説明

EBG構造及び基板

【課題】低周波数帯域のバンドギャップ特性を得ることが可能であり、小型化可能であるEBG構造、及びそれを備える基板を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に示されるEBG構造は、導体層101と、導体層101とキャパシタンスを形成する導体層102と、導体層102にビア104aを介して接続される導体層103を有し、導体層103は導体板113a、113b、113c、113dから構成され、導体板113a、113b、113c、113dとビア104aとは導体線105a、105b、105c、105dを介してそれぞれ接続されているので、低周波数帯域のバンドギャップ特性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上のノイズ伝播を抑制するEBG構造、及びそれを備える基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像信号を受信するアンテナやチューナーを内蔵した電子機器及び移動体通信機器は、設置、持ち運びの利便性から小型化への研究開発が進められている。これらの電子機器には、多種多様な機能を実現するためにアナログ回路やデジタル回路など複数の電子回路が同一の基板上に搭載されている。この基板上の複数の電子回路は互いに異なった動作周波数を有し、複数の電子回路から生じる不要電磁放射による電子回路間の電磁干渉が発生する。電磁干渉は信号入力部にノイズとして伝播し、受信周波数帯域の信号受信を妨害するため、ノイズ伝播を抑制する対策が必要となっている。
【0003】
そこで、不要電磁放射に関連するノイズ対策手法の1つとして、電磁バンドギャップ構造(EBG:Electromagnetic Band Gap 以下、「EBG構造」と記載する。)による対策が注目を集めている。EBG構造を用いることで、ノイズとして伝播する特定周波数の電磁波や電流を抑制する特性(バンドギャップ特性)が得られるため、主基板やICパッケージ基板における不要ノイズ抑制フィルタとしての応用が期待されている。
【0004】
図22は従来技術のEBG構造の断面図である。ここでは、単位構造1a、2a、3aを図示し、単位構造2a及び単位構造3aは単位構造1aと同様の構成をしているため説明を省略する。単位構造1aは、導体層2と、導体層2に平行する導体層3と、導体層2とキャパシタンス成分Cを形成する導体板4aと、導体板4aと導体層3を接続するビア5aを有する。単位構造を1次元又は2次元的に配置することで、隣り合う2つの単位構造1a、1b間において、ビア5a→導体層3→ビア5bを含む電流経路でインダクタンス成分Lが形成される。これらインダクタンス成分L及びキャパシタンス成分CからLC共振回路が形成され、共振周波数近傍でバンドギャップが生じる。即ち、インダクタンス成分Lとキャパシタンス成分Cを制御することにより所望の周波数のノイズ伝播を抑制することが可能となる。近年のデジタル機器に必要な低周波数帯域でのバンドギャップ特性を得るためには、インダクタンス成分Lとキャパシタンス成分Cを大きくする必要があることが知られている。また、インダクタンス成分Lを大きくするためには、インダクタンス成分Lを形成する経路を長くすることが知られており、キャパシタンス成分Cを大きくするためには、キャパシタンス成分Cを形成する導体板の面積を大きくすることが知られている。
【0005】
例えば特許文献1には、導体層にホールを形成し、ビアの一端を前記ホールに配置し、金属線により該導体層と該ビアを接続することで、インダクタンスの電流経路を長くすることによりインダクタンス成分Lを大きくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−4791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は金属線をホール内で延長しているため、延長できる長さに制限があり、低周波数帯域(100MHz〜1GHz)のバンドギャップ特性を得るためには、従来技術と同様に、インダクタンス成分Lを大きくするためにビア同士の間隔を広げたりする必要があり、その結果EBG構造が大型化してしまう。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、低周波数帯域のバンドギャップ特性を得ることが可能であり、小型化可能であるEBG構造及び基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るEBG構造は、第1導体層と、前記第1導体層に第1ビアを介して接続される第2導体層と、を有し、前記第2導体層は複数の第1導体パターンから構成され、前記第1導体パターンと前記第1ビアとは第1接続パターンを介して接続されることを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、第1導体層を含むキャパシタンス部と第2導体層を含むインダクタンス部とを有することでバンドギャップ特性が得られ、該第2導体層を複数の第1導体パターンで構成し、該第1導体パターンと第1ビアとを第1接続パターンで接続することにより、該インダクタンス部の電流経路を長くすることで大きいインダクタンス成分Lを得ることができるため、バンドギャップ特性を低周波数化する効果を奏する。
【0011】
本発明に係るEBG構造は、前記第1導体層とキャパシタンスを形成する第3導体層を有することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、第1導体層と誘電層を挟んで対向する第3導体層を有することで、大きいキャパシタンス成分Cを得ることができるため、バンドギャップ特性を低周波数化する効果を奏する。
【0013】
本発明に係るEBG構造は、前記第2導体層とキャパシタンスを形成する第4導体層を有し、前記第4導体層と前記第3導体層とが第2ビアを介して接続されることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、第1導体層と第3導体層から形成される第1のキャパシタンス部と、第2導体層と第4導体層から形成される第2のキャパシタンス部とを有するため、EBG構造の実装面積を低減する効果を奏する。
【0015】
前記第3導体層は複数の第2導体パターンから構成され、前記第2導体パターンと前記第2ビアとは第2接続パターンを介して接続されることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、第1導体パターンと第1接続パターンを含む第1のインダクタンス部と、第2導体パターンと第2接続パターンを含む第2のインダクタンス部を有し、2つのインダクタンス部から大きいインダクタンス成分Lを得ることができるため、バンドギャップ特性を低周波数化する効果を奏する。
【0017】
