E−およびP−セレクチンの両方のための糖模倣物アンタゴニスト
セレクチン結合により媒介されるインビボおよびインビボプロセスを調節する化合物および方法が提供されている。さらに具体的には、セレクチン調節因子およびそれらの使用が記述されており、ここで、セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻止または強化)するセレクチン調節因子は、BASA(ベンジルアミノスルホン酸)と称する種類の化合物のメンバーに連結された特定の糖模倣物を含有する。そのような化合物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせられ、薬学的組成物を形成し得る。その化合物または組成物は、セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻害または増強)する方法(例えば、セレクチン媒介性細胞間接着を阻害する方法)に使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、概して、セレクチン結合により媒介されるプロセスを調節するための、化合物、組成物および方法に関し、より具体的には、セレクチン調節因子およびそれらの使用に関する。ここで、セレクチン媒介性機能を調節するセレクチン調節因子は、BASA類(Benzyl Amino Sulfonic Acid類、これは、その一部分またはアナログを含む)と呼ばれる化合物のクラスの成員に連結する、特定の糖模倣物を含む。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の記載)
組織が感染または損傷されるとき、炎症性プロセスは、白血球および他の免疫系構成要素を感染または損傷の部位に指向させる。このプロセス内で、白血球は、微生物の飲み込みおよび消化において重要な役割を果たす。従って、感染または損傷された組織に対する白血球のリクルート(recruitment)は、有効な免疫防御を獲得するために重要である。
【0003】
セレクチンは、内皮細胞への白血球の結合を調節するために重要である、構造的に類似な細胞表面レセプターの群である。これらのタンパク質は、1型膜タンパク質であり、アミノ末端レクチンドメイン、上皮増殖因子(EGF)様ドメイン、種々の多数の補体レセプター関連リピート、疎水性ドメインがまたがった領域および細胞質ドメインから構成される。この結合相互作用は、セレクチンのレクチンドメインと種々の炭水化物リガンドとの接触により媒介されると考えられる。
【0004】
3種の公知のセレクチンが存在する:E−セレクチン、P−セレクチンおよびL−セレクチン。E−セレクチンは、活性化内皮細胞(これは、毛細血管の内壁の内側を覆う)の表面上に見出されている。E−セレクチンは、炭水化物シアリル−ルイスX(SLeX)に結合し、これは、特定の白血球(単球および好中球)の表面上の糖タンパク質または糖脂質として存在し、周囲組織が感染または損傷されている領域での毛細血管壁へのこれらの細胞の接着を補助する;そして、E−セレクチンはまた、シアル−ルイスa(SLea)に結合し、これは、多くの腫瘍細胞上に発現される。P−セレクチンは、炎症性内皮および血小板上に発現され、これはまた、SLeXおよびSLeaを認識するが、硫酸化チロシンと相互作用する第2の部位もまた含む。E−セレクチンおよびP−セレクチンの発現は、概して、毛細血管に接着する組織が感染または損傷される場合、増加する。L−セレクチンは、白血球上に発現される。セレクチン媒介性細胞間接着は、セレクチン媒介性機能の一例である。
【0005】
セレクチン媒介性機能の調節因子としては、PSGL−1タンパク質(およびより小さいペプチドフラグメント)、フコイダン、グリチルリジン(および誘導体)、抗セレクチン抗体、硫酸ラクトース誘導体、ならびにヘパリンが挙げられる。これらは全て、物質の、不十分な活性、毒性、特異性の欠如、乏しいADME特性および/またはアベイラビリティに起因して、薬物開発のためには不適切であることが示されている。
【0006】
セレクチン媒介性細胞接着は、感染と競合するために、および異物(foreign material)を破壊するために、必要とされるが、そのような細胞接着が所望されないかまたは過剰である状況が存在し、その結果、修復ではなく組織損傷が生じる。例えば、多くの病理(例えば、自己免疫疾患および炎症性疾患、ショックならびに再還流傷害)は、白血球細胞の異常な接着に関与する。そのような異常な細胞接着はまた、輸送および移植片拒絶に役割を果たし得る。さらに、いくつかの循環する癌細胞は、活性化内皮に結合するために、炎症性機構を利用すると考えられる。そのような場合、セレクチン媒介性細胞間接着の調節が所望され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、当該分野において、セレクチン媒介性機能(例えば、セレクチン依存性細胞接着)のインヒビターを同定する必要性、および過剰なセレクチン活性に関連する状態を阻害するためにそのような化合物を使用する方法を開発する必要性が存在する。本発明は、これらの必要性を満たし、そしてさらに、他の関連の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の簡単な要旨)
手短に述べると、本発明は、セレクチン媒介性プロセスを調節するための、化合物、組成物および方法を提供する。本発明において、セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻害または増強)する化合物は、特定の糖模倣物およびBASA(すなわち、ベンジルアミノスルホン酸またはいずれかの部分もしくはアナログ)を含む。そのような化合物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせられ、薬学的組成物を形成し得る。その化合物または組成物は、セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻害または増強)する方法(例えば、セレクチン媒介性細胞間接着を阻害する方法)に使用され得る。
【0009】
本発明の一局面において、少なくとも以下の2つの構成要素を含む化合物が提供される:(1)特定の糖模倣物(またはその複合糖質)および(2)BASA。BASAの例は、以下に示される。図1A〜1Iに示されるBASA類が好ましい。好ましい糖模倣物の例は、図1Jに示される。本発明の化合物は、セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻害または増強)する化合物を生成するための、特定の糖模倣物およびBASAの組み合わせである。BASAは、図1JのR、R’またはR’’にて結合され得、そしてその位置において置換基と置き換わり得る。セレクチン媒介性機能の一例は、セレクチン媒介性細胞間接着である。本発明の化合物は、その生理学的に受容可能な塩を包含する。薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせた、本発明の化合物は、本発明の組成物を提供する。
【0010】
本発明の好ましい実施態様では、次式を有する化合物、またはそれらの生理的に受容可能な塩が提供されている:
【0011】
【化18】
ここで:
R=Hまたはベンジルアミノスルホン酸である;
R’=ベンジルアミノスルホン酸、
【0012】
【化19】
【0013】
【化20】
【0014】
【化21】
【0015】
【化23】
【0016】
【化24】
【0017】
【化25】
【0018】
【化26】
【0019】
【化27】
【0020】
【化28】
【0021】
【化29】
【0022】
【化30】
である;
R’’=ベンジルアミノスルホン酸、
【0023】
【化31】
【0024】
【化32】
【0025】
【化33】
【0026】
【化34】
【0027】
【化35】
【0028】
【化36】
である;そして
ここで、該化合物は、R、R’またはR’’にてベンジルアミノスルホン酸を有するが、R、R’およびR’’の1個より多くでは、ベンジルアミノスルホン酸を有しない。このような化合物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と混ぜ合わされ得、本発明の好ましい組成物が提供される。本発明の化合物または組成物は、さらに、診断因子または治療因子を含有し得る。本明細書中(図面を含めて)の化学式では、他の線の中間を通る線は、環(または、もし縮合しているなら、複数の環)内の炭素原子の任意の1個の置換基が結合することを意味する。上で示した置換基からR、R’およびR’’に対して特定の置換基を選択することにより形成される個々の化合物は、R、R’およびR’’に対する置換基のいずれの組み合わせも別々に列挙されているごとく、同じ程度まで、全て、本願で開示されている。
【0029】
本発明の他の局面では、セレクチン媒介性機能を調節するために本発明の化合物または組成物を使用する方法が提供されている。このような化合物または組成物は、例えば、セレクチン媒介性機能(例えば、セレクチン媒介細胞間相互作用)を阻止または強化するのに使用できる。化合物または組成物は、そのセレクチン機能を調節するのに有効な量でセレクチンを発現する細胞と接触させる方法において、使用できる。化合物または組成物は、過剰なセレクチン媒介性機能(例えば、過剰なセレクチン媒介細胞間接着)に関連した病気の発症を阻止する必要がある患者に、このような病気の発症を阻止するのに有効な量で投与する方法において、使用できる。このような病気の例には、炎症疾患、自己免疫疾患、感染、癌、ショック、血栓症、創傷、火傷、再灌流傷害、血小板媒介疾患、白血球媒介肺傷害、脊髄損傷、消化管粘膜障害、骨粗鬆症、関節炎、喘息およびアレルギー反応が挙げられる。化合物または組成物は、移植した組織の拒絶を阻止するのに有効な量で、移植した組織の受容者である患者に投与する方法において、使用できる。化合物または組成物は、セレクチン発現細胞を薬剤(例えば、診断因子または治療因子)を標的化するのに有効な量で、このような細胞を該化合物または組成物に結合された該薬剤と接触させることによる方法において、使用できる。
【0030】
本発明のこのような局面および他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照すると、明らかとなる。本明細書中で開示された全ての参考文献の内容は、各々が個々に援用されているごとく、それらの全体として、本明細書中で参考として援用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
上で述べたように、本発明は、セレクチン調節因子、それらの組成物、およびセレクチン媒介性機能を調節する方法を提供する。このような調節因子は、インビトロまたはインビボで、以下でさらに詳細に述べる種々の状況において、セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻止または強化)するのに使用され得る。セレクチン媒介性機能の例には、細胞間接着、および血管形成中の新規毛細管の形成が挙げられる。
【0032】
(セレクチン調節因子)
本明細書中で使用する「セレクチン調節因子」との用語は、セレクチン媒介性機能(例えば、セレクチン媒介細胞間相互作用)を調節(例えば、阻止または強化)する分子であって、以下のBASAの少なくとも1つを含む分子を意味する:
(a)BASA(またはその塩);
(b)セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻止または強化)する性能を保持するBASAの部分;または
(c)セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻止または強化)する性能を有するBASAの類似物、またはBASAの部分の類似物;
ここで、(a)、(b)または(c)の少なくとも1つは、1種またはそれ以上の特定のセレクチン結合糖模倣物(またはそれらの糖抱合体)に結合されている。
【0033】
セレクチン調節因子は、1種またはそれ以上の特定の糖模倣物に結合された上記BASAヨ要素だけからなり得るか、または1種またはそれ以上の追加分子成分を含み得る。本発明のセレクチン調節因子は、驚くべきことに、個々の成分単独または相加よりも著しく強力である。
【0034】
本発明の範囲内では、BASAは、低分子量サルフェート化合物であり、これらは、セレクチンと相互作用する性能を有する。この相互作用は、セレクチン媒介性機能(例えば、細胞間相互作用)を調節するか、またはその機能の調節(例えば、阻止または強化)を助ける。これらは、それらのプロトン化された酸形状として、またはナトリウム塩として存在するが、ナトリウムは、カリウムまたは任意の他の薬学的に受容可能な対イオンで置き換えられ得る。代表的なBASAは、以下の構造を有する:
【0035】
【化37】
セレクチンと相互作用する性能(この相互作用は、本明細書中で記述したセレクチン媒介性機能を調節するか、その調節を助ける)を保持するBASAの部分もまた、本発明のセレクチン調節因子のBASA成分である。このような部分は、一般に、そのBASA構造内に存在している少なくとも1個の芳香環を含む。特定の実施態様内では、部分は、単一芳香環、複数のこのような環、または対称BASA分子の半分を含み得る。
【0036】
上で述べたように、BASAの類似物およびそれらの部分(これらの両方は、上で述べた生物学的特性を有する)もまた、例えば、このセレクチン調節因子BASA成分により、本発明に含まれる。本明細書中で使用する「類似物」とは、
1個またはそれ以上の化学部分の1個またはそれ以上の追加、削除および/または置換があるために、BASAまたはそれらの部分とは異なる化合物であり、その結果、この類似物がセレクチン媒介相互作用を阻止する性能は、減少される。例えば、類似物は、SからPへの置換を含み得る(例えば、サルフェート基をホスフェート基で置換した)。他の可能な変更には、以下が挙げられる:(a)環の大きさの変更(例えば、任意の環は、4個と7個の間の炭素原子を含み得る);(b)縮合環の数の変化(例えば、単一環は、3個までの縮合環を含む多環式部分で置き換えられ得、多環式部分は、単一非縮合環で置き換えられ得、または多環式部分内の縮合環の数が変えられ得る);(c)芳香環内の水素原子または炭素原子に結合した他の部分が種々の部分(例えば、F、Cl、Br、I、OH、O−アルキル(C1〜8)、SH、NO2、CN、NH2、NH−アルキル(C1〜8)、N−(アルキル)2、SO3M(ここで、M=H+、Na+、K+または他の薬学的に受容可能な対イオンである)、CO2M、PO4M2、SO2NH2、アルキル(C1〜8)、アリール(C6〜10)、CO2−アルキル(C1〜8)、−CF2X(ここで、Xは、H、F、アルキル、アリールまたはアシル基であり得る)および炭水化物)のいずれかで置き換えられ得る環置換;および連結部分(すなわち、BASA分子内の環の間に位置している部分)の変更であって、ここで、アルキル、エステル、アミド、無水物およびカーバメート基のような基は、互いに置換され得る。
【0037】
ある種のBASA部分および類似物は、以下の一般構造の1つを含む:
【0038】
【化38】
この構造内では、nは、0または1であり得、X1は、−PO2M、−SO2Mまたは−CF2−(ここで、Mは、薬学的に受容可能な対イオン(例えば、水素、ナトリウムまたはカリウム)である)であり得、R1は、−OH、−Fまたは−CO2R4(ここで、R4は、−Hまたは−(CH2)m−CH3であり得、そしてmは、0〜3の範囲の整数であり得る)であり得、R2は、−H、−PO3M2、−SO3M2、−CH2−PO3M2、−CH2−SO3M2、−CF3または−(CH2)m−C(R6)H−R5またはR9−N(R10)−であり得、R3は、−H、−(CH2)m−C(R6)H−R5またはR9−N(R10)−(ここで、R5およびR6は、別個に、−H、−CO2−R7および−NH−R3から選択され得、R7およびR8は、別個に、水素、およびアルキル基、芳香族部分、アミノ基またはカルボキシ基の1個またはそれ以上を含む部分から選択され得、そしてR9およびR10は、別個に、−H、−(CH2)m−CH3;−CH2−Ar、−CO−Arであって、ここでmは、0〜3の範囲の数であり、そしてArは、芳香族部分(すなわち、少なくとも1個の置換または非置換芳香環を含む任意の部分であって、ここで、該環は、上で示した−CH2−または−CO−基に直接結合されている))であり得る。
【0039】
BASAの他の部分および類似物は、以下の一般構造を含む:
【0040】
【化39】
この構造内では、R1およびR2は、別個に、(i)水素、(ii)アルキル基、芳香族部分、アミノ基またはカルボキシ基の1個またはそれ以上を含む部分、および(iii)−CO−R3(ここで、R3は、上記アルキルまたは芳香族部分を含む)から選択され得、そしてMは、薬学的に受容可能な対イオンである。
【0041】
本明細書中で記述した構造および置換基の種々の組み合わせから誘導された個々の化合物または化合物群は、各化合物または化合物群が個々に示されているごとく、同じ程度まで、全て、本願で開示されている。
【0042】
代表的なBASA部分および類似物は、図1A〜1Iで示された化合物に含まれる。これらの図面で示された化合物に対して、セレクチン調節因子としての機能する性能に悪影響を及ぼすことなく、変更を行い得ることは、当業者に明らかとなる。このような変更には、上記削除、追加および置換が挙げられる。
【0043】
ある種のセレクチン調節因子成分は、例えば、Sigma−Aldrich,Toronto Research Chemicals,Calbiochemなどから市販されている。他のものは、入手できる化合物から、周知の化学合成技術を使用して調製され得る。セレクチン調節因子を合成する一般的な合成方法は、以下の工程を包含する:第一級または第二級アミンまたはアニリンのアミド形成は、ハロゲン化アシルまたはカルボン酸との反応によって、達成できる(図2および3を参照のこと)。N−結合アルキル化合物は、このアミン/アニリンをアルデヒドで還元アミノ化することに続いてシアノホウ化水素ナトリウムでイミン還元することにより、調製される。ビフェニル化合物は、スズキ/ネジキ条件によって、適当な臭化/ヨウ化アリールを適当なボロン酸と反応させることにより、容易に調製される(図2を参照のこと)。ニトロ基の還元は、他の感受性基質の存在下にて、パラジウム触媒水素化により、選択的に達成できる(図2および3を参照のこと)。
【0044】
BASA成分(例えば、上で述べたもの)は、特定のセレクチン結合糖模倣物(またはそれらの糖抱合体)に連結(例えば、スペーサー基でまたはそれなしで、共有結合)されて、本発明のセレクチン調節因子を形成する。好ましい糖模倣物の例は、図1Jで示されている。BASAが図1JのR、R’またはR’’に結合されるとき、特定の位置について列挙された置換基は、典型的には、このBASAで置き換えられる。
【0045】
特定の糖模倣物は、一般に、以下である:
【0046】
【化40】
R、R’およびR’’は、BASAが結合できる位置にある。単一のBASAだけが、特定の糖模倣物に結合される(すなわち、BASAは、所定分子にて、R、R’およびR’’の1個だけで結合される)。BASAがRで結合されないとき、R置換基は、水素(H)である。BASAがR’で結合されないとき、R’置換基は、本明細書中で開示された置換基の1つであるか、他の芳香族置換基(ヘテロ芳香族を含めて)である。BASAがR’’で結合されないとき、R’’置換基は、本明細書中で開示された置換基の1つであるか、他の芳香族置換基である。R’およびR’’では、−OH以外の置換基が好ましい。
【0047】
特定の糖模倣物へのBASAの結合は、セレクチン調節因子を形成する種々の様式で達成できる。BASAまたは糖模倣物が有する(またはそこに負荷される)リンカーには、スペーサー基(例えば、−(CH2)n−または−O(CH2)nであって、ここで、nは、一般に、約1〜20(その全ての整数範囲を含めて)である)が挙げられ得る。リンカーの一例には、それが短スペーサー基を含むとき、糖模倣物上の−NH2(例えば、−CH2−NH2)がある。1実施態様では、糖模倣物には、R’にて、−CH2−NH2が結合され、これは、次いで、BASAを結合するのに使用され得る。最も簡単な結合方法は、還元末端(アノマーヒドロキシル/アルデヒド)を含む糖模倣物へのBASAの還元アミノ化である。これは、BASAの還元末端への簡単な反応、および形成されたイミンの引き続いた還元(例えば、pH4.0で、NaCNBH3を使う)により、達成される。最も一般的なアプローチは、そのアノマー位置でのO、SまたはNヘテロ原子(またはC原子)を介した糖模倣物への活性化リンカーの簡単な結合を伴う。このような結合方法は、炭水化物について広く研究されており、アノマー選択性は、方法および/または保護基の正しい選択により、容易に達成される。可能性のあるグリコシド合成方法の例には、ハロゲンまたは過アセチル化糖でのルイス酸触媒結合形成(Koenigs Knorr)、トリクロロアセトアミド結合形成、チオグリコシド活性化およびカップリング、グルカール(glucal)活性化およびカップリング、n−ペンテニルカップリング、ホスホン酸エステルホモロゲーション(Horner−Wadsworth−Emmons reaction)、および多くの他のものが挙げられる。あるいは、リンカーは、このアノマー以外の部分にある位置に結合できる。結合に最もアクセス可能な部位は、糖模倣物(第一級アルコール)の6ヒドロキシル(6−OH)位置である。6−OHでのリンカーの結合は、種々の手段により、容易に達成できる。例には、オキシ−アニオン(塩基を使った脱プロトン化により形成されるアルコール)と適当な求核試薬(例えば、臭化、塩化アルキル/アシル、またはスルホン酸エステル)との反応、スルホン酸エステルクロライドまたはPOCl3との反応によるこのアルコールの活性化および引き続いた求核試薬での置換、このアルコールのアルデヒドまたはカルボン酸への酸化(カップリングのために)、または異なる官能基を導入するための光延反応の使用さえ挙げられる。このリンカーは、一旦結合すると、次いで、BASA上の適当な求核試薬との反応のために官能化される(逆もまた正しい)。これは、しばしば、チオ尿素結合配位子を製造するためのチオホスゲンおよびアミンの使用、スクアリン酸ジエチルの結合(再度、アミンを使って)および/または簡単なアルキル化/アシル化反応により、達成される。利用できる別の方法には、FMOC固相または溶液相合成技術(これらは、伝統的に、炭水化物およびペプチドカップリングに使用されている)および化学酵素合成技術(これは、おそらく、グリコシル/フコシルトランスフェラーゼおよび/またはオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を利用する)が挙げられる。
【0048】
リンカーの実施態様には、以下が挙げられる:
【0049】
【化41】
他のリンカーは、当業者によく知られている。
【0050】
本明細書中に記載されるようなセレクチン調節因子は、インビボで所望の部位を十分に標的化し得るが、特定の適用にとって、1つ以上の特定の組織に対する標的化を容易にする、さらなる標的化部分を含むことが有利であり得る。本明細書中で使用される場合、「標的化部分」とは、調節因子に連結された場合、標的組織への調節因子の輸送を増強し、それによって、その調節因子の局所的濃度を増大する、任意の物質(例えば、構成要素または細胞)であり得る。標的化部分としては、抗体またはそのフラグメント、レセプター、リガンド、および、その標的組織の細胞またはその標的組織の近接の細胞に結合する他の分子が挙げられる。結合は、一般的に、共有結合であり、そして、例えば、直接的縮合もしくは他の反応によって、または二官能性リンカーもしくは多官能性リンカーによって、達成され得る。
