説明

BGL6β−グルコシダーゼ及びそれをエンコードする核酸

本発明は新規なβ−グルコシダーゼ核酸配列、特定のbgl6、及び対応するBGL6アミノ酸配列を提供する。本発明はBGL6、組換えBGL6タンパク質をエンコードする核酸配列を含む発現ベクター及び宿主細胞も提供し、それらの生成方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
政府の支援
この研究の一部はU.S.エネルギー省の請負契約番号DE−AC36−99GO10337の下、再生可能エネルギー研究所の下請け契約番号ZCO−30017−01により資金援助を受けたものである。従って、合衆国政府は本発明において権利の一部を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、β−グルコシダーゼ活性を有するポリペプチドをエンコードする単離bgl6核酸配列に関する。また、本発明は核酸構築体、ベクター及び当該核酸配列を含む宿主細胞、並びに組換えBGL6ポリペプチドの生成方法に関する。
【0003】
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【0004】
発明の背景
セルロース及びヘミセルロースは光合成により生成される最も豊富な植物材料である。これらは、細菌、酵母及び真菌などの多数の微生物により分解でき、エネルギー源として使用でき、これらの微生物はポリマー基質を単糖類に加水分解できる細胞外酵素を生成する(Aro et al.、2001)。非再生源の限界が近づいているため、セルロースが主な再生可能エネルギー源となる可能性は非常に大きい(Krishna et al.、2001)。生物プロセスを通じたセルロースの効果的な活用は食料、飼料及び燃料不足の克服手段のひとつである(Ohmiya et al.、1997)。
【0005】
セルラーゼはセルロース(β−1,4−グルカンまたはβ−D−グルコシド結合)を加水分解してグルコース、セロビオース、セロオリゴ糖等の形成を生じる酵素である。セルラーゼは従来から3つの主な分類に分けられる:エンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)(“EG”)、エキソグルカナーゼまたはセロビオヒドロラーゼ(EC 3.2.1.91)(“CBH”)、及びβ−グルコシダーゼ([β]−D−グルコシドグルコヒドロラーゼ;EC 3.2.1.21)(“BG”)(Knowles et al.、1987;Shulein、1988)。エンドグルカナーゼは主にセルロース繊維のアモルファス部分で作用するのに対し、セロビオヒドロラーゼは結晶セルロースを分解することもできる(Nevalainen and Penttila、1995)。従って、結晶セルロースを効果的に可溶化するために、セルラーゼ系中にセロビオヒドロラーゼの存在が必要である(Suurnakki、et al.2000)。β−グルコシダーゼはセロビース、セロ−オリゴ糖、及びその他のグルコシド由来D−グルコース単位の遊離に作用する(Freer、1993)。
【0006】
セルラーゼは大量の細菌、酵母及び真菌により生成されることが知られる。特定の真菌はセルロース結晶を分解できる完全なセルラーゼ系を生成し、発酵により大量のセルラーゼが容易に生成される。サッカロミセス・セレビシェなど多くの酵母がセルロースの加水分解能を有さないので、糸状菌は特別な役割を担う。例えば、Aro et al.、2001;Aubert et al.、1988;Wood et al.、1988及びCoughlan et al.を参照されたい。
【0007】
CBH、EG及びBGの真菌セルラーゼ分類はさらに、複数の要素を含む各分類内に広げられる。例えば、複数のCBH、EG及びBGは、2つのCBH(すなわち、CBHI及びCBHII)、少なくとも5つのEG(すなわち、EGI、EGII、EGIII、EGIV及びEGV)及び少なくとも2つのBG(すなわち、BG1及びBG2)は公知遺伝子を含むトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)などの多数の真菌源から単離される。
【0008】
結晶セルロースをグルコースに効果的に変換するためには、結晶セルロースの加水分解にあまり効果がない単離成分とともにCBH、EG及びBGの各分類由来の成分を含む完全なセルラーゼ系が必要である(Filho et al.、1996)。それぞれの分類由来のセルラーゼ成分間で相乗関係が観測されている。特に、EG型セルラーゼ及びCBH型セルラーゼは相乗的に相互作用してより効果的にセルロースを分解する。例えば、Wood、1985を参照されたい。
【0009】
セルラーゼは洗剤組成物の洗浄能力を高めるため、柔軟剤としての使用、綿織物の手触り及び外観を向上させるため等の使用で、織物処理に有用であることが当業界で公知である(Kumar et al.、1997)。
【0010】
改善された洗浄性能を有するセルラーゼ含有洗剤組成物(米国特許第4,435,307号;GB出願番号第2,095,275号及び第2,094,826号)及び織物の手触り及び外観を改善させるための織物処理での使用(米国特許第5,648,263号、第5,691,178号及び第5,776,757号;GB出願番号第1,358,599号;The Shizuoka Prefectural Hammamatsu Textile Industrial Research Institute Report、第24巻、第54〜61頁、1986)の開示がある。
【0011】
従って、真菌及び細菌内で生成されるセルラーゼは著しい注目を集めている。特に、トリコデルマ種の発酵(例えば、トリコデルマ・ロンギブラチアタム(longibrachiatum)またはトリコデルマ・リーゼイ)は結晶形態のセルロースを分解できる完全なセルラーゼ系を生成することが示されている。米国特許第5,475,101号は、トリコデルマ・ロンギブラチアタム由来の1の有用な特定酵素指定EGIIIの精製及び分子クローニングについて開示している。
【0012】
従来からセルラーゼ組成物について記載されているが、家庭用洗剤、ストーンウォッシュ組成物または洗濯用洗剤等に使用するための新規で改善されたセルラーゼ組成物の必要性が依然としてある。界面活性剤(例えば、直鎖スルホン酸アルキル、LAS)に対する耐性、熱ストレス下での改善された性能、増加または減少したセルロース分解能及び/またはin vitroでの高レベル発現を示すセルラーゼは特に関心が高い。
【0013】
発明の概要
本発明は、ここでBGL6として同定する単離セルラーゼタンパク質、及びBGL6をエンコードする核酸を提供する。
【0014】
1の側面において、BGL6ポリペプチドまたはタンパク質は配列番号2として表す配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%またはそれ以上の配列同一性を有する配列を含む。
【0015】
関連する側面において、本発明は、(i)BGL6断片、好ましくは少なくとも約20〜100アミノ酸長、より好ましくは約100〜200アミノ酸長、及び(ii)BGL6を含む医薬組成物、を含む。種々の実施態様において、当該断片はBGL6のN末端ドメインまたはBGL6のC末端ドメインに対応する。
【0016】
他の側面において、本発明はBGL6をエンコードする配列、bgl6コード配列に相補的な配列を有する単離ポリヌクレオチド、及び当該ポリヌクレオチドを含む組成物を含む。ポリヌクレオチドはmRNA、DNA、cDNA、ゲノムDNAまたはそれらのアンチセンス類似体である。
【0017】
bgl6ポリヌクレオチドは、中程度から高ストリンジェンシー条件下で、配列番号1として表す核酸の相補体にハイブリダイズする単離核酸分子を含むことができ、ここで核酸分子はβ−グルコシダーゼ活性を示すBGL6ポリペプチドをエンコードする。
【0018】
当該ポリヌクレオチドは、配列番号1として表す配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%またはそれ以上の配列同一性を有するBGL6タンパク質をエンコードすることができる。特定の実施態様において、ポリヌクレオチドは配列番号1と実質的に同一な配列を含む。本発明はまた、ポリヌクレオチド断片も含み、好ましくは少なくとも約15〜30ヌクレオチド長である。
【0019】
本発明はさらに、選択宿主内でタンパク質発現に有効な調節因子に動作可能に連結した、BGL6をエンコードする核酸配列またはそれらの断片またはスプライス変異体を含む組換え発現ベクターを提供する。関連する側面において、本発明は当該ベクターを含む宿主細胞を含む。
【0020】
本発明はさらに、組換え技術により、BGL6をエンコードする核酸配列を含む原核または真核組換え宿主細胞を当該タンパク質の発現促進に効果的な条件下で培養することにより、及び続いて宿主細胞または細胞培養基から当該タンパク質を回収することにより、BGL6を生成する方法を含む。
【0021】
他の側面において、本発明はセルロースをエタノールに変換するために有用な酵素組成物を提供する。好ましい実施態様において、酵素組成物はBGL6を含む。当該組成物はさらに、エンドグルカナーゼ及び/またはセロビオヒドロラーゼなどのさらなるセルラーゼ酵素を含むことができる。当該組成物はBGL6を豊富に含むことができる。
【0022】
他の側面において、本発明はBGL6に特異的免疫反応性である抗体を含む。
【0023】
bgl6核酸及びBGL6タンパク質を検出する分析方法も本発明の一部を形成する。
【0024】
発明の詳細な説明
1.定義
特段に示す場合を除いて、ここで用いる全ての技術及び科学用語は本発明の当業者にとっての意味と同じ意味を有する。当業界の定義及び用語に関しては、実務者は特にSambrook et al.、1989、及びAusubel FM et al.、1993を参照できる。本発明は記載された特定の方法、手順及び試薬に限定されないことは、これらが種々多様であることから当然に理解される。
【0025】
ここに引用する全ての文献は、本発明との関連で使用し得る組成物及び方法を説明及び開示する目的において明示的にここに引用するものとする。
【0026】
ここで用いる“ポリペプチド”の語は、ペプチド結合により結合したアミノ酸残基の一本鎖から構成される化合物をいう。ここで用いる“タンパク質”の語は、“ポリペプチド”と同義語であり、またはさらに、2以上のポリペプチド複合体をいう。
【0027】
“核酸分子”の語はRNA、DNA及びcDNA分子を含む。当然のことながら、遺伝コードの縮退の結果、BGL6など所定タンパク質をエンコードする多数のヌクレオチド配列が生じ得る。本発明は、可能性のある全てのBGL6をエンコードする変異ヌクレオチド配列を意図するものであり、その全てが遺伝コードの所定の可能な縮退である。
【0028】
“異種”核酸構築体または配列は、発現する細胞に天然ではない配列の一部を有する。制御配列に関して異種とは、発現が目下調節されている、同じ遺伝子を調節するために天然では機能しない制御配列(すなわち、プロモーターまたはエンハンサー)をいう。通常、異種核酸配列はそれが存在する細胞またはゲノムの一部に内生のものではなく、挿入、トランスフェクション、形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等により細胞に加えられたものである。“異種”核酸構築体は、天然細胞に見られる制御配列/DNAコード配列の組み合わせと同じまたは異なる制御配列/DNAコード配列の組み合わせを含む。
【0029】
ここで用いる“ベクター”の語は、異なる宿主細胞間の移動のために設計された核酸構築体をいう。“発現ベクター”とは、外来細胞中に異種DNA断片を組み込んで発現する能力を有するベクターをいう。多くの原核及び真核発現ベクターが市販されている。適切な発現ベクターの選択は当業者の知識の範囲内である。
【0030】
従って、“発現カセット”または“発現ベクター”は、標的細胞中で特定の核酸の転写を可能にする一連の特定核酸要素を用いて、組換え技術による、または合成的に生成した核酸構築体である。組換え発現カセットはプラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、色素体DNA、ウイルスまたは核酸断片内に組み込むことができる。一般的に、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、配列の中でも、転写される核酸配列及びプロモーターを含む。
【0031】
ここで用いる“プラスミド”の語は、クローニングベクターとして用いる環状二本鎖(ds)DNA構築体をいい、多くの細菌及びいくつかの真核性物において染色体外の自己複製遺伝要素を形成する。
【0032】
ここで用いる“選択マーカーエンコードヌクレオチド配列”とは、細胞内で発現できるヌクレオチド配列をいい、ここで選択マーカーの発現により発現遺伝子を含む細胞は、対応する選択剤の存在下、または対応する選択成長条件下で成長できる能力が与えられる。
【0033】
ここで用いる“プロモーター”の語は、下流遺伝子の直接転写に作用する核酸配列をいう。プロモーターは通常、標的遺伝子が発現される宿主細胞に適したものである。プロモーターはその他の転写及び翻訳調節核酸配列(“制御配列”とも呼ぶ)と一緒に所定の遺伝子を発現するために必要である。通常、転写及び翻訳調節配列は、限定されないが、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び停止配列、翻訳開始及び停止配列及びエンハンサーまたは活性化配列を含む。
【0034】
