説明

CO2の排出を規制した直接還元鉄の製造方法

水素および一酸化炭素を含有する循環再生高温還元ガスのストリームに酸化鉄を直接接触させることで、海綿鉄としても知られる直接還元鉄(DRI)を製造する方法および装置。本発明は、少なくとも部分的に、通常の炭素を含む燃料に代えて、水素を主成分とするガス・ストリームを使用することによって、還元ガスヒータ内で炭素を含む燃料を燃焼させることで生成される、CO2の規制されない大気中への放出を減少させる方法を提供する。物理ガス分離ユニット(PSA/VPSA型吸着ユニット、ガス分離膜ユニット、またはPSA/VPSAユニットとガス分離膜ユニットとの組み合わせでもよい)によりCO2をほとんど含まない水素燃料のストリームが、還元反応器に再循環される再生還元ガスのストリームの少なくとも一部から得られる。得られた水素燃料のストリームは、還元ガスヒータおよび/または還元プラント内の他の熱機器で燃焼され、大気中に直接放出されるCO2を減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、水素と一酸化炭素に転換される天然ガスから得られる循環再生高温還元ガスのストリームに直接接触させることによって、粒状鉄鉱石を海綿鉄としても知られる直接還元鉄(DRI)に還元する方法に関する。より詳細には、本発明は、炭素を含む燃料を用いる際に、CO副生成物の大気中への放出を減少する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
DRIは、鉄鉱石(主として、塊、凝集ペレットまたはこれらの混合物の形態である酸化鉄)を、水素と一酸化炭素を主成分とする還元ガスと750〜1100℃の温度範囲で反応させることにより生成される固体粒状物質である。
【0003】
典型的なDRI製造設備は、例えば、米国特許第3,779,741号、第3,765,872号、第4,150,972号、第4,336,063号、第4,834,792号、および第5,078,787号に開示されている。このようなシステムは、その上部に還元ゾーンを有する垂直流方式反応器を共通して含み、高温還元ガスが上方に流れて、下降する鉄鉱石本体に対して向流となり、さらに海綿鉄の形状を有する還元鉱石(DRI)が冷却ガスによって冷却される冷却ゾーンを任意に備えている。代わりに、DRIを反応器から高温のまま直接排出して、DRI溶解炉または別の冷却容器に供給することもある。
【0004】
還元ガスは、一般的に外部触媒改質装置(例えば、米国特許第3,765,872号および第4,150,972号参照)内で天然ガスを改質することで得られるか、或いはより有益には、還元反応器の内部で、効果的な改質触媒(米国特許第4,336,063号、第4,668,284号、および第5,110,350号参照)としてDRIを有効利用することによって得られる。
【0005】
外部触媒改質装置は、加熱室内に配置された一列の触媒充填チューブを含む。前記チューブは、バーナにより放出され最終的に排気筒(exhaust stack)を通して大気中に排出される高温燃焼生成物(相当量のCOを含む)によって外部から加熱される。
【0006】
還元ゾーンの下部で反応器に導入される還元ガスは、その後、還元ゾーンの上部から排出され、2つのストリームに分割される。そのうちの大部分は処理され、還元反応副生成物(二酸化炭素と水)のほとんどを除去することで改良される。一方、少量の残りのストリームは、系内での不活性ガス(N等)の滞留を防止するために十分にパージされ、典型的には加熱燃料として使用できる。
【0007】
使用済み還元ガスを改良するために水と二酸化炭素を除去する方法は、昔から当業者に知られている。特に、米国特許第2,547,685号、第4,001,010号、第4,129,281号、第3,853,538号、および第4,046,557号には、急冷による水の除去と、COを含むガスを前記COと反応する溶液に接触させ、ユニット内での化学吸収によるCOの除去により、純COオフガスのストリームをプラントから排出することが開示されている。
【0008】
外部触媒改質装置を使用する際は、改良還元ガスのストリームを改質ガスの補給分と混合した後、ガスヒータで加熱し、最後に還元反応器内へと戻す。上述したように、還元反応器では、還元反応が起こる。
【0009】
