説明

CDRを移植されたIII型抗CEAヒト化マウスモノクローナル抗体

【課題】マウスクラスIII、抗CEA mAbの抗CEA結合特性及びヒト患者におけるヒトmAbの免疫原性を有する免疫学的試薬を提供する。
【解決手段】異種抗体のフレームワーク領域に移植された親マウスクラスIII、抗CEAモノクローナル抗体の相補性決定領域を有するヒト化モノクローナル抗体であって、このヒト化抗体が親マウスモノクローナル抗体の結合特異性は保持するものの、異種宿主においてそれよりも免疫原性が小さいヒト化モノクローナル抗体が提供される。好ましいマウスクラスIII、抗CEAモノクローナル抗体はMN14抗体であり、好ましい異種抗体はヒトに由来するものである。このヒト化モノクローナル抗体を産生するDNA構築物及びベクター、並びにそれを用いる診断用及び治療用複合体も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結腸及び他のガンの診断及び治療用の免疫学的試薬に関する。特に、本発明は、対応するマウス抗ガン胎児性抗原(「CEA」)モノクローナル抗体(「mAb」)(MN14)の結合親和特性並びにヒト抗体の抗原性及びエフェクター特性を有するヒト化抗CEAモノクローナル抗体に関する。さらに、本発明は、抗CEAマウスmAbの相補性決定領域(「CDR」)がヒト抗体のフレームワーク領域に移植されているヒト化mAb、そのようなCDRを移植された抗体をコードするDNA、そのDNAを増殖させ、発現させるためのベクター及び形質転換宿主、並びに診断及び治療用途に有用な抗体の複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ガンの診断及び治療への有望なアプローチは、診断及び治療作用物質を悪性腫瘍に直接搬送するターゲッティング抗体の使用を包含する。過去10年にわたって、様々な腫瘍特異的抗体及び抗体断片が、これらの抗体を薬物、毒素、放射性核種もしくは他の作用物質に複合する方法、及びこれらの複合体を患者に投与する方法と同様に、開発されている。これらの努力は多大な進歩をもたらしているが、様々のほとんど予期し得ない問題が、ある程度まで開発されている試薬の幾つかの診断上及び治療上の実用性を制限している。
【0003】
その中で、最も扱いにくい問題は、ターゲッティング複合体に外来抗原として応答し得る、ヒト免疫系自体によって引き起こされるものである。すなわち、(ヒトに最も普通に用いられているターゲッティング抗体である)マウスモノクローナル抗体と複合体を形成している薬物又は放射性核種で処置された患者は、体内を循環しているヒト抗マウス抗体(HAMA)及びその複合体の抗体部分に対する一般化された即時型III型過敏性反応を発現する。さらに、副作用が最小である場合(例えば、単一の投与における場合)でさえ、循環HAMAは患者におけるターゲッティング作用物質の有効濃度を低下させ、したがって、診断又は治療作用物質が標的部位に到達するのを制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題を克服又は回避するため、幾つかのアプローチが開発されているが、限られた成功しか収めていない。戦略の1つは、ターゲッティング抗体を化学的に修飾してその抗原性を抑制することである。例えば、ターゲッティング抗体へのポリエチレングリコールの複合(PEG化)が、抗体の抗原性を低下させることが報告されている。別のアプローチは、抗体における抗原性の部位を特徴付けた後、それを除去することである。この手法においては、IgG全体の代わりに、Fab’、F(ab)及び他の抗体断片が用いられている。加えて、血液からHAMAを血漿交換で除去することによりHAMAの副作用を低下させる試みがなされている。また、外来抗体の副作用を十分に低下させてターゲッティング作用物質での複数の治療を可能にするのに、免疫抑制技術も用いられている。
【0005】
これらのアプローチで完全に満足に改善するものはない。ターゲッティング抗体及び抗体複合体に対する不利な免疫応答を減少または取り除く手段が、これらの診断及び治療作用物質の完全な利益を得るために、依然として要求されている。
【0006】
この目標は、以下に説明されるCDRを移植されたヒト化マウス抗ヒトCEA mAbで達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、マウスクラスIII抗CEA mAb(MN14)のCDRがヒト抗体又は抗体断片のアミノ酸配列に機能的に移植されたヒト化クラスIII抗CEA mAbを提供し、マウスクラスIII、抗CEA mAbの抗CEA結合特性及びヒト患者におけるヒトmAbの免疫原性を有する免疫学的試薬を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、このような抗体をコードするDNA構築体を提供することにある。これに関する具体的な目的は、細胞培養及び抗体産生における有利な特性を有する、改良された抗体及びその抗体をコードするDNAを生成する遺伝子操作を容易にする基質DNAである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、このDNAを増殖させ、かつこの抗体を発現させるためのベクターを提供することにある。これに関連する本発明の目的は、保存、増殖、抗体産生及び治療用途のための、ベクターを有する細胞を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、診断及び治療において用いられる、抗体を含有する組成物を提供することにある。これに関しては、とりわけ、ex vivo及びin vivoにおける造影、診断、予後及び治療のための、造影剤及び治療剤と複合体を形成する抗体を含む複合体を提供することが目的である。
【0011】
前述の目的の達成において、本発明の一側面に従い、異種(ヒト)抗体のフレームワーク領域に移植されたマウスクラスIII、抗CEA mAb(MN14)のCDRを含むヒト化マウスmAbであって、このようにヒト化されたmAb抗体がクラスIII、抗CEA結合特異性は保持するものの、患者において親MN14マウスモノクローナル抗体よりも免疫原性が小さいヒト化マウスmAbが提供される。
【0012】
特に好ましい態様においては、このヒト化抗体の軽鎖可変領域は下記式で特徴付けられる。FRL1−CDRL1−FRL2−CDRL2−FRL3−CDRL3−FRL4ここで、FRの各々は個別にヒト抗体のフレームワーク領域であり、かつCDRの各々は個別にMN14の軽鎖の相補性決定領域にあり、及び下付文字は軽「L」)鎖領域を指す。
【0013】
重鎖可変領域は下記式で特徴付けられる。
FRH1−CDRH1−FRH2−CDRH2−FRH3−CDRH3−FRH4ここで、FR及びCDRは上と同じ意味を有し、かつ下付文字「H」は重鎖領域を指す。)
【0014】
態様の1つにおいて、CDRL1はアミノ酸配列 KASQD VGTSVA(配列番号20)を有し、CDRL2はアミノ酸配列 WTSTR HT(配列番号21)を有し、CDRL3はアミノ酸配列 QQYSL YRS(配列番号22)を有し、CDRH1はアミノ酸配列 TYWMS(配列番号23)を有し、CDRH2はアミノ酸配列 EIHP DSSTI NYAPS LKD(配列番号24)を有し、CDRH3はアミノ酸配列 LYFGF PWFAY(配列番号25)を有する。
【0015】
他の態様において、FRL1はアミノ酸配列 DIQLT QSPSS LSASV GDRVT ITC(配列番号26)を有し、FRL2はアミノ酸配列 WYQQK PGKAP KLLIY(配列番号27)を有し、FRL3はアミノ酸配列 GVP(S又はD)F SGS(G又はV)S GTDFT FTISS LQPED IATYY V(配列番号28)を有し、FRL4はアミノ酸配列 FGQGT KVIEK(配列番号29)を有し、FRH1はアミノ酸配列 EVQLV ESGGG VVQPG RSLRL SCSSS GFDFT(配列番号30)、EVQLV ESGGG VVQPG RSLRL SCSAS GFDFT(配列番号31)又はQVQLQ ESGPG LVRPS QTLSL TCTSS GFDFT(配列番号32)を有し、FRH2はアミノ酸配列 WVRQA PGKGL EWVA(配列番号33)、WVRQA PGKGL EWIA(配列番号34)、又はWVRQP PGRGL EWIA(配列番号35)を有し、FRH3はアミノ酸配列 RFTIS RDNSK NTLFL QMDSL RPEDT GVYFC AS(配列番号36)、RFTIS RDNAK NTLFL QMDSL RPEDT GVYFC AS(配列番号37)、又はRVTML RDTSK NGSFL RLSSV TAADT AVYYC AS(配列番号38)を有し、FRH4はアミノ酸配列 WGQGT PVTVS S(配列番号39)、又はWGQGT TVTVS S(配列番号40)を有し、以上において、Cはスルフィドリル又はジスルフィドの形であってもよい。
【0016】
別の好ましい態様は、クラスIII、抗CEAヒト化mAbと複合体を形成する診断又は治療剤を包含する。ここで、このクラスIII、抗CEAヒト化mAbにおいて、この抗体のCDRはMN14マウスmAbのCDRに由来し、FRは異種(ヒト)抗体のFRに由来し、この複合体はMN14のクラスIII、抗CEA結合特異性を保持するものの、ヒトにおいてマウスMN14よりも免疫原性が小さい。そのような態様の1つにおいては、その軽鎖及び重鎖可変領域は上に示される通りに特徴付けられ、かつ同様に上に説明されるアミノ酸配列を有する。
【0017】
さらに別の好ましい態様において、患者の診断又は治療方法が、前述の好ましい態様の複合体を適当な投与計画の下に投与するステップを含む。
【0018】
別の好ましい態様は、上述のヒト化抗体の軽鎖、重鎖またはその両鎖をコードする単離精製DNAを含む。
別の好ましい態様は、上述のCDR及びFRのDNA配列を含む。
【0019】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(配列番号1及び配列番号2)は、マウスNEWM MN14可変領域重鎖(「VH」)のコンセンサスDNA配列及びそのタンパク質翻訳産物を示す。CDRは四角で囲まれている。
【図2】図2(配列番号3及び配列番号4)は、マウスMN14可変領域軽鎖(「VK」)のコンセンサスDNA配列及びそのタンパク質翻訳産物を示す。CDRはボックスで囲まれている。
