DC‐DCコンバータ
【課題】入力電源の電圧を昇降圧して所望電圧の正極性の出力電圧を得る低のイズの非絶縁型DC‐DCコンバータを得る。
【解決手段】入力電源Eの両端間に直列接続された入力コイルL1、入力コンデンサC1及び第2中間コイルLm2と、負荷Roの両端間に直列接続された出力コイルL2、出力コンデンサC2及び第1中間コイルLm1と、L1とC1のノードa及びC2とLm1のノードb間に接続されたスイッチング素子Sと、C1とLm2のノードd及びC2とL2のノードc間に接続されたダイオードDとにより構成される。
【解決手段】入力電源Eの両端間に直列接続された入力コイルL1、入力コンデンサC1及び第2中間コイルLm2と、負荷Roの両端間に直列接続された出力コイルL2、出力コンデンサC2及び第1中間コイルLm1と、L1とC1のノードa及びC2とLm1のノードb間に接続されたスイッチング素子Sと、C1とLm2のノードd及びC2とL2のノードc間に接続されたダイオードDとにより構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDC‐DCコンバータに関し、特に太陽電池パネル等の比較的変動する入力電源電圧を所望出力電圧に安定的に昇圧又は降圧する非絶縁型のスイッチングDC‐DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の電子機器又は電子応用機器の電子回路を動作するには、所定出力電圧を有する電源を必要とする。斯かる出力電圧を電池等の電源から直接得ることは一般に不可能又は困難であり、DC‐DCコンバータ(スイッチングレギュレータともいう)により入力電源電圧を所望出力電圧に変換するのが一般的である。特に、人工衛星や惑星探査機等に搭載される電子機器の動作電源は、太陽電池パネルの起電力を入力電源として、DC‐DCコンバータにより所望出力電圧を出力するよう制御している。斯かる用途のDC‐DCコンバータでは、大きく変動する入力電源電圧を低ノイズ且つ低電力損失で昇降圧して安定的な出力電圧を得ることが要求される。以下、太陽電池パネルを入力電源とする場合の従来例又は一般的な技術について説明する。
【0003】
降圧型のDC‐DCコンバータの場合には、直列接続される太陽電池セルの数を調整して、太陽電池パネルからの出力電圧(即ち、入力電源電圧)がDC‐DCコンバータの出力電圧よりも常に高くなるようにしなければならない。太陽電池パネルからの電圧が大きく変動する場合には、太陽電池パネルからの最高出力電圧は非常に高くなり得るので、DC‐DCコンバータの設計が困難になる。
【0004】
他方、昇圧型のDC‐DCコンバータを使用する場合には、直列接続される太陽電池セルの数を調整して、太陽電池パネルからの電圧がDC‐DCコンバータの出力電圧よりも常に低くなるようにしなければならない。上述の如く太陽電池パネルの電圧が大きく変動する場合には、太陽電池パネルの出力電圧は非常に低くなり得るので、この場合にもDC‐DCコンバータの設計が困難になる。
【0005】
そこで、太陽電池パネルからの入力電圧をDC‐DCコンバータの出力電圧、即ち負荷が必要とする出力負荷電圧よりも低い電圧から高い電圧まで入力可能な昇降圧型のDC‐DCコンバータを使用すると、太陽電池パネルの出力電圧範囲を適切に設定可能である。しかし、電力損失の少ない非絶縁型の昇降圧型のDC‐DCコンバータは、入力電圧と出力電圧が逆極性となり、扱いにくいという難点又は課題がある。また、上述した探査機等は、惑星の微小な電場、磁場観測等を主目的とするので、それに使用されるDC‐DCコンバータはノイズ(スイッチングノイズ)が小さいことが必須である。
【0006】
次に、図12〜図16を参照して、一般的な非絶縁昇降圧型スイッチングDC‐DCコンバータについて簡単に説明する。これらのDC‐DCコンバータは、何れも入力電圧と出力電圧の極性が逆及び/又は入力電流や出力電流がパルス波でノイズが大きいという課題がある。即ち、入力電流や出力電流がパルス波であるということは、スイッチング周波数の振幅が大きく電流の時間変化率が大きいので、スイッチング周波数のノイズが大きく且つスイッチング周波数の整数倍である高調波ノイズも大きいことを意味する。
【0007】
図12は、第1の従来DC‐DCコンバータ(Buck-Boostコンバータ)であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。このDC‐DCコンバータ12は、図12(A)に示す如く、入力電源E、スイッチS、コイル(インダクタ)L、ダイオードD、負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoにより構成される。スイッチS及びコイルLは入力電源Eの両端に直列接続され、更にこのコイルLの両端にダイオードDを介して負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoが並列接続されている。ここで、入力電源Eの電圧をVi及び負荷抵抗Roの両端の出力電圧をVoとする。
【0008】
図12に示すDC‐DCコンバータ12において、スイッチSを周期的にON/OFFすると、スイッチS及びコイルLには図12(C)に示す如きリップル電流が流れ、コイル電圧は図12(E)に示す如く−VoとVi間で変化する方形状パルスとなり、負荷Roには出力電圧−Voが供給(又は印加)される。即ち、このDC‐DCコンバータ12の入力電圧Viと出力電圧Voの極性は相互に逆極性であり、入力電流Ii及び出力電流Ioはパルス波である。
【0009】
図13は、第2の従来DC‐DCコンバータ(Cukコンバータ)であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧である。このDC‐DCコンバータ13は、図13(A)に示す如く入力電源E、第1コイルL1、スイッチS、コンデンサC1、ダイオードD、第2コイルL2、負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoにより構成されている。入力電源Eの両端に第1コイルL1及びスイッチSが直列接続され、このスイッチSの両端にコンデンサC1及びダイオードDが直列接続され、更にこのダイオードDの両端に第2コイルL2を介して並列接続された負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoが接続されている。
【0010】
このDC‐DCコンバータ13において、第1コイルL1及び第2コイルL2のリップル電流を図13(C)に示す。これら両コイルL1、L2間に磁気的結合がない場合には最上段に示すようになり、結合係数kがnの場合には中段に示すようになり、結合係数kが1/nの場合には下段に示すようになる。入力電流波形及び出力電流を、それぞれ三角波とゼロリップル又はゼロリップルと三角波にすることができるが、上述したDC‐DCコンバータ12の場合と同様に、入力電圧Viと出力電圧Voの極性は逆である。
【0011】
図14は、第3の従来DC‐DCコンバータ(中間コイル付きCukコンバータ)であり、
(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。図14(A)に示す如く、このDC‐DCコンバータ14は、入力電源E、入力コイルL1、スイッチS、1対のコンデンサC1、C2、中間コイルLm、ダイオードD出力コイルL2及び負荷抵抗Roと負荷コンデンサCoにより構成されている。そして、入力電源Eの両端に入力コイルL1及びスイッチSが直列接続され、このスイッチSの両端にコンデンサC1と中間コイルLmが直列接続され、この中間コイルLmの両端にコンデンサC2とダイオードDが直列接続され、更にこのダイオードDの両端に出力コイルL2を介して並列接続された負荷抵抗Roと負荷コンデンサCoが接続されている。また、入力コイルL1、中間コイルLm及び出力コイルL2は、所定極性関係で磁気的に結合可能に構成されている。
【0012】
図14(C)には、入力コイルL1、中間コイルLm及び出力コイルL2の略三角波状のリップル電流を左右方向に順次並べて示す。そして、これらのリップル電流によるリップル電圧を図14(D)に示す。図14(C)に示す如く、このDC‐DCコンバータ14の入力コイルL1に流れる入力電流及び出力コイルL2に流れる出力電流の両方を、略ゼロリップルとすることができる。しかし、上述したDC‐DCコンバータ12及び13と同様に、入力電圧Viと負荷に供給される出力電圧Voの極性は逆である。
【0013】
また、図15は、第4の従来DC‐DCコンバータ(Zetaコンバータ)であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。図15(A)に示す如く、このDC‐DCコンバータ15は、入力電源E、スイッチS、入力コイルL1、コンデンサC1、ダイオードD、出力コイルL2及び負荷抵抗Roと負荷コンデンサCoにより構成されている。入力電源Eの両端にスイッチS及び入力コイルL1が直列接続され、この入力コイルL1の両端にコンデンサC1とダイオードDが直列接続され、更にダイオードDの両端に出力コイルL2を介して負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoの並列回路が接続されている。入力コイルL1及び出力コイルL2は、相互に磁気的に結合されている。
【0014】
図15(C)に示す如く、スイッチS、入力コイルL1及び出力コイルL2に流れるリップル電流は、両コイルL1、L2の磁気的結合係数kにより変化する。両コイルL1、L2間の磁気的結合がない場合を上段に示し、結合係数kがnの場合を中段に示し、結合係数kが1/nの場合を下段に示す。このDC‐DCコンバータ15では、入力電圧Viと出力電圧Voの極性は同じであるが、入力電流Iiがパルス波になる。
【0015】
図16は、第5の従来DC‐DCコンバータ(Sepicコンバータ)であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。図16(A)に示す如く、このDC‐DCコンバータ16は、入力電源E、入力コイルL1、スイッチS、コンデンサC1、出力コイルL2、ダイオードD、負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoにより構成されている。そして、入力電源Eの両端に入力コイルL1及びスイッチSが直列接続され、このスイッチSの両端にコンデンサC1及び出力コイルL2が直列接続され、更にこの出力コイルL2の両端にダイオードDを介して並列接続された負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoが接続されている。入力コイルL1と出力コイルL2は、磁気的結合係数kで結合可能に構成されている。
【0016】
図16(C)に示す如く、入力コイルL1、出力コイルL2及びダイオードDを流れるリップル電流は、入力コイルL1と出力コイルL2間の結合係数kにより三角波又はパルス状に変化する。このDC‐DCコンバータ16の入力電圧Viと負荷に供給される出力電圧Voの極性は同じであるが、出力電流Ioがパルス波である。
【0017】
