説明

BRCA1mRNA発現レベルによる、ネオアジュバント化学療法で治療されている乳癌患者の生存期間の予測

本発明は、BRCA1の発現レベルを基に乳癌に罹った患者の臨床転帰を予測する方法であって、BRCA1発現レベルが低いことが良い予後を示すものである方法に関する。さらに、本発明は、BRCA1の発現レベルを基に、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法に対する乳癌に罹った患者の反応を予測する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断の分野に関し、特に、個別化ネオアジュバント化学療法を選択し、乳癌患者からの試料におけるBRCA1遺伝子の発現レベルを基に該患者の生存期間を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に見て、乳癌は2番目に多い種類の癌であり(10.4%;肺癌に次ぐ)、5番目に多い癌死の原因である(肺癌、胃癌、肝癌および結腸癌に次ぐ)。世界中の女性の中では、乳癌は最も多い癌死の原因である。2005年には、世界中で502,000人が乳癌で死亡している(癌死の7%;全ての死のほぼ1%)。1970年代以来症例数は世界中で著しく増加しており、一部では、西洋諸国における現代的なライフスタイルによる現象だとされている。北アメリカ女性の乳癌の発生率が世界で最も高い。
【0003】
胸部は男性も女性も同じ組織で構成されているため、男性でも乳癌は発生する。男性の乳癌発生率は女性の約100分の1であるが、男性の乳癌患者の統計的な生存率は女性と同じだと考えられている。
【0004】
乳癌をTNMシステムに従って病期分類する。予後は病期分類の結果と密接に関連しているが、病期分類は、臨床試験および臨床診療の両方において、患者を治療に割り当てるためにも用いられている。病期分類についての情報は以下の通りである。
−TX:原発性腫瘍が判定不能。T0:腫瘍の兆候なし。Tis:上皮内癌、浸潤無し T1:腫瘍が2cm以下 T2:腫瘍が2cmより大きく5cm以下 T3:腫瘍が5cmより大きい T4:腫瘍のサイズは問わず胸壁もしくは皮膚内に増殖しているもの、または炎症性乳癌
−NX:隣接リンパ節が判定不能。N0:癌が所属リンパ節には広がっていない。N1:癌が1〜3個の腋窩リンパ節または1個の内胸リンパ節に広がっている N2:癌が4〜9個の腋窩リンパ節または複数の内胸リンパ節に広がっている N3:以下の内1つが当てはまる:
癌が10個以上の腋窩リンパ節に広がっている、または癌が鎖骨下のリンパ節に広がっている、または癌が鎖骨上のリンパ節に広がっている、または癌が腋窩リンパ節に転移し内胸リンパ節が肥大している、または癌が4つ以上の腋窩リンパ節に転移し、センチネルリンパ節生検を行なうと内胸リンパ節に微量の癌が認められる。
−MX:遠隔ヘの広がり(転移)の存在が判定不能。M0:遠隔ヘの広がり無し。M1:遠隔器官(鎖骨上リンパ節を除く)への広がりが発生。
【0005】
腫瘍が局部的の場合の乳癌治療の柱は手術であるが、(タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬を用いる)アジュバントホルモン療法、化学療法、および/または放射線療法を行なう場合もある。現在、手術後の治療推奨(アジュバント療法)は1つのパターンに従っているが、2年毎にスイスのセントガレンで開かれる世界会議で世界中での多施設治験の実結果について話し合われており、このパターンが変更されることもある。
【0006】
一方、最終的治療の前に施される補助的療法であるネオアジュバント化学療法は、現代の集学的癌治療において欠くことのできない要素である。ネオアジュバント療法または導入療法が治療転帰に最も寄与しているわけではないが、それらによって結果が実質的によくなることもある。例えば、ネオアジュバント療法によって大きな乳癌の患者が乳房温存手術を受けることが可能になる。局所進行喉頭癌患者は発声機能を持ち続けることができる。直腸癌患者の多くは、この手法を受けた後、永久的結腸瘻造設を回避することができる。さらに、ある特定の癌においては、ネオアジュバント療法が長期生存をさらに改善することもある。Mouret-Reynier et al., Clin Breast Cancer. 2004 Oct;5 (4):303-7(非特許文献1)では、I〜III期の原発性で手術可能な乳癌の女性における、ネオアジュバント化学療法としてのFECの効能が研究され、初期の手術可能な乳癌患者においてFECが有効で忍容性が良好であると結論づけられている。
【0007】
過去30年間、臨床腫瘍医は癌患者の転帰を最適化することに集中してきたが、ようやく最近、利用可能な新しい技術によって、異なるグループの癌患者における所定の療法の効果を予測してそれぞれに適合した化学療法にすることを目的とした、多形、遺伝子発現レベルおよび遺伝子突然変異の研究が可能になりつつある。代表的な例としては、TS mRNA発現と抗葉酸剤による反応および生存との関係(欧州特許第1381691号公報(特許文献1)参照)、βチューブリンIII mRNAレベルとチューブリン相互作用薬に対する反応との関係、PTENメチル化と対CPT−11耐性との関係、およびSTAT3過剰発現と対EGF相互作用薬耐性との関係が挙げられる。オンコタイプDX(Oncotype DX)のようなPCR試験またはマンマプリント(MammaPrint)のようなマイクロアレイ試験では、遺伝子発現を基に乳癌の再発リスクを予測することができる。2007年2月、マンマプリント試験は食品医薬品局から公式承認を得た初の乳癌予測法となった。これは、初期の乳癌の女性が5年または10年以内に再発するか否かを予測するのに役立つ新しい遺伝子試験であり、どれだけ積極的に初期の腫瘍を治療するかに影響を及ぼすこともある。
【0008】
乳癌1(BRCA1)はDNA修復においてきわめて重要な役割を果たしており、散発性および遺伝性乳癌の両方でBRCA1 mRNA発現の減少が確認されている(Kennedy RD, et al., (2002) Lancet, 360, 1007-1014(非特許文献2))。これらの患者は、DNA損傷をベースとした化学療法には反応し得るが微小管阻害薬には反応しない。加えて、DNA損傷をベースとした化学療法によって与えられる生存優位性は、BRCA1変異保有者のほうが変異非保有者に比べると大きい。また、BRCA1 mRNAレベルの低い卵巣癌患者は、BRCA1 mRNAレベルが高い患者に比べると、白金ベースの化学療法後の生存期間が改善されている(Quinn et al., Clin Cancer Res. 2007 Dec 15;13(24):7413-20(非特許文献3))。
【0009】
BRCA1は転写と共役したヌクレオチド除去修復(TC−NER)に関与しており、BRCA1の発現調節がTC−NERの調節につながり、それが放射線および化学療法抵抗性につながる。BRCA1発現のアップレギュレーションがSKOV−3ヒト卵巣癌細胞系におけるシスプラチン耐性の増加につながり(Husain A, et al., Cancer Res. 1998 Mar 15;58(6):1120-3(非特許文献4))、BRCA1陰性HCC1937ヒト乳癌細胞系においてBRCA1が回復すると放射線抵抗性が回復した。BRCA1は、相同組換え修復(HRR)、およびDNA損傷に応答した非相同末端結合にも関与している。さらに、BRCA1はBRCA1結合性ゲノムサーベイランス複合体と呼ばれている大きなDNA修復複合体の構成要素であるが、この複合体には多数のミスマッチ修復タンパク質が含まれており、BRCA1がミスマッチ修復において役割を果たしている可能性があることを示している。BRCA1およびβ−チューブリンが紡錘体の微小管および中心体に共局在していることから、BRCA1は紡錘体形成の調節因子である可能性もある。最後に、BRCA1発現の増加は、シスプラチン誘発性DNA損傷によって活性化されるc−Jun N末端キナーゼ経路を介するアポトーシスと関連付けられており、この経路を阻害すると細胞系におけるシスプラチン感受性が増加した。リアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応(RT−QPCR)によって測定された、乳癌細胞系におけるBRCA1 mRNA発現の減少によって、シスプラチンおよびエトポシドに対する感受性が増加したが、微小管干渉剤であるパクリタキセルおよびビンクリスチンへの耐性が増加した(Lafarge S, et al., (2001) Oncogene, 20, 6597-6606(非特許文献5))。最近では、野生型BRCA1をBRCA1陰性HCC1937乳癌細胞系に再構成した結果、シスプラチン耐性が20倍増加した一方で、抗微小管薬(パクリタキセルおよびビノレルビン)感受性が1000〜10,000倍増加した。
