説明

42−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンのオキセパン異性体

本発明は、42−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの精製オキセパン異性体(SDZ−RAD異性体C)、それを調製するための化学的なプロセス、更にはSDZ−RAD異性体Cを含有する医薬組成物およびパック、ならびにそれを免疫抑制剤、抗炎症薬、抗真菌薬、抗増殖剤および抗腫瘍薬として使用するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、42−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの新規なオキセパン(oxepane)異性体、その異性体を調製するためのプロセス、ならびに数ある中でもとりわけ移植による拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫疾患、炎症性疾患、成人T細胞白血病/リンパ腫、充実性腫瘍、真菌感染症および過剰増殖性血管障害の処置、予防または抑制におけるその異性体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
SDZ−RADまたはRAD−666としても知られている40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンの構造および合成は、米国特許第5,665,772号(Cottensら)および国際特許公開公報第94/09010号に記載されている。米国特許第5,665,772号に従って調製された場合、SDZ−RADは、約95wt%の異性体Bおよび30wt%の異性体C(オキセパン異性体)を含有する混合物として存在する。
【0003】
40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンは、付番様式(numbering convention)の変更により、現在では42−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンとして知られている。SDZ−RADは、ストレプトマイセスハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)により自然に産生される大環状トリエン抗生物質であるラパマイシンの類似体である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラパマイシンは、ラパマイシンの抗腫瘍効果および免疫抑制効果に基づく一連の用途において有用性が見出されている。そのような用途としては、全身性エリテマトーデス、肺炎症、インスリン依存性糖尿病、血管手術後の平滑筋細胞増殖および内膜肥厚、成人T細胞白血病/リンパ腫、ならびに眼炎症の予防または処置が挙げられる。ラパマイシンおよび、SDZ−RADを含むラパマイシン誘導体は、これらの状態および他の状態の処置を目的とした研究が継続的に行われている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、SDZ−RAD異性体Cとしても知られている、42−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン(SDZ−RAD)の精製オキセパン異性体を提供する。
【0006】
別の態様においては、本発明は、SDZ−RADから精製SDZ−RAD異性体Cを調製するための化学的なプロセスを提供する。
【0007】
別の態様においては、本発明は、それらを必要としている哺乳動物において、数ある疾患および障害の中でもとりわけ移植による拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫疾患、炎症性疾患、成人T細胞白血病/リンパ腫、充実性腫瘍、真菌感染症および過剰増殖性血管障害の処置、抑制および予防において使用するための、精製SDZ−RAD異性体Cを含有する医薬組成物を提供する。
【0008】
別の態様においては、本発明は、それらを必要としている哺乳動物において、数ある疾患および障害の中でもとりわけ移植による拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫疾患、炎症性疾患、成人T細胞白血病/リンパ腫、充実性腫瘍、真菌感染症および過剰増殖性血管障害を処置、抑制および予防するのに有用な薬剤の調製における、精製SDZ−RAD異性体Cの使用を提供する。
【0009】
更に別の態様においては、本発明は、個々の哺乳動物に対して、数ある疾患および障害の中でもとりわけ移植による拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫疾患、炎症性疾患、成人T細胞白血病/リンパ腫、充実性腫瘍、真菌感染症および過剰増殖性血管障害に対する処置クール(course of treatment)を含む薬学的なキットまたはパックを提供し、その薬学的なキットまたはパックは、単位投薬形態の精製SDZ−RAD異性体Cを有する容器を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、42−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン(「SDZ−RAD」)の精製オキセパン異性体を提供し、そのオキセパン異性体は、以下の構造:
【化5】