リフォーマレスプラント(Zero-Reformer Plant)、すなわち外部改質装置のないプラントでは、COをほとんど除去した改良還元ガスのストリームが、米国特許第5,110,350号で提案されているように、オフガス冷却器から取り出される温水で飽和された後、最終的に還元反応器へと供給される。再循環還元ガスのストリームに含まれる水分は、事前に改良還元ガスのストリームに供給される天然ガスの自動改質を促進する。天然ガス、水および再循環ガスの混合物は、その後、ガスヒータ(典型的にはO2注入により高温化される)で加熱され、上述したように改質および還元反応が同時に行われる還元反応器に供給される。
【0010】
代わりに、PSAまたはVPSA型の物理吸着システム(典型的な特許としては、米国特許第3,788,037号、第4,869,894号、第4,614,525号、第5,026,406号、第5,152,975号、第5,833,734号、第5,858,057号、および第6,027,545号参照)または当業者に公知の他の手段を用いて、ガス混合物からCOを除去することもできる。
【0011】
米国特許第6,027,545号は、この技術を直接還元プラントに適用することを提案した最初のものである。しかしながら、この特許で開示された方法では、化学吸収システムによる選択CO除去は行われていない。また、PSAシステムは、再循環する使用済みガスの大部分からCOを分離するために利用するのではなく、パージされる比較的少量のガスから高純度水素のストリームを回収するために利用しているのであって、その後、回収したHを再循環して、(ヒータ燃料ガスとしてではなく)再循環還元ガスの一部として添加および使用している。
【0012】
米国特許第6,562,103号は、使用済み還元ガスから二酸化炭素を除去するPSAユニットを含む直接還元方法を開示している。しかしながら、この特許はPSAユニットをパージする特別な方法のみを教示するが、排ガス60を処理することについては教示も示唆もなされていない。排ガス60は、(残りの炭素含有ガス、主にCOおよびCHを実質的に除外して)ヒータ内で水素のみを燃焼するように、ヒータ72内で燃焼される。結果として、炭素を含有する排ガス60と天然ガス64を燃焼して生成されるCOが、規制されずに大気中に放出される(化学的CO除去プラント内で選択的に分離されることはない)。
【0013】
したがって、典型的な直接還元プラントでは、COの主な排出源は、(1)(選択CO排出として特徴付けられる)CO除去プラントの吸収カラム、および(2)(非選択CO排出として特徴付けられる)プロセスガスヒータスタックに配置される。さらに、外部接触改質装置が還元補給ガス源として使用されると、改質装置スタックからCOの追加的な非選択排出がなされる。
【0014】
大気中で増加するCOの存在に起因する温室効果に関する懸念が高まっている結果、世界的にこの問題の影響を制限するために対策を考える必要がある。第1の対策は、大気中へのCOの排出を本質的に減少させることである。このためDRI生産者は、大気中へのCOの排出を大幅に削減する直接還元法を開発する必要に直面している。
【0015】
本発明の目的は、鉄鉱石を直接還元する方法を提供することにより達成され、当該方法は、化学吸収システムを含み、反応器、ヒータ、および改質装置から取り出された使用済みガスから略純粋なCOのストリームを抽出するものなので、バーナ用の燃料として主に水素を使用することになる。この方法では、改質装置および/またはヒータスタックから実質的に炭素のない排気がなされる。
【0016】
ヒータおよび/または改質装置で燃焼され、燃焼反応後にCOを放出する炭素含有燃料は、少量の還元ガスのみである。当該還元ガスは、CO,CO,およびCHを含み、連続的に蓄積する可能性がある不活性元素(窒素等)をパージするために系から取り除かれる必要がある。但し、必要であれば、バーナへの点火を安全監視するため、可視炎を発生させるのに必要な最低量の天然ガスが使用される。
【0017】
さらに、この発明は、燃料として必要な水素を還元システム自体から製造することを提案する。特に、PSA型の物理吸着システムを使用して、化学的CO吸収プラントによって事前に改良されたガス・ストリームの一部から水素を回収する。水素の分離は他の手段、例えば、ガス分離膜によって行うことも可能であり、PSA/VPSAとガス膜システムとの組み合わせを任意に含む手段であってもよい。さらに、PSA/VPSAシステムおよび/またはガス膜システムは、いずれも上述した化学吸収システムの代替として、単独でまたは組み合わせて設置されるものではなく、プロセスガス再循環回路のラインから外れて設置される追加のユニットであることは明らかである。その目的は、プロセスガスのラインから外れる部分を処理して、バーナ燃焼用に純粋な水素を回収し、排出ガスや他の炭素含有成分をプロセスガス再循環回路に戻すことを可能にすることである。
