説明

Dravet症候群の早期診断を可能にするためのデータを取得する方法及びその利用

【課題】本発明は、1歳未満の乳児にも適用可能なDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得する方法、及びその利用を提供する。
【解決手段】Dravet症候群の発症に高い関連性をもつ危険因子であって、1歳未満の乳児においても検出可能な特定の危険因子が資料に含まれるか否かを判定する。これにより、Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを、発症早期または難治性経過を示す前の段階に、低コストで、かつ簡便に取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得する方法及びその利用に関するものであって、特に、1歳未満の乳児にも適用可能なDravet症候群の早期診断を可能にするためのデータを取得する方法及びその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱性痙攣は小児の約8%にみられる発症率の高い疾病である。熱性痙攣とは、主に感冒などのウイルス感染や細菌感染などによる38℃以上の発熱に伴って、1〜5分間持続する全身の痙攣である。生後6ヶ月から5歳頃までに発症し、大多数の症例は6歳までに治癒する。そのため、積極的な治療を必要としないことが多く、原則として良性疾患である。しかし、1歳未満に発症する熱性痙攣の患者のなかには、熱性痙攣で終始する良性疾患の患者の他に、6歳以降も痙攣が持続する患者や、Dravet症候群(別名:乳児重症ミオクロニーてんかん(Severe Myoclonic Epilepsy in Infancy);SMEIとも称される)という難治てんかん患者が混在している。
【0003】
Dravet症候群の痙攣は、1歳未満に発症し、平均発症年齢は生後4ヶ月から6ヶ月である。一般に、初発発作は全身性もしくは片側性の強直間代又は間代性けいれんであり、乳幼児期にはけいれん重積状態をきたすことが多い。また、痙攣発作は発熱や入浴によって誘発されやすい。乳幼児期を過ぎると片側性けいれんは減少し、けいれん重積状態もおきにくくなる。
【0004】
1歳前後から4歳頃までに、痙攣発作に加えてミオクロニー発作が出現する。同時期に約40〜90%の患者で非定型欠神発作も出現し、眼瞼、頚部、上肢の微細なミオクロニーを伴うものが多い。非定型欠神発作が数時間から数日間にわたり集積して出現し、体の様々な部位の非同期性、不規則ミオクロニーや四肢のトーヌスの上昇を伴った非けいれん性てんかん重積状態が認められることがある。また、脳波上てんかん発射を伴わないミオクロニーも認められ、これは主として四肢遠位部や顔面筋の非同期性不規則ミオクロニーである。複雑部分発作は経過中の様々な時期に出現する。
【0005】
Dravet症候群の発症前の発達は原則として正常である。歩行は軽度遅れることがあり、有意語はみられるが、文章を話すようになることはほとんどない。歩行の不安定性は持続、又は進行することがある。また、幼児期には多動であることが多い。
【0006】
脳波は、Dravet症候群の発症時には正常所見を示す。1〜2歳頃から徐波化が明らかになり、中心頭頂部優位ながら広汎性θ活動が認められることが多い。1歳過ぎまでにてんかん発射が検出されるようになる。2.5〜4c/sの広汎性棘徐波や多棘徐波が主体であるが、しばしば多焦点性棘波も認められる。また、光過敏性が42〜65%、図形過敏性が11〜35%に認められる。
【0007】
また、近年、遺伝子レベルで、Dravet症候群を診断する試みがなされている。例えば、特許文献1及び2には、神経系における電位依存性ナトリウムチャネルα−サブユニットI型遺伝子(SCN1A)の変異が、SMEIに関与することが開示されている。また、SCN1Aの変異を指標として、SMEIを診断できることが開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、神経系における電位型ナトリウムチャネルタイプII遺伝子(SCN2A)の変異が、重篤な知的能力の退行を伴う難治小児てんかんに関与することが開示されている。また、SCN2Aの変異を指標として、重篤な知的能力の退行を伴う難治小児てんかんの素因を有するか否かを診断できることが開示されている。
【0009】
特許文献4には、GABA受容体γサブユニット遺伝子(GABRG2)の変異が、SMEIに関与することが開示されている。また、GABRG2の変異を指標として、SMEIを診断できることが開示されている。
【特許文献1】特開2004−73058号公報(平成16(2004)年3月11日公開)
【特許文献2】特開2004−329153号公報(平成16(2004)年11月25日公開)
【特許文献3】特開2004−275115号公報(平成16(2004)年10月7日公開)
【特許文献4】特開2005−192411号公報(平成17(2005)年7月21日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、熱性痙攣は主に一般小児科医、家庭医が診断、治療している。しかしながら、上述の臨床症状に基づく診断は専門知識を必要とするため早期診断は困難である。臨床症状が出そろう2〜3歳のころには、Dravet症候群の患者は何度も痙攣を繰り返し、てんかん重積など危険な状態を経験していることがしばしばである。したがって、できるだけ早期にDravet症候群を検知する必要があり、一次診療に携わる一般小児科医、家庭医が利用できる早期診断方法の開発が求められている。
【0011】
そのような技術の例として、上記特許文献1〜4の開示される技術が挙げられる。しかし、これらの方法でDravet症候群の発症の指標とされる各遺伝子の変異とDravet症候群との因果関係が十分には解明されていないため、精度が十分ではないという問題がある。例えば、特許文献4の技術に関していえば、GABRG2遺伝子の変異はDravet症候群の約0.5%(1例/約200例)であり、検出率は低い。また、良性の熱性痙攣でも約1%(2例/約200例)に検出されるため特異性がない。また、特許文献1及び2の技術では、SCN1A遺伝子の特定変異部位を解析するが、当該特定変異部位は多発性変異ではなく、検出頻度がかなり低いという問題がある。
【0012】
そのため、1歳未満の乳児に対しても、より精度よくDravet症候群の発症を早期診断できる技術のさらなる開発が求められている。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、1歳未満の乳児にも適用可能なDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得する方法、及びその利用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定遺伝子の変異解析結果と臨床諸症状とを細分化し、1歳未満に熱性痙攣を発症する患者の中からDravet症候群の患者を検出する複数の危険因子を独自に発見した。該危険因子を危険率に基づいてスコア化した診断予測基準によれば、従来検出が困難であった1歳未満の時点で、Dravet症候群の発症の可能性を高精度に判定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
【0015】
(1)Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得する方法であって、資料に、以下の(a)〜(i)に示される危険因子のうち、少なくとも1つの危険因子が含まれるか否かを判定することを特徴とする方法。
(a)半身痙攣の経験がある
(b)遷延性痙攣の経験がある
(c)発作回数が5回以上ある
(d)熱性痙攣の発症が生後8ヶ月未満である
(e)入浴による痙攣誘発の経験がある
(f)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在する
(g)部分発作の経験がある
(h)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在する
(i)ミオクロニー発作の経験がある
(2)上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記資料に含まれる危険因子の数を算出することを特徴とする(1)に記載の方法。
【0016】
(3)上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して、リスクスコアを設定し、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記資料に含まれる危険因子について、それぞれに設定されたリスクスコアの合計を判定予測スコアとして算出することを特徴とする(1)に記載の方法。
【0017】
(4)上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して設定されるリスクスコアの相対関係は、上記(a)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアを3としたとき、上記(b)〜(i)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアは、それぞれ、3、3、2、2、2、1、1、1であることを特徴とする(3)に記載の方法。
【0018】
(5)Dravet症候群の発症の可能性を判定するために用いられる記録媒体であって、以下の(a)〜(i)に示される危険因子のうち、少なくとも1つの危険因子の保有の有無を問う問診項目が記録されていることを特徴とする記録媒体。
(a)半身痙攣の経験がある
(b)遷延性痙攣の経験がある
(c)発作回数が5回以上ある
(d)熱性痙攣の発症が生後8ヶ月未満である
(e)入浴による痙攣誘発の経験がある
(f)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在する
(g)部分発作の経験がある
(h)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在する
(i)ミオクロニー発作の経験がある
(6)上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して設定されたリスクスコアが、上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対応付けて記録されていることを特徴とする(5)に記載の記録媒体。
【0019】
(7)上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して設定されるリスクスコアの相対関係は、上記(a)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアを3としたとき、上記(b)〜(i)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアは、それぞれ、3、3、2、2、2、1、1、1であることを特徴とする(6)に記載の記録媒体。
【0020】
(8)Dravet症候群の発症の可能性を判定するために用いられるキットであって、(5)〜(7)のいずれかに記載の記録媒体を含むことを特徴とするキット。
【0021】
(9)ヒトSCN1A遺伝子のエキソン内の領域及びエキソン/イントロン境界領域のうち、少なくとも一方の領域の全て、またはその一部を増幅するためのプライマーを、さらに含むことを特徴とする(8)に記載のキット。
