説明

4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造法

【課題】
非水系電解液二次電池の電解液添加剤として利用可能な高純度で且つ着色の少ない4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体、および該化合物を不純物が少なく且つ高収率で生産できる製造プロセスを提供する。
【解決手段】
特定の範囲の減圧条件下で4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を含む粗生成物を蒸留すること、特定の化合物を経由し特定の反応によって該誘導体の合成に至ること、反応原料種、反応資材種、中間体の製造条件や精製条件等を組み合わせてプロセスを設計することにより、高純度で且つ着色の少ない4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を、効率的に収率良く製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法、並びに該製造方法によって得られる4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体及び混合物に関する。
【化1】

【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる携帯電子機器用電源から自動車用等の駆動用車載電源や定置用大型電源等に至るまでの広範な電源としてリチウムイオン二次電池等の非水系電解液二次電池が実用化されつつある。しかしながら、近年の電子機器の高性能化、駆動用車載電源や定置用大型電源への適用等に伴い、適用される二次電池への要求はますます高まり、二次電池の電池特性の高性能化、例えば高容量化、高温保存特性、サイクル特性等の向上を高い水準で達成することが求められている。
【0003】
非水系電解液電池に用いる電解液は、通常、主として電解質と非水溶媒とから構成されている。非水溶媒の主成分としては、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル等が用いられている。
【0004】
また、これらの非水系電解液を用いた電池の負荷特性、サイクル特性、保存特性、低温特性等の電池特性を改良するために、種々の非水溶媒や電解質、助剤等も提案されている。例えば、負極に炭素材料を用いた非水電解質において、ビニレンカーボネート及びその誘導体や、ビニルエチレンカーボネート誘導体を使用することにより、二重結合を有する環状カーボネートが負極と優先的に反応して負極表面に良質の被膜を形成し、これにより電池の保存特性とサイクル特性が向上することが特許文献1および2に開示されている。
【0005】
近年、充放電サイクル寿命特性を向上させ、高温保存時の電池厚みの増加を抑制するために環状炭酸エステル誘導体とビニルエステル誘導体との組み合わせた電解液が有効であり、該環状炭酸エステル誘導体の例示として、二重結合を有する環状カーボネートやハロゲン化環状カーボネートと併せてアルキニル基を含有する環状カーボネートが特許文献3に提案されている。
【0006】
しかしながら、アルキニル基が環に直接結合した環状カーボネートの製造方法の報告例は少ない。例えば、5位に置換基を有するアルキニル環状カーボネートの製造方法としては、金属アセチリドを用いた手法(非特許文献1)やPd触媒を用いたカップリングによりエンイン化合物を合成後、Ru触媒やOs触媒を用いた水酸基導入反応を経て環化させる手法(非特許文献2)が報告されている。本発明のような4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造方法としては、4−クロロ−3−ヒドロキシ−1−ブチンを塩基存在下で反応させる方法が特許文献4に記載されている。しかし、特許文献4で得ら
れた4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンは、41%と収率も低く、また薄黄色の着色不純物を含有しており、例えば、高度な不純物含有量の制御が必要とされる上記の非水系電解液二次電池用途への適用は難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−45545号公報
【特許文献2】特開平4−87156号公報
【特許文献3】特開2007−242496号公報
【特許文献4】特表平3−501121号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Current Organic Chemistry,1997、1、197−218
【非特許文献2】Eur.J.Org.Chem.2009,2836−2844
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、非水系電解液二次電池用の電解液添加剤として使用できる高純度で且つ着色の少ない4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を、効率的に収率良く製造できる新規な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高純度で着色の少ない4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を製造する上で、特に精製工程において特定の範囲の減圧条件下で蒸留精製を実施することが重要であること、また、特定の化合物を経由し特定の反応によって該誘導体の合成に至ること、さらにこれらは反応原料種、反応資材種、中間体の製造条件や精製条件等を組み合わせてプロセスを設計することにより効果的になるとの知見を得、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
a)下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法であって、前記4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を含む粗生成物を準備する準備工程、及び前記粗生成物を0.1mmHg以上、10mmHg以下の範囲の圧力条件で蒸留する蒸留工程、を含むことを特徴とする4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。(請求項1)
【化2】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
b)前記蒸留工程が、50℃以上、160℃以下の範囲の温度で行われる、請求項1に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。(請求項2)c)前記蒸留工程が、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体のハーゼ
ン単位色数が、0以上、200以下となるように行われる、請求項1または2に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。(請求項3)
d)前記蒸留工程が、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体よりも蒸気圧の低い不活性化合物の存在下で行われる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。(請求項4)
e)前記蒸留工程が、重合禁止剤存在下で行われる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。(請求項5)f)前記準備工程が、下記構造式(2)で表される3−ブチン−1,2−ジオール誘導体を炭酸エステル化する反応工程を含む合成方法によって、前記4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を含む粗生成物を準備するものである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。(請求項6)
【化3】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
g)前記準備工程が、下記構造式(3)〜(5)で表される少なくとも何れかの化合物からHXを脱離して4位のアルキニル基を形成する反応工程を含む合成方法によって、前記4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を含む粗生成物を準備するものである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。(請求項7)
【化4】

【化5】

【化6】

(式中、Xは臭素、塩素、ヨウ素、−OSO2(R1)(R1は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基である。)を表す。ZはC=O、CR22(R2は水素、置換基を有してもよい炭素数1から20の炭化水素基、エーテル結合を有する炭素数1から20の炭化水素基、又は炭素数1から20のアルキルアミノ基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R2は互いに結合を作り、環を形成してもよい。)を表す。R
は、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
h)下記構造式(3)〜(5)で表される合成中間体。(請求項8)
【化7】

(式中、Xは臭素、塩素、ヨウ素、−OSO2(R1)(R1は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基である。)を表す。ZはC=O、CR22(R2は水素、置換基を有してもよい炭素数1から20の炭化水素基、エーテル結合を有する炭素数1から20の炭化水素基、又は炭素数1から20のアルキルアミノ基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R2は互いに結合を作り、環を形成してもよい。)を表す。Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
i)ハーゼン単位色数が、0以上、200以下である下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体。(請求項9)
【化8】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
j)下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体及び下記構造式(6)で表されるジカーボネート化合物を少なくとも含有する混合物。(請求項10)
【化9】

【化10】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
k)請求項9に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体又は請求項10に記載の混合物を含有することを特徴とする非水系電解液。(請求項11)
l)下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法であって、下記構造式(3)〜(5)で表される少なくとも何れかの化合物からHXを脱離して4位のアルキニル基を形成する反応工程を含むことを特徴とする、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。(請求項12)
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

(式中、Xは臭素、塩素、ヨウ素、−OSO2(R1)(R1は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基である。)を表す。ZはC=O、CR22(R2は水素、置換基を有してもよい炭素数1から20の炭化水素基、エーテル結合を有する炭素数1から20の炭化水素基、又は炭素数1から20のアルキルアミノ基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R2は互いに結合を作り、環を形成してもよい。)を表す。Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
m)下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法であって、下記構造式(2)で表される3−ブチン−1,2−ジオール誘導体を炭酸エステル化する反応工程を含むことを特徴とする、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。(請求項13)
【化15】

【化16】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通常ハーゼン単位色数が200以下であり、純度が95%以上である着色が少ない高純度の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を、効率的に収率良く製造することが可能である。また、本発明により製造された該誘導体は高度な不純物含有量の制御が求められる非水系電解液二次電池用途に対しても、充放電サイクル特性を向上させ、高温保存時の電池厚みの増加を抑制できる添加剤として利用することができる。さらに、本発明によれば、長期間の品質安定性に優れ、また、製造ロット間の添加剤性能のばらつきが少ない4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の趣旨を超えない限り、これらの内容に限定されるものではない。本発明は、高純度で着色の少ない4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を提供するために、特に精製工程において特定の範囲の減圧条件下で蒸留精製を実施することを特徴とする製造方法に関するものである。
【0014】
1. 4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体
本発明の製造方法によって得られる下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体は、特にその純度、不純物含有量に特徴を有する。
【化17】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0015】
構造式(1)中のRは、前述の範囲であれば特に限定されず、好ましくは、水素原子、フッ素原子、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(芳香族へテロ環を含む)があげられ、より好ましくは、水素原子、フッ素原子、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子である。
置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基における置換基は、特に限定はされないが、好ましくはハロゲン、又はカルボン酸、炭酸、スルホン酸、リン酸若しくは亜リン酸のエステル等があげられ、より好ましくは、ハロゲン、さらに好ましくはフッ素である。
置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1,1,2−トリフルオロエチル基、1,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、が好ましい。
置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基としては、具体的には、エテニル基、1−フルオロエテニル基、2−フルオロエテニル基、1−メチルエテニル基、2−プロペニル基、2−フルオロ−2−プロペニル基、3−フルオロ−2−プロペニル基、エチニル基、2−フルオロエチニル基、2−プロピニル基、3−フルオロ−2−プロピニル基、が好ましい。
置換基を有してもよい芳香族炭化水素基としては、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、が好ましい。
置換基を有してもよい芳香族ヘテロ環としては、2−フラニル基、3−フラニル基、2−チオフェニル基、3−チオフェニル基、1−メチル−2−ピロリル基、1−メチル−3−ピロリル基、が好ましい。
これらの中でも、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、エテニル基、エチニル基、フェニル基、が好ましく、メチル基、エチル基、エチニル基、がさらに好ましい。
【0016】
構造式(1)中のYは、前述の範囲であれば特に限定されず、好ましくは、水素、フッ素、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基があげられ、より好ましくは、水素、置換基を有していてもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基があげられ、特に好ましくは、水素である。
置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基における置換基は、特に限定はされないが、好ましくは、ハロゲン、又はカルボン酸、炭酸、スルホン酸、リン酸若しくは亜リン酸のエステル等があげられ、より好ましくは、ハロゲン、さらに好ましくはフッ素である。
置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1,1,2−トリフルオロエチル基、1,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基としては、具体的には、エテニル基、1
−フルオロエテニル基、2−フルオロエテニル基、1−メチルエテニル基、2−プロペニル基、2−フルオロ−2−プロペニル基、3−フルオロ−2−プロペニル基、エチニル基、2−フルオロエチニル基、2−プロピニル基、3−フルオロ−2−プロピニル基、が好ましい。
置換基を有してもよい芳香族炭化水素基としては、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、が好ましい。
これらの中でも、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、エテニル基、エチニル基、フェニル基、が好ましく、メチル基、エチル基、エテニル基、エチニル基、がさらに好ましい。
【0017】
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の具体例として、以下のものが挙げられる。
【化18】

