説明

EL素子

第1の型の電荷キャリアを注入するための第1の電極を提供すること、ホスト材料、及び下記式(I)の発光ドーパントモノマーを含む組成物を基板上に成膜することによりEL層を形成すること、下記式(I)のモノマーを重合することにより、EL層の少なくともある部分を溶媒に不溶にすること、EL層を溶媒にさらすこと、及びEL層上に第2の型の電荷キャリアを注入し得る第2の電極を成膜することを含むELデバイスを形成する方法。
A-C-(X)n (1)
(式中、Xは重合可能な基を示し、Aは発光基を示し、Cは結合又はスペーサー基を示し、nは整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子、特にりん光性有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
注目されつつある光電素子の1つの種類は、発光のため(EL素子)又はホトセル又は光検出器(“光起電力”素子)の活性成分として、有機半導体材料を用いることである。これらの素子の基本的構成は、負の電荷キャリア(電子)を有機層に注入又は受容するためのカソードと、正の電荷キャリア(正孔)を有機層に注入又は受容するためのアノードとの間に挟まれた有機半導体層である。
【0003】
有機発光素子(OLED)では、電子及び正孔が有機半導体層に注入され、そこでそれらは結合して励起子(excitons)を発生し、発光する。様々な種類の有機発光物質、特に、(WO90/13148に開示されている)ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、及びポリフェニレンのようなポリマー、US4,539,507に開示されているトリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(“Alq”)のような低分子物質として知られている種類の物質、及びWO99/21935に開示されているデンドリマーとして知られている種類の物質が知られている。これらの物質は、一重項励起子からの発光(即ち、蛍光)によりエレクトロルミネセンスを生じるが、しかし、スピン統計によると、75%までの励起子が、非放射失活を生ずる三重項励起子であるため、それらの蛍光OLEDの量子効率の理論最大値は25%となる。なお、Chem. Phys. Lett,. 1993, 210, 61、Nature (London), 2001, 409, 494,、Synth. Met., 2002, 125, 55及びそれらの引用文献を参照のこと。
【0004】
従って、金属錯体におけるスピン−軌道カップリング効果を用いることにより三重項励起子(りん光)から発光を生じさせることに、かなりの努力が向けられた。この目的のために調査された錯体の例として、金属キレートランタン化物[Adv. Mater., 1999, 11, 1349]、白金(II)ポルフィリン[Nature (London), 1998, 395,151]及びトリス−フェニルピリジン イリジウム(III)(以下、Ir(ppy))[Appl. Phys. Lett., 2000, 77, 904]がある。そのような錯体のより詳細な記載は、Pure Appl. Chem., 1999, 71, 2095、Materials Science & Engineering, R:Reports (2002), R39(5-6), 143-222、及びPolymeric Materials Science and Engineering (2000), 83, -203に見られる。
【0005】
OLEDの発光層は、アノードとカソードとの間に位置する高純度な膜からなり、更に電荷輸送層を有してもよい。別の構成では、電荷輸送ホスト材料内にドーパントとして発光物質が提供される。この構成は、電荷の輸送を改善することにより及び/又はホスト材料から発光物質への励起子の輸送を提供することにより、デバイスの効率を増加させるのに役立つ。ホストドーパントの構成は、例えば、J. Appl. Phys. 65, 3610, 1989に記載されているりん光物質、又はりん光OLEDの上述の開示に記載されている蛍光物質に適用される。
【0006】
OLEDの発光層は、成膜の後に、それを不溶にするように架橋される。架橋は、発光物質が溶解性である場合、特に有利である。そうでなければ更に溶解処理工程がとられる場合に、溶けてしまう
架橋は、湿式法によりデバイス層を積層するために使用される。例えば、US6107452は、末端ビニル基を含むフルオレン含有オリゴマーを溶液から塗布し、その上に追加の層を塗布できるよう不溶性ポリマーを形成するため架橋される。同様に、KimらによるSynthetic Metals 122 (2001), 363-368は、ポリマーの塗布後に架橋できるトリアリールアミン基及びエチニル基について記載している。
【0007】
架橋はまた、マスクを用いてEL層のUV架橋によるEL層のフォトリソグラフィーパターニングのためにも使用され、その後、EL層は溶媒で洗浄され、非架橋物質が除去される。例えば、湿式法によりデバイス層を積層、及び/又は洗浄して除去するために、更に湿式法を用いることが望ましい場合がある。例えば、Nature 421, 829-833, 2003は、塗布後に適当な放射線に露光することにより、光酸発生体を媒介として架橋できるオキセタン側鎖を有する、レッド、グリーン、及びブルーのエレクトロルミネセンスポリマーの各層を塗布することによりフルカラーディスプレイを作製する方法について開示している。同様に、JP 2003-142272は、EL層の塗布に先立ち、任意に光パターニングできる正孔輸送層の架橋法について開示している。
【0008】
(OLEDのフォトリソグラフィーではないが)フォトリソグラフィーに使用するために、チオール−エンポリマーが知られている。例えば、Jacobine, Radiat. Curing Polym. Scl. Technol., 1993, 3, 219-68を参照のこと。
