説明

Cry1BeとCry1Fタンパク質との組合せを用いる昆虫抵抗性管理

本発明は、昆虫がどちらか単独の毒素に対する抵抗性を発達させることを妨げるため、Cry1Be毒素をCry1Fa毒素と一緒にスタッキングすることに部分的に関する。本明細書中でより詳細に考察するように、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(FAW)およびオストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(ECB)昆虫の双方に対して高い防除レベルおよび非交差抵抗性活性を示すタンパク質対は知られていないので、本発明のタンパク質対は、とりわけ有利な組合せである。この両者の非交差抵抗性活性は、また、その活性が、複数の非交差抵抗性タンパク質を用いてこれらの昆虫を標的とするのに必要とされるタンパク質/遺伝子の数を低減することができるので、有利である。このことは、緩衝帯地所の要件を低減または削除することができる。したがって、本発明は、また、第1昆虫の非交差抵抗性防除のために3種のタンパク質を、第2昆虫の非交差抵抗性防除のために3種のタンパク質を提供するための4種の遺伝子を使用することに一般には関連する。好ましい実施形態において、標的昆虫はFAWおよびECBである。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
人は、食物およびエネルギーに応用するためのトウモロコシを栽培する。昆虫は、トウモロコシ植物を食べ、損傷し、それによって人類の努力を無駄にする。
【0002】
これらの有害生物の現在の植物内トランスジェニック防除は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)からのCry1Faタンパク質をコードする結晶(Cry)δエンドトキシン遺伝子の植物での発現を介して達成される。Cry1Faは、フォールアーミーワーム(FAW、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda))およびユーロピアンコーンボーラー(ECB、オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis))害虫に対して抵抗性である、現在のところHerculex(商標)ブランドのDow AgroSciencesのトランスジェニックトウモロコシ種子(Herculex、Herculex−Extra、およびHerculex−RW)中のタンパク質毒素である。このタンパク質は、昆虫の中腸中に位置する特定の受容体(群)に結合することによって作用し、消化管細胞内で細孔を形成する。これらの細孔の形成は、昆虫が浸透圧バランスを調節することを妨げ、昆虫の死亡をもたらす。
【0003】
しかし、昆虫が、Cry1Faを結び付けるそれらの消化管内受容体の遺伝子変異を介してCry1Faの作用に対する抵抗性を発達させることができる可能性があることを懸念する人もいる。Cry1Faを結び付ける能力の低下した受容体を作り出す昆虫は、Cry1Faの活性に対して抵抗性であることができ、そのため、このタンパク質を発現する植物上で生き残ることができる。
【0004】
成長状態の間に植物中に絶えず存在する単一のCry毒素について、昆虫は、昆虫消化管中でCry1Fa毒素を結び付ける受容体の遺伝子変異を介してこのタンパク質の活性に対する抵抗性を発達させる可能性があるという懸念がある。受容体におけるこれらの変異による毒素結合性の低下は、Cry1Faの毒性低下につながり、ことによると、作物中で発現されるタンパク質の有効性の減少を結果的にもたらすであろう。例えば、ヘリコベルパ・ゼアまたはアルミゲラ(Helicoverpa zeaまたはarmigera)の防除のためのCry2タンパク質と、Vip3Aa、Cry1F、またはCry1Aに関する米国特許出願公開第2009/0313717号を参照されたい。国際公開第2009/132850号は、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)を防除するためのCry1FまたはCry1AおよびVip3Aaに関する。米国特許出願公開第2008/0311096号は、Cry1F抵抗性ECBを防除するためのCry1Abに関する。
【0005】
さらなるCry毒素は、公式のB.t.命名委員会のウェブサイトに列挙されている(Crickmoreら、lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/)。添付の付表Aを参照されたい。現在、さらなるCyt毒素およびVIP毒素などと共に、ほぼ60種の「Cry」毒素のグループ(Cry1〜Cry59)が存在する。各数字のグループの多くは、大文字のサブグループを有し、大文字のサブグループは小文字のサブグループを有する(例えば、Cry1はA〜Lを有し、Cry1Aはa〜iを有する)。
【0006】
例えば、van Frankenhuyzen(2009)の参考文献(J.Invert.Pathol.101:1〜16)は、多くの標的有害生物、および該標的有害生物を防除するために潜在的に選択され得る可能性のある多数の毒素が存在することを例示している。例えば、van Frankenhuyzenの図3を参照されたい。標的とされ得る(多くの中の)有害生物の1つには、オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)が含まれ、この昆虫に関して、van Frankenhuyzenの図3は、ECBに対して活性である17種の毒素、およびたぶん活性である1種を示している。これは、選択肢の網羅的列挙ではない。
【0007】
van Frankenhuyzenの図3は、また、各Cryタンパク質が、独特な活性スペクトルを有し、それらは、一部の昆虫に対して活性であるが、他の昆虫には活性でないことを示している。Cryタンパク質は、典型的には、昆虫中腸中の細胞上の受容体に結合し、このことが、活性スペクトルに影響を及ぼす1つの要因である。あるCryタンパク質のための受容体は、一部の昆虫中に見出すことができるが、他の昆虫中では見出すことができず、所定の昆虫は、1種または複数のCryタンパク質のための受容体を有するが、その他のCryタンパク質のための受容体を有さない可能性がある。
【0008】