【0018】
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の品質は、ハーゼン単位色数の測定により把握することができ、該数値が小さいほど品質が高くなる。本発明によって得られる成分、即ち4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体のハーゼン単位色数の上限は、通常、200以下、好ましくは、100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。一方、その下限は0以上である。また、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の純度は、高いほど好ましいが、通常、95%以上、好ましくは97%以上、特に好ましくは99.5%以上である。ハーゼン単位色数を上記範囲内とする該誘導体は、非水系電解液二次電池の電解質として求められる優れた充放電サイクル特性を発揮しつつ、電極との副反応や電解質の劣化を防止することができる高品質な添加剤となる。また、これらの品質を制御することにより、製品ロット間の性能のばらつきを抑え、長期間の品質安定性を備えた添加剤となる。
【0019】
本発明の製造方法において、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を、着色が少なく、より高純度で製造することが好ましいが、下記構造式(6)で表されるジカーボネート化合物が含まれているもの(4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体及び下記構造式(6)で表されるジカーボネート化合物を含む混合物)であってもよい。かかる混合物は、非水系電解液二次電池の電解質として求められる優れた充放電サイクル特性を発揮しつつ、電極との副反応や電解質の劣化を防止することができる優れた添加剤となる
【化19】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0020】
構造式(6)中のR及びYは、前述の範囲であれば特に限定されず、好ましくは、水素原子、フッ素原子、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(芳香族へテロ環を含む)があげられ、より好ましくは、水素原子、フッ素原子、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子である。置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(芳香族へテロ環を含む)の具体例としては、前述の段落[0015]及び[0016]に記載されているものと同様である。
【0021】
構造式(6)中のR3は、前述の範囲であれば特に限定されず、好ましくは、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(芳香族へテロ環を含む)があげられ、より好ましくは、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基である。置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(芳香族へテロ環を含む)の具体例としては、前述の段落[0015]及び[0016]に記載されているものと同様である。
【0022】
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体及び構造式(6)で表されるジカーボネート化合物を含む混合物は、前記誘導体及び前記ジカーボネート化合物をそれぞれ1種ずつ含んでいても、2種以上ずつ任意に組み合わせ及び比率で併有していてもよい。また、混合物におけるジカーボネート化合物の含有量は、特に限定されず、含有量の上限は、通常30質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。上記範囲であると、非水系電解液二次電池の電解質として求められる優れた充放電サイクル特性を発揮しつつ、電極との副反応や電解質の劣化を防止することができる高品質な添加剤となる。
【0023】
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体及び構造式(6)で表されるジカーボネート化合物を含む混合物の調製方法は特に限定されない。例えば、4−アルキ
ニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を合成する際に、副生成物として構造式(6)で表されるジカーボネート化合物が生じ、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体とジカーボネート化合物が混合した状態で得られたものであってもよい。具体的には、ジアルキルカーボネートを用いて3−ブチン−1,2−ジオール誘導体を炭酸エステル化し、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を合成する際に、3−ブチン−1,2−ジオール誘導体の2つの水酸基がそれぞれ異なるジアルキルカーボネートと反応し、構造式(6)で表されるジカーボネート化合物が生成する場合がある。
【化20】

【0024】
また、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体及び構造式(6)で表されるジカーボネート化合物をそれぞれ個別に合成し、これらを混合したものであってもよい。更には、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を個別に合成し、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを共存させて構造式(6)で表されるジカーボネート化合物を発生させたものであってもよい。
構造式(6)で表されるジカーボネート化合物の合成方法としては、例えば対応するジオール化合物を適切な溶媒に溶解させ、アミンなどの塩基を加えて適切に冷却する。これに対して必要な酸塩化物、あるいは酸無水物を加え、必要に応じて反応温度を適宜上昇させる。得られる粗体を蒸留、再結晶もしくはシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどの適切な方法で精製することで製造することが出来る。
【0025】
2. 4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む粗生成物を準備する準備工程
本発明の製造方法は、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を含む粗生成物を準備する準備工程を含むことを特徴とする。「準備」とは、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を合成して、かかる誘導体を含む粗生成物を得ること、及びかかる誘導体を含む粗生成物を入手することを含むものとする。また、「粗生成物」とは、本発明の効果を付与するために後述する蒸留工程を行う対象となる化合物又は混合物を意味するものとする。即ち、公知の精製方法や本発明における蒸留工程を既に経ているものであっても、本発明の効果を向上させるために再度後述する蒸留工程を行う場合には、その化合物又は混合物は「粗生成物」に該当する。
【0026】
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を合成して、かかる誘導体を準備する場合の合成方法は、特に限定されないが、以下に4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを合成する場合の例を挙げて、具体的な合成方法を説明する。まず、4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを合成するための前駆体(例えば、3−ブチン−1,2−ジオール(2)、3−ハロ−4−ヒドロキシ−1−ブチン、または4−ハロ−3−ヒドロキシ−1−ブチン、3,4−エポキシ−1−ブチン)の合成方法を以下に列挙する。
【0027】
(i)3−ブチン−1,2−ジオール(2)の合成方法
4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを合成するための前駆体の1つである3−ブチン−1,2−ジオール(2)の合成方法としては、例えば以下の(i−1)〜(
i−7)の方法が挙げられる。
(i−1)アルデヒドと金属アセチリドを縮合する方法
【化21】


(式中、Xはリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、銅、マグネシウムブロマイド、マグネシウムクロライドなどのマグネシウムハライドを表す。Rは一般的な水酸基の保護基を表す。Y1はYと同義、あるいは、トリメチルシリル、C(OH)Me2等の、脱保護後により末端エチニル基(Y=H)とすることができる保護基を表わす。)
アルカリ金属アセチリド類は、アセチレン類にアルカリ金属を作用することにより生成する。アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびそれらのハイドライド、ヒドロキシド、アミド、アルキル化合物が例示される。銅アセチリドとしてはレッペのエチニル化触媒等、塩化銅やヨウ化銅から生成することができる。アセチレンマグネシウムハライドは、アセチレンにアルキルマグネシウムハライド等のグリニャール試薬を作用させて生成することができる。
その他の例として、Eur.J.O.C.2006(20),4676およびSynth.1987,139に記載された方法が挙げられる。
【化22】

(式中、Rは一般的な水酸基の保護基を表す。)
【0028】
(i−2)ハロゲンなどの脱離基を有する化合物と金属アセチリドを縮合する方法
【化23】

(式中、Xは臭素、塩素、ヨウ素、−OSO2R(Rは炭素数1から20の炭化水素基である。)を表し、Rは一般的な水酸基の保護基を表す。)
【0029】
(i−3)アルデヒドにリン化合物を縮合して増炭後、エチニル基を導入する方法
【化24】

例としてJOC 56(3),1083−8,1991に記載された方法が挙げられる。
【0030】
(i−4)水酸基と脱離基を強塩基で処理することにより、エチニル基を導入する方法
【化25】

【化26】

【化27】

例として、TL 29(22),2737−2740、Synthesis,1995(10),1291−1294、特開公09119748などに記載された方法が挙げられる。
【0031】
(i−5)1−ブテン−3−インに水酸基を導入する方法
【化28】

(式中、Rは末端エチニルの保護基を表す。)
【化29】

(式中、Rは水素原子、アルキル基等を表す。)
例としてRussian J.O.C 43(11),1604−1611,2007やEur.J.Org.Chem.2009,2836−2844に記載された方法が挙げられる。
【0032】
(i−6)アセトキシ基をハロゲンやヒドラジンを用いてエチニル基に変換する方法
【化30】

【化31】

(式中、Rは一般的な水酸基の保護基を表す。)
【0033】
(i−7)プロパルギルアルデヒドを増炭する方法
【化32】

(式中、Rは一般的な水酸基の保護基を表す。)
【0034】
(ii)3−ハロ−4−ヒドロキシ−1−ブチン、または4−ハロ−3−ヒドロキシ−1−ブチンの合成方法
アルデヒドと金属アセチリドを縮合する方法が挙げられる。
【化33】

(式中、Xはハロゲン原子、Rは末端エチニルの保護基を表す。)
【0035】
(iii)3,4−エポキシ−1−ブチンの合成方法
上記の3−ハロ−4−ヒドロキシ−1−ブチン、または4−ハロ−3−ヒドロキシ−1−ブチンを塩基処理する方法の他、Russian J.O.C 43(11),1604−1611,2007に記載された方法などや、硫黄イリドで増炭する方法が挙げられる。
【化34】

