Bax−およびBak−欠損細胞株の生成のための方法および組成物
ここに、遺伝子組換えヌクレアーゼを用いてBak−および/またはBax−欠損細胞株を生成するための方法および組成物が開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Baxおよび/またはBakの発現が消失した細胞株のゲノムエンジニアリングおよび生成、ならびに蛋白質(例えば、抗体、抗原等)、ウイルスおよび/またはウイルスベクターの生成のためのBax/Bak欠損細胞株の使用の分野におけるものである。
発明の分野
【背景技術】
【0002】
アポトーシス、またはプログラムされた細胞の死滅は外因性または内因性シグナルならびに発生合図が引き金となり得る。2つの主なアポトーシス経路が確認されている:引き続いて死滅するであろう細胞で発現された細胞表面受容体へのリガンド欠乏を介してアポトーシスが開始される外因性細胞死経路、およびアポトーシスが細胞内で開始される内因性細胞死経路。
【0003】
腫瘍壊死因子受容体ファミリーのメンバーは、外因性死滅経路に関与する受容体で最良に特徴付けられたものの中にある。リガンドの係合に際して、これらの受容体は死滅−誘導シグナリング複合体の形成を開始し、これは必須のアダプター分子FADDを含む。FADDは、今度は、カスパーゼ8を動員し、これは、今度は、自己蛋白質分解プロセスを介して活性化される。一旦活性化されれば、カスパーゼ8は、カスパーゼ9およびカスパーゼ3のようなさらなるカスパーゼ活性および細胞内基質の分解双方を開始させ、これは、結局は細胞死をもたらす。TNF受容体ファミリーはTNFR1;Fas;Apo3、WSL−1、TRAMP、およびLARDのようなDR3蛋白質;DR4;TRAIL−R2、TRICK2、およびKILLERのようなDR5蛋白質;およびDR6を含む。
【0004】
蛋白質のBcl−2ファミリーのメンバーは細胞死を変調するそれらの能力によって特徴付けられる。Bcl−2、およびBcl−x1のようなそのホモログのいくつかはアポトーシスを阻害し、他方BaxおよびBakのような他のファミリーのメンバーはある条件下ではアポトーシスを誘導しまたは加速する。BakおよびBax、ならびにBcl−xs、Bid、Bim、BadおよびBikはBcl−2蛋白質のプロ−アポトーシスの群を構成する。
【0005】
Bax蛋白質はBcl−2を持つ高度に保存されたドメインを保有し、そのいくつかはBax/Bcl−2ヘテロダイマーの形成で必要であり、これは、アポトーシスシグナルに対する生存または死滅の応答で重要であると考えられる。その活性化に続いて、Baxは他のミトコンドリア膜に移動し、そこで、それはオリゴマー化し、膜を透過性とし、チトクロームCを含めた数個の死滅−促進因子を放出する(Scorrano et al.(2003)Biochem.Biophys.Res.Commun.304:437−444)。Baxをミトコンドリアから隔離する、Ku70蛋白質との相互作用を介して正常な細胞においてBaxは不活性とされ得る(Sawada et al.(2003)Nat.Cell Biol.5:320−329)。
【0006】
Bakもまた細胞死を促進し、Bcl−2によって供されたアポトーシスからの保護に対向する。Baxのように、Bakの遺伝子産物は、まず、適切な刺激に続いてアポトーシス細胞死を促進する。Bakは種々の細胞型においてアポトーシスの強力なインデューサーである。
【0007】
Baxおよび/またはBakの発現がアンチセンス分子の導入によって低下される細胞株は記載されている。例えば、Mandic et al.(2001)Mol.Cell Biol.21:3684−3691参照)。加えて、Baxおよび/またはBakの欠乏線維芽細胞もまた細胞株を作り出すために不滅化されている。米国特許出願第20030091982号参照。さらに、抑制ドメインに融合した天然で生じるジンクフィンガー蛋白質(Grimes et al.(1996)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 93:14569−14573)、および遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質およびヌクレアーゼ(米国特許出願公開第20060063231号参照)もまた、Baxおよび/またはBakの不活化について記載している。遺伝子組換えジンクフィンガーヌクレアーゼもまた、内因性ジヒドロ葉酸レダクダーゼ(dhfr)およびCCR5遺伝子を不活化するのに用いられている。例えば、米国特許公開第20080015164号およびPCT国際公開第2007/139982号パンフレット参照。
【0008】
しかしながら、例えば、アポトーシス−抵抗性細胞株の生成を容易とするための、BaxおよびBakの不活化のための方法および組成物に対する要望が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここに、例えば、広く種々の内因性死滅刺激体に対して抵抗性であるBaxおよび/またはBak欠損またはノックアウト細胞株を生成させるための、標的細胞におけるBaxおよび/またはBakの部分的または全面的な不活化のための方法および組成物が開示される。慣用的な細胞株とは異なり、Bax/Bak−欠損細胞株は、多継代後においてさえ、培養にて高レベルの蛋白質を継続的に生産するゆえに、これらの細胞株は、有利には、組換え蛋白質(例えば、抗体、抗原、治療蛋白質)の生産で用いられる。
【0010】
Bax/Bak欠損細胞株は、例えば、組換えレンチウイルス、アデノウイルスまたはアデノ−関連ウイルス(AVV)ベクターの生成において、ウイルスベクターおよび/またはウイルスベクター発現遺伝子産物の生成用のプロデューサー細胞株としても有用である。現在、これらのウイルスベクターを生成するのに用いる方法は、適時でないアポトーシスを介してベクターを低収率に(未修飾宿主細胞において)導く宿主細胞をかなり強調している。かくして、本開示は、ウイルスベクターの生産のためのアポトーシス−抵抗性Bax/Bac欠損細胞株に対する要望に取り組む。
【0011】
加えて、Baxおよび/またはBak欠損細胞株は、ヒトインフルエンザウイルスを標的とするもののようなワクチンのイン・ビトロ生産で有用である。そのようなワクチンプロデューサー細胞のアポトーシスは、(i)低下した全収率、または(ii)ワクチンロットの失敗、およびヒトにおいてワクチンロットを用いることができないことを招きかねない汚染の重要な源である。
【0012】
Baxおよび/またはBak欠損細胞株は、癌、およびアポトーシスが関与する他の病気(例えば、アルツハイマー病、パーキンソー病等)に影響する薬剤を研究するのにも有用である。同様に、Baxおよび/またはBak欠損細胞株は、基礎研究および薬物の発見のための有用なツールである。そのような系は、ある種の実験条件、例えば、エレクトロポレーション、ウイルス形質導入、リポソーム媒介−送達などのような核酸送達手法に対する応答において、および/または薬物―標的相互作用の測定、またはアポトーシス応答の不存在下におけるそのような相互作用の研究を介して基礎研究を知ることを促進できる毒性またはストレス−誘導ペイロードの送達に対する応答に対して、細胞の増大した生存を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つの態様において、BAX遺伝子中に結合するように作成されたジンクフィンガー蛋白質が提供される。本明細書中に記載されるジンクフィンガー蛋白質のいずれも1、2、3、4、5、6またはそれ以上のジンクフィンガーを含んでもよく、各ジンクフィンガーはBAX遺伝子中のサブサイトに結合する認識ヘリックスを有する。ある実施形態において、ジンクフィンガー蛋白質は(F1、F2、F3、F4および所望によりF5と命名された)4つのフィンガーを含み、表1に示された認識ヘリックスのアミノ酸配列を含む。
【0014】
1つの態様において、BAK遺伝子中に結合するように作成されたジンクフィンガー蛋白質が提供される。本明細書中に記載されたジンクフィンガー蛋白質のいずれも1、2、3、4、5、6またはそれ以上のジンクフィンガーを含んでもよく、各ジンクフィンガーはBAK遺伝子中の標的サブサイトに結合する認識ヘリックスを有する。ある実施形態においては、ジンクフィンガー蛋白質は(F1、F2、F3、F4およびF5と命名された)4または5のフィンガーを含み、表2に示された認識ヘリックスのアミノ酸配列を含む。
【0015】
ある実施形態においては、ここに、遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインが提供され、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端にF1ないしF4の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3およびF4は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDHLST(配列番号:1);F2:DRSHLAR(配列番号:2);F3:QSSHLTR(配列番号:3);およびF4:RSDNLRE(配列番号:4)。
【0016】
ある実施形態において、ここに、遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインが提供され、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端にF1ないしF4の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3、およびF4は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSANLSV(配列番号:5);F2:DRANLSR(配列番号:6);F3:NRTDLIR(配列番号:7);およびF4:TSSNLSR(配列番号:8)。
【0017】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF5の順番の5つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3、F4およびF5は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDHLTT(配列番号:9);F2:RSDHLSE(配列番号:10);F3:RNDNRKT(配列番号:11);F4:QSGHLQR(配列番号:12);およびF5;QSGHLSR(配列番号:13)。
【0018】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA結合ドメインは、N−末端からC−末端へF1ないしF4の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3、およびF4は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDSLSA(配列番号:14);F2:DRSSRTK(配列番号:15);F3:RSDDLTR(配列番号:16);およびF4:RSDALAR(配列番号:17)。
【0019】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインは、N−末端からC−末端へF1ないしF5の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3、F4およびF5は以下のアミノ酸配列を含む:F1:DRSDLSR(配列番号:45);F2:NRTDLIR(配列番号:7);F3:TSSNLSR(配列番号:8);F4:RSDTLSQ(配列番号:46);およびF5:DRSARTR(配列番号:47)。
【0020】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA―結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF5の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3、F4およびF5は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDALSV(配列番号:48);F2:DSSHRTR(配列番号:49);F3:QNAHRKT(配列番号:50);F4:RSDHLST(配列番号:1);およびF5:TSGHLSR(配列番号:51)。
【0021】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF5の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここにF1、F2、F3、F4およびF5は以下のアミノ酸配列を含む:F1:QNAHRKT(配列番号:50);F2:QSGDLTR(配列番号:53);F3:QSGDLTR(配列番号:53);F4:QSSNLAR(配列番号:54);およびF5:TSSNRKT(配列番号:55)。
【0022】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF6の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここにF1、F2、F3、F4、F5およびF6は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDNLAR(配列番号:57);F2:QSGDLTR(配列番号:53);F3:DNRQLIT(配列番号:58);F4:TSSNLSR(配列番号:8);F5:RSDTLSR(配列番号:59);およびF6:RNDDRIT(配列番号:60)。
【0023】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF5の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここにF1、F2、F3、F4およびF5は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDNLTT(配列番号:62);F2:RSDHLSR(配列番号:63);F3:QSSDLRR(配列番号:64);F4:QSSHLTR(配列番号:3);およびF5:RSDHLTQ(配列番号:65)。
【0024】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF6の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここにF1、F2、F3、F4、F5およびF6は以下のアミノ酸配列を含む:F1:QSGSLTR(配列番号:67);F2:TSSNRKT(配列番号:55);F3:DRSHLTR(配列番号:68);F4:RSDDRKT(配列番号:69);F5:NRTDLIR(配列番号:7)およびF6:TSSNLSR(配列番号:8)。
【0025】
もう1つの態様において、本明細書中に記載されたジンクフィンガー蛋白質のいずれか、および少なくとも1つの切断ドメインまたは少なくとも1つの切断ハーフ−ドメインを含む融合蛋白質も提供される。ある実施形態において、切断ハーフ−ドメインは野生型FokI切断ハーフ−ドメインである。他の実施形態において、切断ハーフ−ドメインは遺伝子組換えFokI切断ハーフ−ドメインである。
【0026】
なおもう1つの態様において、本明細書中に記載された蛋白質のいずれかをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0027】
なおもう1つの態様において、本明細書中に記載された蛋白質および/またはポリヌクレオチドのいずれかを含む単離された細胞も提供される。ある実施形態において、Baxおよび/またはBakが不活化された細胞株は、本明細書中に記載された蛋白質および/またはポリヌクレオチドのいずれかを含む細胞を培養して、Baxおよび/またはBak欠損細胞株を生成させることによって生成される。ある実施形態において、BaxまたはBakは細胞または細胞株において(部分的にまたは全面的に)不活化される。
【0028】
加えて、細胞または細胞株においてBaxおよび/またはBakを不活化する方法においてジンクフィンガー蛋白質およびその融合を用いる方法が提供される。ある実施形態において、細胞中でのBaxおよび/またはBakの不活化は、細胞の継代に続いてBaxおよび/またはBakが不活化されたままである細胞株を生じさせ、それにより、アポトーシスに対して抵抗性である細胞を作り出す。
【0029】
かくして、もう1つの態様において、ここに、細胞において細胞のBAXおよび/またはBAK遺伝子(例えば、内因性BAK/BAX遺伝子(類))を不活化する方法が提供され、その方法は:(a)第1のポリペプチドをコードする第1の核酸を細胞に導入することを含み、ここに、その第1のポリペプチドは、そのポリペプチドが細胞中で発現されるように、:(i)内因性BAKおよび/またはBAX遺伝子中の第1の標的部位に結合するように作成されたジンクフィンガーDNA−結合ドメイン;および(ii)切断ドメインを含み、それにより、そのポリペプチドは標的部位に結合し、BAKおよび/またはBAXを切断する。ある実施形態において、その方法は、さらに、第2のポリペプチドをコードする核酸を導入することを含み、ここに、第2のポリペプチドは、その第2のポリペプチドが細胞中で発現されるように(i)、BAKおよび/またはBAX遺伝子中の第2の標的部位に結合するように作成されたジンクフィンガーDNA−結合ドメイン;および(ii)切断ドメインを含み、それにより、第1および第2のポリペプチドはそれらの各標的部位に結合し、BAKおよび/またはBAX遺伝子を切断する。第1および第2のポリペプチドは第1の核酸によってまたは異なる核酸によってコードされていてもよい。ある実施形態において、1以上のさらなるポリヌクレオチドまたはポリペプチドが細胞に導入され、例えば、さらなるジンクフィンガー蛋白質をコードするポリヌクレオチドである。
【0030】
もう1つの態様において、ここに、Bakおよび/またはBax発現が消失した(すなわち、Bakおよび/またはBaxの発現が低下した、または排除された)細胞株を生産する方法が提供される。ある実施形態において、その方法は、1以上の遺伝子組換えジンクフィンガーヌクレアーゼ(または遺伝子組換えヌクレアーゼをコードする核酸)を導入し、その細胞を引き続いて培養して、Baxおよび/またはBakに関して欠損した細胞株を生成させることによってBakおよび/またはBaxを部分的にまたは全面的に不活化することを含む。
【0031】
なおもう1つの態様において、開示は、Bakおよび/またはBaxが不活化された宿主細胞または細胞株において注目する蛋白質またはウイルスまたはウイルスベクターを生産する方法を提供する。ある実施形態において、その方法は(a)内因性BAXおよび/またはBAK遺伝子を含む宿主細胞を供し;(b)本明細書中に記載された方法のいずれかによって宿主細胞の内因性BAXおよび/またはBAK遺伝子を不活化し;次いで、(c)導入遺伝子を含む発現ベクター、注目するウイルスまたはウイルスベクターを宿主細胞に導入するステップを含み、その導入遺伝子は蛋白質をコードする配列を含み、それにより、注目する蛋白質、ウイルスまたはウイルスベクターを生産する。他の実施形態において、その方法は:Bak−および/またはBax−欠損細胞株を供し;注目する少なくとも1つの組換え蛋白質をコードするポリヌクレオチド、ウイルス、またはウイルスベクターを、組換え蛋白質が細胞株で発現されるような条件下で、その細胞株に導入するステップを含む。その蛋白質をコードするポリヌクレオチド、ウイルス、または注目するウイルスベクターは、Bak−および/またはBax−結合細胞株に安定におよび/または一過的に導入してもよい。本明細書中に記載された方法のいずれかにおいて、注目する蛋白質は抗体、例えば、モノクローナル抗体を含む。他の実施形態において、注目する蛋白質は、ワクチンのような抗原として有用な蛋白質、例えば、インフルエンザウイルスに由来するHA蛋白質を含む。さらなる実施形態において、その方法を用いて、全ウイルスワクチンを生産する。さらに他の実施形態において、組換えウイルスベクターは、前記した方法、例えば、(a)内因性BAXおよび/またはBAK遺伝子を含む宿主細胞を供し;(b)本明細書中に記載された方法のいずれかによって宿主の内因性BAXおよび/またはBAK遺伝子を不活化し;次いで、(c)組換えウイルスベクター系を含む1以上の発現ベクターを導入し、それにより、注目する組換えベクターを生産するステップを含む方法によって生産される。
【0032】
本明細書中に記載された細胞、細胞株および方法のいずれにおいても、粗細胞またはその細胞株はCOS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28―G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、PerC.6(登録商標)(Crucell);EBx(商標)(Sigma−Aldrich Group)、Spodoptera fugiperda(Sf)のような昆虫細胞、またはSaccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesのような真菌細胞、または当該分野で知られた、またはde novo開発された他の細胞株であり得る。
【0033】
これらおよび他の態様は、全体としての開示に照らして当業者に容易に明らかにあろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、BAK遺伝子のエクソン2が、遺伝子組換えジンクフィンガーヌクレアーゼを用いてノックアウトされたCHO−K1細胞の遺伝子型決定を示す。(野生型と比較した)欠失された塩基はコロンによって示される。頂部線(39F/38R)は野生型配列であって、ボックスに入れた部分は開始コドンを示す。クローン8H6は、対立遺伝子Aが対立遺伝子Bとは異なる塩基対欠失パターンを示す合成異型接合体ノックアウト(KO)である。クローン8D4はホモ接合ノックアウトである。
【図2A】図2のパネルAないしDは、ZFNによるMDCK細胞におけるBAKおよびBAX遺伝子の修飾を示す。図2Aは、BAK−標的化ZFN−処理細胞プール(17623/17622または17627/17626)および非−ZFN−処理細胞(「ベクターのみ」)におけるCEL−Iアッセイでの切断反応に由来するPCR産物を示すゲルである。BAK遺伝子座がZFNによって修飾された対立遺伝子のパーセンテージは、2つの最も左側のレーン直下に示す。図2Bは、BAX−標的化ZFN−処理細胞プール(17658/17659)および非−ZNF処理細胞(「ベクターのみ」)におけるCEL−Iアッセイでの切断反応に由来するPCR産物を示すゲルである。BAX遺伝子座がZFNによって修飾された対立遺伝子のパーセンテージは最も右側のレーン直下に示す(8%)。図2Cは、BAK−標的化ZFNで処理された種々のMDCKクローンのPCR結果を示す。クローンの数は各レーンの頂部に示し、各BAK対立遺伝子における突然変異はゲルの下方に示す。図2DはBAX−特異的ZFNで処理されたMDCK細胞のPCR分析のまとめを示す。図面から分かるように、BAX単一ノックアウトは一方の対立遺伝子での30bpの欠失、および他方の対立遺伝子での1bpの挿入で得られた。BAX/BAK二重ノックアウトでは、BAX対立遺伝子は、BAX−特異的ZFNを用いてBak−欠損クローンにおいて標的化された。理解できるように、数個の異型接合体クローンが同定され、それは1つの野生型BAX対立遺伝子、および1つの突然変異したBAX対立遺伝子を含有した。
【図2B】図2Aに同じ。
【図2C】図2Aに同じ。
【図2D】図2Aに同じ。
【図3】図3は、Bakノックアウト細胞におけるRNA分析を示す。示されたゲルのレーン1ないし5は、示されたクローンおよび対照からのエクソン1ないし4からのBak転写体のRT−PCR産物を示す。レーン6ないし10は、同一クローンおよび対照におけるエクソン4ないし6からのBax転写体のRT−PCR産物を示す。レーン4における矢印によって示されるように、クローン8H6(合成異型接合体クローン)から形成された転写体のほとんどがエクソン2をスキップする。
【図4A】図4のパネルAおよびBは、Bak8H6ノックアウトのバックグラウンドで生じた21の陽性Bak/Bax二重ノックアウトクローンのPCR産物の分析を示す。クローン番号は各レーンの上方に示す。分析した79のクローンの内、21(27%)はBsl Iで消化され、ZLN切断の部位における突然変異を示す。図4AにおけるBslI−抵抗性対立遺伝子の配列は図4Bに示される。頂部線(52F/114R)は、整列を容易とするために4bpのギャップが挿入された野生型配列である。30、35、45、71および97と命名されたクローンについての挿入および欠失は大きく、従って、示していない。クローン#100の遺伝子型は決定しなかった。
【図4B】図4Aに同じ。
【図5】図5は、Bax/Bak二重ノックアウト細胞におけるBaxおよびBak蛋白質の発現を示す。クローン番号は各レーンの上方に示し、検出で用いた抗体は各ゲルの下方に示す(Bax蛋白質についてのAbcam #7977,およびBak蛋白質についてのSigma B5877)。示されるように、二重KO細胞は全長または切断型BaxおよびBak蛋白質を生産しない。
【図6】図6は、アポトーシスを示すカスパーゼ活性(Homogenous Caspases Assay(ホモジニアス カスパーゼアッセイ)、Roche Diagnostics Corporation)によって測定されたBax/Bak二重KO細胞におけるアポトーシスを示すグラフである。白色の棒線は1 uMスタウロスポリンでの誘導後のカスパーゼ活性を示し;灰色の棒線は未誘導細胞を示す。テストしたBax−Bak−/−クローンは;クローン47(左から2番目の棒線);クローン71(右から2番目の棒線);およびクローン91(最も右側の棒線)であった。
【図7】図7は、BAXおよび/またはBAKノックアウト細胞クローンにおける蛋白質(モノクローナル抗体)産生を示すグラフである。菱形は野生型CHO細胞における抗体の産生を示し、四角はクローン8H6−71 BAX−BAK−/−CHO細胞における蛋白質産生を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
BAK遺伝子および/またはBAX遺伝子の部分的または全面的な不活化のための組成物および方法を本明細書中に記載する。また、これらの組成物(試薬)を作成し、およびそれを用いて、例えば、標的細胞においてBakおよびBaxの一方または双方を不活化する方法が開示される。標的細胞におけるBakおよび/またはBaxの不活化を用いて、アポトーシスに対して抵抗性であって抗体のような組換え蛋白質、組換えウイルスベクターを生産するのに、およびワクチン(例えば、1以上の抗原性蛋白質、全ウイルスワクチン等)を製造するのに有用な細胞株を作り出すことができる。
【0036】
哺乳動物細胞において、BaxおよびBakはプログラムされた細胞死を促進するのに関与していることが示されている。Zhang et al.(2000)Science 290:989−992参照。かくして、本明細書中に記載された方法および組成物は、Baxおよび/またはBak欠損細胞株の生成を可能とするBaxおよび/またはBakの(部分的または全面的な)標的化遺伝子ノックアウトのための高度に有効な方法を提供する。Bax/Bak−欠損細胞株は多くの不滅化細胞株で見られる異常な増殖を受けることなく、イン・ビトロにて長期間培養することができる。かくして、本明細書中に記載された細胞株は、組換え蛋白質(例えば、抗体)、ワクチンまたは組換えウイルスベクターを生産するにおいて、およびアポトーシス関連疾患および病態を研究するにおいて有用である。
【0037】
一般
本明細書中に開示された方法、ならびに組成物の調製および使用の実施は、そうでないことが示されるのでなければ、当業者の技量内にあるように、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組換えDNAおよび関連分野の従来の技術を使用する。このような技術は文献で徹底して説明されている。例えば、Sambrook et al. MOLECULAR CLONING:A LABOLATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Labolatory Press,1989および第3版,2001;Ausubel et al. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987および定期的更新物;the series METHODS IN ENZYMOLOGY, Academic Press, San Diego;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,第3版、Academic press,San Diego,1998;METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,“Chromatin”(P.M.WassarmanおよびA.P.Wolffe編),Academic Press,San Diego,1999;およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,“Chromatin Protocols”(P.B.Becker編)Humana Press,Totowa,1999参照。
【0038】
定義
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は相互交換可能に用いられ、線状または環状立体配座であって、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーをいう。本開示の目的では、これらの用語はポリマーの長さに関して限定されると解釈されるべきではない。その用語は天然のヌクレオチドの公知のアナログ、ならびに塩基、糖および/またはリン酸基が修飾されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート骨格)を含むことができる。一般に特定のヌクレオチドのアナログは同一の塩基−対合特異性を有し;すなわち、AのアナログはTと塩基−対合するであろう。
【0039】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「蛋白質」は互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーをいう。その用語は、1以上のアミノ酸が対応する天然アミノ酸の化学的アナログまたは修飾された誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0040】
「結合」とは、マクロ分子の間の(例えば、蛋白質および核酸の間の)配列−特異的非−共有結合相互作用をいう。結合相互作用が全体として配列−特異的である限り、その相互作用の全ての成分が配列−特異的(例えば、DNA骨格中のリン酸残基との接触)である必要はない。そのような相互作用は10−6M−1以下の解離定数(Kd)によって一般的に特徴付けられる。「親和性」とは結合の強度をいい:結合親和性が高まるとKdが低下する。
【0041】
「結合蛋白質」は、もう1つの分子に非―共有結合的に結合することができる蛋白質である。結合蛋白質は、例えば、DNA分子(DNA−結合蛋白質)、RNA分子(RNA−結合蛋白質)および/または蛋白質分子(蛋白質−結合蛋白質)に結合することができる。蛋白質−結合蛋白質の場合には、それはそれ自体に結合して(ホモダイマー、ホモトリマー等を形成)することができる、および/またはそれは異なる蛋白質もしくは蛋白質類の1以上の分子に結合することができる。結合蛋白質は結合活性の1を超えるタイプを有することができる。例えば、ジンクフィンガー蛋白質はDNA−結合、RNA−結合および蛋白質結合活性を有する。
【0042】
「ジンクフィンガーDNA−結合蛋白質」(または結合ドメインは)、蛋白質、あるいはその構造が亜鉛イオンの配位を通じて安定化された結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である、1以上のジンクフィンガーを通じて配列−特異的にDNAに結合するより大きな蛋白質内のドメインである。その用語「ジンクフィンガーDNA結合蛋白質は、しばしば、ジンクフィンガー蛋白質またはZFPと省略される。
【0043】
