説明

BRCA2活性が低下した癌対象の治療のためのSNS−595の使用方法

BRCA2変異をともなう癌を有する対象の治療のためのSNS-595の使用方法が記載される。特定の実施態様においては、該方法は、治療的有効量のSNS-595を、治療を必要とする対象に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.関連出願)
本出願は、2009年2月27日に出願された米国仮出願第61/156,449号、及び2009年4月16日に出願された第61/170,013号の優先権の利益を主張する。前記関連出願の開示は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(2.分野)
本明細書においては、BRCA2活性が低下した対象における、癌の治療方法が提供される。特定の実施態様においては、該方法は、治療的有効量のSNS-595を対象に投与することを含む。
【背景技術】
【0003】
(3.背景技術)
癌は、米国における主要な死因の一つである。毎年、50万人以上の米国人が癌で死亡し、100万人以上が、新たに該疾患であると診断されている。その正常な増殖調節機構から逸脱した時に、癌性腫瘍が起こり得、制御不能な様式で増殖する。疾患の実質的な進行前に原発腫瘍の治療が完了していない、又は開始しない場合、腫瘍細胞は二次部位に転移し得る。腫瘍の早期診断及び効果的な治療が生存のためには必須である。
【0004】
乳癌感受性遺伝子(BRCA1及びBRCA2タンパク質)によりコードされるタンパク質は、乳癌、卵巣癌、及び他の癌になりやすい傾向と関係している。これらのタンパク質は発現し、DNA修復及び組換え、細胞周期のチェックポイント制御、及び転写を含む、全ての細胞に必須の多くの過程において、それらと関係している。
【0005】
BRCA1及びBRCA2は、相同的組換え(HR)による、DNA二重鎖切断(DSB)修復にとって重要である。BRCA1及びBRCA2遺伝子中の変異は、個体を種々の癌に羅患させ得る。BRCA1及びBRCA2中の構造遺伝子変異は、全ての上皮性卵巣癌の約5〜10%の原因である(Li及びKarlanの論文、Curr Oncol Rep, 2001 3:27-32を参照されたい)。これらの遺伝子のいずれかにおける構造遺伝子変異は、複数の個体が影響を受ける家族において、乳癌の症例の20〜60%を占めることが示されている(全てのケースの約2〜6%)。Nathansonらの論文、Nature Med, 2001 7, 552-556, 2001。BRCA1及びBRCA2変異のキャリアも、前立腺、膵臓及び男性乳癌に感受性が高い。Venkitaramanの論文、J. Cell Sci, 2001 114, 3591-98を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乳癌、卵巣癌及び他の癌におけるBRCA1及びBRCA2の変異の重要性を考慮し、BRCA2の変異を有するか、さもなければBRCA2の活性が低下している癌対象の治療方法に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(4.概要)
BRCA2変異の存在が、SNS-95((+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-(メチルアミノ)-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸)による治療に対し、対象における癌細胞の反応性を上昇させることが観察された。従って、一実施態様においては、治療的有効量のSNS-595を対象に投与することを含む、癌対象、例えば、BRCA2の活性が低下した(又はその細胞内でBRCA2活性が下方制御され、又は正常と比較して減少し、例えば発現が減少した)BRCA2変異を有する癌患者の治療方法が提供される。
【0008】
特定の実施態様においては、本明細書においては、癌対象においてBRCA2変異を診断し、SNS-595により対象を治療することを含む方法が提供される。特定の実施態様においては、本明細書においては、癌対象におけるBRCA2活性の下方制御又は低下を診断し、SNS-595により対象を治療することを含む方法が提供される。
【0009】
特定の実施態様においては、本明細書においては、BRCA2変異を有し、又はその中にBRCA2活性(又は発現)が低下した癌対象に、約10〜100mg/m2の投与量のSNS-595を投与することを含む方法が提供される。
【0010】
特定の実施態様においては、本明細書においては、BRCA2変異を有する癌細胞を、二重鎖DNA切断を引き起こすのに有効な量のSNS-595と接触させることを含む方法が提供される。
【0011】
本明細書においては、癌細胞がBRCA2変異を示す、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌及びその他の癌の治療を含む方法が提供される。
【0012】
他の態様においては、本明細書においては、対象におけるBRCA2変異を診断することを含む、SNS-595による治療のための対象の特定方法が提供される。
【0013】
特定の実施態様においては、SNS-595は単独で、すなわち他の化学療法剤なしで用いられる。
【0014】
他の実施態様においては、SNS-595は、1種以上の治療薬、すなわち、癌又はその症状に対して活性を有する医薬品と組み合わせて投与される。本発明の範囲内の療法の例には、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、生物学的療法、免疫療法、及びそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。この組合せには、同時、並びに連続投与が含まれる。
【0015】
ある実施態様においては、追加の治療薬は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、オーロラキナーゼ阻害剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、紡錘体毒、分裂抑制因子、トポイソメラーゼII阻害剤及び毒、トポイソメラーゼI阻害剤、抗腫瘍性抗生物質、ニトロソウレア、無機イオン錯体、酵素、ホルモン及びホルモン類似体、EGFR阻害剤、抗体及び抗体誘導体、IMID、HDAC阻害剤、Bcl-2阻害剤、VEGF-刺激チロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR阻害剤、プロテアソーム阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、PARP阻害剤、アロマターゼ阻害剤、及びデキサメタゾンから選択される。
【0016】
特定の実施態様においては、併用療法は、SNS-595と、ドセタキセル、タキソテール、ビノレルビン、カペシタビン、ドキソルビシン、ゴセレリン、ゾレドロン酸、パクリタキセル、パミドロネート、アナストロゾール、エキセメスタン、シクロホスファミド、エピルビシン、フルベストラント、レトロゾール、ゲムシタビン、ロイプロリド、フィルグラスチム、G-CSF又は顆粒球コロニー刺激因子、ペグフィルグラスチム、トレミフェン、タモキシフェン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、5-フルオロウラシル、メトトレキセート、トラベクチジン(trabectidin)、エポエチンアルファ、及びダルベポエチンアルファから選択される少なくとも1種の治療薬とを投与することを含む。他の実施態様においては、併用療法は、SNS-595及び対症療法剤(support care agent)を投与することを含む。
【0017】
BRCA2活性が低下した癌対象における、SNS-595の投与計画、投与スケジュール及び使用方法も提供される。
【0018】
特定の実施態様においては、本明細書においては、BRCA2活性が低下した癌対象の治療のための、SNS-595と、医薬として許容し得る担体、アジュバント又は希釈剤とを含む医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
(5.図面の簡単な説明)
【図1】図1は、ドキソルビシンの存在下での、BRCA2変異体であるチャイニーズハムスター細胞(VC8)、及び機能性BRCA2が補足されたもの(VC8-B2)における増殖阻害を示す。
【0020】
【図2】図2は、SNS-595の存在下でのVC8及びVC8-B2細胞の増殖阻害を示す。
【0021】
【図3】図3は、ドキソルビシンの処理による、ヒト肉腫U-20S細胞(野生型細胞、及びsiRNAを用いてBRCA2を枯渇させた細胞)内のコロニー成長を示す。
【0022】
【図4】図4は、SNS-595の処理による、ヒト肉腫U-20S細胞(野生型細胞、及びsiRNAを用いてBRCA2を枯渇させた細胞)内のコロニー成長を示す。
【0023】
【図5】図5は、SNS-595及びドキソルビシンをそれぞれ単独で用いた処理、及びアフィディコリンと共に用いた処理についての、240秒のスイッチ時間で18時間実施したパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を示す。
【0024】
【図6】図6は、SNS-595及びドキソルビシンをそれぞれ単独で用いた処理、及びアフィディコリンと共に用いた処理についての、240秒のスイッチ時間で24時間実施したPFGEを示す。
【0025】
【図7】図7は、18時間のPFGEにおいて、SNS-595による処理よりもドキソルビシンによる処理の後に、より小さいDNA断片が産生されることにより示されるように、SNS-595及びドキソルビシンのDNA損傷活性における相違を示す。
【0026】
【図8】図8は、24時間のPFGEにおいてSNS-595による処理よりもドキソルビシンによる処理の後に、より小さいDNA断片が産生されることにより示されるように、SNS-595及びドキソルビシンのDNA損傷活性における相違を示す。
【0027】
【図9】図9は、アフィディコリン、SNS-595、及びドキソルビシンのそれぞれを用いた処理、並びにアフィディコリンと共にSNS-595及びドキソルビシンのそれぞれを用いた処理による、SPD8細胞のクローニング効率を示す。
【0028】
【図10】図10は、アフィディコリン、SNS-595、及びドキソルビシンを用いた処理、並びにアフィディコリンと共に、SNS-595及びドキソルビシンのそれぞれを用いた処理による、SPD8細胞のHPRT変異復帰頻度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(6.詳細な説明)
(6.1 定義)
