説明

DSRC車載器

【課題】DSRC車載器の接点接触不良を解消する。
【解決手段】DSRC車載器201にICカード301を排出し、再び挿入するローディング機構240を設け、ICカードコンタクト部250で車載器201のICカードコンタクト部250とICカード301の接点接触面302との間に接点不良が生じていないかを検知して、接点不良が検知された場合にはローディング機構240を起動させて塵や埃を除去することにより接点不良を自動的に解消する。
また、走行中に生じる振動によって一時的に接点不良が発生したときにも、自動的に接点不良を解消するDSRC車載器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば狭域通信(Dedicated Short Range Communication:DSRC)システムに用いられるDSRC車載器に関し、特にDSRC車載器とこのDSRC車載器に挿入されたICカードとの接点不良が検出されたとき、カードの接点不良を自動的に良好な状態とするものである。
【背景技術】
【0002】
従来の狭域通信システムにおいて用いられるDSRC車載器の利用方法として、例えば、高速道路などの有料道路料金収受において、道路上に設置された路側装置と車両に搭載されたDSRC車載器との間を無線通信により課金処理に必要な情報をやり取りし、料金収受を行う自動料金収受(ETC:Electronic Toll Collection)システムが普及している。
【0003】
このETCシステムに用いられるDSRC車載器は、利用者が自動料金収受システムを使用する際、DSRC車載器に設けられたICカード挿入口にICカードを挿入し、DSRC車載器とICカードとを電気的に接触した状態とすることで、課金処理に必要な情報をDSRC車載器を介して路側装置に送信することができるものである。また、このDSRC車載器においては、自動料金収受システムを利用しないときに、DSRC車載器からICカードを取り外すことができるように構成することにより盗難防止の配慮がなされている。
【0004】
つまり自動料金収受システムを利用するときには、DSRC車載器のICカード挿入口にICカードを挿入させ、利用しないときや車両から離れるときにはICカードを挿入口から取り出すことを可能とするように構成されているため、DSRC車載器にはICカードに設けられた電気的接触面から課金処理に必要な情報を読み出す接点端子をDSRC車載器が持つことになる。
【0005】
ここで、上述のような構成を採用しているため、上記DSRC車載器の接点端子と、ICカードに設けられた接点接触面との間に埃や塵が混入することにより課金に必要な情報をICカードから読出すことや、ICカードへの課金に係わる情報の書込みが正常に動作しなくなってしまうことがあるという問題点があった。
【0006】
また、DSRC車載器に挿入されたICカードの接点接触面とDSRC車載器の接点端子とが車両の振動により一時的に外れ、DSRC車載器が正常に動作しなくなってしまうことがあるという問題があった。
【0007】
この問題に対し、特許文献1には、上記接点端子および上記接点接触面間の電位差を検出することによってDSRC車載器とICカードとの間で接点不良が発生したことを検出し、接点不良が発生した場合に、利用者に対して報知する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−202772号公報([0007]、[0011])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のDSRC車載器は、DSRC車載器に挿入されたICカードとこのDSRC車載器との接点不良を検出し、接点不良が発生している旨を利用者に単に報知するのみであり、この接点不良を解消するためには、利用者がICカードを一旦取り出した後、再度ICカード挿入口へICカードを挿入する必要があった。
【0009】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ICカードがDSRC車載器に挿入されているのにもかかわらず、ICカードとDSRC車載器との接点不良が生じた場合に、この接点不良を自動的に解消することができるDSRC車載器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、DSRC車載器にICカードが挿入されているか否かを検出し(ICカード検出手段)、このDSRC車載器にICカードが挿入され、かつICカードの接点不良が検出された(接点接触検出手段)とき、DSRC車載器に挿入されたICカードをDSRC車載器から一旦排出させた後、再びDSRC車載器に自動的に挿入(ICカード制御手段)させるように制御(制御手段)することを特徴とするものである。
【0011】