標的とすべき多くの考え得る昆虫、および任意の所定の昆虫に対して活性である可能性のある多くの考え得るCryタンパク質を考慮すると、数だけでも、抵抗性管理の問題の複雑性を示している。van FrankenhuyzenによってECBに対して活性またはたぶん活性であろうと確認された18種のタンパク質だけを考慮しても、このことは、組み合わせて試験すべき毒素の数百の考え得る対を可能にするであろう。
【0009】
さらに、競合/非競合結合についてアッセイすることは、容易な課題ではない。それは、放射能標識化、および放射能標識化タンパク質の置換についてアッセイすることを伴うことがある。このことは、それ自体、複雑な技術である場合もある。
【0010】
抵抗性昆虫の使用を試みることも、まさに複雑である。抵抗性系統の昆虫は、所定のタンパク質に対して発生させなければならない。Siqueiraは(June 2004; J. Econ. Entomol., 97(3):1049〜1057)、「異なる毒素間の交差抵抗性に関する試験は、抵抗性コロニーの不足によって制約された」と述べている(要約中で)。このことは、抵抗性管理の可能性についてタンパク質をアッセイするために抵抗性昆虫系統を入手することに伴う困難を示している。抵抗性昆虫の発生についてスクリーニングする試みにおいて、タンパク質対が関わる場合、どちらのタンパク質をも使用する可能性がある。
【0011】
Siqueiraは、また、要約中で、Cry1Abを用いる選択(すなわち、Cry1Abに対して抵抗性であるECBのコロニーを発生させること)は、「いくつかの他の毒素に対する感受性の低下をもたらした」と述べている。このことは、交差抵抗性の現象を例示している。Cry1Ab抵抗性ECBは、「いくつかの他の毒素」に対して交差抵抗性であった。
【0012】
したがって、抵抗性の問題に対処すべき場合、同一(非抵抗性)昆虫に対して活性である2種のタンパク質を選択することは、単に解析の出発点であるにすぎない。非抵抗性昆虫に対する活性レベルが、もう1つの因子である。Frankenhuyzenの図11は、ECB(非抵抗性)に対する試験のために選択された12種の毒素の群間でさえも、他のCryタンパク質(Cry1Ac、Cry1Bb、およびCry2Aaなど)がECBの防除に関して今回特許請求されるものに比べてより活性である可能性があることを示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、Cry1Beタンパク質をCry1Faタンパク質と一緒にスタッキングすること、およびどちらかのタンパク質の単独に対して抵抗性を発達させる昆虫に対してより永続性があり、抵抗性発生の傾向がより少ない製品をもたらすことに、部分的に関する。
【0014】
本明細書中でより詳細に考察するように、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(FAW)およびオストリニナ・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(ECB)昆虫の双方に対して高い防除レベルおよび非交差抵抗性作用を示す他のタンパク質対は知られていないので、本発明のタンパク質対は、とりわけ有利な組合せである。
【0015】
この両者の非交差抵抗性活性は、また、それが複数の非交差抵抗性タンパク質でこれらの昆虫を標的にするのに必要とされるタンパク質/遺伝子の数を減らすことができるので、有利である。このことは、緩衝帯地所の要件を低減または削除することができる。したがって、本発明は、また、FAWの非交差抵抗性防除のために3種のタンパク質を、ECBの非交差抵抗性防除のために3種のタンパク質を提供するための4種の遺伝子を使用することに一般には関連する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(フォールアーミーワーム、FAW)から産生された刷子縁小胞に対する、125ICry1Fa対Cry1FaまたはCry1Beの競合結合を示す図である。
【図2】オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(ユーロピアンコーンボーラー、ECB)から産生された刷子縁小胞に対する、125ICry1Fa対Cry1FaまたはCry1Beの競合結合を示す図である。
【図3】スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)から産生された刷子縁小胞に対する125ICry1Be結合のCry1Fa(▲)およびCry1be(●)による競合置換を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、Cry1Beタンパク質をCry1Faタンパク質と共に対として使用することを含む。本発明は、また、3種(またはそれ以上)の毒素の、基本的対であるCry1FaおよびCry1Beタンパク質との三重のスタックまたは「ピラミッド」に部分的に関する。本発明の基本的なタンパク質対は、2種の昆虫、フォールアーミーワーム(FAW;スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda))およびユーロピアンコーンボーラー(ECB;オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis))に対する非交差抵抗性作用を示す2種のタンパク質を提供する。これらの2種の昆虫に対して高い防除レベルおよび非交差抵抗性作用を示す他のタンパク質対は知られていないので、このことは、本発明のタンパク質対をとりわけ有利な組合せにする。
【0018】
一部の好ましいピラミッド実施形態では、本発明の基本的な対に別のタンパク質を付加して、ECBに対する作用を有する第3のタンパク質を提供することができる。これらの好ましいピラミッド組合せの一部は、Cry1Faタンパク質と、Cry1Beタンパク質と、Cry1Ab、Cry2Aa、Cry1I、およびDIG−3タンパク質からなる群から選択される別の毒素/遺伝子とである。
【0019】
一部の好ましいピラミッド実施形態では、本発明の基本的な対に別のタンパク質を付加して、FAWに対する作用を有する第3のタンパク質を提供することができる。これらの好ましいピラミッド組合せの一部は、Cry1Faと、Cry1Beと、Vip3A、Cry1C、Cry1D、およびCry1Eからなる群から選択される別の毒素/遺伝子とである。
【0020】
