説明

APOBEC3発現向上剤及び抗HIV剤

【課題】抗HIV−1作用をもつ宿主因子であるAPOBEC3の発現を向上させる化合物を有効成分として含有するAPOBEC3発現向上剤を提供することにある。また、本発明の別の課題は、上記化合物を有効成分として含有する抗HIV剤を提供することにある。
【解決手段】本明細書に定義するジスルフィド化合物を有効成分として含有するAPOBEC3発現向上剤及び抗HIV剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジスルフィド化合物を有効成分として含有するAPOBEC3発現向上剤及び抗HIV剤に関する。
【背景技術】
【0002】
下記構造式で表されるジスルフィド化合物及びその還元体等のジチオール化合物が、転写因子HIV−EP1のDNA結合を阻害することが報告されている(非特許文献1)。HIV−EP1とは、HIVプロウイルスの長鎖末端反復配列に存在するDNAκBサイトに結合するC22型ジンク・フィンガータンパク質であり、そのDNA結合によりHIV−1(human immunodeficiency virus Type-1)の遺伝子発現を活性化する。また、上記化合物は、同様にHIV−1の遺伝子発現に関係する転写タンパク質の一つであるSp1のDNA結合を阻害することが報告されている(非特許文献2及び3)。
【化1】

【0003】
また、上記還元体のピリジン環の4位をアリール基に変えた化合物が、ファルネシル・タンパク質転移酵素の酵素活性を阻害し、抗癌活性を有することも報告されている(非特許文献4及び特許文献1を参照)。ファルネシル・タンパク質転移酵素は、細胞内シグナル伝達に関与する亜鉛酵素であり、癌遺伝子rasの産物であるRasタンパク質のC末端のCAAXボックスと呼ばれる部位にファルネシル基を転移するものである。
【0004】
上記化合物の有する阻害活性は、いずれも化合物がタンパク質の亜鉛結合部位に作用することによる。
【0005】
一方、APOBEC(apolipoprotein B mRNA editing enzyme catalytic polypeptide)ファミリータンパク質は、抗ウイルス作用を有する宿主因子の代表的なものとして知られ、特に、APOBEC3タンパク質は、HIV−1のウイルスcDNAを変異させることにより当該ウイルスの複製を阻害することが知られている(非特許文献5)。このファミリーに属するAPOBEC3Gは、HIV−1 Vif(Virion infectivity factor)タンパク質の機能解析の過程で同定されたものであるが(非特許文献6)、HIV−1感染の標的細胞であるT細胞やマクロファージが有する抗HIV−1作用をもつ宿主因子であり、シチジンデアミナーゼに保存されたアミノ酸配列を有するDNA変換酵素である。APOBEC3GはHIV−1ゲノムの逆転写の際に生成される1本鎖 (−) DNAのシチジンをウラシルに変換する(非特許文献7)。この変異により、(1)2本鎖DNAになる際に、+鎖DNAにグアニンからアデニンへの超変異(hypermutation)がおこり、アミノ酸の変異や停止コドンを出現させる経路、(2)DNA修復機構 (UNG: uracil DNA glycosylase) を介しウイルスDNAの切断分解を引き起こす経路、(3)一鎖DNAへのUの取り込みが+鎖DNAの合成そのものを阻害する経路などにより、その後のウイルス複製が阻害されると考えられている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−196732
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Medicinal Chemistry 1996, 39, 503-507
【非特許文献2】Bioorganic & Medicinal Chemistry 1997, 5, 205-215
【非特許文献3】有機合成化学協会誌 1997, 55, 41-48
【非特許文献4】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2003, 13, 1523-1526
【非特許文献5】Judd F Hultquist & Reuben S Harris, Future Virol. (2009)4(6), 605-619
【非特許文献6】A. M. Sheehy ,N. C. Gaddis, J. D. Choi, M. H. Malim, Nature, 418 646 (2002).
【非特許文献7】Q. Yu, R. Konig, S. Pillai, K. Chiles, M. Kearney, S. Palmer, D. Richman, J. M. Coffin, N. R. Landau, Nat. Struct. Mol. Biol., 11, 435 (2004).
【非特許文献8】高折晃史, ウイルス, 55, 267 (2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、抗HIV−1作用をもつ宿主因子であるAPOBEC3の発現を向上させる化合物を有効成分として含有するAPOBEC3発現向上剤を提供することである。また、本発明の別の課題は、上記化合物を有効成分として含有する抗HIV剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、下記一般式(I)で表されるジスルフィド化合物がAPOBEC3の発現向上活性を有し、HIV−1の感染価を低下させる効果(即ち、抗HIV−1作用)を有することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明の態様は以下に関する。
〔1〕 一般式(I):
【化2】