ジンクフィンガー結合ドメインは、例えば、天然のジンクフィンガー蛋白質の認識ヘリックス領域の工学(1以上のアミノ酸の改変)を介して所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作する」ことができる。従って、遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質は、それが非天然の認識ヘリックス領域を含有する点で、非天然の蛋白質である。ジンクフィンガー蛋白質を操作する方法の非限定的例は設計および選択である。設計されたジンクフィンガー蛋白質は、その設計/組成が原理的には合理的基準に由来する性質が起こらない蛋白質である。設計のための合理的基準は、現存のZFP設計および結合データのデータベース貯蔵情報中の情報を処理するための置換規則および計算されたアルゴリズムの適用を含む。例えば、米国特許第6,140,081号;第6,453,242号;および第6,534,261号参照;また、国際公開第98/53058号パンフレット;国際公開第98/53059号パンフレット;国際公開第98/53060号パンフレット;国際公開第02/016536号パンフレットおよび国際公開第03/016496号パンフレット参照。
【0044】
「選択された」ジンクフィンガー蛋白質は、その生産が、主として、ファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択のような経験的プロセスに由来する性質が見出されない蛋白質である。例えば、米国特許第5,789,538号;米国特許第5,925,523号;米国特許第6,007,988号;米国特許第6,013,453号;米国特許第6,200,759号;国際公開第95/19431号パンフレット;国際公開第96/06166号パンフレット;国際公開第98/53057号パンフレット;国際公開第98/54311号パンフレット;国際公開第00/27878号パンフレット;国際公開第01/60970号パンフレット;国際公開第01/88197号パンフレットおよび国際公開第02/099084号パンフレット参照。
【0045】
用語「配列」とは、DNAまたはRNAであり得;線状、環状または分岐のものであり得、かつ一本鎖または二本鎖いずれかであり得る、いずれかの長さのヌクレオチド配列をいう。用語「ドナー配列」とは、ゲノムに挿入されたヌクレオチド配列をいう。ドナー配列はいずれの長さのものとすることもでき、例えば、長さは2および10,000ヌクレオチドの間(またはその間またはそれを超えるいずれかの整数値)、好ましい長さは約100および1,000ヌクレオチドの間(またはその間のいずれかの整数)、より好ましくは長さが約200および500ヌクレオチドの間であり得る。
【0046】
「相同な非−同一配列」とは、第2の配列とある程度の配列同一性を保有するがその配列は第2の配列のそれと同一ではない第1の配列をいう。例えば、突然変異体遺伝子の野生型配列を含むポリヌクレオチドはその突然変異体遺伝子の配列に対して相同であって、非−同一である。ある実施形態において、2つの配列の間の相同性の程度は、通常の細胞メカニズムを利用するそれらの間の相同組換えを可能とするのみ全面的なものである。2つの相同な非−同一配列はいずれの長さのものでもあり得るが、非−相同性のそれらの程度は(例えば、標的化相同組換えによるゲノム点突然変異の修正のためには)単一ヌクレオチド程度小さくすることができ、あるいは(例えば、染色体中の所定の異所性の部位における遺伝子の挿入のためには)10キロベース以上程度大きくすることができる。相同非−同一配列を含むポリヌクレオチドは同一の長さである必要はない。例えば、20および10,000ヌクレオチドのまたはヌクレオチド対の間の外因性ポリヌクレオチド(すなわち、ドナーポリヌクレオチド)を用いることができる。
【0047】
核酸およびアミノ酸配列の同一性を決定するための技術は当該分野で知られている。典型的にはそのような技術は、遺伝子についてのmRNAヌクレオチド配列を決定し、および/またはそれによりコードされるアミノ酸配列を決定し、これらの配列を第2のヌクレオチドまたはアミノ酸と比較することを含む。また、ゲノム配列を決定し、このようにして比較することもできる。一般に、同一性とは、各々、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の正確なヌクレオチド−対−ヌクレオチドまたはアミノ酸−対−アミノ酸対応性をいう。2以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらのパーセント同一性を決定することによって比較することができる。2つの配列のパーセント同一性は、核酸またはアミノ酸配列を問わず、2つの整列させた配列の間の正確なマッチの数をより短い配列の長さで割り、100を掛けたものである。本明細書中に記載された配列に関しては、配列同一性の所望の程度の範囲はほぼ80%ないし100%、およびその間のいずれかの整数値である。典型的には配列の間のパーセント同一性は、少なくとも70ないし75%、好ましくは80ないし82%、より好ましくは85ないし90%、なおより好ましくは92%、依然としてより好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性である。
【0048】
別法として、ポリヌクレオチドの間の配列類似性の程度は、相同領域の間の安定なデュプレックスの形成を可能とする条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼイション、続いての一本鎖で−特異的ヌクレアーゼでの消化、および消化された断片のサイズ決定によって決定することができる。2つの核酸、または2つのポリペプチド配列が、前記方法を用いて決定して、分子の規定された長さにわたって、少なくとも約70%ないし75%好ましくは80%ないし82%、より好ましくは85%ないし90%、なおより好ましくは92%、依然としてより好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性を呈する場合、その配列は相互に実質的に相同である。本明細書中で用いるように、実質的に相同なとは、特定のDNAまたはポリペプチド配列に対して全面的な同一性を示す配列もいう。実質的に相同なDNA配列は、例えば、その特定の系で定義されたストリンジェントな条件下にてサザーンハイブリダイゼイション実験で同定することができる。適切なハイブリダイゼイション条件を定義することは当該分野の技量内のものである。例えば、Sambrook et.al.,上記を参照;Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,編集者B.D.HamesおよびS.J.Higgins,(1985)Oxford;Washington,DC;IRL Press参照。
【0049】
2つの核酸断片の選択的ハイブリダイゼーションは以下のように決定することができる。2つの核酸分子の間の配列同一性の程度は、そのような分子の間のハイブリダイゼーション事象の有効性および強度に影響する。部分的に同一な核酸配列は、標的分子に対する全面的に同一な配列のハイブリダイゼーションを少なくとも部分的に阻害するであろう。全面的に同一な配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当該分野でよく知られたハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、サザーン(DNA)ブロット、ノーザン(RNA)ブロット、溶液ハイブリダイゼーション等、Sambrook,et al.Molecular Cloning;A Labolatory Manual,第2版,(1989)Cold Spring Habor,N.Y.参照)を用いて評価することができる。そのようなアッセイは、種々の程度の選択性を用い、例えば、ストリンジェンシーを低度から高度に変える条件を用いて実施することができる。低ストリンジェンシーの条件を使用するならば、非−特異的結合の不存在は、非−特異的結合事象の不存在下で二次プローブが標的にハイブリダイズしないように、部分的程度さえの配列同一性を欠如する二次プローブ(例えば、標的分子に対して約30%未満の配列同一性を有するプローブ)を用いて評価することができる。
【0050】
ハイブリダイゼイション−ベースの検出系を利用する場合、参照核酸配列に対して相補的な核酸プローブを選択し、次いで、適切な条件の選択によって、そのプローブおよび参照配列は選択的に相互にハイブリダイズし、または結合して、デュプレックス分子を形成する。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で参照配列に選択的にハイブリダイズすることができる核酸分子は、選択された核酸プローブの配列に対して少なくともほぼ70%の配列同一性を有する長さが少なくとも約10ないし14ヌクレオチドの標的核酸配列の検出を可能とする条件下で典型的にはハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、選択された核酸プローブの配列に対して約90ないし95%よりも大きな配列同一性を有する長さが少なくとも約10ないし14ヌクレオチドの標的核酸配列の検出を典型的には可能とする。プローブおよび参照配列が特定の程度の配列同一性を有する場合、プローブ/参照配列ハイブリダイゼーションでいうようなハイブリダイゼーション条件は当該分野で知られているように決定することができる(例えば、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Aproach,編集者B.D.HamesおよびS.J.Higgins,(1985)Oxford;Washington,DC;IRL Press参照)。
【0051】
ハイブリダイゼーションについての条件は当業者によく知られている。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーとは、ハイブリダイゼーション条件がミスマッチしたヌクレオチドを含有するハイブリッドの形成に対して不都合な程度をいい、ストリンジェンシーが高いとミスマッチしたハイブリッドの許容性が低くなる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する因子は当業者によく知られており、限定されるものではないが温度、pH、イオン強度、および例えば、ホルムアミドおよびジメチルスルホキシドのような有機溶媒の濃度を含む。当業者に知られているように、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、より高い温度、より低いイオン強度、およびより低い溶媒濃度によって増加する。
【0052】
ハイブリダイゼーションについてのストリンジェンシー条件に関しては、多数の同等な条件を使用して、例えば、以下の因子:配列の長さおよび性質、種々の配列の塩基組成、塩および他のハイブリダイゼーション溶液の成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中のブロッキング剤(例えば、デキストラン硫酸、およびポリエチレングリコール)の有無、ハイブリダイゼーションの反応温度および時間パラメータ、ならびに洗浄条件を変化させることによって特定のストリンジェンシーを確立できるのは当該分野でよく知られている。ハイブリダイゼーション条件の特定の組の選択は、当該分野における標準的な方法に従って選択される(例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning;A Labolatory Manual,第2版,(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.参照)。
【0053】
「組換え」とは、2つのポリヌクレオチドの間の遺伝子情報の交換のプロセスをいう。本開示の目的では、「相同組換え(HR)」とは、例えば、細胞中の2本鎖破壊の修復の間に起こるそのような変化の特殊化された形態をいう。このプロセスはヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖破壊を経験したもの)の鋳型修復に対して「ドナー」分子を用い、「非−クロスオーバー遺伝子変換」または「短トラクト遺伝子変換」として種々に知られている。なぜならば、それはドナーからの遺伝的情報の標的への移動に導くからである。いずれかの特定の理論によって拘束されるつもりはないが、その様な移動は破壊された標的およびドナーの間に形成されるヘテロデュプレックスDNAのミスマッチ修正、ドナーを用いて標的の一部となるであろう遺伝的情報を再度合成する「合成−依存性ストランドアニーリング」および/または関連プロセスに関与することができる。そのような特殊化されたHRは、しばしば、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全てが標的ポリヌクレオチドに組み込まれるような、標的分子の配列の改変をもたらす。
【0054】
「切断」とは、DNA分子の共有結合骨格の破壊をいう。切断は、限定されるものではないが、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を含めた種々の方法によって開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断の双方が可能であり、および二本鎖切断は、2つの区別される一本鎖事象の結果として起こり得る。DNA切断は、平滑末端または付着末端いずれかの生成をもたらし得る。ある実施形態においては、融合ポリペプチドが、標的化二本鎖DNA切断で用いられる。
【0055】
「切断ハーフ−ドメイン」は、(同一または異なるいずれかの)第2のポリペプチドと一緒に、切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。用語「第一または第二の切断ハーフ−ドメイン」;「+および−切断ハーフ−ドメイン」および「右側および左側切断ハーフ−ドメイン」は、二量体化する切断ハーフ−ドメインの対をいうのに相互交換可能に用いられる。
【0056】
「遺伝子組換え切断ハーフ−ドメイン」は、もう1つの切断ハーフ−ドメイン(例えば、もう1つの遺伝子組換え切断ハーフ−ドメイン)とで絶対的ヘテロダイマーを形成するように修飾されている切断ハーフ−ドメインである。また、その全体が参照により組み込まれる、米国特許出願第10/912,932号および第11/304,981号および(2006年5月25日に出願された)米国仮出願第60/808,486号も参照。
【0057】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核蛋白質構造である。細胞クロマチンは核酸、主としてDNA、およびヒストンおよび非−ヒストン染色体蛋白質を含めた蛋白質を含む。真核生物細胞クロマチンの大部分はヌクレオソームの形態で存在し、ここに、ヌクレオソームコアはヒストンH2A、H2B、H3およびH4の2つの各々を含むオクタマーと会合したDNAのほぼ150塩基対を含み;および(生物に依存して可変長さの)リンカーDNAはヌクレオソームコアの間に延びる。ヒストンH1の分子は、一般に、リンカーDNAと会合している。本開示の目的では、用語「クロマチン」は、原核生物および真核生物の双方の、細胞核蛋白質の全てのタイプを含めことを意図する。細胞クロマチンは、染色体およびエピソームクロマチンの双方を含む。
【0058】
「染色体」は、細胞のゲノムの全てまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、しばしば、細胞のゲノムを含む染色体の全てのコレクションであるその核型によって特徴付けられる。細胞のゲノムは1以上の染色体を含むことができる。
【0059】
「エピソーム」は、複製する核酸、核蛋白質複合体、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む他の構造である。エピソームの例はプラスミドおよびある種のウイルスゲノムを含む。
【0060】
「接近可能な領域」は、標的部位を認識する外因性分子によって、核酸に存在する標的部位が結合され得る細胞クロマチン中の部位である。いずれかの特定の理論によって拘束されるつもりはないが、接近可能な領域は、ヌクレオソーム構造にパッケージされないものであると考えられる。接近可能な領域の区別される構造は、しばしば、化学的および酵素的プローブ、例えば、ヌクレアーゼに対するその感受性によって検出することができる。
【0061】
「標的部位」または「標的配列」は、結合分子が結合する核酸の一部を規定する核酸配列であり、但し、結合のための十分な条件が存在するものとする。例えば、配列5’−GAATTC−3’は、Eco RI制限エンドヌクレアーゼについての標的部位である。
【0062】
「外因性」分子は、細胞に通常は存在しないが、1以上の遺伝子的、生化学的または他の方法によって細胞に導入することができる分子である。「細胞における通常の存在」は、細胞の特定の発生段階および環境的条件に関して決定される。かくして、例えば、筋肉の胚発生の間にのみ存在する分子は、生体筋肉細胞に関して外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非−熱−ショック細胞に関して外因性分子である。外因性分子が、例えば、機能不全内因性分子の機能的バージョン、または通常に機能する内因性分子の機能不全バージョンを含むことができる。
【0063】
外因性分子は、とりわけ、コンビナトーリアル化学プロセスによって生じるような小分子、または蛋白質、核酸、炭水化物、脂質、糖蛋白質、リポ蛋白質、多糖、前記分子のいずれか修飾された誘導体または前記分子の1以上を含むいずれかの複合体のようなマクロ分子であり得る。核酸はDNAおよびRNAを含み、一本鎖または二本鎖であり得;線状、分岐状または環状であり得;およびいずれの長さのものでもあり得る。核酸は、デュプレックスを形成することができるもの、ならびにトリプレックス−形成性核酸を含む。例えば、米国特許第5,176,996号および第5,422,251号参照。蛋白質は、限定されるものではないが、DNA−結合蛋白質、転写因子、クロマチン再形成因子、メチル化DNA結合蛋白質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、フォスファターゼ、インテグラーゼ、レコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイラーゼおよびヘリカーゼを含む。
【0064】
「外因性」分子は、内因性分子と同一タイプの分子、例えば、外因性蛋白質または核酸であり得る。例えば、外因性核酸は感染性ウイルスゲノム、細胞に導入されたプラスミドまたはエピソーム、または細胞において通常は存在しない染色体を含むことができる。外因性分子を細胞に導入する方法は当業者に知られており、限定されるものではないが、脂質−媒介導入(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含めたリポソーム)、エレクトロポレーション、直接的注入、細胞融合、粒子衝撃、リン酸カルシウム共−沈殿、DEAE−デキストラン−媒介導入およびウイルスベクター−媒介導入を含む。外因性分子は、内因性分子と同一タイプの分子でもあり得るが、細胞が由来するのとは異なる種に由来することもできる。例えば、配列決定されたヒト核酸は、マウスまたはハムスターに元来は由来する細胞株に導入することができる。
【0065】
対照的に、「内因性」分子は、特定の環境的条件下で特定の発生段階において特定の細胞に通常は存在するものである。例えば、内因性核酸は染色体、ミトコンドリア、葉緑体または他のオルガネラのゲノム、あるいは天然のエピソーム核酸を含むことができる。さらなる内因性分子は蛋白質、例えば、転写因子および酵素を含むことができる。
【0066】
「融合」分子は、2以上のサブユニット分子が好ましくは共有結合により連結された分子である。サブユニット分子は同一の化学的タイプの分子であり得るか、あるいは異なる化学的タイプの分子であり得る。第1のタイプの融合分子の例は、限定されるものではないが、融合蛋白質(例えば、ZFE DNA結合ドメインおよび切断ドメインの間の融合)、および融合核酸(例えば、前記文献に記載された融合蛋白質をコードする核酸)を含む。第2のタイプの融合分子の例は、限定されるものではないが、トリプレックス−形成性核酸およびポリペプチドの間の融合、および従たる溝バインダーおよび核酸の間の融合を含む。
【0067】
細胞中での融合蛋白質の発現は、融合蛋白質の細胞への送達から、あるいは融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドの細胞への送達によって由来することができ、ここに、ポリヌクレオチドは転写され、および転写体は翻訳され、融合蛋白質を生じる。トランス−スプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチド連結もまた細胞での蛋白質の発現に関与することができる。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチド送達のための方法は、本開示において他の個所に提示する。
【0068】
「遺伝子」は、本開示での目的では、遺伝子産物をコードするDNA領域(後記参照)、ならびに調節配列がコーディングおよび/または転写された配列に隣接するか否かに拘わらず、遺伝子産物の生産を調節するDNA領域を含む。従って、遺伝子は、必ずしも限定されるものではないが、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位のような転写調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位および遺伝子座制御領域を含む。
【0069】
「遺伝子発現」とは、遺伝子に含まれた情報の遺伝子産物への変換をいう。遺伝子産物は遺伝子の直接的転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAまたはいずれかの他のタイプのRNA)、またはmRNAの翻訳によって生じた蛋白質であり得る。遺伝子産物は、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集のようなプロセスによって修飾されたRNA、および例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化によって修飾された蛋白質を含む。
【0070】
遺伝子発現の「変調」とは、遺伝子の活性の変化をいう。発現の変調は、限定されるものではないが、遺伝子の活性化および遺伝子の抑制を含むことができる。遺伝子不活化とは、本明細書中に記載されたようにZFPを含まない細胞と比較した、遺伝子発現のいずれの低下もいう。かくして、遺伝子不活化は部分的または全面的なものであってよい。
【0071】
「真核生物」細胞は、限定されるものではないが、(酵母のような)真菌細胞、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T−細胞)を含む。
【0072】
「細胞株」とは、初代培養からの組織培養で樹立された細胞の集団をいう。かくして、ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて生じさせた細胞株は、1以上の標的遺伝子(例えば、BAKおよび/またはBAXが1以上のジンクフィンガーヌクレアーゼによって部分的にまたは全面的に不活化されており、かつ細胞(または細胞株)の子孫が培養における多数の継体後に部分的または全面的な不活化表現型を保有する細胞(または細胞株)から生起する。さらに、細胞または細胞株は、遺伝子(類)の発現が低下し、または排除された場合に(ノックアウト)、1以上の示された発現は「欠乏」している。かくして、Bax/Bak−欠損細胞株は、BaxおよびBakの低下した、またはノックアウトされた発現を示す。
【0073】
「注目する領域」は、例えば、外因性分子にそれが結合することが望ましい、遺伝子、または遺伝子内の、または遺伝子に隣接する非−コーディング配列のような細胞クロマチンのいずれかの領域である。結合は、標的化DNA切断および/または標的化組換えの目的であり得る。注目する領域は、例えば、染色体、エピソーム、オルガネラゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、または感染性ウイルスゲノムに存在し得る。注目する領域は、遺伝子のコーディング領域内、例えば、リーダー配列、トレーラー配列またはイントロンのような転写された非−コーディング領域内、あるいはコーディング領域の上流または下流いずれかの、非−転写領域内にあり得る。注目する領域は、長さが単一ヌクレオチド対と同程度に小さいか、または2,000ヌクレオチド対まで、あるいはヌクレオチド対のいずれかの整数値であり得る。
【0074】
用語「操作可能な連結」および「操作可能に連結した」(または「操作可能なように連結した」)は、成分が、双方の成分が正常に機能し、かつ成分の少なくとも1つが、他の成分の少なくとも1つに働く機能を媒介できる可能性を可能とするように配置される、2以上の(配列エレメントのような)成分の並置を参照して相互交換可能に用いられる。説明として、プロモーターのような転写調節配列は、もし転写調節配列が、1以上の転写調節因子の存在または不存在に応答してコーディング配列の転写のレベルを制御するならばコーディング配列に操作可能に連結している。転写調節配列は、一般に、コーディング配列に対してシスにて操作可能に連結されているが、それに直接的に隣接する必要なない。例えば、エンハンサーは、たとえそれが連続していなくても、コーディング配列に操作可能に連結された転写調節配列である。
【0075】
融合ポリペプチドに関しては、用語「操作可能に連結した」とは、成分の各々が、あたかもそれがその様に連結していないかのごとく他の成分への連結において同一機能を行うという事実をいうことができる。例えば、ZFP DNA−結合ドメインが切断ドメインに融合した融合ポリペプチドに関しては、ZFP DNA−結合ドメインおよび切断ドメインは、もし融合ポリペプチドにおいて、ZEP DNA−結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合でき、他方、切断ドメインが標的部位に隣接したDNAを切断できるならば、操作可能に連結している。
【0076】
蛋白質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列が全長蛋白質、ポリペプチドまたは核酸と同一ではないが、全長蛋白質、ポリペプチドまたは核酸と同一の機能を保有する蛋白質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応する天然分子よりも多くの、より少ない、または同一数の残基を保有でき、および/または1以上のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含有することができる。核酸の機能(例えば、コーディング機能、もう1つの核酸にハイブリダイズできる能力)を決定する方法は当該分野でよく知られている。同様に、蛋白質機能を決定する方法は良く知られている。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター−結合、電気泳動移動度−シフト、または免疫沈澱アッセイによって決定することができる。DNA切断はゲル電気泳動によってアッセイできる。Ausudel et al.,前掲参照。もう1つの蛋白質と相互作用する蛋白質の能力は、例えば、遺伝子的または生化学的双方の、共−免疫沈澱、2−ハイブリアッセイまたは相補性によって決定することができる。例えば、Fields et al.(1989) Nature 340:245−246;米国特許第5,585,245号およびPCT 国際公開第98/44350号パンフレット参照。
【0077】
本明細書中で用いる用語「抗体」はポリクローナルおよびモノクローナル調製物双方から得られた抗体、ならびに以下の:ハイブリッド(キメラ)抗体分子(例えば、Winter et al., Nature (1991)349:293−299;および米国特許第4,816,567号)参照;F(ab’)2およびF(ab)断片;Fv分子(非−共有結合ヘテロダイマー、例えば、Inbar et al.,Proc Natl Acad Sci USA(1972)69:2659−2662;およびEhrlich et al.,Biochem(1980)19:4091−4096参照);単一−鎖Fv分子(sFv)(例えば、Huston et al.,Proc Natl Acad Sci USA(1988)85:5879−5883参照);ダイマーおよびトリマー抗体断片構築体;ミニボディー(例えば、Pack et al.,Biochem(1992)31:1579−1584;Cumber et al.,J Immunology(1992)149B:120−126参照);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmann et al.,Nature (1988)332:323−327;Verhoeyan et al.,Science(1988)239:1534−1536;および1994年9月21日に公開された英国特許公開番号GB 2,276,169参照);およびそのような断片が親抗体分子の免疫学的結合特性を保有するそのような分子から得られたいずれかの機能的断片を含む。
【0078】
本明細書中で用いるように、用語「モノクローナル抗体」とは、均一な抗体集団を有する抗体組成物をいう。その用語は抗体の種または源に関して制限されず、またそれが作成された方法によって制限される意図はない。その用語は全免疫グロブリン、ならびにFab、F(ab’)2、Fv、および他の断片のような断片、ならびに親モノクローナル抗体分子の免疫学的結合特性を呈するキメラおよびヒト化均一抗体集団を含む。
【0079】
ワクチンとは、将来の害に対する保護が提供されるように、生きた生物の免疫系を刺激するのに用いられる剤を意味する。免疫化とは、生物が従前に暴露された病原体または抗原に対して向けられる、T−リンパ球が病原体を殺し、および/または他の細胞(例えば、食細胞)を活性化して、生物においてそれを行うことができる、抗体および/または細胞免疫応答を誘導するプロセスをいう。本明細書中で用いられる用語「免疫応答」は、例えば、多細胞生物が、生物の細胞、または生物の細胞外流体に侵入する抗原性物質に対して抗体を生じさせるメカニズムを含む。そのように生産された抗体は、免疫グロブリンA、D、E、GまたはMのような免疫学的クラスのいずれかに属してよい。他のタイプの応答、例えば、細胞性および液性免疫もまた含まれる。抗原に対する免疫応答はよく研究され、広く報告されている。免疫学の概観は、例えば、Roitt I.,(1994)に与えられている。Essential Immunology,Blackwell Scientific Publications,London。免疫学における方法はルーチン的であって、慣用的である(例えば、John E.Coligan et al.によって編集されたCurrent Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.参照)。
【0080】
「組換えウイルスベクター」とは、1以上の異種配列(すなわち、ウイルス起源のものではないポリヌクレオチド配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターをいう。組換えパルボウイルスベクターの場合には、組換えポリヌクレオチドは少なくとも1つの、好ましくは2つの逆方向ターミナルリピート配列(ITR)が近接している。
【0081】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」とは、少なくとも1つの、好ましくは2つのAAV逆方向ターミナルリピート配列(ITR)が近接する1以上の異種配列(すなわち、AAV起源のものではないポリヌクレオチド配列)を含むポリヌクレオチドベクターをいう。そのようなrAAVベクターは、適切なヘルパーウイルスで感染されている(または適切なヘルパー機能を発現している)、かつAAV repを発現しておりかつ遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCap蛋白質)をキャップしている宿主細胞に存在する場合、複製し、感染性ウイルス粒子にパッケージされ得る。rAAVベクターがより大きなポリヌクレオチドに(例えば、染色体に、あるいはクローニングまたはトランスフェクションで用いるプラスミドのようなもう1つのベクターに)組み込まれる場合、rAAVベクターは「プロ−ベクター」といってもよく、これは、AAVパッケージング機能および適切なヘルパー機能の存在下で複製およびキャプシド化によって「救済」することができる。rAAVは、リップで複合体化され、リポソーム内にカプセル化され、最も好ましくは、ウイルス粒子、特にAAVにキャプシド化された、限定されるものではないが、プラスミド、線状人工染色体を含めた多数の形態のいずれかとすることができる。rAAVベクターをAAVウイルス粒子にパッケージして、「組換えアデノ−関連ウイルス」(rAAV)を生成させることができる。パッケージして、感染性ウイルス粒子を生じさせることができる最大サイズのベクターはほぼ5.2kbである。
