説明

DC/DCコンバータ

【課題】出力電圧と発振周波数とを調整することにより、インダクタンス素子に対する負荷を増大させることなく入力電圧の低電圧側の動作範囲を拡張することが可能なDC/DCコンバータを提供すること。
【解決手段】所定周波数でスイッチング動作を繰り返すことにより出力電圧を基準電圧に応じた電圧値に維持するものであり、入力電圧の電圧値と所定電圧値とを比較する電圧比較器と、電圧比較器による比較結果に応じて、基準電圧の電圧値を、所定電圧値に対して入力電圧の電圧値が高電圧である場合に比して低電圧である場合に、低い電圧値に切り替える基準電圧器と、電圧比較器による比較結果に応じて、発振周波数を、所定電圧値に対して入力電圧の電圧値が高電圧である場合に比して低電圧である場合に低い周波数に切り替える発振器とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング制御で動作するDC/DCコンバータに関するものであり、特に、低入力電圧時の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているスイッチング電源は、入力電圧を所定の電圧に変換するトランスと、所定の発振周波数で発振動作する発振器と、トランスの一次巻線TN1に接続されたスイッチング素子と、発振器の発振周波数出力を入力し、この発振周波数をスイッチング素子の駆動周波数とするとともに、出力電圧検出信号に基づいて出力電圧を一定値に制御する制御回路を有している。このスイッチング電源では、入力電圧に応じて発振器の発振周波数を可変に制御する。具体的には、入力電圧が小さいとする検出信号が入力されると、発振インピーダンスを大きい方向に可変させて、発振器の発振周波数を低くさせる。これにより、スイッチング素子の動作周波数を低く制御でき、スイッチング損失を低減するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2000−166231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に例示される一般的なスイッチング電源では、一定の発振周波数でスイッチング素子の導通期間が制御される。いわゆるパルス幅変調(以下、PWM(Pulse Width Modulation)と記す)制御が行われる。発振周波数の1周期におけるスイッチング素子の導通期間の時間割合はオンデューティと称される。オンデューティは、入力電圧、出力電圧、トランスまたはインダクタといったインダクタンス素子等の各種回路パラメータにより決定される。一般的に入力電圧が低電圧になるほど、オンデューティは大きな値とする必要がある。低電圧の入力電圧から同じ電力を出力側に供給するためには、スイッチング素子を導通する期間を長くする必要があるからである。
【0005】
入力電圧の低電圧化に伴いオンデューティが増大するところ、更に発振周波数を低周波数化することにより一周期は長くなる。このため、一周期においてインダクタンス素子にエネルギーが蓄積される実時間は長くなってしまい、インダクタンス素子の磁束密度が増大する。
【0006】
このため、入力電圧の低電圧範囲においてインダクタンス素子のコアが磁気飽和することを防止する必要性から、インダクタンス素子のコアサイズは、通常動作範囲で必要とされるコアサイズより更に余裕をもったサイズとすることが必要となる。つまり、通常動作範囲で必要とされるインダクタンス素子に比して大きな体格を有するインダクタンス素子を備える必要がある。インダクタンス素子の体格に制約がある場合には、入力電圧の低電圧側の動作範囲が制約されることとなる。
【0007】
