説明

D型アミノ酸を含む、ベータアミロイドペプチドの凝集のモジュレータ

【課題】天然βアミロイドペプチドの凝集を調節する化合物の提供。
【解決手段】D型アミノ酸から成るペプチドを含む、3から5個のD型アミノ酸残基を含み、D型ロイシン、D型フェニルアラニン及びD型バリンのうちのいずれかから個別に選択される少なくとも二つのD型アミノ酸残基を含むペプチド。ペプチドがβアミロイドペプチドのレトロ−インベルソ異性体であり、好ましくはAβ17-21のレトロ−インベルソ異性体であり、アミノ末端、カルボキシ末端又は両方で修飾される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
アルツハイマー病(AD)は、1907年にバイエルンの精神科医、アロイス・アルツハイマー医師によって初めて記述された疾患であり、短期の記憶喪失に始まり、進行して見当識障害、判断力及び理性の喪失、及び、最終的には痴呆にもつながる進行性の神経障害である。この疾患の経過は通常、発症後4年から12年の間に、重篤な脆弱化した不動の状態で死に至る。ADには、65歳以上の人口の5から11パーセント、そして86歳以上の人口では47パーセントもが罹患すると推定されている。ADに対応するための社会的コストは年間8500億ドルを超えるが、これは主に、AD患者には広汎な保護的ケアが必要だからである。さらに、1940年代及び1950年代のベビーブームに生まれた成人が、ADが多くなる年齢にさしかかるにつれ、ADの抑制及び治療が、より大きな保健上の問題になるであろう。現在では、この疾患の進行を有意に遅らせる治療法はない。ADに関する総説については、Selkoe, D.J.Sci.Amer.,1991年11月、p.p.68-78及びYankner,B.A.等(1991)N.Eng.J.Med.325:1849-1857を参照されたい。
【0002】
最近、アルツハイマー型の神経病理をトランスジェニック・マウスで発生させたという報告があった(Games等(1995)Nature 373:523-527)このトランスジェニック・マウスは高レベルのヒト変異アミロイド前駆体タンパクを発現し、ADに伴う病的状態の多くを発症する。
【0003】
病理学的には、ADは、その患者の脳内に顕著な病変の存在があることを特徴とする。このような脳の病変には、神経原線維濃縮体(NTF)と呼ばれる異常な細胞内フィラメントや、アミロイド形成性タンパク質の老人班又はアミロイド斑への細胞外沈着がある。またアミロイド沈着物は、AD患者の脳血管壁にも存在する。アミロイド斑の主要なタンパク質構成成分は、β−アミロイドペプチド(β−AP)と呼ばれる4キロダルトンのペプチドであると同定されている(Glenner,G.G.及びWong,C.W.(1984)Biochem.Biophys.Res.Commun.120:885-890;Masters,C.等(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4245-4249)。β−APの広汎性の沈着は正常な成人脳でもよく観察されるが、一方、ADの脳組織は、より小型の、密に詰まったコアβ−アミロイド斑を特徴とする。(例えばDavies,L.等(1988)Neurology 38:1688-1693を参照されたい)。これらの観察は、β−APの沈着が、ADで起きるニューロンの破壊に先行して起き、かつそれに寄与していることを示唆している。β−APの直接的な病理的役割をさらに裏付けるものとして、β−アミロイドは、培養株及びイン・ビボの両方で、成熟ニューロンに対して毒性であることが示されている。Yankner,B.A.等(1989)Science245:417-420;Yankner,B.A.等(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9020-9023;Roher,A.E.等(1991)Biochem.Biophys.Res.Commun.174:572-579;Kowall,N.W.等(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:7247-7251。更に、大脳皮質及び脳血管系内の広汎性β−アミロイド沈着により特徴付けられる遺伝性のアミロイドーシスオランダ型を伴う脳溢血(HCHWA−D)の患者は、β−AP内のアミノ酸置換へとつながる点突然変異を有することが示された。Levy,E.等(1990)Science 248:1124-1126。この観察は、β−APの配列の特定の変化がβ−アミロイドの沈着を引き起こすことを示している。
【0004】
天然β−APは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)と呼ばれるずっと大きいタンパク質から加水分解によって誘導される。Kang,J.等(1987)Nature 325:733;Goldgaber,D.等(1987)Science 235:877;Robakis,N.K.等(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4190;Tanzi,R.E.等(1987)Science235:880。APP遺伝子は、第21染色体にマップされるが、このことは、第21染色体のトリソミーにより引き起こされるダウン症候群の個人において若年齢で見られるβ−アミロイド沈着に対する説明となる。Mann,D.M.等(1989)Neuropathol.Appl.Neurobiol.15:317;Rumble,B.等(1989)N.Eng.J.Med.320:1446。APPは、単一の膜貫通ドメインと、細胞外環境へ伸びる長いアミノ末端領域(このタンパク質の約2/3)及び細胞質中に突き出た、より短いカルボキシ末端領域を含む。APPメッセンジャーRNAの選択的スプライシングから、563アミノ酸(APP−563)、695アミノ酸(APP−695)、714アミノ酸(APP−714)、751アミノ酸(APP−751)又は770アミノ酸(APP−770)の何れかからなる少なくとも5つの型のAPPができる。
【0005】
APP内で、天然発生型のβ−アミロイドペプチドは、APP−770のアミノ酸位置672のアスパラギン酸残基で始まる。APPのタンパク質分解でできた天然β−APは、不均一性を示すカルボキシ末端の終点に応じて39〜43アミノ酸残基長である。ADの患者及び正常の成人の両方の血液及び脳脊髄液中で優勢な循環型のβ−APは、β1−40(「ショートβ」)である。Seubert,P.等(1992)Nature 359:325;Shoji,M.等(1992)Science 258:126。しかしながら、β1−42及びβ1−43(「ロングβ」)も又、アミロイド斑中の型である。Masters,C.等(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4245;Miller,D.等(1993)Arch.Biochem.Biophys.301:41;Mori,H.等(1992)J.Biol.Chem.267:17082。β−APPの凝集及び沈着へと導く正確な分子機構は未知であるが、このプロセスは、核形成依存性の重合(例えば、タンパク質結晶化、微小管形成及びアクチン重合)のそれになぞらえられてきた。例えば、Jarrett,J.T.及びLansbury,P.T.(1993)Cell 73:1055-1058を参照されたい。かかるプロセスにおいて、モノマー成分の重合は、核形成までは、生じない。従って、これらのプロセスは、凝集が起きるまでの遅延時間とそれに続く核形成後の急速な重合により特徴付けられる。核形成は、急速な重合を生じる「種」又は予備形成した核の添加により加速することができる。β−APのロングβ型は、種として作用し、それにより、ロング及びショートβ−AP型の両方の重合を加速することが示されている。Jarrett,J.T.等(1993)Biochemistry32:4693。
【0006】
β−AP中にアミノ酸置換を作成したある研究において、2つの変異型βペプチドが、変異型のペプチドと非変異型のペプチドを混合したときに、非変異型のβ−APの重合を邪魔することが報告された。Hilbich,C.等(1992)J.Mol.Biol.228:460-473。等モル量の変異した及び変異してない(即ち、天然の)β−アミロイドペプチドを用いてこの効果を見て、これらの変異したペプチドは、イン・ビボでの使用に適さないことが報告された。Hilbich,C.等(1992)、前出。
【0007】
発明の概要
本発明は、天然β−アミロイドペプチド(β−AP)に結合し、天然β−APの凝集を調節し、及び/又は、天然β−APの神経毒性を阻止することのできる化合物、及び、その製薬組成物に関するものである。前記化合物は、生物学的安定性を高め、上昇した血漿レベルを長引かせるような態様で、修飾される。本発明のβ−アミロイドモジュレータ化合物は、完全にD型アミノ酸から構成された、好ましくはβ−アミロイドペプチドに基づく、ペプチド構造を含む。様々な実施例では、前記モジュレータ化合物のペプチド構造は、天然β−APに見られるL型アミノ酸配列に対応するD型アミノ酸配列、天然β−APに見られるL型アミノ酸配列のインベルソ異性体であるD型アミノ酸配列、天然β−APに見られるL型アミノ酸配列のレトロ−インベルソ異性体であるD型アミノ酸配列、又は、天然β−APに見られるL型アミノ酸配列がスクランブルされた又は置換されたものであるD型アミノ酸配列、を含む。好ましくは、前記モジュレータのD型アミノ酸ペプチド構造は、アミノ酸配列Leu-Val-Phe-Phe-Ala(SEQ ID NO:4)を有する、天然β−APの位置17−21(それぞれAβ17-20及びAβ17-21)にある小領域に基づいてデザインされるとよい。好適な実施例では、本発明の化合物中のフェニルアラニンは、例えば酸化的代謝に対してより安定であるか、もしくはその影響を受けにくいような、又は当該化合物の脳内レベルが高くなるような、フェニルアラニン類似体に置換される。
【0008】
さらに別の実施例では、本発明のモジュレータ化合物には、ヒドラジン部分に結合させた、D型アミノ酸、L型アミノ酸もしくは両方から成るβ−アミロイドペプチド、β−アミロイドペプチドのインベルソ異性体、又は、β−アミロイドペプチドのレトロ−インベルソ異性体が含まれ、この場合、前記化合物は、天然β−アミロイドペプチドに接触させたときに、その天然β−アミロイドペプチドに結合するか、又は、天然β−アミロイドペプチドの凝集を調節するか、又は、その天然β−アミロイドペプチドの神経毒性を阻止する。
【0009】
本発明のモジュレータ化合物は、好ましくは、3から20個のD型アミノ酸、より好ましくは3から10個のD型アミノ酸、そしてさらにより好ましくは3から5個のD型アミノ酸を含む。前記モジュレータのD型アミノ酸ペプチド構造は、遊離したアミノ末端、カルボキシ末端、又は、カルボキシアミド末端を有していてもよい。あるいは、前記アミノ末端、カルボキシ末端、又は、その両方、を修飾してもよい。例えば、Aβ凝集を阻止する上での当該化合物の能力を高めるN末端修飾基を用いてもよい。さらに、(例えば安定性、生物学的利用能、例えば血液脳関門を通過して脳内に進入する当該化合物送達度の向上、等々)当該化合物の薬物動態性を変えるために、当該ペプチドのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端を修飾してもよい。好適なアミノ末端修飾基には、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、又はイソプロピル基など、がある。好適なカルボキシル末端修飾基には、アミド基、アルキルもしくはアリールアミド基(例えばフェネチルアミド)、ヒドロキシ基(即ち、ペプチド酸を還元してペプチドアルコールを生じる場合の生成物)、アシルアミド基、及び、アセチル基、がある。さらに、モジュレータ化合物を修飾して、検出可能な物質(例えば放射性標識)で当該化合物を標識してもよい。
【0010】
いくつかの好適な実施例では、本発明は構造:N,N-ジメチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-メチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-エチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-イソプロピル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala)-イソプロピルアミド; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala)-ジメチルアミド; N,N-ジエチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N,N-ジエチル-(D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(Gly-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N-エチル-(Gly-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N-エチル-(Gly- D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-エチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N-プロピル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N,N-ジエチル-(Gly-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Ile-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ile)-NH2; H-(D-Ile-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala-)-NH2; H-( D-Ile- D-Ile-D-Phe-D-Phe- D-Ile)-NH2; H-(D-Nle-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala-)-NH2; H-(D-Nle-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Nle)-NH2; 1-ピペリジン-アセチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; 1-ピペリジン-アセチル-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu-イソプロピルアミド; H-D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu-イソプロピルアミド; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-メチルアミド; H-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-メチルアミド; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-OH; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Cha-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[p-F]Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[F5]Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe-D-Cha-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe- D-[p-F]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe- D-[F5]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe-D-Lys-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Cha-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-[p-F]Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-[F5]Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu- D-Lys-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Cha-D-Cha-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu- D-[p-F]Phe-D-[p-F]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-[F5]Phe-D-[F5]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu- D-Lys- D-Lys-D-Val-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Cha-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[p-F]Phe-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[F5]Phe-D-Leu)-NH2; H-D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-(H-D-Leu-D-Val-D-Phe-)NH; H-D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-NH-COCH3; 及びH- D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-NH2を有する化合物を提供するものである。
【0011】
本発明の化合物で特に好適なものについては、実施例の項で記述する。
【0012】
本発明の別の態様は、製薬組成物に関する。典型的には、前記製薬組成物は、治療上有効量の本発明のモジュレータ化合物と、薬学的に容認可能な担体と、を含む。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、天然β−アミロイドペプチドの凝集を阻止する方法に関する。これらの方法は、天然β−アミロイドペプチドの凝集が阻止されるよう、天然β−アミロイドペプチドを本発明のモジュレータ化合物に接触させるステップを含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、生物学的試料中の天然β−アミロイドペプチドの存在又は不存在を検出する方法に関する。これらの方法は、生物学的試料を本発明の化合物に接触させるステップであって、前記化合物に、検出可能な物質の標識が付けられている、ステップと、天然β−アミロイドペプチドに結合した前記化合物を検出し、それにより、前記生物学的試料中の天然β−アミロイドペプチドの存在又は不存在を検出するステップと、を含む。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、β−アミロイド症に伴う障害について被験者を処置する方法に関する。これらの方法は、β−アミロイド症に伴う障害について被験者が処置されるよう、被験者に、治療上有効量の本発明のモジュレータ化合物を投与するステップを含む。好ましくは、前記障害がアルツハイマー病であるとよい。β−アミロイド症に伴う障害の治療に、又は、β−アミロイド症に伴う障害の処置のための医薬製造に、本発明のモジュレータを利用することも、本発明の包含するところである。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、天然β−アミロイドペプチドに結合する、天然β−アミロイドペプチド(β−AP)の凝集を調節する、及び/又は、天然β−APの神経毒性を阻止する、ことのできる化合物、及びその製薬組成物に関するものである。前記化合物は、生物学的安定性を高め、高められた血漿レベルを長引かせるような態様で修飾される。天然β−APの凝集を調節する本発明の化合物は、ここでは互換可能にβ−アミロイドモジュレータ化合物、β−アミロイドモジュレータ、又は、単にモジュレータとも言及されており、当該モジュレータを天然β−APに接触させたときに、天然β−APの凝集を変えるものである。このように、本発明の化合物は、β−APの天然の凝集プロセス又は速度を変えるよう作用することで、このプロセスを破壊する。好ましくは、前記化合物はβ−APの凝集を阻止するとよい。本発明の化合物は、完全にD型アミノ酸残基から成るペプチド構造を含むことを特徴とする。このペプチド構造は、好ましくはβ−アミロイドペプチドに基づくものであるとよく、そして、例えば、天然β−APに見られるL型アミノ酸配列に対応するD型アミノ酸配列、天然β−APに見られるL型アミノ酸配列のインベルソ異性体であるD型アミノ酸配列、天然β−APに見られるL型アミノ酸配列のレトロ−インベルソ異性体であるD型アミノ酸配列、又は、天然β−APに見られるL型アミノ酸配列がスクランブルされた又は置換されたものであるD型アミノ酸配列、を含むことができる。好適な実施例では、本発明の化合物中のフェニルアラニンは、例えば酸化的代謝に対してより安定な、かつ、その影響を受けにくいフェニルアラニン類似体に置換される。
【0017】
本発明は、遊離したアミノ末端、カルボキシ末端、又はカルボキシアミド末端を有するD型アミノ酸ペプチド構造を含むモジュレータ化合物や、ペプチド構造のアミノ末端、カルボキシ末端、及び/又は、側鎖が修飾されているようなモジュレータ化合物を包含する。
【0018】
