9−cis−レチニルエステルを脂質ビヒクル中に含む医薬製剤
9-cis-レチニルエステルを脂質ビヒクル中に含む医薬製剤がヒトの網膜変性症を治療するのためのレチノイド補充療法として記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工レチノイドを含む医薬製剤、特に視覚発色団補充療法(visual chromophore replacement therapy)に好適な安定な製剤及び剤形(dosage formulation)に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚は目の網膜の光受容体による光エネルギーの電気シグナルへの生物学的変換に起因し、そのプロセスは光伝達(phototransduction)と呼ばれる。光伝達プロセスは視覚色素により開始される。例えば、発色団11-cis-レチナールはアポタンパク質であるGタンパク質結合受容体オプシンに結合してロドプシンを形成している(Palczewski K「Gタンパク質結合受容体ロドプシン」、Annual review of biochemistry 2006;75:743-767)。発色団は光子を吸収し、発色団のそのtrans形態への光異性化を引き起こし、信号伝達カスケードを引き起こす(Palczewski K. supra; Ridge KD et al.「視覚ロドプシンが光を見る:Gタンパク質シグナル伝達の構造及びメカニズム」、J Biol Chem 2007;282:9297-9301)。その後、異性化された発色団、all-trans-レチナールはall-trans-レチノールに還元され、網膜色素上皮(RPE)へと輸送され、レシチン:レチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)によりall-trans-レチニル脂肪酸エステルに変換される。最後に、all-trans-レチニル脂肪酸エステルから11-cis-レチナールが再生されてこのレチノイド(視覚)サイクルが完結する(例えば、米国特許出願公開第2004/0242704号、2006/028182号、2006/0221208号を参照)。
【0003】
11-cis-レチナールの再生は視力を維持するために重要である(Travis GH, et al.「視覚サイクルにおける欠陥により引き起こされる疾患:有力治療薬としてのレチノイド」 Annu Rev Pharmacol Toxicol 2007;47:469-512)。11-cis-レチナール生成における欠陥は多くの遺伝性変性網膜症に関連する(Gu SM, et al「RPE65における変異は深刻な常染色体劣性小児期発症網膜変性症を引き起こす」、Nature genetics 1997;17:194-197)。2つの例として、レーバー先天性黒内障(LCA)(深刻な視力障害を引き起こす小児期発症網膜症)及び網膜色素変性症(RP)(より変動の大きい発病年齢を有する別の網膜症)がある。
【0004】
LCAは遺伝性の深刻な現在治療不能の網膜変性症であり、小児期の失明の主因である。出生時又は出生直後、LCA患者は、遊走(wandering)眼振、黒内障瞳孔、錐体(cone)及び桿体(rod)の感度の欠如を伴う色素性網膜症、網膜電図(ERG)応答がないか、又は大きく減衰すること、及び錐体フリッカー振幅の約100倍の減少により裏付けられる深刻な視力障害を特徴的に示す(Perrault I, et al「レーバー先天性黒内障」、Mol Genet Metab 1999;68:200-208; Fazzi E, et al.「レーバー先天性黒内障:最新情報」、Eur J Paediatr Neurol 2003;7:13-22; Fazzi E, et al「健康な正期新生児群における痛みに対する応答:行動的観点及び生理学的観点」、Functional neurology 1996;11:35-43)。
【0005】
RPE65(RPEに特異的で豊富に存在する65kDaタンパク質であり、all-trans-レチニル脂肪酸エステルの11-cis-レチノールへの異性化を触媒する)は、一般に、11-cis-レチナールの再生に関与するレチノイド異性化酵素と考えられている(Hamel CP, et al.「インビトロで転写後に調節される新規網膜色素上皮特異的なミクロソームタンパク質、RPE65の分子クローニング及び発現」、J Biol Chem 1993;268:15751-15757; Jin M, et al「Rpe65はウシの網膜色素上皮におけるレチノイド異性化酵素である」、Cell 2005;122:449-459; Moiseyev G, et al「RPE65はレチノイド視覚サイクルにおいてイソメロヒドロラーゼである」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2005;102:12413-12418; Redmond TM, et al「RPE65の鍵となる残基の変異は視覚サイクルにおけるイソメロヒドロラーゼとしての酵素的役割を破壊する」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2005;102:13658-13663)。RPE65遺伝子変異はLCAの場合の16%までを占め、常染色体劣性(autosomal recessive)RPの場合の2%を占める(Gu SM, supra; Marlhens F, et al「RPE65における変異はレーバー先天性黒内障を引き起こす」、Nature genetics 1997;17:139-141; Morimura H, et al「常染色体劣性網膜色素変性症またはレーバー先天性黒内障の患者のRPE65遺伝子における変異」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 1998;95:3088-3093; Thompson DA, et al「遺伝性網膜変性症におけるRPE65変異の遺伝的特徴及び表現型」、Investigative ophthalmology & visual science 2000;41:4293-4299; Lorenz B, et al「RPE65変異を有する幼児における早期発症の深刻な杆体-錐体変性症」、Investigative ophthalmology & visual science 2000;41:2735-2742)。マウス及びイヌにおけるRpe65の自然又は工学的欠失は、11-cis-レチナールの欠乏、網膜電図(ERG)応答を劇的に減少させる早期発症型かつ徐々に進行する網膜変性症及びRPEにおけるall-trans-レチニル脂肪酸エステルの蓄積を伴う典型的なLCA病変を引き起こす(Redmond TM, et al「Rpe65は網膜視覚サイクルにおける11-cis-ビタミンAの生成に必須である」、Nature genetics 1998;20:344-351; Pang JJ, et al.「網膜変性症12(rd12):新規のヒトのレーバー先天性黒内障(LCA)についての自然発生的マウスモデル」、Molecular vision 2005;11:152-162; Wrigstad A, et al「遺伝性先天性夜盲症及び部分的昼盲症を有するブリアード犬における網膜及び網膜色素上皮の超構造的変化」、Experimental eye research 1992;55:805-818; Acland GM, et al「遺伝子治療は小児期失明のイヌモデルにおいて視力を回復させる」、Nature genetics 2001;28:92-95; Imanishi Y, et al「非侵襲性二光子イメージングは目におけるレチニルエステル貯蔵構造を明らかにする」、The Journal of cell biology 2004;164:373-383)。
【0006】
LCAを治療するためのいくつかの可能な治療が研究されている。RPE65遺伝子増強治療及び人工網膜は、早期の臨床評価において、視力救済の予備的で有望な兆候を示した(Bainbridge JW, et al「レーバー先天性黒内障における視覚機能に対する遺伝子治療の効果」、The New England journal of medicine 2008;358:2231-2239; Maguire AM, et al「レーバー先天性黒内障についての遺伝子導入の安全性及び効果」、The New England journal of medicine 2008;358:2240-2248; Yanai D, et al「網膜色素変性症を患う3つの対象における人工網膜を使用する視覚機能」、American journal of ophthalmology 2007;143:820-827)。
【0007】
最近、9-cis-レチナールによる視覚発色団補充療法が不完全なレチノイドサイクルをバイパスする新規薬理的アプローチとして提案された(Van Hooser JP, et al「小児期失明のマウスモデルにおける経口レチノイドによる視覚色素及び機能の急速回復」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2000;97:8623-8628; Van Hooser JP, et al「レーバー先天性黒内障のマウスモデルにおける視覚機能の回復」、J Biol Chem 2002;277:19173-19182; Aleman TS, et al「レーバー先天性黒内障を患うRpe65(-/-)マウス及びヒトにおける一時的瞳孔光反射障害」、Investigative ophthalmology & visual science 2004;45:1259-1271; Batten ML, et al「盲目のマウスモデルにおけるレーバー先天性黒内障の視覚機能の薬理及びrAAV遺伝子治療レスキュー」、PLoS Med 2005;2:e333)。9-cis-レチナールはオプシンに結合して、ロドプシンと同様に光伝達を開始する桿体細胞色素、イソロドプシンを形成する。9-cis-レチナール又はその前駆体の経口投与は目においてイソロドプシンとしてオプシンを再生し、ERG応答により評価される網膜機能を改善し、2つのLCAの遺伝モデルである、Rpe65及びLratノックアウトマウスにおける瞳孔の光反射を改善することを示した。レチノイドサイクルにおける欠陥により引き起こされる種々の形態の遺伝性網膜変性症の治療のための経口的、胃内、局所的(例えば、硝子体内)又は静脈投与製剤中において合成9-cis-レチノイドをさらに開発する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2000;97:8623-8628
【非特許文献2】J Biol Chem 2002;277:19173-19182
【非特許文献3】Investigative ophthalmology & visual science 2004;45:1259-1271
【非特許文献4】PLoS Med 2005;2:e333
【発明の概要】
【0009】
脂質ビヒクル中に人工(artificial)レチノイドを含む医薬製剤が記載される。人工レチノイドはレチノイドサイクルにおいて、重大な遮断(例えば、RPE65欠如又は変異)をバイパス(迂回)するのに使用することができ、それにより、オプシンと機能的に結合することができる人工cis-レチノイド発色団を生成する。1回、間欠及び毎日の投与処方(dosing regimen)を含む医薬製剤の剤形(dosage formulation)も記載される。
【0010】
従って、1つの実施形態は脂質ビヒクル及び1種以上の式(I):
【化1】
【0011】
(式中、Rはアルキル基又はアルケニル基である)
の9-cis-レチニルエステルを含み、該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む医薬製剤を提供する。
【0012】
特定の実施形態において、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテートである。
【0013】
特定の実施形態において、脂質ビヒクルはダイズ油を含む。
【0014】
別の実施形態は9-cis-レチニルエステルのそれを必要とする対象への毎日の投与に好適な剤形を提供し、該剤形は約1.25〜20mg/mLの9-cis-レチニルアセテートをダイズ油中に含み、ここで該剤形は対象の体表面積に対して約1.25〜40mg/m2の9-レチニルアセテートを24時間にわたって提供する。
【0015】
別の実施形態は9-cis-レチニルアセテートの対象への硝子体内投与による1回投与に好適な剤形を提供し、該剤形は約18〜40%mg/mLの9-cis-レチニルアセテートをダイズ油中に含む。
【0016】
別の実施形態は、ヒト対象においてレーバー先天性黒内障を治療する方法を提供し、有効量の1種以上の式(I)の9-cis-レチニルエステルを脂質ビヒクル中に有する医薬製剤を投与するステップを含み、該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。
【0017】
特定の実施形態において、該方法に用いられる式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテートである。
【0018】
特定の実施形態において、該方法に用いられる脂質ビヒクルはダイズ油を含む。
【0019】
別の実施形態は11-cis-レチナールが欠乏するヒト対象に、有効量の1種以上の式(I)の9-cis-レチニルエステルを脂質ビヒクル中に有する医薬製剤を投与するステップを含む方法を提供し、該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。
【0020】
特定の実施形態において、該方法に用いられる式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテートである。
【0021】
特定の実施形態において、該方法に用いられる脂質ビヒクルはダイズ油を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1Aは4種の油中の9-シス-レチニルアセテートの相対的吸収並びにその活性代謝体の9-シス-レチニル脂肪酸エステルの血漿滞留を示す。
【図1B】図1Bは4種の油中の9-シス-レチニルアセテートの相対的吸収並びにその活性代謝体のall-trans-レチニル脂肪酸エステルの血漿滞留を示す。
【図1C】図1Cは4種の油中の9-シス-レチニルアセテートの相対的吸収並びにその活性代謝体の9-cis-レチノールの血漿滞留を示す。
【図1D】図1Dは4種の油中の9-シス-レチニルアセテートの相対的吸収並びにその活性代謝体のall-trans-レチノールの血漿滞留を示す。
【図2】図2(A〜C)はダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの1回投与により処置したマウスにおけるa波及びb波の両方の振幅の用量依存的増加を示す。
【図3】図3は1回フラッシュ(flash)ERGを記録し、目のレチノイド量を測定した14日間の投薬処方を示す。
【図4A】図4Aは処置した5週齢Rpe65-/-マウスにおける、ERGのベースラインと比較したa波及びb波の両方の振幅の用量依存的増加を示す。
【図4B】図4Bは処置した5週齢Rpe65-/-マウスにおける、ERGのベースラインと比較したa波及びb波の両方の振幅の用量依存的増加を示す。
【図4C】図4Cは処置した5週齢Rpe65-/-マウスにおける、ERGのベースラインと比較したa波及びb波の両方の振幅の用量依存的増加を示す。
【図4D】図4Dは処置した5週齢Rpe65-/-マウスにおける、ERGのベースラインと比較したa波及びb波の両方の振幅の用量依存的増加を示す。
【図5】図5は投薬処方並びにダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後のERG評価及びレチノイド分析を示す。
【図6A】図6Aはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なa波の振幅を示す。
【図6B】図6Bはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なb波の振幅を示す。
【図6C】図6Cはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なa波の振幅を示す。
【図6D】図6Dはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なb波の振幅を示す。
【図6E】図6Eはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なa波の振幅を示す。
【図6F】図6Fはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なb波の振幅を示す。
【図7】図7は8週間の間欠投与処方及び毎日投与処方を示す。
【図8A】図8Aは間欠投与処方における28日目及び56日目のa波の振幅の用量依存的な増加を示す。
【図8B】図8Bは間欠投与処方における28日目及び56日目のb波の振幅の用量依存的な増加を示す。
【図8C】図8Cは毎日投与処方における28日目及び56日目のa波の振幅の用量依存的な増加を示す。
【図8D】図8Dは毎日投与処方における28日目及び56日目のb波の振幅の用量依存的な増加を示す。
