EBV(エプスタイン−バーウイルス)潜在性膜タンパク質(LMP1)の細胞内領域に結合する抗体を含んでなる医薬組成物
本発明は、EBVタンパク質LMP1の細胞内領域に特異的に結合する抗体を含んでなる医薬およびワクチン組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、LMP1の細胞内領域に由来するポリペプチド断片およびこれら断片に特異的に結合する抗体並びにそれらの免疫療法および予防接種における使用に関する。
【0002】
エプスタイン−バーウイルス(EBV)は数々のヒト癌:鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者に誘発するリンパ腫、食道および肝内胆管癌に関連する。最近のデータでは、EBVは鼻NK/T細胞リンパ腫および肝内胆管癌にも関与していることが示されている。エイズ患者に頻発する口腔毛髪状白斑症(OHL)もEBVに密接に関連する。EBVはそれゆえにリンパ親和性かつ上皮親和性である。
【0003】
放射線療法および化学療法を含めて、EBV関連癌のための数々の治療法が用いられてきた。しかしながら、放射線療法および化学療法は、古典的な問題(毒性、投与量など)を引き起こす。同様に、一般的に標的としてのウイルスおよび/または細胞タンパク質に基づいた数々の細胞およびウイルス遺伝子治療が、開発されてきた。しかしながら、これらの治療法は十分によく機能していなかった。
【0004】
免疫療法においては、EBVに付随するまたは付随しない上皮腫瘍細胞がEGFR(表皮成長因子受容体)を発現しているため、特に癌(NPC、胸腺腫(Thymomes)、肺、子宮頸癌、大腸、乳、および頭頸部)の治療のために、抗EGFR抗体が同様に提案されている。治療はそれ故に、EBV関連癌に限られない。治療(モノクローナル抗体カツマキソマブ)の効果は子宮頸癌および胸腺腫で評価されている。しかし、抗EGFRを放射線療法との組合せで用いて治療した患者は放射線耐性となる危険性がある。
【0005】
鼻咽頭癌(NPC)は、後鼻孔の上皮に由来するヒト悪性腫瘍である。絶えずウイルスと関連づけられるヒト悪性腫瘍のもっとも際だった例の一つである。エプスタイン−バーウイルス(EBV)の全長ゲノムはすべての悪性NPC細胞に含まれており、これはおそらく悪性表現型に寄与するウイルスタンパク質をコードしている(Decaussin G, Sbih-Lammali F, De Turenne-Tessier M, Bougermouh AM, Ooka T. 2000. Cancer Res 60 : 5584-5588; Ooka T : 2005. In. Epstein-Barr Virus. Horizon Press, Annette Griffin: Edited by Erle S. Robertson. Chapter 28 : p.p 613-630)。ヒトにおいてはEBV感染が遍在しているが、NPC発生数は地理学上の地域に依存して極めて大きく変動する。世界における胃癌のおよそ5−10%もまたEBVに関連する。
【0006】
NPCの検査用生体組織は、一貫してEBERs、EBNA1、LMP1、LMP2A、BARF0、そしてBARF1をコードする遺伝子を含む様々なEBV遺伝子を発現している。これらの中では、LMP1とBARF−1のみが齧歯類の線維芽細胞において悪性の形質転換を引き起こす能力があり(Wei and Ooka, 1989, EMBO J. 8 :2897-903 ; Wang D, Liebowitz D and Kieff E. 1985. Cell 43:831-840)、ウイルス癌遺伝子と考えられている。
【0007】
LMP1(潜在性膜タンパク質−1)はEBVが感染した細胞の表面に発現する潜在性の抗原のファミリーに属しており、B細胞の不死化に不可欠である。LMP1は、ヒトヘルペスウイルス4タイプ1に属するエプスタイン−バーウイルス(EBV)のゲノムにコードされている。LMP1は6つの膜貫通領域と一つの細胞内C末端領域を有する。このC末端領域は二つの主な機能領域、CTAR1とCTAR2を含む。LMP1タンパク質の「ショートループ」と呼ばれる細胞外領域はEBV感染細胞の表面上に存在する。LMP1はB細胞の不死化に不可欠であり、上皮細胞に導入すると、細胞分化を抑制できるNFkB、A20、およびEGF−Rのような様々な細胞遺伝子を活性化する(Ooka T : 2005. In. Epstein-Barr Virus. Horizon Press, Annette Griffin: Edited by Erle S. Robertson. Chapter 28 : p.p 613-630.)。しかしながら、LMP1単独ではB細胞を不死化することはできず、5つの他のEBV遺伝子と協力する必要がある(EBERs、LMP2A、EBNA3A、EBNA3B、EBNA2)(Kieff and Rickinson, 2007, Fields Virology 5th Edition-Fields BN, Knipe DM, Howley PM (ed.) Lippincott-Williams & Wilkins Publishers : Philadelphia, 2007, pp. 2603-2654)。古典的には、LMP1タンパク質は細胞膜に局在するとされてきた。しかし、最近のデータではLMP1は、LMP1遺伝子組み換えバキュロウイルスに感染した昆虫Sf9細胞の培養液(Vazirabadi G, Geiger TR, Coffin WF, Martin J M. Links 2003, J Gen Virol. 84 : 1997-2008; Flanagan J, Middeldorp J, Sculley, T. 2003, J Gen Virol 84 :1871-9)やNPC由来c666−1細胞株の培養液(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 2007 13 : 4993-5000)におけると同様に、B95−8細胞(非ヒトマーモセットBリンパ球)の培養液において、エキソソームの成分中に分泌され、かつ局在することが示されている。これらのエキソソーム成分はT細胞の増殖抑制の原因であるらしい(Flanagan J, Middeldorp J, Sculley, T. 2003 J Gen Virol 84 :1871-9)。エキソソーム様小胞内に存在するLMP1はFGF2の発現を活性化することが示されている(Ceccarelli S, Visco V, Raffa S, Wakisaka N, Pagano J, Torrissi R. 2007 Int. J. Cancer 121: 1494-506)。
【0008】
LMP1の発ガン性に不可欠な役割は、NFkBの活性化により決定される。LMP1の発現の抑制は、NFkBの発現の減少に関連した細胞死を引き起こす(Kieff and Rickinson, 2007, Fields Virology 5th Edition-Fields BN, Knipe DM, Howley PM (ed.) Lippincott-Williams & Wilkins Publishers : Philadelphia, 2007, pp. 2603-2654)。
【0009】
近年、NPC患者の血清および唾液における二つの癌遺伝子(LMP1およびBARF1)の分泌が明らかにされ(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 2007. 13 :4993-5000)、NPC患者の血清から精製されたこれらの癌遺伝子は、イン・ビトロで強力な細胞分裂促進活性を示した。この細胞分裂促進活性は、腫瘍の発達に関連し得る。
【0010】
NPC患者の血清、またはc666−1細胞の注入後に引き起こされたNPC由来の腫瘍を発達させるマウスの血清に見いだされるLMP1の多くは、エキソソーム様小胞と会合している。この複合体形態であるLMP/エキソソームが自己分泌の機構で細胞周期を活性化することができるが、一方で遊離LMP1(エキソソームなし)は細胞周期を活性化できない(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 2007. 13 : 4993-5000)。
【0011】
米国特許第6,723,695号はEBVの構造および潜在性タンパク質内のCTLエピトープを記載している。これらのCTLエピトープはEBV感染に対する抗ウイルス免疫の提供に効果的であり得る。EBV陽性リンパ腫の治療のために、臨床試験が開始されている。LMP1由来のエピトープは、LMP1の細胞外ループに由来する。
【0012】
免疫療法においては、LMP1エピトープを認識するEBV特異的CTLは、ホジキン病の患者の治療にもまた用いられる。しかし、この治療は、サイトカインによる抑制効果により成功していない(Gottschalk et al., 2002, Adv. Cancer Res. 8 : 175-201 ; Bollard et al., 2004. J. Exp. Med. 200 : 1623-1633)。
【0013】
WO03/048337は、LMP1に結合する抗体と治療方法におけるその使用を記載している。この抗LMP1抗体は、感染細胞の表面に暴露されたLMP1の細胞外ループに結合する。これらの抗体でみられる細胞増殖の抑制は明確に述べられてはおらず、おそらく、細胞膜に局在するLMP1の中和によるものであって、培養液内に分泌されたエキソソームに局在するLMP1との結合によるものではない。
【0014】
欧州公開第1,229,043号公報はLMP1由来の異なるペプチドとこれらと反応する抗体試薬を記載している。記載されたポリペプチドと抗体はEBV感染またはEBV陽性腫瘍の治療のための医薬の製造のために用いることができる。LMP1の細胞内領域に対する抗体が記載されている。しかしながら、医薬組成物はLMP1の細胞外ループに対して作製した抗体を記載しているのみである。
【0015】
B細胞の不死化に必要な癌遺伝子としてのLMP1の役割も示されてきた。しかし、他の癌遺伝子が記載されてきており、これらが不死化に必要である。
【0016】
最新の技術では、免疫療法は、EBV感染細胞の表面に露出されるLMP1の細胞外ループに対して行われている。
【0017】
本発明では、LMP1の機能阻害に基づく新しい免疫治療法を提供する。驚くべきことに、LMP1機能の阻害は、腫瘍の発達を防ぎ、抑圧するに十分である。
【0018】
本発明は予期せぬことに、LMP1の細胞内領域に結合する抗体が、イン・ビトロおよびイン・ビボの両方で、EBVと関連した腫瘍細胞の発達を抑制するに十分であることを示す。LMP1の細胞内領域に結合する抗体は、イン・ビボで癌タンパク質を中和する能力を有し、マウスモデルにおいて腫瘍の予防と抑圧の結果を生む。この中和はLMP1の細胞内領域がエキソソームの表面に露出しているという事実によるのだろう。
【0019】
BD.Science、フランスにより市販されているモノクローナル抗LMP1抗体が用いられた。この抗体はLMP1のCTRA1とCTRA2の間のLMP1細胞内領域に結合する。NPC由来の上皮腫瘍細胞の注入前の、抗LMP1抗体の連続的な注入は腫瘍の出現の予防に導く。腫瘍サイズが直径約0.8cmになった後に抗LMP1を連続的に注入すると、腫瘍は後退し、完全に消えた。このことは、EBV陽性腫瘍を抑圧し、これから防護する、抗LMP1抗体を用いた免疫療法に関する最初の報告である。
【0020】
培養液への抗LMP1の添加も同様にEBV陽性のB細胞の増殖を抑制することができ、このことは、抗LMP1に基づく免疫療法がEBV関連リンパ腫の発達を抑制し、これから防護するに効果的であることを示唆する。
【0021】
さらに、患者はこのウイルスタンパク質に対してとても弱い抗体反応しか示さないため、LMP1の細胞内領域を標的とした免疫療法はNPCの予防および治療に有望である(Meij P, Vervoort MBHJ, Aarbiou J, van Dissel P, Brink A, Bloemena E, Meijer CJLM, Middeldorp JM. 1999. J. Infect. Diseases 179 : 1108-15)。
【0022】
配列表
配列番号1:ヒトヘルペスウイルス4タイプ1からのLMP1(潜在性膜タンパク質−1)のアミノ酸配列(Genbank YP_401722.1)
【発明の具体的説明】
【0023】
本発明の第一の対象は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までの配列を有するエプスタイン−バーウイルス(EBV)タンパク質LMP1に由来するポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を含んでなる、医薬としての使用のための組成物である。
【0024】
好ましい態様では、医薬としての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までの配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドの少なくとも5、7、10、15、20、50アミノ酸の断片に特異的に結合する抗体または抗体断片を含んでなるものである。
【0025】
好ましくは、医薬としての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の232番から351番までの配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を含んでなるものである。
【0026】
さらにより好ましくは、医薬としての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までの配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を含んでなるものである。
【0027】
本発明の第二の対象は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドの少なくとも10、20、50アミノ酸の断片を含んでなる、医薬としての、またはワクチンとしての使用のための組成物である。
【0028】
好ましい態様では、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドを含んでなるものである。
【0029】
好ましくは、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の232番から351番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドを含んでなるものである。
【0030】
もう一つの好ましい態様では、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドを含んでなるものである。
【0031】
本発明のもう一つの対象は、下記からなる群:配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までの配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドの少なくとも5、7、10、15、20、50アミノ酸の断片、配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチド、または、配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチド、から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物である。
【0032】
本発明は医薬組成物およびワクチン組成物を包含する。
【0033】
好ましくは、本発明の組成物は、EBV陽性腫瘍またはEBV関連腫瘍の予防または治療のためのものである。
【0034】
より好ましくは、本発明の組成物は、鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者に誘発するリンパ腫、食道および肝内胆管癌、鼻NK/T細胞リンパ腫、並びに口腔毛髪状白斑症(OHL)の予防または治療のためのものである。
【0035】
さらにより好ましくは、本発明の組成物は鼻咽頭癌の予防または治療のためのものである。
【0036】
本発明のもう一つの対象は、エプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来し、下記からなる群:
− 配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までのアミノ酸配列を有するポリペプチド、
− 配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までのアミノ酸配列を有するポリペプチドの少なくとも5、7または10アミノ酸の断片、
から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0037】
本発明のもう一つの対象は、本発明に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0038】