ここで定義する“キメラ遺伝子”または“異種核酸構築体”は、調節因子などを含む、種々の遺伝子部分からなる非天然遺伝子(すなわち、宿主内に導入された遺伝子)をいう。宿主細胞を形質転換するためのキメラ遺伝子構築体は一般的に、異種タンパク質コード配列に動作可能に連結した、または選択マーカーキメラ遺伝子内で、形質転換細胞に抗生物質耐性を与えるタンパク質をエンコードする選択マーカー遺伝子に動作可能に連結した転写調節領域(プロモーター)からなる。宿主細胞内への形質転換のため、本発明の一般的なキメラ遺伝子は、構造性または誘導性の転写調節領域、タンパク質コード配列、及び終結配列を含む。キメラ遺伝子構築体は、標的タンパク質の分泌を望む場合、シグナルペプチドをエンコードする第2のDNA配列も含むことができる。
【0035】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係に位置する場合、“動作可能に連結”する。例えば、分泌リーダー(leader)をエンコードするDNAは、ポリペプチドの分泌に関与すするプレタンパク質として発現する場合、ポリペプチドのDNAに動作可能に連結し;プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響する場合、コード配列に動作可能に連結し;またはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するために位置する場合、コード配列に動作可能に連結する。通常、“動作可能に連結する”とは、連結DNA配列が隣接しており、及び分泌リーダーの場合、隣接かつリーディングフレーム内にあることを意味する。しかし、エンハンサーは隣接している必要はない。連結は都合のよい制限部位で連結反応により達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチド・アダプタ、リンカーまたはPCR用プライマーを従来実務に従って用いる。
【0036】
ここで用いる“遺伝子”の語は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNA断片を意味し、コード領域の先行及び後の領域、例えば5’非翻訳(5’UTR)または“リーダー”配列及び3’UTRまたは“トレーラー”配列及び個々のコード断片(エキソン)間の介在配列(イントロン)などを含んでも含まなくてもよい。
【0037】
通常、BGL6またはその類似体または相同体をエンコードする核酸分子はここに配列番号1として表す配列に中程度から高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。しかしながら、場合によっては、実質的に異なるコドン使用を有するBGL6エンコードヌクレオチド配列が用いられるが、当該BGL6エンコードヌクレオチド配列によりエンコードされるタンパク質は天然タンパク質と同じまたは実質的に同じアミノ酸配列を有する。例えば、コード配列は特定の原核または真核生物発現系内でのより速いBGL6発現を促進するために、宿主に利用される特定コドン頻度に従って修飾できる。Te’o et al.(2000)、は例えば、糸状菌内での遺伝子発現の最適化について記載している。
【0038】
核酸配列は、2つの配列が特異的に中程度から高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション及び洗浄条件下でお互いにハイブリダイズする場合、対照核酸配列に“選択的にハイブリダイズ”すると考えられる。ハイブリダイゼーション条件は核酸結合複合体またはプローブの融点(Tm)に基づく。例えば、“最大ストリンジェンシー”は通常、約Tm−5℃で起こり(プローブのTmより5℃低い);“高ストリンジェンシー”はTmより約5−10℃低く;“中ストリンジェンシー”はプローブのTmより約10−20℃低く;及び“低ストリンジェンシー”はTmより約20−25℃低い。機能的に、最大ストリンジェンシー条件はハイブリダイゼーションプローブと厳密に同一またはほぼ厳密に同一な配列を同定するために用いることができ、高ストリンジェンシー条件はプローブと約80%以上の配列同一性を有する配列を同定するために用いる。
【0039】
中程度から高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は当業界に公知である(例えば、明示的にここに引用するSambrook et al.1989、第9章及び11章、及びAusubel、F.M.et al.、1993を参照)。高ストリンジェンシー条件の例としては、50%ホルムアミド、5X SSC、5X Denhardt’s溶液、0.5% SDS及び100μg/ml変性キャリアDNA中、約42℃でのハイブリダイゼーション、及び続いて2X SSC及び0.5% SDS中、室温で2回洗浄及びさらに0.1X SSC及び0.5% SDS、42℃で2回洗浄を含む。
【0040】
ここで用いる“組換え体”は、異種核酸配列の挿入により修飾された、または細胞がそのように修飾された細胞由来である、細胞またはベクターへの言及を含む。従って、例えば、組換え細胞は当該細胞の天然(非組換え)型内では同じ形態で見られない遺伝子を発現し、または意図的な人間介入の結果として発現、または全く発現しない条件下で、通常は異常発現される天然遺伝子を発現する。
【0041】
ここで用いる細胞に関する“形質転換”、“安定に形質転換された”または“トランスジェニック”の語は、ゲノム内に統合された、または複数の世代を通して維持されるエピソームプラスミドとして非天然(異種)核酸配列を細胞が有することを意味する。
【0042】
ここで用いる“発現”の語は、ポリペプチドが遺伝子の核酸配列に基づいて生成されるプロセスをいう。当該プロセスは転写及び翻訳の両方を含む。
【0043】
細胞への核酸配列の挿入に関する“導入”の語は“トランスフェクション”または“形質転換”または“形質導入”を意味し、原核または真核細胞内への核酸配列の組込みに関する場合を含み、ここで核酸配列は細胞のゲノム内(例えば、染色体、プラスミド、色素体またはミトコンドリアDNA)に組み込まれることができ、自己レプリコンに変換され、または一時的に発現される(例えば、トランスフェクトされたmRNA)。
【0044】
従って、“BGL6発現”の語はbgl6遺伝子の転写及び翻訳をいうことになり、その生成物は前駆体RNA、mRNA、ポリペプチド、翻訳後処理ポリペプチド、及びその誘導体を含み、トリコデルマ・ロンギブラチアタム(リーゼイ)、トリコデルマ・ビリディ、トリコデルマ・コニンギ、ヒポクレア・jecorina及びヒポクレア・schweinitziiなどの関連種由来のBGL6を含む。例として、BGL6発現の分析はBGL6タンパク質のウエスタンブロット、BGL6 mRNAのノーザンブロット分析及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析、及びChen et al.(1992)及びHerr et al.(1978)に記載のグルコシダーゼ活性分析を含む。
【0045】
“選択的スプライシング”の語は、複数のポリペプチドイソ型が1の遺伝子から生じるプロセスをいい、遺伝子の全部ではないがいくつかの転写処理中、非連続エキソンを一緒にスプライシングすることに関与する。従って、特定のエキソンはメッセンジャーRNAを形成するためにいくつかの選択的エキソンのいずれかひとつに結合することができる。選択的スプライスmRNAはポリペプチド(“スプライス変異体”)を生成し、共通する部分もあれば異なる部分もある。
【0046】
“シグナル配列”の語は、細胞外でタンパク質の成熟型の分泌を促進するタンパク質のN末端部分でのアミノ酸配列をいう。細胞外タンパク質の成熟型は分泌過程中に開裂されるシグナル配列がない。
【0047】
“宿主細胞”の語はベクターを含み、複製及び/または転写または発現構築体の転写及び翻訳(発現)を助ける細胞を意味する。本発明で用いる宿主細胞は大腸菌などの原核細胞または酵母、植物、昆虫、両生類または哺乳類細胞などの真核細胞である。通常、宿主細胞は糸状菌である。
【0048】
“糸状菌”の語は、当業者に認識される任意の及び全ての糸状菌を意味する。好ましい真菌はアスペルギルス、トリコデルマ、フサリウム、クリソスポリウム、ペニシリン、フミコーラ、アカパンカビ(Neurospora)またはそれらの他の有性型、例えばエメリセラ、ヒポクレアからなる群より選択される。
【0049】
“セロオリゴ糖”の語は、2〜8のグルコース単位を含み、及びβ−1,4結合を有するオリゴ糖グループをいい、例えばセロビオースである。
【0050】
“セルラーゼ”の語はセルロースポリマーをより短いセロ−オリゴ糖オリゴマー、セロビオース及び/またはグルコースに加水分解できる酵素分類をいう。多数のセルラーゼの例として、例えば、エキソグルカナーゼ、エキソセロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ及びグルコシダーゼは、セルロース分解性生物、特に真菌、植物及び細菌から得られる。
【0051】
ここで用いる“セルロース結合ドメイン”の語は、セルラーゼのアミノ酸配列の一部をいい、またはセルラーゼまたはその誘導体のセルロース結合活性に関する酵素領域をいう。セルロース結合ドメインは通常、セルラーゼのセルロース、セルロース誘導体またはその他の多糖類同等物への非共有結合により作用する。セルロース結合ドメインは、触媒コア領域を構造的に区別することによりセルロース繊維の加水分解を促進または可能にし、通常、触媒コアの独立に作用する。従って、セルロース結合ドメインは触媒コアに起因する大きな加水分解活性は有さない。言いかえると、セルロース結合ドメインは、触媒活性を有する構造的因子から区別されるセルラーゼ酵素タンパク質三次構造の構造的因子である。
【0052】
ここで用いる“界面活性剤”の語は、表面活性特性を有するものとして当業界で通常認識されている任意の化合物をいう。従って、例えば、界面活性剤は陰イオン性、陽イオン性及び非イオン性界面活性剤を含み、例えば洗剤において通常見られるものである。陰イオン性界面活性剤は、直鎖または分岐鎖アルキルベンゼンスルフォネート;直鎖または分岐鎖アルキル基またはアルケニル基を有するアルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩;アルキルまたはアルケニル硫酸塩;オレフィンスルフォネート;及びアルカンスルフォネートが挙げられる。両性界面活性剤は第4級アンモニウム塩スルフォネート及びベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。当該両性界面活性剤は同じ分子内に正及び負電荷の両方の基を有する。非イオン性界面活性剤はポリオキシアルキレンエーテル及び高脂肪酸アルカノールアミドまたはその酸化アルキレン付加、脂肪酸グリセリンモノエステル等を含むことができる。
【0053】
ここで用いる“セルロース含有繊維”の語は、セルロースを含有する綿または非綿、またはセルロースブレンド、例えば天然セルロース誘導体及び人工セルロース誘導体を含有する綿または非綿から作られた任意の織布または不織布、糸または繊維をいう(例えば、ジュート(黄麻)、亜麻布、ラミー、レーヨン及びリヨセル)。
【0054】
ここで用いる、“綿含有繊維”の語は、純粋な綿または綿ブレンドから作られた織布または不織布、糸または繊維をいい、綿織物、綿ニット、綿デニム、綿糸、原綿等を含む。
【0055】
ここで用いる、“ストーンウォッシュ組成物”の語は、セルロース含有繊維をストーンウォッシュする際に用いる製剤をいう。ストーンウォッシュ組成物は販売前、すなわち製造プロセス時にセルロース含有繊維を修正するために用いる。これに対し、洗剤組成物は汚れた衣類の洗浄を目的とするものであり、製造プロセス時には用いられない。
【0056】
ここで用いる“洗剤組成物”の語は汚れたセルロース含有繊維を洗濯するための洗浄手段で用いることを意図した混合物をいう。本発明に関して、当該組成物はセルラーゼ及び界面活性剤に加えて、さらに加水分解酵素、ビルダー、漂白剤、漂白活性化剤、青味剤及び蛍光色素、ケーキング防止剤、マスキング剤、セルラーゼ活性化剤、酸化防止剤及び可溶化剤を含むことができる。
【0057】
ここで用いる“bgl6遺伝子発現の減少または除去”とは、bgl6遺伝子がゲノムから欠失され、従って組換え宿主微生物により発現できないこと;またはbgl6遺伝子が修飾され、機能的BGL6酵素が組換え宿主微生物により生成されないことを意味する。
【0058】
“変異bgl6”または“変異bgl6遺伝子”の語は当該遺伝子の核酸配列がコード配列を除去、付加及び/または操作することにより変異されたこと、または発現タンパク質のアミノ酸配列が修飾されたことを意味する。
【0059】
ここで用いる“精製”の語は、通常、トランスジェニック核酸またはタンパク質を含む細胞を生化学精製及び/またはカラムクロマトグラフィーに供することをいう。
【0060】
ここで用いる“活性”及び“生物活性”の語は、特定タンパク質に関する生物活性をいい、例えばプロテアーゼに関する酵素活性である。従って、当業者とって所定タンパク質の生物活性は通常、当該タンパク質に起因する任意の生物活性をいうことになる。
【0061】
ここで用いる“濃縮”の語は野生型または天然真菌セルラーゼ組成物に見られるBGL6濃度と比較してBGL6濃度が高いことを意味する。
【0062】
野生型真菌セルラーゼ組成物は天然真菌源により生成されるものであり、1以上のBG、CBH及びEG成分を含み、これらの各成分は真菌源により生成される割合で見られる。従って、濃縮BGL6組成物はBGL6の割合が変化しており、その他のセルラーゼ成分(すなわち、CBH及びエンドグルカナーゼ)に対するBGL6の割合が高くなっている。この割合は、当業界で公知の任意の方法によりBGL6を増加させることにより、または少なくとも1のその他の成分を減少(または除去)させることにより増加させることができる。
【0063】
従って、例えば、天然セルラーゼ系は、適当なpHでのイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除等の文献に開示で公知の分離技術により実質的に純粋な成分に精製できる。例えば、イオン交換クロマトグラフィー(通常、陰イオン交換クロマトグラフィー)において、セルラーゼ成分はpH勾配を用いる溶出により、または塩勾配、またはpH及び塩勾配の両方を用いる溶出により分離することが可能である。次に、精製BGL6を酵素溶液に加えて濃縮BGL6溶液を得ることができる。