本発明のβ−アミロイドモジュレータ化合物は、それらが持つ天然β−アミロイドペプチドに結合する能力、イン・ビトロで天然β−アミロイドペプチドの凝集を調節する能力、及び/又は、(例えば神経毒性アッセイ、核形成アッセイ、又は、原線維結合アッセイなど、ここで説明するアッセイを用いて)培養細胞で天然β−AP原線維の神経毒性を阻止する能力に基づいて、選抜することができる。好適なモジュレータ化合物は、天然β−APの凝集を阻止する、及び/又は、天然β−APの神経毒性を阻止する、ものである。しかしながら、これらの特性の一方又は両方に基づいて選抜されたモジュレータ化合物は、アミロイド症の処置に有利かも知れない更なる特性をイン・ビボで有するものでもよい(J. S. Pachter 等 (1998) "Aβ1-40 induced neurocytopathic activation of human monocytes is blocked by Aβ peptide aggregation inhibitors." Neurobiology of Aging (Abstracts: The 6th International Conference on Alzheimer's Disease and Related Disorders, Amsterdam, 18-23 July 1998) 19, S128 (Abstract 540); R. Weltzein, A. 等 (1998) "Phagocytosis of Beta-Amyloid: A Possible Requisite for Neurotoxicity." J. Neuroimmunology (Special Issue: Abstracts of the International Society of Neuroimmunology Fifth International Congress, Montreal, Canada, 23-27 August 1998) 1998, 90, 32 (Abstract 162))。例えば、前記モジュレータ化合物は、(直接的又は間接的プロテアーゼ阻害により)又は、イン・ビボで生体内で毒性β−AP又はその他のAPPフラグメントを生ずるプロセスの調節により、天然β−APのプロセッシングに干渉するものでもよい。あるいは、イン・ビトロでのAβ凝集の阻止ではなく、これら後者の特性に基づいてモジュレータ化合物を選抜してもよい。さらに、天然β−APとの相互作用に基づいて選抜された、本発明のモジュレータ化合物は、さらに、APP又はその他のAPPフラグメントと相互作用してもよい。さらに、本発明のモジュレータ化合物は、β−アミロイド原線維の凝集を有意に変化させることなくβ−アミロイド原線維に結合するその能力に基づいて、特徴付けることができる(この能力は、例えば当該化合物を放射性標識し、当該化合物をβ−アミロイド斑に接触させ、β−APの病的形態である斑などに結合した当該化合物を例えば撮像などによって計数又は検出することによって、調べることができる)。β−アミロイド原線維の凝集を有意に変化させることなくβ−アミロイド原線維に効率的に結合するような化合物を用いて、例えば、β−アミロイド原線維を(例えばここでさらに説明するように診断目的で)検出することができる。しかしながら、β−アミロイド原線維に結合する、及び/又は、それらの凝集を調節する上での、特定の化合物の能力は、その化合物の濃度に依存して異なる場合があることは、理解されよう。従って、低濃度のときには、β−アミロイド原線維の凝集を変化させることなく、それらに結合する化合物であっても、高濃度のときには、原線維の凝集を阻止するかも知れない。β−アミロイド原線維に結合する、及び/又は、原線維の凝集を調節する、という特性を有するこのような化合物はすべて、本発明に包含されるものとして、意図されている。
【0019】
ここで用いられる、β−アミロイド凝集の「モジュレータ」とは、天然β−アミロイドペプチドに接触させたときに、天然β−アミロイドペプチドの凝集を変化させる作用薬を言うものとして、意図されている。「β−アミロイドペプチドの凝集」という用語は、ペプチドが相互に会合して多量体の、概ね不溶性の錯体を形成するプロセスを言う。「凝集」という用語はさらに、β−アミロイドの原線維形成を包含するものとして意図されており、β−アミロイド斑も包含する。
【0020】
ここでは互換可能に用いられている「天然β−アミロイドペプチド」、「天然β−AP」及び「天然Aβペプチド」という用語は、β−AP凝集及びβ−アミロイド症に関与するβ−アミロイド前駆体タンパク質(APP)の自然発生型のタンパク質分解開裂生成物を包含するものとして、意図されている。これらの天然ペプチドには、39から43個のアミノ酸を有するβ−アミロイドペプチド(即ちAβ1-39、Aβ1-40、Aβ1-41、Aβ1-42及びAβ1-43)が含まれる。天然β−APのアミノ末端アミノ酸残基は、770個のアミノ酸残基型のアミロイド前駆体タンパク質(「APP−770」)の位置672にあるアスパラギン酸残基に相当する。43個のアミノ酸ロング型の天然β−APはアミノ酸配列
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIAT (SEQ ID NO:1とも示す)を有するが、より短い型は、カルボキシ末端から削除した1から4個のアミノ酸残基を有する。APP−770の、位置672(即ち天然β−APのアミノ末端)からそのC末端まで(103個のアミノ酸)のアミノ酸配列をSEQ ID NO:2に示す。ここで説明する凝集アッセイに用いるのに好適な型の天然β−APは、Aβ1−40又はAβ1−42である。
【0021】
本発明のモジュレータの存在下では、天然β−アミロイドペプチドの凝集は「変更」又は「調節」される。様々な型の用語「変更」又は「調節」も、β−AP凝集の阻止及びβ−AP凝集の促進の両方を包含するものとして、意図されている。天然β−APの凝集は、当該モジュレータの不存在下でのβ−APの凝集量及び/又は凝集速度に比較して、β−APの凝集量及び/又は凝集速度に減少があったときに、当該モジュレータの存在下で「阻止された」とされる。凝集の阻止は、実施例の項で説明するような凝集アッセイを用い、凝集にかかる遅延時間の倍増としてか、又は、凝集の全体的プラトーレベル(即ち凝集の全体量)の低下として、定量することができる。様々な実施例では、本発明のモジュレータは、当該化合物がβ−APに対して一モル等量であるとき、凝集遅延時間を少なくとも1.2倍、1.5倍、1.8倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍又は5倍に増加させるものである。その他の様々な実施例では、本発明のモジュレータは、凝集のプラトーレベルを、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%又は100%、阻止するものである。
【0022】
β−AP凝集を阻止するモジュレータ(阻止的モジュレータ化合物)を用いて、β−アミロイド沈着の開始を妨げる又は遅らせることができる。好ましくは、本発明の阻止的モジュレータ化合物は、天然Aβペプチドの神経毒性凝集体の形成及び/又は活性を阻止するものであるとよい(即ち、前記阻止的化合物を用いて、β−APの神経毒性を阻止できるとよい)。さらに、本発明の阻止的化合物によって、既に形成されたβ−AP凝集体の神経毒性を減じることができるが、このことは、この阻止的モジュレータが、既に形成されたβ−AP原線維又は可溶性の凝集体に結合してそれらの固有神経毒性を調節できること、又は、このモジュレータが、単量体型のβ−APと凝集型のβ−APとの間にある平衡を、非毒性型を優先する態様で乱すことができること、を示唆している。
【0023】
あるいは、別の実施例では、本発明のモジュレータ化合物は、天然Aβペプチドの凝集を促進するものである。様々な型の用語「促進」は、このモジュレータの不存在下でのβ−APの凝集量及び/又は凝集の割合に比較して、このモジュレータの存在下でβ−APの凝集量及び/凝集の割合に増加があることを言う。Aβ凝集を促進するこのような化合物は、刺激的モジュレータ化合物と言及されている。刺激的モジュレータ化合物は、例えばβ−APの凝集が有害でないかも知れない生物区画にβ−アミロイドペプチドを封鎖し、それによりβ−APの凝集が有害である生物区画からβ−APを枯渇させるのに、有用かも知れない。さらに、刺激的モジュレータ化合物を用いて、イン・ビトロ凝集アッセイ(例えば例2の項に記載したアッセイなど)でAβ凝集を促進することができ、このイン・ビトロ凝集アッセイは、例えば、このAβ凝集を阻止するか又は反転させることのできるテスト化合物に関するスクリーニング・アッセイ(即ち、刺激的モジュレータ化合物が、Aβ凝集体の形成を促進する「種」として作用できる場合)である。
【0024】
好適な実施例では、本発明のモジュレータは、モル過剰量の天然β−APに接触させたときにβ−AP凝集を変化させることができる。「モル過剰量の天然β−AP」とは、モジュレータのモル濃度よりも大きな、β−APのモル濃度を言う。例えば、モジュレータ及びβ−APが両方とも1μMの濃度で存在する場合、これらは「等モル」であると言い、他方、モジュレータが1μMの濃度で存在し、β−APが5μMの濃度で存在する場合、このβ−APはモジュレータに比較して5倍のモル過剰量、存在すると言う。好適な実施例では、本発明のモジュレータは、天然β−APがモジュレータ濃度に比較して少なくとも2倍、3倍又は5倍モル過剰で存在するとき、天然β−AP凝集を変化させるのに効果的である。別の実施例では、このモジュレータは、天然β−APがモジュレータ濃度に比較して少なくとも10倍、20倍、33倍、50倍、100倍、500倍又は1000倍モル過剰で存在するとき、β−AP凝集を変化させるのに効果的である。
【0025】
ここで用いられる「完全にD型アミノ酸から成るβ−アミロイドペプチド」という用語は、本発明のモジュレータに用いられる場合、APP中の天然配列のアミノ酸配列に同一なアミノ酸配列を有するペプチドだけでなく、許容可能なアミノ酸置換がその天然配列から行われており、しかし天然β−APに存在する天然L型アミノ酸ではなく、D型アミノ酸から成るペプチドも包含するものとして、意図されている。許容可能なアミノ酸置換とは、天然β−AP凝集を変化させるという、そのD型アミノ酸含有ペプチドの能力に影響を与えない、及び/又は、その能力を高めるかも知れないものである。さらに、いくつかのアミノ酸置換は、天然β−AP凝集を変化させるそのペプチドの能力に貢献したり、及び/又は、更なる有利な性質(例えば可溶性の向上、その他のアミロイドタンパク質との会合の減少、等々)をそのペプチドにもたらすかも知れない。親ペプチドに見られるのと同一のアミノ酸配列を有するが、全L型アミノ酸が全D型アミノ酸に置換されているようなペプチドは、さらに「インベルソ」化合物とも言及されている。例えば、親ペプチドがThr-Ala-Tyrである場合、そのインベルソ型はD-Thr-D-Ala-D-Tyrである。
【0026】
ここで用いられる「β−アミロイドペプチドのレトロ−インベルソ異性体」という用語は、本発明のモジュレータに用いられる場合、当該アミノ酸の配列が、天然β−AP中の配列に比較して反転されており、全L型アミノ酸がD型アミノ酸に置換されているようなペプチドを包含するものとして、意図されている。例えば、親ペプチドがThr-Ala-Tyrである場合、そのレトロ−インベルソ型はD-Tyr-D-Ala-D-Thrである。親ペプチドに比べ、レトロ−インベルソペプチドは、反転した骨格を持ち、しかし元の側鎖の空間的コンホメーションを概ね維持しているため、親ペプチドに近似したトポロジーを有するレトロ−インベルソ異性体となっている。Goodman 等 "Perspectives in Peptide Chemistry" pp. 283-294 (1981)を参照されたい。「レトロ−インベルソ」ペプチドの更なる解説については、Sistoの米国特許第4,522,752も参照されたい。
【0027】
多様なその他の態様の本発明のモジュレータ、及びその利用を、以下の項でさらに詳細に説明する。
【0028】
I モジュレータ化合物
一実施例では、本発明のモジュレータ化合物はβ−アミロイドペプチドを包含して成るが、このβ−アミロイドペプチドは、完全にD型アミノ酸から成り、前記化合物は、天然β−アミロイドペプチドに接触させたときに、天然β−アミロイドペプチドに結合するか、又は、天然β−アミロイドペプチドの凝集を調節するか、又は、その神経毒性を阻止する。好ましくは、前記モジュレータのβ−アミロイドペプチドは、3から20個のD型アミノ酸、より好ましくは3から10個のD型アミノ酸、そしてさらにより好ましくは3から5個のD型アミノ酸から成るとよい。好適な実施例では、本発明の化合物中のフェニルアラニンは、例えば酸化的代謝に対してより安定である、かつ、より影響を受けないフェニルアラニン類似体に置換される。
【0029】
実施例の一つでは、モジュレータのβ−アミロイドペプチドを、例えばメチル、エチル、もしくはプロピル基など、C1からC6の低級アルキル基などのアルキル基;又は、環式、ヘテロ環式、多環式又は分枝式アルキル基などのアルキル基を含む修飾基で、アミノ末端修飾する。適したN末端修飾基の例を、以下の項IIでさらに詳述する。別の実施例では、モジュレータのβ−アミロイドペプチドにカルボキシ末端修飾し、例えば当該モジュレータが、ペプチドアミド、ペプチドアルキルもしくはアリールアミド(例えばペプチドフェネチルアミド)又はペプチドアルコールを含んでいてもよい。適したC末端修飾基の例を、以下の項II及びIIIにさらに解説する。モジュレータのβ−アミロイドペプチドは、β−AP凝集又は神経毒性を変化させるそのモジュレータの能力を高めるよう、修飾してもよい。加えて、又は、代替的に、モジュレータの薬物動態特性を変更したり、及び/又は、検出可能な物質(以下の項IIIにさらに説明する)でモジュレータを標識するために、モジュレータのβ−アミロイドペプチドを修飾してもよい。
【0030】
別の実施例では、本発明のモジュレータ化合物は、β−アミロイドペプチドのレトロ−インベルソ異性体を包含して成り、この場合、前記化合物は、天然β−アミロイドペプチドに接触させたときに、天然β−アミロイドペプチドに結合するか、又は、天然β−アミロイドペプチドの凝集を調節するか、又は、その神経毒性を阻止する。好ましくは、前記β−アミロイドペプチドのレトロ−インベルソ異性体は、3から20個のD型アミノ酸、より好ましくは3から10個のD型アミノ酸、そしてさらにより好ましくは3から5個のD型アミノ酸から成るとよい。好適な実施例では、本発明の化合物中のフェニルアラニンは、例えば酸化的代謝に対してより安定である、かつ、より影響を受けないフェニルアラニン類似体に置換される。
【0031】
実施例の一つでは、このレトロ−インベルソ異性体を、例えばメチル、エチルもしくはプロピル基など、C1からC6の低級アルキル基などのアルキル基;又は、環式、ヘテロ環式、多環式又は分枝式アルキル基などのアルキル基を含む修飾基で、アミノ末端修飾する。適したN末端修飾基の例を、以下の項IIでさらに詳述する。別の実施例では、このレトロ−インベルソ異性体に、例えばアミド基、アルキルもしくはアリールアミド基(例えばフェネチルアミド)、又はヒドロキシ基(即ち、ペプチド酸を還元してペプチドアルコールを生じる場合の生成物)でカルボキシ末端修飾してもよい。適したC末端修飾基の例を、以下の項II及びIIIにさらに解説する。このレトロ−インベルソ異性体は、β−AP凝集又は神経毒性を変化させるそのモジュレータの能力を高めるよう、修飾してもよい。加えて、又は、代替的に、モジュレータの薬物動態特性を変化させたり、及び/又は、検出可能な物質(以下の項IIIにさらに説明する)でモジュレータを標識するために、このレトロ−インベルソ異性体を修飾してもよい。
【0032】
さらに別の実施例では、本発明のモジュレータ化合物には、ヒドラジン部分に結合させた、完全にもしくは部分的にD型アミノ酸から成るβ−アミロイドペプチド、β−アミロイドペプチドのインベルソ異性体、又は、β−アミロイドペプチドのレトロ−インベルソ異性体が含まれ、この場合、前記化合物は、天然β−アミロイドペプチドに接触させたときに、その天然β−アミロイドペプチドに結合するか、又は、天然β−アミロイドペプチドの凝集を調節するか、又は、その天然β−アミロイドペプチドの神経毒性を阻止する。好ましくは、本発明のモジュレータ化合物は、ヒドラジン部分に結合させた、1から20個のD型アミノ酸、より好ましくは1から10個のD型アミノ酸、さらにより好ましくは1から5個のD型アミノ酸、そして最も好ましくは2から4個のD型アミノ酸から成るとよい。
【0033】
一実施例では、ヒドラジン部分を含む本発明のモジュレータ化合物を、例えばメチル、エチル又はイソプロピル基などのアルキル基を含む修飾基で、アミノ末端修飾する。適したN末端修飾基の例を、以下の項IIにさらに解説する。別の実施例では、ヒドラジン部分を含むこの本発明のモジュレータ化合物を、例えばアセチルなどでカルボキシ末端修飾する。適したC末端修飾基の例は、以下の項II及びIIIでさらに解説する。ヒドラジン部分を含む本発明のモジュレータ化合物は、β−AP凝集又は神経毒性を変化させるそのモジュレータの能力を高めるよう、修飾してもよい。加えて、又は、代替的に、モジュレータの薬物動態特性を変化させたり、及び/又は、検出可能な物質(以下の項IIIにさらに説明する)でモジュレータを標識するために、ヒドラジン部分を含むこの本発明のモジュレータ化合物を修飾してもよい。
【0034】
本発明のモジュレータは、好ましくは、天然β−APの小領域のアミノ酸配列に基づいてデザインされるとよい。「天然β−アミロイドペプチドの小領域」という用語は、天然β−APのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端の削除を含むものとして、意図されている。「天然β−APの小領域」という用語は、完全長の天然β−APを含むものとしては、意図されていない(即ち、「小領域」にはAβ1−39、Aβ1−40、Aβ1−41、Aβ1−42、及びAβ1−43は含まれない)。天然β−アミロイドの好適な小領域は「Aβ凝集コアドメイン」(ACD)である。ここで用いられる「Aβ凝集コアドメイン」という用語は、天然β−アミロイドペプチドの小領域であって、この小領域を、言及によってその全内容をここに編入する米国特許出願番号08/548,998号及び米国特許出願番号08/616,081号に詳述されたように、そのL型アミノ酸型の状態で適宜修飾(例えばアミノ末端で修飾する)すると、天然β−APの凝集を調節するのに充分であるような小領域を言う。好ましくは、ACDを、15個未満のアミノ酸長、そしてより好ましくは3から10個のアミノ酸長である天然β−APの小領域にならってモデル化するとよい。多様な実施例では、このACDを、10、9、8、7、6、5、4又は3個のアミノ酸長であるβ−APの小領域にならってモデル化する。一実施例では、ACDのモデル化の基となるβ−APの小領域は、β−APの内部又はカルボキシ末端領域(即ち、アミノ酸位置1のアミノ末端よりも下流)である。別の実施例では、このACDを、β−APのうちの疎水性の小領域にならってモデル化する。好適なAβ凝集コアドメインは、ここで説明するように、天然β−AP又はその類似体のアミノ酸残基17−20又は17−21(それぞれAβ17−20及びAβ17−21)を包含する。Aβ17−20及びAβ17−21のアミノ酸配列は、それぞれLeu-Val-Phe-Phe(SEQ ID NO:3)及びLeu-Val-Phe-Phe-Ala(SEQ ID NO:4)である。
【0035】
実施例の項で実証するように、Aβ17−20及びAβ17−21のアミノ酸配列に基づいてデザインされた、D型アミノ酸含有モジュレータは、Aβ凝集の特に有効な阻止剤であり、向上した生物学的安定性、及び、延長された上昇した血漿レベルを呈する。これらのモジュレータは、Aβ17−20又はAβ17−21のL型アミノ酸配列に対応するD型アミノ酸配列、Aβ17−20又はAβ17−21のL型アミノ酸配列のインベルソ異性体であるD型アミノ酸配列、Aβ17−20又はAβ17−21のL型アミノ酸配列のレトロ−インベルソ異性体であるD型アミノ酸配列、又は、Aβ17−20又はAβ17−21のL型アミノ酸配列のスクランブルされた又は置換されたものであるD型アミノ酸配列、を含んでいてよい。好適な実施例では、Aβ17−20及びAβ17−2のアミノ酸配列に基づいてデザインされたモジュレータ中のフェニルアラニンは、酸化的代謝などに対してより安定である、かつ、より影響を受けないフェニルアラニン類似体に置換される。別の好適な実施例では、Aβ17−20及びAβ17−2のアミノ酸配列に基づいてデザインされたモジュレータは、さらにヒドラジン部分を含む。
【0036】
D型アミノ酸を基にしたモジュレータは、修飾されていないアミノ末端及び/又はカルボキシ末端及び/又はカルボキシアミド末端を有していてもよく、あるいは、その代わりに、そのアミノ末端、カルボキシ末端、又は両方は、修飾されてもよい(以下に詳述する)。効果的なモジュレータのペプチド構造は概ね疎水性であり、D型ロイシン構造、D型フェニルアラニン構造、及びD型バリン構造のうちのいずれかから個別に選択される少なくとも二つのD型アミノ酸構造の存在を特徴とする。ここで用いられる「D型アミノ酸構造」(例えば「D型ロイシン構造」、「D型フェニルアラニン構造」、又は「D型バリン構造」など)という用語は、D型アミノ酸だけでなく、当該化合物の機能的活性を維持したD型アミノ酸の類似体、誘導体、及びミメティックをも包含するものとして、意図されている(以下に詳述する)。例えば、「D型フェニルアラニン構造」という用語は、D型フェニルアラニンだけでなく、D-シクロヘキシルアラニン[D-cha]、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ−フルオロフェニルアラニン){[p-F]f又はD-[p-F]Phe}、D-ペンタフルオロフェニルアラニン{[F5]f又はD-[F5]Phe}、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、D-ピリジルアラニン、D-ホモフェニルアラニン、メチルチロシン、及びベンジルセリンや、D型リシン構造、D型バリン構造、又はD型ロイシン構造による置換も含むものとして意図されている。「D型ロイシン構造」という用語は、D型ロイシンだけでなく、D型バリンやD型ロイシン、又は、例えばD型ノルロイシンもしくはD型ノルバリンなどの脂肪族の側鎖を有するその他の天然もしくは非天然のアミノ酸による置換も含むものとして、意図されている。「D型バリン構造」という用語は、D型バリンだけでなく、D型ロイシンや、脂肪族の側鎖を有するその他の天然もしくは非天然のアミノ酸による置換も含むものとして、意図されている。
【0037】
