説明

Cripto−3の検出のための組成物および方法

本発明は少なくとも部分的には、偽遺伝子TDGF3(Cripto−3)が細胞において発現されること、そして特にTDGF3の過剰発現は細胞の形質転換に関連すること、例えばTDGF3は癌細胞系統及び腫瘍組織由来細胞において過剰発現されることを発見したことに基づいている。従って、本発明は試料中のTDGF3ポリヌクレオチド又はポリペプチドの存在を検出するための組成物、キット及び方法を提供する。本発明は更に細胞が形質転換されたかどうかを試験するため、並びに、患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験するための組成物、キット及び方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、「compositions and Methods for the Detection of Cripto−3」と題された2006年4月28日に出願された米国仮特許出願第60/795,807号の利益を請求する。上記の仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
Cripto−1(TDGF1によりコードされる)は形質転換成長因子アルファ及び表皮成長因子とのどう養成を有する1ドメインを含有する細胞表面関連蛋白である。EGF−CFCファミリー蛋白は早期の発達及び癌の形成において重要な役割を果たしている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4による研究を参照)。Criptoにおける機能突然変異の損失はヒトにおける全前脳症、例えば前脳欠損及び発達遅延に関連している(de la Cruz等、2002)。正常成人組織におけるCripto蛋白の発現は低値であり、正常成人組織においてこの蛋白に関する機能が存在するかどうかは不明である。1つの発現は乳腺においておこり、この場合Criptoの発現は腺管上皮細胞分化において役割を果たしていると疑われる(非特許文献3)。しかしながら、Cripto蛋白は多くのヒトの固形腫瘍において過剰発現される(Adkins等、2003;Ciardiello等、1991b;Shen 2003)。例えば、抗Cripto抗体を用いた免疫組織化学的分析によれば、ヒト乳腺腫瘍の80%まで並びに結腸及び肺の腫瘍のかなりの割合におけるCripto過剰発現が分かっている。Cripto過剰発現は又腫瘍形成性でもある(SunY 2005)。更に又Criptoの発現は正常マウス乳腺上皮細胞系統の形質転換をもたらすことが分かっている(Ciardiello等、1991a)。数種の最近の報告によればモノクローナル抗体によるか、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドによるCriptoの抑制はインビボにおける癌細胞の成長を抑制している(Adkins等、2003;Normanno等、2004b;Xing等、2004)。
【0003】
Criptoは多くの癌細胞系統及び中においてアップレギュレートされること、及びCriptoの発現は腫瘍形成性であることは明確であるが、Cripto発現がどのようにして正常及び癌組織でアップレギュレートされるかはそれほど明確ではない。更に又、どれほど多くの遺伝子が実際にCripto蛋白をコードしているかも明らかではない。ヒトゲノムにおいてはTDGF1〜TDGF7と称される少なくとも7種のCripto遺伝子及び偽遺伝子が存在する。TDGF1は染色体3p23−21領域上に位置しており、Cripto蛋白に関する唯一の構造遺伝子であると広範にとらえられている(表1)。6偽遺伝子のうち、X染色体(Xq28)上のTDGF3は公開されているCripto−1蛋白レファレンス配列と比較して6つの異なるアミノ酸を有する予測された蛋白(Cripto−3)をコードする未損傷のオープンリーディングフレームを有している(Scognamiglio B 1999)(図1A;配列番号1)。この遺伝子は無イントロンであり、進化の途中でヒトゲノム内へのTDGF1cDNAの挿入から誘導されたと考えられ、そして本発明以前においては、発現されないと考えられていた。従って、偽遺伝子TDGF3の潜在的発現、及び、更には、TDGF3発現と癌のような増殖性障害の発症又は存在との間に存在するかもしれない何らかの相関を調べることが当該分野で必要とされていた。
【非特許文献1】Gritsman K,Zhang J,Cheng S,Heckscher E,Talbot WS,Schier AF (1999)The EGF−CFC protein one−eyed pinhead is essential for nodal signaling.Cell 97: 121−32
【非特許文献2】Minchiotti G,Manco G,Parisi S,Lago CT,Rosa F, Persico MG (2001) Structure−function analysis of the EGF−CFC family member Cripto identifies residues essential for nodal signalling. Development 128:4501−10
【非特許文献3】Saloman DS,Bianco C,Ebert AD,Khan NI,De Santis M,Normanno N, Wechselberger C,Seno M,Williams K, Sanicola M, Foley S, Gullick WJ,Persico G(2000)The EGF−CFC family: novel epidermal growth factor−related proteins in development and cancer.Endocr Relat Cancer 7:199−226
【非特許文献4】Strizzi L,Bianco C,Normanno N,Salomon D(2005) Cripto−1:a multifunctional modulator during embryogenesis and oncogenesis.Oncogene.2005 24: 5731−41
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は少なくとも部分的には、予測される偽遺伝子TDGF3がヒトの細胞において発現される機能的に無イントロンの遺伝子であること、そして更には、TDGF3の過剰発現は細胞の形質転換に関連すること、例えば(TDGF3は癌細胞および腫瘍組織由来細胞において過剰発現されるという発見に基づいている。従って、本発明は試料中のマーカー、例えばTDGF3及び/又はTDGF1、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの存在を特異的に検出するための組成物、キットおよび方法に関する。これらの組成物、キットおよび方法は腫瘍の表現型、例えば腫瘍がTDGF1又はTDGF3発現腫瘍であるかどうかを調べる場合に有用である。これらの組成物、キットおよび方法は細胞が形質転換されるかどうかを試験するため、例えば癌を診断するため、並びに患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験する場合に有用である。従って、本発明は更に中のCripto発現表現型を測定するための組成物、キットおよび方法に関する。本発明は更に細胞が形質転換されるかどうかを試験するための組成物、キットおよび方法に関する。本発明は更に患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験するための組成物、キットおよび方法に関する。
【0005】
従って、本発明の1つの特徴は、試料中のTDGF3ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、方法が下記工程:
a)転写されたTDGF3ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子に試料を接触させること、ここで転写されたTDGF3ポリヌクレオチドはTDGF3遺伝子のコーディング領域を含む工程;及び、
b)試料中のポリヌクレオチドに核酸分子が結合するかどうか調べることにより試料中のTDGF3ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出する工程;
を含む上記方法に関する。
【0006】
1つの実施形態において、転写されたTDGF3ポリヌクレオチドはmRNAである。
【0007】
1つの実施形態において、転写されたTDGF3ポリヌクレオチドがcDNAである。
【0008】
1つの実施形態において、方法は転写されたTDGF3ポリヌクレオチドを核酸分子で増幅させる工程をさらに含む。
【0009】
1つの実施形態において、増幅工程はポリメラーゼ連鎖反応を含む。
【0010】
1つの実施形態において、転写されたTDGF3ポリヌクレオチドへの核酸分子の結合が増幅されたTDGF3ポリヌクレオチドを検出することにより測定される。
【0011】
1つの実施形態において、転写されたポリヌクレオチドは、転写されたTDGF3ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする少なくとも一つの核酸分子を用いて増幅される。
【0012】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子はTDGF3ポリヌクレオチドを増幅しない。
【0013】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子は転写されたTDGF3ポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズし、その部分はV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするTDGF3コーディング領域内のヌクレオチドを含む。
【0014】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子は表2及び表3に記載する配列よりなる群から選択される配列を含む。
【0015】
1つの特徴において、本発明は、試料中のTDGF3ポリペプチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、方法が下記工程:
a)TDGF3ポリペプチドに選択的に結合する試薬に試料を接触させる工程;及び、
b)試料中のポリペプチドに試薬が結合するかどうか調べることにより試料中のTDGF3ポリペプチド又はその部分の存在を検出する工程;
を含む上記方法に関する。
【0016】
1つの実施形態において、試薬は抗体、抗体誘導体及び抗体フラグメントよりなる群から選択される。
【0017】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはTDGF3ポリペプチドに結合し、そしてTDGF1ポリペプチドには結合しない。
【0018】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはTDGF3ポリペプチドの細胞外部分に含まれるエピトープに結合する。
【0019】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸を含むエピトープに結合する。
【0020】
1つの実施形態において、患者の試料は腫瘍組織試料を含む。
【0021】
1つの実施形態において、腫瘍は乳腺腫瘍、結腸腫瘍および肺腫瘍よりなる群から選択される。
【0022】
1つの実施形態において、患者の試料は体液である。
【0023】
1つの実施形態において、体液は血液、リンパ、腹水(ascetic fluid)、婦人科学的体液(gynecological fluid)、嚢胞液および尿よりなる群から選択される。
【0024】
別の特徴において、本発明は試料中のTDGF3ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、方法は下記工程:
a)転写されたTDGF3ポリヌクレオチドの一部分に選択的にハイブリダイズする核酸分子に試料を接触させる工程、その部分はV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするTDGF3コーディング領域内のヌクレオチドを含む工程;
b)転写されたTDGF3ポリヌクレオチド又はその部分をポリメラーゼ連鎖反応により核酸分子で増幅する工程;及び、
b)増幅されたTDGF3ポリヌクレオチドを検出することにより、試料中のTDGF3ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出する工程;
を含む上記方法に関する。
【0025】
別の特徴において、本発明はTDGF3ポリヌクレオチド又はその部分の試料中の存在を検出するためのキットであって、キットはTDGF3転写ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子を含む上記キットに関する。
【0026】
別の特徴において、本発明はTDGF3ポリペプチド又はその部分の試料中の存在を検出するためのキットであって、キットは抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントを含み、ここで抗体又はそのフラグメントはTDGF3ポリペプチド又はその部分に特異的に結合する上記キットに関する。
【0027】
更に別の特徴において、本発明は、下記項目:
a)試験細胞中のTDGF3遺伝子の発現のレベル;及び、
b)対照非形質転換細胞中のTDGF3の発現のレベル;
を比較することを含む、細胞が形質転換されているかどうかを試験する方法であって、
ここで対照非形質転換細胞中のレベルと比較して、試験細胞中のTDGF3遺伝子の発現のより高いレベルは、試験細胞が形質転換されていることを示す上記方法に関する。
【0028】
1つの実施形態において、試験細胞中及び対照細胞中のTDGF3遺伝子の発現のレベルは、転写されたポリヌクレオチド又はその部分の試験細胞中及び対照細胞中の存在を検出することにより試験され、ここで、転写されたポリヌクレオチドはTDGF3遺伝子のコーディング領域を含む。
【0029】
1つの実施形態において、転写されたポリヌクレオチドはmRNAである。
【0030】
1つの実施形態において、転写されたポリヌクレオチドはcDNAである。
【0031】
1つの実施形態において、検出の工程は更に転写されたポリヌクレオチドを検出する前に転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含む。
【0032】
1つの実施形態において、増幅工程はポリメラーゼ連鎖反応を含む。
【0033】
1つの実施形態において、転写されたポリヌクレオチドはTDGF3コーディング領域に選択的にハイブリダイズする少なくとも一つの核酸分子を用いて増幅される。
【0034】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子はTDGF1ポリヌクレオチドを増幅しない。
【0035】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子はV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするヌクレオチドにわたるTDGF3コーディング領域に相当する転写されたポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズする。
【0036】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子は表2及び表3に記載する配列の群から選択される配列を含む。
【0037】
1つの実施形態において、試験細胞中及び対照細胞中のTDGF3遺伝子の発現のレベルはTDGF3遺伝子によりコードされる蛋白の試験細胞中及び対照細胞中の存在を蛋白に特異的に結合する試薬を用いて検出することにより試験する。
【0038】
1つの実施形態において、試薬は抗体、抗体誘導体及び抗体フラグメントよりなる群から選択される。
【0039】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはTDGF3ポリペプチドに結合し、そしてTDGF1ポリペプチドには結合しない。
【0040】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはTDGF3ポリペプチドの細胞外部分に含まれるエピトープに結合する。
【0041】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択される1つ以上のアミノ酸を含むエピトープに結合する。
【0042】
さらに別の特徴において、本発明は形質転換細胞の試料中の存在を検出するためのキットであって、キットは抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントを含み、ここで抗体又はそのフラグメントはTDGF3蛋白に特異的に結合する上記キットに関する。
【0043】
別の特徴において、本発明は形質転換細胞の試料中の存在を検出するためのキットであって、キットはTDGF3転写ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子を含む上記キットに関する。
【0044】
別の特徴において、本発明は患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験する方法であって、方法は下記項目:
a)患者試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベル;及び、
b)対照非癌試料中のTDGF3の発現のレベル;
を比較する工程を含み、
ここで対照非癌試料中と比較して、患者試料中のTDGF3遺伝子の発現のより高いレベルは、患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であることを示す上記方法に関する。
【0045】
別の特徴において、試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルは転写されたポリヌクレオチド又はその部分の試料中の存在を検出することにより試験され、ここで転写されたポリヌクレオチドはTDGF3遺伝子のコーディング領域を含む。
【0046】
1つの実施形態において、転写されたポリヌクレオチドはmRNAである。
【0047】
1つの実施形態において、転写されたポリヌクレオチドはcDNAである。
【0048】
1つの実施形態において、検出の工程は更に転写されたポリヌクレオチドを検出する前に転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含む。
【0049】
1つの実施形態において、増幅工程はポリメラーゼ連鎖反応を含む。
【0050】
1つの実施形態において、転写されたポリヌクレオチドはTDGF3コーディング領域に選択的にハイブリダイズする少なくとも一つの核酸分子を用いて増幅される。
【0051】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子はTDGF1ポリヌクレオチドを増幅しない。
【0052】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子はV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするヌクレオチドにわたるTDGF3コーディング領域に相当する転写されたポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズする。
【0053】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子は表2及び表3に記載する配列の群から選択される配列を含む。
【0054】
1つの実施形態において、試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、選択的に転写されたTDGF3ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列にハイブリダイズする、又は転写されたTDGF3ポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズする核酸プローブを用いて転写されたポリヌクレオチドの試料中の存在を検出することにより試験される。
【0055】
1つの実施形態において、試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルをTDGF3遺伝子によりコードされる蛋白の試料中の存在を蛋白に特異的に結合する試薬を用いて検出することにより試験する。
【0056】
1つの実施形態において、試薬は抗体、抗体誘導体及び抗体フラグメントよりなる群から選択される。
【0057】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはTDGF3ポリペプチドに結合し、そしてTDGF1ポリペプチドには結合しない。
【0058】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはTDGF3ポリペプチドの細胞外部分に含まれるエピトープに結合する。
【0059】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択される1つ以上のアミノ酸を含むエピトープに結合する。
【0060】
1つの実施形態において、患者の試料は腫瘍組織試料を含む。
【0061】
1つの実施形態において、腫瘍は乳腺腫瘍、結腸腫瘍および肺腫瘍よりなる群から選択される。
【0062】
1つの実施形態において、患者の試料は体液である。
【0063】
1つの実施形態において、体液は血液、リンパ、腹水、婦人科学的体液、嚢胞液および尿よりなる群から選択される。
【0064】
1つの実施形態において、患者試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルは対照非癌試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルと少なくとも約2倍異なる。
【0065】
1つの実施形態において、患者試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルは対照非癌試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルと少なくとも約5倍異なる。
【0066】
1つの実施形態において、TDGF3遺伝子は対照非癌試料中では発現されない。
【0067】
別の特徴において、本発明は患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験するためのキットであって、キットは抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントを含み、ここで抗体又はそのフラグメントはTDGF3蛋白に特異的に結合する上記キットに関する。
【0068】
別の特徴において、本発明は患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験するためのキットであって、キットはTDGF3転写ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子を含む上記キットに関する。
【0069】
別の特徴において、本発明は細胞における細胞形質転換を抑制するための組成物を選択する方法であって、方法は下記工程:
a)細胞を含有する試料を得る工程、及び、
b)試験組成物複数の存在下に試料のアリコートを別個に維持する工程;
c)アリコートの各々におけるTDGF3遺伝子の発現を比較する工程;
d)他の試験組成物と比較して、試験組成物を含有するアリコートにおいてより低いレベルのTDGF3遺伝子発現を誘導する試験組成物のうちの1つを選択する工程;
を含む上記方法に関する。
【0070】
別の特徴において、本発明は試験化合物の発癌潜在性を試験する方法であって、方法は下記工程:
a)試験化合物の存在下及び非存在下に哺乳類細胞の別個のアリコートを維持する工程;及び、
c)アリコートの各々におけるTDGF3遺伝子の発現を比較する工程;
を含み、
d)ここで試験化合物非存在下に維持されたアリコートと比較して、試験化合物存在下に維持されたアリコート中のTDGF3遺伝子の発現のより高いレベルは、試験化合物は発癌潜在性を保有していることを示す、方法に関する。
【0071】
別の特徴において、本発明は試料中のTDGF3ポリペプチド又はその部分の存在を特異的に検出するために有用な単離されたモノクローナル抗体を作成する方法であって、方法は下記工程:
TDGF3又はその部分を単離する工程;
単離されたポリペプチドを用いて哺乳類を免疫化する工程;
免疫化された哺乳類から脾細胞を単離する工程;
単離された脾細胞を不朽化細胞系統と融合させてハイブリドーマを形成する工程と;及び、
TDGF3ポリペプチドに特異的に結合する抗体の産生のために個々のハイブリドーマをスクリーニングする工程;及び、
ハイブリドーマにより産生された抗体を単離することにより試料中のTDGF3ポリペプチド又はその部分の存在を特異的に検出するために有用なモノクローナル抗体を単離する工程;
を含む上記方法に関する。
【0072】
別の特徴において、本発明は本明細書の方法を用いながら製造されるモノクローナル抗体に関する。
【0073】
1つの特徴において、本発明は試料中のTDGF1ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、方法は下記工程:
a)転写されたTDGF1ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子に試料を接触させること、ここで転写されたTDGF3ポリヌクレオチドはTDGF1遺伝子のコーディング領域を含む工程;及び、
b)試料中のポリヌクレオチドに核酸分子は結合するかどうか調べることにより試料中のTDGF1ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出する工程;
を含む上記方法に関する。
【0074】
1つの実施形態において、転写されたTDGF1ポリヌクレオチドはmRNAである。
【0075】
1つの実施形態において、転写されたTDGF1ポリヌクレオチドはcDNAである。
【0076】
1つの実施形態において、転写されたTDGF1ポリヌクレオチドを核酸分子で増幅させる工程をさらに含む。
【0077】
1つの実施形態において、増幅工程はポリメラーゼ連鎖反応を含む。
【0078】
1つの実施形態において、転写されたTDGF1ポリヌクレオチドへの核酸分子の結合は増幅されたTDGF1ポリヌクレオチドを検出することにより測定される。
【0079】
1つの実施形態において、転写されたポリヌクレオチドは、転写されたTDGF1ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする少なくとも一つの核酸分子を用いて増幅される。
【0080】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子はTDGF3ポリヌクレオチドを増幅しない。
