説明

Clostridiumdifficileに対する、組換え毒素A/毒素Bワクチン

【課題】組換えタンパク質成分を含む免疫原性組成物であって、当該タンパク質成分は、C.difficile毒素Aの少なくとも1回の繰り返し単位(rARU)、またはC.difficile毒素Bの少なくとも1回の繰り返し単位(rBRU)、または各毒素Aおよび毒素Bの少なくとも1回の繰り返し単位を含む、免疫原性組成物を提供すること。
【解決手段】組換えタンパク質成分を含む免疫原性組成物であって、当該タンパク質成分は、C.difficile毒素Aの少なくとも1回の繰り返し単位(rARU)、またはC.difficile毒素Bの少なくとも1回の繰り返し単位(rBRU)、または各毒素Aおよび毒素Bの少なくとも1回の繰り返し単位を含む、免疫原性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、医学免疫学の分野に関し、そしてさらに薬学的組成物、ワクチンの作製方法およびワクチンの使用方法に関する。より詳細には、本発明は、Clostridium difficileの毒素Aおよび毒素Bをコードする遺伝子由来の組換えタンパク質、ならびにC.difficileに対する活性なワクチンにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
Clostridium difficileは、グラム陽性の嫌気性芽胞形成桿菌であり、抗生物質関連下痢(AAD)および大腸炎(AAC)の病因因子である。この疾患の症状は、軽度の下痢から、劇症でかつ生命を脅かす偽膜性腸炎(PMC)までの範囲である。抗生物質治療は、正常な腸の微生物叢を破壊し得る。正常な微生物叢の破壊は、C.difficileの芽胞が発芽し得、そしてこの生物が増殖して疾患の原因毒素を産生するのを可能にする状態を生じる。C.difficileは抗生物質関連下痢のうちの約25%を引き起こすが、しかし、C.difficileはほぼ常に、PMCの原因因子である(Lyerly,D.M.およびT.D.Wilkins,Infections of the Gastrointestinal Tract,第58章,867−891頁(Raven Press,Ltd,New York 1995))。さらに、C.difficileは頻繁に、院内感染下痢、特に高齢の患者または免疫無防備状態の患者の院内感染下痢の原因因子として同定される(米国特許第4,863,852号(Wilkinsら)(1989))。
【0003】
C.difficileによって引き起こされる疾患は、毒素産生性株によって産生される2つの腸毒素AおよびBに起因する(米国特許第5,098,826号(Wilkinsら)(1992))。毒素Aは、最小の細胞傷害性活性を有する腸毒素であり、一方、毒素Bは、強力な細胞毒であるが、制限された腸毒性活性を有する。腸粘膜に対する広範な損傷は、毒素Aの作用に起因し得るが、しかし、毒素Aおよび毒素Bは、腸において相乗的に作用する。
【0004】
公知の中でも最大の細菌毒素であり、それぞれ、308,000および269,000の分子量を有する、毒素産生性タンパク質Aおよび毒素産生性タンパク質Bの両方をコードする遺伝配列が解明されている(Moncriefら、Infect.Immun.65:1105−1108(1997);Barrosoら、Nucl.Acids Res.18:4004(1990);Doveら、Infect.Immun.58:480−488(1990))。保存された置換を考慮した場合の類似性の程度から、これらの毒素は、遺伝子の重複から生じたと考えられる。これらのタンパク質は、互いに多数の類似の構造的特徴を共有する。例えば、両方のタンパク質は、推定のヌクレオチド結合部位、中心の疎水性領域、4つの保存されたシステインおよびカルボキシ末端に長い一連の反復単位を保有する。特に、毒素Aの反復単位は、免疫優性であり、そして腸上皮の表面の2型コア炭水化物抗原に対する結合を担う(Krivanら、Infect.Immun.53:573−581(1986);Tucker,K.およびT.D.Wilkins、Infect.Immun.59:73−78(1991))。
【0005】
毒素は、Rhoタンパク質の共有結合的改変を含む類似の分子作用機構を共有する。Rhoタンパク質は、細胞骨格の組織化の維持を含む多数の細胞機能を有する低分子量エフェクタータンパク質である。Rhoタンパク質の共有結合的改変は、毒素のグルコシルトランスフェラーゼ活性に起因する。グルコース部分は、補基質としてUDP−グルコースを用いてRhoへと付加される(Justら、Nature 375:500−503(1995)、Justら、J.Biol.Chem 270:13932−13939(1995))。グルコシルトランスフェラーゼ活性は、毒素のうちの、酵素活性に関与しない、細胞傷害性を担う、この反復単位を含む大きな部分を残して、これらの毒素の各々のアミノ酸配列のうちの最初のほぼ25%に局在している(Hofmannら、J.Biol.Chem.272:11074−11078(1997)、FaustおよびSong,Biochem.Biophys.Res.Commun.251:100−105(1998))。
【0006】
毒素Aタンパク質は、31個の連続した反復単位(rARU)を含み、そして複数のT細胞エピトープを含み得る(Doveら、Infect.Immun.58:480−488(1990))。反復単位は、クラスI反復およびクラスIIと定義される。rARUは、抗原に対するT細胞依存性応答を誘導する際の使用に独自に適切であり得る。各々の単位の配列は、類似するが同一ではない。これらの特徴は、毒素A中和抗体を惹起する際のその有用性とともに、rARUをキャリアタンパク質の新規な候補にする。
【0007】
毒素B反復単位は、rARUのものと類似の特徴を有する。rARUと同様に、組換え毒素B反復単位(rBRU)は、比較的大きく(約70kDa)、そして類似のアミノ酸配列の連続した反復から構成される(Barrosoら、Nucleic Acids Res.18:4004(1990);Eichel−Streiberら、Gene 96:107−113(1992))。毒素Bのこの部分については、毒素Aの結合ドメインほどには知られていない。
【0008】