また、図12乃至図16を参照して上述した従来のDC‐DCコンバータにおける出力電流がリップル電流であることによるノイズの発生を解消又は低減するDC‐DCコンバータが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この従来のDC‐DCコンバータ17は、図17に示す如く、入力電源E、2対のインダクタL1−L3、L2−L4、1対のコンデンサC1−C2、1対のスイッチS1−S2、負荷抵抗Ro及び出力(平滑用)コンデンサCoにより構成されている。インダクタL1−L3は磁気的に結合され、インダクタL2−L4も磁気的に結合されている。
【0018】
このDC‐DCコンバータ17において、インダクタL1、コンデンサC1及びインダクタL3は、入力電源Eの両端間に直列接続されている。また、インダクタL2コンデンサC2及びインダクタL4は、並列接続された負荷抵抗Roと出力コンデンサCoの両端間に直列接続されている。そして、第1スイッチS1は、インダクタL1及びコンデンサC1の接続点とコンデンサC2及びインダクタL4の接続点間に接続されている。第2スイッチS2は、コンデンサC1及びインダクタL3の接続点とインダクタL2及びコンデンサC2の接続点間に接続されている。
【0019】
上述の如く構成されたDC‐DCコンバータ17において、第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、交互且つ相補的にON/OFFする。即ち、第1スイッチS1がONすると、第2スイッチS2がOFFし、入力電源E及びコンデンサC2及び負荷コンデンサCoを充電する。インダクタL1及びL3の電磁結合により入力インダクタL1に流れる入力電流のリップルを0にする。一方、第1スイッチS1がOFF、第2スイッチS2がONすると、出力インダクタL2及びインダクタL3を介して負荷コンデンサCo及びコンデンサC2が放電する。また、出力インダクタL2及びインダクタL4の電磁結合により、出力インダクタL2を流れる出力電流のリップルが0になる。これにより、入力電流及び出力電流のリップルをなくしてノイズを低減する。
【特許文献1】特開平4−364358号公報(第4−5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図12乃至図17に示す従来のDC‐DCコンバータは、入出力電圧の極性が逆になるので取扱いが不便である。また、入出力電流にリップルを含み、大きなノイズを生じるので、ノイズに敏感な用途には応用不可能であるという課題を有する。
【0021】
本発明は、従来のDC‐DCコンバータの上述した課題に鑑みなされたものであり、斯かる課題を解消すること、即ち入出力電圧が正(又は同)極性であると共に入出力電流に含まれるリップルを低減して低ノイズ化するDC‐DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明のDC‐DCコンバータは、入力電源の電圧を昇降圧して所望電圧の出力電圧を出力する非絶縁型のDC‐DCコンバータであって、入力電源の両端に直列接続された入力コイル、入力コンデンサ及び第2中間コイルと、負荷の両端間に直列接続された出力コイル、出力コンデンサ及び第1中間コイルと、入力コイル及び入力コンデンサの接続点と第1中間コイル及び出力コンデンサの接続点間に接続されたスイッチング素子と、入力コンデンサ及び第2中間コイルの接続点と出力コンデンサ及び出力コイルの接続点間に接続されたダイオードとを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明のDC‐DCコンバータによると、次の如き特有の効果を奏する。即ち、入力電源の電圧を所望出力電圧に昇降圧して正極性の出力電圧を得ると共に低ノイズの非絶縁型のDC−DCコンバータを提供することが可能である。従って、惑星探査機等に搭載された太陽電池パネルの電圧を負荷が必要とする安定的な出力電圧に変換するDC‐DCコンバータに好適である。また、必要とする回路素子は、コイル、コンデンサ、スイッチング素子及びダイオードであるので、例えば図17に示す如き従来のDC‐DCコンバータの構成と比較して複雑又は高価になることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明によるDC‐DCコンバータの好適実施例の構成及び動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
先ず、図1を参照して、本発明によるDC‐DCコンバータの第1実施例について説明する。図1において、(A)は、本発明による第1実施例のDC‐DCコンバータ1の回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【0026】
図1(A)に示す如く、このDC‐DCコンバータ1は、入力電源E、入力コイル(又はインダクタ)L1、出力コイルL2、第1中間コイルLm1、第2中間コイルLm2、入力(又は第1中間)コンデンサC1、出力(又は第2中間)コンデンサC2、スイッチS、ダイオードD及び相互に並列接続された負荷抵抗Roと出力(平滑用)コンデンサCoにより構成されている。
【0027】
入力電源Eの両端間に入力コイルL1、入力コンデンサC1及び第2中間コイルLm2が直列接続されている。また、並列接続された負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoの両端間には出力コイルL2、出力コンデンサC2及び第1中間コイルLm1が直列接続されている。ここで、入力コイルL1と入力コンデンサC1の接続点をノードa、第1中間コイルLm1と第2中間コンデンサC2の接続点をノードb、出力コイルL2と出力コンデンサC2の接続点をノードc及び入力コンデンサC1と第2中間コイルLm2の接続点をノードdとする。スイッチSはノードa及びノードb間に接続され、ダイオードDはノードd及びノードc間に接続されている。また、入力コイルL1と第1中間コイルLm1及び出力コイルL2と第2中間コイルLm2は、それぞれ所定極性関係で磁気的に結合可能に構成されている。
【0028】
図1(C)に示すリップル電流において、左側から右側にかけて入力コイルL1、第1中間コイルLm1、出力コイルL2及び第2中間コイルLm2のリップル電流を示す。また、最上段から最下段にかけて、入力コイルL1と第1中間コイルLm1及び出力コイルL2と第2中間コイルLm2間の磁気的結合が右側に示す値の場合について示している。リップル電流は、コイルL1−Lm1及びL2−Lm2間の磁気的結合がない場合には、これら全てのコイルL1、Lm1、Lm2及びL2のリップル電流は、比較的大きい三角波である。他方、これらの磁気的結合が存在すると、その結合度合に応じて入力コイルL1及び出力コイルL2のリップル電流は略0(ゼロリップル)又は三角波となるが、中間コイルLm1及びLm2のリップル電流は三角波のままである。
【0029】
一方、リップル電圧は、図1(D)に示す如く図1(A)中の上述した4つのノードa〜dにおいて方形波となる。そして、DC‐DCコンバータ1の負荷抵抗Roの両端に供給される出力電圧Voは、非絶縁型の昇降圧DC‐DCコンバータでありながら、入力電圧Viと同極性である。また、パルス状のリップル電流がないので、このDC‐DCコンバータ1は低ノイズ特性である。
【0030】
次に、図2を参照して、本発明による第1実施例のDC‐DCコンバータ1の動作を詳細に説明する。図2(A)は上述した図1(A)と同様のDC‐DCコンバータ1の回路図であり、(B)は図2(A)中のスイッチSがONの場合における各ノードa〜dの電位と電流の流れを示し、(C)はスイッチSがOFFの場合における各ノードa〜dの電位と電流の流れを示す図である。
【0031】
スイッチSがONのときには、図2(B)に示す如く、点線で示す如く全てのコイルL1、Lm1、Lm2及びL2に励磁電流が流れ、入力電源Eから出力(負荷抵抗Ro)に電流が流れる。入出力コンデンサC1及びC2には放電方向の電流が流れる。他方、スイッチSがOFFのときには、図2(C)に示す如く、全てのコイルL1、Lm1、Lm2及びL2にダイオードDを介して開放電流が入力電源Eから出力(負荷抵抗Ro)へ流れる。この場合に、コンデンサC1及びC2の電流は、図2(B)におけるスイッチSがONのときとは逆方向となり、充電方向に流れる。
【0032】
図2(B)及び図2(C)に示した各ノードa〜dの電位は、後述するL1=
L2(即ち、入力コイルL1のインダクタンス=出力コイルL2のインダクタンス)、Lm1=Lm2(即ち、第1中間コイルLm1のインダクタンス=第2中間コイルLm2のインダクタンス)のときの値である。入力電圧の出力電圧の極性が同極性である。スイッチSがONのとき及びOFFのときの何れにおいても入力コイルL1及び出力コイルL2に電流が流れている(スイッチSがONのとき右上がりで、OFFのとき右下がりの三角波となり、急激に変化する方形波等のパルス波にならない)ことに注目されたい。
【0033】
次に、本発明のDC‐DCコンバータ1の動作解析を行う。この動作解析において、スイッチSは理想スイッチ、ダイオードDは理想ダイオード、スイッチSがONしている時間をton、スイッチSがOFFしている時間をtoffとする。また、スイッチング周波数における入力コンデンサC1及び出力コンデンサC2のインピーダンスは充分小さく(静電容量が充分大きい)、入力コンデンサC1は入力電源Eの電圧に等しい電圧Viの電圧源、出力コンデンサC2は出力電圧に等しい電圧Voの電圧源と見なせるものとする。
【0034】
(a)スイッチSがONのとき:
各ノードの電位(V「」)及び各コイルのリップル電流の大きさ(ΔI「」)の関係・・・式(1)
Va = Vb
Vc = Va + Vo
Vd = Va - Vi
ΔIL1+ΔILm2 = ΔILm1+ΔIL2
各コイルのリップル電流の大きさ(ΔI「」)(⇒は L1= L2及びLm1=Lm2のとき)・・・式(2)
ΔIL1 =(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi×ton/L1⇒(Vi×ton/L1/2)
ΔILm1 =(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi×ton/Lm1
⇒(Vi×ton/Lm1/2)
ΔIL2 =(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi×ton/L2
⇒(Vi×ton/L2/2)
ΔILm2 =(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi×ton/Lm2
⇒(Vi×ton/Lm2/2)
各ノードの電位(V「」)(⇒は L1= L2、及びLm1=Lm2のとき)・・・式(3)
Va = (1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi⇒(Vi/2)
Vb =(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi⇒(Vi/2)