一部の好ましい実施形態において、かつECBおよびFAWの双方に対するCry1FおよびCry1Beの双方の活性を考えて、本発明は、4種のタンパク質の3種がECBに対して非交差抵抗性作用を示し、かつ4種のタンパク質の3種がFAWに対して非競合作用を示す、4種のタンパク質の使用を可能にする。好ましい四重のスタックは、Cry1Faと、Cry1Beと、Cry1C、Cry1D、Cry1E、またはVip3(FAWを標的にするため)と、Cry1Ab、Cry2A、Cry1I、またはDIG−3(ECBを標的にするため)とである。
【0021】
「抵抗性昆虫の管理のためのVip3Abの使用」と題する同時提出出願は、Vip3Abが、FAWにおける殺虫性タンパク質抵抗性を管理するのにCry1Fと共に有用であること、およびVip3AbおよびCry1Fが、FAWの膜調製物に競合的に結合しないことを示すデータを提供している。
【0022】
米国特許仮出願第61/284,281号(2009年12月16日出願)には、Cry1CがCry1F抵抗性FAWに対して活性であることが示されており、米国特許仮出願第61/284,252号(2009年12月16日出願)には、Cry1DがCry1F抵抗性FAWに対して活性であることが示されている。これらの2つの出願には、また、Cry1Cが、FAWの膜調製物中での結合に関してCry1Fと競合しないこと、およびCry1Dが、FAWの膜調製物中での結合に関してCry1Fと競合しないことが示されている。
【0023】
米国特許仮出願第61/284,278号(2009年12月16日出願)には、Cry2AがCry1F抵抗性ECBに対して活性であることが示されている。
【0024】
Cry1Abは、米国特許出願公開第2008/0311096号中に、Cry1F抵抗性ECBを防除するのに有用であるとして開示されている。
【0025】
DIG−3は、米国特許出願公開第2010/0269223号中に開示されている。
【0026】
例えば、Vip3毒素(一部の好ましい実施形態ではVip3Abを含む)は、添付の付表A中に列挙されている。Cryタンパク質も列挙されている。それらのGENBANK番号は、本明細書中で開示または言及される任意の遺伝子およびタンパク質のための配列を入手するのに使用することもできる。
【0027】
本発明は、また、単一の標的有害生物に対して互いに交差抵抗性を引き起こさない3種の殺虫性タンパク質(一部の好ましい実施形態ではCryタンパク質)の使用に一般には関する。本発明は、また、2種の標的昆虫に対して高い防除レベルおよび非交差抵抗性活性を組合せで示す、4種の殺虫性タンパク質(一部の好ましい実施形態ではCryおよびVipタンパク質)の使用に一般には関する。
【0028】
本発明のタンパク質の組合せを産生する植物(およびこのような植物を植え付けた耕地)は、本発明の範囲に包含される。さらなる毒素/遺伝子を付加することもできるが、本発明による好ましい三重および四重(4種のタンパク質/遺伝子)のスタックは、好都合かつ驚くべきことに、FAWおよび/またはECBに対する非競合作用を有する3種のタンパク質を提供する。このことは、緩衝帯地所の要件を低減または削除するのを助ける(例えば、40%未満、20%未満、10%未満、5%未満、さらには0%の面積)。このように10エーカーを超えて植え付けられた圃場は、したがって、本発明に包含される。
【0029】
本発明のポリヌクレオチド(群)は、非バチルス−チューリンゲンシス(non-Bacillus-thuringiensis)プロモーターの調節下(作動可能的に連結された/含む)の遺伝子構築物中に好ましくは存在する。本発明のポリヌクレオチドは、植物中での高められた発現のためのコドン使用頻度を含むことができる。
【0030】
昆虫のCry1Faに対して抵抗性を発達させる能力を妨げるために、本発明者らは、タンパク質受容体に(Cry1Faと)非競合的に結合するCry毒素を同定した。Cry1Faは、FAWおよびECB幼虫の昆虫消化管中に位置する受容体に対するCry1Beの結合を置換しない。本発明者らは、完全に異なる受容体と相互作用するか、あるいはCry1Faと比較してそれらの受容体相互作用の中で単に部分的に重なっているCry1BeCryタンパク質を見出した。これらのCry1Be毒素がFAWおよびECBの幼虫に対して毒性である能力は、依然としてCry1Faと同一受容体部位で完全に相互作用することはなく、それらの毒性は、Cry1Faの毒性に対して抵抗性になる機構としての、それらのCry1Fa受容体の遺伝子変異を発生してしまった昆虫によって影響されないことを示している。したがって、その消化管受容体がCry1Faを結び付ける能力の低下を介してCry1Faに対する抵抗性を発達させてしまった昆虫は、なお、変異受容体部位に結合するCry1Beタンパク質の毒性に対して感受性がある。本発明者らは、これを支持する生化学的データを得た。
【0031】
トランスジェニック植物中で発現されるこれらのタンパク質の組合せを有することは、したがって、圃場における昆虫抵抗性の発達に関する確率を低下させ、かくして緩衝帯の要件の縮減につながる有用かつ価値ある機構である。これらのCry1Beタンパク質は、表1に示すように、他の主要害虫、Cry1Faに対して感受性および抵抗性であるもの(rFAWおよびrECB)の双方に対するそれらの活性について研究され、Cry1Beは、抵抗性および感受性ECB幼虫の双方に対して活性である。これらのデータは、Cry1Faと比較して、Cry1Be毒素は昆虫消化管内の別個の標的部位(複数可)で相互作用し、かくして優れたスタックパートナーを構成することを示している。
【0032】
Cry1Faを発現する作物を1種または複数のさらなるCry遺伝子(Cry1Beタンパク質毒素を発現するものなど)とスタッキングすることは、昆虫がこれらのタンパク質毒素を発現するトランスジェニック植物の活性に対する耐性を発達させる能力を妨げるための有効な管理戦略をもたらす。本発明者らは、Cry1Beタンパク質がCry1Faに比較して異なる部位で相互作用することを示しているので、抵抗性が、Cry毒素に結合する昆虫消化管受容体の親和性の変異を介して起こるものなら、その変異は、昆虫が複数のタンパク質を発現する植物上で生きることを可能にするように、少なくとも2種の異なる受容体で同時的に起こらなければならない。この発達確率は、極度にわずかであり、かくして、タンパク質に対する耐性を発達させることのできる昆虫区画に対するトランスジェニック産物の永続性を増加させる。