このような構成を採用することにより、DSRC車載器とICカードとの接点不良を自動的に解消することができ、ICカードが挿入された状態で接点不良が発生してもその都度ユーザの操作によりICカードを一旦排出させた後に再び挿入させる必要がなくなりユーザの操作性を向上させることができる。また、車両の走行中にICカードの排出、再挿入の操作をする必要がなくなるため、安全運転に寄与することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、車両を利用しようとする状態信号が検出されたことを開始条件とし、制御手段にてICカードをDSRC車載器から排出させた後に再び挿入させる制御を自動的に実行させることを特徴とするものである。このようにすることによって、車両を利用しようとするユーザが車両を動かすときに、接点不良解消制御を行うことができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、車両を利用しようとする状態信号は、車両の利用者が携帯する車両の鍵から送信される無線信号であることを特徴とするものである。このようにすることにより、車両を利用しようとする利用者が車両に向けて車両のドア鍵を開ける無線信号を送信し、この無線信号を車両が受信したことを開始条件とし、接点不良解消制御することができる。このため、利用者が車両に至る前から予めDSRC車載器とICカードとの接点不良解消制御を開始することができるため、利用者が車両に乗り込む前に接点不良を解消することが期待できる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、車両を利用しようとする状態信号は車両のドアが開けられたということを特徴とするものである。このようにすることにより、上記請求項2と同様の効果を得ることができる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、車両を利用しようとする状態信号を車両の駆動源の信号、例えば車両のイグニションスイッチをオフからACCにしたことを特徴とするものであり、請求項2と同様の効果を得ることができる。
【0016】
請求項6記載の発明のよれば、利用者が車両のシートに座ったときに、DSRC車載器の挿入されているICカードの接点検出結果を報知することを特徴とするものである。このように利用者がシートに座ったときに報知することにより、利用者の接点検出結果に対する認知を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、道路上に設置されたDSRC路上機と車両に搭載されたDSRC車載器との間を無線通信により課金処理に必要な情報をやり取りし、料金収受を行う自動料金収受システムへ本発明を適用した一実施形態について図面を用いて以下説明する。
【0018】
(DSRC路上機110の構成に関する記載)
図1は、自動料金収受システムのシステム構成図である。DSRC路上機110は、路上アンテナ120、車両検知器130、発進制御器140、ゲート150、路上機制御装置160などから構成されている。そして、詳細は後述するが、路上機制御装置160には、路上アンテナ120、車両検知器130及び発進制御器140が接続され、この路上機制御装置160は、上記路上アンテナ120を介して課金処理に必要な情報をDSRC車載器201との間でやり取りする制御や、車両の通過を許可あるいは禁止する制御を実行するものである。なお、これらの機器は高速道路の入口および出口に設置されている。
【0019】
路上アンテナ120は、車線をまたぐように設置されているガントリの上部に設置されており、車両が走行する路上に向けて電波を放射し、通信エリアを形成することにより、車両に搭載されたDSRC車載器201と通信するものである。
【0020】
車両検知器130は、車線の両端に設置され、一対の投光器と受光器とからなる光電センサにより構成され、車両が通過する際、投光器から発せられた光が受光部に到達する間に車両によって遮られたことを検出することにより車両の通過や、車輪数といった車種毎に定められた通行料金に関する情報を検出し、この検出した情報を路上機制御装置160へ送信する。 発進制御機140は、路上機制御装置160からの指示に基づいてゲート150を開閉制御するものであって、DSRC路上機110とDSRC車載器201との間の通信が正常に行われたときは、ゲート150を開放することにより車両の通過を許可する。またDSRC路上機110とDSRC車載器201との間の通信が正常に行われなかったときは、ゲート150を閉鎖することにより車両の通過を禁止するようになっている。
【0021】
DSRC路上機110は、車両が通信エリアに位置した状態で、DSRC車載器201が搭載されている場合に、DSRC車載器201との間で通信を行い、課金処理が行われるようになっている。
【0022】
次に、図1においてDSRC車載器201を搭載した車両が右から左へ進むものとしてDSRC路上機110の動作について説明する。なお、DSRC路上機110は有料道路の入口と出口に設けられるものであるが、いずれの動作も略共通であるために、ここでは出口に設けられたものについて説明する。