Vc =(1/L1+1/Lm2)/1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi+Vo⇒(Vi/2 + Vo)
Vd = -(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi⇒(- Vi/2)
各コイルの両端電圧(V「」)(⇒は L1= L2、及びLm1=Lm2のとき)・・・式(4)
VL1 =(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi ⇒(Vi/2)
VLm1 = 1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi ⇒(Vi/2)
VL2 =(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi ⇒(Vi/2)
VLm2 =(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi ⇒(Vi/2)
【0035】
(b)スイッチSがOFFのとき:
各ノードの電位(V「」)及び各コイルのリップル電流の大きさ(ΔI「」)の関係・・・式(5)
Va= Vc + Vi
Vb= Vc - Vo
Vc= Vd
ΔIL1+ΔILm2 = ΔILm1+ΔIL2
各コイルのリップル電流の大きさ(ΔI「」)(⇒は L1= L2及びLm1=Lm2のとき)・・・式(6)
ΔIL1=(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo×toff/ L1
⇒(Vo×toff/L1/2)
ΔILm1=1/L1+1/Lm2)/(1/L1+ 1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo×toff/Lm1
⇒(Vo×toff/Lm1/2)
ΔIL2=(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo×toff/L2
⇒(Vo×toff/L2/2)
ΔILm2=(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo×toff/Lm2
⇒(Vo×toff/Lm2/2)
各ノードの電位(V「」)(⇒は L1= L2及びLm1=Lm2のとき)・・・式(7)
Va=(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo+
Vi⇒(Vi+Vo/2)
Vb=-(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo⇒(- Vo/2)
Vc=(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo⇒(Vo/2)
Vd=-(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo⇒(Vo/2)
各コイルの両端電圧(V「」)(⇒は L1= L2及びLm1=Lm2のとき)・・・式(8)
VL1=-(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo ⇒(- Vo/2)
VLm1=-(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo ⇒(- Vo/2)
VL2=-(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo ⇒(- Vo/2)
VLm2=-(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo ⇒(- Vo/2)
【0036】
コンバータとして正常に動作するための条件は以下である・・・式(9)
ΔI「」 (ON) = ΔI「」(OFF) (式(2)= 式(6))
V「」(ON)×ton=-V「」(OFF)×toff(式(4)= 式(8))
「」は、コイルL1、Lm1、L2又はLm2の何れかを示す。
この式を解くと、下記が得られる。
Vo=Vi×ton/toff=Vi×D/(1-D); D=ton/(ton+toff)・・・式(10)
これは、このDC−DCコンバータ1は、入出力電圧が同極性の昇降圧コンバータとして動作することを示している。以上より、本発明のコンバータは、入力コイル及び出力コイルのリップル電流が三角波で、非絶縁型でありながら入力電圧と出力電圧が同極性で、昇降圧型のコンバータとして動作する。
【0037】
(c)入出力リップル電流の低減及びゼロリップル化:
次に、図3は、従来技術として知られているリップル電流の低減及びゼロリップル化の概念を示す。図3(A)のように回路中に同じ両端電圧が発生する2個のコイルL1及びL2があったとき、図3(B)のようにこれら2個のコイルを同極性に磁気的結合させると、図3(C)の等価回路となる。これら両コイルL1及びL2が図3(D)の(a)に示す如き結合係数及び巻数比の関係にあるとき、各コイルのリップル電流は結合前の1/2に減少する。図3(E)の(b)に示す結合係数及び巻数比の関係にあるとき、コイルL1のリップル電流は結合前と変わらず、コイルL2のリップル電流はゼロ(ゼロリップル)となる。また、図3(F)の(c)に示す結合係数及び巻数比の関係にあるとき、コイルL1のリップル電流はゼロ(ゼロリップル)となり、コイルL2のリップル電流は結合前と変わらない。
【0038】
上述した本発明のDC−DCコンバータ1においては、図1、式(4)及び式(8)に示したように、常にVL1=VLm2及びVL1=VLm2が成立する。特に、L1=L2及びLm1=Lm2のとき、VL1=VLm2=VL1=VLm2が成立し、入力コイルL1、出力コイルL2及び中間コイルLm1、Lm2の全てのコイルの両端電圧波形が等しくなる。従って、これらのコイルL1−Lm2及びL2−Lm1を適切に結合させることにより、入力コイルL1及び/又は出力コイルL2のリップル電流を減少させることができる。
【0039】
図1(C)には、入力コイルL1と第1中間コイルLm1のみを結合させて入力コイルL1のみをゼロリップル化した場合、出力コイルL2と第2中間コイルLm2のみを結合させて出力コイルL2のみをゼロリップル化した場合及び入力コイルL1と第1中間コイルLm1及び出力コイルL2と第2中間コイルLm2の両方を結合させて入力コイルL1及び出力コイルL2の両方をゼロリップル化した場合のリップル電流波形を示している。この他にも、上述したリップル電流低減及びゼロリップル化の概念で示したように、入力コイルL1と第1中間コイルLm1、出力コイルL2と第2中間コイルLm2の両方を巻線比=1及び結合係数=1で結合させれば、入出力コイルL1、L2及び中間コイルLm1、Lm2の全てのリップル電流を結合前の1/2に減少させることも可能である。また、結合させるコイルの組み合わせを入れ換えて入力コイルL1と第2中間コイルLm2、出力コイルL2と第1中間コイルLm1を結合させても、同様の効果が得られる。
【0040】
次に、図4は、本発明によるDC‐DCコンバータ1の具体的な応用例を示す。バッテリや太陽電池等の不安定な直流電源6の出力電圧Viを、本発明のDC‐DCコンバータ1により昇降圧安定化して、電気・電子回路、他のDC‐DCコンバータ、バッテリ等の負荷7に出力電圧Voを供給する。そして出力電圧Voが所望電圧になるようにフィードバックする既知のフィードバック制御部8にてスイッチSのON時間を制御する。図4では、上述の如く入力コイルL1と第1中間コイルLm1、出力コイルL2と第2中間コイルLm2をそれぞれ適切に結合させて、入力コイルL1及び出力コイルL2のリップル電流を低減又はゼロリップル化している。
【0041】
図4において、DC‐DCコンバータ1は、入力コイルL1、出力コイルL2、第1中間コイルLm1、第2中間コイルLm2、入力(第1中間)コンデンサC1、出力(第2中間)コンデンサC2、スイッチS、ダイオードD及び負荷(出力)コンデンサCoにより構成されている。負荷7は負荷抵抗Roを含んでいる。更に、この負荷7に供給される出力電圧VoをフィードバックしてスイッチSのON時間を制御するフィードバック制御部8を備えている。
【0042】
次に、図5及び図6を参照して、本発明のDC‐DCコンバータ1の動作を説明する。図5及び図6は、入出力コイルL1、L2のリップル電流を1/2に低減(又は半減)する下記の条件でシミュレーションした結果の動作波形を示す。
Vi=120V、 Vo=50V
L1=L2=50μH、 Lm1=Lm2=50μH
C1=C2=5μF、 C=100μF
S=理想スイッチ、 D=理想ダイオード
スイッチング周波数=100kHz、 ton=2.92μs
【0043】
図5は、図4のDC‐DCコンバータ1の具体例においてコイルL1‐Lm1、L2‐Lm2の結合がない場合の動作波形を示す。図5(A)〜(D)は、それぞれ入力コイルL1、出力コイルL2、第1中間コイルLm1及び第2中間コイルLm2の両端電圧波形である。また、(E)〜(H)は、それぞれ入力コイルL1、出力コイルL2、第1中間コイルLm1及び第2中間コイルLm2のリップル電流波形である。これら全てのコイルL1、L2、Lm1及びLm2の両端電圧が等しく、スイッチSがONのときVi/2≒60V、スイッチSがOFFのとき-Vo/2≒-25Vとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(2)及び式(6)の結果と一致している。
【0044】
コイルのリップル電流は、ΔIL1=ΔIL2=Vi/2/L×ton≒3.5A、ΔILm1=ΔILm2=Vi/2/L×ton≒3.5Aとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(4)及び式(8)の結果と一致している。
【0045】
一方、図6(A)〜(H)は、図4に示すDC‐DCコンバータ1の具体例において、入力コイルL1と第1中間コイルLm1、出力コイルL2と第2中間コイルLm2をそれぞれ下記の条件で結合させた場合の、図5(A)〜(H)に対応する動作波形である。
巻数比
L1:Lm1間 ; n11 = √(Lm1 / L1) = 1
L2:Lm2間 ; n22 = √(Lm2 / L2) = 1
結合係数
L1:Lm1間 ; k11 = n11 = 1
L2:Lm2間 ; k22 = n22 = 1
全てのコイルL1、L2、Lm1及びLm2の両端電圧が等しく、スイッチSがONのときVi/2≒60V、スイッチSがOFFのとき-Vo/2≒-25Vとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(2)及び式(6)の結果と一致している。また、コイルL1、L2、Lm1及びLm2のリップル電流は、ΔIL1=ΔIL2=Vi/2/L×ton/2≒1.75A、ΔILm1=ΔILm2=Vi/2/L×ton/2≒1.75Aとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(4)及び式(8)の結果と一致している。
【0046】
次に、図7及び図8に、本発明のDC‐DCコンバータ1において、入出力コイルL1及びL2のリップル電流をゼロリップルにする下記の条件でシミュレーションした結果の動作波形を示す。