【0081】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子は転写されたTDGF1ポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズし、その部分はA7、P68、G92、V178、V22及びY43よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするTDGF3コーディング領域内のヌクレオチドを含む。
【0082】
1つの実施形態において、少なくとも一つの核酸分子は表2及び表3に記載する配列よりなる群から選択される配列を含む。
【0083】
1つの特徴において、本発明は試料中のTDGF1ポリペプチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、方法は下記工程:
a)TDGF3ポリペプチドに選択的に結合する試薬に試料を接触させること;及び、
b)試料中のポリペプチドに試薬は結合するかどうか調べることにより試料中のTDGF3ポリペプチド又はその部分の存在を検出すること;
を含む上記方法に関する。
【0084】
1つの実施形態において、試薬は抗体、抗体誘導体及び抗体フラグメントよりなる群から選択される。
【0085】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはTDGF3ポリペプチドに結合し、そしてTDGF1ポリペプチドには結合しない。
【0086】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはTDGF3ポリペプチドの細胞外部分に含まれるエピトープに結合する。
【0087】
1つの実施形態において、抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントはV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸を含むエピトープに結合する。
【0088】
1つの実施形態において、患者の試料は腫瘍組織試料を含む。
【0089】
1つの実施形態において、腫瘍は乳腺腫瘍、結腸腫瘍および肺腫瘍よりなる群から選択される。
【0090】
1つの実施形態において、患者の試料は体液である。
【0091】
1つの実施形態において、体液は血液、リンパ、腹水、婦人科学的体液、嚢胞液および尿よりなる群から選択される。
【0092】
1つの特徴において、本発明は試料中のTDGF1ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、方法は下記工程:
a)転写されたTDGF1ポリヌクレオチドの一部分に選択的にハイブリダイズする核酸分子に試料を接触させること、その部分はA7、P68、G92、V178、V22及びY43よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするTDGF1コーディング領域内のヌクレオチドを含む工程;
b)転写されたTDGF1ポリヌクレオチド又はその部分をポリメラーゼ連鎖反応により核酸分子で増幅する工程;及び、
b)増幅されたTDGF1ポリヌクレオチドを検出することにより、試料中のTDGF1ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出する工程;
を含む上記方法に関する。
【0093】
1つの特徴において、本発明はTDGF1ポリヌクレオチド又はその部分の試料中の存在を検出するためのキットであって、キットはTDGF1転写ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子を含む上記キットに関する。
【0094】
1つの特徴において、本発明はTDGF1ポリペプチド又はその部分の試料中の存在を検出するためのキットであって、キットは抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントを含み、ここで抗体又はそのフラグメントはTDGF1ポリペプチド又はその部分に特異的に結合する上記キットに関する。
【0095】
別の特徴において、本発明はTDGF1ポリヌクレオチドを特異的に検出するための単離された核酸分子であって、ここで核酸分子は表2及び表3に記載する配列の群から選択される上記核酸分子に関する。
【0096】
別の特徴において、本発明はTDGF3ポリヌクレオチドを特異的に検出するための単離された核酸分子であって、ここで核酸分子は表2及び表3に記載する配列の群から選択される上記核酸分子に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0097】
(発明の詳細な説明)
ヒトゲノムにはTDGF1〜TDGF7と称される少なくとも7種のCRIPTO遺伝子及び偽遺伝子が存在する。TDGF1は染色体3p23−21領域上に位置し、そして本発明以前においては、Cripto蛋白に関する唯一の構造遺伝子であると広範に考えられていた(表1)。
【0098】
【表1】

6種の推定偽遺伝子のうち、X染色体(Xq28)上のTDGF3は公開されているCripto−1蛋白レファレンス配列と比較して6つの異なるアミノ酸を有する予測された蛋白(Cripto−3)をコードする未損傷のオープンリーディングフレームを有している(ScognamiglioB1999)(図1A;配列番号1)。この遺伝子は無イントロンであり、進化の途中でヒトゲノム内へのTDGF1cDNAの挿入から誘導されたと考えられる。
【0099】
本発明は、少なくとも部分的には、多数の癌組織及び細胞系統に由来するCriptocDNA単離体の大多数がTDGF1(Cripto−1)遺伝子ではなくTDGF3(Cripto−3)遺伝子から誘導されていたという意外な発見に基づいている。TDGF1及びTDGF3の遺伝子の両方とも多くのヒト正常及び癌組織において転写及び翻訳されている。Cripto発現組織試料を検査した場合、両方の遺伝子とも僅か少数の例においては同様のレベルで発現されたが、大部分の例においてTDGF1又はTDGF3の何れかが優先的に発現されている。特に本発明はTDGF1は一部の正常組織で発現される場合があるが、大部分のCripto発現腫瘍においてはTDGF1ではなくTDGF3が過剰発現されるという発見に基づいている。
【0100】
従って、試料中の本発明のマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1の存在を、例えば試料中のマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1ポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現を特異的に検出することにより検出するための組成物、キット及び方法が本明細書において提供される。これらの組成物、キット及び方法は腫瘍の表現型、例えば腫瘍がCripto−1又はCripto−3発現腫瘍であるかどうかを調べるために有用である。細胞が形質転換されるかどうかを試験するための方法も本明細書において提供される。これらの方法では細胞におけるTDGF3遺伝子の発現のレベルを対照非形質転換細胞におけるTDGF3遺伝子発現レベルに比較する。更に又患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験するための方法も提供される。これらの方法では患者試料におけるTDGF3遺伝子の発現のレベルを対照非癌試料におけるTDGF3遺伝子発現レベルに比較する。
【0101】
本発明の種々の特徴を以下のサブセクションにおいて更に詳述する。
【0102】
I.定義
本明細書においては、以下の用語の各は本セクションにおけるそれに関連する意味を有する。
【0103】
単数表記の文法的目的語は本明細書においては、1つ又は1つより多くを指すために用いる。例えば、「要素」とは1つの要素又は1つより多い要素を指す。
【0104】
本明細書においては、「マーカー」という用語は細胞の形質転換又は増殖性疾患、例えば癌の発症(維持、進行、血管形成及び/又は転移を包含)に関与していると考えられているマーカー、例えばCripto−3(TDGF3)及び/又はCripto−1(TDGF1)を包含する。「マーカー」は細胞が形質転換されるかどうかを試験する場合に有用なマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1を包含する。マーカーは患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験する場合に有用なマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1を包含する。「TDGF3」及び「Cripto−3」という用語は本明細書においては互換的に使用する。「TDGF1」及び「Cripto−1」という用語は本明細書においては互換的に使用する。
【0105】
本発明のマーカーは又増殖性疾患(例えば癌)の診断、例えば治療の前、最中、又は後における増殖性疾患の過剰又は過少な活動性、発生、発現、生育、後退、再発又は耐性の診断において有用である。本発明のマーカーは更に、腫瘍の等級、腫瘍の予後、および腫瘍の治療応答の診断のために有用である場合がある。マーカーの予測機能は例えば(1)ヒト増殖性疾患、例えば癌における過剰発現又は過少発現(例えばISH、ノーザンブロット、又はqPCRによる)、増大又は低下した蛋白レベル(例えばIHCによる)、又は増大又は低下した活性(例えばマーカーが関与する経路のモジュレーションにより測定)(例えばヒト増殖性疾患、例えば癌の約2%、3%、5%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、20%、25%、50%以上における)(2)生物学的試料、例えば増殖性疾患、例えば癌にり患した対象(例えばヒト対象)に由来する組織、細胞又は生物学的流体を含む試料中のその存在又は非存在、又は(3)増殖性疾患、例えば癌を有する患者の臨床サブセット(例えば特定の治療に応答性であるもの、又は耐性を発生させているもの)におけるその存在又は非存在により確認してよい。
【0106】
「マーカー核酸」とは例えばCripto−3及び/又はCripto−1のような本発明のマーカーによりコードされる、又はそれに相当する核酸(例えばDNA、mRNA、cDNA)である。例えばそのようなマーカー核酸分子はCripto−3遺伝子の核酸配列の全体又は一部の配列又はそのような配列の相補又はハイブリダイズフラグメントを含むDNA(例えばゲノムDNA又はcDNA)を包含する。マーカー核酸分子は又Cripto−3遺伝子の核酸配列の全体又は一部の配列又はそのような配列の相補対を含む例えばmRNAのようなルナを包含し、この場合すべてのチミジン残基はウリジン残基で置き換えられている。
【0107】
「マーカー蛋白」又は「マーカーポリペプチド」とは、例えばCripto−3及び/又はCripto−1のような本発明のマーカーによりコードされる、又はそれに相当する蛋白である。マーカー蛋白はCripto−3遺伝子のポリヌクレオチド配列によりコードされる蛋白の全アミノ酸配列を含む。「蛋白」及び「ポリペプチド」という用語は本明細書においては、互換的に使用する。
【0108】
マーカーの本明細書において互換的に使用する「改変された量」又は「モジュレートされた量」又はマーカーの本明細書において互換的に使用する「改変されたレベル」又は「モジュレートされたレベル」という用語は、試料、例えば増殖性疾患(例えば癌)に罹患した対象に由来する試料中のマーカー遺伝子の発現レベルが、対照試料(例えば正常、非癌組織、例えば隣接する正常組織、又は増殖性疾患、例えば癌に罹患していない健常者対象由来の試料)中のマーカーの発現レベルと比較して、モジュレート、例えば増大又は低下していることを指す。マーカーの「改変された量」又は「モジュレートされた量」という用語は、試料、例えば増殖性疾患(例えば癌)に罹患した対象由来の試料中のマーカーの蛋白レベルが、正常、対照試料中のマーカーの蛋白レベルと比較して、モジュレート、例えば増大又は低下していることを指す。
【0109】
マーカーの「発現のモジュレートされたレベル」と本明細書において互換的に使用する「発現の改変されたレベル」という用語は、対照試料(例えば正常、非癌組織、例えば隣接する正常組織、又は増殖性疾患、例えば癌に罹患していない健常者対象由来の試料)中のマーカーの発現レベルと比較して、統計学的に有意な量、例えば発現を試験するために使用した試験法の標準誤差より高値である量、モジュレートされている、例えば高値又は低値である、試料、例えば増殖性疾患(例えば癌)に罹患した対象由来の試料中のマーカーの発現レベルを指す。好ましくは、試験試料中のマーカーの発現レベルは、対照試料中のマーカーの発現レベルよりも、少なくとも2、より好ましくは3、4、5又は10倍以上、そして好ましくは数対照試料中のマーカーの平均発現レベルから、モジュレートされている、例えば高値又は低値である。
【0110】
マーカーの「過剰発現」又は「発現のより高いレベル」又は「発現の高値」とは、対照試料(例えば正常、非癌組織、例えば隣接する正常組織、又は増殖性疾患、例えば癌に罹患していない健常者対象由来の試料)中のマーカーの発現レベルと比較して、統計学的に有意な量、例えば発現を試験するために使用した試験法の標準誤差より高値である量、そして好ましくは対照試料中のマーカーの発現レベルの少なくとも2倍、より好ましくは3、4、5又は10倍以上、そして好ましくは数対照試料中のマーカーの平均発現レベルより高値である試料中の発現レベルを指す。
【0111】
マーカーの「過少発現」又は「発現のより低いレベル」とは、対照試料(例えば正常、非癌組織、例えば隣接する正常組織、又は増殖性疾患、例えば癌に罹患していない健常者対象由来の試料)中のマーカーの発現レベルと比較して、統計学的に有意な量、例えば発現を試験するために使用した試験法の標準誤差より低値である量、そして好ましくは対照試料中のマーカーの発現レベルより少なくとも2倍、より好ましくは3、4、5又は10倍以上低値、そして好ましくは数対照試料中のマーカーの平均発現レベルより低値である試料中の発現レベルを指す。
【0112】
試料中のマーカーの量、例えばマーカーの発現、又はマーカーの蛋白レベルは、マーカーの量が、量を試験するために使用した試験法の標準誤差より高値である量だけ、そして好ましくはその量の少なくとも2倍、より好ましくは3、4、5又は10倍以上、対照試料中のレベルよりもそれぞれ高値又は低値である場合、対照試料(例えば正常、非癌組織、例えば隣接する正常組織、又は増殖性疾患、例えば癌に罹患していない健常者対象由来の試料)中のマーカーの量よりも「有意に」高値又は低値となる。或いは、試料中のマーカーの量は、その量が対照試料中のマーカーの量よりも少なくとも約2、そして好ましくは少なくとも約3、4、又は5倍、それぞれ高値又は低値である場合、対照試料中の量よりも「有意に」高値又は低値とみなすことができる。
【0113】
マーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1の「モジュレートされた活性」と本明細書において互換的に使用する「改変された活性」という用語は、正常な対照試料中のマーカーの活性と比較して、疾患状態において、例えば増殖性疾患(例えば癌)において、モジュレート、例えば増大又は低下しているマーカーの活性を指す。マーカーの改変又はモジュレートされた活性は、例えば、マーカーの改変又はモジュレートされた発現、マーカーの改変又はモジュレートされた蛋白レベル、マーカーの改変又はモジュレートされた構造、又は、例えばマーカーと同じか又は異なる経路に関与する他の蛋白との改変又はモジュレートされた相互作用、又は転写活性化物質又は抑制物質との改変又はモジュレートされた相互作用、又は改変されたメチル化状態に起因する場合がある。
【0114】
マーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1の「モジュレートされた構造」と本明細書において互換的に使用する「改変された構造」という用語は、正常又は野生型の遺伝子又は蛋白と比較して、マーカー遺伝子又はマーカー蛋白内の突然変異又は対立遺伝子変異体、例えば、マーカーの発現又は活性に影響する突然変異の存在を指す。例えば、突然変異は限定しないが、置換、欠失又は付加の突然変異を包含する。突然変異はマーカーのコーディング又は非コーディング領域に存在してよい。
【0115】
「転写されたポリヌクレオチド」とは、本発明のマーカー、例えばCripto−3の転写、及び場合により転写物の正常な翻訳後プロセシング(例えばスプライシング)及び転写物の逆転写により作成される成熟RNAの全て又は一部分と相補であるか相同であるポリヌクレオチド(例えばRNA、cDNA又はRNA又はcDNAの1つの類縁体)である。
【0116】
「相補である」とは2核酸鎖の領域間、又は、同じ核酸鎖の2領域間の配列の相補性の広範な概念を指す。第1の核酸領域のアデニン残基は、第1の領域と反平行である第2の核酸領域の残基と、その残基がチミジン又はウラシルである場合は、特異的な水素結合を形成(塩基対形成)することができることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基は、第1の鎖と反平行である第2の核酸鎖の残基と、その残基がグアニンである場合は塩基対形成できることが分かっている。核酸分子の第1の領域は、反平行な態様において2領域が配置している場合に第1の領域のヌクレオチド残基少なくとも1つが第2の領域の残基と塩基対形成できれば、同じか又は異なる核酸分子の第2の領域に相補である。好ましくは、第1の領域は第1の部分を含み、そして第2の領域は第2の部分を含むことにより、第1及び第2の部分が反平行の態様に配置した場合に、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。より好ましくは、第1の部分の全てのヌクレオチド残基が第1の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。
【0117】
「相同性」又は「同一性」という用語は、本明細書において互換的に使用する通り、2ポリヌクレオチド配列間又は2ポリペプチド配列間の配列の同様性を指し、同一性はより厳密な比較である。「パーセント同一性又は相同性」及び「%同一性又は相同性」という表現は、ポリヌクレオチド配列2つ以上又はポリペプチド配列2つ以上の比較において観察される配列同様性のパーセンテージを指す。「配列同様性」とはポリヌクレオチド配列2つ以上の間に塩基対配列におけるパーセント同様性を指す(いずれかの適当な方法で測定した場合)。配列2つ以上は0〜100%同様の何れか、又はその間の何れかの整数値
であることができる。同一性又は同様性は比較の目的のためにアラインしてよい各配列における位置を比較することにより測定できる。比較される配列における位置が同じヌクレオチド塩基又はアミノ酸で占有されている場合は、分子はその位置において同一である。ポリヌクレオチド配列間の同様性又は同一性の程度は、ポリヌクレオチド配列により共有されている位置における同一又はマッチしたヌクレオチドの数の関数である。ポリペプチド配列の同一性の程度は、ポリペプチド配列により共有されている位置における同一のアミノ酸の数の関数である。ポリペプチド配列の相同性又は同様性の程度は、ポリペプチド配列により共有されている位置におけるアミノ酸の数の関数である。「実質的な相同性」という用語は、本明細書においては、少なくとも50%、より好ましくは60%、70%、80%、90%、95%以上の相同性を指す。
【0118】
「プローブ」という用語は特定の意図する標的分子、例えば本発明のマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1に選択的に結合することができるいずれかの分子を指す。プローブは当該分野で知られる通り合成するか、又は適切な生物学的調整品から誘導することができる。標的分子の検出の目的のためには、プローブは本明細書に記載する通り、標識できるように特に設計してよい。プローブとして利用できる分子の例は、限定しないがRNA、DNA、蛋白、抗体、及び有機単量体を包含する。
【0119】
「核酸プローブ」又は「プライマー」は本発明のマーカーポリヌクレオチド、例えばCripto−3ポリヌクレオチド及び/又はCripto−1ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズできる何れかの核酸分子を指す。「核酸プローブ」又は「プライマー」は、Cripto−3ポリヌクレオチドは選択的に検出されるように、例えばCripto−1ポリヌクレオチド、例えばCripto−1転写ポリヌクレオチドが低効率で検出されるか、検出されないように、Cripto−3ポリヌクレオチド、例えばCripto−3転写ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズできる何れかの核酸分子を包含する。「核酸プローブ」又は「プライマー」は又、Cripto−1ポリヌクレオチドは選択的に検出されるように、例えばCripto−3ポリヌクレオチド、例えばCripto−3転写ポリヌクレオチドが低効率で検出されるか、検出されないように、Cripto−1ポリヌクレオチド、例えばCripto−1転写ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズできる何れかの核酸分子を包含する。
【0120】
マーカー又はプローブ(例えば核酸プローブ又はプライマー)は、それが基板に共有結合的又は非共有結合的に会合しており、そしてかなりの画分のマーカーが基板から解離することなく流体(例えば標準的なクエン酸塩、pH7.4)で洗浄できれば、基板に「固定されている」。
【0121】
本明細書においては、「天然に存在する」核酸分子とは天然界に存在する(例えば天然に存在する蛋白をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNA又はDNA分子を指す。
【0122】
本明細書においては、「増殖性疾患」とは望ましくない細胞増殖を伴った何れかの疾患、例えば癌を指す。増殖性疾患の限定しない例は、本明細書においては、乳がん、肺癌、結腸直腸癌、精巣癌、卵巣癌、腎臓癌、子宮癌、子宮頸癌、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌,胃癌、中枢神経系の癌、黒色腫、リンパ腫、及び白血病を包含する。
【0123】
増殖性疾患、例えば癌は、増殖性疾患の症状少なくとも1つが軽減、終了、緩徐化、又は防止されれば、「モジュレート」、例えば「抑制」される。本明細書においては、増殖性疾患、例えば癌はまた、増殖性疾患(例えば腫瘍)の回帰、再発又は転移が低減、緩徐化、遅延又は防止されれば「抑制される」。
【0124】
本明細書においては、「対象」とは、脊椎動物、特に哺乳類の種のメンバーを指し、そして限定しないが家畜動物、競技用動物、及び霊長類、例えばヒトを包含する。
【0125】
本明細書においては、「プロモーター」、「調節配列」又は「プロモーターエレメント」という用語は、プロモーター/調節配列に作動可能に連結した遺伝子産物の発現のために必要な核酸配列を意味する。一部の例においてはこの配列はコアプロモーター配列出会ってよく、そして別の例においてはこの配列はエンハンサー配列および遺伝子産物の発現のために必要な他の調節エレメントも包含してよい。プロモーター/調節配列は、例えば空間的又は時間的に制限された態様において遺伝子産物を発現するものであってよい。
【0126】
「構成」プロモーターは、遺伝子産物をコードするか、それを特定するポリヌクレオチドに作動可能に連結した場合に、細胞の大部分又は全ての生理学的条件下において細胞中で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0127】
「誘導」プロモーターは、遺伝子産物をコードするか、それを特定するポリヌクレオチドに作動可能に連結した場合に、実質的にプロモーターに相当するインデューサーが細胞内に存在する場合においてのみ、細胞中で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0128】
「組織特異的プロモーター」、「空間的に制限されたプロモーター又は調節配列」又は「空間的に制限されたプロモーターエレメント」とは、遺伝子産物をコードするか、それを特定するポリヌクレオチドに作動可能に連結した場合に、実質的に細胞がプロモーターに相当する組織型の細胞である場合においてのみ、細胞中で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0129】
「時間的に制限されたプロモーター又は調節配列」又は「時間的に制限されたプロモーターエレメント」とは、遺伝子産物をコードするか、それを特定するポリヌクレオチドに作動可能に連結した場合に、実質的に細胞が特定の発達段階にあるか、プロモーターの発現を誘導する薬剤、例えばテトラサイクリン又はタモキシフェンに曝露されている場合においてのみ、生存ヒト細胞中で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0130】
キットは本発明のマーカーを特異的に検出するための少なくとも1つの試薬、例えばプローブを含む何れかの製造物(例えばパッケージ又はコンテナー)であり、その製造物は本発明の方法を実施するための単位として宣伝、流通又は販売されているものである。
【0131】
II.本発明の使用
本発明は細胞の形質転換に関与するマーカー、例えば対照(例えば非罹患又は正常)細胞と比較して、増殖性疾患、例えば癌に罹患した細胞において優先的に発現されるマーカー、例えば、Cripto−3及び/又はCripto−1の発見に部分的には基づいている。本発明のマーカーは正常及び罹患細胞の一方又は両方において検出されることができるDNA、cDNA、RNA又はポリペプチド分子であってよい。
【0132】
試料中、例えば組織又は細胞、例えば腫瘍組織又は細胞を含有する試料、又は生物学的流体、例えば全血、血清、血漿、口腔スワブ、唾液、脊髄液、脳脊髄液、尿、便中のマーカーの量、構造、及び/又は活性、例えば存在、非存在、発現レベル、蛋白レベル、蛋白活性、突然変異、例えばマーカーの活性に影響する突然変異(例えば置換、欠失、又は付加の突然変異)の存在、及び/又はメチル化状態は、本明細書においては、細胞の形質転換の状態に相関付ける。
【0133】
即ち本発明は試料中のマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1の存在を検出するための組成物、キット及び方法を提供する。これらの組成物、キット及び方法は腫瘍の表現型、例えばCripto発現表現型、例えば腫瘍がCripto−1又はCripto−3を発現するかどうかを調べるために有用である。これらの組成物、キット及び方法は又、細胞の形質転換状態を試験するため、並びに患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験するために有用である。
【0134】
本発明の組成物、キット及び方法は特に以下の用途を有する。
1)試料中のマーカー、例えばCripto−1及び/又はCripto−3、例えばCripto−3ポリヌクレオチドを検出すること;
2)細胞が形質転換されるか、又は形質転換される危険性を有するかどうかを試験すること;
3)試料中の形質転換された、又は悪政の細胞の存在を試験すること;
4)対象における腫瘍の良性又は悪性の性質を試験すること;
5)腫瘍の表現型、例えば腫瘍がCripto−1又はCripto−3発現腫瘍であるかどうかを試験すること;
6)対象が増殖性の疾患、障害又は状態に罹患しているかどうかを試験すること;
7)腫瘍に罹患している対象が抗Cripto抗体系の治療に対する適当な候補であるかどうかを試験すること;
8)治療、例えば抗Cripto抗体系治療に対する腫瘍罹患対象の応答性を予測すること;
