説明

5環化合物、液晶組成物および液晶表示素子

【課題】 熱、光などに対する安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33を有し、さらに、高い負の誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供する。
【解決手段】 化合物(1)とする。


例えば、RおよびRは、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシである;環A、環A、および環Aのうち1つが1,4−フェニレンまたは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、他の2つは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり;Zは、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは液晶性化合物である5環2,3−ジフルオロベンゼン誘導体、この化合物を含有したネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、液晶表示モジュール等に代表される液晶表示素子は、液晶性化合物(本発明では、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称を意味する。)が有する光学異方性、誘電率異方性などを利用したものであるが、この液晶表示素子の動作モードとしては、PC(phase change)モード、TN(twisted nematic)モード、STN(super twisted nematic)モード、BTN(bistable twisted nematic)モード、ECB(electrically controlled birefringence)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in−plane switching)モード、VA(vertical alignment)モード、PSA(polymer sustained alignment)などの様々なモードが知られている。
【0003】
これら動作モードの中でもECBモード、IPSモード、VAモードなどは、液晶分子の垂直配向性を利用した動作モードであり、特にIPSモードおよびVAモードは、TNモード、STNモード等の従来の表示モードの欠点である視野角の狭さを改善可能であることが知られている。
【0004】
そして、従来からこれら動作モードの液晶表示素子に使用可能な、負の誘電率異方性を有する液晶組成物の成分として、ベンゼン環上の水素がフッ素で置き換えられた液晶性化合物が数多く検討されてきている。
【0005】
例えばベンゼン環上の水素がフッ素で置き換えられた化合物(A)および(B)が検討されている(特許文献1および2参照)。しかし、このような化合物は、市場要求を満たすほどの高い負の誘電率異方性を有しない。
【0006】
また、フッ素で置換されたベンゼン環を有する化合物(C)が検討されている(特許文献3参照)。しかし、この化合物は、市場要求を満たすほどの高い負の誘電率異方性を有しない。
【0007】
また、フッ素で置換されたベンゼン環を2つ有する、クオターフェニル化合物(D)が検討されている(特許文献4参照)。しかし、この化合物は融点が非常に高く、相溶性に乏しい。また、市場要求を満たすほどの高い負の誘電率異方性を有しない。
【0008】
また、エチレン結合基と、フッ素で置換されたベンゼン環を3つ有する化合物(E)が検討されている(特許文献5参照)。しかし、化合物(E)は融点が高く、相溶性に乏しい。また、市場要求を満たすほどの高い負の誘電率異方性を有しない。
【0009】
また、結合基と、フッ素で置換されたベンゼン環を中央に有する5環化合物(F)が検討されている(特許文献6参照)。しかし、化合物(F)は、市場要求を満たすほどの高い負の誘電率異方性を有しない。
【0010】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表平02−503441号公報
【特許文献2】国際公開第89/02425号パンフレット
【特許文献3】特表2002−193853号公報
【特許文献4】欧州特許第1346995号明細書
【特許文献5】国際公開第98/23564号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2009/034867号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、IPSモードおよびVAモード等の動作モードの液晶表示素子であっても、CRTと比較すれば表示素子としてはいまだ問題があり、例えば、応答速度の向上、コントラストの向上、駆動電圧の低下が望まれている。
【0013】
上述したIPSモード、あるいはVAモードで動作する表示素子は、主として、負の誘電率異方性を有する液晶組成物から構成されているが、これらの特性を向上させるためには、この液晶組成物に含まれる液晶性化合物が、以下(1)〜(8)で示す特性を有することが必要である。すなわち、
(1)化学的に安定であること、および物理的に安定であること
(2)高い透明点(液晶相−等方相の転移温度)を有すること
(3)液晶相(ネマチック相、スメクチック相等)の下限温度、特にネマチック相の下限温度が低いこと
(4)粘度が小さいこと
(5)適切な光学異方性を有すること
(6)高い負の誘電率異方性を有すること
(7)適切な弾性定数K33(K33:ベンド弾性定数)を有すること
(8)他の液晶性化合物との相溶性に優れること
である。
【0014】
(1)のように化学的、物理的に安定な液晶性化合物を含む組成物を表示素子に用いると、電圧保持率を大きくすることができる。
【0015】
(2)および(3)のように、高い透明点、あるいは液晶相の低い下限温度を有する液晶性化合物を含む組成物では、ネマチック相の温度範囲を広げることが可能となり、幅広い温度領域で表示素子として使用することが可能となる。
【0016】
(4)のように粘度の小さい化合物、および(7)のように大きな弾性定数K33を有する化合物を含む組成物を表示素子として用いると応答速度を向上することができ、(5)のように適切な光学異方性を有する化合物を含む組成物を用いた表示素子の場合は、表示素子のコントラストの向上を図ることができる。素子の設計次第では、光学異方性は小さいものから大きなものまで必要である。最近ではセル厚を薄くすることにより応答速度を改善する手法が検討されており、それに伴い、大きな光学異方性を有する液晶組成物も必要となっている。
【0017】
液晶性化合物が負に高い誘電率異方性を有する場合には、この化合物を含む液晶組成物のしきい値電圧を低くすることができるので、(6)のように高い負の誘電率異方性を有する化合物を含む組成物を用いた表示素子の場合には、表示素子の駆動電圧を低くし、消費電力も小さくすることができる。(7)のように適切な弾性定数K33を有する化合物を含む組成物を表示素子に用いることで表示素子の駆動電圧を小さくすることができ、消費電力も小さくすることができる。
【0018】
液晶性化合物は、単一の化合物では発揮することが困難な特性を発現させるために、他の多くの液晶性化合物と混合して調製した組成物として用いることが一般的である。したがって、表示素子に用いる液晶性化合物は、(8)のように、他の液晶性化合物等との相溶性が良好であることが好ましい。また、表示素子は、氷点下を含め幅広い温度領域で使用することもあるので、低い温度で良好な相溶性を有す化合物であることが好ましい場合もある。
【0019】

本発明の第一の目的は、熱、光などに対する高い安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33を有し、さらに、高い負の誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供することである。
【0020】
本発明の第二の目的は、この化合物を含有し、そして熱、光などに対する高い安定性を有し、粘度が低く、大きな光学異方性、および高い負の誘電率異方性を有し、適切な弾性定数K33を有し、しきい値電圧が低く、ネマチック相の上限温度(ネマチック相−等方相の相転移温度)が高く、ネマチック相の下限温度が低い液晶組成物を提供することである。
【0021】
本発明の第三の目的は、応答時間が短く、消費電力および駆動電圧が小さく、大きなコントラストを有し、広い温度範囲で使用可能である、上記組成物を含有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らはこれらの課題に鑑み鋭意研究を行った結果、両端に2位または3位の水素がフッ素で置き換えられたベンゼン環を有する5環液晶性化合物が、熱、光などに対する高い安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33を有し、さらに、高い負の誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有していること、また、この化合物を含有する液晶組成物が、熱、光などに対する高い安定性を有し、粘度が小さく、大きな光学異方性、適切な弾性定数K33、および負に高い誘電率異方性を有し、しきい値電圧が低く、さらに、ネマチック相の上限温度が高く、ネマチック相の下限温度が低いこと、さらに、この組成物を含有する液晶表示素子が、応答時間が短く、消費電力および駆動電圧が小さく、コントラスト比が大きく、広い温度範囲で使用可能であることを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0023】
すなわち、本発明は、以下項〔1〕〜〔15〕に記載された事項などを有している。
【0024】
〔1〕 式(1)で表される化合物。


式(1)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
環A、環A、および環Aのうち1つが1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるとき、他の2つは1,4−シクロへキシレン、または1,4−シクロヘキセニレンであり;
は、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【0025】
〔2〕 式(1−1)〜(1−3)のいずれか1つで表される項〔1〕に記載の化合物。


式(1−1)〜(1−3)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、または1,4−シクロヘキセニレンであり;
は、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【0026】
〔3〕 式(1−1−1)〜(1−3−1)のいずれか1つで表される項〔1〕に記載の化合物。


式(1−1−1)〜(1−3−1)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
は、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【0027】
〔4〕 式(1−4)で表される項〔1〕に記載の化合物。


式(1−4)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
は、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【0028】
〔5〕 式(1−1−1)〜(1−3−1)において、Zが−(CH−である項〔3〕に記載の化合物。
【0029】
〔6〕 式(1−1−1)〜(1−3−1)において、Zが−CHO−または−OCH−である項〔3〕に記載の化合物。
【0030】
〔7〕 式(1−1−1)〜(1−3−1)において、Zが−COO−または−OCO−である項〔3〕に記載の化合物。
【0031】
〔8〕 式(1−4)において、Zが−COO−または−OCO−である項〔4〕に記載の化合物。
【0032】
〔9〕 項〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の化合物を少なくとも1つ含有することを特徴とする液晶組成物。
【0033】
〔10〕 式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)および(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項〔9〕に記載の液晶組成物。

【0034】
式(2)〜(7)において、RおよびR10は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;
、Z、Z、およびZは独立して、−(CH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH−、または単結合であり;
およびLは独立して、フッ素または塩素であり;
q、r、s、t、u、およびvは独立して、0または1であり、r、s、t、およびuの和は、1または2である。
【0035】
〔11〕 式(8)、(9)および(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項〔9〕に記載の液晶組成物。

【0036】
式(8)〜(10)において、R11およびR12は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ1,4−フェニレンであり;
およびZ10は独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH−、−CH=CH−、または単結合である。
【0037】
〔12〕 項〔11〕記載の式(8)、(9)および(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項〔10〕に記載の液晶組成物。
【0038】
〔13〕 少なくとも1つの光学活性化合物および/または重合可能な化合物をさらに含有する、項〔9〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0039】
〔14〕 少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する項〔9〕〜〔13〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0040】
〔15〕 項〔9〕〜〔14〕のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0041】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。ネマチック相の上限温度はネマチック相−等方相の相転移温度であり、そして単に透明点または上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1)から式(10)において、六角形で囲んだD、Eなどの記号はそれぞれ環D、環Eなどに対応する。百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。環A、Y、Bなど複数の同じ記号を同一の式または異なった式に記載したが、これらの任意の2つは同一であってもよいし、異なってもよい。
【0042】
「任意の」は、「一つ以上の」位置だけでなく個数についても自由に選択できることを示す。任意のAが、B、CまたはDで置き換えられてもよいという表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合および任意のAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。例えば、任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどが含まれる。なお、本発明においては、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。そして、アルキルにおける末端メチルの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−Hのようになることも好ましくない。以下に本発明をさらに説明する。
【発明の効果】
【0043】
本発明の液晶性化合物は、熱、光などに対する高い安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33(K33:ベンド弾性定数)を有し、さらに、高い負の誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有している。また、本発明の液晶性化合物は、ネマチック相の上限温度が低下せず、しかも、粘度が大きくなることなく、光学異方性が大きくなる傾向にある点で特に優れている。
【0044】
また、本発明の液晶組成物は、粘度が小さく、大きな光学異方性、適切な弾性定数K33、および高い負の誘電率異方性を有し、しきい値電圧が低く、さらに、ネマチック相の上限温度が高く、ネマチック相の下限温度が低い。特に、本発明の液晶組成物は大きな光学異方性を有するため、大きな光学異方性が必要な素子に有効である。
【0045】
さらに、本発明の液晶表示素子は、この液晶組成物を含有することを特徴とし、応答時間が短く、消費電力および駆動電圧が小さく、コントラスト比が大きく、広い温度範囲で使用可能であり、IPSモード、VAモード、PSAモードなどの表示モードの液晶表示素子に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下説明中では、特に断りのない限り、百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)を意味する。
【0047】
〔化合物(1)〕
本発明の化合物は、式(1)で示される構造を有する(以下、この化合物を「化合物(1)」ともいう。)。
【0048】