【化35】

【0036】
以上に記載した前駆体の合成方法には、炭素骨格構築法として増炭反応を含むものがあるが、増炭反応は一般的に金属試薬を用いることが多く、工業的に取り扱うには、コスト高であり、操作が煩雑などの課題が残される場合がある。また、減炭反応には、過ヨウ素酸やオゾンなどの酸化剤を用いることが多く、これらもやはり同様の課題が残される場合がある。そこで出発原料は、合成過程において、増炭又は減炭反応を行わなくて済むように、目的とする4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの炭素骨格に合わせたものを用いることが好ましい場合がある。例えば、4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの合成においては、炭素原子4個を有する化合物を出発原料として用いるのが簡便である。用いられる出発原料としては、石化製品、天然抽出物、微生物生産物等いずれでもよく、例えば、3−ブテン−1,2−ジオール、3,4−ジアセトキシブテン、ブタジエン、エリスリトール、ビニルエチレンカーボネート、コハク酸等が挙げられる。この中でも、3−ブテン−1,2−ジオール、3,4−ジアセトキシブテン、ビニルエチレンカーボネートが安価に安定的に入手できる原料であるため好ましい。
【0037】
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を合成するための前駆体の合成方法を前述したが、本発明の製造方法においては、特に下記構造式(3)〜(5)で表される少なくとも何れかの化合物からHXを脱離して4位のアルキニル基を形成する反応工程を含むことが好ましい場合がある。
【化36】

(式中、Xは臭素、塩素、ヨウ素、−OSO2(R1)(R1は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基である。)を表す。ZはC=O、CR22(R2は水素、置換基を有してもよい炭素数1から20の炭化水素基、エーテル結合を有する炭素数1から20の炭化水素基、又は炭素数1から20のアルキルアミノ基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R2は互いに結合を作り、環を形成してもよい。)を表す。Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0038】
構造式(3)〜(5)中のXは、前述のように臭素、塩素、ヨウ素又は−OSO2(R1)(R1は置換基を有しても良い炭素数1から20の炭化水素基である。)であるが、目的物たる4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を、効率的に収率良く製造するために極めて重要な構造である。これらの構造は、例えば不飽和結合をハロゲン化することにより容易に調製することができ、さらに該構造からHXを脱離することによって、簡便かつ高収率でアルキニル基を形成することができる。そのため、該化合物を経由する本発明の製造方法は、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を効率的に収率良く製造することができる。該化合物の調製及び脱離反応がより容易である観点から、Xは臭素が特に好ましい。
【0039】
上記R1は前述の範囲であれば特に限定されず、置換基を有していてもよい炭素数1から20の飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である。
置換基を有してもよい炭化水素基の置換基は、特に限定されないが、ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。
具体的には、飽和脂肪族炭化水素基としてはメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、不飽和脂肪族炭化水素基としてはエテニル基、エチニル基、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トルイル基、4−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−クロロフェニル基等が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、トルイル基が好ましい。
【0040】
構造式(3)〜(5)中のZは、C=O、CR22(R2は水素、置換基を有してもよい炭素数1から20の炭化水素基、エーテル結合を有する炭素数1から20の炭化水素基、又は炭素数1から20のアルキルアミノ基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R2は互いに結合を作り、環を形成してもよい。)であるが、その後の合成に影響を与えない官能基が特に好ましい。なお、ZのC=O及びCR22は、相互の変換が容易である。例えば、ジオキソラン構造を一度ジオール構造に変換し、該ジオール構造をアセタール化又は炭酸エステル化等することによって、C=OまたはCR22を形成することができる。
【0041】
上記R2は前述の範囲であれば特に限定されないが、隣接する水酸基の保護に好適であ
り、さらに脱保護が容易なものが好ましい。
2中の置換基を有してもよい炭化水素基の置換基は、特に限定されないが、ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。
具体的には、水素原子、飽和脂肪族炭化水素基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、トリクロロメチル基等が、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、4−メトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、4−ジメチルアミノフェニル基、4−ニトロフェニル基等が挙げられる。エーテル結合を有するものとしては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基等が挙げられる。ジアルキルアミノ基としてはジメチルアミノ基が挙げられる。これらの場合、R2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
互いに結合を作り、環を形成する場合には、−CH2−(CH22−CH2−、−CH2−(CH23−CH2−、−CH2−(CH24−CH2−等が挙げられる。
これらの中でも、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基の組み合わせが、環を形成する場合には、−CH2−(CH22−CH2−、−CH2−(CH23−CH2−が好ましい。
【0042】
構造式(3)〜(5)中のRは、前述の範囲にあれば特に限定されないが、目的とする4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体のRと一致する場合、その後の合成が容易であり好ましい。また、Rが該化合物の調製やHXの脱離反応を阻害しない置換基である場合、官能基の保護等の処理を必要としないため特に好ましい。
【0043】
構造式(3)〜(5)で表される化合物に至るまでの合成方法は特に限定されないが、隣接した2つの水酸基及び不飽和結合を有する出発原料を用いた以下の方法があげられる。
【化37】

2つの水酸基をアセタール化又は炭酸エステル化等することによって保護した後、不飽和結合をハロゲン化する方法;同様に水酸基を保護した後、不飽和結合をジヒドロキシル化し、該水酸基をスルホン酸エステル化する方法ある。これらの方法は、簡便かつ高収率な方法であるため、特に好ましい一例である。
構造式(4)、(5)で表される化合物は、構造式(3)で表される化合物から、後述の方法により、容易に調製することが出来る。
【0044】
構造式(3)〜(5)で表される化合物からHXを脱離する脱離反応は、金属試薬を用いることなく、また簡便かつ高収率で目的物を得ることができる反応である。また、該脱離反応は以下の反応式に表されるように2段階の反応であるが、2段階をワンポットで進めることもできる。脱離反応についての詳細な条件は、後述する「脱離工程」の記載部分で説明する。
【化38】

【0045】
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を合成するための前駆体の合成方法を前述したが、本発明の製造方法においては、特に下記構造式(2)で表される3−ブチン−1,2−ジオール誘導体を合成し、かかる3−ブチン−1,2−ジオール誘導体を炭酸エステル化する反応工程を含むことが好ましい。
【化39】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0046】
構造式(2)中のRは、前述の範囲にあれば特に限定されないが、目的とする4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体のRと一致する場合、その後の合成が容易であり好ましい。
【0047】
3−ブチン−1,2−ジオール誘導体を炭酸エステル化する反応工程は、簡便かつ高収率で目的物を得ることができる反応である。炭酸エステル化には、ホスゲン、トリホスゲン;ジメチルカーボネートやジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート;カルボキシジイミダゾール等を用いることができる。かかる反応についての詳細な条件は、後述する「環化工程」の記載部分で説明する。
【化40】

【0048】
3−ブチン−1,2−ジオール誘導体を経由しない合成方法としては、以下のものが挙げられる(4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを合成する場合の例)。
(i)環状カーボネート化合物にエチニル基を導入する方法
【化41】

(式中、Rはトリメチルシリル、C(OH)Me2などの保護基を表す。)
【0049】
(ii)3,4−エポキシ−1−ブチンに二酸化炭素を触媒存在下反応させ環状カーボネートとする方法
【化42】

(iii)4−ハロ−3−ヒドロキシ−1−ブチン、または3−ハロ−4−ヒドロキシ−1−ブチンに二酸化炭素や炭酸塩等を反応させ環状カーボネートとする方法
【化43】

(式中、Xは、塩素、臭素、ヨウ素、−SO2R等の脱離基を表す。(Rは炭素数1から20の炭化水素基である。))
【0050】
更に、特に限定はされないが、上記の反応ルートの一部を含め一般的な4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造基礎ルートを以下に示した。尚、以下の反応式中のアセチレン記載部は、三重結合含有化合物を表し、アセチレンのみならず、TMSアセチレン(TMSはトリメチルシリルを表す。)、2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチンなど、アセチレン前駆体としての保護アセチレンも含まれる。
【化44】

