説明

B群連鎖球菌属を検出するための組成物及び方法

【課題】B群連鎖球菌属(Group B streptococci)を検出するための組成物、方法及びキット。
【解決手段】特に、極めて低レベルのB群連鎖球菌属核酸を検出するための増幅プライマー及びハイブリダイゼーションプローブとして有用なオリゴヌクレオチドを記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第60/650,501号(2005年2月7日出願)に基づく優先権を主張する。この優先権出願の開示内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は生命工学分野に関する。より具体的には、本発明はB群連鎖球菌属(GroupB streptococci(GBS))の核酸を検出するための診断アッセイに関する。
【背景技術】
【0003】
より一般的にはB群連鎖球菌属として知られるストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)は、新生児の敗血症及び髄膜炎の主因の1つである。B群疾患の発症率は、生児出生1000人につき2〜5人の乳児と推定される。早期発症型の本疾患は生後1週間以内に発症し、死亡率は50%を超える。7日目以降に発症した場合、死亡率は14〜23%に低下する。膣部や肛門直腸部にB群連鎖球菌が定着している女性及び遅延分娩又は難産の女性から産まれた場合、新生児はB群疾患のリスクが高い。B群疾患を予防する方法として、CDCは全妊婦について妊娠35〜37週目に肛門性器部のB群連鎖球菌定着をスクリーニングすることを推奨し、これにより、保菌者と同定された全ての女性に分娩時抗菌予防処置を施すことができる。スクリーニングは膣及び/又は肛門直腸のスワブを採取し、それらをリム(Lim)ブロス等の推奨培地で18〜24時間インキュベートして培養することにより行われる。B群連鎖球菌は成人でも重篤な疾患を引き起こす可能性があるが、新生児の場合より極めて少ない。
【0004】
ストレプトコッカス・アガラクティエの推定同定は、伝統的に生理的及び生化学的方法により行われていた。これには、グラム染色、カタラーゼ反応、ヒツジ血液寒天平板上での溶血活性、馬尿酸塩又はL−ピロリドニル−β−ナフチルアミド(PYR)の加水分解、CAMP試験及び胆汁エスクリン試験があげられる。B群連鎖球菌コロニーのあるものはヒツジ血液寒天上で溶血しないため、B群連鎖球菌の確認同定には生化学的試験及び/又は血清学的試験を組み合わせる必要があった。
【0005】
近年、培養物からB群連鎖球菌を同定する際にDNAプローブ試験が役立っている。DNAプローブ試験は、B群連鎖球菌のDNA及びRNAの定性検出のために核酸ハイブリダイゼーションを用いる。本試験は、ストレプトコッカス・アガラクティエを確実に同定するための非主観的で精確かつ迅速な同定法を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、B群連鎖球菌検出の感度、精度及び特異性を高めて;定性的及び定量的測定能を提供し;かつリアルタイムで増幅と検出を組み合わせて複製レベルの低い標的の検出速度を高めて、DNAプローブ試験を改良する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明の第1側面は、ストレプトコッカス・アガラクティエ核酸を検出するためのハイブリダイゼーションアッセイプローブに関する。本ハイブリダイゼーションアッセイプローブは、標的相補的塩基配列、及び、場合により、検出すべき核酸に対して相補的でない1以上の塩基配列を含む、プローブ配列を含む。標的相補的塩基配列は、配列番号3の配列に含まれる16〜20個の連続塩基又はその相補配列からなり、RNA及びDNAの均等物並びにヌクレオチド類似体が存在してもよい。一般に、ハイブリダイゼーションアッセイプローブの長さは最高30塩基でもよい。好ましい態様では、プローブ配列は検出すべき核酸に対して相補的でない任意塩基配列を含む。より好ましくは、ハイブリダイゼーションアッセイプローブは検出可能な標識を含む。例えば、プローブは発蛍光団部分と消光体部分を含んでもよい。この場合、ハイブリダイゼーションアッセイプローブは分子ビーコン(molecular beacon)でもよい。分子ビーコンの例としては、配列番号14、配列番号15、配列番号16及び配列番号17からなる群から選択される標的相補的塩基配列があげられる。他の好ましい態様では、プローブ配列は検出すべき核酸に対して相補的でない1以上の任意塩基配列を含まない。より好ましくは、このハイブリダイゼーションアッセイプローブは検出可能な標識を含む。検出可能な標識は、化学発光性標識及び蛍光性標識であってよい。
【0008】
本発明の他の側面は、生物試料中に存在する可能性のあるストレプトコッカス・アガラクティエ核酸配列を増幅するキットに関する。本キットは、3’末端標的相補的配列、及び、場合により増幅すべき標的核酸に対して相補的でない第1プライマー上流配列を有する第1プライマーを含む。第1プライマーの3’末端標的相補的配列は、配列番号2に含まれる25個の連続塩基を含み、RNA及びDNAの均等物並びにヌクレオチド類似体が存在してもよい。キットはまた、3’末端標的相補的配列、及び、場合により増幅すべき標的核酸に対して相補的でない第2プライマー上流配列を有する第2プライマーを含む。第2プライマーの3’末端標的相補的配列は、配列番号1に含まれる20個の連続塩基を含み、RNA及びDNAの均等物並びにヌクレオチド類似体が存在してもよい。キットの好ましい態様では、第1プライマー及び第2プライマーの長さは各々最高58塩基である。他の好ましい態様では、第1プライマーの3’末端標的相補的配列及び第2プライマーの3’末端標的相補的配列の長さは各々最高31塩基である。この場合、第2プライマーの3’末端標的相補的配列の長さは最高21塩基であることがより好ましい。さらに好ましくは、第1プライマーはT7 RNAポリメラーゼに対するプロモーター配列等の第1プライマー上流配列を含む。キットの他の好ましい態様では、第1プライマーの3’末端標的相補的配列の長さが最高31塩基で、第2プライマーの3’末端標的相補的配列の長さが最高21塩基の場合、第1プライマーの3’末端標的相補的配列は好ましくは配列番号8、配列番号9及び配列番号10からなる群から選択され、第2プライマーの3’末端標的相補的配列は好ましくは配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
定義
本発明の目的に関する以下の用語は、それと異なることを本明細書に明記しない限り下記の意味である:
本明細書の「生物試料」は、ヒト、動物又は環境試料由来のいかなる組織又はポリヌクレオチド含有材料である。本発明の生物試料としては、末梢血、血漿、血清若しくは他の体液、骨髄若しくは他の臓器、生検組織、又は生物由来の他の材料があげられる。生物試料を組織又は細胞構造の破壊のために処理して細胞内成分を、酵素、緩衝剤、塩類、界面活性剤等を含有しうる溶液中へ放出させることができる。
【0010】
本明細書の「ポリヌクレオチド」は、RNA又はDNA及び配列中に存在する可能性がある合成ヌクレオチド類似体又は他の分子であって、ポリヌクレオチドと相補配列がある第2分子とのハイブリダイゼーションを妨げないものを意味する。
【0011】
本明細書の「検出可能な標識」は、検出できる又は検出可能な応答をもたらすことができる、化学物質種である。本発明の検出可能な標識をポリヌクレオチドプローブに直接又は間接的に連結させることができ、放射性同位体、酵素、ハプテン、色素又は検出可能な色を付与する粒子(例えばラテックスビーズ又は金属粒子)等の発色団、発光性化合物(例えば生物発光性、リン光性又は化学発光性部分)及び蛍光性化合物があげられる。
【0012】
「均一検出可能な標識」は、標的配列にハイブリダイズしたプローブ上に当該標識があるかを決定することにより均一系で検出できる標識をいう。すなわち、均一検出可能な標識は、ハイブリダイズした形の標識又は標識プローブをハイブリダイズしていない形のものから物理的に分離せずに検出できる。GBS核酸検出のために標識プローブを用いる場合は均一検出可能な標識が好ましい。均一標識の例は、Arnoldら、米国特許5,283,174号;Woodheadら、米国特許第5,656,207号;及びNelsonら、米国特許第5,658,737号に詳述されている。均一アッセイ法に使用するための好ましい標識としては化学発光性化合物があげられる(例えばWoodheadら、米国特許第5,656,207号;Nelsonら、米国特許第5,658,737号;及びArnoldら、米国特許第5,639,604号参照)。好ましい化学発光性標識は、標準AE又はその誘導体(例えばナフチル−AE、オルト−AE、1−又は3−メチル−AE、2,7−ジメチル−AE、4,5−ジメチル−AE、オルト−ジブロモ−AE、オルト−ジメチル−AE、メタ−ジメチル−AE、オルト−メトキシ−AE、オルト−メトキシ(シンナミル)−AE、オルト−メチル−AE、オルト−フルオロ−AE、1−又は3−メチル−オルト−フルオロ−AE、1−又は3−メチル−メタ−ジフルオロ−AE、及び2−メチル−AE)等のアクリジニウムエステル(AE)化合物である。
