説明

E型肝炎ウイルス抗原およびその使用

【課題】腸を介して伝染する非A非B型肝炎ウイルス因子(本明細書中では、E型肝炎ウイルス(HEV)ともいう)に由来する抗原、ならびにそのような抗原を用いる診断方法、診断アッセイ、ワクチン組成物およびワクチン方法の提供。
【解決手段】E型肝炎ウイルス(HEV)オープンリーディングフレーム(ORF)2のカルボキシ末端の549アミノ酸に由来する少なくとも1つのポリペプチドであって、ORF2の全661アミノ酸を含まないポリペプチドを含有する、HEVポリペプチド組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腸を介して伝染する非A非B型肝炎ウイルス因子(本明細書中では、E型肝炎ウイルス(HEV)ともいう)に由来する抗原、ならびにそのような抗原を用いる診断方法、診断アッセイ、ワクチン組成物およびワクチン方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【数1】

【0003】
【数2】

【0004】
【数3】

【0005】
発明の背景
腸を介して伝染する非A/非B型肝炎ウイルス因子(ET-NANB;本明細書中でHEVともいう)は、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、メキシコ、およびインド亜大陸でのいくつかの流行および散発的事例における肝炎の報告された原因である。感染は通常、便で汚染された水によるが、ヒトからヒトへの伝染の証拠がいくつか存在する。このウイルスは慢性感染を引き起こさないようである。ET-NANBにおけるウイルス性の病因は、ボランティアがプールされた糞便単離体で感染することによって示された。免疫電子顕微鏡検査(IEM)研究により、感染個体からの大便中に直径27〜34nmのウイルス粒子が示された。このウイルス粒子は、地理的に異なる地域の感染個体に由来する血清中の抗体と反応した。このことは、1つのウイルス因子またはクラスが世界中で見られる大部分のET-NANB肝炎の原因であることを示唆する。非経口的に伝染するNANBウイルス(C型肝炎ウイルスまたはHCVとしても知られる)に感染した個体に由来する血清において抗体反応は観察されなかった。このことは、2つのNANBタイプの間で特異性が異なることを示す。
【0006】
血清学的な差異に加えて、2つのタイプのNANB感染は、別の臨床的な差異を示す。ET-NANBは特徴的には急性感染であり、しばしば発熱および関節痛に関係し、そして肝臓生検標本における門脈炎症および連合胆汁鬱滞(associatedbile stasis)に関係する(Arankalle、1988)。症状は通常6週間以内に解消する。これとは対照的に、非経口的に伝染するNANBは、症例の約50%で慢性感染を生じる。発熱および関節痛は滅多に見られず、そして炎症は実質に優勢に分布する(Khuroo、1980)。ET-NANBHの経過は一般に健常個体において何事もない。そして、感染個体の大多数はHCVで見られる慢性続発症を伴うことなく回復する。しかし、場合によっては、ヒトボランティアによって最近示されたように、疾患の経過は重篤であり得る(Chauhan1993)。この疾患の1つの特異な疫学的特徴は、妊婦で観察される著しく高い死亡率である。しかしこれは、多くの研究で、10〜20%のオーダーであると報告されている(Khuroo1981、Reyes 1993)。この知見は多くの疫学的研究で見られているが、現時点では、説明できないままである。これがウイルスの病原性に反映するのか、ウイルスと免疫抑制(妊娠)宿主との相互作用の致死的な因果関係に反映するのか、または罹患しやすい栄養失調集団の衰弱した胎児の健康の反映に反映するのかは明確にされるべきことのままである。
【0007】
2つのウイルス因子はまた、霊長類宿主の罹患性に基づいて区別され得る。ET-NANBはカニクイザルに伝染し得るが、非経口的に伝染する因子はカニクイザルに伝染し得ない。非経口的に伝染する因子は、ET-NANBより容易にチンパンジーに伝染する(Bradley、1987)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(項目1)E型肝炎ウイルス(HEV)オープンリーディングフレーム(ORF)2のカルボキシ末端の549アミノ酸に由来する少なくとも1つのポリペプチドを含有する、HEVポリペプチド組成物。
(項目2)前記少なくとも1つのポリペプチドが、前記549アミノ酸のHEV ORF2ポリペプチドの約24カルボキシ末端アミノ酸までのカルボキシ末端欠失を含む、項目1に記載のポリペプチド組成物。
(項目3)前記組成物が、配列番号15に示される配列または該配列と相同な配列を有するポリペプチドを含有する、項目1に記載のポリペプチド組成物。
(項目4)前記組成物が、配列番号16に示される配列または該配列と相同な配列を有するポリペプチドを含有する、項目1に記載のポリペプチド組成物。
(項目5)前記組成物が、配列番号25に示される配列または該配列と相同な配列を有するポリペプチドを含有する、項目1に記載のポリペプチド組成物。
(項目6)前記組成物が、配列番号26に示される配列または該配列と相同な配列を有するポリペプチドを含有する、項目1に記載のポリペプチド組成物。
(項目7)前記組成物が、配列番号27に示される配列または該配列と相同な配列を有するポリペプチドを含有する、項目1に記載のポリペプチド組成物。
(項目8)前記組成物が、配列番号28に示される配列または該配列と相同な配列を有するポリペプチドを含有する、項目1に記載のポリペプチド組成物。
【0009】

(項目9)前記組成物が、配列番号25および配列番号27に示される配列、またはこれらの配列と相同な配列を有する2つのポリペプチドを含有する、項目1に記載のポリペプチド組成物。
(項目10)前記組成物が、配列番号26および配列番号28に示される配列、またはこれらの配列と相同な配列を有する2つのポリペプチドを含有する、項目1に記載のポリペプチド組成物。
(項目11)項目1から10のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、実質的に単離された核酸配列。
(項目12)項目1から10のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、E型肝炎ウイルスポリペプチド抗原組成物を作製するための発現ベクターであって、
該核酸配列は発現ベクター中に挿入され、該核酸配列は選択された宿主細胞において転写を開始し得るプロモーターに作動可能に連結される、
発現ベクター。
(項目13)項目1から10のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、E型肝炎ウイルスポリペプチド抗原組成物を作製するための発現系であって、
該核酸配列は発現ベクター中に挿入され、該核酸配列は選択された宿主細胞において転写を開始し得るプロモーターに作動可能に連結され、そして該発現ベクターは該宿主細胞内に保持される、
発現系。
(項目14)前記発現ベクターがバキュロウイルス発現ベクターであり、そして前記宿主細胞が昆虫細胞である、項目13に記載の発現系。
(項目15)E型肝炎ウイルス(HEV)ポリペプチド組成物であって、以下の工程:
項目12に記載の発現ベクターを含む昆虫細胞を、前記核酸によりコードされるポリペプチドを発現させるに十分な条件下で培養する工程、
を包含するプロセスによって作製される、組成物。
(項目16)前記組成物の少なくとも1つのポリペプチドが、配列番号15、配列番号16、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、およびそれらと相同な配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、項目15に記載の組成物。
(項目17)E型肝炎ウイルス(HEV)ポリペプチド組成物であって、以下の工程:
a)HEVキャプシドタンパク質の少なくとも549個のカルボキシ末端アミノ酸を有するHEVキャプシド由来抗原を得る工程;および
b)該抗原と、バキュロウイルスに感染した溶解物とを、該HEVキャプシド由来抗原のカルボキシ末端配列を切断するに十分な条件下でインキュベートする工程、
を包含するプロセスによって作製される、組成物。
(項目18)E型肝炎ウイルス(HEV)ポリペプチド組成物を作製する方法であって、以下の工程:
項目12に記載の発現ベクターを含む細胞を、前記核酸によりコードされるポリペプチド配列を発現させるに十分な条件下で培養する工程、
を包含する、方法。
(項目19)個体におけるE型肝炎ウイルス感染を検出する方法であって、以下の工程:
a)該個体から採取した血清サンプルを、項目1から10のいずれかに記載のE型肝炎ウイルス(HEV)ポリペプチド組成物と反応させる工程;および
b)該組成物のポリペプチドを結合抗体の存在について検査する工程、
を包含する、方法。
(項目20)前記HEVポリペプチド組成物のポリペプチドが固体支持体に結合し、前記反応させる工程が、前記血清と該支持体とを接触させることを包含し、そして前記検査する工程が、該支持体および結合抗体とレポーター標識抗ヒト抗体とを反応させることを包含する、項目19に記載の方法。
(項目21)個体から採取した血清サンプルにおけるHEVに対する抗体の存在を確認するためのキットであって、
表面に結合した抗原を有する固体支持体、ここで該表面に結合した抗原は項目1から10のいずれかに記載のHEVポリペプチド組成物のポリペプチドである、
を含む、キット。
(項目22)個体をE型肝炎ウイルス(HEV)に対して免疫することに使用されるワクチン組成物であって、
薬理学的に受容可能なキャリアー中の項目1から10のいずれかに記載のHEVポリペプチド組成物、
を含有する、ワクチン組成物。
(項目23)前記HEVポリペプチド組成物の少なくとも1つのポリペプチドが、配列番号15、配列番号16、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、およびそれらと相同な配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、項目22に記載のワクチン組成物。
(項目24)HEVによる個体の感染を阻害する方法であって、
該個体に項目21または22のいずれかに記載のワクチン組成物を、治療上有効な量で投与する工程、
を包含する、方法。
(発明の要旨)
本発明は、E型肝炎ウイルス(HEV)のオープンリーディングフレーム(ORF)2のカルボキシ末端の549アミノ酸に由来する少なくとも1つのポリペプチドからなるHEVポリペプチド組成物を包含する。この組成物は、この領域に対応するポリペプチドであって、549アミノ酸ポリペプチドのカルボキシ末端からアミノ酸を欠失したポリペプチドを含み得る。1つの実施態様において、この組成物の少なくとも1つのポリペプチドは、上記549アミノ酸のHEVORF2ポリペプチドの約24カルボキシ末端アミノ酸までのカルボキシ末端欠失を含む。例示的なポリペプチドには、以下の配列:配列番号15、配列番号16、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、および本明細書中に示される配列と相同な配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0010】
1つの実施態様において、本発明の組成物(「62K抗原」)は、少なくとも2つのこのようなポリペプチド、例えば、配列番号25および配列番号27、あるいは配列番号26および配列番号28に示される配列(相同配列も含む)を有する2つのポリペプチドを含む。
【0011】
本発明は、実質的に単離された、HEVオープンリーディングフレーム2のカルボキシ末端の549アミノ酸に由来するポリペプチドをコードする核酸配列をさらに包含する。例示的な核酸配列には、配列番号3、配列番号4およびこれらに相同な配列が含まれる。
【0012】
別の実施態様において、本発明は、E型肝炎ウイルスポリペプチド抗原組成物を産生するための発現ベクターを包含する。このようなベクターは、HEVオープンリーディングフレーム2のカルボキシ末端の549アミノ酸に由来するポリペプチドをコードする核酸配列であって、(i)発現ベクター中に挿入され、そして(ii)選択された宿主細胞において転写を開始し得るプロモーターに作動可能に連結される核酸配列を含む。発現ベクターは、この発現ベクターが適切な宿主細胞に保持されている発現系に含まれ得る。ここで、この宿主細胞は、本発明のポリペプチドの発現を可能にする。1つの実施態様において、この発現系は、宿主細胞が昆虫細胞であるバキュロウイルス発現ベクターを含む。多くの有用な発現ベクターおよび発現系が当業者に公知であり、そして本明細書中に記載されている。
【0013】
さらなる実施態様において、本発明は、上記のような発現ベクターを含む昆虫細胞を、E型肝炎ウイルス(HEV)オープンリーディングフレーム2のカルボキシ末端の549アミノ酸に由来するポリペプチドを発現させるに十分な条件下で培養することによって産生されるHEVポリペプチド組成物を包含する。このような組成物は、配列番号15、配列番号16、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、およびこれらと相同な配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。
【0014】
さらに別の実施態様において、本発明は、E型肝炎ウイルス(HEV)キャプシドタンパク質の少なくとも549個のカルボキシ末端アミノ酸を有するHEVキャプシド由来抗原を、バキュロウイルスに感染した溶解物とともに、このHEVキャプシド由来抗原のカルボキシ末端配列を切断するに十分な条件下でインキュベートすることによって産生されるHEVポリペプチド組成物を包含する。
【0015】
本発明はまた、E型肝炎ウイルス(HEV)ポリペプチド組成物(「62K抗原」)を産生する別の方法を包含する。この方法において、上記の発現ベクターのうちの1つを含む細胞が、HEVオープンリーディングフレーム2のカルボキシ末端の549アミノ酸に由来するポリペプチドを発現させるに十分な条件下で培養される。
【0016】
本発明はさらに、個体におけるE型肝炎ウイルスの感染を検出する方法を包含する。この方法において、E型肝炎ウイルス(HEV)オープンリーディングフレーム(ORF)2のカルボキシ末端の549アミノ酸に由来する少なくとも1つのポリペプチドからなるHEVポリペプチド組成物は、個体から採取した血清サンプルと反応させられる。次いで、HEVポリペプチドは、結合した抗体の存在について検査される。この方法において、HEVポリペプチド組成物のポリペプチドは、固体支持体に結合され、上記反応工程はこのような血清をこの支持体と接触させることを包含し、そして上記検査工程は、この支持体および結合した抗体をレポーター標識抗ヒト抗体と反応させることを包含する。本発明はまた、個体から採取した血清サンプルにおけるHEVに対する抗体の存在を確かめるためのキットを包含する。代表的には、このキットは、表面に結合した抗原を有する固体支持体を含む。ここで、この表面に結合した抗原は、本明細書中に記載されるHEVポリペプチド(「62K抗原」)組成物のポリペプチドである。
【0017】
さらに、本発明は、本発明のHEVポリペプチド抗原を用いるワクチン組成物を包含する。個体をE型肝炎ウイルス(HEV)に対して免疫することに使用されるワクチン組成物は、HEVオープンリーディングフレーム(ORF)2のカルボキシ末端の549アミノ酸に由来する少なくとも1つのポリペプチドを含む。本発明のポリペプチドは、薬学的に受容可能なキャリア中に処方され得る。このワクチンは、この領域に対応するポリペプチドであって、549アミノ酸ポリペプチドのカルボキシ末端からアミノ酸を欠失させられたポリペプチドを含み得る。1つの実施態様において、ワクチン組成物の少なくとも1つのポリペプチドは、上記549アミノ酸のHEVORF2ポリペプチドの約24カルボキシ末端アミノ酸までのカルボキシ末端欠失を含む。例示的なポリペプチドには、以下の配列:配列番号15、配列番号16、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、および本明細書中に示される配列と相同な配列が含まれるが、これらに限定されない。本発明はまた、HEVによる個体の感染を阻害する方法を包含する。この方法において、本発明のワクチン組成物は、治療上有効な量を使用して被験体に投与される。
【0018】
本発明はまた、上記の方法の実施に使用されるための、本発明のHEVポリペプチド組成物のポリペプチドを含むキットを包含する。
【0019】
さらなる実施態様において、本発明は、E型肝炎ウイルス(HEV)オープンリーディングフレーム(ORF)2のカルボキシ末端の549アミノ酸に由来する少なくとも1つのポリペプチドからなるHEVポリペプチド組成物であって、この組成物のポリペプチドがウイルス様粒子(VLP)を形成し得るHEVポリペプチド組成物を包含する。
【0020】
本発明のこれらおよび他の目的ならび特徴は、以下の発明の詳細な説明を添付の図面とともに読む場合、より十分に理解されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明の詳細な説明
I.定義
下記で定義される用語は、本明細書中では以下の意味を有する:
A.「腸を介して伝染する非A/非B型肝炎ウイルス因子」、「E型肝炎ウイルス」または「HEV」は、(i)水媒介性の感染性肝炎を引き起こし、(ii)カニクイザルにおいて伝染可能であり、(iii) 血清学的に、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、およびD型肝炎ウイルスと異なり、そして(iv)ATCC寄託番号67717により同定されるE.coliBB4株が有するプラスミドpTZKF1(ET1.1) 中の1.33 kb cDNA挿入物と相同なゲノム領域を含むウイルス、ウイルスタイプ、またはウイルスクラスを意味する。
【0022】
B.「HEV変異体」は、本明細書中に開示される公知のHEVポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号1または2)をに対する、少なくとも約40%、好ましくは50%、あるいはより好ましくは70%の全配列相同性(すなわち、所定の長さのウイルスゲノムポリヌクレオチド配列(例えばORF2)にわたる配列同一性)を有するウイルス単離体として定義される。
【0023】
「配列相同性」は本質的に以下のように決定される。同一の長さ(好ましくはウイルスゲノム全体)の2つのポリヌクレオチド配列は、これらがALIGNプログラムを用いて整列されるとき、最も高い得点の整列(alignment)において、核酸の40%、好ましくは50%、またはより好ましくは70%より多くが、ktupを1とすること、デフォルトパラメーター(defaultparameter)およびデフォルトPAMマトリックスを用いて同一に整列される場合、互いに相同とみなされる。
【0024】
ALIGNプログラムは、配列比較プログラムのFASTAバージョン1.7セットに見出される(Pearsonら、1988;Pearson、1990;WilliamR. Pearson (Department of Biological Chemistry, Box 440, Jordan Hall,Charlottesville, VA)から入手可能なプログラム)。
【0025】
2つのウイルスが互いに「高度に相同」であるかどうかを決定する際、一方のウイルスの全てのウイルスタンパク質の完全な配列は、ktupを1とすること、デフォルトパラメーターおよびデフォルトPAMマトリックスを用いて上記セットのALIGNプログラムを用いて、他方のウイルスのウイルスタンパク質またはポリタンパク質と最適に、全体的に整列させられる。非類似または類似の領域はこの分析から除外されない。2つの配列の間の長さの相違は、ミスマッチとみなされる。あるいは、ウイルスの構造タンパク質領域は、代表的に、ウイルス単離体間の関連性を決定するために使用される。高度に相同なウイルスは、40%、あるいは好ましくは50%、あるいはより好ましくは70%を越える全体的なポリペプチド配列同一性を有する。
【0026】
C.2つの核酸フラグメントは、以下の条件下で、これらが、(1)HEVまたはその変異体に特異的にハイブリダイズし得るか、または(2)ポリメラーゼ連鎖反応を特異的にプライムし得る場合、HEVポリヌクレオチドに「選択的にハイブリダイズ可能」であるとみなされる:(i)例えば、Maniatisら、320-328頁、および382-389頁に記載されているような代表的なハイブリダイゼーション条件下および洗浄条件下、(ii)多くて約25〜30%の塩基対ミスマッチを可能にする低いストリンジェンシー洗浄条件(例えば:2×SSC、0.1%SDS、室温で2回、30分間ずつ;続いて、2×SSC、0.1%SDS、37℃で1回、30分間;続いて、2×SSC、室温で2回、10分間ずつ)を用いること、または(iii)標準的条件(例えば、Saiki, R.Kら;Mullis;Mullisら)下での代表的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR;これはHEVまたはその変異体の配列の特異的増幅を生じる)における使用のためのプライマーを選択すること。
【0027】
上記で議論した相同性(配列相同性)の程度は、当該分野で周知のように、遺伝子ライブラリー(または遺伝子物質の他の供給源)由来のクローンの同定のために、適切なストリンジェンシーの洗浄条件を用いるハイブリダイゼーションにより選択され得る。
【0028】
D.「HEVポリペプチド」は、本明細書中で、HEVポリペプチドに相同な任意のポリペプチドとして定義される。本明細書中で使用されている「相同性」は以下のように定義される。1つの実施態様では、ポリペプチドは、これがHEVまたはその変異体の配列に選択的にハイブリダイズする核酸によりコードされる場合、HEVポリペプチドに相同である。
【0029】
別の実施態様では、ポリペプチドは、上記で定義されるように、これがHEVまたはその変異体によりコードされる場合、HEVポリペプチドに相同である。このグループのポリペプチドは、代表的には、15個、好ましくは25個、またはより好ましくは35個より長い連続するアミノ酸である。さらに、約60アミノ酸より長いポリペプチドについては、「ポリペプチド相同性」を決定する目的のための配列比較は、局所整列プログラムLALIGNを用いて行われる。このポリペプチド配列は、HEVアミノ酸配列またはその任意の変異体に対して、上記で定義されたように、ktupを1とすること、デフォルトパラメーターおよびデフォルトPAMでLALIGNプログラムを用いて比較される。
【0030】
60アミノ酸より長く最適に整列され、そして40%、好ましくは50%、またはより好ましくは70%以上のアミノ酸が同一的に整列されたポリペプチドはいずれも、「相同ポリペプチド」であるとみなされる。LALIGNプログラムは、配列比較プログラムのFASTAバージョン1.7セットに見出される(Pearsonら、1988;Pearson、1990;WilliamR. Pearson(Department of Biological Chemistry, Box 440, Jordan Hall,Charlottesville, VA)から入手可能なプログラム)。
【0031】
E.ポリヌクレオチドは、これが、HEVゲノムの領域、HEVのcDNAまたはそれらの相補体と同じまたは実質的に同じ塩基対配列を有する場合、あるいはこれが上記の「B」または「C」に記載のような相同性を示す場合、HEV「に由来する」。
【0032】
ポリペプチドまたはポリペプチド「フラグメント」は、これが、(i)HEVポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームによりコードされるか、または(ii)上記の「B」および「D」に記載のようなHEVポリペプチドに対して相同性を示すか、または(iii)HEV陽性血清と特異的に免疫反応する場合、HEV「に由来する」。
【0033】
F.本発明の文脈で、用語「核酸配列」は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする配列をいう場合、相同なタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド配列、および開示された配列をコードする縮重核酸配列を包含することを意味する。
【0034】
G.「エピトープ」は、特異的抗体の抗原結合部分が相互作用する抗原の特異的部分として定義される抗原性決定基である。用語「免疫原性領域」または「エピトープ」は、互換可能に使用される。
【0035】
H.抗原またはエピトープは、エピトープ/抗原がHEV感染血清に存在する抗体と結合するが、HEVに感染していないか、または感染したことがない個体由来の血清の大部分(約90%以上、好ましくは95%以上)に存在する抗体と結合しない場合、HEV陽性血清と「特異的に免疫反応性」である。「特異的に免疫反応性」の抗原またはエピトープはまた、特定のHEVエピトープまたは抗原に対して産生されるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体と免疫反応性であり得る。
【0036】
抗体または抗体組成物(例えば、ポリクローナル抗体)は、この抗体または抗体組成物がHEV抗原と免疫反応性であるが、関連のない肝炎ウイルス(例えば、HAV、HBV、HCV、またはHDV)抗原と免疫反応性でない場合、HEVと「特異的に免疫反応性」である。さらに、「特異的に免疫反応性の抗体」は、正常な血清に代表的に存在する抗原と免疫反応性でない。
【0037】
I.アミノ酸配列が、約70%以上相同である2またはそれ以上の公知のペプチド配列において、第3番目のアミノ酸配列中の各アミノ酸がその公知配列中の少なくとも1つのアミノ酸と一致する場合、第3番目の配列は、「この公知配列と内部で一致」する。
【0038】
J.所定のアミノ酸配列「によって形成されたエピトープ」は、水溶液中でのその配列の2次/3次構造によって生成されたエピトープである。
【0039】
K.「抗原結合部位」は、抗原の結合に直接関与している抗体の可変領域内に含まれるその抗体分子の領域である。
【0040】
L.特定された、特定されたアミノ酸配列「によって形成されるエピトープを含有するペプチド抗原」は、特定された配列自身、または特定された配列に存在するエピトープを規定するのに十分な(ヒト血清サンプルに含まれる抗体に対する免疫反応性によって証明される)その配列の部分を含む。特定されたペプチド抗原は、エピトープを保存するアミノ酸置換を含み得る。
【0041】
M.「実質的に単離された」および「精製された」とは、いくつかの文脈においておよび代表的には、無関係な成分または汚染成分(例えば、血清細胞、タンパク質、非HEVポリヌクレオチドおよび非抗HEV抗体)からの、HEVウイルス粒子、成分(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)、または関係する化合物(例えば、抗HEV抗体)の少なくとも部分的な精製をいうために使用する。目的の化合物または成分の単離もしくは精製のための方法および手順を以下に記載する(例えば、タンパク質の精製およびHEVポリペプチドの組換え産生)。
【0042】
N.「62K抗原」は、タンパク質またはタンパク質の混合物の一般名であり、ここで、このタンパク質またはタンパク質の混合物は、HEVORF2によってコードされるカルボキシ末端の549アミノ酸に由来する(例えば、配列番号15または16、あるいはこれらに対して相同な配列)。得られたタンパク質は、549アミノ酸タンパク質に匹敵するアミノ末端およびカルボキシ末端からの約24アミノ酸までの欠失を有し得る(配列番号25、26、27、および28)。
【0043】
他の変異体のカルボキシ末端アミノ酸配列由来の類似するタンパク質は、その変異体と、例えば、Burma または Mexico 変異体(PCT 国際出願 US91/02368 (出願日 1991年4月5日);1989年6月16日に出願されたPCT国際出願 US89/02648 (WO 89/12462)、双方とも本明細書中で参考として援用される))との整列によって決定され得る。
【0044】
例示的な「62K抗原」ポリペプチドは、以下に記したBurmaおよび Mexico HEV 変異体由来のポリペプチドを含む:配列番号15/16、配列番号25/26、および配列番号27/28またはそれらと相同な配列。さらに、「62K抗原」は、このようなポリペプチドの混合物、例えば、配列番号25および配列番号27として配列が与えられるポリペプチドを含有する調製物を含む。
【0045】
549アミノ酸より長いタンパク質は、それらがHEVORF2によりコードされる正確に特定されたカルボキシ末端配列を含有する限り、「62K 抗原」の意味に含まれる。例えば、再遺伝子操作した 62K抗原「r62K」は、随意にN末端メチオニンを有し得る;すなわち、550アミノ酸配列である。あるいは、62K抗原は、(例えば、β−ガラクトシダーゼをコードする配列に加えてHEV ORF2のカルボキシ末端の549アミノ酸配列を含む)融合タンパク質として生成され得る。
【0046】