9)Cripto−3ポリペプチドを検出するため、細胞が形質転換されるかどうかを試験するため、患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験するため、増殖性疾患、障害又は状態を治療するため、及び/又は対象が増殖性疾患、障害又は状態に罹患しているかどうかを試験するために有用である抗体、抗体フラグメント又は抗体誘導体を作成すること;
10)細胞の形質転換を抑制するための試験化合物1つ以上の薬効を試験すること;
11)試験化合物の発癌潜在性を試験すること。
【0135】
すなわち本発明はマーカーポリヌクレオチド、例えばCripto−3又はCripto−1ポリヌクレオチドの試料中の存在を検出するための組成物、キット及び方法を包含する。1つの実施形態において、方法は転写されたCripto−3ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子に試料を接触させること、ここで転写されたCripto−3ポリヌクレオチドはCripto−3遺伝子のコーディング領域を含むものであること、及び、核酸分子が試料中のポリヌクレオチドに結合するかどうかを調べることを含む。別の実施形態においては、方法は転写されたCripto−1ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子に試料を接触させること、ここで転写されたCripto−1ポリヌクレオチドはCripto−1遺伝子のコーディング領域を含むものであること、及び、核酸分子が試料中のポリヌクレオチドに結合するかどうかを調べることを含む。
【0136】
本発明は更にマーカーポリペプチド、例えばCripto−3ポリペプチド又はCripto−1ポリペプチドの試料中の存在を検出するための組成物、キット及び方法を包含する。1つの実施形態において、方法はCripto−3ポリペプチドに選択的に結合する試薬に試料を接触させること、及び、試料中のポリペプチドに試薬が結合するかどうか調べることを含む。別の実施形態において、方法はCripto−3ポリペプチドに選択的に結合する試薬に試料を接触させること、及び、試料中のポリペプチドに試薬が結合するかどうか調べることを含む。
【0137】
試料中の本明細書のマーカーの存在を検出するためのこれらの組成物、キット及び方法は腫瘍の表現型、例えば腫瘍がCripto−3又はCripto−1発現腫瘍であるかどうかを調べるために有用である。本発明は又細胞が形質転換されるかどうかを試験するため、例えば、癌の診断のために有用である。これらの組成物、キット及び方法は更に患者が抗Cripto抗体系療法に対する適当な候補であるかどうかを試験するためにも有用である。
【0138】
従って、本発明は細胞が形質転換されるかどうかを試験する方法を提供する。この方法は、試験試料中のマーカー、例えばCripto−3の量、構造、又は活性、例えば存在、非存在、発現レベル、蛋白レベル、蛋白活性、 突然変異、例えばマーカーの活性に影響する突然変異(例えば置換、欠失、又は付加の突然変異)の存在、及び/又はメチル化状態を、正常な非形質転換細胞におけるレベルと比較することを含む。正常な非形質転換細胞と比較した場合の試験細胞中のマーカーの量、構造又は活性における有意差、例えば増大は細胞が形質転換されることを示す。
【0139】
本発明は更に腫瘍のCripto発現表現型を測定する方法を提供する。この方法は腫瘍試料中のCripto−3の量、構造又は活性を腫瘍試料中のCripto−1の量、構造又は活性と比較することを含む。腫瘍試料中のCripto−1と比較した場合のCripto−3の量、構造又は活性の有意差、例えば増大は腫瘍がCripto−3発現腫瘍であることを示す。腫瘍試料中のCripto−3と比較した場合のCripto−1の量、構造又は活性の有意差、例えば増大は腫瘍がCripto−1発現腫瘍であることを示す。
【0140】
本発明は又、患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験する方法を提供する。方法は患者試料中のマーカー、例えばCripto−3の、量、構造及び/又は活性、例えば存在、非存在、コピー数、発現レベル、蛋白レベル、蛋白活性、突然変異、例えばマーカーの活性に影響する突然変異(例えば置換、欠失、又は付加の突然変異)の存在、及び/又はメチル化状態を、対照非癌試料のレベルと比較することを含む。対照非癌試料中のレベルと比較した場合の患者試料中のマーカー、例えばCripto−3の量、構造又は活性の有意差、例えば増大は、患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であることを示す。
【0141】
更に又、マーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1の改変された量、構造及び/又は活性に関してより多数の対象試料を試験し、そして、試料入手元の個体対象の結果を相関付けるに従って、マーカーの改変された量、構造及び/又は活性は、癌又は腫瘍の特定の型と、又は療法、例えば抗Cripto抗体療法に対する特定の応答、例えば抗Cripto抗体療法に対する陽性又は陰性の応答を有する癌又は腫瘍と強い相関があることが確認されることになる。即ち、本発明の組成物、キット及び方法は、対象における例えば癌又は腫瘍の段階、等級、組織学的型、良性/前悪性/悪性の性質、及びその抗Cripto抗体療法への予測される応答又は転帰を特性化するために有用である。
【0142】
当然ながら、本発明の組成物、キット及び方法は、増殖性疾患、障害又は状態を発症する危険性が増大している対象、およびそれらの医療上の助言者に対して、特定の利用性を呈する。増殖性疾患、障害又は状態を発症する危険性が増大していると認識される対象は、例えば、増殖性疾患、障害又は状態の家族歴を有する対象、突然変異癌遺伝子(即ち少なくとも1つ対立遺伝子)を有することが発見された対象、および高齢者対象を包含する。
【0143】
正常(即ち非罹患)ヒト組織における例えばマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1の量、構造、及び/又は活性のモジュレーション、例えば改変は種々の方法で試験することができる。1つの実施形態において、発現の正常レベルは非罹患であることがわかっている細胞の一部分におけるマーカーのエスのレベルを試験することにより、そして、発現のこの正常レベルを、疾患を有する、又は罹患していると疑われる細胞の一部分における発現のレベルと比較することにより試験する。或いは、そして特に、本明細書に記載した方法の日常的実施の結果としてさらに情報が入手できるようになるに従い、本発明のマーカーの「正常な」量、構造、及び/又は活性に関する集団平均値を使用してよい。別の実施形態においては、マーカーの「正常な」量、構造、及び/又は活性は、非増殖性疾患、障害又は状態に罹患した対象から、対象における増殖性疾患、障害又は状態の発生が疑われる前に対象から得られた対象試料から、アーカイブの対象試料から得られる対象試料中のマーカーの量、構造、及び/又は活性を試験することにより測定してよい。
【0144】
本発明は試料(例えばアーカイブの組織試料又は対象から得られた試料)中の本発明のマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1の存在を検出するための組成物、キット及び方法を包含する。本発明は更に、腫瘍のCripto発現表現型、例えば腫瘍がCripto−1又はCripto−3発現腫瘍であるかどうかを調べるための組成物、キット及び方法を包含する。本発明は更に細胞が形質転換されるかどうかを試験するための組成物、キット及び方法を包含する。本発明は更に患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験するための組成物、キット及び方法を包含する。必要に応じて、組成物、キット及び方法は試料の特定の型による使用に適合される。例えば試料がパラフィン包埋されたアーカイブのヒト組織試料である場合、それは本発明の組成物中、本発明のキットにおける、又は使用する方法において、化合物の比を調節する必要がある場合がある。そのような方法は当該分野で良く知られており、そして当業者の知る通りである。
【0145】
即ち本発明は、試料(例えば対象の組織試料)中の本発明のマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1の量、例えば発現を検出又は試験するためのキットを包含する。本発明は更に形質転換された細胞(例えば対象試料のような試料中)の存在を試験するためのキットを包含する。本発明は更に抗Cripto抗療法に対して患者が適当な候補であるかどうかを試験するためのキットを包含する。キットは本発明のマーカーを識別する、例えば本発明のマーカーに相当する核酸又はポリペプチドに特異的に結合することができる試薬1つ以上を含んでよい。本発明のマーカーに相当するポリペプチドに結合するための適当な試薬は、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント等を包含する。核酸(例えばゲノムDNA、mRNA、スプライシングされたmRNA、cDNA等)に結合するための適当な試薬は、相補核酸を包含する。例えば、核酸試薬は基板に固定されたオリゴヌクレオチド(標識又は未標識)、基板に結合していない標識オリゴヌクレオチド、PCRプライマー対、分子ビーコンプローブ等を包含してよい。
【0146】
本発明のキットは場合により本発明の方法を実施するために有用な追加的成分を含んでよい。例示すればキットは相補核酸をアニーリングするため、又は、抗体をそれが特異的に結合する蛋白に結合させるために適する流体(例えばSSC緩衝液)、試料コンパートメント1つ以上、本発明の方法の実施に関して説明する説明書、正常細胞の試料、神経膠細胞の試料等を含んでよい。
【0147】
本発明のキットはマーカーの蛋白レベル又は蛋白活性を測定するために有用な試薬を含んでよい。
【0148】
本発明は又本発明の方法及びキットにおいて有用な単離されたモノクローナル抗体を作成する方法を包含する。モノクローナル抗体は当該分野で知られた方法を用いて作成してよい。例えば本発明のマーカーに相当する蛋白又はその免疫原性の部分、例えばCripto−3を単離してよく(例えばそれが発現される細胞からの精製によるか、又は知られた方法を用いたインビボ又はインビトロの蛋白をコードする核酸の転写および翻訳による)、そして、脊椎動物、好ましくは哺乳類、例えばマウス、ラット、ウサギ、又はヤギを単離した蛋白を用いて免疫化する。脊椎動物は場合により(そして好ましくは)、脊椎動物が蛋白に対する頑健な免疫応答を呈するように、単離された蛋白を用いて少なくとも更に1回免疫化する。脾細胞を免疫化脊椎動物から単離し、当該分野で良く知られている種々の方法の何れかを用いて不朽化細胞系統と融合することにより、ハイブリドーマを形成する。このような態様において形成されたハイブリドーマを次に、標準的な方法を用いてスクリーニングすることにより蛋白に特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマ1つ以上を発見する。本発明は又この方法により作成されたハイブリドーマ、およびそのようなハイブリドーマを用いて作成された抗体も包含する。他の抗体を作成する他の方法は当該分野で知られており、後に詳述する通りである。
【0149】
本発明は又細胞の形質転換をモジュレート、例えば抑制することに関して、試験化合物の薬効を試験する方法を包含する。上記した通り、本発明のマーカーの量、本発明の発現のレベルの相違は、細胞の形質転換状態に相関する。本発明のマーカーの量のレベル、例えば発現における変化は細胞の形質転換状態に起因する場合があり、或いは形質転換された状態を誘導、維持及び増進する場合がある。即ち、対象における増殖性疾患、障害又は状態をモジュレート、例えば抑制する化合物は、そのマーカーに関する正常レベルの近傍のレベル(例えば非罹患細胞におけるマーカーに関する量、例えば発現)まで、変化、例えば、本発明のマーカーの発現の変化を誘発する場合がある。
【0150】
即ち本方法は、試験化合物存在下に維持されている第1の細胞試料中のマーカーの量、例えば発現をと試験化合物非存在下に維持されている第2の細胞試料中のマーカーの量、例えば発現を比較することを含む。マーカーの量、例えば発現における有意なモジュレーション、例えば低下は化合物が細胞の形質転換をモジュレートすることを示している。細胞試料は、例えば、対象から得られた正常細胞の単一の試料の小分量、対象から得られた正常細胞のプールされた試料、正常な細胞系統の細胞、対象から得られた罹患細胞の単一の試料の小分量、対象から得られた罹患細胞のプールされた試料、増殖性疾患、障害又は状態の動物モデル由来の細胞等であってよい。
【0151】
上記した通り、細胞の形質転換状態は本発明のマーカー、例えばCripto−3の量における変化に相関している。即ち、マーカーの増大した発現又は活性を誘導する化合物は細胞の発癌性又は増殖性の疾患、障害又は状態を誘導することができる。本発明は又試験化合物のヒト細胞発癌潜在性を試験するための方法を包含する。この方法は試験化合物の存在下又は非存在下にヒト細胞の別個の小分量を維持することを含む。小分量の各々におけるマーカー、例えばCripto−3の発現を比較する。試験化合物の存在下に維持されている小分量中のマーカーの量の(試験化合物非存在下に維持されている小分量と相対比較した場合の)有意なモジュレーション、例えば有意な増大は、試験化合物がヒト細胞発癌潜在性、又は増殖性の疾患、障害又は状態を誘導する能力を保有していることを示している。種々の試験化合物の相対的な疾患誘発潜在性はマーカーの量の増強の程度を比較することにより試験できる。
【0152】
III.単離された核酸分子
本発明の1つの特徴は本発明のマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1に相当する核酸分子、例えばマーカーポリペプチド又はそのようなポリペプチドの一部分をコードする核酸に関する。本発明の核酸分子は又、マーカー遺伝子、例えばCripto−3及び/又はCripto−1に相当する核酸分子を発見するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用するために十分な核酸分子、例えばマーカーポリペプチドをコードする核酸分子、およびそのような核酸分子のフラグメント、例えば核酸分子の増幅又は突然変異のためのPCRプライマーとして使用するのに適するものも包含する。本明細書においては、「核酸分子」という用語はDNA分子(例えばcDNA)及びRNA分子(例えばmRNA)及びヌクレオチド類縁体を用いて形成されたDNA又はRNAの類縁体を包含することを意図している。核酸分子は1本鎖又は2本鎖であることができる。
【0153】
1つの実施形態において、本発明の核酸分子は単離された核酸分子である。「単離された」核酸分子とは核酸分子の天然の原料中に存在する他の核酸分子から分離されているものである。好ましくは、「単離された」核酸分子は核酸分子の誘導元である生物のゲノムDNA中で核酸に天然にフランキングしている(即ち核酸の5’及び3’末端に位置する)配列(好ましくは蛋白コード配列)を含有しない。例えば、種々の実施形態において、単離された核酸分子は核酸分子の誘導元である細胞のゲノムDNA中で核酸に天然にフランキングしているヌクレオチド配列の約5kB、4kB、3kB、2kB、1kB、0.5kB又は0.1kB未満を含有することができる。更に又、「単離された」核酸分子、例えばcDNA分子は、組み換え手法により製造された場合に他の細胞物質又は培地を実質的に含まないか、又は、化学合成された場合には化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含まないことができる。
【0154】
本発明の核酸分子、例えばCripto−3蛋白又はそのフラグメント又はCripto−1蛋白又はそのフラグメントをコードする核酸分子は標準的な分子生物学の手法及び本明細書に記載したデータベースレコード中の配列情報を用いて単離できる。そのような核酸分子配列の全体又は一部分を用いながら、本発明の核酸分子は標準的なハイブリダイゼーション及びクローニング手法を用いて単離できる(例えばSambrook等編、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nded.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に記載)。
【0155】
本発明の核酸分子は鋳型としてのcDNA、mRNA、又はゲノムDNA、及び適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いながら、標準的なPCR増幅手法に従って増幅できる。このようにして増幅された核酸分子を適切なベクター内にクローニングし、DNA配列分析により特性化することができる。更に又、本発明の核酸分子の全体又は一部分に相当するオリゴヌクレオチドを例えば自動DNA合成装置を用いながら、標準的な合成手法により製造できる。
【0156】
1つの実施形態において、本発明の核酸分子はCripto−3遺伝子に相当する核酸のヌクレオチド配列に対して、又はCripto−3蛋白をコードする核酸のヌクレオチド配列に対して相補であるヌクレオチド配列を有する核酸分子を含む。別の実施形態においては、本発明の核酸分子はCripto−1遺伝子に相当する核酸のヌクレオチド配列に対して、又はCripto−1蛋白をコードする核酸のヌクレオチド配列に対して相補であるヌクレオチド配列を有する核酸分子を含む。好ましいCripto−3ポリヌクレオチドは図ICに示すヌクレオチド配列(配列番号4)を有する。好ましいCripto−1ポリヌクレオチドは図IBに示すヌクレオチド配列(配列番号3)を有する。所定のヌクレオチド配列に対して相補である核酸分子は、その所定のヌクレオチド配列にハイブリダイズして安定なデュプレックスを形成することができる程度に所定のヌクレオチド配列に対して十分相補であるものである。
【0157】
1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、完全長の核酸配列がCripto−3遺伝子を含むか、Cripto−3ポリペプチドをコードする場合のその核酸配列の僅か一部分のみを含む。別の実施形態においては、完全長の核酸配列がCripto−1遺伝子を含むか、Cripto−1ポリペプチドをコードする場合のその核酸配列の僅か一部分のみを含む。そのような核酸分子は例えばプローブ又はプライマーとして有用である。プローブ又はプロモーターは典型的には実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの形態にある。オリゴヌクレオチドは典型的には本発明の核酸の少なくとも約7、好ましくは約15、より好ましくは約25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、又は400又はそれ以上の連続ヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドはCripto−3ポリヌクレオチド、例えば転写されたポリヌクレオチドの約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30又はそれ以上の連続ヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。
【0158】
Cripto−3核酸分子の配列に基づいた核酸プローブはCripto−3転写ポリヌクレオチド、例えばmRNA又はcDNAを検出するために使用できる。Cripto−1核酸分子の配列に基づいた核酸プローブはCripto−1転写ポリヌクレオチド、例えばmRNA又はcDNAを検出するために使用できる。プローブは自身に結合した標識基を含むことができ、例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素、又は酵素コファクターが挙げられる。そのようなプローブは試料中のCripto−3又はCripto1転写ポリヌクレオチドの存在を特異的に検出するために使用できる。そのようなプローブは又、キットの一部として、例えば対象由来の細胞の試料中のCripto−3転写ポリヌクレオチドのレベルを測定すること、例えばmRNAレベルを検出することにより、マーカー遺伝子を過剰発現する細胞又は組織、例えば形質転換された細胞又は腫瘍組織を発見するために使用できる。
【0159】
1つの実施形態において、本発明の核酸分子は少なくとも7、10、12、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、550、650、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3500、4000、4500、又はそれ以上のヌクレオチド長であり、そしてCripto−3遺伝子に相当する核酸分子、又はCripto−3蛋白をコードする核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。別の実施形態においては、本発明の核酸分子は少なくとも7、10、12、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、550、650、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3500、4000、4500、又はそれ以上のヌクレオチド長であり、そしてCripto−1遺伝子に相当する核酸分子、又はCripto−1蛋白をコードする核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。
【0160】
本明細書においては、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語は相互に少なくとも60%、65%、70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%又は98%同一であるヌクレオチド配列が相互にハイブリダイズした状態で残存するハイブリダイゼーション及び戦場の条件を説明することを意図している。そのようなストリンジェントな条件は当該分野で知られており、そしてCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NY(1989)のセクション6.3.1〜6.3.6に記載されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃、その後一回以上の洗浄を0.2XSSC、0.1%SDS中50〜65℃で行うハイブリダイゼーションを包含する。好ましいハイブリダイゼーション条件は又Cripto−1核酸の存在下でCripto−3核酸の特異的検出を可能にする。
【0161】
試料中のCripto−3ポリヌクレオチドの特異的検出のための本発明において特に有用なハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は(i)1時間42℃において予備ハイブリダイゼーション溶液(6XSSC、5XDenhardt溶液、0.05%ピロリン酸ナトリウム、100ug/mltRNA、0.5%SDS)中予備ハイブリダイズ;(ii)一夜42℃において(例えば10〜10CPM/mlの放射標識核酸プローブと共に)ハイブリダイゼーション溶液(6XSSC、5XDenhardt溶液、0.05%ピロリン酸ナトリウム、0.5%SDS)中、核酸プローブ(例えば検出可能となるように修飾された、例えば放射標識された、例えば5’末端において32Pで標識された核酸)とハイブリダイズ;及び(iii)例えば3回、20分間42℃において洗浄溶液(0.1%SDS含有6XSSC)で洗浄することを含む。当業者の知る通りCripto−3ポリヌクレオチド又はCripto−1ポリヌクレオチドの特異的検出のための最適なハイブリダイゼーション条件は使用される特定の核酸プローブにより変動する。特定の核酸プローブに対する最適なハイブリダイゼーション条件は、当該分野で知られた定型的な方法を超えない方法により当業者が決定できるものである。
【0162】
本発明の1つの実施形態において、核酸分子(例えばプローブ又はプライマー)は転写されたCripto−3ポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズし、その部分は、転写されたCripto−1ポリヌクレオチドの存在下において転写されたCripto−3ポリヌクレオチドが選択的に検出される、例えば特異的に検出されるように、Cripto−1と比較してCripto−3にユニークである1つ以上のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは、核酸分子(例えばプローブ又はプライマー)は転写されたCripto−1ポリヌクレオチドが弱く検出されるように、転写されたCripto−1ポリヌクレオチドに対しては弱くハイブリダイズする。より好ましくは、核酸分子(例えばプローブ又はプライマー)は転写されたCripto−1ポリヌクレオチドが検出されないように、転写されたCripto−1ポリヌクレオチドに対してはハイブリダイズしない。本発明の別の実施形態においては、核酸分子(例えばプローブ又はプライマー)は転写されたCripto−1ポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズし、その部分は、転写されたCripto−3ポリヌクレオチドの存在下において転写されたCripto−1ポリヌクレオチドが選択的に検出される、例えば特異的に検出されるように、Cripto−3と比較してCripto−1にユニークである1つ以上のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは、核酸分子(例えばプローブ又はプライマー)は転写されたCripto−3ポリヌクレオチドが弱く検出されるように、転写されたCripto−3ポリヌクレオチドに対しては弱くハイブリダイズする。より好ましくは、核酸分子(例えばプローブ又はプライマー)は転写されたCripto−3ポリヌクレオチドが検出されないように、転写されたCripto−3ポリヌクレオチドに対してはハイブリダイズしない。
【0163】
1つの実施形態において本発明の核酸分子(例えばプローブ又はプライマー)は少なくとも7、10、12、15、20、25、30、35、40、50又はそれ以上のヌクレオチド長であり、そしてマーカー遺伝子に相当する核酸分子(例えばCripto−3及び/又はCripto−1)に対し、又はマーカー蛋白をコードする核酸分子(例えばCripto−3及び/又はCripto−1)、例えば転写されたポリヌクレオチド、例えばmRNA又はcDNAに対し、選択的にハイブリダイズし、そしてマーカー核酸分子の増幅、例えばPCR増幅のために有用である。1つの好ましい実施形態においては、核酸分子(例えばプライマー)は例えばCripto−1核酸分子、例えばCripto−1転写ポリヌクレオチドの存在下において、Cripto−3核酸分子、例えばCripto−3転写ポリヌクレオチドを選択的に増幅することができる。好ましくは、核酸分子(例えばプライマー)は転写されたCripto−1ポリヌクレオチドが弱く増幅されるように、転写されたCripto−1ポリヌクレオチドに対しては弱くハイブリダイズする。より好ましくは、核酸分子(例えばプライマー)は転写されたCripto−1ポリヌクレオチドが増幅されないように、転写されたCripto−1ポリヌクレオチドに対してはハイブリダイズしない。別の好ましい実施形態においては、核酸分子(例えばプライマー)は例えばCripto−3核酸分子、例えばCripto−3転写ポリヌクレオチドの存在下において、Cripto−3核酸分子、例えばCripto−3転写ポリヌクレオチドを選択的に増幅することができる。好ましくは、核酸分子(例えばプライマー)は転写されたCripto−3ポリヌクレオチドが弱く増幅されるように、転写されたCripto−3ポリヌクレオチドに対しては弱くハイブリダイズする。より好ましくは、核酸分子(例えばプライマー)は転写されたCripto−3ポリヌクレオチドが増幅されないように、転写されたCripto−3ポリヌクレオチドに対してはハイブリダイズしない。