【0018】
この方法により、ヒータバーナおよび改質装置バーナ(今では、炭素を含む燃料に代えて主に水素が供給される)からのCO生成物の大部分は、自動的に化学吸収ユニットの方へ搬送され、そこで略すべてのCOが、純粋な工業用ガスとしてDRI還元システムから封じ込めて回収される。
【0019】
この発明は、外部改質装置を備えた還元システムおよびリフォーマレス(Zero Reformer)タイプの還元システムのいずれにも有益に組み込むことができる。しかしながら、外部改質装置が不要であるリフォーマレスシステムが好適であることは明らかである。なぜなら燃料として使用する水素の量は、ヒータバーナ用のものだけで十分だからである。
【0020】
この明細書中で引用する(上述した特許文献を含む)文献、およびこの明細書中で引用する文献の中で引用または参照されたすべての文献は、参照により、その記載内容が本願明細書に包含されるものとする。本願明細書中に参照により包含された文献または当該文献の教示内容は、本願発明を実施する際に使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
[発明の目的]
したがって、本発明の目的は、大気中に無制限に漏れるCOの放出を減少させるDRIの製造方法および装置を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、使用済みガス排出物のストリームからのCOの選択除去を最大限に行うことで、改質装置バーナおよび/またはヒータバーナによって生成される非選択COを最小限にすることである(本発明によると、この目的は、燃焼用燃料として主に水素を用いることで実現される)。
【0023】
本発明のさらなる目的は、DRプラント内で選択CO吸収を(理論的には100%に)増加させる方法および装置を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、ヒータバーナおよび改質装置バーナで生成される非選択COの放出を減少させることである。特に、選択COの排気は、封じ込め可能な純COのストリームとするか、またはその純度のため、大気中に無制限に放出する代わりに、他の工業プロセスにおける工業用ガスとして使用することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
[発明の概要]
本発明の目的は、還元反応器、ガス冷却ユニット、二酸化炭素選択吸収ユニット、および還元ガスヒータを含む直接還元システム内でDRIを製造する方法および装置を提供することにより達成される。酸化鉄含有粒子は、水素と一酸化炭素を主成分とする高温還元ガスと反応させることにより、DRI含有金属鉄に還元される。その際、前記反応器からの使用済みガス排出物は、浄化され、前記ガス冷却ユニットで冷却されることで、前記使用済みガスから水が凝集されて回収される。浄化および冷却された還元ガスは、前記二酸化炭素選択除去ユニットで処理され、還元プラントから制御可能に回収できる略純粋な二酸化炭素のストリームが生成され、したがって、水素、一酸化炭素、およびメタンを主成分とする改良還元ガスが生成される。前記改良還元ガスの第1の部分は、前記還元ガスヒータで加熱された後に前記反応器へ再循環され、前記改良還元ガスの第2の部分は、物理吸着ユニットで処理され、水素を主成分とする第1ガス・ストリームと、一酸化炭素とメタンを主成分とする第2ガス・ストリームが生成される。水素を主成分とする第1ガス・ストリームは、前記プロセスガスヒータで燃料として燃焼され、COおよびCHを含有する第2ガス・ストリームは、還元システムへ再循環されることで、これらの炭素含有ガスから生成されるいかなるCOも、最終的には前記二酸化炭素選択除去ユニットの系から回収される。この方法では、炭素を含む燃料に代えて、水素を含有する第1ガス・ストリームをプロセスガスヒータで燃焼して、前記直接還元プラントから大気中への規制されない二酸化炭素の放出を減少させている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明との比較を容易にする目的で添付した、先行技術による直接還元法のプロセス図(例えば、米国特許第5,110,350号参照)を示す。
【図2】本発明を組み込んで変更した、図1に類似する直接還元法のプロセス図を示す。
【図3】本発明の別の実施形態を組み込んだ直接還元法のプロセス図であり、図2と類似しているが、DRI冷却ゾーンを含まず、DRIが高温で排出される形態を示す。