【図9A−B】図9A、Bは9-シス-レチニルアセテートの長期投与後の、光受容体外節(photoreceptor outer segment)の長さにより評価される網膜に対する用量依存的な保護効果を示す。
【図9C−D】図9C、Dは9-シス-レチニルアセテートの長期投与後の、光受容体外節(photoreceptor outer segment)の長さにより評価される網膜に対する用量依存的な保護効果を示す。
【図9E−I】図9E〜Iは9-シス-レチニルアセテートの長期投与後の、光受容体外節(photoreceptor outer segment)の長さにより評価される網膜に対する用量依存的な保護効果を示す。
【図10】図10はHPLCにより測定される、9-シス-レチニルアセテート投与後のレチノイドの血漿中濃度を示す。
【図11A】図11Aは9-シス-レチニルアセテートによる14日間の毎日の治療を受けた後の目におけるレチノイド(レチナール)を示す。
【図11B】図11Bは9-シス-レチニルアセテートによる14日間の毎日の治療を受けた後の目におけるレチノイド(レチニル脂肪酸エステル)を示す。
【図11C】図11Cは9-シス-レチニルアセテートによる14日間の毎日の治療を受けた後の目におけるレチノイド(レチノール)を示す。
【図11D】図11Dは9-シス-レチニルアセテートによる14日間の毎日の治療を受けた後の肝臓におけるレチノイド(レチニル脂肪酸エステル)を示す。
【図12】図12は9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後の目からの9-cis-レチナール消失の動態を示す。
【図13】図13(A〜B)は9-cis-R-Acにより8週間の間欠及び毎日の治療を受けた後のRpe65-/-マウスの目におけるレチノイド含有量を示す。
【図14】図14(A〜C)は9-シス-レチニルアセテートによる間欠及び毎日の治療を受けた56日後のRpe65-/-マウスの肝臓におけるレチノイド分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
レチノイド補充療法に好適な9-cis-レチニルエステルの医薬製剤が記載される。特に、医薬製剤は1種以上の9-cis-レチニルエステル及び脂質ビヒクルを含む。
【0024】
本明細書において、「レチノイド」はビタミンAに関連する天然又は人工の一群の化合物をいう。構造的に、レチノイドは環状末端基、共役ポリエン側鎖及び極性末端基からなる共通のコア構造を共有する。天然のレチノイドは、例えば、ビタミンA(11-trans-レチノール)、11-trans-レチナール及び11-trans-レチノイン酸を含む。レチノイド補充療法に好適な人工又は合成レチノイドは、例えば、本明細書に定義される9-cis-レチニルエステル、9-cis-レチナール及び9-cis-レチノールを含む。
【0025】
本明細書に記載されるように、9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチナールのプロドラッグ形態又はプロドラッグの前駆体として機能することができ、この9-cis-レチナールはオプシンと機能的に結合することができ、従って例えばRPE65の欠乏又は変異にもかかわらずレチノイドサイクルを完結させることができる。
【0026】
従って、1つの実施形態は、1種以上の9-cis-レチニルエステル及び脂質ビヒクルを含み、1種以上の9-cis-レチニルエステルが脂質ビヒクル中に懸濁化されている医薬製剤を記載する。
【0027】
9-cis-レチニルエステル
9-cis-レチニルエステルは以下の式(I):
【化2】
【0028】
(Rはアルキル基又はアルケニル基である)の一般構造を指す。
【0029】
「アルキル」は炭素及び水素原子のみからなり、不飽和を含まず、22個までの炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。特定の実施形態において、アルキルは12〜17個の炭素原子(「C12-17アルキル」とも呼ばれる)を含むことができる。特定の実施形態において、アルキルは12〜15個の炭素原子(「C12-15アルキル」とも呼ばれる)を含むことができる。特定の実施形態において、アルキルは1〜8個の炭素原子(「C1-8アルキル」とも呼ばれる)を含むことができる。その他の実施形態において、アルキルは1〜6個の炭素原子(「C1-6アルキル」とも呼ばれる)を含むことができる。別の実施形態において、アルキルは1〜4個の炭素原子(「C1-4アルキル」とも呼ばれる)を含むことができる。アルキルは単結合により分子の残りの部分に結合しており、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(iso-プロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル等である。特記しない限り、本明細書において、アルキル基は、場合によって1個以上の以下の置換基:ハロ(-F、-Br、-Cl及び-Iを含む)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、オキソ(=O)及びヒドロキシル(-OH)により置換されていてもよい。
【0030】
「アルケニル」は炭素及び水素原子のみからなり、少なくとも1個の不飽和(C=C)を含み、2〜20個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。種々の実施形態において、RはC12-17アルケニル、C1-8アルケニル、C1-6アルケニル又はC1-4アルケニルである。特記しない限り、本明細書において、アルキル基は場合によって1個以上の以下の置換基: ハロ(-F、-Br、-Cl及び-Iを含む)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、オキソ(=O)及びヒドロキシル(-OH)により置換されていてもよい。
【0031】
特定の実施形態において、9-cis-レチニルエステルは人工レチノイドであり、9-cis-レチナールのプロドラッグ形態の前駆体(プレドラッグ)として作用する。より具体的には、9-cis-レチニルエステルは肝臓により代謝性プロドラッグ形態(すなわち、9-cis-レチニル脂肪酸エステル)に変換されることができ、それは肝臓中に肝臓脂質滴で貯蔵される。9-cis-レチニル脂肪酸エステル及びレチノールは肝臓から動員されて循環系に入り、目及びRPEに移動し、9-cis-レチナールに変換され、最終的に光受容体オプシンと結合して活性視覚色素を形成する。
【0032】
好ましい9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテート(Rがメチルである)である。さらに、「9-cis-R-Ac」とも記載される9-cis-レチニルアセテートは医薬プレドラッグであり、肝臓により9-cis-レチニル脂肪酸エステル(例えば、9-cis-レチニルパルミテート)へと代謝される。その後、9-cis-レチニル脂肪酸エステル及びレチノールは、欠如している発色団(例えば、11-cis-レチナール)の補充として目及びRPEで9-cis-レチナールへと変換される。
【0033】
9-cis-R-Acは最初にall-trans-レチニルアセテート(Sigma-Aldrich)をパラジウム触媒(例えば、パラジウム塩、酸化パラジウム)の存在下で9-cis-レチニルアセテートとall-trans-レチニルアセテートの混合物に変換することにより調製することができる。その後、9-cis-レチニルアセテートとall-trans-レチニルアセテートの混合物は加水分解されて 9-cis-レチノールとall-trans-レチノールの混合物を生じる。純粋な9-cis-レチノールは選択的再結晶、さらに、純粋な9-cis-R-Acへとエステル化することにより単離することができる。9-cis-R-Acを調製し、精製する方法の詳細は例えば、GB Patent No. 1452012に見出すことができる。
【0034】
その他の実施形態において、レチニルエステルはプロドラッグそのもの(プロドラッグの前駆体ではない)であり、目及びRPEで9-cis-レチナールに直接変換することができる。9-cis-レチニルエステルのプロドラッグ形態は、典型的には9-cis-レチニル脂肪酸エステル(式中、RはC11-21アルキルである)である。本明細書で使用される「脂肪酸」は飽和(アルキル)又は不飽和(アルケニル)であることができる、長鎖脂肪族を有するカルボン酸を指す。典型的には、脂肪族鎖は少なくとも11個の炭素を含み、21個までの炭素長であることができる。例示される脂肪酸は、限定されることなく、ラウリン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸を含む。
【0035】
従って、1つの実施形態において、RはC15アルキルであり、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルパルミテートである。
【0036】
別の実施形態において、RはC17アルキルであり、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルステアレートである。
【0037】
他の実施形態において、RはC17アルケニルであり、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルオレエートである。
【0038】
本明細書に記載される9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチノールから適切なエステル化剤を使用して、9-cis-R-Acの調製と同様の方法で調製することができ、その方法は当業者に公知である。
【0039】
本明細書で示されるように、プレドラッグの例となる低用量(1及び4mg/kg)の9-cis-R-Acは、臨床的に安全であり、ERG記録、目のレチノイド量、網膜組織診及び視力依存的挙動研究により評価されるように、Rpe65-/-マウスの視覚機能を維持するのに効果的であることが見出された。この化合物は、例えば、不十分なレチノイド発色団生成により引き起こされる網膜症を有するヒトを治療するのに有用である。
【0040】
脂質ビヒクル
典型的には、9-cis-レチニルエステルは油状物質であり、脂溶性である。従って、記載される医薬製剤は脂質ビヒクルをさらに含むことができる。
【0041】
9-cis-レチニルエステルは光及び酸素に敏感であるので、その安定性は製剤の有効性及び保存可能期間にとって極めて重要である。従って、好適な脂質ビヒクルはその中に懸濁化又は可溶化される9-cis-レチニルエステルを安定化する能力に基づいて選択される。
【0042】
本明細書において使用される「脂質」又は「脂質ビヒクル」は1種の脂肪酸エステル又は脂肪酸エステルの混合物を指す。種々の実施形態において、脂質ビヒクルは、1個のグリセロールが3個の脂肪酸によりエステル化されると形成する1個以上のトリグリセリドを含む。トリグリセリドは植物油及び動物性油の両方を含む。
【0043】
本発明における脂質ビヒクルにおいて、トリグリセリドは、多くの場合、単純にその対応する脂肪酸により呼ばれる。トリグリセリドの脂肪酸は飽和、一価不飽和及び多価不飽和であることができ、脂肪族鎖中の炭素-炭素二重結合(C=C)の数によって決まる。飽和脂肪酸は脂肪族鎖中に炭素-炭素二重結合を含まない。飽和脂肪酸の例は例えば、パルミチン酸及びステアリン酸を含む。一価不飽和脂肪酸は脂肪族鎖中に1個の炭素-炭素二重結合(C=C)を含む。一価不飽和脂肪酸の例は例えば、オレイン酸及びパルミトレイン酸を含む。多価不飽和脂肪酸は脂肪族鎖中に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む。多価不飽和脂肪酸の例は、例えば、リノール酸(2個のC=C)及びリノレン酸(3個のC=C)を含む。さらに、多価不飽和脂肪酸はω-3脂肪酸及びω-6脂肪酸を含み、脂肪族鎖中の最後のC=C結合の位置によって決まる。例えば、リノール酸はω-6脂肪酸であり、リノレン酸はω-3脂肪酸である。
【0044】
典型的には、脂質ビヒクルは脂肪酸の混合物であり、それぞれの相対量は脂質ビヒクル全体の特性、特にその耐酸性及びその中に懸濁化された9-cis-レチニルエステルを安定化する能力に影響を与え得る。
【0045】
特定の実施形態において、脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。特定の実施形態において、脂質ビヒクルはトリグリセリドリノレート及びトリグリセリドリノレネートを15未満の(重量)比で含み、それらは合計で脂質ビヒクルの全重量の50%より多い。
【0046】
他の実施形態において、脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む、植物由来の油又は油混合物であることができる。
【0047】
表1は多数の植物油及びその脂肪酸成分を重量%で示す(例えば、米国特許出願公開第2007071872号を参照されたい)。
【表1】
【0048】
ダイズ油は約62%の多価不飽和脂肪酸(54%リノール酸及び8%リノレン酸)、25%の一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)及び16%の飽和脂肪酸(11%のパルミチン酸及び5%のステアリン酸)を含むので、好適な脂質ビヒクルである。
【0049】
ダイズ油は透明で無臭の油であり、本明細書に記載される9-cis-レチニルエステルと混和性である。より低い濃度の多価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(例えば、それぞれ約30%及び20%未満の多価不飽和脂肪酸を含むキャノーラ油及びオリーブ油)と比較して、ダイズ油は予想外に優れた安定化効果を示し、2週間後の製剤中に保持される純粋な9-cis-レチニルアセテートの含有量がより高いことにより立証される。
【0050】
さらに、より高いω-6対ω-3多価不飽和脂肪酸の比を有する脂肪酸と比較しても、ダイズ油は優れた安定化効果を示す。例えば、ヒマワリ油は、多価不飽和脂肪酸の全体量(61%)はダイズ油と同程度であるが、ダイズ油(約7)よりも遥かに高いω-6対ω-3多価不飽和脂肪酸の比(600以上)を有する。表2(実施例1)に示されるように、ヒマワリ油の安定化効果はキャノーラ油と同等であり、いずれもダイズ油(USPグレード)よりも遥かに低い。
【0051】
注目すべきことに、ダイズ油製剤はその他のビヒクルの製剤と比較して、生理条件下に近い温度(例えば、40℃)で最も安定である。USPグレードのダイズ油は市販グレードのダイズ油よりも高い安定化を提供することが観測された(実施例1を参照されたい)ので、U.S.P.モノグラフを満たす高精製ダイズ油が好ましい(例えば、Spectrum Chemicalsにより提供される)。
【0052】
さらに、ダイズ油ビヒクルは9-cis-レチニルエステルの代謝体の最も高い血漿中濃度を提供する。図1は9-cis-R-Acの相対吸収及びその活性代謝体、9-cis-レチニル脂肪酸エステル及び9-cis-レチノールの血漿滞留(plasma retention)を示す。
【0053】
従って、ダイズ油は9-cis-レチニルエステルの安定性及びその活性代謝体の高い血漿滞留の両方を与え、それによって製剤に対して相乗利益を提供することが示される。
【0054】
別の実施形態において、脂質ビヒクルは72%の多価不飽和脂肪酸(62%のリノール酸及び12%のリノレン酸)を含むクルミ油である。
【0055】
さらに別の実施形態において、脂質ビヒクルは62%の多価不飽和脂肪酸(55%のリノール酸及び7%のリノレン酸)を含むコムギ胚芽油である。
【0056】
製剤:
一般に、医薬製剤は本明細書に記載されるいずれかの9-cis-レチニルエステルを好適な脂質ビヒクルと組み合わせて含むことができる。
【0057】
1つの実施形態は、脂質ビヒクル中に1種以上の9-cis-レチニルエステルを含む医薬製剤を記載し、ここで該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。
【0058】
別の実施形態は脂質ビヒクル中に9-cis-レチニルアセテートを含む医薬製剤を記載し、ここで該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。
【0059】
別の実施形態は脂質ビヒクル中に9-cis-レチニルアセテートを含む医薬製剤を記載し、ここで該脂質ビヒクルはトリグリセリドリノレート及びトリグリセリドリノレネートを15未満の(重量)比で含み、それらは合計で脂質ビヒクルの全重量の50%より多い。
【0060】
別の実施形態はダイズ油中に9-cis-レチニルアセテートを含む医薬製剤を記載する。
【0061】
さらに別の実施形態はクルミ油中に9-cis-レチニルアセテートを含む医薬製剤を記載する。
【0062】
さらに別の実施形態はコムギ胚芽油中に9-cis-レチニルアセテートを含む医薬製剤を記載する。
【0063】
種々の実施形態において、医薬製剤は40(重量)%以下の9-cis-レチニルエステル、30(重量)%以下の9-cis-レチニルエステル、25(重量)%以下の9-cis-レチニルエステル、10(重量)%以下の9-cis-レチニルエステル、5(重量)%以下の9-cis-レチニルエステルを含む。