【0082】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
BAKおよび/またはBAX遺伝子の不活化で用いることができるジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)が本明細書中で記載される。ZFNはジンクフィンガー蛋白質(ZFP)およびヌクレアーゼ(切断)ドメインを含む。
【0083】
A.ジンクフィンガー蛋白質
ジンクフィンガー結合ドメインは、選択された配列に結合するように作成することができる。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135−141;Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313−340;Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656−660;Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632−637;Choo et al.(2000)Curr.Opin. Struct.Biol. 10:411−416参照。遺伝子組換えジンクフィンガー結合ドメインは、天然のジンクフィンガー蛋白質と比較して新規な結合特異性を有することができる。遺伝子組換えによる方法は、限定されるものではないが、合理的設計および種々のタイプの選択を含む。合理的設計は、例えば、トリプレット(またはクワドルプレット)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用を含み、ここに、各トリプレットおよびクワドルプレットヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクワドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1以上のアミノ酸配列に関連する。例えば、その全体が参照により組み込まれる、共有された米国特許第6,453,242号および第6,534,261号参照。
【0084】
ファージディスプレイおよび2−ハイブリッド系を含めた例示的な選択方法は米国特許第5,789,538号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,410,248号;第6,140,466号;第6,200,759号;および第6,242,568号;ならびに国際公開第98/37186号パンフレット;国際公開第98/53057号パンフレット;国際公開第00/27878号パンフレット;国際公開第01/88197号パンフレットおよび英国特許第2,338,237号明細書に開示されている。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共有された国際公開第02/077227号パンフレットに記載されている。
【0085】
標的部位の選択;融合蛋白質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのZFPおよび方法は当該分野で知られており、その全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第20050064474号および第20060188987号に詳細に記載されている。
【0086】
加えて、これらおよび他の文献に開示されているように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガードジンクフィンガー蛋白質は、例えば、長さが5以上のアミノ酸のリンカー(例えば、TGEKP(配列番号:18)、TGGQRP(配列番号:37)、TGQKP(配列番号:19)、および/またはTGSQKP(配列番号:20))を含めたいずれかの適切なリンカー配列を用いて一緒に連結してもよい。また、長さが6以上のアミノ酸の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;第6,903,185号;および第7,153,949号も参照。本明細書中で記載された蛋白質は、蛋白質の個々のジンクフィンガーの間に適切なリンカーのいずれかの組合せを含んでもよい。
【0087】
表1および2は、BAX遺伝子(表1)およびBAK遺伝子(表2)におけるヌクレオチド配列に結合するように作成されたジンクフィンガー結合ドメインを記載する。各列は別々のジンクフィンガーDNA―結合ドメインを記載する。各ドメインについてのDNA標的配列は最初の欄に示され、第2ないし第5欄は、蛋白質中のジンクフィンガー(F1ないしF4またはF5)の各々の認識領域のアミノ酸配列を示す(ヘリックスの開始に関して、アミノ酸−1ないし+6)。また、蛋白質についての識別番号が最初の欄にやはり掲げられる。
【表1】
【表2】
【0088】
以下に記載するように、ある実施形態においては、表1および2に示された4−または5−フィンガー結合ドメインが、例えば、FokIのようなタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインのような切断ハーフ−ドメインに融合される。そのようなジンクフィンガー/ヌクレアーゼハーフ−ドメイン融合の1以上の対は、例えば、米国特許公開第20050064474号に開示されているように、標的化切断に用いられる。
【0089】
標的化された切断では、接合部位の近くのエッジは5以上のヌクレオチド対によって分離でき、融合蛋白質の各々はDNA標的の逆ストランドに結合させることができる。典型的には、表1および2に示されたZFNは、それらの標的遺伝子の切断のために対で用いられる。本開示に従い、ZFNはBAXまたはBAK遺伝子中のいずれかの配列に標的化することができる。
【0090】
B.切断ドメイン
ZFNはヌクレアーゼ(切断ドメイン、切断ハーフ−ドメイン)も含む。本明細書中に開示された切断ドメイン部分は、いずれかのエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼは、限定されるものではないが、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼを含む。例えば、2002−2003 Catalogue, New England Biolabs,Beverly,MA;およびBelfort et al.(1997)Nucreic Acids Res. 25:3379-3388参照。DNAを切断するさらなる酵素は知られている(例えば、S1ヌクレアーゼ;マングビーンヌクレアーゼ;膵臓DNase I;ミクロコッカスヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;また、Linn et al.(編)Nucleases,Cold Spring Harbor Labratory Press, 1993も参照)。これらの酵素(またはその機能的断片)の1以上を、切断ドメインおよび切断ハーフ−ドメインの源として用いることができる。
【0091】
同様に、切断ハーフ−ドメインは、切断活性のために二量体化を必要とする、前記したいずれかのヌクレアーゼまたはその部分に由来することができる。一般に、もし融合蛋白質が切断ハーフ−ドメインを含むならば、2つの融合蛋白質が切断で必要とされる。別法として、2つの切断ハーフ−ドメインを含む単一蛋白質を用いることができる。2つの切断ハーフ−ドメインは同一のエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来することができるか、あるいは各切断ハーフ−ドメインは異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来することができる。加えて、2つの融合蛋白質のための標的部位が、それらの各標的部位への2つの融合蛋白質の結合が、例えば、二量体化によって切断ハーフ−ドメインが機能的切断ドメインを可能とする、相互に対する空間的向きに切断ハーフ−ドメインを置くように、相互に関して、好ましくは配置される。かくして、ある実施形態においては、標的部位の近くのエッジは5ないし8ヌクレオチドだけ、または15ないし18ヌクレオチドだけ分離される。しかしながら、いずれかの全体数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対を2つの標的部位の間に(例えば、2ないし50ヌクレオチド対以上)介在させることができる。一般に、切断の部位は、標的部位の間に存在する。
【0092】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多くの種に存在し、(認識部位において)DNAに配列−特異的に結合することができ、および結合の部位において、または部位近くでDNAを切断することができる。ある制限酵素(例えば、タイプIIS)は認識部位から除去された部位においてDNAを切断し、分離可能な結合および切断ドメインを有する。例えば、タイプIIS酵素FokIは、1つのストランド上のその認識部位から9ヌクレオチド、および他のストランド上のその認識部位から13ヌクレオチドにおいて、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号および第5,487,994号;ならびにLi et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4275−4279;Li et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2764−2768;Kim et al.(1994a)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:883−887;Kim et al.(1994b)J.Biol.Chem.269:31,978−31,982参照。かくして、1つの実施形態において、融合蛋白質は少なくとも1つのタイプIIS制限酵素からの切断ドメイン(または切断ハーフ−ドメイン)、および操作されていてもいなくてもよい1以上のジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0093】
その切断ドメインが結合ドメインから分離可能な例示的なタイプIIS制限酵素はFokIである。この特定の酵素はダイマーとして活性である。Bitinaite et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:10,570−10,575。従って、本開示の目的では、開示された融合蛋白質で用いるFokI酵素の部分は切断ハーフ−ドメインと考えられる。かくして、ジンクフィンガー−FokI融合を用いる標的化二本鎖切断および/または細胞配列の標的化置き換えのために、各々がFokI切断ハーフ−ドメインを含む2つの融合蛋白質を用いて、触媒的に活性な切断ドメインを再構成することができる。別法として、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokI切断ハーフ−ドメインを含む単一ポリペプチド分子を用いることもできる。ジンクフィンガー−FokI融合を用いる標的化切断および標的化配列改変についてのパラメータが、本開示において他の個所に提供される。
【0094】
切断ドメインまたは切断ハーフ−ドメインは、切断活性を保有し、または多量体化(例えば、二量体化)して、機能的切断ドメインを形成する能力を保有する蛋白質のいずれかの部分であり得る。
【0095】
例示的なタイプIIS制限酵素は、その全体が参照により組み込まれる国際公開第07/014275号パンフレットに記載される。さらなる制限酵素もまた分離可能な結合および切断ドメインを含有し、これらは本開示で塾考されている。例えば、Roberts et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:418−420参照。
【0096】
ある実施形態において、切断ドメインは、例えば、その全ての開示が、ここにその全体が参照により組み込まれる、米国特許公開第20050064474号および第20060188987号、および(2007年5月23日に出願された)米国出願第11/805,850号に記載されたように、ホモ二量体化を最小化し、または妨げる(二量体化ドメイン突然変異体ともいわれる)1以上の遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインを含む。FokIの位置446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538におけるアミノ酸残基は、全て、FokI切断ハーフ−ドメインの二量体化に影響させるための標的である。
【0097】
絶対ヘテロダイマーを形成するFokIの例示的な遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインは、第1の切断ハーフ−ドメインがFokIの位置490および538のアミノ酸残基において突然変異を含み、かつ第2の切断ハーフ−ドメインがアミノ酸残基486および499において突然変異を含む対を含む。
【0098】
かくして、1つの実施形態において、490における突然変異はGlu(E)をLys(K)で置き換え;538における突然変異はIso(I)をLys(K)で置き換え;486における突然変異はGln(Q)をGlu(E)で置き換え;および位置499における突然変異はIso(I)をLys(K)で置き換える。具体的には、本明細書中に記載された遺伝子組換え切断ハーフドメインは、1つの切断ハーフ−ドメインにおいて位置490(E→K)および538(I→K)を突然変異させて、「E490K:I538K」と命名された遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインを生じさせることにより、およびもう1つの切断ハーフ−ドメインにおける位置486(Q→E)および499(I→L)を突然変異させて、「Q486E:I499L」と命名される遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインを生じさせることによって調製した。本明細書中に記載された遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインは、異常な切断が最小化されるか、または排除された絶対ヘテロダイマー突然変異体である。例えば、その開示が、全ての目的で、その全体が参照により組み込まれる(2006年5月25日に出願された)米国特許仮出願第60/808,486号の実施例1参照。
【0099】
本明細書中に開示される遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインは、例えば、米国特許公開第20050064474号(例えば、実施例5参照);および国際公開第07/139898に号パンフレット記載された野生型切断ハーフ−ドメイン(FokI)の部位−特異的突然変異誘発によっていずれかの適切な方法を用いて調製することができる。
【0100】
別法として、ヌクレアーゼは、いわゆる「分解酵素」技術(例えば、米国特許公開第20090068164号参照)を用いて核酸標的部位においてイン・ビボにて組み立ててよい。そのような分解酵素の成分は別々の発現構築体で発現してもよく、あるいは、例えば、2AペプチドまたはIRES配列を自己−切断することによって、個々の成分が分離された1つのオープンリーディングフレームに連結することができる。成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメイン、またはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであってよい。
【0101】
C.標的化切断のためのさらなる方法
BAXまたはBAK遺伝子中に標的部位を有するいずれのヌクレアーゼも、本明細書中に開示された方法で用いることができる。例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼは、一旦ヒト−サイズのゲノムに入れば、統計学的ベースに基づいて、そのいくつかは存在するようである、非常に長い認識配列を有する。BAXおよび/またはBAK遺伝子中にユニークな標的部位を有するいずれのそのようなヌクレアーゼも、これらの遺伝子における標的化切断のために、ジンクフィンガーヌクレアーゼの代わりに、またはそれに加えて用いることができる。
【0102】
例示的なホーミングエンドヌクレアーゼは、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIを含む。それらの認識配列は知られている。また、米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379−3388;Dujon et al.(1989)Gene 82:115−118;Perler et al.(1994)Nucleic Acids Res.22,1125−1127;Jasin(1996)Trends Genet.12:224−228;Gimble et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163−180;Argast et al.(1998)J.Mol.Biol.280:345−353およびNew England Biolabsカタログも参照。
【0103】
ほとんどのホーミングエンドヌクレアーゼの切断特異性はそれらの認識部位に関しては絶対的でないが、その部位は、哺乳動物−サイズのゲノム当たりの単一切断反応が、その認識部位の単一コピーを含有する細胞においてホーミングエンドヌクレアーゼを発現させることによって得ることができる十分な長さのものである。また、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの特異性は、非−天然標的部位に結合するように作成することができると報告されている。例えば、Chevalier et al.(2002)Molec.Cell 10:895−905;Epinat et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:2952−2962;Ashworth et al.(2006)Nature 441:656−659;Paques et al.(2007)Current Gene Therapy 7:49−66参照。
【0104】
送達
本明細書中に記載されたZFNはいずれかの適切な手段によって標的細胞に送達することができる。適切な細胞は、限定されるものではないが、真核生物細胞および原核生物細胞および/または細胞株を含む。そのような細胞、またはそのような細胞から生成された細胞株の非限定的例はCOS、CHO(例えば、CHO-S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293−H、HEK293−T)、およびperC6細胞、ならびにSpodoptera fugiperda (Sf)のような昆虫細胞、Saccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesのような真菌細胞を含む。ある実施形態において、細胞株はCHO-K1、MDCKまたはHEK293細胞株である。
【0105】
ジンクフィンガーを含む蛋白質を送達する方法は、例えば、その全ての開示が、その全体が参照により組み込まれる、米国特許第6,453,242号;第6,503,717号;第6,534,261号;第6,599,692号;第6,607,882号;第6,689,558号;第6,824,978号;第6,933,113号;第6,979,539号;第7,013,219号;および第7,163,824号に記載されている。
【0106】
本明細書中に記載されたZFNは、ZFNの1以上をコードする配列を含有するベクターを用いて送達してもよい。限定されるものではないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ−関連ウイルスベクター等を含めたいずれのベクター系を用いてもよい。また、その全体が参照により組み込まれる米国特許第6,534,261号;第6,607,882号;第6,824,978号;第6,933,113号;第6,979,539号;第7,013,219号;および第7,163,824号も参照。さらに、これらのベクターのいずれも、1以上のZFNをコードする配列を含んでもよいのは明らかであろう。かくして、ZFNの1以上の対が細胞に導入される場合、ZFNは同一ベクターまたは異なるベクターで行ってよい。多数のベクターを用いる場合、各ベクターは1または多数のZFNをコードする配列を含んでもよい。
【0107】
慣用的なウイルスおよび非−ウイルスベースの遺伝子導入方法を用いて、遺伝子組換えZFPをコードする核酸を細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織に導入することができる。そのような方法を用いて、ZFPをコードする核酸をイン・ビトロにて細胞に投与することもできる。ある実施形態において、ZFPをコードする核酸はイン・ビボまたはエクス・ビボ遺伝子療法使用のために投与される。非−ウイルスベクター送達系は、リポソームまたはポロキサマーのような送達媒体と複合化させた、DNAプラスミド、裸の核酸、および核酸を含む。ウイルスベクター送達系はDNAおよびRNAウイルスを含む、それは、細胞への送達後にエピソームまたは組み込まれたゲノムいずれかを有する。遺伝子治療手順のレビューについては、Anderson,Science 256:808−813(1992);Nabel & Felgner,TIBTECH 11:211−217(1993);Mitani & Caskey,TIBTECH 11:162−166(1993);Dillon,TIBTECH 11:167−175(1993);Miller,Nature 357:455−460(1992);Van Brunt,Biotechnology 6(10):1149−1154(1988);Vigne,Restorative Neurology and Neuroscience 8:35−36(1995);Kremer & Perricaudet,British Medical Bulletin 51(1):31−44(1995);Haddada et al.,in Current Topics in Microbiology and Immunology,Doerfler and Baehm(編)(1995);およびYu et al.,Gene Therapy 1:13−26(1994)参照。
【0108】
遺伝子組換えZFPをコードする核酸の非―ウイルス送達の方法はエレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティックス、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質を含む。核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、およびDNAの作用物質増強型取り込みである。例えば、Sonitron 2000 System(Rich−Mar)を用いるソノポレーションを、核酸の送達で用いることもできる。
【0109】
さらなる例示的な核酸送達系は、Amaxa Biosystems(Cologne,Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville,Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston,MA)およびCopernicus Therapeutics Inc.(例えば、米国特許第6008336号参照)によって提供されるものを含む。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号および米国特許第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は商業的に販売されている。(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの有効な受容体−認識リポフェクションに適したカチオン性および中性脂質は、Fenglner 国際公開第91/17424号パンフレット、 国際公開第91/16024号パンフレットのものを含む。送達は細胞(エクス・ビボ投与)または標的組織(イン・ビボ投与)に対するものとすることができる。
【0110】
免疫脂質複合体のような標的化リポソームを含めた脂質:核酸複合体の調製は当業者に良く知られている(例えば、Crystal,Science 270:404−410(1995);Blaese et al.,Cancer Gene Ther.2:291−297(1995);Behr et al.,Bioconjugate Chem.5:382−389(1994);Remy et al.,Bioconjugate Chem.5:647−654(1994);Gao et al.,Gene Therapy 2:710−722(1995);Ahmad et al.,Cancer Res.52:4817−4820(1992);米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、および第4,946,787号参照)。
【0111】
遺伝子組換えZFPをコードする核酸の送達のためのRNAまたはDNAウイルスベースの系の使用は、身体中でウイルスを特異的細胞に標的化し、次いで、ウイルスペイロードを核に輸送するための高度に発達したプロセスを利用する。ウイルスベクターは患者に直接的に投与することができ(イン・ビボ)、あるいはそれを用いて、イン・ビトロにて細胞を処理することができ、修飾された細胞が患者に投与される(エクス・ビボ)。ZFPの送達のための慣用的なウイルスベースの系は、限定されるものではないが、遺伝子導入用の、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ−関連、ワクシニアおよび単純疱疹ウイルスベクターを含む。宿主ゲノムへの組込みはレトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ−関連ウイルス遺伝子導入方法で可能である、しばしば、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。加えて、高い形質導入効率が、多くの異なる細胞型および標的組織で観察されている。
【0112】
レトロウイルスの向性は、外来性エンベロープ蛋白質を組み込むことによって改変することができ、標的細胞の潜在的標的集団を拡大する。レンチウイルスベクターは、非−分裂細胞を形質導入し、または感染させ、典型的には、高いウイルス力価を生じさせることができるレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6ないし10kbの外来性配列に対するパッケージング能力を持つシス−作用性ロングターミナルリピートよりなる。最小シス−作用性LTRはベクターの複製およびパッケージングで十分であり、これは、次いで、治療遺伝子を標的細胞に取り込んで、永久的導入遺伝子発現を提供するのに用いられる。広く用いられるレトロウイルスベクターは、ネズミ白血球ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびその組合せに基づくものを含む(例えば、Buchscher et al.,J.Virol.66:2731−2739(1992);Johann et al.,J.Virol.66:1635−1640(1992);Sommerfelt et al.,Virol.176:58−59(1990);Wilson et al.,J.Virol.63:2374−2378(1989);Miller et al.,J.Virol.65:2220−2224(1991);PCT/US94/05700参照)。
【0113】
ZFP融合蛋白質の一過性発現が好ましい適用において、アデノウイルスベースの系を用いることができる。アデノウイルスベースのベクターは多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターでは、発現の高い力価および高いレベルが得られてきた。このベクターは、比較的単純な系において大量に生産することができる。また、アデノ−関連ウイルス(「AAV」)ベクターを用いて、例えば、核酸およびペプチドのイン・ビトロ生産においておよびイン・ビボおよびエクス・ビボ遺伝子治療手順のために、標的核酸で細胞を形質導入する(例えば、West et al.,Virology 160:38−47(1987);米国特許第4,797,368号;国際公開第93/24641号パンフレット;Kotin,Human Gene Therapy 5:793−801(1994);Muzyczka,J.Clin.Invest.94:1351(1994)参照)。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.5:3251−3260(1985);Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072−2081(1984);Hermonat & Muzyczka,PNAS 81:6466−6470(1984);およびSamulski et al.,J.Virol.63:03822−3828(1989)を含めた多数の刊行物に記載されている。
【0114】
少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが臨床試験における遺伝子導入で現在利用でき、これは、ヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠陥ベクターの相補性に関連するアプローチを利用して、形質導入剤を生じさせる。
【0115】
pLASNおよびMFG−Sは、臨床試験で用いられてきたレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al.,Blood 85:3048−305(1995);Kohn et al.,Nat.Med.1:1017−102(1995);Malech et al.,PNAS 94:22 12133−12138(1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験で用いられた最初の治療ベクターであった(Blaese et al.,Science 270:475−480(1995))。50%以上の形質導入効率が、MFG−Sをパッケージしたベクターで観察されてきた(Ellem et al.,Immunol Immunother.44(1):10−20(1997);Dranoff et al.,Hum.Gene.Ther.1:111−2(1997))。
【0116】
組換えアデノ−関連ウイルスベクター(rAAV)は、欠陥がある非病原性のパラボウイルスアデノウイルス関連ウイルス2型に基づいた有望な代替遺伝子送達系である。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに近接するAAV 145bp逆方向ターミナルリピートのみを保有するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノムへの組込みによる有効な遺伝子導入および安定な導入遺伝子送達は、このベクター系のための鍵となる特徴である(Wagner et al.,Lancet 351:9117 1702−3(1998),Kearns et al.,Gene Ther.9:748−55(1996))。
【0117】
複製欠損性組換えアデノウイルスベクター(Ad)は高い力価で生産することができ、多数の異なる細胞型を容易に感染させることができる。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd E1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置き換えるように作成され;引き続いて、複製欠陥ベクターは、欠失した遺伝子機能をトランスにて供給するヒト293細胞中で増殖させる。Adベクターは、肝臓、腎臓および筋肉で見出されるもののような分裂をしていない分化した細胞を含めた多数のタイプの組織をイン・ビボにて形質導入することができる。慣用的なAdベクターは輸送能が大きい。臨床試験でのAdベクターの使用の例は、筋肉内注射での抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド療法を含むものであった(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083−9(1998))。臨床試験における遺伝子導入用のアデノウイルスベクターの使用のさらなる例は、Rosenecker et al.,Infection 24:1 5−10(1996);Sterman et al.,Hum.Gene Ther.9:7 1083−1089(1998);Welsh et al.,Hum.Gene Ther.2:205−18(1995);Alvarez et al.,Hum.Gene Ther.5:597−613(1997);Topf et al.,Gene.Ther.5:507−513(1998);Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083−1089(1998)を含む。