他の実施例では、モジュレータのペプチド構造は、D型ロイシン構造、D型フェニルアラニン構造、D型バリン構造、D型アラニン構造、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、及び、D型リシン構造、のうちのいずれかから個別に選択される少なくとも二つのD型アミノ酸構造を含む。別の実施例では、前記ペプチド構造は、D型ロイシン構造、D型フェニルアラニン構造、及び、D型バリン構造のうちのいずれかから個別に選択される少なくとも三つのD型アミノ酸構造から成る。さらに別の実施例では、前記ペプチド構造は、D型ロイシン構造、D型フェニルアラニン構造、D型バリン構造、D型アラニン構造、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、及び、D型リシン構造、のうちのいずれかから個別に選択される少なくとも三つのD型アミノ酸構造から成る。さらに別の実施例では、前記ペプチド構造は、D型ロイシン構造、D型フェニルアラニン構造、及び、D型バリン構造のうちのいずれかから個別に選択される少なくとも四つのD型アミノ酸構造を含む。さらに別の実施例では、前記ペプチド構造は、D型ロイシン構造、D型フェニルアラニン構造、及び、D型バリン構造のうちのいずれかから個別に選択される少なくとも四つのD型アミノ酸構造から成る。好適な実施例では、前記ペプチド構造は、フェニルアラニンよりも安定であり、酸化的代謝などによる影響をより受けない、少なくとも一つのフェニルアラニン類似体を含む。
【0038】
一実施例では、本発明は、式(I):
【0039】
【化1】

【0040】
を含むβ−アミロイドモジュレータ化合物を提供するものであるが、
但し式中、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4、はそれぞれD型アミノ酸構造であり、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4、のうちの少なくとも二つは、個別に、D型ロイシン構造、D型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ−フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、及び、D型バリン構造、のうちのいずれかから選択され、
存在しても、存在しなくともよいYは、式(Xaa)aを有する構造であり、但し式中、Xaaは何らかのD型アミノ酸構造であり、そしてaは1から15までの整数であり、
存在しても、存在しなくともよいZは、式(Xaa)bを有する構造であり、但し式中、Xaaは何らかのD型アミノ酸構造であり、そしてbは1から15までの整数であり、
存在しても、存在しなくともよいAは、前記化合物に直接又は間接的に結合させた修飾基であり、そして
nは1から15までの整数であり、
但し式中、Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Y、Z、A及びnは、前記化合物が、天然β−アミロイドペプチドに接触させたときに、天然β−アミロイドペプチドに結合するか、天然β−アミロイドペプチドの凝集を調節するか、又は、神経毒性を阻止するよう、かつ、酸化的代謝などの代謝の影響をより受けないよう、選択される。
【0041】
この式の下位実施例では、五番目のアミノ酸残基であるXaa5は、Xaa4のC末端側に特定され、そして存在しても、存在しなくてもよいZは、式(Xaa)bを有する構造であり、但し式中、Xaaは何らかのD型アミノ酸構造であり、そしてbは1から14までの整数である。従って、本発明は式(II):
【0042】
【化2】

【0043】
を含むβ−アミロイドモジュレータ化合物を提供するものであり、但し式中、bは1から14までの整数である。
【0044】
好適な実施例では、式(I)のXaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4は、Aβ17−20の配列、又は許容可能なその置換に基づいて選択される。従って、好適な実施例において、Xaa1は、D型アラニン構造又はD型ロイシン構造であり、Xaa2は、D型バリン構造又はD型フェニルアラニン構造であり、Xaa3は、D型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、又は、D型リシン構造であり、そしてXaa4は、D型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、又はD型リシン構造、である。
【0045】
他の好適な実施例において、式(II)のXaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4及びXaa5は、Aβ17-21の配列又はその許容し得る置換に基づいて選択される。従って、好適な実施例において、Xaa1は、D型アラニン構造又はD型ロイシン構造であり、Xaa2は、D型バリン構造であり;Xaa3は、D型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、又は、D型リシン構造であり、Xaa4は、フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、D-ピリジルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、又はD型リシン構造であり、そしてXaa5は、D型アラニン構造又はD型ロイシン構造である。
【0046】
他の好適な実施例において、式(I)のXaa1、Xaa2、Xaa3及びXaa4は、Aβ17-20のレトロ−インベルソ異性体又はその許容し得る置換に基づいて選択される。従って、好適な実施例において、Xaa1は、D型アラニン構造、D型ロイシン構造、又は、D型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、D型ロイシン構造、D型バリン構造、又は、D型リシン構造であり;Xaa2は、D型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、D-ピリジルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、又はD型リシン構造であり;Xaa3は、D型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、D-ピリジルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、又は、D型リシン構造であり;そしてXaa4は、D型バリン構造、又は、D型ロイシン構造である。
【0047】
他の好適な実施例において、式(II)のXaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4及びXaa5は、Aβ17-21のレトロ−インベルソ異性体又はその許容し得る置換に基づいて選択される。従って、好適な実施例において、Xaa1は、D型アラニン構造、D型ロイシン構造、又は、D型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、D-ピリジルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、又は、D型リシン構造であり;Xaa2は、D型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、D-ピリジルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、又は、D型リシン構造であり;Xaa3は、D型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、、D-ピリジルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、又は、D型リシン構造であり;Xaa4は、D型バリン構造又はD型ロイシン構造であり、そしてXaa5は、D型ロイシン構造である。
【0048】
別の実施例では、本発明は式(III):
【0049】
【化3】

【0050】
を含むβ−アミロイドモジュレータ化合物を提供するものであり、但し式中、
Xaa1及びXaa2は、それぞれD型アミノ酸構造であり、そしてXaa1及びXaa2のうちの少なくとも二つは、個別に、D型ロイシン構造、D型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、D型リシン構造、又は、D型バリン構造、のうちのいずれかから選択され、
NH-NHはヒドラジン構造であり、
存在しても、存在しなくともよいYは、式(Xaa)aを有する構造であり、但し式中、Xaaは何らかのD型アミノ酸構造であり、そしてaは1から15までの整数であり、
存在しても、存在しなくともよいXaa1’、Xaa2’、及びXaa3’は、それぞれD型アミノ酸又はL型アミノ酸構造であり、Xaa1’、Xaa2’、及びXaa3’のうちの少なくとも二つは、個別に、D型もしくはL型ロイシン構造、D型もしくはL型フェニルアラニン構造、例えばD-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、及びD-ホモフェニルアラニンなど、D型もしくはL型チロシン構造、D型もしくはL型ヨードチロシン構造、D型もしくはL型リシン構造、又は、D型もしくはL型バリン構造、のうちのいずれかから選択され、
存在しても、存在しなくともよいZは、式(Xaa)bを有する構造であり、但し式中、Xaaは何らかのD型アミノ酸構造であり、そしてbは1から15までの整数であり、
存在しても、存在しなくともよいAは、前記化合物に直接又は間接的に結合した修飾基であり、そして
nは1から15までの整数であり、
但し式中、Xaa1、Xaa2、Xaa1’、Xaa2’、Xaa3’、Y、Z、A及びnは、前記化合物が、天然β−アミロイドペプチドに接触させたときに、天然β−アミロイドペプチドに結合するか、天然β−アミロイドペプチドの凝集を調節するか、又は、天然β−アミロイドペプチドの神経毒性を阻止し、かつ、酸化的代謝などの代謝の影響をより受けない、ように、選択される。
【0051】
上記の式(I)、(II)又は(III)を有するこの発明のモジュレータにおいては、随意の修飾基(「A」)を、直接又は間接的に、このモジュレータのペプチド構造に結合させる。(ここで用いる場合、用語「調節基」及び「修飾基」は、ペプチド構造に直接又は間接的に結合された化学基を記述するために互換可能に用いる)。例えば、修飾基を、共有結合により、直接ペプチド構造に結合することができ、又は修飾基を、安定な非共有結合性の会合により、間接的に結合することができる。この発明の一実施例においては、修飾基を、このモジュレータのアミノ末端に結合する。或は、この発明の他の実施例においては、修飾基を、このモジュレータのカルボキシ末端に結合させる。別の実施例においては、修飾基を、このモジュレータのアミノ末端及びカルボキシ末端の両方に結合させる。さらに別の実施例では、調節基を、このモジュレータのペプチド構造の少なくとも1つのアミノ酸残基の側鎖に結合する(例えば、リジル残基のイプシロンアミノ基を通して、アスパラギン酸残基若しくはグルタミン酸残基のカルボキシル基を通して、チロシル残基、セリン残基若しくはスレオニン残基のヒドロキシ基、又は、他のアミノ酸側鎖上の適当な反応基を通して)。
【0052】
修飾基が存在するならば、その修飾基は、この化合物が天然β−アミロイドペプチドと接触したときに、天然β−アミロイドペプチドの凝集を阻止するように選択される。従って、この化合物のβ−APペプチドは、その天然状態から改変されているため、修飾基「A」は、ここで用いる場合、水素を包含することを意図していない。この発明のモジュレータにおいては、単一の修飾基を、ペプチド構造に結合することができ、又は複数の修飾基をペプチド構造に結合することができる。修飾基の数は、この化合物が天然β−アミロイドペプチドと接触したときに天然β−アミロイドペプチドの凝集を阻止するように選択される。しかしながら、nは、好ましくは、1〜60の、一層好ましくは1〜30の、尚一層好ましくは1〜10の又は1〜5の整数である。好適な実施例において、Aは、環式基、ヘテロ環式基、多環式基、直線状の基、又は、分枝したアルキル基を含むアミノ末端修飾基であり、且つ、n=1である。他の好適な実施例において、Aは、アミド基、アルキルアミド基、アリールアミド基又はヒドロキシ基を含むカルボキシ末端修飾基であり、且つ、n=1である。適当な修飾基については、下記のII項及びIII項において更に説明する。
【0053】
好適な特定の実施例において、この発明は、(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Cha-D-Leu) (SEQ ID NO:5); (D-Leu-D-Val-D-Cha-D-Phe-D-Leu) (SEQ ID NO:6); (D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[p-F]Phe-D-Leu) (SEQ ID NO:7); (D-Leu-D-Val-D-[p-F]Phe-D-Phe-D-Leu) (SEQ ID NO:8); (D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[F5]Phe-D-Leu) (SEQ ID NO:9); (D-Leu-D-Val-D-[F5]Phe-D-Phe-D-Leu) (SEQ ID NO:10); (D-Leu-D-Phe-D-Cha-D-Val-D-Leu) (SEQ ID NO:11); (D-Leu-D-Phe-D-[p-F]Phe-D-Val-D-Leu) (SEQ ID NO:12); D-Leu-D-Phe-D-[F5]Phe-D-Val-D-Leu) (SEQ ID NO:13); (D-Leu-D-Phe-D-Lys-D-Val-D-Leu) (SEQ ID NO:14); (D-Leu-D-Cha-D-Phe-D-Val-D-Leu) (SEQ ID NO:15); (D-Leu-D-[p-F]Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu) (SEQ ID NO:16); (D-Leu-D-[F5]Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu) (SEQ ID NO:17); (D-Leu-D-Lys-D-Phe-D-Val-D-Leu) (SEQ ID NO:18); (D-Leu-D-Cha-D-Cha-D-Val-D-Leu) (SEQ ID NO:19); (D-Leu-D-Val-D-Cha-D-Cha-D-Leu) (SEQ ID NO:20); (D-Leu-D-[p-F]Phe-D-[p-F]Phe-D-Val-D-Leu) (SEQ ID NO:21); (D-Leu-D-Val-D-[p-F]Phe-D-[p-F]Phe-D-Leu) (SEQ ID NO:22); (D-Leu-D-[F5]Phe-D-[F5]Phe-D-Val-D-Leu) (SEQ ID NO:23); (D-Leu-D-Val-D-[F5]Phe-D-[F5]Phe-D-Leu) (SEQ ID NO:24); (D-Leu-D-Val-D-Phe) (SEQ D NO:25)よりなる群から選択するペプチド構造を含むβ−アミロイドモジュレータ化合物を提供する。
【0054】
前述の特定のペプチド構造の何れも、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端を修飾することができ、下記のII及び/又はIII項において更に説明する。
【0055】
本発明において特に好適なモジュレータには、以下N,N-ジメチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-メチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-エチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-イソプロピル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala)-イソプロピルアミド; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala)-ジメチルアミド; N,N-ジエチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N,N-ジエチル-(D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(Gly-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N-エチル-(Gly-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N-エチル-(Gly- D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-エチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N-プロピル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N,N-ジエチル-(Gly-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Ile-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ile)-NH2; H-(D-Ile-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala-)-NH2; H-( D-Ile- D-Ile-D-Phe-D-Phe- D-Ile)-NH2; H-(D-Nle-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala-)-NH2; H-(D-Nle-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Nle)-NH2; 1-ピペリジン-アセチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; 1-ピペリジン-アセチル-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu-イソプロピルアミド; H-D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu-イソプロピルアミド; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-メチルアミド; H-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-メチルアミド; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-OH; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Cha-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[p-F]Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[F5]Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe-D-Cha-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe- D-[p-F]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe- D-[F5]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe-D-Lys-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Cha-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-[p-F]Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-[F5]Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu- D-Lys-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Cha-D-Cha-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu- D-[p-F]Phe-D-[p-F]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-[F5]Phe-D-[F5]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu- D-Lys- D-Lys-D-Val-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Cha-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[p-F]Phe-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[F5]Phe-D-Leu)-NH2; H-D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-(H-D-Leu-D-Val-D-Phe-)NH; H-D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-NH-COCH3; 及びH- D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-NH2、が含まれる。
【0056】
さらにより好適な本発明の化合物には、PPI-1319: H-(D-Leu-D-Phe-[p-F]D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2 及びPPI:1019: N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2 が含まれる。(上述したように、D-ChaはD-シクロヘキシルアラニンを表し;[p-F]f又はD-[p-F]Phe はD-4-フルオロフェニルアラニン(又はパラ-フルオロフェニルアラニン)を表し;[F5]f 又はD-[ F5]Phe はD-ペンタフルオロフェニルアラニンを表し;そしてD-NleはD-ノルロイシンを表す)。
【0057】
