説明

CATVシステムにおける番組視聴制御方法

【課題】簡単な端末装置20によりテレビ番組を視聴制御する。
【解決手段】極性が反転されたOFDM信号S1 をセンタ側から伝送路N上に送出し、端末装置20において、センタ側からのOFDM信号S1 の極性を再反転させてテレビ受像機TVに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数多重分割)信号によるテレビ番組を容易に視聴制御することができるCATVシステムにおける番組視聴制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホテルや、病院、学校などの施設では、構内にCATVシステムを構築してテレビ番組を視聴サービスすることが少なくない。
【0003】
CATVシステムのテレビ番組は、無料番組に加えて有料番組を含むのが普通である。そこで、有料番組を円滑に視聴させるために、センタ側において有料番組のテレビ信号にスクランブル処理を掛けて伝送路に送出し、加入者側の端末装置において、有料番組の視聴契約がある場合にのみ、スクランブル処理の解除を許可する方式が実用されている(たとえば特許文献1)。また、このようなスクランブルによる視聴制御方式をCATVシステムに応用する改良技術も提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−152702号公報
【特許文献2】特開2007−89211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、有料番組の視聴契約がある加入者の端末装置においてのみスクランブル処理を解除する必要があるため、視聴契約の存否を確認するために加入者側の端末装置とセンタ側との間に双方向の通信が必要であり、端末装置が複雑高価になりがちであるという問題があった。端末装置は、スクランブル処理を解除するために、自己の識別番号を含む固有のスクランブル解除情報をセンタ側から取得する必要があるからである。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、テレビ番組用のOFDM信号の極性を反転させることによって、簡単な端末装置を使用して容易にテレビ番組を視聴制御することができるCATVシステムにおける番組視聴制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、極性が反転されたテレビ番組のOFDM信号をセンタ側から伝送路上に送出し、端末装置において、視聴許可信号に基づいてセンタ側からのOFDM信号の極性を再反転させてテレビ受像機に供給することをその要旨とする。
【0007】
なお、端末装置により、センタ側からの複数チャンネルのOFDM信号を複数チャンネルに一括変換してテレビ受像機に供給することができ、センタ側からの複数チャンネルのOFDM信号を固定チャンネルに個別に変換してテレビ受像機に供給することができる。
【発明の効果】
【0008】
かかる発明の構成によるときは、加入者側の端末装置は、極性が反転されたセンタ側からのOFDM信号の極性を再反転させてテレビ受像機に供給するだけで済み、その構成を極めて簡単にすることができる。なお、ここで、OFDM信号の極性とは、OFDM信号を構成する最大5617本のキャリヤの周波数軸上における配列順序をいう。したがって、極性が反転されたOFDM信号は、周波数軸上におけるキャリヤの配列順序が逆順になっており、周波数スペクトラムが反転していることを意味し、このようなOFDM信号は、たとえば、ディジタル信号をIFFT(Inverse Fast Fourier Transformer:逆高速フーリエ変換)処理、直交変調処理して正規のOFDM信号を作り、その後、局部発振周波数との差の周波数の出力信号に周波数変換することにより、簡単に作ることができる。また、IFFT処理後のI成分(In−phase:同相成分)、Q成分(Quadrature−phase:直交成分)を入れ替えることによっても、同様に極性が反転されたOFDM信号を作ることができる。
【0009】
極性が反転されたOFDM信号は、たとえば地上ディジタル放送対応のテレビ受像機に供給しても、正しく映像化されず、視聴不可能である。そこで、端末装置は、適切な視聴許可信号に基づいて、極性が反転されたセンタ側からのOFDM信号の極性を再反転させてテレビ受像機に供給することにより、極性を反転させたOFDM信号としてセンタ側から送出される有料番組を正常に視聴させることができる。なお、極性の再反転も、その反転と全く同様に、OFDM信号を局部発振周波数との差相当の周波数の出力信号に周波数変換することによって実現できる。また、視聴許可信号は、たとえば、端末装置に付属のコインタイマに所定の視聴料相当の金員が投入されたことを示す信号や、プリペイドカードにより所定の前払い金額が支払われたことを示すカードリーダからの信号、端末装置用またはテレビ受像機用のリモコンにより有料番組が選択されたことを示す信号などを使用することができる。
【0010】
端末装置により、センタ側からの複数チャンネルのOFDM信号を複数チャンネルに一括変換してテレビ受像機に供給すると、テレビ受像機は、内蔵のチャンネル選択機能を使用して、変換後の複数チャンネルの1波を選択して視聴すればよい。
【0011】