まず、上記車両検知器130により車両が進入したことが検出され、同時に料金に関係する車種(大型車・小型車等)がここで検出される。続いて車両に搭載されているDSRC車載器201が路上アンテナ120にて形成される無線通信エリアに入ると、DSRC車載器201と路上アンテナ120との通信が行われる。この通信は路上機アンテナ120を介して、車載器201が持つ情報を読み出す処理がなされる。この車載器201が持つ情報とは、有料道路の入口通過時にDSRC路上機110から送信されてDSRC車載器201に記憶された有料道路の入口を特定する入口情報である。
【0023】
DSRC路上機110がDSRC車載器201から読み出す情報は、前述の入口情報のほか、後述するICカード不揮発性メモリ303に記憶されている有料道路料金を請求する課金先を特定する情報が読み出される。
【0024】
そして、路上アンテナ120を介して車載器201から得た情報は、路上機制御装置160に送信される。路上機制御装置160は、DSRC車載器201から読み出された情報及び、車両検知器130により検出された情報をもとに、有料道路の利用料金額を算出する。
【0025】
次に路上機制御装置160は、この有料道路の利用金額と利用場所、利用日時など利用履歴がわかる情報を路上機アンテナ120を介してDSRC車載器201へ送信する。DSRC車載器201は、路上アンテナ120から送信された情報を受信し、必要な情報を後述する車載器用揮発性メモリ280およびICカード不揮発性メモリ303に記憶するようになっている。
【0026】
そして、路上機制御装置160は、この処理が正常に行われたか異常であったかという結果を発進制御器140に伝える。発信制御器140は、路上機制御装置160から伝えられた結果が正常であればゲート150を開け、異常であればゲート150を閉じるように制御する。なお、異常の場合はDSRC路上機110付近に待機している収受員によりゲート150を開ける操作がなされ、車両が通行できるようになっている。
【0027】
(DSRC車載器201の構成に関する記載)
図2は、車両に搭載されているDSRC車載器201の電気的な構成の機能ブロック図を示すものである。
【0028】
DSRC車載器201は、アンテナを介してDSRC路上機110とDSRC通信する送受信回路210と、DSRC車載器201にICカード301が挿入されているか否かを検出するICカードコネクタ260と、ICカード301に設けられた接点接触面302とDSRC車載器201に設けられた図示しない接点端子とが接触しているか否かを検出するICカードコンタクト部250と、ICカード301の挿入および排出を行うローディング機構240と、DSRC車載器201の動作状態やDSRC路上機110との通信結果を通知するブザー270と、ICカード用不揮発性メモリ303から読み出した情報や路上機アンテナ120から受信した情報を記憶する車載器用揮発性メモリ280と、DSRC車載器201と、このDSRC車載器201が搭載されている車両を特定可能とする車検証に記載された情報やDSRC車載器201を制御する制御プログラムが記憶された車載器用不揮発性メモリ290と、DSRC車載器201が搭載された車両の他の搭載機器(例えば、ナビゲーション装置等)と情報をやり取りする外部I/O291とを有しており、またこれらDSRC車載装置201の各構成を制御する車載器ECU220よりなっている。
【0029】
なお、上記ICカードコネクタ260が本発明のICカード検出手段に該当し、上記ICカードコンタクト部250が本発明の接点接触検出手段に該当する。
【0030】
また、上記ローディング機構240が本発明のICカード制御手段に該当し、上記車載器ECU220が本発明の制御手段に該当する。 次に、これらDSRC車載器201が有する各構成について説明する。
【0031】
ICカードコネクタ部260は、ICカード301が挿入されると、このICカード301によって押下される位置に設けられた図示しないスイッチによってICカード301が挿入されているか否かを検出できるようになっている。このスイッチの押下有無は車載器ECU220に伝えられ、車載器ECU220は、このスイッチが押下されているときはICカード301がDSRC車載器201に挿入されていると判断し、このスイッチが押下されていないときはICカード301がDSRC車載器201に挿入されていないと判断する。
【0032】
また、ICカードコンタクト部250は、図示しない複数の突起状の接点端子により構成されており、ICカード301がDSRC車載器201に正しく挿入されると、これら複数の接点端子とICカード302に設けられた接点接触面302とが電気的に接続するようになっている。
【0033】
そして、DSRC車載器201の車載器用揮発性メモリ280に記憶されているDSRC路上機110から受信した情報をICカード302のICカード用不揮発性メモリ303に書き込むことや、上記ICカード用不揮発性メモリ303に記憶されている有料道路の利用料金を金融機関の口座から引き落とすために必要な利用者の銀行口座番号等の情報を読み出すことができる。なお、複数の接点接触端子間の電圧を監視することによりICカードコンタクト部250とICカード302が電気的に正しく接続されているのか否かを検出できるようになっている。
【0034】
