説明

CHA構造を有するCu含有ゼオライトの直接合成のための方法

CHA骨格構造を有する銅含有ゼオライト材料およびモル比(nYO2):X23[式中、Xは三価元素、好ましくはAlであり、Yは四価元素、好ましくはSiであり、nは、好ましくは少なくとも20である]を含む組成物を製造するための方法であって、少なくとも1つのX23源および少なくとも1つのYO2源、CHA骨格構造を有するゼオライト材料の製造に好適な少なくとも1つの構造誘導剤、ならびに少なくとも1つのCu源を含む無リン水溶液を製造することを含み、前記水溶液を熱水結晶化して、CHA骨格構造を有する銅含有ゼオライト材料を含む懸濁液を得ることをさらに含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CHA骨格構造を有し、Cuを含む無リンゼオライト材料を製造するための方法であって、前記ゼオライト材料を単一の処理工程で得る方法に関する。この処理段階は、通常、ゼオライト骨格の骨格元素として採用される三価および/または四価元素の他に、CHA骨格構造を有する最終的なCuゼオライトの製造に必要なすべてのCuを既に含む水溶液に施される熱水結晶化段階である。特に、本発明は、CHA骨格構造を有し、高含有量のCuを示すゼオライト材料を製造するための当該方法であって、得られた材料が、好ましくは、SiおよびAlを含み、高モル比のSi:Alを有する方法に関する。したがって、本発明は、また、この方法によって得られるゼオライト材料および/または得られたゼオライト材料、ならびにCuを含み、CHA骨格構造を有し、特定のSi:Al比を示す特定のゼオライト材料そのものに関する。
【0002】
斜方沸石(CHA)骨格構造を有し、銅(Cu)を含むゼオライト材料は、該材料が触媒として採用される自動車工業などの重要な実際の技術分野に広く使用される。したがって、これらの材料は、経済的および環境的関心が高い。前記技術分野が存在し、その結果として大量の該材料が必要とされるため、これらの材料を製造するための効率的な方法に対する需要が高まっている。
【0003】
分子篩は、ゼオライト命名に関するIUPAC委員会の規則に従って国際ゼオライト協会の構造委員会によって分類される。この分類によれば、構造が確定した骨格型ゼオライトおよび他の結晶性微孔性分子篩が三文字コードを割り当てられ、Atlas of Zeolite Framework Types,5th edition,Elsevier,London,England(2001)に記述される。斜方沸石は、構造が確定された分子篩の1つであり、この骨格型の材料がCHAと呼ばれる。
【0004】
US5,254,515には、銅を含む結晶性珪酸塩が開示されている。この文献によれば、硫酸銅、硝酸銅または酢酸銅などの鉱酸が溶解した水溶液に珪酸塩を浸漬させることにより、アルカリ金属イオンおよび水素イオンなどのイオン交換部位を銅イオンで置き換えるイオン交換によって、銅イオンが結晶性材料に加えられる。
【0005】
US6,056,928には、ベータゼオライト、ZSM−5ゼオライト、モルデン沸石または斜方沸石であり得る、N2Oを除去するための触媒が開示されている。例えば、Cu、Co、Rh、PdまたはIrと交換されたゼオライトに基づく触媒が利用可能であることも開示されている。Cu斜方沸石ゼオライトの例が示されていない。
【0006】
US7,067,108B2には、斜方沸石骨格型のゼオライトが開示されている。これらのゼオライトは、具体的なシーディング材料、すなわちAEI型、LEV型またはOFF型などの、斜方沸石型以外の骨格型を有する結晶性材料を採用することによって製造される。合成された斜方沸石骨格型材料における陽イオンを少なくとも一部にイオン交換によって他の陽イオンで置き換えることができることが開示されている。
【0007】
US6,974,889B1には、その骨格にリンを含む構造型CHAまたはLEVのゼオライトなどの結晶性分子篩を製造するための方法であって、コロイド結晶性分子篩がシード材料として使用される方法が開示されている。合成混合物は、金属元素、特に第VIII族金属、特にニッケルの供給源を含むことができることが開示されている。実施例によれば、ゼオライト骨格におけるAl23:P25の典型的なモル比は、約1:1である。この金属は、有利には、アルミナに対する酸化物として計算されたモル比が0.001〜0.05、好ましくは0.005〜0.01の範囲内、すなわち非常に小さい金属酸化物:アルミナのモル比である。US6,974,889B1によれば、他の好適な第VIII族金属としてはFeおよびCoが挙げられ、他の好適な金属としては、Mn、Cr、Cu、Zn、Mg、TiおよびZrが挙げられる。Cuゼオライト、特にCu斜方沸石ゼオライトに関する例は示されていない。
【0008】
US4,996,322は、分子篩を用いたアミドの分離に関する。この文献によれば、この分離のための好適なゼオライトは、A型、X型、Y型、MFI型および斜方沸石型ならびにモルデン沸石型のゼオライトであり、カルシウム斜方沸石が特に好適である。斜方沸石ゼオライトに関しては、Cu斜方沸石も開示されている。しかし、US4,996,322の第11表によれば、銅斜方沸石は、2:1のSi:Al比を有する合成ゼオライトの酢酸銅交換によって製造される。
【0009】
したがって、本発明の目的は、CHA骨格構造を有する無リンCu含有ゼオライト材料、特に、Cu含有量が高いCHA骨格構造を有する無リンCu含有ゼオライト材料を製造するための新規の方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、CHA骨格構造を有する無リン無リンCu含有ゼオライト材料、特に、Cu含有量が高いCHA骨格構造を有する無リンCu含有ゼオライト材料を製造するための新規の方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、CHA骨格構造を有する無リンCu含有ゼオライト材料を製造するための新規かつ効率的な方法であって、ゼオライト材料は、SiおよびAlを高いSi:Alのモル比で含むと同時に、高いCu含有量を示す方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、CHA骨格構造を有し、高いCu含有量を示すとともに、好ましくは高いSi:Alのモル比を示すCu含有ゼオライト材料を提供することである。
【0013】
したがって、本発明は、CHA骨格構造を有する銅含有ゼオライト材料、および
(nYO2):X23
[式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、nは、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15である]のモル比を含む組成物を製造するための方法であって、
(i)少なくとも1つのX23源および少なくとも1つのYO2源、CHA骨格構造を有するゼオライト材料の製造に好適な少なくとも1つの構造誘導剤、ならびに少なくとも1つのCu源を含む水溶液を製造することであって、前記水溶液がリン源を含まないこと、および
(ii)リン源を含まない(i)による水溶液を熱水結晶化して、CHA骨格構造を有する銅含有ゼオライト材料を含む懸濁液を得ること
を含む方法に関する。
【0014】
本発明の前記記載内容に使用されている「水溶液は、リン源を含まない」という用語は、後に熱水結晶化が施される(i)による水溶液の製造に、リンを含まない化合物がそのまま使用されることに関する。しかし、この用語は、明記されている出発材料が、一定の量のリンまたはリン含有化合物を不純物として含む当該実施態様を除外しない。例として、当該不純物は、典型的には、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは300ppm未満の量で存在する。
【0015】
XおよびY
本発明の段階(i)によれば、ゼオライト骨格を構成することが可能であり、本発明の文脈において、ゼオライト骨格の一部としてX23およびYO2と称する、考えられる三価元素Xおよび四価元素Yのすべての供給源を採用することができる。
【0016】
好ましくは、三価元素Xは、Al、B、In、Gおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0017】
一般に、すべての好適なB23源を採用することができる。例として、ホウ酸塩および/またはホウ酸、メタホウ酸、メタホウ酸アンモニウム、および/またはホウ酸トリエチルエステルもしくはホウ酸トリメチルエステルなどのホウ酸エステルを挙げることができる。
【0018】
一般に、すべての好適なIn23源を採用することができる。例として、硝酸Inを挙げることができる。
【0019】
一般に、すべての好適なGa23源を採用することができる。例として、硝酸Gaを挙げることができる。
【0020】
一般に、すべての好適なAl23源を採用することができる。例として、アルミニウム粉末などの金属アルミニウム、アルカリ金属アルミン酸塩などの好適なアルミン酸塩、アルムニウムトリイソプロピラートなどのアルミニウムアルコラートおよび水酸化アルミニウムを挙げることができる。しかし、本発明の好適な実施態様によれば、ナトリウムを含まない、特にアルカリ金属を含まないAl23源が採用される。水酸化アルミニウム、Al(OH)3およびアルミニウムトリイソプロピラートが特に好適である。
【0021】
したがって、本発明は、X23源、特にAl23源がナトリウムを含まない、特にアルカリ金属を含まない上記方法に関する。
【0022】
本発明の特に好適な実施態様によれば、三価元素XはAlであり、さらにより好ましくは、他の三価元素が使用されないため、Alが、CHAゼオライト骨格構造を構成する唯一の三価元素である。
【0023】
好ましくは、四価元素Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Geおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0024】
一般に、すべての好適なTiO2源を採用することができる。例として、酸化チタン、またはテトラエトキシチタネートもしくはテトラプロポキシチタネートなどのチタンアルコラートを挙げることができる。
【0025】
一般に、すべての好適なSnO2源を採用することができる。例として、塩化錫、または錫アルコラート、もしくは錫−アセチルアセトネートなどの錫キレート化合物などの金属有機錫化合物を挙げることができる。
【0026】
一般に、すべての好適なZrO2源を採用することができる。例として、塩化ジルコニウムまたはジルコニウムアルコラートを挙げることができる。
【0027】
一般に、すべての好適なGeO2源を採用することができる。例として、塩化ゲルマニウムを挙げることができる。
【0028】
一般に、すべての好適なSiO2源を採用することができる。例として、珪酸塩、シリカ、珪酸、コロイドシリカ、ヒュームドシリカ、テトラアルコキシシラン、シリカ水酸化物、沈降シリカまたはクレーを挙げることができる。前記記載内容において、所謂「湿式二酸化珪素」ならびに所謂「乾式二酸化珪素」を採用することができる。コロイド二酸化珪素は、なかでも、Ludox(登録商標)、Syton(登録商標)、Nalco(登録商標)またはSnowtex(登録商標)として市販されている。「湿式」二酸化珪素は、なかでも、Hi−Sil(登録商標)、Ultrasil(登録商標)、Vulcasil(登録商標)、Santocel(登録商標)、Valron−Estersil(登録商標)、Tokusil(登録商標)またはNipsil(登録商標)として市販されている。「乾式」二酸化珪素は、なかでも、Aerosil(登録商標)、Reolosol(登録商標)、Cab−O−Sil(登録商標)、Fransil(登録商標)またはArcSilica(登録商標)として市販されている。例えばテトラエトキシシランまたはテトラプロポキシシランなどのテトラアルコキシシランを挙げることができる。
【0029】
本発明の好適な実施態様によれば、乾式シリカまたはコロイドシリカが採用される。コロイドシリカが採用される場合は、前記コロイドシリカが、ナトリウム、特にアルカリ金属を使用せずに安定化されることがさらに好適である。コロイドシリカが使用されるさらにより好適な実施態様によれば、(i)に水溶液として採用されるコロイドシリカは、アンモニアを用いて安定化される。
【0030】
したがって、本発明は、YO2源、特にSiO2源がナトリウムを含まない、特にアルカリ金属を含まない上記方法に関する。
【0031】
本発明の特に好適な実施態様によれば、四価元素YはSiであり、さらにより好ましくは他の四価元素が使用されないため、Siが、CHAゼオライト骨格構造を構成する唯一の四価元素である。
【0032】
結果として、本発明の特に好適な実施態様によれば、XはAlであり、YはSiであり、さらにより好ましくは、熱水結晶化の後にゼオライト骨格構造を構成する他の三価および四価元素が採用されない。
【0033】
したがって、本発明は、Xが、Al、B、In、Gおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、Yが、Si、Sn、Ti、Zr、Geおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、Xが好ましくはAlであり、Yが好ましくはSiである上記方法に関する。
【0034】
一般に、(ii)において、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライトが得られるのであれば、(i)における水溶液の製造に、X23源およびYO2源を考えられるすべての量およびモル比で採用することができる。
【0035】
本発明の好適な実施態様によれば、少なくとも1つのYO2源および少なくとも1つのX23源は、(i)により得られた水溶液が、
(nYO2):X23
[式中、nは、少なくとも10、より好ましくは少なくとも15である]のモル比を示す量で採用される。より好ましくは、nは、15〜80、より好ましくは15〜60、より好ましくは15〜50の範囲、例えば、15、20、25、30、35、40、45、50である。
【0036】
Cu源
Cu源に関する限り、(ii)において、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライトが得られるのであれば、(i)における水溶液の製造にすべての好適な化合物を採用することができる。好ましくは、少なくとも1つのCu塩の水溶液が採用される。好適なCu塩は、例えば、CuCO3、酢酸CuおよびCu(NO32である。
【0037】
さらにより好ましくは、水およびCu塩の他にアンモニアを含む少なくとも1つの好適なCu塩の水溶液が採用される。
【0038】
したがって、本発明は、Cuおよびアンモニアを含む水溶液がCu源として採用される上記方法に関する。好適な実施態様によれば、水溶液に含まれるアンモニアの量は、水溶液に含まれるCuが[Cu(NH342+錯体として存在するのに十分に大きい。
【0039】
モル比
一般に、(ii)において、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライトが得られるのであれば、(i)における水溶液の製造にX23およびYO2およびCu源を考えられるすべての量およびモル比で採用することができる。
【0040】
本発明の好適な実施態様によれば、少なくとも1つのYO2源および少なくとも1つのX23源は、(i)により得られた水溶液が(nX23)とYO2の合計に対して、
(mCu):((nYO2)+X23
[式中、mは少なくとも0.005、より好ましくは少なくとも0.01、より好ましくは少なくとも0.02である]のCuのモル比を示す量で採用される。さらにより好ましくは、前記mは、0.08以下、より好ましくは0.07以下、より好ましくは0.06以下、より好ましくは0.05以下、より好ましくは0.04以下である。したがって、本発明の好適な実施態様によれば、mは、0.005〜0.08、より好ましくは0.01〜0.06、さらにより好ましくは0.02〜0.04の範囲である。
【0041】
したがって、本発明は、また、(i)による水溶液の製造のために、(i)により得られた水溶液が、
(nYO2):X23
[式中、nは、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは15〜70の範囲である]のモル比、および
(mCu):((nYO2)+X23
[式中、mは少なくとも0.005、より好ましくは0.02〜0.04の範囲である]のモル比を示す量で、少なくとも1つのYO2源、少なくとも1つのX23源およびCu源が採用される上記方法に関する。
【0042】
特に、本発明は、(i)による水溶液の製造のために、(i)により得られた水溶液が、
(nSiO2):Al23
[式中、nは、15〜50の範囲である]のモル比、および
(mCu):((nSiO2)+Al23
[式中、mは、0.02〜0.04の範囲である]のモル比を示す量で、少なくとも1つのSiO2源、少なくとも1つのAl23源およびCu源が採用される上記方法に関する。
【0043】
構造誘導材(SDA)
(i)に採用される構造誘導材に関する限り、(ii)において、CHA骨格構造を有するゼオライト材料が得られるのであれば、制限はない。
【0044】
例として、好適なN−アルキル−3−キヌクリジノール、好適なN,N,N−トリアルキルエキソアミノノルボルネン、好適なN,N,N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム化合物、好適なN,N,N−トリメチル−2−アダマンチルアンモニウム化合物、好適なN,N,N−トリメチルシクロヘキシルアンモニウム化合物、好適なN,N−ジメチル−3,3−ジメチルピペリジ二ウム化合物、好適なN,N−メチルエチル−3,3−ジメチルピペリジニウム化合物、好適なN,N−ジメチル−2−メチルピペリジニウム化合物、1,3,3,6,6−ペンタメチル−6−アゾニオ−ビシクロ(3.2.1)オクタン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、または好適なN,N,N−トリメチルベンジルアンモニウム化合物を挙げることができる。好適な化合物として、以上に挙げた化合物の水酸化物を挙げることができる。
【0045】
好ましくは、好適なN,N,N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム(1−アダマンチルトリメチルアンモニウム)化合物が採用される。場合によって、この好適な1−アダマンチルトリメチルアンモニウム化合物を少なくとも1つのさらなる好適なアンモニウム化合物、例えば、N,N,N−トリメチルベンジルアンモニウム(ベンジルトリメチルアンモニウム)化合物もしくはテトラメチルアンモニウム化合物、またはベンジルトリメチルアンモニウム化合物とテトラメチルアンモニウム化合物の混合物と組み合わせて採用することができる。
【0046】
本発明の好適な実施態様によれば、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム化合物とベンジルトリメチルアンモニウム化合物の混合物が使用され、さらにより好ましくは、ベンジルトリメチルアンモニウム化合物と1−アダマンチルトリメチルアンモニウムとのモル比は、好ましくは、1:1〜5:1の範囲、より好ましくは1.5:1〜4:1の範囲、さらにより好ましくは2:1〜3:1の範囲である。
【0047】
本発明の別の好適な実施態様によれば、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム化合物とテトラメチルアンモニウム化合物の混合物が使用され、さらにより好ましくは、テトラメチルアンモニウム化合物と1−アダマンチルトリメチルアンモニウムとのモル比は、1:1〜5:1の範囲、より好ましくは1.1:1〜4:1の範囲、より好ましくは1.2〜3.1の範囲、さらにより好ましくは1.3:1〜2:1の範囲である。
【0048】
アンモニウム化合物に関する限り、アンモニウム化合物の好適な塩が採用されることが考えられる。好ましくは、当該塩が採用される場合は、この塩または塩の混合物は、熱水結晶化が施される水溶液に所望のpHを付与することになる。必要であれば、例えば好適な水酸化物源などの好適な塩基を、前記塩基の他に添加して、前記pHを付与することができる。好ましくは、本発明によれば、1つまたは複数のアンモニウム塩素のものが好適な塩基、好ましくは水酸化物源である。すなわち、1つまたは複数のアンモニウム化合物を水酸化物として採用することが好適である。
【0049】
したがって、構造誘導剤として本発明に従って使用される好適な化合物は、水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムおよび水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムおよび/または水酸化テトラメチルアンモニウムである。これらの水酸化物の混合物がさらにより好適である。
【0050】
好適な実施態様によれば、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムと水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムとのモル比は、好ましくは1:1〜5:1の範囲、より好ましくは1.5:1〜4:1の範囲、さらにより好ましくは2:1〜3:1の範囲である。
【0051】
