説明

CO2回収方法およびCO2回収装置

【課題】炭素を含む燃料のガス化ガスと吸収液を接触させてCOを回収するプロセスにおいて、送電端効率の低下を抑制し発電効率を増加することが可能なCO回収方法および回収装置を提供する。
【解決手段】炭素を含む燃料をガス化して生じる生成ガス1からのCO回収方法において、COをCOに変換するCOシフト工程21a〜21cを経た後の生成ガス1を吸収液6cと接触させてCOを吸収させるCO吸収工程24と、CO吸収工程24でCOを吸収した吸収液6aを減圧して含まれているCOの一部を放出させる第1ガス放出工程27aと、COシフト工程21cとCO吸収工程24との間の生成ガス1を熱源として、第1のガス放出工程27aを経た後の吸収液6bを加熱する加熱工程23aと、加熱工程23aで加熱された吸収液6bを減圧して含まれているCOを放出させて、再生された吸収液6cを得る第2ガス放出工程27bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素を含む燃料のガス化ガスからCOを回収する方法および回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化現象の一因としてCOによる温室効果が指摘され、地球環境を守る上でその対策が急務となっている。COの発生源としては、化石燃料を燃焼させるあらゆる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。特に大量の化石燃料を使用する火力発電所を対象に、COを含む燃焼排ガスをアルカノールアミン水溶液等と接触させてCOを吸収させ、COを回収する方法、および回収されたCOを大気へ放出することなく貯蔵する方法が精力的に研究されている。
【0003】
アルカノールアミンの例としては、モノエタノールアミン(MEA)やN−メチルジエタノールアミン(MDEA)などが挙げられる。アルカノールアミン水溶液を吸収液とする吸収法では、吸収塔においてCOを吸収した吸収液は、再生塔において150℃前後の水蒸気を使用して加熱され再生される(例えば、特許文献1、2)。処理ガス量が多いほど、使用する吸収液量は多くなり、それに伴い、再生に必要な水蒸気量も増大する。したがって、石炭やオイルコークス等のガス化ガスを対象とした場合には、燃焼によりガス量が増加してしまうので、燃焼前にCOを回収する方法が望ましい。
【0004】
ガス化ガスには、炭素は主にCOの形で含まれるので、予め式(1)に示すシフト反応によりCOをCOに変換する必要がある。
CO+HO→CO+H (1)
シフト反応は、COを含むガスと水蒸気を触媒の存在下で200℃以上の温度で反応させることにより進行する。つまり、シフト反応でも水蒸気を使用する。一方、シフト反応は発熱反応なので、反応熱を熱源として水蒸気を発生させることが可能である。しかし、この水蒸気だけでは吸収液の再生とシフト反応の両方を賄い切れず、外部からも水蒸気の供給が必要である。また、火力発電所においては、本来発電に供するための水蒸気をCO回収プロセスに抽気することにより、送電端効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−193116号公報
【特許文献2】特開2006−232596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の火力発電所では、吸収液の再生に、本来発電に供するための水蒸気、すなわち蒸気タービンから抽気した蒸気を主に利用していた。その結果として、送電端効率が大幅に低下するという課題が生じていた。
【0007】
本発明は、石炭や石油ピッチ等の炭素を含む燃料のガス化ガスと吸収液とを接触させてCOを回収するプロセスにおいて、発電用水蒸気の抽気による送電端効率の低下を抑制し、発電効率を大幅に増加することが可能なCO回収方法および回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるCO回収方法は、以下のような基本的な特徴を有する。
【0009】
炭素を含む燃料をガス化して生じる生成ガスからのCO回収方法において、前記生成ガスと水蒸気を触媒上で反応させて、前記生成ガスに含まれるCOをCOに変換するCOシフト工程と、前記COシフト工程を経た後の生成ガスを、冷却して凝縮水を除去してから、吸収液と接触させて前記生成ガス中の主にCOを吸収させるCO吸収工程と、前記CO吸収工程でCOを吸収した吸収液を減圧し、この吸収液に含まれているCOの一部を放出させる第1のガス放出工程と、前記COシフト工程と前記CO吸収工程との間の生成ガスを熱源として、前記第1のガス放出工程を経た後の吸収液を加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された吸収液を減圧し、この吸収液に含まれているCOを放出させて、前記CO吸収工程に用いるために再生された吸収液を得る第2のガス放出工程とを有する。