本発明はさらに、本発明に記載されるポリヌクレオチドを用いて形質転換した宿主細胞に関する。
【0039】
本発明は、本明細書に記載されたLMP1の細胞内領域またはその誘導体に特異的に結合する抗体若しくは抗体断片を含んでなる、医薬としての使用のための組成物に関する。本発明はさらに、LMP1の細胞内領域またはその断片を含んでなる、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物に関する。本発明のもう一つの対象は、LMP1の細胞内領域またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでなる、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物である。
【0040】
配列番号1のアミノ酸配列188番から386番の配列からなるポリペプチドは、EBV感染細胞の表面に露出しないLMP1の細胞内領域に対応する。しかし、驚くべきことに、本発明において、この領域に結合する抗体はイン・ビボのマウスモデルにおいて腫瘍の発達を防ぎ、減少させることがわかった。
【0041】
本発明は:
a)本明細書に記載された有効量の抗体若しくは抗体断片、本明細書で記載された有効量のポリペプチド、本明細書で記載された有効量のポリヌクレオチド、および、
b)不活性または生理的に活性であってもよい、薬学上許容可能な担体、
を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0042】
本発明はさらに:
a)本明細書に記載された有効量のポリペプチドまたは本明細書に記載された有効量のポリヌクレオチド、および、
b)アジュバント
を含んでなるワクチンを提供する。
【0043】
本明細書で用いられる「薬学上許容可能な担体」には、生理学的に適した任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗バクテリア剤および抗菌物質並びに同様のものが挙げられる。好適な担体、希釈剤および/または賦形剤の例には、一以上の水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等が、これらの混合物同様に挙げられる。多くの事例で、糖、ポリアルコールまたは塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含ませることが好ましい。特に、好適な担体の適切な例としては、(1)約1mg/mlから25mg/mlのヒト血清アルブミンを含む、または含まないpH〜7.4のダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、(2)0.9%生理食塩水(0.9% w/v 塩化ナトリウム(NaCl))、および(3)5%(w/v)デキストロースが挙げられ、同様にトリプタミンなどの抗酸化剤およびTween20などの安定剤を含んでいてもよい。
【0044】
本発明に含まれる医薬組成物は、EBVに関連する癌の治療のためのさらなる治療剤を含んでいてもよい。
【0045】
本発明の組成物は様々な形態とすることができる。これらは、例えば、溶液、半固体、そして固体投薬形態とすることができるが、好適な形態は、投薬および治療利用の意図した方式に依存する。典型的に好適な組成物は、注射可能なまたは不溶解性の溶液の形態である。好適な投与方式は、非経口(例えば、静脈注射の、筋肉内の、腹腔内の、皮下の)である。好ましい態様では、本発明の組成物は、一度にまたは時間をかけた連続的な注入により静脈内に投与される。もう一つの好ましい実施例では、筋肉内の、皮下の、関節内の、関節滑液嚢内の、腫瘍内の、腫瘍周囲の、病変部の、または病変周囲の経路で注入され、全身的な治療効果と同様に局所的な治療効果を発揮する。
【0046】
非経口投与のための滅菌組成物は、適切な溶媒中で、本発明に記載に記載された抗体、抗体断片、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含ませることにより必要量製造することができ、また、その後精密濾過による滅菌を行うことができる。溶媒または賦形剤として、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールおよび同様のものがこれらの組合せと同様に使われうる。多くの事例で、糖、ポリアルコール若しくは塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含むことが好ましい。これらの組成物は、補助剤、特に湿潤剤、等張剤、乳剤、分散剤、および安定剤を含んでいても良い。非経口投薬のための滅菌組成物は、使用時に滅菌水または滅菌した他の任意の注射可能な溶媒に溶解しうる滅菌固体組成物の形態でもまた製造されうる。
【0047】
本明細書に記載された抗体、抗体断片、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、経口投与してもよい。経口投与のための固体組成物として、錠剤、丸薬、粉末(ゼラチンカプセル、サシェ)または顆粒が用いることができる。これらの組成物においては、本発明による活性成分が、例えばデンプン、セルロース、ショ糖、ラクトースまたはシリカなどの一以上の不活性な希釈剤とアルゴン流の元で混合される。これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えばステアリン酸マグネシウムやタルクなどの一以上の滑沢剤、着色剤、コーティング剤(糖コート錠剤)または釉薬をもまた含んでなりうる。
【0048】
経口投与のための液体組成物として、薬学上許容可能な溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、および、水、エタノール、グリセロール、植物油またはパラフィンオイルなどの不活性な希釈剤を含んだエリキシール剤を用いることができる。これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えば、湿潤剤、甘味剤、濃縮剤、香料または安定剤を含んでなりうる。
【0049】
用量は所望の効果、治療の持続時間、用いられる投与経路に依存する。
【0050】
本発明は、また、鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者に誘発するリンパ腫、食道および肝内胆管癌、鼻NK/T細胞リンパ腫、並びに口腔毛髪状白斑症(OHL)などのEBV陽性腫瘍若しくはEBV関連腫瘍の予防若しくは治療のための医薬の製造のための、またはワクチンの製造のための、本明細書に記載した抗体、抗体断片、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの使用にも関する。
【0051】
好ましい態様では、本明細書に記載した抗体、抗体断片、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、EBV陽性腫瘍の予防または治療のために用いられる。より好ましい態様では、上記で開示した、および本明細書に記載した抗体、抗体断片、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む医薬またはワクチン組成物の一つは、EBV陽性腫瘍の予防または治療のために用いられる。より好ましくは、これらは鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者に誘発するリンパ腫、食道および肝内胆管癌、鼻NK/T細胞リンパ腫、並びに口腔毛髪状白斑症(OHL)の予防または治療のために用いられる。好ましい態様では、鼻咽頭癌の予防または治療のために用いられる。
【0052】
本発明はまた、ヒトまたは治療若しくは予防を必要とする患者に本明細書に記載した有効量の抗体、抗体断片、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを投与することを含むEBV陽性腫瘍の予防または治療のための方法を提供する。好ましい態様では、本発明は、鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者に誘発するリンパ腫、食道および肝内胆管癌、鼻NK/T細胞リンパ腫、並びに口腔毛髪状白斑症(OHL)の予防または治療のための方法に関する。さらにより好ましくは、本発明は鼻咽頭癌の予防または治療のための方法に関する。
【0053】
最初の態様では、本発明の組成物は、LMP1の細胞内領域またはこの誘導体に特異的に結合する抗体若しくは抗体断片を含んでなる。
【0054】
本明細書で用いられる用語「結合」は、配列番号1のアミノ酸配列188番から386番までのペプチドに対応するLMP1の細胞内領域のエピトープと反応する、若しくは配列番号1のアミノ酸配列188番から386番までのポリペプチドに対応するLMP1の細胞内領域に対して作製された、抗体または抗体断片に関する。好ましくは、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列306番から318番までのペプチドからのエピトープと反応するか、または配列番号1のアミノ酸配列306番から318番までのポリペプチドに対して作製される。
【0055】
好ましくは、抗体はLMP1の細胞内領域に特異的に結合し、他の抗原とは交差反応しない。それ故に、抗体は一つの特定の抗原と反応する。
【0056】
LMP1の細胞内領域と特異的に結合する抗体は、例えば、BD Sciences(フランス)からの抗体S12などが市販されている。代わりに、LMP1の細胞内領域に特異的に結合する抗体またはその断片を標準的な方法で製造しても良い。好適な抗体は、モノクローナル抗体S12も同様に特異的に結合する、配列番号1のアミノ酸配列306番から318番までの配列を有するポリペプチドに結合する抗体である。好ましくは、抗体は、抗体S12と同じエピトープに結合する。S12抗体のエピトープは、配列番号1のアミノ酸配列306番から386番までの配列を有するポリペプチドから開始して、当業者に知られる方法で決めることができる。
【0057】
用語「抗体」は、本明細書では、広義に用い、特にIgG、IgM、IgA、IgD、IgEなどの任意のアイソタイプのモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および抗体断片を含む。特定の抗原に反応性の抗体は、ファージ若しくは同様のベクターにおける組み換え抗体のライブラリーからの選択などの組み換え法により、または抗原若しくは抗原をコードする核酸を用いて動物を免疫することにより生産することができる。
【0058】
典型的なIgG抗体は、ジスルフィド結合に連結した二つの同一の重鎖と二つの同一な軽鎖を含んでなる。各重鎖および軽鎖は定常領域と可変領域からなる。各可変領域は、「相補性決定領域」(「CDR」)または「超可変領域」と呼ばれる三つの区分からなり、主に抗原のエピトープに結合する原因となっている。これらは通常CDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれ、N末端側から連続して番号を振られている。可変領域のより高く保存されている領域は、「フレームワーク領域」と呼ばれる。
【0059】
本明細書で用いられる「VH」または「VH」は、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域をいい、Fv、scFv,dsFv、Fab、Fab’またはF(ab’)2断片の重鎖を含む。「VL」または「VL」は、抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域をいい、Fv、scFv,dsFv、Fab、Fab’またはF(ab’)2断片の軽鎖を含む。
【0060】
「ポリクローナル抗体」は、一以上の他の非同一な抗体の中から、またはその存在下で製造された抗体である。一般的にはポリクローナル抗体は、非同一の抗体を製造するいくつかの他のBリンパ球の存在下で、Bリンパ球から製造される。通常は、ポリクローナル抗体は免疫された動物から直接得られる。
【0061】
本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体であり、すなわち、この集団を形成する抗体は、少量存在しうる自然に生じうる変異を除いて、本質的に同一である。
【0062】
「エピトープ」は、抗体が結合する抗原の部位である。
【0063】
本明細書で用いられる「キメラ抗体」は、定常領域またはその一部が改変され、置き換えられ、または交換されており、そのため、可変領域が異なる種の、またはもう一つの抗体クラス若しくはサブクラスに属する定常領域と連結する抗体である。
【0064】
「キメラ抗体」は、また、可変領域またはその一部が改変され、置き換えられ、または交換されており、そのため、定常領域が異なる種の、またはもう一つの抗体クラス若しくはサブクラスに属する可変領域と連結する抗体でもある。キメラ抗体を製造する方法は、技術的に知られている。
【0065】
本明細書で用いられる用語「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含むキメラ抗体をいう。ヒト化の目的は、完全な抗原結合親和性と抗体の特異性を維持しながら、ヒトへの導入のために、マウスの抗体などの異種の抗体の免疫原性を低減することである。ヒト化抗体または他の哺乳動物による拒絶反応欠如に適した抗体は、再表面形成(resurfacing)またはCDRグラフト化などの様々な技術を用いて製造することができる。ヒト化キメラ抗体は、好ましくは、相補性決定領域(CDR)以外の定常領域および可変領域であって、対応するヒト抗体領域から実質的にまたは排他的に由来する定常領域および可変領域、およびヒト以外のほ乳類から実質的または排他的に由来するCDRを有する。
【0066】
本発明の抗体は、上で議論した全長の抗体およびそのエピトープ結合断片の両方を含む。本明細書で用いられる「抗体断片」とは、一般的に「エピトープ結合断片」と称される、全長の抗体により認識されるエピトープに結合する能力を保持した抗体の任意の一部を含む。抗体断片の例としては、下記に限定されないが、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、単鎖Fvs(scFv),単鎖抗体、ジスルフィド連結Fvs(dsFv)ならびにVLまたはVH領域のいずれかを含んでなる断片が挙げられる。エピトープ結合断片は、単鎖抗体を含み、単独または下記:ヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3領域の全体若しくは一部との組合せにおいて可変領域を含んでいてもよい。
【0067】
第二の態様では、本発明の組成物はLMP1の細胞内領域に対応するポリペプチドまたはその断片を含んでなる。
【0068】
用語ポリペプチド「断片」とは、それが由来するポリペプチドの全体ではなく一部を含むポリペプチドをいう。本発明による断片は、それが由来するポリペプチドの抗原性の特性を保持している。このように、本発明は配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するポリペプチドの少なくとも5、7、10、15、20アミノ酸の断片に関する。
【0069】
本発明による断片は、好都合には、その抗原性の特性を保持した最小の大きさを有する。
【0070】
本発明のもう一つの目的は、エプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来し、下記からなる群:
−配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までの配列を有するペプチド、
−配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までの配列を有するペプチドの少なくとも5、7または10アミノ酸の断片からなる断片、
から選択されるペプチドである。
【0071】
第三の態様では、本発明の組成物は、LMP1の細胞内領域に対応する上述のポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでなる。
【0072】
本発明による用語「ポリヌクレオチド」とは、DNAもしくはRNAタイプでありうる単鎖ヌクレオチド鎖若しくはその相補鎖、またはcDNA(相補的)若しくはゲノムDNAタイプでありうる二本鎖ヌクレオチド鎖をいう。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、DNAタイプ、いわゆる二本鎖DNAタイプである。同様に用語「ポリヌクレオチド」は、改変されたポリヌクレオチドをも含む。
【0073】
本発明のポリヌクレオチドは自然環境から単離され、または精製される。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、Sambrook et al. (Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 1989)に記載された技術などの通常の分子生物学技術を用いて、または化学合成により製造することができる。
【0074】