を有し、また、式:1,17−ジヒドロキシ−11−{2−[4−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−3−メトキシ−シクロヘキシル]−1メチル−エチル}−18,29−ジメトキシ−14,16,20,22,28,34−ヘキサメチル−10,36−ジオキサ−3−アザ−トリシクロ[29.4.1.0〜3,8]ヘキサトリアコンタ−15,23,25,27−テトラエン−2,9,13,19,35−ペンタオン;で表すこともできる。
【0011】
本明細書で使用する場合、「SDZ−RAD異性体C」という用語は、前式を有する化合物を意味する。
【0012】
本明細書で使用する場合、「精製SDZ−RAD異性体C」という用語は、前式を有する化合物(即ち、SDZ−RAD異性体C)であって、90wt%より高い純度、または95wt%、98wt%もしくは99wt%より高い純度を有する化合物を意味する。
【0013】
また、本発明により、SDZ−RADから精製SDZ−RAD異性体Cを調製するための化学的なプロセスも提供される。SDZ−RAD異性体CはSDZ−RAD異性体Bと平衡状態で存在する。ここで記載されている状況下において、前述の平衡は、下の図式Iで要約されているように、主流の(greatly favored)異性体B状態から異性体C状態をとることができる。SDZ−RAD(42−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン)の調製については、米国特許第5,665,772号(Cottenら)において(前の40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンの名前で)記載されている。中間体を通じるSDZ−RAD異性体BのSDZ−RAD異性体Cへの変換は、約pH4〜pH10の範囲において、水性緩衝液と有機溶媒との混合物中で達成することができる。別の実施形態においては、上述の水性緩衝液は、約4〜10、5〜9、6〜9、7〜9または7.5〜8.5のpHを有している。一つの更なる実施形態においては、その水性緩衝液は約8.5のpHを有している。
【化6】