以上のように、特許文献1のスイッチング電源では、回路の体格が大きなものとなってしまうか、あるいは入力電圧の低電圧側の動作範囲に制約を受けてしまうおそれがあり問題である。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、インダクタンス素子の体格の増大も入力電圧の低電圧側の動作範囲の制約もなく入力電圧の低電圧側の動作範囲を拡張することが可能なDC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るDC/DCコンバータは、所定周波数でスイッチング素子を制御することにより出力電圧を基準電圧に応じた電圧値に維持するものであり、DC/DCコンバータに入力される入力電圧の電圧値と所定電圧値とを比較する電圧比較器と、入力電圧の電圧値が前記所定電圧値より高い場合、第1の基準電圧を出力すると共に入力電圧の電圧値が前記所定電圧値より低い場合、第1の基準電圧より低い電圧の第2の基準電圧を出力する基準電圧器と、入力電圧の電圧値が所定電圧値より高い場合、第1の周波数を出力すると共に入力電圧の電圧値が所定電圧値より低い場合、第1の周波数より低い周波数の第2の周波数を出力する発振器と、出力電圧を基準電圧部から出力される基準電圧に維持するように発振器から出力される周波数でスイッチング素子を制御する制御部とを備えている。
【0010】
本発明に係るDC/DCコンバータでは、電圧比較器が入力電圧の電圧値をモニタして所定電圧値との電圧値の大小関係を比較する。電圧比較器による比較結果の大小関係に応じて、基準電圧器が基準電圧の電圧値を切り替え、発振器が発振周波数を切り替える。具体的には、所定電圧値に対して入力電圧の電圧値が高電圧である場合には、基準電圧を第1の基準電圧にし、発振周波数を第1の周波数にする。所定電圧値に対して入力電圧の電圧値が低電圧である場合には、基準電圧を第1の基準電圧より低い電圧の第2の基準電圧にし、発振周波数を第2の周波数にする。
【0011】
これにより、インダクタンス素子の体格増大も入力電圧の低電圧側の動作範囲の制約もなく入力電圧の低電圧側の動作範囲を拡張することができる。
【0012】
また、上記本発明に係るDC/DCコンバータにおいては、所定電圧値は、入力電圧の電圧値が所定電圧値と等しい場合、第1の周波数における最大のオンデューティでスイッチング素子を制御すると出力電圧として第1の基準電圧より低い値を出力するような値である。
【0013】
これにより、入力電圧が所定電圧値である場合は、出力側が要求している電力を供給できない状態であることがわかり、DC/DCコンバータが電力供給の限界にある状態を検出することができる。
【0014】
また、上記本発明に係るDC/DCコンバータにおいては、第1の基準電圧と第1の周波数の周期との積は、第2の基準電圧と第2の周波数の周期との積と同じであることが好ましい。
【0015】
磁束密度は出力電圧と発振周期との積に比例した特性を有しているため、第2の基準電圧を出力電圧として出力するときの磁束密度を第1の基準電圧を出力電圧として出力するときの磁束密度と同じにすることができる。この磁束密度を最大磁束密度に設定してやれば、小型のトランスを効率よく使用して動作を行なわせることができる。
【0016】
また、上記本発明に係るDC/DCコンバータにおいては、電圧比較器は、電圧値の異なる複数の所定電圧値ごとに備えられ、複数の所定電圧値ごとに入力電圧の電圧値と比較を行い、DC/DCコンバータに入力される入力電圧の電圧値と所定電圧値より低い電圧値の第2の所定電圧値とを比較する第2の電圧比較器を有し、基準電圧器は、入力電圧の電圧値が第2の所定電圧値より低い場合、第2の基準電圧より低い電圧の第3の基準電圧を出力し、発振器は、入力電圧の電圧値が第2の所定電圧値より低い場合、第2の周波数より低い周波数の第3の周波数を出力することが好ましい。
【0017】
これにより、入力電圧の低減に従って、基準電圧および発振周波数を段階的に切り替えることができる。多段階に切り替えることにより、入力電圧の低電圧側の動作範囲を拡張することができる。また、出力電圧の電圧値および発振周波数を段階的に低減させることができる。切り替え前後の動作条件で、出力電圧および発振周波数の急激な変化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のDC/DCコンバータによれば、インダクタンス素子の体格の増大も入力電圧の低電圧側の動作範囲の制約もなく入力電圧の低電圧側の動作範囲を拡張することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に示す第1実施形態のDC/DCコンバータの回路ブロック図について、回路構成を以下に示す。第1実施形態のDC/DCコンバータは、一次巻線TN1と二次巻線TN2とを有するトランスTと、一次側回路と、二次側回路とを備えている。