【0022】
(10)Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得するシステムであって、問診手段と、判定手段と、を備え、上記問診手段は、以下の(a)〜(i)に示される危険因子のうち、少なくとも1つの危険因子について、被験者が該危険因子を保有するか否かを問う問診を行い、問診結果が記録された問診結果ファイルを生成し、上記判定手段は、以下の(a)〜(i)に示される危険因子のうち、少なくとも1つの危険因子が、上記問診結果ファイルに記録された問診結果に含まれるか否かを判定することを特徴とするシステム。
(a)半身痙攣の経験がある
(b)遷延性痙攣の経験がある
(c)発作回数が5回以上ある
(d)熱性痙攣の発症が生後8ヶ月未満である
(e)入浴による痙攣誘発の経験がある
(f)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在する
(g)部分発作の経験がある
(h)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在する
(i)ミオクロニー発作の経験がある
(11)上記判定手段は、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記問診結果に含まれる危険因子の数を算出することを特徴とする(10)に記載のシステム。
【0023】
(12)上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して設定されたリスクスコアを格納する格納手段をさらに備え、上記判定手段は、上記格納手段に格納されたリスクスコアを用いて、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記問診結果に含まれる危険因子について、それぞれに対して設定されたリスクスコアの合計を判定予測スコアとして算出することを特徴とする(10)に記載のシステム。
【0024】
(13)上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して設定されるリスクスコアの相対関係は、上記(a)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアを3としたとき、上記(b)〜(i)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアは、それぞれ、3、3、2、2、2、1、1、1であることを特徴とする(12)に記載のシステム。
【0025】
(14)(10)〜(13)のいずれかに記載のシステムを動作させるためのプログラムであって、コンピュータを上記問診手段および判定手段として機能させるためのプログラム。
【0026】
(15)(14)に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかるDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得方法は、Dravet症候群の発症に高い関連性をもつ危険因子の有無を判定することにより、Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得する。また、上記危険因子は、1歳未満の乳児においても検出が可能である。それゆえ、Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを、発症早期または難治性経過を示す前の段階に、低コストで、かつ簡便に取得できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明にかかる実施形態について、図1〜図6を用いて、以下説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
<I.Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得方法>
本発明にかかるDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得方法(以下、単に「本発明にかかるデータ取得方法」と称する)は、資料を用いて、Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得する方法である。なお、本明細書において、「Dravet症候群の発症の可能性」とは、すでにDravet症候群を発症している可能性と、Dravet症候群を将来的に発症する可能性との両方の意味を包含するものである。
【0030】
本発明にかかるデータ取得方法は、具体的には、資料に危険因子が含まれるか否かを判定する。上記危険因子としては、1歳未満に熱性痙攣を発症したことのある者を対象に、Dravet症候群との高い相関性のある症状を用いる。このような危険因子としては、具体的には、例えば、以下の(a)〜(i)に示される危険因子を挙げることができる。
(a)半身痙攣の経験がある
(b)遷延性痙攣の経験がある
(c)発作回数が5回以上ある
(d)熱性痙攣の発症が生後8ヶ月未満である
(e)入浴による痙攣誘発の経験がある
(f)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在する
(g)部分発作の経験がある
(h)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在する
(i)ミオクロニー発作の経験がある。
【0031】
すなわち、本発明にかかるデータ取得方法は、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、少なくとも1つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定し、Dravet症候群を発症している可能性を判定するためのデータを取得する方法である。なお、本明細書において、「遷延性痙攣」とは、痙攣または意識障害が通常の痙攣発作より長引くことであり、ここでは具体的に、10分間以上の痙攣を意味する。また、本明細書において、「ミスセンス変異」とは、DNAがコードしているアミノ酸のコドンに変異が生じてしまいアミノ酸置換が生じる変異を意味する。ここでは、1アミノ酸の欠損異常もミスセンス変異に含まれる。「トランケーション変異」とは、アミノ酸をコードしているコドンがアミノ酸をコードしていない終止コドンに変化してしまう変異と、フレームシフトによりコドンがずれてしまい結果的に終止コドンが生じる変異、及び、エキソン/イントロン領域の変異から生じるスプライシング異常により下流のアミノ酸が正常とは異なってしまう変異を意味する。
【0032】
上記資料とは、既往症、治療歴、現在かかっている疾患、及びその治療状況等、被験者の健康に関する情報が記載された資料を意味する。具体的には、例えば、被験者のカルテ、検査結果、及び問診表に対する回答結果等を挙げることができる。
【0033】
上記資料が検査結果である場合、それは、Dravet症候群の発症を診断するための検査結果を含むことが好ましい。例えば、SCN1A遺伝子の解析結果を挙げることができる。特に、SCN1A遺伝子のトランケーション変異及びミスセンス変異の有無を解析した結果を含むことが好ましい。本発明において、SCN1A遺伝子の解析結果を用いる場合、その解析方法は、特に限定されるものではない。具体的には、従来公知の遺伝子変異検出方法を用いて行うことができる。
【0034】
例えば、まず、被験者から採取した毛髪や口腔粘膜上皮等の組織や、血液、体液等の検体を用意する。血液や体液を検体とする場合、新鮮血液、体液に限定されるものではなく、凝固防止処理された血液やろ紙に染み込ませた血液や凝固血液、体液を用いてもよい。また、血液や凝固血液、体液をろ紙に染み込ませた後、乾燥させたものであってもよい。
【0035】
次に、該検体からゲノムDNAを単離する。ゲノムDNAの単離は、従来公知の方法を用いればよく、例えば、従来のSDS/Proteinase処理を用いる方法を用いることができる。また、市販の白血球細胞分離試薬及びDNA抽出試薬を用いてもよい。
【0036】
該ゲノムDNAを鋳型として、SCN1A遺伝子の全長もしくは特定領域を従来公知の方法により増幅する。DNAの増幅方法としては、PCR法、LAMP法(Loop-mediated Isothermal Amplification)(栄研化学株式会社)、ICAN法(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids法)(宝酒造株式会社)を挙げることができる。また、上記特定領域としては、SCN1A遺伝子のエキソン及びエキソン/イントロン境界領域を挙げることができる。
【0037】
また、精製したゲノムDNAに代えて、毛髪、口腔上皮、微量血液などを直接用いてDNA増幅してもよい。さらに、ゲノムDNAに代えて、被験者から単離したmRNAから逆転写酵素を用いて合成したcDNAを用いてもよい。その場合、増幅する特定領域として、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域及びエキソン内の領域を挙げることができる。
【0038】
次に、増幅された遺伝子断片の塩基配列を決定する。塩基配列決定法は蛍光ラベルを使用する方法や、放射性同位元素を用いた方法など、従来公知の方法を用いることができる。決定した塩基配列と、健常者のSCN1A遺伝子のゲノム配列又はcDNA配列とを比較することにより、変異の有無を判定することができる。
【0039】
また、SCN1A遺伝子の変異解析は、SSCP(Single Strand Conformation Polymorphism)法やDHPLC(Denaturing High Performance Liquid Chromatography)法、Melting Temperatureの差を利用して変異を検索する方法、並びにマイクロアレイやリアルタイムPCRを使う変異検出方法及び多型検出方法等、あらゆる従来公知の変異検出方法を用いることができる。
【0040】
本発明におけるSCN1A遺伝子とは、ヒト由来であり、神経系における電位依存性ナトリウムチャネルα−サブユニットI型遺伝子である。そのゲノム配列としては、例えば、配列番号1に示される塩基配列を挙げることできる。また、そのcDNAの塩基配列としては、配列番号2に示される塩基配列(GenBankにアクセション番号AB093548として登録されている塩基配列)を挙げることができる。
【0041】
なお、本発明において、上記(f)及び(h)に示される危険因子に記載のSCN1A遺伝子におけるミスセンス変異及びトランケーション変異の変異位置等は特に限定されるものではない。詳細は後述の実施例において説明するが、例えば、配列番号1に示される塩基配列において、表1に示す変異が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【表1】

【0043】
また、上記資料が問診表に対する回答結果である場合、Dravet症候群を診断する際に行う問診結果を含むことが好ましい。
【0044】
より具体的には、被験者が上記(a)〜(i)に示される危険因子を含むか否かを判定できるものであればよい。例えば、上記問診表における問診としては、けいれんの発作回数、けいれんの発作型、けいれんの誘発因子、けいれん発作を初めて起こした月齢、及びSCN1A遺伝子の異常の有無を問う問診が挙げられる。これらの問診は、例えば、図1(a)に示す問診表のような、以下のQ1〜Q9の質問が記載された問診表を用いて、上記(a)〜(i)に示される危険因子を有するか否かを直接問うことによって行うことができる。