【0010】
また、本発明によるCO回収装置は、以下のような基本的な特徴を有する。
【0011】
炭素を含む燃料をガス化して生じる生成ガスからCOを吸収液に吸収させるCO回収装置において、前記生成ガスと水蒸気を触媒上で反応させて、前記生成ガスに含まれるCOをCOに変換するシフト反応器と、前記シフト反応器を出た生成ガスに含まれるCOを前記吸収液に吸収させるCO吸収塔と、前記CO吸収塔の塔底から抜き出した吸収液を減圧し、この吸収液に含まれているCOの一部を放出させる第1のフラッシュドラムと、前記COシフト反応器を出た後の生成ガスを熱源として、前記第1のフラッシュドラムを出た吸収液を加熱する吸収液加熱器と、前記吸収液加熱器で加熱された吸収液を減圧し、この吸収液に含まれているCOを放出させて、前記CO吸収塔で用いるために再生された吸収液を得る第2のフラッシュドラムとを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蒸気タービンから抽気した蒸気や、シフト反応の熱を利用して発生させた蒸気を使うことなく、シフト反応の反応熱により高温となった生成ガスの保有する熱量のみでCO回収に必要な熱を賄うことができる。したがって、火力発電所において、従来よりも発電効率を大幅に増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1によるCO回収装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の比較例1によるCO回収装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例2によるCO回収装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例3によるCO回収装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例4によるCO回収装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例5によるCO回収装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によるCO回収方法の概要は、次の通りである。
【0015】
炭素を含む燃料をガス化して生じる生成ガスを触媒上で水蒸気と反応させて、生成ガス中のCOをCOに変換する。この際に発生する反応熱により自己加熱された生成ガスを熱源として、蒸気発生器で水蒸気を発生させてもよい。生成ガス中のCOは、吸収塔で吸収液に吸収される。COを吸収した吸収液は、吸収塔の底部より抜き出され、減圧され、吸収していたCOの一部を放出する。さらに、この吸収液は、生成ガスを熱源として加熱され、残存しているCOを放出して再生される。この再生された吸収液は、吸収塔へ塔頂から導入される。一方、吸収液の加熱に用いられた生成ガスは、水分が除去された後に、吸収塔に導入される。
【0016】
本発明によれば、COを吸収した吸収液を加熱・再生する前に減圧し、吸収液に吸収されていたCOの一部を放出させる。吸収液中のCOの量を加熱前に減らすことで、吸収液の再生に必要な加熱量を低減できる。さらには、減圧によるCOの放散に伴い吸収液の温度が低下するため、吸収液を加熱する工程で生成ガスの保有する熱を有効に利用できる。その結果、従来は必要であった加熱用蒸気が一切不要となる。
【0017】
以下では、吸収塔の底部より抜き出された吸収液を「リッチ液」、COを放出して再生した吸収液を「セミリーン液」と称する。また、実施例4において、再生塔で加熱再生された吸収液を「リーン液」と称する。
【0018】
本発明で対象となる生成ガスは、石炭や石油ピッチや重油などの炭素を含む燃料を部分酸化してガス化したときに発生するCO、H、CH、CO等を含むガスである。
【0019】
以下に本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