【図3】図3は、キメラもしくはヒト化MN14の重鎖遺伝子の発現のためのベクターを示す。この模式図は、キメラ及び再構成重鎖免疫グロブリン(Ig)遺伝子の両者並びにpSVgpt発現ベクターを示す。「キメラ」と表示されている最初の図は、ヒトIgG1定常領域をコードするDNAに連結したMN14マウスVH領域をコードするDNAを示すマップである。このMN14 VH領域において、3つの黒い領域により3つのCDRが示されている。FRは、4つの点で埋めた領域で示されている。「再構成」と表示されている真中の図は、マウスFRが、「ヒト」VH領域で4つの白抜き領域によって示されるヒトFRで置換されているMN14 VH領域のヒト化を示す。下方に示される発現ベクターpSVgptの円形マップは、Ighエンハンサー要素のすぐ下流の、再構成MN14抗体遺伝子のHindIII/BamHI挿入部位を示す。また、このマップは、増殖のための大腸菌における複製起点(colEl ori)及び哺乳動物細胞における複製起点(SV40プロモーター領域)、並びにこのベクターで形質転換されている細菌を培養するための選択マーカー(Apr)及び哺乳動物細胞を培養するための選択マーカー(gpt)をコードする遺伝子を含むこのベクター内の重要な機能的ドメインの幾つかも示す。この場合の抗体遺伝子の発現は、この抗体遺伝子のマップでHindIII部位の近傍に黒塗りの丸で示されるIgプロモーターを介在する。
【図4】図4は、キメラもしくはヒト化MN14κ鎖遺伝子の発現のためのベクターを示す。この図は、キメラ及び再構成MN14κ軽鎖遺伝子及びpSVhyg発現ベクターを示す。「キメラ」と表示される最初の図は、ヒトκ定常(「CK」)領域をコードするDNAに結合するMN14マウスκ軽鎖可変領域領域(「VK」)をコードするDNAを示すマップである。このマウスVK領域において、3つのCDRが3つの黒い領域で示され、FRが4つの点で埋められている領域で示されている。「再構成」と表示される真中の図は、マウスFRが、「ヒト」VK領域において4つの白抜きの領域で示されるヒトFRで置換されているMN14 VK領域のヒト化を示す。最後の発現ベクターpSVhygの円形マップは、Ighエンハンサー要素のすぐ下流の再構成MN14抗体遺伝子のHindIII/BamHI挿入部位を示す。このマップは、大腸菌増殖のための複製起点(col El ori)及び哺乳動物細胞の増殖のための複製起点(SV40プロモーター領域)、並びにこのベクターで形質転換されている細菌を培養するための選択マーカー(Apr)及び哺乳動物細胞を培養するための選択マーカー(gpt)をコードする遺伝子を含むこのベクター内の重要な機能的ドメインの幾つかも示す。この場合の抗体遺伝子の発現には、この抗体遺伝子のマップのHindIII部位の近傍で黒塗りの丸で図示されるIgプロモーターが介在する。
【図5】図5は、マウスMN14可変領域(配列番号2及び配列番号4)の配列を、ヒト可変領域NEWM VH(配列番号5)及びREI VK(配列番号6)と共に(図5A)、並びにヒトKOL VH領域(配列番号7)と共に(図5B)示す。CDRはボックスで囲まれ、このヒト化VHに組込まれているマウスVH FRは、Kabat, et al.SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST,U.S.Government Printing Office,Washington,D.C.,1987のナンバリング・システムに従ってそれらの位置が印付けられている。KLHuVHに含まれていたCDR外のマウスの残基は、黒丸で示されている。
【図6】図6は、マウスMN14 VHフレームワーク領域(FR)(配列番号2)とヒト化MN14 VHフレームワーク領域(配列番号5、8〜11、7及び12〜15)との間のアミノ酸配列の比較を示す。マウスと異なるヒトFR残基のみが示されている。また、NEWM及びKOLのCDAも示されていない。それぞれのFRにおけるアミノ酸置換の領域が太字で強調され、その置換の位置がKabatらのナンバリング・システムに従って示されている。3番目のCDRが、ボックスで囲まれている。
【図7】図7は、MN14 HuVH領域のDNA配列とそれに対応するアミノ酸配列(配列番号16及び配列番号17)を示す。CDRはボックスで囲まれている。
【図8】図8は、MN14 HuVK領域のDNA配列とそれに対応するアミノ酸配列(配列番号18及び配列番号19)を示す。CDRはボックスで囲まれている。
【図9】図9は、(−○−)KLHuVH/HuVK、(−黒四角−)KLHuVHAIG/HuVK、(−●−)KLHuVKAIGAY/HuVK、(−□−)KLHuVHAIGA/HuVK、(−黒三角−)キメラ対照、及び(−△−)マウス対照を含むKLHuVH変異体の相対結合親和性を比較する、MN14の遮断(すなわち、競合)検定のグラフである。
【図10】図10は、hMN14を(FR1領域でグリコシル化されている)HMN14−NVTと比較する、MN14遮断検定を示す。
【図11】図11は、結腸ガン患者に131I標識hMN14IgG(左パネル)又はmMN14IgG(右パネル)を投与した後の、その患者の腹部のラジオオートグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
用語の説明
本出願においては、以下の用語又は略語が用いられる。この用語集に記される意味は、説明のためのみである。これらの用語の完全な意味は、当該技術分野の熟練者には明らかである。
【0022】
「CDR」は、相補性決定領域に対する略語として用いられる。これらは、主として、しかしながら他の可能性を除くわけではないが、抗原抗体結合の原因である、抗体の可変領域内の領域である。
【0023】
「FR」は、フレームワーク領域に対する略語である。広く言えば、これらは、抗体の可変領域の、CDRに隣接し、もしくは並列する部分である。一般には、これらの領域は、その可変領域の立体配座に影響を与え、そのフレームワーク領域が抗体と抗原との相互作用に影響を及ぼし得るにもかかわらず、抗体への抗原の特異的結合の直接の原因とはほとんどならない多くの構造上の機能を有する。
【0024】
「キメラ」は、その可変領域がマウス抗体に由来し、その定常領域が異種(別)の種の抗体に由来する抗体を指す。
【0025】
「ヒト化」は、上に定義されるキメラ抗体ではあるが、FR可変領域がヒト抗体に由来するものを指す。
【0026】
「HAHA」は、ヒト化マウス抗体に対するヒト抗体を指す。
「CEA」は、内胚葉起源の消化器系上皮のほとんどのアデノカルシノーマ並びに乳ガン及び非小細胞肺ガンのような他のガンにおいて発現する180kDa糖タンパク質であるガン胎児性抗原を指す。
【0027】
接頭辞としての「h」という文字は、「ヒト化」を意味する。
他の略語は、Roitt et al., IMMUNOLOGY, 3rd ed. Mosby Year Book Europe Ltd. (1993)に従って用いられる。この文献は、引用することにより本明細書にそのまま組込まれる。
【0028】
本明細書の開示において用いられるこれらの用語及び他の用語は、本発明が属する技術分野において通常用いられるものと同じ意味で用いられる。
【0029】
過去に、MN14のCEA結合特性を有する有効な非HAMA誘発性の抗CEA抗体を開発することには失敗しているが、MN14 mAbのCDRをヒト抗体のFRに移植して、HAMAの誘発が低下され、かつエフェクター活性が増大されていながら、MN14の抗CEA mAbの抗原結合特性を有する抗体及び抗体誘導試薬を得ることが可能であることが見出されている。
【0030】
マウス抗CEAのIgG1モノクローナル抗体MN14、及びその生成は、以前に説明されている。Hansen et al., Cancer, 71:3478 (1993)、Primus et al.,米国特許第4,818,709号を参照。MN14はクラスIII、抗CEAモノクローナル抗体の基準の全てを満たし、EIAで胎便と非反応性であり、かつ通常の組織とは反応しない。
【0031】
遮断解析は、Hansen et al., 1993 上記、Losman et al., Int. Cancer, 56:580 (1994)、Hansen et al., Clin. Chem., 35:146 (1989)に従って行う。CEAの定量にこれらの参考文献に記述されるものと同じ条件を用いて、標識MN14プローブに対するヒト化MN14の結合を評価することができる。典型的なプローブは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)に複合しているMN14である。標識及び非標識MN14の両者を、マイクロタイタープレートのウェルのような固体支持体に固定されているCEA試料に加える。CEAに対する標識MN14の結合の「遮断」の程度は、非標識MN14の活性の直接の反映である。標準MN14を用いて、ヒト化MN14又はそれらの誘導体の未知試料の相対活性を決定することができる。典型的には、この反応はマイクロタイタープレートのウェルにおいて行われる。例えば25μg/ウェルのレベルでこのウェルをCEAで直接満たされ、又は間接的に満たされる。間接的に満たされる場合には、CEAと反応はするがMN14が相互作用するものとは異なるエピトープに反応する抗体が予め満たされている。このような抗体は、MN15 mAbであってもよい。その後、CEAを間接的にそのウェルに固定することができる。次に、そのような満たされたプレートを用いて、競合結合EIA検定を行うことができる。
【0032】
前述のHRP標識mAbの代わりに、抗体を、通常、例えば131Iを用いて、クロラミンT法により、約10mCi/μgの比活性まで放射ヨウ素化することが可能であり、遊離した放射性同位体はアクリルアミドゲルカラムでのクロマトグラフィーにより除去する(上記Hansen et al., 1993を参照)。
【0033】
本明細書に説明される発明の実施に適切な分子生物学上の技術も、当該技術分野における熟練者には公知である。適切な技術は、とりわけ、Sambrook et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989), PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Ausubel et al., Eds., Green Publishing Associates and Wiley-Interscience, John Wiley and Sons, New York (1987, 1988, 1989)(これらは、引用することにより、本明細書に補遺を含むそれら全体を組込むものとする)を含む多くのマニュアルや主要な刊行物に記述されている。
【0034】
本明細書に開示されるMN14軽鎖及び重鎖CDR及び修飾したMN14のCDRは、上記参考文献に記述されているもののような公知の組換え技術を用いて、他の抗体に組込むことができる。