【0118】
細胞のパッケージングを用いて宿主細胞を感染させることができるウイルス粒子を形成する。そのような細胞はアデノウイルスをパッケージする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージするΨ2細胞またはPA317細胞を含む。遺伝子治療で用いるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子にパッケージするプロデューサー細胞株によって生成される。そのベクターは典型的にはパッケージングおよび(もし適用可能であれば)、宿主への引き続いての取込みに必要なウイルスの最小配列を含有し、他のウイルス配列は、発現させるべき蛋白質をコードする発現カセットによって置き換えられている。ウイルス機能の喪失は、パッケージング細胞株によってトランスにて供給される。例えば、遺伝子治療で用いるAAVベクターは典型的には、パッケージング、および宿主ゲノムへの組込みに必要なAAVゲノムからの逆方向ターミナルリピート(ITR)配列のみを保有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわち、repおよびcapをコードするヘルパープラスミドを含有するが、ITR配列を欠如する細胞株にパッケージされる。その細胞株はヘルパーとしてのアデノウイルスでも感染される。ヘルパーウイルスはAAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如のためかなりの量でパッケージングされない。アデノウイルスでの汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも感受性が高いアデノウイルスに対して熱処理することによって低下させることができる。
【0119】
多くの遺伝子治療適用においては、遺伝子治療ベクターは、特定の組織タイプに対する高度な特異性を保ちながら送達されるのが望ましい。従って、ウイルスベクターは、ウイルスの外側表面のウイルス外皮蛋白質との融合蛋白質としてリガンドを発現されることによって、所与の細胞型に対する特異性を有するように修飾することができる。リガンドは、注目する細胞型に存在することが知られた受容体に対する親和性を有するように選択される。例えば、Han et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:9747−9751(1995)は、モロニーネズミ白血病ウイルスがgp70に融合したヒトヘレグリンを発現するように修飾することができ、組換えウイルスは、ヒト表皮成長因子受容体を発現するある種のヒト乳癌細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスが細胞−表面受容体に対するリガンドを含む融合蛋白質を発現する他のウイルス−標的細胞対まで拡大することができる。例えば、繊維状ファージは、実質的にいずれの選択された細胞受容体に対する特異的結合親和性も有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を呈するように作成することができる。先の記載は主としてウイルスベクターに適用されるが、同一の原理は非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターは、特異的標的細胞による取込みに好都合な特異的取込み配列を含有するように作成することができる。
【0120】
遺伝子治療ベクターは、典型的には、後に記載するような、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または頭蓋内注入)または局所的適用によって、個々の患者に投与することによって、イン・ビボにて送達することができる。別法として、ベクターは、個々の患者から外植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄吸入物、組織バイオプシー)、または万能供血者の造血系幹細胞のような細胞にエクス・ビボにて投与し、通常は、ベクターが組み込まれた細胞についての選択の後に、細胞を患者に再度移植することができる。
【0121】
診断、研究のためのエクス・ビボ細胞トランスフェクション、または(例えば、宿主生物への、トランスフェクトされた細胞の再−注入を介する)遺伝子治療のためのエクス・ビボ細胞トランスフェクションは当業者によく知られている。好ましい実施形態においては、細胞は対象生物から単離され、ZFP核酸(遺伝子またはcDNA)でトランスフェクトされ、対象生物(例えば、患者)に再度注入して戻される。エクス・ビボトランスフェクションに適した種々の細胞型は当業者によく知られている(例えば、Freshney et al.,Culture of Animal Cells,A Mamual of Basic Technique(第3版 1994)、および患者からの細胞単離培養方法の考察について、そこで引用された文献参照)。
【0122】
1つの実施形態において、幹細胞は、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のためのエクス・ビボ手法で用いられる。幹細胞を用いる利点は、それをイン・ビトロで他の細胞型に分化することができるか、あるいは骨髄移植される(細胞のドナーのような)哺乳動物に導入できることである。GM−CSF、IFN−γおよびTNF−αのようなサイトカインを用いてCD34+細胞を臨床的に重要な免疫細胞型にイン・ビトロにて分化させる方法は知られている(Inaba et al.,J.Exp.Med.176;176:1693−1702(1992)参照)。
【0123】
幹細胞は公知の方法を用いて形質導入および分化のために単離される。例えば、幹細胞は、CD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR−1(顆粒球)、およびIad(分化した抗原提示細胞)のような、望まない細胞に結合する抗体で骨髄細胞をピックアップすることによって、幹細胞は骨髄細胞から単離される(Inaba et al.,J.Exp.Med.176:1693−1702(1992)参照)。
【0124】
治療ZEP核酸を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム等)は、イン・ビボでの細胞の形質導入のために生物に直接的に投与することもできる。別法として、裸のDNAを投与することができる。投与は、限定されるものではないが、注射、点滴、局所適用およびエレクトロポレーションを含めた、血液または組織細胞と最終的に接触させて分子を導入するために通常用いられる経路のいずれかによる。そのような核酸を投与する適切な方法は利用可能であって、当業者によく知られており、1を超える経路を用いて、特定の組成物を投与することができるが、特定経路はしばしば、もう1つの経路よりもより直ちにかつより有効な反応を供することができる。
【0125】
DNAを造血系幹細胞に導入する方法は、例えば、米国特許第5,928,638号に開示されている。導入遺伝子の造血系幹細胞、例えば、CD34+細胞への導入で有用なベクターはアデノウイルスタイプ35を含む。
【0126】
導入遺伝子を免疫細胞(例えば、T−細胞)に導入するのに適切なベクターは非組込みレンチウイルスベクターを含む。例えば、Ory et al.,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11382−11388;Dull et al.,(1998)J.Virol.72;8463−8471;Zuffery et al.,(1998)J.Virol.72:9873−9880;Follenzi et al.(2000)Nature Genetics 25:217−222参照。
【0127】
医薬品上許容される担体は、投与されるべき特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するのに用いる特定の方法によって、部分的には決定される。従って、後に記載するように、利用可能な医薬品組成物の広く種々の適切な処方がある(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,1989参照)。
【0128】
先に述べたように、開示された方法および組成物は、限定されるものではないが、原核生物細胞、真菌細胞、古細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞を含めたいずれのタイプの細胞にも用いることができる。蛋白質発現のための適切な細胞株は当業者に知られており、限定されるものではないが、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、Hak、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、perC6、Spodoptera fugiperda(Sf)のような昆虫細胞、およびSaccharomyces,PischiaおよびSchizosaccharomycesのような真菌細胞を含む。これらの細胞株の子孫の変異および誘導体を用いることもできる。
【0129】
キット
また、本明細書中に記載された組成物のいずれかを含む、または本明細書中に記載された方法のいずれかを実施するためのキットが提供される。キットは、典型的には、BakまたはBaxにおける標的部位に結合する1以上のジンクフィンガー蛋白質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ)を含有する。かくして、BAKおよび/またはBAXノックアウト細胞株を生成するためのキットが提供される。キットは細胞、細胞の形質転換用の緩衝液、細胞用の培地および/またはアッセイを行うための緩衝液を含有することもできる。典型的にはキットは、キットに貼付されたまたはそうでなければ、キットの他の成分に添付された指示書、パッケージングまたは宣伝リーフレットのようないずれかの資材を含むラベルも含有する。
【0130】
適用
開示された方法および組成物は、BAXおよび/またはBAKゲノム配列の不活化のために用いることができる。先に記載したように、不活化は、細胞におけるBaxおよび/またはBak遺伝子発現の部分的または全面的な抑制を含む。Bax−および/またはBak−欠損細胞株(例えば、二重Bax−Bakノックアウト細胞株)を本明細書中に記載したように生成させることもできる。Bakおよび/またはBaxの不活化は、例えば、単一切断反応による切断、続いての、非相同末端接合によって、2つの部位における切断、続いての、2つの切断部位の間の配列を欠失させるような接合によって、ミスセンスまたはナンセンスコドンのコーディング領域への標的化組換えによって、遺伝子または調節領域を破壊するような、遺伝子またはその調節領域への無関係配列(すなわち、「スタッファー配列」)の標的化組換えによって、遺伝子または調節領域を破壊するような注目配列をコードする外因性核酸配列の標的化組換えによって、あるいは、転写体のミススプライシングを引き起こす、スプライスアクセプター配列のイントロンへの標的化組換えによって達成することができる。
【0131】
Baxおよび/またはBakのZFN媒介不活化(ノックアウト)のための種々の適用がある。例えば、本明細書中に記載されたように生成されたBaxおよび/またはBakが欠損した細胞株はアポトーシスに対して抵抗性であって、Baxおよび/またはBakが欠乏していない細胞株よりも、培養において注目する外因性蛋白質を発現させた場合に、より長く増殖し、かつ健康なままでいる。従って、本明細書中に記載されたBax/Bak欠損細胞株は、注目する1以上の蛋白質(例えば、抗体、抗原、治療用蛋白質)および/または組換えウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、アデノウイルスまたはアデノ−関連ウイルス(AAV)ベクター)の長期的な効率のよい生産に用いることができる。加えて、他のアポトーシス−関連遺伝子の破壊は、単独で、または組み合せて、アポトーシスを妨げるのに有効であることが判明するであろう。特に、アポトーシス−促進蛋白質(すなわち、Bik、Bim、Bad等)のBH3−onlyファミリーのメンバーは、遺伝子破壊および/またはノックアウトのための標的とすることができる。
【0132】
加えて、本明細書中に記載されたBaxおよび/またはBak欠損細胞株は、ウイルス全体および/またはサブユニットのワクチンの生産で有用である。例えば、インフルエンザウイルスが感染した細胞株はアポトーシスの顕著な証拠を示すことが知られている。かくして、本発明のBaxおよび/またはBak欠損細胞株の使用は、インフルエンザワクチンのようなウイルスワクチンのより効率のよい長期的生産に利用することができる。インフルエンザ感染に対して感受性のない種からの細胞でのインフルエンザワクチンの生産は、例えば、MDCK細胞のようなイヌ細胞において特に望ましい。また、宿主細胞アポトーシスの結果、ワクチンが生産細胞の成分により汚染する可能性がもたらされることも知られている。そのような汚染の結果、ヒト向けの出荷および使用に必要な純度および品質を達成するための製品のロットが失敗し得る。Baxおよび/またはBak欠損細胞株を用いることによって得られたアポトーシスの予防を介して汚染を減少させると、収率および有効性双方の獲得に導き得る。
【実施例】
【0133】
実施例1:BAX−およびBAK−ZFNの設計および構築
ジンクフィンガー蛋白質は、BAXおよびBAKにおける標的部位を認識するように設計した。例示的な設計は表1および2に示される。
【0134】
ZFNの適切な対をコードする配列を含むプラスミドを、Urnov et al.(2005)Nature 435(7042):646−651に実質的に記載されたように構築した。また、米国特許公開第20080015164号および国際公開第2007/139982号パンフレットも参照。
【0135】
実施例2:遺伝子型分析
種々の細胞型におけるBAK−およびBAX−不活化クローンを生成させ、遺伝子レベルにて分析した。
【0136】
A.CHO細胞
ZFN 11205および10350をコードするプラスミドをCHO K1細胞にトランスフェクトした。CHO K1細胞はAmerican Type Culture Collectionから入手し、10%の適格なウシ胎仔血清(FCS, Cyclone)を補足したF−12培地(Invitrogen)中で推奨されるように増殖させた。細胞は、TrypLE Select(商標)プロテアーゼ(Invitrogen)を用いてプラスチックウエアから解離させた。トランスフェクションでは、100万のCHO K1細胞を、2μgのジンク−フィンガーヌクレアーゼプラスミドおよび100μLのAmaxa溶液Tと混合した。プログラムU−23を用いて、細胞をAmaxa Nucleofector II(商標)において細胞をトランスフェクトし、1.4mLのF−12加熱培地+10%FCSに回収した。
【0137】
ゲノムDNAを収穫し、オリゴGJC 39F(5’−tcaagaggtttcatggcgag−3’)(配列番号:25)およびGJC 38R(5’−ttctctctcttgtgcttatgg−3’)(配列番号:26)を用いてBAK遺伝子座の一部をPCR増幅した。InVitrogenからのAccuprime HiFiポリメラーゼを用いるPCRは以下の通りであった:94℃における最初の3分の変性後に、PCRの30サイクルを94℃における30秒の変性工程で行い、引き続いて、58℃において30秒のアニーリング工程を行い、引き続いて、68℃において30秒の延長工程を行った。30サイクルの完了の後、反応液を68℃にて7分間インキュベート、次いで、10℃で無期限に保存した。
【0138】
PCR産物をゲル精製し、配列決定し、2つの対立遺伝子を回収した。2つの例示的クローンのBAK遺伝子型(欠失)の一部を図1に示す。双方のクローンにおいて、ZFNは、野生型開始部位を含んだ欠失を導入した。対立遺伝子はAおよびBと命名される。
【0139】
配列決定された双方のクローンについては、BAKの双方の対立遺伝子を修飾した。クローン8H−6はヘテロ接合性化合物であり(対立遺伝子Bよりも大きな欠失を有する対立遺伝子A)、クローン8D−4はホモ接合性であった。図1参照。
【0140】
B.MDCK細胞
(イヌBAK遺伝子中の標的部位を認識する)BAKについてはZFN 17622および17623、および(イヌBAX遺伝子中の標的部位を認識する)BAXについてはZFN 17658および17659を用いる以外は、CHO細胞について前記したように、BAK−およびBAX−標的化ZFNをMadin−Darby Canine Kidney(MDCK)細胞においてもテストした。
【0141】
例えば、米国特許公開第20080015164号;第20080131962号および第20080159996号に記載されたように、Surveyor(商標)ヌクレアーゼ(Transgenomic)によって、MDCK BAK−およびBAX−ZFN処理細胞も調べた。ZFN−17622/17623およびZFN 17627/17626で処理したMDCK細胞は、各々、BAK対立遺伝子において3.7%および1.1%破壊を示した(図2A)。ZFN 17658および17659で処理したMDCK細胞はBAX対立遺伝子において8.0%破壊を示した(図2B)。
【0142】
ゲノムDNAに収穫し、オリゴYS 13F(5’−ctcctttcacagagatgcag−3’)(配列番号:70)およびYS 14R(5’−caggagagacagagtggtca−3’)(配列番号:71)を用いてBAK遺伝子座の一部をPCR増幅した。ゲノムDNAを収穫し、オリゴYS 21F(5’−aaaaagactgcagtggcgca−3’)(配列番号:72)およびYS 22R(5’−tcacccagaggtcaatggat−3’)(配列番号:73)を用いてBAX遺伝子座の一部をPCR増幅した。(野生型およびBAK−欠失クローン双方における)BAKおよびBAXについてのPCR増幅産物をクローン化し、配列決定した。
【0143】
図2Cに示すように、種々のBAK−特異的ZFN−処理クローンの分析は、ZFN−処理MDCKクローンが一方または双方のBAK対立遺伝子において破壊されていることを示した。同様に、図2Dは、BAX−特異的ZFNで処理したMDCK細胞のPCR分析を示し、BAK単一ノックアウトが、一方の対立遺伝子での30bpの欠失、および他方の対立遺伝子での1bpの挿入で得られたことを示す。BAX/BAK二重ノックアウトでは、BAK対立遺伝子が、BAX−特異的ZFNを用いてBak−欠損クローンにおいて標的化された。図に示すように、いくつかのヘテロ接合性クローンが同定され、これは1つの野生型BAX対立遺伝子、および1つの突然変異したBAX対立遺伝子を含有した。
【0144】
実施例3:Bak欠失クローンのRNA分析
実施例2に記載されたようなBAK−不活化CHO細胞クローンからのBAKの転写体も分析した。
【0145】
製造業者の推奨に従い、High Pure RNA Isolation Kit(Roche Applied Science)を用いて、野生型CHO−KI細胞および双方のBAK欠失クローンからRNAを精製した。2.5μgの全RNAを逆転写反応で以下のように用いた:500ngのオリゴ(dT)をRNA、および1μLの10 mM dNTPミックスと混合した。水を20μLの最終容量になるように加えた。混合物を65℃まで加熱し、氷上で冷却し、4μLの5×第1ストランド緩衝液(Invitrogen)および0.1M DTTを補充した。混合物を42℃にて2分間インキュベートした。1μLのSuperscript IIreverse transcriptase(登録商標)(InVitrogen)を反応液に加え、次いで、反応液を42℃にて50分間インキュベートした。次いで、逆転写反応を、70℃での15分間のインキュベーションによって停止した。InVitrogenからのAccuprime(商標) HiFiポリメラーゼを用い、1μLの得られたcDNAをPCR反応で以下のように用いた:94℃における最初の3分の変性後に、25サイクルのPCRを、94℃における30秒の変性工程で行い、続いて、60℃にて30秒のアニーリング工程を行い、続いて、68℃にて30秒の延長工程を行った。30サイクルの完了の後、反応液を68℃にて7分間インキュベート、次いで、10℃で、無期限に保存した。BAKのオリゴヌクレオチドはGJC 24F(5’−catctcacatctggaccacagccg−3’)(配列番号:27)およびGJC 25R(5’−ctggaactctgtgtcgtatctccgg−3’)(配列番号:28)であった。BAXについてのオリゴヌクレオチドはGJC 12F(5’−cttcttccgggtggcagctg−3’)(配列番号:29)およびGJC 23R(5’−cccgaagtatgagaggaggccatc−3’)(配列番号:30)であった。
【0146】
図3に示すように、クローン8H6(合成異型接合体クローン)から形成された転写体は、このクローンがエクソン2をスキップすることを示す。加えて、予測されたように、BAKの欠失はBAXのスプライシングに対して効果を有しなかった。
【0147】
実施例4:BAK/BAX二重ノックアウト細胞株の生成および分析
BAKおよびBAXの双方が不活化された細胞株も創製した。特に、BAXに向けられたジンクフィンガーヌクレアーゼを設計し、前記したように構築した。BAXをコードするプラスミドは、表1に示されるように、実施例2および3に記載されたBak−欠損CHO細胞に設計する。
【0148】
ZFN切断の部位において突然変異を検出するBslIによるBAX PCR産物の消化によって、細胞をBAX不活化についてテストした。各クローンからのほぼ25,000個の細胞を100μLのQuickExtract(商標)溶液(Epicentre)に溶解させ、得られた粗製溶解物の1μLを、InvitrogenからのAccuprine(商標) HiFiポリメラーゼを用いるPCR反応で以下のように用いた:94℃における最初の3分の変性の後、35サイクルのPCRを94℃における30秒の変性工程で行い、続いて、60℃における30秒のアニーリング工程を行い、続いて、68℃における30秒の延長工程を行った。30サイクルの完了の後、反応液を68℃にて7分間インキュベート、次いで、10℃で、無期限に保存した。BAX破壊クローンをスクリーニングするためのオリゴヌクレオチドはGJC 52F(5’−cagaggaatgaaagcaaagg−3’)(配列番号:31)およびGJC 114R(5’−tgaaccaggctgggagattt−3’)(配列番号:32)であった。0.1μLの10mg/mL BSAおよび0.1μLの10×緩衝液#4(New England Biolabs)とともにBslI(New England Biolabs)の0.1μLをPCR反応に加えた。消化を55℃にて3時間進行させ、その後、消化産物を1%アガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0149】
図4に示すように、BAK−/−BAX−トランスフェクトクローン79のうち21は、BAXの予測された破壊を含有した。
【0150】
BAK/BAX二重ノックアウトクローンを、BaxおよびBak蛋白質の発現についてもテストした。100万のBAX/BAK−/−細胞からの溶解物は、100μL RIPA緩衝液(Sigma)+プロテアーゼ阻害剤(Complete Mini tablets, Roche Applied Science)中への再懸濁、および氷上での1時間のインキュベーションによって調製した。溶解物を14,000rpmにおいて10分間遠心し、10μLの上清をウエスタンブロットで用いた。クローンからの蛋白質抽出物を抗−Bax抗体(Abcam)および抗−Bak抗体(Sigma)で検索した。図5に示すように、BAX/BAK−/−二重ノックアウト細胞は、BaxまたはBak蛋白質の全長型または切断型を発現しなかった。
【0151】
実施例5:アポトーシスは、BAX/BAK−/−二重ノックアウト細胞株において妨げられる。
また、BAX/BAK−/−二重ノックアウト細胞株を、スタウロスポリン−誘導アポトーシスに対するそれらの抵抗性についてテストした。
【0152】
簡単に述べれば、3つの異なるBAX/BAK−/−−ノックアウト細胞株(#47、71および97)からの25000個の細胞、25000個のの野生型CHO−KI細胞を、96−ウェル皿中の、F−12培地+10%ウシ胎仔血清に播いた。12時間の増殖の後、細胞を37℃にて1μMスタウロスポリン(Sigma,S−4400)に6時間暴露した。カスパーゼ(アポトーシスの間のみ活性であって、ミトコンドリアからのチトクロームCのBak−およびBax媒介放出によって活性化されるプロテアーゼ)の活性化を、製造業者に指示に従い、Homogenous Caspase Assay Kit(Roche Applied Science)で測定した。データは、アッセイの開始から2.5時間後に記録した。細胞播種密度のわずかな変動について修正するために、CytoTox−One(商標)キット(Promega)を用い、カスパーゼ活性をLDH−A酵素活性(細胞数の代わり)によって正規化した。
【0153】
図6に示すように、アポトーシスはBAX/BAK−/−細胞株において検出されなかった。
【0154】
これらの結果は、遺伝子組換えヌクレアーゼを用いるアポトーシス−抵抗性BaxおよびBak−欠損細胞株の迅速な生成を示す。切断の部位におけるNHEJの誤差−傾向プロセスによる不正なDNA修復の結果、機能的に有害な突然変異がもたらされる。NHEJ−由来突然変異は、時々、慣用的な遺伝子破壊によって作成されたものに対して小さいが、BAKおよびBAXの選択された臨界的領域にこれらの突然変異を標的化する遺伝子組換えヌクレアーゼ(ZFN)の能力は、小さいイン−フレーム欠失でさえ不活化をもたらすであろうとことを確実とした。
【0155】
さらに、CHO細胞株の多くの異なるサブタイプが、しばしば、特注の遺伝子または表現型変化を伴って存在するが、本明細書中に記載されたZFNを用いて、いずれかの細胞株またはサブタイプにおいてBAXおよび/またはBAKを迅速に破壊することができる。加えて、哺乳動物種の間で保存されたジンクフィンガー蛋白質結合部位を選択することができるが、ZFNは、いずれの種に由来する細胞株においてもBAXおよびBAKを不活化するように設計することができる。
【0156】
実施例6:組換え蛋白質の生産はBAX/BAK−/−二重ノックアウト細胞株において増加する。
野生型CHO−KI細胞およびBAX BAK−/−クローン8H6−71(図5参照)からの蛋白質生産をアッセイした。野生型およびノックアウト両細胞株を、IgG重鎖および軽鎖遺伝子、およびピューロマイシン−抵抗性についての遺伝子を含有するプラスミドでトランスフェクトした。細胞を8μg/mLピューロマイシンで選択し、ピューロマイシン抵抗性プールの細胞上清を2日間隔で2.5週間サンプリングした。細胞はこの実験においては栄養を与えず、栄養飢餓および毒性代謝産物蓄積が培養の増殖後期にアポトーシスを誘導することを可能とした。
【0157】
IgGレベルは4ないし8日において双方の培養で同様であった。しかしながら、12ないし17日において、二重−ノックアウト培養におけるIgGレベルは野生型CHO細胞培養の2ないし5倍であった(図7)。
【0158】
本明細書中で言及した全ての特許、特許出願および刊行物は、ここに、その全体を参照により組み込まれる。
【0159】
開示は理解の明瞭性の目的で説明および例によって幾分詳細に提供してきたが、開示の精神または範囲を逸脱することなく実施することができるのは当業者に明らかであろう。従って、これまでの記載および実施例は限定的なものと解釈すべきではない。
【技術分野】
【0001】
本開示は、Baxおよび/またはBakの発現が消失した細胞株のゲノムエンジニアリングおよび生成、ならびに蛋白質(例えば、抗体、抗原等)、ウイルスおよび/またはウイルスベクターの生成のためのBax/Bak欠損細胞株の使用の分野におけるものである。
発明の分野
【背景技術】
【0002】
アポトーシス、またはプログラムされた細胞の死滅は外因性または内因性シグナルならびに発生合図が引き金となり得る。2つの主なアポトーシス経路が確認されている:引き続いて死滅するであろう細胞で発現された細胞表面受容体へのリガンド欠乏を介してアポトーシスが開始される外因性細胞死経路、およびアポトーシスが細胞内で開始される内因性細胞死経路。
【0003】
腫瘍壊死因子受容体ファミリーのメンバーは、外因性死滅経路に関与する受容体で最良に特徴付けられたものの中にある。リガンドの係合に際して、これらの受容体は死滅−誘導シグナリング複合体の形成を開始し、これは必須のアダプター分子FADDを含む。FADDは、今度は、カスパーゼ8を動員し、これは、今度は、自己蛋白質分解プロセスを介して活性化される。一旦活性化されれば、カスパーゼ8は、カスパーゼ9およびカスパーゼ3のようなさらなるカスパーゼ活性および細胞内基質の分解双方を開始させ、これは、結局は細胞死をもたらす。TNF受容体ファミリーはTNFR1;Fas;Apo3、WSL−1、TRAMP、およびLARDのようなDR3蛋白質;DR4;TRAIL−R2、TRICK2、およびKILLERのようなDR5蛋白質;およびDR6を含む。
【0004】
蛋白質のBcl−2ファミリーのメンバーは細胞死を変調するそれらの能力によって特徴付けられる。Bcl−2、およびBcl−x1のようなそのホモログのいくつかはアポトーシスを阻害し、他方BaxおよびBakのような他のファミリーのメンバーはある条件下ではアポトーシスを誘導しまたは加速する。BakおよびBax、ならびにBcl−xs、Bid、Bim、BadおよびBikはBcl−2蛋白質のプロ−アポトーシスの群を構成する。
【0005】
Bax蛋白質はBcl−2を持つ高度に保存されたドメインを保有し、そのいくつかはBax/Bcl−2ヘテロダイマーの形成で必要であり、これは、アポトーシスシグナルに対する生存または死滅の応答で重要であると考えられる。その活性化に続いて、Baxは他のミトコンドリア膜に移動し、そこで、それはオリゴマー化し、膜を透過性とし、チトクロームCを含めた数個の死滅−促進因子を放出する(Scorrano et al.(2003)Biochem.Biophys.Res.Commun.304:437−444)。Baxをミトコンドリアから隔離する、Ku70蛋白質との相互作用を介して正常な細胞においてBaxは不活性とされ得る(Sawada et al.(2003)Nat.Cell Biol.5:320−329)。
【0006】
Bakもまた細胞死を促進し、Bcl−2によって供されたアポトーシスからの保護に対向する。Baxのように、Bakの遺伝子産物は、まず、適切な刺激に続いてアポトーシス細胞死を促進する。Bakは種々の細胞型においてアポトーシスの強力なインデューサーである。
【0007】
Baxおよび/またはBakの発現がアンチセンス分子の導入によって低下される細胞株は記載されている。例えば、Mandic et al.(2001)Mol.Cell Biol.21:3684−3691参照)。加えて、Baxおよび/またはBakの欠乏線維芽細胞もまた細胞株を作り出すために不滅化されている。米国特許出願第20030091982号参照。さらに、抑制ドメインに融合した天然で生じるジンクフィンガー蛋白質(Grimes et al.(1996)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 93:14569−14573)、および遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質およびヌクレアーゼ(米国特許出願公開第20060063231号参照)もまた、Baxおよび/またはBakの不活化について記載している。遺伝子組換えジンクフィンガーヌクレアーゼもまた、内因性ジヒドロ葉酸レダクダーゼ(dhfr)およびCCR5遺伝子を不活化するのに用いられている。例えば、米国特許公開第20080015164号およびPCT国際公開第2007/139982号パンフレット参照。
【0008】