【0009】
先願であるPCT/GB03/00899は、OLED、特に上述のホスト−ドーパントシステムを含むOLEDのためのチオール−エンの使用について記載している。この出願は、マトリクス中に発光ドーパント物質を含有する電荷輸送ホストポリマーマトリクスを含むEL層を形成するために、Ir(ppy)のような発光物質の存在下で重合できるチオール又はアルケン基を含む電荷輸送部分について記載している。この層は、その後、フォトパターニングのような溶液プロセスに供される。この方法は、機能的かつパターニングされたOLEDを提供するのに役立つが、本発明者らは、EL層の成膜後の処理工程が、この手法により作られた、フォトパターニングされたデバイスの効率を比較的低くしてしまうことを見出した。
【0010】
WO03/01616は、アクリレート基を含むトリスフェニルピリジンイリジウム(III)のようなりん光錯体のモノマーについて記載している。これらの錯体を含むOLEDは、アクリレート基を重合し、次いでOLED基板にポリマーを溶液塗布することにより、又はその塗布後にモノマーを重合することにより形成される。ポリマーの架橋の程度がそれを不溶にするならば、後者の場合が好ましい。この文献は、溶解性及び不溶性ポリマーについて記載しており、これらのポリマーの塗布後の更なる溶液処理について記載していない。
【0011】
特に、フォトパターニングされたデバイスのようなデバイスにおける、上述した低効率の問題を考慮すると、本発明の目的は、改良された効率を有するホスト−ドーパントEL層を含むELデバイスを形成する方法を提供することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ホスト−ドーパント系のドーパントの不溶ポリマー中への導入が、デバイスの効率の実質的な改良を生ずることを見出した。
【0013】
したがって、第1の態様では、本発明は、第1の型の電荷キャリアを注入するための第1の電極を含む基板を提供すること、
ホスト材料、及び下記式(I)の発光ドーパントモノマーを含む組成物を基板上に塗布することにより表面を有するEL層を形成すること、
式(I)のモノマーを重合することにより、EL層の少なくともある部分を溶媒に不溶にすること、
EL層を溶媒にさらすこと、及び
EL層上に第2の型の電荷キャリアを注入し得る第2の電極を成膜すること
を含むELデバイスを形成する方法を提供する。
【0014】
A-C-(X)n (I)
(式中、Xは重合可能な基を示し、Aは発光基を示し、Cは結合又はスペーサー基を示し、nは整数である。)
好ましくは、この組成物は、Xとの共重合のための第2の重合可能な基Yを含む。
【0015】
X及びYは、同一又は異なる種類の重合可能な基から選択される。
【0016】
1つの好ましい実施態様では、X及びYは、異なる種類の重合可能な基から選択される。より好ましくは、X及びYの一方は、任意に置換されたチオールであり、他方は、反応性不飽和炭素−炭素結合を含み、好ましくは任意に置換されたアルケンである。最も好ましくは、Xは、反応性不飽和炭素−炭素結合、好ましくは任意に置換されたアルケンである。
【0017】
他の好ましい実施態様では、X及びYは、同一の種類の重合可能な基から選択される。より好ましくは、X及びYは、同一又は異なり、両方とも任意に置換されたチオールであり、又は両方とも反応性不飽和炭素−炭素結合であり、好ましくは任意に置換されたアルケンである。この場合、X及びYは、直接一緒に重合してもよい。或いは、X及びYは、架橋剤により重合されてもよい。特に好ましい実施態様では、X及びYの双方は、不飽和の炭素結合を含み、架橋剤は複数のチオール基を含む。
【0018】
「反応性不飽和炭素−炭素結合」とは、それ自体又はコモノマーと重合可能な基を意味する。
【0019】
好ましくは、nは少なくとも2である。
【0020】
好ましくは、ホスト材料は、更に別の第1の重合可能な基X又は第2の重合可能な基Yと結合される。より好ましくは、ホスト材料は、更に別の第1の重合可能な基X又は第2の重合可能な基Yの少なくとも2つに結合される。好ましくは、ホスト材料は、更に別の第1の重合可能な基Xの少なくとも1つに結合される。
【0021】
好ましくは、発光基は、りん光性化合物である。好ましくは、りん光性化合物は、金属錯体である。
【0022】
式(I)のモノマーを重合する適切な方法は、モノマーにUV光を照射すること、又はモノマーを熱処理することを含む。1つの好ましい実施態様では、式(I)のモノマーを重合する工程は、EL層の表面のある部分のみにUV光を照射することを含む。EL層を溶媒にさらす後の工程は、溶解性物質を洗い流し、不溶性物質のパターンを残す。
【0023】
他の好ましい実施態様では、EL層の全面は、不溶性にされる。この態様では、EL層を溶媒にさらす後の工程は、EL層上に溶媒及び電気的機能物質を含む組成物を成膜することにより、電気的機能層を形成することを含む。
【0024】
好ましくは、電気的機能層は、電荷輸送物質を含む電荷輸送(即ち、正孔又は電子輸送)層である。
【0025】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法により得ることが可能なELデバイスを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1を参照すると、本発明のELデバイスの標準構造は、透明ガラス又はプラスチック基板1、インジウム スズ 酸化物のアノード2、及びカソード4を備える。本発明のEL層は、アノード2とカソード4との間の層3である。
【0027】
層3に加えて、別の正孔輸送層及び/又は電子輸送層が設けられてもよい。
【0028】
基本的なことではないが、アノード2とEL層3の間に有機正孔注入材料の層を設けるのが望ましい。有機正孔注入材料の例として、EP0901176及びEP0947123に開示されているポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDT/PSS)、又はUS5723873及びUS5798170に開示されているポリアニリンのような、導電性ポリマーがある。