【0164】
1つの実施形態において、本発明の核酸分子は転写されたCripto−3ポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズし、その部分はCripto−1蛋白と比較してCripto−3蛋白にユニークな1つ以上のアミノ酸、例えばV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるCripto−3ポリペプチド配列内の1つ以上のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態においては、本発明の核酸分子は転写されたCripto−1ポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズし、その部分はCripto−3蛋白と比較してCripto−1蛋白にユニークな1つ以上のアミノ酸、をコードする核酸配列を含む。1つの好ましい実施形態においては、Cripto−3蛋白と比較してCripto−1蛋白にユニークな1つ以上のアミノ酸はA7、P68、G92、V178、V22及びY43よりなる群から選択される。別の好ましい実施形態においては、Cripto−3蛋白と比較してCripto−1蛋白にユニークな1つ以上のアミノ酸はA7、P68、G92、およびV178よりなる群から選択される。
【0165】
Cripto−3ポリヌクレオチド又はCripto−1ポリヌクレオチドの選択的検出のための本発明において有用な核酸分子の非限定的な例は表2に示すとおりである。表2に示す核酸分子(プローブ)はCriptoDNA配列のアンチセンス又は鋳型鎖に相当する。即ち表2に示す核酸分子はCripto−3又はCripto−1mRNAに相補であり(mRNAはセンス又はコーディング鎖に相当する)、そして試料中のCriptomRNAを検出するためにCripto−3又はCripto−1mRNAにハイブリダイズするために有用である。当業者の知る通り、表2に示す核酸分子(プローブ)の相補体はCripto−3又はCripto−1DNAのセンス又はコーディング鎖に相当し、そしてこのため、試料中のCriptocDNAを検出するためにCriptocDNAにハイブリダイズするために有用である(cDNAはアンチセンス又は鋳型鎖に相当する)。表2に示す核酸分子は試料中のCripto−3転写ポリヌクレオチドの特異的検出、又はCripto−1転写ポリヌクレオチドの特異的検出のための、本明細書に記載した方法の何れかにおいて有用である。表2に示す核酸分子は特に、試料中のCripto−3転写ポリヌクレオチド又はCripto−1転写ポリヌクレオチドの検出のためのノーザン及びサザンブロット分析において有用である。
【0166】
【表2−1】

【0167】
【表2−2】

試料中のマーカー、例えばCripto−3又はCripto−1ポリヌクレオチドの選択的検出のために有用な核酸分子の別の例は、マーカーポリヌクレオチドに対して特異的な、そしてマーカーポリヌクレオチドの増幅に適する核酸分子(プライマー)である。好ましくは、これらの核酸分子(プライマー)は試料中のマーカー、例えばCripto−3又はCripto−1転写ポリヌクレオチドのPCR増幅のためのプライマーとして特に有用である。転写されたポリヌクレオチドの増幅のために有用である核酸分子(プライマー)は一般的に、対、例えばCripto−3DNA配列(例えば図1Cに示すCripto−3をコードするヌクレオチド配列)のアンチセンス又は鋳型鎖に相当する1つの核酸分子(プライマー)、及びCripto−3DNA配列(例えば図1Cに示すCripto−3をコードするヌクレオチド配列)のセンス又はコーディング鎖に相当する第2の核酸分子(プライマー)を含む対において使用される。即ち、例えば表3に示すように、核酸分子又はプライマーの対は、試料中の転写されたポリヌクレオチド、例えばmRNA又はcDNAを特異的に検出するための、2つの核酸プライマーによりフランキングされている、転写されたポリヌクレオチド、例えばCripto−3mRNA(ここでmRNAはセンス又はコーディング鎖に相当する)及び/又はCripto−3cDNA(ここでcDNAはアンチセンス又は鋳型鎖に相当する)の一部分の増幅のために有用である。そのような核酸分子(プライマー)の非限定的な例は表3に示す通りである。表3に示した核酸分子はフォワード及びリバースプライマーの特定の対として提示したが、当業者の知る通り、フォワード及びリバースプライマー、例えば表3のプライマー類の他の組み合わせもCripto−3又はCripto−1転写ポリヌクレオチドを特異的に増幅するために使用してよい。更に当業者の知る通り、表3に示す核酸分子が本発明の増幅方法、例えばPCR、例えば定量的PCRにおいて特に有用であるが、試料中のCripto−3転写ポリヌクレオチドの特異的検出のため、又は、Cripto−1転写ポリヌクレオチドの特異的検出のための本明細書に記載した他の検出方法の何れかにおいても有用である。
【0168】
【表3】

本発明は、試料中のCripto−3又はCripto−1核酸分子の存在を定量するために分子ビーコンが有用であるような、本明細書に記載した又Cripto−3又はCripto−1核酸分子に相補である領域少なくとも1つを有する分子ビーコン核酸分子を包含する。「分子ビーコン」核酸とは、相補領域の対を含み、そして蛍光団及びそれに会合した蛍光クエンチャーを有する核酸分子である。蛍光団及びクエンチャーは、相補領域が相互にアニーリングした場合に蛍光団の蛍光がクエンチャーによりクエンチングされるような方向において核酸の異なる部分と会合している。核酸分子の相補領域が相互にアニーリングしない場合、蛍光団の蛍光のクエンチングの程度は低くなる。分子ビーコン核酸分子は例えば米国特許5,876,930に記載されている。
【0169】
1つの実施形態において、核酸分子は核酸の誘導元である生物のゲノムDNA中で核酸に天然にフランキングしている配列(即ち核酸の5’及び3’末端に位置する配列)を含有することができる。種々の実施形態において、単離された核酸分子は核酸分子の誘導元である細胞のゲノムDNA中で核酸分子に天然にフランキングしているヌクレオチド配列の約100kB、50kB、25kB、15kB、10kB、5kB、4kB、3kB、2kB、1kB、0.5kB又は0.1kB未満を含有することができる。例えば種々の実施形態において、本発明の核酸分子は開始シグナル、例えば開始ATGコドンに対して近位、又は5’側である時間的及び空間的な調節エレメント(例えば特定の組織に対し、又は特定の発達段階に対して本発明のマーカーの発現を限定するエレメント)を含有する。更に又、核酸分子は組み換え手法により製造された場合に他の細胞物質又は培地を実質的に含まないか、又は、化学合成された場合には化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含まないことができる。
【0170】
当業者の知る通り、本発明は更に、例えばCripto−3及び/又はCripto−1のようなマーカー蛋白をコードする核酸のヌクレオチド配列とは、遺伝子コードの縮重のために異なっており、そしてそのため、同じ蛋白をコードしている核酸分子を包含する。やはり当業者の知る通り、アミノ酸配列の変化をもたらすDNA配列の多形が集団内に存在する場合がある(例えばヒト集団)。そのような遺伝子多形は天然の対立遺伝子変異のために集団内の個体の間で存在する場合がある。対立遺伝子は所定の遺伝子座において代替的に存在する遺伝子の群の1つである。更に又、当然ながら、RNA発現レベルに影響するDNA多形であってその遺伝子の全体的発現レベルに影響する場合のあるものもまた存在する場合がある。
【0171】
本明細書においては、「対立遺伝子変異体」という表現は所定の遺伝子座に存在するヌクレオチド配列、又はヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドを指す。
【0172】
本明細書においては、「遺伝子」及び「組み換え遺伝子」という用語は、Cripto−3ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子を指す。そのような天然の対立遺伝子変異は、典型的には、所定の遺伝子のヌクレオチド配列中に1〜5%の変異をもたらすことができる。代替対立遺伝子は多くの異なる個体において目的の遺伝子を配列決定することにより発見できる。これはハイブリダイゼーションプローブを用いて種々の個体において同じ遺伝子座を発見することにより、容易に実施できる。全てのこのようなヌクレオチドの変異及びその結果として生じるアミノ酸の多形、又は天然の対立遺伝子変異の結果として生じ、機能的活性を改変しない変異は本発明の範囲に包含されることを意図している。
【0173】
やはり当業者の知る通り、突然変異により本発明の核酸分子内に配列変化を導入することにより、コードされた蛋白のアミノ酸配列の変化を、それによりコードされる蛋白の生物学的活性を改変することなくもたらすことができる。例えば、「非必須」アミノ酸残基においてアミノ酸置換がもたらされるヌクレオチド置換を行うことができる。「非必須」アミノ酸残基とは、「必須」アミノ酸残基が生物学的活性のために必要であるのに対し、生物学的活性を改変することなく野生型配列から改変できる残基である。例えば種々の生物種の相同体の間で保存されていない、又は半保存されているのみであるアミノ酸残基は活性のために非必須であり、従って改変の標的となりえる。或いは、種々の生物種(例えばネズミ及びヒト)の相同体の間で保存されているアミノ酸残基は活性のために必須であり、従って改変の標的となりえない。
【0174】
従って、本発明の別の特徴は活性のために必須ではないアミノ酸残基における変化を含有するマーカーポリペプチド、例えばCripto−3又はCripto−1ポリペプチドをコードする核酸分子に関する。そのようなポリペプチドは本発明のマーカーに相当する天然に存在する蛋白とはアミノ酸配列において異なっているが、なお生物学的活性を保持している。1つの実施形態において、そのような蛋白は本発明のマーカーに相当する蛋白の1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約40%同一、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0175】
変異体蛋白をコードする核酸分子は、1つ以上のアミノ酸残基の置換、付加又は欠失がコードされた蛋白内に導入されるように、本発明の核酸のヌクレオチド配列内に1つ以上のヌクレオチドの置換、付加又は欠失を導入することにより作成できる。突然変異は標準的な手法、例えば部位指向性突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発により導入できる。好ましくは、保存的なアミノ酸の置換を1つ以上の予測される非必須アミノ酸残基において行う。「保存的アミノ酸置換」とはアミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられているものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該分野で知られている。これらのファミリーは塩基性の側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、未荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性の側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族の側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を包含する。或いは、突然変異はコーディング配列のすべて又は部分に渡ってランダムに、例えば飽和突然変異誘発により、導入することができ、そして得られた突然変異体を生物学的活性に関してスクリーニングすれば活性を保持している突然変異体が発見できる。突然変異誘発の後、コードされた蛋白を組み換えにより発現させることができ、そして蛋白の活性を測定できる。
【0176】
マーカー遺伝子の時間的及び空間的な調節エレメント、例えば時間的及び空間的なプロモーターに相当する本発明の核酸分子は組み換え発現ベクターを構築するために使用できる。時間的及び空間的な調節エレメントの発見は、誘導組み換えの部位、例えばlox部位、例えばloxP部位に作動可能に連結した、そして場合により更にレポーター配列、例えばLacZ、GFP及びEGFPに作動可能に連結した、架空の時間的及び空間的な調節エレメントを有する核酸分子を含有する組み換え発現ベクターを作成することにより実施できる。そのような組み換え発現ベクターを用いてトランスジェニック動物を作成することができ、その細胞を後にレポーター配列の時間的及び空間的制限に関して調べることにより、時間的及び空間的な調節エレメントに相当する補の核酸分子を発見することができる。
【0177】
上記したこのようなトランスジェニック動物は時間的及び空間的な調節エレメントを発見するために有用であるのみならず、補のマーカーポリペプチドの機能及び/又は活性を研究するため、マーカーポリペプチド活性のモジュレーターを発見及び/又は評価するため、並びに、治療薬又は診断薬の前臨床試験において有用である。更に又、そのような動物は目的の遺伝子の時間的及び空間的な制限の作用、例えば生理学的作用を調べるために有用である。例えば、トランスジーンは発達の特定の点における遺伝子の必要性のために致死性をもたらす場合がある。しかしながら、空間的及び/又は時間的に調節されたプロモーターの制御下にある同じトランスジーンを、遺伝子の損失が致死性を誘発する時点の後に、及び/又は致死性を誘発しない特定の組織内に導入してよい。或いは、ユビキタスに発現される、又は、正常細胞、例えば疾患、障害又は状態に罹患していない細胞においては低値又は検出不可能なレベルにおいて発現される遺伝子を、疾患、障害又は状態、例えば癌において優先的に過剰発現又は錯誤発現させてよい。例えばCripto−1蛋白は成人の多くの組織においては低値のレベルで発現されるか検出不可能であるが、乳腺の細胞において、並びに多くの癌においては、特異的に過剰発現されることが分かっている。同様に、本明細書に記載する通り、Cripto−3転写ポリヌクレオチドは多くの正常な成人組織においては低地のレベルで発現されるか、検出不可能であるが、多くの癌において特異的に過剰発現される。本発明の空間的に制限されたプロモーター、例えば乳腺特異的プロモーターにCripto−3を作動可能に連結すること、及び、更に、誘導プロモーターを作動可能に連結することにより、特定の細胞型、例えば乳腺細胞においてCripto−3の制御された発現、例えば誘導発現が可能になり、これにより、増殖性の疾患、障害又は状態の進行、維持、及び/又は治療への応答の研究のために、増殖性の疾患、障害又は状態をより近似的にモデル化することができる。
【0178】
IV.単離された蛋白及び抗体
(i)蛋白
本発明の1つの特徴はCripto−3ポリペプチドに対して指向された抗体を作成するための免疫原としての使用に適する単離されたCripto蛋白、例えばCripto−3、並びにフラグメントに関する。1つの実施形態において、Cripto−3ポリペプチド又はそのフラグメントは標準的な蛋白精製手法を用いながら適切な精製スキームにより、細胞又は組織の原料から単離できる。別の実施形態においては、Cripto−3ポリペプチド又はそのフラグメントは組み換えDNA手法により製造される。組み換え発現の代替として、Cripto−3ポリペプチド又はそのフラグメントは標準的なペプチド合成手法を用いて化学的に合成できる。
【0179】
「単離された」又は「精製された」蛋白又はそのフラグメントは、その蛋白の誘導元である細胞又は組織の原料に由来する細胞性物質又は他の夾雑蛋白を実質的に含まないか、又は化学合成された場合は化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない。「細胞性物質を実質的に含まない」という表現は、蛋白がその単離元又は組み換え製造元の細胞の細胞性成分から分離されている蛋白の調製品を包含する。即ち、細胞性物質を実質的に含まない蛋白は、異種蛋白(本明細書においては「夾雑蛋白」とも称する)の約30%、20%、10%、又は5%未満を有する蛋白の調製品を包含する。蛋白又はその生物学的活性部分が組み換えにより製造されている場合、それは又好ましくは培地を実質的に含まず、即ち、培地は蛋白調製品のぼる量の約20%、10%、又は5%未満に相当する。蛋白が化学合成される場合は、それは好ましくは化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含まず、即ち、蛋白の合成に関与する化学的前駆体又は他の化学物質から分離されている。従って蛋白のそのような調製品は化学的前駆体又は目的のポリペプチド以外の化合物の約30%、20%、10%、5%(乾燥重量による)未満を有する。
【0180】
好ましいCripto−3ポリペプチドはず1Aに示すアミノ酸配列を有する(配列番号2)。他の有用な蛋白はこの配列に実質的に同一(例えば少なくとも約40%、好ましくは50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%)であり、そして天然のCripto−3蛋白の機能的活性を保持しているが、なお突然変異誘発により、又は天然の対立遺伝子変異により、アミノ酸配列において異なっている。
【0181】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸のパーセント同一性を測定するためには、配列を最適な比較目的のためにアラインする(例えば第1のアミノ酸配列又は核酸配列内に、第1のアミノ酸又は核酸配列との最適アライメントのためにギャップを導入できる)。次に相当するアミノ酸一又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が第2の配列における相当する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドで占有されていれば、分子はその位置において同一である。2つの配列の間のパーセント同一性は配列により共有されている同一の位置の数の関数である(即ち、%同一性=同一位置の数/位置(例えばオーバーラップ位置)総数x100)。1つの実施形態において、2つの配列は同じ長さである。
【0182】
2つの配列の間のパーセント同一性の測定は数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877において改変されたKarlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:2264−2268のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムはAltschul等(1990)J.Mol.Biol.215:403−410のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索はNBLASTプログラム、スコア=100、ワードレングス=12で実施することができ、これにより本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLAST蛋白検索はXBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3で実施することができ、これにより本発明の蛋白分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップを有するアライメントを得るためには、GappedBLASTをAltschul等(1997)Nucleic Acid Res.25:3389−3402に記載の通り利用することができる。或いは、PSI−Blastを用いて分子間の遠い関係を検出する反復検索を実施することができる。BLAST、GappedBLAST及びPSI−Blastプログラムを利用する場合は、それぞれのプログラム(例えばXBLAST又はNBLAST)のデフォルトのパラメーターを使用できる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照できる。配列の比較のために利用される数学的プログラムの別の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller,(1988)Comput Appl Biosci,4:11−7のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムはGCG配列アライメントソフトウエアパッケージの部分であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合は、PAM120ウエイト残基表、ギャップ長ペナルティー12及びギャップペナルティー4を使用できる。局所的配列どう養成及びアライメントの領域を発見するための更に別の有用なアルゴリズムはPearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444−2448に記載されているFASTAアルゴリズムである。ヌクレオチド又はアミノ酸配列を比較するためにFASTAアルゴリズムを使用する場合は、例えばPAM120ウエイト残基表を2のk組値と共に使用することができる。
【0183】
2配列間のパーセント同一性はギャップを許容するかすることなく、上記したものと同様の手法を用いて測定できる。パーセント同一性を計算する場合は、厳密なマッチのみを計上する。
【0184】
本発明の1つの実施形態において、単離されたCripto−3ポリペプチド又はそのフラグメントはポリクローナル及びモノクローナル抗体の製造のための標準的手法を用いながら抗体を形成するための免疫原として使用することができる。完全長ポリペプチドを使用することができ、あるいは、本発明は免疫原としての使用のための抗原性ペプチドフラグメントを提供する。Cripto−3蛋白の抗原性ペプチドはCripto−3のアミノ酸配列のアミノ酸残基少なくとも8(好ましくは10、15、20、25又は30)個を含み、そしてペプチドに対して形成された抗体がCripto−3蛋白と特異的免疫複合体を形成するような蛋白のエピトープを包含する。好ましくは、Cripto−3蛋白の抗原性ペプチドは、ペプチドに対して形成された抗体がCripto−3蛋白との免疫複合体を選択的に形成し、そしてCripto−1蛋白とは免疫複合体を形成しないようにCripto−3蛋白のエピトープを包含する。
【0185】
抗原性ペプチドに包含される好ましいエピトープは蛋白の表面上に位置する領域、例えば親水性領域である。疎水性配列分析、親水性配列分析、又は同様の分析を用いて親水性領域を発見することができる。抗原性ペプチドは全ドメイン、例えば細胞外ドメイン、細胞内ドメイン、EGF様ドメイン、cysリッチドメイン、受容体結合ドメイン等に相当してよい。Cripto−3の細胞外ドメインは成熟Cripto−3蛋白の約アミノ酸残基1〜約アミノ酸残基158に渡っている。Cripto−3のEGF様ドメインは成熟Cripto−3蛋白の約アミノ酸残基75〜約アミノ酸残基112に渡っている。Cysリッチドメインは成熟Cripto−3蛋白の約アミノ酸残基114〜約アミノ酸残基150に渡っている。Cripto−3のエピトープはアミノ酸残基の線状又は非線状の領域を含んでよい。1つの実施形態において、エピトープは、変性したCripto−3蛋白に対抗して、コンホーメーション的にはネイティブのCripto−3蛋白において形成されるエピトープである
本発明の1つの実施形態において、Cripto−3蛋白の抗原性ペプチドは細胞外ドメインに含まれるCripto−3蛋白のエピトープを包含する。好ましくは、抗原性ペプチドに包含されるエピトープはCripto−1と比較してCripto−3にユニークなアミノ酸残基、例えばCripto−1ポリペプチドのアミノ酸配列の相当するアミノ酸一におけるアミノ酸残基とは異なるCripto−3ポリペプチドのアミノ酸配列におけるアミノ酸残基1つ以上を含むCripto−3蛋白の領域である。Cripto−1ポリペプチドの相当するアミノ酸残基とは異なるCripto−3ポリペプチドのアミノ酸残基は、Cripto−3のアミノ酸V7、L68、E92及びA178を包含する。抗原性ペプチドにより包含される好ましいエピトープはV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸少なくとも1つを含むCripto−3の領域である。関連する実施形態において、Cripto−3蛋白の抗原性ペプチドはCripto−3蛋白の一部分を含み、ここでその部分の二次構造又はコンホーメーションは、例えばCripto−1と比較してCripto−3にユニークなアミノ酸、例えばV7、L68、E92及びA178の1つ以上の存在のために、Cripto−1と比較してCripto−3に独特である。
【0186】
免疫原は典型的には適当な(即ち免疫コンピテントな)対象、例えばウサギ、ヤギ、マウス又は他の哺乳類又は脊椎動物を免疫化することにより抗体を製造するために使用される。適切な免疫原性の調製品は例えば組み換え発現された、又は化学合成されたポリペプチドを含有できる。調製品はさらに、アジュバント、例えばフロインド完全又は不完全アジュバント、又は同様の免疫刺激性の薬剤を包含することができる。
【0187】
本発明は又Cripto−3ポリペプチドに相当するキメラ又は融合蛋白を提供する。本明細書においては、「キメラ蛋白」又は「融合蛋白」とは、非相同ポリペプチド(即ちCripto−3ポリペプチド以外のポリペプチド)に作動可能に連結したCripto−3ポリペプチドの全て又は部分(好ましくは生物学的に活性な部分)を含む。融合蛋白において、「作動可能に連結した」という用語はCripto−3ポリペプチド及び非相同ポリペプチドが相互にインフレームに融合することを示すことを意図している。非相同ポリペプチドはCripto−3ポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端に融合できる。
【0188】
1つの有用な融合蛋白はCripto−3ポリペプチドがGST配列のカルボキシ末端に融合しているGST融合蛋白である。そのような融合蛋白は組み換えCripto−3ポリペプチドの精製を容易にすることができる。
【0189】
別の実施形態においては、融合蛋白はそのアミノ末端において非相同シグナル配列を含有する。例えばCripto−3ポリペプチドのネイティブのシグナル配列を除去し、そして別の蛋白に由来するシグナル配列と置き換えることができる。例えばバキュロウイエンベロープ蛋白のgp67分泌配列を非相同シグナル配列として使用できる(Ausubel等、編、Current Protocols in Molecular Biolohy,John Wiley&Sons,NY,1992)。真核生物の非相同シグナル配列の別の例はメリチン及びヒト胎盤アルカリホスファターゼの分泌配列を包含する(Stratagene;La Jolla,California)。さらに別の例においては、有用な原核生物非相同シグナル配列はphoA分泌シグナル(Sambrook等、上出)、およびプロテインA分泌シグナル(Pharmacia Biotech;Piscataway,New Jersey)を包含する。
【0190】
