説明

AAV媒介性の蝸牛細胞への遺伝子送達

本発明は、哺乳動物の蝸牛細胞に形質導入する方法、より好ましくは、蝸牛有毛細胞および支持細胞に形質導入する方法に関する。この方法は、アデノ-随伴ウイルス(AAV)を標的哺乳動物の蝸牛細胞に対して送達することを含む。AAVは、AAVに対して外来性であるDNA、そしてDNAに対して機能可能に連結したプロモータを含む。好ましくは、プロモータは、細胞特異的プロモータ、例えば、有毛細胞または支持細胞特異的プロモータ、であり、およびAAVは、血清型1、2、6、または2種またはそれ以上の血清型の混合物である。本発明はまた、特異的蝸牛細胞に形質導入する際に有用である修飾AAVを含む組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2005年6月17日に出願した“AAV Mediated Gene Delivery to Cochelear Cells”を発明の名称とするUS非仮出願、および2004年6月18日に出願したUS仮出願60/580,752に基づく優先権を主張し、その利益を主張するが、これらの出願の内容は、本明細書中に参考文献として明示的に援用される。
【0002】
連邦政府に後援された研究または開発に関する記述
本出願は、U.S.政府からの資金(NIH R 21 DC05462 “Transduction of the mouse auditory system with AAV”)により、一部サポートされた。したがって、U.S.政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、アデノ-随伴ウイルス(AAV)を使用して哺乳動物の蝸牛細胞に形質導入する方法に関する。本発明はまた、蝸牛有毛細胞および支持細胞に形質導入するためのAAVを含む組成物に関する。
【0004】
発明の背景
2800万人以上のアメリカ人が、様々な形態の聴覚喪失を患っており、そしてさらに3000万人が、危険レベルの雑音に曝されている。多くの形態の後天性および先天性の聴覚障害についての効果的な治療法がないことから、新たに開発された遺伝子送達技術を正常な蝸牛の機能を修復するために適用することの潜在性についての緊急の関心が持たれている。蝸牛中への遺伝子導入は、先天性および病的な聴覚障害の両方を治療するための治療的ストラテジーを開発するための潜在性を提供する。しかしながら、聴覚障害をうまく治療しうる遺伝子治療ストラテジーを開発するため、重篤な副作用なしに蝸牛有毛細胞および支持細胞に形質導入することができる適切なベクターを開発しなければならない。
【0005】
蝸牛へのウィルス-媒介性遺伝子導入は、かつてはそれほどうまくいっていなかった。従来の方法では、有毛細胞および特異的な支持細胞のいずれかに形質導入することができないか、または例えば治療後に導入細胞が破壊されるなどのネガティブな副作用を引き起こした。例えば、レンチウィルスによる形質導入後の遺伝子発現は、傍リンパ腔(paralymphatic space)を裏打ちする細胞に限定された(Han et al., 1999)。アデノウィルスによるin vivoでの治療は、結果として、モルモットの内有毛細胞(inner hair cell)の90%以上、外有毛細胞(outer hair cell)の50%以上、そして支持柱細胞(supporting pillar cell)のいくつかにおいても形質導入を生じた(Stover et al, 2000;Luebke et al., 2001a, 2001b)。しかしながら、アデノウィルスによる治療は、しばしば形質導入細胞の究極的な破壊を引き起こす免疫応答の誘導を引き起こし、そしてまたしばしばトランスジーンの発現が短期間しか生じない。これらのネガティブな副作用は、遺伝子導入に対してアデノウィルスを使用することの主要な欠点である。
【0006】
AAVは、遺伝子送達システムとして魅力的ないくつかの特徴を有する(レビューとして、Bueler, 1999;Carter and Samulski, 2000;During and Ashenden, 1998;Flotte et. al., 1996;Peel and Klein, 2000;Rabinowitz and Samulski, 2000;Snyder, 1999;Xiao et. al., 1997を参照)。AAVは、非病原性のヒトパルボウィルスであり、約85%のヒトが人生の最初の10年間のうちに感染し、そして疾患とは決して関連しない。AAVはまた、極めて幅広い宿主範囲を有し、分裂終了細胞を含むほとんどの細胞型に感染することができる。それぞれのカプシドタンパク質におけるアミノ酸配列の差異に基づいて、8種類のAAV血清型(AAV-1〜8)が同定された。血清型1および6は、>99%アミノ酸相同性を共有し、そしてしたがって、機能的には差別化されない。組換えAAVは、実験動物の肝臓、肺、筋肉、脳、脈管構造、および網膜において、形質導入を示し、そして長期の遺伝子発現を示した(1.5年まで、Carter and Samulski, 2000)(Rabinowitz and Samulski, 2000;Walters et al., 2001)。さらに、AAVベクターは、多数の臨床試験において使用され、細胞増殖、細胞形態または細胞分化に対して何ら明らかな病原性を有さなかった。AAV血清型2が最初にクローニングされたため、これまでの大多数の遺伝子導入研究においてAAV血清型2が使用され、そして聴覚系において調べられた唯一の血清型であった。
【0007】
AAVが好ましい選択肢であるとしても、聴覚系においてAAVを使用した従来の研究は、AAVが適切なものではなく、そして実際に蝸牛有毛細胞または支持細胞-ダイテル(Deiter)細胞、ヘンセン(Hensen)細胞、柱細胞、内有毛細胞の支持細胞(inner phalangeal cell)、境界細胞、またはインターデンティアル(interdential)細胞、に形質導入することができなかったことを示した(Jero et al., 2001;Kho et al., 2000;Luebke et al., 2001b)。これらの細胞の表面のヘパラン硫酸(heparin sulfate)の欠失によるものであることが推測された(Luebke et al., 2001b, “One explanation for the lack of hair cell transduction with AAV may be the absence of heparin sulfate proteoglycans on hair cells”)。従来技術とは対照的に、本発明は驚くべきことに、蝸牛有毛細胞および支持細胞に、AAVにより形質導入する方法を本明細書中で見いだしそして提供する。
【0008】
発明の概要
本発明は、哺乳動物の蝸牛細胞に形質導入する方法、好ましくは有毛細胞または支持細胞に形質導入する方法に関する。この方法は、アデノ-随伴ウイルス(AAV)を標的有毛細胞または支持細胞に対して送達する工程を含む。蝸牛細胞に形質導入するために使用されたAAVは修飾され、AAVに対して外来性であり、そしてプロモータに対して機能可能に連結したDNAを含む。
【0009】
好ましくは、μl当たり少なくとも109ゲノム粒子(genomic particles;gp/μl)の力価を有する高力価のAAVが使用され、そしてより好ましくは、少なくとも1010 gp/μl、あるいは少なくとも1011gp/μlの力価を有するAAVが使用される。
【0010】
一態様において、AAVにおける外来性のDNAは、蝸牛有毛細胞の増殖、細胞分化を促進するタンパク質、例えば有毛細胞への支持細胞の分化を促進するタンパク質、あるいは遺伝子変異を修復するタンパク質、をコードする。好ましい態様において、DNAは、Math1タンパク質、Hath1タンパク質、SOX2タンパク質、コネキシン26タンパク質、または成長因子タンパク質をコードする。好ましい成長因子タンパク質の具体的な例には:神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来神経発育因子(GDNF)、および維芽細胞成長因子(FGF)が含まれる。