【図4】本発明のさらに別の実施形態を組み込んだ直接還元法のプロセス図であり、補給還元ガスを生成するために炭化水素水蒸気改質装置を組み込んだ形態を示す。
【図5】図2または図3と類似する直接還元法のプロセス図の一部を示し、PSAユニットに代えて水素分離膜が使用される本発明の別の実施形態を組み込んだものである。
【図6】図2または図3と類似する直接還元法のプロセス図の一部を示し、PSAユニットと組み合わせて水素分離膜が使用される本発明のさらに別の実施形態を組み込んだものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[発明の好ましい実施形態の詳細な説明]
図1から図6を参照して、本発明の実施形態をいくつか説明する。参照を容易にするため、すべての図面について、同一符号は、一般に同一要素を示す。
【0028】
図1は、現在実施されているリフォーマレス直接還元システムを示し、符号10は、一般に、少なくとも1つの入口16を通して、塊、ペレットまたはこれらの混合物の形態の鉄鉱石15が供給される竪型シャフト移動床鉄鉱石ガス還元反応器を示す。
【0029】
鉄鉱石は、還元ガスと高温で向流接触しながら、重力により反応器10を通って降下する。この還元ガスは、還元ゾーン12の下部でガスのストリーム86として反応器に導入され、300〜450℃の温度範囲で反応器の上部から反応ガスのストリーム20として取り出される。部分的に還元力が低下したこの反応ガスのストリーム20は、熱交換器22を通過する(熱交換器22では、低温のストリーム23を熱交換器に供給し、高温のストリーム21として取り出すことで、前記ガスのストリーム20から奪った熱を回収し、例えば、蒸気の生成や、低温還元ガスの予熱を行う)。
【0030】
熱交換器22を通過した後、部分的に冷却された使用済みガス24はクリーニングステーション26へと導かれる。クリーニングステーション26では、使用済みガス24に同伴する塵埃が、ストリーム29として回収される水のストリーム27と接触することで除去され、排クリーンガス28が、通常は直接接触型である冷却ステーション30へと流れる。冷却ステーション30では、水31と接触することで還元反応による副生水が凝集され、水のストリーム68として還元ガスから取り除かれる。
【0031】
浄化および冷却されて得られた使用済みガスのストリーム32は、CO,CO,Hおよびメタンを含有する少量の第1の部分33が(ガスヒータ72の燃料としても使用可能な)排ガスとして系からパージされることで分割される。それ以外の、すなわち冷却ガスのストリーム32の大部分35は、その後、コンプレッサ34によって加圧されてから、例えば、アミン溶媒を用いるCO化学吸収除去システムの吸収カラム38にストリーム36として供給される。このように、還元反応により生成されたCOが、前記ガスのストリーム36から選択的に分離され、希薄アミン溶液130で化学吸収される。このようなカラム40の底部からの高温吸収溶液130は、吸収装置38の上部へと流入し、カラムを通って下方に移動して使用済みガスの向流となり、当該技術分野で周知の方法でCOが吸収される。COリッチ溶液132は、吸収カラム38の底部から出て、ストリッパーカラム(stripper column)40に供給される。略純粋なCOのストリーム42は、前記ストリッパーカラム40の上部から抽出される一方、得られた改良還元ガス44は、前記吸収装置38の上部から取り出される。ストリーム42からのCOは、他の工業プロセスで使用したり、地下位置への隔離または大気中にこのストリームが放出されないように封じ込めることができるので、環境保全、還元プラントの運転に適用される環境規制の順守に寄与することができる。
【0032】
ストリーム44/58は、さらに天然ガス64の補給ストリームと混合された後、加湿器66に供給される。加湿器66では、前記ストリーム70に含まれるメタンおよびその他の炭化水素の改質を還元ゾーン12内で行う(米国特許第5,110,350号に詳細を記載)のに好適な、ストリーム70の3〜10体積%の範囲の水分量となるように含水量が調整される。このため、ガス冷却装置30から排出される水のストリーム68は、還元ガスを飽和するのに使用され、余分な水がストリーム67として加湿器から出る。
【0033】
加湿された還元ガスのストリーム70は、その後ヒータ72で加熱される。ヒータ72では、ガスの温度が約900℃またはそれ以上に達して、還元ガスのストリーム82となる。その後、酸素84を注入して、さらにガスの温度を1000℃よりも高いレベルに上昇させることで、酸化鉄のより効率的な還元を行うと同時に、前記還元ガス内に存在する炭化水素の改質部分酸化を行って、再循環還元ガスの還元力を高めることもできる。
