説明

4級カチオン性帯電防止剤及びそれを含有した帯電防止組成物と成形品

【課題】樹脂や有機溶媒との相溶性が良好で、耐加水分解性が高く、ハロゲンフリー、金属イオンフリーで環境への負荷が少ない、帯電防止剤及び該帯電防止剤を含有する帯電防止性樹脂組成物の提供。
【解決手段】正イオンのアンモニウム、負イオンの炭素数が1〜20のアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種のイオンで構成されたオニウム塩の一般式(1)(式中R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一若しくは異なってもよい、R4は炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基、Aは炭素数1〜3のアルキレン基、X-はアニオン)で示される(メタ)アクリルアミド系モノマー又は該モノマーからなるオリゴマー又は/及びポリマーを帯電防止剤とし、基材上にコーティング又は固定することで帯電防止層を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーからなる帯電防止剤及び該帯電防止剤を含有する帯電防止性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に樹脂材料は、電気絶縁性に優れているため、絶縁体等の電気絶縁性を必要とする用途には極めて有用である反面、表面に静電気を帯びやすく、粉塵の吸着及び静電気に起因したトラブルを生じる。
【0003】
第4級アンモニウム塩基からなるカチオン系の帯電防止剤は、優れた帯電防止効果を持つことが知られている。例えば、特許文献1、2では、負イオンとしてハロゲン化物イオン又はアルキルスルホン酸イオンを含有する非重合性第4級アンモニウム塩をアクリレート系モノマーなどの重合性化合物に添加し、紫外線照射により帯電防止性樹脂組成物を得る方法が報告された。しかし、これらの非重合性第4級アンモニウム塩が樹脂との間に有効な化学結合が形成されておらず、時間経過とともに樹脂組成物表面に徐々にブリードアウトし、水拭き、摩擦などで容易に剥がれてしまい、帯電防止性能を持続できないという問題点があった。
【0004】
持続できる帯電防止性能を提供するため、重合性基を持つカチオン性ビニルモノマーが他の共重合可能なモノマー、例えばメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドを2−エチルヘキシルアクリレートと共重合させ、高分子帯電防止剤として使用する方法が報告された(特許文献3)。しかし、該カチオン性ビニルモノマーはエステル系のアクリレート骨格を有するため、加水分解し易いという欠点があった。加水分解によってアクリル酸と末端ヒドロキシル基を有する非重合性第4級アンモニウム塩が発生し、期待された持続できる帯電防止性能が失ってしまう。また、加水分解で発生したアクリル酸が電子部品、光学材料などの腐食を招く恐れがあった。
【0005】
耐水性の改善のため、耐加水分解性の高いアミド系化合物を使用することが公知化されている。しかし、多くのアミド系カチオン性ビニルモノマーは極性が高く、吸湿性が高く、また製造上の関係で通常水溶液の状態で流通している。例えば、不飽和第3級アミンであるN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドに4級化剤としてメチルクロライドを加えて、水とアプロティックな有機溶媒からなる混合溶媒存在下で4級化反応を行う方法がよく使われている(特許文献4)。当然ながら、これらの公知の方法により得られるアミド系カチオン性ビニルモノマー溶液は通常水溶液であるため、塗膜時の乾燥性が悪く、また、汎用樹脂、多官能アクリルモノマー、オリゴマー、有機溶媒などとの相溶性が乏しく、均一に分散できず、有効な帯電防止性が発現できないという問題点があった。仮にアミド系カチオン性ビニルモノマーを高純度に精製し、極性有機溶媒に溶解させたとしても、該モノマー自身の親水性が高いために、有機溶媒を除去して使用する際に樹脂中の他成分に対する溶解性が低く、樹脂中で凝縮するか樹脂から析出し、連続した帯電防止膜を形成できず、目標とする帯電防止性能を達成できない場合があった。