特に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、当業者に通常に理解されるのと同じ意味を有する。全ての特許、出願、公開出願、他の刊行物は引用により本明細書にその全体が組み込まれる。本明細書における用語について複数の定義がある場合、特に明記しない限り、この項におけるものが優先される。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「SNS-595」は、(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-メチルアミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸、並びに任意のイオン形態、塩、溶媒和物、例えば、水和物、又は化合物の他の形態を意味し、それらの混合物が含まれる。従って、SNS-595を含む組成物は、(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-メチルアミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸、そのイオン形態、塩、溶媒和物、例えば、水和物、又は該化合物の他の形態を含み得る。ある実施態様においては、SNS-595は医薬として許容し得る塩として提供される。特定の実施態様においては、SNS-595は、基本的に(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-メチルアミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸からなる組成物を含み、組成物の全重量を基準とし、0.5(質量)%未満の他の化合物又は不純物を含む。このような不純物には、チアゾリル-オキソ-ナフチリジン-3-カルボン酸骨格を有する化合物、例えば、(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-ヒドロキシ-4-メチルアミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸、(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-アミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸及び/又は(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-ヒドロキシ-4-アミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸が含まれる。例示的なSNS-595組成物は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる米国仮出願第61/141,856号に記載されている。
【0031】
本明細書で用いられる場合、「鏡像異性的に純粋なSNS-595」は、(-)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-(メチルアミノ)-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸を実質的に含まないSNS-595を意味する。言い換えると、鏡像異性的に純粋なSNS-595は、「(-)」型の鏡像体過剰である。用語「鏡像異性的に純粋」又は「純粋な鏡像異性体」は、化合物が約95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、99.5重量%、99.6重量%、99.7重量%、99.8重量%又は99.9重量%を超えるSNS-595を含むことを意味する。
【0032】
本明細書で用いられる場合、特に明記しない限り、用語「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、疾患又は治療すべき病状に関連する疾患又は症状の重症度を緩和又は低減することを意味する。
【0033】
本明細書で用いられる場合、用語「予防する」、「予防すること」及び該用語の他の形態には、疾患若しくは障害、又は特定の疾患若しくは障害の症状の発症又は進行の阻害が含まれる。ある実施態様においては、癌の家族歴を有する対象は、予防的投薬計画のための候補である。一般的に、癌との関連で、用語「予防すること」は、癌、特に癌の危険性のある対象において、癌の徴候又は症状の発症前に、薬剤を投与することを意味する。
【0034】
本明細書で用いられる場合、特に明記しない限り、用語「管理すること」は、特定の疾患又は障害を患った対象において、その再発を予防し、前記疾患又は障害を患った対象が寛解のままにいる時間を長くし、対象の死亡率を低下させ、及び/又は管理すべき疾患又は病状に関連する症状の重症度を維持又は縮小し、若しくは該症状を回避することを含む。
【0035】
本明細書で用いられる場合、「対象」は動物、通常は、ヒトを含む哺乳動物を意味する。本明細書で用いられる場合、「患者」は、ヒト対象を意味する。
【0036】
本明細書で用いられる場合、「試料」又は「生物学的試料」は、当該技術分野で公知の分析方法を通して対象のBRCA2の状態に関して情報を得ることのできる細胞及び生理液を含む、組織又は抽出物を意味する。通常、生物学的試料は血液試料であろう。しかし、試料は、体液試料、又は組織試料を含む、対象由来の1種以上の種々の供給源から収集することができる。適切な組織試料には、生検で得た試料のような、種々のタイプの腫瘍又は癌組織、器官組織が含まれる。試料は、使用前に、血液からの血漿の調製、粘性のある液体の希釈等の処理をすることができる。試料の処理法には、ろ過、蒸留、抽出、濃縮、妨害化合物の不活性化、試薬の添加等が含まれる。
【0037】
本明細書で用いられる場合、特に明記しない限り、用語、化合物の「治療的有効量」及び「有効量」は、疾患の治療、予防、及び/又は管理において治療的利益をもたらし、治療すべき疾患又は障害に関連する1種以上の症状を遅延又は最小化させるのに十分な量を意味する。用語「治療的有効量」及び「有効量」は、全体の治療効果を改善し、疾患又は障害の症状又は原因を低減又は回避し、他の治療薬の治療効果を向上する量を含み得る。
【0038】
本明細書で用いられる場合、特に明記しない限り、用語「医薬として許容し得る塩」には、本明細書において提供される化合物内に存在し得る、酸性又は塩基性基の塩が含まれるが、これらに限定されない。特定の酸性条件下では、化合物は、種々の無機及び有機酸を用いて、多種多様の塩を形成することができる。このような塩基性化合物の医薬として許容し得る塩を製造するために用いることのできる酸は、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコニルアニサニル酸塩、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、ヒドロキシナフトエ酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、メチル硫酸塩、ムスケート、ナプシル酸塩、硝酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トリエチオダイド、及びパモ酸塩が含まれるが、これらに限定されない、薬理学的に許容し得るアニオンを含む塩由来のものである。特定の塩基性条件下では、化合物は、種々の薬理学的に許容し得るカチオンを用いて、塩基性塩を形成することができる。このような塩の非限定的例には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、特に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム及び鉄の塩が含まれる。
【0039】
本明細書で用いられる場合、特に明記しない限り、用語「水和物」は、SNS-595又はその塩を意味し、更に、非共有結合分子間力により結合する水の化学量論的又は非化学量論的量が含まれる。SNS-595の水和物は、結晶性又は非結晶性であり得る。
【0040】
本明細書で用いられる場合、特に明記しない限り、用語「溶媒和物」は、本明細書において提供される化合物への1種以上の溶媒分子の会合から形成される溶媒和物を意味する。用語「溶媒和物」には水和物(例えば、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物等)が含まれる。SNS-595の溶媒和物は、結晶性又は非結晶性であり得る。
【0041】
本明細書で用いられる場合、移行句「基本的に〜からなる」は、請求項の範囲を特定の物質に限定し、追加の物質は、実質的に請求項に記載の主題の基本的かつ新規な特徴に影響しない。
【0042】
用語「同時投与」及び「〜と併用して」は、特定の時間の限定なく、同時に、共に、又は順次にのいずれか、2種以上の治療薬(例えば、本明細書において提供されるSNS-595又は組成物、及び他の抗癌剤又は他の活性薬剤)の投与を含む。一実施態様においては、SNS-595及び少なくとも1種の他の薬剤は細胞内又は患者の身体内に同時に存在し、又は同時に生物学的若しくは治療的効果を発揮する。一実施態様においては、治療薬は同じ組成物又は単一剤形中にある。他の実施態様においては、治療薬は、別個の組成物又は単一剤形中にある。
【0043】
用語「対症療法剤」は、SNS-595単独で、又は他の治療剤と組み合わせた治療の不都合な又は望ましくない効果を、処理、予防、管理、低減又は回避する任意の活性薬剤を意味する。具体例は本明細書に記載される。
【0044】
(6.2 SNS-95)
本明細書において提供される併用療法及び組成物を含む、本明細書において提供される方法において用いられる化合物は、SNS-595又はAG-7352としても知られている、鏡像異性的に純粋な(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-(メチルアミノ)-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸である。米国一般名会議(United States Adopted Names Councel)(USANC)により該化合物に与えられた名称は「ボレロキシン」である。
【0045】
SNS-595は、以下の化学構造を有する。
【化1】

【0046】
特定の実施態様においては、SNS-595の医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物又はプロドラッグは、本明細書において提供される方法及び組成物において用いられる。
【0047】
特定の実施態様においては、SNS-595は、基本的に、鏡像異性的に純粋な(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-メチルアミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸からなり、組成物の全質量を基準とし、0.5質量%未満の他の化合物又は不純物を含む組成物として投与される。このような不純物には、チアゾリル-オキソ-ナフチリジン-3-カルボン酸骨格を有する化合物、例えば、(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-ヒドロキシ-4-メチルアミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸、(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-アミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸及び/又は(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-ヒドロキシ-4-アミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸が含まれる。
【0048】
SNS-595は、当業者に公知の方法により、例えば、その全体が引用により本明細書に組み込まれる、2009年12月30日に出願された、米国出願第12/650,390号;国際公開第WO 2007/146335号;米国特許第5,817,669号;及び日本国特許出願平成10年第173986号に記載される方法に従い、製造することができる。SNS-595を含む、特定の例示的な医薬組成物、及びその使用法は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0203120号;第2005/0215583号;第2006/0025437号;第2006/0063795号、第2006/0247267号、並びに2009年9月4日に出願された米国仮出願第61/240,161号、2009年9月4日に出願された第61/240,113号、及び2009年12月18日に出願された第61/288,213号に記載されている。
【0049】
(6.3 治療法)
相同的組換え修復(HRR)の方法は、二重鎖切断(DSB)及び鎖間架橋において作用する、主要なDNA修復経路である。HRRは、複製されるDNA中に存在する損傷のエラーのない除去のためのメカニズムを提供する。従って、HRRは、細胞分裂が起こる前の染色体切断を排除するために、S及びG2チェックポイント機構と協調して、重要な方法で作用する。
Thompsonらの論文、Mutation Research/Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis, 2001, 477, 131-153を参照されたい。