〔式中、R1は、水素原子、低級アルコキシ基又はNR23(R2及びR3は、それぞれ独立して低級アルキル基を表す)を表し;n1、n2、m1及びm2は、それぞれ独立して、1〜5の整数を表し;Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は一般式(II):
【化3】

(式中、Xは、低級アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲノ低級アルキル基、ニトロ基、シアノ基又はアルデヒド基を表し;pは、0〜3の整数を表す)を表す〕
で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含有する、APOBEC3発現向上剤。
〔2〕 一般式(I)において、R1がNR23を表し、R2及びR3がC1−C4アルキル基である、〔1〕に記載のAPOBEC3発現向上剤。
〔3〕 R2及びR3がメチル基である、〔2〕に記載のAPOBEC3発現向上剤。
〔4〕 一般式(I)において、Y1及びY2が一般式(II)で表され、Xがニトロ基であり、かつpが1〜2の整数である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のAPOBEC3発現向上剤。
〔5〕 一般式(I)において、Y1及びY2が水素原子である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のAPOBEC3発現向上剤。
〔6〕 一般式(I)において、n1及びn2が1であり、かつm1及びm2が2である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のAPOBEC3発現向上剤。
〔7〕 一般式(I)で表される化合物が、下記構造式(III):
【化4】

で表される化合物、又は下記構造式(IV):
【化5】

で表される化合物である、〔1〕に記載のAPOBEC3発現向上剤。
〔8〕 APOBEC3Gの発現の向上に用いるための〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のAPOBEC3発現向上剤。
【0011】
〔9〕 一般式(I):
【化6】

〔式中、R1は、水素原子、低級アルコキシ基又はNR23(R2及びR3は、それぞれ独立して低級アルキル基を表す)を表し;n1、n2、m1及びm2は、それぞれ独立して、1〜5の整数を表し;Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は一般式(II):
【化7】

(式中、Xは、低級アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲノ低級アルキル基、ニトロ基、シアノ基又はアルデヒド基を表し;pは、0〜3の整数を表す)を表す〕
で表される化合物、その酸化により得られる2量体又は生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含有する、抗HIV剤。
〔10〕 一般式(I)において、R1がNR23を表し、R2及びR3がC1−C4アルキル基である、〔9〕に記載の抗HIV剤。
〔11〕 R2及びR3がメチル基である、〔10〕に記載の抗HIV剤。
〔12〕 一般式(I)において、Y1及びY2が一般式(II)で表され、Xがニトロ基であり、かつpが1〜2の整数である、〔9〕〜〔11〕のいずれかに記載の抗HIV剤。
〔13〕 一般式(I)において、Y1及びY2が水素原子である、〔9〕〜〔12〕のいずれかに記載の抗HIV剤。
〔14〕 一般式(I)において、n1及びn2が1であり、かつm1及びm2が2である、〔9〕〜〔13〕のいずれかに記載の抗HIV剤。
〔15〕 一般式(I)で表される化合物が、下記構造式(III):
【化8】

で表される化合物、又は下記構造式(IV):
【化9】

で表される化合物である、〔9〕に記載の抗HIV剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明のAPOBEC3発現向上剤は、顕著なAPOBEC3発現向上活性を有する。また、本発明の抗HIV剤は、顕著なAPOBEC3発現向上活性を有するジスルフィド化合物を有効成分とし、HIV感染、それによって引き起こされる後天性免疫不全症候群(AIDS)に対して優れた治療効果を有する。ウイルス側の因子を標的とした従来の抗HIV感染と比較すると、本発明の抗HIV剤は、宿主因子であるAPOBEC3を標的としていることから、ウイルス遺伝子の変異による薬剤耐性の問題にも対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1のAPOBEC3G分解阻害実験におけるウェスタン・ブロッティングの結果を示す図である。図1において、15は化合物15を、16は化合物16を示す。
【図2】実施例1において、各種プロテアソーム阻害剤を含めたAPOBEC3G分解阻害実験におけるウェスタン・ブロッティングの結果を示す図である。図2において、15は化合物15を、16は化合物16を示す。
【図3】実施例2におけるRTアッセイの概要を説明する図である。
【図4】実施例2におけるMAGIアッセイの概要を説明する図である。
【図5】実施例2において、各化合物についてのHIV−1感染値を示すグラフである。図5において、15は化合物15を、16は化合物16を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のAPOBEC3発現向上剤は、一般式(I):
【化10】

