説明

CLA富化乳脂肪とその利用法

白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、粘液過剰分泌のうちの1つ以上に関連した疾患を治療または予防するためのc-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体の使用、又はc-9, t-11 CLA、それらの塩、それらのエステル、それらの前駆体のいずれかを豊富にした乳脂肪の使用に関する。本発明は、CLA富化乳脂肪を含む医薬組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白血球浸潤、好酸球増加症、気道リモデリング、気管支収縮のうちの1つ以上に関連した症状を治療または予防するための共役リノール酸(CLA)のc-9, t-11異性体の使用に関する。本発明は、白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、粘液過剰分泌のうちの1又は複数に関連した疾患を治療または予防する方法におけるCLA富化乳脂肪組成物と、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピーの人は、環境中の一般的なアレルゲンに対してIgE抗体を産生する遺伝的傾向を持っているため、1又は複数のアトピー疾患(例えばアレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性湿疹)に苦しむことがしばしばある(1)。アトピーの人は、アレルゲンに対するIgE抗体のレベル上昇を特徴とする過剰な応答をし、T細胞がアレルゲンに応答して、典型的な通常の応答である1型ヘルパー(Th1)サイトカイン(例えばインターロイキン-2(Il-2)、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ))ではなく2型ヘルパー(Th2)サイトカイン(例えばIL-4、IL-5、IL-9、IL-13)を産生する。
【0003】
アトピーの人がアレルゲンに曝露すると即時過敏反応が起こり、マスト細胞の表面にあるアレルゲンとIgEとFcεRIの複合体が、ヒスタミン、トリプターゼ、脂質メディエータ(ロイコトリエン、プロスタグランジン、血小板活性化因子)を放出させる。ロイコトリエン、C4、D4、E4は、平滑筋の収縮、血管拡張、血管の浸透性増大、粘液の過剰分泌を引き起こす。トリプターゼはシグナル伝達経路を活性化し、内皮細胞と上皮細胞の表面にあって好酸球と好中球を選択的に引き付ける細胞接着分子を上方調節する。続く遅発反応では、好酸球と好中球が肺に蓄積した後、CD4+T細胞が蓄積する。遅発反応は、即時過敏症が起こらないときに誘発されることがあるため、これは、T細胞があればアレルギー性喘息患者の気道を狭くするのに十分であることを示している。
【0004】
好酸球の数の増加はアレルギー疾患の指標であり、好酸球は、喘息患者の気道では100倍に増えている。最近のある論文では、好酸球増加症と疾患の重篤度の間に大まかな相関があることが報告されている。好酸球は、季節性鼻炎および通年性鼻炎(2)とポリープ症(3)の1つの特徴である。アトピー性皮膚炎では好酸球の数が増加しており、病気の皮膚には好酸球塩基性タンパク質が堆積している(4)。好酸球の脱顆粒により、気管支痙攣の原因であると考えられている毒性のある塩基性タンパク質、ロイコトリエン、血小板活性化因子が放出されることで、粘膜表面が損傷し、コリン作動性応答の制御にとって重要なM2ムスカリン受容体が損なわれる可能性がある。以前から、これらが喘息、鼻ポリープ症、アレルギー性鼻炎、好酸球性肺炎の病因であると言われている(5、6)。
【0005】
喘息の発作は、吸入したアレルゲンが、肺の中にある感作したマスト細胞の表面にあるIgE抗体と結合することによって始まる。結合は、マスト細胞の脱顆粒とヒスタミンおよびロイコトリエンの放出の引き金を引く。これらの分子は気管支の平滑筋細胞を収縮させ、気管支の管腔を狭くし、炎症性細胞(特に好酸球)を引き付け、粘液の産生を媒介する。マスト細胞の安定化剤である既存の薬は即時アレルギー応答を抑制するが、慢性喘息の治療には効果がない。マスト細胞からメディエータが放出されるのを抑える薬は、他の何らかの活性(例えば気管支拡張剤、または好酸球性炎症の阻害剤としての活性)を示すことができない限り、喘息の治療には有効でなさそうである。
【0006】
現在は、吸入するコルチコステロイドが、喘息の治療に推奨される最も重要な薬である。というのもこの薬は、肺機能を改善し、症状を軽減し、悪化を減らし、喘息で入院が全患者の過半数を入院せずに済むようにできるからである(7)。この薬は、喘息の罹患率と死亡率を減らすのに有効であるが、有効性を維持するには定期的に吸入する必要がある。吸入するコルチコステロイドは、喘息用に異常に多い投与量が処方されることがあるため、骨粗鬆症、白内障、副腎抑制といった副作用が発生する可能性がある(8)。抗IgE抗体(9)、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト(10)、金やメトトレキセート(11)などのさまざまな治療薬が、ステロイドを控える効果を持っているために喘息患者に投与されてきた。ステロイドを投与しても患者にとっての利益が少ないステロイド抵抗性喘息は医学上の大きな挑戦課題であり、非ステロイド系抗喘息薬が必要とされている(12)。
【0007】
西洋の生活様式は、喘息発症リスクに寄与する因子であると考えられている。われわれがより田園的な生活を送っていたときから食事は大きく変化した。疫学的研究から、油の多い魚を消費することの好ましい効果(13)が示唆されているが、魚油を用いた介入研究の結果はまちまちである。通常は魚に由来するγ-リノール酸とエイコサペンタエン酸(EPA)の組み合わせを含む油を投与するといった食事介入を行なうことで、喘息に関連する炎症性メディエータのレベルが低下することが報告されている(14)。EPAとドコサヘキサエン酸(DHA)が豊富な魚油を食事に補足すると、気管支喘息の子どもに効果のあることが報告されている(15)。オメガ3脂肪酸であるDHAとEPAが豊富に含まれるニュージーランド産緑イガイ(ペルナ・カナリクルス)から抽出した脂質は、喘息患者の日中の喘鳴を減らし、放出されるH2O2の濃度を低下させ、朝の最大呼気流量を増大させることが報告されている(16)。他の多くの研究では、魚油を用いた治療の利点はまったく見られていない(17)。
【0008】
最近、学齢前児童2978人で食品の消費と喘息症状の関係が調査された。乳脂肪の頻繁な消費は、喘息症状のリスク低下と関係していることが報告されている(18)。他の多くの研究は、乳製品の消費がアレルギー性感作やアトピー性疾患の進行を阻止できるのに対し、多不飽和脂肪は害をもたらす可能性があることを示唆している(19〜22)。
【0009】
乳脂肪は、生物活性のある多数の脂肪酸を含んでいる。精力的に研究されているミルク由来の脂肪酸のほとんどは、共役したリノール酸(CLA)である。CLAは、健康上の多くの利点があることが報告されている(23)。t-10, c-12異性体を豊富にした合成CLAを2週間にわたって与えたモルモットの気管では、アレルゲンに対する収縮が減少したことが報告されている。これは、プロスタグランジンE2(PGE2)の放出が増加したことに対応する(国際特許出願WO 97/32008)。逆に、同じ著者は、その後に出た2つの論文において、合成したシス-9、トランス-11 CLA異性体とトランス-10、シス-12 CLA異性体をほぼ同じ量混合したものが、アレルゲンによって誘導されるヒスタミンを減らすとともに、アレルゲンで感作したモルモットの気管からのPGE2の放出を減らしたが、アレルゲンによって誘発される気管の収縮には影響を与えなかったことを報告している(24)。
【0010】
合成CLAの持つ健康上の利点が報告されているが、ヒトとウシのミルクの中に天然に存在するCLAの性質に関する情報が欠けている。ウシの乳脂肪は、主に(75〜90%)c-9, t-11異性体を含んでいる(26)。CLAは、食品のリノール酸が生体内で水素化されてステアリン酸になるときの中間体としてこぶ胃において天然に産生されるとともに、デルタ-9デサチュラーゼ酵素がトランスバクセン酸(トランス-11-オクタデセン酸)に作用することによっていろいろな組織でも天然に産生される。乳脂肪中で2番目に多いCLA異性体はt-7, c-9異性体であり、c-9, t-11異性体の約10%のレベルで存在している。乳脂肪に含まれるCLAのt-10, c-12異性体の含有量は、所定の食事状況下で顕著に増大させることができるが、それでもc-9, t-11 CLAの含有量の2%未満である(27)。乳脂肪は、CLAの別の多くの異性体を痕跡量含んでいる。
【0011】
種子由来の合成CLAが免疫機能に与える影響に関して公開されているデータを網羅的に分析した報告によると、食事にCLAを補足することは推奨されない(28)。合成c-9, t-11 CLA異性体は比較的良性であるように見えるが、合成t-10, c-12異性体のほうは、体脂肪を変化させ、いくつかの組織の脂肪含有量を増大させ、循環するインスリンを増大させ、脂肪組織と筋肉の飽和脂肪酸含有量を増大させることがわかっている(28)。さらに、マウスに4週間にわたって0.4%w/wの割合で供給すると、脂肪肝の劇的な増大を引き起こすことが報告されている(29)。t-10, c-12 CLAは、ヒトに悪い効果をもたらすこともわかっている(30)。この研究では、t-10, c-12 CLAがインスリン抵抗性を悪化させ、CRPと、酸化ストレスのマーカーである8-イソ-プロスタンを増大させることがわかった。
【0012】
したがって、アトピー性疾患、好酸球増加症、Th2を媒介とした疾患などの疾患を治療または予防するため、報告されている治療法に伴う問題点を解決または改善する改良された手段または代替手段を提供すること、あるいは少なくとも一般の人に有用な選択肢を提供することが望ましかろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで本発明の第1の特徴により、白血球浸潤、好酸球増加症、気道リモデリング、及び気管支収縮のうちの1又は複数に関連した症状を治療または予防するための組成物の製造におけるc-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体の使用を提供する。一実施態様では、症状は、アトピー性疾患、好酸球増加症、Th2を媒介とした症状を含む以下に列挙する症状の中から選択される。一実施態様では、症状は喘息である。
【0014】
一実施態様では、組成物はt-10, c-12 CLAを実質的に含んでいない。
【0015】
本発明の別の特徴により、白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、粘液過剰分泌のうちの1又は複数に関連した症状を治療または予防するための組成物の製造におけるc-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体を豊富にした乳脂肪の使用を提供する。一実施態様では、症状は、アトピー性疾患、好酸球増加症、Th2を媒介とした症状を含む以下に列挙する症状の中から選択される。一実施態様では、症状は喘息である。
【0016】
一実施態様では、CLA富化乳脂肪は、少なくとも約2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50重量%のいずれかの量のc-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体を含んでおり、有用な範囲は、これらのうちの任意の値に挟まれた範囲にすることができる(例えば約4%〜約7%)。乳脂肪は、c-9, t-11 CLAを少なくとも約2重量%含んでいることが好ましく、約2〜10重量%含んでいることが好ましく、約4〜7重量%含んでいることがより好ましく、約5重量%含んでいることが最も好ましい。
【0017】