本発明によるCOの回収方法および回収装置の第1の実施例を、図1を用いて説明する。実施例1は、本発明によるCO回収方法および回収装置の基本的な構成を、石炭のガス化プロセスに適用した例である。図1は、本実施例でのCO回収装置の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、本実施例でのCO回収装置は、高温シフト反応器21a、中温シフト反応器21b、低温シフト反応器21c、吸収液加熱器23a、吸収塔24、冷却器25、28、気水分離器26、およびフラッシュドラム27a、27bを備える。高温シフト反応器21a、中温シフト反応器21b、および低温シフト反応器21cの後段には、それぞれ高温蒸気発生器22a、中温蒸気発生器22b、および低温蒸気発生器22cが設けられている。高温蒸気発生器22a、中温蒸気発生器22b、および低温蒸気発生器22cからは、それぞれ高温蒸気3、中温蒸気4、および低温蒸気5が発生する。
【0022】
ガス化炉(図示せず)で石炭と酸素を含むガスを高温で反応させて発生した生成ガス1は、脱塵や水洗の後、COSをHSに変換するCOS転換処理やHSを除去する脱硫処理を経た後、水蒸気2と共に高温シフト反応器21aに導入される。
【0023】
高温シフト反応器21aには、FeとCrを主な活性成分とするシフト触媒が充填されており、この触媒により式(1)のシフト反応が促進される。シフト反応は発熱反応であり、触媒と生成ガス1は反応熱により加熱される。石炭をガス化して得られる生成ガスの場合、一般にCO濃度は20〜60%と高いため、COの全量を一度に反応させると反応熱により触媒の温度がその耐熱温度を上回ってしまう。そのため、高温シフト反応器21aでは、生成ガス1に含まれるCOの一部だけを反応させる。
【0024】
生成ガス1は、次に、高温シフト反応器21aと同じ触媒が充填された中温シフト反応器21bに導入される。中温シフト反応器21bでは、生成ガス1に含まれる残りのCOの一部がCOに転化される。
【0025】
生成ガス1は、さらに、低温シフト反応器21cに導入される。低温シフト反応器21cには、比較的低い温度でシフト反応促進活性を有するCuとZnを主な活性成分とする触媒が充填されている。生成ガス1は、低温シフト反応器21cにおいて、所望するCO濃度まで転化される。なお、シフト反応の温度レベルは、例えば、高温シフト反応器21aでは250〜450℃、中温シフト反応器21bでは250〜350℃、低温シフト反応器21cでは200〜270℃とすることができる。
【0026】
次に、生成ガス1は、吸収液加熱器23aに導入される。吸収液加熱器23には、吸収塔24の底部から抜き出された後、フラッシュドラム27aで部分的に再生されたリッチ液6bが導入されている。生成ガス1は、このリッチ液6bとの熱交換により冷却される。
【0027】
生成ガス1は、さらに、冷却器25で50℃以下に冷却され、気水分離器26で凝縮水7が除去された後、吸収塔24に導入される。ここで、生成ガス1は、再生されたセミリーン液6cと接触し、酸性ガスであるCOが除去され精製ガス8が得られる。
【0028】
一方、COを吸収したリッチ液6aは、吸収塔24よりも低い圧力に調節されたフラッシュドラム27aに導入される。フラッシュドラム27aでは、リッチ液6aが吸収していたCOの一部が放出される。すなわち、リッチ液6aからCOを含む放散ガス9aが放出され、リッチ液6aは部分的に再生されてリッチ液6bとなる。放散ガス9aの放出の際に潜熱が奪われ、リッチ液6bの温度は低下する。
【0029】
次にリッチ液6bは、吸収液加熱器23aに導入される。加熱源として吸収液加熱器23aに導入される生成ガス1には、シフト反応用に供給された水蒸気2のうち反応に使われなかった水蒸気が含まれている。リッチ液6bは、この水蒸気の凝縮熱と生成ガス1の顕熱により加熱される。
【0030】
加熱されたリッチ液6bは、フラッシュドラム27bに導入され、COを含む放散ガス9bが放出されて再生し、セミリーン液6cとなる。セミリーン液6cは、冷却器28で所定の温度に冷却された後、再び吸収塔24に導入される。
【0031】
ここで、流量が16万m/h(下付きのNはノルマル流量を表す)、CO濃度が32.6%、圧力が2.5MPaである生成ガスからCOを除去する際に、本実施例を適用した場合について、以下に説明する。本実施例は、以下に示す式(2)で求められる炭素回収率が90%となるようにCO回収装置を運転したときの例である。
【0032】
吸収塔24において、塔頂から供給されるセミリーン液量6cの流量が2500t/h、温度が43℃のとき、COを吸収したリッチ液6aの温度は61℃であった。吸収塔24の塔底から抜き出されたこのリッチ液6aを、0.2MPaに設定したフラッシュドラム27aに導入したところ、9千m/hの放散ガス9aが発生し、リッチ液6bの温度は57℃に低下した。
【0033】