【0011】
好ましい態様においては、DNAは、ER受容体融合タンパク質(例えば、Math1/ERタンパク質、Hath1/ERタンパク質、またはSOX2/ERタンパク質をコードする。この態様においては、この方法は、アクチベーター化合物、例えばタモキシフェンを投与する工程をさらに含む。
【0012】
好ましくは、本発明は、特異的プロモータを使用することをさらに含む。好ましいプロモータには、蝸牛有毛細胞特異的プロモータおよび支持細胞特異的プロモータが含まれる。支持細胞特異的プロモータの例には、以下のもの:グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)プロモータ、興奮性アミノ酸トランスポーター-1(EAAT1)プロモータ、GLASTプロモータおよびマウスサイトメガロウィルス(mCMV)プロモータが含まれる。さらに、有毛細胞特異的プロモータの例として:ヒトサイトメガロウィルス(CMV)プロモータ、ニワトリβ-アクチン/CMVハイブリッド(CAG)プロモータ、およびミオシンVIIAプロモータが含まれる。一態様において、使用されるプロモータは、CAGプロモータである。
【0013】
有利には、AAVは、ウッドチャック肝炎ウィルス転写後制御エレメント(WPRE)を含んでいてもよい。
好ましい態様において、開示された方法の形質導入効率は、少なくとも30%である;好ましくは、形質導入効率は少なくとも50%である;より好ましくは、少なくとも60%である;そして最も好ましくは少なくとも70%である。
【0014】
AAVは、いずれのAAV血清型であってもよい。しかしながら、好ましくは、AAVは、血清型1、2、6、または2種類またはそれ以上の血清型の混合物を含む。好ましい態様において、血清型は、血清型1および2を含む混合物である。
【0015】
形質導入される標的有毛細胞または支持細胞は哺乳動物の細胞であり、そしてより好ましくはヒトの細胞である。一態様において、標的細胞は、生きた哺乳動物の体内におけるものである。
【0016】
本発明は、さらに、哺乳動物の蝸牛有毛細胞または支持細胞に形質導入するための組成物に関する。形質導入組成物は、アデノ-随伴ウイルス(AAV)を有毛細胞または支持細胞に形質導入するために十分な量で含む。AAVは、AAVに対して外来性であり、典型的には蝸牛有毛細胞プロモータまたは支持細胞プロモータに対して機能可能に連結したDNAである。
【0017】
好ましくは、組成物中で使用されるAAVは、少なくとも109gp/μlの高力価ウィルスであり、そしてより好ましくは、少なくとも1010 gp/μlである。組成物は、1種類のAAV血清型または2種またはそれ以上の混合物を含んでもよい。一態様において、組成物は、少なくとも2種の血清型、例えば血清型1と2、の混合物を含む。
【0018】
好ましい態様の詳細な記載
本明細書中で引用されるすべての特許および参考文献は、その全体を参考文献として援用する。本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形(“a”)は、その用語が用いられる文脈に従って、1またはそれ以上を意味することができる。
【0019】
本発明は、哺乳動物の蝸牛細胞、好ましくは有毛細胞または支持細胞、に形質導入する方法を提供する。この方法は、標的有毛細胞または支持細胞に対して、アデノ-随伴ウイルス(AAV)を送達する工程を含む。蝸牛細胞に形質導入するために使用されるAAVは修飾され、そしてAAVに対して外来性であり、そしてプロモータに対して機能可能に連結したDNAを含む。
【0020】
蝸牛の“有毛細胞”は、耳の感覚細胞である。正常な有毛細胞は、感覚神経繊維(sensory fibers)だけでなく、聴覚神経の遠心性繊維(efferent fibers)とシナプス接合しており、そして毛髪に似た細かい突起を有する。有毛細胞は、しばしばコルチ細胞とも呼ばれる。2種類の有毛細胞が存在する:外有毛細胞(outer hair cell)および内有毛細胞(inner hair cell)である。外有毛細胞(outer hair cell)は、らせん縁(spiral limbus)から遠位であり、そして一般的に蝸牛管の全長にわたって走行する、3列〜5列の有毛細胞が存在する(ヒトでは約20,000個が存在する)。内有毛細胞(inner hair cell)は、らせん縁(spiral limbus)に対して近位である。蝸牛管の全長にわたって走行するただ1列の内有毛細胞(inner hair cell)が存在する(ヒトでは約3500個が存在する)。
【0021】
蝸牛の“支持細胞”は、感覚上皮中に局在し、そして蝸牛の有毛細胞と緊密な接触、好ましくは直接的な接触をしている。一般的には、支持細胞には以下の細胞が含まれる:ダイテル(Deiter)細胞、ヘンセン(Hensen)細胞、柱細胞、内有毛細胞の支持細胞(inner phalangeal cell)、境界細胞、またはインターデンティアル(interdential)細胞。哺乳動物の蝸牛のスキーム図については、図10を参照。
【0022】
用語“形質導入”は、in vivoまたはin vitroのいずれかで、AAVを介して、DNA分子をレシピエント細胞に対して送達することを示す。
AAV:8種類のAAV血清型(AAV-1〜8)が、それぞれのカプシドタンパク質におけるアミノ酸配列の差異に基づいて同定された。血清型1および6は、>99%のアミノ酸相同性を共有し、そして従って、機能的に差異はない。本発明において使用されるAAVは、いずれのAAV血清型であっても良い。しかしながら、好ましい態様において、血清型は、血清型1、2、6、または2またはそれ以上の血清型の混合物、たとえば、血清型1および2を含む混合物、を含む。
【0023】
本発明において使用されたAAVは、外来性DNAが導入されるアデノ随伴ウィルスの誘導体である。感染性組換えAAVの構築および精製方法は、当該技術分野において周知である。たとえば、U.S.特許番号5,173,414;5,139,941;5,741,683;6,458,587;6,475,769;および6,783,972;Zolotukhin et al., (1999);およびGrimm et al., (1998および1999)を参照(これらの全体を参考文献として援用する)。
【0024】
AAVゲノムは、4681塩基を含有する直鎖一本鎖DNA分子から構成される(Berns and Bohenzky上記)。ゲノムには、逆位末端リピート(ITR)が含まれ、それぞれの末端でDNA複製基点としてそしてウィルスについてのパッケージシグナルとしてcisで機能する。ITRは、約145 bpの長さである。ゲノムの内部非リピート部分には、それぞれAAVのrep領域およびcap領域として知られる2つの大型のオープンリーディングフレームが含まれる。 これらの領域は、AAVヘルパー機能を提供するウィルスタンパク質、すなわち、ビリオンの複製およびパッケージングに関与するタンパク質、をコードする。具体的には、少なくとも4つのウィルスタンパク質、Rep 78、Rep 68、Rep 52およびRep 40(それぞれは、みかけ分子量に従って命名された)のファミリーが、AAVのrep領域から合成される。AAVのcap領域は、少なくとも3つのタンパク質VP1、VP2およびVP3をコードする。AAVゲノムの詳細な記載は、たとえばMuzyczka (1992)を参照。
【0025】