一実施態様では、乳脂肪は、少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または99重量%のいずれかの量のc-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体を含有するCLA異性体を含んでおり、有用な範囲は、これらのうちの任意の値に挟まれた範囲にすることができる(例えば約80%〜約95%)。乳脂肪は、c-9, t-11 CLAを少なくとも約50重量%、好ましくは約70〜90重量%、より好ましくは約70〜80重量%含有するCLA異性体を含んでいることが好ましい。
【0018】
一実施態様では、c-9, t-11 CLAは、天然源に由来するc-9, t-11 CLA;合成したc-9, t-11 CLA;遊離脂肪酸の形態になったc-9, t-11 CLA;グリセロール、モノグリセリドまたはジグリセリドに結合したc-9, t-11 CLA;エステル化された形態のc-9, t-11 CLA;または、それらの混合物から選択される。
【0019】
一実施態様では、乳脂肪は実質的にt-10, c-12 CLA異性体を含まないか、または、さもなければ乳脂肪は、標準的乳脂肪の脂肪酸プロファイルに実質的に対応する脂肪酸プロファイルを有する。一実施態様では、乳脂肪組成物は、t-10, c-12 CLA異性体を、標準的乳脂肪で見られるt-10, c-12 CLA異性体のレベル以下のレベルで含んでいる。
【0020】
一実施態様では、組成物は、保管中または投与後の劣化を防止または低減する1又は複数の成分(例えば酸化防止剤)をさらに含んでいる。
【0021】
一実施態様では、乳脂肪は、ミルク産生哺乳動物に、少なくとも1種類の脂肪酸(リノール酸)を豊富にした餌を与えてCLAの自然レベルを上昇させることによって製造される。
【0022】
別の一実施態様では、本発明の乳脂肪組成物は、c-9, t-11 CLA、またはそれらの塩、それらのエステル、若しくはそれらの前駆体の供給源と乳脂肪を組み合わせることによって製造される。
【0023】
一実施態様では、組成物は、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、食事のサプリメント、栄養製品、薬物、医薬品、または栄養薬効品の形態にされる。組成物は、粉末、液体、フード・バー、スプレッド、ソース、軟膏、錠剤、カプセルの形態にされることが好ましい。
【0024】
一実施態様では、組成物は、経口投与、鼻腔投与、局所投与、皮下投与、筋肉内投与または静脈内投与、非経口投与のために配合される。
【0025】
一実施態様では、組成物は、摂取、吸入、局所塗布のために配合される。当該組成物が吸入用の製剤にされる場合には、吸入可能な粉末、吸入可能な溶液またはエアロゾルとして配合されることが好ましい。組成物が局所塗布用の製剤にされる場合には、軟膏、クリーム、ローションいずれかの形態にされることが好ましい。
【0026】
一実施態様では、当該使用は、白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、粘液過剰分泌のうちの1又は複数に関連した症状に対してステロイド節約効果のある治療または予防のためである。当該症状は、コルチコステロイド依存性喘息、重篤な湿疹、好酸球性疾患(好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、好酸球増多症候群など)などのステロイド依存性症状であることが好ましい。
【0027】
本発明の別の特徴により、上記のc-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を豊富にした乳脂肪、及び薬理学的に許容可能な担体を含む医薬組成物が提供される。
【0028】
一実施態様では、本発明の医薬組成物は、経口投与、鼻腔投与、局所投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与のために配合される。別の一実施態様では、本発明の医薬組成物は、摂取、吸入、局所塗布のために配合される。さらに別の一実施態様では、本発明の医薬組成物は、吸入可能な粉末、吸入可能な溶液またはエアロゾルとして配合される。
【0029】
本発明の別の特徴により、c-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体を、それらを必要とする対象に投与することを含む、白血球浸潤、好酸球増加症、気道リモデリング、気管支収縮のうちの1又は複数に関連した症状(例えば以下に列挙する症状)を治療または予防する方法が提供される。
【0030】
本発明の別の特徴により、c-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を、それを必要とする対象に投与することを含む、白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、粘液過剰分泌のうちの1又は複数に関連した症状(例えば以下に列挙する症状)を治療または予防する方法が提供される。
【0031】
一実施態様では、症状は喘息である。
【0032】
一実施態様では、症状はアトピー性疾患である。別の一実施態様では、症状はアレルギーである。さらに別の一実施態様では、症状は好酸球増加症である。さらに別の一実施態様では、症状はTh2を媒介とした症状である。
【0033】
一実施態様では、症状の選択は、アレルギー性鼻炎、枯草熱、アトピー性鼻結膜炎、蕁麻疹、喘息、アトピー性湿疹の中からなされる。
【0034】
一実施態様では、症状は、接触性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹、アレルギー性結膜炎、枯草熱、アレルギー性鼻炎、木(例えばカバノキ)の花粉アレルギー、雑草(例えばブタクサ)の花粉アレルギー、及び草の花粉アレルギーを含む空中浮遊体アレルギー、ラテックス・アレルギー、食品アレルギー(例えばピーナツ、甲殻類、乳タンパク)、薬アレルギー(例えばペニシリン・アレルギー)、虫刺されアレルギー(例えばミツバチ・アレルギー、カリバチ(wasp)アレルギー、スズメバチ(hornet, yellow jacket)・アレルギー、刺しアリ・アレルギー)、カビ・アレルギー(例えばアルテルナリア属、クラドスポリウム属、アスペルギルス属、ペニシリウム属、ヘルミントスポリウム属、エピコッカム属、フザリウム属、ケカビ属、クモノスカビ属、及びオーレオバシジウム属などに対するアレルギー)、ダニ・アレルギー、動物アレルギー(例えばネコやイヌなどの家庭のペット)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、職業性喘息、好酸球増加症を伴う再現性血管性水腫から選択される。
【0035】
一実施態様では、症状は、気道、肺、血液、皮膚の好酸球増加症から選択される。別の一実施態様では、その好酸球増加症は、気道、肺、血液、皮膚の好酸球増加症、好酸球性腹水、好酸球性蜂巣炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、セリアック病、アレルギー性大腸炎、好酸球性食道炎、好酸球性膵臓炎、好酸球性肺炎、気管支拡張症、好酸球性滑膜炎、鼻好酸球増加症、熱帯性肺好酸球増加症、チャーグ-ストラウス症候群、肺好酸球増加症、特発性過好酸球増加症候群、炎症性腸疾患、好酸球性胆管炎、好酸球性白血病、及び他の好酸球性がん、家族性(遺伝性)好酸球増加症、好酸球性肉芽腫、サルコイドーシス、好酸球増加-筋痛症候群、嚢胞性線維症、鼻ポリープ症、好酸球性髄膜炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、多発性関節炎、関節リウマチ、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、多形性紅斑、好酸球性蜂巣炎、寄生虫感染(イヌ回虫、フィラリア症、鉤虫症、旋毛虫症、糞線虫症、肝蛭症、住血吸虫症)から選択される。
【0036】
一実施態様では、症状は、Th2を媒介とした喘息、アレルギー、湿疹、微生物または寄生虫の感染、及び自己免疫疾患(潰瘍性大腸炎など)から選択される。
【0037】
本発明の別の特徴により、c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体、あるいはc-9, t-11 CLA、またはそれらの塩、それらのエステル、若しくはそれらの前駆体のいずれかを豊富にした乳脂肪を、それらを必要とする対象に投与することを含む、白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、及び粘液過剰分泌のうちの1又は複数に関連した症状に対してステロイド節約効果のある治療法または予防法が提供される。当該症状は、コルチコステロイド依存性喘息、重篤な湿疹、好酸球性疾患(好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、好酸球増多症候群など)などのステロイド依存性症状であることが好ましい。
【0038】
この明細書でこれまでに引用した、または以下の記述で引用するあらゆる出願、特許、刊行物があれば、その全開示内容が、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0039】
この明細書と請求項では、“含む”という用語は、“少なくとも一部を構成する”という意味である。この明細書と請求項でこの用語を含む文章を解釈するとき、それぞれの文章または請求項においてこの用語の前に置かれている特徴がすべて存在している必要があるが、他の特徴も存在していてよい。
【0040】
この明細書に開示した数字の範囲に言及するときには、その範囲内のすべての有理数(例えば1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、10)が含まれるだけでなく、その範囲内の有理数に挟まれた任意の範囲(例えば2〜8、1.5〜5.5、3.1〜4.7)も含まれるものとし、したがってこの明細書に明示的に開示したすべての範囲よりも狭い範囲もすべて含まれるものとする。これらは特別に例示した具体例にすぎず、実際に示してある最小値と最大値に挟まれた数値のあらゆる組み合わせもこの出願で同様に明示されていると考えるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
実施例に示してあるように、CLA富化乳脂肪組成物は、アレルゲン(オボアルブミン)によって誘発される喘息のモデル・マウスにおいて、OVAによって誘発される気道の炎症が進行するのを抑制した。それとは対照的に、標準的乳脂肪と、ベニバナ油に由来する合成CLA製品(“syn-CLA”)を添加した標準的乳脂肪には、検出可能な効果がなかった。遊離脂肪酸またはグリセリドの形態になったc-9, t-11 CLAを含む餌を投与すると、肺の炎症が少なくなることが見いだされたが、CLA富化乳脂肪よりはその程度が少なかった。
【0042】
“標準的乳脂肪”という用語は、哺乳動物の典型的な乳脂肪を意味する。それは例えばニュージーランドの牧草を与えた乳牛が出す乳脂肪である。典型的なニュージーランドの乳脂肪と無水乳脂肪(AMF)の成分を分析した結果を表1と表2に示してある。ニュージーランドの乳脂肪の組成は、公知のように季節ごとに異なる(例えばMacGibbon, A.K.H.、Van der Does, Y.E.H.、Fong, B.Y.、Robinson, N.P.、Thomson, N.A.、「ニュージーランドの乳脂肪に含まれるCLAの変化」、Australian Journal of Dairy Technology、2001年、第56巻(2)、158ページを参照のこと)。
【0043】
“CLA富化乳脂肪”および“c-9, t-11 CLA富化乳脂肪”という表現は、c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体のレベルが標準的乳脂肪よりも高い乳脂肪を意味する。CLA富化乳脂肪は公知の技術で調製することができ、例えば牧草を与えた乳牛に遊離脂肪酸を補足して与える方法がある(32)。CLA富化乳脂肪は、乳脂肪にCLAを補足することによっても調製できる。本発明の一実施態様で使用する乳脂肪は、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、スイギュウ、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、リャマ、ウシ、ヒトの乳脂肪である。乳脂肪はウシの乳脂肪であることが好ましい。
