EML4−ALK融合遺伝子の高感度検出方法
【課題】パラフィン包埋検体のような検体(核酸、特にはmRNA)に損傷があるような微量の試料において、肺癌マーカーとなりうるEML4−ALK融合遺伝子を高感度且つ高精度に検出する方法、該方法に使用するプライマーおよびキットを提供する。
【解決手段】検出方法は、(A)試料から鋳型DNAを調製する工程、(B)前記鋳型DNAに対し、融合点を含む領域を増幅する増幅用プライマーの組合せを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する工程を含む。
【解決手段】検出方法は、(A)試料から鋳型DNAを調製する工程、(B)前記鋳型DNAに対し、融合点を含む領域を増幅する増幅用プライマーの組合せを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EML4−ALK融合遺伝子の高感度な検出方法、検出用プライマー、およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
EML4−ALK融合遺伝子は、第2染色体上のEML4(echinoderm microtubule associated protein like 4)のN末端とALK(anaplastic lymphoma receptor tyrosine kinase)のC末端が融合した産物である。ALKは受容体型チロシンキナーゼであるが、EML4との融合により活性体となり癌化能を示す(特許文献1、特許文献2)。EML4−ALK融合遺伝子発現細胞ではALKの活性化が認められ、その細胞増殖抑制にALK阻害剤が有効であることが明らかとなっている。すなわち、EML4−ALK融合遺伝子はALK阻害剤の感受性規定因子であるといえる。EML4−ALK融合遺伝子は、肺癌腫瘍における発現が認められており、その発現頻度は約5%といわれている。
【0003】
現在、癌組織からのEML4−ALK融合遺伝子の検出には、凍結検体に対する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法による定量法が報告されている(非特許文献1)が、この方法はEML4とALKの融合点を含んだ約200bp〜約1300bpを増幅する必要があるため、核酸が分解あるいは劣化したようなパラフィン包埋検体での測定には適応できていない。しかし、肺癌においては、生体組織の採取は困難であり、比較的入手可能なパラフィン包埋検体を用いた解析が望ましい。パラフィン包埋検体に対するEML4−ALK融合遺伝子の検出法としては、免疫組織染色法や蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法が用いられている。しかしこれらの方法では、検出感度が低いこと、融合点が近いバリアントを検出する場合には判別が難しいことなどから、パラフィン包埋検体を用いた、更に高感度且つ高精度な、EML4−ALK融合遺伝子の検出法の構築が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−295444号公報
【特許文献2】特開2010−501175号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Clin Cancer Res 2008;14:6618−24.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、パラフィン包埋検体のような検体(核酸、特にはmRNA)に損傷があるような微量の試料において、EML4−ALK融合遺伝子を高感度且つ高精度に検出する方法、該方法に使用するプライマーおよびキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記に挙げるEML4−ALK融合遺伝子の融合点を含む約100bp以下の領域を増幅可能なプライマーを使用し、例えば、一塩基伸長反応を利用する質量分析法(MassARRAY法)によって、該EML4−ALK融合遺伝子の有無を検出可能であることを見出した。すなわち、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント5b、バリアント6、バリアント7の各々について、EML4とALK遺伝子の各融合点を含む約100bp以下の領域を増幅可能な増幅用プライマーを用いて該融合点を増幅することによって、パラフィン包埋切片において該融合遺伝子の全てを検出することを可能にした。更に、その増幅産物を鋳型として、該融合点にハイブリダイズ可能な相補的なプライマーを使用する一塩基伸長反応を行うことによって、高感度且つ高精度に全ての該融合遺伝子の存在を検出することを可能にした。
【0008】
本発明は、
[1](A)試料から鋳型DNAを調製する工程、
(B)前記鋳型DNAに対し、融合点を含む領域を増幅する増幅用プライマーの組合せであって、配列番号11と配列番号15の組合せ、配列番号20と配列番号18又は21の組合せ、配列番号23又は26と配列番号24の組合せ、配列番号32と配列番号33の組合せ、配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せ、配列番号41と配列番号45の組合せ、配列番号47と配列番号48の組合せ、配列番号50と配列番号51の組合せ、配列番号56と配列番号54の組合せから選択される少なくとも一つの該増幅用プライマーの組合せを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する工程
を含む、EML4−ALK融合遺伝子を検出する方法;
[2]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号11と配列番号15の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント1を検出する方法;
[3]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号20と配列番号18又は21の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント2を検出する方法;
[4]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号23又は26と配列番号24の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aを検出する方法;
[5]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号32と配列番号33の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3bを検出する方法;
[6]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント4を検出する方法;
[7]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号41と配列番号45の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5aを検出する方法;
[8]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号47と配列番号48の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5bを検出する方法;
[9]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号50と配列番号51の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント6を検出する方法;
[10]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号56と配列番号54の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント7を検出する方法;
[11](a)融合点を含む領域を増幅する増幅用プライマーの組合せであって、配列番号11と配列番号15の組合せ、配列番号20と配列番号18又は21の組合せ、配列番号23又は26と配列番号24の組合せ、配列番号32と配列番号33の組合せ、配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せ、配列番号41と配列番号45の組合せ、配列番号47と配列番号48の組合せ、配列番号50と配列番号51の組合せ、配列番号56と配列番号54の組合せから選択される少なくとも一つの該増幅用プライマーの組合せを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する工程、
(b)前記増幅産物を鋳型として、該融合点を挟む領域に相補的な検出プライマーを使用して一塩基伸長反応を行う工程
を含む、EML4−ALK融合遺伝子を検出する方法;