前記第1接続パターンは、少なくとも1つの前記第1導体パターンの一部を取り囲むことが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、第1接続パターンを第1導体パターンの一部を取り囲むように延長して配置することで、大きいインダクタンス成分Lを得ることができるため、バンドギャップ特性を低周波数化する効果を奏する。
【0019】
前記第1導体パターンは切り欠きを有し、前記第1接続パターンの一部は前記切り欠きに配置されることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、第1導体パターンは切り欠きを有し、該切り欠きを利用して第1接続パターンを延長することで、大きいインダクタンス成分Lを得ることができるため、バンドギャップ特性を低周波数化する効果を奏する。
【0021】
前記第1導体層を構成する複数の導体パターンと前記第4導体層を構成する複数の導体パターンとは一部が厚さ方向において重なるように配置されることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、第1導体層を構成する導体パターンと第2導体パターンとから形成される第1のキャパシタンス部と、第4導体層を構成する導体パターンと第1導体パターンとから形成される第2のキャパシタンス部が、厚さ方向において重なるように配置されるため、EBG構造の実装面積を低減する効果を奏する。
【0023】
前記第1接続パターンは前記第4導体層を構成する複数の導体パターンと厚さ方向において重ならないように配置されることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、第1接続パターンに発生する磁界が第4導体層を構成する導体パターンに流れる電流によって減衰されることを防止することで、大きいインダクタンス成分Lを得ることができるため、バンドギャップ特性を低周波数化する効果を奏する。
【0025】
前記第4導体層を構成する複数の導体パターンのうちの1つと前記複数の第1導体パターンのうちの1つとが厚さ方向において重なる面積は、前記第4導体層を構成する複数の導体パターンのうちの1つの面積と等しいことが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、第1導体パターンと第4導体層を構成する導体パターンとが厚さ方向において重なる面積を大きくすることで、大きいキャパシタンス成分Cを得ることができ、バンドギャップ特性を低周波数化する効果を奏する。
【0027】
本発明に係る基板は、上述したEBG構造を少なくとも電子回路の周囲の一部に周期的に配置することが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、ノイズ伝播経路にEBG構造を配置することでノイズの影響による電子回路の誤動作を防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、低周波数帯域のバンドギャップ特性を得ることが可能であり、小型化可能であるEBG構造、及びそれを用いた基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1を説明するためのEBG構造の単位構造の斜視図である。
【図2】本発明の実施例1を説明するためのEBG構造の断面図である。
【図3】本発明の実施例1を説明するためのEBG構造の平面図である。
【図4】導体線の他の例を説明するためのEBG構造の平面図である。
【図5】本発明の実施例1のインダクタンス部を説明するための説明図である。
【図6】導体層103の他の例を説明するためのEBG構造の平面図である。
【図7】本発明の実施例1のEBG構造の特性を解析したシミュレーション結果である。
【図8】本発明の実施例2を説明するためのEBG構造の断面図である。
【図9】本発明の実施例2を説明するためのEBG構造の平面図である。
【図10】本発明の実施例2を説明するためのEBG構造の斜視図である。
【図11】本発明の実施例2のキャパシタンス部を説明するための説明図である。(a)は実施例2のEBG構造の断面図であり、(b)は実施例2のEBG構造の平面図である。
【図12】導体板214が切り欠きを有する形態を説明するためのEBG構造の平面図である。
【図13】本発明の実施例3を説明するためのEBG構造の断面図である。
【図14】本発明の実施例3を説明するためのEBG構造の平面図である。
【図15】本発明の実施例3を説明するためのEBG構造の斜視図である。
【図16】本発明の実施例3のEBG構造と特性を比較するためのEBG構造の断面図である。
【図17】本発明の実施例3のEBG構造の特性を確認するためのシミュレーション結果である。(a)は実施例3のEBG構造の特性を解析したシミュレーション結果であり、(b)は図16のEBG構造の特性を解析したシミュレーション結果である。
【図18】本発明の実施例3の好適なEBG構造との比較を行うためのEBG構造の断面図である。
【図19】本発明の実施例3の好適なEBG構造の特性を確認するためのシミュレーション結果である。(a)は実施例3の好適なEBG構造の特性を解析したシミュレーション結果であり、(b)は図18のEBG構造の特性を解析したシミュレーション結果である。
【図20】本発明の実施例4を説明するための主基板の断面図である。
【図21】本発明の実施例4を説明するためのパッケージ基板及び主基板の断面図である。
【図22】従来技術のEBG構造の断面図である。
【図23】従来技術のEBG構造のインダクタンス部を説明するための説明図である。
【図24】従来技術のEBG構造のキャパシタンス部を説明するための説明図である。(a)は従来技術のEBG構造の断面図であり、(b)は従来技術のEBG構造の平面図である。
【図25】従来技術のEBG構造の特性を解析したシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0031】
以下、本発明の実施例1について図1から図7に基づいて説明する。図1は本実施形態のEBG構造の単位構造の斜視図である。単位構造100aは、導体層101と、導体層101とキャパシタンスを形成する導体層102と、導体層102にビア104aを介して接続される導体層103を有する。ここで、導体層103は導体板113a、113b、113c、113dから構成され、導体板113a、113b、113c、113dとビア104aとは導体線105a、105b、105c、105dを介してそれぞれ接続されている。本実施形態のEBG構造は単位構造100aと同様の構成をした単位構造が1次元又は2次元的に配置される。ここで、基板に平行な平面をxy平面とし、基板の厚さ方向、即ちxy平面に垂直な方向をz軸方向とし、z軸正方向を基板における上方向とする。また、ここではx軸と平行な直線上に導体線105a及び導体線105cを配置し、y軸と平行な直線上に導体線105b及び導体線105dを配置している。
【0032】