Thomasら(米国特許第5,919,463(1999))は、C.difficile毒素Aもしくは毒素Bまたはそれらの特定のフラグメントを、鼻腔内に投与されて抗原(例えば、Helicobacter pyloriウレアーゼ、オボアルブミン(OVA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH))に対する免疫応答を刺激する粘膜アジュバントとして開示する。しかし、Thomasは、C.difficileの株に対する防御のためのこのようなアジュバントの使用を教示しない。Lyerlyら、Current Microbiology,21:29−32(1990)は、ハムスター防御アッセイにおいて毒素A反復からのより小さな組換えフラグメントで考慮した。しかし、これらのデータは、せいぜい、C.difficileの株からの非常に弱いかまたは部分的な防御しか示唆せず、一方、本発明は、明らかな免疫原性応答を提供し、そしてより高いレベルでは、C.difficileに対する防御を提供する、C.difficile毒素反復単位の使用を実証する。
【0009】
rARUおよびrBRUを結合体ワクチンの候補タンパク質として考えたとはいえ、このようなタンパク質の産生は、特定の抗原投与を提示する。毒素Aおよびこれに対して惹起されるタンパク質の産生のための方法が存在する(特許文献1(Wilkinsら)(1985);特許文献2(Wilkinsら)(1985);および特許文献3(Wilkinsら)(1989))。十分な量のC.difficile毒素Aおよび毒素Bタンパク質を産生する際には、かなりの困難が存在する。これらの方法は一般に煩雑でかつ高価である。しかし、本発明は、E.coliの株におけるC.difficileの毒素Aおよび毒素Bの非中毒性の短縮化タンパク質またはフラグメントの構築および組換え発現を提供する。このような方法は、抗原に対する体液性免疫原性を惹起するために充分な量のタンパク質分子の産生のためにより効果的でかつ商業的に実行可能である。
【0010】
本発明が克服する困難性の一部は、大きなタンパク質はE.coli中で高レベルで発現することが困難であるという事実に関する。さらに、これらのクロストリジウム属の遺伝子配列における異常に高い含量のAT(すなわち、ATリッチ)は、これらが高レベルで発現されるのを特に困難にする(Makoffら、BiolTechnology 7:1043−1046(1989))。大きな(すなわち、100kdより大きな)フラグメントがE.coli中で発現される場合にしばしば、発現の困難性に遭遇することが報告された。この遺伝子の小さな領域が、高度のタンパク質分解を伴わずに高レベルまで発現され得るか否かを決定するために、毒素A遺伝子のより小さなフラグメントを含む多数の発現構築物が構築されている。全ての場合、より大きな組換えフラグメントではなく、より高レベルのインタクトな、全長融合タンパク質が観察されたことが報告された(Kinkら,米国特許第5,736,139号;実施例11(c)を参照のこと)。ATリッチな遺伝子が、E.coliにおける高レベルの発現を妨害すると考えられる稀なコドンを含むことがさらに報告されている(Makoffら、Nucleic Acids Research 17:10191−10202)。本発明は、大きくかつATリッチの両方である遺伝子を産生する方法およびそれらの免疫原性組成物を提供する。例えば、毒素Aの反復単位は約98kDaであり、そしてこの遺伝子配列は、E.coliゲノムの約50% AT含量よりもずっと高い、約70%のAT含量を有する。本発明は、稀なコドンを変更することも、稀なtRNAを供給することもなく、ATリッチ遺伝子(非常に大きな遺伝子を含む)をE.coli中で高レベルで発現する方法を提供する。
【0011】
上記の文献の引用は、上記のいずれかの文献が適切な先行技術であると認めたことを意図するわけではない。これらの文献の日付についての全ての言明またはこれらの文献の中身についての説明は、出願人に利用可能な情報に基づいており、これらの文献の日付または内容の正確さについては何の承認をも構成しない。さらに、本出願を通して言及される全ての文献は、その全体が本明細書中に参考として援用される。詳細には、本出願は、米国仮特許出願第60/190,111号(2000年3月20日出願);および米国仮特許出願第60/186,201号(2000年3月1日出願);および米国仮特許出願第60/128,686号(1999年4月9日出願)に対する優先権の利益を主張し、これらの仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,530,833号明細書
【特許文献2】米国特許第4,533,630号明細書
【特許文献3】米国特許第4,879,218号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、組換えタンパク質を含む免疫原性組成物に関する。このタンパク質をコードする遺伝子は、C.difficileの株から単離される。本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1つのタンパク質が毒素または毒素フラグメントであることを提供する。さらに好ましい実施形態は、この毒素がC.difficileの毒素Aまたは毒素Bであることを提供する。本発明のより好ましい実施形態は、組換えタンパク質成分が、非中毒性であり、そしてC.difficileの毒素Aもしくは毒素Bの反復単位(rARUもしくはrBRU)またはそれらのフラグメントのアミノ酸配列の全てを含む、両方の毒素の一部を含むことを提供する。免疫原性組成物は、炭水化物部分ならびに薬学的に受容可能なキャリアまたは哺乳動物における注射に適切な処方における他の組成物をさらに含み得る。
【0014】
本発明の別の実施形態は、rARU成分およびrBRU成分が、好ましくは、免疫原性組成物がワクチンにおいて使用される場合に、毒素Aおよび毒素Bに対する高レベルの中和抗体をもたらす様式で組み合わされることである。これらの成分は、種々の比率で混合され得る。さらに、rARU成分およびrBRU成分は、化学的または物理的に連結されて複合体を形成し得る。別の好ましい実施形態は、rARU配列およびrBRU配列またはそれらのフラグメントが、ハイブリッド分子の産生をもたらす様式で遺伝的に融合され得ることである。さらなる実施形態は、免疫原性組成物が、ネイティブなC.difficile毒素を沈澱させ、かつそれらの細胞傷害性活性を中和し、従ってC.difficile関連疾患に対する防御を提供する抗体を惹起することである。
