説明

Bcl−2ファミリー阻害剤耐性腫瘍及び癌を有する被験者を同定、分類及びモニターするための方法及び組成物

本発明は、Bcl−2ファミリー阻害剤治療について癌患者を同定、分類及びモニターできる方法及びキットに関する。本発明の方法及び組成物は、癌または腫瘍細胞中のBcl−xの増幅または高いBcl−xポリペプチド発現の判定に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌患者をBcl−2ファミリー阻害剤治療について同定、分類及びモニターするために有用な診断アッセイに関し、特に大部分のBcl−2阻害剤に対して耐性でありそうな癌を有する患者を同定することができる特定のマーカーの計測に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の遺伝的異種性は有効な癌治療薬の開発を複雑にしている要因である。古典的な組織病理学的分類に従って1つの疾病単位であると見なされている癌は、分子プロファイリングにかけるとしばしば複数のゲノムサブタイプを示す。幾つかの症例では、分子分類が古典的病理学よりもより正確であると証明された。標的癌治療薬の有効性は遺伝子増幅のようなゲノム特徴の存在と相関し得る(Cobleighら,1999;Lynchら,2004)。乳癌中のHer−2の場合、遺伝子増幅の検出がタンパク質過剰発現の免疫組織化学(IHC)による検出と比較して優れた診断・治療選択情報を与えることが立証されている(Paulettiら,2000)。従って、患者の標的癌治療に対する応答率を向上させ得るゲノム分類マーカーが要望されている。
【0003】
肺癌は新しい標的癌治療のために活発に研究されている分野である。肺悪性腫瘍は米国では2006年に約160,000人が死亡した癌死亡率の主たる原因である。小細胞肺癌(SCLC)は、肺癌症例の約20%に相当する肺癌の組織病理学的サブタイプである。このサブタイプの生存率は低く(長期生存率4〜5%)、新しい化学療法レジメンが導入されたにも関わらず、過去10年間で有意に改善されていない。肺癌症例の残りは、幾つかの共通するサブタイプからなるカテゴリーの非小細胞肺癌(NSCLC)である。過去数年間で、NSCLCに対する標的治療(例えば、エルロチニブ及びゲフィチニブ)の開発が大きく進歩している。NSCLC患者を潜在的な応答者及び非応答者に層化することができるゲノムバイオマーカーが発見された。特に、EGFRキナーゼドメインにおける変異及び増幅がエルロチニブ及びゲフィチニブに対する応答と相関していることが分かった。残念ながら、たとえSCLC細胞株及び腫瘍のゲノム分析が報告されても(Ashmanら,2002;Coeら,2006;Kimら,2006)、SCLCでは上記進歩は達成されていない。
【0004】
標的癌治療研究は、プログラム化細胞死の中心的制御因子であるBcl−2タンパク質ファミリーのメンバーに対して報告されている。アポトーシスを抑制するBcl−2ファミリーメンバーは癌において過剰発現され、腫瘍形成の原因となる。Bcl−2発現は癌治療に対する耐性及び低い生存率と強く相関している。例えば、前立腺癌におけるアンドロゲン非依存性の発現はBcl−2発現の高い発生率(調べたコホートの>40%)(Chaudharyら,1999)により特徴づけられ、これは治療に対する高い耐性にも相関している。更に、NSCLC及びSCLC細胞株の両方におけるBcl−2の過剰発現が細胞毒性剤に対する耐性を誘発することが立証されている(Ohmoriら,1993;Yasuiら,2004)。Yasuiら(2004)はBcl−w(BCL2L2)遺伝子座でのコピー数増加を記載しており、Bcl−w発現がSKOV3/VPの化学耐性に対して少なくとも部分的に関与していると結論付けている。Yatsuiら(2004)は他の癌細胞株でのBcl−2ファミリーコピー数変化の同定を開示していない。
【0005】
Martinez−Climentら(2003)は、濾胞性リンパ腫の大細胞性リンパ腫への形質転換におけるBcl−2遺伝子座を含めた18q21でのコピー数変化の同定を記載している(Martinez−Climentら,2003)。Monniら(1996)は、びまん性大細胞B細胞リンパ腫における複数のコピー数変化を報告している(Monniら,1996)。Galtelandら(2005)はB細胞非ホジキンリンパ腫におけるBcl−2の染色体座の増加を報告している(Galtelandら,2005)。Nupponenら(1998)は17個の再発性前立腺癌サンプルのうちの4個でBcl−2の低レベルのコピー数増加を記載している(Nupponenら,1998)。Olejniczakらは、Bcl−2遺伝子を含んでおり、Bcl−2阻害剤ABT−737に対する感受性に関連していたSCLCにおける18q21上の増加を報告している(Olejniczakら,2007)。
【0006】
今日の腫瘍学研究の重要な領域は標的治療に対する獲得耐性の研究である。標的治療は患者に対して優れた効果を与える。しかしながら、多くの場合、腫瘍が上記治療の効果を避けるべく多数の方策を強制するのでその効果は一時的である。これらの耐性メカニズムは複雑であり、様々である。これらのメカニズムが解明されたら、耐性メカニズムを標的とする新しい治療法が開発され、展開され得る。
【0007】
BH3ミメティックは、特定の抗アポトーシスBcl−2ファミリーメンバーを抑制することによりアポトーシスを誘発させるように工学操作された高度に標的化された化合物である。これらの薬物の効果に対する耐性は治療中に生じ得る。
【0008】
前記ミメティックの1つのABT−737(旧ABT−263)はBcl−2ファミリーメンバーBcl−2、Bcl−x及びBcl−wの低分子阻害剤であり、固形腫瘍の退縮を誘発することが判明している(Oltersdorfら,2005)。ABT−737をヒト癌細胞株の多種多様のパネルに対して試験し、ABT−737がSCLC及びリンパ腫細胞株に対して選択的効果を示した(Oltersdorfら,2005)。ABT−737の化学構造はOltersdorfら(2005)のp.679に挙げられている。
【0009】
多くの腫瘍で、生存促進性ファミリーメンバーが過剰発現し、(Coryら,2003)、またはp53経路の変異がさもなければアポトーシスを誘発するであろうBH3−オンリータンパク質のp53媒介誘導を停止させる(Jeffersら,2003;Shibueら,2003;Villungerら,2003)ので、Bcl−2ファミリーの損傷細胞を除去する能力は覆る。しかしながら、興味深いことに、たとえBcl−2阻害剤ファミリーの効果に対して耐性であっても、腫瘍細胞におけるアポトーシス機構は無傷のままである。
【0010】
生存促進性Bcl−2ファミリーメンバーを過剰発現した細胞の1つの研究で、前記細胞が通常Bax/Bak媒介アポトーシスを誘発させるABT−737に対して耐性であることが知見された。Van Delftら(2006)は、別の生存促進性関連物のMcI−1が過剰発現したので細胞はABT−737に対して化学不応性であったと知見した。Mcl−1をダウンレギュレートすることにより、細胞はABT−737媒介アポトーシスに対して感受性になった(van Delftら,2006)。癌細胞をABT−737の作用に対して難治性とする際のMcI−1の役割はTahirら(2007)により立証された(Olejniczakら,2007)。この研究で、Tahirら(2007)は、小細胞肺癌系を漸増量のABT−737に曝すと、細胞はABT−737耐性を獲得し、これはMcI−1発現のアップレギュレーションに関係していたことを観察した。
【0011】
よって、Bcl−2ファミリーメンバーのアンタゴニストに対して耐性である細胞の同定を可能にすることが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Cobleighら,1999
【非特許文献2】Lynchら,2004
【非特許文献3】Paulettiら,2000
【非特許文献4】Ashmanら,2002
【非特許文献5】Coeら,2006
【非特許文献6】Kimら,2006
【非特許文献7】Chaudharyら,1999
【非特許文献8】Ohmoriら,1993
【非特許文献9】Yasuiら,2004
【非特許文献10】Martinez−Climentら,2003
【非特許文献11】Monniら,1996
【非特許文献12】Galtelandら,2005
【非特許文献13】Nupponenら,1998
【非特許文献14】Olejniczakら,2007
【非特許文献15】Oltersdorfら,2005
【非特許文献16】Coryら,2003
【非特許文献17】Jeffersら,2003
【非特許文献18】Shibueら,2003
【非特許文献19】Villungerら,2003
【非特許文献20】Van Delftら,2006
【非特許文献21】Tahirら(2007)
【発明の概要】
【0013】
第1の態様で、本発明は、
(a)患者から組織サンプルを用意し;
(b)Bcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し;
(c)Bcl−x遺伝子が増幅されるならば患者をBcl−2低分子阻害剤に対して耐性であると分類する
ことを含むBcl−2ファミリー阻害剤に対して耐性である癌を有する患者を分類する方法に関する。
【0014】
第2の態様で、本発明は、
(a)患者から組織サンプルを用意し;
(b)Bcl−x遺伝子の発現が増幅されるかを判定し;
(c)Bcl−x遺伝子が増幅されないならば患者をBcl−2ファミリー阻害剤を受ける資格があると分類する
ことを含む癌患者をBcl−2ファミリー阻害剤治療を受ける資格があると同定する方法に関する。
【0015】