本発明のもう一つの対象は、本明細書に記載されたようなペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0075】
本発明は、本発明に記載したポリヌクレオチドで形質転換した宿主細胞にも関する。当業者は、例えばトランスフェクション、リポフェクション、電気穿穴法、マイクロインジェクション法、ウイルス感染、熱衝撃、膜の化学的な透過処理もしくは細胞融合後の形質転換などの、宿主細胞へのポリヌクレオチドの取り込みのための標準的な方法に通じている。
【0076】
本発明のもう一つの対象は、本発明に記載したポリヌクレオチドを含んでなるベクターであり、ウイルスベクターを含む。
【0077】
第四の態様では、本発明の組成物は、LMP1の細胞内領域に対応する上述のポリペプチドまたはその断片を発現する形質転換した宿主細胞を含んでなる。
【実施例】
【0078】
腫瘍抑制のための抗LMP−1による処理
本発明者らは、抗LMP−1抗体での処理が、1)NPC由来のおよびGC由来の腫瘍を抑圧したこと、並びに2)NPC由来のおよびGC由来の腫瘍の発達から保護したことを示す。
【0079】
抗LMP−1抗体をEBV関連癌(NPCおよびGC)の保護および抑制剤として示すために、本発明者らは、本発明者らの研究室で以前開発した動物モデル(ヌードマウス)を用いた(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 13 : 4993-5000 ; Sheng W, Decaussin, G., Sumner, S. and Ooka, T. 2001. Oncogene 20: 1176-1185)。
【0080】
本実施例で用いられたヌードマウスは、Harlan社(フランス)に由来しており、イタリアで作製された:系統:Hsd:Athymic Nude−Fox1nu。本発明者らはHsdCpb:NMRI−Fox1nuも同様に分析した。これらの週齢は4週であった。これらの性別はオスであった。これらの4週齢での体重は約19−21gであった。
【0081】
抗LMP−1抗体の効果についてのイン・ビトロ解析のために、EBV陽性NPC由来のc666−1およびGC由来EBV−AGS上皮細胞株およびEBV陽性またはEBV陰性ヒトB細胞株において、モノクローナル抗LMP−1 S12を調べた。
【0082】
抗LMP1抗体S12はBD Science(フランス)から市販されている。カタログ番号:559898。
【0083】
この抗体はLMP1タンパク質のC末端領域、CTAR2近傍のアミノ酸配列301−318aaを認識する(図1参照)。
【0084】
NPC由来の腫瘍は、NPC由来c666−1(Cheung ST, Huang DP, Hui AB, Lo KW, Ko CW, Tsang YS, Wong N, Whitney BM, Lee JC. Int J Cancer 1999; 83:121-6)またはGC由来EBV陽性AGS(Kassis J , Maeda A, Teramoto N, Takada, K, Wu C, Wells A. Int. J. Cancer 2002; 99 : 644-51)上皮細胞がヌードマウスに注入されたときに引き起こされうる。そこで本発明者らは、これらのマウスにおける抗LMP1抗体の効果を分析した。
【0085】
一般的に、EBVゲノムを持たないAGS細胞がヌードマウスに注入されたときにはいかなる腫瘍も引き起こさないが、ヌードマウスにおいてはEBV陽性AGSによりGC由来の腫瘍の発達が起こった。この報告は今までされたことが無い。
【0086】
イン・ビトロ実験
最初に、EBV陽性c666−1およびEBV陽性AGS上皮細胞株、EBV陽性ヒトIB4 B細胞株、EBV陽性ヒトRaji B細胞株およびEBV陰性ヒトLouckes B細胞株における、イン・ビトロ培養状態での(培養液に加えられた)抗LMP1抗体の効果を分析した。105個の細胞に対して5μgの抗LMP1を培養液に加えた。細胞増殖の進展を120時間観察した(図2)。
【0087】
分泌されたLMP−1癌タンパク質が(培養液に加えられた)5μgのS12抗LMP−1抗体により中和されると、c666−1細胞は図2−3の生存曲線により示されるように死滅した。生存細胞は、抗体添加後、24時間後に78%に、48時間後に50%に、72時間後に25%に、96時間後に7%に減少し、すべてのc666−1細胞が120時間(5日間)後に死滅した。このことは、LMP−1/エキソソームの細胞分裂促進活性が主要な細胞活性化プロセスに直接関係していることを示唆する(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 13 : 4993-5000)。
【0088】
同様の抑制効果が、EBV陽性ヒトRaji(図1−1)およびIB4 B細胞株(図2−4)においても観察された。この抑制効果は、EBV陽性B細胞株(図2−1および4)において顕著であった:抗体添加後、生存細胞は、24時間後に78%に、48時間後に13%に、72時間後に10%に、96時間後に5−7%に減少し、そしてすべてのB細胞が120時間(5日間)後に死滅した。
【0089】
EBV陰性Louckes B細胞株ではそのような抑制効果は見られなかった(図2−2)。
【0090】
結論として、抗LMP−1抗体はLMP−1タンパク質を発現するEBV陽性c666−1上皮細胞およびEBV陽性B細胞の細胞増殖を抑制することができた。
【0091】
これらの結果は、抗LMP−1が細胞から分泌されたLMP−1/エキソソームと複合体を形成し、その後その複合体が細胞内に入りうることを示唆している。おそらく、一度この複合体が細胞内に入ることがNFkBの発現を抑制し細胞死を引き起こしたのだろう(イン・ビボ実験の項と図15を参照)。
【0092】
この仮説を検証するため、Raji細胞を図2−1(ヒトRaji B細胞)と同様の条件で5μg S12と共に96時間培養した。24時間毎に細胞を回収し、スライドグラス上に置き、透過処理のためにアセトンで固定した。細胞内のエキソソーム/LMP−1/S12複合体の存在を、フルオレセインを連結した抗マウスIgで検出した。
【0093】
S12で処理されなかったRajiでは蛍光が観察されなかった(図2、Raji+Mouse Ig)が、一方で、S12処理後24時間のRajiは細胞膜近傍に斑点状の免疫蛍光が見られた。96時間では、重大な免疫蛍光が細胞質および核分画に観察された。このことは腫瘍細胞から分泌されたエキソソーム/LMP1がS12と複合体を形成し、そしてLMP1/エキソソーム/S12が細胞内に吸収され、核に到達することができたことを示唆している。S12で処理されなかった細胞で反応がみられなかったことは、抗体S12単独では細胞に吸収されないことを示す。
【0094】
本発明者らはそこでLMP1/エキソソーム複合体(ELC)がEBV陰性細胞株の培養液に直接添加されたときに同様の現象(LMP1/エキソソーム複合体の細胞内への吸収)が起こるか否かを検証した。このために、本発明者らは最初にNPC患者の血清からエキソソーム/LMP1複合体を精製し、その後EBV陰性細胞の培養液に直接添加した。ヒトT細胞株、CEM1およびヒトB細胞株、Louckesを1μgのELCと共に培養した。細胞を固定し、その後透過処理した。エキソソーム/LMP1複合体の存在を抗LMP−1 S12および抗CD63(エキソソームの特異的なマーカー)を用いて共焦点顕微鏡法により24時間観察した。核に局在するために細胞をDapiで染色した。最初は抗体S12または抗CD63を1000分の1希釈で用いて保温し、その後Alexa Fluo 488 IgGヤギ抗マウスIgGを二次抗体として用いてインキュベートした。LMP1はローダミンで赤色蛍光とし、CD63はフルオレセインで緑色蛍光とした。細胞は356nm(Dapi)と488nm(Alexa)で励起した。
【0095】
両方の抗体(抗LMP−1および抗CD63)が細胞画分:細胞質および核に共局在した。これらは、ELCで以前観察されたのと同様に、エキソソーム/LMP1/S12複合体が吸収されうることを示唆する。
【0096】
これらの細胞内局在を免疫電子顕微鏡法により確かめた。
2種の細胞株を電子顕微鏡解析した:−1)1μgのNPC血清由来LMP1/エキソソーム複合体で処理されたヒトLouckes B細胞株および−2)S12でのみ処理されたヒトRaji B細胞株。
【0097】
Louckes細胞をNPCから精製されたエキソソーム/LMP1複合体で48時間処理した。細胞塊を冷凍状態でカットし、その後スライドグラス上に置いた。
【0098】
CD63は10nm金ビーズを連結した抗CD63で検出した。LMP−1は5nm金ビーズを結合したS12により検出した。
【0099】
Raji細胞をS12抗体で48時間処理し、その後固定した。このスライドグラスを抗マウスIg(S12用)または抗CD63(エキソソーム用)のいずれかで処理した。(5nm金ビーズを連結した)抗マウスIgは、エキソソーム/LMP1/S12複合体上に局在するS12抗体と反応し、(10nm金ビーズを連結した)抗CD63は、同じエキソソーム上に局在するCD63と反応した。エキソソーム小胞、多小胞体、腔および核に陽性反応が見られた。
【0100】
NPC患者の血清から単離されたエキソソーム/LMP1複合体は、MTT試験において強力な細胞分裂促進活性を有する(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 13 : 4993-5000)。
【0101】
NPC患者の血清からのエキソソーム/LMP1複合体(ELC)および通常個体からのエキソソーム(EC)が細胞増殖促進活性を有するか否かを調べるために、多様な細胞株で比較研究を行った。AKATA(EBV−変種)、Louckes(B細胞)、CEM−1(T細胞)、Balb/c3T3(齧歯類線維芽細胞)およびEBV陰性ヒト上皮HaCaT細胞株をこの調査に用いた(図3)。
【0102】
NPC患者から精製された300ngのエキソソーム/LMP−1複合体(SNPC)と共に50000細胞/100μlの培養液(FCS無し)でMTT試験を行った。FBS有りまたは無しの条件および健康な個体から単離されたエキソソーム(EC−SNF)を対照として用いた(図4)。
【0103】
NPCからのエキソソーム/LMP1複合体は強力な細胞分裂促進活性を示した。ECL(SNPC)で得られたこの値はFBSで得られた値と同等であったが、一方でPBSや健康な個体からのEC(SNP)は基底値を示した。エキソソーム/LMP1分析におけるS12の添加(ELC+S12)が、エキソソーム/LMP1複合体により誘導される細胞分裂促進活性をほぼ完全に消失させるため(図4、ELC(SNPC)+S12)、ELC(SNPC)で得られた細胞分裂促進活性はエキソソーム内のLMP−1の存在による。
【0104】
抗LMP−1により誘導される細胞死は、エキソソームと複合体を形成したLMP−1によるNFkB、特にNFkBの二つの主要構成要素(p65およびp50)の発現の抑制と関連する(図11参照)。(エキソソームを付随しない)遊離のLMP−1は細胞周期を活性化できなかった(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bouguermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 2007. 13 : 4993-5000)。さらには、本発明者らのデータは健康な個体から精製したエキソソーム(EC:SNP)は細胞周期を活性化できかったことを示した(図4)。
【0105】
結論として、LMP−1の細胞分裂促進活性はエキソソームとの会合を必要とする。最後に、本発明者らのデータはエキソソーム/LMP1複合体形態がNFkBの発現を抑制する能力を有することを示した。
【0106】
NFkBの発現は、S12処理のc666−1やS12処理のRaji細胞で完全に抑制されていた(図11)。
【0107】
本発明者らのデータは今まで文献で報告されていたLMP−1によるNFkBの抑制が、おそらく細胞に入ったエキソソームとの複合体からくることを示唆している。この観察は、本発明者らにLMP−1により誘導される発癌の機構における新しい概念を提供するだろう。
【0108】
抗LMP−1の効果を、EBV−AGS細胞株で研究した。AGSおよびEBV−AGS細胞株を抗LMP−1で処理した(図4−1および図4−2)。
【0109】
抗LMP−1はAGS細胞増殖において少しも抑制を示さなかったが(図4−1)、その一方で、抗LMP−1は72時間で細胞増殖を止めた。しかし、すべての細胞が120時間まで生存していた(図4−2)。
【0110】
イン・ビトロで培養したEBV−AGSではLMP−1の転写はほぼ全くなかった。抗LMP−1はそれゆえにこれらの細胞で有毒ではない。
しかし、実際には細胞死を伴わない細胞増殖の抑制に関しては説明が無い。
【0111】
イン・ビボ実験:
本発明者らは、EBV関連癌:c666−1細胞(NPC由来)またはEBV陽性AGS(GC由来)からの107個の培養細胞を皮下に注射したヌードマウスにおいて抗LMP−1抗体の活性を調べた。
【0112】
c666−1細胞では、抗体処理をしていないマウスで、2日目または3日目までに腫瘍が検出され、その直径は、4日で約2mm、8日で8mm、そして14日で16mmおよび20日で20mm(図5−1)に達した:EBV−AGS細胞ではc666−1細胞での腫瘍よりも約1.5倍大きかった。
【0113】
EBV陽性AGS細胞では、抗体処理をしていないマウスで、2日目または3日目までに腫瘍が検出され、その直径は、4日で約3mm、8日で15mm、そして14日で25mmおよび20日で30mm(図6−1)に達した。
【0114】
誘発した腫瘍(直径におけるmm単位での腫瘍サイズ)は、EBV−AGS細胞での腫瘍がc666−1細胞での腫瘍よりもやや大きく、約1.5倍であった(図5−aおよび図6−e)。
【0115】
抗LMP−1の効果を解析するため、マウス1匹に対して25μgのモノクローナル抗LMP−1 S12を3つの手順で、腹腔内に注射した:
手順#1、予防的手順において、抗LMP−1 S12が25μgの5回の腹腔内注射として5日間隔で投与され、腫瘍接種の3日前に投与を終えた(c666−1は図5−bおよびEBV−AGSは図6−f)。
手順#2、腫瘍接種と同時に連続した毎日の注射を開始した(c666−1は図5−cおよびEBV−AGSは図6−g)。
手順#3、腫瘍サイズが直径で約0.8cmになったときに注射(毎日1回の注射)が行われた(c666−1は図5−dおよびEBV−AGSは図6−h)。
手順#1と#2は予防のため、手順#3は腫瘍の治療のためである。
【0116】
両方の細胞株に対する抗LMP−1での予防的な(手順#1 c666−1は−図5−bそしてEBV−AGSは図6−f)または同時の(手順#2 手順#1 c666−1は−図5−cそしてEBV−AGSは図6−g)処理は、処置したどのマウスにおいても腫瘍の発生を少なくとも3ヶ月間は完全に排除した。
【0117】
腫瘍がすでに相当な大きさに達しているときに投与されたとしても、抗LMP−1抗体の注射は高い効き目があった。約8mm(c666−1)および約15mm(EBV−AGS)の塊が速やかに安定化し、抗LMP−1抗体の5日間の毎日の注射による処置の後、次第に後退した(c666−1は図5−d、そしてEBV−AGSは図6−h)。処置開始後11日目には腫瘍塊が完全に消失し、少なくとも3ヶ月間マウスは腫瘍の無い状態であった。
【0118】
腫瘍増殖の抑制における抗LMP−1の特異性を確かめるために、本発明者らは手順#1(予防的)において、EBVにコードされるデオキリシボヌクレアーゼの抗体またはマウスモノクローナル抗Ig抗体のいずれかを注射した。抗EBV−デオキリシボヌクレアーゼまたは抗マウスIgのいずれかが、予防的手順において腫瘍接種前に25μgの5回の腹腔内注射として5日間隔で投与された。
【0119】
手順#1(予防的)でc666−1(図7)で抗デオキリシボヌクレアーゼで、若しくは抗LMP−1の代わりに抗マウスIg(図8)で処理したまたは未処理のマウスを対照実験として用いたとき、急激な腫瘍成長が見られた(図7および図8)。このことは、腫瘍発達の特異的な抑制がおそらくS12抗LMP−1によるLMP−1タンパク質の中和によることを示唆している。抗マウスIgはシグマ(フランス)カタログ番号62197から購入した。
【0120】
本実施例で用いたウサギポリクローナル抗デオキリシボヌクレアーゼは、本発明者らの研究室において、バキュロウイルスシステムにより得られたデオキリシボヌクレアーゼから作成された(Sbih-Lammali F, Berger F, Busson P and Ooka T, 1996, Virology, 222: 64-74)(Zeng Y, Middeldorp J, Madjar JJ and Ooka T , 1997, Virology 239:285-295)。
【0121】
その後、本発明者らは抗LMP−1およびLMP−1タンパク質の複合体が腫瘍細胞同様に血清にも存在するか否かを検証した。
【0122】
本発明者らは免疫ブロット法により、腫瘍を発達させたマウスからの血清および腫瘍を分析した。
【0123】
LMP−1はc666−1(図9−1、c666−1)およびEBV−AGS(図9−1、EBV−AGS)をもつマウスの血清に存在した。この実験で用いられた陽性対照はヒトP3HR1B細胞の細胞抽出物に由来する。LMP−1タンパク質は古典的に知られるp63kDaタンパク質として検出された。