・本発明は、さらに以下を提供し得る:
・(項目1) 組換えタンパク質成分を含む免疫原性組成物であって、当該タンパク質成分は、C.difficile毒素Aの少なくとも1回の繰り返し単位(rARU)、またはC.difficile毒素Bの少なくとも1回の繰り返し単位(rBRU)、または各毒素Aおよび毒素Bの少なくとも1回の繰り返し単位を含む、免疫原性組成物。
・(項目2) 上記組換えタンパク質成分が、一般的に互いに融合される、少なくとも2回の上記繰り返し単位を含む、項目1に記載の免疫原性組成物。
・(項目3) 上記組換えタンパク質成分が、化学的に互いに結合される、少なくとも2回の上記繰り返し単位を含む、項目1に記載の免疫原性組成物。
・(項目4) 上記組成物が、毒素Aまたは毒素Bあるいはその両方を中和させる抗体を誘発する、項目1に記載の免疫原性組成物。
・(項目5) 哺乳動物の宿主において、C.difficile株に対する防御応答を誘発する、項目1に記載の免疫原性組成物。
・(項目6) 毒素Aまたは毒素Bあるいはその両方を中和させる抗体を誘発する、項目2に記載の免疫原性組成物。
・(項目7) 哺乳動物の宿主において、C.difficile株に対する防御応答を誘発する、項目2に記載の免疫原性組成物。
・(項目8) 毒素Aまたは毒素Bあるいはその両方を中和させる抗体を誘発する、項目3に記載の免疫原性組成物。
・(項目9) 哺乳動物の宿主において、C.difficile株に対する防御応答を誘発する、項目3に記載の免疫原性組成物。
・(項目10) 薬学的に受容可能なキャリア中に、項目1〜9のいずれか1項に記載される免疫原性組成物を含む、薬学的組成物。
・(項目11) 哺乳動物の宿主において、防御応答を与える方法であって、当該方法は、項目1〜9のいずれか1項に記載の治療的に有効量の免疫原性組成物を哺乳動物の宿主に投与する工程を包含する、方法。
・(項目12) 哺乳動物の宿主において、防御応答を与える方法であって、当該方法は、項目10に記載の治療的に有効量の免疫原性組成物を哺乳動物の宿主に投与する工程を包含する、方法。
・(項目13) 上記タンパク質成分が、毒素Aまたはそのフラグメントである、項目1に記載の免疫原性組成物。
・(項目14) 上記タンパク質成分が、上記毒素A繰り返し単位(rARU)またはそのフラグメントを含む、組換えアミノ酸配列を含む、項目13に記載の免疫原性組成物。
・(項目15) 上記タンパク質が、融合タンパク質である、項目14に記載の免疫原性組成物。
・(項目16) 上記タンパク質成分が、毒素Bまたはそのフラグメントである、項目1に記載の免疫原性組成物。
・(項目17) 上記タンパク質成分が、上記毒素B繰り返し単位(rBRU)またはそのフラグメントを含む、組換えアミノ酸配列を含む、項目16に記載の免疫原性組成物。
・(項目18) 上記タンパク質が、融合タンパク質である、項目17に記載の免疫原性組成物。
・(項目19) 上記免疫原性組成物が、哺乳動物の宿主において、T細胞依存性である免疫応答を誘発する、項目1に記載の免疫原性組成物。
・(項目20) 上記免疫原性組成物が、哺乳動物の宿主において、T細胞非依存性である免疫応答を誘発する、項目1に記載の免疫原性組成物。
・(項目21) 上記免疫原性組成物が、哺乳動物の宿主において、T細胞依存性およびT細胞非依存性の両方である免疫応答を誘発する、項目1に記載の免疫原性組成物。
・(項目22) 上記免疫応答が、細胞依存性免疫応答である、項目19または20または21に記載の免疫原性組成物。
・(項目23) 上記免疫応答が、上記哺乳動物の宿主において、追加免疫効果を生じる、項目19または20または21に記載の免疫原性組成物。
・(項目24) 上記免疫応答が、C.difficile株に対する防御応答を誘発する、項目19または20または21に記載の免疫原性組成物。
・(項目25) 上記免疫応答組成物が、哺乳動物の宿主において、体液性免疫応答を誘発する、項目19または20または21に記載の免疫原性組成物。
・(項目26) 上記免疫応答組成物が、哺乳動物の宿主において、体液性免疫応答または細胞依存性免疫応答の両方を誘発する、項目19または20または21に記載の免疫原性組成物。
・(項目27) 上記免疫応答が、C.difficile株に対する防御応答を誘発する、項目19または20または21に記載の免疫原性組成物。
・(項目28) 組換えタンパク質成分を含む免疫原性組成物であって、当該タンパク質成分は、Clostridium difficile毒素A繰り返し単位(rARU)またはそのフラグメントを含有する、組換えアミノ酸配列を含み、そして当該組成物が、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、免疫原性組成物。
・(項目29) 組換えタンパク質成分を含む免疫原性組成物であって、当該タンパク質成分は、Clostridium difficile毒素B繰り返し単位(rBRU)またはそのフラグメントを含有する、組換えアミノ酸配列を含み、そして当該組成物が、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、免疫原性組成物。
・(項目30) 組換えタンパク質成分を含む免疫原性組成物であって、当該タンパク質成分は、Clostridium difficile毒素A繰り返し単位(rARU)またはClostridium difficile毒素B繰り返し単位(rBRU)あるいはそれらのいずれかのフラグメントを含有する、組換えアミノ酸配列を含み、そして当該組成物が、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、免疫原性組成物。
・(項目31) 組換えタンパク質成分を含む免疫原性組成物であって、当該タンパク質成分は、Clostridium difficile毒素A繰り返し単位(rARU)またはそのフラグメント、およびClostridium difficile毒素B繰り返し単位(rBRU)またはそのフラグメントを含有する、組換えアミノ酸配列を含み、そして当該組成物が、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、免疫原性組成物。
・(項目32) 項目28、29、30または31のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を含む、ワクチン。