【0006】
アミド系カチオン性ビニルモノマーを使用せず、耐水性と樹脂、有機溶媒との相溶性を同時に改良しようとする種々の試みも行われてきた。例えば、アクリレート系カチオン性ビニルモノマーとアミド基を有する重合性モノマーを共重合して使用する方法が報告されている(特許文献5、6)。しかし、これらの方法では、帯電防止組成物中のカチオン性ビニルモノマーの含有量が低下するため、目標とする帯電防止性能を得るためには、この共重合体を多量に添加する必要があり、その結果、樹脂の各種特性が低下するとともに、樹脂組成物の価格が高くなってしまうという問題点があった。
【0007】
また、カチオン性ビニルモノマー自身の相溶性向上を目的としたものとして、例えば、特許文献7、8では、窒素オニウムカチオン及び該オニウムカチオンに弱く配位する弱配位性アニオンを有する重合性化合物を提案している。しかし、該提案のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等をアニオンとした重合性化合物は、通常、ハロゲン化アルキルによる4級化を経由し、アルカリ金属塩を用いて塩交換をすることにより合成しているため、アルカリ金属イオン及びハロゲンイオンの混入は避けられない。また、当該アルカリ金属塩は一般に高価であるとともに、ハロゲンイオンを含有するため、廃棄、焼却時に有毒なガスなど発生する可能性があり、人体や自然環境に悪影響を及ぼす恐れがある。さらに、このような窒素オニウム塩を電池やコンデンサー等の電子部品に用いると、ハロゲンイオンにより電極の劣化、金属イオンの吸湿性による耐湿性、耐水性の低下を引き起こし易く、かかる表面と接触する用途には不向きである。
【0008】
ハロゲンイオン、金属イオンを除去するために、通常イオン交換樹脂処理等の精製工程が必要となるが、固体または粘性の高い液体であるカチオン性ビニルモノマーにおいて、適当な溶媒で溶解、希釈されてからイオン交換樹脂塔に導入する必要があり、多くの溶媒を要し、溶媒回収などコストの面でも有効な方法であるとは言えない。
【0009】
ハロゲンフリーの製法としてハロゲン化アルキル以外の4級化剤による3級アミンの4級化反応も検討されてきた。例えば、特許文献7と特許文献9に示すジアルキル硫酸類による4級化方法が提案されている。特許文献7はジメチルアミノエチルメタクリレートと過剰のジエチル硫酸を無溶剤系で反応させた後、イオン交換水に希釈し、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとの金属塩反応でアニオン交換を行った。特許文献9は溶媒としてアルコールの存在下で、ジメチル硫酸とジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを反応させ、その後ラジカル重合開始剤を添加してポリマー化を行った。しかしながら、得られメタアクリレート系並びメタクリルアミド系4級塩モノマーの純度、収率、単離精製方法などについては何ら記載がない。
【0010】
これらの4級塩ビニルモノマーの高純度品を得るため、通常、反応後の反応液から例えば蒸留などの方法で反応溶媒を除去しなければならない。しかし、4級塩ビニルモノマーは極性が高く、吸湿性が高いので、蒸留等で単離することは極めて困難である。また、カチオン性ビニルモノマーは重合性基を有するため、蒸留時に重合する可能性がある。さらに、これらの提案の4級化剤であるジアルキル硫酸類は発がん性、皮膚腐食性、刺激性などの毒性が高く、得られるカチオン性ビニルモノマーは安全性の面で問題が生じる。
【0011】
特許文献9では、スルホン酸エステル類による4級化も可能と同時に提案したが、その合成実態については何ら記載がなかった。仮に同様なアルコール溶媒中でスルホン酸系ビニルモノマーを合成しても、ジメチル硫酸塩と同様に分離、精製はできず、UV硬化などに要求される高純度品カチオン性ビニルモノマーが取得できないと明らかになっている。
【0012】