【0029】
EL層3は、側鎖として、又はポリマー主鎖内のユニットとして、ポリマーに結合された発光ドーパント基を有するポリマーを含む。ポリマーを形成するために使用されるモノマーは、溶解性であるのが好ましいが、不溶性ポリマーを形成できる。スピンコーティング、インクジェットプリンティング、ディップコーティングメニスカス若しくはロールコーティング、又は他の印刷若しくはコーティング技術、又は熱転写法が、重合されるモノマーを成膜するために使用される。
【0030】
モノマーは、熱処理、化学的重合開始、及び照射、特にUV照射を含む適切な技術により重合される。1つの特に適切な種類のポリマーは、チオール−エンポリマーである。本発明の方法に使用されたモノマーが反応性不飽和炭素−炭素結合を含む場合、この結合は、例えば、炭素−炭素二重又は三重結合を有する非芳香族基である。チオールが使用されるとき、これらの物質は、チオエーテル結合を形成する。立体構造の理由から、最も反応性の不飽和炭素−炭素結合は、しばしば、鎖又は分枝の末端の位置にある。
【0031】
好ましくは、重合は、ポリマー中にペルオキシ基のような化学的開始剤の形成を避けるために、不活性雰囲気内で化学線を照射することにより開始される。膜の洗浄又は現像の後、膜は乾燥され、又は他のパターニング後処理を受ける。
【0032】
発光層のフォトリソグラフィーパターニングは、適切なフォトマスクの使用により達成される。第1の色を発し得る膜が成膜され、パターニングされ、現像されて、第1の色を発し得る画素が形成される。この段階で、第1の色の膜は不溶性であるので、第1の色の膜を妨害することなく、第2の色を発し得る物質の膜の成膜が可能である。この第2の膜は、パターニングされ、現像されて、第2の色を発し得る画素が形成される。このプロセスは、第3の色を発し得る物質の膜を成膜するために繰り返される。電荷輸送層が存在するならばパターニングすることもでき、これは同一のマスク技術を用いてなされる。
【0033】
チオール−エンポリマーのようなポリマーは、フリーラジカル誘導重合により形成される。任意ではあるが、フリーラジカル誘導重合は、ラジカル開始剤の存在下で生じ得る。生じたポリマーは溶媒に不溶のため、未反応モノマーを洗い除くことができる。不溶化は、架橋したポリマーネットワークを生成する重合により望ましく達成される。
【0034】
正しい条件下では、チオエーテル基とアルケン基は、反応して、チオエーテル結合を形成する。この反応は、Jacobine, Radlat. Curing Polym. Sci. Technol., 1993, 3, 219-68に概括されているように、逐次成長メカニズムにより進行する。この反応は、以下に示す式により表され、式中、Aは発光ドーパント、Bはチオール官能基が結合するコアである。
【化1】

【0035】
それぞれのモノマーが2つの官能基を有する場合(n=m=2)、線状ポリマーが形成され得る。n又はmの少なくとも1つが2より大きい場合には、架橋したポリマーが形成され得る。上述のポリマーにホスト材料を組み込むために、少なくとも2つの反応性不飽和炭素−炭素結合を含むホスト材料が、上記のモノマー混合物に加えられる。ホスト材料及び発光ドーパントは、アルケン反応性ユニットを有するモノマーとして上で説明されたが、それらのいずれか又は双方は、チオール反応性ユニットを有し得ることが認識されよう。更に、1つのモノマーに、1つ以上のチオール基と1つ以上の反応性不飽和炭素−炭素結合を含んでもよい。
【0036】
上述のモノマーは、A及びBの双方の基がポリマーの主鎖に位置するポリマーを生成する。しかし、このモノマーは、A及びBの一方又は双方がポリマーの主鎖から枝分かれする置換基として存在するように変性されてもよい。そのようなモノマーの例を以下に示す。
【化2】

【0037】
式中、nは少なくとも2であり、Cは、以下に示すスペーサー基のセットから適切に選択されるスペーサー基を示す。同様に、二重結合がチオール基と置換され、及び/又は発光ドーパントAが電荷輸送部分と置換されてもよい。
【0038】
原則として、完全な反応が生ずるために、Y基と同様に多くのX基が存在すべきである。しかし、周知のように、制限のない移動度を仮定すると、多官能モノマーの重合反応では、すべての官能基が反応するわけではないので(P.J.Flory, J. Am. Chem. Soc. 1947, 69, 2893)、X及びY基の数がバランスすることが重要であるとは考えられていない。
【0039】
チオール−エンが使用される場合、発光部分と重合可能なチオール又は反応性不飽和炭素−炭素結合との間にスペーサーが存在することが好ましい。そのようなスペーサーは、材料の膜形成特性を改善し、溶液から良質の膜を成膜できる。スペーサーはまた、重合プロセスを助ける。スペーサーは、カルボニル基(エステル、アミド等の形のものを含む)を含むべきではない。スペーサーは、アルキル、エーテル、チオエーテル、アリール、シロキサン、アミン若しくは不飽和基、又はシリコン、ボロン若しくはリンのようなヘテロ原子を含むことができる。
【0040】
チオ尿素、チオ硫酸イオン、チオールエステル及びジチオカルバメートから出発するものを含むチオール含有物質を形成するための合成ルートは、S. Patal, Chapter 4, The Chemistry of the Thiol Group, Jhon Wiley & Sons, London 1974に見ることができる。
【0041】
反応性不飽和炭素−炭素結合とその分子の残部との間のエーテル結合を有するアルケン物質への合成ルートは、図2に示す塩基の存在下での求核置換による(化合物10cから化合物10への工程)。Synthesis of ethers, Houben-Weyl, Methoden der organishe Chemie, V1/3, Gerge Thieme Verlag, Stuttgart 1965.