【0050】
BRCA2活性を低下させるBRCA2変異を有する癌細胞は、相同的組換え修復の妨げになっていたと言える。任意の特定の動作理論に拘束されることを意図しないが、SNS-595処理が、これらの細胞におけるHRRの不足のために修復することができない二重鎖DNA切断の数の増加をもたらすことができるので、そのような細胞は、SNS-595による処理に対して大きな感受性を有し得る。同様に、例えば、BRCA2発現を下方制御することにより、細胞中のBRCA2活性が、正常レベルと比較して低下しているなら、このような細胞はSNS-595に対して、より高い感受性を有しているかもしれない。従って、本明細書においては、治療的有効量のSNS-595を投与することにより、対象、例えば、BRCA2変異を有する患者において、癌を治療、予防、又は管理することを含む方法が提供される。特定の実施態様においては、前記方法は、対象、例えば、BRCA2変異を示す患者における、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌及び他の癌の治療を含む。一実施態様においては、癌は、対象、例えば、BRCA2変異を示す患者における乳癌である。
【0051】
特定の実施態様においては、前記方法は、癌細胞がBRCA2変異を示す、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌及び他の癌の治療を含む。一実施態様においては、癌は、癌細胞がBRCA2変異を示す乳癌である。
【0052】
他の態様においては、本明細書においては、対象においてBRCA2変異を診断することを含む、SNS-595により治療するための対象の特定方法が提供される。
【0053】
特定の実施態様においては、本明細書においては、対象、例えば、BRCA2変異を有する患者内の、又は前記患者由来の癌細胞を、治療的有効量のSNS-595と接触させることを含む方法が提供される。一般的に、使用されるSNS-595の量は、二重鎖DNA切断を引き起こすのに効果的である。前記接触は、インビトロ、インビボ又はエクスビボであり得る。一実施態様においては、前記方法は、癌細胞をインビボで接触させることを含む。
【0054】
一実施態様においては、本明細書においては、(a)癌を有する候補者から生物学的試料を得ること;(b)BRCA2変異について、生物学的試料をスクリーニングすること;及び(c)該候補者がBRCA2変異を有している場合に、候補者を、SNS-595により治療するのに適した癌対象として特定することを含む、SNS-595により治療するのに適した癌対象の特定方法が提供される。
【0055】
他の実施態様においては、本明細書においては、複数の癌対象の候補から、SNS-595により治療するのに適した、1人以上の癌対象を特定する方法が提供される。該方法は、SNS-595により治療するのに適した癌対象として、複数の対象からBRCA2変異を有する1人以上の癌対象を特定することを含む。一実施態様においては、1人以上の適切な対象はSNS-595で治療される。
【0056】
一実施態様においては、BRCA2活性レベルが正常範囲である(又は有意に低下していない)、1人以上の被験者は、SNS-595で治療されない。特定の実施態様においては、BRCA2活性レベルが正常範囲である(又は有意に低下していない)全ての対象はSNS-595で治療されない。例えば、BRCA2活性レベルが正常である(又は有意に低下していない)対象は、他の治療法、例えば、その抗癌活性がBRCA2の状態により影響されない化学療法を用いて治療することができる。あるいは、正常又は正常に近いBRCA2活性を有する対象は、異なる治療プロトコール、例えば、BRCA2活性が低下している患者について考えられるよりも、SNS-595の投与量を高い頻度で、又は高い投与量のSNS-595を投与する治療スケジュールを用いてSNS-595により治療することができる。
【0057】
一実施態様においては、BRCA2変異を示さない1人以上の対象はSNS-595で治療されない。特定の実施態様においては、BRCA2変異を示さない全ての対象はSNS-595で治療されない。例えば、BRCA2変異を有しない対象は、他の治療法、例えば、その抗癌活性がBRCA2変異により影響されない化学療法を用いて治療することができる。あるいは、BRCA2変異を有しない対象は、異なる治療プロトコール、例えば、BRCA2変異を有する患者について考えられるよりも、SNS-595の投与量を高い頻度で、又は高い投与量のSNS-595が投与される治療スケジュールを用いてSNS-595により治療することができる。
【0058】
癌細胞内のBRCA2変異は、当該技術分野において公知の任意の適切な方法、例えば、Myriad Genetic Laboratories, Inc社のBRACAnalysis(登録商標)、多重ライゲーション依存性プローブ増幅分析(MPLA)、高解像度融解曲線分析(Dufresneらの論文、Arch Pathol Lab Med,2006,130:185-187、及びTakanoらの論文、BMC Cancer, 2008, 8:59を参照されたい)、タンパク質トランケーション試験(PTT)、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)、及び/又は温度変性高圧液体クロマトグラフィー法(DHPLC)を含む遺伝子配列決定により診断することができる。
【0059】
特定の実施態様においては、BRCA2内の変異は、全てのタンパク質の間に見出すことのできる、小規模の欠失又は挿入である。本明細書において提供される方法は、当業者に公知の任意のBRCA2変異を有する癌対象の治療を含む。このような変異の具体例には、例えば、999del5、6174delT、8803delC、4486delG、5445del5、及び2024del5、763insAT、763insAT、983delACAG、A3058T、3758delACAG、3908delTG、4706delAAAG、5804delTTAA、C6137A、6174delT、6305insA、9132delC、del2352insl2、dup9700、del1518、例えばLomanらの論文、J Natl Cancer Inst, 2001, 93(16):1215-1223;Petoらの論文、J Natl Cancer Inst, 1999, 91(11):943-949;及びWalshらの論文、JAMA, 2006, 295(12): 1379-88に記載されるような他のものが含まれる。
【0060】
特定の理論に拘束されないが、SMS-595は、複製依存DNA損傷、不可逆的G2停止及び迅速なアポトーシスをもたらす、選択的にDNAを挿入すること及びトポイソメラーゼIIを阻害することによる、部位選択的DNA損傷を引き起こすと考えられる。一方、アントラサイクリンをベースとする治療法には、トポイソメラーゼII介在性DNA DSB、並びにDNA付加物の生成、DNA架橋の形成及び活性酸素種(ROS)の産生を含む、非トポイソメラーゼII関連メカニズムを通したDNA-損傷活性が含まれる。Gewirtz Dの論文、Biochem Pharmacol 1999, 57:727-41を参照されたい。
【0061】
SNS-595療法における標的DNA−酵素相互作用は、臨床で用いられている、機構的により乱雑で、高度に挿入的なアントラサイクリンと対照的に位置している(O'Reillyらの論文、Biochemistry 2002, 41 :7989-97;Wang Jの論文、Nat Rev Mol Cell Biol, 2002, 3:430-40)。これらの異なる特徴は、SNS-595誘発性DNA損傷の修復におけるBRCA2の役割が、アントラサイクリン類などのドキソルビシン、又はエトポシドなどのトポイソメラーゼII阻害剤、と関連するデータから直接移動可能でないことを示している。SNS-595に対するBRCA2変異細胞の増感を示す、実施例の項において提供されるデータにより、SNS-595誘発性DNA損傷の修復におけるBRCA2の役割が確認される。
【0062】
特定の実施態様においては、本明細書においては、約10〜100mg/m2の投与量のSNS-595を対象に投与することを含む治療方法が提供される。特定の実施態様においては、前記治療方法は、約10〜100mg/m2、約20〜90mg/m2、約30〜90mg/m2、約40〜90mg/m2、約30〜80mg/m2、約40〜80mg/m2、又は約30〜50mg/m2の投与量を対象に投与することを含む。
【0063】
ある実施態様においては、前記方法は、治療的有効量のSNS-595を、治療的有効量の第二の活性薬剤と組み合わせて対象に投与することを含む。ある実施態様においては、該第二の活性薬剤は、癌抗原に対する治療抗体、造血成長因子、サイトカイン、抗癌剤、抗生物質、cox-2阻害剤、免疫調整剤、免疫抑制剤、コルチコステロイド、又はそれらの薬理学的に活性な変異体又は誘導体である。他の実施態様においては、該第二の活性薬剤は、アルキル化剤、抗腫瘍性抗生物質、代謝拮抗剤、白金配位錯体、トポイソメラーゼII阻害剤又は毒、CDK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、紡錘体毒、分裂抑制因子、トポイソメラーゼI阻害剤、ニトロソウレア、無機イオン錯体、酵素、ホルモン及びホルモン類似体、EGFR阻害剤、抗体又は抗体誘導体、IMID、HDAC阻害剤、Bcl-2阻害剤、VEGF-刺激チロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR阻害剤、プロテアソーム阻害剤、アロマターゼ阻害剤、PARP阻害剤、デキサメタゾン又は放射線である。
【0064】
(6.3.1 対象)
本明細書において提供される方法の特定の実施態様においては、治療される対象は動物、例えば、哺乳動物又は非ヒト霊長類である。特定の実施態様においては、対象はヒト患者である。対象は男性又は女性であってもよい。
【0065】
特に、本明細書において提供される治療法による治療の影響を受けやすい対象には、乳癌、卵巣癌、膵臓癌又は前立腺癌を患い、BRCA2活性が低下した対象が含まれる。特定の実施態様においては、対象は乳癌を患っている。特定の実施態様においては、乳癌は、以前の治療に抵抗性で、及び/又は再発性である。BRCA2活性の低下は、当業者に公知である、任意のBRCA2変異と関連しているかもしれない。多くの実施態様においては、BRCA2変異は、種々の機構的形態で明らかになり得る、BRCA2の活性が低下する変異である。例えば、該変異はBRCA2の発現、すなわち、細胞内で産生されるBRCA2タンパク質の量を低下させるか、又は該変異は、タンパク質の生物学的活性、例えば、他のタンパク質若しくは核酸とBRCA2との相互作用、又はBRCA2タンパク質の酵素活性を低下させ得る。BRCA2変異、又は活性の欠失は、当業者により適切であると考えられる任意の方法により患者内で診断することができる。例示的な方法は、Oncogene, 1998, 16(23): 3069-82、Kuznetsovらの論文、Nature Medicine, 2008, 14, 875-881、Dufresneらの論文、Arch Pathol Lab Med, 2006,130:185-187、及びTakanoらの論文、BMC Cancer, 2008, 8:59に記載されている。
【0066】
対象の年齢にかかわらず、対象を治療する方法も含まれるが、いくつかの疾患又は障害は、特定の年齢層に多く見られる。ある実施態様においては、対象は少なくとも18歳のヒト患者である。ある実施態様においては、患者は、10、15、18、21、24、35、40、45、50、55、65、70、75、80、又は85歳又はそれ以上である。
【0067】
ある実施態様においては、前記方法は、少なくとも50歳の患者における使用を見出したが、より若い患者は、同様に前記方法から利益を得ることができた。他の実施態様においては、患者は、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳である。特定の実施態様においては、本明細書において提供される方法は、年齢を問わず、早期発症型(50歳以前)乳癌、又は早期発症型の乳癌及び卵巣癌の個人歴を有する女性患者において有用である。他の実施態様においては、患者は女性であり、乳癌、又は乳癌及び卵巣癌の家族歴を有する。他の実施態様においては、患者は、男性乳癌の個人歴又は家族歴を有する男性である。