・(項目33) 上記ワクチンが、ヒトでの使用のために処方される、項目32に記載のワクチン。
・(項目34) 上記ワクチンが、動物での使用のために処方される、項目32に記載のワクチン。
・(項目35) 免疫原性組成物を産生するための方法であって、当該方法は、
組換えタンパク質成分をコードする遺伝子配列を構築する工程であって、当該遺伝子配列がClostridium difficile株から単離される、工程;
微生物宿主で、当該組換えタンパク質を発現する工程;
当該宿主の培養物から当該組換えタンパク質を回収する工程;および
当該組換えタンパク質成分を回収する工程であって、当該タンパク質成分は、Clostridium difficile毒素A繰り返し単位(rARU)またはそのフラグメントであるか、またはClostridium difficile毒素B繰り返し単位(rBRU)またはそのフラグメントである、工程、
を包含する、方法。
・(項目36) 上記遺伝子配列の発現が、当該配列の上流に作動可能に配置される誘導性プロモータおよび上記宿主の機能によって調節される、項目35に記載の方法。
・(項目37) 上記微生物宿主が、Escherichia coliである、項目36に記載の方法。
・(項目38) 上記組換えタンパク質が、約10mg/mlよりも高いレベルで発現される、項目37に記載の方法。
・(項目39) 上記組換えタンパク質が、上記培養の約50mg/lよりも高いレベルで発現される、項目37に記載の方法。
・(項目40) 上記組換えタンパク質が、上記培養の約100mg/lよりも高いレベルで発現される、項目37に記載の方法。
・(項目41) 上記タンパク質が、約50kDaよりも大きい、項目37に記載の方法。
・(項目42) 上記タンパク質が、約90kDaよりも大きい、項目37に記載の方法。
・(項目43) 上記タンパク質が、硫酸アンモニウム沈殿、次いでイオン交換クロマトグラフィーによって回収される、項目37に記載の方法。
・(項目44) 上記タンパク質が、スクシニル化される、項目37に記載の方法。
・(項目45) Clostridium difficile株由来のタンパク質成分をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む、組換え遺伝子配列。
・(項目46) 上記遺伝子が、毒素Aまたはそのフラグメントをコードする、項目45に記載の組換え配列。
・(項目47) 上記遺伝子が、上記毒素A繰り返し単位(rARU)またはそのフラグメントをコードする、項目46に記載の組換え配列。
・(項目48) 上記遺伝子が、上記毒素Bまたはそのフラグメントをコードする、項目45に記載の組換え配列。
・(項目49) 上記遺伝子が、上記毒素B繰り返し単位(rBRU)またはそのフラグメントをコードする、項目48に記載の組換え配列。
・(項目50) 毒素Aまたはそのフラグメントをコードする第1遺伝子、および毒素Bまたはそのフラグメントをコードする第2遺伝子を含む、項目45に記載の組換え配列。
・(項目51) 上記毒素A繰り返し単位(rARU)またはそのフラグメントをコードする上記第1遺伝子、および上記毒素B繰り返し単位(rBRU)またはそのフラグメントをコードする上記第2遺伝子を含む、項目50に記載の組換え配列。
・(項目52) 項目45または項目50の遺伝子配列、および微生物宿主に選択的な表現型を与える遺伝子を含む、発現ベクター。
・(項目53) 上記選択的な表現型が、カナマイシンに対して耐性である、項目52に記載の発現ベクター。
・(項目54) 項目52または項目53の発現ベクターで形質転換された、微生物宿主。
・(項目55) 受動免疫治療のための、病原性微生物株に対する抗体の産生のための項目1〜9および13〜31のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、毒素Aおよび毒素Bの模式図である。これらの毒素の反復単位は、細胞表面への結合において機能する。これらの毒素の反復単位に対する抗体は、細胞表面へのこれらの毒素の結合をブロックすることによって細胞傷害性活性を中和する。
【図2】図2は、rARUおよび毒素A停止コドンをコードする、毒素A遺伝子領域のヌクレオチド配列(番号5690〜8293、GenBank登録番号M30307、Doveら、1993)を示す。この配列は、Doveら(Doveら、Infect Immun.58:480−488(1990))によって定義された、C.difficileのVPI 10463株由来の毒素Aの反復単位全体をコードする。さらに、この配列は、この反復単位の始まりの上流の4アミノ酸および毒素Aの末端の疎水性アミノ酸の小さなストレッチをコードする。この配列の始まりのSau3A部位(下線)を用いて、発現ベクターへと遺伝子フラグメントをサブクローン化した。この配列の末端の停止コドンは、斜体である。
【図3】図3は、rARUのアミノ酸配列(GenBank登録番号M303307)を示す。本発明は、このアミノ酸配列を含む任意の組換えタンパク質、その中の任意のフラグメント、rARUを含む任意の融合タンパク質またはその中のフラグメント、およびrARUの全てまたは一部を保有する毒素A由来の任意のより大きなフラグメントの、結合体ワクチン組成物のためのキャリアとしての使用を意図する。
【図4】図4は、rARUの発現のために用いられる発現ベクターpRSETB−ARU−Kmrを示す。rARU、停止コドンおよび毒素Aの停止コドンの下流の小さな領域をコードするヌクレオチド配列全体を含む、約2.7kbのSau3A/HindIII遺伝子フラグメントを、BamHIおよびHindIIIで消化したベクターpRSETBへとサブクローン化した。その後の工程では、カナマイシン耐性遺伝子を、rARUの遺伝子フラグメントの下流に位置するHindIII部位でサブクローン化した。Kmr遺伝子をコードする1.2kbフラグメントを、EcoRIでの消化によってpUC4K(GenBank登録番号X06404)から誘導し、そしてクレノウフラグメントでのベクターおよびKmrカセットの平滑末端化後にHindIII部位でのサブクローン化した。発現ベクターpRSETB−ARU−Kmrを、T7プロモーターの制御下でrARUの発現のためにBL21(DE3)中に形質転換した。 *HindIII/EcoRI部位を、平滑末端化によって除去した。