【0033】
本発明者らは、Cry1Beタンパク質毒素のトリプシンで切り詰められた形態を放射性ヨウ素化し、放射性受容体結合アッセイ技術を使用して、昆虫消化管膜内に位置する推定上の受容体タンパク質との結合相互作用を測定した。消化管膜は、Wolfersbergerの方法により刷子縁膜小胞(BBMV)として調製した。毒素のヨウ素化は、Pierce Chemicalsからのヨウ素ビーズまたはヨードゲン(Iodogen)処理された管を使用して実施した。放射能標識化毒素の比放射能は、ほぼ1〜4μCi/タンパク質(μg)であった。結合研究は、本質的にはLiangの方法で実施した。
【0034】
標識化Cry1Faを使用するさらなる競合結合データも、後記実施例の部に示す。これらのデータは、ECBおよびFAWの双方に対するCry1FaおよびCry1Beの非交差抵抗性活性も示す。
【0035】
本明細書中に示すデータは、Cry1Beタンパク質が、Cry1Faに比較して昆虫消化管内の別個の標的部位で相互作用することを示している。したがって、これらの2種のタンパク質は、優れたスタックパートナーを構成する。
【0036】
本発明により有用である遺伝子および毒素は、開示された完全長配列のみならず、本明細書中で具体的に例示される毒素の特徴的な殺有害生物活性を保持する、これらの配列のフラグメント、変異体、突然変異体、および融合タンパク質を包含する。本明細書中で使用する場合、用語、遺伝子の「変異体」または「変形形態」は、同一毒素をコードする、または殺有害生物活性を有する同等の毒素をコードするヌクレオチド配列を指す。本明細書中で使用する場合、用語「同等の毒素」は、標的有害生物に対して特許請求される毒素と同一または本質的に同一の生物学的活性を有する毒素を指す。
【0037】
本明細書中で使用する場合、境界は、「Revision of the Nomenclature for the Bacillus thuringiensis Pesticidal Crystal Proteins」(N. Crickmore, D. R. Zeigler, J. Feitelson, E. Schnepf, J. Van Rie, D. Lereclus, J. Baum、およびD. H. Dean、Microbiology and Molecular Biology Reviews (1998) Vol. 62: 807〜813)に従って、ほぼ95%(Cry1Fa類および1Be類)、78%(CryF類およびCry1B類)、および45%(Cry1類)の配列同一性を意味する。これらのカットオフは、また、コアタンパク質(例えば、Cry1FaおよびCryBeコアタンパク質)のみに適用することができる。
【0038】
例示された毒素の殺有害生物活性を保持するフラグメントおよび等価体は、本発明の範囲に包含される。また、遺伝子コードの冗長性のため、種々の異なるDNA配列が、本明細書に記載のアミノ酸配列をコードすることができる。同一または本質的に同一の毒素をコードするこれらの代わりのDNA配列を創り出すことは、当業者の技術に包含される。これらの変異体DNA配列は、本発明の範囲に包含される。本明細書中で使用する場合、「本質的に同一の」配列への言及は、殺有害生物活性に実質的に影響を及ぼさない、アミノ酸の置換、欠失、付加、または挿入を有する配列を指す。殺有害生物活性を保持するタンパク質をコードする遺伝子のフラグメントも、この定義に包含される。
【0039】
毒素をコードする遺伝子および本発明により有用である遺伝子部分を同定するためのさらなる方法は、オリゴヌクレオチドプローブの使用により行われる。これらのプローブは、検出可能なヌクレオチド配列である。これらの配列は、適切な標識によって検出することができ、あるいは国際公開第93/16094号に記載のように、本来的に蛍光を発するように調製することができる。当技術分野で周知のように、プローブ分子および核酸サンプルが、2つの分子間で強力な結合を形成することによってハイブリダイズするなら、プローブおよびサンプルは、実質的相同性を有すると合理的に推量することができる。好ましくは、ハイブリダイゼーションは、例えばKeller, G. H., M. M. Manak (1987) DNA Probes, Stockton Press, New York.,pp169〜170中に記載のような当技術分野で周知の技術によるストリンジェントな条件下で実施される。塩濃度と温度との組合せのいくつかの例は次の通りである(ストリンジェンシーを増加する順で):室温での2X SSPEまたはSSC;42℃での1X SSPEまたはSSC;42℃での0.1X SSPEまたはSSC;65℃での0.1X SSPEまたはSSC。プローブの検出は、ハイブリダイゼーションが起こったかどうかを既知の方式で判定するための手段を提供する。このようなプローブ分析は、本発明の毒素をコードする遺伝子を同定するための迅速な方法を提供する。本発明によりプローブとして使用されるヌクレオチドセグメントは、DNAシンセサイザーおよび標準的な手順を使用して合成することができる。これらのヌクレオチド配列を、本発明の遺伝子を増幅するためのPCRプライマーとして使用することもできる。
【0040】
本発明の特定のタンパク質は、本明細書中で具体的に例示されている。これらのタンパク質は、本発明のタンパク質の単に例示であるので、本発明は、例示されるタンパク質と同一または類似の殺有害生物活性を有する変異体または同等のタンパク質(および同等のタンパク質をコードするヌクレオチド配列)を含むことが容易に想到されよう。同等のタンパク質は、例示されるタンパク質とアミノ酸の相同性を有する。このアミノ酸の相同性は、典型的には、75%を超え、好ましくは90%を超え、最も好ましくは95%を超える。アミノ酸の相同性は、生物学的活性の源泉であるタンパク質の重要な領域で最も高く、あるいは最終的に生物学的活性の原因である三次元立体配置の決定に必要とされる。これに関して、特定アミノ酸の置換は、これらの置換が活性に対して重要でない領域中に存在するか、あるいは分子の三次元立体配置に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換であるなら、許容され、予測され得る。例えば、アミノ酸は、次のクラス:無極性、無電荷極性、塩基性、および酸性に分けることができる。あるクラスのアミノ酸を、同一タイプの別のアミノ酸に置き換える保存的置換は、その置換が化合物の生物学的活性を実質的に変更しない限り、本発明の範囲に包含される。次は、各クラスに属するアミノ酸の例のリストである。一部の例で、非保存的置換も行うことができる。重要な因子は、これらの置換が、該タンパク質の生物学的活性を有意に損ねないことである。