図2は本実施形態のEBG構造をxz平面で切断した場合の断面図である。ここでは、図1の単位構造100aを含む、単位構造100a、100b、100cを図示しており、単位構造100b及び単位構造100cは単位構造100aと同様の構成をしているため説明を省略する。導体層102は導体板112a、112b、・・・(以下、導体板112と記載する。)で構成され、導体層103は導体板113a、113b、・・・(以下、導体板113と記載する。)の他に、導体線105a、105b、・・・(以下、導体線105と記載する。)、ビアランド106a、106b、・・・(以下、ビアランド106と記載する。)を含む。ビア104a、104b、・・・(以下、ビア104と記載する。)の一端は導体板112に接続され、他端はビアランド106に接続される。導体線105はビアランド106と導体板113を接続する。導体層101及び導体層102の間の層には誘電層114が設けられ、導体層102と導体層103の間の層には誘電層115が設けられる。キャパシタンス部は誘電層114を挟んで対向している導体層101と導体板112で形成される。
【0033】
本実施形態のEBG構造を形成する方法は次の通りである。まず、誘電層115の上層に導体層102として導体板112を形成する。次に、誘電層115を貫通し、導体板112と接続するビア104を形成する。次に、誘電層115の下層に導体層103として、導体板113、導体線105、及びビアランド106を形成する。最後に、導体層102の上層に誘電層114及び導体層101を積層する。
【0034】
ここで、導体板112、導体板113、導体線105、及びビアランド106は、マスキング、露光、エッチング、現像等の一般的な基板の製造方法を用いて形成することができる。また、ビア104は、誘電層115をレーザー加工等で孔開けした後、導電性材料を充填したり内壁にメッキしたりすることで形成する。内壁にメッキする場合は中心部分に誘電物質又は空気が満たされていてもよい。
【0035】
上記EBG構造の形成方法は一例であり、これに限るものではない。例えば、ビア104以外の構成を上記と同様に形成した後に、導体層101から導体層103までの全層をドリル加工等で孔開けしてビア104を形成してもよい。但し、この場合は導体層101とビア104が接続されないように、導体層101上のビア104の周囲にクリアランスを設ける必要がある。
【0036】
図3は本実施形態の導体層103を説明するためのEBG構造の平面図である。ビアランド106は複数の導体板の間に配置され、導体線105を介して周囲に配置された導体板と接続される。例えば、ビアランド106aは導体板113a、113b、113c、113dの間に配置され、導体板113a、113b、113c、113dは導体線105a、105b、105c、105dを介してビアランド106aとそれぞれ接続される。導体線105は図3のような直線でもよいが、曲線や折れ線でもよい。例えば、図4(a)のように導体線105aを導体板113aの1つの辺に沿って延長してから接続してもよく、図4(b)のように導体線105aで導体板113aの1つの辺を取り囲み、導体板113aの他の辺に導体線105aを接続してもよい。導体線105aが導体板113aを1周以上周回してもよい。他の導体線105b、105c、・・・についても同様である。また、1つの導体線105aで1つの導体板113aをビアランド106aと接続するのではなく、例えば、導体線105aと導体線105bを1つの導体線で構成し、該導体線で導体板113a及び導体板113bをビアランド106aと接続してもよい。
【0037】
図5と図23を用いて本実施形態のEBG構造のインダクタンス部と従来技術のEBG構造のインダクタンス部との比較を行う。図5は本実施形態のインダクタンス部を説明するためのEBG構造の平面図である。本実施形態のEBG構造はビア104aの一端がビアランド106aに接続され、ビア104dの一端がビアランド106dに接続され、インダクタンス部はビア104a→ビアランド106a→導体線105a→導体板113a→導体線105m→ビアランド106d→ビア104dを含む電流経路で形成される。該インダクタンス部と上述したキャパシタンス部により、本実施形態のEBG構造はLC共振回路として機能し、バンドギャップ特性が得られる。また、本実施形態のEBG構造のインダクタンス部の一部は領域121に形成される。
【0038】
図23は従来技術のインダクタンス部を説明するためのEBG構造の平面図である
従来技術のEBG構造は、導体層3にビア5a及びビア5bの一端が接続され、インダクタンス部はビア5a→導体層3→ビア5bを含む電流経路で形成される。即ち、従来技術のEBG構造のインダクタンス部の一部は領域122に形成され、領域122の長さは隣り合う2つのビア5a及びビア5bの最短距離となる。図5のように、領域121の長さは隣り合う2つのビアランド106a及び106dの最短距離よりも大きくできるため、本実施形態のビア104a及びビア104dの長さと従来技術のビア5a及びビア5bの長さが等しく、ビア104a及びビア104dの間隔とビア5a及びビア5dの間隔が等しい場合は、従来技術と比べて本実施形態の方がインダクタンス部の電流経路を長くできる。また、本実施形態は導体線105a及び導体線105mの長さを延長することによって、さらにインダクタンス部の電流経路を長くすることもできるため、大きいインダクタンス成分Lを得ることにより、低周波数帯域のバンドギャップ特性を得ることができる。
【0039】
図6は本実施形態の導体層103の別の例を説明するための図である。例えば、ビアランド106aの周囲に配置された全ての導体板113a、113b、113c、113dを、導体線105a、105b、105c、105dを用いてビアランド106aに接続しなくてもよい。即ち、図6(a)のように、導体板113a、113b、113dは導体線105a、105b、105dを介してビアランド106aに接続され、導体線105cは無くてもよい。ただし、導体板113cは導体線105r、ビアランド106e、導体線105o、導体板113b、及び導体線105bを介してビアランド106aと接続している。また、ビアランド106aが4つの導体板113a、113b、113c、113dの間に配置されていなくてもよい。ここまでは単位構造が2次元的に配置された例であったが、例えば図6(b)のように、単位構造が1次元的に配置され、ビアランド106aは2つの導体板113aと113dの間に配置されてもよい。導体層103を構成する導体板113、導体線105、及びビアランド106の形態はこれに限ったものではない。ビアランド106aを2つの導体板と導体線で接続すれば、単位構造を1次元的に配置することができ、ビアランド106aを3つ以上の導体板と導体線で接続すれば、単位構造を2次元的に配置することができる。ビアランド106aの周囲に配置された導体板113a、113b、113c、113d以外の導体板とビアランド106aを導体線で接続してもよく、隣り合うビアランド間の電流経路が周期的になるように接続され、導体層103を構成する全ての導体板113とビアランド106が接続されるように導体線105を配置すれば、どのような形態でもよい。
