説明

CCD型固体撮像素子の欠陥検査方法及びその装置

【課題】CCD型固体撮像素子の縦スジ欠陥の検出を容易にすると共に縦スジ欠陥の開始位置座標を高精度に求める。
【解決手段】半導体基板上にアレイ状に形成された複数のフォドダイオードの各蓄積電荷を読み出し垂直方向に1段づつ転送する複数の垂直転送路と、各垂直転送路上を転送されてきた前記蓄積電荷を各垂直転送路から受け取り1水平転送期間で水平方向に転送し出力する水平転送路とを備えるCCD型固体撮像素子の欠陥検査方法において、縦線欠陥検査時には、水平転送期間を複数回(35,36)連続して繰り返す毎に垂直転送路の前記1段の転送を行い、複数回の連続する水平転送期間35,36(38,39)の間は垂直転送路の転送駆動を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)型固体撮像素子の垂直転送路の不具合に起因する縦線欠陥を検出する欠陥検査方法及びその装置に係り、特に、垂直転送路上で縦線欠陥が開始する位置座標を求めることが可能なCCD型固体撮像素子の欠陥検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCCD型固体撮像素子は多画素化が進み、数百万画素以上を搭載するのが普通になっている。このため、各画素を構成するフォトダイオードや、電荷転送を行う垂直レジスタ(垂直転送路:VCCD),水平レジスタ(水平転送路:HCCD)を全て完全に欠陥無く製造するのが困難である。
【0003】
そこで、欠陥画素が存在する場合には、例えば下記特許文献1記載の様に欠陥画素を検出してメモリにその位置座標を格納しておき、欠陥画素周囲の画素が検出した画像信号を補間演算することで欠陥画素位置の画像信号を求める(欠陥画素補正機能)ようになっている。
【0004】
垂直レジスタの一部に欠陥が存在すると、固体撮像素子から読み出して再生した画像中に垂直レジスタ方向に延びる縦スジが発生する。この縦線欠陥を検出するには、例えば加温した検査環境に固体撮像素子を置き、垂直レジスタの転送を1回行ってから水平レジスタ上に移された1行分の電荷を転送し出力するという通常の駆動方法を繰り返すことで1フレーム分のデータを固体撮像素子から読み出せばよく、縦線欠陥が存在すれば出力画像上に縦スジとして現れる。
【0005】
しかし、この縦スジは垂直レジスタ上に発生した暗電流成分等に基づくものであり、検査環境が40℃程度であるため欠陥に基づく電荷量が小さく、検出が容易でない。そこで従来は、下記特許文献2に記載されている様に、水平レジスタを一定期間停止させ、この停止中に垂直レジスタによる転送を複数回行わせ、その後、水平レジスタを駆動して水平レジスタ上の1行分の電荷を出力させる様にしている。
【0006】
即ち従来は、垂直レジスタ上の複数の電荷を水平レジスタ上で加算蓄積させ、欠陥に基づく電荷量を複数倍とすることで、縦線欠陥を高精度に検出できる様にしている。
【0007】
【特許文献1】特開2003―60991号公報
【特許文献2】特開平5―236357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術では、欠陥に基づく電荷量を複数倍に蓄積加算することで、縦線欠陥の検出を容易にしている。しかし、水平レジスタを一定期間停止して垂直レジスタ上の欠陥に基づく電荷を垂直方向に加算するため、垂直レジスタの縦線欠陥が開始する位置座標が不明確となってしまい、例えば、固体撮像素子の出力画像中の縦スジを補正処理するとき、精度良く補正することができないという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、縦線欠陥を精度良く検出すると共に縦線欠陥の開始位置座標も精度良く検出できるCCD型固体撮像素子の欠陥検査方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のCCD型固体撮像素子の欠陥検査方法は、半導体基板上にアレイ状に形成された複数のフォドダイオードの各蓄積電荷を読み出し垂直方向に1垂直転送分づつ転送する複数の垂直転送路と、各垂直転送路上を転送されてきた前記蓄積電荷を各垂直転送路から受け取り1水平転送期間で水平方向に転送し出力する水平転送路とを備えるCCD型固体撮像素子の欠陥検査方法において、縦線欠陥検査時には、前記水平転送期間をn回(nは任意の複数)連続して繰り返す毎に前記垂直転送路の前記1垂直転送分の転送を行い前記n回の連続する水平転送期間の間は前記垂直転送路の転送駆動を停止させることを特徴とする。
