説明

8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンおよび香料組成物

【課題】フレッシュな果実感の強調された、天然感あふれる香りを再現することができる新規香料化合物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンはドライウッディ調を伴う天然感、フレッシュ感あふれる、果実様香気・香味、および優れた持続性を有しており、これを配合した香料組成物は、飲食品、香粧品及び医薬品等の賦香用香料として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料化合物として有用な新規化合物8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンおよび該化合物を有効成分として含有する新規な香料組成物、さらには該化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガルバナム精油の香気成分に関しては、従来より多くの報告例が存在し、その特徴的な香気に興味がもたれている。ガルバナム精油は、バルサミックな樹皮様香気を基調としたドライウッディ調を伴う新鮮なグリーンノートを持っており、主にフレグランス用途において天然のグリーンノート素材として重要な位置を占めている。
ガルバナム精油の香気成分は、β−ピネン、Δ−カレン、α−ピネン、d−リモネン、1,3,5−ウンデカトリエンなどの炭化水素類が主香気成分として占めており、その他の成分としては、ピラジン類、チオカルボン酸類、エステル類が知られている。また、ガルバナム アブソリュートの特徴成分としては、12−トリデカノライド、13−テトラデカノライド、14−ペンタデカノライドが見出されている(非特許文献1)。また、ガルバナム精油からは、多不飽和化合物が重要な香気成分として見出されており、例えば、ガルバナムからの(3Z,5Z)−1,3,5−ウンデカトリエンおよび(3E,5Z)−1,3,5−ウンデカトリエンの存在の報告(非特許文献2)、その合成法(特許文献1)、1,3,5,7−ウンデカテトラエンの香料用途としての使用(特許文献2)などが挙げられる。
これらのウンデカトリエン、ウンデカテトラエンは優れた香気を有する。例えば、ウンデカトリエンの香気特性として、花様、例えば、ヒヤシンス、すみれ、水仙、ラベンダー、クチナシを想起させる香りで、その底に葉の香りが天然と類似した性質を発現または強化すると記載されている(特許文献1)。また、ウンデカテトラエンの香気特性は土壌及び樹木様の香気(特許文献2)と記載されている。
【0003】
【非特許文献1】特許庁公報 周知慣用技術集 香料 第III部 香粧品用香料 P32−33
【非特許文献2】Recherches,16(1967),5
【特許文献1】特開昭50−32105号公報
【特許文献2】特開昭59−42326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年消費者の嗜好性の多様化により、飲食品、香粧品等に使用する香料においても天然感、フレッシュ感あふれる素材が求められており、従来の香料物質を組み合わせることではその要求に十分対応しきれないのが現状である。したがって、本発明の目的は、天然感、フレッシュ感あふれる香りを再現することができる新規香料化合物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ガルバナム精油の興味深い香気に着目し、新たな微量香気成分の探索を行った。その結果、先に、文献未記載の新規物質である6,8,10−ウンデカトリエン−3−オン(特許第4057639号)および6,8,10−ウンデカトリエン−4−オン(特許第4057640号)を見出し、さらに該化合物がドライウッディ調を伴うグリーンノートを有しているばかりでなく、甘く、天然感、フレッシュ感あふれる、果実様香気を有していることを見出し特許出願し登録された。また、本発明者らは前記多不飽和化合物やその類縁化合物が優れた香気特性を有することに鑑み、多不飽和化合物誘導体を合成検討していたところ、6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン(特許第4057638号)もまた優れた香気特性を有し、その香気がフレッシュな果実感の強調された、天然感あふれる香りを有することを見出し特許出願し登録された。
【0006】
本発明者らは前記多不飽和化合物やその類縁化合物が優れた香気特性を有することに鑑み、さらに、多不飽和化合物誘導体を合成検討していたところ、今回偶然にも下記式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表される8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンが優れた香気特性を有し、その香気がドライウッディ調を伴う、天然感、フレッシュ感あふれる、果実様香気を有することを見出し、本発明を完成するに至った。なお、本発明の式(1)の化合物は従来文献未記載の新規化合物であり、前記提案等には記載されておらず、ましてや該化合物の香気香味ならびに該化合物が調合香料の素材として有用であることなどは、示唆も言及もされていない。
【0009】
かくして、本発明は
下記式(1)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表される8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンを提供するものである。
【0012】
本発明は、また、下記式(1)
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表される8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物を提供するものである。
【0015】
本発明は、また、下記式(2)
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンを提供するものである。
【0018】
本発明は、また、下記式(2)
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物を提供するものである。
【0021】
本発明は、また、下記式(3)
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンを提供するものである。
【0024】
本発明は、また、下記式(3)
【0025】
【化7】