【0051】
特定の実施形態について、また、または代替的に、セレクチン調節因子へ薬物を結合させることが有利であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「薬物」とは、疾患または他の所望されない状態を予防または処置するための、哺乳動物への投与を対象とした、任意の生物活性因子をいう。薬物としては、ホルモン、成長因子、タンパク質、ペプチドおよび他の化合物が挙げられる。潜在的な薬物の例としては、抗腫瘍性薬剤(例えば、5−フルオロウラシルおよびジスタミシン(distamycin))、インテグリンアゴニスト/アンタゴニスト類(例えば、環状RGDペプチド)、サイトカインアゴニスト/アンタゴニスト類、ヒスタミンアゴニスト/アンタゴニスト類(例えば、ジフェンヒドラミンおよびクロルフェニラミン)、抗体(例えば、アミノグリコシド類およびセファロスポリン類)ならびに酸化還元活性生物学的因子(例えば、グルタチオンおよびチオレドキシン)が挙げられる。他の実施形態では、診断用または治療用の放射性核種類は、セレクチン調節因子に連結され得る。多くの実施形態では、上記因子は、セレクチン調節因子に直接的または間接的に連結され得る。
【0052】
(セレクチン媒介性細胞間接着の阻害の評価)
上記のような調節因子は、例えば、セレクチン媒介性細胞接着を阻害し得る。この能力は、一般的に、セレクチン発現細胞間の接着(例えば、白血球と血小板または内皮細胞との間の接着)への影響を測定するために設計された、種々のインビトロアッセイのいずれかを使用して評価され得る。例えば、そのような細胞は、調節因子の非存在下では細胞接着を可能にする、標準的な条件下、プレート上にまかれ得る。一般的に、調節因子は、試験細胞と調節因子との接着が、結果として、細胞接着の識別可能な破壊を生じる場合、セレクチン媒介性細胞接着のインヒビターである。例えば、調節因子(例えば、μMレベル)の存在下では、白血球と血小板および/または内皮細胞との間の接着の破壊は、互いに相互作用する細胞の減少を観察することによって、およそ数分内で視覚的に決定され得る。
【0053】
(セレクチン調節因子処方物)
本明細書中に記載されるような調節因子は、薬学的組成物中に存在し得る。薬学的組成物は、1種以上の、薬学的にもしくは生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、1種以上の調節因子を含む。そのような組成物は、緩衝剤(例えば、中性緩衝化生理食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースもしくはデキストラン類)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドもしくはアミノ酸(例えば、グリシン)、抗酸化剤、キレート化剤(例えば、EDTA)またはグルタチオン、アジュバント類(例えば、水酸化アルミニウム)ならびに/または防腐剤を含み得る。さらに他の実施形態内では、本発明の組成物は、凍結乾燥物として処方され得る。本発明の組成物は、任意の適切な様式の投与(例えば、局所的投与、経口投与、経鼻投与、静脈内投与、頭蓋内投与、腹腔内投与、皮下投与または筋肉内投与)のために所望され得る。
【0054】
薬学的組成物はまた、または代替的に、調節因子に連結し得るかまたはその組成物中に遊離型で存在し得る、1種以上の活性因子(例えば、薬物(例えば、上で示される薬物))を含み得る。
【0055】
本明細書中に記載される組成物は、徐放性処方物(すなわち、投与の後の、調節因子の持続放出を達成するカプセルまたはスポンジのような処方物)の一部として、投与され得る。そのような処方物は、一般的に、周知の技術を使用して調製され得、そして、例えば、経口、直腸もしくは皮下移植によって、または所望の標的部位での移植によって、投与され得る。そのような処方物内での使用のためのキャリアは、生体適合性であり、これはまた、生分解性であり得る;好ましくは、上記処方物は、比較的一定レベルの調節因子の放出を提供する。徐放性処方物内に含められる調節因子の量は、移植の部位、放出の速度および予測される持続時間、ならびに処置もしくは予防されるべき状態の性質に依存する。
【0056】
セレクチン調節因子は、一般的に、治療有効量で薬物学的組成物中に存在する。治療有効量とは、識別可能な患者の利点(例えば、上記のような、過剰のセレクチン媒介性機能(例えば、細胞間接着)に関連する状態の治癒の増大)を生じる、量である。
【0057】
(セレクチン調節因子の使用方法)
一般的に、本明細書中に記載される調節因子および組成物は、セレクチン媒介性機能を増強または阻害するために使用され得る。そのような増強または阻害は、温血動物において、好ましくはヒトのような哺乳動物において、インビトロおよび/またはインビボで達成され得る。ただし、セレクチン発現細胞は、最終的に、セレクチン媒介性機能を増強または阻害する量で、ならびにセレクチン媒介性機能を増強または阻害する時間にわたって、調節因子と接触される。
【0058】
特定の局面内で、本発明は、セレクチン媒介性機能(例えば、細胞間接着)に関連する状態の進行を阻害するための方法を提供する。一般的に、そのような方法は、そのような状態を予防、遅延または処置するために使用され得る。換言すると、本明細書中に提供される治療方法は、疾患を処置するために使用され得るか、あるいは疾患に罹患していない患者またはセレクチン媒介性機能に関連しない疾患を罹患する患者において、そのような疾患の発症を予防または遅延するために使用され得る。例えば、上記治療方法は、細胞増殖の阻止、細胞の殺傷、細胞(単数または複数)増殖の防止、細胞(単数または複数)増殖の発生の遅延、あるいは器官の生存の長期化を含み得る、用途を有する。
【0059】
種々の状態は、セレクチン媒介性機能に関連する。そのような状態としては、例えば、組織移植片拒絶、血小板媒介性疾患(例えば、アテロームおよび凝固)、機能亢進冠循環(hyperactive coronary circulation)、急性白血病媒介性肺損傷(例えば、成人呼吸促進症候群(ARDS))、クローン病、炎症性疾患(例えば、炎症性腸疾患)、自己免疫疾患(MS、重症筋無力症)、感染、癌(および転移)、血栓症、創傷(および創傷関連敗血症)、熱傷、脊髄損傷、消化管粘膜障害(胃炎、潰瘍)、骨粗しょう症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、ぜん息、アレルギー、乾癬、敗血症性ショック、外傷性ショック、脳卒中、腎炎、アトピー性皮膚炎、凍傷損傷、成人型呼吸困難症候群(adult dyspnoea syndrome)、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、虚血性エピソードの後の糖尿病および再還流が挙げられる。セレクチン調節因子はまた、回復を増強するために、心臓手術の前に患者に投与され得る。他の用途としては、疼痛処理のための用途、および、例えば、癌に関連する所望されない新脈管形成に対する用途が挙げられる。
【0060】
本発明のセレクチン調節因子は、処置(または予防)されるべき疾患に適切な様式で投与され得る。適切な投薬量ならびに適切な持続期間および投薬頻度は、患者の状態、患者の疾患のタイプおよび重篤度、ならびに投与方法のような因子によって決定され得る。一般的に、適切な投薬量および処置レジメンは、治療的および/または予防的利点を提供するのに十分な量で、調節因子(単数または複数)を提供する。本発明の特に好ましい実施形態内で、セレクチン調節因子は、単回一日量または複数回一日量のレジメンで、0.001〜100mg/kg体重の範囲の投薬量で投与され得る。適切な投薬量は、一般的に、実験モデルおよび/または臨床試験を使用して決定され得る。一般的に、有効な治療を提供するのに十分な最小の投薬量の使用が好ましい。患者は、一般的に、処置または予防されるべき状態に適切なアッセイ(これは、当業者に公知である)を使用して治療有効性についてモニタリングされ得る。
【0061】
セレクチン調節因子はまた、セレクチンを発現する細胞に対して物質を標的化するために使用され得る。そのような物質としては、治療因子および診断因子が挙げられる。治療因子は、障害を処置もしくは予防するため、または患者の生理学を制御するための有用性を提供するような、分子、ウイルス、ウイルス構成要素、細胞、細胞構成要素、または、標的細胞の特性を調節するために実証され得る任意の他の物質であり得る。治療因子はまた、インビボで生物活性を有する因子を生成するプロドラッグであり得る。治療因子であり得る分子は、例えば、ポリペプチド類、アミノ酸類、核酸類、ポリヌクレオチド類、ステロイド類、多糖類、または無機化合物類であり得る。そのような分子は、任意の種々の方法で(酵素として、酵素インヒビターとして、ホルモンとして、レセプターとして、アンチセンスオリゴヌクレオチドとして、触媒的ポリヌクレオチドとして、抗ウイルス因子として、抗腫瘍因子として、抗細菌因子として、免疫調節因子として、および細胞毒性因子(例えば、ヨウ素、臭素、鉛、パラジウムまたは銅のような放射性核種)として)、機能し得る。診断因子としては、金属および放射活性因子(例えば、ガリウム含有化合物、テクネチウム含有化合物、インジウム含有化合物、ストロンチウム含有化合物、ヨウ素含有化合物、バリウム含有化合物、臭素含有化合物およびリン含有化合物)のような画像化剤(imaging agent)、造影剤(contrast agent)、染料(例えば、蛍光染料および発色団)ならびに比色反応もしくは蛍光反応を触媒する酵素が挙げられる。一般的に、治療因子および診断因子は、上記の技術のような種々の技術を使用して、セレクチン調節因子に結合され得る。標的化の目的のために、セレクチン調節因子は、上記のように患者に投与され得る。セレクチンは、新脈管形成の間の新たな毛細血管の形成に関与する内皮細胞に対する走化性分子であるので、セレクチン調節因子は、腫瘍の脈管構造を殺傷するための治療因子を標的化するために使用され得る。セレクチン調節因子はまた、遺伝子標的化に使用され得る。
【0062】
セレクチン調節因子はまた、例えば、種々の周知の細胞培養物および細胞分離方法内で、インビトロで使用され得る。例えば、調節因子は、培養物中のスクリーニング、アッセイおよび増殖のためのセレクチン発現細胞を固定化する際に使用するための、組織培養プレートまたは他の細胞培養支持体の内側表面に連結され得る。そのような連結は、任意の適切な技術(例えば、上記の方法、および他の標準的な方法)により実施され得る。調節因子はまた、例えば、細胞同定およびインビトロでの細胞選別を容易にし、セレクチン(または異なるセレクチンレベル)を発現する細胞の選択を可能にするために使用され得る。好ましくは、そのような方法で使用するための調節因子(単数または複数)は、検出可能なマーカーに連結される。適切なマーカーは、当該分野で周知であり、これらとしては、放射性核種、発光群、蛍光群、酵素、染料、免疫グロブリン定常ドメインおよびビオチンが挙げられる。1つの好ましい実施形態内で、蛍光マーカー(例えば、フルオレセイン)に連結する調節因子は、細胞と接触し、これは次いで、蛍光細胞分析分離装置に(FACS)によって分析される。
【0063】
本発明の全ての化合物またはそれらの有用な化合物には、それらの生理的に受容可能な塩が含まれる。
【0064】
以下の実施例は、限定ではなく、例として提供されている。
【実施例】
【0065】
本発明で使用される糖模倣物のいくつかの合成は、以下の参考文献で説明されている:Helvetica Chemica Acta Vol.83,pp.2893−2907(2000)およびAngew.Chem.Int.Ed.Vol.40,No.19,pp.3644−3647(2001)。
【0066】
(実施例1)
(代表的なBASAの調製(図2))
(39の合成)
(スズキカップリング)
4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−安息香酸(0.004mol、1当量)およびKOAc(0.012mol、3当量)をTHF(25ml)に入れ、スラリーを作製する。次いで、その溶液に、撹拌しつつ、PdCl2(dppf)(0.00012mol、3mol%)およびp−ブロモ−ニトロベンゼン(0.005mol、1.2当量)を加え、この溶液を、80℃まで穏やかに加熱する。6時間後、その反応は、TLC(20:1のCH2Cl2/CH3OH)により、完結している。その反応混合物を乾燥状態まで蒸発させ、CH2Cl2(30ml)に溶解し、そして蒸留水および飽和NaHCO3で洗浄する。得られたビフェニル化合物を、次の工程に直接持ち込む。
【0067】
(カルボジイミドカップリング)
4’−ニトロ−ビフェニル−4−カルボン酸(0.004mol、1当量)、ジメチルアミノピリジン(1結晶、触媒)およびEDCl(0.0041mol、1.05当量)をDMF(またはTHF、20ml)に溶解し、そして室温で、10分間反応させる。撹拌しながら、その反応混合物に、8−アミノ−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸を加え、室温で、窒素下にて、48時間にわたって、この反応を進行させる。次いで、この反応混合物を乾燥状態まで蒸発させ、そして逆相クロマトグラフィー(C18カラム、80/20のCH3CN/H2O−1%TFA〜50/50のCH3CN/H2O)で精製する。
【0068】
(水素化)
8−[(4’−ニトロ−ビフェニル−4−カルボニル)−アミノ]−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(1当量)および炭素上10%Pd(10mol%)を、EtOAc(またはCH3OH)に入れる。その溶液を脱気し、そして反応容器内にて、H2雰囲気を発生させる。H2の取り込みが終わりTLCにより出発物質の消失が示されるまで(約12時間)、この反応を進行させる。セライト床で濾過することにより、パラジウム沈殿物を除去し、その濾液を乾燥状態まで蒸発させて、化合物39を得る。
【0069】
(実施例2)
(代表的なBASAの調製(図3))
(22の合成)
(酸塩化物カップリング)
8−アミノ−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(0.004mol、1当量)およびジイソプロピルエチルアミン(6当量)をDMF(20ml)に入れ、そして0℃まで冷却する。塩化3−ニトロ−4−メチルベンゾイル(0.005mol、1.2当量)をDMFに溶解し、そして10分間にわたって、この冷却溶液に滴下する。0℃で、3時間にわたって、この反応を進行させる。その反応混合物を0.1M HCl(25ml)で洗浄し、凍結し、そして乾燥状態まで蒸発させる。得られたシロップを、精製することなく、次の工程で使用する。
【0070】
(水素化)
8−(4−メチル−3−ニトロ−ベンゾイルアミノ)−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(1当量)および炭素上10%Pd(10mol%)を、CH3OHに入れる。その溶液を脱気し、そして反応容器内にて、H2雰囲気を発生させる。H2の取り込みが終わりTLCにより出発物質の消失が示されるまで(約12時間)、この反応を進行させる。セライト床で濾過することにより、パラジウム沈殿物を除去し、その濾液を乾燥状態まで蒸発させて、還元化合物である8−(3−アミノ−4−メチル−ベンゾイルアミノ)−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸を得る。
【0071】
(酸塩化物カップリング)
8−(3−アミノ−4−メチル−ベンゾイルアミノ)−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(0.004mol、1当量)およびジイソプロピルエチルアミン(6当量)をDMF(15ml)に入れ、そして0℃まで冷却する。塩化3−ニトロ−ベンゾイル(0.005mol、1.2当量)をDMF(5ml)に溶解し、そして10分間にわたって、この冷却溶液に滴下する。0℃で、3時間にわたって、この反応を進行させる。その反応混合物を0.1M HCl(25ml)で洗浄し、凍結し、そして乾燥状態まで蒸発させる。この化合物を逆相クロマトグラフィー(C18カラム、80/20のCH3CN/H2O−1%TFA〜50/50のCH3CN/H2O)で精製する。
【0072】
(水素化)
8−(3−(3−ニトロ−ベンズアミド)−4−メチル−ベンゾイルアミノ)−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(1当量)をMeODに溶解し、そして炭素上10%Pd(10mole%)を加える。次いで、その反応混合物を、水素雰囲気下にて、16振盪する。セライト床で濾過することにより、このパラジウムを除去し、その濾液を乾燥状態まで蒸発させて、化合物22を得る。
【0073】
(実施例3)
(糖模倣物の合成(図4))
(中間体Cの形成)
化合物A(5.00g、12.74mmol)および化合物B(4.50g、19.11mmol)およびNIS(3.58g、15.93mmol)をCH2Cl2(50ml)に溶解し、そして0℃まで冷却する。撹拌しながら、トリフルオロメタンスルホン酸の溶液(CH2Cl2中で0.15M)を滴下する。その溶液が橙色から暗褐色に色変化した後、TMS−OHの添加を中止する。次いで、この溶液を飽和NaHCO3(30ml)で洗浄し、有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。得られたシロップをシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/エーテル、1:1)で精製し、そして次の工程で使用する。
【0074】
先に得られた化合物をTHF(40ml)に溶解し、そしてPd(10%)/C(質量で1/10)を加える。その溶液を脱気し、そしてH2雰囲気を発生させる。TLCにより出発物質の消失が示されるまで、室温で、この反応を進行させる。この溶液をセライト床で濾過し、その濾液を真空中で濃縮して、4および6OH化合物を得る。次いで、この化合物をピリジン(25ml)に溶解し、そして0℃まで冷却する。Ph3CCl(1.2当量)を滴下し、室温で、6時間にわたって、この反応を進行させる。次いで、酢酸エチル(50ml)を加え、その溶液を、0.1N HCl(2×50ml)、飽和NaHCO3(1×50ml)および飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーにより、中間体Cを得る。
【0075】
(化合物の形成)
化合物C(800mg、1.41mmol)およびE4NBr(353mg、1.69mmol)をDMF/CH2Cl2(10ml、1:1、モレキュラーシーブを含有する)に溶解し、そして0℃まで冷却する。化合物D(808mg、1.69mmol)の別のCH2Cl2溶液に、0℃で、Br2(298mg、1.86mmol、CH2Cl2中)を滴下する。30分後、Br2/D溶液をシクロヘキセン(0.2ml)でクエンチし、直ちに(10分以内)、C溶液に加える。この混合物を、室温で、65時間反応させる。酢酸エチル(100ml)を加え、その溶液を濾過し、その濾液を、飽和NaS2O3(2×50ml)および飽和NaCl(2×50ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。次いで、得られたシロップをエーテル(50ml)およびギ酸(10ml)に溶解し、撹拌しながら加える。この反応が完結すると(TLCで確認する)、その溶液を飽和NaHCO3(2×50ml)および飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで、乾燥状態まで蒸発させる。次いで、この化合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0076】
(中間体Fの形成)
この化合物(1g、1.02mmol)をMeOH/ジオキサン(10ml、20:1)に溶解し、そして撹拌しながら、NaOMe(0.10mmol)を加える。50℃で、20時間にわたって、この反応を進行させ、次いで、2滴の酢酸を加える。その溶液を乾燥状態まで蒸発させ、エチルエーテル(25ml)に溶解し、そして飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。最終生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。この生成物(0.980mmol)およびBu2Sn(1.08mmol)をMeOH(15ml)に懸濁し、そして2時間にわたって、還流状態まで加熱する。次いで、得られた透明溶液を乾燥状態まで蒸発させ、ペンタン(10ml)に吸収させ、そして蒸発させて、無色泡状物を得る。この泡状物を1,2−ジメトキシエタン(DME、15ml)に溶解し、化合物E(1.96mmol)およびCsF(1.18mmol)を加え、その反応物を、室温で、2時間撹拌する。2時間後、撹拌しながら、1M KH2PO4(50ml)およびKF(1g)を加え、続いて、酢酸エチル(2×25ml)で抽出する。有機層を10%KF(2×50ml)および飽和NaCl(2×50ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして減圧下にて、乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーによって、化合物Fを得る。
【0077】
(糖模倣物の形成)
化合物FをCH3OH(50ml)に溶解し、そしてPd(10%)/C(質量で1/10)を加える。その溶液を脱気し、そしてH2雰囲気を発生させる。出発物質の消失がTLCで確認されるまで、室温で、この反応を進行させる。この溶液をセライト床で濾過し、その濾液を真空中で濃縮して、この糖模倣物を得る。
【0078】
(実施例4)
(糖模倣物の合成(図5))
(中間体Lの形成)
出発化合物(10mmol)をCH2Cl2(30ml)に溶解し、そしてDMSO(20mmol)を加え、その溶液を−60℃まで冷却する。20の撹拌溶液に、塩化オキサリル(11mmol)をゆっくりと加える。N2雰囲気下にて、30分間にわたって、この反応を進行させる。その反応物を、0.1M HCl、飽和NaHCO3および飽和NaClで洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。得られたシロップをtBuOH(20ml)および2−メチル−2−ブテン(10ml)に入れ、そして撹拌しながら、NaH2PO4(20mmol)を加える。3時間にわたって、この反応を進行させ、次いで、蒸発させ、CH2Cl2に吸収させ、そして0.1 M HCl、飽和NaHCO3および飽和NaClで洗浄する。得られた化合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物Lを得る。
【0079】
(中間体Nの形成)