【化45】


【化46】

【化47】

【0051】
3. 4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む粗生成物を蒸留する蒸留工程
本発明の製造方法は、前述の準備工程で得られた4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を含む粗生成物を、特定の条件下で蒸留する蒸留工程を含むことを特徴とする。かかる蒸留工程は、前述した高純度の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を得ることを可能とする、極めて有用な方法である。本発明の蒸留工程
は、例えば合成の際に生じた副生不純物を効率よく分離し、かつ該化合物の分解を抑えつつ精製することができる。
【0052】
通常沸点の高い化合物の蒸留は、熱による化合物の分解を抑制するとともに、効率よく精製を進めるために、減圧下で行われる。圧力が低いほど効率良く蒸留が進むため、低い圧力条件で実施されるのが一般的である。例えば4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの蒸留については、60−62℃、0.0075mmHg(0.01mbar)の条件で行われる例が報告されている(特許文献4)。しかしながら、上記のような低温低圧条件の蒸留では、例えば該化合物の合成の際に生じた沸点の近い副生不純物等を精密に分離することが困難で、十分な収率・純度が得られないという課題を有していた。本発明者らは、適切な圧力条件の設定により、精密かつ効率的な蒸留が可能となり、上記課題を解決できることを見出した。即ち本発明に係る蒸留の圧力条件の下限は、通常0.1mmHg以上、好ましくは0.2mmHg以上、より好ましくは0.5mmHg以上、更に好ましくは1.0mmHg以上である。一方、上限は、通常10.0mmHg以下、好ましくは5.0mmHg以下、より好ましくは3.0mmHgである。圧力の値が低すぎる場合は、工業的には設備、処理能力の面でコスト高になるばかりか、着色成分等の不純物が留出品に混入する傾向が有る。一方、圧力の値が高すぎる場合は、蒸留時の温度を高く設定する必要が生じ、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の熱分解が著しくなる理由から着色成分等の不純物が留出品に混入する傾向がある。
【0053】
また、蒸留は上記圧力条件下で加熱して実施されるが、その温度の下限は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上であり、一方、その上限は、通常160℃以下、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃、更に好ましくは110℃である。温度が低すぎる場合は、蒸留に長時間を要し、加熱条件下での長時間滞留により4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の分解量が増加する場合がある。一方、温度が高すぎる場合は、蒸留時に4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の熱分解が著しくなる場合がある。これらの蒸留時の温度条件と上記の圧力条件を組み合わせると、より効果的に本発明の長期間の品質安定性に優れ、また、製造ロット間の添加剤性能のばらつきが少ないリチウム二次電池電解質用の高品質な添加剤を提供できる。
【0054】
蒸留は蒸気圧の低い不活性化合物、特に4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体よりも蒸気圧の低い不活性化合物と共存させて蒸留を行ってもよい。蒸気圧の低い不活性化合物としては、蒸留時に缶出に混入しないものが好ましく、釜残に残り、長時間加熱条件下にさらされるため、熱に対して安定なものが好ましい。例えば、デカリン、テトラヒドロデカリン、ヘキサデカン、ウンデカン、トリデカン、テトラデカン、等の炭化水素;エチレングリコール、ブタンジオール、トリメチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル等のアルコール;安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、トリメリット酸オクチル等のエステル;トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類;アントラセン、フェナントレンなどの芳香族類;カプロラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルウレア等の含窒素化合有機物、スルホラン、ジフェニルスルホン等の含硫黄化合物等が挙げられる。
【0055】
また、蒸留時の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の分解を抑制させる手法としては、蒸留を重合禁止剤存在下で行う手法が挙げられる。
本発明で用いられる重合禁止剤としては、フェノール誘導体、ビニル化合物、含硫黄化合物、含窒素化合物、金属化合物を例示することができるがこの限りではない。
【0056】
フェノール誘導体としては、フェノール、4−t−ブチルフェノール、4−メトシキフ
ェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−i−プロピル−5−メチルフェノール等を例示することができるがこの限りではない。
ビニル化合物としては、スチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−ニトロスチレン、m−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン、o−シアノスチレン、m−シアノスチレン、p−シアノスチレン、ジビニルベンゼン、p−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニル−5−エチルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、アクリルアミド、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等を例示することができるがこの限りではない。
含硫黄化合物としては、フェノチアジン、2,2'−ジベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩、チオ尿酸等を例示することができるがこの限りではない。
含窒素化合物としては、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、4−ニトロソジフェニルアミン、2−メチル−2−ニトロソプロパン、α−フェニル(t−ブチル)ニトロン、N−フェニル−N'−i−プロピルフェニレンジアミン、5,5−ジメチル−N−フェニル−N'−i−プロピルフェニレンジアミン、1−ニトロソ−2−ナフトール、2−ニトロソ−1−ナフトール、ニトロソベンゼン等を例示することができるがこの限りではない。
金属化合物の金属としては、マンガン、亜鉛、リチウム、鉄、銅等を例示することができるがこの限りではない。また金属化合物としては、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、リン酸塩、リン酸水素塩、酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、塩基性炭酸塩、カルボン酸塩、有機金属錯体等が挙げられるがこの限りではない。
【0057】
重合禁止剤は1種のみを単独で使用できるほか、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用することもできる。後述の蒸留塔を用いた場合、重合禁止剤は蒸留塔の塔底液中、通常0.01〜1.5質量%の濃度で用いることができる。
【0058】
蒸留装置は特に限定はされないが、公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、樹脂製のものなどが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好んで用いられる。金属製の材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
【0059】
蒸留の形態としては、単蒸留、精密蒸留、薄膜蒸留、フラッシュ蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留、共沸蒸留、抽出蒸留等、いずれの公知の形態であってもよい。
蒸留塔を用いて工業的に精製する場合には、充填塔や棚段塔を選択することができ、蒸留方式としては、回分方式、半連続方式、連続方式のいずれも選択することができる。
【0060】
<4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の合成>
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の具体的な合成方法について、4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの場合を例に挙げて以下に詳細に示すが、本発明の趣旨を超えない限り、本発明は以下の合成方法に限定されるものではない。
【0061】
3−ブテン−1,2−ジオールを出発原料として用いた合成方法には、以下の反応式で表される各反応工程を含むものが挙げられ、具体的には、2つの水酸基を保護する工程(水酸基保護工程)、アルケニル基を臭素化する工程(臭素化工程)、ハロゲン化アルキルを脱ハロヒドリン化し、エチニル基(アルキニル基)を形成する工程(脱離工程)、保護した水酸基を元に戻す工程(脱保護工程)、炭酸エステル化し、4−エチニル−1,3−
ジオキソラン−2−オンを得る工程(環化工程)を含むものである。
【化48】