端末装置により、センタ側からの複数チャンネルのOFDM信号を特定の固定チャンネルに個別に変換してテレビ受像機に供給すると、テレビ受像機は、内蔵のチャンネル選択機能を使用することなく、任意の空きチャンネルを固定の視聴用チャンネルとして使用することができる。ただし、このときの端末装置は、センタ側からの複数チャンネルを視聴用の固定チャンネルに変換するために、視聴するチャンネルごとに局部発振周波数を変動させる必要がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0013】
CATVシステムにおける番組視聴制御方法は、センタ側のヘッドエンド装置10、伝送路N、加入者側の端末装置20、テレビ受像機TVを組み合わせるCATVシステムにおいて実施する(図1)。ただし、図1において、加入者側の端末装置20、テレビ受像機TVは、共通のヘッドエンド装置10に対し、伝送路Nを介して多数組が接続されている。また、テレビ受像機TVは、OFDM信号による地上ディジタル放送に対応している。
【0014】
ヘッドエンド装置10は、複数チャンネルの有料番組のテレビ信号TS、TS…を処理するために、複数系列の符号化部11、IFFT部12、直交変調部13、コンバータ部14と、共通の混合部15とを備えて構成されている(図2)。
【0015】
符号化部11には、図示しない情報源からのディジタル化されたテレビ信号TSが入力されており、符号化部11は、テレビ信号TSをシリアルパラレル変換し、IFFT部12は、符号化部11の出力を所定のビット数ごとに高速逆フーリエ変換処理してI成分、Q成分として出力する。直交変調部13は、IFFT部12からのI成分、Q成分をディジタルアナログ変換して直交変調し、正規のOFDM信号の中間周波信号IFを出力するから、コンバータ部14は、中間周波信号IFを所定の高周波信号RFに周波数変換して混合部15に出力する。ただし、各コンバータ部14は、入力側の中間周波信号IFの周波数fi 、局部発信周波数fc 、出力側の高周波信号RFの周波数fr として、fr =fc −fi に設定することにより、高周波信号RFとして、極性が反転されたOFDM信号を出力することができる。そこで、混合部15は、極性が反転された複数チャンネルのテレビ番組のOFDM信号S1 を伝送路N上に送出することができる(図3)。
【0016】
図3において、スーパーハイバンド中のチャンネルP1 、P2 、P3 は、ヘッドエンド装置10からの極性が反転されたOFDM信号S1 の各チャンネルに相当している。すなわちチャンネルPi (i=1、2…)内のキャリヤ1、2…n(ただし、nは、最大5617)は、周波数軸上において配列順序が逆順になっている。また、図3には、UHFバンドに属する無料番組の地上ディジタル放送のチャンネルD1 、D2 …が併せて図示されている。チャンネルDj (j=1、2…)のテレビ信号は、極性が反転されていない正規のOFDM信号S2 であり、ヘッドエンド装置10から併せて伝送路N上に送出される。すなわち、図2の混合部15には、各系列のコンバータ部14、14…からの高周波信号RF、RF…が入力される他、図示しない情報源からの正規のOFDM信号による複数チャンネルの無料番組のテレビ信号も併せて入力されている。
【0017】
加入者側の端末装置20は、入力側を伝送路Nに接続する分波器21、出力側をテレビ受像機TVに接続する混合器24の他、分波器21、混合器24の間に介装するコンバータ22を備えている(図4)。なお、コンバータ22には、制御部23が付設されており、制御部23には、外部からの視聴許可信号Sa が入力されている。
【0018】
センタ側のヘッドエンド装置10からの正規のOFDM信号S2 は、伝送路Nから分波器21に入力すると、分波器21、混合器24を経由してテレビ受像機TVに供給される。そこで、テレビ受像機TVは、内蔵のチャンネル選択機能を利用することにより、正規のOFDM信号S2 に含まれる複数チャンネルの無料番組を任意に選択して視聴させることができる。
【0019】
一方、ヘッドエンド装置10からの極性が反転されたOFDM信号S1 は、分波器21に入力されると、分波器21、コンバータ22、混合器24を経由してテレビ受像機TVに供給される。すなわち、分波器21は、伝送路N側の入力端子から混合器24側の出力端子間において、UHFバンド以上の信号を通過させ、入力端子からコンバータ22側の出力端子間において、スーパーハイバンド以下の信号を通過させる。そこで、コンバータ22は、制御部23を介して入力される視聴許可信号Sa が存在することを条件にして、極性が反転されたOFDM信号S1 の極性を再反転させてテレビ受像機TVに供給し、テレビ受像機TVにより、OFDM信号S1 に含まれる複数チャンネルの有料番組を視聴させることができる。また、テレビ受像機TVは、このようにしてOFDM信号S1 の極性が再反転されない限り、OFDM信号S1 に含まれる有料番組を視聴させることができない。
【0020】
コンバータ22は、スーパーハイバンド中の極性が反転されたOFDM信号S1 のチャンネルPi をUHFバンド内の複数のチャンネルUi (i=1、2…)に一括変換するとともに、チャンネルPi の極性を再反転し、正規のOFDM信号としてテレビ受像機TVに供給することができる(図5(A))。このとき、コンバータ22は、チャンネルPi 、Ui の周波数Fi 、Fui(i=1、2…)として、固定の局部発振周波数Fcxを使用し、Fui=Fcx−Fi に設定すればよい。
【0021】
ただし、図5(A)において、符号Lc は、周波数軸上の局部発振信号の位置を示している。また、同図には、チャンネルU1 のキャリヤ1、2…nが周波数軸上に正しい順序に配列されており、チャンネルU1 が正規のOFDM信号に戻っていることが併せて図示されている。そこで、テレビ受像機TVは、内蔵のチャンネル選択機能を使用することにより、チャンネルUi の任意の1波を選択して視聴させることができる。