Vi=120V、 Vo=50V
L1=L2=118μH、 Lm1=Lm2=50μH
C1=C2=5μF、 C=100μF
S=理想スイッチ、 D=理想ダイオード
スイッチング周波数=100kHz、 ton=2.92μs
【0047】
図7は、図4に示すDC‐DCコンバータ1におけるコイルL1、L2、Lm1及びLm2の結合がない場合の動作波形である。上述した図5及び図6(A)〜(H)と同様に、(A)〜(D)は各コイルの両端電圧波形、(E)〜(H)はリップル電流波形である。全てのコイルの両端電圧が等しく、スイッチSがONのときVi/2≒60V、スイッチSがOFFのとき-Vo/2≒-25Vとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(2)及び(6)の結果と一致している。また、コイルL1、L2、Lm1及びLm2のリップル電流は、ΔIL1=ΔIL2=Vi/2/L×ton≒1.5A、ΔILm1=ΔILm2=Vi/2/L×ton≒3.5Aとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(4)及び式(8)の結果と一致している。
【0048】
また、図8は、図4に示すDC‐DCコンバータ1における入力コイルL1と第1中間コイルLm1、出力コイルL2と第2中間コイルLm2をそれぞれ下記の条件で結合させた場合の動作波形である。
巻数比
L1:Lm1間 ; n11 = √(Lm1 / L1) = 0.65
L2:Lm2間 ; n22 = √(Lm2 / L2) = 0.65
結合係数
L1:Lm1間 ; k11 = n11 = 0.65
L2:Lm2間 ; k22 = n22 = 0.65
【0049】
全てのコイルL1、L2、Lm1及びLm2の両端電圧が等しく、スイッチSがONのときVi/2≒60V、スイッチSがOFFのとき-Vo/2≒-25Vとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(2)及び式(6)の結果と一致している。また、コイルL1、L2、Lm1及びLm2のリップル電流は、ΔIL1=ΔIL2≒0A(ゼロリップル)、ΔILm1=ΔILm2=Vi/2/L×ton≒3.5Aとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(4)及び式(8)の結果と一致している。
【0050】
次に、本発明の他の実施例又は変形実施例について図9〜図11を参照して説明する。図9は、本発明によるDC‐DCコンバータの第2実施例の回路図を示す。このDC‐DCコンバータ2は、スイッチSをバイポーラトランジスタで構成した例である。他の構成は、図1等を参照して上述した第1実施例のDC‐DCコンバータ1と同様であるので、詳細説明は省略する。
【0051】
図10は、本発明によるDC‐DCコンバータの第3実施例の回路図を示す。このDC‐DCコンバータ3は、スイッチS及びダイオードDをパワーMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)で構成した例である。パワーMOSFETに並列に接続されているダイオードDは、パワーMOSFET寄生ダイオードである。出力電圧が所望電圧になるようにフィードバック制御部8によりスイッチSのON時間を制御する。スイッチSのOFF期間にダイオードDの代わりのパワーMOSFETをON(同期整流)することにより、パワーMOSFETでの電力損失を低減することができる。DC‐DCコンバータ3の他の回路構成は、上述したDC−DCコンバータ1と同様であるので、重複説明は省略する。
【0052】
次に、図11は、本発明によるDC‐DCコンバータの第4実施例の回路図を示す。このDC‐DCコンバータ4の基本回路構成は図10のDC‐DCコンバータ3と同じである。しかし、このDC‐DCコンバータ4の電力回路をよく見ると、左右(入出力)対称であることが分かる。スイッチSのON時間を制御すると左側を入力とし右側を出力とする昇降圧コンバータとして動作することは既に述べた。左右対称の構成であるので同様に、ダイオードDの代わりに使用したパワーMOSFETのON時間を制御すると、右側を入力とし左側を出力とする昇降圧コンバータとしても動作する。即ち、このDC‐DCコンバータ4は、双方向昇降圧コンバータとしても動作する。図示したように、左側の直流電源6と負荷7が接続された直流電源バスから、右側のバッテリに昇降圧充電することができる。また、左側のバッテリから右側の直流電源バスに昇降圧放電することもできる。1つのDC‐DCコンバータ4で充電制御8aと放電制御8bの両方が行えるので、充放電器を小型化することができる。また、昇降圧コンバータなので直流電源バスの電圧に対してバッテリ電圧の選択範囲を広く取ることができる。即ち、バッテリセル(太陽電池セル等)の直列接続数の選定の自由度が増加する。セルの容量(Ah)でバッテリの電力量(Wh)を調節する他に、セルの直列接続数でもバッテリの電力量(Wh)を調節することができる。セルの容量が決まった離散的な値しかない場合に有利である。
【0053】
以上、本発明によるDC‐DCコンバータの好適な実施例について詳述した。しかし、斯かる実施例は本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨や精神を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。
【0054】
上述の如く構成された本発明のDC‐DCコンバータは、太陽電池を電力源とする電源システム・機器、バッテリを電力源とする電源システム・機器、バッテリ充放電システム・機器及び低ノイズであることが必要な電源システム・機器等への応用に好適である。
本発明の実施態様としては以下のような構成がある。
上記基本構成において、
前記入出力コイル及び前記中間コイルを磁気的に結合し、前記入出力コイルを流れるリップル電流を低減する構成、
前記スイッチング素子は,前記負荷への出力電圧が入力されるフィードバック制御手段により制御されるトランジスタによる構成。
前記スイッチング素子及び前記ダイオードは、パワーMOSトランジスタによる構成。
前記スイッチング素子及び前記ダイオードは、パワーMOSトランジスタにより構成され、それぞれ前記出力電圧及び入力電源電圧を入力とするフィードバック制御部により制御される構成。
前記入力電源は、複数のセルが直列接続された太陽電池である構成。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明によるDC‐DCコンバータの第1実施例の説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図2】図1に示すDC‐DCコンバータの動作説明図であり、(A)は回路図、(B)はスイッチON時の電流の流れ及び(C)はスイッチOFF時の電流の流れを示す。
【図3】入出力コイルのリップル電流の原理を説明する図である。
【図4】図1に示すDC‐DCコンバータの具体的応用例を示す図である。
【図5】図1に示すDC−DCコンバータの各コイルのインダクタンスが50μH且つコイル間の磁気的結合がない場合の動作波形図であり、(A)〜(D)及び(E)〜(H)はそれぞれ入力コイル、出力コイル、第1及び第2中間コイルの両端電圧及びリップル電流波形を示す。
【図6】図1に示すDC‐DCコンバータの入出力コイルのインダクタンスが50μH且つコイル間を磁気的結合した場合の図5(A)〜(H)に対応する波形を示す。
【図7】図1に示すDC‐DCコンバータの入出力コイルのインダクタンスが118μH、中間コイルのインダクタンスが50μH且つコイル間の磁気的結合がない場合の図5(A)〜(H)に対応する波形図である。
【図8】図1に示すDC‐DCコンバータの各コイルのインダクタンスが図7と同じで且つコイル間の磁気的結合がある場合の図5(A)〜(H)に対応する波形図である。
【図9】本発明のDC‐DCコンバータの第2実施例の回路図である。
【図10】本発明のDC‐DCコンバータの第3実施例の回路図である。
【図11】本発明のDC‐DCコンバータの第4実施例の回路図である。
【図12】第1の従来DC−DCコンバータの説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図13】第2の従来DC‐DCコンバータの説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図14】第3の従来DC‐DCコンバータの説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図15】第4の従来DC‐DCコンバータの説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図16】第5の従来DC‐DCコンバータの説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図17】第6の従来DC−DCコンバータの回路図である。
【符号の説明】
【0056】
1〜4 DC‐DCコンバータ
6 直流電源(入力電源)
7 負荷
8 フィードバック制御部
L1 入力コイル
L2 出力コイル
Lm1、Lm2 中間コイル
C1 入力コンデンサ
C2 出力コンデンサ
S スイッチ(スイッチング素子)
D ダイオード
【技術分野】
【0001】
本発明はDC‐DCコンバータに関し、特に太陽電池パネル等の比較的変動する入力電源電圧を所望出力電圧に安定的に昇圧又は降圧する非絶縁型のスイッチングDC‐DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の電子機器又は電子応用機器の電子回路を動作するには、所定出力電圧を有する電源を必要とする。斯かる出力電圧を電池等の電源から直接得ることは一般に不可能又は困難であり、DC‐DCコンバータ(スイッチングレギュレータともいう)により入力電源電圧を所望出力電圧に変換するのが一般的である。特に、人工衛星や惑星探査機等に搭載される電子機器の動作電源は、太陽電池パネルの起電力を入力電源として、DC‐DCコンバータにより所望出力電圧を出力するよう制御している。斯かる用途のDC‐DCコンバータでは、大きく変動する入力電源電圧を低ノイズ且つ低電力損失で昇降圧して安定的な出力電圧を得ることが要求される。以下、太陽電池パネルを入力電源とする場合の従来例又は一般的な技術について説明する。
【0003】
降圧型のDC‐DCコンバータの場合には、直列接続される太陽電池セルの数を調整して、太陽電池パネルからの出力電圧(即ち、入力電源電圧)がDC‐DCコンバータの出力電圧よりも常に高くなるようにしなければならない。太陽電池パネルからの電圧が大きく変動する場合には、太陽電池パネルからの最高出力電圧は非常に高くなり得るので、DC‐DCコンバータの設計が困難になる。
【0004】
他方、昇圧型のDC‐DCコンバータを使用する場合には、直列接続される太陽電池セルの数を調整して、太陽電池パネルからの電圧がDC‐DCコンバータの出力電圧よりも常に低くなるようにしなければならない。上述の如く太陽電池パネルの電圧が大きく変動する場合には、太陽電池パネルの出力電圧は非常に低くなり得るので、この場合にもDC‐DCコンバータの設計が困難になる。