【0010】
BRCA1を条件的に破壊したマウスモデルでは、ドキソルビシンおよびガンマ線照射に対する感受性は高かったがタモキシフェンには耐性を示し、BRCA1発現と関連した特異な化学感受性についてのさらなる証拠となった。BRCA1発現を、散発性乳癌の女性において半定量的PCRで調べたところ、BRCA1 mRNAレベルが低い(最低四分位(bottom quartile))ことは遠隔転移の頻度が高いことと関連していた(Seery LT, et al., (1999) Int. J. Cancer (Pred. Oncol.), 84, 258-262(非特許文献6))。
【0011】
細胞系およびマウスモデルのデータは豊富にあるにもかかわらず、臨床状況における、BRCA1およびBRCA2 mRNA発現と化学療法への反応との相関関係について調べた研究は小さなものが1つあるだけである(Egawa C., (2001) Int. J. Cancer (Pred. Oncol.), 95, 255-259(非特許文献7))。局所進行性または転移性乳癌をドセタキセル治療している25人の女性において、BRCA1についてもわずかな違いは観察されたが、非応答者よりも応答者において有意に低かったのはBRCA2 mRNAレベルのみであった。
【0012】
Martin-Richard et al., Oncology, 2004; 66: 388-94(非特許文献8)には、乳癌におけるアントラサイクリンによるネオアジュバント化学療法に対する臨床反応を予測する際のトポイソメラーゼIIα(トポII)の有用性、および考えられる化学療法後のトポIIの変化が記載されている。治療前の腫瘍の31%でトポIIが過剰発現し、この過剰発現が臨床反応と有意に関連していたという結果が示されている。Kandioler-Eckersberger D. et al., Clin Cancer Res. 2000; 6:50-6(非特許文献9)には、FEC(フルオロウラシル、エピルビシンおよびシクロホスファミド)の細胞傷害効果を予測するためのp53の有用性、および進行性乳癌患者における微小管安定化(パクリタキセル)化学治療計画が記載されている。FECの組合せへの反応は乳癌患者における正常p53および腫瘍細胞アポトーシスと直接関連していた、という結果が示されている。Knoop J Clin Oncol., 2005; 23:7483-90(非特許文献10)には、TOP2Aが増幅している患者では、CEF(シクロホスファミド、エピルビシンおよびフルオロウラシル)化学療法とCMF(シクロホスファミド、メトトレキサートおよびフルオロウラシル)化学療法とで比較しながら治療した場合、無再発生存期間および全生存期間がそれぞれ増加しており、TOP2Aが欠失している患者では危険率はほぼ等しかった、ということが記載されている。
【0013】
本発明の目的は、特に乳癌患者について、最適な治療法選択に使用するための有用な臨床ツールとなり得る、化学療法、特にネオアジュバント療法に対する反応の予測方法を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第1381691号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Mouret-Reynier et al., Clin Breast Cancer. 2004 Oct;5 (4):303-7
【非特許文献2】Kennedy RD, et al., (2002) Lancet, 360, 1007-1014
【非特許文献3】Quinn et al., Clin Cancer Res. 2007 Dec 15;13(24):7413-20
【非特許文献4】Husain A, et al., Cancer Res. 1998 Mar 15;58(6):1120-3
【非特許文献5】Lafarge S, et al., (2001) Oncogene, 20, 6597-6606
【非特許文献6】Seery LT, et al., (1999) Int. J. Cancer (Pred. Oncol.), 84, 258-262
【非特許文献7】Egawa C., (2001) Int. J. Cancer (Pred. Oncol.), 95, 255-259
【非特許文献8】Martin-Richard et al., Oncology, 2004; 66: 388-94
【非特許文献9】Kandioler-Eckersberger D. et al., Clin Cancer Res. 2000; 6:50-6
【非特許文献10】Knoop J Clin Oncol., 2005; 23:7483-90
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、乳癌における、特異な化学感受性の予測およびネオアジュバント化学療法の適合化に使用するためのツールを提供する。
【0017】
本発明者らは、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法によりBRCA1の発現レベルが低い乳癌に罹った患者の生存期間が改善されるという、驚くべき知見を得た。
【0018】
したがって、第1の態様において、本発明は、乳癌に罹った患者からの試料におけるBRCA1遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなる、該患者用の個別化ネオアジュバント療法を選択する方法であって、BRCA1遺伝子の発現レベルが基準値に比べて低い場合に、該患者が代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法のための良い候補である方法に関する。
【0019】
第2の態様において、本発明は、乳癌に罹った患者からの試料におけるBRCA1遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなる、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法への前記患者の臨床反応を決定する方法であって、BRCA1遺伝子の発現レベルが基準値に比べて低い場合に、それが該療法への該患者の臨床反応が良好であることを示す方法に関する。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、乳癌に罹った患者からの試料におけるBRCA1遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなる、該患者の、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法へ反応する素因を評価する方法であって、BRCA1遺伝子の発現レベルが低い場合に、それが、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法に反応する該患者の好ましい素因を示す方法に関する。
【0021】
別の態様において、本発明は、BRCA1遺伝子の発現レベルが低い乳癌に罹った患者における乳癌治療のためのネオアジュバント療法としての、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せに関する。