AAVベクターは、AAVゲノムの内部部分を全体的にまたは部分的に欠失させることにより、そして目的とするDNA配列をITR間に挿入することにより、目的とする外来性ヌクレオチド配列(たとえば、選択された遺伝子-たとえば、Hath1またはSOX2、アンチセンス核酸分子など)を保持するように操作することができる。ITRは、そのようなベクター中でも機能性を維持しており、異種の目的とするヌクレオチド配列を含有するAAVの複製およびパッケージングを可能にする。異種のヌクレオチド配列はまた、典型的には、特定の条件下で、患者の標的細胞中にて遺伝子発現を駆動することができるプロモータ配列に連結される。終止シグナル(たとえば、ポリアデニル化部位)がベクター中に含まれていても良い。
【0026】
このベクターをin vitroで増加させるため、感受性細胞をAAV-由来ベクターと適切なAAV-由来ヘルパーウィルスまたはプラスミドとによりコトランスフェクトさせる。好ましくは、ベクターは、AAVからは、複製およびパッケージングについての認識シグナルのみが本質的に維持されている。
【0027】
AAV-由来配列は、必ずしも、それらの野生型原始型と正確に対応していなければならないわけではない。例えば、本発明のAAVベクターは、ベクターが、ヘルパーウィルスと協力して依然として複製することができそしてパッケージングされ得ること、そして依然として標的細胞に感染することができることを条件として、変異した逆方向末端リピートなどの特徴を有していてもよい。場合により、ヘルパーウィルスが、例えば、56℃、30分間の加熱不活性化により利用される態様、または塩化セシウム勾配中での遠心分離によりパッケージングされたAAVベクターから分離される態様において、ヘルパーウィルスを除去してもよい。
【0028】
一態様において、AAVを、Lai, et al., (2002)に記載されるプラスミドベースの方法を使用して作製し、そしてウィルスをZolotukhin et al., (2002)に記載されるイオディキサノール(iodixanol)勾配上で精製する。
【0029】
ウィルスは、ml当たりのゲノム粒子数により力価測定される。AAVの力価は、特に標的細胞に依存して変動しうるものであるが、しかし好ましくは、使用されるAAVは、少なくとも109gp/μlの高力価ウィルスであり、そしてより好ましくは少なくとも1010 gp/μlの高力価ウィルスである。高力価ウィルスを産生する方法は、当該技術分野においても周知である。例えば、U.S.特許No. 6,632,670(高力価で、コンタミ物質なしの、組換えAAVベクターを大量に精製する方法を教示する)を参照。
【0030】
DNA:“外来性DNA”により、いずれかの異種DNA、すなわち、標的細胞中への移動のためにAAV中に挿入されうる、野生型AAV中には通常は見いだされないDNA、が意味される。“機能可能に連結”により、プロモータが、当該技術分野において知られている様に、外来性DNAの発現を駆動することができること、そして外来性DNAに関してプロモータの適切な方向性が含まれうること、が意味される。さらに、好ましくは、外来性のDNAは、発現のために適切なすべての配列を有する。DNAは、例えば、エンハンサなどの発現調節配列、および必要な情報プロセッシング部位を含んでいてもよい。典型的には、AAVのパッケージングの限定のため、外来性のDNAは、約10〜5,000塩基の長さを有している。好ましくは、このDNAは、100〜4,000塩基である。
【0031】
好ましい事例には、蝸牛有毛細胞の増殖および細胞分化を促進するタンパク質をコードするDNA、例えば、支持細胞の有毛細胞への分化を促進するタンパク質をコードするDNA、あるいは遺伝子変異を修正するタンパク質をコードするDNAが含まれる。限定的ではない例には、Math1タンパク質、Hath1タンパク質、SOX2タンパク質、コネキシン26タンパク質、または成長因子タンパク質をコードするDNAが含まれる。成長因子タンパク質の例には、以下のものが含まれる:神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、そして線維芽細胞増殖因子(FGF)。
【0032】
好ましい態様において、DNAは、Math1またはヒトオルソログであるHath1をコードする。塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス転写因子、Math1またはHath 1の発現は、有毛細胞分化のために必要かつ十分であることが示された。Zheng and Gao, (2000)は、ラット蝸牛外植片のMath1遺伝子によるエレクトロポレーションの後、大型上皮堤(greater epithelial ridge)内でMath1を発現している、ミオシンVIIA陽性細胞の発生を報告した。より最近には、Kawamoto et al., (2003)もまた、Math1遺伝子を中央階(scala media)にアデノウィルス-媒介性送達した後、コルチ器官内および非感覚上皮細胞内に未成熟有毛細胞が限定的に出現することを観察した。興味深いことに、Kawamoto et al.はまた、非感覚領域内の未成熟有毛細胞のいくつかに、軸索が進展していることも報告した。発生のあいだ、Math1は、E12.5〜POのあいだにのみ発現される(Zuo, 2002)。
【0033】
別の好ましい態様において、DNAは、ER受容体融合タンパク質、例えばMath1/ERタンパク質、Hath1/ERタンパク質、またはSOX2/ERタンパク質など、をコードする。この態様において、融合タンパク質は、Math1タンパク質、Hath1タンパク質、またはSOX2タンパク質の活性を制御する際に有用である。活性は、エストロジェン受容体による融合タンパク質の細胞質残存により制御される。活性化化合物(例えばタモキシフェン)の利用は、融合タンパク質の核への移行を可能にするために必要であり、核でその後機能的に活性になる。一態様において、タモキシフェンを、少なくとも形質導入の翌日に投与し、そしてより好ましくは、形質導入の数週間後に投与する。好ましい態様において、活性化化合物は形質導入の2〜3週間後に投与される。活性化化合物を投与することを待つことにより、患者は、治療からの回復が可能であり、そして患者における外来性遺伝子発現の高くそして一定のレベルがより好ましい。
【0034】
プロモータ:プロモータは、既知の検討事項、例えばプロモータに対して機能可能に連結したDNAの発現レベルや有毛細胞または支持細胞などのDNAが発現されるべき細胞の型など、により選択される、いずれかの好ましいプロモータであってもよい。プロモータは、外来性のプロモータであってもあるいは内在性のプロモータであってもよい。プロモータは、原核細胞プロモータ、真核細胞プロモータ、真菌プロモータ、核プロモータ、ミトコンドリアプロモータ、ウィルスプロモータなどであってよい。さらに、標的化遺伝子発現のためのキメラ制御性プロモータを使用することができる。好ましいプロモータには、蝸牛毛細胞特異的プロモータおよび支持細胞特異的プロモータが含まれる。
【0035】
Boeda et al., (2001)は最近、蝸牛の有毛細胞中および前庭の有毛細胞中で強力で選択的な発現を示す、MYO7Aプロモータを特性決定した。より最近では、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)プロモータが、支持細胞の特定のサブポピュレーション中で選択的活性を有することが示された(Rio et al., 2002)。著者らは、生後まもなくのすべての支持細胞中で、GFAP活性が、基底から頂端(apex)に向けて徐々に強度が減少することを観察した。同様に、我々の研究室では、GFAPプロモータを使用してトランスジーンの発現を駆動した場合、P0蝸牛外植片におけるGFP発現の同様のパターンを観察した。興味深いことに、Rio et alもまた、P15の後、GFAPの発現が、内有毛細胞の支持細胞(inner phalangeal cell)、境界細胞およびダイテル(Deiter)細胞に最も限局されたことを報告した。