【0062】
(水酸基保護工程)
3−ブテン−1,2−ジオールから脱ハロヒドリン化によってアルキニル基(4−エチニル基)を形成するためには、その前提としての2つの水酸基を不活性化し、保護しておくのが好ましい。
【0063】
保護工程で用いる資材としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−メトキシベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド(クロラーニル)等のアルデヒド類、アセトン、2−ブタノン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等のケトン類;2,2−ジメトキシプロパン、等のアセタール類;イソプロペニルメチルエーテル、イソプロペニルエチルエーテル、イソプロペニルトリメチルシリルエーテル等のエーテル類;オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト安息香酸メチル、テトラメチルオルト炭酸エステル、等のオルトエステル類;ジブロモメタン等のジハロアルキル類等が挙げられる。必要に応じて、系内で副生する水やアルコールを除去しながら反応を行うこともできる。
【0064】
保護工程における反応は酸触媒存在下、または非存在下行い、用いられる酸触媒としては、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸;硫酸、塩酸、硝酸、燐酸、臭化水素酸等の無機酸;ダイヤイオン、アンバーリスト15等の酸性のイオン交換樹脂;ポリリン酸、ゼオライト等の固体酸;ピリジン塩酸、ピリジン硫酸塩、p-トルエンスルホン酸ピリジン塩等の塩類;塩化鉄、塩化亜鉛、四塩化チタン、フッ化ホウ素、臭化マグネシウム、のルイス酸等が挙げられる。
【0065】
保護工程は、無溶媒または溶媒中で行うことができる。反応は通常、反応条件下で安定で、かつ反応に悪影響を与えない溶媒中で行われる。溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素; ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル; 塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ブロモプロパン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等の含シアノ炭化水素;またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。系内で副生する水やアルコールを除去しながら反応を行うと、効率よく反応が進行することから、水と共沸しやすい溶媒が好ましい。
溶媒の使用量は、基質に対し、通常0〜50倍重量の範囲が適当であり、好ましくは1〜20倍重量の範囲である。
【0066】
保護工程における反応温度は、通常0℃〜150℃以下、好ましくは0℃〜120℃である。
保護工程における反応は、常圧、加圧、減圧条件下のいずれでも行うことが好ましいが、系内で副生する水やアルコールを除去しながら反応を行うと効率がよいことから、常圧
、または減圧条件下で行うのが好ましい。
【0067】
(臭素化工程)
3−ブテン−1,2−ジオールのアルケニル基(3−ブテン基)をハロゲン化し、その後脱ハロヒドリン化することによってアルキニル基(4−エチニル基)を形成することができる。ハロゲン化としては、特に臭素化反応が容易であり、有用である(以下、臭素化工程ともいう)。
【0068】
臭素化工程は、無溶媒または溶媒中で行われる。用いられる溶媒としては、臭素や、系中で発生する臭化水素と反応しないものを用いるのが好ましい。例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル等の脂肪族系炭化水素; ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ブロモプロパン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のアルコール; アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等の含シアノ炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類:ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素類、水;またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいが、コストの面から、安価な溶媒と混合して用いることもできる。
【0069】
臭素化は必要に応じ、系内で生成する臭化水素を除去する目的で、塩基存在下で反応を行ってもよい。用いられる塩基とは、脱ハロヒドリン化を起こさない弱い塩基が好ましく、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;トリエチルアミン、トリメチルアミン等のアミン類;ピリジン、ピコリン等のピリジン類;N,N−ジメチルアニリン等のアニリン;等を挙げることができる。
【0070】
臭素化工程の反応の温度は、通常、臭素の揮発性を考慮し、好ましくは−10〜50℃、さらに好ましくは、0〜30℃で行う。
臭素化工程は、常圧、加圧、減圧条件下のいずれでも行うことができるが、常圧条件下で行うのが好ましい。
【0071】
(脱離工程)
上記臭素化工程によって合成した臭素化アルキルを、塩基で処理することによって、脱ハロヒドリン化が進行し、アルキニル基(4−エチニル基)を形成することができる。(以下、脱離工程ともいう)脱ハロヒドリン化は、1つのハロゲン化水素が脱離してハロゲン化ビニルが形成する一段階目と、さらにハロゲン化水素が脱離してアルキニル基に至る二段階目の2つの段階を有する。これらの段階は、順次段階的に進行するが、一段階目と二段階目を分けて行うことも、ワンポットで行うこともできる。用いる塩基も、同一のものでもよいが、それぞれ異なる塩基を用いることもできる。一般的に、二段階目の反応の方が一段階目より、例えば強い塩基、高い反応温度、極性の溶媒等、強い条件が必要となる。
【0072】
脱離工程に用いられる塩基は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水
素化ナトリウム等の水酸化物塩;水素化ナトリウム、水素化カリウム、金属ナトリウム、金属カリウム等の無機塩基、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド等の金属アルコキシド類;トリエチルアミン、トリメチルアミン等のアミン類;ピリジン、ピコリン等のピリジン類;N,N−ジメチルアニリン等のアニリン;メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム等のアルキル金属化合物;フェニルリチウム等のアリール金属化合物等を挙げることができる。溶媒の種類によっては、塩基により分解するものもあるため、溶媒との組み合わせを考慮して用いる。
塩基の使用量は、脱離させるハロゲン化水素に対し1当量〜10当量の範囲が好ましく、更に好ましくは1当量〜3当量の範囲が好ましい。
【0073】
脱離工程における反応は、通常塩基条件下で安定かつ反応に悪影響を与えない溶媒中で行われる。溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素; ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル; 塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ブロモプロパン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のアルコール; アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等の含シアノ炭化水素;水;またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。溶媒の使用量は、基質に対し、通常1〜50倍重量の範囲が適当であり、好ましくは1〜20倍重量の範囲である。
【0074】
脱離工程における反応温度は、−10℃ 〜100℃の範囲が好ましく、−0℃ 〜100℃の範囲がより好ましい。
脱離工程は、生成するアセチレン化合物がハロゲンを含有する反応基質より低沸であるため、生成するアセチレン化合物を留去しながら行うこともできる。この際に、精留することにより、反応と精製を同時に行うこともできる。
脱離工程における反応は、常圧、加圧、減圧条件下のいずれでも行うことができる。反応温度、化合物の蒸気圧に応じ、また、反応蒸留のように、反応生成物を逐次系外に排出するか否かにより、適切な条件で行う。
【0075】
なお、上記臭素化工程及び脱離工程を経てアルキニル基を形成する以外に、アルケニル基(3−ブテン基)をジヒドロキシル化(X=OH)した後、水酸基をスルホン酸エステル化し(X=OSO2(R1))、さらにこれを脱離してアルキニル基を形成することもできる。
【0076】
ジヒドロキシル化する方法としては、オスミウムを用いる方法の他、過ギ酸、過酢酸、m-クロロ過安息香酸等の過酸、超原子価ヨウ素等の酸化反応を用いる方法等が知られている。酸化反応を用いる例としては、過ギ酸で反応後、塩基処理をする方法、過酢酸、m-クロロ過安息香酸等の過酸でエポキシ化した後、これを酸や塩基で開裂する方法、ジアセトキシヨードベンゼンで反応後、塩基処理する方法等が挙げられるが、このうち過ギ酸を使う方法が簡便で好ましい。
【0077】
スルホン酸エステル基の導入方法は、特に限定されないが、一般的には塩基存在下、スルホニルクロライドを反応させる。
スルホン酸エステル基の種類としては、メタンスルホン酸エステル、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、エタンスルホン酸エステル、ベンゼンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0078】
スルホン酸エステル基を導入する反応は、通常反応条件下で、安定かつ反応に悪影響を与えない溶媒中で行われる。溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等の等のエーテル;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ブロモプロパン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のアルコール;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等の含シアノ炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、水、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。溶媒の使用量は、基質に対し、通常1〜50倍重量の範囲が適当であり、好ましくは1〜20倍重量の範囲である。
【0079】
スルホン酸エステル基を導入する反応の温度は、通常80℃以下、好ましくは0〜40℃であり、圧力は常圧、加圧、減圧条件下のいずれでも行うことができるが、常圧条件下で行うのが好ましい。
【0080】
(脱保護工程)
上記水酸基保護工程によって導入した保護基を、取り除き、前駆体である3−ブチン−1,2−ジオール(2)を合成することができる(以下、脱保護工程ともいう)。
【0081】
4−エチニル−1,3−ジオキソラン類の脱保護工程は、酸存在下、水または/且つアルコール存在下で反応を行う。有機溶媒を用いてもよい。
【0082】
用いられる酸としては、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸;硫酸、塩酸、硝酸、燐酸、臭化水素酸等の無機酸;ダイヤイオン、アンバーリスト15等の酸性のイオン交換樹脂;ポリりん酸、ゼオライト等の固体酸が挙げられる。
【0083】
脱保護工程の反応は通常反応条件下で、安定かつ反応に悪影響を与えない溶媒中で行われる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1 − ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のアルコールや水の他、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素; ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ブロモプロパン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等の含シアノ炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。溶媒の使用量は、基質に対し、通常
0〜50倍重量の範囲が適当であり、好ましくは0〜20倍重量の範囲である。
【0084】
脱保護工程の反応の温度は、通常0℃〜100℃以下、好ましくは10℃〜80℃である。
脱保護工程の反応は、常圧、加圧、減圧条件下のいずれでも行うことが好ましいが、常圧条件下で行うのが好ましい。
【0085】
(環化工程)
合成した3−ブチン−1,2−ジオールを、炭酸エステル化することによって、最終目的物たる4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを合成することができる(以下、環化工程ともいう)。
【0086】
3−ブチン−1,2−ジオールの炭酸エステル化には、ホスゲン、トリホスゲン;ジメチルカーボネートやジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート;カルボキシジイミダゾール等を用いることができる。
【0087】
上記ホスゲン、トリホスゲンを用いる環化工程の場合の反応条件を以下に記す。
【0088】
ホスゲン、トリホスゲンとの反応は、一般的に塩基存在下で反応を行う。用いる塩基としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸バリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩;トリエチルアミン、ピリジン、インダゾール、エチルアミン、DBU(1,8−ジアゼビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7)等の有機含窒素化合物;リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムメトキシド等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルコキシド類;塩基性イオン交換樹脂を例示できる。
これらの塩基の使用量は特に限定されないが、通常は原料の3−ブチン−1,2−ジオールに対して0.1〜10モル、好ましくは0.5〜4モルの範囲で行う。
【0089】
反応は通常反応条件下で、安定かつ反応に悪影響を与えない溶媒中で行われる。溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素; ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等の等のエーテル; 塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ブロモプロパン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1 − ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のアルコール; アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等の含シアノ炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。溶媒の使用量は、基質に対し、通常1〜50倍重量の範囲が適当であり、好ましくは1〜20倍重量の範囲である。
【0090】
反応の温度は、通常ホスゲンガスの揮発性を考慮し、−10℃〜50℃で、好ましくは0℃〜40℃で行う。
反応は、常圧、加圧、減圧条件下のいずれでも行うことが好ましいが、常圧条件下で行うのが好ましい。
【0091】
ジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートを用いて炭酸エステル化する場合の条件を以下に記す。
【0092】
ジアルキルカーボネートや、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートを反応させる場合は塩基、酸、金属等の存在下で反応を行う。使用する触媒としては、一般に使用されているエステル交換触媒が使用できる。
【0093】
塩基触媒として、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸バリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩;リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムメトキシド等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルコキシド類;リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属のアリーロキシド類;酢酸リチウム、安息香酸ナトリウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の有機酸塩類、インダゾール、エチルアミン、DBU(1,8−ジアゼビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7)等のアミン化合物;塩基性イオン交換樹脂を例示できる。
【0094】
酸触媒としては、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸;硫酸、塩酸、硝酸、燐酸、臭化水素酸等の無機酸;ダイヤイオン、アンバーリスト15等の酸性のイオン交換樹脂;ポリりん酸、ゼオライト等の固体酸;ピリジン塩酸、ピリジン硫酸塩、p-トルエンスルホン酸ピリジン塩等の塩類;塩化鉄、塩化亜鉛、四塩化チタン、フッ化ホウ素、臭化マグネシウム等、のルイス酸等が挙げられる。
【0095】
上記以外の触媒としては、酸化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物類;酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリメチル等のホウ素化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、テトラメチルケイ素等のケイ素化合物類;酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエトキシド等のゲルマニウム化合物類;酸化スズ、ジアルキルスズオキシド、ジアリールスズオキシド、酢酸スズ、エチルスズトリブトキシド等のアルコシ基又はアリーロキシ基と結合したスズ化合物、有機スズ化合物等のスズ化合物類;酸化鉛、酢酸鉛、炭酸鉛等の鉛化合物;第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩等のオニウム化合物類;酸化アンチモン、酢酸アンチモン等のアンチモン化合物類;酢酸マンガン、炭酸マンガン等のマンガン化合物類;酸化チタン、チタンのアルコキシド又はアリールオキシド等のチタンの化合物類;酢酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトン等のジルコニウムの化合物類等が挙げられる。
また、これらの触媒の使用量は特に限定されないが、通常は原料の3−ブチン−1,2−ジオールに対して0.0001〜10モル%、好ましくは0.001〜3モル%、特に好ましくは0.001〜0.1モル%の範囲で選ばれる。
【0096】
反応に用いるカーボネート類として具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等を例示できる。この中ではジメチルカーボネート、やジエチルカーボネートが好ましい。
【0097】
反応は通常、無溶媒で反応は行われるが、必要に応じて反応に悪影響を及ぼさないものを溶媒として用いることもできる。
【0098】
反応は生成するアルコールを留去する温度以上に加熱して反応を行うことが好ましい。ジメチルカーボネートを用いた場合には生成するメタノールは未反応ジメチルカーボネートと共沸組成物をつくるが、これを系外へ留去させながら反応を行うことが好ましい。反応温度は使用されるジオールとジアルキルカーボネートの種類によっても異なるが、通常
は60〜180℃である。
反応は、通常常圧、または加圧下で行うが、生成するアルコールを留去するのに適する条件が好ましい。
【0099】
本発明の反応ではジアルキルカーボネートの全量を反応の最初から仕込んでもよいし、あるいは必要に応じて適宜反応器へ適宜量を追加してもよい。
【0100】
上記各工程の反応装置は特に限定されないが、公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂等のライニングを施したもの、さらにはガラス製、樹脂製のもの等が用いられる。強度ならびに安全の面等から金属製もしくはそれらにガラスライニングを施したものが好んで用いられる。金属製の材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
【0101】
(合成中間体の精製法)
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を純度良く合成するためには、前提として純度の高い合成中間体である4−アルキニル−1,3−ジオキソラン類を得る必要があり、該合成中間体の精製が極めて重要であるとの知見を得た。留出成分、即ち蒸留後の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン類の純度は、純度よい4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を得るという観点から、高いほど好ましいが、具体的には99%以上、更に好ましくは99.5%以上であることが好ましい。特に含ハロゲン化合物は0.1%以下、好ましくは0.05%以下、更に好ましくは検出限界以下であることが好ましい。
【0102】
蒸留の形態としては、単蒸留、精密蒸留、薄膜蒸留、フラッシュ蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留、共沸蒸留、抽出蒸留等、いずれの公知の形態であってもよい。
蒸留塔を用いて工業的に精製する場合には、充填塔や棚段塔を選択することができ、蒸留方式としては、回分方式、半連続方式、連続方式のいずれも選択することができる。
【0103】
蒸留においては4−アルキニル−1,3−ジオキソラン類と近似の蒸気圧を有する不活性化合物の存在下で蒸留することにより、蒸留系内での4−アルキニル−1,3−ジオキソラン類の濃度を一定以下に保つことができる。また、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン類より蒸気圧の低い不活性化合物の存在下で蒸留することにより、釜残中の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン類の濃度を一定以下に保つことが可能となり、安全に蒸留を行うことができる。
【0104】
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン類と近似の蒸気圧を有する不活性化合物としては、蒸留条件下で4−アルキニル−1,3−ジオキソラン類と共沸や同伴して留出するもので、次工程の反応を阻害しない、または蒸留後除去が容易であるものが好ましい。4−アルキニル−1,3−ジオキソラン類を合成する際の反応溶媒をそのまま用いてもよい。好ましい不活性化合物としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル等の酢酸エステル類;アセトン、2−ブタノン等のケトン;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ブロモプロパン、トリクロロプロパン等の含ハロゲン炭化水素;アセトニトリル、プロピオニトリル
、ブチロニトリル等、の含シアノ炭化水素;またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0105】
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン類より蒸気圧の低い不活性化合物と共存させて蒸留を行ってもよい。蒸気圧の低い不活性化合物としては、蒸留時に缶出に混入しないものが好ましく、釜残に残り、長時間加熱条件下にさらされるため、熱に対して安定なものが好ましい。例えば、デカリン、テトラヒドロデカリン、ヘキサデカン、ウンデカン、トリデカン、テトラデカン、等の炭化水素;エチレングリコール、ブタンジオール、トリメチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル等のアルコール;安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、トリメリット酸オクチル等のエステル;トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;アントラセン、フェナントレン等の芳香族類;アセトアミド、N−メチルピロリドン,ジメチルホルムアミド、カプロラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ベンゾニトリル、テトラメチルウレア等の含窒素有機物、スルホラン、ジフェニルスルホン等の含硫黄化合物等が挙げられる。
【0106】
その他の、各工程の中間体の精製方法としては、蒸留、晶析、懸洗、分液、吸着、昇華等の公知の方法が挙げられる。化合物が液体の場合は分液、吸着、蒸留が挙げられる。晶析による精製には、水洗、ろ過等の方法により系内の無機塩を除去した後、溶媒を減圧留去する、または留去することなしに、冷却して晶析させる方法、化合物の溶解度の低い溶媒、いわゆる貧溶媒を加え析出する方法、化合物の溶解度の高い溶媒、いわゆる易溶媒と貧溶媒を組み合わせて析出する方法、反応終了後、無機塩を除去することなく水を加えて晶析させる方法等のいずれでもよい。溶媒としては有機溶媒、水、またはその混合物、有機溶媒同士を組み合わせる等、いずれでも良く、化合物の溶解度により適切なものを選択する。有機溶媒としては、酢酸エチル等のエステル類、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の等脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等の非プロトン性溶媒、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N'−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0107】
懸洗による精製には、化合物の溶解度の低い溶媒、いわゆる貧溶媒を用いる。好ましい貧溶媒は化合物により異なるが、3−ブチン−1,2−ジオール等の極性の高い化合物には、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等極性の低い脂肪族炭化水素が、逆に4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体等の極性の低い化合物にはメタノール等のアルコール類等の極性の高いものが挙げられる。水溶性の溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、N,N'−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド等が挙げられ、これらは水と混合して用いることができる。
【0108】
分液による精製は、水と水に不溶または難溶な有機溶媒を組み合わせる場合と、お互いに混合しない複数の有機溶媒を組み合わせる場合がある。溶媒の組合せとしては例えば、メタノールとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタンのうち少なくともひとつとの組合せ、N,N'−ジメチルホルムアミドとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタン、ジイソプロピルエーテル、キシレンのうち少なくともひとつとの組合せ、ジメチルスルホキシドとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、キシレンのうち少なくともひとつとの組合せ、アセトニトリルとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタン、シクロへキサン、シクロペンタンのうち少なくともひとつとの組合せ、等が挙げられあげられ、必要に応じ、水等の第三成分を加えてもよい。吸着による精製は、含塩素系不純物と吸着剤として、活性炭、活性白土、モレキュラーシーブス、アルミナ、ゼオライト、イオン交換樹脂等が挙げられる。
【0109】
4. 4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を含む非水系電解液
本発明の製造方法によって、ハーゼン単位色数が0以上、200以下である着色の少ない高純度の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を製造することができるが、かかる誘導体は非水系電解液二次電池の電解質として求められる優れた充放電サイクル特性を発揮しつつ、電極との副反応や電解質の劣化を防止することができる高品質な添加剤となる。また、前述のように4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体及び構造式(6)で表されるジカーボネート化合物を含む混合物も、非水系電解液二次電池の優れた添加剤となる。ハーゼン単位色数が、0以上、200以下である下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体、又は4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体及び構造式(6)で表されるジカーボネート化合物を含む混合物を含有する非水系電解液もまた本発明の1つである。
【0110】
本発明の非水系電解液は、電解質とこれを溶解する非水系溶媒を含有してなる非水系電解液に関するものであり、前述した4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体等を含むことを特徴とするものである。電解質はリチウム塩等の非水系電解液に用いられる電解質であれば特に制限はなく、また非水系溶媒も飽和環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状及び鎖状カルボン酸エステル、エーテル化合物、スルホン系化合物等の公知のものを適宜採用することができる。
4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体、又は4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体及び構造式(6)で表されるジカーボネート化合物を含む混合物の含有量は、非水系電解液中に0.001〜5.0質量%含有されていることが好ましく、0.001〜3.0質量%含有されていることがより好ましく、0.01〜2.0質量%含有されていることが特に好ましい。上記範囲内にある場合、本発明の効果をより発揮することができる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何等限定されるものではない。
【0112】
合成化合物の分析としては、下記GC、GC−Mass、NMR等が挙げられる。GCおよびNMR分析の場合、内標を用いて定量してもよい。
反応の分析はGCにて行い、条件の一例を以下に示した。
・GC分析条件 装置:GC6890(Agilent)、カラム:DB−1(25m×0.32mmφ、0.52μm)、検出器:FID、Injection温度250℃、Detection温度280℃、条件1:50℃で10分間保持後、10℃/minで250℃まで昇温、窒素流量10mL/min、スプリット比10:1、条件2:50℃より、10℃/minで280℃まで昇温、窒素流量 105mL/min、スプリット比20。
・GC/MS分析条件 装置:GC6890(Agilent)−JMS600H(JEOL)、カラム:ZB−1(30m×0.25mmφ、0.25μm)、イオン化法:EI
1H−NMR分析条件 装置:BRUKER社 AVANCE400、400MHz、溶媒0.03v%TMS含有重クロロホルム
・ハーゼン単位色数 ハーゼン単位色数はJIS K0071−1に準じて比色して求めた。
【0113】
[4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の合成]
<実施例1>
3,4−ジブロモ−1,2−ブタンジオールの合成
【化49】

