説明

DRD2又はANKK1のSNP遺伝子型に基づく抗精神病治療

本発明は、ドーパミン受容体D2(DRD2)及び/又はankyrin repeat and kinase domain containing 1(ANKK1)遺伝子と関連する1つ又は複数の一塩基多型(SNP)における個体の遺伝子型に基づく、抗精神病薬による個体の治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
統合失調症は、人口の約1%が罹患する。これは、陽性症状(幻覚及び妄想を含む、異常な考え又は知覚)、陰性症状(引きこもり、毎日の生活における満足感の欠如)、及び認知機能(言語記憶、情報処理)の障害の存在を特徴とする。このような症状は、例えば双極性障害などの他の障害の指標となり得る。
【0002】
統合失調症を治療するいくつかの抗精神病薬が認可されている。しかし、治療に対する患者の応答は依然として非常に変化しやすく、抗精神病薬治療の中断率は高い。すべての統合失調症患者に最適な効果を提供する単一の抗精神病薬は存在しない。最も適切な薬物療法の選択及び個々の患者に対する治療特異性の改善において、臨床医及び患者の指針となる利用可能なデータはほとんどない。薬理ゲノミクスは、応答を予測する遺伝子マーカーを発見する機会を提供する。その患者の遺伝子構成に基づいて、統合失調症患者が特定の治療に如何に応答し得るかを知ることにより、臨床医は、より少ない試行錯誤で、最適な薬物及び投薬量を選択することが可能となり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、ドーパミン受容体D2(DRD2)及び/又はankyrin repeat and kinase domain containing 1(ANKK1)遺伝子と関連する1つ又は複数の一塩基多型(SNP)における個体の遺伝子型に基づく個体の抗精神病薬治療、並びに抗精神病薬治療の相対的に高い有効性と関連する1つ又は複数のSNP遺伝子型を有する個体に対する抗精神病薬治療の有効性の予測に関する。
【0004】
本発明の一態様は、個体における少なくとも1つの精神病症状の治療でのイロペリドン使用の有効性を予測する方法を提供し、該方法は、rs1800497一塩基多型(SNP)における個体の遺伝子型を決定するステップと、rs1800497 SNP座位における個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連している場合に、イロペリドンによる個体の治療が有効であると予測するステップとを含む。
【0005】
本発明の別の態様は、個体における少なくとも1つの精神病症状の治療でのイロペリドン使用の有効性を予測する方法を提供し、該方法は、rs2283265一塩基多型(SNP)における個体の遺伝子型を決定するステップと、rs2283265 SNP座位における個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連している場合に、イロペリドンによる個体の治療が有効であると予測するステップとを含む。
【0006】
本発明のさらに別の態様は、個体における少なくとも1つの精神病症状の治療でのイロペリドン使用の有効性を予測する方法を提供し、該方法は、rs1076560一塩基多型(SNP)における個体の遺伝子型を決定するステップと、rs1076560 SNP座位における個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連している場合に、イロペリドンによる個体の治療が有効であると予測するステップとを含む。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、有効用量のイロペリドンを個体に投与する方法を提供し、該方法は、イロペリドンのベースライン用量を個体のために決定するステップと、rs1800497一塩基多型(SNP)における個体の遺伝子型を決定するステップと、rs1800497 SNP座位における個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連している場合に、イロペリドンのベースライン用量より低い有効用量のイロペリドンを個体に投与するステップとを含む。
【0008】