別の好適な実施態様によれば、水酸化テトラメチルアンモニウムと水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムとのモル比は、好ましくは1.1:1〜4:1の範囲、より好ましくは1.2〜3:1の範囲、さらにより好ましくは1.3:1〜2:1の範囲である。
【0052】
したがって、本発明は、また、構造誘導剤が、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム化合物と少なくとも1つのさらなる好適なアンモニウム化合物との混合物、好ましくは、水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムとの混合物、または水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムとの混合物、または水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムとの混合物であり、水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、または水酸化テトラメチルアンモニウム、または水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムの合計とのモル比が1:5〜1:1の範囲である上記方法に関する。
【0053】
したがって、本発明は、また、構造誘導剤が、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム化合物とベンジルトリメチルアンモニウム化合物との混合物、好ましくは水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムとの混合物であり、ベンジルトリメチルアンモニウム化合物と1−アダマンチルトリメチルアンモニウムとのモル比が好ましくは2:1〜3:1の範囲である上記方法に関する。
【0054】
したがって、本発明は、また、構造誘導剤が、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム化合物とテトラメチルアンモニウム化合物との混合物、好ましくは水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムとの混合物であり、テトラメチルアンモニウム化合物と1−アダマンチルトリメチルアンモニウムとのモル比が好ましくは1.3:1〜2:1の範囲である上記方法に関する。
【0055】
アンモニウム化合物に関する限り、本発明によれば、それぞれのアミン化合物を、必要であれば、例えば好適な水酸化物源などの少なくとも1つの好適な塩基と組み合わせて採用することも可能である。
【0056】
一般に、(ii)において、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライトが得られるのであれば、(i)における水溶液の製造に、X23源およびYO2源ならびに構造誘導剤を考えられるすべての量およびモル比で採用することができる。
【0057】
本発明の好適な実施態様によれば、少なくとも1つのYO2源および少なくとも1つのX23源は、(i)により得られた水溶液が、(nX23)とYO2の合計に対する構造誘導剤(SDA)のモル比
(pSDA):((nYO2)+X23
[式中、pは、少なくとも0.035、より好ましくは少なくとも0.07、より好ましくは少なくとも0.15である]を示す量で採用される。さらにより好ましくは、pは、0.6以下、より好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。したがって、本発明の好適な実施態様によれば、pは、0.035〜0.6、よりこのましくは0.07〜0.4、さらにより好ましくは0.15〜0.2の範囲である。
【0058】
したがって、本発明は、また、(i)による水溶液を製造するために、(i)により得られた水溶液が、
(nYO2):X23
[式中、nは、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、好ましくは15〜70の範囲である]のモル比、および
(pSDA):((nYO2)+X23
[式中、pは、少なくとも0.035、好ましくは0.15〜0.2の範囲である]のモル比を示すように、少なくとも1つのYO2源および少なくとも1つのX23源およびSDA源が採用される上記方法に関する。
【0059】
水溶液のpH
好ましくは、(i)から得られ、(ii)により熱水結晶化が施された水溶液のpHは、少なくとも10、より好ましくは少なくとも11、さらにより好ましくは少なくとも12である。より好ましくは、(ii)により熱水結晶化が施された水溶液のpHは、12〜14の範囲である。
【0060】
したがって、本発明は、また、(ii)が施された水溶液のpHが12〜14の範囲である上記方法に関する。
【0061】
採用される出発材料に応じて、pHが上記値を有するように、(ii)による熱水結晶化が施された水溶液のpHを調整することが必要であり得る。好ましくは、pHの調整は、ナトリウムを含まない塩基、好ましくは、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属を含まない塩基を使用して実施される。
【0062】
好ましくは、pHは、水溶液、例えば、少なくとも1つの上記Cu塩を含む水溶液として添加できるアンモニアを使用して上記値に調整される。
【0063】
また、好ましくは、pHは、好適な構造誘導化合物、例えば、それぞれの上記水酸化アンモニウム化合物を使用して、上記値に調整される。特に、水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムとの混合物が使用される場合は、水酸化テトラメチルアンモニウムは、主として、水酸化物源として作用するため、pHを上記値に調整するための好適な塩基として作用する。
【0064】
よって、本発明は、また、CHA構造を有するCu含有ゼオライト材料の熱水結晶化が施される溶液のpHを調整するための塩基性化合物、特にpHを12〜14の範囲に調整するための塩基性化合物としての水酸化テトラメチルアンモニウムの使用に関する。
【0065】
アルカリ金属含有量
以上に既に記載されているように、少なくとも1つのYO2源、好ましくはSiO2源および少なくとも1つのX23源、好ましくはAl23源は、ナトリウム、特にアルカリ金属を含まない。本発明のさらにより好適な実施態様によれば、(i)で得られ、(ii)で熱水結晶化が施される水溶液は、ナトリウムを、特にアルカリ金属を含まない。したがって、例えば、(ii)による熱水結晶化が施される水溶液のpHの調整は、必要であれば、好ましくは、ナトリウム、特にアルカリ金属を含まない塩基を使用して実施され、pHの調整は、好ましくは、塩基性材料として好ましくはアンモニアを含む少なくとも1つの上記Cu塩を含む水溶液によって実施される。
【0066】
本発明の前記記載内容に使用されている「アルカリ金属を含まない」および「ナトリウムを含まない」という用語は、必須成分としてナトリウム、特にアルカリ金属、例えば、Al22源としてのアルミン酸ナトリウム等を含む出発材料が採用されないことに関する。しかし、この用語は、明記される出発材料が一定量のナトリウム、特にアルカリ金属を不純物として含む当該実施態様を除外しない。例として、当該不純物は、典型的には、1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下の量で存在する。
【0067】
したがって、本発明は、また、(ii)による熱水結晶化が施される水溶液が、ナトリウム、特にアルカリ金属を含まない上記方法に関する。
【0068】
よって、本発明は、斜方沸石骨格構造を有し、ナトリウム、特にアルカリ金属を含まない、発明のプロセスから得られたゼオライト材料および/または得られるゼオライト材料に関する。
【0069】
特に、上記定義に従って、本発明は、また、斜方沸石骨格構造を有し、ナトリウム、特にアルカリ金属の含有量が1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下である、発明のプロセスから得られたゼオライト材料および/または得られるゼオライト材料に関する。
【0070】
本発明の前記記載内容で使用されている「Xppm以下のアルカリ金属含有量」という用語は、存在するすべてのアルカリ金属の合計がXppmを超えない実施態様に関する。
【0071】
考えられる他の出発材料
さらなる実施態様によれば、(ii)が施される水溶液は、少なくとも1つのさらなる金属、例えば遷移金属および/またはランタニドを含むことができる。
【0072】
水溶液が遷移金属を含むことができる実施態様によれば、少なくとも1つのさらなる金属は、好ましくは、Fe、Co、Ni、Zn、YおよびVからなる群から選択される。一般に、すべての好適なFe源を採用することができる。例として、硝酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩を挙げることができる。一般に、すべての好適なCo源を採用することができる。例として、硝酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩を挙げることができる。一般に、すべての好適なNi源を採用することができる。例として、酸化ニッケル、ニッケル塩、例えば塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケルおよびその水和物、硝酸ニッケルおよびその水和物、硫酸ニッケルおよびその水和物、酢酸ニッケルおよびその水和物、シュウ酸ニッケルおよびその水和物、炭酸ニッケル、水酸化ニッケルまたはアセチルアセトン酸ニッケルを挙げることができる。一般に、すべての好適なZn源を採用することができる。例として、シュウ酸塩、酢酸塩を挙げることができる。一般に、すべての好適なV源を採用することができる。例として、好適なバナジルを挙げることができる。
【0073】
したがって、本発明は、また、(ii)が施される水溶液が、少なくとも1つのさらなる金属源を含み、前記さらなる金属が、Fe、Co、Ni、Zn、YおよびVからなる群から選択される方法を示す。
【0074】
特に好適な実施態様によれば、本発明は、(ii)が施される水溶液が、少なくとも1つのSi源、少なくとも1つのAl源および少なくとも1つのCu源を含み、他のXO2およびY23を含まず、Fe、Co、Ni、Zn、YまたはVなどのさらなる金属、特に遷移金属を含まない上記方法に関する。
【0075】
本発明のさらなる実施態様によれば、(ii)が施される水溶液は、好適なセリウム源または好適なランタン源などの好適なランタニド源、好ましくは好適なLa(ランタン)源を含む。すべての好適なLa源が考えられるが、好適なLa源は、例えば、水溶液に可溶のLa塩である。好適なLa源は、なかでも、硝酸ランタンである。さらにより好ましくは、Cu含有ゼオライト材料を製造するための全体的方法に関する限り、(ii)が施される水溶液にランタン源のみが採用される。特に、La源が採用される乾燥ゼオライト材料も焼成ゼオライト材料も処理が施されない。
【0076】
一般に、最終的に得られる材料が所望のLa含有量を有する量で、La源を採用することができる。好ましくは、(ii)が施される水溶液は、1:10〜1:100の範囲のLa:Cuの原子比を有する。
【0077】
特に好適な実施態様によれば、本発明は、(ii)が施される水溶液が、少なくとも1つのSi源、少なくとも1つのAl源、少なくとも1つのCu源および少なくとも1つのLa源を含み、他のXO2およびY23を含まず、Fe、Co、Ni、Zn、YまたはVなどのさらなる金属、特に遷移金属を含まない上記方法に関する。
【0078】
したがって、本発明は、また、(ii)による熱水結晶化が施される水溶液は、La源を、好ましくは、La:Cuの原子比が1:10〜1:100の範囲、より好ましくは1:20〜1:80の範囲、さらにより好ましくは1:30〜1:60の範囲になる量で含む上記方法に関する。
【0079】
(i)による水溶液の製造
一般に、(i)による水溶液を得るために出発材料を混合する順序に特別な制限はない。
【0080】
本発明の一実施態様によれば、少なくとも1つの構造誘導剤を含む水溶液が、Cu源を含む水溶液、および好ましくは、以上に記載されているようにさらにアンモニアと混合される。この溶液に、少なくとも1つのX23源、好ましくはAl23源、および少なくとも1つのYO2源、好ましくはSiO2源が懸濁される。
【0081】
本発明の別の実施態様によれば、少なくとも1つのX23源、好ましくはAl23源を含む水溶液が、少なくとも構造誘導剤と混合され、続いて、少なくとも1つのCu源が添加され、最後に少なくとも1つのYO2源、好ましくはSiO2源が添加される。
【0082】
本発明の好適な実施態様によれば、少なくとも1つのYO2源および少なくとも1つのX23源は、(i)により得られた水溶液が、(nX23)とYO2の合計に対する水のモル比
(qH2O):((nYO2)+X23
[式中、qは、少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、さらにより好ましくは少なくとも20である]を示す量で採用される。さらにより好ましくは、前記qは、70以下、より好ましくは65以下、より好ましくは60以下、より好ましくは55以下、より好ましくは50以下である。したがって、本発明の好適な実施態様によれば、qは、10〜70、より好ましくは15〜60、さらにより好ましくは20〜50の範囲である。
【0083】
したがって、本発明は、また、(i)による水溶液の製造のために、(i)により得られた水溶液が、
(nYO2):X23
[式中、nは、少なくとも10、好ましくは少なくとも17、好ましくは15〜70の範囲である]のモル比、および
(qH2O):((nYO2)+X23
[式中、qは、少なくとも10、好ましくは20〜50の範囲である]のモル比を示す量で、少なくとも1つのYO2源および少なくとも1つのX23源および水が採用される上記方法に関する。
【0084】
したがって、本発明は、また、(i)による水溶液の製造のために、(i)により得られた水溶液が、
(nYO2):X23
[式中、nは、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、好ましくは15〜70の範囲である]のモル比、および
(mCu):((nYO2)+X23
[式中、mは、少なくとも0.005、好ましくは0.02〜0.04の範囲である]のモル比、
(qH2O):((nYO2)+X23
[式中、qは、少なくとも10、好ましくは20〜50の範囲である]のモル比、および
(pSDA):((nYO2)+X23
[式中、pは、少なくとも0.035、好ましくは0.15〜0.2の範囲である]のモル比を示す量で、少なくとも1つのYO2源、好ましくはSiO2源、より好ましくは専らSiO2源、少なくとも1つのX23源、好ましくはAl23源、より好ましくは専らAl23源、およびCu源、SDAおよび水が採用される上記方法に関する。
【0085】
(i)による水溶液の製造時の温度は、好ましくは、10〜40℃の範囲、より好ましくは15〜35℃の範囲、特に好ましくは20〜30℃の範囲である。
【0086】
(i)による水溶液を製造する目的で、より高量の上記の水が使用される場合は、水溶液の含水量を上記好適な範囲になるように適切に調整することが考えられる。なかでも好適である適切な方法によれば、少なくとも1つの好適な装置で水を除去することによって含水量を調整することができる。本実施態様によれば、水を60〜85℃、より好ましく65〜80℃、特に好ましくは65〜75℃の範囲で除去することができる。よって、本発明は、また、(i)に従って水溶液が製造され、(ii)の前に、水溶液が、(nX23)とYO2の合計に対する水のモル比
(qH2O):((nYO2)+X23
[式中、qは、少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも20である]を示すように、(i)により得られた水溶液の含水量が調整される上記の方法に関する。さらにより好ましくは、qは、70以下、より好ましくは65以下、より好ましくは60以下、より好ましくは55以下、より好ましくは50以下である。したがって、本発明の好適な実施態様によれば、qは、10〜70、より好ましくは15〜60、さらにより好ましくは20〜50の範囲である。少なくとも1つの好適な装置として、なかでも、ロータリーエバポレータまたはオーブンを挙げることができる。オーブンが特に好適である。なかでも、減圧、そして低温での水の除去を可能にする装置、例えば、減圧下で動作されるロータリーエバポレータを挙げることができる。
【0087】
熱水結晶化
基本的には、CHA骨格構造のゼオライト材料を溶液中で結晶化させるのであれば、(ii)による水溶液を任意の好適な圧力下および任意の好適な1つまたは複数の温度で加熱することが可能である。ここで、選択された圧力において、(i)により得られた溶液の沸点を超える温度が好適である。大気圧における200℃までの温度がより好適である。本発明の文脈において使用される「大気圧」という用語は、理想的には101325Paであるが、当業者に既知の範囲内で変化し得る圧力を指す。例えば、該圧力は、95000〜106000または96000〜105000または97000〜104000または98000〜103000または99000〜102000Paの範囲であってよい。
【0088】
本発明による方法の特に好適な実施態様によれば、(ii)による熱水結晶化は、オートクレーブにて実施される。
【0089】
よって、本発明は、また、(ii)における熱水結晶化がオートクレーブにて実施される上記の方法に関する。
【0090】
(ii)によるオートクレーブにて使用される温度は、好ましくは、100〜200℃の範囲、より好ましくは120〜195℃の範囲、より好ましくは130〜190℃の範囲、より好ましくは140〜185℃の範囲、特に好ましくは150〜180℃の範囲である。
【0091】
よって、本発明は、また、(i)により得られた水溶液が、上記のように場合によって濃縮された後で、オートクレーブにて(ii)により100〜200℃の範囲の温度に加熱される上記の方法に関する。
【0092】
本発明のさらにより好適な実施態様によれば、(ii)による熱水結晶化を実施するために採用されるオートクレーブは、オートクレーブの内容物を加熱および冷却する手段、より好ましくは、好適な加熱/冷却ジャケットなどの外部加熱手段を示す。
【0093】
水溶液の前記温度への加熱を連続的;段階的などの不連続的;または第1の温度まで連続的に加熱し、溶液をこの温度に所定時間にわたって保持し、溶液を第1の温度から上記のような所望の最終温度までさらに加熱することなどの準連続的に実施することができる。また、2つ以上の温度平坦域が考えられる。好ましくは、水溶液は、5〜95℃/時、より好ましくは10〜55℃/時、さらにより好ましくは15〜25℃/時の範囲の温度プロファイルで連続的に加熱される。
【0094】
さらに、本発明は、また、(ii)による熱水結晶化が100〜200℃の範囲の温度で実施される上記の方法に関する。
【0095】
(ii)により水溶液を加熱する温度を、基本的には、所望の程度の結晶化が生じるまで維持することができる。ここで、340時間まで、より好ましくは300時間まで、より好ましくは260時間まで、より好ましくは1時間〜260時間、より好ましくは2時間〜252時間、より好ましくは3〜252時間、より好ましくは4〜240時間、より好ましくは5〜216時間、より好ましくは6〜192時間、より好ましくは8〜168時間、より好ましくは12〜144時間、より好ましくは24〜120時間、より好ましくは48〜115時間、より好ましくは50〜110時間の時間が好適である。
【0096】
したがって、本発明は、また、(ii)による熱水結晶化が12〜144時間、好ましくは24〜120時間、好ましくは48〜115時間、より好ましくは50〜110時間の時間にかけて実施される上記の方法に関する。
【0097】
本発明のさらなる好適な実施態様によれば、結晶化時間は、12〜48時間、より好ましくは24〜48時間の範囲である。したがって、本発明は、また、(ii)による熱水結晶化が、12〜48時間、より好ましくは24〜48時間の時間にわたって実施される上記の方法に関する。
【0098】
結晶化を通じて、1〜20バール、より好ましくは2〜10バール、さらにより好ましくは5〜8バールの範囲の1つまたは複数の圧力が特に好適である。
【0099】
よって、本発明は、また、(i)により得られたコロイド溶液が、上記のように場合によって濃縮された後に、1〜20バール、より好ましくは2〜10バール、さらにより好ましくは5〜8バールの範囲の1つまたは複数の圧力において、(ii)により12〜144時間、好ましくは24〜120時間、好ましくは48〜115時間、より好ましくは50〜110時間にわたって加熱される上記の方法に関する。
【0100】
したがって、本発明は、また、(i)により得られたコロイド溶液が、上記のように場合によって濃縮された後に、1〜20バール、より好ましくは2〜10バール、さらにより好ましくは5〜8バールの範囲の1つまたは複数の圧力において、(ii)により12〜48時間、好ましくは24〜48時間の時間にわたって加熱される上記の方法に関する。
【0101】
水溶液は、好ましくは、(ii)による結晶化のために撹拌される。結晶化が実施される反応容器を回転させることも可能である。前記撹拌または回転に関する典型的な値は、40〜250rpm、例えば、50〜250rpm(回転数毎分)の範囲である。
【0102】