【0036】
使用することができるその他のプロモータの例には、アストロサイトに対する選択性を示すマウスCMV(mCMV)プロモータが含まれる(Aiba-Masago et al., 1999)。FurnessとLawton(2003)は、アストロサイトのグルタミン酸トランスポーター(GLAST)が、成熟したモルモットの境界細胞および内有毛細胞の支持細胞(inner phalangeal cell)においてのみ発現することを報告した。実際、同様のGLASTの発現パターンが、P0蝸牛外植片培養中で観察された。その他の例としては、支持細胞特異的発現のために有用でもある、Jagged-1およびNotch 1が含まれる。
【0037】
好ましい支持細胞特異的プロモータの例には、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)プロモータ、興奮性アミノ酸トランスポーター-1(EAAT1)プロモータ、GLASTプロモータおよびマウスサイトメガロウィルス(mCMV)プロモータが含まれる。好ましい有毛細胞特異的プロモータの例には、ヒトサイトメガロウィルス(CMV)プロモータ、ニワトリβ-アクチン/CMVハイブリッド(CAG)プロモータ、およびミオシンVIIAプロモータが含まれる。一態様において、好ましいプロモータは、CAGプロモータである。
【0038】
送達:送達は、AAVを投与するためのいずれかの標準的な手段により、行うことができる。例えば、組織培養液または緩衝塩類溶液などの好ましい液体中に場合により含有されるAAVと、標的細胞とを単純に接触させることにより、行うことができる。AAVを、いずれかの所望の長さの時間、標的細胞との接触を維持させることができ、そして典型的には、AAVを投与しそして標的細胞に効果的に形質導入するために十分な時間維持することができる。
【0039】
in vivo送達のため、AAVを、いずれかの適切な方法により送達することができる。使用することができる送達方法の例には、正円窓(round window)を通じた浸透圧性ミニポンプ輸液を介する送達(Derby et al., 1999;Komeda et al., 1999;Raphael et al., 1996;およびYagi et al 1999);正円窓(round window)または鼓室階切開(cochleostomy)のいずれかを介する鼓室階(scala tympani)中への送達(Carvalho and Lalwani, 1999;Han et al., 1999;Jero et al., 2001;Lalwani et al., 1996, 1997, 1998a, 1998b;Luebke et al., 2001b;Raphael 2001;Waring et al., 1999);内リンパ嚢(endolymphatic sac)中にウィルスを直接注入することを介する送達(Yamasoba et al., (1999));そして中央階(scala media)中へウィルスを直接注入することを介する送達(Ishimoto et al., (2002))が含まれる。好ましい態様において、AAVは、蝸牛中に直接的にまたは間接的に送達される。一態様において、AAVは、鼓室階(scala tympani)中に直接送達される。
【0040】
適切な用量は、治療される被検体(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類またはその他の哺乳動物)、治療される被検体の年齢および一般的状態、治療される症状の重症度、AAVの投与様式、その他の因子に依存する。適切な有効量は、当業者により容易に決定されうる。
【0041】
このように、“治療的有効量”は、臨床試験を通じて決定することができる比較的幅広い範囲に含まれる。例えば、in vivo注射に関して、すなわち、被検体への直接注射に関して、好ましい治療的有効用量は、10μl〜500μlのオーダーの1010gp/μlのAAV力価のものであろう。ある被検体においては、50μl〜150μlが好ましいだろう。例えば、一態様において、100μlがヒトの蝸牛に対して送達される。
【0042】
AAV組成物:本発明はまた、哺乳動物の蝸牛有毛細胞または支持細胞に形質導入するための組成物にも関する。形質導入組成物は、蝸牛有毛細胞または支持細胞に形質導入するために十分な量のアデノ-随伴ウイルス(AAV)を含む。AAVは、AAVに対して外来性であり、そして典型的には蝸牛有毛細胞プロモータまたは支持細胞プロモータに対して機能可能に連結しているDNAを含む。
【0043】
AAV組成物は、標的細胞中で治療的有効量の(すなわち、問題となる疾患状態の症候を弱めるかまたは改善するために十分な量または所望の利点をもたらすために十分な量の)目的タンパク質を効率的に産生するために十分なAAVを含む。このように、AAVは、1またはそれ以上の用量で与えられる場合、治療効果をもたらすために十分な量で組成物を提供する。
【0044】
組成物はまた、その他の有効成分(例えば、医薬的に許容可能な賦形剤)を含有していてもよい。医薬的に許容可能な賦形剤には、液体(水、塩類溶液、グリセロールおよびエタノール)が含まれるが、これらには限定されない。医薬的に許容可能な塩には、その中に、例えば、無機酸塩(mineral acid salts)(例えば、ハイドロクロリド、ハイドロブロミド、ホスフェート、サルフェートなど);および有機酸の塩(例えば、アセテート、プロピオネート、マロネート、ベンゾエートなど)が含まれてもよい。さらに、補助的な物質(例えば湿潤剤や乳化剤、pH緩衝物質など)が、その様なビヒクル中に存在していてもよい。医薬的に許容可能な賦形剤の十分な検討は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub. Co., NJ. 1991)中で得ることができる。
【0045】
好ましい賦形剤は、AAVに対して保護的作用を付与し、それによりAAVの喪失並びに製剤化手順やパッケージング、保存、輸送などの結果として生じる形質導入効率の喪失を最小限にする。
【0046】
本発明は、説明のためのみの目的である以下の実施例においてさらに具体的に記載される。というのも、多数の修飾やバリエーションが、当業者には明らかだからである。
【実施例】
【0047】
実施例1:蝸牛有毛細胞および支持細胞のin vitroでの形質導入
材料と方法
プラスミド構築:CAGプロモータまたはGFAPプロモータのいずれかを含有するAAV中にパッケージングするために、2種類の別個のトランス-ジーンプラスミドを構築した。CAGプロモータは、ユビキタスプロモータであり、そして肝臓および脳において頑健な(robust)発現を駆動することが示された(Xu et al., 2001;Klein, et al., 2002)。ヒト化Renilla緑色蛍光タンパク質(hrGFP)遺伝子(Stratagene)を含有する730-bρ BamHI-EcoRIフラグメントを、CAGベクターまたはGFAPベクター中にサブクローニングした。それぞれの構築物には、3'WPREも含まれた。WPREは、イントロンのないウィルスのメッセージの発現を促進する様に進化したものであり、そして遺伝子発現安定性および遺伝子発現レベルがin vitroでもin vivoでも上昇することが示された(Klein, et al., 2002;Loeb, et al., 1999)。
【0048】