【0124】
その後、本発明者らは腫瘍発達後(手順#3)に抗体で処理したマウスにおけるこれら血清構成成分を調べた。エキソソームと複合体を形成するLMP−1は超遠心分離により精製した(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bouguermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 13 : 4993-5000)。
【0125】
ウェスタンブロット法によるc666−1処理マウスの血清における複合体の分析で、ウサギ免疫グロブリン(図9−2:S−c666−1−Ig)と会合したLMP−1(図9−2:S−c666−1)の存在が示された。市販のマウスIgを陽性対照として加えた(図9−2:Ig)。
【0126】
同様の複合体が、腫瘍の生検材料(図9−3、MT−c666−1)において、ウサギ免疫グロブリン(図9−3、MT−c666−1−Ig)と会合した状態で存在した。市販のマウスIgを陽性対照(図9−3:Ig)として加えた。
【0127】
c666−1腫瘍を発達させるS12処理マウスの血清において、エキソソーム/LMP1/マウスIg複合体の存在を調べた(図10)。
【0128】
c666−1腫瘍を発達させるマウス血清からのエキソソーム/LMP1/S12複合体を分画超遠心分離により精製し、抗マウスIg(S12検出のため)または抗CD63(エキソソーム検出のため)で処理した。エキソソーム/LMP1/S12複合体を10nm金ラベルマウスIgにより、および5nm金ラベル抗CD63により検出した。標準のエキソソーム:これらの抗体(抗マウスIgおよび抗CD63(図10) S12で処理したc666−1を注射したマウスからのエキソソーム)で処理されなかったエキソソーム/LMP1/S12。
【0129】
一次抗体の省略またはこれらの非免疫血清(標準のマウスのエキソソーム)による置き換えにより免疫学的特異性が制御された。
【0130】
エキソソーム/LMP1/マウスIg複合体をより正確に可視化するために、腫瘍の生検材料から抽出し、スライドグラスに広げられ、アセトンで固定されたc666−1およびEBV−AGS腫瘍細胞においてこの複合体が調べられた。
【0131】
驚くべきことに、本発明者らは、適切に処理したマウスからの腫瘍の生検材料から単離された細胞の内部にエキソソーム/LMP1/マウスIg複合体を見いだした。この複合体はS12用の抗マウスIgにより明らかにされた。両方の腫瘍(LMP−1 c666−1およびLMP−1 EBV−AGS)において、エキソソーム/LMP−1/マウスIg複合体が細胞質内および核内の斑点として見られた。通常、細胞分裂促進活性をもつこれらの構成成分はその特異的抗体との結合により無効にされたらしい。
【0132】
S12抗体で処理したマウスの血清から得た複合体は、抗マウスIgおよび抗CD63の両方と反応し、LMP−1/エキソソーム複合体の存在を確認した。
【0133】
抗体は、引き続いて生じる細胞死を伴うLMP−1/エキソソーム複合体の細胞分裂促進活性を中和するらしい。イン・ビトロで培養したときには検出できるLMP−1発現が認められないにもかかわらず、S12抗体がEBV−AGS移植マウス(図6f、g、h)における腫瘍成長を抑制することは驚くべきことであった(Kassis J , Maeda A, Teramoto N, Takada, K, Wu C, Wells A. Int. J. Cancer 2002; 99 : 644-51)(図9と[0095]も参照)。
【0134】
ex vivoおよび培養状態におけるEBV−AGS細胞内のLMP−1の転写を半定量的RT−PCRにより比較した。本発明者らは、LMP−1発現(479bpのバンド)がEBV−AGS細胞培養でほとんど消失していること、その一方で腫瘍の生検材料においてはその発現が陽性になることを見いだした。予想される通り、ゲノム配列(非スプライス配列)の増幅で640bpのバンドが得られる。RT−PCRで増幅される配列はLMP1 mRNAに対応する。本発明者らは、この結果を定量的RT−PCRにより確かめた。相対的な発現をBARF1 mRNA/actin mRNAのパーセンテージ(%)により表した。培養細胞(c666−1)から得られる値と比較してc666−1腫瘍(c666−1/c666−1−T)における転写レベルはほぼ7倍であった。EBV−AGS腫瘍においてはBARF1転写の注目すべき高い活性化が観察されたが、その一方で、培養状態でのEBV−AGS細胞においては転写がほとんど観察されなかった。
【0135】
それゆえに、EBV−AGS腫瘍における抗LMP−1の抑制効果は腫瘍におけるLMP−1発現の活性化による。このような報告は今までなされたことが無い。
【0136】
LMP−1はNF−kB発現を活性化する(Kieff and Rickinson, 2007, Fields Virology 5th Edition-Fields BN, Knipe DM, Howley PM (ed.) Lippincott-Williams & Wilkins Publishers : Philadelphia, 2007, pp. 2603-2654)。本発明者らはELISA試験(TransAM NFkBファミリーキット:商品コード43296、Active−Motif、フランス)によりNF−kBの5つの構成成分の発現を調べた。本発明者らは、RajiおよびC666−1細胞において、S12抗体による処理は、NFkBファミリーの重要な構成成分であるNFkB p65およびp50を完全に抑制することを見いだしたが、このことは、これらの細胞におけるNF−kB p65およびp50の発現がもっぱらLMP−1の活性化に依存することを示唆している。LMP−1を発現しないEBV−AGSは、S12処理後はNF−kB p65およびp50の基底の発現を示し続けた(図11a)が、このことは代替の活性化経路を示唆する。p65およびp50は両方の型の腫瘍(NPC:c666−1TumおよびGC:EBV−AGSTum)において著しく活性化されていた。NPC血清から単離したLMP1/エキソソーム複合体で、Louckes細胞をイン・ビトロで処理(Louckes+ELC)したとき、これらの構成成分の活性化が見られた(図11b)。この活性化は、S12抗体の存在により完全に低減したが、このことはこの活性化がエキソソームと複合体を形成したLMP−1(Louckes+ELC+S12)の存在によることを示唆している。陽性対照としてのRaji細胞(Raji)におけるp65およびp50の有意な発現もS12抗体によって完全に抑制された(図11b:Raji+S12)。抗LMP−1による免疫療法を原理とする治療および予防はNPC型の癌のみならず、GC型の癌に対しても有効である。抗LMP1の抑制効果はイン・ビボおよびイン・ビトロで観察された。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】LMP1タンパク質の構造とエキソソーム/LMP1複合体におけるS12の認識部位を示した図である。
【図2】EBV陽性またはEBV陰性細胞株における抗LMP1の効果を示した図である。抗LMP1の効果をEBV陽性およびEBV陰性B細胞株、並びにc666−1上皮細胞株において分析した。5μgのモノクローナル抗体S12の添加後、細胞の生存を120時間モニターした。抗LMP1はc666−1、RajiおよびIB4の細胞増殖を効果的に抑制し、一方でEBV陰性のLouckes細胞株では抑制効果は見られなかった。
【図3】NPC患者の血清から単離したエキソソーム/LMP1で処理したCEM(ヒトT細胞)、EBV陰性AKATA(B細胞)、Balb/c3T3(齧歯類線維芽細胞)およびHaCaT(ヒト上皮細胞)に対するMTT試験を示した図である。エキソソーム/LMP1複合体(ELC)を単離した。300ngのNPC患者からの複合体を含む5μlのエキソソーム/LMP1複合体を用いて、FBS無しの50000細胞/100μlの培養液でMTT試験を行った(SNPC)。FBSありまたは無しで、および健康な個体から得たエキソソーム(EC−SNP)を対照として用いた。LouckesとAKATA:ヒトB細胞株、CEM、Balb/c3T3およびHaCaT。エキソソーム/LMP1へのモノクローナル抗体A12の添加は細胞分裂促進活性をほぼ完全に破壊した(ELC+S12)。
【図4】EBV−AGS細胞増殖におけるモノクローナル抗体S12の効果を示した図である。EBV陰性AGS(1)およびEBV陽性AGS(2)をS12抗体で分析した。5μgのモノクローナルS12を培養液に添加した。対照細胞は抗体を入れなかった。細胞生存力をクマシーブルー染色により5日間計測した。
【図5】免疫療法評価分析を示した図である。 抗LMP1 S12を、c666−1細胞の注入の、前に(b)、同時に(c)、後に(d)、注入した。50μgの抗体を腹腔内に注入した。107細胞(c666−1)を皮下に注入した。図中の値はmm単位で計測した平均腫瘍サイズの直径に対応する。プロトコル1:(b)c666−1に対しS12を使用した。プロトコル2:(c)c666−1に対しS12を使用した。プロトコル3:(d)c666−1に対しS12を使用した。いずれの抗体も使用しないc666−1細胞の導入後の腫瘍発達(a)。
【図6】免疫療法評価分析を示した図である。抗LMP1 S12を、EBV−AGS細胞の注入の、前に(b)、同時に(c)、後に(d)、注入した。50μgの抗体を腹腔内に注入した。107細胞(EBV−AGS)を皮下に注入した。図中の値はmm単位で計測した平均腫瘍サイズの直径に対応する。プロトコル1:(b)EBV−AGSに対しS12を使用した。プロトコル2:(c)EBV−AGSに対しS12を使用した。プロトコル3:(d)EBV−AGSに対しS12を使用した。いずれの抗体も使用しないAGS−EBV細胞の導入後の腫瘍発達(a)。
【図7】抗EBVデオキシリボヌクレアーゼの効果を示した図である。50μgのウサギポリクローナル抗EBVデオキシリボヌクレアーゼを20日間5日毎に処置のために使用し、その後106個のc666−1細胞を注入した。腫瘍発達をモニターした。腫瘍発達における抗体の抑制効果は無い。
【図8】抗ウサギまたは抗マウスの効果を示した図である。50μgの抗マウスIgを20日間5日毎に処置し、その後、その後106個のc666−1細胞を注入した。腫瘍発達をモニターした。腫瘍発達における抗体の抑制効果は無い。
【図9】免疫ブロットによるマウス血清および腫瘍細胞におけるLMP1/エキソソーム複合体の検出を示した図である。LMP1/エキソソーム複合体を単離し、12%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分析した。抗原抗体複合体は増強化学発光システム(ECL;アマシャム)により検出した。c666−1またはEBV−AGS腫瘍の発達させたマウスからの血清内のLMP1の存在を分析した(1)。陽性の対照はP3HR1細胞であった。LMP1/エキソソーム複合体は血清から単離された:(2)S−c666−1。LMP1/エキソソーム複合体は腫瘍から単離された(3):MT−c666−1。S12はウサギ二次抗Igにより検出された。市販のマウスIgが陽性の対照として用いられた:Ig(1、2、3)。
【図10】エキソソーム/LMP1/S12複合体を示した図である。エキソソーム/LMP1/S12複合体をc666−1腫瘍の発達しているマウスの血清から精製し、抗マウスIg(S12の検出のため)または抗CD63(エキソソーム検出のため)で処理した。10nm金ラベルマウスIgおよび5nm金ラベル抗CD63によりエキソソーム/LMP1/S12複合体を検出した。通常のエキソソーム:これら抗体で非処理のエキソソーム/LMP1/S12。免疫学的特異性は、一次抗体の省略または非免疫の血清による置換により制御された。
【図11】A:c666−1、AGS、EBV−AGS、c666−1、c666−1腫瘍およびEBV−AGS腫瘍におけるNF−kBのタンパク質発現を示した図である。 a:NF−kBの5つの構成要素(p65、p50、p52、RelBおよびc−Rel)の発現をELISA試験(TransAM NFkBファミリーキット:商品コード43296、Active−Motif、ベルギー)により分析した。AGS、EBV−AGS、EBV−AGS+S12、EBV−AGS腫瘍、c666−1、c666−1+S12、c666−1腫瘍、RajiおよびS12処理RajiをNF−kBの5つの構成要素の発現解析にかけた。NF−kBの主要な構成要素である、p65およびp50はRajiで活性化され、これらの構成要素はS12存在下で有意に抑制された。この構成要素の発現は、腫瘍で活性化されたが、一方で培養中の細胞はこの構成要素の基底の発現を示した。 b:Louckets細胞を、イン・ビボでNPC血清から単離したLMP1/エキソソーム複合体で処理したときのこれらの構成要素の活性を見た(Louckes+ELC)(b)。この活性はS12抗体の存在下で完全に減少しており、このことはこの活性がエキソソームと複合体を形成したLMP1の存在に起因することを示唆している(Louckes+ELC+S12)。陽性の対照として、Raji細胞(Raji)におけるp65およびp50の重要な発現も同様にS12抗体によって完全に阻害されていた(Raji+S12)。
【背景技術】
【0001】
本発明は、LMP1の細胞内領域に由来するポリペプチド断片およびこれら断片に特異的に結合する抗体並びにそれらの免疫療法および予防接種における使用に関する。
【0002】
エプスタイン−バーウイルス(EBV)は数々のヒト癌:鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者に誘発するリンパ腫、食道および肝内胆管癌に関連する。最近のデータでは、EBVは鼻NK/T細胞リンパ腫および肝内胆管癌にも関与していることが示されている。エイズ患者に頻発する口腔毛髪状白斑症(OHL)もEBVに密接に関連する。EBVはそれゆえにリンパ親和性かつ上皮親和性である。
【0003】
放射線療法および化学療法を含めて、EBV関連癌のための数々の治療法が用いられてきた。しかしながら、放射線療法および化学療法は、古典的な問題(毒性、投与量など)を引き起こす。同様に、一般的に標的としてのウイルスおよび/または細胞タンパク質に基づいた数々の細胞およびウイルス遺伝子治療が、開発されてきた。しかしながら、これらの治療法は十分によく機能していなかった。
【0004】
免疫療法においては、EBVに付随するまたは付随しない上皮腫瘍細胞がEGFR(表皮成長因子受容体)を発現しているため、特に癌(NPC、胸腺腫(Thymomes)、肺、子宮頸癌、大腸、乳、および頭頸部)の治療のために、抗EGFR抗体が同様に提案されている。治療はそれ故に、EBV関連癌に限られない。治療(モノクローナル抗体カツマキソマブ)の効果は子宮頸癌および胸腺腫で評価されている。しかし、抗EGFRを放射線療法との組合せで用いて治療した患者は放射線耐性となる危険性がある。
【0005】
鼻咽頭癌(NPC)は、後鼻孔の上皮に由来するヒト悪性腫瘍である。絶えずウイルスと関連づけられるヒト悪性腫瘍のもっとも際だった例の一つである。エプスタイン−バーウイルス(EBV)の全長ゲノムはすべての悪性NPC細胞に含まれており、これはおそらく悪性表現型に寄与するウイルスタンパク質をコードしている(Decaussin G, Sbih-Lammali F, De Turenne-Tessier M, Bougermouh AM, Ooka T. 2000. Cancer Res 60 : 5584-5588; Ooka T : 2005. In. Epstein-Barr Virus. Horizon Press, Annette Griffin: Edited by Erle S. Robertson. Chapter 28 : p.p 613-630)。ヒトにおいてはEBV感染が遍在しているが、NPC発生数は地理学上の地域に依存して極めて大きく変動する。世界における胃癌のおよそ5−10%もまたEBVに関連する。
【0006】
NPCの検査用生体組織は、一貫してEBERs、EBNA1、LMP1、LMP2A、BARF0、そしてBARF1をコードする遺伝子を含む様々なEBV遺伝子を発現している。これらの中では、LMP1とBARF−1のみが齧歯類の線維芽細胞において悪性の形質転換を引き起こす能力があり(Wei and Ooka, 1989, EMBO J. 8 :2897-903 ; Wang D, Liebowitz D and Kieff E. 1985. Cell 43:831-840)、ウイルス癌遺伝子と考えられている。
【0007】