チオール−エン混合物は、容易に熱重合及び光重合され得る。光重合は、良好な解像度でパターニングされた膜が得られるという利点を有し、そのため光重合は、OLED用には好ましい。反応性不飽和炭素−炭素結合は、好ましくは電子リッチであり、又は歪んだリング系を形成する。後者の場合、反応性不飽和炭素−炭素結合とチオールとの反応は、リングの歪みを開放する。反応性不飽和基は、好ましくはノルボルニル又はビニルエーテル部分からなり、他の有用なアリルエーテルからなるエン、又は不飽和環状系からなる。チオール−エン系の場合、UV光又は可視光のいずれかによる活性化のための適切な開始剤がある。良好な重合開始のためには、開始剤により吸収されるが、膜の他の成分によっては強く吸収されない波長の光を用いることが好ましい。このようにして、開始剤は良好に機能し、膜の光劣化は最小にされる。
【0042】
本明細書で言うチオール−エン系は、カルボニル基を含まず、そのためルミネセンスの消光は観察されない。
【0043】
本発明の発光ドーパントは、好ましくは、式(V)の任意に置換された金属錯体である。
【0044】
ML
式中、Mは金属、L、L及びLのそれぞれは配位基、qは整数、r及びsはそれぞれ独立に0又は整数、(a.q)+(b.r)+(c.s)は、Mに配位する配位部位の数を示し、aはLへの配位部位の数、bはLへの配位部位の数、cはLへの配位部位の数である。
【0045】
金属錯体は、蛍光を発する比較的軽い元素に基づくものであり、例えばアルミニウム錯体、特にJ. Appl. Phys. 65, 3610, 1989に開示されているようなAlqである。或いは、金属錯体は、強いスピン軌道カップリングを生じ、急速に項間交差させ、三重項状態から発光(りん光)させる重原子に基づくものでもよい。適切な重金属Mとしては、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ツリウム、及びネオジミウムがあり、またd−ブロック金属、特に2族及び3族,即ち39−48元素及び72−80元素、特にルテニウム、ロジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金がある。
【0046】
f−ブロック元素のための適切な配位基としては、カルボン酸、1,3−ジケトネート、ヒドロキシカルボン酸、アシルフェノール及びイミノアシル基を含むシッフ塩基のような酸素又は窒素ドナー系がある。知られているように、発光ランタニド金属錯体は、金属イオンの第1の励起状態より高い三重項励起エネルギーレベルを有する感光基を必要とする。発光は金属のf−f遷移からであり、そのため発光色は金属の選択により決定される。鋭い発光は一般に狭く、ディスプレイ用に有用な純粋な色の発光を生ずる。
【0047】
d−ブロック金属は、ポルフィリン又は式(VI)の二座配位子のような炭素又は窒素を有する有機金属錯体を形成する。
【化3】

【0048】
式中、Ar及びArは、同一又は異なっており、独立に、任意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基から選択され、X及びYは、同一又は異なっており、独立に、炭素又は窒素から選択され、Ar及びArは、縮合していてもよい。Xが炭素で、Yが窒素である配位子が特に好ましい。
【0049】
二座配位子の例を以下に示す。
【化4】

【0050】
Ar及びArのそれぞれは、1つ又はそれ以上の置換基を有していても良い。特に好ましい置換基として、WO02/45466、WO02/44189、US2002−117662及びUS2002−182441に開示されている錯体の発光をブルーシフトするために使用されるフッ素基又はトリフルオロメチル基;JP2002−324679に開示されているアルキル又はアルコキシ基;WO02/81448に開示されているように、発光物質として使用されるときに錯体に正孔を輸送するのを助けるために使用されるカルバゾール;WO02/68435及びEP1245659に開示されている別の基の取り付けのために配位子を機能させるのに役立ち得る臭素、塩素又はヨウ素;及びWO02/66552に開示されている金属錯体の塗布性を得るため又は強化するために使用されるデンドロン(dendron)がある。
【0051】
d−ブロック元素に使用するに適切な他の配位子としては、ジケトネート、特に、それぞれが置換されている、アセチルアセトネート(acac);トリアリールホスフィン及びピリジンがある。
【0052】
メイングループの金属錯体は、配位子ベースの、又は電荷輸送発光を示す。これらの錯体については、配位子及び金属の選択により、発光色が決定される。広範囲の蛍光低分子量金属錯体が知られており、有機発光デバイスにおいて示されており[例えば、Macromol. Sym. 125(1997) 1-48, US-A 5,150,006, US-A 6,083,634及びUS-A 5,432,014参照のこと]、特にトリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムがある。2価又は3価の金属のための適切な配位子としては、オキシノイド類が挙げられる。例えば、8−ヒドロキシキノレート及びヒドロキシキノキサリノール−10−ヒドロキシベンゾ(h)キノリナート(II)、ベンザゾール(III)、シッフ塩基類、アゾインドール類、クロモン誘導体、3−ヒドロキシフラボン、及びサリチラートアミノカルボキシレート類及びエステルカルボキシレート類のようなカルボン酸が挙げられ、電子供与性原子として酸素−窒素又は酸素−酸素を有するものである。一般的には、置換基上の酸素原子を伴った環上の窒素原子、又は置換基上の酸素原子を伴った置換基上の窒素原子又は酸素原子の組合せがある。任意の置換基としては、発光色を修正する(ヘテロ)芳香環上の、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、アミド、スルホニル、カルボニル、アリール、又はヘテロアリールがある。
