説明

EHECを含有すると疑われる複雑な多菌サンプルの分子的リスク評価を決定するアッセイ

本発明は、サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子stx1、stx2、eae及び/又はespkに由来する一対のプライマーと接触させる工程を含んでなる、腸管出血性大腸菌(EHEC)を含有すると疑われるサンプルについて分子的リスク評価(MRA)を行う方法に関し、ここで、該方法は、第1の工程において標的遺伝子の各々について増幅産物が検出された場合に、第2の工程で、前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子nleB、nleH1-2、nleE、ent/espL2、eaeサブタイプγ、β、ε及びθ並びに標的遺伝子rfbE(0157)、wbdl(O111)、wzx(026);ihp1(0145)、wzx(0103)に由来する一対のプライマーと接触させ;標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を決定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1980年代初期以来、シガトキシン産生性大腸菌(Escherichia coli;STEC)は、食物媒介感染の主要な原因として明らかになってきた(Karmaliら,1983、Rileyら,1983)。STECは、ヒトにおいて下痢を引き起こすことがあり、幾つかのSTEC株は、出血性結腸炎(HC)及び溶血性尿毒症症候群(HUS)のような生命にかかわる疾患を引き起こし得る。後者の株は、ヒト病原性(pathogenicity)により、腸管出血性E. coli(EHEC)とも命名されている(Levine 1987、Nataro及びKaper 1998)。HC及びHUSの多くの症例でEHECセロタイプO157:H7株が原因とされているが、今ではSTECのその他のセロタイプがEHEC群に属すると認識されている。セロタイプとヒトでの流行、HUS及び下痢との関連に基づくSTEC血清病原型分類(A〜E)が、非-O157 EHEC及びSTEC株に関連する臨床上及び公衆衛生上のリスクを評価する手掛かりとして開発されている(Karmaliら,2003)。Enter-Net(腸管感染性疾患を追跡する35カ国の世界的サーベイランスコンソーシアム)の最近のデータにより、2000年〜2005年の間に、非-O157 STEC及びEHECが引き起こしたヒト疾患の数が世界的に60.5%増加した一方で、同時にEHEC O157に関連する症例数は13%増加したに過ぎないことが示された(著者不明 2005)。2005年に出血性疾患に最も頻繁に関わった上位5つの非-O157 EHECセロタイプのうち、80%が血清病原型Bに属し、20%が血清病原型Cに属する(著者不明 2005)。より病毒性の弱いSTEC血清病原型D及びEに属するものはなく、このことは、高度病毒性株の選択が現在起きていることを示唆している。
【0002】
EHECによるシガトキシンの産生はHUSを担う主要な病毒性(virulence)形質であるが、シガトキシンを産生する多くのE. coli非-O157:H7株はHUSを引き起こさない。全てのSTEC株がヒトにとって臨床的に重要であるというわけではない(EFSA 2007)ので、stx遺伝子特異的検出によるヒト病毒性STECの同定は誤りを導き得る。加えて、一方又は両方のタイプのシガトキシンを産生するために、定型EHEC株(typical EHEC strain)は、「腸細胞消去遺伝子座」(locus of enterocyte effacement;LEE)と呼ばれるゲノムアイランドを有する。この遺伝子座は、発展途上国における乳児下痢症の優勢な原因である腸内病原性E. coli (EPEC)で最初に同定された。LEEは、腸細菌コロニー形成機能及び小腸粘膜破壊機能をコードする(したがって、疾患プロセスに寄与する)遺伝子を保有する(Nataro及びKaper 1998)。LEEがコードするeae-遺伝子産物であるインチミンは、接着及び消去(A/E)プロセスに直接関与し、細菌におけるA/E機能の指標として役立つ(Zhangら,2002)。eae遺伝子のDNA配列間に、特に3'末端領域で、相当な異質性が同定されている。このことが少なくとも21のインチミンサブタイプの分類に繋がっている。このうち、eae-γサブタイプはEHEC O157:H7及びO145:H28で最も一般的にに見出されている一方、eae-β、eae-ε及びeae-θサブタイプは、それぞれEHEC O26:H11、O103:H2及びO111:H8で一般的に検出されている(Oswaldら,2000;Tarr及びWhittam 2002)。
【0003】
LEEは、調節エレメント、タイプIII分泌系(TTSS)、分泌されたエフェクタータンパク質及び同族シャペロンを含む(Elliottら,1998、Pernaら,1998)。インチミンに加えて、定型EHEC株のほとんどが、プラスミドによりコードされたエンテロヘモリシン(ehxA)(これは、関連する病毒性因子と考えられている)を有する(Nataro及びKaper 1998)。しかし、LEE及びエンテロヘモリシンはHC及びHUSを引き起こす全てのSTECでは見出されず、対応する株は非定型EHEC(atypical EHEC)と名付けられた(Nataro及びKaper 1998)。非定型EHECは定型EHECより低い頻度で出血性疾患に関与するが、下痢の頻繁な原因である。このことにより更なる病毒性決定因子が病原性において或る役割を演じていることが示される(Brooksら,2005、Eklundら,2001)。
【0004】
細菌の病原因子における病毒性は、ゲノムアイランドのような移動性遺伝要素の獲得によりモジュレートされる(Lawrence 2005)。ゲノムアイランドの1つのクラスは、病原性アイランド(PAI)と呼ばれ、病原因子の進化及び病毒性能に寄与する可撓性遺伝子プールを構成し、新たに明らかになりつつある病原因子の遺伝子サインとして使用することができる。LEEの外側でPAIよりコードされる多数のタイプIIIエフェクターが、EHEC及び腸内病原性E. coli(EPEC)株において記載されてきた。
【0005】
例えばstx1/stx2遺伝子及びeae遺伝子の存在を検出することにより、サンプルにおけるSTEC汚染の存在を決定する技法が存在する(Loukiadisら,2006)。しかし、上記で説明したとおり、STEC病原性の遺伝子的基礎は、これら遺伝子の一方又は両方の存否より遥かに複雑である。(株の混合物を含み得る)複雑なサンプルでは、stx1/2遺伝子及びLEEの存在はまた、このサンプルにおけるEHECの存在を常に示すものではない。
【0006】
したがって、現時点では、複雑な多菌サンプル(例えば、食品、糞便、環境サンプル)をEHECの存在についてスクリーニングするための信頼性のある検査は存在しない。ヒトにおいて非常に深刻な健康上の問題を引き起こすことがあるEHEC株も存在することを考えれば、既存の方法を使用する作業者は、或るSTEC株が検出されると、該STECがヒトの健康に脅威をもたらしそうになくても、そのサンプルを破棄しなければならない。したがって、既存の方法は、非病原性STEC株とEHEC株との間の識別性を欠くことに起因して、大量の廃棄物を生じる。
加えて、検査するサンプルの性質に起因して、これらは、各々が異なる総数の遺伝子を含み、したがって各々が可能な病原性を異なるレベルで提示するいくらかの多様な細菌株を含むことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、STECを含有すると疑われるサンプルについてより完全な分子的リスク評価(molecular risk assessment)を行うことを可能にするために、より複雑で微細なアッセイが必要とされる。この新たなアッセイは、汚染している特定のSTEC株がもたらす危険/病原性を決定することが可能でなければならない。このアッセイはまた、増大した複雑性のために現時点ではルーチン的に同定できない既知の病毒性EHEC株のサンプル中での同定が可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に従えば、
前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− stx1;
− stx2;
と下記の標的遺伝子:
− eae;
− espK;
の少なくとも1つとに由来する一対のプライマーと接触させる工程を含んでなる、シガトキシンをコードする大腸菌(Shiga toxin-encoding Escherichia coli;STEC)を含有すると疑われるサンプルについて分子的リスク評価(MRA)を行う方法であって、該方法が、
前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− nleB;
− nleH1-2;
− nleE;
− ent/espL2;
に由来する一対のプライマーと接触させること、及び
該標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出すること
もまた含んでなることを特徴とする、方法が提供される。
【0009】
この方法により、STEC汚染菌を含有すると疑われるサンプルについて詳細な分子的リスク評価を行うことが可能になる。このリスク評価において、作業者は、汚染菌が選択した標的遺伝子のどのパネルを含むのかを同定することができ、このことから、この汚染菌がヒト健康に脅威をもたらすかどうかを決定することができる。具体的には、この方法は、或るSTEC株がEHEC株であるかどうかを決定するために使用し得る。本発明者らは、或る株におけるこれら全ての標的遺伝子の存在が、当該株がEHEC株であることと相関することを示した。
【0010】
stx1及びstx2遺伝子はシガトキシンをコードし、したがってその存在は病原性に必須である。eae遺伝子(インチミン)はLEEゲノムアイランドによりコードされ、したがって定型EHEC株及びEPEC株と関連することが知られているこのゲノムアイランドの有用なマーカーである。本発明者らはまた、幾つかのnle遺伝子又はこれら遺伝子の対立遺伝子及びespK遺伝子(Z1829)がEHEC株に関連し、したがってeaeに代えて又はeaeに加えて使用することができることを確かめた。
幾つかのEHEC及びEPEC株はまた、LEEに加えて、種々のエフェクタータンパク質をコードするその他のゲノムアイランドを共有する。これら非LEEによりコードされるエフェクタータンパク質は、E. coliの病毒性と多かれ少なかれ関連するnle遺伝子の大きなパネルによってコードされる。
【0011】