II. HEV抗原
この項は、本発明に従う診断薬およびワクチン組成物に有用なHEV抗原の調製方法を記載する。
【0047】
A. HEVゲノム配列
HEVゲノムクローンおよび異なるHEV株についての全HEVゲノムに対応する配列は、公開された方法(Huang1992, Yarbough 1991)に従い、そしてPCT国際出願 US91/02368(1991年4月5日出願)およびPCT国際出願US89/02648(1989年6月16日出願、WO 89/12462)(両方の記載は、本明細書に参考として援用されている)に記載されるように得られた。簡単に述べると、既知のHEV感染症を有するカニクイザルの胆汁から単離されたRNAを、cDNAフラグメントとしてクローン化してフラグメントライブラリーを作成し、そのライブラリーを、感染および非感染の胆汁供給源由来の放射標識cDNAとの鑑別ハイブリダイゼーションによってスクリーニングした。
【0048】
同定クローン中のHEVフラグメントのクローン化領域の塩基対配列を、標準的な配列決定法によって決定した。図1を参照して、HEVは、約7.5キロベース(kb)の一本鎖でポリアデニル化された正センス極性(positive-sensepolarity)RNAゲノムを有するウイルスである。3つのオープンリーディングフレーム(ORF)は、RNA依存性RNAポリメラーゼのドメインを有するポリペプチドおよびヘリカーゼをコードするORF1、ウイルスの推定キャプシドタンパク質をコードするORF2、および第2の推定構造タンパク質をコードするORF3としてHEVに割り当てられている。
【0049】
HEVのゲノム構成は、3'末端に構造遺伝子を有し、5'末端にその非構造遺伝子を割り当てる。サイズが約2.0kbおよび3.7 kbの2つのサブゲノムポリアデニル化転写物は、感染肝臓に検出され、それらの3'末端で7.5 kbの完全長ゲノム転写物と共に終止する。HEVのゲノム構成および発現ストラテジーは、HEVが、新しいクラスのRNAウイルスあるいはおそらくCaliciviridae科の別の属のプロトタイプのヒト病原体であり得ることを示唆する。
【0050】
図2に示されているゲノム配列およびペプチド配列は、HEVのBurma株(B)(上段の列)およびMexico株(M)(下段の列)のORF-2およびORF-3領域に対応する。中段の列に示されている塩基は、保存ヌクレオチドを示す。比較に使用されている番号付けシステムは、Burma配列に基づく。ORF2に対応する領域は、Burma株およびMexico株に対して、それぞれ配列番号1および配列番号2を有する。62kDa抗原に対応する領域は、Burma株およびMexico株に対して、それぞれ配列番号3および配列番号4を有する。SG3に対応する領域は、Burma株およびMexico株に対して、それぞれ配列番号5および配列番号6を有する。406.3-2に対応する領域は、Burma株およびMexico株に対して、それぞれ配列番号7および配列番号8を有する。ORF3に対応する領域は、Burma株およびMexico株に対して、それぞれ配列番号9および配列番号10を有する。406.4-2に対応する領域は、Burma株およびMexico株に対して、それぞれ配列番号11および配列番号12を有する。
【0051】
B. HEV抗原配列
HEVのBurma株およびMexico株の第3および第2のオープンリーディングフレームに対応するアミノ酸配列を、それぞれ図3および4に示す。示されている配列表は以下の通りである。
【0052】
配列番号13および配列番号14は、それぞれ、Burma株およびMexico株のORF2によってコードされる全推定キャプシドタンパク質に対するアミノ酸配列に対応する。
【0053】
配列番号15および配列番号16は、それぞれ、Burma株およびMexico株のORF2由来の62K抗原に対するアミノ酸配列に対応する。
【0054】
配列番号17および配列番号18は、それぞれ、ペプチドSG3(B)およびSG3(M)に対するアミノ酸配列に対応する。各ペプチドは、HEVキャプシドのカルボキシ側(carboxyl)の327アミノ酸を有する。
【0055】
配列番号19および配列番号20は、それぞれ、406.4-2(B)および406.4-2(M)に対するアミノ酸配列に対応する(図3)。これらは、ORF3によってコードされる33アミノ酸の配列である。
【0056】
配列番号21および配列番号22は、それぞれ、Burma株およびMexico株のORF3によってコードされる全タンパク質に対するアミノ酸配列に対応する。
【0057】
配列番号23および配列番号24は、それぞれ、406.3-2(B)および406.3-2(M)に対するアミノ酸配列に対応する。各ペプチドは、ORF2配列中に示されているように、ORF2によってコードされるキャプシドタンパク質のC末端領域中の42アミノ酸ペプチドである(図4)。
【0058】
HEV抗原の異なる株由来の上記の特定配列と内部で一致する配列もまた企図される。これらには、配列番号13;配列番号14;および配列番号13と配列番号14との間で内部で一致する変異体;配列番号15;配列番号16;および配列番号15と配列番号16との間で内部で一致する変異体;配列番号17;配列番号18;および配列番号17と配列番号18との間で内部で一致する変異体;配列番号19;配列番号20;および配列番号19と配列番号20との間で内部で一致する変異体;配列番号21;配列番号22;および配列番号21と配列番号22との間で内部で一致する変異体;配列番号23;配列番号24;および配列番号23と配列番号24との間で内部で一致する変異体が含まれる。
【0059】
例えば、HEV406.4-2抗原は、Burma株(B)およびMexico株(M)について図16に示される配列相同性を有する。配列比較中の一重点は、認識された高い確率または「中性」のアミノ酸置換を示す。空白は、非中性置換を示す。
【0060】
これらの2つの配列と内部で一致する配列は、配列番号31に示されている配列の1つを有する。
【0061】
長さが124アミノ酸の、Burma株およびMexico株についてのORF3アミノ酸配列は、124アミノ酸中87.1%の同一性を有する。659アミノ酸の重複を有するORF2アミノ酸配列は、659アミノ酸中93.0%の同一性を有する。
【0062】
C. HEV抗原の調製
406.3-2(M)ペプチドを調製するために、実施例1に記載されているλgt11406.3-2からのDNAフラグメントを、グルタチオンS-トランスフェラーゼベクターpGEXTMにサブクローン化して、実施例1および参考文献Tam(1991-b)に記載のように406.3-2(M)抗原を発現させた。
【0063】
406.3-2(B)抗原は、pBET1プラスミド(Tam1991-b)のPCR増幅による、上記からのBurma 配列番号5のPCR増幅によって調製され得る。このプラスミドは、Burma株のHEV配列に対するORF2およびORF3をカバーする2.3kbの挿入物を含有する。プラスミドは、NcoI部位を含む5'プライマーおよびBamHI部位を含む3'プライマーを使用するPCR増幅によって増幅する(Sakai)。増幅したフラグメントは、pGEXTMベクターのNcoI/BamHI部位に挿入され、実施例1に記載のように、E.coli発現系で発現される。
【0064】
SG3(B)ペプチドを、HEV(B)の全ORF2およびORF3領域を含有するpBET1クローンプラスミドを使用して、5'EcoRI-NcoIおよび3'BamHIリンカーを有する配列番号7配列を最初に増幅することによって調製した。増幅したフラグメントを、BluescriptTMベクター(Stratagene,La Jolla, CA)のEcoRI/BamHI部位に、製造業者の使用説明書に従って挿入した。ベクター増殖および回収後に、クローン化挿入物をNcoIおよびBamHIによる切断によって遊離させ、ゲル精製した。精製フラグメントをpGEXTMベクターのNcoI/BamHI部位に挿入し、実施例1に記載のようにE.coli発現系で発現させた。SG3(M)ペプチドは、配列番号7の代わりに配列番号8を使用して、同様に調製され得る。
【0065】
キャプシドタンパク質(B)を、NcoI部位を含む5'プライマーおよびBamHI部位を含む3'プライマーを使用して、pBET1プラスミドから、配列番号1のPCR増幅によって、実質的に上記に記載のように調製した。増幅したフラグメントをpGEXTMベクターのNcoI/BamHI部位に挿入し、実施例1に記載のようにE.coli発現系で発現させた。キャプシドタンパク質(M)を同様に調製する。
【0066】
406.4-2(M)ペプチドを調製するために、実施例1に記載されているλgt11406.4-2を、グルタチオンS-トランスフェラーゼベクターpGEXTMにサブクローン化して、実施例1に記載のように406.4-2(M)抗原を発現させた。
【0067】
406.4-2(B)抗原は、NcoI部位を含む5'プライマーおよびBamHI部位を含む3'プライマーを使用して、PCR増幅による上記からBurma配列番号9のPCR増幅によって調製され得る。増幅したフラグメントは、pGEXTMベクターのNcoI/BamHI部位に挿入され、実施例1に記載のようにE.coli発現系で発現される。
【0068】
D. 成熟キャプシドタンパク質
HEVペプチド抗原もまた、霊長類の肝臓、好ましくはヒトまたはカニクイザルの肝臓から得た初代肝細胞で増殖された精製HEVウイルスから得られ得る。培養用の初代霊長類肝細胞を調製する方法、および培養中長期間、肝臓に特異的な機能を保存するのに効果的な培養培地条件は、下記の実施例2において、ヒト肝細胞について詳述されている。
【0069】
培養における増殖の3日後に、実施例3に記載のように、HEV感染カニクイザルの大便プールのプールされた接種物に細胞を感染させる(第四継代)。細胞における増殖HEVウイルスの存在およびレベルは、間接免疫蛍光によって測定され得る。例えば、初代細胞が、カニクイザル細胞である場合、その細胞を、ヒトHEV抗血清と免疫反応させ得、続いて、ウサギ抗ヒトIgG抗体と免疫反応させ得る。
【0070】
あるいは、HEVウイルスは、実施例3に記載のように、初期cDNA形成を包含する選択増幅法、およびPCR増幅によるHEVcDNA配列のPCR増幅によって、検出および測定され得る。ウイルス粒子は、超遠心分離による30%スクロースクッションを通してのウイルスのペレット化によって、培養培地中のHEV感染ヒト肝細胞から単離され得る。所望であれば、ペレット化ウイルスは、10〜40%スクロース勾配を通してのゾーン遠心分離によって、さらに精製され、ピークのウイルス画分と合わせられ得る。
【0071】
可溶性培養培地成分からウイルス粒子を分離するその他の方法が、使用され得る。例えば、清澄化培養培地は、サイズ排除マトリックスに通され、サイズ排除により可溶性成分と分離され得る。
【0072】
あるいは、清澄化培養培地は、ウイルス粒子は残し得るが、溶質(非微粒子)の培養培地成分は通過させ得る、10〜20 nmの孔サイズを有する限外濾過メンブレンを通過させられ得る。
【0073】
本発明は、インタクトなHEVキャプシドタンパク質におけるグリコシル化およびその他の翻訳後改変を可能にする。ウイルス粒子からのキャプシド単離は、ウイルス粒子を、可溶化培地(例えば、非イオン性界面活性剤の溶液)中に可溶化後、標準的な方法、例えば、イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー、ならびにHPLC精製によって実施され得る。タンパク質は、例えば、抗HEV抗血清から精製された抗体を利用してのアフィニティークロマトゲラフィーによって、精製され得る。インタクトなキャプシドタンパク質(および、組換え産生タンパク質)から部分フラグメントおよびペプチドを得るために、分解プロセスを使用し得る。例えば、プロテアーゼが使用され得る。このような手順は、当業者に公知である。
【0074】
E. 昆虫細胞でのキャプシド抗原、切断された62K抗原、および組換え62K抗原の産生。
【0075】
この項は、昆虫細胞で産生される、完全長ORF2(73K)、ORF2の切断62K種(c62K)、およびORF2の再遺伝子操作された62K種(r62K)を記載する。
【0076】
1.昆虫細胞でのORF2の発現。
【0077】
例えば、バキュロウイルスベクターおよびバキュロウイルスDNAの処理および調製、ならびに昆虫細胞の培養手順の一般的な方法は、本明細書に参考として援用される、「バキュロウイルスベクターおよび昆虫細胞の培養手順の手引」(AManual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Cell Culture Procedures(Summers,M.D.ら、1988))に概説されている。組換えバキュロウイルスORF2-Autographica californica核ポリヘドロンウイルス(ORF2-rAcNPV)を、本明細書に参考として援用されている、He,J.ら、J.Clin. Microbiology, 31:2167(1993)に以前に記載されたように構築した。HEV ORF2タンパク質を発現する組換えバキュロウイルスORF2-rAcMNPVを、He(1993)に記載の方法および下記の実施例4に記載の方法に従って、Spodopterafrugiperda-9(Sf9)の懸濁培養物および単層細胞培養物の両方を感染させるために使用した。
【0078】
感染後の種々の時間に、調製された感染細胞溶解物を、遠心分離によって分離して、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)可溶性および不溶性の両画分を生成した。両画分からのタンパク質を、SDS-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、実施例5に従って、それをクマシーブルー溶液で染色するか(図6A)、またはニトロセルロースペーパーに移し、その後ウエスタンブロット分析を行った(図6B)。
【0079】
大きさが約73kDaの主要なウイルスタンパク質が、感染後2〜7日目の懸濁培養細胞のPBS不溶性画分中にもっぱら認められた(図6A)。このタンパク質の移動は、完全長ORF-2の推定分子量によく相関する。分離ウエスタンブロットにより、この73Kタンパク質が、ORF2の一番端の(extreme)C末端を認識するORF2特異的抗血清1L6と反応することを確認した。宿主タンパク質の分解は、感染の最終段階(感染後4〜7日目の可溶性画分)で観察されるが、73KORF2タンパク質は、感染の間中、安定であるようであった。
【0080】
同じ組換えウイルスを、Sf-9単層細胞に感染させるために使用した場合、発現の異なるパターンが観察された(図6B)。不溶性73Kタンパク質種が観察される代わりに、ORF2タンパク質は、感染後4〜7日目に、約62kDaの大きさに位置する可溶性型に転換された。これらの観察は、不溶性ORF-2(73K)タンパク質が、タンパク質分解的切断をうけて、単層細胞中に可溶性または「c62K」と呼ばれる切断された62Kタンパク質を生成することを示唆した。感染の最終段階に、30kDa付近またはこれ以下に、数個のより小さな種の移動もまた認められた。より小さな種は、73Kタンパク質の分解産物であった。
【0081】
2. ORF2のタンパク質分解的プロセッシング。
【0082】
73Kタンパク質の可溶性c62K種への転換は、感染経過の間に累進的に生じることが認められた。従って、この転換は、感染経過の間あるいは細胞採集時のプロテアーゼ活性の刺激、またはこれらの事象の組合せである、自己触媒切断の結果であり得た。この疑問に的をしぼるために、細胞溶解物を感染後5日目に調製し、その後溶解物中のタンパク質が変性する前の種々の時間の間インキュベーションを行った。73Kからc62Kへの転換を、図7に示すようにインキュベーション時間に対してモニターした。
【0083】
細胞溶解物が、細胞破壊後直ちに変性したとき(0分、インキュベーション時間)には、ORF2タンパク質は、おもに73K不溶性ポリペプチドとして存在し、そして可溶性c62Kタンパク質はほとんど観察されなかった。しかし、インキュベーション時間が、30分〜300分の間に増加されたときには、可溶性画分中のc62Kタンパク質量は比例的に増加した。対照的に、不溶性画分中の73Kタンパク質量は減少し、このことは、細胞破壊後のプロテイナーゼにより果たされる重要な役割を示している。この実験の結論は、73Kタンパク質は、細胞破壊後にプロテイナーゼ活性よってc62Kに切断され得ることである。
【0084】
図6Bに示すように、感染後期にインビボにおいて観察されるc62Kタンパク質は、プロテイナーゼ活性の放出を生じる、かなりの割合の細胞が生存可能ではない長期間のウイルス感染によって説明され得た。
【0085】
3. 73Kからc62Kへの転換はバキュロウイルス感染特異的であり得る。
【0086】
73Kからc62Kへの切断を担うプロテイナーゼの供給源は、Sf9細胞、バキュロウイルス感染Sf9細胞、またはその両方に由来し得た。この疑問に的をしぼるために、抽出物混合実験を実施して、これらの可能性を区別した。Sf9懸濁培養細胞からの不溶性73K調製物を、種々の可溶性抽出物と混合し、そして切断をイムノブロット分析によってモニターした(図8の上段パネル)。懸濁培養物および単層の両方からの非感染細胞抽出物は切断に対して影響せず、このことは切断がウイルス感染に仲介されたことを示唆している。PBSは、予測されたようにいかなる影響も示さなかった。感染細胞抽出物からの抽出物が使用された場合にのみ、73Kタンパク質の切断が観察された。
【0087】
73Kの同時切断およびc62Kタンパク質の蓄積が、不溶性73K調製物を野生型バキュロウイルスによって感染した懸濁培養細胞からの可溶性抽出物と混合した第2の実験で、さらに示された(図8下段パネル)。1時間のインキュベーション後に切断が観察されたが、感染細胞抽出物の代わりに非感染細胞抽出物を用いた場合、24時間後でも切断は生じなかった(図8下段パネル)。
【0088】
4. 73Kおよびc62Kタンパク質の精製。
【0089】
バキュロウイルス感染細胞で発現されたORF2タンパク質が、複合タンパク質構造を形成するかどうかを決定するため、ならびにORF2内の切断部位がc62Kタンパク質の形成をもたらすかを決定するために、高度に精製されたタンパク質調製物を調製した。73Kタンパク質の精製を要約するSDS-PAGE分析を、図9に示す。精製プロセスの詳細な説明を、実施例6Aに記載する。Hyper-DS-カラムロードを、レーン1〜6に示し、その後の流出および溶出カラム画分をレーン2〜4および7〜9に示す。βメルカプトエタノールがサンプル分離緩衝液から除去されたレーン(レーン2〜4)において、鎖内ジスルフィド結合が73Kタンパク質内に生じ、この会合が、還元条件下で容易に除去されることは明白である。
【0090】
原核生物発現系およびバキュロウイルス発現系の両方で高レベルに発現される組換えタンパク質は、73Kタンパク質として観察される、封入体形態で細胞内に蓄積し得る。これらの条件下では、タンパク質の抽出、可溶化、および再折り畳みの手順を開発する必要がある。標準的なアプローチが、封入体を単離するために、および緩衝液中で細胞夾雑物を除去するための洗浄のために、そして強力な界面活性剤として0.5%SDSを用いてペレットを可溶化するために使用された。次いで、変性物を、迅速希釈および透析によって除去し、タンパク質を天然の状態に再折り畳みした。再折り畳みプロセスの間、凝集を避けるために、ポリエチレングリコール(PEG)を、安定な可溶性形態の73Kタンパク質の再折り畳みを増強するようである共溶媒として、希釈緩衝液に加えた。
【0091】
c62K精製プロセスの最終産物を、図10に示す。精製プロセスの詳細な説明を、実施例6Bに記載する。簡単には、c62K/Sf9細胞溶解物をスピンして取り出し、次いで、上清をE.Merck DEAE EMD 650(S)カラムにロードし、62-kDaが捕捉され、そして80%を超える純度で溶出された。DEAEピーク画分をプールし、SephacrylS-100カラムでクロマトグラフを行った。次いで、Sephacryl S-100カラムからのc62Kを含有する画分を精製し、そしてPoros HQ/Fカラムで濃縮した。図10のレーン2に見られるタンパク質のバンドは、PorosHQ/Fカラムからの最終精製タンパク質を示す。
【0092】
c62Kタンパク質の精製を促進するために、還元剤(例えば、DTT)を溶解上清に加え、その後初期低還元環境(50mM DTT〜0.5 mM DTT)から最終非還元環境への2工程交換を行った。これらの条件下で、c62Kタンパク質が混入している細胞タンパク質に凝集する可能性が排除される。次いで、c62Kタンパク質は、容易に高度に精製された均質形態で回収される。クマシーブルー染色に基づいて、73Kおよびc62Kタンパク質の両方の純度が95〜99%であると評価された。
【0093】
5. VLP-電子顕微鏡の証拠。
【0094】
精製組換え73Kおよびc62Kタンパク質をネガティブ染色し、そして直接電子顕微鏡で試験した(実施例7)。c62Kタンパク質の電子顕微鏡写真は、大便および胆汁中に見出された真正ウイルス粒子(28〜34nm)を記載する報告(Bradley, 1988; Reyes, 1993)によく一致する、約30 nmの大きさの決定要素粒子(determinantparticle)を明かにした(図11A)。再折り畳み73Kタンパク質は、大きさが25〜40 nmの範囲の多型粒子を生じ、このほとんどは非決定基形態を示す(図11b)。
【0095】
6. c62Kタンパク質のN末端配列。
【0096】
精製c62Kタンパク質によって示されるウイルス様粒子構造、ならびにその溶解度は、このタンパク質が、天然ビリオン(すなわち、ウイルス粒子またはウイルス様粒子に類似するコンホメーション構造)を示し得ることを示唆した。従って、c62Kタンパク質に対応し、従って、このタンパク質の産生のための切断プロセスを迂回する能力を可能にし得る懸濁培養細胞でのその後の発現を可能にするコード配列を同定することが望まれた。この理由により、精製c62Kタンパク質のN末端配列解析が実施された。
【0097】
配列決定した最初の10アミノ酸の配列を以下であると決定した:Ala-Val-Ala-Pro-Ala-His-Asp-Thr-Pro-Pro。この配列は、ORF-2(配列番号13)中の残基112位で始まるアミノ酸残基に完全に相同であった。従って、切断は、それぞれ、アミノ酸111位および112位に対応するThrとAlaとの間で生じた。
【0098】
従って、c62Kタンパク質は、HEVキャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含有するバキュロウイルス発現ベクターを用いるトランスフェクト昆虫細胞によって産生され得る。より一般的には、ORF2ヌクレオチド配列のごく一部分、c62Kフラグメントをコードする配列(例えば、ORF273K配列由来のアミノ酸112-660をコードする配列;このような配列の例を、配列番号3および配列番号4に示す)、およびこの配列と相同な、プロテアーゼとして発現されることを必要とする配列は、c62Kタンパク質に対する過剰なN末端アミノ酸を切断することが認識される。
【0099】
その他のバキュロウイルスが当業者に周知であり、例えば、Orygia psuedotsugataは、一般的に使用されるベクターである。比較的狭い宿主範囲を有するバキュロウイルスは、一般的にLepidopteran昆虫細胞での複製に限定される。Spodopterafrugiperda以外の適切なLeptidopteran細胞株は、当業者に周知であり、例えば、Lamantria disparおよびHelicos zeaである。
【0100】
好ましい発現系はバキュロウイルス発現系であるが、HEV ORF2(Burma株変異体に関して)によってコードされるC末端549アミノ酸に対するコード領域を含有するORF2配列は、同様にその他の発現系で発現され得、そしてこれらの発現系において固有のプロテイナーゼによって切断され得るか、または、それらはインビトロにおいて、バキュロウイルス感染細胞抽出物によって後に切断され得ることもまた、当業者によって認識される。さらに、HEVキャプシドタンパク質は、上記のように、インビボまたはインビトロにおけるヒトまたはサルの肝臓で増殖されたHEVから得られ得、そしてそのキャプシドタンパク質は、バキュロウイルス感染昆虫細胞溶解物で切断されて、同様に62K抗原を形成し得る。
【0101】
さらに、キャプシドタンパク質に含有される切断部位は、組換えタンパク質産物、発現系、およびこの産物を作製するための工業プロセスにおける使用のための、人工的に挿入される切断部位として使用され得る。例えば、それらが融合タンパク質として生成されるように、組換えタンパク質を構築するのに有益である。1つの利点は、融合パートナーが、目的の組換えタンパク質を精製するための手段として使用され得ることである。例えば、特に有用な融合パートナーの1つは、本明細書に参考として援用されている米国特許第5,310,663号に記載されている、NTA樹脂での金属キレートアフィニティークロマトグラフィーの手段によって効率よく精製されるポリヒスチジンフラグメントである。組換えタンパク質が精製後に融合パートナーを含有しないように、融合パートナーと組換えタンパク質との間に遺伝子操作された切断部位を有することが、有用である。従って、新規なバキュロウイルス特異切断部位の発見は、非バキュロウイルス系で産生される組換えタンパク質に現在使用されている従来の部位の代替を提供する。
【0102】
切断部位は、同様にバキュロウイルス系に対して有利であり得る。例えば、新しいポリペプチドを細胞質に指向させるに有用な融合タンパク質は、細胞質中で優先的に1度切断され得る。
【0103】
切断部位を含有するアミノ酸を明確にする境界は、当業者に周知の方法によって決定され得る。このような方法の1つは、切断部位に隣接する個々のアミノ酸を変化する部位特異的変異誘発の使用、およびその後の、変異体ペプチドのプロテイナーゼ活性の試験を用いる。
【0104】
さらに、バキュロウイルス特異的プロテイナーゼの同一性が決定され得、その核酸配列がクローン化され得、そして当業者に周知の技術によって発現され得る。これは、バキュロウイルス感染細胞溶解物以外の、精製形態の特異的プロテイナーゼの使用を可能にする。
【0105】
7. 再遺伝子操作されたR62KHEV抗原の組換え産生および精製。
【0106】
本明細書でr62Kと呼ばれる「再遺伝子操作された」62Kタンパク質種が、プロセスされた形態のc62Kタンパク質と類似の生物学的特性および構造的特性を有する安定なタンパク質形成を生じるか否かの疑問が残ったままであった。従って、112位アミノ酸からORF2(Burma株)の3'末端の最終アミノ酸までのDNA配列を、図5に示し、そして実施例4に記載するように、バキュロウイルス発現ベクターpBluBacIIIにクローン化した。メチオニンコドンを、適切な翻訳開始を確実にするために、5'末端に組み込んだ。
【0107】
トランスフェクションおよび4回のプラーク精製後に、ウイルスストックおよび細胞溶解物を、10の個別のプラーク単離体から調製した。ウエスタンブロット分析を、高レベルで可溶性r62Kタンパク質を産生したウイルス単離体についてスクリーニングするために実施した(図12)。ほぼ全部のウイルス単離体が、可溶性r62Kを産生した。r62Kの溶解度は、全抽出物の約60〜70%の範囲であった。単離体の1つが、さらなる研究のために増幅用に選択された。
【0108】
r62Kは、細胞溶解物上清中での分子の定量回収によって、溶解緩衝液中で完全に溶解性であることが見出された。溶解上清を、続いて実施例6bに従って、3つのクロマトグラフィー工程によりプロセスし、精製r62Kタンパク質を得た。最初のクロマトグラフィー工程を、E.Merck DEAE EMD 650(S)カラムで実施した。r62KのEMD DEAE誘導体の増強された回収の使用は、その他の類似の弱アニオン交換樹脂(Toyopearl650(S)、DEAE Sepharose Fast Flowなど)に関連することが見出された。増強された回収は、E. Merck誘導体化樹脂の「触手(tentaclearm)」構造のためであった。
【0109】
さらなる精製は、SephacrylS-100カラム(いくつかの少数の精製を用いて緩衝液交換に主に使用された)を使用して達成された。最終物質は、Poros HQ/F強アニオン交換樹脂で精製されたピーク画分から得た。
【0110】
この手順で得られた最終物質は、カブトガニ変形細胞溶解物アッセイによって、95%を超える純度であり、本質的にエンドトキシンを含まないことが決定された。ウエスタンブロッティングの目的のために、対応のゲルサンプルを、SDS-PAGEおよびPVDFメンブレンへのトランスファーの前に、1:10に希釈した。r62Kのバンドは二重であるようであり、r62Kの改変形態の存在を示唆する。N末端配列分析、ペプチドマッピング、および質量分析データは、単一の再遺伝子操作62Kの一次アミノ酸配列の存在を支持する。
【0111】
精製62-kDaタンパク質のさらなる生物化学的特徴づけを、種々の方法を使用して実施した(実施例9)。組換え62-kDa配列のPVDFへのトランスファー、およびその後のアミノ酸配列分析は、62-kDaタンパク質のアミノ末端が、正確な翻訳開始を確実にするために導入されたN末端メチオニンが導入されたこと以外は、完全であることを示した。配列決定の間の最初の5サイクルの各々での全収率は低く、このことは、62-kDaの重要な部分が、おそらくアミノ末端でブロックされたことを示す。
【0112】
トリプシンペプチド分析は、逆相HPLCによって143ピークを示した。8ピークを、構造完全性および潜在的な翻訳後の改変を決定するためのLDMS用に選択した(実施例9)。これらの8ピークのうち、4つは単一種のペプチドを生じた。これらのペプチドのうち3つは、エドマン分解配列決定によって決定されるように、62-kDaタンパク質の種々の内部領域に一致した。1つのピークであるピーク65は、エドマン分解による配列を生じなかった。しかし、分子量は、細胞アミノペプチダーゼ、その後の隣接アラニン残基のアシル化によるN末端メチオニンの除去を考慮すると、アミノ末端トリプシンペプチドの推定分子量に非常によく一致する。結果は、62K抗原ポリペプチドのアミノ末端がブロックされる、おそらくアシル化されることを示唆する。
【0113】
レーザー脱吸着質量分析によるPost-source decay分析は、ピーク65が、アミノ末端トリプシンペプチドであることを示した(実施例9)。複数ペプチド種を生じるその他4つのトリプシン消化HPLCピークもまた配列決定され、配列決定された真正HEVが保存されているというさらなる確証を提供した。
【0114】
LC-MSデータ(実施例9)は、ウエスタンブロッティングで観察された62-kDaの2重の成分の真の分子量を確立した。以前の実験でのアミノ末端の解明によって、ES-MSデータから、並数分布した「62-kDa」種を生じる、推定カルボキシル末端プロセッシング工程を予測することが可能であった。
【0115】
ORF-2領域の残基112位〜残基660位のコード配列を使用する、62-kDaタンパク質の推定分子量は、59.1-kDaである。タンパク質は、過ヨウ素酸酸化およびGC-MS分析の両方ではグリコシル化は見出されなかった。実施例9に示すデータは、欠失が分子中で生じたこと、およびその欠失がアミノ末端またはカルボキシル末端であるようであることを示唆した。
【0116】
アミノ末端の確認と合わせると、ES-MSデータは、カルボキシル末端が、残基539〜540と残基536〜537(推定62-kdaタンパク質配列に関して)との間で削られ得ることを示唆した。自動化カルボキシル末端配列決定は、タンパク質のカルボキシル末端プロセッシングを確認し、残基539〜540(9アミノ酸のカルボキシ末端欠失;例えば、配列番号25および配列番号26)および残基524〜525(23アミノ酸のカルボキシ末端欠失;例えば、配列番号27および配列番号28)を、それぞれ、58.1-kDaおよび56.5-kDaタンパク質のカルボキシ末端として、確固として確立した。従って、昆虫細胞から単離された元来の62K抗原は、これらの2つの関連ポリペプチド種からなる。
【0117】
従って、意図されるタンパク質は、明白なカルボキシ末端プロセッシングは予測されなかったが、高レベルで発現され、95%を超える純度で精製された。このプロセッシングは、有効な抗原として作用するタンパク質の能力を妨害するようではなかった(例えば、表1に示す結果)(実施例9)。事実、62K抗原は、HEV診断アッセイにおいて、細菌発現されたタンパク質に比較して改良された抗原を示す。
【0118】
この抗原の優れた免疫原特性はまた、HEVによる異種チャレンジ後に霊長類における防御免疫応答を誘引する62K抗原の能力から明かであった(下記の第IV章を参照のこと)。これらの観察は、バキュロウイルス発現タンパク質が、天然のウイルスキャプシドタンパク質に密接に類似する免疫学的構造を含み得ることを、示唆する。
【0119】
8. 62KサブユニットVLPの大きさの決定。
【0120】
ゲル濾過は、密度勾配超遠心分離よりも時間浪費が非常に少なく、そしてクロマトグラフ解像および所望のウイルス粒子よりも大きいかまたは小さい粒子の除去を可能にするので、ウイルス粒子の精製および分析的特徴づけに魅力的な技術である。Sephacryl S-1000 Superfineは、Percollのような、ウイルス粒子、亜細胞粒子、およびミクロソーム小胞(例えば、パーコール)の分離に関与する適用に適した樹脂を作製する、高度な多孔性を有する。S-1000Superfineの排除限界は、直径約300〜400 nm粒子に対応する。
【0121】
精製c62Kおよびr62Kウイルス粒子のSephacrylS-1000 Superfineクロマトグラフィーの吸収プロフィールを、図13に示す。c62Kおよびr62Kの溶出は、95〜105分の保持時間を有するピークに対応した。これは、直径約20〜30nmの大きさの粒子に対応した。S-1000カラムはまた、3つの標準;2つの粒子およびモノマー構造で校正された。ワクシニアウイルス(250 nm)は、約48分の保持時間を有することが見出された。B型肝炎血漿由来の表面抗原(HBsAg)粒子(22nm)は、95分の保持時間を有することが見出され、一方、ウシ血清アルブミン(モノマータンパク質標準)は、132分の保持時間を有した。
【0122】
本発明の62K抗原(Burma株変異体に関するHEVORF2によってコードされるC末端549アミノ酸およびそれらとの相同配列を含む)は、その他の型の発現系、好ましくは真核生物系(例えば、哺乳動物および酵母)で、上記のHEVゲノム挿入プラスミドを使用して所望の配列の増幅および適切な発現ベクターへのクローニングを伴って、同様に調製され得る。再遺伝子操作されたペプチドを産生するのに使用されるコード配列は、上記または他に詳述されたクローニングベクター由来であり得るか、または、ヌクレオチド配列の構築において、既知の方法に従って、オリゴヌクレオチドフラグメントを連結するためのPCRスプライシング法を用いる、合成ヌクレオチド合成由来であり得る。このような改変は、当業者によって容易になされ得る。
【0123】
この様式で産生された62K抗原は、実施例8に記載の方法によって、抗原性についてスクリーニングされ得る。簡単には、抗原は、実施例6bに詳述する方法に従って精製され、マイクロタイターウエルに播種される。ポリヌクレオチドはブロック溶液で洗浄し、次いで抗HEV抗体を含有することが知られている血清と反応させる。非結合抗体を洗浄除去し、次いでレポーター分子に連結された二次抗体をペプチドー抗体複合体と反応させる。生成物は、非結合二次抗体を洗浄除去した後に、レポーター分子の検出によって得ることができる。
【0124】
本発明に従ってこの様式で産生された62K抗原は、昆虫細胞で産生された、配列番号15配列を有する62K抗原が示すHEV陽性血清に対する反応性と本質的に類似の免疫反応性を示す抗原である。免疫反応性は、両抗原と反応性である血清サンプルの割合が、好ましくは80%を超え、より好ましくは90%を超え、さらにより好ましくは95%を超える場合に、実質的に類似である。
【0125】