本発明の別の態様は、精神病性障害に罹患している患者を治療する方法を提供し、該方法は、次の1つ又は複数の遺伝子座、rs1800497、rs1799978、rs1799732、rs2283265、rs1076560、及びrs6275における患者の遺伝子型を決定するステップと、前記1つ又は複数の遺伝子座における患者の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連している場合に、そうでない場合に投与されると思われる用量より、低い有効用量のイロペリドンを個体に投与するステップとを含む。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、精神病性障害に罹患している患者を治療する方法を提供し、該方法は、次の1つ又は複数の遺伝子座、rs1800497、rs1799978、rs1799732、rs2283265、rs1076560、及びrs6275における患者の遺伝子型を決定するステップと、前記1つ又は複数の遺伝子座における患者の遺伝子型がイロペリドンの相対的に低い有効性と関連している場合に、そうでない場合に投与されると思われる用量より、高い有効用量のイロペリドンを個体に投与するステップ、又はイロペリドン以外の薬剤を患者に投与するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】2つのイントロンSNP及び1つのエクソンSNPを含む6つのSNPを分析した結果を表す図である。
【図2】白人の結果を表す図である。
【図3】黒人の結果を表す図である。
【図4】イロペリドン応答に対するTaq1A多型の効果を、遺伝子型の各群(A1/A2:緑色、非A1/A2:青色)ごとに白人集団(1)及び黒人集団(2)について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
イロペリドン(1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシフェニル]エタノン)は、参照により本明細書中に組み込まれる米国再発行特許第39198号中に開示されている。イロペリドンの活性代謝産物は、本発明において有用である。例えば、参照により本明細書中に組み込まれる国際公開第03/020707号を参照のこと。イロペリドン代謝産物には、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシフェニル]エタノン、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシフェニル]−2−ヒドロキシエタノン、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシ−α−メチルベンゼンメタノール、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシル−2−ヒドロキシ−5−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル]エタノン、及び1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2,5−ジヒドロキシフェニル]エタノンが含まれる。参照により本明細書中に組み込まれる、米国再発行特許第39198号、国際公開第93/09276号、及び国際公開第95/11680号を参照のこと。
【0012】
有効量のイロペリドン又はその活性代謝産物は、被験動物(典型的にはヒトであるが、他の動物、例えば、家畜、ペット、及びレース用動物もまた治療できる)に、いくつかの経路によって投与することができる。有効量は、治療の過程の間に、精神病性障害(例えば、統合失調症若しくはその症状、又は双極性障害の症状)に対する予防効果又は寛解効果を有すると見込まれる量である。有効量は、例えば、患者、症状の重篤度又は治療される症状、及び投与経路に依存して、量的に変動させることができる。
【0013】
実際に投与されるイロペリドン又はその活性代謝産物の量を含む投薬プロトコルは、関連する状況(例えば、治療すべき状態、選択された投与経路、個々の患者の年齢、体重、及び応答、並びに患者の症状の重篤度が含まれる)を考慮して、医師により決定されることは理解されよう。患者は当然、可能性のある有害事象についてモニタリングされるべきである。
【0014】
治療的使用又は予防的使用のために、イロペリドン又はその活性代謝産物は、標準的な従来の技術を使用して、固体又は液体の医薬として許容可能な担体、並びに、場合により、医薬として許容可能な補助剤及び賦形剤と合わせて、その必須活性成分として(又は必須活性成分の1つとして)、少なくとも1つのそのような化合物を含む医薬組成物として、通常は投与されよう。
【0015】
本発明の実施に有用な医薬組成物には、経口、非経口(皮下、筋内、皮内、及び静脈内が含まれる)、経皮、気管支、又は経鼻投与に適した剤形が含まれる。したがって、固体担体を使用する場合、製剤は、錠剤にするか、散剤若しくはペレットの形態で硬ゼラチンカプセルに入れるか、又はトローチ剤若しくはロゼンジ剤の形態にすることができる。固体担体は、例えば結合剤、充填剤、錠剤化滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの、従来の賦形剤を含むことができる。錠剤は、所望の場合、従来の技術によりフィルムコーティングしてもよい。液体担体を使用する場合、製剤は、シロップ剤、エマルジョン、軟ゼラチンカプセル、注射用の無菌ビヒクル、水性若しくは非水性の液体懸濁物の形態であってもよく、又は使用前に水若しくは他の適切なビヒクルで再溶解するための乾燥製品であってもよい。