【0005】
そこで、太陽電池パネルからの入力電圧をDC‐DCコンバータの出力電圧、即ち負荷が必要とする出力負荷電圧よりも低い電圧から高い電圧まで入力可能な昇降圧型のDC‐DCコンバータを使用すると、太陽電池パネルの出力電圧範囲を適切に設定可能である。しかし、電力損失の少ない非絶縁型の昇降圧型のDC‐DCコンバータは、入力電圧と出力電圧が逆極性となり、扱いにくいという難点又は課題がある。また、上述した探査機等は、惑星の微小な電場、磁場観測等を主目的とするので、それに使用されるDC‐DCコンバータはノイズ(スイッチングノイズ)が小さいことが必須である。
【0006】
次に、図12〜図16を参照して、一般的な非絶縁昇降圧型スイッチングDC‐DCコンバータについて簡単に説明する。これらのDC‐DCコンバータは、何れも入力電圧と出力電圧の極性が逆及び/又は入力電流や出力電流がパルス波でノイズが大きいという課題がある。即ち、入力電流や出力電流がパルス波であるということは、スイッチング周波数の振幅が大きく電流の時間変化率が大きいので、スイッチング周波数のノイズが大きく且つスイッチング周波数の整数倍である高調波ノイズも大きいことを意味する。
【0007】
図12は、第1の従来DC‐DCコンバータ(Buck-Boostコンバータ)であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。このDC‐DCコンバータ12は、図12(A)に示す如く、入力電源E、スイッチS、コイル(インダクタ)L、ダイオードD、負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoにより構成される。スイッチS及びコイルLは入力電源Eの両端に直列接続され、更にこのコイルLの両端にダイオードDを介して負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoが並列接続されている。ここで、入力電源Eの電圧をVi及び負荷抵抗Roの両端の出力電圧をVoとする。
【0008】
図12に示すDC‐DCコンバータ12において、スイッチSを周期的にON/OFFすると、スイッチS及びコイルLには図12(C)に示す如きリップル電流が流れ、コイル電圧は図12(E)に示す如く−VoとVi間で変化する方形状パルスとなり、負荷Roには出力電圧−Voが供給(又は印加)される。即ち、このDC‐DCコンバータ12の入力電圧Viと出力電圧Voの極性は相互に逆極性であり、入力電流Ii及び出力電流Ioはパルス波である。
【0009】
図13は、第2の従来DC‐DCコンバータ(Cukコンバータ)であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧である。このDC‐DCコンバータ13は、図13(A)に示す如く入力電源E、第1コイルL1、スイッチS、コンデンサC1、ダイオードD、第2コイルL2、負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoにより構成されている。入力電源Eの両端に第1コイルL1及びスイッチSが直列接続され、このスイッチSの両端にコンデンサC1及びダイオードDが直列接続され、更にこのダイオードDの両端に第2コイルL2を介して並列接続された負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoが接続されている。
【0010】
このDC‐DCコンバータ13において、第1コイルL1及び第2コイルL2のリップル電流を図13(C)に示す。これら両コイルL1、L2間に磁気的結合がない場合には最上段に示すようになり、結合係数kがnの場合には中段に示すようになり、結合係数kが1/nの場合には下段に示すようになる。入力電流波形及び出力電流を、それぞれ三角波とゼロリップル又はゼロリップルと三角波にすることができるが、上述したDC‐DCコンバータ12の場合と同様に、入力電圧Viと出力電圧Voの極性は逆である。
【0011】
図14は、第3の従来DC‐DCコンバータ(中間コイル付きCukコンバータ)であり、
(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。図14(A)に示す如く、このDC‐DCコンバータ14は、入力電源E、入力コイルL1、スイッチS、1対のコンデンサC1、C2、中間コイルLm、ダイオードD出力コイルL2及び負荷抵抗Roと負荷コンデンサCoにより構成されている。そして、入力電源Eの両端に入力コイルL1及びスイッチSが直列接続され、このスイッチSの両端にコンデンサC1と中間コイルLmが直列接続され、この中間コイルLmの両端にコンデンサC2とダイオードDが直列接続され、更にこのダイオードDの両端に出力コイルL2を介して並列接続された負荷抵抗Roと負荷コンデンサCoが接続されている。また、入力コイルL1、中間コイルLm及び出力コイルL2は、所定極性関係で磁気的に結合可能に構成されている。
【0012】
図14(C)には、入力コイルL1、中間コイルLm及び出力コイルL2の略三角波状のリップル電流を左右方向に順次並べて示す。そして、これらのリップル電流によるリップル電圧を図14(D)に示す。図14(C)に示す如く、このDC‐DCコンバータ14の入力コイルL1に流れる入力電流及び出力コイルL2に流れる出力電流の両方を、略ゼロリップルとすることができる。しかし、上述したDC‐DCコンバータ12及び13と同様に、入力電圧Viと負荷に供給される出力電圧Voの極性は逆である。
【0013】
また、図15は、第4の従来DC‐DCコンバータ(Zetaコンバータ)であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。図15(A)に示す如く、このDC‐DCコンバータ15は、入力電源E、スイッチS、入力コイルL1、コンデンサC1、ダイオードD、出力コイルL2及び負荷抵抗Roと負荷コンデンサCoにより構成されている。入力電源Eの両端にスイッチS及び入力コイルL1が直列接続され、この入力コイルL1の両端にコンデンサC1とダイオードDが直列接続され、更にダイオードDの両端に出力コイルL2を介して負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoの並列回路が接続されている。入力コイルL1及び出力コイルL2は、相互に磁気的に結合されている。
【0014】
図15(C)に示す如く、スイッチS、入力コイルL1及び出力コイルL2に流れるリップル電流は、両コイルL1、L2の磁気的結合係数kにより変化する。両コイルL1、L2間の磁気的結合がない場合を上段に示し、結合係数kがnの場合を中段に示し、結合係数kが1/nの場合を下段に示す。このDC‐DCコンバータ15では、入力電圧Viと出力電圧Voの極性は同じであるが、入力電流Iiがパルス波になる。
【0015】
図16は、第5の従来DC‐DCコンバータ(Sepicコンバータ)であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。図16(A)に示す如く、このDC‐DCコンバータ16は、入力電源E、入力コイルL1、スイッチS、コンデンサC1、出力コイルL2、ダイオードD、負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoにより構成されている。そして、入力電源Eの両端に入力コイルL1及びスイッチSが直列接続され、このスイッチSの両端にコンデンサC1及び出力コイルL2が直列接続され、更にこの出力コイルL2の両端にダイオードDを介して並列接続された負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoが接続されている。入力コイルL1と出力コイルL2は、磁気的結合係数kで結合可能に構成されている。
【0016】
図16(C)に示す如く、入力コイルL1、出力コイルL2及びダイオードDを流れるリップル電流は、入力コイルL1と出力コイルL2間の結合係数kにより三角波又はパルス状に変化する。このDC‐DCコンバータ16の入力電圧Viと負荷に供給される出力電圧Voの極性は同じであるが、出力電流Ioがパルス波である。
【0017】
また、図12乃至図16を参照して上述した従来のDC‐DCコンバータにおける出力電流がリップル電流であることによるノイズの発生を解消又は低減するDC‐DCコンバータが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この従来のDC‐DCコンバータ17は、図17に示す如く、入力電源E、2対のインダクタL1−L3、L2−L4、1対のコンデンサC1−C2、1対のスイッチS1−S2、負荷抵抗Ro及び出力(平滑用)コンデンサCoにより構成されている。インダクタL1−L3は磁気的に結合され、インダクタL2−L4も磁気的に結合されている。
【0018】
このDC‐DCコンバータ17において、インダクタL1、コンデンサC1及びインダクタL3は、入力電源Eの両端間に直列接続されている。また、インダクタL2コンデンサC2及びインダクタL4は、並列接続された負荷抵抗Roと出力コンデンサCoの両端間に直列接続されている。そして、第1スイッチS1は、インダクタL1及びコンデンサC1の接続点とコンデンサC2及びインダクタL4の接続点間に接続されている。第2スイッチS2は、コンデンサC1及びインダクタL3の接続点とインダクタL2及びコンデンサC2の接続点間に接続されている。
【0019】
上述の如く構成されたDC‐DCコンバータ17において、第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、交互且つ相補的にON/OFFする。即ち、第1スイッチS1がONすると、第2スイッチS2がOFFし、入力電源E及びコンデンサC2及び負荷コンデンサCoを充電する。インダクタL1及びL3の電磁結合により入力インダクタL1に流れる入力電流のリップルを0にする。一方、第1スイッチS1がOFF、第2スイッチS2がONすると、出力インダクタL2及びインダクタL3を介して負荷コンデンサCo及びコンデンサC2が放電する。また、出力インダクタL2及びインダクタL4の電磁結合により、出力インダクタL2を流れる出力電流のリップルが0になる。これにより、入力電流及び出力電流のリップルをなくしてノイズを低減する。
【特許文献1】特開平4−364358号公報(第4−5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図12乃至図17に示す従来のDC‐DCコンバータは、入出力電圧の極性が逆になるので取扱いが不便である。また、入出力電流にリップルを含み、大きなノイズを生じるので、ノイズに敏感な用途には応用不可能であるという課題を有する。
【0021】