次に、このリッチ液6bを吸収液加熱器23aへ導入したところ、リッチ液6bの温度は90℃に上昇した。このリッチ液6bをフラッシュドラム27bに導入した結果、5万4千m/hの放散ガス9bが発生し、セミリーン液6cの温度は73℃に低下した。
【0034】
放散ガス9aと9bに含まれるCO量を合計すると5万2千m/hであり、式(2)に従って求めた炭素回収率は90%であった。吸収液加熱器23aにおける加熱量を計算したところ、55MWであった。炭素回収率を求める式は、次式である。
η=FoCO/(FiCO+FiCH+FiCO)×100 (2)
η:炭素回収率(%)
FiCO:吸収塔入口でのCOの流量(m/h)
FiCH:吸収塔入口でのCHの流量(m/h)
FiCO:吸収塔入口でのCOの流量(m/h)
FoCO:フラッシュドラム出口でのCO流量(m/h)
FiCO、FiCH、およびFiCOは、生成ガス1の流量に、それぞれ生成ガス1中のCOの濃度、CHの濃度、およびCOの濃度をかけて求めた。FoCOは、放散ガス9aの流量に放散ガス9a中のCO濃度をかけた量と、放散ガス9bの流量に放散ガス9b中のCO濃度をかけた量を合計して求めた。
(比較例1)
実施例1の比較例について、図2を用いて説明する。比較例1は、実施例1と同様の石炭のガス化プロセスの例である。図2は、本比較例のCO回収装置の構成を示すブロック図である。図2において、図1と同一の符号は、図1と同一または共通の要素を示す。本比較例のCO回収装置は、フラッシュドラムを1つ備え、吸収塔とフラッシュドラムの間に吸収液加熱器を2つ備える。以下の説明では、実施例1と異なる部分のみ説明する。
【0035】
吸収塔24から排出されたリッチ液6aは、吸収液加熱器23aに導入され、シフト反応後の生成ガス1により加熱される。さらに、リッチ液6aは、吸収液加熱器23cに導入され、蒸気発生器22aで発生した高温蒸気3により95℃まで加熱され、フラッシュドラム27へ導入されて、放散ガス9とセミリーン液6cが得られる。
【0036】
比較例1において、実施例1と同じ生成ガスを処理した場合、吸収液加熱器23a、23cを通過した後のリッチ液6aの温度を95℃にすることで、式(2)で求められる炭素回収率が90%となった。このときの吸収液加熱器23a、23cにおける加熱量の合計値は、63MWであった。
【0037】
実施例1と比較例1の結果から、以下のことがわかる。実施例1では、フラッシュドラム27aを設置することにより、リッチ液6aに含まれるCOの一部が放散ガス9aとして放出される。このため、リッチ液6bを比較例1よりも5℃低い90℃まで加熱するだけで、リッチ液6bに含まれる残りのCOをフラッシュドラム27bで放散ガス9bとして放散させることができる。また、フラッシュドラム27aでリッチ液6bの温度が低下することにより、吸収液加熱器23aにおいて生成ガス1との温度差が拡大し、より効率よく加熱できるという効果もある。その結果として、吸収液(リッチ液6b)の加熱量を低減でき、高温蒸気3をリッチ液6bの加熱源として使用する必要が一切ない。したがって、本実施例によるCO回収装置を発電プラントからのCO回収に適用すれば、従来に比べて発電効率の大幅な向上を図ることができる。
【実施例2】
【0038】
本発明によるCOの回収方法および回収装置の第2の実施例を、図3を用いて説明する。実施例2は、比較例1(図2)に示したようなフラッシュドラムを1つだけ有する構成のCO回収装置において、本発明を適用する例である。図3は、本実施例でのCO回収装置の構成を示すブロック図である。図3において、図1と同一の符号は、図1と同一または共通する要素を示す。以下の説明では、実施例1と異なる部分のみ説明する。
【0039】
本実施例のCO回収装置は、比較例1と同様に、フラッシュドラムを1つ備える。ただし、このフラッシュドラムは、断熱壁40を内部に有し、2つのフラッシュドラム27c、27dに分割されている。分割されたフラッシュドラム27c、27dは、それぞれが独立したフラッシュドラムとして機能する。また、フラッシュドラム27cとフラッシュドラム27dは、配管で接続される。この配管には、シフト反応後の生成ガス1が導入される吸収液加熱器23aが設けられている。
【0040】
本実施例においても、実施例1と同様に、吸収塔24の塔底から抜き出されたリッチ液6aは、2つのフラッシュドラム27c、27dにより、放散ガス9a、9bを放出して再生し、セミリーン液6cとなる。フラッシュドラム27c、27dは、断熱壁40で分離されているので、それぞれが処理するリッチ液の温度が異なっていてもよい。以下、リッチ液6aがフラッシュドラム27c、27dによってセミリーン液6cとなる過程を説明する。
【0041】