〔式中、R1は、水素原子、低級アルコキシ基又はNR23(R2及びR3は、それぞれ独立して低級アルキル基を表す)を表し;n1、n2、m1及びm2は、それぞれ独立して、1〜5の整数を表し;Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は一般式(II):
【化11】

(式中、Xは、低級アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲノ低級アルキル基、ニトロ基、シアノ基又はアルデヒド基を表し;pは、0〜3の整数を表す)を表す〕
で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含有する。
【0015】
また、本発明の抗HIV剤は、一般式(I):
【化12】

〔式中、R1は、水素原子、低級アルコキシ基又はNR23(R2及びR3は、それぞれ独立して低級アルキル基を表す)を表し;n1、n2、m1及びm2は、それぞれ独立して、1〜5の整数を表し;Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は一般式(II):
【化13】

(式中、Xは、低級アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲノ低級アルキル基、ニトロ基、シアノ基又はアルデヒド基を表し;pは、0〜3の整数を表す)を表す〕
で表される化合物、その酸化により得られる2量体又は生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含有する。
【0016】
本明細書において、「低級アルキル基」とは、例えば、炭素数1ないし6個の直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基であり、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基などを挙げることができる。好ましくはC1−C4アルキル基であり、さらに好ましくはC1−C2アルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0017】
「ハロゲン原子」とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子である。「ハロゲノ低級アルキル基」とは、前記「低級アルキル基」にハロゲン原子が1個又は2個以上置換した基を意味する。置換するハロゲン原子の種類、個数、及び置換位置は特に限定されず、2個以上のハロゲン原子が置換している場合には、ハロゲン原子の種類は同一でも異なっていてもよい。「ハロゲノ低級アルキル基」としては、より具体的には、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、フルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−クロロエチル基、2−フルオロエチル基、2−ヨ−ドエチル基、3−クロロプロピル基、4−フルオロブチル基、6−ヨードヘキシル基、2,2−ジブロモエチル基のようなハロゲノC1−C6アルキル基を挙げることができ、好ましくはハロゲノC1−C2アルキル基であり、好ましくはフルオロC1−C2アルキル基であり、最も好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0018】
「低級アルコキシ基」とは、前記「低級アルキル基」が酸素原子に結合した基を示し、より具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、2−メチルブトキシ基、1−エチルプロポキシ基、2−エチルプロポキシ基、ネオペントキシ基、ヘキシルオキシ基、4−メチルペントキシ基、3−メチルペントキシ基、2−メチルペントキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基などを挙げることができ、好ましくはC1−C4アルコキシ基であり、さらに好ましくはC1−C2アルコキシ基であり、最も好ましくはメトキシ基である。
【0019】
本発明のAPOBEC3発現向上剤及び抗HIV剤の有効成分に関し、一般式(I)の好ましい態様として、R1がNR23(R2及びR3は、それぞれ独立して、C1−C4アルキル基であり、より好ましくはC1−C2アルキル基であり、最も好ましくはメチル基である)であり、n1及びn2が1〜3、より好ましくは1〜2、最も好ましくは1であり、m1及びm2が1〜2、より好ましくは2であり、Y1及びY2が水素原子又は一般式(II)で表され、一般式(II)においてはXがニトロ基であり、pが1であることが好ましい。
【0020】
本発明のAPOBEC3発現向上剤及び抗HIV剤の有効成分として含まれる最も好ましい化合物としては、下記構造式で表される化合物15及び化合物1が挙げられる。化合物1は、例えば、ジチオトレイトール (dithiothreitol、DTT)を用いることにより、化合物15を還元することで得られる。
【0021】
【化14】

【0022】
また、本発明の抗HIV剤は、一般式(I)で表される化合物の酸化型化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含有し得る。そのような酸化型化合物としては、上記化合物1を酸化して得られる下記構造式で表される化合物16が挙げられる。
【0023】
【化15】

