説明

ASK受信回路

【課題】ASK変調信号を受信し、その受信信号から、送信データに対応したパルス信号を生成するASK受信回路において、パルス信号のデューティ比が50%からずれるのを防止する。
【解決手段】ASK受信回路20では、受信信号を周波数変換したIF信号S4が対数アンプ10にて増幅され、増幅後のIF信号S5が検波回路12にて包絡線検波される。検波信号S6は、比較回路16にて基準電圧S11と比較されることにより、パルス信号Soutに変換されるが、これに必要な基準電圧S11は、ピークホールド回路22及び積分回路14を用いて検波信号S6のピーク電圧S10と平均電圧S7とを検出し、これら各電圧S10、S7を所定の比率(K1/K2)で加算することにより生成する。この結果、パルス信号のデューティ比が50%となり、送信データを正確に復元できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ASK(Amplitude Shift Keying)変調された信号を受信し、該受信信号から送信データを復元するのに用いられるASK受信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ETCシステム(Electronic Toll Collection system:自動料金収受システム)において使用される車載器には、路上機からの送信信号(ASK変調された信号)を受信するために、図6(a)に示すようなASK受信回路60が設けられている。なお、図6(a)は、車載器に搭載される一般的なASK受信回路60と、路上機側に設けられるASK送信回路50の構成を表すブロック図である。
【0003】
図6(a)に示すように、路上機に設けられるASK送信回路50は、送信データS1を、ローパスフィルタ(LPF)51を介して取り込み、ミキサ54にて、その取り込んだ送信データS2と局部発振器52から出力される搬送波とを混合することで、搬送波を送信データS2にてASK変調し、そのASK変調した信号をパワーアンプ(PA)56にて増幅して、送信アンテナ58に出力することで、送信アンテナ58からASK変調された送信信号S3を放射するように構成されている。
【0004】
一方、車載器には、路上機からの送信信号を受信する受信アンテナ2が設けられている。そして、ASK受信回路60においては、この受信アンテナ2からの受信信号が、ローノイズアンプ(LNA)4にて増幅され、ミキサ8にて、その増幅後の受信信号と局部発振器6から出力された周波数変換用の局部発振信号とが混合されることで、受信信号が中間周波信号(IF信号)S4に周波数変換される。
【0005】
また、このように周波数変換された受信信号(つまりIF信号)S4は、受信可能な信号電力範囲(ダイナミックレンジ)を拡大するために、対数アンプ10にて増幅され、増幅後のIF信号S5は、IF信号S5を両波整流して包絡線検波する検波回路12に入力される。
【0006】
そして、検波回路12にて包絡線検波された検波信号S6は、2系統に分配され、その分配された一方の検波信号S6は、検波信号S6を積分(換言すれば平均化)して基準電圧(換言すれば平均電圧)S7を生成する積分回路14に入力され、他方の検波信号S6は、積分回路14にて生成された基準電圧S7と共に比較回路16に入力される。
【0007】
つまり、送信データS1は、ハイ/ローの信号レベルの比率(つまり、デューティ比)が50%になることから、ASK受信回路60では、検波信号S6の平均電圧を基準電圧S7として生成し、この基準電圧S7と検波信号S6とを比較することで、送信データS1に対応したデューティ比50%のパルス信号(2値信号)Soutを生成するのである。
【0008】
そして、このパルス信号Soutは、送信データS1を復元したデータ信号として、図示しないデータ処理部に出力される。
ところで、図6(a)に示すASK受信回路60において、対数アンプ10を使用しているのは、ダイナミックレンジを拡大するために、リニアアンプとAGC回路とからなるAGCアンプを使用して受信信号(詳しくはIF信号)を増幅するようにした場合に比べて、ASK受信回路60の回路構成を簡単にして、その消費電力やコストを低減するためである。
【0009】
しかし、このように対数アンプ10を用いたASK受信回路60では、受信信号(IF信号)S4が対数的に重み付けして増幅されるので、基準電圧S7を、検波信号S6の積分(平均化)により生成するようにしただけでは、比較回路16にて生成されるパルス信号Soutのデューティ比が50%から大きくずれてしまい、後段のデータ処理部で、送信データS1のビット判定を行う際に、ビット誤りを生じ易くなるという問題があった。