化合物L(10mmol)をDMF(15ml)に溶解し、そして撹拌しながら、化合物M(10mmol)、HBTU(12mmol)およびEt3N(20mmol)を加える。室温で、24時間にわたって、その反応を進行させる。酢酸エチル(100ml)を加え、その溶液を、0.1 M HCl(1×100ml)、飽和NaHCO3(1×100ml)および飽和NaCl(1×100ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーにより、化合物Nを得る。
【0080】
(中間体Oの形成)
化合物N(10mmol)をMeOH(35ml)に溶解し、そして撹拌しながら、NaOMe(1mmol)を加える。室温で、20時間にわたって、この反応を進行させる。その溶液を乾燥状態まで蒸発させ、エチルエーテル(50ml)に溶解し、そして飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。最終生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。この生成物(0.980mmol)およびBu2Sn(1.08mmol)をMeOH(15ml)に懸濁し、そして2時間にわたって、還流状態まで加熱する。次いで、得られた透明溶液を乾燥状態まで蒸発させ、ペンタン(10ml)に吸収させ、そして蒸発させて、無色泡状物を得る。この泡状物を1,2−ジメトキシエタン(DME、15ml)に溶解し、化合物E(1.96mmol)およびCsF(1.18mmol)を加え、その反応物を、室温で、2時間撹拌する。2時間後、撹拌しながら、1M KH2PO4(50ml)およびKF(1g)を加え、続いて、酢酸エチル(2×25ml)で抽出する。有機層を10%KF(2×50ml)および飽和NaCl(2×50ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして減圧下にて、乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーによって、化合物Oを得る。
【0081】
(糖模倣物の形成)
化合物O(9mmol)をMeOH(200ml)に溶解し、そしてPd(10%)/C(3g)を加える。その溶液を脱気し、そしてH2雰囲気を発生させる。出発物質の消失がTLCで確認されるまで、室温で、この反応を進行させる。この溶液をセライト床で濾過し、その濾液を真空中で濃縮して、この糖模倣物を得る。
【0082】
(実施例5)
(糖模倣物前駆体の合成(図6A))
(中間体Hの形成)
化合物G(15.0g、66.9mmol)およびBu2Sn(20.0g、80.3mmol)をMeOH(450ml)に懸濁し、そして2時間にわたって、還流状態まで加熱する。次いで、得られた透明溶液を乾燥状態まで蒸発させ、ペンタンに吸収させ、そして再度蒸発させて、無色泡状物を得る。この泡状物を1,2−ジメトキシエタン(DME、120ml)に溶解し、E(39.6g、100.3mmol)およびCsF(12.2g、80.3mmol)を加え、その反応物を、室温で、2時間撹拌する。2時間後、撹拌しながら、1M KH2PO4(700ml)およびKF(25g)を加え、続いて、酢酸エチル(3×250ml)で抽出する。有機層を10%KF(2×250ml)および飽和NaCl(2×250ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして減圧下にて、乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーによって、この化合物(19.3g、41.2mmol)を得る。この化合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、直ちに、結晶DMAPと共に、ピリジン(210ml)に溶解する。その溶液を0℃まで冷却し、そして撹拌しながら、塩化ベンゾイル(52.1g、370.7mmol)を滴下する。この溶液を室温までゆっくりと温め、室温で、20分間にわたって、この反応を進行させる。この溶液を乾燥状態まで蒸発させ、酢酸エチル(500ml)に溶解し、そして0.1M HCl(2×250ml)、飽和NaHCO3(2×250ml)および飽和NaCl(1×250ml)溶液で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーにより、Hが得られる。
【0083】
(中間体Iの形成)
中間体H(10.0g、12.82mmol)および中間体B(6.05g、25.64mmol)をCH2Cl2(75ml)に溶解し、そして撹拌しながら、−10℃で、0.15M CF3SO3H(CH2Cl2中)を滴下する。その橙色溶液が褐色に変わると、添加を停止する。酢酸エチル(500ml)を加え、この溶液を、飽和NaHCO3(4×250ml)および飽和NaCl(250ml)で洗浄する。次いで、有機層をNa2SO4で乾燥し、そして減圧下にて蒸発させる。次いで、この化合物(7.96g、9.19mmol)をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、次いで、DMF(55ml)に溶解する。次いで、TBDMS−Cl(1.52g、10.1mmol)およびイミダゾール(0.94g、13.8mmol)を加え、室温で、1時間にわたって、この反応を進行させる。酢酸エチル(250ml)を加え、その溶液を、飽和NaHCO3(5×250ml)および飽和NaCl(1×250ml)で洗浄する。次いで、有機層をNa2SO4で乾燥し、そしてシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、中間体Iを得る。
【0084】
(中間体Jの形成)
化合物I(7.71g、7.87mmol)およびEt4NBr(2.00g、9.45mmol)をDMF/CH2Cl2(60ml、1:1、モレキュラーシーブを含有する−12g)に溶解し、そして0℃まで冷却する。化合物D(4.5g、9.45mmol)の別のCH2Cl2溶液に、0℃で、CH2Cl2(11ml)中のBr2(1.90g、11.8mmol)を滴下する。30分後、Br2/D溶液をシクロヘキセン(2.5ml)でクエンチし、直ちに(10分以内)、I溶液に加える。この混合物を、室温で、65時間反応させる。CH2Cl2(250ml)を加え、その溶液を濾過し、その濾液を、飽和NaHCO3(2×50ml)、0.5M HCl(2×250ml)および飽和NaCl(2×250ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。この混合物を、室温で、MeCN(85ml)に溶解し、そしてEt3N(0.21ml)およびH2SiF6(1.3ml、35%)のMeCN(17ml)溶液を加え、そして2時間撹拌する。CH2Cl2(250ml)を加え、この溶液を、飽和NaHCO3(3×250ml)および飽和NaCl(1×250ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで、乾燥状態まで蒸発させる。そしてJをシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0085】
(中間体Kの形成)
中間体J(12.5g、9.75mmol)をピリジン(80ml)に溶解し、そして撹拌しながら、5分間にわたって、塩化メタンスルホニル(3.35g、29.2mmol)を滴下する。30分間にわたって、この反応を進行させ、次いで、酢酸エチル(500ml)を加える。その溶液を1N HCl(250ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして蒸発させる。得られたシロップ(12.95g、9.52mmol)をDMF(40ml)に溶解し、そしてNaN3(4.64g、74.4mmol)を加える。アルゴン雰囲気下にて、65℃で、35時間にわたって、この反応を進行させる。この溶液を酢酸エチル(500ml)で希釈し、そしてH2O(300ml)および飽和NaCl(150ml)で洗浄する。有機層をNa2SO3で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。この化合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。次いで、精製した生成物(12.2g、9.33mmol)をMeOH/H2O(200ml/20ml)溶液に懸濁し、そしてLiOH−H2O(5.1g、121.3mmol)を加える。65℃で、20時間にわたって、この反応を進行させる。エチルエーテル(500ml)を加え、この溶液を飽和NaCl(200ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。化合物Kをシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0086】
(糖模倣物前駆体の形成)
化合物K(8.45g、9.33mmol)をジオキサン/H2O(250ml/50ml)に溶解し、そしてPd(10%)/C(3.4g)を加える。その溶液を脱気し、そしてH2雰囲気を発生させる。TLCにより出発物質の消失が示されるまで、室温で、この反応を進行させる。この溶液をセライト床で濾過し、その濾液を真空中で濃縮して、糖模倣物前駆体を得る。
【0087】
(実施例6)
(糖模倣物の合成(図6B))
この実施例で使用する糖模倣物前駆体は、実施例5(図6A)で記述されている。
【0088】
(糖模倣物前駆体と酸塩化物との反応)
この糖模倣物前駆体(20mg、0.033mmol)をTHF/H2O(2ml、1:1)溶液(これは、1N NaOH(pHを8と10の間に調節した)を含有する)に溶解し、そして0℃まで冷却する。次いで、撹拌しながら、シクロヘキシル−カルボニルクロライド(0.049mmol)を滴下する。0℃で、3時間にわたって、この反応を継続する。その溶液を氷でクエンチし、この溶液を乾燥状態まで蒸発させる。この糖模倣物を逆相クロマトグラフィーで精製する。
【0089】
(糖模倣物前駆体とイソシアン酸エステルの反応)
この糖模倣物前駆体(30mg、0.049mmol)を0.5N NaOH水溶液(1ml)に溶解し、そして0℃まで冷却する。次いで、撹拌しながら、イソシアン酸エチル(1.2当量)を滴下する。室温で、3時間にわたって、この反応を継続する。その溶液を氷でクエンチし、この溶液を乾燥状態まで蒸発させる。この糖模倣物を逆相クロマトグラフィーで精製する。
【0090】
(糖模倣物前駆体とクロロ−オルトギ酸エステルとの反応)
この糖模倣物前駆体(20mg、0.033mmol)をTHF/H2O(2ml、1:1)溶液(これは、1N NaOH(pHを8と10の間に調節した)を含有する)に溶解し、そして0℃まで冷却する。次いで、撹拌しながら、クロロ−オルトギ酸ベンジル(0.049mmol)を滴下する。0℃で、3時間にわたって、この反応を継続する。その溶液を氷でクエンチし、この溶液を乾燥状態まで蒸発させる。この糖模倣物を逆相クロマトグラフィーで精製する。
【0091】
(糖模倣物前駆体と塩化スルホニルとの反応)
この糖模倣物前駆体(20mg、0.033mmol)をNaHCO3/トルエン飽和水溶液(2ml、1:1)に溶解し、そして0℃まで冷却する。次いで、撹拌しながら、塩化p−トルエンスルホニル(0.049mmol)を滴下する。0℃で、3時間にわたって、この反応を継続する。その溶液を氷でクエンチし、この溶液を乾燥状態まで蒸発させる。この糖模倣物を逆相クロマトグラフィーで精製する。
【0092】
(実施例7)
(糖模倣物−BASAの合成(図7Aおよび7B))
(化合物4の合成)
市販の2−デオキシグルコース(15g)から出発して、文献(Bioorg.Med.Chem.Lett.11,2001,923−925;Carbohydr.Res.197,1990,75)で記載された手順に従って、化合物4を合成する。
【0093】
(化合物6の合成)
文献(Carbohydr.Res.,193,1989,283−287)で記載されているようにして、市販の5(25g)から、化合物6を合成する。
【0094】
(化合物9の合成)
化合物4(5g)をジクロロメタン(100ml)に溶解し、そしてN−ヨードスクシンイミド(NIS、10g)および化合物6(7.5g)を加える。その混合物を、モレキュラーシーブ(4A)と共に、室温で、30分間撹拌する。この反応混合物を0〜5℃まで冷却し、そして1時間にわたって、ジクロロメタン中のトリフルオロメタンスルホン酸(0.05M)を滴下し、その反応混合物を、0〜5℃で、2時間撹拌し続ける。モレキュラーシーブをセライト床で濾過し、そして有機層を、水、炭酸水素ナトリウム飽和溶液および水で抽出する。その粗反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィーにかけると、収率75%で、化合物7が得られる。
【0095】
化合物7(7g)を、80℃で、2時間にわたって、80%酢酸水溶液で処理する。蒸発により溶媒を除去して、収率92%で、8を得る。
【0096】
化合物8(6g)をDMF(60ml)および1H−イミダゾールに溶解し、塩化第三級ブチル−トリメチル−シリル(4ml)を加える。その反応混合物を、室温で、1時間撹拌する。この反応混合物を酢酸エチルで希釈し、そして水および炭酸水素ナトリウム飽和溶液で洗浄する。有機層を乾燥状態まで蒸発させて、収率90%で、9を得る。
【0097】
(化合物13の合成)
文献(Carbohydr.Res.201,1990,15−30)で記載された手順に従って、化合物13(12g)を調製する。
【0098】
(化合物16の合成)
化合物13(4g)および化合物9(4g)のジクロロメタン−DMF溶液に、モレキュラーシーブ(4A)および臭化テトラブチルアンモニウムを加え、その混合物を、室温(RT)で、1時間撹拌する。室温で、撹拌しながら、臭素(0.2g)のジクロロメタン(10ml)溶液を滴下する。室温で、2時間にわたって、撹拌を継続する。その反応混合物をセライト床で濾過し、そして有機層を、水および炭酸水素ナトリウム飽和溶液で洗浄する。蒸発により溶媒を除去し、そのシロップ残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにかけて、収率70%で、14を得る。
【0099】
化合物14を、2時間にわたって、0.01M NaOMe/MeOHで処理して、収率96%で、15を得る。
【0100】
化合物15(4g)を、MeOH中で、還流条件下にて、4時間にわたって、ジブチルスズオキシドで処理する。蒸発により溶媒を除去して、粗製物16を得る。
【0101】
(化合物20の合成)
文献(J.Med.Chem.42、1999、4909−4913)で記載されているようにして、市販のフェニル乳酸から出発して、化合物17を合成する。
【0102】
(化合物23の合成)
化合物16(7gの粗製物)および化合物20(3g)をジメトキシエタン(DME)に溶解し、そしてCsF(1g)を加える。得られた混合物を、室温で、8時間撹拌する。その反応混合物に水を加え、そして酢酸エチルで抽出する。有機層を乾燥状態まで蒸発させ、その残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、全収率64%で、21を得る。
【0103】
化合物21(3.5g)のアセトニトリル(100ml)懸濁液に、a,a−ジメトキシトルエン(0.5ml)およびp−トルエン−スルホン酸(0.2g)を加える。その反応混合物を、室温で、4時間撹拌する。トリエチルアミン(0.4ml)を加え、蒸発により溶媒を除去する。その残渣混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率88%で、化合物22を得る。
【0104】
O−アシル化化合物一般を合成するために、化合物22(各1g)をピリジン(15ml)に溶解し、そして塩化アシル(芳香族および複素環酸塩化物)を加える。その反応混合物を、室温で、2h時間撹拌し、そして蒸発により溶媒を除去する。その残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率80〜92%で、対応するアシル化誘導体23を得る。
【0105】
(化合物24の合成)
化合物23(1g)をアセトニトリル(25ml)に溶解し、その溶液に、トリエチルアミン(0.1ml)を加える。アセトニトリル(5ml)中のH2SiF6(0.5ml)を加え、その反応混合物を、室温で、2時間撹拌する。この反応混合物をジクロロメタンで希釈し、そして水、炭酸水素ナトリウム飽和溶液および水で連続的に洗浄する。有機層を乾燥状態まで蒸発させ、そしてシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率75%で、化合物24を得る。
【0106】
(化合物25の合成)
化合物24(0.8g)の乾燥ピリジン(10ml)溶液に、室温で、撹拌しながら、塩化メタンスルホニルの溶液(0.3ml)を加える。30分後、その混合物をEtOAcで希釈し、そして水、炭酸水素ナトリウム飽和溶液および水で連続的に洗浄する。有機層を乾燥状態まで蒸発させることより除去し、その残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率95%で、25を得る。
【0107】
(化合物26の合成)
化合物24(0.7g)のDMF(5ml)溶液に、アジ化ナトリウム(0.3g)を加える。その混合物を、65℃で、アルゴン下にて加熱し、そして28時間撹拌する。室温まで冷却した後、EtOAc(44ml)を加え、そして水で洗浄かる。有機層を乾燥状態まで蒸発させ、そしてシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率96%で、26を得る。
【0108】
(化合物27の合成)
化合物26(0.5g)のジオキサン−水(5:1、12ml)溶液に、10%Pd−C(0.2g)を加え、その反応混合物を、水素雰囲気下にて、22時間激しく攪拌する。この反応混合物をセライト床で濾過し、そして蒸発により溶媒を除去する。その残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率77%で、27を得る。
【0109】
(28の合成)
化合物27(50mg)のTHF/水(1:1、5ml)溶液に、THF(0.5ml)中の市販の酸塩化物(0.1g)を加える。1N NaOHを加えることにより、その反応混合物のpHを8〜10に調節し、この反応の初めから終わりまで維持する。もし必要なら、1〜4時間後、追加酸塩化物を加え、全体で2〜42時間後、その混合物を部分的に蒸発させて、THFを除去する。蒸発により水を除去し、この反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率77〜88%で、N−アシル化化合物を得る。
【0110】
(化合物30の合成)
化合物28を、まず、エチレンジアミンと反応させ、得られた誘導体29を、シリカゲルクロマトグラフィー後、収率80%で得る。化合物29を、適当なスペーサ(例えば、スクアリン酸、イソチオシアネート、イソシアネート、ヒスチジン、グルタル酸ジスクシンイミジル)を使って、pH9で、BASA化合物化合物と反応させて、BASA(化合物30)に連結された対応する糖模倣物を得る。
【0111】
(実施例8)
(糖模倣物の合成(図8Aおよび8B))
(中間体Lの形成)
化合物K(1g)(これは、実施例5に従って、調製した)をアセトニトリルに溶解し、そしてp−トルエン−スルホン酸の存在下にて、室温で、4時間にわたって、a,a−ジメトキシトルエンに溶解する。その反応混合物をトリエチルアミンで中和し、そして乾燥状態まで濃縮する。次いで、この反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、純粋な化合物Lを得る。
【0112】
(中間体Mの形成)
化合物L(1g)を、ピリジン中にて、16時間にわたって、ナフトールクロライドで処理する。その粗反応混合物をジクロロメタンで希釈し、そして有機層を、冷0.1N HCl、炭酸水素ナトリウム冷飽和溶液および冷ブライン溶液で連続的に洗浄する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして乾燥状態まで濃縮する。得られた生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率80%で、化合物Mを得る。
【0113】
(化合物Nの形成)
化合物M(1g)のジオキサン−水溶液に、炭素上10%パラジウムを加えもその懸濁液を、室温で、水素の正圧下にて、48時間振盪する。触媒をセライト床で濾過し、その溶液を乾燥状態まで濃縮して、化合物Nを得る。
【0114】
(糖模倣物の合成(図8B))
実施例6で記述した手順を使用して、糖模倣物前駆体Nを、酸塩化物、イソシア酸エステル、クロロ−オルトギ酸エステルまたは塩化スルホニルと反応させる。
【0115】
(実施例9)
(糖模倣物の合成(図9Aおよび9B))
(中間体Oの形成)
化合物L(1g)(これは、実施例8に従って、調製した)を、中間体M(実施例8)について記述した様式と正確に同じ様式で、塩化4−フェニル−ベンゾイルで処理し、そしてシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0116】
(化合物Pの形成)
化合物Oを、化合物N(実施例8)について記述した様式と正確に同じ様式で、炭素上10%パラジウムで水素化して、化合物Pを得る。
【0117】
(糖模倣物の合成(図9B))
実施例6で記述した手順を使用して、糖模倣物前駆体Pを、酸塩化物、イソシア酸エステル、クロロ−オルトギ酸エステルまたは塩化スルホニルと反応させる。
【0118】
(実施例10)
(糖模倣物−BASAの合成(図10))
(BASAとスクアリン酸ジエチルとの間の縮合)
実施例1のBASA(10mg)を、リン酸緩衝液中にて、pH7で、スクアリン酸ジエチル(5mg)と反応させ、そして分取hplcで精製して、付加物Aを得る。
【0119】
(糖模倣物Nの合成)
実施例8で記述したようにして、糖模倣物Nを合成する。
【0120】
(糖模倣物Nと中間体Aとの間の縮合)
中間体A(15mg)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5、1.5ml)溶液に、糖模倣物N(10mg)を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、この反応混合物をsephadex G−25のカラムに適用し、このカラムを5mM炭酸水素溶液で溶出する。生成物に対応する画分を集め、そして凍結乾燥して、糖模倣物−BASA抱合体(12mg)を得る。
【0121】
(実施例11)
(糖模倣物−BASAの合成(図11))
(BASAとスクアリン酸ジエチルとの間の縮合)
実施例1のBASA(10mg)を、リン酸緩衝液中にて、pH7で、スクアリン酸ジエチル(5mg)と反応させ、そして分取hplcで精製して、付加物Aを得る。
【0122】
(糖模倣物Pの合成)
実施例9で記述したようにして、糖模倣物Pを合成する。
【0123】
(糖模倣物Pと中間体Aとの間の縮合)