【0014】
一つの実施形態においては、上述の緩衝液はトリエチルアンモニウムアセタート(TEAA)である。別の実施形態においては、任意の適切な水性緩衝液は、当業者であれば容易に選択することができ、そのような緩衝液としては、これらに限定するものではないが、リン酸緩衝生理食塩水およびクエン酸ナトリウム緩衝剤を含む水が挙げられる。一つの実施形態においては、上述の有機溶媒は、極性非プロトン性溶媒、即ち、分子双極子を有しているが、それらの水素原子が酸素もしくは窒素に結合されていない溶媒、または双極性非プロトン性溶媒、即ち、ゼロ分子双極子(zero molecular dipole)を有しており、それらの水素原子が酸素もしくは窒素に結合されていないが、個々の原子に電荷を有している溶媒である。一つの実施形態においては、その有機溶媒はアセトニトリル(H−CO−N(CH)または1,4−ジオキサン(通常、ジオキサンと呼ばれている)である。別の実施形態においては、その有機溶媒は1,4−ジオキサンである。他の実施形態においては、その有機溶媒は、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO;CH−SO−CH)、ジメチルホルムアミド(HCON(CH)、アルデヒドまたはケトンである。更に別の実施形態においては、上述の溶媒の組合せも想定されている。一つの実施形態においては、上述の水性緩衝液および有機溶媒は、体積で約1:1.5〜約1:1の比で提供される。しかし、当業者にとっては、容易に、他の適切な緩衝液:溶媒比が明らかであろう。同様に、当業者にとっては、本明細書に照らし、容易に、本発明のプロセスに有用な他の適切な水性緩衝液および有機溶媒が明らかであろう。
【0015】
SDZ−RAD異性体BからSDZ−RAD異性体Cへの変換反応は、室温、即ち、約22℃〜約28℃の温度で実施されてよい。代替的に、その変換は、必要に応じて、より低い温度またはより高い温度で実施されてもよい。典型的には、変換は、約4時間(必要に応じ、または望ましい場合、それ以上の長い時間)進行させてよく、適切な有機溶媒を用いるSDZ−RAD異性体Cの抽出により停止させることができる。
【0016】
一つの実施形態においては、上述の抽出で使用される有機溶媒は極性非プロトン性溶媒である。一つの実施形態では、この抽出で使用される有機溶媒は塩化メチレン(CHCl)である。当業者にとっては、本明細書に照らし、容易に、他の適切な溶媒またはそれらの溶媒の組合せが明らかであろう。
【0017】
SDZ−RAD異性体Cの単離は、分取クロマトグラフィー技術、例えば当業者に公知の分取クロマトグラフィーなどにより達成することができる。一般的な内容については、R. P. W. Scottによる「Preparative Chromatography(Chrom-Ed Book Series、オンラインで入手可能)」およびGuiochon,G.らによる「Fundamentals of Preparative and Nonlinear Chromatography(1st Academic Press(1994))」を参照のこと。
【0018】
SDZ−RAD異性体Cは、移植による拒絶反応、例えば腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、膵臓(島細胞)、角膜、小腸、皮膚同種移植片および心臓弁異種移植片などの移植による拒絶反応;移植片対宿主病;自己免疫疾患、例えば狼瘡、関節リウマチ、真性糖尿病、重症筋無力症および多発性硬化症など;炎症性疾患、例えば乾癬、皮膚炎、湿疹、脂漏症、炎症性腸疾患、肺炎症(喘息、慢性閉塞性肺疾患、気腫、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎などを含む)および眼ブドウ膜炎などの処置、予防もしくは抑制における免疫抑制剤および抗炎症薬として有用であり、またはこれらの処置、予防もしくは抑制に役立つ薬剤の調製に有用である。
【0019】
また、SDZ−RAD異性体Cは、抗腫瘍活性、抗真菌活性および増殖抑制作用も有している。従って、SDZ−RAD異性体Cは、充実性腫瘍、例えば類線維腫(子宮平滑筋腫)、肉腫および癌腫を含む充実性腫瘍、例えば星状細胞腫、前立腺癌、乳癌、結腸癌、小細胞肺癌および卵巣癌など;貧血;成人T細胞白血病/リンパ腫;マントル細胞リンパ腫;真菌感染症;および過剰増殖性血管疾患、例えば再狭窄症、移植片血管アテローム性動脈硬化症(graft vascular atheroscleosis)、心臓血管疾患、脳血管疾患および末梢血管疾患など、例えば冠状動脈疾患、脳血管障害、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、非アテローム性動脈硬化症、免疫介在性血管損傷をもたらす細胞事象に由来する血管壁損傷、血管外傷後の平滑筋細胞増殖および内膜肥厚、ならびに脳卒中(stroke)または多発脳梗塞性認知症(multiinfarct dementia)など:の処置、予防もしくは抑制に有用であり、またはこれらの処置、予防もしくは抑制に役立つ薬剤の調製に有用である。一つの実施形態においては、SDZ−RAD異性体Cは、血管形成術後の再狭窄症を処置、予防または抑制するために使用される。この目的で使用される場合、SDZ−異性体Cは、上述の手順が行われる前、行われている間もしくは行われた後に投与されてもよいし、または上述のタイミングを組み合わせて投与されてもよい。
【0020】
上述のいずれかの疾患または状態を処置または抑制または予防するために投与する場合、SDZ−RAD異性体Cは、哺乳動物に対し、経口的に、非経口的に、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、鼻腔内に、気管支内に、経皮的に、局所的に、膣内に、または経直腸的に投与されてよい。
【0021】
投薬必要量は投与経路により異なる。一つの実施形態においては、SDZ−RAD異性体Cの一日投薬量は、約0.1μg/kg〜100μg/kg、0.001mg/kg〜25mg/kg、または約0.01mg/kg〜5mg/kgである。他の実施形態においては、その投薬量は、投与経路、症状の重症度および処置される被験体(即ち、患者の病歴)に依存して変わる。処置は、一般的には、少なめの投薬量、即ち、最適用量未満の投薬量から始められる。この後、投薬量は、その状況下における最適な効果に到達するまで、増量される。正確な投薬量は、一般的な経験および治療される個々の被験体または患者における経験に基づき、施療医師により決定されてよい。
【0022】
また、本発明によるSDZ−RAD異性体Cおよび一つもしくはそれ以上の薬学的に許容される担体または賦形剤の薬学組成物も本発明により提供される。これらの薬学的な担体または賦形剤は、固体であってよく、または液体であってもよい。固体の担体は、矯味矯臭剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、キレート化剤、界面活性剤、充填剤、流動促進剤、圧縮助剤(compression aid)、結合剤、錠剤崩壊剤またはカプセル化材料としても作用し得る一つもしくはそれ以上の物質を含むことができる。粉末剤の場合には、担体は微粉化された固体であり、この固体が微粉化された活性成分、即ち、SDZ−RAD異性体Cと混ぜ合わされる。錠剤の場合には、SDZ−RAD異性体Cが、必要な圧縮特性を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状およびサイズに圧縮される。一つの実施形態においては、これらの粉末剤および錠剤は、約99%以上の活性成分を含んでいる。適切な固体担体としては、例えばリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂が挙げられる。
【0023】
溶液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤および加圧組成物の調製では液体の担体が使用される。本活性成分が、薬学的に許容される液体担体、例えば水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合物、または薬学的に許容される油もしくは脂肪などに溶解または懸濁されてよい。この液体担体は、他の適切な薬学的添加剤、例えば可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、矯味矯臭剤、懸濁化剤、キレート化剤、界面活性剤(例えばポリソルベート20またはポリソルベート80)、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、酸化防止剤、安定剤または浸透圧調節剤などを含んでいてよい。経口投与用および非経口投与用の適切な液体担体は、水(上述のような添加剤、例えばセルロース誘導体を含有する水、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液など)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)およびそれらの誘導体、レシチン、ならびに油(例えばヤシ油およびラッカセイ油)を含む。非経口投与用の場合、担体は、油性エステル、例えばエチルオレアートおよびイソプロピルミリスタートなどであってもよい。無菌の液体担体は、非経口投与用の無菌の液体形態の組成物に有用である。加圧組成物用の液体担体は、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容される噴霧剤であってよい。