第1及び第2の態様で、Bcl−2ファミリー阻害剤はABT−263であり得、Bcl−x遺伝子の増幅はBcl−xポリペプチドの発現の増加と相関している。判定ステップは、例えば検出可能に標識されている核酸プローブを用いるin situハイブリダイゼーションを含み得る。或いは、遺伝子増幅を判定するために、Bcl−x遺伝子にハイブリダイズするプライマーを用いてPCRを使用し得る。増幅はマイクロアレイアッセイを用いても判定され得る。
【0016】
第3の態様で、本発明は、
(a)癌患者から検査サンプルを用意し;
(b)検査サンプル中の腫瘍または癌細胞を同定し、または検査サンプルから腫瘍または癌細胞を抽出し;
(c)腫瘍または癌細胞中でBcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し;
(d)治療開始前または治療開始時に測定した増幅Bcl−x遺伝子を有する腫瘍または癌細胞の数を前記腫瘍または癌細胞の基準レベルと比較する
ことを含む抗−Bcl−2ファミリー剤で治療されている患者をモニターする方法に関する。
【0017】
第4の態様で、本発明は、
(a)患者から検査サンプルを用意し;
(b)(i)検査サンプル中でBcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し、及び(ii)検査サンプル中のBcl−xの量を測定し;
(c)検査サンプル中のBcl−xの量が対照中のBcl−xの量より多いか少ないかを判定し;
(d)(i)Bcl−x遺伝子の増幅及び(ii)Bcl−xの量が対照中よりも検査サンプル中で多いことに基づいて患者をBcl−2ファミリー阻害剤に対して耐性の癌を有すると分類する
ことを含むBcl−2ファミリー阻害剤に対して耐性の癌を有する患者を分類する方法に関する。
【0018】
第5の態様で、本発明は、
(a)患者から検査サンプルを用意し;
(b)(i)検査サンプル中でBcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し、(ii)検査サンプル中のBcl−xの量を測定し;
(c)検査サンプル中のBcl−xの量が対照中のBcl−xの量より多いか少ないかを判定し;
(d)(i)Bcl−x遺伝子の増幅及び(ii)Bcl−xの量が対照中よりも検査サンプル中で多いことに基づいて患者をBcl−2ファミリー阻害剤治療を受ける資格があると分類する
ことを含む癌患者をBcl−2ファミリー阻害剤治療を受ける資格があると同定する方法に関する。
【0019】
第6の態様で、本発明は、
(a)癌患者から検査サンプルを用意し;
(b)サンプル中の腫瘍または癌細胞を同定し、またはサンプルから腫瘍または癌細胞を抽出し;
(c)Bcl−x遺伝子の増幅の存在または不在に基づいて患者をBcl−2ファミリー阻害剤で治療を続けるべきかを決定する
ことを含む抗−Bcl−2ファミリー剤で治療されている患者をモニターする方法に関する。
【0020】
第7の態様で、本発明は、
(a)患者から検査サンプルを用意し;
(b)(i)検査サンプル中でBcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し、(ii)検査サンプル中のBcl−xの量を測定し;
(c)検査サンプル中のBcl−xの量が対照中のBcl−xの量よりも多いか少ないかを判定し;
(d)(i)Bcl−x遺伝子の増幅及び(ii)Bcl−xの量が対照中よりも検査サンプル中で多いことに基づいて患者をBcl−2ファミリー阻害剤で治療続けるべきかを判定する
ことを含む抗−Bcl−2ファミリー剤で治療されている患者をモニターする方法に関する。
【0021】
測定ステップ(b)(ii)をイムノアッセイにより実施する。
【0022】
本発明のこれらの最初の7つの態様で、それぞれBcl−2ファミリー阻害剤はABT−263であり得、Bcl−x遺伝子の増幅はBcl−xタンパク質の発現の増加に相関している。判定ステップは、例えば検出可能に標識されている核酸プローブを用いるin situハイブリダイゼーションを含み得る。或いは、遺伝子増幅を判定するためにBcl−x遺伝子にハイブリダイズするプライマーを用いてPCRを使用し得る。増幅はマイクロアレイアッセイを用いても判定され得る。幾つかの態様で、Bcl−x遺伝子発現はmRNAまたはポリペプチドレベルを計測することにより調べられる。ポリペプチドレベルは、サンドイッチ型イムノアッセイ、ELISAのようなイムノアッセイを用いて、または自動イムノアッセイ計器を用いて計測され得る。患者は特にSLCL及びリンパ腫患者であり得る。腫瘍細胞は循環腫瘍細胞であり得る。
【0023】
第8の態様で、本発明は、
(a)増幅されたBcl−x遺伝子を検出するための試薬及び
(b)使用説明書
を含むキットに関する。
【0024】
キット中の試薬は、Bcl−x遺伝子の少なくとも一部にハイブリダイズする検出可能に標識されているポリヌクレオチド、けまたはBcl−xポリペプチドを結合する抗体であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、癌及び腫瘍細胞をBcl−2ファミリー阻害剤治療に対する耐性についてモニターするための方法及び組成物を提供する。本発明者らは、予期せぬことに、すでにBcl−2ファミリー阻害剤により標的化されている遺伝子産物の1つをコードする領域の遺伝子増幅によりBcl−2ファミリー阻害剤耐性が生ずることを知見した。この知見は理論上または文献から完全に予期されなかった。
【0026】
本発明者らは、ゲノムワイドスケールで遺伝子コピー数異常を検出するためのマイクロアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション技術を用いる増幅により、DNAコピー数の変化を伴う染色体異常の全ゲノム見解が得られることを知見した。この方法は、開示内容を参照により本明細書に組み入れる2008年10月31日に出願された米国特許出願No.61/110,281の“METHODS FOR ASSEMBLING PANELS OF CANCER CELL LINES FOR USE IN TESTING THE EFFICACY OF ONE OR MORE PHARMACEUTICAL COMPOSITIONS”に詳しく開示されている。
【0027】
本発明は、患者組織サンプル中のBcl−x遺伝子増幅及び/または遺伝子発現増加を評価することを含む癌患者を同定、分類及びモニターするための診断アッセイを提供する。本発明のアッセイは、Bcl−2ファミリーアンタゴニスト治療を受ける資格がある患者を同定するため及び前記治療に対する患者応答をモニターするためのアッセイ方法を含む。本発明は、例えばBcl−x遺伝子の増幅の存在または不在を蛍光in situハイブリダイゼーションにより判定することを含む。増幅されたBcl−xを有すると分類された患者は、抗−Bcl−2ファミリー治療に応答しそうにないのでこの治療を受ける資格がない。加えて、この増幅を有する患者は他の癌治療に対して耐性であり得る。よって、癌及び腫瘍細胞中のBcl−xの増幅の存在を判定することが一般的な治療層化マーカーである。
【0028】
1つの実施形態において、本発明は、
(a)患者から組織サンプルを用意し;
(b)Bcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し;
(c)Bcl−x遺伝子が増幅されるならば患者をBcl−2低分子阻害剤に対して耐性であると分類する
ことを含むBcl−2ファミリー阻害剤に対して耐性である癌を有する患者を同定または分類する方法に関する。
【0029】
この実施形態において、遺伝子増幅は多色蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイにより判定され得、例えば肺癌腫瘍生検サンプルに対して実施される。他の実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、
(a)癌患者から検査サンプルを用意し;
(b)検査サンプル中の腫瘍または癌細胞を同定し、または検査サンプルから腫瘍または癌細胞を抽出し;
(c)腫瘍または癌細胞中でBcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し;
(d)治療開始前または治療開始時に測定した増幅Bcl−x遺伝子を有する腫瘍または癌細胞の数を前記腫瘍または癌細胞の基準レベルと比較する
ことを含む抗−Bcl−2ファミリー剤で治療されている患者をモニターする方法に関する。
【0031】
ここでも、FISH及びPCR方法がBcl−x増幅を検出するために使用され得る。
【0032】
更に、本発明は、
(a)患者から検査サンプルを用意し;
(b)(i)検査サンプル中でBcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し、及び(ii)検査サンプル中のBcl−xの量を測定し;
(c)検査サンプル中のBcl−xの量が対照中のBcl−xの量より多いか少ないかを判定し;
(d)(i)Bcl−x遺伝子の増幅及び(ii)Bcl−xの量が対照中よりも検査サンプル中で多いことに基づいて患者をBcl−2ファミリー阻害剤に対して耐性の癌を有すると分類する
ことを含むBcl−2ファミリー阻害剤に対して耐性の癌を有する患者を分類する方法を含む。
【0033】
これらの同一方法がBcl−2ファミリー阻害剤治療を受ける資格がある患者を同定するために使用され得る。
【0034】
本発明は、パッケージ、例えばPCRプライマー、FISHプローブ等として使用されるように工学操作されたポリヌクレオチドを含むキットにも関する。
【0035】
本発明は、癌治療、特にBcl−2ファミリー阻害剤治療についての患者の改善された層化を提供できる。これらのバイオマーカーを本発明で評価すると、個々の患者の治療に対する応答を追跡することもできる。
【0036】
定義