[12]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号11と配列番号15の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号13及び/又は配列番号16であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント1を検出する方法;
[13]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号20と配列番号18又は21の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号19及び/又は配列番号22であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント2を検出する方法;
[14]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号23又は26と配列番号24の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号25及び/又は配列番号28であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aを検出する方法;
[15]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号32と配列番号33の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号31及び/又は配列番号34であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3bを検出する方法;
[16]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号37及び/又は配列番号40であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント4を検出する方法;
[17]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号41と配列番号45の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号43及び/又は配列番号46であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5aを検出する方法;
[18]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号47と配列番号48の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号49であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5bを検出する方法;
[19]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号50と配列番号51の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号52であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント6を検出する方法;
[20]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号56と配列番号54の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号55及び/又は配列番号58であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント7を検出する方法;
[21]配列番号11と12の組合せ、配列番号14と15の組合せ、配列番号17と18の組合せ、配列番号20と21の組合せ、配列番号23と24の組合せ、配列番号26と27の組合せ、配列番号29と30の組合せ、配列番号32と33の組合せ、配列番号35と36の組合せ、配列番号38と39の組合せ、配列番号41と42の組合せ、配列番号44と45の組合せ、配列番号47と48の組合せ、配列番号50と51の組合せ、配列番号53と54の組合せ、配列番号56と57の組合せから選択される、プライマーセット;
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高感度且つ高精度に、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント5b、バリアント6、バリアント7の存在を検出することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】プラスミドを用いた各EML4−ALK融合遺伝子バリアントの検出結果を示すマススペクトルである。
【図2】図1に示すマススペクトルの内、ALK(1)を用いた場合(検出塩基がT)の結果を示すマススペクトルである。
【図3】図1に示すマススペクトルの内、Variant1(1)を用いた場合(検出塩基がG)の結果を示すマススペクトルである。
【図4】図1に示すマススペクトルの内、Variant3a(1)を用いた場合(検出塩基がC)の結果を示すマススペクトルである。
【図5】図1に示すマススペクトルの内、Variant1(2)を用いた場合(検出塩基がA)の結果を示すマススペクトルである。
【図6】細胞株を用いたEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出結果の一例〔Variant3a(2);MKN1(野生型ALK遺伝子発現株)〕を示すマススペクトルである。
【図7】検出感度を比較するために(図8参照)、プラスミド、細胞株(H2228)、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)における、PCR増幅法によるEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出結果を示す電気泳動パターンである。
【図8】図7で実施したPCR増幅法における検出感度と比較するために、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)における、MassARRAYシステムによるEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出結果を示すマススペクトルである。
【図9】図7で使用したサンプルの1/10量を使用して、プラスミド、細胞株(H2228)、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)における、PCR増幅法によるEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出結果を示す電気泳動パターンである。
【図10】図8で使用したサンプルの1/10量を使用して、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)における、MassARRAYシステムによるEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出結果を示すマススペクトルである。
【図11】各EML4−ALK融合遺伝子バリアントの構造を模式的に示す説明図である。
【図12】EML4−ALK融合遺伝子バリアント1の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号1)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマー(フォワードプライマー、リバースプライマー、伸長用プライマー。以下、同じ)の標的配列を示す説明図である。
【図13】EML4−ALK融合遺伝子バリアント2の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号2)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図14】EML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの融合点およびその近傍領域の配列(配列番号3)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図15】EML4−ALK融合遺伝子バリアント3bの融合点およびその近傍領域の配列(配列番号4)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図16】EML4−ALK融合遺伝子バリアント4の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号5)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図17】EML4−ALK融合遺伝子バリアント5aの融合点およびその近傍領域の配列(配列番号6)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図18】EML4−ALK融合遺伝子バリアント5bの融合点およびその近傍領域の配列(配列番号7)と、表4に示すプライマーセット1に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図19】EML4−ALK融合遺伝子バリアント6の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号8)と、表4に示すプライマーセット1に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図20】EML4−ALK融合遺伝子バリアント7の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号9)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図21】野生型ALK遺伝子の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号10)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、DNA、RNA、核酸、遺伝子、遺伝子発現、コード、相補、鋳型、プライマー、ハイブリダイゼーション、PCR等の用語の定義に関しては、現在、分子生物学、遺伝学、遺伝子工学等で広く一般的に使用されている用語と同じ意味である。