中間体A(15mg)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5、1.5ml)溶液に、糖模倣物P(10mg)を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、この反応混合物をsephadex G−25のカラムに適用し、このカラムを5mM炭酸水素溶液で溶出する。生成物に対応する画分を集め、そして凍結乾燥して、糖模倣物−BASA抱合体(11mg)を得る。
【0124】
(実施例12)
(BASAおよびBASA−スクアリン酸エステルの合成(図12))
(BASAの合成)
市販の8−アミノナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(xxxxxi)の水溶液(pH11)に、撹拌しながら、室温で、ヨウ化3−ニトロ−ベンジルを加える。その溶液のpHを1に調節し、溶媒を蒸発させた後、エタノールから、生成物xxxxiiiを沈殿させて除く。
【0125】
化合物xxxxiiiを白金触媒水素化すると、収率96%で、BASA化合物xxxxivが得られる。
【0126】
(BASA−スクアリン酸エステルの合成)
化合物xxxxivのリン酸緩衝液(pH7.1)溶液に、市販のスクアリン酸ジエチルを加え、その反応混合物を、室温で、4時間撹拌する。次いで、それを逆相hplcで精製して、BASA−スクアリン酸エステル化合物xxxxvを得る。
【0127】
(実施例13)
(糖模倣物−BASAの合成(図13))
(BASAとスクアリン酸ジエチルとの間の縮合)
実施例12のBASA(10mg)を、リン酸緩衝液中にて、pH7で、スクアリン酸ジエチル(5mg)と反応させ、そして分取hplcで精製して、付加物Bを得る。
【0128】
(糖模倣物Nの合成)
実施例8で記述したようにして、糖模倣物Nを合成する。
【0129】
(糖模倣物Nと中間体Bとの間の縮合)
中間体B(15mg)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5、1.5ml)溶液に、糖模倣物N(10mg)を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、この反応混合物をsephadex G−25のカラムに適用し、このカラムを5mM炭酸水素溶液で溶出する。生成物に対応する画分を集め、そして凍結乾燥して、糖模倣物−BASA抱合体(14mg)を得る。
【0130】
(実施例14)
(糖模倣物−BASAの合成(図14))
(BASAとスクアリン酸ジエチルとの間の縮合)
実施例12のBASA(10mg)を、リン酸緩衝液中にて、pH7で、スクアリン酸ジエチル(5mg)と反応させ、そして分取hplcで精製して、付加物Bを得る。
【0131】
(糖模倣物Pの合成)
実施例9で記述したようにして、糖模倣物Nを合成する。
【0132】
(糖模倣物Pと中間体Bとの間の縮合)
中間体B(15mg)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5、1.5ml)溶液に、糖模倣物P(10mg)を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、この反応混合物をsephadex G−25のカラムに適用し、このカラムを5mM炭酸水素溶液で溶出する。生成物に対応する画分を集め、そして凍結乾燥して、糖模倣物−BASA抱合体(15mg)を得る。
【0133】
(実施例15)
(糖模倣物−BASAの合成(図15Aおよび15B))
(BASA−スクアリン酸エステル(中間体A)の合成)
この反応は、実施例10で記述されているようにして、実行する。
【0134】
(化合物29の合成)
実施例7の化合物28を、70℃で、5時間にわたって、過剰なエチレンジアミンで処理し、次いで、溶媒を蒸発させて除く。粗生成物をsephadex G−25カラムで精製して、化合物29を得る。
【0135】
(化合物29とBASA−スクアリン酸エステルとの間の縮合)
BASA−スクアリン酸エステルの炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液溶液に、pH9.5で、化合物29を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、それをsephadex G−25カラムで精製して、糖模倣物−BASA抱合体を得る。
【0136】
(実施例16)
(糖模倣物−BASAの合成)
(BASA−スクアリン酸エステル(中間体B)の合成)
この反応は、実施例13で記述されているようにして、実行する。
【0137】
(化合物29とBASA−スクアリン酸エステルとの間の縮合)
BASA−スクアリン酸エステルの炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液溶液に、pH9.5で、実施例15の化合物29を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、それをsephadex G−25カラムで精製して、糖模倣物−BASA抱合体を得る。
【0138】
(実施例17)
(糖模倣物−BASAの合成(図16Aおよび16B))
(11および12の合成)
市販のb−アラリンの水溶液に、濃HClを加える。その溶液をエタノールで希釈し、そして撹拌しながら、ベンジルカルボノクロライド(benzylcarbonochloride)のジメトキシエタン溶液を滴下する。この撹拌を24時間継続する。通常のワークアップ後、その反応混合物をhplcで精製して、中間体11を得る。
【0139】
11のDMF溶液に、塩化チオニルを加え、その反応混合物を、室温で、1時間撹拌する。溶媒を蒸発させて除き、そしてhplcで精製して、12を得る。
【0140】
(化合物17の合成)
出発物質13の合成:実施例7で記述し図7Aで描写した様式と類似の様式で、この化合物を合成する。
【0141】
(中間体14の合成)
化合物13を、室温で、4時間にわたって、MeOH中の0.1M NaOMeで処理し、次いで、IR−120(H+)樹脂で中和して、化合物12を得る。
【0142】
(中間体15の合成)
14のアセトニトリル溶液に、ベンズアルデヒドジメチルアセタールおよびp−トルエンスルホン酸を加える。その反応混合物を、室温で、4時間撹拌し、そしてトリエチルアミンで中和する。溶媒を蒸発させて除き、そして粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して、15を得る。
【0143】
(中間体16の合成)
15のピリジン溶液に、2,6−ジメチルアミノピリジンを加え、続いて、12を加える。その反応混合物を、室温で、16時間撹拌し、そして溶媒を蒸発させて除く。粗反応混合物をカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体16を得る。
【0144】
(中間体16の水素化)
中間体16のジオキサン溶液に、10%Pd−Cを加え、その反応混合物を、室温で、24時間激しく振盪する。触媒をセライト床で濾過して除き、その上澄み液を乾燥状態まで濃縮して、化合物17を得る。
【0145】
(糖模倣物−BASAの合成(図16A))
17とBASA−スクアリン酸エステル付加物との間の抱合:BASA−スクアリン酸エステル付加物(実施例10から得た)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5)溶液に、化合物17を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。この反応混合物をsephadex G−25で精製して、糖模倣物−BASA化合物18を得る。
【0146】
(糖模倣物−BASAの合成(図16B))
17とBASA−スクアリン酸エステル付加物との間の抱合:BASA−スクアリン酸エステル付加物(実施例12から得た)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5)溶液に、化合物17を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。この反応混合物をsephadex G−25で精製して、糖模倣物−BASA化合物19を得る。
【0147】
(実施例18)
(E−セレクチンアンタゴニスト活性のアッセイ)
マイクロタイタープレート(プレート1)のウェルを、2時間37℃でインキュベーションすることにより、E−セレクチン/hlgキメラ(GlycoTech Corp.,Rockville,MD)と接触させる。このプレートを5回、50mM TrisHCl、150mM NaCl、2mM CaCl2、pH7.4(Tris−Ca)で洗浄した後、Tris−Ca/Stabilcoat(SurModics,Eden Prairie,MN)(1:1、v/v)中の100μlの1%BSAを、各ウェルに添加し、非特異的結合をブロッキングする。試験化合物を、第2の低結合丸底プレート(プレート2)中で、Tris−Ca(60μl/ウェル)で段階希釈する。Streptavidin−HRP(Sigma,St.Louis,MO)と混合したSLea−PAA−ビオチン(GlycoTech Corp.,Rockville,MD)の前もって形成した複合物を、プレート2の各ウェルに添加する(1μg/mlの60μl/ウェル)。プレート1を、Tris−Caで数回洗浄し、100μl/ウェルをプレート2からプレート1に移す。室温で正確に2時間インキュベーションした後、そのプレートを洗浄し、100μl/ウェルのTMB試薬(KPL labs,Gaithersburg,MD)を各ウェルに添加する。3分間室温でインキュベーションした後、その反応を、100μl/ウェルの1M H3PO4を添加することにより停止し、450nmでの吸光度を、マイクロタイタープレートリーダーにより決定する。
【0148】
(実施例19)
(P−セレクチンアンタゴニスト活性のアッセイ)
新糖タンパク質、シアリルLea−HSA(Isosep AB,Sweden)を、マイクロタイタープレート(プレート1)のウェル上にコーティングし、次いで、そのウェルを、ダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水(DPBS)中に希釈された2%のウシ血清アルブミン(BSA)の添加によりブロッキングする。第2のマイクロタイタープレート(プレート2)において、試験アンタゴニストをDPBS中の1% BSAで段階希釈する。ブロック後、プレート1を洗浄し、プレート2の内容物をプレート1に移す。Pセレクチン/hlg組換えキメラタンパク質(GlycoTech Corp.,Rockville,MD)を、プレート1の各ウェルにさらに添加し、その結合プロセスを、2時間室温にてインキュベートさせる。次いで、プレート1をDPBSで洗浄し、ペルオキシダーゼラベル化ヤギ抗ヒトIg(γ)(KPL Labs,Gaithersburg,MD)を1μg/mlで各ウェルに添加する。室温で1時間のインキュベーション後、そのプレートをDBPSで洗浄し、次いで、TMB基質(KPL Labs)を各ウェルに添加する。5分後、その反応を1M H3PO4の添加により停止させる。次いで、450nmでの吸光度を、マイクロタイタープレートリーダーにより決定する。
【0149】
本明細書中で引用しおよび/または出願データシートで列挙した上記米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および特許以外の刊行物の全ての内容は、それらの全体について、本明細書中で参考として援用されている。
【0150】
前述のことから、本発明の特定の実施態様は、本明細書中にて、例示の目的のために記述されているものの、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更を行い得ることが分かる。従って、本発明は、添付の請求の範囲を除いて、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1A】図1Aは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1B】図1Bは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1C】図1Cは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1D】図1Dは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1E】図1Eは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1F】図1Fは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1G】図1Gは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1H】図1Hは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1I】図1Iは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1J−1】図1J−1は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図1J−2】図1J−2は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図1J−3】図1J−3は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図1J−4】図1J−4は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図1J−5】図1J−5は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図1J−6】図1J−6は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図2】図2は、代表的なBASAの合成を図示しているダイアグラムである。
【図3】図3は、代表的なBASAの合成を図示しているダイアグラムである。
【図4】図4は、糖模倣物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図5】図5は、糖模倣物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図6A】図6Aは、糖模倣物前駆体の合成を図示しているダイアグラムである。
【図6B】図6Bは、図6Aの前駆体を使用することによる数種の糖模倣物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図7A】図7Aは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図7B】図7Bは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図8A】図8Aは、糖模倣物前駆体の合成を図示しているダイアグラムである。
【図8B】図8Bは、図8Aの前駆体を使用することによる数種の糖模倣物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図9A】図9Aは、糖模倣物前駆体の合成を図示しているダイアグラムである。
【図9B】図9Bは、図9Aの前駆体を使用することによる数種の糖模倣物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図10】図10は、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図11】図11は、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図12】図12は、BASA−スクアリン酸エステルの合成を図示しているダイアグラムである。
【図13】図13は、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図14】図14は、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図15A】図15Aは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図15B】図15Bは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図16A】図16Aは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図16B】図16Bは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、概して、セレクチン結合により媒介されるプロセスを調節するための、化合物、組成物および方法に関し、より具体的には、セレクチン調節因子およびそれらの使用に関する。ここで、セレクチン媒介性機能を調節するセレクチン調節因子は、BASA類(Benzyl Amino Sulfonic Acid類、これは、その一部分またはアナログを含む)と呼ばれる化合物のクラスの成員に連結する、特定の糖模倣物を含む。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の記載)
組織が感染または損傷されるとき、炎症性プロセスは、白血球および他の免疫系構成要素を感染または損傷の部位に指向させる。このプロセス内で、白血球は、微生物の飲み込みおよび消化において重要な役割を果たす。従って、感染または損傷された組織に対する白血球のリクルート(recruitment)は、有効な免疫防御を獲得するために重要である。
【0003】
セレクチンは、内皮細胞への白血球の結合を調節するために重要である、構造的に類似な細胞表面レセプターの群である。これらのタンパク質は、1型膜タンパク質であり、アミノ末端レクチンドメイン、上皮増殖因子(EGF)様ドメイン、種々の多数の補体レセプター関連リピート、疎水性ドメインがまたがった領域および細胞質ドメインから構成される。この結合相互作用は、セレクチンのレクチンドメインと種々の炭水化物リガンドとの接触により媒介されると考えられる。
【0004】
3種の公知のセレクチンが存在する:E−セレクチン、P−セレクチンおよびL−セレクチン。E−セレクチンは、活性化内皮細胞(これは、毛細血管の内壁の内側を覆う)の表面上に見出されている。E−セレクチンは、炭水化物シアリル−ルイスX(SLeX)に結合し、これは、特定の白血球(単球および好中球)の表面上の糖タンパク質または糖脂質として存在し、周囲組織が感染または損傷されている領域での毛細血管壁へのこれらの細胞の接着を補助する;そして、E−セレクチンはまた、シアル−ルイスa(SLea)に結合し、これは、多くの腫瘍細胞上に発現される。P−セレクチンは、炎症性内皮および血小板上に発現され、これはまた、SLeXおよびSLeaを認識するが、硫酸化チロシンと相互作用する第2の部位もまた含む。E−セレクチンおよびP−セレクチンの発現は、概して、毛細血管に接着する組織が感染または損傷される場合、増加する。L−セレクチンは、白血球上に発現される。セレクチン媒介性細胞間接着は、セレクチン媒介性機能の一例である。
【0005】
セレクチン媒介性機能の調節因子としては、PSGL−1タンパク質(およびより小さいペプチドフラグメント)、フコイダン、グリチルリジン(および誘導体)、抗セレクチン抗体、硫酸ラクトース誘導体、ならびにヘパリンが挙げられる。これらは全て、物質の、不十分な活性、毒性、特異性の欠如、乏しいADME特性および/またはアベイラビリティに起因して、薬物開発のためには不適切であることが示されている。
【0006】
セレクチン媒介性細胞接着は、感染と競合するために、および異物(foreign material)を破壊するために、必要とされるが、そのような細胞接着が所望されないかまたは過剰である状況が存在し、その結果、修復ではなく組織損傷が生じる。例えば、多くの病理(例えば、自己免疫疾患および炎症性疾患、ショックならびに再還流傷害)は、白血球細胞の異常な接着に関与する。そのような異常な細胞接着はまた、輸送および移植片拒絶に役割を果たし得る。さらに、いくつかの循環する癌細胞は、活性化内皮に結合するために、炎症性機構を利用すると考えられる。そのような場合、セレクチン媒介性細胞間接着の調節が所望され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、当該分野において、セレクチン媒介性機能(例えば、セレクチン依存性細胞接着)のインヒビターを同定する必要性、および過剰なセレクチン活性に関連する状態を阻害するためにそのような化合物を使用する方法を開発する必要性が存在する。本発明は、これらの必要性を満たし、そしてさらに、他の関連の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の簡単な要旨)
手短に述べると、本発明は、セレクチン媒介性プロセスを調節するための、化合物、組成物および方法を提供する。本発明において、セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻害または増強)する化合物は、特定の糖模倣物およびBASA(すなわち、ベンジルアミノスルホン酸またはいずれかの部分もしくはアナログ)を含む。そのような化合物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせられ、薬学的組成物を形成し得る。その化合物または組成物は、セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻害または増強)する方法(例えば、セレクチン媒介性細胞間接着を阻害する方法)に使用され得る。
【0009】
本発明の一局面において、少なくとも以下の2つの構成要素を含む化合物が提供される:(1)特定の糖模倣物(またはその複合糖質)および(2)BASA。BASAの例は、以下に示される。図1A〜1Iに示されるBASA類が好ましい。好ましい糖模倣物の例は、図1Jに示される。本発明の化合物は、セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻害または増強)する化合物を生成するための、特定の糖模倣物およびBASAの組み合わせである。BASAは、図1JのR、R’またはR’’にて結合され得、そしてその位置において置換基と置き換わり得る。セレクチン媒介性機能の一例は、セレクチン媒介性細胞間接着である。本発明の化合物は、その生理学的に受容可能な塩を包含する。薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせた、本発明の化合物は、本発明の組成物を提供する。
【0010】
本発明の好ましい実施態様では、次式を有する化合物、またはそれらの生理的に受容可能な塩が提供されている:
【0011】
【化18】
ここで:
R=Hまたはベンジルアミノスルホン酸である;
R’=ベンジルアミノスルホン酸、
【0012】
【化19】
【0013】
【化20】
【0014】
【化21】
【0015】
【化23】
【0016】
【化24】
【0017】
【化25】
【0018】
【化26】
【0019】
【化27】
【0020】
【化28】
【0021】
【化29】
【0022】
【化30】
である;
R’’=ベンジルアミノスルホン酸、
【0023】