【0064】
任意成分
本明細書に記載される医薬製剤は、場合によって、安定性及び口当たり(palatability)を高める追加の成分を含むことができる。例えば、1種以上の安定化剤(例えば、抗酸化剤)を含んでさらなる安定化効果を与えることができる。さらに、香味剤を経口投与製剤に加えて風味を改善することもできる。
【0065】
本発明において使用される抗酸化剤は以下の1種以上であることができる:α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビルパルミテート及びプロピルガレート、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)。エデト酸二ナトリウム及びエデント酸二ナトリウムカルシウム等のキレート剤を使用することができる。
【0066】
香味剤及び調味剤(flavor enhancer)は医薬製剤を患者に対してより口当たり良くする。本発明の組成物に含むことができる医薬品のための通常の香味剤及び調味剤は、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール及び酒石酸を含む。香味油(例えば、レモン油)は脂質ビヒクルと混和性であるので好ましい。ソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクロース、アスパルテーム、フルクトース、マンニトール及び転化糖等の甘味剤を加えて風味を改善することができる。
【0067】
水、界面活性剤又は乳化剤を油ベースの製剤に加えて経口投与(例えば、飲料の形態)又は静脈注射に好適な混合物を形成することができる。好適な界面活性剤及び乳化剤は、例えば、ダイズレシチン及びジパルミトイルホスファチジルコリンを含む。豆乳等の飲料も本明細書に記載される製剤に直接加えることができる。
【0068】
従って、1つの実施形態は1種以上の9-cis-レチニルエステル及び脂質ビヒクルを含む飲料を提供し、ここで該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。
【0069】
別の実施形態は9-cis-レチニルアセテート、ダイズ油及び飲用液体媒体を含む飲用処方、エマルション又は飲料を提供する。特定の実施形態において、飲用液体媒体は水中油型エマルション(例えば、乳又は豆乳)の形態である。アカシア、トラガカントゴム及びメチルセルロース等の追加の乳化剤を使用することもできる。
【0070】
別の実施形態はカプセルの形態の経口製剤を提供し、該カプセルは9-cis-レチニルアセテート及びダイズ油を含む。抗酸化剤等の追加の賦形剤を、当業者に理解されるように含むことができる。
【0071】
投与及び剤形(dosage formulation)
本明細書に記載される医薬製剤は経口、胃内又は局所投与(硝子体内注射及び静脈注射等)により対象に投与することができる。
【0072】
経口投与は経口強制投与により、又は1種以上の9-cis-レチニルエステル、脂質ビヒクル及び豆乳等の飲料を含む飲用処方若しくは飲料により達成することができる。
【0073】
胃内投与は胃内強制投与(例えば、胃管)により達成することができる。
【0074】
硝子体内(目を貫通する)注射及び静脈注射等の局所投与は、シリンジを使用して行う。
【0075】
本明細書において、「対象」は患者を指し、任意の哺乳類種、例えば、霊長類(特にヒト);齧歯動物(マウス、ラット及びハムスターを含む);ウサギ;ウマ;ウシ;イヌ;ネコ等であることができる。動物モデル(特に遺伝子組み換え動物)は、実験的研究のために興味深く、ヒトの疾患(例えば、LCA)の治療のためのモデルを提供する。
【0076】
典型的には、9-cis-R-Acの全ての投与量(dose)は脂質ビヒクル(ダイズ油、USP(Spectrum Chemicals)を含む)に完全に混和性である。種々の実施形態において、1回、間欠及び毎日の投与が記載される。さらに、血漿中のその薬理学的に活性な代謝体の吸収後の量に基づいて、投与量及び9-cisレチニルエステルの対応する有効性はERG、視力、全視野刺激試験(full-field stimulus testing)、視野分析、色覚試験を使用して評価することができる。
【0077】
実施例に示されるように、網膜機能のレベル及び持続の両方の用量依存的な改善が、LCAの2種の遺伝モデルであるRpe65及びLratノックアウトマウスにおいて観測された。重要なことには、薬理活性は投薬後十分に長い期間持続し、柔軟な間欠投与スケジュールの製剤を可能にした。
【0078】
より詳細には、9-cis-R-Ac(6.25〜50mg/kg)の1回投与はERG応答の有意な用量依存的改善をもたらした。2週間の毎日の投与(1、4及び12.5mg/kg)は十分に許容され、網膜機能の著しい改善をもたらした。ERG応答の有意な用量依存的改善が1、4及び12.5mg/kgの9-cis-R-Acの3日間の毎日投与の6日後に観察された。1及び4mg/kg/日の毎日の又は間欠9-cis-R-Ac治療を受け、2ヶ月後に評価されたマウスは、網膜機能及び形態の用量依存的改善を8週間後に示したが、匹敵する3月齢対照動物においては網膜機能が低下した。
【0079】
従って、1つの実施形態において、本明細書に記載されるのは9-cis-R-Acのそれを必要とする対象への24時間又は一日の投与に好適な剤形であり、約1.25〜20mg/mLの9-cis-R-Acをダイズ油中に含み、ここで該剤形は対象の体表面積に対して約1.25〜40mg/m2の9-cis-R-Acを24時間にわたって提供する。
【0080】
別の実施形態において、剤形は、剤形の経口又は胃内投与後約3〜6時間という、9-cis-レチニルエステルの最大又はピーク(peak)血漿中濃度到達時間を提供する。本明細書において、「ピーク血漿中濃度」は医薬品のバイオアベイラビリティを評価するための薬物動態尺度である。血漿中薬物濃度は吸収度とともに増加し、薬物消失速度が吸収速度と等しいとき、ピークに到達する。最大(ピーク)血漿中薬物濃度に加えて、対応するピーク時間(最大血漿中薬物濃度となる時)及び血漿中濃度-時間の曲線の下の面積も、薬物動態パラメーターである。
【0081】
別の実施形態において、本明細書に記載されるのは、9-cis-レチニルアセテートの対象への硝子体内投与による1回投与に好適な剤形であり、該剤形は約18〜40%mg/mLの9-cis-レチニルアセテートをダイズ油中に含む。硝子体内投与のための1回投与量の薬剤は、おそらく持続放出の様式により、何日も、何週間でさえ対象の目の中で存続し得ることが見出された。
【0082】
レチノイド補充療法としての9-cis-レチニルエステルの使用
さらに、式(I)の9-cis-レチニルエステルを、ヒトにおける網膜変性症のためのレチノイド補充療法として使用する方法も本明細書に記載される。
【0083】
9-cis-レチニルエステルのレチノイド補充療法としての効果及び安全性を評価するため、適切な動物モデルを実施した(実施例を参照)。使用した動物モデルはRpe65-/-マウスであり、該マウスは網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)が欠乏しており、ヒトにおけるLCAに類似する網膜症及び盲目症を発症している。
【0084】
プレドラッグの薬物動態的及び薬力学的効果は、Rpe65-/-マウスモデルにおいて、プレドラッグが肝臓でプロドラッグに(すなわち、大部分は9-cis-レチニルパルミテートに)変換されることを示す(実施例を参照)。また、Rpe65-/-マウスモデルにおいて、9-cis-レチノイドは2通りの方法で(すなわち、第一に、速やかに循環血液から、第2に、肝臓に貯蔵された9-cis-レチノイドから徐々に)網膜へと送達されたことが観測された(実施例5を参照)。
【0085】
Rpe65-/-マウスにおいていくつかの異なる処方を使用して薬効及び安全性を評価することにより、9-cis-レチニルエステルは合成レチノイドとして使用してヒトのLCA患者を治療することができることが示される。1及び4mg/kgの試験された最も低い投与量においてでさえ、投与量及び投与期間の両方に依存した視覚機能の保持が観測された(図2、4、6、8)。重要なことに、用量依存的な効果の延長がプレドラッグ9-cis-R-Acについて観測された。
【0086】
従って、1つの実施形態はヒト対象におけるレーバー先天性黒内障を治療する方法を提供し、該方法は有効量の1種以上の式(I)の9-cis-レチニルエステルをダイズ油中に有する医薬製剤を投与するステップを含む。さらに具体的な実施形態において、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテートである。
【0087】
別の実施形態は11-cis-レチナールが欠乏したヒト対象に、有効量の1種以上の式(I)の9-cis-レチニルエステルをダイズ油中に有する医薬製剤を投与するステップを含む方法を提供する。さらに具体的な実施形態において、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテートである。
【0088】
本明細書に記載した種々の実施形態を以下の非限定的な実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0089】
材料、手順及び分析
網膜電図(ERG)
ERGは、例えば、Maeda A, et al「インビボにおけるレチノイドサイクル中の光受容体特異的レチノールデヒドロゲナーゼの役割」、J Biol Chem 2005;280:18822-18832及びMaeda T, et al「錐体シナプスにおけるCaBP4の重要な役割」、Investigative ophthalmology & visual science 2005;46:4320-4327に記載されているように、麻酔をかけたマウスで記録した。
【0090】
簡潔にいうと、初めに、マウスを記録の前に一晩暗順応させた。その後、安全光下で、100mMのNaClを含む、10mMのリン酸ナトリウム(pH7.2)で希釈した6mg/mlのケタミン及び0.44mg/mlのキシラジンの20μl/g体重の腹腔内注射により、マウスに麻酔をかけた。瞳孔を1%のトロピカミドで拡張した。コンタクトレンズ電極を目に設置し、基準電極及び接地電極を耳及び尾にそれぞれ設置した。ERGを万能試験及び電気生理システム(UTAS) E-3000 (LKC Technologies, Inc.)で記録した。
【0091】
1回フラッシュ記録
白色光フラッシュ刺激は(-3.7〜2.8log cd.s.m-2の)の強度範囲で使用し、フラッシュ持続は強度(20μs〜1ms)に調節した。マウスを回復させるためにフラッシュ刺激間に十分な間隔(10秒〜10分)を入れて2〜5回の記録を行った。典型的には、4〜8匹の動物を記録する各点に使用した。一方向ANOVA試験を応答の統計分析に使用した。
【0092】
組織診及び免疫組織化学
上記のMaeda A, et alに記載されている組織診手順を目の分析に用いた。
【0093】
レチノイン酸及び非極性レチノイドの分析
抽出、レチノイド誘導体化及びレチノイドの分離に関する全ての実験方法はKodak No. 1 安全光(透過>560nm)により提供される暗赤色光下で行った。肝臓からのレチノイン酸抽出を、例えば、従来の上記のBatten ML. et al.に記載されるように行った。血漿、目、及び肝臓における極性レチノイドの分析をAgilent 1100 HPLC及び2個の直列の順相カラム(Varian Microsorb Silica 3μm, 4.6 × 100 mm (Varian, Palo Alto, CA)及びUltrasphere-Si, 5 μm, 4.6 × 250 mm カラム(上記Aleman TS, et al.))を使用して行った。ヘキサン:2-プロパノール:氷酢酸(1000:4.3:0.675; v/v/v)のアイソクラチック順相システムを1ml/分の流速で、20℃で、355nmの検出における溶出に使用した。校正をSigma-Aldrich から購入した標準all-trans-レチノイン酸及び9-cis-レチノイン酸で行った。血漿、目及び肝臓における非極性レチノイドの分析を順相HPLC(Ultrasphere-Si, 5 μm, 4.6 × 250 mm, Beckman, Fullerton, CA)により、10%エチルアセテート及び90%ヘキサンで、1.4ml/分の流速で、325nmにおける検出で、ダイオードアレイ検出器とHP Chemstation A.03.03ソフトウェアを備えるHP1100 HPLCにより行った。
【実施例1】
【0094】
種々の製剤の安定性試験
9-cis-R-Acの数種の異なる脂質ベースの製剤を調製して種々の脂質ビヒクルにより付与される安定性を試験した。9-cis-R-Acは光に敏感であると考えられるので、琥珀色のバイアル瓶をできる限り使用し、化合物は金色の蛍光灯下で取り扱った。9-cis-R-Acを-20℃の冷凍庫から取り出し、30分間室温に暖めた。化合物の取り扱いはアルゴンガス下で行った。化合物を予め計量した琥珀色のバイアル瓶に移し、バイアル瓶をアルゴンで充填する前にバイアル瓶を再計量して化合物の量を計算し、使用するまで20℃で保存した。
【0095】
種々の担体/ビヒクル中の9-cis-R-Ac(1.4〜8mg/mL)の混合物を正確に計量した化合物を含有する琥珀色のバイアル瓶を使用して調製した。サンプルバイアル瓶はアルゴンで充填し、ボルテックスすることにより混合した。ポリオキシル35ヒマシ油のサンプルを60℃に加熱した。それぞれのサンプルを2つに分け、4℃又は40℃で保存した。調製後(0日目)、及び、2週間までの時点において、HPLCによりサンプルの9-cis-レチニルアセテート含有量を分析した。
【0096】
HPLC分析用のサンプルはTHF中、約0.1mg/mLに希釈した。サンプルは、直後に、又は-20℃若しくは-70℃で分析まで1週間まで保存し、分析した。0日目における製剤濃度に対する回収率をHPLCにより計算した。
【0097】
予想外のことに、7日目及び14日目における製剤中の9-cis-R-Ac含有率(%)により示されるように、BHTを有する、及び有さないダイズ油(USP)は9-cis-R-Acに対して、特に生理的温度(約40℃)において、最も安定な懸濁液を提供する(表2)。
【表2】
【実施例2】
【0098】
9-cis-レチニルアセテート代謝体の血漿滞留
数種の異なる油ベースの調製物を調製して血漿中の9-cis-R-Acの吸収量を試験した。より具体的には、4種の異なるビヒクル油に懸濁化された9-cis-レチニルアセテート(50mg/kg)の50mg/kgの1回投与量を胃内強制投与により5週齢C57/B16マウスに投与し、その後の血漿中のレチノイド量を測定した(1群当り各時点について5匹(n=5))。
【0099】
9-cis-レチニル脂肪酸エステル及び9-cis-レチノール(9-cis-R-Acの2つの活性代謝体)の最も高い血漿中量により立証されるように(図1A、C、11)、キャノーラ油及びナタネ油と比較して、ダイズ油又はヒマワリ油中の9-cis-R-Acの溶液は9-cis-R-Acの最も優れた吸収を提供した。これらの9-cis-レチノイドの最も高い血漿中量は約3時間で観察された。all-trans-レチノール及びall-trans-レチニル脂肪酸エステルの血漿中量は、試験ビヒクル間で23時間の試験期間中に有意には相違せず、cis-レチノイドはall-trans-レチノイドに変換されないことを示した(図1B、D)。
【0100】
図10はHPLCにより測定される血漿中のレチノイドを示す。溶出相において早い時間に検出されるレチニル脂肪酸エステル(a、b、c)は9-cisの4つのピーク(a、c)及びall-trans(b)異性体の2つのピークからなる。9-cis-レチノール(d)及びall-trans-レチノール(e)の2つは後の時間に溶出する。
【実施例3】
【0101】
Rpe65-/-マウスの網膜機能に対する9-cis-R-Acの1回投与の効果
ダイズ油中の9-cis-R-Acの1回投与量(2〜50mg/kg)を5週齢Rpr65Rpe65-/-マウスに投与してプレ-プロドラッグ(pre-prodrug)9-cis-R-Acは人工発色団を目に送達することが可能であるかを試験した。
【0102】
マウスは50mg/kgの最も高い投与量を受けた後でさえ、明らかな臨床副作用を示さなかった。強制投与後3日間の暗順応(dark-adaption)後、暗順応1回フラッシュERGを記録し、目を集めて9-cis-レチナール量を評価した。
【0103】
処置を受けたマウスの暗順応ERGはa波及びb波の振幅の両方において用量依存的な増加を示した(図2A、B)。高い刺激強度の後に有意な改善を提供した最も低い試験投与量は6.25mg/kgであった。同様に、9-cis-レチナールの用量依存的蓄積も処置を受けたマウスの目に見られ、網膜機能における改善と関連付けられた(図2C)。9-cis-レチニル脂肪酸エステルは分析された目に全く検出されなかったが、一方、all-trans-レチニル脂肪酸エステルの量は約1〜1.6nmol/目の範囲であり、4つの処置群間で有意差はなかった。さらに、all-trans-レチニル脂肪酸エステル量は処置を受けていない5週齢Rpe65-/-マウスについて報告された1.2nmol/目と同程度であった。
【0104】