リッチ液6aは、吸収塔24からフラッシュドラム27cに導入される。フラッシュドラム27cでは、リッチ液6aが吸収していたCOの一部が放散ガス9aとして放出され、リッチ液6aは、部分的に再生されてリッチ液6bとなる。放散ガス9aの放出の際に潜熱が奪われ、リッチ液6bの温度は低下する。
【0042】
リッチ液6bは、フラッシュドラム27cとフラッシュドラム27dを接続する配管を通って、フラッシュドラム27cからフラッシュドラム27dへ流れる。このとき、リッチ液6bは、吸収液加熱器23aにて生成ガス1により加熱される。
【0043】
加熱されたリッチ液6bは、フラッシュドラム27dにて、COを含む放散ガス9bが放出されて再生し、セミリーン液6cとなる。セミリーン液6cは、実施例1と同様に、冷却器28で所定の温度に冷却された後、再び吸収塔24に導入される。
【0044】
したがって、本実施例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施例では、1つのフラッシュドラムを分割して2つのフラッシュドラムとして再構成しているため、フラッシュドラムを1つだけ備える既存の設備を活用することができるという効果もある。また、新たなフラッシュドラムを設ける必要がないので、2つのフラッシュドラムを配置するスペースがない場合であっても、本実施例は適用可能である。
【実施例3】
【0045】
本発明によるCOの回収方法および回収装置の第3の実施例を、図4を用いて説明する。実施例3は、実施例1と同様に、本発明によるCO回収方法および回収装置を石炭のガス化プロセスに適用した例であるが、以下の点が異なる。すなわち、セミリーン液を熱源として、生成ガスで加熱する前のリッチ液を予め加熱する点である。
【0046】
図4は、本実施例でのCO回収装置の構成を示すブロック図である。図4において、図1と同一の符号は、図1と同一または共通する要素を示す。本実施例のCO回収装置は、実施例1と同様の構成であるが、フラッシュドラム27aと吸収液加熱器23aの間に吸収液加熱器23bが設置されている点が異なる。
【0047】
本実施例でのCO回収方法は、実施例1と同様であり、以下では相違点のみを説明する。
【0048】
フラッシュドラム27aで吸収していたCOの一部を放散したリッチ液6bは、吸収液加熱器23bに導入され、セミリーン液6cを加熱源として加熱される。その後、リッチ液6bは、吸収液加熱器23aに導入され、さらに加熱される。
【0049】
このように、吸収液加熱器23aの前段において、事前にリッチ液6bを加熱することで、吸収液加熱器23aでの加熱量が少なくなり、加熱源である生成ガスの温度を低くすることが可能となる。一方、新たな加熱源として使用したセミリーン液は、元々吸収塔へ導入する前に冷却器28で冷却しており、温度が低下することはむしろ好都合である。吸収液加熱器23aに導入する生成ガスの温度を低くできるということは、蒸気発生器22cにおける蒸気発生量を増加できることを意味する。したがって、本実施例によれば、さらなる発電効率の向上が可能となる。
【実施例4】
【0050】
本発明によるCOの回収方法および回収装置の第4の実施例を、図5を用いて説明する。実施例4は、本発明によるCO回収方法および回収装置を、石炭のガス化プロセスに適用した例であり、生成ガスを、脱塵、水洗した後、直接シフト反応を行い、その後、COとHSを同時に除去するプロセスに適用した例である。図5は、本実施例でのCO回収装置の構成を示すブロック図である。図5において、図1と同一の符号は、図1と同一または共通する要素を示す。本実施例は、図1に示した装置に加え、HS吸収塔31、再生塔32、液液熱交換器33、冷却器34を備える。
【0051】
本実施例でのCO回収方法は、実施例1と同様であり、以下では相違点のみを説明する。
【0052】
シフト反応器21a〜21cには、CoとMoを主な活性成分とするシフト触媒が充填されており、HSの存在下において式(1)のシフト反応が促進される。
【0053】
吸収塔24を出た精製ガス8は、HS吸収塔31へ導入され、リーン液13と接触させられる。精製ガス8に残存するCOとHSは、リーン液13に吸収されて除去され、精製ガス10が得られる。HS吸収塔31の塔底から抜き出されたリッチ液12は、液液熱交換器33でリーン液13により加熱され、再生塔32へ導入される。
【0054】
リッチ液12は、再生塔32で約120〜200℃の水蒸気により所定の温度まで加熱され、吸収していたCOとHS等を放散ガス11として放出し、再生されてリーン液13が得られる。リーン液13は、約110〜130℃に加熱されており、液液熱交換器33に導入されてリッチ液12の加熱に供される。その後、冷却器34で所定の温度まで冷却された後、HS吸収塔31に導入される。