【0040】
図7及び図25を用いて、本実施形態のEBG構造と従来技術のEBG構造とで特性の比較を行う。図7は本実施形態のEBG構造の特性を解析したシミュレーション結果を示すグラフであり、図25は従来技術のEBG構造の特性を解析したシミュレーション結果を示すグラフである。ここで、X軸は周波数(GHz)、Y軸は減衰量(dB)を表す。減衰量の絶対値が40dB以上となる周波数の範囲をバンドギャップの範囲とし、バンドギャップの下限周波数を確認すると、図7の下限周波数123は1.0GHz、図25の下限周波数124は1.2GHzとなり、本実施形態のEBG構造の方が低周波数のバンドギャップ特性を得られることを確認できる。即ち、本実施形態は、導体層103を導体板113と導体線105で構成することによって、大きいインダクタンス成分Lが得られるため、低周波数帯域のバンドギャップ特性を得られることを確認できる。
【0041】
本実施例では、導体層103は導体線105とビアランド106を含んでいるが、導体層103は導体線105とビアランド106の少なくとも一方を含まなくてもよい。例えば、ビアランド106を導体層102と導体層103の間の層、又は導体層103より下層に配置し、ビアランド106と同じ層で導体線105を延長してもよい。また、導体層102と導体層103の間の層に導体線105を配置し、導体線105の一端はビア104に接続し他端は別に形成したビアを介して導体板113と接続してもよい。
【0042】
本実施例では、導体層101は導体層102の上層に配置されているが、導体層101は導体層102の下層に配置されてもよい。この場合、導体層101はクリアランスが設けられ、ビア104は導体層101と接触しないように該クリアランス内に配置される。
【0043】
本実施例は、ビア104の一端がビアランド106に接続され、ビアランド106が導体線105を介して導体板113に接続しているが、ビアランド106は必ずしも必要ではない。導体線105をビア104に直接接続してもよい。
【0044】
本実施例は、導体層101、導体層102、及び導体層103の3層を有するが、導体層101は必ずしも必要ではない。導体層101が無い場合、キャパシタンス部は導体板112において隣り合う2つの導体板の間で形成される。
【実施例2】
【0045】
次に、本発明の実施例2について、図8〜図12に基づいて説明する。ここで、基板に平行な平面をxy平面とする、また、基板の厚さ方向をz軸方向とし、z軸正方向を基板における上方向とする。
【0046】
図8は本実施形態のEBG構造のxz平面における断面図である。ここでは、単位構造200a、単位構造200b、及び単位構造200cの一部を図示しており、単位構造200b及び単位構造200cは単位構造200aと同様の構成をしているため、説明を省略する。単位構造200aは、導体層201と、導体層201とキャパシタンスを形成する導体層202と、導体層202にビア205aを介して接続される導体層204と、導体層204とキャパシタンスを形成し導体層201にビア207aを介して接続される導体層203を有する。
【0047】
導体層202は導体板212a、212b、・・・(以下、導体板212と記載する。)で構成され、導体板212はビア207a、207b、・・・(以下、ビア207と記載する。)と接しないように配置される。導体層204は導体板214a、214b、・・・(以下、導体板214と記載する。)、ビアランド208a、208b、・・・(以下、ビアランド208と記載する。)、導体線206a、206b、・・・(以下、導体線206と記載する。)を含む。ビア205a、205b、・・・(以下、ビア205と記載する。)の一端は導体板212に接続され、他端はビアランド208に接続される。導体板214とビアランド208とは導体線206を介して接続される。導体層203は導体板213a、213b、・・・(以下、導体板213と記載する。)で構成され、導体板213はビア205と接しないように配置される。また、導体板212と導体板213は一部がz軸方向において重なるように配置される。例えば、導体板212aは導体板213aの一部及び導体板213bの一部とz軸方向において重なるように配置される。ここで、z軸方向において重なるとは、物理的に接触することではなく、基板をz軸方向へ見たときに重なっていることを意味し、z軸方向において重ならないとは、基板をz軸方向へ見たときに重なっていないことを意味する。ビア207の一端は導体板213に接続され、他端は導体層201に接続される。導体層201と導体層202の間の層には誘電層215が設けられ、導体層202と導体層203の間の層には誘電層216が設けられ、導体層203と導体層204の間の層には誘電層217が設けられる。
【0048】
単位構造200aは、誘電層215を挟んで対向している導体層201と導体板212aから第1のキャパシタンス部を形成し、誘電層217を挟んで対向している導体板213aと導体板214aから第2のキャパシタンス部を形成するため、2つのキャパシタンス部を上下に重なるように形成する。導体板212aは単位構造200bに含まれる導体板213bとも一部がz軸方向において重なるように配置され、また、導体板213aは単位構造200cに含まれる導体板212cとも一部がz軸方向において重なるように配置される。即ち単位構造200aは単位構造200b及び単位構造200cと重なり合うように配置される。
【0049】
本実施形態のEBG構造を形成する方法は次の通りである。まず、誘電層216の上層に導体層202として導体板212を形成する。次に、誘電層216の下層に導体層203として導体板213を形成する。次に、導体層202の上層に誘電層215を積層する。次に、誘電層215及び誘電層216を貫通し、導体層203と接続するビア207を形成する。次に、誘電層215の上層に導体層201を積層する。次に、導体層203の下層に誘電層217を積層する。次に、誘電層216及び誘電層217を貫通し、導体板212と接続するビア205を形成する。最後に、誘電層217の下層に導体層204として、導体板214、導体線206、及びビアランド208を形成する。
【0050】
ここで、導体板212、導体板213、導体板214、導体線206、及びビアランド208は、マスキング、露光、エッチング、現像等の一般的な基板の製造方法を用いて形成することができる。また、ビア205及びビア207は、誘電層215、誘電層216、及び誘電層217をレーザー加工等で孔開けした後、導電性材料を充填したり内壁にメッキしたりすることで形成する。内壁にメッキする場合は中心部分に誘電物質又は空気が満たされていてもよい。
【0051】