本発明は、従来のDC‐DCコンバータの上述した課題に鑑みなされたものであり、斯かる課題を解消すること、即ち入出力電圧が正(又は同)極性であると共に入出力電流に含まれるリップルを低減して低ノイズ化するDC‐DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明のDC‐DCコンバータは、入力電源の電圧を昇降圧して所望電圧の出力電圧を出力する非絶縁型のDC‐DCコンバータであって、入力電源の両端に直列接続された入力コイル、入力コンデンサ及び第2中間コイルと、負荷の両端間に直列接続された出力コイル、出力コンデンサ及び第1中間コイルと、入力コイル及び入力コンデンサの接続点と第1中間コイル及び出力コンデンサの接続点間に接続されたスイッチング素子と、入力コンデンサ及び第2中間コイルの接続点と出力コンデンサ及び出力コイルの接続点間に接続されたダイオードとを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明のDC‐DCコンバータによると、次の如き特有の効果を奏する。即ち、入力電源の電圧を所望出力電圧に昇降圧して正極性の出力電圧を得ると共に低ノイズの非絶縁型のDC−DCコンバータを提供することが可能である。従って、惑星探査機等に搭載された太陽電池パネルの電圧を負荷が必要とする安定的な出力電圧に変換するDC‐DCコンバータに好適である。また、必要とする回路素子は、コイル、コンデンサ、スイッチング素子及びダイオードであるので、例えば図17に示す如き従来のDC‐DCコンバータの構成と比較して複雑又は高価になることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明によるDC‐DCコンバータの好適実施例の構成及び動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
先ず、図1を参照して、本発明によるDC‐DCコンバータの第1実施例について説明する。図1において、(A)は、本発明による第1実施例のDC‐DCコンバータ1の回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【0026】
図1(A)に示す如く、このDC‐DCコンバータ1は、入力電源E、入力コイル(又はインダクタ)L1、出力コイルL2、第1中間コイルLm1、第2中間コイルLm2、入力(又は第1中間)コンデンサC1、出力(又は第2中間)コンデンサC2、スイッチS、ダイオードD及び相互に並列接続された負荷抵抗Roと出力(平滑用)コンデンサCoにより構成されている。
【0027】
入力電源Eの両端間に入力コイルL1、入力コンデンサC1及び第2中間コイルLm2が直列接続されている。また、並列接続された負荷抵抗Ro及び負荷コンデンサCoの両端間には出力コイルL2、出力コンデンサC2及び第1中間コイルLm1が直列接続されている。ここで、入力コイルL1と入力コンデンサC1の接続点をノードa、第1中間コイルLm1と第2中間コンデンサC2の接続点をノードb、出力コイルL2と出力コンデンサC2の接続点をノードc及び入力コンデンサC1と第2中間コイルLm2の接続点をノードdとする。スイッチSはノードa及びノードb間に接続され、ダイオードDはノードd及びノードc間に接続されている。また、入力コイルL1と第1中間コイルLm1及び出力コイルL2と第2中間コイルLm2は、それぞれ所定極性関係で磁気的に結合可能に構成されている。
【0028】
図1(C)に示すリップル電流において、左側から右側にかけて入力コイルL1、第1中間コイルLm1、出力コイルL2及び第2中間コイルLm2のリップル電流を示す。また、最上段から最下段にかけて、入力コイルL1と第1中間コイルLm1及び出力コイルL2と第2中間コイルLm2間の磁気的結合が右側に示す値の場合について示している。リップル電流は、コイルL1−Lm1及びL2−Lm2間の磁気的結合がない場合には、これら全てのコイルL1、Lm1、Lm2及びL2のリップル電流は、比較的大きい三角波である。他方、これらの磁気的結合が存在すると、その結合度合に応じて入力コイルL1及び出力コイルL2のリップル電流は略0(ゼロリップル)又は三角波となるが、中間コイルLm1及びLm2のリップル電流は三角波のままである。
【0029】
一方、リップル電圧は、図1(D)に示す如く図1(A)中の上述した4つのノードa〜dにおいて方形波となる。そして、DC‐DCコンバータ1の負荷抵抗Roの両端に供給される出力電圧Voは、非絶縁型の昇降圧DC‐DCコンバータでありながら、入力電圧Viと同極性である。また、パルス状のリップル電流がないので、このDC‐DCコンバータ1は低ノイズ特性である。
【0030】
次に、図2を参照して、本発明による第1実施例のDC‐DCコンバータ1の動作を詳細に説明する。図2(A)は上述した図1(A)と同様のDC‐DCコンバータ1の回路図であり、(B)は図2(A)中のスイッチSがONの場合における各ノードa〜dの電位と電流の流れを示し、(C)はスイッチSがOFFの場合における各ノードa〜dの電位と電流の流れを示す図である。
【0031】
スイッチSがONのときには、図2(B)に示す如く、点線で示す如く全てのコイルL1、Lm1、Lm2及びL2に励磁電流が流れ、入力電源Eから出力(負荷抵抗Ro)に電流が流れる。入出力コンデンサC1及びC2には放電方向の電流が流れる。他方、スイッチSがOFFのときには、図2(C)に示す如く、全てのコイルL1、Lm1、Lm2及びL2にダイオードDを介して開放電流が入力電源Eから出力(負荷抵抗Ro)へ流れる。この場合に、コンデンサC1及びC2の電流は、図2(B)におけるスイッチSがONのときとは逆方向となり、充電方向に流れる。
【0032】
図2(B)及び図2(C)に示した各ノードa〜dの電位は、後述するL1=
L2(即ち、入力コイルL1のインダクタンス=出力コイルL2のインダクタンス)、Lm1=Lm2(即ち、第1中間コイルLm1のインダクタンス=第2中間コイルLm2のインダクタンス)のときの値である。入力電圧の出力電圧の極性が同極性である。スイッチSがONのとき及びOFFのときの何れにおいても入力コイルL1及び出力コイルL2に電流が流れている(スイッチSがONのとき右上がりで、OFFのとき右下がりの三角波となり、急激に変化する方形波等のパルス波にならない)ことに注目されたい。
【0033】
次に、本発明のDC‐DCコンバータ1の動作解析を行う。この動作解析において、スイッチSは理想スイッチ、ダイオードDは理想ダイオード、スイッチSがONしている時間をton、スイッチSがOFFしている時間をtoffとする。また、スイッチング周波数における入力コンデンサC1及び出力コンデンサC2のインピーダンスは充分小さく(静電容量が充分大きい)、入力コンデンサC1は入力電源Eの電圧に等しい電圧Viの電圧源、出力コンデンサC2は出力電圧に等しい電圧Voの電圧源と見なせるものとする。
【0034】
(a)スイッチSがONのとき:
各ノードの電位(V「」)及び各コイルのリップル電流の大きさ(ΔI「」)の関係・・・式(1)
Va = Vb
Vc = Va + Vo
Vd = Va - Vi
ΔIL1+ΔILm2 = ΔILm1+ΔIL2
各コイルのリップル電流の大きさ(ΔI「」)(⇒は L1= L2及びLm1=Lm2のとき)・・・式(2)
ΔIL1 =(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi×ton/L1⇒(Vi×ton/L1/2)
ΔILm1 =(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi×ton/Lm1
⇒(Vi×ton/Lm1/2)
ΔIL2 =(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi×ton/L2
⇒(Vi×ton/L2/2)
ΔILm2 =(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi×ton/Lm2
⇒(Vi×ton/Lm2/2)
各ノードの電位(V「」)(⇒は L1= L2、及びLm1=Lm2のとき)・・・式(3)
Va = (1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi⇒(Vi/2)
Vb =(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi⇒(Vi/2)
Vc =(1/L1+1/Lm2)/1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi+Vo⇒(Vi/2 + Vo)
Vd = -(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi⇒(- Vi/2)
各コイルの両端電圧(V「」)(⇒は L1= L2、及びLm1=Lm2のとき)・・・式(4)
VL1 =(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi ⇒(Vi/2)
VLm1 = 1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi ⇒(Vi/2)
VL2 =(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi ⇒(Vi/2)
VLm2 =(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vi ⇒(Vi/2)
【0035】
(b)スイッチSがOFFのとき:
各ノードの電位(V「」)及び各コイルのリップル電流の大きさ(ΔI「」)の関係・・・式(5)
Va= Vc + Vi
Vb= Vc - Vo
Vc= Vd
ΔIL1+ΔILm2 = ΔILm1+ΔIL2
各コイルのリップル電流の大きさ(ΔI「」)(⇒は L1= L2及びLm1=Lm2のとき)・・・式(6)
ΔIL1=(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo×toff/ L1
⇒(Vo×toff/L1/2)
ΔILm1=1/L1+1/Lm2)/(1/L1+ 1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo×toff/Lm1
⇒(Vo×toff/Lm1/2)
ΔIL2=(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo×toff/L2
⇒(Vo×toff/L2/2)
ΔILm2=(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo×toff/Lm2
⇒(Vo×toff/Lm2/2)
各ノードの電位(V「」)(⇒は L1= L2及びLm1=Lm2のとき)・・・式(7)
Va=(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo+
Vi⇒(Vi+Vo/2)
Vb=-(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo⇒(- Vo/2)
Vc=(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo⇒(Vo/2)
Vd=-(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo⇒(Vo/2)