【0035】
この目的に適切な具体的な方法は、下記例に示されている。本明細書に説明されるアミノ酸配列に基づいて、MN14のCDRをコードするオリゴヌクレオチドを合成することができる。本明細書に説明されるアミノ酸配列を正確にコードするものに加えて、修飾CDRをコードするオリゴヌクレオチドを作製することもできる。また、このオリゴヌクレオチドは、MN14のCDRのものに加えて、例えばクローニングを容易にするヌクレオチドを有していてもよい。オリゴヌクレオチドの合成技術は公知であり、多くの製造者から入手可能な自動装置で行うことができる。さらに、あらゆる特定の配列のオリゴヌクレオチドを購入することができる。
【0036】
MN14のCDR及び/又は特定のFR残基をコードするオリゴヌクレオチド又はそれらの相補鎖に相当するオリゴヌクレオチドを、そのオリゴヌクレオチドの末端、一般的には12ヌクレオチドがテンプレートDNAに完全にアニーリングするように設計されているという条件の下で、部位指向性突然変異誘発によるVH又はVK DNAへのこれらの残基のコドンの導入に用いることができる。このテンプレートDNAは、典型的には、必須FRをコードする可変領域DNAを坦持するM13ベクターに表される一本鎖DNAである。方法の1つにおいて、変異誘発性オリゴヌクレオチドをそれらの5’末端でリン酸化し、5’から可変領域DNAへの伸長を誘発するオリゴヌクレオチドと一緒に、このssDNAテンプレートにアニーリングする。このオリゴヌクレオチドを、T7ポリメラーゼ及びT4DNAリガーゼによって一緒に連結する断片を用いて伸長させ、可変領域全体を包含する完全な変異鎖を得る。この変異鎖をテンプレートとして用い、熱サイクル反応においてTaq DNAポリメラーゼを用いて適切なプライマーからその相補鎖の複数のコピーを合成することができる。変異鎖がこのように選択的に増幅されると、通常のPCRにより、クローニング、配列決定及び発現のためにDNAを増幅することが可能である。
【0037】
抗体をコードしている適切なDNAが開示により本明細書に示されるが、事実上、そのようなDNAのあらゆるものが含まれる。様々なヒト抗体遺伝子が、公的に利用可能な寄託の形態で利用することができる。抗体及び抗体をコードしている遺伝子の多くの配列が公開されており、上述のように適切な抗体遺伝子をこれらの配列から合成することができる。
【0038】
本発明の範囲には、本明細書に説明されるDNA配列の対立遺伝子、変種及び変異が含まれる。
【0039】
本開示によるCDR移植は、確立されている技術を用いて行うことができる。抗体産生細胞系は、熟練技術者に公知の技術を用いて選択し、かつ培養することができる。そのような技術は、様々な実験マニュアル及び主要な刊行物に記述されている。例えば、以下に記述されるような本発明での使用に適する技術は、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, Coligan et al., Eds., Green Publishing Associates and Wiley-Interscience, John Wiley and Sons, New York (1991)に記述されておる。この文献は引用することにより補遺を含むその全体が本明細書に組込まれる。
【0040】
RNAは、元のハイブリドーマ細胞から、グアニジニウムイソチオシアネート抽出及び沈殿と、それに続く遠心もしくはクロマトグラフィーのような標準技術により、単離することができる。所望であれば、オリゴdTセルロースでのクロマトグラフィーのような標準技術により、mRNAを全RNAから単離することができる。これらの目的に適する技術は、前述の参考文献に記述されるように、当該技術分野において公知である。
【0041】
抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、公知の方法に従って逆転写酵素及びDNAポリメラーゼを用いて、同時に又は別々に作製することができる。これは、コンセンサス定常領域プライマーで、あるいは公開されている重鎖及び軽鎖DNA及びアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーで開始することができる。
【0042】
抗体の軽鎖及び重鎖をコードするDNAクローンの単離にPCRを用いることもできる。この場合、コンセンサスプライマー、又はマウスコンセンサス領域プローブのようなより大きな同種プローブでライブラリーをスクリーニングすることが可能である。必要な技術は当該技術分野における熟練者に公知であり、前述のSambrook及びAusubelの参考文献に説明されており、かつ以下に述べられる例により説明される。
【0043】
抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、CDRを単離する前に、あらゆる適切な宿主のあらゆる適切なベクターにおいて増殖させることができる。以下の例に説明されるように、このクローンは、しばしば、この目的のために、大腸菌内で最も都合よく増殖される。しかしながら、熟練者に公知の他の様々なベクター及び宿主細胞を本発明のこの側面において有利に用いることができる。そのようなベクターの様々なものが前述の参考文献に説明されている。
【0044】
DNA、典型的にはプラスミドDNAを、組換えDNA技術に関連する前述の参考文献に詳細に説明されている標準の公知技術に従い、細胞から単離し、制限地図を作製し、かつ配列決定することができる。
【0045】
ベクターにより抗体重鎖及び軽鎖並びにそれらの断片をコードするDNAを、キメラ及びCDRを移植したヒト化MN14抗体の構築に用いることができる。
【0046】
MN14の抗CEA mAbのCDRが本明細書で同定され、説明され、かつ図1及び図2(それぞれ、配列番号2及び配列番号4)に示されている。これらの配列を用いて、MN14重鎖及び軽鎖のCDRを本発明で用いるために合成することができる。天然資源からMN14のCDRを再クローニングする必要はない。そのDNA及びアミノ酸配列は本明細書に示されている。本発明のこの側面に適するオリゴヌクレオチド合成技術は熟練技術者に公知であり、幾つかの市販されている自動合成器のあらゆるものを用いて行うことができる。加えて、本明細書に説明されるCDRをコードするDNAは、商業DNA合成販売者のサービスにより得ることができる。
【0047】
本発明のこの側面によって合成されるポリヌクレオチドには、MN14のCDRを構成するものに加えて、このCDRに由来するものではないものも含まれ得る。異種からのFRへのこのCDRの結合を容易にするさらなる塩基を含んでいてもよい。この目的のために、制限部位又はオーバーラップした相補的な領域を含むこともできる。短い重複一本鎖DNAからの長い二本鎖DNAの合成は当該技術分野における熟練者に公知である。同様に、平滑末端DNA及び少なくとも部分的に重複する相補的な末端を有するものを含むDNAの末端間結合は公知である。これらの技術は、例えば、組換えDNA技術に関する前述の参考文献に説明されている。
【0048】
また、MN14重鎖及び軽鎖のCDRも、特にはキメラもしくはヒト化抗体に組込んだ後に、クローニングしたDNA又はRNA、もしくは合成DNA又はRNAにおける塩基の削除、挿入及び変更を行うための公知の組換えDNA技術を用いて、修飾することが可能である。この目的に適切な部位特異的突然変異誘発技術は当該技術分野における熟練者に公知であり、組換えDNA技術に関する前述の参考文献に説明されている。また、削除及び挿入技術も説明されている。これらの方法は、例えば、MN14のCDRをコードするポリヌクレオチド又はクローニングした重鎖もしくは軽鎖遺伝子の他の領域への所望の変更の導入に用いることができる。
【0049】
本発明に従い、MN14のCDR及び修飾MN14のCDRをFRのあらゆるセットに実用的に導入することができる。これに関して、ポリヌクレオチドをクローニングし、操作する様々な公知の技術を効果的に使用できることを当該技術分野における熟練者は予期するであろう。このような技術は、前述の組換えDNAに関連する参考文献に説明される方法によって示されている。
【0050】
本発明の特に好ましい態様において、MN14のCDRがヒト抗体に移植される。この文脈において、ヒト抗体は、ヒト体内に生じるあらゆる抗体又は、幾つかの点において、ヒト免疫系と適合し得るように設計されている加工抗体を指すことは理解されるであろう。この目的のためには、広くは、患者において不利な免疫応答を引き起こすことがない抗体が特に好ましい。より具体的には、「ヒト抗体」という表現は、ヒト体内において実際に生じる遺伝子、又はそれらの対立遺伝子、変種もしくは変異体によってコードされる抗体を意味することが意図されている。
【0051】
いったんMN14に由来するCDRを移植された抗体をコードするDNAが、MN14のVH及びVK領域DNA及び、それらにより形成されるヒト定常ドメインの軽鎖及び重鎖の各々と結合する可変領域から構築されると、通常の技術により、それを増殖及び発現のためのベクターに挿入することが可能である。この方法で、所望の量の抗体を得ることができる。
【0052】
このMN14のCDRを移植されたヒト抗体は、造影化合物又は同位体と結合するこのヒト化抗体又はそれらのFab’を被検体に投与することにより、造影用途に用いることができる。
【0053】
造影のためには、通常の方法を用いて、この抗体を標識に複合する。このような通常の方法には、1)抗体タンパク質又はそれらの断片の直接放射性ヨウ素化又は2)抗体又はそれらの断片への金属性核種の直接付着(例えば、Hansen et al., Cancer, 73: 761 (1994)を参照)が含まれるが、これらに限定されるものではない。様々な診断用及び治療用金属の抗体又はそれらの断片への結合に用いることができる二官能性キレートの使用も本発明の範囲内にある(Antibodies in Radiodiagnosis and Therapy, ed. M. R. Zalutsky, 1989, CRC Press, Boca Raton, FL、及びCancer Therapy with Radiolabeled Antibodies, ed. D. M. Goldenberg, 1994, CRC Press, Boca Raton, FLを参照)。複合手順及び生成物の特徴付けに続いて、ヒト患者において使用するための診断用組成物の生成に適する優良製造規範(Good Manufacturing procedures、「GMP」)に合致する条件下において、十分に標識された複合体を均質に精製する。
【0054】