(Q1)熱性痙攣が生後8ヶ月未満に起きたか
(Q2)発作回数が5回以上あるか
(Q3)痙攣が10分以上続いた経験があるか
(Q4)半身痙攣の経験があるか
(Q5)部分発作の経験があるか
(Q6)ミオクロニー発作の経験があるか
(Q7)入浴中や入浴後に痙攣が起きたことがあるか
(Q8)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在するか
(Q9)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在するか
また、図1(b)に示す問診表を用いて、けいれんの発作回数、けいれんの発作型、けいれんの誘発因子、及びけいれん発作を初めて起こした月齢を具体的に問うものであってもよい。なお、本発明において用いることが可能な問診表が図1(a)及び(b)に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0045】
本発明にかかるデータ取得方法では、まず、上記資料に、上記(a)〜(i)に示される危険因子が含まれるか否かを判定する。本発明では、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、少なくとも1つの危険因子について、上記資料に含まれるか否かを調べればよいが、Dravet症候群の発症の可能性を高精度に判定するためのデータを取得するとの観点から、複数の危険因子について、該危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定することが好ましく、全ての危険因子について判定することがさらに好ましい。
【0046】
また、上記(a)〜(i)に示される危険因子の一部についてのみ上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態では、上記(a)〜(e)、(g)、及び(i)に示される7つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定することが好ましい。このような構成によれば、SCN1A遺伝子における変異の有無を検査する必要がないため、設備的、物理的限界の制約を受けることなく、低コストで簡便にDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得することができる。
【0047】
さらに、上記(a)〜(i)に示される危険因子の一部について上記資料に含まれるか否かを判定する別の実施形態では、上記(e)に示される危険因子を除く8つの危険因子について、上記資料に含まれるか否かを判定することが好ましい。このような構成によれば、入浴習慣がない被験者についても、簡便にDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得することができる。
【0048】
また、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記(a)〜(d)、(g)、及び(i)に示される6つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態とすることができる。
【0049】
さらに、上記(a)〜(i)に示される危険因子の一部について上記資料に含まれるか否かを判定する別の実施形態では、上記(b)〜(e)に示される4つの危険因子と、(f)または(h)のいずれか一方に示される危険因子との合計5つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定することが好ましい。
【0050】
また、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記(b)〜(e)に示される4つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態とすることができる。
【0051】
さらに、上記(a)〜(i)に示される危険因子の一部について上記資料に含まれるか否かを判定する別の実施形態では、上記(b)〜(d)に示される3つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定することが好ましい。
【0052】
また、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記(b)および(d)に示される2つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態とすることができる。
【0053】
SCN1A遺伝子変異の検査項目を含まないような構成によれば、SCN1A遺伝子における変異の有無を検査する必要がないため、設備的、物理的限界の制約を受けることなく、低コストで簡便にDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得することができる。上記(a)、(g)、および(i)に示される3つの危険因子を含まないような構成によれば、発作型の専門的分類知識を必要としないため、該被験者の家族等でも病状についての理解が容易となり、簡便にDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得することができる。上記(c)に示される危険因子を含まないような構成によれば、発作回数が5回になるまでを待つ必要がないため、より早期にDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得することができる。
【0054】
さらに、本発明にかかるデータ取得方法では、危険因子として、(a)〜(i)に示される危険因子に加えて、さらなる危険因子を追加してもよいし、(a)〜(i)に示される危険因子のうち、一部を削除したうえで、さらなる危険因子を追加してもよい。
【0055】
上記の判定の結果、上記資料に上記危険因子が含まれるとのデータが取得されると、該データを用いて、該被験者がDravet症候群の発症している可能性が高いと判定することができる。
【0056】
また、本発明にかかるデータ取得方法では、上記資料に含まれる上記危険因子の数を算出してもよい。これによれば、Dravet症候群の発症の可能性をより高精度に判定するためのデータを取得することができる。この実施形態にかかるデータ取得方法により取得されたデータによれば、上記資料に含まれる危険因子の数が多いほど、被験者はDravet症候群を発症している可能性が高いと判定することができる。
【0057】
さらに、本発明にかかるデータ取得方法で、上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれについて、対応するリスクスコア(Dravet症候群の発症の可能性の高さの指標となる数値)を設定し、上記資料に含まれる危険因子のそれぞれに対応するリスクスコアの合計を判定予測スコアとして算出してもよい。
【0058】
具体的には、例えば、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、Dravet症候群の発症との関連がより高い危険因子に対してはより大きな数値を設定し、Dravet症候群の発症との関連が相対的に低い危険因子にはより小さな数値を設定する。つまり、Dravet症候群の発症の可能性の高さを、上記(a)〜(i)に示される危険因子について全て一律にして考えるのではなく、上記(a)〜(i)に示される危険因子間で優劣をつける。このような構成とすれば、Dravet症候群の発症の可能性をより高精度に判定するためのデータを取得することができる。なお、本実施形態のデータ取得方法により取得されたデータによれば、判定予測スコアが大きいほど、Dravet症候群の発症の可能性が高く、判定予測スコアが低いほどDravet症候群の発症の可能性が低いと判定することができる。
【0059】
いうまでもないが、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、Dravet症候群の発症との関連がより高い危険因子に対してはより小さなリスクスコアを設定し、Dravet症候群の発症との関連が相対的に低い危険因子にはより大きなリスクスコアを設定する実施形態とすることもできる。このような実施形態にかかるデータ取得方法により取得されたデータによれば、判定予測スコアが小さいほどDravet症候群を発症している可能性が高く、判定予測スコアが大きいほどDravet症候群の発症の可能性が低いと判定することができる。
【0060】
ここで、Dravet症候群の発症と上記(a)〜(i)に示される危険因子との因果関係の優劣について説明する。すなわち、上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対応するリスクスコアの設定方法について説明する。
【0061】
本発明者らは、後述の実施例に示すように、上記(a)〜(i)に示される危険因子がDravet症候群の発症との関連性が高い症状であることを独自に見出した。さらに、これら(a)〜(i)に示される危険因子の保有と、Dravet症候群の発症との関係は、すべて同じではなく、保有される危険因子によって、Dravet症候群の発症の可能性の大きさには優劣があることを独自に見出した。具体的には、上記(a)〜(i)に示される危険因子を、最もDravet症候群の発症との関連性が非常に高いグループ(以下、「第1グループ」ともいう)、次にDravet症候群の発症との関連性が中等度に高いグループ(以下、「第2グループ」ともいう)、及び、最もDravet症候群の発症との関連性が軽度に高いグループ(以下、「第3グループ」ともいう)に分類すると、上記第1グループには、上記(a)〜(c)に示される危険因子が含まれ、上記第2グループには、上記(d)〜(f)に示される危険因子が含まれ、上記第3グループには、上記(g)〜(i)に示される危険因子が含まれることを見出した。
【0062】
本発明にかかるデータ取得方法の一実施形態では、上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれについて、対応するリスクスコアを設定する際、上記知見に基づき、上記第1グループに属する危険因子には、高いリスクスコアを設定し、上記第2グループに属する危険因子には、それよりも低いリスクスコアを設定し、第3グループに属する危険因子には、さらにそれよりも低いリスクスコアを設定することが好ましい。また、同一グループに属する危険因子には、同一のリスクスコアを設定することが好ましい。
【0063】
上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれについて、対応するリスクスコアを設定する方法は特に限定されるものではないが、例えば、上記(a)〜(i)に示される各危険因子とDravet症候群の関連を、Chi-square又はFisher検定によるDravet症候群の患者群と非Dravet症候群の患者群との有意差検定や、オッズ比による検定を行う方法を挙げることができる。さらに、病気を発見する能力を検討する敏感度(sensitivity)や非病人を病気と誤診しない能力を検討する特異度(specificity)を用いてもよい。また、その他の統計処理を用いてもよい。
【0064】
ここでは、Chi-square又はFisher検定、及びオッズ比による検定を用いて、各危険因子に対応するリスクスコアを設定する方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
