説明

Co−Fe合金微粒子およびその製造方法

【課題】飽和磁化の高いCo−Fe合金微粒子およびその製造方法を提供とする。
【解決手段】Coを45〜60質量%含有するCo−Fe合金微粒子であって、複数の多面体が、柱状、板状、塊状のうち少なくとも一つの形状に合体した粒子形状を呈している。Co−Fe合金微粒子の粒子表面は、連続した凹凸部を有している。連続した凹凸部は、複数の多面体の表面が連なることにより形成されている。凹凸部を構成する面間の角部には、磁束が集中しやすい。このため、磁気異方性を高くすることができ、飽和磁化を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波吸収体、磁気シールド、磁気誘導成形などに用いられるCo−Fe合金微粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、飽和磁化の高い磁性材料の開発が望まれている。例えば、パソコンや携帯電話などから発生する電磁波を吸収する部材として、ゴムや発泡体中に磁性体を混合したものがある。近年の高速大容量通信化に伴いその発生周波数帯がGHz領域に及んでおり、その対策として電磁波吸収性能が高い、すなわち飽和磁化が高い材料が利用されている。
【0003】
また、ゴムや発泡体の熱伝導性や電磁波シールド性を向上させる目的で、磁性材料の磁場配向性を利用した磁気誘導成形方法が提案されている。この方法の場合、磁性材料が添加された原料に磁場をかけることにより、磁性材料を移動させながら成形体を製造する。ここで、磁性材料の飽和磁化が高いほど、磁場に対する磁性材料の応答性が高くなる。このため、当該成形方法に飽和磁化の高い磁性材料を用いると、低い充填量で、比較的弱い磁場で成形体を製造することができる。したがって、成形体の製造コストを削減することができる。同様に、磁性流体においても、飽和磁化の高い磁性材料を用いると、磁界に対する応答性を高くすることができる。
【0004】
また、ハードディスクドライブの記録密度を向上させるためには、記録ヘッドの書き込み磁界を強くする必要がある。記録ヘッドは、コアとコイルとを備えている。コイルはコアの周囲に巻装されている。コイルに発生させた誘導磁界をコア内に収束させることにより、記録ヘッドは、書き込み磁界を発生させている。コア用に飽和磁化の高い磁性材料を用いると、書き込み磁界を強くすることができる。このように、様々な理由から、近年においては、飽和磁化の高い磁性材料の開発が望まれている。
【0005】
磁性材料の中でも、Co−Fe合金は、特に飽和磁化の高い合金として知られている。Co−Fe合金は、アトマイズ法や気相還元法により製造される。特許文献1には、Co−Fe合金微粒子をアトマイズ法により製造する方法が開示されている。同文献記載の製造方法によると、10μm程度までしか微粒子を小径化できない。また、磁気異方性を高めるため、粉砕工程により、アトマイズ法により製造したCo−Fe合金微粒子を、扁平化している。このため、製造コストが高い。また、加工による内部歪みが発生し、磁気特性が劣化するおそれがある。
【0006】
特許文献2には、Co−Fe合金微粒子を気相還元法により製造する方法が開示されている。特許文献1に記載の製造方法とは反対に、同文献記載の製造方法によると、1μm程度までしか微粒子を大径化できない。また、装置コストが高いため、大量生産に不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−276002号公報
【特許文献2】特開2003−147404号公報
【特許文献3】特開2000−087121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この点、特許文献3には、粒径が100nm以下の金属微粒子を、液相還元法により製造する方法が開示されている。液相還元法によると、金属微粒子の製造コストを削減することができる。また、装置コストを削減することができる。
【0009】
同文献には、金属塩を形成する金属元素として、Au、Ag、Pd、Cu、Ni、Co、Fe、Mnが列挙されている。しかしながら、同文献には、Co−Fe合金微粒子の製造方法や、製造されたCo−Fe合金微粒子の特徴が具体的に開示されていない。上述したように、近年においては飽和磁化の高い磁性材料の開発が望まれているおり、この要望はCo−Fe合金微粒子に対しても同様である。この点、特許文献3からは、Co−Fe合金微粒子の飽和磁化を向上させる技術に想到することは困難である。