「Bcl−2ファミリー阻害剤」は、Bcl−2、Bcl−x及びBcl−wの少なくとも1つに結合し、Bcl−2ファミリー関連核酸またはタンパク質の活性を拮抗させる任意のタイプの治療用化合物を指し、この中には低分子−、抗体−、アンチセンス−、小型干渉RNA、またはミクロRNAベースの化合物が含まれる。本発明の方法は公知のまたは今後開発されるBcl−2ファミリー阻害剤で有用である。Bcl−2ファミリー阻害剤の例は、Bcl−2、Bcl−x及びBcl−wの各々に結合するABT−737、すなわちN−(4−(4−((4’−クロロ(1,1’−ビフェニル)−2−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(ジメチルアミノ)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ)−3−ニトロベンゼンスルホンアミドである。別のBcl−2ファミリー阻害剤は、ABT−263、すなわちN−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキサ−1−エン−1−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(モルホリン−4−イル)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミドである。ABT−263の化学構造はABT−737に関連しており、その化学構造を式(I):
【0037】
【化1】

に示す。
【0038】
本発明のアッセイは、標的癌治療、例えば小細胞肺癌及びリンパ腫に対する標的治療と共に使用され得る。アッセイは、Bcl−xの増幅が関与する癌のタイプに関連して実施され得る。癌の他の例には、前立腺癌、卵巣癌及び食道癌のような上皮癌が含まれる。本発明のアッセイは、任意のタイプの患者組織サンプルに対して、または末梢血、(新鮮冷凍及び固定パラフィン包埋組織を含めた)腫瘍または疑わしい腫瘍組織、血液サンプル、リンパ節組織、骨髄及び微小針吸引物中で分離または同定された循環上皮細胞のような細胞単離物に対して実施される。
【0039】
Bcl−2(BCL2としても公知)はヒトB細胞CLL/リンパ腫2遺伝子を意味する。Bcl−x(BCL2L1としても公知)はヒトBCL2様1遺伝子を意味する。Bcl−w(BCL2L2としても公知)はヒトBCL2−l様2遺伝子を意味する。
【0040】
「特異的にハイブリダイズする」は、核酸が第2核酸に対して検出可能に且つ特異的に結合する能力を指す。ポリヌクレオチドは、非特異的核酸による検出可能な結合の認知し得る量の検出を最小限とするハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で標的核酸鎖と特異的にハイブリダイズする。
【0041】
「標的配列」または「標的核酸配列」は、ポリヌクレオチドプライマーまたはプローブを用いて増幅及び/または検出される核酸配列を意味し、例えば遺伝子、或いはその補体または断片が含まれる。加えて、用語「標的配列」は時々二本鎖核酸配列を指すが、標的配列は一本鎖であってもよい。標的が二本鎖の場合、ポリヌクレオチドプライマー配列は好ましくは標的配列の両鎖を増幅させる。特定生物に対して多少特異的である標的配列が選択され得る。例えば、標的配列は全属、1つ以上の属、生物の種または亜種、血清群、生育型、血清型、系統、単離物または他の亜集団に対して特異的であり得る。
【0042】
「検査サンプル」は、被験者または生体流体から採取したサンプルを意味し、該サンプルは標的配列を含み得る。検査サンプルは任意のソース、例えば組織、血液、唾液、痰、粘液、汗、尿、尿道スワブ、子宮頸部スワブ、尿生殖器または肛門スワブ、結膜スワブ、眼房水、脳脊髄液等から採取され得る。検査サンプルは、(i)ソースから得たまま直接、または(ii)サンプルの特性を調節するための前処理後に使用され得る。よって、検査サンプルは、使用前に例えば血液から血漿または血清を作成する、細胞またはウイルス粒子を破壊する、固体材料から液体を調製する、粘性流体を希釈する、液体を濾過する、試薬を添加する、核酸を精製すること等により前処理され得る。
【0043】
「被験者」には哺乳動物、鳥類または爬虫類が含まれる。被験者はウシ、ウマ、イヌ、ネコまたは霊長類であり得る。被験者がヒトであってもよい。被験者が生きていても、死んでいてもよい。
【0044】
「ポリヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、修飾RNAまたはDNA、或いはRNAまたはDNAミメティックス(例えば、PNA)の核酸ポリマー、並びにその誘導体及びそのホモログである。よって、ポリヌクレオチドには天然に存在するヌクレオ塩基、糖及び共有ヌクレオシド間(骨格)結合から構成されるポリマー、及び同様に機能する非天然部分を有するポリマーが含まれる。前記した修飾または置換核酸ポリマーは当業界で公知であり、「アナログ」と称される。オリゴヌクレオチドは通常約10〜最高約160または200ヌクレオチドの短ポリヌクレオチドである。
【0045】
「バリアントポリヌクレオチド」または「バリアント核酸配列」は、所与の核酸配列と少なくとも約60%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%の核酸配列同一性、更により好ましくは少なくとも約99%の核酸配列同一性を有するポリヌクレオチドを意味する。バリアントは天然ヌクレオチド配列を含まない。
【0046】
通常、バリアントポリヌクレオチドは少なくとも約8ヌクレオチド長、しばしば少なくとも約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60ヌクレオチド長、更には約75〜200ヌクレオチド長またはそれ以上である。
【0047】
核酸配列に対する「核酸配列同一性パーセント(%)」は、最大パーセントの配列同一性を得るために配列をアラインさせ、必要ならばギャップを導入した後、当該配列中のヌクレオチドと同一の候補配列中のヌクレオチドのパーセンテージとして定義される。核酸配列同一性%を判定するためのアラインメントは、例えば公に入手可能なコンピューターソフトウェア(例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア)を用いて当業者の範囲内にある各種方法を用いてなされ得る。当業者は、比較しようとする配列の全長にわたり最大のアラインメントを得るために必要なアルゴリズムを含めたアラインメントを調べるための適切なパラメーターを決定することができる。
【0048】
ヌクレオチド配列をアラインさせたら、所与の核酸配列Dに対してまたは核酸配列Dと所与の核酸配列Cの核酸配列同一性%(或いは、所与の核酸配列Dに対してまたは核酸配列Dとある%の核酸配列同一性を有するまたは含む所与の核酸配列Cとして表され得る)が次のように計算され得る:
核酸配列同一性%=W/Z100
ここで、WはC及びDの配列アラインメントプログラムまたはアルゴリズムアラインメントにより同一マッチとして採点されたヌクレオチドの数であり、ZはD中のヌクレオチドの総数である。
【0049】
核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さに等しくない場合、CのDに対する核酸配列同一性%はDのCに対する核酸配列同一性%と等しくないであろう。
【0050】
「%の配列同一性を有するポリヌクレオチドから本質的に構成される」は、ポリヌクレオチドはその長さに実質的な違いはないが、配列が実質的に異なることがあることを意味する。よって、100ヌクレオチドを有する公知の配列“B”に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチドから本質的に構成されるポリヌクレオチド“A”は、ポリヌクレオチド“A”が約100nts長であるが、最高20ntsが“B”配列と異なり得ることを意味する。問題のポリヌクレオチド配列は、例えば実質的に非同一の配列を付加して意図する第2構造を形成している場合のように特定タイプのプローブ、プライマー及び他の分子ツールを作成すべく1〜15ヌクレオチドを付加するように末端が修飾されているためにより長かったり、またはより短かったりする。配列が「本質的にからなる」により修飾されているときには、前記非同一性ヌクレオチドは配列同一性の計算時に考慮されない。
【0051】
一本鎖DNAが相補性断片をハイブリダイズする特異性は反応条件のストリンジェンシーにより決定される。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、DNA二本鎖を形成する傾向が低下するにつれて高まる。核酸ハイブリダイゼーション反応において、ストリンジェンシーは特異的ハイブリダイゼーションを促進するように選択され得る(高ストリンジェンシー)。余り特異的でないハイブリダイゼーション(低ストリンジェンシー)は、関連するが、そのままではないDNA分子(相同ではあるが、同一ではない)またはセグメントを同定するために使用され得る。
【0052】
DNA二本鎖は、(1)相補性塩基対の数、(2)塩基対のタイプ、(3)反応混合物の塩濃度(イオン強度)、(4)反応の温度、及び(5)DNA二本鎖安定性を低下させる特定の有機溶媒(例えば、ホルムアミド)の存在により安定化される。一般的なアプローチは温度を変化させることである。よりストリンジェントな反応条件をもたらすより高い相対温度により(Ausubelら,1987)、ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーがうまく説明される。
【0053】
「ストリンジェントな条件」下でのハイブリダイゼーションは、相互に少なくとも60%相同でヌクレオチド配列がハイブリダイズされたままであることを意味する。
【0054】