しかしながら、例えば、アポトーシス−抵抗性細胞株の生成を容易とするための、BaxおよびBakの不活化のための方法および組成物に対する要望が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここに、例えば、広く種々の内因性死滅刺激体に対して抵抗性であるBaxおよび/またはBak欠損またはノックアウト細胞株を生成させるための、標的細胞におけるBaxおよび/またはBakの部分的または全面的な不活化のための方法および組成物が開示される。慣用的な細胞株とは異なり、Bax/Bak−欠損細胞株は、多継代後においてさえ、培養にて高レベルの蛋白質を継続的に生産するゆえに、これらの細胞株は、有利には、組換え蛋白質(例えば、抗体、抗原、治療蛋白質)の生産で用いられる。
【0010】
Bax/Bak欠損細胞株は、例えば、組換えレンチウイルス、アデノウイルスまたはアデノ−関連ウイルス(AVV)ベクターの生成において、ウイルスベクターおよび/またはウイルスベクター発現遺伝子産物の生成用のプロデューサー細胞株としても有用である。現在、これらのウイルスベクターを生成するのに用いる方法は、適時でないアポトーシスを介してベクターを低収率に(未修飾宿主細胞において)導く宿主細胞をかなり強調している。かくして、本開示は、ウイルスベクターの生産のためのアポトーシス−抵抗性Bax/Bac欠損細胞株に対する要望に取り組む。
【0011】
加えて、Baxおよび/またはBak欠損細胞株は、ヒトインフルエンザウイルスを標的とするもののようなワクチンのイン・ビトロ生産で有用である。そのようなワクチンプロデューサー細胞のアポトーシスは、(i)低下した全収率、または(ii)ワクチンロットの失敗、およびヒトにおいてワクチンロットを用いることができないことを招きかねない汚染の重要な源である。
【0012】
Baxおよび/またはBak欠損細胞株は、癌、およびアポトーシスが関与する他の病気(例えば、アルツハイマー病、パーキンソー病等)に影響する薬剤を研究するのにも有用である。同様に、Baxおよび/またはBak欠損細胞株は、基礎研究および薬物の発見のための有用なツールである。そのような系は、ある種の実験条件、例えば、エレクトロポレーション、ウイルス形質導入、リポソーム媒介−送達などのような核酸送達手法に対する応答において、および/または薬物―標的相互作用の測定、またはアポトーシス応答の不存在下におけるそのような相互作用の研究を介して基礎研究を知ることを促進できる毒性またはストレス−誘導ペイロードの送達に対する応答に対して、細胞の増大した生存を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つの態様において、BAX遺伝子中に結合するように作成されたジンクフィンガー蛋白質が提供される。本明細書中に記載されるジンクフィンガー蛋白質のいずれも1、2、3、4、5、6またはそれ以上のジンクフィンガーを含んでもよく、各ジンクフィンガーはBAX遺伝子中のサブサイトに結合する認識ヘリックスを有する。ある実施形態において、ジンクフィンガー蛋白質は(F1、F2、F3、F4および所望によりF5と命名された)4つのフィンガーを含み、表1に示された認識ヘリックスのアミノ酸配列を含む。
【0014】
1つの態様において、BAK遺伝子中に結合するように作成されたジンクフィンガー蛋白質が提供される。本明細書中に記載されたジンクフィンガー蛋白質のいずれも1、2、3、4、5、6またはそれ以上のジンクフィンガーを含んでもよく、各ジンクフィンガーはBAK遺伝子中の標的サブサイトに結合する認識ヘリックスを有する。ある実施形態においては、ジンクフィンガー蛋白質は(F1、F2、F3、F4およびF5と命名された)4または5のフィンガーを含み、表2に示された認識ヘリックスのアミノ酸配列を含む。
【0015】
ある実施形態においては、ここに、遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインが提供され、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端にF1ないしF4の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3およびF4は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDHLST(配列番号:1);F2:DRSHLAR(配列番号:2);F3:QSSHLTR(配列番号:3);およびF4:RSDNLRE(配列番号:4)。
【0016】
ある実施形態において、ここに、遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインが提供され、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端にF1ないしF4の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3、およびF4は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSANLSV(配列番号:5);F2:DRANLSR(配列番号:6);F3:NRTDLIR(配列番号:7);およびF4:TSSNLSR(配列番号:8)。
【0017】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF5の順番の5つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3、F4およびF5は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDHLTT(配列番号:9);F2:RSDHLSE(配列番号:10);F3:RNDNRKT(配列番号:11);F4:QSGHLQR(配列番号:12);およびF5;QSGHLSR(配列番号:13)。
【0018】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA結合ドメインは、N−末端からC−末端へF1ないしF4の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3、およびF4は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDSLSA(配列番号:14);F2:DRSSRTK(配列番号:15);F3:RSDDLTR(配列番号:16);およびF4:RSDALAR(配列番号:17)。
【0019】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインは、N−末端からC−末端へF1ないしF5の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3、F4およびF5は以下のアミノ酸配列を含む:F1:DRSDLSR(配列番号:45);F2:NRTDLIR(配列番号:7);F3:TSSNLSR(配列番号:8);F4:RSDTLSQ(配列番号:46);およびF5:DRSARTR(配列番号:47)。
【0020】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA―結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF5の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここに、F1、F2、F3、F4およびF5は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDALSV(配列番号:48);F2:DSSHRTR(配列番号:49);F3:QNAHRKT(配列番号:50);F4:RSDHLST(配列番号:1);およびF5:TSGHLSR(配列番号:51)。
【0021】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF5の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここにF1、F2、F3、F4およびF5は以下のアミノ酸配列を含む:F1:QNAHRKT(配列番号:50);F2:QSGDLTR(配列番号:53);F3:QSGDLTR(配列番号:53);F4:QSSNLAR(配列番号:54);およびF5:TSSNRKT(配列番号:55)。
【0022】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF6の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここにF1、F2、F3、F4、F5およびF6は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDNLAR(配列番号:57);F2:QSGDLTR(配列番号:53);F3:DNRQLIT(配列番号:58);F4:TSSNLSR(配列番号:8);F5:RSDTLSR(配列番号:59);およびF6:RNDDRIT(配列番号:60)。
【0023】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF5の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここにF1、F2、F3、F4およびF5は以下のアミノ酸配列を含む:F1:RSDNLTT(配列番号:62);F2:RSDHLSR(配列番号:63);F3:QSSDLRR(配列番号:64);F4:QSSHLTR(配列番号:3);およびF5:RSDHLTQ(配列番号:65)。
【0024】
他の実施形態において、開示は遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質DNA−結合ドメインを提供し、ここに、DNA−結合ドメインはN−末端からC−末端へF1ないしF6の順番の4つのジンクフィンガー認識領域を含み、ここにF1、F2、F3、F4、F5およびF6は以下のアミノ酸配列を含む:F1:QSGSLTR(配列番号:67);F2:TSSNRKT(配列番号:55);F3:DRSHLTR(配列番号:68);F4:RSDDRKT(配列番号:69);F5:NRTDLIR(配列番号:7)およびF6:TSSNLSR(配列番号:8)。
【0025】
もう1つの態様において、本明細書中に記載されたジンクフィンガー蛋白質のいずれか、および少なくとも1つの切断ドメインまたは少なくとも1つの切断ハーフ−ドメインを含む融合蛋白質も提供される。ある実施形態において、切断ハーフ−ドメインは野生型FokI切断ハーフ−ドメインである。他の実施形態において、切断ハーフ−ドメインは遺伝子組換えFokI切断ハーフ−ドメインである。
【0026】
なおもう1つの態様において、本明細書中に記載された蛋白質のいずれかをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0027】
なおもう1つの態様において、本明細書中に記載された蛋白質および/またはポリヌクレオチドのいずれかを含む単離された細胞も提供される。ある実施形態において、Baxおよび/またはBakが不活化された細胞株は、本明細書中に記載された蛋白質および/またはポリヌクレオチドのいずれかを含む細胞を培養して、Baxおよび/またはBak欠損細胞株を生成させることによって生成される。ある実施形態において、BaxまたはBakは細胞または細胞株において(部分的にまたは全面的に)不活化される。
【0028】
加えて、細胞または細胞株においてBaxおよび/またはBakを不活化する方法においてジンクフィンガー蛋白質およびその融合を用いる方法が提供される。ある実施形態において、細胞中でのBaxおよび/またはBakの不活化は、細胞の継代に続いてBaxおよび/またはBakが不活化されたままである細胞株を生じさせ、それにより、アポトーシスに対して抵抗性である細胞を作り出す。
【0029】
かくして、もう1つの態様において、ここに、細胞において細胞のBAXおよび/またはBAK遺伝子(例えば、内因性BAK/BAX遺伝子(類))を不活化する方法が提供され、その方法は:(a)第1のポリペプチドをコードする第1の核酸を細胞に導入することを含み、ここに、その第1のポリペプチドは、そのポリペプチドが細胞中で発現されるように、:(i)内因性BAKおよび/またはBAX遺伝子中の第1の標的部位に結合するように作成されたジンクフィンガーDNA−結合ドメイン;および(ii)切断ドメインを含み、それにより、そのポリペプチドは標的部位に結合し、BAKおよび/またはBAXを切断する。ある実施形態において、その方法は、さらに、第2のポリペプチドをコードする核酸を導入することを含み、ここに、第2のポリペプチドは、その第2のポリペプチドが細胞中で発現されるように(i)、BAKおよび/またはBAX遺伝子中の第2の標的部位に結合するように作成されたジンクフィンガーDNA−結合ドメイン;および(ii)切断ドメインを含み、それにより、第1および第2のポリペプチドはそれらの各標的部位に結合し、BAKおよび/またはBAX遺伝子を切断する。第1および第2のポリペプチドは第1の核酸によってまたは異なる核酸によってコードされていてもよい。ある実施形態において、1以上のさらなるポリヌクレオチドまたはポリペプチドが細胞に導入され、例えば、さらなるジンクフィンガー蛋白質をコードするポリヌクレオチドである。
【0030】
もう1つの態様において、ここに、Bakおよび/またはBax発現が消失した(すなわち、Bakおよび/またはBaxの発現が低下した、または排除された)細胞株を生産する方法が提供される。ある実施形態において、その方法は、1以上の遺伝子組換えジンクフィンガーヌクレアーゼ(または遺伝子組換えヌクレアーゼをコードする核酸)を導入し、その細胞を引き続いて培養して、Baxおよび/またはBakに関して欠損した細胞株を生成させることによってBakおよび/またはBaxを部分的にまたは全面的に不活化することを含む。
【0031】
なおもう1つの態様において、開示は、Bakおよび/またはBaxが不活化された宿主細胞または細胞株において注目する蛋白質またはウイルスまたはウイルスベクターを生産する方法を提供する。ある実施形態において、その方法は(a)内因性BAXおよび/またはBAK遺伝子を含む宿主細胞を供し;(b)本明細書中に記載された方法のいずれかによって宿主細胞の内因性BAXおよび/またはBAK遺伝子を不活化し;次いで、(c)導入遺伝子を含む発現ベクター、注目するウイルスまたはウイルスベクターを宿主細胞に導入するステップを含み、その導入遺伝子は蛋白質をコードする配列を含み、それにより、注目する蛋白質、ウイルスまたはウイルスベクターを生産する。他の実施形態において、その方法は:Bak−および/またはBax−欠損細胞株を供し;注目する少なくとも1つの組換え蛋白質をコードするポリヌクレオチド、ウイルス、またはウイルスベクターを、組換え蛋白質が細胞株で発現されるような条件下で、その細胞株に導入するステップを含む。その蛋白質をコードするポリヌクレオチド、ウイルス、または注目するウイルスベクターは、Bak−および/またはBax−結合細胞株に安定におよび/または一過的に導入してもよい。本明細書中に記載された方法のいずれかにおいて、注目する蛋白質は抗体、例えば、モノクローナル抗体を含む。他の実施形態において、注目する蛋白質は、ワクチンのような抗原として有用な蛋白質、例えば、インフルエンザウイルスに由来するHA蛋白質を含む。さらなる実施形態において、その方法を用いて、全ウイルスワクチンを生産する。さらに他の実施形態において、組換えウイルスベクターは、前記した方法、例えば、(a)内因性BAXおよび/またはBAK遺伝子を含む宿主細胞を供し;(b)本明細書中に記載された方法のいずれかによって宿主の内因性BAXおよび/またはBAK遺伝子を不活化し;次いで、(c)組換えウイルスベクター系を含む1以上の発現ベクターを導入し、それにより、注目する組換えベクターを生産するステップを含む方法によって生産される。
【0032】
本明細書中に記載された細胞、細胞株および方法のいずれにおいても、粗細胞またはその細胞株はCOS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28―G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、PerC.6(登録商標)(Crucell);EBx(商標)(Sigma−Aldrich Group)、Spodoptera fugiperda(Sf)のような昆虫細胞、またはSaccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesのような真菌細胞、または当該分野で知られた、またはde novo開発された他の細胞株であり得る。
【0033】
これらおよび他の態様は、全体としての開示に照らして当業者に容易に明らかにあろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、BAK遺伝子のエクソン2が、遺伝子組換えジンクフィンガーヌクレアーゼを用いてノックアウトされたCHO−K1細胞の遺伝子型決定を示す。(野生型と比較した)欠失された塩基はコロンによって示される。頂部線(39F/38R)は野生型配列であって、ボックスに入れた部分は開始コドンを示す。クローン8H6は、対立遺伝子Aが対立遺伝子Bとは異なる塩基対欠失パターンを示す合成異型接合体ノックアウト(KO)である。クローン8D4はホモ接合ノックアウトである。
【図2A】図2のパネルAないしDは、ZFNによるMDCK細胞におけるBAKおよびBAX遺伝子の修飾を示す。図2Aは、BAK−標的化ZFN−処理細胞プール(17623/17622または17627/17626)および非−ZFN−処理細胞(「ベクターのみ」)におけるCEL−Iアッセイでの切断反応に由来するPCR産物を示すゲルである。BAK遺伝子座がZFNによって修飾された対立遺伝子のパーセンテージは、2つの最も左側のレーン直下に示す。図2Bは、BAX−標的化ZFN−処理細胞プール(17658/17659)および非−ZNF処理細胞(「ベクターのみ」)におけるCEL−Iアッセイでの切断反応に由来するPCR産物を示すゲルである。BAX遺伝子座がZFNによって修飾された対立遺伝子のパーセンテージは最も右側のレーン直下に示す(8%)。図2Cは、BAK−標的化ZFNで処理された種々のMDCKクローンのPCR結果を示す。クローンの数は各レーンの頂部に示し、各BAK対立遺伝子における突然変異はゲルの下方に示す。図2DはBAX−特異的ZFNで処理されたMDCK細胞のPCR分析のまとめを示す。図面から分かるように、BAX単一ノックアウトは一方の対立遺伝子での30bpの欠失、および他方の対立遺伝子での1bpの挿入で得られた。BAX/BAK二重ノックアウトでは、BAX対立遺伝子は、BAX−特異的ZFNを用いてBak−欠損クローンにおいて標的化された。理解できるように、数個の異型接合体クローンが同定され、それは1つの野生型BAX対立遺伝子、および1つの突然変異したBAX対立遺伝子を含有した。
【図2B】図2Aに同じ。
【図2C】図2Aに同じ。
【図2D】図2Aに同じ。
【図3】図3は、Bakノックアウト細胞におけるRNA分析を示す。示されたゲルのレーン1ないし5は、示されたクローンおよび対照からのエクソン1ないし4からのBak転写体のRT−PCR産物を示す。レーン6ないし10は、同一クローンおよび対照におけるエクソン4ないし6からのBax転写体のRT−PCR産物を示す。レーン4における矢印によって示されるように、クローン8H6(合成異型接合体クローン)から形成された転写体のほとんどがエクソン2をスキップする。
【図4A】図4のパネルAおよびBは、Bak8H6ノックアウトのバックグラウンドで生じた21の陽性Bak/Bax二重ノックアウトクローンのPCR産物の分析を示す。クローン番号は各レーンの上方に示す。分析した79のクローンの内、21(27%)はBsl Iで消化され、ZLN切断の部位における突然変異を示す。図4AにおけるBslI−抵抗性対立遺伝子の配列は図4Bに示される。頂部線(52F/114R)は、整列を容易とするために4bpのギャップが挿入された野生型配列である。30、35、45、71および97と命名されたクローンについての挿入および欠失は大きく、従って、示していない。クローン#100の遺伝子型は決定しなかった。
【図4B】図4Aに同じ。
【図5】図5は、Bax/Bak二重ノックアウト細胞におけるBaxおよびBak蛋白質の発現を示す。クローン番号は各レーンの上方に示し、検出で用いた抗体は各ゲルの下方に示す(Bax蛋白質についてのAbcam #7977,およびBak蛋白質についてのSigma B5877)。示されるように、二重KO細胞は全長または切断型BaxおよびBak蛋白質を生産しない。
【図6】図6は、アポトーシスを示すカスパーゼ活性(Homogenous Caspases Assay(ホモジニアス カスパーゼアッセイ)、Roche Diagnostics Corporation)によって測定されたBax/Bak二重KO細胞におけるアポトーシスを示すグラフである。白色の棒線は1 uMスタウロスポリンでの誘導後のカスパーゼ活性を示し;灰色の棒線は未誘導細胞を示す。テストしたBax−Bak−/−クローンは;クローン47(左から2番目の棒線);クローン71(右から2番目の棒線);およびクローン91(最も右側の棒線)であった。
【図7】図7は、BAXおよび/またはBAKノックアウト細胞クローンにおける蛋白質(モノクローナル抗体)産生を示すグラフである。菱形は野生型CHO細胞における抗体の産生を示し、四角はクローン8H6−71 BAX−BAK−/−CHO細胞における蛋白質産生を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
BAK遺伝子および/またはBAX遺伝子の部分的または全面的な不活化のための組成物および方法を本明細書中に記載する。また、これらの組成物(試薬)を作成し、およびそれを用いて、例えば、標的細胞においてBakおよびBaxの一方または双方を不活化する方法が開示される。標的細胞におけるBakおよび/またはBaxの不活化を用いて、アポトーシスに対して抵抗性であって抗体のような組換え蛋白質、組換えウイルスベクターを生産するのに、およびワクチン(例えば、1以上の抗原性蛋白質、全ウイルスワクチン等)を製造するのに有用な細胞株を作り出すことができる。
【0036】
哺乳動物細胞において、BaxおよびBakはプログラムされた細胞死を促進するのに関与していることが示されている。Zhang et al.(2000)Science 290:989−992参照。かくして、本明細書中に記載された方法および組成物は、Baxおよび/またはBak欠損細胞株の生成を可能とするBaxおよび/またはBakの(部分的または全面的な)標的化遺伝子ノックアウトのための高度に有効な方法を提供する。Bax/Bak−欠損細胞株は多くの不滅化細胞株で見られる異常な増殖を受けることなく、イン・ビトロにて長期間培養することができる。かくして、本明細書中に記載された細胞株は、組換え蛋白質(例えば、抗体)、ワクチンまたは組換えウイルスベクターを生産するにおいて、およびアポトーシス関連疾患および病態を研究するにおいて有用である。
【0037】
一般
本明細書中に開示された方法、ならびに組成物の調製および使用の実施は、そうでないことが示されるのでなければ、当業者の技量内にあるように、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組換えDNAおよび関連分野の従来の技術を使用する。このような技術は文献で徹底して説明されている。例えば、Sambrook et al. MOLECULAR CLONING:A LABOLATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Labolatory Press,1989および第3版,2001;Ausubel et al. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987および定期的更新物;the series METHODS IN ENZYMOLOGY, Academic Press, San Diego;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,第3版、Academic press,San Diego,1998;METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,“Chromatin”(P.M.WassarmanおよびA.P.Wolffe編),Academic Press,San Diego,1999;およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,“Chromatin Protocols”(P.B.Becker編)Humana Press,Totowa,1999参照。
【0038】
定義
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は相互交換可能に用いられ、線状または環状立体配座であって、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーをいう。本開示の目的では、これらの用語はポリマーの長さに関して限定されると解釈されるべきではない。その用語は天然のヌクレオチドの公知のアナログ、ならびに塩基、糖および/またはリン酸基が修飾されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート骨格)を含むことができる。一般に特定のヌクレオチドのアナログは同一の塩基−対合特異性を有し;すなわち、AのアナログはTと塩基−対合するであろう。
【0039】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「蛋白質」は互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーをいう。その用語は、1以上のアミノ酸が対応する天然アミノ酸の化学的アナログまたは修飾された誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0040】
「結合」とは、マクロ分子の間の(例えば、蛋白質および核酸の間の)配列−特異的非−共有結合相互作用をいう。結合相互作用が全体として配列−特異的である限り、その相互作用の全ての成分が配列−特異的(例えば、DNA骨格中のリン酸残基との接触)である必要はない。そのような相互作用は10−6M−1以下の解離定数(Kd)によって一般的に特徴付けられる。「親和性」とは結合の強度をいい:結合親和性が高まるとKdが低下する。
【0041】
「結合蛋白質」は、もう1つの分子に非―共有結合的に結合することができる蛋白質である。結合蛋白質は、例えば、DNA分子(DNA−結合蛋白質)、RNA分子(RNA−結合蛋白質)および/または蛋白質分子(蛋白質−結合蛋白質)に結合することができる。蛋白質−結合蛋白質の場合には、それはそれ自体に結合して(ホモダイマー、ホモトリマー等を形成)することができる、および/またはそれは異なる蛋白質もしくは蛋白質類の1以上の分子に結合することができる。結合蛋白質は結合活性の1を超えるタイプを有することができる。例えば、ジンクフィンガー蛋白質はDNA−結合、RNA−結合および蛋白質結合活性を有する。
【0042】
「ジンクフィンガーDNA−結合蛋白質」(または結合ドメインは)、蛋白質、あるいはその構造が亜鉛イオンの配位を通じて安定化された結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である、1以上のジンクフィンガーを通じて配列−特異的にDNAに結合するより大きな蛋白質内のドメインである。その用語「ジンクフィンガーDNA結合蛋白質は、しばしば、ジンクフィンガー蛋白質またはZFPと省略される。
【0043】
ジンクフィンガー結合ドメインは、例えば、天然のジンクフィンガー蛋白質の認識ヘリックス領域の工学(1以上のアミノ酸の改変)を介して所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作する」ことができる。従って、遺伝子組換えジンクフィンガー蛋白質は、それが非天然の認識ヘリックス領域を含有する点で、非天然の蛋白質である。ジンクフィンガー蛋白質を操作する方法の非限定的例は設計および選択である。設計されたジンクフィンガー蛋白質は、その設計/組成が原理的には合理的基準に由来する性質が起こらない蛋白質である。設計のための合理的基準は、現存のZFP設計および結合データのデータベース貯蔵情報中の情報を処理するための置換規則および計算されたアルゴリズムの適用を含む。例えば、米国特許第6,140,081号;第6,453,242号;および第6,534,261号参照;また、国際公開第98/53058号パンフレット;国際公開第98/53059号パンフレット;国際公開第98/53060号パンフレット;国際公開第02/016536号パンフレットおよび国際公開第03/016496号パンフレット参照。
【0044】
「選択された」ジンクフィンガー蛋白質は、その生産が、主として、ファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択のような経験的プロセスに由来する性質が見出されない蛋白質である。例えば、米国特許第5,789,538号;米国特許第5,925,523号;米国特許第6,007,988号;米国特許第6,013,453号;米国特許第6,200,759号;国際公開第95/19431号パンフレット;国際公開第96/06166号パンフレット;国際公開第98/53057号パンフレット;国際公開第98/54311号パンフレット;国際公開第00/27878号パンフレット;国際公開第01/60970号パンフレット;国際公開第01/88197号パンフレットおよび国際公開第02/099084号パンフレット参照。
【0045】
用語「配列」とは、DNAまたはRNAであり得;線状、環状または分岐のものであり得、かつ一本鎖または二本鎖いずれかであり得る、いずれかの長さのヌクレオチド配列をいう。用語「ドナー配列」とは、ゲノムに挿入されたヌクレオチド配列をいう。ドナー配列はいずれの長さのものとすることもでき、例えば、長さは2および10,000ヌクレオチドの間(またはその間またはそれを超えるいずれかの整数値)、好ましい長さは約100および1,000ヌクレオチドの間(またはその間のいずれかの整数)、より好ましくは長さが約200および500ヌクレオチドの間であり得る。
【0046】
「相同な非−同一配列」とは、第2の配列とある程度の配列同一性を保有するがその配列は第2の配列のそれと同一ではない第1の配列をいう。例えば、突然変異体遺伝子の野生型配列を含むポリヌクレオチドはその突然変異体遺伝子の配列に対して相同であって、非−同一である。ある実施形態において、2つの配列の間の相同性の程度は、通常の細胞メカニズムを利用するそれらの間の相同組換えを可能とするのみ全面的なものである。2つの相同な非−同一配列はいずれの長さのものでもあり得るが、非−相同性のそれらの程度は(例えば、標的化相同組換えによるゲノム点突然変異の修正のためには)単一ヌクレオチド程度小さくすることができ、あるいは(例えば、染色体中の所定の異所性の部位における遺伝子の挿入のためには)10キロベース以上程度大きくすることができる。相同非−同一配列を含むポリヌクレオチドは同一の長さである必要はない。例えば、20および10,000ヌクレオチドのまたはヌクレオチド対の間の外因性ポリヌクレオチド(すなわち、ドナーポリヌクレオチド)を用いることができる。
【0047】
核酸およびアミノ酸配列の同一性を決定するための技術は当該分野で知られている。典型的にはそのような技術は、遺伝子についてのmRNAヌクレオチド配列を決定し、および/またはそれによりコードされるアミノ酸配列を決定し、これらの配列を第2のヌクレオチドまたはアミノ酸と比較することを含む。また、ゲノム配列を決定し、このようにして比較することもできる。一般に、同一性とは、各々、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の正確なヌクレオチド−対−ヌクレオチドまたはアミノ酸−対−アミノ酸対応性をいう。2以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらのパーセント同一性を決定することによって比較することができる。2つの配列のパーセント同一性は、核酸またはアミノ酸配列を問わず、2つの整列させた配列の間の正確なマッチの数をより短い配列の長さで割り、100を掛けたものである。本明細書中に記載された配列に関しては、配列同一性の所望の程度の範囲はほぼ80%ないし100%、およびその間のいずれかの整数値である。典型的には配列の間のパーセント同一性は、少なくとも70ないし75%、好ましくは80ないし82%、より好ましくは85ないし90%、なおより好ましくは92%、依然としてより好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性である。
【0048】