【0022】
また、コンバータ22は、スーパーハイバンド中のチャンネルPi をVHFバンド内のチャンネルVi (i=1、2…)に一括変換してもよい(図5(B))。このとき、コンバータ22は、チャンネルPi 、Vi の周波数Fi 、Fvi (i=1、2…)として、固定の局部発信周波数Fcxを使用して、Fvi=Fcx−Fi に設定すればよく、テレビ受像機TVは、内蔵のチャンネル選択機能により、チャンネルVi を選択して視聴することができる。
【0023】
なお、コンバータ22は、スーパーハイバンド中のチャンネルPi をUHFバンド内の固定のチャンネルUxに個別に変換することもできる(図6(A))。このときのコンバータ22は、チャンネルPi 、Ux の周波数Fi 、Fuxとして、Fux=Fci −Fi となるように、チャンネルPi ごとに異なる局部発振周波数Fci(i=1、2…)を使用すればよい。ただし、図6(A)の符号Lciは、チャンネルPi ごとに変動する局部発振信号の周波数軸上の代表的な位置を示している。また、このときのテレビ受像機TVは、任意のチャンネルPi の有料番組を視聴するために、固定のチャンネルUx を選択すればよい。
【0024】
同様にして、コンバータ22は、チャンネルPi をVHFバンド内の固定のチャンネルVx に個別に変換してもよい(図6(B))。このとき、コンバータ22は、チャンネルPi 、Vx の周波数Fi 、Fvxとして、Fvx=Fci−Fi となるように、局部発振周波数FciをチャンネルPi ごとに設定し、テレビ受像機TVは、固定のチャンネルVx を選択すればよい。
【0025】
コンバータ22は、たとえば周波数変換部22a、局部発振部22bを組み合わせて構成することができる(図7)。なお、局部発振部22bには、制御部23の出力が接続され、周波数変換部22aの出力側には、たとえばUHFバンド以下の信号を通過させるローパスフィルタ22cが介装されている。ローパスフィルタ22cは、局部発振部22bを作動させるとき、高調波の漏出によりBS放送やCS放送の受信に支障が生じることを防止する。
【0026】
図5(A)、(B)の一括変換の場合、コンバータ22は、視聴許可信号Sa が制御部23に入力されていることを条件にして局部発振部22bを固定の局部発振周波数Fcxで作動させる。なお、視聴許可信号Sa は、たとえば視聴料相当の金額を投入するコインタイマや、視聴料相当の前払いを証するプリペイドカード用のカードリーダなどの出力信号を利用することができる。また、視聴許可信号Sa は、たとえばタッチパネルやキーボード、ボタンスイッチなどを使用する有料番組視聴用の専用のデータ入力機器やリモコンなどの出力信号であってもよい。
【0027】
図6(A)、(B)の個別変換の場合、コンバータ22の局部発振部22bは、チャンネルPi のいずれを視聴するかによって異なる局部発振周波数Fciで作動させる必要がある。そこで、制御部23は、視聴許可信号Sa に加えて、専用のリモコンなどの出力信号によりチャンネルPi の選択情報を受け付け、それに適合するように局部発振部22bの発振周波数を制御する。
【0028】
以上の説明において、端末装置20の分波器21、混合器24は、制御部23の出力信号によって同時に作動する一対の1回路2接点形の切換スイッチ素子としてもよい。これらの切換スイッチ素子は、視聴許可信号Sa がないとき、コンバータ22をバイパスさせ、視聴許可信号Sa があるとき、コンバータ22を有効に作動させるように機能する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】全体ブロック系統図
【図2】要部ブロック系統図(1)
【図3】動作説明図(1)
【図4】要部ブロック系統図(2)
【図5】動作説明図(2)
【図6】動作説明図(3)
【図7】要部ブロック系統図(3)
【符号の説明】
【0030】
N…伝送路
TV…テレビ受像機
S1 、S2 …OFDM信号
Sa …視聴許可信号
20…端末装置

特許出願人 北菱電興株式会社
ミハル通信株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性が反転されたテレビ番組のOFDM信号をセンタ側から伝送路上に送出し、端末装置において、視聴許可信号に基づいてセンタ側からのOFDM信号の極性を再反転させてテレビ受像機に供給することを特徴とするCATVシステムにおける番組視聴制御方法。
【請求項2】
端末装置により、センタ側からの複数チャンネルのOFDM信号を複数チャンネルに一括変換してテレビ受像機に供給することを特徴とする請求項1記載のCATVシステムにおける番組視聴制御方法。
【請求項3】
端末装置により、センタ側からの複数チャンネルのOFDM信号を固定チャンネルに個別に変換してテレビ受像機に供給することを特徴とする請求項1記載のCATVシステムにおける番組視聴制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−130595(P2009−130595A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303027(P2007−303027)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000242530)北菱電興株式会社 (10)
【出願人】(000114226)ミハル通信株式会社 (38)
【Fターム(参考)】