一方、特許文献10はハロゲン化銀写真感光材料の構成成分としてN−メタクリルアミドプロピル−N,N,N,−トリメチルアンモニウム−p−トルエンスルホンネートの使用を提案した。該特許文献によると、酢酸エチルとn−へキサンの混合溶媒を用いた場合、40℃でジメチルアミノプロピルメタクリルアミドと同モルのp−トルエンスルホン酸メチルを反応させた後反応液を冷却させることで、目的物が反応液から析出し、分離できる。しかし、該反応の収率は83.6%と低く、また得られた目的4級塩ビニルモノマーの純度などの詳細記載は一切なかった。該方法で得られたトルエンスルホン酸系4級塩ビニルモノマーが、高純度を要求されない用途、例えば、該文献に提案された他のジビニルモノマーと共重合して架橋性ポリマーを合成することができるが、高純度、高品質が要求されるUV硬化分野への応用には適用するとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−231240号公報
【特許文献2】特開2008−13636号公報
【特許文献3】特開2008−231196号公報
【特許文献4】特開昭63−201151号公報
【特許文献5】特開2007−332181号公報
【特許文献6】特開2000−129245号公報
【特許文献7】特開2007−9042号公報
【特許文献8】特開2005−255843号公報
【特許文献9】特開2001−323029号公報
【特許文献10】特開昭61−279853号公報
【0014】
以上のように、従来の4級化剤にハロゲン化アルキルを用いたカチオン性ビニルモノマーの製造にあたっては、ハロゲンイオンをカウンターアニオンとするオニウム塩を経由し、それを高価なアルカリ金属塩でアニオン交換するため、ハロゲンイオン、金属イオンが製品中に残留し、そのようなカチオン性ビニルモノマーを電池やコンデンサーなどの電子部品に用いると、腐食などの問題があった。またハロゲン化アルキルを用いないカチオン性ビニルモノマーの製造においても、安全性に問題のあるアルキル硫酸類をカウンターアニオンとしたものであった。さらに、他の4級化剤として、p−トルエンスルホン酸メチルを用いることができるが、高収率で高純度のカチオン性ビニルモノマーを得ることは困難であった。すなわち、耐水性も相溶性も本質的に改善され、且つ環境への負荷が少なく、各種電気化学デバイスにも好適に用いられ、UV硬化に応用できる帯電防止剤組成物とするアミド系カチオン性ビニルモノマーの良質結晶を高収率で得る方法は未だに得られていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、基材及び他の帯電防止剤組成物との相溶性に優れ、耐加水分解性が高く、吸湿性が低く、優れた帯電防止効果を有しハロゲンフリー、金属イオンフリーで環境への負荷が少なく、各種電気化学デバイスにも好適に用いられ、安価に高収率に製造できる高純度のアクリルアミド系のカチオン性ビニルモノマー、該モノマーからなる帯電防止剤および該帯電防止剤を含有する帯電防止性樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、このようなアミド系カチオン性ビニルモノマーからなる帯電防止組成物により、帯電防止性、透明性、各種樹脂基材との密着性に優れた帯電防止層、およびこのような帯電防止層を備える帯電防止フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者はこれらの課題を解決するために鋭意検討を行った結果、下記一般式(1) (式中R1は水素原子またはメチル基を、R2及びR3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、R4は炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を、X-はアニオンを示す)で示される4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを、水と相溶性のある非プロトン性有機溶媒の存在下、下記一般式(2)で表される三級アミン化合物と下記一般式(3)で表される酸エステルとを4級化することにより得ることを見出し、当該4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマー、又は/及び該モノマーからなるオリゴマー、ポリマーで構成した帯電防止剤を見出した。該帯電防止剤を有機溶媒に溶解させてから基材上にコーティング、固定することで帯電防止層を形成させることにより上記課題を解決し、本発明に到達した。
【化1】