本発明の文脈において、段階(ii)が施された溶液に好適なシーディング材料、例えば、CHA骨格構造を有する場合によって乾燥および/または焼成されたゼオライト材料を添加することが可能であるが、シーディング材料を用いずに熱水結晶化、特に発明の方法全体を実施することが好適である。
【0103】
したがって、本発明は、シーディング材料が添加されない、特にシーディング材料が(ii)による熱水結晶化が施された溶液に添加されない上記方法に関する。
【0104】
本発明の別の実施態様によれば、特に、得られた斜方沸石材料の結晶度および熱水結晶化時間に関して、熱水合成時に好適なシーディング材料を使用することが有利であり得ることが判明した。所望の斜方沸石材料が得られるのであれば、シーディング材料に関して特別な制限はないが、斜方沸石ゼオライトをシーディング材料として採用することが好適である。さらに、シーディング材料として、合成されたままの斜方沸石ゼオライト、乾燥斜方沸石ゼオライト、例えば、噴霧乾燥および非焼成斜方沸石ゼオライト、または(場合によって乾燥された)焼成斜方沸石ゼオライトを採用することが可能であり得ることが考えられる。さらに、SiO2として計算された合成混合物に含まれるSiに対して0.1〜10質量%のシーディング材料を採用するのが有利であり得ることが考えられる。合成混合物におけるSiに対するシーディング材料の例示的な量は、例えば、1〜9質量%、2〜8質量%、3〜7質量%または4〜6質量%である。
【0105】
したがって、本発明は、シーディング材料が添加される、特に、シーディング材料が、(ii)による熱水結晶化が施される溶液に添加される上記方法に関する。
【0106】
本発明による方法の一実施態様によれば、(ii)による結晶化を好適な急冷法によって停止することができる。ここで、結晶化を停止するのに好適な温度を有する水を懸濁液に添加することが特に好適である。
【0107】
本発明の別の実施態様によれば、(ii)による結晶化は、好ましくは、オートクレーブへの熱の供給を停止することによって、より好ましくは、オートクレーブのジャケットを介するオートクレーブへの熱の供給を停止することによって、急冷法を用いることなく停止される。熱の供給の停止を、ジャケットへの加熱媒体の供給を停止すること、または加熱媒体の供給を停止し、少なくとも1つの好適な冷却媒体をジャケットに流すことによって停止することによって実施することができる。
【0108】
(ii)による熱水結晶化後に、CHA骨格構造を有する発明のCu含有ゼオライト材料を含む母液が前記母液から適切に分離される。分離前に、ゼオライト材料を含む母液の温度を、好適な冷却速度を採用して所望の値まで適切に低下させることができる。典型的な冷却速度は、15〜45℃/時、好ましくは20〜40℃/時、さらにより好ましくは25〜35℃/時の範囲である。
【0109】
CHA骨格構造を有する発明のCu含有ゼオライト材料を含む冷却母液の典型的な温度は、25〜55℃、好ましくは35〜50℃の範囲である。
【0110】
分離および乾燥段階
本発明による方法の一実施態様によれば、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料は、(ii)から得られた懸濁液、すなわちゼオライト材料を含む母液から少なくとも1つの工程で好適な方法により分離される。この分離を当業者に既知のすべての好適な方法、例えば、デカント法、濾過法、限外濾過法、ダイアフィルトレーション法もしくは遠心法、または例えば噴霧乾燥法および噴霧顆粒化法によって実施することができる。
【0111】
(ii)により得られた懸濁液そのもの、または(ii)により得られた懸濁液を濃縮することによって得られる懸濁液を分離、例えば噴霧法によって分離することができる。(ii)により得られた懸濁液の濃縮を、例えば、蒸発、例えば減圧下での蒸発、または十字流濾過によって達成することができる。同様に、(ii)により得られた懸濁液を、(ii)による懸濁液を2つのフラクションに分離することによって濃縮することが可能であり、両フラクションの一方に含まれる固体は、濾過法、限外濾過法、ダイアフィルトレーション法または遠心法もしくは噴霧法によって分離され、場合による洗浄工程および/または乾燥工程の後に懸濁液の他方のフラクションに懸濁される。分離および乾燥併用方法としての流動床噴霧顆粒化乾燥などの噴霧乾燥および噴霧顆粒化乾燥によって得られた噴霧材料は、固体および/または中空球体を含むことができ、それぞれ例えば5〜500μmまたは5〜300μmの範囲の直径を有する当該球体から実質的に構成され得る。一成分または多成分ノズルを、噴霧ノズルとして、噴霧時に使用することができる。回転噴霧器の使用も考えられる。使用されるキャリヤガスの可能な入口温度は、例えば、200〜600℃の範囲、好ましくは225〜550℃の範囲、より好ましくは300〜500℃の範囲である。キャリヤガスの出口温度は、例えば、50〜200℃の範囲である。空気、希薄空気、または酸素含有量が10容量%まで、好ましくは5容量5間で、より好ましくは5容量%未満、例えば2容量%までの酸素−窒素混合物をキャリヤガスとして挙げることができる。噴霧方法を向流または並流で実施することができる。
【0112】
したがって、本発明は、また、
(iii)(ii)により得られた懸濁液からCu含有ゼオライト材料を分離することをさらに含む上記方法に関する。
【0113】
ゼオライト材料から分離された母液の構造誘導剤の含有量に応じて、構造誘導剤を、場合によって母液から適切に分離した後に(i)で再使用することができる。代替法によれば、構造誘導剤を含む母液を、構造誘導剤を分離せずに(i)でそのまま再使用することができる。
【0114】
例えば、ゼオライト材料が、(ii)により得られた懸濁液の濾過または遠心または濃縮によって分離される場合は、分離されたゼオライト材料を適切に乾燥させることが好適である。分離されたゼオライトを乾燥する前に、好適な洗浄剤で少なくとも1回洗浄することができ、洗浄工程が少なくとも2つである場合は同一もしくは異なる洗浄剤または洗浄剤の組合せを使用し、乾燥工程が少なくとも2つである場合は同一または異なる乾燥温度を使用することが可能である。
【0115】
ここで乾燥温度は、好ましくは、室温から200℃、より好ましくは60〜180℃、より好ましくは80〜160℃、より好ましくは100〜150℃の範囲である。
【0116】
乾燥の継続時間は、好ましくは、2〜48時間、より好ましくは4〜36時間の範囲である。
【0117】
よって、本発明は、また、(iii)により分離されたCu含有ゼオライト材料を100〜150℃の範囲の温度で乾燥させることをさらに含む上記の方法に関する。
【0118】
さらに、本発明は、また、
(iii)(ii)により得られた懸濁液からCu含有ゼオライト材料を分離すること、および
(iv)(iii)により分離されたCu含有ゼオライト材料を100〜150℃の範囲の温度で乾燥させることをさらに含む上記の方法に関する。
【0119】
使用される洗浄剤は、例えば、水、アルコール、例えばメタノール、エタノールもしくはプロパノール、またはそれらの2つ以上の混合物であってよい。例えば、2つ以上のアルコール、例えば、メタノールとエタノールまたはメタノールとプロパノールまたはエタノールとプロパノールまたはメタノールとエタノールとプロパノールの混合物、あるいは水と少なくとも1つのアルコール、例えば、水とメタノールまたは水とエタノールまたは水とプロパノールまたは水とメタノールおよびエタノールまたは水とメタノールおよびプロパノールまたは水とエタノールおよびプロパノールまたは水とメタノールおよびエタノールおよびプロパノールの混合物を混合物として挙げることができる。水、または水と少なくとも1つのアルコール、好ましくは水とエタノールの混合物が好適であり、水が唯一の洗浄剤であることが極めて好適である。
【0120】
例えば、分離が、上記のように、噴霧乾燥法または噴霧顆粒化法によって実施される場合は、この方法は、(ii)により得られた懸濁液からのゼオライト材料の分離およびゼオライト材料の乾燥を単一の工程で実施できるという利点を提供する。
【0121】
また、特に、分離が噴霧乾燥法または噴霧顆粒化法によって実施される場合は、噴霧乾燥法または噴霧顆粒化法が施される懸濁液に好適な化合物を添加することができる。当該化合物は、例えばマイクロ孔および/またはメソ孔をもたらす造孔剤、または結合剤化合物であり得る。概して、好適な結合剤は、結合剤がなくても存在し得る物理吸着を超える、接着されるゼオライト材料粒子同士の接着性および/または凝集性を付与するあらゆる化合物である。当該結合剤の例は、金属酸化物、例えば、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2もしくはMgO、またはクレー、あるいはこれらの化合物の2種以上の混合物である。
【0122】
したがって、本発明の文脈において、以下の好適な分離、洗浄または乾燥手順を例として挙げることができる。
(a)CHA骨格型を有するCu含有ゼオライト材料を含む母液をさらに処理することなく噴霧させる。すなわち、それを、場合によって好適な冷却後に、熱水結晶化から得られたままの状態で噴霧させる。噴霧前に、懸濁液を造孔剤または結合剤化合物などの好適な化合物と混合することができる。
(b)CHA骨格型を有するCu含有ゼオライト材料を含む母液を、上記のように好適な濃縮後に噴霧させる。噴霧の前に、懸濁液を造孔剤または結合剤化合物などの好適な化合物と混合することができる。
(c)CHA骨格型を有するCu含有ゼオライト材料を含む母液に噴霧と異なる分離段階、例えば、デカント、濾過、限外濾過、ダイアフィルトレーションまたは遠心を施す。
【0123】
(a)もしくは(b)から得られた噴霧材料または(c)から得られた材料を、少なくとも1つの好適な塩基および/または少なくとも1つの好適な酸と場合によって混合された少なくとも1つの好適な洗浄剤で少なくとも1回洗浄することができる。1つまたは複数の洗浄段階後に、材料を適切に乾燥させることが可能であり、乾燥温度は、好ましくは室温から200℃、より好ましくは60〜180℃、より好ましくは80〜160℃、より好ましくは100〜150℃の範囲であり、乾燥の継続時間は、好ましくは2〜48時間、より好ましくは4〜36時間である。
【0124】
材料が(c)により得られる場合は、場合により洗浄され、場合により乾燥された材料を例えば水などの少なくとも1つの好適な化合物でスラリー状にすることができる。そのようにして得られた懸濁液に噴霧乾燥または噴霧顆粒化乾燥などの噴霧段階を施すことができる。噴霧前に、造孔剤および/または結合剤化合物などの少なくとも1つの好適なさらなる化合物を懸濁液に添加することができる。この噴霧段階後に、噴霧材料に少なくとも1つの好適な洗浄段階を施した後に、後続の好適な乾燥段階を場合によって施すことができる。
【0125】
本発明によるゼオライト材料がその母液から濾過によって分離される場合は、濾過の前に、ゼオライト材料を含む懸濁液に好適な量の好適な酸性化合物を混合することが特に好適である。最も好ましくは、当該量の酸性化合物は、濾過される生成懸濁液のpHが6〜8の範囲、好ましくは6.5〜7.5の範囲、より好ましくは6.8〜7.2の範囲、例えば、約6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1もしくは7.2もしくは7.3もしくは7.4もしくは7.5になるように添加される。意外にも、懸濁液のpHを当該値、特に7.0付近の値に調整すると、懸濁液に含まれるゼオライト結晶性材料の凝集が極めて容易になるため、それぞれの濾過ケークの形成、そしてゼオライト材料のその母液からの分離が極めて容易になることが判明した。本明細書に記載されているように、乾燥および焼成により容易に除去できる当該酸が好適である。なかでも、硝酸、またはギ酸もしくは酢酸などの好適な有機酸を好適な酸として挙げることができる。
【0126】
焼成
本発明による方法の特に好適な実施態様によれば、(iii)もしくは(iv)により得られたゼオライト材料が、好ましくは(iv)の後に、少なくとも1つのさらなる工程で焼成される。
【0127】
したがって、本発明は、また、Cu含有ゼオライト材料を焼成することをさらに含む上記方法に関する。
【0128】
基本的には、ゼオライト材料を含む懸濁液をそのまま焼成に供することが可能である。好ましくは、ゼオライト材料は、焼成前に、(iii)に従って上記のように懸濁液から分離される。さらにより好ましくは、ゼオライト材料は、焼成前に乾燥される。
【0129】
(ii)および/または(iii)および/または(iv)により得られたゼオライト材料の焼成は、好ましくは、750℃までの範囲の温度で実施される。1つの代替法によれば、焼成が静的条件下、例えばマッフル炉で実施される場合は、600〜650℃までの温度が好適である。別の代替法によれば、焼成が動的条件下、例えば回転式焼成炉で実施される場合は、700〜750℃までの温度が好適である。
【0130】
本発明による方法の好適な実施態様によれば、ゼオライト材料は、それにより、室温または乾燥段階に採用される温度から750℃までの温度に加熱され、より好ましくは、加熱速度は、0.1〜10℃/分、より好ましくは0.2〜5℃/分、特に好ましくは1〜4℃/分の範囲である。この温度は、好ましくは、例えば200〜750℃の範囲である。250〜700℃の範囲の焼成温度が好適であり、300℃〜650℃の範囲の温度が特に好適である。
【0131】
本発明の特に好適な実施態様によれば、焼成は、得られた焼成材料の全有機炭素(TOC)含有量が、焼成材料の全質量に対して0.1質量%以下になるような時間にわたって実施される。
【0132】
したがって、本発明は、また、
(v)好ましくは(iv)により乾燥されたCu含有ゼオライト材料を300〜650℃の範囲の温度で焼成することをさらに含む上記方法であって、
さらにより好ましい実施態様によれば、この温度を達成するための加熱速度は、0.1〜10℃/分の範囲、特に1〜4℃/分の範囲である方法に関する。
【0133】
本発明による方法の可能な実施態様によれば、焼成は、連続的な温度で段階的に実施される。本発明の文脈において使用される「連続的な温度で段階的に」という用語は、焼成されるゼオライト材料が一定の温度に加熱され、一定時間にわたってこの温度に維持され、この温度から少なくとも1つのさらなる温度に加熱され、次に、一定時間にわたってその温度に維持される焼成を指す。好ましくは、焼成されるゼオライト材料は、4つまでの温度、より好ましくは3つまでの温度、特に好ましくは2つまでの温度に維持される。この点において、第1の温度は、好ましくは300〜550℃の範囲、より好ましくは350〜550℃の範囲である。この温度は、好ましくは、1〜24時間、より好ましくは2〜18時間、特に5〜10時間の範囲の時間にわたって維持される。第2の温度は、好ましくは550℃を超える温度から750℃の範囲、より好ましくは575〜700℃の範囲、特に好ましくは600〜650℃の範囲である。この温度は、好ましくは、1〜24時間、より好ましくは2〜18時間、特に5〜10時間の範囲の時間にわたって維持される。
【0134】
よって、本発明は、また、焼成が750℃まで、好ましくは200〜750℃、より好ましくは250〜700℃、より好ましくは300〜650℃の範囲の連続的な温度で段階的に実施される上記の方法に関する。
【0135】
焼成が段階的に実施される場合は、所望の温度を達成するためのそれぞれの加熱速度は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、焼成が2つの温度で実施され、第1の温度が好ましくは300〜550℃の範囲、より好ましくは350〜550の範囲であり、この温度が好ましくは1〜24時間、より好ましくは2〜18時間、特に5〜10時間の時間にわたって維持される場合は、この温度を達成するための好適な加熱速度は、0.1〜10℃/分、より好ましくは1〜4℃/分の範囲である。好ましくは550℃を超える温度から750℃の範囲、より好ましくは600〜650℃の範囲であり、好ましくは1〜24時間、より好ましくは2〜18時間、特に5〜10時間の範囲の時間にわたって維持される第2の温度を達成するための加熱速度は、好ましくは、0.1〜10℃/分、より好ましくは1〜4℃/分の範囲である。
【0136】
本発明の好適な実施態様によれば、第1の温度を達成するための第1の加熱速度は、1.5〜2.5℃/分、より好ましくは1.75〜2.25℃/分の範囲であってよく、第2の温度を達成するための第2の加熱速度は、0.5〜1.5℃/分、より好ましくは0.75〜1.25℃/分の範囲であってよい。
【0137】
したがって、本発明は、また、
(v)(a)好ましくは(iv)により乾燥されたCu含有ゼオライト材料を300〜550℃の範囲、より好ましくは350〜550℃の範囲の第1の温度で焼成することであって、さらにより好適な実施態様によれば、この温度を達成するための加熱速度が0.1〜10℃/分、好ましくは0.2〜5℃/分の範囲であること、および
(v)(b)そのようにして焼成されたCu含有ゼオライト材料を550を超える温度から750℃の範囲、より好ましくは600〜650℃の範囲の第2の温度で焼成することであって、さらにより好適な実施態様によれば、この温度を達成するための加熱速度が0.1〜10℃/分、好ましくは0.2〜5℃/分の範囲であることをさらに含む上記方法であって、
さらにより好ましくは、第2の温度を達成するための加熱速度が第1の温度を達成するための加熱速度より小さく、第1の加熱速度がより好ましくは1.75〜2.25℃/分の範囲であり、第2の加熱速度がより好ましくは0.75〜1.25℃/分の範囲である方法に関する。
【0138】
焼成を任意の好適な雰囲気、例えば、空気中、酸素が欠乏した希薄空気中、酸素中、窒素中、水蒸気中、合成空気中、二酸化炭素中で実施することができる。焼成は、好ましくは空気下で実施される。焼成を二重方式、すなわち低酸素または無酸素雰囲気での第1の焼成を含み、酸素富化または純酸素雰囲気での第2の焼成を含む方式で実施することも考えられる。
【0139】
焼成をこの目的に好適な任意の装置で実施することができる。焼成は、好ましくは、静的および/または動的条件下、例えば、回転管、ベルト焼成炉、マッフル炉、ゼオライトが、後に、例えば分子篩、触媒として意図する目的に、または以下に記載される他の用途に使用される装置の原位置で実施される。回転管およびベルト焼成炉が特に好適である。
【0140】
よって、本発明は、また、
(iii)Cu含有ゼオライト材料を、(ii)により得られた懸濁液から分離すること、
(iv)(iii)により分離されたCu含有ゼオライト材料を、好ましくは100〜150℃の範囲の温度で乾燥させること、および
(v)(iv)により乾燥されたCu含有ゼオライト材料を、好ましくは300〜650℃の範囲の温度で焼成することをさらに含む上記方法に関する。
【0141】
(ii)により得られたゼオライト材料を、噴霧乾燥法または噴霧顆粒化法によって(ii)から得られた懸濁液から分離する本発明の考えられる実施態様によれば、分離時に採用する条件を、分離時にゼオライト材料の少なくとも一部が少なくとも部分的に焼成されるように選択することができる。それにより、分離時に、好ましくは少なくとも300℃の温度が選択される。本実施態様は、分離工程、乾燥工程および少なくとも部分的に焼成工程を組み合わせて単一の工程にするという利点を提供することができる。
【0142】
本発明は、また、上記方法によって得られる、または得られた、骨格構造CHAを有するCu含有ゼオライト材料に関する。
【0143】
特に好適な実施態様によれば、本発明は、特に、段階(i)でのみ銅源を採用することを特徴とする。該方法の後続の段階では、他の銅源が採用されない。特に、乾燥後も焼成後も、得られた、骨格構造CHAを有するCu含有ゼオライト材料は、銅源と接触されない。したがって、本発明は、(無銅)CHAゼオライト材料と好適なCu源とを接触させるための後合成段階を実施しなくてよいCu含有CHAゼオライト材料の直接的な合成を可能にする。
【0144】
したがって、本発明は、また、(i)の後に、Cu源が採用されない上記方法、およびこの方法によって得られる、または得られた、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料に関する。特に、乾燥ゼオライトにも焼成ゼオライトにも、Cu源が採用される処理が施されない。
【0145】
Cu含有ゼオライト材料が、ナトリウムの不在下、特にアルカリ金属の不在下で上記のように合成されるさらにより好適な実施態様によれば、本発明の方法は、通常採用される時間のかかるイオン交換工程、すなわち
(I)CHAゼオライト材料のNa形の合成、
(II)焼成、鋳型(SDA)の除去によるH−Na形の形成、
(III)NH形への変換、および最後に
(IV)Cu2+形への変換
を回避することができるため、さらにより単純化された方法を可能にする。
【0146】
したがって、本発明は、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料を製造するための経済的かつ環境的に有利な方法を可能にする。
【0147】
特に、本発明は、
(i)少なくとも1つのX23源、好ましくは少なくとも1つのAl23源、および少なくとも1つのYO2源、好ましくは少なくとも1つのSiO2源、CHA骨格構造を有するゼオライト材料の製造に好適な少なくとも1つの構造誘導剤、好ましくは水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムとの混合物または水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムとの混合物、および少なくとも1つのCu源を含み、リン源を含まない水溶液を製造すること、
(ii)リン源を含まない(i)による水溶液を熱水結晶化して、CHA骨格構造を有する銅含有ゼオライト材料を含む懸濁液を得ること、