上記EBG構造の形成方法は一例であり、これに限るものではない。例えば、ビア205及びビア207以外の構成を上記と同様に形成した後に、導体層201から導体層204までの全層をドリル加工等で孔開けしてビア205及びビア207を形成してもよい。但し、この場合は導体層201とビア205が接続されないように、導体層201上のビア205の周囲にクリアランスを設け、導体板214とビア207が接続されないように、導体板214上のビア207の周囲にクリアランスを設ける必要がある。
【0052】
図9は本実施形態のEBG構造の平面図を示し、図9(a)は図8の導体層204を説明するための平面図である。ビアランド208は複数の導体板の間に配置され、導体線206を介して周囲に配置された導体板と接続される。例えば、ビアランド208aは4つの導体板214a、214b、214d、214eの間に配置され、導体板214a、214b、214d、214eは導体線206a、206b、206g、206hを介してビアランド208aとそれぞれ接続される。本実施形態は実施例1と同様に、例えばビアランド208aとビアランド208eの間では、インダクタンス部の一部が導体線206h→導体板214e→導体線206rの電流経路で形成されるため、インダクタンス部の電流経路を長くすることで大きいインダクタンス成分Lを得ることができる。導体線206は実施例1の導体線105と同様の形態を取ることができ、例えば、導体線206aは導体板214aの一部を取り囲むように延長されてもよい。また、1つの導体線206aで1つの導体板214aをビアランド208aと接続するのではなく、導体線206aと導体線206gを1つの導体線で構成し、該導体線で導体板214a及び導体板214dをビアランド208aと接続してもよい。ビアランド208aの周囲に配置する導体板の数やビアランド208aに接続する導体線の数を任意の数に変更してもよく、隣り合うビアランド間の電流経路が周期的になるように接続され、導体層204を構成する全ての導体板214とビアランド208が接続されるように導体線206を配置すれば、どのような形態でもよい。
【0053】
図9(b)は図8の導体層203を説明するための平面図である。導体板213はビア205と接しないように配置され、例えば、導体板213bはビア205a、205b、205d、205eの間で接しないように配置される。導体板213aは、導体板214aと上記第2のキャパシタンス部を形成するために214aの上層において重なるように配置される。また、導体線206は導体板213とz軸方向において重ならないように配置される。例えば、導体線206aが導体板213aと重なる位置に配置された場合、導体板213aに流れる電流によって導体線206aに発生する磁界が打ち消され、導体線206aによるインダクタンス成分Lを増加させる効果が弱くなる。そこで、導体線206aは導体板213aと重ならないように配置されることが好ましい。
【0054】
また、大きいキャパシタンス成分Cを得るためには導体板213aと導体板214aがz軸方向において重なる面積を大きくする必要がある。そのため、導体板214aの面積は少なくとも導体板213aの面積と等しく、導体板214aと導体板213aがz軸方向において重なる面積は導体板213aの面積と等しいことが好ましい。このように導体板213aと導体板214aを配置することで、導体線206aは導体層204でどのように配置されても導体板213aとz軸方向において重なることはなく、キャパシタンス成分Cとインダクタンス成分Lを効率よく発生させることができる。
【0055】
図10は本実施形態のEBG構造の斜視図である。前述したとおり、第1のキャパシタンス部は導体層201と導体板212aから形成され、第2のキャパシタンス部は導体板213aと導体板214aから形成される。また、隣り合う単位構造間で、第1のインダクタンス部はビア205a→ビアランド208a→導体線206h→導体板214e→導体線206r→ビアランド208e→ビア205eを含む電流経路で形成され、第2のインダクタンス部はビア207a→導体層201→ビア207eを含む電流経路で形成される。これらキャパシタンス部とインダクタンス部がLC共振回路として機能するため、バンドギャップ特性を得ることができる。
【0056】
単位構造を重ねて配置することの効果を、図11と図24を用いて説明する。図24(a)は従来技術のEBG構造のキャパシタンス部を説明するための図であり、図24(b)のB−B’間の断面図である。図24(b)は図24(a)のA−A’平面の平面図であり、従来技術でキャパシタンス部を12個形成する場合のEBG構造を説明するための図である。キャパシタンス部221.1は導体層2と導体板4.01から形成され、キャパシタンス部221.2は導体層2と導体板4.02から形成され、キャパシタンス部221.3は導体層2と導体板4.03から形成される。従来技術のEBG構造は、導体層2と導体板4.01、4.02、・・・、4.12からキャパシタンス部が形成されるため、キャパシタンス部を12個形成する場合、図24(b)のように同一平面上に12個の導体板を配置する必要がある。
【0057】
図11(a)は本実施形態のEBG構造のキャパシタンス部を説明するための図であり、図11(b)のC−C’間の断面図である。図11(b)は図11(a)の導体層202の平面図であり、本実施形態でキャパシタンス部を12個形成する場合のEBG構造を説明するための図である。ただし、図12(b)の破線は図12(a)の導体層203の導体板213.1、213.2、・・・、213.6を表す。キャパシタンス部222.1は導体層201と導体板212.1から形成され、キャパシタンス部222.2は導体層201と導体板212.2から形成され、キャパシタンス部222.3は導体板213.1と導体板214.1から形成される。本実施形態のEBG構造は、導体層201と導体板212.1、212.2、・・・、212.6から6個のキャパシタンス部が形成され、導体板213.1、213.2、・・・、213.6とそれぞれに誘電層を挟んで対向する導体板214.1、214.2、・・・、214.6から6個のキャパシタンス部が形成されるため、図12(b)のように同一平面上に6個の導体板を配置し、別の平面上に6個の導体板を配置し、各平面上の導体板がz軸方向において重なるようにキャパシタンス部を12個形成できる。
【0058】
図24(b)と図11(b)の導体板4.01、4.02、・・・、4.12、導体板212.1、212.2、・・・、212.6、及び導体板213.1、213.2、・・・、213.6が同一の面積を有し、隣り合う導体板の間隔がそれぞれ等しい場合、同一平面上に導体板を配置する従来技術のEBG構造と比べ、2つの異なる平面上にそれぞれz軸方向において重なり合うように導体板を配置できる本実施形態のEBG構造の方が、実装面積を低減できる。
【0059】