【0034】
還元ゾーン12で生成されたDRIは、図3に示すように、ほぼ400〜750℃の高温で排出されるか、或いはその後、排出および大気と接触させて貯蔵可能な温度(好適には100℃より低い温度)まで冷却し、その再酸化を防止することができる。
【0035】
DRIの冷却は、冷却ガスのストリーム122を比較的低温で反応器10の下部排出ゾーン14を通して上方に通過させることで行われ、これにより冷却ガスの温度が上昇し、海綿鉄の温度が下がる。冷媒として使用するガスは、例えば、天然ガスや還元ガスのように、通常、炭素を含有するガスであり、熱い海綿鉄と接触して炭素を付着させる際に熱分解する。このように、正しいガス組成を選択することで、所望の炭化度を達成することが可能となる。使用済み冷却ガス90は、当業者に公知の方法で冷却および再循環してもよい。簡潔に述べると、ストリーム90として冷却ゾーンの上部から回収される暖められたガスは、クリーニングステーション92でさらに処理され、ストリーム95として出てくる水のストリーム93と接触することで塵埃が除去される。そして、クリーンガスのストリーム94は、さらに冷却ステーション96で冷却される。冷却ステーションでは、クリーンガスのストリーム94は、閉じた冷却回路内でコンプレッサ100によりガスのストリーム98として再循環される前に、水のストリーム99として排出される水のストリーム97と接触させることで、実質的に完全に脱水および冷却がなされる。冷却ガス80の補給ストリーム、望ましくは好適な供給源77からの天然ガスは、ストリーム120と混合され、冷却ガスとして排出ゾーン14へ再循環される。
【0036】
この先行技術の処理では、天然ガスのストリーム78および排ガスのストリーム33を燃焼する結果、DRI1メートルトンあたり約169kgものCOがヒータスタック131を通して大気中に放出される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態を示す図2を参照すると、CO化学吸収ユニット38/40から排出される改良還元ガス44は、その後2つのストリームに分割される。第1のストリーム58は、加湿器66へと向かって、最終的には反応器10の還元ゾーン12に再循環される。一方、第2のストリーム46は、さらに2つの部分に分割される。特に、第1の部分48は、前記ガスのストリームに含まれる軽分子、例えば、水素、窒素、および水から、大きい分子のガス、主に一酸化炭素およびメタンを分離するため、PSA(プレッシャースイング吸着/pressure swing adsorption)型の物理吸着ユニット140で処理される。その結果、水素リッチなストリーム74が生成され、その後、ヒータ72のバーナに燃料として供給される。ストリーム46の少量の第2の部分50は、弁51で調整された排ガスとして系からパージされ、プロセスガスヒータ72で燃焼される。このパージガス50は、プロセス還元ガス内に窒素等の不活性元素が蓄積されていない場合には、実質的にゼロとなることもある。最後に、視覚監視用にバーナで可視炎を発生させることのみを目的として、純天然ガス78の少量の追加ストリームをヒータで燃焼する。
【0038】
脱水素後のストリーム48の残りの部分は、COとCHを主成分とするストリーム52としてPSAユニット140から取り除かれ、その後、吸収カラム38からの改良再循環ガスのストリーム58に直接混合される前に、コンプレッサ54によって圧縮される。圧縮されたストリーム56は、改良還元ガス58と混合されてストリーム60となり、さらに天然ガス64の補給ストリームと混合された後、加湿器66に供給される。加湿器66では、圧縮されたストリーム56の水分量が、上述したようにストリーム70の3〜10体積%の範囲の水分量となるように調整される。本発明の原理によると、通常、ヒータ72のバーナに供給される天然ガス78の重要部分の代わりに、プロセスから回収された水素74が供給され、これと同量をストリーム64としてプロセスに注入して、全体の質量平衡を維持する。最終的な結果として、炭素の反応に関連する天然ガス中のCOが、略完全にプロセス回路を通過して、CO吸収システム内ですべて処理されることで、最大限に選択COの回収を行い、大気中にCOが直接放出されることを防止する。
【0039】
ガスヒータで水素に代えて天然ガスを使用したことで、大気中に放出されるCOの量は、DRI1メートルトンあたり約68kgとなり、図1に示す先行技術の処理と比較して、ヒータスタック131を通して大気中に放出されるCOが減少したことがわかる。