結果的に、遺伝子stx1、stx2、eae、espK及び選択したnle遺伝子(例えばnleB)のうちの僅か1つの存在は、複雑な多菌サンプル(例えば食品又は糞便サンプル)中のEHECの存在を断定的に予測するに十分な情報を提供しない。EHECで汚染されていない食品の幾つかは、これら遺伝子の少なくとも1つを有する細菌を含むので、これら遺伝子を単独でEHECのマーカーとして使用することはできない。しかし、本発明のこの第1の観点に従う必要な最少種類が同じサンプル中に存在するとき、これは、下記で証明するように、病毒性の信頼できる予測指標として使用することができる。
Salmonella spp.のようなその他の病原性細菌について達成されているようなEHEC株の独特なマーカーを入手することは現実的でないという事実を前提として、本発明者らは、選択した標的の検出に基づく、多菌サンプル(例えば食品、糞便、環境サンプル)をスクリーニングする方法を開発し、洗練させた。この方法は、stx1/2及びeae(及び/又はespK)を、少なくとも下記の遺伝子:ent/espL2、nleB、nleE及びnleH1-2と共に検出することに基づくマルチパラメータアプローチに基づく。
【0012】
nle遺伝子は、種々の移動性遺伝要素(ゲノムアイランドを含む)に由来し得る。本発明者らは、2つのゲノムアイランドの遺伝子:OI#122遺伝子ent/espL2(Z4326)、nleB(Z4328)、nleE(Z4329)及びOI#71遺伝子:nleF(Z6020)、nleH1-2(Z6021)、nleA(Z6024)の検出に努力を集中させた。本発明者らは、OI#122遺伝子ent/espL2(Z4326)、nleB(Z4328)、nleE(Z4329)及びOI#71遺伝子nleH1-2(Z6021)(カッコ内の名称は固有のGenbank識別子である)が、定型EHEC株及び幾つかのEPEC株と密接に関連することを見出した。
したがって、この方法により、作業者は、第1に、或るサンプルがSTEC汚染菌を含むかどうかを決定することができるようになり、第2に、このSTEC株がEHEC株である可能性が高いかどうかを決定することができるようになる。
【0013】
この方法の全ての工程は、例えば一連の増幅反応又は多重増幅反応を使用して、同時に行うことができる。例として、GeneDisc(登録商標)システムに基づく多重増幅反応を本発明者らは使用した。GeneDisc(登録商標)システムは、要求される標的の検出及び定量に必要な試薬を予め付与した反応マイクロチャンバにおいて複数標的の同時検出を可能にするGeneSystem(登録商標)PCR技術(Beutinら,2009)を使用するDNA増幅分野における最近の革新技術である(Beutinら,2009、Yaradouら,2007)。
或いは、これら工程は、異なる時点で行うことができる。例えば、サンプルを、最初に、stx1、stx2並びにeae及び/又はespK遺伝子の存在について分析することができる。この反応の結果が陽性であれば、次いでサンプルを、残りの病毒性決定因子nleB、nleH1-2、nleE及びent/espL2の存在について分析し、そして両セットの結果を用いてMRAを行うことができる。
【0014】
本発明において、任意の適切なプライマーセットを使用して、検出可能な増幅産物が生じるように標的遺伝子を増幅し得る。最も通常には、これは、標的遺伝子中で互いに或る数の塩基対で分離された一対のプライマーである。しかし、単一プライマーが検出可能な増幅産物を導くのであれば、これを使用し得る。或いは、2より多いプライマーを使用して1以上の標的遺伝子を増幅し得る。このような全ての変形は本発明に包含される。
【0015】
詳細には、本発明は、
サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− stx1 (配列番号1若しくは配列番号2又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− stx2 (配列番号4若しくは配列番号5又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
と下記の標的遺伝子:
− eae (配列番号7若しくは配列番号8又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− espK (配列番号82若しくは配列番号83又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用)
の少なくとも1つとに由来する一対のプライマーと接触させる工程を含んでなる、EHECを含有すると疑われるサンプルについてMRAを行う方法であって、
前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− nleB (配列番号16、配列番号17、配列番号79若しくは配列番号80又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントにより規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− nleH1-2 (配列番号25若しくは配列番号26又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントにより規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− nleE (配列番号19若しくは配列番号20又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントにより規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− ent/espL2 (配列番号13若しくは配列番号14又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントにより規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
に由来する一対のプライマーと接触させ、
該標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出すること
もまた含んでなることを特徴とする方法を提供する。
【0016】
本発明者らは、この方法を使用して、広範囲のO157 EHEC株及び異なるセロタイプの他の病原性EHEC株、例えばO103、O111、O26、O145、O5、O55、O45、O118、O121、O123、O165、O172、O15を同定することができることを見出した。全てのeae-陰性STEC株はまた、本研究で調べたnle遺伝子セットについても陰性であった。対照的に、nle遺伝子は定型EHEC(新たに明らかになりつつあるセロタイプを含む)に存在していた。めったに激増せず発生頻度は低いと知られている非定型EHEC、すなわちO91:H21及びO113:H21(EFSA 2007)は、nle遺伝子について陰性の検査結果であった。
したがって、本発明者らは、ゲノムO-アイランドOI#71及びOI#122のモジュール2に属する幾つかの非-LEEエフェクター遺伝子と共にシガトキシン(stx1及びstx2)、インチミン(eae)を同時検出することが、STEC病毒性の分子的リスク評価に関する完全なアプローチを提供することを示した。
【0017】
詳細には、本方法はまた、前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− ehxA (配列番号10若しくは配列番号11又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントにより規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− nleF (配列番号22若しくは配列番号23又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントにより規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− nleA (配列番号28若しくは配列番号29又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントにより規定される少なくとも1つのプライマーを使用)
の少なくとも1つに由来する一対のプライマーと接触させることを含んでなる。
【0018】
ehxA遺伝子は、EHEC株にしばしば見出されるプラスミドpO157上に存在する。O-アイランド71 PAIから生じる遺伝子nleF(Z6020)及びnleA(Z6024)は、EHEC単離株中で不均等に分布していた。それらの普及率(prevalence)はそれぞれ72.76%及び79%であり、本発明者らが検査した種々の株の中で唯一O26:H11株で存在しないことが判明したnleH1-2(Z6021)の普及率よりずっと低い。
本発明に従う増幅産物は、この目的に利用可能な種々の天然の又は操作した酵素の任意のものを使用し、任意の適切なDNA増幅技法、例えば単式又はマルチプレックス形態のいずれかでのPCRを用いて生成することができる。核酸配列ベースの増幅(NASBA)、分岐DNA、鎖置換増幅及びループ媒介等温増幅(loop-mediated isothermal amplification:LAMP)法(Compton 1991、Chang 1991、Walkerら,1992、Notomiら,2000)のような代替法も、増幅産物の生成に使用することができる。
【0019】
詳細には、増幅産物は、存在する場合、各標的遺伝子について、下記の配列により規定される縮重プローブを使用して検出される:
− stx1については、配列番号3又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− stx2については、配列番号6又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− eaeについては、配列番号9又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− espKについては、配列番号84又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− ehxAについては、配列番号12又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− nleFについては、配列番号24又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− nleBについては、配列番号18若しくは配列番号81又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− nleH1-2については、配列番号27又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− nleEについては、配列番号21又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− nleAについては、配列番号30又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− ent/espL2については、配列番号15又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント。