9-cis-レチノール(43pmol/目)は50mg/kg投与されたマウスの目においてのみ検出されたが、all-trans-レチノール量(14〜22pmol/目で変化している)は4つの処置群間で有意差はなかった。11-cis-レチノイドはいずれの目においても全く検出されなかった。
【0105】
従って、この結果は9-cis-レチナールはオプシンと再結合してイソロドプシンを形成することを示唆する。重要なことに、僅かな量の9-cis-レチナールが目に検出されたが、より低い投与量(2及び4mg/kg)の9-cis-R-AcはERG陽性効果を誘発した(図2)。
【実施例4】
【0106】
14日間毎日投与された9-cis-R-Acの効果
9-cis-R-Acの毎日の投与を繰り返した後にRpe65-/-及びC57BI/6マウスの網膜機能を試験した。これを直接試験するため、5週齢Rpe65-/-マウスに毎日、ダイズ油中の9-cis-R-Acを、1、4又は12.5mg/kgの投与量で、14日間強制投与した。マウスを処置の最後の11日間、暗環境と蛍光灯(500〜1500ルクスの照度範囲)環境に交互にさらした。暗順応1回フラッシュERGを記録し、目のレチノイド量を測定した(図3)。
【0107】
ERGは、処置を受けた5週齢Rpe65-/-マウスにおけるa波及びb波の両方の振幅においてベースラインのマウスと比較して用量依存的増加を示した(図4A、B)。1mg/kgの最も低い毎日の投与量でさえ、対照群と比較して網膜機能の有意な改善を引き起こした。
【0108】
9-cis-レチナールはノックアウト動物の目に容易に検出されたが、9-cis-レチニル脂肪酸エステル及び9-cis-レチノールは存在しなかった(図11A〜C)。しかし、9-cis-レチニル脂肪酸エステルはC57B1/6及びRpe65-/-マウスの両方の肝臓に用量依存的に蓄積した(図11D)。これらのマウスの目における9-cis-レチナールの存在はRpe65-/-マウスの1回投与の研究において観察されたような網膜機能の改善を示唆する。対応して、処置を受けたマウスの目における9-cis-レチナールの用量依存的蓄積も見られた(図4C)。ベースライン及び1mg/kgで処置を受けた群の目において9-cis-レチナールは検出されず、毎日の4及び12.5mg/kgの群において38±4及び95±14pmolがそれぞれ測定された。4及び12.5mg/kg/日の群において、9-cis-レチニル脂肪酸エステルの量は低く(1pmol/目)、他の群では目において検出されなかった(図4D)。all-trans-レチノール及び9-cis-レチノールのいずれもいずれの群においても見られなかった。9-cis-R-Acを与えられたマウスの目におけるall-trans-レチニル脂肪酸エステル(特に、パルミテート、ステアレート及びオレエート)の量は1.2〜1.4nmol/目の範囲であり、対照の目における量と有意には相違しなかった(5週齢において1.2nmol/目)。
【0109】
ERG応答は用量依存的な9-cis-R-Acの改善した効果及び動態を示した。9-cis-レチナール及び9-cis-レチニル脂肪酸エステルは目において検出されなかったが、最も低い投与量(1mg/kg)で、ベースラインの5週齢Rpe65-/-マウスと比較して、ERG応答が有意に改善された(図4)。このことは、9-cis-レチナールは露光(光8時間/暗16時間)により消失し、9-cis-レチニル脂肪酸エステルがイソロドプシンを再生させるのに代わりに利用されることを示唆する。実際、9-cis-レチニル脂肪酸エステルの蓄積が肝臓サンプルにおいて用量依存的に検出され、9-cis-レチニル脂肪酸エステルの肝臓貯蔵が貯蔵所(reservoir)として働いて目において9-cis-レチナール及びイソロドプシンを生成させることを示唆する。
【0110】
この14日の研究において、毎日の1、4、12.5及び50mg/kgの投与は5週齢C57B1/6及びRpe65-/-マウスの両方において十分に許容され、9-cis-R-Acの安全性を示している。
【実施例5】
【0111】
9-cis-R-Acの3日間の毎日の投与後の改善した網膜機能の持続期間
9-cis-レチニル脂肪酸エステルの形態の9-cis-レチノールは少なくとも12.5mg/kgの投与量を2週間繰り返して与えられたRpe65-/-マウスの肝臓に蓄積した(図11D、実施例4を参照されたい)。
【0112】
マウスの9-cis-レチノイドを貯蔵し、後にそれらをレチノイドサイクルに利用する能力を評価するため、ダイズ油中の9-cis-R-Acを1日1回、3日間連続して、1、4又は12.5mg/kg/日の投与量で暗条件に保たれた5週齢Rpe65-/-マウスに強制投与した。その後、8時間の500〜1500ルクスの照度範囲の蛍光に当てた後、暗い中で16時間というサイクルをマウスに経験させた。
【0113】
ERG及びレチノイド分析は露光の第1日目(4日目)、第2日目(5日目)、第4日目(7日目)及び第6日目(9日目)の終わりに行った(図5)。9日目までに記録されたERG応答のa波及びb波の振幅の両方(図6A〜F)はそれぞれの時点において用量依存的であり、露光の回数とともに減少した。試験された最も高い投与量(12.5mg/kg/日)で、9日目までのa波及びb波の両方が高い刺激度において有意に改善され(図6A〜B)、一方、4mg/kg及び1mg/kgの投与量ではそれぞれ9日目及び7日目までのa波の振幅において改善が示され、9日目までのb波の振幅において改善が示された(図6C〜F)。目における9-cis-レチナールの量も用量依存的であり、かつ経時的に減少した(図12)。この化合物は全ての処置を受けたマウスの網膜に4日目に検出され(図12)、4及び12.5mg/kgを投与されたマウスの網膜に5日目に、12.5mg/kg群のみにおいては7日目に検出された。処置を受けた又は対照マウスの網膜に9日目までに9-cis-レチナールは見られなかった。従って、9-cis-R-Acを目に送達し、Rpe65-/-マウスの網膜機能において改善を維持するためには9-cis-R-Acの毎日の投与は必要なかった。
【0114】
従って、ERG振幅は概して用量依存的に改善し、この陽性効果は処置後4〜6日まで維持されたことが示される。さらに、これらの動物の目に見られる9-cis-レチナール量についても同様であった。重要なことに、9-cis-レチナールが目に見られない場合、4mg/kg投与量におけるERG応答の改善は処置の中止後4〜6日間持続した。これらの結果は、対照群のERG応答は低下するが、9-cis-R-Ac治療の陽性効果は、ROSを安定化する網膜中の僅かな量の9-cis-レチナールにより保持されることを示す。その後、目のレチノイド量の動態が露光後の暗順応中に試験された。重要なことに、目の9-cis-レチニル脂肪酸エステル及び9-cis-レチナールの回復は暗順応中に起こった。
【実施例6】
【0115】
9-cis-R-Acの8週間の間欠投与及び毎日の投与後のRpe65-/-マウスの網膜機能
9-cis-R-Acの3通りの低い毎日の投与量で、ERG応答が露光の6日後に改善したので(図6A〜F)、8週に延長した間欠投与処方(regimen)を実施した。
【0116】
Rpe65-/-マウスを2つの群(間欠群及び毎日群)に分け、それぞれを全部で8週間、1又は4mg/kgの9-cis-R-Acで処置した。間欠群は、8週間の処方の各週の間、毎日3日間投与された後、4日間は休薬日であった。毎日群は8週間毎日投与された。投与処方は図7に図示される。500〜1500ルクスの照度範囲の蛍光灯に8時間当てた後、暗い中で16時間というサイクルをマウスに毎日経験させた。ERGを28日目と、さらに56日目に記録した後に、目及び肝臓のレチノイド分析並びに目の組織診のために組織が集められた。
【0117】
間欠群及び毎日群における処置を受けたマウスのERG応答は、28日目及び56日目の両方において対照群よりも有意に優れており、処置を受けたマウス及び対照マウスの両方において、28日目〜56日目の間に振幅の緩やかなテーパリングが見られた。間欠投与及び毎日投与処方の両方は28日目及び56日目において、a波及びb波の振幅の用量依存的増加を引き起こした(図8A〜D)。応答は間欠投与群よりも毎日投与群においてより顕著であった。処置スケジュールに関わらず、高い刺激度において、対照群に対してERG応答における有意な改善を引き起こすのに低投与量(1mg/kg)は十分であった。さらに、a波及びb波の振幅は28日目と56日目において類似し、一方で、9-cis-レチノールの摂取と貯蔵の間で均衡が達成され得ることを示唆し、他方では、レチノイドサイクルを支えるための網膜中のその動員(mobilization)を示唆する。これらのERGの結果と一致して、9-cis-レチナールは目で用量依存的に検出され、その量は毎日投与のマウスにおいてより高かった(図13A)。さらに、9-cis-レチニル脂肪酸エステルも、処置を受けた両方の動物の目において、低い可変量で見られた(図13B)。さらに、all-trans-レチニル脂肪酸エステルにおける僅かな用量依存的増加も、処方に関わらず処置を受けたマウスの目に見られた。9-cis-レチノールは、9-cis-レチニル脂肪酸エステルの形態で、用量及び処方依存的に肝臓中に実質的に貯蔵された(図14A、B)。all-trans-レチニル脂肪酸エステルの量は、4mg/kgの9-cis-R-Acを投与されたマウスにおいて僅かに増加し得たが、これらの処方により有意な影響を受けなかった。光受容体外節の長さ(図9A、C)及び外核層中の核の数(図9B、D)により評価されるように、9-cis-R-Acの長期間の投与は網膜に対して用量依存的保護効果を有した。これらの効果は網膜の下側よりも上側のほうがより顕著であった。網膜の断面のより高い拡大図は桿体外節(ROS)形態の改善及び4mg/kgの毎日処方又は4mg/kgの間欠処方で処置されたマウスから得られた網膜の上部及び下部の一部において油滴状構造がより少なくなることを示した(図9E、F)。しかし、1mg/kgの9-cis-R-Acの投与をいずれかのスケジュールにより与えられたマウスの網膜においては、対照マウス網膜(図9I)と比較して、有意な変化は観測されなかった(図9G、H)。
【0118】
重要なことに、9-cis-R-Acで間欠的に処置したマウスのERG応答は、56日目において、1及び4mg/kgの投与群間に有意差がないことを証明し、連続的に与えられる場合、より低い1mg/kgの投与量は同様の効果を有し得ることを示唆した。図9に示されるように、ROSの形態の改善は、4mg/kgで処置したマウスの上部網膜においてROSの長さが有意に長くなったように観測され、一方、1mg/kgの投与量を与えられた動物においては有意な変化は見られなかった。これらの観測から、1及び4mg/kgの両方の処置処方は、著しい臨床毒性又は目及び肝臓における異常なレチノイドの蓄積なしにRpe65-/-マウスにおける網膜機能を維持したことが強く示唆される。
【0119】
本明細書に記載されるかつ/又は、出願データシートに記載された全ての上記の米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0120】
前記のように、例示の目的で、本発明の特定の実施形態が本明細書に記載されているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく種々の変更が可能である。従って、本発明は添付の特許請求の範囲を除き限定されない。
【技術分野】
【0001】
本発明は人工レチノイドを含む医薬製剤、特に視覚発色団補充療法(visual chromophore replacement therapy)に好適な安定な製剤及び剤形(dosage formulation)に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚は目の網膜の光受容体による光エネルギーの電気シグナルへの生物学的変換に起因し、そのプロセスは光伝達(phototransduction)と呼ばれる。光伝達プロセスは視覚色素により開始される。例えば、発色団11-cis-レチナールはアポタンパク質であるGタンパク質結合受容体オプシンに結合してロドプシンを形成している(Palczewski K「Gタンパク質結合受容体ロドプシン」、Annual review of biochemistry 2006;75:743-767)。発色団は光子を吸収し、発色団のそのtrans形態への光異性化を引き起こし、信号伝達カスケードを引き起こす(Palczewski K. supra; Ridge KD et al.「視覚ロドプシンが光を見る:Gタンパク質シグナル伝達の構造及びメカニズム」、J Biol Chem 2007;282:9297-9301)。その後、異性化された発色団、all-trans-レチナールはall-trans-レチノールに還元され、網膜色素上皮(RPE)へと輸送され、レシチン:レチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)によりall-trans-レチニル脂肪酸エステルに変換される。最後に、all-trans-レチニル脂肪酸エステルから11-cis-レチナールが再生されてこのレチノイド(視覚)サイクルが完結する(例えば、米国特許出願公開第2004/0242704号、2006/028182号、2006/0221208号を参照)。
【0003】
11-cis-レチナールの再生は視力を維持するために重要である(Travis GH, et al.「視覚サイクルにおける欠陥により引き起こされる疾患:有力治療薬としてのレチノイド」 Annu Rev Pharmacol Toxicol 2007;47:469-512)。11-cis-レチナール生成における欠陥は多くの遺伝性変性網膜症に関連する(Gu SM, et al「RPE65における変異は深刻な常染色体劣性小児期発症網膜変性症を引き起こす」、Nature genetics 1997;17:194-197)。2つの例として、レーバー先天性黒内障(LCA)(深刻な視力障害を引き起こす小児期発症網膜症)及び網膜色素変性症(RP)(より変動の大きい発病年齢を有する別の網膜症)がある。
【0004】
LCAは遺伝性の深刻な現在治療不能の網膜変性症であり、小児期の失明の主因である。出生時又は出生直後、LCA患者は、遊走(wandering)眼振、黒内障瞳孔、錐体(cone)及び桿体(rod)の感度の欠如を伴う色素性網膜症、網膜電図(ERG)応答がないか、又は大きく減衰すること、及び錐体フリッカー振幅の約100倍の減少により裏付けられる深刻な視力障害を特徴的に示す(Perrault I, et al「レーバー先天性黒内障」、Mol Genet Metab 1999;68:200-208; Fazzi E, et al.「レーバー先天性黒内障:最新情報」、Eur J Paediatr Neurol 2003;7:13-22; Fazzi E, et al「健康な正期新生児群における痛みに対する応答:行動的観点及び生理学的観点」、Functional neurology 1996;11:35-43)。
【0005】
RPE65(RPEに特異的で豊富に存在する65kDaタンパク質であり、all-trans-レチニル脂肪酸エステルの11-cis-レチノールへの異性化を触媒する)は、一般に、11-cis-レチナールの再生に関与するレチノイド異性化酵素と考えられている(Hamel CP, et al.「インビトロで転写後に調節される新規網膜色素上皮特異的なミクロソームタンパク質、RPE65の分子クローニング及び発現」、J Biol Chem 1993;268:15751-15757; Jin M, et al「Rpe65はウシの網膜色素上皮におけるレチノイド異性化酵素である」、Cell 2005;122:449-459; Moiseyev G, et al「RPE65はレチノイド視覚サイクルにおいてイソメロヒドロラーゼである」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2005;102:12413-12418; Redmond TM, et al「RPE65の鍵となる残基の変異は視覚サイクルにおけるイソメロヒドロラーゼとしての酵素的役割を破壊する」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2005;102:13658-13663)。RPE65遺伝子変異はLCAの場合の16%までを占め、常染色体劣性(autosomal recessive)RPの場合の2%を占める(Gu SM, supra; Marlhens F, et al「RPE65における変異はレーバー先天性黒内障を引き起こす」、Nature genetics 1997;17:139-141; Morimura H, et al「常染色体劣性網膜色素変性症またはレーバー先天性黒内障の患者のRPE65遺伝子における変異」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 1998;95:3088-3093; Thompson DA, et al「遺伝性網膜変性症におけるRPE65変異の遺伝的特徴及び表現型」、Investigative ophthalmology & visual science 2000;41:4293-4299; Lorenz B, et al「RPE65変異を有する幼児における早期発症の深刻な杆体-錐体変性症」、Investigative ophthalmology & visual science 2000;41:2735-2742)。マウス及びイヌにおけるRpe65の自然又は工学的欠失は、11-cis-レチナールの欠乏、網膜電図(ERG)応答を劇的に減少させる早期発症型かつ徐々に進行する網膜変性症及びRPEにおけるall-trans-レチニル脂肪酸エステルの蓄積を伴う典型的なLCA病変を引き起こす(Redmond TM, et al「Rpe65は網膜視覚サイクルにおける11-cis-ビタミンAの生成に必須である」、Nature genetics 1998;20:344-351; Pang JJ, et al.「網膜変性症12(rd12):新規のヒトのレーバー先天性黒内障(LCA)についての自然発生的マウスモデル」、Molecular vision 2005;11:152-162; Wrigstad A, et al「遺伝性先天性夜盲症及び部分的昼盲症を有するブリアード犬における網膜及び網膜色素上皮の超構造的変化」、Experimental eye research 1992;55:805-818; Acland GM, et al「遺伝子治療は小児期失明のイヌモデルにおいて視力を回復させる」、Nature genetics 2001;28:92-95; Imanishi Y, et al「非侵襲性二光子イメージングは目におけるレチニルエステル貯蔵構造を明らかにする」、The Journal of cell biology 2004;164:373-383)。