また、ローディング機構240は、ICカード301をDSRC車載器201に挿入したり、排出したりするものであり、モータやソレノイドを用いてローディングを行うものである。このローディング機構240は、ICカード301と直接接する回転体を回転させて挿入や排出をするようにしてもよいし、ICカード301を保持する図示しないトレー部をDSRC車載器201に設けて、このトレーを挿入、排出するようにしてもよい。なお、ローディング機構240は、車載器ECU220からの指示に基づいて制御が行われる。
【0035】
ブザー270は、車載器ECU220からの指示に基づいて鳴動をするものであり、DSRC車載器201とDSRC路上機110との通信が正常に行われたか、異常であったかという通信状態を利用者にブザ−270の鳴動音によって通知することができるようになっている。またICカード301が正しく挿入されていないことを利用者に知らせることもできる。なお、利用者への報知は、ブザー270に替えて、LCDやLEDを用いた表示による報知でも良いし、ブザー270とLCDやLEDによる表示とを組み合わせた報知であってもよい。このLCDやLEDを用いた表示による報知の場合、DSRC車載器201にLCDやLEDを配置する以外に、車両に設けられ車両の速度やエンジン回転数等を表示するメータ周辺に表示をするようにして利用者に報知をするようにしてもよい。さらには、車両に搭載された図示しないナビゲーション装置のディスプレイを用いて報知をしても良い。
【0036】
次に、車載器用揮発性メモリ280は、電源供給が停止されると揮発性メモリ280内に記憶をしている情報が消去される周知のメモリ(RAM)であり、DSRC車載器201が起動中である間は情報が保持される。
【0037】
車載器用揮発性メモリ280には、ICカード301から読み出した情報や、アンテナおよび送受信回路210を介して受信したDSRC路上機110からの情報が記憶される。
【0038】
まずICカード301に記憶された情報を車載器用揮発性メモリ280に記憶するときについて記す。
【0039】
起動中のDSRC車載器201にICカード301が挿入されると、車載器ECU220は、ICカード301に設けられたICカード用不揮発性メモリ303にアクセスし、情報をやり取りできるように活性化を行う。そして、ICカード用不揮発性メモリ303に暗号化されて記憶されている認証情報を読出し、ICカード301とDSRC車載器201との認証を行う。また、車載器ECU220は、利用者や利用者が予め金融機関と契約をした銀行口座番号等の情報をICカード用不揮発性メモリ303から読出し、上記車載器用揮発性メモリ280に記憶する。
【0040】
次にDSRC路上機110から受信した情報を車載器用揮発性メモリ280に記憶するときについて記す。
【0041】
DSRC路上機110から送信される情報は、送受信回路210を介して車載器ECU220に入力されたのち、一旦車載器用揮発性メモリ280に記憶される。そして、車載器ECU220は、DSRC路上機110からの指示に基づいて課金に必要な情報を車載器用揮発性メモリ280および車載器用不揮発性メモリ290から読出し、DSRC路上機110に送信する。
【0042】
DSRC路上機110は、DSRC車載器201から送信されてきた情報を路上アンテナ120で受信し、路上機制御装置160に送信する。また、車両検知器130によって検出された車種等を路上機制御装置160に送信する。路上機制御装置160はこれらの情報から課金額を算出し、課金額と利用履歴をDSRC車載器201に送信する。そして、この利用履歴が車載器用揮発性メモリ280に記憶され、その後ICカード301のICカード用不揮発性メモリ303に記憶される。
【0043】
車載器用不揮発性メモリ290は、周知のメモリ(EEPROM)であって、車載器ECU220の制御プログラムはこのメモリに記憶されている。なお、本実施形態では、車載器ECU220と車載器用不揮発性メモリ290を別構成で記したが、車載器ECU220内に車載器用不揮発性メモリ290を設けるようにしても良い。
【0044】
外部I/O291は、DSRC車載器201が搭載された車両に設けられた、シートセンサ、キーレス装置、カーテシスイッチと車両用LANを介して接続するインターフェース部である。また、このインターフェース部には車両用LANを介して車両のイグニションキー信号線にも接続されている。なお、シートセンサは車両の利用者がこの車両にシートに座ったことを検出するためのセンサである。また、キーレス装置は車両の利用者が携帯する車両の鍵からこの車両の鍵を開閉制御する無線信号を受信し、車両の鍵を開閉制御するものである。また、カーテシスイッチとは車両ドアの開閉に連動して動作をするスイッチであり、車両ドアの開閉状態を検出することができる。
【0045】
車載器ECU220は、DSRC路上機110から送信され送受信回路210を介して得られた情報の解析、ICカード301の挿入有無判断、ICカード用不揮発性メモリ303との情報のやり取り、ローディング機構240の挿入および排出制御、および外部I/O290から伝送される情報の解析等の処理を実行するプログラムが記憶されたCPUとして構成される。