【0024】
一般式(I)で表される本発明の化合物、その酸化型化合物は、酸付加塩又は塩基付加塩などの塩の形態で存在する場合があるが、本発明の範囲にはいかなる塩も包含される。酸付加塩としては、塩酸塩若しくは臭化水素酸塩などの鉱酸塩、又はp-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、シュウ酸塩、若しくは酒石酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、若しくはカルシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩若しくはエタノールアミン塩などの有機アミン塩などを用いることができる。また、グリシン塩などのアミノ酸塩として存在することもできる。さらに、本発明の化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合があるが、これらの物質も本発明の範囲に包含される。また、本発明の化合物は、置換基の種類によっては1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。
【0025】
上記一般式(I) に包含される化合物は、上述の非特許文献1〜4、特許文献1に開示されている方法を採用し、あるいはこれら方法に公知慣用技術を組合せて合成することができる。
【0026】
本発明のAPOBEC3発現向上剤は、APOBEC3に属する遺伝子(タンパク質)の発現の向上のために使用され得る。ここで、APOBEC3に属するものとしては、APOBEC3A、APOBEC3B、APOBEC3C、APOBEC3DE、APOBEC3F、APOBEC3G、APOBEC3Hが知られている。本発明のAPOBEC3発現向上剤は、このうち、APOBEC3Gの発現の向上のために使用されることが好ましい。
【0027】
本発明のAPOBEC3発現向上剤及び抗HIV剤は、上記の一般式(I)で表される化合物及びその塩、並びにそれらの水和物及びそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる物質の1種又は2種以上を有効成分として含んでいる。また、本発明の抗HIV剤は、上記一般式(I)で表される化合物を酸化して得られる化合物及びその塩、並びにそれらの水和物及びそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる物質の1種又は2種以上を有効成分として含むこともできる。本発明のAPOBEC3発現向上剤及び抗HIV剤としては上記物質それ自体を投与してもよいが、好ましくは、当業者に周知の方法によって製造可能な経口用あるいは非経口用の医薬組成物として投与することができる。経口投与に適する医薬用組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、及びシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、座剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、軟膏剤、クリーム剤、貼付剤、経皮吸収剤、又は経粘膜吸収剤等を挙げることができる。
【0028】
上記の医薬組成物の製造に用いられる製剤用添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を挙げることができるが、これらは医薬組成物の形態に応じて当業者が適宜選択することができ、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の医薬組成物には、さらに他の医薬の有効成分の1種又は2種以上を配合して、いわゆる合剤の形態の医薬組成物として用いることもできる。医薬組成物は経口投与用又は非経口投与用のいずれの形態で調製することも可能である。
【0029】
本発明のAPOBEC3発現向上剤及び抗HIV剤の投与経路は特に限定されず、経口投与でも非経口投与(例えば、直腸投与、皮下投与、筋肉内投与、鼻腔投与および静脈内投与など)でもよいが、好ましくは経口投与である。
【0030】
本発明のAPOBEC3発現向上剤及び抗HIV剤の投与量は、投与対象又は患者の年齢、体重、症状等に応じて適宜設定することができるが、例えば、有効成分の化合物の量として0.1μg〜100mg/kg/日、好ましくは1μg〜10mg/kg/日とすることができる。
【0031】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
<APOBEC3G分解阻害実験>
本発明の化合物が、細胞内でAPOBEC3Gの分解を抑制するか検討した。概略、293T細胞にmycタグが付加されたAPOBEC3G (APOBEC3G−myc) とFLAGタグが付加されたVif (Vif−FLAG) の発現ベクターと、HIV−1感染性クローンpNL4−3のVif欠損体pNL−Ndを導入した。導入開始から6時間後に化合物15(4-(Dimethylamino)-2,6-bis[[N-[2-[(2-nitrophenyl)dithio]ethyl]amino]methyl]pyridine)、化合物16(4-(Dimethylamino)-2,6-bis [[(2-mercaptoethyl)amino]methyl]pyridineの酸化型)および/またはDTTを加え、さらに36時間静置培養し、ウイルス液と細胞を回収した。回収した細胞を溶解し、ウェスタン・ブロッティングを行うことで、APOBEC3GおよびVifの発現量を測定した。以下に、化合物16の合成方法及びAPOBEC3G分解阻害実験の手順を説明する。
【0033】
(化合物16の合成)
化合物15 (109.0 mg, 0.181 mmol) をCHCl3 5.8 mlに溶かし、dithiothreitol (83.6 mg, 0.542 mmol) を加え室温にて3hr撹拌した。精製水を加え、1M HCl水溶液でpH 1とし、CH2Cl2 (30 ml ×5回) にて洗浄した。水層をsat. NaHCO3水溶液で中和し、CH2Cl2 (30 ml×4回) にて抽出した。MgSO4を加えて乾燥し濾過した。O2雰囲気下室温にて12hr撹拌した。MgSO4を加えて乾燥し濾過した。減圧濃縮し化合物16をアモルファスとして得た。
収量 35.0 mg (0.117 mmol)
収率 65%
1H NMR (C DCl3) δ: 2.59 (4H, t, J = 6.9Hz, S-CH2CH2-N×2), 2.82 (4H, t, J = 6.9Hz, S-CH2CH2-N×2), 2.95 (6H, s, N(CH3)2), 3.76 (4H, s, -CH2-N-×2), 6.27 (2H, s, pyridine)