式(1)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシである。
【0049】
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、
環A、環A、および環Aのうち1つが1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるとき、他の2つは1,4−シクロへキシレン、または1,4−シクロヘキセニレンである。
【0050】
1,4−シクロへキシレンには、1,4位の水素の位置において、立体配置がシス配置、トランス配置の2通りがあるが、透明点を高くすることができるという点で、立体配置はトランス配置が好ましい。
【0051】
は、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【0052】
化合物(1)は、2位および3位の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンを分子の両端に有する。このような構造を有することで、適切な光学異方性、適切な弾性定数K33、高い負の誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有す。特に、ネマチック相の上限温度が低下せず、負の誘電率異方性が高い点で特に優れている。
【0053】
式中、RおよびRは、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり、例えば、CH(CH−、−CH−、CH(CHO−、CH−O−(CH−、CH−O−CH−O−、HC=CH−(CH−、CH−CH=CH−CH−またはCH−CH=CH−O−である。
【0054】
しかし、化合物の安定性を考慮すると、CH−O−O−CH−のような酸素と酸素とが隣接した基や、CH−CH=CH−CH=CH−などの二重結合部位が隣接した基は好ましくない。
【0055】
これら基中の炭素−炭素結合の鎖は、直鎖であることが好ましい。炭素−炭素結合の鎖が直鎖であると、液晶相の温度範囲を広くすることができ、粘度を小さくすることができる。また、RおよびRのいずれかが光学活性基である場合には、キラルドーパントとして有用であり、該化合物を液晶組成物に添加することにより、液晶表示素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(reverse twisted domain)を防止することができる。
【0056】
これらRおよびRとしては、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびアルケニルが好ましく、アルキル、アルコキシ、またはアルケニルがさらに好ましい。
【0057】
およびRが、アルキル、アルコキシ、またはアルケニルである場合には、液晶性化合物の液晶相の温度範囲を広げることができる。
【0058】
アルケニルには、アルケニル中の二重結合の位置に依存して、−CH=CH−の好ましい立体配置がある。
【0059】
−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−CCH=CHCH、または−CCH=CHCなどのように奇数位に二重結合を有するアルケニルでは、立体配置はトランス配置が好ましい。
【0060】
一方、−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、−CHCH=CHCなどのように偶数位に二重結合を有するアルケニルでは、立体配置はシス配置が好ましい。上述のような好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、液晶相の温度範囲が広く、大きな弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)を有し、粘度を小さくすることができ、さらに、この液晶性化合物を液晶組成物に添加すると、ネマチック相の上限温度(TNI)を高くすることができる。
【0061】
アルキルの具体例としては、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、またはC1021を挙げることができ;
アルコキシの具体例としては、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−OC15、−OC17、またはOC19を挙げることができ;
アルコキシアルキルの具体例としては、−CHOCH、−CHOC、−CHOC、−(CHOCH、−(CHOC、−(CHOC、−(CHOCH、−(CHOCH、または(CHOCHを挙げることができ;
アルケニルの具体例としては、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、または(CHCH=CHを挙げることができ;
アルケニルオキシの具体例としては、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、またはOCHCH=CHCを挙げることができる。
【0062】
よって、RおよびRの具体例の中でも、−CH、−C、−C、−C、−C11、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−CHOCH、−(CHOCH、−(CHOCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CHC、−(CHCH=CHC、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、−OCHCH=CHCが好ましく、−CH、−C、−C、−OCH、−OC、−OC、−OC、−(CHCH=CH、−(CHCH=CHCH、または(CHCH=CHCがより好ましい。
【0063】
環A、環A、および環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0064】
これら環の中でも、1,4−シクロへキシレン、および2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンがより好ましく、1,4−シクロヘキシレン2つに対して、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンの組み合わせが最も好ましい。
【0065】
中でも、これら環のうち少なくとも一つの環が、1,4−シクロヘキシレンであるときには、粘度を小さくすることができ、さらに、この液晶性化合物を液晶組成物に添加すると、ネマチック相の上限温度(TNI)を高くすることができる。
【0066】
さらに、これら環のうち少なくとも一つの環が、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるときには、誘電率異方性を負に大きくすることができ、さらに、この液晶性化合物を液晶組成物に添加すると、光学異方性を大きくすることができる。
【0067】
は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【0068】
が、単結合、または−CHCH−である場合は、化合物の粘度を小さくすることができるため好ましい。Zが、−COO−、または−OCO−である場合は、化合物のネマチック相の上限温度(TNI)を高くすることができるためより好ましい。さらに、−CHO−、または−OCH−である場合は、化合物の誘電率異方性を負に高くすることができるためさらに好ましい。
【0069】
化合物の安定性を考慮すると単結合、−CHCH−、−CHO−またはOCH−が好ましく、単結合および−CHCH−がさらに好ましい。また、化合物のネマチック相の上限温度を高くすることを考慮すると、Z、ZおよびZのうち1つが−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−であるときは、残りは単結合であることが好ましく、Z、ZおよびZすべてが単結合であることがさらに好ましい。
【0070】
なお、化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)はH(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。
【0071】
この化合物(1)では、R、R、環A、環A、環A、およびZを、適宜選択することにより、誘電率異方性などの物性を所望の値に調整することが可能である。
【0072】
化合物(1)の好ましい例として、化合物(1−1)〜(1−4)が挙げられる。
【0073】

【0074】
式(1−1)〜(1−3)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環A、環A、および環Aは、1,4−シクロへキシレン、または1,4−シクロヘキセニレンであり;
は、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【0075】
化合物(1−1)〜(1−3)で示される液晶性化合物はフッ素置換ベンゼン環3つに加えて、1,4−シクロへキシレン基または1,4−シクロヘキセニレン基を持ち、化合物全体に対して構造が非対称に結合基を持つため、熱や光に対する高い安定性を有し、液晶相の下限温度をより低く、ネマチック相の上限温度をより高く、大きな光学異方性および適切な弾性定数K33を有するという観点でより好ましい。
【0076】
化合物(1−1)〜(1−3)の好ましい化合物の例として、化合物(1−1−1)〜(1−3−1)が挙げられる。
【0077】

【0078】
式(1−1−1)〜(1−3−1)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
は独立して、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【0079】
化合物(1−1−1)〜(1−3−1)で示される液晶性化合物はフッ素置換ベンゼン環3つに加えて、1,4−シクロへキシレン基2つ持ち、化合物全体に対して構造が非対称に結合基を持つため、熱や光に対する高い安定性を有し、液晶相の下限温度をより低く、ネマチック相の上限温度をより高く、適切な光学異方性および適切な弾性定数K33を有し、粘度を小さくできるという観点でより好ましい。
【0080】

【0081】
式(1−4)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
は独立して、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【0082】
化合物(1−4)で示される液晶性化合物はフッ素置換ベンゼン環2つに加えて、1,4−シクロヘキセニレン基を3つ持ち、化合物全体に対して構造が非対称に結合基を持つため、熱や光に対する高い安定性を有し、液晶相の下限温度をより低く、ネマチック相の上限温度をより高く、適切な光学異方性および適切な弾性定数K33を有し、粘度を小さくできるという観点でより好ましい。
【0083】
化合物(1−1)〜(1−4)で示される液晶性化合物は、高い負の誘電率異方性を有し、熱や光に対する高い安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、適切な光学異方性および適切な弾性定数K33を有する。このうち、ZまたはZが単結合である化合物は液晶相の下限温度をより低く、粘度をより小さくできるという観点で好ましい。Zが−COO−、または−OCO−である化合物は、ネマチック相の上限温度を高くすることができるためより好ましい。また、ZまたはZが−CHCH−である化合物は、液晶相の下限温度をより低く、相溶性をより高く、粘度をより小さくできるという観点でさらに好ましい。さらに、ZまたはZが−CHO−または−OCH−である化合物は負の誘電率異方性をより高く、粘度をより小さくできるという観点で最も好ましい。
【0084】
液晶性化合物が化合物(1−1)〜(1−4)である場合には、高い負の誘電率異方性を有し、他の液晶性化合物との相溶性が極めてよい。さらに、熱、光などに対する高い安定性を有し、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33を有している。また、この液晶性化合物(1)を含有する液晶組成物は、液晶表示素子が通常使用される条件下で安定であり、低い温度で保管してもこの化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。
【0085】
したがって、液晶性化合物(1)はIPS、VA、PSAなどの表示モードの液晶表示素子に用いる液晶組成物に、好適に適用することができる。
【0086】
〔化合物(1)の合成〕
液晶性化合物(1)は、有機合成化学の合成手法を適切に組み合わせることにより合成することができる。出発物に目的の末端基、環、および結合基を導入する方法は、例えば、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。
【0087】
<結合基Zの形成>
結合基Zを形成する方法の一例を示す。結合基を形成するスキームを以下示す。このスキームにおいて、MSGまたはMSGは1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG(またはMSG)は、同一の有機基であってもよいし、または異なった有機基であってもよい。化合物(1A)から(1D)は液晶性化合物(1)に相当する。
【0088】