【図5】図5は、rARUの発現および精製の工程のSDS−PAGEゲル(15%アクリルアミド)を示す。レーン:1)4μlの10×BL21(DE3)E.coli/pRSETB−ARU−Kmr溶解産物、2)元々の培養溶液の容量に対して10×の4μlの透析された40%硫酸アンモニウム画分、3)CL−6B Sepharoseアニオン交換クロマトグラフィーにより精製された5μl rARU(0.88mg/ml)。
【図6】図6は、rBRUおよび上流の小さな部分をコードする毒素B遺伝子領域のヌクレオチド配列(GenBank登録番号X531138、Wilkinsら、1990)を示す。サブクローン化のために用いたSau3a制限部位に下線を付す。C.difficileのVPI株由来の毒素Bの反復単位の配列は、以前に定義された(Eichel−Streiberら、Mol.Gen.Gen.233:260−268)。
【図7】図7は、rBRUおよび小さな上流の領域のアミノ酸配列(GenBank登録番号X53138)を示す。本発明は、このアミノ酸配列を含む任意の組換えタンパク質、その中の任意のフラグメント、rBRUを含む任意の融合タンパク質またはその中のフラグメント、およびrBRUの全てまたは一部を保有する毒素B由来の任意のより大きなフラグメントの、C.difficileに対するワクチンにおける成分として使用を意図する。
【図8】図8は、rBRUの発現のために用いた発現ベクターpRSETC−BRU−Kmrを示す。rBRUをコードするヌクレオチド配列のほぼ全体を含む約1.8kbの遺伝子フラグメント(毒素Bの最後の10アミノ酸が除去される)を、毒素B遺伝子(Phelpsら、Infect.Immun.59:150−153(1991))からサブクローン化してpGEX−3Xとした。pGEX−3X−BRU由来のBamHI/EcoRIをサブクローン化してpRSETCとした。その後の工程では、カナマイシン耐性遺伝子を、rBRU遺伝子フラグメントの下流に位置するEcoRI部位にサブクローン化した。Kmr遺伝子をコードする1.2kbフラグメントを、EcoRIでの消化によってpUC4K(GenBank登録番号X06404)から誘導した。発現ベクターpRSETC−BRU−Kmrを、rBRUの発現のためにT7プロモーターの制御下でBL21(DE3)中に形質転換した。
【図9】図9は、精製されたrARUおよび部分的に精製されたrBRUのSDS−PAGEである。レーン;1)連続した硫酸アンモニウム沈澱およびSepharose CL−6Bアニオン交換クロマトグラフィーによって精製されたrARU、2)硫酸アンモニウム沈澱およびフェニルSepharoseでの疎水性相互作用クロマトグラフィーによって部分的に精製されたrBRU、3)Escherichia coli BL21(DE3)/pRSETC−BRU−Kmrの溶解産物(10×濃度)。
【図10】図10は、(A)C.difficile培養濾液および(B)部分的に精製したrBRUの交叉免疫電気泳動である。C.difficileヤギ抗血清を、沈澱抗体として用いた。
【図11】図11は、rARUおよびrBRUの遺伝子融合物の例を示す。Sau3A/EcoRI毒素A遺伝子フラグメント(ヌクレオチド5530〜6577)を、ApoI毒素B遺伝子フラグメント(ヌクレオチド5464〜6180)へと融合して、両方の毒素遺伝子由来の反復単位のかなりの部分を含む約68kDaの588アミノ酸のrARU’/’rBRU’融合タンパク質を発現するインフレームの1,763bpの遺伝子融合物を作製し得る。rARU’フラグメントは、この遺伝子融合物のrARU’部分において白棒によって示されるPCG−4についてのエピトープをコードする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、免疫原性組成物に関する。この組成物は、少なくとも1つの組み換えタンパク質成分を含む。ここで、このタンパク質成分をコードする遺伝子は、Clostridium difficileの株から単離される。本発明の好ましい実施形態は、そのタンパク質が毒素または毒素フラグメントであることを提供する。なおさらなる好ましい実施形態は、その毒素が毒素Aであることを提供する。ここで、なおさらに好ましい実施形態は、毒素A反復単位(rARU)またはそのフラグメントのアミノ酸配列のすべてを含む毒素の一部分である。別の好ましい実施形態は、その毒素が毒素Bであることである。ここで、さらに別の好ましい実施形態は、反復単位(rBRU)またはそのフラグメントのアミノ酸配列の全てを含むその毒素の一部分である。免疫原性組成物は、さらに、哺乳動物における注射のために適切な処方物において、薬学的に受容可能なキャリアまたは他の組成物を含み得る。
本発明のこれらの免疫原性組成物は、哺乳動物宿主において免疫応答を惹起する。この動物にはヒトおよび他の動物が含まれる。免疫応答は、細胞依存性応答または抗体依存性の応答のいずれかあるいはその両方であり得、そしてさらにその応答は、免疫記憶または追加免疫効果あるいはその両方を、その哺乳動物宿主において提供し得る。これらの免疫原性組成物はワクチンとして有用であり、そしてClosteridium difficile株による感染からの哺乳動物被検体または宿主による保護的応答を提供し得る。
【0017】
本発明は、さらに、以下による免疫原性組成物を生成するための方法を包含する:組み換えタンパク質成分をコードする遺伝子配列を構築する工程であって、ここでそのタンパク質成分をコードする遺伝子は、Clostridium difficileの株から単離される、工程;その組み換えタンパク質成分を微生物宿主中で発現する工程;その組み換えタンパク質をその宿主の培養物から回収する工程;そのタンパク質を第二のタンパク質成分と結合体化する工程、ならびにその結合体化されたタンパク質およびポリサッカリド成分を回収する工程。このタンパク質成分はまた、融合タンパク質からなり得、ここでは、その組み換えタンパク質の一部は、第二のタンパク質に遺伝子的に融合されている。好ましくは、遺伝子配列の発現は、その配列の上流に作動可能に配置され、そしてその宿主細胞中で機能性である誘導プロモーターによって調節される。なおさらに、その遺伝子配列は、定常的かつ安定な選択圧力によって、その宿主の増殖の間維持される。その発現ベクターの維持は、選択遺伝子型をコードする遺伝子配列の発現ベクターへの取り込みにより付与され得る。その微生物宿主細胞におけるその配列の発現は、選択表現型を生じる。そのような選択遺伝子型は、カナマイシンのような抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子を含む。カナマイシンの存在のような選択剤または状態の存在下で発現ベクター上のこの選択遺伝子型配列の発現は、その宿主の増殖の間、そのベクターの安定な維持を生じる。選択的遺伝子型配列はまた、条件的に致死変異を補完する遺伝子を含み得る。