本実施形態では、p値が0.01未満であれば、統計的に有意であると判定する。また、オッズ比(odds ratio)による検定を行い、オッズ比の値(以下、「オッズ値」ともいう)が1よりも大きければ、統計的に有意であると判定する。そして、オッズ値、並びにChi-square 又はFisher検定におけるp値を基に、各危険因子に対応するリスクスコアを設定すればよい。
【0066】
例えば、オッズ値≦1又はp>0.01である場合、リスクスコアを0(危険因子ではない)とし、1<オッズ値<20又は0.01≧p>1.0E−5である場合、リスクスコアを1とし、20≦オッズ値<40又は1.0E−5≧p>1.0E−10である場合、リスクスコアを2とし、40≦オッズ値又は1.0E−10≧pである場合、リスクスコアを3とする。上記基準によれば、上記第1〜3グループに属する危険因子に対して設定されるリスクスコアは、それぞれ、3、2、1となる。なお、各危険因子に対応する具体的なリスクスコアの値は、上記に限定されるものではなく、上記第1〜第3グループに属する危険因子に対して設定されるリスクスコアの値の相対的な関係が上記の関係となっていればよい。また、リスクスコアを設定する基準も上記に限定されるものではない。
【0067】
各危険因子に対してリスクスコアを設定する実施形態では、上述したように、上記資料に含まれる各危険因子のリスクスコアを合計した判定予測スコアを算出する。このように算出された判定予測スコアによれば、該判定予測スコアが高いほど、被験者はDrevet症候群を発症している可能性が高いと判定することができる。また、本発明にかかるデータ取得方法において、判定予測スコアについてDravet症候群の発症の可能性の判断基準となる基準値を設定しておくことが好ましい。このような構成によれば、被験者の判定予測スコアを、上記基準値に照らし合わせるだけで、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性を容易に判定することができる。この場合、上記Dravet症候群の発症の可能性の判断基準となる基準値は、上記資料に含まれるか否かを判定する危険因子の数及び種類、並びに各危険因子に対して設定されるリスクスコアの値に応じて変更される。
【0068】
例えば、上記(a)〜(i)に示される各危険因子に対して設定されるリスクスコアが、それぞれ、3、3、3、2、2、2、1、1、1である場合について説明する。上記(a)〜(i)に示される危険因子の全てについて上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態では、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性が高いと判定する基準値を、上記判定予測スコアが7以上とすることが好ましい。また、上記(a)〜(e)、(g)、及び(i)に示される7つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態は、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性が高いと判定する基準値は、上記判定予測スコアが7以上とすることが好ましい。上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記(e)に示される危険因子を除く8つの危険因子について上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態では、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性が高いと判定する基準値は、上記判定予測スコアが6以上とすることが好ましい。さらに、上記(a)〜(d)、(g)、及び(i)に示される6つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態では、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性が高いと判定する基準値は、上記判定予測スコアが6以上とすることが好ましい。また、上記(b)〜(e)に示される4つの危険因子と、(f)または(h)のいずれか一方に示される危険因子との合計5つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態は、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性が高いと判定する基準値は、上記判定予測スコアが6以上とすることが好ましい。また、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記(b)〜(e)に示される4つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態では、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性が高いと判定する基準値は、上記判定予測スコアが5以上とすることが好ましい。さらに、上記(b)〜(d)に示される3つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態は、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性が高いと判定する基準値は、上記判定予測スコアが5以上とすることが好ましい。また、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記(b)および(d)に示される2つの危険因子が上記資料に含まれるか否かを判定する実施形態は、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性が高いと判定する基準値は、上記判定予測スコアが3以上とすることが好ましい。
【0069】
なお、別の実施形態として、上記第1グループに属する危険因子には、低いリスクスコアを設定し、上記第2グループに属する危険因子には、それよりも高いリスクスコアを設定し、第3グループに属する危険因子には、さらにそれよりも高いリスクスコアを設定する実施形態とすることもできる。このような実施形態にかかるデータ取得方法で取得されたデータを用いれば、判定予測スコアが低いほどDravet症候群の発症の可能性が高いと判定することができる。
【0070】
このように、本発明にかかるデータ取得方法では、カルテや検査結果、問診表の回答結果等の資料を用いて、該資料に上記(a)〜(i)に示される危険因子が含まれているか否かを判定することによって、Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得する。本発明にかかるデータ取得方法で取得されたデータによれば、専門知識を必要とすることなく、低コストで簡便に、Dravet症候群の発症の可能性を判定することができる。
【0071】
また、上記(a)〜(i)に示される危険因子は、いずれも、1歳未満の被験者において、検出可能なものである。したがって、本発明にかかるデータ取得方法によれば、従来は困難であった、1歳未満の被験者におけるDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得することができる。よって、本発明にかかるデータ取得方法では、被験者は1未満の乳児であることが好ましく、熱性痙攣をもつ1歳未満の乳児であることがより好ましい。このような被験者は、Dravet症候群の発症の可能性が高く、できるだけ早期にDravet症候群の発症の有無を判定し、症状が重篤となる前に、てんかん専門医に紹介し、治療管理体制を整えることが必要である。本発明にかかるデータ取得方法によれば、1歳未満という早期にDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータが取得できるため、それを可能にすることができる。
【0072】
また、本発明にかかるデータ取得方法によれば、患者の治療成績の向上、家族の精神的負担及び経済的負担の軽減が可能である。さらには、Dravet症候群の発症早期に適切な治療を施すことが可能となるため、医療費の削減に貢献することができる。
【0073】
なお、本発明には、本発明にかかるデータ取得方法を用いて取得されたデータを用いて、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性を判定する方法も含まれる。また、本実施形態では、SCN1A遺伝子について、トランケーション変異およびミスセンス変異を危険因子としたが、本発明はこれに限定されず、SCN1A遺伝子の欠失、および再構成(リアレンジメント)等の変異を危険因子とすることもできる。具体的には、SCN1A遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域の異常を危険因子の1つとして用いることができる。この場合、該プロモーター/エンハンサー領域を増幅できるプライマーを用いるのが好ましい。
【0074】
<II.Dravet症候群の発症の可能性の判定用記録媒体及び判定用キット>
(II−1)Dravet症候群の発症の可能性の判定用記録媒体
本発明にかかるDravet症候群の発症の可能性の判定用記録媒体(以下、単に「本発明にかかる判定用記録媒体」ともいう)は、上記<I.Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得方法>で説明した本発明にかかるデータ取得方法を実施するために好適に用いることができる記録媒体である。具体的には、Dravet症候群の発症との関連が高い症状の保有の有無を問う問診項目が記録された記録媒体であり、例えば、以下の(a)〜(i)に示される危険因子のうち、少なくとも1つの危険因子の保有の有無を追う問診項目が記録された記録媒体を挙げることができる。本発明にかかる判定用記録媒体には、(a)〜(i)に示される危険因子がすべて記録されていることが好ましいが、一部のみが記録されていてもよい。また、(a)〜(i)に示される危険因子に加えて、さらなる危険因子が記録されていてもよいし、(a)〜(i)に示される危険因子の一部が削除され、さらなる危険因子が記録されていてもよい。
(a)半身痙攣の経験がある
(b)遷延性痙攣の経験がある
(c)発作回数が5回以上ある
(d)熱性痙攣の発症が生後8ヶ月未満である
(e)入浴による痙攣誘発の経験がある
(f)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在する
(g)部分発作の経験がある
(h)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在する
(i)ミオクロニー発作の経験がある
また、本発明にかかる判定用記録媒体において、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、一部のみが記録されている実施形態では、上記(a)〜(e)、(g)、及び(i)に示される7つの危険因子が記録されている構成、上記(e)を除く8つの危険因子が記録されている構成、上記(a)〜(d)、(g)、及び(i)に示される6つの危険因子が記録されている構成、上記(b)〜(e)に示される4つの危険因子と、(f)または(h)のいずれか一方に示される1つの危険因子との合計5つの危険因子が記録されている構成、上記(b)〜(e)に示される4つの危険因子が記録されている構成、上記(b)〜(d)に示される3つの危険因子が記録されている構成、上記(b)および(d)に示される2つの危険因子が記録されている構成が好ましい。