詳細には、本方法は、陰性増幅コントロール及び/又は阻害コントロールの実行;及び
前記反応からの増幅産物の存否の検出を更に含んでなる。
【0020】
ヒト健康の観点に関する方法では、アッセイの結果が可能な限り正確であり信頼できると確認することができる限り望ましい。このことを行うために、アッセイは、アッセイ結果がサンプル内容を真に代表していることを保証するための幾つかの内部及び外部コントロールを含んでなってもよい。したがって、本方法は、任意の検出産物が真の陽性結果であることを保証する陰性増幅コントロールを含んでなってもよく、また本方法は、サンプルからのDNAを増幅することができ、したがって偽陰性が生じないことを保証する阻害コントロールを含んでなってもよい。
これらタイプの内部実験コントロールに加えて、本方法を数回行い結果をプールして、より代表的な結果を得てもよい。
【0021】
特には、プローブは少なくとも1つの蛍光標識で標識される。
適切な蛍光標識の非限定的な例としては、6-カルボキシルフルオレセイン(FAM)、テトラクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(TET)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)が挙げられる。二重標識プローブを標識するための適切な消光剤の非限定的な例としては、6-カルボキシ-テトラメチル-ローダミン(TAMRA)、DABCYL、ブラックホール消光剤ファミリー(BHQ)の消光剤のような非蛍光消光剤剤が挙げられ、マイナーグルーブバインダー基(minor groove binder group;MGB)も挙げられる。
【0022】
特には、増幅産物はマルチプレックス増幅反応を使用して生成される。
或いは、増幅産物は、一連の独立/単式の増幅反応を用いて生成される。
特には、増幅反応はマイクロアレイで行われる。
本特許出願に従えば、マイクロアレイは、或る数のDNAプライマー(本発明の種々の観点に従って記載されているもの)がスポット状に塗布されている基板のような予め形成された構造を記述するために使用する。したがって、このようなマイクロアレイにより、本明細書に記載の1以上の検出アッセイのルーチンの実行が可能になる。好適なマイクロアレイは本明細書に記載のGeneDiscシステムである。
【0023】
本方法を行うために本発明者らが好んだ手段は、シガトキシン1及び2(stx1及びstx2)、インチミン(eae)、エンテロヘモリシン(ehxA)をコードする遺伝子並びにゲノムアイランドOI#71及びOI#122(モジュール2)に由来する6つの異なるnle遺伝子の同時試験が可能であるGeneDiscアレイである。
EHEC関連病毒性決定因子は、GeneDiscアッセイで現実に検出された。このことにより、これをルーチン診断用の適切な検出ツールとして提示する。他の多くの診断試験とは対照的に、特別な実験装置及び特別に訓練を受けた人員を必要とすることなく結果が得られ、アッセイは非常に短時間で実行される。よって、低密度マイクロアレイは、STEC単離株のルーチンモニタリング用並びに古典的な及び新たに明らかになりつつあるEHEC株の同定用の革新的で効率的な分子的リスク評価ツールである。
特には、増幅反応はリアルタイムPCR反応である。
【0024】
リアルタイムPCRは、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)又は動力学的ポリメラーゼ連鎖反応とも呼ばれ、標的されたDNA分子を増幅し同時に定量するために使用される。これにより、DNAサンプル中の特定配列の検出及び定量(絶対的コピー数として又はDNA投入量若しくは追加の規格化用遺伝子に対して規格化したときの相対量として)の両方が可能になる。手順はポリメラーゼ連鎖反応の一般原理に従う;その鍵となる特徴は、増幅したDNAが、各増幅サイクル後にリアルタイムで反応物中に蓄積するにつれ定量されることである(Mackay 2007)。2つの共通する定量方法は、二本鎖DNAにインターカレートする蛍光色素の使用、及び相補DNAとハイブリダイズすると蛍光を発する修飾DNAオリゴヌクレオチドプローブの使用である(Mackay 2007)。
好適なRT-PCR法は、下記に概説するようなGeneDiscシステムを使用する。
【0025】
本発明の更なる観点に従えば、
サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− nleB (配列番号16、配列番号17、配列番号79若しくは配列番号80又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− nleH1-2 (配列番号25若しくは配列番号26又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− nleE (配列番号19若しくは配列番号20又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− ent/espL2 (配列番号13若しくは配列番号14又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
の少なくとも1つに由来する一対のプライマーと接触させ、
前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出する
ことを含んでなることを特徴とする、STEC株について分子的リスク評価を行う方法が提供される。
【0026】
この指定されたプライマーに加えて、指定された標的遺伝子に対する他のプライマーもまた、使用することができ、本発明のこの観点に包含される。
したがって、本発明はまた、STEC株を含むことが既知であるサンプルについて分子的リスク評価を行う方法を提供する。ここで、列挙された標的遺伝子の存在は、STEC株がEHEC株である可能性が高く、よってヒトの健康に有害であることを示す。
【0027】
本発明の更なる観点に従えば、サンプル中に存在するnle遺伝子のパターンに基づいてSTEC株のセロタイプを予測する方法が提供される。この方法は、下記の工程:
前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− nleB (配列番号16、配列番号17、配列番号79若しくは配列番号80又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− nleH1-2 (配列番号25若しくは配列番号26又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− nleE (配列番号19若しくは配列番号20又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− ent/espL2 (配列番号13若しくは配列番号14又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− nleF (配列番号22若しくは配列番号23又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− nleA (配列番号28若しくは配列番号29又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
に由来する一対のプライマーと接触させる工程、及び
前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出する工程
を含んでなる。
【0028】
本発明者らは、株に存在するnle遺伝子のパターンが種々の株間で異なり、よって異なるEHEC株を識別するために使用できることを見出した。
1つの特徴的nleパターン[ent/espL2、nleB、nleE、nleF、nleH1-2、nleA]が、EHEC O157:[H7]、O111:[H8]、O26:[H11]、O103:[H25]、O118:[H16]、O121:[H19]、O5:[HNM]、O55:[H7]、O123:[H11]、O172:[H25]及びO165:[H25]株と関連することが判明した。興味深いことに、rfbEO157遺伝子に関して陽性であると以前に同定されているソルビトール発酵性(SF)O157:[HNM]、stx2株及びO-rough:[H7](stx2、eae-γ)株が、同じ定型病毒性プロフィールを示した。
【0029】
このアプローチはまた、重篤なヒト病原因子として最近報告された幾つかの新たに明らかになりつつあるEHEC株を同定するために使用することができる。これらの1つは、2006年のノルウェーにおける食物媒介HUS発生の原因(Schimmerら,2008)であるEHEC O103:H25タイプ株であり、これは、EHEC O157:[H7]と同じnleプロフィール、すなわち[ent/espL2、nleB、nleE、nleF、nleH1-2、nleA]を有していた。
牛肉、乳製品及びヒトHC患者から単離された別の新生EHECタイプO5:HNM株(McLeanら,2005)は、同じnleパターン[ent/espL2、nleB、nleE、nleF、nleH1-2、nleA]を示す。興味深いことに、欧州で新たな高病毒性STECタイプとして現在明らかになりつつあるEHEC O118:H16/HNM(Maidhofら,2002)は、EHEC O157:H7及び試験したほとんどの定型EHEC株に特徴的である、この同じnleパターン[en/espL2、nleB、nleE、nleF、nleH1-2、nleA]を示す。
【0030】
本発明に従って記載されたPCR検査に基づいて、本発明者らは、全てのEHECが完全なnleパターン(上記で列挙した6つ全てのnle標的遺伝子)を有するわけではないことを見出した。セロタイプO103:H2、O145:H28のEHEC株は、本発明で記載したプライマー及びプローブを使用することによって、[ent/espL2、nleB、nleE、nleH1-2]についてのみ陽性シグナルである第2の特徴的nleパターンを示した。同じ遺伝子を検出するための他のプライマー又はプローブの使用は、全く異なるパターンを生じ得る。このため、異なるプライマーを使用したCreuzburg及びSchmidt(2007)は、幾つかのO103:H2株におけるnleAの検出を報告している。彼らはまた、E. coli株での11の異なるnleA変形体の存在を報告している。このことは、nleAが、他のnle遺伝子と同様、遺伝的に変動性である可能性が高いことを示している。
【0031】
本発明のプライマー及びプローブの使用により、他の新たに明らかになりつつあるEHEC O15:H2及びO45:H2(HUSに関与する高病毒性クローン)が、EHEC O103:H2及びO145:H28株と同じnleパターン[ent/espL2、nleB、nleE、nleH1-2]を有することが判明した。