【0040】
図3は、本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では、反応器10で生成されたDRIは約400〜750℃の高温で反応器の下部ゾーン14から排出されるため、冷却ガス回路要素が使用されていない(または図示したように省略される)。その他のプロセスおよび装備は、図2に示す実施形態と同様である。
【0041】
次に図4を参照すると、この実施形態では、外部触媒改質装置148を備えた直接還元プラントに本発明を組み込んでいる。この実施形態では、天然ガス123およびストリーム121が改質され、還元ガス126が生成される。還元ガス126は、その後、事前に改良された還元ガスのストリーム60と混合され、還元ガスのストリーム128を形成する。還元ガスのストリーム128は、ヒータ72で加熱され900℃前後の温度に昇温させた後、最終的に反応器に供給される。その他のプロセスは、図2に示す実施形態に関連して説明したものと同様である。
【0042】
外部触媒改質装置を設けることで、ストリーム74としてヒータに供給することが必要な分だけでなく、ストリーム73として改質装置バーナに供給することが必要な分の量の水素も、改良還元ガスのストリームから回収することが必要になる。その結果、PSAユニットで処理しなければならない還元ガス48の体積は、図2に示すリフォーマレスプラントの場合における同じストリームと比較して高くなる。
【0043】
図5を参照すると、PSA/VPSAユニットの代わりに、水素分離膜142が使用されている。膜システムの動作原理は、PSA/VPSAユニットの動作とは異なる。膜システムは、HおよびCO等の高速移動する気体成分を低圧の排ガス・ストリームに通過させて、CO,CHおよびN等の低速の成分を高圧に維持する。したがって、水素リーンガスを圧縮して、還元ガス回路に戻すために、ブースタコンプレッサ54も必要になる。膜システムはCOに対するHの選択性が低いが、圧縮コストが低減できるという利点がある。
【0044】
図6を参照すると、水素を分離するために、PSA/VPSAユニット140と分離膜システム142を組み合わせたものが使用されており、PSA/VPSAユニット140から排出された高圧COリーンガスのストリーム74が膜システム142に供給され、ヒータ72で燃料として使用される低圧Hリッチガスのストリーム75と、高圧Hリーンガスのストリーム76が生成される。PSA/VPSAユニット140からのHリーンガスのストリーム52は、コンプレッサ54によって圧縮され、膜システム142からの排出されるストリーム76と混合される。この混合ストリームは、コンプレッサ55で圧縮して、ストリーム58として還元ガス回路に再循環される。
【0045】
任意選択的に、DRIを約400〜750℃の高温で排出(図3参照)し、その後、当業者に公知の方法により、高温で固形化(briquetted)するか製鋼炉に空気輸送することもできる。
【0046】
さらに別の選択肢として、改質ガスの代わりに、(石炭または石油のガス化により生成された)合成ガスや、CO,HおよびCH等の種を含む他のプラントからのオフガス(コークス炉ガス等)を使用することもできる。この特許で開示された方法は、CO,CHおよびHを含む天然ガス、改質ガス、合成ガスなどのガスのいずれであるかを問わず、如何なる種類の補給ガスにも適用することができる。
【0047】
(ヒータの燃料として)より多量の水素74を生成するために、より多くの炭化水素ガス64、例えば天然ガスを還元回路または(80を経由して)冷却回路に供給する場合には、ヒータスタック131を通して大気中に放出されるCOの量が増加することもある。しかしながら、還元回路を循環する炭化水素ガスがこのように増加すると、(このような増加した炭化水素ガスに由来して追加の水素を得る改質反応を促進させるため、エネルギを供給するのに必要となる)酸素84の消費もこれに対応して増加させることが必要となる。逆に言えば、水素の要求が少なければ、炭化水素ガス64の量および酸素80とCOの量も少なくなる。
【0048】
[実施例]
下記の表は、それぞれの組成と本発明を実施する直接還元プロセス用に算出した関連するガス・ストリームの流量を示す。ガス・ストリームは、図1および図2に示す番号によって特定される。94%の金属化(鉄全体に対する金属鉄の割合%)と3.5%の炭素という条件で1時間あたり220トンのDRIを生成する、外部改質装置を備えていないプラントに対して、流量および組成を算出した。