【0022】
別の態様において、本発明は、乳癌に罹った患者を分類する方法であって、
i)BRCA1遺伝子の発現レベル;および
ii)プロゲステロン受容体発現;
を決定することと、
iii)工程i)およびii)の結果に従って患者を以下のように定義される4つの群:
−BRCA1遺伝子の発現レベルが低く、プロゲステロン受容体発現が陽性;
−BRCA1の発現レベルが低く、プロゲステロン受容体発現が陰性;
−BRCA1遺伝子の発現レベルが高く、プロゲステロン受容体発現が陽性;および
−BRCA1の発現レベルが高く、プロゲステロン受容体発現が陰性;
に分類すること
とを含んでなる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、BRCA1についての無病生存期間(DFS)を三分位(terciles)で表したカプランマイヤー生存曲線を示す。期間は月で表す。プロットにおいて、小さな垂直のチェックマークはロスを示し、ここで患者データが打ち切りになっている。「打ち切り」という用語は、最終転帰を観察する前のサンプルのロスを示す。
【図2】図2は、BRCA1についての生存期間中央値を三分位で表したカプランマイヤー生存曲線を示す。期間は月で表す。プロットにおいて、小さな垂直のチェックマークはロスを示し、ここで患者データが打ち切りになっている。「打ち切り」という用語は、最終転帰を観察する前のサンプルのロスを示す。
【図3】図3は、免疫組織化学で測定したBRCA1タンパク質発現(値0、1、2および3)と、定量PCRにより、FECネオアジュバント療法で治療されている41人の乳癌患者で測定したBRCA1 mRNA発現との相関関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法で治療されている乳癌に罹った患者の臨床反応はBRCA1の発現レベルと密接な相関関係がある、という驚くべき知見を得た。
【0025】
これにより医師は、リスクと利益との患者にとって適当な妥協点を取りながら、BRCA1発現レベルに従って、最も生存期間を改善する可能性のある治療計画に関してインフォームドディシジョンを行なうことができる。これらの知見に基づき、本発明者らは、以下に詳細に記載する様々な実施形態における本発明の方法を定義した。
【0026】
したがって、第1の態様において、本発明は、乳癌に罹った患者からの試料におけるBRCA1遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなる、該患者用の個別化ネオアジュバント療法を選択する方法であって、BRCA1遺伝子の発現レベルが基準値に比べて低い場合、該患者が代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法のための良い候補である、新規な方法を提供する。
【0027】
「乳癌」という用語は乳房の腫瘍に関し、典型的には腺管癌、小葉癌、血管腫、肉腫等の乳癌に出現するいずれかの組織学的亜型、表在性癌、筋層浸潤性癌または転移性疾患癌等のいずれかの臨床亜型、およびいずれかのTMN分類を含む。TMN分類には、浸潤癌の有無、浸潤癌の大きさおよび乳房の外側の浸潤の有無によって決まるTis、T1、T2、T3またはT4、リンパ節内の乳癌細胞沈渣の数、サイズおよび位置によって決まるN0、N1、N2またはN3、ならびに乳房およびリンパ節以外の場所での乳癌細胞の有無(例えば骨、脳、肺へのいわゆる遠隔転移)によって決まるM0またはM1が含まれる。
【0028】
本明細書で用いる「試料」という用語は、患者から得ることができる任意の試料に関する。本方法は、生検試料、組織、細胞または体液(血清、唾液、精液、痰、脳脊髄液(CSF)、涙、粘液、汗、乳汁、脳抽出物等)等の、患者からのあらゆるタイプの生物学的試料に適用することができる。特定の実施形態において、該試料は腫瘍組織試料またはその一部である。さらに特定の実施形態において、該腫瘍組織試料は乳癌に罹った患者からの乳房腫瘍組織試料である。該試料は、医療関連分野の当業者に周知の方法を用いて、生検等の従来の方法で得ることができる。生検材料から試料を得る方法としては、肉眼で見える程度の塊の分割もしくは顕微解剖、または当業者に公知のその他の細胞分離法が挙げられる。さらには、腫瘍細胞は穿刺吸引細胞診により得ることができる。試料は、その保存および取扱いを簡素化するために、ホルマリン固定してパラフィン包埋するか、または、まず凍結させ、次いで急速凍結が可能になる超極低温培地への浸漬を経てからOCTコンパウンド等の低温凝固性培地に包埋してもよい。
【0029】
本発明の方法は、BRCA1遺伝子の発現レベルを決定することを必要とする。好ましい実施形態において、BRCA1遺伝子の発現レベルの決定は、BRCA1遺伝子によってコードされるmRNAの発現レベルを測定することによって行なうことができる。この目的のためには、生物学的試料を処理して、組織や細胞構造を物理的または機械的に破壊し、細胞内成分を水溶液または有機溶液中に放出し、さらなる分析のために核酸を作製してもよい。この核酸は当業者に公知の手順で試料から抽出されるが、市販もされている。次いで、当技術分野において一般的ないずれかの方法、例えば、Sambrook, Fischer and Maniatis, Molecular Cloning, a laboratory manual, (2nd ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1989)によって、RNAが凍結試料または新鮮な試料から抽出される。抽出プロセス中にRNAが分解しないように注意することが好ましい。
【0030】
特定の実施形態において、発現レベルは、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した組織試料から得たmRNAを用いて決定される。mRNAは、保存用病理試料または最初に脱パラフィン化した生検試料から単離することができる。典型的な脱パラフィン法には、パラフィン化した試料を例えばキシレン等の有機溶媒で洗浄することが含まれる。脱パラフィン化した試料は、低級アルコールの水溶液で再水和してもよい。好適な低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノ−ルが挙げられる。脱パラフィン化した試料は、例えば、低級アルコール溶液で、その濃度を下げながら次々と洗浄することで再水和してもよい。あるいは、試料の脱パラフィン化と再水和を同時に行なう。次いで試料を溶解させ、RNAを試料から抽出する。
【0031】
全ての遺伝子発現プロファイリングの手法(RT−PCR、SAGEまたはTaqMan)が上述の本発明の態様を実施する際に用いるのに好適であるが、遺伝子mRNA発現レベルは、多くの場合逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)で決定される。検出は、個々の試料または組織マイクロアレイ中で行なうことができる。
【0032】
mRNA発現の値を異なる試料間で正規化するために、試験用試料中の目的のmRNAの発現レベルとコントロールRNAの発現とを比較することが可能である。本明細書で用いる「コントロールRNA」は、非腫瘍形成性細胞に対し、腫瘍細胞において発現レベルが変化しないか、またはほんのわずかな量しか変化しないRNAに関する。好ましくは、コントロールRNAは、ハウスキーピング遺伝子に由来し、かつ構成的に発現して必須の細胞機能を果たすタンパク質をコードするmRNAである。本発明に用いる好ましいハウスキーピング遺伝子としては、β−2−ミクログロブリン、ユビキチン、18−Sリボソームタンパク質、シクロフィリン、GAPDHおよびアクチンが挙げられる。好ましい実施形態において、コントロールRNAはβ−アクチンmRNAである。一実施形態において、相対的遺伝子発現の定量は、内在性コントロールとしてβ−アクチンを、キャリブレーターとして市販のRNAコントロールを用いて比較Ct法に従って計算した。最終結果は、2−(ΔCt 試料ΔCt キャリブレーター)の式に従って決定し、式中、キャリブレーターおよび試料のΔCT値は、β−アクチン遺伝子の値から標的遺伝子のCT値を引くことによって決定する。