13C NMR (CDCl3) δ: 39.2 (N(CH3)2), 41.5 (S-CH2CH2-N), 47.7 ( S-CH2CH2-N), 54.9 (-CH2-N-), 104.5 (pyridine), 155.6 (pyridine), 159.5(pyridine)
FAB-MS (m/z) : 299, 597 (M+H) +
【0034】
(APOBEC3G分解阻害実験)
ヒト胎児腎臓由来上皮細胞である293T細胞〔J. S. Lebkowski, S. Clancy, M. P. Calos, Nature, 317, 169 (1985)〕を、10%FCS含有D−MEM培地に懸濁し、細胞培養用シャーレに播種して、CO2インキュベーター中37℃、5%CO2下で静置培養した。コンフルエントに達した細胞をトリプシン−EDTA法によりディッシュから剥離し、10%FCS含有D−MEMを加えてピペッティングした。あらかじめ10%FCS含有D−MEM培地を加えておいた細胞培養用シャーレに細胞懸濁液を播種し、48時間静置培養した細胞をトランスフェクション実験に用いた。
【0035】
HIV−1の感染性クローンpNL4−3 〔A. Adachi, H. E. Gendelman, S. Koenig, T. Folks, R. Willey, A. Rabson, M. A. Martin, J. Virol., 59, 284 (1986)〕のVif欠損体pNL−Nd 〔A. Adachi, N. Ono, H. Sakai, K. Ogawa, R. Shibata, T. Kiyomatsu, H. Masuike, S. Ueda, Arch. Virol., 117, 45 (1991)〕と、Vif−FLAGを発現させるベクターとしてpNL−ASCF−fWT〔B. Khamsri, M. Fujita, K. Kamada, A. Piroozmand, T. Yamashita, T. Uchiyama, A. Adachi, Int. J. Mol. Med., 18, 679, (2006)〕とを用いた。これらのmockとして、pUCまたはpNL−A1 Vif(−) (NIH, USA, Strebel Klaus博士から供与) を用いた。APOBEC3G−mycを発現させるベクターとしてpcDNA−APO3G (NIH, USA, Strebel Klaus博士から供与) を用い、そのmockとしてpcDNA 3.1(−)を用いた。
【0036】
遺伝子導入はリン酸カルシウム法で行い、定法に従った。まず、遺伝子発現用プラスミド計10μgを用い、超純水で全量を220μLとした。この混合液にCaCl2水溶液 (2.5M) 25μLを加え、2×Hebs (42mM HEPES, 290mM NaCl, pH 7.1) 250μLとNa2HPO4 (70mM) 5μLとの混合溶液に滴下した。30分間室温でインキュベートした後、細胞培養用シャーレ (6.0cm) でサブコンフルエント状態にある293T細胞に添加した。37℃にて6時間培養後、D−MEMで置換した。遺伝子導入開始48時間後に細胞を回収した。遺伝子発現用プラスミドの各組成を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
上記の通り、293T細胞に各種プラスミドベクターを用いてトランスフェクションを行い、遺伝子導入より6時間後上清をD−MEMで置換した際に、DTT(15μM)、化合物15(最終濃度が5μM)、化合物16(最終濃度が5μM)、化合物15(最終濃度が5μM)及びDTT(15μM)の混合物、化合物16(最終濃度が5μM)及びDTT(15μM)の混合物をそれぞれ添加した。遺伝子導入より48時間後、スクレーパーにより細胞を剥離して15mLチューブに移し、PBS(−)で洗浄した。細胞にPBS(−)150μLと2×sampling buffer 150μLを加え、ヒートブロックにより加熱 (100℃, 1 時間)した後、遠心 (14,000 rpm, 1分, r.t.) して上清をウエスタンブロッティング用のサンプルとした。
【0039】
次に、上記回収した細胞について、通常のウエスタンブロッティング法により解析した。ウエスタンブロッティング用のサンプルについて、SDS−PAGEを行った後、PVDF膜に転写(100V, 4℃, 3 時間) した。転写したPVDF膜を、5%スキムミルクを含むPBST (0.1%Tween-20を含むPBS (-) ) 中で1時間振盪することでマスキングを行った。PVDF膜に1次抗体 (anti-myc又はanti-FLAG) を用いて1時間抗体反応を行った。PBSTで洗浄後2次抗体 (anti-mouse IgG) を用いて1時間抗体反応を行った。反応終了後、PVDF膜をPBSTで洗浄し、基質との反応を行い、FUJIFILM LAS-3000(富士フィルム社製)を用いて検出した。その結果を図1に示す。
【0040】
その結果、予想通りVif非存在下ではAPOBEC3Gの発現が見られたが、Vif存在下で発現量は低下した。意外なことに化合物15および化合物15+DTTを加えたものの存在下では、APOBEC3Gの発現量が顕著に上昇した。その発現量はVif非存在下よりも高いことから、APOBEC3Gがこの実験系ではVif以外の因子により分解を受けており、それが化合物15および化合物15+DTTを加えたものにより分解阻害されることが示唆された。
【0041】
次に、この分解がプロテアソーム分解であるかどうか調べるために、前述した実験と同様の方法でプロテアソーム阻害剤であるMG132およびLactacystinと活性を比較した。また、同時にBis(2-nitrophenyl)disulfideについても同様の実験を行った。そのウェスタンブロッティングの結果を図2に示す。
【0042】
その結果、MG132およびLactacystinでも化合物15と同様APOBEC3Gの発現量上昇が見られ、この分解がプロテアソーム分解であること、化合物15やMG132またはLactacystinによりプロテアソーム分解が阻害されることが示された。また、Bis(2-nitrophenyl)disulfideはAPOBEC3Gの発現量を上昇させなかった。
【0043】
また、化合物のin vitroにおけるプロテアソーム阻害活性を、A. Asai, T. Tsujita, S. V. Sharma, Y. Yamashita, S. Akinaga, M. Funakoshi, H. Kobayashi, T. Mizukami, Biochem. Pharmacol., 67, 227 (2004)に記載の方法により調べた。その結果を表2に示す。結果として、化合物15、16、16+DTTはプロテアソーム分解阻害活性を示し、その中でも化合物15は最も高いプロテアソーム分解阻害活性を有することが判明した
【0044】
【表2】