【0089】

【0090】

【0091】
<−CHCH−の生成>
有機ハロゲン化合物(a1)を、ブチルリチウム、もしくはマグネシウムと反応して得られた化合物を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させて、アルデヒド誘導体(a2)を得る。ついで、得られたアルデヒド(a2)と、ホスホニウム塩(a3)をカリウムt−ブトキシド等の塩基で処理して得られるリンイリドとを反応させ、2重結合を有する化合物(a4)を得る。そして、化合物(a4)を炭素担持パラジウム(Pd/C)のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1A)を合成することができる。
【0092】
<単結合の生成>
有機ハロゲン化合物(a1)とマグネシウム、またはブチルリチウムとを反応させ、グリニャール試薬、またはリチウム塩を調製する。この調製したグリニャール試薬、またはリチウム塩とホウ酸トリメチルなどのホウ酸エステルを反応させ、塩酸などの酸で加水分解することによりジヒドロキシボラン誘導体(a5)を合成する。そのジヒドロキシボラン誘導体(a5)と有機ハロゲン化合物(a6)とを、例えば、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)とからなる触媒の存在下で反応させることにより、化合物(1B)を合成することができる。
【0093】
また、一価の有機基MSGを有する有機ハロゲン化合物(a6)にブチルリチウムを反応させ、さらに塩化亜鉛を反応させた後、得られた化合物を、例えば、ビストリフェニルホスフィンジクロロパラジウム(Pd(PPhCl)触媒の存在下で化合物(a1)と反応させることにより、化合物(1B)を合成することもできる。
【0094】
<−CHO−または−OCH−の生成>
ジヒドロキシボラン誘導体(a5)を過酸化水素等の酸化剤により酸化し、アルコール誘導体(a7)を得る。別途、アルデヒド誘導体(a3)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元してアルコール誘導体(a8)を得る。得られたアルコール誘導体(a8)を臭化水素酸等でハロゲン化して有機ハロゲン化合物(a9)を得る。最初に得られたアルコール誘導体(a7)と有機ハロゲン化合物(a9)とを炭酸カリウムなどの存在下反応させることにより化合物(1C)を合成することができる。
【0095】
<−COO−と−OCO−の生成 >
化合物(a6)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸誘導体(a10)を得る。カルボン酸誘導体(a10)と、フェノール誘導体(a11)とをDDC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1D)を合成することができる。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成することができる。
【0096】
<環A、環Aまたは環Aの形成>
トランス−1,4−シクロへキシレン、シクロヘキセン−1,4−ジイル、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。
【0097】
〔化合物(1の製造方法〕
以下、化合物(1)の製造例を示す。
【0098】

【0099】
まず、ジフルオロフェニルボロン酸(b1)とブロモジフルオロベンゼン誘導体(b2)とを炭酸カリウム、Pd/C等の触媒の存在下、反応させ、Pd/C等の触媒存在下、水素添加反応を行うことにより、化合物(b3)を得る。
別途、ジフルオロベンゼン誘導体(b4)とsec−BuLiとを反応させリチウム塩を調製する。このリチウム塩とカルボニル誘導体(b5)とを反応させて、さらに、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒の存在下、得られたアルコール誘導体の脱水反応を行い、Pd/C等の触媒存在下、水素添加反応を行うことにより、化合物(b6)を得る。得られた化合物(b6)をギ酸等で反応させて、カルボニル誘導体(b7)を得る。得られたカルボニル誘導体を、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリドと、カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)等の塩基とから調製されるリンイリドと、Wittig反応させ、さらにギ酸等で反応させて、アルデヒド誘導体(b8)を得る。このアルデヒド誘導体を水素化リチウムアルミニウム等の還元剤を反応させることにより、アルコール誘導体(b9)を得る。さらにこれを塩化チオニル等で塩素化することにより、化合物(b10)を得る。
【0100】
上述の操作で得られた化合物(b10)とビフェノール誘導体(b3)とをリン酸三カリウムなどの塩基の存在下、エーテル化反応させることにより、本発明の液晶性化合物(1)の一例である(b11)を製造することができる。
【0101】
〔液晶組成物〕
以下、本発明の液晶組成物について説明をする。この液晶組成物の成分は、少なくとも一つの液晶性化合物(1)を含むことを特徴とするが、液晶性化合物(1)を2つ以上含んでいてもよく、液晶性化合物(1)のみから構成されていてもよい。また本発明の液晶組成物を調製するときには、例えば、液晶性化合物(1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択することもできる。成分を適切に選択した液晶組成物は、粘度が低く、高い負の誘電率異方性を有し、適切な弾性定数K33を有し、しきい値電圧が低く、さらに、ネマチック相の上限温度(ネマチック相−等方相の相転移温度)が高く、ネマチック相の下限温度が低い。
【0102】
本発明の液晶組成物は、本発明の式(1)で示される化合物を成分Aとして含む必要がある。この成分Aのみの組成物、または成分Aと本明細書中で特に成分名を示していないその他の成分との組成物でもよいが、この成分Aに以下に示す成分D、およびEから選ばれた成分を加えることにより種々の特性を有する本発明の液晶組成物(a)、(d)、(e)などが好ましい。
【0103】
成分Aに加える成分として式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、および(7)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物からなる成分Dを混合した組成物が好ましい。さらに式(8)、(9)および(10)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1つの化合物からなる成分Eを混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、粘度等を調整することができる。
【0104】
式(2)〜(7)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも一種の化合物からなる成分Dは、垂直配向モ−ド(VAモ−ド)、高分子支持配向モード(PSAモ−ド)などに用いられる誘電率異方性が負の液晶組成物を調製する場合に、好ましい成分である。
【0105】
化合物式(2)〜(7)(成分D)の好適例として、化合物(2−1)〜(2−6)、(3−1)〜(3−15)、(4−1)、(5−1)〜(5−3)、(6−1)〜(6−11)、および(7−1)〜(7−10)を挙げることができる。
【0106】

【0107】


これらの式において、RおよびR10は前記と同じ定義を表す。
【0108】
これら成分Dの化合物は主として誘電率異方性の値が負であるVAモ−ド、PSAモード用の液晶組成物に用いられる。その含有量を増加させると組成物のしきい値電圧が低くなるが、粘度が大きくなるので、しきい値電圧の要求値を満足している限り含有量を少なくすることが好ましい。しかしながら、誘電率異方性値の絶対値が5程度であるので、含有量が40重量%より少なくなると電圧駆動ができなくなる場合がある。
【0109】
成分Dのうち化合物(2)は2環化合物であるので、主としてしきい値電圧の調整、粘度調整または屈折率異方性値の調整の効果がある。また、式(3)および式(4)で表される化合物は3環化合物であるので透明点を高くする、ネマチック相の温度範囲を広くする、しきい値電圧を低くする、屈折率異方性値を大きくするなどの効果が得られる。また、式(5)、(6)および(7)で表される化合物はしきい値電圧を低くするなどの効果が得られる。
【0110】
成分Dの含有量は、VAモ−ド、PSAモード用の組成物を調製する場合には、組成物全量に対して好ましくは40重量%以上、より好ましくは50〜95重量%である。また、成分Dを混合することにより、弾性定数をコントロ−ルし、組成物の電圧透過率曲線を制御することが可能となる。成分Dを誘電率異方性値が正である組成物に混合する場合はその含有量が組成物全量に対して30重量%以下が好ましい。
【0111】
化合物(8)、(9)および(10)(成分E)の好適例として、化合物(8−1)〜(8−11)、(9−1)〜(9−19)、および(10−1)〜(10−6)を挙げることができる。
【0112】

【0113】


これらの式において、R11およびR12は前記と同じ定義を表す。
【0114】
化合物(8)〜(10)(成分E)は、誘電率異方性値の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。化合物(8)は主として粘度調整または屈折率異方性値の調整の効果があり、また化合物(9)および(10)は透明点を高くするなどのネマチック相の温度範囲を広げる効果、または屈折率異方性値の調整の効果がある。
【0115】
成分Eの含有量を増加させると液晶組成物のしきい値電圧が高くなり、粘度が低くなるので、液晶組成物のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが望ましい。VA用またはPSA用の液晶組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、組成物全量に対して好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。
【0116】
本発明の液晶組成物は、本発明の化合物(1)の少なくとも1つを0.1〜99重量%の割合で含有することが、優良な特性を発現せしめるために好ましい。
【0117】
本発明の液晶組成物の調製は、公知の方法、例えば必要な成分を高温度下で溶解させる方法などにより一般に調製される。また、用途に応じて当業者によく知られている添加物を組成物に添加してよい。例えばつぎに述べるような光学活性化合物、または重合可能な化合物、重合開始剤を含む液晶組成物、染料を添加したGH型用の液晶組成物を調製することができる。通常、添加物は当該業者によく知られており、文献などに詳細に記載されている。
【0118】
本発明の液晶組成物は、少なくとも1つの光学活性化合物を含有してもよい。
【0119】
光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加する。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を調整し、逆ねじれを防ぐといった効果を有する。キラルド−プ剤の例として以下の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。
【0120】