【0053】
適切な蛍光青色発光体は、例えば、スチルベン、クマリン、アントラセン(Kodak US 5,972,247 (1999), Toshio et al (Toyo Ink) EP 0765106 (1996)、及びペリレン(So et al (Motorola) US 5,853,905 (1997), Lee et al (Motorola) US 5,747,183 (1996))である。青色発光アルミニウム錯体(Bryan et al (Kodak) US 5,141,671、Van Slyke et al (Kodak) US 5,150,006)もまた適切である。適切な緑色発光体は、 Alq(Macromol. Sym. 125(1997) 1-48)、クマリン(Chen et al (Kodak) US 6,020,078)、及びキナクリドン(Shi et al (Kodak) US 5,593,788)である。適切な赤色発光体は、DCM及びその誘導体(Chen et al, US 5,908,581)である。蛍光物質は、分子又はデンドリマーの種類がある。適切な蛍光性デンドリマーの例は、例えば、WO 99/21935に見られる。
【0054】
発光ドーパントがりん光性である場合、ホストはそのドーパントよりも高いTエネルギーレベルを有することが必要である。適切なホスト材料の例は、トリアリールアミン単位を含むもの(例えば、Shirata, J. Mater. Chem., 2000, 10, 1-25参照)又はカルバゾール単位、特にポリ(ビニルカルバゾール)である。
【0055】
ホスト材料はまた、電荷輸送特性を有していてもよい。下記の式を有する正孔輸送性アリールアミンのような正孔輸送ホスト材料が特に好ましい。
【化5】

【0056】
式中、Arは、フェニル又は下記式により表されるような任意の置換芳香族基である。
【化6】

【0057】
Ar、Ar、Ar及びArは、任意に置換された芳香族基又はヘテロ芳香族基(Shi et al (Kodak)US 5,554,450), Van Slyke et al, US 5,061,569, So et al (Motorola)US 5,853, 905(1997))である。Arは好ましくはビフェニルである。本発明では、Ar、Ar、Ar及びArの少なくとも2つは、チオール基、X又は反応性不飽和炭素−炭素結合、Yのいずれかに結合されている。Ar及びAr、及び/又はAr及びArは、NがN含有環を形成するように任意にリンクしており、それによって、カルバゾール単位、例えば下記式に示すものの一部を形成する。
【化7】

【0058】
電荷輸送性/ホスト材料は、バイポーラであり、即ち、正孔及び電子を輸送し得る。適切なバイポーラ物質は、好ましくは、少なくとも2つのカルバゾールユニットを含む(Shirota J. Mater. Chem., 2000, 10, 1-25)のがよい。
【0059】
ホスト材料中の蛍光又はリン光発光ドーパントの濃度は、膜が高いホトルミネセンス及びエレクトロルミネセンス効率を有するようなものであるべきである。発光種の濃度が高すぎるならば、消光が生じ得る。0.01−49モル%の濃度が一般に適正である。
【0060】
OLEDは、EL層に加えて更に半導体層を含んでもよい。特に、電荷輸送及び/又はブロッキング層を用いてもよい。電荷輸送及び/又はブロッキング層を形成するのに適切な物質は、π電子リッチの、特にトリアリールアミン(例えば、Shirota J. Mater. Chem., 2000, 10, 1-25参照)及びホスト材料として上述した化合物を含むそれらのアミン及びカルバゾールである。
【0061】
発光体がりん光性である場合、正孔ブロッキング層としても機能する電子輸送層が存在するか、或いは発光層と電子輸送層との間に正孔ブロッキング層が存在することは、特に有利である。
【0062】
電子輸送材料は、π電子に乏しい部分を含む。適切なπ電子に乏しい部分の例は、オキサジアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、キノリン、及びキノキサリン(Thealakkat, Schmidt, Polym. Adv. Technol. 1998, 9. 429-42)である。特定の例として、Alq[アルミニウム トリ(8−ヒドロキシキノリン)]、TAZ(3−フェニル−4−(1−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール)及びOXD−7(1,3−ビス(N,N−t−ブチル−フェニル)−1,3,4−オキシジアゾール)がある。
【0063】
電荷輸送及び/又はブロッキング物質の層(図示せず)は、EL層3とカソード層4との間に設けられる。正孔輸送又は注入層についてのように、電荷輸送及び/又はブロッキング物質は必須ではない。
【0064】
カソード層4は、EL層、又は存在するならば、電子輸送層への電子注入が可能な仕事関数を有する物質から選択される。カソードとEL物質との間の不都合な相互作用の可能性のような他のファクターが、カソードの選択に影響を与える。カソードは、アルミニウム層のような単独の物質からなるものでもよい。或いは、それは、複数の金属、例えば、WO 98/10621に開示されているカルシウムとアルミニウムの二層、Appl. Phys. Lett. 2002, 81(4), 634及びWO 02/84759に開示されている元素バリウム、又は電子の注入を助けるための誘電体薄層、例えばWO 00/48258に開示されている弗化リチウム、又はAppl. Phys. Lett. 2001, 79(5)2001に開示されている弗化バリウムを含む。
【0065】