各コイルの両端電圧(V「」)(⇒は L1= L2及びLm1=Lm2のとき)・・・式(8)
VL1=-(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo ⇒(- Vo/2)
VLm1=-(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo ⇒(- Vo/2)
VL2=-(1/L1+1/Lm2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo ⇒(- Vo/2)
VLm2=-(1/Lm1+1/L2)/(1/L1+1/Lm1+1/L2+1/Lm2)×Vo ⇒(- Vo/2)
【0036】
コンバータとして正常に動作するための条件は以下である・・・式(9)
ΔI「」 (ON) = ΔI「」(OFF) (式(2)= 式(6))
V「」(ON)×ton=-V「」(OFF)×toff(式(4)= 式(8))
「」は、コイルL1、Lm1、L2又はLm2の何れかを示す。
この式を解くと、下記が得られる。
Vo=Vi×ton/toff=Vi×D/(1-D); D=ton/(ton+toff)・・・式(10)
これは、このDC−DCコンバータ1は、入出力電圧が同極性の昇降圧コンバータとして動作することを示している。以上より、本発明のコンバータは、入力コイル及び出力コイルのリップル電流が三角波で、非絶縁型でありながら入力電圧と出力電圧が同極性で、昇降圧型のコンバータとして動作する。
【0037】
(c)入出力リップル電流の低減及びゼロリップル化:
次に、図3は、従来技術として知られているリップル電流の低減及びゼロリップル化の概念を示す。図3(A)のように回路中に同じ両端電圧が発生する2個のコイルL1及びL2があったとき、図3(B)のようにこれら2個のコイルを同極性に磁気的結合させると、図3(C)の等価回路となる。これら両コイルL1及びL2が図3(D)の(a)に示す如き結合係数及び巻数比の関係にあるとき、各コイルのリップル電流は結合前の1/2に減少する。図3(E)の(b)に示す結合係数及び巻数比の関係にあるとき、コイルL1のリップル電流は結合前と変わらず、コイルL2のリップル電流はゼロ(ゼロリップル)となる。また、図3(F)の(c)に示す結合係数及び巻数比の関係にあるとき、コイルL1のリップル電流はゼロ(ゼロリップル)となり、コイルL2のリップル電流は結合前と変わらない。
【0038】
上述した本発明のDC−DCコンバータ1においては、図1、式(4)及び式(8)に示したように、常にVL1=VLm2及びVL1=VLm2が成立する。特に、L1=L2及びLm1=Lm2のとき、VL1=VLm2=VL1=VLm2が成立し、入力コイルL1、出力コイルL2及び中間コイルLm1、Lm2の全てのコイルの両端電圧波形が等しくなる。従って、これらのコイルL1−Lm2及びL2−Lm1を適切に結合させることにより、入力コイルL1及び/又は出力コイルL2のリップル電流を減少させることができる。
【0039】
図1(C)には、入力コイルL1と第1中間コイルLm1のみを結合させて入力コイルL1のみをゼロリップル化した場合、出力コイルL2と第2中間コイルLm2のみを結合させて出力コイルL2のみをゼロリップル化した場合及び入力コイルL1と第1中間コイルLm1及び出力コイルL2と第2中間コイルLm2の両方を結合させて入力コイルL1及び出力コイルL2の両方をゼロリップル化した場合のリップル電流波形を示している。この他にも、上述したリップル電流低減及びゼロリップル化の概念で示したように、入力コイルL1と第1中間コイルLm1、出力コイルL2と第2中間コイルLm2の両方を巻線比=1及び結合係数=1で結合させれば、入出力コイルL1、L2及び中間コイルLm1、Lm2の全てのリップル電流を結合前の1/2に減少させることも可能である。また、結合させるコイルの組み合わせを入れ換えて入力コイルL1と第2中間コイルLm2、出力コイルL2と第1中間コイルLm1を結合させても、同様の効果が得られる。
【0040】
次に、図4は、本発明によるDC‐DCコンバータ1の具体的な応用例を示す。バッテリや太陽電池等の不安定な直流電源6の出力電圧Viを、本発明のDC‐DCコンバータ1により昇降圧安定化して、電気・電子回路、他のDC‐DCコンバータ、バッテリ等の負荷7に出力電圧Voを供給する。そして出力電圧Voが所望電圧になるようにフィードバックする既知のフィードバック制御部8にてスイッチSのON時間を制御する。図4では、上述の如く入力コイルL1と第1中間コイルLm1、出力コイルL2と第2中間コイルLm2をそれぞれ適切に結合させて、入力コイルL1及び出力コイルL2のリップル電流を低減又はゼロリップル化している。
【0041】
図4において、DC‐DCコンバータ1は、入力コイルL1、出力コイルL2、第1中間コイルLm1、第2中間コイルLm2、入力(第1中間)コンデンサC1、出力(第2中間)コンデンサC2、スイッチS、ダイオードD及び負荷(出力)コンデンサCoにより構成されている。負荷7は負荷抵抗Roを含んでいる。更に、この負荷7に供給される出力電圧VoをフィードバックしてスイッチSのON時間を制御するフィードバック制御部8を備えている。
【0042】
次に、図5及び図6を参照して、本発明のDC‐DCコンバータ1の動作を説明する。図5及び図6は、入出力コイルL1、L2のリップル電流を1/2に低減(又は半減)する下記の条件でシミュレーションした結果の動作波形を示す。
Vi=120V、 Vo=50V
L1=L2=50μH、 Lm1=Lm2=50μH
C1=C2=5μF、 C=100μF
S=理想スイッチ、 D=理想ダイオード
スイッチング周波数=100kHz、 ton=2.92μs
【0043】
図5は、図4のDC‐DCコンバータ1の具体例においてコイルL1‐Lm1、L2‐Lm2の結合がない場合の動作波形を示す。図5(A)〜(D)は、それぞれ入力コイルL1、出力コイルL2、第1中間コイルLm1及び第2中間コイルLm2の両端電圧波形である。また、(E)〜(H)は、それぞれ入力コイルL1、出力コイルL2、第1中間コイルLm1及び第2中間コイルLm2のリップル電流波形である。これら全てのコイルL1、L2、Lm1及びLm2の両端電圧が等しく、スイッチSがONのときVi/2≒60V、スイッチSがOFFのとき-Vo/2≒-25Vとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(2)及び式(6)の結果と一致している。
【0044】
コイルのリップル電流は、ΔIL1=ΔIL2=Vi/2/L×ton≒3.5A、ΔILm1=ΔILm2=Vi/2/L×ton≒3.5Aとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(4)及び式(8)の結果と一致している。
【0045】
一方、図6(A)〜(H)は、図4に示すDC‐DCコンバータ1の具体例において、入力コイルL1と第1中間コイルLm1、出力コイルL2と第2中間コイルLm2をそれぞれ下記の条件で結合させた場合の、図5(A)〜(H)に対応する動作波形である。
巻数比
L1:Lm1間 ; n11 = √(Lm1 / L1) = 1
L2:Lm2間 ; n22 = √(Lm2 / L2) = 1
結合係数
L1:Lm1間 ; k11 = n11 = 1
L2:Lm2間 ; k22 = n22 = 1
全てのコイルL1、L2、Lm1及びLm2の両端電圧が等しく、スイッチSがONのときVi/2≒60V、スイッチSがOFFのとき-Vo/2≒-25Vとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(2)及び式(6)の結果と一致している。また、コイルL1、L2、Lm1及びLm2のリップル電流は、ΔIL1=ΔIL2=Vi/2/L×ton/2≒1.75A、ΔILm1=ΔILm2=Vi/2/L×ton/2≒1.75Aとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(4)及び式(8)の結果と一致している。
【0046】
次に、図7及び図8に、本発明のDC‐DCコンバータ1において、入出力コイルL1及びL2のリップル電流をゼロリップルにする下記の条件でシミュレーションした結果の動作波形を示す。
Vi=120V、 Vo=50V
L1=L2=118μH、 Lm1=Lm2=50μH
C1=C2=5μF、 C=100μF
S=理想スイッチ、 D=理想ダイオード
スイッチング周波数=100kHz、 ton=2.92μs
【0047】
図7は、図4に示すDC‐DCコンバータ1におけるコイルL1、L2、Lm1及びLm2の結合がない場合の動作波形である。上述した図5及び図6(A)〜(H)と同様に、(A)〜(D)は各コイルの両端電圧波形、(E)〜(H)はリップル電流波形である。全てのコイルの両端電圧が等しく、スイッチSがONのときVi/2≒60V、スイッチSがOFFのとき-Vo/2≒-25Vとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(2)及び(6)の結果と一致している。また、コイルL1、L2、Lm1及びLm2のリップル電流は、ΔIL1=ΔIL2=Vi/2/L×ton≒1.5A、ΔILm1=ΔILm2=Vi/2/L×ton≒3.5Aとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(4)及び式(8)の結果と一致している。
【0048】
また、図8は、図4に示すDC‐DCコンバータ1における入力コイルL1と第1中間コイルLm1、出力コイルL2と第2中間コイルLm2をそれぞれ下記の条件で結合させた場合の動作波形である。
巻数比
L1:Lm1間 ; n11 = √(Lm1 / L1) = 0.65
L2:Lm2間 ; n22 = √(Lm2 / L2) = 0.65
結合係数
L1:Lm1間 ; k11 = n11 = 0.65
L2:Lm2間 ; k22 = n22 = 0.65
【0049】
全てのコイルL1、L2、Lm1及びLm2の両端電圧が等しく、スイッチSがONのときVi/2≒60V、スイッチSがOFFのとき-Vo/2≒-25Vとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(2)及び式(6)の結果と一致している。また、コイルL1、L2、Lm1及びLm2のリップル電流は、ΔIL1=ΔIL2≒0A(ゼロリップル)、ΔILm1=ΔILm2=Vi/2/L×ton≒3.5Aとなっている。それぞれ、本発明による解決手段として上述した式(4)及び式(8)の結果と一致している。
【0050】
次に、本発明の他の実施例又は変形実施例について図9〜図11を参照して説明する。図9は、本発明によるDC‐DCコンバータの第2実施例の回路図を示す。このDC‐DCコンバータ2は、スイッチSをバイポーラトランジスタで構成した例である。他の構成は、図1等を参照して上述した第1実施例のDC‐DCコンバータ1と同様であるので、詳細説明は省略する。
【0051】