【0010】
本発明のCo−Fe合金微粒子およびその製造方法は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、飽和磁化の高いCo−Fe合金微粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するため、本発明のCo−Fe合金微粒子は、複数の多面体が、柱状、板状、塊状のうち少なくとも一つの形状に合体した粒子形状を呈し、粒子表面が、複数の該多面体の表面が連なることにより形成される連続した凹凸部を有することを特徴とする(請求項1に対応)。
【0012】
従来は、主に、磁性材料を構成する元素の種類、配合量を最適化することにより、飽和磁化の向上が検討されてきた。これに対して、本発明のCo−Fe合金微粒子は、従来は着目されなかった粒子の形状に敢えて着目して、飽和磁化の向上を図るものである。
【0013】
本発明のCo−Fe合金微粒子は、あたかも複数の多面体が合体したかのような形状を呈している。Co−Fe合金微粒子の表面には、多面体の面形状が表出している。このため、Co−Fe合金微粒子の表面には、連続した凹凸部が形成されている。凹凸部を構成する面間の角部には、磁束が集中しやすい。このため、製造後のCo−Fe合金微粒子を扁平化することなく、磁気異方性を高くすることができ、飽和磁化を高くすることができる。したがって、本発明のCo−Fe合金微粒子は、一例として、高周波磁界に対応した電磁波吸収材として利用することができる。
【0014】
(2)上記課題を解決するため、本発明のCo−Fe合金微粒子の製造方法は、コバルト塩と鉄塩とを、アルコールと水とを含む溶媒に、溶解させることにより、溶液を調製する溶解工程と、該溶液に還元剤を添加することにより、Co−Fe合金微粒子を合成する還元工程と、を有するCo−Fe合金微粒子の製造方法であって、前記溶液全体に対する前記コバルト塩および前記鉄塩の濃度は、0.05mol/L以上2mol/L以下であり、前記溶媒全体に対する前記アルコールの濃度は、10容量%以上50容量%以下であることを特徴とする(請求項5に対応)。
【0015】
つまり、本発明のCo−Fe合金微粒子の製造方法は、液相還元法によりCo−Fe合金微粒子を製造するものである。Co−Fe合金微粒子の製造方法は、溶解工程と、還元工程とを有している。溶解工程においては、コバルト塩と鉄塩とを、アルコールと水とを含む溶媒に、溶解させることにより、溶液を調製する。還元工程においては、溶液に還元剤を添加することにより、Co−Fe合金微粒子を合成する。
【0016】
本発明のCo−Fe合金微粒子の製造方法によると、アトマイズ法によりCo−Fe合金微粒子を製造する場合と比較して粒子を小粒化でき、粒子の扁平化の必要がないため製造コストを削減することができる。また、本発明のCo−Fe合金微粒子の製造方法によると、気相還元法によりCo−Fe合金微粒子を製造する場合と比較して、装置コストを削減することができる。
【0017】
溶液における、コバルト塩および鉄塩の濃度(合計濃度)を0.05mol/L以上にしたのは、0.05mol/L未満の場合、粒子成長が充分に促進されず、粒径が小さくなり、飽和磁化が低下するからである。また、コバルト塩および鉄塩の濃度(合計濃度)を2mol/L以下にしたのは、2mol/L超過の場合、アルコール比率の高い溶媒に対して、コバルト塩および鉄塩が溶解しにくくなるからである。
【0018】
溶媒における、アルコールの濃度を10容量%以上にしたのは、10容量%未満の場合、コバルト塩および鉄塩の溶解度が大きくなり、粒子成長が充分に促進されず、粒径が小さくなり、飽和磁化が低下するからである。また、アルコールの濃度を50容量%以下にしたのは、50容量%超過の場合、コバルト塩および鉄塩が溶解しにくくなり、生産性が低下するからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、飽和磁化の高いCo−Fe合金微粒子およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1のCo−Fe合金微粒子のSEM写真である。
【図2】実施例2のCo−Fe合金微粒子のSEM写真である。
【図3】比較例1のCo−Fe合金微粒子のSEM写真である。