2L四つ口フラスコ中に、3,4−ジヒドロキシブテン500g、ジクロロメタン 500mLを仕込み、氷水冷却下、内温を40℃以下に保ちながら、臭素907gを6時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で1時間反応した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、重曹水600mLを加え、更に系内の赤色が消えるまで、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を徐々に追加しながら、30分間攪拌した。有機層を分離した後、これを重曹水300mLで洗浄し、得られた3,4−ジブロモ−1,2−ブタンジオール有機層1738gを濃縮することなく、次の工程に用いた。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ2.49(2H,br)、3.74(2H,m)、3.90(2H,m)、 4.08(1H,m)、4.30(1H,m)
【0114】
4−(1−ブロモエテニル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランの合成
【化50】

上記3,4−ジブロモ−1,2−ブタンジオール有機層のうち817gを2Lセパラブルフラスコに仕込み、無水p−トルエンスルホン酸9.7gを加え、10℃の冷却水を循環しながら、内温を30℃以下になるように、イソプロペニルメチルエーテル468gを4時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間、内温30℃で反応した後、0.5Nテトラブチルアンモニウム水溶液16mLを加え、36%水酸化ナトリウム水溶液533mlを、内温30〜40℃以下に保ちながら、3時間かけて滴下した。40℃で2時間反応した後、ジクロロメタンを留去し、遊離した有機層を分離した。水層をジイソプロピルエーテル900mlで抽出し、先に分離した有機層と合わせた。これを濃縮して、4−(1−ブロモエテニル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン423g(GC純度90%)を得た。(収率:3,4−ジヒドロキシブテンより72% )
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ1.41(3H,s)、1.49(3H,s)、3.89(1H,dd,J=6.4,8.4Hz)、 4.20(1H,dd,J=6.4,8.4Hz)、4.62(1H,dd,J=6.4Hz)、5.60(1H,J=0.8,1.6Hz)、6.05(1H,J=0.8,1.6Hz)
【0115】
4−エチニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランの合成
【化51】