【0011】
本発明のCCD型固体撮像素子の欠陥検査方法は、前記水平転送路から出力されるデータに基づき垂直転送路の縦線欠陥開始位置座標を算出することを特徴とする。
【0012】
本発明のCCD型固体撮像素子の欠陥検査装置は、半導体基板上にアレイ状に形成された複数のフォドダイオードの各蓄積電荷を読み出し垂直方向に1垂直転送分づつ転送する複数の垂直転送路と、各垂直転送路上を転送されてきた前記蓄積電荷を各垂直転送路から受け取り1水平転送期間で水平方向に転送し出力する水平転送路とを備えるCCD型固体撮像素子の欠陥検査装置において、縦線欠陥検査時に前記水平転送期間をn回(nは任意の複数)連続して繰り返す毎に前記垂直転送路の前記1垂直転送分の転送を行い前記n回の連続する水平転送期間の間は前記垂直転送路の転送駆動を停止させる駆動信号を生成し前記CCD型固体撮像素子に出力する素子駆動手段を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のCCD型固体撮像素子の欠陥検査装置は、前記水平転送路から出力されるデータに基づき垂直転送路の縦線欠陥開始位置座標を算出する演算手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、垂直転送路上の欠陥に起因する電荷が垂直転送路の停止期間が長くなることで増幅されるため、容易に検出可能となる。また、垂直方向の電荷加算を行わないので、垂直転送路上に欠陥が存在した場合、その欠陥による縦スジの開始位置座標を精度良く算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るCCD型固体撮像素子の欠陥検査装置の機能構成図である。この欠陥検査装置は、検査対象となるCCD型固体撮像素子1の出力データ(アナログデータ)を取り込み自動利得制御や相関二重サンプリング処理等のアナログ処理を行うアナログ信号処理部2と、アナログ信号処理部2から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するアナログ/デジタル(A/D)変換部3と、デジタル画像信号を取り込んで一時保存するフレームメモリ4と、デジタル画像信号を取り込んで補間処理やγ補正処理,RGB/YC変換処理等を行うデジタル信号処理部5と、外部インタフェース部6と、これらを相互に接続するバス7,8とを備える。
【0017】
この欠陥検査装置は更に、欠陥検査装置を統括制御するCPU10と、CPU10からの指令に基づきCCD型固体撮像素子1を駆動する撮像素子駆動部11と、外部インタフェース部6に接続されたパーソナルコンピュータ12とを備える。
【0018】
CCD型固体撮像素子1は、図示しない取付部に交換可能に設置され、撮像素子駆動部11からの駆動パルス等に基づいて駆動され、出力データがアナログ信号処理部2に出力される。この出力データは、A/D変換部3によりデジタル信号に変換され、デジタル信号処理部5が画像処理し、処理後の画像が、例えばパーソナルコンピュータ12のモニタ画面に表示される。
【0019】
検査員は、パーソナルコンピュータ12を介して欠陥検査装置のCPU10に指令を出し、例えば縦線欠陥検査を行うときは、その旨をパーソナルコンピュータ12に入力する。これにより、CPU10は、縦線欠陥検査用の所要タイミングの垂直転送パルスφVや水平転送路パルスφHを撮像素子駆動部11に生成させ、CCD型固体撮像素子1に出力させる。
【0020】
図2は、CCD型固体撮像素子1の表面模式図である。このCCD型固体撮像素子1の半導体基板20上には、多数のフォトダイオード(PD)21がアレイ状に、図示する例では正方格子状に配列形成されており、各フォトダイオード列の側部には、垂直方向に延びる垂直転送路(VCCD)22が形成されている。半導体基板20の下辺部には、水平転送路(HCCD)23が形成され、その出力段には、水平転送路23の出力端まで転送されてきた電荷の電荷量に応じた電圧値信号を出力するアンプ24が設けられている。
【0021】
垂直転送路22は、半導体基板表面部に形成された埋め込みチャネルと、この埋め込みチャネル上に絶縁膜を介して積層され個々が絶縁分離された多数枚の連続する垂直転送電極膜とで構成され、1つのフォトダイオード(PD)21に対して、複数枚の垂直転送電極膜が形成される。
【0022】