【0064】
真菌セルラーゼは1以上のBG成分を含み得る。それぞれの成分は通常、イオン交換クロマトグラフィー等により分離を可能とする異なる等電点を有する。1のBG成分またはBG成分の組み合わせは酵素溶液中で用いることができる。
【0065】
酵素溶液中で用いる場合、BG成分は通常、セルラーゼ組成物中に見られるCBH及びエンドグルカナーゼ成分のセロビオースによる阻害を防止するために十分な量で加える。加えるBG成分の量は、バイオマス糖化プロセス時に生成されるセロビオースの量に依存し、当業者により容易に測定できる。しかしながら、セルラーゼ組成物中に存在するCBHまたはエンドグルカナーゼ型成分と比較したBGL6成分を用いる場合のその重量%は、好ましくは約1、好ましくは約5、好ましくは約10、好ましくは約15、または好ましくは約20重量%〜好ましくは約25、好ましくは約30、好ましくは約35、好ましくは約40、好ましくは約45、または好ましくは約50重量%である。さらに、好ましい範囲は約0.5〜約15重量%、約0.5〜約20重量%、約1〜約10重量%、約1〜約15重量%、約1〜約20重量%、約1〜約25重量%、約5〜約20重量%、約5〜約25重量%、約5〜約30重量%、約5〜約35重量%、約5〜約40重量%、約5〜約45重量%、約5〜約50重量%、約10〜約20重量%、約10〜約25重量%、約10〜約30重量%、約10〜約35重量%、約10〜約40重量%、約10〜約45重量%、約10〜約50重量%、約15〜約20重量%、約15〜約25重量%、約15〜約30重量%、約15〜約35重量%、約15〜約40重量%、約15〜約45重量%、約15〜約50重量%である。
【0066】
II.標的生物
A.糸状菌
糸状菌は、細目の真菌門(Eumycota)及び卵菌(Oomycota)全ての線状体を含む。糸状菌はキチン、グルカン、キトサン、マンナン及びその他の複合多糖類からなる細胞壁を有する栄養菌糸、及び菌糸伸長による栄養成長並びに偏性好気性の炭素異化を特徴とする。
【0067】
本発明において、糸状菌親細胞は限定されないが、トリコデルマ、例えばトリコデルマ・ロンギブラチアタム(リーゼイ)、トリコデルマ・ビリディ、トリコデルマ・コニンギ、トリコデルマ・ハルジアナム;ペニシリン種;フミコーラ・インソレンスなどのフミコーラ種;C.lucknowenseなどのクリソスポリウム種;グリオクラディウム種;アスペルギルス種;フサリウム種、アカパンカビ(Neurospora)種、ヒポクレア種及びエメリセラ種の細胞である。ここで用いる“トリコデルマ”または“トリコデルマ種”の語は、既にトリコデルマとして分類されている、または最近トリコデルマとして分類された任意の真菌株をいう。
【0068】
1の好ましい実施態様において、糸状菌親細胞はアスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・aculeatusまたはアスペルギルス・ニデュランス細胞である。
【0069】
他の好ましい実施態様において、糸状菌親細胞はトリコデルマ・リーゼイ細胞である。
【0070】
III.セルラーゼ
セルラーゼはセルロース(β−1,4−グルカンまたはβ−D−グルコシド結合)を加水分解してグルコース、セロビオース、セロオリゴ糖などを生じる酵素として当業界に公知である。上述の通り、セルラーゼは従来から3つの主な分類に分けられる:エンドグルカナーゼ(EC3.2.1.4)(“EG”)、エキソグルカナーゼまたはセロビオヒドロラーゼ(EC3.2.1.91)(“CBH”)及びβ−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)(“BG”)(Knowles、et al.、1987;Schulein、1988)。
【0071】
特定の真菌は、エキソセロビオヒドロラーゼまたはCBH型セルラーゼ、エンドグルカナーゼまたはEG型セルラーゼ及びβ−グルコシダーゼまたはBG型セルラーゼを含む完全なセルラーゼ系を生じる(Schulein、1988)。しかしながら、これらの系はCBH型セルラーゼを欠く場合があり、また、細菌性セルラーゼは通常CBH型セルラーゼを含まないか、またはほとんど含まない。さらに、EG成分及びCBH成分は相乗的に相互作用してより効果的にセルロースを分解することが示されている。例えば、Wood、1985を参照されたい。種々の成分、すなわち、複数成分または完全なセルラーゼ系中の種々のエンドグルカナーゼ及びエキソセロビオヒドロラーゼは通常、等電点、分子量、糖化度、基質特異性及び酵素作用パターンなど異なる性質を有する。
【0072】
エンドグルカナーゼ型セルラーゼは、セルロースの低結晶領域中の内部β−1,4−グルコシド結合を加水分解し、エキソ−セロビオヒドロラーゼ型セルラーゼはセルロースの還元または非還元末端からセロビオースを加水分解すると考えられる。従って、エンドグルカナーゼ成分の作用は、エキソ−セロビオヒドロラーゼ成分に認識される新しい鎖末端を生成することによりエキソ−セロビオヒドロラーゼの作用を大きく促進させることができることになる。さらに、β−グルコシダーゼ型セルラーゼは、メチルβ−D−グルコシド及びp−ニトロフェニルグルコシドなどのアルキル及び/またはアリールβ−D−グルコシド及びセロビオースなどの糖質残基しか含まないグリコシドの加水分解を触媒することが示されている。これにより微生物の唯一の生成物としてグルコースを生じ、セロビオヒドロラーゼ及びエンドグルカナーゼを阻害するセロビオースを減少または除去する。
【0073】
従って、β−グルコシダーゼ型セルラーゼは、グルコースへの全体的な反応を推進するのでセルラーゼ系に不可欠な部分と考えられる。T.リーゼイにおいてBG発現の増加がセルロースからグルコースへの分解を向上させることが示されている。ここに引用するEP0562003を参照されたい。さらに、β−グルコシダーゼは多種多様の基質の加水分解を触媒でき、従って、様々な用途で活用できる。いくつかのβ−グルコシダーゼはワイン製造時にブドウに加えて、最終ワイン製品の芳香性を高めることができる。さらに別の用途としては、β−グルコシダーゼは香りを高めるために果物に用いることができる。もしくは、β−グルコシダーゼは風味及び香りを高めるために食品添加物またはワイン加工に直接用いることができる。
【0074】
また、セルラーゼは洗浄能力を高めるため、柔軟剤として、及び綿織物の手触りを向上させるためなど、洗剤組成物において多様な用途がある(Hemmpel、1991;Tyndall、1992;Kumar et al.、1997)。当該メカニズムは本発明の一部を構成するものではないが、米国特許第5,648,263号、第5,691,178号、及び第5,776,757号に説明されているように、セルラーゼの柔軟及び色修復特性はセルラーゼ組成物中のアルカリエンドグルカナーゼ成分のためであり、当該文献は特定のアルカリエンドグルカナーゼ成分を濃縮したセルラーゼ組成物を含む洗剤組成物は、当該成分を濃縮しないセルラーゼ組成物と比較して処理衣類に色修復及び改善された柔軟性を与えることを開示している。さらに、当該アルカリエンドグルカナーゼ成分は洗剤組成物中で使用すると洗剤組成物のpH条件を補完することが示されている(例えば、米国特許第5,648,263号、第5,691,178号、及び第5,776,757号に記載の通り、pH7.5〜10のアルカリ性で最大活性を示す)。
【0075】
セルラーゼ組成物は綿含有織物を分解し、織物の強度を損なうことも示されており(米国特許第4,822,516号)、市販の洗剤用途にセルラーゼ組成物が用いにくい原因となっている。エンドグルカナーゼ成分を含むセルラーゼ組成物は完全なセルラーゼ系を含む組成物と比較して、綿含有織物の損失強度の減少を示すことが示唆されている。
【0076】
また、セルラーゼはセルロースバイオマスからエタノールへの分解(ここでセルラーゼはセルロースをグルコースに分解し、酵母またはその他の微生物がさらにグルコースを発酵してエタノールになる)、機械パルプの処理(Pere et al.、1996)、飼料添加物としての使用(WO91/04673)及び穀物湿式粉砕に有用であることが示されている。
【0077】
多数のセルラーゼが科学文献に記載されており、例えば:トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei):Shoemaker,S et al.、Bio/Technology,1:691−696、1983、CBHIを開示;Teeri T.et al.、Gene、51:43−52、1987、CBHIIを開示;Penttila,M.et al.、Gene、45:253−263、1986、EGIを開示;Saloheimo,M et al.、Gene,63:11−22、1988、EGIIを開示;Okada,M et al.、Appl.Environ.Microbiol.,64:555−563、1988、EGIIIを開示;Saloheimo,M et al.、Eur.J.Biochem.,249:584−591、1997、EGIVを開示;Saloheimo,A et al.、Molecular Microbiology、13:219−228、1994、EGVを開示;Barnett,C.C.,et al.、Bio/Technology、9:562−567、1991、BGL1を開示、及びTakashima,S.et al.、J.Biochem.,125:728−736、1999、BGL2を開示。トリコデルマ以外の種由来のセルラーゼについても記載されており、例えば、Ooi et al.、1990は、アルペルギルス・aculeatusにより生成されるエンドグルカナーゼF1−CMCをコードするcDNA配列を開示;Kawaguchi T et al.、1996はアルペルギルス・aculeatusからβ−グルコシダーゼ1をエンコードするcDNAのクローニング及びシーケンシングについて開示;Sakamoto et al.、1995は、アスペルギルス・カワチIFO4308由来のエンドグルカナーゼCMCアーゼ−1をエンコードするcDNA配列を開示;Saarilahti et al.、1990は、Erwinia carotovara由来のエンドグルカナーゼを開示;Spilliaert R et al.、1994は、好熱性バクテリア(Rhodothermus marinu)由来の熱安定性β−グルカナーゼをコードするbglAのクローニング及びシーケンシングについて開示;及びHalldorsdottir S et al.、1998は、グリコシルヒドロラーゼ属12の熱安定性セルラーゼをエンコードする好熱性バクテリア(Rhodothermus marinu)遺伝子のクローニング、シーケンシング及び過剰発現について開示している。しかしながら、熱応力条件下、または界面活性剤の存在下での改善された性能、増加した特異活性、変異基質開裂パターン及び/またはin vitroでの高レベル発現など改善された特性を有する新規なセルラーゼの同定及びキャラクタリゼーションの必要性が依然として存在する。
【0078】
様々な量のCBH型、EG型及びBG型セルラーゼを含む新規で改善されたセルラーゼ組成物の開発は以下の用途に注目されている:(1)洗浄能力の向上、柔軟剤としての機能及び/または綿織物の手触りの改善を示す洗剤組成物(例えば、“ストーンウォッシング”または“バイオポリッシング”)での使用;(2)木材パルプまたはその他のバイオマスを糖に分解する組成物での使用(例えば、バイオ−エタノール生成);及び/または(3)飼料組成物での使用。
【0079】
IV.新規な配列の同定方法
オープンリーディングフレーム(ORF)は、T.リーゼイゲノムまたはT.リーゼイmRNA由来cDNAライブラリーのクローンの全部または部分シーケンシングにより分析され、さらに配列分析ソフトウェアを用いて、及びデータベース(公共/私用)中の公知配列との相同性を測定することにより分析される。
【0080】
V.bgl6核酸及びBGL6ポリペプチド
A.bgl6核酸
本発明の核酸分子は、天然コード配列、配列番号1としてここに表すbgl6のcDNA配列、及び他の種におけるそれらの相同体、天然対立及びスプライス変異体、核酸断片及びそれらの生物学的に活性な(機能的)誘導体、例えば天然分子のアミノ酸配列変異体及び融合タンパク質をエンコードする配列を含む。bgl6遺伝子は2つの推定上の開始コドンを有する。当該2つの開始コドンは図4中、下線で示す。当該配列は“BGL6−エンコード核酸配列”としてここで集合的に言及する。
【0081】
重複のない核酸配列データベースの基本BLASTNサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)は2002年10月1日に実施され、図1(配列番号1)に表すbgl6遺伝子配列を含み、重大な配置(すなわち、10−5以下のE値)を生じる配列は存在しないことが示されている。
【0082】
本発明のbgl6核酸配列はDNAまたはRNA配列であり、ゲノムDNA、cDNA、mRNA由来であり、または全体または部分的に合成できる。DNAは二本鎖または一本鎖であり、一本鎖の場合、コード鎖または非コード(アンチセンス、相補的)鎖でもよい。核酸配列はクローンでき、例えば、適当な供給源からゲノムDNAを単離して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて目的配列を増幅及びクローニングすることによりクローンできる。もしくは、核酸配列は完全に、または部分的に合成でき、特に、最適発現のため宿主が好む配列を提供することが望ましい場合に合成できる。従って、所望の構造遺伝子(遺伝子の一部がポリペプチドまたはタンパク質をエンコードする)の全てまたは一部は選択宿主が好むコドンを用いて合成できる。
【0083】