【0044】
一実施態様では、CLA富化乳脂肪は、少なくとも約2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50重量%のいずれかの量のc-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を含んでおり、有用な範囲は、これらのうちの任意の値に挟まれた範囲にすることができる(例えば約4%〜約7%)。CLA富化乳脂肪は、c-9, t-11 CLAを少なくとも約2重量%含んでいることが好ましく、約2〜10重量%含んでいることが好ましく、約4〜7重量%含んでいることがより好ましく、約5重量%含んでいることが最も好ましい。
【0045】
一実施態様では、乳脂肪は、少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または99重量%のいずれかの量のc-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体を含有するCLA異性体を含んでおり、有用な範囲は、これらのうちの任意の値に挟まれた範囲にすることができる(例えば約80%〜約95%)。CLA富化乳脂肪は、c-9, t-11 CLAを少なくとも約50重量%、好ましくは約70〜80重量%含有するCLA異性体を含んでいることが好ましい。
【0046】
一実施態様では、c-9, t-11 CLA異性体を本発明の組成物に遊離脂肪酸の形態で含むことができる。別の一実施態様では、CLAはエステル化した形態(例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルなど)にすることができる。別の一実施態様では、CLAは塩の形態(例えばナトリウム塩、亜鉛塩など)にすることができる。さらに別の一実施態様では、1又は複数のc-9, t-11 CLA分子を、他の脂肪酸とともに、または他の脂肪酸なしでポリオール(例えばグリセロール、スフィンゴシン)に結合させ、例えばモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドを形成することができる。さらに別の一実施態様では、c-9, t-11 CLAのこれら形態の混合物を本発明の組成物に含めることができる。別の一実施態様では、c-9, t-11 CLAの前駆体(例えばバクセン酸(トランス-11-オクタデセン酸))を提供することができる。
【0047】
c-9, t-11 CLA異性体、またはその塩、またはその前駆体の適切なレベルは、この分野の技術と本出願の教示を考慮して当業者が決定して実現し、提供することができる。
【0048】
実施例を参照すると、CLA富化乳脂肪は、標準的乳脂肪と比べてアレルゲン特異的IgEのレベルを30〜55%低下させ、アレルゲン特異的IgG1のレベルを45〜48%低下させた。CLA富化乳脂肪は、肺好酸球増加症とリンパ球増加症を抑制したのに対し、標準的乳脂肪とsyn-CLA添加乳脂肪には明確な効果がなかった。CLA富化乳脂肪は杯細胞の化生と気道粘液の過剰産生(気道リモデリングの特徴)を抑制したのに対し、標準的乳脂肪とsyn-CLA添加乳脂肪には明確な効果がなかった。CLA富化乳脂肪を与えたマウスの気道は開いていたのに対し、標準的乳脂肪とsyn-CLA添加乳脂肪を与えたマウスの気道はムチンで塞がって狭窄状態であった。
【0049】
syn-CLAを添加した標準的乳脂肪を最大投与量(餌の5.3%が合成CLA異性体であった)で与えたマウスは脂肪肝疾患を発症した。CLA富化乳脂肪組成物にはそのような効果はなく、他の臓器を目視で調べたところ、最大投与量でさえ、いかなる毒性副作用も見られなかった。
【0050】
syn-CLAを2つの主要成分(すなわち合成c-9, t-11 CLA異性体(syn-9, 11 CLA)とt-10, c-12 CLA異性体(syn-10, 12 CLA))に分離すると、syn-9, 11 CLAのほうは肺好酸球増加症とリンパ球増加症を抑制したのに対し、syn-10, 12 CLAのほうには明確な効果がなかった。
【0051】
CLA富化乳脂肪は、普通の乳脂肪およびsyn-CLAと比べてアレルギー特異的Ig応答を減らしたのに対し、遊離脂肪酸とトリグリセリドの形態になったCLA異性体には有意な効果がなかった。
【0052】
したがってこの明細書に記載したCLA富化乳脂肪組成物は、白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、粘液過剰分泌のうちの1又は複数を減らすことができるため、これら状態のうちの1又は複数を減らすことが有益な疾患の治療薬として役立つ。そのような疾患としては、アトピー性疾患、アレルギー、好酸球増加症、Th2を媒介とした疾患などがある。
【0053】
したがって本発明の1つの特徴は、白血球浸潤、好酸球増加症、気道リモデリング、気管支収縮のうちの1又は複数に関連した症状を治療または予防するための組成物を製造する際のc-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体使用に関する。
【0054】
本発明の別の目的は、白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、粘液過剰分泌のうちの1又は複数に関連した症状を治療または予防するための組成物の製造におけるc-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステル、または、それらの前駆体を豊富にした乳脂肪の使用に関する。
【0055】
c-9, t-11 CLAとしては、合成したもの、または天然源に由来するもの、またはこれらの混合物が可能である。c-9, t-11 CLAの天然源は、Chinらが記載している(31)。c-9, t-11 CLAが合成CLAである一実施態様では、当該CLAは、力価、安定性、輸送性、半減期を改善するために化学的に修飾されたCLAを含んでいる。
【0056】
ヒマワリとサフラワーの種子の油がそれぞれ約65%と76%のリノール酸を含んでおり、CLAを製造するための原材料として現在使用されている。市場スケールの製造で利用される最適条件では、c-9, t-11異性体とt-10, c-12異性体がほぼ同じ量になる。したがってサフラワーをベースとした製品は、c-9, t-11異性体とt-10, c-12異性体をそれぞれ約36%含むことになる。小さなピークとして、9, 11CLAと10, 12CLAのシス-シス異性体とトランス-トランス異性体があり、それぞれ約0.5〜1%である。(t-10, c-12異性体を加熱することによって形成される)c-11, t-13と(c-9, t-11異性体を加熱することによって形成される)t-8, c-10が痕跡量存在している可能性もある。
【0057】
本発明で使用する組成物は、場合によってはさらに、少なくとも1つの酸化防止剤、または他の化学物質でc-9, t-11 CLA、またはその塩、またはそのエステル、またはその前駆体の劣化を防止できるものを含んでいてもよい。
【0058】
一実施態様では、本発明で使用する乳脂肪または組成物は、存在しているc-9, t-11 CLA異性体の量と比べて高いレベルで存在しているとc-9, t-11 CLA異性体の保護効果を無効にする可能性のあるt-10, c-12 CLA異性体を実質的に含んでいない。最大の効果を得るため、患者は、市販されている非動物性の合成混合CLA異性体の利用と、t-10, c-12 CLA異性体を比較的高レベルで含む他の食品供給源の利用をできるだけ少なくすべきである。
【0059】
理論に囚われずに考えると、他のCAL異性体(10, 12異性体は除く)と(遊離脂肪酸またはグリセリドの形態になった)1又は複数のトランス脂肪酸(例えばC10〜C20脂肪酸)が、本発明の乳脂肪組成物の活性に寄与している可能性がある。活性を持つ可能性のある他のCAL異性体として、c-9, t-11;c-8, t-10;c-8, c-10;c-9, c-11;c-11, c-13;t-11, t-13;t-9, t-11 CLA異性体のうちの1つ以上が挙げられる。
【0060】
一実施態様では、乳脂肪組成物は、標準的乳脂肪の脂肪酸プロファイルに実質的に対応する脂肪酸プロファイルを有する。
【0061】
一実施態様では、CLA富化乳脂肪に含まれるバクセン酸のレベルが上昇している。CLA富化乳脂肪は、バクセン酸を少なくとも約5、10、15、20、25、30、35重量%含んでいることが好ましい。
【0062】
一実施態様では、CLA富化乳脂肪に含まれるc16:0のレベルが低下している。
【0063】
一実施態様では、乳脂肪組成物は、公知のように、季節変動があるため、または餌への補足物が原因となった変動があるため、脂肪酸のプロファイルが変化した標準的乳脂肪を含んでいる。好ましい一実施態様では、乳脂肪組成物は、表2に示したCLA富化乳脂肪の脂肪酸プロファイルを有する乳脂肪を含んでいる。
【0064】
場合によっては、乳脂肪組成物はさらに、保管中または投与後の組成物の劣化を防止または低減する1又は複数の成分(例えば酸化防止剤)を含んでいる。
【0065】
一実施態様では、乳脂肪組成物は、普通の乳脂肪で見られるt-10, c-12 CLA異性体のレベル以下のレベルのt-10, c-12 CLA異性体を含んでいる。したがってこの実施態様を実現するため、乳脂肪組成物は、乳脂肪そのものの中に天然に存在しているt-10, c-12 CLA異性体を除くと、上記のようにt-10, c-12 CLA異性体を実質的に含んでいない。
【0066】
一実施態様では、乳脂肪組成物は、ミルクを出す哺乳動物に少なくとも1種類の脂肪酸(例えばリノール酸)を豊富にした餌を与えてミルクに含まれるCLAの天然のレベルを高めることによって産生させる。例えばHarfootらが記載している方法を参照のこと(32)。
【0067】
別の一実施態様では、本発明の乳脂肪組成物は、c-9, t-11 CLAの供給源を乳脂肪と組み合わせることによって調製される。
【0068】
この明細書において有用な組成物は、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、食事のサプリメント、栄養製品、薬物、医薬品、栄養薬効品いずれかの形態にすることができる。本発明の組成物は、粉末、液体、フード・バー、スプレッド、ソース、軟膏、錠剤、カプセルいずれかの形態にすることが好ましい。適切な組成物は、この分野の技術と本出願の記載内容を考慮して当業者が調製することができる。
【0069】
本発明により、上記のCLA富化乳脂肪と薬理学的に許容可能な担体を含む医薬組成物も提供される。
【0070】
本発明の別の特徴により、c-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体を、それらを必要とする対象に投与することを含む、白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、及び粘液過剰分泌のうちの1又は複数に関連した症状(例えば以下に列挙する症状)を治療または予防する方法が提供される。
【0071】
したがって本発明の別の特徴により、c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体を、それらを必要とする対象に投与することを含む、アトピー性疾患を治療または予防する方法が提供される。一実施態様では、アトピー性疾患は、アレルギー性鼻炎、枯草熱、アトピー性鼻結膜炎、蕁麻疹、喘息、アトピー性湿疹から選択される。
【0072】
本発明では、“対象”は動物であり、哺乳動物であることが好ましく、ペットになる哺乳動物またはヒトであることがより好ましい。好ましいペット動物は、ネコ、イヌ、ウマなどである。
【0073】