【0075】
本発明にかかる判定用記録媒体の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、紙、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−R、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R、DVD−R/RW、DVD−ROM等を挙げることができる。つまり、図1(a)及び(b)に示される問診表は、本発明にかかる判定用記録媒体の一実施形態といえる。
【0076】
本発明にかかる判定用記録媒体によれば、使用者は、該判定用記録媒体に記録された問診項目に回答し、上記危険因子を、被験者が保有するか否かを判定するだけで、該被験者におけるDravet症候群の発症の可能性を簡便に判定するためのデータを取得することができる。
【0077】
また、本発明にかかる判定用記録媒体には、被験者がDravet症候群を発症しているか否かの判定基準が記録されていてもよい。具体的には、上記危険因子のうち、被験者が保有する数に基づいて、被験者がDravet症候群を発症しているか否かを判定する基準が記録されていてもよい。このような構成であれば、被験者が保有する上記危険因子の数を上記基準に照らし合わせることで、より判定精度よく、該被験者におけるDravet症候群の発症の可能性を判定することができる。
【0078】
本発明にかかる判定用記録媒体には、さらに、上記各危険因子に対応づけられたリスクスコアが記録されていることが好ましい。上記リスクスコアについては、上述したので、ここではその説明を省略する。このような構成によれば、使用者は、該判定用記録媒体に記録された危険因子を、被験者が保有するか否かを判定し、該被験者が保有する危険因子に対応付けられたリスクスコアを合計し、判定予測スコアを算出することができる。このような構成によれば、該判定予測スコアの大小により、該被験者におけるDravet症候群の発症の可能性を判定することができる。それゆえ、Dravet症候群の発症の可能性の判定精度をより向上させることができる。
【0079】
本発明にかかる判定用記録媒体に上記リスクスコアが記録された実施形態では、さらに、判定予測スコアから、被験者がDravet症候群を発症している可能性を判定するための基準値が記録されていることが好ましい。この基準値の設定方法や、基準値の具体例については、上述したので、ここではその説明を省略する。
【0080】
このように、本発明にかかる判定用記録媒体は、換言すれば、Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得する際のチェックシートとして用いることが可能なものであり、本発明にかかるデータ取得方法の実施に好適に利用することができる。
【0081】
また、本発明には、上記判定用記録媒体を含むDravet症候群の発症の可能性の判定用キット(以下、単に「本発明にかかる判定用キット」ともいう)も含まれる。以下、本発明にかかる判定用キットについて説明する。
【0082】
(II−2)Dravet症候群の発症の可能性の判定用キット
本発明にかかるDravet症候群の発症の可能性の判定用キット(以下、単に「本発明にかかる判定用キット」ともいう)は、本発明にかかる判定用記録媒体を含んでいるものであればよく、その他の構成物は特に限定されるものではない。
【0083】
例えば、SCN1A遺伝子を解析するための試薬や器具等を含む構成を挙げることができる。具体的には、白血球細胞分離用試薬及び器具、DNA抽出用試薬及び器具、SCN1A遺伝子DNA増幅用試薬及び器具、並びにSCN1A遺伝子変異検出用試薬及び器具を挙げることができる。
【0084】
上記SCN1A遺伝子DNA増幅用試薬には、ヒトSCN1A遺伝子のDNAを増幅するためのプライマーが含まれうる。該プライマーは、ヒトSCN1A遺伝子のエキソン内の領域及びエキソン/イントロン境界領域のうち、少なくとも一方の領域の全て、またはその一部を増幅できる領域に位置しているものであればよく、当該プライマーの配列及びその位置に限定されるものではない。例えば、後述の実施例で用いた配列番号3〜56に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを、実施例に記載する組み合わせで用いることができる。また、上述したように、本発明にかかるデータ取得方法では、SCN1A遺伝子の欠失および再構成を危険因子の1つとして用いることができる。したがって、ヒトSCN1A遺伝子のDNAを増幅するためのプライマーとして、ヒトSCN1A遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域の異常を検出できるプライマーを用いてもよい。
【0085】
また、増幅するDNAはゲノムDNAに限定されるものではなく、mRNAを用いて逆転写酵素で合成したcDNAであってもよい。その場合、cDNA増幅用のプライマーは5’非翻訳領域、3’非翻訳領域及びエキソン内の領域のうち、少なくともいずれか1つの領域の全て、またはその一部を増幅できるものであってもよい。
【0086】
また、別の実施形態として、本発明にかかる判定用キットには、ゲノムDNAやmRNAを抽出可能な試料の搬送を可能にする構成物が含まれていてもよい。具体的には、例えば、液体状の血液及び体液、凝固血液、濾紙に吸着乾燥させた血液及び体液、毛髪、及び口腔上皮など、DNAの抽出が可能な試料を搬送するための容器および/または器具と、該試料を入れた容器を、診療施設、病院、検査機関等に搬送するための搬送手段とを含む構成を挙げることができる。上記搬送手段としては、郵送のための封筒や切手を挙げることができる。また、本実施形態にかかる判定用キットには、遺伝子DNA解析に対する被験者、又は該被験者の保護者もしくは親権者から同意を得るための同意書が含まれていることが好ましい。上記構成によれば、使用者の居住地等に左右されることなく、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得することができる。
【0087】
<III.Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得システム>
本実施形態にかかるデータ取得システム1(システム)は、コンピュータ装置によって構成されており、CPU、メモリ(RAM、ROMなど)、外部記憶装置(ハードディスクドライブ、MOドライブなど)、表示装置、入力装置(キーボード、マウスなど)、及び出力装置(プリンターなど)を備えている。また、データ取得システム1は、Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得するために、図2に示すように、個人情報ファイル生成部10、問診部20(問診手段)、判定部30(判定手段)、および格納部40(格納手段)を備えている。
【0088】
個人情報ファイル生成部10、問診部20、及び判定部30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等から構成される。また、格納部40は、情報記憶装置(RAM、ROMなどのメモリ、ハードディスクドライブ、MOドライブなどの外部記憶装置)や、情報記録媒体(CD−ROM、DVDなど)等から構成される。
【0089】
ここで、実施形態にかかるデータ取得システム1の動作について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0090】
本実施形態にかかるデータ取得システム1が起動されると、個人情報ファイル生成部10は、表示装置の表示画面に個人データ入力画面を表示する(ステップ1、以下の説明では、適宜ステップをSと略す)。上記個人データ入力画面は、使用者が、データ取得システム1に、被験者の個人情報を入力することを支援するものである。具体的には、例えば、図4に示すように、氏名の文字データの入力が可能な氏名17と、男性又は女性の性別の選択入力が可能なラジオボタン18と、ABO式血液型の4つのいずれかの選択入力が可能なラジオボタン22と、月齢の数値データの入力が可能な月齢19とを備えた画面を挙げることができる。
【0091】
上記個人データ入力画面が表示されると、使用者は、入力装置を用いて、上記個人データ入力画面の支援のもと、個人情報ファイル生成部10に、氏名、性別、月齢、血液型等の個人を特定するための個人データを入力する。
【0092】
図4に示される個人データ入力画面を用いて、より詳しく説明すると、氏名は、それぞれ個人データ入力画面の氏名17に文字データとして入力される。また、性別及び血液型は、それぞれ男性又は女性のラジオボタン18、及び血液型はABO式血液型の4つのいずれかのラジオボタン22をクリックして選択することにより入力される。さらに、月齢19は数値データとして入力される。これらデータの入力中に、入力したデータを訂正したい場合、訂正ボタン26をクリックすれば、入力したものが消去され、再度入力することができる。また、全てのデータの入力が完了すれば、「次へ」ボタン25を、入力装置を用いてクリックする。
【0093】
「次へ」ボタン25がクリックされると、入力装置から個人情報ファイル生成部10に信号が伝送され、その信号を合図に、個人情報ファイル生成部10は、個人情報ファイルを生成する(S2)。S2後、個人情報ファイル生成部10は、問診部20に信号を伝送する。
【0094】
問診部20は、個人情報ファイル生成部10からの信号を受信すると、その信号を合図に、表示装置の表示画面に、問診画面を表示する(S3)。上記問診画面は、使用者が、データ取得システム1に、被験者の問診に対する回答結果の入力することを支援するものである。具体的には、例えば、図5に示すように、被験者が上述の(a)〜(i)に示される危険因子を保有するか否かの回答の選択入力が可能なラジオボタン28を備える画面を挙げることができる。
【0095】
上記個人データ入力画面が表示されると、使用者は、入力装置を用いて、上記問診画面の支援のもと、問診部20に、被験者が上述の(a)〜(i)に示される危険因子を保有するか否かの回答結果を入力する。なお、回答は、使用者が被験者に実際に問診を行いながら、入力されてもよいし、事前に被験者から得た資料に基づいて入力されてもよい。なお、ここでいう資料は、上記<I.Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得方法>で説明した資料を指す。
【0096】
図5に示される問診画面を用いて、より詳しく説明すると、問診画面の問診項目27に対して回答を、「はい」又は「いいえ」のラジオボタン28をクリックすることによって入力する。問診項目27は、被験者が上述の(a)〜(i)に示される危険因子を保有するか否かを問う問診であればよい。例えば、以下の(A)〜(I)に示される問診が挙げられる。
(A)半身痙攣の経験がありますか?
(B)10分間以上の痙攣が続いた経験がありますか?
(C)発作回数が5回以上ありますか?
(D)熱性痙攣の発症が生後8ヶ月未満ですか?
(E)入浴による痙攣誘発の経験がありますか?
(F)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在しますか?
(G)部分発作の経験がありますか?
(H)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在しますか?
(I)ミオクロニー発作の経験がありますか?