【0121】
本発明の液晶組成物は、通常これらの光学活性化合物を添加して、ねじれのピッチを調整する。ねじれのピッチはTFT用およびTN用の液晶組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STN用の液晶組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。また、双安定TN(bistable TN)モ−ド用の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。また、ピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。
【0122】
本発明の液晶組成物は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GH型用の液晶組成物として使用することもできる。
【0123】
本発明の液晶組成物は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAPや、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマ−分散型液晶表示素子(PDLCD)例えばポリマ−ネットワ−ク液晶表示素子(PNLCD)用をはじめ、複屈折制御(ECB)型やDS型用の液晶組成物としても使用できる。
【0124】
また、本発明の液晶組成物は重合可能な化合物を添加してPSA(Polymer sustained alignment)型用の液晶組成物として使用することもできる。重合可能な化合物の例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合する。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光重合開始剤であるIrgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、またはDarocure1173(登録商標)(Ciba Japan K.K.)がラジカル重合に対して適切である。
【0125】
〔組成物の製造方法〕
本発明に係る液晶組成物は、例えば、各成分を構成する化合物が液体の場合には、それぞれの化合物を混合し振とうさせることにより、また固体を含む場合には、それぞれの化合物を混合し、加熱溶解によってお互い液体にしてから振とうさせることにより調製することができる。また、本発明に係る液晶組成物はその他の公知の方法により調製することも可能である。
【0126】
〔組成物の特性〕
本発明に係る液晶組成物では、ネマチック相の上限温度を70℃以上とすること、ネマチック相の下限温度は−20℃以下とすることができ、ネマチック相の温度範囲が広い。したがって、この液晶組成物を含む液晶表示素子は広い温度領域で使用することが可能である。
【0127】
本発明に係る液晶組成物では、組成等を適宜調整することで、光学異方性を0.10〜0.13の範囲、0.05〜0.18の範囲とすることもできる。
【0128】
また、本発明に係る液晶組成物では、通常、−5.0〜−2.0の範囲の誘電率異方性、好ましくは、−4.5〜−2.5の範囲の誘電率異方性を有する液晶組成物を得ることができる。−4.5〜−2.5の範囲の誘電率異方性を有する液晶組成物は、IPSモード、VAモード、またはPSAモードで動作する液晶表示素子として好適に使用することができる。
【0129】
〔液晶表示素子〕
本発明に係る液晶組成物は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、PSAモード等の動作モードを有し、AM方式で駆動する液晶表示素子だけでなく、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、VAモード、IPSモード等の動作モードを有しパッシブマトリクス(PM)方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。
【0130】
これらAM方式、およびPM方式の液晶表示素子は、反射型、透過型、半透過型、いずれの液晶ディスプレイ等にも適用ができる。
【0131】
また、本発明に係る液晶組成物は、導電剤を添加させた液晶組成物を用いたDS(dynamic scattering)モード素子や、液晶組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、液晶組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子にも使用できる。
【0132】
中でも本発明に係る液晶組成物では、上述のような特性を有するので、VAモード、IPSモード、またはPSAモードなどの負の誘電率異方性を有する液晶組成物を利用した動作モードで駆動するAM方式の液晶表示素子に好適に用いることができ、特に、VAモードで駆動するAM方式の液晶表示素子に好適に用いることができる。
【0133】
なお、TNモード、VAモード等で駆動する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して垂直である。一方、IPSモード等で駆動する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して平行である。なお、VAモードで駆動する液晶表示素子の構造は、K. Ohmuro, S. Kataoka, T. Sasaki and Y. Koike, SID ’97 Digest of Technical Papers, 28, 845 (1997)に報告されており、IPSモードで駆動する液晶表示素子の構造は、国際公開91/10936号パンフレット(ファミリー:US5576867)に報告されている。
【0134】
[実施例]
【0135】
〔化合物(1)の実施例〕
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。なお特に断りのない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0136】
得られた化合物は、H−NMR分析で得られる核磁気共鳴スペクトル、ガスクロマトグラフィー(GC)分析で得られるガスクロマトグラムなどにより同定したので、まず分析方法について説明をする。
【0137】
H−NMR分析
測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。測定は、実施例等で製造したサンプルを、CDCl等のサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数32回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0138】
GC分析
測定装置は、島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M25−025(長さ25m、内径0.22mm、膜厚0.25μm);固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は1ml/分に調整した。試料気化室の温度を280℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。
【0139】
試料はトルエンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。
【0140】
記録計としては島津製作所製のC−R6A型Chromatopac、またはその同等品を用いた。得られたガスクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0141】
なお、試料の希釈溶媒としては、例えば、クロロホルム、ヘキサンを用いてもよい。また、カラムとしては、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty.Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)などを用いてもよい。
【0142】
ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶性化合物における補正係数に大きな差異がないからである。ガスクロクロマトグラムにより液晶組成物中の液晶性化合物の組成比をより正確に求めるには、ガスクロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶性化合物(被検成分)と基準となる液晶性化合物(基準物質)を同時にガスクロ測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとから、面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶性化合物の組成比をガスクロ分析からより正確に求めることができる。
【0143】
〔測定用試料〕
液晶性化合物の物性値を測定する試料としては、化合物そのものを試料とする場合、化合物を母液晶と混合して試料とする場合の2種類がある。
【0144】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる後者の場合には、以下の方法で測定を行う。まず、得られた液晶性化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を作製する。そして、得られた試料の測定値から、下記式に示す外挿法にしたがって、外挿値を計算する。この外挿値をこの化合物の物性値とする。
【0145】
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉
)/〈液晶性化合物の重量%〉
液晶性化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、スメクチック相、または結晶が25℃で析出する場合には、液晶性化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、スメクチック相、または結晶が25℃で析出しなくなった組成で試料の物性値を測定しこの式にしたがって外挿値を求めて、これを液晶性化合物の物性値とする。
【0146】
本測定に用いる母液晶としては様々な種類が存在するが、例えば、母液晶(i)の組成は以下のとおりである。
【0147】
母液晶(i):
【0148】


なお、液晶組成物の物性を測定する場合には、液晶組成物そのものを試料として用いた。
【0149】
〔測定方法〕
物性値の測定は後述する方法で行った。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。また、測定に用いたTN素子またはVA素子には、TFTを取り付けなかった。
【0150】
測定値のうち、液晶性化合物単体そのものを試料として得られた値と、液晶組成物そのものを試料として得られた値は、そのままの値を実験データとして記載した。化合物を母液晶に混合し試料として得られた場合には、外挿法で得られた値を外挿値とした。
【0151】
相構造および転移温度(℃)
以下(1)、および(2)の方法で測定を行った。
(1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に化合物を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
(2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、転移温度を決定した。
【0152】
以下、結晶はCと表した。結晶の区別がつく場合は、それぞれCまたはCと表した。また、スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれS、またはSと表した。転移温度の表記として、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」とは、結晶からネマチック相への転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度(NI)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0153】
ネマチック相の上限温度(TNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に、試料(液晶組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を置き、1℃/分の速度で加熱しながら偏光顕微鏡を観察した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度をネマチック相の上限温度とした。以下、ネマチック相の上限温度を、単に「上限温度」と略すことがある。
【0154】
低温相溶性
母液晶と液晶性化合物とを、液晶性化合物が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%の量となるように混合した試料を作製し、試料をガラス瓶に入れる。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶もしくはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0155】
粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
E型回転粘度計を用いて測定した。
【0156】
粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料(液晶組成物液晶組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を入れた。この素子に30ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。なお、この計算に必要な誘電率異方性は、下記誘電率異方性で測定した値を用いた。
【0157】
光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn)
測定は、25℃の温度下で、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料(液晶組成物液晶組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0158】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
誘電率異方性は以下の方法によって測定した。
【0159】
よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板から、間隔(セルギャップ)が20μmであるVA素子を組み立てた。
【0160】
同様の方法で、ガラス基板にポリイミドの配向膜を調製した。得られたガラス基板の配向膜にラビング処理をした後、2枚のガラス基板の間隔が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子を組み立てた。
【0161】
得られたVA素子に試料(液晶組成物液晶組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
【0162】
また、得られたTN素子に試料(液晶組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0163】
誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥の式から計算した。
【0164】
電圧保持率(VHR;25℃で測定;%)
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は6μmである。この素子は試料(液晶組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を、高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率(%)で表現したものである。
【0165】
弾性定数(K11、K33;25℃で測定)
測定には株式会社東陽テクニカ製のEC−1型弾性定数測定器を用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである垂直配向セルに試料を入れた。このセルに20ボルトから0ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を『液晶デバイスハンドブック』(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.100)から弾性定数の値を得た。
【実施例1】
【0166】
トランス−4−((トランス−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキサン)−4−イル)メトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−ヘキシルオキシビフェニル(No.138)の合成
【0167】

【0168】
第1工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−ヘキシルオキシ−2,3−ジフルオロフェニルボロン酸(s−1)30.0g、4−ブロモ−2,3−ジフルオロベンゾキシベンゼン(s−2)31.6g、炭酸カリウム43.8g、Pd(PPhCl2.2g、トリフェニルホスフィン1.7g、テトラブチルアンモニウムブロミド20.4g、トルエン200ml、ソルミックスA−11 200mlおよび水200mlを加え、2時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水200mlおよびトルエン200mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し得られた残渣を、トルエンとヘプタンの混合溶媒(容量比トルエン:ヘプタン=2:1)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。それを、トルエン150ml、ソルミックスA−11 150mlとの混合溶媒に溶解させ、さらにPd/Cを0.26g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去して、得られた残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらに、トルエンとヘプタンの混合溶媒(容量比トルエン:ヘプタン=1:2)からの再結晶により精製し、乾燥させ、4−ヘキシルオキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェノール(s−3)15.1gを得た。化合物(s−2)からの収率は41.8%であった。
【0169】
第2工程
窒素雰囲気下の反応器へ、3−ブトキシ−1,2−ジフルオロベンゼン(s−4)10.0gとTHF200mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00M−sec−ブチルリチウム,n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液64.0mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて4−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−イル)−シクロヘキサノン(s−5)を12.8g含んだTHF50ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。3% 塩化アンモニウム水溶液100mlと酢酸エチル100mlとが入った容器中に添加して混合した後、静置して、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取し、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、4−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−イル)−1−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサノールを得た。この化合物に、p−トルエンスルホン酸0.68g、およびトルエン200mlを混合し、この混合物を、留出する水を抜きながら2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水200mlとトルエン200mlとを加え混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、乾燥させた。さらに、Pd/Cを0.3g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去して、得られた残渣をTHFとヘプタンの混合溶媒(容量比 THF:ヘプタン=1:9)からの再結晶により精製し、8−[4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキセニル]−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン(s−6)7.7gを得た。化合物(s−4)からの収率は35.2%であった。
【0170】
第3工程
化合物(s−6)7.7g、87%蟻酸8.7g、およびトルエン100mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 200mlとトルエン200mlとを加え混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、残渣をヘプタン溶媒からの再結晶により精製し、乾燥させ、4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−ビシクロヘキシル−4−オン(s−7)6.8gを得た。化合物(s−6)からの収率は99.0%であった。
【0171】
第4工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド 7.9gとTHF100mlを混合し、−30℃まで冷却した。その後、カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)2.6gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、4回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF35mlに溶解した化合物(s−7)6.8gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。−10℃で30分攪拌した後、反応液を水 200mlとトルエン 100mlの混合液へ注ぎ込み、混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し得られた残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。得られた溶離液を減圧下、濃縮し、4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4’−メトキシメチレン−ビシクロヘキシルを得た。この化合物に、87%蟻酸 8.4g、およびトルエン 100mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 200mlとトルエン 300mlとを加え混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣をヘプタンとTHFの混合溶媒(容量比 ヘプタン:THF=9:1)からの再結晶により精製し、乾燥させ、4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−ビシクロヘキシル−トランス−4−カルボアルデヒド(s−8)6.0gを得た。化合物(s−7)からの収率は82.5%であった。
【0172】
第5工程
水素化リチウムアルミニウム4.2gをTHF300mlに懸濁した。この懸濁液に4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−ビシクロヘキシル−トランス−4−カルボアルデヒド(s−8)6.0gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。得られた有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、減圧下濃縮をして、トランス−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−トランス−4−ヒドロキシメチルビシクロヘキシル(s−9)6.0gを得た。化合物(s−8)からの収率は99.5%であった。
【0173】
第6工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s−9)6.0g、トルエン100mlおよびピリジン0.1mlを加え、45℃で1時間攪拌した。その後、塩化チオニル1.4mlを45℃から55℃の温度範囲で加え、2時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水100mlおよびトルエン100mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、飽和重曹水で2回、水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を、トルエンとヘプタンとの混合溶媒(容量比 トルエン:ヘプタン=1:1)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、乾燥させ、トランス−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−トランス−4−クロロメチルビシクロヘキシル(s−10)6.2gを得た。化合物(s−9)からの収率は98.6%であった。
【0174】
第7工程
窒素雰囲気下、DMF 100mlに4−ヘキシルオキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェノール(s−3)2.6g、およびリン酸三カリウム(KPO)8.0gを加え、80℃で攪拌した。そこへ化合物(s−9)3.0gを加え、80℃で、7時間攪拌した。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、ろ過によって固形物と分離した後、トルエン 100ml、および水 100mlを加え混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣をヘプタンとトルエンの混合溶媒(容量比 ヘプタン:トルエン=1:2)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにソルミックスA−11とヘプタンの混合溶媒(容量比 ソルミックスA−11:ヘプタン=1:2)からの再結晶により精製し、乾燥させ、トランス−4−((トランス−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキサン)−4−イル)メトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−ヘキシルオキシビフェニル(No.138)4.3gを得た。化合物(s−10)からの収率は81.3%であった。
【0175】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、トランス−4−((トランス−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキサン)−4−イル)メトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−ヘキシルオキシビフェニル(No.138)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
【0176】
化学シフトδ(ppm);7.07(m,3H),6.91(t,1H),6.81(t,1H),6.71(t,1H),6.12(m,1H),4.17(q,2H),4.02(q,2H),3.22(m,1H),2.70−2.59(m,1H),2.59−2.44(m,2H),2.38−2.30(m,1H),2.08−2.01(m,1H),2.01−1.91(m,1H),1.81(quin,2H),1.51−1.43(m,5H),1.34(m,4H),0.91(t,3H).
【0177】
転移温度は化合物自体の測定値とし、上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、化合物15重量%と母液晶(i)85重量%とを混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って換算した外挿値とした、化合物(No.138)の物性値は以下の通りであった。
転移温度 :C 102.6 S 232.2 N 276.5 I
NI=227.9℃,Δε=−10.37,Δn=0.178.
【実施例2】
【0178】
1−ブトキシ−4−(トランス−4−(トランス−4−((トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−(ヘキシルオキシ)フェニル)シクロヘキシル)メトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシル)−2,3−ジフルオロベンゼン(No.218)の合成
【0179】