遺伝コードの固有縮退により、実質的に同じまたは機能的に同等なアミノ酸配列をエンコードする天然型以外の核酸配列をクローンに用いることができ、及び/またはBGL6−エンコード核酸配列を発現するために用いることができる。従って、所定のBGL6−エンコード核酸配列に関して、遺伝コードの縮退の結果、同じアミノ酸配列を有するタンパク質をエンコードする多数のコード配列が生成できることが理解される。例えば、CGTトリプレットはアミノ酸アルギニンをエンコードする。またはアルギニンはCGA、CGC、CGG、AGA及びAGGにもエンコードされる。従って、当然のことながら、コード領域におけるそのような置換は本発明に含まれる核酸配列変異体の範囲内である。任意かつ全てのこれら配列変異体はここに記載した同じ方法でBGL6−エンコード核酸配列の天然型に利用できる。
【0084】
“変異体”BGL6−エンコード核酸配列は、天然ポリペプチド配列から1以上のアミノ酸が変異された“変異体”BGL6アミノ酸配列をエンコードでき、またはポリペプチド配列のいずれかの末端から1以上のアミノ酸を除去することにより先端を切り捨てる(truncated)ことができ、その両方が本発明の範囲内である。同様に、BGL6に関する“修飾型”の語は天然BGL6タンパク質−エンコード核酸配列または天然BGL6アミノ酸配列の誘導体または変異体を意味する。
【0085】
同様に、本発明の実施に用いるポリヌクレオチドは天然BGL6タンパク質及びそのスプライス変異体をエンコードする配列、天然タンパク質コード配列に相補的な配列、及びBGL6エンコードポリヌクレオチドの新規な断片を含む。BGL6エンコード核酸配列は、ゲノムDNA配列の場合、1以上のイントロン配列を含むことができる。
【0086】
1の一般的な実施態様において、BGL6−エンコードヌクレオチド配列は、ここで配列番号1として表すbgl6コード配列に対して少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、95%、98%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0087】
他の実施態様において、BGL6−エンコードヌクレオチド配列は中程度から高ストリンジェンシーな条件下でBGL6タンパク質をエンコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする。関連する実施態様において、BGL6−エンコードヌクレオチド配列は中程度から高ストリンジェンシーな条件下で配列番号1として表すヌクレオチド配列にハイブリダイズする。
【0088】
BGL6をエンコードするいくつかの核酸配列変異体は親配列に選択的にハイブリダイズできる、またはできないことが理解される。例として、コード配列が遺伝コードの縮退に基づいて最適化された状況において、BGL6タンパク質をエンコードするが中程度から高ストリンジェンシーな条件下で天然BGL6−エンコード核酸配列にハイブリダイズしない変異体コード配列が生成できる。これは、例えば、配列変異体が親ヌクレオチドによりエンコードされる各アミノ酸に関して異なるコドンを含む場合に起こり得る。
【0089】
さらに当業者に理解されるように、場合によっては、非天然コドン、例えばイノシンまたはその他の非天然ヌクレオチド類似体を有さないヌクレオチド配列を生成することは有利である。特定の真核宿主に好まれるコドンは例えば、BGL6タンパク質発現速度を上げるため、または天然配列から生成された転写物よりも長い半減期など望ましい性質を有する組換えRNA転写物を生成するために選択できる。従って、天然BGL6−エンコードヌクレオチド配列は種々の理由でコード配列が変異するように設計でき、限定されないが、クローニング、プロセシング及び/またBGL6タンパク質の細胞による発現を修飾する変異などの理由で変異を設計できる。
【0090】
天然ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの性質または活性が変化しないようなサイレント核酸置換、付加及び欠失が特に好ましい。
【0091】
オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、及びPCR突然変異誘発などの当業界に公知の方法を用いて変異を起こすことができる。部位特異的突然変異誘発(Carter et al.、1986;Zoller et al.、1987)、カセット突然変異誘発(Wells et al.、1985)、制限選択突然変異誘発(Wells et al.、1986)またはその他の公知の技術は、BGL6ポリペプチドエンコード変異体DNAを生成するためにクローンDNA上で行うことができる。
【0092】
しかしながら、場合によっては、天然bgl6ポリヌクレオチドまたはBGL6ポリペプチドの性質または活性を有さないbgl6変異体を発現することが有利である。その場合、天然BGL6エンコード核酸配列の変異または修飾型は当業者が通常用いる技術により生成できる。
【0093】
B.BGL6ポリペプチド
1の好ましい実施態様において、本発明は天然成熟型または図2(配列番号2)に表される配列を含む完全長BGL6ポリペプチド配列を有するBGL6ポリペプチドを提供する。本発明のBGL6ポリペプチドは成熟BGL6ポリペプチド、融合タンパク質の一部または図2(配列番号2)に表されるBGL6ポリペプチド配列の断片または変異体であってもよい。
【0094】
通常、本発明のBGL6ポリペプチドは全体長にわたって、BGL6アミノ酸配列に少なくとも80%同一性を有する。より好ましくは、BGL6ポリペプチド配列は、ここに詳細に記載する配列プログラムを用いて、図2(配列番号2)のBGL6ポリペプチド配列に少なくとも80、85、90、95、98%またはそれ以上の配列同一性を有する領域を含む。
【0095】
通常、天然BGL6タンパク質の“修飾型”または“変異体”BGL6タンパク質はそれぞれ、少なくとも1のアミノ酸置換、付加、欠失または挿入を含む誘導体配列を有する。
【0096】
特定のアミノ酸置換はタンパク質の機能に影響することなくタンパク質配列中で生じることができることは当業界で公知である。通常、保存アミノ酸置換または類似アミノ酸の置換はタンパク質機能に影響せずに許容される。類似アミノ酸は大きさが類似及び/または電荷特性が類似するアミノ酸であり、例えば、アスパラギン酸塩とグルタミン酸塩、及びイソロイシンとバリンは両ペアとも類似アミノ酸である。アミノ酸ペア間の類似性は多数の方法で当業界で評価されている。例えば、ここに引用するDayhoff et al.(1978)はアミノ酸類似性の指標として用いることができるアミノ酸置換の度数分布表を提供している。Dayhoff et al.の度数分布表は、種々の進化的に異なる供給源由来の同じ機能を有するタンパク質のアミノ酸配列の比較に基づく。
【0097】
図2(配列番号2)のBGL6ポリペプチド配列の断片及び変異体は本発明の一部であると考えられる。断片は前述したポリペプチドのアミノ酸配列の全部ではないがその一部と全く同じアミノ酸配列を有する変異体ポリペプチドである。断片は“独立”していてもよく、またはより大きなポリペプチド内に含まれて当該断片がその一部または領域、最も好ましくは1の連続領域として形成されてもよい。好ましい断片は生物学的に活性な断片であり、本発明のポリペプチドの活性を仲介する断片であり類似活性または改善された活性または減少した活性を有する断片を含む。また、動物、特にヒト内で抗原性または免疫原性である断片も含む。この側面において、本発明は(i)BGL6断片、好ましくは、少なくとも約20〜100アミノ酸長、より好ましくは約100〜200アミノ酸長、及び(ii)BGL6を含む医薬組成物を含む。種々の実施態様において、当該断片はBGL6のN末端ドメインまたはBGL6のC末端ドメインに対応する。
【0098】
また、本発明のBGL6ポリペプチドは図2(配列番号2)のBGLポリペプチド配列と異なるポリペプチドも含む。これらの変異体は置換、挿入または欠失変異体である。当該変異体は通常、天然類似体と同じ性質の生物活性を示すが、さらに下記に説明するような特性が変更された変異体を選択することもできる。
【0099】
“置換”は1以上のヌクレオチドまたはアミノ酸を異なるヌクレオチドまたはアミノ酸によりそれぞれ置き換えることにより生じる。
【0100】
“挿入”または“付加”は天然配列と比較して、それぞれ1以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の追加を生じるヌクレオチドまたはアミノ酸配列の変化である。
【0101】
“欠失”はそれぞれ1以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基がない、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の変化として定義される。
【0102】
アミノ酸置換は通常は1残基であり、挿入は通常約1〜20アミノ酸程度であるが、かなり大きな挿入も許容され得る。欠失は約1〜約20残基の範囲であるが、場合によってはかなり大きい欠失でもよい。
【0103】
置換、欠失、挿入またはそれらの任意の組み合わせが最終誘導体に到達するために用いることができる。通常、これらの変化は分子変化を最小限にするために2、3のアミノ酸について行う。しかしながら、より大きな変化も特定の環境化においては許容され得る。
【0104】
アミノ酸置換は類似構造及び/または化学的性質を有する他のアミノ酸で1のアミノ酸を置き換えることにより生じ、例えば、イソロイシンからバリンへの置換、すなわち保存アミノ酸置換である。挿入または欠失は任意で1〜5アミノ酸の範囲内である。
【0105】
置換は通常、公知の“保存置換”に従ってできる。“保存置換”とは、1の分類のアミノ酸を同じ分類のアミノ酸により置換することをいい、ここで分類はアミノ酸側鎖の共通の物理化学的特性及び相同タンパク質中で天然に見られる高置換頻度により定義される(例えば、標準Dayhoff頻度交換マトリックスまたはBLOSUMマトリックスにより決定される)(一般的に、Doolittle,R.F.,1986を参照)。
【0106】
“非保存置換”とは、1の分類のアミノ酸と他の分類のアミノ酸を置換することをいう。
【0107】
BGL6ポリペプチド変異体は通常、天然類似体と同じ性質の生物活性を示すが、必要に応じて、変異体はBGL6ポリペプチドの特性を変更するために選択される。例えば、グリコシル化部位、及びより具体的には、1以上のO結合またはN結合型グリコシル化部位は変異または除去できる。アミノ酸変化はBGL6ポリペプチドの翻訳後プロセスを変化させ得ることは当業者に当然に理解され、例えばグリコシル化部位の数または位置の変化、または膜アンカー特性または分泌特性またはその他の細胞局在特性の変化である。
【0108】
また、BGL6ポリペプチドの定義内にはその他の関連BGL6ポリペプチドも含まれる。従って、プローブまたは縮重ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列はその他の関連ポリペプチドを発見するために用いることができる。有用なプローブまたはプライマー配列は、BGL6ポリペプチド配列の全部または一部、またはコード領域の外側の配列が指定できる。当業界に公知の通り、好ましいPCRプライマーは約15〜約35ヌクレオチド長であり、好ましくは約20〜約30であり、及び必要に応じてイノシンを含むことができる。PCR反応の条件は当業界に一般的に公知である。
【0109】
BGL6ポリペプチドの共有結合修飾も本発明の範囲内である。例えば、本発明はBGL6ポリペプチドを提供し、当該BGL6ポリペプチドは成熟タンパク質であり、かつ別のアミノまたはカルボキシル末端アミノ酸、またはアミノ酸を成熟ポリペプチド内に含むことができる(例えば、タンパク質の成熟型が1より多くのポリペプチド鎖を有する場合)BGL6ポリペプチドを提供する。当該配列は、例えば、前駆体から成熟型へタンパク質を処理する役割、タンパク質輸送、タンパク質半減期の延長または短縮、または分析または生成においてタンパク質操作の促進を可能にする。例として、本発明の新規なBGL6ポリペプチドは細胞内タンパク質であると考えられる。従って、細胞外環境に輸送するために、その後除去される分泌シグナルが望ましい。
【0110】
また、活性部位の変異、pH最適条件、温度最適条件の変化、及び/またはBGL6酵素の基質親和性の変化を目的とした修飾が考えられる。
【0111】
図2は、図1に示すヌクレオチド配列に基づいた典型的なBGL6ポリペプチドの予測アミノ酸配列(配列番号2)を示す。エンコードされるBGL6ポリペプチドの予測分子量は92kDaである。シグナルペプチド(Nielsen、H.、Engelbrecht、J.、Brunak,S.,von Heijne,G.,Protein Engineering、10:1−6、1997)に類似の配列はBGL6アミノ末端には存在せず、BGL6ポリペプチドが分泌されないことを示唆する。
【0112】
2002年10月1日に実施された、重複のないタンパク質データベースである基本BLASTPサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)において、BGL6アミノ酸配列は、ジェンバンク(GenBank)受入番号P07337(クリヴェロミセス(Kluyveromyces)marxianus var.marxianusのβ−グルコシダーゼ前駆体)と42%配列同一性を示し、ジェンバンク受入番号AL355920(Schizosaccharomyces pombeのβ−グルコシダーゼ前駆体)と43%配列同一性、ジェンバンク受入番号AF329731(フクロタケ属(Volvariella)volvaceaのβ−グルコシダーゼ)と38%配列同一性、及びジェンバンク受入番号AJ293760(アガリクス・ビスポラスの推定β−グルコシダーゼ)と38%配列同一性を示す。BGL6との同一性が43%より低く最も高い10個の配列をβ−グルコシダーゼとして注記した。これらの配列類似性はBGL6がグリコシルヒドロラーゼ属3の一種であることを示す(Henrissat、B.and Bairoch,A.(1993)Biochem.J.293:781−788)。