液体製剤は、懸濁剤、乳化剤、湿潤剤、非水性ビヒクル(食用油が含まれる)、防腐剤、並びに香味剤及び/又は着色剤などの、従来の添加剤を含むことができる。非経口投与のために、ビヒクルは通常、少なくとも大部分は無菌水を含むことになろうが、生理食塩水、グルコース溶液などを使用してもよい。注射可能な懸濁物もまた使用することができ、この場合、従来の懸濁剤を使用することができる。従来の防腐剤、緩衝剤などもまた、非経口剤形に添加することができる。医薬組成物は、適切な量のイロペリドン又はその活性代謝産物を含有する所望の製剤に適した従来の技術によって製剤化することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、第17版、1985を参照のこと。
【0016】
本発明で使用するための医薬組成物の製造において、活性成分(複数可)は、通常、担体と混合されるか、又は担体で希釈されるか、又はカプセル、サシェ剤、紙、若しくは他の容器の形態になり得る担体内に封入されよう。担体が希釈剤として機能する場合、この担体は、その活性成分のためのビヒクル、賦形剤、又は媒体として機能する固体材料、半固体材料、又は液体材料とすることができる。したがって、この組成物は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁物、エマルジョン、溶液、シロップ剤、エアロゾル(固体として又は液体媒体中)、例えば活性化合物を10重量%まで含有する軟膏、軟及び硬ゼラチンカプセル、坐剤、無菌注射溶液、並びに無菌包装散剤の形態とすることができる。
【0017】
適切な担体及び希釈剤のいくつかの例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、並びに鉱油が含まれる。製剤は、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、保存剤、甘味剤、又は香味剤をさらに含むことができる。本発明の組成物は、患者への投与後に、活性成分の迅速放出、持続放出、又は遅延放出をもたらすように、製剤化することができる。
【0018】
これらの組成物は、単位剤形で製剤化することが好ましい。用語「単位剤形」とは、ヒト被験体及び他の哺乳動物のための単位投薬量として適切な物理的に別個な単位を指し、各単位は、治療期間の過程にわたって所望の予防効果又は治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を、必要とされる医薬担体と合わせて含有する。
【0019】
イロペリドン及びその活性代謝産物はまた、放出制御形態(例えば、遅延性、持続性又は拍動性の放出)で製剤化できる。
【0020】
イロペリドン及び/又はその誘導体を投与する種々の製剤及び方法が記載されている。例えば、国際公開第2004/006886A2号は、イロペリドン結晶を含む注射用デポー製剤を記載しており、イロペリドン及びポリグリコリドポリラクチドグルコーススターポリマーのマイクロカプセル化デポー製剤は、米国特許出願第20030091645号に記載されており、とりわけ、イロペリドン又はイロペリドン誘導体の濃度増加に伴う補正心電図QT(QTc)間隔の延長の排除又は最小化のためのイロペリドンの投与方法は、国際公開第2006/039663A2号に記載されている(これらはすべて、参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0021】
全ゲノム関連解析
【0022】
イロペリドンの第III相臨床試験において実施された全ゲノム関連解析(WGAS)によって、いくつかの一塩基多型(SNP)がイロペリドンに対する応答の改善と関連することが見出された。この臨床試験は、統合失調症と診断された患者の治療におけるイロペリドンの有効性を評価したものである。本研究、その結果、及びそこから引き出された推論を以下に述べる。
【0023】
方法
【0024】
イロペリドンの、4週間のランダム化二重盲検プラセボ及びジプラシドン対照の多施設入院患者第III相臨床試験を、409人に対して、陽性−陰性症状評価尺度合計(PANSS−T)における変化によって測定するイロペリドンの有効性を評価するために実施した。図1並びに以下の表1に示すように、2つのイントロンSNP及び1つのエクソンSNPを含む6つのSNPを分析した。
【0025】
【表1】

【0026】
rs1799978 SNPは、DRD2発現レベル及び線条体受容体密度を制御すると考えられている。−241A対立遺伝子を保有する患者の中には、リスペリドンで治療された時、−241G対立遺伝子を保有する患者よりも大きな応答を示す者がいた。
【0027】
rs1799732 SNPもまた、DRD2発現レベル及び線条体受容体密度を制御すると考えられている。−141C欠失対立遺伝子を保有する統合失調症患者は、抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、及びクロルプロマジン)に対する応答に、−141C挿入対立遺伝子を保有する患者よりも著しく長い時間がかかると報告されてきた。