この発明のこれらのモジュレータのD型アミノ酸ペプチド構造は、更に、ここに記載のような天然β−AP凝集を変化させるこのモジュレータの能力を保持している他のペプチド改変物(類似体、誘導体及びミメティックを含む)を包含することを意図している。例えば、この発明のモジュレータのD型アミノ酸ペプチド構造は、更に、その安定性、生物学的利用能、溶解度等を増大させるように改変してもよい。用語「類似体」、「誘導体」及び「ミメティック」は、ここで用いる場合、D−ペプチド構造の化学構造を模倣すると共にD−ペプチド構造の機能的特性を保持した分子を包含することを意図している。ペプチドの類似体、誘導体及びミメティックをデザインするアプローチは、当分野において、公知である。例えば、Farmer,P.S.{Drug Design(E.J.Ariens編)Academic Press,New York,1980,10巻、119-143頁};Ball.J.B.及びAlewood.P.F.(1990)J.Mol.Recognition 3:55;Morgan,B.A.及びGainor,J.A.(1989)Ann.Rep.Med.Chem.24:243;及びFreidinger,R.M.(1989)Trends Pharmacol.Sci.10:270を参照されたい。Sawyer,T.K.(1995)「Peptidomimetic Design and Chemical Approaches to Peptide Metabolism」{Taylor,M.D.及びAmidon,G.L.(編)Peptide-Based Drug Dcsign:Controlling Transport and Metabolism,第17章};Smith,A.B.三世等(1995)J.Am.Chem.Soc.117:11113-11123;Smith,A.B.三世等(1994)J.Am.Chem.Soc.116:9947-9962;及びHirschman,R.等(1993)J.Am.Chem.Soc.115:12550-12568も参照されたい。
【0058】
ここで用いる場合、化合物X(例えば、ペプチド又はアミノ酸)の「誘導体」は、この化合物上の1つ以上の反応基が置換基によって誘導変化されているXの形態をいう。ペプチド誘導体の例には、アミノ酸側鎖、ペプチド主鎖又はアミノ若しくはカルボキシ末端が誘導変化されたペプチド(例えば、メチル化アミド結合を有するペプチド化合物)が含まれる。ここで用いる場合、化合物Xの「類似体」は、Xと異なるある化学構造をも有するが、Xの機能的活性に必要なXの化学構造を未だ保持している化合物をいう。天然発生型のペプチドの類似体の例は、1つ以上の非天然アミノ酸を含むペプチドである。ここで用いる場合、化合物Xの「ミメティック」は、Xの機能的活性に必要なXの化学構造がXのコンホメーションを真似た他の化学構造で置換された化合物をいう。ペプチドミメティックの例には、ペプチド主鎖が1つ以上のベンゾジアゼピン分子で置換されたペプチド化合物が含まれる(例えば、James,G.L.等(1993)Science 260:1937-1942を参照されたい)。
【0059】
本発明のモジュレータ化合物の類似体は、ペプチド構造の1つ以上のD型アミノ酸が、元のモジュレータの特性が保持されるように同族のアミノ酸で置換された化合物を包含することを意図している。好ましくは、保存的アミノ酸置換は、1つ以上のアミノ酸残基で行われるとよい。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、帯電していない極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。本発明のモジュレータのペプチド構造においてなし得る同族置換の非制限的な例には、D−フェニルアラニンのD−チロシン、D−ピリジルアラニン若しくはD−ホモフェニルアラニンでの置換、D−ロイシンのD−バリン若しくは他の天然若しくは非天然の脂肪族側鎖を有するアミノ酸での置換、及び/又は、D−バリンのD−ロイシン若しくは他の天然若しくは非天然の脂肪族側鎖を有するアミノ酸での置換が含まれる。
【0060】
用語「ミメティック」(特に、ペプチドミメティック)は、同配体を含むことを意図している。この用語「同配体」は、ここで用いる場合、第1の構造の立体コンホメーションが第2の構造に特異的な結合部位に適合するために第2の化学構造の代用となり得る化学構造を含むことを意図している。この用語は、特に、当業者に周知のペプチド主鎖改変物(即ち、アミド結合ミメティック)を包含する。かかる改変には、アミド窒素、α−炭素、アミドカルボニルの改変、アミド結合の完全な置換、伸長、欠失又は主鎖の架橋が含まれる。ψ[CH2S]、ψ[CH2NH]、ψ[CSNH2]、ψ[NHCO]、ψ[COCH2]及びψ[(E)又は(Z)CH=CH]を含む幾つかのペプチド主鎖の改変は、公知である。上で用いた命名法において、ψは、アミド結合の不在を示している。このアミド基を置き換える構造は、角型括弧内に特定されている。
【0061】
他の可能な改変には、N−アルキル(又はアリール)置換(ψ[CONR])や、又は、ラクタム及び他の環状構造を構築する主鎖の架橋が含まれる。この発明のモジュレータ化合物の他の誘導体には、C末端ヒドロキシメチル誘導体、O−改変誘導体(例えば、C末端ヒドロキシメチルベンジルエーテル)、N末端改変誘導体(置換されたアミド、例えばアルキルアミド及びヒドラジドを含む)、及び、C末端フェニルアラニン残基がフェネチルアミド類似体で置換された化合物(例えば、トリペプチドVal−Phe−Pheの類似体としてのVal−Phe−フェネチルアミド)が含まれる。
【0062】
この発明のモジュレータ化合物は、製薬組成物に取り入れることができ(下記のV項で更に説明する)、下記のVI項で更に説明するような検出方法及び治療方法において用いることができる。
【0063】
II.修飾基
いくつかの実施例においては、本発明のモジュレータ化合物を、直接又は間接的に、少なくとも1つの修飾基(MGと略記)に結合する。用語「修飾基」は、D型アミノ酸構造に(例えば、共有結合で)直接結合する構造や、(例えば、安定な非共有結合性の会合により、又は、Aβ由来のD型アミノ酸ペプチド構造に隣接し得る追加のアミノ酸残基若しくはそのミメティック、類似体若しくは誘導体に対する共有結合により)間接的にペプチド構造に結合するものを含むことを意図している。例えば、修飾基を、Aβ由来のD−アミノ酸ペプチド構造のアミノ末端若しくはカルボキシ末端に結合することができ、又はコアドメインに隣接するペプチド若しくはペプチドミメティック領域に結合することができる。或は、修飾基を、Aβ由来のD−アミノ酸ペプチド構造の少なくとも1つのD型アミノ酸残基の側鎖に、又はコアドメインに隣接するペプチド若しくはペプチドミメティック領域に結合することができる(例えば、リジル残基のイプシロンアミノ基を通して、アスパラギン酸残基若しくはグルタミン酸残基のカルボキシル基を通して、チロシル残基、セリン残基若しくはスレオニン残基のヒドロキシ基又は他のアミノ酸側鎖上の適当な反応基を通して)。D型アミノ酸ペプチド構造に共有結合される修飾基は、例えば、アミド、アルキルアミノ、カルバメート、尿素又はエステル結合を含む化学構造を結合させるための、当分野で周知の手段及び方法により結合することができる。
【0064】
用語「修飾基」は、それらの自然の形態においては天然のAβペプチドに自然には結合しない基を包含することを意図している。従って、用語「修飾基」は、水素を包含することを意図していない。この(これらの)修飾基は、モジュレータ化合物が、天然β−アミロイドペプチドと接触したときに天然β−アミロイドペプチドの凝集を変化させ好ましくは阻止し又は天然β−アミロイドペプチドと接触したときに天然β−アミロイドペプチドの神経毒性を阻止するように選択する。機構により制限されることを意図する訳ではないが、このモジュレータが修飾基を含む実施例においては、その(それらの)修飾基は、モジュレータのAβ重合を破壊させる能力を増大させる主要なファルマコフォアとして機能すると考えられる。
【0065】
好適実施例において、この(これらの)修飾基はアルキル基を包含する。用語「アルキル」は、ここで用いられる場合、約1から10個の炭素原子を有する直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基を言う。アルキル基の例には、メチル、エチル、ジメチル、ジエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、及びn−ヘキシルがある。アルキル基は置換されなくともよく、又は、一つ以上の位置で、例えばハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロ環式基、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、−CF、−CN、等々で置換されてもよい。好適なアルキルはメチル、エチル、ジメチル、ジエチル、n−プロピル、イソプロピルである。
【0066】
別の実施例では、例えば一個のアルキル基などの一個の修飾基を、別の修飾基に結合させる。さらに別の実施例では、本発明のモジュレータ化合物中のD型アミノ酸を、二つの修飾基で修飾する。従って、好適な修飾基には1-ピペリジンアセチル基が含まれる。
【0067】
好適な実施例の一つでは、この(これらの)修飾基は環式、ヘテロ環式、多環式又は枝分かれ式のアルキル基を包含する。用語「環式基」は、ここで用いる場合、約3〜10の好ましくは約4〜8の、一層好ましくは約5〜7の炭素原子を有する環式の飽和又は不飽和(即ち、芳香族)基を包含することを意図している。典型的な環式基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチルが含まれる。環式基は、1つ以上の環位置において未置換であっても、又は、置換されていてよい。従って、環式基は、例えば、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロ環式基、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、スルホネート、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、−CF3、−CN等で置換されていてよい。
【0068】
用語「ヘテロ環式基」は、約3〜10の好ましくは約4〜8の、一層好ましくは約5〜7の炭素原子を有する環式の飽和又は不飽和(即ち、芳香族)基であって、その環構造が約1〜4のヘテロ原子を含むものを包含することを意図している。ヘテロ環式基には、ピロリジン、オキソラン、チオラン、イミダゾール、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン及びピリジンが含まれる。ヘテロ環式の環は、1つ以上の位置で、例えば、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、他のヘテロ環式基、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、−CF3、−CN、等の置換基により置換されていてよい。ヘテロ環式基は又、下記のような他の環式基と架橋又は縮合していてもよい。
【0069】
用語「多環式基」は、ここで用いる場合、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共有される2つ以上の飽和又は不飽和(即ち、芳香族)環をいうことを意図している(例えば、これらの環は、「縮合環」である)。非隣接原子を介して連結された環は、「架橋された」環と呼ばれる。多環式基の各環は、上記のような置換基、例えばハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、−CF3、−CN、等によって置換することができる。
【0070】
好適な多環式基は、シス−デカリン構造を含む基である。機構により制限されることを意図する訳ではないが、シス−デカリン構造の存在により修飾基上に与えられた「曲がった」コンホメーションがAβ重合の破壊における修飾基の効力に寄与していると考えられる。従って、シス−デカリン構造の「曲がった」配置を真似る他の構造も又、修飾基として用いることができる。修飾基として用いることのできるシス−デカリン含有構造の例は、コラノイル構造例えばコリル基である。例えば、モジュレータ化合物は、そのアミノ末端を、凝集コアドメインをコール酸、胆汁酸と反応させることにより、コリル基で修飾することができる。その上、モジュレータ化合物は、そのカルボキシ末端を、当分野で公知の方法により、コリル基で修飾することができる(例えば、Wess,G.等(1993)Tetrahedron Letters,34:817-822;Wess,G.等(1992)Tetrahedron Letters 33:195-198;及びKramer,W.等(1992)J.Biol.Chem.267:18598-18604を参照されたい)。コリル誘導体及び類似体も又、修飾基として用いることができる。例えば、好適なコリル誘導体は、Aic(3−(O−アミノエチル−イソ)−コリル)であり、これは、更にモジュレータ化合物を修飾するために用いることのできる遊離のアミノ基を有する(例えば、99mTcのキレート化基を、Aicの遊離のアミノ基を通して導入することができる)。ここで用いる場合、用語「コラノイル構造」は、コリル基並びにその誘導体及び類似体特に4環シス−デカリン形状を保持しているものを包含することを意図している。コラノイル構造の例には、他の胆汁酸例えばデオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸及びヒオデオキシコール酸から誘導された基並びに他の関連する構造例えばコラン酸、ブファリン及びレジブフォゲニンが含まれる(もっとも、最後の2つの化合物は、修飾基として用いるには好ましくない)。シス−デカリン含有化合物の他の例は、5β-コレスタン-3α-オール((+)-ジヒドロコレステロールのシス−デカリン異性体)である。胆汁酸及びステロイド構造及び命名法の更なる説明は、Nes,W.R.及びMcKean,M.L.Biochemistry of Steroids and OtherIsopentanoids,University Park Press,Baltimore,メリーランド在の第2章を参照されたい。
【0071】
シス−デカリン含有基に加えて、他の多環式基を修飾基として用いることができる。例えば、ステロイド又はβ−ラクタムに由来する修飾基は、適当な修飾基であろう。一実施例において、修飾基は、ビオチニル基並びにその類似体及び誘導体を含む「ビオチニル構造」である(例えば、2−イミノビオチニル基)。他の実施例において、修飾基には、「フルオレセイン含有基」、例えばAβ由来のペプチド構造を5-(及び6-)-カルボキシフルオレセイン、スクシンイミジルエステル又はフルオレセインイソチオシアネートと反応させて誘導された基など、を含めることができる。種々の他の実施例において、修飾基には、N-アセチルノイラミニル基、トランス-4-コチニンカルボキシル基、2-イミノ-1-イミダゾリジンアセチル基、(S)-(-)-インドリン-2-カルボキシル基、(-)-メントキシアセチル基、2−ノルボルナンアセチル基、γ-オキソ-5-アセナフテンブチリル、(-)-2-オキソ-4-チアゾリジンカルボキシル基、テトラヒドロ-3-フロイル基、2-イミノビオチニル基、ジエチレントリアミンペンタアセチル基、4-モルホリンカルボニル基、2-チオフェンアセチル基又は2-チオフェンスルホニル基を含めることができる。
【0072】
上記の環式基、ヘテロ環式基及び多環式基に加えて、他の型の修飾基を、本発明のモジュレータにおいて用いることができる。例えば、疎水性の基及び分枝したアルキル基は、適当な修飾基であろう。例には、アセチル基、フェニルアセチル基、フェニルアセチル基、ジフェニルアセチル基、トリフェニルアセチル基、イソブタノイル基、4−メチルバレリル基、トランス-シンナモイル基、ブタノイル基及び1-アダマンタンカルボニル基が含まれる。
【0073】
更に別の型の修飾基は、ベータ−ターンミメティックとして作用する非天然アミノ酸例えばTsang,K.Y.等(1994)J.Am.Chem.Soc.116:3988-4005;Diaz,H及びKelly,J.W.(1991)Tetrahedron Letters 41:5725-5728;及びDiaz,H等(1992)J.Am.Chem.Soc.114:8316-8318に記載されたジベンゾフランベースのアミノ酸を含有する化合物である。かかる修飾基の例は、ペプチドアミノエチルジベンゾフラニルプロピオン酸(Adp)基(例えば、DDIIL−Adp)(SEQ ID NO:31)である。この型の修飾基には、更に、この型の化合物が天然β−APと相互作用する際に天然β−APの凝集に対する更なる立体障害を導入するための1つ以上のN−メチルペプチド結合が含まれ得る。
【0074】
更に別の種類の修飾基はNH−OR基であり、但し式中、Rは、ここに説明した、修飾された又は未修飾のアルキル基又はシクロアルキル基のいずれでもよい。
【0075】
適当な修飾基及びそれらの対応する修飾試薬の非制限的例を以下に列記する。
【0076】
修飾基 修飾試薬
メチル- メチルアミン、Fmoc-D-[Me]-Leu- OH、
メチルアミン及びブロモアセチルペプチド
エチル- エチルアミン、アセトアルデヒド及び
水素化シアノホウ素ナトリウム、
エチルアミン及びブロモアセチルペプチド
プロピル- プロピルアミン、プロピオンアルデヒド
及び水素化シアノホウ素ナトリウム、
プロピルアミン及びブロモアセチルペプチド
イソプロピル- イソプロピルアミン、イソプロピルアミン 及びブロモアセチルペプチド
ピペリジン- ピペリジン及びブロモアセチルペプチド
アセチル- 無水酢酸、酢酸
ジメチル- メチルアミン、ホルムアルデヒド及び
水素化シアノホウ素ナトリウム
ジエチル- アセトアルデヒド
及び水素化シアノホウ素ナトリウム
コリル- コール酸
リトコリル- リトコール酸
ヒオデキシコリル- ヒオデオキシコール酸
ケノデオキシコリル- ケノデオキシコール酸
ウルソデオキシコリル- ウルソデオキシコール酸
3-ヒドロキシシンナモイル- 3-ヒドロキシ桂皮酸
4-ヒドロキシシナモイル- 4-ヒドロキシ桂皮酸
2-ヒドロキシシナモイル- 2-ヒドロキシ桂皮酸
3-ヒドロキシ-4-メトキシシンナモイル- 3-ヒドロキシ-4-メトキシ桂皮酸
4-ヒドロキシ-3-メトキシシンナモイル- 4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸
2-カルボキシシンナモイル- 2-カルボキシ桂皮酸
3-ホルミルベンゾイル- 3-カルボキシベンズアルデヒド
4-ホルミルベンゾイル- 4-カルボキシベンズアルデヒド
3,4-ジヒドロキシヒドロシンナモイル- 3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸
3,7-ジヒドロキシ-2-ナフトイル- 3,7-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸
4-ホルミルシンナモイル- 4-ホルミル桂皮酸
2-ホルミルフェノキシアセチル- 2-ホルミルフェノキシ酢酸
8-ホルミル-1-ナフトイル- 1,8-ナフタアルデヒド酸
4-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル- 4-(ヒドロキシメチル)安息香酸
4-ヒドロキシフェニルアセチル- 4-ヒドロキシフェニル酢酸
3-ヒドロキシベンゾイル- 3-ヒドロキシ安息香酸
4-ヒドロキシベンゾイル- 4-ヒドロキシ安息香酸
5-ヒダントインアセチル- 5-ヒダントイン酢酸
L-ヒドロオロチル- L-ヒドロオロト酸
4-メチルバレリル- 4-メチル吉草酸
2,4-ジヒドロキシベンゾイル- 2,4-ジヒドロキシ安息香酸
3,4-ジヒドロキシシンナモイル- 3,4-ジヒドロキシ桂皮酸
3,5-ジヒドロキシ-2-ナフトイル- 3,5-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸
3-ベンゾイルプロパノイル- 3-ベンゾイルプロパン酸
trans-シンナモイル- trans-桂皮酸
フェニルアセチル- フェニル酢酸
ジフェニルアセチル- ジフェニル酢酸
トリフェニルアセチル- トリフェニル酢酸
2-ヒドロキシフェニルアセチル- 2-ヒドロキシフェニル酢酸
3-ヒドロキシフェニルアセチル- 3-ヒドロキシフェニル酢酸
4-ヒドロキシフェニルアセチル- 4-ヒドロキシフェニル酢酸
(±)-マンデリル- (±)-マンデル酸
(±)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタノイル (±)-パントラクトン
ブタノイル- 無水ブタン酸
イソブタノイル- 無水イソブタン酸
ヘキサノイル- 無水ヘキサン酸
プロピオニル- 無水プロピオン酸
3-ヒドロキシブチロイル β-ブチロラクトン
4-ヒドロキシブチロイル γ-ブチロラクトン
3-ヒドロキシプロピオノイル β-プロピオラクトン
2,4-ジヒドロキシブチロイル α-ヒドロキシ-β-ブチロラクトン
1-アダマンタンカルボニル- 1-アダマンタン炭酸
グリコリル- グリコール酸
DL-3-(4-ヒドロキシフェニル)ラクチル- DL-3-(4-ヒドロキシフェニル)乳酸
3-(2-ヒドロキシフェニル)プロピオニル- 3-(2-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸
4-(2-ヒドロキシフェニル)プロピオニル- 4-(2-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸
D-3-フェニルラクチル- D-3-フェニル乳酸
ヒドロシナモイル- ヒドロ桂皮酸
3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル- 3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸
L-3-フェニルラクチル- L-3-フェニル乳酸
4-メチルバレリル 4-メチル吉草酸
3-ピリジルアセチル 3-ピリジル酢酸
4-ピリジルアセチル 4-ピリジル酢酸
イソニコチノイル
4-キノリンカルボキシル 4-キノリンカルボン酸
1-イソキノリンカルボキシル 1-イソキノリンカルボン酸
3-イソキノリンカルボキシル 3-イソキノリンカルボン酸
【0077】
好適な修飾基には、メチル含有基、エチル含有基、プロピル含有基、及び、1-ピペリジン-アセチル基などのピペリジン含有基、が含まれる。
【0078】
III.Aβモジュレータの更なる化学修飾
本発明のAβ−アミロイドモジュレータ化合物は、更に、この化合物のAβ凝集を変化させ及びAβ神経毒性を阻止する能力を保持したまま、この化合物の特定の特性を変えるように修飾することができる。例えば、一実施例においては、この化合物を更に修飾して、この化合物の薬物動態特性、例えばイン・ビボでの安定性又は半減期など、を変化させる。他の実施例においては、この化合物を更に修飾して、検出可能な物質でこの化合物を標識する。更に別の実施例においては、この化合物を更に修飾して、この化合物を更なる治療部分に結合させる。図式的には、少なくとも1つの修飾基に直接又は間接的に結合されたD−アミノ酸Aβ凝集コアドメインを含む本発明のモジュレータは、MG−ACDと示すことができる。もっとも、更にこのモジュレータの特性を変えるように修飾されたこの化合物は、MG−ACD−CMと示すことができる(ここに、CMは、更なる化学修飾を表している)。
