説明

EL素子及びその製造方法

【課題】EL素子を湾曲させた際にEL素子を形成するそれぞれの層が破壊されるのを防止することができるEL素子を提供すること。
【解決手段】EL素子100を曲面形状としたときに凸となる面の反対側の面に、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなるストライプ状の切り欠き部71が表面に複数本並んで設けられる板状の形状支持体70を設ける。一対の斜辺が互いに接するところまでEL素子100を湾曲させることにより曲面形状を規定することができ、それ以上湾曲させることができないことによりEL素子100の曲面形状の限界形状以下に規定することができる。この場合、EL素子100を形成するそれぞれの層の中で最も柔軟性に乏しい層を基準として、その層の破壊曲げ限界を超えないように一対の斜辺間の角度を調節することによってEL素子100を形成するそれぞれの層が破壊されるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子として表示装置等に利用されるEL素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイとして液晶ディスプレイに代わり、EL素子を用いたELディスプレイが注目されてきている。
【0003】
ELディスプレイは、バックライトが不要な自発光型のフラットパネルディスプレイであり、視認性が高い、視野角依存症がない、液晶ディスプレイと比較して薄い、軽い等のさまざまな利点がある。更に近年、EL素子が本来有する可撓性を利用してディスプレイを湾曲させる試みがなされている。
【0004】
しかし、基板を湾曲させた際にEL素子を構成する膜にクラックが生じてしまう等の問題があった。この問題に対処するために、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【0005】
特許文献1において、EL素子は、第1の基板上に、第1の電極と、有機EL層と、第2の電極とを有する。このように構成されるEL素子上に、更にEL層を封止する第1の無機絶縁膜と、第2の基板とを積層する。このとき第1の無機絶縁膜上に第2の基板を形成することにより、表示装置を曲げる際に生じる引張応力(膜が縮む方向へ加わる応力)と圧縮応力(膜が伸びる方向へ加わる応力)が釣り合って無応力状態となる中立軸を第1の無機絶縁膜の近傍に位置させる。このようにして、ELディスプレイを湾曲させた場合に、可撓性に乏しい無機絶縁膜にクラックが入るのを防止する。
【特許文献1】再表2005−027582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1においては曲げた際に最も応力が集中する基板表面に、無機絶縁膜ではなく第2の基板を設け、無機絶縁膜にクラックが入るのを防止している。しかし、柔軟性に乏しいEL層及び電極によりEL素子を構成している場合には、EL素子表面に限らず、柔軟性に乏しいEL層及び電極にも応力がかかり、それらを破壊してしまうという可能性がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、EL素子を湾曲させた際にEL素子を形成するそれぞれの層が破壊されるのを防止することができるEL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載のEL素子は、基板上に、水分の侵入を防止する第1のバリア膜、第1の電極、EL発光層、第2の電極、第2のバリア膜が順次積層されたEL素子において、前記EL素子を曲面形状としたときに凸となる面の反対側の面に、前記EL素子が所望の曲面形状となるように規定する形状規定部材を設けることを特徴とする。
【0009】
請求項1記載のEL素子は、上述の構成を採用したことにより、EL素子を湾曲させる際に、EL素子を曲面形状としたときに凸となる面の反対側の面に形状規定部材を設けることによりEL素子の曲面形状を規定しているので、EL素子が過度に湾曲してしまうのを防止することができる。この場合、EL素子を形成するそれぞれの層の中で最も柔軟性に乏しい層を基準として、その層の破壊曲げ限界を超えないようにEL素子の曲面形状を規定することによって、EL素子を形成するそれぞれの層が破壊されるのを防止することができる。
【0010】
請求項2に記載のように、前記形状規定部材は、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなるストライプ状の切り欠き部が表面に複数本並んで設けられる板状の形状支持体であり、前記切り欠き部を形成する前記一対の斜辺が互いに接するところまで前記EL素子を曲げることにより所望の曲面形状とすることができ、それ以上前記EL素子を曲げることができないことにより曲面形状を規定しても良い。この場合、切り欠き部を形成する一対の斜辺間の角度を調節することにより、EL素子の曲面形状を調節することができる。またストライプ状の切り欠き部を複数本設けることにより、EL素子を湾曲させた際に、その曲面形状を複数箇所で調節することができる。
【0011】
請求項3に記載のように、前記形状規定部材は、x方向とy方向に辺を有する前記EL素子をx方向、y方向のどちらの方向から曲げた場合にも曲面形状を規定することができるように、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなる切り欠き部が前記x方向及びy方向に沿って設けられた形状支持体であっても良い。