F.抗原ポリペプチドおよび抗体の調製
本明細書中に記載されるように、62K抗原は、タンパク質の混合物(例えば、58.1kDaおよび56.5kDa種、実施例6および9)またはHEVのORF2のカルボキシ末端の549アミノ酸に由来する個々のポリペプチド(例えば、配列番号15、配列番号16、配列番号25、配列番号26、配列番号27および配列番号28)を包含する。本発明の1実施態様は、昆虫細胞においてコード配列の発現によって得られる二つのポリペプチドを含有する62K抗原の生産を含む(実施例4および6)。これらの二つのポリペプチドは、ORF2のカルボキシ末端の549アミノ酸に対してカルボキシ末端の欠損を有する。他の発現系は、本発明の個々のポリペプチドまたはポリペプチドの混合物を生産するために使用され得る。
【0126】
例えば、本発明の抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、プラスミドp-GEXまたはその種々の誘導体の中にクローン化され得る。プラスミドpGEX(Smithら、1988)およびその誘導体は、タンパク質のグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(sj26)に対してインフレームで融合したクローン化挿入物のポリペプチド配列を発現する。1つのベクター構築物、プラスミドpGEX-hisBにおいては、6個のヒスチジンのアミノ酸配列を融合タンパク質のカルボキシ末端で導入する。
【0127】
種々の組換えpGEXプラスミドをE.coliの適切な株に形質転換し得、そしてIPTG(イソプロピル-チオガラクトピラノシド)の添加によって、融合タンパク質の生産を誘導し得る。次いで、可溶化した組換え融合タンパク質を、グルタチオンアガロースアフィニティークロマトグラフィーを用いて、誘導された培養物の細胞溶解物から精製し得る。
【0128】
β-ガラクトシダーゼ融合タンパク質(例えば、λgt11クローンによって生産される融合タンパク質)の場合、融合タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーによるか、または表面に結合した抗β-ガラクトシダーゼ抗体を有する固相支持体上に細胞溶解物を通過させることにより、容易に単離され得る。
【0129】
本発明のポリペプチドをコードしている配列(例えば、配列番号15/配列番号16、配列番号25/配列番号26、および配列番号27/配列番号28、またはこれらとの相同配列)および適切な宿主内でコード領域の発現を可能とする発現制御因子を含有する、上記のλgt11またはpGEXベクターのような発現ベクターも本発明に含まれる。制御因子は、一般にプロモーター、翻訳開始コドン、ならびに翻訳および転写終止配列、ならびに挿入物をベクターに導入するための挿入部位を含む。
【0130】
所望の抗原ポリペプチドをコードするDNAは、多くの市販のベクターにクローン化されて、適切な宿主系内でポリペプチドの発現をもたらし得る。これらの系には、限定はされないが、以下のものが含まれる:バキュロウイルス発現(Reillyら;Beamesら;Pharmingen;Clontech,Palo Alto, CA)、ワクシニア発現(Earl、1991;Mossら)、細菌における発現(Ausubelら;Clontech)、酵母における発現(Gellissen、1992;Romanos、1992;Goeddel;GuthrieおよびFink)、哺乳動物細胞における発現(Clontech;Gibco-BRL,Ground Island, NY)(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(Haynes、1983、Lau、1984、Kaufman、1990))。これらの組換えポリペプチド抗原は、直接発現され得るか、または融合タンパク質として発現され得る。
【0131】
酵母系での発現は、商業的生産に有利である。ワクシニアおよびCHO細胞株による組換えタンパク質の生産は、哺乳動物発現系である点で有利である。さらに、ワクシニアウイルス発現は、以下を含むいくつかの利点を有する:(i)広範な宿主範囲;(ii)組換えタンパク質の正確な転写後修飾、プロセッシング、折り畳み、輸送、分泌、および構築(assembly);(iii)比較的可溶な組換えタンパク質の高レベルの発現;および(iv)外来DNAを収容する大きな能力。
【0132】
発現された組換えポリペプチド抗原は、溶解した細胞または培養培地から典型的に単離される。精製は、本明細書中に記載の方法によって行われ得る。
【0133】
これらの方法のいずれかによって得られる抗原は、抗体生成、診断テストおよびワクチン開発のために用いられ得る。
【0134】
別の局面において、本発明は、本発明のポリペプチド抗原に対する特異抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)を包含する。例えば、精製抗原または融合抗原タンパク質は、モノクローナル抗体を産生するために用いられ得る。ここで、免疫動物に由来する脾臓またはリンパ球が取り出され、そして当業者に公知の方法(Harlowら)により不死化されるか、またはこれを用いてハイブリドーマを調製する。ヒト由来のハイブリドーマを産生するために、ヒトリンパ球ドナーが選択される。本発明のポリペプチドをワクチン接種したドナーは、適切なリンパ球ドナーとして供され得る。リンパ球は、末梢血サンプルから単離され得る。Epstein-Barrウイルス(EBV)を用いてヒトリンパ球を不死化し得るか、または適切な融合パートナーを用いてヒト由来ハイブリドーマを生成し得る。ウイルス特異的ポリペプチドでの一次インビトロ感作は、ヒトモノクローナル抗体の生成に用いられ得る。
【0135】
不死化細胞により分泌される抗体は、所望の特異性の抗体を分泌するクローンを決定するために、例えば、ELISAまたはウェスタンブロット法を用いることによりスクリーニングされる。
【0136】
別の局面において、本発明は、本発明のポリペプチド抗原をコードする核酸分子(例えば、DNAまたはRNA)を包含する。
【0137】