【化31】
【0024】
【化32】
【0025】
【化33】
【0026】
【化34】
【0027】
【化35】
【0028】
【化36】
である;そして
ここで、該化合物は、R、R’またはR’’にてベンジルアミノスルホン酸を有するが、R、R’およびR’’の1個より多くでは、ベンジルアミノスルホン酸を有しない。このような化合物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と混ぜ合わされ得、本発明の好ましい組成物が提供される。本発明の化合物または組成物は、さらに、診断因子または治療因子を含有し得る。本明細書中(図面を含めて)の化学式では、他の線の中間を通る線は、環(または、もし縮合しているなら、複数の環)内の炭素原子の任意の1個の置換基が結合することを意味する。上で示した置換基からR、R’およびR’’に対して特定の置換基を選択することにより形成される個々の化合物は、R、R’およびR’’に対する置換基のいずれの組み合わせも別々に列挙されているごとく、同じ程度まで、全て、本願で開示されている。
【0029】
本発明の他の局面では、セレクチン媒介性機能を調節するために本発明の化合物または組成物を使用する方法が提供されている。このような化合物または組成物は、例えば、セレクチン媒介性機能(例えば、セレクチン媒介細胞間相互作用)を阻止または強化するのに使用できる。化合物または組成物は、そのセレクチン機能を調節するのに有効な量でセレクチンを発現する細胞と接触させる方法において、使用できる。化合物または組成物は、過剰なセレクチン媒介性機能(例えば、過剰なセレクチン媒介細胞間接着)に関連した病気の発症を阻止する必要がある患者に、このような病気の発症を阻止するのに有効な量で投与する方法において、使用できる。このような病気の例には、炎症疾患、自己免疫疾患、感染、癌、ショック、血栓症、創傷、火傷、再灌流傷害、血小板媒介疾患、白血球媒介肺傷害、脊髄損傷、消化管粘膜障害、骨粗鬆症、関節炎、喘息およびアレルギー反応が挙げられる。化合物または組成物は、移植した組織の拒絶を阻止するのに有効な量で、移植した組織の受容者である患者に投与する方法において、使用できる。化合物または組成物は、セレクチン発現細胞を薬剤(例えば、診断因子または治療因子)を標的化するのに有効な量で、このような細胞を該化合物または組成物に結合された該薬剤と接触させることによる方法において、使用できる。
【0030】
本発明のこのような局面および他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照すると、明らかとなる。本明細書中で開示された全ての参考文献の内容は、各々が個々に援用されているごとく、それらの全体として、本明細書中で参考として援用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
上で述べたように、本発明は、セレクチン調節因子、それらの組成物、およびセレクチン媒介性機能を調節する方法を提供する。このような調節因子は、インビトロまたはインビボで、以下でさらに詳細に述べる種々の状況において、セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻止または強化)するのに使用され得る。セレクチン媒介性機能の例には、細胞間接着、および血管形成中の新規毛細管の形成が挙げられる。
【0032】
(セレクチン調節因子)
本明細書中で使用する「セレクチン調節因子」との用語は、セレクチン媒介性機能(例えば、セレクチン媒介細胞間相互作用)を調節(例えば、阻止または強化)する分子であって、以下のBASAの少なくとも1つを含む分子を意味する:
(a)BASA(またはその塩);
(b)セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻止または強化)する性能を保持するBASAの部分;または
(c)セレクチン媒介性機能を調節(例えば、阻止または強化)する性能を有するBASAの類似物、またはBASAの部分の類似物;
ここで、(a)、(b)または(c)の少なくとも1つは、1種またはそれ以上の特定のセレクチン結合糖模倣物(またはそれらの糖抱合体)に結合されている。
【0033】
セレクチン調節因子は、1種またはそれ以上の特定の糖模倣物に結合された上記BASAヨ要素だけからなり得るか、または1種またはそれ以上の追加分子成分を含み得る。本発明のセレクチン調節因子は、驚くべきことに、個々の成分単独または相加よりも著しく強力である。
【0034】
本発明の範囲内では、BASAは、低分子量サルフェート化合物であり、これらは、セレクチンと相互作用する性能を有する。この相互作用は、セレクチン媒介性機能(例えば、細胞間相互作用)を調節するか、またはその機能の調節(例えば、阻止または強化)を助ける。これらは、それらのプロトン化された酸形状として、またはナトリウム塩として存在するが、ナトリウムは、カリウムまたは任意の他の薬学的に受容可能な対イオンで置き換えられ得る。代表的なBASAは、以下の構造を有する:
【0035】
【化37】
セレクチンと相互作用する性能(この相互作用は、本明細書中で記述したセレクチン媒介性機能を調節するか、その調節を助ける)を保持するBASAの部分もまた、本発明のセレクチン調節因子のBASA成分である。このような部分は、一般に、そのBASA構造内に存在している少なくとも1個の芳香環を含む。特定の実施態様内では、部分は、単一芳香環、複数のこのような環、または対称BASA分子の半分を含み得る。
【0036】
上で述べたように、BASAの類似物およびそれらの部分(これらの両方は、上で述べた生物学的特性を有する)もまた、例えば、このセレクチン調節因子BASA成分により、本発明に含まれる。本明細書中で使用する「類似物」とは、
1個またはそれ以上の化学部分の1個またはそれ以上の追加、削除および/または置換があるために、BASAまたはそれらの部分とは異なる化合物であり、その結果、この類似物がセレクチン媒介相互作用を阻止する性能は、減少される。例えば、類似物は、SからPへの置換を含み得る(例えば、サルフェート基をホスフェート基で置換した)。他の可能な変更には、以下が挙げられる:(a)環の大きさの変更(例えば、任意の環は、4個と7個の間の炭素原子を含み得る);(b)縮合環の数の変化(例えば、単一環は、3個までの縮合環を含む多環式部分で置き換えられ得、多環式部分は、単一非縮合環で置き換えられ得、または多環式部分内の縮合環の数が変えられ得る);(c)芳香環内の水素原子または炭素原子に結合した他の部分が種々の部分(例えば、F、Cl、Br、I、OH、O−アルキル(C1〜8)、SH、NO2、CN、NH2、NH−アルキル(C1〜8)、N−(アルキル)2、SO3M(ここで、M=H+、Na+、K+または他の薬学的に受容可能な対イオンである)、CO2M、PO4M2、SO2NH2、アルキル(C1〜8)、アリール(C6〜10)、CO2−アルキル(C1〜8)、−CF2X(ここで、Xは、H、F、アルキル、アリールまたはアシル基であり得る)および炭水化物)のいずれかで置き換えられ得る環置換;および連結部分(すなわち、BASA分子内の環の間に位置している部分)の変更であって、ここで、アルキル、エステル、アミド、無水物およびカーバメート基のような基は、互いに置換され得る。
【0037】
ある種のBASA部分および類似物は、以下の一般構造の1つを含む:
【0038】
【化38】
この構造内では、nは、0または1であり得、X1は、−PO2M、−SO2Mまたは−CF2−(ここで、Mは、薬学的に受容可能な対イオン(例えば、水素、ナトリウムまたはカリウム)である)であり得、R1は、−OH、−Fまたは−CO2R4(ここで、R4は、−Hまたは−(CH2)m−CH3であり得、そしてmは、0〜3の範囲の整数であり得る)であり得、R2は、−H、−PO3M2、−SO3M2、−CH2−PO3M2、−CH2−SO3M2、−CF3または−(CH2)m−C(R6)H−R5またはR9−N(R10)−であり得、R3は、−H、−(CH2)m−C(R6)H−R5またはR9−N(R10)−(ここで、R5およびR6は、別個に、−H、−CO2−R7および−NH−R3から選択され得、R7およびR8は、別個に、水素、およびアルキル基、芳香族部分、アミノ基またはカルボキシ基の1個またはそれ以上を含む部分から選択され得、そしてR9およびR10は、別個に、−H、−(CH2)m−CH3;−CH2−Ar、−CO−Arであって、ここでmは、0〜3の範囲の数であり、そしてArは、芳香族部分(すなわち、少なくとも1個の置換または非置換芳香環を含む任意の部分であって、ここで、該環は、上で示した−CH2−または−CO−基に直接結合されている))であり得る。
【0039】
BASAの他の部分および類似物は、以下の一般構造を含む:
【0040】
【化39】
この構造内では、R1およびR2は、別個に、(i)水素、(ii)アルキル基、芳香族部分、アミノ基またはカルボキシ基の1個またはそれ以上を含む部分、および(iii)−CO−R3(ここで、R3は、上記アルキルまたは芳香族部分を含む)から選択され得、そしてMは、薬学的に受容可能な対イオンである。
【0041】
本明細書中で記述した構造および置換基の種々の組み合わせから誘導された個々の化合物または化合物群は、各化合物または化合物群が個々に示されているごとく、同じ程度まで、全て、本願で開示されている。
【0042】
代表的なBASA部分および類似物は、図1A〜1Iで示された化合物に含まれる。これらの図面で示された化合物に対して、セレクチン調節因子としての機能する性能に悪影響を及ぼすことなく、変更を行い得ることは、当業者に明らかとなる。このような変更には、上記削除、追加および置換が挙げられる。
【0043】
ある種のセレクチン調節因子成分は、例えば、Sigma−Aldrich,Toronto Research Chemicals,Calbiochemなどから市販されている。他のものは、入手できる化合物から、周知の化学合成技術を使用して調製され得る。セレクチン調節因子を合成する一般的な合成方法は、以下の工程を包含する:第一級または第二級アミンまたはアニリンのアミド形成は、ハロゲン化アシルまたはカルボン酸との反応によって、達成できる(図2および3を参照のこと)。N−結合アルキル化合物は、このアミン/アニリンをアルデヒドで還元アミノ化することに続いてシアノホウ化水素ナトリウムでイミン還元することにより、調製される。ビフェニル化合物は、スズキ/ネジキ条件によって、適当な臭化/ヨウ化アリールを適当なボロン酸と反応させることにより、容易に調製される(図2を参照のこと)。ニトロ基の還元は、他の感受性基質の存在下にて、パラジウム触媒水素化により、選択的に達成できる(図2および3を参照のこと)。
【0044】
BASA成分(例えば、上で述べたもの)は、特定のセレクチン結合糖模倣物(またはそれらの糖抱合体)に連結(例えば、スペーサー基でまたはそれなしで、共有結合)されて、本発明のセレクチン調節因子を形成する。好ましい糖模倣物の例は、図1Jで示されている。BASAが図1JのR、R’またはR’’に結合されるとき、特定の位置について列挙された置換基は、典型的には、このBASAで置き換えられる。
【0045】
特定の糖模倣物は、一般に、以下である:
【0046】
【化40】
R、R’およびR’’は、BASAが結合できる位置にある。単一のBASAだけが、特定の糖模倣物に結合される(すなわち、BASAは、所定分子にて、R、R’およびR’’の1個だけで結合される)。BASAがRで結合されないとき、R置換基は、水素(H)である。BASAがR’で結合されないとき、R’置換基は、本明細書中で開示された置換基の1つであるか、他の芳香族置換基(ヘテロ芳香族を含めて)である。BASAがR’’で結合されないとき、R’’置換基は、本明細書中で開示された置換基の1つであるか、他の芳香族置換基である。R’およびR’’では、−OH以外の置換基が好ましい。
【0047】
特定の糖模倣物へのBASAの結合は、セレクチン調節因子を形成する種々の様式で達成できる。BASAまたは糖模倣物が有する(またはそこに負荷される)リンカーには、スペーサー基(例えば、−(CH2)n−または−O(CH2)nであって、ここで、nは、一般に、約1〜20(その全ての整数範囲を含めて)である)が挙げられ得る。リンカーの一例には、それが短スペーサー基を含むとき、糖模倣物上の−NH2(例えば、−CH2−NH2)がある。1実施態様では、糖模倣物には、R’にて、−CH2−NH2が結合され、これは、次いで、BASAを結合するのに使用され得る。最も簡単な結合方法は、還元末端(アノマーヒドロキシル/アルデヒド)を含む糖模倣物へのBASAの還元アミノ化である。これは、BASAの還元末端への簡単な反応、および形成されたイミンの引き続いた還元(例えば、pH4.0で、NaCNBH3を使う)により、達成される。最も一般的なアプローチは、そのアノマー位置でのO、SまたはNヘテロ原子(またはC原子)を介した糖模倣物への活性化リンカーの簡単な結合を伴う。このような結合方法は、炭水化物について広く研究されており、アノマー選択性は、方法および/または保護基の正しい選択により、容易に達成される。可能性のあるグリコシド合成方法の例には、ハロゲンまたは過アセチル化糖でのルイス酸触媒結合形成(Koenigs Knorr)、トリクロロアセトアミド結合形成、チオグリコシド活性化およびカップリング、グルカール(glucal)活性化およびカップリング、n−ペンテニルカップリング、ホスホン酸エステルホモロゲーション(Horner−Wadsworth−Emmons reaction)、および多くの他のものが挙げられる。あるいは、リンカーは、このアノマー以外の部分にある位置に結合できる。結合に最もアクセス可能な部位は、糖模倣物(第一級アルコール)の6ヒドロキシル(6−OH)位置である。6−OHでのリンカーの結合は、種々の手段により、容易に達成できる。例には、オキシ−アニオン(塩基を使った脱プロトン化により形成されるアルコール)と適当な求核試薬(例えば、臭化、塩化アルキル/アシル、またはスルホン酸エステル)との反応、スルホン酸エステルクロライドまたはPOCl3との反応によるこのアルコールの活性化および引き続いた求核試薬での置換、このアルコールのアルデヒドまたはカルボン酸への酸化(カップリングのために)、または異なる官能基を導入するための光延反応の使用さえ挙げられる。このリンカーは、一旦結合すると、次いで、BASA上の適当な求核試薬との反応のために官能化される(逆もまた正しい)。これは、しばしば、チオ尿素結合配位子を製造するためのチオホスゲンおよびアミンの使用、スクアリン酸ジエチルの結合(再度、アミンを使って)および/または簡単なアルキル化/アシル化反応により、達成される。利用できる別の方法には、FMOC固相または溶液相合成技術(これらは、伝統的に、炭水化物およびペプチドカップリングに使用されている)および化学酵素合成技術(これは、おそらく、グリコシル/フコシルトランスフェラーゼおよび/またはオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を利用する)が挙げられる。
【0048】
リンカーの実施態様には、以下が挙げられる:
【0049】
【化41】
他のリンカーは、当業者によく知られている。
【0050】
本明細書中に記載されるようなセレクチン調節因子は、インビボで所望の部位を十分に標的化し得るが、特定の適用にとって、1つ以上の特定の組織に対する標的化を容易にする、さらなる標的化部分を含むことが有利であり得る。本明細書中で使用される場合、「標的化部分」とは、調節因子に連結された場合、標的組織への調節因子の輸送を増強し、それによって、その調節因子の局所的濃度を増大する、任意の物質(例えば、構成要素または細胞)であり得る。標的化部分としては、抗体またはそのフラグメント、レセプター、リガンド、および、その標的組織の細胞またはその標的組織の近接の細胞に結合する他の分子が挙げられる。結合は、一般的に、共有結合であり、そして、例えば、直接的縮合もしくは他の反応によって、または二官能性リンカーもしくは多官能性リンカーによって、達成され得る。
【0051】
特定の実施形態について、また、または代替的に、セレクチン調節因子へ薬物を結合させることが有利であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「薬物」とは、疾患または他の所望されない状態を予防または処置するための、哺乳動物への投与を対象とした、任意の生物活性因子をいう。薬物としては、ホルモン、成長因子、タンパク質、ペプチドおよび他の化合物が挙げられる。潜在的な薬物の例としては、抗腫瘍性薬剤(例えば、5−フルオロウラシルおよびジスタミシン(distamycin))、インテグリンアゴニスト/アンタゴニスト類(例えば、環状RGDペプチド)、サイトカインアゴニスト/アンタゴニスト類、ヒスタミンアゴニスト/アンタゴニスト類(例えば、ジフェンヒドラミンおよびクロルフェニラミン)、抗体(例えば、アミノグリコシド類およびセファロスポリン類)ならびに酸化還元活性生物学的因子(例えば、グルタチオンおよびチオレドキシン)が挙げられる。他の実施形態では、診断用または治療用の放射性核種類は、セレクチン調節因子に連結され得る。多くの実施形態では、上記因子は、セレクチン調節因子に直接的または間接的に連結され得る。
【0052】
(セレクチン媒介性細胞間接着の阻害の評価)
上記のような調節因子は、例えば、セレクチン媒介性細胞接着を阻害し得る。この能力は、一般的に、セレクチン発現細胞間の接着(例えば、白血球と血小板または内皮細胞との間の接着)への影響を測定するために設計された、種々のインビトロアッセイのいずれかを使用して評価され得る。例えば、そのような細胞は、調節因子の非存在下では細胞接着を可能にする、標準的な条件下、プレート上にまかれ得る。一般的に、調節因子は、試験細胞と調節因子との接着が、結果として、細胞接着の識別可能な破壊を生じる場合、セレクチン媒介性細胞接着のインヒビターである。例えば、調節因子(例えば、μMレベル)の存在下では、白血球と血小板および/または内皮細胞との間の接着の破壊は、互いに相互作用する細胞の減少を観察することによって、およそ数分内で視覚的に決定され得る。
【0053】
(セレクチン調節因子処方物)
本明細書中に記載されるような調節因子は、薬学的組成物中に存在し得る。薬学的組成物は、1種以上の、薬学的にもしくは生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、1種以上の調節因子を含む。そのような組成物は、緩衝剤(例えば、中性緩衝化生理食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースもしくはデキストラン類)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドもしくはアミノ酸(例えば、グリシン)、抗酸化剤、キレート化剤(例えば、EDTA)またはグルタチオン、アジュバント類(例えば、水酸化アルミニウム)ならびに/または防腐剤を含み得る。さらに他の実施形態内では、本発明の組成物は、凍結乾燥物として処方され得る。本発明の組成物は、任意の適切な様式の投与(例えば、局所的投与、経口投与、経鼻投与、静脈内投与、頭蓋内投与、腹腔内投与、皮下投与または筋肉内投与)のために所望され得る。
【0054】
薬学的組成物はまた、または代替的に、調節因子に連結し得るかまたはその組成物中に遊離型で存在し得る、1種以上の活性因子(例えば、薬物(例えば、上で示される薬物))を含み得る。
【0055】
本明細書中に記載される組成物は、徐放性処方物(すなわち、投与の後の、調節因子の持続放出を達成するカプセルまたはスポンジのような処方物)の一部として、投与され得る。そのような処方物は、一般的に、周知の技術を使用して調製され得、そして、例えば、経口、直腸もしくは皮下移植によって、または所望の標的部位での移植によって、投与され得る。そのような処方物内での使用のためのキャリアは、生体適合性であり、これはまた、生分解性であり得る;好ましくは、上記処方物は、比較的一定レベルの調節因子の放出を提供する。徐放性処方物内に含められる調節因子の量は、移植の部位、放出の速度および予測される持続時間、ならびに処置もしくは予防されるべき状態の性質に依存する。
【0056】
セレクチン調節因子は、一般的に、治療有効量で薬物学的組成物中に存在する。治療有効量とは、識別可能な患者の利点(例えば、上記のような、過剰のセレクチン媒介性機能(例えば、細胞間接着)に関連する状態の治癒の増大)を生じる、量である。
【0057】
(セレクチン調節因子の使用方法)
一般的に、本明細書中に記載される調節因子および組成物は、セレクチン媒介性機能を増強または阻害するために使用され得る。そのような増強または阻害は、温血動物において、好ましくはヒトのような哺乳動物において、インビトロおよび/またはインビボで達成され得る。ただし、セレクチン発現細胞は、最終的に、セレクチン媒介性機能を増強または阻害する量で、ならびにセレクチン媒介性機能を増強または阻害する時間にわたって、調節因子と接触される。
【0058】
特定の局面内で、本発明は、セレクチン媒介性機能(例えば、細胞間接着)に関連する状態の進行を阻害するための方法を提供する。一般的に、そのような方法は、そのような状態を予防、遅延または処置するために使用され得る。換言すると、本明細書中に提供される治療方法は、疾患を処置するために使用され得るか、あるいは疾患に罹患していない患者またはセレクチン媒介性機能に関連しない疾患を罹患する患者において、そのような疾患の発症を予防または遅延するために使用され得る。例えば、上記治療方法は、細胞増殖の阻止、細胞の殺傷、細胞(単数または複数)増殖の防止、細胞(単数または複数)増殖の発生の遅延、あるいは器官の生存の長期化を含み得る、用途を有する。
【0059】
種々の状態は、セレクチン媒介性機能に関連する。そのような状態としては、例えば、組織移植片拒絶、血小板媒介性疾患(例えば、アテロームおよび凝固)、機能亢進冠循環(hyperactive coronary circulation)、急性白血病媒介性肺損傷(例えば、成人呼吸促進症候群(ARDS))、クローン病、炎症性疾患(例えば、炎症性腸疾患)、自己免疫疾患(MS、重症筋無力症)、感染、癌(および転移)、血栓症、創傷(および創傷関連敗血症)、熱傷、脊髄損傷、消化管粘膜障害(胃炎、潰瘍)、骨粗しょう症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、ぜん息、アレルギー、乾癬、敗血症性ショック、外傷性ショック、脳卒中、腎炎、アトピー性皮膚炎、凍傷損傷、成人型呼吸困難症候群(adult dyspnoea syndrome)、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、虚血性エピソードの後の糖尿病および再還流が挙げられる。セレクチン調節因子はまた、回復を増強するために、心臓手術の前に患者に投与され得る。他の用途としては、疼痛処理のための用途、および、例えば、癌に関連する所望されない新脈管形成に対する用途が挙げられる。
【0060】