【0013】
「均一アッセイ」は、特異的プローブハイブリダイゼーションの程度を決定する前に、ハイブリダイズしたプローブをハイブリダイズしていないプローブから物理的に分離する必要がない検出法をいう。例えば本明細書に記載の均一アッセイ法の例では、適当な標的にハイブリダイズした場合に蛍光シグナルを発する分子ビーコンその他自己報告プローブ、ハイブリッド二本鎖中に存在しない限り化学的手段で選択的に破壊できる化学発光性アクリジニウムエステル系標識及び当業者に周知の他の均一検出可能な標識を使用できる。
【0014】
本明細書の「増幅」は、標的核酸配列、その相補配列又はそのフラグメントの多数の複製を得るためのインビトロ法をいう。
「標的核酸」又は「標的」は、標的核酸配列を含む核酸を意味する。一般に、増幅すべき標的核酸配列は、反対側に配置された2つのプライマーの間に位置し、各プライマーに対して完全に相補的な標的核酸部分を含むであろう。
【0015】
「標的核酸配列」又は「標的配列」又は「標的領域」は、特異的なデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド配列であって、一本鎖核酸分子及びそれに対して相補的なデオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド配列の全部又は一部を含む配列を意味する。
【0016】
「転写関連増幅(transcription associated amplification)」は、RNAポリメラーゼを用いて核酸鋳型から多数のRNA転写体を調製するいかなる型の核酸増幅をも意味する。「転写介在増幅(Transcription Mediated Amplification)」(TMA)という転写関連増幅法の例は、一般に、RNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、リボヌクレオシド三リン酸及びプロモーター−鋳型相補的オリゴヌクレオチドを用い、場合により1以上の類似オリゴヌクレオチドを含んでもよい。TMAの変法は当技術分野で周知であり下記:Burgら、米国特許第5,437,990号;Kacianら、米国特許第5,399,491号及び第5,554,516号;Kacianら、国際特許出願公開WO93/22461;Gingerasら、国際特許出願公開WO88/01302;Gingerasら、国際特許出願公開WO88/10315;Malekら、米国特許第5,130,238号;Urdeaら、米国特許第4,868,105号及び第5,124,246号;McDonoughら、国際特許出願公開WO94/03472;並びにRyderら、国際特許出願公開WO95/03430に詳細に開示される。本明細書に開示する型の核酸増幅法を実施するためには、Kacianらの方法が好ましい。
【0017】
本明細書の「オリゴヌクレオチド」又は「オリゴマー」は、少なくとも2、一般に約5〜約100の化学物質サブユニットの高分子鎖であり、各サブユニットはヌクレオチド塩基部分、糖部分及びサブユニットを直線的な空間配置に結合する連結部分を含む。一般的なヌクレオチド塩基部分は、グアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)であるが、水素結合可能な他の稀な又は修飾されたヌクレオチド塩基が当業者に周知である。オリゴヌクレオチドは、場合により、糖部分、塩基部分及び主鎖構成要素のいかなる類似体を含んでもよい。本発明の好ましいオリゴヌクレオチドのサイズ範囲は約10〜約100残基である。オリゴヌクレオチドは天然資源から精製できるが、好ましくは様々ないかなる周知の酵素法又は化学的方法を用いても合成される。
【0018】
本明細書の「プローブ」は、ハイブリダイゼーションを促進する条件下で、核酸中、好ましくは増幅した核酸中の、標的配列に特異的にハイブリダイズして、検出可能なハイブリッドを形成するオリゴヌクレオチドである。プローブは場合により、検出可能な部分を含んでもよく、これはプローブの末端(1以上)に結合していても、内部にあってもよい。標的ポリヌクレオチドと結合するプローブのヌクレオチドは、検出可能な部分がプローブ配列の内部にある場合のように、厳密に連続しなくてもよい。検出は直接的(すなわち、標的配列又は増幅した核酸に直接ハイブリダイズするプローブから生じる)又は間接的(すなわち、プローブを標的配列又は増幅した核酸に連結する中間分子構造体にハイブリダイズするプローブから生じる)のいずれでもよい。プローブの「標的」は一般に、プローブオリゴヌクレオチドの少なくとも一部に標準的な水素結合(すなわち塩基対合)により特異的にハイブリダイズする増幅核酸配列内に含まれる配列をいう。プローブは、標的特異的配列、及び、場合により、検出すべき標的配列に対して相補的でない他の配列を含んでもよい。本非相補配列としては、プロモーター配列、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、又はプローブの三次元配置に寄与する配列(例えばLizardiら、米国特許第5,118,801号及び第5,312,728号参照)があげられる。「十分に相補的」である配列は、プローブオリゴヌクレオチドを、プローブの標的特異的配列に対して完全には相補的でない標的配列に安定にハイブリダイズさせることができる。
【0019】
本明細書の「増幅プライマー」は、標的核酸又はその相補配列にハイブリダイズして核酸増幅反応に関与するオリゴヌクレオチドである。例えば増幅プライマー又はより簡易に「プライマー」は、場合により修飾されたオリゴヌクレオチドでもよく、鋳型核酸にハイブリダイズすることができ、かつDNAポリメラーゼ活性によって延長できる3’末端があるものである。一般にプライマーは、GBS核酸に対して相補的な下流配列、及び、場合により、GBS核酸に対して相補的でない上流配列を有してもよい。この任意の上流配列は、例えばRNAポリメラーゼプロモーターとして作用できるか又は制限エンドヌクレアーゼ開裂部位を含んでもよい。
【0020】
「実質的に相同」、「実質的に対応している」又は「実質的に対応する」は、対象オリゴヌクレオチドに、基準塩基配列内に存在する少なくとも10個の連続塩基領域に対して少なくとも70%相同、好ましくは少なくとも80%相同、より好ましくは少なくとも90%相同、最も好ましくは少なくとも100%相同である少なくとも10個の連続塩基領域を含む塩基配列があることを意味する(RNA及びDNAの均等物を除く)。当業者であれば、様々な%の相同性で、許容できない程度の非特異的ハイブリダイゼーションを阻止しつつオリゴヌクレオチドを標的配列にハイブリダイズさせることができるように、ハイブリダイゼーションアッセイ条件を改変できることを容易に認識するであろう。類似性の程度は、2つの配列を構成する核酸塩基の順序を比較して決定し、構造差が相補的塩基との水素結合を阻害しない限り、2配列間に存在する可能性のある他の構造差は考慮されない。2配列間の相同性の程度は、比較する少なくとも10個の連続塩基の各組中に存在する不適正塩基対合の数でも表わすことができ、これは0〜2個の塩基差であってよい。
【0021】
「実質的に相補的」は、対象オリゴヌクレオチドに、標的塩基配列内に存在する少なくとも10個の連続塩基領域に対して少なくとも70%相補的、好ましくは少なくとも80%相補的、より好ましくは少なくとも90%相補的、最も好ましくは少なくとも100%相補的である、少なくとも10個の連続塩基領域を含む塩基配列があることを意味する(RNA及びDNAの均等物を除く)。当業者であれば、様々な%の相補性で、許容できない程度の非特異的ハイブリダイゼーションを阻止しつつオリゴヌクレオチドを標的配列にハイブリダイズさせることができるように、ハイブリダイゼーションアッセイ条件を改変することを容易に認識するであろう。相補性の程度は、2つの配列を構成する核酸塩基の順序を比較して決定し、構造差が相補的塩基との水素結合を阻害しない限り、2つの配列間に存在する可能性のある他の構造差を考慮しない。2つの配列間の相補性の程度は、比較する少なくとも10個の連続塩基の各組中に存在する不適正塩基対合の数で表わすこともでき、これは0〜2個の不適正塩基対合であってよい。
【0022】