別法として、ポリヌクレオチドの間の配列類似性の程度は、相同領域の間の安定なデュプレックスの形成を可能とする条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼイション、続いての一本鎖で−特異的ヌクレアーゼでの消化、および消化された断片のサイズ決定によって決定することができる。2つの核酸、または2つのポリペプチド配列が、前記方法を用いて決定して、分子の規定された長さにわたって、少なくとも約70%ないし75%好ましくは80%ないし82%、より好ましくは85%ないし90%、なおより好ましくは92%、依然としてより好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性を呈する場合、その配列は相互に実質的に相同である。本明細書中で用いるように、実質的に相同なとは、特定のDNAまたはポリペプチド配列に対して全面的な同一性を示す配列もいう。実質的に相同なDNA配列は、例えば、その特定の系で定義されたストリンジェントな条件下にてサザーンハイブリダイゼイション実験で同定することができる。適切なハイブリダイゼイション条件を定義することは当該分野の技量内のものである。例えば、Sambrook et.al.,上記を参照;Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,編集者B.D.HamesおよびS.J.Higgins,(1985)Oxford;Washington,DC;IRL Press参照。
【0049】
2つの核酸断片の選択的ハイブリダイゼーションは以下のように決定することができる。2つの核酸分子の間の配列同一性の程度は、そのような分子の間のハイブリダイゼーション事象の有効性および強度に影響する。部分的に同一な核酸配列は、標的分子に対する全面的に同一な配列のハイブリダイゼーションを少なくとも部分的に阻害するであろう。全面的に同一な配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当該分野でよく知られたハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、サザーン(DNA)ブロット、ノーザン(RNA)ブロット、溶液ハイブリダイゼーション等、Sambrook,et al.Molecular Cloning;A Labolatory Manual,第2版,(1989)Cold Spring Habor,N.Y.参照)を用いて評価することができる。そのようなアッセイは、種々の程度の選択性を用い、例えば、ストリンジェンシーを低度から高度に変える条件を用いて実施することができる。低ストリンジェンシーの条件を使用するならば、非−特異的結合の不存在は、非−特異的結合事象の不存在下で二次プローブが標的にハイブリダイズしないように、部分的程度さえの配列同一性を欠如する二次プローブ(例えば、標的分子に対して約30%未満の配列同一性を有するプローブ)を用いて評価することができる。
【0050】
ハイブリダイゼイション−ベースの検出系を利用する場合、参照核酸配列に対して相補的な核酸プローブを選択し、次いで、適切な条件の選択によって、そのプローブおよび参照配列は選択的に相互にハイブリダイズし、または結合して、デュプレックス分子を形成する。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で参照配列に選択的にハイブリダイズすることができる核酸分子は、選択された核酸プローブの配列に対して少なくともほぼ70%の配列同一性を有する長さが少なくとも約10ないし14ヌクレオチドの標的核酸配列の検出を可能とする条件下で典型的にはハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、選択された核酸プローブの配列に対して約90ないし95%よりも大きな配列同一性を有する長さが少なくとも約10ないし14ヌクレオチドの標的核酸配列の検出を典型的には可能とする。プローブおよび参照配列が特定の程度の配列同一性を有する場合、プローブ/参照配列ハイブリダイゼーションでいうようなハイブリダイゼーション条件は当該分野で知られているように決定することができる(例えば、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Aproach,編集者B.D.HamesおよびS.J.Higgins,(1985)Oxford;Washington,DC;IRL Press参照)。
【0051】
ハイブリダイゼーションについての条件は当業者によく知られている。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーとは、ハイブリダイゼーション条件がミスマッチしたヌクレオチドを含有するハイブリッドの形成に対して不都合な程度をいい、ストリンジェンシーが高いとミスマッチしたハイブリッドの許容性が低くなる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する因子は当業者によく知られており、限定されるものではないが温度、pH、イオン強度、および例えば、ホルムアミドおよびジメチルスルホキシドのような有機溶媒の濃度を含む。当業者に知られているように、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、より高い温度、より低いイオン強度、およびより低い溶媒濃度によって増加する。
【0052】
ハイブリダイゼーションについてのストリンジェンシー条件に関しては、多数の同等な条件を使用して、例えば、以下の因子:配列の長さおよび性質、種々の配列の塩基組成、塩および他のハイブリダイゼーション溶液の成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中のブロッキング剤(例えば、デキストラン硫酸、およびポリエチレングリコール)の有無、ハイブリダイゼーションの反応温度および時間パラメータ、ならびに洗浄条件を変化させることによって特定のストリンジェンシーを確立できるのは当該分野でよく知られている。ハイブリダイゼーション条件の特定の組の選択は、当該分野における標準的な方法に従って選択される(例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning;A Labolatory Manual,第2版,(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.参照)。
【0053】
「組換え」とは、2つのポリヌクレオチドの間の遺伝子情報の交換のプロセスをいう。本開示の目的では、「相同組換え(HR)」とは、例えば、細胞中の2本鎖破壊の修復の間に起こるそのような変化の特殊化された形態をいう。このプロセスはヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖破壊を経験したもの)の鋳型修復に対して「ドナー」分子を用い、「非−クロスオーバー遺伝子変換」または「短トラクト遺伝子変換」として種々に知られている。なぜならば、それはドナーからの遺伝的情報の標的への移動に導くからである。いずれかの特定の理論によって拘束されるつもりはないが、その様な移動は破壊された標的およびドナーの間に形成されるヘテロデュプレックスDNAのミスマッチ修正、ドナーを用いて標的の一部となるであろう遺伝的情報を再度合成する「合成−依存性ストランドアニーリング」および/または関連プロセスに関与することができる。そのような特殊化されたHRは、しばしば、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全てが標的ポリヌクレオチドに組み込まれるような、標的分子の配列の改変をもたらす。
【0054】
「切断」とは、DNA分子の共有結合骨格の破壊をいう。切断は、限定されるものではないが、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を含めた種々の方法によって開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断の双方が可能であり、および二本鎖切断は、2つの区別される一本鎖事象の結果として起こり得る。DNA切断は、平滑末端または付着末端いずれかの生成をもたらし得る。ある実施形態においては、融合ポリペプチドが、標的化二本鎖DNA切断で用いられる。
【0055】
「切断ハーフ−ドメイン」は、(同一または異なるいずれかの)第2のポリペプチドと一緒に、切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。用語「第一または第二の切断ハーフ−ドメイン」;「+および−切断ハーフ−ドメイン」および「右側および左側切断ハーフ−ドメイン」は、二量体化する切断ハーフ−ドメインの対をいうのに相互交換可能に用いられる。
【0056】
「遺伝子組換え切断ハーフ−ドメイン」は、もう1つの切断ハーフ−ドメイン(例えば、もう1つの遺伝子組換え切断ハーフ−ドメイン)とで絶対的ヘテロダイマーを形成するように修飾されている切断ハーフ−ドメインである。また、その全体が参照により組み込まれる、米国特許出願第10/912,932号および第11/304,981号および(2006年5月25日に出願された)米国仮出願第60/808,486号も参照。
【0057】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核蛋白質構造である。細胞クロマチンは核酸、主としてDNA、およびヒストンおよび非−ヒストン染色体蛋白質を含めた蛋白質を含む。真核生物細胞クロマチンの大部分はヌクレオソームの形態で存在し、ここに、ヌクレオソームコアはヒストンH2A、H2B、H3およびH4の2つの各々を含むオクタマーと会合したDNAのほぼ150塩基対を含み;および(生物に依存して可変長さの)リンカーDNAはヌクレオソームコアの間に延びる。ヒストンH1の分子は、一般に、リンカーDNAと会合している。本開示の目的では、用語「クロマチン」は、原核生物および真核生物の双方の、細胞核蛋白質の全てのタイプを含めことを意図する。細胞クロマチンは、染色体およびエピソームクロマチンの双方を含む。
【0058】
「染色体」は、細胞のゲノムの全てまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、しばしば、細胞のゲノムを含む染色体の全てのコレクションであるその核型によって特徴付けられる。細胞のゲノムは1以上の染色体を含むことができる。
【0059】
「エピソーム」は、複製する核酸、核蛋白質複合体、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む他の構造である。エピソームの例はプラスミドおよびある種のウイルスゲノムを含む。
【0060】
「接近可能な領域」は、標的部位を認識する外因性分子によって、核酸に存在する標的部位が結合され得る細胞クロマチン中の部位である。いずれかの特定の理論によって拘束されるつもりはないが、接近可能な領域は、ヌクレオソーム構造にパッケージされないものであると考えられる。接近可能な領域の区別される構造は、しばしば、化学的および酵素的プローブ、例えば、ヌクレアーゼに対するその感受性によって検出することができる。
【0061】
「標的部位」または「標的配列」は、結合分子が結合する核酸の一部を規定する核酸配列であり、但し、結合のための十分な条件が存在するものとする。例えば、配列5’−GAATTC−3’は、Eco RI制限エンドヌクレアーゼについての標的部位である。
【0062】
「外因性」分子は、細胞に通常は存在しないが、1以上の遺伝子的、生化学的または他の方法によって細胞に導入することができる分子である。「細胞における通常の存在」は、細胞の特定の発生段階および環境的条件に関して決定される。かくして、例えば、筋肉の胚発生の間にのみ存在する分子は、生体筋肉細胞に関して外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非−熱−ショック細胞に関して外因性分子である。外因性分子が、例えば、機能不全内因性分子の機能的バージョン、または通常に機能する内因性分子の機能不全バージョンを含むことができる。
【0063】
外因性分子は、とりわけ、コンビナトーリアル化学プロセスによって生じるような小分子、または蛋白質、核酸、炭水化物、脂質、糖蛋白質、リポ蛋白質、多糖、前記分子のいずれか修飾された誘導体または前記分子の1以上を含むいずれかの複合体のようなマクロ分子であり得る。核酸はDNAおよびRNAを含み、一本鎖または二本鎖であり得;線状、分岐状または環状であり得;およびいずれの長さのものでもあり得る。核酸は、デュプレックスを形成することができるもの、ならびにトリプレックス−形成性核酸を含む。例えば、米国特許第5,176,996号および第5,422,251号参照。蛋白質は、限定されるものではないが、DNA−結合蛋白質、転写因子、クロマチン再形成因子、メチル化DNA結合蛋白質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、フォスファターゼ、インテグラーゼ、レコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイラーゼおよびヘリカーゼを含む。
【0064】
「外因性」分子は、内因性分子と同一タイプの分子、例えば、外因性蛋白質または核酸であり得る。例えば、外因性核酸は感染性ウイルスゲノム、細胞に導入されたプラスミドまたはエピソーム、または細胞において通常は存在しない染色体を含むことができる。外因性分子を細胞に導入する方法は当業者に知られており、限定されるものではないが、脂質−媒介導入(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含めたリポソーム)、エレクトロポレーション、直接的注入、細胞融合、粒子衝撃、リン酸カルシウム共−沈殿、DEAE−デキストラン−媒介導入およびウイルスベクター−媒介導入を含む。外因性分子は、内因性分子と同一タイプの分子でもあり得るが、細胞が由来するのとは異なる種に由来することもできる。例えば、配列決定されたヒト核酸は、マウスまたはハムスターに元来は由来する細胞株に導入することができる。
【0065】
対照的に、「内因性」分子は、特定の環境的条件下で特定の発生段階において特定の細胞に通常は存在するものである。例えば、内因性核酸は染色体、ミトコンドリア、葉緑体または他のオルガネラのゲノム、あるいは天然のエピソーム核酸を含むことができる。さらなる内因性分子は蛋白質、例えば、転写因子および酵素を含むことができる。
【0066】
「融合」分子は、2以上のサブユニット分子が好ましくは共有結合により連結された分子である。サブユニット分子は同一の化学的タイプの分子であり得るか、あるいは異なる化学的タイプの分子であり得る。第1のタイプの融合分子の例は、限定されるものではないが、融合蛋白質(例えば、ZFE DNA結合ドメインおよび切断ドメインの間の融合)、および融合核酸(例えば、前記文献に記載された融合蛋白質をコードする核酸)を含む。第2のタイプの融合分子の例は、限定されるものではないが、トリプレックス−形成性核酸およびポリペプチドの間の融合、および従たる溝バインダーおよび核酸の間の融合を含む。
【0067】
細胞中での融合蛋白質の発現は、融合蛋白質の細胞への送達から、あるいは融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドの細胞への送達によって由来することができ、ここに、ポリヌクレオチドは転写され、および転写体は翻訳され、融合蛋白質を生じる。トランス−スプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチド連結もまた細胞での蛋白質の発現に関与することができる。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチド送達のための方法は、本開示において他の個所に提示する。
【0068】
「遺伝子」は、本開示での目的では、遺伝子産物をコードするDNA領域(後記参照)、ならびに調節配列がコーディングおよび/または転写された配列に隣接するか否かに拘わらず、遺伝子産物の生産を調節するDNA領域を含む。従って、遺伝子は、必ずしも限定されるものではないが、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位のような転写調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位および遺伝子座制御領域を含む。
【0069】
「遺伝子発現」とは、遺伝子に含まれた情報の遺伝子産物への変換をいう。遺伝子産物は遺伝子の直接的転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAまたはいずれかの他のタイプのRNA)、またはmRNAの翻訳によって生じた蛋白質であり得る。遺伝子産物は、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集のようなプロセスによって修飾されたRNA、および例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化によって修飾された蛋白質を含む。
【0070】
遺伝子発現の「変調」とは、遺伝子の活性の変化をいう。発現の変調は、限定されるものではないが、遺伝子の活性化および遺伝子の抑制を含むことができる。遺伝子不活化とは、本明細書中に記載されたようにZFPを含まない細胞と比較した、遺伝子発現のいずれの低下もいう。かくして、遺伝子不活化は部分的または全面的なものであってよい。
【0071】
「真核生物」細胞は、限定されるものではないが、(酵母のような)真菌細胞、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T−細胞)を含む。
【0072】
「細胞株」とは、初代培養からの組織培養で樹立された細胞の集団をいう。かくして、ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて生じさせた細胞株は、1以上の標的遺伝子(例えば、BAKおよび/またはBAXが1以上のジンクフィンガーヌクレアーゼによって部分的にまたは全面的に不活化されており、かつ細胞(または細胞株)の子孫が培養における多数の継体後に部分的または全面的な不活化表現型を保有する細胞(または細胞株)から生起する。さらに、細胞または細胞株は、遺伝子(類)の発現が低下し、または排除された場合に(ノックアウト)、1以上の示された発現は「欠乏」している。かくして、Bax/Bak−欠損細胞株は、BaxおよびBakの低下した、またはノックアウトされた発現を示す。
【0073】
「注目する領域」は、例えば、外因性分子にそれが結合することが望ましい、遺伝子、または遺伝子内の、または遺伝子に隣接する非−コーディング配列のような細胞クロマチンのいずれかの領域である。結合は、標的化DNA切断および/または標的化組換えの目的であり得る。注目する領域は、例えば、染色体、エピソーム、オルガネラゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、または感染性ウイルスゲノムに存在し得る。注目する領域は、遺伝子のコーディング領域内、例えば、リーダー配列、トレーラー配列またはイントロンのような転写された非−コーディング領域内、あるいはコーディング領域の上流または下流いずれかの、非−転写領域内にあり得る。注目する領域は、長さが単一ヌクレオチド対と同程度に小さいか、または2,000ヌクレオチド対まで、あるいはヌクレオチド対のいずれかの整数値であり得る。
【0074】
用語「操作可能な連結」および「操作可能に連結した」(または「操作可能なように連結した」)は、成分が、双方の成分が正常に機能し、かつ成分の少なくとも1つが、他の成分の少なくとも1つに働く機能を媒介できる可能性を可能とするように配置される、2以上の(配列エレメントのような)成分の並置を参照して相互交換可能に用いられる。説明として、プロモーターのような転写調節配列は、もし転写調節配列が、1以上の転写調節因子の存在または不存在に応答してコーディング配列の転写のレベルを制御するならばコーディング配列に操作可能に連結している。転写調節配列は、一般に、コーディング配列に対してシスにて操作可能に連結されているが、それに直接的に隣接する必要なない。例えば、エンハンサーは、たとえそれが連続していなくても、コーディング配列に操作可能に連結された転写調節配列である。
【0075】
融合ポリペプチドに関しては、用語「操作可能に連結した」とは、成分の各々が、あたかもそれがその様に連結していないかのごとく他の成分への連結において同一機能を行うという事実をいうことができる。例えば、ZFP DNA−結合ドメインが切断ドメインに融合した融合ポリペプチドに関しては、ZFP DNA−結合ドメインおよび切断ドメインは、もし融合ポリペプチドにおいて、ZEP DNA−結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合でき、他方、切断ドメインが標的部位に隣接したDNAを切断できるならば、操作可能に連結している。
【0076】
蛋白質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列が全長蛋白質、ポリペプチドまたは核酸と同一ではないが、全長蛋白質、ポリペプチドまたは核酸と同一の機能を保有する蛋白質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応する天然分子よりも多くの、より少ない、または同一数の残基を保有でき、および/または1以上のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含有することができる。核酸の機能(例えば、コーディング機能、もう1つの核酸にハイブリダイズできる能力)を決定する方法は当該分野でよく知られている。同様に、蛋白質機能を決定する方法は良く知られている。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター−結合、電気泳動移動度−シフト、または免疫沈澱アッセイによって決定することができる。DNA切断はゲル電気泳動によってアッセイできる。Ausudel et al.,前掲参照。もう1つの蛋白質と相互作用する蛋白質の能力は、例えば、遺伝子的または生化学的双方の、共−免疫沈澱、2−ハイブリアッセイまたは相補性によって決定することができる。例えば、Fields et al.(1989) Nature 340:245−246;米国特許第5,585,245号およびPCT 国際公開第98/44350号パンフレット参照。
【0077】
本明細書中で用いる用語「抗体」はポリクローナルおよびモノクローナル調製物双方から得られた抗体、ならびに以下の:ハイブリッド(キメラ)抗体分子(例えば、Winter et al., Nature (1991)349:293−299;および米国特許第4,816,567号)参照;F(ab’)2およびF(ab)断片;Fv分子(非−共有結合ヘテロダイマー、例えば、Inbar et al.,Proc Natl Acad Sci USA(1972)69:2659−2662;およびEhrlich et al.,Biochem(1980)19:4091−4096参照);単一−鎖Fv分子(sFv)(例えば、Huston et al.,Proc Natl Acad Sci USA(1988)85:5879−5883参照);ダイマーおよびトリマー抗体断片構築体;ミニボディー(例えば、Pack et al.,Biochem(1992)31:1579−1584;Cumber et al.,J Immunology(1992)149B:120−126参照);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmann et al.,Nature (1988)332:323−327;Verhoeyan et al.,Science(1988)239:1534−1536;および1994年9月21日に公開された英国特許公開番号GB 2,276,169参照);およびそのような断片が親抗体分子の免疫学的結合特性を保有するそのような分子から得られたいずれかの機能的断片を含む。
【0078】
本明細書中で用いるように、用語「モノクローナル抗体」とは、均一な抗体集団を有する抗体組成物をいう。その用語は抗体の種または源に関して制限されず、またそれが作成された方法によって制限される意図はない。その用語は全免疫グロブリン、ならびにFab、F(ab’)2、Fv、および他の断片のような断片、ならびに親モノクローナル抗体分子の免疫学的結合特性を呈するキメラおよびヒト化均一抗体集団を含む。
【0079】
ワクチンとは、将来の害に対する保護が提供されるように、生きた生物の免疫系を刺激するのに用いられる剤を意味する。免疫化とは、生物が従前に暴露された病原体または抗原に対して向けられる、T−リンパ球が病原体を殺し、および/または他の細胞(例えば、食細胞)を活性化して、生物においてそれを行うことができる、抗体および/または細胞免疫応答を誘導するプロセスをいう。本明細書中で用いられる用語「免疫応答」は、例えば、多細胞生物が、生物の細胞、または生物の細胞外流体に侵入する抗原性物質に対して抗体を生じさせるメカニズムを含む。そのように生産された抗体は、免疫グロブリンA、D、E、GまたはMのような免疫学的クラスのいずれかに属してよい。他のタイプの応答、例えば、細胞性および液性免疫もまた含まれる。抗原に対する免疫応答はよく研究され、広く報告されている。免疫学の概観は、例えば、Roitt I.,(1994)に与えられている。Essential Immunology,Blackwell Scientific Publications,London。免疫学における方法はルーチン的であって、慣用的である(例えば、John E.Coligan et al.によって編集されたCurrent Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.参照)。
【0080】
「組換えウイルスベクター」とは、1以上の異種配列(すなわち、ウイルス起源のものではないポリヌクレオチド配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターをいう。組換えパルボウイルスベクターの場合には、組換えポリヌクレオチドは少なくとも1つの、好ましくは2つの逆方向ターミナルリピート配列(ITR)が近接している。
【0081】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」とは、少なくとも1つの、好ましくは2つのAAV逆方向ターミナルリピート配列(ITR)が近接する1以上の異種配列(すなわち、AAV起源のものではないポリヌクレオチド配列)を含むポリヌクレオチドベクターをいう。そのようなrAAVベクターは、適切なヘルパーウイルスで感染されている(または適切なヘルパー機能を発現している)、かつAAV repを発現しておりかつ遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCap蛋白質)をキャップしている宿主細胞に存在する場合、複製し、感染性ウイルス粒子にパッケージされ得る。rAAVベクターがより大きなポリヌクレオチドに(例えば、染色体に、あるいはクローニングまたはトランスフェクションで用いるプラスミドのようなもう1つのベクターに)組み込まれる場合、rAAVベクターは「プロ−ベクター」といってもよく、これは、AAVパッケージング機能および適切なヘルパー機能の存在下で複製およびキャプシド化によって「救済」することができる。rAAVは、リップで複合体化され、リポソーム内にカプセル化され、最も好ましくは、ウイルス粒子、特にAAVにキャプシド化された、限定されるものではないが、プラスミド、線状人工染色体を含めた多数の形態のいずれかとすることができる。rAAVベクターをAAVウイルス粒子にパッケージして、「組換えアデノ−関連ウイルス」(rAAV)を生成させることができる。パッケージして、感染性ウイルス粒子を生じさせることができる最大サイズのベクターはほぼ5.2kbである。
【0082】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
BAKおよび/またはBAX遺伝子の不活化で用いることができるジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)が本明細書中で記載される。ZFNはジンクフィンガー蛋白質(ZFP)およびヌクレアーゼ(切断)ドメインを含む。
【0083】
A.ジンクフィンガー蛋白質
ジンクフィンガー結合ドメインは、選択された配列に結合するように作成することができる。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135−141;Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313−340;Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656−660;Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632−637;Choo et al.(2000)Curr.Opin. Struct.Biol. 10:411−416参照。遺伝子組換えジンクフィンガー結合ドメインは、天然のジンクフィンガー蛋白質と比較して新規な結合特異性を有することができる。遺伝子組換えによる方法は、限定されるものではないが、合理的設計および種々のタイプの選択を含む。合理的設計は、例えば、トリプレット(またはクワドルプレット)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用を含み、ここに、各トリプレットおよびクワドルプレットヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクワドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1以上のアミノ酸配列に関連する。例えば、その全体が参照により組み込まれる、共有された米国特許第6,453,242号および第6,534,261号参照。
【0084】
ファージディスプレイおよび2−ハイブリッド系を含めた例示的な選択方法は米国特許第5,789,538号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,410,248号;第6,140,466号;第6,200,759号;および第6,242,568号;ならびに国際公開第98/37186号パンフレット;国際公開第98/53057号パンフレット;国際公開第00/27878号パンフレット;国際公開第01/88197号パンフレットおよび英国特許第2,338,237号明細書に開示されている。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共有された国際公開第02/077227号パンフレットに記載されている。
【0085】
標的部位の選択;融合蛋白質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのZFPおよび方法は当該分野で知られており、その全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第20050064474号および第20060188987号に詳細に記載されている。
【0086】
加えて、これらおよび他の文献に開示されているように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガードジンクフィンガー蛋白質は、例えば、長さが5以上のアミノ酸のリンカー(例えば、TGEKP(配列番号:18)、TGGQRP(配列番号:37)、TGQKP(配列番号:19)、および/またはTGSQKP(配列番号:20))を含めたいずれかの適切なリンカー配列を用いて一緒に連結してもよい。また、長さが6以上のアミノ酸の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;第6,903,185号;および第7,153,949号も参照。本明細書中で記載された蛋白質は、蛋白質の個々のジンクフィンガーの間に適切なリンカーのいずれかの組合せを含んでもよい。
【0087】
表1および2は、BAX遺伝子(表1)およびBAK遺伝子(表2)におけるヌクレオチド配列に結合するように作成されたジンクフィンガー結合ドメインを記載する。各列は別々のジンクフィンガーDNA―結合ドメインを記載する。各ドメインについてのDNA標的配列は最初の欄に示され、第2ないし第5欄は、蛋白質中のジンクフィンガー(F1ないしF4またはF5)の各々の認識領域のアミノ酸配列を示す(ヘリックスの開始に関して、アミノ酸−1ないし+6)。また、蛋白質についての識別番号が最初の欄にやはり掲げられる。
【表1】