(iii)(ii)により得られた懸濁液からCu含有ゼオライト材料を分離すること、
(iv)(iii)により分離されたCu含有ゼオライト材料を、好ましくは100〜150℃の範囲の温度で乾燥させることであって、乾燥前に、分離されたCu含有ゼオライト材料を好ましくは水で少なくとも1回洗浄すること、
(v)(iv)により乾燥されたCu含有ゼオライト材料を好ましくは300〜650℃の範囲の温度で焼成すること
を含む方法であって、(i)の後に、Cu源が採用されない方法によって得られる、または得られた、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料に関する。
【0148】
さらにより好適な実施態様によれば、本発明は、
(i)少なくとも1つのX23源、好ましくは少なくとも1つのAl23源、および少なくとも1つのYO2源、好ましくは少なくとも1つのSiO2源、CHA骨格構造を有するゼオライト材料の製造に好適な少なくとも1つの構造誘導剤、好ましくは水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムとの混合物または水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムとの混合物、および少なくとも1つのCu源を含み、リン源を含まない水溶液を製造すること、
(ii)リン源を含まない(i)による水溶液を熱水結晶化して、CHA骨格構造を有する銅含有ゼオライト材料を含む懸濁液を得ること、
(iii)(ii)により得られた懸濁液からCu含有ゼオライト材料を分離すること、
(iv)(iii)により分離されたCu含有ゼオライト材料を、好ましくは100〜150℃の範囲の温度で乾燥させることであって、乾燥前に、分離されたCu含有ゼオライト材料を好ましくは水で少なくとも1回洗浄すること、
(v)(iv)により乾燥されたCu含有ゼオライト材料を好ましくは300〜650℃の範囲の温度で焼成すること
を含む方法であって、(i)の後に、Cu源が採用されず、(i)による水溶液の製造のために、(i)により得られた水溶液が、
(nYO2):X23
[式中、nは、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、好ましくは15〜70の範囲である]のモル比、および
(mCu):((nYO2)+X23
[式中、mは、少なくとも0.005、好ましくは0.02〜0.04の範囲である]のモル比、
(qH2O):((nYO2)+X23
[式中、qは、少なくとも20、好ましくは40〜50の範囲である]のモル比、および
(pSDA):((nYO2)+X23
[式中、pは、少なくとも0.035、好ましくは0.15〜0.2の範囲である]のモル比を示す量で、少なくとも1つのYO2源、好ましくはSiO2源、より好ましくは専らSiO2源、少なくとも1つのX23源、好ましくはAl23源、より好ましくは専らAl23源、およびCu源、SDAおよび水が採用される方法によって得られる、または得られた、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料に関する。
【0149】
特に好適な実施態様によれば、本発明は、
(nYO2):X23
[式中、XはAlであり、YはSiであり、nは15〜70の範囲である]のモル比を含む組成を有し、焼成ゼオライト材料の全質量に対して2.0〜4.0質量%、好ましくは2.5〜3.5質量%の範囲のCu含有量を有し、
(i)少なくとも1つのAl23源、および少なくとも1つのSiO2源、構造誘導剤(SDA)としての水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムとの混合物または水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムとの混合物、および少なくとも1つのCu源を含み、リン源を含まず、ナトリウム源、特にアルカリ源を含まず、そのpHが12〜14の範囲である水溶液を製造すること、
(ii)リン源を含まない(i)による水溶液を熱水結晶化して、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料を含む懸濁液を得ること、
(iii)(ii)により得られた懸濁液からCu含有ゼオライト材料を、好ましくは濾過によって分離すること、
(iv)(iii)により分離されたCu含有ゼオライト材料を、100〜150℃の範囲の温度で乾燥させることであって、乾燥前に、分離されたCu含有ゼオライト材料を好ましくは水で少なくとも1回洗浄すること、
(v)(iv)により乾燥されたCu含有ゼオライト材料を300〜600℃の範囲の温度で、好ましくは、それぞれ350〜550℃の範囲および570〜600℃の範囲の連続的な温度で段階的に焼成すること
を含む方法であって、(i)の後に、Cu源が採用されず、(i)による水溶液の製造のために、(i)により得られた水溶液が、
(nYO2):X23
[式中、nは15〜70の範囲である]のモル比、および
(mCu):((nYO2)+X23
[式中、mは0.02〜0.04の範囲である]のモル比、
(qH2O):((nYO2)+X23
[式中、qは40〜50の範囲である]のモル比、および
(pSDA):((nYO2)+X23
[式中、pは0.07〜0.2の範囲である]のモル比を示す量で、少なくとも1つのSiO2源、少なくとも1つのAl23源、およびCu源、SDAおよび水が採用される方法によって得られる、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料に関する。
【0150】
Cu含有ゼオライト材料自体
本発明は、また、骨格構造CHAを有し、Pを含まず、
(nYO2):X23
[式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、nは少なくとも10、好ましくは少なくとも15である]のモル比を含む組成物を有し、Cu元素として計算したゼオライト材料のCu含有量が、焼成ゼオライト材料の全質量に対して少なくとも0.5質量%であるCu含有ゼオライト自体に関する。前記記載内容において、「骨格構造CHAを有し、Pを含まないCu含有ゼオライト材料自体」という用語は、水を実質的に含まず、構造誘導剤および有機酸などの他の有機化合物が焼成によって実質的に除去された焼成ゼオライト材料に関する。
【0151】
本発明の前記記載内容に使用される「Pを含まない」という用語は、焼成材料のP含有量が500ppm未満、好ましくは300ppm未満であることに関する。
【0152】
好ましくは、nは、15〜70の範囲、より好ましくは15〜60の範囲、より好ましくは15〜50の範囲である。例として、nの特に好適な値は、15、20、25、30、40、45、50である。
【0153】
Cu元素として計算したゼオライト材料のCu含有量は、それぞれの場合において焼成ゼオライト材料の全質量に対して、好ましくは少なくとも1.0質量%、より好ましくは少なくとも1.5質量%、より好ましくは少なくとも2.0質量%、さらにより好ましくは少なくとも2.5質量%である。さらにより好ましくは、Cu元素として計算したゼオライト材料のCu含有量は、それぞれの場合において焼成ゼオライト材料の全質量に対して、5質量%まで、より好ましくは4.5質量%まで、より好ましくは4.0質量%まで、さらにより好ましくは3.5質量%までの範囲である。したがって、Cu元素として計算したゼオライト材料のCu含有量の好適な範囲は、それぞれの場合において焼成ゼオライト材料の全質量に対して、1.0〜5.0質量%、より好ましくは1.5〜4.5質量%、より好ましくは2.0〜4.0質量%、さらにより好ましくは2.5〜3.5質量%である。
【0154】
したがって、本発明は、また、Cu元素として計算したゼオライト材料のCu含有量が、焼成ゼオライト材料の全質量に対して、2.5〜3.5質量%の範囲である上記のゼオライト材料に関する。
【0155】
本発明のさらなる実施態様によれば、骨格構造CHAを有し、Pを含まないCu含有ゼオライト材料自体は、好ましくは、原子比La:Cuが1:10〜1:100の範囲、より好ましくは1:20〜1:80の範囲、さらにより好ましくは1:30〜1:60の範囲になる量でLaをさらに含む。
【0156】
したがって、本発明は、好ましくは、原子比La:Cuが1:10〜1:100の範囲になる量でLaをさらに含む上記ゼオライト材料に関する。
【0157】
一般に、すべての考えられる三価元素Xおよび四価元素Yがゼオライト骨格に含まれていてよく、本発明の文脈においてX23およびYO2と称する。
【0158】
好ましくは、三価元素Xは、Al、B、In、Gおよびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。本発明の特に好適な実施態様によれば、三価元素XはAlであり、さらにより好ましくは、Alが、CHAゼオライト骨格構造を構成する唯一の三価元素である。
【0159】
好ましくは、四価元素Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Geおよびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。本発明の特に好適な実施態様によれば、四価元素YはSiであり、さらにより好ましくは、他の四価元素が使用されない。したがって、Siが、CHAゼオライト骨格構造を構成する唯一の四価元素である。
【0160】
さらにより好ましくは、上記焼成ゼオライト材料は、ナトリウム、特にアルカリ金属を含まない。本発明の文脈において使用される「アルカリ金属を含まない」および「ナトリウムを含まない」という用語は、アルカリ金属含有量およびナトリウム含有量が、それぞれ1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下であるゼオライト材料に関する。
【0161】
本発明の考えられる実施態様によれば、上記のゼオライト材料は、Fe、Co、Ni、Zn、YおよびVからなる群から選択される少なくとも1つの金属をさらに含む。より好ましくは、上記のゼオライト材料は、実質的にSi、Al、CuおよびOならびに場合によってLaからなり、さらなる元素を実質的に含まない。
【0162】
本発明の一実施態様によれば、上記の焼成ゼオライト材料、あるいは上記の方法により得られる、または得られた焼成ゼオライト材料の結晶子の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の縁は、SEMにより測定した平均長さが0.05〜5マイクロメートルの範囲、好ましくは0.1〜4マイクロメートルの範囲、より好ましくは0.5〜4マイクロメートルの範囲、より好ましくは0.75〜4マイクロメートルの範囲、特に1〜3マイクロメートルの範囲である。
【0163】
本発明の好適な実施態様によれば、本発明の方法によって得られる、または得られた焼成ゼオライト材料、あるいはCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料自体は、ゼオライト材料の全質量に対して、0.1質量%以下のTOC含有量を有する。
【0164】
本発明の好適な実施態様によれば、本発明の方法によって得られる、または得られた焼成ゼオライト材料、あるいはCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料自体は、DIN 66131に従って測定したBET表面が300〜700m2/g、好ましくは400〜700m2/gの範囲である。
【0165】
本発明の好適な実施態様によれば、本発明の方法によって得られる、または得られた焼成ゼオライト材料、あるいはCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料自体は、DIN 66135に従って測定したラングミュア表面が400〜975m2/g、好ましくは550〜975m2/gの範囲である。
【0166】
本発明の好適な実施態様によれば、本発明の方法によって得られる、または得られた焼成ゼオライト材料、あるいはCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料自体は、示差熱分析または示差走査熱分析により測定された熱安定性が、900〜1400℃の範囲、好ましくは1100〜1400℃の範囲、より好ましくは1150〜1400℃の範囲である。
【0167】
成形品
本発明によるゼオライト材料を、上記分離技術、例えば、デカント、濾過、遠心または噴霧から得られた粉末または噴霧材料の形で提供することができる。
【0168】
多くの工業用途において、使用者の側では、粉末または噴霧材料の形のゼオライト材料、すなわち場合によって洗浄および乾燥ならびに後の焼成を含む、その母液からの材料の分離によって得られたゼオライト材料でなく、成形品を得るためにさらに処理されたゼオライト材料を採用することがしばしば所望される。当該成形品は、特に多くの工業的方法、例えば、本発明のゼオライト材料が触媒または吸着剤として採用される多くの方法に必要とされる。
【0169】
よって、本発明は、また、本発明の骨格構造CHAを有するCu含有ゼオライト材料を含む成形品に関する。
【0170】
概して、粉末または噴霧材料を、例えば好適な圧縮によって他の化合物を用いずに成形して、所望の幾何学形状、例えば、タブレット形、円筒形または球形の成形品を得ることができる。
【0171】
好ましくは、粉末または噴霧材料は、好適な耐火性結合剤と混合されるか、または当該結合剤によって被覆される。概して、好適な結合剤は、結合剤がなくても存在し得る物理吸着を超える、接着されるゼオライト材料粒子同士の接着性および/または凝集性を付与するあらゆる化合物である。当該結合剤の例は、金属酸化物、例えば、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2もしくはMgO、またはクレー、あるいはこれらの化合物の2種以上の混合物である。採用できる天然のクレーとしては、サブベントナイトを含むモンモリロナイトおよびカオリン類、ならびにデキシー、マクナミー、ジョージアおよびフロリダクレーとして一般に既知のカオリン、または主たる鉱物構成成分がハロイサイト、カオリナイト、ジッカイト、ナクライトもしくはアナウキサイトである他のクレーが挙げられる。当該クレーを、採掘したままの生の状態で使用するか、または最初に焼成、酸処理もしくは化学的改質を施すことができる。加えて、本発明によるゼオライト材料を、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリアおよびシリカ−チタニアなどの多孔質マトリックス材料、ならびにシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシアおよびシリカ−マグネシア−ジルコニアなどの三成分組成物と複合することができる。
【0172】
また、好ましくは、場合によって上記のように好適な耐火性結合剤と混合、または当該結合剤によって被覆した後の粉末または噴霧材料は、例えば水を用いてスラリー化され、好適な耐火性担体上に堆積される。スラリーは、例えば、安定剤、消泡剤または促進剤などの他の化合物を含むことができる。典型的には、担体は、それを貫通する複数の微細な平行気体流路を有する1つ以上の耐火体を含む、「ハニカム」担体としばしば称する構成要素を含む。当該担体は、当該技術分野で周知であり、コージライト等の任意の好適な材料で構成され得る。
【0173】
本発明の触媒を、微粒子触媒の充填層として、または板、サドルもしくは管等の成形部品として使用するために、任意の他の好適な形状の押出物、ペレット、タブレットもしくは粒子の形で提供することができる。
【0174】
また、触媒を基板上に配置することができる。基板は、典型的には触媒を製造するために使用される材料のいずれかであってよく、通常、セラミックまたは金属ハニカム構造を含むことになる。流路が開放して流体を流すように基板の入口または出口面からそれを貫通する微細な平行気体流路を有するタイプのモノリシック基板(ハニカム流通基板と称する)などの任意の好適な基板を採用することができる。それらの流体入口からそれらの流体出口まで実質的に直線の経路である流路は、流路を流れる気体が触媒材料と接触するように触媒材料が薄め塗膜として配置される壁によって定められる。モノリシック基板の流路は、台形、長方形、正方形、シヌソイド形、六角形、卵形、円形等の任意の好適な断面形状および大きさを有し得る薄肉チャネルである。当該構造体は、断面1平方インチ(2.54cm×2.54cm)当たり約60個から約400個以上の気体導入口(すなわちセル)を含むことができる。
【0175】
基板は、また、チャネルを交互に遮断して、一方向(導入方向)からチャネルに入る気体流が、チャネル壁を流れ、他方の方向(排出方向)からチャネルを出ることを可能にする壁フローフィルタ基板であり得る。触媒組成物を流通または壁フローフィルタに塗布することができる。壁フロー基板が利用される場合は、得られたシステムは、微粒子物質を気体汚染物質とともに除去することが可能である。壁フロー基板を、コージライト、チタン酸アルミニウムまたは炭化珪素などの当該技術分野で一般に既知の材料から製造することができる。壁フロー基板上への触媒組成物の充填量は、多孔性および肉厚などの基板特性に左右され、典型的には、流通基板上への充填量より小さくなることが理解されるであろう。
【0176】
セラミック基板を任意の好適な耐火材料、例えば、コージライト、コージライト−アルミナ、窒化珪素、ジルコンムライト、リチア輝石、アルミナ−シリカマグネシア、珪酸ジルコン、シリマナイト、珪酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、アルファ−アルミナおよびアルミノ珪酸塩等で構成することができる。
【0177】
本発明の実施態様の触媒に有用な基板は、本質的に金属であり、1つ以上の金属または金属合金で構成されていてもよい。波形板またはモノリシック形などの様々な形状の金属基板を採用することができる。好適な金属支持体としては、チタンおよびステンレス鋼などの耐熱性金属および金属合金、ならびに鉄が実質的または主要な成分である他の合金が挙げられる。当該合金は、1つ以上のニッケル、クロムおよび/またはアルミニウムを含むことができ、これらの金属の全量は、有利には、少なくとも15質量%の合金、例えば、10〜25質量%のクロム、3〜8質量%のアルミニウムおよび20質量%までのニッケルを含むことができる。合金は、少量または微量の1つ以上の他の金属、例えば、マンガン、銅、バナジウムおよびチタン等を含むこともできる。表面または金属基板を恒温、例えば1000℃以上の温度で酸化させて、基板の表面に酸化層を形成することによって合金の耐腐食性を向上させることができる。当該高温に誘発された酸化は、耐火性金属酸化物支持体および触媒促進金属成分の基板への接着性を増強させることができる。
【0178】
代替的な実施態様において、CHA構造を有する本発明によるゼオライト材料を連続気泡発泡体基板に堆積することができる。当該基板は、当該技術分野で周知であり、典型的には、耐火性セラミックまたは金属材料で構成される。
【0179】
CHA構造を有するCu含有ゼオライト材料の使用
概して、上記ゼオライト材料を分子篩、吸着剤、触媒、触媒支持体またはそれらの結合剤として使用することができる。触媒としての使用が特に好適である。例えば、ゼオライト材料を、選択的分子分離、例えば、炭化水素もしくはアミドの分離のために気体もしくは液体を乾燥させるための分子篩として;イオン交換体として;化学担体として;吸着剤、特に炭化水素もしくはアミドの分離のための吸着剤として;または触媒として使用することができる。最も好ましくは、本発明によるゼオライト材料は、触媒として使用される。
【0180】
したがって、本発明は、また、上記のCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料を含む触媒、好ましくは成形触媒に関する。
【0181】
さらに、本発明は、上記のCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料の触媒としての使用に関する。
【0182】
さらに、本発明は、本発明によるCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料が触媒活性材料として採用される、化学反応を触媒する方法に関する。
【0183】
なかでも、前記触媒を、窒素酸化物NOxの選択的還元(SCR);NH3の酸化、特にディーゼルシステムにおけるNH3スリップの酸化;N2Oの分解;煤酸化;予混合圧縮着火(HCCI)エンジンなどの高度排気システムにおける排気制御のための触媒として;流動触媒分解(FCC)法における添加剤として;有機変換反応における触媒として;または「固定源」法における触媒として採用することができる。
【0184】