さらに別の実施形態においては、融合蛋白はCripto−3ポリペプチドの全て又は部分が免疫グロブリン蛋白ファミリーのメンバーから誘導された配列に融合している免疫グロブリン融合蛋白である。本明細書の免疫グロブリン融合蛋白は医薬組成物に配合して対象に投与することによりリガンド(可溶性又は膜結合)及び細胞表面上の蛋白(受容体)との間の相互作用を抑制し、これによりインビボのシグナルトランスダクションを抑制することができる。免疫グロブリン融合蛋白はCripto−3ポリペプチドの同族体リガンドの生体利用性に影響するために使用できる。リガンド/受容体相互作用の抑制は、増殖及び分化の障害を治療するため、及び細胞生存をモジュレート(例えば増進又は抑制)するための両方に治療上有用であることができる。更に又、本発明の免疫グロブリン融合蛋白は対象においてCripto−3ポリペプチドに対して指向された抗体を産生するための免疫原として、リガンドを精製するため、そしてリガンドとの受容体の相互作用を抑制する分子を発見するためのスクリーニング試験において使用できる。
【0191】
本発明のキメラ及び融合蛋白は標準的な組み換えDNA手法により製造できる。別の実施形態において、融合遺伝子は自動DNA合成装置を包含する従来の手法により合成できる。或いは、キメラ遺伝子配列を形成するために後にアニーリング及び再増幅することができる2つの連続遺伝子フラグメントの間の相補オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを用いて遺伝子フラグメントのPCR増幅を実施することができる(例えばAusubel等、上出参照)。更に又、既に融合部分(例えばGSTポリペプチド)をコードしている多くの発現ベクターが市販されている。Cripto−3ポリペプチドをコードする核酸は融合部分がCripto−3ポリペプチドにインフレームに連結されるように発現ベクター内にクローニングすることができる。
【0192】
シグナル配列は分泌蛋白又は他の目的の蛋白の分泌及び単離を容易にするために使用できる。シグナル配列は典型的には切断事象1つ以上において分泌の間に成熟蛋白から一般的には切断される疎水性アミノ酸のコア部を特徴としている。そのようなシグナルペプチドはそれらが分泌経路を通過する場合に成熟蛋白からのシグナル配列の切断を可能にするプロセシング部位を含有する。即ち、本発明はシグナル配列を有する記載したポリペプチド、並びに、シグナル配列が蛋白分解的に切断されているポリペプチド(即ち切断産物)に関する。1つの実施形態において、シグナル配列をコードする核酸配列は目的の蛋白、例えば通常では分泌されない、又は別様には単離が困難である蛋白に発現ベクター中で作動可能に連結させることができる。シグナル配列は発現ベクターが形質転換される真核生物宿主等からの蛋白の分泌を指向しており、そしてシグナル配列は後に、又は同時に切断される。次に蛋白は当該分野で知られた方法により細胞外の培地から容易に精製できる。或いは、シグナル配列はGSTドメインを有するもののような精製を容易にする配列を用いながら目的の蛋白に連結することができる。
【0193】
本発明は又Cripto−3ポリペプチドの変異体に関する。そのような変異体はアゴニスト(ミメティック)又は拮抗剤の何れかとして機能することができる改変されたアミノ酸配列を有する。変異体は突然変異誘発、例えば個別の点突然変異又はトランケーションにより形成できる。好ましい変異体はCripto−1のものとは異なるCripto−3の特異的1つ以上のアミノ酸を維持しており、例えばCripto−3のアミノ酸V7、L68、E92及びA1781つ以上において改変されていない変異体が挙げられる。アゴニストは蛋白の天然に存在する型の生物学的活性の実質的に同じかサブセットを保持することができる。蛋白の拮抗剤は例えば目的の蛋白を包含する細胞シグナリングカスケードの下流又は上流のメンバーに競合的に結合することにより、蛋白の天然に存在する型の活性1つ以上を抑制できる。即ち、限定された機能の変異体を用いた治療により特定の生物学的作用を誘発することができる。蛋白の天然に存在する形態の生物学的活性のサブセットを有する変異体を用いた対象の治療は、蛋白の天然に存在する形態を用いた治療と相対比較して対象における副作用が低下している。
【0194】
アゴニスト(ミメティック)又は拮抗剤の何れかとして機能する本発明の蛋白の変異体は、アゴニスト又は拮抗剤活性に関して本発明の蛋白の突然変異体、例えばトランケーション突然変異体のコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることにより発見できる。1つの実施形態において、変異体の多様化されたライブラリは核酸レベルにおけるコンビナトリアルな突然変異誘発により形成でき、そして多様化された遺伝子ライブラリによりコード化される。変異体の多様化されたライブラリは例えば潜在的蛋白配列の縮重セットが個々のポリペプチドとして、又は、より大きい融合蛋白のセット(例えばファージディスプレイの場合)として発現可能であるように、遺伝子配列内に合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素的にライゲーションすることにより製造できる。縮重オリゴヌクレオチド配列から本発明のポリペプチドの潜在的変異体のライブラリを作成するために使用できる種々の方法がある。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は当該分野で知られている(例えばNarang,1983,Tetrahedron 39:3;Itakura等、1984、Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakura等、1984、Science 198:1056;Ike等、1983、Nucleic Acid Res.11:477参照)。
【0195】
更に又、Cripto−3ポリペプチドのコーディング配列のフグのライブラリを用いてスクリーニング及びその後の変異体選択のためのポリペプチドの多様化された集団を作成できる。例えば、コーディング配列フラグメントのライブラリは、分子当たり約一回ニック形成が起こる条件下でヌクレアーゼで目的のコーディング配列の可溶性鎖PCRフラグメントを処理すること、2本鎖DNAを変成すること、異なるニック化産物由来のセンス/アンチセンス対を包含できる2本鎖DNAを形成するためにDNAを再生(renature)すること、S1ヌクレアーゼで処理することにより再形成されたデュプレックスから1本鎖部分を除去すること、および得られたフラグメントライブラリを発現ベクター内にライゲーションすることにより作成できる。この方法により、目的の蛋白の種々のサイズのアミノ末端及び内部のフラグメントをコードする発現ライブラリを誘導することができる。
【0196】
点突然変異又はトランケーションにより作成したコンビナトリアルなライブラリの遺伝子産物をスクリーニングするため、および、選択された特性を有する遺伝子産物に関してcDNAをスクリーニングするための数種の手法が当該分野で知られている。大型の遺伝子ライブラリをスクリーニングするための高スループット分析に適合したもっとも広範に使用されている手法は典型的には複製可能な発現ベクター内に遺伝子ライブラリをクローニングすること、得られたベクターライブラリを用いて適切な細胞を形質転換すること、及び所望の活性の検出が自身の産物が検出される遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下においてコンビナトリアルな遺伝子を発現させることを包含する。帰納的合同突然変異誘発(REM)、即ちライブラリ中の機能的突然変異体の頻度を増大させるための手法をスクリーニング試験と組み合わせて使用することにより、本発明の蛋白の変異体を発見できる(Arkin and Yourvan,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815;Delgrave等、1993、Protein Engineering 6(3):327−331)。
【0197】
更に又、本明細書に記載した方法はCripto−1と特異的な免疫複合体を形成する、例えばCripto−3とは免疫複合体を形成しない抗体を製造するために使用してよいことも意図している。好ましくは、Cripto−1蛋白の抗原性ペプチドは、ペプチドに対抗して作成された抗体がCripto−1蛋白と免疫複合体を選択的に形成し、そしてCripto−3蛋白とは免疫複合体を形成しないように、Cripto−1蛋白のエピトープを包含する。好ましくは、抗原性ペプチドにより包含されるエピトープはCripto−3と比較してCripto−1にユニークなアミノ酸残基、例えばCripto−3のポリペプチド配列の相当するアミノ酸一におけるアミノ酸残基とは異なるCripto−1のポリペプチド配列におけるアミノ酸残基1つ以上を含むCripto−1蛋白の領域である。Cripto−3ポリペプチド内の相当するアミノ酸とは異なるCripto−1ポリペプチドにおけるアミノ酸残基はアミノ酸A7、P68、G92、V178、V22及びY43を包含する。抗原性ペプチドにより包含される好ましいエピトープはアミノ酸A7、P68、G92及びV178の少なくとも1つを含むCripto−1の領域である。関連の実施形態においては、Cripto−1蛋白の抗原性ペプチドはCripto−1蛋白の一部分を含み、ここで部分の二次構造又はコンホーメーションは、例えばCripto−3と比較した場合のCripto−1にユニークなアミノ酸、例えばA7、P68、G92及びV178の1つ以上の存在のために、Cripto−3と比較してCripto−1にユニークなものとなる。
【0198】
(ii)抗体
本発明の別の特徴はCripto−3ポリペプチドに対して指向された抗体に関する。本明細書において互換的に使用する「抗体」及び「抗体物質」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち本発明のCripto−3ポリペプチドのような抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。Cripto−3ポリペプチドに特異的に結合する分子はCripto−3ポリペプチドには結合するが、天然にはポリペプチドを含有する試料、例えば生物学的試料中の他の分子には実質的に結合しない分子である。好ましくは、Cripto−3ポリペプチドに特異的に結合する分子は、Cripto−1ポリペプチドには実質的に結合しない。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例はペプシンのような酵素で抗体を処理することにより形成できるF(ab)及びF(ab’)フラグメントを包含する。本発明はポリクローナル及びモノクローナル抗体を提供する。「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は本明細書においては、特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位の唯一の物質種を含有する抗体分子の集団を指す。
【0199】
ポリクローナル抗体は免疫原としての本発明のポリペプチドで適当な対象を免疫化することにより上記した通り製造できる。免疫化された対象における抗体力価を標準的な手法により、例えば固定化されたポリペプチドを用いた酵素結合免疫吸着試験(ELISA)により経時的にモニタリングすることができる。所望により、抗体分子を対象から(例えば対象の血液又は血清から)採集、又は単離し、そしてよく知られた手法、例えばプロテインAクロマトグラフィーにより精製することによりIgG画分が得られる。免疫化後の適切な時間において、例えば特定の抗体力価が最高値になった時点において、抗体産生細胞を対象から採取し、そして標準的な手法、例えば最初にKohler and Milstein(1975)Nature 256:495−497に記載されたハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ手法(Kozbor等、1983、Immunol.Today 4:72参照)、EBVハイブリドーマ手法(Cole等、pp.77−96、Monochlonal Antibodies and Cancer Therapy,AlanR.Liss,Inc.,1985参照)又はトリオーマ手法によりモノクローナル抗体を製造するために使用する。ハイブリドーマを製造するための技術は当該分野で良く知られている(一般的にCurrent Protocols in Immunology,Coligan等編、John Wiley&Sons,New York,1994参照)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば標準的なELISA試験を用いながら目的のポリペプチドに結合する抗体が存在するかどうか、ハイブリドーマ培養上澄みをスクリーニングすることにより検出される。
【0200】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを製造する代わりに、本発明のCripto−3ポリペプチドに対して指向されたモノクローナル抗体は目的のポリペプチドを用いて理子コンビナトリアル免疫グロブリンライブラリ(例えば抗体ファージディスプレイライブラリ)をすりすることにより発見及び単離することができる。ファージディスプレイライブラリを作成してスクリーニングするためのキットは市販されている(例えばPharmacia Recombinant Phage Antibody System,Catalog No.27−9400−01;及びStratfagene SurZAP.Phage Display Kit,Catalog No.240612)。更に又抗体ディスプレイライブラリを作成してスクリーニングする場合の使用に特に適合している方法及び試薬の例は、米国特許5,223,409;PCT公開WO 92/18619;PCT公開WO 91/17271;PCT公開WO 92/20791;PCT公開92/15679;PCT公開WO 93/01288;PCT公開WO92/01047;PCT公開WO 92/09690;PCT公開WO 90/02809;Fuchs等(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hay等(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81−85;Huse等(1989)Science 246:1275−1281;Griffiths等(1993)EMBO J 12:725−734に記載されている。
【0201】
更に又、標準的な組み換えDNA手法を用いて作成できるヒト及び非ヒトの部分を含む組み換え抗体、例えばキメラ及びヒト化モノクローナル抗体、は本発明の範囲に包含される。そのようなキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は当該分野で知られた組み換えDNA手法により、例えばPCT公開WO87/02671;欧州特許出願184,187;欧州特許出願171,496;欧州特許出願173,494;PCT出願WO86/01533;米国特許4,816,567;欧州特許出願125,023;Better等(1988)Science240:1041−1043;Liu等(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liu等(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sun等(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimura等(1987)CancerRes.47:999−1005;Wood等(1985)Nature 314:446−449;and Shaw等(1988)J.Natl.CancerInst.80:1553−1559);Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oi等(1986)Bio/Techniques 4:214;米国特許5,225,539;Jones等(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyan等(1988)Science239:1534;and Beidler等(1988)J.Immunol.141:4053−4060に記載されている方法を用いながら、製造することができる。
【0202】
完全にヒト型の抗体はヒト対象の施療的治療のために特に望ましい。そのような抗体は内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺伝子を発現できないが、ヒト重鎖及び軽鎖の遺伝子は発現できるトランスジェニックマウスを用いて製造できる。トランスジェニックマウスは選択された抗原、例えば本発明のマーカーに相当するポリペプチドの全て又は一部分を用いて通常の態様において免疫化する。抗原に対して指向されたモノクローナル抗体は従来のハイブリドーマ手法を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスにより保有されるヒト免疫グロブリントランスジーンはB細胞分化の間に再配列し、そしてその後クラススイッチ及び体細胞突然変異を起こす。即ち、このような手法を用いながら、治療上有用なIgG、IgA及びIgE抗体を製造することができる。ヒト抗体を製造するためのこの技術に関する考察は、Lonberg and Huszar(1995)Int.Rev.Immunol.13:65−93を参照できる。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を製造するためのこの技術及びそのような抗体を製造するためのプロトコルの詳細な考察は、例えば米国特許5,625,126;米国特許5,633,425;米国特許5,569,825;米国特許5,661,016;及び米国特許5,545,806を参照できる。更に又、Abgenix,Inc.(Freemont,CA)のような企業が上記したものと同様の技術を用いて選択された抗原に対して指向されたヒト抗体を提供することに従事している。
【0203】
選択されたエピトープを認識する完全ヒト型の抗体は「誘導選択」と称される手法を用いて作成できる。この方策においては、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばネズミ抗体を用いて同じエピトープを認識する完全ヒト型抗体の選択を誘導する(Jespers等、1994、Bio/technology 12:899−903)。
【0204】
増殖性障害、例えば癌においてモジュレートされるCripto−3ポリペプチドに特異的に結合する抗体、抗体誘導体又はそのフラグメントはCripto−3の活性を抑制するために使用してよく、そしてこのため、対象における増殖性障害、例えば癌を治療、抑制又は防止するために対象に投与してよい。更に又、コンジュゲートした抗体も又、対象における癌を治療、抑制又は防止するために使用してよい。コンジュゲートした抗体、好ましくはモノクローナル抗体又はそのフラグメントは薬剤、毒素又は放射性原子に結合した抗体であり、そして癌細胞に直接これらの物質を送達するための送達ベヒクルとして使用される。抗体、例えばCripto−3ポリペプチドに特異的に結合する抗体は対象に投与され、そしてマーカーに結合し、これにより罹患細胞に対して毒性物質を送達し、身体の他の部分における正常細胞に対する損傷を最小限とする。
【0205】
コンジュゲートされた抗体は又「タグ付された」、「標識された」又は「負荷された」と称される。結合した化学療法剤を有する抗体は一般的に化学標識されたと称される。結合した放射性粒子を有する抗体は放射標識されたと称され、そしてこの型の療法は放射性免疫療法(RIT)として知られている。癌を治療するために使用されることの他に、放射標識抗体は身体に拡張している癌の区域を検出するためにも使用できる。毒素に結合している抗体は免疫毒素と称される。
【0206】
免疫毒素は毒素(例えば植物又は最近由来の毒性物質)をモノクローナル抗体に結合することにより作成する。免疫毒素はモノクローナル抗体を細菌毒素、例えばジフテリア毒素(DT)又はシュードモナス細菌体外毒素(PE40)に、又は植物毒素、例えばリシンA又はサポリンに結合させることにより製造してよい。
【0207】
Cripto−3ポリペプチドに対して指向された抗体(例えばモノクローナル抗体)はアフィニティークロマトグラフィー又は免疫沈降のような標準的手法によりポリペプチドを単離するために使用できる。更に又、そのような抗体はポリペプチドの発現のレベル及びパターンを評価するためにポリペプチド(例えば細胞溶解物、又は細胞上澄み中)を検出するために使用できる。抗体は又例えば所定の治療用法の薬効(例えば抗Cripto抗体療法の薬効)を調べるための臨床試験操作法の部分として組織又は体液中(例えば卵巣関連体液中)の蛋白のレベルをモニタリングするために診断的に使用できる。検出は検出可能な物質に抗体をカップリングさせることに容易になる。検出可能な物質の例は、種々の酵素、補欠分子団、蛍光物質、ルミネセント物質、バイオルミネセント物質、および放射性物質を包含する。適当な酵素の例は、セイヨウワサビパーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを包含し;適当な補欠分子団複合体の例はストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを包含し;適当な蛍光物質の例はウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリスリンを包含し;ルミネセント物質の例はルミノールを包含し;バイオルミネセント物質の例はルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを包含し、そして適当な放射性物質の例は125I、131I、35S又はHを包含する。
【0208】
更に又、本明細書に記載した方法の何れもCripto−1ポリペプチドに特異的に結合する、例えばCripto−3ポリペプチドには結合しない分子、例えば抗体、例えばモノクローナル抗体の製造のために使用してよいことを意図している。Cripto−1ポリペプチドに特異的に結合する分子は、Cripto−1ポリペプチドには結合するが、ポリペプチドを天然に含有する試料、例えば生物学的試料中の他の分子とは実質的に結合しない分子である。好ましくはCripto−1ポリペプチドに特異的に結合する分子はCripto−3ポリペプチドには特異的に結合しない。
【0209】
IV.検出及び診断試験
本発明は試料中の本発明のマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1に相当するポリペプチド又は核酸の量、構造、及び/又は活性を測定するための検出試験又は診断試験に関する。そのような検出試験は腫瘍の表現型、例えばCripto−3又はCripto−1発現腫瘍であるかどうかを調べるために有用である。そのような試験は又、細胞(例えば患者試料由来の細胞)が形質転換されるかどうかを試験するため、例えば癌を診断するため、及び、患者が抗Cripto抗体療法のための適当な候補であるかどうかを試験するためにも有用である。好ましい実施形態においては、本発明のマーカー、例えばCripto−3の発現レベルは、細胞、例えば患者試料由来の細胞が形質転換されるかどうかを試験するための方法として試験することができる。本発明のマーカー、例えばCripto−3の発現レベルは更に、増殖性の疾患、障害又は状態、例えば癌、又は増殖性の疾患、障害又は状態を発症する危険性の診断のための方法として試験できる。更に又、本発明のマーカー、例えばCripto−3の発現レベルは、患者が抗Cripto抗体療法のための適当な候補であるかどうかを試験するための方法として試験できる。
【0210】
1.遺伝子発現の検出のための方法
本発明のマーカーの発現は転写されたポリヌクレオチド又は蛋白の発現を検出するためのよく知られた方法の広範な種類の何れかにより試験してよい。そのような方法の非限定的な例は核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写法、及び核酸増幅法、分泌された、細胞表面の、細胞質性の、又は核の蛋白の検出のための方法、蛋白精製方法、及び蛋白機能又は活性の試験を包含する。
【0211】
好ましい実施形態においては、特定のマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1の発現は、遺伝子転写物(例えばmRNA又はcDNA)の尺度により、翻訳された蛋白の量の尺度により、又は遺伝子産物の活性の尺度により、特徴づけられる。マーカー発現は種々の方法において、例えばmRNAレベル、蛋白レベル又は蛋白活性の検出によりモニタリングすることができ、これらの何れも標準的な手法を用いて測定できる。検出は、遺伝子発現のレベル(例えばcDNA、mRNA、蛋白又は酵素の活性)の定量を包含するか、又は、特に対照レベルとの比較における遺伝子発現のレベルの定性的試験であることができる。検出されるレベルの型は関連において明確化される。
【0212】
核酸ハイブリダイゼーション手法を用いた遺伝子転写物(それから作成したmRNA又はcDNA)を検出及び/又は定量する方法は当該分野で知られている(Sambrook等、上出、参照)。例えば、cDNAの存在、非存在又は量を評価するための1つの方法ではサザン転移を行う。慨すれば、mRNAを単離(例えば酸グアニジニウム−フェノール−クロロホルム抽出法、Sambrook等、上出)し、そして逆転写してcDNAを形成する。次にcDNAを場合により消化し、緩衝液中でゲル上を泳動させ、メンブレンに転移させる。次に標的cDNAに特異的な核酸プローブを用いてハイブリダイゼーションを実施する。
【0213】
そのような検出試験又は診断及び余語の試験の一般的原理は、マーカー及びプローブ(例えば核酸プローブ又はプライマー)を含有する反応混合物の試料をマーカーとプローブが相互作用して結合することにより反応混合物中で除去及び/又は検出できる複合体を形成するために適切な条件下及び十分な時間において製造することを包含する。これらの試験は種々の方法において実施できる。
【0214】
例えばそのような試験を実施する1つの方法は、基板とも称される固相支持体上にマーカー又はプローブをアンカリングすること、及び反応終了時に固相上にアンカリングされた標的マーカー/プローブを検出することを包含する。そのような方法の1つの実施形態において、マーカーの存在及び/又は濃度に関して試験すべき対象由来の試料を担体又は固相支持体上にアンカリングすることができる。別の実施形態においては、逆の状況が可能であり、その場合、プローブを固相にアンカリングし、そして対象由来の試料を試験の非アンカリング成分と反応させることができる。
【0215】
固相に試験成分をアンカリングさせるための多くの方法が確立されている。これらには限定しないがビオチン及びストレプトアビジンのコンジュゲート形成を介して固定化されているマーカー又はプローブの分子が包含される。そのような美越智似るか試験の成分は当該分野で知られた手法(例えばビオチニル化キット、Pierce Chemicals,Rockford,IL)を用いながらビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から製造でき、そしてストレプトアビジンコーティング96穴プレート(Pierce Chemical)のウェル中に固定化できる。特定の実施形態においては、固定化された試験成分を有する表面を予め製造して保存しておくことができる。
【0216】
