説明

4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、および1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンの製造

本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法、および1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、および1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、ならびに医薬として許容されるそれらの塩の製造のための分割(resolvation)法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の化合物である、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン(I)、および1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン(II)は、以下、化合物(I)および化合物(II)と呼ばれ、次に表すそれぞれの分子構造を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
ピペラジン環の2位および/または3位において置換されている、3−アリール−1−(1−ピペラジニル)インダンのトランス異性体の一群は、WO93/22293、およびKlaus P. Bogeso, Drug Hunting, the Medicinal Chemistry of 1-Piperazino-3-phenylindans and Related Compounds, 1998, ISBN 87-88085-10-4(例えば、47ページ、表3中および101ページ、表9A中の化合物69を参照)に記載されている。これらの化合物は、ドーパミンDおよびD受容体、ならびに5−HT受容体に高親和性を有すると記載され、統合失調症を含めた、中枢神経系のいくつかの疾患の治療に有用であると提唱されている。
【0005】
トランス4−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、およびトランス1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンは、例えば、Bogeso et al., J. Med. Chem., 1995, 38, p. 4380-4392、およびWO93/22293に概説された方法と同様に合成することができる。トランス4−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンの分割による化合物(I)の製造は、J. Med. Chem., 1995, 38, p. 4380-4392に、Bogesoらによって記載されている(表5、化合物(−)−38を参照されたい)。記載されている方法は、(+)−ジトルオイル酒石酸を酢酸エチル中での分割に使用することを含み、化合物(I)は、フマル酸塩として単離される。
【0006】
光学的に純粋な出発材料からの化合物(II)の合成は、WO2005/016900、WO2005/016901、およびWO2006/086984に記載されている。N−アルキル化による、化合物(II)からの化合物(I)の合成は、WO2005/016900(31ページ、実施例12)に開示されている。化合物(II)の結晶性の酒石酸水素塩は、WO2006/086985に開示されている。
【0007】
Bogeso et al., J. Med. Chem., 1995, 38, p. 4380-4392は、化合物(I)が、in vitroで幾らかのD選択性を示す、強力なD/Dアンタゴニストである一方で、in vivoでは、DおよびDアンタゴニストとして等力であることを開示している。この化合物はまた、強力な5−HTアンタゴニストであり、αアドレナリン受容体に高親和性を有するものと記載されている。WO2005/016901に開示されている通り、化合物(II)は、化合物(I)と類似した受容体プロフィールおよび薬理学的活性を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、高収率、かつ高鏡像異性体過剰率の4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、および1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンを、キラルな塩形成酸を用いた、各ラセミ化合物の分割によって得ることができることを発見した。
【0009】
したがって、一実施形態では、本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中で、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンをL−(+)−酒石酸と混合するステップを含む方法を提供する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中にtrans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸とを含む溶液から、生成物を沈殿させるステップを含む方法を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、
a)極性溶媒中で、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンをL−(+)−酒石酸と混合するステップと、
b)得られた混合物を適切な温度に任意に加熱して、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸との溶液を得るステップと、
c)b)で得られた溶液を、沈殿まで冷却するステップと、
d)c)で得られた沈殿物を単離するステップと、
e)d)で得られた沈殿物を任意に乾燥させるステップと
を含む方法を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩である化合物に関する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中で、trans1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンをD−(−)−酒石酸と混合するステップを含む方法に関する。
【0014】
別の実施態様では、本発明は、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中にtrans1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸とを含む溶液から、生成物を沈殿させるステップを含む方法に関する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、
a)極性溶媒中で、trans1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンをD−(−)−酒石酸と混合するステップと、
b)得られた混合物を適切な温度に任意に加熱して、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸との溶液を得るステップと、
c)b)で得られた溶液を、沈殿まで冷却するステップと、
d)c)で得られた沈殿物を単離するステップと、