本発明の別の特徴により、c-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体か、c-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体を豊富にした乳脂肪を、それらを必要としている対象に投与することを含む、アレルギーの治療法または予防法が提供される。一実施態様では、当該アレルギーは、接触性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹、アレルギー性結膜炎、枯草熱、アレルギー性鼻炎、空中浮遊体アレルギー(木(例えばカバノキ)の花粉アレルギー、雑草(例えばブタクサ)の花粉アレルギー、草の花粉アレルギーなど)、ラテックス・アレルギー、食品アレルギー(例えばピーナツ、甲殻類、乳タンパク)、薬アレルギー(例えばペニシリン・アレルギー)、虫刺されアレルギー(例えばミツバチ・アレルギー、スズメバチ・アレルギー、クマンバチ・アレルギー、刺しアリ・アレルギー)、カビ・アレルギー(例えばアルテルナリア属、クラドスポリウム属、アスペルギルス属、ペニシリウム属、ヘルミントスポリウム属、エピコッカム属、フザリウム属、ケカビ属、クモノスカビ属、オーレオバシジウム属などに対するアレルギー)、ダニ・アレルギー、動物アレルギー(例えばネコやイヌなどの家庭のペット)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、職業性喘息、好酸球増加症を伴う再現性血管性水腫から選択される。
【0074】
本発明の別の特徴により、c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体か、c-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体を豊富にした乳脂肪を、それらを必要としている対象に投与することを含む、好酸球増加症の治療法または予防法が提供される。一実施態様では、好酸球増加症は、気道、肺、血液、及び皮膚の好酸球増加症から選択される。別の一実施態様では、好酸球増加症は、好酸球性腹水、好酸球性蜂巣炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、セリアック病、アレルギー性大腸炎、好酸球性食道炎、好酸球性膵臓炎、好酸球性肺炎、気管支拡張症、好酸球性滑膜炎、鼻好酸球増加症、熱帯性肺好酸球増加症、チャーグ-ストラウス症候群、肺好酸球増加症、特発性過好酸球増加症候群、炎症性腸疾患、好酸球性胆管炎、好酸球性白血病、及び他の好酸球性がん、家族性(遺伝性)好酸球増加症、好酸球性肉芽腫、サルコイドーシス、好酸球増加-筋痛症候群、嚢胞性線維症、鼻ポリープ症、好酸球性髄膜炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、多発性関節炎、関節リウマチ、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、多形性紅斑、好酸球性蜂巣炎、寄生虫感染(イヌ回虫、フィラリア症、鉤虫症、旋毛虫症、糞線虫症、肝蛭症、住血吸虫症)から選択される。
【0075】
本発明の別の特徴により、c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体か、c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体を豊富にした乳脂肪を、それらを必要としている対象に投与することを含む、Th2を媒介とした症状の治療法または予防法が提供される。一実施態様では、Th2を媒介とした症状は、喘息、アレルギー、湿疹、微生物または寄生虫の感染、自己免疫疾患(潰瘍性大腸炎など)から選択なされる。
【0076】
本発明の別の特徴により、上記の疾患の中から選択した疾患に対して“ステロイド節約”効果のある治療法または予防法であって、c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体か、c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を豊富にした乳脂肪を、それらを必要としている対象に投与することを含む方法が提供される。一実施態様では、この方法により、対象に投与されているあらゆるステロイドの投与量を減らすことができる。本発明の別の一実施態様では、コルチコステロイド依存性喘息、重篤な湿疹、好酸球性疾患(好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、好酸球増多症候群など)などのステロイド依存性症状を治療する方法が提供される。
【0077】
この明細書では、“ステロイド節約”という用語は、対象に投与されているステロイドの投与量を、その対象が本発明の組成物を摂取し始める前に投与されていたよりも低いレベルまで減らせることを意味する。投与量の減少は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90%のいずれかであることが好ましい。
【0078】
この明細書で有用なc-9, t-11 CLAと乳脂肪組成物は、選択した任意の経路(例えば経口投与、鼻腔投与、局所投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、非経口投与)で対象に投与できる形態にすることができる。したがって本発明の医薬組成物は、予定する投与経路と医薬に関する標準的なやり方を考慮し、薬理学的に許容可能な適切な賦形剤、希釈剤、基剤とともに製剤化することができる。本発明の組成物は、例えば粉末、液体、錠剤、カプセルとして経口投与すること、または軟膏、クリーム、ローションとして局所投与することができる。適切な製剤は、必要に応じて追加物質(例えば、乳化剤、酸化防止剤、着香剤、着色剤)を含むことができ、しかも即時放出、遅延放出、可変放出、持続放出、パルス式放出、制御放出させることができる。
【0079】
組成物は、(経口または鼻腔)吸入によって投与することもでき、乾燥粉末吸入器の形態で提供したり、適切な公知の推進剤を使用して、または使用せずに、加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器からエアロゾル・スプレーの形態で提供したりすると便利である。
【0080】
好ましい一実施態様では、本発明で使用する組成物は、摂取、吸入、局所塗布のための製剤にする。
【0081】
本発明において有用な組成物は、単独で使用すること、または1種類以上の他の治療薬と組み合わせて使用することができる。別の1つの治療薬と組み合わせて使用する場合には、その2つの薬剤は、同時投与すること、または逐次投与することができる。同時投与には、両方の薬剤を含む単一投与形態の投与と、別々の投与形態になった2つの薬剤の実質的な同時投与が含まれる。逐次投与には、異なるスケジュールに従って2つの薬剤を投与することが含まれる。その場合、2つの薬剤を供給する期間が重複していることが好ましい。本発明の組成物と組み合わせて投与するのに適した薬剤としては、気管支拡張剤(例えばβ-2アゴニスト)、抗コリン作動薬、抗炎剤(例えば吸入するステロイド、鼻腔内ステロイド、ステロイド・クリーム、ステロイド軟膏、経口ステロイド、ロイコトリエン・アンタゴニスト、5-リポキシゲナーゼ阻害剤)、公知の他の適切な薬剤などがある。
【0082】
本発明の一実施態様では、本発明の医薬組成物は、気管支拡張剤、長期作用性βアゴニスト、ロイコトリエン修飾剤、ならびに公知の他の適切な薬剤の中から選択した薬剤を含んでいるか、そのような薬剤とともに(同時または逐次)投与される製剤にされている。
【0083】
さらに、本発明の組成物は、特定の状態にある対象に利益をもたらす可能性のある追加の活性成分とともに製剤化することが考えられる。例えば疾患プロセスの同じ側面または異なる側面を標的とする治療薬を使用することができる。
【0084】
投与される組成物の投与量、投与期間、全体的な投与計画は、対象の症状の重篤度、治療する疾患のタイプ、選択した投与法、対象の年齢、性別、全体的健康状態などの変数に応じて対象ごとに異なる可能性があることがわかるであろう。しかし一般に、本発明の発明者は、本発明の乳脂肪組成物を体重1kgにつき1日に約1mg〜約1000mg、好ましくは約50mg〜約100mg投与することを考えている。一実施態様では、本発明の乳脂肪組成物を1日に約1g〜約30g、好ましくは約3g〜約7g投与する。本発明のCLA富化乳脂肪ではなくてc-9, t-11 CLAを含む組成物を、本発明のCLA富化乳脂肪組成物よりも少ない投与量で毎日投与できることを理解すべきである。例えば一実施態様では、本発明の発明者は、c-9, t-11 CLAを含む本発明の医薬を組成物を体重1kgにつき約0.05mg〜約50mg投与することを考えている。
【0085】
投与には、1日に1回の投与、または適切な回数に分けた投与が含まれることを理解すべきである。
【0086】
この明細書では、“治療する”という用語とその派生語は、文脈から考えられる最も広い意味で解釈されるべきである。この用語は、対象が完全に回復するまで治療を受けることを意味すると受け取ってはならない。したがって“治療する”には、特定の症状の発症予防および/または特定の症状の程度の改善が含まれる。その具体例は、白血球浸潤、好酸球増加症、病変の減少や、アレルギー応答または疾患症状の予防や進行リスクの低減などである。“治療する”という用語の範囲は広く、感受性のある個人の呼吸を良好な状態に維持し、疾患を予防するスタミナを構築することも含まれる。
【0087】
当業者であれば、特別な実験をすることなく、この分野の技術とこの明細書の開示内容を考慮し、所定の条件に関する本発明の組成物の有効量を決定できることを理解されたい。
【0088】
本発明のさまざまな側面を、すべてではないが、以下の実施例を参照してこれから説明する。
【実施例】
【0089】
マウス
年齢が8〜9週間のオスとメスのC57/BL/6マウス(オークランド大学、ニュージーランド国)を乳離れさせ、特定の餌(対照餌または実験餌)群に割り当てるまで、オボアルブミン(OVA)を含まないマウス用の普通食を与え続けた。それぞれの群(n=6)にはオスとメスのマウスが同数含まれていた。実験期間全体を通じ、湿度と温度が制御されていて昼と夜を12時間ずつのサイクルにしたエアコンルームにマウスを入れた。
【0090】

Harfootらの方法(32)に従い、牧草を与えた乳牛に遊離脂肪酸を補足して与えることにより、CLA富化乳脂肪を調製した。実験用の餌は、粉末化したAIN-93G組成物をベースとして用いて調製した(33)。
【0091】
健康な対照マウスにそのままのAIN-93G餌および/またはマウス用の普通食を与えた。(CLAを含まない)ダイズ油が、AIN-93Gにおける餌からの脂肪供給源であった。実施例で用いるすべての治療用餌の最終脂肪含有量は、治療用餌のダイズ油含有量を必要なだけ減らすことにより、対照餌となるAIN-93Gの脂肪含有量と同じレベルに維持した。
【0092】
実施例1〜3では、2種類の治療用餌を調製した。その餌では、AIN-93G餌に標準的乳脂肪またはCLA富化乳脂肪を5%w/w補足し、ダイズ油の含有量をその分減らして餌の全脂肪含有量が同じになるようにした。
【0093】
実施例4〜6では、9種類の治療用餌を調製した。その餌は、AIN-93G餌に、標準的乳脂肪、CLA富化乳脂肪、サフラワー油に由来する合成CLA製品(“syn-CLA”)を添加した標準的乳脂肪のうちの1つを0.5%w/w、2%w/w、7%w/wいずれかの割合で補足したものであり、ダイズ油の含有量をその分減らして餌の全脂肪含有量が同じになるようにした。
【0094】
実施例8では、5種類の治療用餌を調製した。その餌は、AIN-93G餌に、遊離脂肪酸またはトリグリセリドの形態になった0.07%w/wの合成c-9, t-11 CLA(インドファイン・ケミカル社、ヒルズバラ、ニュージーランド国)を補足したものであり、ダイズ油の含有量をその分減らして餌の全脂肪含有量が同じになるようにした。
【0095】