【0049】
冷却装置30内で水を除去した後の、約10%の体積のCOを有する、反応した還元ガス(ストリーム20)のDRI1トンあたり1,631NCMが、CO化学吸収ユニット38で処理される。CO化学吸収ユニット38では、COの含有量が約1.5体積%まで減少される。この再生ガスの一部はストリーム58として反応器10に再循環される。COの含有量が低減した再生ガスの別の部分(ストリーム46)は、PSAユニット140で処理され、水素含有量が多い燃料のストリーム74と炭素化合物を含むストリーム56とを生成する。炭素化合物を含むストリーム56は還元ループ(ストリーム58)へ再循環され、ヒータスタックからストリーム131としてCOを放出する代わりに、COが再循環ループを通って流れ、ユニット38内で吸収される。DRI冷却用反応器の下部に供給される天然ガス(ストリーム80)は、先行技術と比較して同一のものである。一方、還元ループに供給される天然ガスのストリーム(ストリーム64)は増加している。なぜなら、水素に転換されて最終的にはヒータ72で燃焼されるからである。
【0050】
【表1】

【0051】
上述した実施例を、冷却ループを備えていないプラント(図3参照)または外部触媒ストリーム炭化水素改質装置148を備えたプラントに適用した本発明の実施形態として実施すると、ガス・ストリームの値と組成は変化することになるが、化学吸収ユニット38で除去されるCOの量は実質的に同様であり、ヒータ72のスタック131および改質装置148のスタック150を通して大気中に放出されるCOの量が大幅に減少され、本発明の利点と利益を提供することができる。もちろん、本明細書中に記載された本発明の実施形態は、例示的に含めたものに過ぎず、下記の特許請求の範囲で定義される本発明は、その特定の利用に従って、多数の変更を行うことが可能であることは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元反応器、ガス冷却ユニット、二酸化炭素選択除去ユニット、および還元ガスヒータを含む直接還元システム内でDRIを製造する方法であって、
炭化水素含有ガスから得られる水素と一酸化炭素を主成分とする高温還元ガスと反応させることにより、酸化鉄含有粒子をDRI含有金属鉄に還元し、
水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、および水を含む前記反応器からの使用済みガス排出物を浄化し、前記ガス冷却ユニット内で冷却することで、前記使用済みガスから水を凝集して回収し、
前記浄化および冷却された還元ガスを前記二酸化炭素選択除去ユニットで処理して、還元プラントから制御可能に回収できる略純粋な二酸化炭素のストリームを生成することで、水素、一酸化炭素、およびメタンを主成分とする改良還元ガスを生成し、
前記改良還元ガスの第1の部分が、前記還元ガスヒータで加熱された後、前記反応器へ再循環される方法において、
前記改良還元ガスの第2の部分をガス分離ユニット内で処理して、高濃度の水素を含む第1ガス・ストリームと、高濃度の一酸化炭素とメタンを含む第2ガス・ストリームを生成し、前記第1ガス・ストリームを前記プロセスガスヒータの燃料として使用するとともに、前記第2ガス・ストリームを前記還元システムに再循環させて、前記二酸化炭素選択除去ユニットで最終的に処理することによって、炭素を含む燃料に代えて、前記水素を含有する第1ガス・ストリームを前記プロセスガスヒータで燃焼して、前記直接還元プラントの大気中への二酸化炭素の放出を減少することを特徴とする方法。
【請求項2】
好適な溶剤中で化学吸収を行うことにより、前記還元反応器からの前記使用済みガス排出物から前記二酸化炭素を選択的に除去することを特徴とする請求項1に記載のDRIの製造方法。
【請求項3】
前記物理ガス分離ユニットが、PSA/VPSA吸着ユニットであることを特徴とする請求項1に記載のDRIの製造方法。
【請求項4】
前記物理ガス分離ユニットが、ガスにより透過が異なる膜ユニットであることを特徴とする請求項1に記載のDRIの製造方法。
【請求項5】
前記炭化水素ガスが、天然ガスであることを特徴とする請求項1に記載のDRIの製造方法。
【請求項6】
さらに前記DRIを冷却ガスのガス・ストリームと接触させることで、前記反応器の下部排出ゾーンで前記DRIを冷却することを特徴とする請求項1に記載のDRIの製造方法。
【請求項7】
さらに炭化水素含有ガスを改質装置で改質し、前記改質装置からの還元ガス排出物を前記還元システムに供給することを特徴とする請求項1に記載のDRIの製造方法。