【0113】
C.アンチBGL6抗体
本発明はさらに、アンチBGL6抗体を提供する。当該抗体はポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性またはヘテロ共役抗体であってもよい。
【0114】
ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に公知である。免疫剤はBGL6ポリペプチドまたはその融合タンパク質であってもよい。免疫される哺乳類において免疫原性となることが公知のタンパク質に抗原を結合することは有用である。免疫付与手順は標準手順または通常の実験に基づき当業者であれば決定できる。
【0115】
もしくは、アンチBGL6抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は動物中で免疫された細胞により、または組換えDNA方法を用いて生成できる(例えば、Kohler et al.、1975;米国特許第4,816,567号を参照)。
【0116】
本発明のアンチBGL6抗体はさらに、ヒト化またはヒト抗体を含むことができる。“ヒト化抗体”の語は、非ヒト(例えばマウス)抗体をヒト化した形態をいい、キメラ抗体、免疫グロブリン鎖またはそれらの断片であり(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)または抗体のその他の抗原結合部分配列)、非ヒト抗体由来配列をいくらか含む。非ヒト抗体をヒト化する方法は当業界に公知であり、さらなる詳細はJones et al.、1986;Riechmann et al.、1988;及びVerhoeyen et al.、1988に記載されている。ヒト抗体を生成する方法も当業者に公知である。例えば、Jakobovits,A.et al.、1995及びJakobovits,A、1995を参照されたい。
【0117】
VI.組換えBGL6の発現
本発明の方法はBGL6を発現するために使用する細胞に依存し、特定のBGL6発現方法が要求されるものではない。
【0118】
本発明はBGL6−エンコード核酸配列を含む発現ベクターを用いて変換、形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。温度、pH等の培養条件は変換、形質転換またはトランスフェクション前に親宿主細胞に用いた条件であり、当業者に明らかである。
【0119】
1の方法において、糸状菌細胞または酵母細胞は、BGL6が細胞株内で発現するように、BGL6をエンコードするDNA断片に動作可能に連結した、プロモーターまたは生物学的に活性なプロモーター断片または宿主細胞株内で機能する1以上の(例えば、一連の)エンハンサーを有する発現ベクターを用いてトランスフェクトされる。
【0120】
A.核酸構築体/発現ベクター
BGL6をエンコードする天然または合成ポリヌクレオチド断片(“BGL6−エンコード核酸配列”)は、異種核酸構築体またはベクター内に組み込むことができ、糸状菌または酵母細胞内に導入及び複製させることができる。ここに開示するベクター及び方法はBGL6発現のための宿主細胞での使用に適したものである。いかなるベクターも導入される細胞内で複製及び生存可能である限り用いることができる。多数の適切なベクター及びプロモーターが当業者に公知であり、市販されている。また、クローニング及び発現ベクターについてもここに明示的に引用するSambrook et al.、1989、Ausubel FM et al.、1989及びStrathern et al.、1981に記載されている。真菌に適切な発現ベクターはvan den Hondel,C.A.M.J.J.et al.(1991):Bennett,J.W.及びLasure,L.L.(編集)More Gene Manipulations in Fungi.Academic Press,第396〜428頁に記載されている。適当なDNA配列が種々の手順によりプラスミドまたはベクター(集合的にここで“ベクター”という)内に挿入できる。通常、DNA配列は標準手順により、適当な制限エンドヌクレアーゼ部位内に挿入される。当該手順及び関連サブクローニング手順は当業者の知識の範囲内であると考えられる。
【0121】
BGL6のコード配列を含む組換え糸状菌は、BGL6コード配列を含む異種核酸構築体を糸状菌の選択株の細胞内に導入することにより生成できる。
【0122】
bgl6核酸配列、相同体、それらの変異体または断片の所望の形態が得られると、種々の方法で修飾できる。当該配列が非コードフランキング領域を含む場合、当該フランキング領域は切除、突然変異誘発等に供することができる。従って、転移、塩基転換、欠失及び挿入が天然配列上で行うことができる。
【0123】
選択bgl6コード配列は公知の組換え技術に従って適切なベクター内に挿入でき、BGL6発現が可能な糸状菌を形質転換するために用いることができる。遺伝コードの固有縮退のため、実質的に同じまたは機能的に同等なアミノ酸配列をエンコードするその他の核酸配列がBGL6をクローン及び発現するために用いることができる。従って、コード領域内の当該置換は、本発明によりカバーされる配列変異体の範囲に当然含まれる。これらの任意及び全ての配列変異体はここに記載する親BGL6−エンコード核酸配列と同じ方法で利用できる。
【0124】
また、本発明は上述の1以上のBGL6−エンコード核酸配列を含む組換え核酸構築体を含むこともできる。当該構築体はプラスミドまたはウイルスベクターなどのベクターを含み、本発明の配列がフォワードまたはリバース方向に挿入される。
【0125】
異種核酸構築体はbgl6のコード配列、またはそれらの変異体、断片またはスプライス変異体を含むことができ、それらは(i)単独で;(ii)例えば融合タンパク質またはシグナルペプチドコード配列などの他のコード配列と組み合わせて(ここでbgl6コード配列は優性コード配列);(iii)イントロンなどの非コード配列、及び適当な宿主中でコード配列の発現に効果的な、プロモーター及び終止因子または5’及び/または3’非翻訳領域など制御因子と組み合わせて;及び/または(iv)bgl6コード配列が異種遺伝子となるベクターまたは宿主環境において、含むことができる。
【0126】
本発明の1の側面において、異種核酸構築体はin vitroでBGL6−エンコード核酸配列を細胞内に移動させるために用いられ、確立された糸状菌及び酵母株が好ましい。BGL6の長期、高収量生成のために、安定な発現が好ましい。従って、安定な形質転換を生成するために効果的な任意の方法が本発明の実施に用いることができる。
【0127】
適当なベクターは通常、選択マーカー−エンコード核酸配列、挿入部位及び適当な制御因子、例えばプロモーター及び終止配列などを備える。当該ベクターは調節配列を含んでもよく、例えば、イントロンなどの非コード配列、及び制御因子、すなわち宿主細胞(及び/または修飾可溶性タンパク質抗原コード配列が通常は発現されないベクターまたは宿主細胞環境)内でコード配列の発現に効果的な、コード配列に動作可能に連結したプロモーター及び終止因子または5’及び/または3’非翻訳領域を含むことができる。多数の適切なベクター及びプロモーターが当業者に公知であり、その多くが市販されており、及び/またはSambrook,et al.、(上述)に記載されている。
【0128】
典型的なプロモーターは保存プロモーター及び誘導性プロモーターの両方を含み、例としては、CMVプロモーター、SV40早期プロモーター、RSVプロモーター、EF−1αプロモーター、tet−onまたはtet−offシステムにおいてtet応答性因子(TRE)を含むプロモーター(ClonTech and BASF)、βアクチンプロモーター及び特定の金属塩の添加により非調節にできるメタロチオニンプロモーターが挙げられる。プロモーター配列は発現のために特定の糸状菌により認識されるDNA配列であり、BGL6ポリペプチドをエンコードするDNA配列に動作可能に連結する。当該連結は開示した発現ベクター中においてBGL6ポリペプチドをエンコードするDNA配列の開始コドンに関するプロモーターの位置決定を含む。プロモーター配列は、BGL6ポリペプチドの発現を媒介する転写及び翻訳制御配列を含む。例えば、アスペルギルス・ニガー、A.アワモリまたはA.オリゼー・グルコアミラーゼ、α−アミラーゼまたはα−グルコシダーゼエンコード遺伝子;A.ニデュランス(nidulans)gpdAまたはtrpC遺伝子;アカパンカビ(Neurospora crassa)cbh1またはtrp1遺伝子;A.ニガーまたはリゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ・エンコード遺伝子;T.reesei cbh1、cbh2、egl1、egl2またはその他のセルラーゼエンコード遺伝子由来のプロモーターが挙げられる。
【0129】
適当な選択マーカーの選択は宿主細胞に依存し、種々の宿主について適当なマーカーは当業界に公知である。一般的な選択マーカー遺伝子はA.ニデュランスまたはT.リーゼイ由来のargB、A.ニデュランス由来のamdS、アカパンカビ(Neurospora crassa)またはT.リーゼイ由来のpyr4、アスペルギルス・ニガーまたはA.ニデュランス由来のpyrGを含む。他の典型的な選択マーカーは、限定されないが、trpc、trp1、oliC31、niaDまたはleu2が挙げられ、これらはtrp−、pyr−、leu−等などの変異株を形質転換するために用いる異種核酸構築体に含まれる。
【0130】
当該選択マーカーは形質転換体に、通常は当該糸状菌により代謝されない代謝産物が利用できる能力を与える。例えば、アセトアミダーゼ酵素をエンコードするT.reesei由来のamdS遺伝子は、形質転換細胞が窒素源としてアセトアミド上で成長できるようにする。選択マーカー(例えば、pyrG)は栄養要求性変異株の選択最小培地上で成長する能力を回復させることができ、または選択マーカー(例えば、olic31)は形質転換体に阻害薬または抗生物質の存在下で成長できる能力を与えることができる。
【0131】
選択マーカーコード配列は当業界で用いられる一般的な方法を用いて適切なプラスミド内にクローンされる。典型的なプラスミドはpUC18、pBR322及びpUC100が挙げられる。
【0132】
本発明の実施には他に指示がない限り、当業者の技術の範囲内である分子生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の従来技術を用いる。当該技術は文献中に十分に説明されている。例えば、Sambrook et al.、1989;Freshney、1987;Ausubel,et al.、1993;及びColigan et al.、1991を参照されたい。ここで言及する全ての特許、特許出願、雑誌及び文献はここに明示的に引用される。
【0133】
B.高められたBGL6生成のための宿主細胞及び培養条件
(i)糸状菌
従って、本発明は、対応する非形質転換親真菌と比較してBGL6生成または発現を高めるために効果的な方法で修飾、選択及び培養された細胞を含む糸状菌を提供する。
【0134】
高められたBGL6発現のために処理及び/または修飾できる親糸状菌の種の例としては、限定されないが、トリコデルマ、例えばトリコデルマ・リーゼイ、トリコデルマ・ロンギブラチアタム、トリコデルマ・ビリディ、トリコデルマ・コニンギ;ペニシリン種、フミコーラ種、例えばフミコーラ・インソレンス;アスペルギルス種、クリソスポリウム種、フサリウム種、ヒポクレア種及びエメリセラ種が挙げられる。
【0135】
BGL6発現細胞は通常、親真菌株を培養するために用いる条件下で培養する。通常、細胞はPourquie,J.et al.、Biochemistry and Genetics of Cellulose Degradation、編集、Aubert,J.P.et al.、Academic Press、第77〜86頁、1988及びIlmen,M.et al.、Appl.Environ.Microbiol.63:1298−1306、1997に記載されるような生理食塩及び栄養物を含む標準培地内で培養する。また、培養条件も標準であり、例えば培養物は28℃、振とう培養または発酵槽中で、所望レベルのBGL6発現が達成されるまで培養する。
【0136】
所定の糸状菌の好ましい培養条件は科学文献及び/またはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC;“http://www.atcc.org/”)などの真菌源から見つけることができる。真菌成長の達成後、当該細胞はBGL6の過剰発現を生じるまたは可能にするために効果的な条件に曝す。
【0137】
BGL6コード配列が誘導プロモーターの制御下にある場合、例えば糖、金属塩または抗生物質などの誘発剤を高レベルBGL6発現を誘導するために有効な濃度で培地に加える。
【0138】
(ii)酵母
また、本発明はBGL6生成のための宿主細胞として酵母の使用も考えられる。加水分解酵素をエンコードするその他いくつかの遺伝子が種々の酵母S.セレヴィシエ株において発現する。これらは、2つのエンドグルカナーゼ(Penttila et al.、1987)、トリコデルマ・リーゼイ由来の2つのセロビオヒドロラーゼ(Penttila et al.、1988)及び1のβ−グルコシダーゼ(Cummings and Fowler、1996)、Aureobasidlium pullulans由来キシラナーゼ(Li and Ljungdahl、1996)、小麦由来のα−アミラーゼ(Rothstein et al.、1987)等をエンコードする配列を含む。さらに、ルーメン細菌(Butyrivibrio fibrisolvens)エンド−[ベータ]−1,4−グルカナーゼ(END1)、白色腐朽菌(Phanerochaete chrysosporium)セロビオヒドロラーゼ(CBH1)、ルミノコッカス(Ruminococcus)flavefaciensセロデキストリナーゼ(CEL1)及びエンドミセス(Endomyces)frbrilizerセロビアーゼ(Bgl1)をエンコードするセルラーゼ遺伝子カセットはS.セレヴィシエ(Van Rensburg et al.、1998)の研究所株中でうまく発現された。