本発明のセレクチン調節因子は、処置(または予防)されるべき疾患に適切な様式で投与され得る。適切な投薬量ならびに適切な持続期間および投薬頻度は、患者の状態、患者の疾患のタイプおよび重篤度、ならびに投与方法のような因子によって決定され得る。一般的に、適切な投薬量および処置レジメンは、治療的および/または予防的利点を提供するのに十分な量で、調節因子(単数または複数)を提供する。本発明の特に好ましい実施形態内で、セレクチン調節因子は、単回一日量または複数回一日量のレジメンで、0.001〜100mg/kg体重の範囲の投薬量で投与され得る。適切な投薬量は、一般的に、実験モデルおよび/または臨床試験を使用して決定され得る。一般的に、有効な治療を提供するのに十分な最小の投薬量の使用が好ましい。患者は、一般的に、処置または予防されるべき状態に適切なアッセイ(これは、当業者に公知である)を使用して治療有効性についてモニタリングされ得る。
【0061】
セレクチン調節因子はまた、セレクチンを発現する細胞に対して物質を標的化するために使用され得る。そのような物質としては、治療因子および診断因子が挙げられる。治療因子は、障害を処置もしくは予防するため、または患者の生理学を制御するための有用性を提供するような、分子、ウイルス、ウイルス構成要素、細胞、細胞構成要素、または、標的細胞の特性を調節するために実証され得る任意の他の物質であり得る。治療因子はまた、インビボで生物活性を有する因子を生成するプロドラッグであり得る。治療因子であり得る分子は、例えば、ポリペプチド類、アミノ酸類、核酸類、ポリヌクレオチド類、ステロイド類、多糖類、または無機化合物類であり得る。そのような分子は、任意の種々の方法で(酵素として、酵素インヒビターとして、ホルモンとして、レセプターとして、アンチセンスオリゴヌクレオチドとして、触媒的ポリヌクレオチドとして、抗ウイルス因子として、抗腫瘍因子として、抗細菌因子として、免疫調節因子として、および細胞毒性因子(例えば、ヨウ素、臭素、鉛、パラジウムまたは銅のような放射性核種)として)、機能し得る。診断因子としては、金属および放射活性因子(例えば、ガリウム含有化合物、テクネチウム含有化合物、インジウム含有化合物、ストロンチウム含有化合物、ヨウ素含有化合物、バリウム含有化合物、臭素含有化合物およびリン含有化合物)のような画像化剤(imaging agent)、造影剤(contrast agent)、染料(例えば、蛍光染料および発色団)ならびに比色反応もしくは蛍光反応を触媒する酵素が挙げられる。一般的に、治療因子および診断因子は、上記の技術のような種々の技術を使用して、セレクチン調節因子に結合され得る。標的化の目的のために、セレクチン調節因子は、上記のように患者に投与され得る。セレクチンは、新脈管形成の間の新たな毛細血管の形成に関与する内皮細胞に対する走化性分子であるので、セレクチン調節因子は、腫瘍の脈管構造を殺傷するための治療因子を標的化するために使用され得る。セレクチン調節因子はまた、遺伝子標的化に使用され得る。
【0062】
セレクチン調節因子はまた、例えば、種々の周知の細胞培養物および細胞分離方法内で、インビトロで使用され得る。例えば、調節因子は、培養物中のスクリーニング、アッセイおよび増殖のためのセレクチン発現細胞を固定化する際に使用するための、組織培養プレートまたは他の細胞培養支持体の内側表面に連結され得る。そのような連結は、任意の適切な技術(例えば、上記の方法、および他の標準的な方法)により実施され得る。調節因子はまた、例えば、細胞同定およびインビトロでの細胞選別を容易にし、セレクチン(または異なるセレクチンレベル)を発現する細胞の選択を可能にするために使用され得る。好ましくは、そのような方法で使用するための調節因子(単数または複数)は、検出可能なマーカーに連結される。適切なマーカーは、当該分野で周知であり、これらとしては、放射性核種、発光群、蛍光群、酵素、染料、免疫グロブリン定常ドメインおよびビオチンが挙げられる。1つの好ましい実施形態内で、蛍光マーカー(例えば、フルオレセイン)に連結する調節因子は、細胞と接触し、これは次いで、蛍光細胞分析分離装置に(FACS)によって分析される。
【0063】
本発明の全ての化合物またはそれらの有用な化合物には、それらの生理的に受容可能な塩が含まれる。
【0064】
以下の実施例は、限定ではなく、例として提供されている。
【実施例】
【0065】
本発明で使用される糖模倣物のいくつかの合成は、以下の参考文献で説明されている:Helvetica Chemica Acta Vol.83,pp.2893−2907(2000)およびAngew.Chem.Int.Ed.Vol.40,No.19,pp.3644−3647(2001)。
【0066】
(実施例1)
(代表的なBASAの調製(図2))
(39の合成)
(スズキカップリング)
4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−安息香酸(0.004mol、1当量)およびKOAc(0.012mol、3当量)をTHF(25ml)に入れ、スラリーを作製する。次いで、その溶液に、撹拌しつつ、PdCl2(dppf)(0.00012mol、3mol%)およびp−ブロモ−ニトロベンゼン(0.005mol、1.2当量)を加え、この溶液を、80℃まで穏やかに加熱する。6時間後、その反応は、TLC(20:1のCH2Cl2/CH3OH)により、完結している。その反応混合物を乾燥状態まで蒸発させ、CH2Cl2(30ml)に溶解し、そして蒸留水および飽和NaHCO3で洗浄する。得られたビフェニル化合物を、次の工程に直接持ち込む。
【0067】
(カルボジイミドカップリング)
4’−ニトロ−ビフェニル−4−カルボン酸(0.004mol、1当量)、ジメチルアミノピリジン(1結晶、触媒)およびEDCl(0.0041mol、1.05当量)をDMF(またはTHF、20ml)に溶解し、そして室温で、10分間反応させる。撹拌しながら、その反応混合物に、8−アミノ−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸を加え、室温で、窒素下にて、48時間にわたって、この反応を進行させる。次いで、この反応混合物を乾燥状態まで蒸発させ、そして逆相クロマトグラフィー(C18カラム、80/20のCH3CN/H2O−1%TFA〜50/50のCH3CN/H2O)で精製する。
【0068】
(水素化)
8−[(4’−ニトロ−ビフェニル−4−カルボニル)−アミノ]−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(1当量)および炭素上10%Pd(10mol%)を、EtOAc(またはCH3OH)に入れる。その溶液を脱気し、そして反応容器内にて、H2雰囲気を発生させる。H2の取り込みが終わりTLCにより出発物質の消失が示されるまで(約12時間)、この反応を進行させる。セライト床で濾過することにより、パラジウム沈殿物を除去し、その濾液を乾燥状態まで蒸発させて、化合物39を得る。
【0069】
(実施例2)
(代表的なBASAの調製(図3))
(22の合成)
(酸塩化物カップリング)
8−アミノ−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(0.004mol、1当量)およびジイソプロピルエチルアミン(6当量)をDMF(20ml)に入れ、そして0℃まで冷却する。塩化3−ニトロ−4−メチルベンゾイル(0.005mol、1.2当量)をDMFに溶解し、そして10分間にわたって、この冷却溶液に滴下する。0℃で、3時間にわたって、この反応を進行させる。その反応混合物を0.1M HCl(25ml)で洗浄し、凍結し、そして乾燥状態まで蒸発させる。得られたシロップを、精製することなく、次の工程で使用する。
【0070】
(水素化)
8−(4−メチル−3−ニトロ−ベンゾイルアミノ)−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(1当量)および炭素上10%Pd(10mol%)を、CH3OHに入れる。その溶液を脱気し、そして反応容器内にて、H2雰囲気を発生させる。H2の取り込みが終わりTLCにより出発物質の消失が示されるまで(約12時間)、この反応を進行させる。セライト床で濾過することにより、パラジウム沈殿物を除去し、その濾液を乾燥状態まで蒸発させて、還元化合物である8−(3−アミノ−4−メチル−ベンゾイルアミノ)−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸を得る。
【0071】
(酸塩化物カップリング)
8−(3−アミノ−4−メチル−ベンゾイルアミノ)−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(0.004mol、1当量)およびジイソプロピルエチルアミン(6当量)をDMF(15ml)に入れ、そして0℃まで冷却する。塩化3−ニトロ−ベンゾイル(0.005mol、1.2当量)をDMF(5ml)に溶解し、そして10分間にわたって、この冷却溶液に滴下する。0℃で、3時間にわたって、この反応を進行させる。その反応混合物を0.1M HCl(25ml)で洗浄し、凍結し、そして乾燥状態まで蒸発させる。この化合物を逆相クロマトグラフィー(C18カラム、80/20のCH3CN/H2O−1%TFA〜50/50のCH3CN/H2O)で精製する。
【0072】
(水素化)
8−(3−(3−ニトロ−ベンズアミド)−4−メチル−ベンゾイルアミノ)−ナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(1当量)をMeODに溶解し、そして炭素上10%Pd(10mole%)を加える。次いで、その反応混合物を、水素雰囲気下にて、16振盪する。セライト床で濾過することにより、このパラジウムを除去し、その濾液を乾燥状態まで蒸発させて、化合物22を得る。
【0073】
(実施例3)
(糖模倣物の合成(図4))
(中間体Cの形成)
化合物A(5.00g、12.74mmol)および化合物B(4.50g、19.11mmol)およびNIS(3.58g、15.93mmol)をCH2Cl2(50ml)に溶解し、そして0℃まで冷却する。撹拌しながら、トリフルオロメタンスルホン酸の溶液(CH2Cl2中で0.15M)を滴下する。その溶液が橙色から暗褐色に色変化した後、TMS−OHの添加を中止する。次いで、この溶液を飽和NaHCO3(30ml)で洗浄し、有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。得られたシロップをシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/エーテル、1:1)で精製し、そして次の工程で使用する。
【0074】
先に得られた化合物をTHF(40ml)に溶解し、そしてPd(10%)/C(質量で1/10)を加える。その溶液を脱気し、そしてH2雰囲気を発生させる。TLCにより出発物質の消失が示されるまで、室温で、この反応を進行させる。この溶液をセライト床で濾過し、その濾液を真空中で濃縮して、4および6OH化合物を得る。次いで、この化合物をピリジン(25ml)に溶解し、そして0℃まで冷却する。Ph3CCl(1.2当量)を滴下し、室温で、6時間にわたって、この反応を進行させる。次いで、酢酸エチル(50ml)を加え、その溶液を、0.1N HCl(2×50ml)、飽和NaHCO3(1×50ml)および飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーにより、中間体Cを得る。
【0075】
(化合物の形成)
化合物C(800mg、1.41mmol)およびE4NBr(353mg、1.69mmol)をDMF/CH2Cl2(10ml、1:1、モレキュラーシーブを含有する)に溶解し、そして0℃まで冷却する。化合物D(808mg、1.69mmol)の別のCH2Cl2溶液に、0℃で、Br2(298mg、1.86mmol、CH2Cl2中)を滴下する。30分後、Br2/D溶液をシクロヘキセン(0.2ml)でクエンチし、直ちに(10分以内)、C溶液に加える。この混合物を、室温で、65時間反応させる。酢酸エチル(100ml)を加え、その溶液を濾過し、その濾液を、飽和NaS2O3(2×50ml)および飽和NaCl(2×50ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。次いで、得られたシロップをエーテル(50ml)およびギ酸(10ml)に溶解し、撹拌しながら加える。この反応が完結すると(TLCで確認する)、その溶液を飽和NaHCO3(2×50ml)および飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで、乾燥状態まで蒸発させる。次いで、この化合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0076】
(中間体Fの形成)
この化合物(1g、1.02mmol)をMeOH/ジオキサン(10ml、20:1)に溶解し、そして撹拌しながら、NaOMe(0.10mmol)を加える。50℃で、20時間にわたって、この反応を進行させ、次いで、2滴の酢酸を加える。その溶液を乾燥状態まで蒸発させ、エチルエーテル(25ml)に溶解し、そして飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。最終生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。この生成物(0.980mmol)およびBu2Sn(1.08mmol)をMeOH(15ml)に懸濁し、そして2時間にわたって、還流状態まで加熱する。次いで、得られた透明溶液を乾燥状態まで蒸発させ、ペンタン(10ml)に吸収させ、そして蒸発させて、無色泡状物を得る。この泡状物を1,2−ジメトキシエタン(DME、15ml)に溶解し、化合物E(1.96mmol)およびCsF(1.18mmol)を加え、その反応物を、室温で、2時間撹拌する。2時間後、撹拌しながら、1M KH2PO4(50ml)およびKF(1g)を加え、続いて、酢酸エチル(2×25ml)で抽出する。有機層を10%KF(2×50ml)および飽和NaCl(2×50ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして減圧下にて、乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーによって、化合物Fを得る。
【0077】
(糖模倣物の形成)
化合物FをCH3OH(50ml)に溶解し、そしてPd(10%)/C(質量で1/10)を加える。その溶液を脱気し、そしてH2雰囲気を発生させる。出発物質の消失がTLCで確認されるまで、室温で、この反応を進行させる。この溶液をセライト床で濾過し、その濾液を真空中で濃縮して、この糖模倣物を得る。
【0078】
(実施例4)
(糖模倣物の合成(図5))
(中間体Lの形成)
出発化合物(10mmol)をCH2Cl2(30ml)に溶解し、そしてDMSO(20mmol)を加え、その溶液を−60℃まで冷却する。20の撹拌溶液に、塩化オキサリル(11mmol)をゆっくりと加える。N2雰囲気下にて、30分間にわたって、この反応を進行させる。その反応物を、0.1M HCl、飽和NaHCO3および飽和NaClで洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。得られたシロップをtBuOH(20ml)および2−メチル−2−ブテン(10ml)に入れ、そして撹拌しながら、NaH2PO4(20mmol)を加える。3時間にわたって、この反応を進行させ、次いで、蒸発させ、CH2Cl2に吸収させ、そして0.1 M HCl、飽和NaHCO3および飽和NaClで洗浄する。得られた化合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物Lを得る。
【0079】
(中間体Nの形成)
化合物L(10mmol)をDMF(15ml)に溶解し、そして撹拌しながら、化合物M(10mmol)、HBTU(12mmol)およびEt3N(20mmol)を加える。室温で、24時間にわたって、その反応を進行させる。酢酸エチル(100ml)を加え、その溶液を、0.1 M HCl(1×100ml)、飽和NaHCO3(1×100ml)および飽和NaCl(1×100ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーにより、化合物Nを得る。
【0080】
(中間体Oの形成)
化合物N(10mmol)をMeOH(35ml)に溶解し、そして撹拌しながら、NaOMe(1mmol)を加える。室温で、20時間にわたって、この反応を進行させる。その溶液を乾燥状態まで蒸発させ、エチルエーテル(50ml)に溶解し、そして飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。最終生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。この生成物(0.980mmol)およびBu2Sn(1.08mmol)をMeOH(15ml)に懸濁し、そして2時間にわたって、還流状態まで加熱する。次いで、得られた透明溶液を乾燥状態まで蒸発させ、ペンタン(10ml)に吸収させ、そして蒸発させて、無色泡状物を得る。この泡状物を1,2−ジメトキシエタン(DME、15ml)に溶解し、化合物E(1.96mmol)およびCsF(1.18mmol)を加え、その反応物を、室温で、2時間撹拌する。2時間後、撹拌しながら、1M KH2PO4(50ml)およびKF(1g)を加え、続いて、酢酸エチル(2×25ml)で抽出する。有機層を10%KF(2×50ml)および飽和NaCl(2×50ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして減圧下にて、乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーによって、化合物Oを得る。
【0081】
(糖模倣物の形成)
化合物O(9mmol)をMeOH(200ml)に溶解し、そしてPd(10%)/C(3g)を加える。その溶液を脱気し、そしてH2雰囲気を発生させる。出発物質の消失がTLCで確認されるまで、室温で、この反応を進行させる。この溶液をセライト床で濾過し、その濾液を真空中で濃縮して、この糖模倣物を得る。
【0082】
(実施例5)
(糖模倣物前駆体の合成(図6A))
(中間体Hの形成)
化合物G(15.0g、66.9mmol)およびBu2Sn(20.0g、80.3mmol)をMeOH(450ml)に懸濁し、そして2時間にわたって、還流状態まで加熱する。次いで、得られた透明溶液を乾燥状態まで蒸発させ、ペンタンに吸収させ、そして再度蒸発させて、無色泡状物を得る。この泡状物を1,2−ジメトキシエタン(DME、120ml)に溶解し、E(39.6g、100.3mmol)およびCsF(12.2g、80.3mmol)を加え、その反応物を、室温で、2時間撹拌する。2時間後、撹拌しながら、1M KH2PO4(700ml)およびKF(25g)を加え、続いて、酢酸エチル(3×250ml)で抽出する。有機層を10%KF(2×250ml)および飽和NaCl(2×250ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして減圧下にて、乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーによって、この化合物(19.3g、41.2mmol)を得る。この化合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、直ちに、結晶DMAPと共に、ピリジン(210ml)に溶解する。その溶液を0℃まで冷却し、そして撹拌しながら、塩化ベンゾイル(52.1g、370.7mmol)を滴下する。この溶液を室温までゆっくりと温め、室温で、20分間にわたって、この反応を進行させる。この溶液を乾燥状態まで蒸発させ、酢酸エチル(500ml)に溶解し、そして0.1M HCl(2×250ml)、飽和NaHCO3(2×250ml)および飽和NaCl(1×250ml)溶液で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィーにより、Hが得られる。
【0083】
(中間体Iの形成)
中間体H(10.0g、12.82mmol)および中間体B(6.05g、25.64mmol)をCH2Cl2(75ml)に溶解し、そして撹拌しながら、−10℃で、0.15M CF3SO3H(CH2Cl2中)を滴下する。その橙色溶液が褐色に変わると、添加を停止する。酢酸エチル(500ml)を加え、この溶液を、飽和NaHCO3(4×250ml)および飽和NaCl(250ml)で洗浄する。次いで、有機層をNa2SO4で乾燥し、そして減圧下にて蒸発させる。次いで、この化合物(7.96g、9.19mmol)をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、次いで、DMF(55ml)に溶解する。次いで、TBDMS−Cl(1.52g、10.1mmol)およびイミダゾール(0.94g、13.8mmol)を加え、室温で、1時間にわたって、この反応を進行させる。酢酸エチル(250ml)を加え、その溶液を、飽和NaHCO3(5×250ml)および飽和NaCl(1×250ml)で洗浄する。次いで、有機層をNa2SO4で乾燥し、そしてシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、中間体Iを得る。
【0084】
(中間体Jの形成)
化合物I(7.71g、7.87mmol)およびEt4NBr(2.00g、9.45mmol)をDMF/CH2Cl2(60ml、1:1、モレキュラーシーブを含有する−12g)に溶解し、そして0℃まで冷却する。化合物D(4.5g、9.45mmol)の別のCH2Cl2溶液に、0℃で、CH2Cl2(11ml)中のBr2(1.90g、11.8mmol)を滴下する。30分後、Br2/D溶液をシクロヘキセン(2.5ml)でクエンチし、直ちに(10分以内)、I溶液に加える。この混合物を、室温で、65時間反応させる。CH2Cl2(250ml)を加え、その溶液を濾過し、その濾液を、飽和NaHCO3(2×50ml)、0.5M HCl(2×250ml)および飽和NaCl(2×250ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。この混合物を、室温で、MeCN(85ml)に溶解し、そしてEt3N(0.21ml)およびH2SiF6(1.3ml、35%)のMeCN(17ml)溶液を加え、そして2時間撹拌する。CH2Cl2(250ml)を加え、この溶液を、飽和NaHCO3(3×250ml)および飽和NaCl(1×250ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで、乾燥状態まで蒸発させる。そしてJをシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0085】
(中間体Kの形成)