治療用餌で使用した普通の乳脂肪、CLA富化乳脂肪、syn-CLA添加乳脂肪の組成を表1と表2にまとめてある。表1と表2のデータは、従来技術で知られているFAMES分析、伸長したFAMES分析、CLA分析、乳脂肪分析を利用して得られた。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
マウスには新鮮な餌を1週間に2回与え、実験期間全体を通じて餌と水に自由に近づけるようにした。オスとメス両方のマウスの体重は、どの餌を与えられたかに関係なくほぼ一定であり、差は22%以下であった。正味の体重増加のいかなる差も統計的に有意ではなかった。ただし例外として、CLA富化乳脂肪を最も少なくして与えたオスの体重が、CLA富化乳脂肪とsyn-CLA添加乳脂肪を最高レベルで与えたオスと比べてわずかに多かった(P<0.05)。オスのマウスは全体としてメスのマウスよりも11〜50%重かった。
【0101】
感作とアレルゲンへの曝露のプロトコル
体重を測定し、血液サンプルを尾の静脈から採取した後、マウスに特定の餌を割り当てた。2週間後、1つの餌を割り当てられたマウスに、20μgのOVA(ニワトリのオボアルブミン、グレードV;シグマ・ケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)を2mgのImject Alum(Al(OH)3/Mg(OH)2;ピアース社、ロックフォード、イリノイ州)を用いて錯体化して全体積100μlのPBSに入れたものを0日目と14日目の2回、腹腔内(i.p.)注射して免疫化した。2回目の注射をしてから2週間後、マウスにケタミンとキシラジンの混合物(フェニックス社、オークランド、ニュージーランド国)をi.p.注射することによって麻酔し、100μgのOVAを含む50μlのPBSによるチャレンジを鼻腔内に行なった。同様の方法で、疾患のない対照マウスを免疫化し、PBSによるチャレンジを行なった。鼻腔内チャレンジの6日後、体重を測定し、血液、気管支肺胞洗浄(BAL)流体、肺組織のサンプルを回収した。血液は、マウスにケタミンとキシラジンの混合物をi.p.注射することによって深く麻酔した後、心臓に穿刺して回収した。血清を血液サンプルから分離し、-80℃で保管した。
【0102】
炎症細胞の肺への浸潤の評価
カニューレを挿入した気管を通じ、加熱して不活化したウシ胎仔血清を1%含む1mlのPBS(洗浄緩衝液)をマウスの肺と気道に3回流してマウスを安楽死させ、その直後に気管支肺胞洗浄を実施した。回収したBALを各マウスごとにプールし、4℃にて1,500rpmで遠心分離し、上清を-80℃で保管した。細胞ペレットを1mlの洗浄緩衝液の中に再び懸濁させ、血球計算器を用いて全細胞数をカウントした。サイトスピンを用いてBAL細胞を遠心分離した後、ポリ-L-リシンでコーティングしたスライド・ガラスの上に載せ、Diff-Quik染料(デード・ベーリング社、アメリカ合衆国)で染色した。標準的な形態基準を利用し、光学顕微鏡(ニコンE200顕微鏡)で300個以上の細胞をカウントすることにより、差分細胞カウントを行なった。
【0103】
組織化学
BALの後、肺の右葉をドライアイスの中でただちに凍結させて-80℃で保管し、タンパク質分析とウエスタン・ブロット分析を行なった。肺の左葉は、パラホルムアルデヒドを4%含む0.1MのPBS(pH7.4)の中で一晩にわたって固定し、最適切断温度化合物(OCT、ティッシュ・テック社)の中に包埋して免疫組織化学検査のために細胞を切断するまで-80℃で凍結した状態を維持するか、パラフィンに包埋して定型的な組織病理学的分析を行なった。いくつかの肺葉は、好酸球の顆粒を検出することを目的として好酸球のためのルナ法によってヘマトキシリン-ビーブリッヒ・スカーレット混合溶液で染色する(34)か、酸性粘液および中性粘液の検出と、杯細胞の同定を行なうためにアルシアン・ブルー-過ヨウ素酸シッフで染色した。
【0104】
OVA特異的免疫グロブリンの測定
96ウエルの微量滴定プレート(ナンク・マクシソープ社)を用い、血清サンプル中のOVA特異的IgG1を標準的なELISAで測定した。プレートは、10μg/mlのOVA(シグマ社)を含む100μlの0.1M炭酸塩緩衝液(pH9.5)を用いて4℃にて一晩にわたってコーティングした。PBS-T(0.05%のトゥイーン20を含むPBS)を用いて3回洗浄した後、BSAを3%含む200μlのPBS(pH7.2)を用いてプレートを室温にて90分間にわたってブロックした。それぞれの血清サンプル100μl(希釈率1:40)を3通り用意してウエルに添加し、37℃にて2時間にわたってインキュベートした。PBS-Tを用いてウエルを4回洗浄し、ヤギ抗マウスIgG1-HPRが共役した抗体(ベシル・ラボラトリーズ社、アメリカ合衆国)を100μl、1:50,000に希釈して添加した。プレートを37℃にて1時間にわたってインキュベートし、PBS-Tで5回洗浄し、ペルオキシダーゼ酵素基質であるo-フェニレンジアミン(OPD、シグマ・ケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)100μlを各ウエルに添加した。約20分後、各ウエルに4MのH2SO4を50μl添加することによって着色反応を停止させた。バイオラド・マイクロプレートELISA読取装置で490nmでの吸光度を読み取った。プラスの血清とマイナスの血清を対照として用いた。
【0105】
OVA特異的IgG1に関してOVA特異的IgEを測定した。ただし血清サンプルは1:5に希釈し、OVAは100μg/mlの割合でプレートにコーティングした(35)。OVA特異的IgE抗体を、ビオチンが共役したラット抗マウスIgEモノクローナル抗体(1:200に希釈;ファーミンジェン社、サン・ディエゴ、カリフォルニア州)を用いて検出し、次いでアビジン-HRP共役体(1:250に希釈)を用いて検出した後、OPDを用いて現像した。
【0106】
統計的分析
データは平均値±標準偏差で表示し、統計的有意さは、スチューデントのt検定によって明らかにした。P<0.05という値を有意であるとした。
【0107】
結論
実施例1
c-9, t-11 CLAが豊富な乳脂肪を餌として与えると、アレルゲンによるチャレンジそ行なったマウスの肺への白血球浸潤が減少する。
3種類の餌、すなわち対照AIN93G、乳脂肪脂肪酸をc-9, t-11CLAとして5.04%含むCLA富化乳脂肪、乳脂肪脂肪酸をc-9, t-11CLAとして1.17%含む普通の乳脂肪のうちの1つをマウスに与えた。それぞれの餌を割り当ててから2週間後、マウスに20μgのOVAをi.p.注射し、その2週間後にさらにOVAを注射することによってそのマウスを免疫化した。2回目の注射から2週間後、マウスに対し、100μgのOVAによるチャレンジを鼻腔内に行ない、6日後に、肺に浸潤していた白血球をBALによって回収した。アレルゲンを用いたチャレンジにより、餌として対照AIN93Gと普通の乳脂肪を与えたマウスの肺における白血球の量が大幅に増加した(図1A)。CLA富化乳脂肪には、アレルゲンによって誘発される肺への白血球の蓄積に対する抑制効果があった。全BAL細胞カウント数は、餌として対照AIN93Gを与えたマウスと普通の乳脂肪を与えたマウスから得られた細胞と比較して、それぞれ72%(P<0.01)と75%(P<0.05)減少した(図1A)。CLA富化乳脂肪は、好酸球の蓄積を、餌として対照AIN93Gを与えたマウスと普通の乳脂肪を与えたマウスのBAL中の好酸球の数と比較して、それぞれ88%(P<0.01)と93%(P<0.05)抑制した(図1B)。好酸球の減少に加え、単球/マクロファージの数が顕著に減少(それぞれ61%(P<0.01)と35%(P<0.05))(餌として対照AIN93Gを与えたマウスと普通の乳脂肪を与えたマウスのBAL中の単球/マクロファージおよびリンパ球の数との比較)し、同様に、リンパ球の数もそれぞれ61%(P<0.01)と64%(P<0.05)減少した(図1B)。PBSで処理した健康な対照マウスからのBALは細胞の含有量が非常に少なく(図1A)、そのほとんどが単球/マクロファージであった(図1B)。BALに含まれる好中球の数は、餌の種類に関係なく非常に少なく、アレルゲンによるチャレンジの後も顕著に増加することはなかった。そのためそれ以上は分析しなかった。
【0108】
実施例2
CLA富化乳脂肪は、BAL好酸球の細胞溶解と、単球/マクロファージによる好酸球残滓のクリアランスを誘発する。
好酸球の細胞溶解と脱顆粒はヒトの喘息における特徴であり、好酸球の中にある細胞傷害性顆粒が放出されることによって組織の損傷を引き起こすと考えられている(36)。しかし好酸球が喘息の一般的なモデル・マウスで細胞溶解または脱顆粒を起こすことの説得力のある証明はまだない。それと呼応するように、餌として対照AIN93Gを与えてOVAによるチャレンジを行なったマウスのBALに含まれる好酸球は、見たところ完全に正常である。それとは逆に、餌としてCLA富化乳脂肪を与えてOVAによるチャレンジを行なったマウスはしばしば細胞溶解を起こした。そのことは、染色体溶解と、傷のない細胞膜の損傷と、膜結合特異的顆粒の放出(遊離した好酸球の顆粒からなるクラスター(cfegs)として目に見える)によって証明された。cfegsは、単球/マクロファージによる貪食が起こったときにしばしば見られ、いくつかのマクロファージは6個までのcfegsを含んでいた。マクロファージの中には空胞の多いものがあり、これはマクロファージが好酸球の細胞膜の断片を飲み込んだ可能性のあることを示している。それとは対照的に、餌として普通の乳脂肪を与えてOVAによるチャレンジを行なったマウスのBALに含まれる好酸球は、形状が正常であった。
【0109】
実施例3
CLA富化乳脂肪は、アレルゲン特異的Ig応答を減少させる。
アレルゲンを用いたチャレンジにより、餌として対照AIN93Gと普通の乳脂肪を与えたマウスの血清においてOVA特異的IgEのレベル(図2A)とOVA特異的IgG1のレベル(図2B)が大幅に上昇した(P<0.001)。CLA富化乳脂肪は、餌として対照AIN93Gと普通の乳脂肪を与えたマウスの血清におけるレベルと比較して、OVA特異的IgEの増加をそれぞれ30%(P<0.05)と55%(P<0.001)抑制し、OVA特異的IgG1の増加をそれぞれ45%(P<0.05)と48%(P<0.01)抑制した。
【0110】
実施例4
CLA富化乳脂肪は、低用量で白血球浸潤を阻止するため、種子由来の合成CLA(“syn-CLA”)よりも優れている。
以前の2つの論文に、OVAによる感作を行なう前の1〜2週間、およびOVAによる感作中に種子由来のCLAの合成シス-9, トランス-11異性体と合成トランス-10, シス-12異性体のほぼ等量混合物(餌100gにつきCLAを0.25g)を与えると、アレルゲンによって誘導されるヒスタミンが減り、アレルゲンで感作したモルモットの気管からのPGE2の放出が減る(23、24)が、アレルゲンによって誘発される気管収縮には影響がないことが報告されている(23)。気管収縮に対する効果がないことと、吸入したアレルゲンに対する初期および後期の気管支収縮応答の阻害剤であるPGE2(37)の減少は、種子由来合成CLAが喘息症状を悪化させる可能性を持っていることを示唆している。この可能性を調べるため、そして種子由来の合成CLAを含むCLA富化乳脂肪の投与量の違いによる有効性を比較するため、マウスに、CLA富化乳脂肪、普通の乳脂肪、syn-CLAを添加した普通の乳脂肪からなる餌を与えた。ただしそれぞれの餌の乳脂肪の含有率は0.5、2、7%にした。この研究で使用したCLA富化乳脂肪は6.34%w/wのCLAで構成されていたため、3種類のCLA富化乳脂肪は、それぞれ0.032、0.13、0.44%w/wのCLAを含んでいた。この研究で使用した普通の乳脂肪は1.59%w/wのCLAで構成されていたため、3種類の普通の乳脂肪は、それぞれ0.008、0.032、0.111%w/wのCLAを含んでいた。この研究で使用したsyn-CLAを添加した普通の乳脂肪は1.59%w/wのCLAと2.65%のsyn-CLAで構成されていたため合計で4.24%w/wのCLAであり、syn-CLAを添加した3種類の普通の乳脂肪は、それぞれ0.008、0.032、0.111%のCLAと、0.0132、0.052、0.182%のsyn-CLA、すなわち合計で0.021、0.085、0.294%w/wのCLAを含んでいた。OVAによる感作とチャレンジ、餌の供給計画は、上に説明したのと同じであった。