【0026】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物を提供するものである。
【0027】
本発明は、さらに、下記式(4)
【0028】
【化8】

【0029】
(式中、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるホスホニウム塩または下記式(5)
【0030】
【化9】

【0031】
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
で表されるホスホナートを下記式(6)
【0032】
【化10】

【0033】
で表されるアルデヒドとウィッティヒ反応またはホーナー−エモンズ反応させることを特徴とする下記式(2)
【0034】
【化11】

【0035】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンの製造方法を提供するものである。
【0036】
本発明は、さらにまた、下記式(4)
【0037】
【化12】

【0038】
(式中、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるホスホニウム塩または下記式(5)
【0039】
【化13】

【0040】
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
で表されるホスホナートを下記式(7)
【0041】
【化14】

【0042】
で表されるアルデヒドとウィッティヒ反応またはホーナー−エモンズ反応させることを特徴とする下記式(3)
【0043】
【化15】

【0044】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0045】
本発明の式(1)の化合物は、ドライウッディ調を伴う、天然感、フレッシュ感あふれる、果実様香気・香味、および優れた持続性を有しており、該化合物は、飲食品類、香粧品類、保健・衛生・医薬品などに用いる香料組成物の調合素材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の化合物、その製造方法および香料組成物としての用途について、さらに詳細に説明する。
本発明の化合物である式(2)のトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンは次の反応経路1に従って合成することができる。
【0047】
【化16】

【0048】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
また、本発明の化合物である式(3)のシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンは次の反応経路2に従って合成することができる。
【0049】
【化17】

【0050】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
ここで、用語「アリール基」としては、例えば、各々場合により置換されていてもよいフェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられ、好ましくはフェニル基である。
用語「アルキル基」は、直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、1−メチルエチル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などが挙げられる。
Xが示す特に好ましいハロゲン原子としては、Cl、Brが挙げられる。
【0051】
式(4)のホスホニウム塩と式(6)または式(7)のアルデヒドとのウィッティヒ反応、または式(5)のホスホナートと式(6)または式(7)のアルデヒドとのホーナー−エモンズ反応は、文献(例えば、新実験化学講座14有機化合物の合成と反応[I]P224−243参照)に記載されているこれらの反応に典型的な条件下で実施することができる。
【0052】
式(4)のホスホニウム塩と式(6)または式(7)のアルデヒドとのウィッティヒ反応は、不活性有機溶媒中で塩基の存在下に行うことができ、有機溶媒としては、例えば、エーテル(例:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ハロゲン化炭化水素(例:ジクロロメタン、クロロホルムなど)、芳香族炭化水素(例:ベンゼン、トルエン、キシレンなど)または極性溶媒(例:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなど)が挙げられ、特にトルエン、テトラヒドロフラン,ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合溶媒が好適である。
【0053】
上記塩基としては、ウィッティヒ反応に通常用いられる塩基がいずれも使用することができ、例えば、アルカリ金属水酸化物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)、アルカリ金属水素化物(例:水素化ナトリウム、水素化カリウムなど)、有機リチウム化合物(n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウムなど)、アルカリ金属アミド(例:リチウムアミド、カリウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミドなど)、アルカリ金属ヘキサメチルジシラジド、アルカリ金属アルコラート(例:ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど)が挙げられ、これらの塩基の使用量は、式(4)のホスホニウム塩に対して、通常0.8〜5当量、好ましくは1〜3当量の範囲内とすることができる。
【0054】
また、式(4)のホスホニウム塩に対する式(6)または式(7)のアルデヒドの使用量は、式(4)のホスホニウム塩に対して、通常0.8〜5当量、好ましくは1〜3当量の範囲内とすることができる。
【0055】
上記ウィッティヒ反応は、反応温度としては、通常、−78〜60℃、好ましくは、−10〜25℃の範囲で、反応時間としては、通常0.5〜24時間、好ましくは0.5〜2時間の範囲で行うことができる。
式(5)のホスホナートと式(6)または式(7)のアルデヒドとのホーナー−エモンズ反応は、上記の式(4)のホスホニウム塩と式(6)または式(7)のアルデヒドとのウィッティヒ反応の場合と同様にして行うことができる。
かくして、用いる反応条件により、波線の結合におけるシス:トランス比が一般に10:1〜1:10の範囲内にある式(2)のトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンまたは式(3)のシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンが幾何異性体混合物の形態で得られる。
【0056】
出発原料として使用される式(6)または式(7)のアルデヒドはいかなる製法により得られたものでも使用することができるが、例えば、以下の反応経路3または反応経路4に従って合成することができる。
【0057】
【化18】