結果全体は、EHECが、nle病毒性決定因子という共通コアを共有し、(おそらくは、異なる宿主又は環境的適所に対するこれら株の順応を反映する)株及び/又はセロタイプ特異的である多くの変動性nle遺伝子もまた保有する異質な群を構成することを示唆している。同じ株における毒性決定因子のコア[eae、ent/espL2、nleB、nleE及びnleH1-2]の存在が、ヒトの罹患及び死亡を引き起こし得る病原性EHECの強力なサインであることは注目に値する。本発明者らは、これら病毒性因子が、全ての定型EHECに、そして欧州及び北米で新たに明らかになりつつあるEHECタイプ、例えばO5:HNM(McLeanら,2005)、O15:H2(Starrら,1998)、O118:H16(Maidhofら,2002)、O121:H19(Brooksら,2005)にも見出されることを示した。
【0032】
したがって、特には、nleパターンは、下記のとおりである:
[ent/espL2、nleB、nleE、nleF、nleH1-2、nleA]、このEHEC株は下記を含む群に属する可能性が高い:EHEC O157:[H7]、O111:[H8]、O26:[H11]、O118:[H16]、O121:[H19]、O5:[HNM]、O55:[H7]、O123:[H11]、O172:[H25]、O165:[H25]、O157:[HNM]、O103:[H25]、O5:[HNM]、O118:[H16/HNM];又は
[ent/espL2、nleB、nleE、nleH1-2]、このEHEC株は下記を含む群に属する可能性が高い:EHEC O103:[H2]、O145:[H28]、O15:[H2]及びO45:[H2]。
【0033】
加えて、stx-陰性、eae-陽性E. coli株の幾つかは、eae-遺伝子型及びnle-遺伝子パターンによればEHEC株に似ているEHEC関連セロタイプに属する。これら株は、stx遺伝子を喪失したEHEC株のレムナント(remnant)であるようである。よって、nle-遺伝子型決定アッセイは、stx-遺伝子を喪失したEHECをしばしば糞便と共に排泄すると報告(Bielaszewskaら,2007)されたHUS-患者でEHECレムナントを検出する助けとなる。nle遺伝子は、異なる分布で、幾つかのEPEC株(O113:H6、O127:H6、O128:H2、O156:H8、O55:H6、O55:H7、O84:H2及びO86:H40)でも検出された。Creuzburg及びSchmidt(2007)により報告された結果に反して、EPEC株E2348/69(O127:H6)は、本発明者らの研究ではnleA(Z6024)について陽性との検査結果であった。これらEPEC株が複数タイプのnle遺伝子を保有するという事実は、これらエフェクターが乳児のEPEC誘導性下痢において果たし得る役割の明示である。これらnle遺伝子は、ヒト糞便からしばしば単離されるEnterobacteriaceae種及び健常乳児の便フローラを表す糞便E. coliには存在しなかった。これは、nle病毒性型決定が高病毒性Stx陽性E. coli株の迅速な特徴付けに適切であることの別の証左である。
【0034】
本発明の更なる観点に従えば、標的遺伝子:
− nleB;
− nleH1-2;
− nleE;
− ent/espL2;
のためのプライマーセットと、任意に、各標的遺伝子について増幅産物を検出するためのプローブセットを少なくとも含んでなる、シガトキシン産生性生物の検出用キットが提供される。
本発明の更なる観点に従えば、本発明に従う方法から得られる増幅産物からなる単離核酸分子が提供される。
【0035】
本発明の第2の観点に従えば、下記の工程:
a)サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− stx1;
− stx2;及び下記の標的遺伝子の少なくとも1つ:
− eae;
− espK;
に由来する一対のプライマー及び下記の標的遺伝子:
− nleB;
− nleH1-2;
− nleE;
− ent/espL2;
の少なくとも1つに由来する一対のプライマーと接触させ、前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出する工程;及び、増幅産物が検出される場合には、次いで
b)前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、eae標的遺伝子に由来する1以上のプライマー対と接触させ、eaeサブタイプを決定する工程
を含んでなる、シガトキシンをコードする大腸菌(STEC)を含有すると疑われるサンプルについて分子的リスク評価(MRA)を行う方法が提供される。
【0036】
本発明の好適な観点に従えば、工程a)において、遺伝子stx1、stx2、eae又はespkと、nleB又はent/espL2のいずれかの存在が決定される。
本発明の更なる好適な観点に従えば、nleB遺伝子の特定のnleB2対立遺伝子の存在が、配列番号79若しくは配列番号80又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントの群から選択される少なくとも1つのプライマーを用いるこのアッセイで検出される。その増幅反応産物は、配列番号81又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントからなるプローブを用いて検出される。本発明者らは、特に、nleB2対立遺伝子の存在と宿主株がEPECよりむしろEHECであることとの間の関連を確立した。
【0037】
eae遺伝子は、幾つかの異なるサブタイプ(現在では21知られている)をコードしており、より少ない幾つかがサンプル中にルーチンで見出される。これらeae遺伝子型は、PCR反応を用いて(Nielsen及びAndersen 2003)、並びに配列決定、サザンハイブリダイゼーション及び他のタイプの増幅反応のようなその他の手段によって、その配列に基づいて、ルーチンで区別することができる。
本発明の更なる観点に従えば、工程b)では、eaeサブタイプeaeγ、eaeβ、eaeθ及びeaeεが検出される。
【0038】
本発明の更なる観点に従えば、eaeサブタイプは、下記の工程:
サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− eaeγ (配列番号52若しくは配列番号53又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− eaeβ (配列番号49若しくは配列番号50又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− eaeθ (配列番号64若しくは配列番号65又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− eaeε (配列番号58若しくは配列番号59又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
に由来する一対のプライマーと接触させる工程、及び
前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出する工程
を含んでなる方法によって決定される。
【0039】
これら反応は、特には、リアルタイムPCR反応であり得、この場合、eaeγ、eaeβ、eaeθ及びeaeεの各々の増幅産物に対するプローブが、eaeγについては配列番号54により、eaeβについては配列番号51により、eaeθについては配列番号66により、eaeεについては配列番号60により規定されるプローブを用いて検出され得る。
加えて、他のeaeサブタイプの検出、例えば、配列番号46若しくは配列番号47又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントにより規定される少なくとも1つのeaeα用プライマー及び/又は配列番号61若しくは配列番号62又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントにより規定される少なくとも1つのeaeζ用プライマーを用いるeaeα及びeaeζの検出もまた、本発明に包含される。
【0040】
再び、このような検出反応は、好ましくはリアルタイムPCR反応であり、この場合、eaeαについては配列番号48により規定されるプローブが、eaeζについては配列番号63により規定されるプローブがそれぞれ使用され得る。
本発明者らは、eae遺伝子のサブタイプとEHEC株における或る種の血清病原型(又は血清群)との間に相関が存在することを見出した。したがって、stx1/2及びeae遺伝子並びに選択されたnle遺伝子(例えばnleB)が或る種のeaeサブタイプ及びセロタイプと共に存在することは、検査したサンプルがEHEC株を含んでいることを強く示す。
【0041】
本発明によれば、血清群又は血清病原型は、共通の抗原を含有する細菌群である。
STECは幾つかの血清群の1つに属し得るが、重篤なヒト疾患に最も強固に関連するもの(例えばEHEC株)は、一般に、血清群O157:[H7]、O111:[H8]、O26:[H11]、EHEC O103:[H2]、O145:[H28]に属する(EFSA,2007)。これら血清群に対応する遺伝子は、rfbE(0157)、wbdl(O111)、wzx(026)、ihp1(0145)及びwzx(0103)である。
【0042】
これら血清群を規定する1以上の抗原の存在について株を検査することが可能であり、よって本発明の更なる観点に従えば、本発明のこの第2の観点による方法は、前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− rfbE(0157);
− wbdl(O111);
− wzx(026);
− ihp1(0145);
− wzx(0103)
に由来する一対のプライマーと接触させることを更に含んでなる。
【0043】
本発明の更なる観点に従えば、セロタイプは、下記の工程:
前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− rfbE(O157) (配列番号31若しくは配列番号32又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− wbdl(O111) (配列番号34若しくは配列番号35又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− wzw(O26) (配列番号37若しくは配列番号38又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− Ihp1(O145) (配列番号40若しくは配列番号41又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− wzx(O103) (配列番号43若しくは配列番号44又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