【0111】
アレルゲンを用いたチャレンジにより、餌として普通の乳脂肪を与えたマウスの肺に白血球が多数浸潤した(図3A)。BALに含まれる細胞含有量は、餌に含まれる乳脂肪の量が増えるにつれて増加した。例えば7%の乳脂肪を与えたマウスのBALに含まれる白血球の数は、0.5%の乳脂肪を与えた場合と比べて43%増加していた。ここでも、CLA富化乳脂肪は、アレルゲンによって誘発される肺への白血球蓄積に対する抑制効果があった。最低投与量と最高投与量のCLA富化乳脂肪を餌として与えたマウスでの全BAL細胞数は、最低投与量と最高投与量の普通の乳脂肪を餌として与えたマウスの場合と比較して、それぞれ38%(P<0.05)と56%(P<0.05)減少した(図3A)。BALの細胞含有量は、CLA富化乳脂肪の投与量を増やしても増加しなかった。それとは対照的に、syn-CLAを添加した最低投与量の乳脂肪は、BALの細胞含有量が普通の乳脂肪を与えた場合と同様であったため、明らかな治療効果はなかった。syn-CLA添加乳脂肪の投与量を増やすと、BALの細胞含有量は、syn-CLA添加乳脂肪を少量投与した場合と比べて70%増加し(P<0.01)、普通の乳脂肪を最高投与量にした場合と比べて30%増加した(P>0.05)。
【0112】
CLA富化乳脂肪を餌として与えたマウスのBALの細胞含有量は、疾患のない対照マウスと比べて多かった。そこでBAL中の白血球の表現型を調べ、白血球の各サブセットの相対数、中でも潜在的に病原性のある好酸球の数を明らかにした(図3B)。餌として普通の乳脂肪とsyn-CLA添加乳脂肪を与えたマウスのBALは、単球/マクロファージと好酸球をほぼ同じ割合で数多く含んでおり、それよりも少ないがやはり多数のリンパ球も含んでいた。syn-CLA添加乳脂肪を多く投与したマウスのBALは、好酸球を最も多く含んでいることがわかった。これは、BALが細胞を多数含んでいることと一致する。これら2つの餌とは対照的に、CLA富化乳脂肪は、健康なマウスの肺に常在しているほぼ唯一の細胞である単球/マクロファージに有利になるように白血球のプロファイルを歪ませた。したがって低用量のCLA富化乳脂肪を与えたマウスのBALに含まれるマクロファージは、他の2つの餌を対応する量与えたマウスと同様であったのに対し、好酸球とリンパ球の含有量は、それぞれ87〜90%(P<0.01〜0.001)と56〜68%(P<0.01〜0.05)減少した。それぞれの餌を多く投与した場合の効果と比較すると、好酸球とリンパ球の含有量は、それぞれ76〜84%(P<0.01〜0.05)と64〜65%(P<0.01)減少した。
【0113】
実施例5
CLA富化乳脂肪は、気道の変化(例えば白血球浸潤、気管支収縮、気道上皮細胞の肥大、杯細胞の化生、粘液分泌)を抑制する。
ヒトにおけるのと同様、OVAで感作したマウスの気道は、アレルゲンを用いたチャレンジの後に大きな病的変化を示す(36)。このような変化は、普通の乳脂肪とsyn-CLA添加乳脂肪を餌として与えた喘息の動物で典型的に見られた。そのため気管支周辺と脈管周辺での白血球の大量浸潤に加え、顕著な上皮細胞の肥大と杯細胞の化生が存在していた。さらに、アルシアン・ブルー-過ヨウ素酸シッフ二重染色法により、シッフ試薬によって“赤く”染色されることでわかる中性ムコ多糖類の含有量が、アレルゲンを用いたチャレンジに応答して気道上皮において劇的に増加したことがわかった。それとは対照的に、CLA富化乳脂肪を与えてアレルゲンによるチャレンジを行なったマウスの肺における同様の変化は非常に少なかった。ほんの痕跡量の中性ムコ多糖類だけが明らかになった。
【0114】
気道上皮のシッフ試薬染色のレベルを半定量的に決定し、粘液指数スコアとして記録した(表3)。3つの割合のCLA富化乳脂肪のどれも、粘液の産生を有意に抑制した(51〜66%)。syn-CLA添加乳脂肪には有意な効果がなかった。
【0115】
【表5】

【0116】
気道上皮のシッフ染色のレベルは、報告されている粘液指数のスコアとなるように半定量的に決定した(38)が、気道を顕微鏡で見てシッフ染色のスコアを決めた点が異なっている。マウスごとに、気道に関する横断方向の切片または矢状の切片の代表例を少なくとも4〜6つ得点化した。そのときのスケールとして、0(染色なし)、1(染色された気道上皮が25%以下)、2(染色された気道上皮が26〜50%)、3(染色された気道上皮が51〜75%)、4(染色された気道上皮が75%)を利用した。気道の周辺を完全に見ることができる場合にだけ気道を分析し、直接肺胞空間に開いている気道は含めなかった。
【0117】
餌としてCLA富化乳脂肪を与えたマウスの気管支気道は他の2つの餌を与えたマウスと比べて収縮が少ないように見えた。餌としてCLA富化乳脂肪を与えたマウスの気道は、疾患のないマウスの気道と非常に似ていた。肺に存在する好酸球ははるかに少なく、存在している好酸球は細胞溶解の徴候を示していた。BAL中での状況と同様、多数のcfegsを飲み込んだマクロファージを検出できた。それとは対照的に、血液の塗布標本からは、周辺部位に存在する好酸球の形状が正常であることが確立された。全体的な組織病理学的スコアを得るため、肺の変化を、炎症、脈管周辺/気管支周辺の浸潤、好ましい貪食性マクロファージの存在、気道上皮の肥大、杯細胞の化生、細気管支の収縮、粘液の過剰分泌に関して得点化した(表4)。上記の結果は、CLA富化乳脂肪がアレルゲン特異的リモデリングと肺炎の両方を抑制できることを示している。
【0118】
【表6】

【0119】
【表7】

【0120】
組織病理学的スコアは、各マウスの左肺のパラフィン包埋め切片をアルシアン・ブルー-過ヨウ素酸シッフ染色して検査することによって決定した。肺炎、脈管周辺/気管支周辺の浸潤、気道上皮の肥大、杯細胞の化生、細気管支の収縮、粘液の過剰分泌、好ましい貪食性マクロファージの存在を、0(変化なし)〜4(顕著な変化)のスケールで得点化した。それぞれの基準に関する個別の得点を合計することにより、各マウスに全体的な組織病理学的スコアを与えた。すべてのスライド・ガラスを盲検方式で(どの餌を与えたか/どの群に割り当てたかをわからないようにして)得点化し、1つの群につき4〜6匹のマウスの平均値±標準偏差として表示した。
【0121】
実施例6
CLA富化乳脂肪は組織に対する明らかな毒性を持たない一方で、種子由来の合成syn-CLAを添加した高レベルの乳脂肪は、脂肪肝疾患を誘発する。
乳脂肪を多く与えたマウスの脾臓と肝臓を目で見て分析したところ、毒性の明らかな徴候はないことがわかった。ただし、syn-CLA添加乳脂肪を大量に与えたマウスは別である。どのマウスの脾臓と肝臓も体重あたりの臓器の重量は似た値に見えたが、例外が1つあった。syn-CLA添加乳脂肪を最も高レベルで与えたマウスの肝臓は、普通の乳脂肪またはCLA富化乳脂肪を最高レベルで与えたマウスの肝臓よりも平均で58%重かった(P<0.001)。その肝臓は非常に青白く、脂肪が多く堆積していることを示していた。syn-CLA添加乳脂肪を与えたマウスの肝臓に関する組織学的分析から、汎小葉性大空胞性脂肪症であること(脂肪蓄積)が明らかになった。脂肪の堆積による大量の空胞が存在していたが、ほんのわずかに肝炎になっていただけであった。多くの肝細胞が、肝臓脂肪症に伴うマロリー体を想起させる顆粒状物質とアモルファス物質を含んでいた(39)。それとは対照的に、ミルクをベースとした他の2つの餌を与えたマウスの肝臓は、組織学的な所見は正常であった。
【0122】
実施例7
CLA富化乳脂肪は、乳脂肪と比べても、syn-CLA添加乳脂肪と比べても、幅広い投与量でアレルゲン特異的Ig応答を減少させる。
さまざまな投与量のCLA富化乳脂肪がアレルゲン特異的Ig応答を減らす能力を調べ、普通の乳脂肪とsyn-CLA添加乳脂肪を同じ投与量にした場合と比較した。0.5、2、7%にしたCLA富化乳脂肪は、普通の乳脂肪を0.5、2、7%与えた場合と比較した場合には、OVA特異的IgEの増加をそれぞれ60、50、54.8%抑制し(表5)、OVA特異的IgG1の増加をそれぞれ31、31、38%抑制し(表6)、syn-CLA添加乳脂肪を0.5、2、7%与えた場合と比較した場合には、OVA特異的IgEの増加をそれぞれ62、51、47%抑制し(IgE、表5)、OVA特異的IgG1の増加をそれぞれ27、41、29%抑制した(表6)。
【0123】
【表8】

【0124】
【表9】

【0125】
実施例8
合成c-9, t-11 CLA異性体は肺炎のマウスを減らすのに対し、t-10. c-12 CLA異性体は有効ではない。
それぞれ0.07%のc-9, t-11 CLA異性体とt-10, c-12 CLA異性体を遊離脂肪酸とトリグリセリド両方の形態で含む餌をマウスに与えた。遊離脂肪酸とトリグリセリドいずれかの形態になったc-9, t-11異性体を補足した餌は、アレルゲンによって誘発される肺への白血球の蓄積を抑制した。全BAL細胞のカウント数は、対照餌を与えたマウスから得られた全BAL細胞のカウント数と比べて平均でそれぞれ74%(P<0.01)と56%(P<0.05)減少した(図4)。それとは対照的に、t-10, c-12異性体を与えたマウスの全BAL細胞のカウント数は、対照餌を与えた場合と比べて有意に異なってはいなかった。遊離脂肪酸とトリグリセリドの形態になったc-9, t-11異性体は、対照餌を与えた場合と比べて好酸球の蓄積を平均でそれぞれ87%(P<0.01)と62%(P>0.05)抑制したが、前者の比較だけが有意であった(図5)。それとは対照的に、t-10, c-12異性体を与えたマウスの好酸球のカウント数は、対照餌を与えた場合と比べて有意に異なってはいなかった。好酸球の減少には単球/マクロファージの数の減少が伴っており、対照餌を与えたマウスのBALに含まれる単球/マクロファージの数と比べて61%(P<0.05)と53%(P>0.05)減少していた。リンパ球の数も、対照餌を与えたマウスと比べて同様に72%(P<0.01)と43%(P>0.05)減少していた。遊離脂肪酸の形態になったc-9, t-11異性体では後者の比較だけが有意であった。それとは対照的に、t-10, c-12 CLA異性体を与えたマウスの単球/マクロファージのカウント数とリンパ球のカウント数は、対照餌を与えた場合と比べて有意には異なっていなかった。したがってc-9, t-11 CLA異性体(特に遊離脂肪酸の形態)は、アレルゲンに応答した肺炎を抑制する。
【0126】
実施例9
遊離脂肪酸の形態の合成c-9, t-11 CLA異性体は、粘液の過剰分泌を減らす。
実施例7に示したマウスの肺の気管支気道における粘液産生を調べた(表7)。遊離脂肪酸の形態になったc-9, t-11異性体は、対照餌と比べて粘液の産生を平均で32%抑制したが、有意ではなかった(表4)。それに対してトリグリセリドの形態のほうは、抑制が無視できるほど少なかった(15%)。遊離脂肪酸とトリグリセリドの形態になったt-10, c-12 CLA異性体も抑制は無視できるほどであった(それぞれ7%と15%)。
【0127】
【表10】

【0128】
実施例10
遊離脂肪酸の形態の合成c-9, t-11 CLA異性体は、肺の病気を全体的に減らす。
肺の変化を、炎症、脈管周辺/気管支周辺の浸潤、好ましい貪食性マクロファージの存在、気道上皮の肥大、杯細胞の化生、細気管支の収縮、粘液の過剰分泌に関して得点化し、全体的な組織病理学的スコアを得た(表8)。以下の結果から、遊離脂肪酸の形態になったc-9, t-11異性体は、アレルゲン特異的リモデリングと肺炎の両方を顕著に抑制できるのに対し、t-10, c-12 CLA異性体は有効ではなかったことがわかる。遊離脂肪酸の形態になったc-9, t-11異性体で組織病理学的スコアが2.02というのは、0.5%CLA富化乳脂肪(1.36)と2%CLA富化乳脂肪(1.85)で記録された値よりも大きいが、この2つの場合との有意差はなかった。c-9, t-11異性体は、炎症をCLA富化乳脂肪と同程度に抑制したが、アレルゲン特異的リモデリングに対する効果はより少なかった。
【0129】
【表11】

【0130】
実施例11
遊離脂肪酸の形態またはトリグリセリドの形態になったCLA異性体は、アレルゲン特異的Ig応答に対して有意な効果がない。