MN14のCDRを移植された抗体及びこの複合体の造影剤部分との血清抗体の反応は、複合体の投与の前に得られた対照血清の反応を含めて、その診断手順の過程の全てにわたって決定することができる。同様の決定は、MN14それ自体の類似の複合体で処置されている他の患者においても行われる。これらの試験によって検出される、CDRを移植されたMN14ヒト抗体と反応する血清抗体は、マウスMN14含有複合体で処置されている患者において複合体の抗体部分と反応する抗体ではほとんどあり得ない。
【0055】
アミノデキストランに、及びホウ素に複合するヒト化MN14抗体は、診断用途に用いることができる。アミノデキストラン−ホウ素付加物に複合するためのMN14及びCDRを移植されたMN14抗体は、上に説明されるように調製することができる。アミノデキストラン−ホウ素付加物は、適切なホウ素ケージ化合物(例えば、アミノデキストラン官能基で適切に誘導形成されている12−ホウ素炭酸塩)の反応により調製することができる。好ましい態様においては、アミノデキストランを過剰のハロアセチル酸エステル又は(無水ヨード酢酸のような)無水物と反応させ、それにより、通常、反応条件及びアミノデキストランのサイズに応じて10〜1000基の範囲をとる、所望の数のハロアセチル基を有するアミノデキストランを生成させる。メルカプトカルボランB12のような適切なホウ素誘導体を、所望のモル過剰で、アルキル化反応により、ハロアセチル−アミノデキストランと反応させる。好ましい態様においては、ホウ素化ハロアセチルアミノデキストラン上の多数のハロアセチル基が未反応のまま残り、この付加物をタンパク質のチオール基に付着させるための「ハンドル」として用いることが可能である。
【0056】
MN14のCDRを移植されたヒト化抗体及びそれらの誘導体は、それらの免疫原性の低下により、治療において、血清疾患もしくはアナフィラキーショックのような望まれない免疫反応を伴うことのない受動免疫、上述のような腫瘍の位置測定及びin vivo造影、活性作用物質の局部濃度が重要な因子である疾患細胞の特定の処置、例えば、細胞毒、免疫調節剤もしくは他の薬学的に活性な分子の部位指向性送達等に有用であり、それらにより、これらのヒト化抗体の実用上の用途が確立される。上述のように、in vivo造影のためには、ヒト化したCDR移植MN14モノクローナル抗体を放射性標識し、又は放射性核種、例えばヨウ素、イットリウム、テクネチウム等と複合体を形成する金属キレート剤と複合させ、一次及び転移性CEA腫瘍の検出に放射性走査技術を用いることができる。この目的のため、この放射性抗体を、例えば静脈内に、注射し、ガンマ造影機を用いて規則的な間隔で患者を走査する。CEAを発現する腫瘍は他の組織よりも多くの放射性抗体を取り込み、造影カメラにより容易に認識される。131Iで標識されているモノクローナル抗体が、優先的に、体重kg当り15〜30μCiに相当する3〜10μgの量で用いられる。細胞障害作用物質を用いる治療のためには、この抗体を、ドキソルビシン、メトトレキセート、タキソール、リシンA、放射性原子、毒性作用物質のような様々な既知の治療剤に複合させ、そのような複合体を薬学的に許容し得る無菌担体中に処方し、その製剤を通常の手段により投与する。治療上の投与量は、これらの技術分野における平均的な技量を有する利用者により、通常通りに、容易に決定することができる。哺乳動物の治療用量は、患者の状態及び投与様式に応じて、モノクローナル抗体自体については体重kg当り約1mg〜5mg、細胞障害薬剤との複合体については体重kg当り0.1mg〜5mgである。あるいは、CEAが存在するガン細胞を被験者から除去するために、このヒト化抗体を、宿主の免疫系の要素、例えば補体系もしくは細胞介在応答と組み合わせて用いることができる。患者の免疫応答は、先行する方法により監視することができる。放射性造影及び治療のためのさらなる手順については、EP 0 323,806号、Hansen et al., Cancer 71: 3478-85 (1993)、及び米国特許第4,818,709号並びにそれらに含まれるを参考文献を参照のこと。これらの全ては引用することにより本明細書に組込まれる。
【0057】
Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1989に記述されるもののような非経口投与のための医薬調製品が好ましい。最終調製品は、0.01%〜50%の活性成分を含有する。このような複合体の製造方法及び診断及び治療におけるそれらの使用は、例えば、Shih et al., 米国特許第5,057,313号、Shih et al., Int. J. Cancer 41: 832 (1988)、同時継続中の同一出願人による米国特許出願第08/162,912号、及びMcKearn et al., 米国特許第5,156,840号に示されており、それらの内容は引用することにより本明細書に組込まれる。
【0058】
上述のように、治療のためには、ヒト化抗体複合体及び薬学的に許容し得る担体を治療上有効な量で患者に投与する。投与される量が生理学的に意味のあるものである場合、複合体と薬学的に許容し得る担体との組み合わせは、「治療上有効な量」で投与されると言われる。ある作用物質が存在することで、投与される患者の生理状態に検出可能な変化を生じる場合、その作用物質は「生理学的に意味がある」。標的とされる治療剤は、等価の非標的作用物質を全身投与したときに、それが投与された用量のより高い割合を目的の標的に送達し、その標的に付着する場合、「治療上有効」である。
【0059】
治療上有効であるためには、複合体及び担体は、他の治療剤と組み合わせるか、又はより広範な治療投薬計画の一部として投与することが必要となることがある。現在、組み合わせ治療アプローチで用いられる場合に標的治療剤の効果がしばしば大きく増大し得るという意見が医師らの間にはある。例えば、単独で用いられた場合重度の血液毒性を引き起こすB細胞リンパ腫の高用量の放射免疫治療は、自己骨髄再注入と組み合わせて用いた場合、非常に効果的であることが示されている。Press et al., “Treatment of Relapsed B Cell Lymphomas with High Dose Radioimmunotherapy and Bone Marrow Transplantation" in CANCER THERAPY WITH RADIOLABELED ANTIBODIES, Goldenberg, ed. (CRC Press, Boca Raton, 1994) ch. 17参照。別の例においては、腫瘍が予備照射されている場合、腫瘍による放射標識抗体の取り込みの5倍の増強が観察される。Leichner et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 14: 1033 (1987)参照。放射免疫治療の臨床上の効力を改善する潜在力を有することが示されている機構が、DeNardo et al., “Overview of Obstacles and Opportunities for Radioimmunotherapy of Cancer" in CANCER THERAPY WITH RADIOLABELED ANTIBODIES, Goldenberg, Ed. (CRC Press, Boca Raton, 1994) ch. 11にも論じられている。用量制限副作用の研究並びに標的の狙い付け、取り込み及び有益な副作用の増強及び増幅に加えて、そのような組み合わせプロトコルを開発する方法はこの分野における熟練臨床技術者に公知であり、開発に過度の実験を必要としない。
【0060】
診断及び治療剤とのヒト化MN14の複合体を用いるin vivoでの実験は、動物モデル及びヒト患者で実施されている(以下の例11を参照)。CDRを移植されたヒト化抗体複合体は、良好な治療上のプロフィールを示し、親であるMN14抗体複合体よりも長い治療投与計画で用いることが可能であった。CDRを移植された抗体複合体は、対照マウス抗体複合体よりも治療効果が良好であり、有害な副作用が少なかった。
【0061】
例えば、誘導体形成の目的で、上記Shih et al.によって記述される方法を用い、炭水化物ヒドロキシル基を用いて、この抗体をアミノデキストラン結合メトトレキセートと共有結合により複合体を形成させた。免疫活性に対する抗体炭水化物基の寄与を決定するため、哺乳動物細胞において遮断遺伝子が発現する前にグリコシル化部位、NVTを導入するように、hMN14(接頭辞「h」は「ヒト化」を意味することが意図されている)のVK FR1領域の18〜20位に変異を導入することができる。遮断細胞結合検定におけるhMN14抗体と変異hMN14−NTVとの比較(図8)は、18位の炭水化物部分にはこのヒト化抗体の免疫反応性に対する影響がないことを示している。
【0062】
平均分子量40kDaのアミノデキストランをNaIO4で酸化して(ヒドロキシル基の酸化により)アルデヒドを形成する。反応条件及びタイミングを注意深く制御することにより、アミノデキストランのモル当たり約50〜150モルのアルデヒド基が導入される。次に、このアルデヒドを過剰の1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンと反応させ、実質的に全てのアルデヒドとシッフ塩基を形成させる。次いで、このシッフ塩基を過剰のNaBH4で処理することにより還元する。その後、このアミン誘導デキストランをゲル排除クロマトグラフィーにより精製する。
【0063】
細胞障害性薬剤メトトレキセート(MTX)は、ジメチルホルムアミド中で、ジシクロカルボジアミドで処理し、次いでN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させることにより活性化する。活性化されたMTXを、水溶液中において、50:1の比でアミノ誘導デキストランと混合する。この生成物から、精製後に、モル当たり約35MTXモルを有するMTX誘導デキストランが得られる。このように得られたMTX付加物を、前出のShih et al.に記述される方法を用いて、MN14のCDRを移植された抗体に結合させる。例えば、抗体の炭水化物を酸化し、得られたアルデヒドを付加物中のデキストランの残留アミンと反応させる。それにより得られたシッフ塩基産物を、抗体の10倍モル過剰のシアノホウ水素化ナトリウムで処理することにより還元する。この還元抗体−デキストラン−MTX産物を検定の前に完全に精製し、患者に投与するために処方する。
【0064】
対照として、同じ方法で、親MN14抗体をデキストラン−MTXに結合させる。
【0065】