【化2】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を、R2及びR3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)

【化3】

(式中、R4は炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基を、Xは炭素数が1〜20のアルキルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基を表す。)
【0017】
すなわち、本発明は、
(1)正イオンとしてアンモニウム、負イオンとして炭素数が1〜20のアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種のイオン、で構成されたオニウム塩である一般式(1)(式中R1は水素原子またはメチル基を、R2及びR3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、R4は炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を、X-はアニオンを示す)で示される4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを含む帯電防止剤、
【化1】

(2)上記(1)記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーが、一般式(2)



(式中、R1は水素原子又はメチル基を、R2及びR3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)で表されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドと一般式(3)

(式中、R4は炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基を、Xは炭素数が1〜20のアルキルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基を表す。)で表される4級化剤と有機溶媒の存在下で反応させことにより得られたことを特徴とする、請求項1に記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを含む帯電防止剤、
(3)上記(1)記載の4級記カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを製造するにあたり、溶媒として、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、及びN−メチルピロリドンからなる、水と相溶性のある非プロトン性有機溶媒群から選ばれた少なくとも1種を用いることを特徴とする、上記(1)に記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを含む帯電防止剤、
(4)上記(1)記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを製造するにあたり、上記(3)記載の有機溶媒の配合量が前記4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマー濃度に対して10〜1000体積%である、請求項1乃至請求項3記載の前記4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーの製造方法。
(5)上記(1)記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを構成成分とするオリゴマー又は/及びポリマーを含む帯電防止剤、
(6)多官能(メタ)アクリレート又は/及び(メタ)アクリルアミドをさらに含有する上記(1)乃至上記(5)記載の帯電防止組成物、
(7)上記(6)記載の多官能(メタ)アクリレート又は/及び(メタ)アクリルアミドの配合量は上記(1)乃至上記(5)記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマー、該モノマーを配合したオリゴマー又は/及びポリマー対して1〜50重量%含有することを特徴とする帯電防止組成物、
(8)上記(1)記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを構成単位として0.1〜90重量%含有した上記(1)乃至上記(7)記載の帯電防止剤及び帯電防止組成物
(9)基材上に上記(1)乃至上記(7)記載の帯電防止剤又は/及び帯電防止組成物を塗布して形成されることを特徴とする帯電防止層、
(10)基材上に上記(1)乃至上記(7)記載の帯電防止剤又は/及び帯電防止組成物を活性エネルギー線又は熱で重合して形成されることを特徴とする帯電防止層、
(11)基材及び基材上に上記(1)乃至上記(7)記載の帯電防止剤又は/及び帯電防止層を有することを特徴とする帯電防止フィルム
を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーからなる帯電防止剤は樹脂との相溶性が良好であり、耐擦傷性と透明性が良好で、金属イオンの混入がなく、ハロゲンフリーのため環境負荷が少なく、十分な耐加水分解性を有すると共に、吸湿性が極めて低く、持続できる優れた帯電防止効果を持つ帯電防止性樹脂組成物とすることができる。
これら作用効果のうち、特に、帯電防止性に優れた理由として、4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーが高純度であること、樹脂や有機溶媒との相溶性が高いことで樹脂中に帯電防止剤が均一に分散でき、連続的な帯電防止層を形成し易いことを本発明者らは推察している。
【0019】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとスルホン酸エステル類の4級化剤との4級化反応で合成されるもので、該4級化反応は窒素求核種とスルホニル化アルキルとの2分子求核置換反応であり、その反応収率が反応溶媒の品種によって大きく変わることが、本発明者らの鋭意検討を重ねて洞察した。即ち、n−へキサン、トルエン、酢酸エチルなど非極性溶媒では4級化反応の収率が90%以下と低く、極性溶媒では反応の進行と共に電荷が発生するので大きな溶媒効果を受け、反応が素早くに進行し、短時間で99%以上の収率を達することができる。また、非プロトン性有機溶媒において、4級化反応の原料は可溶で、生成物である4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーは不溶であるものを使用することが最も好ましい。この場合、反応の進行に伴い目的4級塩モノマーが結晶または溶媒に不溶の液体として析出し、高速度、高選択率、高収率で4級化反応を完結することができる。さらに、このように得られた結晶または反応溶媒に不溶の液体が非粘質で取扱い易く、しかも未反応物を含まず高純度で得ることができる。一方、プロトン性の強極性溶媒では、反応速度がさらに速くなる反面、目的4級塩生成の選択率が低くなり、また生成した目的4級塩モノマーがプロトン性の強極性溶媒との親和性が高く、4級塩モノマを溶解することが多いので、反応終了後反応溶媒除去などの精製工程における目的4級塩モノマーが重合してしまうなどのトラブル発生が回避できない場合がある。
【0020】
本発明の非プロトン性の極性有機溶媒を使用することによって、4級化反応常温、常圧でも十分な速度で進行し、目的の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーが効率よく得られる。さらに、ハロゲンイオンフリー、金属イオンフリーのため、本発明の新規4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーは、自身の相溶性が優れているので、相溶性向上目的の新たな化合物の添加が不要となり、相対的なカチオン性モノマーの含有量低下による樹脂の各種特性の低下を抑えることができた。
【0021】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーからなる帯電防止剤、帯電防止組成物により、アルカリイオンなど金属の混入がなく、ハロゲンフリーのため環境負荷が少ない、帯電防止性、透明性、各種樹脂基材との密着性に優れた帯電防止層及びこのような帯電防止層を備える帯電防止フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の帯電防止剤の有効成分である4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーは、正イオンとしてアンモニウム、負イオンとして炭素数が1〜20のアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種のイオンで構成されたオニウム塩であり、さらに重合性の(メタ)アクリルアミドと連結した化合物である。
【0023】
一般式(1)で表される化合物は、式中R1は水素原子またはメチル基を、R2及びR3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、R4は炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を、X-はアニオンをそれぞれ表す化合物で、具体的には、アクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムメチルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムメチルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウムメチルスルホナートなどの(メタ)アクリルアミド系アンモニウムアルキルスルホナート4級カチオン性モノマーが挙げられ、または、アクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムベンジルスルホナート、アクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムベンジルスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウムベンジルスルホナートなどの(メタ)アクリルアミド系アンモニウムベンジルスルホナート4級カチオン性モノマーが挙げられ、または、アクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムトシラート、アクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムトシラート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウムトシラートなどの(メタ)アクリルアミド系アンモニウムトシラート4級カチオン性モノマーが挙げられ、さらには、アクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、アクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナートなどの(メタ)アクリルアミド系アンモニウムトリフルオロメタンスルホナート4級カチオン性モノマーが挙げられる。本実施形態においては、これらの4級カチオン性モノマーの中から1種又は2種以上のモノマーを任意に選択して組み合わせればよい。そして、これらの中でも、工業品原料を入手し易く、安価で簡易に製造できるといった観点から、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムトシラートが特に好ましい。
【0024】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーは、下記一般式(2)

(式中、R1は水素原子又はメチル基を、R2及びR3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)で表されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドと一般式(3)