【0068】
特定の実施態様においては、本明細書において提供される方法は、以前に癌の治療を受けていない対象の治療を含む。他の実施態様においては、前記方法は、以前に治療を受けたが、標準的治療法に対して非応答性である患者、並びに現在癌の治療を受けている患者の治療を含む。例えば、対象は、当業者に公知の、癌についての標準的治療計画による治療を以前に受けたか、又は現在治療を受けている。
【0069】
ある実施態様においては、対象は以前にSNS-595による治療を受けていない。ある実施態様においては、対象は以前にSNS-595による治療を受けている。
【0070】
(6.3.2 投与量)
特定の代表的実施態様においては、本明細書において提供される、癌の治療、予防又は管理方法は、任意の許容される投与経路により、有効量のSNS-595を対象に投与することを含む。一般的に、前記方法は、体表面積を基準とし、対象に、約10〜100mg/m2の投与量のSNS-595を投与することを含む。他の実施態様においては、前記方法は、約20〜90mg/m2の投与量のSNS-595を投与することを含む。他の実施態様においては、前記方法は、約40〜90mg/m2の投与量のSNS-595を投与することを含む。他の実施態様においては、前記方法は、約30〜50mg/m2の投与量のSNS-595を投与することを含む。他の実施態様においては、前記方法は、約30〜90mg/m2の投与量のSNS-595を投与することを含む。他の実施態様においては、前記方法は、約40〜90mg/m2の投与量のSNS-595を投与することを含む。他の実施態様においては、前記方法は、約30〜80mg/m2の投与量のSNS-595を投与することを含む。他の実施態様においては、前記方法は、約40〜80mg/m2の投与量のSNS-595を投与することを含む。
【0071】
一実施態様においては、SNS-595は、1日に、約10、15、18、21、24、25、27、30、35、40、45、48、50、55、60、63、70、72、75、80、85、90、95、又は100mg/m2の量(この量は単一又は分割投与により与えてもよい)で静脈内に投与される。
【0072】
癌の治療における熟練した医師は、通常、投与される活性成分への対象の曝露の概算を可能にする投与単位を使用する。任意の適切な投与単位を使用することができる。
【0073】
例えば、用いられる投与単位は、体表面積の計算に基づくおおよその露出であってもよい。ヒト被験者についての体表面積(BSA)の計算は、例えば、下記Mostellerの式を用いて計算することができる。
BSA(m2)=[(身長(cm)×体重(kg)/3600]1/2
最も一般的な、このような投与単位は、体表面積1平方メートルあたりの活性化合物のmgである(mg/m2)。
【0074】
他の例として、SNS-595の投与量は、mg/m2以外の単位で表すことができる。例えば、投与量は、体重1キログラムあたりの活性化合物のミリグラムとして表すことができる(mg/kg)。当業者は、患者の身長及び/又は体重を与えられると、どのように患者投与量をmg/m2からmg/kgへ変換するかが容易に分かるであろう(http://www.fda.gov/cder/cancer/animalframe.htmを参照されたい)。例えば、65kgのヒトについて1〜30mg/m2の投与量は、0.026〜0.79mg/kgとほぼ等しい。他の投与単位も使用することができる。
【0075】
特定の実施態様においては、SNS-595の投与量は、1回の急速投与(例えば、静脈注射)として、又は長期間にわたって(例えば、持続点滴又は周期的な急速投与)送達することができる。SNS-595の投与は、対象が疾患の安定若しくは退行を経験するまで、又は対象が疾患の進行若しくは許容できない毒性を経験するまで繰り返すことができる。疾患の安定又はその欠如は、当該技術分野において公知の方法、例えば、症状の評価、理学的検査、及び他の通常に受け入れられるパラメータにより判定される。
【0076】
本明細書において提供される方法により投与されるSNS-595の量は、種々の要因、例えば、治療される対象の健康全般、障害の重症度又は障害の症状、投与される活性成分、投与方法、投与頻度、他の薬剤の存在、並びに処方医の判断に依存するであろう。投与される量は、医師により経験的に決定することができる。
【0077】
ある実施態様においては、投与頻度は、ほぼ毎日の投与から、ほぼ毎月の投与までの範囲である。特定の実施態様においては、投与は1日に1回、1日おき、連続3日間、連続4日間、1及び4日目、1及び2日目、1及び3日目、週1回、週2回、週3回、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回である。一実施態様においては、本明細書において提供される医薬組成物は、3週間にわたり1週間に1回投与される。他の実施態様においては、本明細書において提供される医薬組成物は、3週間に1回投与される。一実施態様においては、本明細書において提供される医薬組成物は、3週間に1回投与される。他の実施態様においては、本明細書において提供される医薬組成物は、4週間に1回投与される。
【0078】
特定の実施態様においては、SNS-595は、1以上の投与サイクルで対象に投与される。サイクリング療法は、1種以上の投与量のSNS-595の投与、それに続く休止期間、この投与/休止サイクルの繰り返しを含む。サイクリング療法は、1種以上の療法に対する耐性の発生を減少し、1種以上の療法の副作用を回避又は減少し、及び/又は治療の効果又は持続期間を向上し得る。
【0079】
従って、一実施態様においては、SNS-595の投与量を、投与の間に約1〜30日の休止期間を伴う、3〜6週のサイクルにおいて、週1回投与する。ある実施態様においては、待機期間は14日であり、1日目に最初の投与を実施し、次の投与は15日目に実施される。従って、このようなケースにおける治療は、「14日サイクル」を用いると言ってもよい。ある実施態様においては、投与は、28日離れて、すなわち28日サイクルで実施することができる。
【0080】
他の実施態様においては、投与方法はサイクルを含み、該サイクルは、3週間にわたり、1週間に1回、SNS-595の投与量を被験者に投与し、次いで、少なくとも14日間、化合物又は組成物を対象に投与せず、このサイクルを複数回繰り返すことを含む。他の実施態様においては、化合物又は組成物を投与しない期間は18日である。他の実施態様においては、化合物又は組成物を投与しない期間は21日である。他の実施態様においては、化合物又は組成物を投与しない期間は28日である。投与サイクルの頻度、回数及び長さは増加し、又は減少することができる。
【0081】
一実施態様においては、本明細書において提供される方法は:i)SNS-595の投与量、例えば、約40〜90mg/m2を対象に投与すること;ii)対象に少しもSNS-595を投与しないで、少なくとも6日間待機すること;及びiii)SNS-595の他の投与量、例えば、約40〜90mg/m2のSNS-595を対象に投与することを含む。一実施態様においては、工程ii)〜iii)を複数回繰り返す。
【0082】
一実施態様においては、本明細書において提供される方法は:i) SNS-595の投与量、例えば、約30〜50mg/m2を対象に投与すること;ii) 対象に少しもSNS-595を投与しないで、少なくとも6日間待機すること;及びiii) SNS-595の他の投与量、例えば、約30〜50mg/m2のSNS-595を対象に投与することを含む。一実施態様においては、工程ii)〜iii)を複数回繰り返す。
【0083】
他の実施態様においては、前記方法は、約40mg/m2、約45mg/m2、約48mg/m2、約50mg/m2、約60mg/m2、約72mg/m2、約75mg/m2、約80mg/m2、又は約90mg/m2のSNS-595を、前記工程i)及びiii)のそれぞれにおいて投与することを含む。
【0084】
他の実施態様においては、本明細書においては、約48mg/m2の投与量のSNS-595を対象に3週間に1回投与することを含む、BRCA2活性が低下した乳癌対象の治療方法が提供される。他の実施態様においては、本明細書においては、約60mg/m2の投与量のSNS-595を対象に3週間に1回投与することを含む、BRCA2変異を有する乳癌対象の治療方法が提供される。他の実施態様においては、本明細書においては、約75mg/m2の投与量のSNS-595を対象に3週間に1回投与することを含む、BRCA2変異を有する乳癌対象の治療方法が提供される。
【0085】
特定の実施態様においては、投与方法は、2週間にわたり、1週間に2回、SNS-595の投与量を対象に投与することを含む(1、4、8及び11日目に投与)。他の実施態様においては、投与方法は、SNS-595の投与量を、対象に1週間に1回投与することを含む。他の実施態様においては、投与方法は、SNS-595の投与量を、対象に2週間に1回投与することを含む。他の実施態様においては、投与方法は、SNS-595の投与量を、対象に3週間に1回投与することを含む。他の実施態様においては、投与方法は、SNS-595の投与量を、対象に4週間に1回投与することを含む。
【0086】
一実施態様においては、約40〜80mg/m2の投与量のSNS-595が、対象に3週間に1回投与され、3週間の期間は治療サイクルを含み、該治療サイクルは少なくとも1回繰り返される。他の実施態様においては、前記方法は、約40〜80mg/m2の投与量のSNS-595を、対象に4週間に1回投与することを含み、4週間の期間は治療サイクルを含み、該治療サイクルは少なくとも1回繰り返される。他の実施態様においては、前記方法は、約48mg/m2の投与量のSNS-595を、対象に3週間に1回投与することを含み、3週間の期間は治療サイクルを含み、該治療サイクルは少なくとも1回繰り返される。他の実施態様においては、前記方法は、約60 mg/m2の投与量のSNS-595を、対象に4週間に1回投与することを含み、4週間の期間は治療サイクルを含み、該治療サイクルは少なくとも1回繰り返される。他の実施態様においては、前記方法は、約75mg/m2の投与量のSNS-595を、対象に4週間に1回投与することを含み、4週間の期間は治療サイクルを含み、該治療サイクルは少なくとも1回繰り返される。
【0087】
一実施態様においては、前記方法は、約40〜80mg/m2の投与量のSNS-595を、対象に1週間に1回投与することを含み、1週間の期間は治療サイクルを含み、該治療サイクルは、少なくとも2回、又は少なくとも3回繰り返される。他の実施態様においては、前記方法は、約30〜50mg/m2の投与量のSNS-595を、対象に1週間に2回投与することを含み、1週間の期間は治療サイクルを含み、該治療サイクルは、少なくとも2回繰り返される。他の実施態様においては、前記投与量は、1週間に1回、約50mg/m2のSNS-595であり、1週間の期間は治療サイクルを含み、該治療サイクルは、少なくとも3回繰り返される。他の実施態様においては、前記投与量は、1週間に1回、約60mg/m2のSNS-595であり、1週間の期間は治療サイクルを含み、該治療サイクルは、少なくとも3回繰り返される。他の実施態様においては、前記投与量は、1週間に1回、約72mg/m2のSNS-595であり、1週間の期間は治療サイクルを含み、該治療サイクルは、少なくとも3回繰り返される。他の実施態様においては、前記方法は、約40mg/m2の投与量のSNS-595を、対象に1週間に2回投与することを含み、1週間の期間は治療サイクルを含み、該治療サイクルは、少なくとも2回繰り返される。
【0088】
本明細書に記載される全ての方法及び投与量は、癌又は前癌状態の治療又は予防に適用される。
【0089】
(6.6.6 追加の活性薬剤)
SNS-595、及びSNS-595を含む医薬組成物を、他の活性薬剤又は医療処置を補足的に組み合わせる治療法において使用し得ることも認識されるであろう。
【0090】