「十分に相補的」は、一連の相補的塩基間の水素結合により他の塩基配列にハイブリダイズしうる連続核酸塩基配列を意味する。相補的塩基配列は、オリゴヌクレオチドの塩基配列中の各位置において標準塩基対合(例えばG:C、A:T又はA:U対合)により相補的であってもよく、あるいは標準水素結合により相補的ではない1以上の残基を含んでもよい(非塩基ヌクレオチドを含む)が、この場合、本相補的塩基配列全体は適切なハイブリダイゼーション条件下で他の塩基配列と特異的にハイブリダイズすることができる。連続塩基は、オリゴヌクレオチドを特異的にハイブリダイズさせる予定の配列に対して、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約100%相補的である。適切なハイブリダイゼーション条件は当業者に周知であり、塩基配列組成に基づいて容易に推定でき、あるいはルーチン試験法を用いて経験的に決定できる(例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー,1989)1.90-1.91,7.37-7.57,9.47-9.51及び11.47-11.57章、特に9.50-9.51,11.12-11.13,11.45-11.47及び11.55-11.57章参照)。
【0023】
「捕獲オリゴヌクレオチド」は、標的配列と固定化オリゴヌクレオチドを塩基対ハイブリダイゼーションで特異的に結合させる手段を提供する、少なくとも1の核酸オリゴヌクレオチドを意味する。捕獲オリゴヌクレオチドは、好ましくは2つの結合領域、すなわち標的配列結合領域と固定化プローブ結合領域を含む。通常は2つの結合領域は同一オリゴヌクレオチド上で連続するが、捕獲オリゴヌクレオチドは、1以上のリンカーで互いに結合した2つの異なるオリゴヌクレオチド上に存在する、標的配列結合領域と固定化プローブ結合領域を含んでもよい。例えば、固定化プローブ結合領域が第1オリゴヌクレオチド上に存在し、標的配列結合領域が第2オリゴヌクレオチド上に存在し、この2つの異なるオリゴヌクレオチドが、第1及び第2オリゴヌクレオチドの配列に特異的にハイブリダイズする配列を含む第3オリゴヌクレオチドであるリンカーと水素結合で結合してもよい。
【0024】
「固定化プローブ」又は「固定化核酸」は、直接又は間接的に捕獲オリゴヌクレオチドを固定化支持体へ結合させる核酸を意味する。固定化プローブは、試料中の結合した標的配列を結合していない物質から分離するのを容易にする固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドである。
【0025】
「分離」又は「精製」は、生物試料中の1以上の成分を試料の1以上の他の成分から分離することを意味する。試料成分には一般に水溶液相中の核酸が含まれ、当該相はタンパク質、炭水化物、脂質及び標識プローブ等の物質も含有してもよい。好ましくは、分離又は精製の工程により、試料中に存在する他の成分のうち少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%、よりさらに好ましくは少なくとも約95%が除去される。
【0026】
「RNA及びDNAの均等(同等)物」又は「RNA及びDNAの均等(同等)塩基」は、同じ相補的塩基対ハイブリダイゼーション特性をもつRNA及びDNA等の分子を意味する。RNA及びDNAの均等物は異なる糖部分(すなわちリボース対デオキシリボース)があり、RNA中のウラシル及びDNA中のチミンの存在により異なる場合がある。均等物は特定配列に対して同程度の相補性があるため、RNA及びDNAの均等物間の相異が相同性の相異の一因となることはない。
【0027】
「本質的に〜からなる」は、本発明の基本的かつ新規な特性を実質的に変化させない他の成分、組成物又は工程が本発明の組成物又はキット又は方法に含まれてもよいことを意味する。当該特性としては、全血又は血漿等の生物試料中のGBS核酸を選択的に検出する機能があげられる。本発明の基礎をなす新規な特性に実質的影響を与える成分、組成物又は工程はいずれも本用語に含まれない。
【0028】
発明の詳細な説明
本明細書では血液、血漿、血清若しくは他の体液又は組織等の生物試料中のGBS核酸を選択的に検出するための組成物、方法及びキットを開示する。本発明のプライマー、プローブ及び方法は診断に用いることができる。
【0029】
概要
本発明には、生物試料中のGBS核酸を検出するのに特に有用な組成物(プライマー及びプローブ)、方法及びキットがあげられる。当該用途に適当なオリゴヌクレオチド配列を設計するため、まず既知のGBS核酸配列を比較して、診断アッセイで細菌ゲノムの標的として使用できる候補領域を同定した。比較の結果、図1に模式的に示すプライマー及びプローブを用いる検出の標的として、GBSゲノムの3つの異なる領域(配列番号1〜3)を選択した。増幅及び増幅配列の検出に用いるのに適当な合成オリゴヌクレオチドを設計するにあたって、比較した配列間で比較的変異が少ない配列部分を選択した。
【0030】
上記分析に基づき、以下に示す増幅プライマー及びプローブ配列を設計した。当業者であれば、GBS等の細菌標的に特異的なプライマー配列であって、T7プロモーター配列を含むもの又は含まないものを、以下に示す様々なプライマーベースのインビトロ増幅法でプライマーとして用いることができることを認識するであろう。本明細書に開示された配列を有するオリゴヌクレオチドは、GBS核酸を検出するアッセイで交互機能を果たすことを意図する。例えば交互検出アッセイで、本明細書に開示されたハイブリダイゼーションプローブを増幅プライマーとして用い、本明細書に開示の増幅プライマーをハイブリダイゼーションプローブとして用いることができる。さらに捕獲オリゴヌクレオチドを増幅前の標的核酸にハイブリダイズさせてこれを捕獲するために用いることも意図する。
【0031】
本明細書に開示された増幅プライマーは、特に標的特異的プライマーの組合わせから数種のアンプリコンを調製できる多重増幅反応の成分として意図される。例えば、本明細書に開示の好ましいGBS特異的プライマーのいくつかは、無関係な細菌のポリヌクレオチドを、アッセイを実質的に妨げずに増幅できる多重増幅反応に用いうることを意図する。
【0032】
有用な増幅方法
本発明に関して有用な増幅方法には、転写介在増幅(TMA)、核酸配列ベース増幅(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification、NASBA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification、SDA)、並びに自己複製ポリヌクレオチド分子と複製酵素、例えばMDV−I RNAとQ−ベータ酵素を用いる増幅方法が含まれる。これら種々の増幅方法を実施する方法は、各々米国特許第5,399,491号;欧州特許出願公開第0525882号;米国特許第4,965,188号;米国特許第5,455,166号;米国特許第5,472,840号;及びLizardi et al., BioTechnology 6:1197 (1988)にある。核酸増幅反応の実施方法を記載した上記文献の開示内容を本明細書に援用する。
【0033】
本発明の極めて好ましい態様では、GBS核酸配列をTMAプロトコルにより増幅する。本プロトコルによれば、DNAポリメラーゼ活性を提供する逆転写酵素が内因性RNaseH活性をも備えている。本方法で用いられるプライマーの1つは、増幅すべき標的核酸の一方の鎖に対して相補的な配列の上流に位置するプロモーター配列を含む。本増幅方法の第1工程では、プロモーター−プライマーがGBS標的の特定部位にハイブリダイズする。逆転写酵素が、プロモーター−プライマーの3’末端から延長して標的RNAの相補的DNA複製体を作製する。逆鎖プライマーと新たに合成されたDNA鎖との相互作用に伴い、本プライマーの末端から逆転写酵素により第2DNA鎖が合成されて二本鎖DNA分子が形成される。RNAポリメラーゼが本二本鎖DNA鋳型中のプロモーター配列を認識して転写を開始する。新たに合成されたRNAアンプリコンが各々TMAプロセスに再入して新たな複製の鋳型として用いられてRNAアンプリコンが指数関数的に増加する。DNA鋳型は各々100〜1000コピーのRNAアンプリコンを作製できるため、このような増加により100億のアンプリコンが1時間未満で得られる。本プロセス全体は自触媒反応であり、定温で行われる。
【0034】
プライマーの構造特性
上記のように、「プライマー」は、核酸増幅反応に関与しうる、場合により修飾されたオリゴヌクレオチドを示す。好ましいプライマーは、鋳型核酸にハイブリダイズすることができ、3’末端はDNAポリメラーゼ活性により延長できる。プライマーの5’側領域は標的核酸に対して相補的でなくてもよい。5’側−非相補領域にプロモーター配列が含まれる場合は「プロモーター−プライマー」という。当業者であれば、プライマーとして機能しうるいかなるオリゴヌクレオチド(すなわち、標的配列に特異的にハイブリダイズし、3’末端はDNAポリメラーゼ活性により延長されるオリゴヌクレオチド)を修飾して5’側プロモーター配列を含有させてプロモーター−プライマーとして機能しうることを認識するであろう。また、いかなるプロモーター−プライマーをプロモーター配列の除去により修飾するか、又はプロモーター配列なしに合成しても、依然としてプライマーとして機能できる。
【0035】