一次側回路は、一次巻線TN1、電源コンデンサCI、およびブリッジ回路とを備えている。電源コンデンサCIは、入力端子VINの両端子間に接続されている。ブリッジ回路は、4つのスイッチングトランジスタT1乃至T4からなり、スイッチングトランジスタT1乃至T4としてMOSFETが使用されている。スイッチングトランジスタT1は、ドレインが入力端子VINのプラス端子に接続され、ソースがスイッチングトランジスタT2のドレインに接続されている。スイッチングトランジスタT2のソースは入力端子VINのマイナス端子に接続され、スイッチングトランジスタT1のソースとスイッチングトランジスタT2のドレインとの中点がトランスTの一次巻線TN1の一方の端子に接続されている。スイッチングトランジスタT3は、ドレインが入力端子VINのプラス端子に接続され、ソースがスイッチングトランジスタT4のドレインに接続されている。スイッチングトランジスタT4のソースは入力端子VINのマイナス端子に接続され、スイッチングトランジスタT3のソースとスイッチングトランジスタT4のドレインとの中点がトランスTの一次巻線TN1の他方の端子に接続されている。すなわち、ブリッジ回路はHブリッジ回路を構成する。
【0020】
二次側回路は、二次巻線TN2、ダイオードD1、ダイオードD2、容量素子C1、容量素子C2、チョークコイルL1、および平滑コンデンサCOを備えている。
二次巻線TN2は、センタータップと巻線両端のタップの3端子を備えている。二次巻線TN2のセンタータップは、DC/DCコンバータが収納されている筐体などの接地電位に接続されている。二次巻線TN2の巻線両端のタップのうち一方のタップは、ダイオードD1のアノード端子が接続されている。ダイオードD1のアノード・カソード間には、容量素子C1が並列に接続されている。また、二次巻線TN2の巻線両端のタップのうち他方のタップは、ダイオードD2のアノード端子が接続されている。ダイオードD2のアノード・カソード間には、容量素子C2が並列に接続されている。ダイオードD1、D2のカソード端子は互いに接続されている。
【0021】
互いに接続されたダイオードD1、D2のカソード端子は、チョークコイルL1の一端に接続されている。チョークコイルL1の他端は、出力端子VOUTに接続されている。出力端子VOUTと基準端子との間には平滑コンデンサCOが接続されている。出力端子VOUTの基準端子は、接地電位である。
【0022】
尚、トランスTは、一次巻線TN1と二次巻線TN2とで巻線方向が同一方向である。第1実施形態のDC/DCコンバータはフォワードコンバータを構成する。
【0023】
電圧比較器1は、一方の入力端子が入力端子VINに接続され、他方の入力端子が所定電圧値VBを出力する所定電圧源2に接続されている。電圧比較器1の出力端子は、発振器3および基準電圧器4に接続されている。
【0024】
発振器3は、電圧比較器1からの出力に基づいて出力する発振周波数を決める。本実施の形態では、図2に示すように入力電圧VINの電圧値が所定電圧値VBより大きいときは第1の周波数flの発振信号fOSCを出力し、入力電圧VINの電圧値が所定電圧値VB以下のときは第2の周波数f2の発振信号fOSCを出力する。
【0025】
基準電圧器4は、電圧比較器1からの出力に基づいて出力する基準電圧Vrefを決める。本実施の形態では、入力電圧VINの電圧値が所定電圧値のVBより大きいときは第1の電圧値VO1の基準電圧Vrefを出力し、入力電圧VINの電圧値が所定電圧値VB以下のときは第2の電圧値VO2の基準電圧Vrefを出力する。
【0026】