【0058】
【化19】

【0059】
式(6)または式(7)のアルデヒドの合成:
式(8)または式(10)のトランスまたはシス−3−ヘキセン−1−オールのエポキシ化反応は、文献(例えば、新実験化学講座14有機化合物の合成と反応[I]P605−607参照)に記載されているこれらの反応に典型的な条件下で実施することができる。例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなどの不活性有機溶媒中で、過酢酸やm−クロロ安息香酸などの過酸を用いることにより、式(9)または式(11)の化合物へと導くことができる。
【0060】
次いで、式(9)または式(11)の化合物を、温和な酸化条件下(例えば、J.Org.Chem.,48(1983),4155に記載のDess−Martin酸化、J.Am.Chem.Soc.,122(2000),7596に記載のo−ヨードキシ安息香酸(IBX)による酸化、Synthesis,(1994),639に記載のテトラプロピルアンモニウムペルルテナート(TPAP)による酸化などが挙げられる。)で反応させることにより、式(6)または式(7)のアルデヒドを得ることができる。
式(4)のホスホニウム塩または式(5)のホスホナートはそれ自体既知の物であり、文献(例えば、特開昭50−32105号公報)に記載の方法に従って合成してもよく、例として、反応経路5を挙げることができる。
【0061】
【化20】

【0062】
(式中、Rはアリール基を示し、X、Yはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
式(4)のホスホニウム塩および式(5)のホスホナートの合成:
出発物質である式(12)のグリニャール試薬はハロゲン化ビニルと金属マグネシウムから常法にしたがって調製することができる、ハロゲン化ビニルとしては塩化ビニルおよび臭化ビニルが好適である。式(13)のギ酸エチル1モルに対し、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの溶媒中で、2当量以上の式(12)のグリニャール試薬を反応させることにより式(14)のアルコールを得ることができる。
上記のグリニャール反応において、式(13)のギ酸エチルの代わりに、アクロレインを用いても同様に式(14)のアルコールを得ることができる。
【0063】
次いで、式(14)のアルコールをハロゲン化水素(HX)で求核置換反応を行うことにより、式(15)のハロゲン化物を得ることができる。ハロゲン化水素(HX)としては、塩化水素もしくは臭化水素が好ましく、本反応は式(14)のアルコール1モルに1〜3モルの塩化水素もしくは臭化水素の20〜60%水溶液を添加することにより行うことができる。
【0064】
引き続き、式(15)のハロゲン化物1モルを1〜5当量のホスフィン[P(R3]または亜りん酸エステル[P(OR]と常法により反応させることにより、式(4)のホスホニウム塩または式(5)のホスホナートを得ることができる。
式(2)および式(3)の化合物は、前記式(2)および式(3)における波線で示す部分の結合がシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物のいずれであっても、上記の如き香気・香味特性を有している。したがって、本発明の式(1)、式(2)および式(3)の化合物は、波線で示す部分の幾何学的配置にかかわりなく香料組成物において使用することができる。