4−(1−ブロモエテニル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン311g(1.50mol)、ジイソプロピルエーテル1Lを2L四つ口フラスコに仕込み、t−ブトキシカリウム240gを内温が15−20℃になるように冷却水の温度を調製しながら、3分割し、1時間で投入した。20−25℃で1時間反応した後、水400mLで2回洗浄した後、得られた有機層を精留塔(テフロンラッシリング充填)付きの1Lナスに仕込んだ。50℃の油浴中で、ジイソプロピルエーテルを減圧条件下(200−300mmHg)留去した後、減圧度100Hg〜3mmHgに除々に上げ、4−エチニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランの50wt%ジイソプロピルエーテル溶液を322g得た。(収率77%)
H−NMR(400MHz、CDCl)δ1.39(3H,s)、1.50(3H,s)、2.49(1H,d,J=2.0Hz)、3.95(1H,dd,J=6.0,8.0Hz)、4.17(1H,dd,J=6.0,8.0Hz)、4.71(1H,dt,J=2.4,6.0Hz)
【0116】
3−ブチン−1,2−ジオール[II]の合成
【化52】

4−エチニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン42.0g(333mol)をメタノール(126mL,3VR)および水(84mL,2VR)に溶解し、濃塩酸(8.4mL,0.2VR)を添加し、室温で2時間攪拌した。その後溶媒を減圧留去し、水分を共沸除去するため、MeOH(210mL,5VR)を添加、減圧留去を3回行った。残渣を減圧蒸留(1mmHg、71℃)により精製し、3−ブチン−1,2−ジオールを無色油状物として23.5g、収率82%で得た。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ2(2H,broad)、2.51(1H,d,J=2.0Hz)、3.71(1H,dd,J=6.4,11.2Hz)、3.77(1H,dd,J=4.0,11.2Hz)、4.47(1H,ddd,J=2.4,4.0,6.4Hz)
【0117】
4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オン[I]の合成
【化53】

トリホスゲン法
3−ブチン−1,2−ジオール28.4g(330mmol)のジイソプロピルエーテル(142mL、5VR)溶液に、ピリジン77.0mL(957mmol、2.9MR)を添加し、氷冷下、トリホスゲン39.2g(132mmol、0.4MR)のジイソプロピルエーテル(132mL、5VR)溶液を内温10℃以下で1.5時間かけて滴下した。滴下後反応終了を確認し、氷冷下、水142mL(7.5VR)にてクエンチ後、酢酸エチル284mL(10VR)を添加し、室温まで昇温後、有機層を分離した。水層を酢酸エチル142mL(5VR)で2回再抽出後、有機層を合わせて2M硫酸、水、飽和重曹水、水各142mL(5VR)で順次洗浄し、硫酸ナトリウム乾燥後ろ過、溶媒を減圧留去した。残渣を減圧蒸留(0.2mmHg、67℃)により精製し、4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを無色油状物として25.1g、収率68%で得た(ハーゼン単位色数30以下)。得られた4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンには、後述する構造式(8)で表される副生成物は含まれていないことが確認された。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ2.85(1H,d,J=2.0)、4.43(1H,dd,J=8.4,6.4)、 4.73(1H,m)、5.30(1H,ddd、J=2.4,6.8,8.8)
【0118】
<実施例2>
4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オン[I]の合成
ジメチルカーボネート法
実施例1と同様の方法により、3−ブチン−1,2−ジオールを合成し、以下の方法にて、4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オン[I]を合成した。
3−ブチン−1,2−ジオール14.5g(168mmol)のジメチルカーボネート(58mL、4VR)溶液に、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.52mLを添加し、4時間攪拌後、反応液を濃縮した。残渣にジメチルカーボネート(58mL, 4VR)を加え、更に1.5時間攪拌後濃縮し、再度ジメチルカーボネート(58mL,4VR)を加えて1時間攪拌後濃縮した。反応液にジメチルカーボネート58mL、ジイソプロピルエーテル58mLを加え、水30mLで洗浄後、有機層を分離した。有機層を飽和食塩水50mLで洗浄し、硫酸ナトリウム乾燥後ろ過、溶媒を減圧留去した。残渣を減圧蒸留(0.2mmHg、67℃)により精製し、4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを無色油状物として15.9g、収率84%で得た(ハーゼン単位色数30以下)。得られた4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンには、下記構造式(7)で表される3−エチニル−2,5−ジオキサヘキサン二酸ジメチルが、1.44質量%含まれていた。
【化54】

1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ2.59(1H,d,J=2.4)、3.82(s,3H)、3.82(s,3H)、4.34(1H,dd,J=7.6,11.6)、4.42(1H,dd,J=3.6,11.6)、5.49(1H,ddd,J=2.4,3.6,7.6)
【0119】
また、ジメチルカーボネートの代わりにジエチルカーボネートを用いて、同様の手法により4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オン[I]の合成を行うと、下記構造式(8)で表される3−エチニル−2,5−ジオキサヘキサン二酸ジエチルを含む4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを無色油状物として得られることを確認した(ハーゼン単位色数100)。
【化55】

【0120】
<参考例1>
4−ビニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランの合成
【化56】

3−ブテン−1,2−ジオール182g(2.06mol)をジイソプロピルエーテル363mL(2VR)に溶解し、メタンスルホン酸0.67mL(6.96mmol,0.5mol%)、2,2−ジメトキシプロパン303mL(2.91mol、1.2MR)を順次添加し、その後0.5時間攪拌した。反応液に飽和重曹水36.3mL(0.2VR)、水145mL(0.8VR)を添加し、0.5時間攪拌した後、有機層を分離した。有機層をビグリュー管を用いて溶媒等を留去し(〜400mmHg、bp〜50℃)、その後減圧蒸留(120mmHg、70−72℃)により精製し、4−ビニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランを無色油状物として208g、収率79%で得た。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ1.40(3H,s)、1.43(3H,s)、3.60(1H,t,J=8.0Hz)、 4.10(1H,dd,J=6.4,8.4Hz)、4.47−4.54(1H,m)、5.22(1H,dt,J=0.8,10.4Hz)、5.35(1H,dt,J=1.2,17.2Hz)、5.83(1H,ddd,J=7.2,10.4,17.6Hz)
【0121】
<実施例3>
4−(1,2−ジブロモエチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランの合成
【化57】

4−ビニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン100g(780mmol)のジイソプロピルエーテル(400mL,4VR)溶液に炭酸カリウム 215g(1.56mol,2MR)を添加し、氷冷下、臭素150g(936mol,1.2MR)を内温5℃以下で2時間かけて滴下した。反応終了を確認後、H2O350ml(3.5VR)を添加して10時間攪拌した。その後セライト10g(0.1WR)を加え、1時間攪拌後にろ過し、その後有機層を分離し、有機層を水300mL×2で洗浄後、溶媒を減圧留去した。残渣を減圧蒸留(4mmHg、91−97℃)により精製し、4−(1,2−ジブロモエチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランを淡黄色油状物として155g、収率69%で得た。
ジアステレオマー1
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ1.37(3H,d,J=0.4Hz)、1.50(3H,d,J=0.4Hz)、3.76(1H,dd,J=5.6,10.4Hz)、 3.84−3.88(2H,m)、4.11−4.20(2H,m)、4.54(1H,ddd,J=2.8,5.6,6.8Hz)
ジアステレオマー2
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ1.36(3H,d,J=0.4Hz)、1.44(3H,d,J=0.4Hz)、3.89−3.94(2H,m)、 3.99(1H,dd,J=4.8,8.8Hz)、4.05(1H,ddd,J=4.0,5.2,8.8Hz)、4.14−4.20(2H,m)、4.34(1H,ddd,J=4.8,6.0,8.8Hz)
【0122】
<参考例2>
4−エチニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランの合成
【化58】

t−ブトキシカリウム77.2g(688mmol、2.5MR)のジイソプロピルエーテル(396mL、5VR)懸濁液に、氷冷下、4−(1,2−ジブロモエチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン79.2g(275mmol)のジイソプロピルエーテル(400mL、4VR)溶液を内温10℃以下で1.25時間かけて滴下した。滴下後徐々に室温とし、3時間攪拌した。その後氷冷下、飽和塩化アンモニウム水158mL(2VR)にてクエンチ後、析出した塩を溶解するためH2O120mL(1.5VR)を添加し、室温で30分攪拌した。その後有機層を分離し、有機層を精留塔を用いた蒸留(〜450mmHg、〜67℃)、次いで減圧蒸留(50mmHg、66℃)により精製し、4−エチニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランを淡黄色油状物として25.7g、収率74%で得た。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ1.38(3H,d,J=0.4Hz)、1.50(3H,d,J=0.4Hz)、2.49(1H,d,J=2.4Hz)、 3.95(1H,dd,J=6.0,8.0Hz)、4.17(1H,dd,J=6.0,8.0Hz)、4.71(1H,dt,J=2.4,6.0Hz)
【0123】
<実施例4>
4−(1−ブロモ−2−エテニル)−2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソランの合成
【化59】

粗な3,4−ジブロモ−1,2−ブタンジオール25.2g(0.1mol)、トルエン100mL、メチルエチルケトン28mL、p−トルエンスルホン酸一水和物0.4gを300mLの4つ口フラスコに仕込み、90℃の油浴中で、生成する水をコンデンサー部から抜きながら、2時間反応した。水25mLで2回洗浄して、余剰のメチルエチルケトンを除去後、36%水酸化ナトリウム水溶液50mL、0.5Nテトラブチルアンモニウム水溶液0.2mLを加え、100℃の油浴中で1時間反応した。水層を除去した後、水25mLで3回洗浄し、濃縮、粗な4−(1−ブロモ−2−エテニル)−2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソランを24g(0.10mol)得た。(収率:3,4−ジヒドロキシブテンより98%)
1H−NMR(400MHz、CDCl3)(ジアステレオマー混合物)δ0.94+0.99(3H,t,J=7.2Hz)、1.34+1.42(3H、s)、1.9(2H、m)、3.83+3.86(1H,m)、4.13+4.20(1H,m)、4.57+4.63(1H,m)、5.60(1H,m)、6.03+6.05(1H,m)
【0124】
<参考例4>
4−エチニル−2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソランの合成
【化60】