中間体J(12.5g、9.75mmol)をピリジン(80ml)に溶解し、そして撹拌しながら、5分間にわたって、塩化メタンスルホニル(3.35g、29.2mmol)を滴下する。30分間にわたって、この反応を進行させ、次いで、酢酸エチル(500ml)を加える。その溶液を1N HCl(250ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして蒸発させる。得られたシロップ(12.95g、9.52mmol)をDMF(40ml)に溶解し、そしてNaN3(4.64g、74.4mmol)を加える。アルゴン雰囲気下にて、65℃で、35時間にわたって、この反応を進行させる。この溶液を酢酸エチル(500ml)で希釈し、そしてH2O(300ml)および飽和NaCl(150ml)で洗浄する。有機層をNa2SO3で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。この化合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。次いで、精製した生成物(12.2g、9.33mmol)をMeOH/H2O(200ml/20ml)溶液に懸濁し、そしてLiOH−H2O(5.1g、121.3mmol)を加える。65℃で、20時間にわたって、この反応を進行させる。エチルエーテル(500ml)を加え、この溶液を飽和NaCl(200ml)で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させる。化合物Kをシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0086】
(糖模倣物前駆体の形成)
化合物K(8.45g、9.33mmol)をジオキサン/H2O(250ml/50ml)に溶解し、そしてPd(10%)/C(3.4g)を加える。その溶液を脱気し、そしてH2雰囲気を発生させる。TLCにより出発物質の消失が示されるまで、室温で、この反応を進行させる。この溶液をセライト床で濾過し、その濾液を真空中で濃縮して、糖模倣物前駆体を得る。
【0087】
(実施例6)
(糖模倣物の合成(図6B))
この実施例で使用する糖模倣物前駆体は、実施例5(図6A)で記述されている。
【0088】
(糖模倣物前駆体と酸塩化物との反応)
この糖模倣物前駆体(20mg、0.033mmol)をTHF/H2O(2ml、1:1)溶液(これは、1N NaOH(pHを8と10の間に調節した)を含有する)に溶解し、そして0℃まで冷却する。次いで、撹拌しながら、シクロヘキシル−カルボニルクロライド(0.049mmol)を滴下する。0℃で、3時間にわたって、この反応を継続する。その溶液を氷でクエンチし、この溶液を乾燥状態まで蒸発させる。この糖模倣物を逆相クロマトグラフィーで精製する。
【0089】
(糖模倣物前駆体とイソシアン酸エステルの反応)
この糖模倣物前駆体(30mg、0.049mmol)を0.5N NaOH水溶液(1ml)に溶解し、そして0℃まで冷却する。次いで、撹拌しながら、イソシアン酸エチル(1.2当量)を滴下する。室温で、3時間にわたって、この反応を継続する。その溶液を氷でクエンチし、この溶液を乾燥状態まで蒸発させる。この糖模倣物を逆相クロマトグラフィーで精製する。
【0090】
(糖模倣物前駆体とクロロ−オルトギ酸エステルとの反応)
この糖模倣物前駆体(20mg、0.033mmol)をTHF/H2O(2ml、1:1)溶液(これは、1N NaOH(pHを8と10の間に調節した)を含有する)に溶解し、そして0℃まで冷却する。次いで、撹拌しながら、クロロ−オルトギ酸ベンジル(0.049mmol)を滴下する。0℃で、3時間にわたって、この反応を継続する。その溶液を氷でクエンチし、この溶液を乾燥状態まで蒸発させる。この糖模倣物を逆相クロマトグラフィーで精製する。
【0091】
(糖模倣物前駆体と塩化スルホニルとの反応)
この糖模倣物前駆体(20mg、0.033mmol)をNaHCO3/トルエン飽和水溶液(2ml、1:1)に溶解し、そして0℃まで冷却する。次いで、撹拌しながら、塩化p−トルエンスルホニル(0.049mmol)を滴下する。0℃で、3時間にわたって、この反応を継続する。その溶液を氷でクエンチし、この溶液を乾燥状態まで蒸発させる。この糖模倣物を逆相クロマトグラフィーで精製する。
【0092】
(実施例7)
(糖模倣物−BASAの合成(図7Aおよび7B))
(化合物4の合成)
市販の2−デオキシグルコース(15g)から出発して、文献(Bioorg.Med.Chem.Lett.11,2001,923−925;Carbohydr.Res.197,1990,75)で記載された手順に従って、化合物4を合成する。
【0093】
(化合物6の合成)
文献(Carbohydr.Res.,193,1989,283−287)で記載されているようにして、市販の5(25g)から、化合物6を合成する。
【0094】
(化合物9の合成)
化合物4(5g)をジクロロメタン(100ml)に溶解し、そしてN−ヨードスクシンイミド(NIS、10g)および化合物6(7.5g)を加える。その混合物を、モレキュラーシーブ(4A)と共に、室温で、30分間撹拌する。この反応混合物を0〜5℃まで冷却し、そして1時間にわたって、ジクロロメタン中のトリフルオロメタンスルホン酸(0.05M)を滴下し、その反応混合物を、0〜5℃で、2時間撹拌し続ける。モレキュラーシーブをセライト床で濾過し、そして有機層を、水、炭酸水素ナトリウム飽和溶液および水で抽出する。その粗反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィーにかけると、収率75%で、化合物7が得られる。
【0095】
化合物7(7g)を、80℃で、2時間にわたって、80%酢酸水溶液で処理する。蒸発により溶媒を除去して、収率92%で、8を得る。
【0096】
化合物8(6g)をDMF(60ml)および1H−イミダゾールに溶解し、塩化第三級ブチル−トリメチル−シリル(4ml)を加える。その反応混合物を、室温で、1時間撹拌する。この反応混合物を酢酸エチルで希釈し、そして水および炭酸水素ナトリウム飽和溶液で洗浄する。有機層を乾燥状態まで蒸発させて、収率90%で、9を得る。
【0097】
(化合物13の合成)
文献(Carbohydr.Res.201,1990,15−30)で記載された手順に従って、化合物13(12g)を調製する。
【0098】
(化合物16の合成)
化合物13(4g)および化合物9(4g)のジクロロメタン−DMF溶液に、モレキュラーシーブ(4A)および臭化テトラブチルアンモニウムを加え、その混合物を、室温(RT)で、1時間撹拌する。室温で、撹拌しながら、臭素(0.2g)のジクロロメタン(10ml)溶液を滴下する。室温で、2時間にわたって、撹拌を継続する。その反応混合物をセライト床で濾過し、そして有機層を、水および炭酸水素ナトリウム飽和溶液で洗浄する。蒸発により溶媒を除去し、そのシロップ残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにかけて、収率70%で、14を得る。
【0099】
化合物14を、2時間にわたって、0.01M NaOMe/MeOHで処理して、収率96%で、15を得る。
【0100】
化合物15(4g)を、MeOH中で、還流条件下にて、4時間にわたって、ジブチルスズオキシドで処理する。蒸発により溶媒を除去して、粗製物16を得る。
【0101】
(化合物20の合成)
文献(J.Med.Chem.42、1999、4909−4913)で記載されているようにして、市販のフェニル乳酸から出発して、化合物17を合成する。
【0102】
(化合物23の合成)
化合物16(7gの粗製物)および化合物20(3g)をジメトキシエタン(DME)に溶解し、そしてCsF(1g)を加える。得られた混合物を、室温で、8時間撹拌する。その反応混合物に水を加え、そして酢酸エチルで抽出する。有機層を乾燥状態まで蒸発させ、その残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、全収率64%で、21を得る。
【0103】
化合物21(3.5g)のアセトニトリル(100ml)懸濁液に、a,a−ジメトキシトルエン(0.5ml)およびp−トルエン−スルホン酸(0.2g)を加える。その反応混合物を、室温で、4時間撹拌する。トリエチルアミン(0.4ml)を加え、蒸発により溶媒を除去する。その残渣混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率88%で、化合物22を得る。
【0104】
O−アシル化化合物一般を合成するために、化合物22(各1g)をピリジン(15ml)に溶解し、そして塩化アシル(芳香族および複素環酸塩化物)を加える。その反応混合物を、室温で、2h時間撹拌し、そして蒸発により溶媒を除去する。その残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率80〜92%で、対応するアシル化誘導体23を得る。
【0105】
(化合物24の合成)
化合物23(1g)をアセトニトリル(25ml)に溶解し、その溶液に、トリエチルアミン(0.1ml)を加える。アセトニトリル(5ml)中のH2SiF6(0.5ml)を加え、その反応混合物を、室温で、2時間撹拌する。この反応混合物をジクロロメタンで希釈し、そして水、炭酸水素ナトリウム飽和溶液および水で連続的に洗浄する。有機層を乾燥状態まで蒸発させ、そしてシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率75%で、化合物24を得る。
【0106】
(化合物25の合成)
化合物24(0.8g)の乾燥ピリジン(10ml)溶液に、室温で、撹拌しながら、塩化メタンスルホニルの溶液(0.3ml)を加える。30分後、その混合物をEtOAcで希釈し、そして水、炭酸水素ナトリウム飽和溶液および水で連続的に洗浄する。有機層を乾燥状態まで蒸発させることより除去し、その残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率95%で、25を得る。
【0107】
(化合物26の合成)
化合物24(0.7g)のDMF(5ml)溶液に、アジ化ナトリウム(0.3g)を加える。その混合物を、65℃で、アルゴン下にて加熱し、そして28時間撹拌する。室温まで冷却した後、EtOAc(44ml)を加え、そして水で洗浄かる。有機層を乾燥状態まで蒸発させ、そしてシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率96%で、26を得る。
【0108】
(化合物27の合成)
化合物26(0.5g)のジオキサン−水(5:1、12ml)溶液に、10%Pd−C(0.2g)を加え、その反応混合物を、水素雰囲気下にて、22時間激しく攪拌する。この反応混合物をセライト床で濾過し、そして蒸発により溶媒を除去する。その残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率77%で、27を得る。
【0109】
(28の合成)
化合物27(50mg)のTHF/水(1:1、5ml)溶液に、THF(0.5ml)中の市販の酸塩化物(0.1g)を加える。1N NaOHを加えることにより、その反応混合物のpHを8〜10に調節し、この反応の初めから終わりまで維持する。もし必要なら、1〜4時間後、追加酸塩化物を加え、全体で2〜42時間後、その混合物を部分的に蒸発させて、THFを除去する。蒸発により水を除去し、この反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率77〜88%で、N−アシル化化合物を得る。
【0110】
(化合物30の合成)
化合物28を、まず、エチレンジアミンと反応させ、得られた誘導体29を、シリカゲルクロマトグラフィー後、収率80%で得る。化合物29を、適当なスペーサ(例えば、スクアリン酸、イソチオシアネート、イソシアネート、ヒスチジン、グルタル酸ジスクシンイミジル)を使って、pH9で、BASA化合物化合物と反応させて、BASA(化合物30)に連結された対応する糖模倣物を得る。
【0111】
(実施例8)
(糖模倣物の合成(図8Aおよび8B))
(中間体Lの形成)
化合物K(1g)(これは、実施例5に従って、調製した)をアセトニトリルに溶解し、そしてp−トルエン−スルホン酸の存在下にて、室温で、4時間にわたって、a,a−ジメトキシトルエンに溶解する。その反応混合物をトリエチルアミンで中和し、そして乾燥状態まで濃縮する。次いで、この反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、純粋な化合物Lを得る。
【0112】
(中間体Mの形成)
化合物L(1g)を、ピリジン中にて、16時間にわたって、ナフトールクロライドで処理する。その粗反応混合物をジクロロメタンで希釈し、そして有機層を、冷0.1N HCl、炭酸水素ナトリウム冷飽和溶液および冷ブライン溶液で連続的に洗浄する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして乾燥状態まで濃縮する。得られた生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、収率80%で、化合物Mを得る。
【0113】
(化合物Nの形成)
化合物M(1g)のジオキサン−水溶液に、炭素上10%パラジウムを加えもその懸濁液を、室温で、水素の正圧下にて、48時間振盪する。触媒をセライト床で濾過し、その溶液を乾燥状態まで濃縮して、化合物Nを得る。
【0114】
(糖模倣物の合成(図8B))
実施例6で記述した手順を使用して、糖模倣物前駆体Nを、酸塩化物、イソシア酸エステル、クロロ−オルトギ酸エステルまたは塩化スルホニルと反応させる。
【0115】
(実施例9)
(糖模倣物の合成(図9Aおよび9B))
(中間体Oの形成)
化合物L(1g)(これは、実施例8に従って、調製した)を、中間体M(実施例8)について記述した様式と正確に同じ様式で、塩化4−フェニル−ベンゾイルで処理し、そしてシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0116】
(化合物Pの形成)
化合物Oを、化合物N(実施例8)について記述した様式と正確に同じ様式で、炭素上10%パラジウムで水素化して、化合物Pを得る。
【0117】
(糖模倣物の合成(図9B))
実施例6で記述した手順を使用して、糖模倣物前駆体Pを、酸塩化物、イソシア酸エステル、クロロ−オルトギ酸エステルまたは塩化スルホニルと反応させる。
【0118】
(実施例10)
(糖模倣物−BASAの合成(図10))
(BASAとスクアリン酸ジエチルとの間の縮合)
実施例1のBASA(10mg)を、リン酸緩衝液中にて、pH7で、スクアリン酸ジエチル(5mg)と反応させ、そして分取hplcで精製して、付加物Aを得る。
【0119】
(糖模倣物Nの合成)
実施例8で記述したようにして、糖模倣物Nを合成する。
【0120】
(糖模倣物Nと中間体Aとの間の縮合)
中間体A(15mg)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5、1.5ml)溶液に、糖模倣物N(10mg)を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、この反応混合物をsephadex G−25のカラムに適用し、このカラムを5mM炭酸水素溶液で溶出する。生成物に対応する画分を集め、そして凍結乾燥して、糖模倣物−BASA抱合体(12mg)を得る。
【0121】
(実施例11)
(糖模倣物−BASAの合成(図11))
(BASAとスクアリン酸ジエチルとの間の縮合)
実施例1のBASA(10mg)を、リン酸緩衝液中にて、pH7で、スクアリン酸ジエチル(5mg)と反応させ、そして分取hplcで精製して、付加物Aを得る。
【0122】
(糖模倣物Pの合成)
実施例9で記述したようにして、糖模倣物Pを合成する。
【0123】
(糖模倣物Pと中間体Aとの間の縮合)
中間体A(15mg)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5、1.5ml)溶液に、糖模倣物P(10mg)を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、この反応混合物をsephadex G−25のカラムに適用し、このカラムを5mM炭酸水素溶液で溶出する。生成物に対応する画分を集め、そして凍結乾燥して、糖模倣物−BASA抱合体(11mg)を得る。
【0124】
(実施例12)
(BASAおよびBASA−スクアリン酸エステルの合成(図12))
(BASAの合成)
市販の8−アミノナフタレン−1,3,5−トリスルホン酸(xxxxxi)の水溶液(pH11)に、撹拌しながら、室温で、ヨウ化3−ニトロ−ベンジルを加える。その溶液のpHを1に調節し、溶媒を蒸発させた後、エタノールから、生成物xxxxiiiを沈殿させて除く。
【0125】
化合物xxxxiiiを白金触媒水素化すると、収率96%で、BASA化合物xxxxivが得られる。
【0126】
(BASA−スクアリン酸エステルの合成)
化合物xxxxivのリン酸緩衝液(pH7.1)溶液に、市販のスクアリン酸ジエチルを加え、その反応混合物を、室温で、4時間撹拌する。次いで、それを逆相hplcで精製して、BASA−スクアリン酸エステル化合物xxxxvを得る。
【0127】
(実施例13)
(糖模倣物−BASAの合成(図13))
(BASAとスクアリン酸ジエチルとの間の縮合)
実施例12のBASA(10mg)を、リン酸緩衝液中にて、pH7で、スクアリン酸ジエチル(5mg)と反応させ、そして分取hplcで精製して、付加物Bを得る。
【0128】
(糖模倣物Nの合成)
実施例8で記述したようにして、糖模倣物Nを合成する。
【0129】
(糖模倣物Nと中間体Bとの間の縮合)
中間体B(15mg)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5、1.5ml)溶液に、糖模倣物N(10mg)を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、この反応混合物をsephadex G−25のカラムに適用し、このカラムを5mM炭酸水素溶液で溶出する。生成物に対応する画分を集め、そして凍結乾燥して、糖模倣物−BASA抱合体(14mg)を得る。
【0130】
(実施例14)
(糖模倣物−BASAの合成(図14))
(BASAとスクアリン酸ジエチルとの間の縮合)
実施例12のBASA(10mg)を、リン酸緩衝液中にて、pH7で、スクアリン酸ジエチル(5mg)と反応させ、そして分取hplcで精製して、付加物Bを得る。
【0131】
(糖模倣物Pの合成)
実施例9で記述したようにして、糖模倣物Nを合成する。
【0132】
(糖模倣物Pと中間体Bとの間の縮合)
中間体B(15mg)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5、1.5ml)溶液に、糖模倣物P(10mg)を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、この反応混合物をsephadex G−25のカラムに適用し、このカラムを5mM炭酸水素溶液で溶出する。生成物に対応する画分を集め、そして凍結乾燥して、糖模倣物−BASA抱合体(15mg)を得る。
【0133】
(実施例15)
(糖模倣物−BASAの合成(図15Aおよび15B))
(BASA−スクアリン酸エステル(中間体A)の合成)
この反応は、実施例10で記述されているようにして、実行する。
【0134】
(化合物29の合成)
実施例7の化合物28を、70℃で、5時間にわたって、過剰なエチレンジアミンで処理し、次いで、溶媒を蒸発させて除く。粗生成物をsephadex G−25カラムで精製して、化合物29を得る。
【0135】
(化合物29とBASA−スクアリン酸エステルとの間の縮合)
BASA−スクアリン酸エステルの炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液溶液に、pH9.5で、化合物29を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、それをsephadex G−25カラムで精製して、糖模倣物−BASA抱合体を得る。
【0136】
(実施例16)
(糖模倣物−BASAの合成)
(BASA−スクアリン酸エステル(中間体B)の合成)
この反応は、実施例13で記述されているようにして、実行する。
【0137】
(化合物29とBASA−スクアリン酸エステルとの間の縮合)
BASA−スクアリン酸エステルの炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液溶液に、pH9.5で、実施例15の化合物29を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。次いで、それをsephadex G−25カラムで精製して、糖模倣物−BASA抱合体を得る。
【0138】
(実施例17)
(糖模倣物−BASAの合成(図16Aおよび16B))
(11および12の合成)
市販のb−アラリンの水溶液に、濃HClを加える。その溶液をエタノールで希釈し、そして撹拌しながら、ベンジルカルボノクロライド(benzylcarbonochloride)のジメトキシエタン溶液を滴下する。この撹拌を24時間継続する。通常のワークアップ後、その反応混合物をhplcで精製して、中間体11を得る。
【0139】
11のDMF溶液に、塩化チオニルを加え、その反応混合物を、室温で、1時間撹拌する。溶媒を蒸発させて除き、そしてhplcで精製して、12を得る。
【0140】
(化合物17の合成)
出発物質13の合成:実施例7で記述し図7Aで描写した様式と類似の様式で、この化合物を合成する。
【0141】
(中間体14の合成)
化合物13を、室温で、4時間にわたって、MeOH中の0.1M NaOMeで処理し、次いで、IR−120(H+)樹脂で中和して、化合物12を得る。
【0142】
(中間体15の合成)
14のアセトニトリル溶液に、ベンズアルデヒドジメチルアセタールおよびp−トルエンスルホン酸を加える。その反応混合物を、室温で、4時間撹拌し、そしてトリエチルアミンで中和する。溶媒を蒸発させて除き、そして粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して、15を得る。
【0143】
(中間体16の合成)
15のピリジン溶液に、2,6−ジメチルアミノピリジンを加え、続いて、12を加える。その反応混合物を、室温で、16時間撹拌し、そして溶媒を蒸発させて除く。粗反応混合物をカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体16を得る。
【0144】
(中間体16の水素化)
中間体16のジオキサン溶液に、10%Pd−Cを加え、その反応混合物を、室温で、24時間激しく振盪する。触媒をセライト床で濾過して除き、その上澄み液を乾燥状態まで濃縮して、化合物17を得る。
【0145】
(糖模倣物−BASAの合成(図16A))
17とBASA−スクアリン酸エステル付加物との間の抱合:BASA−スクアリン酸エステル付加物(実施例10から得た)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5)溶液に、化合物17を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。この反応混合物をsephadex G−25で精製して、糖模倣物−BASA化合物18を得る。
【0146】
(糖模倣物−BASAの合成(図16B))
17とBASA−スクアリン酸エステル付加物との間の抱合:BASA−スクアリン酸エステル付加物(実施例12から得た)の炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.5)溶液に、化合物17を加え、その反応混合物を、室温で、16時間撹拌する。この反応混合物をsephadex G−25で精製して、糖模倣物−BASA化合物19を得る。