修飾された塩基部分がG、A、C、T又はUと非共有結合を形成する機能を維持する限り、かつ少なくとも1の修飾ヌクレオチド塩基部分又は類似体を含むオリゴヌクレオチドと一本鎖核酸とのハイブリダイゼーションが立体障害を受けない限り、プライマーのヌクレオチド塩基部分を修飾することができる(例えばプロピン基の付加により)。有用なプローブの化学組成は以下に記載するが、本発明のプライマーの窒素塩基は以下の:一般的な塩基(G、A、C、T、U)、その既知の類似体(例えば、塩基部分にヒポキサンチンがあるイノシン、すなわち「I」;The Biochemistry of the Nucleic Acids5-36, Adams et al.著 第11版1992参照)、プリン塩基又はピリミジン塩基の既知の誘導体(例えばN−メチルデオキシグアノシン、デアザ−又はアザ−プリン類及びデアザ−又はアザ−ピリミジン類、5又は6位に置換基をもつピリミジン塩基、2、6又は8位に変化又は変換された置換基をもつプリン塩基、2−アミノ−6−メチルアミノプリン、O−メチルグアニン、4−チオ−ピリミジン類、4−アミノ−ピリミジン類、4−ジメチルヒドラジン−ピリミジン類、及びO−アルキル−ピリミジン(Cook国際公開WO93/13121参照)、及びポリマーの1以上の残基の代わりに、主鎖が窒素塩基を含まない「非塩基」残基(Arnoldら米国特許第5,585,481号参照)でもよい。プライマー主鎖を構成する一般的な糖部分にはリボース及びデオキシリボースが含まれるが、2’−O−メチルリボース(2’−OMe)、ハロゲン化糖及び他の修飾された糖部分も使用できる。通常、プライマー主鎖の連結基はリン含有部分、最も一般的にはホスホジエステル結合であるが、ホスホロチオエート、メチルホスホナート、並びに「ロックされた核酸(locked nucleic acid)」(LNA)中にみられる結合、及び「ペプチド核酸」(PNA)中にみられるペプチド様結合等のリンを含まない結合等の他の結合も、本明細書中に開示するアッセイに用いられる。
【0036】
有用なプローブ標識系及び検出可能部分
特異的核酸ハイブリダイゼーションをモニターするのに用いられる標識系及び検出系は、本質的にいずれも本発明に用いられる。有用な標識群に含まれるものは、放射性標識、酵素、ハプテン、結合オリゴヌクレオチド、化学発光性分子、蛍光性部分(単独又は「消光体」部分と組み合わせて)及び電気的検出法に適用できるレドックス活性部分である。好ましい化学発光性分子としては、Arnoldら米国特許第5,283,174号に開示される、均一保護アッセイに関して用いられるタイプ及びWoodheadら米国特許第5,656,207号に開示される、多数の標的を単一反応で定量するアッセイに関して用いられるタイプのアクリジニウムエステルがあげられる。上記特許文献に含まれる開示内容を本明細書に援用する。好ましい電気的な標識法及び検出法は、米国特許第5,591,578号及び第5,770,369号並びに国際公開WO98/57158に開示され、その開示内容を本明細書に援用する。本発明で標識として有用なレドックス活性部分は、Cd、Mg、Cu、Co、Pd、Zn、Fe及びRu等の遷移金属があげられる。
【0037】
本発明のプローブに特に好ましい検出可能な標識は、均一アッセイ系で検出できる(すなわちこの場合、混合物中で、結合した標識プローブは結合していない標識プローブと比較して検出可能な変化、例えば安定性又は異なる分解性を示す)。他の均一検出可能な標識、例えば蛍光性標識及び電気的に検出可能な標識を本発明の実施に使用できるが、均一アッセイに用いるのに好ましい標識は化学発光性化合物(例えばWoodheadら米国特許第5,656,207号;Nelsonら米国特許第5,658,737号;又はArnoldら米国特許第5,639,604号に記載)である。特に好ましい化学発光性標識には、アクリジニウムエステル(AE)化合物、例えば標準AE又はその誘導体、例えばナフチル−AE、オルト−AE、1−又は3−メチル−AE、2,7−ジメチル−AE、4,5−ジメチル−AE、オルト−ジブロモ−AE、オルト−ジメチル−AE、メタ−ジメチル−AE、オルト−メトキシ−AE、オルト−メトキシ(シンナミル)−AE、オルト−メチル−AE、オルト−フルオロ−AE、1−又は3−メチル−オルト−フルオロ−AE、1−又は3−メチル−メタ−ジフルオロ−AE、及び2−メチル−AEが含まれる。アクリジニウムエステルを非ヌクレオチドリンカーによりプローブに結合させることができる。例えば、実質的に米国特許第5,585,481号並びに米国特許第5,639,604号、特に10欄6行〜11欄3行及び例8に記載のリンカーで結合した化学発光性アクリジニウムエステル化合物で検出プローブを標識できる。上記特許文献に含まれる開示内容を本明細書に援用する。
【0038】
ある用途で、ハイブリダイズしていないプローブをまず検出前に除去する必要なく被験試料中のプローブ:標的二本鎖を容易に検出するためには、少なくともある程度の自己相補性を示すプローブが望ましい。例えば、別個の自己相補的領域(「標的結合ドメイン」及び「標的閉鎖ドメイン」を含む)を含む「分子トーチ(molecular torche)」という構造体を設計する;当該領域は結合領域で結合され、所定のハイブリダイゼーションアッセイ条件下で互いにハイブリダイズしている。変性条件下では、分子トーチの当該2つの相補領域(これらは完全相補的でも部分相補的でもよい)が融解し、所定のハイブリダイゼーションアッセイ条件が再生された際に標的結合ドメインが標的配列にハイブリダイズしうる状態になる。分子トーチは、標的結合ドメインが標的閉鎖ドメインより標的配列へのハイブリダイゼーションに指向するように設計される。分子トーチの標的結合ドメインと標的閉鎖ドメインは、分子トーチが自己ハイブリダイズしている際には分子トーチが標的核酸にハイブリダイズした場合とは異なるシグナルを発するように配置された相互作用性標識(例えば蛍光体/消光体の対)を含み、これにより、ハイブリダイズしていないプローブ(実用可能な標識がそれに結合している)の存在下で試料中のプローブ:標的二本鎖を検出できる。分子トーチについては米国特許第6,361,945号に十分に記載されており、その開示内容を本明細書に援用する。
【0039】
本発明で用いられる自己相補的ハイブリダイゼーションアッセイプローブの他の例は、一般に「分子ビーコン」という構造体である。分子ビーコンは、標的相補的領域をもつ核酸分子、標的核酸配列が存在しなければプローブを閉鎖配置に保持する親和性対(又は核酸アーム)、及びプローブが閉鎖配置にある場合に相互作用する標識対を含む。分子ビーコンの標的相補的配列が標的核酸にハイブリダイズすると、親和性対のメンバーが分離してプローブが開放配置に移行する。開放配置への移行は、発蛍光団と消光体(例えばDABCYLとEDANS)等の標識対の相互作用が低下することにより検出できる。分子ビーコンは米国特許第5,925,517号に十分に記載され、本開示内容を本明細書に援用する。GBS特異的核酸配列の検出に有用な分子ビーコンは、本明細書に開示されたプローブ配列の1のいずれかの末端に、発蛍光団を含む第1核酸アーム及び消光体部分を含む第2核酸アームを付与して作製できる。本構造体で、本明細書に開示するGBS特異的配列は、得られる分子ビーコンの標的相補的「ループ」部として用いられる。
【0040】
分子ビーコンは、好ましくは相互作用性の検出可能な標識対で標識される。好ましい検出可能な標識は、FRET又は非−FRETエネルギー移動機序で互いに相互作用する。蛍光共鳴エネルギー移動法(FRET)では、発色団間の共鳴相互作用によりエネルギー量子が分子又は分子系中の吸収部位から利用部位へ、原子間距離よりかなり長距離にわたって、熱エネルギーに変換されず、かつ供与体と受容体が運動衝突せずに無放射伝達される。「供与体」は最初にエネルギーを吸収する部分であり、「受容体」はその後にエネルギーが移動する部分である。FRETのほか、供与分子から受容分子へ励起エネルギーを移動させることができる「非−FRET」エネルギー移動法が少なくとも他に3つある。
【0041】
FRET又は非−FRETのいずれの機序でも、2つの標識を、一方の標識から放出されたエネルギーが第2標識で受容又は吸収されうるのに十分に近接して保持した場合、当該2つの標識は「エネルギー移動関係」にあるという。例えば、分子ビーコンがステム二本鎖の形成で閉鎖状態に保持され、分子ビーコンの一方のアームに結合した発蛍光団からの蛍光発光が他方のアーム上の消光体部分で消光される場合がその例である。
【0042】