【0180】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、3−ヘキシルオキシ−1,2−ジフルオロベンゼン(s−11)100gとTHF1000mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00M−sec−ブチルリチウム,n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液500mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−8−オン(s−12)を72.9g含んだTHF200ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。得られた反応混合物を3% 塩化アンモニウム水溶液500mlと酢酸エチル500mlとが入った容器中に添加して混合した後、静置して、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取し、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、8−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−オールを得た。これに、p−トルエンスルホン酸4.1g、およびトルエン 300mlを混合し、この混合物を、留出する水を抜きながら2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水500mlとトルエン 500mlとを加え混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。それを、トルエン200ml、ソルミックスA−11 200mlとの混合溶媒に溶解させ、さらにPd/Cを1.4g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去して、得られた残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、乾燥させ、8−(4−ヘキシルオキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン(s−13)127.4gを得た。化合物(s−11)からの収率は73.6%であった。
【0181】
第2工程
化合物(s−13)127.4g、87%蟻酸82.7g、およびトルエン500mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 500mlとトルエン 500mlとを加え混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、さらにヘプタンとトルエンの混合溶媒(容量比 ヘプタン:トルエン=2:1)からの再結晶により精製し、乾燥させ、1−(4−ヘキシルオキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサン−4−オン(s−14)101.4gを得た。化合物(s−13)からの収率は90.9%であった。
【0182】
第3工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド 37.3gとTHF500mlを混合し、−30℃まで冷却した。その後、カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)13.0gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF100mlに溶解した化合物(s−14) 30.0gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。−10℃で30分攪拌した後、反応液を水 200mlとトルエン 200mlの混合液へ注ぎ込み、混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し得られた残渣をヘプタンとトルエンの混合溶媒(容量比 ヘプタン:トルエン=1:1)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。得られた溶離液を減圧下、濃縮し、1−(4−ヘキシルオキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−メトキシメチレンシクロヘキサンを得た。その後、87%蟻酸 22.3g、およびトルエン300mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 100mlとトルエン 200mlとを加え混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、トルエンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、さらにヘプタンとトルエンの混合溶媒(容量比 ヘプタン:トルエン=2:1)からの再結晶により精製し、乾燥させ、トランス−4−(4−ヘキシルオキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサンカルボアルデヒド(s−15)15.8gを得た。化合物(s−14)からの収率は50.4%であった。
【0183】
第4工程
水素化リチウムアルミニウム1.1gをTHF200mlに懸濁した。この懸濁液にトランス−4−(4−ヘキシルオキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサンカルボアルデヒド(s−15)15.8gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。得られた有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、減圧下濃縮をして、トランス−4−(4−ヘキシルオキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−ヒドロキシメチルシクロヘキサン(s−16)4.7gを得た。化合物(s−15)からの収率は29.6%であった。
【0184】
第5工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s−16)4.7g、トルエン100mlおよびピリジン 0.5mlを加え、45℃で1時間攪拌した。その後、塩化チオニル1.6mlを45℃から55℃の温度範囲で加え、2時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水100mlおよびトルエン100mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、飽和重曹水で2回、水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を、トルエンとヘプタンとの混合溶媒(容量比 トルエン:ヘプタン=1:1)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、乾燥させ、トランス−4−(4−ヘキシルオキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−クロロメチルシクロヘキサン(s−17)4.7gを得た。化合物(s−16)からの収率は94.7%であった。
【0185】
第6工程
窒素雰囲気下の反応器へ、3−ブトキシ−1,2−ジフルオロベンゼン(s−18)17.7gとTHF500mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00M−sec−ブチルリチウム,n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液114mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて4−(2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキサノン(s−19)を20.0g含んだTHF100ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。得られた反応混合物を3% 塩化アンモニウム水溶液 200mlと酢酸エチル200mlとが入った容器中に添加して混合した後、静置して、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取し、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去した。これに、p−トルエンスルホン酸4.1g、およびトルエン300mlを混合し、この混合物を、留出する水を抜きながら2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 500mlとトルエン 500mlとを加え混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、トルエンとヘプタンとの混合溶媒(容量比 トルエン:ヘプタン=1:1)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、乾燥させ、1−ブトキシ−4−(4−(2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロベンゼン(s−20) 7.2gを得た。化合物(s−18)からの収率は20.0%であった。
【0186】
第7工程
窒素雰囲気下の反応器へ、1−ブトキシ−4−(4−(2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロベンゼン(s−20)7.2gとTHF 200mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00Msec−ブチルリチウム,n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液23.0mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて、ホウ酸トリメチル2.0gのTHF30ml溶液に−74℃から−65℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ、さらに8時間攪拌した。その後、反応混合物を1N塩酸100ml氷水200mlとが入った容器中に注ぎ込み、混合した。酢酸エチル200mlを加えて、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去した。それを窒素雰囲気下の反応器へ、酢酸50mlとともにを加えて、室温下、31%過酸化水素水1.0gを25℃から30℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。その後、反応混合物を亜硫酸水素ナトリウム水溶液100ml、酢酸エチル200mlが入った容器中に注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取し、水、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、1−ブトキシ−4−(4−(2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロフェノール(s−21)5.9gを得た。化合物(s−20)からの収率は78.6%であった。
【0187】

第8工程
窒素雰囲気下、DMF100mlに1−ブトキシ−4−(4−(2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロフェノール(s−21)5.9g、およびリン酸三カリウム(KPO)14.4gを加え、80℃で攪拌した。そこへ化合物(s−17)4.7gを加え、80℃で、7時間攪拌した。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、ろ過によって固形物と分離した後、トルエン 100ml、および水 100mlを加え混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣をヘプタンとトルエンの混合溶媒(容量比 ヘプタン:トルエン=1:2)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにPd/Cを0.5g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去して、得られた残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、さらにソルミックスA−11とヘプタンの混合溶媒(容量比 ソルミックスA−11:ヘプタン=1:2)からの再結晶により精製し、乾燥させ、1−ブトキシ−4−(トランス−4−(トランス−4−((トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−(ヘキシルオキシ)フェニル)シクロヘキシル)メトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシル)−2,3−ジフルオロベンゼン(No.218)1.6gを得た。化合物(s−17)からの収率は17.0%であった。
【0188】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、1−ブトキシ−4−(トランス−4−(トランス−4−((トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−(ヘキシルオキシ)フェニル)シクロヘキシル)メトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシル)−2,3−ジフルオロベンゼン(No.218)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
【0189】
化学シフトδ(ppm);7.11−7.02(m,3H),6.90(td,1H),6.81(td,2H),6.70(td,1H),6.78(td,1H),4.16(q,2H),4.02(t,2H),3.02(m,1H),2.91(m,1H),2.03(m,4H),1.82(quin,2H),1.77−1.62(m,4H),1.51−1.43(m,5H),1.38−1.31(m,4H),0.91(t,3H).
【0190】
転移温度は化合物自体の測定値とし、上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、化合物5重量%と母液晶(i)95重量%とを混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って換算した外挿値とした、化合物(No.218)の物性値は以下の通りであった。
転移温度 :C 125.7 S 200.5 N 244.8 I
NI=202.6℃,Δε=−6.23,Δn=0.153.
【実施例3】
【0191】
1−ブトキシ−4−(4−(4−(4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロベンゼン(No.48)の合成
【0192】

【0193】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、1−ブトキシ−4−(4−(2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロベンゼン(s−20)8.1gとTHF 200mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00M−sec−ブチルリチウム,n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液26.0mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキサノン(s−14)を20.0g含んだTHF100ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。得られた反応混合物を3% 塩化アンモニウム水溶液100mlと酢酸エチル100mlとが入った容器中に添加して混合した後、静置して、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取し、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去した。これに、p−トルエンスルホン酸0.14g、およびトルエン200mlを混合し、この混合物を、留出する水を抜きながら2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水100mlとトルエン100mlとを加え混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、トルエンとヘプタンとの混合溶媒(容量比 トルエン:ヘプタン=1:1)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、さらに酢酸エチルとソルミックスA−11との混合溶媒(容量比 酢酸エチル:ソルミックスA−11=1:1)からの再結晶により精製し、乾燥させ、1−ブトキシ−4−(4−(4−(4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロベンゼン(No.48)0.61gを得た。化合物(s−20)からの収率は4.2%であった。
【0194】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、1−ブトキシ−4−(4−(4−(4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロベンゼン(No.48)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
【0195】
化学シフトδ(ppm);6.99(m,3H),6.82(m,2H),6.65(t,1H),4.17(q,2H),4.01(t,2H),2.73(m,3H),1.95(m,2H),1.88(m,2H),1.80(quin,2H),1.60(q,2H),1.52−1.42(m,7H),1.42−1,30(m,5H),1.21−1,12(m,2H),0.91(t,3H).
【0196】
転移温度は化合物自体の測定値とし、上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、化合物15重量%と母液晶(i)85重量%とを混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って換算した外挿値とした、化合物(No.48)の物性値は以下の通りであった。
転移温度 :C 91.8 SB 101.5 SA 236.7 N 270.4 I
NI=210.6℃,Δε=−8.24,Δn=0.192.
【実施例4】
【0197】
4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシルカルボン酸−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキシル(No.458)の合成
【0198】