ウィルス産生:AAV血清型1、2、および5を、HEK293T細胞中でパッケージングした。培養物を、10%FBS、0.05%ペニシリン/ストレプトマイシン(5000 U/ml)、0.1 mM MEM非必須アミノ酸、1 mM MEMピルビン酸ナトリウム、そしてゲンタマイシン(25 mg/ml)を添加したDMEMからなる増殖培地中で維持した。トランスフェクションの前日、約1.5×107細胞を増殖培地を含む150-mmディッシュ上に播いた。24時間後、培養液を5%FBSおよび抗生物質を含有するDMEMに交換し、そして細胞をPolyfectトランスフェクション試薬(Qiagen)を使用してトランスフェクションした。プラスミドベースのAAV産生方法を使用した(Lai, et al., 2002)。トランスフェクションのために使用したプラスミドは、(1)pFΔ6(アデノウィルスヘルパープラスミド);(2)pRVI(AAV血清型2用のcap遺伝子およびrep遺伝子)、pH21(AAV血清型1用のcap遺伝子および血清型2用のrep遺伝子)、またはpH25a(AAV血清型5用のcap遺伝子および血清型2用のrep遺伝子);および(3)AAV-2 ITRと隣り合わせにされたGFP発現カセットを含有するトランス-ジーンプラスミドであった。これらのプラスミドは、Dr. Matthew During Jr.(University of Auckland, New Zealand)の研究室から入手した。ウィルスを、以前に記載されたとおり(Zolotukhin et al., 2002)、イオディキサノール(iodixanol)勾配にて精製した。ウィルス力価は、定量的PCRにより決定し、そしてゲノム粒子/ml中で表した。
【0049】
蝸牛の培養:初代蝸牛外植片を、E13マウスまたはP0〜P1 CD1マウス(Charles River)から調製した。生まれた日を、生後day 0と表記した。すべての動物の方法は、研究室動物の飼育および利用についてのNTH指針に厳格にしたがって行い、そしてUniversity of Montana Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認を受けた。蝸牛を、以前に記載されたように解剖した(Mueller et al., 2002;Raz et al., 1999)。簡単に述べると、蝸牛および前庭領域(vestibular region )を、5 mM Hepesおよび0.6%グルコースを含有する1×HBSSから構成される冷解剖培地中で、頭部から無菌的に切り出した。前庭領域(vestibular region)を、ピンで止め、そして骨質の外部被膜を、残りの蝸牛から注意深く切り離した。蝸牛は、P0で1ターン以上になっているので、蝸牛を2片に切り、そして0.05 mg/mlポリ-D-リジン(BD)、次いで3.75% Matrigel(BD)でコーティングしたMat-Tekディッシュに注意深く移した。培養液は、10%FBS、N2(1:100;Invitrogen)、ペニシリンG(1500 U/ml;CalBiochem)、およびFungizone(9μg/ml;Calbiochem)を添加したDMEMであった。AAV-1-CAG-hrGFP、AAV-2-CAG-hrGFP、AAV-5-CAG-hrGFP、AAV-1-GFAP-hrGFP、AAV-2-GFAP-hrGFP、またはAAV-5-GFAP-hrGFPを、プレーティング時にディッシュ当たり1010gpの最終濃度となるように培地に対して添加した。培養は、37℃、5%CO2で5日間、加湿インキュベーター中で維持した。
【0050】
免疫細胞化学:5日後、培養液を注意深く吸引し、そして培養物を冷4%パラホルムアルデヒド(PEA)中で室温にて30分間固定し、次いで氷冷メタノール中で-20℃にて2分間、固定後処理を行った。残留PEAおよびメタノールを除去するため、培養物をPBSですすいだ(3×15分)。組織を、室温にて1時間、PBS+0.5%Triton X(PBS-Tx)を用いて膜透過させた。次いで、組織を、5%正常ヤギ血清(NGS)を用いて、室温にて1時間、ブロッキングした。すべての免疫細胞化学試薬は、特に記載しない限りは、PBS-Tx中で希釈した。
【0051】
すべての一次抗体は、1%NGSを含有するPBS-Tx中で希釈し、そして4℃にて一晩、インキュベートした。抗-ミオシンVI(Sigma)を使用して、有毛細胞を同定した。非結合一次抗体を、組織をPBS-Txを用いて洗浄することにより(3×20分)取り除いた。一次抗体を、二次Alexa-Fluor 546(1 :2000;Molecular Probes)と共に室温にて1時間インキュベーションすることにより検出した。いずれかの非結合二次抗体および残存塩を除去するため、組織をPBS-Tx(3×10分)およびPBS(2×5分)を用いて洗浄した。胚の培養画像を、Zeiss LSM510共焦点顕微鏡で取り込み、そしてPI培養物をBio-Rod Radiance 2000 MPレーザースキャニング共焦点顕微鏡で画像化した。Z積み重ね画像を重ね合わせ、そしてMetaMorphソフトウェア(Universal Imaging)を用いて解析した。形質導入細胞の陽性の特定は、GFPの488 nmでの緑色蛍光により調べた
【0052】
特異的な細胞型を、543 nmでの赤色免疫蛍光により同定した。細胞数カウントは、細胞特異的赤色免疫標識に対する緑色のGFP発現の比として表した。全長約250μmの頂端(apex)または基底を有する4つの視野の内3つを、40×倍率でカウントした。予備実験により、内有毛細胞(inner hair cell)および外有毛細胞(outer hair cell)のあいだの形質導入効率の相違が示され、そのためそれぞれのために別個のカウントが得られた。形質導入効率が基底から頂端への優先性にしたがっている様であるという事実のため、カウントは、蝸牛の頂端(apical portion)部分および基底部分について得られた。内有毛細胞(inner hair cell)および外有毛細胞(outer hair cell)におけるGFP遺伝子発現レベルを、Image Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics, Inc., Silver Springs, MD, USA)を使用して相対平均蛍光密度(全蛍光/細胞領域)を測定することにより決定した。データを、GraphPad Instatを用いたANOVAにより解析した。P値<0.05を、統計的に有意であると考えた。
【0053】
結果
A. AAVは、マウス蝸牛外植片において有毛細胞に形質導入する
AAV血清型1、2および5のP0〜1マウスの蝸牛外植片中での有毛細胞への形質導入の能力を研究した。以前の研究では、AAVは、蝸牛有毛細胞表面にヘパリン硫酸が存在しないため、蝸牛有毛細胞に形質導入できないと示された(Jero et al, 2001;Kho et al, 2000;Luebke et al., 2001b)。従来技術の知見とは対照的に、本願発明者らは驚くべきことに、その様な方法を使用して、現実に、AAVを内有毛細胞および外有毛細胞に形質導入することができることを見いだした。図1〜3を参照。
【0054】
図1A〜Fに示すように、蝸牛有毛細胞を、CAG-GFP発現カセットを有するAAV-1により(図1A〜B)、CAG-GFP発現カセットを有するAAV-2により(図1C〜D)、そしてCAG-GFP発現カセットを有するAAV-5により(図1E〜F)、うまく形質導入した。基底領域内部において、AAV-2と比較して、AAV-1により形質導入された内有毛細胞(inner hair cell)および外有毛細胞(outer hair cell)の数において、わずかながら差異が見いだされたが、これらの差異は、統計的に有意ではなかった(表1)。36%の内有毛細胞(inner hair cell)および59%の外有毛細胞(outer hair cell)がAAV-2により形質導入されたのと比較して、約43%の内有毛細胞(inner hair cell)および64%の外有毛細胞(outer hair cell)がAAV-1により形質導入された。
【0055】
【表1】