【0010】
つまり、例えば、図7(a)は、図6(a)に示したASK送/受信回路50、60における各信号S1〜S7、Soutの信号波形を表しているが、この図から明らかなように、対数アンプ10に入力されるIF信号S4は、振幅変化部分の包絡線がほぼ正弦波状になるのに対し、対数アンプ10にて増幅されたIF信号S5は、振幅が小さいローレベル領域では伸張され、振幅が大きいハイレベル領域では圧縮されて、上下非対称の歪んだ波形となる。
【0011】
このため、このIF信号を包絡線検波して、その検波信号S6と、検波信号S6の平均電圧である基準電圧S7とを比較するだけでは、最終的に得られるパルス信号Soutのデューティ比が、60%〜70%となってしまい、後段のデータ処理部で、送信データS1を正常に復元できなくなるという問題が生じるのである。
【0012】
一方、この問題を防止する技術として、図6(b)に示すように、検波回路12の後段にクリップ回路18を設けて、検波回路12からの出力(検波信号S6)が所定のクリップ電圧よりも低下したときに、その信号をクリップ電圧に保持することが提案されている(例えば、特許文献1等、参照)。
【0013】
つまり、この提案のASK受信回路70においては、図7(b)に示すように、クリップ回路18にて検波信号S6の最低電圧がクリップ電圧となるよう検波信号S6を補正し、積分回路14にて、その補正後の検波信号(クリップ信号)S8を積分(平均化)することで基準電圧S9を生成し、比較回路16にて、その基準電圧S9とクリップ信号S8(又は検波信号S6)とを比較することで、パルス信号Soutを生成する。
【0014】
従って、この提案のASK受信回路70によれば、比較回路16からのパルス信号Soutのデューティ比が50%となるようにクリップ電圧を予め設定しておくことで、比較回路16から出力されるパルス信号Soutのデューティ比を50%にすることができ、送信データS1のビット判定を行う際に生じるビット誤りを低減することができる。
【特許文献1】特開2006−311285号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記提案のASK受信回路70においては、クリップ電圧が一定電圧に固定されるため、対数アンプ10の特性のバラツキによって、クリップ電圧が最適値からずれてしまい、パルス信号Soutのデューティ比を50%に制御することができなくなることがあった。
【0016】
また、対数アンプ10は、入力電圧をVin、出力電圧をVout、としたとき、出力電圧Voutが入力電圧Vinに対して対数関数(Vout=k・logVin、k:定数)となるように、入力信号(ここではIF信号S4)を増幅するものであるが、対数アンプ10において、理想的な対数関数となる入出力特性が得られる信号入力範囲は限られており、IF信号の電力(換言すればASK受信回路70における受信電力)が、この理想的な信号入力範囲からずれると、IF信号を所望の対数関数で増幅することができなくなる。
【0017】
このため、上記提案のASK受信回路70において、クリップ電圧を、対数アンプ10において理想的な入出力特性が得られる信号入力範囲内で設定したとしても、ASK受信回路70における受信電力が理想的な信号入力範囲からずれた場合には、パルス信号Soutのデューティ比も50%からずれてしまう、という問題もある。
【0018】
そして、このようにパルス信号Soutのデューティ比が50%からずれると、送信データS1のビット判定を行う際にビット誤りが生じ易くなるため、送信データS1の受信精度を確保するためには、ASK受信回路70に組み込む対数アンプ10の特性や、受信電力に対するASK受信回路70の使用条件等を、厳しく管理しなければならなくなる。
【0019】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、ASK変調された信号を受信し、その受信信号を対数アンプにより増幅して基準電圧と比較することにより、送信データに対応したパルス信号を生成するASK受信回路において、対数アンプのバラツキや受信電力の変動等によってパルス信号のデューティ比が50%からずれるのを防止し、送信データを精度よく復元できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載のASK受信回路においては、前述の従来回路と同様、ASK変調された信号を受信し、その受信信号を対数アンプにて増幅すると共に、その増幅後の受信信号を検波回路にて包絡線検波し、比較回路にて、その検波信号と基準電圧とを比較することで、送信データに対応したパルス信号を生成する。