e)d)で得られた沈殿物を任意に乾燥させるステップと
を含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本明細書に記述する場合、化合物(I)および化合物(II)はそれぞれ、遊離塩基、医薬として許容されるそれらの塩(例えば、コハク酸塩およびマロン酸塩などの医薬として許容される酸付加塩)、遊離塩基またはそれらの塩の水和物または溶媒和物、ならびに無水形、非晶形、または結晶形などの、該化合物の任意の形態を指すことを意図している。
【0017】
本明細書に記述する場合、用語「キラルな塩形成酸」は、少なくとも1個のキラルな炭素原子を有する有機酸と定義される。「本発明のキラルな塩形成酸」は、L−(+)−酒石酸およびD−(−)−酒石酸を示すことを意図している。
【0018】
本明細書に記述する場合、用語「極性溶媒」は、極性分子から構成される液体と定義される。例としては、水、エタノールおよびプロパノールなどのアルコール、ギ酸などの有機酸、アセトンなどのケトン、テトラヒドロフラン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
本明細書に記述する場合、式IまたはIIの化合物の「医薬として許容される塩」としては、医薬として許容される酸付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、無機酸ならびに有機酸の塩が挙げられる。適切な無機酸の代表例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸などが挙げられる。適切な有機酸の代表例としては、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、桂皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、イタコン酸、乳酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、テオフィリン酢酸、ならびに8−ハロテオフィリン、例えば、8−ブロモテオフィリンなどが挙げられる。
【0020】
本発明の文脈では、用語「分割(resolvation)」および「分離(resolution)」は、同義に使用され、ラセミ化合物を、その2種の鏡像異性体に分ける方法を表す。
【0021】
本文脈では、「適切な温度」に加熱することは、例えば、溶媒の還流温度によって制限される、>40℃、>45℃、>50℃、>55℃、>60℃、>65℃、>70℃などの、室温を超える温度のような、溶液を得るのに適した温度に、組成物を加熱することを示す。使用される溶媒によっては、「適切な温度」は、還流温度を示す可能性がある、すなわち、組成物は加熱還流される。
【0022】
本文脈では、「還流」は、蒸気を凝縮させること、およびこの凝縮液を、それが生じた系に戻すことを含む技術である。
【0023】
本文脈では、「再結晶」は、化合物を精製するための手法である。再結晶は、例えば、単一溶媒による再結晶、複数溶媒による再結晶、または熱濾過−再結晶によって実施することができる。
【0024】
本文脈では、合成方法の「収率」は、ラセミ化合物塩の理論量に対する両鏡像異性体の塩を含めた、合成生成物の総収率を表す。
【0025】
本文脈では、「鏡像異性体過剰率(enantiomeric excess)」は、eeと略記され、化合物の各鏡像異性体のモル分率間の絶対差と定義される。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「trans4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン」、すなわち、鏡像異性体のいかなる特定の表示(例えば、(+)および(−)を使用する、またはR/S表示法を使用する)もないものは、2種の鏡像異性体である、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(I)と4−((1S,3R)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンとの混合物を指す。しかし、本文脈では、好ましくは、化合物(I)の含有率に相当する鏡像異性体の含有率が、混合物の少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、少なくとも50%(すなわち、少なくともラセミ化合物と同じ)である。同じ原理が、「trans−1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン」に適用される。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「トランス4−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン」は、ラセミ化合物を指す。同じ原理が、「トランス1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン」に適用される。
【0028】
本文脈では、「ラセミ化合物」は、キラルな分子のSおよびR鏡像異性体の量が実質的に等しい、光学的に不活性な化合物である。
【0029】
本発明は、L−(+)−酒石酸を用いるtrans4−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンの分割を含む、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン(化合物(I))の製造のための方法に関する。
【0030】
本発明はまた、D−(−)−酒石酸を用いるtrans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンの分割を含む、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン(化合物(II))の製造のための方法に関する。
【0031】
手短に述べると、本発明は、ラセミ化合物を、極性溶媒中で、本発明のキラルな塩形成酸と混合する方法に関する。混合物は、ラセミ化合物とキラルな塩形成酸との溶液を得るために、適切な温度に任意に加熱することができる。それに続く鏡像異性体の沈殿は、例えば、冷却または蒸発によって得ることができ、沈殿物を、単離し、任意に乾燥させることができる。沈殿物の再結晶によって、鏡像異性体過剰率を高め得るというのが、本発明者らの経験である。所望の鏡像異性体の収率および鏡像異性体過剰率を最適化するために、該分割方法のための溶媒および条件(例えば、温度、および出発材料の化学量論)の選択を使用することができる。
【0032】
本発明の分割法は、少なくとも>40%、ある状況下では、最大で約90%の収率をもたらすことが判明した。この収率は、Bogeso et al., J. Med. Chem., 1995, 38, p. 4380-4392に記載されている分割法(そこでは、トランス4−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンの分割のために、(+)−ジトルオイル酒石酸が使用される)によって得られる収率よりも著しく高い。さらに、本発明の方法のほうが、はるかに規模拡大に適している。非置換酒石酸を用いる分離では、高い濾過速度で濾過容易な結晶が得られ、濾過ケークを洗浄することが可能である。ジアステレオマーの結晶化は、非常に効率的であり、しばしば、鏡像異性体純度が、1回目の結晶化で、最大で98%というee値を示す。対照的に、(+)−ジトルオイル酒石酸を用いて本発明者らが分割した結果、より多くの再結晶ステップが必要となる、濾過のより困難な沈殿物が得られており、この方法は、生産規模での使用に適していない。