【0056】
AAV-1またはAAV-2のいずれかにより形質導入した外有毛細胞(outer hair cell)において、頑健な(Robust)GFP発現が観察された。しかしながら、GFP発現は、AAV-1およびAAV-2により形質導入された内有毛細胞(inner hair cell)において、より低かった(P<0.001)(表1)。AAV-1またはAAV-2のいずれかで形質導入した後、基底および頂端(apex)の内有毛細胞(inner hair cell)中での同じくらい低レベルのGFP発現が検出された。AAV-1およびAAV-2のあいだで主要な相違は、頂端領域(apical region)の外有毛細胞(outer hair cell)中で観察された。AAV-1と比較して、AAV-2により形質導入された頂端の(apical)外有毛細胞(outer hair cell)中で、より低いGFP発現が検出された(表1)。
【0057】
発生における修飾または年齢依存的な修飾が、転写活性化因子の発現および制御に影響を与える可能性があるだけでなく、標的受容体の細胞表面発現にも影響を与える可能性があることから、E13蝸牛外植片をCAG-GFP構築物を有するAAV-1およびAAV-2により形質導入する定性的解析を行った。図2〜3を参照。図2A〜Fは、AAV-1-CAGにより形質導入したE13蝸牛外植片の画像を示す;一方、図3A〜Fは、AAV-2-CAGにより形質導入したE13蝸牛外植片の画像を示す。生後day 0(P0)の外植片と同様に、頑健なGFP発現が、AAV-1およびAAV-2により形質導入した後に、外有毛細胞(outer hair cell)集団において観察された。しかしながら、P0培養物と比較して、E13外植片の内有毛細胞(inner hair cell)において、限定的なGFP発現が観察された。P0培養物と同様に、形質導入E13外植片培養物において、基底において最強の発現が検出され、そして頂端(apex)に向けて減少する、GFP発現の明りょうな勾配が観察された。
【0058】
これらの結果から、AAV-1およびAAV-2は両方とも、蝸牛有毛細胞に形質導入することができること、そしてCAGプロモータはこれらの細胞中で機能的に活性であることが明白に示される。これらの結果から、AAV-1やAAV-2とは同様の効率ではなかったものの、AAV-5が、マウス蝸牛有毛細胞の形質導入を媒介する可能性があることも明らかになる。
【0059】
B. 蝸牛外植片中のマウス支持細胞のAAV形質導入
マウス蝸牛外植片中での支持細胞へのAAV-媒介性形質導入を調べるため、GFP遺伝子がアストロサイト-特異的GFAPプロモータの調節下に配置された二番目の発現カセットを作成した。GFAPプロモータは、新生仔モルモットのすべての支持細胞集団中で活性であることが、以前に報告された(Rio et al., 2002)。図4に示される様に、AAV-1およびAAV-2両方による支持細胞の頑健な形質導入が観察された。AAV-5ベクターによる形質導入後のGFP発現は、AAV-1およびAAV-2による形質導入と比較して、限定された。GFAPプロモータを使用して、調べたいずれかの血清型を有する有毛細胞において、GFP発現が観察された。
【0060】
良好な支持細胞-特異的抗体が存在しないため、特異的支持細胞集団を、形態および局在により同定した。このことのために、形質導入支持細胞の実際の割合を決定するための定量的解析ができない。しかしながら、内有毛細胞(inner hair cell)および外有毛細胞(outer hair cell)に関する局在化に基づいて、AAV-2によりP0蝸牛外植片を形質導入した後、ヘンセン(Hensen)細胞、ダイテル(Deiter)細胞、柱細胞、内有毛細胞の支持細胞(inner phalangeal cell)、境界細胞およびインターデンティアル(interdential)細胞において強力なGFP発現が観察された(図4A)。同様に、AAV-1によるP0外植片の形質導入により、支持細胞、主として内有毛細胞(inner hair cell)および外有毛細胞(outer hair cell)に隣接するヘンセン(Hensen)細胞およびインターデンティアル(interdential)細胞、における頑健な発現も導かれる(図4B)。AAV-1は、E13支持細胞に強力に形質導入することも示された(図5)。GFP発現は、AAV-5により形質導入された支持細胞においてより限定的であった。
【0061】
このように、図4〜5により示される様に、AAV、特にAAV-1およびAAV-2、は、支持細胞集団を効率的に形質導入する。AAV-1およびAAV-2のあいだの向細胞性(cellular tropism)における差異は、特定の治療のために有用であろう。
【0062】
実施例2:Math/ER融合タンパク質の誘導活性化
我々は、Math1活性のより厳密な制御を可能にし、そして一過性Math1活性の有毛細胞発生に対する一過性作用の研究を可能にする、誘導性Math1タンパク質の開発に興味を抱いた。したがって、Math1/エストロゲン受容体(ER)構築物をクローニングし、そしてCMVプロモータの調節下にて発現させた。例えばタモキシフェンなどの誘導可能物質または活性化物質が存在しない場合、Math1/ER 融合タンパク質は、細胞質中で隔離される。タモキシフェンの存在下にて、融合タンパク質は核に輸送され、そこでMath1がその標的配列を活性化しそして有毛細胞分化を誘導することができる。図6は、この点を示す蛍光画像を示す。E14マウス蝸牛は、Math1/ER-IRES-GFP構築物を用いてエレクトロポレーションによりトランスフェクトされた。培養物を15 nMのタモキシフェンを用いて6日間処理した。対照の姉妹培養物は、タモキシフェンを含まない培地中で維持した。6日後、培養物を固定し、そして有毛細胞-特異的マーカーであるMyosin 6について染色した。図6により示されるように、Math1をERタンパク質と融合することにより、Math1の活性を制御することができる。このことにより、形質導入が生じた後に有毛細胞分化を調節する能力が提供される。
【0063】
実施例3:鼓室階切開(cochleostomy)による直接注入を介した、蝸牛有毛細胞および支持細胞のin vivoでの形質導入
鼓室階切開(cochleostomy)を介したマウス蝸牛中へのAAV-1-CAG-GFPの直接注入の結果、主として傍リンパ腔(paralymphatic space)と関連する細胞の形質導入が生じる。図7Aに示されるように、GFP陽性細胞が、鼓室階(scala tympani)および前庭階(scala vestibuli)を裏打ちする細胞において見いだされる。しかしながら、形質導入細胞は、調べられた5頭の動物のうち2頭において、中央階(scala media)中に見いだされた(図7B〜C)。具体的には、形質導入が、有毛細胞、支持細胞およびらせん神経節(spiral ganglion)細胞中で見いだされた。これらの結果から、コルチ器官中での有毛細胞および支持細胞のAAV媒介性の形質導入は、遺伝子導入のための効果的なアプローチであることが示された。コルチ器官の細胞中への限定的な形質導入効率は、以前に刊行物に発行された結果にしたがったものであり、そして中央階(scala media)へのウィルスの侵入が、傍リンパ(paralymphatic)-内リンパ(endo lymphatic)バリアが破られる場合にのみ生じることを示唆する。このように、ウィルスベクターの傍リンパ腔(endolymphatic space)への直接的送達は、コルチ器官内への形質導入効率を大幅に改良し得る。
【0064】
実施例4:鼓室階(scala tympani)中への直接注入を介した、蝸牛支持細胞のin vivoでの形質導入
組換えAAV-2 GFAP-GFPを、Luebke et al.,(2001b)の方法にしたがって、成オスモルモット(約300 g)の鼓室階(scala tympani)中に直接的に注入した。簡単に述べると、鼓室小骨胞(tympanic bony bulla)の下壁(inferior wall)を、外科的に露出させ、そして鼓室小骨胞(bony bulla)中に小穴を作成した。小穴は、卵円窓(oval window)の直下の蝸牛の基底回転(basal turn)の鼓室階(scala tympany)中にドリルで開けた。人工傍リンパ溶液中10μlのウィルスを、マイクロインフュージョン浸透圧ポンプに接続されたマイクロカニューレを介して、鼓室階(scala tympani)に対して送達した。全溶液を、500 nl/時間の速度で送達した。胞内の骨欠損部をDuralonを用いて閉じ、そしてDermalonを用いて切開を閉じた。
【0065】
図8A〜Bに示されるように、AAVは、in vivoにて支持細胞 - ダイテル(Deiter)細胞、ヘンセン(Hensen)細胞、柱細胞、内有毛細胞の支持細胞(inner phalangeal cell)、境界細胞、またはインターデンティアル(interdential)細胞 - に形質導入することに成功した。緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をGFAPプロモータの調節下にて有するAAV-2ベクターは、モルモットの鼓室階(scala tympani)を介して、蝸牛の基底回転(basal turn)に対して直接送達された。支持細胞の形質導入は、抗-GFP抗体およびDABを使用する免疫細胞化学的解析により確認した。ホールマウントの代表的な画像は、注入蝸牛(図8A)および対照蝸牛(図8B)から調製した。図8Aにおける強力なGFP染色領域(矢印により示す)は、対照の注入していない蝸牛中には存在しない。図に示される様に、GFP発現が最も高い領域は、有毛細胞の内側列と外側列のあいだ、かつおそらくは有毛細胞の下の支持細胞中にある。
【0066】
さらに、GFAPプロモータが支持細胞中でトランスジーン発現を選択的に駆動することを確認するため、対照モルモット由来(図9A)およびAAV-2-GF AP-GFP注入モルモット由来(図9B)のパラフィン包埋蝸牛の横断切片を調べた。GFP発現は、DABを使用する免疫細胞化学的解析により可視化した。GFP特異的染色は、対照蝸牛中では検出されなかった。しかしながら、GFP陽性細胞が、AAV-2-GFAP-GFP注入動物中で観察された。DAB陽性細胞の形態および局在に基づいて、GFAPは、蝸牛の支持細胞中でのトランスジーンの発現を選択的に駆動し、そしてAAV-2がトランスジーンをこれらの細胞に対して送達する、遺伝子の効率的な手段であることが、明らかである。
【0067】
引用文献
【0068】
【表2−1】