【0079】
この化合物の薬物動態特性を変える等のためにこの化合物を更に化学的に修飾するには、反応基を誘導変化させることができる。例えば、修飾基を凝集コアドメインのアミノ末端に結合した場合には、この化合物のカルボキシ末端を更に修飾することができる。好適なC末端修飾には、この化合物のカルボキシペプチダーゼの基質として作用する能力を減少させるものが含まれる。好適なC末端改変剤の例には、アミド基(即ち、ペプチドアミド)、アルキル又はアリールアミド基(例えば、エチルアミド基又はフェネチルアミド基)ヒドロキシ基(即ち、ペプチドアルコール)及び種々の非天然アミノ酸例えばD型アミノ酸及びβ−アラニンが含まれる。或は、修飾基を凝集コアドメインのカルボキシ末端に結合した場合には、この化合物のアミノ末端を更に修飾して、例えば、この化合物のアミノペプチダーゼ基質として作用する能力を減少させることができる。
【0080】
モジュレータ化合物は、更に修飾して、この化合物を検出可能な物質と反応させることにより、この化合物を標識することができる。適当な検出可能な物質には、種々の酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質及び放射性物質が含まれる。適当な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが含まれる。適当な補欠分子団複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが含まれ;適当な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンジルクロリド又はフィコエリトリンが含まれ;発光物質の例には、ルミノールが含まれ;そして適当な放射性物質の例には、14C、123I、124I、125I、131I、99mTc、35S又は3Hが含まれる。好適実施例において、モジュレータ化合物は、14Cの修飾基又はモジュレータ化合物中の1つ以上のアミノ酸構造中への組み込みにより、14Cで放射性標識する。標識されたモジュレータ化合物を用いて、これらの化合物のイン・ビボでの薬物動態を評価することができ、並びにAβ凝集を検出することができる(例えば、診断目的のために)。Aβ凝集は、標識したモジュレータ化合物を用いて、イン・ビボで、又は、患者に由来するイン・ビトロ試料中で検出することができる。
【0081】
好ましくは、イン・ビボ診断剤としての使用のためには、本発明のモジュレータ化合物を、放射性テクネチウム又はヨウ素で標識する。従って、一実施例において、本発明は、テクネチウムで(好ましくは、99mTcで)標識したモジュレータ化合物を提供する。ペプチド化合物をテクネチウムで標識する方法は、当分野において公知である(例えば、米国特許第5,443,815号、第5,225,180号及び第5,405,597号(すべて、Dean等による);Stepniak-Biniakiewicz,D.等(1992)J.Med.Chem.35:274-279:Fritzberg.A.R.等(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4025-4029;Baidoo,K.E.等(1990)Cancer Res.補遺50:799s-803s;及びRegan,L.及びSmith,C.K.(1995)Science 270:980-982を参照されたい)。99mTcに対するキレート化基を導入することのできる部位を提供する修飾基を選択することができる(例えば、遊離のアミノ基を有するコール酸のAic誘導体)。他の実施例において、本発明は、放射性ヨウ素で標識されたモジュレータ化合物を提供する。例えば、Aβ配列中のフェニルアラニン残基(例えばPhe19又はPhe20)を、放射性のヨードチロシルで置換することができる。放射性ヨウ素の種々のアイソトープの何れでも、取り込ませて診断剤を造ることができる。好ましくは、123I(半減期=13.2時間)を、全身シンチグラフィーに用い、124I(半減期=4日)を、ポジトロン放射トモグラフィー(PET)に用い、125I(半減期=60日)を、代謝回転の研究に用い、そして131I(半減期=8日)を、全身計数及び遅延低解像度イメージングの研究に用いる。
【0082】
その上、本発明のモジュレータ化合物の更なる修飾を、この化合物に更なる治療特性を与えるのに役立てることができる。即ち、この更なる化学修飾は、更なる官能性部分を含むことができる。例えば、アミロイド斑を分解又は溶解させるのに役立つ官能性部分を、このモジュレータ化合物に結合することができる。この形態において、このモジュレータのMG−ACD部分は、この化合物をAβペプチドにターゲティングすると共に、Aβペプチドの重合を破壊するのに役立つ。もっとも、この追加の官能性部分は、この化合物がこれらの部位にターゲティングされた後で、アミロイド斑を分解又は溶解させるのに役立つ。
【0083】
別の化学修飾においては、本発明のβ−アミロイド化合物は、「プロドラッグ」形態で製造され、該形態において、この化合物自体はAβ凝集を調節しないが、イン・ビボでの代謝の際に、ここに規定するβ−アミロイドモジュレータ化合物に変換させることができる。例えば、この型の化合物において、調節基は、代謝されると活性な調節基の形態に転化することのできるプロドラッグ形態で存在することができる。かかるプロドラッグ形態の修飾基は、ここでは、「二次的修飾基」と呼ぶ。ペプチドベースの薬物の活性型の最適な送達のために、代謝を制限するペプチドプロドラッグを製造する様々なストラテジーが、当分野においては、知られている(例えば、Moss,J.(1995){Peptide-Based Drug Design:Controlling Transport and Metabolism,Taylor,M.D.及びAmidon,G.L.(編)、第18章中}を参照されたい)。更に、ストラテジーは、「順次的代謝」に基づくCNS送達を達成するように特に仕立てられてきた(例えば、Bodor,N.等(1992)Science 257:1698-1700;Prokai,L.等(1994)J.Am.Chem.Soc.116:2643-2644;Bodor,N.及びProkai,L.(1995){Peptide-Based Drug Design:Controlling Transport and Metabolism,Taylor,M.D.及びAmidon,G.L.(編)第14章}を参照されたい)。本発明のプロドラッグ形態のモジュレータの一実施例において、修飾基には、血液脳関門透過性を促進するアルキルエステルが含まれる。
【0084】
本発明のモジュレータ化合物は、当分野で公知の標準的技術により製造することができる。モジュレータのペプチド成分は、Bodansky,M.Principles of Peptide Synthcsis,Springer Verlag,Berlin(1993)及びGrant,G.A.(編)Synthetic Peptides:A User's Guide,W.H.Freeman and Company,New York(1992)に記載されたような標準的技術を用いて合成することができる。自動化ペプチドシンセサイザーが市販されている(例えば、Advanced Chem Tech Model 396;Milligen/Biosearch 9600)。更に、1つ以上の調節基を、Aβに由来するペプチド成分(例えば、Aβ凝集コアドメイン)に、標準的方法例えばアミノ基(例えば、ペプチドのアミノ末端のアルファ−アミノ基)、カルボキシル基(例えば、ペプチドのカルボキシ末端の)、ヒドロキシル基(例えば、チロシン、セリン又はスレオニン残基上の)又はアミノ酸側鎖上の他の適当な反応基を通した反応のための方法を用いることにより、結合することができる(例えば、Greene,T.W及びWuts,P.G.M.Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,Inc.,New York(1991)を参照されたい)。D型アミノ酸βアミロイドモジュレータの典型的合成を、実施例1において更に説明する。
【0085】
IV.スクリーニングアッセイ
本発明の他の態様は、β−アミロイド凝集のモジュレータを選択する方法に関係する。この方法においては、テスト化合物を天然βアミロイドペプチドと接触させ、天然β−APの凝集を測定し、そして天然β−APの凝集を変える(例えば、凝集を阻止し又は促進する)テスト化合物の能力に基づいてモジュレータを選択する。好適実施例において、テスト化合物を、モル過剰量の天然β−APと接触させる。テスト化合物の存在下での天然β−AP凝集の量及び/又は割合を、ここに記載したようなβ−AP凝集を示す適当なアッセイによって調べることができる(例えば、実施例2参照)。
【0086】
好適なアッセイにおいては、天然β−APをテスト化合物の存在下で溶液に溶解させて、天然β−APの凝集を、405nmでの溶液の見かけの吸光度により測定して、時間経過にわたって溶液の濁度を評価することにより(実施例2で更に説明する;Jarrett等(1993)Biochemistry 32:4693-4697も参照されたい)、核形成アッセイ(実施例2参照)で評価する。β−アミロイドモジュレータの不在時では、溶液のA405nmは、典型的には、溶液中にβ−APが残っている遅延時間中では比較的一定のままであるが、その後β−APが凝集して溶液から析出するにつれ、この溶液のA405nmは急速に上昇し、最後にはプラトーレベルに達する(即ち、溶液のA405nmは、時間経過に伴ってシグモイド的動力学を示す)。対照的に、β−AP凝集を阻止するテスト化合物の存在下では、溶液のA405nmはモジュレータの不在時と比べて減少する。このように、阻止用モジュレータの存在下では、溶液は、モジュレータの不在時と比べて、増大した遅延時間、低下した凝集勾配及び/又は一層低いプラトーレベルを示す。β−アミロイド重合のモジュレータを選択するこの方法は、同じく、β−AP凝集を促進するモジュレータを選択するために用いることもできる。従って、β−AP凝集を促進するモジュレータの存在下で、溶液のA405nmは、モジュレータの不在時と比べて増大する(例えば、この溶液は、モジュレータの不在時と比べて減少した遅延時間、増大した凝集勾配及び/又は一層高いプラトーレベルを示すであろう)。
【0087】
本発明のスクリーニング方法での使用に適した他のアッセイである播種伸展(seeded extension)アッセイも又、実施例2で更に説明する。このアッセイにおいては、β−APモノマーと、凝集したβ−APの「種」とを、テスト化合物の存在下及び不在において組み合わせて、β−原線維形成の量を、β−AP原線維と接触した際の染料チオフラビンTの増大された放出に基づいて、アッセイする。その上、β−AP凝集は、β−AP標品の電子顕微鏡検査(EM)によって、モジュレータの存在下又は不在においてアッセイすることができる。例えば、EMにより検出可能なβアミロイド原線維形成は、β−AP凝集を阻止するモジュレータの存在下で減少する(即ち、このモジュレータの存在下では、β−原線維の量又は数が減少する)が、β原線維形成は、β−AP凝集を促進するモジュレータの存在下においては増大する(即ち、このモジュレータの存在下では、β−原線維の量又は数が増大する)。
【0088】
適当なモジュレータを選択するための本発明のスクリーニング方法において使用するのに好適な他のアッセイは、実施例3に記載した神経毒性アッセイである。神経毒性のAβ凝集物の形成を阻止し及び/又は既に形成されたAβ原線維の神経毒性を阻止する化合物を選択する。この神経毒性アッセイは、イン・ビボにおける神経毒性の予想となると考えられる。従って、このイン・ビトロの神経毒性アッセイにおけるモジュレータ化合物の阻止活性は、イン・ビボにおける神経毒性に対するこの化合物の同様の阻止活性を予測する。
【0089】
V.製薬組成物
本発明の他の態様は、本発明のβ−アミロイドモジュレータ化合物の製薬組成物に関係する。一実施例において、この組成物は、天然β−アミロイドペプチドの凝集を変化させ好ましくは阻止させるのに十分な製薬上又は予防上有効な量のβアミロイドモジュレータ化合物と、製薬上許容し得る担体と、を含む。他の実施例において、この組成物は、天然β−アミロイドペプチドの神経毒性を阻止するのに十分な治療上又は予防上有効な量のβアミロイドモジュレータ化合物と、製薬上許容し得る担体と、を含む。「治療上有効な量」は、β−アミロイド沈着の減少若しくは逆転、及び/又は、Aβ神経毒性の減少若しくは逆転等、所望の治療結果を達成するのに有効な量(投薬量及び必要な期間の量)をいう。モジュレータの治療上有効な量は、個人の病状、年齢、性別及び体重等の因子、並びにその個人における所望の応答を誘出するモジュレータの能力によって変化し得る。投薬養生法は、最適な治療応答を与えるように調節することができる。治療上有効な量は又、モジュレータの任意の毒性の又は有害な効果よりも、治療上有益な効果が勝っているものでもある。本発明のモジュレータの潜在的な神経毒性は、実施例6に記載した細胞ベースのアッセイを用いてアッセイすることができ、有意の神経毒性を示さない治療上有効なモジュレータを選択することができる。好適実施例において、モジュレータの治療上有効な量は、モル過剰量の天然β−アミロイドペプチドの凝集を変化させ好ましくは阻止するのに十分である。「予防上有効な量」は、所望の予防上の結果例えばβ−アミロイド沈着が起きやすい患者におけるβ−アミロイド沈着の割合及び/又はAβ神経毒性を防止し又は阻止することを達成するのに十分な量(投薬量及び必要な期間)をいう。予防上有効な量は、治療上有効な量について上記したようにして決定することができる。典型的には、予防的投与量は、病気の初期ステージの前の又は該ステージの患者に用い、予防上有効な量は、治療上有効な量より少ないであろう。
【0090】
βアミロイドモジュレータの治療上又は予防上有効な量を決定する際に考慮し得る1つの因子は、患者の生物学的区画、例えば患者の脳脊髄液(CSF)、中の天然β−APの濃度である。CSF中の天然β−APの濃度は3nMと見積もられている(Schwartzman,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8368-8372)。βアミロイドモジュレータの治療上又は予防上有効な量の非制限的な範囲は、0.01nM〜10μMである。投薬量の値は、軽減すべき病状の重さによって変化し得るということには注意すべきである。任意の特定の患者について、特定の投薬養生法は、その個人の必要に応じて、及び、これらの組成物を投与し又はその投与を管理する専門家の判断に従って、経時的に調節すべきであるということ、並びに、ここに示した投薬量の範囲は例に過ぎず請求の範囲に記載した組成物の範囲及びプラクティスを制限することを意図したものではないということは、更に理解されるべきである。
【0091】
この組成物中の活性な化合物の量は、個人の病状、年齢、性別及び体重等の因子(これらの各々は、その個人における天然β−APの量に影響し得る)によって変化し得る。投薬養生法は、最適な治療応答をもたらすように調節することができる。例えば、単一の巨丸剤を投与することができ、幾つかに分割した投与量を経時的に投与することができ、又はこの投与量を治療状況の緊急性に合わせて増減することができる。非経口組成物を投与し易いように及び均一な投与量のために投薬量単位形態で配合することは、特に有利である。投薬量単位形態は、ここで用いる場合、治療すべき哺乳動物患者への単位ごとの投薬に適した物理的に別々の単位を言い、各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性な化合物を、必要な製薬担体と組み合わせて含む。本発明の投薬量単位形態の仕様は、(a)活性な化合物の固有の特性及び達成すべき特定の治療効果並びに(b)個人における感受性の治療のためにかかる活性な化合物を混合する分野に固有の限界によって決定され、且つ、直接これらに依存する。
【0092】
ここで用いる場合、「製薬上許容し得る担体」は、生理学的に適合性の任意の及びすべての溶媒、分散媒、被覆、抗菌及び抗カビ剤、等張剤及び吸収遅延剤等を包含する。一実施例において、この担体は、非経口投与に適している。好ましくは、この担体は、中枢神経系(例えば、髄腔又は大脳内)への投与に適している。或は、この担体は、静脈、腹腔又は筋肉投与に適していてよい。他の実施例において、この担体は、経口投与に適している。製薬上許容し得る担体には、無菌の水溶液又は分散及び、無菌の注射用溶液又は分散液の即時調製用の無菌の粉末が含まれる。かかる媒質及び作用剤の製薬上活性な物質のための利用は、当分野で周知である。任意の慣用の媒質又は作用剤が活性な化合物と適合性でない場合を除いて、本発明の製薬組成物におけるそれらの利用は、企図されている。補足的な活性化合物も又、これらの組成物に組み込むことができる。
【0093】
治療用組成物は、典型的には、製造及び貯蔵条件下で無菌で且つ安定でなければならない。この組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、リポソーム又は他の高い薬物濃度に適した整った構造として配合することができる。この担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)及びこれらの適当な混合物を含有する溶媒又は分散媒であってよい。適当な流動性を、例えば、レシチン等の被覆の利用により、適当な粒子寸法の維持により(分散液の場合)、及び界面活性剤の利用により維持することができる。多くの場合において、等張剤例えば糖類、ポリアルコール例えばマンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムをこの組成物中に含むことは、好適であろう。これらの注射用組成物の延長された吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを含ませることによりもたらすことができる。その上、これらのモジュレータは、時間放出用配合物例えば遅延放出ポリマーを含む組成物にて投与することができる。これらの活性化合物は、化合物を急速な放出から護る担体と共に調製することができる(インプラント及びマイクロカプセル封入した送達システムを含む。制御放出製剤等)。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、及び、ポリ乳酸、ポリグリコール酸コポリマー(PLG)等の生物分解性の生体適合性ポリマーを用いることができる。かかる配合物の多くの製造方法は、特許され又は、一般に、当業者に公知である。
【0094】
無菌の注射用溶液は、適当な溶媒中に必要量の活性化合物(例えば、β−アミロイドモジュレータ)を、必要に応じて上記の成分の1つ又は組合せと共に取り込み、その後、濾過除菌することにより調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基礎的分散媒及び上記からの他の必要な成分を含む無菌ビヒクルに取り込むことにより調製する。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合には、好適な製造方法は、活性成分及び任意の所望の成分の粉末を、予め除菌濾過したそれらの溶液から生成する真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0095】
本発明のモジュレータ化合物は、このモジュレータ化合物の溶解度を増大させる1種以上の追加の化合物を伴って配合することができる。これらのモジュレータの溶解度を増大させるために配合物に加えるべき好適な化合物は、シクロデキストリン誘導体、好ましくはヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである。ペプチドの中枢神経系への送達のためのシクロデキストリン誘導体を含有する薬物送達用ビヒクルは、Bodor,N.等(1992)Science 257:1698-1700に記載されている。ここに記載のβ−アミロイドモジュレータについて、配合物中にヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンを50〜200mMの濃度で含めると、これらの化合物の水への溶解度が増大する。溶解度の増大に加えて、この配合物へのシクロデキストリン誘導体の含有は、β−シクロデキストリン自体がAβペプチドと相互作用して原線維の形成を阻止することがイン・ビトロで報告されているため、他の有益な効果を有するかも知れない(Camilleri,P.等(1994)FEBS Lettcrs 341:256-258)。従って、本発明のモジュレータをシクロデキストリン誘導体と組み合わせた利用は、モジュレータ単独での使用よりも大きいAβ凝集の阻止を生じ得る。シクロデキストリンの化学修飾は、当分野で公知である(Hanessian等(1995)J.Org.Chem.60:4786-4797)。本発明のモジュレータを含有する製薬組成物における添加剤としての利用に加えて、シクロデキストリン誘導体は又、修飾基としても有用であり、従って、Aβペプチド化合物と共有結合して本発明のモジュレータ化合物を形成することもできる。
【0096】
脳の取り込みを増大させるモジュレータ化合物の他の好適な配合物は、デタージェントトゥイーン−80、ポリエチレングリコール(PEG)及びエタノール(塩溶液中)を含む。かかる好適な配合物の非制限的例は、0.16%トゥイーン−80、1.3%PEG−3000及び2%エタノール(塩溶液中)である。
【0097】
他の実施例では、本発明のモジュレータを含む製薬組成物を、このモジュレータが血液脳関門(BBB)を横切って輸送されるように配合する。BBBを横切る輸送を増大させるための、当分野で知られた様々なストラテジーを本発明のモジュレータに適合させ、それにより、BBBを横切るモジュレータの輸送を増大させることができる(かかるストラテジーの総説としては、例えば、Pardridge,W.M.(1994)Trends in Biotechnol.12:239-245;Van Bree,J.B.等(1993)Pharm.World Sci.15:2-9;及びPardridge,W.M.等(1992)Pharmacol.Toxicol.71:3-10を参照されたい)。一つのアプローチにおいては、このモジュレータを化学的に修飾して、増大した膜貫通輸送を有するプロドラッグを形成する。適当な化学修飾には、脂肪酸のこのモジュレータへのアミド又はエステル結合を介しての共有結合(例えば、Shashouaの米国特許第4,933,324号及びPCT公開WO89/07938;Hesse等の米国特許第5,284,876号;Toth,I.等(1994)J.Drug Target.2:217-239;及びShashoua,W.E.等(1984)J.Med.Chem.27:659-664参照)、及び、このモジュレータの糖付加(例えば、Poduslo等の米国特許第5,260,308号参照)が含まれる。又、N−アシルアミノ酸誘導体もモジュレータにおいて用いて「脂質的」プロドラッグを形成することができる(例えば、Hashimoto等の第5,112,863号参照)。