LMP1(潜在性膜タンパク質−1)はEBVが感染した細胞の表面に発現する潜在性の抗原のファミリーに属しており、B細胞の不死化に不可欠である。LMP1は、ヒトヘルペスウイルス4タイプ1に属するエプスタイン−バーウイルス(EBV)のゲノムにコードされている。LMP1は6つの膜貫通領域と一つの細胞内C末端領域を有する。このC末端領域は二つの主な機能領域、CTAR1とCTAR2を含む。LMP1タンパク質の「ショートループ」と呼ばれる細胞外領域はEBV感染細胞の表面上に存在する。LMP1はB細胞の不死化に不可欠であり、上皮細胞に導入すると、細胞分化を抑制できるNFkB、A20、およびEGF−Rのような様々な細胞遺伝子を活性化する(Ooka T : 2005. In. Epstein-Barr Virus. Horizon Press, Annette Griffin: Edited by Erle S. Robertson. Chapter 28 : p.p 613-630.)。しかしながら、LMP1単独ではB細胞を不死化することはできず、5つの他のEBV遺伝子と協力する必要がある(EBERs、LMP2A、EBNA3A、EBNA3B、EBNA2)(Kieff and Rickinson, 2007, Fields Virology 5th Edition-Fields BN, Knipe DM, Howley PM (ed.) Lippincott-Williams & Wilkins Publishers : Philadelphia, 2007, pp. 2603-2654)。古典的には、LMP1タンパク質は細胞膜に局在するとされてきた。しかし、最近のデータではLMP1は、LMP1遺伝子組み換えバキュロウイルスに感染した昆虫Sf9細胞の培養液(Vazirabadi G, Geiger TR, Coffin WF, Martin J M. Links 2003, J Gen Virol. 84 : 1997-2008; Flanagan J, Middeldorp J, Sculley, T. 2003, J Gen Virol 84 :1871-9)やNPC由来c666−1細胞株の培養液(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 2007 13 : 4993-5000)におけると同様に、B95−8細胞(非ヒトマーモセットBリンパ球)の培養液において、エキソソームの成分中に分泌され、かつ局在することが示されている。これらのエキソソーム成分はT細胞の増殖抑制の原因であるらしい(Flanagan J, Middeldorp J, Sculley, T. 2003 J Gen Virol 84 :1871-9)。エキソソーム様小胞内に存在するLMP1はFGF2の発現を活性化することが示されている(Ceccarelli S, Visco V, Raffa S, Wakisaka N, Pagano J, Torrissi R. 2007 Int. J. Cancer 121: 1494-506)。
【0008】
LMP1の発ガン性に不可欠な役割は、NFkBの活性化により決定される。LMP1の発現の抑制は、NFkBの発現の減少に関連した細胞死を引き起こす(Kieff and Rickinson, 2007, Fields Virology 5th Edition-Fields BN, Knipe DM, Howley PM (ed.) Lippincott-Williams & Wilkins Publishers : Philadelphia, 2007, pp. 2603-2654)。
【0009】
近年、NPC患者の血清および唾液における二つの癌遺伝子(LMP1およびBARF1)の分泌が明らかにされ(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 2007. 13 :4993-5000)、NPC患者の血清から精製されたこれらの癌遺伝子は、イン・ビトロで強力な細胞分裂促進活性を示した。この細胞分裂促進活性は、腫瘍の発達に関連し得る。
【0010】
NPC患者の血清、またはc666−1細胞の注入後に引き起こされたNPC由来の腫瘍を発達させるマウスの血清に見いだされるLMP1の多くは、エキソソーム様小胞と会合している。この複合体形態であるLMP/エキソソームが自己分泌の機構で細胞周期を活性化することができるが、一方で遊離LMP1(エキソソームなし)は細胞周期を活性化できない(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 2007. 13 : 4993-5000)。
【0011】
米国特許第6,723,695号はEBVの構造および潜在性タンパク質内のCTLエピトープを記載している。これらのCTLエピトープはEBV感染に対する抗ウイルス免疫の提供に効果的であり得る。EBV陽性リンパ腫の治療のために、臨床試験が開始されている。LMP1由来のエピトープは、LMP1の細胞外ループに由来する。
【0012】
免疫療法においては、LMP1エピトープを認識するEBV特異的CTLは、ホジキン病の患者の治療にもまた用いられる。しかし、この治療は、サイトカインによる抑制効果により成功していない(Gottschalk et al., 2002, Adv. Cancer Res. 8 : 175-201 ; Bollard et al., 2004. J. Exp. Med. 200 : 1623-1633)。
【0013】
WO03/048337は、LMP1に結合する抗体と治療方法におけるその使用を記載している。この抗LMP1抗体は、感染細胞の表面に暴露されたLMP1の細胞外ループに結合する。これらの抗体でみられる細胞増殖の抑制は明確に述べられてはおらず、おそらく、細胞膜に局在するLMP1の中和によるものであって、培養液内に分泌されたエキソソームに局在するLMP1との結合によるものではない。
【0014】
欧州公開第1,229,043号公報はLMP1由来の異なるペプチドとこれらと反応する抗体試薬を記載している。記載されたポリペプチドと抗体はEBV感染またはEBV陽性腫瘍の治療のための医薬の製造のために用いることができる。LMP1の細胞内領域に対する抗体が記載されている。しかしながら、医薬組成物はLMP1の細胞外ループに対して作製した抗体を記載しているのみである。
【0015】
B細胞の不死化に必要な癌遺伝子としてのLMP1の役割も示されてきた。しかし、他の癌遺伝子が記載されてきており、これらが不死化に必要である。
【0016】
最新の技術では、免疫療法は、EBV感染細胞の表面に露出されるLMP1の細胞外ループに対して行われている。
【0017】
本発明では、LMP1の機能阻害に基づく新しい免疫治療法を提供する。驚くべきことに、LMP1機能の阻害は、腫瘍の発達を防ぎ、抑圧するに十分である。
【0018】
本発明は予期せぬことに、LMP1の細胞内領域に結合する抗体が、イン・ビトロおよびイン・ビボの両方で、EBVと関連した腫瘍細胞の発達を抑制するに十分であることを示す。LMP1の細胞内領域に結合する抗体は、イン・ビボで癌タンパク質を中和する能力を有し、マウスモデルにおいて腫瘍の予防と抑圧の結果を生む。この中和はLMP1の細胞内領域がエキソソームの表面に露出しているという事実によるのだろう。
【0019】
BD.Science、フランスにより市販されているモノクローナル抗LMP1抗体が用いられた。この抗体はLMP1のCTRA1とCTRA2の間のLMP1細胞内領域に結合する。NPC由来の上皮腫瘍細胞の注入前の、抗LMP1抗体の連続的な注入は腫瘍の出現の予防に導く。腫瘍サイズが直径約0.8cmになった後に抗LMP1を連続的に注入すると、腫瘍は後退し、完全に消えた。このことは、EBV陽性腫瘍を抑圧し、これから防護する、抗LMP1抗体を用いた免疫療法に関する最初の報告である。
【0020】
培養液への抗LMP1の添加も同様にEBV陽性のB細胞の増殖を抑制することができ、このことは、抗LMP1に基づく免疫療法がEBV関連リンパ腫の発達を抑制し、これから防護するに効果的であることを示唆する。
【0021】
さらに、患者はこのウイルスタンパク質に対してとても弱い抗体反応しか示さないため、LMP1の細胞内領域を標的とした免疫療法はNPCの予防および治療に有望である(Meij P, Vervoort MBHJ, Aarbiou J, van Dissel P, Brink A, Bloemena E, Meijer CJLM, Middeldorp JM. 1999. J. Infect. Diseases 179 : 1108-15)。
【0022】
配列表
配列番号1:ヒトヘルペスウイルス4タイプ1からのLMP1(潜在性膜タンパク質−1)のアミノ酸配列(Genbank YP_401722.1)
【発明の具体的説明】
【0023】
本発明の第一の対象は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までの配列を有するエプスタイン−バーウイルス(EBV)タンパク質LMP1に由来するポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を含んでなる、医薬としての使用のための組成物である。
【0024】
好ましい態様では、医薬としての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までの配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドの少なくとも5、7、10、15、20、50アミノ酸の断片に特異的に結合する抗体または抗体断片を含んでなるものである。
【0025】
好ましくは、医薬としての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の232番から351番までの配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を含んでなるものである。
【0026】
さらにより好ましくは、医薬としての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までの配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片を含んでなるものである。
【0027】
本発明の第二の対象は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドの少なくとも10、20、50アミノ酸の断片を含んでなる、医薬としての、またはワクチンとしての使用のための組成物である。
【0028】
好ましい態様では、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドを含んでなるものである。
【0029】
好ましくは、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の232番から351番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドを含んでなるものである。
【0030】
もう一つの好ましい態様では、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドを含んでなるものである。
【0031】
本発明のもう一つの対象は、下記からなる群:配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までの配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチドの少なくとも5、7、10、15、20、50アミノ酸の断片、配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチド、または、配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番の配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来するポリペプチド、から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物である。
【0032】
本発明は医薬組成物およびワクチン組成物を包含する。
【0033】
好ましくは、本発明の組成物は、EBV陽性腫瘍またはEBV関連腫瘍の予防または治療のためのものである。
【0034】
より好ましくは、本発明の組成物は、鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者に誘発するリンパ腫、食道および肝内胆管癌、鼻NK/T細胞リンパ腫、並びに口腔毛髪状白斑症(OHL)の予防または治療のためのものである。
【0035】
さらにより好ましくは、本発明の組成物は鼻咽頭癌の予防または治療のためのものである。
【0036】
本発明のもう一つの対象は、エプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来し、下記からなる群:
− 配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までのアミノ酸配列を有するポリペプチド、
− 配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までのアミノ酸配列を有するポリペプチドの少なくとも5、7または10アミノ酸の断片、
から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0037】
本発明のもう一つの対象は、本発明に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0038】
本発明はさらに、本発明に記載されるポリヌクレオチドを用いて形質転換した宿主細胞に関する。
【0039】
本発明は、本明細書に記載されたLMP1の細胞内領域またはその誘導体に特異的に結合する抗体若しくは抗体断片を含んでなる、医薬としての使用のための組成物に関する。本発明はさらに、LMP1の細胞内領域またはその断片を含んでなる、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物に関する。本発明のもう一つの対象は、LMP1の細胞内領域またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでなる、医薬としてのまたはワクチンとしての使用のための組成物である。
【0040】
配列番号1のアミノ酸配列188番から386番の配列からなるポリペプチドは、EBV感染細胞の表面に露出しないLMP1の細胞内領域に対応する。しかし、驚くべきことに、本発明において、この領域に結合する抗体はイン・ビボのマウスモデルにおいて腫瘍の発達を防ぎ、減少させることがわかった。
【0041】
本発明は:
a)本明細書に記載された有効量の抗体若しくは抗体断片、本明細書で記載された有効量のポリペプチド、本明細書で記載された有効量のポリヌクレオチド、および、
b)不活性または生理的に活性であってもよい、薬学上許容可能な担体、
を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0042】
本発明はさらに:
a)本明細書に記載された有効量のポリペプチドまたは本明細書に記載された有効量のポリヌクレオチド、および、
b)アジュバント
を含んでなるワクチンを提供する。
【0043】
本明細書で用いられる「薬学上許容可能な担体」には、生理学的に適した任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗バクテリア剤および抗菌物質並びに同様のものが挙げられる。好適な担体、希釈剤および/または賦形剤の例には、一以上の水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等が、これらの混合物同様に挙げられる。多くの事例で、糖、ポリアルコールまたは塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含ませることが好ましい。特に、好適な担体の適切な例としては、(1)約1mg/mlから25mg/mlのヒト血清アルブミンを含む、または含まないpH〜7.4のダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、(2)0.9%生理食塩水(0.9% w/v 塩化ナトリウム(NaCl))、および(3)5%(w/v)デキストロースが挙げられ、同様にトリプタミンなどの抗酸化剤およびTween20などの安定剤を含んでいてもよい。
【0044】
本発明に含まれる医薬組成物は、EBVに関連する癌の治療のためのさらなる治療剤を含んでいてもよい。
【0045】
本発明の組成物は様々な形態とすることができる。これらは、例えば、溶液、半固体、そして固体投薬形態とすることができるが、好適な形態は、投薬および治療利用の意図した方式に依存する。典型的に好適な組成物は、注射可能なまたは不溶解性の溶液の形態である。好適な投与方式は、非経口(例えば、静脈注射の、筋肉内の、腹腔内の、皮下の)である。好ましい態様では、本発明の組成物は、一度にまたは時間をかけた連続的な注入により静脈内に投与される。もう一つの好ましい実施例では、筋肉内の、皮下の、関節内の、関節滑液嚢内の、腫瘍内の、腫瘍周囲の、病変部の、または病変周囲の経路で注入され、全身的な治療効果と同様に局所的な治療効果を発揮する。
【0046】