【0033】
トランス4−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンを、(+)−ジベンゾイル酒石酸、(+)−カンファースルホン酸、(−)−マンデル酸、およびL−グルタミン酸で分割することも試みた。しかし、これらの代替物は、結晶させる能力に乏しい、または、結晶が得られた場合でも、所望の鏡像異性体の鏡像異性体過剰率が不十分であるといういずれかの欠点を有する。同様に、トランス1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンも、(+)−ジトルオイル酒石酸、(+)−ジベンゾイル酒石酸、(+)−カンファースルホン酸、(−)−マンデル酸、およびL−グルタミン酸で分割することを試みたが、同じ欠点を示した。
【0034】
第1の実施形態では、本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中で、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンをL−(+)−酒石酸と混合するステップを含む方法に関する。
【0035】
さらなる実施形態では、極性溶媒中の、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸との混合物を、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸との溶液を得るのに適した状態にする。好ましくは、極性溶媒中の、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸との前記混合物を、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸との溶液を得るために、適切な温度に加熱する。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中にtrans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸とを含む溶液から、生成物を沈殿させるステップを含む方法に関する。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、
a)極性溶媒中で、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンをL−(+)−酒石酸と混合するステップと、
b)得られた混合物を適切な温度に任意に加熱して、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸との溶液を得るステップと、
c)b)で得られた溶液を、沈殿まで冷却するステップと、
d)c)で得られた沈殿物を単離するステップと、
e)d)で得られた沈殿物を任意に乾燥させるステップと
を含む方法に関する。場合によっては、該方法は、ステップd)またはe)の後に続く、沈殿物を再結晶するステップを含む。
【0038】
好ましい実施形態では、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンの製造のための方法で使用される、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンは、トランス4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンである。
【0039】
一実施形態では、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩が、該方法の中間生成物または最終生成物である。好ましい実施形態では、前記4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩は、結晶形である。
【0040】
一実施形態では、本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩である化合物に関する。好ましい実施形態では、前記4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩は、結晶形である。
【0041】
本発明はまた、D−(−)−酒石酸を用いるtrans1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンの分割による、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン(化合物(II))の製造のための方法に関する。
【0042】
したがって、一実施形態では、本発明は、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中で、trans1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンをD−(−)−酒石酸と混合するステップを含む方法に関する。
【0043】
さらなる実施形態では、極性溶媒中の、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸との混合物を、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸との溶液を得るのに適した状態にする。好ましくは、極性溶媒中の、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸との前記混合物を、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸との溶液を得るために、適切な温度に加熱する。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中にtrans1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸とを含む溶液から、生成物を沈殿させるステップを含む方法に関する。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、
a)極性溶媒中で、trans1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンをD−(−)−酒石酸と混合するステップと、
b)得られた混合物を適切な温度に任意に加熱して、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸との溶液を得るステップと、
c)b)で得られた溶液を、沈殿まで冷却するステップと、
d)c)で得られた沈殿物を単離するステップと、
e)d)で得られた沈殿物を任意に乾燥させるステップと
を含む方法に関する。
【0046】
さらなる実施形態では、前記方法は、ステップd)またはe)の後に続く、沈殿物を再結晶するステップを含む。
【0047】
好ましい実施形態では、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンの製造のための方法で使用される、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンは、トランス1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンである。
【0048】