【0055】
このように、本実施例によれば、従来個別に実施されていたHS除去とCO回収を同時に行う場合においても、発電効率の向上が図れる。
【実施例5】
【0056】
本発明によるCOの回収方法および回収装置の第5の実施例を、図6を用いて説明する。実施例5では、実施例1と同様の構成のCO回収装置の運転制御方法の例について説明する。
【0057】
図6は、本実施例でのCO回収装置の構成を示すブロック図である。図6において、図1と同一の符号は、図1と同一または共通する要素を示す。本実施例のCO回収装置は実施例1と同様の構成であるが、図6には、凝縮熱を回収してリッチ液6a、6bを加熱する際の運転制御に必要な構成要素を追加して記載した。また、高温シフト反応器21a、中温シフト反応器21b、高温蒸気発生器22a、および中温蒸気発生器22bは、図示を省略した。
【0058】
吸収塔24に導入される生成ガス1の流路には、流量計51とガス分析用のガスサンプリング手段54が設置されている。ガスサンプリング手段54は、生成ガス1の一部を採取し、生成ガス1中のCO、CO、CH、HS等の成分濃度を測定する。
【0059】
フラッシュドラム27aから放出される放散ガス9aの流路には、冷却器29aと気液分離器26aが設置されており、フラッシュドラム27bから放出される放散ガス9bの流路には、冷却器29bと気液分離器26bが設置されている。放散ガス9aは、冷却器29aで所定の温度まで冷却されて、気液分離器26aで水分42aと酸性ガス43aとに分離される。放散ガス9bも、同様にして、冷却器29bと気液分離器26bにより、水分42bが除去され、酸性ガス43bが得られる。酸性ガス43a、43bの流路には、それぞれ流量計52、53およびガスサンプリング手段55、56が設置されている。酸性ガス43a、43bは、主にCOを含むガスであり、HSを含む場合もある。
【0060】
低温蒸気発生器22cには冷媒が供給され、低温シフト反応器21cを出た生成ガス1を冷却する。低温蒸気発生器22cに供給される冷媒の流路には、冷媒の流量調節手段が設置されている。冷媒としては、液体や気体を用いることができ、例えば、水や水素(精製ガス8)を用いることができる。本実施例では、冷媒としてボイラ給水14cを用いる。また、本実施例では、ボイラ給水14cの流量調節手段として流量調節弁57を用いる。流量調節手段は、流量調節弁だけに限られず、冷媒の種類や想定される流量などに応じて任意の手段を用いることができる。
【0061】
吸収液加熱器23aとフラッシュドラム27bの間には、リッチ液6bの温度を計測する手段である温度計測手段58が設置されている。温度計測手段58としては、例えば温度計を用いることができる。
【0062】
また、本実施例でのCO回収装置には、流量、温度、ガス濃度などの計測値を監視し、流量調節弁57の開度を制御する制御機100が設置されている。制御機100は、演算装置を備え、式(2)に従って炭素回収率を求めることができる。
【0063】
ここで、フラッシュドラム27bから放出される放散ガス9bの流量を制御する方法について説明する。放散ガス9bの流量は、フラッシュドラム27bに流入するリッチ液6bの温度が高いと増加し、低いと減少する。リッチ液6bは、吸収液加熱器23aで生成ガス1により加熱される。したがって、生成ガス1の温度を変えることにより、リッチ液6bの温度を変え、放散ガス9bの流量を変化させることができる。生成ガス1の温度は、低温蒸気発生器22cに供給されるボイラ給水14cの流量によって、制御することができる。そこで、制御機100は、放散ガス9bの流量やリッチ液6bの温度に基づき、流量調節弁57の開度を変化させることにより、ボイラ給水14cの流量を制御する。
【0064】
以下、制御機100が放散ガス9bの流量を制御する例について説明する。この例では、制御機100は、温度計測手段58で計測されるリッチ液6bの温度に基づき、放散ガス9bの流量を制御するものとする。制御機100は、温度計測手段58が計測したリッチ液6bの温度が予め定めた所定の温度より高い場合は、ボイラ給水14cの流量が増加するように流量調節弁57の開度を大きくする。この結果、生成ガス1の温度が低下し、リッチ液6bの温度も低下し、放散ガス9bの流量は減少する。一方、温度計測手段58が計測したリッチ液6bの温度が予め定めた所定の温度より低い場合は、制御機100は、ボイラ給水14cの流量が減少するように流量調節弁57の開度を小さくする。この結果、生成ガス1の温度が上昇し、リッチ液6bの温度も上昇し、放散ガス9bの流量は増加する。
【0065】