このCDRを移植された精製した抗体複合体は、CEA産生ガンを有する患者に投与することができる(上を参照)。この治療に対する副作用、特に患者の免疫系が介在するものを含む応答を監視する。このCDRを移植された抗体複合体で治療した患者は、治療結果の改善、その作用物質に対する免疫応答の減少及び治療の免疫介在有害作用の顕著な減少を示す。このCDRを移植された抗体複合体を用いる治療は、親マウスMN14抗体を用いるものより高い投与量で、かつより長い期間行うことが可能であり、より積極的な治療と応答の改善を可能にする。
【0066】
本発明を、以下の説明のための例を参照することによりさらに説明する。MN−14軽鎖及び重鎖遺伝子をコードするDNAクローンの単離に関する技術が、産生細胞からのあらゆる抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子の単離に有用なクローニング技術によって説明されることは、予期されるであろう。配列が開示されているので、本発明を実施するためにMN14重鎖及び軽鎖遺伝子を再単離する必要はない。
【0067】
この詳細な説明及び具体的な例は、本発明の好ましい態様を示すものではあるが、説明のためだけに示されるものであることは理解されるべきである。これは、本発明の精神及び範囲内にある様々な変更および変形が、以下の説明のための記述から、当該技術分野における熟練者に明らかとなるためである。
【0068】
実施態様例
以下は、本発明の実施態様例である。
1.親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体由来の軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域のフレームワーク(FR)の各々とを含むヒト化モノクローナル抗体またはその断片であって、該ヒト化抗体は、該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の特異性を保持するものの、ヒト患者において該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体よりも免疫原性が小さく、該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のCDRが、KASQD VGTSV A(配列番号20)を含むCDRL1と、WTSTR HT(配列番号21)を含むCDRL2と、QQYSL YRS(配列番号22)を含むCDRL3とを含んでなり、該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の重鎖可変領域のCDRが、TYWMS(配列番号23)を含むCDRH1と、EIHPD SSTIN YAPSL KD(配列番号24)を含むCDRH2と、LYFGF PWFAY(配列番号25)を含むCDRH3とを含んでなることを特徴とするヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【0069】
2.(a)軽鎖可変領域が、式FRL1−CDRL1−FRL2−CDRL2−FRL3−CDRL3−FRL4(ここで、FRの各々はヒト抗体のフレームワーク領域であり、CDRの各々は該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の軽鎖の相補性決定領域である。)により特徴付けられ、(b)重鎖可変領域が、式FRH1−CDRH1−FRH2−CDRH2−FRH3−CDRH3−FRH4(ここで、FRの各々は、ヒト抗体のフレームワーク領域であり、CDRの各々は親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の重鎖の相補性決定領域である。)により特徴付けられるパラグラフ1に記載のヒト化モノクローナル抗体。
【0070】
3.FRL1が、ヒト抗体のFRL1に天然に生じる約23個のアミノ酸の領域を含み、FRL2が、ヒト抗体のFRL2に天然に生じる約15個のアミノ酸の領域を含み、FRL3が、ヒト抗体のFRL3に天然に生じる約32個のアミノ酸の領域を含み、FRL4が、ヒト抗体のFRL4に天然に生じる約10個のアミノ酸の領域を含み、FRH1が、ヒト抗体のFRH1に天然に生じる約28〜32個のアミノ酸の領域を含み、FRH2が、ヒト抗体のFRH2に天然に生じる約28〜32個のアミノ酸の領域を含み、FRH3が、ヒト抗体のFRH3に天然に生じる約30〜34個のアミノ酸の領域を含み、FRH4が、ヒト抗体のFRH4に天然に生じる約9〜13個のアミノ酸の領域を含むことを特徴とするパラグラフ2に記載のヒト化モノクローナル抗体。
【0071】
4.FRL1のアミノ酸配列が、DIQLT QSPSS LSASV GDRVT ITC(配列番号26)であり、FRL2のアミノ酸配列が、WYQQK PGKAP KLLIY(配列番号27)であり、FRL3のアミノ酸配列が、GVP(S又はD)R FSGS(G又はV) SGTDF TFTIS SLQPE DIATY YC(配列番号28)であり、FRL4のアミノ酸配列が、FGQGT KVIEK(配列番号29)であり、FRH1のアミノ酸配列が、EVQLV ESGGG VVQPG RSLRL SCSSS GFDFT(配列番号30)、EVQLV ESGGG VVQPG RSLRL SCSAS GFDFT(配列番号31)又はQVQLQ ESGPG LVRPS QTLSL TCTSS GFDFT(配列番号32)であり、FRH2のアミノ酸配列が、WVRQA PGKGL EWVA(配列番号33)、WVRQA PGKGL EWIA(配列番号34)又はWVRQP PGRGL EWIA(配列番号35)であり、FRH3のアミノ酸配列が、RFTIS RDNSK NTLFL QMDSL RPEDT GVYFC AS(配列番号36)、RFTIS RDNAK NTLFL QMDSL RPEDT GVYFC AS(配列番号37)又はRVTML RDTSK NGSFL RLSSV TAADT AVYYC AS(配列番号38)であり、FRH4のアミノ酸配列が、WGQGT PVTVS S(配列番号39)又はWGQGT TVTVS S(配列番号40)である(ここで、Cはスルフィドリル型又はジスルフィド型であってもよい)パラグラフ3に記載のヒト化モノクローナル抗体。
【0072】
5.親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体又はその断片の軽鎖可変領域のCDRを含んでなるヒト化抗体軽鎖又はその断片であって、該CDRが、KASQD VGTSV A(配列番号20)を含むCDRL1と、WTSTR HT(配列番号21)を含むCDRL2と、QQYSL YRS(配列番号23)を含むCDRL3とを含んでなることを特徴とするヒト化抗体軽鎖又はその断片。
【0073】
6.親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体又はその断片の重鎖可変領域のCDRを含んでなるヒト化抗体重鎖又はその断片であって、該CDRが、TYWMS(配列番号23)を含むCDRH1と、EIHPD SSTIN YAPSL KD(配列番号24)を含むCDRH2と、LYFGF PWFAY(配列番号25)を含むCDRH3とを含んでなることを特徴とするヒト化抗体重鎖又はその断片。
【0074】
7.親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域と、ヒト抗体の軽鎖定常領域及び重鎖定常領域とを含んでなるキメラモノクローナル抗体又はその断片であって、該キメラ抗体は、該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の特異性を保持しつつ、ヒト患者において該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体よりも免疫原性が小さく、該キメラモノクローナル抗体が、配列番号4の軽鎖可変領域と、配列番号2の重鎖可変領域とを含んでなることを特徴とするキメラモノクローナル抗体またはその断片。
【0075】
8.配列番号4を含むマウスクラスIII抗CEA抗体軽鎖又はその断片。
9.配列番号2を含むマウスクラスIII抗CEA抗体重鎖又はその断片。
【0076】
10.該マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体が、MN14モノクローナル抗体であることを特徴とするパラグラフ1〜9のいずれか一に記載のモノクローナル抗体、軽鎖、又は重鎖。
【0077】
11.該断片が、F(ab')2 or Fab'であるパラグラフ1〜4又は7のいずれか一に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
12.ガン患者の治療に使用するためのパラグラフ1〜4、7、10又は11の何れかに記載のモノクローナル抗体又はその断片。
13.ガン患者の治療に使用するためのパラグラフ12に記載のモノクローナル抗体又はその断片と治療物質との治療用組み合わせ物。
【0078】
14.ガン患者の診断又は治療に使用するための、パラグラフ1〜4、7、10又は11に記載のモノクローナル抗体又はその断片に結合している診断物質又は治療物質を含んでなる複合体。
【0079】
15.該治療物質が細胞障害剤を含むことを特徴とする、パラグラフ12に記載のモノクローナル抗体又はその断片、パラグラフ13に記載の治療用組み合わせ物、又はパラグラフ14に記載の複合体。
【0080】
16.該細胞傷害剤が、ドキソルビシン、メソトレキセート、タキソール、リシンA、又は放射性核種であることを特徴とする、パラグラフ15に記載のモノクローナル抗体、治療用組み合わせ物又は複合体。
17.該放射性核種が131Iであることを特徴とする、パラグラフ16に記載のモノクローナル抗体、治療用組み合わせ物、又は複合体。
【0081】
18.該治療物質が免疫調節剤であることを特徴とする、パラグラフ12のモノクローナル抗体又はその断片、パラグラフ13の治療用組み合わせ物、又はパラグラフ14の複合体。
19.該治療物質が、ガン患者の治療に使用するための治療物質と結合しているパラグラフ14の複合体であることを特徴とするパラグラフ13の治療用組み合わせ物。
【0082】
20.該治療物質が、ガン患者の診断に使用するためのイメージング剤を含むことを特徴とするパラグラフ14の複合体。
21.該イメージング剤が、放射性核種であることを特徴とするパラグラフ20の複合体。
【0083】
22.パラグラフ1〜11のいずれか一に記載のモノクローナル抗体、軽鎖、又は重鎖をコードする単離DNA。
23.パラグラフ22のDNA配列を発現するためのベクター。
24.パラグラフ22のDNA配列を発現する形質転換した細胞。
【0084】