【0045】
また、Vifの発現量を調べたところ、化合物15存在下で発現上昇は見られないが、MG132存在下で発現が強く上昇した。Vifがプロテアソーム分解を受け、その分解がMG132により阻害されることは既に報告されている(M. Fujita, H. Akari, A. Sakurai, A. Yoshida, T. Chiba, K. Tanaka, K. Strebel, A. Adachi, Microbes and Infection, 6, 791 (2004))。しかし、ここでは化合物15はVifのプロテアソーム分解を阻害せず、選択的にAPOBEC3Gのプロテアソーム分解を阻害することが示唆された。
【0046】
(実施例2)
<HIV−1感染阻害実験>
次に、実際に化合物15及び16がAPOBEC3Gを発現した細胞内でHIV−1の感染を抑制するか検討した。HIV−1の放出量(下記RTアッセイの結果)で補正した感染価をその指標に用いた。
【0047】
(1)RTアッセイ (HIV−1放出量の測定)
本RTアッセイは、R. L. Willey, P. H. Smith, L. A. Lasky, T. S. Thedore, P. L. Earl, B. Moss, D. J. Capon, M. A. Mavtia, J. Virol., 62, 139 (1988)に記載の方法に基づくものである。
【0048】
RTアッセイの手順を概略すると、293T細胞にAPOBEC3Gの発現ベクターとHIV−1感染性クローンpNL4−3を導入し、導入開始から6時間後に化合物15、16および/またはDTT、TPENを加えさらに42時間静置培養し、ウイルス液を回収した。ウイルス液を溶解して逆転写酵素をとりだし、PolyA, Oligo(dT)12-18 プライマー, [α32P]-TTPを加えた。オリゴヌクレオチドを単離し、β線を測定することで逆転写酵素 (RT)の量を算出し、HIV−1の放出量とした。RTアッセイ法の概略を図3に示し、以下、その手順について詳述する。
【0049】
下記遺伝子導入に用いたプラスミドは、上述のHIV−1の感染性クローンpNL4−3、及びそのVif欠損体pNL−Ndである。これらのmockとしてpUCを用いた。APOBEC3Gの発現ベクターとしてpcDNA−APO3G (NIH, USA, Strebel Klaus博士から供与) を用いた。
【0050】
遺伝子導入はリン酸カルシウム法で行い、定法に従った。まず、遺伝子発現用プラスミド計3.3μgを用い、精製水で全量を73.3μLとした。この混合液にCaCl2水溶液 (2.5M)8.3μLを加え、2×Hebs (42mM HEPES, 290mM NaCl, pH 7.1) 83.3μLとNa2HPO4 (70mM) 1.7μLとの混合溶液に滴下した。30分間室温でインキュベートした後、細胞培養用シャーレ (3.5cm) でサブコンフルエント状態にある293T細胞に添加した。37℃にて6時間培養後、D−MEMで置換した。遺伝子導入開始48時間後に細胞を回収した。遺伝子発現用プラスミドの組成を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
293T細胞に各種プラスミドベクターを用いて遺伝子導入した後6時間後上清をD−MEMで置換した時に、DTT(15μM)、化合物15(最終濃度が5μM)、化合物16(最終濃度が5μM)、化合物15(最終濃度が5μM)及びDTT(15μM)の混合物、化合物16(最終濃度が5μM)及びDTT(15μM)の混合物、並びにTPEN(最終濃度が5μM)をそれぞれ添加した。遺伝子導入より48時間後、上清を回収し、遠心 (3,000rpm, 10分, r.t.) した後、上清をウイルス液として得た。この溶液5μLにRTカクテル (50mM Tris-HCl, pH7.8, 75mM KCl, 2.0mM DTT, 5.0mM MgCl2, 0.5μg/mL Poly A, 6.3μg/ml Oligo d(T)12-18, 0.05% NP40 25μL, [α32P]-TTPを適量(1日目: 0.025μL))加え37℃で3時間静置培養した。これを10μLずつクロマトグラフィーペーパーにしみ込ませ、2×SSC (300mM NaCl, 30.0mM Sodium citrate) で洗浄した後乾燥させ、シンチレーションカウンターでβ線を検出した。得られた値をHIV−1の放出量とした。
【0053】
(2) MAGIアッセイ(HIV−1感染価の測定)
本MAGIアッセイは、J. Kimpton, M. Emerman, J. Virol., 66, 2232 (1992)に記載の方法に基づくものである。
【0054】
MAGIアッセイの手順を概略すると、RTアッセイに用いたウイルス液をあらかじめ培養したMAGI−CXCR4に添加し、感染させた。MAGI−CXCR4にはCD4、CXCR4、LTR−β−galが導入されている。HIV−1が感染するとHIV−1の転写活性化タンパク質Tatが発現し、これがLTR領域にあるTARに結合し、その下流にあるβ−gal遺伝子の転写を促進する。生じたβ−ガラクトシダーゼに基質であるX−Galを加え、青く染まった細胞を数えることでHIV−1感染価を測定した。MAGIアッセイの概略を図4に示す。以下、その手順を詳述する。
【0055】
ヒト子宮頸癌由来細胞であるHeLa細胞にCD4、CXCR4、LTR−β−gal遺伝子を導入したMAGI−CXCR4細胞を、10%FCS、0.2mg/mL G418、 0.1mg/mL Hygromycin B、1μg/ml Puromycin含有D−MEM (以下、MAGI−CXCR4用D−MEM) に懸濁し、細胞培養用シャーレに播種してCO2インキュベーター中37℃、5%CO2下で静置培養した。コンフルエントに達した細胞をトリプシン−EDTA法によりディッシュから剥離し、MAGI−CXCR4用D−MEMを加えてピペッティングした。計算板で細胞数を計測し必要量だけ15mLチューブに移し、遠心後上清をすて細胞数が2×104個/300μLとなるように10%FCS含有D−MEMを加えてピペッティングした。96穴プレートに細胞懸濁液を300μLずつ播種し、48時間静置培養した細胞をMAGIアッセイに用いた。
【0056】
RTアッセイに用いたウイルス液をD−MEMで10分の1、100分の1、1000分の1に希釈し、DEAE−dextranを最終濃度20μg/mLとなるように加えた。96穴プレートにて培養したMAGI細胞の上清を除き、調整したウイルス液を100μLずつ加えていった。37℃で12時間インキュベーションした後、D−MEMを100μLずつ加えた。さらに36時間静置培養した後、上清を除去し、固定液を加え5分インキュベートし、PBS(−) で洗浄した後、染色液 (4.0mM K3 [Fe(CN)6], 4.0mM K4 [Fe(CN)6], 2.0mM MgCl2, 0.4 mg/mL X-Gal) を加え、37℃で50分インキュベートした。PBS(−)で洗浄後、青く染色された細胞数を計測し、得られた値をHIV−1の感染価とした。
【0057】
代表的な結果 (RT活性で補正)を図5に示す。得られた結果より、本発明の化合物15、化合物16、および、それらDTTによる還元体は、HIV−1の感染価を低下させる効果を有することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のAPOBEC3発現向上剤及び抗HIV剤は、医薬、医療等の分野において高い産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