【0028】
DRD2遺伝子のエクソン6の選択的スプライシングにより、少なくとも3つのアイソフォーム、すなわち、短いアイソフォーム(DRD2S)、長いアイソフォーム(DRD2L)、及びより長いアイソフォームが生成する。rs2283265 SNP及びrs1076560 SNPでは、DRD2Lに比較してDRD2Sの発現が減少している。
【0029】
rs6275 SNPに対してC/C遺伝子型を有する統合失調症患者は、クロザピン、ハロペリドール、又はリスペリドールで治療された時、非C/C遺伝子型を有する患者よりも大きな改善を示すと報告されてきた。
【0030】
DRD2に初めは帰属されたrs1800497多型は、その後、ankyrin repeat and kinase domain containing 1(ANKK1)遺伝子のエクソン8内に位置することが示されてきた。A1対立遺伝子は、健常個体における低密度の線条体ドーパミンD2受容体と関連づけられており、線条体L−アミノ酸デカルボキシラーゼ(ドーパミン生合成の最終酵素)活性の亢進と関連している可能性がある。A2対立遺伝子は、統合失調症と関連づけられてきた。ある個体群では、A2ホモ接合体の患者は、ヘテロ接合体の患者よりも有意に高い抗精神病薬応答を示した。別の個体群では、A1対立遺伝子は、上記のrs2283265 SNP及びrs1076560 SNPのマイナー対立遺伝子と連鎖不平衡にあることが示された。
【0031】
統合失調症の急性増悪期と診断された患者全員を、3群のうちの1つにランダムに割り当てた。第1群(n=218)は、24mg/日(12mgを1日2回)のイロペリドンを服用し、第2群(n=103)は、160mg/日(80mgを1日2回)のジプラシドンを服用し、第3群(n=105)はプラセボを服用した。有効性は、PANSS−Tスコアにおけるベースラインからの変化によって測定した。
【0032】
結果
【0033】
分析された6つのSNPのいずれも、全研究集団又は白人亜集団若しくは黒人亜集団においてベースラインPANSS−Tと関連していなかった。
【0034】
Taq1A多型では、白人亜集団において14日目に統計的に最も有意な効果が示された。図2を参照のこと。図3と比較されたい。統計的に有意な効果はまた、7、10、及び21日目にこのSNPに関して観察された。図4を参照のこと。14日目において、非A1/A2患者に対するPANSS−T変化の平均は、−12.7(±2.1)であり、A1/A2患者に対しては−2.1(±2.7)となり、その結果、0.003のp値が得られた。
【0035】
rs2283265及びrs1076560のイントロンSNPも、14日目において、白人亜集団のイロペリドン応答と有意に関連していた(それぞれp=0.01及びp=0.05)。rs2283265に対して非G/T遺伝子型を保有する白人患者(PANSS−T変化の平均:−11.8(±2.0))では、G/T遺伝子型を保有する白人患者(PANSS−T変化の平均:−2.4(±3.0))よりも高い有効性(p=0.01)。
【0036】
識別された亜集団(白人、黒人、及びアジア人)の間で観察されたp値の相違は、統計的に有意でないp値を示すので、rs1800497多型がこれらの群の間でイロペリドンの有効性を予測することを示唆すると解釈されないことに留意されたい。集団全体に対するp値は、統計的に有意であり、亜集団間に統計的に有意なp値が得られないことは、亜集団の標本サイズ、対立遺伝子頻度の差、又はその両方に起因する可能性がある。
【0037】
上記結果は、上記SNPの1つ又は複数における患者の遺伝子型に基づいて、患者の治療でのイロペリドンの有効性を予測するために使用することができる。
【0038】
この結果はまた、患者に対するイロペリドンの有効用量を決定するために使用することができる。例えば、イロペリドン(FANAPT(商標))錠剤の推奨標的投薬量は、1日2回服用の12〜24mg/日である。(FANAPT(商標)に関する完全な処方情報は、参照により本明細書中に組み込まれる。)この標的投薬量範囲は、毎日の投薬量調節によって通常は達成される。すなわち、起立性低血圧の症状に対して患者に注意を喚起しながら、1日2回の1mg用量から開始して、その後、2、3、4、5、6、及び7日目にそれぞれ2mg、4mg、6mg、8mg、10mg、及び12mgを1日2回として、12mg/日〜24mg/日の投薬量範囲に到達させる。イロペリドンの相対的に高い有効性と関連する遺伝子型を患者が保有するか否かを決定した場合、このような投薬量調節レジメンを維持すること及び/又は最大投薬量を12mg/日(6mgを1日2回)に留めておくことが可能である。他方、イロペリドンの相対的に低い有効性と関連する遺伝子型を患者が保有すると決定された場合、投薬量調節レジメンをより高い初期投薬量(例えば1mg/日ではなく2mg/日)から開始すること及び/又は最大投薬量を24mg/日(12mgを1日2回)に留めておくことが可能である。別の場合では、代替治療(例えば非イロペリドン治療又はイロペリドン及び少なくとも1つの他の化合物を同時投与することを含む治療)に取り組んでもよい。