SNS-595及びその医薬組成物は、1種以上の所望の活性薬剤又は医療処置と同時に、前に、又はそれに続いて投与することができる。投与計画と組み合わせて使用するための、治療(薬剤又は処置)の特定の組合せは、所望の治療及び/又は処置の適合性、並びに達成するための所望の治療効果を考慮に入れるであろう。使用される治療法が、同じ障害について所望の効果を達成し(例えば、SNS-595は、同じ障害を治療するために用いられる他の活性薬剤と同時に投与することができる)、又はそれらが異なる効果(例えば、任意の副作用の制御)を達成し得ることも認識されるであろう。このような薬剤及び処置の非限定的な例には、手術、放射線療法(例えば、ガンマ−放射線、中性子ビーム放射線、電子線照射線、陽子線治療、小線源療法、及び全身放射線同位元素)、内分泌療法、生物反応修飾物質(インターフェロン、インターロイキン、及び少数の例に命名した腫瘍壊死因子(TNF))、温熱療法及び凍結療法、任意の副作用を減衰する薬剤(例えば、鎮吐薬)、及び認可された他の化学療法抗癌剤が含まれる。
【0091】
SNS-595と組み合わせ、第二の活性薬剤として用いることのできる化学療法抗癌剤の例には、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート)、オーロラキナーゼ阻害剤(例えば、SNS-314)、プリンアンタゴニスト及びピリミジンアンタゴニスト(例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン)、紡錘体毒(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビンなどのビンカアルカロイド)、分裂抑制因子(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、タキソテールなどのタキサン)、トポイソメラーゼII阻害剤又は毒(例えば、エトポシド、テニポシドなどのエピポドフィロトキシン;例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシンなどのアントラサイクリン、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン)、抗腫瘍性抗生物質(例えば、ブレオマイシン、マイトマイシン、アフィディコリン;ミトキサントロンなどのアントラセンジオン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンなどの白金錯体)、酵素(例えば、アスパラギナーゼ)、ホルモン及びホルモン類似体(例えば、タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、メゲストロール)、EGFR(Herl、ErbB-1)阻害剤(例えば、ゲフィチニブ)、抗体(例えば、ベバシズマブ、リツキシマブ)、抗体誘導体(例えば、ラニビズマブ)、IMID(例えば、サリドマイド、レナリドミド)、HDAC阻害剤(例えば、ボリノスタット)、Bcl-2阻害剤(例えば、オブリメルセン)、VEGF-刺激チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ、スニチニブ)、VEGFR阻害剤(例えば、トラスツズマブ)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、サイクリン−依存性キナーゼ(cdk)阻害剤(例えば、SNS-032、セリシクリブ)、PARP阻害剤(例えば、BSI- 201)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール)、トラベクチジン、及びデキサメタゾンが含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
一実施態様においては、SNS-595と組み合わせて第二の活性薬剤として用いることのできる化学療法抗癌剤の例には、ドセタキセル、ビノレルビン、カペシタビン、ドキソルビシン、ゴセレリン、ゾレドロン酸、パクリタキセル、パミドロネート、アナストロゾール、エキセメスタン、シクロホスファミド、エピルビシン、フルベストラント、レトロゾール、ゲムシタビン、ロイプロリド、フィルグラスチム(G-CSF又は顆粒球コロニー刺激因子)、トレミフェン、タモキシフェン、アナストロゾール、デクスラゾキサン、トラスツズマブ、ペグフィルグラスチム、エポエチンアルファ、及びダルベポエチンアルファが含まれる。特定の実施態様においては、SNS-595は、1種以上のこれらの治療薬と組合せて、乳癌の治療に用いることができる。
【0093】
一実施態様においては、治療薬は、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、トポテカン、アルトレタミン、トラベクチジン、及びシクロホスファミドから選択される。特定の実施態様においては、SNS-595は、1種以上のこれらの薬剤と組合せて、卵巣癌の治療に用いることができる。
【0094】
一実施態様においては、第二の治療薬は、ミトキサントロン、プレドニゾン、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラムスチン、ドキソルビシン、ゴセレリン、ロイプロリド、及びデガレリクスから選択される。特定の実施態様においては、SNS-595は、1種以上のこれらの薬剤と組合せて、前立腺癌の治療に用いることができる。
【0095】
SNS-595と組み合わせて用いることのできる、いくつかの特定の抗癌剤には、カルボプラチン、シスプラチン、ゲムシタビン、及びそれらの任意の2種以上の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
一実施態様においては、追加の活性薬剤は対症療法剤、例えば、鎮吐薬又は癌防御剤(chemoprotectant agent)である。特定の鎮吐薬には、フェノチアジン、ブチロフェノン、ベンゾジアザピン、コルチコステロイド、セロトニンアンタゴニスト、カンナビノイド、及びNK1受容体アンタゴニストが含まれるが、これらに限定されない。フェノチアジン鎮吐薬の例には、プロクロルペラジン及びトリメトベンズアミドが含まれるが、これらに限定されない。ブチロフェノン鎮吐薬の例には、ハロペリドールが含まれるが、これに限定されない。ベンゾジアザピン鎮吐薬の例には、ロラゼパムが含まれるが、これに限定されない。コルチコステロイド鎮吐薬の例には、デキサメタゾンが含まれるがこれに限定されない。セロトニン受容体(5-HT3受容体)アンタゴニスト鎮吐薬の例には、メシル酸ドラセトロン(例えば、Anzemet(登録商標))、グラニセトロン(例えば、Kytril(登録商標))、イタセトロン、オンダンセトロン(例えば、Zofran(登録商標))、パロノセトロン(例えば、Aloxi(登録商標))、ラモセトロン、トロピセトロン(例えば、Navoban(登録商標))、バタノプリド、ダゾプリド、レンザプリドが含まれるが、これらに限定されない。カンナビノイド鎮吐薬の例には、ドロナビノールが含まれるが、これに限定されない。NK1受容体アンタゴニストの例には、アプレピタント(例えば、Emend(登録商標))が含まれるが、これに限定されない。
【0097】
他の対症療法剤には、癌防御剤、例えば、アミホスチン(例えば、Ethyol(登録商標))、デキスラゾキサン(例えば、Zinecard(登録商標))、ロイコボリン(フォリン酸)、及びメスナ(例えば、Mesnex(登録商標));血小板新生成長因子(thrombopoeitic growth factors)、例えば、インターロイキン-11(IL-11、オプレルベキン、例えば、Neumega(登録商標));ビスホスホネート、例えば、パミドロン酸二ナトリウム(例えば、Aredia(登録商標))、エチドロン酸二ナトリウム(例えば、Didronel(登録商標))及びゾレドロン酸(例えば、Zometa(登録商標));及びTNFアンタゴニスト、例えば、インフリキシマブ(例えば、Remicade(登録商標))が含まれる。
【0098】
特定の実施態様においては、SNS-595の投与は、腫瘍崩壊症候群又はその構成症状(component symptoms)を軽減又は予防するための1種以上の対症療法治療と組み合わせて実施される。 TLS(又は、高カリウム血症、高リン酸血症、高尿酸血症、高カルシウム血症、及び急性腎不全を含む、それらの症状にいずれか)を予防又は軽減するのに適した治療法には、例えば、アロプリノール(例えば、Zyloprim(登録商標))、ラスブリカーゼ(例えば、Elitek(登録商標))、及びポリスチレンスルホン酸ナトリウム(例えば、Kayexalate(登録商標))が含まれる。白血球除去輸血は、例えば、SNS-595による最初の治療の後、72時間以内に実施することができる。
【0099】
(6.4 他の活性薬剤との併用療法)
特定の実施態様においては、本明細書において提供される方法は、1種以上の他の活性薬剤と組合せ、及び/又は放射線療法若しくは手術と組み合せ、本明細書において提供されるSNS-595又は医薬組成物を投与することを含む。
【0100】
対象へのSNS-595及び追加の活性薬剤の投与は、同一又は異なる投与経路により、同時に又は連続的に実施することができる。特定の活性薬剤について使用される特定の投与経路の適合性は、活性薬剤自体(例えば、血流に入る前に分解せずに経口投与できるかどうか)、及び治療される疾患に依存するであろう。このような他の活性薬剤のための投与の推奨される経路は当業者に公知である。例えば、医師用卓上参考書(Physicians' Desk Reference)(63版、2009)(本明細書において、以下、「医師用卓上参考書」という)を参照されたい。
【0101】
一実施態様においては、第二の活性薬剤は、約1〜約1,000mg、約5〜約500mg、約10〜約375mg、又は約50〜約200mgの量で、1日に1回又は2回、静脈内又は皮下に投与される。
【0102】
他の実施態様においては、本明細書においては、手術、免疫療法、生物学的療法、放射線療法、又は癌を治療、予防若しくは管理するための現在用いられている、他の薬剤をベースとしない治療法を含むが、これらに限定されない従来の治療法と組合せ(例えば、前、間又は後に)、SNS-595を投与することを含む、BRCA2変異を有する対象における、癌の治療、予防及び/又は管理方法が提供される。
【0103】
一実施態様においては、SNS-595は、単独で、又は従来の治療法の使用の前に、間に、若しくは後に、本明細書に開示される第二の活性薬剤と組合せ、約10〜100mg/m2、約20〜90mg/m2、約30〜80mg/m2、約40〜80mg/m2、約40〜90mg/m2、約30〜90mg/m2、又は約30〜50mg/m2の量で投与することができる。
【0104】
一実施態様においては、第二の薬剤は、カルボプラチン、シスプラチン、ゲムシタビン、及びそれらの2種以上の組合せからなる群から選択される。
【0105】
一実施態様においては、併用療法は、SNS-595及びカルボプラチンの投与を含む。一実施態様においては、併用療法は、SNS-595及びシスプラチンの投与を含む。一実施態様においては、併用療法は、SNS-595及びゲムシタビンの投与を含む。
【0106】
一実施態様においては、提供される前記方法は、約5mg/m2〜約200mg/m2のシスプラチンと組み合わせて、SNS-595を投与することを含む。例えば、一実施態様は、約50又は70mg/m2の投与量で、3〜4週間に1回シスプラチンを投与することを含む。一実施態様は、約50又は70mg/m2の投与量で、3週間に1回シスプラチンを投与することを含む。他の実施態様は、約75又は100mg/m2の投与量で、3週間に1回シスプラチンを投与することを含む。他の実施態様においては、シスプラチンの投与は、約20mg/m2の投与量で、毎日、5日以内である。シスプラチンの投与は、静脈内注射、静注、急速投与法又は皮下注射により実施することができる。一実施態様においては、シスプラチンの投与は、3〜4週間に1回であるが、SNS-595の投与は、3週間にわたり1週間に1回、又は3週間に1回である。