図10は、本発明によるDC‐DCコンバータの第3実施例の回路図を示す。このDC‐DCコンバータ3は、スイッチS及びダイオードDをパワーMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)で構成した例である。パワーMOSFETに並列に接続されているダイオードDは、パワーMOSFET寄生ダイオードである。出力電圧が所望電圧になるようにフィードバック制御部8によりスイッチSのON時間を制御する。スイッチSのOFF期間にダイオードDの代わりのパワーMOSFETをON(同期整流)することにより、パワーMOSFETでの電力損失を低減することができる。DC‐DCコンバータ3の他の回路構成は、上述したDC−DCコンバータ1と同様であるので、重複説明は省略する。
【0052】
次に、図11は、本発明によるDC‐DCコンバータの第4実施例の回路図を示す。このDC‐DCコンバータ4の基本回路構成は図10のDC‐DCコンバータ3と同じである。しかし、このDC‐DCコンバータ4の電力回路をよく見ると、左右(入出力)対称であることが分かる。スイッチSのON時間を制御すると左側を入力とし右側を出力とする昇降圧コンバータとして動作することは既に述べた。左右対称の構成であるので同様に、ダイオードDの代わりに使用したパワーMOSFETのON時間を制御すると、右側を入力とし左側を出力とする昇降圧コンバータとしても動作する。即ち、このDC‐DCコンバータ4は、双方向昇降圧コンバータとしても動作する。図示したように、左側の直流電源6と負荷7が接続された直流電源バスから、右側のバッテリに昇降圧充電することができる。また、左側のバッテリから右側の直流電源バスに昇降圧放電することもできる。1つのDC‐DCコンバータ4で充電制御8aと放電制御8bの両方が行えるので、充放電器を小型化することができる。また、昇降圧コンバータなので直流電源バスの電圧に対してバッテリ電圧の選択範囲を広く取ることができる。即ち、バッテリセル(太陽電池セル等)の直列接続数の選定の自由度が増加する。セルの容量(Ah)でバッテリの電力量(Wh)を調節する他に、セルの直列接続数でもバッテリの電力量(Wh)を調節することができる。セルの容量が決まった離散的な値しかない場合に有利である。
【0053】
以上、本発明によるDC‐DCコンバータの好適な実施例について詳述した。しかし、斯かる実施例は本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨や精神を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。
【0054】
上述の如く構成された本発明のDC‐DCコンバータは、太陽電池を電力源とする電源システム・機器、バッテリを電力源とする電源システム・機器、バッテリ充放電システム・機器及び低ノイズであることが必要な電源システム・機器等への応用に好適である。
本発明の実施態様としては以下のような構成がある。
上記基本構成において、
前記入出力コイル及び前記中間コイルを磁気的に結合し、前記入出力コイルを流れるリップル電流を低減する構成、
前記スイッチング素子は,前記負荷への出力電圧が入力されるフィードバック制御手段により制御されるトランジスタによる構成。
前記スイッチング素子及び前記ダイオードは、パワーMOSトランジスタによる構成。
前記スイッチング素子及び前記ダイオードは、パワーMOSトランジスタにより構成され、それぞれ前記出力電圧及び入力電源電圧を入力とするフィードバック制御部により制御される構成。
前記入力電源は、複数のセルが直列接続された太陽電池である構成。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明によるDC‐DCコンバータの第1実施例の説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図2】図1に示すDC‐DCコンバータの動作説明図であり、(A)は回路図、(B)はスイッチON時の電流の流れ及び(C)はスイッチOFF時の電流の流れを示す。
【図3】入出力コイルのリップル電流の原理を説明する図である。
【図4】図1に示すDC‐DCコンバータの具体的応用例を示す図である。
【図5】図1に示すDC−DCコンバータの各コイルのインダクタンスが50μH且つコイル間の磁気的結合がない場合の動作波形図であり、(A)〜(D)及び(E)〜(H)はそれぞれ入力コイル、出力コイル、第1及び第2中間コイルの両端電圧及びリップル電流波形を示す。
【図6】図1に示すDC‐DCコンバータの入出力コイルのインダクタンスが50μH且つコイル間を磁気的結合した場合の図5(A)〜(H)に対応する波形を示す。
【図7】図1に示すDC‐DCコンバータの入出力コイルのインダクタンスが118μH、中間コイルのインダクタンスが50μH且つコイル間の磁気的結合がない場合の図5(A)〜(H)に対応する波形図である。
【図8】図1に示すDC‐DCコンバータの各コイルのインダクタンスが図7と同じで且つコイル間の磁気的結合がある場合の図5(A)〜(H)に対応する波形図である。
【図9】本発明のDC‐DCコンバータの第2実施例の回路図である。
【図10】本発明のDC‐DCコンバータの第3実施例の回路図である。
【図11】本発明のDC‐DCコンバータの第4実施例の回路図である。
【図12】第1の従来DC−DCコンバータの説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図13】第2の従来DC‐DCコンバータの説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図14】第3の従来DC‐DCコンバータの説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図15】第4の従来DC‐DCコンバータの説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図16】第5の従来DC‐DCコンバータの説明図であり、(A)は回路図、(B)は伝達関数、(C)はリップル電流、(D)はリップル電圧及び(E)はコイル電圧を示す。
【図17】第6の従来DC−DCコンバータの回路図である。
【符号の説明】
【0056】
1〜4 DC‐DCコンバータ
6 直流電源(入力電源)
7 負荷
8 フィードバック制御部
L1 入力コイル
L2 出力コイル
Lm1、Lm2 中間コイル
C1 入力コンデンサ
C2 出力コンデンサ
S スイッチ(スイッチング素子)
D ダイオード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源の電圧を昇降圧して所望電圧の正極性の出力電圧を出力する非絶縁型のDC‐DCコンバータにおいて、
前記入力電源の両端間に直列接続された入力コイル、入力コンデンサ及び第2中間コイルと、負荷の両端間に直列接続された出力コイル、出力コンデンサ及び第1中間コイルと、前記入力コイル及び前記入力コンデンサの接続点と前記第1中間コイル及び前記出力コンデンサの接続点間に接続されたスイッチング素子と、前記入力コンデンサ及び前記第2中間コイルの接続点と前記出力コンデンサ及び前記出力コイルの接続点間に接続されたダイオードとを備えることを特徴とするDC‐DCコンバータ。
【請求項2】
前記入出力コイル及び前記中間コイルを磁気的に結合し、前記入出力コイルを流れるリップル電流を低減することを特徴とする請求項1に記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項3】
前記スイッチング素子は,前記負荷への出力電圧が入力されるフィードバック制御手段により制御されるトランジスタにより構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項4】
前記スイッチング素子及び前記ダイオードは、パワーMOSトランジスタにより構成されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項5】
前記スイッチング素子及び前記ダイオードは、パワーMOSトランジスタにより構成され、それぞれ前記出力電圧及び入力電源電圧を入力とするフィードバック制御部により制御されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項6】
前記入力電源は、複数のセルが直列接続された太陽電池であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項1】
入力電源の電圧を昇降圧して所望電圧の正極性の出力電圧を出力する非絶縁型のDC‐DCコンバータにおいて、
前記入力電源の両端間に直列接続された入力コイル、入力コンデンサ及び第2中間コイルと、負荷の両端間に直列接続された出力コイル、出力コンデンサ及び第1中間コイルと、前記入力コイル及び前記入力コンデンサの接続点と前記第1中間コイル及び前記出力コンデンサの接続点間に接続されたスイッチング素子と、前記入力コンデンサ及び前記第2中間コイルの接続点と前記出力コンデンサ及び前記出力コイルの接続点間に接続されたダイオードとを備えることを特徴とするDC‐DCコンバータ。
【請求項2】
前記入出力コイル及び前記中間コイルを磁気的に結合し、前記入出力コイルを流れるリップル電流を低減することを特徴とする請求項1に記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項3】
前記スイッチング素子は,前記負荷への出力電圧が入力されるフィードバック制御手段により制御されるトランジスタにより構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項4】
前記スイッチング素子及び前記ダイオードは、パワーMOSトランジスタにより構成されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項5】
前記スイッチング素子及び前記ダイオードは、パワーMOSトランジスタにより構成され、それぞれ前記出力電圧及び入力電源電圧を入力とするフィードバック制御部により制御されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のDC‐DCコンバータ。
【請求項6】
前記入力電源は、複数のセルが直列接続された太陽電池であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のDC‐DCコンバータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−11109(P2009−11109A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171688(P2007−171688)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(301072650)NEC東芝スペースシステム株式会社 (62)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(301072650)NEC東芝スペースシステム株式会社 (62)
【Fターム(参考)】
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