に由来する一対のプライマーと接触させる工程、及び
前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出する工程
を含んでなる方法によって決定される。
【0044】
これら反応は、特には、リアルタイムPCR反応であり得、この場合、rfbE(0157)、wbdl(O111)、wzx(026)、ihp1(0145)及びwzx(0103)の各々の増幅産物に対するプローブは、rfbE(0157)については配列番号33により、wbdl(O111)については配列番号36により、wzx(026)については配列番号39により、Ihp1(O145)については配列番号42により、wzx(O103)については配列番号45により規定されるプローブを用いて検出され得る。
O118:[H16]、O121:[H19]、O5:[HNM]、O55:[H7]、O123:[H11]、O172:[H25]、O165:[H25]、O157:[HNM]、O103:[H25]、O5:[HNM]、O118:[H16/HNM]、O15:[H2]及びO45:[H2]のような他のセロタイプを検出することも可能であり、これらセロタイプの1以上の検出も本特許出願に包含される。
【0045】
本発明の更なる観点に従えば、セロタイプは、下記の工程:
前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− wzx(O121) (配列番号67若しくは配列番号68又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− wzy(O118) (配列番号70若しくは配列番号71又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− wzx(O45) (配列番号73若しくは配列番号74又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
− wbgN(O55) (配列番号76若しくは配列番号77又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントによって規定される少なくとも1つのプライマーを使用);
に由来する一対のプライマーと接触させる工程、及び
前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出する工程
を含んでなる方法によって決定される。
【0046】
これら反応は、より詳細には、リアルタイムPCR反応であり、この場合、wzx(O121);wzy(O118);wzx(O45);wbgN(O55)の各々の増幅産物に対するプローブは、wzx(O121)については配列番号69により、wzx(O118)については配列番号72により、wzx(O45)については配列番号75により、wbgN(O55)については配列番号78により規定されるプローブを用いて検出され得る。
【0047】
したがって、本発明のこの第2の観点の好適な実施形態に従えば、下記の工程:
a)前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− stx1;
− stx2;
− eae;
− espK;
− nleB又はent/espL2;
− rfbE(0157);
に由来する一対のプライマーと接触させ、前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出する工程;及び、増幅産物が検出された場合には、次いで
b)前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子及び/又はeaeサブタイプ:
− eaeγ
− eaeβ
− eaeθ
− eaeε
− wbdl(O111);
− wzx(026);
− ihp1(0145);
− wzx(0103).
に由来する1以上のプライマー対と接触させる工程
を含んでなるアッセイが提供される。
【0048】
ここで、例示として、本発明者らによって企図される具体的態様を記載する。下記では、十分な理解を提供するために、多くの具体的詳細が記載される。しかし、本発明が、これら具体的詳細に限定されることなく実施され得ることは、当業者に明らかである。不必要に曖昧な説明を回避するため、その他の例では、周知の方法及び構造は記載しない。
【実施例】
【0049】
実施例1.材料及び方法
GeneDiscアレイの原理
GeneDiscアレイ(GeneSystems,Bruz,France)の原理は、以前に報告されている(Beutinら,2009)。これは、乾燥PCRプライマー及びTaqMan(登録商標)プローブ(リポーター色素6-FAM(490〜520nm)又はROX(580〜620nm)のいずれかで標識)が予め付与された反応マイクロチャンバが刻まれているプラスチック反応トレイ中での複数標的のリアルタイムPCR適用に基づく。
【0050】
本研究で開発したGeneDiscアレイの特性
「病毒性型決定GeneDisc」は、(各々が10のEHEC特異的遺伝子標的について試験される)6つの異なるサンプルを、陰性及び阻害コントロールと併せて同時に検査するために設計されている。これは下記の設定を有する:マイクロウェル1)陰性PCRコントロール(6-FAM標識)及びPCR阻害コントロール(ROX-標識)、マイクロウェル2)stx2(FAM)及びstx1(ROX)、マイクロウェル3)ent/espL2(FAM)及びnleF(ROX)、マイクロウェル4)nleB(FAM)及びnleH1-2(ROX)、マイクロウェル5)nleE(FAM)及びnleA(ROX)、並びにマイクロウェル6)ehxA(FAM)及びeae(ROX)。
【0051】
eaeサブタイプ検出及びセロタイプ検出についての更なる実験にためには、下記の設定を実験1で使用した:マイクロウェル1)O157(FAM)及びstx1+stx2(ROX);マイクロウェル2)nleB(FAM)及びeae(ROX);マイクロウェル3)陰性コントロール(FAM)及び阻害コントロール(ROX)。実験2では:マイクロウェル1)eaeγ(FAM)及びO113(ROX);マイクロウェル2)O26(FAM)及びO111(ROX);マイクロウェル3)O145(FAM)及びeaeβ(ROX);マイクロウェル4)eaeθ(FAM)及びeaeε(ROX);マイクロウェル5)陰性コントロール(FAM)及び阻害コントロール(ROX)。
GeneDiscで使用したオリゴヌクレオチドプライマー及び遺伝子プローブを表1に記載する。stx1、stx2、eae及びehxAを検出するために使用するプライマー及びプローブは以前に記載されており(Nielsen及びAndersen 2003、Perelleら,2004)、最近の研究において「VTEC Screening」GeneDiscで評価された(Beutinら,2009)。全てのオリゴヌクレオチドは、Sigma-Aldrich(St. Quentin Fallavier,France)から購入した。GeneDiscのスポット形成(spotting)及び製造はGeneSystems(Bruz,France)が行った。
【0052】
表1のオリゴヌクレオチド配列において、Yは(C、T)であり、Sは(C、G)であり、Wは(A、T)であり、Rは(A、G)であり、Mは(A、C)であり、Kは(G、T)であり;Hは(A、T、C)であり;Dは(G、A、T)であり;FAM=6-カルボキシルフルオレセイン;ROX=カルボキシ-X-ローダミン;;プローブ=FAM又はROXのいずれか;BHQ=ブラックホール消光剤、*相補鎖;a:シガトキシン1をコードする遺伝子;b:シガトキシン2をコードする遺伝子;c:インチミンをコードする遺伝子;d:エンテロヘモリシンをコードする遺伝子;e:「推定の非LEEエフェクターent/espL2」をコードする遺伝子;f:「推定の非LEEエフェクターB」をコードする遺伝子;g:「推定の非LEEエフェクターE」をコードする遺伝子;h:「推定の非LEEエフェクターF」をコードする遺伝子;I:「推定の非LEEエフェクターH1-2」をコードする遺伝子;「推定の非LEEエフェクターA」をコードする遺伝子。
【0053】
GeneDiscアレイを用いて調べた細菌株
「病毒性型決定GeneDisc」を用いて病毒性遺伝子含量について調べたE. coli及び他のEnterobacteriaceaeの株は、Federal Institute for Risk Assessment(BfR)(Berlin,Germany)のNational Reference Laboratory for E. coliのコレクションからのもの;及びFrench Food Safety Agency(AFSSA)(Maisons-Alfort,France)からのものであった。評価のために、本発明者らは、STEC参照株及びstx-及びeae-遺伝子型について以前に特徴付けられたeae-陽性「接着・消去E. coli(Attaching and Effacing E. coli)」(AEEC)(Beutinら,2007、Kozub-Witkowskiら,2008)を使用した。EHEC O-群O26、O103、O111、O145及びO157の参照株については、本発明者らは、O-及びH-抗原のセロタイプ決定並びにfliC遺伝子型決定によって以前に同定された株(Beutinら,2004)を使用した。参照としたEHEC参照株H19(O26:H11)、PMK5(O103:H2)、CL37(O111:[H8])、CB7874(O145:[H28])及びEDL933(O157:H7)の特性及び起源は、他の刊行物(Beutinら,2004、Oswaldら,2000、Tarr及びWhittam 2002)に記載されている。参照STEC株EDL933(O157:H7)及びEPEC株E2348/69(O127:H6)は、完全なnle遺伝子セット、すなわちent/espL2(Z4326)、nleB(Z4328)、nleE(Z4329)、nleF(Z6020)、nleH1-2(Z6021)及びnleA(Z6024)の試験についての陽性コントロールとして使用した。株C600(E. coli K-12)は、本研究で調べた全遺伝子についての陰性コントロールとして採用した(Beutinら,2007)。加えて、標準的な方法(Ewing 1986)により特徴付けられた68の腸内細菌株(C. sakasaki、Yersinia、Escherichia、Salmonella、Shigella、Citrobacter、Hafnia、Kebsiella、Proteus)をGeneDiscアレイの評価に使用した。S. dysenteriaeタイプ1(stx1)、S. sonnei株CB7888(stx1)(Beutinら,2007)及びCitrobacter rodentium株10835(eae)を除き、他の全てのEnterobacteriacae単離株は、stx-及びeae-遺伝子について陰性であった。検査のために、細菌を、Luria-Brothプレート上で単一コロニーに培養し、37℃にて一晩増殖させた。このコロニーの約2×106細菌に相当する小アリコートを、InstaGeneマトリクス(Bio-Rad Laboratories,Marnes La Coquette,France)を使用してDNA抽出したか、又は200μlの滅菌水に直接溶解し、十分にボルテックスした。36μlの懸濁細菌又はDNA抽出物をGeneDiscアレイにより試験した。