【0199】
第1工程
水素化リチウムアルミニウム0.62gをTHF200mlに懸濁した。この懸濁液に4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−ビシクロヘキシル−4−オン(s−7)10.0gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。得られた有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、減圧下濃縮をして、4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−ビシクロヘキサノール(s−22)8.8gを得た。化合物(s−7)からの収率は87.5%であった。
【0200】
第2工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s−15)10.5g、OXONE23.8g、DMF100mlを加え、室温で24時間攪拌した。反応液を、1N−HCl水溶液200mlおよびトルエン200mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、乾燥させ、トランス−4−(4−ヘキシルオキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキシルカルボン酸(s−23)7.8gを得た。化合物(s−15)からの収率は70.8%であった。
【0201】
第3工程
窒素雰囲気下、化合物(s−22)2.2g、化合物(s−23)2.0g、1,3−ジシクロカルボジイミド(DCC)1.5g、および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP) 0.07gをトルエン100ml中に加え、25℃で20時間攪拌した。GC分析により反応が終了していることを確認後、トルエン100mlおよび水100mlを加え、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらに酢酸エチルとソルミックスA−11との混合溶媒(容量比 酢酸エチル:ソルミックスA−11=1:1)からの再結晶により精製し、乾燥させ、4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシルカルボン酸−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキシル(No.458)3.2gを得た。化合物(s−22)からの収率は78.6%であった。
【0202】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシルカルボン酸−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキシル(No.458)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
【0203】
化学シフトδ(ppm);6.82(m,2H),6.66(t,2H),4.66(tt,1H),4.01(m,4H),2.78(tt,1H),2.72(tt,1H),2.30(tt,1H),2.08(m,2H),1.99(m,2H),1.96−1.75(m,12H),1.65−1.54(m,2H),1.53−1.27(m,14H),1.22−1.08(m,6H),0.97(t,3H),0.90(t,3H).
【0204】
転移温度は化合物自体の測定値とし、上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、化合物10重量%と母液晶(i)90重量%とを混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って換算した外挿値とした、化合物(No.458)の物性値は以下の通りであった。
転移温度:C 106.6 S 258.9 S 277.2 N 317.9 I
NI=245.6℃,Δε=−8.35,Δn=0.141.
【実施例5】
【0205】
トランス−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキシルカルボン酸−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−ヘキシルオキシ−1,1’−ビフェニル(No.258)の合成
【0206】

【0207】
第1工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s−8)10.0g、OXONE17.8g、DMF100mlを加え、室温で24時間攪拌した。反応液を、1N−HCl水溶液200mlおよびトルエン200mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、乾燥させ、トランス−4−(4−ヘキシルオキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキシルカルボン酸(s−24)7.8gを得た。化合物(s−8)からの収率は74.8%であった。
【0208】
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(s−3)2.0g、化合物(s−24)2.3g、1,3−ジシクロカルボジイミド(DCC)1.3g、および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.07gをトルエン100ml中に加え、25℃で20時間攪拌した。GC分析により反応が終了していることを確認後、トルエン100mlおよび水100mlを加え、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらに酢酸エチルとソルミックスA−11との混合溶媒(容量比 酢酸エチル:ソルミックスA−11=1:1)からの再結晶により精製し、乾燥させ、トランス−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキシルカルボン酸−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−ヘキシルオキシ−1,1’−ビフェニル(No.258)3.6gを得た。化合物(s−3)からの収率は86.7%であった。
【0209】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、トランス−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキシルカルボン酸 2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−ヘキシルオキシ−1,1’−ビフェニル(No.258)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
【0210】
化学シフトδ(ppm);7.10(t,1H),7.02(t,1H),6.97(t,1H),6.86−6.78(m,2H),6.67(t,1H),4.08(t,2H),4.01(t,2H),2.74(tt,1H),2.57(tt,1H),2.22(m,2H),1.95−1.74(m,10H),1.65−1.54(m,2H),1.54−1.39(m,6H),1.38−1.32(m,4H),1.26−1.09(m,6H),0.97(t,3H),0.91(t,3H).
【0211】
転移温度は化合物自体の測定値とし、上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、化合物10重量%と母液晶(i)90重量%とを混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って換算した外挿値とした、化合物(No.258)の物性値は以下の通りであった。
転移温度:C 134.1 S 170.7 S 272.6 N 321.5 I
NI=233.6℃,Δε=−8.95,Δn=0.161.
【実施例6】
【0212】
トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシルカルボン酸 トランス−4−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)シクロヘキシル(No.347)の合成
【0213】

【0214】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル(s−25)50gとTHF500mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00M−sec−ブチルリチウム,n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液222mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−8−オン(s−12)を28.8g含んだTHF200ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。得られた反応混合物を3% 塩化アンモニウム水溶液500mlと酢酸エチル500mlとが入った容器中に添加して混合した後、静置して、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取し、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、8−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−オールを得た。これに、p−トルエンスルホン酸1.5g、およびトルエン300mlを混合し、この混合物を、留出する水を抜きながら2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水300mlとトルエン300mlとを加え混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。それを、トルエン100ml、ソルミックスA−11 100mlとの混合溶媒に溶解させ、さらにPd/Cを2.5g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去して、得られた残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、乾燥させ、8−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン(s−26)31.9gを得た。化合物(s−25)からの収率は42.0%であった。
【0215】
第2工程
化合物(s−26)31.9g、87%蟻酸10.7g、およびトルエン200mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 200mlとトルエン 200mlとを加え混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、さらにヘプタンとトルエンの混合溶媒(容量比 ヘプタン:トルエン=2:1)からの再結晶により精製し、乾燥させ、1−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)−シクロヘキサン−4−オン(s−27)21.8gを得た。化合物(s−26)からの収率は76.6%であった。
【0216】
第3工程
水素化リチウムアルミニウム0.31gをTHF 100mlに懸濁した。この懸濁液に1−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)−シクロヘキサン−4−オン(s−27)を5.0g含んだTHF 20ml溶液を、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。得られた有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、減圧下濃縮をして、トランス−4−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)−シクロヘキサノール(s−28)12.1gを得た。化合物(s−27)からの収率は89.1%であった。
【0217】
第4工程
窒素雰囲気下、化合物(s−23)2.0g、化合物(s−28)2.2g、1,3−ジシクロカルボジイミド(DCC)1.8g、および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.07gをトルエン50ml中に加え、25℃で20時間攪拌した。GC分析により反応が終了していることを確認後、トルエン100mlおよび水100mlを加え、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた残渣をトルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらに酢酸エチルとソルミックスA−11との混合溶媒(容量比 酢酸エチル:ソルミックスA−11=1:1)からの再結晶により精製し、乾燥させ、トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシルカルボン酸トランス−4−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)シクロヘキシル(No.347)3.0gを得た。化合物(s−28)からの収率は74.6%であった。
【0218】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシルカルボン酸ランス−4−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)シクロヘキシル(No.347)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
【0219】
化学シフトδ(ppm);7.03(m,3H),6.81(tt,2H),6.67(t,1H),4.81(m,1H),4.17(q,2H),4.00(t,2H),2.93(tt,1H),2.80(tt,1H),2.34(tt,1H),2.12(m,4H),1.98(m,2H),1.94(m,2H),1.80(quin,2H),1.71−1.42(m,13H),1.38−1.31(m,4H),0.90(t,3H).
【0220】
転移温度は化合物自体の測定値とし、上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、化合物15重量%と母液晶(i)85重量%とを混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って換算した外挿値とした、化合物(No.347)の物性値は以下の通りであった。
転移温度:C 135.2 N 314.0 I
NI=234.6℃,Δε=−7.54,Δn=0.174.
【実施例7】
【0221】
トランス−4−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)シクロヘキシルカルボン酸トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシル(No.297)の合成
【0222】