ポリヌクレオチドは、ペプチド(例えば、インビボで宿主細胞受容体を標的化するため)または細胞膜を超えた輸送を促進する物質のような付加基を含み得る。加えて、オリゴヌクレオチドはハイブリダイゼーション誘発分割剤(van der Krolら,1988)またはインターカレート剤(Zon,1988)を用いて修飾され得る。オリゴヌクレオチドは別の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発分割剤等にコンジュゲートされ得る。
【0055】
有用なポリヌクレオチドアナログには、修飾骨格または非天然ヌクレオシド間結合を有するポリマーが含まれる。修飾骨格には、骨格中にリン原子を保持している骨格、例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル及び他のアルキルホスホネート;及びリン原子を有していない骨格、例えば短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子またはヘテロ環式ヌクレオシド間結合により形成される骨格が含まれる。修飾核酸ポリマー(アナログ)は1つ以上の修飾糖部分を含み得る。
【0056】
ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間結合の両方が新規な基で置換されているRNAまたはDNAミメティックであるアナログも有用である。これらのミメティックでは、塩基単位は標的配列とのハイブリダイゼーションのために維持されている。優れたハイブリダイゼーション特性を有することが判明しているミメティックの例はペプチド核酸(PNA)(Buchardtら,1992;Nielsenら,1991)である。
【0057】
ヌクレオチドの範囲には、核酸分子が天然に存在するヌクレオチド以外の部分で置換、化学、酵素または他の適切な手段により共有的に修飾されている誘導体も含まれる。
【0058】
ポリヌクレオチドは、核酸配列のアナログ及び/または誘導体を含めた標的配列に対して特異的にハイブリダイズするプライマー及びそのホモログを含む。
【0059】
ポリヌクレオチドは、市販されている計器、例えばApplied Biosystems USA Inc.(米国カリフォルニア州フォスター・シティーに所在)、DuPont(米国デラウェア州ウィルミントンに所在)またはMilligen(米国マサチューセッツ州ベッドフォードに所在)から入手可能な計器を用いる固相合成のような慣用技術により製造され得る。ホスホロチオエート及びアルキル化誘導体のような修飾ポリヌクレオチドも当業界で公知の類似方法により容易に製造され得る(Fino,1995;Mattingly,1995;Ruth,1990)。
【0060】
「遺伝子」は、コード配列の前の調節配列(5’非コード配列)及び後の調節配列(3’非コード配列)を含めた特定タンパク質を発現する核酸断片を指す。
【0061】
「未変性遺伝子」は、それ自身の調節配列を有する天然に存在する遺伝子を指す。対照的に、「キメラ構築物」は、通常天然に一緒に存在しない核酸断片の組合せを指す。従って、キメラ構築物は、異なるソースから誘導される調節配列及びコード配列を含み得、或いは同一ソースから誘導されるが、通常天然に存在するとは異なる方法で配列されている調節配列及びコード配列を含み得る。(用語「単離された」は、配列が天然環境から除去されることを意味する)。
【0062】
本明細書中で使用されている「プローブ」または「プライマー」は、少なくとも8ヌクレオチド長であり、プローブまたはプライマー中の少なくとも1つの配列が標的領域中の配列と相補性であるために標的配列とハイブリッド構造を形成するポリヌクレオチドである。プローブのポリヌクレオチド領域はDNA及び/またはRNA及び/または合成ヌクレオチドアナログから構成され得る。好ましくは、プローブはポリメラーゼ連鎖反応中に標的配列をプライムするために使用される配列に対して相補的である配列を含まない。
【0063】
「発現」は、機能最終産物の産生を指す。遺伝子の発現は、遺伝子の転写及びmRNAの前駆体または成熟タンパク質への翻訳を含む。「アンセチンス抑制」は、標的タンパク質の発現を阻止し得るアンチセンスRNA転写物の産生を指す。「共抑制」は、同一または実質的に類似の外来または内因性遺伝子の発現を阻止し得るセンスRNA転写物の産生を指す(米国特許No.5,231,020)。
【0064】
「組換え体」は、例えば化学合成による、または核酸の単離セグメントを遺伝子工学技術により操作することによる配列の2つの他の方法で分離されているセグメントの人工的組合せを指す。
【0065】
「PCR」または「ポリメラーゼ連鎖反応」は、一連の反復サイクル(コネチカット州ノーウォークに所在のPerkin Elmer Cetus Instruments)からなる大量の特定DNAセグメントを合成するための技術である。典型的には、二本鎖DNAを熱変性し、標的セグメントの3’境界に相補的な2つのプライマーを低温でアニールした後、中間温度で伸長させる。これら3つの連続したステップの1組をサイクルと呼ぶ。
【0066】
PCRは、テンプレートを反復複製することによりDNAを短時間で数百万倍に増幅させるために使用される強力な技術である((Mullisら,1986);Erlichら,欧州特許出願No.50,424;欧州特許出願No.84,796;欧州特許出願No.258,017、欧州特許出願No.237,362;欧州特許出願No.201,184、米国特許No.4,683,202;米国特許No.4,582,788;及び米国特許No.4,683,194)。この方法は、DNA合成をプライムするために特定のインビトロ合成したオリゴヌクレオチドの組を使用している。プライマーの設計は分析しようとするDNAの配列に依存する。この技術は、テンプレートを高温で融解し、プライマーをテンプレート内の相補性配列にアニールした後、テンプレートをDNAポリメラーゼを用いて複製するサイクルを複数回(通常20〜50回)実施する。
【0067】
PCR反応産物は、アガロースゲルを用いて分離した後、臭化エチジアム染色し、次いでUV透照で視覚化することにより分析され得る。或いは、生成物に標識を取り込むために放射活性dNTPをPCRを添加してもよい。この場合、ゲルをx線フィルムに曝すことによりPCRの産物を可視化する。PCR産物を放射標識する追加の利点は個々の増幅産物のレベルを定量化できることである。
【0068】
発明の実施
ポリヌクレオチドアッセイ
本発明において有用な核酸アッセイ方法は、(i)無傷の組織または細胞サンプルに対してin situハイブリダイゼーションアッセイ、(ii)組織サンプルから抽出した染色体DNAに対してマイクロアレイハイブリダイゼーションアッセイ、及び(iii)組織サンプルから抽出した染色体DNAに対してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の増幅アッセイを施すことにより増幅DNA領域を検出することを含む。これらのフォーマットのいずれにおいても核酸の合成アナログ(例えば、ペプチド核酸)を用いるアッセイを使用し得る。
【0069】
本発明のアッセイは、治療応答を予測するために及びBcl−2ファミリー阻害剤治療に対する患者応答をモニターするためにBcl−xコピー数バイオマーカーを増加させる増幅Bcl−x領域を同定すべく使用される。応答予測のためのアッセイは治療開始前に実施され得、Bcl−x領域の増幅を示す患者はBcl−2ファミリー阻害剤治療を受ける資格がある。コピー数増加は他の癌治療(例えば、化学療法または放射線治療)に対する耐性の兆候となり得る。患者応答をモニターするためには、組織サンプル中のバイオマーカーの基準レベル(例えば、サンプル中でコピー数増加を示す全細胞の%または細胞の数)を定めるためにアッセイを治療開始時に実施する。次いで、同一組織をサンプリングし、アッセイし、バイオマーカーのレベルを基準と比較する。レベルが同一のままか低下したならば、治療は多分有効であり、継続することができる。基準レベルよりも有意な上昇が生じたならば、患者は応答しないことがあり得る。
【0070】
本発明は、特定の設計された染色体標的にハイブリダイズするように設計/選択した検出可能に標識されている核酸プローブ(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)プローブまたはタンパク質核酸(PNA)プローブ)または非標識プライマーを用いるハイブリダイゼーションアッセイを用いることによるゲノムバイオマーカーの検出を含む。非標識プライマーを例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅アッセイにおいて使用し、このPCRではプライマー結合後ポリメラーゼはその後の検出のために標的核酸配列を増幅させる。PCRまたは他の増幅アッセイにおいて使用される検出プローブは好ましくは蛍光であり、より好ましくは「リアルタイムPCR」において有用な検出プローブである。蛍光標識もin situハイブリダイゼーションにおいて使用するのに好ましいが、ハイブリダイゼーション技術において通常使用されている他の検出可能な標識(例えば、酵素、色素原性及び同位体標識)も使用され得る。有用なプローブ標識技術は文献(Fan,2002)(参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。ゲノムバイオマーカーのマイクロアレイ分析による検出において、これらのプローブ標識技術が患者サンプル由来の染色体DNA抽出物を標識するために適用され、その後マイクロアレイにハイブリダイズされる。
【0071】
ヒトBcl−xのポリヌクレオチド配列(配列番号1;GenBank受託番号NM 138578)を表1に示す。
【0072】
【表1】


【0073】