非経口投与のための滅菌組成物は、適切な溶媒中で、本発明に記載に記載された抗体、抗体断片、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含ませることにより必要量製造することができ、また、その後精密濾過による滅菌を行うことができる。溶媒または賦形剤として、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールおよび同様のものがこれらの組合せと同様に使われうる。多くの事例で、糖、ポリアルコール若しくは塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含むことが好ましい。これらの組成物は、補助剤、特に湿潤剤、等張剤、乳剤、分散剤、および安定剤を含んでいても良い。非経口投薬のための滅菌組成物は、使用時に滅菌水または滅菌した他の任意の注射可能な溶媒に溶解しうる滅菌固体組成物の形態でもまた製造されうる。
【0047】
本明細書に記載された抗体、抗体断片、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、経口投与してもよい。経口投与のための固体組成物として、錠剤、丸薬、粉末(ゼラチンカプセル、サシェ)または顆粒が用いることができる。これらの組成物においては、本発明による活性成分が、例えばデンプン、セルロース、ショ糖、ラクトースまたはシリカなどの一以上の不活性な希釈剤とアルゴン流の元で混合される。これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えばステアリン酸マグネシウムやタルクなどの一以上の滑沢剤、着色剤、コーティング剤(糖コート錠剤)または釉薬をもまた含んでなりうる。
【0048】
経口投与のための液体組成物として、薬学上許容可能な溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、および、水、エタノール、グリセロール、植物油またはパラフィンオイルなどの不活性な希釈剤を含んだエリキシール剤を用いることができる。これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えば、湿潤剤、甘味剤、濃縮剤、香料または安定剤を含んでなりうる。
【0049】
用量は所望の効果、治療の持続時間、用いられる投与経路に依存する。
【0050】
本発明は、また、鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者に誘発するリンパ腫、食道および肝内胆管癌、鼻NK/T細胞リンパ腫、並びに口腔毛髪状白斑症(OHL)などのEBV陽性腫瘍若しくはEBV関連腫瘍の予防若しくは治療のための医薬の製造のための、またはワクチンの製造のための、本明細書に記載した抗体、抗体断片、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの使用にも関する。
【0051】
好ましい態様では、本明細書に記載した抗体、抗体断片、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、EBV陽性腫瘍の予防または治療のために用いられる。より好ましい態様では、上記で開示した、および本明細書に記載した抗体、抗体断片、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む医薬またはワクチン組成物の一つは、EBV陽性腫瘍の予防または治療のために用いられる。より好ましくは、これらは鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者に誘発するリンパ腫、食道および肝内胆管癌、鼻NK/T細胞リンパ腫、並びに口腔毛髪状白斑症(OHL)の予防または治療のために用いられる。好ましい態様では、鼻咽頭癌の予防または治療のために用いられる。
【0052】
本発明はまた、ヒトまたは治療若しくは予防を必要とする患者に本明細書に記載した有効量の抗体、抗体断片、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを投与することを含むEBV陽性腫瘍の予防または治療のための方法を提供する。好ましい態様では、本発明は、鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者に誘発するリンパ腫、食道および肝内胆管癌、鼻NK/T細胞リンパ腫、並びに口腔毛髪状白斑症(OHL)の予防または治療のための方法に関する。さらにより好ましくは、本発明は鼻咽頭癌の予防または治療のための方法に関する。
【0053】
最初の態様では、本発明の組成物は、LMP1の細胞内領域またはこの誘導体に特異的に結合する抗体若しくは抗体断片を含んでなる。
【0054】
本明細書で用いられる用語「結合」は、配列番号1のアミノ酸配列188番から386番までのペプチドに対応するLMP1の細胞内領域のエピトープと反応する、若しくは配列番号1のアミノ酸配列188番から386番までのポリペプチドに対応するLMP1の細胞内領域に対して作製された、抗体または抗体断片に関する。好ましくは、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列306番から318番までのペプチドからのエピトープと反応するか、または配列番号1のアミノ酸配列306番から318番までのポリペプチドに対して作製される。
【0055】
好ましくは、抗体はLMP1の細胞内領域に特異的に結合し、他の抗原とは交差反応しない。それ故に、抗体は一つの特定の抗原と反応する。
【0056】
LMP1の細胞内領域と特異的に結合する抗体は、例えば、BD Sciences(フランス)からの抗体S12などが市販されている。代わりに、LMP1の細胞内領域に特異的に結合する抗体またはその断片を標準的な方法で製造しても良い。好適な抗体は、モノクローナル抗体S12も同様に特異的に結合する、配列番号1のアミノ酸配列306番から318番までの配列を有するポリペプチドに結合する抗体である。好ましくは、抗体は、抗体S12と同じエピトープに結合する。S12抗体のエピトープは、配列番号1のアミノ酸配列306番から386番までの配列を有するポリペプチドから開始して、当業者に知られる方法で決めることができる。
【0057】
用語「抗体」は、本明細書では、広義に用い、特にIgG、IgM、IgA、IgD、IgEなどの任意のアイソタイプのモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および抗体断片を含む。特定の抗原に反応性の抗体は、ファージ若しくは同様のベクターにおける組み換え抗体のライブラリーからの選択などの組み換え法により、または抗原若しくは抗原をコードする核酸を用いて動物を免疫することにより生産することができる。
【0058】
典型的なIgG抗体は、ジスルフィド結合に連結した二つの同一の重鎖と二つの同一な軽鎖を含んでなる。各重鎖および軽鎖は定常領域と可変領域からなる。各可変領域は、「相補性決定領域」(「CDR」)または「超可変領域」と呼ばれる三つの区分からなり、主に抗原のエピトープに結合する原因となっている。これらは通常CDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれ、N末端側から連続して番号を振られている。可変領域のより高く保存されている領域は、「フレームワーク領域」と呼ばれる。
【0059】
本明細書で用いられる「VH」または「VH」は、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域をいい、Fv、scFv,dsFv、Fab、Fab’またはF(ab’)2断片の重鎖を含む。「VL」または「VL」は、抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域をいい、Fv、scFv,dsFv、Fab、Fab’またはF(ab’)2断片の軽鎖を含む。
【0060】
「ポリクローナル抗体」は、一以上の他の非同一な抗体の中から、またはその存在下で製造された抗体である。一般的にはポリクローナル抗体は、非同一の抗体を製造するいくつかの他のBリンパ球の存在下で、Bリンパ球から製造される。通常は、ポリクローナル抗体は免疫された動物から直接得られる。
【0061】
本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体であり、すなわち、この集団を形成する抗体は、少量存在しうる自然に生じうる変異を除いて、本質的に同一である。
【0062】
「エピトープ」は、抗体が結合する抗原の部位である。
【0063】
本明細書で用いられる「キメラ抗体」は、定常領域またはその一部が改変され、置き換えられ、または交換されており、そのため、可変領域が異なる種の、またはもう一つの抗体クラス若しくはサブクラスに属する定常領域と連結する抗体である。
【0064】
「キメラ抗体」は、また、可変領域またはその一部が改変され、置き換えられ、または交換されており、そのため、定常領域が異なる種の、またはもう一つの抗体クラス若しくはサブクラスに属する可変領域と連結する抗体でもある。キメラ抗体を製造する方法は、技術的に知られている。
【0065】
本明細書で用いられる用語「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含むキメラ抗体をいう。ヒト化の目的は、完全な抗原結合親和性と抗体の特異性を維持しながら、ヒトへの導入のために、マウスの抗体などの異種の抗体の免疫原性を低減することである。ヒト化抗体または他の哺乳動物による拒絶反応欠如に適した抗体は、再表面形成(resurfacing)またはCDRグラフト化などの様々な技術を用いて製造することができる。ヒト化キメラ抗体は、好ましくは、相補性決定領域(CDR)以外の定常領域および可変領域であって、対応するヒト抗体領域から実質的にまたは排他的に由来する定常領域および可変領域、およびヒト以外のほ乳類から実質的または排他的に由来するCDRを有する。
【0066】
本発明の抗体は、上で議論した全長の抗体およびそのエピトープ結合断片の両方を含む。本明細書で用いられる「抗体断片」とは、一般的に「エピトープ結合断片」と称される、全長の抗体により認識されるエピトープに結合する能力を保持した抗体の任意の一部を含む。抗体断片の例としては、下記に限定されないが、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、単鎖Fvs(scFv),単鎖抗体、ジスルフィド連結Fvs(dsFv)ならびにVLまたはVH領域のいずれかを含んでなる断片が挙げられる。エピトープ結合断片は、単鎖抗体を含み、単独または下記:ヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3領域の全体若しくは一部との組合せにおいて可変領域を含んでいてもよい。
【0067】
第二の態様では、本発明の組成物はLMP1の細胞内領域に対応するポリペプチドまたはその断片を含んでなる。
【0068】
用語ポリペプチド「断片」とは、それが由来するポリペプチドの全体ではなく一部を含むポリペプチドをいう。本発明による断片は、それが由来するポリペプチドの抗原性の特性を保持している。このように、本発明は配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するポリペプチドの少なくとも5、7、10、15、20アミノ酸の断片に関する。
【0069】
本発明による断片は、好都合には、その抗原性の特性を保持した最小の大きさを有する。
【0070】
本発明のもう一つの目的は、エプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1に由来し、下記からなる群:
−配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までの配列を有するペプチド、
−配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までの配列を有するペプチドの少なくとも5、7または10アミノ酸の断片からなる断片、
から選択されるペプチドである。
【0071】
第三の態様では、本発明の組成物は、LMP1の細胞内領域に対応する上述のポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでなる。
【0072】
本発明による用語「ポリヌクレオチド」とは、DNAもしくはRNAタイプでありうる単鎖ヌクレオチド鎖若しくはその相補鎖、またはcDNA(相補的)若しくはゲノムDNAタイプでありうる二本鎖ヌクレオチド鎖をいう。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、DNAタイプ、いわゆる二本鎖DNAタイプである。同様に用語「ポリヌクレオチド」は、改変されたポリヌクレオチドをも含む。
【0073】
本発明のポリヌクレオチドは自然環境から単離され、または精製される。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、Sambrook et al. (Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 1989)に記載された技術などの通常の分子生物学技術を用いて、または化学合成により製造することができる。
【0074】
本発明のもう一つの対象は、本明細書に記載されたようなペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0075】
本発明は、本発明に記載したポリヌクレオチドで形質転換した宿主細胞にも関する。当業者は、例えばトランスフェクション、リポフェクション、電気穿穴法、マイクロインジェクション法、ウイルス感染、熱衝撃、膜の化学的な透過処理もしくは細胞融合後の形質転換などの、宿主細胞へのポリヌクレオチドの取り込みのための標準的な方法に通じている。
【0076】
本発明のもう一つの対象は、本発明に記載したポリヌクレオチドを含んでなるベクターであり、ウイルスベクターを含む。
【0077】
第四の態様では、本発明の組成物は、LMP1の細胞内領域に対応する上述のポリペプチドまたはその断片を発現する形質転換した宿主細胞を含んでなる。
【実施例】
【0078】
腫瘍抑制のための抗LMP−1による処理
本発明者らは、抗LMP−1抗体での処理が、1)NPC由来のおよびGC由来の腫瘍を抑圧したこと、並びに2)NPC由来のおよびGC由来の腫瘍の発達から保護したことを示す。
【0079】
抗LMP−1抗体をEBV関連癌(NPCおよびGC)の保護および抑制剤として示すために、本発明者らは、本発明者らの研究室で以前開発した動物モデル(ヌードマウス)を用いた(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 13 : 4993-5000 ; Sheng W, Decaussin, G., Sumner, S. and Ooka, T. 2001. Oncogene 20: 1176-1185)。
【0080】
本実施例で用いられたヌードマウスは、Harlan社(フランス)に由来しており、イタリアで作製された:系統:Hsd:Athymic Nude−Fox1nu。本発明者らはHsdCpb:NMRI−Fox1nuも同様に分析した。これらの週齢は4週であった。これらの性別はオスであった。これらの4週齢での体重は約19−21gであった。
【0081】
抗LMP−1抗体の効果についてのイン・ビトロ解析のために、EBV陽性NPC由来のc666−1およびGC由来EBV−AGS上皮細胞株およびEBV陽性またはEBV陰性ヒトB細胞株において、モノクローナル抗LMP−1 S12を調べた。
【0082】
抗LMP1抗体S12はBD Science(フランス)から市販されている。カタログ番号:559898。
【0083】
この抗体はLMP1タンパク質のC末端領域、CTAR2近傍のアミノ酸配列301−318aaを認識する(図1参照)。
【0084】
NPC由来の腫瘍は、NPC由来c666−1(Cheung ST, Huang DP, Hui AB, Lo KW, Ko CW, Tsang YS, Wong N, Whitney BM, Lee JC. Int J Cancer 1999; 83:121-6)またはGC由来EBV陽性AGS(Kassis J , Maeda A, Teramoto N, Takada, K, Wu C, Wells A. Int. J. Cancer 2002; 99 : 644-51)上皮細胞がヌードマウスに注入されたときに引き起こされうる。そこで本発明者らは、これらのマウスにおける抗LMP1抗体の効果を分析した。
【0085】
一般的に、EBVゲノムを持たないAGS細胞がヌードマウスに注入されたときにはいかなる腫瘍も引き起こさないが、ヌードマウスにおいてはEBV陽性AGSによりGC由来の腫瘍の発達が起こった。この報告は今までされたことが無い。
【0086】
イン・ビトロ実験
最初に、EBV陽性c666−1およびEBV陽性AGS上皮細胞株、EBV陽性ヒトIB4 B細胞株、EBV陽性ヒトRaji B細胞株およびEBV陰性ヒトLouckes B細胞株における、イン・ビトロ培養状態での(培養液に加えられた)抗LMP1抗体の効果を分析した。105個の細胞に対して5μgの抗LMP1を培養液に加えた。細胞増殖の進展を120時間観察した(図2)。
【0087】