25.パラグラフ20の形質転換した細胞を培養して、モノクローナル抗体、軽鎖又は重鎖を生成するステップを含む、パラグラフ1〜11のいずれか一に記載のモノクローナル抗体、軽鎖、又は重鎖を発現するための方法。
【実施例】
【0085】
例1
抗体産生細胞の培養
上記Hansen et al. (1993)及び上記Primus et al. (1983)に従い、クラスIII、抗CEAモノクローナル抗体を産性するマウス/マウスハイブリドーマ細胞系を確立した。
【0086】
標準イソタイプ決定技術を用いて調整培地(conditioned medium)を試験することにより、κIgG1の分泌について細胞を選択した。このための様々なキットが市販されている。これらの細胞を、上述の標準遮断検定を用いて調整培地を試験することにより、抗体の産生についてスクリーニングした。この検定において確認された産生細胞のストックを増殖させ、液体窒素中で凍結した。
【0087】
例2
産生細胞系からのRNAの単離
MN14産生細胞を培養で増殖させ、遠心によって集めて洗浄した。全RNAを、このペレットの細胞から、Favaloro et al., Methods in Enzymology 65: 718 (1980)及びOrlandi et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 86: 3833 (1989)に従って単離した。これらは、参照することにより組込まれる。
【0088】
例3
cDNA合成及び重鎖可変領域の増幅
MN14産生細胞からのmRNAを、以下に記述されるように、cDNA合成の標準技術を用いるcDNA合成及びPCRによるDNA増幅に用いた。一般には、PCRに用いられるプライマーは、増幅産物のクローニングを容易にするため、それらの5’末端に制限エンドヌクレアーゼ切断部位を有していた。マウスIgG重鎖の第1の定常領域ドメイン(「CH1」)をコードするDNAのセンス鎖の末端に相補的なオリゴヌクレオチドを、逆転写酵素による第1鎖cDNA合成の誘発に用いた。このプライマーの配列、CG1FOR、を表1に示す。下記表1には、本明細書で用いられる他のオリゴヌクレオチド配列も示される。
【0089】
【表1】

【0090】
クローニングを容易にするためにプライマーに組込まれている制限部位には下線が付されている。
【0091】
次に、重鎖(「VH」)cDNAの可変領域を、上に引用されるOrlandi et al. (1989)に記述されるように、PCRにより、同じプライマー、CG1FOR、及びVH遺伝子の5’末端のコンセンサス配列に基づくプライマー(VH1BACK)を用いて増幅した。この反応のPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析した。これにより、エチジウムブロマイド染色及び蛍光照明で、期待通り約400bpの1つの主要バンドが明らかになった。
【0092】
第2のcDNA調製品からの配列を確かめるため、PCRにおいてシグナル配列プライマーを用いてN末端の真正アミノ酸の決定を可能にした。重鎖シグナル配列コード領域に基づく分解オリゴヌクレオチドであるSH1BACK及びSH2BACKを、CG1FORに関連する別々の反応に用いた。CG1FOR、SH1BACK増幅から拡散産物バンドが得られた。
【0093】
この産物のVH含量を増大させるため、これを低融点アガロースから切り出し、SH1BACK及び第4のフレームワーク領域コンセンサス配列に相補的なオリゴヌクレオチド、VH1FOR、を用いて増幅した。この反応の産物は、アガロースゲル電気泳動で分析した場合、別のバンドであった。
【0094】
例4
PCRにより得られた、MN14重鎖可変領域をコードするDNAのクローニング及び配列決定
CG1FOR、VH1BACKプライマー対を用いて得られた増幅産物をHindIII及びPstIで別々に消化した。これらの酵素の開裂部位はこれらのPCRプライマーに含まれる。このVH内部にも部位があるのかどうかを決定することが好ましかった。この制限断片のアガロースゲル分析は、このDNAの一端に近接する内部PstI部位の存在を示した。このPCR産物をHindIII及びPstIで消化し、M13mp18及びM13mp19にクローニングして、それぞれのクローンの挿入断片(インサート)のDNA配列を決定した。大部分のクローンが同じVHのDNAの挿入断片を有していた。
【0095】
この配列決定により、このさらなる予期せざるPstI部位の存在が確認された。この部位は、VHの最後の2つのアミノ酸を部分的にコードするCG1FORプライマーの配列の3’末端に近接していた。この方法により幾つかの完全長VHクローンが得られたが、さらなるPCR産物DNAをPstI−PstI断片としてクローニングした。このため、これらのクローンは完全VH配列は有するが、CG1FORによって与えられる定常領域は有していなかった。VK1BACK、CG1FOR産物から、合計16の完全長クローンが得られた。これらの実験において、分析されたクローンの約25%がVH領域と無関係の挿入断片を有していた。
【0096】
第2のcDNA調製品からのVH配列を確認し、同時に、このVHのN末端に対応する、プライマーが指定するものではない本当のDNA配列を得るため、VH1FOR及びSH1BACKプライマーからのPCR産物をクローニングした。これらのプライマーは、上述のCG1FOR及びVH1BACKのPstI及びHindIII部位ではなく、BstEII及びEcoRI制限部位を有する。この反応のPCR産物を、BstEIIで消化し、このBstEII末端を埋め、EcoRIで消化し、このEcoRI及び平滑末端をEcoRI及びHindIIで消化されているベクターに連結することによりクローニングした。このクローニング断片の配列を決定した。このVH断片の収量は比較的少なかった。これは、おそらく、SH1BACKの縮重によって引き起こされるPCRにおける特異性の欠如を反映している。しかしながら、配列決定された18のクローンのうちの4つは、以前に配列決定されている通りのMN14のVH領域をコードするDNAを有していた。他の挿入断片はVHをコードしているDNA由来ではなかった。
【0097】
全部で、20の完全長MN14のVHクローンが得られた。これらのMN14のVH領域クローンにおける配列の中で、5つの一過性変異が観察された。これらの変異は、増幅の間に、Taqポリメラーゼによる誤った取り込みの結果として導入されたもののようである。
【0098】
例5
MN14の重鎖可変領域のアミノ酸配列の分析
VHのDNA配列から翻訳されたマウスMN14重鎖可変領域のアミノ酸配列を図1に示す(配列番号1及び配列番号2)。この配列とマウスVHサブグループを表す配列との比較は、MN14の重鎖可変領域がサブグループIIIB(Kabat et al. SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST, U. S. Government Printing Office, 1987を参照)に属することを示した。
【0099】
MN14のCDRの配列は、前出のKabat et al.(1987)によって報告されているいかなるものとも異なる。さらに、MN14重鎖VHフレームワーク領域の4つの位置のアミノ酸が、他のサブグループIIIBのVH配列のフレームワーク領域のものとは異なる。これらの4つの置換(Ser14、Thr30、Ser94及びPro108)は、IIIB VHサブグループ以外の他のマウスVH領域において観察されているが、Kabatの108位のプロリンが最も異例である。
【0100】
VH又はVKにおけるあらゆる異例の残基は、マウスMN14の結合に有利であることが立証されている体細胞変異を表すことがある。
【0101】
例6
cDNA合成及びMN14 VKをコードするDNAの増幅
MN14のκ軽鎖をコードするcDNAを、上述の重鎖の可変領域をコードするcDNAと同様の方法でクローニングした。κ鎖cDNAの第1鎖を合成するための逆転写酵素を誘発するのに、幾つかのプライマーを用いた。プライマーの1つであるCK2FORの配列は、κ軽鎖遺伝子の定常領域(「CK」)の5’末端の配列から誘導した。他の2つのプライマー、VK1FOR及びVK3FOR、の配列は、κ軽鎖遺伝子の可変領域(「VK」)の3’末端の配列をベースとした。
【0102】
第1鎖DNA産物を、PCRにより、多くのプライマー対を用いて増幅した。一方向への合成を第1鎖の作製に用いたプライマーにより誘発した。もう一方の、「逆」方向への重合は、VK領域の5’末端の配列であるVK1BACK、VK2BACK、VK3BACK、VK4BACK及びVK8BACK、又はシグナルペプチドの最後の4つのアミノ酸及び可変領域の最初の4つのアミノ酸をコードする配列であるVK5BACK、VK6BACK及びVK7BACKのいずれかに基づく配列を有する一連のκ軽鎖特異的プライマーで開始した。加えて、CK2FORで誘発したcDNAも、VK1FOR及びVK8BACKを用いて増幅した。
【0103】
これらの増幅産物を、上記の例に記述されている方法で、ゲル電気泳動により分析した。VK1BACK、VK3BACK、VK5BACK、VK7BACK及びVK8BACKで誘発する反応からの生成物が、期待通りの350bpのバンドを生じた。
【0104】
例7
PCRによって得られたMN14κ軽鎖可変領域のクローニング及び配列決定
選択されたPCR産物を、上記例4においてVHについて説明されているのと同様の様式で増幅プライマーに含まれる制限部位を用いて、M13mp18及びM13mp19にクローニングした。ヌクレオチド配列決定により、大部分の挿入断片がVK関連ではなかったことが明らかとなった。これは、VKのcDNAのクローニングを試みる場合、異例のことではなく、VH特異的プライマーよりもVK特異的プライマーを設計することが困難であるように思われる。
【0105】
VK1FOR/VK8BACKの組み合わせからVKのcDNA挿入断片が得られたが、CDRL3をコードするcDNA内でのフレームシフト及び23位に不変Cysが存在しないことにより、これは機能的なVKを生じなかった。このVKのcDNAは他のハイブリドーマから単離されており、これはSp2/0融合パートナーに由来する。CK2/VK1BACK産物は、この場合フレームワーク4の保存残基を欠く、さらなる4つの異なる異常VK cDNA挿入断片を生じた。このプライマー対を用いて得られた50のVK挿入断片は、明らかにこのプライマーのミスマッチが誘発するずれによる現象であるVK1BACKの3’末端でのフレーム移動を除いて、機能的VKのものであった。この問題は、VK遺伝子までは伸長しないVK8BACKを用いることにより、回避することができる。しかしながら、VK1FOR/VK8BACK産物からのさらなるクローンの分析は所望の挿入断片を生じなかった。