【図4】比較例2のNi−Fe合金粉体のSEM写真である。
【図5】比較例3のCo−Fe合金微粒子のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のCo−Fe合金微粒子およびその製造方法の実施の形態について説明する。なお、本発明のCo−Fe合金微粒子およびその製造方法の実施の形態は、以下に示す形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0022】
<Co−Fe合金微粒子>
Co−Fe合金微粒子の形状は、複数の多面体が、柱状、板状、塊状のうち少なくとも一つの形状に合体した形状を呈している。すなわち、粒子形状は、柱状、板状、塊状、柱状部分と板状部分とが合体した形状、柱状部分と塊状部分とが合体した形状、板状部分と塊状部分とが合体した形状、柱状部分と板状部分と塊状部分とが合体した形状を呈している。Co−Fe合金微粒子における、柱状部分、板状部分、塊状部分の配置数は、特に限定しない。例えば、Co−Fe合金微粒子は、複数の柱状部分が合体した形状、複数の柱状部分と複数の板状部分とが合体した形状などであってもよい。また、柱状部分、板状部分、塊状部分の配置は、二次元的でも、三次元的でもよい。Co−Fe合金微粒子の製造方法は特に限定しない。液相還元法によりCo−Fe合金微粒子を製造する場合、溶液中に生成した核を起点に、Co−Fe合金微粒子が成長する。このため、Co−Fe合金微粒子は、全体として、複数の多面体により形成された、花状、樹枝状、雪結晶状、葉脈状、ウニ状、金平糖状などの形状に成長しやすい。なお、Co−Fe合金微粒子の観察は、電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡 S−4800)により行うことができる。
【0023】
好ましくは、Co−Fe合金微粒子の全体を100質量%として、Coが45質量%以上60質量%以下含まれる方がよい。Coを45質量%以上にしたのは、45質量%未満の場合、Co−Fe合金微粒子が過度に微細化するからである。また、Co−Fe合金微粒子を構成する複数の多面体のうち、一部が球体化するからである。また、相対的にFe配合量が増加するため、酸化されやすくなり、飽和磁化が低下するからである。また、Coを60質量%以下にしたのは、60質量%超過の場合、相対的にFe配合量が減少するため、飽和磁化が低下するからである。また、高価なCoの配合量が増加するため、Co−Fe合金微粒子の製造コストが高くなるからである。より好ましくは、Co−Fe合金微粒子の全体を100質量%として、Coが49質量%以上51質量%以下含まれる構成とする方がよい。こうすると、より飽和磁化が高くなる。同様の理由から、さらに好ましくは、Co−Fe合金微粒子の全体を100質量%として、Coが50質量%含まれる構成とする方がよい。なお、Co−Fe合金微粒子の組成は、X線分析装置(例えば、堀場製作所社製エネルギー分散型X線分析装置 EMAX ENERGY EX−350)により行うことができる。
【0024】
好ましくは、Co−Fe合金微粒子の平均粒径が、100nm以上10μm以下である方がよい。ここで、平均粒径とは、粒度分布のメジアン径をいう。平均粒径を100nm以上にしたのは、100nm未満の場合、粒子が充分に成長せず飽和磁化が小さくなるからである。また、表面活性が高く酸化や凝集が起こりやすくなるからである。また、平均粒径を10μm以下にしたのは、10μm超過の場合、粒子の成長に時間がかかり、生産効率が悪いからである。また、成形体の薄膜化に不利だからである。なお、平均粒径の測定は、粒度分布測定装置(例えば、日機装社製マイクロトラック粒度分布測定装置 UPA−EX150型)により行うことができる。
【0025】
好ましくは、Co−Fe合金微粒子の飽和磁化が1.8T以上である方がよい。飽和磁化を1.8T以上にしたのは、1.8T未満の場合、Co−Fe合金微粒子の用途によっては、充分な磁気特性を発揮できないからである。なお、飽和磁化の測定は、理研電子社製直流磁化特性自動測定装置 BHU−30により行うことができる。
【0026】
また、本発明のCo−Fe合金微粒子は、Co、Fe以外の元素を含んでいてもよい。例えば、Al、Si、V、B、C、P、Ti、Cr、Mn、Ni、Cu、Mo、W、Nbなどの元素を、用途に応じて含んでいてもよい。
【0027】