分泌されたLMP−1癌タンパク質が(培養液に加えられた)5μgのS12抗LMP−1抗体により中和されると、c666−1細胞は図2−3の生存曲線により示されるように死滅した。生存細胞は、抗体添加後、24時間後に78%に、48時間後に50%に、72時間後に25%に、96時間後に7%に減少し、すべてのc666−1細胞が120時間(5日間)後に死滅した。このことは、LMP−1/エキソソームの細胞分裂促進活性が主要な細胞活性化プロセスに直接関係していることを示唆する(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 13 : 4993-5000)。
【0088】
同様の抑制効果が、EBV陽性ヒトRaji(図1−1)およびIB4 B細胞株(図2−4)においても観察された。この抑制効果は、EBV陽性B細胞株(図2−1および4)において顕著であった:抗体添加後、生存細胞は、24時間後に78%に、48時間後に13%に、72時間後に10%に、96時間後に5−7%に減少し、そしてすべてのB細胞が120時間(5日間)後に死滅した。
【0089】
EBV陰性Louckes B細胞株ではそのような抑制効果は見られなかった(図2−2)。
【0090】
結論として、抗LMP−1抗体はLMP−1タンパク質を発現するEBV陽性c666−1上皮細胞およびEBV陽性B細胞の細胞増殖を抑制することができた。
【0091】
これらの結果は、抗LMP−1が細胞から分泌されたLMP−1/エキソソームと複合体を形成し、その後その複合体が細胞内に入りうることを示唆している。おそらく、一度この複合体が細胞内に入ることがNFkBの発現を抑制し細胞死を引き起こしたのだろう(イン・ビボ実験の項と図15を参照)。
【0092】
この仮説を検証するため、Raji細胞を図2−1(ヒトRaji B細胞)と同様の条件で5μg S12と共に96時間培養した。24時間毎に細胞を回収し、スライドグラス上に置き、透過処理のためにアセトンで固定した。細胞内のエキソソーム/LMP−1/S12複合体の存在を、フルオレセインを連結した抗マウスIgで検出した。
【0093】
S12で処理されなかったRajiでは蛍光が観察されなかった(図2、Raji+Mouse Ig)が、一方で、S12処理後24時間のRajiは細胞膜近傍に斑点状の免疫蛍光が見られた。96時間では、重大な免疫蛍光が細胞質および核分画に観察された。このことは腫瘍細胞から分泌されたエキソソーム/LMP1がS12と複合体を形成し、そしてLMP1/エキソソーム/S12が細胞内に吸収され、核に到達することができたことを示唆している。S12で処理されなかった細胞で反応がみられなかったことは、抗体S12単独では細胞に吸収されないことを示す。
【0094】
本発明者らはそこでLMP1/エキソソーム複合体(ELC)がEBV陰性細胞株の培養液に直接添加されたときに同様の現象(LMP1/エキソソーム複合体の細胞内への吸収)が起こるか否かを検証した。このために、本発明者らは最初にNPC患者の血清からエキソソーム/LMP1複合体を精製し、その後EBV陰性細胞の培養液に直接添加した。ヒトT細胞株、CEM1およびヒトB細胞株、Louckesを1μgのELCと共に培養した。細胞を固定し、その後透過処理した。エキソソーム/LMP1複合体の存在を抗LMP−1 S12および抗CD63(エキソソームの特異的なマーカー)を用いて共焦点顕微鏡法により24時間観察した。核に局在するために細胞をDapiで染色した。最初は抗体S12または抗CD63を1000分の1希釈で用いて保温し、その後Alexa Fluo 488 IgGヤギ抗マウスIgGを二次抗体として用いてインキュベートした。LMP1はローダミンで赤色蛍光とし、CD63はフルオレセインで緑色蛍光とした。細胞は356nm(Dapi)と488nm(Alexa)で励起した。
【0095】
両方の抗体(抗LMP−1および抗CD63)が細胞画分:細胞質および核に共局在した。これらは、ELCで以前観察されたのと同様に、エキソソーム/LMP1/S12複合体が吸収されうることを示唆する。
【0096】
これらの細胞内局在を免疫電子顕微鏡法により確かめた。
2種の細胞株を電子顕微鏡解析した:−1)1μgのNPC血清由来LMP1/エキソソーム複合体で処理されたヒトLouckes B細胞株および−2)S12でのみ処理されたヒトRaji B細胞株。
【0097】
Louckes細胞をNPCから精製されたエキソソーム/LMP1複合体で48時間処理した。細胞塊を冷凍状態でカットし、その後スライドグラス上に置いた。
【0098】
CD63は10nm金ビーズを連結した抗CD63で検出した。LMP−1は5nm金ビーズを結合したS12により検出した。
【0099】
Raji細胞をS12抗体で48時間処理し、その後固定した。このスライドグラスを抗マウスIg(S12用)または抗CD63(エキソソーム用)のいずれかで処理した。(5nm金ビーズを連結した)抗マウスIgは、エキソソーム/LMP1/S12複合体上に局在するS12抗体と反応し、(10nm金ビーズを連結した)抗CD63は、同じエキソソーム上に局在するCD63と反応した。エキソソーム小胞、多小胞体、腔および核に陽性反応が見られた。
【0100】
NPC患者の血清から単離されたエキソソーム/LMP1複合体は、MTT試験において強力な細胞分裂促進活性を有する(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bougermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 13 : 4993-5000)。
【0101】
NPC患者の血清からのエキソソーム/LMP1複合体(ELC)および通常個体からのエキソソーム(EC)が細胞増殖促進活性を有するか否かを調べるために、多様な細胞株で比較研究を行った。AKATA(EBV−変種)、Louckes(B細胞)、CEM−1(T細胞)、Balb/c3T3(齧歯類線維芽細胞)およびEBV陰性ヒト上皮HaCaT細胞株をこの調査に用いた(図3)。
【0102】
NPC患者から精製された300ngのエキソソーム/LMP−1複合体(SNPC)と共に50000細胞/100μlの培養液(FCS無し)でMTT試験を行った。FBS有りまたは無しの条件および健康な個体から単離されたエキソソーム(EC−SNF)を対照として用いた(図4)。
【0103】
NPCからのエキソソーム/LMP1複合体は強力な細胞分裂促進活性を示した。ECL(SNPC)で得られたこの値はFBSで得られた値と同等であったが、一方でPBSや健康な個体からのEC(SNP)は基底値を示した。エキソソーム/LMP1分析におけるS12の添加(ELC+S12)が、エキソソーム/LMP1複合体により誘導される細胞分裂促進活性をほぼ完全に消失させるため(図4、ELC(SNPC)+S12)、ELC(SNPC)で得られた細胞分裂促進活性はエキソソーム内のLMP−1の存在による。
【0104】
抗LMP−1により誘導される細胞死は、エキソソームと複合体を形成したLMP−1によるNFkB、特にNFkBの二つの主要構成要素(p65およびp50)の発現の抑制と関連する(図11参照)。(エキソソームを付随しない)遊離のLMP−1は細胞周期を活性化できなかった(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bouguermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 2007. 13 : 4993-5000)。さらには、本発明者らのデータは健康な個体から精製したエキソソーム(EC:SNP)は細胞周期を活性化できかったことを示した(図4)。
【0105】
結論として、LMP−1の細胞分裂促進活性はエキソソームとの会合を必要とする。最後に、本発明者らのデータはエキソソーム/LMP1複合体形態がNFkBの発現を抑制する能力を有することを示した。
【0106】
NFkBの発現は、S12処理のc666−1やS12処理のRaji細胞で完全に抑制されていた(図11)。
【0107】
本発明者らのデータは今まで文献で報告されていたLMP−1によるNFkBの抑制が、おそらく細胞に入ったエキソソームとの複合体からくることを示唆している。この観察は、本発明者らにLMP−1により誘導される発癌の機構における新しい概念を提供するだろう。
【0108】
抗LMP−1の効果を、EBV−AGS細胞株で研究した。AGSおよびEBV−AGS細胞株を抗LMP−1で処理した(図4−1および図4−2)。
【0109】
抗LMP−1はAGS細胞増殖において少しも抑制を示さなかったが(図4−1)、その一方で、抗LMP−1は72時間で細胞増殖を止めた。しかし、すべての細胞が120時間まで生存していた(図4−2)。
【0110】
イン・ビトロで培養したEBV−AGSではLMP−1の転写はほぼ全くなかった。抗LMP−1はそれゆえにこれらの細胞で有毒ではない。
しかし、実際には細胞死を伴わない細胞増殖の抑制に関しては説明が無い。
【0111】
イン・ビボ実験:
本発明者らは、EBV関連癌:c666−1細胞(NPC由来)またはEBV陽性AGS(GC由来)からの107個の培養細胞を皮下に注射したヌードマウスにおいて抗LMP−1抗体の活性を調べた。
【0112】
c666−1細胞では、抗体処理をしていないマウスで、2日目または3日目までに腫瘍が検出され、その直径は、4日で約2mm、8日で8mm、そして14日で16mmおよび20日で20mm(図5−1)に達した:EBV−AGS細胞ではc666−1細胞での腫瘍よりも約1.5倍大きかった。
【0113】
EBV陽性AGS細胞では、抗体処理をしていないマウスで、2日目または3日目までに腫瘍が検出され、その直径は、4日で約3mm、8日で15mm、そして14日で25mmおよび20日で30mm(図6−1)に達した。
【0114】
誘発した腫瘍(直径におけるmm単位での腫瘍サイズ)は、EBV−AGS細胞での腫瘍がc666−1細胞での腫瘍よりもやや大きく、約1.5倍であった(図5−aおよび図6−e)。
【0115】
抗LMP−1の効果を解析するため、マウス1匹に対して25μgのモノクローナル抗LMP−1 S12を3つの手順で、腹腔内に注射した:
手順#1、予防的手順において、抗LMP−1 S12が25μgの5回の腹腔内注射として5日間隔で投与され、腫瘍接種の3日前に投与を終えた(c666−1は図5−bおよびEBV−AGSは図6−f)。
手順#2、腫瘍接種と同時に連続した毎日の注射を開始した(c666−1は図5−cおよびEBV−AGSは図6−g)。
手順#3、腫瘍サイズが直径で約0.8cmになったときに注射(毎日1回の注射)が行われた(c666−1は図5−dおよびEBV−AGSは図6−h)。
手順#1と#2は予防のため、手順#3は腫瘍の治療のためである。
【0116】
両方の細胞株に対する抗LMP−1での予防的な(手順#1 c666−1は−図5−bそしてEBV−AGSは図6−f)または同時の(手順#2 手順#1 c666−1は−図5−cそしてEBV−AGSは図6−g)処理は、処置したどのマウスにおいても腫瘍の発生を少なくとも3ヶ月間は完全に排除した。
【0117】
腫瘍がすでに相当な大きさに達しているときに投与されたとしても、抗LMP−1抗体の注射は高い効き目があった。約8mm(c666−1)および約15mm(EBV−AGS)の塊が速やかに安定化し、抗LMP−1抗体の5日間の毎日の注射による処置の後、次第に後退した(c666−1は図5−d、そしてEBV−AGSは図6−h)。処置開始後11日目には腫瘍塊が完全に消失し、少なくとも3ヶ月間マウスは腫瘍の無い状態であった。
【0118】
腫瘍増殖の抑制における抗LMP−1の特異性を確かめるために、本発明者らは手順#1(予防的)において、EBVにコードされるデオキリシボヌクレアーゼの抗体またはマウスモノクローナル抗Ig抗体のいずれかを注射した。抗EBV−デオキリシボヌクレアーゼまたは抗マウスIgのいずれかが、予防的手順において腫瘍接種前に25μgの5回の腹腔内注射として5日間隔で投与された。
【0119】
手順#1(予防的)でc666−1(図7)で抗デオキリシボヌクレアーゼで、若しくは抗LMP−1の代わりに抗マウスIg(図8)で処理したまたは未処理のマウスを対照実験として用いたとき、急激な腫瘍成長が見られた(図7および図8)。このことは、腫瘍発達の特異的な抑制がおそらくS12抗LMP−1によるLMP−1タンパク質の中和によることを示唆している。抗マウスIgはシグマ(フランス)カタログ番号62197から購入した。
【0120】
本実施例で用いたウサギポリクローナル抗デオキリシボヌクレアーゼは、本発明者らの研究室において、バキュロウイルスシステムにより得られたデオキリシボヌクレアーゼから作成された(Sbih-Lammali F, Berger F, Busson P and Ooka T, 1996, Virology, 222: 64-74)(Zeng Y, Middeldorp J, Madjar JJ and Ooka T , 1997, Virology 239:285-295)。
【0121】
その後、本発明者らは抗LMP−1およびLMP−1タンパク質の複合体が腫瘍細胞同様に血清にも存在するか否かを検証した。
【0122】
本発明者らは免疫ブロット法により、腫瘍を発達させたマウスからの血清および腫瘍を分析した。
【0123】
LMP−1はc666−1(図9−1、c666−1)およびEBV−AGS(図9−1、EBV−AGS)をもつマウスの血清に存在した。この実験で用いられた陽性対照はヒトP3HR1B細胞の細胞抽出物に由来する。LMP−1タンパク質は古典的に知られるp63kDaタンパク質として検出された。
【0124】
その後、本発明者らは腫瘍発達後(手順#3)に抗体で処理したマウスにおけるこれら血清構成成分を調べた。エキソソームと複合体を形成するLMP−1は超遠心分離により精製した(Houali K, X. Wang, Y. Shimizu, D. Djennaoui, J. Nicholls, S. Fiorini, A. Bouguermouh and T. Ooka. Clin. Cancer Res. 13 : 4993-5000)。
【0125】
ウェスタンブロット法によるc666−1処理マウスの血清における複合体の分析で、ウサギ免疫グロブリン(図9−2:S−c666−1−Ig)と会合したLMP−1(図9−2:S−c666−1)の存在が示された。市販のマウスIgを陽性対照として加えた(図9−2:Ig)。
【0126】
同様の複合体が、腫瘍の生検材料(図9−3、MT−c666−1)において、ウサギ免疫グロブリン(図9−3、MT−c666−1−Ig)と会合した状態で存在した。市販のマウスIgを陽性対照(図9−3:Ig)として加えた。
【0127】
c666−1腫瘍を発達させるS12処理マウスの血清において、エキソソーム/LMP1/マウスIg複合体の存在を調べた(図10)。
【0128】
c666−1腫瘍を発達させるマウス血清からのエキソソーム/LMP1/S12複合体を分画超遠心分離により精製し、抗マウスIg(S12検出のため)または抗CD63(エキソソーム検出のため)で処理した。エキソソーム/LMP1/S12複合体を10nm金ラベルマウスIgにより、および5nm金ラベル抗CD63により検出した。標準のエキソソーム:これらの抗体(抗マウスIgおよび抗CD63(図10) S12で処理したc666−1を注射したマウスからのエキソソーム)で処理されなかったエキソソーム/LMP1/S12。
【0129】
一次抗体の省略またはこれらの非免疫血清(標準のマウスのエキソソーム)による置き換えにより免疫学的特異性が制御された。
【0130】
エキソソーム/LMP1/マウスIg複合体をより正確に可視化するために、腫瘍の生検材料から抽出し、スライドグラスに広げられ、アセトンで固定されたc666−1およびEBV−AGS腫瘍細胞においてこの複合体が調べられた。
【0131】
驚くべきことに、本発明者らは、適切に処理したマウスからの腫瘍の生検材料から単離された細胞の内部にエキソソーム/LMP1/マウスIg複合体を見いだした。この複合体はS12用の抗マウスIgにより明らかにされた。両方の腫瘍(LMP−1 c666−1およびLMP−1 EBV−AGS)において、エキソソーム/LMP−1/マウスIg複合体が細胞質内および核内の斑点として見られた。通常、細胞分裂促進活性をもつこれらの構成成分はその特異的抗体との結合により無効にされたらしい。
【0132】
S12抗体で処理したマウスの血清から得た複合体は、抗マウスIgおよび抗CD63の両方と反応し、LMP−1/エキソソーム複合体の存在を確認した。
【0133】
抗体は、引き続いて生じる細胞死を伴うLMP−1/エキソソーム複合体の細胞分裂促進活性を中和するらしい。イン・ビトロで培養したときには検出できるLMP−1発現が認められないにもかかわらず、S12抗体がEBV−AGS移植マウス(図6f、g、h)における腫瘍成長を抑制することは驚くべきことであった(Kassis J , Maeda A, Teramoto N, Takada, K, Wu C, Wells A. Int. J. Cancer 2002; 99 : 644-51)(図9と[0095]も参照)。
【0134】