【0106】
推定VKを優先的に増幅するため、その真正第4フレームワーク配列からVK3FORを設計し、VK1FORの代替物として合成した。VK3FOR及びVK8BACKを用いるVK3FOR誘発cDNAの増幅により所望のVKを含む4つのクローンが生じ、この戦略は成功した。
【0107】
マウスMN14κ軽鎖可変領域のDNA及びアミノ酸配列が図2に示されている(配列番号3及び配列番号4)。このMN14のVKは、KabatのVKサブグループVに位置し得る。このMN14 VKフレームワーク領域の僅か3つの残基(Met10、Val66及びThr76)だけがこのサブグループの他のメンバーに現れない。Met10及びVal66がこの3つのうちで最も異例である。これらは、Kabatに列挙されているマウスVKのいかなるものにも見出されない。これらのMN14のVKのCDRには、Kabatにおいて以前報告されている配列はない。
【0108】
例8
ヒト抗体の可変領域へのMN14のVH及びVKのCDRの移植
8.1 キメラ抗体発現ベクターの構築
マウス可変領域及びヒト定常領域からなるキメラ抗体の生成において、親マウス抗体と一緒に試験することは、正しい可変領域cDNAが単離されていることをチェックするのに役立った。また、成功したキメラ抗体は、ヒト化されたものの結合を評価する際、有用な対照としても機能する。発現のための可変領域のクローニングにおいて用いられた配列は前出のOrlandi et al. (1989)に記述されており、図3及び4に示されている。
【0109】
VHのDNAを、オリゴヌクレオチドVH1BACK及びVH1FORを使用するPCRを用いて、M13クローンMNVH41から増幅した。これらのプライマー中のPstI及びBstEII制限部位は、発現のための正しい背景の下で、M13VHPCR1にVHが挿入されることを可能にする。この時点で、VHの内部BamHI制限部位を部位指向性突然変異により除去した。M13VHPCR1のHindIII−BamHI断片全体を包含するこの反応生成物をpSVgptにクローニングし、VH配列を確認した。
【0110】
その後、上記Takahashi et al., Cell, 29: 671-679 (1962)によって公開されているヒトIgG1定常領域遺伝子をこの構築物にBamHI断片として加え、これにより、pSVgptMN14MuVHHuIgG1と呼ばれるベクターを得た。
【0111】
同様に、プライマーVK8BACK及びVK3FOR並びにM13VKPCR1にクローニングされているPvuII、BglII消化産物を用いるPCR増幅より、M13クローンMNVK154からVK DNAを得、それにより可変領域の配列をチェックした。HindIII−BamHI断片をRFのDNAから切り出し、プラスミドpSVhygに移した。この構築物は、Hieter et al., Cell, 22: 197-207 (1980)に記述されるように、既にヒトκ定常領域遺伝子を有する。このようにして得られた最終ベクターはpSVhygMN14MuVKHuCKと名付けられた。
【0112】
8.2 ハイブリッド抗体の発現及び試験
M13KLHuVHAIGAのHindIII−BamHI断片をプラスミドpSVgptに挿入し、発現ベクターpSVgptKLHuAIGAHuIgG1を得た。同様に、M13HuVKのHindIII−BamHI断片をプラスミドpSVhygに挿入し、発現ベクターpSVhygMN14REIHuVKHuCKを得た。約5μgのpSVgptMN14MuVHHuIgG1及び10μgのpSVhygMN14MuVKHuCK DNAをPvulで直鎖状にして、170V、960μFのシングルパルスのBioRadモデル165BR1160ジーン・パルサー・エレクトロポレーター(Gene Pulser Electroporator)を通常通り用いるエレクトロポレーションにより、約107個の半集密SP2/0ミエローマ細胞に移した。24ウェルプレートにおいて、DMEM+10%FCS成長培地にマイコフェノール酸及びキサンチンを添加することにより、gpt遺伝子の発現について細胞を選択した。
【0113】
生存細胞のコロニーを含むウェルを同定した。その培地上清をこれらのウェルから取り除き、ヒト抗体について検定した。抗体を分泌するコロニーを増殖させ、より多量の抗体を単離するため0.5Lの調整培地を得た。
【0114】
通常通り、最初に、プロテインAアガロースアフィニティクロマトグラフィーにより、この培地から抗体を精製した。精製した抗体を、未変性MN14抗体、ヒト抗体及び他の対照を参照して、さらに特徴付けた。
【0115】
また、この抗体を、MN14遮断検定におけるその反応プロフィールによっても特徴付けた。これにより、このハイブリッド抗体のCEA結合親和性と、ポジティブコントロールとして役に立つMN14マウス抗体によるCEA結合とによって、情報を提示する比較が得られた。
【0116】
8.3 MN14抗体のヒト化
ヒトNEWM VH、KOL VH及びREI VKフレームワークがヒト体内で寛容性であるように思われるため、それらを抗体の再構成のための基礎として選択した。MN14のVH(配列番号2)及びVK(配列番号4)とこれらのヒト可変領域とを並べたものを図5に示す(配列番号5〜7)。
【0117】
A.NEWMベースのヒト化
MN14のCDRを導入するための開始点は、必須FR及び無関係のCDRをコードするDNAである。これらのテンプレートの可変領域は、用いられる発現ベクターに適合する形態、すなわち、HindIII−BamHI断片中にあり、本明細書にはプロモーター領域、シグナルペプチド及びイントロンDNAも含まれる(図3及び図4)。NEWM VHでのものについては、このテンプレートはM13VHPCR1(上記Orlandi et al.、及び下記8.3項)である。KOL FR及び無関係のCDRを含む、このテンプレートの誘導体を、KOLコード領域の生成に用いた。M13VKPCR1(上記Orlandi et al.)の誘導体をHuVKベクターの作製において用いた。得られたベクターを、M13NMHuVH、M13KLHuVH及びM13HuVKと名付けた。ヒト化MN14可変領域DNAを有するHindIII−BamHI断片を、本質的に例8.1においてキメラMN14発現ベクターの構築について記述される通りに、これらのM13ベクターから発現ベクターに移した。
【0118】
NEWM FRは、Poljak et al. Biochemistry 16: 3412-20 (1977)に説明されている。そのマウス等価物のものに匹敵する、CEAに対する親和性を有するhMN14の構築を、段階的なアプローチで達成した。キメラ抗体の生成は、ヒト化されたものの結合を評価する場合に、有用な対照を提供する。ヒトNEWM VH及びREI VKフレームワークを抗体を再構成するための基礎として最初に選択した。これは、これらがヒト体内において寛容性であることが知られているためである。MN14の残基Phe27、Asp28及びThr30は保持した。これは、Kabatの超可変領域であるCDR1残基31〜35の一部ではないものの、それらのアミノ酸がCDR1構造ループ(Chothia et al., J. Mol. Biol. 176: 901-917 (1987))の一部であるためである。加えて、以下の理由により、ヒト化VHへの組込みのために次の残基も選択した。すなわち、Ala24、この残基はCDR1に接触する。Arg71、この残基の側鎖はこのドメインの中心を通して突き出し、CDR1及びCDR2と相互作用する。ほんの少しのValの置換はこれらのCDRループの立体配座を変更し得る。ならびに、Ser94、大部分の抗体はこの位置にArgを有しており、そこではCDR3のAsp残基と相互作用するものと考えられ、NEWMがArgを含むとマウスCDRとの望ましくない相互作用を形成することがあり得るという理由である。他の再構成分子において重要であることが立証されている領域に相当する3つの領域において、このバージョン(NMHuVH)に対する他の変更がなされた。これらの変更は以下のものであった。
【0119】
(i)Gln77Phe78Ser79からThrLeuTyr(NMHuVhHTLY、配列番号9)
(ii)Ser82Thr83Ala84Ala85からLysArgSerGlu(NMHuVhHKRSE、配列番号10)
(iii)Arg66Val67Thr68Met69Leu70からLysPheIleValSer(NMHuVhKFIVS、配列番号11)
【0120】
このNEWM VHフレームワークの異なるバージョン(配列番号5及び8〜11)とMN14 VH(配列番号2)とのアラインメントを図6に示す。これらのバージョンの各々は、同じHuVKと対を形成している。TLY又はKFIVSモチーフのいずれかを含むことにより、約2倍の改善が得られた。
【0121】
上記Kabat et al.(1987)に示されているNEWNフレームワーク配列とは2つの相違がある。すなわち、S107からT及びL108からT。Kabatは、残基1をPCAとして、かつ残基5及び6をE又はQとして列挙している。
【0122】
B.KOLベースのヒト化
NEWM VHの使用と平行して、我々はヒトKOL VHも再構成している。KOL VHは、Schmidt et al.,Z.physiol.Chem,364:713−747(1987)に説明されている。抗体のヒト化に用いられたFRはKabatに示されるものと同様である。このKOLベースのVHの本来のバージョンは、残基の可変性の観点で定義される(上記Kabat et al.)、MN14のCDR及び3つのさらなるマウス残基を有していた。NEWM VHを用いた場合と同様に、これらの置換のうちの2つが生じた。これは、βシートフレームワークから伸びる実際のペプチドCDR1構造ループが残基25〜32からなる(上記Chothia et al. 1987)ためである。28位及び30位での変更は、このループが全体としてマウス抗体から移植されるのを可能にする。KOL VHのArg残基がAsp110との塩架橋に関与し、NEWM VHを用いた場合と同様に、Arg94の保持がMN14のCDR3構造を撹乱することがあるように思われたため、MN14残基94が含められた。残基94の側鎖はCDR1の残基とも相互作用し得る。この基本MN14 KOLHuVH(配列番号12)に対してなされた他の変更は以下の通りである。
【0123】
(i)Ser24からAla24及びVal48Ala49からIleGly(KLHuVhAIG、配列番号13)。
(ii)Ser24からAla24、Val48Ala49からIleGly、及びSer74からAla(KLHuVhAIGA、配列番号14)。