遊離脂肪酸の形態またはトリグリセリドの形態になったc-9, t-11 CLA異性体とt-10. c-12 CLA異性体を補足した餌は、餌として対照AIN-93を与えたマウスと比べてOVA特異的IgE(表9)とOVA特異的IgG1(表10)を増加させる有意な効果がなかった。
【0131】
【表12】

【0132】
【表13】

【0133】
比較のため、PBSを注射した健康な対照マウスのアレルゲン特異的なIgE値とIgG値を挙げると、それぞれ0.24±0.03と0.02±0.04であった。
【0134】
産業上の応用
本発明は、白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、粘液過剰分泌のうちの1つ以上に関連した疾患を治療または予防するのに役立つ。本発明の組成物は、食品添加物や飲料添加物、栄養製品、食事のサプリメント、医薬品、栄養薬効品として利用することができる。本発明の組成物と方法は、上記の疾患のうちの1つ以上を治療または予防するのに使用できる。
【0135】
当業者であれば、上記の説明が単なる例として提示したものであり、本発明がその説明に限定されないことが理解できよう。
【0136】
【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】図1Aは、対照餌を与えた健康なマウスと、表1に示した実験餌を与えてOVAによるチャレンジを行なったマウスに由来するBAL細胞の平均数(±標準偏差)を示すグラフである(各群のマウスの数nは5〜6)(同様の結果が、対照餌としてAIN93Gを与えた健康なマウスで得られた)。
【図1B】図1Bは、対照餌を与えた健康なマウスと、表1に示した実験餌を与えてOVAによるチャレンジを行なったマウスに由来するBALの中に存在するいろいろなタイプの細胞の平均数(±標準偏差)を示すグラフである(各群のマウスの数nは5〜6)。
【図2】図2A及び2Bは、対照餌を与えた健康なマウスと、表1に示したように実験餌を与えてOVAによるチャレンジを行なったマウスにおけるアレルゲン特異的IgE応答とアレルゲン特異的IgG1応答の平均レベル(±標準偏差)を示すグラフである(各群のマウスの数nは5〜6)。
【図3A】図3Aは、表2に示した実験餌を与えてOVAによるチャレンジを行なったマウスに由来するBAL細胞の平均数(±標準偏差)を示すグラフである(各群のマウスの数nは5〜6)。
【図3B】図3Bは、表2に示した実験餌を与えてOVAによるチャレンジを行なったマウスに由来するBALの中に存在するいろいろなタイプの細胞の平均数(±標準偏差)を示すグラフである(各群のマウスの数nは5〜6)。
【図4】図4は、表3に示した実験餌を与えてOVAによるチャレンジを行なったマウスに由来するBAL細胞の合計数に関する個々のデータと平均値を示したグラフである(各群のマウスの数nは4〜6)。
【図5】図5は、表3に示した実験餌を与えてOVAによるチャレンジを行なったマウスに由来するBAL細胞の中に存在する各タイプの細胞の数に関する個々のデータと平均値を示したグラフである(各群のマウスの数nは4〜6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白血球浸潤、好酸球増加症、気道リモデリング、及び気管支収縮のうちの1又は複数に関連した症状を治療または予防するための組成物の製造におけるc-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体の使用。
【請求項2】
白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、粘液過剰分泌のうちの1又は複数に関連した症状を治療または予防するための組成物の製造におけるc-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を豊富にした乳脂肪の使用。
【請求項3】
上記乳脂肪が、少なくとも約2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50重量%のいずれかの量のc-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
上記乳脂肪が、少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または99重量%のいずれかの量のc-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を含有するCLA異性体を含む、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
上記c-9, t-11 CLAが、天然源に由来するc-9, t-11 CLA;合成したc-9, t-11 CLA;遊離脂肪酸の形態になったc-9, t-11 CLA;グリセロール、モノグリセリドまたはジグリセリドに結合したc-9, t-11 CLA;エステル化された形態のc-9, t-11 CLA;または、それらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項6】
上記c-9, t-11 CLA前駆体がバクセン酸である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項7】
上記組成物が実質的にt-10, c-12 CLAを含まない、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
上記乳脂肪が実質的にt-10, c-12 CLAを含まないか、または、さもなければ上記乳脂肪が、標準的乳脂肪の脂肪酸プロファイルに実質的に対応する脂肪酸プロファイルを有する、請求項2に記載の使用。
【請求項9】
上記乳脂肪が、ミルク産生哺乳動物に、少なくとも1種類の脂肪酸を豊富にした餌を与えることによって製造されるか、あるいは、c-9, t-11 CLA、またはそれらの塩、それらのエステル、若しくはそれらの前駆体の供給源と乳脂肪を組み合わせることによって製造される、請求項2に記載の使用。
【請求項10】
上記組成物が、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、食事のサプリメント、栄養製品、薬物、医薬品、または栄養薬効品である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項11】
上記組成物が、経口投与、鼻腔投与、局所投与、皮下投与、筋肉内投与または静脈内投与のために配合される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項12】
上記組成物が、吸入可能な粉末、吸入可能な溶液またはエアロゾルとして配合される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項13】
上記症状が喘息である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項14】
上記症状がアトピー症状である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項15】
上記症状が、アレルギー性鼻炎、枯草熱、アトピー性鼻結膜炎、蕁麻疹、喘息、及びアトピー性湿疹から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項16】
上記症状がアレルギーである、請求項2に記載の使用。
【請求項17】
上記症状が、接触性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹、アレルギー性結膜炎、枯草熱、アレルギー性鼻炎、木、雑草、及び草の花粉アレルギーを含む空中浮遊体アレルギー、ラテックス・アレルギー、ピーナツ・アレルギー、甲殻類アレルギー、及び乳タンパク・アレルギーを含む食品アレルギー、薬アレルギー、ミツバチ・アレルギー、カリバチ(wasp)・アレルギー、スズメバチ(hornet, yellow jacket)・アレルギー、刺しアリ・アレルギーを含む虫刺されアレルギー、アルテルナリア属、クラドスポリウム属、アスペルギルス属、ペニシリウム属、ヘルミントスポリウム属、エピコッカム属、フザリウム属、ケカビ属、クモノスカビ属、及びオーレオバシジウム属に対するアレルギーを含むカビ・アレルギー、ダニ・アレルギー、動物アレルギー、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、職業性喘息、及び好酸球増加症を伴う偶発性血管性水腫から選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項18】
上記症状が好酸球増加症である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項19】
上記症状が、気道、肺、血液、及び皮膚の好酸球増加症、好酸球性腹水、好酸球性蜂巣炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、セリアック病、アレルギー性大腸炎、好酸球性食道炎、好酸球性膵臓炎、好酸球性肺炎、気管支拡張症、好酸球性滑膜炎、鼻好酸球増加症、熱帯性肺好酸球増加症、チャーグ-ストラウス症候群、肺好酸球増加症、特発性過好酸球増加症候群、炎症性腸疾患、好酸球性胆管炎、好酸球性白血病、及び他の好酸球性がん、家族性(遺伝性)好酸球増加症、好酸球性肉芽腫、サルコイドーシス、好酸球増加-筋痛症候群、嚢胞性線維症、鼻ポリープ症、好酸球性髄膜炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、多発性関節炎、関節リウマチ、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、多形性紅斑、好酸球性蜂巣炎、及びイヌ回虫、フィラリア症、鉤虫症、旋毛虫症、糞線虫症、肝蛭症、及び住血吸虫症を含む寄生虫感染から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項20】
上記症状がTh2を媒介とした症状である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項21】
上記症状が、Th2を媒介とした喘息、アレルギー、湿疹、微生物または寄生虫の感染、及び潰瘍性大腸炎を含む自己免疫疾患から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項22】
白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、及び粘液過剰分泌のうちの1又は複数に関連した症状に対してステロイド節約効果のある治療または予防を行なうための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項23】
上記症状が、コルチコステロイド依存性喘息、重篤な湿疹、及び好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、及び好酸球増多症候群を含む好酸球性疾患のステロイド依存性症状である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
c-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を豊富にした乳脂肪、及び薬理学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項25】
白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、粘液過剰分泌のうちの1又は複数に関連した症状を治療または予防するための、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
上記乳脂肪が、少なくとも約2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50重量%のいずれかの量のc-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