このような問診形式によれば、回答を2値データとして扱えるため、後述する判定部30における処理を単純化することができる。
【0097】
上記回答の入力中に、入力した回答を訂正したい場合、訂正ボタン26をクリックすれば、入力した回答が消去され、再度入力することができる。問診画面上のすべての問診に対する回答の入力が完了すると、「次へ」ボタン25を、入力装置を用いてクリックする。
【0098】
「次へ」ボタン25がクリックされると、入力装置から問診部20に信号が伝送され、その信号を合図に、問診部20は、問診結果が記録された問診結果ファイルを生成する(S4)。S4後、問診部20は、判定部30に信号を伝送する。
【0099】
判定部30は、問診部20からの信号を受信し、その信号を合図に、上記問診結果ファイルを用いて、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性の判定を行う。具体的には、まず、判定部30は、上記問診結果ファイルに記録された問診結果が、上記危険因子を含むか否かを判定する(S5)。図5に示す問診画面に従って、生成された問診結果ファイルを例に、より具体的に説明すると、問診項目27のうち、「はい」が選択された項目の有無を判定する。判定部30は、上記問診結果ファイルの問診結果が、上記危険因子を含まない、すなわち、問診項目27のうち、「はい」が選択された項目がないと判定すると、表示装置の表示画面に、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性が低いことを示す判定結果画面を表示装置の表示画面に表示する(S6)。
【0100】
一方、判定部30は、上記問診結果ファイルの問診結果が、上記危険因子を含む、すなわち、問診項目27のうち、「はい」が選択された項目があると判定すると、判定予測スコアを算出する(S7)。判定部30は、該判定予測スコアを、格納部40に格納されている各危険因子に対するリスクスコアを用いて算出する。なお、判定予測スコア及びリスクスコアについては、上記<I.Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得方法>で説明したので、ここではその説明は省略する。
【0101】
次に、判定部30は、S7で算出した判定予測スコアと、Drevet症候群を発症していると判断できる基準値との比較を行う。具体的には、上記判定予測スコアが、上記基準値以上であるか否かを判定する(S8)。その結果、上記判定予測スコアが上記基準値以上であれば、判定部30は、表示装置の表示画面に被験者におけるDravet症候群の発症の可能性が高いことを示す判定結果画面を表示装置の表示画面に表示する(S9)。一方、上記判定予測スコアが上記基準値よりも小さければ、判定部30は、被験者におけるDravet症候群の発症の可能性が低いことを示す判定結果画面を表示装置の表示画面に表示する(S6)。なお、上記基準値については、上記<I.Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得方法>で説明したので、ここではその説明は省略する。
【0102】
判定部30が表示する画面は、被験者が非Dravet症候群又はDravet症候群であることを使用者が確認できるものであればよいが、その他の情報を含んでいてもよい。例えば、図6に示すように、上記判定予測スコアを表示してもよい。また、終了ボタン32を備えており、入力装置を用いて、該終了ボタン32をクリックすることによって、終了する構成とすることもできる。
【0103】
さらに、「治療方法」ボタン34を備えており、入力装置を用いて、該「治療方法」ボタン34をクリックすることによって、メモリや外部記憶装置に記憶されている治療方法や対処方法、全国の専門医等の情報ファイルを表示装置の表示画面にさせる構成とすることもできる。
【0104】
上記の説明したように動作することにより、本実施形態にかかるデータ取得システム1は、本発明にかかるDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得方法を実施することにより、Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得することができる。本実施形態にかかるデータ取得システム1を用いて取得されたデータによれば、簡便に、かつ、高精度にDravet症候群の発症の可能性を判定することができる。
【0105】
なお、本実施形態にかかるデータ取得システム1では、個人情報ファイル生成部10を備えているため、問診結果ファイルを個人情報ファイルと対応付けて、外部記憶装置等に保存できる。しかし、問診結果ファイルや判定結果を保存する必要がない場合などは、個人情報ファイル生成部10を備えない構成としてもよい。
【0106】
また、判定部30が判定予測スコアに基づいて、Dravet症候群の発症の可能性を判定する実施形態について、説明したが、本発明は、これに限定されず、上記<I.Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得方法>で説明したように、上記問診結果ファイルに記録された回答結果が、上記(a)〜(i)に示される危険因子を含むか否かを判定基準として用いてもよいし、また、上記回答結果に含まれる危険因子の数を判定基準として用いてもよい。
【0107】
さらに、本発明にかかるデータ取得システムは、上述したデータ取得システム1を種々に変更、修飾し、出力装置を用いて表示画面を出力する構成としたり、判定結果が記録された判定結果ファイルを生成し、該判定結果と上記個人情報ファイルと問診結果ファイルとを対応付けて外部記憶装置に記憶させる構成としたり、入力装置及び表示装置と、個人情報ファイル生成部10、問診部20及び判定部30とをネットワークを介して接続するシステム構成としたりすることができる。すなわち、本発明にかかるデータ取得システムには、本発明にかかるデータ取得方法を実施することにより、Dravet症候群の発症の可能性を判定するものであれば、あらゆる構成のシステムが含まれる。

最後に、データ取得システム1の各ブロック、特に個人情報ファイル生成部10、問診部20、および判定部30は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0108】
すなわち、データ取得システム1は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるデータ取得システム1の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記データ取得システム1に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0109】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0110】
また、データ取得システム1を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0111】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0112】
本発明について、実施例及び比較例、並びに図7〜図10に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、及び改変を行うことができる。
【0113】
〔実施例1:Dravet症候群の発症を予測する危険因子の同定〕
(1)Dravet症候群患者及び非Dravet症候群患者の選別
まず、1歳未満に熱性痙攣を発症した経験をもち、本実施例の実施時には、すでに成長して、それぞれの病状、病名も明らかになっている112人の日本人患者を選別した。次に、各々の1歳未満の時点の症状をカルテ等により、以下の(i)〜(v)の条件をすべて満たす患者96人を選別した。
(i)1歳未満に熱性痙攣を発症している
(ii)発症時には発達が正常である
(iii)3年以上の追跡期間がある
(iv)中枢神経感染症による痙攣ではない
(v)基礎疾患を有さない
次に、上記96人の患者を、各々のカルテ等により、Dravet症候群患者(46人)と非Dravet症候群患者(50人)との2群に分類した。なお、この分類において、Dravet症候群の定義を、発症時に正常発達を示し、全身痙攣、半身痙攣、または部分発作をもち、多くは発熱時に痙攣を起こす、後にミオクロニー発作が合併する、経過中に脳波はてんかん発射が出現する、治療に抵抗性を示す、2歳以降に発達遅滞が徐々に出現してくる症例とした。また、反復発作が認められた症例については、頭部CTやMRI検査を実施し、脳の器質病変が存在しないことを確認した。さらに、発達の分類は、正常、軽度遅滞、及び中等度から重度遅滞の3群に分類した。
【0114】
また、上記非Dravet症候群に分類された患者50人については、さらに、熱性痙攣に終始した群と後にてんかんを合併した群とに分類した。
【0115】
上記96人の患者の本実施例の実施時点での臨床特徴を表2に示す。
【0116】
【表2】

【0117】
(2)Dravet症候群患者及び非Dravet症候群患者の臨床データの後方視的解析
上記Dravet症候群患者(46人)及び非Dravet症候群患者(50人)について、1歳の時点での臨床データを後方視的に解析した。臨床因子としては、発症時月齢、痙攣性疾患の家族歴、1歳までの全発作回数、10分以上の遷延性発作の存在、発作型、誘発因子、脳波所見を検討した。
【0118】
(2−1)発症時月齢(発症月齢)及び1歳までの全発作回数(総発作回数)について
まず、発症時月齢(発症月齢)と1歳までの全発作回数(総発作回数)を調べた。上記Dravet症候群患者(46人)及び非Dravet症候群患者(50人)において、それぞれ総計を取った。図7(a)及び(b)は、その分布をグラフに示した図である。
【0119】
次に、これらの分布の中で、Dravet症候群と非Dravet症候群とに区切る閾値を求めることにした。まず、発症月齢の5ヶ月以下(6ヶ月未満)をDravet症候群になりやすい閾値として区切った場合、6ヶ月以下を閾値として区切った場合、7ヶ月以下を閾値として区切った場合、などと連続的に該当患者数の集計を行った。次に、病気を発見する能力を検討する感度(sensitivity)及び非病人を病気と誤診しない能力を検討する特異度(specificity)を以下の式で計算した。
感度(sensitivity)=a/(a+c)
特異度(specificity)=d/(b+d)
なお、式中、a〜dは、以下の表3に示す通りである。
【0120】
【表3】

【0121】
計算した「感度」及び「1−特異度」をグラフに連続的にプロットし、ROC曲線解析(Receiver Operating Characteristic Curve Analysis)を行った。その結果を図7(c)に示す。図7(c)において、「感度」及び「特異度」が共に高い値を示すポイントを探すことにより、閾値を求めた。同様に、各発作回数を閾値として区切った場合を集計し、ROC曲線解析を行い、「感度」及び「特異度」がともに良好な点を判定することにより、閾値を求めた。その結果、発症月齢は7ヶ月以下(8ヶ月未満)、総発作回数は5回以上をDravet症候群の危険因子とした。
【0122】
(2−2)その他の臨床因子について
上記Dravet症候群患者(46人)及び非Dravet症候群患者(50人)について、1歳時のカルテや、問診等により、痙攣性疾患の家族歴、1歳までの全発作回数、10分以上の遷延性発作の存在、発作型、誘発因子、脳波所見を調べた。その結果を表4に示す。
【0123】
【表4】

【0124】
【表5】

【0125】
(2−3)Dravet症候群患者及び非Dravet症候群患者におけるSCN1A遺伝子の変異
