DNAメチル化測定方法
【課題】メチル化DNAの含量の測定方法の提供。
【解決手段】試料から一本鎖DNA:Aと一本鎖固定化オリゴヌクレオチドBとを結合させAを選択して二本鎖Cを形成させ、Cをメチル化感受性制限酵素で消化後、生成した遊離消化物を除去し、未消化物であるCを一本鎖状態に分離し、生成した遊離一本鎖DNAとBとを結合させて一本鎖DNAを選択し、選択した遊離一本鎖DNAを鋳型としBをプライマー:PRとしてBを1回伸長させて形成した二本鎖Dを一本鎖に一旦分離し、生成した一本鎖DNA(正鎖)とBとを結合させて一本鎖DNAを選択し、一本鎖DNAを鋳型としBをPRとしてBを1回伸長させて二本鎖として形成させ、生成した一本鎖DNA(負鎖):Eを鋳型とし特定PR:FをPRとしてFを1回伸長させてEを二本鎖として形成させ、さらに伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離後、繰返して増幅・定量する。
【解決手段】試料から一本鎖DNA:Aと一本鎖固定化オリゴヌクレオチドBとを結合させAを選択して二本鎖Cを形成させ、Cをメチル化感受性制限酵素で消化後、生成した遊離消化物を除去し、未消化物であるCを一本鎖状態に分離し、生成した遊離一本鎖DNAとBとを結合させて一本鎖DNAを選択し、選択した遊離一本鎖DNAを鋳型としBをプライマー:PRとしてBを1回伸長させて形成した二本鎖Dを一本鎖に一旦分離し、生成した一本鎖DNA(正鎖)とBとを結合させて一本鎖DNAを選択し、一本鎖DNAを鋳型としBをPRとしてBを1回伸長させて二本鎖として形成させ、生成した一本鎖DNA(負鎖):Eを鋳型とし特定PR:FをPRとしてFを1回伸長させてEを二本鎖として形成させ、さらに伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離後、繰返して増幅・定量する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるDNAのメチル化状態を評価するための方法としては、例えば、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法が存在している(例えば、非特許文献1及び2参照)。
当該測定方法では、まず、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、目的とするDNA領域を含むDNAを抽出する必要がある。当該抽出方法としては、例えば、ゲル濾過、シリカ担体、有機溶媒等による抽出方法等が知られているが、いずれの抽出方法も操作が煩雑である。
次いで、抽出されたDNAの目的領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法としては、例えば、(1)亜硫酸塩等を用いて当該DNAを修飾した後、DNAポリメラーゼによるDNA合成の連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;以下、PCRと記すこともある。)に供することにより目的領域を増幅する方法、(2)メチル化感受性制限酵素を用いて当該DNAを消化した後、PCRに供することにより、目的領域を増幅する方法等を挙げることができる。
【0003】
【非特許文献1】Clark SJ, Harrison J, Paul CL, Frommer M., High sensitivity mapping of methylated cytosines. Nucleic Acids Res. 1994 Aug 11;22(15):2990-7.
【非特許文献2】Ushijima T, Morimura K, Hosoya Y, Okonogi H, Tatematsu M, Sugimura T, Nagao M., Establishment of methylation-sensitive- representational difference analysis and isolation of hypo- and hypermethylated genomic fragments in mouse liver tumors.Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Mar 18;94(6):2284-9.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のいずれの方法とも、PCRに供するまでの操作(具体的には例えば、メチル化検出のためのDNAの修飾及びその後の生成物の精製等)に非常に時間と労力とを要し、さらに、PCRが増幅しようとする目的領域のDNAの塩基配列に対して相補的な1組のオリゴヌクレオチドプライマー(以下、プライマー対と記すこともある。)を用いて液相中にて行われるために、増幅されたDNA断片を精製した後、これをPCRのための反応容器へ移し換える操作、また目的領域を増幅させるための前記のプライマー対を含む反応試薬を反応系に添加するための操作等も必要である。更に、増幅しようとする目的領域のDNAの増幅を確認するために、電気泳動等の分析操作に供する必要もあり、しかもその操作は極めて繁雑である。
このように、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定するための一連の操作には、多大な手間が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる状況下鋭意検討した結果、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法であって、
(1)生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の一本鎖DNAを選択し、選択された一本鎖DNAと前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成させる第一工程、
(2)第一工程で結合形成させた二本鎖DNAを少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理した後、生成した遊離の消化物(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA)を除去する第二工程、及び、
(3)下記の各本工程の前工程として、第二工程で得られた未消化物である結合形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない結合形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(第一前工程)と、
生成した遊離の一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の生成した遊離の一本鎖状態であるDNAを選択し、選択された一本鎖DNAと前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成させる工程(第二(A)前工程)と、
当該工程(第二(A)前工程)で結合形成された二本鎖DNAを、前記の選択された一本鎖DNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の選択された一本鎖DNAを伸長形成された二本鎖DNAとする工程(第二(B)前工程)と
を有する工程(第二前工程)と、
第二前工程で伸長形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を、一本鎖状態であるDNA(正鎖)と一本鎖状態であるDNA(負鎖)に一旦分離する工程(第三前工程)とを有し、且つ、本工程として
(a)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第A1工程と、第A1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第A2工程とを有する第A工程(本工程)と、
(b)生成した一本鎖状態であるDNA(負鎖)を鋳型として、前記の一本鎖状態であるDNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’末端よりさらに3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有し、且つ、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドを鋳型とする伸長反応に利用できない伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、当該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第B工程(本工程)とを有し、
さらに第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すことにより、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第三工程、
を有することを特徴とする方法(以下、本発明測定方法と記すこともある。);
2.第一工程において、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させる際に、二価陽イオンを含有する反応系中で結合させることを特徴とする前項1記載の方法。
3.二価陽イオンがマグネシウムイオンであることを特徴とする前項2記載の方法。
4.前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の第一前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程);
5.前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の第一前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第二工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法(以下、本発明メチル化割合測定方法と記すこともある。)
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程);
6.前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の第三前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程);
7.前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の第三前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第二工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程);
8.前項1〜7のいずれかの前項記載の方法の工程として、下記の2つの工程をさらに追加的に有することを特徴とするメチル化割合の測定方法。
(4)前項1〜7のいずれかの前項記載の方法の第一工程を行った後、前項1〜8のいずれかの前項記載の方法の第二工程を行うことなく、前項1〜7のいずれかの項記載の方法における第三工程を行うことにより、前記の目的とするDNA領域のDNA(メチル化されたDNA及びメチルされていないDNAの総量)を検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第四工程、及び、
(5)前項1〜7のいずれかの前項記載の第三工程により定量されたDNAの量と、第四工程により定量されたDNAの量とを比較することにより得られる差異に基づき前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの割合を算出する第五工程;
9.生物由来検体が、哺乳動物の血清又は血漿であることを特徴とする前項1〜8のいずれかの前項記載の方法;
10.生物由来検体が、哺乳動物の血液又は体液であることを特徴とする前項1〜8のいずれかの前項記載の方法;
11.生物由来検体が、細胞溶解液又は組織溶解液であることを特徴とする前項1〜8のいずれかの前項記載の方法;
12.生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、当該ゲノムDNAが有する目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA試料であることを特徴とする前項1〜11のいずれかの前項記載の方法;
13.生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理されてなるDNA試料であることを特徴とする前項1〜12のいずれかの前項記載の方法;
14.生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、予め精製されてなるDNA試料であることを特徴とする前項1〜13のいずれかの前項記載の方法;
15.少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素が、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域の中に認識切断部位を有する制限酵素であることを特徴とする前項1〜12のいずれかの前項記載の方法;
16.少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素が、メチル化感受性制限酵素であるHpaII又はHhaIであることを特徴とする前項1〜14のいずれかの前項記載の方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を簡便に測定する方法等を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明における「生物由来検体」としては、例えば、細胞溶解液、組織溶解液(ここでの組織とは、血液、リンパ節等を含む広義の意味である。)若しくは、哺乳動物においては、血漿、血清、リンパ液等の体液、体分泌物(尿や乳汁等)等の生体試料及びこれら生体試料から抽出して得られたゲノムDNAをあげることができる。また当該生物由来検体としては、例えば、微生物、ウイルス等由来の試料もあげられ、この場合には、本発明測定方法における「ゲノムDNA」とは、微生物、ウイルスのゲノムDNAを意味するものである。
哺乳動物由来の検体が血液である場合には、定期健康診断や簡便な検査等での本発明測定方法の利用が期待できる。
ゲノムDNAを哺乳動物由来の検体から得るには、例えば、市販のDNA抽出用キット等を用いてDNAを抽出すればよい。
因みに、血液を検体として用いる場合には、血液から通常の方法に準じて血漿又は血清を調製し、調製された血漿又は血清を検体として、その中に含まれる遊離DNA(胃癌細胞等の癌細胞由来のDNAが含まれる)を分析すると、血球由来のDNAを避けて胃癌細胞等の癌細胞由来のDNAを解析することができ、胃癌細胞等の癌細胞、それを含む組織等を検出する感度を向上させることができる。
【0008】
本発明における「メチル化されたDNA」とは、下記のようなDNAを意味するものである。通常、遺伝子(ゲノムDNA)を構成する塩基は4種類である。これらの塩基のうち、シトシンのみがメチル化されるという現象が知られており、このようなDNAのメチル化修飾は、5’−CG−3’で示される塩基配列(Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表す。以下、当該塩基配列を「CpG」と記すこともある。)中のシトシンに限られている。シトシンにおいてメチル化される部位は、その5位である。細胞分裂に先立つDNA複製に際して、複製直後は鋳型鎖の「CpG」中のシトシンのみがメチル化された状態となるが、メチル基転移酵素の働きにより即座に新生鎖の「CpG」中のシトシンもメチル化される。従って、DNAのメチル化の状態は、DNA複製後も、新しい2組のDNAにそのまま引き継がれることになる。このようなメチル化修飾により生じたDNAを意味するものである。
本発明における「CpG対」とは、CpGで示される塩基配列と、これに相補するCpGが結合してなる二本鎖オリゴヌクレオチドを意味するものである。
【0009】
本発明における「目的とするDNA領域」(以下、目的領域と記すこともある。)は、当該領域に含まれるシトシンのメチル化有無を調べたいDNA領域であって、少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素の認識部位を有するものであり、例えば、Lysyl oxidase、HRAS-like suppressor、bA305P22.2.1、Gamma filamin、HAND1、Homologue of RIKEN 2210016F16、FLJ32130、PPARG angiopoietin-related protein、Thrombomodulin、p53-responsive gene 2、Fibrillin2、Neurofilament3、disintegrin and metalloproteinase domain 23、G protein-coupled receptor 7、G-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor、Solute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2等の有用タンパク質遺伝子のプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列中のシトシンを含むDNAの領域等を挙げることができる。
【0010】
具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子がLysyl oxidase遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のLysyl oxidase遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号1で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF270645に記載される塩基配列の塩基番号16001〜18661で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号1で示される塩基配列においては、ヒト由来のLysyl oxidaseタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2031〜2033に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号1957〜2661に示されている。配列番号1で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号1で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号1で示される塩基配列において、塩基番号1539、1560、1574、1600、1623、1635、1644、1654、1661、1682、1686、1696、1717、1767、1774、1783、1785、1787、1795等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0011】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子がHRAS-like suppressor遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHRAS-like suppressor遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号2で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC068162に記載される塩基配列の塩基番号172001〜173953で示される塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号2で示される塩基配列においては、ヒト由来のHRAS-like suppressor遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1743〜1953に示されている。配列番号2で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号2で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号2で示される塩基配列において、塩基番号1316、1341、1357、1359、1362、1374、1390、1399、1405、1409、1414、1416、1422、1428、1434、1449、1451、1454、1463、1469、1477、1479、1483、1488、1492、1494、1496、1498、1504、1510、1513、1518、1520等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0012】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、bA305P22.2.1遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のbA305P22.2.1遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号3で示される塩基配列(Genbank Accession No.AL121673に記載される塩基配列の塩基番号13001〜13889で示される塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号3で示される塩基配列においては、ヒト由来のbA305P22.2.1タンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号849〜851に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号663〜889に示されている。配列番号3で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号3で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号3で示される塩基配列において、塩基番号329、335、337、351、363、373、405、424、427、446、465、472、486等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0013】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Gamma filamin遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のGamma filamin遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号4で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC074373に記載される塩基配列の塩基番号63528〜64390で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号4で示される塩基配列においては、ヒト由来のGamma filaminタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号572〜574に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号463〜863に示されている。配列番号4で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号4で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号4で示される塩基配列において、塩基番号329、333、337、350、353、360、363、370、379、382、384、409、414、419、426、432、434、445、449、459、472、474、486、490、503、505等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0014】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、HAND1遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHAND1遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号5で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC026688に記載される塩基配列の塩基番号24303〜26500で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号5で示される塩基配列においては、ヒト由来のHAND1タンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号1656〜1658に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号1400〜2198に示されている。配列番号5で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号5で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号5で示される塩基配列において、塩基番号1153、1160、1178、1187、1193、1218、1232、1266、1272、1292、1305、1307、1316、1356、1377、1399、1401、1422、1434等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0015】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Homologue of RIKEN 2210016F16遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHomologue of RIKEN 2210016F16遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号6で示される塩基配列(Genbank Accession No.AL354733に記載される塩基配列の塩基番号157056〜159000で示される塩基配列の相補的塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号6で示される塩基配列においては、ヒト由来のHomologue of RIKEN 2210016F16タンパク質のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1392〜1945に示されている。配列番号6で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号6で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号6で示される塩基配列において、塩基番号1172、1175、1180、1183、1189、1204、1209、1267、1271、1278、1281、1313、1319、1332、1334、1338、1346、1352、1358、1366、1378、1392、1402、1433、1436、1438等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0016】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、FLJ32130遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のFLJ32130遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号7で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC002310に記載される塩基配列の塩基番号1〜2379で示される塩基配列の相補的塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号7で示される塩基配列においては、ヒト由来のFLJ32130タンパク質のアミノ酸末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2136〜2138に示されており、上記エクソン1と考えられる塩基配列は、塩基番号2136〜2379に示されている。配列番号7で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号7で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号7で示される塩基配列において、塩基番号1714、1716、1749、1753、1762、1795、1814、1894、1911、1915、1925、1940、1955、1968等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0017】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、PPARG angiopoietin-related protein遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のPPARG angiopoietin-related protein遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号8で示される塩基配列があげられる。配列番号8で示される塩基配列においては、ヒト由来のPPARG angiopoietin-related proteinタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号717〜719に示されており、上記エクソン1の5’側部分の塩基配列は、塩基番号1957〜2661に示されている。配列番号8で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号8で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号8で示される塩基配列において、塩基番号35、43、51、54、75、85、107、127、129、143、184、194、223、227、236、251、258等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0018】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Thrombomodulin遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のThrombomodulin遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号9で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF495471に記載される塩基配列の塩基番号1〜6096で示される塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号9で示される塩基配列においては、ヒト由来のThrombomodulinタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2590〜2592に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号2048〜6096に示されている。配列番号9で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号9で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号9で示される塩基配列において、塩基番号1539、1551、1571、1579、1581、1585、1595、1598、1601、1621、1632、1638、1645、1648、1665、1667、1680、1698、1710、1724、1726、1756等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0019】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、p53-responsive gene 2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のp53-responsive gene 2遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号10で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009471に記載される塩基配列の塩基番号113501〜116000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号10で示される塩基配列においては、ヒト由来のp53-responsive gene 2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1558〜1808に示されている。配列番号10で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号10で示される塩基配列において、塩基番号1282、1284、1301、1308、1315、1319、1349、1351、1357、1361、1365、1378、1383等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0020】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Fibrillin2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のFibrillin2遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号11で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC113387に記載される塩基配列の塩基番号118801〜121000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号11で示される塩基配列においては、ヒト由来のFibrillin2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1091〜1345に示されている。