【0006】
LCAを治療するためのいくつかの可能な治療が研究されている。RPE65遺伝子増強治療及び人工網膜は、早期の臨床評価において、視力救済の予備的で有望な兆候を示した(Bainbridge JW, et al「レーバー先天性黒内障における視覚機能に対する遺伝子治療の効果」、The New England journal of medicine 2008;358:2231-2239; Maguire AM, et al「レーバー先天性黒内障についての遺伝子導入の安全性及び効果」、The New England journal of medicine 2008;358:2240-2248; Yanai D, et al「網膜色素変性症を患う3つの対象における人工網膜を使用する視覚機能」、American journal of ophthalmology 2007;143:820-827)。
【0007】
最近、9-cis-レチナールによる視覚発色団補充療法が不完全なレチノイドサイクルをバイパスする新規薬理的アプローチとして提案された(Van Hooser JP, et al「小児期失明のマウスモデルにおける経口レチノイドによる視覚色素及び機能の急速回復」、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2000;97:8623-8628; Van Hooser JP, et al「レーバー先天性黒内障のマウスモデルにおける視覚機能の回復」、J Biol Chem 2002;277:19173-19182; Aleman TS, et al「レーバー先天性黒内障を患うRpe65(-/-)マウス及びヒトにおける一時的瞳孔光反射障害」、Investigative ophthalmology & visual science 2004;45:1259-1271; Batten ML, et al「盲目のマウスモデルにおけるレーバー先天性黒内障の視覚機能の薬理及びrAAV遺伝子治療レスキュー」、PLoS Med 2005;2:e333)。9-cis-レチナールはオプシンに結合して、ロドプシンと同様に光伝達を開始する桿体細胞色素、イソロドプシンを形成する。9-cis-レチナール又はその前駆体の経口投与は目においてイソロドプシンとしてオプシンを再生し、ERG応答により評価される網膜機能を改善し、2つのLCAの遺伝モデルである、Rpe65及びLratノックアウトマウスにおける瞳孔の光反射を改善することを示した。レチノイドサイクルにおける欠陥により引き起こされる種々の形態の遺伝性網膜変性症の治療のための経口的、胃内、局所的(例えば、硝子体内)又は静脈投与製剤中において合成9-cis-レチノイドをさらに開発する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2000;97:8623-8628
【非特許文献2】J Biol Chem 2002;277:19173-19182
【非特許文献3】Investigative ophthalmology & visual science 2004;45:1259-1271
【非特許文献4】PLoS Med 2005;2:e333
【発明の概要】
【0009】
脂質ビヒクル中に人工(artificial)レチノイドを含む医薬製剤が記載される。人工レチノイドはレチノイドサイクルにおいて、重大な遮断(例えば、RPE65欠如又は変異)をバイパス(迂回)するのに使用することができ、それにより、オプシンと機能的に結合することができる人工cis-レチノイド発色団を生成する。1回、間欠及び毎日の投与処方(dosing regimen)を含む医薬製剤の剤形(dosage formulation)も記載される。
【0010】
従って、1つの実施形態は脂質ビヒクル及び1種以上の式(I):
【化1】
【0011】
(式中、Rはアルキル基又はアルケニル基である)
の9-cis-レチニルエステルを含み、該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む医薬製剤を提供する。
【0012】
特定の実施形態において、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテートである。
【0013】
特定の実施形態において、脂質ビヒクルはダイズ油を含む。
【0014】
別の実施形態は9-cis-レチニルエステルのそれを必要とする対象への毎日の投与に好適な剤形を提供し、該剤形は約1.25〜20mg/mLの9-cis-レチニルアセテートをダイズ油中に含み、ここで該剤形は対象の体表面積に対して約1.25〜40mg/m2の9-レチニルアセテートを24時間にわたって提供する。
【0015】
別の実施形態は9-cis-レチニルアセテートの対象への硝子体内投与による1回投与に好適な剤形を提供し、該剤形は約18〜40%mg/mLの9-cis-レチニルアセテートをダイズ油中に含む。
【0016】
別の実施形態は、ヒト対象においてレーバー先天性黒内障を治療する方法を提供し、有効量の1種以上の式(I)の9-cis-レチニルエステルを脂質ビヒクル中に有する医薬製剤を投与するステップを含み、該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。
【0017】
特定の実施形態において、該方法に用いられる式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテートである。
【0018】
特定の実施形態において、該方法に用いられる脂質ビヒクルはダイズ油を含む。
【0019】
別の実施形態は11-cis-レチナールが欠乏するヒト対象に、有効量の1種以上の式(I)の9-cis-レチニルエステルを脂質ビヒクル中に有する医薬製剤を投与するステップを含む方法を提供し、該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。
【0020】
特定の実施形態において、該方法に用いられる式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテートである。
【0021】
特定の実施形態において、該方法に用いられる脂質ビヒクルはダイズ油を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1Aは4種の油中の9-シス-レチニルアセテートの相対的吸収並びにその活性代謝体の9-シス-レチニル脂肪酸エステルの血漿滞留を示す。
【図1B】図1Bは4種の油中の9-シス-レチニルアセテートの相対的吸収並びにその活性代謝体のall-trans-レチニル脂肪酸エステルの血漿滞留を示す。
【図1C】図1Cは4種の油中の9-シス-レチニルアセテートの相対的吸収並びにその活性代謝体の9-cis-レチノールの血漿滞留を示す。
【図1D】図1Dは4種の油中の9-シス-レチニルアセテートの相対的吸収並びにその活性代謝体のall-trans-レチノールの血漿滞留を示す。
【図2】図2(A〜C)はダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの1回投与により処置したマウスにおけるa波及びb波の両方の振幅の用量依存的増加を示す。
【図3】図3は1回フラッシュ(flash)ERGを記録し、目のレチノイド量を測定した14日間の投薬処方を示す。
【図4A】図4Aは処置した5週齢Rpe65-/-マウスにおける、ERGのベースラインと比較したa波及びb波の両方の振幅の用量依存的増加を示す。
【図4B】図4Bは処置した5週齢Rpe65-/-マウスにおける、ERGのベースラインと比較したa波及びb波の両方の振幅の用量依存的増加を示す。
【図4C】図4Cは処置した5週齢Rpe65-/-マウスにおける、ERGのベースラインと比較したa波及びb波の両方の振幅の用量依存的増加を示す。
【図4D】図4Dは処置した5週齢Rpe65-/-マウスにおける、ERGのベースラインと比較したa波及びb波の両方の振幅の用量依存的増加を示す。
【図5】図5は投薬処方並びにダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後のERG評価及びレチノイド分析を示す。
【図6A】図6Aはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なa波の振幅を示す。
【図6B】図6Bはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なb波の振幅を示す。
【図6C】図6Cはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なa波の振幅を示す。
【図6D】図6Dはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なb波の振幅を示す。
【図6E】図6Eはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なa波の振幅を示す。
【図6F】図6Fはダイズ油中の9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後9日目までに記録されたERG応答の用量依存的なb波の振幅を示す。
【図7】図7は8週間の間欠投与処方及び毎日投与処方を示す。
【図8A】図8Aは間欠投与処方における28日目及び56日目のa波の振幅の用量依存的な増加を示す。
【図8B】図8Bは間欠投与処方における28日目及び56日目のb波の振幅の用量依存的な増加を示す。
【図8C】図8Cは毎日投与処方における28日目及び56日目のa波の振幅の用量依存的な増加を示す。
【図8D】図8Dは毎日投与処方における28日目及び56日目のb波の振幅の用量依存的な増加を示す。
【図9A−B】図9A、Bは9-シス-レチニルアセテートの長期投与後の、光受容体外節(photoreceptor outer segment)の長さにより評価される網膜に対する用量依存的な保護効果を示す。
【図9C−D】図9C、Dは9-シス-レチニルアセテートの長期投与後の、光受容体外節(photoreceptor outer segment)の長さにより評価される網膜に対する用量依存的な保護効果を示す。
【図9E−I】図9E〜Iは9-シス-レチニルアセテートの長期投与後の、光受容体外節(photoreceptor outer segment)の長さにより評価される網膜に対する用量依存的な保護効果を示す。
【図10】図10はHPLCにより測定される、9-シス-レチニルアセテート投与後のレチノイドの血漿中濃度を示す。
【図11A】図11Aは9-シス-レチニルアセテートによる14日間の毎日の治療を受けた後の目におけるレチノイド(レチナール)を示す。
【図11B】図11Bは9-シス-レチニルアセテートによる14日間の毎日の治療を受けた後の目におけるレチノイド(レチニル脂肪酸エステル)を示す。
【図11C】図11Cは9-シス-レチニルアセテートによる14日間の毎日の治療を受けた後の目におけるレチノイド(レチノール)を示す。
【図11D】図11Dは9-シス-レチニルアセテートによる14日間の毎日の治療を受けた後の肝臓におけるレチノイド(レチニル脂肪酸エステル)を示す。
【図12】図12は9-シス-レチニルアセテートの3日間の毎日の投与後の目からの9-cis-レチナール消失の動態を示す。
【図13】図13(A〜B)は9-cis-R-Acにより8週間の間欠及び毎日の治療を受けた後のRpe65-/-マウスの目におけるレチノイド含有量を示す。
【図14】図14(A〜C)は9-シス-レチニルアセテートによる間欠及び毎日の治療を受けた56日後のRpe65-/-マウスの肝臓におけるレチノイド分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
レチノイド補充療法に好適な9-cis-レチニルエステルの医薬製剤が記載される。特に、医薬製剤は1種以上の9-cis-レチニルエステル及び脂質ビヒクルを含む。
【0024】
本明細書において、「レチノイド」はビタミンAに関連する天然又は人工の一群の化合物をいう。構造的に、レチノイドは環状末端基、共役ポリエン側鎖及び極性末端基からなる共通のコア構造を共有する。天然のレチノイドは、例えば、ビタミンA(11-trans-レチノール)、11-trans-レチナール及び11-trans-レチノイン酸を含む。レチノイド補充療法に好適な人工又は合成レチノイドは、例えば、本明細書に定義される9-cis-レチニルエステル、9-cis-レチナール及び9-cis-レチノールを含む。
【0025】
本明細書に記載されるように、9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチナールのプロドラッグ形態又はプロドラッグの前駆体として機能することができ、この9-cis-レチナールはオプシンと機能的に結合することができ、従って例えばRPE65の欠乏又は変異にもかかわらずレチノイドサイクルを完結させることができる。
【0026】
従って、1つの実施形態は、1種以上の9-cis-レチニルエステル及び脂質ビヒクルを含み、1種以上の9-cis-レチニルエステルが脂質ビヒクル中に懸濁化されている医薬製剤を記載する。
【0027】
9-cis-レチニルエステル
9-cis-レチニルエステルは以下の式(I):
【化2】
【0028】
(Rはアルキル基又はアルケニル基である)の一般構造を指す。
【0029】
「アルキル」は炭素及び水素原子のみからなり、不飽和を含まず、22個までの炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。特定の実施形態において、アルキルは12〜17個の炭素原子(「C12-17アルキル」とも呼ばれる)を含むことができる。特定の実施形態において、アルキルは12〜15個の炭素原子(「C12-15アルキル」とも呼ばれる)を含むことができる。特定の実施形態において、アルキルは1〜8個の炭素原子(「C1-8アルキル」とも呼ばれる)を含むことができる。その他の実施形態において、アルキルは1〜6個の炭素原子(「C1-6アルキル」とも呼ばれる)を含むことができる。別の実施形態において、アルキルは1〜4個の炭素原子(「C1-4アルキル」とも呼ばれる)を含むことができる。アルキルは単結合により分子の残りの部分に結合しており、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(iso-プロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル等である。特記しない限り、本明細書において、アルキル基は、場合によって1個以上の以下の置換基:ハロ(-F、-Br、-Cl及び-Iを含む)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、オキソ(=O)及びヒドロキシル(-OH)により置換されていてもよい。
【0030】
「アルケニル」は炭素及び水素原子のみからなり、少なくとも1個の不飽和(C=C)を含み、2〜20個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。種々の実施形態において、RはC12-17アルケニル、C1-8アルケニル、C1-6アルケニル又はC1-4アルケニルである。特記しない限り、本明細書において、アルキル基は場合によって1個以上の以下の置換基: ハロ(-F、-Br、-Cl及び-Iを含む)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、オキソ(=O)及びヒドロキシル(-OH)により置換されていてもよい。
【0031】
特定の実施形態において、9-cis-レチニルエステルは人工レチノイドであり、9-cis-レチナールのプロドラッグ形態の前駆体(プレドラッグ)として作用する。より具体的には、9-cis-レチニルエステルは肝臓により代謝性プロドラッグ形態(すなわち、9-cis-レチニル脂肪酸エステル)に変換されることができ、それは肝臓中に肝臓脂質滴で貯蔵される。9-cis-レチニル脂肪酸エステル及びレチノールは肝臓から動員されて循環系に入り、目及びRPEに移動し、9-cis-レチナールに変換され、最終的に光受容体オプシンと結合して活性視覚色素を形成する。