【0054】
実施例2.結果
eae-タイプ、ehxA遺伝子及びnle遺伝子と定型及び非定型EHEC株との関連:
定型EHEC(n=178)、非定型EHEC(n=26)及び新たに明らかになりつつあるEHEC株(n=46)を含む250のEHEC株並びにEHEC株と同じセロタイプに属するstx-陰性株(n=65)を、病毒性型決定GeneDiscアレイで調べた(表2、3及び4)。全てのEHEC株がstx1及び/又はstx2遺伝子について陽性との検査結果であった。これは、以前に発表されたデータと全く一致する(Beutinら,2004、Beutinら,2009、Fachら,2001、Perelleら,2004)。eae遺伝子は、古典的EHEC群O26、O103、O111、O145及びO157に属する株並びに明らかになりつつあるEHECタイプO5、O15、O45、O55、O118、O121、O123、O165及びO172株で検出された。唯一、EHEC O103:H2株がeae遺伝子で陰性との検査結果であった(表2)。
【0055】
eae-遺伝子は、調べた他の全てのSTEC(非定型EHEC O91:H21及びO113:H21を含む;後者は、食物及びヒト患者からしばしば単離される(Werberら,2008))で存在しなかった。驚くべきことに、全てのeae-陰性STEC及び非定型EHEC株はまた、本研究で調べたnle遺伝子セットについても陰性であった(表4)。
表4では、下記の略語(号)を使用する:EHECは腸管出血性E. coliであり;STECはシガトキシン産生性E. coliであり;ETECは腸管毒素原性E. coliであり;FECは健常な子供の糞便から単離されたE. coliであり、ECはE. coliである。
【0056】
アイランドOI#71及びOI#122によってコードされるnle遺伝子は、新たに明らかになりつつあるセロタイプを含む定型EHEC株に存在した。nle遺伝子(ent/espL2、nleB、nleE、nleF、nleH1-2及びnleA)の1つの特徴的パターンは、セロタイプO157:[H7]、O111:[H8]、O26:[H11]、O103:H25、O118:[H16]、O121:[H19]、O5:NM、O55:H7、O123:H11、O172:H25及びO165:H25に属するEHEC株に見出された(表2)。76のEHEC O157:[H7]株のうち、6つがソルビトール-発酵性(SF)のO157:HNM、stx2株であり、これらは非-SF O157:[H7]株と同じnleパターンを示した。2つのO-rough:[H7](stx2、eae-γ)株(以前、rfbEO157遺伝子について陽性と同定)は、血清学的に型決定可能な(serologically typable)O157:[H7]株と同じnleパターンを有していた。
【0057】
別のタイプのnleパターンが、セロタイプO103:H2、O145:[H28]、O45:H2及びO15:H2株に属するEHEC株で見出された。これらは、OI#71にコードされる遺伝子nleA及びnleFを除き、調べた全てのnle-遺伝子について陽性であった(表2)。本発明者らの結果は、定型EHEC株がnle-遺伝子の分布について高度に保存されていることを示唆し、eae-遺伝子型、nle-パターン及びセロタイプの関連を示している。34の検査したEHEC O26:H11株の1つでnleH1-2遺伝子が存在しないというような例外が稀に観察された(表2)。定型EHEC株のほとんど(93.25%)は、プラスミドに位置し、エンテロヘモリシンをコードするehxA遺伝子について陽性であった。このマーカーはまた、本研究で調べた新たに明らかになりつつあるEHECの87%、非定型EHECの73%及びその他のSTEC株の42,66%に存在した。
【0058】
セロタイプ及びその他の特性についてEHECと似たStx-陰性株の同定及び特徴付け:
EHEC株は、感染の間及び継代培養の際にstx-遺伝子を自発的に喪失することがあると以前に報告された(Friedrichら,2007)。本発明者らは、EHEC関連セロタイプに属するStx-陰性、eae-陽性E. coli株を、eae-遺伝子型及びnle-遺伝子に関するEHEC株との類似性について調べることに興味を抱いた。65の株で得られた結果を表3に示す。本発明者らは、同じセロタイプに属するstx-産生性EHECと類似するeae-遺伝子型及びnleパターンを示した、3つのstx-陰性O157:[H7]、10のO26:[H11]、1つのO103:[H2]、3つのO121:[H19]、1つのO121:[H-]、4つのO55:H7及び1つのO15:H2株を同定することができた(表3)。これら株は、これらセロタイプに属するEHEC株のstx-遺伝子喪失レムナントである可能性が高いようである。対照的に、非H7-鞭毛(HNT、H16、H2、H26、H27、H39、H45)を有する14のO157株の群は、EHEC O157:H7と、H-タイプのみならず、eae-遺伝子型も、調べたほとんどのnle遺伝子(nleH1-2及びnleA以外)が存在しないことも異なっていた。
【0059】
EHEC O111:[H8]株は、通常、eae-θ並びにOI#71及びOI#122によりコードされる全てのnle遺伝子について陽性であった。24のうち1つの株のみがnleFで陰性であった(表2)。2つの単一stx-陰性O111:H11株(eae-β)がEHEC O111:[H8]と同じnleプロフィールを示した。このことは、病原性アイランドの移入が異なる病原群(pathogroup)のE. coli間に生じたことを示している。興味深いことに、乳児において胃腸炎を引き起こすEPEC O111:H2株は、EHEC O111:[H8]とは、H-タイプとOI#71がコードするnleF及びnleA遺伝子が存在しないこととで異なることが判明した(表3)。EPEC O111:H19株(eae-θ)は、nle遺伝子のいずれも保有しないので、EHEC O111:[H8]とは尚更異なっていた。
EHEC O145:[H28]株は、OI#122モジュール2がコードするnle遺伝子の完全なセットent、nleB及びnleEの保持により特徴付けられる(表2)。興味深いことに、これら遺伝子は、調べた他の全ての形質についてO145:[H28] EHECと似ている2つのstx-陰性O145:[H28]株には存在しなかった(表3)。これら株は、stx遺伝子及びOI#122 PAIを喪失したEHEC O145:[H28]のレムナントである可能性がある。全てのEPEC O145株(O145:H34、O145:H4及びO145:Hr)は、nle遺伝子を有さず、他のeae-遺伝子型をコードしているので、EHEC O145:[H28]とは顕著に異なっていた。
【0060】
O103:H2株の群において、ウサギEPEC株E22は、nle遺伝子セットに関して、全てのEHEC O103:H2株に類似していたが、EHEC O103:H2はeae-εをコードするので、eaeβサブタイプが異なっていた。対照的に、2006年にノルウェーでHUS発生を引き起こしたEHEC O103:H25株(Schimmerら,2008)は、古典的EHEC O103:H2クローンとは、H-タイプ、eae-タイプ及びnle遺伝子セットが異なることが判明した。
【0061】
本発明者らは、加えて、古典的EPEC群の代表を調べた。EPEC O55:H7株は、eae-遺伝子型及びnle-遺伝子に関して、EHEC O157:[H7]株に類似していた。調べた全てのnle遺伝子はまた、EPEC O127:H6、株E2348/69に存在していた。EPEC O84:H2は、nleEを除いて全てのnle遺伝子を保有していた。EPEC O156:H8は、OI#71 nleF及びnleA遺伝子についてのみ陰性であった。EPEC O128:H2及びO113:H6のみが、nleHについて陽性であり、OI#122モジュール2関連nle遺伝子を欠いていた。EPEC O55:H6もまた、OI#122モジュール2関連nle遺伝子を欠いていたが、nleH及びnleFを保有していた。対照的に、EPEC O86:H40は、OI#122モジュール2がコードするnle遺伝子を保有していたが、OI#71上に位置するものはなかった(表3)。他の幾つかのEPEC株(O125:H6、O126:H6、O51及びO76:H51)は、nle遺伝子を有しておらず、通常eae-α遺伝子型をコードしていた。これら知見は、EPEC株とEHEC株との間に、セロタイプに関してのみならず、LEE及び非LEE関連エフェクターに関しても顕著な差異を指摘した。
【0062】
eae-及びnle-陰性株の同定及び特徴付け
STECの多くのタイプが、動物及び食物から単離されるが、これらの僅か5%がeae-遺伝子について陽性であるか、又は定型EHEC血清群O26、O103、O111、O145及びO157に属する(Beutinら,2007)。eae-陰性STEC株の幾つかは、ヒトにおいて下痢を引き起こすことが知られているが、稀にHC及びHUSのような出血性疾患に関与する(Beutinら,2004、Friedrichら,2007、Werberら,2008)。本発明者らは、食物からしばしば単離されるeae-陰性STECタイプの代表株(O8、O91、O100、O113、O146、O128及びO174)を調べることに興味を抱いた。食物、動物及びヒトから単離された合計150のSTEC株並びに健常な子供からの29の糞便E. coli単離株(FEC)を病毒性型決定GeneDiscで調べた。結果を表4にまとめる。eae-陰性STEC株及び健常乳児からのFECのいずれもnle遺伝子について陽性でなかった。このことは、LEEの存在とOI#122及びOI#71がコードするnle遺伝子との間の密接な関連を示している。
【0063】