【表2】
【0088】
以下に記載するように、ある実施形態においては、表1および2に示された4−または5−フィンガー結合ドメインが、例えば、FokIのようなタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインのような切断ハーフ−ドメインに融合される。そのようなジンクフィンガー/ヌクレアーゼハーフ−ドメイン融合の1以上の対は、例えば、米国特許公開第20050064474号に開示されているように、標的化切断に用いられる。
【0089】
標的化された切断では、接合部位の近くのエッジは5以上のヌクレオチド対によって分離でき、融合蛋白質の各々はDNA標的の逆ストランドに結合させることができる。典型的には、表1および2に示されたZFNは、それらの標的遺伝子の切断のために対で用いられる。本開示に従い、ZFNはBAXまたはBAK遺伝子中のいずれかの配列に標的化することができる。
【0090】
B.切断ドメイン
ZFNはヌクレアーゼ(切断ドメイン、切断ハーフ−ドメイン)も含む。本明細書中に開示された切断ドメイン部分は、いずれかのエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼは、限定されるものではないが、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼを含む。例えば、2002−2003 Catalogue, New England Biolabs,Beverly,MA;およびBelfort et al.(1997)Nucreic Acids Res. 25:3379-3388参照。DNAを切断するさらなる酵素は知られている(例えば、S1ヌクレアーゼ;マングビーンヌクレアーゼ;膵臓DNase I;ミクロコッカスヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;また、Linn et al.(編)Nucleases,Cold Spring Harbor Labratory Press, 1993も参照)。これらの酵素(またはその機能的断片)の1以上を、切断ドメインおよび切断ハーフ−ドメインの源として用いることができる。
【0091】
同様に、切断ハーフ−ドメインは、切断活性のために二量体化を必要とする、前記したいずれかのヌクレアーゼまたはその部分に由来することができる。一般に、もし融合蛋白質が切断ハーフ−ドメインを含むならば、2つの融合蛋白質が切断で必要とされる。別法として、2つの切断ハーフ−ドメインを含む単一蛋白質を用いることができる。2つの切断ハーフ−ドメインは同一のエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来することができるか、あるいは各切断ハーフ−ドメインは異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来することができる。加えて、2つの融合蛋白質のための標的部位が、それらの各標的部位への2つの融合蛋白質の結合が、例えば、二量体化によって切断ハーフ−ドメインが機能的切断ドメインを可能とする、相互に対する空間的向きに切断ハーフ−ドメインを置くように、相互に関して、好ましくは配置される。かくして、ある実施形態においては、標的部位の近くのエッジは5ないし8ヌクレオチドだけ、または15ないし18ヌクレオチドだけ分離される。しかしながら、いずれかの全体数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対を2つの標的部位の間に(例えば、2ないし50ヌクレオチド対以上)介在させることができる。一般に、切断の部位は、標的部位の間に存在する。
【0092】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多くの種に存在し、(認識部位において)DNAに配列−特異的に結合することができ、および結合の部位において、または部位近くでDNAを切断することができる。ある制限酵素(例えば、タイプIIS)は認識部位から除去された部位においてDNAを切断し、分離可能な結合および切断ドメインを有する。例えば、タイプIIS酵素FokIは、1つのストランド上のその認識部位から9ヌクレオチド、および他のストランド上のその認識部位から13ヌクレオチドにおいて、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号および第5,487,994号;ならびにLi et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4275−4279;Li et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2764−2768;Kim et al.(1994a)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:883−887;Kim et al.(1994b)J.Biol.Chem.269:31,978−31,982参照。かくして、1つの実施形態において、融合蛋白質は少なくとも1つのタイプIIS制限酵素からの切断ドメイン(または切断ハーフ−ドメイン)、および操作されていてもいなくてもよい1以上のジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0093】
その切断ドメインが結合ドメインから分離可能な例示的なタイプIIS制限酵素はFokIである。この特定の酵素はダイマーとして活性である。Bitinaite et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:10,570−10,575。従って、本開示の目的では、開示された融合蛋白質で用いるFokI酵素の部分は切断ハーフ−ドメインと考えられる。かくして、ジンクフィンガー−FokI融合を用いる標的化二本鎖切断および/または細胞配列の標的化置き換えのために、各々がFokI切断ハーフ−ドメインを含む2つの融合蛋白質を用いて、触媒的に活性な切断ドメインを再構成することができる。別法として、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokI切断ハーフ−ドメインを含む単一ポリペプチド分子を用いることもできる。ジンクフィンガー−FokI融合を用いる標的化切断および標的化配列改変についてのパラメータが、本開示において他の個所に提供される。
【0094】
切断ドメインまたは切断ハーフ−ドメインは、切断活性を保有し、または多量体化(例えば、二量体化)して、機能的切断ドメインを形成する能力を保有する蛋白質のいずれかの部分であり得る。
【0095】
例示的なタイプIIS制限酵素は、その全体が参照により組み込まれる国際公開第07/014275号パンフレットに記載される。さらなる制限酵素もまた分離可能な結合および切断ドメインを含有し、これらは本開示で塾考されている。例えば、Roberts et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:418−420参照。
【0096】
ある実施形態において、切断ドメインは、例えば、その全ての開示が、ここにその全体が参照により組み込まれる、米国特許公開第20050064474号および第20060188987号、および(2007年5月23日に出願された)米国出願第11/805,850号に記載されたように、ホモ二量体化を最小化し、または妨げる(二量体化ドメイン突然変異体ともいわれる)1以上の遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインを含む。FokIの位置446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538におけるアミノ酸残基は、全て、FokI切断ハーフ−ドメインの二量体化に影響させるための標的である。
【0097】
絶対ヘテロダイマーを形成するFokIの例示的な遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインは、第1の切断ハーフ−ドメインがFokIの位置490および538のアミノ酸残基において突然変異を含み、かつ第2の切断ハーフ−ドメインがアミノ酸残基486および499において突然変異を含む対を含む。
【0098】
かくして、1つの実施形態において、490における突然変異はGlu(E)をLys(K)で置き換え;538における突然変異はIso(I)をLys(K)で置き換え;486における突然変異はGln(Q)をGlu(E)で置き換え;および位置499における突然変異はIso(I)をLys(K)で置き換える。具体的には、本明細書中に記載された遺伝子組換え切断ハーフドメインは、1つの切断ハーフ−ドメインにおいて位置490(E→K)および538(I→K)を突然変異させて、「E490K:I538K」と命名された遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインを生じさせることにより、およびもう1つの切断ハーフ−ドメインにおける位置486(Q→E)および499(I→L)を突然変異させて、「Q486E:I499L」と命名される遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインを生じさせることによって調製した。本明細書中に記載された遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインは、異常な切断が最小化されるか、または排除された絶対ヘテロダイマー突然変異体である。例えば、その開示が、全ての目的で、その全体が参照により組み込まれる(2006年5月25日に出願された)米国特許仮出願第60/808,486号の実施例1参照。
【0099】
本明細書中に開示される遺伝子組換え切断ハーフ−ドメインは、例えば、米国特許公開第20050064474号(例えば、実施例5参照);および国際公開第07/139898に号パンフレット記載された野生型切断ハーフ−ドメイン(FokI)の部位−特異的突然変異誘発によっていずれかの適切な方法を用いて調製することができる。
【0100】
別法として、ヌクレアーゼは、いわゆる「分解酵素」技術(例えば、米国特許公開第20090068164号参照)を用いて核酸標的部位においてイン・ビボにて組み立ててよい。そのような分解酵素の成分は別々の発現構築体で発現してもよく、あるいは、例えば、2AペプチドまたはIRES配列を自己−切断することによって、個々の成分が分離された1つのオープンリーディングフレームに連結することができる。成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメイン、またはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであってよい。
【0101】
C.標的化切断のためのさらなる方法
BAXまたはBAK遺伝子中に標的部位を有するいずれのヌクレアーゼも、本明細書中に開示された方法で用いることができる。例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼは、一旦ヒト−サイズのゲノムに入れば、統計学的ベースに基づいて、そのいくつかは存在するようである、非常に長い認識配列を有する。BAXおよび/またはBAK遺伝子中にユニークな標的部位を有するいずれのそのようなヌクレアーゼも、これらの遺伝子における標的化切断のために、ジンクフィンガーヌクレアーゼの代わりに、またはそれに加えて用いることができる。
【0102】
例示的なホーミングエンドヌクレアーゼは、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIを含む。それらの認識配列は知られている。また、米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379−3388;Dujon et al.(1989)Gene 82:115−118;Perler et al.(1994)Nucleic Acids Res.22,1125−1127;Jasin(1996)Trends Genet.12:224−228;Gimble et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163−180;Argast et al.(1998)J.Mol.Biol.280:345−353およびNew England Biolabsカタログも参照。
【0103】
ほとんどのホーミングエンドヌクレアーゼの切断特異性はそれらの認識部位に関しては絶対的でないが、その部位は、哺乳動物−サイズのゲノム当たりの単一切断反応が、その認識部位の単一コピーを含有する細胞においてホーミングエンドヌクレアーゼを発現させることによって得ることができる十分な長さのものである。また、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの特異性は、非−天然標的部位に結合するように作成することができると報告されている。例えば、Chevalier et al.(2002)Molec.Cell 10:895−905;Epinat et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:2952−2962;Ashworth et al.(2006)Nature 441:656−659;Paques et al.(2007)Current Gene Therapy 7:49−66参照。
【0104】
送達
本明細書中に記載されたZFNはいずれかの適切な手段によって標的細胞に送達することができる。適切な細胞は、限定されるものではないが、真核生物細胞および原核生物細胞および/または細胞株を含む。そのような細胞、またはそのような細胞から生成された細胞株の非限定的例はCOS、CHO(例えば、CHO-S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293−H、HEK293−T)、およびperC6細胞、ならびにSpodoptera fugiperda (Sf)のような昆虫細胞、Saccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesのような真菌細胞を含む。ある実施形態において、細胞株はCHO-K1、MDCKまたはHEK293細胞株である。
【0105】
ジンクフィンガーを含む蛋白質を送達する方法は、例えば、その全ての開示が、その全体が参照により組み込まれる、米国特許第6,453,242号;第6,503,717号;第6,534,261号;第6,599,692号;第6,607,882号;第6,689,558号;第6,824,978号;第6,933,113号;第6,979,539号;第7,013,219号;および第7,163,824号に記載されている。
【0106】
本明細書中に記載されたZFNは、ZFNの1以上をコードする配列を含有するベクターを用いて送達してもよい。限定されるものではないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ−関連ウイルスベクター等を含めたいずれのベクター系を用いてもよい。また、その全体が参照により組み込まれる米国特許第6,534,261号;第6,607,882号;第6,824,978号;第6,933,113号;第6,979,539号;第7,013,219号;および第7,163,824号も参照。さらに、これらのベクターのいずれも、1以上のZFNをコードする配列を含んでもよいのは明らかであろう。かくして、ZFNの1以上の対が細胞に導入される場合、ZFNは同一ベクターまたは異なるベクターで行ってよい。多数のベクターを用いる場合、各ベクターは1または多数のZFNをコードする配列を含んでもよい。
【0107】
慣用的なウイルスおよび非−ウイルスベースの遺伝子導入方法を用いて、遺伝子組換えZFPをコードする核酸を細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織に導入することができる。そのような方法を用いて、ZFPをコードする核酸をイン・ビトロにて細胞に投与することもできる。ある実施形態において、ZFPをコードする核酸はイン・ビボまたはエクス・ビボ遺伝子療法使用のために投与される。非−ウイルスベクター送達系は、リポソームまたはポロキサマーのような送達媒体と複合化させた、DNAプラスミド、裸の核酸、および核酸を含む。ウイルスベクター送達系はDNAおよびRNAウイルスを含む、それは、細胞への送達後にエピソームまたは組み込まれたゲノムいずれかを有する。遺伝子治療手順のレビューについては、Anderson,Science 256:808−813(1992);Nabel & Felgner,TIBTECH 11:211−217(1993);Mitani & Caskey,TIBTECH 11:162−166(1993);Dillon,TIBTECH 11:167−175(1993);Miller,Nature 357:455−460(1992);Van Brunt,Biotechnology 6(10):1149−1154(1988);Vigne,Restorative Neurology and Neuroscience 8:35−36(1995);Kremer & Perricaudet,British Medical Bulletin 51(1):31−44(1995);Haddada et al.,in Current Topics in Microbiology and Immunology,Doerfler and Baehm(編)(1995);およびYu et al.,Gene Therapy 1:13−26(1994)参照。
【0108】
遺伝子組換えZFPをコードする核酸の非―ウイルス送達の方法はエレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティックス、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質を含む。核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、およびDNAの作用物質増強型取り込みである。例えば、Sonitron 2000 System(Rich−Mar)を用いるソノポレーションを、核酸の送達で用いることもできる。
【0109】
さらなる例示的な核酸送達系は、Amaxa Biosystems(Cologne,Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville,Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston,MA)およびCopernicus Therapeutics Inc.(例えば、米国特許第6008336号参照)によって提供されるものを含む。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号および米国特許第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は商業的に販売されている。(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの有効な受容体−認識リポフェクションに適したカチオン性および中性脂質は、Fenglner 国際公開第91/17424号パンフレット、 国際公開第91/16024号パンフレットのものを含む。送達は細胞(エクス・ビボ投与)または標的組織(イン・ビボ投与)に対するものとすることができる。
【0110】
免疫脂質複合体のような標的化リポソームを含めた脂質:核酸複合体の調製は当業者に良く知られている(例えば、Crystal,Science 270:404−410(1995);Blaese et al.,Cancer Gene Ther.2:291−297(1995);Behr et al.,Bioconjugate Chem.5:382−389(1994);Remy et al.,Bioconjugate Chem.5:647−654(1994);Gao et al.,Gene Therapy 2:710−722(1995);Ahmad et al.,Cancer Res.52:4817−4820(1992);米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、および第4,946,787号参照)。
【0111】
遺伝子組換えZFPをコードする核酸の送達のためのRNAまたはDNAウイルスベースの系の使用は、身体中でウイルスを特異的細胞に標的化し、次いで、ウイルスペイロードを核に輸送するための高度に発達したプロセスを利用する。ウイルスベクターは患者に直接的に投与することができ(イン・ビボ)、あるいはそれを用いて、イン・ビトロにて細胞を処理することができ、修飾された細胞が患者に投与される(エクス・ビボ)。ZFPの送達のための慣用的なウイルスベースの系は、限定されるものではないが、遺伝子導入用の、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ−関連、ワクシニアおよび単純疱疹ウイルスベクターを含む。宿主ゲノムへの組込みはレトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ−関連ウイルス遺伝子導入方法で可能である、しばしば、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。加えて、高い形質導入効率が、多くの異なる細胞型および標的組織で観察されている。
【0112】
レトロウイルスの向性は、外来性エンベロープ蛋白質を組み込むことによって改変することができ、標的細胞の潜在的標的集団を拡大する。レンチウイルスベクターは、非−分裂細胞を形質導入し、または感染させ、典型的には、高いウイルス力価を生じさせることができるレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6ないし10kbの外来性配列に対するパッケージング能力を持つシス−作用性ロングターミナルリピートよりなる。最小シス−作用性LTRはベクターの複製およびパッケージングで十分であり、これは、次いで、治療遺伝子を標的細胞に取り込んで、永久的導入遺伝子発現を提供するのに用いられる。広く用いられるレトロウイルスベクターは、ネズミ白血球ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびその組合せに基づくものを含む(例えば、Buchscher et al.,J.Virol.66:2731−2739(1992);Johann et al.,J.Virol.66:1635−1640(1992);Sommerfelt et al.,Virol.176:58−59(1990);Wilson et al.,J.Virol.63:2374−2378(1989);Miller et al.,J.Virol.65:2220−2224(1991);PCT/US94/05700参照)。
【0113】
ZFP融合蛋白質の一過性発現が好ましい適用において、アデノウイルスベースの系を用いることができる。アデノウイルスベースのベクターは多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターでは、発現の高い力価および高いレベルが得られてきた。このベクターは、比較的単純な系において大量に生産することができる。また、アデノ−関連ウイルス(「AAV」)ベクターを用いて、例えば、核酸およびペプチドのイン・ビトロ生産においておよびイン・ビボおよびエクス・ビボ遺伝子治療手順のために、標的核酸で細胞を形質導入する(例えば、West et al.,Virology 160:38−47(1987);米国特許第4,797,368号;国際公開第93/24641号パンフレット;Kotin,Human Gene Therapy 5:793−801(1994);Muzyczka,J.Clin.Invest.94:1351(1994)参照)。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.5:3251−3260(1985);Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072−2081(1984);Hermonat & Muzyczka,PNAS 81:6466−6470(1984);およびSamulski et al.,J.Virol.63:03822−3828(1989)を含めた多数の刊行物に記載されている。
【0114】
少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが臨床試験における遺伝子導入で現在利用でき、これは、ヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠陥ベクターの相補性に関連するアプローチを利用して、形質導入剤を生じさせる。
【0115】
pLASNおよびMFG−Sは、臨床試験で用いられてきたレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al.,Blood 85:3048−305(1995);Kohn et al.,Nat.Med.1:1017−102(1995);Malech et al.,PNAS 94:22 12133−12138(1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験で用いられた最初の治療ベクターであった(Blaese et al.,Science 270:475−480(1995))。50%以上の形質導入効率が、MFG−Sをパッケージしたベクターで観察されてきた(Ellem et al.,Immunol Immunother.44(1):10−20(1997);Dranoff et al.,Hum.Gene.Ther.1:111−2(1997))。
【0116】
組換えアデノ−関連ウイルスベクター(rAAV)は、欠陥がある非病原性のパラボウイルスアデノウイルス関連ウイルス2型に基づいた有望な代替遺伝子送達系である。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに近接するAAV 145bp逆方向ターミナルリピートのみを保有するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノムへの組込みによる有効な遺伝子導入および安定な導入遺伝子送達は、このベクター系のための鍵となる特徴である(Wagner et al.,Lancet 351:9117 1702−3(1998),Kearns et al.,Gene Ther.9:748−55(1996))。
【0117】
複製欠損性組換えアデノウイルスベクター(Ad)は高い力価で生産することができ、多数の異なる細胞型を容易に感染させることができる。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd E1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置き換えるように作成され;引き続いて、複製欠陥ベクターは、欠失した遺伝子機能をトランスにて供給するヒト293細胞中で増殖させる。Adベクターは、肝臓、腎臓および筋肉で見出されるもののような分裂をしていない分化した細胞を含めた多数のタイプの組織をイン・ビボにて形質導入することができる。慣用的なAdベクターは輸送能が大きい。臨床試験でのAdベクターの使用の例は、筋肉内注射での抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド療法を含むものであった(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083−9(1998))。臨床試験における遺伝子導入用のアデノウイルスベクターの使用のさらなる例は、Rosenecker et al.,Infection 24:1 5−10(1996);Sterman et al.,Hum.Gene Ther.9:7 1083−1089(1998);Welsh et al.,Hum.Gene Ther.2:205−18(1995);Alvarez et al.,Hum.Gene Ther.5:597−613(1997);Topf et al.,Gene.Ther.5:507−513(1998);Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083−1089(1998)を含む。
【0118】
細胞のパッケージングを用いて宿主細胞を感染させることができるウイルス粒子を形成する。そのような細胞はアデノウイルスをパッケージする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージするΨ2細胞またはPA317細胞を含む。遺伝子治療で用いるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子にパッケージするプロデューサー細胞株によって生成される。そのベクターは典型的にはパッケージングおよび(もし適用可能であれば)、宿主への引き続いての取込みに必要なウイルスの最小配列を含有し、他のウイルス配列は、発現させるべき蛋白質をコードする発現カセットによって置き換えられている。ウイルス機能の喪失は、パッケージング細胞株によってトランスにて供給される。例えば、遺伝子治療で用いるAAVベクターは典型的には、パッケージング、および宿主ゲノムへの組込みに必要なAAVゲノムからの逆方向ターミナルリピート(ITR)配列のみを保有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわち、repおよびcapをコードするヘルパープラスミドを含有するが、ITR配列を欠如する細胞株にパッケージされる。その細胞株はヘルパーとしてのアデノウイルスでも感染される。ヘルパーウイルスはAAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如のためかなりの量でパッケージングされない。アデノウイルスでの汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも感受性が高いアデノウイルスに対して熱処理することによって低下させることができる。
【0119】
多くの遺伝子治療適用においては、遺伝子治療ベクターは、特定の組織タイプに対する高度な特異性を保ちながら送達されるのが望ましい。従って、ウイルスベクターは、ウイルスの外側表面のウイルス外皮蛋白質との融合蛋白質としてリガンドを発現されることによって、所与の細胞型に対する特異性を有するように修飾することができる。リガンドは、注目する細胞型に存在することが知られた受容体に対する親和性を有するように選択される。例えば、Han et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:9747−9751(1995)は、モロニーネズミ白血病ウイルスがgp70に融合したヒトヘレグリンを発現するように修飾することができ、組換えウイルスは、ヒト表皮成長因子受容体を発現するある種のヒト乳癌細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスが細胞−表面受容体に対するリガンドを含む融合蛋白質を発現する他のウイルス−標的細胞対まで拡大することができる。例えば、繊維状ファージは、実質的にいずれの選択された細胞受容体に対する特異的結合親和性も有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を呈するように作成することができる。先の記載は主としてウイルスベクターに適用されるが、同一の原理は非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターは、特異的標的細胞による取込みに好都合な特異的取込み配列を含有するように作成することができる。
【0120】
遺伝子治療ベクターは、典型的には、後に記載するような、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または頭蓋内注入)または局所的適用によって、個々の患者に投与することによって、イン・ビボにて送達することができる。別法として、ベクターは、個々の患者から外植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄吸入物、組織バイオプシー)、または万能供血者の造血系幹細胞のような細胞にエクス・ビボにて投与し、通常は、ベクターが組み込まれた細胞についての選択の後に、細胞を患者に再度移植することができる。
【0121】