本発明の分子ビーコンに極めて好ましい標識部分は、発蛍光団と蛍光消光特性をもつ第2部分(すなわち「消光体」)を含む。本態様では、特徴的なシグナルは特定波長の蛍光であると思われるが、又は可視光シグナルでもよい。蛍光を伴う場合、発光の変化は好ましくはFRET又は放射エネルギー移動若しくは非−FRETモードによる。閉鎖状態の相互作用標識対をもつ分子ビーコンを適切な周波数の光で刺激すると、第1レベルの蛍光シグナルが発せられる。これは極めて低くてもよい。本同じ分子ビーコンが開放状態にあって適切な周波数の光で刺激された場合、発蛍光団と消光体部分は互いに十分に離れているため、それらの間でのエネルギー移動は実質的に除外される。本条件下では、消光体部分は発蛍光団部分からの蛍光を消光できない。発蛍光団を適切な波長の光エネルギーで刺激すると、第1レベルより高い第2レベルの蛍光シグナルが発せられるであろう。上記2つのレベルの蛍光の差を検出及び測定することができる。本態様で発蛍光団と消光体部分を用いると、分子ビーコンは「開放」配置でのみ「オン」であり、プローブが標的に結合していることを、容易に検出できるシグナルの発生により示す。標識部分間の相互作用を調節することで、プローブの配置状態がプローブから発せられるシグナルを変化させる。
【0043】
FRET対と非−FRET対を区別しなければ、本発明に使用できる供与体/受容体標識対の例としては、下記:フルオレセイン/テトラメチルローダミン、IAEDANS/フルオレセイン、EDANS/DABCYL、クマリン/DABCYL、フルオレセイン/フルオレセイン、BODIPY FL/BODIPY FL、フルオレセイン/DABCYL、ルシファーイエロー/DABCYL、BODIPY/DABCYL、エオシン/DABCYL、エリスロシン/DABCYL、テトラメチルローダミン/DABCYL、テキサスレッド(Texas Red)/DABCYL、CY5/BH1、CY5/BH2、CY3/BH1、CY3/BH2、及びフルオレセイン/QSY7色素があげられる。当業者であれば、供与色素と受容色素が異なる場合に受容体の増強蛍光の発生又は供与体の蛍光の消光によりエネルギー移動を検出できることを理解するであろう。供与体種と受容体種が同一の場合、蛍光の偏光が生じることによりエネルギーを検出できる。DABCYL及びQSY 7色素等の非蛍光性受容体は、直接(つまり増強していない)受容体励起から発せられるバックグラウンド蛍光の潜在的な問題が有利に排除される。供与体−受容体対の一方のメンバーとして用いられる好ましい発蛍光団部分としては、フルオレセイン、ROX及びCY色素(例えばCY5)があげられる。供与体−受容体対の他方のメンバーとして用いられる極めて好ましい消光体部分としては、DABCYL及びBLACK HOLE QUENCHER部分が含まれ、これらはBiosearch Technologies, Inc.(カリフォルニア州ノバート)から入手できる。
【0044】
標識を核酸に結合させるための合成技術及び標識を検出する方法は、当技術分野で周知である(例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー,1989),10章;Nelsonら米国特許第5,658,737号;Woodheadら米国特許第5,656,207号;Hoganら米国特許第5,547,842号;Arnoldら米国特許第5,283,174号;Kourilskyら米国特許第4,581,333号;及びBeckerら欧州特許出願EP0747706参照)。
【0045】
プローブの化学組成
本発明のプローブはポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド類似体を含み、場合によりそれに共有結合した検出可能な標識を保有する。プローブのヌクレオシド又はヌクレオシド類似体には窒素複素環塩基又は塩基類似体が含まれ、これらのヌクレオシドが例えばホスホジエステル結合により互いに連結してポリヌクレオチドを形成する。したがって、プローブは一般的なリボ核酸(RNA)及び/又はデオキシリボ核酸(DNA)を含んでもよいが、上記分子の化学的類似体を含んでもよい。プローブ主鎖は当該技術分野で既知の多様な結合で構成でき、これには1以上の糖−ホスホジエステル結合、ロックされた核酸(LNA)結合、ペプチド−核酸結合(「ペプチド核酸」という場合もある;Hyldig−Nielsenら国際公開WO95/32305に記載)、ホスホロチオエート結合、メチルホスホナート結合又はその組合わせが含まれる。プローブの糖部分は、リボース若しくはデオキシリボース又は既知の置換基をもつ2’−O−メチルリボース及び2’ハライド置換体(例えば2’−F)等の類似化合物でもよい。窒素塩基は、一般的な塩基(G、A、C、T、U)、その既知の類似体(例えばイノシン、すなわち「I」;The Biochemistry of the Nucleic Acids5-36, Adams et al.著, 第11版, 1992参照)、プリン塩基又はピリミジン塩基の既知の誘導体(例えばN−メチルデオキシグアノシン、デアザ−又はアザ−プリン類及びデアザ−又はアザ−ピリミジン類、5又は6位に置換基をもつピリミジン塩基、2、6又は8位に変化又は置換した置換基をもつプリン塩基、2−アミノ−6−メチルアミノプリン、O−メチルグアニン、4−チオ−ピリミジン類、4−アミノ−ピリミジン類、4−ジメチルヒドラジン−ピリミジン類、及びO−アルキル−ピリミジン(Cook国際公開WO93/13121参照)並びにポリマーの1以上の残基の代わりに主鎖が窒素塩基を含まない「非塩基」残基(Arnoldら米国特許第5,585,481号参照)でもよい。プローブはRNA及びDNA中にみられる一般的な糖、塩基及び結合のみを含んでもよく、又は一般的な成分と置換体の両方を含んでもよい(例えば、メトキシ主鎖で結合した一般的な塩基又は一般的な塩基及び1以上の塩基類似体を含む核酸)。
【0046】
種々の長さ及び塩基組成のオリゴヌクレオチドプローブをGBS核酸の検出に使用できるが、本発明に好ましいプローブの長さは最高30ヌクレオチド、より好ましくは26〜30ヌクレオチドである。しかし後記の特異的プローブ配列を核酸クローニングベクター若しくは転写体又はより長い他の核酸中で提供することもでき、これらもGBS核酸の検出に使用できる。
【0047】
GBS特異的増幅プライマー及び検出プローブの選択
所望の特性をもつ増幅プライマー及びプローブの設計に有用な指針を以下に記載する。GBS核酸の増幅及び探査に最適な部位は、各々約250塩基の連続配列内の長さ約20塩基以上の3つのGBSゲノム保存領域である。1以上のプロモーター−プライマーを含む一組のプライマーの増幅度は、オリゴヌクレオチドがその相補配列にハイブリダイズする機能及び酵素で延長する機能を含むいくつかの要因に依存する。ハイブリダイゼーション反応の程度及び特異性は多数の要因により影響されるので、その要因の操作により個々のオリゴヌクレオチド(標的に対して完全に相補的かまたはそうでなくても)の厳密な感度及び特異性が決定されるであろう。アッセイ条件変更の影響は当業者に既知で、Hoganら米国特許第5,840,488号に記載され、本開示内容を本明細書に援用する。
【0048】
標的核酸配列の長さ、つまりプライマー配列又はプローブ配列の長さが重要な場合がある。場合により、特定の標的領域から、所望のハイブリダイゼーション特性をもつプライマー又はプローブとなる、位置及び長さの異なる数種類の配列が得られる可能性がある。完全には相補的でない核酸がハイブリダイズすることはできるが、通常は、完全に相同な塩基配列の最大長がハイブリッドの安定性を決定するであろう。
【0049】
増幅プライマー及びプローブは、オリゴヌクレオチド:非標的核酸ハイブリッドの安定性を最小限にするように配置すべきである。増幅プライマー及びプローブは、標的配列と非標的配列を識別しうることが好ましい。プライマー及びプローブを設計する際、T値で表わされる融解温度の差をなるべく大きくすべきである(例えば少なくとも2℃、好ましくは5℃)。
【0050】
非特異的延長(プライマー二量体又は非標的の複製)の程度も増幅効率に影響を与える場合がある。このためプライマーは、特に配列の3’末端で自己−又は交差−相補性が低くなるように選択される。不要なプライマー延長を少なくするため、長いホモポリマー領域及び高GC含量は避ける。市販のコンピューターソフトウェアが設計の本側面で役立つ。入手できるコンピュータープログラムとしては、MacDNASIS(商標)2.0(Hitachi Software Engineering American Ltd.)及びOLIGOver.6.6(Molecular Biology Insights;コロラド州カスケード)があげられる。
【0051】
当業者であれば、ハイブリダイゼーションが2つの一本鎖相補核酸の会合を伴い、水素結合した二本鎖が形成されることを認識するであろう。2つの鎖の一方が完全又は部分的にハイブリッドに含まれれば、その鎖が新たなハイブリッド形成に関与する機能がより低下するのは当然である。当該配列の実質部が一本鎖であるようにプライマー及びプローブを設計して、ハイブリダイゼーションの速度及び程度を大幅に高めることができる。標的が組込みゲノム配列の場合は自然界では二本鎖形で存在するであろう(ポリメラーゼ連鎖反応の生成物の場合と同様)。当該二本鎖標的はプローブとのハイブリダイゼーションに対して当然阻害性であり、ハイブリダイゼーション工程の前に変性させる必要がある。
【0052】