〔式中、R1は、水素原子、低級アルコキシ基又はNR23(R2及びR3は、それぞれ独立して低級アルキル基を表す)を表し;n1、n2、m1及びm2は、それぞれ独立して、1〜5の整数を表し;Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は一般式(II):
【化2】

(式中、Xは、低級アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲノ低級アルキル基、ニトロ基、シアノ基又はアルデヒド基を表し;pは、0〜3の整数を表す)を表す〕
で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含有するAPOBEC3発現向上剤。
【請求項2】
一般式(I)において、R1がNR23を表し、R2及びR3がC1−C4アルキル基である、請求項1に記載のAPOBEC3発現向上剤。
【請求項3】
2及びR3がメチル基である、請求項2に記載のAPOBEC3発現向上剤。
【請求項4】
一般式(I)において、Y1及びY2が一般式(II)で表され、Xがニトロ基であり、かつpが1〜2の整数である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のAPOBEC3発現向上剤。
【請求項5】
一般式(I)において、Y1及びY2が水素原子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のAPOBEC3発現向上剤。
【請求項6】
一般式(I)において、n1及びn2が1であり、かつm1及びm2が2である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のAPOBEC3発現向上剤。
【請求項7】
一般式(I)で表される化合物が、下記構造式(III):
【化3】