【0024】
SDZ−RAD異性体Cの経口用製剤は、従来使用されているあらゆる経口用の形態を含むことができ、そのような形態としては、錠剤、カプセル剤、口腔用の形態、トローチ剤、ロゼンジおよび経口用液剤、懸濁剤または溶液剤が挙げられる。カプセル剤は、SDZ−RAD異性体Cと不活性な充填剤および/または希釈剤、例えば薬学的に許容されるデンプン(例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、またはタピオカデンプン)、糖、人工甘味剤、粉末セルロース、例えば結晶セルロースおよび微結晶性セルロースなど、小麦粉(flours)、ゼラチン、ゴムなどとの混合物を含んでいてよい。
【0025】
有用な錠剤製剤は、従来の圧縮法、湿性造粒法または乾性造粒法により製造することができ、また、薬学的に許容される希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、表面改変剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定剤を利用することができ、そのような添加剤としては、これらに限定するものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアガム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合シリカート(complex silicate)、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプンおよび粉末糖が挙げられる。錠剤製剤に有用な表面改変剤は、非イオン性およびアニオン性の表面改変剤を含む。表面改変剤の代表的な例としては、これらに限定するものではないが、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウムおよびトリエタノールアミンが挙げられる。ここで述べられている経口用製剤は、SDZ−RAD異性体Cの吸収を変えるべく、標準的な遅延放出製剤法または持続放出製剤法を利用することができる。また、この経口用の製剤は、本活性成分を必要に応じて適切な可溶化剤または乳化剤を含有する水または果汁に投与したものを含むことができる。
【0026】
注射用として適切なSDZ−RAD異性体Cの薬学的形態は、無菌の注射可能な溶液または分散液をその場で調製するための無菌の水性溶液または分散液および無菌粉末を含む。すべての場合において、その形態は、無菌でなければならず、そして、容易な注射針通過性(syringability)が存在する程度にまで流動性を有していなければならない。その形態は、製造条件および保管条件下において安定していなければならず、そして、微生物、例えば細菌および真菌などの汚染作用に対して保護されていなければならない。担体は、溶媒または分散媒質であってよく、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物および植物油を含有する。
【0027】
本発明において有用な非経口用製剤は、直接的な注射による投与に適した投薬形態を製造するために使用されてよく、または静脈内注射用の無菌注入液への付加に適した投薬形態を製造するために使用されてもよい。
【0028】
別の実施形態においては、SDZ−RAD異性体Cは、エアロゾルの形態で気道に直接的に投与することができるように調製されてよい。
【0029】
経皮的な投与は、本活性化合物および担体を含有する経皮的パッチ剤の使用を通じて達成することができ、前述の担体は、活性化合物に対して不活性であり、皮膚に無毒であり、皮膚を介して為される血流中への全身性の吸収で本薬剤の送給を可能にする。経皮的な投与は、上皮組織および粘膜組織を含め、身体の表面および身体通路の内層を横断するすべての投与を含むものと理解される。そのような投与は、SDZ−RAD異性体Cを用い、ローション剤、クリーム剤、フォーム剤、パッチ剤、懸濁剤、溶液剤および坐剤(直腸用および膣用)を使用して実施することができる。
【0030】
担体はかなり多数の形態を取ることができ、例えばクリームおよび軟膏、ペースト、ゲル、ならびに密封デバイス(occlusive device)などの形態を取ることができる。クリームおよび軟膏は、粘性の液体、または水中油型もしくは油中水型のいずれかの半固体エマルジョンであってよい。本活性成分を含有する石油または親水性石油(hydrophilic petroleum)中に分散された吸収性粉末から成るペーストも適している。本活性成分を血流中に放出するために様々な密封デバイスを使用することができ、例えば担体を伴う本活性成分もしくは担体を伴わない本活性成分を含有するレザバーを覆う半透膜、または本活性成分を含有するマトリックスなどを使用することができる。文献において公知の他の密封デバイスも本発明により企図されている。
【0031】
坐剤製剤は調合技術分野において公知の材料から製造されてよく、そのような材料は、坐剤の融点を変えるべくワックスの付加を伴ったココアバター、またはワックスの付加を伴わないココアバター、およびグリセリンを含む。水溶性の坐剤の基剤、例えば様々な分子量のポリエチレングリコールなども使用することができる。
【0032】
SDZ−RAD異性体Cは、あらゆる適切な送達経路およびビヒクルに合わせて調合されてよく、種々のパーツからなる薬学的なパックまたはキットの形態に組み立てられてよい。本発明による薬学的なパックまたはキットは、本明細書において列挙されているいずれかの疾患もしくは障害の処置、抑制または予防に有用であり、またはそれらの疾患もしくは障害に有用な薬剤の調製に役立つ。一つの実施形態においては、本発明は、哺乳動物の処置において使用するための本発明によるSDZ−RAD異性体Cを含有する製品(product)を含む。別の実施形態においては、本発明は、一つの個別的な哺乳動物に対する新生物の処置クールを含む薬学的なパックを含み、ここで、そのパックは、単位投薬形態においてSDZ−RAD異性体Cの単位を含有している。更に別の実施形態においては、上述のパック/キットは、他の構成要素、例えばSDZ−RAD異性体Cの希釈、混合および/または投与に関する指示書、容器、注射器、注射針などを含んでいる。当業者にとっては、容易に、他のそのようなパック/キット構成要素が明らかであろう。
【0033】
SDZ−RAD異性体Cの調製において使用される試薬は、商業的に入手することもできるし、または文献に記載されている標準的な手順により調製することもできる。以下の実施例は、本発明の例証ではあるが、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0034】
A.材料および機器
SDZ−RADは、Chemical Development Wyeth-Ayerst Research,Pearl River,NYから入手した。すべての溶媒はHPLCグレードであり、すべての他の化学薬品は分析試薬または同等品であった。分取HPLCは、Rainin Instrument Company,Inc.(Woburn,MA)から入手した2台のDynamaxTM溶媒送達システム(Model SD-1)と1台のDynamaxTM吸光度検出器(Model UV-1)で構成された。自動高速真空(speed-vac)濃縮機(Savant,Model AS 160)はSavant Instruments,Inc.(Holbrook,NY)から入手し、BUCHI回転式蒸発システム(RE 260およびR 124)はBuchi(Flawil,Switzerland)から入手した。H NMRおよび13Cのデータは、25℃のプローブ温度での600MHz Varian Unity Plus分光計で取得された。質量スペクトルは、PE Sciexから入手したAPI 365質量分光光度計により得られた。すべてのサンプルは、周囲温度で調製され、実施された。
【0035】
B.化合物の調製
SDZ−RAD(40mg;0.042mmol)を50mLの40%の0.1M TEAA緩衝液(pH8.5)および60%のジオキサン中に溶解した。その溶液を室温(約22℃〜28℃)で4時間攪拌した。この変換を2×50mLのCHClでの抽出により停止させた。上記有機層を回転式蒸発システムにより減量し、乾燥させた。化合物の単離は、60%のジオキサンおよびpH3.9の0.01M TEAA緩衝液を含む40%の水から成る移動相を用いて、BDS−Hypersil−C18カラム(250×20mm)により行った。流量は12mL/分であった。異性体Cのフラクション(28.9分)を収集し、分液漏斗を用いてCHClで抽出した。上記有機層を合わせ、2×50mLの水で洗った後、上記有機層を無水NaSOを用いて乾燥させた。その有機溶媒を回転蒸発により約1mLにまで減量した。上記生成物をバイアルに移し、n−ヘキサンを加えることにより沈殿させた。溶媒を吹き飛ばすべくNを用いることにより白色の粉末が得られ、そのバイアルを高速真空濃縮機(speed-vac)に入れて一晩乾燥させた。各精製工程での異性体Cの純度をHPLCにより分析した。ESI質量分析は分子イオン[M+NH m/e 975.8を示し、これはSDZ−RADの基準サンプルと同じである。
【0036】
NMRサンプルはアセトン−d中において調製された。表:25℃、500MHz(13C:100MHz)でのアセトン−d6中におけるSDZ−RAD異性体C(NB#L20156−xxx)のプロトンおよび炭素共鳴アサインメント(assignment)
【表1】