【0018】
他の遺伝子配列は、発現ベクター中に取り込まれ得る(例えば、他の薬物耐性遺伝子または致死変異を補完する遺伝子)。
【0019】
本発明の微生物宿主は、以下を含み得る:グラム陽性細菌;グラム陰性細菌;好ましくはE.coli細胞、酵母;糸状真菌細胞;哺乳動物細胞;昆虫細胞;または植物細胞。
【0020】
本発明の方法はまた、約10mg/L培養物を超える、より好ましくは約50mg/Lを超える、そしてさらにより好ましくは約100mg/Lでの、または約100mg/Lを超えるレベルで、その宿主中の組み換えタンパク質の発現のレベルを提供する。そのタンパク質の分子量は、約30kDaを超え、好ましくは約50kDaを超え、そしてさらにより好ましくは、約90kDaを超える。本発明はまた、そのタンパク質がタンパク質の単離および回収について当業者に公知の多数のいずれかの方法によって回収され得るが、好ましくは、その回収が硫酸アンモニウム沈降、続いてイオン交換クロマトグラフィーによることを提供する。
【0021】
本発明はさらに、そのタンパク質成分が当該分野において公知の多数の手段の一つによって第二のタンパク質成分へと、特にアミド化反応によって結合体化されることを提供する免疫原性組成物を調製するための方法を包含する。
【0022】
また、組み換えタンパク質の高収量は、増殖条件、発現速度およびATリッチ遺伝子配列を発現するために使用される時間の長さに依存し得る。一般に、ATリッチ遺伝子は、E.coliにおいて、指数増殖期の後または遅延増殖期の間により高いレベルで発現されるようである。コードされるタンパク質の高レベルの産生は、より短い時間(例えば、4から6時間)にわたる指数増殖の間の高レベルの発現の代表的なアプローチではなく、指数増殖期後の長期(例えば、20から24時間)にわたる中程度のレベルの発現を必要とする。この点に関して、長期の増殖の間のその遺伝子またはその発現ベクターについての定常的選択圧力を維持することにより、目的の遺伝子を有するプラスミドを維持することがより効率的である。本発明の1つの局面は、アンピリシンを用いてみいだされるように、発現宿主細胞の増殖の間に不活化または分解されない抗生物質を用いることである。1つのそのような好ましい実施形態は、その発現ベクターを維持するための選択表現型としてのカナマイシンに対する耐性をコードする遺伝子の発現を含む。このベクターは、そのようなカナマイシン遺伝子配列を含む。E.coliにおける本発明の方法により提供されるレベル(>100mg/L)の大きなATリッチクロストリジアム遺伝子の発現は、これまで未知であった。
【0023】
本明細書において使用される用語は、その当該分野において認識される意味に基づき、そして当業者に明白に理解されるはずである。
【0024】
免疫原性組成物は、その免疫原性組成物が注射または他の方法で導入されるときに、哺乳動物宿主における免疫応答を惹起する物質の任意の組成物である。免疫反応は、体液性、細胞性またはその両方であり得る。
【0025】
融合タンパク質は、遺伝子または遺伝子のフラグメントによってコードされる組み換えタンパク質である。これらは、遺伝子的に別の遺伝子または遺伝子のフラグメントに融合されている。
【0026】
追加免疫効果とは、同じ免疫原性組成物に対する哺乳動物宿主の続いての暴露の際の免疫原性組成物に対する免疫応答の増加をいう。体液性応答は、免疫原性組成物に対する暴露の際に哺乳動物宿主による抗体の産生を生じる。
【0027】
rARUは、Doveらによって規定されるClostridium difficile 毒素Aの反復単位を含む組み換えタンパク質である(Doveら、Infect.Immun.58:480−488 (1990))。rARUをコードするヌクレオチド配列およびrARUのアミノ酸配列は、図2および3にそれぞれ示される。pRSETB−ARU−Kmrにによって発現されるrARUは、毒素Aの反復単位領域の全体を含む。本発明はさらに、単独で発現されるものであれ、融合タンパク質としてであれ、この組み換えタンパク質成分、または毒素Aの反復単位全体を含む他の任意のタンパク質成分またはその中の任意のフラグメントの使用を企図する。
【0028】
類似の方法を使用してクローンを単離し得、そしてClostridium difficile毒素Bの反復単位(rBRU)を含む組み換えタンパク質成分を発現し得る。rBRUをコードするヌクレオチド配列およびrBRUのアミノ酸配列は、図6および7にそれぞれ示される。pRSETC−BRU−Kmrによって発現されるrBRUは、毒素Bの反復単位領域全体を含む(図8を参照のこと)。
【0029】
この方法は、rARUまたはrBRUあるいはその両方を含む免疫原性組成物の調製を提供する。これらは、ワクチンとして有用である。免疫原性組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈物中にワクチンとして処方され得る(例えば、水、生理食塩水溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)、重炭酸溶液(例えば、0.24 M NaHCO3))、坐剤、クリーム、またはゼリー)。これらは、投与の様式および経路ならびに標準的な薬学的実施に基づいて選択される。以下を参照のこと:米国特許第5,919.463、Thomasら(1999)(これは、本明細書においてその全体が参考として援用される)。適切な薬学的キャリアおよび希釈物、ならびに薬学適所放物においてその使用のための薬学的要件は、この分野において、USP/NFにおける標準的な参考文献である、Remington’sPharmaceutical Sciences (Alfonso Gennaroら編、第17版, Mack Publishing Co..Easton Pa..1985)において、およびLachman ら (The Theory & Practice of Industrial Pharmacy,第2版.Lea & Febiger.PhiladelphiaPa..1976)によって記載される。直腸および膣投与の場合、ワクチンは、これらの領域に対して、薬学的材料を投与することにおいて標準的に使用される方法およびキャリアを用いて投与される。例えば、坐剤、クリーム(例えば、ココアバター)、またはゼリー、ならびに標準的な膣塗布剤、スポイト、シリンジ、または浣腸が、当業者によって適切であるように決定されるように使用され得る。