尚、「垂直」「水平」という用語を用いているが、これらは夫々半導体基板表面の「一方向」「この一方向に対して略直角の方向」という意味である。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態に係るCCD型固体撮像素子の欠陥検査方法で用いる駆動パルスの説明図である。図3(a)は、CCD型固体撮像素子の通常駆動時の駆動パルス(垂直転送パルスφV,水平転送パルスφH)を示し、図3(b)が縦線欠陥検出時の駆動パルスを示す図である。
【0024】
CCD型固体撮像素子1を通常駆動する場合には、図3(a)に示す様に、先ず、読み出しパルス30が固体撮像素子1に印加される。これにより、図2のフォトダイオード(PD)21の蓄積電荷が垂直転送路22に読み出される。
【0025】
次に、各垂直転送路22を垂直転送パルス(水平転送期間)31で駆動し垂直方向への転送を1回行うと、各垂直転送路22上の各電荷が垂直方向に1転送分だけ移動し、図2の水平転送路23に一番近いフォトダイオード行の各電荷が水平転送路に23に移る。
【0026】
次に、水平転送路23を水平転送パルス列32で駆動し、水平転送路23上の1行分の各電荷をアンプ24側に転送し、各電荷量に応じた電圧値信号を順次アンプ24から出力させ、図1のアナログ信号処理部2に送る。
【0027】
次に、垂直転送パルス33で各垂直転送路22を駆動して垂直方向への転送を1回行うと、各垂直転送路22上の各電荷が垂直方向に1転送分だけ移動し、例えば図2の水平転送路23に二番目に近いフォトダイオード行の各電荷が水平転送路に23に移る。
【0028】
そして、水平転送路23を水平転送パルス列34で駆動し、水平転送路23上の1行分の各電荷をアンプ24側に転送する、という動作を繰り返すことで、1フレーム分の画像データが固体撮像素子1から読み出される。
【0029】
CCD型固体撮像素子1の縦線欠陥検査を行う場合には、このCCD型固体撮像素子1は、例えば40℃以下の所定温度,所定明るさの検査環境に置かれる。CCD型固体撮像素子1を検査する場合、実際の使用環境と同様の環境で検査する必要があるため、縦線欠陥検査においても、水平転送路23は、図3(a)で説明した通常駆動時と同じ周期で繰り返し駆動される。
【0030】
縦線欠陥検査時には、図3(b)に示すように、先ず、読み出しパルス30を固体撮像素子1に印加してフォトダイオード21から蓄積電荷を垂直転送路22に読み出す。以後、垂直転送路22と水平転送路23を用いて電荷転送を行い、1フレーム分の画像データを固体撮像素子1から出力させることになるが、本実施形態では読み出しパルス30後に水平転送パルス列35,36を印加して2回分の水平転送を行う。
【0031】
つまり、水平転送期間を2回連続して設け、水平転送路23を2回空送りすることで水平転送路23上の不要電荷を廃棄すると共に、その間、垂直転送路22を停止させる。これにより、垂直転送路22上の欠陥位置(例えば図2の位置A)で発生する暗電流分の電荷は通常駆動時の2倍となる。
【0032】
次に、垂直転送路22に垂直転送パルス37を印加して垂直転送路22上の電荷を1回(段)分だけ垂直方向に転送させ、垂直転送路端部の電荷を水平転送路23に移動させる。そして、水平転送路23を水平転送パルス列38,39で2回駆動する。最初の水平転送パルス列38で水平転送路23上の電荷がアンプ24によって読み出され、2回目の転送パルス列39で、水平転送路23は空送りされる。
【0033】
この2回の水平転送期間38,39の間、垂直転送路22の駆動は停止されるため、垂直転送路22上の欠陥位置で発生する暗電流分の電荷量は通常駆動時の2倍となる。
【0034】
以上の動作を繰り返すことにより、1フレーム分のデータをCCD型固体撮像素子1から出力させる。図2に示す様に、垂直転送路22上に欠陥Aが存在した場合、欠陥Aと垂直転送路22の水平転送路23側端部までの間Bにある電荷は、欠陥Aの影響を受けないため、縦スジは現れない。
【0035】
しかし、欠陥Aと垂直転送路22の反水平転送路側端部までの間Cにある電荷は、欠陥位置Aを通過し、欠陥位置Aで2水平転送期間だけ停止されるため、出力データをモニタ画面に表示すると、画面上で縦スジとして現れる。この様に、本実施形態では、2水平転送期間づつ垂直転送路22を停止させて縦線欠陥を増幅するため、縦線欠陥の検出が容易となる。
【0036】
しかも、本実施形態では、垂直方向の電荷加算は行わないので、縦線の発生箇所すなわち縦線欠陥の開始位置座標を垂直転送電極膜単位で明確に定めることが可能となる。
【0037】