【0098】
BBBを横切る輸送を増大させるための別のアプローチにおいては、ペプチドモジュレータ又はペプチドミメティックモジュレータを、第2のペプチド又は蛋白質に結合して、それにより、キメラ蛋白質を形成する(ここに、第2のペプチド又は蛋白質は、BBBを介して吸収性の又はレセプター媒介のトランスサイトーシスを受ける)。従って、モジュレータをこの第2のペプチド又は蛋白質に結合することにより、このキメラ蛋白質は、BBBを横切って輸送される。この第2のペプチド又は蛋白質は、脳毛細血管内皮細胞レセプターリガンドのリガンドであってよい。例えば、好適なリガンドは、脳毛細血管内皮細胞上のトランスフェリンレセプターに特異的に結合するモノクローナル抗体である(例えば、すべてFriden等の米国特許第5,182,107号及び第5,154,924号及びPCT公開WO93/10819及びWO95/02421を参照)。BBBを横切る輸送を媒介することのできる他の適当なペプチド又は蛋白質には、ヒストン(例えば、Pardridge及びSchimmelの米国特許第4,902,505号参照)、及び、リガンド、例えばビオチン、葉酸塩、ナイアシン、パントテン酸、リボフラビン、チアミン、ピリドキサール及びアスコルビン酸(例えば、両者ともにHeinsteinの米国特許第5,416,016号及び第5,108,921号参照)が含まれる。更に、グルコーストランスポーターGLUT−1は、BBBを横切って糖ペプチド([Met5]エンケファリンのL−セリニル−β−D−グルコシド類似体)を輸送することが報告されている(Polt,R.等(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91.:7114-1778)。従って、モジュレータ化合物をかかる糖ペプチドに結合して、そのモジュレータをGLUT−1グルコーストランスポーターを標的とさせることができる。例えば、アミノ末端を修飾基Aic(3−(O−アミノエチル−イソ)−コリル、遊離アミノ基を有するコール酸の誘導体)で修飾したモジュレータ化合物を、標準的方法によって、Aicのアミノ基を介して糖ペプチドに結合することができる。キメラ蛋白質は、組換えDNA法により(例えば、融合蛋白質をコードするキメラ遺伝子の形成により)形成したり、又は、モジュレータを第2のペプチド若しくは蛋白質に化学的に架橋してキメラ蛋白質を形成することによって形成することができる。多数の化学架橋剤が公知である(例えば、イリノイ州ロックフォード、ピアース社から市販されている)。モジュレータを第2のペプチド又は蛋白質へ高い収率で結合させるような、そしてその後、生物活性を有するモジュレータを遊離させるようリンカーの開裂を可能にするような架橋剤を選択することができる。例えば、ビオチン−アビジンベースのリンカー系を用いることができる。
【0099】
BBBを横切った輸送を増大させるための更に別のアプローチにおいては、モジュレータを、BBBを横切る輸送を媒介する担体ベクター中にカプセル封入する。例えば、モジュレータを、リポソーム、例えば正に帯電した単ラメラリポソーム(例えば、FadenのPCT公開WO88/07851及びWO88/7852参照)中に、又は高分子ミクロスフェア(例えば、Khan等の米国特許第5,413,797号、Mathiowitz等の米国特許第5,271,961号及びGombotz等の第5,019,400号参照)中にカプセル封入することができる。その上、担体ベクターを改変して、それを、BBBを横切る輸送のためにターゲッティングすることができる。例えば、この担体ベクター(例えば、リポソーム)を、BBBを横切って能動輸送される分子で共有結合により修飾したり、又は、脳内皮細胞レセプターに対するリガンド、例えばトランスフェリンレセプターに特異的に結合するモノクローナル抗体など、で修飾することができる(例えば、Collins等のPCT公開WO91/04014及びGreig等のWO94/02178参照)。
【0100】
BBBを横切るモジュレータの輸送を増大させるための更に別のアプローチにおいては、モジュレータを、BBBを透過性にするよう機能する他の薬剤と同時投与する。かかるBBB「パーミアビライザー」の例には、ブラジキニン及びブラジキニンアゴニスト(例えば、Malfroy-Camineの米国特許第5,112,596号参照)及びKozarich等の米国特許第5,268,164号に開示されたペプチド化合物が含まれる。
【0101】
脳脊髄液(CSF)中のモジュレータ化合物のイン・ビトロでの安定性や、モデル動物におけるモジュレータ化合物の脳による取り込みの程度を測定するアッセイは、これらの化合物のイン・ビボでの効力の予測として用いることができる。CSF安定性及び脳の取り込みを測定するための適当なアッセイは、実施例7及び8にそれぞれ記載してある。
【0102】
本発明のモジュレータ化合物は、このモジュレータが唯一の活性化合物である製薬組成物に配合することができ、或は、この製薬組成物に更なる活性化合物を含有させることができる。例えば、2種以上のモジュレータ化合物を組み合わせて用いることができる。その上、本発明のモジュレータ化合物は、抗アミロイド形成性特性を有する1種以上の他の薬剤と組み合わせることができる。例えば、モジュレータ化合物を、非特異的なコリンエステラーゼインヒビターのタクリン(COGNEX(登録商標)、Parke-Davis)と組み合わせることができる。
【0103】
他の実施例において、本発明の製薬組成物をパッケージされた配合物として提供する。このパッケージされた配合物には、容器に入った本発明の製薬組成物と、β−アミロイド症に関連する病気、例えばアルツハイマー病など、を有する患者を治療するためにこの組成物を投与する際の印刷指示書とが含まれよう。
【0104】
VI.Aβモジュレータの利用方法
本発明の他の態様は、天然β−アミロイドペプチドの凝集を変化させ又はその神経毒性を阻止するための方法に関係する。本発明の方法においては、天然βアミロイドペプチドを、Aβアミロイドモジュレータに、天然βアミロイドペプチドの凝集が変化し又は天然βアミロイドペプチドの神経毒性が阻止されるよう、接触させる。好適実施例において、このモジュレータは、天然βアミロイドペプチドの凝集を阻止する。他の実施例において、このモジュレータは、天然βアミロイドペプチドの凝集を促進する。好ましくは、モジュレータの量と比較してモル過剰量のβ−APの凝集が、このモジュレータとの接触に際して変更される。
【0105】
本発明の方法においては、天然βアミロイドペプチドを、イン・ビトロ又はイン・ビボの何れにおいても、モジュレータと接触させることができる。従って、用語「と接触させる」は、モジュレータを天然β−AP標品とイン・ビトロでインキュベートすること及びモジュレータを天然β−APが存在するイン・ビボの部位に送達することの両方を包含することを意図している。モジュレータ化合物は天然β−APと相互作用するので、これらのモジュレータ化合物を用いて、天然β−APを、イン・ビトロ又はイン・ビボの何れでも検出することができる。従って、本発明のモジュレータ化合物の用途の一つは、診断剤として、生物学的試料中で又は患者においてイン・ビボで、天然β−APの存在を検出することである。さらに、本発明のモジュレータ化合物を用いる天然β−APの検出は、更に、患者におけるアミロイド症を診断するために利用することができる。更には、本発明のモジュレータ化合物はβ−APの凝集を破壊し、β−APの神経毒性を阻止するため、これらのモジュレータ化合物は又、β−アミロイド症に関連する障害の治療においても、予防上又は治療上の何れでも有用である。従って、本発明のモジュレータ化合物の他の用途は、天然β−APの凝集及び/又は神経毒性を変化させる治療剤としての用途である。
【0106】
一実施例において、本発明のモジュレータ化合物は、例えば、イン・ビトロで、試料(例えば、生物学的液体の試料)中の天然β−APを検出し、定量するために用いられる。検出における補助のために、このモジュレータ化合物を検出可能な物質で修飾することができる。この方法で用いる天然β−APの源は、例えば、脳脊髄液の試料(例えば、AD患者、家族の病歴から見てAD易罹患性のある成人、又は正常な成人からの試料)であってよい。天然β−AP試料を本発明のモジュレータと接触させて、β−APの凝集を実施例2に記載したようなアッセイなどによって測定する。次いで、β−AP試料の凝集の程度を、同様にモジュレータと接触させた既知濃度のβ−APの対照用試料のそれと比較することができ、その結果を、患者がβ−アミロイド症と関連する障害に対して易罹患性である又はその病気を有しているかの指標として利用することができる。その上、β−APは、モジュレータ中に取り込まれた調節基を検出することにより検出することができる。例えば、ここに記載したようなビオチン化合物(例えば、アミノ末端ビオチン化β−APペプチド)を取り込んだモジュレータを、検出可能な物質(例えば、酵素例えばペルオキシダーゼ)で標識したストレプトアビジン又はアビジン・プローブを用いて検出することができる。
【0107】
他の実施例において、例えば患者におけるβアミロイド症の診断の補助のために、本発明のモジュレータ化合物をイン・ビボで用いて、患者における天然β−AP沈着を検出し、所望であれば定量する。検出の補助のために、モジュレータ化合物を、検出可能な物質好ましくは患者においてイン・ビボで検出できる99mTc又は放射性ヨウ素で修飾することができる(上で更に説明した)。標識したβ−アミロイドモジュレータ化合物を患者に投与し、アミロイド沈着部位にモジュレータを蓄積させるのに十分な時間の後に、標識したモジュレータ化合物を標準的なイメージング技術により検出する。標識した化合物により生成された放射性シグナルは、直接検出することができ(例えば、全身計数)、或は、患者におけるアミロイド沈着の像を描くことを可能にするために、放射性シグナルをオートラジオグラフ上又はコンピュータースクリーン上で画像に変換することができる。放射性標識した蛋白質を用いてアミロイド症の像を描く方法は、当分野において公知である。例えば、123I又は99mTcで放射性標識した血清アミロイドPコンポーネント(SAP)は、全身のアミロイド症の像を撮像するのに利用されてきた(例えば、Hawkins,P.N.及びPepys,M.B.(1995)Eur.J.Nucl.Med.22:595-599参照)。種々の放射性ヨウ素のアイソタイプの内で、好ましくは、123I(半減期=13.2時間)を全身シンチグラフィーに用い、124I(半減期=4日)をポジトロン放出トモグラフィー(PET)に用い、125I(半減期=60日)を代謝回転の研究に用い、そして131I(半減期=8日)を全身計数及び遅延低分解能イメージングの研究に用いる。放射性標識したSAPを用いる研究と同様に、本発明の標識したモジュレータ化合物を適当な経路により(例えば、静脈、髄腔、大脳経由で)、例えば約180MBqの放射能を有する100μgの標識した化合物を含有する単一の巨丸剤にて、患者に送達することができる。
【0108】
本発明は、生物学的試料中の天然β−アミロイドペプチドの存否を検出する方法であって、生物学的試料を本発明の化合物と接触させて天然β−アミロイドペプチドに結合した化合物を検出し、それにより、その生物学的試料中の天然β−アミロイドペプチドの存否を検出することを含む方法を提供する。一実施例において、β−アミロイドモジュレータ化合物と生物学的試料をイン・ビトロで接触させる。他の実施例においては、β−アミロイドモジュレータ化合物を、該化合物を患者に投与することにより生物学的試料と接触させる。イン・ビボ投与の場合、好ましくは、この化合物を、放射性テクネチウム又は放射性ヨウ素で標識する。
【0109】
本発明は又、天然β−アミロイドペプチドを検出してβ−アミロイド形成性疾患の診断を容易にする方法であって、生物学的試料を本発明の化合物と接触させ、天然β−アミロイドペプチドに結合した化合物を検出してβ−アミロイド形成性疾患の診断を容易にすることを含む方法をも提供する。一実施例においては、β−アミロイドモジュレータ化合物と生物学的試料をイン・ビトロで接触させる。他の実施例においては、β−アミロイドモジュレータ化合物を、β−アミロイドモジュレータ化合物を患者に投与することによって生物学的試料と接触させる。イン・ビボ投与の場合、好ましくは、化合物を放射性テクネチウム又は放射性ヨウ素で標識する。好ましくは、この方法の利用は、アルツハイマー病の診断を容易にする。
【0110】
他の実施例において、本発明は、天然β−AP凝集を変化させ又はβ−APの神経毒性を阻止するための方法であって、βアミロイド症と関連する障害、例えばアルツハイマー病など、の治療又は防止において、予防又は治療のために用いることのできる方法を提供する。本発明のモジュレータ化合物は、天然β−AP凝集物の培養神経細胞に対する毒性を減じることができる。その上、これらのモジュレータは又、既に形成されたAβ原線維の神経毒性を減じる能力をも有する。従って、本発明のモジュレータ化合物を用いて、患者における神経毒性のAβ原線維の形成を(例えば、β−アミロイド沈着を生じ易い患者において予防的に)阻止し又は防止することができ、また、既にβ−アミロイド沈着を示している患者において治療的にβ−アミロイド症を逆行させるために用いることができる。
【0111】
本発明のモジュレータを、患者中(例えば、患者の脳脊髄液又は大脳中)に存在する天然βアミロイドペプチドと接触させ、それにより、天然β−APの凝集を変化させ及び/又は天然β−APの神経毒性を阻止する。モジュレータ化合物を単独で患者に投与することができ、或は、モジュレータ化合物を他の治療上活性な薬剤と組み合わせて投与することができる(例えば、IV項で上述したように)。併用療法を採用する場合には、それらの治療剤は、単一の製薬組成物にて同時投与することができ、別々の製薬組成物にて同時投与することができ、又は順次的に投与することができる。
【0112】
このモジュレータは、患者における天然β−AP凝集を阻止するのに有効な任意の適当な経路によって患者に投与することができる。もっとも、特に好適な実施例において、このモジュレータは、非経口的に投与され、最も好ましくは、患者の中枢神経系に投与する。CNS投与の可能な経路には、髄腔内投与及び大脳内投与(例えば、大脳血管投与)が含まれる。或は、この化合物を、例えば経口、腹腔、静脈又は筋肉内投与することができる。非CNS投与経路の場合、この化合物は、BBBを横切る輸送を可能にする配合物にて投与することができる。いくつかのモジュレータは、何ら追加の更なる修飾をしなくてもBBBを横切って輸送され得るが、他のものは、IV項に記載したように更なる修飾を必要とする場合がある。
【0113】
患者のCNSへの治療用化合物の送達のための適当な形態及び装置は、当分野で公知であり、脳血管リザーバー(例えば、Ommaya又はRikkerリザーバー;例えば、Raney,J.P.等(1988)J.Neurosci.Nurs.20:23-29;Sundaresan,N.等(1989)Oncology 3:15-22参照)、くも膜下送達用カテーテル(例えば、Port-a-Cath,Y-カテーテル等;例えば、Plummer,J.L.(1991)Pain 44:215-220;Yaksh,T.L.等(1986)Pharmacol.Biochem.Behav.25:483-485参照)、注射可能なくも膜下用リザーバー(例えば、Spinalgesic;例えば、Brazenor,G.A.(1987)Neurosurgery 21:484-491参照)、移植可能な輸注ポンプシステム(例えば、Infusaid;例えば、Zierski,J.等(1988)Acta Neurochem.Suppl.43:94-99;Kanoff,R.B.(1994)J.Am.Osteopath.Assoc.94:487-493参照)及び浸透ポンプ(Alza社より販売されている)が含まれる。特に好適な投与形態は、移植可能な外からプログラムできる輸注ポンプによるものである。適当な輸注ポンプシステム及びリザーバーシステムは、Blomquistの米国特許第5,368,562号及びPharmacia Dcltce Inc.が開発したDoanの米国特許第4,731,058号にも記載されている。
【0114】
イン・ビボでβ−AP凝集を変化させ、特に、β−AP凝集を阻止するための本発明の方法は、異常なβアミロイド凝集及び沈着に関連する疾患の治療に利用することができ、それにより、βアミロイド沈着の速度を遅くし及び/又はβアミロイド沈着の程度を少なくし、それにより、疾患の経過を改善することができる。好適実施例において、この方法をアルツハイマー病(例えば、散発性又は家族性AD、ADの症状を示す個人及び家族性ADに易罹患性の個人の両方を含む)を治療するために用いる。この方法は又、他の臨床的に生じるβアミロイド沈着、例えばダウン症候群の個人におけるもの及びアミロイド症オランダ型を伴う遺伝性脳溢血(HCHWA−D)の患者におけるものを、予防又は治療するのにも用いることができる。β−AP凝集の阻止は好適な治療方法であるが、β−AP凝集を促進するモジュレータも又、神経病学的障害へとつながらない部位へのβ−APの隔離を可能にすることにより、治療上有用であろう。
【0115】
更に、β−アミロイド前駆体蛋白質の筋線維中の異常な蓄積は、散発性の封入体筋炎(IBM)の病理に関係があるとされてきた(Askana,V.等(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1314-1319;Askanas,V.等(1995)Current Opinion in Rheumatology 7:486-496)。従って、本発明のモジュレータは、β−AP又はAPPが非神経病学的位置に異常に沈着する障害の治療、例えばモジュレータの筋線維への送達によるIBMの治療など、において予防的又は治療的に用いることができる。
【0116】
本発明を、下記の実施例により更に説明するが、これらを制限的なものと解釈すべきではない。下記のアッセイにおいて、天然β−アミロイドペプチドの凝集を変化させ及び/又は天然β−アミロイドペプチドの神経毒性を阻止するモジュレータの能力は、それらのモジュレータのイン・ビボで同じ機能を果たす能力を予想させるものである。
【0117】
本発明を、下記の実施例により更に説明するが、これらを制限的なものと解釈すべきではない。この出願中で引用したすべての参考文献、特許及び公開された特許出願の内容や図面を、参考として本明細書中に援用する。
【0118】
実施例1:D型アミノ酸を含むβ−アミロイドモジュレータ化合物の製造
D型アミノ酸を含むβ−アミロイドモジュレータは、固相ペプチド合成により、例えば、下記のようなNα-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)ベースの保護ストラテジーを用いて製造することができる。2.5mモルのFMOC−D−Val−Wang樹脂にて出発して、各アミノ酸の順次的付加を、4倍過剰の保護したアミノ酸、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)及びジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて行う。結合の後に樹脂のニンヒドリン試験により測定して必要な場合には、再結合を行う。各合成サイクルは、簡単に述べれば、3分間の脱保護(25%ピペリジン/N−メチル−ピロリドン(NMP))、15分間の脱保護、5回の1分間のNMP洗浄、60分間の結合サイクル、5回のNMP洗浄及びニンヒドリン試験によるものである。N末端修飾のために、上記のプロトコールに従って、N末端修飾試薬でFMOC−D−アミノ酸を置換し、完全に組み立てられたペプチド樹脂の700mg部分に結合する。このペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)(82.5%)、水(5%)、チオアニソール(5%)、フェノール(5%)、エタンジチオール(2.5%)で2時間処理することにより樹脂から取り出し、その後ペプチドを冷エーテル中で沈殿させる。この固形分を遠心分離(2400rpm×10分間)によりペレット化して、エーテルをデカントする。この固形分をエーテルに再懸濁させ、ペレット化して、2回デカントする。この固形分を10%酢酸に溶解させて、凍結乾燥する。準備的な精製、及び、それに続く分析的な特徴付けのために、この固形分の60mgを25%アセトニトリル(ACN)/0.1%TFAに溶解させ、C18逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムに施す。
【0119】
或は、D型アミノ酸を含むβ−アミロイドモジュレータは、0.025mモルスケールでの合成用にメーカにより確立された自動化プロトコールを用いてRainin PS3ペプチド・シンセサイザーにて製造することができる。カップリングを、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)/FMOC-D型アミノ酸を4倍過剰で0.4MのN-メチルモルホリン(NMM)/ジメチルホルムアミド(DMF)中で60分間用いて行う。カップリングとカップリングの間に、20%のピペリジン/DMFとの20分間の反応により、FMOC基を取り除く。95%のTFA/水による1時間の処理により、樹脂からペプチドを外し、エーテルで沈殿させる。そのペレットを40%のアセトニトリル/水に再懸濁させ、凍結乾燥させる。必要に応じて、この物質を調製用HPLCにより、15〜50%アセトニトリルを用いて、60分間にわたって、Vydac C18カラム(21×250mm)を用いて精製した。
【0120】
種々のN末端修飾したβ−アミロイドモジュレータ化合物を、標準的方法を用いて合成することができる。完全に保護した樹脂結合したペプチドを上記のように適当な樹脂上で製造して最後にカルボキシル末端ペプチド酸を与える。各ペプチド樹脂の小部分(例えば、13〜20μモル)を別々の反応容器にアリクォートする。各試料のN末端FMOC保護基を、標準的方法にて、20%ピペリジン(NMP中)を用い、その後DMFで入念に洗うことにより除去する。各ペプチド−樹脂試料の保護されていないN末端α−アミノ基を、下記の方法の一つを用いて修飾することができる:
【0121】