で表される化合物、又は下記構造式(IV):
【化4】

で表される化合物である、請求項1に記載のAPOBEC3発現向上剤。
【請求項8】
APOBEC3Gの発現の向上に用いるための、請求項1〜7のいずれか1項に記載のAPOBEC3発現向上剤。
【請求項9】
一般式(I):
【化5】

〔式中、R1は、水素原子、低級アルコキシ基又はNR23(R2及びR3は、それぞれ独立して低級アルキル基を表す)を表し;n1、n2、m1及びm2は、それぞれ独立して、1〜5の整数を表し;Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は一般式(II):
【化6】

(式中、Xは、低級アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲノ低級アルキル基、ニトロ基、シアノ基又はアルデヒド基を表し;pは、0〜3の整数を表す)を表す〕
で表される化合物、その酸化により得られる2量体又は生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含有する、抗HIV剤。
【請求項10】
一般式(I)において、R1がNR23を表し、R2及びR3がC1−C4アルキル基である、請求項9に記載の抗HIV剤。
【請求項11】
2及びR3がメチル基である、請求項10に記載の抗HIV剤。
【請求項12】
一般式(I)において、Y1及びY2が一般式(II)で表され、Xがニトロ基であり、かつpが1〜2の整数である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の抗HIV剤。
【請求項13】
一般式(I)において、Y1及びY2が水素原子である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の抗HIV剤。
【請求項14】
一般式(I)において、n1及びn2が1であり、かつm1及びm2が2である、請求項9〜13のいずれか1項に記載の抗HIV剤。
【請求項15】
一般式(I)で表される化合物が、下記構造式(III):
【化7】

で表される化合物、又は下記構造式(IV):
【化8】

で表される化合物である、請求項9に記載の抗HIV剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231053(P2011−231053A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103182(P2010−103182)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】