したがって、本発明は、また、NOxを含む流体と、本発明によるCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料を含む触媒とを好適な還元条件下で接触させることによって窒素酸化物NOxを選択的に還元するための方法;NH3を含む流体と、本発明によるCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料を含む触媒とを好適な酸化条件下で接触させることによって、NH3、特にディーゼルシステムにおけるNH3スリップを酸化する方法;NxOを含む流体と、本発明によるCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料を含む触媒とを好適な分解条件下で接触させることによってN2Oを分解するための方法;排気流と、本発明によるCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料を含む触媒とを好適な条件下で接触させることによって予混合圧縮着火(HCCI)エンジンなどの高度排気システムにおける排気を制御する方法;本発明によるCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料が添加剤として採用される流動触媒分解FCC法;有機化合物と、本発明によるCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料を含む触媒とを好適な変換条件下で接触させることによって前記有機化合物を変換する方法;本発明によるCHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料を含む触媒が採用される「固定源」法に関する。
【0185】
最も好ましくは、本発明によるゼオライト材料、あるいは本発明により得られる、または得られたゼオライト材料は、触媒として、好ましくは成形触媒として、さらにより好ましくは、窒素酸化物NOxの選択的還元、すなわち窒素酸化物のSCR(選択的触媒還元)のためにゼオライト材料が好適な耐火性担体、さらにより好ましくは「ハニカム」担体に堆積される成形触媒として使用される。特に、本発明によるゼオライト材料が触媒活性材料として採用される窒素酸化物の選択的還元は、アンモニアまたは尿素の存在下で実施される。アンモニアは、固定発電所に適する還元剤であり、尿素は、移動SCRシステムに適する還元剤である。典型的には、SCRシステムは、エンジンおよび車両設計が統合されるとともに、典型的には、以下の主要構成要素、すなわち本発明によるゼオライト材料を含むSCR触媒;尿素貯蔵タンク;尿素ポンプ;尿素配給システム;尿素注入器/ノズル;およびそれぞれの制御装置を含む。
【0186】
したがって、本発明は、また、窒素酸化物NOxを選択的に還元するための方法であって、窒素酸化物NOxを含み、好ましくはアンモニアおよび尿をも含む気体流と、好ましくは成形触媒の形、さらにより好ましくは、ゼオライト材料が好適な耐火性担体、さらにより好ましくは「ハニカム」担体に堆積される成形触媒の形の本発明によるゼオライト材料、あるいは本発明により得られる、または得られたゼオライト材料と接触させる方法に関する。
【0187】
本発明の文脈における窒素酸化物NOxという用語は、窒素の酸化物、特に酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、三酸化二窒素(N23)、二酸化窒素(NO2)、四酸化二窒素(N24)、五酸化二窒素(N25)、過酸化窒素(NO3)を指す。
【0188】
本発明によるゼオライト材料、あるいは本発明により得られる、または得られたゼオライト材料を含む触媒を使用して還元される窒素酸化物を、例えば廃ガス流として任意の方法によって得ることができる。なかでも、アジピン酸、硝酸、ヒドロキシルアミン誘導体、カプロラクタム、グリオキサル、メチルグリオキサル、グリオキシル酸を製造するための方法、または窒素性材料を燃焼するための方法で得られる廃ガス流を挙げることができる。
【0189】
化学量論的燃焼に必要とされる空気より過度の空気を用いる燃焼条件、すなわち希薄条件で動作する内燃機関、特にディーゼルエンジンの排気ガスから窒素酸化物NOxを除去するための、本発明によるゼオライト材料、あるいは本発明により得られる、または得られたゼオライト材料を含む触媒の使用が特に好適である。
【0190】
したがって、本発明は、また、化学量論的燃焼に必要とされる空気より過度の空気を用いる燃焼条件、すなわち希薄条件で動作する内燃機関、特にディーゼルエンジンの排気ガスから窒素酸化物NOxを除去するための方法であって、本発明によるゼオライト材料、あるいは本発明により得られる、または得られたゼオライト材料を含む触媒が触媒活性材料として採用される方法に関する。
【0191】
特定の触媒組成物または異なる目的の組成物を製造するときは、CHAを有する本発明によるCu含有材料と、少なくとも1つの他の触媒活性材料、または意図する目的に関して活性である材料とをブレンドすることも考えられる。Cu含有量、および/またはYO2:X23比、好ましくはSiO2:Al23比、および/または遷移金属および/またはLaなどのランタニドなどのさらなる金属の存在または不在、および/または遷移金属および/またはLaなどのランタニドなどのさらなる金属の具体的な量等が異なり得る少なくとも2つの異なる発明の材料をブレンドすることも可能である。少なくとも2つの異なる発明の材料と、少なくとも1つの他の触媒活性材料または意図する目的に関して活性である材料とをブレンドすることも可能である。例として、少なくとも1つの発明の材料と、CHA構造型を有し、ゼオライト材料が、熱水結晶化後にイオン交換処理され、例えば銅が導入される従来技術により製造される少なくとも1つの他のゼオライト材料とブレンドすることも可能である。本発明による2つ以上の異なるCu−CHA材料または本発明による少なくとも1つのCu−CHA材料と、従来技術により得られた例えばCu−CHA材料などの少なくとも1つの他の材料との当該混合は、例えば触媒用途において、低温および高温要件をより良好に満たすことを可能にする触媒組成物として有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】図1は、実施例1によるCHA骨格型を有する焼成ゼオライト材料のXRDパターンを示す。モノクロCuKアルファ−1放射線を発するSiemens D−5000に粉末X線回折パターンを記録し、優先配向を避けるためにキャピラリーサンプルホルダを使用した。8〜96°(2シータ)の範囲および0.0678°のステップ幅で、Braunの光位置センサを使用して回折データを収集した。粉末−Xで実装されるプログラムTreor90を使用して、粉末ダイアグラムの指標付けを実施した(Treor90は、URL(http://www.ch.iucr.org/sincris−top/logiciel/)を介して自由にアクセスできるパブリックドメインプログラムである)。図では、角度2シータ(°)を横軸に示し、強度(LC=Linカウント)を縦軸にプロットする。
【図2】図2は、SEMによって測定された、実施例1によるCHA骨格型を有する焼成ゼオライト材料の典型的な結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺20000:1の図)。
【図3】図3は、実施例2により得られた焼成サンプルの結晶度の増加を示す。
【図4】図4は、92時間の全結晶化時間後に実施例2により得られた、CHA骨格型を有する焼成製造物のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定方法については、図1を参照されたい。
【図5】図5は、実施例3により得られた、焼成サンプルS1のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定方法については、図1を参照されたい。
【図6】図6は、CHA骨格型を有する、実施例3により得られた焼成サンプルS2のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定方法については、図1を参照されたい。
【図7】図7は、CHA骨格型を有する、実施例3により得られた焼成サンプルS3のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定方法については、図1を参照されたい。
【図8】図8は、実施例3によるサンプルを噴霧乾燥するのに使用した装置を概略的に示す。参照符号(a)〜(k)は、以下の意味を有する。(a)噴霧乾燥器、(b)噴霧乾燥が施されるサンプルを含む容器、(c)ポンプ、(d)噴霧ガス(スプレーガス)、(e)電気加熱、(f)乾燥ガス、(g)噴霧器、(h)サイクロン、(i)排ガス、(k)噴霧乾燥物。
【図9】図9は、CHA骨格型を有する、実施例3により得られた焼成サンプルS4のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定方法については、図1を参照されたい。
【図10】図10は、SEMによって測定された、実施例3によるCHA骨格型を有する焼成ゼオライト材料S4の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺200:1の図)。
【図11】図11は、SEMによって測定された、実施例3によるCHA骨格型を有する焼成ゼオライト材料S4の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺1000:1の図)。
【図12】図12は、SEMによって測定された、実施例3によるCHA骨格型を有する焼成ゼオライト材料S4の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺5000:1の図)。
【図13】図13は、SEMによって測定された、実施例3によるCHA骨格型を有する焼成ゼオライト材料S4の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺20000:1の図)。
【図14】図14は、CHA骨格型を有する、実施例3により得られた焼成サンプルS5のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定方法については、図1を参照されたい。
【図15】図15は、SEMによって測定された、実施例3によるCHA骨格型を有する焼成ゼオライト材料S5の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺200:1の図)。
【図16】図16は、SEMによって測定された、実施例3によるCHA骨格型を有する焼成ゼオライト材料S5の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺1000:1の図)。
【図17】図17は、SEMによって測定された、実施例3によるCHA骨格型を有する焼成ゼオライト材料S5の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺5000:1の図)。
【図18】図18は、SEMによって測定された、実施例3によるCHA骨格型を有する焼成ゼオライト材料S5の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺20000:1の図)。
【図19】図19は、実施例4によるセル状セラミックコアに塗布されたサンプル5のSCR試験の結果を示す(新鮮SCR触媒)。略語「T」は、入口温度(℃)を表し、略語「%」は、NOx、NH3の変換率を表す。略語「ppm」は、N2O生成量を表す。曲線の符号は、以下の化学化合物を表す。黒菱形 NOx(変換)、黒四角 NH3(変換)、黒三角 N2O(生成)。
【図20】図20は、実施例4によるセル状セラミックコアに塗布されたサンプル5のSCR試験の結果を示す(熟成SCR触媒)。略語「T」は、入口温度(℃)を表し、略語「%」は、NOx、NH3の変換率を表す。略語「ppm」は、N2O生成量を表す。曲線の符号は、以下の化学化合物を表す。黒菱形 NOx(変換)、黒四角 NH3(変換)、黒三角 N2O(生成)。
【図21】図21は、実施例5によるCHA骨格型を有するCuおよびLa含有焼成ゼオライト材料のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定方法については、図1を参照されたい。
【図22】図22は、SEMによって測定された、実施例5によるCHA骨格型を有するCuおよびLa含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺1000:1の図)。
【図23】図23は、SEMによって測定された、実施例5によるCHA骨格型を有するCuおよびLa含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺5000:1の図)。
【図24】図24は、SEMによって測定された、実施例5によるCHA骨格型を有するCuおよびLa含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺20000:1の図)。
【図25】図25は、実施例6によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定方法については、図1を参照されたい。
【図26】図26は、SEMによって測定された、実施例6によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺1000:1の図)。
【図27】図27は、SEMによって測定された、実施例6によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺5000:1の図)。
【図28】図28は、SEMによって測定された、実施例6によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺20000:1の図)。
【図29】図29は、実施例7によるセル状セラミックコアに塗布された実施例6により得られた材料のSCR試験の結果を示す(新鮮SCR)。略語「T」は、入口温度(℃)を表し、略語「%」は、NOxおよびNH3の変換率を表す。略語「ppm」は、N2O生成量を表す。曲線の符号は、以下の化学化合物を表す。黒菱形 NOx(変換)、黒四角 NH3(変換)、黒三角 N2O(生成)。
【図30】図30は、実施例7によるセル状セラミックコアに塗布された実施例6により得られた材料のSCR試験の結果を示す(熟成SCR)。略語「T」は、入口温度(℃)を表し、略語「%」は、NOxおよびNH3の変換率を表す。略語「ppm」は、N2O生成量を表す。曲線の符号は、以下の化学化合物を表す。黒菱形 NOx(変換)、黒四角 NH3(変換)、黒三角 N2O(生成)。
【図31】図31は、CE1.3.2によるセル状セラミックコアに塗布された先行技術による実施例CE1.3.1により得られた材料のSCR試験の結果を示す(新鮮SCR触媒CE1.3.3)。略語「T」は、入口温度(℃)を表し、略語「%」は、NOxおよびNH3の変換率を表す。略語「ppm」は、N2O生成量を表す。曲線の符号は、以下の化学化合物を表す。黒菱形 NOx(変換)、黒四角 NH3(変換)、黒三角 N2O(生成)。
【図32】図32は、CE1.3.2によるセル状セラミックコアに塗布された先行技術による実施例CE1.3.1により得られた材料のSCR試験の結果を示す(熟成SCR触媒CE1.3.4)。略語「T」は、入口温度(℃)を表し、略語「%」は、NOxおよびNH3の変換率を表す。略語「ppm」は、N2O生成量を表す。曲線の符号は、以下の化学化合物を表す。黒菱形 NOx(変換)、黒四角 NH3(変換)、黒三角 N2O(生成)。
【図33】図33は、48時間の結晶化時間後の実施例8によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定方法については、上記図1の説明を参照されたい。
【図34】図34は、SEMによって測定された、48時間の結晶化時間後の実施例8によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺1000:1の図)。
【図35】図35は、SEMによって測定された、48時間の結晶化時間後の実施例8によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺5000:1の図)。
【図36】図36は、SEMによって測定された、48時間の結晶化時間後の実施例8によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺20000:1の図)。
【図37】図37は、実施例9によるセル状セラミックコアに塗布された実施例8により得られた材料のSCR試験の結果を示す(新鮮SCR)。略語「T」は、入口温度(℃)を表し、略語「%」は、NOxおよびNH3の変換率を表す。略語「ppm」は、N2O生成量を表す。曲線の符号は、以下の化学化合物を表す。黒菱形 NOx(変換)、黒四角 NH3(変換)、黒三角 N2O(生成)。
【図38】図38は、実施例9によるセル状セラミックコアに塗布された実施例8により得られた材料のSCR試験の結果を示す(熟成SCR)。略語「T」は、入口温度(℃)を表し、略語「%」は、NOxおよびNH3の変換率を表す。略語「ppm」は、N2O生成量を表す。曲線の符号は、以下の化学化合物を表す。黒菱形 NOx(変換)、黒四角 NH3(変換)、黒三角 N2O(生成)。
【図39】図39は、48時間の結晶化時間後の実施例10によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定方法については、上記図1の説明を参照されたい。
【図40】図40は、SEMによって測定された、48時間の結晶化時間後の実施例10によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺1000:1の図)。
【図41】図41は、SEMによって測定された、48時間の結晶化時間後の実施例10によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺5000:1の図)。
【図42】図42は、SEMによって測定された、48時間の結晶化時間後の実施例10によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料の結晶子を示す(二次電子5kV;縮尺20000:1の図)。
【図43】図43は、40時間の結晶化時間後の比較例CE2によるCHA骨格型を有するCu含有焼成ゼオライト材料のXRDパターンを示す。XRDパターンの測定方法については、上記図1の説明を参照されたい。
【図44】図44は、比較例CE2.7.3によるセル状セラミックコアに塗布された比較例CE2により得られた材料のSCR試験の結果を示す(新鮮SCR)。略語「T」は、入口温度(℃)を表し、略語「%」は、NOxおよびNH3の変換率を表す。略語「ppm」は、N2O生成量を表す。曲線の符号は、以下の化学化合物を表す。黒菱形 NOx(変換)、黒四角 NH3(変換)、黒三角 N2O(生成)。
【図45】図45は、比較例2.7.4によるセル状セラミックコアに塗布された比較例CE2により得られた材料のSCR試験の結果を示す(熟成SCR)。略語「T」は、入口温度(℃)を表し、略語「%」は、NOxおよびNH3の変換率を表す。略語「ppm」は、N2O生成量を表す。曲線の符号は、以下の化学化合物を表す。黒菱形 NOx(変換)、黒四角 NH3(変換)、黒三角 N2O(生成)。
【0193】
以下の実施例は、本発明の方法および材料をさらに例示するものである。
【実施例】
【0194】
実施例
熱安定性の測定
実施例全体を通じて、熱分析装置STA449C Jupiterを用いて材料の熱安定性を測定した。本発明において、熱安定性の測定が言及される場合は、前記測定はこの装置による測定であると理解されるべきである。熱分析装置STA449C Jupiterは、質量変化(TG)および高温および低温の両方における熱量効果(DSCまたはDTA)を同時に測定するように設計されている。TG技術は、サンプル質量の温度誘発変化を測定する。出力信号を電子的に差別化してDTG曲線を作成する。DTA技術は、サンプルと基準材料との温度差を測定する。DTA曲線は、プロセスが生じる温度範囲に関する情報を提供し、エンタルピ変化(ΔH)の値の計算を可能にする。同様の情報をDSCから得ることができる。以下の試験条件を適用した。10mgのサンプルをTGA/DTAに使用した。温度勾配は、室温から1400℃にかけて30℃/分であった。
【0195】
結晶性の測定
実施例において、かつ本発明全体を通じて測定される結晶性は、4°Sollerスリット、V20可変発散スリットおよびX線検出器としてのシンチレータカウンタを有するBruker D4 Endeavor回折計を使用して測定されるものと理解されるべきである。以下の測定条件を適用した。分析すべきサンプルを2°〜70°(2シータ)で測定し、または迅速な結果が必要であれば、より短時間/ステップを用いて2°〜47°(2シータ)で測定した。0.02°のステップ幅および2秒のステップ時間を使用した。可変一次および二次発散スリットを用いて測定を実施した。洗練の前に、Bruker AXSのデータ評価プログラムEVAを使用して、生データを固定スリットデータに変換した。これは、バックグラウンドを平坦化し、非晶質相のハロを局在化させる効果を有していた。次いで、変換された生データを、上記手順を用いて、Bruker AXSによるRietveldプログラム「Topas」で洗練した。勾配が洗練可能なパラメータである線形関数に対応する一次のチェビシェフ関数によってバックグラウンドをモデル化した。適合範囲を8°〜70°(2シータ)に選択した。非晶質ピーク位置を21.95°(2シータ)に固定した。
【0196】
分析方法:
CHAは、単位セル毎に2つのケージを形成するSiO4四面体の4および6員環からなる三次元骨格ゼオライトである。斜方沸石は、空間群R−3Mならびにa=1.352nmおよびc=1.468nmの格子定数を有する菱面体単位セルで結晶化する。良好な結晶性サンプルの回折図は、鋭い回折線のみを示し、異方性の線の広がりを示さない。完全に非晶質のSi/Oは、約15°〜35°(2シータ)に主たる広回折ピークを有し、22°付近(2シータ)に極大ピークを有する。したがって、ゼオライトサンプルに非晶質分があると、この範囲における結晶ピーク下のピーク面積が減少し、非晶質ピーク面積が増加する。斜方沸石相および非晶質相の回折ピーク面積を、Bruker AXSのRietveldプログラム「Topas」を使用する全パターン分解技術を利用して測定した。結晶度は、結晶および非晶質相の合計面積に対する結晶性斜方沸石相の面積の比(D=lc/(lc+la)で定義される。この方法は、測定すべきさらなる外部標準またはさらなる製造労力をもたらすスパイキング法に依存しない。斜方沸石の回折ピークを、斜方沸石相に対する空間群および結晶定数を定めることによって洗練した。これらは、個々の(hkl)回折線の位置を決定づける。(hkl)線の強度は、個々に洗練可能なパラメータである。非晶質相を、22°にその位置を有する単一ピーク相によって定めた。非晶質ピーク相の位置ならびに面積は、洗練可能なパラメータである。擬似ヴォイトまたはピアソンVIIのような解析関数を使用して(hkl)線および非晶質ピーク相の形状を適合させる代わりに、回折計の基本パラメータを使用して個々のピークの形状をモデル化する「Topas」の基本パラメータ手法を使用した。これは、洗練可能パラメータの数を少なく維持することによって、洗練可能パラメータ間の相互相関を回避する利点を有していた。
【0197】
実施例1:CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料の製造
1.1 合成ゲルの調製
以下の出発材料を採用した:
−脱イオン水
−水酸化トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム(TMAA、水中12.2質量%)
−水酸化トリメチルベンジルアンモニウム(TMBA、水中40質量%(Aldrich24603−4、ロット.S30723−355))
−Al(OH)3(Barcroft0250)
−アンモニア(水中25質量%)
−Cu(NO32*2,5H2
−アエロジル200。
【0198】
ビーカーにおいて、1160.60gの脱イオン水と157.2gのTMAA水溶液と91.5gのTMBA水溶液とを混合し、撹拌した。
【0199】
第2のビーカーにおいて、11.09gの硝酸銅を105.2gの25質量%アンモニア水溶液に約2時間以内で溶解させた。それによって、該溶液を撹拌した。
【0200】
第1のビーカーの溶液に対して、第2のビーカーの溶液を添加しながら、第1のビーカーの溶液を撹拌した。混合後、得られた溶液を約20分間撹拌した。続いて、5.2のAl(OH)3出発材料および94.0gのアエロジルを溶液に懸濁させた。得られた懸濁液を30分間撹拌した。13.8のpHを有する液体ゲルは、以下のモル比の組成を有していた。36SiO2:1.2Al(OH)3:2.09TMAA:5.04TMBA:35.6NH3:1831H2O。このゲルをオートクレーブ内に移した。
【0201】
1.2 熱水結晶化
オートクレーブを密閉し、1時間以内に160℃の温度に加熱した。160℃の温度を60時間維持した。それにより、オートクレーブ内の混合物を200U/分で撹拌した。オートクレーブ内の圧力は、7〜8バールの範囲であった。
【0202】
1.3 分離、乾燥および焼成
熱水結晶化後に、10.5のpHを有する反応混合物を室温まで冷却した。懸濁液の固体材料を濾過によって母液から分離し、3000mLの脱イオン水で洗浄した。洗浄した固体を大気下で120℃にて10時間乾燥させた。107.2gの乾燥材料を得た。次いで、乾燥材料を540℃の温度まで1℃/分の加熱速度で加熱し、この温度を5時間維持することによって大気下で焼成した。続いて、温度を60分以内に595℃まで上昇させ、この温度をさらに5時間維持した。87.0gの焼成材料を得た。
【0203】
1.4 製造物の特性決定
焼成材料の元素分析は、焼成材料100g当たり0.02gのC、0.02gのNa、3.1gのCu、1.4gのAlおよび39.0gのSiを示した。
【0204】
DIN66131に従って測定した焼成材料のBET表面は、527m2/gであり、DIN66135に従って測定したラングミュア表面積は、705m2/gであった。結晶化度は88%であり、結晶子の平均長さは100nmを超えていた。図1は、CHA骨格型を有する焼成材料のXRDパターンを示し、図2は、SEMによって測定した焼成材料の典型的な結晶子を示す。
【0205】
実施例2:CHA骨格を有するCu含有ゼオライトの製造
2.1 Cu源の合成
2O中NH3の21.55Lの25質量%溶液に対して、2.87kgのNH4HCO3を添加した。次いで、8.81kgのCuCO3を1時間にわたってNH3雰囲気下でこの混合物に溶解させた。終了時に、2.5LのH2Oを添加した。12時間後に該溶液を濾過した。[Cu(NH34]CO3錯体の水溶液(15.7質量%Cu)を得た。
【0206】
2.2 合成ゲルの調製
固定ミキサーおよび外部冷却/加熱手段を備えた60Lオートクレーブにて、以下の出発材料を混合した。
−2.1による[Cu(NH34]CO3錯体の水溶液
−Al(OH)3(Barcroft、78.8質量%)
−水酸化トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム(TMAA、水中10.7質量%)
−水酸化トリメチルベンジルアンモニウム(TMBA、水中10.2質量%)
−コロイドLudox AS40(NH4+安定化、H2O中40質量%懸濁液)。
【0207】
材料を以下の順に添加した。
1.H2
2.Al(OH)3。Al源の添加後、固定ミキサーを使用して、得られた混合物を室温で10分間撹拌した。
3.TMAA
4.TMBA。TMBAの添加後、固定ミキサーを使用して、得られた混合物を室温で20分間撹拌した。
5.[Cu(NH3)]4CO3。Cu源の添加後、固定ミキサーを使用して、得られた混合物を室温で10分間撹拌した。
6.SiO2(Ludox)。Si源の添加後、固定ミキサーを使用して、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。
【0208】
以下の組成を有する合成ゲルを得る量で材料を添加した。
【0209】
【表1】

【0210】
2.3 熱水合成
合成ゲルの調製後、オートクレーブを密閉した。外部加熱手段を使用して、オートクレーブ内の合成ゲルを、2℃/分の加熱速度で170℃の温度に加熱した。オートクレーブ内の反応混合物を150rpmで撹拌した。92時間後、結晶化を停止した。結晶化を通じて、4つのサンプルを採取して結晶度を制御した(以下セクション2.5参照)。
【0211】
2.4 分離、乾燥、焼成
結晶化の後に、92時間の結晶化時間の後に得られたサンプルおよび製造物を濾過し、濾液がpH7(伝導度90μS)に達するまで脱イオン水で洗浄した。製造物を大気下で120℃にて24時間乾燥させた。焼成の目的で、乾燥サンプルおよび乾燥製造物をそれぞれ2℃/分の加熱速度にて大気下で350℃の温度に加熱し、続いて1℃/分の加熱速度で600℃の温度に加熱した。600℃の温度を5時間維持した。
【0212】
2.5 製造物の特性決定
結晶化を通じて、結晶度の増加が確認された。約60時間後に80%の結晶度に到達し、次の32時間にわたって、約85%の最終値までの結晶度のわずかな増加が確認された(図3参照)。
【0213】
結晶度100%のCu斜方沸石の全体収率は、合成ゲルのシリカの量に対して、73モル%であり、2.7kgの製造物を得た。固体材料をその母液から分離する前の反応混合物の固体濃度は、6.3質量%であった。熱水結晶化の後の反応混合物のpHは12であった。
【0214】
DIN66131に従って測定した焼成製造物のBET表面は、481m2/gであった。焼成材料のSi:Alのモル比は、56のSiO2:Al23のモル比に対応する28であった。Cu元素として計算した焼成材料のCu含有量は、焼成材料の全質量に対して26質量%であった。
【0215】
CHA骨格型を有する製造物のXRDパターン(全結晶化時間92時間)を図4に示す。
【0216】
実施例3:CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料の製造
3.1 合成ゲルの調製
60Lの全容量および40Lの反応容量を有し、ミキサーおよび外部冷却/加熱手段を備えたオートクレーブにおいて、24587gの水酸化トリメチル−1−アダマンチルアンモニウムの水溶液(TMAA、水中4.5質量%)と26848gの水酸化テトラメチルアンモニウムの水溶液(TMAOH、水中25質量%)を混合した。続いて、得られた混合物を撹拌し、9662gのアルミニウムトリイソプロポキシドを添加した。得られた混合物を約30分間撹拌した。次いで、実施例2(2.1)により調製した9132gの[Cu(NH34]CO3錯体(15.7質量%Cu)の水溶液を添加し、得られた混合物を15分間撹拌した。続いて、10892.3gのLudox AS40を添加し、得られた懸濁液を約30分間撹拌した。
【0217】
懸濁液のpHを測定するためにサンプルを採取した。懸濁液のpHは13.3であった。
【0218】
合成ゲルのモル比は、
3.6TMAOH:2.6TMAA:2.22Alイソプロプ(isoprop.):1.12Cu:36SiO2:904H20
であった。
【0219】
3.2 熱水合成
3.1の懸濁液を含むオートクレーブを密閉し、懸濁液を160℃の温度に加熱した。160℃において、オートクレーブ内の圧力は5.9バールであった。次いで、懸濁液を120rpmで160℃にて12時間撹拌し、12時間後、オートクレーブ内の圧力は7.2バールであった。さらに4時間後、すなわち16時間の全結晶化時間後に、第1のサンプル(S1)を採取した。38時間の全結晶化時間後に第2のサンプル(S2)を採取した。102時間の全結晶化時間後に結晶化を停止した。102時間の全結晶化時間後に得られた反応混合物からサンプルS3を採取した。
【0220】
残留する反応混合物は、60Lのプラスチックドラムに充填した。均質化後、プラスチックドラムの反応混合物の5L部に異なるさらなる処理を施した(セクション3.6〜3.8参照)。
【0221】
3.3 サンプルS1の分析
サンプルS1のpHは11.8であった。260gの乳状懸濁液を、直径25cmの陶器吸込フィルタで濾過した。濾過ケークを脱イオン水で洗浄し、293.32gの湿性ケークを陶器皿に充填した。湿性製造物を30分以内に大気中で120℃の温度に加熱し、120℃で240分間乾燥させた。次いで、乾燥製造物を240分以内に600℃の温度に加熱し、600℃にて大気中で300分間焼成した。収量は31.07gであった。焼成されたS1のサンプルを、XRDにより調べた。サンプルは非晶質であることが判明した(図5参照)。
【0222】
3.4 サンプルS2の分析
サンプルS2のpHは11.5であった。257.45gの乳状懸濁液を、直径25cmの陶器吸込フィルタで濾過した。濾過ケークを脱イオン水で洗浄し、112.8gの湿性ケークを陶器皿に充填した。湿性製造物を30分以内に大気中で120℃の温度に加熱し、120℃で240分間乾燥させた。次いで、乾燥製造物を240分以内に600℃の温度に加熱し、600℃にて大気中で300分間焼成した。収量は27.29gであった。焼成されたS2のサンプルを、XRDにより調べた(図6参照)。XRDパターンは、CHA骨格型を有する結晶性ゼオライト材料を示した。
【0223】
結晶度は51%であり、SEM/TEMにより測定したサンプルS2の結晶子の平均長さは100nmを超えていた。
【0224】
3.5 サンプルS3の分析
102時間の全結晶化時間後に得られた反応混合物からサンプルS3を採取した。サンプルS3のpHは11.43であった。227.9gの乳状懸濁液を、直径25cmの陶器吸込フィルタで濾過した。濾過ケークを脱イオン水で洗浄し、70gの湿性ケークを陶器皿に充填した。湿性製造物を30分以内に大気中で120℃の温度に加熱し、120℃で240分間乾燥させた。次いで、乾燥製造物を240分以内に600℃の温度に加熱し、600℃にて大気中で300分間焼成した。収量は26.07gであった。焼成されたS3のサンプルを、XRDにより調べた(図7参照)。XRDパターンは、CHA骨格型を有する結晶性ゼオライト材料を示した。
【0225】
結晶度は85%であり、SEMにより測定したサンプルS3の結晶子の平均長さは、100nmを超えていた。焼成されたS3の元素分析は、それぞれの場合に焼成されたS3の100g当たり0.06gのNa、2.8gのCu、2.4gのAlおよび39.2gのSiを示した。焼成されたS3のSi:Al比は15.87であった。
【0226】
3.6 反応生成物「自体」(サンプルS4)の噴霧乾燥
プラスチックドラムの2*5L=10Lの反応混合物を、均質化(上記セクション3.2参照)後に噴霧乾燥した。噴霧乾燥装置を図8に概略的に示す。噴霧乾燥器のノズルは、直径1.5mmの二成分ノズルであった。ノズル圧は、3バールabsであった。乾燥ガスとして、窒素を30Nm3/hの流量で使用した。乾燥温度は299℃であった。噴霧ガスとして、窒素を4Nm3/hの流量で使用した。噴霧ガスの温度は室温であった。噴霧乾燥器のコーヌスの温度は、160〜175℃の範囲であり、サイクロンの温度は、135〜145℃の範囲であった。
【0227】
全体で、水分が5.31%の923gの噴霧乾燥材料を得た。
【0228】
555.42gの噴霧乾燥材料を陶器皿に充填した。材料を30分以内に大気中で120℃の温度に加熱し、120℃で240分間乾燥させた。次いで、乾燥製造物を240分以内に600℃の温度で加熱し、600℃にて大気中で300分間焼成した。425.0gの焼成材料S4を得た。
【0229】
焼成されたS4のサンプルをXRDにより調べた(図9参照)。XRDパターンは、CHA骨格型を有する結晶性ゼオライト材料を示した。
【0230】
結晶度は88%であり、SEMにより測定したサンプルS4の結晶子の平均長さは、100nmを超えていた(図10〜13参照)。
【0231】
焼成されたS4の元素分析は、それぞれの場合に焼成されたS4の100g当たり0.014gのC、0.01g未満のN、0.17gのNa、2.7gのCu、2.3gのAlおよび39.5gのSiを示した。
【0232】
DIN66131に従って測定した焼成S4のBET表面は492m2/gであり、DIN66135に従って測定したラングミュア表面は652m2/gであった。
【0233】
焼成されたS4の熱的挙動をAr雰囲気中でTGA−IRにより測定した。以下の結果を得た(デルタm=質量差)
【表2】

【0234】
3.7 中性反応生成物(サンプルS5)の噴霧乾燥
プラスチックドラム内の2kgの反応混合物を、均質化(上記セクション3.2参照)後に、2kgの脱イオン水と混合した。496gの10質量%HNO3水溶液を用いて、懸濁液のpHを7の値に調整し、懸濁液を濾過した。濾過ケークを再び脱イオン水と混合し、得られた懸濁液のpHを10質量%HNO3水溶液で7の値に調整した。続いて、懸濁液を濾過し、濾過ケークを同様にして再び処理した。次いで、固体を、濾液の伝導度が120μS(マイクロシーメン)になるまで脱イオン水(15L)で洗浄した。
【0235】
続いて、固体を脱イオン水でスラリー化し、スラリーを噴霧乾燥させた。噴霧乾燥装置を図8に概略的に示す。噴霧乾燥器のノズルは、直径1.5mmの二成分ノズルであった。ノズル圧は、3バールabsであった。乾燥ガスとして、窒素を30Nm3/hの流量で使用した。乾燥温度は299℃であった。噴霧ガスとして、窒素を4Nm3/hの流量で使用した。噴霧ガスの温度は室温であった。噴霧乾燥器のコーヌスの温度は、165〜175℃の範囲であり、サイクロンの温度は、130〜140℃の範囲であった。
【0236】
全体で、水分が約1%の541gの噴霧乾燥材料S5を得た。
【0237】
540gの噴霧乾燥材料を陶器皿に充填した。材料を30分以内に大気中で120℃の温度に加熱し、120℃で240分間乾燥させた。次いで、乾燥製造物を240分以内に600℃の温度で加熱し、600℃にて大気中で300分間焼成した。435.5gの焼成材料S5を得た。
【0238】
焼成されたS5のサンプルをXRDにより調べた(図14参照)。XRDパターンは、CHA骨格型を有する結晶性ゼオライト材料を示した。
【0239】
結晶度は86%であり、SEMにより測定したサンプルS5の結晶子の平均長さは、100nmを超えていた(図15〜18参照)。
【0240】
焼成されたS5の元素分析は、それぞれの場合に焼成されたS5の100g当たり0.018gのC、0.01g未満のN、0.05gのNa、2.7gのCu、2.4gのAlおよび40.0gのSiを示した。
【0241】
DIN66131に従って測定した焼成S5のBET表面は492m2/gであり、DIN66135に従って測定したラングミュア表面は651m2/gであった。
【0242】
焼成されたS5の熱的挙動をAr雰囲気中でTGA−IRにより測定した。以下の結果を得た(デルタm=質量差)
【表3】

【0243】
3.8 反応生成物(サンプルS6)の噴霧乾燥
プラスチックドラム内の2kgの反応混合物を、均質化(上記セクション3.2参照)後に、濾過した。続いて、得られた固体を脱イオン水でスラリー化し、スラリーを噴霧乾燥させた。噴霧乾燥装置を図8に概略的に示す。噴霧乾燥器のノズルは、直径1.5mmの二成分ノズルであった。ノズル圧は、3バールabsであった。乾燥ガスとして、窒素を30Nm3/hの流量で使用した。乾燥温度は299℃であった。噴霧ガスとして、窒素を4Nm3/hの流量で使用した。噴霧ガスの温度は室温であった。噴霧乾燥器のコーヌスの温度は、165〜175℃の範囲であり、サイクロンの温度は、135〜150℃の範囲であった。
【0244】
全体で、水分が約1.52%の541gの噴霧乾燥材料S6を得た。
【0245】
480gの噴霧乾燥材料S6を陶器皿に充填した。材料を30分以内に大気中で120℃の温度に加熱し、120℃で240分間乾燥させた。次いで、乾燥製造物を240分以内に600℃の温度で加熱し、600℃にて大気中で300分間焼成した。377.5gの焼成材料S6を得た。
【0246】
焼成されたS6の元素分析は、それぞれの場合に焼成されたS6サンプル100g当たり0.021gのC、0.01g未満のN、0.09gのNa、2.6gのCu、2.4gのAlおよび41.0gのSiを示した。
【0247】
実施例4:実施例3によるサンプルS5のSCR試験
4.1 スラリーの調製
実施例3(サンプル5)により得られた、Cuを含み、CHA骨格構造を有する90gの噴霧乾燥および焼成ゼオライト材料を215mLの脱イオン水と混合した。混合物を11時間にわたってボールミル処理して、10マイクロメートルより小さい90%の粒子を含むスラリーを得た。希酢酸中15.8gの酢酸ジルコニウムを撹拌しながらスラリーに添加した。次いで、最終的に焼成されたハニカムに、粒子をハニカムに接着させるための結合剤材料として作用するZrO2を形成する。
【0248】
4.2 塗布
400cpsi(1平方インチ当たりのセル数=(2.54cm)2当たりのセル数)のセル密度および6.5mmの肉厚を有する1"D×3"Lセル状セラミックコアにスラリーを塗布した。被覆されたコアを110℃で3時間乾燥させ、400℃で1時間焼成した。塗布処理を1回繰り返して、2.4g/in3(2.4g/(2.54cm)3)の目標薄め塗布量を得た。薄め塗布量は、容量に対するハニカムの乾燥重量増加と定義される。
【0249】
4.3 NOx選択的触媒還元(SCR)効率の測定
新鮮触媒コアの窒素酸化物選択的触媒還元(SCR)効率および選択性を、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のH2Oを有し、残りがN2の供給ガス混合物を、1"D×3"L触媒コアを含む定常状態反応器に添加することによって測定した。
【0250】
触媒試験のために、薄め被覆コアを、セラミック絶縁マットが巻きつけられた正方形断面に成形し、電気炉によって加熱されたインコネル反応器管の内側に配置した。ガス、すなわち(空気の)O2、N2およびH2Oを予備加熱炉で予備加熱してから、反応器に導入した。反応ガスNOおよびNH3を予備加熱炉と反応器の間に導入した。
【0251】
反応を、150℃〜460℃の温度範囲にわたって80000h-1の空間速度で実施した。空間速度は、全反応混合物を含むガス流量を、触媒コアの幾何容量で割ったものと定義される。これらの条件は、新鮮触媒に対する標準試験を定める。
【0252】
図19は、新鮮触媒の触媒効率および選択性を示すSCR試験の結果を示す。一般に、広い温度範囲にわたって高性能を示し、特に低温性能が向上した材料を提供することが望まれる。性能は、NOx変換率だけでなく、N2Oの形成を最小限に抑えることによって反映されるN2に対するSCRの選択性をも含む。本発明によるこの触媒は、低N2O形成(10ppm未満のN2O)とともに全温度枠にわたる高NOx変換率を示すことがわかる。
【0253】
4.4 触媒の熱水安定性の測定
上記セクション4.2に記載の新鮮触媒コアを10質量%のH2Oの存在下で850℃にて6時間にわたって熱水熟成した後に、新鮮触媒コアに対するSCR評価について上記セクション4.3に概説されているのと同じ方法によって窒素酸化物SCR効率および選択性を測定することによって、触媒の熱水安定性を測定した。
【0254】
熟成触媒のSCR効率および選択性の結果を図20に示す。一般に、既存のゼオライト材料と比較して熱水安定性を向上させること、例えば、少なくとも約650℃以上、例えば約700℃〜約800℃の範囲の温度で安定する触媒材料が望まれる。本発明によるこの触媒は、全温度枠にわたって高NOx変換率を維持しながら、低N2O形成(20ppm未満のN2O)で反映される窒素に対する高い選択性を維持することがわかる。
【0255】