上記Dravet症候群患者(46人)及び非Dravet症候群患者(50人)のSCN1A遺伝子について解析した。DNA抽出キット(WB kit;Nippon gene, Tokyo, Japan)を用いて患者の末梢血からゲノムDNAを抽出し、全エキソンをPCRで増幅した。PCRは50ng ヒトゲノムDNA、20pmol 各プライマー、0.8mM dNTPs、1×reaction buffer、1.5mM MgCl、0.7ユニットのAmpliTaq Gold DNA polymerase (Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を含む25μlの反応液中で行った。得られたPCR産物を、PCR products pre-sequencing kit (Amersham Biosciences, Little Chalfont, Buckinghamshire, England)を用いて精製した。続いて、Big Dye Terminator FS ready-reaction kit (Applied Biosystems)を用いて、シークエンス反応を行い、蛍光シークエンサー(ABI PRISM3100 sequencer ;Applied Biosystems)により塩基配列を決定した。こうして得られたSCN1A遺伝子解析の結果を表5に示す。表5に示すように、Dravet症候群では、ミスセンス変異19例(41%)、トランケーション変異19例(41%)、非Dravet症候群ではミスセンス変異6例(12%)であった。
【0126】
【表6】

【0127】
【表7】

【0128】
なお、SCN1A遺伝子のゲノム配列及びcDNA配列は、それぞれ、配列番号1及び配列番号2に示す。また、用いたSCN1A遺伝子ゲノム検出用のプライマー配列は、以下の通りである。
【0129】
エキソン1増幅
Sense primer:5'- tcatggcacagttcctgtatc -3' (配列番号3)
Antisense primer:5'- gcagtaggcaattagcagcaa -3' (配列番号30)
エキソン2増幅
Sense primer:5'- tggggcactttagaaattgtg -3' (配列番号4)
Antisense primer:5'- tgacaaagatgcaaaatgagag -3' (配列番号31)
エキソン3増幅
Sense primer:5'- gcagtttgggcttttcaatg -3' (配列番号5)
Antisense primer:5'- tgagcattgtcctcttgctg -3' (配列番号32)
エキソン4増幅
Sense primer:5'- agggctacgtttcatttgtatg -3' (配列番号6)
Antisense primer:5'- tgtgctaaattgaaatccagag -3' (配列番号33)
エキソン5増幅
Sense primer:5'- CAGCTCTTCGCACTTTCAGA -3' (配列番号7)
Antisense primer:5'- TCAAGCAGAGAAGGATGCTGA -3' (配列番号34)
エキソン6増幅
Sense primer:5'- agcgttgcaaacattcttgg -3' (配列番号8)
Antisense primer:5'- gggatatccagcccctcaag -3' (配列番号35)
エキソン7増幅
Sense primer:5'- gacaaatacttgtgcctttgaatg -3' (配列番号9)
Antisense primer:5'- acataatctcatactttatcaaaaacc -3' (配列番号36)
エキソン8増幅
Sense primer:5'- gaaatggaggtgttgaaaatgc -3' (配列番号10)
Antisense primer:5'- aatccttggcatcactctgc -3' (配列番号37)
エキソン9増幅
Sense primer:5'- agtacagggtgctatgaccaac -3' (配列番号11)
Antisense primer:5'- tcctcatacaaccacctgctc -3' (配列番号38)
エキソン10増幅
Sense primer:5'- tctccaaaagccttcattagg -3' (配列番号12)
Antisense primer:5'- ttctaattctccccctctctcc -3' (配列番号39)
エキソン11増幅
Sense primer:5'- tcctcattctttaatcccaagg -3' (配列番号13)
Antisense primer:5'- gccgttctgtagaaacactgg -3' (配列番号40)
エキソン12増幅
Sense primer:5'- gtcagaaatatctgccatcacc -3' (配列番号14)
Antisense primer:5'- gaatgcactattcccaactcac -3' (配列番号41)
エキソン13増幅
Sense primer:5'- tgggctctatgtgtgtgtctg -3' (配列番号15)
Antisense primer:5'- ggaagcatgaaggatggttg -3' (配列番号42)
エキソン14増幅
Sense primer:5'- tacttcgcgtttccacaagg -3' (配列番号16)
Antisense primer:5'- gctatgcaagaaccctgattg -3' (配列番号43)
エキソン15増幅
Sense primer:5'- atgagcctgagacggttagg -3' (配列番号17)
Antisense primer:5'- atacatgtgccatgctggtg -3' (配列番号44)
エキソン16増幅
Sense primer:5'- tgctgtggtgtttccttctc -3' (配列番号18)
Antisense primer:5'- tgtattcataccttcccacacc -3' (配列番号45)
エキソン17増幅
Sense primer:5'- aaaagggttagcacagacaatg -3' (配列番号19)
Antisense primer:5'- attgggcagatataatcaaagc -3' (配列番号46)
エキソン18増幅
Sense primer:5'- cacacagctgatgaatgtgc -3' (配列番号20)
Antisense primer:5'- tgaagggctacactttctgg -3' (配列番号47)
エキソン19増幅
Sense primer:5'- tctgccctcctattccaatg -3' (配列番号21)
Antisense primer:5'- gcccttgtcttccagaaatg -3' (配列番号48)
エキソン20増幅
Sense primer:5'- aaaaattacatcctttacatcaaactg -3' (配列番号22)
Antisense primer:5'- ttttgcatgcatagattttcc -3' (配列番号49)
エキソン21増幅
Sense primer:5'- tgaaccttgcttttacatatcc -3' (配列番号23)
Antisense primer:5'- acccatctgggctcataaac -3' (配列番号50)
エキソン22増幅
Sense primer:5'- tgtcttggtccaaaatctgtg -3' (配列番号24)
Antisense primer:5'- ttggtcgtttatgctttattcg -3' (配列番号51)
エキソン23増幅
Sense primer:5'- ccctaaaggccaatttcagg -3' (配列番号25)
Antisense primer:5'- atttggcagagaaaacactcc -3' (配列番号52)
エキソン24増幅
Sense primer:5'- gagatttgggggtgtttgtc -3' (配列番号26)
Antisense primer:5'- ggattgtaatggggtgcttc -3' (配列番号53)
エキソン25増幅
Sense primer:5'- caaaaatcagggccaatgac -3' (配列番号27)
Antisense primer:5'- tgattgctgggatgatcttg -3' (配列番号54)
エキソン26(1)増幅
Sense primer:5'- aggactctgaaccttaccttgg -3' (配列番号28)
Antisense primer:5'- ccatgaatcgctcttccatc -3' (配列番号55)
エキソン26(2)増幅
Sense primer:5'- tgtgggaacccatctgttg -3' (配列番号29)
Antisense primer:5'- gtttgctgacaaggggtcac -3' (配列番号56)
(3)危険因子の同定
各臨床因子とDravet症候群の関連を調べるために、上記(2−1)〜(2−3)で得られたデータについて、Chi-square検定又はFisher検定を行い、両群の有意差検定を行った。p値が0.01未満であれば、統計的に有意であると判定した。また、オッズ比(odds ratio)による検定も行った。その結果を表4に示す。
【0130】
以下に示す9項目の臨床因子がDravet症候群の危険因子になると考えられた。
(a)半身痙攣の経験がある
(b)遷延性痙攣の経験がある
(c)発作回数が5回以上ある
(d)熱性痙攣の発症が生後8ヶ月未満である
(e)入浴による痙攣誘発の経験がある
(f)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在する
(g)部分発作の経験がある
(h)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在する
(i)ミオクロニー発作の経験がある。
【0131】
(4)危険因子のスコア化
上記(3)にて同定された危険因子について、上記統計処理にて計算されたオッズ比の値(オッズ値)、並びにChi-square検定又はFisher検定におけるp値を基に、各危険因子に1〜3点のリスクスコア(risk score)をつけた(表4)。具体的には、1<オッズ値<20又は0.01≧p>1.0E−5は1点、20≦オッズ値<40又は1.0E−5≧p>1.0E−10は2点、40≦オッズ値又は1.0E−10≧pは3点にした。その結果を表4に示す。なお、表4では、上記(3)における統計計算の結果、危険因子とはしなかった項目、具体的には、オッズ値が1以下又はp>0.01の項目については、0点を記載した。
【0132】
〔実施例2:本発明にかかるデータ取得方法を用いたDravet症候群の検出効率〕
本発明にかかるデータ取得方法を用いて、Dravet症候群の検出効率を検討した。実施例1で決定した各危険因子のリスクスコアを各患者に応用し、患者の各症状を数値化し、判定予測スコアを求めた。そして、Dravet症候群(46人)と非Dravet症候群(50人)との間で判定予測スコアの分布を比較した。その結果を図8に示す。
【0133】
図8に示すように、判定予測スコアが7点以上になると、Dravet症候群になるリスクが高くなると判定された。このように、わずかな点数の重なりがあるものの、このようにスコア表を適応することで、両群が高精度で鑑別できることが示された。
【0134】
〔実施例3:本発明にかかるデータ取得方法を用いた発作予後の比較検討〕
本発明にかかるデータ取得方法により取得されたデータを用いて、発作予後を比較できるかどうか検討した。まず、Dravet症候群(46人)と非Dravet 症候群(50人)とを区別することなく合わせた後、判定予測スコアが6点以下の群と7点以上の群とに分け、Kaplan-Meier 法を用いて、生後96ヶ月までの発作の抑制経過を比較した。その結果を図9に示す。
【0135】
図9に示すように、判定予測スコアが6点以下の群は時間経過と共に発作回数は減衰していった。一方、判定予測スコアが7点以上の群は生後96ヶ月まで発作が続いていることが明らかになった。このことは、本発明にかかるデータ取得方法が難治てんかん患者を高精度に選別していることを示している。
【0136】
〔実施例4:本発明にかかるデータ取得方法を用いたDravet症候群の検出効率(2)〕
本発明にかかるデータ取得方法において、実施例1の(a)〜(i)に示される9つの危険因子のうち、用いる危険因子の組み合わせを変更して、Dravet症候群の検出効率を検討した。具体的には、(1)9つ全ての危険因子を用いる場合、(2)上記(a)〜(e)、(g)、及び(i)に示される7つの危険因子を用いる場合、(3)上記(e)に示される危険因子を除く8つの危険因子を用いる場合、(4)上記(a)〜(d)、(g)、及び(i)に示される6つの危険因子を用いる場合、(5)上記(b)〜(e)に示される4つの危険因子と、(f)または(h)のいずれか一方に示される危険因子との合計5つの危険因子を用いる場合、(6)上記(b)〜(e)に示される4つの危険因子を用いる場合、(7)上記(b)〜(d)示される3つの危険因子を用いる場合、(8)上記(b)および(d)に示される2つの危険因子を用いる場合について、実施例2と同一の方法を用いてDravet症候群の検出効率を検討した。その結果を図10(a)〜(h)に示す。