配列番号11で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号11で示される塩基配列において、塩基番号679、687、690、699、746、773、777、783、795、799、812、823、830、834、843等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0021】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Neurofilament3遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のNeurofilament3遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号12で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF106564に記載される塩基配列の塩基番号28001〜30000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号12で示される塩基配列においては、ヒト由来のNeurofilament3遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号614〜1694に示されている。配列番号12で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号12で示される塩基配列において、塩基番号428、432、443、451、471、475、482、491、499、503、506、514、519、532、541、544、546、563、566、572、580等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0022】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、disintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のdisintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号13で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009225に記載される塩基配列の塩基番号21001〜23300で示される塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号13で示される塩基配列においては、ヒト由来のdisintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1194〜1630に示されている。配列番号13で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号13で示される塩基配列において、塩基番号998、1003、1007、1011、1016、1018、1020、1026、1028、1031、1035、1041、1043、1045、1051、1053、1056、1060、1066、1068、1070、1073、1093、1096、1106、1112、1120、1124、1126等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0023】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、G protein-coupled receptor 7遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のG protein-coupled receptor 7遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号14で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009800に記載される塩基配列の塩基番号75001〜78000で示される塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号14で示される塩基配列においては、ヒト由来のG protein-coupled receptor 7遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1666〜2652に示されている。配列番号14で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号14で示される塩基配列において、塩基番号1480、1482、1485、1496、1513、1526、1542、1560、1564、1568、1570、1580、1590、1603、1613、1620等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0024】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、G-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、のプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のG-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号15で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC008971に記載される塩基配列の塩基番号57001〜60000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号15で示される塩基配列においては、ヒト由来のG-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号776〜2632に示されている。配列番号15で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号15で示される塩基配列において、塩基番号470、472、490、497、504、506、509、514、522、540、543、552、566、582、597、610、612等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0025】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Solute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のSolute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号16で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC026802に記載される塩基配列の塩基番号78801〜81000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号16で示される塩基配列においては、ヒト由来のSolute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1479〜1804に示されている。配列番号16で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号16で示される塩基配列において、塩基番号1002、1010、1019、1021、1051、1056、1061、1063、1080、1099、1110、1139、1141、1164、1169、1184等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0026】
本発明における「(目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、)増幅されたDNAの量」とは、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的領域におけるメチル化されたDNAの増幅後の量そのもの、即ち、本発明測定方法の第三工程で求めた量を意味するものである。例えば、生物由来検体が1mLの血清であった場合には、血清1mL中に含まれる前記のメチル化されたDNAに基づいて増幅されたDNAの量を意味する。
【0027】
本発明(特に、本発明メチル化割合測定方法)における「メチル化割合」とは、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの増幅後の量とメチル化されていないDNAの増幅後の量との合計量を、メチル化されたDNAの増幅後の量で除した数値を意味するものである。
【0028】
本発明における「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA」とは、二本鎖DNAにおける前記制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対におけるシトシンの両者がメチル化されていないシトシンである二本鎖DNA、即ち、二本鎖DNAにおける前記制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対において、正鎖DNAのシトシンとこれに対応する負鎖DNAのシトシンとの両者が共にメチル化されていないシトシンである二本鎖DNAを意味するものである。また「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA」とは、二本鎖DNAにおける前記制限酵素の認識部位の中に存在している全てのCpG対におけるシトシンの一方がメチル化されており、他方がメチル化されていないシトシンである二本鎖DNA、即ち、二本鎖DNAにおける前記制限酵素の認識部位の中に存在している全てのCpG対において、正鎖DNAのシトシンとこれに対応する負鎖DNAのシトシンとのいずれか一方がメチル化されており、他方がメチル化されていないシトシンである二本鎖DNAを意味するものである。
【0029】
本発明測定方法の第一工程において、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の一本鎖DNAを、当該一本鎖DNAと一本鎖固定化オリゴヌクレオチドが結合してなる二本鎖DNA(即ち、結合形成させた二本鎖DNA)として選択する。
本発明測定方法の第一工程における「一本鎖固定化オリゴヌクレオチド」は、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の目的とするDNA領域の全てに対して相補性である塩基配列、または、目的とするDNA領域の一部分であって、且つ、目的とするDNA領域の3’末端を含む領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(以下、本固定化オリゴヌクレオチドと記すこともある。)である。
本固定化オリゴヌクレオチドは、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を選択するために用いられる。本固定化オリゴヌクレオチドは、5〜1000塩基長であることが好ましく、より具体的には20〜200塩基長であることが望ましい。
本固定化オリゴヌクレオチドの5’末端側は、担体と固定化され得るものであり、一方その3’末端側は、後述する第二前工程及び第A2工程により5’末端から3’末端に向かって進行する一回伸長反応が可能なようにフリーな状態であればよい。ここで「担体と固定化され得るもの」とは、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を選択する際に本固定化オリゴヌクレオチドが担体に固定化されていればよく、(1)当該一本鎖DNA(正鎖)と本固定化オリゴヌクレオチドとの結合前の段階で、本固定化オリゴヌクレオチドと担体との結合により固定化されるものであってもよく、また(2)当該一本鎖DNA(正鎖)と本固定化オリゴヌクレオチドとの結合後の段階で、本固定化オリゴヌクレオチドと担体との結合により固定化されるものであってもよい。
このような構造を得るには、オリゴヌクレオチドの5’末端を通常の遺伝子工学的な操作方法又は市販のキット・装置等に従い、担体に固定すればよい(固相への結合)。具体的には例えば、本オリゴヌクレオチドの5’末端をビオチン化した後、得られたビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体(例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブ、ストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズ等)に固定する方法を挙げることができる。
また、本オリゴヌクレオチドの5’末端側に、アミノ基、アルデヒド基、チオール基等の活性官能基を有する分子を共有結合させた後、これを表面がシランカップリング剤等で活性化させたガラス、シリカ若しくは耐熱性プラスチック製の支持体に、例えば、トリグリセリドを5個直列に連結したもの等のスペーサー、クロスリンカー等を介して共有結合させる方法も挙げられる。またさらに、ガラス若しくはシリコン製の支持体の上で直接、本オリゴヌクレオチドの5’末端側から化学合成させる方法も挙げられる。
【0030】
本発明測定方法の第一工程は、具体的には例えば、本固定化オリゴヌクレオチドがビオチン化オリゴヌクレオチドの場合には、
(a)まず、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に、アニーリングバッファー及びビオチン化オリゴヌクレオチド(当該一本鎖DNA(正鎖)と本固定化オリゴヌクレオチドとの結合後の段階で、本固定化オリゴヌクレオチドと担体との結合により固定化されるものであるために、現段階では遊離状態にあるもの)を添加することにより、混合物を得る。次いで、得られた混合物を、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で数分間加熱する。その後、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、ビオチン化オリゴヌクレオチドのTm値の約10〜20℃低い温度まで速やかに冷却し、その温度で数分間保温する。
(b)その後、室温に戻す。
(c)ストレプトアビジンで被覆した支持体に、上記(b)で得られた混合物を添加し、さらに、これを37℃で数分間保温することにより、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定する。
因みに、前述の如く、上記(a)〜(c)では、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの結合を、ビオチン化オリゴヌクレオチドとストレプトアビジンで被覆した支持体との固定よりも前段階で実施しているが、この順番は、どちらが先でも構わない。即ち、例えば、ストレプトアビジンで被覆した支持体に固定化されたビオチン化オリゴヌクレオチドに、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料を添加することにより混合物を得て、得られた混合物を生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で数分間加熱し、その後ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、ビオチン化オリゴヌクレオチドのTm値の約10〜20℃低い温度まで速やかに冷却し、その温度で数分間保温してもよい。
(d)このようにしてビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定した後、残溶液の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。
より具体的には例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブを使用する場合には、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、これに生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加し、その後当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。またストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを使用する場合には、磁石によりビーズを固定した後、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加し、その後当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。
次いで、このような操作を数回実施することにより、残溶液の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。
当該操作は、固定化されていないDNA、又は、後述の制限酵素で消化された溶液中に浮遊しているDNA、を反応溶液から取り除くため、重要である。これら操作が不十分であれば、反応溶液中に浮遊しているDNAが鋳型となり、増幅反応で予期せぬ増幅産物が得られることとなる。支持体と生物由来検体中DNAとの非特異的結合を避けるためには、目的領域とはまったく異なる塩基配列を有するDNA(例えば、ヒトの生物由来検体の場合は、ラットDNA等)を大量に生物由来検体に添加し、上記の操作を実施すればよい。
本発明測定方法の第一工程における好ましい態様としては、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させる際に、二価陽イオンを含有する反応系中で結合させることを挙げることができる。より好ましくは、二価陽イオンがマグネシウムイオンであることが挙げられる。ここで「二価陽イオンを含有する反応系」とは、前記一本鎖DNA(正鎖)と前記一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させるために用いられるアニーリングバッファー中に二価陽イオンを含有するような反応系を意味し、具体的には例えば、マグネシウムイオンを構成要素とする塩(例えば、MgOAc2、MgCl2等)を1mM〜600mMの濃度で含まれることがよい。
【0031】
本発明測定方法の第二工程において、第一工程で結合形成された二本鎖DNAを少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理した後、生成した遊離の消化物(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA)を除去する。
本発明測定方法の第二工程における「メチル化感受性制限酵素」とは、例えば、メチル化されたシトシンを含む認識配列を消化せず、メチル化されていないシトシンを含む認識配列のみを消化することのできる制限酵素等を意味する。即ち、メチル化感受性制限酵素が本来認識することができる認識配列に含まれるシトシンがメチル化されているDNAの場合には、当該メチル化感受性制限酵素を当該DNAに作用させても、当該DNAは切断されない。これに対して、メチル化感受性制限酵素が本来認識することができる認識配列に含まれるシトシンがメチル化されていないDNAの場合には、当該メチル化感受性制限酵素を当該DNAに作用させれば、当該DNAは切断される。このようなメチル化感受性酵素の具体的な例としては、例えば、HpaII、BstUI、NarI、SacII、HhaI等を挙げることができる。尚、前記のメチル化感受性制限酵素は、ヘミメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA(即ち、前記CpG対のうち、一方の鎖のシトシンがメチル化されており、他方の鎖のシトシンがメチル化されていないような二本鎖DNA)を切断しないものであり、すでにGruenbaumらにより明らかにされている(Nucleic Acid Research, 9、 2509-2515)。
【0032】
当該メチル化感受性制限酵素による消化の有無を調べる方法としては、具体的には例えば、前記DNAを鋳型とし、解析対象とするシトシンを認識配列に含むDNAを増幅可能なプライマー対を用いてPCRを行い、DNAの増幅(増幅産物)の有無を調べる方法をあげることができる。解析対象とするシトシンがメチル化されている場合には、増幅産物が得られる。一方、解析対象とするシトシンがメチル化されていない場合には、増幅産物が得られない。このようにして、増幅されたDNAの量を比較することにより、解析対象となるシトシンのメチル化されている割合を測定することができる。
因みに、第一工程で選択された二本鎖DNAにおいて、前述の如く、負鎖としての一本鎖固定化オリゴヌクレオチドに含まれるシトシンはメチル化されていない状態であり、正鎖側のDNA鎖に含まれるシトシンは生物由来検体中に含まれるゲノムDNAのDNAに含まれるシトシンがメチル化されていたか、それともメチル化されていなかったかにより、当該二本鎖DNAの状態がアンメチル状態であるか否かが決まる。即ち、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAがメチル化されていれば、得られた二本鎖DNAはヘミメチル状態(アンメチル状態ではない状態。負鎖:メチル化されていない状態、正鎖:メチル化されている状態)であり、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAがメチル化されていなければ、得られた二本鎖DNAはアンメチル状態(負鎖:メチル化されていない状態、正鎖:メチル化されていない状態)である。従って、前記のメチル化感受性制限酵素がヘミメチル状態である二本鎖DNAを切断しないという特性を利用することにより、前記の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対におけるシトシンがメチル化されていたか否かを区別することができる。即ち、前記のメチル化感受性制限酵素で消化処理することにより、仮に生物由来検体生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対におけるシトシンがメチル化されていないのであれば、当該二本鎖DNAはアンメチル状態であり、当該メチル化感受性制限酵素により切断される。また仮に生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している全てのCpG対におけるシトシンがメチル化されていたのであれば、当該二本鎖DNAはヘミメチル状態であり、当該メチル化感受性制限酵素により切断されない。従って、消化処理を実施した後、後述のように、前記の目的とするDNA領域を増幅可能な一対のプライマーを用いたPCRを実施することにより、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対におけるシトシンがメチル化されていないのであれば、PCRによる増幅産物は得られず、一方、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している全てのCpG対におけるシトシンがメチル化されていたのであれば、PCRによる増幅産物が得られることになる。
【0033】
本発明測定方法の第二工程は、具体的には例えば、本固定化オリゴヌクレオチドがビオチン化オリゴヌクレオチドの場合には、以下のように実施すればよい。第一工程で生成した二本鎖DNAに、最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μL、1mg/mL BSA水溶液を3μL、メチル化感受性制限酵素HpaII又はHhaI(10U/μL)等を夫々1.5μL加え、次いで当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとし、37℃で1時間〜3時間インキュベーションすればよい。
【0034】
このようにして第一工程で結合形成された二本鎖DNAを少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理した後、生成した遊離の消化物(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA)の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。
より具体的には例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブを使用する場合には、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、これに生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。またストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを使用する場合は、磁石によりビーズを固定した後、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。
次いで、このような操作を数回実施することにより、消化物(前記制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA)除去及び洗浄(DNA精製)する。
【0035】
尚、本発明測定方法の第二工程におけるメチル化感受性制限酵素による消化処理での懸念点として、メチル化されていないシトシンを含む認識配列を完全に消化できない(所謂「DNAの切れ残し」)虞を挙げることができる。このような虞が問題となる場合には、メチル化感受性制限酵素の認識部位が多く存在すれば、「DNAの切れ残し」を最小限に抑えることができるので、目的とするDNA領域としては、メチル化感受性制限酵素の認識部位を少なくとも1つ以上有しており、その認識部位が多ければ多いほどよいと考えられる。
従って、本発明測定方法の第二工程において複数のメチル化感受性制限酵素による処理を実施する場合には、具体的には例えば、以下のように行えばよい。第一工程で選択された二本鎖DNAに、最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μL、1mg/mL BSA水溶液を3μL、メチル化感受性酵素HpaII及びHhaI(10U/μL)等を夫々1.5μL加え、次いで当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとし、37℃で1時間〜3時間インキュベーションする。その後、前記と同様な操作に準じて、ピペッティング又はデカンテーションにより、残溶液の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。より具体的には例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブを使用する場合には、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、これに生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。またストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを使用する場合は、磁石によりビーズを固定した後、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。
次いで、このような操作を数回実施することにより、残溶液の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。
【0036】
尚、本発明測定方法又は後述のメチル化割合測定方法において、「生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料」が、当該ゲノムDNAが有する目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA試料であることを好ましい態様の一つとして挙げることができる。ここで、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA(鋳型DNA)を一本鎖固定化オリゴヌクレオチドで選択する場合には、短い鋳型DNAの方がより選択され易く、また、PCRで目的領域を増幅する場合にも、鋳型DNAが短い方がよいと考えられるので、目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素を生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に直接使用し消化処理を実施してもよい。尚、目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素により消化処理する方法としては、一般的な制限酵素処理法を用いればよい。
また、「生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料」が、少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理されてなるDNA試料であることを好ましい態様の一つとして挙げることができる。
これらの好ましい態様は、生物由来検体そのものを予め上記のような制限酵素で消化処理しておくことにより、メチル化量を精度良く求めることができるためである。当該方法は、上記のような「DNAの切れ残し」を無くすのに有用である。
生物由来検体に含まれるゲノムDNA由来の試料をメチル化感受性制限酵素により消化する方法としては、生物由来検体がゲノムDNA自体の場合には前記の方法と同様な方法でよく、生物由来検体が組織溶解液、細胞溶解液等の場合には前記の方法と同様な方法に準じて、大過剰のメチル化感受性制限酵素、例えば、25ngのDNA量に対して500倍量(10U)又はそれ以上のメチル化感受性制限酵素を用いて消化処理を実施すればよい。
【0037】
本発明測定方法の第三工程において、下記の各本工程の前工程として、第二工程で得られた未消化物である結合形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(第一前工程)と、
生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の生成した遊離の一本鎖状態であるDNAを選択し、選択された一本鎖DNAと前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成させる工程(第二(A)前工程)と、
当該工程(第二(A)前工程)で結合形成された二本鎖DNAを、前記の選択された一本鎖DNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の選択された一本鎖DNAを伸長形成された二本鎖DNAとする工程(第二(B)前工程)と
を有する工程(第二前工程)と、
第二前工程で伸長形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を、一本鎖状態であるDNA(正鎖)と一本鎖状態であるDNA(負鎖)に一旦分離する工程(第三前工程)とを有し、且つ、本工程として
(a)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第A1工程と、第A1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第A2工程とを有する第A工程(本工程)と、
(b)生成した一本鎖状態であるDNA(負鎖)を鋳型として、前記の一本鎖状態であるDNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’末端よりさらに3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有し、且つ、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドを鋳型とする伸長反応に利用できない伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、当該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第B工程(本工程)とを有し、
さらに第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNA(を一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すことにより、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する。
【0038】
本発明測定方法の第三工程では、まず、下記の各本工程の前工程のうち第一前工程として、第二工程で得られた未消化物である結合形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する。具体的には例えば、第二工程で得られた未消化物である結合形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない二本鎖DNA)に、アニーリングバッファーを添加することにより、混合物を得る。次いで、得られた混合物を95℃で数分間加熱する。その後、第二前工程における第二(A)前工程では、具体的に例えば、第一工程に準じて実施すれば良く、メチル化状態の一本鎖DNAと本固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成される。これにより、当該二本鎖DNAが選択可能となる。
第二(B)前工程においては、具体的には例えば、本固定化オリゴヌクレオチドがビオチン化オリゴヌクレオチドの場合には、以下のように実施すればよい。