【0033】
BRCA1遺伝子の発現レベルの決定には基準値が関連している必要があるが、この基準値は、ネオアジュバント化学療法的治療に先立って癌患者からの生検試料中の腫瘍組織を回収する際に測定される、BRCA1の発現レベルの中央値に相当している。この中央値が確定すれば、患者からの腫瘍組織に発現するこのマーカーのレベルとこの中央値とを比較することができ、よって「低」「普通」または「高」のレベルを割り当てることができる。基準レベルの元となる試料の回収物は、同タイプの癌の患者から構成されることが好ましい。例えば、実施例に記載した統計的に代表的な回収物は、乳癌患者からの41個の試料から構成されていた。いずれの場合においても、回収物に含まれる試料数は異なり得る。遺伝子試料の発現が「増加」または「減少」しているかを決定するのに用いる基準値は、ネオアジュバント化学療法的治療に先立って癌患者からの生検により得られる各腫瘍試料からそれぞれ同量のRNAをプールすることで得られるRNA試料において測定されるBRCA1の発現レベルの中央値に対応して使用される。この中央値が確定すれば、患者からの腫瘍組織に発現するこのマーカーのレベルとこの中央値とを比較することができ、よって「増加」または「減少」のレベルを割り当てることができる。被験者間のバラつき(例えば、年齢、人種等に関する面)により、BRCA1の絶対的な基準値を確定することは(事実上不可能とまではいかないが)非常に困難である。したがって、特定の実施形態において、BRCA1発現の「増加」または「減少」に対する基準値は、通常の被験者(すなわち乳癌の診断を受けていない人)から単離された試料群のBRCA1遺伝子の発現レベルを試験することを含む、従来の手段でパーセンタイル(percentile)を計算することにより決定される。こうして「増加」したレベルを割り当てることができるが、BRCA1遺伝子の発現レベルが通常の集団において50パーセンタイル以上、例えば、通常の集団において60パーセンタイル以上、通常の集団において70パーセンタイル以上、通常の集団において80パーセンタイル以上、通常の集団において90パーセンタイル以上、および通常の集団において95パーセンタイル以上の発現レベルの試料に対して割り当てることが好ましい。
【0034】
好ましい実施形態において、BRCA1発現値は三分位(terciles)に分割される。一例としては、リアルタイム定量PCRを用いて、ネオアジュバントFEC化学療法を受けた乳癌患者からの41個の腫瘍生検材料におけるBRCA1 mRNAレベルを決定し、その遺伝子発現値を三分位に分割した。結果が転帰(DFSおよびMS)と相関関係にある場合、BRCA1レベルが最低三分位(第1三分位)(tercile 1)の患者は、最高および中三分位の患者に比べて、再発リスクが有意に減少し(DFS)、生存期間が有意に改善した(MS)ことが観察された(図1および2参照)。
【0035】
別の実施形態において、BRCA1遺伝子の発現レベルは、BRCA1タンパク質の発現を測定することにより決定される。BRCA1タンパク質の発現レベルの決定は、例えば、ELISA、ウェスタンブロットまたは免疫蛍光法等の免疫学的手法により行なうことができる。ウェスタンブロットは、あらかじめ変性条件下にてゲル電気泳動で分解し、特異的な抗体および展開系(例えば化学発光系)と一緒にインキュベーションすることにより膜(通常はニトロセルロース)上に固定化したタンパク質を検出することが基本となっている。免疫蛍光法による分析では、顕微鏡検査によって発現および細胞内局在を分析するために、標的タンパク質に特異的な抗体を使用することが必要である。通常、研究中の細胞は、あらかじめパラホルムアルデヒドで固定され非イオン洗剤で透過化処理されている。ELISAは酵素で標識した抗原または抗体を用いることが基本となっているため、標的抗原と標識抗体の間で結合体(conjugate)が形成されることで、酵素的に活性な複合体が形成されることになる。構成要素の一方(抗原または標識抗体)が支持体上に固定化されるため抗体−抗原複合体が支持体上に固定化されることになり、そのため、酵素によって例えば分光測光法または蛍光光度法で検出可能な産物へと変換される基質を添加することによって、これを検出することができる。この手法では標的タンパク質の正確な位置確認やその分子量の決定はできないが、種々の生物学的試料(血清、血漿、組織ホモジネート、ポスト核(postnuclear)上清、腹水等)中の標的タンパク質を非常に特異的に、かつ高感度に検出することができる。好ましい実施形態において、BRCA1タンパク質は、コーティングしたスライド上に固定化された生物学的試料の薄片を用いて免疫組織化学(IHC)分析によって検出される。次いでこの薄片は、パラフィン化した組織試料由来の場合には脱パラフィン化され、抗原を回収するように処理される。検出は、個々の試料または組織マイクロアレイ中で行うことができる。
【0036】
標的タンパク質の量を検出するためには、標的タンパク質に高親和性に結合することが知られているいずれの抗体または試薬を用いてもよい。とは言うものの、ポリクローナル血清、ハイブリドーマ上清またはモノクローナル抗体等の抗体;Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、ScFv等の抗体断片;ジアボディ(diabodies);トリアボディ(triabodies);テトラボディ(tetrabodies)およびヒト化抗体を使用することが好ましい。
【0037】
さらに別の実施形態において、BRCA1タンパク質発現レベルの決定は、集めた患者試料を含有する組織マイクロアレイ(TMA)を構築し、免疫組織化学の手法でBRCA1タンパク質の発現レベルを決定することによって行なうことができる。免疫染色強度は、この方法の再現性を維持するために、2つの異なる病理学者によって評価し、一律で明確なカットオフ基準を用いて記録してもよい。不一致は、同時に再評価することで解決できる。簡単に言うと、免疫染色の結果は、腫瘍細胞における発現および各マーカーに対する特異的カットオフを考慮に入れつつ、陰性発現(0)対陽性発現、ならびに低発現(1+)対中(2+)および高(3+)発現として記録してもよい。カットオフは、全般的な基準としては再現性を促進するために、可能であれば生物学的事象を解釈するために選択した。
【0038】
本発明者らは、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法で治療されている乳癌に罹った患者の生存期間はプロゲステロン受容体の発現レベルとも相関関係にあることをさらに示している。よって、BRCA1発現およびプロゲステロン受容体発現の測定値は両方とも、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法で治療されている乳癌に罹った患者の臨床転帰の予測マーカーとして用いることができる。したがって、本発明の特定の実施形態において、また乳癌患者の生存率をさらに改善するため、かつ本発明に従ってより有効な治療選択肢を提供するため、本方法はプロゲステロン受容体発現を測定することをさらに含んでなり、ここで、基準値と比較したときプロゲステロン受容体発現が陽性である場合に、該患者は代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法のための良い候補である。特定の実施形態において、プロゲステロン受容体の発現レベルは、プロゲステロン受容体タンパク質の発現を測定することにより決定される。プロゲステロン受容体タンパク質の発現レベルの決定は、先に記載のいずれかの免疫学的な方法で行なうことができる。さらに特定の実施形態において、プロゲステロン受容体タンパク質の発現レベルの決定は、免疫組織化学の手法によりプロゲステロン受容体タンパク質の発現レベルを決定する、組織マイクロアレイ(TMA)により行なわれる。よって、PR発現測定の例示的、非限定的な例として、例えばMohsin et al. (Modern Pathology; 2004 17, 1545-1554)が記載しているように、PRの免疫組織化学的発現は、試料中のPR陽性核の数を定量することによって、免疫組織化学の手法で定量される。ここで、10%以上のPR陽性核を示す腫瘍試料がPR陽性とみなされる。