(iii)Ser24からAla24、Val48Ala49からIleGly、Ser74からAla及びPhe79からTyr(KLHuVhAIGAY、配列番号15)。
【0124】
変異の論理的説明
Ala24−CDR1のループは、残基29の側鎖のフレームワークへの浸透によって固定されている。残基24は、それが相互作用するものの1つである(Chothia et al., J. Mol. Biol. 227: 799-817 (1992))。
【0125】
Ile48Gly49−これらの残基の両者はCDR2超可変領域に隣接するものの、実際の構造ループからはかけ離れている。両残基は完全に埋もれており(Padlan, Mol. Immunolog. 28: 489-498, 1991)、これらがそれらのパッキング相互作用により結合を行うことが可能であるように思われた。
【0126】
Ala74−この残基はVH抗原結合表面に見出される第4ループの一部であり、その側鎖は溶媒にほとんど完全に露出している(上記Padlan, 1991)。この残基と抗原との直接相互作用を予想することができた。
【0127】
Tyr79−残基74と同様に、この残基は抗原結合部位に近接し、結合を行うことが可能である。
【0128】
KOL VHフレームワークの異なるバージョン(配列番号7及び12〜15)とNEWMベースのバージョン(配列番号5及び8〜11)及びマウスMN14(配列番号2)のアラインメントを図6に示す。
【0129】
MN14HuVH及びMN14HuVLのDNA配列及び翻訳産物をそれぞれ図7及び8に示す(それぞれ、配列番号16〜19)。
【0130】
抗体KLHuVHAIGA/HuVKのようなヒト化KLHuVHの変種を精製し、以下のように遮断検定において試験を行った。抗体を、指定された濃度で、HRP標識MN14と共に添加し、最終容積0.1mlとした。37℃で30分間インキュベートし、洗浄して未結合の抗体を除去した後、残留結合ペルオキシダーゼ活性から抗体の相対親和力を決定した。図9の検定データによって示されるように、「再構成」(すなわち、FRにCDRが移植されている)ヒト化抗体の活性は、キメラ及びマウス陽性対照のものと同等であった。
【0131】
KLHuVHAIG/HuVK及びKLHuVHAIGAY/HuVK抗体を分泌する細胞からの上清液を用いて得られた結果は、これらが、KLHuVHAIGA/HuVK抗体のものと同等の遮断活性を有することを示唆する。
【0132】
C.REIベースのヒト化
REI VLは、Epp et al., Eur. J. Biochem., 45: 513-24 (1974)に説明されている。REIフレームワークにおいては、結合を改善するための変更は行わなかった。Kabat et al. (1987)に示される配列からの変更は、M4からL、T39からK、Y71からF、L104からV、Q105からE、及びT107からKである。これらの変更は、MN14 CDRを移植するときに用いられるテンプレートに予め存在し、結合を改善するために特異的に作製されはしなかった。M4のLへの変更は制限部位を組込むが、残りの相違がREIフレームワークの異例の残基を取り除く。類似のフレームワークが、Foote et al., J. Mol. Biol. 224: 487-9 (1992)により、ヒトκサブグループIのコンセンサスと呼ばれている。
【0133】
例9
MN14のCDRを移植されたヒト化抗体の発現
MN14のCDRを移植されたヒト抗体の発現について安定に形質転換された細胞を上述の方法で選択し、クローニングして個々の産生細胞系を確立した。これらの系の各々を検定し、正しい抗体の産生を決定して、産生の効力を評価した。抗体のクラスを決定し、抗CEA結合親和性を評価した。
【0134】
最良の産生細胞を産生される抗体の全量についてさらに特徴付け、これらのうちの最良のものについて、トランスフェクション、組込み、増殖又は選別の間に抗体遺伝子に変異が生じていないことを保証するためそのmRNAから配列を得た。
【0135】
例10
細胞培養物中で発現したMN14のCDRを移植されたヒト化抗体の精製
MN14のCDRを移植されたヒト抗体の最良産生細胞系を培養し、その成長培地を集めて、0.2ミクロン膜を通して濾過した。その後、抗体を、プロテインAクロマトグラフィー、次いでイオン交換及びサイズ排除クロマトグラフィーのような他の通常の精製ステップにより精製した。通常の遠心により、細胞をペレット化した。その上清液から、上述のように抗体を精製した。
【0136】
例11
診断におけるヒト化MN14モノクローナル抗体の使用
A.動物研究
ヒト結腸ガンを有するヌードマウスにおいて、標識ヒト化MN14 IgGの生体内の分配を測定した。放射性位置測定研究に対しては、4〜5週齢雌胸腺欠損マウス(nu/nu、Harlan、Indianapolis、IN)に、胸腺欠損マウスにおいて順次増殖させた異種移植片から調製したLS174Tヒト結腸アデノカルシノーマ(Sharkey et al., Cancer Res., 50: 828-34 (1990))の10%懸濁液0.2mlを皮下に移植した。腫瘍の発達を2週間待った後、これらのマウスに、20μCi(約2μg)の131I標識ヒト化MN14モノクローナル抗体を静脈内注射した。その後、時々、4〜5匹のマウスの群を屠殺し、上記Sharkey et al.に従い、組織中で放射活性の位置を測定した。表2のデータは注射された用量/組織gの%及び腫瘍:非腫瘍比を示す。
【0137】
これらの結果は、この抗体の優れた腫瘍結合性を示し、その最大結合活性は2日以内に生じる。hMN14抗体の血液クリアランスは、親mMN14抗体よりも迅速であった。加えて、脾臓によるhMN14の取り込みはmMN14よりも高く、これはhMN14抗体がマウスにとって「外来性」であるという事実を反映している。腫瘍:非腫瘍比は優れたものであった。これらの結果は、本発明のhMN14 mAbがCEA産生腫瘍を標的とすることが可能であることを示す。
【0138】
【表2】

【0139】
B.131I標識ヒト化MN14のIgGを用いた臨床研究
ヒト化MN14 IgGのターゲッティング及び薬物速度論的挙動の先行調査のため、患者を、米国分子薬剤及び免疫学センター(Center for Molecular Medicine and Immunology)、Newark、NJで、インスティチューショナル・レビュー・ボード(Institutional Review Board)認可プロトコルに処した。図12に示されている結果の場合、その男性患者は、肝臓に転移している結腸直腸ガンを有していた。彼に131I−hMN14 IgG(8mCi、0.6mg抗体)を静脈注射し、6日間にわたって撮像した。続いて、この患者に等用量のmMN14 IgGを注射した。図12に示される像は、各注射の約140時間後の腹部前面の像を示す。これらの像は、直接比較することができるように、正確に同じ濃度に調整されている。これらの結果は、親マウス抗体のみならずこのヒト化抗体がCEA産生腫瘍によって取り込まれることを示す。これらの実験は、本発明のヒト化MN14 mAbを用いるヒトCEA産生結腸ガンの診断が実用上有用なものであることを立証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体由来の軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域のフレームワーク(FR)の各々とを含むヒト化モノクローナル抗体またはその断片であって、該ヒト化抗体は、該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の特異性を保持するものの、ヒト患者において該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体よりも免疫原性が小さく、該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のCDRが、KASQD VGTSV A(配列番号20)を含むCDRL1と、WTSTR HT(配列番号21)を含むCDRL2と、QQYSL YRS(配列番号22)を含むCDRL3とを含んでなり、該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の重鎖可変領域のCDRが、TYWMS(配列番号23)を含むCDRH1と、EIHPD SSTIN YAPSL KD(配列番号24)を含むCDRH2と、LYFGF PWFAY(配列番号25)を含むCDRH3とを含んでなることを特徴とするヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項2】
親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域と、ヒト抗体の軽鎖定常領域及び重鎖定常領域とを含んでなるキメラモノクローナル抗体又はその断片であって、該キメラ抗体は該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体の特異性を保持するものの、ヒト患者において該親マウスクラスIII抗CEAモノクローナル抗体よりも免疫原性が小さく、該キメラモノクローナル抗体は配列番号4の軽鎖可変領域と配列番号2の重鎖可変領域を含んでなることを特徴とするキメラモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項3】
請求項1又は2のモノクローナル抗体又は断片に結合している診断物質又は治療物質を含んでなる複合体。
【請求項4】
ガン患者の診断又は治療に使用するための請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体又は請求項3に記載の複合体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体又はその断片をコードする単離DNA。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−75190(P2010−75190A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260907(P2009−260907)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【分割の表示】特願2001−357367(P2001−357367)の分割
【原出願日】平成7年9月28日(1995.9.28)
【出願人】(599176263)イムノメディクス, インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】