ポリヌクレオチドがその標的にハイブリダイズする速度は、標的結合領域の標的二次構造の熱安定性の尺度である。ハイブリダイゼーション速度の標準尺度はC1/2であり、これはリットル当たりのヌクレオチドのモル数に秒を掛けて測定される。例えばこれは、プローブ濃度にその濃度で最大ハイブリダイゼーションの50%が起きる時間を掛けたものである。この値は、種々の量のポリヌクレオチドを一定量の標的に一定時間ハイブリダイズして決定する。C1/2は、当業者が慣用する標準法でグラフから得られる。
【0053】
好ましい増幅プライマー
増幅反応を行うのに有用なプライマーは、標的結合に関与せず、増幅又は検出の操作に実質的に影響を与える可能性のない、他の配列の存在を受容するため、長さは様々であってもよい。例えば、本発明の増幅反応を行うのに有用なプロモーター−プライマーは、GBS標的核酸にハイブリダイズするための少なくとも最小限の配列及びその最小限の配列の上流に位置するプロモーター配列をもつ。しかし、増幅反応でプライマーの有用性を妨げずに、標的結合配列とプロモーター配列の間に配列を挿入してプライマーの長さを変えてもよい。さらに、増幅プライマー及びプローブの長さは、目的とする相補配列をハイブリダイズするための最小限の必須要件にオリゴヌクレオチドの配列が適合する限り、任意に選択できる。
【0054】
表1及び2は、GBS核酸を増幅するためのプライマーとして用いたオリゴヌクレオチド配列の具体例を示す。表1は、GBS核酸の一方の鎖に対するGBS標的相補的プライマーの配列を示す。表1に示した具体的プライマーには全て、配列番号1の配列に含まれる標的相補的配列がある。
【0055】
【表1】

【0056】
表2は、GBS核酸の逆鎖に対するGBS標的相補的プライマーと対応するプロモーター−プライマーの両方の配列を示す。上記のように、全てのプロモーター−プライマーがその3’末端にGBS標的配列に対して相補的な配列を含有し、その5’末端にT7プロモーター配列AATTTAATACGACTCACTATAGGGAGA(配列番号7)を含有していた。表2に配列番号11〜13と示すプライマーは、各々配列番号8〜10と示すGBS標的相補的プライマーに対応するプロモーター−プライマーである。表2に示す具体的プライマーには全て、配列番号2の配列に含まれる標的相補的配列がある。
【0057】
【表2】

【0058】
GBS核酸配列を増幅するための好ましいプライマーの組としては、表2に挙げたプライマーのいずれか等のGBS標的配列にハイブリダイズする第1プライマー、及び表1に挙げたプライマーのいずれか等の第1プライマーの延長生成物の配列に対して相補的な第2プライマーがあげられる。極めて好ましい態様では、第1プライマーは5’末端にT7プロモーター配列を含むプロモーター−プライマーがある。
【0059】
好ましい検出プローブ
本発明の他の側面は、GBS核酸を検出するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用できるオリゴヌクレオチドに関する。GBS核酸中に存在する標的核酸配列を増幅する方法は、アンプリコンを検出するための任意工程をさらに含んでもよい。本検出法には、被験試料とハイブリダイゼーションアッセイプローブを接触させる工程が含まれ、プローブは標的核酸配列又はその相補配列に緊縮ハイブリダイゼーション条件下で優先的にハイブリダイズして、検出に対して安定なプローブ:標的二本鎖を形成する。次いで、被験試料中のGBS核酸の存在又は不存在の指標として、本ハイブリッドが被験試料中に存在するかを判定する工程がある。これは、プローブ:標的二本鎖の検出を含んでもよく、好ましくは均一アッセイ系を含む。
【0060】
GBS核酸配列の検出に有用なハイブリダイゼーションアッセイプローブには、GBS標的核酸配列に対して実質的に相補的である塩基配列が含まれる。したがって、本発明のプローブはGBS標的核酸配列の一方の鎖又はその相補配列にハイブリダイズする。当該プローブは、場合により、ターゲティングする核酸領域の外側に追加塩基があってもよく、これらはGBS核酸に対して相補的でも、そうでなくてもよい。
【0061】
好ましいプローブは、化学発光性分子で標識したプローブについては約60℃及び塩類濃度0.6〜0.9Mに相当する緊縮ハイブリダイゼーション条件下で、分子ビーコンプローブについては42℃及び塩類濃度20〜100mMに相当する緊縮ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするのに十分なほど、標的核酸に対して相同性がある。好ましい塩類としては塩化リチウム、塩化マグネシウム及び塩化カリウムがあげられるが、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウム等の他の塩類もハイブリダイゼーション溶液に使用できる。または、高緊縮ハイブリダイゼーション条件の例は、0.48Mリン酸ナトリウム緩衝液、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、並びに各々1mM EDTA及びEGTAにより、又は0.6M LiCl、1%ラウリル硫酸リチウム、60mMコハク酸リチウム、並びに各々10mM EDTA及びEGTAにより得られる。
【0062】
本発明のプローブは、GBSゲノムのあるドメインに対して相補的又はそれに相当する配列がある。GBS核酸配列を検出するのに好ましい分子ビーコンプローブは、26〜30ヌクレオチドの長さのプローブ配列があり、これは標的相補的塩基配列を、検出すべき核酸に対して相補的でないずれかの塩基配列と共に含む。GBS核酸配列を検出するのに好ましい具体的な分子ビーコンプローブは、16〜20ヌクレオチドの長さの標的相補的配列がある。もちろん、本標的相補的配列は線状配列でもよく、また分子ビーコンの構造中、若しくは検出すべきGBS標的配列に対して相補的でない1以上の任意核酸配列がある他の構築体中に含まれていてもよい。上記のように、プローブはDNA、RNA、組合わせDNA及びRNA、核酸類似体から構成されてもよく、または1以上の修飾ヌクレオシド(例えばリボフラノシル部分に2’−O−メチル置換をもつリボヌクレオシド)を含んでもよい。
【0063】
簡潔には、本発明に関して目的とする標的核酸を検出するのに好ましいプローブは、ある特定のプローブドメインのうち1以上に含まれる配列又はその相補配列を含有し、RNA及びDNAの均等物並びにヌクレオチド類似体が存在してもよい。例えば、GBS核酸を検出するのに好ましいハイブリダイゼーションアッセイプローブは、配列番号3の配列に含まれる標的相補的塩基配列を含んでもよい。検出すべき核酸配列に対して相補的でない任意配列を、プローブの標的相補的配列に連結させることができる。
【0064】
本発明のある好ましいプローブは、検出可能な標識を含む。この標識は、発蛍光団、及び蛍光消光特性をもつ第2部分を含む。
表3は、GBSアンプリコンの検出に用いる分子ビーコンプローブのループ部に含まれるGBS標的相補的オリゴヌクレオチド配列及び対応する分子ビーコンプローブの完全配列を示す。各分子ビーコンは、分子ビーコンのループ部に含まれるGBS標的相補的配列に付与された5’側CCGAGアーム配列及び3’側CUCGGアーム配列を含んでいた。表3に配列番号14〜17と表示したループ部は、配列番号18〜21と表示した分子ビーコンに各々対応する。本発明方法に用いるGBS特異的分子ビーコンは全て、配列番号3の配列に含まれる16〜20個の連続ヌクレオチドを含む標的相補的配列があり、RNA及びDNAの均等物が存在してもよい。表3に示す標的相補的配列を、独立して分子ビーコンのループ領域に組み込ませた。本発明方法に用いた分子ビーコンは各々、5’末端にフルオレセイン発蛍光団及び3’末端にDABCYL消光体部分を含んでいた。
【0065】
【表3】

【0066】
GBS核酸配列を検出するための交互プローブを逆センスGBS鎖にハイブリダイズさせることができるので、本発明には表3に示す配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドも含まれる。
【0067】
上記のように、様々な主鎖構造体を、本発明のハイブリダイゼーションプローブのオリゴヌクレオチド配列の足場として使用できる。極めて好ましい態様では、GBSアンプリコンの検出に用いるプローブ配列は、メトキシ主鎖を含み、又は核酸主鎖中に少なくとも1のメトキシ結合を含む。
【0068】
GBSポリヌクレオチド配列を増幅及び検出するための好ましい方法
本発明の好ましい方法を後記の実施例により記載及び説明する。図1はGBS核酸の標的領域(太い水平の実線で示す)を検出するために用いられる1の系を模式的に示す。本系は、少なくとも3つのオリゴヌクレオチド(短い実線で示す)を含む;1のT7プロモーター−プライマー:GBS配列の標的領域に特異的にハイブリダイズする配列、及びT7プロモーター配列(「P」)(二本鎖の場合にはT7 RNAポリメラーゼに対する機能性プロモーターとして作用する)を含む;1の非T7プライマー:T7プロモーター−プライマーを用いて標的領域配列から作製された第1鎖cDNAに特異的にハイブリダイズする配列を含む;並びに1の標識プローブ:上記2つのプライマーを用いて増幅した標的領域の一部に特異的にハイブリダイズする配列を含む。