【0041】
【表1】

【0042】
植物の形質転換。本発明の殺虫性タンパク質を産生させるのに好ましい組換え宿主は、形質転換された植物である。本明細書に開示のようなB.t.毒素タンパク質をコードする遺伝子を、当技術分野で周知の種々の技術を使用して植物細胞中に挿入することができる。例えば、大腸菌(Escherichia coli)中の複製系を含む多数のクローニングベクター、および形質転換された細胞の選択を可能にするマーカーは、外来遺伝子を高等植物中に挿入するための準備に利用可能である。ベクターは、例えば、とりわけpBR322、pUCシリーズ、M13mpシリーズ、pACYC184を含む。したがって、B.t.毒素タンパク質をコードする配列を有するDNAフラグメントを、適切な制限部位でベクター中に挿入することができる。生じるプラスミドは、大腸菌(E. coli)中への形質転換に使用される。大腸菌(E. coli)細胞を、適切な栄養培地中で培養し、次いで採取し、溶菌する。プラスミドを回収する。配列解析、切断解析、電気泳動、およびその他の生化学−分子生物学的方法が、解析方法として一般的に実施される。各操作の後、使用されるDNA配列を開裂し、次のDNA配列に連結することができる。各プラスミド配列を、同一または他のプラスミド中にクローン化することができる。所望の遺伝子を植物中に挿入する方法に応じて、他のDNA配列を必要とする可能性がある。例えば、植物細胞の形質転換にTiまたはRiプラスミドを使用するなら、TiまたはRiプラスミドT−DNAの少なくとも右境界、しばしば右および左境界を、挿入すべき遺伝子の隣接領域として連結すべきである。植物細胞の形質転換のためのT−DNAの使用は、徹底的に研究され、欧州特許第120516号、LeeおよびGelvin(2008)、Hoekema(1985)、Fraley et al(1986)、およびAn et al(1985)中に十分に記載されており、当技術分野で十分確立されている。
【0043】
挿入されたDNAが植物ゲノム中で統合されると、それは、比較的安定である。形質転換ベクターは、通常、形質転換された植物細胞に、殺生物剤、あるいはとりわけビアラホス、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、またはヒグロマイシンなどの抗生物質に対する抵抗性を付与する選択マーカーを含む。個別的に採用されるマーカーは、したがって、挿入DNAを含まない細胞よりも形質転換された細胞の選択を可能にするべきである。
【0044】
多数の技術が、DNAを植物宿主細胞中に挿入するのに利用可能である。これらの技術には、形質転換剤としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)、融合、注入、遺伝子銃(微粒子照射)、またはエレクトロポレーション、ならびにその他の可能な方法を使用する、T−DNAでの形質転換が含まれる。形質転換にアグロバクテリアを使用するなら、挿入すべきDNAを、特別のプラスミド中に、すなわち、中間ベクター中に、またはバイナリーベクター中にクローン化すべきである。中間ベクターを、T−DNA中の配列に相同である配列のための相同組換えによってTiまたはRiプラスミド中に統合することができる。TiまたはRiプラスミドは、また、T−DNAの移動に必須であるvir領域を含む。中間ベクターは、アグロバクテリア中でそれ自身を複製することができない。中間ベクターを、ヘルパープラスミド(複合化)を使用して、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)中に移動させることができる。バイナリーベクターは、大腸菌(E. coli)およびアグロバクテリウムの双方中でそれ自身を複製することができる。それらは、選択マーカー遺伝子、および右および左T−DNA境界領域によって枠取られたリンカーまたはポリリンカーを含む。それらを、アグロバクテリア中に直接的に形質転換することができる(Holstersら、1978)。宿主細胞として使用されるアグロバクテリウム(Agrobacterium)は、vir領域を所持するプラスミドを含むはずである。vir領域は、T−DNAの植物細胞中への移行に必須である。さらなるT−DNAを含むことができる。そのように形質転換されたバクテリウムは、植物細胞の形質転換に使用される。植物の外植体を、DNAを植物細胞中へ移行するためにアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)と共に有利に培養することができる。次いで、全植物を、選択のための抗生物質または殺生物剤を含んでいてもよい適切な培地中で、感染植物材料(例えば、葉片、茎、根の部分、さらには原形質体または懸濁培養細胞)から再生することができる。そうして得られる植物を、次いで、挿入されたDNAの存在について試験することができる。注入およびエレクトロポレーションの場合、プラスミドに関する特別の要求はなされない。例えば、pUC誘導体などの通常のプラスミドを使用することが可能である。
【0045】
形質転換された細胞は、植物中、通常の方式で増殖する。それらは、胚細胞を形成し、形質転換された形質(群)を子孫植物に伝達することができる。このような植物を、通常の方式で育成し、同一の形質転換された遺伝要因または他の遺伝要因を有する植物と交配させることができる。生じるハイブリッド個体は、対応する表現型特性を有する。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、植物は、そのコドン使用頻度が植物に対して最適化された遺伝子で形質転換される。参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第5380831号を参照されたい。一部の末端欠失型毒素を本明細書中で例示するが、Btの技術分野で、130kDa型(完全長)毒素は、コア毒素であるN末端の半分、およびプロトキシンの「尾部」であるC末端の半分を有することが周知である。したがって、適切な「尾部」を、本発明の末端欠失型/コア毒素と共に使用することができる。例えば、米国特許第6218188号および米国特許第6673990号を参照されたい。さらに、植物中で使用するための合成のBt遺伝子を創り出す方法は、当技術分野で周知である(StewartおよびBurgin、2007)。好ましい形質転換植物の1つの非限定的例が、Cry1Faタンパク質をコードする植物で発現可能な遺伝子を含み、かつCry1Caタンパク質をコードする植物で発現可能な第2遺伝子をさら含む受精能力のあるトウモロコシ植物である。