【0147】
(実施例18)
(E−セレクチンアンタゴニスト活性のアッセイ)
マイクロタイタープレート(プレート1)のウェルを、2時間37℃でインキュベーションすることにより、E−セレクチン/hlgキメラ(GlycoTech Corp.,Rockville,MD)と接触させる。このプレートを5回、50mM TrisHCl、150mM NaCl、2mM CaCl2、pH7.4(Tris−Ca)で洗浄した後、Tris−Ca/Stabilcoat(SurModics,Eden Prairie,MN)(1:1、v/v)中の100μlの1%BSAを、各ウェルに添加し、非特異的結合をブロッキングする。試験化合物を、第2の低結合丸底プレート(プレート2)中で、Tris−Ca(60μl/ウェル)で段階希釈する。Streptavidin−HRP(Sigma,St.Louis,MO)と混合したSLea−PAA−ビオチン(GlycoTech Corp.,Rockville,MD)の前もって形成した複合物を、プレート2の各ウェルに添加する(1μg/mlの60μl/ウェル)。プレート1を、Tris−Caで数回洗浄し、100μl/ウェルをプレート2からプレート1に移す。室温で正確に2時間インキュベーションした後、そのプレートを洗浄し、100μl/ウェルのTMB試薬(KPL labs,Gaithersburg,MD)を各ウェルに添加する。3分間室温でインキュベーションした後、その反応を、100μl/ウェルの1M H3PO4を添加することにより停止し、450nmでの吸光度を、マイクロタイタープレートリーダーにより決定する。
【0148】
(実施例19)
(P−セレクチンアンタゴニスト活性のアッセイ)
新糖タンパク質、シアリルLea−HSA(Isosep AB,Sweden)を、マイクロタイタープレート(プレート1)のウェル上にコーティングし、次いで、そのウェルを、ダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水(DPBS)中に希釈された2%のウシ血清アルブミン(BSA)の添加によりブロッキングする。第2のマイクロタイタープレート(プレート2)において、試験アンタゴニストをDPBS中の1% BSAで段階希釈する。ブロック後、プレート1を洗浄し、プレート2の内容物をプレート1に移す。Pセレクチン/hlg組換えキメラタンパク質(GlycoTech Corp.,Rockville,MD)を、プレート1の各ウェルにさらに添加し、その結合プロセスを、2時間室温にてインキュベートさせる。次いで、プレート1をDPBSで洗浄し、ペルオキシダーゼラベル化ヤギ抗ヒトIg(γ)(KPL Labs,Gaithersburg,MD)を1μg/mlで各ウェルに添加する。室温で1時間のインキュベーション後、そのプレートをDBPSで洗浄し、次いで、TMB基質(KPL Labs)を各ウェルに添加する。5分後、その反応を1M H3PO4の添加により停止させる。次いで、450nmでの吸光度を、マイクロタイタープレートリーダーにより決定する。
【0149】
本明細書中で引用しおよび/または出願データシートで列挙した上記米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および特許以外の刊行物の全ての内容は、それらの全体について、本明細書中で参考として援用されている。
【0150】
前述のことから、本発明の特定の実施態様は、本明細書中にて、例示の目的のために記述されているものの、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更を行い得ることが分かる。従って、本発明は、添付の請求の範囲を除いて、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1A】図1Aは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1B】図1Bは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1C】図1Cは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1D】図1Dは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1E】図1Eは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1F】図1Fは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1G】図1Gは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1H】図1Hは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1I】図1Iは、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の代表的なBASA成分の構造を示す。この図で図示した化合物は、BASA部分および類似物を含む。
【図1J−1】図1J−1は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図1J−2】図1J−2は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図1J−3】図1J−3は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図1J−4】図1J−4は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図1J−5】図1J−5は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図1J−6】図1J−6は、本明細書中で記述したセレクチン調節因子の好ましい糖模倣物化合物の構造を示す。
【図2】図2は、代表的なBASAの合成を図示しているダイアグラムである。
【図3】図3は、代表的なBASAの合成を図示しているダイアグラムである。
【図4】図4は、糖模倣物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図5】図5は、糖模倣物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図6A】図6Aは、糖模倣物前駆体の合成を図示しているダイアグラムである。
【図6B】図6Bは、図6Aの前駆体を使用することによる数種の糖模倣物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図7A】図7Aは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図7B】図7Bは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図8A】図8Aは、糖模倣物前駆体の合成を図示しているダイアグラムである。
【図8B】図8Bは、図8Aの前駆体を使用することによる数種の糖模倣物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図9A】図9Aは、糖模倣物前駆体の合成を図示しているダイアグラムである。
【図9B】図9Bは、図9Aの前駆体を使用することによる数種の糖模倣物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図10】図10は、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図11】図11は、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図12】図12は、BASA−スクアリン酸エステルの合成を図示しているダイアグラムである。
【図13】図13は、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図14】図14は、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図15A】図15Aは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図15B】図15Bは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図16A】図16Aは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【図16B】図16Bは、糖模倣物−BASA化合物の合成を図示しているダイアグラムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化1】
を有する化合物、またはその生理的に受容可能な塩であって、ここで:
R=Hまたはベンジルアミノスルホン酸であり;
R’=ベンジルアミノスルホン酸、
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
であり;
R’’=ベンジルアミノスルホン酸、
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
であり;そして
ここで、該化合物は、R、R’またはR’’にてベンジルアミノスルホン酸を有するが、R、R’およびR’’の1個より多くでは、ベンジルアミノスルホン酸を有しない、
化合物。
【請求項2】
Rが、ベンジルアミノスルホン酸である、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
R’’が、−OHである、請求項2に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
R’が、−OHではない、請求項2に記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
Rが、Hであり、そしてR’が、ベンジルアミノスルホン酸である、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
R’’が、−OHではない、請求項5に記載の化合物またはその塩。
【請求項7】
Rが、Hであり、そしてR’’が、ベンジルアミノスルホン酸である、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
R’が、−OHではない、請求項7に記載の化合物またはその塩。
【請求項9】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせて、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含有する、組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含み、さらに、診断因子または治療因子を含む、化合物またはその生理的に受容可能な塩。
【請求項11】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせて、請求項10に記載の化合物またはその塩を含有する、組成物。
【請求項12】
セレクチン媒介性機能を調節する方法であって、該セレクチン機能を調節するのに有効な量で、セレクチンを発現する細胞を、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項13】
セレクチン媒介性機能を調節する方法であって、セレクチンを発現する細胞を、該セレクチン機能を調節するのに有効な量の請求項9に記載の組成物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項14】
患者を処置する方法であって、過剰なセレクチン媒介性機能に関連した状態の発症を阻止する必要がある患者に、このような状態の発症を阻止するのに有効な量で、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
患者を処置する方法であって、過剰なセレクチン媒介性機能に関連した状態の発症を阻止する必要がある患者に、このような状態の発症を阻止するのに有効な量で、請求項9に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項16】
移植した組織の拒絶を阻止する方法であって、移植した組織の受容者である患者に、該移植した組織の拒絶を阻止するのに有効な量で、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を投与する工程を包含する、方法。
【請求項17】
移植した組織の拒絶を阻止する方法であって、移植した組織の受容者である患者に、該移植した組織の拒絶を阻止するのに有効な量で、請求項9に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項18】
薬剤をセレクチン発現細胞に標的化する方法であって、セレクチンを発現する細胞を、該細胞に診断因子または治療因子を標的化するのに有効な量の請求項10に記載の化合物またはその塩と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項19】
薬剤をセレクチン発現細胞に標的化する方法であって、セレクチンを発現する細胞を、該細胞に診断因子または治療因子を標的化するのに有効な量の請求項11に記載の組成物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項20】
セレクチン媒介性機能を調節する方法で使用するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物。
【請求項21】
セレクチン媒介性機能を調節する医薬の調製における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項22】
過剰なセレクチン媒介性機能に関連した状態の発症を阻止する方法で使用するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物。
【請求項23】
過剰なセレクチン媒介性機能に関連した状態の発症を阻止する医薬の調製における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項24】
移植した組織の拒絶を阻止する方法で使用するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物。
【請求項25】
移植した組織の拒絶を阻止する医薬の調製における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項26】
診断因子または治療因子をセレクチン発現細胞に標的化する方法で使用するための、請求項10に記載の化合物またはその塩、または請求項11に記載の組成物。
【請求項27】
診断因子または治療因子をセレクチン発現細胞に標的化する医薬の調製における、請求項10に記載の化合物またはその塩、または請求項11に記載の組成物の使用。
【請求項1】
次式:
【化1】
を有する化合物、またはその生理的に受容可能な塩であって、ここで:
R=Hまたはベンジルアミノスルホン酸であり;
R’=ベンジルアミノスルホン酸、
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
であり;
R’’=ベンジルアミノスルホン酸、
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
であり;そして
ここで、該化合物は、R、R’またはR’’にてベンジルアミノスルホン酸を有するが、R、R’およびR’’の1個より多くでは、ベンジルアミノスルホン酸を有しない、
化合物。
【請求項2】
Rが、ベンジルアミノスルホン酸である、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
R’’が、−OHである、請求項2に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
R’が、−OHではない、請求項2に記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
Rが、Hであり、そしてR’が、ベンジルアミノスルホン酸である、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
R’’が、−OHではない、請求項5に記載の化合物またはその塩。
【請求項7】
Rが、Hであり、そしてR’’が、ベンジルアミノスルホン酸である、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
R’が、−OHではない、請求項7に記載の化合物またはその塩。
【請求項9】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせて、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含有する、組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含み、さらに、診断因子または治療因子を含む、化合物またはその生理的に受容可能な塩。
【請求項11】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせて、請求項10に記載の化合物またはその塩を含有する、組成物。
【請求項12】
セレクチン媒介性機能を調節する方法であって、該セレクチン機能を調節するのに有効な量で、セレクチンを発現する細胞を、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項13】
セレクチン媒介性機能を調節する方法であって、セレクチンを発現する細胞を、該セレクチン機能を調節するのに有効な量の請求項9に記載の組成物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項14】
患者を処置する方法であって、過剰なセレクチン媒介性機能に関連した状態の発症を阻止する必要がある患者に、このような状態の発症を阻止するのに有効な量で、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
患者を処置する方法であって、過剰なセレクチン媒介性機能に関連した状態の発症を阻止する必要がある患者に、このような状態の発症を阻止するのに有効な量で、請求項9に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項16】
移植した組織の拒絶を阻止する方法であって、移植した組織の受容者である患者に、該移植した組織の拒絶を阻止するのに有効な量で、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を投与する工程を包含する、方法。
【請求項17】
移植した組織の拒絶を阻止する方法であって、移植した組織の受容者である患者に、該移植した組織の拒絶を阻止するのに有効な量で、請求項9に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項18】
薬剤をセレクチン発現細胞に標的化する方法であって、セレクチンを発現する細胞を、該細胞に診断因子または治療因子を標的化するのに有効な量の請求項10に記載の化合物またはその塩と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項19】
薬剤をセレクチン発現細胞に標的化する方法であって、セレクチンを発現する細胞を、該細胞に診断因子または治療因子を標的化するのに有効な量の請求項11に記載の組成物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項20】
セレクチン媒介性機能を調節する方法で使用するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物。
【請求項21】
セレクチン媒介性機能を調節する医薬の調製における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項22】
過剰なセレクチン媒介性機能に関連した状態の発症を阻止する方法で使用するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物。
【請求項23】
過剰なセレクチン媒介性機能に関連した状態の発症を阻止する医薬の調製における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項24】
移植した組織の拒絶を阻止する方法で使用するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物。
【請求項25】
移植した組織の拒絶を阻止する医薬の調製における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、または請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項26】
診断因子または治療因子をセレクチン発現細胞に標的化する方法で使用するための、請求項10に記載の化合物またはその塩、または請求項11に記載の組成物。
【請求項27】
診断因子または治療因子をセレクチン発現細胞に標的化する医薬の調製における、請求項10に記載の化合物またはその塩、または請求項11に記載の組成物の使用。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J−1】
【図1J−2】
【図1J−3】
【図1J−4】
【図1J−5】
【図1J−6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J−1】
【図1J−2】
【図1J−3】
【図1J−4】
【図1J−5】
【図1J−6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【公表番号】特表2007−524658(P2007−524658A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541392(P2006−541392)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/038782
【国際公開番号】WO2005/054264
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506167421)グリコミメティクス, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/038782
【国際公開番号】WO2005/054264
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506167421)グリコミメティクス, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]