二本鎖DNAとして選択されたメチル化状態の一本鎖DNAと一本鎖固定化オリゴヌクレオチドに、滅菌超純水を17.85μL、最適な10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2)を3μL、2mM dNTPを3μL、5N ベタインを6μL加え、次いで当該混合物にAmpliTaq(DNAポリメラーゼの1種:5U/μL)を0.15μL加えて液量を30μLとし、37℃で2時間インキュベーションする。その後、インキュベーションされた溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、これに生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加し、当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。
より具体的には例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブを使用する場合には、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、これに生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加し、その後当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。またストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを使用する場合には、磁石によりビーズを固定した後、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加し、その後当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。
次いで、このような操作を数回実施することにより、残溶液の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。
第三前工程においては、第二(B)前工程で得られた伸長形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を、一本鎖状態であるDNA(正鎖)と一本鎖状態であるDNA(負鎖)に一旦分離する。具体的には例えば、第二(B)前工程で得られた二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない二本鎖DNA)に、アニーリングバッファーを添加することにより、混合物を得る。次いで、得られた混合物をを95℃で数分間加熱する。
その後、本工程として、
(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)を、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(負鎖)にアニーリングさせるために、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(負鎖)のTm値の約10〜20℃低い温度まで速やかに冷却し、その温度で数分間保温する。
(ii)その後、室温に戻す。(第A工程における第A1工程)
(iii)上記(i)で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる(即ち、第A工程における第A2工程)。具体的には例えば、後述の説明や前述の本発明測定方法の第二(B)前工程における伸長反応での操作方法等に準じて実施すればよい。
(iv)生成した一本鎖状態であるDNA(負鎖)を鋳型として、前記の一本鎖状態であるDNAが有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’末端よりさらに3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有し、且つ、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドを鋳型とする伸長反応に利用できない伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、当該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする(即ち、第B工程)。具体的には例えば、上記(iii)と同様に、後述の説明や前述の本発明測定方法の第二(B)前工程における伸長反応での操作方法等に準じて実施すればよい。
(v)さらに第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すこと(例えば、第A工程及び第B工程)により、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する。具体的には例えば、上記と同様に、後述の説明や前述の本発明測定方法の第三工程における第二(B)前工程、第A工程及び第B工程での操作方法等に準じて実施すればよい。
尚、リバース用プライマーとして、一本鎖固定化オリゴヌクレオチドを鋳型として伸長反応に利用できない伸長プライマーを用いることで、第三工程で伸長形成されていない一本鎖(固定化)オリゴヌクレオチドを増幅することなく、第二(B)前工程で伸長形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない二本鎖DNA)を特異的に増幅できる。
【0039】
第三工程は、具体的には、第一前工程から開始して本工程に至るまでの反応を、一つのPCR反応として実施することもできる。また、第一前工程から第三前工程まで、各々、独立した反応を実施し、本工程のみをPCR反応として実施することもできる。
【0040】
メチル化感受性制限酵素による消化処理の後に目的とするDNA領域(即ち、目的領域)を増幅する方法としては、例えば、PCRを用いることができる。目的領域を増幅する際に、片側のプライマーとして本固定化オリゴヌクレオチドを用いることができるので、もう一方のプライマーのみ添加してPCRを行うことにより、増幅産物が得られ、その増幅産物も固定化されることとなる。この際、予め蛍光等で標識されたプライマーを使用してその標識を指標とすれば、電気泳動等の煩わしい操作を実施せずに増幅産物の有無を評価できる。PCR反応液としては、例えば、本発明測定方法の第二工程で得たDNAに、50μMのプライマーの溶液を0.15μlと、2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、20mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、AmpliTaq Gold (耐熱性DNAポリメラーゼの一種: 5U/μl)を0.2μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとした反応液をあげることができる。
目的とするDNA領域(即ち、目的領域)は、GCリッチな塩基配列が多いため、時に、ベタイン、DMSO等を適量加えて反応を実施してもよい。反応条件としては、例えば、前記のような反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで55〜65℃にて30秒間さらに72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を30〜40サイクル行う条件があげられる。かかるPCRを行った後、得られた増幅産物を検出する。例えば、予め標識されたプライマーを使用した場合には、先と同様の洗浄・精製操作を実施後、固定化された蛍光標識体の量を測定することができる。また、標識されていない通常のプライマーを用いたPCRを実施した場合は、金コロイド粒子、蛍光等で標識したプローブ等をアニーリングさせ、目的領域に結合した当該プローブの量を測定することにより検出することができる。また、増幅産物の量をより精度よく求めるには、例えば、リアルタイムPCR法を用いればよい。リアルタイムPCR法とは、PCRをリアルタイムでモニターし、得られたモニター結果をカイネティックス分析する方法であり、例えば、遺伝子量に関して2倍程度のほんのわずかな差異をも検出できる高精度の定量PCR法として知られる方法である。当該リアルタイムPCR法には、例えば、鋳型依存性核酸ポリメラーゼプローブ等のプローブを用いる方法、サイバーグリーン等のインターカレーターを用いる方法等を挙げることができる。リアルタイムPCR法のための装置及びキットは市販されるものを利用してもよい。以上の如く、検出については特に限定されることはなく、これまでに周知のあらゆる方法による検出が可能である。これら方法では、反応容器を移し換えることなく検出までの操作が可能となる。
【0041】
さらに、一本鎖固定化オリゴヌクレオチドと同じ塩基配列のビオチン化オリゴヌクレオチドを片側のプライマー、又は、一本鎖固定化オリゴヌクレオチドより、3’端側に新しいビオチン化オリゴヌクレオチドを設計しそれを片側のプライマーとし、その相補側プライマーを用いて、目的領域を増幅することもできる。この場合、得られた増幅産物は、ストレプトアビジンで被覆した支持体があれば固定化されるので、例えば、ストレプトアビジンコートPCRチューブでPCRを実施した場合には、チューブ内に固定されるため、上記の通り、標識されたプライマーを用いれば、増幅産物の検出が容易である。また、先の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドが共有結合等による固定化の場合であれば、PCRで得られた増幅産物を含む溶液をストレプトアビジン被覆支持体が存在する容器に移し、増幅産物を固定化することが可能である。検出については、上述の通り実施すればよい。目的領域を増幅する相補側のプライマーは、メチル化感受性制限酵素の認識部位を1つ以上有する目的領域を増幅でき、かつ、その認識部位を含まないプライマーでなければいけない。この理由は、以下の通りである。選択及び1回伸長反応で得られた二本鎖DNAの本固定化オリゴヌクレオチド側のDNA鎖(新生鎖)の一番3’端側のメチル化感受性制限酵素の認識部位のみがメチル化されていない場合には、その部分だけがメチル化感受性制限酵素で消化されることになる。消化後、前述のように洗浄操作を行っても、新生鎖で言う3’端の一部だけを失った二本鎖DNAが固定化されたままの状態で存在する。相補側のプライマーが、この一番3’端側のメチル化感受性制限酵素の認識部位を含んでいた場合には、当該プライマーの3’端側の数塩基が、新生鎖の3’端の数塩基とアニーリングし、その結果、目的領域がPCRにより増幅する可能性があるからである。
【0042】
本発明は、本発明測定方法の第三工程の第一前工程の前操作段階又は後操作段階、或いは、第三工程の第三前工程の前操作段階又は後操作段階において、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有するような変法を含む。
即ち、
【0043】
(変法1)
本発明測定方法の第三工程の第一前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
本発明測定方法の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【0044】
(変法2)
本発明測定方法の第三工程の第一前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第一前工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
本発明測定方法の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法(以下、本発明メチル化割合測定方法と記すこともある。)
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【0045】
(変法3)
本発明測定方法の第三工程の第三前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
本発明測定方法の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【0046】
(変法4)
本発明測定方法の第三工程の第三前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第一前工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
本発明測定方法の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法(以下、本発明メチル化割合測定方法と記すこともある。)
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【0047】
当該変法では、外部から「前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)」を反応系内に添加すること等により、第三工程における前述の目的とするDNA領域の増幅効率を容易に向上させることが可能となる。尚、追加前工程で反応系内に添加される一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)は、一本鎖DNAの3'末端の一部(但し、前記の目的とするDNA領域を含まない。)に対して相補性である塩基配列であって、5'末端が、前記一本鎖固定化オリゴヌクレオチドと同じである塩基配列を有する遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチドであれば、前記一本鎖固定化オリゴヌクレオチドと同じ塩基配列であっても、又は、短い塩基配列であっても、或いは、長い塩基配列であってもよい。但し、前記一本鎖固定化オリゴヌクレオチドよりも長い塩基配列の場合には、前記リバース用プライマー(正鎖)を伸長プライマーとし、当該一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を鋳型として、伸長プライマーを伸長させる反応に利用できない遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチドであることが重要である。
【0048】
目的領域を増幅する際に、片側のプライマーとして固定化オリゴヌクレオチドを用いて、もう一方のプライマーのみ添加してPCRを行う例を前記したが、目的産物の検出のために他の方法(例えば、PCRで得られた各々の増幅産物の量を比較することができる分析方法)を実施するのであれば、上記の如く、目的領域を増幅する際に、固定化オリゴヌクレオチドを一方(片側)のプライマーとして使用せず、一対のプライマーを添加してPCRを実施してもよい。かかるPCRを行った後、得られた増幅産物の量を求める。
【0049】
本発明測定方法の第三工程は繰り返し工程を有するが、例えば、第A1工程における「生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)」とは、第1回目の第三工程の操作及び第2回目以降の第三工程の繰り返し操作の両操作において「生成した『遊離の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」を意味することになる。
また、第B工程における「生成した一本鎖状態であるDNA(負鎖)」とは、第1回目の第三工程の操作及び第2回目以降の第三工程の繰り返し操作の両操作において「生成した『固定の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」を意味する。但し、第三工程がさらに追加的にC工程を有する場合には、第1回目の第三工程の操作において「生成した『固定の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」を意味し、一方、第2回目以降の第三工程の繰り返し操作において「生成した『固定の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」と「生成した『遊離の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」との両者を意味することになる。
【0050】
また、第三工程の各本工程で得られた「伸長形成された二本鎖DNA」とは、第A工程の場合には、第1回目の第三工程の操作において「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に、アンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA」を意味し、一方、第2回目以降の第三工程の繰り返し操作において「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に、アンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA」と「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に、アンメチル状態のCpG対を含む伸長形成された二本鎖DNA」との両者を意味することになる。第B工程の場合には、第1回目の第三工程の操作及び第2回目以降の第三工程の繰り返し操作の両操作において「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位では全てがアンメチル状態のCpG対である伸長形成された二本鎖DNA」を意味することになる。
尚、第三工程がさらに追加的にC工程を有する場合にも同様である。
【0051】
また、第三工程がさらに追加的にC工程を有する場合において、第C1工程における「生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)」とは、第1回目の第三工程の操作及び第2回目以降の第三工程の繰り返し操作の両操作において「生成した『遊離の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」を意味することになる。
【0052】
また本発明は、本発明測定方法の工程として、下記の2つの工程をさらに追加的に有することを特徴とするメチル化割合の測定方法(即ち、本発明メチル化割合測定方法)を含む。
(4)本発明測定方法(前記の変法を含む)の第一工程を行った後、本発明測定方法(前記の変法を含む)の第二工程を行うことなく、本発明測定方法(前記の変法を含む)の第三工程を行うことにより、前記の目的とするDNA領域のDNA(メチル化されたDNA及びメチルされていないDNAの総量)を検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第四工程、及び、
(5)本発明測定方法(前記の変法を含む)の第三工程により定量されたDNAの量と、第四工程により定量されたDNAの量とを比較することにより得られる差異に基づき前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの割合を算出する第五工程
【0053】
当該メチル化割合測定方法は、下記のような場面において利用すればよい。
各種疾患(例えば、癌)においてDNAのメチル化異常が起こることが知られており、このDNAメチル化異常を検出することにより、各種疾患の度合いを測定することが可能と考えられている。
例えば、疾患由来の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいて100%メチル化されているDNA領域があり、そのDNA領域について、本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法を実施すれば、メチル化されたDNAの量は多くなり、例えば、疾患由来の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいて100%メチル化されていないDNA領域があり、そのDNA領域について、本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法を実施すれば、メチル化されたDNAの量はほぼ0に近い値となるであろう。また、例えば、健常者の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいてメチル化割合が低く且つ疾患患者の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいてメチル化割合が高いDNA領域があり、そのDNA領域について、本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法を実施すれば、健常者の場合には、メチル化されたDNAの量は、0に近い値を示し、一方、疾患患者の場合には、健常者の場合における値よりも有意に高い値を示すため、この値の差異に基づき、「疾患の度合い」を判定することができる。ここでの「疾患の度合い」とは、一般に当該分野において使用される意味と同様であって、具体的には、例えば、生物由来検体が細胞である場合には当該細胞の悪性度を意味し、また、例えば、生物由来検体が組織である場合には当該組織における疾患細胞の存在量等を意味している。さらに、生物由来検体が血漿・血清である場合にはその個体が疾患を有する確率を意味している。従って、本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法は、メチル化異常を調べることにより、各種疾患を診断することを可能にする。
【0054】
このような本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法における、目的領域のメチル化されたDNA量の測定、メチル化割合の測定を行うための各種方法で使用し得る制限酵素、プライマー又はプローブは、検出用キットの試薬として有用である。本発明は、これら制限酵素、プライマー又はプローブ等を試薬として含有する検出用キットや、これらプライマー又はプローブ等が担体上に固定化されてなる検出用チップも提供しており、本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法の権利範囲は、当該方法の実質的な原理を利用してなる前記のような検出用キットや検出用チップのような形態での使用ももちろん含むものである。
【実施例】
【0055】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
ATCCより購入された哺乳動物由来の結腸腺癌細胞株Caco−2(ATCC NO.HTB-37)を、ATCCのカタログに記載された細胞株のための専用培地でコンフルエントになるまで培養することにより、各々約1x107細胞を得た。得られた細胞に、SEDTAバッファー[10mM Tris-HCl pH 8.0、10mM EDTA pH 8.0、100mM NaCl]を10倍容量加えた後、これをホモジナイズした。
得られた混合物に、proteinase K(Sigma)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl、pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱(ゲノムDNA)を回収した。回収された沈澱をTEバッファー(10mM Tris、1mM EDTA、pH 8.0)に溶解し、これに40μg/mlになるようにRNase A(Sigma)を加えて37℃で1時間インキュベートした。インキュベートされた混合物をフェノール・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱することにより沈澱(ゲノムDNA)を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
得られたゲノムDNAから、以下のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、供試サンプルとして用いられるDNAフラグメント(以下、DNAフラグメントX2と記す。配列番号18で示される塩基配列を有する。Genbank Accession No.AC009800等に示されるGPR7配列の塩基番号76477〜77002に相当する領域)を増幅した。
【0057】
PF3:5'-GTCCGCGGCGACATTGGG-3' (配列番号19)
PR3:5'-CGATGAGCTTGCACATGAGCT-3' (配列番号20)
【0058】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAを2.5ngと、3μMに調製された配列番号19及び配列番号20で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各2.5μlと、each 2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、 5U/μl)を0.125μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで59℃にて60秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を50サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、目的のDNAフラグメント(526bp)を切り出し、QIAGEN QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)により、DNAフラグメントX2を精製した。
得られたDNAフラグメントX2の一部をメチル化酵素SssI(NEB社)により処理し、5’−CG−3’全てをメチル化したDNAフラグメント(以下、DNAフラグメントY2と記す。)を得た。これについても、先と同様に、1.5%アガロース電気泳動により増幅を確認し、DNAフラグメント(526bp)を切り出し、QIAGEN QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)により、DNAフラグメントY2を精製した。
【0059】
前記のDNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2とアニーリングするオリゴヌクレオチドとして、配列番号21に示される塩基配列を有する5’末端がビオチン標識されたオリゴヌクレオチドB1(80bp)を合成した。
【0060】
<ビオチン標識オリゴヌクレオチド>
B1:5'-GACAACGCCTCGTTCTCGG-3'(配列番号21)
【0061】
DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2の各々別々(25pg/mL水溶液、10μL)に、5μMビオチン化オリゴヌクレオチドB1を1μL、及び、アニーリングバッファー(0.5M チャーチリン酸バッファー、7% SDS、1mM EDTA水溶液)を10μL添加することにより、混合物を得た。
次いで得られた混合物を、前記の生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で5分間加熱した。その後、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、50℃まで速やかに冷却し、その温度で5分間保温した。次いで、これを37℃で5分間保温した後、室温に戻し、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(DNAフラグメントX2又はDNAフラグメントY2)とビオチン化オリゴヌクレオチドとを結合させた(DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2につき、各々2本作製)。
次に、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブに、上記のようにして、前調製された混合物を添加し、さらに、これを37℃で5分間保温することにより、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定した(以下、本発明測定方法の第一工程に相当する。)。
【0062】
次いで、前記のPCRチューブから溶液を除去した後、100μLのTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティングにより取り除いた。当該操作をさらに2回実施した(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する。)。
このようにして得られた二本鎖DNAについて、以下の2種の処理を施した。
【0063】
A群(無処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
【0064】
B群(HpaII及びHhaIによる消化処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIを夫々15Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
【0065】
各々の反応液を37℃で1時間インキュベーション(消化処理)した後、上清を取り除き、100μLのTEバッファーを混合した後、当該TEバッファーをピペッティングにより取り除いた(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する)。
【0066】
次に、得られた未消化物から、下記のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、目的とするDNA領域におけるメチル化DNA(配列番号22で示される塩基配列を有する。Genbank Accession No.AC009800等に示されるGPR7配列の塩基番号76669〜76835に相当する領域)を増幅した。
【0067】
PF4:5'-GACAACGCCTCGTTCTCGG-3'(配列番号23)
PR4:5'-GCGGAGTTGCCCGCCAGA-3'(配列番号24)
【0068】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAに、3μMに調製された配列番号23及び配列番号24で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各2.5μlと、each 2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)5U/μlを0.125μlと、5Nベタイン水溶液を5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで59℃にて60秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を37サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する。)。
【0069】
DNAフラグメントX2に関して、A群(無処理群)の場合には、増幅が確認されその増幅産物が得られた。これに対してB群(HpaII、HhaI処理群)の場合には、増幅が確認されずその増幅産物は得られなかった。一方、DNAフラグメントY2に関しては、A群(無処理群)の場合とB群(HpaII、HhaI処理群)の場合ともに、増幅が確認されその増幅産物が得られた。
【0070】
以上より、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されていないDNAを増幅することなく、メチル化されたDNAのみを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量できることが確認された。
【0071】
実施例2
実施例1で得られたDNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2を用いて下記の試験を行った。
DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2の各々別々を25pg/mlの割合になるようにラット血清1mLに添加することにより、血清溶液を得た。当該血清溶液(DNAフラグメント25pg/mL水溶液、10μL)に、5μMビオチン化オリゴヌクレオチドB1を1μL、及び、アニーリングバッファー(0.5M チャーチリン酸バッファー、7% SDS、1mM EDTA水溶液)を10μL添加することにより、混合物を得た。
次いで得られた混合物を、前記の生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で5分間加熱した。その後、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、50℃まで速やかに冷却し、その温度で5分間保温した。次いで、これを37℃で5分間保温した後、室温に戻し、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAとビオチン化オリゴヌクレオチドとを結合させた(DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2につき、各々6本作製)。
次に、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブに、上記のようにして、前調製された混合物を添加し、さらに、これを37℃で5分間保温することにより、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定した(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する)。
【0072】
次いで、前記のPCRチューブから溶液を除去した後、100μLのTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティングにより取り除いた。当該操作をさらに2回実施した。
このようにして選択され得られた二本鎖DNA(即ち、結合形成された二本鎖DNA)について、以下の2種の処理を施した。
【0073】
A群(無処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした(各々3本作製)。
【0074】
B群(HpaII及びHhaIによる消化処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIを夫々15Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした(各々3本作製)。
【0075】
各々の反応液を37℃で1時間インキュベーション(消化処理)した後、上清を取り除き、100μLのTEバッファーを混合した後、当該TEバッファーをピペッティングにより取り除いた(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する。)。
【0076】