制御部としてのコントローラ5は、発振器3から出力される発振信号fOSC,基準電圧器4から出力される基準電圧Vref,出力端子VOUTに繋がる出力電圧線から図示しない絶縁素子を介して出力される出力電圧VOUTに基づいてスイッチングトランジスタT1乃至T4をスイッチング制御する信号を生成する。具体的には、トランスTの磁束が発振信号fOSCの1周期ごとにリセットされるとともに出力電圧VOUTが基準電圧VrefとなるようにスイッチングトランジスタT1乃至T4のオンデューティ(発振周波数の1周期においてスイッチングトランジスタがオンしている期間の時間割合)を決定する。本実施形態では、発振信号fOSCの1周期でスイッチングトランジスタT1、T4がオン(このときスイッチングトランジスタT2、T3はオフ)した後、スイッチングトランジスタT1、T4がオンした時間と同じ時間だけスイッチングトランジスタT2、T3をオン(このときスイッチングトランジスタT1、T4はオフ)することでインダクタンス素子の磁束を発振信号fOSCの1周期ごとにリセットする。
【0027】
次に動作について図1〜図3を使って説明する。
図3は、入力電圧VINに対する出力電圧VOUTの特性を示す図である。
【0028】
入力電圧VINが電圧値VA以上の場合、発振器3は、第1の周波数f1の発振信号fOSCをコントローラ5に出力し、基準電圧器4は、第1の電圧値VO1の基準電圧Vrefをコントローラ5に出力する。
コントローラ5は、第1の周波数f1の1周期で出力電圧VOUTが第1の電圧値VO1となるようにスイッチングトランジスタT1乃至T4のオンデューティを決定し、スイッチングトランジスタT1乃至T4を制御する。
【0029】
入力電圧VINが電圧値VAになると、スイッチングトランジスタT1乃至T4は、スイッチングトランジスタT1、T2およびスイッチングトランジスタT3、T4に短絡電流が流れないように設けられるデッドタイム(スイッチングトランジスタT1乃至T4が全てオフの時間)を除いてスイッチングトランジスタT1、T4またはスイッチングトランジスタT2、T3のどちらかがオンしている状態となる。つまり、電圧値VAは、第1の周波数flにおける最大のオンデューティでスイッチングトランジスタT1乃至T4を制御したとき、出力電圧VOUTが第1の電圧値VO1となるような値である。
【0030】
入力電圧VINが電圧値VAを下回ると、出力電圧VOUTの電圧値は入力電圧VINの低減に伴い第1の電圧値VO1から低下していく。
【0031】
入力電圧VINが電圧値VAである場合、第1の周波数f1における最大のオンデューティでスイッチングトランジスタT1乃至T4を制御して第1の電圧値VO1を出力する状態であり、入力電圧VINが電圧値VAより低減した場合、第1の電圧値VO1を出力するためには電圧値VAの場合より更にスイッチングトランジスタT1乃至T4のオン時間を長くする必要がある。しかしながら、発振器3からは第1の周波数f1の発振信号fOSCが出力されているため、これ以上オン時間を長くすることはできない。したがって、入力電圧VINの電圧値の低減に従って出力電圧VOUTの電圧値は低下する。
【0032】
入力電圧VINが所定電圧値VBになると、電圧比較器1の出力が反転する。これにより、発振器3から出力される発振信号fOSCの発振周波数は第1周波数f1から第1周波数f1より低い第2周波数f2に切り替えられ、基準電圧器4から出力される基準電圧Vrefの電圧値は第1の電圧値VO1から第1の電圧値VO1より低い第2の電圧値VO2に切り替えられる。
【0033】
なお、所定電圧値VBは、第1の周波数flにおける最大のオンデューティでスイッチングトランジスタT1乃至T4を制御したときに出力電圧VOUTが第2の電圧値VO2となるような値である。
【0034】
これにより、第2の周波数f2に切り替えられて周期が長くなると共に、基準電圧Vrefの電圧値がより低い電圧値に切り替えられるため、オンデューティは最大ではなくなる。
【0035】
以降、入力電圧VINが所定電圧値VBより小さくなると、発振器3は、第2の周波数f2の発振信号fOSCをコントローラ5に出力し、基準電圧器4は、第2の電圧値VO2の基準電圧Vrefをコントローラ5に出力する。
【0036】
したがって、コントローラ5は、入力電圧VINが電圧値VB以下のときは出力電圧VOUTが第2の電圧値VO2となるようにスイッチングトランジスタT1乃至T4のオンデューティを決定する。
【0037】