【実施例2】
【0037】
本発明の化合物の抗真菌活性は、幾つかの真菌の菌株に対して評価することにより確かめられた。簡単に説明すると、以下の手順を用いてそのような活性が評価された。96ウェルのマイクロタイタープレートにRPMI 1640を満たした(50μL/ウェル)。評価されるべき化合物を適切なウェルに入れ、一連のウェル内で連続希釈し、幾つかの希釈物を作成した。濃度は64mg/mL〜0.06mg/mLの範囲であった。調整された接種真菌材料(50μL)を各ウェルに加え、それらのプレートを35℃で24〜48時間インキュベートした。最小発育阻止濃度(MIC)は、ウェル内における生物体の成長を完全に抑制した化合物の最も低い濃度である。以下の表は、この標準的な薬理学的試験手順で得られた結果を示している。同じ真菌名が一回より多く列挙されている場合、それは、一つより多くの菌株が評価されたことを示す。本発明の化合物は、この表の見出しでは「化合物」として掲載されている。
【表2】

【0038】
この標準的な薬理学的試験手順で得られた結果は、SDZ−RAD異性体Cの有効性を明示している。
【0039】
本明細書で参照されているすべての特許、特許出願、論文、刊行物および他の文書は、参照により本明細書に組み込まれる。当業者であれば、以下の特許請求の範囲で定められている通りの本発明から逸脱することなく、本明細書で記載されている実施形態において条件および技術に対して軽微な改変を様々に変更することができ、そして、それらの改変が本発明により包含されていることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
90wt%より高い純度を有する、以下の構造:
【化1】