【0065】
式(1)、式(2)または式(3)の化合物を香料組成物に配合する場合、その配合量は、配合の目的や香料組成物の種類などによって異なるが、香料組成物の重量を基準にして、通常の0.00001〜10重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%の範囲内とすることができる。
【0066】
かくして、本発明の式(1)、式(2)または式(3)の化合物は、例えば、果物(例:ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰など)、柑橘類(例:レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリンなど)、和柑橘類(例:みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑など)、茶類(例:紅茶、ウーロン茶、緑茶など)などの香料組成物に式(1)の化合物を上記の添加量で添加することにより、香料組成物にフレッシュで天然らしさのある果実感を賦与・強調することができる。また、ベルガモット調、ゼラニウム調、ローズ調、ブーケ調、ヒヤシンス調、ラン調、フローラル調などの調合香料に式(1)、式(2)または式(3)の化合物を上記の量で添加することにより、その香気の特徴をより強調することができ、天然感にあふれた香りを再現することができる。
【0067】
さらに、本発明によれば、式(1)、式(2)または式(3)の化合物を有効成分として含有する香料組成物を飲食品類、香粧品類、保健・衛生・医薬品類などに配合することにより、式(1)、式(2)または式(3)の化合物を香気・香味成分として含有する飲食品類、香粧品類、保健・衛生・医薬品類などを提供することができる。
【0068】
例えば、炭酸飲料、果汁飲料、果実酒飲料類、乳飲料などの飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類などの冷菓類;和・洋菓子、チューインガム類、パン類、コーヒー、紅茶、お茶、タバコなどの嗜好品類;和風スープ類、洋風スープ類などのスープ類;ハム、ソーセージなどの畜肉加工品;風味調味料、各種インスタント飲料ないし食品類、各種のスナック類などに、式(1)、式(2)または式(3)の化合物を有効成分として含有する香料組成物の適当量を添加することにより、そのユニークな香気・香味が賦与された飲食品類を提供することができる。また、例えば、シャンプー類、ヘアクリーム類、その他の毛髪化粧料基剤;オシロイ、口紅、その他の化粧用基剤や化粧用洗剤類基剤などに、式(1)、式(2)または式(3)の化合物を有効成分として含有する香料組成物を適当量添加することにより、そのユニークな香気が賦与された化粧品類を提供することができる。さらにまた、式(1)、式(2)または式(3)の化合物を有効成分として含有する香料組成物を例えば、洗濯用洗剤類、消毒用洗剤類、防臭洗剤類、その他各種の保健・衛生用洗剤類;歯磨き、ティシュー、トイレットペーパーなどに適当量配合することにより、そのユニークな香気が賦与された各種保健・衛生材料類;医薬品類などを提供することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0069】
実施例1
下記一連の反応式にしたがって式(2)のトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0070】
【化21】