【0039】
本発明者らは、リンパ節転移、すなわちリンパ管侵襲の程度が、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法で治療されている乳癌に罹った患者の臨床転帰の予測マーカーとして使用できることも見出した。したがって、別の実施形態において、本発明の方法はリンパ節転移を測定することをさらに含んでなり、ここで、リンパ節転移が陰性である場合に、該患者は代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法のための良い候補である。
【0040】
本明細書で用いる「リンパ節転移」(lymph node involvement)という表現は、腫瘍細胞が、腫瘍を含んだ組織の近くにあるリンパ節および血管へ広がることと理解される。
【0041】
本発明の方法で用いられる化学療法ネオアジュバント剤は、一般に臨床的に使用されている用量で投与される。こうした用量は、例えば体表面積を基に、通常のやり方で算出される。
【0042】
本発明の代謝拮抗薬としては、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン、アミノプテリン、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、チオグアニン、カペシタビン、フロクスウリジン等を用いることができる。
【0043】
アルキル化剤としては、クロラムブシル、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、カルムスチン、フォテムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ブスルファン、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロマイド、チオテパ、トレオスルファンおよびウラムスチンが挙げられる.
【0044】
挿入剤としては、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ピクサントロン、バルルビシンが挙げられる。
【0045】
本発明の特定の実施形態において、前記乳癌患者に施されるネオアジュバント化学療法は、代謝拮抗剤であるフルオロウラシルの投与を含んでなる。
【0046】
5−FU(フルオロウラシル)は何通りかに作用するが、主にチミジル酸シンターゼ阻害剤として作用する。この酵素の作用を遮断することにより、DNA複製に必要とされるヌクレオチドであるピリミジンチミジンの合成がブロックされる。チミジル酸シンターゼはデオキシウラシル一リン酸(dUMP)をメチル化してデオキシチミン一リン酸(dTMP)にする。多くの抗癌剤と同様、5−FUの効果は全身に感じられるが、ヌクレオチド合成機構を盛んに利用している、急速に分裂している細胞にもっとも大きな効果を及ぼす。ピリミジン類似体として、5−FUは細胞内で様々な細胞毒性代謝産物に変換され、次いでDNAおよびRNAに組み込まれ、細胞のDNA合成能を阻害することにより最終的に細胞周期停止およびアポトーシスを誘導する。5−FUはS期特異的薬剤であり、特定の細胞周期の間のみ活性である。DNAおよびRNAに組み込まれるほかに、この薬剤は、エキソリボヌクレアーゼ複合体であるエキソソーム複合体の、細胞生存に不可欠な活性を阻害することが示されている。
【0047】
本発明の別の特定の実施形態において、前記挿入剤はエピルビシンである。
【0048】
エピルビシンはDNA鎖にインターカレートすることで作用する。インターカレーションによって複合体形成が起き、それがDNAおよびRNA合成を阻害する。またインターカレーションはトポイソメラーゼIIによるDNA開裂を誘発し、細胞死を招くメカニズムを引き起こす。細胞膜および血漿タンパク質への結合が化合物の細胞障害効果に関与している可能性がある。またエピルビシンは細胞およびDNAの損傷を引き起こすフリーラジカルも生成する。エピルビシンは副作用をあまり起こさないと思われるので、いくつかの化学治療計画においては、最も普及しているアントラサイクリンであるドキソルビシンよりも好まれている。エピルビシンは糖の4’炭素にいろいろな空間定位のヒドロキシル基を有するが、そのことがエピルビシンの排泄の速さおよび毒性の低さの原因である可能性がある。エピルビシンは、主に乳癌および卵巣癌、胃癌、肺癌、ならびにリンパ腫に対して使用される。
【0049】
本発明の別の特定の実施形態において、前記アルキル化剤はシクロホスファミドである。
【0050】
シトホスファンとしても知られるシクロホスファミドは、オキサゾフォリン基由来のナイトロジェンマスタードアルキル化剤である。シクロホスファミドは「プロドラッグ」であり、肝臓で化学療法的活性を有する活性型に変換される。シクロホスファミドは、肝臓で混合機能オキシダーゼ酵素によって活性代謝産物に変換される。主な活性代謝産物は4−ヒドロキシシクロホスファミドである。4−ヒドロキシシクロホスファミドは、その互変異性体であるアルドホスファミドと平衡して存在している。ほとんどのアルドホスファミドは酵素であるアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)によって酸化され、カルボキシホスファミドとなる。ごく一部のアルドホスファミドはホスホラミドマスタードおよびアクロレインに変換される。アクロレインは膀胱上皮に対して毒性があり、出血性膀胱炎を引き起こす恐れがある。これは、積極的な水分補給および/またはメスナ(Mesna)を使用することで防ぐことができる。
【0051】
最近の臨床研究によると、シクロホスファミドは養子免疫療法において有益な免疫調節性効果を誘導することが示されている。シクロホスファミドの主作用は、その代謝産物であるホスホラミドマスタードによるものである。この代謝産物はALDHのレベルが低い細胞でしか形成されない。ホスホラミドマスタードは、グアニンのN−7位にてDNA鎖間(ストランド間架橋)およびDNA鎖内(ストランド内架橋)でDNA架橋を形成し、これが細胞死を招く。ALDHは骨髄幹細胞、肝臓および腸管上皮に比較的高濃度に存在するため、シクロホスファミドの典型的な化学療法毒性は比較的少ない。ALDHは、アルドホスファミドを毒性代謝産物(ホスホラミドマスタードおよびアクロレイン)を生じることのないカルボキシホスファミドに変換することによって、これらの活発に増殖している組織をホスホラミドマスタードおよびアクロレインの毒作用から保護する。
【0052】
従来のFEC療法は、5−フルオロウラシル600mg/m、エピルビシン60mg/m、シクロホスファミド600mg/mからなる。しかしながら、この用量は患者の要求に従って変更することも可能である。例えばエピルビシンの用量は、用量強度を25〜70パーセントの間で増やせば、50パーセントより多く増やしてもよい。さらに、シクロホスファミドの用量は、患者に対する毒性の増加が重度でなければ、100パーセントより多く増やしてもよい。
【0053】
本発明者らは、BRCA1発現が、乳癌に罹った患者の生存期間の良い予測マーカーとして使用できることを見出した。したがって、別の態様において、本発明は、乳癌に罹った患者からの試料におけるBRCA1遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなる、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法への該患者の臨床反応を決定する方法であって、BRCA1遺伝子の発現レベルが基準値に比べて低い場合に、それが該療法への該患者の臨床反応が良好であることを示す方法に関する。
【0054】
臨床反応の予測は、腫瘍学において用いられ、かつ当業者に公知の任意の終点測定法を用いて行なうことができる。病気の進行を記述するための有用な終点パラメータとして、以下のものが挙げられる。