次に、得られた未消化物から、下記のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、目的とするDNA領域におけるメチル化DNA(配列番号22、Genbank Accession No.AC009800等に示されるGPR7配列の塩基番号76669〜76835に相当する領域)を増幅した。
【0077】
PF4:5'-GACAACGCCTCGTTCTCGG-3'(配列番号23)
PR4:5'-GCGGAGTTGCCCGCCAGA-3'(配列番号24)
【0078】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAに、3μMに調製した配列番号23及び配列番号24で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各2.5μlと、each 2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)5U/μlを0.125μlと、5Nベタイン水溶液を5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで63℃にて60秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を35サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する。)。
【0079】
DNAフラグメントX2に関して、A群(無処理群)の場合には、増幅が確認されその増幅産物が得られた。これに対してB群(HpaII、HhaI処理群)の場合には、増幅は確認されずその増幅産物は得られなかった。一方、DNAフラグメントY2に関しては、A群(無処理群)の場合及びB群(HpaII、HhaI処理群)の両場合ともに、増幅が確認されその増幅産物が得られた。
【0080】
以上より、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料としての血清溶液を用いても、前記の実施例1と同様に、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されていないDNAを増幅することなく、メチル化されたDNAのみを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量できることが確認された。
【0081】
実施例3
実施例1で得られたDNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2を用いて下記の試験を行った。
DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2の0、0.1、1及び10pg/10μLのTEバッファー(10mM Tris、1mM EDTA、pH 8.0)溶液を調製した。これらTEバッファー溶液10μL各々別々に、5μMビオチン化オリゴヌクレオチドB1を1μL、10×アニーリングバッファー(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μL、及び、滅菌超純水を7μL添加することにより、混合物を得た。
次いで得られた混合物を、前記の生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で5分間加熱した。その後、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、50℃まで速やかに冷却し、その温度で5分間保温した。次いで、これを37℃で5分間保温した後、室温に戻し、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(DNAフラグメントX2又はDNAフラグメントY2)とビオチン化オリゴヌクレオチドとを結合させた(DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2につき、各々2本作製)。
次に、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブに、上記のようにして、前調製された混合物を添加し、さらに、これを37℃で5分間保温することにより、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定した(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する。)。
【0082】
次いで、前記のPCRチューブから溶液を除去した後、100μLの洗浄バッファー(0.05%Tween20含有リン酸バッファー:1mM KH2PO4、3mM Na2HPO・7H2O、154mM NaCl、 pH7.4)を添加した後、当該洗浄バッファーをピペッティングにより取り除いた。当該操作をさらに2回実施した。
【0083】
その後、このようにして得られた二本鎖DNAについて、以下の2種の処理を施した。
【0084】
A群(無処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
【0085】
B群(HpaII及びHhaIによる消化処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIを夫々15Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
各々の反応液を37℃で5時間インキュベーション(消化処理)した後、上清を取り除き、100μLの上記洗浄バッファーを混合した後、当該洗浄バッファーをピペッティングにより取り除いた(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する。)。
【0086】
次に、得られた未消化物から、下記のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、目的とするDNA領域におけるメチル化DNA(配列番号22で示される塩基配列を有する。Genbank Accession No.AC009800等に示されるGPR7配列の塩基番号76669〜76835に相当する領域)を増幅した。
【0087】
PF4:5'-GACAACGCCTCGTTCTCGG-3'(配列番号23)
PR4:5'-GCGGAGTTGCCCGCCAGA-3'(配列番号24)
【0088】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAに、50μMに調製した配列番号23及び配列番号24で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各0.3μlと、each 2mM dNTPを5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)5U/μlを0.25μlと、5Nベタイン水溶液を10μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで59℃にて30秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を32サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する。)。
【0089】
DNAフラグメントX2に関して、A群(無処理群)の場合には、1pg/10μLのサンプル及び10pg/10μLのサンプルで増幅が確認されその増幅産物が得られた。これに対してB群(HpaII、HhaI処理群)の場合には、全てのサンプルで、その増幅産物は得られなかった。一方、DNAフラグメントY2に関しては、A群(無処理群)及びB群(HpaII、HhaI処理群)の1pg/10μLのサンプル及び10pg/10μLのサンプルで、増幅が確認されその増幅産物が得られた。
【0090】
以上より、アニーリングバッファーとして二価陽イオン(マグネシウムイオン)を含有する溶液を用いて、且つ、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることで、前記の実施例1及び実施例2と同様に、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを選択することが可能であること、且つ、メチル化感受性制限酵素での処理により、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されていないDNAを増幅することなく、メチル化されたDNAのみを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量できることが確認された。
【0091】
実施例4
実施例1で得られたDNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2を用いて下記の試験を行った。
DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2の0、0.1、1、及び10pg/10μLラット血清溶液を調製した。これら溶液10μL各々別々に、5μMビオチン化オリゴヌクレオチドB1を1μL、10×アニーリングバッファー(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μL、及び、滅菌超純水を7μL添加することにより、混合物を得た。
次いで得られた混合物を、前記の生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で5分間加熱した。その後、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、50℃まで速やかに冷却し、その温度で5分間保温した。次いで、これを37℃で5分間保温した後、室温に戻し、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(DNAフラグメントX2又はDNAフラグメントY2)とビオチン化オリゴヌクレオチドとを結合させた(DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2につき、各々2本作製)。
次に、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブに、上記のようにして、前調製された混合物を添加し、さらに、これを37℃で5分間保温することにより、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定した(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する。)。
【0092】
次いで、前記のPCRチューブから溶液を除去した後、100μLの洗浄バッファー(0.05%Tween20含有リン酸バッファー:1mM KH2PO4、3mM Na2HPO・7H2O、154mM NaCl pH7.4)を添加した後、当該洗浄バッファーをピペッティングにより取り除いた。当該操作をさらに2回実施した。
【0093】
その後、このようにして得られた二本鎖DNAについて、以下の2種の処理を施した。
【0094】
A群(無処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
【0095】
B群(HpaII及びHhaIによる消化処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIを夫々15Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
各々の反応液を37℃で5時間インキュベーション(消化処理)した後、上清を取り除き、100μLの上記洗浄バッファーを混合した後、当該洗浄バッファーをピペッティングにより取り除いた(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する。)。
【0096】
次に、得られた未消化物から、下記のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、目的とするDNA領域におけるメチル化DNA(配列番号22で示される塩基配列を有する。Genbank Accession No.AC009800等に示されるGPR7配列の塩基番号76669〜76835に相当する領域)を増幅した。
【0097】
PF4:5'-GACAACGCCTCGTTCTCGG-3'(配列番号23)
PR4:5'-GCGGAGTTGCCCGCCAGA-3'(配列番号24)
【0098】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAに、50μMに調製した配列番号23及び配列番号24で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各0.3μlと、each 2mM dNTPを5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)5U/μlを0.25μlと、5Nベタイン水溶液を10μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで59℃にて30秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を32サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する。)。
【0099】
DNAフラグメントX2に関して、A群(無処理群)の場合には、1pg/10μLのサンプル及び10pg/10μLのサンプルで増幅が確認されその増幅産物が得られた。これに対してB群(HpaII、HhaI処理群)の場合には、全てのサンプルで、その増幅産物は得られなかった。一方、DNAフラグメントY2に関しては、A群(無処理群)及びB群(HpaII、HhaI処理群)の1pg/10μLのサンプル及び10pg/10μLのサンプルで、増幅が確認されその増幅産物が得られた。
【0100】
以上より、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料としての血清溶液を用いて、且つ、アニーリングバッファーとして二価陽イオン(マグネシウムイオン)を含有する溶液を用いて、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることで、前記の実施例3と同様に、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを選択することが可能であること、且つ、メチル化感受性制限酵素での処理により、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されていないDNAを増幅することなく、メチル化されたDNAのみを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量できることが確認された。
【0101】
実施例5
ATCCより購入された哺乳動物由来の乳癌細胞株MCF−7(ATCC NO.HTB-22)を、ATCCのカタログに記載された当該細胞株のための専用培地でコンフルエントになるまで培養することにより、約1×107個の細胞を得た。得られた細胞に、SEDTAバッファー[10mM Tris-HCl pH 8.0、10mM EDTA pH 8.0、100mM NaCl]を10倍容量加えた後、これをホモジナイズした。得られた混合物に、proteinase K(Sigma)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl、pH 8.0 にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱をTEバッファー(10mM Tris、1mM EDTA、pH 8.0)に溶解し、これに40μg/mlになるようにRNase A(Sigma)を加えて37℃で1時間インキュベートした。インキュベートされた混合物をフェノール・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱(ゲノムDNA)を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
得られたゲノムDNAから、以下のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、供試サンプルとして用いられる配列番号17で示される塩基配列(Genbank Accession No.M80343等に示されるLINE1配列の塩基番号257〜352に相当する領域)を含むDNAフラグメント(DNAフラグメントX1、配列番号25で示される塩基配列を有する。Genbank Accession No.M80343等に示されるLINE1配列の塩基番号8〜480に相当する領域)を増幅した。
【0102】
PF1:5'-GAGCCAAGATGGCCGAATAGG-3'(配列番号26)
PR1:5'-CTGCTTTGTTTACCTAAGCAAGC-3'(配列番号27)
【0103】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAを2ngと、100pmol/μlに調製した配列番号26及び配列番号27で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各0.125μlと、each 2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ 5U/μlを0.125μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで63℃にて60秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を50サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、目的のDNAフラグメント(473bp)を切り出し、QIAGEN QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)により、DNAフラグメントX1を精製した。
得られたDNAフラグメントX1の一部をメチル化酵素SssI(NEB社)により処理し、5−CG−3’全てをメチル化したDNAフラグメント(以下、DNAフラグメントY1と記す)を得た。これについても、先と同様に、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、目的のDNAフラグメント(473bp)を切り出し、QIAGEN QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)により、DNAフラグメントY1を精製した。
DNAフラグメントX1及びDNAフラグメントY1を用いて、以下のメチル化フラグメントと非メチル化フラグメントとの混合物を調製した。
【0104】
【表1】
【0105】
I〜V各々のDNAフラグメントを用いて、以下の4種の溶液を調製した。
【0106】
A群(無処理群):DNAフラグメント約25ngに、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした。
【0107】
B群(HpaII処理群):DNAフラグメント約25ngに、HpaIIを0.5Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした。
【0108】
C群(HhaI処理群):DNAフラグメント約25ngに、HhaIを0.5Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした。
【0109】
D群(HpaII及びHhaI処理群):DNAフラグメント約25ngに、HpaII及びHhaIを夫々0.5Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした。
【0110】
各々の反応液を37℃で2時間インキュベーションした後、これに滅菌超純水を加えて100倍希釈した。
各希釈溶液5μL(DNAフラグメント62.5pg相当量)を鋳型とし、配列番号17で示される塩基配列からなる領域のDNA量を求めるために、下記のプライマーPF2及びPR2並びに5’末端がレポーター蛍光色素であるFAM(6−カルボキシ−フルオレッセイン)及び3’末端がクエンチャー蛍光色素であるTAMRA(6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン)で標識されたプローブT1を用いたリアルタイムPCRを行った。
【0111】
<プライマー>
PF2(フォワード側): 5'-CACCTGGAAAATCGGGTCACT-3'(配列番号28)
PR2(リバース側): 5'-CGAGCCAGGTGTGGGATATA-3'(配列番号29)
【0112】
<プローブ>
T1:5'-CGAATATTGCGCTTTTCAGACCGGCTT-3'(配列番号30)
【0113】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAフラグメント62.5pgと、3pmol/μlに調製した配列番号28及び配列番号29で示される塩基配列からなるプライマーの溶液2種を各2.5μlと、2.5pmol/μLに調製した配列番号30で示される塩基配列からなるプローブを2.5μLと、each 2mM dNTPを2.5μlと、10×PCR緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)5U/μlを0.125μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとしたものを用いた。リアルタイムPCRは、Gene Amp 5700 Sequence Detection System (Applied Biosystems)を用いて実施した。配列番号17で示される塩基配列のうち塩基番号1〜94で示される塩基配列からなる領域(DNA)を増幅するために、当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて15秒間、60℃にて60秒間を1サイクルとしてリアルタイムPCRを行った。当該リアルタイムPCRの結果により、当該領域のDNA量を定量した。各生物由来検体について3回試験を実施した。
その結果を図3〜図7に示した。A群での当該領域のDNA量を1として、他の群での当該領域のDNA量を示した。図3(「I」)は、メチル化割合0%のフラグメント混合物であるため、B群、C群及びD群での理論値は「0」、図4(「II」)は、メチル化割合10%のフラグメントであるため、B群、C群及びD群での理論値は「0.1」、図5(「III」)は、メチル化割合25%のフラグメントであるため、B群、C群及びD群での理論値は「0.25」、図6(「IV」)は、メチル化割合50%のフラグメントであるため、B群、C群及びD群での理論値は「0.5」、図7(「V」)は、メチル化割合100%のフラグメントであるため、B群、C群及びD群での理論値は「1」を示すことになる。実験の結果、図3〜図7に示す通り、D群で、この理論値に最も近い値が得られており、2種類以上のメチル化感受性酵素での消化処理が好ましいことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明により、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を簡便に測定する方法等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は、実施例1において、調製されたサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaI同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAフラグメントX2の「A」処理が施されたサンプル、DNAフラグメントX2の「B」処理が施されたサンプル、DNAフラグメントY2の「A」処理が施されたサンプル、DNAフラグメントY2の「B」処理が施されたサンプルでの結果を示している。
【図2】図2は、実施例2において、調製されたサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaI同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M」、DNAフラグメントY2の「A」処理が施されたサンプル1、DNAフラグメントY2の「A」処理が施されたサンプル2、DNAフラグメントY2の「A」処理が施されたサンプル3、DNAフラグメントY2の「B」処理が施されたサンプル1、DNAフラグメントY2の「B」処理が施されたサンプル2、DNAフラグメントY2の「B」処理が施されたサンプル3、DNAフラグメントX2の「A」処理が施されたサンプル1、DNAフラグメントX2の「A」処理が施されたサンプル2、DNAフラグメントX2の「A」処理が施されたサンプル3、DNAフラグメントX2の「B」処理が施されたサンプル1、DNAフラグメントX2の「B」処理が施されたサンプル2、DNAフラグメントX2の「B」処理が施されたサンプル3、での結果を示している。
【図3】図3は、実施例3において、調製されたDNAフラグメントX2のサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M」、10pgDNAフラグメントX2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「1」、1pgDNAフラグメントX2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「2」、0.1pgDNAフラグメントX2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「3」、0pgDNAフラグメントX2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「4」、での結果を示している。
【図4】図4は、実施例3において、調製されたDNAフラグメントY2のサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M」、10pgDNAフラグメントY2/mLTEバッファーの「A」処理が施されたサンプル「1」、1pgDNAフラグメントY2/mLTEバッファーの「A」処理が施されたサンプル「2」、0.1pgDNAフラグメントY2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「3」、0pgDNAフラグメントY2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「4」、での結果を示している。
【図5】図5は、実施例4において、調製されたDNAフラグメントX2のサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M」、10pgDNAフラグメントX2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「1」、1pgDNAフラグメントX2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「2」、0.1pgDNAフラグメントX2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「3」、0pgDNAフラグメントX2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「4」、での結果を示している。
【図6】図6は、実施例4において、調製されたDNAフラグメントY2のサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M」、10pgDNAフラグメントY2/mLらっと血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「1」、1pgDNAフラグメントY2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「2」、0.1pgDNAフラグメントY2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「3」、0pgDNAフラグメントY2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「4」、での結果を示している。
【図7】図7は、実施例5において、調製されたサンプル「(I)」に、「A(無処理)」、「B(HpaII処理)」、「C(HhaI処理)」又は「D(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号17で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAの量をリアルタイムPCRにて測定した結果を示した図である。 図中の縦軸は、「A」処理が施されたサンプルでのDNAの量を1とした場合の相対値を示している(3回の平均値±標準偏差)。また、理論値とは、B群、C群、D群で予想される計算値(メチル化割合)を示している。
【図8】図8は、実施例5において、調製されたサンプル「(II)」に、「A(無処理)」、「B(HpaII処理)」、「C(HhaI処理)」又は「D(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号17で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAの量をリアルタイムPCRにて測定した結果を示した図である。 図中の縦軸は、「A」処理が施されたサンプルでのDNAの量を1とした場合の相対値を示している(3回の平均値±標準偏差)。また、理論値とは、B群、C群、D群で予想される計算値(メチル化割合)を示している。
【図9】図9は、実施例5において、調製されたサンプル「(III)」に、「A(無処理)」、「B(HpaII処理)」、「C(HhaI処理)」又は「D(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号17で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAの量をリアルタイムPCRにて測定した結果を示した図である。 図中の縦軸は、「A」処理が施されたサンプルでのDNAの量を1とした場合の相対値を示している(3回の平均値±標準偏差)。また、理論値とは、B群、C群、D群で予想される計算値(メチル化割合)を示している。
【図10】図10は、実施例5において、調製されたサンプル「(IV)」に、「A(無処理)」、「B(HpaII処理)」、「C(HhaI処理)」又は「D(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号17で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAの量をリアルタイムPCRにて測定した結果を示した図である。 図中の縦軸は、「A」処理が施されたサンプルでのDNAの量を1とした場合の相対値を示している(3回の平均値±標準偏差)。また、理論値とは、B群、C群、D群で予想される計算値(メチル化割合)を示している。
【図11】図11は、実施例5において、調製されたサンプル「(V)」に、「A(無処理)」、「B(HpaII処理)」、「C(HhaI処理)」又は「D(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号17で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAの量をリアルタイムPCRにて測定した結果を示した図である。 図中の縦軸は、「A」処理が施されたサンプルでのDNAの量を1とした場合の相対値を示している(3回の平均値±標準偏差)。また、理論値とは、B群、C群、D群で予想される計算値(メチル化割合)を示している。
【0116】
[配列表フリーテキスト]
配列番号19
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号20
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号21
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号23
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号24
リアルタイムPCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプローブ
配列番号26
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号27
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号28
支持体への固定化のために設計されたビオチン標識オリゴヌクレオチド
配列番号29
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号30
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるDNAのメチル化状態を評価するための方法としては、例えば、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法が存在している(例えば、非特許文献1及び2参照)。
当該測定方法では、まず、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、目的とするDNA領域を含むDNAを抽出する必要がある。当該抽出方法としては、例えば、ゲル濾過、シリカ担体、有機溶媒等による抽出方法等が知られているが、いずれの抽出方法も操作が煩雑である。
次いで、抽出されたDNAの目的領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法としては、例えば、(1)亜硫酸塩等を用いて当該DNAを修飾した後、DNAポリメラーゼによるDNA合成の連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;以下、PCRと記すこともある。)に供することにより目的領域を増幅する方法、(2)メチル化感受性制限酵素を用いて当該DNAを消化した後、PCRに供することにより、目的領域を増幅する方法等を挙げることができる。
【0003】
【非特許文献1】Clark SJ, Harrison J, Paul CL, Frommer M., High sensitivity mapping of methylated cytosines. Nucleic Acids Res. 1994 Aug 11;22(15):2990-7.