好ましくは、in situハイブリダイゼーションは、Bcl−2遺伝子座及びプローブA 67 P04742617及びA 53 P174456(Agilent(カリフォルニア州サンタクララに所在)から入手可能;マウスCGHマイクロアレイ244A,カタログ番号G4415A)により規定される遺伝子座での染色体コピー数増加または遺伝子増幅の存在を検出するために使用される。プローブは配列番号1の配列を用いて当業者により作成され得る。
【0074】
本発明のin situハイブリダイゼーション方法において使用するためのプローブは2つの広い群;染色体計数プローブ、すなわち染色体領域、通常反復配列領域にハイブリダイズし、全染色体の存在または不在を示すプローブ;及び遺伝子座特異的プローブ、すなわち染色体上の特定遺伝子座にハイブリダイズし、特定遺伝子座の存在または不在を検出するプローブに入る。染色体腕プローブ、すなわち染色体領域にハイブリダイズし、特定染色体の腕の存在または不在を示すプローブも使用され得る。Bcl−xのような問題の遺伝子座でのユニークな染色体DNA配列の変化を検出し得る遺伝子座特異的プローブを使用することが好ましい。in situハイブリダイゼーションのためにユニークな配列プローブを使用する方法は参照により本明細書に組み入れる米国特許5,447,841に記載されている。
【0075】
染色体計数プローブは動原体近くに位置するかまたは動原体から除去した反復配列にハイブリダイズし得、或いは染色体上の任意の位置にあるユニーク配列にハイブリダイズし得る。例えば、染色体計数プローブは染色体の動原体に関係する反復DNAとハイブリダイズし得る。霊長類染色体の動原体は、α−サテライトと称される約171塩基対のモノマー反復長からなるDNAの長タンデム反復の複合体ファミリーを含む。染色体14及び18の各々に対する動原体蛍光in situハイブリダイゼーションプローブはAbbott Molecular(イリノイ州デス・プレーンズに所在)から市販されている。
【0076】
特に有用なin situハイブリダイゼーションプローブは、参照により本明細書に組み入れる米国特許5,491,224に記載されているような直接標識されている蛍光プローブである。米国特許5,491,224は、2つ以上の蛍光標識されているプローブを用いる同時FISHアッセイも記載している。
【0077】
有用な遺伝子座特異的プローブは任意の方法で作成され得、通常約10,000〜約1,000,000塩基長を有する染色体DNA標的配列にハイブリダイズする配列を含んでいる。好ましくは、プローブは少なくとも100,000〜約500,000塩基長を有する標的遺伝子座で染色体DNの標的ストレッチにハイブリダイズし、プローブの非特異的結合を避けるために参照により本明細書に組み入れる米国特許5,756,696に開示されているようにプローブミックス中に非標識遮断核酸をも含む。遮断核酸として非標識の合成オリゴマー核酸またはペプチド核酸を使用することもできる。特定遺伝子座を標的とするために、プローブが遺伝子に架かっており、よって遺伝子の全ゲノムコーディング座の両側にハイブリダイズする核酸配列を含むことが好ましい。プローブは細菌人工染色体(BAC)等のようなヒトDNA含有クローンから出発して作成され得る。ヒトゲノムのBACライブラリーはInvitrogen(カリフォルニア州カールズバッドに所在)から入手可能であり、有用なクローンを同定するために調べられ得る。標的遺伝子座中のDNA配列を同定するためにカリフォルニア大学サンタクルーズ校のゲノムブラウザを使用することが好ましい。次いで、これらのDNA配列を使用して、有用なクローンを同定すべくBACライブラリーをスクリーニングするために使用するためのPCRプライマーを合成することができる。次いで、クローンを慣用のニック翻訳方法により標識し、in situハイブリダイゼーションプローブとして試験し得る。
【0078】
本明細書中に記載されているin situハイブリダイゼーション方法で使用され得る蛍光基の例は、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、Texas Red(商標)(オレゴン州ユージンに所在のMolecular Probes,Inc.);5−(及び−6)−カルボキシ−X−ローダミン、リサミンローダミンB、5−(及び−6)−カルボキシフルオレセイン;フルオレセイン−5−イソチオシアネート(FITC);7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸、テトラメチル−ローダミン−5−(及び−6)−イソチオシアネート;5−(及び−6)−カルボキシテトラメチルローダミン;7−ヒドロキシ−クマリン−3−カルボン酸;6−[フルオレセイン5−(及び−6)−カルボキサミド]ヘキサン酸;N−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−3−インダセンプロピオン酸;エオシン−5−イソチオシアネート;エリスロシン−5−イソチオシアネート;5−(及び−6)−カルボキシローダミン6G;及びCascade(商標)ブルーアセチルアジド(Molecular Probes;Invitrogenブランド)である。
【0079】
プローブは蛍光顕微鏡及び蛍光基毎に適切なフィルターを用いて、または複数の蛍光基を観察するためのデュアルまたはトリプルバンド通過フィルター組を用いることにより見ることができる。例えば、参照により本明細書に組み入れるBittnerらの米国特許No.5,776,688を参照されたい。ハイブリダイズしたプローブを視覚化するために自動デジタルイメージグシステムを含めた適当な顕微鏡イメージング方法を使用し得る。或いは、染色体プローブのハイブリダイゼーションパターンを調べるためにフローサイトメトリーのような技術を使用し得る。
【0080】
in situハイブリダイゼーションにより生ずるセルバイセル遺伝子増幅分析が好ましいが、ゲノムバイオマーカーも定量PCRにより検出され得る。この実施形態では、染色体DNAを組織サンプルから抽出した後、Bcl−2、Bcl−xまたはBcl−wの少なくとも1つに対して特異的なプライマーの対を用いるPCRにより、またはプライマーの複数の対を用いるマルチプレックスPCRにより増幅させる。バイオマーカーのために任意のプライマー配列を使用し得る。次いで、参照増幅標準と比較することにより組織のコピー数を測定する。
【0081】
マイクロアレイコピー数分析も使用し得る。この実施形態では、基質表面1cmあたり数百万以下のプローブのプローブ密度で配置した複数の固定化非標識核酸プローブを有する基質を含むマイクロアレイにハイブリダイズするために抽出後の染色体DNAを標識する。複数のマイクロアレイフォーマットが存在し、Agilent Technologies(カリフォルニア州パロアルトに所在)及びAffymetrix(カリフォルニア州にサンタクララに所在)から入手し得るようなBAC及びオリゴヌクレチドをベースとするマイクロアレイを含めたこれらのいずれかを使用し得る。増幅を検出するためにオリゴヌクレオチドマイクロアレイを使用するときには、標的領域中の3つ以上の別の位置に対するプローブ配列を有するマイクロアレイを使用することが好ましい。
【0082】
発現の検出:mRNA
Bcl−xの遺伝子発現レベルは、検査サンプル中の1つ以上のmRNAの量を評価することにより調べられ得る。サンプル中のmRNAの計測方法は当業者で公知である。mRNAレベルを計測するためには、検査サンプル中の細胞を溶解し、ライゼート中、或いはライゼートから精製または半精製したRNA中のmRNAのレベルは当業者に周知の各種方法により測定し得る。これらの方法には、検出可能に標識されているDNAまたはRNAプローブを用いるハイブリダイゼーションアッセイ(すなわち、ノーザンブロッティング)、または適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いる定量または半定量RT−PCR方法が含まれる。或いは、定量または半定量in situハイブリダイゼーションアッセイは、例えば組織切片または未溶解細胞懸濁液及び検出可能に標識されている(例えば、蛍光または酵素標識されている)DNAまたはRNAプローブを用いて実施し得る。mRNAを定量するための別の方法には、RNAプロテクションアッセイ(RPA)、cDNA及びオリゴヌクレオチドマイクロアレイ、発現差解析(RDA)、ディファレンシャルディスプレイ、EST配列分析及び遺伝子発現の連続分析(SAGE)が含まれる。
【0083】
適当な実施形態では、PCR増幅が検査サンプル中のBcl−x遺伝子を検出するために使用される。簡単に説明すると、PCRでは、マーカー配列(例えば、Bcl−x遺伝子)の相手相補鎖上の領域に対して相補性の2つのプライマー配列を作成する。反応混合物に過剰のデオキシヌクレオチドトリホスフェートをDNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)と一緒に添加する。標的配列がサンプル中に存在するならば、プライマーは配列に結合し、ポリメラーゼはヌクレオチドに付加することによりプライマーをマーカー配列に沿って伸長させるであろう。反応混合物の温度を上下させることにより、伸長したプライマーはマーカーから解離して反応産物を形成し、過剰のプライマーはマーカー及び反応産物に結合し、このプロセスを繰り返すと増幅産物が生ずる。増幅したmRNAの量を定量するためには逆転写酵素PCR増幅手順を実施し得る。
【0084】
Bcl−x遺伝子の適当な断片を増幅し、検出し得る。PCRのために有効なプライマーを設計することは当業者の範囲内である。典型的には、検出のための増幅断片は約50〜300ヌクレオチド長である。
【0085】