このような試験のための他の適当な担体又は固相支持体はマーカー又はプローブが所属する分子のクラスを結合できる何れかの物質を包含する。よく知られた支持体又は担体は限定しないが、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然及び修飾されたセルロース、ポリアクリルアミド、ハンレイ岩及び磁鉄鉱を包含する。
【0217】
上記した手順により試験を実施するためには、非固定化成分を固相に添加し、その上に第2の成分をアンカリングする。反応終了後、形成された複合体は全て固相上に固定化された状態で残存するような条件下で未複合体化成分を除去(例えば洗浄による)してよい。固相にアンカリングしたマーカー/プローブ複合体の検出は本明細書に記載した多くの方法において実施できる。
【0218】
好ましい実施形態においては、プローブ(例えば核酸プローブ又はプライマー)は、それが未アンカリングの試験成分である場合は、検出及び試験の読み取りの目的のために、直接又は間接的に、本明細書に記載した、そして当該分野で良く知られている検出可能な標識で標識することができる。
【0219】
更に又、例えば蛍光エネルギー転移の手法を利用することにより、何れかの成分(マーカー又はプローブ)の操作又は標識を更に行うことなく、マーカー/プローブ複合体形成を直接検出することも可能である(例えばLakowicz等、米国特許5,631,169;Stavrianopoulos等、米国特許4,868,103参照)。第1の「ドナー」分子上の蛍光団標識は、適切な波長の入射光による励起時に、その発光蛍光エネルギーが第2の「アクセプター」分子上の蛍光標識により吸収され、それが次に吸収エネルギーにより蛍光発生性となり得るに選択される。或いは、「ドナー」の蛋白分子は単にトリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを利用してもよい。「アクセプター」分子の標識が「ドナー」のものとは示差的であるように異なる波長の光を発射する標識を選択する。標識間のエネルギー転移の効率は分子を隔てる距離に関連するため、分子間の空間的関係を試験することができる。分子間に結合が生じる状況においては、試験における「アクセプター」分子標識の蛍光の発射は最大となるはずである。FET結合事象は当該分野で良く知られている標準的な蛍光測定検出手段を介して好都合に測定できる(例えば蛍光計を用いる)。
【0220】
別の実施形態においては、プローブ(例えば核酸プローブ又はプライマー)がマーカーを認識する能力の測定は試験成分(プローブ又はマーカー)の何れを標識することもなく、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)のような技術を利用することにより行うことができる(例えばSjolander,S.and Urbaniczky,C.,1991,Anal.Chem.63:2338−2345及びSzabo等、1995、Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705参照)。本明細書においては、「BIA」又は「表面プラズモン共鳴」とは相互作用物質の何れも標識することなくリアルタイムで生体特異的な相互作用を検討するための技術である(例えばBIAcore)。結合表面における質量の変化(結合事象を示す)は表面近傍の光の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学的現象)をもたらし、生物学的分子の間のリアルタイムの反応の指標として使用できる検出可能なシグナルを与える。
【0221】
或いは、別の実施形態においては、類似の診断及び予後の試験を液相中の溶質としてのマーカー及ぶプローブにより実施できる。そのような試験において、複合体化されたマーカー及びプローブは多くの標準的手法の何れか、例えば限定しないが示差的遠心分離、クロマトグラフィー、電気泳動及び免疫沈降により、未複合体化成分から分離される。示差的遠心分離においては、マーカー/プローブ複合体は一連の遠心分離工程を介して、その異なる大きさ及び密度に基づいた複合体の異なる沈降平衡により、未複合体化試験成分から分離される(例えばRivas,G.,and Minton,A.P.,1993,Trends Biochem Sci.18(8):284−7参照)。標準的なクロマトグラフィー手法も又、複合体化分子を未複合体化のものから分離するために利用してよい。例えばゲル濾過クロマトグラフィーは大きさに基づいて分子を分離し、そして適切なゲル濾過樹脂をカラムフォーマット中で使用することを介し、例えば相対的に大型の複合体を相対的に小型の未複合体化成分から分離してよい。同様に、未複合体化成分と比較した場合のマーカー/プローブ複合体の相対的に異なる電荷特性を利用することにより、例えばイオン交換クロマトグラフィー樹脂の利用を介して複合体を未複合体化成分から差別化してよい。そのような樹脂及びクロマトグラフィー手法は当該分野で良く知られている(例えばHeegaard,N.H.,1998,J.Mol.Recongnit.Winter 11(1−6):141−8;Hage,D.S.,and Tweed,S.A.J.Chromatogr B Biomed Sci Appl 1997Oct 10;699(1−2):499−525参照)。ゲル電気泳動もまた未結合の成分から複合体化試験成分を分離するために使用してよい(例えばAusubel等編、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,1987−1999参照)。本手法において、蛋白又は核酸の複合体は例えば大きさ又は電荷に基づいて分離される。電気泳動過程における結合相互作用を維持するためには、非変性ゲルマトリックス物質及び還元剤免疫組織化学存在下の条件が典型的には好ましい。特定の試験及びその成分に対する適切な条件は当該分野で良く知られている。
【0222】
特定の実施形態において、マーカーに相当する転写されたポリヌクレオチド、例えばmRNAのレベルは、当該分野で知られた方法を用いて生物学的試料中でインサイチュ又はインビトロのフォーマットの何れかにより測定できる。「生物学的試料」という用語は、対象から単離された組織、細胞、生物学的流体及びその単離物、並びに対象内に存在する組織、細胞及び流体、例えば腫瘍細胞を包含することを意図している。
【0223】
本発明の発現検出方法は単離されたRNA、例えばmRNA又はcDNAを使用できる。インビトロの方法のためには、mRNAの単離に相反して選択することのないいずれかのRNA単離手法を細胞からのRNAの単離のために利用できる(例えばAusubel等編、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York 1987−1999参照)。更に又、Chomczynski(1989、米国特許4,843,155)の単一工程RNA単離プロセスのような当該分野で良く知られている手法を用いながら多数の組織試料を容易に処理することができる。インサイチュの方法のためには、mRNAは検出の前に細胞から単離する必要はない。そのような方法において、細胞又は組織試料は知られた組織学的方法を用いて製造/処理する。次に試料を支持体、典型的にはスライドガラス上に固定化し、次に、マーカーをコードするmRNAにハイブリダイズできるプローブに接触させる。
【0224】
本発明のマーカーに相当する単離された転写されたポリヌクレオチド、例えばmRNA又はcDNAは、ハイブリダイズ又は増幅試験、例えば限定しないが、サザン又はノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析及びプローブアレイにおいて使用できる。
【0225】
mRNA又はcDNAレベルの検出のための1つの診断方法では単離されたmRNA又はcDNAを、検出すべきマーカーによりコードされるmRNA又はcDNAにハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)に接触させる。核酸プローブは、例えば、完全長cDNA、又はその1部分、例えば少なくとも7、10、15、20、25、30、40、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900又は1000ヌクレオチド長以上の、そして本発明のマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1をコードする転写されたポリヌクレオチド、例えばmRNA又はcDNAにストリンジェントな条件下に特異的にハイブリダイズするために十分なオリゴヌクレオチドであることができる。1つの実施形態において、核酸プローブは、核酸プローブが転写されたCripto−1ポリヌクレオチドにハイブリダイズしないように転写されたCripto−3ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする。別の実施形態においては、核酸プローブは転写されたCripto−3ポリヌクレオチドにハイブリダイズしないように転写されたCripto−1ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする。本発明の方法において使用するための他の適当な核酸プローブ又はプライマーは本明細書に記載する通りである。転写されたポリヌクレオチド、例えばmRNA又はcDNAのプローブ又はプライマーとのハイブリダイゼーションは問題となっているマーカーが発現されていることを示す。
【0226】
1つのフォーマットにおいて、転写されたポリヌクレオチド、例えばmRNA又はcDNAを固体表面上に固定化し、そしてプローブと接触させるが、これは例えば単離されたmRNA又はcDNAをアガロースゲル上で泳動させ、そしてmRNA又はcDNAをゲルからメンブレン、例えばニトロセルロースに転移させることにより行う。代替のフォーマットにおいては、プローブを固体表面上に固定化し、そしてmRNA又はcDNAを例えばAffymetrix遺伝子チップアレイにおいて、プローブと接触させる。本発明のマーカーによりコードされるmRNA又はcDNAのレベルを検出する場合における使用のための知られたmRNA及び/又はcDNAの検出方法は当業者が容易に適用できるものである。
【0227】
プローブは蛋白をコードする核酸配列の完全長又は完全長未満のものであることができる。より短いプローブは特異性に関して実験的に試験される。好ましくは核酸プローブは10、15、20塩基長以上である(例えば核酸ハイブリダイゼーションに使用するための核酸プローブ配列の選択の方法に関してはSambrook等を参照)。ハイブリダイズされた部分のハイブリダイゼーションはmRNA又はcDNAの存在又は非存在の定性的測定を可能にする。
【0228】
本発明の1つの実施形態において、本発明のマーカー、例えばCripto−3及び/又はCripto−1に相当する転写されたポリヌクレオチドのレベルの測定は、転写されたポリヌクレオチドの増幅のプロセスと、その後の当該分野で良く知られている手法を用いた増幅分子の検出を包含する。核酸増幅のための方法は当該分野で知られており、そして限定しないが例えばPCR、rtPCR(Mullis,1987米国特許4,683,202に記載の実験実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:189−193)、自己持続性配列複製Guatelli等、1990、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅系(Kwoh等、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardi等、1988、Bio/Technology 6:1197)、ローリングサイクル複製(Lizardi等、米国特許5,854,033)又は当該分野で知られた何れかの他の核酸増幅方法を包含する。蛍光発生性のrtPCRもまた本発明の方法において使用してよい。蛍光発生性rtPCRにおいては、定量は蛍光シグナル、例えばTaqMan及びsybrグリーンの量に基づいている。これらの検出スキームは核酸分子が極めて少数しか存在しない場合に、そのような分子の検出のために特に有用である。本発明の好ましい増幅方法はPCR、例えばrtPCRを包含する。
【0229】
一般的に、増幅プライマーとして使用できる核酸分子は約10〜50(例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50以上)ヌクレオチド長であり、約25、50、75、100、200、300、400、500、750、10000、20000ヌクレオチド長以上の領域にフランキングしている。適切な条件下及び適切な試薬を用いれば、そのようなプライマーはプライマーによりフランキングされたヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。
【0230】
1つの実施形態において、核酸分子(プライマー)は、プライマーが転写されたCripto−3ポリヌクレオチドを選択的に増幅し、そして転写されたCripto−1ポリヌクレオチドを増幅しないように、転写されたCripto−3ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする。その様な核酸分子(プライマー)の一例は転写されたCripto−3ポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズする核酸分子(プライマー)であり、その部分はCripto−1と比較してCripto−3にユニークなアミノ酸、例えば、Cripto−1ポリヌクレオチド配列における相当するアミノ酸とは異なるCripto−3ポリヌクレオチド配列中のアミノ酸残基、例えばV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、核酸分子(プライマー)は、プライマーが転写されたCripto−1ポリヌクレオチドを選択的に増幅し、そして転写されたCripto−3ポリヌクレオチドを増幅しないように、転写されたCripto−1ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする。その様な核酸分子(プライマー)の一例は転写されたCripto−1ポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズする核酸分子(プライマー)であり、その部分はCripto−3と比較してCripto−1にユニークな1つ以上のアミノ酸、例えば、Cripto−3ポリヌクレオチド配列における相当するアミノ酸とは異なるCripto−1ポリヌクレオチド配列中の1つ以上のアミノ酸残基、例えばA7、P68、G92、V178、V22及びY43よりなる群から選択される1つ以上のアミノ酸をコードするヌクレオチドを含む。好ましい実施形態においては、Cripto−3蛋白と比較してCripto−1蛋白にユニークな1つ以上のアミノ酸はA7、P68、G92及びV178よりなる群から選択される。
【0231】
マーカーの絶対的な発現レベルに基づいて測定を行うことの代わりに、測定はマーカーの規格化された発現レベルに基づいてよい。発現レベルは、マーカーの絶対的な発現レベルを、マーカーではない遺伝子、例えば構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子の発現にその発現を比較することにより補正すれば、規格化される。規格化のための適当な遺伝子はハウスキーピング遺伝子、例えばアクチン遺伝子、又は上皮細胞特異的遺伝子である。この規格化により、1つの試料、例えば対象の試料を別の試料、例えば正常な非癌性の試料に対して、又は異なる原料に由来する試料の間で、発現レベルを比較することが可能になる。
【0232】
或いは、発現レベルは相対的発現レベルとして提示できる。マーカーの相対的発現レベルを測定するためには、マーカーの発現レベルを正常vs癌細胞単離体の1、2、3、4、5、10試料以上、好ましくは50試料以上に関して測定した後に、問題の試料に関する発現レベルを測定する。多数の試料において試験した遺伝子の各々の平均の発現レベルを求め、そしてこれをマーカーに関するベースライン発現レベルとして使用する。次に、試験試料に関して測定したマーカーの発現レベル(発現の絶対的レベル)をそのマーカーに関して得られた平均の発現値で割る。これにより相対的発現レベルが得られる。
【0233】
Cripto−3の発現レベルは試料中のCripto−1の発現レベルに対する相対的発現レベルとして提示できることも意図している。1つの実施形態において、本発明は患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験する方法を提供し、方法は、患者試料、例えば腫瘍試料中のTDGF3遺伝子の発現レベルと患者試料中のTDGF1遺伝子の発現レベルを比較する工程を含み、ここで患者試料中のTDGF1遺伝子の発現レベルと比較した場合に患者試料中のTDGF3遺伝子の発現レベルがより高値であることは患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であることを示す。好ましくは、ベースライン測定において使用する試料は同じ組織型の癌細胞又は正常細胞に由来するものとなる。細胞の原料の選択は相対的発現レベルの使用に依存する。平均発現スコアとして正常組織中で観察される発現を使用することにより、試験しているマーカーが細胞の誘導元の組織に特異的であるかどうか(vs正常細胞)を確認する場合に参考になる。更に又、データがより多く蓄積するに従って、平均発現値を見直すことができ、蓄積データに基づいた向上した相対的発現値が得られる。正常細胞由来の発現データは形質転換された状態、例えば癌の状態の重症度を等級づけるための手段を提供する。
【0234】
本発明の組成物、キット及び方法は本発明のマーカーの発現レベルの相違の検出に依存しているため、マーカーの発現のレベルは正常細胞及び癌性の細胞の少なくとも1つにおける発現を試験するために使用される方法の最低検出限界より有意に高値である。
【0235】
別の好ましい実施形態においては、マーカーの発現は対象試料中の細胞に由来するゲノムDNA又はmRNA/cDNA(即ち転写されたポリヌクレオチド)を製造することにより、そしてマーカーを含むポリヌクレオチド及びそのフラグメントの相補体であるレファレンスポリヌクレオチドとゲノムDNA又はmRNA/cDNAをハイブリダイズすることによりにより試験される。cDNAは場合によりレファレンスポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの前に種々のポリメラーゼ連鎖反応法の何れかを用いて増幅できる。1つ以上のマーカーの発現も同様に定量的PCR(QPCR)を用いることにより検出することができ、これによりマーカーの発現のレベルを試験できる。或いは、本発明のマーカーの突然変異又は変異体(例えば1ヌクレオチド多形、欠失等)を検出するための多くの知られた方法の何れかを使用して対象における突然変異したマーカーの存在を検出してよい。
【0236】
別の実施形態においては、マーカーの発現を試験するための方法の組み合わせを利用する。
【0237】
2.発現された蛋白の検出のための方法
本発明のマーカー蛋白、例えばCripto−3及び/又はCripto−1の活性又はレベルは又、発現されたポリペプチドを検出又は定量することにより、検出及び/又は定量することができる。ポリペプチドは当該分野で良く知られている多くの集団の何れかにより検出及び定量できる。これらは分析的生化学的方法、例えば電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高拡散クロマトグラフィー等、又は種々の免疫学的方法、例えば流体又はゲルの沈降反応、免疫拡散法(単一又は二重)、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着試験(ELISA)、免疫蛍光試験、ウエスタンブロット等を包含してよい。当業者であれば、細胞が本発明のマーカーを発現するかどうかを測定する場合の使用に対して既知の蛋白/抗体検出方法を容易に適合できる。
【0238】
本発明のポリペプチドを検出するための好ましい薬剤は、本発明のマーカーに相当するポリペプチドに結合できる抗体、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。抗体はポリクローナル、或いは、より好ましくはモノクローナルであることができる。未損傷の抗体又はそのフラグメント(例えばFab又はF(ab’))を使用できる。プローブ又は抗体に関する場合の「標識された」という用語は、プローブ又は抗体に検出可能な物質をカップリング(即ち物理的に連結)することによるプローブ又は抗体の直接の標識、並びに、直接標識される別の試薬との反応性によるプローブ又は抗体の間接的標識を包含することを意図する。間接的標識の例は、蛍光標識された二次抗体を使用した一次抗体の検出、及びビオチンを用いてそれが蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できるようにしたDNAプローブの末端標識を包含する。
【0239】
好ましい実施形態においては、抗体は標識された、例えば放射標識された、発色団標識された、蛍光団標識された、又は酵素標識された抗体である。別の実施形態においては、抗体誘導体(例えば基板又は蛋白又は蛋白−リガンド対{例えばビオチン−ストレプトアビジン}のリガンドとコンジュゲートされた抗体)、又はマーカーに相当するオープンリーディングフレームによりコードされた蛋白、又は自身の翻訳後修飾の全て又は一部分を起こしている蛋白のようなマーカーに相当する蛋白に特異的に結合する抗体フラグメント(例えば単鎖抗体、単離された抗体の超可変ドメイン等)を使用する。
【0240】
細胞由来の蛋白は、当該分野で良く知られている手法を用いて単離できる。使用される蛋白単離方法は例えば、Harlow and Lane(Harlow and Lane,1988,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)に記載されているものなどであることができる。
【0241】
1つのフォーマットにおいて、抗体又は抗体フラグメントは発現された蛋白を検出するためのウエスタンブロット又は免疫蛍光手法のような方法において使用できる。そのような用途において固体支持体上に抗体又は蛋白の何れかを固定化することが一般的に好ましい。適当な固相支持体又は担体は抗原又は抗体を結合できる何れかの支持体を包含する。良く知られた支持体又は担体はガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然及び修飾されたセルロース、ポリアクリルアミド、ハンレイ岩及び磁鉄鉱を包含する。
【0242】
当業者であれば抗体又は抗原を結合するための多くの他の適当な担体を知っており、そして本発明と共に使用するためにこのような支持体を適合することができる。例えば、細胞から単離した蛋白はポリアクリルアミドゲル電気泳動上で泳動し、そしてニトロセルロースのような固相指示体上に固定化することができる。次に支持体を適当な緩衝液で洗浄し、その後、検出可能に標識された抗体で処理することができる。次に固相支持体を緩衝液で再度洗浄し、未結合の抗体を除去することができる。次に固体支持体上の結合標識の量を従来の手段により検出できる。電気泳動法を用いて蛋白を検出する手段は当該分野で良く知られている(一般的に、R.Scopes(1982)Protein Purification,Springer−Verlag,N.Y.;Deutscher,(1990)Methods in Enzymology Vol.182:Guide to Protein Purification,Academic Press,Inc.,N.Y.を参照できる)。
【0243】
別の好ましい実施形態においては、ウエスタンブロット(イムノブロット)分析を用いて試料中のポリペプチドの存在を検出及び定量する。この手法は一般的に分子量に基づいてゲル電気泳動により試料蛋白を分離すること、分離された蛋白を適当な固体支持体(例えばニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター又は誘導体化ナイロンフィルター)に転移させること、及びポリペプチドに特異的に結合する抗体と共に試料をインキュベートすることを含む。抗ポリペプチド抗体は固体支持体上のポリペプチドに特異的に結合する。これらの抗体は直接標識するか、或いは、抗ポリペプチドに特異的に結合する標識された抗体(例えば標識されたヒツジ抗マウス抗体)を用いて後に検出してよい。
【0244】
より好ましい実施形態においては、ポリペプチドはイムノアッセイを用いて検出する。本明細書においては、イムノアッセイとは分析対象に特異的に結合するために抗体を利用する試験である。即ちイムノアッセイは分析対象を単離し、ターゲティングし、そして定量するために他の物理的及び化学的な特性を使用することとは異なり、抗抗体へのポリペプチドの特異的結合の検出を特徴とする。
【0245】
ポリペプチドは多くの良く知られた免疫学的結合試験の何れかを用いて検出及び/又は定量する(例えば米国特許4,366,241;4,376,110;4,517,288;及び4,837,168参照)。一般的なイムノアッセイの考察は、Asai(1993)Methods in Cell Biology Volume 37:Antibodies in Cell Biology,Academic Press,Inc.New York;Stites&Terr(1991)Basic and Clinical Immunology 7th Editionも参照できる。
【0246】
免疫学的結合試験(又はイムノアッセイ)は典型的には分析対象(ポリペプチド又は配列)に特異的に結合し、そして頻繁にはこれを固定化するために「キャプチャー剤」を使用する。キャプチャー剤は分析対象に特異的に結合する部分である。好ましい実施形態においては、キャプチャー剤はポリペプチドに特異的に結合する抗体である。抗体(抗ペプチド)は当該分野で良く知られている多くの手段の何れかにより製造してよい。
【0247】
イムノアッセイは頻繁には、キャプチャー剤と分析対象により形成される結合複合体に特異的に結合してこれを標識するために標識剤を利用する。標識剤はそれ自体が抗体/分析対象複合体を含む部分の1つであってよい。即ち、標識剤は標識されたポリペプチド又は標識された抗抗体であってよい。或いは、標識剤は抗体/ポリペプチド複合体に特異的に結合する別の抗体のような第3の部分であってよい。
【0248】
1つの好ましい実施形態においては、標識剤は標識を担持した第2のヒト抗体である。或いは、第2の抗体は標識を欠いていてよいが、その代わりに、第2の抗体の誘導元の種の抗体に特異的な標識された第3の抗体により結合されてよい。第2のものは酵素標識ストレプトアビジンのような第3の標識された分子が特異的に結合できる検出可能な部分、例えばビオチンにより修飾されていることができる。
【0249】
プロテインA又はプロテインGのような免疫グロブリン定常領域に特異的に結合できる他の蛋白も又、標識剤として使用してよい。これらの蛋白は連鎖球菌の細胞壁の通常の構成要素である。これらは種々の種に由来する免疫グロブリン定常領域に対して強力な非免疫原性の反応性を示す(一般的にKronval等(1973)J.Immunol.,111:1401−1406及びAkerstrom(1985)J.Immunol.,135:2589−2542を参照できる)。
【0250】
上記した通り、ポリペプチドの検出及び/又は定量のためのイムノアッセイは当該分野で良く知られている広範な種類のフォーマットをとることができる。
【0251】
ポリペプチドを検出するための好ましいイムノアッセイは競合的又は非競合的のいずれかである。非競合的なイムノアッセイはキャプチャーされた分析対象の量を直接測定する