G.HEVペプチドの合成生産
上記のペプチドを生産するための手順に加えて、長さ約50アミノ酸までのペプチドは、従来の固相合成法によって生産され得る。このような方法は当業者に公知である。この方法において生産されたペプチドは、他のペプチド、あるいは例えば組換えにより融合タンパク質で形成されるようなタンパク質接合体またはタンパク質部分に共有結合され得る。
【0138】

III.診断方法
関連する局面において、本発明はHEVに感染した個体の診断方法に関し、ここでHEV由来ペプチド抗原は、抗HEV抗体の存在について個体の血清を調べるために使用される。
【0139】

A.HEV抗原の免疫反応性
HEV抗原の生産の次に、本発明によって、HEVに感染したことが知られている個体由来の血清サンプルを、これらの抗原に対する結合能について試験した。抗体−抗原結合についてのアッセイは、当該分野で周知である(Harlow、1988)。固相アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)結合アッセイ)は、抗体−ペプチド抗原結合を測定するために特に適切である。このようなアッセイは、直接または競合的な結合アッセイ方式で実施され得る。直接的な方法において、試験ペプチドは固相に吸着される。試験抗HEV抗血清はペプチドに添加され、そしてペプチドに対するヒト抗体の結合が、例えば、実施例8の方法のように測定される。
【0140】
あるいは、ペプチドをSDS-PAGEによって保持されるのに十分なサイズの融合タンパク質として発現させるときは、ウェスタンブロットが、融合タンパク質のペプチド部分の血清サンプルへの結合を決定するために用いられ得る。
【0141】
クローン406.3-2(M)および406.4-2(M)は、免疫反応性ペプチドをコードすることが示された(PCT国際出願第PCT/US93/00475号、1993年1月15日出願;PCT国際出願第PCT/US93/00459号、1993年1月15日出願;PCT国際出願第PCT/US91/02368号、1991年4月5日出願、WO91/15603、1991年10月17日公開)。HEV陽性ヒト血清(5つの異なる流行由来)を用いるBurma株から得られたこれらのペプチドおよびそれらのアナログについての継続研究において、ペプチド406.3-2(M)は試験した11サンプル中8サンプルに免疫反応性であり、ペプチド406.4-2(M)は試験した11サンプル中9サンプルに免疫反応性であり、そしてペプチド406.3-2(B)およびペプチド406.4-2は両方とも試験された6サンプル中6サンプル全てで免疫反応性であった(Yarbough,1991(本明細書中参考として援用される))。上記の結果を導く実験の記載は、実施例1において見出され得る。ペプチド抗原SG3は、感染血清について高い免疫反応性を示した(PCT国際出願第PCT/US93/00475号、1993年1月15日出願;PCT国際出願第PCT/US93/00459号、1993年1月15日出願)。
【0142】
本発明では、精製されたc62Kタンパク質調製物の抗原性を評価するために、種々のE型肝炎流行の間に得られたヒトの急性期血清および回復期血清のパネルを用いて免疫アッセイを行った。血清は、実施例8の方法により、HEVに対するIgGおよびIgM抗体についてのELISAによって試験した。HEVの推定キャプシドタンパク質由来の3つの抗原を使用した:(1)SG3、E.coliにおいて発現されたORF2の327アミノ酸(配列番号17);(2)73K、バキュウロウイルスにおいて発現されたORF2の660アミノ酸(配列番号13);および(3)c62K、バキュウロウイルスプロティナーゼによりプロセシングされたORF2の549アミノ酸(配列番号15)。
【0143】
血清サンプルは、流行地域においてE型肝炎であると確認された症例および疑われる症例より得た。下記の表1に示すように、バキュロウイルスにおいて発現されたc62Kタンパク質は、急性E型肝炎の症例由来の数種類の血統の明らかな検体においてHEVに対する測定可能な抗体を検出した。この急性E型肝炎の症例は、E.coliにおいて発現される最良のHEV抗原であるSG3(Yarbough,1994)を用いた際は検出することができない。試験してc62K抗原のみに陽性である検体を、星印により表示する。抗HEVIgGに対しては、3/18血清サンプル(17%)が、唯一、c62Kタンパク質について抗体陽性として記録された。抗HEV IgMに対しては、7/18血清サンプル(39%)が、唯一、c62Kタンパク質について抗体陽性として記録された。ほとんどの場合、O.D.値は、SG3タンパク質または73Kタンパク質によって検出された抗HEVが、ちょうど信頼性のある検出の閾値未満であることを示唆した。
【0144】
【表1−1】

【0145】
【表1−2】

【0146】
全体的にみて、結果は、このアッセイの感度および特異性がc62Kを抗原源として用いることにより著しく改善されたことを示した。この観察は、抗HEV抗体により認識されるc62K上に存在する構造決定基が、バキュロウイルス73KおよびE.coliによって発現される組換えタンパク質とは対照的に、天然のビリオンとより密接に類似した自然感染の間に生じたことを示唆する。まとめると、62K抗原はE型肝炎ウイルスに対する低レベルの抗体を検出するために重要な進歩である。
B.c62KとR62Kとの間の免疫反応性の比較
比較ELISAアッセイは、これら2つのタンパク質間の抗原類似性を測定するために、そしてさらにr62Kおよびc62Kタンパク質調製物との一致を支持するために行われた。実施例8の方法に従って、同等量のc62Kおよびr62Kタンパク質を用いて、これら2つのタンパク質調製物の間の抗原類似性を測定した。種々雑多な血清サンプルでの抗HEVIgGの検出は、切断された(c)62Kタンパク質種および再遺伝子操作された(r)62Kタンパク質種は、抗HEVを検出するために、それらの特異性および感度において匹敵することを示した(表2、下記)。
【0147】
【表2】

【0148】
C.R62K抗原の感度
ヒトおよびヒト以外の霊長類の血清の小さなサブセットを希釈し、そしてr62Kタンパク質調製物の感度を明確にするために、抗HEV IgGおよびIgMについてアッセイした(表3、下記)。希釈した血清は、E.coliおよびバキュロウイルスで発現された抗原のそれぞれについて試験された。ELISA終点は、アッセイにおいて陽性の結果が依然として認められる最大希釈として定義された。終点滴定のデータは、r62Kタンパク質が、一般に用いられるE.coliで発現されたSG3抗原の最小で5倍を越える抗HEVIgGについての検出限界を有することを確立した。抗HEV IgMの検出は、えり抜きの抗原としてr62Kタンパク質調製物を用いることにより、結果として25倍増加した。62K抗原は、E型肝炎ウイルスに対する低レベルの抗体を検出するために重要な進歩である。
【0149】
【表3】

【0150】
IV.治療的適用
異種抗原投与に対する保護を与えるための、ORF2の62K抗原のインビボでの免疫原性効力を調査した(実施例11)。r62K抗原(実施例4、6、および9)を用いてカニクイザルに接種(incoculate)し、その後、異種HEVMexico株を用いて抗原投与した。この結果は、この候補抗原が、発展途上国における急性E型肝炎を予防するため、そして疾患流行地域への旅行者に保護を提供するためのワクチンの開発に有用であり得ることを示す。
【0151】
ORF2r62Kタンパク質によるカニクイザル(cynos)の免疫化は、その後の異種野生型HEVの感染および疾患に対して予防した。HEV感染およびウイルス複製の証拠の受け入れられている基準は、以下を包含する:(1)肝臓におけるHEV抗原の検出、(2)糞または血清におけるHEVRNAの検出、(3)HEV抗体陽性への血清変換。E型肝炎疾患は、HEV感染、ならびに(1)ベースラインから標準偏差の2倍より大きなALTレベルの上昇、および(2)ウイルス肝炎との組織病理学的適合として定義される。
【0152】
本発明の支持の下に行った実験は、HEV Burma株由来の組換えキャプシドタンパク質で免疫化された動物が、互いに異なるHEV Mexuco株の野生型ウイルスでの抗原投与から保護されたことを示す。肝臓の酵素における有意な上昇はみられず、そして3頭の免疫化された動物のいずれにおいても肝細胞性の損傷の組織病理学的な証拠はなかった。従って、ワクチン接種は、r62Kを用いて免疫化したすべてのカニクイザルにおいて疾患に対する保護を与えた。
【0153】
3頭のワクチン接種された動物のうち2頭について、肝臓において測定し得るウイルス抗原が存在しないこと、または糞の中にウイルスRNAが存在しないことにより、HEV感染に対する完全な保護が実証された。さらに、これらの2頭の動物において、中和抗体が存在することが示された(実施例11、図15)。1頭のカニクイザルにおける感染に対する部分的な保護は、糞の中にウイルスRNAが遅延してかつ一時的に存在することによって証明されるが、比較的低レベルの測定し得る抗HEV抗体と関連し得る。それにもかかわらず、壊死炎症性の変化の非存在下では、感染からの完全な保護はこの1頭の動物において達成されなかったが、肝炎はr62Kワクチンによる免疫化によって予防されたようである。
【0154】
必要なときは、中和抗体のレベルは、より高い用量の抗原の使用および/または感染性ウイルスでの抗原投与前の接種の繰り返しによって増加され得る。このような接種の繰り返しは、例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)およびB型肝炎ウイルス(HBV)に対するワクチン接種に一般に使用される。
【0155】
ワクチン接種した動物における結果および抗原投与接種物であるウイルスを滴定するために用いられる動物における結果は両方とも、HEV感染および関連疾患の発達が、接種物の量に関する閾値効果ならびに最初から存在する特異的な免疫応答の存在および特徴に依存することを支持する。HEV感染動物を用いる滴定の研究では、肝炎の程度は投与された接種物の量と相関し、そしてALT上昇の開始のタイミングは、投与された接種物の量と逆に相関した。
【0156】
研究のワクチン部分において、cyno9330を用いた結果は、HEV感染は予防できなかったが、抗原投与の時のHEV特異的免疫の存在は、検出可能なウイルス複製の開始の遅延潜伏、検出可能なウイルス複製の短縮された接続時間、およびHEVにより誘導される疾患の特徴が存在しないことにより特徴付けられる限定された感染となった。
【0157】
以前の研究(Purdyら、1993)において、E.coliにおいて発現させた切断型のHEVBurma ORF2、trpE-C2を用いる免疫化は、HEV感染および疾患に対する種々の程度の保護を与えた。1頭のカニクイザルは、相同な株の野生型抗原投与の後のウイルス感染および肝炎に対して完全に保護されたことが報告された。しかし、異種のHEVMexico株を用いて抗原投与した動物は、部分的に保護されたのみであった。1頭の免疫化したカニクイザルは肝炎より保護されたようであったが、この動物は異種野生型抗原投与の後に肝臓の中のウイルス抗原および糞の中のウイルスRNAの証拠を有した。
【0158】
本明細書に記載されるデータは、現在までに単離および特徴付けられた最も分岐したHEV株に対する干渉効果を提供し得る、E型肝炎に対する効果的なワクチンの開発の可能性を初めて最終的に確立する。「62K」ORF2ワクチン候補物で発現される549アミノ酸において、Burma株とMexico株との間には31アミノ酸の変化があり(Tamら、1991;Huangら、1992)、そしてより近縁なBurma株、China株、およびPakistan株の間にはわずか4アミノ酸の変化しかない(Tsarevら、1992)。
V.HEVアッセイのためのHEV特異的ペプチド抗原
この章では、アッセイキットにおいて使用されるペプチド抗原を記載し、そしてアッセイ方法は以下の第VI章にて記載する。
【0159】
本発明によって、本明細書中のHEVの診断に有用であると特徴付けられるHEV抗原は、62K(B)または(M)抗原を含む。これらの抗原は、例えば、配列番号15/配列番号16、配列番号25/配列番号26、および配列番号27/配列番号28、またはこれらと相同な配列からなる群より選択されるアミノ酸配列から成る。62K抗原は、天然または組換えORF2由来タンパク質のどちらかをプロテアーゼ、好ましくはバキュロウイルスプロテアーゼを用いて切断することによって産生され得る。あるいは、62K抗原は、再遺伝子操作され、そして組換え発現系において発現され得る。再遺伝子操作された62K抗原、つまり「r62K」は、好ましくはN末端にメチオニンを含み、そして好ましくは昆虫細胞においてバキュロウイルス発現ベクターにより産生される。
【0160】
62K抗原は、オープンリーディングフレーム-2(Burma株に関して)にコードされるキャプシドタンパク質のカルボキシル末端の549残基に由来する。これらのペプチド抗原は、上記第II章および以下の実施例4に記載されるように調製され得る。
【0161】
本発明の支持の下に行った研究は、上述で討議したように、62K抗原がHEVに対して特異的であることを示す;すなわち、62Kは、HEV感染個体の血清中に存在する抗体と免疫反応する。抗原は全てのHEV陽性血清を検出しないかもしれず、そしていくつかの擬陽性(すなわち、非感染個体)を拾い上げるかもしれない。HEVのMexico株(または他の変異株)由来の62K抗原は、HEV陽性血清と特異的に免疫反応すると期待され得る。
【0162】
いくつかのHEVペプチド抗原は、すでに特徴付けられている(PCT国際出願第PCT/US93/00475号、1993年1月15日出願;PCT国際出願第PCT/US93/00459号、1993年1月15日出願;PCT国際出願第PCT/US91/02368号、1991年4月5日出願、WO91/15603、1991年10月17日公開)。これらのペプチドは、62K抗原と組み合わせてアッセイに用いられるとき、本発明の一部を形成する。
【0163】
以前に特徴付けられたHEVペプチド抗原のグループにおける第1の抗原は、406.4-2(B)ペプチド(配列番号19)または406.4-2(M)ペプチド(配列番号20)により形成されるエピトープを含む。配列番号19および配列番号20に相同なアミノ酸配列、または配列番号19と配列番号20の間で本質的に一致する変異体により形成されるエピトープを含有するペプチド抗原も意図される。この第1のペプチド抗原は、オープンリーディングフレーム-3によりコードされるタンパク質のカルボキシル末端に由来する。第2のペプチド抗原は、406.3-2(B)ペプチド(配列番号23)または406.3-2(M)ペプチド(配列番号24)により形成されるエピトープを含む。配列番号11および配列番号12に相同なアミノ酸配列、または配列番号11と配列番号12の間で本質的に一致する変異体により形成されるエピトープを含有するペプチド抗原も、第2のペプチド抗原として意図される。第3のペプチド抗原は、SG3(B)ペプチド(配列番号17)またはSG3(M)ペプチド(配列番号18)により形成されるエピトープを含む。配列番号17および配列番号18に相同なアミノ酸配列、または配列番号17と配列番号18の間で本質的に一致する変異体により形成されるエピトープを含有するペプチド抗原も第3のペプチド抗原として意図される。これらの第2および第3のペプチド抗原は、オープンリーディングフレーム-2によりコードされるキャプシドタンパク質のカルボキシル末端に由来する。図3は406.4-2(B)および(M)ペプチドの配列を示し、そして図4は406.3-2(B)および(M)ならびにSG3(B)およびSG3(M)ペプチドの配列を示す。確立されたペプチドの取得方法は上述され、そして以下の実施例で詳細が記載される。
【0164】
本発明によって、肝炎の原因病原体に感染していることが疑われる個体より得た血清サンプルにおける抗体の62K抗原に対する反応性は、HEVとしての原因病原体の信頼できる診断方法である。62K抗原とともに使用される公知のペプチドに対する反応性が、以下に記載の診断方法の感度および信頼性を増加させ得ることも、本発明の一部を形成する。
【0165】

VI.有用性
この章は、E型肝炎ウイルス感染を診断するための診断試薬としての本発明の抗原ペプチドおよびタンパク質の使用、ならびにHEVによる感染から個体を保護するためのワクチン組成物における本発明の抗原ペプチドおよびタンパク質の使用を記載する。
【0166】