上記乳脂肪が、少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99重量%のいずれかの量のc-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を含有するCLA異性体を含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項28】
上記c-9, t-11 CLAが、天然の供給源に由来するc-9, t-11 CLA;合成したc-9, t-11 CLA;遊離脂肪酸の形態になったc-9, t-11 CLA;グリセロール、モノグリセリドまたはジグリセリドに結合したc-9, t-11 CLA;エステル化された形態のc-9, t-11 CLA;または、それらの混合物から選択される、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項29】
上記c-9, t-11 CLA前駆体がバクセン酸である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項30】
上記医薬組成物が実質的にt-10, c-12 CLAを含まないか、上記乳脂肪が実質的にt-10, c-12 CLAを含まないか、または、さもなければ上記乳脂肪が、標準的乳脂肪の脂肪酸プロファイルに実質的に対応する脂肪酸プロファイルを有する、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項31】
上記乳脂肪が、ミルク産生哺乳動物に、少なくとも1種類の脂肪酸を豊富にした餌を与えることによって製造されるか、あるいはc-9, t-11 CLAまたはそれらの塩、またはそれらのエステル、またはそれらの前駆体の供給源と乳脂肪を組み合わせることによって製造される、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項32】
経口投与、鼻腔投与、局所投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与のために配合される、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項33】
摂取、吸入または局所塗布のために配合される、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項34】
吸入可能な粉末、吸入可能な溶液またはエアロゾルとして配合される、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項35】
c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を、それらを必要とする対象に投与することを含む、白血球浸潤、好酸球増加症、気道リモデリング、及び気管支収縮のうちの1又は複数に関連した症状を治療または予防する方法。
【請求項36】
c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステル、またはそれらの前駆体を豊富にした乳脂肪を、それらを必要とする対象に投与することを含む、白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、及び粘液過剰分泌のうちの1または複数に関連した疾患を治療または予防する方法。
【請求項37】
上記乳脂肪が、少なくとも約2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50重量%のいずれかの量のc-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
上記乳脂肪が、少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または99重量%のいずれかの量のc-9, t-11 CLA、あるいは、それらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体を含有するCLA異性体を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
上記c-9, t-11 CLAが、天然の供給源に由来するc-9, t-11 CLA;合成したc-9, t-11 CLA;遊離脂肪酸の形態になったc-9, t-11 CLA;グリセロール、モノグリセリドまたはジグリセリドに結合したc-9, t-11 CLA;エステル化された形態のc-9, t-11 CLA;またはそれらの混合物から選択される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項40】
上記c-9, t-11 CLA前駆体がバクセン酸である、請求項35または36に記載の方法。
【請求項41】
実質的にt-10, c-12 CLAを対象に投与しない、請求項35または36に記載の方法。
【請求項42】
上記乳脂肪が実質的にt-10, c-12 CLAを含まないか、または、さもなければ上記乳脂肪が、標準的乳脂肪の脂肪酸プロファイルに実質的に対応する脂肪酸プロファイルを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
上記乳脂肪が、ミルク産生哺乳動物に少なくとも1種類の脂肪酸を豊富にした餌を与えることによりCLAの自然レベルを高めることによって製造されるか、あるいは、c-9, t-11 CLA、またはそれらの塩、それらのエステル、若しくはそれらの前駆体の供給源と乳脂肪を組み合わせることによって調製される、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
上記c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体、または上記乳脂肪が、経口投与、鼻腔投与、局所投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与のために配合される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項45】
上記c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体、または上記乳脂肪が、摂取、吸入、局所塗布のために配合される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項46】
上記c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体、または上記乳脂肪が、吸入可能な粉末、吸入可能な溶液またはエアロゾルとして配合される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項47】
上記症状が喘息である、請求項35または36に記載の方法。
【請求項48】
上記症状がアトピー疾患である、請求項35または36に記載の方法。
【請求項49】
上記症状が、アレルギー性鼻炎、枯草熱、アトピー性鼻結膜炎、蕁麻疹、喘息、及びアトピー性湿疹から選択される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項50】
上記症状がアレルギーである、請求項36に記載の方法。
【請求項51】
上記症状が、接触性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹、アレルギー性結膜炎、枯草熱、アレルギー性鼻炎、木、雑草、及び草の花粉アレルギーを含む空中浮遊体アレルギー、ラテックス・アレルギー、ピーナツ・アレルギー、甲殻類アレルギー、及び乳タンパク・アレルギーを含む食品アレルギー、薬アレルギー、ミツバチ・アレルギー、カリバチ・アレルギー、スズメバチ(hornet,yellow jacket)・アレルギー、刺しアリ・アレルギーを含む虫刺されアレルギー、アルテルナリア属、クラドスポリウム属、アスペルギルス属、ペニシリウム属、ヘルミントスポリウム属、エピコッカム属、フザリウム属、ケカビ属、クモノスカビ属、及びオーレオバシジウム属に対するアレルギーを含むカビ・アレルギー、ダニ・アレルギー、動物アレルギー、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、職業性喘息、及び好酸球増加症を伴う偶発性血管性水腫から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項52】
上記症状が好酸球増加症である、請求項35または36に記載の方法。
【請求項53】
上記症状が、気道、肺、血液、及び皮膚の好酸球増加症、好酸球性腹水、好酸球性蜂巣炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、セリアック病、アレルギー性大腸炎、好酸球性食道炎、好酸球性膵臓炎、好酸球性肺炎、気管支拡張症、好酸球性滑膜炎、鼻好酸球増加症、熱帯性肺好酸球増加症、チャーグ-ストラウス症候群、肺好酸球増加症、特発性過好酸球増加症候群、炎症性腸疾患、好酸球性胆管炎、好酸球性白血病、及び他の好酸球性がん、家族性(遺伝性)好酸球増加症、好酸球性肉芽腫、サルコイドーシス、好酸球増多-筋痛症候群、嚢胞性線維症、鼻ポリープ症、好酸球性髄膜炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、多発性関節炎、関節リウマチ、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、多形性紅斑、好酸球性蜂巣炎、及びイヌ回虫、フィラリア症、鉤虫症、旋毛虫症、糞線虫症、肝蛭症、及び住血吸虫症を含む寄生虫感染から選択される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項54】
上記症状がTh2を媒介とした症状である、請求項35または36に記載の方法。
【請求項55】
上記症状が、Th2を媒介とした喘息、アレルギー、湿疹、微生物または寄生虫の感染、及び潰瘍性大腸炎を含む自己免疫疾患から選択される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項56】
c-9, t-11 CLA、あるいはそれらの塩、それらのエステルまたはそれらの前駆体、あるいはc-9, t-11 CLA、またはそれらの塩、それらのエステル、若しくはそれらの前駆体のいずれかを豊富にした乳脂肪を、それらを必要とする対象に投与することを含む、白血球浸潤、好酸球増加症、IgE分泌、気道リモデリング、気管支収縮、及び粘液過剰分泌のうちの1又は複数に関連した症状に対してステロイド節約効果のある治療法または予防法。
【請求項57】
上記症状が、コルチコステロイド依存性喘息、重篤な湿疹、及び好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、及び好酸球増多症候群を含む好酸球性疾患のステロイド依存性症状である、請求項56に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−537250(P2007−537250A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513091(P2007−513091)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/NZ2005/000096
【国際公開番号】WO2005/107736
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506377260)フォンテラ コーポレート リサーチ アンド ディベロップメント リミティド (1)
【出願人】(506377271)フォンテラ リミティド (1)
【出願人】(501410698)オークランド ユニサービシーズ リミティド (4)
【Fターム(参考)】