【0223】
第1工程
水素化リチウムアルミニウム1.47gをTHF 200mlに懸濁した。この懸濁液に4−(4’−ヘキシルオキシ−2,3,−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサノン(s−14)を20.0g含んだTHF50ml溶液を、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。得られた有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、減圧下濃縮をして、トランス−4−(4’−ヘキシルオキシ−2,3,−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサノール(s−29)16.3gを得た。化合物(s−27)からの収率は81.0%であった。
【0224】
第2工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド 320.4gとTHF 200mlを混合し、−30℃まで冷却した。その後、カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)6.7gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF 50mlに溶解した化合物(s−27)16.8gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。−10℃で30分攪拌した後、反応液を水 200mlとトルエン 200mlの混合液へ注ぎ込み、混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し得られた残渣をヘプタンとトルエンの混合溶媒(容量比 ヘプタン:トルエン=1:1)を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。得られた溶離液を減圧下、濃縮し、トランス−4−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)−メトキシメチレンシクロヘキサンを得た。その後、87%蟻酸 4.2g、およびトルエン100mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、得られた液に水 100mlとトルエン 100mlとを加え混合した後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、トルエンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、さらにヘプタンとトルエンの混合溶媒(容量比 ヘプタン:トルエン=2:1)からの再結晶により精製し、乾燥させ、トランス−4−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)−シクロヘキサンカルボアルデヒド(s−30)11.7gを得た。化合物(s−27)からの収率は67.1%であった。
【0225】
第3工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s−30)5.0g、OXONE9.7g、DMF50mlを加え、室温で24時間攪拌した。反応液を、1N−HCl水溶液100mlおよびトルエン100mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、乾燥させ、トランス−4−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)−シクロヘキシルカルボン酸(s−31)2.5gを得た。化合物(s−8)からの収率は48.0%であった。
【0226】
第4工程
窒素雰囲気下、化合物(s−25)0.9g、化合物(s−31)0.7g、1,3−ジシクロカルボジイミド(DCC)0.7g、および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP) 0.03gをトルエン50ml中に加え、25℃で20時間攪拌した。GC分析により反応が終了していることを確認後、トルエン100mlおよび水 100mlを加え、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらに酢酸エチルとソルミックスA−11との混合溶媒(容量比 酢酸エチル:ソルミックス A−11=1:1)からの再結晶により精製し、乾燥させ、トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシルカルボン酸トランス−4−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)シクロヘキシル(No.297)0.18gを得た。化合物(s−25)からの収率は11.5%であった。
【0227】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、トランス−4−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)シクロヘキシルカルボン酸トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシル(No.297)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
【0228】
化学シフトδ(ppm);7.10−6.99(m,3H),6.81(m,2H),6.68(m,1H),4.80(m,1H),4.17(q,2H),4.00(t,2H),2.93(tt,1H),2.81(tt,1H),2.36(tt,1H),2.18−2.06(m,4H),2.00(m,2H),1.93(m,2H),1.80(quin,2H),1.71−1.42(m,13H),1.39−1.31(m,4H),0.90(t,3H).
【0229】
転移温度は化合物自体の測定値とし、上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、化合物5重量%と母液晶(i)95重量%とを混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って換算した外挿値とした、化合物(No.297)の物性値は以下の通りであった。
転移温度:C 113.7 S 117.5 N 305.9 I
NI=232.6℃,Δε=−6.61,Δn=0.185.
【実施例8】
【0230】
実施例1〜7に記載された合成方法と同様の方法により以下に示す、化合物(No.1)〜(No.460)を合成することができる。付記したデータは、実際に合成で得られた化合物を用いて、前記した手法に従い、測定した値である。転移温度は化合物自体の測定値であり、上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、化合物を母液晶(i)に混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って換算した外挿値である。なお、化合物No.218、297は母液晶95重量%、化合物5重量%とからなる液晶組成物を調製し、得られた液晶組成物の物性値を測定し、測定値を外挿したもの、化合物No.258、458は母液晶90重量%、化合物10重量%とからなる液晶組成物を調製し、得られた液晶組成物の物性値を測定し、測定値を外挿したもの、残りのデータを付記した化合物は母液晶85重量%、化合物15重量%とからなる液晶組成物を調製し、得られた液晶組成物の物性値を測定し、測定値を外挿したものである。
【0231】

【0232】

【0233】

【0234】

【0235】

【0236】

【0237】

【0238】

【0239】

【0240】

【0241】

【0242】

【0243】

【0244】

【0245】

【0246】

【0247】

【0248】

【0249】

【0250】

【0251】

【0252】

【0253】

【0254】
〔比較例1〕
比較例として、トランス−4−ペンチル−トランス−4’’−(2,3−ジフルオロエトキシフェニル)−1,1’,4’,1’’−ターシクロヘキシル(C)を合成した。
【0255】

【0256】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、トランス−4−ペンチル−トランス−4’’−(2,3−ジフルオロエトキシフェニル)−1,1’,4’,1’’−ターシクロヘキシル(C)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
化学シフトδ(ppm);6.85(td,1H),6.68(td,1H),4.11(q,2H),2.74(tt,1H),1.93−1.82(m,4H),1.82−1.68(m,8H),1.48−1.37(m,4H),1.37−0.82(m,27H).
【0257】
化合物(C)の転移温度は以下の通りであった。
転移温度 :C 71.8 S 298.2 N 330.7 I
【0258】
母液晶(i)97重量%と、合成したトランス−4−ペンチル−トランス−4’’−(2,3−ジフルオロエトキシフェニル)−1,1’,4’,1’’−ターシクロヘキシル(C)3重量%とからなる液晶組成物(iv)を調製した。得られた液晶組成物(iv)の物性値を測定し、測定値を外挿することで比較例化合物(C)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
光学異方性(Δn)=0.137;
誘電率異方性(Δε)=−1.86;
また、液晶組成物(iv)の弾性定数K33は11.31pNであった。
【実施例9】
【0259】
化合物(No.218)の物性
母液晶(i)95重量%と、実施例2で得られた1−ブトキシ−4−(トランス−4−(トランス−4−((トランス−4−(2,3−ジフルオロ−4−(ヘキシルオキシ)フェニル)シクロヘキシル)メトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシル)−2,3−ジフルオロベンゼン(No.218)5重量%とからなる液晶組成物(v)を調製した。得られた液晶組成物(v)の物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶性化合物(No.218)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
光学異方性(Δn)=0.153;
誘電率異方性(Δε)=−6.23;
また、液晶組成物(v)の弾性定数K33は16.04pNであった。
【0260】
このことから液晶性化合物(No.218)は、光学異方性(Δn)を大きく、誘電率異方性(Δε)を負に高く、弾性定数K33を大きくすることができる化合物であることがわかった。
【0261】
また、比較例化合物(C)と比較して、光学異方性(Δn)が大きく、誘電率異方性(Δε)が負に高く、弾性定数K33が大きい化合物であることがわかった。
【0262】
〔比較例2〕
比較例として、化合物(D)に類似の4−エトキシ−4’’’−ペンチル−2’’’,3’’’,2,3−テトラフルオロ−1,1’,4’,1’’,4’’,1’’’−クオターフェニル(G)を合成した。
【0263】

【0264】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−エトキシ−4’’’−ペンチル−2’’’,3’’’,2,3−テトラフルオロ−1,1’,4’,1’’,4’’,1’’’−クオターフェニル(G)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
化学シフトδ(ppm);7.50(q,4H),7.14(d,2H),7.09(td,1H),6.92(d,1H),6.78(t,1H),4.17(q,2H),2.42(tt,1H),1.86(m,4H),1.53−1.17(m,13H),1.08−0.98(m,2H),0.89(t,3H).
【0265】
化合物(F)の転移温度は以下の通りであった。
転移温度 :C 149.8 N 306.7 I
【0266】
母液晶(i)95重量%と、合成した4−エトキシ−4’’’−ペンチル−2’’’,3’’’,2,3−テトラフルオロ−1,1’,4’,1’’,4’’,1’’’−クオターフェニル(G)5重量%とからなる液晶組成物(v)を調製した。得られた液晶組成物vの物性値を測定し、測定値を外挿することで比較例化合物(G)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
誘電率異方性(Δε)=−6.05;
また、液晶組成物(v)の弾性定数K33は15.78 pNであった。
【実施例10】
【0267】
液晶性化合物(No.48)の物性
母液晶(i)85重量%と、実施例3で得られた1−ブトキシ−4−(4−(4−(4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシ−1−エニル)−2,3−ジフルオロベンゼン(No.48)15重量%とからなる液晶組成物(v)を調製した。得られた液晶組成物(v)の物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶性化合物(No.48)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
誘電率異方性(Δε)=−8.24;
また、液晶組成物(v)の弾性定数K33は16.47pNであった。
【0268】
このことから液晶性化合物(No.48)は、融点が低く、粘度(η)が小さく、誘電率異方性(Δε)を負に高くすることができる化合物であることがわかった。
【0269】
また、比較例化合物(G)と比較して、誘電率異方性(Δε)が負に高く、融点が低く、粘度(η)が小さく、弾性定数K33が大きい化合物であることがわかった。
【0270】
〔比較例3〕
比較例として、化合物(E)に類似の4−エトキシ−2,3,2’’,3’’−テトラフルオロ−4’’−(2,3−ジフルオロ−4−ペンチルフェニルエチル)−1,1’’−ターフェニル(H)を合成した。
【0271】

【0272】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−エトキシ−2,3,2’’,3’’−テトラフルオロ−4’’−(2,3−ジフルオロ−4−ペンチルフェニルエチル)−1,1’’−ターフェニル(H)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
化学シフトδ(ppm);7.60(m,4H),7.15(m,2H),6.97(m,1H),6.83(m,3H),4.18(q,2H),2.99(m,2H),2.62(t,2H),1.64−1.55(m,5H),1.49(t,3H),1.33(m,3H),0.90(t,3H).
【0273】
化合物(H)の転移温度は以下の通りであった。
転移温度 :C 136.5 N 201.0 I
【0274】
母液晶(i)97重量%と、合成した4−エトキシ−2,3,2’’,3’’−テトラフルオロ−4’’−(2,3−ジフルオロ−4−ペンチルフェニルエチル)−1,1’’−ターフェニル(H)3重量%とからなる液晶組成物(vi)を調製した。得られた液晶組成物(vi)の物性値を測定し、測定値を外挿することで比較例化合物(H)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=154.6℃;
誘電率異方性(Δε)=−6.73;
また、液晶組成物(vi)の弾性定数K33は14.57 pNであった。
【実施例11】
【0275】
液晶性化合物(No.138)の物性
母液晶(i)85重量%と、実施例1で得られたトランス−4−((トランス−4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキサン)−4−イル)メトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−ヘキシルオキシビフェニル(No.138)15重量%とからなる液晶組成物(vii)を調製した。得られた液晶組成物(vii)の物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶性化合物(No.138)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=227.9℃;
誘電率異方性(Δε)=−10.37;
また、液晶組成物(vii)の弾性定数K33は17.03 pNであった。
【0276】
このことから液晶性化合物(No.138)は、融点が低く、上限温度(TNI)が高く、誘電率異方性(Δε)を負に高くすることができる化合物であることがわかった。
【0277】
また、比較例化合物(H)と比較して、上限温度(TNI)が高く、誘電率異方性(Δε)が負に高く、融点が低く、粘度(η)が小さく、弾性定数K33が大きい化合物であることがわかった。
【0278】
〔比較例4〕
比較例として、化合物(F)に類似の2,3−ジフルオロ−4−(トランス−4’プロピルビシクロヘキサン−トランス−4−イル)フェニル トランス−4’−ペンチルビシクロヘキサン)−トランス−4−カルボン酸エステル(I)を合成した。
【0279】