【0012】
請求項1〜3いずれかに記載のEL素子は、請求項4に記載のように、前記EL素子の基板面に対して垂直な方向軸に沿って上下どちらの方向に凸となるように曲げた場合にも曲面形状を規定することができるように、前記形状規定部材は前記EL素子の両面に設けられていても良い。
【0013】
請求項5に記載のように、前記形状規定部材は、前記EL素子に接する面と反対側の面が凹んだ曲面形状に変形しようとする応力を有する形状保持膜であり、応力により曲面形状を規定しても良い。この場合、応力を有する形状保持膜の厚さ等によって、形状保持膜の応力を調節することにより、EL素子の曲面形状を調節することができる。また、EL素子のどちらの面に形状保持膜を設けた場合にもEL素子に接する面と反対側の面が凹んだ曲面形状に変形させることが可能となる。
【0014】
請求項6記載のEL素子の製造方法は、基板上に、第1のバリア膜、第1の電極、EL発光層、第2の電極、第2のバリア膜を順に形成する工程と、前記EL素子を曲面形状としたときに凸となる面の反対側の面に、前記EL素子が所望の曲面形状となるように規定する形状規定部材を形成する工程と、からなることを特徴とする。これにより、上述した請求項1に記載のEL素子を製造することができる。
【0015】
請求項7に記載のように、前記形状規定部材を形成する工程は、前記EL素子上に樹脂膜を堆積させた後、この樹脂膜の表面に前記切り欠き部を形成するためのエッチング処理を施す工程を有していても良い。これにより、EL素子の一面に所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなるストライプ状の切り欠き部が表面に複数本並んで設けられる板状の形状支持体である形状規定部材を形成することができる。
【0016】
請求項8に記載のように、前記形状規定部材を形成する工程は、始めに前記切り欠き部を有する樹脂板を成形した後、接着剤で前記EL素子と接着する工程を有していても良い。これにより、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなるストライプ状の切り欠き部が表面に複数本並んで設けられる板状の形状支持体である形状規定部材を形成することができる。
【0017】
請求項9に記載のように、前記形状規定部材を形成する工程は、前記EL素子上に応力を有する膜を成膜する工程を有し、この成膜時に発生する応力により前記EL素子を曲面形状に変形させても良い。これにより、EL素子に接する面と反対側の面が凹んだ曲面形状に変形しようとする応力を有する形状保持膜である形状規定部材を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の複数の実施形態を図に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0019】
(第1実施形態)
図1(a)及び(b)は本実施形態におけるEL素子100を説明するための断面図であり、(a)はその平面形状を示す図であり、(b)は曲面形状としたときの図である。
【0020】
図1(a)及び(b)に示すように、EL素子100は、基板10上に、水分の侵入を防止する第1のバリア膜20、第1の電極30、EL発光層40、第2の電極50、第2のバリア膜60が順次積層されて、構成される。
【0021】
本実施形態において、上述したような積層構造が形成された基板10の反対側の面にはEL素子100が所望の曲面形状となるように規定する形状支持体70が形成されている。尚、本実施形態においては、図1(b)に示すように、EL素子100を第2のバリア膜60側が凸となるような曲面形状としているため、積層構造が形成された基板10の反対側の面に形状支持体70を設けているが、EL素子100を基板10側が凸となるような曲面形状とする場合には、第2のバリア膜60上に形状支持体70を設ければ良い。
【0022】
このように、EL素子100を曲面形状としたときに凸となる面の反対側の面に形状支持体70を設けることにより、EL素子100を湾曲させる際にEL素子100の曲面形状の限界形状以下に制限できるので、EL素子100が過度に湾曲してしまうのを防止することができる。この場合、EL素子100を形成するそれぞれの層の中で最も柔軟性に乏しい層を基準として、その層の破壊曲げ限界を超えないようにEL素子100の曲面形状の限界形状を規定することによって、EL素子100を形成するそれぞれの層が破壊されるのを防止することができる。
【0023】
ここで破壊曲げ限界とは、第1のバリア膜20または第2のバリア膜60に発生したクラックが、第1の電極30または第2の電極50まで達する直前の状態である。そして、EL素子100において、この破壊曲げ限界の状態が限界形状である。尚、第1のバリア膜20または第2のバリア膜60に発生したクラックが、第1の電極30または第2の電極50まで到達した場合、両電極30、50やEL発光層40が水分や酸素に曝されてしまい、EL素子100の表示品位が著しく低下してしまう。
【0024】
形状支持体70は、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなるストライプ状の切り欠き部71が表面に複数本並んで設けられる板状部材である。
【0025】