−無病進行。これは、本明細書で用いるように、研究期間中に病気が再発していない、完全寛解状態の患者の割合を記述する。
−奏功。これは、本発明で用いるように、治療を受けた人の中で完全奏功または部分奏功が認められた人の割合を記述する。
−腫瘍制御。これは、本発明で用いるように、治療を受けた人の中で完全奏功、部分奏功、やや有効または6カ月以上の安定病態が認められた人の割合に関する。
−無病生存期間(DFS)。これは、本明細書で用いるように、治療後に患者が癌の増殖の兆候を示すことなく生存する期間の長さ、と定義される。
−6カ月無憎悪生存率またはPFS6”率。これは、本明細書で用いるように、治療開始後の最初の6カ月間に進行がない人の割合に関する。
−生存期間中央値(MS)。これは、本明細書で用いるように、研究に参加した患者の半数が依然として生存している期間に関する。
【0055】
特定の実施形態において、臨床反応の予測は無病生存期間および生存期間中央値を測定することにより行なわれる。
【0056】
「試料」という用語は既に定義されており、患者からのあらゆるタイプの生物学的試料に適用することができる。特定の実施形態において、該試料は腫瘍組織試料またはその一部である。さらに特定の実施形態において、該腫瘍組織試料は乳癌に罹った患者からの乳房腫瘍組織試料またはホルマリン包埋した乳房組織試料である。好ましい実施形態において、該試料は組織生検材料である。
【0057】
特定の実施形態において、BRCA1遺伝子の発現レベルの決定は、BRCA1遺伝子によってコードされるmRNAの発現レベルを測定すること、または前述のいずれかの手順を用いてBRCA1遺伝子産物の発現レベルを測定することによって行なわれる。
【0058】
前にも説明したように、BRCA1発現のほか、プロゲステロン受容体発現の測定を、DFSおよびMSの良い予測マーカーとして使用することができる。したがって、特定の実施形態において、本方法はプロゲステロン受容体発現を測定することも含んでなり、ここで、基準値と比較したときプロゲステロン受容体発現が陽性である場合に、前記療法への前記患者の臨床反応が良好であることを示す。
【0059】
特定の実施形態において、プロゲステロン受容体の発現レベルは、プロゲステロン受容体タンパク質の発現を測定することにより決定される。プロゲステロン受容体タンパク質の発現レベルの決定は、先に記載のいずれかの免疫学的な方法により行なうことができる。
【0060】
さらに特定の実施形態において、プロゲステロン受容体タンパク質の発現レベルの決定は、免疫組織化学の手法によりプロゲステロン受容体タンパク質の発現レベルを決定する、組織マイクロアレイ(TMA)により行なわれる。
【0061】
別の特定の実施形態において、臨床反応を予測する本方法はリンパ節転移を測定することをさらに含んでなり、ここで、リンパ節転移が陰性の場合に、前記療法への前記患者の臨床反応が良好であることを示す。
【0062】
本発明の方法で用いられる化学療法ネオアジュバント剤は、一般に臨床的に使用されている用量で投与される。本発明の特定の実施形態において、前記乳癌患者に施されるネオアジュバント化学療法は、代謝拮抗剤であるフルオロウラシルの投与を含んでなる。別の特定の実施形態において、前記挿入剤はエピルビシンである。別の特定の実施形態において、前記アルキル化剤はシクロホスファミドである。
【0063】
本発明者らの研究結果により、BRCA1の発現と、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント化学療法に患者が反応する可能性とが相関関係にある、乳癌に罹った患者のための個別化治療の開発が可能になる。したがって、別の態様において、本発明は、乳癌に罹った患者からの試料におけるBRCA1遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなる、該患者の、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法へ反応する素因を評価する方法であって、BRCA1遺伝子の発現レベルが低い場合、それが、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法に反応する該患者の好ましい素因を示す方法に関する。
【0064】
本発明の特定の実施形態において、かかる試料は生検試料である。
【0065】
別の特定の実施形態において、BRCA1遺伝子の発現レベルの決定は、BRCA1遺伝子によってコードされるmRNAの発現レベルを測定すること、または前述の手順のいずれかを用いてBRCA1遺伝子産物の発現レベルを測定することによって行なわれる。
【0066】
本発明者らは、BRCA1発現が低いこと以外にも、プロゲステロン受容体発現が陽性であることと、患者が代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント化学療法に反応する可能性とが相関関係にある、ということを示した。したがって、特定の実施形態において、本方法は先に説明したようにプロゲステロン受容体発現を測定することも含んでなり、ここで、基準値と比較したときプロゲステロン受容体発現が陽性である場合に、それは代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法に反応する該患者の好ましい素因を示す。
【0067】
NR3C3(核受容体サブファミリー3、グループC、メンバー3)としても知られるプロゲステロン受容体(PR)は、プロゲステロンに特異的に結合する細胞内ステロイド受容体である。
【0068】
特定の実施形態において、プロゲステロン受容体の発現レベルは、プロゲステロン受容体タンパク質の発現を測定することにより決定される。プロゲステロン受容体タンパク質の発現レベルの決定は、先に記載のいずれかの免疫学的な方法により行なうことができる。
【0069】
さらに特定の実施形態において、プロゲステロン受容体タンパク質の発現レベルの決定は、免疫組織化学の手法によりプロゲステロン受容体タンパク質の発現レベルを決定する、組織マイクロアレイ(TMA)により行なわれる。
【0070】
別の特定の実施形態において、乳癌に罹った患者の、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法へ反応する素因を評価する本方法は、リンパ節転移を測定することをさらに含んでなり、ここで、リンパ節転移が陰性の場合に、それは代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法に反応する該患者の好ましい素因を示す。
【0071】
本発明の方法で用いられる化学療法ネオアジュバント剤は、一般に臨床的に使用されている用量で投与される。本発明の特定の実施形態において、前記乳癌患者に施されるネオアジュバント化学療法は、代謝拮抗剤であるフルオロウラシルの投与を含んでなる。別の特定の実施形態において、投与される前記挿入剤はエピルビシンである。別の特定の実施形態において、前記アルキル化剤はシクロホスファミドである。
【0072】
別の態様において、本発明は、BRCA1遺伝子の発現レベルが低い乳癌に罹った患者の乳癌治療のためのネオアジュバント療法としての、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せに関する。
【0073】
先に説明した同じ理由で、本発明の特定の実施形態において、前記患者はプロゲステロン受容体陽性発現をさらに示し、また別の特定の実施形態において、前記患者は陰性リンパ節転移をさらに示す。
【0074】
別の態様において、本発明はさらに、
i)BRCA1遺伝子の発現レベル;および
ii)プロゲステロン受容体発現;
を決定することと、
iii)工程i)およびii)の結果に従って患者を以下のように定義される4つの群:
−BRCA1遺伝子の発現レベルが低く、プロゲステロン受容体発現が陽性;
−BRCA1の発現レベルが低く、プロゲステロン受容体発現が陰性;