【0030】
本発明のワクチン組成物は、臨床的に適合した任意の経路(例えば、粘膜(鼻内、経口、眼内、胃腸、直腸、膣内または尿生殖路を含む)の表面への塗布による)によって投与され得る。あるいは、非経口的(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内)の投与様式もまた使用され得る。投与されるワクチンの量は、当業者によって判定されるように、特定のワクチン抗原、ならびに使用される任意のアジュバント、投与の様式および頻度、および所望の効果(例えば、保護および/処置)に依存する。一般に、本発明のワクチンは、1μgと100mgとの間の範囲の量で投与される。投与は、当業者によって必要とされるように決定されるように反復される。例えば、プライム刺激用量に続いて3回の追加免疫用量を、1週間おきに投与され得る。
【0031】
ここまで、本発明を一般的に記載してきたことから、本発明は、以下の実施例を参酌してより容易に理解される。これらの実施例は、例示の目的で提供され、そして特定しない限り本発明の限定を意図しない。
【実施例】
【0032】
(実施例)
(実施例1:rARU発現ベクターの構築)
発現および精製のために使用したベクターをクローニングのための標準的な技術を用いて構築した(Sambrookら、Molecular Cloning:ALaboratorv Manual (1989))。rARUをコードする毒素A遺伝子フラグメントのヌクレオチド配列は、クローニングされた毒素A遺伝子から得(Doveら、Infect.Immun.58.480−488 (1990);Phelpsら、Infect Immun.59:150−153 (1991))、そして図2に示す。この遺伝子フラグメントは、タンパク質867アミノ酸長をコードする(図3)。ここで、算出される分子量は98kDaである。この遺伝子フラグメントを発現ベクターpRSETBへとサブクローニングした。カナマイシン耐性遺伝子を、次にこのベクターへとサブクローニングした。得られたベクターpRSETB−ARU−Kmrは、rARUを発現する。この組み換えタンパク質のN末端にはさらに31アミノ酸が発現ベクターpRSETBによって与えられる。その組み換えタンパク質の最後の算出分子量は102kDaである。
【0033】
(実施例2:rARUの発現および精製)
Escherichia coli T7 発現宿主株BL21(DE3)を、記載されるように、pRSETB−ARU−Kmrで形質転換した(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory
Manual (1989))。1Lの培養物を、pRSETB−ARU−Kmrを含む10mlのEscherichia coli BL21 (DE3)の一晩培養物に接種し、、そして25 μg/mlのカナマイシンを含むTerrificブロス (Sigma, St.Louis.,MO)中で1.8−2.0にまでO.D.600増殖させ、そしてイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度40μMにまで添加した。細胞を、誘導の22時間後採集し、0.2%のカザミノ酸を含む0.1Lの標準的なリン酸緩衝化生理食塩水pH7に懸濁化し、そして超音波処理により破壊した。細胞砕片を遠心分離により溶解物から除去した。溶解物は、代表的に、TOX−A試験EIAにおいて106の力価(0.2を超えるA450を有する最高希釈物の逆数)を含んだ(TechLab.Inc..Blacksburg, VA)。溶解物を、40%硫酸アンモニウムで飽和させ、4℃で一晩攪拌し、そして沈澱したタンパク質を遠心分離により採取した。この硫酸アンモニウム画分を0.1Lの5mM K2PO4、0−1M NaC12, pH 8.0中に懸濁し、そして4℃で同じ緩衝液に対して徹底的に透析した。可溶性材料を遠心分離により除去した。透析した溶液をSepharose CL−6Bクロマトグラフィー媒体(50ml媒体/100ml溶液)を含むカラムに通した。画分を収集し、そしてrARUの存在について、TOX−A試験を用いてEIAによりモニターした。EIA活性を含む画分を、およそ102KDaの分子量でのrARUの存在についてSDS−PAGEにより、分析した。単一バンドのrARUを含む画分をプールした。純度をさらに確実とするために、プールされた溶液をSepharose CL−6B カラム (25 ml媒体/100 mlタンパク質溶液)に対して通過させた。精製されたrARUを含む溶液を22μフィルターを通過させることによりフィルター濾過し、そして4℃で保存した。精製されたrARUを、精製(溶解物および透析された硫酸アンモニウム画分)の工程からのサンプルとともに、図5に示す。その手順は、代表的に、1リットルのE.coli/pRSETB−ARU−Kmr培養物あたりおよそ100mg rARUを得る。併せて6リットルのバッチにより、合計で748mgのrARUについて0.88mg/mlでまたは125mg/リットルの培養物0.850リットルのrARUが得られた。回収されたrARUの量は可溶性タンパク質の合計の23%を示す。
【0034】
(実施例3:rBRU発現ベクターの構築)
発現および精製のために使用されたベクターpRSETC−BRU−Kmrを標準的なクローニング技術を用いて構築した(Sambrook et al., Molecular Cloning:ALaboratory Manual (1989))。rBRUをコードする毒素B遺伝子フラグメントのヌクレオチド配列はクローニングした毒素B遺伝子に由来し(Barroso et
al..Nucleic Acids Res 1 8:4004 (1990)) 、そして図6に示す。この遺伝子フラグメントは、622アミノ酸長のタンパク質をコードし、分子量は約70kDaである。カナマイシン耐性遺伝子を、次にそのベクター中にサブクローニングした。得られたベクターpRSETC−BRU−KmrはrBRUを発現する。