Co−Fe合金微粒子の用途は特に限定しない。磁気誘導成形用の原料、磁性流体、電波吸収体、磁気シールド、ノイズフィルター、インダクタなどの電子回路部品などに用いてもよい。
【0028】
<Co−Fe合金微粒子の製造方法>
コバルト塩の種類は特に限定しない。水溶性であればよい。また、価数は二価でも三価でもよい。例えば、硫酸第一コバルト(CoSO)、硫酸第二コバルト(Co(SO)、塩化第一コバルト(CoCl)、塩化第二コバルト(CoCl)、硝酸第一コバルト(Co(NO)、硝酸第二コバルト(Co(NO)、酢酸第一コバルト(Co(CHCO)、酢酸第二コバルト(Co(CHCO)などを用いることができる。
【0029】
鉄塩の種類は特に限定しない。水溶性であればよい。また、価数は二価でも三価でもよい。例えば、硫酸第一鉄(FeSO)、硫酸第二鉄(Fe(SO)、塩化第一鉄(FeCl)、塩化第二鉄(FeCl)、硝酸第一鉄(Fe(NO)、硝酸第二鉄(Fe(NO)、酢酸第一鉄(Fe(CHCO)、酢酸第二鉄(Fe(CHCO)などを用いることができる。
【0030】
アルコールの種類は特に限定しない。水溶性であればよい。例えば、メタノール(CHO)、エタノール(CO)、プロパノール(CO)などを用いることができる。
【0031】
還元剤の種類は特に限定しない。溶液に対して還元性を発揮するものであればよい。例えば、ヒドラジン(N)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)などを用いることができる。
【0032】
還元剤の濃度は特に限定しない。一般的に、還元剤の濃度が高いほど金属のイオンの析出速度が速くなるため、粒径が大きくなる。したがって、還元剤の濃度により、Co−Fe合金微粒子の粒径を調整してもよい。
【0033】
還元剤としてヒドラジンを用いる場合、ヒドラジンの還元能力を確保するために、苛性アルカリを溶液に添加してもよい。例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH))などを用いることができる。
【0034】
還元剤としてヒドラジンを用いる場合、還元工程に要する時間は、0.5時間以上2時間以下とする方がよい。0.5時間以上にしたのは、0.5時間未満の場合、還元反応が完了しないおそれがあるからである。2時間以下にしたのは、2時間超過の場合、ヒドラジンの還元能力が低くなり、Co−Fe合金微粒子が酸化しやすくなるからである。より好ましくは、1時間程度にする方がよい。
【0035】
なお、Co−Fe合金微粒子の酸化を抑制するために、予めヒドラジンを溶液に過剰に添加しておいてもよい。この場合、未反応のヒドラジンが溶液中に残留するが、残留ヒドラジンはCo−Fe合金微粒子に悪影響を及ぼさない。
【0036】
還元時の溶液の温度は、40℃以上90℃以下にしてもよい。溶液の温度を40℃以上にしたのは、40℃未満の場合、還元反応の進行が遅くなるからである。溶液の温度を90℃以下にしたのは、90℃超過の場合、Co−Fe合金微粒子が酸化しやすくなるからである。
【0037】
また、溶液にpH調整剤を添加してもよい。pH調整剤としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、塩素等のハロゲン元素、硫黄、リン、ホウ素等の不純物元素を含まないアンモニアやカルボン酸アンモニウムが好ましい。また、還元後に、Co−Fe合金微粒子に対して、ろ過、洗浄、乾燥などを行ってもよい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明のCo−Fe合金微粒子およびその製造方法の実施例について説明する。なお、本明細書においては、複数の「微粒子」の集合体を「粉体」と定義する。
【0039】
<サンプルの製造方法、組成>
まず、各サンプルの組成、製造方法について説明する。なお、組成は、堀場製作所社製エネルギー分散型X線分析装置 EMAX ENERGY EX−350により測定した。
【0040】
[実施例1]
Co−Fe合金微粒子の製造方法は、溶解工程と、還元工程とを有している。溶解工程においては、まず、硫酸第一コバルト七水和物(CoSO・7HO)0.02molと硫酸第一鉄七水和物(FeSO・7HO)0.02molとを、エタノール50mL、水80mLに溶解させ、溶液を調製した。次に、当該溶液を撹拌しながら、溶液に5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を100mL添加した。それから、引き続き当該溶液を撹拌しながら、溶液の温度を60℃に調整した。