実施例5:Laをさらに含む、CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料の製造
5.1 合成ゲルの調製
以下の出発材料を採用した:
−脱イオン水
−水酸化トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム(TMAA、水中13.4質量%、Sachen ロット.A7089OX16007)
−水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH、水中25質量%(Aldrich331633、ロット.A337872))
−アルミニウムトリイソプロピレート(Aldrich22,041−8、ロット.S42369−457)
−実施例2(2.1)により調製した[Cu(NH34]CO3錯体(15.7質量%のCu)
−La(NO33×6H2
−Ludox AS40。
【0256】
ビーカーにおいて、612.15gの脱イオン水と309.29gのTMAA水溶液とを混合した。続いて、99gのTMAOH水溶液を混合し、室温で10分間撹拌した。続いて、0.92gのLa(NO33×6H2Oを添加しながら、混合物を撹拌した。次いで、34.7gのアルミニウムトリイソプロピレートを添加し、得られた懸濁液を約60分間撹拌した。続いて、36.2gの[Cu(NH34]CO3溶液を添加し、約10分間撹拌した。続いて、408.3gのLudox AS40を添加し、得られた懸濁液を約20分間撹拌した。
【0257】
得られた懸濁液のpHは13.3であった。
【0258】
懸濁液は、以下のモル比の組成を有していた。36SiO2:2.25Alイソプロプ:2.6TMAA:3.6TMAOH:1.12Cuアミン:455H2O:0.028La(NO33×6H2O。このゲルをオートクレーブ内に移した。
【0259】
5.2 熱水結晶化
オートクレーブを密閉し、160℃の温度に加熱した。160℃の温度を12時間維持した。それによって、オートクレーブ内の混合物を200rpm(回転数/分)で撹拌した。オートクレーブ内の圧力は、開始時は7バールであり、12時間後は7.2バールであった。次いで、オートクレーブの加熱を停止し、オートクレーブを50℃まで冷却し、反応混合物を30分間撹拌した。続いて、オートクレーブを160℃に加熱し、90時間撹拌しながら、温度を160℃に維持した。
【0260】
5.3 分離、乾燥および焼成
熱水結晶化後に、得られた懸濁液は、11.57のpHを有していた。この懸濁液を脱イオン水と(1:1で)混合し、得られた懸濁液のpHを約650gの5%HNO3で7.47に調整した。次いで、懸濁液を、直径15cmの陶器吸込フィルタで濾過した。濾過ケークを脱イオン水で洗浄し、380gの湿性ケークを陶器皿に充填した。湿性製造物を30分以内に大気中で120℃の温度に加熱し、120℃で240分間乾燥させた。次いで、乾燥製造物を240分以内に600℃の温度に加熱し、600℃にて大気中で300分間焼成した。収量は179.99gであった。焼成された材料のサンプルを、XRDにより調べたところ、CHA骨格を有するゼオライトが得られたことが判明した(図21参照)。
【0261】
5.4 製造物の特性決定
5.3により得られた焼成材料の元素分析は、それぞれの場合に焼成材料100g当たり0.015gのC、0.5g未満のN、0.06gのNa、2.6gのCu、2.2gのAlおよび38.0gのSiを示した。
【0262】
DIN66131に従って測定した焼成材料のBET表面は488m2/gであり、DIN66135に従って測定したラングミュア表面積は675.5m2/gであった。結晶度は92%であり、結晶子の平均長さは、100nmを超えていた。典型的な結晶子は、約3〜4マイクロメートルの平均長さを有していた(図22〜24参照)
焼成材料の熱的挙動をTG/DTA/IRにより測定した。以下の結果を得た(デルタm=質量差)。
【0263】
【表4】

【0264】
該材料は、約1182.7℃の分解温度および約1302.1℃の再結晶温度を有することが判明した。Laの存在は、実施例3.6と比較した場合に分解温度を上昇させたことがわかる。
【0265】
実施例6:CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料の製造
6.1 合成ゲルの調製
以下の出発材料を採用した:
−水酸化トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム(TMAA、水中13.4質量%、Sachen ロット.A7089OX16007)
−水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH、水中25質量%(Aldrich331633、ロット.A337872))
−アルミニウムトリイソプロピレート(Aldrich22,041−8、ロット.S42369−457)
−実施例2(2.1)により調製した[Cu(NH34]CO3錯体(15.7質量%のCu)
−Ludox AS40。
【0266】
ビーカーにおいて、222.8gのTMAAと696.7gのTMAOH溶液とを混合した。この溶液を室温で10分間撹拌した。次いで、94.1gのアルミニウムトリイソプロピレートを添加し、得られた懸濁液を約60分間撹拌した。続いて、67.4gの[Cu(NH34]CO3溶液を添加し、約10分間撹拌した。続いて、918.9gのLudox AS40を添加し、得られた懸濁液を約20分間撹拌した。
【0267】
得られた懸濁液のpHは13.6であった。
【0268】
懸濁液は、以下のモル比の組成を有していた。36SiO2:2.7Alイソプロプ:2.6TMAA:3.6TMAOH:0.096Cuアミン:450H2O。このゲルをオートクレーブ内に移した。
【0269】
6.2 熱水結晶化
オートクレーブを密閉し、170℃の温度に加熱した。170℃の温度を120時間維持した。それによって、オートクレーブ内の混合物を200rpm(回転数/分)で撹拌した。
【0270】
6.3 分離、乾燥および焼成
熱水結晶化後に、得られた懸濁液は、11.26のpHを有していた。この懸濁液を脱イオン水と(1:1で)混合し、得られた懸濁液のpHを約650gの5%HNO3で7.47に調整した。次いで、懸濁液を、直径15cmの陶器吸込フィルタで濾過した。湿性製造物を30分以内に大気中で120℃の温度に加熱し、120℃で240分間乾燥させた。次いで、乾燥製造物を240分以内に600℃の温度に加熱し、600℃にて大気中で300分間焼成した。収量は403.5gであった。焼成された材料のサンプルをXRDにより調べたところ、CHA骨格を有するゼオライトが得られたことが判明した(図25参照)。
【0271】
6.4 製造物の特性決定
5.3により得られた焼成材料の元素分析は、それぞれの場合に焼成材料100g当たり0.026gのC、0.5g未満のN、0.038gのNa、2.2gのCu、2.9gのAlおよび39.0gのSiを示した。
【0272】
DIN66131に従って測定した焼成材料のBET表面は459.7m2/gであり、DIN66135に従って測定したラングミュア表面積は638.5m2/gであった。結晶度は92%であり、結晶子の平均長さは、100nmを超えていた。典型的な結晶子は、約2〜5マイクロメートルの平均長さを有していた(図26〜28参照)。
【0273】
焼成材料の熱的挙動をTG/DTA/IRにより測定した。以下の結果を得た(デルタm=質量差)。
【0274】
【表5】

【0275】
該材料は、約1188.5℃の分解温度および約1329.3℃の再結晶温度を有することが判明した。
【0276】
実施例7:実施例6によるサンプルのSCR試験
7.1 スラリーの調製
実施6により得られた、Cuを含み、CHA骨格構造を有する150gの噴霧乾燥および焼成ゼオライト材料を358mLの脱イオン水と混合した。混合物を11時間にわたってボールミル処理して、10マイクロメートルより小さい90%の粒子を含むスラリーを得た。希酢酸中(30%のZrO2を含む)26gの酢酸ジルコニウムを撹拌しながらスラリーに添加した。
【0277】
7.2 塗布
65cpsi(1平方インチ当たりのセル数)(400cpsi(1平方インチ当たりのセル数))のセル密度および6.5mmの肉厚を有する1"D×3"Lセル状セラミックコアにスラリーを塗布した。被覆されたコアを110℃で3時間乾燥させ、400℃で1時間焼成した。塗布処理を1回繰り返して、0.146g/cm3(2.4g/in3)の目標薄め塗布量を得た。薄め塗布量は、容量に対するハニカムの乾燥重量増加と定義される。
【0278】
7.3 NOx選択的触媒還元(SCR)効率の測定
新鮮触媒コアの窒素酸化物選択的触媒還元(SCR)効率および選択性を、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のH2Oを有し、残りがN2の供給ガス混合物を、1"D×3"L触媒コアを含む定常状態反応器に添加することによって測定した。
【0279】
触媒試験のために、薄め被覆コアを、セラミック絶縁マットが巻きつけられた正方形断面に成形し、電気炉によって加熱されたインコネル反応器管の内側に配置した。ガス、すなわち(空気の)O2、N2およびH2Oを予備加熱炉で予備加熱してから、反応器に導入した。反応ガスNOおよびNH3を予備加熱炉と反応器の間に導入した。
【0280】
反応を、150℃〜460℃の温度範囲にわたって80000h-1の空間速度で実施した。空間速度は、全反応混合物を含むガス流量を、触媒コアの幾何容量で割ったものと定義される。これらの条件は、新鮮触媒に対する標準試験を定める。
【0281】
図29は、新鮮触媒の触媒効率および選択性を示すSCR試験の結果を示す。一般に、広い温度範囲にわたって高性能を示し、特に低温性能が向上した材料を提供することが望まれる。性能は、NOx変換率だけでなく、N2Oの形成を最小限に抑えることによって反映されるN2に対するSCRの選択性をも含む。この触媒は、低N2O形成(10ppm未満のN2O)とともに全温度枠にわたる高NOx変換率を示すことがわかる。
【0282】
7.4 触媒の熱水安定性の測定
上記セクション4.2に記載の新鮮触媒コアを10質量%のH2Oの存在下で850℃にて6時間にわたって熱水熟成した後に、新鮮触媒コアに対するSCR評価について上記セクション4.3に概説されているのと同じ方法によって窒素酸化物SCR効率および選択性を測定することによって、触媒の熱水安定性を測定した。
【0283】
熟成触媒のSCR効率および選択性の結果を図30に示す。一般に、既存のゼオライト材料と比較して熱水耐久性を向上させること、例えば、少なくとも約650℃以上、例えば約700℃〜約900℃の範囲の温度で安定する触媒材料が望まれる。この触媒は、全温度枠にわたって高NOx変換率を維持しながら、低N2O形成(20ppm未満のN2O)で反映される窒素に対する高い選択性を維持することがわかる。
【0284】
CE1(先行技術による実施例):CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料のイオン交換による製造
CE1.1 CHA骨格構造を有する粉末ゼオライト材料の調製
以下の出発材料を採用した:
−脱イオン水
−水酸化トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム(TMAA、水中13.4質量%、Sachen ロット.A7089OX16007)
−アルミニウムトリイソプロポキシド(Aldrich22,041−8、ロット.S42369−457)
−Ludox AS40
−水酸化ナトリウム(50%溶液)。
【0285】
38.95kgのアダマンチル溶液をオートクレーブに添加した。続いて、2.65kgの水酸化ナトリウム溶液を撹拌しながら添加した。溶液が透明になるまで混合を実施した(約30分間)。次いで、4.26kgのトリイソプロポキシド(ATIP)を5〜15分以内に添加した。固体が反応し、溶液が均一な懸濁液になるまで混合を継続した(約2時間)。次いで、50kgのLudox AS−40を撹拌しながら添加した。
【0286】
懸濁液は、以下のモル比の組成を有していた。36SiO2:1.1Al23:2.6TMAA:1.8Na2O:377H2O。
【0287】
CE1.2 熱水結晶化
オートクレーブを密閉し、170℃の温度に加熱した。170℃の温度を20時間維持した。それによって、オートクレーブ内の混合物を200rpm(回転数/分)で撹拌した。オートクレーブ内の圧力は7.8バールであった。pHは、反応の開始時は13.4であった。20時間後、オートクレーブの加熱を停止し、オートクレーブを35℃まで冷却した。
【0288】
CE1.3 分離、乾燥および焼成
熱水結晶後に、得られた懸濁液は、11.9のpHを有していた。反応器内容物1000kg当たり168kgの希釈酸を添加した。予備混合した硝酸(10質量%水溶液)の全量計算値の約80%を撹拌下で反応器に供給した。pHが約7〜7.5になるまで約20%を徐々に少しずつ添加した。全組成物を濾過装置に供給した。
【0289】
懸濁液をフィルタプレスで濾過した。濾過ケークを200マイクロシーメン/cmの伝導度まで脱イオン水で洗浄した。湿性製造物を30分以内に大気中で120℃の温度に加熱し、120℃で240分間乾燥させた。次いで、乾燥製造物を240分以内に600℃の温度に加熱し、600℃にて大気中で300分間焼成した。焼成された材料のサンプルをXRDにより調べたところ、CHA骨格を有するゼオライトが得られたことが判明した。
【0290】
CE1.4 アンモニウム交換
CE1.3のイオン交換によりアンモニア形を製造した。55.6gの54質量%の硝酸アンモニウムと530gの脱イオン水とを80℃で混合することによって硝酸アンモニウム溶液を調製した。次いで、300gのCE1.3のゼオライト材料をこの溶液に添加した。Na/H形のゼオライト材料とアンモニウムイオンとのイオン交換反応を、スラリーを60℃で1時間撹拌することによって実施した。反応時のpHは、2.7〜2.4であった。次いで、得られた混合物を濾過し、濾液が200未満のマイクロシーメン/cm未満の伝導度を有するまで洗浄してから、洗浄したサンプルを空気乾燥させた。
【0291】
CE1.5 銅交換
89.8gの酢酸銅塩を1.125Lの脱イオン水に70℃で溶解させることによって、酢酸銅(II)一水和物溶液を調製した。次いで、この溶液に300gのCE1.4のゼオライト材料を添加した。NH4+形のゼオライト材料と銅イオンとのイオン交換反応を、スラリーを70℃で1.5時間撹拌することによって実施した。反応時のpHは、4.8〜4.5であった。次いで、得られた混合物を濾過し、濾液が200マイクロシーメン/cm未満の伝導度を有して、可溶の銅または遊離した銅がサンプルに実質的に残留していないことが示されるまで洗浄し、洗浄したサンプルを90℃で乾燥させた。得られたCu含有材料は、2.4質量%のCuおよび104ppmのNaを含んでいた。SiO2:Al23は30:1であった。
【0292】
CE1.6 CE1.5の材料のSCR試験
CE1.6.1スラリーの調製
CE1.5により得られた、Cuを含み、CHA骨格構造を有する197gのゼオライト材料を280.4mLの脱イオン水と混合した。混合物を20分間にわたってボールミル処理して、10マイクロメートルより小さい90%の粒子を含むスラリーを得た。希酢酸中(30%のZrO2を含む)27.38gの酢酸ジルコニウムを撹拌しながらスラリーに添加した。
【0293】
CE1.6.2 塗布
65cpsi(1平方インチ当たりのセル数)(400cpsi(1平方インチ当たりのセル数))のセル密度および6.5mmの肉厚を有する1"D×3"Lセル状セラミックコアにスラリーを塗布した。被覆されたコアを110℃で3時間乾燥させ、400℃で1時間焼成した。塗布処理を1回繰り返して、0.146g/cm3(2.4g/in3)の目標薄め塗布量を得た。薄め塗布量は、容量に対するハニカムの乾燥重量増加と定義される。
【0294】
CE1.6.3 NOx選択的触媒還元(SCR)効率の測定
新鮮触媒コアの窒素酸化物選択的触媒還元(SCR)効率および選択性を、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のH2Oを有し、残りがN2の供給ガス混合物を、1"D×3"L触媒コアを含む定常状態反応器に添加することによって測定した。
【0295】
触媒試験のために、薄め被覆コアを、セラミック絶縁マットが巻きつけられた正方形断面に成形し、電気炉によって加熱されたインコネル反応器管の内側に配置した。ガス、すなわち(空気の)O2、N2およびH2Oを予備加熱炉で予備加熱してから、反応器に導入した。反応ガスNOおよびNH3を予備加熱炉と反応器の間に導入した。
【0296】
反応を、150℃〜460℃の温度範囲にわたって80000h-1の空間速度で実施した。空間速度は、全反応混合物を含むガス流量を、触媒コアの幾何容量で割ったものと定義される。これらの条件は、新鮮触媒に対する標準試験を定める。
【0297】
新鮮触媒のSCR効率および選択性の結果を図31に示す。
【0298】
CE1.6.4 触媒の熱水安定性の測定
上記セクション4.2に記載の新鮮触媒コアを10質量%のH2Oの存在下で850℃にて6時間にわたって熱水熟成した後に、新鮮触媒コアに対するSCR評価について上記セクション4.3に概説されているのと同じ方法によって窒素酸化物SCR効率および選択性を測定することによって、触媒の熱水安定性を測定した。
【0299】
熟成触媒のSCR効率および選択性の結果を図32に示す。
【0300】
実施例8:CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料の製造
8.1 合成ゲルの調製
以下の出発材料を採用した:
−水酸化トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム(TMAA、水中13.4質量%、Sachen ロット.A7089OX16007)
−水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH、水中25質量%(Aldrich331633、ロット.A337872))
−アルミニウムトリイソプロピレート(Aldrich22,041−8、ロット.S42369−457)
−実施例2(2.1)により調製した[Cu(NH34]CO3錯体(14.5質量%のCu)
−Ludox AS40
−ワンポットCuCHAのシード。
【0301】
1600リットルのオートクレーブにおいて、190.9kgのTMAAと59.7kgのTMAOH溶液とを混合した。この溶液を室温で10分間撹拌した。次いで、25.2kgのアルミニウムトリイソプロピレートを添加し、得られた懸濁液を約60分間撹拌した。続いて、19.1kgの[Cu(NH34]CO3溶液を添加し、約10分間撹拌した。続いて、246.2kgのLudox AS−40を添加し、得られた懸濁液を約20分間撹拌した。
【0302】
得られた懸濁液のpHは、13.5であった。
【0303】
懸濁液は、以下のモル比の組成を有していた。36SiO2:2.7Alイソプロプ:2.6TMAA:3.6TMAOH:0.96Cuアミン:450H2O。次いで、5kgの79%結晶性Cu斜方沸石を噴霧乾燥形のシードとして添加した。
【0304】
8.2 熱水結晶化
オートクレーブを密閉し、170℃の温度に加熱した。170℃の温度を96時間維持した。それによって、1600リットルのオートクレーブにおける混合物を49rpm(回転数/分)で撹拌した。48時間後、72時間後および96時間後に原位置のサンプルを採取した。
【0305】
8.3 分離、乾燥および焼成
熱水結晶化後に、得られた懸濁液は、11.4のpHを有していた。この懸濁液を脱イオン水と(1:1で)混合し、得られた懸濁液のpHを5%HNO3で7.5に調整した。次いで、懸濁液を、直径80cmの400リットル陶器吸込フィルタで濾過した。次いで、湿性製造物を噴霧乾燥させた(サイクロン温度は130℃であり、乾燥ガス温度は300℃であった)。次いで、乾燥製造物を600℃の温度で回転窯にて焼成して、鋳型を除去し、C含有量を0.1質量%未満とした。焼成された材料のサンプルをXRDにより調べたところ、CHA骨格を有するゼオライトが得られたことが判明した(図33参照)。
【0306】
8.4 製造物の特性決定
8.3により得られた焼成材料の元素分析は、それぞれの場合に焼成材料100g当たり0.1g未満のC、0.5g未満のN、0.05gのNa、1.8gのCu、2.4gのAlおよび32.0gのSiを示した。これは、25.6のSiO2:Al23比に相当する。
【0307】
DIN66131に従って測定した焼成材料のBET表面およびDIN66135に従って測定したラングミュア表面積を、結晶化の詳細とともに以下の表に示す。典型的な結晶子は、約1.5〜3マイクロメートルの平均長さを有していた(図34〜36参照)。
【0308】
【表6】

【0309】
結晶化時間による製造物の特性決定は、結晶化が多くとも48時間後に完了することを示している。より短い結晶化時間も可能であり得ることが考えられる。
【0310】
実施例9:実施例8によるサンプルのSCR試験
9.1 スラリーの調製
実施8により得られた、Cuを含み、CHA骨格構造を有する150gの噴霧乾燥および焼成ゼオライト材料を358mLの脱イオン水と混合した。混合物を11時間にわたってボールミル処理して、10マイクロメートルより小さい90%の粒子を含むスラリーを得た。希酢酸中(30%のZrO2を含む)26gの酢酸ジルコニウムを撹拌しながらスラリーに添加した。
【0311】
9.2 塗布