その他のEnterobacteriaceaeへのOI#122及びOI#71がコードするnle遺伝子の拡大の可能性を検討するために、本発明者らは、Escherichia、Cronobacter、Yersinia、Salmonella、Shigella、Citrobacter、Hafnia、Kebsiella及びProteus種を含む68の細菌株を調べた。S. dysenteriaeタイプ1(stx1)の2つの株、S. sonnei株CB7888(stx1)及びCitrobacter rodentium株CB10835(eae、nleE、nleA)(データは示さず)を除き、他の全てのEnterobacteriacae単離株が遺伝子stx1及び/又はstx2、eae、ehxA並びにnle遺伝子について陰性であると確証された(表4)。要約すると、これら結果は、stx及びeae遺伝子型とnle遺伝子の検出を組み合わせた病毒性型決定アレイが、他のSTEC、EPEC、他のEnterobacteriaceae及びヒト糞便E. coliフローラを含有し得るサンプルにおける、既知の又は新たに明らかになりつつあるセロタイプに属するヒト病毒性EHEC株の迅速な同定のための適切なツールであることを示している。
【0064】
eaeサブタイプ及びセロタイプの多面的分析に基づく、複雑なマトリクスにおけるEHECのスクリーニング用の分子的リスク評価アプローチ:
上記で説明したとおり、EHECは、食物の安全性に対する重大な脅威である、食物媒介病原体の既存の又は新たに明らかになりつつある重要な群である。その検出が、他の一般的な微生物(例えばSalmonella spp.)による食物汚染についてのアッセイと類似する方法で、複雑な多菌サンプル(例えば食品又は糞便サンプル)中のEHECの存在を示す単一遺伝子マーカーは知られていない。結果として、多パラメータアッセイにおける幾つかの遺伝子マーカーの迅速な同時検出は、分子的リスク評価を行う手段としての迅速なサンプルスクリーニングへの最も適切なアプローチである。これは、次に、例えばセロタイプ特異的集積培養により、被疑株を更に研究するために必要なより多くの手段(resource)を可能にする。
【0065】
本発明者らは、上記の、STEC株がまたEHEC株であり得ることを示す最少種類の遺伝子の検出に基づく最初のアッセイを開発した。
このアッセイは、サンプル中に存在するeae遺伝子のサブタイプもまた決定することにより更に精密化することができる。
本発明者らは、これは、stx1/2とeae遺伝子とnle(ent/espL2、nleB、nleE、nleH1-2)遺伝子の少なくとも1つとが検出されたとき、及び第2の工程で、特定のeaeサブタイプであるeae-γ、eae-β、eae-ε及びeae-θの1つもまた検出されたとき、EHEC株セロタイプの予測(このことは、当然のことながら、セロタイプの基礎をなす遺伝子の存在を検出することによって更に検証することができる)に使用することができることを確かめた。
【0066】
eaeサブタイプとセロタイプとの間のこれら相関は下記のとおりである:
− 特にeae-γ、ent/espL2、nleB、nleE及びnleH1-2が検出されると、EHEC O157:H7及びO145:H28が疑われる。
− 特にeae-ε、ent/espL2、nleB、nleE及びnleH1-2が検出されると、EHEC O103:H2が疑われる。
− eae-β、ent/espL2、nleB、nleE及びnleH1-2が検出されると、EHEC O26:H11が疑われる。
− eae-θ、ent/espL2、nleB、nleE及びnleH1-2が検出されると、EHEC O111:H11が疑われる。
【0067】
複雑なサンプルにおいて、nle遺伝子の特異な存在は、常にこのサンプル中のEHECの存在を示しているわけではない。それは、例えば、EPEC又はCitrobacter rodentium(これらもまたnle遺伝子を有する)の存在の結果であり得る。比較として、遺伝子stx(stx1、stx2)、eae(特にサブタイプγ、β、ε及びθ)と、nle遺伝子(ent/espL2、nleB、nleE、nleH1-2)の少なくとも1つとの同時検出は、病毒性のより遥かに明確なサイン及びEHEC汚染の強力なシグナルである。
本発明者らはまた、サンプル中に存在するE. coli spp.により提示されるリスクを決定するため、特にサンプルがEHEC株を含むかどうかを決定するための更なる二工程方法を開発した。
【0068】
第1の工程では、stx1/2及びeae遺伝子並びにent/espL2、NleB、NleE及びNleH1-2の少なくとも1つの存在が決定される。この第1の工程は、下記の表1に記載されるオリゴヌクレオチドを用いて実行することができる。
この第1の工程により、作業者は、サンプルがEHEC株に必須の遺伝子を少なくとも含むかどうかを決定することが可能になる。これら遺伝子の1以上が存在しなければ、サンプルは、低リスクであると考えることができ、よって更に調べる必要はない。
これら全ての遺伝子が存在する場合、サンプルはリスクを呈する。次いで、第2の工程が行われ、そこで少なくともeaeサブタイプ(例えばeae-γ、eae-β、eae-ε及びeae-θ)及びセロタイプ遺伝子(例えば、セロタイプO157、O103、O26、O111、O145)の1以上の存在もまた決定される。
【0069】
この組合せのデータセットを用いて、作業者は、サンプルがEHEC株を含む可能性があり、よって(食物サンプルの場合には)サプライチェーンから除去し及び/又は更なる研究のために保持する必要があるかどうかを決定することができる。
本発明に基づいて、下記の多パラメータアプローチにより、複雑なサンプル中のEHECの信頼性のあるスクリーニングが可能になる。
本発明者らが見出した相関を、下記の表2及び5にまとめる。
本発明者らはまた、明らかになりつつあるEHEC株(総数46株)からの低頻度に観察される他の幾つかのセロタイプを検査して、eaeサブタイプ及びnle遺伝子種類とこれら他のセロタイプとの間の更なる相関を見出した(表2及び6を参照)
【0070】
本発明のこの観点に従って、本発明者らは、下記のとおりの二工程方法を提供する:
a)サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− stx1;
− stx2;
− eae;
− nleB又はent/espL2;
− rfbE(0157);
に由来する一対のプライマーと接触させ、標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出し;そして、増幅産物が検出された場合には、次いで:
b)サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子及び/又はeaeサブタイプ:
− eaeγ
− eaeβ
− eaeθ
− eaeε
− wbdl(O111);
− wzx(026);
− ihp1(0145);
− wzx(0103);
に由来する1以上のプライマー対と接触させ、該標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を決定する。
【0071】
このアッセイからのデータは、必須の病毒性遺伝子(例えばstx1/2、eae及びnleB又はent/espL2)もまた含む株におけるeaeサブタイプとセロタイプとの間の相関と比較することができ、サンプルがもたらすリスクについて、詳細な情報に基づく再現可能な決定をなすことができる。
【0072】
E. coli株におけるEHEC-及びEPEC-関連遺伝子マーカーの存在及びnleB対立遺伝子との関連
(全てがstx陰性、eae-陽性と特徴付けられた)E. coli株のセットを、遺伝子espK及びnleBの存在について更に分析し、これらを、stx-陽性、eae-陽性の或る数のEHEC株と比較した。
nleB遺伝子は、多様で異なる対立遺伝子の存在が判明した。したがって、本発明者らは、EPEC及びEHEC株に固有に分布することが見出された(表7)2つの異なるnleB対立遺伝子を同定する2セットのプライマー及びプローブを選択した。
驚くべきことに、全てのEHEC株が、nleB及びnleB2遺伝子型の両方並びにespKについて陽性との検査結果であった。非常に少数のEPEC株(これらは血清群が定型EHEC株と明らかに異なる)のみが、[nleB、nleB2及びespK]遺伝子マーカーの完全なセットを保有する。
【0073】
nleB遺伝子型及びespK遺伝子の存在に基づいて幾つかの群に分類された他のEPEC株は、[nleB、nleB2及びespK]の完全なセットについて決して陽性ではないと判明した。
興味深いことに、幾つかのEPEC株はnleB2遺伝子配列を欠いているか又は顕著に異なるnleB2配列を有しているために、nleB2に特異的なPCR検査で検出されなかった。また、幾つかのEPEC株は、nleB2 PCR検査で非常に弱いシグナルを生じた。このことは、これら株におけるnleB2遺伝子配列変形体の存在を示している。(幾つかのEPEC株で本発明で記載したPCR検査を用いて生成された高いCt値に関しては、このような株は表7でnleB2-陰性と報告した)。
【0074】
本発明によれば、Ct(サイクル閾値)は、蛍光シグナルが閾値を横切る(すなわちバックグランドレベルを超える)ために必要なサイクル数として規定される。Ctレベルは、サンプル中の標的核酸の量に反比例する(すなわち、Ctレベルが低ければ、サンプル中の標的核酸の量は多く、及び/又は逆に、幾つかのEPEC株で本発明で記載したPCR検査を用いて生成された高いCt値は、低量の標的DNA又はPCR反応での不十分な複製相を示す)。
上記の結果として、nleB2遺伝子配列の検出は、EHEC O157、O145、O103、O111、O26及びO121に主に限定されていた。よって、或る株又は多菌サンプルにおけるこの特異配列の検出は、トップ5のEHEC及び限られた数のEPEC株の存在と相関している(表7を参照)。
同じE. coli株又は同じサンプル中でのnleB2及びespK遺伝子配列の検出は、EHEC予測値を補強する(表7参照)。EHEC及び非常に限られた数の非EHEC株におけるこれら2つの配列の限定は、EHEC株についての分子的リスク評価の一部として価値が大きい。
【0075】
遺伝子stx1、stx2、eae、nleB及びespKは、単独で検出されるとき、複雑な多菌サンプル(例えば食物又は糞便サンプル)中のEHECの存在を予測するに十分ではない。食物サンプル(例えば、乳製品、牛肉)において、これら遺伝子の1つの検出は、個々に見て、サンプルがEHEC株で汚染されていると疑うに十分ではない。これは、(EHECによって汚染されていない)幾つかの食物が、これら遺伝子の少なくとも1つを含む1以上のE. coli sppを有し、よってそれら遺伝子は単独では、EHEC検出用の選択マーカーとして使用することができないからである。しかし、これら全ての遺伝子が同じサンプル中で検出されるか又は関連付けられる場合、それら遺伝子は、本明細書中で提示したデータによって証明されるように、病毒性のサインとして使用することができる。
【0076】
また、表7に提示したデータに基づけば、分子的リスク評価法を更に強化するために、eae遺伝子の検出は、有利には、espK遺伝子の検出で置換又は補充し得る。加えて、nleB遺伝子の検出は、有利には、nleB2配列に基づいて検出し得る。本発明による分子的リスク評価のこれら精緻化形態は共に、評価によって提供される情報のレベルを増大させ、サンプルと関連するリスクをより確実に評価することを可能にする。
【0077】
【表1−1】