【0039】
これらの結果はまた、統合失調症などの精神病性障害に罹患している患者を治療するために使用することができる。例えば、上記の6つのSNPのうちの1つ又は複数において、イロペリドンの相対的に高い有効性と関連する遺伝子型を患者が保有すると決定された場合、そうでない場合に患者に投与されると思われる用量より、低い有効用量(すなわち、イロペリドンの相対的に高い有効性と関連する遺伝子型を保有しない患者に投与されると思われる用量より低い有効用量及び/又は遺伝子型(複数可)が決定されなかった患者に投与されると思われる用量より少ない有効用量)のイロペリドンを患者に投与することができる。
【0040】
本発明の様々な態様の上記説明は、例示及び説明の目的で提示したものである。上記説明は、網羅的であることも、開示した正確な形態に本発明を限定することも意図せず、明らかに、多数の改変及び変形が可能である。当業者には明白なことになり得るこのような改変及び変形は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内に含むことを意図している。
【0041】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年5月15日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第61/178,934号の利益を主張し、これは、参照により本明細書中に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における少なくとも1つの精神病症状の治療でのイロペリドン使用の有効性を予測する方法であって、
rs1800497一塩基多型(SNP)における前記個体の遺伝子型を決定するステップと、
rs1800497 SNP座位における前記個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連する場合に、イロペリドンによる前記個体の治療が有効であると予測するステップと
を含む方法。
【請求項2】
イロペリドンの相対的に高い有効性と関連するrs1800497 SNP遺伝子型が、非A1/A2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
rs1799978、rs1799732、rs2283265、rs1076560、及びrs6275からなる群から選択される少なくとも1つの追加のSNPにおいて前記個体の遺伝子型を決定するステップと、
前記少なくとも1つの追加のSNP座位における前記個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連する場合に、イロペリドンによる前記個体の治療が有効であると予測するステップと
をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの追加のSNPがrs2283265であり、且つイロペリドンの相対的に高い有効性と関連する遺伝子型が非G/Tである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの追加のSNPがrs1076560であり、且つイロペリドンの相対的に高い有効性と関連する遺伝子型が非G/Tである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
個体における少なくとも1つの精神病症状の治療でのイロペリドン使用の有効性を予測する方法であって、
rs2283265一塩基多型(SNP)における前記個体の遺伝子型を決定するステップと、
rs2283265 SNP座位における前記個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連する場合に、イロペリドンによる前記個体の治療が有効であると予測するステップと
を含む方法。
【請求項7】
イロペリドンの相対的に高い有効性と関連するrs2283265 SNP遺伝子型が、非G/Tである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
個体における少なくとも1つの精神病症状の治療でのイロペリドン使用の有効性を予測する方法であって、
rs1076560一塩基多型(SNP)における前記個体の遺伝子型を決定するステップと、
rs1076560 SNP座位における前記個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連する場合に、イロペリドンによる前記個体の治療が有効であると予測するステップと
を含む方法。
【請求項9】
イロペリドンの相対的に高い有効性と関連するrs1076560 SNP遺伝子型が、非G/Tである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
