説明

CCA木材処理方法および装置

【課題】CCA木材を低エネルギー且つ低コストで処理する。
【解決手段】反応容器1内でCCA木材を、水蒸気発生器2からの過熱水蒸気に曝することにより、CCA木材に六価クロムが生じることなく炭化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材処理技術に関し、特にCCA(クロム、銅、ヒ素化合物系木材防腐剤)を内部に加圧注入した木材(以下、CCA木材)を含む非処理物において、有害な六価クロムを生じることなく炭化し、減容化するための木材処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CCA木材は、木材の防腐・防蟻を目的として、CCAを木材の内部に加圧注入したもので、日本では1960年代から電柱や土台等の建築用材として使用されてきた。現在、その毒性や廃水基準の強化により国内ではほとんど生産されていないが、今後、建築物の解体により、CCA木材が廃棄物として大量に排出されることが予想される。
【0003】
CCA木材は不適正な焼却処理を行った場合、ヒ素を含む有害ガスの発生や焼却灰に有害物質である六価クロムおよびヒ素が含まれることが指摘されている。このため、CCA木材は適正に焼却または埋め立てを行うことが必要である。
特に、クロムは、木材中では三価の状態で木材に固定化されているが、通常の焼却処理では、溶け出しやすい六価に酸化されるため、残渣や灰に高い濃度で溶出して危険であると考えられている。そこで、廃棄されたCCA木材の三価クロムを六価クロムに変えることなく、安全に処理することが課題であった。
【0004】
一方、食品廃棄物等の炭化方法として、特許文献1に記載されているように過熱水蒸気を用いた方法が提案されている。過熱水蒸気を用いることで効率よく炭化ができ、ダイオキシン類の発生も抑制できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−194362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような過熱水蒸気を用いた食品廃棄物等の炭化方法では、廃棄木材処理にそのまま適用できるものではなかった。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、CCA木材を低エネルギー且つ低コストで処理することができる木材処理技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明にかかるCCA木材処理方法は、水を加熱して過熱水蒸気を発生させ、CCA(クロム・銅・ヒ素化合物系木材防腐剤)が内部に加圧注入されているCCA木材を過熱水蒸気に曝することにより、CCA木材に六価クロムが生じることなく炭化させるようにしたものである。
この際、過熱水蒸気として、300℃以上の温度を有するもの用いるようにしてもよい。
【0008】
また、本発明にかかるCCA木材処理装置は、水を加熱して過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生器と、CCA(クロム・銅・ヒ素化合物系木材防腐剤)が内部に加圧注入されているCCA木材を収容し、過熱水蒸気発生器によって生成された過熱水蒸気にCCA木材を曝することにより、CCA木材に六価クロムが生じることなく炭化させる反応容器と、反応容器での炭化処理による生成物を回収する回収容器とを備えている。
この際、過熱水蒸気発生器から反応容器内に導入される過熱水蒸気として、300℃以上の温度を有するものを用いてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、三価クロムを含むCCA木材を、比較的低い温度で化学物質を用いることなく六価クロムを生じることなく炭化することができ、CCA木材の減容化ができる。本発明では、環境に優しい水を用いて、CCA木材を比較的低い温度で炭化することができるので、特殊な装置は不要であり、無害減容化に要するエネルギーを低減することができることから、処理に要する費用も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】CCA木材処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】CCA木材処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態にかかるCCA木材処理装置10について説明する。図1は、CCA木材処理装置の構成を示すブロック図である。図2は、CCA木材処理方法を示すフローチャートである。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態にかかるCCA木材処理装置10には、主な構成として、分解対象のCCA木材を含む被処理物を収容する反応容器1、所定温度に水を加熱して過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生器2、反応容器1内の水蒸気および空気を加熱する加温器3、加水分解処理による分解生成物である気体と過熱水蒸気とを冷却して液化する冷却器4、処理によって得られた固体及び液体を回収する回収容器5、および、液化された生成物を回収する回収容器6が設けられている。
【0013】
また、本実施の形態にかかるCCA木材処理方法は、炭化処理と分別回収処理とがある。このうち、炭化処理は、所定温度に水を加熱して過熱水蒸気を発生させ、この過熱水蒸気に被処理物を曝し、被処理物中に含まれる三価クロムを酸化することなく、木材を炭化し、減容化させる処理である。一方、分別回収処理は、処理による分解生成物を気体、液体、固体に分別して、それぞれ回収する処理である。