【0046】
(ICカード301の構成に関する記載)
また、図2に記載のICカード301は、DSRC車載器201のICカードコンタクト部250を介してDSRC車載器201と情報のやり取りを行う接点接触面302と、情報を記憶・読み出し可能なICカード用不揮発性メモリ303とからなる。このICカード301の外観は、クレジットカードなど周知の電子カードの形状をなしている。
【0047】
また、ICカード用不揮発性メモリ303には、DSRC車載器201の車載器ECU220との間でデータのやり取りを行うための制御プログラムが記憶されているとともに、ICカード301の契約の有効期限等を含む契約情報、有料道路の利用料金を金融機関の口座から引き落とすための決済情報が記憶されている。
【0048】
また、このICカード用不揮発性メモリ303には、ICカード301を特定するためのICカード識別情報(カードID)も予め記憶されている。そして、DSRC車載器201に設けられたICカードコンタクト部250と、ICカード301に設けられた接点接触面302とが接触し、DSRC車載器201からICカード301へ電源が供給されると、ICカード301とDSRC車載器201との認証が行われ、その後ICカード301の活性化が行われる。続いて、DSRC車載器201からICカード用不揮発性メモリ303への情報読込み、書き出しを行うことができるようになる。
【0049】
次に、上述したDSRC車載器201の作動について説明する。
まず、DSRC車載器201は、車両に取り付けられた図示しない車両バッテリから電源供給が行われるようになっている。このとき、DSRC車載器201はDSRC路上機110と直ちに通信を行える状態とはなっておらず、利用者が車両を利用しようとする状態を検出できるように外部I/O291を起動させておくと共に、外部I/O291を介して利用者が車両を利用しようとしていることが判別できるように車載器ECU220の一部が起動している状態となっている。
【0050】
そして、利用者が車両を利用しようとする状態信号が外部I/O291に接続されたシートセンサ、キーレス装置、カーテシスイッチ等のセンサによって検出されると、外部I/O291はこの検出結果をセンサから受信し、この受信結果を車載器ECU220に通知する。この通知をもとに車載器ECU220は、DSRC車載器201全体を起動状態とするように制御する。このように、利用者が車両を利用しようとしていないときは、DSRC車載器201全体での消費電流が抑えられるようになっている。
【0051】
そして、DSRC車載器201に設けられた図示しないICカード挿入口にICカード301が挿入されると、ICカードコネクタ部260によってICカード301が挿入されたことが検出され、この検出結果を車載器用ECU220へ出力する。車載器ECU220は、この通知によって、ICカード301が挿入されているか否かの検出を行うことができる。
【0052】
続いて、車載器ECU220は、DSRC車載器201に設けられたICカードコンタクト部250と、ICカード301に設けられた接点接触面302とが正常に接しているか否かのチェックを行うためにICカードコンタクト部250へ検査信号を出力する。
【0053】
車載器ECU220は、この検査信号の応答によって、ICカードコンタクト部250と接点接触面302とが正常に接触しているのか否かを判断し、その結果をブザー270へ出力する。そして利用者はこのブザー270からの報知結果によってICカード301が利用できる状態であるのか否かを知ることができる。
【0054】
そしてICカードコンタクト部250とICカード301の接点接触面302とが正常であることが検出されたときは、次にICカード用不揮発性メモリ303からDSRC路上機110との通信を行うために必要な情報を読出し、車載器用揮発性メモリ280に記憶する。そして、DSRC車載器201はDSRC路上機110からの通信信号を受信待機する待ち受け状態となる。この状態において、DSRC路上機110からの無線信号がアンテナを介して送受信回路210によって受信されると、DSRC車載器201とDSRC路上機110との間で通信が開始され課金処理に必要な情報のやり取りが行われる。
【0055】
ここで、本実施形態では、接点接触検出結果が異常であると判断されたときの動作について記す。車載器ECU220はICカード制御手段をなすローディング機構240へ信号を出力し、この出力信号を受けたローディング機構240は、DSRC車載器201に挿入されているICカード301を一旦排出し、再度挿入するように動作させる。
【0056】
そして、DSRC車載器201に設けられたICカードコンタクト部250と、ICカード301に設けられた接点接触面302とが正常に接しているか否かのチェックが再び行われる。このチェックが正常であるときは前述の処理を経て、待ち受け状態となる。また、異常であるときは再びICカード301を排出しICカードを再挿入する。そして、再びチェックを行い、正常であると判断されたときは待ち受け状態となる。なお、異常であると判断されたときは、更に排出と挿入の動作を行い、チェックをする。なお、ICカード301を排出し、挿入するという動作が所定回数繰り返された後であっても異常であると判断されたときは、車載ECU220を介してブザー270を鳴動させることにより、利用者に接点異常であることが報知される。