典型的なELデバイスは、4.8eVの仕事関数を有するアノードを使う。従って、正孔輸送材料のHOMOレベルは、好ましくは4.8−5.5eV近辺である。同様に、典型的なデバイスのカソードは、3eV近辺の仕事関数を持っている。従って、電子輸送物質のLUMOレベルは、好ましくは3−3.5eV近辺である。
【0066】
EL層3は、本発明のホスト材料及び発光物質のみを含むか、又は1つ又はそれ以上の追加の物質を含んでもよい。特に、層3は、WO 99/48160に開示されているように、正孔輸送ポリマー及び電子輸送ポリマーの1つ又はそれ以上と混合された、ホスト材料及び発光物質を含んでいてもよい。
【0067】
ELデバイスは、モノクロデバイス又はフルカラーデバイス(即ち、レッド、グリーン、及びブルーEL物質から形成された)である。
【0068】
このデバイスは、パターン形成せずに、パッシブマトリクス又はアクティブマトリクスデバイスとして用いてもよい。
【0069】
実施例
A)物質
【化8】

【0070】
B)合成
4,4’−ビス(3−(アリルオキシメチル)カルバゾール−9−イル)(1)
式(I)の化合物は、図2に示す式に従って合成された。
【0071】
i)4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(1a)の合成
トルエン(88ml)中にtert-ブチルホスフィン(III)(880mg、4.35mmol)を含む溶液を、トルエン(50ml)中にカルバゾール(11.9g、71.0mmol)、4,4’−ジブロモビフェニル(10.0g、32.11mmol)、tert-ブトキシドナトリウム(23.2g、241mmol)及び酢酸パラジウム(324mg、32.1.34mmol)を加え脱酸素化した混合物に、窒素下で添加し、得られた混合物を窒素雰囲気で10日間加熱還流した。反応混合物を室温に冷却し、更にトルエン(200ml)で希釈した。反応混合物を濾過してナトリウム塩を除去し、濾液からすべての微量の生成物を除去した。濾液を乾燥して濃縮し、粗生成物を薄い褐色の固形物として得た。この粗生成物は、最初に、溶出液としてジクロロメタンを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、次いでトルエンから再結晶した。次いで、この物質を10−6mmHgで280−281℃で昇華させ、生成物4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニルを、融点280−281℃(lit.融点281℃)を有する灰色がかった白色の固形物として得た。
【0072】
ii)4,4’−ビス(3−ホルミルカルバゾール−9−イル)ビフェニル(1b)の合成
オキシ塩化リン(13ml,21.5g,140mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(5.40ml,5.10g,69.7mmol)及び4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(7.72ml,16.0mmol)の攪拌混合物に滴下し、得られた混合物を室温で5分間攪拌し、24時間で90℃に加熱した(nb反応混合物は、溶出液として5%エタノール/ジクロロメタンを用いてTLCに供された。)。反応混合物を水(800ml)に注ぎ、このビーカーを超音波浴に2時間置き、物質を加水分解した。この混合物を更に2時間攪拌し、濾過した。残渣を水で、次いでヘキサンで洗浄し、真空中で2時間乾燥した。粗生成物をアセトン(3×400ml)とともに加熱し、濾過した。この生成物は、多くの有機溶媒に不溶であった。アセトンで洗浄することにより不純物を除去した。融点295℃(dec.)を有する生成物である4,4’−ビス(3−ホルミルカルバゾール−9−イル)ビフェニル(7.92g,87%)が得られた。実測値:C,81.74;H,4.71;N,4.45.C3828.(CHCOの計算値:C,82.25;H,5.05;N,4.68%.H n.m.r.(300MHz,MeSO):δ10.09(2H,s,CHO);8.88(2H,d,J0.88Hz,芳香族H);8.41(2H,d,J7.61Hz,芳香族H);8.41(4H,d,J8.49Hz,芳香族H);8.00(2H,dd,J8.49,1.46Hz,芳香族H);7.83(4H,d,J8.49Hz,芳香族H);7.38−7.61(8H,m,芳香族H).λmax(CHCl):215nm(ε/Lmol−1cm−19163),241(68 488),272(65 928),294(67 194),328(42 620).FT−IR(固体):3045,2825,2730,1682,1623,1591,1505,1456,1438,1365,1319,1275,1230,1180,802,745cm−1
iii)4,4’−ビス(3−(ヒドロキシメチル)カルバゾール−9−イル)ビフェニル(1c)の合成
水素化ホウ素ナトリウム(2.40g,63.4mmol)を、THF(1.2L)中に4,4’−ビス (3−ホルミルカルバゾール−9−イル)ビフェニル(3.42g,6.33mmol)を含む溶液に加え、得られた混合物を室温で24時間攪拌した。反応後、溶出液として5%エタノール/ジクロロメタンを用いてTLCに供された。反応が完了すると、混合物を水(400ml)にゆっくり注ぎ、混合物を室温で更に30分間攪拌するままとした。反応混合物を塩酸(5M)によりpH1に酸性化した。生成物をジクロロメタン(3×300ml)で抽出した。合わせた有機相を水(400ml)及び塩水(400ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、濾液を蒸発乾固した。粗生成物を溶出液として50%THF/トルエンを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。生成物をエタノールから再結晶し、生成物4,4’−ビス(3−(ヒドロキシメチル)カルバゾール−9−イル)ビフェニルを、融点268℃(dec)を有する淡い黄色の固形物(3.22g,94%)として得た。