【0047】
Cry1FaおよびCry1Ca測定形質(群)の近交系トウモロコシ系統中への移行(遺伝子移入)は、反復選択育種によって、例えば、戻し交配によって達成することができる。この場合、所望の反復親を、まず、Cry1FおよびCry1C測定形質に対して適切な遺伝子(群)を所持する供与近交系(非反復親)に交配させる。この交配の子孫を、次いで、反復親へ戻し接合し、続いて非反復親から移行される予定の所望の形質(群)について生じる子孫の中で選択する。所望の形質(群)に関する選択を伴う、反復親との3、好ましくは4、より好ましくは5世代以上の戻し交配の後に、子孫は、移行される形質(群)を調節する遺伝子座に関してヘテロ接合性であるが、他の遺伝子のほとんどまたはほとんど全てに関して反復親に似ている(例えば、Poehlman & Sleper (1995) Breeding Field Crops 4th Ed., 172〜175;Fehr (1987) Principles of Cultivar Development Vol.1 :Theory and Technique, 360〜376参照)。
【0048】
昆虫抵抗性管理(IRM)の戦略。例えば、Roushらは、殺虫性トランスジェニック作物の管理のために、「ピラミッド化」または「スタッキング」とも呼ばれる2毒素戦略を概説している(The Royal Society. Phil. Trans. R. Soc. Lond. B. (1998) 353, 1777〜1786)。
【0049】
それらのウェブサイト(epa.gov/oppbppd1/biopesticides/pips/bt_corn_refuge_2006.htm)上で、米国環境保護庁は、標的有害生物に対して活性な単一のBtタンパク質を産生するトランスジェニック作物を使用するための非トランスジェニック(すなわち、非B.t.)緩衝帯(非Bt作物/トウモロコシのセクションまたはブロック)を準備するための種の次の要件を発表している。
【0050】
「コーンボーラーから保護されるBt(Cry1AbまたはCry1F)トウモロコシ製品のための特定の構造化要件は次の通りである:
構造化緩衝帯: トウモロコシ地域の20%の非鱗翅目Btトウモロコシ緩衝帯
ワタ地域の50%の非鱗翅目Bt緩衝帯
ブロック:
内部(すなわち、Bt耕地内)
外部(すなわち、無作為接合を最大化するためのBt耕地の1/2マイル(可能なら1/4マイル)以内の分離された耕地)
圃場内帯状地
帯状地は、幼虫移動の効果を低減するために少なくとも4列の幅(好ましくは6列)でなければならない。」
【0051】
さらにまた、全米トウモロコシ耕作者協会(National Corn Growers Association)は、彼らのウェブサイト:(ncga.com/insect-resistance-management-fact-sheet-bt-corn)上で、緩衝帯要件に関する類似の指針を提供している。例えば、
「コーンボーラーのIRMの要件
−トウモロコシ耕地少なくとも20%に保護ハイブリッド種を植え付ける
−ワタを作る地域では、緩衝帯は50%でなければならない
−保護ハイブリッド種の1/2マイル以内に植え付けるべきである
−緩衝帯は、Bt圃場内に帯状地として植えることができ;緩衝帯の帯状地は少なくとも4列の幅でなければならない
−緩衝帯は、標的昆虫に対して経済的閾値に到達するなら、通常の殺有害生物剤だけで処理することができる
−Btをベースにした噴霧可能な殺虫剤は、緩衝帯のトウモロコシに用いることができない
−適切な緩衝帯は、あらゆる農場にBtトウモロコシを植えるべきである」
【0052】
Roush et alが述べているように(例えば、1780および1784頁の右欄)、標的有害生物に対してそれぞれ有効で、交差抵抗性がほとんどまたはまったくない異なる2種のタンパク質のスタッキングまたはピラミッド化は、より小さな緩衝帯の使用を可能にすることができる。Roushは、成功的なスタッキングの場合、10%未満の緩衝帯の大きさが、単一(非ピラミッド化)形質に関して約50%の緩衝帯に匹敵する抵抗性管理を提供できることを示唆した。現在利用可能なピラミッド化Btトウモロコシ製品の場合、米国環境保護庁は、単一形質の製品の場合(一般には20%)に比べて、植え付けられる非Btトウモロコシのかなりより少ない(一般には5%)構造化緩衝帯を要求している。
【0053】
Roush et al(上記)、および米国特許第6,551,962号でさらに考察されているように、耕地における種々の幾何的植え付けパターン(上述のような)および袋内種子混合物(in-bag seed mixture)を含む、緩衝帯のIRM効果を準備する種々の方法が存在する。
【0054】
上記のパーセンテージ、または類似の緩衝帯比率は、本発明の二重または三重のスタックまたはピラミッドに対して使用することができる。単一の標的有害生物に対する3種の作用方式を用いる三重スタックの場合、目標はゼロ緩衝帯(または、例えば5%未満の緩衝帯)である。これは、例えば10エーカーを超える商業的耕地の場合にとりわけ当てはまる。
【0055】
本明細書中で言及または引用される全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、それらが本明細書の明確な教示と矛盾しない程度まで、参照によりその全体で組み込まれる。特別に指摘または暗示しない限り、用語[a]、「an」および「the」は、本明細書中で使用する場合、「少なくとも1つ」を意味する。
【0056】
(参考文献)
Wolfersberger, M.G., (1993), Preparation and Partial Characterization of Amino Acid Transporting Brush Border Membrane Vesicles from the Larval Midgut of the Gypsy Moth (Lymantria Dispar). Arch. Insect Biochem. Physiol. 24: 139-147.