一実施形態では、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミD−(−)−酒石酸塩が、該方法の中間生成物または最終生成物である。好ましい実施形態では、前記1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミD−(−)−酒石酸塩は、結晶形である。
【0049】
一実施形態では、本発明の方法で適用される極性溶媒は、水、アセトン、エタノール、n−プロパノール、ギ酸、またはこれらの混合物などの、水、ケトン、アルコール、有機酸、またはこれらの混合物から選択される。
【0050】
本発明のキラル酸付加塩と異なる塩が望まれる場合は、化合物(I)または(II)の精製されたキラル酸付加塩を、さらなる方法における出発材料として使用することができる。その方法では、本発明のキラル酸付加塩を溶解し、遊離塩基形を、場合により得て、所望の塩、好ましくは、医薬として許容される塩を、適切な酸を用いる沈殿によって得る。
【0051】
本発明の一実施形態では、医薬として許容される塩は、コハク酸塩またはマロン酸塩である。一実施形態では、医薬として許容される塩は、化合物(I)の結晶性のコハク酸水素塩の形、例えば、化合物(I)のコハク酸水素塩の結晶形αもしくはβ、または化合物(I)の結晶性のマロン酸水素塩の形である。化合物(I)のコハク酸塩およびマロン酸塩は、WO2005/016900に記載されている。
【0052】
本発明の別の実施形態では、医薬として許容される塩は、酒石酸塩またはリンゴ酸塩である。一実施形態では、医薬として許容される塩は、化合物(II)の結晶性の酒石酸水素塩、または化合物(II)のリンゴ酸水素塩の形である。化合物(II)の酒石酸塩およびリンゴ酸塩は、WO2006/086985に記載されている。
【0053】
本明細書で引用したすべての参考文献は、参照により本明細書にそれらの全体が援用されており、また、特定の文書が、本明細書の他の部分でいずれも別々に援用されているにも拘わらず、各参考文献が、個別的かつ具体的に、参照により援用されていることが示され、本明細書でその全体が記述されている場合と同じ程度まで(法によって許される最大限まで)援用されている。
【0054】
本発明を説明する文脈における、用語「a」および「an」および「the」、ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がない、または文脈上明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を含めると解釈されるべきである。例えば、句「該化合物(the compound)」は、別段の指示がない限り、本発明または記述された特定の態様の様々な化合物を指していると理解されるべきである。
【0055】
別段の指示がない限り、本明細書に示すすべての正確な値は、対応する近似値の代表である(例えば、特定の係数または測定値に関して示す、すべての正確な例示的値は、適宜「約」によって修飾される、対応する近似測定値も示すとみなすことができる)。
【0056】
1つまたは複数の要素に関して、「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、「含有する」などの用語を使用して、任意の態様または本発明の態様を本明細書に記述することは、別段の明記がない、または文脈上明らかに矛盾しない限り、1つまたは複数のその特定の要素「からなる」、「から本質的になる」、またはその要素「を実質的に含む」、類似の態様または本発明の態様を支持することを意図している(例えば、ある特定の要素を含むと本明細書に記述した組成物は、別段の明記がない、または文脈上明らかに矛盾しない限り、その要素からなる組成物についても述べていると理解されるべきである)。
【0057】
本発明を、以下の非限定的な実施例において例示する。化合物(I)の製造のために記述されるすべての実施例は、キラルな塩形成酸としてのL−(+)−酒石酸の使用を必ず伴う。化合物(II)の製造のために記述されるすべての実施例は、L(+)−酒石酸およびD(−)−酒石酸の使用を必ず伴う。
【実施例】
【0058】
HPLC法
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンのキラル純度を、Chirapak ADHカラム(250×4.6mm)上での、溶離液:ヘキサン/IPA/N−エチルエタンアミン(90:10:0.2)、カラム温度:35℃、流速:0.4mL/分、および230nmでのUV検出による、キラルHPLCクロマトグラフィーによって測定した。2種の鏡像異性体の保持時間は、(1S,3R)鏡像異性体について8.4分、および化合物(I)について9.3分であった。
【0059】
1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンのキラル純度を、Chirapak ODカラム(250×4.6mm)上での、溶離液:ヘプタン/EtOH/DEA(98.4:1.5:0.1)、カラム温度:35℃、流速:1.0mL/分、および230nmでのUV検出による、キラルHPLCクロマトグラフィーによって確定した。2種の鏡像異性体の保持時間、化合物(II)について8.5分、および(1S,3R)鏡像異性体について9.5分。
【実施例1】
【0060】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩、アセトン。
トランス4−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン(3.0g)を、アセトン(100mL)に溶解した。L−(+)−酒石酸(1.3g)を加えて、懸濁液を、すべての酒石酸が溶解するまで50℃に加熱した。温まった溶液を、冷却のために放置した。15分後に沈殿が始まった。懸濁液を、室温で終夜撹拌し、生成物を濾過し、フード内で室温で乾燥させた。収率2.00g(91%)。
【0061】
2種の鏡像異性体の含有率は、(1S,3R)鏡像異性体=4.6%、および化合物(I)=95.4%であり、ee=90.8%の4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩に相当した。
【0062】
生成物(1.50g)を、還流下のエタノール(30mL)から再結晶した。溶液を、室温に冷却しながら、終夜撹拌した。生成物を濾過し、フード内で室温で乾燥させた。収率:1.37g(87%)。2種の鏡像異性体の含有率は、(1S,3R)鏡像異性体=0.8%、および化合物(I)=99.2%であり、ee=98.4%の4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩に相当した。
【実施例2】
【0063】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩、エタノール。
トランス4−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン(1.5g)を、エタノール(50mL)から、L−(+)−酒石酸(0.63g)を用いて分割した。収率0.92g(87%);(1S,3R)鏡像異性体=0.8%および化合物(I)=99.2%であり、ee=98.4%の4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩に相当する。
【実施例3】
【0064】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩、プロパノール。