【非特許文献2】Ushijima T, Morimura K, Hosoya Y, Okonogi H, Tatematsu M, Sugimura T, Nagao M., Establishment of methylation-sensitive- representational difference analysis and isolation of hypo- and hypermethylated genomic fragments in mouse liver tumors.Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Mar 18;94(6):2284-9.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のいずれの方法とも、PCRに供するまでの操作(具体的には例えば、メチル化検出のためのDNAの修飾及びその後の生成物の精製等)に非常に時間と労力とを要し、さらに、PCRが増幅しようとする目的領域のDNAの塩基配列に対して相補的な1組のオリゴヌクレオチドプライマー(以下、プライマー対と記すこともある。)を用いて液相中にて行われるために、増幅されたDNA断片を精製した後、これをPCRのための反応容器へ移し換える操作、また目的領域を増幅させるための前記のプライマー対を含む反応試薬を反応系に添加するための操作等も必要である。更に、増幅しようとする目的領域のDNAの増幅を確認するために、電気泳動等の分析操作に供する必要もあり、しかもその操作は極めて繁雑である。
このように、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定するための一連の操作には、多大な手間が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる状況下鋭意検討した結果、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法であって、
(1)生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の一本鎖DNAを選択し、選択された一本鎖DNAと前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成させる第一工程、
(2)第一工程で結合形成させた二本鎖DNAを少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理した後、生成した遊離の消化物(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA)を除去する第二工程、及び、
(3)下記の各本工程の前工程として、第二工程で得られた未消化物である結合形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない結合形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(第一前工程)と、
生成した遊離の一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の生成した遊離の一本鎖状態であるDNAを選択し、選択された一本鎖DNAと前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成させる工程(第二(A)前工程)と、
当該工程(第二(A)前工程)で結合形成された二本鎖DNAを、前記の選択された一本鎖DNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の選択された一本鎖DNAを伸長形成された二本鎖DNAとする工程(第二(B)前工程)と
を有する工程(第二前工程)と、
第二前工程で伸長形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を、一本鎖状態であるDNA(正鎖)と一本鎖状態であるDNA(負鎖)に一旦分離する工程(第三前工程)とを有し、且つ、本工程として
(a)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第A1工程と、第A1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第A2工程とを有する第A工程(本工程)と、
(b)生成した一本鎖状態であるDNA(負鎖)を鋳型として、前記の一本鎖状態であるDNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’末端よりさらに3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有し、且つ、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドを鋳型とする伸長反応に利用できない伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、当該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第B工程(本工程)とを有し、
さらに第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すことにより、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第三工程、
を有することを特徴とする方法(以下、本発明測定方法と記すこともある。);
2.第一工程において、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させる際に、二価陽イオンを含有する反応系中で結合させることを特徴とする前項1記載の方法。
3.二価陽イオンがマグネシウムイオンであることを特徴とする前項2記載の方法。
4.前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の第一前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程);
5.前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の第一前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第二工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法(以下、本発明メチル化割合測定方法と記すこともある。)
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程);
6.前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の第三前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程);
7.前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の第三前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第二工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
前項1〜3のいずれかの前項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程);
8.前項1〜7のいずれかの前項記載の方法の工程として、下記の2つの工程をさらに追加的に有することを特徴とするメチル化割合の測定方法。
(4)前項1〜7のいずれかの前項記載の方法の第一工程を行った後、前項1〜8のいずれかの前項記載の方法の第二工程を行うことなく、前項1〜7のいずれかの項記載の方法における第三工程を行うことにより、前記の目的とするDNA領域のDNA(メチル化されたDNA及びメチルされていないDNAの総量)を検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第四工程、及び、
(5)前項1〜7のいずれかの前項記載の第三工程により定量されたDNAの量と、第四工程により定量されたDNAの量とを比較することにより得られる差異に基づき前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの割合を算出する第五工程;
9.生物由来検体が、哺乳動物の血清又は血漿であることを特徴とする前項1〜8のいずれかの前項記載の方法;
10.生物由来検体が、哺乳動物の血液又は体液であることを特徴とする前項1〜8のいずれかの前項記載の方法;
11.生物由来検体が、細胞溶解液又は組織溶解液であることを特徴とする前項1〜8のいずれかの前項記載の方法;
12.生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、当該ゲノムDNAが有する目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA試料であることを特徴とする前項1〜11のいずれかの前項記載の方法;
13.生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理されてなるDNA試料であることを特徴とする前項1〜12のいずれかの前項記載の方法;
14.生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、予め精製されてなるDNA試料であることを特徴とする前項1〜13のいずれかの前項記載の方法;
15.少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素が、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域の中に認識切断部位を有する制限酵素であることを特徴とする前項1〜12のいずれかの前項記載の方法;
16.少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素が、メチル化感受性制限酵素であるHpaII又はHhaIであることを特徴とする前項1〜14のいずれかの前項記載の方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を簡便に測定する方法等を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明における「生物由来検体」としては、例えば、細胞溶解液、組織溶解液(ここでの組織とは、血液、リンパ節等を含む広義の意味である。)若しくは、哺乳動物においては、血漿、血清、リンパ液等の体液、体分泌物(尿や乳汁等)等の生体試料及びこれら生体試料から抽出して得られたゲノムDNAをあげることができる。また当該生物由来検体としては、例えば、微生物、ウイルス等由来の試料もあげられ、この場合には、本発明測定方法における「ゲノムDNA」とは、微生物、ウイルスのゲノムDNAを意味するものである。
哺乳動物由来の検体が血液である場合には、定期健康診断や簡便な検査等での本発明測定方法の利用が期待できる。
ゲノムDNAを哺乳動物由来の検体から得るには、例えば、市販のDNA抽出用キット等を用いてDNAを抽出すればよい。
因みに、血液を検体として用いる場合には、血液から通常の方法に準じて血漿又は血清を調製し、調製された血漿又は血清を検体として、その中に含まれる遊離DNA(胃癌細胞等の癌細胞由来のDNAが含まれる)を分析すると、血球由来のDNAを避けて胃癌細胞等の癌細胞由来のDNAを解析することができ、胃癌細胞等の癌細胞、それを含む組織等を検出する感度を向上させることができる。
【0008】
本発明における「メチル化されたDNA」とは、下記のようなDNAを意味するものである。通常、遺伝子(ゲノムDNA)を構成する塩基は4種類である。これらの塩基のうち、シトシンのみがメチル化されるという現象が知られており、このようなDNAのメチル化修飾は、5’−CG−3’で示される塩基配列(Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表す。以下、当該塩基配列を「CpG」と記すこともある。)中のシトシンに限られている。シトシンにおいてメチル化される部位は、その5位である。細胞分裂に先立つDNA複製に際して、複製直後は鋳型鎖の「CpG」中のシトシンのみがメチル化された状態となるが、メチル基転移酵素の働きにより即座に新生鎖の「CpG」中のシトシンもメチル化される。従って、DNAのメチル化の状態は、DNA複製後も、新しい2組のDNAにそのまま引き継がれることになる。このようなメチル化修飾により生じたDNAを意味するものである。
本発明における「CpG対」とは、CpGで示される塩基配列と、これに相補するCpGが結合してなる二本鎖オリゴヌクレオチドを意味するものである。
【0009】
本発明における「目的とするDNA領域」(以下、目的領域と記すこともある。)は、当該領域に含まれるシトシンのメチル化有無を調べたいDNA領域であって、少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素の認識部位を有するものであり、例えば、Lysyl oxidase、HRAS-like suppressor、bA305P22.2.1、Gamma filamin、HAND1、Homologue of RIKEN 2210016F16、FLJ32130、PPARG angiopoietin-related protein、Thrombomodulin、p53-responsive gene 2、Fibrillin2、Neurofilament3、disintegrin and metalloproteinase domain 23、G protein-coupled receptor 7、G-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor、Solute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2等の有用タンパク質遺伝子のプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列中のシトシンを含むDNAの領域等を挙げることができる。
【0010】
具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子がLysyl oxidase遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のLysyl oxidase遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号1で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF270645に記載される塩基配列の塩基番号16001〜18661で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号1で示される塩基配列においては、ヒト由来のLysyl oxidaseタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2031〜2033に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号1957〜2661に示されている。配列番号1で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号1で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号1で示される塩基配列において、塩基番号1539、1560、1574、1600、1623、1635、1644、1654、1661、1682、1686、1696、1717、1767、1774、1783、1785、1787、1795等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0011】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子がHRAS-like suppressor遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHRAS-like suppressor遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号2で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC068162に記載される塩基配列の塩基番号172001〜173953で示される塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号2で示される塩基配列においては、ヒト由来のHRAS-like suppressor遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1743〜1953に示されている。配列番号2で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号2で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号2で示される塩基配列において、塩基番号1316、1341、1357、1359、1362、1374、1390、1399、1405、1409、1414、1416、1422、1428、1434、1449、1451、1454、1463、1469、1477、1479、1483、1488、1492、1494、1496、1498、1504、1510、1513、1518、1520等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0012】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、bA305P22.2.1遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のbA305P22.2.1遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号3で示される塩基配列(Genbank Accession No.AL121673に記載される塩基配列の塩基番号13001〜13889で示される塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号3で示される塩基配列においては、ヒト由来のbA305P22.2.1タンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号849〜851に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号663〜889に示されている。配列番号3で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号3で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号3で示される塩基配列において、塩基番号329、335、337、351、363、373、405、424、427、446、465、472、486等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0013】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Gamma filamin遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のGamma filamin遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号4で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC074373に記載される塩基配列の塩基番号63528〜64390で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号4で示される塩基配列においては、ヒト由来のGamma filaminタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号572〜574に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号463〜863に示されている。配列番号4で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号4で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号4で示される塩基配列において、塩基番号329、333、337、350、353、360、363、370、379、382、384、409、414、419、426、432、434、445、449、459、472、474、486、490、503、505等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0014】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、HAND1遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHAND1遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号5で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC026688に記載される塩基配列の塩基番号24303〜26500で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号5で示される塩基配列においては、ヒト由来のHAND1タンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号1656〜1658に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号1400〜2198に示されている。配列番号5で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号5で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号5で示される塩基配列において、塩基番号1153、1160、1178、1187、1193、1218、1232、1266、1272、1292、1305、1307、1316、1356、1377、1399、1401、1422、1434等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0015】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Homologue of RIKEN 2210016F16遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHomologue of RIKEN 2210016F16遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号6で示される塩基配列(Genbank Accession No.AL354733に記載される塩基配列の塩基番号157056〜159000で示される塩基配列の相補的塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号6で示される塩基配列においては、ヒト由来のHomologue of RIKEN 2210016F16タンパク質のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1392〜1945に示されている。配列番号6で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号6で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号6で示される塩基配列において、塩基番号1172、1175、1180、1183、1189、1204、1209、1267、1271、1278、1281、1313、1319、1332、1334、1338、1346、1352、1358、1366、1378、1392、1402、1433、1436、1438等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0016】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、FLJ32130遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のFLJ32130遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号7で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC002310に記載される塩基配列の塩基番号1〜2379で示される塩基配列の相補的塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号7で示される塩基配列においては、ヒト由来のFLJ32130タンパク質のアミノ酸末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2136〜2138に示されており、上記エクソン1と考えられる塩基配列は、塩基番号2136〜2379に示されている。配列番号7で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号7で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号7で示される塩基配列において、塩基番号1714、1716、1749、1753、1762、1795、1814、1894、1911、1915、1925、1940、1955、1968等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0017】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、PPARG angiopoietin-related protein遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のPPARG angiopoietin-related protein遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号8で示される塩基配列があげられる。配列番号8で示される塩基配列においては、ヒト由来のPPARG angiopoietin-related proteinタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号717〜719に示されており、上記エクソン1の5’側部分の塩基配列は、塩基番号1957〜2661に示されている。配列番号8で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号8で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号8で示される塩基配列において、塩基番号35、43、51、54、75、85、107、127、129、143、184、194、223、227、236、251、258等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0018】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Thrombomodulin遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のThrombomodulin遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号9で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF495471に記載される塩基配列の塩基番号1〜6096で示される塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号9で示される塩基配列においては、ヒト由来のThrombomodulinタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2590〜2592に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号2048〜6096に示されている。配列番号9で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号9で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号9で示される塩基配列において、塩基番号1539、1551、1571、1579、1581、1585、1595、1598、1601、1621、1632、1638、1645、1648、1665、1667、1680、1698、1710、1724、1726、1756等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0019】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、p53-responsive gene 2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のp53-responsive gene 2遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号10で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009471に記載される塩基配列の塩基番号113501〜116000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号10で示される塩基配列においては、ヒト由来のp53-responsive gene 2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1558〜1808に示されている。配列番号10で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号10で示される塩基配列において、塩基番号1282、1284、1301、1308、1315、1319、1349、1351、1357、1361、1365、1378、1383等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0020】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Fibrillin2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のFibrillin2遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号11で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC113387に記載される塩基配列の塩基番号118801〜121000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号11で示される塩基配列においては、ヒト由来のFibrillin2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1091〜1345に示されている。配列番号11で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号11で示される塩基配列において、塩基番号679、687、690、699、746、773、777、783、795、799、812、823、830、834、843等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0021】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Neurofilament3遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のNeurofilament3遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号12で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF106564に記載される塩基配列の塩基番号28001〜30000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号12で示される塩基配列においては、ヒト由来のNeurofilament3遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号614〜1694に示されている。配列番号12で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号12で示される塩基配列において、塩基番号428、432、443、451、471、475、482、491、499、503、506、514、519、532、541、544、546、563、566、572、580等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0022】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、disintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のdisintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号13で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009225に記載される塩基配列の塩基番号21001〜23300で示される塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号13で示される塩基配列においては、ヒト由来のdisintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1194〜1630に示されている。配列番号13で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号13で示される塩基配列において、塩基番号998、1003、1007、1011、1016、1018、1020、1026、1028、1031、1035、1041、1043、1045、1051、1053、1056、1060、1066、1068、1070、1073、1093、1096、1106、1112、1120、1124、1126等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0023】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、G protein-coupled receptor 7遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のG protein-coupled receptor 7遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号14で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009800に記載される塩基配列の塩基番号75001〜78000で示される塩基配列に相当する。)があげられる。配列番号14で示される塩基配列においては、ヒト由来のG protein-coupled receptor 7遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1666〜2652に示されている。配列番号14で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号14で示される塩基配列において、塩基番号1480、1482、1485、1496、1513、1526、1542、1560、1564、1568、1570、1580、1590、1603、1613、1620等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0024】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、G-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、のプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のG-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号15で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC008971に記載される塩基配列の塩基番号57001〜60000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号15で示される塩基配列においては、ヒト由来のG-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号776〜2632に示されている。配列番号15で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号15で示される塩基配列において、塩基番号470、472、490、497、504、506、509、514、522、540、543、552、566、582、597、610、612等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0025】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Solute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のSolute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列をあげることができ、より具体的には、配列番号16で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC026802に記載される塩基配列の塩基番号78801〜81000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)があげられる。配列番号16で示される塩基配列においては、ヒト由来のSolute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1479〜1804に示されている。配列番号16で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。さらに具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号16で示される塩基配列において、塩基番号1002、1010、1019、1021、1051、1056、1061、1063、1080、1099、1110、1139、1141、1164、1169、1184等で示される塩基番号であるシトシンをあげることができる。