方法A、遊離のカルボン酸基を含む修飾試薬の結合:修飾試薬(5当量)を予めNMP、DMSO又はこれら2溶媒の混合物に溶解させる。HOBT及びDIC(各試薬の5当量)を溶解させた改質剤に加え、その結果の溶液を1当量の遊離アミノペプチド樹脂に加える。カップリングを一晩進め、その後、洗浄する。ペプチド−樹脂の小試料に対するニンヒドリン試験がカップリングが終了していないことを示したならば、HOBtの代わりに1−ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)を用いてカップリングを繰り返す。
【0122】
方法B、予め活性化した形態で得られた修飾試薬の結合:修飾試薬(5当量)を予めNMP、DMSO又はこれら2溶媒の混合物に溶解させ、1当量のペプチド−樹脂に加える。ジイソプロピルエチルアミン(DIEA;6当量)を、活性化した改質剤及びペプチド−樹脂の懸濁液に加える。カップリングを一晩進め、その後、洗浄する。ペプチド−樹脂の小試料に対するニンヒドリン試験がカップリングが終了していないことを示したならば、カップリングを繰り返す。
【0123】
第2のカップリングの後に(必要ならば)、N末端修飾したペプチド−樹脂を減圧下で乾燥し、上記のように側鎖保護基をはずして樹脂から開裂させる。分析用逆相HPLCを用いて主要生成物が生成した粗ペプチド中に存在することを確認し、該生成物をMillipore Sep-Pakカートリッジ又は調製用逆相HPLCを用いて精製する。質量分析又はハイフィールド核磁気共鳴スペクトル分析を用いて、生成物中の所望の化合物の存在を確認する。
【0124】
方法C、N末端アルキル置換ペプチドの、ブロモアセチルペプチド中間体を用いた調製: DMF中で1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(13当量)を用いて、樹脂結合ペプチドをブロモ酢酸(12当量)に結合させることができる。その結果得られるブロモアセチル置換ペプチドを、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン及びピペリジンを含む第一級又は第二級アミンとの反応で修飾することができる。反応は60%のDMSO/DMF内で行われるが、典型的には24時間後に終了する。
【0125】
方法D、還元的アルキル化による、N末端アルキル置換ペプチドの調製: 0〜10%のメタノールを含有する水にペプチドを溶解(又は部分的に溶解)させた後、アルデヒド(5乃至8当量)及び水素化シアノホウ素ナトリウム(10乃至16当量)と反応させる。アルデヒドの種類及び所望の置換の程度に応じて、当量数は調節してもよい。その結果得られる溶液のpHを、1MのHClで2に調節して、1時間、2に維持する。反応はhplcで観察するが、通常は2時間で終了する。反応混合液を室温で濃縮し、hplcで精製する。
【0126】
方法E、C末端の修飾: 標準的なFmoc化学法を用いてペプチドを2-クロロトリチル樹脂上に合成したが、結合した最終のD型アミノ酸基はBocで保護した。このペプチドを樹脂から8/1/1のジクロロメタン(DCM)/酢酸/トリフルオロエタノールで取り外し、混合液を濃縮した。ペプチド残分を20%のアセトニトリルに溶解させ、凍結させ、一晩かけて凍結乾燥させた。BOC保護された粗ペプチド酸を、それぞれ1当量の1-ヒドロキシ-7-アゾベンゾトリアゾール(HOAt)及びDICで、塩基性条件(DIEAで調節した、pH=11)下でアミンに結合させた。一晩攪拌した後に反応を終了させ、水でペプチドを沈殿させた。DCMに溶かした25%のTFAとの1時間の反応によってBOC基を開裂させ、ペプチドをHPLC精製した。
【0127】
実施例2: β−アミロイド凝集アッセイ
β−アミロイドモジュレータ化合物の、天然β−APと組み合わされたときに天然β−APの凝集を調節する(例えば阻止する又は促進する)能力は、下記の凝集アッセイの一方又は両方において試験することができる。これらの凝集アッセイで用いるための天然β−AP(β−AP1-40)は、Bachem(カリフォルニア、Torrance在)より市販されている。
【0128】
A.核形成アッセイ
モノマーのβ−APからのβ−AP線維の形成における初期事象を変化させる(例えば、阻止する)テスト化合物の能力を測定するために核形成アッセイを用いる。核形成される重合機構の特徴である遅延時間が核形成前に認められ、その後、ペプチドは、濁度の直線的上昇に反映されるように、急速に線維を形成する。β−APモノマーの重合前の時間の遅れ並びに不溶性線維の形成の程度は、光散乱(濁度)により定量することができる。重合は、最大濁度がプラトーに達したときに平衡に達する。種々の濃度のβ−アミロイドモジュレータ化合物の不在又は存在下における天然β−APの溶液の濁度を、溶液の405nmでの見かけの吸光度(A405nm)を経時的に測定することにより測定する。濁度の測定の感度の閾値は、15〜20μMβ−APの範囲にある。モジュレータの存在下での、モジュレータの不在時の濁度と比較して経時的に減少した濁度は、そのモジュレータがモノマーのβ−APからのβ−AP線維の形成を阻止することを示す。このアッセイは、攪拌又は振盪を利用して重合を加速して行うことができ、それにより、アッセイのスピードを増すことができる。その上、このアッセイは、96ウェルプレート形式に適合させて複数の化合物をスクリーニングすることができる。
【0129】
核形成アッセイを行うために、第1のAβ1-40ペプチドをHFIP(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール;Aldrich 10,522-8)中に2mgペプチド/mlの濃度で溶解させ、室温で30分間インキュベートする。HFIP可溶化されたペプチドを水浴ソニケーター中で5分間、最高の設定で超音波処理し、次いで、アルゴン気流中で蒸発させて乾燥させる。このペプチドフィルムを、無水ジメチルスルホキシド(DMSO)中に、6.9mg/mlの濃度(25×濃度)で再懸濁させ、前記のように5分間超音波処理し、次いで、0.2ミクロンのナイロンシリンジフィルター(VWR cat.No.28196-050)を通して濾過する。テスト化合物を、DMSO中に、100×濃度で溶解させる。4容の25×Aβ1-40ペプチド(DMSO中)を1容のテスト化合物(DMSO中)とガラスバイアル中で合わせて、混合して1:1のAβペプチドのテスト化合物に対するモル比とする。種々のモル比について、テスト化合物を、最終的なDMSOとAβ1-40の濃度を一定に保つために、Aβ1-40への添加の前にDMSOで希釈する。対照用試料は、テスト化合物を含まない。この混合物の10マイクロリットルを、次いで、Corning Costar超低結合性96ウェルプレート(マサチューセッツ、Cambridge在、Corning Costar;cat.No.2500)のウェルの底に加える。90マイクロリットルの水をこのウェルに加え、このプレートをロータリーシェーカー上で、室温で30秒間一定のスピードで振盪し、追加の100μlの2×PTL緩衝液(20mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH7.4)をこのウェルに加え、このプレートを30秒間再振盪し、ベースライン(t=0)の濁度を、405nmでの見かけの吸光度をBio-Rad Model 450マイクロプレートリーダーを用いて測定することにより、読み取る。次いで、このプレートをシェーカーに戻して連続5時間振盪する。濁度の読み取りを15分間隔で行う。
【0130】
β−アミロイド凝集は、何れのモジュレータも存在しない場合には、天然β−AP溶液の増大した濁度(即ち、405nmにおける経時的な見かけの吸光度の増加)を生じる。従って、効果的な阻止用モジュレータ化合物を含む溶液は、モジュレータ化合物を含まない対照用試料と比較して減少した濁度(即ち、対照用試料と比較して一層少ない405nmにおける経時的な見かけの吸光度)を示す。
【0131】
β−アミロイド凝集を定量するための濁度の利用の代わりに、チオフラビンT(Th−T)の蛍光も又、核形成アッセイにおけるβ−アミロイド凝集を定量するために用いることができる(Th−Tの蛍光のβ−アミロイド凝集を定量するための利用は、更に、下記において、播種伸展アッセイについて説明されている)。
【0132】
B.原線維結合アッセイ
原線維結合アッセイには以下の材料が必要である。ミリポア社製マルチフィルタ装置;12×75のガラス製チューブ;GF/F25ミリメートルのガラス製フィルタ;4℃のPBS/0.1%トゥイーン20(PBST);Aβ原線維;放射性化合物;非放射性化合物;チップ付きエッペンドルフリピート・ピペット;ラベル;鉗子;及びバキューム。
【0133】
このアッセイでは各試料を三重にして試験を行った。4%のDMSO/PBSに溶かした200μMのAβ1-40ペプチド溶液の1mlアリクォートを、揺らしながら37℃で8日間、「老化」させることにより、およそ8日間前に「老化」Aβ原線維をまず調製する。このような「老化」Aβペプチドは、細胞上で直接テストしても、又は−80℃で凍結させてもよい。
【0134】
200μMのAβ原線維をPBSTに希釈して、4μMの溶液(16mlのPBST中320μl)を生成する。この溶液のうち100μLのアリクォートをリピート・ピペットで1本のチューブごとに加える。
【0135】
以下のようにして、本発明のβアミロイドモジュレータ化合物を2μMから200fMの希釈液になるように調製する:
5 mM のストックをDMSOに1:3に希釈して1.6667 のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
1.667 mM のストックをDMSOに1:3に希釈して0.5556 のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
555.556μMのストックをDMSOに1:3に希釈して185.19のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
5 185.185μMのストックをDMSOに1:3に希釈して61.728のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
61.728μMのストックをDMSOに1:3に希釈して20.576のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
20.576μMのストックをDMSOに1:3に希釈して6.8587のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
6.859μMのストックをDMSOに1:3に希釈して2.2862のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
2.286μMのストックをDMSOに1:3に希釈して0.7621のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
10 762.079 nM のストックをDMSOに1:3に希釈して254.03のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
254.026 nM のストックをDMSOに1:3に希釈して84.675のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
84.675 nM のストックをDMSOに1:3に希釈して28.225のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
28.225 nM のストックをDMSOに1:3に希釈して9.4084 のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
9.408 nM のストックをDMSOに1:3に希釈して3.1361 のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
15 3.136 nM のストックをDMSOに1:3に希釈して1.0454 のストック (400μlのDMSO中200μl)を生成する。
1.045 nM のストックをDMSOに1:3に希釈して0.3485 のストック(400μlのDMSO中200μl)を生成する。
348.459 pM のストックをDMSOに1:3に希釈して116.15 のストック(400μlのDMSO中200μl)を生成する。
116.153 pM のストックをDMSOに1:3に希釈して38.718 のストック(400μlのDMSO中200μl)を生成する。
185.185μMのストックをPBSTに1:25に希釈して7.4074 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
20 61.728μMのストックをPBSTに1:25に希釈して2.4691 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
20.576μMのストックをPBSTに1:25に希釈して0.823 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
6.859μMのストックをPBSTに1:25に希釈して0.2743 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
2.286μM のストックをPBSTに1:25に希釈して0.0914 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
762.079 nM のストックをPBSTに1:25に希釈して30.483 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
25 254.026 nM のストックをPBSTに1:25に希釈して10.161 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
84.675 nM のストックをPBSTに1:25に希釈して3.387 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
28.225 nM のストックをPBSTに1:25に希釈して1.129 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
9.408 nM のストックをPBSTに1:25に希釈して0.3763 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
3.136 nM のストックをPBSTに1:25に希釈して 0.1254 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
30 1.045 nM のストックをPBSTに1:25に希釈して0.0418 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
348.459 pM のストックをPBSTに1:25に希釈して13.938 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
116.153 pM のストックをPBSTに1:25に希釈して4.6461 (1.2mLのPBST中50μL)を生成する。
【0136】
次に、βアミロイドモジュレータ化合物(200μL)を、Aβ原線維を容れた適当なチューブに加える。
【0137】
放射性標識されたβアミロイドモジュレータ化合物の調製は、終末濃度が100μL当たり20,000dpmになるよう、PBS/0.1%トゥイーン20溶液への希釈を行うことで、標準的な放射能安全プロトコルを用いて行われる。リピート・ピペットを用いて1本のチューブ当たり100μLアリクォートの放射性標識済みβアミロイドモジュレータ化合物を加える。試料をパラフィルムで覆い、プラスチック製放射能バッグ内で一晩、37℃でインキュベートする。
【0138】
試料を濾過するために、フィルタを少量のPBSTで予め濡らす。メーカの指示に従い、二つのミリポア社製マルチフィルトレーション装置の各濾過スロットにGF/Fフィルタを取り付ける。試料を37℃のインキュベータから取り出し、各試料を少量(〜5ml)の低温PBST緩衝液を用いて濾過する。次に試料のチューブをさらに二回、5mLの体積のの低温PBST緩衝液で洗浄する。最後の試料を加えてから約2分間、バキュームをセミドライフィルタ上にあて、フィルタをラベル付きチューブに移してヨウ素化計数する。1分間のカウントを記録し、データを表にし、メーカの指示に基づき、プリズム・プログラム(GraphPAD)を用いてグラフを分析する。
【0139】
C.播種伸展アッセイ
播種伸展アッセイを用いて、ポリマーAβ線維の「種」の添加後にAβモノマーの溶液において形成されるAβ線維の割合を測定することができる。既に沈着したアミロイドへのモノマーAβの更なる沈着を防止するテスト化合物の能力を、蛍光を用いるβ−シート形成の直接的指標を利用して測定する。核形成アッセイとは対照的に、種の添加により、核形成が即時に行われ、また、連続混合を必要としないまま、前に形成された線維が継続的に成長するため、重合開始前の遅延時間がなくなる。このアッセイは、静的重合条件を用いるので、核形成アッセイにおける陽性化合物の活性をこの第2のアッセイにおいて異なる条件下で及びアミロイド構造の更なるプローブを用いて確認することができる。
【0140】
播種伸展アッセイにおいては、モノマーAβ1-40を、「種」核(制御された静的条件下で前に重合させた約10モルパーセントのAβ)の存在下でインキュベートする。この溶液の試料を、次いで、チオフラビンT(Th−T)にて希釈する。Th−TのAβとのポリマー特異的会合により、蛍光性の複合体が生成されるが、この複合体により、原線維形成の程度の測定が可能である(Levine,H.(1993)Protein Science 2:404-410)。特に、Th−Tの、凝集したβ−AP(モノマーの又はゆるく会合したβ−APではない)との会合は、(この染料が遊離している場合の385nm(ex)及び445nm(em)とは対照的に)450nmに新たな励起(ex)の最大値を生じ、482nmに増大された放出(em)を生じる。この重合混合物の小アリコートは、Th−Tと混合するのに充分な原線維を含んでおり、反復サンプリングにより、その反応混合物の観察が可能である。直線的成長曲線は、過剰のモノマーの存在下で認められる。チオフラビンT反応性β−シート原線維の形成は、核形成アッセイを用いて認められた濁度の増加に並行する。
【0141】
播種伸展アッセイで用いるAβモノマーの溶液は、適当な量のAβ1-40ペプチドを1/25容のジメチスルホキシド(DMSO)に溶解させ、その後、1/2容以下の水及び1/2容の2×PBS(10×PBS:137mM NaCl、2.7mM KCl、4.3mM Na2HPO4・7H2O、1.4mMKH2PO4 pH7.2)で200μMの終末濃度にすることによって調製する。ストックの種を用意するために、1mlのAβモノマー調製物を約8日間37℃でインキュベートし、順次、18、23、26及び30ゲージの針をそれぞれ25回、25回、50回及び100回通して剪断する。この剪断した物質の2μlの試料を、蛍光単位(FU)がプラトー(約100−150×)に達するまで、30ゲージの針を50回通すごとに蛍光測定用に取る。適当な量のテスト化合物を1×PBS中に1mM(10×ストック)の終末濃度になるように溶解させることにより、テスト化合物を調製する。不溶性であれば、その化合物を、1/10容のDMSOに溶解させ、1×PBSで希釈して1mMとする。更なる1/10希釈物も又、100μM及び10μMの各候補をテストするために調製する。
【0142】
播種伸展アッセイを行うために、各試料を、50μlの200μMモノマー、125FUの剪断した種(種のバッチに依って量は変化するが、通常3〜6μlである)及び10μlの10×モジュレータ溶液と共にセットする。次いで、この試料体積を、1×PBSを用いて100μlの最終体積に調節する。典型的には、各モジュレータの2つの濃度100μM及び10μMをテストする(これらは、1:1及び1:10のモノマーのモジュレータに対するモル比に相当する)。これらの対照には、新鮮なモノマーが種を含まないことを確認するための播種してない反応、及び、如何なるモジュレータも存在しない場合の播種した反応が含まれる(候補のモジュレータと比較するための参考として)。このアッセイを、6時間、37℃でインキュベートし、蛍光測定のために、1時間ごとに2μlの試料を取る。蛍光を測定するために、Aβの2μlの試料を400μlのチオフラビン−T溶液(50mMリン酸カリウム、10mMチオフラビン−TpH7.5)に加える。これらの試料をボルテックスミキサーにかけ、蛍光度を、0.5mlのミクロ石英キュベットで、EX450nm及びEM482nm(Hitachi 4500蛍光計)にて読む。
【0143】
β−アミロイド凝集は、チオフラビン−Tの増大した放出を生じる。従って、有効な阻止用モジュレータ化合物を含む試料は、モジュレータ化合物を含まない対照用試料と比較して減少した放出を示す。
【0144】
実施例3: βアミロイドモジュレータ化合物の分析
この実施例では、ここに説明したβアミロイドモジュレータ化合物を調製し、実施例2で説明した通りの凝集アッセイを用いて、天然βアミロイドペプチドの凝集を阻止するそれらの能力についてテストした。最初の一連の実験結果を下の表I、II及びIIIに要約する。
【0145】
【表1】

【0146】
【表2】

【0147】
モジュレータ化合物は、5μMのAβ1-40と、5μM、2.5μM、1.25μM、3μM、1μM、又は0.3μMのいずれかのテスト化合物とを用いた核形成アッセイで評価した。遅延時間(ΔLag)の変化は、テスト化合物(5μM、2.5μM、1.25μM、3μM、1μM、又は0.3μM)の存在時に観察された遅延時間の、対照での遅延時間に対する比率で表す。
【0148】
【表3】

【0149】
PPI-1801は、文献で報告されたH-LPFFD-OHのアセチルアミド類似体である。この化合物を調製し、比較目的で活性についてテストした。その結果、この化合物が、ここで用いたアッセイでは原線維にあまり結合しないことが示された。
【0150】
対照的に、表I、II及びIII、並びに図2で示した結果は、本発明のβアミロイドモジュレータは、Aβ凝集の有効なインヒビタであることを実証している。
【0151】
実施例6: 神経毒性アッセイ