【0069】
上記のように、2つのプライマーを用いる標的領域の増幅は、当業者に慣用のいかなる多様な公知の核酸増幅反応でも達成できる。好ましい態様では、TMA等の転写関連増幅反応を用いる。本態様では、標的核酸の単一複製体から多数の核酸鎖が生成するので、増幅配列に結合する検出プローブから標的を検出できる。好ましくは、転写関連増幅には2種類のプライマー(1つはRNAポリメラーゼに対するプロモーター配列(図1中に「P」と表示)を含有するので、プロモーター−プライマーという)、2種類の酵素(逆転写酵素及びRNAポリメラーゼ)及び基質(デオキシリボヌクレオシド三リン酸、リボヌクレオシド三リン酸)を、適切な塩類及び緩衝剤と共に溶液中で用いて、核酸鋳型から多数のRNA転写体を製造する。
【0070】
図1は、転写介在増幅の際に、T7プロモーター−プライマーとして示す第1プライマーに標的核酸がハイブリダイズする。逆転写酵素を用い、標的RNAを鋳型として用いて、T7プロモーター−プライマーから相補的DNA鎖が合成される。非T7プライマーとして示す第2プライマーが、新たに合成されたDNA鎖にハイブリダイズし、逆転写酵素の作用で延長し、DNA二本鎖を形成して二本鎖T7プロモーター領域が形成される。その後、T7 RNAポリメラーゼが、本機能性T7プロモーターを用いて多数のRNA転写体を生成する。TMAの自触媒作用機序は、RNA転写体を鋳型として用いるcDNA合成工程後のハイブリダイゼーション工程及び重合工程の反復で転写体を産生して標的領域に特異的な核酸配列を増幅する。
【0071】
検出工程には、上記の増幅RNA転写体、すなわちアンプリコンに特異的な、少なくとも1種類の検出プローブが用いられる。好ましくは、検出プローブは均一検出系を用いて検出できる標識で標識される。例えば、上記のように標識プローブをアクリジニウムエステル化合物で標識でき、これから化学発光シグナルを発生させて検出することができる。または標識プローブは、発蛍光団又は発蛍光団と消光体部分を含んでもよい。分子ビーコンは、均一検出系に使用できる標識プローブの1態様である。
【0072】
GBS核酸を検出するためのキット
本発明には、細菌の核酸鋳型を用いてポリヌクレオチド増幅反応を行うためのキットも含まれる。好ましいキットは、標的相補的塩基配列を含有するハイブリダイゼーションアッセイプローブを含み、場合により、検出すべき標的を増幅するためのプライマー又は他の補助オリゴヌクレオチドを含むであろう。他の好ましいキットは、インビトロ増幅反応で標的核酸を増幅するために使用できる一対のオリゴヌクレオチドプライマーを含むであろう。キットの例としては、増幅すべきGBS核酸配列の逆鎖に対して相補的な第1及び第2増幅オリゴヌクレオチドがあげられる。キットはさらに1以上のオリゴヌクレオチド検出プローブを含んでもよい。さらに本発明の他のキットは、増幅前にGBS鋳型核酸を他の種から精製するための捕獲オリゴヌクレオチドをさらに含んでもよい。
【0073】
本発明の一般原理は、限定ではない下記の実施例からより十分に理解できる。
【実施例1】
【0074】
実施例1は、いくつかのハイブリダイゼーションプローブを同定した方法を記載する。その後、これらをGBS核酸検出のためのアッセイに用いた。これらのプローブを結合するための標的として、1の合成RNAオリゴヌクレオチドを用いた。
【0075】
実施例1 GBS核酸を検出するためのオリゴヌクレオチド
標準的実験方法により、2’−OMeヌクレオチド類似体を用いて、合成分子ビーコンを製造した。合成分子ビーコンの配列を表3に示す。
【0076】
ハイブリダイゼーション反応には、10pmol/反応の分子ビーコン及び表4にあげる30pmol/反応の合成GBS RNA標的リゴヌクレオチドが含まれた。
【0077】
【表4】

【0078】
20mM MgCl含有TRIS緩衝液100μlの反応容量で、合成GBS RNA標的リゴヌクレオチドの不存在又は存在下での分子ビーコンのハイブリダイゼーション反応を60℃10分間行い、続いて42℃で60分間インキュベートした。
【0079】
Rotor−Gene2000計測器(Corbett Research,オーストラリア、シドニー)を用いて、42℃で30秒毎に99サイクルで蛍光を測定した。蛍光反応の結果を相対蛍光単位(RFU)で測定した。ハイブリダイゼーション反応終了後、各工程で15秒間保持しながら反応温度を42℃〜99℃まで1℃ずつ上昇させ、得られたRFUを測定し、Rotor−Gene2000計測器に添付のデータ分析ソフトウェアを用いて分子ビーコンの融解温度(T)を決定した。ハイブリダイゼーション反応で得られた代表的な結果及び融解温度測定値を表5にまとめる。
【0080】
表5に示す数値は、標的存在下で測定した終点RFUを標的の不存在下で測定した終点RFUで割ったものから計算した平均シグナル/ノイズ比(S/N)の数値を示す。標的不存在下での分子ビーコンの融解温度計算値は分子ビーコンのステム構造の安定性を判定するのに有用であり、一方、標的配列にハイブリダイズした分子ビーコンの融解温度はハイブリッドの安定性に関する情報を提供する。
【0081】
【表5】

【0082】
表5に示す結果は、合成GBS RNA標的リゴヌクレオチドへの結合に伴い、各分子ビーコンのS/N比の数値が強まることを示した。さらに、標的不存在下での分子ビーコンの融解温度は、当該分子ビーコンが安定なステム構造をもつことにより、さらに低温での分子ビーコンの非特異的「開放」が阻止されることが示された。合成GBS RNA標的リゴヌクレオチド存在下での分子ビーコンの高い融解温度は、実験条件下で安定なハイブリッドが形成されたことを示した。
【0083】
アンプリコン産生をリアルタイム増幅方法で時間の関数としてモニターした。増幅反応に含まれるアンプリコン特異的分子ビーコンが、アンプリコン合成の連続モニタリング手段を提供した。経時的に高まる蛍光発光は、アンプリコンが生成して分子ビーコンにハイブリダイズし、分子ビーコンの開放配置へ検出可能な転移が起こったことを示した。
【0084】
分子ビーコンには、標的相補的配列がある核酸分子、標的不存在下では相補的塩基対合により相互作用してステム構造(すなわち閉鎖配置)を形成する親和性対(つまり核酸アーム)及びプローブが閉鎖配置にある場合に相互作用する一組の標識対が含まれる。当業者であれば、分子ビーコンの構造内に含まれる標的相補的配列が一般にプローブの一本鎖ループ領域の形であることを理解するであろう。標的核酸とプローブの標的相補的配列がハイブリダイズすると、親和性対のメンバーが分離し、これによりプローブが開放配置に移行する。この移行は、標識対(例えば発蛍光団と消光体であってよい)のメンバー間の相互作用が低下して検出できる。分子ビーコンは米国特許第5,925,517号に十分に記載されており、その開示内容を本明細書に援用する。
【0085】
市販のソフトウェアを利用して、GBS核酸由来のアンプリコンに特異的な分子ビーコンを用いて得た時間依存性の結果を分析した。本分析から得た結果は、増幅反応に含まれる標的複製数と蛍光シグナルがバックグラウンド閾値を超えた時間(つまり出現時間)との間に、実質的に直線関係を示した。以下に示す結果から確認されるように、本方法は極めて広範にわたる被分析標的量を定量するのに有用であった。より具体的には、既知量の被分析ポリヌクレオチドを検量標準品として用いると、測定した出現時間を標準曲線と比較することにより、被験試料中に存在する被分析体の量を判定できる。
【0086】
以下に記載の方法で用いた増幅反応を、増幅と検出を同時に行うために、定温で、他の検出工程のために中断せずに操作した事実により、分子ビーコンに厳密な要求が課された。より具体的には、本方法の成功のために、分子ビーコンがアンプリコンを結合し、その後アンプリコンを指数的増幅系で鋳型として用いることを妨げないことが要求された。実際、分子ビーコン存在下で増幅反応が効率的に進行し得たという知見は、本プローブとその標的との相互作用が増幅反応に不可逆的な阻害又は弊害とならなかったことを示す。
【実施例2】
【0087】
実施例2には、各相互作用性の発蛍光団/消光体対で標識した分子ビーコンプローブをTMA反応での時間依存性アンプリコン産生のモニタリングに用いた方法を記載する。実施例2に記載の分子ビーコンは増幅核酸生成物の一方の鎖のみにハイブリダイズしたが、相補的プローブ配列が逆核酸鎖にハイブリダイズすることも予想されるため、本発明の範囲に含まれる。
【0088】
実施例2 アンプリコン産生のリアルタイムモニタリング