図12は本実施形態の導体層204の平面図を示し、導体板214が切り欠きを有する場合について説明するための図である。図12(a)は導体板214が辺の中央部に切り欠きを有する例である。例えば、導体板214aは切り欠き209aを有し、導体線206aの一部は切り欠き209aに配置される。切り欠き209aを有することで導体板214aの面積は減少するが、導体線206aの幅が小さく、切り欠き209aによって延長した導体線206aの長さに比べて切り欠き209aの幅が極めて小さいとき、切り欠き209aを有することによって減少したキャパシタンス成分Cよりも、導体線206aを延長することによって得られるインダクタンス成分Lの方が大きくなるため、バンドギャップ特性を低周波数化することができる。導体板214aは切り欠き209aを辺の中央部に有するのではなく、図12(b)のように辺の端に有しても良い。
【0060】
本実施例では、導体層204は導体線206とビアランド208を含んでいるが、導体層204は導体線206とビアランド208の少なくとも一方を含まなくてもよい。例えば、導体層203と導体層204の間の層、又は導体層204より下層にビアランド208を配置し、ビアランド208と同じ層で導体線206を延長してもよい。また、導体層203と導体層204の間の層に導体線206を配置し、導体線206の一端はビア205に接続し他端は別に形成したビアを介して導体板214と接続してもよい。
【0061】
本実施例では、導体層201は導体層202の上層に配置されているが、導体層201は導体層202の下層に配置されてもよい。この場合、導体層201はクリアランスが設けられ、ビア205は導体層201と接触しないように該クリアランス内に配置される。また、導体層203は導体層204の上層に配置されているが、導体層203は導体層204の下層に配置されてもよい。この場合、導体板214はクリアランスが設けられ、ビア207は導体板214と接しないように該クリアランス内に配置される。
【0062】
本実施例は、ビア205の一端がビアランド208に接続され、ビアランド208が導体線206を介して導体板214に接続しているが、ビアランド208は必ずしも必要ではない。導体線214をビア205に直接接続してもよい。
【0063】
導体板212、導体板213、及び導体板214は同じ形状でもよいが、それぞれ異なる形状や異なる面積でもよい。また、ビア205とビア207の長さは互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。
【実施例3】
【0064】
次に、本発明の実施例3について、図13から図19に基づいて説明する。ここで、実施例2と同じ構成要素には同じ番号を付与し、詳細な説明は省略する。また、基板に平行な平面をxy平面、基板の厚さ方向をz軸方向とし、z軸正方向を基板における上方向とする。
【0065】
図13は本発明の実施例3のEBG構造のxz平面における断面図である。ここでは、単位構造300aと単位構造300bと単位構造300cの一部とを図示しており、単位構造300b及び単位構造300cは単位構造300aと同様の構成をしているため、説明を省略する。単位構造300aは、導体層301と、導体層301とキャパシタンスを形成する導体層202と、導体層202にビア205aを介して接続される導体層204と、導体層204とキャパシタンスを形成し導体層301にビア207aを介して接続される導体層203を有する。
【0066】
導体層301は導体板311a、311b、・・・(以下、導体板311と記載する。)、導体線305a、305b、・・・(以下、導体線305と記載する。)、ビアランド306a、306b、・・・(以下、ビアランド306と記載する。)を含む。ビア207の一端は導体板213に接続され、他端はビアランド306に接続される。導体板311とビアランド306とは導体線305を介して接続される。
【0067】
単位構造300aは、誘電層215を挟んで対向している導体板311aと導体板212aから第1のキャパシタンス部を形成し、誘電層217を挟んで対向している導体板213aと導体板214aから第2のキャパシタンス部を形成し、2つのキャパシタンス部を上下に重なるように形成する。導体板212aは単位構造300bに含まれる導体板213bとも一部が重なるように配置され、また、導体板213aは単位構造300cに含まれる導体板212cとも一部が重なるように配置される。即ち単位構造300aは単位構造300b及び単位構造300cと重なり合うように配置されるため、本実施形態は実施例2と同様にEBG構造の実装面積を低減する効果が得られる。
【0068】
本実施形態のEBG構造は実施例2と同様の手順で形成することができる。即ち、実施例2の導体層201を積層する工程において、導体層301として導体板311、導体線305、ビアランド306を形成することで、本実施形態のEBG構造を形成できる。ここで、導体板311、導体線305、ビアランド306はマスキング、露光、エッチング、現像等の一般的な基板の製造方法を用いて形成することができる。
【0069】
図14は本実施形態のEBG構造の平面図を示し、図14(a)は図13の導体層301を説明するための平面図である。ビアランド306は導体板311の間に配置され、導体線305を介して周囲に配置された導体板と接続される。例えば、ビアランド306aは導体板311a、311c、311g、311hの間に配置され、導体板311a、311c、311g、311hは導体線305a、305b、305g、305hを介してビアランド306aとそれぞれ接続される。本実施形態は実施例1と同様に、例えばビアランド306aとビアランド306eの間ではインダクタンス部の一部が導体線305b→導体板311a→導体線305oの電流経路に形成されるため、インダクタンス部を延長することで大きいインダクタンス成分Lを得ることができる。導体線305は導体線206と同様の形態を取ることができ、例えば、導体線305aは導体板311cの一部を取り囲むように延長されてもよい。また、1つの導体線305aで1つの導体板311cをビアランド306aと接続するのではなく、例えば、導体線305aと導体線305gを1つの導体線で構成し、該導体線で導体板311c及び導体板311gをビアランド306aと接続してもよい。導体板214aと同様に、導体板311aは一部に切り欠きを有してもよい。ビアランド306aの周囲に配置する導体板の数やビアランド306aに接続する導体線の数を任意の数に変更してもよく、隣り合うビアランド間の電流経路が周期的になるように接続され、導体層301を構成する全ての導体板311とビアランド306が接続されるように導体線305を配置すればどのような形態でもよい。
【0070】
図14(b)は図13の導体層202を説明するための平面図である。導体板212はビア207と接しないように配置される。例えば、導体板212aはビア207a、207b、207d、207eの間で接しないように配置される。導体板212aは、導体板311aと上記第1のキャパシタンス部を形成するために311aの下層において重なるように配置される。また、導体線305は導体板212と重ならないように配置される。例えば、導体線305aが導体板212cとz軸方向において重なる位置に配置された場合、導体板212cに流れる電流によって導体線305aに発生する磁界が打ち消され、導体線305aによるインダクタンス成分Lを増加させる効果が弱くなる。そこで、導体線305aは導体板212cとz軸方向において重ならないように配置されることが好ましい。