【0139】
C.BGL6−エンコード核酸配列の宿主細胞内への導入
本発明はさらに、外来BGL6−エンコード核酸配列を含むように遺伝子組換えされた細胞及び細胞組成物を提供する。親細胞または細胞株はクローニングベクターまたは発現ベクターを用いて遺伝子組み換え(すなわち、変換、形質転換またはトランスフェクト)できる。ベクターは、上述したように例えば、プラスミド、ウイルス粒子、ファージ等の形態である。
【0140】
種々の方法が発現ベクターをin vitroで細胞内に輸送するために用いることができる。適当なベクターを構築した後、真菌または酵母株を形質転換するために用いる。核酸を細胞内に異種核酸配列を発現するために導入する一般的な方法は当業者に公知である。当該方法は限定されないが、エレクトロポレーション;核マイクロインジェクションまたは1の細胞内への直接マイクロインジェクション;無傷細胞を用いる細菌原形質融合;ポリカチオンの使用、例えば、ポリブレンまたはポリオリニチン;リポソーム、リポフェクトアミンまたはリポフェクション媒介トランスフェクションを用いる膜融合;DNAコートマイクロプロジェクタイルを用いる高速照射;リン酸カルシウムDNA沈殿を用いる培養;DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション;変異ウイルス核酸を用いる感染等が挙げられる。
【0141】
異種核酸構築体(発現ベクター)を糸状菌(例えば、T.リーゼイ)内に導入するための好ましい方法は限定されないが、粒子または遺伝子銃の使用、形質転換プロセス前の糸状菌細胞壁の透過化(例えば、高濃度のアルカリ使用、例えば0.05M〜0.4M CaClまたは酢酸リチウム)、原形質融合またはアグロバクテリウム媒介形質転換が挙げられる。ポリエチレングリコール及びCaClを用いて原形質またはスフェロプラストを処理することにより糸状菌を形質転換するための典型的な方法は、Campbell,E.I.et al.、Curr.Genet.16:53−56、1989及びPenttila,M.et al.、Gene,63:11−22、1988に記載されている。
【0142】
さらに、BGL6−エンコード核酸配列を含む異種核酸構築体はin vitroで転写でき、得られたRNAを公知の方法、例えば注入により宿主細胞内に導入する。
【0143】
bgl6のコード配列を含む異種核酸構築体を導入後、遺伝子組み換え細胞はプロモーターを活性化、形質転換体を選択またはBGL6−エンコード核酸配列の発現を増幅するために適切に変異された従来の栄養培養基中で培養できる。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に以前に用いたものであり、当業者に明らかである。
【0144】
異種核酸構築体が導入された細胞の子孫は通常、異種核酸構築体内に見られるBGL6−エンコード核酸配列を含むと考えられる。
【0145】
本発明はさらに、真菌セルラーゼ組成物の生成に使用する新規で有用な、トリコデルマ・リーゼイなどの糸状菌の形質転換体を含む。本発明は糸状菌の形質転換体を含み、特にbgl6コード配列、bgl6コード配列の修飾型またはbgl6コード配列の欠失を含む真菌の形質転換体を含む。
【0146】
糸状菌の安定な形質転換体は通常、固体培養基上の不規則な輪郭よりもむしろ速い成長速度及び滑らかな環状コロニーの形成により不安定な形質転換体から区別できる。さらに、場合によっては、さらに安定性試験を固体非選択性培地上で形質転換体を成長させ、この培養基から胞子を回収し、及び続いて選択培地上で発芽及び成長するこれらの胞子の割合を測定することにより行うことができる。
【0147】
VII.BGL6核酸コード配列及び/またはタンパク質発現の分析
BGL6−エンコード核酸構築体を用いて形質転換した細胞株によりBGL6発現を評価するために、タンパク質レベル、RNAレベルで分析を行うことができ、特にグルコシダーゼ活性及び/または生成に対する機能的バイオアッセイを使用することにより分析を行うことができる。
【0148】
ここに記載のbgl6核酸及びタンパク質配列の1の典型的な用途において、糸状菌、例えばトリコデルマ・リーゼイの遺伝子組換え株は増加した量のBGL6を生成するように設計できる。そのような遺伝子組換え糸状菌はセルロース分解能が大きく増加したセルラーゼ生成物を生成するのに有用である。1の手段においてこれは、適当な宿主、例えばトリコデルマ・リーゼイなどの糸状菌内にbgl6をコードする配列を導入することにより達成される。
【0149】
従って、本発明は糸状菌またはその他の適当な宿主の細胞内にBGL6をエンコードするDNA配列を含む発現ベクターを導入することにより糸状菌またはその他の適当な宿主内でBGL6を発現するための方法を含む。
【0150】
他の側面において、本発明は糸状菌またはその他の適当な宿主の細胞内でのBGL6発現を修飾するための方法を含む。当該修飾は発現の減少または除去、またはBGL6の変異型の発現を含む。BGL6の変異型は変異アミノ酸配列または変異核酸配列を有することができる。
【0151】
通常、BGL6発現を分析するために用いる分析は、ノーザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、RT−PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)、または適当な(核酸コード配列に基づく)標識プローブを用いるin situハイブリダイゼーション、及び従来のサザンブロッティング及びオートラジオグラフィーが挙げられる。
【0152】
さらに、BGL6の生成及び/または発現はサンプル内で直接測定でき、例えばグルコシダーゼ活性、発現及び/または生成の分析により測定できる。当該分析は例えば、それぞれここに明示的に引用するChen et al.(1978)及び米国特許第6,184,018号(Li et al.;2001)に記載されている。BGL6の単離可溶性及び不溶性基質を加水分解する能力はSuurnakki et al.(2000)及びOrtega et al.(2001)に記載の分析を用いて測定できる。セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼまたはβ−グルコシダーゼ活性を分析するために有用な基質は結晶性セルロース、ろ紙、リン酸膨潤セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セロオリゴ糖、メチルウンベリフェリル・ラクトシド、メチルウンベリフェリル・セロビオシド、オルトニトロフェニル・ラクトシド、パラニトロフェニル・ラクトシド、オルトニトロフェニル・セロビオシド、パラニトロフェニル・セロビオシド、オルトニトロフェニル・グルコシド、パラニトロフェニル・グルコシド、メチルウンベリフェリル・グルコシドが挙げられる。最後の3つはβ−グルコシダーゼの分析に特に有用である。β−グルコシダーゼ分析は当業界に公知である。Cummings及びFowler(1996)を参照されたい。
【0153】
さらに、タンパク質発現は、細胞、組織切片の免疫組織化学的染色または組織培養基の免疫学的分析など免疫学的方法、例えばウエスタンブロットまたはELISAにより評価できる。当該免疫分析はBGL6発現を定性的及び定量的に評価するために用いることができる。当該方法の詳細は当業者に公知であり、当該方法を実施するための多くの試薬が市販されている。
【0154】
BGL6の精製体は種々の免疫分析に用いるために発現タンパク質に特異なモノクローナルまたはポリクローナル抗体を生成するために用いることができる(例えば、Hu et al.、1991を参照)。典型的な分析はELISA、競合イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロット、間接免疫蛍光試験などが挙げられる。通常、市販の抗体及び/またはキットはグルコシダーゼタンパク質発現レベルの定量免疫分析に用いることができる。
【0155】
VIII.組換えBGL6タンパク質の単離及び精製
通常、細胞培養基内で生成したBGL6タンパク質は培養基内に分泌され、例えば細胞培養基から不要な成分を除去することにより精製または単離できる。しかしながら、場合によっては、BGL6タンパク質は細胞溶解物から回収が必要な細胞型で生成できる。その場合、BGL6タンパク質は細胞から精製し、当業者により通常用いられる技術を用いて生成した。例としては限定されないが、アフィニティクロマトグラフィー(Tilbeurgh et al.、1984)、イオン交換クロマトグラフィー法(Goyal et al.、1991;Fliess et al.、1983;Bhikhabhai et al.、1984;Ellouz et al.、1987)、例えば高い分解力を有する物質を用いたイオン交換(Medve et al.、1998)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(Tomaz and Queiroz、1999)及び2相分離(Brumbauer,et al.、1999)が挙げられる。
【0156】
通常、BGL6タンパク質は、特定の結合剤(例えば抗体または受容体)への結合親和性、または選択分子量範囲または等電点範囲を有するなど選択特性を有するタンパク質を分離するために分画する。
【0157】
所定のBGL6タンパク質発現が達成されると、それにより生成したBGL6タンパク質を細胞または細胞培養基から精製する。当該精製に適した典型的な手順は以下を含む:抗体親和性カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはDEAEなどカチオン交換樹脂によるクロマトグラフィー;クロマト分画;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;及び例えばSephadex G−75を用いるゲルろ過。種々のタンパク質精製方法が用いることができ、当該方法は当業者に公知であり、例えばDeutscher,1990;Scopes,1982に記載されている。選択する精製工程は例えば、用いる生成工程の性質及び生成される特定タンパク質に依存する。
【0158】
IX.bgl6及びBGL6の活用
当然のことながら、bgl6ヌクレオチド、BGL6タンパク質及びBGL6タンパク質活性を含む組成物は多種多様な用途で用いることができ、そのいくつかを下記に説明する。
【0159】
様々な量でCBH型、EG型及びBG型セルラーゼを含む新規で改善されたセルラーゼ組成物は高い洗浄能を示し、柔軟剤として作用し、及び/または綿織物の手触りを改善させる(例えば、“ストーンウォッシング”または“バイオポリッシング”)洗剤組成物、木材パルプを等に分解する組成物(例えば、バイオ−エタノール生成)及び/または飼料組成物に用いることができる。各タイプのセルラーゼの単離及びキャラクタリゼーションにより当該組成物の特徴を制御する能力が提供される。
【0160】
1の好ましい手段において、本発明のセルラーゼは洗剤組成物または手触り及び外観を改善するための織物処理に使用できる。
【0161】
本発明のβ−グルコシダーゼは多種多様の用途に用いることができる。例えば、β−グルコシダーゼはワイン製造時にブドウに添加して最終ワイン製品の香りを高めることができる。他の用途において、果物にβ−グルコシダーゼを用いて香りを高めることができる。もしくは、高められたβ−グルコシダーゼを含む単離組換え発酵生成物は食品添加物またはワイン処理に直接用いて風味または香りを高めることができる。
【0162】
セルロース誘導体生成物の加水分解速度はゲノム内に挿入された少なくとも1の他のbgl6遺伝子コピーを有する形質転換体を用いることにより上げることができるので、セルロースまたはヘテログリカンを含む生成物をより速い速度、より大きな範囲で分解できる。紙、綿、セルロース系おむつ等のセルロースから作られた製品はごみ処理においてより効率的に分解できる。従って、当該形質転換体単独または複数形質転換体から得られる発酵生成物は過密ごみ処理場に加える種々のセルロース生物の液化により分解を助ける組成物中に用いることができる。
【0163】
分離糖化及び発酵はバイオマス、例えば伐採残(コーンストーバー)中に存在するセルロースをグルコースに変換し、続いて酵母株がグルコースをエタノールに変換する方法である。同時糖化及び発酵は伐採残(コーンストーバー)中に存在するセルロースをグルコースに変換し、同時に同じ反応器内で酵母株がグルコースをエタノールに変換する方法である。従って、他の好ましい手段において、本発明のグルコシダーゼ型セルラーゼはバイオマスからエタノールへの分解に利用できる。容易に入手可能なセルロース源からのエタノール生成は安定で再生可能な燃料源を提供する。
【0164】
セルロースベース供給原料は農業廃棄物、草及び木材及びその他の低価値バイオマス、例えば都市ゴミ(例えば、再生紙、庭切り(yard clippings)等)からなる。エタノールは任意のこれらセルロース系供給原料の発酵から生成できる。しかしながら、セルロースは、エタノール変換の前にまず糖に変換されなければならない。
【0165】
多種多様の供給原料が本発明のβ−グルコシダーゼと用いることができ、使用する種類の選択は変換が行われる地域に依存する。例えば、アメリカ中西部では麦かん、伐採残(コーンストーバー)及びバガスなどの農業廃棄物が主流であり、一方、カリフォルニアでは稲わらが主流である。しかしながら、当然のことながらいかなる入手可能なセルロース系バイオマスも任意の地域で使用できる。