一実施態様においては、シスプラチンの投与は、5日にわたり毎日であるが、SNS-595の投与は、3週間にわたり1週間に1回、又は3週間に1回である。一実施態様においては、シスプラチンの投与は、3週間にわたり1週間に1回であるが、SNS-595の投与は、3週間にわたり1週間に1回、又は3週間に1回である。
【0107】
一実施態様においては、提供される方法は、約50mg/m2〜約400mg/m2のカルボプラチンと組合せ、SNS-595を投与することを含む。例えば、一実施態様は、約300又は約360mg/m2の投与量で、3週間に1回、カルボプラチンを投与することを含む。一実施態様は、約300又は360mg/m2の投与量で、4週間に1回、カルボプラチンを投与することを含む。カルボプラチンの投与は、静脈内注射、静注、急速投与法又は皮下注射により実施することができる。一実施態様においては、カルボプラチンの投与は、3週間に1回であるが、SNS-595の投与は、3週間にわたり1週間に1回、又は3週間に1回である。一実施態様においては、カルボプラチンの投与は、3週間にわたり1週間に1回であるが、SNS-595の投与は、3週間にわたり1週間に1回、又は3週間に1回である。
【0108】
一実施態様においては、提供される方法は、約100mg/m2〜約1500mg/m2のゲムシタビンと組合せ、SNS-595を投与することを含む。例えば、一実施態様は、約1000〜1250mg/m2の投与量で、少なくとも4週間にわたり1週間に1回、ゲムシタビンを投与することを含む。ゲムシタビンの投与は、静脈内注射、静注、急速投与法又は皮下注射により実施することができる。一実施態様においては、ゲムシタビンの投与は、1週間に1回で4週間以内であるが、SNS-595の投与は、3週間にわたり1週間に1回、又は3週間に1回である。一実施態様においては、ゲムシタビンの投与は、2週間にわたり1週間に2回であるが、SNS-595の投与は3週間にわたり1週間に1回である。
【0109】
特定の実施態様においては、第二の活性薬剤は、SNS-595と同時に投与されるか、又は1〜50時間遅れて投与される。特定の実施態様においては、SNS-595が最初に投与され、次いで第二の活性薬剤が1〜50時間遅れて投与される。他の実施態様においては、第二の薬剤が最初に投与され、次いでSNS-595が1〜50時間遅れて投与される。ある実施態様においては、遅延は24時間である。
【0110】
他の実施態様においては、本明細書において提供される方法は:a)約10〜100mg/m2の投与量のSNS-595を、BRCA2変異を有する癌対象に投与すること、及びb)治療的有効量の対症療法剤を対象に投与することを含む。
【0111】
対症療法剤は、その薬物についての適切な投薬計画に従って投与される。例えば、吐き気を治療するための種々の対症療法剤は、種々の投薬計画を有している。このような薬剤のいくつかは予防的に投与されるが、他のものは、本明細書において提供される化合物又は組成物と同時に投与され、更に他のものは、SNS-595の投与後に投与される。対症療法剤、それらの投与量及び投薬計画の具体例は、医師用卓上参考書に記載されている。いくつかの具体的な対症療法剤は、引用によりその全体が、本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2006-0025437号に開示されている。
【0112】
(6.5 医薬組成物及び剤形)
本明細書において提供される方法は、SNS-595、及び医薬として許容し得る担体、例えば、希釈剤、又はアジュバントとを含むか、又は他の活性成分、例えば他の抗癌剤と組み合わせて含む医薬組成物を用いる。臨床診療においては、SNS-595は、経口、非経口、直腸又は吸入(例えば、エアロゾルの形態)を含むが、これらに限定されない、任意の標準的経路により投与することができる。非経口剤形は、皮下、静脈内(急速投与を含む)、筋肉内、及び動脈内が含まれるが、これらに限定されない種々の経路により対象に投与することができる。それらの投与は、通常、汚染物質に対する対象の自然免疫能を回避するので、非経口剤形は無菌であり、又は対象への投与前に滅菌することができる。非経口剤形の例には、注射の準備のできている溶液、注射用の医薬として許容し得る媒体に溶解又は懸濁する準備のできている乾燥製品、注射の準備ができている懸濁液、及びエマルションが含まれるが、これらに限定されない。一実施態様においては、SNS-595はIV注射により投与される。
【0113】
非経口投与用医薬組成物は、エマルション又は均質溶液であってもよい。非経口剤形を提供するために用いることのできる適切な媒体は、当業者に周知である。具体例には:注射用水USP;水性媒体、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム注射液、及び乳酸リンゲル注射液(これらに限定されない);水混和性媒体、例えば、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール(これらに限定されない);非水性媒体、例えば、石油、動物の油、例えばピーナツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油のような、植物又は合成起源の油(これらに限定されない);オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルが含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
これらの医薬組成物は、アジュバント、特に、湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散剤、及び安定化剤を含んでいてもよい。滅菌は、種々の方法により、例えば、0.2ミクロンのフィルターを用い、放射線又は加熱により実施することができる。レミントンの薬学(Remington 's Pharmaceutical Sciences)、21版、Mack Publishing, Easton, PA (2005)(本明細書において、以下、「レミントンの薬学」という)を参照されたい。それらは、使用時に無菌水又は他の注射用無菌媒体に溶解することのできる、無菌の固体医薬組成物の形態で製造することもできる。
【0115】
医薬組成物は、個々の単一の単位製剤の調製品において用いることができる。医薬組成物及び剤形は、化合物及び1種以上の賦形剤を含む。
【0116】
医薬組成物及び剤形は、1種以上の追加の活性成分を含んでいてもよい。任意の第二又は追加の活性成分の例は、本明細書に開示されている。
【0117】
特定の実施態様においては、本明細書において提供される医薬組成物は、単一の単位剤形である。本明細書において提供される医薬組成物及び単一の単位剤形は、予防的又は治療的有効量の化合物又は組成物と、典型的には1種以上の薬理学的に許容し得る担体又は賦形剤とを含む。用語「担体」は、治療薬とともに投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントのアジュバント(完全及び不完全))、賦形剤、又は媒体を意味する。適切な医薬担体の例は、レミントンの薬学に記載されている。
【0118】
標準的な医薬組成物及び剤形は、1種以上の賦形剤を含む。適切な賦形剤は、薬学の分野における当業者に周知であり、適切な賦形剤の非限定的な例には、デンプン、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、粉スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等が含まれる。特定の賦形剤が、医薬組成物又は剤形に取り入れるのに適しているかどうかは、剤形が対象に投与されるであろう方法、及び剤形中の特定の活性成分が含まれるが、これらに限定されない、当業者に周知の種々の要因に依存する。所望であれば、医薬組成物又は単一の単位剤形は、少量の湿潤剤、乳化剤、又はpH緩衝剤を含んでいてもよい。
【0119】
本明細書に開示される1種以上の活性成分の溶解度を上昇させる化合物を、非経口剤形に取り込んでもよい。例えば、活性成分の溶解度を上昇させるために、シクロデキストリン及びその誘導体を用いることができる。例えば、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,134,127号を参照されたい。
【0120】
医薬組成物又は剤形のpHは、1種以上の活性成分の送達を向上させるために調整してもよい。同様に、送達を向上させるために、溶媒担体の極性、そのイオン強度又は浸透圧を調整することができる。送達を向上させるように、1種以上の活性成分の親水性又は親油性を有利に変化させるために、医薬組成物又は剤形に、ステアリン酸塩等の化合物を加えてもよい。この点において、ステアリン酸塩は、製剤の脂質媒体として、乳化剤又は界面活性剤として、及び送達向上剤又は浸透向上剤としての機能を果たし得る。活性成分の種々の塩、水和物又は溶媒和物を、得られる医薬組成物の性質を更に調整するために用いることができる。
【0121】
本明細書においては、更に、活性成分を分解する速度を低下させる、1種以上の化合物を含む医薬組成物及び剤形が提供される。本明細書において、「安定化剤」と言及される、そのような化合物には、アスコルビン酸などの抗酸化剤、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
医薬組成物及び単一の単位剤形は、溶液、懸濁液、エマルション、粉末等の形態をとることができる。このような組成物及び剤形は、特定の実施態様においては、対象への適切な投与のための剤形を提供するように、純粋な形態で、適量の担体と一緒に、予防的又は治療的有効量の予防又は治療薬を含むであろう。製剤は投与方法に適合させるべきである。一実施態様においては、医薬組成物又は単一の単位剤形は無菌であり、ヒト又は他の対象への投与に適した形態である。
【0123】
本明細書において提供される医薬組成物は、意図する投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口経路(すなわち、消化管を通るもの以外)、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、吸入、鼻腔内、経皮、局所、経粘膜、腫瘍内、及び滑膜内投与が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施態様においては、組成物は、ヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、鼻腔内又は局所投与に適合する医薬組成物として、通常の方法により製剤化される。特定の実施態様においては、医薬組成物は、ヒトへの皮下投与のために、通常の方法により製剤化される。一実施態様においては、静脈内投与のための医薬組成物は、無菌等張水バッファー中の溶液である。必要に応じ、医薬組成物は、可溶化剤、及び注射部位における痛みを軽減するためのリグノカイン等の局所麻酔薬を含んでいてもよい。
【0124】
剤形の例には、対象への非経口投与に適した液状剤形;対象への非経口投与に適した液状剤形を提供するのに再構築することのできる無菌固固体(例えば、結晶性又は非晶質固体)が含まれるが、これらに限定されない。具体的な固形製剤は凍結乾燥固体である。
【0125】
本明細書において提供される医薬組成物、剤形の形状及びタイプは、一般的に、それらの用途に依存して変化するであろう。例えば、疾患の初期治療において用いられる剤形は、同じ感染症の維持療法において用いられる剤形が含まれるよりも、大量の1種以上の活性成分を含んでいてもよい。同様に、非経口剤形は、同じ疾患又は障害を治療するために用いられる経口剤形が含むよりも、少量の1種以上の活性成分を含んでいてもよい。本明細書に包含される特定の剤形がお互いに変化する方法、及び他の方法は、当業者に容易に明らかであろう。例えば、レミントンの薬学を参照されたい。
【0126】