【0071】
また、大きいキャパシタンス成分Cを得るためには導体板311aと導体板212aがz軸方向へ重なる面積を大きくする必要がある。そのため、導体板311aの面積は少なくとも導体板212aの面積と等しく、導体板311aと導体板212aがz軸方向において重なる面積は導体板212aの面積と等しいことが好ましい。このように導体板311aと導体板212aを配置することで、導体線305bは導体層204でどのように配置されても導体板212aと重なることはなく、キャパシタンス成分Cとインダクタンス成分Lを効率よく発生させることができる。
【0072】
図15は本実施形態のEBG構造の斜視図である。前述したとおり、第1のキャパシタンス部は導体板311aと導体板212aから形成され、第2のキャパシタンス部は導体板213aと導体板214aから形成される。また、隣り合う単位構造間で、第1のインダクタンス部はビア205a→導体線206h→導体板214e→導体線206r→ビア205eを含む電流経路で形成される。ここで、ビア205aが接続されているビアランド及びビア205eが接続されているビアランドは省略している。第2のインダクタンス部はビア207a→ビアランド306a→導体線305b→導体板311a→導体線305o→ビアランド306e→ビア207eを含む電流経路で形成される。これらキャパシタンス部とインダクタンス部がLC共振回路として機能するため、バンドギャップ特性を得ることができる。本実施形態は導体層301を複数の導体板311で構成しているため、実施例2と比較して第2のキャパシタンス部から得られるキャパシタンス成分Cは小さくなる。しかし、キャパシタンス成分Cの減少分以上のインダクタンス成分Lを、導体板311aと導体線305b、305oを含む第2のインダクタンス部から得られるため、バンドギャップ特性を低周波数化することができる。
【0073】
図16は本実施形態のEBG構造と特性を比較するためのEBG構造の断面図である。本実施形態の導体層301を実施例2の導体層201とし、本実施形態の導体層204を導体層201と同様の導体層307とした構成をとる。図16のEBG構造は、導体層201と導体板212aを含む第1のキャパシタンス部と、導体板213aと導体層307を含む第2のキャパシタンス部とを有し、これら2つのキャパシタンス部を上下に重なるように配置される点は本実施形態と同様である。しかし、図16のEBG構造の第1及び第2のインダクタンス部は導体線を含まず、これらインダクタンス部の電流経路を長くすることができない点が本実施形態と異なる。
【0074】
図17は本実施形態のEBG構造と図16で示したEBG構造の特性を比較するための図である。図17(a)は本実施形態のEBG構造の特性を解析したシミュレーション結果を示すグラフであり、図17(b)は図16で示したEBG構造の特性を解析したシミュレーション結果を示すグラフである。ここで、X軸は周波数(GHz)、Y軸は減衰量(dB)を表す。減衰量の絶対値が40dB以上となる周波数の範囲をバンドギャップの範囲とし、図17でバンドギャップの下限周波数を確認すると、図17(a)の下限周波数321は1.0GHz、図17(b)の下限周波数322は1.2GHzとなり、本実施形態のEBG構造の方が低周波数のバンドギャップ特性を得られることを確認できる。即ち、導体層301及び導体層204を複数の導体板及び導体線で構成することによって、第1のインダクタンス部及び第2のインダクタンス部から大きいインダクタンス成分を得ることで、低周波数帯域のバンドギャップ特性を得られることを確認することができる。
【0075】
図18は本発明の好適な実施形態のEBG構造と特性を比較するためのEBG構造の断面図であり、例えば、導体線206aが導体板213aと重なるように配置され、導体線305bが導体板212aと重なるように配置されている。図13の本発明の好適な実施例と比べて、導体線206a及び導体線305bを長くしているが、前述したように、導体線206aが導体板213aとz軸方向において重なっているためインダクタンス成分Lを増加させる効果が弱くなる。同様に導体線305bによるインダクタンス成分Lを増加させる効果も弱くなる。また、導体板214a及び導体板311aの面積が小さくなることでキャパシタンス成分Cも小さくなるため、図18に示す構造は低周波数帯域のバンドギャップ周波数を得るためには好ましくない。
【0076】
図19は本実施形態の好適な実施形態のEBG構造と、好ましくない形態のEBG構造の特性を比較するための図である。図19(a)は本発明の好適な実施形態の特性を解析したシミュレーション結果を示すグラフであり、図19(b)は図18で示したEBG構造の特性を解析したシミュレーション結果を示すグラフである。ここで、X軸は周波数(GHz)、Y軸は減衰量(dB)を表す。減衰量の絶対値が40dB以上となる周波数の範囲をバンドギャップの範囲とし、図19よりバンドギャップ特性が現れる下限周波数を確認すると、図19(a)の下限周波数323は1.0GHz、図19(b)の下限周波数324は3.1GHzとなる。図18に示したEBG構造でもバンドギャップ特性が現れるが、高周波数帯域のバンドギャップ特性となる。低周波数帯域のバンドギャップ特性を得るためには、導体板214a及び導体板311aの面積を大きくし、導体線206aと導体板213a及び導体線305bと導体板212aがそれぞれz軸方向において重ならないことが好ましいことを確認できる。
【0077】
本実施例では、導体層301は導体線305とビアランド306を含んでいるが、導体層301は導体線305とビアランド306の少なくとも一方を含まなくてもよい。例えば、導体層301と導体層202の間の層、又は導体層301より上層にビアランド306を配置し、ビアランド306と同じ層で導体線305を延長してもよい。また、導体層301と202の間の層に導体線305を配置し、導体線305の一端はビア207に接続し他端は別に形成したビアを介して導体板311と接続してもよい。
【0078】
本実施例では、導体層301は導体層202の上層に配置されているが、導体層301は導体層202の下層に配置されてもよい。この場合、導体板311はクリアランスが設けられ、ビア205は導体板311と接触しないように該クリアランス内に配置される。
【0079】
本実施例は、ビア207の一端がビアランド306に接続され、ビアランド306が導体線305を介して導体板311に接続しているが、ビアランド306は必ずしも必要ではない。導体線306をビア207に直接接続してもよい。
【0080】