増幅産物は幾つかの方法で検出され得る。増幅産物は、サンプルをゲル中で電気泳動にかけた後、DNA結合染料(例えば、臭化エチジウム)で染色することにより視覚化され得る。或いは、増幅産物を放射性または蛍光ヌクレオチドで完全に標識した後、x線フィルムを用いてまたは適当な刺激スペクトル下で視覚化することができる。
【0086】
増幅は「リアルタイム」方法を用いてもモニターされ得る。リアルタイムPCRにより、核酸標的を検出し、定量することができる。典型的には、定量PCRに対するこのアプローチは、SYBR GREEN(登録商標)Iのような二本鎖特異的染料であり得る蛍光染料を使用する。或いは、他の蛍光染料(例えば、FAMまたはHEX)をオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーにコンジュゲートし得る。リアルタイムPCRを実施し得る各種計器が当業界で公知であり、例えばABI PRISM(登録商標)7900(Applied Biosystems)及びLIGHTCYCLER(登録商標)システム(Roche)が含まれる。PCRの各サイクルで発生する蛍光シグナルはPCR産物の量に比例している。蛍光対サイクル数のプロットを使用すると増幅のカイネティックスが説明され、蛍光閾値レベルを使用すると最初のテンプレート濃度に対する分割サイクル数が規定される。増幅を実施し、熱サイクリング中蛍光を測定することができる計器を用いて検出するとき、非特異的PCR産物由来の意図するPCR産物を融解分析を用いて区別し得る。増幅及びシグナル発生後の反応の温度を徐々に上昇させながら蛍光の変化を計測することにより、意図する産物及び非特異的産物のTmを測定することができる。
【0087】
この方法は、「マルチプレックス検出」または「マルチプレクシング」としても公知であり、サンプル中の複数の核酸を増幅させることを含む。「マルチプレックスPC」は、1つ以上の標的遺伝子マーカー由来の核酸を含めた複数の核酸を検出し、定量するために反応物に2組以上のPCRプライマーを添加することを含むPCRを指す。更に、内部対照(例えば、18S rRNA、GADPHまたはO−アクチン)とマルチプレクシングすると、反応なしにPCRのための対照が得られる。
【0088】
発現の研修:ポリペプチド
本発明の方法及びアッセイは、ポリペプチド発現の評価、例えばBcl−xポリペプチド発現のモニターにも関する。ポリペプチドの発現の量は定性的または定量的に評価し得る。他の実施形態では、ポリペプチドの発現の量を非腫瘍または癌細胞と腫瘍または癌細胞間で比較する。このために当業界で公知の方法が使用され得るが、Bcl−xポリペプチドに対して特異的に結合する抗体を使用するイムノアッセイが特に好都合である。市販されている抗−Bcl−x抗体の例を表3に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
イムノアッセイには2つの基本的タイプ、すなわち競合的または非競合的(例えば、それぞれイムノメトリック型及びサンドイッチ型)がある。いずれのアッセイでも、抗体または抗原試薬を固相に共役的または非共役的に結合させる。共役結合のための連結剤は公知であり、固相の一部であり得、またはコーティングする前に誘導体化され得る。イムノアッセイで使用される固相の例は多孔質または非孔質材料、ラテックス粒子、磁気粒子、ミクロ粒子、ストリップ、ビーズ、膜、マイクロタイターウェル及びプラスチック管である。固相材料及び抗原または抗体試薬を検出可能に標識させる方法の選択は所望のアッセイフォーマット性能特性に基づいて決定される。幾つかのイムノアッセイの場合には、検出可能な標識を必要としない。例えば、抗原が赤血球のような検出可能な粒子上にあるならば、反応性は凝集に基づいて確立され得る。或いは、抗原−抗体反応により目に見える変化(例えば、放射状免疫拡散)が生じ得る。多くの場合、イムノアッセイで使用される抗体または抗原試薬の1つをシグナル発生化合物(検出可能な標識)に結合させる。このシグナル発生化合物または標識はそれ自体検出可能であり、または検出可能な産物を生成させるべく1つ以上の追加化合物と反応させてもよい(米国特許No.6,395,472 Blも参照されたい)。前記シグナル発生化合物の例には、色素源、放射性同位体(例えば、125I、1311、32P、H、35S及び14C)、蛍光化合物(例えば、フルオレセイン、ローダミン)、化学ルミネセント化合物、粒子(可視または蛍光)、核酸、錯化剤または触媒、例えば酵素(例:アルカリホスファターゼ、アシッドホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ及びリボヌクレアーゼ)が含まれる。酵素を使用する場合、色素原性、蛍光原性または発光原性基質を添加すると、検出可能なシグナルが発生する。他の検出システム、例えば時間分割蛍光法、内部反射、蛍光、増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)及びラマン分光法も有用である。
【0091】
2つの一般的フォーマットがヒト中の特定の抗体タイター及びタイプをモニターするために通常使用されている:(1)抗原を上記したような固相に提示し、特定の抗体を含有するヒト生体流体を抗原と反応させた後、抗原に結合した抗体をシグナル発生化合物にカップリングさせた抗ヒト抗体を用いて検出する;及び(2)抗ヒト抗体を固相に結合させ、特定の抗体を含有するヒト生体流体を結合抗体と反応させた後、シグナル発生化合物に結合させた抗原を添加して、流体サンプル中に存在する特定の抗体を検出する。いずれのフォーマットでも、抗ヒト抗体試薬は、アッセイの所期目的に応じて、すべての抗体クラスを認識し得、或いは抗体の特定クラスまたはサブクラスに対して特異的であり得る。これらのアッセイフォーマット及び他の公知のフォーマットは本発明の範囲内にあると意図され、当業者に公知である。
【0092】
本明細書に例示されているフォーマット及び本発明のアッセイまたはキットは、例えば米国特許Nos.5,089,424及び5,006,309に記載されているような、またAbbott Laboratories(イリノイ州アボット・パークに所在)から市販されているような(ミクロ粒子からなる固相が存在しているシステムを含めた)自動及び半自動システム並びに他のプラットフォームにおいて使用するために改造または最適化され得る。市販品にはAbbott’s ARCHITECT(登録商標)、AxSYM、IMX、PRISM及びQuantum IIプラットフォームが含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
本発明のアッセイ及びキットは、Abbott’s Point of Care(i−STAT(商標))電気化学イムノアッセイシステムを含めたポイント・オブ・ケア・アッセイシステムのために改造または最適化され得る。イムノセンサー及びそれを製造し、単使用テストデバイスにおいて操作する方法は、例えば米国特許No.5,063,081、並びに公開された米国特許出願Nos.20030170881、20040018577、20050054078及び20060160164(当該部分に関して教示するために参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0094】
サンプル処理及びアッセイ性能
本発明方法によりアッセイしようとする組織サンプルは、末梢血サンプル、腫瘍組織または疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、微小針吸引物サンプル、骨髄サンプル、リンパ節サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄液サンプル、食道ブラシサンプル、膀胱または肺洗浄液サンプル、脊髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引物サンプル、乳頭分泌物サンプル、胸膜滲出液サンプル、新鮮凍結組織サンプル、パラフィン包埋組織サンプル;或いは末梢血サンプル、腫瘍組織または疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、微小針吸引物サンプル、骨髄サンプル、リンパ節サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄液サンプル、食道ブラシサンプル、膀胱または肺洗浄液サンプル、脊髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引物サンプル、乳頭分泌物サンプル、胸膜滲出液サンプル、新鮮凍結組織サンプルまたはパラフィン包埋組織サンプルから作成される抽出物または処理サンプルを含めた任意のタイプからなり得る。例えば、まず患者末梢血サンプルを処理して上皮細胞集団を抽出した後、この抽出物をアッセイし得る。疑わしい腫瘍細胞を多く含む細胞サンプルを得るために組織サンプルの顕微解剖を使用することもできる。本発明で使用するための好ましい末梢組織サンプルは末梢血、微小針吸引物サンプル、新鮮凍結組織サンプル及びパラフィン包埋組織サンプルを含めた腫瘍組織または疑わしい腫瘍組織、及び骨髄である。
【0095】
組織サンプルは、in situハイブリダイゼーションまたは他の核酸アッセイを実施するための望ましい方法により処理され得る。好ましいin situハイブリダイゼーションアッセイの場合、パラフィン包埋した腫瘍組織サンプルまたは骨髄サンプルをガラス顕微鏡スライド上に固定し、溶媒(典型的には、キシレン)を用いて脱パラフィン化する。組織脱パラフィン化及びin situハイブリダイゼーションのために有用なプロトコルはAbbott Molecular Inc.(イリノイ州デス・プレーンズに所在)から入手可能である。適当な計器による計測または自動化が本発明のアッセイの実施において使用され得る。PCRに基づくアッセイはm2000計器システム(イリノイ州デス・プレーンズに所在のAbbott Molecular)を用いて実施され得る。自動イメージングが好ましい蛍光in situハイブリダイゼーションアッセイのために使用され得る。