実測値:C,82.51;H,4.64;N,4.86.C3828.EtOHの計算値:C,81.33;H,5.80;N,4.74%.H n.m.r.(300MHz,MeSO):δ8.23(2H,d,J7.61Hz,芳香族H);8.18(2H,s,芳香族H);8.06(4H,d,J8.19Hz,芳香族H);7.75(4H,J8.19Hz,芳香族H);7.38−7.50(8H,m,芳香族H);7.29(2H,m,芳香族H);5.25(2H,t,J5.58Hz,OH);4.68(4H,d,J5.56Hz,CH).λmax(CHCl):216nm(ε/Lmol−1cm−1177 455),240(57 873),271(56 558),294(55 330),329(37 758).FT−IR(固体):3343,1604,1500,1485,1455,1362,1330,1230,803,745cm−1
iv)4,4’−ビス(3−(アリルオキシメチル)カルバゾール−9−イル)ビフェニル(1)の合成
DMSOを水素化カルシウム上で乾燥し、次いで真空下で蒸留し、モレキュラーシーブズ上で貯蔵した。DMSO(20ml)に水酸化カリウム(2.07g,36.9mmol)を加え、窒素下、室温で15分間攪拌した。次いで、ジオール(2.39g,4.39mmol)のDMSO溶液(20ml)を加え、更に臭化アリル(2ml,2.80g,21.7mmol)を加え、得られた混合物を窒素下、室温で一昼夜攪拌した。反応混合物を水(200ml)に注ぎ、生成物をジクロロメタン(3×50ml)で抽出した。有機相を合体し、水(5×150ml)、塩水(200ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。混合物を濾過し、濾液を蒸発乾固した。この物質を溶出液としてジクロロメタンを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。問題の留分を合体し、減圧下で溶媒を除去した。生成物をジクロロメタン及びヘキサンから回収し、融点118−120℃を有する淡い黄色の固形物として生成物を得た。(実測値:C,82.51;H,4.64;N,4.86.C3828.EtOHの計算値:C,81.33;H,5.80;N,4.74%.H n.m.r.(300MHz,MeSO):δ8.13−8.20(4H,m,芳香族H);7.87−7.93(4H,m,芳香族H);7.65−7.72(4H,m,芳香族H);7.40−7.65(8H,芳香族H);7.27−7.35(2H,m,芳香族H);5.93−6.09(2H,m,CH=CH);5.30−5.39(2H,m,CH=CH);5.20−5.29(2H,m,CH=CH);4.74(4H,s,CH);(8H,m,CH−CH=CH).λmax(CHCl):241nm(ε/Lmol−1cm−188 506),296(40 331),319(29657).FT−IR(固体):3047,2852,1604,1500,1455,1359,1331,1230,1074,915,807cm−1
テトライソプロピルペンタエリスリトール(2)の合成
式(2)の化合物を、Nouguier R, Mchich M, J. Chem. 1985, 50, (3296-3298)に開示されているテトラアリルペンタエリスリトールから出発した2段階合成で製造した。
【化9】

【0073】
i) テトラチオアセチルプロピルペンタエリスリトールの合成
攪拌器を備えた10mlの丸底フラスコに、2.0g(6.74mmol)のテトラアリルペンタエリスリトールを加えた。この試薬を、4.11g(53.98mmol)の新しい蒸留されたチオ酢酸を1mlの部分に加えたアイス浴で冷却した。添加が完了した後、5mgのAlBNを加え、反応混合物を15分間攪拌した。AlBNが溶解した後、反応混合物を60℃で12時間加熱し、この反応後、T.L.C.に供した。反応生成物は、シリカゲル上ジクロロメタン(DCM)で0.05のR、エタノールで0.9のRを有していた。真空下で反応混合物から過剰のチオ酢酸を除去し、残渣を最小限のDCM中を使って短いシリカゲルカラム上にのせた。このカラムを500mlのDCMで、次いで500mlのエタノールで溶出した。エタノール部分を回収し、溶媒を除去した。2.9g(71.5%収率)のテトラチオアセチルプロピルペンタエリスリトールを、淡い黄色の固体として単離した。
【0074】
H n.m.r.(CDCL)ppm:3.41(三重項,8H)3.34(一重項,8H)2.92(三重項,8H)2.32(一重項,12H)1.80(四重項,8H)I.R(cm−1):2866,1686,1354,1099,953.
ii) テトラチオプロピルペンタエリスリトール(2)の合成
100mlの丸底フラスコ内の10mlの無水THFに、1.8g(2.99mmol)のテトラチオアセチルプロピルペンタエリスリトールを加え、混合物を攪拌しつつ脱ガスした。反応容器内を窒素でパージし、THF中に12.3mlの1MのLiAlHを含む溶液を滴下した。反応物を室温で18時間攪拌し、反応をT.L.C.(ジクロロメタン)によりモニターした。反応が完了したとき、混合物を0.1MのHClでpH3に酸性化し、50mlのDCMを加えた。有機相を回収し、水相を2×50mlのDCMで抽出した。有機層を合体し、100mlの塩水で4回、及び50mlの水で2回抽出した。硫酸ナトリウム上で有機相を乾燥し、濾過し、溶媒を除去した。生成物を、0.92g(71.2%収率)の淡い黄色のオイルとして単離した。生成物をKugelrohr装置で蒸留し、10−4ミルバールで230℃の沸点を有する、流動性のある無色のオイルを得た。
【0075】
H NMR(CDCL)ppm:3.47(三重項,8H)3.34(一重項,8H)2.60(四重項,8H)1.84(五重項,8H)1.38(三重項,4H)I.R(cm−1):2864,1368,1101.