試験である。1つの好ましい「サンドイッチ」試験においては、例えば、キャプチャー剤(抗ペプチド抗体)は固体基板に直接結合され、そこでそれらは免疫化されることができる。次にこれらの固定化された抗体が試験試料中のポリペプチドをキャプチャーする。このようにして固定化されたポリペプチドは次に、標識剤、例えば標識を担持している第2のヒト抗体に結合される。
【0252】
競合的試験の場合は、試料中に存在する分析対象(ポリペプチド)の量は、試料中に存在する分析対象によりキャプチャー剤(抗ペプチド抗体)から退去させられた(又は競合的に排除された)添加された(外来の)分析対象の(ポリペプチド)の量を測定することにより間接的に測定される。1つの競合的試験において、既知量の、この場合はポリペプチドを試料に添加し、そして次に試料をキャプチャー剤と接触させる。抗体に結合したポリペプチドの量は試料中に存在するポリペプチドの濃度に反比例する。
【0253】
1つの特に好ましい実施形態においては、抗体は固体基盤上に固定化される。抗体に結合したポリペプチドの量はポリペプチド/抗体複合体中に存在するポリペプチドの量を測定することにより、又は残存する未複合体化ポリペプチドの量を測定することにより、測定してよい。ポリペプチドの量は標識されたポリペプチドを供することにより検出してよい。
【0254】
本発明の試験は当該分野で良く知られている標準的な方法に従って採点される(陽性又は陰性又はポリペプチドの量)。採点の特定の方法は試験フォーマット及び選択された標識に依存することになる。例えば、ウエスタンブロット試験は酵素標識により生成された着色生成物を可視化することにより採点できる。正しい分子量における明確に目視できる着色されたバンド又はスポットは陽性の結果と採点され、そして明確に目視できるスポット又はバンドが存在しないことは陰性と採点される。バンド又はスポットの強度はポリペプチドの定量的尺度を与えることができる。
【0255】
本明細書に記載した種々のイムノアッセイにおける使用のための抗体は上記した通り製造できる。
【0256】
別の実施形態において、レベル(活性)は遺伝子産物の酵素的活性を測定することにより試験される。酵素活性を試験する方法は当該分野で良く知られている。
【0257】
バイオマーカー蛋白の検出のためのインビボの手法は、蛋白に対して指向された標識抗体を対象内に導入することを包含する。例えば抗体は、対象内の自身の存在及び位置が標準的な画像化手法により検出できる放射性マーカーで標識できる。
【0258】
当然ながら、対象の試料、例えば組織又は細胞、例えば腫瘍組織又は細胞を含有する試料、例えば全血、血清、血漿、口腔スワブ、唾液、脊髄液、脳脊髄液、尿、糞便は特に細胞が癌性である場合、そして更にとりわけ癌が転移中である場合そこに細胞を含有する場合があり、そしてこのため、本発明の方法において使用してよい。細胞試料は当然ながら、試料中のマーカーの発現レベルの試験前に種々の良く知られた収集後の調整及び保存の手法(例えば核酸及び/又は蛋白の抽出、固定化、保存、凍結、限外濾過、濃縮、蒸発、遠心分離等)に付すことができる。即ち、本発明の組成物、キット及び方法は自身を発現する細胞の表面上にディスプレイされる部分少なくとも1つを有する蛋白に相当するマーカーの発現を検出するために使用できる。何れかの特定のマーカーに相当する蛋白が細胞表面蛋白を含むかどうかを調べることは当業者にとっては簡単なことである。例えば、免疫学的方法を用いて全細胞上のそのような蛋白を検出してよく、又はよく知られたコンピューター系の配列分析方法(例えばSIGNALPプログラム;Nielsen等、1997、Protein Engineering 10:1−6)を用いて少なくとも1つの細胞外ドメインの存在を予測してよい(即ち分泌蛋白および少なくとも1つの細胞表面ドメインを有する蛋白の両方を包含する)。自身を発現する細胞の表面上にディスプレイされる部分少なくとも1つを有する蛋白に相当するマーカーの発現は必ずしも細胞を溶解することなく検出してよい(例えば蛋白の細胞表面ドメインに特異的に結合する標識された抗体を使用する)。
【0259】
本発明は又、生物学的試料、例えば組織又は細胞、例えば腫瘍組織又は細胞を含有する試料、又は生物学的流体、例えば全血、血清、血漿、口腔スワブ、唾液、脊髄液、脳脊髄液、尿、糞便中の本発明のマーカーに相当するポリペプチド又は核酸の存在を検出するためのキットを包含する。そのようなキットは細胞が形質転換されているかどうかを調べるために使用できる。そのようなキットは抗Cripto抗体療法に対して対象が適当な候補であるかどうかを試験するためにも使用できる。例えば、キットは生物学的試料中の本発明のマーカーに相当するポリペプチド又はポリペプチドをコードするmRNAを検出することができる標識された化合物又は薬剤、及び試料中のポリペプチド又はmRNAの量を測定するための手段(例えばポリペプチドに結合する抗体、又はポリペプチドをコードするDNA又はmRNAに結合する核酸分子(プローブ又はプライマー))を含むことができる。キットは又、キットを用いて得られた結果を解釈するための説明書を包含できる。
【0260】
抗体系キットに関しては、キットは、例えば(1)本発明のマーカーに相当するポリペプチドに結合する第1の抗体(例えば固体支持体に結合);及び場合により(2)ポリペプチド又は第1の抗体の何れかに結合し、検出可能な標識にコンジュゲートされた第2の異なる抗体、を含むことができる。
【0261】
核酸分子系キットに関しては、キットは、例えば(1)本発明のマーカーに相当するポリペプチドをコードする核酸配列にハイブリダイズする核酸分子(プローブ)、例えば検出可能に標識された核酸分子、又は(2)本発明のマーカーに相当する核酸分子を増幅するために有用な核酸分子対(プライマー)、を含むことができる。キットは又、例えば緩衝剤、保存料又は蛋白安定化剤も含むことができる。キットは更に検出可能な標識(例えば酵素又は基質)を検出するために必要な成分も含むことができる。キットは又試験して試験試料と比較することができる対照試料又は一連の対照試料も含有できる。キットの各成分は個別の容器内に封入することができ、そして、種々の容器の全ては、キットを使用して実施された試験の結果を解釈するための説明書と共に単一のパッケージ内に包含されることができる。
【0262】
本発明は以下の実施例により更に説明するが、それらは限定的とみなしてはならない。本出願全体を通して引用された全ての参考文献、図面、表、添付資料、アクセッション番号、特許及び公開特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0263】
実施例1:TDGF3(Cripto−3)遺伝子発現分析
A.材料及び方法
ヒトゲノムDNA及びRNAの試料。健常対照ヒトゲノムDNAをSigma(HRC1パネル)及びCoriell Cell Repositoriesから購入した。ヒト癌ゲノムDNA及びRNAはBiochain Institute Inc.(Hayward,CA94545)から購入するか、又はヒト組織(Asterand,Detroit,MI48202)及び細胞培養物から製造した。全てのヒト癌細胞系統はNCI−DCTD腫瘍レポジトリーから入手したKM20L2を除き、American Type Culture Collectionから入手した。DNAはDNeasyキット(Quiagen,Valencia,CA)で製造した。RNAはTrizolで製造し、RNeasyキット(Quiagen,Valencia,CA)でフォローアップした。「ゲノムDNA非含有」RNA中でいかなる残存ゲノムDNA夾雑物も排除するため、各RNA試料1μgをcDNA合成前に室温で15又は30分間DNaseI(Invitrogen)1単位で消化した。cDNAはCripto−1イントロン特異的オリゴプライマー:(CGCTTACAGGAATTGCCCTTGC(配列番号45);及びCAGACCCAAGCTATCGCAGC(配列番号46))を用いたPCRによりgDNA夾雑に関して確認した。
【0264】
cDNA製造及びTAクローニング。cDNAはSMARTcDNA合成キット(BDClontech,CA)を用いて、製造元のプロトコルに従って合成した。ゲノムDNAを含有しない全RNAの0.3μgを各試料に関して使用した。各試料由来のcDNAを鋳型として用いることにより、TDGF1及びCripto−3cDNAの完全長又はフラグメントを、両方の遺伝子について共通である以下のオリゴプライマー:
GGCTGAGTCTCCAGCTCAAGG(FL、フォワード)(配列番号47)及び、
GTATTTCTGGAAATAGGTCAATGTCG(FL、リバース)(配列番号48);
GGCTGAGTCTCCAGCTCAAGG(部分、フォワード)(配列番号47)及び、
TGTGATTTGGATCATGGCCA(部分、リバース)(配列番号49)、
を用いて増幅した。PCR産物はpCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen)内にクローニングし、各組織試料由来の多数の単離体を配列決定した。
【0265】
ピロシーケンサーによる遺伝子タイピング。標的DNAフラグメントを0.4μlのチタニウムTaqDNAポリメラーゼ(BD Biosciences,Palo Alto,CA)を含有する20μlの反応容量中20ngのゲノムDNAからPCR増幅した。PCR条件は以下の通り、即ち初期変性95℃1分、変性94℃45秒、アニーリング64℃45秒、伸長72℃0.5分、及び反復回数38サイクルとした。プライマーの配列は以下の通りであった。
CTCATGTTTGACTTCCTCTTC(フォワード)(配列番号50)、
CATCGAAGTCAGGCAGTTCTTAC(リバース、5’末端でビオチニル化)(配列番号51);
GATCATGGCCATTTCTAAAG(V/A22に対する配列決定プライマー)(配列番号52);
GAATTTGCTCGTCCATCTCGGGGA(Y/D43に対する配列決定プライマー)(配列番号53)。
約3〜8μlのPCR産物をPSQ96HS機材(Biotage,Uppsala,Sweden)上で製造元により示唆されたプロトコルに従って遺伝子タイピングのために使用した。
【0266】
Cripto−1及びCripto−3特異的PCR。PCR条件は以下の通り、即ち初期変性95℃1分、変性94℃45秒、アニーリング64℃(Cripto−3特異的)又は66℃(Cripto−1特異的)45秒、伸長72℃1分、及び反復回数35サイクルとした。プライマーの配列は以下の通りであった。
Cripto−1に対するフォワードオリゴヌクレオチド:GCTACGACCTTCTGGGGAAAACG(配列番号36);
Cripto−1に対するリバースオリゴヌクレオチド:CTGGTCATGAAATTTGCATG(配列番号37);
Cripto−3に対するフォワードオリゴヌクレオチド:GCGTGTGCTGCCCATGGGA(配列番号27);
Cripto−3に対するリバースオリゴヌクレオチド:CGGGTCATGAAATTTGCATA(配列番号28)。
PCR産物の予測される大きさはCripto−1フラグメントでは776bp、及びCripto−3フラグメントでは431bp以下であった。
【0267】
Cripto蛋白のFACS検出。細胞を抗Cripto抗体10μg/mlと共にインキュベートし、抗マウスIgGPEコンジュゲート二次抗体で染色した。約10,000個の細胞をFACSカリバー及びFlowJoソフトウエアを用いながらフローサイトメトリーにより分析した。
【0268】
B.結果
Cripto−3遺伝子発現。Cripto−3遺伝子がヒト腫瘍組織及び腫瘍細胞系統において発現されるかどうかを調べるために、ヒト腫瘍組織試料及び腫瘍細胞系統に由来するCriptocDNAをCripto−1とCripto−3に共通のプライマーを用いて増幅した(図2B)。次にPCR生成物をクローニングし、そして各試料由来の多数のクローンを配列決定した。Cripto−3は無イントロンの遺伝子であるため、そのゲノムコーディング配列はcDNA配列と同一である。即ち、如何なるゲノムDNA夾雑RNA調製品も増幅され、そしてCripto−3cDNAとして誤解釈される可能性がある。ゲノムDNA(gDNA)夾雑を排除するために、RNA調製品をDNaseIで十分処理した後に逆転写し、そしてCripto−1イントロンに特異的なプライマーを用いたPCRを実施することによりcDNAがゲノムDNA夾雑のないことを確認した(図2)。意外なことに、癌試料由来のcDNAクローンの全ての単離体がCripto−3遺伝子から誘導され、そしてCripto−3cDNAは又試験した8癌細胞系統のうち5系統において観察された(表4)。
【0269】
【表4】

TAがコーディング潜在性を有さないmRNAを起源とするcDNAフラグメントをクローニングした可能性に関する対照とするために、別の癌組織試料由来の完全長TDGFcDNAをCripto−1とCripto−3に共通のプライマーを用いてPCR増幅した。全てのTDGF陽性癌試料に由来する完全長cDNAクローン単離体はCripto−3遺伝子から誘導されることがわかった(表5)。Cripto−3cDNAも又、1正常乳腺、2正常結腸及び3正常肺試料中に存在していた(表5)。Cripto−1cDNAは乳腺試料6点中3点、及び肺試料6点中2点を包含する健常組織から増幅されたのみであった(表5)。1点の正常肺試料のみがCripto−1及びCripto−3遺伝子の両方から誘導されたcDNAクローンをもたらした(表5及び表4)。
【0270】
【表5】

転写物特異的PCR。Cripto−1とCripto−3に共通のプライマーを用いたPCRは一方の遺伝子転写物に対してもう一方よりも偏ったデータを生じさせた可能性がある。TDGF発現に関する独立した実験データを得るために、2遺伝子の間で固定されたヌクレオチド相違を利用しながら上記と同じセットのcDNAに対して転写物特異的PCRを実施した。2蛋白間には4種の固定されたアミノ酸相違、即ちCripto−1においてはアラニン7(A7)、プロリン68(P68)、グリシン92(G92)及びバリン178(V178)であるのに対し、Cripto−3においてはバリン7(V7)、ロイシン68(L68)、グルタミン酸92(E92)及びアラニン178(A178)が存在する。これらのユニークなアミノ酸の1つ以上をコードするヌクレオチド配列に特異的なプライマーを用いてCripto−1又はCripto−3転写物を特異的に増幅した。図3Aに示す通り、3種の正常乳腺及び2種の正常肺の試料はCripto−1を発現した。これとは対照的に、本実験において試験した癌試料の全てはCripto−3に関して陽性であるか、又は陰性のRT−PCR結果を有していた。
【0271】
SAGEデータベース検索。次に、公的なSAGEデータベース(www.ncbi.nlm.gov/projects/SAGEのウエブサイト参照)をCripto−3発現の独立した証拠に関して検索した。検索において使用したTDGF1特異的タグは配列:TAATTCTACCAAGGTCTであった。検索に使用したCripto−3特異的タグは配列:CTCTTCAGAAであった。SAGEライブラリの2つの非重複セットはCripto−1又はCripto−3タグの何れかに対して陽性であった。10Cripto−1タグ陽性ライブラリのうち9点はES細胞由来、1つは胎児脳由来であった。5Cripto−3陽性ライブラリのうち4点は癌試料由来であった。これらのデータはCripto−3が癌組織中で発現されるという結論をさらに裏付けている。
【0272】
アフィメトリックス遺伝子発現データ。次に、腫瘍におけるCripto−1ではなくCripto−3の発現を裏付ける別の独立した証拠がアフィメトリックス遺伝子発現データから誘導された。ヒトU95Av2アフィメトリックスチップ上のプローブセット40386_r_atをCripto−1特異的としてアノテーションした。しかしながら、これらのプローブセットにおける16プローブのうち僅か1つのみがCripto−1に対して特異的であり、他のプローブは全てCripto−1とCripto−3の両方に共通している。「Cripto−1」発現はこのプローブセットを用いて42点の人悪性結腸試料中28点において検出された。Cripto−1特異的オリゴヌクレオチドプローブは、シグナルがほぼ常時「非存在」であったため、一貫してセット中の全プローブの最低強度を有していた(p<0.01)。これらの実験においてCripto−1特異的プローブに由来するシグナルが欠如していたことはCripto−1メッセージよりはむしろCripto−3からCriptoシグナルが誘導されていることと合致している。
【0273】
配列変異分析。最後に、観察されたcDNA配列がCripto−1における多形又は突然変異から誘導される可能性があるかどうかを試験するために、Cripto−1及びCripto−3における配列の変異を96健常者対照、72癌試料、及び32細胞系統に由来するDNAにおいて分析した。Cripto−1に関しては2つのあらかじめ報告されているSNP、rs11130097及びrs2293025は、dsSNPにおいて報告されている健常者集団に由来するものと同様の対立遺伝子頻度を示した。Cripto−1はCripto3においては単形である2つの部位において多形であった。特に、Cripto−1はアミノ酸残基22、例えばV/A22(ヌクレオチド位312においてT/C)、そしてアミノ酸残基43、例えばY/D(ヌクレオチド位374においてT/G)において多形であることが観察された。Cripto−3はこれらの位置において単形であることがわかり、その場合、Cripto−3配列における特定のアミノ酸は、例えばA22及びD43のようなCripto−1配列における2つの変異体の1つにおけるその位置におけるアミノ酸と同じである。即ちアミノ酸V22及びY43はCripto−1にユニークである。V22に関する推定対立遺伝子頻度は白人(94個体を遺伝子タイピング)において約47%、そしてアフリカ系アメリカ人(86個体を遺伝子タイピング)において約57%である。D43に関する推定対立遺伝子頻度は白人(94個体を遺伝子タイピング)において4%、そしてアフリカ系アメリカ人(96個体を遺伝子タイピング)において1%である。その他に関しては、Cripto−1とCripto−3が異なる部位においてSNPや突然変異は観察されなかった。Cripto−3に関しては、全コーディング配列をこれらの204試料において配列決定し、そしてヌクレオチド変異は観察されず、全配列は本明細書に記載するCripto−3cDNAクローンに関して観察されたものと同一であった。
【0274】
Cripto−3蛋白発現。次の疑問点はCripto−3mRNAが細胞内で翻訳され、そして生じたCripto−3蛋白が細胞表面にまで輸送されるかどうかであった。2つの抗Cripto抗体、B3.F6及びA6.C12を用いて蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によりCripto−3蛋白を測定した。BT474、即ちCripto−3cDNAのみが良好にPCR増幅できた細胞系統は、Cripto−1 RT−PCRのみに対して陽性である細胞系統NCCITと同じ染色パターンを示した(図4A)。同様の結果がCripto−1又はCripto−3の何れかを発現するプラスミドでトランスフェクトされている細胞系統T47D(内因性Cripto発現については陰性)からえられた(ず4B)。これらの結果はCripto−3遺伝子が転写されるのみならず、Cripto−3蛋白が翻訳されてこれらの細胞の細胞表面に輸送されたことを示している。
【0275】
Cripto−3発現の調節。本明細書に記載した通り一部の癌においてCripto−3の発現が観察されたため、この遺伝子がこれらの細胞においてどのようにして脱調節されるかという疑問が生じる。Cripto−3発現が癌において脱調節される機序として考えられるものは、限定しないが、(i)Cripto−3遺伝子座の増幅;(ii)Cripto−3のプロモーター/調節領域における突然変異;(iii)Cripto−3発現を調節する転写因子のアップレギュレーション又はダウンレギュレーション;及び(iv)Cripto−3プロモーターのメチル化状態の変化を包含する。ゲノムワイドの発現プロファイルのマイニングにより発現パターンがTDGFと正の相関にある数種の遺伝子、例えばASCL2、DHCR7、EPHB3、GPSM2、NOX1、C13orf23およびNUFIP1が判明した。特にASCL2はE−Box配列フラグメントのクラスターに結合する転写因子をコードしている。Cripto−3転写開始部位の上流300ヌクレオチド領域内にE−Box6個が存在するのに対し、Cripto−1転写開始部位の上流300ヌクレオチドフラグメント内にはE−Box僅か1個が存在するのみである。これらのデータはASCL2転写因子とCripto−3遺伝子発現の間に関連性がある可能性があることを示唆している。更にゲノム分析を行うことによりいかにしてCripto−3遺伝子発現が癌においてモジュレートされるかが解明し易くなり、癌治療のためにCripto又はその相互作用蛋白をどのようにターゲティングすればよいかに関する情報が更にもたらされると考えられる。
【0276】
C.考察
Cripto−1とCripto−3のレファレンス配列の間には6つのアミノ酸相違が存在し、そのうち4つは固定された相違であり、2つはCripto−1において多形である部位にある。図1に示す通り、固定されたアミノ酸相違はA7V、P68L、G92E、V178A(Cripto−1配列をはじめに示す)である。これらのアミノ酸相違の機能的意味は現時点では不明であるが、68位におけるロイシンによるプロリンの非保存的置換は注目すべきである。やはり注目すべき点は、ヒトゲノム内のTDGF偽遺伝子の全てのうち、Cripto−3がそのオープンリーディングフレーム内に維持されている唯一の偽遺伝子である点である。更に又、本明細書において試験した試料においては突然変異やSNPは観察されなかった。チンパンジーX染色体(レファレンス配列コンティーグNW122118.1)上の無イントロンTDGF偽遺伝子の存在は、Cripto−3が少なくともヒト種と同様に古いことを示している。従って、Cripto−3遺伝子は低減した変異を有するゲノムの一部分にあるか、及び/又は精製選択に付されていると考えられる。Cripto−3上での集中的な精製選択は、Cripto−3が機能的役割も癌において遺伝子が果たす何れかの役割に追加的に有していることと合致している。
【0277】
本発明に先だって、TDGF発現に関する全ての公開された研究はCripto−1とCripto−3を区別しない方法を使用している。IHC、ノーザンブロット分析及びゲノムワイドのオリゴヌクレオチドチップの結果は、単にCripto−3がイントロン欠如のような偽遺伝子の一部の目印を担持しているという理由から、Cripto−1に起因するとされていた。しかしながら、無イントロン遺伝子の発現は稀ではなく;ヒト遺伝子の約5%が無イントロンと推定される。15Cripto−3からCripto−1を区別するための十分な配列特異性を有する唯一の公的に入手されるデータはSAGEであるが、癌におけるCripto−3発現を示すデータは見落とされている。
【0278】
出願人等は推定偽遺伝子Cripto−3は機能的な無イントロン遺伝子であること、及びCripto−3が有意な数量のTDGF陽性癌組織において検出可能なレベルで発現される唯一のCripto遺伝子であることの証拠を最初に提示した。Cripto−1は早期の胚の発生の間に重要な役割を果たすこと、及びCripto−1の操作された過剰発現は腫瘍形成性であることは明白である。Cripto−3が癌組織において発現されること、及びCripto−3はCripto−1と同様のコーディング配列を有することを観察したことは、Cripto−3発現も又腫瘍形成性であることを強力に示唆している。即ち、Cripto−1は胚発生及び乳腺発達の間に重要な役割を果たすべく進化したと考えられるが、Cripto−1又はCripto−3の何れかが高レベルで成人組織において発現することは腫瘍形成性であると予測される。
【0279】
実施例2:Cripto−Nodalシグナリング試験におけるTDGF3(Cripto−3)機能
A.材料及び方法
マウスCriptoに関してヌルであるマウス奇形癌F9Cripto−/−細胞(24穴プレート中2x10個/ウェル)を50ngの(n2)−ルシフェラーゼレポーターコンストラクト、100ngのフォークヘッドアビジンシグナルトランスデューサー(FAST)転写因子、及び100ngの完全長ヒトCripto−1又はヒトCripto−3発現プラスミドと共にリポフェクタミン(Invitrogen)を用いながらトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞をLucLite(Perkin Elmer)で溶解し、ルシフェラーゼ活性をルミネセントのメーター(Perkin Elmer)において測定した。
【0280】
B.結果
ひとCripto−1及びヒトCripto−3がNodalを介してシグナリングする能力について、FAST転写因子依存性(n2)−ルシフェラーゼレポーター試験において試験した。活性はマウスCripto遺伝子座(F9Cripto−/−)の不活性化に関してターゲティングされたマウスF9誘導胚性癌腫細胞系統遺伝子において試験した。これらの細胞は内因性Nodalを含有するが、Criptoに関してはヌルであり、即ちCripto依存性シグナリングに関してはヌルである。対照と比較した場合にCripto−3及びCripto−1トランスフェクト細胞においてはルシフェラーゼ活性の4〜6倍増大が観察された(図5)。これらの結果はヒトCripto−1及びヒトCripto−3が両方ともNodalを介してシグナリングできることを示している。
【0281】
参考文献
【0282】
【表6−1】

【0283】
【表6−2】

等価物
当業者であれば、定型的な実験を超えることなく本明細書に記載した本発明の特定の実施形態と等価である多くのものを認識、又は確認することができる。そのような等価物は添付請求項に包含されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0284】
【図1A】図1A−CはCripto−1及びCripto−3をコードするヌクレオチド配列及びポリペプチド配列を示す。(A)TDGF1及びTDGF3によりコードされる蛋白のペプチド配列アライメント。上側の線はCripto1配列(配列番号1)であり下側の線はCripto3配列(配列番号2)である。共通の配列は中央にある。2蛋白間の異なるアミノ酸残基の位置は点で示す。TDGF1におけるSNPにより誘発されたCripto1における可変アミノ酸部位はアスタリスクで示し、2蛋白間の固定されたアミノ酸相違を有する部位は箱で囲む。シグナルペプチドは太字で示す。潜在的フコシル化部位には下線を付す。
【図1B】図1A−CはCripto−1及びCripto−3をコードするヌクレオチド配列及びポリペプチド配列を示す。(B)Cripto−1をコードする核酸配列(配列番号3)。
【図1C】図1A−CはCripto−1及びCripto−3をコードするヌクレオチド配列及びポリペプチド配列を示す。(C)Cripto−3をコードする核酸配列(配列番号4)。
【図2A】図2A−2BはTDGFcDNAフラグメントのPCR増幅の結果を示す。(A)cDNA純度試験。TDGF1遺伝子に対して相対的なオリゴの位置及びcDNAおよびゲノムDNAを用いたPCRからの予測される結果を示す。レーン1〜4:4乳腺腫瘍由来のcDNA;レーン5〜8:4結腸腫瘍由来のcDNA;レーン9〜12:4肺腫瘍由来のcDNA;レーン13:100bpのDNAマーカー;レーン14〜25:レーン1〜12と同じセットの組織試料に由来するゲノムDNA。