【0032】
好ましい9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテート(Rがメチルである)である。さらに、「9-cis-R-Ac」とも記載される9-cis-レチニルアセテートは医薬プレドラッグであり、肝臓により9-cis-レチニル脂肪酸エステル(例えば、9-cis-レチニルパルミテート)へと代謝される。その後、9-cis-レチニル脂肪酸エステル及びレチノールは、欠如している発色団(例えば、11-cis-レチナール)の補充として目及びRPEで9-cis-レチナールへと変換される。
【0033】
9-cis-R-Acは最初にall-trans-レチニルアセテート(Sigma-Aldrich)をパラジウム触媒(例えば、パラジウム塩、酸化パラジウム)の存在下で9-cis-レチニルアセテートとall-trans-レチニルアセテートの混合物に変換することにより調製することができる。その後、9-cis-レチニルアセテートとall-trans-レチニルアセテートの混合物は加水分解されて 9-cis-レチノールとall-trans-レチノールの混合物を生じる。純粋な9-cis-レチノールは選択的再結晶、さらに、純粋な9-cis-R-Acへとエステル化することにより単離することができる。9-cis-R-Acを調製し、精製する方法の詳細は例えば、GB Patent No. 1452012に見出すことができる。
【0034】
その他の実施形態において、レチニルエステルはプロドラッグそのもの(プロドラッグの前駆体ではない)であり、目及びRPEで9-cis-レチナールに直接変換することができる。9-cis-レチニルエステルのプロドラッグ形態は、典型的には9-cis-レチニル脂肪酸エステル(式中、RはC11-21アルキルである)である。本明細書で使用される「脂肪酸」は飽和(アルキル)又は不飽和(アルケニル)であることができる、長鎖脂肪族を有するカルボン酸を指す。典型的には、脂肪族鎖は少なくとも11個の炭素を含み、21個までの炭素長であることができる。例示される脂肪酸は、限定されることなく、ラウリン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸を含む。
【0035】
従って、1つの実施形態において、RはC15アルキルであり、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルパルミテートである。
【0036】
別の実施形態において、RはC17アルキルであり、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルステアレートである。
【0037】
他の実施形態において、RはC17アルケニルであり、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルオレエートである。
【0038】
本明細書に記載される9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチノールから適切なエステル化剤を使用して、9-cis-R-Acの調製と同様の方法で調製することができ、その方法は当業者に公知である。
【0039】
本明細書で示されるように、プレドラッグの例となる低用量(1及び4mg/kg)の9-cis-R-Acは、臨床的に安全であり、ERG記録、目のレチノイド量、網膜組織診及び視力依存的挙動研究により評価されるように、Rpe65-/-マウスの視覚機能を維持するのに効果的であることが見出された。この化合物は、例えば、不十分なレチノイド発色団生成により引き起こされる網膜症を有するヒトを治療するのに有用である。
【0040】
脂質ビヒクル
典型的には、9-cis-レチニルエステルは油状物質であり、脂溶性である。従って、記載される医薬製剤は脂質ビヒクルをさらに含むことができる。
【0041】
9-cis-レチニルエステルは光及び酸素に敏感であるので、その安定性は製剤の有効性及び保存可能期間にとって極めて重要である。従って、好適な脂質ビヒクルはその中に懸濁化又は可溶化される9-cis-レチニルエステルを安定化する能力に基づいて選択される。
【0042】
本明細書において使用される「脂質」又は「脂質ビヒクル」は1種の脂肪酸エステル又は脂肪酸エステルの混合物を指す。種々の実施形態において、脂質ビヒクルは、1個のグリセロールが3個の脂肪酸によりエステル化されると形成する1個以上のトリグリセリドを含む。トリグリセリドは植物油及び動物性油の両方を含む。
【0043】
本発明における脂質ビヒクルにおいて、トリグリセリドは、多くの場合、単純にその対応する脂肪酸により呼ばれる。トリグリセリドの脂肪酸は飽和、一価不飽和及び多価不飽和であることができ、脂肪族鎖中の炭素-炭素二重結合(C=C)の数によって決まる。飽和脂肪酸は脂肪族鎖中に炭素-炭素二重結合を含まない。飽和脂肪酸の例は例えば、パルミチン酸及びステアリン酸を含む。一価不飽和脂肪酸は脂肪族鎖中に1個の炭素-炭素二重結合(C=C)を含む。一価不飽和脂肪酸の例は例えば、オレイン酸及びパルミトレイン酸を含む。多価不飽和脂肪酸は脂肪族鎖中に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む。多価不飽和脂肪酸の例は、例えば、リノール酸(2個のC=C)及びリノレン酸(3個のC=C)を含む。さらに、多価不飽和脂肪酸はω-3脂肪酸及びω-6脂肪酸を含み、脂肪族鎖中の最後のC=C結合の位置によって決まる。例えば、リノール酸はω-6脂肪酸であり、リノレン酸はω-3脂肪酸である。
【0044】
典型的には、脂質ビヒクルは脂肪酸の混合物であり、それぞれの相対量は脂質ビヒクル全体の特性、特にその耐酸性及びその中に懸濁化された9-cis-レチニルエステルを安定化する能力に影響を与え得る。
【0045】
特定の実施形態において、脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。特定の実施形態において、脂質ビヒクルはトリグリセリドリノレート及びトリグリセリドリノレネートを15未満の(重量)比で含み、それらは合計で脂質ビヒクルの全重量の50%より多い。
【0046】
他の実施形態において、脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む、植物由来の油又は油混合物であることができる。
【0047】
表1は多数の植物油及びその脂肪酸成分を重量%で示す(例えば、米国特許出願公開第2007071872号を参照されたい)。
【表1】
【0048】
ダイズ油は約62%の多価不飽和脂肪酸(54%リノール酸及び8%リノレン酸)、25%の一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)及び16%の飽和脂肪酸(11%のパルミチン酸及び5%のステアリン酸)を含むので、好適な脂質ビヒクルである。
【0049】
ダイズ油は透明で無臭の油であり、本明細書に記載される9-cis-レチニルエステルと混和性である。より低い濃度の多価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸(例えば、それぞれ約30%及び20%未満の多価不飽和脂肪酸を含むキャノーラ油及びオリーブ油)と比較して、ダイズ油は予想外に優れた安定化効果を示し、2週間後の製剤中に保持される純粋な9-cis-レチニルアセテートの含有量がより高いことにより立証される。
【0050】
さらに、より高いω-6対ω-3多価不飽和脂肪酸の比を有する脂肪酸と比較しても、ダイズ油は優れた安定化効果を示す。例えば、ヒマワリ油は、多価不飽和脂肪酸の全体量(61%)はダイズ油と同程度であるが、ダイズ油(約7)よりも遥かに高いω-6対ω-3多価不飽和脂肪酸の比(600以上)を有する。表2(実施例1)に示されるように、ヒマワリ油の安定化効果はキャノーラ油と同等であり、いずれもダイズ油(USPグレード)よりも遥かに低い。
【0051】
注目すべきことに、ダイズ油製剤はその他のビヒクルの製剤と比較して、生理条件下に近い温度(例えば、40℃)で最も安定である。USPグレードのダイズ油は市販グレードのダイズ油よりも高い安定化を提供することが観測された(実施例1を参照されたい)ので、U.S.P.モノグラフを満たす高精製ダイズ油が好ましい(例えば、Spectrum Chemicalsにより提供される)。
【0052】
さらに、ダイズ油ビヒクルは9-cis-レチニルエステルの代謝体の最も高い血漿中濃度を提供する。図1は9-cis-R-Acの相対吸収及びその活性代謝体、9-cis-レチニル脂肪酸エステル及び9-cis-レチノールの血漿滞留(plasma retention)を示す。
【0053】
従って、ダイズ油は9-cis-レチニルエステルの安定性及びその活性代謝体の高い血漿滞留の両方を与え、それによって製剤に対して相乗利益を提供することが示される。
【0054】
別の実施形態において、脂質ビヒクルは72%の多価不飽和脂肪酸(62%のリノール酸及び12%のリノレン酸)を含むクルミ油である。
【0055】
さらに別の実施形態において、脂質ビヒクルは62%の多価不飽和脂肪酸(55%のリノール酸及び7%のリノレン酸)を含むコムギ胚芽油である。
【0056】
製剤:
一般に、医薬製剤は本明細書に記載されるいずれかの9-cis-レチニルエステルを好適な脂質ビヒクルと組み合わせて含むことができる。
【0057】
1つの実施形態は、脂質ビヒクル中に1種以上の9-cis-レチニルエステルを含む医薬製剤を記載し、ここで該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。
【0058】
別の実施形態は脂質ビヒクル中に9-cis-レチニルアセテートを含む医薬製剤を記載し、ここで該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。
【0059】
別の実施形態は脂質ビヒクル中に9-cis-レチニルアセテートを含む医薬製剤を記載し、ここで該脂質ビヒクルはトリグリセリドリノレート及びトリグリセリドリノレネートを15未満の(重量)比で含み、それらは合計で脂質ビヒクルの全重量の50%より多い。
【0060】
別の実施形態はダイズ油中に9-cis-レチニルアセテートを含む医薬製剤を記載する。
【0061】
さらに別の実施形態はクルミ油中に9-cis-レチニルアセテートを含む医薬製剤を記載する。
【0062】
さらに別の実施形態はコムギ胚芽油中に9-cis-レチニルアセテートを含む医薬製剤を記載する。
【0063】
種々の実施形態において、医薬製剤は40(重量)%以下の9-cis-レチニルエステル、30(重量)%以下の9-cis-レチニルエステル、25(重量)%以下の9-cis-レチニルエステル、10(重量)%以下の9-cis-レチニルエステル、5(重量)%以下の9-cis-レチニルエステルを含む。
【0064】
任意成分
本明細書に記載される医薬製剤は、場合によって、安定性及び口当たり(palatability)を高める追加の成分を含むことができる。例えば、1種以上の安定化剤(例えば、抗酸化剤)を含んでさらなる安定化効果を与えることができる。さらに、香味剤を経口投与製剤に加えて風味を改善することもできる。
【0065】
本発明において使用される抗酸化剤は以下の1種以上であることができる:α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビルパルミテート及びプロピルガレート、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)。エデト酸二ナトリウム及びエデント酸二ナトリウムカルシウム等のキレート剤を使用することができる。
【0066】
香味剤及び調味剤(flavor enhancer)は医薬製剤を患者に対してより口当たり良くする。本発明の組成物に含むことができる医薬品のための通常の香味剤及び調味剤は、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール及び酒石酸を含む。香味油(例えば、レモン油)は脂質ビヒクルと混和性であるので好ましい。ソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクロース、アスパルテーム、フルクトース、マンニトール及び転化糖等の甘味剤を加えて風味を改善することができる。
【0067】
水、界面活性剤又は乳化剤を油ベースの製剤に加えて経口投与(例えば、飲料の形態)又は静脈注射に好適な混合物を形成することができる。好適な界面活性剤及び乳化剤は、例えば、ダイズレシチン及びジパルミトイルホスファチジルコリンを含む。豆乳等の飲料も本明細書に記載される製剤に直接加えることができる。
【0068】
従って、1つの実施形態は1種以上の9-cis-レチニルエステル及び脂質ビヒクルを含む飲料を提供し、ここで該脂質ビヒクルは50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、該多価不飽和脂肪酸はω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む。
【0069】
別の実施形態は9-cis-レチニルアセテート、ダイズ油及び飲用液体媒体を含む飲用処方、エマルション又は飲料を提供する。特定の実施形態において、飲用液体媒体は水中油型エマルション(例えば、乳又は豆乳)の形態である。アカシア、トラガカントゴム及びメチルセルロース等の追加の乳化剤を使用することもできる。
【0070】
別の実施形態はカプセルの形態の経口製剤を提供し、該カプセルは9-cis-レチニルアセテート及びダイズ油を含む。抗酸化剤等の追加の賦形剤を、当業者に理解されるように含むことができる。
【0071】
投与及び剤形(dosage formulation)
本明細書に記載される医薬製剤は経口、胃内又は局所投与(硝子体内注射及び静脈注射等)により対象に投与することができる。
【0072】
経口投与は経口強制投与により、又は1種以上の9-cis-レチニルエステル、脂質ビヒクル及び豆乳等の飲料を含む飲用処方若しくは飲料により達成することができる。
【0073】
胃内投与は胃内強制投与(例えば、胃管)により達成することができる。
【0074】
硝子体内(目を貫通する)注射及び静脈注射等の局所投与は、シリンジを使用して行う。
【0075】
本明細書において、「対象」は患者を指し、任意の哺乳類種、例えば、霊長類(特にヒト);齧歯動物(マウス、ラット及びハムスターを含む);ウサギ;ウマ;ウシ;イヌ;ネコ等であることができる。動物モデル(特に遺伝子組み換え動物)は、実験的研究のために興味深く、ヒトの疾患(例えば、LCA)の治療のためのモデルを提供する。
【0076】
典型的には、9-cis-R-Acの全ての投与量(dose)は脂質ビヒクル(ダイズ油、USP(Spectrum Chemicals)を含む)に完全に混和性である。種々の実施形態において、1回、間欠及び毎日の投与が記載される。さらに、血漿中のその薬理学的に活性な代謝体の吸収後の量に基づいて、投与量及び9-cisレチニルエステルの対応する有効性はERG、視力、全視野刺激試験(full-field stimulus testing)、視野分析、色覚試験を使用して評価することができる。
【0077】
実施例に示されるように、網膜機能のレベル及び持続の両方の用量依存的な改善が、LCAの2種の遺伝モデルであるRpe65及びLratノックアウトマウスにおいて観測された。重要なことには、薬理活性は投薬後十分に長い期間持続し、柔軟な間欠投与スケジュールの製剤を可能にした。
【0078】
より詳細には、9-cis-R-Ac(6.25〜50mg/kg)の1回投与はERG応答の有意な用量依存的改善をもたらした。2週間の毎日の投与(1、4及び12.5mg/kg)は十分に許容され、網膜機能の著しい改善をもたらした。ERG応答の有意な用量依存的改善が1、4及び12.5mg/kgの9-cis-R-Acの3日間の毎日投与の6日後に観察された。1及び4mg/kg/日の毎日の又は間欠9-cis-R-Ac治療を受け、2ヶ月後に評価されたマウスは、網膜機能及び形態の用量依存的改善を8週間後に示したが、匹敵する3月齢対照動物においては網膜機能が低下した。
【0079】
従って、1つの実施形態において、本明細書に記載されるのは9-cis-R-Acのそれを必要とする対象への24時間又は一日の投与に好適な剤形であり、約1.25〜20mg/mLの9-cis-R-Acをダイズ油中に含み、ここで該剤形は対象の体表面積に対して約1.25〜40mg/m2の9-cis-R-Acを24時間にわたって提供する。
【0080】
別の実施形態において、剤形は、剤形の経口又は胃内投与後約3〜6時間という、9-cis-レチニルエステルの最大又はピーク(peak)血漿中濃度到達時間を提供する。本明細書において、「ピーク血漿中濃度」は医薬品のバイオアベイラビリティを評価するための薬物動態尺度である。血漿中薬物濃度は吸収度とともに増加し、薬物消失速度が吸収速度と等しいとき、ピークに到達する。最大(ピーク)血漿中薬物濃度に加えて、対応するピーク時間(最大血漿中薬物濃度となる時)及び血漿中濃度-時間の曲線の下の面積も、薬物動態パラメーターである。
【0081】