トランス4−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン(0.75g)を、プロパノール(25mL)から、L−(+)−酒石酸(0.32g)を用いて分割した。収率0.49g(89.1%);(1S,3R)鏡像異性体=2.2%および化合物(I)=97.8%であり、ee=95.6%の4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩に相当する。
【実施例4】
【0065】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩、エタノールおよびギ酸。
トランス4−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン(1.5g)を、エタノール(50mL)から、L−(+)−酒石酸(0.38g)およびギ酸(0.097g)を用いて分割した。収率0.56g(51%);(1S,3R)鏡像異性体=4.8%および化合物(I)=95.2%であり、ee=90.4%の4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩に相当する。
【実施例5】
【0066】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩、エタノール。
トランス4−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン(1.5g)を、エタノール(50mL)から、L−(+)−酒石酸(0.95g)を用いて分割した。収率0.82g(77%);(1S,3R)鏡像異性体=3.2%および化合物(I)=96.8%であり、ee=93.6%の4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩に相当する。
【実施例6】
【0067】
1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミL−(+)−酒石酸塩、アセトン。
トランス1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン)(2.9g)を、アセトン(200mL)に溶解した。L−(+)−酒石酸(1.3g)を加え、懸濁液を、ほとんどすべてが溶解するまで加熱還流した。わずかな濁りが存在し、それを、折りたたみ濾紙で濾過した。温まった溶液を、室温に冷却するために放置し、1時間後に、沈殿が非常にゆっくりと始まった。懸濁液を、室温で終夜撹拌し、生成物を非常にゆっくりと濾過し、フード内で室温で乾燥させた。収率2.74g(65%)。2種の鏡像異性体の含有率は、化合物(II)=58.6%、および(1S,3R)鏡像異性体=41.4%であり、ee=17.2%の1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミL−(+)−酒石酸塩に相当した。
【0068】
生成物(2.00g)を、還流下の、エタノール(100mL)と水(10mL)との混合液から再結晶した。溶液を、室温に冷却しながら撹拌し、室温で1週間撹拌した。沈殿物を濾過し、フード内で室温で乾燥させた。収率0.81g(40.5%)。2種の鏡像異性体の含有率は、化合物(II)=3.9%、および(1S,3R)鏡像異性体=96.1%であり、ee=92.2%の1−((1S,3R)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミL−(+)−酒石酸塩に相当した。すなわち、エタノール水溶液からの再結晶によって、最も豊富な鏡像異性体が逆転しており、出発材料中のキラル鏡像体の含有率を考慮すると、53%の収率が得られる。
【実施例7】
【0069】
1−((1S,3R)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミL−(+)−酒石酸塩、エタノール。
トランス1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン(2.9g)を、エタノール(350mL)から、L−(+)−酒石酸(1.3g)を用いて分割した。収率1.49g(42%);化合物(II)=2.8%および(1S,3R)鏡像異性体=97.2%であり、ee=94.4%の1−((1S,3R)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミL−(+)−酒石酸塩に相当する。
【実施例8】
【0070】
1−((1S,3R)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミL−(+)−酒石酸塩、アセトン。
トランス1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン(0.85g)を、アセトン(25mL)および水(2.5mL)から、L−(+)−酒石酸(0.37g)を用いて分割した。収率0.61g(51%);化合物(II)=49.8%および(1S,3R)鏡像異性体=50.2%であり、ee=0.4%、すなわちラセミ化合物に相当する。
【実施例9】
【0071】
1−((1S,3R)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミL−(+)−酒石酸塩、エタノール。
トランス1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン(1.45g)を、エタノール(50mL)から、L−(+)−酒石酸(0.65g)を用いて分割した。収率0.62g(56%);化合物(II)=2.2%および(1S,3R)鏡像異性体=97.8%であり、ee=95.6%の1−((1S,3R)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミL−(+)−酒石酸塩に相当する。
【実施例10】
【0072】
1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミD−(−)−酒石酸塩、エタノールおよびギ酸。
トランス1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン(1.5g)を、エタノール(50mL)から、D−(−)−酒石酸(0.40g)およびギ酸(0.10mL)を用いて分割した。収率0.78g(71%);化合物(II)=99.0%および(1S,3R)鏡像異性体=1.0%であり、ee=98.0%の1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミD−(−)−酒石酸塩に相当する。
【実施例11】
【0073】
1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンD−(−)−酒石酸塩、エタノール。
トランス1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン(0.94g)を、エタノール(150mL)から、D−(−)−酒石酸(0.94g)を用いて分割した。収率0.61g(59%);化合物(II)=98.3%および(S1,R3)鏡像異性体=1.7%であり、ee=96.6%の1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミD−(−)−酒石酸塩に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中で、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンをL−(+)−酒石酸と混合するステップを含む方法。
【請求項2】