入力電圧VINが更に低減し電圧値VCに至ると、スイッチングトランジスタT1乃至T4は、スイッチングトランジスタT1、T2およびスイッチングトランジスタT3、T4に短絡電流が流れないように設けられるデッドタイム(スイッチングトランジスタT1乃至T4が全てオフの時間)を除いてスイッチングトランジスタT1、T4またはスイッチングトランジスタT2、T3のどちらかがオンしている状態となる。つまり、電圧値VCは、第2の周波数f2における最大のオンデューティでスイッチングトランジスタT1乃至T4を制御したとき、出力電圧VOUTが第2の電圧値VO2となるような値である。
【0038】
そして、入力電圧VINが電圧値VCを下回ると、出力電圧VOUTの電圧値は入力電圧VINの低減に伴い第2の電圧値VO2から低下していく。
入力電圧VINが電圧値VCである場合、第2の周波数f2における最大のオンデューティでスイッチングトランジスタT1乃至T4を制御して第2の電圧値VO2を出力する状態であり、入力電圧VINが電圧値VCより低減した場合、第2の電圧値VO2を出力するためには電圧値VCの場合より更にスイッチングトランジスタT1乃至T4のオン時間を長くする必要がある。しかしながら、発振器3からは第2の周波数f2の発振信号fOSCが出力されているため、これ以上オン時間を長くすることはできない。したがって、入力電圧VINの電圧値の低減に従って出力電圧VOUTの電圧値は低下する。
【0039】
図4には、入力電圧VINとトランスTのコアにおける磁束密度との関係を示す。通常の回路構成においては、最小の回路構成で最大の回路動作を確保するために、トランスTのコアを貫く磁束密度は最大値に近い状態で回路動作が行われるように設計することが通常である。従って、入力電圧VINの電圧値が電圧値VA以上の領域では、磁束密度が最大値となる条件で動作する。
【0040】
入力電圧VINの電圧値がVAを下回り所定電圧値VBに至る領域では、出力電圧VOUTが下がるのに発振周波数は変化しないため、磁束密度は低下する。
【0041】
ここで、磁束密度Bは、
B=(出力電圧VOUT)×(発振周期)/{2×(コア断面積)×(二次巻線数)×(効率η)}で決定されることが知られている。
【0042】
入力電圧VINの電圧値VB−VCの領域では、発振信号fOSCの発振周波数を第1の周波数f1から第1の周波数f1の周波数より低い周波数の第2の周波数にし、基準電圧Vrefを第1の電圧値VO1から第1の電圧値VO1より低い電圧値の第2の電圧値VO2にした状態である。ここで、第2の周波数と第2の電圧値VO2は、第2の周波数の周期と第2の電圧値VO2との積と、第1の周波数の周期と第1の電圧値VO1との積とが同じになるような値に設定されている。これにより、磁束密度Bを一定とすることができ、入力電圧VINの電圧値VB−VCの領域でも磁束密度を最大とすることができる。
【0043】
以上のように、VIN≧VAの領域に加えて、VC≦VIN≦VBの領域においても、最大の磁束密度で動作をさせることができる。
【0044】
なお、入力電圧VINの電圧値VC以下の領域は、電圧値VA−VBの領域と同様である。
【0045】
図5に示す第2実施形態は、第1実施形態として説明した入力電圧VINの低電圧領域での制御を2段階に行う場合を示している。第1実施形態の回路ブロック図(図1)と同様な構成については記載を省略している。
【0046】
第2実施形態では、入力電圧VINの電圧値が、所定電圧値VBの場合に加えて、所定電圧値VBより低電圧である所定電圧値VDにおいて制御される。
【0047】
所定電圧値VBを出力する所定電圧源2、および入力電圧VINの電圧値を所定電圧値VBと比較する電圧比較器1は、第1実施形態の場合と同様である。第2実施形態では、更に、所定電圧値VDを出力する所定電圧源21、および入力電圧VINの電圧値を所定電圧値VDと比較する電圧比較器11を備えている。ここで、所定電圧値VDは所定電圧値VBより低電圧の電圧値である。
【0048】