別の実施形態において、本明細書に記載されるのは、9-cis-レチニルアセテートの対象への硝子体内投与による1回投与に好適な剤形であり、該剤形は約18〜40%mg/mLの9-cis-レチニルアセテートをダイズ油中に含む。硝子体内投与のための1回投与量の薬剤は、おそらく持続放出の様式により、何日も、何週間でさえ対象の目の中で存続し得ることが見出された。
【0082】
レチノイド補充療法としての9-cis-レチニルエステルの使用
さらに、式(I)の9-cis-レチニルエステルを、ヒトにおける網膜変性症のためのレチノイド補充療法として使用する方法も本明細書に記載される。
【0083】
9-cis-レチニルエステルのレチノイド補充療法としての効果及び安全性を評価するため、適切な動物モデルを実施した(実施例を参照)。使用した動物モデルはRpe65-/-マウスであり、該マウスは網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)が欠乏しており、ヒトにおけるLCAに類似する網膜症及び盲目症を発症している。
【0084】
プレドラッグの薬物動態的及び薬力学的効果は、Rpe65-/-マウスモデルにおいて、プレドラッグが肝臓でプロドラッグに(すなわち、大部分は9-cis-レチニルパルミテートに)変換されることを示す(実施例を参照)。また、Rpe65-/-マウスモデルにおいて、9-cis-レチノイドは2通りの方法で(すなわち、第一に、速やかに循環血液から、第2に、肝臓に貯蔵された9-cis-レチノイドから徐々に)網膜へと送達されたことが観測された(実施例5を参照)。
【0085】
Rpe65-/-マウスにおいていくつかの異なる処方を使用して薬効及び安全性を評価することにより、9-cis-レチニルエステルは合成レチノイドとして使用してヒトのLCA患者を治療することができることが示される。1及び4mg/kgの試験された最も低い投与量においてでさえ、投与量及び投与期間の両方に依存した視覚機能の保持が観測された(図2、4、6、8)。重要なことに、用量依存的な効果の延長がプレドラッグ9-cis-R-Acについて観測された。
【0086】
従って、1つの実施形態はヒト対象におけるレーバー先天性黒内障を治療する方法を提供し、該方法は有効量の1種以上の式(I)の9-cis-レチニルエステルをダイズ油中に有する医薬製剤を投与するステップを含む。さらに具体的な実施形態において、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテートである。
【0087】
別の実施形態は11-cis-レチナールが欠乏したヒト対象に、有効量の1種以上の式(I)の9-cis-レチニルエステルをダイズ油中に有する医薬製剤を投与するステップを含む方法を提供する。さらに具体的な実施形態において、式(I)の9-cis-レチニルエステルは9-cis-レチニルアセテートである。
【0088】
本明細書に記載した種々の実施形態を以下の非限定的な実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0089】
材料、手順及び分析
網膜電図(ERG)
ERGは、例えば、Maeda A, et al「インビボにおけるレチノイドサイクル中の光受容体特異的レチノールデヒドロゲナーゼの役割」、J Biol Chem 2005;280:18822-18832及びMaeda T, et al「錐体シナプスにおけるCaBP4の重要な役割」、Investigative ophthalmology & visual science 2005;46:4320-4327に記載されているように、麻酔をかけたマウスで記録した。
【0090】
簡潔にいうと、初めに、マウスを記録の前に一晩暗順応させた。その後、安全光下で、100mMのNaClを含む、10mMのリン酸ナトリウム(pH7.2)で希釈した6mg/mlのケタミン及び0.44mg/mlのキシラジンの20μl/g体重の腹腔内注射により、マウスに麻酔をかけた。瞳孔を1%のトロピカミドで拡張した。コンタクトレンズ電極を目に設置し、基準電極及び接地電極を耳及び尾にそれぞれ設置した。ERGを万能試験及び電気生理システム(UTAS) E-3000 (LKC Technologies, Inc.)で記録した。
【0091】
1回フラッシュ記録
白色光フラッシュ刺激は(-3.7〜2.8log cd.s.m-2の)の強度範囲で使用し、フラッシュ持続は強度(20μs〜1ms)に調節した。マウスを回復させるためにフラッシュ刺激間に十分な間隔(10秒〜10分)を入れて2〜5回の記録を行った。典型的には、4〜8匹の動物を記録する各点に使用した。一方向ANOVA試験を応答の統計分析に使用した。
【0092】
組織診及び免疫組織化学
上記のMaeda A, et alに記載されている組織診手順を目の分析に用いた。
【0093】
レチノイン酸及び非極性レチノイドの分析
抽出、レチノイド誘導体化及びレチノイドの分離に関する全ての実験方法はKodak No. 1 安全光(透過>560nm)により提供される暗赤色光下で行った。肝臓からのレチノイン酸抽出を、例えば、従来の上記のBatten ML. et al.に記載されるように行った。血漿、目、及び肝臓における極性レチノイドの分析をAgilent 1100 HPLC及び2個の直列の順相カラム(Varian Microsorb Silica 3μm, 4.6 × 100 mm (Varian, Palo Alto, CA)及びUltrasphere-Si, 5 μm, 4.6 × 250 mm カラム(上記Aleman TS, et al.))を使用して行った。ヘキサン:2-プロパノール:氷酢酸(1000:4.3:0.675; v/v/v)のアイソクラチック順相システムを1ml/分の流速で、20℃で、355nmの検出における溶出に使用した。校正をSigma-Aldrich から購入した標準all-trans-レチノイン酸及び9-cis-レチノイン酸で行った。血漿、目及び肝臓における非極性レチノイドの分析を順相HPLC(Ultrasphere-Si, 5 μm, 4.6 × 250 mm, Beckman, Fullerton, CA)により、10%エチルアセテート及び90%ヘキサンで、1.4ml/分の流速で、325nmにおける検出で、ダイオードアレイ検出器とHP Chemstation A.03.03ソフトウェアを備えるHP1100 HPLCにより行った。
【実施例1】
【0094】
種々の製剤の安定性試験
9-cis-R-Acの数種の異なる脂質ベースの製剤を調製して種々の脂質ビヒクルにより付与される安定性を試験した。9-cis-R-Acは光に敏感であると考えられるので、琥珀色のバイアル瓶をできる限り使用し、化合物は金色の蛍光灯下で取り扱った。9-cis-R-Acを-20℃の冷凍庫から取り出し、30分間室温に暖めた。化合物の取り扱いはアルゴンガス下で行った。化合物を予め計量した琥珀色のバイアル瓶に移し、バイアル瓶をアルゴンで充填する前にバイアル瓶を再計量して化合物の量を計算し、使用するまで20℃で保存した。
【0095】
種々の担体/ビヒクル中の9-cis-R-Ac(1.4〜8mg/mL)の混合物を正確に計量した化合物を含有する琥珀色のバイアル瓶を使用して調製した。サンプルバイアル瓶はアルゴンで充填し、ボルテックスすることにより混合した。ポリオキシル35ヒマシ油のサンプルを60℃に加熱した。それぞれのサンプルを2つに分け、4℃又は40℃で保存した。調製後(0日目)、及び、2週間までの時点において、HPLCによりサンプルの9-cis-レチニルアセテート含有量を分析した。
【0096】
HPLC分析用のサンプルはTHF中、約0.1mg/mLに希釈した。サンプルは、直後に、又は-20℃若しくは-70℃で分析まで1週間まで保存し、分析した。0日目における製剤濃度に対する回収率をHPLCにより計算した。
【0097】
予想外のことに、7日目及び14日目における製剤中の9-cis-R-Ac含有率(%)により示されるように、BHTを有する、及び有さないダイズ油(USP)は9-cis-R-Acに対して、特に生理的温度(約40℃)において、最も安定な懸濁液を提供する(表2)。
【表2】
【実施例2】
【0098】
9-cis-レチニルアセテート代謝体の血漿滞留
数種の異なる油ベースの調製物を調製して血漿中の9-cis-R-Acの吸収量を試験した。より具体的には、4種の異なるビヒクル油に懸濁化された9-cis-レチニルアセテート(50mg/kg)の50mg/kgの1回投与量を胃内強制投与により5週齢C57/B16マウスに投与し、その後の血漿中のレチノイド量を測定した(1群当り各時点について5匹(n=5))。
【0099】
9-cis-レチニル脂肪酸エステル及び9-cis-レチノール(9-cis-R-Acの2つの活性代謝体)の最も高い血漿中量により立証されるように(図1A、C、11)、キャノーラ油及びナタネ油と比較して、ダイズ油又はヒマワリ油中の9-cis-R-Acの溶液は9-cis-R-Acの最も優れた吸収を提供した。これらの9-cis-レチノイドの最も高い血漿中量は約3時間で観察された。all-trans-レチノール及びall-trans-レチニル脂肪酸エステルの血漿中量は、試験ビヒクル間で23時間の試験期間中に有意には相違せず、cis-レチノイドはall-trans-レチノイドに変換されないことを示した(図1B、D)。
【0100】
図10はHPLCにより測定される血漿中のレチノイドを示す。溶出相において早い時間に検出されるレチニル脂肪酸エステル(a、b、c)は9-cisの4つのピーク(a、c)及びall-trans(b)異性体の2つのピークからなる。9-cis-レチノール(d)及びall-trans-レチノール(e)の2つは後の時間に溶出する。
【実施例3】
【0101】
Rpe65-/-マウスの網膜機能に対する9-cis-R-Acの1回投与の効果
ダイズ油中の9-cis-R-Acの1回投与量(2〜50mg/kg)を5週齢Rpr65Rpe65-/-マウスに投与してプレ-プロドラッグ(pre-prodrug)9-cis-R-Acは人工発色団を目に送達することが可能であるかを試験した。
【0102】
マウスは50mg/kgの最も高い投与量を受けた後でさえ、明らかな臨床副作用を示さなかった。強制投与後3日間の暗順応(dark-adaption)後、暗順応1回フラッシュERGを記録し、目を集めて9-cis-レチナール量を評価した。
【0103】
処置を受けたマウスの暗順応ERGはa波及びb波の振幅の両方において用量依存的な増加を示した(図2A、B)。高い刺激強度の後に有意な改善を提供した最も低い試験投与量は6.25mg/kgであった。同様に、9-cis-レチナールの用量依存的蓄積も処置を受けたマウスの目に見られ、網膜機能における改善と関連付けられた(図2C)。9-cis-レチニル脂肪酸エステルは分析された目に全く検出されなかったが、一方、all-trans-レチニル脂肪酸エステルの量は約1〜1.6nmol/目の範囲であり、4つの処置群間で有意差はなかった。さらに、all-trans-レチニル脂肪酸エステル量は処置を受けていない5週齢Rpe65-/-マウスについて報告された1.2nmol/目と同程度であった。
【0104】
9-cis-レチノール(43pmol/目)は50mg/kg投与されたマウスの目においてのみ検出されたが、all-trans-レチノール量(14〜22pmol/目で変化している)は4つの処置群間で有意差はなかった。11-cis-レチノイドはいずれの目においても全く検出されなかった。
【0105】
従って、この結果は9-cis-レチナールはオプシンと再結合してイソロドプシンを形成することを示唆する。重要なことに、僅かな量の9-cis-レチナールが目に検出されたが、より低い投与量(2及び4mg/kg)の9-cis-R-AcはERG陽性効果を誘発した(図2)。
【実施例4】
【0106】
14日間毎日投与された9-cis-R-Acの効果
9-cis-R-Acの毎日の投与を繰り返した後にRpe65-/-及びC57BI/6マウスの網膜機能を試験した。これを直接試験するため、5週齢Rpe65-/-マウスに毎日、ダイズ油中の9-cis-R-Acを、1、4又は12.5mg/kgの投与量で、14日間強制投与した。マウスを処置の最後の11日間、暗環境と蛍光灯(500〜1500ルクスの照度範囲)環境に交互にさらした。暗順応1回フラッシュERGを記録し、目のレチノイド量を測定した(図3)。
【0107】
ERGは、処置を受けた5週齢Rpe65-/-マウスにおけるa波及びb波の両方の振幅においてベースラインのマウスと比較して用量依存的増加を示した(図4A、B)。1mg/kgの最も低い毎日の投与量でさえ、対照群と比較して網膜機能の有意な改善を引き起こした。
【0108】
9-cis-レチナールはノックアウト動物の目に容易に検出されたが、9-cis-レチニル脂肪酸エステル及び9-cis-レチノールは存在しなかった(図11A〜C)。しかし、9-cis-レチニル脂肪酸エステルはC57B1/6及びRpe65-/-マウスの両方の肝臓に用量依存的に蓄積した(図11D)。これらのマウスの目における9-cis-レチナールの存在はRpe65-/-マウスの1回投与の研究において観察されたような網膜機能の改善を示唆する。対応して、処置を受けたマウスの目における9-cis-レチナールの用量依存的蓄積も見られた(図4C)。ベースライン及び1mg/kgで処置を受けた群の目において9-cis-レチナールは検出されず、毎日の4及び12.5mg/kgの群において38±4及び95±14pmolがそれぞれ測定された。4及び12.5mg/kg/日の群において、9-cis-レチニル脂肪酸エステルの量は低く(1pmol/目)、他の群では目において検出されなかった(図4D)。all-trans-レチノール及び9-cis-レチノールのいずれもいずれの群においても見られなかった。9-cis-R-Acを与えられたマウスの目におけるall-trans-レチニル脂肪酸エステル(特に、パルミテート、ステアレート及びオレエート)の量は1.2〜1.4nmol/目の範囲であり、対照の目における量と有意には相違しなかった(5週齢において1.2nmol/目)。
【0109】
ERG応答は用量依存的な9-cis-R-Acの改善した効果及び動態を示した。9-cis-レチナール及び9-cis-レチニル脂肪酸エステルは目において検出されなかったが、最も低い投与量(1mg/kg)で、ベースラインの5週齢Rpe65-/-マウスと比較して、ERG応答が有意に改善された(図4)。このことは、9-cis-レチナールは露光(光8時間/暗16時間)により消失し、9-cis-レチニル脂肪酸エステルがイソロドプシンを再生させるのに代わりに利用されることを示唆する。実際、9-cis-レチニル脂肪酸エステルの蓄積が肝臓サンプルにおいて用量依存的に検出され、9-cis-レチニル脂肪酸エステルの肝臓貯蔵が貯蔵所(reservoir)として働いて目において9-cis-レチナール及びイソロドプシンを生成させることを示唆する。
【0110】
この14日の研究において、毎日の1、4、12.5及び50mg/kgの投与は5週齢C57B1/6及びRpe65-/-マウスの両方において十分に許容され、9-cis-R-Acの安全性を示している。
【実施例5】
【0111】
9-cis-R-Acの3日間の毎日の投与後の改善した網膜機能の持続期間
9-cis-レチニル脂肪酸エステルの形態の9-cis-レチノールは少なくとも12.5mg/kgの投与量を2週間繰り返して与えられたRpe65-/-マウスの肝臓に蓄積した(図11D、実施例4を参照されたい)。
【0112】
マウスの9-cis-レチノイドを貯蔵し、後にそれらをレチノイドサイクルに利用する能力を評価するため、ダイズ油中の9-cis-R-Acを1日1回、3日間連続して、1、4又は12.5mg/kg/日の投与量で暗条件に保たれた5週齢Rpe65-/-マウスに強制投与した。その後、8時間の500〜1500ルクスの照度範囲の蛍光に当てた後、暗い中で16時間というサイクルをマウスに経験させた。
【0113】
ERG及びレチノイド分析は露光の第1日目(4日目)、第2日目(5日目)、第4日目(7日目)及び第6日目(9日目)の終わりに行った(図5)。9日目までに記録されたERG応答のa波及びb波の振幅の両方(図6A〜F)はそれぞれの時点において用量依存的であり、露光の回数とともに減少した。試験された最も高い投与量(12.5mg/kg/日)で、9日目までのa波及びb波の両方が高い刺激度において有意に改善され(図6A〜B)、一方、4mg/kg及び1mg/kgの投与量ではそれぞれ9日目及び7日目までのa波の振幅において改善が示され、9日目までのb波の振幅において改善が示された(図6C〜F)。目における9-cis-レチナールの量も用量依存的であり、かつ経時的に減少した(図12)。この化合物は全ての処置を受けたマウスの網膜に4日目に検出され(図12)、4及び12.5mg/kgを投与されたマウスの網膜に5日目に、12.5mg/kg群のみにおいては7日目に検出された。処置を受けた又は対照マウスの網膜に9日目までに9-cis-レチナールは見られなかった。従って、9-cis-R-Acを目に送達し、Rpe65-/-マウスの網膜機能において改善を維持するためには9-cis-R-Acの毎日の投与は必要なかった。
【0114】