【0071】
工程1:式(14)のアルコールの合成
アルゴン雰囲気下で、2Lフラスコに、マグネシウム48.6g(2.00mol)、テトラヒドロフラン300mLおよびヨウ素(触媒量)を仕込み、室温で撹拌しながら臭化ビニル214.0g(2.00mol)のテトラヒドロフラン(780mL)溶液を約20mL滴下した。反応溶液を30〜40℃まで加熱し反応を開始させてから、30〜40℃の反応温度が維持されるように1時間かけて臭化ビニルのテトラヒドロフラン溶液の残りを滴下した。滴下終了後、室温で1.5時間撹拌し、その後氷水で冷却した。それに式(13)のギ酸エチル74.0g(1.00mol)を5〜15℃で1時間かけて滴下し、その後室温で1時間撹拌した。反応溶液を1Lの飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、有機層を分離し、水層をジエチルエーテルを用いて抽出した。有機層を合わせ、飽和塩化アンモニウム水溶液および飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮を行った。得られた残渣(96.7g)を減圧下蒸留(〜54℃/7.8kPa)し、式(14)のアルコール68.2g(0.811mol,収率81%、純度96%)を得た。
【0072】
工程2:式(17)のブロマイドの合成
300mLフラスコに式(14)のアルコール52.5g(0.625mol)を仕み、メタノール−氷で冷却しながら、48%臭化水素水溶液126.2g(0.749mol)を1.5時間で滴下した。有機層を分離し、水で洗浄を行い、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、式(17)のブロマイド57.1g(0.388mol、収率62%、純度97%)を得た。
【0073】
工程3:式(18)のホスホニウム塩の合成
500mLフラスコに、トリフェニルホスフィン106.8g(0.407mol)およびトルエン250mLを仕込み、室温で式(17)のブロマイド57.1g(0.388mol)を15分かけて滴下した。さらに、室温で22時間撹拌した後、析出した結晶を濾過して、式(18)のホスホニウム塩132.4g(0.323mol、収率83%)を得た。
【0074】
工程4:式(9)のトランス−3,4−エポキシヘキサン−1−オールの合成
200mLフラスコに式(8)のトランス−3−ヘキセン−1−オール20.0g(200mmol)、ジクロロメタン60mL、炭酸水素ナトリウム21.9g(260mmol)を仕込み、氷水で冷却しながら過酢酸49.4g(濃度40%、260mmol)を加え、同温度で1時間15分間攪拌し、その後、室温まで昇温し2時間50分攪拌を続けた。次いで再度、過酢酸4.9g(濃度40%、26mmol)を加え、1時間10分攪拌した。反応溶液を氷水で冷却し、それに飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を非常にゆっくりと滴下した。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(13.5g)を減圧蒸留(〜65℃/0.4kPa)し、式(9)のトランス−3,4−エポキシヘキサン−1−オール9.7g(83.8mmol、収率42%)を得た。
【0075】
工程5:式(6)のトランス−3,4−エポキシヘキサナールの合成
300mLフラスコに室温下でIBX27.0g(96.5mmol)、DMSO140mLおよび式(9)のトランス−3,4−エポキシヘキサン−1−オール8.0g(68.9mmol)を仕込み、反応溶液を水で冷却しながら20〜25℃で3時間攪拌した。反応溶液に水140mLを加え、濾過し、濾液をジエチルエーテルで抽出した。有機層を水および飽和塩化ナトリウム水溶液にて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(10.9g)を減圧蒸留(〜49℃/0.4kPa)し、式(6)のトランス−3,4−エポキシヘキサナール2.3g(19.9mmol、収率29%)を得た。
【0076】
工程6:式(2)のトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンの合成
窒素ガス雰囲気下で、50mLフラスコに、式(6)のトランス−3,4−エポキシヘキサナール1.5g(13.1mmol)、式(18)のホスホニウム塩5.9g(14.4mmol)およびDMF10mLを仕込み、氷水で冷却しながらでNaOMe(28% in MeOH)8.9g(NaOMeとして2.5g,13.1mmol)を20分かけて滴下し、そのまま1時間攪拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、ヘキサンで抽出した。有機層を水および飽和塩化ナトリウム水溶液にて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(2.5g)に対してシリカゲルクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:酢酸エチル200:1)、次いで減圧蒸留(〜130℃/0.13kPa)し、式(2)のトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエン344mg(2.7mmol、収率16%)を得た。
【0077】
式(2)のトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンの物性
5位の幾何異性体比:E:Z=49:51
H−NMR(5位の幾何異性体混合物,CDCl,400MHz):δ 0.96,0.97(total 3H,each t,J=7.6,J=7.6),1.57−1.61(2H,m),2.29−2.55(2H,m),2.66−2.76(2H,m),5.05,5.09(total 1H,dd,d,J=1.2,10.0,J=10.0),5.18,5.22(total 1H,each d,J=16.8,J=16.8),5.46,5.68(total 1H,each dt,J=7.6,11.2,J=7.2,15.2),6.09−6.47(4H,m).
13C−NMR(5位の幾何異性体混合物,CDCl,100MHz):δ 9.9,25.0,25.1,30.5,35.3,57.3,57.4,59.41,59.44,117.0,117.7,126.3,127.9,129.3,130.8,132.2,132.6,132.9,134.2,136.88,136.93.
MS(m/z):27(12),39(25),41(27),51(11),57(23),65(17),77(67),79(56),91(100),105(18),117(8)164(M,28)
【0078】
実施例2
下記一連の反応式にしたがって式(3)のシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0079】
【化22】