【0069】
【表2−2】

【0070】
【表2−3】

【0071】
【表2−4】

【0072】
【表2−5】

【図面の簡単な説明】
【0073】
本願出願には、少なくとも1つのカラー図面が含まれる。カラー図面付きの本件特許の複製物は、請求および必要な費用を支払うことにより、特許庁から提供される。
本発明のさらなる特徴および利点を、以下に記載する好ましい態様の図面との関連で提供される以下の詳細な説明から解明することができる。
【図1】図1A〜Fは、蝸牛有毛細胞のAAV-媒介性形質導入を示す。P1マウス由来の蝸牛外植片に、CAG-GFP発現カセットを有するAAV-1(図1A-B)、AAV-2(図1C-D)またはAAV-5(図1E-F)を用いて形質導入した。ウィルス形質導入は、GFPの発現により決定した(緑色細胞;図1A、図1Cおよび図1E)。有毛細胞は、ミオシンVI抗体により同定し、そして赤く染色した(図1B、図1Dおよび図1Fは、赤色の画像と緑色の画像との重ね合わせを示す)。代表的な共焦点画像は、AAV-1およびAAV-2による処理後、内有毛細胞(inner hair cell)および外有毛細胞(outer hair cell)の両方におけるGFP発現を示す。蝸牛外植片の基部領域が示される。(*)は、GFP陽性内有毛細胞(inner hair cell)を示し、(矢頭)は、GFP陽性外有毛細胞(outer hair cell)を示す。拡大倍率 = 100×、スケールバー= 8μm。GFP陽性有毛細胞のすべてが図面中で印を付けられる訳ではなく、ビューワーの便宜のため代表的な数のみに印をつけられていることに注意されたい。
【図2】図2A-Fは、AAV-1-CAGによるE13蝸牛外植片の形質導入を示す。上部3枚のパネルは、低倍率の蛍光画像を示す;それぞれ、in vitroで5日後のE13 蝸牛外植片培養における、GFP(図2A)、Myosin 6(図2B)および重ね合わせ(図2C)。その下の3枚のパネルは、高倍率の同一画像のGFP(図2D)、Myosin 6(図2E)および重ね合わせ(図2F)を示す。E13でのAAV-1-CAGは、外有毛細胞(outer hair cell)(OHC)において優勢に発現されているが、内有毛細胞(IHC)においてはそれほどでもない。
【図3】図3A-Fは、AAV-2-CAGによるE13蝸牛外植片の形質導入を示す。上部3枚のパネルは、それぞれ、in vitroで5日後のE13 蝸牛外植片培養における、GFP(図3A)、Myosin 6(図3B)および重ね合わせ(図3C)の低倍率の蛍光画像を示す。その下の3枚のパネルは、GFP(図3D)、Myosin 6(図3E)および重ね合わせ(図3F)の高倍率の画像を示す。AAV-2-CAGは、外有毛細胞(outer hair cell)において優勢に発現されているが、内有毛細胞(inner hair cell)においても見いだされる(矢印)。;(*)は、GFP陽性外有毛細胞(outer hair cell)を示す。
【図4】図4A-Bは、マウスP0蝸牛外植片培養物における支持細胞のAAV-媒介性形質導入を示す。代表的な蛍光画像は、AAV-2(図4A)またはAAV-1(図4B)により形質導入されたP0蝸牛外植片培養のものである。外植片は、1×1011ゲノム粒子(GP)の各AAV血清型により調製日に形質導入した。培養5日後、すべての外植片を4%パラホルムアルデヒドで固定し、そして有毛細胞を抗-myosin VI抗体により標識した。すべてのウィルスベクターは、GFP遺伝子発現がGFAPプロモータにより駆動された同一構築物を保有した。緑色細胞は、GFP陽性の支持細胞である。赤色細胞は、Myosin VI陽性の有毛細胞である。図4Aにおいて、(BC/IPC) = 形質導入境界細胞;(ID) = 形質導入インターデンティアル(interdential)細胞;(*) = 内有毛細胞(inner hair cell);(矢頭) = 外有毛細胞(outer hair cell);(P) = 形質導入柱細胞;(D) = 形質導入ダイテル(Deiter)細胞;そして(H) = 形質導入ヘンセン(Hensen)細胞。
【図5】図5A-Cは、AAV-1-GFAP-GFPによるE13蝸牛外植片の形質導入を示す。図5A-Cは、in vitroで5日後のE13蝸牛外植片における、それぞれGFP(図5A)、Myosin 6(図5B)および重ね合わせ(図5C)の高倍率の蛍光画像を示す。感覚上皮内にはかなりの数の標識細胞が存在するが、CAGプロモータではこれとは異なり、標識細胞は支持細胞であるようであることは注目すべきである。(D) = 形質導入ダイテル(Deiter)細胞;(P) = 形質導入柱細胞、(OHC) = 外有毛細胞(outer hair cell);(IHC) = 内有毛細胞(inner hair cell)
【図6】図6A-Fは、Math1/ERが、タモキシフェンの存在下において有毛細胞形成を誘導することを示す。上段:図6A-Cは、Math1/ER-IRES-GFP発現ベクターによりトランスフェクトし、そしてその後タモキシフェンの非存在下にてin vitroで6日間維持したE14蝸牛外植片の低倍率画像である。感覚上皮における有毛細胞は、myosin 6に対する抗体により赤色に標識される(図6A)。トランスフェクト細胞(図6B)は緑色であり、そして大型上皮堤(greater epithelial ridge;GER)において存在するが、異所性の有毛細胞は何も発生していなかった。図6Cは、図6Aおよび図6Bの重ね合わせた赤色画像および緑色画像を示す。下段:図6D-Fは、同一ベクターによりトランスフェクトしたが、実験期間中、15 nMタモキシフェンを含む培養液中で維持した姉妹外植片の低倍率画像である。myosin 6に対する抗体により標識した有毛細胞は、図6Dに示される。図6Eは、トランスフェクト細胞を示し、そして図6Fは、図6Dおよび図6Eの重ね合わせである。感覚上皮内部の有毛細胞の列に加えて、多数の異所性の有毛細胞もまた、GER柱に存在する(矢頭)。異所性有毛細胞の領域は、トランスフェクト細胞の領域とまさに相関し(矢印)そして二重-標識細胞を重ね合わせ画像において同定することができる(矢印)。スケールバーは、200ミクロンに等しい。
【図7】図7A-Fは、AAV-1-CAG-GFPによるマウス蝸牛のin vivo形質導入後のGFP発現を示す。SV=前庭階(scala vestibuli);SM=中央階(scala media); ST=鼓室階(scala tympani);RM=Reissners膜;L=縁(limbus);SL=らせん靱帯(spiral ligament);SG=らせん神経節(spiral ganglion)(矢印);(*)コルチのトンネル(tunnel of corti);内有毛細胞(inner hair cell)=矢印。パラフィン包埋蝸牛の代表的な蛍光画像は、抗-GFP抗体で染色した。AAV-1-CAG-GFPウィルスの1×109のゲノム粒子を、4ヶ月齢のCD1マウスの蝸牛中に、鼓室階切開(cochleostomy)を介して直接的に注入した。マウスは、4週間後に犠死させた。蝸牛を4%パラホルムアルデヒドにて固定し、そしてパラフィン包埋した。10μm厚の切片を、蛍光タグ付き抗-GFP抗体にて染色した(明るい緑色の細胞)。図7Aにおいて、GFP陽性細胞は、鼓室階(scala tympani)および前庭階(scala vestibuli)を裏打ちする細胞において観察される。形質導入された細胞は、調べた5匹の動物のうち2匹の中央階(scala media)において見出される(図7B-Cを参照)。具体的には、形質導入が、有毛細胞、支持細胞およびらせん神経節(spiral ganglion)細胞中で観察される。図7Dは、図7Bの高倍率画像である。図7E-Fは、図7Cの高倍率画像である。有毛細胞および支持細胞であることが明らかである細胞中に、GFP陽性細胞が存在することに注目すべきである。
【図8】図8A-Bは、AAVを使用して、蝸牛有毛細胞および支持細胞にin vivoで形質導入することができることを示す。緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)プロモータの調節下にて保持するAAV-2ベクターは、モルモットの蝸牛の基底回転(basal turn)に対して、鼓室階(scala tympani)を介して、直接的に送達された。形質導入は、抗-GFP抗体およびDABを使用する免疫細胞化学的解析により確認された。注入を受けた蝸牛(図8A)および対照の蝸牛(図8B)から調製したホールマウントの代表的な画像である。図8Aにおける強GFP染色領域(矢印により示される)は、対照の注入されていない蝸牛には存在しない。GFPの発現が最も強力な領域は、有毛細胞の内側列と外側列の間のそして恐らくは有毛細胞の下側の支持細胞中にあるものと思われる。このことは、本発明者らの過去のデータと一致しており、そしてGFAP プロモータ由来のGFP の発現が、支持細胞に局在したものであって、有毛細胞に局在するものではないことを示唆する。
【図9】図9A-Bは、モルモット蝸牛中の支持細胞の、AAV-2媒介性形質導入を示す。GFAPプロモータが支持細胞中のトランスジーン発現を選択的に駆動することを確認するため、対照モルモット(図9A)そしてAAV-2-GFAP-GFPを注入したモルモット(図9B)から作製したパラフィン包埋蝸牛の横断切片を調べた。GFP発現を、DABを使用した免疫細胞化学的解析により可視化した。GFP特異的染色は、対照の蝸牛中では何も検出されなかった。しかしながら、GFP陽性細胞が、AAV-2-GFAP-GFPを注入した動物において観察された。DAB陽性細胞の形態および局在(図10を参照)に基づいて、GFAPが蝸牛の支持細胞中でトランスジーンの発現を選択的に駆動し、そしてAAV-2がこれらの細胞に対してトランスジーンを送達するための効率的な手段であることが明らかである。GFAPプロモータにより観察された最も強力なGFP発現は、柱細胞におけるものであり、中程度の発現は、境界細胞、内有毛細胞の支持細胞(inner phalangeal cell)、およびダイテル(Deiter)細胞におけるものであることに注目すべきである。
【図10】図10は、哺乳動物の蝸牛のスキーム図である:(1)基底膜;(2)ヘンセン(Hensen)細胞;(3)ダイテル(Deiter)細胞;(4)外有毛細胞(outer hair cell);(5)外部柱細胞(outer pillar cells);(6)内部柱細胞(inner pillar cells);(7)外有毛細胞(outer hair cell);(8)内有毛細胞の支持細胞(inner phalangeal cell);(9)境界細胞;(10-11)インターデンティアル(interdential)細胞。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図2F】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図3E】