【0021】
そして、本発明では、比較回路がパルス信号を生成するのに用いる基準電圧を、基準電圧生成回路が、ピークレベル検出手段と平均レベル検出手段とを用いて生成する。つまり、本発明では、ピークレベル検出手段及び平均レベル検出手段が、検波回路から出力される検波信号のピークレベル及び平均レベルをそれぞれ検出し、基準電圧生成回路が、これら各検出手段にて検出されたピークレベルと平均レベルとに基づき、基準電圧を生成する。
【0022】
従って、本発明のASK受信回路によれば、比較回路にて検波信号と比較される基準電圧が、検波信号の平均レベルと検波信号のピークレベルとに応じて変化することになり、ピークレベルが大きくなれば、基準電圧も大きくなる。
【0023】
このため、基準電圧は、受信信号の受信電力が高く、受信信号のハイレベル領域の圧縮率が大きくなる程、より高電圧に設定されることになり、パルス信号のデューティ比が正規の50%からずれるのを防止することができる。
【0024】
また、本発明では、図6(b)に示したASK受信回路のように、検波信号を一定のクリップ電圧でクリップして平均化することにより基準電圧を生成するのではなく、検波信号のピークレベルと平均レベルとを用いて基準電圧を生成する。
【0025】
そして、検波信号のピークレベル及び平均レベルは、対数アンプの特性のバラツキや、対数アンプの使用条件に応じて変化することから、本発明によれば、基準電圧を、対数アンプの特性のバラツキや対数アンプの使用条件に対応して設定することができることになり、ASK受信回路での送信データの復元精度を向上するために、対数アンプの特性のバラツキを抑制したり、その使用範囲を制限する必要がない。よって、本発明によれば、ASK受信回路の低コスト化を図り、その使用可能範囲を拡大することもできる。
【0026】
ここで、基準電圧生成手段にて基準電圧を生成する際には、例えば、ピークレベルと平均レベルを加算し、その加算結果に所定の係数を乗じることで、基準電圧を生成するようにしてもよいが、基準電圧をより最適値に設定できるようにするには、請求項2に記載のように、ピークレベル及び平均レベルを所定の比率で加算することにより、基準電圧を生成するようにするとよい。
【0027】
具体的には、例えば、ピークレベルと平均レベルとにそれぞれ所定の係数K1,K2を乗じ、その乗算値を加算することにより、基準電圧を生成するようにするとよい。
そして、このようにすれば、基準電圧として、ピークレベルと平均レベルとの何れかを重み付けして加算した電圧値を設定することができるようになり、ピークレベルと平均レベルとを単に加算した電圧値に基づき基準電圧を設定するようにした場合に比べて、基準電圧として、対数アンプの特性に対応したより最適な電圧値を設定することが可能となる。
【0028】
なお、この場合、基準電圧を生成する際のピークレベルと平均レベルとの比率(換言すれば上述した係数K1,K2)には、請求項3に記載のように、比較回路から実際に出力されるパルス信号のデューティ比が50%になるように実験或いはシミュレーション等で求めた値を設定すればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は実施形態のASK受信回路20の構成を表すブロック図である。
本実施形態のASK受信回路20は、図6(a)、(b)に示したASK受信回路60,70と同様、ETCシステムで使用される車載器に組み込まれ、図6(a)に示した路上機側のASK送信回路50から送信された送信電波を受信アンテナ2で受信して、ASK送信回路50からの送信データ(例えばマンチェスタ符号化方式で符号化されたデータ)を復元するのに使用されるものである。
【0030】
このため、本実施形態のASK受信回路20には、図6(a)に示したASK受信回路60と同様、受信アンテナ2からの受信信号を増幅するローノイズアンプ(LNA)4、LNA4にて増幅された受信信号と局部発振器6から出力される一定周波数の局発信号とを混合することで、受信信号を中間周波信号(IF信号)S4に周波数変換するミキサ8、ミキサ8にて周波数変換された受信信号(つまりIF信号)S4を増幅する対数アンプ10、対数アンプ10にて増幅されたIF信号S5を両波整流して包絡線検波する検波回路12、及び、この検波回路12にて包絡線検波された検波信号S6と基準電圧S11とを比較することで、送信データに対応したデューティ比50%のパルス信号Soutを生成して、図示しないデータ処理部に出力する比較回路16、が設けられている。
【0031】