以上説明した放散ガス9bの流量の制御方法を応用して、式(2)に示した炭素回収率を制御することができる。本実施例では、炭素回収率を所定の値に維持するための制御方法を説明する。炭素回収率は、流量計51〜53でそれぞれ測定される生成ガス1、放散ガス9a、9bの流量と、ガスサンプリング手段54〜56でそれぞれ測定される生成ガス1、放散ガス9a、9bのCO、CO、CHの各濃度から、制御機100により、式(2)に従って求められる。
【0066】
求められた炭素回収率が、予め定めた目標値より低い場合には、流量調節弁57を徐々に閉止し、低温蒸気発生器22cに供給されるボイラ給水14cの流量を減らしていって生成ガス1の温度を高くし、温度計測手段58で計測されるリッチ液6bの温度を高くする。その結果、放散ガス9bの流量が増加し、炭素回収率が上昇する。
【0067】
一方、炭素回収率が予め定めた目標値より高い場合には、流量調節弁57の開度を徐々に大きくし、低温蒸気発生器22cに供給されるボイラ給水14cの流量を増やしていって生成ガス1の温度を低くし、リッチ液6bの温度を低くする。その結果、放散ガス9bの流量と炭素回収率が減少し、所定の炭素回収率が得られる。これと同時に、ボイラ給水14cの流量が増えたので低温蒸気5の発生量が増加し、発電端出力が増加する。したがって、炭素回収率が所定の目標値より高い場合には、過剰になっている炭素回収率を下げて、代わりに発電効率を向上させることが可能である。
【0068】
このように、本実施例によれば、非常に簡単な設備と制御のみで、炭素回収率を所定の値に維持することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…生成ガス、2…水蒸気、3…高温蒸気、4…中温蒸気、5…低温蒸気、6a,6b,12…リッチ液、6c…セミリーン液、7…凝縮水、8,10…精製ガス、9,9a,9b,11…放散ガス、13…リーン液、14c…ボイラ給水、21a…高温シフト反応器、21b…中温シフト反応器、21c…低温シフト反応器、22a…高温蒸気発生器、22b…中温蒸気発生器、22c…低温蒸気発生器、23a,23b,23c…吸収液加熱器、24…吸収塔、25,28…冷却器、26…気水分離器、26a,26b…気液分離器、27,27a,27b,27c,27d…フラッシュドラム、29a,29b…冷却器、31…HS吸収塔、32…再生塔、33…液液熱交換器、34…冷却器、40…断熱壁、42a,42b…水分、43a,43b…酸性ガス、51,52,53…流量計、54,55,56…ガスサンプリング手段、57…流量調節弁、58…温度計測手段、100…制御機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を含む燃料をガス化して生じる生成ガスからのCO回収方法において、
前記生成ガスと水蒸気を触媒上で反応させて、前記生成ガスに含まれるCOをCOに変換するCOシフト工程と、
前記COシフト工程を経た後の生成ガスを、冷却して凝縮水を除去してから、吸収液と接触させて前記生成ガス中の主にCOを吸収させるCO吸収工程と、
前記CO吸収工程でCOを吸収した吸収液を減圧し、この吸収液に含まれているCOの一部を放出させる第1のガス放出工程と、
前記COシフト工程と前記CO吸収工程との間の生成ガスを熱源として、前記第1のガス放出工程を経た後の吸収液を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された吸収液を減圧し、この吸収液に含まれているCOを放出させて、前記CO吸収工程に用いるために再生された吸収液を得る第2のガス放出工程と、
を有することを特徴とするCO回収方法。
【請求項2】
請求項1記載のCO回収方法において、
前記第2のガス放出工程で再生された吸収液を熱源として、前記第1のガス放出工程と前記加熱工程との間の吸収液を加熱する第2の加熱工程を有するCO回収方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のCO回収方法において、
前記CO吸収工程を経た後の生成ガスをCOとHSを吸収する吸収液と接触させて、前記生成ガス中のCOとHSを除去するガス除去工程と、
前記ガス除去工程でCOとHSを吸収した吸収液からCOとHSを放出させて、前記ガス除去工程に用いるために再生された吸収液を得る再生工程と、
前記再生工程で再生された吸収液を熱源として、前記ガス除去工程と前記再生工程との間の吸収液を加熱する再生前加熱工程と、
を有するCO回収方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のCO回収方法において、