一般的に、本明細書において提供される医薬組成物の成分は、単位剤形中、別々に、又は一緒に混合して供給され、例えば、活性薬剤の量を示すアンプル又はサシェ剤等の密封容器内に、凍結乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として供給される。医薬組成物を、輸液により投与する場合、無菌の医薬品グレードの水又は食塩水を含む点滴ボトルに分注することができる。医薬組成物を注射により投与する場合、無菌の注射用水又は食塩水のアンプルは、投与前に成分を混合するように供給することができる。一実施態様においては、本明細書において提供される剤形は、約10〜100mg/m2/日又は/週の範囲内のSNS-595投与量の投与を可能にするために十分量のSNS-595を含み、任意に食物と共に与えられ、1日を通して、1日に1回又は分割投与として与えられる。
【0127】
特定の実施態様においては、本明細書において提供される医薬剤形は、SNS-595を含む一次容器を有する。特定の実施態様においては、該一次容器は不透明の二次容器内にある。一実施態様においては、該一次容器はガラス瓶、例えば透明なガラス瓶であり、該二次容器は、不透明な金属箔をまいたポーチ、例えば不透明なアルミホイルをまいたポーチを含む、不透明な箔をまいたポーチである。一実施態様においては、本明細書において提供される医薬剤形は、SNS-595を含む透明なガラス瓶を含み、ここで、該透明なガラス瓶は不透明なアルミホイルでまいたポーチ内にある。更に、具体的な医薬剤形は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2008/016668に記載されたものを含む。一実施態様においては、本明細書において提供される剤形は、約1〜2000、1〜1000、1〜500、1〜300、1〜100又は1〜50mgのSNS-595を含む。本明細書において提供される、特定の剤形は、約10、15、18、21、24、25、30、40、48、50、60、70、72、75、80、90、100、150、200、300又は500mgのSNS-595を含む。
【0128】
前記詳細な説明及び添付する実施例は単に説明のためのものであり、本発明の主題の範囲を限定するものとして解釈してはならない。開示された実施態様に対する種々の変形及び変更は当業者に明らかであろう。本明細書において提供される使用法に関するものを制限することなしに、このような変形及び変更は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなくなされ得る。本明細書において言及された特許、特許出願公開、及び他の刊行物は、引用により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0129】
(7. 実施例)
請求項に記載された主題の特定の実施態様を、以下の非限定的な例により説明する。
【0130】
以下の細胞系を、本明細書に開示される実施例において用いた。全ての細胞系は、9%ウシ胎児血清及びペニシリン−ストレプトマイシン(90U/mL)(DMEM)を添加した、グルベッコ変法イーグル培地内で、37℃及び5%CO2雰囲気下に培養した。
【0131】
SPD8細胞系は、hprt遺伝子内に自然に派生した変異を有し、V79チャイニーズハムスター線維芽細胞系由来の6-チオグアニン(6TG)耐性クローンとして分離した。hprt遺伝子内の変異は、機能しないHPRTタンパク質の発現をもたらす、エクソン7、イントロン6、及びエクソン6の3’位のタンデム重複である(Dareらの論文、Somat Cell Mol Genet, 1996, 22:201-210;及びHelledayらの論文、J Mol Biol, 1998, 279(4):687-694)。この重複は、HAsT(50μMヒポキサンチン、10μML-アザセリン、5μMチミジン)内で選択することができる、hprt遺伝子を野生型に戻すHRを通して失い得る(Helledayら、1998)。自然復帰にある細胞を死滅させるために、DMEMに6TG(5μg/mL)を追加した。この濃度における6TGの追加は、これらの変異体の増殖速度にも組換えアッセイ法にも影響しない。
【0132】
U-2 OS(ヒト骨肉腫)細胞系をATCCから得た(HTB-96)。
【0133】
VC8及びVC8-B2細胞系は、V79チャイニーズハムスター卵巣線維芽細胞から生じる。
VC8は、brca2遺伝子内に変異を有し、VC8-B2は、ヒトの第13染色体を補足した、この細胞系である(brca2遺伝子を含む;Kraakman-van der Zwetらの論文、Mol Cell Biol, 2002, 22(2):669-679)。
【0134】
本明細書に記載されるアッセイにおいては、以下の化学物質を用いた。
【0135】
アフィディコリン(Sigma)粉末は、DMSOに0.2%以下に溶解した。
【0136】
ドキソルビシン(Sigma)及びカンプトテシン(Sigma)は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。治療投与量は、DMSOの0.2%を超えなかった。一定分量を-20℃に保存した。
【0137】
SNS-595溶液(メタンスルホン酸によりpH2.5に調整した、4.5%D-ソルビトール水溶液1mLあたり、10mgのSNS-595)を室温に保存した。
【0138】
DMEMにおける治療の直前に、治療希釈液を製造した。
【0139】
ガンマ放射は、Cs137チャンバー内で実施した(1.9Gy/分)。
【0140】
(実施例1:増殖阻害アッセイ)
SNS-595に対する感受性におけるBRCA2の影響を、チャイニーズハムスター細胞変異体(VC8)、及び機能的BRCA2を補足した(VC8-V2)内の増殖アッセイにより評価した。これらのアッセイにおけるSNS-595の活性をドキソルビシンと比較した。アッセイのために以下のプロトコールを用いた。
(1日目)
1. プレートの半分がVC8を含み、他の半分がVC8-B2細胞を含むように、4000細胞/ウェルになるように96ウェルプレートに蒔いた。最後の列はバックグラウンドコントロールとして細胞を入れないままにしておいた。
2. プレートを、5%CO2で37℃でインキュベートした。
(2日目)
1. 培地を除去し、50μLの新鮮な培地を各ウェルに加えた。
2. 最初の列においては、培地を除去し、それぞれ200μLの0.5μMドキソルビシン又は1.5μM SNS-595を加えた。
3. 最初の列から、100μLを第二列に移し、混合した。第二列から、100μLを第三列に移し、混合し、プレートの端までそのようにした。1つの列を未処理のままにした。プレートを、5%CO2で37℃でインキュベートした。
4. 4時間処理した後、プレートを100μLのPBSで2回洗浄し、250μLの培地を加えた。プレートを、5%CO2で37℃でインキュベートした。
(7日目)
1. 120時間のインキュベーション後、プレートを100μLのPBSで洗浄し、100μLのレサズリン(フェノールレッドを含まない完全DMEM中、10μg/mL)を加えた。
2. プレートを、5%CO2で37℃で1時間インキュベートし、Em500nm/Ex590nmで蛍光を測定した。
【0141】
図1及び2は、ドキソルビシン及びSNS-595の存在下での、それぞれチャイニーズハムスター細胞変異体(VC8)及び機能性BRCA2を補足したもの(VC8-B2)における増殖阻害を示す。BRCA2についての細胞変異体においては、機能性BRCA2を発現する細胞と比較し、約5倍の感受性の上昇が、SNS-595について確認された(IC50、0.14μM対0.72μM)。ドキソルビシンの感受性は約4倍上昇した(IC50、0.05μM対0.19μM)。
【0142】
(実施例2:コロニー成長アッセイ)
SNS-595に対する感受性におけるBRCA2の影響を、U-2 OS細胞におけるコロニー成長アッセイにより評価し、野生型細胞を、siRNAを用いたBRCA2について枯渇されたものと比較した。これらのアッセイにおけるSNS-595の活性を、クローン原性生存率(clonogenic survival)により評価し、ドキソルビシンと比較した。アッセイのために以下のプロトコールを用いた。
(1日目)
1. 6-ウェル中、それぞれ2ウェルに、200,000個の細胞を蒔き、5%CO2雰囲気下、37℃で一晩インキュベートした。
(2日目)
1. 以下の試薬を調製した。
A:試験:50μLの2μM siBRCA2(si Genome SMARTpool, Dharmacon)+150μLのOptiMEM(Gibco)
B:コントロール(siRNAなし):200μLのOptiMEM
C:2μLのDharmaFect 1(Dharmacon)+198μLのOptiMEM
2. 試薬を室温に5分間置いた。
3. 試薬A+C及びB+Cを混合し、室温に20分間置いた。
4. ウェル中の培地を、抗生物質を含まない培地(DMEM,Gibco)1.6mLと置換した。
5. 400μLの試薬A+B、又はB+Cを加え、ウェル中で混合した。プレートを37℃でインキュベートした。
(3日目)
1. siRNA処理の24時間後、細胞をトリプシン処理し、計数した。
2. 細胞を100mmのシャーレに、10mLの培地中、500又は1000細胞/シャーレになるように蒔き、4時間インキュベートした。
3. 4時間後、試験薬物を加え、プレートを14日間インキュベートした。
(17日目)
1. プレートを収集し、細胞をメチレンブルー(メタノール中、4g/L)中に固定し、50個以上の細胞を含むコロニーを計数した。
【0143】
図3及び4において、コロニー成長は、siRNAを用いたBRCA2について枯渇したU-2 OS細胞が野生型細胞よりも、4.6倍以上のSNS-595に対する感受性であることを示す。
【0144】
(実施例3:パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE))
200万個(2×106)のSPD8細胞をフラスコ(75cm2)に蒔き、一晩インキュベートした。次いで、細胞をSNS-595(20μM)又はドキソルビシン(3μM)、及びアフィディコリン(3μM)と共に、4時間処理し、その後溶解させ、アガロース挿入物に入れた(1×106細胞/70μL、1%InCert Agarose,BMA)。挿入物を、0.5M EDTA,1%N-ラウリルサルコシル及びプロテイナーゼK(1mg/mL)に移し、50℃で48時間インキュベートし、次いでTE-バッファーで4回洗浄し(各洗浄間に2時間)、アガロース分離ゲル(1%染色体グレード(chromosomal grade)アガロース、Bio-Rad)に装填した。CHEF DR IIIシステム(BioRad;120°電場角、240秒スイッチ時間、4V/cm)で、60〜240秒のスイッチ時間で18時間又は24時間で分離を実施した。ゲルを、臭化エチジウムで5時間染色し、次いで、Quantative One ソフトウェアを用い、走査蛍光リーダー(Molecular Imager FX、BioRad)により分析した。
【0145】
図5及び6は、SNS-595、ドキソルビシンで、及びアフィディコリンと共に処理した、細胞のPFGE分析のデータを示す。図5は、240秒のスイッチ時間で18時間実施したPFGEを示す。図6は、60〜240秒のスイッチ時間で24時間実施したPFGEを示す。データは、SNS-595で処理したものに比べ、ドキソルビシンで処理した細胞において、より小さいDNA断片が産生することを示した。
【0146】
図7は、240秒のスイッチ時間で18時間実施したPFGEについての、ドキソルビシン及びSNS-595による処理の後の、小さいDNA断片の産生を示すデータを表す。SNS-595及びドキソルビシンのDNA-損傷活性における相違は、SNS-595で処理した細胞と比較し、ドキソルビシンで処理した細胞における、より小さいDNA断片の産生により示される。
【0147】
図8は、60〜240秒のスイッチ時間で24時間実施したPFGEについての、ドキソルビシン及びSNS-595による処理の後の、小さいDNA断片の産生を示すデータを表す。この場合も、ドキソルビシンで処理した細胞は、SNS-595で処理したものよりも、より小さいDNA断片を産生した。
【0148】
(実施例4:組換えアッセイ)