【0057】
次に、車載器ECU220の処理を図3のフローチャートに基づき説明する。
【0058】
まず、はじめにステップ100(以下、S100と記す)は車両の図示しないバッテリからDSRC車載器201に電源が供給されるステップである。このとき車載器ECU220は、外部I/O291を介して車両の状態に変化があるかないかを監視できる状態とし、送受信回路210やローディング機構240への電源供給は行わない。
【0059】
次にS110にて車両の状態に変化があるかないかを判断する。すなわち、この車両の状態に変化があるかないかの判断は、利用者が車両を利用しようとしているか否かを判断しようとするものであり、車両の駆動源を起動させるイグニションスイッチがオフからオンへと状態が変化したとき、車両のカーテシスイッチの信号がドアが閉まった状態から開いた状態へと変化したとき、車両の利用者が携帯する車両の鍵からこの車両の鍵を開閉制御する無線信号を受信し鍵状態が変化したとき、のうち少なくともいずれかにより車両の状態が変化したと判断する。
【0060】
そして、S110にて車両状態に変化があった(YES)と判断されるとS120のステップに進む。なお、車両の状態に変化がない(NO)と判断されるとS100へ戻る。つまり車両の状態に変化がない間は、車両の状態の変化を検出する機能のみを起動させておくことによりDSRC車載器201全体での消費電力を抑えるようになっている。
【0061】
次にS120では、DSRC車載器201全体に電源が供給され、これによりDSRC車載器201全体が起動状態となる。
【0062】
続いてS130では、DSRC車載器201にICカード301が挿入されているか否かを判断する。この判断は、ICカードコネクタ部260に設けられたスイッチがICカード301によって押下されているか否かの検出結果に基づき行われる。そしてDSRC車載器201にICカード301が挿入されていると判断されると、S141に進む。
【0063】
このS141では、DSRC車載器201に挿入されたICカード301の接点接触面302と、DSRC車載器201のICカードコンタクト部250とが正常に接触しているか否かが判断される。この判断は、ICカードコンタクト部250の接点端子間の電圧を検出することで正常に接触しているか否かの判断がなされ、正常に接触していると判断されるとS145に進む。
【0064】
S145では、後述するS170によって既に状態報知が行われているか否かを判断する。この判断は後述するS150、S160、S170の処理が何度も繰り返されることを防止するためのものである。そこで、車載器ECU220は、この状態報知を行ったか否かを判断することができるようにするために、この状態報知有無を表すフラグを不揮発性メモリ290に記憶する。具体的には、状態通知を行っていないときには不揮発性メモリ290にフラグ0を記憶させ、状態報知を行っているときには、不揮発性メモリ290にフラグ1を記憶させることにより、状態報知の有無をこのフラグを用いて判断する。
【0065】
そして、S145で状態報知が行われていない(NO)と判断されるとS150に進む。この際、車載器ECU220は、不揮発性メモリ290へ状態報知を行っていないことを示すフラグ0を記憶させる。なお、S145で既に状態報知が行われている(YES)と判断されるとS130に進み、この際車載器ECU220は、不揮発性メモリ290へ状態報知を行ったことを示すフラグ1を記憶させる。ここでは状態報知は行われていないので、S145(YES)と判断され、S150に進む。
【0066】
S150では、ICカード301の活性化及び、DSRC車載器201とICカード301との認証を行う。このステップで活性化と認証を行うことによってDSRC車載器201とICカード301との間で情報を読書きできるようになる。
【0067】
続いて、S160にて利用者が車両のシートに座ったか否かを判断する。このステップは、車両のシートに設けられたシートセンサからの信号に基づいて、利用者がシートに座ったか否かを判断する。利用者が車両のドアを開け、シートに座るまでの間はシートセンサがオフのままであるので(S160:NO)の処理が繰り返される。そしてこのシートセンサによって、利用者がシートに座ったことが検出されるとシートセンサがオンとなり、検出結果が車載器ECU220に伝えられる。この検出結果を受信した車載器ECU220は、利用者がシートに座ったと判断し(S160:YES)、S170のステップに進む。 S170のステップは、DSRC車載器201に挿入されたICカード301の状態を報知するステップである。ここでは、ICカード301が挿入され、ICカードコンタクト部250とICカード301の接点接触面302とが正常に接触していることがS130、S141にて確認されているため「正常」である旨が報知される。利用者がシートに座るということは、これから運転をしようとするタイミングであることから、このタイミングで報知することにより利用者の認識を高めることが期待できる。そして、「正常」である旨を報知した後、S130に戻る。