【0137】
図10(a)に示すように、(1)9つ全ての危険因子を用いる場合は、判定予測スコアが7点以上になると、Dravet症候群になるリスクが高くなると判定された。(2)上記(a)〜(e)、(g)、及び(i)に示される7つの危険因子を判定に用いる場合は、図10(b)に示すように、判定予測スコアが7点以上になると、Dravet症候群になるリスクが高くなると判定された。(3)上記(e)に示される危険因子を除く8つの危険因子を用いる場合は、図10(c)に示すように、判定予測スコアが6点以上になると、Dravet症候群になるリスクが高くなると判定された。また、(4)上記(a)〜(d)、(g)、及び(i)に示される6つの危険因子を用いる場合、図10(d)に示すように、判定予測スコアが6点以上になると、Dravet症候群になるリスクが高くなると判定された。(5)上記(b)〜(e)に示される4つの危険因子と、(f)または(h)のいずれか一方に示される危険因子との合計5つの危険因子を用いる場合、図10(e)に示すように、判定予測スコアが6点以上になると、Dravet症候群になるリスクが高くなると判定された。(6)上記(b)〜(e)に示される4つの危険因子を用いる場合、図10(f)に示すように、判定予測スコアが5点以上になると、Dravet症候群になるリスクが高くなると判定された。(7)上記(b)〜(d)に示される3つの危険因子を用いる場合、図10(g)に示すように、判定予測スコアが5点以上になると、Dravet症候群になるリスクが高くなると判定された。(8)上記(b)および(d)に示される2つの危険因子を用いる場合、図10(h)に示すように、判定予測スコアが3点以上になると、Dravet症候群になるリスクが高くなると判定された。
【0138】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上のように、本発明は、1歳未満の乳児においても検出可能な特定の危険因子の有無を判定することによって、Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得する。そのため、1歳未満の病初期に良性の熱性痙攣のなかから、専門医の治療が必要な難治てんかん患者を選別することができる。したがって、本発明は、医療機器、診断用キットなど医療分野の産業に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1(a)および(b)は、本発明の一実施形態にかかる問診表を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかるDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得システムの機能ブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかるDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかるDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得システムの個人情報ファイル生成部が表示する個人データ入力画面を示す図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にかかるDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得システムの問診部が表示する問診画面を示す図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態にかかるDravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータ取得システムの判定部が表示する判定結果画面を示す図である。
【図7】図7(a)および(b)は、それぞれDravet症候群患者及び非Dravet症候群患者(50人)において、発症時月齢(発症月齢)および1歳までの全発作回数の分布を示す図であり、図7(c)は、図7(a)および(b)に基づいて計算した「感度」及び「1−特異度」をグラフに連続的にプロットし、ROC曲線解析を行った結果を示す図である。
【図8】図8は、本発明にかかる実施例において、Dravet症候群の検出効率を測定した結果を示す図である。
【図9】図9は、本発明にかかる実施例において、Kaplan-Meier 法を用いて、生後96ヶ月までの発作の抑制経過を観察した結果を示す図である。
【図10】図10(a)〜(h)は、それぞれ、本発明にかかる別の実施例において、Dravet症候群の検出効率を測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0141】
1 データ取得システム(システム)
10 個人情報ファイル生成部
20 問診部(問診手段)
30 判定部(判定手段)
40 格納部(格納手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得する方法であって、
資料に、以下の(a)〜(i)に示される危険因子のうち、少なくとも1つの危険因子が含まれるか否かを判定することを特徴とする方法。
(a)半身痙攣の経験がある
(b)遷延性痙攣の経験がある
(c)発作回数が5回以上ある
(d)熱性痙攣の発症が生後8ヶ月未満である
(e)入浴による痙攣誘発の経験がある
(f)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在する
(g)部分発作の経験がある
(h)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在する
(i)ミオクロニー発作の経験がある
【請求項2】
上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記資料に含まれる危険因子の数を算出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して、リスクスコアを設定し、
上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記資料に含まれる危険因子について、それぞれに設定されたリスクスコアの合計を判定予測スコアとして算出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して設定されるリスクスコアの相対関係は、
上記(a)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアを3としたとき、
上記(b)〜(i)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアは、それぞれ、3、3、2、2、2、1、1、1であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Dravet症候群の発症の可能性を判定するために用いられる記録媒体であって、
以下の(a)〜(i)に示される危険因子のうち、少なくとも1つの危険因子の保有の有無を問う問診項目が記録されていることを特徴とする記録媒体。
(a)半身痙攣の経験がある
(b)遷延性痙攣の経験がある
(c)発作回数が5回以上ある
(d)熱性痙攣の発症が生後8ヶ月未満である
(e)入浴による痙攣誘発の経験がある
(f)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在する
(g)部分発作の経験がある
(h)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在する
(i)ミオクロニー発作の経験がある
【請求項6】
上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して設定されたリスクスコアが、上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対応付けて記録されていることを特徴とする請求項5に記載の記録媒体。
【請求項7】
上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して設定されるリスクスコアの相対関係は、
上記(a)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアを3としたとき、
上記(b)〜(i)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアは、それぞれ、3、3、2、2、2、1、1、1であることを特徴とする請求項6に記載の記録媒体。
【請求項8】
Dravet症候群の発症の可能性を判定するために用いられるキットであって、
請求項5〜7のいずれか1項に記載の記録媒体を含むことを特徴とするキット。
【請求項9】
ヒトSCN1A遺伝子のエキソン内の領域及びエキソン/イントロン境界領域のうち、少なくとも一方の領域の全て、またはその一部を増幅するためのプライマーを、さらに含むことを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項10】
Dravet症候群の発症の可能性を判定するためのデータを取得するシステムであって、
問診手段と、
判定手段と、を備え、
上記問診手段は、以下の(a)〜(i)に示される危険因子のうち、少なくとも1つの危険因子について、被験者が該危険因子を保有するか否かを問う問診を行い、問診結果が記録された問診結果ファイルを生成し、
上記判定手段は、以下の(a)〜(i)に示される危険因子のうち、少なくとも1つの危険因子が、上記問診結果ファイルに記録された問診結果に含まれるか否かを判定することを特徴とするシステム。
(a)半身痙攣の経験がある
(b)遷延性痙攣の経験がある
(c)発作回数が5回以上ある
(d)熱性痙攣の発症が生後8ヶ月未満である
(e)入浴による痙攣誘発の経験がある
(f)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在する
(g)部分発作の経験がある
(h)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在する
(i)ミオクロニー発作の経験がある
【請求項11】
上記判定手段は、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記問診結果に含まれる危険因子の数を算出することを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して設定されたリスクスコアを格納する格納手段をさらに備え、
上記判定手段は、上記格納手段に格納されたリスクスコアを用いて、上記(a)〜(i)に示される危険因子のうち、上記問診結果に含まれる危険因子について、それぞれに対して設定されたリスクスコアの合計を判定予測スコアとして算出することを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
上記(a)〜(i)に示される危険因子のそれぞれに対して設定されるリスクスコアの相対関係は、
上記(a)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアを3としたとき、
上記(b)〜(i)に示される危険因子に対して設定されるリスクスコアは、それぞれ、3、3、2、2、2、1、1、1であることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載のシステムを動作させるためのプログラムであって、コンピュータを上記問診手段および判定手段として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−173193(P2008−173193A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7449(P2007−7449)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】