このような切り欠き部71を形成することにより、一対の斜辺が互いに接するところまでEL素子100を曲げることにより所望の曲面形状とすることができ、それ以上EL素子100を曲げることができないことにより曲面形状を限界形状以下に規定することができる。この場合、切り欠き部71を形成する一対の斜辺間の角度を調節することにより、EL素子100の曲面形状の限界形状を調節することができる。またストライプ状の切り欠き部71を複数本設けることにより、EL素子100を湾曲させた際に、その曲面形状を複数箇所で調節することができる。
【0026】
ここで形状支持体70は、x方向とy方向に辺を有するEL素子100において、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなる切り欠き部71がx方向及びy方向に沿って設けられていても良い。このように構成することにより、EL素子100をx方向、y方向のどちらの方向から曲げた場合にも曲面形状を限界形状以下に規定することができる。
【0027】
また形状支持体70は、EL素子100の両面に設けられていても良い。このように構成することにより、EL素子100を基板面に対して垂直な方向軸に沿って上下どちらの方向に凸となるように曲げた場合にも曲面形状を限界形状以下に規定することができる。
【0028】
尚、本実施形態において、形状支持体70は硬度が高い樹脂、例えば、アクリル樹脂を用いて形成される。その他、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等を用いても良い。
【0029】
次に、本実施形態におけるEL素子100の製造方法について説明する。
【0030】
まず、例えばスパッタリング法によって、基板10上にアルミナもしくはAlTiO等からなる第1のバリア膜20を形成する。本実施形態において、基板10は、フレキシブル性を有するプラスチック基板が用いられ、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)もしくはポリエチレンナフタレート(PEN)等からなる。
【0031】
次に、例えばスパッタリング法を用いて、第1のバリア膜20上に、導電性及び光透過性を有する材料、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)等からなる第1の電極30を形成する。
【0032】
次いで、真空蒸着法によって、第1の電極30上にEL発光層40を形成する。本実施形態において、EL発光層40は、発光層のみからなる単層型であるが、発光層以外のホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層等の機能層をも含む多層型であっても良い。EL発光層40は、アルミニウムキノリノール錯体(Alq)等からなる。
【0033】
次いで、真空蒸着法によって、EL発光層40上に、光を反射する導電性材料、例えば、アルミニウム等からなる第2の電極50を形成する。
【0034】
最後に、スパッタリング法によって、第2の電極50上にアルミナもしくはAlTiO等からなる第2のバリア膜60を形成する。
【0035】
このようにして基板10上に、第1のバリア膜20、第1の電極30、EL発光層40、第2の電極50、第2のバリア膜60を順に形成する工程を行う。
【0036】
次に、積層構造が形成された基板10の反対側の面に樹脂膜を堆積させ、切り欠き部71の形成領域に開口を有するマスクを形成した後、この樹脂膜の表面を等方性エッチングする。これにより、マスクの開口から等方的に樹脂膜がエッチング除去されるので、一対の斜辺からなる切り欠き部71を樹脂膜に形成することができる。この結果、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなるストライプ状の切り欠き部71が表面に複数本並んで設けられる板状の形状支持体70を形成することができる。
【0037】
尚、限定されるものではないが、図3に示すように、第1の電極30と第2の電極50とが直交に交わり、EL発光層40のうち第1の電極30と第2の電極50の交点に位置する部分が発光領域となる所謂マトリックス形状のEL素子の場合は、切り欠き部71の底部、すなわち一対の斜辺(面)の交点(交線)が、EL発光層40の発光領域を通過しないことが望ましい。さらには、第1の電極30または第2の電極50の延設方向と、ストライプの交点(交線)の延設方向とが一致していることが望ましい。
【0038】
以下、上記配置が望ましい理由を説明する。マトリックス形状のEL素子の場合、複数の第1の電極30同士が互いに溝31を介して離間して配置されている。そして、この溝31を含め、各第1の電極30の短手方向の端部が絶縁膜32で覆れている。この絶縁膜32は、溝31の中央部に位置する箇所が窪んでおり、その箇所の厚みは第1の電極30の厚みよりも厚い(絶縁膜が1μm程度、電極は0.1〜0.2μm)。また、図示しないが複数の第2の電極50同士も互いに溝を介して離間して配置されている。この複数の第1の電極30と、複数の第2の電極50とは互いに直交して配置されている。そして、EL発光層40と第2の電極50とは、第1の電極30と絶縁膜32の上にも配置される。
【0039】