A.診断方法およびキット
抗原の診断応用の基本的な3つの型を記載する。第1のものは、抗原による補体媒介性かつ抗体依存性の細胞溶解の阻害に基づく。この方法において、試験個体より得た血清を、HEVを感染させた培養ヒト肝細胞と補体の存在下で反応させる。抗HEV抗体の存在は、例えば、トリパンブルー色素排除によって判断される細胞溶解により証明される。細胞溶解が観察される場合、HEV抗原に対する抗HEV抗体の特異性が、まず血清を過剰な抗原と反応させ、次いで補体の存在下で細胞と血清を混合することにより示される。抗体特異性は、細胞溶解の実質的な減少により示される。本方法は、分析血清を増加量の抗原濃度を用いて細胞溶解程度に顕著な効果が最初に見られる濃度を滴定することにより、分析血清中の抗体価を定量するためにも使用され得る。
【0167】
第2の一般的なアッセイの型は、固相免疫検定法である。この方法において、表面に結合した抗原を有する固相試薬を、試薬上の抗原と抗体が結合し得る条件下で分析血清と反応させる。未結合の血清成分を取り除くために試薬を洗浄した後、試薬をレポーター標識された抗ヒト抗体と反応させ、固体支持体上に結合した抗HEV抗体の量に比例してレポーターを試薬に結合させる。未結合の標識抗体を取り除くために試薬を再び洗浄し、そして試薬と結合したレポーターの量を決定する。典型的には、実施例1に記載された系においてのように、レポーターは、適切な蛍光測定基質または比色定量基質の存在下で固相試薬をインキュベートする工程によって検出される酵素である。しかし、放射標識およびその他のレポーターは使用され得る。
【0168】
分析血清を固相結合抗原と反応させる工程、および未結合の血清成分を取り除くために洗浄する工程の後に、抗ヒト抗体をレポーターのメディエーターとして使用する代わりにレポーターに結合した抗体自体を検出試薬として二者択一的に使用し得る。競合アッセイは、二価抗体を利用する。同じレポーターは、上述したように固相アッセイの実施態様において使用され得る。
【0169】
多数の抗原は、上述のアッセイの各々において、同時にまたは順番に使用され得る。さらに、各々の抗原に対する反応は区別され得る。例えば、上述の固相アッセイにおいて、2つ以上の異なる抗原が、各々の抗原に対する反応が別々に定量され得るように、別々の位置の固相に結合され得る。あるいは、区別できるレポーターを用いて標識された抗原は、固体支持体上に点在する抗原を検出するために使用され得る。
【0170】
上記のアッセイの固体表面試薬は、タンパク質材料を固体支持体材料(例えば、ポリマービーズ、ディップスティック(dip sticks)、またはフィルター材料)に付着させるための公知の技術によって調製される。これらの付着方法は、一般に、支持体へのタンパク質の非特異的な吸着、またはタンパク質の共有結合(典型的には、遊離のアミン基から固体支持体上の化学反応基(例えば、活性化したカルボキシル基、ヒドロキシル基またはアルデヒド基)による)を包含する。
【0171】
第3の一般的なアッセイの型は、相同性アッセイであり、このアッセイでは、固体支持体に結合している抗体が、反応媒体中に何らかの変化を生じる。これまでに提案された公知の一般的な型の相同性アッセイは、以下を包含する:(a)スピン標識レポーター、ここで、抗原に結合している抗体は、レポーターの移動度の変化(スピン分裂ピークが広くなること)により検出される;(b)蛍光レポーター、ここで、結合は、蛍光効率の変化により検出される;(c)酵素レポーター、ここで、抗体結合は、酵素/基質の相互作用に影響する;および(d)リポソーム結合レポーター、ここで、結合は、リポソーム溶解およびカプセル化されたレポーターの放出をもたらす。本発明の抗原に対するこれらの方法の適応は、相同性アッセイ試薬の調製のための従来法に従う。
【0172】
上述の3つの一般的なアッセイの各々において、アッセイ方法は、試験個体由来の血清を抗原と反応させる工程、および結合した抗体の存在について抗原を検査する工程を包含する。第1のアッセイにおいて、検査工程は、抗体が抗原と結合する際の抗体媒介性細胞溶解の減少を観察することによって行われる。固相アッセイにおいて、検査工程は、標識された抗ヒト抗体(または標識された抗原)を検査される抗体に付着させる工程、および固体支持体に結合したレポーターの量を測定する工程を包含する。そして第3のアッセイ型において、検査工程は相同性アッセイ試薬上に結合している抗体の効果を観察することによって行われる。
B.ワクチン組成物および方法
1.ワクチン組成物の調製
上述の組換えまたは切断された62K抗原は、注入された抗原の抗原性を増強するために、公知の方法によりワクチン組成物に組み込まれる。
【0173】
1つの組成物において、HEV抗原はキャリアタンパク質(例えばキーホールリンペットヘモシアニン)に、共有結合され、そして溶液の形態でまたはアジュバントとともにのいずれかで注入される。あるいはHEV抗原が融合タンパク質の一部として調製される場合、タンパク質の非HEV部分はキャリアタンパク質として作用し得る。誘導体タンパク質または融合タンパク質は、薬学的に受容可能なキャリア中で(例えば、溶液中または転化ミョウバンのようなアジュバント中で)運ばれる。
【0174】
あるいは、遊離の抗原自身(例えば、HEV 62K抗原)は、ミョウバン中で、またはアジュバントを使用せずに処方され得る。適切なアジュバントワクチンは、約1mg抗原/mgミョウバンの好ましい抗原濃度を有し、注入あたり80mgのミョウバンを超えない。
【0175】

2.抗原ワクチン方法
関連する局面において、本発明は、被験体に非経口注入(例えば、筋肉注射または静脈注射)によって本発明のワクチン組成物を投与することにより、E型肝炎ウイルスによる個体感染を阻害する方法に関する。本方法で使用するための好ましいワクチン組成物は、HEV抗原が、アミノ末端メチオニンを持つまたは持たない、配列番号15、配列番号16、配列番号25、配列番号26、配列番号27および配列番号28によって同定されるペプチド中の配列およびそれらの相同配列を含む組成物である。抗原ワクチン組成物は、好ましくは一連の接種(例えば、4週間ごとのそれぞれ2〜3回の注入)において筋肉注射により投与される。
【0176】
ワクチン組成物のそれぞれの投与量は、治療的有効量において投与される。このような投与量は、例えば、臨床試験のデータに基づいて医師により決定される。ワクチン組成物についての典型的な投与量範囲は、約0.05μg〜1mg、好ましくは約0.1μg〜30μgである。個々の投与量は、単一の62K抗原ポリペプチドまたはHEV ORF2のカルボキシ末端領域の549アミノ酸由来の多数のポリペプチドを含み得る。さらに、このような62K抗原は、ワクチン処方のための他の公知のHEV抗原性ポリペプチドと併用され得る。
【0177】
本発明の62K抗原調製物は、(i)発展途上国におけるE型肝炎の流行症例および散発性症例を予防するため、(ii)疾患流行地域において危険な状態にある妊婦を保護するため、および(iii)それらの地域への旅行者に対して保護を提供するために有用であり得る。本明細書中に記載のインビトロおよびインビボの実験は、62K抗原調製物を用いる最適な免疫化方法を決定するためにに使用され得る。
【0178】
上記で議論したように、本発明の62K抗原は、ワクチン調製物中で使用され得る。さらに、本発明のポリペプチド抗原に対して生成される抗体は、受動免疫療法または受動免疫予防のために使用され得る。本発明の抗原に対する抗体は、抗体の他の治療的投与のために使用されるのと同様の量で投与され得る。例えば、プールされたγグロブリンは、感染の確立を妨害するために、他のウイルス性疾患(例えば、狂犬病、麻疹、およびB型肝炎)の初期のインキュベーションの間に、0.02〜0.1ml/lb体重にて投与される。従って、62K抗原と反応する抗体は、感染を処置する宿主の能力を増強させるために、HEVに感染した宿主に対して単独でまたは他の抗ウイルス剤とともに受動的に投与され得る。
【0179】
上記の治療方法の有用性および効果は、上記の細胞系を使用することによりインビトロで、および上記の動物モデル系を使用することによりインビボで、評価され得る。
【0180】
以下の実施例は、本発明における種々の方法および組成物を例示しているが、これは例示を意図しており、本発明の範囲を制限しない。
【0181】

材料
酵素:DNAseIおよびアルカリホスファターゼを、BoehringerMannheim Biochemicals(BMB,Indianapolis,IN)より得た;EcoRI、EcoRIメチラーゼ、DNAリガーゼ、およびDNAポリメラーゼIを、NewEngland Biolabs(NEB,Beverly MA)より得た;そしてRNase AをSigma(St.Louis,MO)より得た。
【0182】
他の試薬:EcoRIリンカーをNEBより得た;そしてニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-B-D-ガラクトピラノシド(Xgal)、p-ニトロフェニルホスフェート、およびイソプロピルB-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)をSigmaより得た。cDNA合成キットおよびランダムプライム標識キットをBoehringer-MannheimBiochemical(BMB,Indianapolis,IN)より入手した。
【0183】
pBluescriptTM(pBS)のようなクローニングおよび発現ベクターは、StratageneCloning Systems(La Jolla,CA)より得られ得、pGEXTM発現ベクターは、Pharmacia(Piscataway,NJ)より得られ得、そしてpBluBacIIIはInvitrogen(SanDiego,CA)より得られ得る。
【0184】
A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)についての免疫診断試験キットは、AbbottDiagnostics(Abbott Park,IL,USA)より入手可能である。E型肝炎ウイルス(HEV)に対する免疫診断試験キットは、GenelabsDiagnostics USA(Redwood City,CA)より入手可能である。
【0185】
DEAE EMD650(S)を、E.Merck Separations(Darmstadt,Germany)より得た。Sephacryl S-100およびS-1000を、PharmaciaBiotech(Piscataway,NJ)より得た。Poros Q/FおよびHQ/Fクロマトグラフィーカラムを、PerSeptiveBiosystems(Cambridge,MA)より得た。緩衝液の成分を、AMRESCO(Solon,OH)より得、そしてMillennium 2010ソフトウェア(Milford,MA)によりデータ管理を行うWaters650Eクロマトグラフィーワークステーション(Milford,MA)でタンパク質を精製した。
実施例1
406.3-2、406.4-2およびSG3抗原の調製
A.ランダムHEVDNAフラグメントの作成
pBET1プラスミド(Tamら,1991a)をEcoRIで消化することにより挿入物を放出させ、線状化したプラスミドからゲル電気泳動によって精製した。精製したフラグメントを、標準的な消化緩衝液(0.5MTris HCl, pH7.5; 1mg/ml BSA; 10mM MnCl2)中に約1mg/mlの濃度で懸濁し、そして室温で約5分間DNAseIで消化した。これらの反応条件は、主に100〜300塩基対フラグメントを生成させるために必要なインキュベーション時間を決定した予備較正実験から決定した。物質をフェノール/クロロホルムで抽出した後、エタノール沈澱を行った。
【0186】
消化混合物中のフラグメントは、平滑末端であり、そしてEcoRIリンカーと連結した。得られたフラグメントを、PhiX174/HaeIIIおよびλ/HindIIIサイズマーカーを用いて1.2%アガロースゲルでの電気泳動(5〜10V/cm)によって分析した。100〜300bp画分を、NA45細片(Schleicherand Schuell, Keene, NH)上に溶出した。次いでこれを、溶出溶液(1M NaCl, 50mMアルギニン, pH9.0)と共に1.5mlミクロチューブ中に入れ、そして67℃で30〜60分間インキュベートした。溶出したDNAをフェノール/クロロホルム抽出した後、2容積のエタノールで沈澱させた。ペレットを、20mlTE(0.01M Tris HCl, pH7.5, 0.001M EDTA)に再懸濁した。
【0187】
B.発現ベクターへのクローニング
λgt11ファージベクター(Huynh)をPromegaBiotec(Madison, WI)から入手した。このクローニングベクターは、β-ガラクトシダーゼ翻訳終了コドンの53塩基対上流に唯一のEcoRIクローニング部位を有する。上記で得られたゲノムフラグメント(コード配列から直接的に、もしくはcDNAの増幅後のいずれかで得たもの)を、0.5〜1.0μgのEcoRI切断gt11、0.3〜3μlの上記サイズ分画フラグメント、0.5μlのlOX連結緩衝液(上記)、0.5μlのリガーゼ(200単位)および蒸留水(総体積5μlにする量)を混合することによって、EcoRI部位中に導入した。この混合物を14℃で一晩インキュベートした後、標準的な方法(Maniatis,1982, 256-268頁)に従ってインビトロパッケージングを行った。
【0188】
パッケージングしたファージを用いて、Kevin Moore博士(DNAX, Palo Alto, CA)から入手したE. coli KM392株を感染した。あるいは、AmericanType Culture Collection(ATCC #37197)から入手できるE. coli Y1090株が使用され得る。感染させた細菌をプレートに播種し、そして得られたコロニーを、標準的なX-gal基質プラークアッセイ(Maniatis)を用いて、X-galの存在下でβ-ガラクトシダーゼ活性の喪失(透明なプラーク)について調べた。ファージプラークの約50%が、β-ガラクトシダーゼ酵素活性の喪失を示した(組換え体)。
【0189】
C.HEV組換えタンパク質のスクリーニング
HEV回復期の抗血清を、メキシコ、ボルネオ、パキスタン、ソマリアおよびビルマにおける記録に残るHEV発生中の感染患者から得た。この血清は、数人の他のETNANB肝炎患者のそれぞれから得た便標本中のVLPに対して免疫反応性であった。
【0190】
上記で得られた約10pfuのファージストックで感染させたE. coli KM392細胞の菌叢を、150mmプレート上に調製し、そして倒置して37℃で15〜18時間インキュベートした。菌叢をニトロセルロースシートで覆い、発現したHEV組換えタンパク質のプラークから紙面へ転移させた。対応するプレートとフィルターの位置を一致させるため、プラートとフィルターに印を付けた。
【0191】
フィルターをTBST緩衝液(10mMTris, pH8.0, 150mM NaCl, 0.05% Tween 20)中で2回洗浄し、AIB(1%ゼラチンを含むTBST緩衝液)でブロックし、再びTBST中で洗浄し、そして抗血清(AIBで1:50に希釈したもの、12〜15ml/プレート)の添加後、一晩インキュベートした。そのシートをTBST中で2回洗浄した後、酵素標識抗ヒト抗体と接触させることにより、抗血清によって認識されるペプチドを含有するフィルター部位に標識抗体を結合させた。最後の洗浄後、5mlのアルカリ性ホスファターゼ緩衝液(100mMTris, 9.5, 100mM NaCl, 5mM MgCl2)中で、16mlのBCIP(4℃で保持した50mg/ml保存液)と混合した33mlのNBT(4℃で保持した50mg/ml保存液)を含む基質培地中でフィルターを発色させた。抗血清によって認識されたペプチド産生点で紫色が現れた。
【0192】
D.スクリーニングプレート培養
前記の工程で決定されたペプチド産生領域を、約100〜200pfuで82mmプレート上に再播種した。HEV抗体と反応し得る抗原を分泌するファージをプラーク精製するため、15〜18時間のインキュベーションに始まりNBT-BCIP発色に至る上述の工程を繰り返した。同定されたプラークを拾い、そしてファージ緩衝液(Maniatis,443頁)中に溶かした。
【0193】
選択した2つのサブクローンは406.3-2および406.4-2クローンで、それらの配列は上記の通りである。これらの配列は、ヒト・メキシコHEV便標本に由来する増幅cDNAライブラリーから単離した。この項に記載の技術を用いて、これらのクローンによって発現されるポリペプチドを、世界中の供給源から得た多数の異なるヒトHEV陽性血清に対する免疫反応性について試験した。
【0194】
下記の表4に示すように、9血清が406.4-2によって発現されるポリペプチドと免疫反応し、そして8血清が406.3-2クローンによって発現されるポリペプチドと免疫反応した。
【0195】
比較のため、表には、様々なヒト血清の、非構造ペプチドY2との反応性もまた示している。これらの血清のうち1つのみが、このクローンによって発現されるポリペプチドと反応した。gt11ベクターの通常の発現産物には免疫反応性が認められなかった。
【0196】
【表4】

【0197】
E.406.3-2(M)抗原の作成
上記の406.3-2gt11プラスミドをEcoRIで消化した。放出HEVフラグメントを、5'フラグメント末端にNcoI部位を付加し、そして3'フラグメント末端にBamHI部位を付加したリンカーの存在下でPCRによって増幅した。増幅した物質をNcoIおよびBamHIで消化し、そしてグルタチオンS-トランスフェラーゼベクターpGEXTM発現ベクターのNcoI/BamHI部位に製造者の指示に従って挿入した。
【0198】
pGEXTMプラスミドを用いてE. coli宿主細胞を形質転換し、そしてpGEXTMベクターでうまく形質転換される細胞を抗HEVヒト抗血清を用いて、免疫蛍光によって同定する。
【0199】
F.406.4-2抗原の作成
上記の406.4-2gt11プラスミドをEcoRIで消化した。放出HEVフラグメントをPCRにより増幅し、そして増幅フラグメントを上記のようにpGEXTM発現ベクターのNcoI/BamHI部位に挿入した。406.4-2ペプチドのペプチド発現は、406.3-2融合ペプチドについて記述したものと同様であった。
【0200】
G.SG3抗原の作成
SG3ペプチドを、HEV(B)の完全なORF2およびORF3の領域を含有するgt10ファージBET1クローンプラスミドを用いて、5'EcoRI-NcoIおよび3' BamHIプライマーリンカーを用いて配列番号7の配列を最初に増幅することにより調製した。増幅フラグメントを、pBluescriptTMベクター(Stratagene,La Jolla CA)のEcoRI/BamHI部位に、製造者の指示に従って挿入した。ベクター増殖および収集後、クローン化した挿入物をNcoIおよびBamHIでの消化によって放出させ、そしてゲル精製した。精製フラグメントを、pGEXTMベクターのNcoI/BamHI部位に挿入し、E.coli発現系内で発現させた。SG3ペプチドのペプチド発現は、406.3-2融合ペプチドについて記述したものと同様であった。
【0201】
H.キャプシドタンパク質の作成
キャプシドタンパク質(B)を、基本的には上記のように、pBET1プラスミドから、NcoI部位を含有する5'プライマーおよびBamHI部位を含有する3'プライマーを用いて、配列番号1のPCR増幅によって調製した。増幅フラグメントを、pGEXTMベクターのNcoI/BamHI部位に挿入し、そしてE.coli発現系内で発現させた。キャプシドタンパク質(M)を同様に調製した。
【0202】

I.ペプチド精製
406.4-2および406.3-2のような可溶性のHEVペプチド抗原を、細菌発現全細胞溶解物のポリアクリルアミドゲル電気泳動によって精製した。粗溶解物調製物を7.5%SDS-PAGEゲルにのせ、各タンパク質の予想サイズに相当するサイズマーカーがほとんど各ゲルから流出するまで泳動した。ゲル泳動緩衝液を新鮮な緩衝液に置換し、ゲルの泳動を5分間隔で続けた。各間隔後にゲル泳動緩衝液を集め、新鮮な緩衝液で置換した。それらの画分を透析および濃縮し、そして各画分をpGEXTM融合パートナー(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)特異的モノクローナル抗体に対する免疫反応性について試験した。高反応性画分を集めた。
【0203】
あるいは、GST融合物(pGEXTM)として発現した場合のペプチドを、グルタチオンセファロース4B(Pharmacia,Piscataway, NJ)を用いるカラムクロマトグラフィーによって精製した。簡単に述べると、非GST融合タンパク質をカラムから洗浄除去した後、結合しているタンパク質を50mMTris HCl pH8.0中の10mMグルタチオンで溶出した。
【0204】
SG3のような不溶性HEVペプチドは、次のように精製した。pGEXTM融合タンパク質を発現するように誘導した細胞をフレンチプレスに2回通すことによって溶解した。その溶解物をグリセロールの40%溶液上に重層し、BeckmanJ221遠心分離器のJ-20ローターにおいて3500rpmで5分間遠心分離した。ペレットをPBSに再懸濁した後、再びペレット化した。次いで、ペレットを、PBS(pH8.0)中の6M尿素、6Mグアニジン(guanadine)に5分間ホモジネートしながら再懸濁し、そして再びペレット化した。懸濁液を、0.22μmフィルター(Nalgene,Kent,U.K.)を通して濾過し、そして製造者の指示に従って、3カラム容量のCoCl2溶液と共に充填したFast Flow ChelatingSepharoseTM(Pharmacia)を含有するIMACカラム(Pharmacia)にのせた。
【0205】
結合したタンパク質を、2カラム勾配の6M尿素,6Mグアニジンおよび(8.0〜6.0のpH範囲で、PBS中で)0〜1Mイミダゾールで溶出した。カラムをPBS中の0.1M EDTAで洗浄し、そして画分を、例えば実施例6、8または10に詳述するELISA法で分析した。
【0206】