65cpsc(1平方センチ当たりのセル数)(400cpsi(1平方インチ当たりのセル数)のセル密度および6.5mmの肉厚を有する1"D×3"Lセル状セラミックコアにスラリーを塗布した。被覆されたコアを110℃で3時間乾燥させ、400℃で1時間焼成した。塗布処理を1回繰り返して、0.146g/cm3(2.4g/in3)の目標薄め塗布量を得た。薄め塗布量は、容量に対するハニカムの乾燥重量増加と定義される。
【0312】
9.3 NOx選択的触媒還元(SCR)効率の測定
新鮮触媒コアの窒素酸化物選択的触媒還元(SCR)効率および選択性を、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のH2Oを有し、残りがN2の供給ガス混合物を、1"D×3"L触媒コアを含む定常状態反応器に添加することによって測定した。
【0313】
触媒試験のために、薄め被覆コアを、セラミック絶縁マットが巻きつけられた正方形断面に成形し、電気炉によって加熱されたインコネル反応器管の内側に配置した。ガス、すなわち(空気の)O2、N2およびH2Oを予備加熱炉で予備加熱してから、反応器に導入した。反応ガスNOおよびNH3を予備加熱炉と反応器の間に導入した。
【0314】
反応を、150℃〜460℃の温度範囲にわたって80000h-1の空間速度で実施した。空間速度は、全反応混合物を含むガス流量を、触媒コアの幾何容量で割ったものと定義される。これらの条件は、新鮮触媒に対する標準試験を定める。
【0315】
図37は、新鮮触媒の触媒効率および選択性を示すSCR試験の結果を示す。一般に、広い温度範囲にわたって高性能を示し、特に低温性能が向上した材料を提供することが望まれる。性能は、NOx変換率だけでなく、N2Oの形成を最小限に抑えることによって反映されるN2に対するSCRの選択性をも含む。この触媒は、低N2O形成(10ppm未満のN2O)とともに全温度枠にわたる高NOx変換率を示すことがわかる。これらの性能特性は、同じ試験条件を使用するFeベータなどの現行の市販の触媒と比較して大きく向上している。
【0316】
9.4 触媒の熱水安定性の測定
上記セクション9.2に記載の新鮮触媒コアを10質量%のH2Oの存在下で850℃にて6時間にわたって熱水熟成した後に、新鮮触媒コアに対するSCR評価について上記セクション9.3に概説されているのと同じ方法によって窒素酸化物SCR効率および選択性を測定することによって、触媒の熱水安定性を測定した。
【0317】
熟成触媒のSCR効率および選択性の結果を図38に示す。既存のゼオライト材料と比較して熱水耐久性を向上させること、例えば、少なくとも約650℃以上、例えば約700℃〜約900℃の範囲の温度で安定する触媒材料が望まれる。この触媒は、全温度枠にわたって高NOx変換率を維持しながら、低N2O形成(20ppm未満のN2O)で反映される窒素に対する高い選択性を維持することがわかる。
【0318】
実施例10:CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料の製造
10.1 合成ゲルの調製
以下の出発材料を採用した:
−水酸化トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム(TMAA、水中13.4質量%、Sachen ロット.A7089OX16007)
−水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH、水中25質量%(Aldrich331633、ロット.A337872))
−アルミニウムトリイソプロピレート(Aldrich22,041−8、ロット.S42369−457)
−実施例2(2.1)により調製した[Cu(NH34]CO3錯体(14.5質量%のCu)
−Ludox AS40
−ワンポットCuCHAのシード。
【0319】
ビーカーにおいて、718.6gのTMAAと188.8gのTMAOH溶液とを混合した。この溶液を室温で10分間撹拌した。次いで、94.8gのアルミニウムトリイソプロピレートを添加し、得られた懸濁液を約60分間撹拌した。続いて、71.7gの[Cu(NH34]CO3溶液を添加し、約10分間撹拌した。続いて、926.1gのLudox AS40を添加し、得られた懸濁液を約20分間撹拌した。
【0320】
得られた懸濁液のpHは14.1であった。
【0321】
懸濁液は、以下のモル比の組成を有していた。36SiO2:2.7Alイソプロプ:2.6TMAA:3.0TMAOH:0.96Cuアミン:448H2O。このゲルを2.5Lのオートクレーブ内に移した。次いで、20gの79%結晶性Cu斜方沸石を噴霧乾燥した形のシードとして添加した。
【0322】
10.2 熱水結晶化
オートクレーブを密閉し、160℃の温度に加熱した。160℃の温度を48時間維持した。それによって、オートクレーブ内の混合物を200rpm(回転数/分)で撹拌した。
【0323】
10.3 分離、乾燥および焼成
熱水結晶化後に、得られた懸濁液は、11.6のpHを有していた。この懸濁液を脱イオン水と(1:1で)混合し、得られた懸濁液のpHを5%HNO3で7.5に調整した。次いで、懸濁液を、直径15cmの陶器吸込フィルタで濾過した。湿性製造物を30分以内に大気中で120℃の温度に加熱し、120℃で240分間乾燥させた。次いで、乾燥製造物を240分以内に600℃の温度に加熱し、600℃にて大気中で300分間焼成した。収量は406gであった。焼成された材料のサンプルをXRDにより調べたところ、CHA骨格を有するゼオライトが得られたことが判明した(図39参照)。結晶度は90%と報告された。
【0324】
10.4 製造物の特性決定
10.3により得られた焼成材料の元素分析は、それぞれの場合に焼成材料100g当たり0.026gのC、0.5g未満のN、0.06gのNa、2.4gのCu、3gのAlおよび39.0gのSiを示した。
【0325】
DIN66131に従って測定した焼成材料のBET表面は521.9m2/gであり、DIN66135に従って測定したラングミュア表面積は700.3m2/gであった。典型的な結晶子は、約1.5〜3マイクロメートルの平均長さを有していた(図40〜42参照)。
【0326】
CE2(先行技術による実施例):CHA骨格構造を有するCu含有ゼオライト材料のイオン交換による製造
CE2.1 合成ゲルの調製
以下の出発材料を採用した。
−水酸化トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム(TMAA、水中13.4質量%、Sachen ロット.A7089OX16007)
−水酸化ナトリウム(NaOHペレット、>99%Riedel−de Haen)
−アルミニウムトリイソプロピレート(Aldrich22,041−8、ロット.S42369−457)
−Ludox AS40。
【0327】
3Lのプラスチックビーカーにおいて、805.6gのTMAAと28.1gのNaOHとを混合した。この溶液を室温で10分間撹拌した。次いで、114.7gのアルミニウムトリイソプロピレートを添加し、得られた懸濁液を約60分間撹拌した。続いて、1051.6gのLudox AS40を添加し、得られた懸濁液を約20分間撹拌した。
【0328】
得られた懸濁液のpHは13.5であった。
【0329】
懸濁液は、以下のモル比の組成を有していた。36SiO2:2.8Alイソプロプ:2.6TMAA:3.6NaOH:379H2O。このゲルを2.5リットルのオートクレーブ内に移した。
【0330】
CE2.2 熱水結晶化
オートクレーブを密閉し、170℃の温度に加熱した。170℃の温度を40時間維持した。それによって、2.5Lのオートクレーブ内の混合物を200rpm(回転数/分)で撹拌した。
【0331】
CE2.3 分離、乾燥および焼成
熱水結晶化後に、得られた懸濁液は、11.95のpHを有していた。この懸濁液を脱イオン水と(1:1で)混合し、得られた懸濁液のpHを5%HNO3で7.5に調整した。次いで、懸濁液を、直径15cmの陶器吸込フィルタで濾過した。次いで、湿性製造物を噴霧乾燥させた(サイクロン温度は130℃であり、乾燥ガス温度は300℃であった)。次いで、乾燥製造物を600℃の温度で回転窯にて焼成して、鋳型を除去し、C含有量を0.1質量%未満とした。焼成された材料のサンプルをXRDにより調べたところ、CHA骨格を有するゼオライトが得られたことが判明した(図43参照)。
【0332】
CE2.4 製造物の特性決定
CE2.3により得られた焼成材料の元素分析は、それぞれの場合に焼成材料100g当たり0.068gのC、0.5g未満のN、0.78g未満のNa、2.9gのAlおよび38.0gのSiを示した。これは、25.2のSiO2:Al23比に相当する。
【0333】
CE2.5 Na形のアンモニウム交換
NH4斜方沸石粉末触媒を、硝酸アンモニウムとのイオン交換によって調製した。22.5gの硝酸アンモニウムと2.25Lの脱イオン水とを60℃で混合することによって硝酸アンモニウム溶液を調製した。次いで、この溶液に、CE2.3による450gのNa形斜方沸石を添加した。Na+形斜方沸石とアンモニウムイオンのイオン交換反応を、スラリーを60℃で1時間撹拌することによって実施した。次いで、得られた混合物を濾過し、濾液が200μScm-1未満の伝導度を有して、可溶の銅または遊離した銅がサンプルに実質的に残留していないことが示されるまで洗浄し、洗浄したサンプルを90℃で乾燥させた。
【0334】
得られた材料の元素分析は、材料100g当たり0.54gのNH4および0.01g未満のNaを示した。
【0335】
CE2.6 NH4形の銅交換
Cu斜方沸石粉末触媒を酢酸銅とのイオン交換によって調製した。16gの銅塩を800mLの脱イオン水に60℃で溶解させることによって0.1M酢酸銅(II)一水和物溶液を調製した。次いで、CE2.5による200gのNH4+形斜方沸石をこの溶液に添加した。NH4+形斜方沸石と銅イオンのイオン交換反応を、スラリーを60℃で1時間撹拌することによって実施した。反応時のpHは、4.8〜4.6であった。次いで、得られた混合物を濾過し、濾液が200μScm-1未満の伝導度を有して、可溶の銅または遊離した銅がサンプルに実質的に残留していないことが示されるまで洗浄し、洗浄したサンプルを90℃で乾燥させた。
【0336】
1.3により得られた材料の元素分析は、それぞれの場合に材料100g当たり0.068gのC、0.5g未満のN、0.01g未満のNa、1.6gのCu、2.6gのAlおよび35.0gのSiを示した。これは、25.9のSiO2:Al23比に相当する。
【0337】
CE2.7 CE2.6によるサンプルのSCR試験
CE2.7.1 スラリーの調製
CE2.6により得られた、Cuを含み、CHA骨格構造を有する150gのゼオライト材料を358mLの脱イオン水と混合した。混合物を11時間にわたってボールミル処理して、10マイクロメートルより小さい90%の粒子を含むスラリーを得た。希酢酸中(30%のZrO2を含む)26gの酢酸ジルコニウムを撹拌しながらスラリーに添加した。
【0338】
CE2.7.2 塗布
65cpsc(1平方センチ当たりのセル数)(400cpsi(1平方インチ当たりのセル数)のセル密度および6.5mmの肉厚を有する1"D×3"Lセル状セラミックコアにスラリーを塗布した。被覆されたコアを110℃で3時間乾燥させ、400℃で1時間焼成した。塗布処理を1回繰り返して、0.146g/cm3(2.4g/in3)の目標薄め塗布量を得た。薄め塗布量は、容量に対するハニカムの乾燥重量増加と定義される。
【0339】
CE2.7.3 NOx選択的触媒還元(SCR)効率の測定
2.7.2による新鮮触媒コアの窒素酸化物選択的触媒還元(SCR)効率および選択性を、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のH2Oを有し、残りがN2の供給ガス混合物を、1"D×3"L触媒コアを含む定常状態反応器に添加することによって測定した。
【0340】
触媒試験のために、薄め被覆コアを、セラミック絶縁マットが巻きつけられた正方形断面に成形し、電気炉によって加熱されたインコネル反応器管の内側に配置した。ガス、すなわち(空気の)O2、N2およびH2Oを予備加熱炉で予備加熱してから、反応器に導入した。反応ガスNOおよびNH3を予備加熱炉と反応器の間に導入した。
【0341】
反応を、150℃〜460℃の温度範囲にわたって80000h-1の空間速度で実施した。空間速度は、全反応混合物を含むガス流量を、触媒コアの幾何容量で割ったものと定義される。これらの条件は、新鮮触媒に対する標準試験を定める。
【0342】
図44は、新鮮触媒の触媒効率および選択性を示すSCR試験の結果を示す。
【0343】
CE2.7.4 触媒の熱水安定性の測定
上記セクションCE2.7.2に記載の新鮮触媒コアを10質量%のH2Oの存在下で850℃にて6時間にわたって熱水熟成した後に、新鮮触媒コアに対するSCR評価について上記セクションCE2.7.3に概説されているのと同じ方法によって窒素酸化物SCR効率および選択性を測定することによって、触媒の熱水安定性を測定した。
【0344】
熟成触媒のSCR効率および選択性の結果を図45に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CHA骨格構造を有する銅含有ゼオライト材料、および
(nYO2):X23
[式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、nは、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15である]のモル比を含む組成物を製造する方法において、(i)少なくとも1つのX23源および少なくとも1つのYO2源、CHA骨格構造を有するゼオライト材料の製造に好適な少なくとも1つの構造誘導剤、ならびに少なくとも1つのCu源を含む水溶液を製造し、前記水溶液がリン源を含まず、および
(ii)リン源を含まない(i)による水溶液を熱水結晶化し、CHA骨格構造を有する銅含有ゼオライト材料を含む懸濁液を得ることを特徴とする、上記製造方法。
【請求項2】
Xは、Al、B、In、Gおよびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Geおよびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、Xは、好ましくはAlであり、Yは、好ましくはSiである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(ii)による熱水結晶化が施された水溶液が、ナトリウム、特にアルカリ金属を含まない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記構造誘導剤が、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム化合物と少なくとも1つのさらなる好適なアンモニウム化合物との混合物、好ましくは、水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムとの混合物、または水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムとの混合物、または水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムとの混合物であり、水酸化1−アダマンチルトリメチルアンモニウムと水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、または水酸化テトラメチルアンモニウム、または水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムの合計とのモル比が1:5〜1:1の範囲である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
Cuおよびアンモニアを含む水溶液が、Cu源として採用される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(i)による水溶液の製造のために、(i)により得られた水溶液が、
(nYO2):X23
[式中、pは、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは15〜70の範囲である]のモル比、および
(mCu):((nYO2)+X23
[式中、mは少なくとも0.005、より好ましくは0.02〜0.04の範囲である]のモル比を示す量で、少なくとも1つのYO2源、少なくとも1つのX23源およびCu源が採用されるである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
(ii)が施された水溶液のpHが、12〜14の範囲である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
(ii)による熱水結晶化が、100〜200℃の範囲の温度で、12〜144時間の時間にかけて実施される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
(ii)による熱水結晶化が施された水溶液が、好ましくは、La:Cu原子比が1:10〜1:100の範囲になる量でLa源を含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(iii)Cu含有ゼオライト材料を、(ii)により得られた懸濁液から分離すること、
(iv)(iii)により分離されたCu含有ゼオライト材料を、100〜150℃の範囲の温度で乾燥させること、および
(v)(iv)により乾燥されたCu含有ゼオライト材料を、300〜650℃の範囲の温度で焼成することをさらに含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
(i)の後に、Cu源が採用される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法によって得られる、骨格構造CHAを有する、Cu含有ゼオライト材料。
【請求項13】
骨格構造CHAを有し、Pを含まず、
(nYO2):X23
[Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、nは、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは15〜70の範囲である]のモル比を含む組成物を有するCu含有ゼオライト材料であって、Cu元素として計算されたゼオライト材料のCu含有量は、焼成ゼオライト材料の全質量に対して少なくとも0.5質量%である、Cu含有ゼオライト材料。
【請求項14】
Cu元素として計算されたゼオライト材料のCu含有量が、焼成ゼオライト材料の全質量に対して、2.0〜4.0質量%、好ましくは2.5〜3.5質量%の範囲である、請求項12または13に記載のゼオライト材料。
【請求項15】
好ましくは、La:Cu原子比が1:10〜1:100の範囲になる量でLaをさらに含む、請求項12から14までのいずれか1項に記載のゼオライト材料。
【請求項16】
Xは、Al、B、In、Gおよびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Geおよびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、Xは、好ましくはAlであり、Yは、好ましくはSiである、請求項12から15までのいずれか1項に記載のゼオライト材料。
【請求項17】
ナトリウム含有量、特にアルカリ金属含有量が1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下である、請求項12から16までのいずれか1項に記載のゼオライト材料。
【請求項18】
焼成ゼオライト材料の全有機炭素(TOC)含有量が、焼成ゼオライト材料の全質量に対して0.1質量%以下である、請求項12から17までのいずれか1項に記載のゼオライト材料。
【請求項19】
示差熱分析により測定された熱安定性が、1100〜1400℃の範囲、好ましくは1150〜1400℃の範囲である、請求項12から18までのいずれか1項に記載のゼオライト材料。
【請求項20】
焼成ゼオライト材料の結晶子の少なくとも90%の縁が、SEMにより測定された平均長さが1〜3マイクロメートルの範囲である、請求項12から19までのいずれか1項に記載のゼオライト材料。
【請求項21】
好ましくは耐火性担体に堆積される、請求項12から20までのいずれか1項に記載のゼオライト材料を含む、触媒。
【請求項22】
窒素酸化物NOxの選択的還元(SCR);NH3の酸化、特にディーゼルシステムにおけるNH3スリップの酸化;N2Oの分解;予混合圧縮着火(HCCI)エンジンなどの高度排気システムにおける排気制御のための触媒として;流動触媒分解(FCC)法における添加剤として;有機変換反応における触媒として;または「固定源」法における触媒として、最も好ましくは窒素酸化物NOxの選択的還元のための触媒としての、請求項12から20までのいずれか1項に記載のゼオライト材料、または請求項21に記載の触媒の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公表番号】特表2011−521871(P2011−521871A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509950(P2011−509950)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056036
【国際公開番号】WO2009/141324
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】