ここで、発光領域に切り欠き部71の底部が一致すると発光領域内に凸部が発生する。この凸部では光学距離が短くなり、凸部でない部分は表面から見ると斜めとなり光学距離が長くなる。光学距離の違うものを一緒にみると、モアレや干渉縞などの表示不具合となる。このため光学距離による表示不具合を防ぐ為に発光領域外に切り欠き部を形成することが望ましい。また、マトリックス形状のEL素子100を曲げた際の応力を鑑みると、応力の低い無機材料からなる電極部に切り欠き部が来ると電極がクラックして断線し、表示不良に繋がる。
【0040】
また、切り欠き部71を設けて、マトリックス形状のEL素子100を曲げた場合、切り欠き部71の底部(ストライプの交点(交線))には、底部以外よりも大きい応力が発生する可能性がある。EL発光層40の発光領域が存在する箇所は、第1の電極30と第2の電極50とがEL発光層40を挟んで近接しているため、EL素子100を曲げる際に応力が集中すると第1の電極30と第2の電極50とがショートしてしまう可能性もある。
【0041】
このため、切り欠き部71の底部、すなわち一対の斜辺(面)の交点(交線)が、EL発光層40の発光領域を通過しないように配置することが望ましい。すなわち、切り欠き部71の底部を、第1の電極30間の溝31、もしくは、第2の電極50間の溝に配置すれば、上記のような光学距離の差に起因する表示不具合、クラックによる表示不良、第1の電極と第2の電極との間のショートの発生を抑制することができる。
なお、図4に示すような第2の電極50間の溝61に隔壁62を設ける構造の場合は、最も厚みが厚くなる箇所が隔壁62の部分である為、図3とは異なり切り欠き部71の底部がEL発光層40の発光領域を通過するようにすることが望ましい。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態によるEL素子100の製造方法でも、第1実施形態によるEL素子100の製造方法と同様に、基板10上に、第1のバリア膜20、第1の電極30、EL発光層40、第2の電極50、第2のバリア膜60を順に形成する工程を行う。
【0043】
ただし、本実施形態におけるEL素子100の製造方法では、形状支持体70を形成する工程は、所定の切り欠き部71を有するように形成された金型に樹脂を流し込み、切り欠き部71が形成された樹脂板を成形した後、樹脂板を接着剤によりEL素子100と接着することにより形状支持体70を形成する。このような方法によっても、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなるストライプ状の切り欠き部71が表面に複数本並んで設けられる板状の形状支持体70を形成することができる。
【0044】
(第3実施形態)
次に第3実施形態について説明する。図2(a)は本実施形態におけるEL素子200を説明するための断面図である。
【0045】
本実施形態によるEL素子200でも、第1実施形態によるEL素子100と同様に、基板10上に、水分の侵入を防止する第1のバリア膜20、第1の電極30、EL発光層40、第2の電極50、第2のバリア膜60が順次積層されている。
【0046】
ただし、本実施形態におけるEL素子200では、積層構造が形成された基板10の反対側の面に、基板10が平面形状に戻ろうとする応力とは逆の応力、すなわち基板10をより曲面形状に曲げようとする引張応力を有する形状保持膜80が形成される。
【0047】
形状保持膜80を設けることにより、その形状保持膜の応力により曲面形状を規定することができる。この場合、形状保持膜80の材質を変化させて応力を調整する、または形状保持膜80の厚さを調節することにより、形状保持膜80の全応力が変化するため、EL素子200の曲面形状、例えば曲率を調節することができる。また、このような引張応力を有する膜を形状保持膜80として使用した場合、EL素子200のどちらの面に形状保持膜80を設けた場合にもEL素子200に接する面と反対側の面が凹んだ曲面形状に変形させることが可能となる。
【0048】
一方、図2(b)に示すように形状保持膜が圧縮応力を有する膜90であった場合も、EL素子200のどちらの面に形状保持膜90を設けても、EL素子200を曲面形状にすることができる。なお、この場合は、形状保持膜90がEL素子200に接する面と反対側の面が凸な曲面形状に変形する。
【0049】
次に、図2(a)に示した本実施形態におけるEL素子200の製造方法について説明する。本実施形態によるEL素子200の製造方法でも、第1実施形態によるEL素子100の製造方法と同様に、基板10上に、第1のバリア膜20、第1の電極30、EL発光層40、第2の電極50、第2のバリア膜60を順に形成する工程を行う。
【0050】
ただし、本実施形態におけるEL素子200の製造方法では、EL素子200上に、例えばスパッタリング法によって、クロム等からなる引張応力を有した膜80を形成する。この成膜時に発生する応力によりEL素子200を曲面形状に変形させる。これにより、EL素子200に接する面と反対側の面が凹んだ曲面形状に変形しようとする応力を有する形状保持膜80を形成することができる。尚、形状保持膜80を形成する工程として、スパッタ、CVD、蒸着、ALE等の成膜方法を用いても良い。またEL素子200に樹脂膜をコーティングした後、その硬化収縮で所望の応力を得ても良い。
【0051】
(変形例)