WO 02/060910に開示されているように、Fac−トリス[2−(2−ピリジニル−κN)フェニル−κC]−イリジウム(III)(3)を合成した。
【0076】
WO 02/068435に開示されているように、Fac−トリス[2−(2−ピリジニル−κN)フェニル−κC]−ビス[2−(2−ピリジニルκN)(5−ブロモフェニル)−κC]−イリジウム(III)(4)を合成した。
【0077】
Dondoni et al. (J. Org. Chem., 1998, 63, 9535)の方法により3−スチリルホウ酸(5)を合成した。(5)の分析データは、Rush et al. (J. Org. Chem., 1962, 27, 2598)により報告されているものと一致した。
【0078】
Fac−[2−(2−ピリジニル−κN)フェニル−κC]−ビス[2−(2−ピリジニルκN){5−(3−スチリル)フェニル}−κC]−イリジウム(III)(6)
トルエン(90cm)中に(4)(0.582g,0.717mmol)を含むサスペンジョンを、(5)(0.294g,1.79mmol)のエタノール溶液(40cm)、炭酸ナトリウム(0.9cm,1.79mmol)の水溶液、及び水(30cm)で処理した。混合物を窒素ガスで75分間バブリングした。窒素気流下で、混合物に固体テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.040g,0.036mmol)を加えた。次いで、混合物を窒素下で加熱還流した。還流に到達すると、サスペンジョンは透明となり、黄色のサスペンジョンからオレンジ色の混合物に変わった。混合物を窒素下、14.5時間還流を続け、次いで室温に冷却した。反応混合物を室温に冷却すると、両相は透明となった。混合物をジクロロメタン(100cm)で処理し、有機相を分離した。水相をジクロロメタン(2×50cm)で洗浄した。合体した有機抽出物を、水(40cm)で洗浄した。合体した有機抽出物を、次いで、硫酸マグネシウムにより乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗生成物を、1:1ジクロロメタン/ヘキサン溶出液でシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。生成物を黄色粉末(0.560g,90%)として単離した。H nmr(300MHz,CDCL):8.1−7.4(16H,m),7.4−7.3(4H,m),7.2−7.1(2H,m),7.0−6.7(10H,m),5.79(2H,d,J=18Hz),5.30(CHCl),5.25(2H,d,J=11Hz).ES−MS:860.20(MH).元素分析:実測値:C:63.55,H:4.17,N:4.97%,IrC4936・CHClの計算値:C:63.62,H:4.06,N:4.45%.
C)りん光発光体をドープした光重合可能なOLEDの製造
ホスト材料1(8mg)、リン光ドーパント3(8wt%)及びチオール2(1.8mg)を、1.5mlの純クロロホルム(トータル濃度5−7mgml−1)中に溶解した。ITOを被覆したガラス基板(市販の洗浄剤中で超音波処理することにより、かつ脱イオン水により洗浄することにより、あらかじめ清浄化され、Emitech K1050Xプラズマユニットでプラズマ処理された(プロセスガス酸素,100W,2分))にその溶液をスピンコートすることにより、発光層を形成した。2000rpm、加速500rs−1で回転する基板上に、トータル30s、溶液をスピンコートし、厚さ約50nmの発光層を得た。次いで、Hanovir UVA 250W UV源を用いて、不活性雰囲気(N)の下で、膜を光重合した。15nm×20nmの矩形照射領域を与える5”×5”のガラスホトマスク(カットオフ360nm)を通して6−8分間、膜に照射した。トルエンで洗浄し、乾燥窒素流の下で乾燥し、蒸着装置(Kurt J Lesker)に移送し、50nmの厚さの電子輸送/正孔ブロッキング層としてTPBI(以下に示す)及びLiF(1.2nm)とアルミニウム(100−150nm)の二層の上部電極(カソード)を蒸着することにより、OLEDを完成した。アノードとカソードの重なり部が、4mm×5mmの6画素からなる発光領域となる。
【化10】

【0079】
比較のため、重合可能な物質(6)の代わりに7wt%のIr(ppy)(3)を用いたことを除いて、同一のデバイスが作製された。
【0080】
D)デバイス性能
デバイス性能は、100cd/mの値である。
【表1】

【0081】
これらの結果からわかるように、本発明の方法により製造されたデバイスは、多くの性能の点で顕著な改善を示している。
【0082】
何ら理論に結びつけることを望まなければ、本発明のデバイスの利点は、ホストマトリクスから洗い流されないポリマー鎖に固定された発光基により導かれるものと考えられる。更に、ポリマーの主鎖中での発光体とホスト材料の両方の固定化は、発光体とホスト材料が相互にある一定の距離に設定されるため、効率の改善に寄与する。
【0083】
更に、本発明者らは、チオール−エンの光パターニングされたポリマーの使用により、良好な解像度が達成され得ることを認めた。
【0084】
本発明は、特定の例示的実施形態により説明されたが、特許請求の範囲に示す本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本明細書に開示された特徴の様々な修正、変形及び/又は組合せは、当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の方法により製造されたデバイスを示す図。
【図2】式(I)の化合物の合成を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の型の電荷キャリアを注入するための第1の電極を含む基板を提供すること、
ホスト材料、及び下記式(I)の発光ドーパントモノマーを含む組成物を基板上に成膜することにより、表面を有するEL層を形成すること、
下記式(I)のモノマーを重合することにより、EL層の少なくともある部分を溶媒に不溶にすること、
EL層を溶媒にさらすこと、及び
EL層上に第2の型の電荷キャリアを注入し得る第2の電極を成膜すること
を含むELデバイスを形成する方法。
A-C-(X)n (I)
(式中、Xは重合可能な基を示し、Aは発光基を示し、Cは結合又はスペーサー基を示し、nは整数である。)
【請求項2】
前記組成物は、Xとの共重合のための第2の重合可能な基Yを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
X及びYの一方は、任意に置換されたチオールであり、他方は、反応性不飽和炭素−炭素結合を含む基である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
nは少なくとも2である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ホスト材料は、更に別の第1の重合可能な基X又は第2の重合可能な基Yに結合されている請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記発光基は、りん光性化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記EL層を溶媒にさらすことにより、洗浄されてパターン化された不溶性EL層を残す溶解性物質を生ずるように、前記EL層の表面のある部分のみにUV光を照射することを式(I)のモノマーを重合する工程が含む請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記EL層の全面は、不溶性にされている請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
EL層を溶媒にさらす工程は、EL層上に溶媒及び電気的機能物質を含む組成物を成膜することにより、電気的機能層を形成することを含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の方法により得ることが可能なELデバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−506237(P2007−506237A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526700(P2006−526700)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004024
【国際公開番号】WO2005/027583
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】