【0096】
1つの実施形態において、サンプルは、Bcl−x遺伝子座で増幅を有する循環腫瘍または癌細胞の抽出物を産生するように処理された患者由来の末梢血サンプルからなる。循環腫瘍細胞はImmunicon(ペンシルバニア州ハンティンドン・バレーに所在)から入手し得るような免疫磁気分離技術により分離し得る。次いで、少なくとも1コピー数増加を示す循環腫瘍細胞の数を、好ましくは治療開始時に測定して高いコピー数を有する循環腫瘍細胞の基準レベルと比較する。循環腫瘍細胞の数の増加は治療失敗の兆候となり得る。
【0097】
検査サンプルは、臨床診断のために十分な数の細胞を含み得、典型的には少なくとも約100個の細胞を含んでいる。典型的なFISHアッセイでは、ハイブリダイゼーションパターンを約25〜1,000個の細胞で評価する。検査サンプルは、典型的にはサンプルの大部分に遺伝子増幅を含むことが判明したときには「検査陽性」と見なされる。染色体コピー数で同定され、具体的なサンプルを陽性と分類するために使用される細胞の数は、通常サンプル中の細胞数により異なる。陽性分類のために使用される細胞の数はカットオフ値としても公知である。決定の際に使用され得るカットオフ値の例には約5、25、50、100及び250個の細胞、或いは同一サンプル集団中の細胞の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%及び60%が含まれる。サンプルを陽性と分類するには1個くらいの少ない細胞で十分であり得る。典型的なパラフィン包埋組織サンプルの場合、少なくとも30個の細胞を陽性と同定することが好ましく、少なくとも20個の細胞を染色体コピー数増加を有する点で陽性であると同定することがより好ましい。例えば、典型的なパラフィン包埋した小細胞肺癌組織中でBcl−x増幅を有する細胞が30個検出されれば、組織を陽性であり、治療を受ける資格があると分類するのに十分であろう。
【0098】
アッセイキット
別の態様で、本発明は、Bcl−xに対する結合に対して特異的な少なくとも1つのプローブを収容している容器を含むゲノムバイオマーカーを検出するためのキットを含む。これらのキットは、アッセイのための他の関連試薬を収容している容器をも含む。本発明の好ましいキットは、それぞれBcl−xに対して特異的に結合し得る少なくとも1つのFISHプローブを収容している容器を含む。本発明のキットは核酸プローブアナログ、例えばペプチド核酸プローブを含み得る。最後に、キットは更に使用説明書を含み得る。
【0099】
【表3】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)患者から組織サンプルを用意し;
(b)Bcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し;
(c)Bcl−x遺伝子が増幅されるならば患者をBcl−2低分子阻害剤に対して耐性であると分類する
ことを含むBcl−2ファミリー阻害剤に対して耐性である癌を有する患者を分類する方法。
【請求項2】
(a)患者から組織サンプルを用意し;
(b)Bcl−x遺伝子の発現が増幅されるかを判定し;
(c)Bcl−x遺伝子が増幅されないならば患者をBcl−2ファミリー阻害剤を受ける資格があると分類する
ことを含む癌患者をBcl−2ファミリー阻害剤治療を受ける資格があると同定する方法。
【請求項3】
Bcl−2ファミリー阻害剤がABT−263である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Bcl−x遺伝子の増幅はBcl−xポリペプチドの発現の増加と相関している請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
組織サンプルは末梢血サンプル、腫瘍組織または疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、微小針吸引物サンプル、骨髄サンプル、リンパ節サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄液サンプル、食道ブラシサンプル、膀胱または肺洗浄液サンプル、脊髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引物サンプル、乳頭分泌物サンプル、胸膜滲出液サンプル、新鮮凍結組織サンプル、パラフィン包埋組織サンプル;或いは末梢血サンプル、腫瘍組織または疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、微小針吸引物サンプル、骨髄サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄液サンプル、食道ブラシサンプル、膀胱または肺洗浄液サンプル、脊髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引物サンプル、乳頭分泌物サンプル、胸膜滲出液サンプル、新鮮凍結組織サンプルまたはパラフィン包埋組織サンプルから作成される抽出物または処理サンプルからなる請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
判定ステップはin situハイブリダイゼーションを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
in situハイブリダイゼーションを検出可能に標識されている核酸プローブを用いて実施する請求項8に記載の方法。
【請求項8】
in situハイブリダイゼーションをBcl−x遺伝子の少なくとも一部に対して特異的にハイブリダイズする核酸プローブまたはペプチド核酸プローブを用いて実施する請求項8に記載の方法。
【請求項9】
判定はポリメラーゼ連鎖反応を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
ポリメラーゼ連鎖反応をBcl−x遺伝子の核酸配列の少なくとも一部に対して特異的にハイブリダイズする少なくとも1つのプライマーを用いて実施する請求項11に記載の方法。
【請求項11】
判定ステップは核酸マイクロアレイアッセイを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
組織サンプルは小細胞肺癌及びリンパ腫からなる群から選択される癌を有する患者に由来する請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
患者をBcl−2、Bcl−w及びBcl−xの1つに結合するように設計されたアンチセンス剤を受ける資格があると分類する請求項2に記載の方法。
【請求項14】
(a)癌患者から検査サンプルを用意し;
(b)検査サンプル中の腫瘍または癌細胞を同定し、または検査サンプルから腫瘍または癌細胞を抽出し;
(c)腫瘍または癌細胞中でBcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し;
(d)治療開始前または治療開始時に測定した増幅Bcl−x遺伝子を有する腫瘍または癌細胞の数を前記腫瘍または癌細胞の基準レベルと比較する
ことを含む抗−Bcl−2ファミリー剤で治療されている患者をモニターする方法。
【請求項15】
癌は小細胞肺癌及びリンパ腫からなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
患者はABT−263で治療されている請求項14に記載の方法。
【請求項17】
Bcl−x遺伝子の増幅はBcl−xポリペプチドの発現の増加と相関している請求項14に記載の方法。
【請求項18】
患者はBcl−2、Bcl−w及びBcl−xの少なくとも1つに結合するように設計されたアンチセンス剤で治療されている請求項17に記載の方法。
【請求項19】
判定ステップはin situハイブリダイゼーションを含む請求項14に記載の方法。
【請求項20】
in situハイブリダイゼーションを検出可能に標識されている核酸プローブを用いて実施する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
腫瘍細胞は循環腫瘍細胞である請求項14に記載の方法。
【請求項22】
(a)患者から検査サンプルを用意し;
(b)(i)検査サンプル中でBcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し、及び(ii)検査サンプル中のBcl−xの量を測定し;
(c)検査サンプル中のBcl−xの量が対照中のBcl−xの量より多いか少ないかを判定し;
(d)(i)Bcl−x遺伝子の増幅及び(ii)Bcl−xの量が対照中よりも検査サンプル中で多いことに基づいて患者をBcl−2ファミリー阻害剤に対して耐性の癌を有すると分類する
ことを含むBcl−2ファミリー阻害剤に対して耐性の癌を有する患者を分類する方法。
【請求項23】
(a)患者から検査サンプルを用意し;
(b)(i)検査サンプル中でBcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し、(ii)検査サンプル中のBcl−xの量を測定し;
(c)検査サンプル中のBcl−xの量が対照中のBcl−xの量より多いか少ないかを判定し;
(d)(i)Bcl−x遺伝子の増幅及び(ii)Bcl−xの量が対照中よりも検査サンプル中で多いことに基づいて患者をBcl−2ファミリー阻害剤治療を受ける資格があると分類する
ことを含む癌患者をBcl−2ファミリー阻害剤治療を受ける資格があると同定する方法。
【請求項24】
Bcl−2ファミリー阻害剤がABT−263である請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