イロペリドンの有効用量を個体に投与する方法であって、
rs1800497一塩基多型(SNP)における前記個体の遺伝子型を決定するステップと、
rs1800497 SNP座位における前記個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連する場合に、12mg/日以下の有効用量のイロペリドンを前記個体に投与するステップと
を含む方法。
【請求項11】
イロペリドンの相対的に高い有効性と関連するrs1800497 SNP遺伝子型が、非A1/A2である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
rs1799978、rs1799732、rs2283265、rs1076560、及びrs6275からなる群から選択される少なくとも1つの追加のSNPにおける前記個体の遺伝子型を決定するステップと、
前記少なくとも1つの追加のSNPにおける前記個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連する場合に、12mg/日以下の有効用量のイロペリドンを前記個体に投与するステップと
をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの追加のSNPがrs2283265であり、且つイロペリドンの相対的に高い有効性と関連する遺伝子型が非G/Tである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの追加のSNPがrs1076560であり、且つイロペリドンの相対的に高い有効性に関連する遺伝子型が非G/Tである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
rs1800497 SNPにおける前記個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に低い有効性と関連する場合に、12mg/日を超える有効用量のイロペリドンを個体に投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
イロペリドンの前記有効用量が、16mg/日以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
イロペリドンの前記有効用量が、20mg/日以上である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
イロペリドンの前記有効用量が、24mg/日である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
rs1800497 SNPにおける前記個体の遺伝子型がイロペリドンの相対的に低い有効性と関連する場合に、少なくとも1つの他の化合物と併用してある用量のイロペリドンを前記個体に投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
精神病性障害に罹患している患者を治療する方法であって、
次の遺伝子座、rs1800497、rs1799978、rs1799732、rs2283265、rs1076560、及びrs6275の1つ又は複数における前記患者の遺伝子型を決定するステップと、
前記1つ又は複数の遺伝子座における前記患者の遺伝子型がイロペリドンの相対的に高い有効性と関連する場合に、そうでない場合に投与されると思われる用量より、低い有効用量のイロペリドンを前記個体に投与するステップと
を含む方法。
【請求項21】
精神病性障害に罹患している患者を治療する方法であって、
次の遺伝子座、rs1800497、rs1799978、rs1799732、rs2283265、rs1076560、及びrs6275の1つ又は複数における患者の遺伝子型を決定するステップと、
前記1つ又は複数の遺伝子座における前記患者の遺伝子型がイロペリドンの相対的に低い有効性と関連する場合に、そうでない場合に投与されると思われる用量より、高い有効用量のイロペリドンを前記個体に投与するステップ、又はイロペリドン以外の薬剤を前記患者に投与するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−526562(P2012−526562A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511063(P2012−511063)
【出願日】平成22年5月15日(2010.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/035045
【国際公開番号】WO2010/132866
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(507021702)ヴァンダ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】