極性溶媒中の、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸との混合物を、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸との溶液を得るのに適した状態にする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
極性溶媒中の、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸との混合物を、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸との溶液を得るために、適切な温度に加熱する、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中にtrans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸とを含む溶液から、生成物を沈殿させるステップを含む方法。
【請求項5】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、
a)極性溶媒中で、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンをL−(+)−酒石酸と混合するステップと、
b)得られた混合物を適切な温度に任意に加熱して、trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンとL−(+)−酒石酸との溶液を得るステップと、
c)b)で得られた溶液を、沈殿まで冷却するステップと、
d)c)で得られた沈殿物を単離するステップと、
e)d)で得られた沈殿物を任意に乾燥させるステップと
を含む方法。
【請求項6】
ステップd)またはe)の後に続く、沈殿物を再結晶するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記trans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンが、トランス4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩が、前記方法の中間生成物または最終生成物である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩が、結晶形で得られる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記極性溶媒が、水、アルコール、ケトン、有機酸、またはこれらの混合物から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記極性溶媒が、水、アセトン、エタノール、n−プロパノール、ギ酸、またはこれらの混合物から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩である化合物。
【請求項13】
前記4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンL−(+)−酒石酸塩が、結晶形である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中で、trans1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンをD−(−)−酒石酸と混合するステップを含む方法。
【請求項15】
極性溶媒中の、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸との混合物を、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンD−(−)−酒石酸の溶液を得るのに適した状態にする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
極性溶媒中の、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸との混合物を、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸との溶液を得るために、適切な温度に加熱する、請求項14〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、極性溶媒中にtrans4−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸とを含む溶液から、生成物を沈殿させるステップを含む方法。
【請求項18】
1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩の製造のための方法であって、1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジン、または医薬として許容されるその塩を得るために、
a)極性溶媒中で、trans1−(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンをD−(−)−酒石酸と混合するステップと、
b)得られた混合物を適切な温度に任意に加熱して、trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンとD−(−)−酒石酸との溶液を得るステップと、
c)b)で得られた溶液を、沈殿まで冷却するステップと、
d)c)で得られた沈殿物を単離するステップと、
e)d)で得られた沈殿物を任意に乾燥させるステップと
を含む方法。
【請求項19】
ステップd)またはe)の後に続く、沈殿物を再結晶するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記trans1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンが、トランス1−((6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンである、請求項14〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミD−(−)−酒石酸塩が、前記方法の中間生成物または最終生成物である、請求項14〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記1−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンヘミD−(−)−酒石酸塩が、結晶形で得られる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記極性溶媒が、水、アルコール、ケトン、有機酸、またはこれらの混合物から選択される、請求項14〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記極性溶媒が、水、アセトン、エタノール、n−プロパノール、ギ酸、またはこれらの混合物から選択される、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2012−532153(P2012−532153A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518754(P2012−518754)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050177
【国際公開番号】WO2011/003423
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】