【0080】
工程1〜工程3:式(18)のホスホニウム塩の合成
実施例1と同様に工程1〜工程3を経て、式(18)のホスホニウム塩132.4g(0.323mol)を得た。
【0081】
工程4:式(11)のシス−3,4−エポキシヘキサン−1−オールの合成
200mLフラスコに式(10)のシス−3−ヘキセン−1−オール20.0g(200mmol)、ジクロロメタン60mL、炭酸水素ナトリウム21.9g(260mmol)を仕込み、氷水で冷却しながら過酢酸49.4g(濃度40%、260mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応溶液を氷水で冷却しながら飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下した。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(22.6g)を減圧蒸留(〜74℃/0.4kPa)し、式(11)のシス−3,4−エポキシヘキサン−1−オールの16.8g(145mmol、収率72%)を得た。
【0082】
工程5:式(7)のシス−3,4−エポキシヘキサナールの合成
200mLフラスコに室温下でIBX21.5g(76.8mol)、DMSO86mLおよび式(11)のシス−3,4−エポキシヘキサン−1−オール6.4g(54.8mmol)を仕込み、反応溶液を水で冷却しながら20〜25℃で4時間攪拌した。反応溶液に水140mLを加え、濾過し、濾液を酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩水にて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(4.0g)を減圧蒸留(〜45℃/0.4kPa)し、式(7)のシス−3,4−エポキシヘキサナール2.4g(21.2mmol、収率39%)を得た。
【0083】
工程6:式(3)のシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンの合成
窒素ガス雰囲気下で、50mLフラスコに式(7)のシス−3,4−エポキシヘキサナール2.0g(17.5mmol)、式(18)のホスホニウム塩7.9g(19.3mmol)およびDMF10mLを仕込み、氷水で冷却しながらNaOMe(28% in MeOH)13.3g(NaOMeとして3.7g,19.3mmol)を滴下し、そのまま2時間攪拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、ヘキサンで抽出した。有機層を水および飽和塩化ナトリウム水溶液にて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(3.4g)に対してシリカゲルクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:酢酸エチル200:1)、次いで減圧蒸留(〜120℃/0.27kPa)し、式(3)のシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエン405mg(3.2mmol、収率14%)を得た。
【0084】
式(3)のシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンの物性
5位の幾何異性体比:E:Z=44:56
H−NMR(5位の幾何異性体混合物,CDCl,400MHz):δ 1.036,1.041(total 3H,each t,J=7.6,J=7.6),1.46−1.67(2H,m),2.22−2.55(2H,m),2.87−3.01(2H,m),5.062,5.065(total 1H,dd,d,J=1.2,10.0,J=10.0),5.19,5.23(total 1H,each d,J=16.8,J=16.8),5.50,5.73(total 1H,each dt,J=7.6,10.4,J=7.6,14.4),6.11−6.48(4H,m).
13C−NMR(5位の幾何異性体混合物,CDCl,100MHz):δ 10.6,21.05,21.08,26.8,31.3,56.1,56.3,58.28,58.34,117.1,117.8,126.7,127.9,129.6,130.6,132.3,132.4,132.8,134.2,136.88,136.92.
MS(m/z):27(13),39(27),41(29),51(12),57(27),65(17),77(57),79(55),91(100),105(21),117(8)164(M,29)
【0085】
実施例3
香気評価
実施例1および実施例2で得られたトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンおよびシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンならびに前記特許文献1および2に記載の1,3,5−ウンデカトリエンおよび1,3,5,7−ウンデカテトラエンのそれぞれ0.1%エタノール溶液をよく訓練されたパネラーにより香気評価を行った。香気評価は30mLサンプル瓶に前記0.1%エタノール溶液を用意し、瓶口の香気およびその溶液をにおい紙につけて行った。5名の平均的な香気評価を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
実施例4
パイナップル様の調合香料組成物として、下記表2に示す成分からなる基本調合香料組成物を調製した。
【0088】
【表2】