電圧比較器1、11の出力端子が、各々、発振器31および基準電圧器41に接続され比較結果が入力される。図6に示すように、この比較結果に応じて、発振信号fOSCの発振周波数および基準電圧Vrefの電圧値が、順次低減する。すなわち、入力電圧VINの電圧値が所定電圧値VBを下回る領域、および所定電圧値VDを下回る領域で、発振信号fOSCの発振周波数および基準電圧Vrefの電圧値が、ステップ状に低減される。
【0049】
図7は入力電圧VINに対する出力電圧VOUTの入出力応答を示す特性図である。第1実施形態(図3)の特性と同様の特性である。第2実施形態では、入力電圧VINの低減に伴い、所定電圧値VBとさらに低電圧である所定電圧値VDの2段階において、ステップ状に出力電圧VOUTが低減する。同時に発振周波数も低減する。これにより、入力電圧VINの電圧値が電圧値VA以上の領域、電圧値VC〜VBの領域、電圧値VE〜VDの領域で、その領域ごとに設定されている基準電圧Vrefに応じた電圧値に維持される特性を有する。
【0050】
以上、説明したように、本発明の第1実施形態によれば、電圧比較器1が入力電圧VINの電圧値をモニタして所定電圧値VBとの電圧値の大小関係を比較する。所定電圧値VBに対して入力電圧VINの電圧値が高電圧である場合には、基準電圧Vrefを高い電圧値に切り替え、発振信号fOSCの発振周波数を高い周波数に切り替える。所定電圧値VBに対して入力電圧VINの電圧値が低電圧である場合には、基準電圧をVref低い電圧値に切り替え、発振信号fOSCの発振周波数を低い周波数に切り替える。
【0051】
これにより、入力電圧VINの電圧値が低下してオンデューティが増大した場合に、基準電圧Vrefと発振周波数とが低減されるため、広い入力電圧範囲でインダクタンス素子のコアが磁気飽和することなく、最大のオンデューティに至る入力電圧VINの電圧値を十分に低い電圧値にすることができるため、入力電圧の低電圧側の動作範囲を拡張することができる。
【0052】
また、所定電圧値VBは、入力電圧VINが所定電圧値VBと等しい場合、第1の周波数f1における最大のオンデューティでスイッチングトランジスタT1乃至T4を制御すると出力電圧VOUTとして第2の電圧値VO2を出力するような値であるため、入力電圧VINが所定電圧値VBと等しいと出力側が要求している電力を供給できない状態であることがわかる。したがって、DC/DCコンバータが電力供給の限界にある状態を検出することができ、この検出に応じて基準電圧Vrefと発振周波数を低減することができる。
【0053】
また、第2の周波数と第2の電圧値VO2は、第2の周波数の周期と第2の電圧値VO2との積と、第1の周波数の周期と第1の電圧値VO1との積とが同じになるように設定されている。よって、磁束密度は出力電圧VOUTと発振周期との積に比例した特性を有しているため、第2の電圧値VO2を出力電圧VOUTとして出力するときの磁束密度を第1の電圧値VO1を出力電圧VOUTとして出力するときの磁束密度と同じにすることができる。
【0054】
また、本発明の第2実施形態によれば、電圧比較器1、11が2つ備えられており、各々、異なる所定電圧値VB、VDと入力電圧VINとの電圧値を比較する。これにより、VB>VDの関係があるので、入力電圧VINは2段階に電圧比較されることとなる。入力電圧VINの低減に従って、2段階に基準電圧Vrefおよび発振周波数を切り替えることができる。2段階に切り替えることにより、より広い入力電圧範囲で出力電圧VOUTの制御を行うことができる。また、入力電圧VINの低減に応じた出力電圧VOUTの遷移を緩やかなものにすることができる。また、出力電圧VOUTの電圧値および発振周波数を段階的に低減させることができる。切り替え前後の動作条件で、出力電圧VOUTおよび発振周波数の急激な変化を抑制することができる。
【0055】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
【0056】
上記実施形態のDC/DCコンバータの入力端子VINとトランスTの一次巻線TN1との間に設けられる回路は、スイッチングトランジスタT1乃至T4からなるブリッジ構成であるが、トランスTの一次巻線TN1に交流を発生させる構成であればどのような構成でもよい。