組織サンプルは末梢血サンプル、腫瘍組織または疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、微小針吸引物サンプル、骨髄サンプル、リンパ節サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄液サンプル、食道ブラシサンプル、膀胱または肺洗浄液サンプル、脊髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引物サンプル、乳頭分泌物サンプル、胸膜滲出液サンプル、新鮮凍結組織サンプル、パラフィン包埋組織サンプル;或いは末梢血サンプル、腫瘍組織または疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、微小針吸引物サンプル、骨髄サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄液サンプル、食道ブラシサンプル、膀胱または肺洗浄液サンプル、脊髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引物サンプル、乳頭分泌物サンプル、胸膜滲出液サンプル、新鮮凍結組織サンプルまたはパラフィン包埋組織サンプルから作成される抽出物または処理サンプルからなる請求項22または23に記載の方法。
【請求項26】
Bcl−x遺伝子の増幅の判定はin situハイブリダイゼーションを含む請求項22または23に記載の方法。
【請求項27】
in situハイブリダイゼーションを検出可能に標識されている核酸プローブを用いて実施する請求項26に記載の方法。
【請求項28】
in situハイブリダイゼーションをBcl−x遺伝子の少なくとも一部に対して特異的にハイブリダイズする核酸プローブまたはペプチド核酸プローブを用いて実施する請求項27に記載の方法。
【請求項29】
Bcl−x遺伝子の増幅の判定はポリメラーゼ連鎖反応を含む請求項22または23に記載の方法。
【請求項30】
ポリメラーゼ連鎖反応をBcl−x遺伝子の核酸配列の少なくとも一部に対して特異的にハイブリダイズする少なくとも1つのプライマーを用いて実施する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
判定ステップは核酸マイクロアレイアッセイを含む請求項22または23に記載の方法。
【請求項32】
組織サンプルは小細胞肺癌及びリンパ腫からなる群から選択される癌を有する患者に由来する請求項22または23に記載の方法。
【請求項33】
患者をBcl−2、Bcl−w及びBcl−xの1つに結合するように設計されたアンチセンス剤を受ける資格があると分類する請求項23に記載の方法。
【請求項34】
測定ステップ(b)(ii)をイムノアッセイにより実施する請求項22または23に記載の方法。
【請求項35】
イムノアッセイはサンドイッチ型イムノアッセイである請求項34に記載の方法。
【請求項36】
イムノアッセイはELISAである請求項34に記載の方法。
【請求項37】
測定ステップ(b)(ii)を自動イムノアッセイ計器を用いて実施する請求項34に記載の方法。
【請求項38】
測定ステップ(b)(ii)をBcl−x mRNAを計測することにより実施する請求項22または23に記載の方法。
【請求項39】
(a)癌患者から検査サンプルを用意し;
(b)サンプル中の腫瘍または癌細胞を同定し、またはサンプルから腫瘍または癌細胞を抽出し;
(c)Bcl−x遺伝子の増幅の存在または不在に基づいて患者をBcl−2ファミリー阻害剤で治療を続けるべきかを決定する
ことを含む抗−Bcl−2ファミリー剤で治療されている患者をモニターする方法。
【請求項40】
癌は小細胞肺癌及びリンパ腫からなる群から選択される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
患者がABT−263で治療されている請求項39に記載の方法。
【請求項42】
Bcl−x遺伝子の増幅はBcl−xポリペプチドの発現の増加と相関している請求項39に記載の方法。
【請求項43】
患者はBcl−2、Bcl−w及びBcl−xの少なくとも1つに結合するように設計されたアンチセンス剤で治療されている請求項42に記載の方法。
【請求項44】
判定ステップはin situハイブリダイゼーションを含む請求項42に記載の方法。
【請求項45】
in situハイブリダイゼーションを検出可能に標識されている核酸プローブを用いて実施する請求項44に記載の方法。
【請求項46】
in situハイブリダイゼーションを少なくとも2つの核酸プローブを用いて実施する請求項44に記載の方法。
【請求項47】
核酸プローブの1つはBcl−x遺伝子にハイブリダイズするように設計されている請求項46に記載の方法。
【請求項48】
腫瘍細胞は循環腫瘍細胞である請求項39に記載の方法。
【請求項49】
(a)患者から検査サンプルを用意し;
(b)(i)検査サンプル中でBcl−x遺伝子が増幅されるかを判定し、(ii)検査サンプル中のBcl−xの量を測定し;
(c)検査サンプル中のBcl−xの量が対照中のBcl−xの量よりも多いか少ないかを判定し;
(d)(i)Bcl−x遺伝子の増幅及び(ii)Bcl−xの量が対照中よりも検査サンプル中で多いことに基づいて患者をBcl−2ファミリー阻害剤で治療を続けるべきかを決定する
ことを含む抗−Bcl−2ファミリー剤で治療されている患者をモニターする方法。
【請求項50】
Bcl−2ファミリー阻害剤はABT−263である請求項49に記載の方法。
【請求項51】
組織サンプルは末梢血サンプル、腫瘍組織または疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、微小針吸引物サンプル、骨髄サンプル、リンパ節サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄液サンプル、食道ブラシサンプル、膀胱または肺洗浄液サンプル、脊髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引物サンプル、乳頭分泌物サンプル、胸膜滲出液サンプル、新鮮凍結組織サンプル、パラフィン包埋組織サンプル;或いは末梢血サンプル、腫瘍組織または疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、微小針吸引物サンプル、骨髄サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄液サンプル、食道ブラシサンプル、膀胱または肺洗浄液サンプル、脊髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引物サンプル、乳頭分泌物サンプル、胸膜滲出液サンプル、新鮮凍結組織サンプルまたはパラフィン包埋組織サンプルから作成される抽出物または処理サンプルからなる請求項49に記載の方法。
【請求項52】
Bcl−x遺伝子の増幅の判定はin situハイブリダイゼーションを含む請求項49に記載の方法。
【請求項53】
in situハイブリダイゼーションを検出可能に標識されている核酸プローブを用いて実施する請求項52に記載の方法。
【請求項54】
in situハイブリダイゼーションをBcl−x遺伝子の少なくとも一部に対して特異的にハイブリダイズする核酸プローブまたはペプチド核酸プローブを用いて実施する請求項53に記載の方法。
【請求項55】
Bcl−x遺伝子の増幅の判定はポリメラーゼ連鎖反応を含む請求項49に記載の方法。
【請求項56】
ポリメラーゼ連鎖反応をBcl−x遺伝子の核酸配列の少なくとも一部に対して特異的にハイブリダイズする少なくとも1つのプライマーを用いて実施する請求項55に記載の方法。
【請求項57】
判定ステップは核酸マイクロアレイアッセイを含む請求項49に記載の方法。
【請求項58】
組織サンプルは小細胞肺癌及びリンパ腫からなる群から選択される癌を有する患者に由来する請求項49に記載の方法。
【請求項59】
患者をBcl−2、Bcl−w及びBcl−xの1つに結合するように設計されたアンチセンス剤を受ける資格があると分類する請求項49に記載の方法。
【請求項60】
測定ステップ(b)(ii)をイムノアッセイにより実施する請求項49に記載の方法。
【請求項61】
イムノアッセイはサンドイッチ型イムノアッセイである請求項60に記載の方法。
【請求項62】
イムノアッセイはELISAである請求項60に記載の方法。
【請求項63】
測定ステップ(b)(ii)を自動イムノアッセイ計器を用いて実施する請求項60に記載の方法。
【請求項64】
測定ステップ(b)(ii)をBcl−x mRNAを計測することにより実施する請求項49に記載の方法。
【請求項65】
(a)増幅されたBcl−x遺伝子を検出するための試薬及び(b)使用説明書を含む
キット。
【請求項66】
増幅されたBcl−x遺伝子を検出するための試薬はBcl−x遺伝子の少なくとも一部にハイブリダイズする検出可能に標識されているポリヌクレオチドを含む請求項65に記載のキット。

【公表番号】特表2012−517241(P2012−517241A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550213(P2011−550213)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/023818
【国際公開番号】WO2010/093742
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【出願人】(511195541)ザ・ウオルター・アンド・エリザ・ホール・インステイテユート・オブ・メデイカル・リサーチ (1)
【Fターム(参考)】