【0026】
本発明における「(目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、)増幅されたDNAの量」とは、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的領域におけるメチル化されたDNAの増幅後の量そのもの、即ち、本発明測定方法の第三工程で求めた量を意味するものである。例えば、生物由来検体が1mLの血清であった場合には、血清1mL中に含まれる前記のメチル化されたDNAに基づいて増幅されたDNAの量を意味する。
【0027】
本発明(特に、本発明メチル化割合測定方法)における「メチル化割合」とは、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの増幅後の量とメチル化されていないDNAの増幅後の量との合計量を、メチル化されたDNAの増幅後の量で除した数値を意味するものである。
【0028】
本発明における「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA」とは、二本鎖DNAにおける前記制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対におけるシトシンの両者がメチル化されていないシトシンである二本鎖DNA、即ち、二本鎖DNAにおける前記制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対において、正鎖DNAのシトシンとこれに対応する負鎖DNAのシトシンとの両者が共にメチル化されていないシトシンである二本鎖DNAを意味するものである。また「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA」とは、二本鎖DNAにおける前記制限酵素の認識部位の中に存在している全てのCpG対におけるシトシンの一方がメチル化されており、他方がメチル化されていないシトシンである二本鎖DNA、即ち、二本鎖DNAにおける前記制限酵素の認識部位の中に存在している全てのCpG対において、正鎖DNAのシトシンとこれに対応する負鎖DNAのシトシンとのいずれか一方がメチル化されており、他方がメチル化されていないシトシンである二本鎖DNAを意味するものである。
【0029】
本発明測定方法の第一工程において、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の一本鎖DNAを、当該一本鎖DNAと一本鎖固定化オリゴヌクレオチドが結合してなる二本鎖DNA(即ち、結合形成させた二本鎖DNA)として選択する。
本発明測定方法の第一工程における「一本鎖固定化オリゴヌクレオチド」は、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の目的とするDNA領域の全てに対して相補性である塩基配列、または、目的とするDNA領域の一部分であって、且つ、目的とするDNA領域の3’末端を含む領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(以下、本固定化オリゴヌクレオチドと記すこともある。)である。
本固定化オリゴヌクレオチドは、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を選択するために用いられる。本固定化オリゴヌクレオチドは、5〜1000塩基長であることが好ましく、より具体的には20〜200塩基長であることが望ましい。
本固定化オリゴヌクレオチドの5’末端側は、担体と固定化され得るものであり、一方その3’末端側は、後述する第二前工程及び第A2工程により5’末端から3’末端に向かって進行する一回伸長反応が可能なようにフリーな状態であればよい。ここで「担体と固定化され得るもの」とは、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を選択する際に本固定化オリゴヌクレオチドが担体に固定化されていればよく、(1)当該一本鎖DNA(正鎖)と本固定化オリゴヌクレオチドとの結合前の段階で、本固定化オリゴヌクレオチドと担体との結合により固定化されるものであってもよく、また(2)当該一本鎖DNA(正鎖)と本固定化オリゴヌクレオチドとの結合後の段階で、本固定化オリゴヌクレオチドと担体との結合により固定化されるものであってもよい。
このような構造を得るには、オリゴヌクレオチドの5’末端を通常の遺伝子工学的な操作方法又は市販のキット・装置等に従い、担体に固定すればよい(固相への結合)。具体的には例えば、本オリゴヌクレオチドの5’末端をビオチン化した後、得られたビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体(例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブ、ストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズ等)に固定する方法を挙げることができる。
また、本オリゴヌクレオチドの5’末端側に、アミノ基、アルデヒド基、チオール基等の活性官能基を有する分子を共有結合させた後、これを表面がシランカップリング剤等で活性化させたガラス、シリカ若しくは耐熱性プラスチック製の支持体に、例えば、トリグリセリドを5個直列に連結したもの等のスペーサー、クロスリンカー等を介して共有結合させる方法も挙げられる。またさらに、ガラス若しくはシリコン製の支持体の上で直接、本オリゴヌクレオチドの5’末端側から化学合成させる方法も挙げられる。
【0030】
本発明測定方法の第一工程は、具体的には例えば、本固定化オリゴヌクレオチドがビオチン化オリゴヌクレオチドの場合には、
(a)まず、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に、アニーリングバッファー及びビオチン化オリゴヌクレオチド(当該一本鎖DNA(正鎖)と本固定化オリゴヌクレオチドとの結合後の段階で、本固定化オリゴヌクレオチドと担体との結合により固定化されるものであるために、現段階では遊離状態にあるもの)を添加することにより、混合物を得る。次いで、得られた混合物を、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で数分間加熱する。その後、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、ビオチン化オリゴヌクレオチドのTm値の約10〜20℃低い温度まで速やかに冷却し、その温度で数分間保温する。
(b)その後、室温に戻す。
(c)ストレプトアビジンで被覆した支持体に、上記(b)で得られた混合物を添加し、さらに、これを37℃で数分間保温することにより、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定する。
因みに、前述の如く、上記(a)〜(c)では、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの結合を、ビオチン化オリゴヌクレオチドとストレプトアビジンで被覆した支持体との固定よりも前段階で実施しているが、この順番は、どちらが先でも構わない。即ち、例えば、ストレプトアビジンで被覆した支持体に固定化されたビオチン化オリゴヌクレオチドに、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料を添加することにより混合物を得て、得られた混合物を生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で数分間加熱し、その後ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、ビオチン化オリゴヌクレオチドのTm値の約10〜20℃低い温度まで速やかに冷却し、その温度で数分間保温してもよい。
(d)このようにしてビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定した後、残溶液の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。
より具体的には例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブを使用する場合には、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、これに生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加し、その後当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。またストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを使用する場合には、磁石によりビーズを固定した後、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加し、その後当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。
次いで、このような操作を数回実施することにより、残溶液の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。
当該操作は、固定化されていないDNA、又は、後述の制限酵素で消化された溶液中に浮遊しているDNA、を反応溶液から取り除くため、重要である。これら操作が不十分であれば、反応溶液中に浮遊しているDNAが鋳型となり、増幅反応で予期せぬ増幅産物が得られることとなる。支持体と生物由来検体中DNAとの非特異的結合を避けるためには、目的領域とはまったく異なる塩基配列を有するDNA(例えば、ヒトの生物由来検体の場合は、ラットDNA等)を大量に生物由来検体に添加し、上記の操作を実施すればよい。
本発明測定方法の第一工程における好ましい態様としては、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させる際に、二価陽イオンを含有する反応系中で結合させることを挙げることができる。より好ましくは、二価陽イオンがマグネシウムイオンであることが挙げられる。ここで「二価陽イオンを含有する反応系」とは、前記一本鎖DNA(正鎖)と前記一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させるために用いられるアニーリングバッファー中に二価陽イオンを含有するような反応系を意味し、具体的には例えば、マグネシウムイオンを構成要素とする塩(例えば、MgOAc2、MgCl2等)を1mM〜600mMの濃度で含まれることがよい。
【0031】
本発明測定方法の第二工程において、第一工程で結合形成された二本鎖DNAを少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理した後、生成した遊離の消化物(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA)を除去する。
本発明測定方法の第二工程における「メチル化感受性制限酵素」とは、例えば、メチル化されたシトシンを含む認識配列を消化せず、メチル化されていないシトシンを含む認識配列のみを消化することのできる制限酵素等を意味する。即ち、メチル化感受性制限酵素が本来認識することができる認識配列に含まれるシトシンがメチル化されているDNAの場合には、当該メチル化感受性制限酵素を当該DNAに作用させても、当該DNAは切断されない。これに対して、メチル化感受性制限酵素が本来認識することができる認識配列に含まれるシトシンがメチル化されていないDNAの場合には、当該メチル化感受性制限酵素を当該DNAに作用させれば、当該DNAは切断される。このようなメチル化感受性酵素の具体的な例としては、例えば、HpaII、BstUI、NarI、SacII、HhaI等を挙げることができる。尚、前記のメチル化感受性制限酵素は、ヘミメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA(即ち、前記CpG対のうち、一方の鎖のシトシンがメチル化されており、他方の鎖のシトシンがメチル化されていないような二本鎖DNA)を切断しないものであり、すでにGruenbaumらにより明らかにされている(Nucleic Acid Research, 9、 2509-2515)。
【0032】
当該メチル化感受性制限酵素による消化の有無を調べる方法としては、具体的には例えば、前記DNAを鋳型とし、解析対象とするシトシンを認識配列に含むDNAを増幅可能なプライマー対を用いてPCRを行い、DNAの増幅(増幅産物)の有無を調べる方法をあげることができる。解析対象とするシトシンがメチル化されている場合には、増幅産物が得られる。一方、解析対象とするシトシンがメチル化されていない場合には、増幅産物が得られない。このようにして、増幅されたDNAの量を比較することにより、解析対象となるシトシンのメチル化されている割合を測定することができる。
因みに、第一工程で選択された二本鎖DNAにおいて、前述の如く、負鎖としての一本鎖固定化オリゴヌクレオチドに含まれるシトシンはメチル化されていない状態であり、正鎖側のDNA鎖に含まれるシトシンは生物由来検体中に含まれるゲノムDNAのDNAに含まれるシトシンがメチル化されていたか、それともメチル化されていなかったかにより、当該二本鎖DNAの状態がアンメチル状態であるか否かが決まる。即ち、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAがメチル化されていれば、得られた二本鎖DNAはヘミメチル状態(アンメチル状態ではない状態。負鎖:メチル化されていない状態、正鎖:メチル化されている状態)であり、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAがメチル化されていなければ、得られた二本鎖DNAはアンメチル状態(負鎖:メチル化されていない状態、正鎖:メチル化されていない状態)である。従って、前記のメチル化感受性制限酵素がヘミメチル状態である二本鎖DNAを切断しないという特性を利用することにより、前記の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対におけるシトシンがメチル化されていたか否かを区別することができる。即ち、前記のメチル化感受性制限酵素で消化処理することにより、仮に生物由来検体生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対におけるシトシンがメチル化されていないのであれば、当該二本鎖DNAはアンメチル状態であり、当該メチル化感受性制限酵素により切断される。また仮に生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している全てのCpG対におけるシトシンがメチル化されていたのであれば、当該二本鎖DNAはヘミメチル状態であり、当該メチル化感受性制限酵素により切断されない。従って、消化処理を実施した後、後述のように、前記の目的とするDNA領域を増幅可能な一対のプライマーを用いたPCRを実施することにより、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対におけるシトシンがメチル化されていないのであれば、PCRによる増幅産物は得られず、一方、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している全てのCpG対におけるシトシンがメチル化されていたのであれば、PCRによる増幅産物が得られることになる。
【0033】
本発明測定方法の第二工程は、具体的には例えば、本固定化オリゴヌクレオチドがビオチン化オリゴヌクレオチドの場合には、以下のように実施すればよい。第一工程で生成した二本鎖DNAに、最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μL、1mg/mL BSA水溶液を3μL、メチル化感受性制限酵素HpaII又はHhaI(10U/μL)等を夫々1.5μL加え、次いで当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとし、37℃で1時間〜3時間インキュベーションすればよい。
【0034】
このようにして第一工程で結合形成された二本鎖DNAを少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理した後、生成した遊離の消化物(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA)の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。
より具体的には例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブを使用する場合には、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、これに生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。またストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを使用する場合は、磁石によりビーズを固定した後、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。
次いで、このような操作を数回実施することにより、消化物(前記制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA)除去及び洗浄(DNA精製)する。
【0035】
尚、本発明測定方法の第二工程におけるメチル化感受性制限酵素による消化処理での懸念点として、メチル化されていないシトシンを含む認識配列を完全に消化できない(所謂「DNAの切れ残し」)虞を挙げることができる。このような虞が問題となる場合には、メチル化感受性制限酵素の認識部位が多く存在すれば、「DNAの切れ残し」を最小限に抑えることができるので、目的とするDNA領域としては、メチル化感受性制限酵素の認識部位を少なくとも1つ以上有しており、その認識部位が多ければ多いほどよいと考えられる。
従って、本発明測定方法の第二工程において複数のメチル化感受性制限酵素による処理を実施する場合には、具体的には例えば、以下のように行えばよい。第一工程で選択された二本鎖DNAに、最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μL、1mg/mL BSA水溶液を3μL、メチル化感受性酵素HpaII及びHhaI(10U/μL)等を夫々1.5μL加え、次いで当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとし、37℃で1時間〜3時間インキュベーションする。その後、前記と同様な操作に準じて、ピペッティング又はデカンテーションにより、残溶液の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。より具体的には例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブを使用する場合には、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、これに生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。またストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを使用する場合は、磁石によりビーズを固定した後、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。
次いで、このような操作を数回実施することにより、残溶液の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。
【0036】
尚、本発明測定方法又は後述のメチル化割合測定方法において、「生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料」が、当該ゲノムDNAが有する目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA試料であることを好ましい態様の一つとして挙げることができる。ここで、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA(鋳型DNA)を一本鎖固定化オリゴヌクレオチドで選択する場合には、短い鋳型DNAの方がより選択され易く、また、PCRで目的領域を増幅する場合にも、鋳型DNAが短い方がよいと考えられるので、目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素を生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に直接使用し消化処理を実施してもよい。尚、目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素により消化処理する方法としては、一般的な制限酵素処理法を用いればよい。
また、「生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料」が、少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理されてなるDNA試料であることを好ましい態様の一つとして挙げることができる。
これらの好ましい態様は、生物由来検体そのものを予め上記のような制限酵素で消化処理しておくことにより、メチル化量を精度良く求めることができるためである。当該方法は、上記のような「DNAの切れ残し」を無くすのに有用である。
生物由来検体に含まれるゲノムDNA由来の試料をメチル化感受性制限酵素により消化する方法としては、生物由来検体がゲノムDNA自体の場合には前記の方法と同様な方法でよく、生物由来検体が組織溶解液、細胞溶解液等の場合には前記の方法と同様な方法に準じて、大過剰のメチル化感受性制限酵素、例えば、25ngのDNA量に対して500倍量(10U)又はそれ以上のメチル化感受性制限酵素を用いて消化処理を実施すればよい。
【0037】
本発明測定方法の第三工程において、下記の各本工程の前工程として、第二工程で得られた未消化物である結合形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(第一前工程)と、
生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の生成した遊離の一本鎖状態であるDNAを選択し、選択された一本鎖DNAと前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成させる工程(第二(A)前工程)と、
当該工程(第二(A)前工程)で結合形成された二本鎖DNAを、前記の選択された一本鎖DNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の選択された一本鎖DNAを伸長形成された二本鎖DNAとする工程(第二(B)前工程)と
を有する工程(第二前工程)と、
第二前工程で伸長形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を、一本鎖状態であるDNA(正鎖)と一本鎖状態であるDNA(負鎖)に一旦分離する工程(第三前工程)とを有し、且つ、本工程として
(a)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第A1工程と、第A1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第A2工程とを有する第A工程(本工程)と、
(b)生成した一本鎖状態であるDNA(負鎖)を鋳型として、前記の一本鎖状態であるDNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’末端よりさらに3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有し、且つ、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドを鋳型とする伸長反応に利用できない伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、当該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第B工程(本工程)とを有し、
さらに第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNA(を一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すことにより、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する。
【0038】
本発明測定方法の第三工程では、まず、下記の各本工程の前工程のうち第一前工程として、第二工程で得られた未消化物である結合形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する。具体的には例えば、第二工程で得られた未消化物である結合形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない二本鎖DNA)に、アニーリングバッファーを添加することにより、混合物を得る。次いで、得られた混合物を95℃で数分間加熱する。その後、第二前工程における第二(A)前工程では、具体的に例えば、第一工程に準じて実施すれば良く、メチル化状態の一本鎖DNAと本固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成される。これにより、当該二本鎖DNAが選択可能となる。
第二(B)前工程においては、具体的には例えば、本固定化オリゴヌクレオチドがビオチン化オリゴヌクレオチドの場合には、以下のように実施すればよい。
二本鎖DNAとして選択されたメチル化状態の一本鎖DNAと一本鎖固定化オリゴヌクレオチドに、滅菌超純水を17.85μL、最適な10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2)を3μL、2mM dNTPを3μL、5N ベタインを6μL加え、次いで当該混合物にAmpliTaq(DNAポリメラーゼの1種:5U/μL)を0.15μL加えて液量を30μLとし、37℃で2時間インキュベーションする。その後、インキュベーションされた溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、これに生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加し、当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。
より具体的には例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブを使用する場合には、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、これに生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加し、その後当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。またストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを使用する場合には、磁石によりビーズを固定した後、まず溶液をピペッティング又はデカンテーションにより取り除いた後、生物由来検体の容量と略等量のTEバッファーを添加し、その後当該TEバッファーをピペッティング又はデカンテーションにより取り除けばよい。
次いで、このような操作を数回実施することにより、残溶液の除去及び洗浄(DNA精製)を行う。
第三前工程においては、第二(B)前工程で得られた伸長形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を、一本鎖状態であるDNA(正鎖)と一本鎖状態であるDNA(負鎖)に一旦分離する。具体的には例えば、第二(B)前工程で得られた二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない二本鎖DNA)に、アニーリングバッファーを添加することにより、混合物を得る。次いで、得られた混合物をを95℃で数分間加熱する。
その後、本工程として、
(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)を、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(負鎖)にアニーリングさせるために、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(負鎖)のTm値の約10〜20℃低い温度まで速やかに冷却し、その温度で数分間保温する。
(ii)その後、室温に戻す。(第A工程における第A1工程)
(iii)上記(i)で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる(即ち、第A工程における第A2工程)。具体的には例えば、後述の説明や前述の本発明測定方法の第二(B)前工程における伸長反応での操作方法等に準じて実施すればよい。
(iv)生成した一本鎖状態であるDNA(負鎖)を鋳型として、前記の一本鎖状態であるDNAが有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’末端よりさらに3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有し、且つ、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドを鋳型とする伸長反応に利用できない伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、当該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする(即ち、第B工程)。具体的には例えば、上記(iii)と同様に、後述の説明や前述の本発明測定方法の第二(B)前工程における伸長反応での操作方法等に準じて実施すればよい。
(v)さらに第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すこと(例えば、第A工程及び第B工程)により、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する。具体的には例えば、上記と同様に、後述の説明や前述の本発明測定方法の第三工程における第二(B)前工程、第A工程及び第B工程での操作方法等に準じて実施すればよい。
尚、リバース用プライマーとして、一本鎖固定化オリゴヌクレオチドを鋳型として伸長反応に利用できない伸長プライマーを用いることで、第三工程で伸長形成されていない一本鎖(固定化)オリゴヌクレオチドを増幅することなく、第二(B)前工程で伸長形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない二本鎖DNA)を特異的に増幅できる。
【0039】
第三工程は、具体的には、第一前工程から開始して本工程に至るまでの反応を、一つのPCR反応として実施することもできる。また、第一前工程から第三前工程まで、各々、独立した反応を実施し、本工程のみをPCR反応として実施することもできる。
【0040】
メチル化感受性制限酵素による消化処理の後に目的とするDNA領域(即ち、目的領域)を増幅する方法としては、例えば、PCRを用いることができる。目的領域を増幅する際に、片側のプライマーとして本固定化オリゴヌクレオチドを用いることができるので、もう一方のプライマーのみ添加してPCRを行うことにより、増幅産物が得られ、その増幅産物も固定化されることとなる。この際、予め蛍光等で標識されたプライマーを使用してその標識を指標とすれば、電気泳動等の煩わしい操作を実施せずに増幅産物の有無を評価できる。PCR反応液としては、例えば、本発明測定方法の第二工程で得たDNAに、50μMのプライマーの溶液を0.15μlと、2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、20mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、AmpliTaq Gold (耐熱性DNAポリメラーゼの一種: 5U/μl)を0.2μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとした反応液をあげることができる。
目的とするDNA領域(即ち、目的領域)は、GCリッチな塩基配列が多いため、時に、ベタイン、DMSO等を適量加えて反応を実施してもよい。反応条件としては、例えば、前記のような反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで55〜65℃にて30秒間さらに72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を30〜40サイクル行う条件があげられる。かかるPCRを行った後、得られた増幅産物を検出する。例えば、予め標識されたプライマーを使用した場合には、先と同様の洗浄・精製操作を実施後、固定化された蛍光標識体の量を測定することができる。また、標識されていない通常のプライマーを用いたPCRを実施した場合は、金コロイド粒子、蛍光等で標識したプローブ等をアニーリングさせ、目的領域に結合した当該プローブの量を測定することにより検出することができる。また、増幅産物の量をより精度よく求めるには、例えば、リアルタイムPCR法を用いればよい。リアルタイムPCR法とは、PCRをリアルタイムでモニターし、得られたモニター結果をカイネティックス分析する方法であり、例えば、遺伝子量に関して2倍程度のほんのわずかな差異をも検出できる高精度の定量PCR法として知られる方法である。当該リアルタイムPCR法には、例えば、鋳型依存性核酸ポリメラーゼプローブ等のプローブを用いる方法、サイバーグリーン等のインターカレーターを用いる方法等を挙げることができる。リアルタイムPCR法のための装置及びキットは市販されるものを利用してもよい。以上の如く、検出については特に限定されることはなく、これまでに周知のあらゆる方法による検出が可能である。これら方法では、反応容器を移し換えることなく検出までの操作が可能となる。
【0041】
さらに、一本鎖固定化オリゴヌクレオチドと同じ塩基配列のビオチン化オリゴヌクレオチドを片側のプライマー、又は、一本鎖固定化オリゴヌクレオチドより、3’端側に新しいビオチン化オリゴヌクレオチドを設計しそれを片側のプライマーとし、その相補側プライマーを用いて、目的領域を増幅することもできる。この場合、得られた増幅産物は、ストレプトアビジンで被覆した支持体があれば固定化されるので、例えば、ストレプトアビジンコートPCRチューブでPCRを実施した場合には、チューブ内に固定されるため、上記の通り、標識されたプライマーを用いれば、増幅産物の検出が容易である。また、先の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドが共有結合等による固定化の場合であれば、PCRで得られた増幅産物を含む溶液をストレプトアビジン被覆支持体が存在する容器に移し、増幅産物を固定化することが可能である。検出については、上述の通り実施すればよい。目的領域を増幅する相補側のプライマーは、メチル化感受性制限酵素の認識部位を1つ以上有する目的領域を増幅でき、かつ、その認識部位を含まないプライマーでなければいけない。この理由は、以下の通りである。選択及び1回伸長反応で得られた二本鎖DNAの本固定化オリゴヌクレオチド側のDNA鎖(新生鎖)の一番3’端側のメチル化感受性制限酵素の認識部位のみがメチル化されていない場合には、その部分だけがメチル化感受性制限酵素で消化されることになる。消化後、前述のように洗浄操作を行っても、新生鎖で言う3’端の一部だけを失った二本鎖DNAが固定化されたままの状態で存在する。相補側のプライマーが、この一番3’端側のメチル化感受性制限酵素の認識部位を含んでいた場合には、当該プライマーの3’端側の数塩基が、新生鎖の3’端の数塩基とアニーリングし、その結果、目的領域がPCRにより増幅する可能性があるからである。