【図3F】

【図4A】

【図4B】

【図5A】

【図5B】

【図5C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有毛細胞または支持細胞に対して、アデノ-随伴ウイルス(AAV)に対して外来性であるDNAと、そのDNAに対して機能可能に連結したプロモータとを含むAAVを送達すること
を含む、哺乳動物の蝸牛有毛細胞または支持細胞に形質導入する方法。
【請求項2】
AAVが、少なくとも109 gp/μlの高力価ウィルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DNAが、蝸牛有毛細胞の増殖または細胞分化を促進するタンパク質、または遺伝的変異を修正するタンパク質、をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
DNAが、Math1タンパク質、Hath1タンパク質、SOX2タンパク質、コネキシン26タンパク質、または成長因子タンパク質をコードする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Math1タンパク質、Hath1タンパク質、またはSOX2タンパク質が、ER受容体融合タンパク質である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細胞が支持細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
支持細胞が、ダイテル(Deiter)細胞、ヘンセン(Hensen)細胞、柱細胞(pillar cell)、内有毛細胞の支持細胞(inner phalangeal cell)、境界細胞、またはinterdential cellである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プロモータが、支持細胞特異的プロモータである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
支持細胞特異的プロモータが、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)プロモータ、興奮性アミノ酸トランスポーター-1(EAAT1)プロモータ、グルタミン酸トランスポーター(GLAST)プロモータまたはマウスサイトメガロウィルス(mCMV)プロモータである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
蝸牛細胞が、有毛細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
有毛細胞が内有毛細胞(inner hair cell)である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
有毛細胞が外有毛細胞(outer hair cell)である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
プロモータが、有毛細胞特異的プロモータである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
有毛細胞特異的プロモータが、ヒトサイトメガロウィルス(CMV)プロモータ、ニワトリβ-アクチン/CMVハイブリッド(CAG)プロモータ、またはミオシンVIIAプロモータである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
プロモータがCAGプロモータである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
有毛細胞および支持細胞の両方ともに形質導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
形質導入効率が、少なくとも30%である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
AAVが、血清型1、血清型2、血清型6、または2つまたはそれ以上のこれらの血清型の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
AAVが血清型1を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
AAVが血清型2を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
AAVがAAV血清型1および血清型2の混合物を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
ヒト細胞が生きた哺乳動物体内のものである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
AAVがウッドチャック肝炎ウィルス転写後制御エレメント(WPRE)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
AAVが蝸牛へのAAVの直接注射により送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
有毛細胞または支持細胞に形質導入するために十分な量のアデノ-随伴ウイルス(AAV)であって、AAVに対して外来性であり、蝸牛有毛細胞プロモータまたは支持細胞プロモータに対して機能可能に連結したDNAを含むものを含む、哺乳動物の蝸牛有毛細胞または支持細胞に形質導入するための組成物。
【請求項27】
AAVが少なくとも109 gp/μlの高力価ウィルスである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
DNAが、Math1タンパク質、Hath1タンパク質、SOX2タンパク質、コネキシン26タンパク質、または成長因子タンパク質をコードする、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
Math1タンパク質、Hath1タンパク質、またはSOX2タンパク質が、ER受容体融合タンパク質である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
支持細胞特異的プロモータが、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)プロモータ、興奮性アミノ酸トランスポーター-1(EAAT1)プロモータ、グルタミン酸トランスポーター(GLAST)プロモータまたはマウスサイトメガロウィルス(mCMV)プロモータである、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
有毛細胞特異的プロモータが、ヒトサイトメガロウィルス(CMV)プロモータ、ニワトリβ-アクチン/CMVハイブリッド(CAG)プロモータ、またはミオシンVIIAプロモータである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
プロモータがCAGプロモータである、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
AAVが、血清型1、血清型2、血清型6、または2つまたはそれ以上のこれらの血清型の混合物を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項34】
AAVがAAV血清型1および血清型2の混合物を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
AAVがウッドチャック肝炎ウィルス転写後制御エレメント(WPRE)をさらに含む、請求項26に記載の組成物。

【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−503215(P2008−503215A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516783(P2007−516783)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/021486
【国際公開番号】WO2006/033689
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(500212295)ザ ユニバーシティー オブ モンタナ (3)
【Fターム(参考)】