Liang, Y., Patel, S.S., and Dean, D.H., (1995), Irreversible Binding Kinetics of Bacillus thuringiensis Cry1A Delta-Endotoxins to Gypsy Moth Brush Border Membrane Vesicles is Directly Correlated to Toxicity. J. Biol. Chern., 270, 24719-24724.
【実施例】
【0057】
〔実施例1〕
生物活性
FAW、ECB、ならびにCry1Fa抵抗性FAWおよびECB昆虫に作用する本発明のCryタンパク質のバイオアッセイ結果を表1に示す。双方のタンパク質は、FAW幼虫に対して高度に活性である(この有害生物の考察については、例えば、Tabashnik, PNAS (2008), vol.105, no.49, 19029〜19030を参照されたい)。Cry1Faは、感受性FAWに比較して、Cry1Faの毒性に対して抵抗性であるFAW(rFAW)に対してはるかに活性が低い。Cry1Beは、rFAWに対して、感受性FAWに比較して同じように活性またはより活性である。
【0058】
表1.4種の異なる昆虫型、+Cry1Fa抵抗性FAWおよびECBの幼虫に対するCryタンパク質の生物学的活性。下線のない緑色の値は、複数の測定から得られた値の範囲として表したLC−50値である。下線を付した値は、タンパク質が特定の昆虫に対して致死をもたらさないGI−50値である。値はng/cmで表す。
【0059】
【表2】

【0060】
〔実施例2〕
結合研究
図1は、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(フォールアーミーワーム、FAW)から産生された刷子縁小胞に対する、125ICry1Fa対Cry1FaまたはCry1Beの競合結合を示す。アッセイは、プルダウン法を使用して二つ組で実施した。FAW−0は、競合リガンドのまったく存在しない状態で受容体に結合された125ICry1Faを表す(対照)。FAW−1,000nM Cry1Faは、その受容体から放射能標識化Cry1Faの結合を置換した相同の非標識化Cry1Faの存在する状態で得られる大きく低下した結合レベルを表す。FAW−1,000nM Cry1Beは、その受容体から放射能標識化Cry1Faの結合を置換できなかった非標識化Cry1Beの存在する状態で得られる結合を表す。
【0061】
図2は、オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(ユーロピアンコーンボーラー、ECB)から産生された刷子縁小胞に対する、125ICry1Fa対Cry1FaまたはCry1Beの競合結合を示す。アッセイは、プルダウン法を使用して二つ組で実施した。「対照Rxn」は、競合リガンドのまったく存在しない状態で受容体に結合された125ICry1Faを表す。1,000nM Cry1Faは、その受容体から放射能標識化Cry1Faの結合を置換した相同の非標識化Cry1Faの存在する状態で得られる大きく低下した結合レベルを表す。1,000nM Cry1Beは、その受容体から放射能標識化Cry1Faの結合を置換できなかった非標識化Cry1Beの存在する状態で得られる結合を表す。
【0062】
図3は、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)から産生された刷子縁小胞に対する125ICry1Be結合のCry1Fa(▲)およびCry1be(●)による競合置換を示す。Cry1Faは、100nM(アッセイ中に使用される放射能標識化Cry1Beの濃度の200倍)を超える濃度でのみ0.5nM125ICry1Beの結合を効果的に置換する。Cry1Beは、たとえCry1FaがCry1Beに比べてこの有害生物に対してより活性であるにしても、Cry1Faに比較してそれ自身を置換する上ではるかにより効果的である。
【0063】
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【表3−6】

【表3−7】

【表3−8】

【表3−9】

【表3−10】

【表3−11】

【表3−12】

【表3−13】

【0064】
【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cry1Be殺虫性タンパク質をコードするDNAおよびCry1Fa殺虫性タンパク質をコードするDNAを含むトランスジェニック植物。
【請求項2】
請求項1に記載の植物の種子。
【請求項3】
Cry1Be殺虫性タンパク質をコードするDNAおよびCry1Fa殺虫性タンパク質をコードするDNAが遺伝子移入されている、請求項1に記載の植物。
【請求項4】
請求項3に記載の植物の種子。
【請求項5】
非Bt緩衝帯植物、および請求項1に記載の複数の植物を含む植物の圃場であって、前記緩衝帯植物が、前記圃場の全ての作物植物の40%未満を構成する、圃場。
【請求項6】
前記緩衝帯植物が、前記圃場の全ての作物植物の30%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項7】
前記緩衝帯植物が、前記圃場の全ての作物植物の20%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項8】
前記緩衝帯植物が、前記圃場中の全ての作物植物の10%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項9】
前記緩衝帯植物が、前記圃場の全ての作物植物の5%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項10】
前記緩衝帯植物がブロックまたは帯状地にある、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項11】
非Bt緩衝帯植物からの緩衝帯種子、および請求項4に記載の複数の種子を含む種子混合物であって、前記緩衝帯種子は混合物の全ての種子の40%未満を構成する、種子混合物。
【請求項12】
前記緩衝帯種子が、混合物の全ての種子の30%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項13】
前記緩衝帯種子が、混合物の全ての種子の20%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項14】
前記緩衝帯種子が、混合物の全ての種子の10%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項15】