β−アミロイドモジュレータの存在下又は不在下における天然β−アミロイドペプチド凝集物の神経毒性を、ラット又はヒトのニューロン由来の細胞系統の何れか(それぞれ、PC−12細胞又はNT−2細胞)及び生存力インジケーター3,(4,4-ジメチルチアゾール-2-イル)2,5-ジフェニル−テトラゾリウムブロミド(MTT)を用いる細胞ベースのアッセイにおいてテストすることができる。(例えば、類似の細胞ベースの生存力アッセイについてのShearman,M.S.等(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:1470-1474;Hansen,M.B.等(1988)J.Immun.Methods 119:203-210を参照されたい)。PC−12は、ラットの副腎のクロム親和性細胞腫細胞株であり、メリーランド、Rockville在、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手可能である(ATCC CRL1721)。MTT(Sigma Chemical Co.より市販されている)は、生存細胞において黄色から青色に変換され、分光測光的に検出することができる発色性物質である。
【0152】
天然β−アミロイドペプチドの神経毒性をテストするために、新鮮なAβモノマー及び老化したAβ凝集物のストック溶液を先ず用意する。100%DMSO中のAβ1-40を凍結乾燥粉末から調製し、すぐに最終容積の1/2になるようにH2Oで希釈し、次いで、2×PBSにて最終容積の1/2に希釈して、200μM ペプチド、4%DMSOの終末濃度を達成する。この方法で調製し、細胞において直ちにテストしたペプチドを、「新鮮な」Aβモノマーと呼ぶ。「老化した」Aβ凝集物を調製するためには、ペプチド溶液を1.5mlのエッペンドルフチューブに入れて、37℃で8日間インキュベートして原線維を形成させる。かかる「老化した」Aβペプチドは、細胞において直接テストすることができ又は−80℃に凍結することができる。新鮮なモノマー及び老化した凝集物の神経毒性を、PC12細胞及びNT2細胞を用いてテストする。PC12細胞を、10%ウマ血清、5%ウシ胎児血清、4mMグルタミン及び1%ゲンタマイシンを含有するダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中で日常的に培養する。NT2細胞は、10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン及び1%ゲンタマイシンを補ったOPTI−MEM培地(GIBCO BRL CAT.番号31985)にて日常的に培養する。細胞は、処理の3〜4時間前に、10〜15,000細胞/ウェルになるように、96ウェル組織培養プレート中の90μlの新鮮培地中に、プレートする。次いで、新鮮な又は老化したAβペプチド溶液(10μL)を、直接、組織培養培地に加えて、1:10に希釈して、終末濃度を1〜10μMペプチドの範囲とする。細胞を、ペプチドの存在下で、培地を換えずに37℃で48時間インキュベートする。これらの細胞をβ−AP標品にさらす最後の3時間にわたって、MTTを培地に加えて1mg/mlの終末濃度とし、インキュベーションを37℃で続ける。MTTとの2時間のインキュベーションの後に、培地を除去して細胞を100μLのイソプロパノール/0.4NHCl中で攪拌して溶解させる。等容のPBSを各ウェルに加え、これらのプレートを更に10分間攪拌する。各ウェルの570nmでの吸光度を、マイクロ滴定プレートリーダーを用いて測定して生存細胞を定量する。
【0153】
このアッセイを用いて、老化した(5日又は8日)Aβ1-40凝集物単独の神経毒性を確認した(新鮮なAβ1-40モノマー単独ではない)。実験は、神経細胞を、増大する量のAβ1-40モノマーとインキュベートすることはそれらの細胞に対して有意に毒性ではないが、これらの細胞を増大する量の5日目又は8日目のAβ1-40凝集物とインキュベートすることは神経毒性の量の増大へと導くことを示した。老化したAβ1-40凝集物の毒性に関するEC50は、PC12細胞及びNT2細胞の両者について1〜2μMであった。
【0154】
β−アミロイドモジュレータ化合物のAβ1-40凝集物の神経毒性に対する効果を測定するために、モジュレータ化合物を、Aβ1-40モノマーと実施例2に記載した標準的な核形成アッセイ条件下で予備インキュベートし、インキュベーション後、特定の時間間隔でβ−AP/モジュレータ溶液のアリコートを取り出し、1)この溶液の濁度を凝集の尺度として評価し、そして2)この溶液を培養神経細胞に48時間にわたって加え、この時間において、細胞の生存力をMTTを用いて評価してこの溶液の神経毒性を調べる。更に、β−アミロイドモジュレータ化合物が、既に形成されたAβ1-40凝集物の神経毒性を減じる上での能力をアッセイすることができる。これらの実験において、Aβ1-40凝集物は、モノマーのモジュレータの不在におけるインキュベーションにより予備形成される。このモジュレータ化合物を、次いで、予備形成したAβ1-40凝集物と24時間37℃でインキュベートし、その後、β−AP/モジュレータ溶液を集めてその神経毒性を上記のように評価する。
【0155】
実施例7: 脳脊髄液中のモジュレータ化合物の安定性のアッセイ
脳脊髄液(CSF)中のモジュレータ化合物の安定性を、次のように、イン・ビトロアッセイにてアッセイすることができる。75%のアカゲザルのCSF(Northern Biomedical Researchから市販されている)、23%の無菌のリン酸緩衝生理食塩水及び2%のジメチルスルホキシド(v/v)(Aldrich Chemical Co.,カタログNo.27,685-5)を含むCSF溶液を調製する。テストモジュレータ化合物を、このCSF溶液に加えて40μM又は15μMの終末濃度にする。すべての試料操作を層流フード中で行い、テスト溶液は、アッセイ中37℃に維持する。24時間後に、これらの溶液中の酵素活性を、アセトニトリルを加えて25%(v/v)の終末濃度とすることによりより消失させる。試料を(0時間及び24時間の時点で)、逆相HPLCを用いて室温で分析する。ミクロボアカラムを用いて感度を最高にする。分析用HPLCのパラメーターは、下記の通りである:
【0156】
溶媒系
A:0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)(水中)
B:0.085%TFA/アセトニトリル、1%H2O(v/v)
【0157】
注射及び勾配
注射:100〜250μLのテスト試料
ラン:Bを5分間10%とし、その後、Bを60分間にわたって10〜70%とする。
【0158】
クロマトグラフィー分析を、ヒューレット・パッカード1090シリーズIIHPLCを用いて行う。分離に用いるカラムは、C4、5μm、1×250mm(Vydac番号214TP51)である。流量は50μL/分であり、テスト化合物の溶出曲線を、214、260及び280nmで観察する。
【0159】
実施例8: 脳の取り込みアッセイ
我々のAβ由来ペプチドの脳内レベルを、静脈投与後のラットで調べた。ケタミン/キシラジンの麻酔をかけた雄のスプラーグ・ドーリーラット(219から302g)に、左頸静脈に挿入されたカテーテルを通じて静注した(投与量は1分間かけて4mL/kg)。テストした各化合物の実際の投与量を図1に示す。
【0160】
投与後60分後に左総頸動脈をカヌーレして、脳血液を除くべく左前脳を灌流できるようにした。血液を除いたこの前脳を、説かれた(Triguero 等 (1990) J. Neurochem. 54: 1882-1888)ように毛細血管除去した。この確立された技術は、脳血管系を実質から分離するものであり、ひいては血液脳関門を通過した、試験対象である化合物の濃度を正確に調べることができる。脳内に存在した親化合物の量はLC/MS/MSで調べた。
【0161】
上述のアッセイを用いて、以下のモジュレータの脳内取り込みを測定した。

【0162】
化合物 用量
PPI 構造 分子量 濃度 mg/kg
(mg/mL) IV
1324 TFA. H-(l-[F5]f-fvl)-NH2 841 1.20 4.9
1318 TFA. H-(lf-D-Cha-vl)-NH2 757 0.29 1.0
1319 TFA. H-(lf-[p-F]f-vl)-NH2 769 1.70 6.6
1327 TFA. H-(l-[p-F]f-[p-F]f-vl)-NH2 787 0.98 4.0
1301 TFA. H-(lvf-D-Cha-l)-NH2 757 0.70 2.9
1302 TFA. H-(lvf-[p-F]f-l)-NH2 769 0.19 0.7
1328 TFA. H-(l-[F5]f-[F5]f-vl)-NH2 931 0.29 1.2
1322 TFA. H-(l-D-Cha-fvl)-NH2 757 0.03 0.1
1303 TFA. H-(lvf-[F5]f-l)-NH2 841 0.27 1.0
1326 TFA. H-(l-D-Cha-D-Cha-vl)-NH2 763 0.05 0.2
1320 TFA. H-(lf-[F5]f-vl)-NH2 841 0.70 3.0
【0163】
* 下側文字表記はD型の立体配置を表す。
【0164】
結果を図1に要約する。
【0165】
ここに記載したβアミロイドモジュレータ化合物を、以下の表に要約する。
【0166】
【表4】



【0167】
同等物
当業者は、ここに記載したこの発明の特定の具体例に対する多くの同等物を通常の実験を用いて認識し又は確認することができよう。かかる同等物は、後記の請求の範囲により包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】脳取り込みアッセイの結果を示す表である。
【図2】実施例2で説明した原線維結合アッセイの結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:


を含む化合物であって、
但し式中、
Xaa1及びXaa2は、それぞれD型アミノ酸構造であり、そしてXaa1及びXaa2のうちの少なくとも二つは、個別に、D型ロイシン構造、D型フェニルアラニン構造、D型チロシン構造、D型ヨードチロシン構造、D型リシン構造、又は、D型バリン構造、のうちのいずれかから選択され、
NH-NHはヒドラジン構造であり、
存在しても、存在しなくともよいYは、式(Xaa)aを有する構造であり、但し式中、Xaaは何らかのD型アミノ酸構造であり、そしてaは1から15までの整数であり、
存在しても、存在しなくともよいXaa1’、Xaa2’、及びXaa3’は、それぞれD型アミノ酸又はL型アミノ酸構造であり、Xaa1’、Xaa2’、及びXaa3’のうちの少なくとも二つは、個別に、D型もしくはL型ロイシン構造、D型もしくはL型フェニルアラニン構造、D型もしくはL型チロシン構造、D型もしくはL型ヨードチロシン構造、D型もしくはL型リシン構造、又は、D型もしくはL型バリン構造、のうちのいずれかから選択され、
存在しても、存在しなくともよいZは、式(Xaa)bを有する構造であり、但し式中、Xaaは何らかのD型アミノ酸構造であり、そしてbは1から15までの整数であり、
存在しても、存在しなくともよいAは、前記化合物に直接又は間接的に結合した修飾基であり、そして
nは1から15までの整数であり、
但し式中、Xaa1、Xaa2、Xaa1’、Xaa2’、Xaa3’、Y、Z、A及びnは、前記化合物が、天然β−アミロイドペプチドに接触させたときに、天然β−アミロイドペプチドに結合するか、天然β−アミロイドペプチドの凝集を調節するか、又は、天然β−アミロイドペプチドの神経毒性を阻止するよう、かつ、代謝の影響をより受けない、ように、選択される、
化合物。
【請求項2】
H-D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-(H-D-Leu-D-Val-D-Phe-)NH; H-D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-NH-COCH3; 及び H- D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-NH2のうちのいずれかから選択される構造を有する化合物。
【請求項3】
構造:


を含む化合物であって、
但し式中、
Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4、はそれぞれD型アミノ酸構造であり、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4、のうちの少なくとも二つは、個別に、D型ロイシン構造、D-シクロヘキシルアラニン、D-4-フルオロフェニルアラニン(パラ-フルオロフェニルアラニン)、D-ペンタフルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニンD-ホモフェニルアラニン、D型リシン構造、及び、D型バリン構造、のうちのいずれかから選択され、
存在しても、存在しなくともよいYは、式(Xaa)aを有する構造であり、但し式中、Xaaは何らかのD型アミノ酸構造であり、そしてaは1から15までの整数であり、
存在しても、存在しなくともよいZは、式(Xaa)bを有する構造であり、但し式中、Xaaは何らかのD型アミノ酸構造であり、そしてbは1から15までの整数であり、
存在しても、存在しなくともよいAは、前記化合物に直接又は間接的に結合させた修飾基であり、そして
nは1から15までの整数であり、
但し式中、Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Y、Z、A及びnは、前記化合物が、天然β−アミロイドペプチドに接触させたときに、天然β−アミロイドペプチドに結合するか、天然β−アミロイドペプチドの凝集を調節するか、又は、天然β−アミロイドペプチドの神経毒性を阻止するよう、かつ、代謝の影響をより受けないよう、選択される、
化合物。
【請求項4】
N,N-ジメチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-メチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-エチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-イソプロピル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala)-イソプロピルアミド; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala)-ジメチルアミド; N,N-ジエチル-(Gly-D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N,N-ジエチル-(D-Ala-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N,N-ジメチル-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(Gly-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N-エチル-(Gly-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N-エチル-(Gly- D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; N-エチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N-プロピル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; N,N-ジエチル-(Gly-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Ile-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ile)-NH2; H-(D-Ile-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala-)-NH2; H-( D-Ile- D-Ile-D-Phe-D-Phe- D-Ile)-NH2; H-(D-Nle-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Ala-)-NH2; H-(D-Nle-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Nle)-NH2; 1-ピペリジン-アセチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; 1-ピペリジン-アセチル-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu-イソプロピルアミド; H-D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu-イソプロピルアミド; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-メチルアミド; H-(D-Leu-D-Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-メチルアミド; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-OH; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Cha-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[p-F]Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[F5]Phe-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe-D-Cha-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe- D-[p-F]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe- D-[F5]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Phe-D-Lys-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Cha-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-[p-F]Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-[F5]Phe-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu- D-Lys-D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-Cha-D-Cha-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu- D-[p-F]Phe-D-[p-F]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu-D-[F5]Phe-D-[F5]Phe-D-Val-D-Leu)-NH2; H-(D-Leu- D-Lys- D-Lys-D-Val-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Cha-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[p-F]Phe-D-Leu)-NH2; N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-[F5]Phe-D-Leu)-NH2; H-D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-(H-D-Leu-D-Val-D-Phe-)NH; H-D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-NH-COCH3; 及びH- D-Leu-D-Val-D-Phe-NH-NH2のうちのいずれかから選択される構造を有する化合物。
【請求項5】
構造:H-(D-Leu-D-Phe-[p-F]D-Phe-D-Val-D-Leu)-NH2 を有する化合物。
【請求項6】
構造: N-メチル-(D-Leu-D-Val-D-Phe-D-Phe-D-Leu)-NH2 を有する化合物。
【請求項7】
治療上有効量の上記請求項1、2、3、4、5、又は6のいずれかに記載の化合物と、薬学上許容可能な担体とを含む製薬組成物。
【請求項8】
天然βアミロイドペプチドの凝集が阻止されるよう、上記請求項1、2、3、4、5、又は6のいずれかに記載の化合物に天然βアミロイドペプチドを接触させるステップを含む、天然βアミロイドペプチドの凝集を阻止する方法。
【請求項9】
上記請求項1、2、3、4、5、又は6のいずれかに記載の化合物に、生物学的試料を接触させるステップであって、前記化合物が検出可能な物質で標識されている、ステップと、
天然βアミロイドペプチドに結合した前記化合物を検出し、それにより、前記生物学的試料中の天然βアミロイドペプチドの存在又は不在を検出するステップと
を含む、生物学的試料中の天然βアミロイドペプチドの存在又は不在を検出する方法。
【請求項10】
前記βアミロイドモジュレータ化合物及び前記生物学的試料をイン・ビトロで接触させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記βアミロイドモジュレータ化合物を患者に投与することにより、前記生物学的試料に前記βアミロイドモジュレータ化合物を接触させる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が放射性テクネチウム又は放射性ヨウ素で標識される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
患者を、βアミロイド症を伴う障害について処置するよう、治療上有効量の上記請求項1、2、3、4、5、又は6のいずれかに記載の化合物を患者に投与するステップを含む、βアミロイド症を伴う障害について患者を処置する方法。
【請求項14】
前記障害がアルツハイマー病である、請求項13に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−121952(P2011−121952A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287097(P2010−287097)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【分割の表示】特願2000−602272(P2000−602272)の分割
【原出願日】平成12年3月3日(2000.3.3)
【出願人】(398004286)プラエシス ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】