【0035】
(実施例4:rBARUの高レベル発現および部分精製)
1リットルのEscherichia coli pRSETC−BRU−Kmrを37℃で25時間、振盪インキュベーターで増殖させた。細胞を、遠心分離し、そして0.2%カザミノ酸を含む0.1リットルのリン酸緩衝化生理食塩水中に再懸濁した。採取時の培養物の上性は、6.2のpHを有した。細胞を超音波処理により墓石、そして細胞砕片を遠心分離により除去した。10×溶解物を図9、レーン3に示す。
【0036】
(実施例5:結合体のrARU成分に対する免疫応答)
C.difficile毒素A(CDTA)に対する抗体。ネイティブ毒素Aに対する抗体を、C.difficileから単離された毒素Awoコーティング抗原として使用したELISA、および細胞傷害性のインビトロ中和によってにより測定した(Lverlv et al.Infect.Immun.35:1147−1150 (1982))。ヒト小腸上皮HT−29細胞(ATCC HTI3 38)を、5%CO2雰囲気下で10%の仔ウシ血清を補充したMcCov5A培地を有する96ウェルプレート中に維持した。HT−29細胞を選択した。なぜなら、それらは、その表面に高密度の糖レセプターにおそらく起因してCDTAに対して高感度であるからである。連続的に2倍の希釈の血清を、0.4μg/mlのCDTAとともに30分で室温でインキュベートした。CDTA血清混合物を、ウェルに、最終容量0.2ml中に、1ウェルあたり最終濃度20ng(HT−29細胞についての最小細胞傷害性用量の約200倍)の毒素Aで添加した。中和力価を、細胞傷害性を完全に中和した最高希釈の逆数として表す。
【0037】
【表1】

すべての5つの結合体は、高いレベルの抗CDTA(194−613μg/ml)を惹起した(表1)。2.5μgの免疫用量の結合体は、そのポリサッカリド含量に基づいていたことから、注射したrARUの量は、各結合体について異なった。例えば、タンパク質重量ベースで、Pnl4−rARUは、1.29μgのrARUとともに、194μg CDTA抗体/ml(150.3μgAb/μgr注射したARU)を惹起した。対照的に、1用量あたり7.3μgのrARUを含んだPn I4−rARUsuccは、371μg CDTA抗体/ml(50.8μg Ab/注射したμg rARUsucc)を惹起した。PnI4−rARUは、1μgのrARUあたり、Pn14−rARUsccより多くの抗CDTAを誘導したが、Pn14−rARUsccによって惹起された合計量の抗CDTAは、rARUのそのより高い含量に起因して多かった。Pn14−rARUによって惹起される抗CDTA(194μg CDTA抗体/ml)、Pn14−rARU−rARUsuccによって惹起される抗CDTA(371μg CDTA抗体/ml)に比較しての相違は、顕著であった。
【0038】
3.9μgのrARUを含むSF−rARUは、437μgのCDTA抗体/ml(112.0μg Ab/注射されたμg rARU)は、SF−rARUsucc(34.9μg Ab/注射したμg rARUsucc)についての518μg CDTA抗体/mlに匹敵した。rARUsuccに対する特定の免疫原性活性は、SF結合体においてrARUのものよりも低かったが、2つの結合体によって惹起されるCDTA抗体のレベルの間には統計学的な差異はなかった(SF−rARUsuccについて437μg Ab/mlに対してSF−らRUについての242μg Ab/ml)。
【0039】
390μg CDTA抗体/mlを含むK1−rARUsuccは、そのrARU成分の匹敵する特異的免疫原性活性を有した(1μgのrARUsuccあたり48μg Ab/ml)
(実施例6:CDTA中和抗体)
その結合体の第三注射の後7日で得た個々の血清を、ヒト小腸上皮HT−29細胞に対するCDTAの細胞傷害性用量の約200倍のその中和について個々にアッセイした。その結合体で免疫したマウスからのすべての血清は、64以上の中和力価を有した。各結合体についての中和力価の幾何平均の範囲を表2に示す。
【0040】
【表2】

(実施例7:CDTAでの致死チャレンジからの保護(表3))
Hsd/ICRマウスに、SF−rARU、SF−rARUsuccまたはrARUを、上記実施例4に記載のように注射した。第三注射の後1週間で、そのマウスに、致死用量(150ng)のCDTAで腹腔内チャレンジした。結合体またはrARUのいずれかをワクチン接種したほぼすべてのマウスが保護された。注射されたrARUの量に基づいて、rARUおよびSF−rARUは、抗CDTAの類似のレベルを惹起した。浴されるように、SF−rARUsuccは、他の2つの免疫原よりもより低いレベルの抗CDTAを惹起したがレシピエントは比較的保護された。
【0041】
結合体誘導された抗体レベルは、ホルマリン不活化CDTAで惹起された、0.5mg/mlを含むアフィニティー精製された薬学的組成物ギ抗体の中和活性に近づくかまたは超過していた。
【0042】
【表3】

本発明を、直接の説明および実施例によって説明してきた。上記のように、実施例は、本発明の例示のみであり、そして本発明を何らの意味でも限定しないことが意図される。さらに、本発明に関連する当業者は、明細書および上記特許請求の範囲に鑑み、本発明の請求された局面と等価物が存在することを認識する。本発明者らは、請求された本発明の合理的範囲内にそれらの等価物が包含されることを意図する。
【0043】
(引用された文献)
【0044】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載されるような発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−83898(P2010−83898A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298925(P2009−298925)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2000−611685(P2000−611685)の分割
【原出願日】平成12年4月10日(2000.4.10)
【出願人】(509313120)インターセル ユーエスエー, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】