−BRCA1遺伝子の発現レベルが高く、プロゲステロン受容体発現が陽性;および
−BRCA1の発現レベルが高く、プロゲステロン受容体発現が陰性;
に分類すること
とを含んでなる、乳癌に罹った患者を分類する方法に関する。
【0075】
以下の実施例は単に例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0076】
材料および方法
4サイクルのネオアジュバントFEC(フルオロウラシル、エピルビシンおよびシクロホスファミド)化学療法で治療した局所進行乳癌患者86人から、腫瘍生検材料を得た。
【0077】
【表1】




【0078】
エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、HER2、サイトケラチン6/7、ビメンチン、ハンチンチン相互作用タンパク質1(HIP1)およびBRCA1の発現を組織マイクロアレイで調べた。またHER2を化学発色in situハイブリダイゼーション(CISH)で評価し、BRCA1 mRNAを定量PCRにより患者41人の試料で分析した。BRCA1遺伝子発現は、Specht K, et al. (2001) (Am. J. Pathol., 158, 419-429およびKrafft AE, et al. (1997) Mol. Diagn. 3, 217-230によって先に記載されているように測定した。キシレンおよびアルコールを用いて標準組織試料を脱パラフィン化した後、トリス−クロリド、EDTA、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびプロテイナーゼKを含む緩衝液中に試料を溶解させた。次いでRNAをフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコールで抽出し、その後、グリコーゲンおよび酢酸ナトリウムの存在下にて、イソプロパノールで沈殿させた。RNAをRNA保存液(アンビオン社;オースティン、テキサス州、米国)中に再懸濁させ、DNAの混入を避けるためにDNアーゼIで処理した。M−MLVレトロトランスクリプターゼ酵素を用いてcDNAを合成した。各遺伝子に対して特異的なプライマーおよびプローブを含む12.5−μlの反応系中のTaqman Universal Master Mix(AB;アプライドバイオシステムズ社、フォスターシティー、カリフォルニア州、米国)に、鋳型cDNAを加えた。プライマーとプローブのセットは、Primer Express 2.0 Software(AB)を用いて設計した。遺伝子発現の定量は、ABI Prism 7900HT Sequence Detection System(AB)を用いて行なった。BRCA1 mRNA発現分析用のプライマーおよびプローブは、参照配列NM_007294(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/LocusLink)に従って設計した。フォワードプライマーはエクソン8(4292bp〜4317bp位置)に、リバースプライマーはエクソン9(4336bp〜4360bp位置)に、プローブはエクソン8/9ジャンクション(4313bp〜4333bp位置)に位置する。これらのプライマーと一緒に生成されたPCR産物のサイズは69bpであった。プライマーおよび5’標識蛍光レポーター色素(6FAM)プローブは以下の通りであった:β−アクチン:フォワード5’ TGA GCG CGG CTA CAG CTT 3’(配列番号1)、リバース5’ TCC TTA ATG TCA CGC ACG ATT T 3’(配列番号2)、プローブ5’ ACC ACC ACG GCC GAG CGG 3’(配列番号3);BRCA1:フォワード5’ GGC TAT CCT CTC AGA GTG ACA TTT TA 3’(配列番号4)、リバース5’ GCT TTA TCA GGT TAT GTT GCA TGG T 3’(配列番号5)、プローブ5’ CCA CTC AGC AGA GGG 3’(配列番号6)。相対的遺伝子発現の定量は、内在性コントロールとしてβ−アクチンを、キャリブレーターとして市販のRNAコントロール(ストラタジーン社、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を用いて比較Ct法によって計算した。最終結果は以下のように決定した:2−(ΔCt 試料ΔCt キャリブレーター)、式中、キャリブレーターおよび試料のΔC値は、β−アクチン遺伝子の値から標的遺伝子のC値を引くことによって決定する。全ての実験において、Ct値の標準偏差(SD)が<0.20である三つ組のみを採用した。加えて、分析したそれぞれの試料について、ゲノムDNAの混入が無いことを確実にするために、コントロールを差し引いたレトロトランスクリプターゼを同一プレートで使用した。
【0079】
【表2】



【0080】
結果
患者の57%で病理反応が得られた。無病生存期間(DFS)中央値は30カ月(m)で生存期間中央値(MS)は41カ月であった。
表3に、三分位(T1、T2およびT3)に分類したBRCA1発現と患者の臨床的特徴との関係を示す。
【0081】
【表3】


【0082】
図1にDFSのカプランマイヤー生存プロットを示す。BRCA1 mRNA発現結果(第1三分位(Tercile 1)、第2三分位(Tercile 2)および第3三分位(Tercile 3))に従って患者を3つのグループに分けた。「第1三分位」のグループが、BRCA1 mRNA発現がより低いグループである。BRCA1発現が高い乳癌患者(第2および第3三分位)よりも、ネオアジュバントFEC療法で治療されてBRCA1発現が低い患者(第1三分位)のDFSの方がよいことが結果からわかる。図1は、生存期間中央値(MS)のカプランマイヤー生存プロットである。生存期間中央値についてもBRCA1発現が低い患者(第1三分位)の方がよい、ということが図2で示されている。
【0083】
一方、図3および表4に示されるように、クラスタル−ワリス(Klustal−Wallis)検定(p=0.522)によって、免疫組織化学で測定したBRCA1タンパク質発現と、定量PCRで測定したBRCA1 mRNA発現との間に有意な相関関係は無いことが示された。
【0084】
【表4】

【0085】
DFSおよびMSの多変量解析(表5)では、低レベルのBRCA1 mRNAならびに陽性のPRおよび陰性のリンパ節転移から有意な再発リスクの低下(DFS)が予測される一方で、有意な生存期間の改善と関連する変数は低レベルのBRCA1 mRNAおよび陽性のPRのみだということが示されている。
【0086】
【表5】

【0087】
【表6】

【0088】
結論
本発明者らは、乳癌におけるDFSおよびMSの予測マーカーとしてのBRCA1遺伝子発現の主要な役割を支持する証拠を提供した。これらの知見は化学療法を個別化するのに有用であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者からの試料におけるBRCA1遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなる、乳癌に罹った患者用の個別化ネオアジュバント療法を選択する方法であって、BRCA1遺伝子の発現レベルが基準値に比べて低い場合に、該患者が代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法のための良い候補である、方法。
【請求項2】