【0166】
増加した量でβ−グルコシダーゼを含むセルラーゼ組成物はエタノール生成に利用することができる。この方法から得たエタノールはさらにオクタンエンハンサーとして用いることができ、またはガソリンの代わりに直接燃料として用いることができ、燃料源としてのエタノールは石油由来生成物よりもより環境に優しいので有用である。エタノールの使用は大気環境を改善し、局所オゾンレベル及びスモッグを減少させる可能性があることが知られている。さらに、ガソリンの代わりにエタノールを利用することは非再生エネルギー及び石油化学供給の突然移行の影響を緩衝するために戦略的に重要である。
【0167】
エタノールは糖化及び発酵プロセスにより木、葉状植物、都市固体ゴミ及び農業及び林業残留物などのセルロース系バイオマスから生成できる。しかしながら、この方法が直面する1の主な問題は、セロビオースをグルコースに変換する系におけるβ−グルコシダーゼの不足である。セロビースはセロビオヒドロラーゼ及びエンドグルカナーゼの阻害剤として作用し、それによりセルラーゼ系全体の加水分解速度が低下することが知られる。従って、セロビオースを素早くグルコースに変換するために増加した量でβ−グルコシダーゼを使用することにより、エタノール生成が大幅に増加すると考えられる。
【0168】
従って、本発明のβ−グルコシダーゼはセルロースを糖成分に加水分解する際に使用できる。1の実施態様において、β−グルコシダーゼは発酵生物添加前にバイオマスに添加する。第2の実施態様において、β−グルコシダーゼは発酵生物と同時にバイオマスに添加する。任意で、いずれの実施態様もその他のセルラーゼ成分が存在できる。
【0169】
他の実施態様において、セルロース系供給原料を前処理することができる。前処理は高温及び希酸、濃酸または希アルカリ溶液を添加することによる。前処理溶液はヘミセルロース成分を少なくとも部分的に加水分解するのに十分な時間で加え、それから中和する。
【0170】
他の手段において、β−グルコシダーゼが不足した、または含まないセルラーゼ組成物が好ましい。本発明のβ−グルコシダーゼ遺伝子の欠失は洗剤に用いるセルラーゼ組成物の調製に特に有用である。さらに、当該組成物はセロビオース及びその他のセロオリゴ糖の生成に有用である。T.リーゼイ株由来のbgl6遺伝子欠失は特に洗剤及びセロビオースの単離に使用するセルラーゼ組成物の調製に有用である。セルラーゼ酵素は酵素的に衣類を洗浄するために種々の洗剤組成物に用いられている。しかしながら、セルラーゼ酵素の使用は衣類のセルロース繊維を分解し得ることが公知である。分解効果を減少させ得る1の手段は、β−グルコシダーゼを含まない洗剤を生成することである。従って、このタンパク質の欠失はセロビース蓄積によりその他の成分を阻害するようにセルラーゼ系に影響すると考えられる。本発明の変異微生物は、bgl6遺伝子が欠失されて残りのCBH及びEG成分が残り、分解効果がなく改善された洗浄及び柔軟利点を有する組成物を生じるので、特に当該組成物の調製に適している。
【0171】
本発明の洗剤組成物はセルラーゼ組成物に加えて(β−グルコシダーゼ含量に関係なく、すなわち、β−グルコシダーゼを含まない、実質的に含まないまたは増加した量のβ−グルコシダーゼ)、界面活性剤、例えば陰イオン性、非イオン性及び両性イオン性界面活性剤、ヒドロラーゼ、ビルディング剤、漂白剤、青味剤及び蛍光剤、ケーキング防止剤、可溶化剤、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。これら全ての成分は洗剤業界に公知である。上述のセルラーゼ組成物は、希釈液、顆粒、エマルジョン、ゲル、ペースト等の洗剤組成物に加えることができる。当該形態は当業者に公知である。固形洗剤組成物を用いる場合、セルラーゼ組成物は顆粒として処方するのが好ましい。好ましくは、顆粒はセルラーゼ保護剤を含むように処方される。さらに詳細な議論については、ここに引用する米国特許第6,162,782号、表題“Detergent compositions containing cellulase compositions deficient in CBH I type components(CBH I型成分が欠損したセルラーゼ組成物を含有する洗浄剤組成物)”を参照されたい。
【0172】
さらに他の実施態様において、洗剤組成物は増加したレベルでβ−グルコシダーゼまたは変異β−グルコシダーゼを含むこともできる。この点、適当な効果を得るには洗剤組成物中で使用が望まれる生成物の種類にまさに依存する。
【0173】
好ましくは、セルラーゼ組成物は洗剤組成物全体に関して約0.00005重量%〜約5重量%で用いる。より好ましくは、セルラーゼ組成物は洗剤組成物全体に関して約0.0002重量%〜約2重量%を用いる。
【0174】
bgl6遺伝子欠失はセルラーゼ系においてセロビオースを蓄積し、そこから精製し得る。この点、本発明により微生物からセロビオースを容易かつ効果的に単離する可能性が示される。
【0175】
セルロースに結合できるbgl6核酸配列の一部は細菌性キメラ表面タンパク質の生成に用いることができ、セルロースフィルターまたはLehtio et al.、2001に記載のその他の繊維性固体担体上へ細胞全体を固定化することが可能である。
【0176】
さらに、bgl6核酸配列は関連核酸配列の同定及びキャラクタリゼーションに使用できる。関連遺伝子または遺伝子産物の機能の測定(予測または確認)に有用な多数の技術は限定されないが、以下を含む:(A)DNA/RNA分析、例えば(1)過剰発現、異所性発現及びその他の種における発現;(2)遺伝子ノックアウト(逆遺伝学、標的ノックアウト、ウイルスによる遺伝子抑制(VIGS、Baulcombe、1999を参照);(3)遺伝子、特にフランキング調節領域のメチル化状態の分析;及び(4)in situハイブリダイゼーション;(B)遺伝子産物分析、例えば(1)組換えタンパク質発現;(2)抗血清生成、(3)免疫学的局在決定;(4)触媒的またはその他の活性の生化学分析;(5)リン酸化反応状態;及び(6)酵母2ハイブリッド分析によるその他のタンパク質との相互作用;(C)経路分析、例えば、過剰発現表現型に基づいた、または関連遺伝子との配列相同性による、特定生化学またはシグナリング経路内の遺伝子または遺伝子産物のプレイシング;及び(D)特定代謝またはシグナリング経路において単離遺伝子及びその産物の関与を測定または確認するために実施でき、遺伝子機能の測定に役立つ、その他の分析。
【0177】
エンドグルカナーゼ及びβ−グルコシダーゼは、糖転移反応によりセロオリゴ糖及びグルコースからのソホロースなど二糖類の生成に関与し得る。ソホロースはセルラーゼ遺伝子発現に非常に有効な誘導因子であることが知られる(Ilmen,M.et al.、1997、Appl.Environ.Microbiol.63:1298−1306及びそこに記載の文献)。このように、EG及びBGLはセルラーゼ遺伝子発現の誘導プロセスにおいて重要な役割を果たし得る。真菌株内での特定EGまたはBGLの過剰発現により当該株の全体的なセルラーゼ生産性はより高いものとなり得る。
【0178】
A.公知配列に対する相同性
関連BGL6−エンコード核酸配列の機能は特定機能を有する公知遺伝子に対する相同性により測定できる。例えば、同定核酸分子のコード配列と公の核酸配列データベースとの比較は公知遺伝子に対する相同性により機能を確認するために用い、または同定核酸配列の伸長により機能を確認するために用いる。
【0179】
“%相同性”の語はここで“%同一性”の語と交換可能に用い、配列配置プログラムを用いて配置した場合の、BGL6をエンコードする核酸配列またはBGL6アミノ酸配列間の核酸またはアミノ酸配列同一性レベルをいう。
【0180】
例えば、ここで用いる80%相同性は規定アルゴリズムにより測定した80%配列同一性と同じこと意味し、従って所定配列の相同体は所定配列長さにわたって80%以上の配列同一性を有する。配列同一性レベルの例としては、限定されないが、所定配列に対して80、85、90、95、98%またはそれ以上の配列同一性が挙げられ、例えばここに記載のbgl6のコード配列である。
【0181】
2つの配列間の同一性を測定するために使用できるコンピュータープログラムの例は、限定されないが、BLASTプログラム一式、例えばBLASTN、BLASTX及びTBLASTX、BLASTP及びTBLASTNが挙げられ、インターネット上で一般に利用可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)。また、Altschul,et al.、1990及びAltschul,et al.、1997を参照されたい。
【0182】
配列サーチは所定の核酸配列をジェンバンク(GenBank)DNA配列及びその他の公のデータベース中の核酸配列と比較して評価する場合、通常、BLASTNプログラムを用いて行う。BLASTXプログラムはジェンバンクタンパク質配列及びその他の公のデータベース中のアミノ酸配列に対する全てのリーディングフレームにおいて翻訳された核酸配列のサーチに好ましい。BLASTN及びBLASTX共に、オープンギャップペナルティが11.0及び伸長ギャップペナルティが1.0の初期設定パラメーターを用いて行い、BLOSUM−62マトリックスを利用する(例えば、Altschul,et al.、1997を参照)。
【0183】
2つ以上の配列間の“%同一性”を測定するための選択配列の好ましい配置は例えば、MacVectorバージョン6.5のCLUSTAL−Wプログラムで動作し、オープンギャップペナルティ10.0、伸長ギャップペナルティ0.1及びBLOSUM30類似マトリックスなどの初期パラメーターを用いて操作する。
【0184】
1の典型的な手段において、bgl6をエンコードする核酸の配列伸長は、Sambrook et al.、上述に記載の従来のプライマー伸長手順を用いて行いbgl6前駆体及びcDNA内に逆転写されなかったmRNAの処理中間体を検出でき、及び/または完全長タンパク質をエンコードするORFを同定できる。
【0185】
さらに他の実施態様において、本発明はプローブとして用いるためのbgl6核酸配列のヌクレオチド配列全体または一部を含む。当該プローブは関連生物由来の相同性核酸配列を同定及びクローンするために用いることができる。
【0186】
選択プローブを用いたcDNAまたはゲノムライブラリーのスクリーニングはSambrook et al.、(1989)に記載される標準手順を用いて実施できる。中ストリンジェンシー及び高ストリンジェンシーなどのハイブリダイゼーション条件はSambrook et al.上述に開示されている。
【0187】
また、プローブまたはその一部は密接に関連したbgl6配列の同定のための配列プールを作るためにPCR技術において用いることができる。bgl6配列をプローブとして用いる場合、BGL6エンコード配列の特定部分、例えば高度に保存されたコード配列部分が用いることができる。
【0188】
例えば、bgl6ヌクレオチド配列はcDNAライブラリーのためのハイブリダイゼーションプローブとして用い、遺伝子、例えば他の真菌、細菌または植物種由来のBGL6の天然変異体をエンコードする遺伝子を単離でき、当該遺伝子は図1(配列番号1)に開示のbgl6ヌクレオチド配列に所望のレベルで配列同一性を有する。典型的なプローブは約20〜約50塩基長を有する。
【0189】
B.2ハイブリッド分析
本発明により同定されるタンパク質は酵母2ハイブリッド系に用いて、推定シグナル経路タンパク質であるタンパク質結合したタンパク質を“補足”することができる。酵母2ハイブリッド系はFields及びSong、Nature 340:245−246(1989)に記載されている。要するに、2ハイブリッド系において、DNA結合ドメインbgl6の融合(例えば、GAL4−bgl6融合)は酵母細胞内に構築及びトランスフェクトされる。bgl6遺伝子全体またはbgl6遺伝子の小領域が使用できる。DNA活性ドメインに融合される潜在的な結合パートナーのライブラリーを含む第2の構築体をコトランスフェクトする。BGL6タンパク質に結合するタンパク質を含む酵母同時形質転換体は、例えば、使用するベクターに応じて、β−ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼ生成(スクリーン)必須栄養素が不足したプレート上での生存(選択)により同定する。
【0190】
C.マイクロアレイ分析
さらに、マイクロアレイ分析は発現プロファイリングまたは転写プロファイリングとして公知であり、所定DNA配列の存在または発現、または種々の遺伝子の発現変化を同時に評価するために用いることができる。1の手段において、一連の大きなDNA配列(プローブ)、通常、一連の広範な発現配列タグ、cDNA、cDNA断片または配列特異オリゴヌクレオチドはスライドガラスまたはナイロン膜などの固体担体上に配置する。プローブに対するハイブリダイゼーション用標識ターゲットは制御及び導入組織からmRNAを単離し、次に各mRNAプールを直接またはcDNAまたはcRNA中間体により区別するマーカー、通常は蛍光染料を用いて標識することにより生成する。マイクロアレイは複合プローブを用いてハイブリダイズし、及びアレイ上の各位置に関係する関連ハイブリダイゼーションシグナル強度は各マーカー染料について定量できる。制御及び導入状態間の発現の違いは2つのマーカー染料からのシグナル比として測定できる(Baldwin,D et al.、1999を参照)。
【0191】
bgl6を得た生物源のマイクロアレイ分析を行い、bgl6過剰発現の結果として協調的に調節されたその他の遺伝子を同定することにより遺伝子機能の理解を助けることができる。協調的に調節された遺伝子の同定は特定経路においてbgl6遺伝子を位置づけるのに役立つ。もしくは、当該分析はマイクロアレイ分析を用いて同じ経路に関連したその他の遺伝子を同定するために用いることができる。
【0192】
全ての文献、特許及び特許出願はここに明示的にその全体を引用するものとする。
【0193】