縦スジが入ったデータはCCD型固体撮像素子1から出力されて図1のアナログ信号処理部2,A/D変換部3と通ってフレームメモリ4に格納され、デジタル信号処理部5が画像処理する。あるいはパーソナルコンピュータ12が画像処理する。画像処理した結果を解析することで、縦スジの開始位置座標を算出することができる。この算出は、デジタル信号処理部5あるいはパーソナルコンピュータ12が行う。
【0038】
尚、上述した実施形態では、パーソナルコンピュータ12のモニタ画面にCCD型固体撮像素子1の出力データを表示させるものとして説明したが、一々表示させる必要はなく、また、全自動でCCD型固体撮像素子の検査を行い縦線欠陥開始位置座標を算出する構成とすることでも良い。
【0039】
また、上述した実施形態では、2回の連続する水平転送期間毎に1回の垂直転送を行ったが、3回の連続する水平転送期間毎に1回の垂直転送を行う構成でも、更にそれ以上の複数回の連続する水平転送期間毎に1回の垂直転送を行う構成でも良いことはいうまでもない。2回の水平転送期間毎に1回の垂直転送を行うより、3回あるいはそれ以上の水平転送期間毎に1回の垂直転送を行う方が、垂直転送路を停止させている期間が長くなり、縦線欠陥が増幅され、縦線欠陥の検出が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る縦線欠陥検査方法及びその装置は、垂直転送路の縦線欠陥の検出とその欠陥開始位置座標を精度良く求めることができるため、CCD型固体撮像素子の欠陥検査として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係るCCD型固体撮像素子の欠陥検査装置の機能構成図である。
【図2】図1に示すCCD型固体撮像素子の一例の表面模式図である。
【図3】(a)CCD型固体撮像素子を通常駆動させるときの駆動説明図である。 (b)CCD型固体撮像素子の縦線欠陥検査時の駆動説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 CCD型固体撮像素子
10 CPU
11 撮像素子駆動部
21 フォトダイオード
22 垂直転送路(VCCD)
23 水平転送路(HCCD)
A 垂直転送路上の欠陥
B 欠陥Aを通らない電荷が存在する区間
C 欠陥Aを通る電荷が存在する区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にアレイ状に形成された複数のフォドダイオードの各蓄積電荷を読み出し垂直方向に1垂直転送分づつ転送する複数の垂直転送路と、各垂直転送路上を転送されてきた前記蓄積電荷を各垂直転送路から受け取り1水平転送期間で水平方向に転送し出力する水平転送路とを備えるCCD型固体撮像素子の欠陥検査方法において、縦線欠陥検査時には、前記水平転送期間をn回(nは任意の複数)連続して繰り返す毎に前記垂直転送路の前記1垂直転送分の転送を行い前記n回の連続する水平転送期間の間は前記垂直転送路の転送駆動を停止させることを特徴とするCCD型固体撮像素子の欠陥検査方法。
【請求項2】
前記水平転送路から出力されるデータに基づき垂直転送路の縦線欠陥開始位置座標を算出することを特徴とする請求項1に記載のCCD型固体撮像素子の欠陥検査方法。
【請求項3】
半導体基板上にアレイ状に形成された複数のフォドダイオードの各蓄積電荷を読み出し垂直方向に1垂直転送分づつ転送する複数の垂直転送路と、各垂直転送路上を転送されてきた前記蓄積電荷を各垂直転送路から受け取り1水平転送期間で水平方向に転送し出力する水平転送路とを備えるCCD型固体撮像素子の欠陥検査装置において、縦線欠陥検査時に前記水平転送期間をn回(nは任意の複数)連続して繰り返す毎に前記垂直転送路の前記1垂直転送分の転送を行い前記n回の連続する水平転送期間の間は前記垂直転送路の転送駆動を停止させる駆動信号を生成し前記CCD型固体撮像素子に出力する素子駆動手段を備えることを特徴とするCCD型固体撮像素子の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記水平転送路から出力されるデータに基づき垂直転送路の縦線欠陥開始位置座標を算出する演算手段を備えることを特徴とする請求項3に記載のCCD型固体撮像素子の欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−189442(P2007−189442A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5147(P2006−5147)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】