(式中、R4は炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基を、Xは炭素数が1〜20のアルキルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基を表す。)
で表される4級化剤と有機溶媒の存在下で反応させることによって得ることができる。
【0025】
前記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドをアセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、及びN−メチルピロリドンからなる、水と相溶性のある非プロトン性有機溶媒群から選ばれた少なくとも1種の溶媒中で前記4級化剤と反応させると、本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーが高収率で取得できるうえ、非粘質性で取り扱いやすく、しかも未反応物を含まず高純度である。
【0026】
前記4級化反応において用いられる有機溶媒の配合量は、その種類によっても異なるが、本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマー濃度に対して10〜1000体積%の範囲であることが好ましい。10%未満の場合、反応が制御できず、選択率が低下するおそれがある。また、発熱による重合トラブルなどの問題を生じることがある。一方、1000%を超える場合、原料の接触効率が低下し、反応速度が遅くなるおそれがある。
【0027】
【化2】


一般式(2)中、R1は水素原子またはメチル基を、R2及びR3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を表し、具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドN,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が例示される。また、4級化剤としては、一般式(3)


式中、R4は炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基を、Xは炭素数が1〜20のアルキルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基を表し、具体的には、メタンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル等のスルホン酸エステルが挙げられる。
【0028】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーの負イオンとしては、炭素数が1〜20のアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種のイオンが挙げられる。アルキルスルホン酸イオンとしては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の負イオンが使用でき、特にp−トルエンスルホン酸イオンが好ましい。
【0029】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーをプラスチックなどの成形品に塗布した後、乾燥して使用する場合、単独でも帯電防止性、プラスチックへの塗膜性、耐擦傷性の効果を十分に示すことができる。また、本発明の本来の帯電防止性や相溶性などの特性を阻害しない範囲で、2個以上のエチレン基を有する多官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリルアミドを添加し、架橋性被膜を基材表面に形成させることにより、さらなる製膜性や耐擦傷性などの塗膜の性能を向上させることができる。
【0030】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等のモノマーとオリゴマーが挙げられる。
【0031】
このような多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、アロニックスM−400、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、TO−1200、TO−1231、TO−595、TO−756(以上、東亞合成製)、KAYARD
D−310、D−330、DPHA、DPHA−2C(以上、日本化薬製)、ニカラックMX−302(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
【0032】
また、多官能(メタ)アクリルアミドとしては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタアクリルアミド、ジアリルアクリルアミド等のモノマーとウレタンアクリルアミド(特開2002−37849)等のオリゴマーが挙げられる
【0033】
これらの多官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリルアミドは、1種類に限られず、複数の多官能モノマー、オリゴマーを組み合わせて使用してもよい。また、このような多官能モノマー、オリゴマーを使用される場合、本発明の4級カチオン性アクリルアミド系モノマーに対して1〜50重量%含有させることが好ましく、また2〜30重量%含有させることが特に好ましい。含有量が1重量%未満ではその添加効果が認められず、50重量%を越えると、架橋率が高くなるため、塗膜の硬度、耐擦傷性は向上するが、弾力性が失われて割れやすくなる。
【0034】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーは、帯電防止層の種々の性能、例えば硬化物性を硬くあるいは、柔らかく調整する際には、他の重合性化合物を混合し、共重合させてもよく、重合性化合物としては、アクリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、不飽和ニトリルモノマー、不飽和カルボン酸、アミド基含有モノマー、メチロール基含有モノマー、アルコキシメチル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、多官能性モノマー、ビニルエステル、オレフィンなど分子鎖中に反応性二重結合をもつラジカル重合化合物が挙げられる。
【0035】
アクリル(メタ)アクリレートの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなどが挙げられる。
【0036】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
不飽和ニトリルモノマーの例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0038】
不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、モノアルキルイタコネート等がある。
【0039】
このような重合性化合物は、1種類に限られず、複数の重合体を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
本発明の4級カチオン性アクリルアミド系モノマーは重合性化合物と公知の方法によって重合体または共重合体とすることができる。重合方法としては、例えば、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の方法を用いることができる。これらの方法のうち、ラジカル重合開始剤を用いた溶液重合が好ましい。溶液重合を行う際に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、プロビレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、水等を用いることができる。これらの溶媒は、重合する単量体の種類や共重合の場合はその混合比等に応じて、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0041】
ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ化合物系触媒や、ベンゾイルパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物系触媒、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩系触媒等を用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合性単量体100重量%に対して0.05〜10重量%、好ましくは0.2〜3重量%である。
【0042】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーの含有量は、使用する多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリアミドの粘度、他の重合性化合物の配合量、樹脂組成物に要求される物性によるので、特に限定されるものではないが、帯電防止組成物中の固形分比で0.1〜90重量%、好ましくは1〜60重量%である。この4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーの含有量が0.1重量%以下では帯電防止性能が不十分となり、90重量%を超えると透明性に劣るものとなる。
【0043】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーからなる帯電防止組成物は、活性エネルギー線又は熱による硬化が可能であるので、プラスチックなどの成形品に塗布し、乾燥後、硬化することによって、帯電防止性ハードコート樹脂組成物として使用することができる。
【0044】
本発明の活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物(光重合開始剤)を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型である点から、紫外線を使用することが好ましい。
【0045】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを光硬化させる際は、光開始剤を添加しておく。光開始剤は、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には特に必要はないが、紫外線を用いる場合には必要となる。光開始剤はアセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから適宜選択すればよい。光開始剤のうち、市販の光開始剤としてはチバ・スペシャルティーケミカルズ社製、商品名Darocure1116、Darocure1173、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE500、IRGACURE651、IRGACURE754、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE1300、IRGACURE1800、IRGACURE1870、IRGACURE2959、IRGACURE4265、IRGACURE TPO、UCB社製、商品名ユベクリルP36、などを用いることができる。
【0046】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーの帯電防止性や相溶性などの特性を阻害しない範囲で、顔料、染料、界面活性剤、ブロッキング防止剤、バインダー、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の他の任意成分を併用してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。