【表1−2】

【0078】
【表2−1】

【表2−2】

【0079】
【表3−1】

【表3−2】

【0080】
【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】

【表4−4】

【表4−5】

【0081】
【表5】

【0082】
【表6】

【0083】
【表7−1】

【表7−2】

【表7−3】

【表7−4】

【0084】
参照文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、少なくとも下記の標的遺伝子:
− stx1;
− stx2;
と下記の標的遺伝子:
− eae;
− espK;
の少なくとも1つとに由来する一対のプライマー及び下記の標的遺伝子:
− nleB;
− nleH1-2;
− nleE;
− ent/espL2;
の少なくとも1つに由来する一対のプライマーと接触させ、前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出する工程;及び、工程a)からの前記遺伝子の各々についての増幅産物が検出された場合には、次いで:
b)前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、eae標的遺伝子に由来する1以上のプライマー対と接触させ、eaeサブタイプを決定する工程
を含んでなる、腸管出血性大腸菌(EHEC)を含有すると疑われるサンプルについて分子的リスク評価(MRA)を行う方法。
【請求項2】
工程b)において、検出されたeaeのサブタイプがeaeγ;eaeβ;eaeθ;eaeεを含んでなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、標的遺伝子rfbE(0157)、wbdl(O111);wzx(026);ihp1(0145);wzx(0103)に由来する1以上のプライマー対と接触させ;そして
前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出すること
もまた含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
a)サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− stx1;
− stx2;
− eae;
− espK;
− nleB又はent/espL2;
− rfbE(0157);
に由来する一対のプライマーと接触させ、前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出する工程;及び、前記遺伝子の各々について増幅産物が検出された場合には、次いで:
b)サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子及び/又はeaeサブタイプ:
− eaeγ;
− eaeβ;
− eaeθ;
− eaeε;
− wbdl(O111);
− wzx(026);
− ihp1(0145);
− wzx(0103);
に由来する1以上のプライマー対と接触させ、前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出する工程
を含んでなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− stx1;
− stx2;
と下記の標的遺伝子の少なくとも1つ:
− eae;
− espK;
とに由来する一対のプライマーと接触させる工程を含んでなる方法であって、前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− nleB;
− nleH1-2;
− nleE;
− ent/espL2;
に由来する一対のプライマーと接触させ、前記標的遺伝子の各々について増幅産物の存否を検出することも含んでなることを特徴とする、腸管出血性大腸菌(EHEC)を含有すると疑われるサンプルについて分子的リスク評価(MRA)を行う方法。
【請求項6】
前記サンプル又は該サンプルから単離したDNAを、下記の標的遺伝子:
− ehxA;
− nleF;
− nleA
の少なくとも1つに由来する一対のプライマーと接触させることを更に含んでなる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記標的遺伝子の各々についての前記プライマー対が:
− stx1については、配列番号1若しくは配列番号2又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマー;
− stx2については、配列番号4若しくは配列番号5又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマー;
− eaeについては、配列番号7若しくは配列番号8又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマー;
− espKについては、配列番号82若しくは配列番号83又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマーを使用;
− nleBについては、配列番号16、配列番号17、配列番号79若しくは配列番号80又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマー;
− nleH1-2については、配列番号25若しくは配列番号26又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマー;
− nleEについては、配列番号19若しくは配列番号20又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマー;
− ent/espL2については、配列番号13若しくは配列番号14又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマー;
− ehxAについては、配列番号10若しくは配列番号11又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマー;
− nleFについては、配列番号22若しくは配列番号23又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマー;
− nleAについては、配列番号28若しくは配列番号29又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマー;
− eaeγについては、配列番号52若しくは配列番号53又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマーを使用;
− eaeβについては、配列番号49若しくは配列番号50又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマーを使用;
− eaeθについては、配列番号64若しくは配列番号65又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマーを使用;
− eaeεについては、配列番号58若しくは配列番号59又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマーを使用;
− rfbE(O157)については、配列番号31若しくは配列番号32又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマーを使用;
− wbdl(O111)については、配列番号34若しくは配列番号35又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマーを使用;
− wzw(O26)については、配列番号37若しくは配列番号38又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマーを使用;
− Ihp1(O145)については、配列番号40若しくは配列番号41又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマーを使用;
− wzx(O103)については、配列番号43若しくは配列番号44又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメントで規定される少なくとも1つのプライマーを使用
を含んでなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記増幅産物が各標的遺伝子について下記の配列:
− stx1については、配列番号3又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− stx2については、配列番号6又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− eaeについては、配列番号9又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− espKについては、配列番号84又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− ehxAについては、配列番号12又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− nleFについては、配列番号24又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− nleBについては、配列番号18若しくは配列番号81又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− nleH1-2については、配列番号27又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− nleEについては、配列番号21又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− nleAについては、配列番号30又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− ent/espL2については、配列番号15又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− eaeγについては、配列番号54又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− eaeβについては、配列番号52又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− eaeθについては、配列番号66又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− eaeεについては、配列番号60又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− rfbE(O157)については、配列番号33又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− wbdl(O111)については、配列番号36又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− wzw(O26)については、配列番号39又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− Ihp1(O145)については、配列番号42又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント;
− wzx(O103)については、配列番号45又はその少なくとも15ヌクレオチドのフラグメント
で規定される縮重プローブを使用して検出される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
陰性PCRコントロール及び/又は阻害コントロールを行うこと;及び
前記反応からの増幅産物の存否を検出すること
を更に含んでなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プローブが少なくとも1つの蛍光標識で標識されている請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が多重増幅反応を含んでなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が一連の独立した増幅反応を含んでなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
増幅反応がマイクロアレイ上で行われる請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記増幅反応がリアルタイムPCR反応である請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1項に規定されたプライマーセット、及び任意に、請求項8に規定された縮重プローブを含んでなるEHEC株検出用キット。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法から生じた増幅産物からなる単離核酸分子。

【公表番号】特表2013−501516(P2013−501516A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524325(P2012−524325)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053631
【国際公開番号】WO2011/018762
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(512034999)アジャンス ナシオナル ド セキュリテ サニテア ド ラリマンタシオン,ド レンヴィロンヌマン エ デュ トラヴァイユ (1)
【氏名又は名称原語表記】AGENCE NATIONALE DE SECURITE SANITAIRE DE L’ALIMENTATION, DE L’ENVIRONNEMENT ET DU TRAVAIL
【住所又は居所原語表記】27/31, avenue du General Leclerc, F−94701 Maisons−Alfort Cedex, France
【Fターム(参考)】