【0041】
還元工程においては、まず、当該溶液を撹拌しながら、溶液にヒドラジン一水和物(N・HO)を50g添加した。次に、当該溶液を撹拌しながら、60℃のまま1時間保持することにより、溶液中にCo−Fe合金粉体を生成させた。それから、当該溶液を室温まで冷却し、ブフナーロートを用いて、溶液を減圧ろ過した。続いて、ろ過後のCo−Fe合金粉体を純水を用いて洗浄した。最後に、洗浄後のCo−Fe合金粉体を、オーブンにより乾燥させた。このようにして、Co−Fe合金粉体、つまりCo−Fe合金微粒子を製造した。Co−Fe合金微粒子の組成は、Co49質量%、Fe51質量%だった。
【0042】
[実施例2]
実施例2と実施例1との相違点は、溶解工程における、硫酸第一コバルト七水和物、硫酸第一鉄七水和物の溶解量だけである。実施例2においては、硫酸第一コバルト七水和物の溶解量を0.024molとした。また、硫酸第一鉄七水和物の溶解量を0.016molとした。Co−Fe合金微粒子の組成は、Co61質量%、Fe39質量%だった。
【0043】
[比較例1]
比較例1と実施例1との相違点は、溶解工程における、硫酸第一コバルト七水和物、硫酸第一鉄七水和物の溶解量だけである。比較例1においては、硫酸第一コバルト七水和物の溶解量を0.016molとした。また、硫酸第一鉄七水和物の溶解量を0.024molとした。Co−Fe合金微粒子の組成は、Co34質量%、Fe56質量%、O10質量%だった。
【0044】
[比較例2]
比較例2と実施例1との相違点は、硫酸第一コバルト七水和物の代わりに塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO)を、硫酸第一鉄七水和物の代わりに塩化第一鉄四水和物(FeCl・4HO)を、それぞれ用いた点である。つまり、比較例2は、Co−Fe合金微粒子ではなく、Ni−Fe合金微粒子である。比較例2においては、塩化ニッケル六水和物の溶解量を0.02molとした。また、塩化第一鉄四水和物の溶解量を0.02molとした。Ni−Fe合金微粒子の組成は、Ni44質量%、Fe45質量%、O11質量%だった。
【0045】
[比較例3]
比較例3は、液相還元法ではなく、水アトマイズ法により製造された市販のCo−Fe合金微粒子(大同特殊鋼社製、DAP MKV49)である。Co−Fe合金微粒子の組成は、Co49質量%、Fe49質量%、V2質量%だった。
【0046】
<サンプルの特性>
次に、各サンプルの特性について説明する。
【0047】
[平均粒径]
平均粒径の測定は、日機装社製マイクロトラック粒度分布測定装置 UPA−EX150型により行った。実施例1の平均粒径は、5.3μmだった。実施例2の平均粒径は、4.2μmだった。比較例1の平均粒径は、11.3μmだった。比較例2の平均粒径は、0.2μmだった。比較例3の平均粒径は、10μmだった。このことから、実施例によると、平均粒径が数ミクロンオーダー(1μm以上10μm未満)のCo−Fe合金微粒子を製造できることが判った。
【0048】
[飽和磁化]
飽和磁化の測定は、理研電子社製直流磁化特性自動測定装置 BHU−30により行った。実施例1の飽和磁化は、2.2Tだった。実施例2の飽和磁化は、1.8Tだった。比較例1の飽和磁化は、1.2Tだった。比較例2の飽和磁化は、1.1Tだった。比較例3の飽和磁化は、1.7Tだった。このことから、実施例によると、1.8T以上の飽和磁化を有するCo−Fe合金微粒子を製造できることが判った。
【0049】
[表面観察]
表面観察は、日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡 S−4800を用いて行った。図1に、実施例1のCo−Fe合金微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。図2に、実施例2のCo−Fe合金微粒子のSEM写真を示す。図3に、比較例1のCo−Fe合金微粒子のSEM写真を示す。図4に、比較例2のNi−Fe合金粉体のSEM写真を示す。図5に、比較例3のCo−Fe合金微粒子のSEM写真を示す。