【0048】
なお、以下の実施例、比較例において、帯電防止組成物の特性評価は、以下の方法により行った。


(1)4級塩の定量方法

電位差自動滴定装置(装置名:AT−610
京都電子工業株式会社製)を用いて、濃度0.02mol/Lのテトラフェニルほう酸ナトリウム溶液(関東化学株式会社製)により滴定を行い、滴定量から第4級アンモニウム塩濃度を求める。


(2)塗装と紫外線硬化

厚さ100μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを貼付したガラス製の試料板(縦200×横200×厚さ5mm)を動かないように水平面に固定し、板の先方の端に帯電防止ハードコート剤を帯状に滴下して、バーコーター(RDS60)で全体に均等な力がかかるように両端を押さえ、回転させずに同じ速さ(5cm/sec)で手前まで引いて塗布し、熱風乾燥機で80℃、3分の条件で溶媒を除去し、塗膜を得た。塗膜の付着状態を目視によって観察し、塗膜の形成性を評価した(◎:優れている;○:良い;△:やや悪い;×:悪い)。次に塗面を上向きにして紫外線照射を行って硬化させ、帯電防止ハードコート膜を得た。紫外線硬化条件は、出力300W、単位当たり出力50W/cmの高圧水銀灯1本を設置した紫外線照射装置(オーク製作所 モデルOHD320M)を使用し、1秒当たりに紫外線エネルギーは10mJ/cm2であるように試料板とランプの距離を調節した。塗膜の表面がベタつかなくなるまでに必要な照射時間を硬化時間として測定した。硬化後、各試験板上の塗膜の表面抵抗率、耐擦傷性試験を行った。また、塗膜の透明性を目視によって観察し、評価した(◎:透明で表面が平滑;○:透明だが凹凸がある;△:僅かな曇りや凹凸がある;×:極度な曇りや凹凸がある)。


(3)表面抵抗率測定

型板 (縦110×横110mm) を使用し、カッターで帯電防止ハードコート膜を裁断し、表面抵抗率測定用試料を得た。JIS K 6911 に基づき、YOKOGAWA HEWLETT-PACKARD製HIGH RESISTANFE METER 4329Aを用いて測定を行った。


(4)耐擦傷性試験

スチールウールを#0000のスチールウールを用いて、200g/cm2の荷重をかけながら10往復させ、傷の発生の有無を評価した(◎:膜の剥離や傷の発生がほとんど認められない;○:膜にわずかな細い傷が認められる;△:膜全面に筋状の傷が認められる。;×:膜の剥離が生じる)。