【0280】
H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、2,3−ジフルオロ−4−(トランス−4’プロピルビシクロヘキサン−トランス−4−イル)フェニル トランス−4’−ペンチルビシクロヘキサン)−トランス−4−カルボン酸エステル(I)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDClである。
化学シフトδ(ppm);6.93(t,1H),6.80(t,1H),2.78(tt,1H),2.50(tt,1H),2.16(m,2H),1.93−1.81(m,6H),1.81−1.68(m,8H),1.59−1.49(m,2H),1.48−1.36(m,2H),1.35−0.93(m,26H),0.92−0.80(m,10H).
【0281】
化合物(I)の転移温度は以下の通りであった。
転移温度 :C 74.4 S 146.3 S 231.1 N >350 I
【0282】
母液晶(i)95重量%と、合成した2,3−ジフルオロ−4−(トランス−4’プロピルビシクロヘキサン−トランス−4−イル)フェニル トランス−4’−ペンチルビシクロヘキサン)−トランス−4−カルボン酸エステル(I)5重量%とからなる液晶組成物(vi)を調製した。得られた液晶組成物(vi)の物性値を測定し、測定値を外挿することで比較例化合物(I)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
誘電率異方性(Δε)=−2.92;
また、液晶組成物(vi)の弾性定数K33は15.42 pNであった。
【実施例12】
【0283】
液晶性化合物(No.458)の物性
母液晶(i)90重量%と、実施例4で得られた4’−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキサン−4−イル 4−(2,3−ジフルオロ−4−ヘキシルオキシフェニル)シクロヘキシルカルボン酸エステル(No.458)10重量%とからなる液晶組成物(vii)を調製した。得られた液晶組成物viiの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶性化合物(No.458)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
誘電率異方性(Δε)=−8.35;
また、液晶組成物(vii)の弾性定数K33は16.76 pNであった。
【0284】
このことから液晶性化合物(No.458)は、誘電率異方性(Δε)を負に高くすることができる化合物であることがわかった。
【0285】
また、比較例化合物(H)と比較して、誘電率異方性(Δε)が負に高く、弾性定数K33が大きい化合物であることがわかった。
【0286】
〔組成物の実施例〕
以下、本発明で得られる液晶組成物を実施例により詳細に説明する。なお、実施例で用いる液晶性化合物は、下記表の定義に基づいて記号により表す。なお、表中、1,4−シクロへキシレンの立体配置はトランス配置である。各化合物の割合(百分率)は、特に断りのない限り、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。各実施例の最後に、得られた液晶組成物の特性を示す。
【0287】
なお、各実施例で使用する液晶性化合物の部分に記載した番号は、上述した本発明の第一成分から第三成分に用いる液晶性化合物を示す式番号に対応をしており、式番号を記載せずに、単に「−」と記載をしている場合には、この化合物はこれら成分には対応をしていないその他の化合物であることを意味している。
【0288】
化合物の記号による表記方法を以下に示す。
【0289】

【0290】
特性値の測定は以下の方法にしたがって行った。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。
【0291】
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。以下、ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略することがある。
【0292】
(2)ネマチック相の下限温度(TC;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを≦−20℃と記載した。以下、ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0293】
(3)光学異方性(Δn;25℃で測定)
波長が589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により測定した。まず、主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。そして、偏光の方向がラビングの方向と平行であるときの屈折率(n‖)、および偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときの屈折率(n⊥)を測定した。光学異方性の値(Δn)は、(Δn)=(n‖)−(n⊥)の式から算出した。
【0294】
(4)粘度(η;20℃で測定;mPa・s)
測定にはE型粘度計を用いた。
【0295】
(5)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板から、間隔(セルギャップ)が20μmであるVA素子を組み立てた。
【0296】
同様の方法で、ガラス基板にポリイミドの配向膜を調製した。得られたガラス基板の配向膜にラビング処理をした後、2枚のガラス基板の間隔が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子を組み立てた。
【0297】
得られたVA素子に試料(液晶組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
【0298】
また、得られたTN素子に試料(液晶組成物液晶組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥の式から計算した。
この値が負である組成物が、負の誘電率異方性を有する組成物である。
【0299】
(6)電圧保持率(VHR;25℃と100℃で測定;%)
ポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が6μmであるセルに試料を入れてTN素子を作製した。25℃において、このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。TN素子に印加した電圧の波形を陰極線オシロスコープで観測し、単位周期(16.7ミリ秒)における電圧曲線と横軸との間の面積を求めた。TN素子を取り除いたあと印加した電圧の波形から同様にして面積を求めた。電圧保持率(%)の値は、(電圧保持率)=(TN素子がある場合の面積値)/(TN素子がない場合の面積値)×100の値から算出した。
【0300】
このようにして得られた電圧保持率を「VHR−1」として示した。つぎに、このTN素子を100℃、250時間加熱した。このTN素子を25℃に戻したあと、上述した方法と同様の方法により電圧保持率を測定した。この加熱試験をした後に得た電圧保持率を「VHR−2」として示した。なお、この加熱テストは促進試験であり、TN素子の長時間耐久試験に対応する試験として用いた。
【実施例13】
【0301】
6O−B(2F,3F)B(2F,3F)O1HHB(2F,3F)−O4
(No.138) 5%
6O−B(2F,3F)H1OB(2F,3F)HB(2F,3F)−O4
(No.218) 3%
3−HH−O1 (8−1) 8%
5−HH−O1 (8−1) 4%
3−HH−4 (8−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 16%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 21%
2−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 5%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 7%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 14%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 12%
NI=66.5℃;Δn=0.081;η=32.6mPa・s;Δε=−4.4.
【実施例14】
【0302】
6O−B(2F,3F)H1OB(2F,3F)HB(2F,3F)−O4
(No.218) 3%
6O−B(2F,3F)ChB(2F,3F)ChB(2F,3F)−O4
(No.48) 3%
3−HB−O1 (8−5) 15%
3−HH−4 (8−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
2−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 8%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 12%
3−HHB−1 (9−1) 6%
NI=89.3℃;Δn=0.094;η=41.9mPa・s;Δε=−3.5.
【実施例15】
【0303】
6O−B(2F,3F)ChB(2F,3F)ChB(2F,3F)−O4
(No.48) 3%
6O−B(2F,3F)HEHHB(2F,3F)−O4 (No.458) 3%
5−HB−O2 (8−5) 8%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 22%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 22%
2−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 2%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 3%
4−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 2%
5−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 2%
3−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
5−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
V−HHB−1 (9−1) 6%
3−HHB−3 (9−1) 6%
3−HHEBH−5 (10−6) 3%
NI=91.5℃;Δn=0.105;η=36.2mPa・s;Δε=−4.6.
【実施例16】
【0304】
6O−B(2F,3F)HEHHB(2F,3F)−O4 (No.458) 3%
6O−B(2F,3F)B(2F,3F)eHHB(2F,3F)−O4
(No.258) 3%
3−HB−O1 (8−5) 15%
3−HH−4 (8−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
2−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 10%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 10%
6−HEB(2F,3F)−O2 (2−6) 6%
NI=86.5℃;Δn=0.089;η=39.6mPa・s;Δε=−3.9.
上記組成物100重量部に光学活性化合物(Op−05)を0.25重量部添加したときのピッチは61.8μmであった。
【実施例17】
【0305】
6O−B(2F,3F)B(2F,3F)O1HHB(2F,3F)−O4
(No.138) 3%
6O−B(2F,3F)B(2F,3F)eHHB(2F,3F)−O4
(No.258) 3%
2−HH−5 (8−1) 3%
3−HH−4 (8−1) 15%
3−HH−5 (8−1) 4%
3−HB−O2 (8−5) 12%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 15%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 15%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 5%
2−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
5−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 7%
3−HHB−1 (9−1) 3%
3−HHB−O1 (9−1) 3%
NI=80.5℃;Δn=0.096;η=27.0mPa・s;Δε=−4.5.
【実施例18】
【0306】
6O−B(2F,3F)B(2F,3F)O1HHB(2F,3F)−O4
(No.138) 5%
6O−B(2F,3F)ChB(2F,3F)ChB(2F,3F)−O4
(No.48) 3%
3−HB−O1 (8−5) 15%
3−HH−4 (8−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
2−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 5%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 13%
3−HHB−1 (9−1) 6%
NI=91.5℃;Δn=0.096;η=44.4mPa・s;Δε=−3.7.
【実施例19】
【0307】
6O−B(2F,3F)HEHB(2F,3F)B(2F,3F)−O2
(No.347) 5%
6O−B(2F,3F)HeHB(2F,3F)B(2F,3F)−O2
(No.297) 3%
3−HH−O1 (8−1) 8%
5−HH−O1 (8−1) 4%
3−HH−4 (8−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 7%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 21%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 7%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 10%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 20%
2−BB(2F,3F)B−3 (4−1) 5%
2−BB(2F,3F)B−4 (4−1) 5%
NI=78.9℃;Δn=0.099;η=32.9mPa・s;Δε=−4.1.
【産業上の利用可能性】
【0308】
本発明の液晶性化合物は、熱、光などに対する高い安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33を有し、さらに、高い負の誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有している。本発明の液晶組成物は、粘度が小さく、大きな光学異方性、適切な弾性定数K33、および高い負の誘電率異方性を有し、しきい値電圧が低く、さらに、ネマチック相の上限温度が高く、ネマチック相の下限温度が低い。本発明の液晶表示素子は、この液晶組成物を含有し、応答時間が短く、消費電力および駆動電圧が小さく、コントラスト比が大きく、広い温度範囲で使用可能であるので、時計、電卓、ワ−プロなどのディスプレイに広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。


式(1)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
環A、環A、および環Aのうち1つが1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるとき、他の2つは1,4−シクロへキシレン、または1,4−シクロヘキセニレンであり;
は、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【請求項2】
式(1−1)〜(1−3)のいずれか1つで表される請求項1に記載の化合物。


式(1−1)〜(1−3)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、または1,4−シクロヘキセニレンであり;
は、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【請求項3】
式(1−1−1)〜(1−3−1)のいずれか1つで表される請求項1に記載の化合物。


式(1−1−1)〜(1−3−1)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
は、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【請求項4】
式(1−4)で表される請求項1に記載の化合物。


式(1−4)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
は、単結合、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−である。
【請求項5】
式(1−1−1)〜(1−3−1)において、Zが−(CH−である請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
式(1−1−1)〜(1−3−1)において、Zが−CHO−または−OCH−である請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
式(1−1−1)〜(1−3−1)において、Zが−COO−または−OCO−である請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
式(1−4)において、Zが−COO−または−OCO−である請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物を少なくとも1つ含有する液晶組成物。
【請求項10】
式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)および(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項9に記載の液晶組成物。


式(2)〜(7)において、RおよびR10は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;
、Z、Z、およびZは独立して、−(CH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH−、または単結合であり;
およびLは独立して、フッ素または塩素であり;
q、r、s、t、u、およびvは独立して、0または1であり、r、s、t、およびuの和は、1または2である。
【請求項11】
式(8)、(9)および(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項9に記載の液晶組成物。


式(8)〜(10)において、R11およびR12は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ1,4−フェニレンであり;
およびZ10は独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH−、−CH=CH−、または単結合である。
【請求項12】
請求項11記載の式(8)、(9)および(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項10に記載の液晶組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの光学活性化合物および/または重合可能な化合物をさらに含有する請求項9〜12のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する請求項9〜13のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2011−231099(P2011−231099A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28747(P2011−28747)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】