導体板212、導体板213、導体板214、及び導体板311は同じ形状でもよいが、それぞれ異なる形状や異なる面積でもよい。また、導体線206と導体線305は異なる形状や異なる長さでもよい。
【実施例4】
【0081】
本発明の実施例4について、図20及び図21に基づいて説明する。図20は本発明の実施例1から実施例3の何れかに記載したEBG構造を形成した基板の断面図である。主基板401は各種電子機器を構成する基板である。LSI等の電子回路402は主基板401に接続部403を介して接続される。主基板401は電子回路402の周囲のEBG領域404にEBG構造が周期的に形成される。主基板401上を伝播するノイズ405はEBG領域404を通過することで抑制されるため、ノイズの影響による電子回路402の誤作動を防ぐことができる。
【0082】
図21は本発明の実施例1から実施例3の何れかに記載したEBG構造を形成したパッケージ基板及び該パッケージ基板を実装した主基板の断面図である。電子回路402はパッケージ基板406上に配置され、電子回路402の周囲のEBG領域404にEBG構造が周期的に形成される。パッケージ基板406は接続部403によって主基板401に接続される。本発明は主基板やパッケージ基板に限らず、他の様々な基板に適用できる。
【0083】
ここで、図20及び図21のEBG領域404は電子回路402の全周囲にわたる必要は無く、ノイズの伝播経路を遮断できる電子回路の周囲の一部でも良い。EBG構造の単位構造の数に決まった数はなく、適宜変更してもよい。
【0084】
上述した本発明の実施形態を構成する導体層、導体板、及び導体線は、例えば銅、パラジウム、アルミニウム、白金、クロムなどの金属材料で形成されるが、金属以外の導体でもよく、導電性の樹脂などでもよい。ここで、導体層は該導電材料等で構成された金属板や金属箔を誘電層上に積層することで構成される。また、導体板は正方形として示しているが、これに限るものではなく、多角形や円形、線形など、任意の形状の導体パターンで構成される。さらに、導体線はビアと導体板を種々の形態で接続する接続パターンであり、誘電体上に印刷された金属箔や、半田付けされた導線で構成される。ただし、導体線は線状である必要は無く、多角形の金属板等で構成されてもよい。
【0085】
本発明のEBG構造及び基板は、上述した各実施形態の構成が上下逆の構成であっても同様の効果を奏し、上下逆の構成も権利範囲に含まれる。また、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、小型化可能であるEBG構造で低周波数帯域のバンドギャップ特性を得ることができるため、ノイズが発生するあらゆる電子機器及び基板に利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
100a、200a、300a 単位構造
101、201、301 導体層(第3導体層)
102、202 導体層(第1導体層)
203 導体層(第4導体層)
103、204 導体層(第2導体層)
311a 導体板(第2導体パターン)
112a、212a 導体板(第1導体層を構成する導体パターン)
213a 導体板(第4導体層を構成する導体パターン)
113a、214a 導体板(第1導体パターン)
104a、205a、 ビア(第1ビア)
207a ビア(第2ビア)
105a、206a 導体線(第1接続パターン)
305a 導体線(第2接続パターン)
106a、208a、306a ビアランド
209a 切り欠き
401 主基板
402 電子回路
403 接続部
404 EBG領域
405 ノイズ
406 パッケージ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体層と、
前記第1導体層に第1ビアを介して接続される第2導体層と、を有するEBG構造であって、
前記第2導体層は複数の第1導体パターンから構成され、前記第1導体パターンと前記第1ビアとは第1接続パターンを介して接続されることを特徴とするEBG構造。
【請求項2】
第1導体層を含むキャパシタンス部と、
前記第1導体層に第1ビアを介して接続される第2導体層を含むインダクタンス部と、を有するEBG構造であって、
前記第2導体層を複数の第1導体パターンで構成し、前記第1導体パターンと前記第1ビアとを第1接続パターンを介して接続することにより、前記インダクタンス部の電流経路を長くしたことを特徴とするEBG構造。
【請求項3】
前記第1導体層とキャパシタンスを形成する第3導体層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のEBG構造。
【請求項4】
前記第2導体層とキャパシタンスを形成する第4導体層を有し、
前記第4導体層と前記第3導体層とが第2ビアを介して接続されることを特徴とする請求項3に記載のEBG構造。
【請求項5】
前記第3導体層は複数の第2導体パターンから構成され、前記第2導体パターンと前記第2ビアとは第2接続パターンを介して接続されることを特徴とする請求項4に記載のEBG構造。
【請求項6】
前記第1接続パターンは少なくとも1つの前記第1導体パターンの一部を取り囲むことを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載のEBG構造。
【請求項7】
前記第1導体パターンは切り欠きを有することを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載のEBG構造。
【請求項8】
前記第1接続パターンの一部が前記切り欠きに配置されることを特徴とする請求項7に記載のEBG構造。
【請求項9】
前記第1導体層を構成する複数の導体パターンと前記第4導体層を構成する複数の導体パターンとは一部が厚さ方向において重なるように配置されることを特徴とする請求項4又は5に記載のEBG構造。
【請求項10】
前記第1接続パターンは前記第4導体層を構成する複数の導体パターンと厚さ方向において重ならないように配置されることを特徴とする請求項4又は5に記載のEBG構造。
【請求項11】
前記第4導体層を構成する複数の導体パターンのうちの1つと前記複数の第1導体パターンのうちの1つとが厚さ方向において重なる面積は前記第4導体層を構成する導体パターンの面積と等しいことを特徴とする請求項4又は5に記載のEBG構造。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1つに記載のEBG構造を少なくとも電子回路の周囲の一部に周期的に配置することを特徴とする基板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−129221(P2012−129221A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276489(P2010−276489)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】