【0049】
実施例及び比較例で使用した成分は、以下の通りである。
【0050】
〈カチオン性ビニルモノマーの合成〉


合成例1:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホナート
窒素雰囲気下で、1Lの三つ口フラスコにN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人製:商標「DMAPAA」)100g、メチルエチルケトン(MEK)185gを加え、内温20℃以下に調整、撹拌しながらp−トルエンスルホン酸メチル119gを滴下し、4級化反応を実施した。1時間後、析出した結晶をろ過し、減圧下で乾燥した結果、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホナートのサラサラした白色結晶218gが得られた。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は99.6%であった。
【0051】
合成例2:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート
窒素雰囲気下で、1Lの三つ口フラスコにN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人製:商標「DMAPAA」)100g、テトラヒドロフラン200gを加え、内温20℃以下に調整、撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸メチル107gを滴下し、4級化反応を実施した。1時間後、得られた二層分離した下層の油状液体層部分を取り出し、テトラヒドロフランで3回洗浄した後、減圧下で残存の微量テトラヒドロフランを除去し、無色透明の液体としてアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート206gを得た。電位差滴定で分析した結果、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は99.5%であった。
【0052】
合成例3:メタアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホナート
窒素雰囲気下で、1Lの三つ口フラスコにN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド100g、メチルエチルケトン(MEK)185gを加え、内温20℃以下に調整、撹拌しながらp−トルエンスルホン酸メチル109gを滴下し、4級化反応を実施した。1時間後、析出した結晶をろ過し、減圧下で乾燥した結果、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホナートのサラサラした白色結晶208gが得られた。電位差滴定で第4級アンモニウム塩濃度を求めたところ、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は99.7%であった。
【0053】
合成例4:メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート
窒素雰囲気下で、1Lの三つ口フラスコにN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド100g、テトラヒドロフラン200gを加え、内温20℃以下に調整、撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸メチル98gを滴下し、4級化反応を実施した。1時間後、得られた二層分離した下層の油状液体層部分を取り出し、テトラヒドロフランで3回洗浄した後、減圧下で残存の微量テトラヒドロフランを除去し、無色透明の液体としてメタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート195gを得た。電位差滴定で分析した結果、該目的生成物の純度は100%であった。また、収率は99.4%であった。
【0054】
合成比較例1:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(特許文献9を参照)
1Lの三つ口フラスコにアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(興人製:商標「DMAPAA−Q」)の75%水溶液100gを撹拌しながら、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド116gをイオン交換水80mLに希釈したものを60℃加熱下で加えた。2時間後、二層分離した下層の油層部分を取り出し、イオン交換水で3回洗浄した後、減圧下で残存の微量水分を除去し、純度93%のアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの液体156gを得た。収率は88%であった。また、イオンクロマトグラフによる塩素とカリウムイオンを定量し、それぞれの含量は7000ppmと12000ppmであった。
【0055】
合成比較例2:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホナート(特許文献10を参照)
窒素雰囲気下で、3Lの三つ口フラスコにN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人製:商標「DMAPAA」)136g、溶媒として酢酸エチル1L、n-ヘキサン1Lを加え、内温を40℃に調整、撹拌しながらp−トルエンスルホン酸メチル162gを1時間かけて滴下し、4級化反応を実施した。1時間後、析出した結晶をろ過し、減圧下で乾燥した結果、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホナートの白色結晶233gが得られた。第4級アンモニウム塩濃度は100%であったが、収率は78%であった。
【0056】
合成比較例3:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホナート
窒素雰囲気下で、1Lの三つ口フラスコにN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人製:商標「DMAPAA」)100g、メタノール185gを加え、内温20℃以下に調整、撹拌しながらp−トルエンスルホン酸メチル119.2gを滴下し、4級化反応を実施した。1時間後、得られた均一な液体を減圧下で濃縮した結果、濃縮中に増粘し、ワックス状の吸湿性高い固形物を得た。二重結合率をJIS K 0700に準じて測定し結果、該固形物中の目的4級塩モノマー含有量が8%であった。
【0057】
実施例A−1

帯電防止ハードコート剤の作製
ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)社製:ライトアクリレートPE−3A)62重量部、合成例1で合成したアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホナート 14重量部、光開始剤として、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製、商品名Darocure1173 3重量部をイソプロピルアルコール(IPA)120重量部に混合溶解して、紫外線硬化可能な帯電防止ハードコート剤を得た。その後、得られたハードコート剤を厚さ100μmのPETフィルムに塗装し、紫外線硬化を行い、帯電防止性ハードコートを作製した。
【0058】
実施例A−2〜8、比較例A−1〜4

表1に記載の組成に変えた以外は実施例A−1とで同様に作製した。

【0059】
【表1】

【0060】
実施例B−1

共重合体溶液の合成

撹拌翼、還流冷却器、ガス導入口を備えたフラスコに、合成例1で合成したDMAPAA−PTS10重量部と2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)10重量部、アゾイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部をIPA 40重量部に混合溶解し、窒素気流下70℃で8時間重合し、共重合体溶液(a)を得た。
帯電防止ハードコート剤の作製
共重合体溶液(a)5重量部に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)社製:ライトアクリレートPE−3A)とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)社製:ライトアクリレートDPE−6A)及び光開始剤として、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製、商品名Darocure1173 5重量部をIPA
120重量部に混合溶解して、紫外線硬化可能な帯電防止ハードコート剤を得た。その後、得られたハードコート剤を厚さ100μmのPETフィルムに塗装し、紫外線硬化を行い、帯電防止性ハードコートを作製した。
【0061】
共重合体溶液の合成におけるモノマーの配合比を表2に示す。
【0062】
実施例B−2〜10、比較例B−1〜4