また、本実施形態のASK受信回路20には、比較回路16が検波信号S6と比較するのに用いる基準電圧S11を生成するための回路として、検波信号S6を積分(換言すれば平均化)して平均電圧S7を生成する積分回路14と、検波信号S6のピーク電圧S10を検出するためのピークホールド回路22と、が設けられている。なお、積分回路14は、図6(a)に示したASK受信回路60と同様のものである。
【0032】
そして、これら各回路22、14から出力されるピーク電圧S10及び平均電圧S7は、それぞれ、乗算器24、26に入力されて、予め設定された係数K1、K2(但し、0<K1<1、0<K2<1)が乗算される。また、乗算器24、26による乗算結果(K1×S10、K2×S7)は、加算器28に入力され、加算器28にて互いに加算されることにより、基準電圧S11に変換される。
【0033】
つまり、本実施形態では、図2に示すように、検波回路12で検波信号S6が生成されるまでは、図6(a)に示したETCシステムと同様に、送信データS1が、S2〜S6へと変化するが、ASK受信回路20では、この検波信号S6のピーク電圧S10と平均電圧S7とを係数K1、K2にて重み付けして加算することにより、基準電圧S11が生成され(S11=K1×S10+K2×S7)、比較回路16において、この基準電圧S11と検波信号S6とを比較することにより、パルス信号Soutが生成される。
【0034】
そして、本実施形態では、基準電圧S11を生成するのに用いるピーク電圧S10と平均電圧S7との比率(つまり係数K1、K2)が、比較回路16から出力されるパルス信号Soutのデューティ比が50%となるように、予め実験的に設定されている。
【0035】
このため、本実施形態のASK受信回路20によれば、基準電圧S11として、検波信号S6の平均電圧S7とピーク電圧S10との間の最適値が設定されることになり、比較回路16から出力されるパルス信号Soutのデューティ比が50%からずれるのを防止することができる。
【0036】
また、パルス信号Soutのデューティ比を50%にすることができるので、後段のデータ処理部で送信データのビット判定を行う際にビット誤りが生じるのを防止し、送信データの受信精度を向上することができる。
【0037】
また、本実施形態では、図6(b)に示したASK受信回路70のように、検波信号S6を一定のクリップ電圧でクリップしたクリップ信号S8を平均化することにより基準電圧S9を生成するのではなく、検波信号S6のピーク電圧S10と平均電圧S7とを用いて基準電圧S11を生成する。
【0038】
そして、検波信号S6のピーク電圧S10及び平均電圧S7は、対数アンプの特性のバラツキや、対数アンプの使用条件に応じて変化することから、本実施形態によれば、基準電圧S11を、対数アンプ10の特性のバラツキや対数アンプ10の使用条件に対応して設定することができることになり、ASK受信回路20での送信データの復元精度を確保するために、対数アンプの特性のバラツキを抑制したり、その使用範囲を制限する必要がない。
【0039】
よって、本発明によれば、ASK受信回路の低コスト化を図り、その使用可能範囲を拡大することもできる。
以下、この効果について具体的に説明する。
【0040】
まず、対数アンプ10への入力電力[dBm]と出力電圧[V]との関係は、理想的には、図3(a)に点線で示すように直線状(つまり理想的な対数関数)になるが、実際には、こうした理想的な対数関数が得られる信号入力範囲は限られており、図3(a)に実線で示すように、入力電力がこの信号入力範囲(A)からずれると、そのずれ幅に応じて、入力電力の変化に対する出力電圧の変化割合が小さくなる。
【0041】
つまり、例えば、図3(b)に示すように、対数アンプ10への入力電力が、理想的な対数関数が得られる信号入力範囲(A)を中心として所定範囲だけ増加又は減少した領域(B)では、入力電力と出力電圧との関係を表す直線の傾きが、信号入力範囲(A)での直線の傾きよりも小さくなり、対数アンプ10への入力電力が、領域(B)よりも更に増加又は減少した領域(C)では、入力電力と出力電圧との関係を表す直線の傾きが、信号入力範囲(B)での直線の傾きよりも更に小さくなる。
【0042】
そこで、本実施形態のASK受信回路20、及び、図6(a)、(b)に示した従来のASK受信回路60、70に対して、それぞれ、対数アンプ10への入力電力が上記各領域(A)、(B)、(C)内の電力値となるように、ASK変調信号を入力し、そのとき各ASK受信回路20、60、70で生成される検波信号S6、基準電圧S11,S7,S9及びパルス信号Soutを計測(シミュレーション)したところ、図4(a)〜(c)に示す結果が得られた。
【0043】