本発明は具体的な方法及び実施態様を参照して説明したが、本発明を逸脱することなく様々な修正及び変更が可能であることは当然のことである。
【0194】
実施例1
1の典型的な手段において、プローブとして用いるcDNA断片は、セルラーゼ生成を誘導することが知られる条件下で成長したT.リーゼイ株の菌糸体由来の全RNAを抽出し、そこからポリアデニル化(ポリA)断片を得ることにより、単離する。ポリA RNAはcDNAプールを生成するために用い、次にここで提供するbgl6核酸配列に基づいた特異プライマーを用いて増幅される。
【0195】
全RNAは当業界に公知の方法を用いて菌糸体から単離し、例えば、ここに明示的に引用する、Timberlake et al.、1981;Maniatis,et al.、1989;Ausubel,et al.、1993及びSambrook et al.、1989に記載されている。単離すると、セルラーゼ発現を確認するためにノーザンブロットを行い、セルラーゼ発現及び対応するRNA単離のための最適誘導時間を選択する。
【0196】
メッセンジャーRNA(mRNA)は、3’末端にポリ(A)テールを有し、当業界に公知の方法を用いて全RNAから精製できる。
【0197】
T.リーゼイRNAは当業界に公知の方法を用いてRT−PCRのテンプレートとして使用する(Loftus,J.et al.、Science,249:915−918、1990)。この手順の間、mRNAは最初のストランドcDNAを生成するために逆転写される。その後、cDNAは、配列番号1または配列番号3に従って設計された特異オリゴヌクレオチドプライマーを用いてbgl6 cDNA配列のPCR増幅のためのテンプレートとして働く。
【表1】

【0198】

【0199】

【0200】

【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】トリコデルマ・リーゼイbgl6の1本鎖核酸配列(配列番号1)の記述であり、非コード配列を下線で示す。
【図2】図1のヌクレオチド配列に基づいた予測アミノ酸配列(配列番号2)を示し、最初の開始コドンを利用する。
【図3】図1のヌクレオチド配列に基づいた予測アミノ酸配列(配列番号4)を示し、2番目の開始コドンを利用する。
【図4】コード配列bgl6であり、2つの代替(alternate)開始コドンを下線で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真菌源由来の単離ポリヌクレオチドであって、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素をエンコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項2】
以下からなる群より選択される単離ポリヌクレオチド:
(a)図2(配列番号2)に表すアミノ酸配列に少なくとも85%の配列同一性を有するBGL6ポリペプチドをエンコードする配列をエンコードする、または相補的な核酸配列;
(b)図2(配列番号2)に表すアミノ酸配列に少なくとも90%の配列同一性を有するBGL6ポリペプチドをエンコードする配列をエンコードする、または相補的な核酸配列;
(c)図2に表すアミノ酸配列に少なくとも95%の配列同一性を有するBGL6ポリペプチドをエンコードする配列をエンコードする、または相補的な核酸配列;
(d)図2に表すアミノ酸配列を有するBGL6ポリペプチドをエンコードする配列をエンコードする、または相補的な核酸配列;
(e)配列番号2として表すアミノ酸配列に少なくとも95%の配列同一性を有するBGL6ポリペプチドをエンコードする配列をエンコードする、または相補的な核酸配列;
(f)配列番号2として表すアミノ酸配列を有するBGL6ポリペプチドをエンコードする配列をエンコードする、または相補的な核酸配列;
(g)配列番号3として表す核酸配列またはその相補体;及び
(h)高ストリンジェンシー条件下で、配列番号3として表す配列にハイブリダイズする核酸配列またはその相補体または断片であって、前記単離ポリヌクレオチドがβ−グルコシダーゼの生物活性を有するポリペプチドをエンコードする、核酸配列またはその相補体または断片。
【請求項3】
%同一性が、MacVectorバージョン6.5のCLUSTAL−Wプログラムを用いて、オープンギャップペナルティが10.0、伸長ギャップペナルティが0.1及びBLOSUM30類似マトリックスを含む初期設定パラメーターで動作して、計算される、請求項2の単離ポリヌクレオチド。
【請求項4】
ハイブリダイゼーションを、42℃、50%ホルムアミド、6X SSC、5X Denhardt’s溶液、0.5% SDS及び100μg/ml変性キャリアDNA中で行い、続いて室温で2X SSPE及び0.5% SDS中で2回洗浄し、及びさらに0.1 SSPE及び0.5% SDS、42℃で2回洗浄した、請求項2の単離ポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドがRNA分子である、請求項2の単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
β−グルコシダーゼ活性を有する酵素をエンコードする単離ポリヌクレオチドであって、当該酵素がトリコデルマ源由来である、単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
酵素がトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来である、請求項6の単離ポリヌクレオチド。
【請求項8】
ポリヌクレオチド配列を含む発現構築体であって、当該ポリヌクレオチド配列が(i)図2(配列番号2)に表すアミノ酸配列に少なくとも85%配列同一性を有し、または(ii)中から高ストリンジェンシー条件下で、図2に開示するヌクレオチド配列由来のプローブにハイブリダイズでき、または(iii)図2(配列番号2)に表すアミノ酸配列に少なくとも85%配列同一性を有するヌクレオチド配列に相補的である、発現構築体。
【請求項9】
請求項8の発現構築体を含むベクター。
【請求項10】
請求項2の単離ポリヌクレオチドであって、ベクターを用いて形質転換される宿主細胞により認識される制御配列に動作可能に連結した単離ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項11】
請求項9のベクターを用いて形質転換した宿主細胞。
【請求項12】
請求項10のベクターを用いて形質転換した宿主細胞。
【請求項13】
宿主細胞が原核細胞である、請求項12の宿主細胞。
【請求項14】
宿主細胞が真核細胞である、請求項12の宿主細胞。
【請求項15】
請求項2のポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞。
【請求項16】
組換え宿主細胞が原核細胞である、請求項15の組換え宿主細胞。
【請求項17】
組換え宿主細胞が真核細胞である、請求項15の組換え宿主細胞。
【請求項18】
以下からなる群より選択される配列を含む、β−グルコシダーゼ生物活性を有する実質的に精製されたBGL6ポリヌクレオチド:
(a)図2(配列番号2)に表すアミノ酸配列に少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(b)図2(配列番号2)に表すアミノ酸配列に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(c)図2に表すアミノ酸配列に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(d)図2に表すアミノ酸配列;
(e)配列番号2として表すアミノ酸配列に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(f)配列番号2として表すアミノ酸配列;
(g)配列番号2として表すアミノ酸配列の実質的に精製された生物学的に活性な断片。
【請求項19】
β−グルコシダーゼ活性を有する酵素の生成方法であって、
(a)請求項2に定義するポリヌクレオチドを含む発現ベクターを用いて宿主細胞を安定に形質転換する工程;
(b)前記宿主細胞がβ−グルコシダーゼを生成するために適した条件下で前記形質転換宿主細胞を培養する工程;及び
(c)前記β−グルコシダーゼを回収する工程、
を含む方法。
【請求項20】
宿主細胞が糸状菌または酵母細胞である、請求項19の方法。
【請求項21】
請求項19の方法により調製されたβ−グルコシダーゼ活性を有する精製酵素。
【請求項22】
bgl6遺伝子中に欠失または挿入またはその他の変異を含み、当該遺伝子が不活性化され、BGL6ポリペプチド生成が阻害された、組換え宿主細胞。
【請求項23】
配列番号2に表した配列を有するBGL6ポリペプチドをエンコードするメッセンジャーRNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、β−グルコシダーゼ生成宿主細胞に曝した場合、前記宿主細胞によるβ−グルコシダーゼ生成を減少または阻害する前記オリゴヌクレオチド。
【請求項24】
宿主細胞が糸状菌である、請求項23のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
洗剤組成物であって、以下からなる群より選択されるポリペプチドを含む前記組成物:
(a)図2(配列番号2)に表すアミノ酸配列に少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(b)図2(配列番号2)に表すアミノ酸配列に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(c)図2に表すアミノ酸配列に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(d)図2に表すアミノ酸配列;
(e)配列番号2として表すアミノ酸配列に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(f)配列番号2として表すアミノ酸配列;
(g)配列番号2として表すアミノ酸配列の実質的に精製された生物学的に活性な断片。
【請求項26】
酵母生地または当該生地から作った焼き食品の特性の改善方法であって、少なくとも以下の工程からなる方法:
(a)少なくとも約10ppmの請求項18に従うBGL6を生地材料と混合して生地混合物を形成する工程、及び
(b)前記生地混合物を焼いて焼き食品を形成する工程。
【請求項27】
酵母パン生地または酵母ロール生地または酵母パンまたは酵母ロール特性の改善方法であって、少なくとも以下の工程からなる方法:
(a)少なくとも約10ppmの請求項18に従うBGL6をパンまたはロール生地材料と混合して生地混合物を形成する工程;
(b)生地混合物を成形または型詰め(panning)する工程;
(c)生地混合物を補強加工(proofing)する工程;及び
(d)当該生地混合物を焼いてパンまたはロールを形成する工程。
【請求項28】
β−グルコシダーゼ活性を有する異種ポリペプチドをアスペルギルス(Aspergillus)種中で発現する方法であって、
(a)異種β−グルコシダーゼをエンコードするポリヌクレオチドに結合したアスペルギルスβ−グルコシダーゼシグナル配列をエンコードし、その結果キメラポリペプチドをエンコードする、ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを用いて宿主アスペルギルスを提供する工程;
(b)前記キメラポリペプチドを生成するために前記アスペルギルスに適した条件下で前記宿主アスペルギルスを培養し、前記キメラポリペプチドが生成される工程、
を含む、方法。
【請求項29】
エタノールの生成方法であって、
(a)バイオマス組成物とβ−グルコシダーゼ4を含む酵素組成物を接触させて糖溶液を生じる工程;
(b)糖溶液に発酵微生物を加える工程;及び
(c)エタノール生成に適した条件下で発酵微生物を培養する工程、
を含み、バイオマス組成物は任意で前処理される、方法。
【請求項30】
工程(a)がさらに少なくとも1のエンドグルカナーゼの添加を含む、請求項29の方法。
【請求項31】
工程(a)がさらに少なくとも1のセロビオヒドロラーゼの添加を含む、請求項29の方法。
【請求項32】
工程(a)がさらに少なくとも1のセロビオヒドロラーゼの添加を含む、請求項30の方法。
【請求項33】
前処理が希酸を用いる、請求項29の方法。
【請求項34】
エタノールの生成方法であって、
(a)バイオマス組成物とβ−グルコシダーゼ及び発酵微生物を含む酵素組成物を接触させる工程;及び
(b)エタノール生成に適した条件下で発酵微生物を培養する工程、
を含み、バイオマス組成物は任意で前処理される、方法。
【請求項35】
工程(a)がさらに少なくとも1のエンドグルカナーゼの添加を含む、請求項34の方法。
【請求項36】
工程(a)がさらに少なくとも1のセロビオヒドロラーゼの添加を含む、請求項34の方法。
【請求項37】
工程(a)がさらに少なくとも1のセロビオヒドロラーゼの添加を含む、請求項35の方法。
【請求項38】
前処理が希酸を用いる、請求項34の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−505282(P2006−505282A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551945(P2004−551945)
【出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/035672
【国際公開番号】WO2004/043980
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505088721)ジェネンコー・インターナショナル・インク (7)
【Fターム(参考)】