表3に記載の組成に変えた以外は実施例B−1とで同様に作製した。

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
合成例と合成比較例の結果から、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとスルホン酸エステルの4級化反応が非プロトン性の極性溶媒のみにおいて、常温、常圧でも十分な速度で反応が進行し、重合などのトラブルが発生せず、高純度品を高収率で取得することができた。また、該酸エステル法で得られた4級塩モノマーには、ハロゲンイオン並びにアルカリなどの金属イオンの混入がなく、透明性の高い均一な帯電防止塗膜を形成できる。実施例と比較例のUV硬化性と塗膜の帯電防止性評価結果から、金属イオンおよび塩素イオンの残存によるUV硬化の所要時間が長くなり、得られた塗膜がべとつき、透明性が悪く、また、それらの原因で均一な塗膜が得られず、帯電防止効果が低かった。本発明の製造方法で得られた高品質新規4級塩(メタ)アクリルアミド系モノマーのみが、UV硬化に要するエネルギーが少なく、透明性がよく、高耐擦傷性と高耐加水分解性を併せ持つ、優れた帯電防止性能を有する帯電防止剤を提供できることが明らかであった。

【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明してきたように、本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミドモノマーは、常温、常圧でも十分な速度で反応が進行し、高純度で収率良く取得できる。また、アルカリなどの金属イオンの混入がなく、ハロゲンフリーで環境負荷が少ないと共に、他の帯電防止組成物及び有機溶媒との相溶性が良好であるため、この4級カチオン性(メタ)アクリルアミドモノマーからなる帯電防止組成物を用いて形成される帯電防止層は、帯電防止性、透明性、耐擦傷性と耐加水分解性に優れる。本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミドモノマーからなる帯電防止層は、紫外線硬化型樹脂組成物、粘着剤組成物等の樹脂にあらかじめ添加して使用する場合などに好適に用いることができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
正イオンとしてアンモニウム、負イオンとして炭素数が1〜20のアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種のイオンで構成されたオニウム塩である一般式(1)(式中R1は水素原子またはメチル基を、R2及びR3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、R4は炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を、X-はアニオンを示す)で示される4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを含む帯電防止剤。
【化1】

【請求項2】
前記4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーが、一般式(2)

(式中、R1は水素原子又はメチル基を、R2及びR3は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)で表されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドと一般式(3)

(式中、R4は炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基を、Xは炭素数が1〜20のアルキルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基を表す。)で表される4級化剤と有機溶媒の存在下で反応させことにより得られたことを特徴とする、請求項1に記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを含む帯電防止剤。
【請求項3】
前記4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを製造するにあたり、有機溶媒として、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、及びN−メチルピロリドンからなる、水と相溶性のある非プロトン性有機溶媒群から選ばれた少なくとも1種を用いることを特徴とする、請求項1に記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを含む帯電防止剤。
【請求項4】
前記4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを製造するにあたり、請求項3記載の有機溶媒の配合量が前記4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマー濃度に対して10〜1000体積%である、請求項1乃至請求項3記載の前記4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーの製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを構成成分とするオリゴマー又は/及びポリマーを含む帯電防止剤。
【請求項6】
多官能(メタ)アクリレート又は/及び(メタ)アクリルアミドをさらに含有する請求項1乃至請求項5記載の帯電防止組成物。
【請求項7】
請求項6記載の多官能(メタ)アクリレート又は/及び(メタ)アクリルアミドの配合量は請求項1乃至請求項5記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマー、該モノマーを配合したオリゴマー又は/及びポリマー対して1〜50重量%含有することを特徴とする帯電防止組成物。
【請求項8】
請求項1記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを構成単位として0.1〜90重量%含有した請求項1乃至請求項7記載の帯電防止剤及び帯電防止組成物。
【請求項9】
基材上に請求項1乃至請求項7記載の帯電防止剤又は/及び帯電防止組成物を塗布して形成されることを特徴とする帯電防止層。
【請求項10】
基材上に請求項1乃至請求項7記載の帯電防止剤又は/及び帯電防止組成物を活性エネルギー線又は熱で重合して形成されることを特徴とする帯電防止層。
【請求項11】
基材及び基材上に請求項1乃至請求項7記載の帯電防止剤又は/及び帯電防止層を有することを特徴とする帯電防止フィルム。

【公開番号】特開2011−12240(P2011−12240A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202905(P2009−202905)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】