なお、図4(a)、(b)、(c)は、それぞれ、対数アンプ10への入力電力が上述した各領域(A)、(B)、(C)内にあるときの計測結果を表している。また、図4(a)〜(c)において、パルス信号Soutのうち、従来方式1は、図6(a)に示したASK受信回路60からの出力パルスを表し、従来方式2は、図6(b)に示したASK受信回路70からの出力パルスを表し、実施形態は、図1に示した本実施形態のASK受信回路20からの出力パルスを表し、理想波形は、ASK変調信号を生成するのに用いた送信データを表す。
【0044】
そして、この計測結果から、従来方式2のASK受信回路70では、対数アンプ10への入力電力が理想的な信号入力範囲(A)内にあるときには、基準電圧S9が本実施形態の基準電圧S11と略一致して、理想波形に近いデューティ比50%のパルス信号Soutが得られる(図4(a)参照)ものの、対数アンプ10への入力電力が領域(B)にずれると、基準電圧S9が本実施形態の基準電圧S11と従来方式1の基準電圧S7との間の電圧値となって、パルス信号Soutのデューティ比が理想波形(50%)よりも大きくなり、対数アンプ10への入力電力が領域(C)までずれると、基準電圧S9が従来方式1の基準電圧S7と略同じになって、パルス信号Soutのデューティ比が更に大きくなってしまうことがわかる。
【0045】
これに対し、本実施形態のASK受信回路20では、対数アンプ10への入力電力が、理想的な信号入力範囲(A)から領域(B)、領域(C)へとずれても、パルス信号Soutのデューティ比が理想波形(50%)となるように基準電圧S11を最適値に設定することができ、パルス信号Soutのデューティ比を略50%に制御できることがわかる。
【0046】
従って、本実施形態のASK受信回路20によれば、受信信号の受信電力が変動してもパルス信号Soutのデューティ比を略50%に制御できることになり、従来方式2のASK受信回路70に比べて、使用可能範囲を拡大することができるようになるのである。
【0047】
また、本実施形態のASK受信回路20では、ピーク電圧S10及び平均電圧S7に、ぞれぞれ、係数K1、K2を乗じ、その乗算結果を加算することにより基準電圧S11を設定するようにしているので、パルス信号Soutのデューティ比が50%となるように基準電圧S11を設定できるようにするには、ピーク電圧S10及び平均電圧S7に乗じる係数K1、K2(換言すれば基準電圧S11を設定する際の各電圧値S10、S7の比率)を調整すればよく、その調整を簡単に行うことができる。
【0048】
なお、本実施形態では、ピークホールド回路22が本発明のピークレベル検出手段に相当し、積分回路14が本発明の平均レベル検出手段に相当し、乗算器24,26及び加算器28が本発明の基準電圧生成手段に相当する。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲内にて種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施形態では、基準電圧V11は、ピークホールド回路22、積分回路14、乗算器24、26、及び加算器28を用いて生成するものとして説明したが、これら各部の機能は、例えば、図5に示す電気回路によって実現できる。
【0050】
つまり、図5に示す回路においては、検波回路から比較回路16に至る検波信号S6の伝送経路に一端が接続された抵抗R1と、一端がこの抵抗R1に接続され、他端がグランドラインに接地されたコンデンサC1とにより、平均レベル検出手段としての積分回路が形成されている。
【0051】
また、ピークレベル検出手段としてのピークホールド回路は、
1)ベースが検波信号S6の伝送経路に接続され、エミッタが抵抗R2を介して電源ライン(正電圧)に接続され、コレクタがグランドラインに接地されたPNPトランジスタT1と、
2)ベースがPNPトランジスタT1のエミッタに接続され、コレクタが電源ラインに接続され、エミッタが抵抗R3を介してグランドラインに接地されたNPNトランジスタT2と、
3)抵抗R3に並列に接続されたコンデンサC2と、
から構成されている。
【0052】
このため、図5に示す回路では、PNPトランジスタT1を介して、NPNトランジスタT2から抵抗R3とコンデンサC2との並列回路に流れ込む電流が制御されて、コンデンサC2に、検波信号S6の信号レベル(電圧)に対応した電荷が蓄積されることになり、そのコンデンサC2の両端電圧は、検波信号S6のピークレベルに対応した電圧(つまりピーク電圧S10)となる。
【0053】
そして、このコンデンサC2の両端電圧(ピーク電圧S10)と、積分回路を構成しているコンデンサC1の両端電圧(つまり平均電圧S7)は、それぞれ、抵抗R4、R5を介して、比較回路16を構成するコンパレータの反転入力端子に入力される。