例えば、第2実施形態では、入力電圧VINを低電圧化に伴い2段階に電圧比較する場合を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。3段階以上の多段階での制御が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態の回路ブロック図である。
【図2】第1実施形態の入力電圧に対して基準電圧および発振周波数の切り替え特性を示す図である。
【図3】第1実施形態の入力電圧に対する出力電圧の特性を示す図である。
【図4】第1実施形態の入力電圧に対するトランスのコアの磁束密度の特性を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態の回路ブロック図(要部)である。
【図6】第2実施形態の入力電圧に対して基準電圧および発振周波数の切り替え特性を示す図である。
【図7】第2実施形態の入力電圧に対する出力電圧の特性を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1、11 電圧比較器
2、21 所定電圧源
3、31 発振器
4、41 基準電圧器
5 コントローラ
T トランス
VIN 入力端子
VOUT 出力端子
fOSC 発振信号
Vref 基準電圧
VB、VD 所定電圧値




【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数でスイッチング素子を制御することにより出力電圧を基準電圧に応じた電圧値に維持するDC/DCコンバータであって、
前記DC/DCコンバータに入力される入力電圧の電圧値と所定電圧値とを比較する電圧比較器と、
前記入力電圧の電圧値が前記所定電圧値より高い場合、第1の基準電圧を出力すると共に前記入力電圧の電圧値が前記所定電圧値より低い場合、前記第1の基準電圧より低い電圧の第2の基準電圧を出力する基準電圧器と、
前記入力電圧の電圧値が前記所定電圧値より高い場合、第1の周波数を出力すると共に前記入力電圧の電圧値が前記所定電圧値より低い場合、前記第1の周波数より低い周波数の第2の周波数を出力する発振器と、
前記出力電圧を前記基準電圧部から出力される基準電圧に維持するように前記発振器から出力される周波数でスイッチング素子を制御する制御部とを備えることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記所定電圧値は、前記入力電圧の電圧値が前記所定電圧値と等しい場合、前記第1の周波数における最大のオンデューティで前記スイッチング素子を制御すると前記出力電圧として前記第1の基準電圧より低い値を出力するような値であることを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記第1の基準電圧と前記第1の周波数の周期との積は、前記第2の基準電圧と前記第2の周波数の周期との積と同じであることを特徴とする請求項1または2に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記電圧比較器は、電圧値の異なる複数の所定電圧値ごとに備えられ、前記複数の所定電圧値ごとに前記入力電圧の電圧値と比較を行い、
前記DC/DCコンバータに入力される入力電圧の電圧値と前記所定電圧値より低い電圧値の第2の所定電圧値とを比較する第2の電圧比較器を有し、
前記基準電圧器は、前記入力電圧の電圧値が前記第2の所定電圧値より低い場合、前記第2の基準電圧より低い電圧の第3の基準電圧を出力し、
前記発振器は、前記入力電圧の電圧値が前記第2の所定電圧値より低い場合、前記第2の周波数より低い周波数の第3の周波数を出力することを特徴とする請求項1乃至3の少なくとも何れか1項に記載のDC/DCコンバータ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−232662(P2009−232662A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78665(P2008−78665)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】