各フラスコ(75cm2)に、SNS-595(2μM)又はドキソルビシン(0.5μM)で、及びアフィディコリン(0.5μM)と共に処理する24時間前に、1.5×106個のSPD8細胞を接種した。処理の4時間後、フラスコをPBSで2回洗浄し、20mLのDMEMを加えた。次いで、細胞を48時間インキュベートし、回収して、その後ペトリ皿に蒔いた。クローニング効率は、投与量あたり2枚のペトリ皿に、10mLの培地中、500個の細胞を蒔くことにより測定した。HPRT+復帰突然変異体は、HAsT(50μMヒポキサンチン、10μMのL-アザセリン、5μMのチミジン)の存在下、投与量あたり3枚のペトリ皿に3×105細胞/皿に蒔くことにより選択した。7及び10日後に、それぞれ、プレートを収集し、コロニーを、メタノール中のメチレンブルー(4g/L)を用いて固定及び染色した。50個以上の細胞を含むコロニーを計数した。
【0149】
図9は、アフィディコリン、又はSNS-595若しくはドキソルビシン、単独で、並びにアフィディコリンと共に処理することによる、SPD8細胞のクローニング効率を示す。データからわかるように、SNS-595又はドキソルビシンによる処理は、クローニング効率を有意に低下させた。アフィディコリン(S期遮断薬)は、いずれの薬剤についても細胞毒性の減少を引き起こし、これは、ドキソルビシン(p=0.04)よりもSNS-595(p=0.007)についてより顕著であった。これは、SNS-595の細胞毒性の構成成分がS期に誘導され、細胞毒性の大部分がS期に非依存的であることを示す。
【0150】
図10は、アフィディコリン、又はSNS-595若しくはドキソルビシン、単独で、並びにアフィディコリンと共に処理することによる、SPD8細胞の復帰頻度を示す。SNS-595及びドキソルビシンによる処理は、SPD8細胞における復帰頻度を上昇させ、これは、相同的組換え事象のレベルの上昇を反映する。S期の遮断(アフィディコリンと共に処理)は、SNS-595により誘導される復帰率に影響しないが、ドキソルビシンが誘導する事象を有意に低下させた(p=0.04)。これは、SNS-595が誘導するHRR組換え事象が、ドキソルビシンと比較してS期に非依存的であり、HRRが誘導する組換えの構成成分がS期に誘導されることを示す。これらのデータは、SNS-595の作用の分子メカニズムと、ドキソルビシンの作用の分子メカニズムとを更に区別する。
【0151】
(実施例5:注射又は静脈内輸液に適した医薬組成物)
適切な医薬組成物の例は:メタンスルホン酸によりpH2.5に調整された4.5%のD-ソルビトール水溶液1ミリリットル(mL)あたり、10mgのSNS-595、及び(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-アミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸を含む(ここで、SNS-595の量は少なくとも99.95%であり、(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-アミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸の量は約0.05%未満である)。このような溶液を製造するための1つのプロトコールは、100mg/10mLの組成を製造するために以下を含む:基本的に少なくとも99.95%のSNS-595、及び0.05%未満の(+)-1,4-ジヒドロ-7-[(3S,4S)-3-メトキシ-4-アミノ-1-ピロリジニル]-4-オキソ-1-(2-チアゾリル)-1,8-ナフチリジン-3-カルボン酸からなる100mgの活性組成物、並びに450mgのD-ソルビトールを蒸留水に加え、容量を10mLの容量にし;得られた溶液を、メタンスルホン酸によりpH2.5に調整する。得られた組成物は凍結乾燥にも適している。次いで、凍結乾燥形態を無菌水により、使用前に適切な濃度に再構築する。
【0152】
(実施例6:注射又は静脈内輸液に適した医薬組成物)
適切な医薬組成物の例は:メタンスルホン酸によりpH2.5に調整された4.5%のソルビトール水溶液1mLあたり、合計10mgのSNS-595及び不純物を含む(ここで、SNS-595の量は少なくとも99.95%であり、不純物の総量は約0.05%未満である)。このような溶液を製造するための1つのプロトコールは、100mg/10mLの組成を製造するために以下を含む:基本的に少なくとも99.95%のSNS-595及び約0.05%未満の不純物、及び450mgのD-ソルビトールを含む100mgの組成物を蒸留水に加え、容量を10mLの容量にし;得られた溶液を、メタンスルホン酸によりpH2.5に調整する。得られた組成物は凍結乾燥にも適している。次いで、凍結乾燥形態を無菌水により、使用前に適切な濃度に再構築する。
【0153】
前述した、請求項に記載の主題の実施態様は、単に例示であることを意図し、当業者は、通常の実験を用いて、特定の化合物、材料及び方法の多くの同等物を認識し、又は確認することができるであろう。このような全ての同等物は、請求項に記載の主題の範囲内であると考えられ、添付される請求項に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BRCA2活性の低下した、BRCA2変異を有する対象における癌の治療方法であって、該対象に、約10〜100mg/m2の投与量でSNS-595を投与することを含む、前記治療方法。
【請求項2】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、又は膵臓癌である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記癌が乳癌である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、999del5、6174delT、8803delC、4486delG、5445del5、2024del5、763insAT、763insAT、983delACAG、A3058T、3758delACAG、3908delTG、4706delAAAG、5804delTTAA、C6137A、6174delT、6305insA、9132delC、del2352ins12、dup9700、及びdel1518から選択されるBRCA2変異を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
SNS-595を、約40〜90mg/m2の投与量で投与する、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
SNS-595を、約30〜60mg/m2の投与量で投与する、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
i)約40〜90mg/m2の投与量のSNS-595を対象に投与すること;ii)SNS-595を対象に投与しないで、少なくとも6日間待機すること;及びiii)約40〜90mg/m2の別の投与量のSNS-595を対象に投与することを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記投与量が、約10mg/m2、約15mg/m2、約18mg/m2、約21mg/m2、約24mg/m2、約30mg/m2、約35mg/m2、約40mg/m2、約45mg/m2、約48mg/m2、約50mg/m2、約60mg/m2、約72mg/m2、約75mg/m2、約80mg/m2、約85mg/m2、約90mg/m2、又は約100mg/m2である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記投与量のSNS-595を3週間に1回投与する、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記投与量のSNS-595を4週間に1回投与する、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
SNS-595を、3週間に1回、約48mg/m2の投与量で投与する、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
SNS-595を、4週間に1回、約60mg/m2の投与量で投与する、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
SNS-595を、4週間に1回、約75mg/m2の投与量で投与する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
SNS-595をIV注射として投与する、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種の他の治療薬の治療的有効量を投与することを更に含む、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1種の他の治療薬が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、オーロラキナーゼ阻害剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、紡錘体毒、分裂抑制因子、トポイソメラーゼII阻害剤及び毒、トポイソメラーゼI阻害剤、抗腫瘍性抗生物質、ニトロソウレア、無機イオン錯体、酵素、ホルモン及びホルモン類似体、EGFR阻害剤、抗体及び抗体誘導体、IMID、HDAC阻害剤、Bcl-2阻害剤、VEGF-刺激チロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR阻害剤、プロテアソーム阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、PARP阻害剤、アロマターゼ阻害剤、及びデキサメタゾンから選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記治療薬が対症療法剤である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
(a)癌を有する候補者から生物学的試料を得ること;(b)BRCA2変異について、生物学的試料をスクリーニングすること;及び(c)該候補者がBRCA2の活性を低下させる変異を有する場合に、該候補者をSNS-595により治療するのに適した癌対象と特定することを含む、SNS-595により治療するのに適した癌対象の特定方法。
【請求項19】
SNS-595により癌対象を治療する工程を更に含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
(a)癌を有する複数の候補者から生物学的試料を得ること;(b)BRCA2変異について、生物学的試料をスクリーニングすること;及び(c)SNS-595により治療するのに適した癌対象としてBRCA2変異を有する各候補者を特定することを含む、SNS-595により治療するのに適した、1人以上の癌対象の特定方法。
【請求項21】
前記生物学的試料が、体液試料又は組織試料を含む、請求項18〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
BRCA2活性が低下する変異を有する癌細胞を、細胞内で二重鎖DNA切断を引き起こすのに有効な量のSNS-595と接触させることを含む方法。
【請求項23】
BRCA2活性が低下した対象における癌の治療方法であって、該対象に、約10〜100mg/m2の投与量でSNS-595を投与することを含む、前記治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−523376(P2012−523376A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552217(P2011−552217)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/025737
【国際公開番号】WO2010/099526
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(500586635)サネシス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (29)
【Fターム(参考)】