【0068】
以降DSRC車載器201にICカード301が挿入され(S130:YES)、DSRC車載器201に挿入されたICカード301の接点接触面302とDSRC車載器201のICカードコンタクト部250とが正常に接触している間(S141:YES)は、S130からS145の処理が繰り返される。一方、S141にてDSRC車載器201のICカードコンタクト部250とICカード301の接点接触面302とが正常に接触していないと判断されたとき(S141:NO)、S180に進む。なお、この際、車載器ECU220は、不揮発性メモリ290に記憶されている状態報知有無を表すフラグを0(報知を行っていない)とさせる。
【0069】
S180はDSRC車載器201に挿入されたICカード301をローディング機構240によって排出制御する回数が所定回数(N回)に達しているか否かを判断する。そして、所定回数(N回)に達していないと判断されたとき(S180:YES)、S190のステップに進む。
【0070】
続くS190では、DSRC車載器201に挿入されているICカード301をローディング機構240によって一旦排出し、再び挿入するステップである。このS190の動作はDSRC車載器201からICカード301を一旦排出させ、再び挿入することによってICカードコンタクト部250に設けられた接点端子とICカード301の接点接触面302に付着した塵や埃を振るい落とすことができる。また、この動作により、車両の振動により一時的にICカードコンタクト部250とICカード301との接点接触面とが離れてしまったことによる接点接触不良を解消することができる。そして、DSRC車載器201からICカード301を一旦排出し、再び挿入した後に、再びS141のステップに戻る。
【0071】
S141にてICカードコンタクト部250とICカード301との接点接触面とが正常に接触しているとき(S141:YES)は上述したS150のステップに進み、正常でないとき(S141:NO)のときは、S180のステップに進む。
【0072】
そして、S180のICカード301の排出、再挿入動作に所定回数(N回)という上限を設け、このN回に達するまでの間であればS141、S180、S190の処理が繰り返される。そして、N回に達する前にS141での処理で接点が正常に接触している(S141:YES)と判断されたとき、S145に進む。S145は、不揮発性メモリ290に記憶されている状態報知有無を示すフラグを確認することより判断される。ここではフラグは0(状態報知がなされておらず、状態報知無しを示すフラグ)が記憶されているため、S150に進む。 なお、S180のステップにより、ICカード301を排出し、再び挿入する制御がN回を超えたと判断されたとき、S180の処理で所定回数N回を超えた(S180:NO)と判断され、S190でのICカード301の挿入排出動作を中止してS191へ進む。そして、S191にて上述したS160と同様の処理を実行し、利用者がシートに座ったこと、あるいは座っていることが検出されると(S191:YES)、S192のステップに進む。
【0073】
S192では、利用者にICカードコンタクト部250とICカード301の接点接触面302とが正常に接触しておらず、「異常」であることを報知するステップである。なお、利用者にとって異常原因を特定しやすくするために、「ICカードを読み出せません」「ICカードを確認してください」といった内容を図示しないスピーカを介して音声にて報知することが望ましい。このような報知内容とすることで、ICカードに何らかの異常があることを利用者に知らしめることができる。このステップに至るには、ICカード301の接点接触面302またはDSRC車載器201のICカードコンタクト部250に付着した塵や埃が強固に付着していることにより、S180にてICカード301の排出・再挿入動作を繰り返しても、その塵や埃を取り除くことができなかったときや、ICカード301が変形をしていることによりICカードコンタクト部250とICカード301の接点接触面302とが正常に接触しないといったことにより生ずる接触異常に備えるためである。
【0074】
続いて、S192にて利用者に状態を報知した後、S130に戻る。これはS192で異常であることを認識した利用者がICカード301を一旦DSRC車載器201から取り出し、接点接触面302の汚れをふき取ってから再度ICカード301をDSRC車載器201に挿入した場合やICカード301の変形を直してから再度ICカード301をDSRC車載器201に挿入した場合に備えられるようにするためである。
【0075】
また、上記S130でICカード301が挿入されていない(S130:NO)と判断されたとき、S193の処理が行われる。なお、S193の処理は上述したS160及びS191と同様の処理である。続いて、S194でICカード301が挿入されていない旨を報知した後、S130に戻る。なお、ここでの報知内容は「ICカードが挿入されていません」という内容を音声にて報知することで、利用者にとって分かりやすい報知を行うことができる。