従って、ERG振幅は概して用量依存的に改善し、この陽性効果は処置後4〜6日まで維持されたことが示される。さらに、これらの動物の目に見られる9-cis-レチナール量についても同様であった。重要なことに、9-cis-レチナールが目に見られない場合、4mg/kg投与量におけるERG応答の改善は処置の中止後4〜6日間持続した。これらの結果は、対照群のERG応答は低下するが、9-cis-R-Ac治療の陽性効果は、ROSを安定化する網膜中の僅かな量の9-cis-レチナールにより保持されることを示す。その後、目のレチノイド量の動態が露光後の暗順応中に試験された。重要なことに、目の9-cis-レチニル脂肪酸エステル及び9-cis-レチナールの回復は暗順応中に起こった。
【実施例6】
【0115】
9-cis-R-Acの8週間の間欠投与及び毎日の投与後のRpe65-/-マウスの網膜機能
9-cis-R-Acの3通りの低い毎日の投与量で、ERG応答が露光の6日後に改善したので(図6A〜F)、8週に延長した間欠投与処方(regimen)を実施した。
【0116】
Rpe65-/-マウスを2つの群(間欠群及び毎日群)に分け、それぞれを全部で8週間、1又は4mg/kgの9-cis-R-Acで処置した。間欠群は、8週間の処方の各週の間、毎日3日間投与された後、4日間は休薬日であった。毎日群は8週間毎日投与された。投与処方は図7に図示される。500〜1500ルクスの照度範囲の蛍光灯に8時間当てた後、暗い中で16時間というサイクルをマウスに毎日経験させた。ERGを28日目と、さらに56日目に記録した後に、目及び肝臓のレチノイド分析並びに目の組織診のために組織が集められた。
【0117】
間欠群及び毎日群における処置を受けたマウスのERG応答は、28日目及び56日目の両方において対照群よりも有意に優れており、処置を受けたマウス及び対照マウスの両方において、28日目〜56日目の間に振幅の緩やかなテーパリングが見られた。間欠投与及び毎日投与処方の両方は28日目及び56日目において、a波及びb波の振幅の用量依存的増加を引き起こした(図8A〜D)。応答は間欠投与群よりも毎日投与群においてより顕著であった。処置スケジュールに関わらず、高い刺激度において、対照群に対してERG応答における有意な改善を引き起こすのに低投与量(1mg/kg)は十分であった。さらに、a波及びb波の振幅は28日目と56日目において類似し、一方で、9-cis-レチノールの摂取と貯蔵の間で均衡が達成され得ることを示唆し、他方では、レチノイドサイクルを支えるための網膜中のその動員(mobilization)を示唆する。これらのERGの結果と一致して、9-cis-レチナールは目で用量依存的に検出され、その量は毎日投与のマウスにおいてより高かった(図13A)。さらに、9-cis-レチニル脂肪酸エステルも、処置を受けた両方の動物の目において、低い可変量で見られた(図13B)。さらに、all-trans-レチニル脂肪酸エステルにおける僅かな用量依存的増加も、処方に関わらず処置を受けたマウスの目に見られた。9-cis-レチノールは、9-cis-レチニル脂肪酸エステルの形態で、用量及び処方依存的に肝臓中に実質的に貯蔵された(図14A、B)。all-trans-レチニル脂肪酸エステルの量は、4mg/kgの9-cis-R-Acを投与されたマウスにおいて僅かに増加し得たが、これらの処方により有意な影響を受けなかった。光受容体外節の長さ(図9A、C)及び外核層中の核の数(図9B、D)により評価されるように、9-cis-R-Acの長期間の投与は網膜に対して用量依存的保護効果を有した。これらの効果は網膜の下側よりも上側のほうがより顕著であった。網膜の断面のより高い拡大図は桿体外節(ROS)形態の改善及び4mg/kgの毎日処方又は4mg/kgの間欠処方で処置されたマウスから得られた網膜の上部及び下部の一部において油滴状構造がより少なくなることを示した(図9E、F)。しかし、1mg/kgの9-cis-R-Acの投与をいずれかのスケジュールにより与えられたマウスの網膜においては、対照マウス網膜(図9I)と比較して、有意な変化は観測されなかった(図9G、H)。
【0118】
重要なことに、9-cis-R-Acで間欠的に処置したマウスのERG応答は、56日目において、1及び4mg/kgの投与群間に有意差がないことを証明し、連続的に与えられる場合、より低い1mg/kgの投与量は同様の効果を有し得ることを示唆した。図9に示されるように、ROSの形態の改善は、4mg/kgで処置したマウスの上部網膜においてROSの長さが有意に長くなったように観測され、一方、1mg/kgの投与量を与えられた動物においては有意な変化は見られなかった。これらの観測から、1及び4mg/kgの両方の処置処方は、著しい臨床毒性又は目及び肝臓における異常なレチノイドの蓄積なしにRpe65-/-マウスにおける網膜機能を維持したことが強く示唆される。
【0119】
本明細書に記載されるかつ/又は、出願データシートに記載された全ての上記の米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0120】
前記のように、例示の目的で、本発明の特定の実施形態が本明細書に記載されているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく種々の変更が可能である。従って、本発明は添付の特許請求の範囲を除き限定されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質ビヒクル及び1種以上の式(I):
【化1】
(式中、Rはアルキル基又はアルケニル基である)
の9-cis-レチニルエステルを含む医薬製剤であって、脂質ビヒクルが50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、多価不飽和脂肪酸がω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む、前記医薬製剤。
【請求項2】
RがC12〜17アルキル、C12〜17アルケニル、C1〜8アルキル、C1-6アルキル又はC1-4アルキルである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
Rがメチルであり、式(I)の9-cis-レチニルエステルが9-cis-レチニルアセテートである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
RがC15アルキルであり、式(I)の9-cis-レチニルエステルが9-cis-レチニルパルミテートである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
脂質ビヒクルがトリグリセリドリノレート及びトリグリセリドリノレネートを15未満の(重量)比で含み、それらは合計で脂質ビヒクルの全重量の50%より多い、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
脂質ビヒクルがダイズ油を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
脂質ビヒクルがクルミ油を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
脂質ビヒクルがコムギ胚芽油を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
抗酸化剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
抗酸化剤がα-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビルパルミテート、プロピルガレート、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)若しくはキレート剤又はその組合せである、請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
1種以上の香味剤又は香味油をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
9-cis-レチニルエステルのそれを必要とする対象への毎日の投与に好適な剤形であって、剤形が約1.25〜20mg/mLの9-cis-レチニルアセテートをダイズ油中に含み、ここで、剤形が対象の体表面積に対して約1.25〜40mg/m2の9-レチニルアセテートを24時間にわたって提供する、前記剤形。
【請求項13】
代謝性9-cis-レチニルエステルの最大血漿中濃度に剤形の経口又は強制投与後約3〜6時間で到達する、請求項12に記載の剤形。
【請求項14】
9-cis-レチニルアセテートの対象への硝子体内投与による1回投与に好適な剤形であって、剤形が約18〜40%mg/mLの9-cis-レチニルアセテートをダイズ油中に含む、前記剤形。
【請求項15】
製剤が9-cis-レチニルアセテート、ダイズ油及びエマルションを含む飲料である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
エマルションが豆乳若しくは牛乳又はその混合物である、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
それを必要とするヒト対象において、レーバー先天性黒内障を治療する方法であって、脂質ビヒクル及び1種以上の式(I):
【化2】
の9-cis-レチニルエステルを有する医薬製剤を、対象の治療に有効な量で対象に投与することを含み、脂質ビヒクルが50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、多価不飽和脂肪酸がω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む、前記方法。
【請求項18】
式(I)の9-cis-レチニルエステルが9-cis-レチニルアセテートであり、脂質ビヒクルがダイズ油である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
11-cis-レチナールが欠乏している対象を治療する方法であって、脂質ビヒクル及び1種以上の式(I):
【化3】
の9-cis-レチニルエステルを有する医薬製剤を、対象の治療に有効な量で対象に投与するステップを含み、脂質ビヒクルが50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、多価不飽和脂肪酸がω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む、前記方法。
【請求項20】
式(I)の9-cis-レチニルエステルが9-cis-レチニルアセテートであり、脂質ビヒクルがダイズ油である、請求項19に記載の方法。
【請求項1】
脂質ビヒクル及び1種以上の式(I):
【化1】
(式中、Rはアルキル基又はアルケニル基である)
の9-cis-レチニルエステルを含む医薬製剤であって、脂質ビヒクルが50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、多価不飽和脂肪酸がω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む、前記医薬製剤。
【請求項2】
RがC12〜17アルキル、C12〜17アルケニル、C1〜8アルキル、C1-6アルキル又はC1-4アルキルである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
Rがメチルであり、式(I)の9-cis-レチニルエステルが9-cis-レチニルアセテートである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
RがC15アルキルであり、式(I)の9-cis-レチニルエステルが9-cis-レチニルパルミテートである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
脂質ビヒクルがトリグリセリドリノレート及びトリグリセリドリノレネートを15未満の(重量)比で含み、それらは合計で脂質ビヒクルの全重量の50%より多い、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
脂質ビヒクルがダイズ油を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
脂質ビヒクルがクルミ油を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
脂質ビヒクルがコムギ胚芽油を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
抗酸化剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
抗酸化剤がα-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビルパルミテート、プロピルガレート、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)若しくはキレート剤又はその組合せである、請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
1種以上の香味剤又は香味油をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
9-cis-レチニルエステルのそれを必要とする対象への毎日の投与に好適な剤形であって、剤形が約1.25〜20mg/mLの9-cis-レチニルアセテートをダイズ油中に含み、ここで、剤形が対象の体表面積に対して約1.25〜40mg/m2の9-レチニルアセテートを24時間にわたって提供する、前記剤形。
【請求項13】
代謝性9-cis-レチニルエステルの最大血漿中濃度に剤形の経口又は強制投与後約3〜6時間で到達する、請求項12に記載の剤形。
【請求項14】
9-cis-レチニルアセテートの対象への硝子体内投与による1回投与に好適な剤形であって、剤形が約18〜40%mg/mLの9-cis-レチニルアセテートをダイズ油中に含む、前記剤形。
【請求項15】
製剤が9-cis-レチニルアセテート、ダイズ油及びエマルションを含む飲料である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
エマルションが豆乳若しくは牛乳又はその混合物である、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
それを必要とするヒト対象において、レーバー先天性黒内障を治療する方法であって、脂質ビヒクル及び1種以上の式(I):
【化2】
の9-cis-レチニルエステルを有する医薬製剤を、対象の治療に有効な量で対象に投与することを含み、脂質ビヒクルが50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、多価不飽和脂肪酸がω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む、前記方法。
【請求項18】
式(I)の9-cis-レチニルエステルが9-cis-レチニルアセテートであり、脂質ビヒクルがダイズ油である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
11-cis-レチナールが欠乏している対象を治療する方法であって、脂質ビヒクル及び1種以上の式(I):
【化3】
の9-cis-レチニルエステルを有する医薬製剤を、対象の治療に有効な量で対象に投与するステップを含み、脂質ビヒクルが50w/w%より多くの多価不飽和脂肪酸を含み、多価不飽和脂肪酸がω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を15未満の(重量)比で含む、前記方法。
【請求項20】
式(I)の9-cis-レチニルエステルが9-cis-レチニルアセテートであり、脂質ビヒクルがダイズ油である、請求項19に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A−B】
【図9C−D】
【図9E−I】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A−B】
【図9C−D】
【図9E−I】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2013−504617(P2013−504617A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529727(P2012−529727)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/059126
【国際公開番号】WO2011/034551
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(505137018)キューエルティー インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/059126
【国際公開番号】WO2011/034551
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(505137018)キューエルティー インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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