【0089】
上記組成物99.9gに実施例1で製造したトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンまたは実施例2で製造したシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエン0.1gを混合して、新規なパイナップル様の調合香料組成物を調製した。この新規調合香料組成物と該化合物を加えていない上記のパイナップル様調合香料組成物の香気について、専門パネラー10人により比較した。その結果、専門パネラー10人の全員が該化合物を加えた新規調合香料組成物は、いずれも、フレッシュで、天然感のある、果実感が強調された、天然パイナップルの特徴をとらえ、持続性の点でも格段に優れていると評価した。
【0090】
実施例5
ヒヤシンス様の調合香料組成物として、下記表3に示す成分からなる基本調合香料組成物を調製した。
【0091】
【表3】

【0092】
上記組成物99.9gに実施例1で製造したトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3(E),5−トリエンまたは実施例2で製造したシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3(E),5−トリエン0.1gを混合して、新規なヒヤシンス様の調合香料組成物を調製した。この新規調合香料組成物と該化合物を加えていない上記のヒヤシンス様調合香料組成物の香気について、専門パネラー10人により比較した。その結果、専門パネラー10人の全員が該化合物を加えた新規調合香料組成物は、フレッシュ感、天然感あふれる香りが強調された、天然ヒヤシンスの特徴をとらえ、持続性の点でも格段に優れていると評価した。
【0093】
実施例6(トランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンの5E体と5Z体の香気評価)
実施例1で得られた5位の幾何異性がE:Z=49:51のトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンに関して、ガスクロマトグラフィー匂い嗅ぎ法により(3E,5E)−トランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンと(3E,5Z)−トランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンそれぞれの香気を評価した。
【0094】
香気評価
(3E,5E)−トランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエン: シャープなドライウッディ調を伴う、甘い、天然感、フレッシュ感あふれる、果実様香気
(3E,5Z)−トランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエン:ドライウッディ調を伴う、甘い、天然感、フレッシュ感あふれる、果実様香気
【0095】
実施例7(シス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンの5E体と5Z体の香気評価)
実施例1で得られた5位の幾何異性がE:Z=44:56のシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンに関して、ガスクロマトグラフィー匂い嗅ぎ法により(3E,5E)−シス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンと(3E,5Z)−シス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンそれぞれの香気を評価した。
【0096】
香気評価
(3E,5E)−シス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエン: ドライウッディ調を伴う、天然感、フレッシュ感あふれる、みずみずしい果実様香気
(3E,5Z)−シス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエン:弱いドライウッディ調を伴う、天然感、フレッシュ感あふれる、果実様香気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表される8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエン。
【請求項2】
下記式(1)
【化2】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表される8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物。
【請求項3】
下記式(2)
【化3】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエン。
【請求項4】
下記式(2)
【化4】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物。
【請求項5】
下記式(3)
【化5】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエン。
【請求項6】
下記式(3)
【化6】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物。
【請求項7】
下記式(4)
【化7】

(式中、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるホスホニウム塩または下記式(5)
【化8】

(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
で表されるホスホナートを下記式(6)
【化9】

で表されるアルデヒドとウィッティヒ反応またはホーナー−エモンズ反応させることを特徴とする下記式(2)
【化10】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるトランス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンの製造方法。
【請求項8】
下記式(4)
【化11】

(式中、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるホスホニウム塩または下記式(5)
【化12】

(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
で表されるホスホナートを下記式(7)
【化13】

で表されるアルデヒドとウィッティヒ反応またはホーナー−エモンズ反応させることを特徴とする下記式(3)
【化14】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるシス−8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンの製造方法。

【公開番号】特開2010−13391(P2010−13391A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174411(P2008−174411)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】