【0042】
本発明は、本発明測定方法の第三工程の第一前工程の前操作段階又は後操作段階、或いは、第三工程の第三前工程の前操作段階又は後操作段階において、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有するような変法を含む。
即ち、
【0043】
(変法1)
本発明測定方法の第三工程の第一前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
本発明測定方法の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【0044】
(変法2)
本発明測定方法の第三工程の第一前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第一前工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
本発明測定方法の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法(以下、本発明メチル化割合測定方法と記すこともある。)
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【0045】
(変法3)
本発明測定方法の第三工程の第三前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
本発明測定方法の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【0046】
(変法4)
本発明測定方法の第三工程の第三前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第一前工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
本発明測定方法の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法(以下、本発明メチル化割合測定方法と記すこともある。)
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【0047】
当該変法では、外部から「前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)」を反応系内に添加すること等により、第三工程における前述の目的とするDNA領域の増幅効率を容易に向上させることが可能となる。尚、追加前工程で反応系内に添加される一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)は、一本鎖DNAの3'末端の一部(但し、前記の目的とするDNA領域を含まない。)に対して相補性である塩基配列であって、5'末端が、前記一本鎖固定化オリゴヌクレオチドと同じである塩基配列を有する遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチドであれば、前記一本鎖固定化オリゴヌクレオチドと同じ塩基配列であっても、又は、短い塩基配列であっても、或いは、長い塩基配列であってもよい。但し、前記一本鎖固定化オリゴヌクレオチドよりも長い塩基配列の場合には、前記リバース用プライマー(正鎖)を伸長プライマーとし、当該一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を鋳型として、伸長プライマーを伸長させる反応に利用できない遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチドであることが重要である。
【0048】
目的領域を増幅する際に、片側のプライマーとして固定化オリゴヌクレオチドを用いて、もう一方のプライマーのみ添加してPCRを行う例を前記したが、目的産物の検出のために他の方法(例えば、PCRで得られた各々の増幅産物の量を比較することができる分析方法)を実施するのであれば、上記の如く、目的領域を増幅する際に、固定化オリゴヌクレオチドを一方(片側)のプライマーとして使用せず、一対のプライマーを添加してPCRを実施してもよい。かかるPCRを行った後、得られた増幅産物の量を求める。
【0049】
本発明測定方法の第三工程は繰り返し工程を有するが、例えば、第A1工程における「生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)」とは、第1回目の第三工程の操作及び第2回目以降の第三工程の繰り返し操作の両操作において「生成した『遊離の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」を意味することになる。
また、第B工程における「生成した一本鎖状態であるDNA(負鎖)」とは、第1回目の第三工程の操作及び第2回目以降の第三工程の繰り返し操作の両操作において「生成した『固定の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」を意味する。但し、第三工程がさらに追加的にC工程を有する場合には、第1回目の第三工程の操作において「生成した『固定の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」を意味し、一方、第2回目以降の第三工程の繰り返し操作において「生成した『固定の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」と「生成した『遊離の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」との両者を意味することになる。
【0050】
また、第三工程の各本工程で得られた「伸長形成された二本鎖DNA」とは、第A工程の場合には、第1回目の第三工程の操作において「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に、アンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA」を意味し、一方、第2回目以降の第三工程の繰り返し操作において「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に、アンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA」と「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に、アンメチル状態のCpG対を含む伸長形成された二本鎖DNA」との両者を意味することになる。第B工程の場合には、第1回目の第三工程の操作及び第2回目以降の第三工程の繰り返し操作の両操作において「前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位では全てがアンメチル状態のCpG対である伸長形成された二本鎖DNA」を意味することになる。
尚、第三工程がさらに追加的にC工程を有する場合にも同様である。
【0051】
また、第三工程がさらに追加的にC工程を有する場合において、第C1工程における「生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)」とは、第1回目の第三工程の操作及び第2回目以降の第三工程の繰り返し操作の両操作において「生成した『遊離の』一本鎖状態であるDNA(正鎖)」を意味することになる。
【0052】
また本発明は、本発明測定方法の工程として、下記の2つの工程をさらに追加的に有することを特徴とするメチル化割合の測定方法(即ち、本発明メチル化割合測定方法)を含む。
(4)本発明測定方法(前記の変法を含む)の第一工程を行った後、本発明測定方法(前記の変法を含む)の第二工程を行うことなく、本発明測定方法(前記の変法を含む)の第三工程を行うことにより、前記の目的とするDNA領域のDNA(メチル化されたDNA及びメチルされていないDNAの総量)を検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第四工程、及び、
(5)本発明測定方法(前記の変法を含む)の第三工程により定量されたDNAの量と、第四工程により定量されたDNAの量とを比較することにより得られる差異に基づき前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの割合を算出する第五工程
【0053】
当該メチル化割合測定方法は、下記のような場面において利用すればよい。
各種疾患(例えば、癌)においてDNAのメチル化異常が起こることが知られており、このDNAメチル化異常を検出することにより、各種疾患の度合いを測定することが可能と考えられている。
例えば、疾患由来の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいて100%メチル化されているDNA領域があり、そのDNA領域について、本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法を実施すれば、メチル化されたDNAの量は多くなり、例えば、疾患由来の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいて100%メチル化されていないDNA領域があり、そのDNA領域について、本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法を実施すれば、メチル化されたDNAの量はほぼ0に近い値となるであろう。また、例えば、健常者の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいてメチル化割合が低く且つ疾患患者の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいてメチル化割合が高いDNA領域があり、そのDNA領域について、本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法を実施すれば、健常者の場合には、メチル化されたDNAの量は、0に近い値を示し、一方、疾患患者の場合には、健常者の場合における値よりも有意に高い値を示すため、この値の差異に基づき、「疾患の度合い」を判定することができる。ここでの「疾患の度合い」とは、一般に当該分野において使用される意味と同様であって、具体的には、例えば、生物由来検体が細胞である場合には当該細胞の悪性度を意味し、また、例えば、生物由来検体が組織である場合には当該組織における疾患細胞の存在量等を意味している。さらに、生物由来検体が血漿・血清である場合にはその個体が疾患を有する確率を意味している。従って、本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法は、メチル化異常を調べることにより、各種疾患を診断することを可能にする。
【0054】
このような本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法における、目的領域のメチル化されたDNA量の測定、メチル化割合の測定を行うための各種方法で使用し得る制限酵素、プライマー又はプローブは、検出用キットの試薬として有用である。本発明は、これら制限酵素、プライマー又はプローブ等を試薬として含有する検出用キットや、これらプライマー又はプローブ等が担体上に固定化されてなる検出用チップも提供しており、本発明測定方法又は本発明メチル化割合測定方法の権利範囲は、当該方法の実質的な原理を利用してなる前記のような検出用キットや検出用チップのような形態での使用ももちろん含むものである。
【実施例】
【0055】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
ATCCより購入された哺乳動物由来の結腸腺癌細胞株Caco−2(ATCC NO.HTB-37)を、ATCCのカタログに記載された細胞株のための専用培地でコンフルエントになるまで培養することにより、各々約1x107細胞を得た。得られた細胞に、SEDTAバッファー[10mM Tris-HCl pH 8.0、10mM EDTA pH 8.0、100mM NaCl]を10倍容量加えた後、これをホモジナイズした。
得られた混合物に、proteinase K(Sigma)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl、pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱(ゲノムDNA)を回収した。回収された沈澱をTEバッファー(10mM Tris、1mM EDTA、pH 8.0)に溶解し、これに40μg/mlになるようにRNase A(Sigma)を加えて37℃で1時間インキュベートした。インキュベートされた混合物をフェノール・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱することにより沈澱(ゲノムDNA)を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
得られたゲノムDNAから、以下のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、供試サンプルとして用いられるDNAフラグメント(以下、DNAフラグメントX2と記す。配列番号18で示される塩基配列を有する。Genbank Accession No.AC009800等に示されるGPR7配列の塩基番号76477〜77002に相当する領域)を増幅した。
【0057】
PF3:5'-GTCCGCGGCGACATTGGG-3' (配列番号19)
PR3:5'-CGATGAGCTTGCACATGAGCT-3' (配列番号20)
【0058】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAを2.5ngと、3μMに調製された配列番号19及び配列番号20で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各2.5μlと、each 2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、 5U/μl)を0.125μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで59℃にて60秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を50サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、目的のDNAフラグメント(526bp)を切り出し、QIAGEN QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)により、DNAフラグメントX2を精製した。
得られたDNAフラグメントX2の一部をメチル化酵素SssI(NEB社)により処理し、5’−CG−3’全てをメチル化したDNAフラグメント(以下、DNAフラグメントY2と記す。)を得た。これについても、先と同様に、1.5%アガロース電気泳動により増幅を確認し、DNAフラグメント(526bp)を切り出し、QIAGEN QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)により、DNAフラグメントY2を精製した。
【0059】
前記のDNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2とアニーリングするオリゴヌクレオチドとして、配列番号21に示される塩基配列を有する5’末端がビオチン標識されたオリゴヌクレオチドB1(80bp)を合成した。
【0060】
<ビオチン標識オリゴヌクレオチド>
B1:5'-GACAACGCCTCGTTCTCGG-3'(配列番号21)
【0061】
DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2の各々別々(25pg/mL水溶液、10μL)に、5μMビオチン化オリゴヌクレオチドB1を1μL、及び、アニーリングバッファー(0.5M チャーチリン酸バッファー、7% SDS、1mM EDTA水溶液)を10μL添加することにより、混合物を得た。
次いで得られた混合物を、前記の生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で5分間加熱した。その後、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、50℃まで速やかに冷却し、その温度で5分間保温した。次いで、これを37℃で5分間保温した後、室温に戻し、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(DNAフラグメントX2又はDNAフラグメントY2)とビオチン化オリゴヌクレオチドとを結合させた(DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2につき、各々2本作製)。
次に、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブに、上記のようにして、前調製された混合物を添加し、さらに、これを37℃で5分間保温することにより、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定した(以下、本発明測定方法の第一工程に相当する。)。
【0062】
次いで、前記のPCRチューブから溶液を除去した後、100μLのTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティングにより取り除いた。当該操作をさらに2回実施した(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する。)。
このようにして得られた二本鎖DNAについて、以下の2種の処理を施した。
【0063】
A群(無処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
【0064】
B群(HpaII及びHhaIによる消化処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIを夫々15Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
【0065】
各々の反応液を37℃で1時間インキュベーション(消化処理)した後、上清を取り除き、100μLのTEバッファーを混合した後、当該TEバッファーをピペッティングにより取り除いた(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する)。
【0066】
次に、得られた未消化物から、下記のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、目的とするDNA領域におけるメチル化DNA(配列番号22で示される塩基配列を有する。Genbank Accession No.AC009800等に示されるGPR7配列の塩基番号76669〜76835に相当する領域)を増幅した。
【0067】
PF4:5'-GACAACGCCTCGTTCTCGG-3'(配列番号23)
PR4:5'-GCGGAGTTGCCCGCCAGA-3'(配列番号24)
【0068】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAに、3μMに調製された配列番号23及び配列番号24で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各2.5μlと、each 2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)5U/μlを0.125μlと、5Nベタイン水溶液を5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで59℃にて60秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を37サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する。)。
【0069】
DNAフラグメントX2に関して、A群(無処理群)の場合には、増幅が確認されその増幅産物が得られた。これに対してB群(HpaII、HhaI処理群)の場合には、増幅が確認されずその増幅産物は得られなかった。一方、DNAフラグメントY2に関しては、A群(無処理群)の場合とB群(HpaII、HhaI処理群)の場合ともに、増幅が確認されその増幅産物が得られた。
【0070】
以上より、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されていないDNAを増幅することなく、メチル化されたDNAのみを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量できることが確認された。
【0071】
実施例2
実施例1で得られたDNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2を用いて下記の試験を行った。
DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2の各々別々を25pg/mlの割合になるようにラット血清1mLに添加することにより、血清溶液を得た。当該血清溶液(DNAフラグメント25pg/mL水溶液、10μL)に、5μMビオチン化オリゴヌクレオチドB1を1μL、及び、アニーリングバッファー(0.5M チャーチリン酸バッファー、7% SDS、1mM EDTA水溶液)を10μL添加することにより、混合物を得た。
次いで得られた混合物を、前記の生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で5分間加熱した。その後、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、50℃まで速やかに冷却し、その温度で5分間保温した。次いで、これを37℃で5分間保温した後、室温に戻し、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAとビオチン化オリゴヌクレオチドとを結合させた(DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2につき、各々6本作製)。
次に、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブに、上記のようにして、前調製された混合物を添加し、さらに、これを37℃で5分間保温することにより、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定した(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する)。
【0072】
次いで、前記のPCRチューブから溶液を除去した後、100μLのTEバッファーを添加した後、当該TEバッファーをピペッティングにより取り除いた。当該操作をさらに2回実施した。
このようにして選択され得られた二本鎖DNA(即ち、結合形成された二本鎖DNA)について、以下の2種の処理を施した。
【0073】
A群(無処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした(各々3本作製)。
【0074】
B群(HpaII及びHhaIによる消化処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIを夫々15Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした(各々3本作製)。
【0075】
各々の反応液を37℃で1時間インキュベーション(消化処理)した後、上清を取り除き、100μLのTEバッファーを混合した後、当該TEバッファーをピペッティングにより取り除いた(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する。)。
【0076】
次に、得られた未消化物から、下記のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、目的とするDNA領域におけるメチル化DNA(配列番号22、Genbank Accession No.AC009800等に示されるGPR7配列の塩基番号76669〜76835に相当する領域)を増幅した。
【0077】
PF4:5'-GACAACGCCTCGTTCTCGG-3'(配列番号23)
PR4:5'-GCGGAGTTGCCCGCCAGA-3'(配列番号24)
【0078】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAに、3μMに調製した配列番号23及び配列番号24で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各2.5μlと、each 2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)5U/μlを0.125μlと、5Nベタイン水溶液を5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで63℃にて60秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を35サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する。)。
【0079】
DNAフラグメントX2に関して、A群(無処理群)の場合には、増幅が確認されその増幅産物が得られた。これに対してB群(HpaII、HhaI処理群)の場合には、増幅は確認されずその増幅産物は得られなかった。一方、DNAフラグメントY2に関しては、A群(無処理群)の場合及びB群(HpaII、HhaI処理群)の両場合ともに、増幅が確認されその増幅産物が得られた。
【0080】
以上より、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料としての血清溶液を用いても、前記の実施例1と同様に、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されていないDNAを増幅することなく、メチル化されたDNAのみを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量できることが確認された。
【0081】
実施例3
実施例1で得られたDNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2を用いて下記の試験を行った。
DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2の0、0.1、1及び10pg/10μLのTEバッファー(10mM Tris、1mM EDTA、pH 8.0)溶液を調製した。これらTEバッファー溶液10μL各々別々に、5μMビオチン化オリゴヌクレオチドB1を1μL、10×アニーリングバッファー(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μL、及び、滅菌超純水を7μL添加することにより、混合物を得た。
次いで得られた混合物を、前記の生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で5分間加熱した。その後、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、50℃まで速やかに冷却し、その温度で5分間保温した。次いで、これを37℃で5分間保温した後、室温に戻し、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(DNAフラグメントX2又はDNAフラグメントY2)とビオチン化オリゴヌクレオチドとを結合させた(DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2につき、各々2本作製)。
次に、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブに、上記のようにして、前調製された混合物を添加し、さらに、これを37℃で5分間保温することにより、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定した(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する。)。
【0082】
次いで、前記のPCRチューブから溶液を除去した後、100μLの洗浄バッファー(0.05%Tween20含有リン酸バッファー:1mM KH2PO4、3mM Na2HPO・7H2O、154mM NaCl、 pH7.4)を添加した後、当該洗浄バッファーをピペッティングにより取り除いた。当該操作をさらに2回実施した。
【0083】
その後、このようにして得られた二本鎖DNAについて、以下の2種の処理を施した。
【0084】
A群(無処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
【0085】
B群(HpaII及びHhaIによる消化処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIを夫々15Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
各々の反応液を37℃で5時間インキュベーション(消化処理)した後、上清を取り除き、100μLの上記洗浄バッファーを混合した後、当該洗浄バッファーをピペッティングにより取り除いた(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する。)。
【0086】
次に、得られた未消化物から、下記のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、目的とするDNA領域におけるメチル化DNA(配列番号22で示される塩基配列を有する。Genbank Accession No.AC009800等に示されるGPR7配列の塩基番号76669〜76835に相当する領域)を増幅した。
【0087】
PF4:5'-GACAACGCCTCGTTCTCGG-3'(配列番号23)
PR4:5'-GCGGAGTTGCCCGCCAGA-3'(配列番号24)
【0088】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAに、50μMに調製した配列番号23及び配列番号24で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各0.3μlと、each 2mM dNTPを5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)5U/μlを0.25μlと、5Nベタイン水溶液を10μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで59℃にて30秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を32サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する。)。
【0089】
DNAフラグメントX2に関して、A群(無処理群)の場合には、1pg/10μLのサンプル及び10pg/10μLのサンプルで増幅が確認されその増幅産物が得られた。これに対してB群(HpaII、HhaI処理群)の場合には、全てのサンプルで、その増幅産物は得られなかった。一方、DNAフラグメントY2に関しては、A群(無処理群)及びB群(HpaII、HhaI処理群)の1pg/10μLのサンプル及び10pg/10μLのサンプルで、増幅が確認されその増幅産物が得られた。
【0090】
以上より、アニーリングバッファーとして二価陽イオン(マグネシウムイオン)を含有する溶液を用いて、且つ、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることで、前記の実施例1及び実施例2と同様に、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを選択することが可能であること、且つ、メチル化感受性制限酵素での処理により、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されていないDNAを増幅することなく、メチル化されたDNAのみを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量できることが確認された。
【0091】
実施例4
実施例1で得られたDNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2を用いて下記の試験を行った。
DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2の0、0.1、1、及び10pg/10μLラット血清溶液を調製した。これら溶液10μL各々別々に、5μMビオチン化オリゴヌクレオチドB1を1μL、10×アニーリングバッファー(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μL、及び、滅菌超純水を7μL添加することにより、混合物を得た。
次いで得られた混合物を、前記の生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に存在する目的とするDNA領域を含む二本鎖DNAを一本鎖にするために、95℃で5分間加熱した。その後、ビオチン化オリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させるために、50℃まで速やかに冷却し、その温度で5分間保温した。次いで、これを37℃で5分間保温した後、室温に戻し、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(DNAフラグメントX2又はDNAフラグメントY2)とビオチン化オリゴヌクレオチドとを結合させた(DNAフラグメントX2及びDNAフラグメントY2につき、各々2本作製)。
次に、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブに、上記のようにして、前調製された混合物を添加し、さらに、これを37℃で5分間保温することにより、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンで被覆した支持体に固定した(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する。)。
【0092】
次いで、前記のPCRチューブから溶液を除去した後、100μLの洗浄バッファー(0.05%Tween20含有リン酸バッファー:1mM KH2PO4、3mM Na2HPO・7H2O、154mM NaCl pH7.4)を添加した後、当該洗浄バッファーをピペッティングにより取り除いた。当該操作をさらに2回実施した。
【0093】
その後、このようにして得られた二本鎖DNAについて、以下の2種の処理を施した。
【0094】
A群(無処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
【0095】
B群(HpaII及びHhaIによる消化処理群):上記で調製された二本鎖DNAに、HpaII及びHhaIを夫々15Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を3μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとした。
各々の反応液を37℃で5時間インキュベーション(消化処理)した後、上清を取り除き、100μLの上記洗浄バッファーを混合した後、当該洗浄バッファーをピペッティングにより取り除いた(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する。)。
【0096】
次に、得られた未消化物から、下記のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、目的とするDNA領域におけるメチル化DNA(配列番号22で示される塩基配列を有する。Genbank Accession No.AC009800等に示されるGPR7配列の塩基番号76669〜76835に相当する領域)を増幅した。
【0097】
PF4:5'-GACAACGCCTCGTTCTCGG-3'(配列番号23)
PR4:5'-GCGGAGTTGCCCGCCAGA-3'(配列番号24)
【0098】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAに、50μMに調製した配列番号23及び配列番号24で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各0.3μlと、each 2mM dNTPを5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)5U/μlを0.25μlと、5Nベタイン水溶液を10μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで59℃にて30秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を32サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する。)。
【0099】