【図2B】図2A−2BはTDGFcDNAフラグメントのPCR増幅の結果を示す。(B)エキソン間PCR。TDGF遺伝子に対して相対的なオリゴの位置及び転写物、並びにcDNA及びゲノムDNAを用いたPCRからの予測される結果を示す。1374bpのDNAフラグメントはTDGF1遺伝子由来であり、ゲノムDNAから増幅された286bpのDNAフラグメントはTDGF3遺伝子由来であり、そしてcDNAから増幅された286bpDNAフラグメントは、cDNA鋳型はゲノムDNA夾雑がないため、TDGF1及び/又はTDGF3cDNA由来である。
【図3A】図3A−3Bは転写物特異的PCRの結果を示す。(A)TDGF1転写物特異的オリゴ対を用いたPCRの結果。
【図3B】図3A−3Bは転写物特異的PCRの結果を示す。(B)TDGF3転写物特異的オリゴ対を用いたPCRの結果。レーン1:正常乳腺#1;レーン2:正常乳腺#3;レーン3:正常乳腺#4;レーン4:肺#;レーン5:正常肺#4;レーン6〜12:乳癌;レーン13;正常結腸;レーン14〜15:結腸癌;レーン16〜18:正常肺;レーン19:正常マッチ肺;レーン20〜21:肺癌;レーン22:gDNA対照;レーン23:100bpDNAマーカー。
【図4】図4A−4Bは細胞表面上のCripto1及びCripto3のFACS分析から得られた結果を示す。(A)Criptoに対する抗体を用いたTDGF1及びTDGF3陽性細胞系統のFACS分析。(a)NCCIT細胞(TDGF1陽性);(b)BT474細胞(TDGF3陽性);(c)及び(d)抗マウスIgGによる陰性対照。結果はCripto1及びCripto3蛋白両方が細胞表面上に存在し、そして抗Cripto抗体により検出できることを示している。(B)TDGF1又はTDGF3でトランスフェクトした細胞のFACS分析。(a)TDGF1遺伝子でトランスフェクトしたT47D細胞;(b)TDGF3遺伝子でトランスフェクトしたT47D細胞;(c)及び(d)抗マウスIgGによる陰性対照。結果はトランスフェクトされた遺伝子TDGF1及びTDGF3によりコードされるCripto1及びCripto3が細胞表面上で発現され、そして抗Cripto抗体により認識されることを示している。
【図5】図5はF9細胞のNodalを介してCripto−1及びCripto−3がシグナルできることを示す結果を示す。F9cripto−/−細胞を(n2)−ルシフェラーゼを発現するプラスミド、FAST及び無添加(コラム1)、又はヒトCripto−1(コラム2)又はヒトCripto−3(コラム3)添加によりトランスフェクトした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のTDGF3ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、該方法が下記工程:
a)転写されたTDGF3ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子に該試料を接触させる工程であって、ここで該転写されたTDGF3ポリヌクレオチドはTDGF3遺伝子のコーディング領域を含む、工程;及び、
b)該試料中のポリヌクレオチドに核酸分子が結合するかどうか調べることにより、該試料中のTDGF3ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出する工程;
を含む、方法。
【請求項2】
前記転写されたTDGF3ポリヌクレオチドがmRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記転写されたTDGF3ポリヌクレオチドがcDNAである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記転写されたTDGF3ポリヌクレオチドを核酸分子で増幅させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記増幅工程がポリメラーゼ連鎖反応を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記転写されたTDGF3ポリヌクレオチドへの前記核酸分子の結合が、増幅されたTDGF3ポリヌクレオチドを検出することにより測定される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
転写されたポリヌクレオチドが、前記転写されたTDGF3ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする少なくとも一つの核酸分子を用いて増幅される、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つの核酸分子が、TDGF1ポリヌクレオチドを増幅しない、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの核酸分子が、前記転写されたTDGF3ポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズし、該部分はV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするTDGF3コーディング領域内のヌクレオチドを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つの核酸分子が、表2及び表3に記載する配列の群から選択される配列を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
試料中のTDGF3ポリペプチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、該方法が下記工程:
a)TDGF3ポリペプチドに選択的に結合する試薬に該試料を接触させる工程;及び、
b)該試料中のポリペプチドに該試薬が結合するかどうか調べることにより、該試料中のTDGF3ポリペプチド又はその部分の存在を検出する工程;
を含む、方法。
【請求項12】
前記試薬が抗体、抗体誘導体及び抗体フラグメントよりなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントが、前記TDGF3ポリペプチドに結合し、そしてTDGF1ポリペプチドには結合しない、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントが、前記TDGF3ポリペプチドの細胞外部分に含まれるエピトープに結合する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントがV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸を含むエピトープに結合する、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記患者の試料が腫瘍組織試料を含む、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記腫瘍が乳腺腫瘍、結腸腫瘍および肺腫瘍よりなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記患者の試料が体液である、請求項1又は請求項11記載の方法。
【請求項19】
前記体液が血液、リンパ、腹水、婦人科学的体液、嚢胞液および尿よりなる群から選択される請求項18記載の方法。
【請求項20】
試料中のTDGF3ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、該方法が下記工程:
a)転写されたTDGF3ポリヌクレオチドの一部分に選択的にハイブリダイズする核酸分子に該試料を接触させる工程であって、該部分はV7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするTDGF3コーディング領域内のヌクレオチドを含む、工程;
b)該転写されたTDGF3ポリヌクレオチド又はその部分を、ポリメラーゼ連鎖反応により核酸分子で増幅する工程;及び、
b)増幅されたTDGF3ポリヌクレオチドを検出することにより、該試料中のTDGF3ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出する工程;
を含む、方法。
【請求項21】
TDGF3ポリヌクレオチド又はその部分の試料中の存在を検出するためのキットであって、該キットはTDGF3転写ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子を含む、キット。
【請求項22】
TDGF3ポリペプチド又はその部分の試料中の存在を検出するためのキットであって、該キットは抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントを含み、ここで抗体又はそのフラグメントはTDGF3ポリペプチド又はその部分に特異的に結合する、キット。
【請求項23】
細胞が形質転換されているかどうかを試験する方法であって、該方法は、
a)試験細胞中のTDGF3遺伝子の発現のレベル;及び、
b)対照非形質転換細胞中のTDGF3の発現のレベル;
を比較する工程を含み、
ここで該対照非形質転換細胞中のレベルと比較して、該試験細胞中のTDGF3遺伝子の発現のより高いレベルは、該試験細胞が形質転換されていることを示す、方法。
【請求項24】
前記試験細胞中及び前記対照細胞中のTDGF3遺伝子の発現のレベルが、転写されたポリヌクレオチド又はその部分の該試験細胞中及び該対照細胞中の存在を検出することにより試験され、ここで、該転写されたポリヌクレオチドはTDGF3遺伝子のコーディング領域を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記転写されたポリヌクレオチドがmRNAである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記転写されたポリヌクレオチドがcDNAである、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記検出の工程が更に、前記転写されたポリヌクレオチドを検出する前に、該転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記増幅工程がポリメラーゼ連鎖反応を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記転写されたポリヌクレオチドが、TDGF3コーディング領域に選択的にハイブリダイズする少なくとも一つの核酸分子を用いて増幅される、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも一つの核酸分子が、TDGF1ポリヌクレオチドを増幅しない、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも一つの核酸分子が、V7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするヌクレオチドにわたるTDGF3コーディング領域に相当する転写されたポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズする、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも一つの核酸分子が、表2及び表3に記載する配列の群から選択される配列を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記試験細胞中及び前記対照細胞中のTDGF3遺伝子の発現のレベルが、TDGF3遺伝子によりコードされる蛋白の該試験細胞中及び該対照細胞中の存在を、該蛋白に特異的に結合する試薬を用いて検出することにより試験する、請求項23記載の方法。
【請求項34】
前記試薬が抗体、抗体誘導体及び抗体フラグメントよりなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントが、前記TDGF3ポリペプチドに結合し、そしてTDGF1ポリペプチドには結合しない、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントが、TDGF3ポリペプチドの細胞外部分に含まれるエピトープに結合する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントが、V7、L68、E92及びA178よりなる群から選択される1つ以上のアミノ酸を含むエピトープに結合する、請求項34記載の方法。
【請求項38】
形質転換細胞の試料中の存在を検出するためのキットであって、該キットは抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントを含み、ここで該抗体又はそのフラグメントはTDGF3蛋白に特異的に結合する、キット。
【請求項39】
形質転換細胞の試料中の存在を検出するためのキットであって、該キットはTDGF3転写ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子を含む、キット。
【請求項40】
患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験する方法であって、該方法は、
a)患者試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベル;及び、
b)対照非癌試料中のTDGF3の発現のレベル;
を比較する工程を含み、
ここで該対照非癌試料と比較して、該患者試料中のTDGF3遺伝子の発現のより高いレベルは、該患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であることを示す、方法。
【請求項41】
試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルが、転写されたポリヌクレオチド又はその部分の試料中の存在を検出することにより試験され、ここで該転写されたポリヌクレオチドはTDGF3遺伝子のコーディング領域を含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記転写されたポリヌクレオチドがmRNAである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記転写されたポリヌクレオチドがcDNAである、請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記検出の工程が更に、前記転写されたポリヌクレオチドを検出する前に該転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含む、請求項41記載の方法。
【請求項45】
前記増幅工程がポリメラーゼ連鎖反応を含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記転写されたポリヌクレオチドが、TDGF3コーディング領域に選択的にハイブリダイズする少なくとも一つの核酸分子を用いて増幅される、請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも一つの核酸分子がTDGF1ポリヌクレオチドを増幅しない、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも一つの核酸分子が、V7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするヌクレオチドにわたるTDGF3コーディング領域に相当する転写されたポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズする、請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも一つの核酸分子が、表2及び表3に記載する配列の群から選択される配列を含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、転写されたTDGF3ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするか、又は転写されたTDGF3ポリヌクレオチドの一部分に選択的にハイブリダイズする核酸プローブを用いて、転写されたポリヌクレオチドの試料中の存在を検出することにより試験される、請求項40記載の方法。
【請求項51】
前記試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルが、TDGF3遺伝子によりコードされる蛋白の試料中の存在を、蛋白に特異的に結合する試薬を用いて検出することにより試験される、請求項40記載の方法。
【請求項52】
前記試薬が抗体、抗体誘導体及び抗体フラグメントよりなる群から選択される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントが、TDGF3ポリペプチドに結合し、そしてTDGF1ポリペプチドには結合しない、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントが、TDGF3ポリペプチドの細胞外部分に含まれるエピトープに結合する、請求項52記載の方法。
【請求項55】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントが、V7、L68、E92及びA178よりなる群から選択される1つ以上のアミノ酸を含むエピトープに結合する、請求項52記載の方法。
【請求項56】
前記患者試料が腫瘍組織試料を含む、請求項40記載の方法。
【請求項57】
前記腫瘍が乳腺腫瘍、結腸腫瘍および肺腫瘍よりなる群から選択される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記患者試料が体液である、請求項40記載の方法。
【請求項59】
前記体液が血液、リンパ、腹水、婦人科学的体液、嚢胞液および尿よりなる群から選択される、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記患者試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルが、対照非癌試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルと少なくとも約2倍異なる、請求項40記載の方法。
【請求項61】
前記患者試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルが、対照非癌試料中のTDGF3遺伝子の発現のレベルと少なくとも約5倍異なる、請求項40記載の方法。
【請求項62】
前記TDGF3遺伝子が前記対照非癌試料中では発現されない、請求項40記載の方法。
【請求項63】
患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験するためのキットであって、該キットは抗体、抗体誘導体又はその抗体フラグメントを含み、ここで該抗体又はそのフラグメントはTDGF3蛋白に特異的に結合する、キット。
【請求項64】
患者が抗Cripto抗体療法に対する適当な候補であるかどうかを試験するためのキットであって、該キットはTDGF3転写ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子を含む、キット。
【請求項65】
細胞における細胞形質転換を抑制するための組成物を選択する方法であって、該方法は下記工程:
a)細胞を含有する試料を得る工程、及び、
b)複数の試験組成物の存在下で、該試料のアリコートを別個に維持する工程;
c)該アリコートの各々におけるTDGF3遺伝子の発現を比較する工程;
d)他の試験組成物と比較して、該試験組成物を含有するアリコートにおいてより低いレベルのTDGF3遺伝子発現を誘導する試験組成物のうちの1つを選択する工程;
を含む、方法。
【請求項66】
試験化合物の発癌潜在性を試験する方法であって、該方法が下記工程:
a)該試験化合物の存在下及び非存在下で、哺乳類細胞の別個のアリコートを維持する工程;及び、
c)該アリコートの各々におけるTDGF3遺伝子の発現を比較する工程;
を含み、
d)ここで試験化合物非存在下で維持されたアリコートと比較して、試験化合物存在下で維持されたアリコート中のTDGF3遺伝子の発現のより高いレベルは、該試験化合物が発癌潜在性を保有していることを示す、方法。
【請求項67】
試料中のTDGF3ポリペプチド又はその部分の存在を特異的に検出するために有用な単離されたモノクローナル抗体を作成する方法であって、該方法が下記工程:
TDGF3ポリペプチド又はその部分を単離する工程;
単離されたポリペプチドを用いて哺乳類を免疫化する工程;
該免疫化された哺乳類から脾細胞を単離する工程;
該単離された脾細胞を不朽化細胞系統と融合させてハイブリドーマを形成する工程;及び、
該TDGF3ポリペプチドに特異的に結合する抗体の産生のために個々のハイブリドーマをスクリーニングする工程;及び、
該ハイブリドーマにより産生された抗体を単離することにより、試料中のTDGF3ポリペプチド又はその部分の存在を特異的に検出するために有用なモノクローナル抗体を単離する工程;
を含む、方法。
【請求項68】
請求項67の方法により産生されるモノクローナル抗体。
【請求項69】
試料中のTDGF1ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、該方法が下記工程:
a)転写されたTDGF1ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子に該試料を接触させる工程であって、ここで転写されたTDGF3ポリヌクレオチドはTDGF1遺伝子のコーディング領域を含む、工程;及び、
b)該試料中のポリヌクレオチドに核酸分子が結合するかどうか調べることにより、該試料中のTDGF1ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出する工程;
を含む、方法。
【請求項70】
前記転写されたTDGF1ポリヌクレオチドがmRNAである、請求項69記載の方法。
【請求項71】
前記転写されたTDGF1ポリヌクレオチドがcDNAである、請求項69記載の方法。
【請求項72】
前記転写されたTDGF1ポリヌクレオチドを核酸分子で増幅させる工程をさらに含む、請求項69記載の方法。
【請求項73】
前記増幅工程がポリメラーゼ連鎖反応を含む、請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記転写されたTDGF1ポリヌクレオチドへの核酸分子の結合が、増幅されたTDGF1ポリヌクレオチドを検出することにより測定される、請求項72記載の方法。
【請求項75】
転写されたポリヌクレオチドが、前記転写されたTDGF1ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする少なくとも一つの核酸分子を用いて増幅される、請求項72記載の方法。
【請求項76】
前記少なくとも一つの核酸分子がTDGF3ポリヌクレオチドを増幅しない、請求項75記載の方法。
【請求項77】
前記前記少なくとも一つの核酸分子が、転写されたTDGF1ポリヌクレオチドの一部分にハイブリダイズし、該部分はA7、P68、G92、V178、V22及びY43よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするTDGF3コーディング領域内のヌクレオチドを含む、請求項75記載の方法。
【請求項78】
前記少なくとも一つの核酸分子が表2及び表3に記載する配列の群から選択される配列を含む、請求項77記載の方法。
【請求項79】
試料中のTDGF1ポリペプチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、該方法が下記工程:
a)TDGF3ポリペプチドに選択的に結合する試薬に該試料を接触させる工程;及び、
b)該試料中のポリペプチドに該試薬が結合するかどうか調べることにより、該試料中のTDGF3ポリペプチド又はその部分の存在を検出する工程;
を含む、方法。
【請求項80】
前記試薬が抗体、抗体誘導体及び抗体フラグメントよりなる群から選択される、請求項79記載の方法。
【請求項81】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントが、前記TDGF3ポリペプチドに結合し、そしてTDGF1ポリペプチドには結合しない、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントが、TDGF3ポリペプチドの細胞外部分に含まれるエピトープに結合する、請求項80記載の方法。
【請求項83】
前記抗体、抗体誘導体又は抗体フラグメントが、V7、L68、E92及びA178よりなる群から選択されるアミノ酸を含むエピトープに結合する、請求項80記載の方法。
【請求項84】
前記患者試料が腫瘍組織試料を含む、請求項69又は請求項79記載の方法。
【請求項85】
前記腫瘍が乳腺腫瘍、結腸腫瘍および肺腫瘍よりなる群から選択される、請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記患者試料が体液である、請求項69又は請求項79記載の方法。
【請求項87】
前記体液が血液、リンパ、腹水、婦人科学的体液、嚢胞液および尿よりなる群から選択される、請求項86記載の方法。
【請求項88】
試料中のTDGF1ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出するための方法であって、該方法が下記工程:
a)転写されたTDGF1ポリヌクレオチドの一部分に選択的にハイブリダイズする核酸分子に該試料を接触させる工程であって、該部分はA7、P68、G92、V178、V22及びY43よりなる群から選択されるアミノ酸をコードするTDGF1コーディング領域内のヌクレオチドを含む、工程;
b)該転写されたTDGF1ポリヌクレオチド又はその部分を、ポリメラーゼ連鎖反応により核酸分子で増幅する工程;及び、
b)増幅されたTDGF1ポリヌクレオチドを検出することにより、該試料中のTDGF1ポリヌクレオチド又はその部分の存在を検出する工程;
を含む、方法。
【請求項89】
TDGF1ポリヌクレオチド又はその部分の試料中の存在を検出するためのキットであって、該キットはTDGF1転写ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする核酸分子を含む、キット。
【請求項90】
TDGF1ポリペプチド又はその部分の試料中の存在を検出するためのキットであって、該キットは抗体、抗体誘導体又はそのフラグメントを含み、ここで該抗体又はそのフラグメントは、TDGF1ポリペプチド又はその部分に特異的に結合する、キット。
【請求項91】
TDGF1ポリヌクレオチドを特異的に検出するための単離された核酸分子であって、ここで該核酸分子は表2及び表3に記載する配列の群から選択される、核酸分子。
【請求項92】
TDGF3ポリヌクレオチドを特異的に検出するための単離された核酸分子であって、ここで該核酸分子は表2及び表3に記載する配列の群から選択される、核酸分子。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−535033(P2009−535033A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507847(P2009−507847)
【出願日】平成19年4月30日(2007.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/010399
【国際公開番号】WO2007/127461
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】