【0054】
この抵抗R4、R5は、これら各電圧S10、S7を加算して比較回路16に入力するものであり、本発明の基準電圧生成手段として機能する。そして、これら各抵抗R4、R5は、その抵抗値を調整することにより、各電圧S10、S7を加算する際の比率を任意に設定できる。
【0055】
従って、基準電圧S11を図5に示す回路を用いて生成するようにしても、検波電圧のピーク電圧S10と平均電圧S7とを用いて、パルス信号Soutのデューティ比が50%となるように、基準電圧S11を設定することができるようになり、上記実施形態と同様の効果が得られるASK受信回路を構成できることになる。
【0056】
一方、上記実施形態のASK受信回路20は、ETCシステムの車載器に搭載されるものとして説明したが、本発明は、ETCシステム用のASK受信回路に限定されるものではなく、ASK変調信号を受信するASK受信回路であれば、上記実施形態と同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【0057】
そして、上記実施形態のASK受信回路20には、受信信号をIF信号に周波数変換するために、局部発振器6及びミキサ8が設けられているが、受信信号(搬送波)の周波数が低く、受信信号を直接包絡線検波できるようなシステムであれば、局部発振器6及びミキサ8を設けることなく、ASK受信回路を構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施形態のASK受信回路の構成を表すブロック図である。
【図2】実施形態のASK受信回路の各部で生成される信号をASK送信回路側の信号と共に表すタイムチャートである。
【図3】対数アンプへの入力電力と出力電圧との関係を表す説明図である。
【図4】実施形態のASK受信回路の動作を従来方式と比較して表す説明図である。
【図5】実施形態の基準電圧生成用回路の変形例を表す電気回路図である。
【図6】ASK送信回路と従来のASK受信回路の構成を表すブロック図である。
【図7】従来のASK受信回路の各部で生成される信号をASK送信回路側の信号と共に表すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0059】
2…受信アンテナ、4…ローノイズアンプ(LNA)、6…局部発振器、8…ミキサ、10…対数アンプ、12…検波回路、14…積分回路、16…比較回路、18…クリップ回路、22…ピークホールド回路、24…乗算器、28…加算器、20,60,70…ASK受信回路、50…ASK送信回路、51…ローパスフィルタ(LPF)、52…局部発振器、54…ミキサ、56…パワーアンプ(PA)、58…送信アンテナ、T1…PNPトランジスタ、T2…NPNトランジスタ、C1,C2…コンデンサ、R1〜R5…抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASK変調された信号を受信し、該受信信号から前記送信データに対応したパルス信号を生成するASK受信回路であって、
前記受信信号を増幅する対数アンプと、
該対数アンプにて増幅された受信信号を包絡線検波する検波回路と、
該検波回路から出力される検波信号のピークレベルを検出するピークレベル検出手段と、
前記検波回路から出力される検波信号の平均レベルを検出する平均レベル検出手段と、
前記各検出手段にて検出されたピークレベルと平均レベルとに基づき、基準電圧を生成する基準電圧生成手段と、
前記検波回路から出力された検波信号と、前記基準電圧生成手段により生成された基準電圧とを比較し、該比較結果を、前記送信データを表すパルス信号として出力する比較回路と、
を備えたことを特徴とするASK受信回路。
【請求項2】
前記基準電圧生成手段は、前記ピークレベル及び平均レベルを所定の比率で加算することにより、前記基準電圧を生成することを特徴とする請求項1に記載のASK受信回路。
【請求項3】
前記比率は、前記比較回路から出力されるパルス信号のデューティ比が50%になるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載のASK受信回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−300952(P2008−300952A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141966(P2007−141966)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】