プロゲステロン受容体発現を測定することをさらに含んでなり、基準値と比較したとき該プロゲステロン受容体発現が陽性である場合に、前記患者が代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法のための良い候補である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リンパ節転移を測定することをさらに含んでなり、リンパ節転移が陰性の場合に、前記患者が代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法のための良い候補である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が腫瘍生検材料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記BRCA1遺伝子発現レベルが、BRCA1遺伝子によってコードされるmRNAのレベルを測定することにより決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プロゲステロン受容体発現が免疫組織化学により測定される、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記代謝拮抗剤がフルオロウラシルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記挿入剤がエピルビシンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アルキル化剤がシクロホスファミドである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
患者からの試料におけるBRCA1遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなる、乳癌に罹った患者の、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法への臨床反応を決定する方法であって、BRCA1遺伝子の発現レベルが基準値に比べて低い場合に、それが該療法への該患者の臨床反応が良好であることを示す、方法。
【請求項11】
プロゲステロン受容体発現を測定することをさらに含んでなり、基準値と比較したとき該プロゲステロン受容体発現が陽性である場合に、それが前記療法への前記患者の臨床反応が良好であることを示す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
リンパ節転移を測定することをさらに含んでなり、リンパ節転移が陰性の場合に、それが前記療法への前記患者の臨床反応が良好であることを示す、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が腫瘍生検材料である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記BRCA1遺伝子発現レベルが、BRCA1遺伝子によってコードされるmRNAのレベルを測定することにより決定される、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
プロゲステロン受容体発現が免疫組織化学により測定される、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記代謝拮抗剤がフルオロウラシルである、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記挿入剤がエピルビシンである、請求項10〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記アルキル化剤がシクロホスファミドである、請求項10〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記臨床反応が無病生存期間として測定される、請求項10〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記臨床反応が全生存期間として測定される、請求項10〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
患者からの試料におけるBRCA1遺伝子の発現レベルを決定することを含んでなる、乳癌に罹った患者の、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法へ反応する素因を評価する方法であって、BRCA1遺伝子の発現レベルが低い場合に、それが、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法に反応する該患者の好ましい素因を示す、方法。
【請求項22】
プロゲステロン受容体発現を測定することをさらに含んでなり、基準値と比較したとき該プロゲステロン受容体発現が陽性である場合に、それが代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法に反応する前記患者の好ましい素因を示す、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
リンパ節転移を測定することをさらに含んでなり、リンパ節転移が陰性の場合に、それが代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せによるネオアジュバント療法に反応する前記患者の好ましい素因を示す、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記試料が腫瘍生検材料である、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記BRCA1遺伝子発現レベルが、BRCA1遺伝子によってコードされるmRNAのレベルを測定することにより決定される、請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
プロゲステロン受容体発現が免疫組織化学により測定される、請求項21〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記代謝拮抗剤がフルオロウラシルである、請求項21〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記挿入剤がエピルビシンである、請求項21〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記アルキル化剤がシクロホスファミドである、請求項21〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
BRCA1遺伝子の発現レベルが低い乳癌に罹った患者の乳癌治療のためのネオアジュバント療法としての、代謝拮抗剤、挿入剤およびアルキル化剤の組合せ。
【請求項31】
前記患者がプロゲステロン受容体陽性発現をさらに示す、請求項30に記載の組合せ。
【請求項32】
前記患者が陰性リンパ節転移をさらに示す、請求項31に記載の組合せ。
【請求項33】
乳癌に罹った患者を分類する方法であって、
i)BRCA1遺伝子の発現レベル;および
ii)プロゲステロン受容体発現;
を決定することと、
iii)工程i)およびii)の結果に従って該患者を以下のように定義される4つの群
−BRCA1遺伝子の発現レベルが低く、プロゲステロン受容体発現が陽性;
−BRCA1の発現レベルが低く、プロゲステロン受容体発現が陰性;
−BRCA1遺伝子の発現レベルが高く、プロゲステロン受容体発現が陽性;および
−BRCA1の発現レベルが高く、プロゲステロン受容体発現が陰性;
に分類すること
とを含んでなる方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−516407(P2011−516407A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547187(P2010−547187)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052027
【国際公開番号】WO2009/103784
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(507311887)パンガエア、ビオテック、ソシエダッド、アノニマ (5)
【氏名又は名称原語表記】PANGAEA BIOTECH, S.A.
【Fターム(参考)】