のSDZ−RAD異性体C化合物。
【請求項2】
前記SDZ−RAD異性体Cの純度が95wt%より高い、請求項1に記載のSDZ−RAD異性体C。
【請求項3】
前記SDZ−RAD異性体Cの純度が99wt%より高い、請求項1に記載のSDZ−RAD異性体C。
【請求項4】
42−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンから、
(a)42−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンを有機溶媒および水性緩衝液を含有する溶液中に溶解する工程であって前記水性緩衝液が4〜10のpHを有している工程;および
(b)前記SDZ−RAD異性体Cを有機溶媒中に抽出する工程;
により調製される、以下の構造:
【化2】

のSDZ−RAD異性体C化合物。
【請求項5】
工程(a)における前記有機溶媒が極性非プロトン性溶媒または双極性非プロトン性溶媒である、請求項4により調製されたSDZ−RAD異性体C。
【請求項6】
工程(a)における前記有機溶媒がアセトニトリルまたは1,4−ジオキサンである、請求項5により調製されたSDZ−RAD異性体C。
【請求項7】
前記有機溶媒が1,4−ジオキサンである、請求項6により調製されたSDZ−RAD異性体C。
【請求項8】
前記水性緩衝液が約7〜9のpHを有している、請求項4〜7のいずれか一項により調製されたSDZ−RAD異性体C。
【請求項9】
前記水性緩衝液が約7.5〜8.5のpHを有している、請求項8により調製されたSDZ−RAD異性体C。
【請求項10】
前記水性緩衝液が約8.5のpHを有している、請求項9により調製されたSDZ−RAD異性体C。
【請求項11】
工程(b)における上記有機溶媒が極性非プロトン性溶媒である、請求項4〜10のいずれか一項により調製されたSDZ−RAD異性体C。
【請求項12】
工程(b)における前記有機溶媒がCHClである、請求項11により調製されたSDZ−RAD異性体C。
【請求項13】
請求項4〜12のいずれか一項に記載されているいずれか一つのプロセスにより得られる、以下の構造:
【化3】

のSDZ−RAD異性体C化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のSDZ−RAD異性体Cおよび薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項15】
哺乳動物に対する処置クールを含む薬学的なパックであって、前記パックが、単位投薬形態の請求項1〜13のいずれか一項に記載のSDZ−RAD異性体Cの単位を含んでいる、薬学的なパック。
【請求項16】
哺乳動物に対する処置クールを含む薬学的なパックであって、前記パックが、単位投薬形態の請求項1〜13のいずれか一項に記載のSDZ−RAD異性体Cの単位を含んでいる、薬学的なパック。
【請求項17】
薬剤として使用するための、以下の構造:
【化4】

のSDZ−RAD異性体C化合物。

【公表番号】特表2008−533007(P2008−533007A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500729(P2008−500729)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/006125
【国際公開番号】WO2006/096325
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】