前記COシフト工程と前記加熱工程との間の生成ガスを冷媒により冷却する冷却工程と、
前記冷媒の流量を調整して前記生成ガスの温度を変化させて、前記加熱工程で加熱する吸収液の温度を変えることにより、前記第2のガス放出工程で放出されるCOの量を制御する工程と、
を有するCO回収方法。
【請求項5】
炭素を含む燃料をガス化して生じる生成ガスからCOを吸収液に吸収させるCO回収装置において、
前記生成ガスと水蒸気を触媒上で反応させて、前記生成ガスに含まれるCOをCOに変換するシフト反応器と、
前記シフト反応器を出た生成ガスに含まれるCOを前記吸収液に吸収させるCO吸収塔と、
前記CO吸収塔の塔底から抜き出した吸収液を減圧し、この吸収液に含まれているCOの一部を放出させる第1のフラッシュドラムと、
前記COシフト反応器を出た後の生成ガスを熱源として、前記第1のフラッシュドラムを出た吸収液を加熱する吸収液加熱器と、
前記吸収液加熱器で加熱された吸収液を減圧し、この吸収液に含まれているCOを放出させて、前記CO吸収塔で用いるために再生された吸収液を得る第2のフラッシュドラムと、
を備えることを特徴とするCO回収装置。
【請求項6】
炭素を含む燃料をガス化して生じる生成ガスからCOを吸収液に吸収させるCO回収装置において、
前記生成ガスと水蒸気を触媒上で反応させて、前記生成ガスに含まれるCOをCOに変換するシフト反応器と、
前記シフト反応器を出た生成ガスに含まれるCOを前記吸収液に吸収させるCO吸収塔と、
前記CO吸収塔の塔底から抜き出した吸収液を減圧し、この吸収液に含まれているCOを放出させて、前記CO吸収塔で用いるために再生された吸収液を得るフラッシュドラムと、
前記COシフト反応器を出た後の生成ガスを熱源とする吸収液加熱器と、を備え、
前記フラッシュドラムは、内部に設けられた断熱壁により第1のフラッシュドラムと第2のフラッシュドラムに分割され、
前記第1のフラッシュドラムは、前記CO吸収塔の塔底から抜き出した吸収液を減圧し、この吸収液に含まれているCOの一部を放出させ、
前記吸収液加熱器は、前記第1のフラッシュドラムを出た吸収液を加熱し、
前記第2のフラッシュドラムは、前記吸収液加熱器で加熱された吸収液を減圧し、この吸収液に含まれているCOを放出させて、前記CO吸収塔で用いるために再生された吸収液を得る、
ことを特徴とするCO回収装置。
【請求項7】
請求項5または6記載のCO回収装置において、
前記第1のフラッシュドラムと前記吸収液加熱器との間に設置され、前記第2のフラッシュドラムで再生された吸収液を熱源として、前記第1のフラッシュドラムを出た吸収液を加熱する第2の吸収液加熱器を備えるCO回収装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項記載のCO回収装置において、
前記CO吸収塔を通過した後の生成ガスをCOとHSを吸収する吸収液と接触させて、前記生成ガス中のCOとHSを除去する吸収塔と、
前記吸収塔でCOとHSを吸収した吸収液からCOとHSを放出させて、前記吸収塔で用いるために再生された吸収液を得る再生塔と、
前記再生塔で再生された吸収液を熱源として、前記吸収塔を出た吸収液を加熱する液液熱交換器と、
前記再生塔で再生されて前記液液熱交換器で冷却された吸収液を、前記吸収塔へ供給する前に冷却する冷却器と、
を備えるCO回収装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項記載のCO回収装置において、
前記シフト反応器の後段に設置され、冷媒が供給されて前記シフト反応器を出た生成ガスを冷却する蒸気発生器と、
前記冷媒の流量を調整する流量調節手段と、
前記吸収液加熱器と前記第2のフラッシュドラムとの間に設置され、前記吸収液加熱器で加熱された吸収液の温度を計測する温度計測手段と、
前記温度計測手段が計測した吸収液の温度に基づき、前記流量調節手段を制御する制御機を備え、
前記制御機は、前記温度計測手段が計測した吸収液の温度が予め定めた所定の温度より高い場合は、前記冷媒の流量が増加するように前記流量調節手段を制御し、前記温度計測手段が計測した吸収液の温度が予め定めた所定の温度より低い場合は、前記冷媒の流量が減少するように前記流量調節手段を制御するCO回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−162424(P2012−162424A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24637(P2011−24637)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】