【請求項8】
還元反応器、ガス冷却ユニット、二酸化炭素選択除去ユニット、および還元ガスヒータを接続して還元ガス再循環ループを形成する第1導管手段を含む、直接還元システム内でDRIを製造する装置であって、
前記反応器は、炭化水素含有ガスから得られる水素と一酸化炭素を主成分とする高温還元ガスと反応させることにより、酸化鉄含有粒子をDRI含有金属鉄に還元するためのものであり、
前記ガス冷却ユニットは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、および水を含む前記反応器からの使用済みガス排出物を浄化および冷却することで、前記使用済みガスから水を凝集して回収するためのものであり、
前記二酸化炭素選択除去ユニットは、このように浄化および冷却された還元ガスを処理して、還元プラントから制御可能に回収できる略純粋な二酸化炭素のストリームを生成することで、水素、一酸化炭素、およびメタンを主成分とする改良還元ガスを生成するためのものであり、
前記還元ガスヒータは、加熱後に前記再循環ループを経由して前記反応器へ再循環される前記改良還元ガスの第1の部分を加熱するためのものであり、
ガス源が、HおよびCOに改質される炭化水素含有ガスを補給ガスとして供給する装置において、
前記改良還元ガスの第2の部分を処理して、高濃度の水素を含む第1ガス・ストリームと、高濃度の一酸化炭素とメタンを含む第2ガス・ストリームを生成する物理ガス分離ユニットと、
前記第1ガス・ストリームを燃料として利用するため、前記物理ガス分離ユニットを前記プロセスガスヒータのバーナに接続する第2導管手段と、
前記第2ガス・ストリームを前記還元システムに再循環させて、前記二酸化炭素選択除去ユニットで最終的に処理するため、前記物理ガス分離ユニットを前記第1導管手段に接続する第3導管手段と、
を含み、炭素を含む燃料に代えて、前記水素を含有する第1ガス・ストリームを前記プロセスガスヒータで燃焼して、前記直接還元プラントの大気中への二酸化炭素の放出を減少することを特徴とする装置。
【請求項9】
化学吸収ユニットが、前記還元反応器からの前記使用済みガス排出物から前記二酸化炭素を選択的に除去することを特徴とする請求項8に記載のDRIの製造装置。
【請求項10】
前記物理ガス分離ユニットが、PSA/VPSA吸着ユニットであることを特徴とする請求項8に記載のDRIの製造装置。
【請求項11】
前記物理ガス分離ユニットが、ガスにより透過が異なる膜ユニットであることを特徴とする請求項8に記載のDRIの製造方法。
【請求項12】
前記炭化水素ガスが、天然ガスであることを特徴とする請求項8に記載のDRIの製造装置。
【請求項13】
前記反応器の下部排出ゾーンをガス冷却/浄化装置と接続する第4導管手段によって形成されるDRI冷却ループと、
前記DRIを冷却するため、前記下部ゾーンを通して冷却ガスのストリームを循環させるコンプレッサ手段と、
をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のDRIの製造装置。
【請求項14】
前記ガス源からの供給導管手段に接続される炭化水素含有ガス改質装置と、
COとHを主成分とする改質ガスを供給するため、前記改質装置を前記第1導管手段に接続する第5導管手段と、
をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のDRIの製造装置。
【請求項15】
前記CO除去ユニットの下流側で前記再循環ループに接続される加湿器をさらに含み、前記ガス源は、前記加湿器に隣接して前記再循環ループに接続されることを特徴とする請求項8に記載のDRIの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−501140(P2013−501140A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522264(P2012−522264)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001813
【国際公開番号】WO2011/012964
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512025539)エイチワイエル テクノロジーズ、エス.エー. デ シー.ヴイ (1)
【出願人】(512025551)ダニエリ アンド シー. オフィツィーネ メッカニチェ、ソシエタ.ペル.アチオニ (1)
【Fターム(参考)】