実施例2
培養中のヒト初代肝細胞
A.肝細胞の単離
肝細胞を、StanfordUniversity Medical Centerから入手したヒト肝臓から単離した。肝臓をインサイチュで灌流するか、もしくは研究室で灌流するために、くさび(wedge)として摘出した。最初の灌流は、10mMHEPES(pH7.4)および0.5mM[エチレンビス(オキシエチレンニトリロ]四酢酸を補充したCa++,Mg++非含有ハンクス平衡塩溶液を用いて60ml/分で10分間行った。10mMHEPES(pH7.4)および100U/mlコラーゲナーゼ(I型,Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)で補充したウィリアムズ培地E(WME)を用いてさらに20分間灌流を続けた。
【0207】
灌流後、微細ピンセットを用いて肝皮膜を除去し、そしてコラーゲナーゼ溶液中で穏やかに振とうすることにより肝細胞を取り出した。肝細胞懸濁液を数層のガーゼに通してろ過し、そして10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するWMWの等容積と混合した。肝細胞を50×gで5分間の遠心分離によって沈降させ、そして5% FBSを含有するWME中に再懸濁した。肝細胞をさらに、同様に2回沈降させ、再懸濁した。最終細胞調製物を、数層のガーゼを通してさらにろ過した後、トリパンブルーを用いて生存について調べた。細胞を、コラーゲン(CollaborativeResearch, Bedford, MA)で予めコートされた60mm Primariaプレート(Falcon/Becton Dickinson,Franklin Lakes, NJ)1枚あたり2×106細胞の密度でプレートに播種した。
【0208】
培養を5% CO2中37℃で3時間インキュベートして付着させ、培地を血清非含有処方物に交換し、その後48時間毎に交換した。血清非含有処方物は、既に記述されているように(Lanford,1989)、成長因子、ホルモン、10mM HEPES(pH7.4)、100μg/mlゲンタマイシンを補充したWMEベースの培地であった。
【0209】
B.肝臓特異的タンパク質の検出
ヒト肝細胞培養物を、様々な期間で血清非含有培地中に維持し、そして[35S]-メチオニンで24時間標識した。培地を、1mMPMSF、1mM EDTAおよび1% NP40を含有するように調節した。異なる血漿タンパク質に特異的な抗体をプロテインA-アガロースビーズに結合し、そのビーズをPBSで洗浄し、そして標識した培地のアリコートをこの抗体-ビーズ複合体と共に4℃で16時間インキュベートした。ビーズを1%NP40を含む緩衝液で3回洗浄し、免疫沈降したタンパク質を2% SDSおよび2% 2-メルカプトエタノールを含むゲル電気泳動サンプル緩衝液で溶離した。サンプルを勾配SDS-PAGE(4〜15%)とオートラジオグラフィーによって分析した。
実施例3
初代ヒト肝細胞のインビトロHEV感染
A.ヒト肝細胞のHEV感染
HEV感染カニクイザル(cynomolgusmonkey)#73便貯蔵物(継代4)を、初代ヒト肝細胞の感染用の接種物として使用した。様々な量の接種物を血清非含有培地(SFM)1ml中に希釈し、3時間のインキュベーション期間中の培養物に適用した。次いでこの溶液に2mlの新鮮なSFMを補充し、全混合物を一晩インキュベートした。翌日、細胞単層をWME(10mMHEPES, pH7.4)で3回洗浄し、そして新鮮なSFMに交換した。その後、それを2日間隔で交換した。
【0210】
B.免疫蛍光染色アッセイ
初代カニクイザル肝細胞を単離し、記述されているように、コラーゲン被覆カバーグラスを有する組織培養プレートに接種した。カバーグラス上の細胞を、最初の接種の3日後に、HEV感染カニクイザル#73便貯蔵物かNIH正常ヒト血清のいずれかで感染した。感染を2週間進行させた。
【0211】
カバーグラス上の細胞を90%アセトン中で室温で1分間固定した。次にカバーグラスを風乾した。カバーグラスをPBS中の1%ヤギ血清中で1時間ブロックし、PBSで3回洗浄し、そしてHEV組換えタンパク質406.3-2(B)、406.4-2(M)および406.4-2(B)に対するウサギ抗血清の混合物と共に室温で3時間インキュベートした。カバーグラスを、再びPBSで3回洗浄し、PBS-1%ヤギ血清で希釈したフルオレセインイソチオシアネート結合(FITC)ヤギ抗ウサギIgG(H+L)(Zymed)と30分間反応させた。カバーグラスをPBSで3回洗浄して、風乾した後、それにFITCグリセロール溶液をのせ、蛍光顕微鏡下で調べた。
【0212】
C.逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応(RT/PCR)
初代カニクイザル肝細胞のHEV感染をRT/PCRアッセイで評価した。cDNA合成およびPCRのためのプライマーは、完全長HEV cDNAのヌクレオチド配列(Tamら,1991a, 1991b)に基づいた。プライマーHEV3.2SF1(nt 6578-6597)およびHEV3.2SF2(nt 6650-6668)はウイルスゲノムのORF2領域に由来するセンス極性であり、HEV3.2SR1(nt7108-7127)およびHEV3.2SR2(nt 7078-7097)はその領域内のアンチセンスプライマーである。
【0213】
1段階グアニジウム手順を用いてHEV感染細胞、あるいはChomczynskiらの方法(Chomzynski, 1987)に従ってHEV感染上清から全細胞RNAを抽出した後、RNAサンプルのアリコートを95℃で5分間熱変性し、そして20単位のRNasin(Promega)、1mMの濃度の各デオキシリボヌクレオチド(Perkin-ElmerCetus)を有する1×PCR緩衝液(Perkin-Elmer Cetus, Norwalk, CT)および2.5μMのHEV3.2SR1プライマーを含有する20μlの反応体積中で、1反応あたり200単位のMMLV逆転写酵素(BRL)を用いて、室温で5分間、そして42℃で60分間の逆転写に供した。次いで、反応混合物を95℃で5分間熱処理してMMLV逆転写酵素を変性させた。
【0214】
10μlのcDNA合成産物を、0.5μMHEV3.2SF1プライマー、1.25単位のTaq DNAポリメラーゼ(AmpliTaq, Perkin-Elmer Cetus)および1×PCR緩衝液を有し、50μlの鉱油を重層した最終体積50μlでPCRに使用した。Perkin-Elmerサーマルサイクラー中で40サイクルのPCR(95℃×1分間;52℃×2分間;72℃×30秒間)に供した。次いで、この第1のPCR産物の10μlに対して、内部PCRプライマーHEV3.2SF2およびHEV3.2SR2を含有する総体積50μl中で、さらに40サイクルのネステッドPCR(95℃×1分間;55℃×2分間;72℃×30秒間)を行った。
【0215】
第1および第2のPCR産物をアガロース電気泳動に供し、臭化エチジウムで染色し、そしてUV光下で写真撮影した。サザン転移を行い、そしてフィルターを、プライマーを除いた[32P-dCTP]標識の内部プローブHEVORF2-7(nt6782-6997)とハイブリダイズし、そしてオートラジオグラフィーを行った。
実施例4
62kDa HEV抗原の調製
62K抗原を昆虫細胞内のバキュロウイルス発現系によって次のように作成した。
【0216】
A.組換えバキュロウイルスの構築
E型肝炎ウイルスのビルマ株の全ORF-2を発現する組換えバキュロウイルスORF-2-rAcNPVを、He, J.ら, J. Clin. Microbiology,31:2167(1993)(参考として本明細書中で援用される)に既に記述されているように構築した。
【0217】
ORF2のC末端の549アミノ酸を発現する組換えバキュロウイルスpBBIII-62Kの構築を次に記述し、図5に要約する。簡単に述べると、HEVのビルマ株に由来するORF-2(図2)のヌクレオチド5480-5684を含有する204塩基対(bp)DNAフラグメントを、2つのプライマー(5'プライマー、配列番号29と3'プライマー、配列番号30)と共にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)とHEVcDNAプラスミド鋳型pBBIII-ORF2を使用して合成した。プラスミド構築を容易にするために、5'プライマーはBamHI部位を含有し、3'プライマーはHindIII部位を有する。PCR産物をBamHI/HindIIIで消化し、そして同じ制限エンドヌクレアーゼで予め消化しておいたバクロウイルス発現ベクターpBluBacIII(Invitrogen,San Diego)に連結してプラスミドpYZ1を作成した(図1)。
【0218】
HEVORF-2の3'部分に対応する1.5キロ塩基対(kbp)HindIII DNAフラグメントを、既に構築されているプラスミドpBBIII-OF2から切り出し、プラスミドpYZ1のHindIII部位に挿入して最終のバキュロウイルス転移ベクターpBBIII-62Kを作成する。続いてこれを組換えウイルス構築に使用する。PCRから得られるヌクレオチド配列をDNA配列決定によって確認し、pBBIII-62K中のHindIII/HindIII挿入物の方向が正しいことを制限消化分析によって確認する。トランスフェクション、プラーク精製および組換えバキュロウイルスBBIII-62Kのウイルス増幅は、記述された操作法(Invitrogen,San Diego)に従って行う。
【0219】
B.細胞培養および発現条件
懸濁培養フラスコ中のSpodoptera frugiperda(Sf9)細胞を、5%ウシ胎児血清(v/v)、50μg/mLゲンタマイシンおよび0.1%Pluronic F-68を補充したグレース昆虫培地中で27℃に維持した。すべての培養成分を、Gibco/BRL(Gaithersburg, MD)から入手し、そして細胞を製造者(Invitrogen,La Jolla, CA)により記述されたプロトコールに従って培養した。2×106/mLの密度を有する生存細胞を遠心分離によってペレット化した。細胞ペレットを、2プラーク形成単位(PFU)/細胞の感染多重度で、組換えウイルスBBIII-62Kを含有する培地(最初の体積の1/10)に再懸濁した。感染を、攪拌することなく1時間行った。感染細胞を新鮮な培地で最初の密度に希釈し、そして攪拌(75〜95rpm)しながら27℃で2〜7日間維持した。
【0220】
単層細胞の感染手順はInvitrogen, Inc.により提供されるプロトコルに記述されている。
実施例5
Sf-9懸濁培養および単層細胞において産生された
ORF2のSDSPAGEおよび免疫ブロット
感染後の様々な時間後に調製した、上記実施例5からの感染細胞溶解物を遠心分離により分離して、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)の可溶画分と不溶画分との両方を調製した。両画分のタンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、クマシーブルー溶液で染色(図6a)するか、もしくは次に記述するようにニトロセルロース紙に転写してウエスタンブロット分析(図6b)を行った。
【0221】
A.抗HEV抗血清
2つのウサギポリクローナル抗血清(抗SG3と抗1L6)を、既に記述されているように(Yarbough 1991, 1994;参考として本明細書中で援用される)、ORF-2の3'部分、HEVのビルマ株のORF-2の同じC末端を共有する327および42アミノ酸長に対して作成した。
【0222】
B.SDS-PAGEおよび免疫ブロット
SDS-PAGE用のタンパク質サンプルを調製するため、約2×106個のバキュロウイルス感染Sf-9細胞を微量遠心分離器でペレット化し、150μlのリン酸緩衝化生理食塩水中に再懸濁した。細胞を超音波処理によって溶解した。溶解物を微量遠心分離器で4℃で15分間の遠心分離に供した。上清およびペレットを分離し、そして20mMTris(pH6.8)、10% 2-メルカプトエタノール、2% SDS、30%(vol/vol)グリセロールおよび0.1mg/mlブロモフェノールブルーを含有するタンパク質変性緩衝液中で変性した。タンパク質サンプルを4〜20%ポリアクリルアミド-SDSゲルで電気泳動し、次いでPVDF膜に転写した。上記のウサギポリクローナル抗血清および化学発光検出アッセイ(AmershamのECLキット)を用いて免疫ブロットを行った。
【0223】

実施例6
73K、c62Kおよびr62KORF2産物の精製
A.完全長ORF2(73K)の精製
組換えバキュロウイルスORF2-rAcNPV感染細胞ペレットを、1mM EDTA、1μg/mLアプロチニン、10μg/mLロイペプチン、0.5mg/mLPefabloc SCおよび10μg/mLペプスタチンを含有するリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に、20%(w/v)の細胞密度で再懸濁した。懸濁液をMicrofluidics微量流動化装置M-110Sに14,000PSIの液圧で3回通すことによって溶解し、その後、溶解液を5℃で10,000×gの遠心分離を30分間行った。
【0224】
上清を捨て、不溶ペレットをpH8.5の25mM BICINE中に再懸濁した。懸濁液を同じ条件下で再度遠心分離し、そして洗浄ペレットを0.5% SDS(w/v)を含む25mMBICINE中で、周囲温度で30分間抽出した。抽出物を周囲温度で10,000×gの遠心分離を30分間行い、得られた上清を分離し、8M尿素中の25mMBICINE(pH8.5)で1:5に希釈した。
【0225】
この物質を、同じ緩衝液においてHyper-D-S(BioSepra, Framingham, MA)強陽イオン交換カラム上で3000cm/時の表面線速度でクロマトグラフィーを行った。カラムの充填と洗浄後、同じ緩衝液において0〜400mMNaClの直線的勾配で73Kタンパク質を溶出した。
【0226】
Hyper-D-Sカラムからの73Kタンパク質含有画分を500容量過剰の水に対して一晩透析した後、透析物を4℃で10,000×gの遠心分離を行った。上清を捨て、ペレットを25mMTris(pH8.5)中の0.5% SDSで抽出した。固形クレランド試薬(DTT)を50mMの濃度になるよう加え、溶液を100℃に3分間加熱した後、ただちに、50mMグリシン(pH10.5)、10%グリセロール、5mMグルタチオン(還元型)、0.5mMグルタチオン(酸化型)および1g/LPEG 3500を含む100倍量過剰の溶液中に希釈した。溶液を一晩空気酸化させた。酸化後、溶液を濃縮し、そして25mM Tris(pH8.5)への接線横断流ろ過(tangentialcross flow filtration)によってダイアフィルトレーションした。物質を遠心限外ろ過によってさらに濃縮した。
【0227】
B.細胞溶解物の調製と組換え62K抗原の精製
組換えバキュロウイルスBBIII-62Kで感染させた凍結Sf9細胞を、1μg/mLアプロチニン、1mM EDTA、10μg/mLロイペプチン(BoehringerMannheim, Indianapolis, IN)、0.5mg/mL Pefabloc SC(Boehringer Mannheim)、10μg/mLペスタチン(BoehringerMannheim)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に20%(w/v)の濃度で再懸濁した。細胞懸濁液を、Microfluidics微量流動化装置M110S(Newton,MA)に14,000PSIで2回通すことによって溶解した。溶解した細胞を遠心分離(15,000×g、4℃、30分)した。次いで、細胞上清に固形ジチオスレイトール(DTT)(Cleland,1964)を50mMの濃度になるよう添加することによって前処理し、そしてまず、100容量の10mM Tris(pH8.5), 50mM NaClおよび0.5mMDTTに対して4℃で8時間透析した。
【0228】
DTTを除いた新鮮な緩衝液に対してさらに8時間透析を続けた。この2段階透析手順を用いることにより、細胞タンパク質が混入した62kDaタンパク質の凝集物は実質上除去された。r62kDaタンパク質はこの溶解緩衝液に完全に可溶で、細胞溶解上清中の本分子が定量的に回収されることがわかった。
【0229】
透析物を、Millipore0.22ミクロンフィルターを通して予備ろ過し、次いで10mM Tris(pH8.6), 50mM NaClで平衡化したDEAE EMD 650(S)カラム(E.Merck)に直接のせた。r62kDaタンパク質を、50〜500mM NaClの15カラム容量にわたる直線的勾配で100cm/時の表面線速度で溶出した。62kDaタンパク質は、勾配の初期に溶出した。
【0230】
ORF-2関連の62kDaの存在を、ウサギポリクローナル抗体1L6(Yarboughら,1991)(元のORF-2タンパク質のカルボキシル末端領域に対して生じた抗体)によるカラム画分のウエスタンブロッティングによって確認した。
【0231】
DEAEカラムからのr62K含有画分を集め、遠心限外ろ過(Amicon,Beverly, MA)によって濃縮した。r62kDaタンパク質を、表面線速度30cm/時で25mM Tris(pH7.2)で平衡化した60cmSephacryl S-100カラム(Pharmacia, Piscataway, NJ)(5×100cm)上でさらに精製し、そして緩衝液を交換した。62kDaを含有する画分を集め、遠心限外ろ過によって濃縮した。この手順におけるこの工程は、主として緩衝液交換工程として使用した。
【0232】
S-100カラムからの集めた62kDa含有画分を、表面線速度3000cm/時で緩衝液B(25mMTris, pH7.2)で平衡化した強陰イオン交換カラムPoros Q/Fカラム(4.6×10mm)(Perseptive Biosystems,Cambridge, MA)に適用した。カラムを5カラム容積の緩衝液Bで洗浄した。62kDaを、緩衝液B中の0〜1M NaClの直線的勾配(合計10カラム容積)で溶出した。62kDaタンパク質は、約300mMNaClで溶出した。必要であれば、螺旋状カートリッジ(Millipore Prep TFF; Millipore, Bedford, MA)を用いる接線横断流ダイアフィルトレーションによってr62kDaの緩衝液を交換した。この段階で、62kDaタンパク質はSDS-PAGEとウエスタンブロッティングに基づいてほぼ均一であった。
【0233】
上記の精製工程において、緩衝液の導電率およびpHをそれぞれRadiometer Copenhagen CDM 83導電率計(Westlake, OH)およびPHM参照標準pH計でモニターした。すべての緩衝液成分は、生化学用またはUSPグレードのいずれかであり、カブトガニアメーバ様細胞溶解物アッセイによってパイロジェンを実質上含有しないことを決定した。
【0234】
さらに、62K抗原の昆虫細胞溶解物からの回収を定量するために、次の2重抗体サンドウィッチ(ELISA)技術を使用した。ORF-2タンパク質のカルボキシル末端部分に対するポリクローナルウサギ抗体である抗1L6抗体を、プロテインGセファロースアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、そして炭酸塩/重炭酸塩緩衝液中でウェルあたり1.6μg/mLの濃度でマイクロタイタープレートト上にコートした。洗浄およびブロック後、精製62kDa抗原(アミノ酸分析によって定量したもの)、または処理中のサンプルをプレートに加え、2倍希釈系列で希釈した。抗原のインキュベーションおよび洗浄後、二次抗体すなわちビオチンに結合した抗SG3をプレートに加えてインキュベートした。SG3抗原は、62kDaタンパク質のカルボキシル末端328アミノ酸に対応する(Yarboughら,1994)。インキュベーション後、ストレプトアビジン結合西洋ワサビペルオキシダーゼとともに最後のインキュベーションを行った。最後の洗浄の後、基質を加え、プレートを490nmの吸光度で読み取った。
【0235】
サンプルのタンパク質濃度はBradfordアッセイ(Pierce, RockFord, IL)を用いて測定した。
【0236】
実施例7
電子顕微鏡
タンパク質サンプルをFormvar被覆炭素格子にのせ、そして2%酢酸ウラシルまたは2%リンタングステン酸(pH6.5)で染色した後、電子顕微鏡で観察した。固定が必要な場合は、タンパク質サンプルを2%グルタルアルデヒドを含有するPBS中で30分間固定した。次にCentricon-30(Amicon,Beverly, MA)中で遠心分離を行いサンプル緩衝液をPBSに交換することにより、緩衝液交換を行った。
実施例8
ELISAアッセイ
ELISAを用いて、E.coliおよびバキュロウイルス内で発現されるHEVタンパク質産物の抗原性を比較した。コード化血清の小規模パネル調査を用いてバキュロウイルス発現タンパク質を組込んだ診断の感度と特異性を明らかにした。
【0237】
A.ヒト血清
ヒト血清は、様々な地理的位置におけるE型肝炎の様々な流行中に集めておいた保存パネルに由来した。ヒト以外の霊長類の血清は、Center for Disease Control(Atlanta, GA)でE型肝炎ウイルスに実験的に感染させたカニクイザルとチンパンジーに由来した。
【0238】
B.ELISA
免疫診断に使用されるタンパク質には、(1)E. coliにおいて融合タンパク質として発現されるORF2の327アミノ酸をコードするSG3(配列番号17)、(2)バキュロウイルスにおいて発現されるORF2の660アミノ酸をコードする73Kおよび(3)バキュロウイルスにおいて発現されるORF2の549アミノ酸をコードする62Kが含まれる。抗原を、個別にポリスチレンマイクロタイタープレートのウェル上にコートした(Yarboughら,1994)。各ウェルを、0.05M炭酸ナトリウム pH9.5(Na2CO3 1.59g, NaHCO32.93g, 0.02%アジ化ナトリウム, pH9.5, 1000μlにする)緩衝液100μl中で200ngの各タンパク質と共に4℃で一晩インキュベートした。PBS-0.05%モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)「Tween20 TM」(Sigma)中で洗浄し、PBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)の200μlで室温で1.5時間ブロッキングした後、血清サンプルを抗体希釈液(1000mlのTirs緩衝化生理食塩水(40mMTris pH7.5, 1M NaCl)、30mlのヤギ血清、10gのウシ血清アルブミン(画分V)、10gの無脂乳(Carnation)、1gのゼラチン(EIA)、および0.2gのチメルゾール(thimersol)(保存剤);後述の抗体希釈液調製を参照のこと)で1:100に希釈して、37℃で30分間インキュベートした。一次抗体を除去し、そして洗浄によって未結合の一次抗体をすべて除去した後、ウェルを二次抗体すなわちHRP結合ヤギ抗ヒトIgG(γ鎖特異的)またはヤギ抗ヒトIgM(μ鎖特異的)と共に37℃で30分間インキュベートした。
【0239】
最後の洗浄後、基質を加え、プレートを490nmの吸光度で読み取った。0.300またはそれ以上のO.D.値を与える血清をHEV抗体に関して陽性であると評価した。これは、P/N比が3.0より大きく、そして正常な血清の平均より最低5×(標準偏差)大きいことに一致する。
【0240】
C.抗体希釈液調製
抗体希釈液を次のように調製した。200mlのTBSを60℃に加熱して、その中で1gのゼラチンを融解した。体積をTBSで1000mlにした。温度が40℃まで下がってから、10gのBSAを加えた。混合物をBSAが溶解するまで室温で攪拌した。次に30μlのヤギ血清を加えた後、チメレゾール(thimeresol)を0.02%になるよう添加した。この試薬は、4℃で2週間保存し得る。使用前に、ミルクを1%になるように加え、室温で30分間攪拌した。
実施例9
62K抗原のさらなる特徴づけ
A.SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウエスタンブロッティングによる組換え62kDaタンパク質の特徴づけ
62kDaタンパク質の処理画分(実施例4および6B)を変性し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。簡単に述べると、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動を、トリシンSDS-PAGE手順(SchaggerおよびvonJagow, 1987)に従って行った。ウエスタンブロッティングを、既に記述されているように行った(Yarboughら, 1994)。ORF-2のカルボキシル末端に対するウサギポリクローナル抗体1L6を用いて精製タンパク質を評価した(実施例5)。トリシン緩衝液系は、より高い分解能を得ると共にPVDF(ポリビニリデンジフルオリド)膜からの固相配列決定におけるエドマン試薬との干渉を最小化するために使用した。
【0241】
4〜20%SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動および対応するウエスタンブロットによるr62K精製工程の分析結果を図14Aと14Bに示す。図14Aにおいて:レーン1,分子量マーカー;レーン2,細胞溶解物;レーン3,細胞溶解物上清;レーン4,DEAEピーク画分;レーン5,SephacrylS-100ピーク画分;レーン6,Poros HQ/Fピーク画分。分子量マーカーは、Novex SeeBlue Pre-StainedStandards(San Diego, CA)であり、次の範囲である(上から下へ);ミオシン,250kDa;BSA,98kDa;グルタミン酸デヒドロゲナーゼ,64kDa;アルコールデヒドロゲナーゼ,50kDa;カルボニックアンヒドラーゼ,36kDa;ミオグロビン,30kDa;リゾチーム,16kDa;アプロチニン,6kDa;インシュリンB鎖,4kDa。図14Bは、上記のレーン1〜6のウエスタンブロットを表す。SDS-PAGEと転写に先立ってサンプルを15倍に希釈した。1L6抗体を一次抗体として使用した。
【0242】
最初の細胞溶解物の分析(図14A,レーン2)は、62kDaタンパク質がバキュロウイルス発現系において正しく発現され、そしてさらなるプロセシングに好適であることを示した。細胞溶解上清(図14A,レーン3)には、62kDaタンパク質が可溶性産物として本質的に定量的に回収されるようであった。DEAE画分(図14A,レーン4)によって前記の溶解物上清画分から62kDaが有意に精製され、SephacrylS-100およびPoros HQ/Fクロマトグラフィー段階によって62kDaタンパク質がさらに精製された(図14A,レーン5および6)。
【0243】
ゲル電気泳動図の興味深い局面は、62kDaバンドが見かけ上二重線(doublet)として精製されたことであった。図14Bに記載のウエスタンブロットは、並行してSDS-PAGE上で泳動した15倍希釈のサンプルを含有する。ウエスタンブロットではタンパク質が二重線として可視化され、低い方のバンドが精製過程中に蓄積しているようであった。しかし、タンパク質加水分解は最小限であるようであった。この結果は、本タンパク質が、グルコシル化、N末端修飾またはC末端修飾のような潜在的側鎖修飾によって不均質な種として存在し得ることを示唆した。この不均質性の原因を決定するため、以下の実験を行った。
【0244】