上記実施形態において、有機ELを対象としたEL素子について説明したが、その際EL素子を構成するそれぞれの層の構成材料は上述したものに限定されるものではない。また、変形例として有機ELの代わりに無機ELを用いることもでき、その際EL素子を構成するEL発光層、電極等のそれぞれの層は公知の材料を用いて構成されていれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態によるEL素子100を示す断面図であり、(a)はその平面形状を示す図であり、(b)は曲面形状としたときの図である。
【図2】本発明の第3実施形態によるEL素子200を示す断面図であり、(a)は引張応力を有した形状保持膜80を用いた場合を示す図であり、(b)圧縮応力を有した形状保持膜90を用いた場合を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるマトリクス形状のEL素子100を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における別のマトリクス形状のEL素子100を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10・・・基板
20・・・第1のバリア膜
30・・・第1の電極
31,61・・・溝
32・・・絶縁膜
40・・・EL発光層
50・・・第2の電極
60・・・第2のバリア膜
62・・・隔壁
70・・・形状支持体
71・・・切り欠き部
80・・・引張応力を有した形状保持膜
90・・・圧縮応力を有した形状保持膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、水分の侵入を防止する第1のバリア膜、第1の電極、EL発光層、第2の電極、第2のバリア膜が順次積層されたEL素子において、
前記EL素子を曲面形状としたときに凸となる面の反対側の面に、前記EL素子が所望の曲面形状となるように規定する形状規定部材を設けることを特徴とするEL素子。
【請求項2】
前記形状規定部材は、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなるストライプ状の切り欠き部が表面に複数本並んで設けられる板状の形状支持体であり、前記切り欠き部を形成する前記一対の斜辺が互いに接するところまで前記EL素子を曲げることにより所望の曲面形状とすることができ、それ以上前記EL素子を曲げることができないことにより曲面形状を規定することを特徴とする請求項1記載のEL素子。
【請求項3】
前記形状規定部材は、x方向とy方向に辺を有する前記EL素子をx方向、y方向のどちらの方向から曲げた場合にも曲面形状を規定することができるように、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなる切り欠き部が前記x方向及びy方向に沿って設けられた形状支持体であることを特徴とする請求項1記載のEL素子。
【請求項4】
前記形状規定部材は、前記EL素子の基板面に対して垂直な方向軸に沿って上下どちらの方向に凸となるように曲げた場合にも曲面形状を規定することができるように、前記EL素子の両面に設けられることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のEL素子。
【請求項5】
前記形状規定部材は、前記EL素子に接する面と反対側の面が凹んだ曲面形状に変形しようとする応力を有する形状保持膜であり、応力により曲面形状を規定することを特徴とする請求項1記載のEL素子。
【請求項6】
基板上に、第1のバリア膜、第1の電極、EL発光層、第2の電極、第2のバリア膜を順に形成する工程と、
前記EL素子を曲面形状としたときに凸となる面の反対側の面に、前記EL素子が所望の曲面形状となるように規定する形状規定部材を形成する工程と、からなることを特徴とするEL素子の製造方法。
【請求項7】
前記形状規定部材は、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなるストライプ状の切り欠き部が表面に複数本並んで設けられる板状の形状支持体であり、
前記形状規定部材を形成する工程は、前記EL素子上に樹脂膜を堆積させた後、この樹脂膜の表面に前記切り欠き部を形成するためのエッチング処理を施すことにより前記形状支持体を形成する工程を有することを特徴とする請求項6記載のEL素子の製造方法。
【請求項8】
前記形状規定部材は、所定の角度を有して隣接する一対の斜辺からなるストライプ状の切り欠き部が表面に複数本並んで設けられる板状の形状支持体であり、
前記形状規定部材を形成する工程は、始めに前記切り欠き部を有する樹脂板を成形した後、接着剤で前記EL素子と接着することにより前記形状支持体を形成する工程を有することを特徴とする請求項6記載のEL素子の製造方法。
【請求項9】
前記形状規定部材は、前記EL素子に接する面と反対側の面が凹んだ曲面形状に変形しようとする応力を有する形状保持膜であり、
前記形状規定部材を形成する工程は、前記EL素子上に応力を有する膜を成膜する工程を有し、この成膜時に発生する応力により前記EL素子を曲面形状に変形させることを特徴とする請求項6記載のEL素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−170173(P2009−170173A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4854(P2008−4854)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】