診断、研究のためのエクス・ビボ細胞トランスフェクション、または(例えば、宿主生物への、トランスフェクトされた細胞の再−注入を介する)遺伝子治療のためのエクス・ビボ細胞トランスフェクションは当業者によく知られている。好ましい実施形態においては、細胞は対象生物から単離され、ZFP核酸(遺伝子またはcDNA)でトランスフェクトされ、対象生物(例えば、患者)に再度注入して戻される。エクス・ビボトランスフェクションに適した種々の細胞型は当業者によく知られている(例えば、Freshney et al.,Culture of Animal Cells,A Mamual of Basic Technique(第3版 1994)、および患者からの細胞単離培養方法の考察について、そこで引用された文献参照)。
【0122】
1つの実施形態において、幹細胞は、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のためのエクス・ビボ手法で用いられる。幹細胞を用いる利点は、それをイン・ビトロで他の細胞型に分化することができるか、あるいは骨髄移植される(細胞のドナーのような)哺乳動物に導入できることである。GM−CSF、IFN−γおよびTNF−αのようなサイトカインを用いてCD34+細胞を臨床的に重要な免疫細胞型にイン・ビトロにて分化させる方法は知られている(Inaba et al.,J.Exp.Med.176;176:1693−1702(1992)参照)。
【0123】
幹細胞は公知の方法を用いて形質導入および分化のために単離される。例えば、幹細胞は、CD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR−1(顆粒球)、およびIad(分化した抗原提示細胞)のような、望まない細胞に結合する抗体で骨髄細胞をピックアップすることによって、幹細胞は骨髄細胞から単離される(Inaba et al.,J.Exp.Med.176:1693−1702(1992)参照)。
【0124】
治療ZEP核酸を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム等)は、イン・ビボでの細胞の形質導入のために生物に直接的に投与することもできる。別法として、裸のDNAを投与することができる。投与は、限定されるものではないが、注射、点滴、局所適用およびエレクトロポレーションを含めた、血液または組織細胞と最終的に接触させて分子を導入するために通常用いられる経路のいずれかによる。そのような核酸を投与する適切な方法は利用可能であって、当業者によく知られており、1を超える経路を用いて、特定の組成物を投与することができるが、特定経路はしばしば、もう1つの経路よりもより直ちにかつより有効な反応を供することができる。
【0125】
DNAを造血系幹細胞に導入する方法は、例えば、米国特許第5,928,638号に開示されている。導入遺伝子の造血系幹細胞、例えば、CD34+細胞への導入で有用なベクターはアデノウイルスタイプ35を含む。
【0126】
導入遺伝子を免疫細胞(例えば、T−細胞)に導入するのに適切なベクターは非組込みレンチウイルスベクターを含む。例えば、Ory et al.,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11382−11388;Dull et al.,(1998)J.Virol.72;8463−8471;Zuffery et al.,(1998)J.Virol.72:9873−9880;Follenzi et al.(2000)Nature Genetics 25:217−222参照。
【0127】
医薬品上許容される担体は、投与されるべき特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するのに用いる特定の方法によって、部分的には決定される。従って、後に記載するように、利用可能な医薬品組成物の広く種々の適切な処方がある(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,1989参照)。
【0128】
先に述べたように、開示された方法および組成物は、限定されるものではないが、原核生物細胞、真菌細胞、古細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞を含めたいずれのタイプの細胞にも用いることができる。蛋白質発現のための適切な細胞株は当業者に知られており、限定されるものではないが、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、Hak、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、perC6、Spodoptera fugiperda(Sf)のような昆虫細胞、およびSaccharomyces,PischiaおよびSchizosaccharomycesのような真菌細胞を含む。これらの細胞株の子孫の変異および誘導体を用いることもできる。
【0129】
キット
また、本明細書中に記載された組成物のいずれかを含む、または本明細書中に記載された方法のいずれかを実施するためのキットが提供される。キットは、典型的には、BakまたはBaxにおける標的部位に結合する1以上のジンクフィンガー蛋白質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ)を含有する。かくして、BAKおよび/またはBAXノックアウト細胞株を生成するためのキットが提供される。キットは細胞、細胞の形質転換用の緩衝液、細胞用の培地および/またはアッセイを行うための緩衝液を含有することもできる。典型的にはキットは、キットに貼付されたまたはそうでなければ、キットの他の成分に添付された指示書、パッケージングまたは宣伝リーフレットのようないずれかの資材を含むラベルも含有する。
【0130】
適用
開示された方法および組成物は、BAXおよび/またはBAKゲノム配列の不活化のために用いることができる。先に記載したように、不活化は、細胞におけるBaxおよび/またはBak遺伝子発現の部分的または全面的な抑制を含む。Bax−および/またはBak−欠損細胞株(例えば、二重Bax−Bakノックアウト細胞株)を本明細書中に記載したように生成させることもできる。Bakおよび/またはBaxの不活化は、例えば、単一切断反応による切断、続いての、非相同末端接合によって、2つの部位における切断、続いての、2つの切断部位の間の配列を欠失させるような接合によって、ミスセンスまたはナンセンスコドンのコーディング領域への標的化組換えによって、遺伝子または調節領域を破壊するような、遺伝子またはその調節領域への無関係配列(すなわち、「スタッファー配列」)の標的化組換えによって、遺伝子または調節領域を破壊するような注目配列をコードする外因性核酸配列の標的化組換えによって、あるいは、転写体のミススプライシングを引き起こす、スプライスアクセプター配列のイントロンへの標的化組換えによって達成することができる。
【0131】
Baxおよび/またはBakのZFN媒介不活化(ノックアウト)のための種々の適用がある。例えば、本明細書中に記載されたように生成されたBaxおよび/またはBakが欠損した細胞株はアポトーシスに対して抵抗性であって、Baxおよび/またはBakが欠乏していない細胞株よりも、培養において注目する外因性蛋白質を発現させた場合に、より長く増殖し、かつ健康なままでいる。従って、本明細書中に記載されたBax/Bak欠損細胞株は、注目する1以上の蛋白質(例えば、抗体、抗原、治療用蛋白質)および/または組換えウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、アデノウイルスまたはアデノ−関連ウイルス(AAV)ベクター)の長期的な効率のよい生産に用いることができる。加えて、他のアポトーシス−関連遺伝子の破壊は、単独で、または組み合せて、アポトーシスを妨げるのに有効であることが判明するであろう。特に、アポトーシス−促進蛋白質(すなわち、Bik、Bim、Bad等)のBH3−onlyファミリーのメンバーは、遺伝子破壊および/またはノックアウトのための標的とすることができる。
【0132】
加えて、本明細書中に記載されたBaxおよび/またはBak欠損細胞株は、ウイルス全体および/またはサブユニットのワクチンの生産で有用である。例えば、インフルエンザウイルスが感染した細胞株はアポトーシスの顕著な証拠を示すことが知られている。かくして、本発明のBaxおよび/またはBak欠損細胞株の使用は、インフルエンザワクチンのようなウイルスワクチンのより効率のよい長期的生産に利用することができる。インフルエンザ感染に対して感受性のない種からの細胞でのインフルエンザワクチンの生産は、例えば、MDCK細胞のようなイヌ細胞において特に望ましい。また、宿主細胞アポトーシスの結果、ワクチンが生産細胞の成分により汚染する可能性がもたらされることも知られている。そのような汚染の結果、ヒト向けの出荷および使用に必要な純度および品質を達成するための製品のロットが失敗し得る。Baxおよび/またはBak欠損細胞株を用いることによって得られたアポトーシスの予防を介して汚染を減少させると、収率および有効性双方の獲得に導き得る。
【実施例】
【0133】
実施例1:BAX−およびBAK−ZFNの設計および構築
ジンクフィンガー蛋白質は、BAXおよびBAKにおける標的部位を認識するように設計した。例示的な設計は表1および2に示される。
【0134】
ZFNの適切な対をコードする配列を含むプラスミドを、Urnov et al.(2005)Nature 435(7042):646−651に実質的に記載されたように構築した。また、米国特許公開第20080015164号および国際公開第2007/139982号パンフレットも参照。
【0135】
実施例2:遺伝子型分析
種々の細胞型におけるBAK−およびBAX−不活化クローンを生成させ、遺伝子レベルにて分析した。
【0136】
A.CHO細胞
ZFN 11205および10350をコードするプラスミドをCHO K1細胞にトランスフェクトした。CHO K1細胞はAmerican Type Culture Collectionから入手し、10%の適格なウシ胎仔血清(FCS, Cyclone)を補足したF−12培地(Invitrogen)中で推奨されるように増殖させた。細胞は、TrypLE Select(商標)プロテアーゼ(Invitrogen)を用いてプラスチックウエアから解離させた。トランスフェクションでは、100万のCHO K1細胞を、2μgのジンク−フィンガーヌクレアーゼプラスミドおよび100μLのAmaxa溶液Tと混合した。プログラムU−23を用いて、細胞をAmaxa Nucleofector II(商標)において細胞をトランスフェクトし、1.4mLのF−12加熱培地+10%FCSに回収した。
【0137】
ゲノムDNAを収穫し、オリゴGJC 39F(5’−tcaagaggtttcatggcgag−3’)(配列番号:25)およびGJC 38R(5’−ttctctctcttgtgcttatgg−3’)(配列番号:26)を用いてBAK遺伝子座の一部をPCR増幅した。InVitrogenからのAccuprime HiFiポリメラーゼを用いるPCRは以下の通りであった:94℃における最初の3分の変性後に、PCRの30サイクルを94℃における30秒の変性工程で行い、引き続いて、58℃において30秒のアニーリング工程を行い、引き続いて、68℃において30秒の延長工程を行った。30サイクルの完了の後、反応液を68℃にて7分間インキュベート、次いで、10℃で無期限に保存した。
【0138】
PCR産物をゲル精製し、配列決定し、2つの対立遺伝子を回収した。2つの例示的クローンのBAK遺伝子型(欠失)の一部を図1に示す。双方のクローンにおいて、ZFNは、野生型開始部位を含んだ欠失を導入した。対立遺伝子はAおよびBと命名される。
【0139】
配列決定された双方のクローンについては、BAKの双方の対立遺伝子を修飾した。クローン8H−6はヘテロ接合性化合物であり(対立遺伝子Bよりも大きな欠失を有する対立遺伝子A)、クローン8D−4はホモ接合性であった。図1参照。
【0140】
B.MDCK細胞
(イヌBAK遺伝子中の標的部位を認識する)BAKについてはZFN 17622および17623、および(イヌBAX遺伝子中の標的部位を認識する)BAXについてはZFN 17658および17659を用いる以外は、CHO細胞について前記したように、BAK−およびBAX−標的化ZFNをMadin−Darby Canine Kidney(MDCK)細胞においてもテストした。
【0141】
例えば、米国特許公開第20080015164号;第20080131962号および第20080159996号に記載されたように、Surveyor(商標)ヌクレアーゼ(Transgenomic)によって、MDCK BAK−およびBAX−ZFN処理細胞も調べた。ZFN−17622/17623およびZFN 17627/17626で処理したMDCK細胞は、各々、BAK対立遺伝子において3.7%および1.1%破壊を示した(図2A)。ZFN 17658および17659で処理したMDCK細胞はBAX対立遺伝子において8.0%破壊を示した(図2B)。
【0142】
ゲノムDNAに収穫し、オリゴYS 13F(5’−ctcctttcacagagatgcag−3’)(配列番号:70)およびYS 14R(5’−caggagagacagagtggtca−3’)(配列番号:71)を用いてBAK遺伝子座の一部をPCR増幅した。ゲノムDNAを収穫し、オリゴYS 21F(5’−aaaaagactgcagtggcgca−3’)(配列番号:72)およびYS 22R(5’−tcacccagaggtcaatggat−3’)(配列番号:73)を用いてBAX遺伝子座の一部をPCR増幅した。(野生型およびBAK−欠失クローン双方における)BAKおよびBAXについてのPCR増幅産物をクローン化し、配列決定した。
【0143】
図2Cに示すように、種々のBAK−特異的ZFN−処理クローンの分析は、ZFN−処理MDCKクローンが一方または双方のBAK対立遺伝子において破壊されていることを示した。同様に、図2Dは、BAX−特異的ZFNで処理したMDCK細胞のPCR分析を示し、BAK単一ノックアウトが、一方の対立遺伝子での30bpの欠失、および他方の対立遺伝子での1bpの挿入で得られたことを示す。BAX/BAK二重ノックアウトでは、BAK対立遺伝子が、BAX−特異的ZFNを用いてBak−欠損クローンにおいて標的化された。図に示すように、いくつかのヘテロ接合性クローンが同定され、これは1つの野生型BAX対立遺伝子、および1つの突然変異したBAX対立遺伝子を含有した。
【0144】
実施例3:Bak欠失クローンのRNA分析
実施例2に記載されたようなBAK−不活化CHO細胞クローンからのBAKの転写体も分析した。
【0145】
製造業者の推奨に従い、High Pure RNA Isolation Kit(Roche Applied Science)を用いて、野生型CHO−KI細胞および双方のBAK欠失クローンからRNAを精製した。2.5μgの全RNAを逆転写反応で以下のように用いた:500ngのオリゴ(dT)をRNA、および1μLの10 mM dNTPミックスと混合した。水を20μLの最終容量になるように加えた。混合物を65℃まで加熱し、氷上で冷却し、4μLの5×第1ストランド緩衝液(Invitrogen)および0.1M DTTを補充した。混合物を42℃にて2分間インキュベートした。1μLのSuperscript IIreverse transcriptase(登録商標)(InVitrogen)を反応液に加え、次いで、反応液を42℃にて50分間インキュベートした。次いで、逆転写反応を、70℃での15分間のインキュベーションによって停止した。InVitrogenからのAccuprime(商標) HiFiポリメラーゼを用い、1μLの得られたcDNAをPCR反応で以下のように用いた:94℃における最初の3分の変性後に、25サイクルのPCRを、94℃における30秒の変性工程で行い、続いて、60℃にて30秒のアニーリング工程を行い、続いて、68℃にて30秒の延長工程を行った。30サイクルの完了の後、反応液を68℃にて7分間インキュベート、次いで、10℃で、無期限に保存した。BAKのオリゴヌクレオチドはGJC 24F(5’−catctcacatctggaccacagccg−3’)(配列番号:27)およびGJC 25R(5’−ctggaactctgtgtcgtatctccgg−3’)(配列番号:28)であった。BAXについてのオリゴヌクレオチドはGJC 12F(5’−cttcttccgggtggcagctg−3’)(配列番号:29)およびGJC 23R(5’−cccgaagtatgagaggaggccatc−3’)(配列番号:30)であった。
【0146】
図3に示すように、クローン8H6(合成異型接合体クローン)から形成された転写体は、このクローンがエクソン2をスキップすることを示す。加えて、予測されたように、BAKの欠失はBAXのスプライシングに対して効果を有しなかった。
【0147】
実施例4:BAK/BAX二重ノックアウト細胞株の生成および分析
BAKおよびBAXの双方が不活化された細胞株も創製した。特に、BAXに向けられたジンクフィンガーヌクレアーゼを設計し、前記したように構築した。BAXをコードするプラスミドは、表1に示されるように、実施例2および3に記載されたBak−欠損CHO細胞に設計する。
【0148】
ZFN切断の部位において突然変異を検出するBslIによるBAX PCR産物の消化によって、細胞をBAX不活化についてテストした。各クローンからのほぼ25,000個の細胞を100μLのQuickExtract(商標)溶液(Epicentre)に溶解させ、得られた粗製溶解物の1μLを、InvitrogenからのAccuprine(商標) HiFiポリメラーゼを用いるPCR反応で以下のように用いた:94℃における最初の3分の変性の後、35サイクルのPCRを94℃における30秒の変性工程で行い、続いて、60℃における30秒のアニーリング工程を行い、続いて、68℃における30秒の延長工程を行った。30サイクルの完了の後、反応液を68℃にて7分間インキュベート、次いで、10℃で、無期限に保存した。BAX破壊クローンをスクリーニングするためのオリゴヌクレオチドはGJC 52F(5’−cagaggaatgaaagcaaagg−3’)(配列番号:31)およびGJC 114R(5’−tgaaccaggctgggagattt−3’)(配列番号:32)であった。0.1μLの10mg/mL BSAおよび0.1μLの10×緩衝液#4(New England Biolabs)とともにBslI(New England Biolabs)の0.1μLをPCR反応に加えた。消化を55℃にて3時間進行させ、その後、消化産物を1%アガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0149】
図4に示すように、BAK−/−BAX−トランスフェクトクローン79のうち21は、BAXの予測された破壊を含有した。
【0150】
BAK/BAX二重ノックアウトクローンを、BaxおよびBak蛋白質の発現についてもテストした。100万のBAX/BAK−/−細胞からの溶解物は、100μL RIPA緩衝液(Sigma)+プロテアーゼ阻害剤(Complete Mini tablets, Roche Applied Science)中への再懸濁、および氷上での1時間のインキュベーションによって調製した。溶解物を14,000rpmにおいて10分間遠心し、10μLの上清をウエスタンブロットで用いた。クローンからの蛋白質抽出物を抗−Bax抗体(Abcam)および抗−Bak抗体(Sigma)で検索した。図5に示すように、BAX/BAK−/−二重ノックアウト細胞は、BaxまたはBak蛋白質の全長型または切断型を発現しなかった。
【0151】
実施例5:アポトーシスは、BAX/BAK−/−二重ノックアウト細胞株において妨げられる。
また、BAX/BAK−/−二重ノックアウト細胞株を、スタウロスポリン−誘導アポトーシスに対するそれらの抵抗性についてテストした。
【0152】
簡単に述べれば、3つの異なるBAX/BAK−/−−ノックアウト細胞株(#47、71および97)からの25000個の細胞、25000個のの野生型CHO−KI細胞を、96−ウェル皿中の、F−12培地+10%ウシ胎仔血清に播いた。12時間の増殖の後、細胞を37℃にて1μMスタウロスポリン(Sigma,S−4400)に6時間暴露した。カスパーゼ(アポトーシスの間のみ活性であって、ミトコンドリアからのチトクロームCのBak−およびBax媒介放出によって活性化されるプロテアーゼ)の活性化を、製造業者に指示に従い、Homogenous Caspase Assay Kit(Roche Applied Science)で測定した。データは、アッセイの開始から2.5時間後に記録した。細胞播種密度のわずかな変動について修正するために、CytoTox−One(商標)キット(Promega)を用い、カスパーゼ活性をLDH−A酵素活性(細胞数の代わり)によって正規化した。
【0153】
図6に示すように、アポトーシスはBAX/BAK−/−細胞株において検出されなかった。
【0154】
これらの結果は、遺伝子組換えヌクレアーゼを用いるアポトーシス−抵抗性BaxおよびBak−欠損細胞株の迅速な生成を示す。切断の部位におけるNHEJの誤差−傾向プロセスによる不正なDNA修復の結果、機能的に有害な突然変異がもたらされる。NHEJ−由来突然変異は、時々、慣用的な遺伝子破壊によって作成されたものに対して小さいが、BAKおよびBAXの選択された臨界的領域にこれらの突然変異を標的化する遺伝子組換えヌクレアーゼ(ZFN)の能力は、小さいイン−フレーム欠失でさえ不活化をもたらすであろうとことを確実とした。
【0155】
さらに、CHO細胞株の多くの異なるサブタイプが、しばしば、特注の遺伝子または表現型変化を伴って存在するが、本明細書中に記載されたZFNを用いて、いずれかの細胞株またはサブタイプにおいてBAXおよび/またはBAKを迅速に破壊することができる。加えて、哺乳動物種の間で保存されたジンクフィンガー蛋白質結合部位を選択することができるが、ZFNは、いずれの種に由来する細胞株においてもBAXおよびBAKを不活化するように設計することができる。
【0156】
実施例6:組換え蛋白質の生産はBAX/BAK−/−二重ノックアウト細胞株において増加する。
野生型CHO−KI細胞およびBAX BAK−/−クローン8H6−71(図5参照)からの蛋白質生産をアッセイした。野生型およびノックアウト両細胞株を、IgG重鎖および軽鎖遺伝子、およびピューロマイシン−抵抗性についての遺伝子を含有するプラスミドでトランスフェクトした。細胞を8μg/mLピューロマイシンで選択し、ピューロマイシン抵抗性プールの細胞上清を2日間隔で2.5週間サンプリングした。細胞はこの実験においては栄養を与えず、栄養飢餓および毒性代謝産物蓄積が培養の増殖後期にアポトーシスを誘導することを可能とした。
【0157】
IgGレベルは4ないし8日において双方の培養で同様であった。しかしながら、12ないし17日において、二重−ノックアウト培養におけるIgGレベルは野生型CHO細胞培養の2ないし5倍であった(図7)。
【0158】
本明細書中で言及した全ての特許、特許出願および刊行物は、ここに、その全体を参照により組み込まれる。
【0159】
開示は理解の明瞭性の目的で説明および例によって幾分詳細に提供してきたが、開示の精神または範囲を逸脱することなく実施することができるのは当業者に明らかであろう。従って、これまでの記載および実施例は限定的なものと解釈すべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表1または表2に示された4、5または6のジンクフィンガー認識領域を含むジンクフィンガーDNA−結合ドメイン。
【請求項2】
請求項1記載のジンクフィンガーDNA−結合ドメイン、および少なくとも1つの切断ドメインまたは少なくとも1つの切断ハーフ−ドメインを含む融合蛋白質。
【請求項3】
前記ハーフ−ドメインが野生型または遺伝子組換えFokI切断ハーフ−ドメインである請求項2記載の融合蛋白質。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか記載のジンクフィンガーDNA−結合ドメインをコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1ないし3いずれか記載の蛋白質、または請求項4記載のポリヌクレオチドを含む単離された細胞。
【請求項6】
Bakおよび/またはBaxが部分的にまたは全面的に不活化されている細胞株。
【請求項7】
細胞中の内因性細胞BAKまたはBAX遺伝子を不活化する方法であって:
(a)第1のポリペプチドをコードする第1の核酸を細胞に導入することを含み、
ここに、前記第1のポリペプチドは、前記ポリペプチドが前記細胞において発現されるように:
(i)内因性BAKまたはBAX遺伝子中の第1の標的部位に結合するように作成されたジンクフィンガーDNA−結合ドメイン;および
(ii)切断ドメイン
を含み、それにより、前記ポリペプチドは前記標的部位に結合し、およびBAKおよびBAX遺伝子の少なくとも1つを切断することを特徴とする方法。
【請求項8】
さらに、第2のポリペプチドをコードする核酸を導入することを含み、ここに、前記第2のポリペプチドが、前記第2のポリペプチドが前記細胞において発現されるように:
(i)BAKまたはBAX遺伝子中の第二の標的部位に結合するように作成されたジンクフィンガーDMA−結合ドメイン:および
(ii)切断ドメイン
を含み、それにより、前記第1および第2のポリペプチドはそれらの各標的部位に結合し、およびBAKまたはBAX遺伝子の少なくとも1つを切断する請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2のポリペプチドが同一の核酸によってコードされる請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2のポリペプチドが異なる核酸によってコードされる請求項7記載の方法。
【請求項11】
宿主中で注目する組換え蛋白質を生産する方法であって:
(a)内因性BAXおよびBAK遺伝子を含む宿主細胞を供し;
(b)請求項7ないし10のいずれかの方法によって、宿主細胞の内因性BAXおよびBAK遺伝子の一方または双方を不活化し;次いで、
(c)導入遺伝子を含む発現ベクターを宿主細胞に導入するステップを含み、
前記導入遺伝子は注目する蛋白質をコードする配列を含み、それにより、組換え蛋白質が生産される方法。
【請求項12】
前記注目する蛋白質が抗原を含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記抗原がインフルエンザ抗原を含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
BakおよびBaxの少なくとも1つが部分的にまたは全面的に不活化された細胞株であって、ここに、前記細胞株は、
(a)請求項7ないし10いずれか記載の方法に従ってBakおよびBaxの少なくとも1つを細胞において不活化し;次いで、
(b)BakおよびBaxの少なくとも1つが部分的にまたは全面的に不活化された細胞株を生成させるのに適切な条件下で前記細胞を培養する、
ことによって生産される細胞株。
【請求項15】
前記細胞がCOS細胞、CHO細胞、VERO細胞、MDCK細胞、WI38細胞、V79細胞、B14AF28−G3細胞、BHK細胞、HaK細胞、NS0細胞、SP2/0−Ag14細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、およびperC6細胞よりなる群から選択される哺乳動物細胞である請求項14記載の細胞株。
【請求項1】
表1または表2に示された4、5または6のジンクフィンガー認識領域を含むジンクフィンガーDNA−結合ドメイン。
【請求項2】
請求項1記載のジンクフィンガーDNA−結合ドメイン、および少なくとも1つの切断ドメインまたは少なくとも1つの切断ハーフ−ドメインを含む融合蛋白質。
【請求項3】
前記ハーフ−ドメインが野生型または遺伝子組換えFokI切断ハーフ−ドメインである請求項2記載の融合蛋白質。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか記載のジンクフィンガーDNA−結合ドメインをコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1ないし3いずれか記載の蛋白質、または請求項4記載のポリヌクレオチドを含む単離された細胞。
【請求項6】
Bakおよび/またはBaxが部分的にまたは全面的に不活化されている細胞株。
【請求項7】
細胞中の内因性細胞BAKまたはBAX遺伝子を不活化する方法であって:
(a)第1のポリペプチドをコードする第1の核酸を細胞に導入することを含み、
ここに、前記第1のポリペプチドは、前記ポリペプチドが前記細胞において発現されるように:
(i)内因性BAKまたはBAX遺伝子中の第1の標的部位に結合するように作成されたジンクフィンガーDNA−結合ドメイン;および
(ii)切断ドメイン
を含み、それにより、前記ポリペプチドは前記標的部位に結合し、およびBAKおよびBAX遺伝子の少なくとも1つを切断することを特徴とする方法。
【請求項8】
さらに、第2のポリペプチドをコードする核酸を導入することを含み、ここに、前記第2のポリペプチドが、前記第2のポリペプチドが前記細胞において発現されるように:
(i)BAKまたはBAX遺伝子中の第二の標的部位に結合するように作成されたジンクフィンガーDMA−結合ドメイン:および
(ii)切断ドメイン
を含み、それにより、前記第1および第2のポリペプチドはそれらの各標的部位に結合し、およびBAKまたはBAX遺伝子の少なくとも1つを切断する請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2のポリペプチドが同一の核酸によってコードされる請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2のポリペプチドが異なる核酸によってコードされる請求項7記載の方法。
【請求項11】
宿主中で注目する組換え蛋白質を生産する方法であって:
(a)内因性BAXおよびBAK遺伝子を含む宿主細胞を供し;
(b)請求項7ないし10のいずれかの方法によって、宿主細胞の内因性BAXおよびBAK遺伝子の一方または双方を不活化し;次いで、
(c)導入遺伝子を含む発現ベクターを宿主細胞に導入するステップを含み、
前記導入遺伝子は注目する蛋白質をコードする配列を含み、それにより、組換え蛋白質が生産される方法。
【請求項12】
前記注目する蛋白質が抗原を含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記抗原がインフルエンザ抗原を含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
BakおよびBaxの少なくとも1つが部分的にまたは全面的に不活化された細胞株であって、ここに、前記細胞株は、
(a)請求項7ないし10いずれか記載の方法に従ってBakおよびBaxの少なくとも1つを細胞において不活化し;次いで、
(b)BakおよびBaxの少なくとも1つが部分的にまたは全面的に不活化された細胞株を生成させるのに適切な条件下で前記細胞を培養する、
ことによって生産される細胞株。
【請求項15】
前記細胞がCOS細胞、CHO細胞、VERO細胞、MDCK細胞、WI38細胞、V79細胞、B14AF28−G3細胞、BHK細胞、HaK細胞、NS0細胞、SP2/0−Ag14細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、およびperC6細胞よりなる群から選択される哺乳動物細胞である請求項14記載の細胞株。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2011−522564(P2011−522564A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513494(P2011−513494)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/003484
【国際公開番号】WO2009/151591
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(508241200)サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/003484
【国際公開番号】WO2009/151591
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(508241200)サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】
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