B.アミノ末端配列とアミノ酸組成
62kDaタンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲルで分離し、PVDF(Biorad,カリフォルニア州リッチモンド)膜に移した。そのタンパク質についてアミノ酸組成とアミノ末端配列を決定した。
【0245】
アミノ酸組成分析を、100μlの6N HCl、 0.02%フェノールおよび2nmolノルロイシン中115℃で16時間加水分解した後、BeckmanModel 6300(カリフォルニア州フラートン)イオン交換装置で行った。加水分解後、サンプルをSpeedvacで乾燥し、得られたアミノ酸を、2nmolのホモセリンを含む100μlのサンプル緩衝液(Beckman,カリフォルニア州フラートン)に溶解した。ここにホモセリンは分析器へのサンプルの移送を独立して監視するための第2の内部標準として機能する(Rosenfeldら,1992)。装置をアミノ酸の2nmol混合物で較正し、製造者の説明書に従って操作した。アミノ酸組成分析を用いてサンプル中のタンパク質濃度を正確に定量した。
【0246】
アミノ末端配列決定を、得られるフェニルチオヒダントイン(Pth)アミノ酸誘導体を同定するためのオンラインHPLCを装着したApplied Biosystem 470Aまたは477(カリフォルニア州フォスターシティー)で行った。サンプル添加に先立って、まず式:[ノルロイシン-(スクシニル-リジン)43-ノルロイシンを有する25pmolの16残基内部配列決定標準ペプチドを配列決定フィルター上にスポットした(Elliottら,1993)。470Aおよび477装置を製造者の推奨に基づいて操作し、3pmolのPth標品を常套的に使用した。National Center forBiotechnology Informationが管理するBLAST Network Serviceによってすべての配列を検索した。
【0247】
最初の5サイクル中に存在するアミノ酸のレベルは予想より約10倍低く、62kDa分子の主要部分がN末端で遮断されていることを示唆した。得られた配列は完全長ORF-2を発現するSf9細胞内で最初に生産される62kDaのプロセス型と同一であるように思われた。おろらくバキュロウイルス感染Sf9細胞内に存在するメチオニンアミノペプチダーゼが、正しい翻訳開始を保証するために組換えタンパク質のコード配列中に導入されたN末端メチオニンを切断したのだろう。
【0248】
C.トリプシン消化ペプチド分析
102pmolの62kDaタンパク質を、切り出したポリアクリルアミドゲル切片内のその場でトリプシン消化した。ブランクゲル切片と50pmolのトランスフェリンを含むゲル切片をも消化し、コントロールとして並行して分析した。得られたペプチドを逆相HPLCで分離した。
【0249】
ゲル内酵素消化は、比率約1:5(酵素重量:基質重量)の修飾トリプシン(Promega, ウィスコンシン州マジソン)中での灌流と37℃で24時間の消化を用いて、WilliamsおよびStone(WilliamsおよびStone,1995)に従って行った。得られたペプチドを還元/カルボキシルメチル化し、0.1% TFA, 60% CH3CNで抽出した後、量と密度(μgタンパク質/mm3)を決定できるように加水分解/アミノ酸分析にかけた。この2つの変数は共に今まさに起ころうとしている消化の成功の可能性を判断するための有益な規準として機能する。アミノ酸組成分析は上述のように行った。
【0250】
逆相HPLCを、ISCOModel 2150 Peak Separatorと98%緩衝液A(0.06%トリフルオロ酢酸;TFA)と2%緩衝液B(0.052% TFA, 80%アセトニトリル)で平衡化した25cmVydac C-18(5ミクロン,300オングストローム)カラム(カリフォルニア州ヘスペリン)とを装着したHewlett Packard 1090 HPLCシステム(カリフォルニア州パロアルト)で、WilliamsおよびStone(1995)に記載のごとく行った。次にペプチドを次の勾配プログラムで溶出させた:0〜60分(2〜37%緩衝液B)、60〜90分(37〜75%緩衝液B)、および90〜105分(75〜98%緩衝液B)。これを210nmの吸光度で検出した。25〜250pmol範囲の消化物のアリコートを、0.15ml/分で溶出させる2.1mm内径(ID)カラム上で分画した。画分をフタの無いEppendorfチューブに集めた。
【0251】
消化された62kDaタンパク質の逆相HPLC分析によって検出された合計38種と考えられるトリプシン消化ペプチドと143個の潜在的ピークのうち、8ピークをレーザーデソープション質量分析用に選択した。なぜならこれらのピークが1つの主要種のみを含有するらしいことをHPLC特性図が示唆したからである。
【0252】
D.レーザーデソープション質量分析(LDMS)
ピーク45、50、62、65、73、82、101および106をさらにLDMSで評価した。LDMSを用いて次に挙げるいくつかの問題を解決した。
(i)ピークは人為的ピークか、それとも実際にペプチドか。分析により、これらのピークはいずれも人為的でないことが確認された。
(ii)ピークは1より多いペプチドを含有するかどうか。分析により、いくつかの場合ピークがペプチドの混合物を表すことが明らかになった。
(iii)LDMS計算質量はウイルスRNAによってコードされる予想アミノ酸配列から導かれる予想質量と同等かどうか。遮断されていると思われるピーク65を除いて、いずれの場合もペプチドの質量は予想される質量と同等であった。
【0253】
この分析は任意の翻訳後修飾の簡単な決定をも可能にする。
【0254】
LDMSを行うため、逆相HPLCによって単離されたペプチドの3μlアリコートを新しい標的の上にスポットしたα・シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(αCHCA)マトリックス溶液1μlの上部に加えた。サンプルをマイクロピペットに繰り返し出し入れすることによってマトリックスの混合を行った。次にサンプルを室温で風乾した。相互汚染を避けるため、すべての標的を1回だけ使用した。αCHCAマトリックス溶液は40%CH3CN/0.1% TFA(トリフルオロ酢酸)中に10〜20mg/mLの濃度で調製し、それをボルテックスし、数分間静置した後に使用した。マトリックス溶液は−20℃で最大2日間保存した。ペプチドの外部較正のために使用した較正物質はグラミシジンS(m/z=1142.5)とインシュリン(m/z=5734.5)である。両較正物質は50%CH3CN, 0.1% TFAまたは0.1% TFA中のいずれかの10pmol/μl保存液として−20℃で保存した。LDMSを、窒素レーザー(337nm)と0.65m直線状飛行管を装着したVG/FisonsTofSpec質量分析器(VG Organics,英国マンチェスター)で行い、それを加速電圧25kVの+ve直線イオンモードで操作した。
【0255】
通常、各スペクトルについて30回を平均し、各サンプルについて3〜6スペクトルを得た。予想質量は平均イソタイプの一プロトン化質量に基づき、予想質量の正確さは約±0.25%であった。
【0256】
ポストソースディケイ配列決定を反射モードで行い、ラダー配列決定を副腎皮質刺激性ホルモンフラグメントACTHコルチコトロピン様中葉ペプチドフラグメント18〜39の2pmol配列に対して較正した。
【0257】
ピーク65、73、101および116は、LDMSの結果が1つの主要種のみの存在を示したので、直接配列決定に適していると思われた。ピーク45、50、62および82も配列決定した。これらのピークは個々の配列決定前にHPLC再精製を行うことが最善だと思われる混合物であるようだったが、質量情報と予想アミノ酸配列がわかっていることから、これらの混合物を直接配列決定することにした。
【0258】
E.LDMSペプチドの配列分析
ペプチド65は説明しうる配列を与えなかった。さらに調べると、LDMSによって観測された質量はN末端アセチル基が付加した62kDaタンパク質のN末端残基と合致した(予想される1786.9ダルトンに対して観測値は1785.5ダルトン;0.03%の誤差に相当する)。62kDaタンパク質の予想配列を用いるトリプシン消化ペプチドデータベースの評価により、分子量の類似する他のペプチドが1つだけ明らかになった(残基408-423)。ポストソースディケイ分析はピーク65が実際に予想されるアミノ末端トリプシン消化ペプチドであることを明らかにした。
【0259】
ピーク45、50、62、73、82、101および116に対応するペプチドの配列分析により、予想62Kタンパク質の内部配列が無傷であることが確認された。簡単に述べると、ピーク73は既知の配列の残基327-355に合致した。ピーク101は既知の配列の残基123-139に合致した。ピーク116は既知の配列の残基424-431に合致した。ピーク45は予想質量1396.49ダルトンを持つORF-2配列の残基412-423に合致した。ピーク50はORF-2配列の残基334-348に合致した。ピーク62は予想質量749.84ダルトンの短い6ペプチド残基を含有し、ORF-2配列の残基513-518に合致した。ピーク82は残基424-437(第1配列)、残基438-466(第2配列)および残基555-578(第3配列)に合致する3つのペプチドの混合物であった。これらの結果を総合すると、予想62Kポリペプチドの内部配列は無傷であり、予想配列と同一線形順序で並んでいることが示される。
【0260】
F.LC-MSとカルボキシル末端配列分析
SDS-PAGEで観察される62kDタンパク質二重線の性質を評価するため、精製した62kDaタンパク質をVydacC18逆相キャピラリーカラム(カリフォルニア州ヘスペリン)で分画し、その溶出ピークをエレクトロスプレー質量分析(ES-MS)で評価した。精製した62kDaタンパク質を、融合キャピラリーVydacC18逆相カラム上で、ABI Model 410シリンジポンプを用いて、流量50ml/分で分画した。タンパク質を0.1% TFA(v/v)水溶液から0.1%TFAアセトニトリル溶液への溶媒系で分画した。インラインフロー分割器を用いて、陽イオンエレクトロスプレーイオン化モードで操作しているVG BioQトリプル四重極質量分析計(VGOrganics,英国マンチェスター)に10ml/分の流速でピークを分岐させた。62kDaタンパク質はES-MSによって56.1kDaと58.6kDaに対応する2つの主要ピークに分離した。
【0261】
ORF-2領域の残基112から残基660までのコード配列を用いて予想される62kDaタンパク質の分子量は59.1kDである。これらのデータは分子内で欠失が起こっていることとその欠失がおそらくはアミノ末端かカルボキシル末端であろうことを示唆した。このタンパク質は過ヨウ素酸酸化とGC-MS分析の両方によってグルコシル化されていないことがわかった。
【0262】
ES-MSによる分子質量決定は典型的には0.01%である(Scobleら,1993)。アミノ末端の確認により、ES-MSデータはカルボキシル末端が残基551-552と残基536-537の間で切断されうることを示唆した。この推定カルボキシル末端プロセシングを確認するため、無傷の62kDaを用いて自動カルボキシル末端配列決定を行った。
【0263】
自動C末端配列分析のため、タンパク質サンプルを、イソプロパノールで予備処理し、不活性Kel-Fカラム(Norton Performance Plastics,ニュージャージー州ウェイン)に挿入したZitex膜(NortonPerformance Plastics,ニュージャージー州ウェイン)に付与した。この配列決定カラムを化学カップリングと環化用のHewlett PackardG1009A配列決定装置(カリフォルニア州パロアルト)に装着した。トリメチルシラノレートのアルカリ塩(KOTMS)を用いて、結合したペプチジルチオヒダントインと環化産物をC末端チオヒダントインアミノ酸残基と短くなったペプチドに切断した。誘導体化したサンプルを、HewlettPackard特製(2.1mm×25cm)逆相PTH分析HPLCカラムを用いるHewlett Packard 1090液体クロマトグラフ(カリフォルニア州パロアルト)によって、269nmにおけるフィルター測光検出で分析した。
【0264】
スルホン酸アルキルをイオン対合試薬として用いる39分二相勾配(溶媒A:リン酸緩衝液pH2.9;溶媒B:アセトニトリル)を開発した。100pmolのチオヒダントイン-アミノ酸標品を用いて分析を標準化した。最初の配列決定サイクルはグルタミンとリジンに対応する2つの極めて強いピークを生じた。これらはいずれも62kDaタンパク質の推定カルボキシル末端には位置しない。
【0265】
第2サイクルは極めて強い(>200pmol)ロイシンピークを明らかにし、このポリペプチド混合物中に1より多いロイシンが存在することを示した。第3サイクルは増大したバックグラウンドゆえにいくらか不明瞭であった。しかし第3サイクルにはグルタミン酸またはグリシン残基のいずれかと共にアルギニンが明らかに存在した。このカルボキシル配列決定データは不均質な先端欠失タンパク質の存在を支持している。
実施例10
62kDa HEV抗原ワクチンは異種野生型HEVに対する完全な保護を動物に与える
A.抗原投与ストックの滴定
メキシコ・テリクスタック(Telixtac)におけるHEV流行(Velazquezら,1990)の間に感染した人から得た10%便懸濁液(Mex #14)は、実験的に感染したカニクイザルでE型肝炎を引き起こすと報告されている(Purdyら,1993)。この抗原投与ストックを滴定するため、4組のカニクイザルに、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に調製したメキシコ1410%便懸濁液の希釈液を静脈内注射した。2匹からなる各群に1mlの10−2、10−5、10−6または10−7希釈液を与えた。
【0266】
動物を、1)ALTとSICDの血清レベル、2)HEVに対する抗体の発生、3)糞へのHEVの排出、4)肝臓におけるHEV抗原の検出および5)組織病理学的変化によって、抗原感染の証拠について監視した(表5)。
【0267】
表5のデータはメキシコ14 HEV接種物の滴定を表している。抗HEVはELISAで検定した。肝臓中のHEV抗原は肝生検標本の免疫蛍光検定によって検出した。肝生検を壊死炎症性変化についてコード下で調べた。ALTレベルを標準的方法で検定した(Purdyら,1993)。
【0268】
【表5】

【0269】
週毎の血清標本をアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)について試験し、ELISAで抗HEV抗体について試験した。10−2希釈液を接種した動物(カニクイザル#9218,9219)は共に上昇したALTを持ち、感染後3週間以内に抗HEVへ血清変換した。10−5希釈液を接種した2匹のうち1匹だけ(50%)が上昇したALTを持った。この動物すなわちカニクイザル#9220は感染後第35日に血清変換した。10−6希釈液を接種した動物は共に一時的で最小限のALT上昇しか示さなかったにもかからわず、これらのサル(カニクイザル#9213と9215)は第35日と第49日に血清変換した。10−7希釈液を接種した動物はいずれにおいてもALT上昇と抗体血清変換がなかった。週毎の肝生検標本を組織病理学的に、およびHEV抗原の存在に関する免疫蛍光分析によって評価した。肝中HEV抗原と組織病理学的変化の知見はALTの上昇と一致しており、カニクイザル#9218、9219および9220でのみ観察された。カニクイザル便中のHEVRNAをRT-PCRで検定した。
【0270】
ストックの力価(CID50)は、試験したカニクイザルの50%で感染性であることが示されたHEV濃度として定義された。10%w/vヒト便懸濁液の10−5希釈液を接種した2匹のカニクイザルのうちの1匹における肝炎の生化学的および組織病理学的証拠に基づいて、Mex#14接種物のCID50力価は10−5/mlと推定された。1000のカニクイザル感染投与量(CID50)を含有するように希釈した懸濁液を、ワクチン接種カニクイザルとコントロールカニクイザルの静脈内抗原投与に用いた。
【0271】
B.コントロール試験動物とワクチン接種した試験動物の感染
1.動物の免疫感作と抗原投与
14匹のカニクイザルをこの研究に用いた。抗原投与ストックの滴定のため、8匹のカニクイザルにメキシコ14HEV 懸濁液として10%便懸濁液の希釈液を静脈内注射した(上記参照)。6匹のカニクイザル(3匹にはワクチン接種し、3匹にはワクチン接種していない)を用いて、r62K抗原(実施例4および6B)のインビボの効力を試験した。この研究期間中、Centerfor Disease Control and Prevention(ジョージア州アトランタ)で、サルをBSL-2生物学的危険封じ込め下で飼育した。
【0272】
動物を6週間隔離し、以後6週間、血清標本を毎週集めてALTとSICDについてベースライン容量を確立した。ウイルス接種とワクチン接種に先立って、すべてのカニクイザル血清をHEV ORF2およびORF3タンパク質と反応する抗体の存在についてELISAによって試験した(実施例1および8)。動物はすべて接種前にHEV抗体陰性であった。
【0273】
r62K(上記の実施例4および6ように精製した)を標準的手法に従って明礬で沈澱させた。免疫感作に先立ってタンパク質-明礬複合体を4℃で保存した。3匹のカニクイザル(カニクイザル#9338、9339、9340)をコントロール動物とした。第0日と第31日に、これらの各動物に明礬を筋肉内注射した。第0日と第31日に0.5mlの緩衝液中の20μgの明礬沈澱r62Kタンパク質を筋肉内注射することにより、3匹のカニクイザル(カニクイザル#9327、9330、9331)を免疫感作した。
【0274】
第74日すなわち最後の免疫感作の6週間後に、6匹の動物すべてに1000CID50の野生型メキシコHEV(Mex#14)を含有する10%ヒト便懸濁液の10−2希釈液を抗原投与した。
【0275】
2.標本収集
メキシコ14抗原投与ストックの滴定に使用した8匹の動物について、1週間に2回1.5mlの血液サンプルを採取した。この研究のワクチン相に使用した6匹の動物について、毎週1.5mlの血液サンプルを採取した。血液収集を少なくとも120日続けた。各標本をアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、血清イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(SICD)および抗HEVIgG抗体について試験した。ALTおよびSICD活性に関するベースラインと99%信頼限界を接種前の値を用いて各動物について確立した。
【0276】
肝臓の針生検標本を毎週集めた。標本を組織病理学用と抗原の同定用にわけた。肝臓酵素がベースラインに戻った後少なくとも30日間は生検を取った。
【0277】
便標本を抗原投与後少なくとも90日間は毎日集め、ウイルスRNA含量の分析まで−70℃で保存した。
【0278】
C.集めた標本の評価
1.抗HEVに関するELISA
抗HEVELISAは既に記述したEIA法(実施例8)の変法である。抗原としてポリスチレンELISAプレートにコートしたタンパク質にはORF2 SG3(Yarboughら,1994)、ORF3 4-2M(Yarboughら,1991)、およびORF2 r62Kが含まれる。試験血清を抗原被覆ウェル中でインキュベートした後、ガンマ鎖特異的HRP結合ヤギ抗ヒトIgG(Zymed,カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)を添加した。各接種後標本に関する信号対雑音値(S/N)を、490nmでの吸光度を同じ動物の接種前血清の490nmでの吸光度で割ることによって計算した。ベースライン抗HEV値を5つの週単位の接種前血清標本で各サルについて確立した。
【0279】
抗HEV反応性についてのカットオフを0.200OD490と定義した。これはS/N値3.39で相関し、接種前O.D.値の平均より30標準偏差以上大きかった。抗体力価を2倍希釈系列によって決定した。終点力価は、まだ少なくとも0.200OD490のO.D.を与える2倍希釈サンプル中の最大血清希釈として計算した。
【0280】
2.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法(Kawasakiら;Wangら,1990)を用いてカニクイザル便中のHEV RNAを検定した。公開されたHEV配列(Tamら,1991a,1991b;McCaustlandら,1991)から導いたHEV特異的プライマーを用いて検定を行った。
【0281】
3.免疫蛍光検定
肝生検組織中のE型肝炎ウイルス抗原に関する免疫蛍光検定をKrawczynskiおよびBradley(1989)に従って行った。
【0282】
D.非免疫感作動物におけるE型肝炎
肝炎の生化学的証拠と組織病理学的証拠を、滴定研究で抗原投与ストックの10−2希釈液を接種した2匹のカニクイザル(カニクイザル#9218、9219)で観察した。ALTの上昇が接種の2〜3週間後に観察された。壊死炎症性変化は肝細胞損傷の生化学的証拠と一致した。HEV抗原が接種の2〜3週間後にサルの肝臓中に検出された。便へのウイルス排出をRT-PCRで観察した。
【0283】
HEVのORF2に対する抗体は第20日までに観測できた。第65日までにALTレベルが減少し始め、その後ウイルスの除去と疾患の消散が認められた。
【0284】
肝炎の生化学的証拠と組織病理学的証拠を、r62Kによるインビトロ効力の研究において抗原投与ストックの10−2希釈液を接種した3匹のコントロール動物(カニクイザル 9338、9339、9340)で観測した(表6)。
【0285】
表6に示すデータは非免疫感作カニクイザルと免疫感作カニクイザルにおけるE型肝炎の経過を示す。3匹のカニクイザルを第0日と第31日に明礬沈澱r62Kタンパク質20μgを含む0.5mlの筋肉内注射によって免疫感作した。第74日に、6匹のカニクイザルに1000CID50の野生型メキシコHEV(Mex#14)を抗原投与した。抗HEVをELISAで検定した。肝中のHEV抗原を肝生検標本の免疫蛍光検定によって検出した。肝生検を壊死炎症性変化についてコード下で調べた。ALTレベルを標準的な方法で検定した。HEVRNAをRT-PCRによって検出した(Purdyら, 1993;Kawasakiら;Wangら, 1990)。
【0286】
【表6】