標準固相ホスファイトトリエステル化学により、3’側−消光体に結合した制御ポアガラス(CPG)及び5’側−発蛍光団で標識したホスホルアミダイトを用い、Perkin−Elmer(カリフォルニア州フォスター・シティー)EXPEDITEモデル8909自動合成装置で、GBSアンプリコンに対する結合特異性を有する分子ビーコンを合成した。分子ビーコンの構築のために発蛍光団としてフルオレセインを用い、消光体としてDABCYLを用いた。全ての分子ビーコンを2’−0Meヌクレオチド類似体を用いて構築した。CPG試薬及びホスホルアミダイト試薬をGlen Research Corporation(バージニア州スターリング)から購入した。合成後、濃水酸化アンモニウム(30%)で60℃2時間処理し、プローブを脱保護して固体支持体マトリックスから解離した。次いで、当業者に慣用の標準方法を用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動の後HPLCでプローブを精製した。
【0089】
リアルタイム増幅及び検出法に用いた核酸標的は、既知濃度の精製rRNAであった。様々な標的濃度を三重試験した。分子ビーコンを0.2pmol/μl(3pmol/反応)のレベルで用いた。鋳型複製数50/反応〜5×10/反応までを用いて、GBS核酸を増幅する反応を実施した。
【0090】
3pmol/反応のT7プライマー、3pmol/反応の非T7プライマー、標的ポリヌクレオチド、及び3pmol/反応の分子ビーコンを、15μlの緩衝液(最終濃度:50mM TrisHCl(pH8.2〜8.5),35mM KCl,4mM GTP,4mM ATP,4mM UTP,4mM CTP,1mM dATP,1mM dTTP,1mM dCTP,1mM dGTP,20mM MgCl,20mM N−アセチル−L−システイン及び5%(w/v)グリセロール)中に含む反応物を、乾式加熱ブロックで60℃10分間インキュベートして、プライマーのアニーリングを促進した。60℃のインキュベーション工程後、反応物を42℃の加熱ブロックへ移し、次いで2分間インキュベートした。MMLV逆転写酵素及びT7 RNAポリメラーゼ酵素の両方を含有する酵素試薬各5μlを反復ピペッターで各反応物に添加した。試験管を短時間渦撹拌し、次いで42℃に予熱したRotor−Gene2000(Corbett Research、オーストラリア、シドニー)ローターへ移した。増幅反応を42℃で実施し、30秒毎に60サイクルの蛍光読取りを行い、R2000に付属する標準ソフトウェアを用いて結果をリアルタイムで分析した。異なる分子ビーコン及び異なるプライマー組合わせを用いて本方法で得た代表的な結果を、表6及び7に示す。
【0091】
【表6】

【0092】
表6に示す結果から、3種類のプライマー組合わせ、異なるGBS特異的分子ビーコン及び特定の標的濃度(複製数5×10/反応)を含む増幅反応では、プライマー組合わせ配列番号4と13及び分子ビーコン配列番号18を除いて、所望の蛍光シグナルはプラトーに達するまで経時的に増大することが確認された。本方法に用いた各分子ビーコンは5’末端にフルオレセイン発蛍光団、3’末端にDABCYL消光体部分を含んだ。結果はすべて三重試験に含まれる反応に基づくものであった。
【0093】
【表7】

【0094】
表7に示す結果から、異なるプライマー組合わせ及び特定の分子ビーコン(配列番号19)を含む増幅反応では、所望の蛍光シグナルはプラトーに達するまで経時的に増大することが確認された。結果はすべて三重試験に含まれる反応に基づくものであった。上記結果は、特定の分子ビーコンが複製数50/反応まで増幅生成物を検出できることをも示した。プライマー組合わせ配列番号5と12及び配列番号6と12のみが複製数50/反応のレベルで2/3の複製物を検出し、一方、プライマー組合わせ配列番号6と11についてはこのレベルでは3複製物はいずれも検出されなかった。
【0095】
試験した各プライマー組合わせでは、少なくともある程度の時間依存性−被分析体検出が得られた。本方法で試験した、異なるプライマー組合わせの態様は、リアルタイムアッセイ様式で若干異なった。例えば、プライマー組合わせ配列番号4と13及び配列番号6と13を含む反応は極めて迅速に検出された。表7に示す結果はさらに、前記のプライマー及び分子ビーコンは極めて低い装入鋳型レベルのGBS核酸を検出するための高感度アッセイに使用できることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、GBS核酸(太い横線で示す)内の標的領域を検出するのに用いる様々なポリヌクレオチドを示す模式図である。下記の核酸の位置を標的領域に対比して示す:「非T7プライマー」及び「T7プロモーター−プライマー」はTMAを実施するのに用いる2つの増幅プライマーを示し、ここで「P」はT7プロモーター−プライマーのプロモーター配列を示し、「プローブ」は増幅核酸を検出するのに用いるプローブを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)核酸を検出するためのハイブリダイゼーションアッセイプローブであって、下記:
標的相補的塩基配列、及び、場合により、検出すべき核酸に対して相補的でない1以上の塩基配列を含む、プローブ配列であって、
前記標的相補的塩基配列は、配列番号3の配列に含まれる16〜20個の連続塩基又はその相補配列からなり、RNA及びDNAの均等物並びにヌクレオチド類似体が存在してもよく、
前記ハイブリダイゼーションアッセイプローブの長さは、最高30塩基である;
を含む、前記ハイブリダイゼーションアッセイプローブ。
【請求項2】
プローブ配列が、検出すべき核酸に対して相補的でない1以上の任意の塩基配列を含む、請求項1のハイブリダイゼーションアッセイプローブ。
【請求項3】
さらに検出可能な標識を含む、請求項2のハイブリダイゼーションアッセイプローブ。
【請求項4】
さらに発蛍光団部分及び消光体部分を含み、ハイブリダイゼーションアッセイプローブが分子ビーコンである、請求項2のハイブリダイゼーションアッセイプローブ。
【請求項5】
標的相補的塩基配列が、配列番号14、配列番号15、配列番号16及び配列番号17からなる群から選択される、請求項4のハイブリダイゼーションアッセイプローブ。
【請求項6】
プローブ配列が、検出すべき核酸に対して相補的でない1以上の任意塩基配列を含まない、請求項1のハイブリダイゼーションアッセイプローブ。
【請求項7】
さらに検出可能な標識を含む、請求項6のハイブリダイゼーションアッセイプローブ。
【請求項8】
検出可能な標識が化学発光性標識及び蛍光性標識からなる群から選択される、請求項7のハイブリダイゼーションアッセイプローブ。
【請求項9】
生物試料中に存在する可能性のあるストレプトコッカス・アガラクティエ核酸配列を増幅するためのキットであって、下記:
3’末端標的相補的配列、及び、場合により、増幅すべきストレプトコッカス・アガラクティエ核酸配列に対して相補的でない第1プライマー上流配列を含む、第1プライマーであって、前記第1プライマーの3’末端標的相補的配列は、配列番号2に含まれる25個の連続塩基を含み、RNA及びDNAの均等物並びにヌクレオチド類似体が存在してもよく;並びに
3’末端標的相補的配列、及び、場合により、増幅すべきストレプトコッカス・アガラクティエ核酸配列に対して相補的でない第2プライマー上流配列を含む、第2プライマーであって、前記第2プライマーの3’末端標的相補的配列は、配列番号1に含まれる20個の連続塩基を含み、RNA及びDNAの均等物並びにヌクレオチド類似体が存在してもよい;
を含む、前記キット。
【請求項10】
第1プライマー及び第2プライマーの長さが各々最高58塩基である、請求項9のキット。
【請求項11】
第1プライマーの3’末端標的相補的配列及び第2プライマーの3’末端標的相補的配列の長さが各々最高31塩基である、請求項9のキット。
【請求項12】
第2プライマーの3’末端標的相補的配列の長さが最高21塩基である、請求項11のキット。
【請求項13】
第1プライマーが第1プライマー上流配列を含む、請求項12のキット。
【請求項14】
第1プライマー上流配列がT7 RNAポリメラーゼに対するプロモーター配列を含む、請求項13のキット。
【請求項15】
第1プライマーの3’末端標的相補的配列が配列番号8、配列番号9及び配列番号10からなる群から選択され、第2プライマーの3’末端標的相補的配列が配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される、請求項12のキット。

【図1】
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【公表番号】特表2008−529501(P2008−529501A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554336(P2007−554336)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/004372
【国際公開番号】WO2006/086438
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(500169900)ジェン−プローブ・インコーポレーテッド (32)
【Fターム(参考)】