ex vivoおよび培養状態におけるEBV−AGS細胞内のLMP−1の転写を半定量的RT−PCRにより比較した。本発明者らは、LMP−1発現(479bpのバンド)がEBV−AGS細胞培養でほとんど消失していること、その一方で腫瘍の生検材料においてはその発現が陽性になることを見いだした。予想される通り、ゲノム配列(非スプライス配列)の増幅で640bpのバンドが得られる。RT−PCRで増幅される配列はLMP1 mRNAに対応する。本発明者らは、この結果を定量的RT−PCRにより確かめた。相対的な発現をBARF1 mRNA/actin mRNAのパーセンテージ(%)により表した。培養細胞(c666−1)から得られる値と比較してc666−1腫瘍(c666−1/c666−1−T)における転写レベルはほぼ7倍であった。EBV−AGS腫瘍においてはBARF1転写の注目すべき高い活性化が観察されたが、その一方で、培養状態でのEBV−AGS細胞においては転写がほとんど観察されなかった。
【0135】
それゆえに、EBV−AGS腫瘍における抗LMP−1の抑制効果は腫瘍におけるLMP−1発現の活性化による。このような報告は今までなされたことが無い。
【0136】
LMP−1はNF−kB発現を活性化する(Kieff and Rickinson, 2007, Fields Virology 5th Edition-Fields BN, Knipe DM, Howley PM (ed.) Lippincott-Williams & Wilkins Publishers : Philadelphia, 2007, pp. 2603-2654)。本発明者らはELISA試験(TransAM NFkBファミリーキット:商品コード43296、Active−Motif、フランス)によりNF−kBの5つの構成成分の発現を調べた。本発明者らは、RajiおよびC666−1細胞において、S12抗体による処理は、NFkBファミリーの重要な構成成分であるNFkB p65およびp50を完全に抑制することを見いだしたが、このことは、これらの細胞におけるNF−kB p65およびp50の発現がもっぱらLMP−1の活性化に依存することを示唆している。LMP−1を発現しないEBV−AGSは、S12処理後はNF−kB p65およびp50の基底の発現を示し続けた(図11a)が、このことは代替の活性化経路を示唆する。p65およびp50は両方の型の腫瘍(NPC:c666−1TumおよびGC:EBV−AGSTum)において著しく活性化されていた。NPC血清から単離したLMP1/エキソソーム複合体で、Louckes細胞をイン・ビトロで処理(Louckes+ELC)したとき、これらの構成成分の活性化が見られた(図11b)。この活性化は、S12抗体の存在により完全に低減したが、このことはこの活性化がエキソソームと複合体を形成したLMP−1(Louckes+ELC+S12)の存在によることを示唆している。陽性対照としてのRaji細胞(Raji)におけるp65およびp50の有意な発現もS12抗体によって完全に抑制された(図11b:Raji+S12)。抗LMP−1による免疫療法を原理とする治療および予防はNPC型の癌のみならず、GC型の癌に対しても有効である。抗LMP1の抑制効果はイン・ビボおよびイン・ビトロで観察された。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】LMP1タンパク質の構造とエキソソーム/LMP1複合体におけるS12の認識部位を示した図である。
【図2】EBV陽性またはEBV陰性細胞株における抗LMP1の効果を示した図である。抗LMP1の効果をEBV陽性およびEBV陰性B細胞株、並びにc666−1上皮細胞株において分析した。5μgのモノクローナル抗体S12の添加後、細胞の生存を120時間モニターした。抗LMP1はc666−1、RajiおよびIB4の細胞増殖を効果的に抑制し、一方でEBV陰性のLouckes細胞株では抑制効果は見られなかった。
【図3】NPC患者の血清から単離したエキソソーム/LMP1で処理したCEM(ヒトT細胞)、EBV陰性AKATA(B細胞)、Balb/c3T3(齧歯類線維芽細胞)およびHaCaT(ヒト上皮細胞)に対するMTT試験を示した図である。エキソソーム/LMP1複合体(ELC)を単離した。300ngのNPC患者からの複合体を含む5μlのエキソソーム/LMP1複合体を用いて、FBS無しの50000細胞/100μlの培養液でMTT試験を行った(SNPC)。FBSありまたは無しで、および健康な個体から得たエキソソーム(EC−SNP)を対照として用いた。LouckesとAKATA:ヒトB細胞株、CEM、Balb/c3T3およびHaCaT。エキソソーム/LMP1へのモノクローナル抗体A12の添加は細胞分裂促進活性をほぼ完全に破壊した(ELC+S12)。
【図4】EBV−AGS細胞増殖におけるモノクローナル抗体S12の効果を示した図である。EBV陰性AGS(1)およびEBV陽性AGS(2)をS12抗体で分析した。5μgのモノクローナルS12を培養液に添加した。対照細胞は抗体を入れなかった。細胞生存力をクマシーブルー染色により5日間計測した。
【図5】免疫療法評価分析を示した図である。 抗LMP1 S12を、c666−1細胞の注入の、前に(b)、同時に(c)、後に(d)、注入した。50μgの抗体を腹腔内に注入した。107細胞(c666−1)を皮下に注入した。図中の値はmm単位で計測した平均腫瘍サイズの直径に対応する。プロトコル1:(b)c666−1に対しS12を使用した。プロトコル2:(c)c666−1に対しS12を使用した。プロトコル3:(d)c666−1に対しS12を使用した。いずれの抗体も使用しないc666−1細胞の導入後の腫瘍発達(a)。
【図6】免疫療法評価分析を示した図である。抗LMP1 S12を、EBV−AGS細胞の注入の、前に(b)、同時に(c)、後に(d)、注入した。50μgの抗体を腹腔内に注入した。107細胞(EBV−AGS)を皮下に注入した。図中の値はmm単位で計測した平均腫瘍サイズの直径に対応する。プロトコル1:(b)EBV−AGSに対しS12を使用した。プロトコル2:(c)EBV−AGSに対しS12を使用した。プロトコル3:(d)EBV−AGSに対しS12を使用した。いずれの抗体も使用しないAGS−EBV細胞の導入後の腫瘍発達(a)。
【図7】抗EBVデオキシリボヌクレアーゼの効果を示した図である。50μgのウサギポリクローナル抗EBVデオキシリボヌクレアーゼを20日間5日毎に処置のために使用し、その後106個のc666−1細胞を注入した。腫瘍発達をモニターした。腫瘍発達における抗体の抑制効果は無い。
【図8】抗ウサギまたは抗マウスの効果を示した図である。50μgの抗マウスIgを20日間5日毎に処置し、その後、その後106個のc666−1細胞を注入した。腫瘍発達をモニターした。腫瘍発達における抗体の抑制効果は無い。
【図9】免疫ブロットによるマウス血清および腫瘍細胞におけるLMP1/エキソソーム複合体の検出を示した図である。LMP1/エキソソーム複合体を単離し、12%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分析した。抗原抗体複合体は増強化学発光システム(ECL;アマシャム)により検出した。c666−1またはEBV−AGS腫瘍の発達させたマウスからの血清内のLMP1の存在を分析した(1)。陽性の対照はP3HR1細胞であった。LMP1/エキソソーム複合体は血清から単離された:(2)S−c666−1。LMP1/エキソソーム複合体は腫瘍から単離された(3):MT−c666−1。S12はウサギ二次抗Igにより検出された。市販のマウスIgが陽性の対照として用いられた:Ig(1、2、3)。
【図10】エキソソーム/LMP1/S12複合体を示した図である。エキソソーム/LMP1/S12複合体をc666−1腫瘍の発達しているマウスの血清から精製し、抗マウスIg(S12の検出のため)または抗CD63(エキソソーム検出のため)で処理した。10nm金ラベルマウスIgおよび5nm金ラベル抗CD63によりエキソソーム/LMP1/S12複合体を検出した。通常のエキソソーム:これら抗体で非処理のエキソソーム/LMP1/S12。免疫学的特異性は、一次抗体の省略または非免疫の血清による置換により制御された。
【図11】A:c666−1、AGS、EBV−AGS、c666−1、c666−1腫瘍およびEBV−AGS腫瘍におけるNF−kBのタンパク質発現を示した図である。 a:NF−kBの5つの構成要素(p65、p50、p52、RelBおよびc−Rel)の発現をELISA試験(TransAM NFkBファミリーキット:商品コード43296、Active−Motif、ベルギー)により分析した。AGS、EBV−AGS、EBV−AGS+S12、EBV−AGS腫瘍、c666−1、c666−1+S12、c666−1腫瘍、RajiおよびS12処理RajiをNF−kBの5つの構成要素の発現解析にかけた。NF−kBの主要な構成要素である、p65およびp50はRajiで活性化され、これらの構成要素はS12存在下で有意に抑制された。この構成要素の発現は、腫瘍で活性化されたが、一方で培養中の細胞はこの構成要素の基底の発現を示した。 b:Louckets細胞を、イン・ビボでNPC血清から単離したLMP1/エキソソーム複合体で処理したときのこれらの構成要素の活性を見た(Louckes+ELC)(b)。この活性はS12抗体の存在下で完全に減少しており、このことはこの活性がエキソソームと複合体を形成したLMP1の存在に起因することを示唆している(Louckes+ELC+S12)。陽性の対照として、Raji細胞(Raji)におけるp65およびp50の重要な発現も同様にS12抗体によって完全に阻害されていた(Raji+S12)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体の断片を含んでなる、医薬として用いるための組成物。
【請求項2】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドのうちの少なくとも10アミノ酸からなる断片に対して特異的に結合する抗体または抗体の断片を含んでなる、請求項1に記載の医薬として用いるための組成物。
【請求項3】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体の断片を含んでなる、請求項1に記載の医薬として用いるための組成物。
【請求項4】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドのうちの少なくとも10アミノ酸からなる断片を含んでなる、医薬またはワクチンとして用いるための組成物。
【請求項5】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドを含んでなる、請求項4に記載の医薬またはワクチンとして用いるための組成物。
【請求項6】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドを含んでなる、請求項4に記載の医薬またはワクチンとして用いるための組成物。
【請求項7】
下記から選択される1種のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる、医薬またはワクチンとして用いるための組成物:
− 配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドのうちの少なくとも10アミノ酸からなる断片、
− 配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチド、または
− 配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチド。
【請求項8】
エプスタイン−バーウイルス陽性の腫瘍の予防または治療のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者で引き起こされたリンパ腫、食道および肝内胆管癌、鼻NK/T細胞リンパ腫、並びに口腔毛髪状白斑症(OHL)の予防または治療のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
鼻咽頭癌の予防または治療のための、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
下記から選択されるエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のペプチド:
− 配列番号1の306番から318番までのアミノ酸配列を有するペプチド、
− 配列番号1の306番から318番までのアミノ酸配列を有するペプチドのうちの少なくとも5アミノ酸からなる断片。
【請求項12】
請求項11に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリヌクレオチドで形質転換した宿主細胞。
【請求項1】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体の断片を含んでなる、医薬として用いるための組成物。
【請求項2】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドのうちの少なくとも10アミノ酸からなる断片に対して特異的に結合する抗体または抗体の断片を含んでなる、請求項1に記載の医薬として用いるための組成物。
【請求項3】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体の断片を含んでなる、請求項1に記載の医薬として用いるための組成物。
【請求項4】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドのうちの少なくとも10アミノ酸からなる断片を含んでなる、医薬またはワクチンとして用いるための組成物。
【請求項5】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドを含んでなる、請求項4に記載の医薬またはワクチンとして用いるための組成物。
【請求項6】
配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドを含んでなる、請求項4に記載の医薬またはワクチンとして用いるための組成物。
【請求項7】
下記から選択される1種のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる、医薬またはワクチンとして用いるための組成物:
− 配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチドのうちの少なくとも10アミノ酸からなる断片、
− 配列番号1で示されるアミノ酸配列の188番から386番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチド、または
− 配列番号1で示されるアミノ酸配列の306番から318番までのアミノ酸配列を有するエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のポリペプチド。
【請求項8】
エプスタイン−バーウイルス陽性の腫瘍の予防または治療のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
鼻咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、エイズ患者で引き起こされたリンパ腫、食道および肝内胆管癌、鼻NK/T細胞リンパ腫、並びに口腔毛髪状白斑症(OHL)の予防または治療のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
鼻咽頭癌の予防または治療のための、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
下記から選択されるエプスタイン−バーウイルスタンパク質LMP1由来のペプチド:
− 配列番号1の306番から318番までのアミノ酸配列を有するペプチド、
− 配列番号1の306番から318番までのアミノ酸配列を有するペプチドのうちの少なくとも5アミノ酸からなる断片。
【請求項12】
請求項11に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリヌクレオチドで形質転換した宿主細胞。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−530277(P2011−530277A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521593(P2011−521593)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060277
【国際公開番号】WO2010/015705
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(596096180)ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060277
【国際公開番号】WO2010/015705
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(596096180)ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ (16)
【Fターム(参考)】
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