【0076】
以上の処理を施すことにより、DSRC車載器201にICカード301が挿入されているのにもかかわらず、ICカード301の接点接触面302と、DSRC車載器201のICカードコンタクト部250との電気的接続が正常でないことが検出されたとき、ICカード301を一旦排出したのち再び挿入することにより、ICカードコンタクト部250やICカード301に振動を加えることができ、この振動によってICカードコンタクト部250とICカード301との接点接触不良の解消を自動的に行うことができるようになる。
【0077】
また、S141の接点接触が正常であるか否かの検出はDSRC車載器の電源がオンとなっていて、且つICカード301がDSRC車載器201に挿入されている状態であれば常に繰り返し行われているため、車両走行中に生じた振動に起因して発生した一時的な接点接触不良を検出し、自動的に接点不良を解消する動作に入ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施形態に係る、有料道路の入口に設けられたDSRC路上機110の 構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る、DSRC車載器201の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る、DSRC車載器201の車載機ECU220の処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
110 DSRC路上機
201 DSRC車載器
220 車載器ECU
210 送受信回路
240 ローディング機構
250 ICカードコンタクト部
260 ICカードコネクタ部
270 ブザー
280 車載器用揮発性メモリ
290 車載器用不揮発性メモリ
291 外部I/O
301 ICカード
302 接点接触面
303 ICカード用不揮発性メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードが挿入され、路上機との間でDSRC通信を行うDSRC車載器において、前記ICカードが前記車載器に挿入されているか否かを検出するICカード検出手段と、
前記DSRC車載器に設けられた接点端子と前記ICカードに設けられた接点接触面とが接触しているか否かを検出する接点接触検出手段と、
前記ICカードの挿入及び排出の制御を行うICカード制御手段と、
前記ICカード検出手段にて前記ICカードが前記DSRC車載器に挿入されていることが検出され、かつ前記接点接触検出手段により前記車載器と前記ICカードとの接点が接点不良であると検出された場合に、前記ICカード制御手段に対し、前記ICカードを前記DSRC車載器から排出させた後に再び挿入させる制御を自動的に実行させる制御手段とを備えたことを特徴とするDSRC車載器。
【請求項2】
前記制御手段には、前記DSRC車載器が搭載された車両を利用者が利用しようとしているか否かを示す状態信号が入力され、この状態信号が利用者が利用しようとしていることを示す信号である場合に、前記制御手段は、前記ICカードを前記DSRC車載器から排出させた後に再び挿入させる制御を自動的に実行することを特徴とする請求項1に記載のDSRC車載器。
【請求項3】
前記DSRC車載器が搭載された車両を利用者が利用しようとしているか否かを示す状態信号は、前記車両の利用者が携帯する鍵から送信される前記車両のドアロックを開状態とするための無線信号であることを特徴とする請求項2に記載のDSRC車載器。
【請求項4】
前記DSRC車載器が搭載された車両を利用者が利用しようとしているか否かを示す状態信号は、前記車両のドアが開けられたことを示す信号であることを特徴とする請求項2に記載のDSRC車載器。
【請求項5】
前記DSRC車載器が搭載された車両を利用者が利用しようとしているか否かを示す状態信号は、前記車両の駆動源を駆動させる信号であることを特徴とする請求項2に記載のDSRC車載器。
【請求項6】
前記接点接触検出手段に基づく検出結果に基づいて、前記DSRC車載器に設けられた接点端子と前記ICカードに設けられた前記接点接触面との接触状態を報知する報知手段を備え、前記制御手段には、前記DSRC車載器が搭載された車両のシートに座ったか否かを示す状態信号が入力され、この状態信号がシートに座ったことを示す信号である場合に、前記報知手段にて報知をすることを特徴とする請求項1乃至5に記載のDSRC車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−43161(P2009−43161A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209766(P2007−209766)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】