【0287】
各コントロールサルについて、2.5シグナル/カットオフ比の過剰ピークを持つALT上昇が抗原投与の2〜3週間後に現れた。壊死炎症性変化は肝細胞損傷の生化学的証拠と一致した。
【0288】
この3匹の動物の肝臓中には抗原投与の2週間以内にHEV抗原が検出された。便へのウイルス排出は3匹のコントロール動物において抗原投与の1週間後ぐらいからRT-PCRによって観察された。ウイルスの排出は3週間程度続いた。非ワクチン接種動物のALTレベルは抗原投与後の第38日までにベースラインに戻った。HEVのORF2に対する抗体は、各コントロール動物において野生型抗原投与の3週間後以内に測定できた。1匹の動物(カニクイザル#9340)は同時期のORF3抗体応答をも生じた。
【0289】
疾患の消散に伴って、HEVのORF2に対する抗体が第36〜41日にピークに達し、抗原投与後の少なくとも12週間は持続した。ORF3に対する抗体は短寿命で、抗体レベルは抗原投与後の第12週までに減衰した。1匹のコントロール動物(カニクイザル#9340)は抗原投与後15週と16週の間に死亡した。死亡の原因はHEV感染とは基本的に無関係であった。残りの2動物(カニクイザル#9338および9339)は抗原投与の21週間後に、減衰しつつはあるがまだ測定可能な抗HEV抗体を持っていた。
【0290】
E.ワクチン接種カニクイザルにおけるE型肝炎に対する完全な保護
3匹のカニクイザル(#9327、9331および9330)を20μg投与量の明礬沈澱r62K ORF2で2回免疫感作した(表6)。ORF2に対する抗HEV抗体は最初の免疫感作の1〜2週間後にまず検出された。1:2000の高さの抗HEVORF2抗体力価がすべての免疫感作カニクイザルで達成された。カニクイザル9327と9331の抗HEV力価は追加免疫感作後上昇し続けた。抗HEVはカニクイザル#9330中でも測定可能であったが、その抗体レベルは最後の追加投与と野生型抗原投与の間の6週間の間に低下した。カニクイザル9327と9331は1:5000の推定力価を持ち、カニクイザル9330はそれより低い1:2500の力価を持っていた(表7)。
【0291】
【表7】

【0292】
1000 CID50の異種野生型HEVを抗原投与した後、ORF2に対する測定可能な抗体のレベルはカニクイザル9327および9331で安定していた。しかしカニクイザル9330については、抗原投与の6週間後に明らかな記憶応答が認められ、終点力価はほぼ10倍の1:20000に増大した(表7)。抗HEVORF2の上昇に伴って、カニクイザル9330はORF3に対する抗体応答を示した。
【0293】
抗体レベルはその後4週間上昇し続けたが、その後ふいにHEVに対する抗体が連続的に減少した。カニクイザル9330の抗HEV力価は抗原投与の12週間後までに有意に低下しており、カニクイザル9327および9331の抗HEV力価は一定に維持された。ワクチン接種動物の1匹(カニクイザル#9331)は抗原投与後の16週と21週の間に死亡した。死亡の原因は基本的にHEV感染とは無関係であった。抗原投与の21週後に、カニクイザル#9327はORF2に対する抗体の緩慢な減衰を示し、終点力価は2倍変動しただけだった。抗原投与の21週後に、#9330はORF3に対する測定可能な抗体を持たず、ORF2に対する抗体力価は20倍以上低下した。
【0294】
ワクチン接種動物すべてについて、研究期間の間、ALTレベルはほぼベースラインであった。肝臓には抗原が検出されなかったし、壊死炎症性変化も認められなかった(表6)。2匹の免疫感作カニクイザルではRT-PCRによって糞中にウイルスが検出されず、1匹の免疫感作カニクイザルではウイルス排出が遅延し、かつ短期間であった。3匹の免疫感作動物のいずれにおいても肝細胞損傷の生化学的および組織病理学的証拠は認められなかったので、ワクチン接種はr62Kで免疫感作されたすべてのカニクイザルにおいて疾患に対する保護を付与したと思われる。
【0295】
F.疾患を伴わない「ブレークスルー」E型肝炎感染の証拠
カニクイザル#9330において抗原投与の6週後にHEVのORF3に対する抗体が出現したことは、この動物が抗原投与ウイルスで実際に感染したことを示唆している。この観察結果はORF2に対する記憶抗体応答によって実証された。カニクイザル9330の便へのウイルス排出はRT-PCRによって検出されたが、コントロール動物と比較すると出現が遅延し、その持続時間も短かった(表6)。これらの知見は総合的に「ブレークスルー」感染(疾患を伴わない制限され遅延したウイルス複製)と合致する。
【0296】
カニクイザル9330における感染に対する部分的保護は、この動物が抗原投与前に低下したレベルの抗HEVを持っていたという事実によって説明することができる。それでもなお肝炎の壊死炎症性変化や生化学的証拠はなく、肝細胞損傷と肝炎が免疫感作によって防止されたようである。
実施例11
インビトロ内HEV感染と中和
A.細胞培養と抗体調製
実施例10に記述した非ワクチン接種カニクイザルとワクチン接種カニクイザルの血清を、インビトロ中和検定(下記参照)を用いて、潜在的中和抗体について試験した。ワクチン接種前の5週間の間に毎週集めた血清サンプルを合わせて前採血血清プールを作った。抗原投与当日、動物にHEVを接種する前に血清サンプルを集めた。
【0297】
3匹の動物(カニクイザル#9338、9339、9340)からなるコントロール群の血清をプールした後、プロテインGカラムクロマトグラフィー(PerseptiveBiosystems,マサチューセッツ州ケンブリッジ)によって全免疫グロビン(Ig)のアフィニティー精製を行った。ワクチン接種した動物#9327および9330の血清をIgについて個別に精製した。
【0298】
精製したIgGサンプルをspeed-vac遠心分離によって濃縮した後、インビトロ中和検定に使用した。ORF2SG3タンパク質に対するELISA終点力価に従って標準化することにより、各IgプールからのORF2反応性抗体を等量に近づけた。
【0299】
正常な一次カニクイザル肝細胞を肝くさび生検から単離した。肝細胞をコラーゲン被覆6ウェルプレートの各ウェルに1×10細胞/mlの密度でまいた。成長因子とホルモンを添加した血清非含有培地(SFM)における肝細胞のインビトロ培養は既に記述した通りである(実施例2)。単離の6日後、プレートにまいた肝細胞に既知の感染性HEV接種物か、あるいは試験抗体とウイルスストックの予備インキュベートした混合物のいずれかを接種した。
【0300】
肝細胞のHEV抗原投与に使用した接種物はカニクイザル11708から得た感染性胆汁である。この動物は第3継代便,カニクイザル#73(HEVビルマ株,Bradleyら,1987, Purdyら, 1993)から得た10%便懸濁液で実験的に感染されていた。
【0301】
各予備採血プールと抗原投与プールから得たIgを個別にウイルス接種物と共に穏やかに振とうしながら37℃で1時間インキュベートした。温かい血清非含有培地(SFM)を抗体-ウイルス混合物に加え、それを培養した肝細胞の接種に使用した。完全な培地交換を24時間後および48時間間隔で行った。この実験の間、1対の肝細胞培養ウェルを用いて各抗体調製物の潜在的中和活性を試験した。
【0302】
培地と組織培養細胞から調製したRNAを、鎖特異的RT-PCR検定を使用して、+鎖および−鎖HEV RNAの存在について分析した。
【0303】
B.ワクチン接種動物からの血清抗体によるE型肝炎ウイルスのインビトロ中和
非ワクチン接種カニクイザルとワクチン接種カニクイザルから精製した全IgGを上述のようにHEVに対する潜在的中和抗体の存在について調べた。図15に記載のデータはワクチン接種動物からの血清抗体によるE型肝炎ウイルスのインビトロ中和を示している。
【0304】
非ワクチン接種動物からなるコントロール群の血清をプールした。感染の14日後に収集した培地と組織培養細胞から調製したRNAを、鎖特異的RT-PCR検定を使用して、+鎖および−鎖HEV RNAの存在について分析した。
【0305】
すべてのカニクイザルについてワクチン接種前に得たIgG(予備採血)は、+鎖PCR検定で測定したところ、インビトロHEV感染を遮断しえなかった(図15,「予備NV(非ワクチン接種)カニクイザル」、「予備CY9327」および「予備CY9330」)。観測されたPCR産物は、IgGの非存在下で行った感染培養コントロールについて観測される産物の量と相関した。
【0306】
抗原投与時に非ワクチン接種カニクイザル(9338、9339、9340)からプールしたIgGは培養肝細胞のインビトロ感染を遮断しなかった(図15;「抗原投与NVカニクイザル」)。やはり観測されたPCR産物は、IgGの非存在下で行った感染培養コントロールについて観測される産物の量と相関した。
【0307】
抗原投与時に2匹のワクチン接種カニクイザル(カニクイザル9327、9330)から採取したIgGは、インビトロでウイルス感染を完全に遮断しうる中和免疫応答を生じたように思われた(図15,「抗原投与CY9327」と「抗原投与CY9330」)。+鎖RT-PCR読み出しによって検出できる産物はなく、これはHEVウイルスRNAが存在しないことを立証すると共に、これらのカニクイザル抗体の中和活性を確認するものである。
【0308】
図15において、「N」と命名したレーンはサンプルを含まない。2つの肝細胞コントロールレーンが示してあり、1つは「非感染コントロール」細胞培養からのもので、もう1つは「感染コントロール」細胞培養からのものである。「スパイク」と命名したレーンは、接種物自体から得られ得る最大限可能なシグナルを示すポジティブコントロールである。「RNAコントロール」レーンはRT-PCR反応の定量と評価のために使用したもので、+鎖RNA1fg、+鎖RNA 10fgおよび−鎖RNA 100fgである。
【0309】
これらの観測結果は、62K抗原調製物を用いたワクチン接種に応答して生じた抗体がHEVウイルスを中和し、感染とそれに続く疾患に対する保護を付与することの生化学的および組織病理学的証拠を強化する。
【図面の簡単な説明】
【0310】
【図1】図1は、HEVのゲノム構成の概略図を表し、HEVゲノム、ゲノム中のオープンリーディングフレームの配置、およびHEV抗原406.3-2、406.4-2、SG3および62Kのおよそのコード領域を示す。
【図2−1】図2Aから2Eは、ORF2およびORF3のヌクレオチド配列を表し、HEVのBurma株(上段の列)、Mexico株(下段の列)についてHEVORF2およびORF3のヌクレオチド配列を示している。
【図2−2】図2Aから2Eは、ORF2およびORF3のヌクレオチド配列を表し、HEVのBurma株(上段の列)、Mexico株(下段の列)についてHEVORF2およびORF3のヌクレオチド配列を示している。
【図2−3】図2Aから2Eは、ORF2およびORF3のヌクレオチド配列を表し、HEVのBurma株(上段の列)、Mexico株(下段の列)についてHEVORF2およびORF3のヌクレオチド配列を示している。
【図2−4】図2Aから2Eは、ORF2およびORF3のヌクレオチド配列を表し、HEVのBurma株(上段の列)、Mexico株(下段の列)についてHEVORF2およびORF3のヌクレオチド配列を示している。
【図2−5】図2Aから2Eは、ORF2およびORF3のヌクレオチド配列を表し、HEVのBurma株(上段の列)、Mexico株(下段の列)についてHEVORF2およびORF3のヌクレオチド配列を示している。
【図3】図3は、ORF3のアミノ酸配列を表し、HEVのBurma株(上段の列)およびMexico株(下段の列)についてのORF3タンパク質のアミノ酸配列を示している。
【図4A】図4Aと図4Bは、ORF2のアミノ酸配列を表し、HEVのBurma株(上段の列)およびMexico株(下段の列)についてのORF2タンパク質のアミノ酸配列、ならびに62K、C-2、SG3および406.3-2抗原のそれぞれのアミノ末端を示している。
【図4B】図4Aと図4Bは、ORF2のアミノ酸配列を表し、HEVのBurma株(上段の列)およびMexico株(下段の列)についてのORF2タンパク質のアミノ酸配列、ならびに62K、C-2、SG3および406.3-2抗原のそれぞれのアミノ末端を示している。
【図5】図5は、バキュロウイルスにおける再遺伝子操作した(re-engineered)r62K抗原の発現のためのプラスミドの構築の概略図であり、pBBIII-62Kの構築のフローチャートを示す。バーは、r62KをコードするDNAフラグメントを示す。
【図6】図6aと図6bは、Sf9懸濁培養物における完全長ORF273Kタンパク質の生成およびSf9単層細胞における62K種を形成するための73Kの切断に関するデータを示している。図6aは、組換えバキュロウイルスORF2-rAcMNPVに感染させたSf9懸濁培養細胞の溶解物由来のPBS可溶性タンパク質(S)および不溶性タンパク質(I)を様々な感染後日数(DPI)でSDS-PAGEで分析した結果を示す。矢印は生成した組換えORF−2タンパク質を示している。図6bは、クマシーブルー染色の代わりにイムノブロットを行ったこと以外は本質的には図6aと同じである。矢印は、それぞれ73Kおよび62Kタンパク質の移動を示す。
【図7】図7「インビトロにおけるHEV ORF2タンパク質のタンパク分解的切断」は、インビトロでの様々な時点における、73K完全長ORF2不溶性タンパク質(I)の62K可溶性タンパク質(S)への切断を示す。プロテイナーゼインヒビターの存在を(+)で、非存在を(-)で示す。
【図8】図8「Sf9懸濁培養細胞による73-62K変換」は、野生型バキュロウイルスに感染した懸濁培養細胞の可溶性抽出物(上のパネル)または非感染の懸濁培養細胞の可溶性抽出物(下のパネル)間での73Kから62Kへの切断の比較である。下のパネルの最も右側の2つのレーンではサンプルのロードを反対にした。
【図9】図9「73KORF2 Process Gel」は、73Kの精製プロセスの間に採取され、そして4〜20% SDS PAGE上で泳動した様々な画分および対応するウエスタンブロットを示す。レーン1は、Hyper-D-SLoad;レーン2は、プールした画分(pH 8.5);レーン3は、フロースルー(pH 7.5) ;レーン4は、フロースルー(pH 8.5);レーン5は、BioRadMW標準;レーン6は、Hyper-D-S Load;レーン7は、プールした画分(pH 8.5);レーン8は、フロースルー(pH 7.5) 、レーン9は、フロースルー(pH8.5) ;レーン10は、Promega MW標準である。MW 標準(Promega mid-range)は(上から下に)以下の通りである;ホスホリラーゼB、97-kDa;BSA、66-kDa;グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、55-kDa;オボアルブミン、43-kDa;アルドラーゼ、40-kDa;カルボニックアンヒドラーゼ、31-kDa;大豆トリプシンインヒビター、21-kDa;リゾチーム、14-kDa。レーン1〜5は、非還元条件下;レーン6〜10は、サンプル調製緩衝液中でβ−メルカプトエタノールで還元したものである。
【図10】図10「最終的に精製した62K」は、4〜20%SDS-PAGE上で泳動された精製可溶性c62Kタンパク質を示す。レーン1は、Novex製の「SeeBlueTM」で予め染色されたMW標準;レーン2は、最終的に精製したc62Kタンパク質である。MW標準は以下の通りの範囲である(上から下):ミオシン、250-kDa;BSA、98-kDa;グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、64-kDa;アルコールデヒドロゲナーゼ、50-kDa;カルボニックアンヒドラーゼ、36-kDa;ミオグロビン、30-kDa;リゾチーム、16-kDa;アプロチニン(aprotinin)、6-kDa;インスリンB鎖、4-kDa。c62Kの精製プロセスは実施例6Bに詳細に記載されている。
【図11】図11aおよび11bは、それぞれ、精製した組換えORF2タンパク質c62Kおよび73Kの電子顕微鏡写真の間の比較を示す。図11aは、95,000倍および図11bは、200,000倍の倍率である。図11bは、73Kタンパク質によるウイルス様粒子形成を示す。
【図12】図12「バキュロウイルスにおけるORF2-62Kの発現」は、懸濁培養細胞におけるBBIII-62Kの複数の単離体の発現を示す。
【図13】図13「S-1000クロマトグラフィー」は、Sephacryl S-1000サイズ排除クロマトグラフィーによる再遺伝子操作したr62Kおよび切断したc62Kのウイルス粒子サイズの測定を示す。ウイルス粒子標準(ワクシニアウイルスおよびB型肝炎表面抗原、HBsAg)と、ウシ血清アルブミン(BSA)と、精製したc62Kおよびr62K調製物とを、SephacrylS-1000 Superfine樹脂をパックしたWaters AP-2 2×60 cm AP-2カラムで、120cm/時の見かけ上の線形速度(superficiallinear velocity)でクロマトグラフした。保持時間(分)および相対的な吸光度(280 nm)を、各々のサンプルについて示す。
【図14】図14Aおよび14Bは、4〜20%のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いたr62K精製プロセスの分析結果(14A)および対応するウエスタンブロットの分析結果(14B)を示す。
【図15】図15は、r62KHEV抗原をワクチン接種したカニクイザルにおける中和抗体の存在を証明する結果を示す。
【図16】図16は、406.4-2抗原についてのBurma株(B)とMexico株(M)との間の相同性の比較を示す。
【0311】
(配列表)
【0312】
【数4−1】

【0313】
【数4−2】

【0314】
【数4−3】

【0315】
【数4−4】

【0316】
【数4−5】

【0317】
【数4−6】

【0318】
【数4−7】

【0319】
【数4−8】

【0320】
【数4−9】

【0321】
【数4−10】

【0322】
【数4−11】

【0323】
【数4−12】

【0324】
【数4−13】

【0325】
【数4−14】

【0326】
【数4−15】

【0327】
【数4−16】

【0328】
【数4−17】

【0329】
【数4−18】

【0330】
【数4−19】

【0331】
【数4−20】

【0332】
【数4−21】

【0333】
【数4−22】

【0334】
【数4−23】

【0335】
【数4−24】

【0336】
【数4−25】

【0337】
【数4−26】

【0338】
【数4−27】

【0339】
【数4−28】

【0340】
【数4−29】

【0341】
【数4−30】

【0342】
【数4−31】

【0343】
【数4−32】

【0344】
【数4−33】

【0345】
【数4−34】

【0346】
【数4−35】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施例に記載の組成物。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−141400(P2006−141400A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354138(P2005−354138)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【分割の表示】特願平8−514117の分割
【原出願日】平成7年10月23日(1995.10.23)
【出願人】(398055462)ジェネラブス テクノロジーズ,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】