前記緩衝帯種子が、混合物の全ての種子の5%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項16】
昆虫によるCry毒素に対する抵抗性の発達を管理する方法であって、種子を播いて請求項5に記載の植物の圃場を作製することを含む方法。
【請求項17】
前記植物が、Cry1Abコア毒素を含むタンパク質をコードするDNAをさらに含む、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
【請求項18】
非Bt緩衝帯植物および請求項17に記載の複数種のトランスジェニック植物を含む植物の圃場であって、前記緩衝帯植物が、前記圃場の全ての作物植物の約20%未満を構成する、圃場。
【請求項19】
請求項17に記載の複数の植物を含む植物の圃場であって、約10%未満の緩衝帯植物を含む圃場。
【請求項20】
昆虫によるCry毒素に対する抵抗性の発達を管理する方法であって、種子を播いて請求項19に記載の植物の圃場を作製することを含む方法。
【請求項21】
Cry1Fコア毒素を含むタンパク質およびCry1Beコア毒素を含むタンパク質の双方の有効量を発現する細胞を含む、鱗翅目有害生物を防除するための組成物。
【請求項22】
Cry1Fタンパク質およびCry1Beタンパク質の双方を発現するように形質転換された、微生物または植物細胞である宿主を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記有害生物に対してまたは前記有害生物の環境に対して有効量の請求項21に記載の組成物を提示することを含む、鱗翅目有害生物の防除方法。
【請求項24】
バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来の4種の殺虫性タンパク質を産生するトランスジェニック植物であって、前記タンパク質の3種が、第1昆虫に対して非交差反応性活性を示し、かつ前記タンパク質の3種が、第2昆虫に対して非交差反応性活性を示す、トランスジェニック植物。
【請求項25】
前記昆虫が、ユーロピアンコーンボーラーおよびフォールアーミーワームである、請求項24に記載の植物。
【請求項26】
Cry1Faタンパク質と、Cry1Beタンパク質と、Cry1Ab、Cry2Aa、およびCry1Iタンパク質からなる群から選択される第3タンパク質とを産生するトランスジェニック植物。
【請求項27】
Cry1Faタンパク質と、Cry1Beタンパク質と、Vip3A、Cry1C、Cry1D、およびCry1Eタンパク質からなる群から選択される第3タンパク質とを産生するトランスジェニック植物。
【請求項28】
Cry1Faタンパク質と、Cry1Beタンパク質と、Cry1Ab、Cry2Aa、およびCry1Iタンパク質からなる群から選択される第3タンパク質と、Vip3A、Cry1C、Cry1D、およびCry1Eタンパク質からなる群から選択される第4タンパク質とを産生するトランスジェニック植物。
【請求項29】
昆虫によるCry毒素に対する抵抗性の発達を管理する方法であって、種子を播いて請求項24から28のいずれかに記載の植物の圃場を作製することを含む方法。
【請求項30】
非Bt緩衝帯植物、および請求項24から28のいずれかに記載の複数の植物を含む植物の圃場であって、前記緩衝帯植物が、前記圃場の全ての作物植物の約10%未満を構成する、圃場。
【請求項31】
約5%未満の緩衝帯植物を含む、請求項30に記載の圃場。
【請求項32】
昆虫によるCry毒素に対する抵抗性の発達を管理する方法であって、種子を播いて請求項30または/および請求項31に記載の植物の圃場を作製することを含む方法。
【請求項33】
非Bt緩衝帯植物からの緩衝帯種子、および請求項24から28のいずれかに記載の植物からの複数の種子を含む種子混合物であって、前記緩衝帯種子は混合物の全ての種子の10%未満を構成する、種子混合物。
【請求項34】
前記植物が、10エーカーよりも多くを占める、請求項5、18および30から31のいずれかに記載の圃場。
【請求項35】
前記植物が、トウモロコシ、ダイズ、およびワタからなる群から選択される、請求項1、2、17、24、25、26および27から28のいずれかに記載の植物。
【請求項36】
前記植物がトウモロコシ植物である、請求項1、2、17、24、25、26および27から28のいずれかに記載の植物。
【請求項37】
前記植物細胞が、前記Cry1Fa殺虫性タンパク質をコードする前記DNAおよび前記Cry1Be殺虫性タンパク質をコードする前記DNAを含み、前記Cry1Fa殺虫性タンパク質が配列番号1と少なくとも99%同一であり、前記Cry1Be殺虫性タンパク質が、配列番号2と少なくとも99%同一である、請求項1、2、17、24、25、26および27から28のいずれかに記載の植物の植物細胞。
【請求項38】
前記Cry1Fa殺虫性タンパク質が配列番号1を含み、前記Cry1Be殺虫性タンパク質が配列番号2を含む、請求項1、2、17、24、25、26および27から28のいずれかに記載の植物。
【請求項39】
請求項1、2、17、24、25、26および27から28のいずれかに記載の植物の植物細胞であって、前記植物細胞が、前記Cry1Be殺虫性タンパク質をコードする前記DNAおよび前記Cry1Fa殺虫性タンパク質をコードする前記DNAを含み、前記Cry1Be殺虫性タンパク質が、配列番号2と少なくとも99%同一であり、前記Cry1Fa殺虫性タンパク質が、配列番号1と少なくとも99%同一である、植物細胞。
【請求項40】
前記Cry1Be殺虫性タンパク質が配列番号2を含み、前記Cry1Fa殺虫性タンパク質が配列番号1を含む、請求項1、2、17、24、25、26および27から28のいずれかに記載の植物。
【請求項41】
ユーロピアンコーンボーラーおよびフォールアーミーワームからなる群から選択される昆虫を防除する方法であって、前記昆虫をCry1Be殺虫性タンパク質およびCry1Fa殺虫性タンパク質と接触させることを含む方法。
【請求項42】
請求項37または請求項39に記載の植物細胞を産生する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−514765(P2013−514765A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544834(P2012−544834)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060808
【国際公開番号】WO2011/075584
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】