このCCA木材処理を適用できるCCA木材としては、電柱、家屋の廃材等がある。また、これらの素材を持つ廃木材が混在していても処理が可能である。
【0014】
次に、図2を参照して、本実施の形態にかかる分解回収方法について詳細に説明する。
まず、CCA木材を含む廃木材等の被処理物を反応容器1内に投入する(ステップ100)。続いて、炭化処理として、過熱水蒸気発生器2によって300℃以上の処理温度に加熱した過熱水蒸気を、バルブ7Aを介して反応容器1内に導入し、過熱水蒸気で満たされた水蒸気雰囲気内に被処理物を曝して、被処理物に含まれるCCA木材を加熱する(ステップ101)。このとき、反応容器1内に設けられた加温器3で、反応容器1内の水蒸気および空気を、300℃以上の設定温度に加熱する。
【0015】
このような炭化処理による熱反応の結果、被処理物に含まれるCCA木材から炭化した生成物及び含有金属である銅、三価クロム、ヒ素が回収される。分解生成物の種類としては、気体、液体、固体がある。
次に、炭化処理により得られた分解生成物について、気体、液体、固体ごとに、それぞれに対応した分別回収処理を行う(ステップ102)。
【0016】
まず、分解生成物のうちの気体は、過熱水蒸気と一緒に、反応容器1からバルブ7Bを介して冷却器4内に導かれ、冷却器4によって冷却され液化される(ステップ110)。液化によって得られた液体は、冷却器4からバルブ7Cを介して回収容器5へ回収される(ステップ111)。この液体は、灰、含有金属の微粒子と水とが混ざったものなので、分留を行うことで、含有金属を回収することができる。
【0017】
また、分解生成物のうちの液体は、バルブ7Dを介して回収容器6へ回収される(ステップ120)。また、分解生成物のうち一部の固体も、液体と同様にして、バルブ7Dを介して回収容器6へ回収される(ステップ130)。
なお、分別回収処理において、反応容器1内に残った固体は、加水分解処理で分解できなかった残渣なので、作業者、もしくは反応容器1内に設けられた搬出装置(不図示)による回収作業により、反応容器1から搬出されて回収される。
【0018】
実際に、本実施の形態にかかるCCA木材処理方法を確認するため、CCA木材を原料とした電柱を被処理物として反応容器1内に投入し、被処理物を過熱水蒸気に曝して処理した。このとき、加温器3の設定温度、すなわち過熱水蒸気を蓄えることができる反応容器1内の設定温度を350℃とした。
この後、水蒸気と共に採取した気体を冷却器4で液化して、回収容器5で回収し、得られた液体をICP質量分析により分析した結果、ヒ素が微量ながら存在することが確認できた。また、回収容器6で回収した液体からも同様に銅、ヒ素、クロムが検出された。さらに、灰となった固体の残渣を反応容器1から回収した。
【0019】
このように、本実施の形態は、反応容器1内でCCA木材を、水蒸気発生器2からの過熱水蒸気に曝することにより、CCA木材に六価クロムが生じることなく炭化させるようにしたので、比較的低い温度で、化学物質を用いることなく六価クロムを生じることなく炭化することができ、CCA木材の減容化ができる。また、本実施の形態によれば、環境に優しい水を用いて、CCA木材を比較的低い温度で炭化することができるので、特殊な装置は不要であり、無害減容化に要するエネルギーを低減することができることから、処理に要する費用も低減することができる。
【0020】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、CCA木材を含む被処理物において六価クロムを生じずに廃棄物を減容化する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
10…CCA木材処理装置、1…反応容器、2…過熱水蒸気発生器、3…加温器、4…冷却器、5,6…回収容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱して過熱水蒸気を発生させ、CCA(クロム・銅・ヒ素化合物系木材防腐剤)が内部に加圧注入されているCCA木材を前記過熱水蒸気に曝することにより、前記CCA木材に六価クロムが生じることなく炭化させることを特徴とするCCA木材処理方法。
【請求項2】
請求項1記載のCCA木材処理方法において、
前記過熱水蒸気は、300℃以上の温度を有することを特徴とするCCA木材処理方法。
【請求項3】
水を加熱して過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生器と、
CCA(クロム・銅・ヒ素化合物系木材防腐剤)が内部に加圧注入されているCCA木材を収容し、前記過熱水蒸気発生器によって生成された前記過熱水蒸気に前記CCA木材を曝することにより、前記CCA木材に六価クロムが生じることなく炭化させる反応容器と、
前記反応容器での炭化処理による生成物を回収する回収容器と
を備えることを特徴とするCCA木材処理装置。
【請求項4】
請求項3記載のCCA木材処理装置において、
前記過熱水蒸気発生器から前記反応容器内に導入される前記過熱水蒸気は、300℃以上の温度を有することを特徴とするCCA木材処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−53261(P2013−53261A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193587(P2011−193587)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】