【0050】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1のCo−Fe合金微粒子は、多数の多面体が合体して形成される複数の柱状部分が、合体して形成されている。SEM写真における、一つの多面体の最大長部分の長さは、0.5〜2μm程度である。また、多数の多面体の多くは、六面体である。
【0051】
Co−Fe合金微粒子は、中心から放射状に複数の花弁部が延びる、花状を呈している。花弁部は、あたかもスギの樹形のような、尖頭状を呈している。Co−Fe合金微粒子は、全体として角張った形状を呈している。また、Co−Fe合金微粒子の表面には、多数の多面体の表面が連なることにより、連続した凹凸部が形成されている。
【0052】
(実施例2)
図2に示すように、実施例2のCo−Fe合金微粒子は、多数の多面体が合体して形成される複数の柱状部分と、多数の多面体が合体して形成される複数の板状部分とが、合体して形成されている。板状部分は、あたかも「ひだ」のように、湾曲しながら連なっている。SEM写真における、一つの多面体の最大長部分の長さは、0.5〜2μm程度である。また、多数の多面体の多くは、六面体である。
【0053】
Co−Fe合金微粒子は、中心から放射状に複数の花弁部が延びる、花状を呈している。花弁部は、尖頭状や湾曲板状を呈している。Co−Fe合金微粒子は、全体として角張った形状を呈している。また、Co−Fe合金微粒子の表面には、多数の多面体の表面が連なることにより、連続した凹凸部が形成されている。
【0054】
(比較例1)
図3に示すように、比較例1のCo−Fe合金微粒子は、多数の多面体および多数の球体が合体して形成される複数の柱状部分と、多数の多面体および多数の球体が合体して形成される複数の板状部分とが、合体して形成されている。すなわち、実施例2と比較すると、多面体の他に、多面体よりも小さな球体が含まれている。SEM写真における、一つの多面体の最大長部分の長さは、0.5〜2μm程度である。また、一つの球体の直径は、0.5μm以下である。
【0055】
(比較例2)
図4に示すように、比較例2のNi−Fe合金微粒子は、球状を呈している。
【0056】
(比較例3)
図5に示すように、比較例3のCo−Fe合金微粒子は、球状を呈している。
【0057】
(まとめ)
表面観察の結果、実施例によると、多数の多面体(主に六面体)が合体した、全体として花状のCo−Fe合金微粒子が得られることが判った。また、得られたCo−Fe合金微粒子の表面には、多数の多面体の表面が連なることにより、連続した凹凸部が形成されることが判った。なお、SEM写真によると、比較例1で確認されたような微小な球体は、実施例では確認できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の多面体が、柱状、板状、塊状のうち少なくとも一つの形状に合体した粒子形状を呈し、
粒子表面が、複数の該多面体の表面が連なることにより形成される連続した凹凸部を有するCo−Fe合金微粒子。
【請求項2】
粒子全体を100質量%として、Coが45質量%以上60質量%以下含まれる請求項1に記載のCo−Fe合金微粒子。
【請求項3】
平均粒径が100nm以上10μm以下である請求項1または請求項2に記載のCo−Fe合金微粒子。
【請求項4】
飽和磁化が1.8T以上である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のCo−Fe合金微粒子。
【請求項5】
コバルト塩と鉄塩とを、アルコールと水とを含む溶媒に、溶解させることにより、溶液を調製する溶解工程と、
該溶液に還元剤を添加することにより、Co−Fe合金微粒子を合成する還元工程と、
を有するCo−Fe合金微粒子の製造方法であって、
前記溶液全体に対する前記コバルト塩および前記鉄塩の濃度は、0.05mol/L以上2mol/L以下であり、
前記溶媒全体に対する前記アルコールの濃度は、10容量%以上50容量%以下であることを特徴とするCo−Fe合金微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−214114(P2011−214114A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85130(P2010−85130)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】