4−(1−ブロモ−2−エテニル)−2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソランを22.3g(0.10mol)を4−(1−ブロモエテニル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランと同様の方法により、反応、後処理、精製し、4−エチニル−2−エチル−3−メチル−1,3−ジオキソランの約50wt%ジイソプロピルエーテル溶液を20g得た。(収率約70%)
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ0.93+0.98(3H,t,J=7.2
Hz)、1.32+1.44(3H、s)、1.65+1.74(2H,dd,J=7.6,15.2Hz)、2.48+2.50(1H,J=2.4Hz)、 3.91+3.95(1H,dd,J=6.0,8.0Hz)、4.17(1H,dd,J=6.0,8.0Hz)、4.68+4.72(1H,dt,J=2.4,6.0Hz)
【0125】
<参考例5>
3−ブチン−1,2−ジオール[II]の合成
【化61】

2Lのジャケット付きセパラブルフラスコ中に、4−(1−ブロモ−2−エテニル)−1,3−ジオキソラン−2−オン142g(1.24mol)に20%水酸化ナトリウム水溶液440mLを仕込み、50℃で5時間反応した。更に20%水酸化ナトリウム水溶液440mLを加えて、90℃で5時間反応した。反応中に褐色の粘性不溶物が生成し、析出した。放冷後、硫酸で中和後、酢酸エチル500mLで計6回抽出し、粗な3−ブチン−1,2−ジオール[II]25.9g(0.30mol)を得た。粗収率24%(2工程)。
【0126】
<参考例6>
3−ブチン−1,2−ジオール[II]の合成
【化62】


100mLの3口フラスコにグリコールアルデヒドダイマーを266mg(2.21mmol)計り取り、系内を窒素置換後、攪拌しながらエチニルマグネシウムブロミドの0.5M THF溶液19.9mL(9.97mmol)を加え、徐々に加温し、3時間加熱還流した。その後、エチニルマグネシウムブロミドの0.5M THF溶液9.95mL(4.97mmol)を加え、更に3時間加熱還流した。0℃に冷却後、飽和塩化アンモニウム4mLを滴下し、30分室温で攪拌後、セライトを用いてろ過し、ろ液を減圧濃縮し、粗体を淡黄色油状物として粗な3−ブチン−1,2−ジオール[II]247mg得た。
【0127】
<参考例7>
4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オン[I]の合成
【化63】


500mLの4口フラスコに4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン30.0g(263mmol)を仕込み、ジクロロメタン(120mL,4VR)を加え、氷冷下、
臭素44.1g(276mol,1.05MR)を内温20℃以下で30分かけて滴下した。反応終了を確認後、氷冷下、0.5M亜硫酸ナトリウム水溶液150mLを添加して1時間攪拌した。その後有機層を分離し、有機層を飽和食塩水100mLで洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、粗体の4−(1,2−ジブロモエチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンを淡黄色油状物として71.8g得た。
【0128】
50mLの3口フラスコに得られた粗体の4−(1,2−ジブロモエチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン2.32g(8.47mmol)を仕込み、ジクロロメタン(11.6mL,5VR)を加え、氷冷下、トリエチルアミン2.60mL(18.6mol,2.2MR)を加え、その後室温で6日間攪拌した。反応液に水5mLを加え、30分攪拌後、有機層を分離し、有機層を飽和食塩水10mLで洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=3/1)により精製し、4−(1−ブロモビニル)−1,3−ジオキソラン−2−オンを淡黄色油状物として1.25g得た。(収率76%)
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ4.38(1H,dd,J=5.8,8.6Hz)、4.62(1H,t,J=8.6Hz)、5.19(1H,dd,J=5.8,8.6Hz)、 5.80(1H,d,J=2.3Hz)、6.16(1H,dd,J=1.0,2.3Hz)
【0129】
50mLの3口フラスコの系内を窒素置換後、60%水素化ナトリウムを61.2mg(1.53mmol)、DMF5.1mLを加え、氷冷下、4−(1−ブロモビニル)−1,3−ジオキソラン−2−オン197mg(1.02mmol)のDMF0.5mL溶液を滴下した。その後室温にて24時間攪拌し、氷冷後に1M HCl10mLを滴下してクエンチ後、酢酸エチル(15mL)を用いて目的物を3回抽出後、有機層を飽和食塩水20mLで洗浄し、Na2SO4で乾燥後ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、粗体を褐色油状物として80.3mg得た。この粗体中に4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンが主生成物として存在することを確認した。
【0130】
[リチウム二次電池の作製]
炭素質材料98質量部に、増粘剤及びバインダーとして、それぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)100質量部及びスチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)2質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出し、負極とした。
【0131】
正極活物質としてLiCoO2を90質量%と、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを、厚さ15μmのアルミ箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出し、正極とした。
【0132】
乾燥アルゴン雰囲気下、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合物(体積比30:70)に乾燥したLiPF6を1mol/Lの割合となるように溶解して基本電解液を調製した。この基本電解液100質量部に、実施例1及び実施例2で得た4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オン化合物を表1に記載の割合で混合し、それぞれの電解液とした。
【0133】
上記正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極と負極の端子を突設させながら挿入した後、表1に記載の電解液をそれぞれ袋内に注入し、真空封止を行い、シート状電池を作製し、それぞれ実施例1、2及び比較例1に用いる電池とした。
【0134】
[サイクル特性の評価]
リチウム二次電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において0.2Cに相当する定電流で慣らし運転を行った。慣らし運転が終了した電池を45℃において、0.5Cの定電流で充電後、0.5Cの定電流で放電する過程を1サイクルとして、400サイクル実施した。ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、5Cとはその5倍の電流値を、また0.2Cとはその1/5の電流値を表す。(400サイクル目の放電容量)÷(1サイクル目の放電容量)×100の計算式から、容量維持率をそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0135】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法であって、前記4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を含む粗生成物を準備する準備工程、及び前記粗生成物を0.1mmHg以上、10mmHg以下の範囲の圧力条件で蒸留する蒸留工程、を含むことを特徴とする4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記蒸留工程が、50℃以上、160℃以下の範囲の温度で行われる、請求項1に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記蒸留工程が、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体のハーゼン単位色数が、0以上、200以下となるように行われる、請求項1または2に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記蒸留工程が、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体よりも蒸気圧の低い不活性化合物の存在下で行われる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記蒸留工程が、重合禁止剤存在下で行われる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。
【請求項6】
前記準備工程が、下記構造式(2)で表される3−ブチン−1,2−ジオール誘導体を炭酸エステル化する反応工程を含む合成方法によって、前記4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を含む粗生成物を準備するものである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。
【化2】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記準備工程が、下記構造式(3)〜(5)で表される少なくとも何れかの化合物からHXを脱離して4位のアルキニル基を形成する反応工程を含む合成方法によって、前記4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体を含む粗生成物を準備するものであ
る、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。
【化3】

【化4】

【化5】

(式中、Xは臭素、塩素、ヨウ素、−OSO2(R1)(R1は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基である。)を表す。ZはC=O、CR22(R2は水素、置換基を有してもよい炭素数1から20の炭化水素基、エーテル結合を有する炭素数1から20の炭化水素基、又は炭素数1から20のアルキルアミノ基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R2は互いに結合を作り、環を形成してもよい。)を表す。Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項8】
下記構造式(3)〜(5)で表される合成中間体。
【化6】

(式中、Xは臭素、塩素、ヨウ素、−OSO2(R1)(R1は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基である。)を表す。ZはC=O、CR22(R2は水素、置換基を有してもよい炭素数1から20の炭化水素基、エーテル結合を有する炭素数1から20の炭化水素基、又は炭素数1から20のアルキルアミノ基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R2は互いに結合を作り、環を形成してもよい。)を表す。Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項9】
ハーゼン単位色数が、0以上、200以下である下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体。
【化7】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項10】
下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体及び下記構造式(6)で表されるジカーボネート化合物を少なくとも含有する混合物。
【化8】

【化9】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。R3は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項11】
請求項9に記載の4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体又は請求項10に記載の混合物を含有することを特徴とする非水系電解液。
【請求項12】
下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法であって、下記構造式(3)〜(5)で表される少なくとも何れかの化合物からHXを脱離して4位のアルキニル基を形成する反応工程を含むことを特徴とする、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

(式中、Xは臭素、塩素、ヨウ素、−OSO2(R1)(R1は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基である。)を表す。ZはC=O、CR22(R2は水素、置換基を有してもよい炭素数1から20の炭化水素基、エーテル結合を有する炭素数1から20の炭化水素基、又は炭素数1から20のアルキルアミノ基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R2は互いに結合を作り、環を形成してもよい。)を表す。Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項13】
下記構造式(1)で表される4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法であって、下記構造式(2)で表される3−ブチン−1,2−ジオール誘導体を炭酸エステル化する反応工程を含むことを特徴とする、4−アルキニル−1,3−ジオキソラン−2−オン誘導体の製造方法。
【化14】

【化15】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1から20の炭化水素基を表す。それぞれのRは同一であっても、または異なっていてもよい。Yは上記Rと同義であり、YとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)

【公開番号】特開2012−162516(P2012−162516A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253217(P2011−253217)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】