DNAフラグメントX2に関して、A群(無処理群)の場合には、1pg/10μLのサンプル及び10pg/10μLのサンプルで増幅が確認されその増幅産物が得られた。これに対してB群(HpaII、HhaI処理群)の場合には、全てのサンプルで、その増幅産物は得られなかった。一方、DNAフラグメントY2に関しては、A群(無処理群)及びB群(HpaII、HhaI処理群)の1pg/10μLのサンプル及び10pg/10μLのサンプルで、増幅が確認されその増幅産物が得られた。
【0100】
以上より、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料としての血清溶液を用いて、且つ、アニーリングバッファーとして二価陽イオン(マグネシウムイオン)を含有する溶液を用いて、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることで、前記の実施例3と同様に、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを選択することが可能であること、且つ、メチル化感受性制限酵素での処理により、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されていないDNAを増幅することなく、メチル化されたDNAのみを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量できることが確認された。
【0101】
実施例5
ATCCより購入された哺乳動物由来の乳癌細胞株MCF−7(ATCC NO.HTB-22)を、ATCCのカタログに記載された当該細胞株のための専用培地でコンフルエントになるまで培養することにより、約1×107個の細胞を得た。得られた細胞に、SEDTAバッファー[10mM Tris-HCl pH 8.0、10mM EDTA pH 8.0、100mM NaCl]を10倍容量加えた後、これをホモジナイズした。得られた混合物に、proteinase K(Sigma)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl、pH 8.0 にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱をTEバッファー(10mM Tris、1mM EDTA、pH 8.0)に溶解し、これに40μg/mlになるようにRNase A(Sigma)を加えて37℃で1時間インキュベートした。インキュベートされた混合物をフェノール・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱(ゲノムDNA)を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
得られたゲノムDNAから、以下のプライマー及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、供試サンプルとして用いられる配列番号17で示される塩基配列(Genbank Accession No.M80343等に示されるLINE1配列の塩基番号257〜352に相当する領域)を含むDNAフラグメント(DNAフラグメントX1、配列番号25で示される塩基配列を有する。Genbank Accession No.M80343等に示されるLINE1配列の塩基番号8〜480に相当する領域)を増幅した。
【0102】
PF1:5'-GAGCCAAGATGGCCGAATAGG-3'(配列番号26)
PR1:5'-CTGCTTTGTTTACCTAAGCAAGC-3'(配列番号27)
【0103】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAを2ngと、100pmol/μlに調製した配列番号26及び配列番号27で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各0.125μlと、each 2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ 5U/μlを0.125μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで63℃にて60秒間さらに72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を50サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、目的のDNAフラグメント(473bp)を切り出し、QIAGEN QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)により、DNAフラグメントX1を精製した。
得られたDNAフラグメントX1の一部をメチル化酵素SssI(NEB社)により処理し、5−CG−3’全てをメチル化したDNAフラグメント(以下、DNAフラグメントY1と記す)を得た。これについても、先と同様に、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、目的のDNAフラグメント(473bp)を切り出し、QIAGEN QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)により、DNAフラグメントY1を精製した。
DNAフラグメントX1及びDNAフラグメントY1を用いて、以下のメチル化フラグメントと非メチル化フラグメントとの混合物を調製した。
【0104】
【表1】
【0105】
I〜V各々のDNAフラグメントを用いて、以下の4種の溶液を調製した。
【0106】
A群(無処理群):DNAフラグメント約25ngに、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした。
【0107】
B群(HpaII処理群):DNAフラグメント約25ngに、HpaIIを0.5Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした。
【0108】
C群(HhaI処理群):DNAフラグメント約25ngに、HhaIを0.5Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした。
【0109】
D群(HpaII及びHhaI処理群):DNAフラグメント約25ngに、HpaII及びHhaIを夫々0.5Uと、HpaII及びHhaIに最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を2μLと、10×BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLとを加えて、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした。
【0110】
各々の反応液を37℃で2時間インキュベーションした後、これに滅菌超純水を加えて100倍希釈した。
各希釈溶液5μL(DNAフラグメント62.5pg相当量)を鋳型とし、配列番号17で示される塩基配列からなる領域のDNA量を求めるために、下記のプライマーPF2及びPR2並びに5’末端がレポーター蛍光色素であるFAM(6−カルボキシ−フルオレッセイン)及び3’末端がクエンチャー蛍光色素であるTAMRA(6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン)で標識されたプローブT1を用いたリアルタイムPCRを行った。
【0111】
<プライマー>
PF2(フォワード側): 5'-CACCTGGAAAATCGGGTCACT-3'(配列番号28)
PR2(リバース側): 5'-CGAGCCAGGTGTGGGATATA-3'(配列番号29)
【0112】
<プローブ>
T1:5'-CGAATATTGCGCTTTTCAGACCGGCTT-3'(配列番号30)
【0113】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAフラグメント62.5pgと、3pmol/μlに調製した配列番号28及び配列番号29で示される塩基配列からなるプライマーの溶液2種を各2.5μlと、2.5pmol/μLに調製した配列番号30で示される塩基配列からなるプローブを2.5μLと、each 2mM dNTPを2.5μlと、10×PCR緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)5U/μlを0.125μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとしたものを用いた。リアルタイムPCRは、Gene Amp 5700 Sequence Detection System (Applied Biosystems)を用いて実施した。配列番号17で示される塩基配列のうち塩基番号1〜94で示される塩基配列からなる領域(DNA)を増幅するために、当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて15秒間、60℃にて60秒間を1サイクルとしてリアルタイムPCRを行った。当該リアルタイムPCRの結果により、当該領域のDNA量を定量した。各生物由来検体について3回試験を実施した。
その結果を図3〜図7に示した。A群での当該領域のDNA量を1として、他の群での当該領域のDNA量を示した。図3(「I」)は、メチル化割合0%のフラグメント混合物であるため、B群、C群及びD群での理論値は「0」、図4(「II」)は、メチル化割合10%のフラグメントであるため、B群、C群及びD群での理論値は「0.1」、図5(「III」)は、メチル化割合25%のフラグメントであるため、B群、C群及びD群での理論値は「0.25」、図6(「IV」)は、メチル化割合50%のフラグメントであるため、B群、C群及びD群での理論値は「0.5」、図7(「V」)は、メチル化割合100%のフラグメントであるため、B群、C群及びD群での理論値は「1」を示すことになる。実験の結果、図3〜図7に示す通り、D群で、この理論値に最も近い値が得られており、2種類以上のメチル化感受性酵素での消化処理が好ましいことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明により、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を簡便に測定する方法等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は、実施例1において、調製されたサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaI同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAフラグメントX2の「A」処理が施されたサンプル、DNAフラグメントX2の「B」処理が施されたサンプル、DNAフラグメントY2の「A」処理が施されたサンプル、DNAフラグメントY2の「B」処理が施されたサンプルでの結果を示している。
【図2】図2は、実施例2において、調製されたサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaI同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M」、DNAフラグメントY2の「A」処理が施されたサンプル1、DNAフラグメントY2の「A」処理が施されたサンプル2、DNAフラグメントY2の「A」処理が施されたサンプル3、DNAフラグメントY2の「B」処理が施されたサンプル1、DNAフラグメントY2の「B」処理が施されたサンプル2、DNAフラグメントY2の「B」処理が施されたサンプル3、DNAフラグメントX2の「A」処理が施されたサンプル1、DNAフラグメントX2の「A」処理が施されたサンプル2、DNAフラグメントX2の「A」処理が施されたサンプル3、DNAフラグメントX2の「B」処理が施されたサンプル1、DNAフラグメントX2の「B」処理が施されたサンプル2、DNAフラグメントX2の「B」処理が施されたサンプル3、での結果を示している。
【図3】図3は、実施例3において、調製されたDNAフラグメントX2のサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M」、10pgDNAフラグメントX2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「1」、1pgDNAフラグメントX2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「2」、0.1pgDNAフラグメントX2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「3」、0pgDNAフラグメントX2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「4」、での結果を示している。
【図4】図4は、実施例3において、調製されたDNAフラグメントY2のサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M」、10pgDNAフラグメントY2/mLTEバッファーの「A」処理が施されたサンプル「1」、1pgDNAフラグメントY2/mLTEバッファーの「A」処理が施されたサンプル「2」、0.1pgDNAフラグメントY2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「3」、0pgDNAフラグメントY2/mLTEバッファー溶液の「A」処理が施されたサンプル「4」、での結果を示している。
【図5】図5は、実施例4において、調製されたDNAフラグメントX2のサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M」、10pgDNAフラグメントX2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「1」、1pgDNAフラグメントX2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「2」、0.1pgDNAフラグメントX2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「3」、0pgDNAフラグメントX2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「4」、での結果を示している。
【図6】図6は、実施例4において、調製されたDNAフラグメントY2のサンプルに、「A(無処理)」又は「B(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号22で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M」、10pgDNAフラグメントY2/mLらっと血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「1」、1pgDNAフラグメントY2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「2」、0.1pgDNAフラグメントY2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「3」、0pgDNAフラグメントY2/mLラット血清溶液の「A」処理が施されたサンプル「4」、での結果を示している。
【図7】図7は、実施例5において、調製されたサンプル「(I)」に、「A(無処理)」、「B(HpaII処理)」、「C(HhaI処理)」又は「D(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号17で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAの量をリアルタイムPCRにて測定した結果を示した図である。 図中の縦軸は、「A」処理が施されたサンプルでのDNAの量を1とした場合の相対値を示している(3回の平均値±標準偏差)。また、理論値とは、B群、C群、D群で予想される計算値(メチル化割合)を示している。
【図8】図8は、実施例5において、調製されたサンプル「(II)」に、「A(無処理)」、「B(HpaII処理)」、「C(HhaI処理)」又は「D(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号17で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAの量をリアルタイムPCRにて測定した結果を示した図である。 図中の縦軸は、「A」処理が施されたサンプルでのDNAの量を1とした場合の相対値を示している(3回の平均値±標準偏差)。また、理論値とは、B群、C群、D群で予想される計算値(メチル化割合)を示している。
【図9】図9は、実施例5において、調製されたサンプル「(III)」に、「A(無処理)」、「B(HpaII処理)」、「C(HhaI処理)」又は「D(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号17で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAの量をリアルタイムPCRにて測定した結果を示した図である。 図中の縦軸は、「A」処理が施されたサンプルでのDNAの量を1とした場合の相対値を示している(3回の平均値±標準偏差)。また、理論値とは、B群、C群、D群で予想される計算値(メチル化割合)を示している。
【図10】図10は、実施例5において、調製されたサンプル「(IV)」に、「A(無処理)」、「B(HpaII処理)」、「C(HhaI処理)」又は「D(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号17で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAの量をリアルタイムPCRにて測定した結果を示した図である。 図中の縦軸は、「A」処理が施されたサンプルでのDNAの量を1とした場合の相対値を示している(3回の平均値±標準偏差)。また、理論値とは、B群、C群、D群で予想される計算値(メチル化割合)を示している。
【図11】図11は、実施例5において、調製されたサンプル「(V)」に、「A(無処理)」、「B(HpaII処理)」、「C(HhaI処理)」又は「D(HpaII及びHhaIの同時処理)」のいずれかの処理を施し、配列番号17で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAの量をリアルタイムPCRにて測定した結果を示した図である。 図中の縦軸は、「A」処理が施されたサンプルでのDNAの量を1とした場合の相対値を示している(3回の平均値±標準偏差)。また、理論値とは、B群、C群、D群で予想される計算値(メチル化割合)を示している。
【0116】
[配列表フリーテキスト]
配列番号19
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号20
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号21
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号23
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号24
リアルタイムPCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプローブ
配列番号26
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号27
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号28
支持体への固定化のために設計されたビオチン標識オリゴヌクレオチド
配列番号29
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号30
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法であって、
(1)生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の一本鎖DNAを選択し、選択された一本鎖DNAと前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成させる第一工程、
(2)第一工程で結合形成された二本鎖DNAを少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理した後、生成した遊離の消化物(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA)を除去する第二工程、及び、
(3)下記の各本工程の前工程として、第二工程で得られた未消化物である結合形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない結合形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(第一前工程)と、生成した遊離の一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の生成した遊離の一本鎖状態であるDNAを選択し、選択された一本鎖DNAと前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成させる工程(第二(A)前工程)と、
当該工程(第二(A)前工程)で結合形成された二本鎖DNAを、前記の選択された一本鎖DNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の選択された一本鎖DNAを伸長形成された二本鎖DNAとする工程(第二(B)前工程)と
を有する工程(第二前工程)と、
第二前工程で伸長形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を、一本鎖状態であるDNA(正鎖)と一本鎖状態であるDNA(負鎖)に一旦分離する工程(第三前工程)とを有し、
且つ、本工程として
(a)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第A1工程と、第A1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第A2工程とを有する第A工程(本工程)と、
(b)生成した一本鎖状態であるDNA(負鎖)を鋳型として、前記の一本鎖状態であるDNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’末端よりさらに3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有し、且つ、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドを鋳型とする伸長反応に利用できない伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、当該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第B工程(本工程)とを有し、
さらに第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すことにより、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第三工程、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
第一工程において、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させる際に、二価陽イオンを含有する反応系中で結合させることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
二価陽イオンがマグネシウムイオンであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の第一前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の第一前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第二工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の第三前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の第三前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第二工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの請求項記載の方法の工程として、下記の2つの工程をさらに追加的に有することを特徴とするメチル化割合の測定方法。
(4)請求項1〜7のいずれかの請求項記載の方法の第一工程を行った後、請求項1〜8のいずれかの請求項記載の方法の第二工程を行うことなく、請求項1〜8のいずれかの請求項記載の方法における第三工程を行うことにより、前記の目的とするDNA領域のDNA(メチル化されたDNA及びメチルされていないDNAの総量)を検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第四工程、及び、
(5)請求項1〜7のいずれかの請求項記載の第三工程により定量されたDNAの量と、第四工程により定量されたDNAの量とを比較することにより得られる差異に基づき前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの割合を算出する第五工程
【請求項9】
生物由来検体が、哺乳動物の血清又は血漿であることを特徴とする請求項1〜89のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項10】
生物由来検体が、哺乳動物の血液又は体液であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項11】
生物由来検体が、細胞溶解液又は組織溶解液であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項12】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、当該ゲノムDNAが有する目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA試料であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項13】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理されてなるDNA試料であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項14】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、予め精製されてなるDNA試料であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素が、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域の中に認識切断部位を有する制限酵素であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素が、メチル化感受性制限酵素であるHpaII又はHhaIであることを特徴とする請求項1〜15のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項1】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法であって、
(1)生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の一本鎖DNAを選択し、選択された一本鎖DNAと前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成させる第一工程、
(2)第一工程で結合形成された二本鎖DNAを少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理した後、生成した遊離の消化物(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位に少なくとも1つ以上のアンメチル状態のCpG対を含む二本鎖DNA)を除去する第二工程、及び、
(3)下記の各本工程の前工程として、第二工程で得られた未消化物である結合形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない結合形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(第一前工程)と、生成した遊離の一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させることにより、前記の生成した遊離の一本鎖状態であるDNAを選択し、選択された一本鎖DNAと前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとが結合してなる二本鎖DNAを結合形成させる工程(第二(A)前工程)と、
当該工程(第二(A)前工程)で結合形成された二本鎖DNAを、前記の選択された一本鎖DNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の選択された一本鎖DNAを伸長形成された二本鎖DNAとする工程(第二(B)前工程)と
を有する工程(第二前工程)と、
第二前工程で伸長形成された二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を、一本鎖状態であるDNA(正鎖)と一本鎖状態であるDNA(負鎖)に一旦分離する工程(第三前工程)とを有し、
且つ、本工程として
(a)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第A1工程と、第A1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドをプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第A2工程とを有する第A工程(本工程)と、
(b)生成した一本鎖状態であるDNA(負鎖)を鋳型として、前記の一本鎖状態であるDNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’末端よりさらに3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有し、且つ、前記の一本鎖固定化オリゴヌクレオチドを鋳型とする伸長反応に利用できない伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、当該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第B工程(本工程)とを有し、
さらに第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すことにより、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第三工程、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
第一工程において、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、当該一本鎖DNAの目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を有する一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとを結合させる際に、二価陽イオンを含有する反応系中で結合させることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
二価陽イオンがマグネシウムイオンであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の第一前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の第一前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第二工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の第三前工程の前操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の第三前工程の後操作段階において、
前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)の3’末端の一部に対して相補性である塩基配列を有し且つ遊離状態である一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)を反応系内に添加する工程(追加前工程)を追加的に有し、且つ、第二工程及び上記の追加前工程を経て得られた未消化物である二本鎖DNA(前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位にアンメチル状態のCpG対を含まない伸長形成された二本鎖DNA)を一本鎖状態に一旦分離する工程(追加再前工程)を有し、且つ、
請求項1〜3のいずれかの請求項記載の第三工程の各本工程として、下記の1つの工程をさらに追加的に有することを特徴とする方法。
(c)(i)生成した一本鎖状態であるDNA(正鎖)と、上記の追加前工程で反応系内に添加された一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)とを結合させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを選択する第C1工程と、
(ii)第C1工程で選択された一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記の一本鎖オリゴヌクレオチド(負鎖)をプライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする第C2工程と
を有する第C工程(本工程)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの請求項記載の方法の工程として、下記の2つの工程をさらに追加的に有することを特徴とするメチル化割合の測定方法。
(4)請求項1〜7のいずれかの請求項記載の方法の第一工程を行った後、請求項1〜8のいずれかの請求項記載の方法の第二工程を行うことなく、請求項1〜8のいずれかの請求項記載の方法における第三工程を行うことにより、前記の目的とするDNA領域のDNA(メチル化されたDNA及びメチルされていないDNAの総量)を検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第四工程、及び、
(5)請求項1〜7のいずれかの請求項記載の第三工程により定量されたDNAの量と、第四工程により定量されたDNAの量とを比較することにより得られる差異に基づき前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの割合を算出する第五工程
【請求項9】
生物由来検体が、哺乳動物の血清又は血漿であることを特徴とする請求項1〜89のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項10】
生物由来検体が、哺乳動物の血液又は体液であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項11】
生物由来検体が、細胞溶解液又は組織溶解液であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項12】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、当該ゲノムDNAが有する目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA試料であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項13】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素で消化処理されてなるDNA試料であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項14】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、予め精製されてなるDNA試料であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素が、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域の中に認識切断部位を有する制限酵素であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素が、メチル化感受性制限酵素であるHpaII又はHhaIであることを特徴とする請求項1〜15のいずれかの請求項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−154514(P2008−154514A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347300(P2006−347300)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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