【0012】
本明細書における遺伝子操作技術は特に断りのない限り「Molecular Cloning」 Sambrook, Jら、ColdSpring Harbor Laboratory Press、1989年等の公知技術に従って実施可能である。
【0013】
本明細書において、核酸とは、DNA又はRNA、天然のものであってもよく、合成されたものであってもよい。天然の核酸として、例えば、生物から回収されたゲノムDNA、mRNA、tRNA、rRNA、hnRNA等がある。また、合成された核酸として、β−シアノエチルホスフォロアミダイト法、DNA固相合成法等の公知の化学的合成法により合成されたDNAや、PCR等の公知の核酸増幅法により合成された核酸、逆転写反応により合成されたcDNA等がある。
【0014】
本明細書において「野生型遺伝子」とは、融合を生じる前の遺伝子を言う。具体的には、NCBIのGene Bankのaccession Numberで示す、NM_019063.3のEML4遺伝子、NM_004304.3のALK遺伝子である。
【0015】
本明細書において「EML4-ALK融合遺伝子」とは、EML4遺伝子の一部とALK遺伝子の一部が融合し、腫瘍形成能を有するようになった遺伝子である(図11)。具体的には、NCBIのGene Bankのaccession Numberで示す、
・EML4遺伝子のエクソン1−13とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント1」(AB274722.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−20とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント2」(AB275889.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−6とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント3a」(AB374361.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−6とクリプティックエクソン(Additional cryptic exon)とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント3b」(AB374362.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−14と未知配列とALK遺伝子のエクソン20が逆の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント4」(AB374363.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−2とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント5a」(AB374364.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−2とALK遺伝子のイントロン19の一部とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント5b」(AB374365.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−13と未知配列とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント6」(AB462411.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−14とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント7」(AB462412.1:図11)
が含まれる。
【0016】
本明細書における「融合点」とは、前記EML4遺伝子とALK遺伝子の連結した部位を示す。EML4−ALK融合遺伝子バリアント1の融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の接する部位であり(図12)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント2の融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の接する部位であり(図13)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の接する部位であり(図14)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント3bの融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の間にクリプティックエクソンが挿入されているので、EML4遺伝子とクリプティックエクソンの接する部位あるいはALK遺伝子とクリプティックエクソンの接する部位であり(図15)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント4の融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の間に未知配列が挿入されているので、EML4遺伝子と未知配列の接する部位あるいはALK遺伝子と未知配列の接する部位であり(図16)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント5aの融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の接する部位であり(図17)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント5bの融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の間にALK遺伝子のイントロン19の一部が挿入されているので、EML4遺伝子とALK遺伝子のイントロン19の接する部位あるいはALK遺伝子とALK遺伝子のイントロン19の接する部位であり(図18)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント6の融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の間に未知配列が挿入されているので、EML4遺伝子と未知配列の接する部位あるいはALK遺伝子と未知配列の接する部位であり(図19)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント7の融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の接する部位である(図20)。
【0017】
前記融合遺伝子の調製方法としては、例えば、特開2008−295444号公報を参照して行うことができる。前記融合遺伝子を有する細胞あるいは組織、例えば、ヒト肺癌患者由来肺組織からmRNAを抽出する。次いで、このmRNAをランダムプライマー又はオリゴdTプライマーの存在下で、逆転写酵素反応を行い、第一鎖cDNAを合成することができる。得られた第一鎖cDNAを用い、目的遺伝子の一部の領域をはさんだ2種類のプライマーを用いてPCRに供し、前記融合遺伝子を得ることができる。また、本発明の実施例1に示すように、既にクローニングされているベクターから目的の領域を増幅し連結して融合遺伝子を作製することもできる。
【0018】
本発明で使用可能な生体試料は、EML4−ALK融合遺伝子が検出可能な限り、限定されないが、病理検体(生検・細胞診・手術標本・胸水)および喀痰における凍結組織検体、パラフィン包埋検体などが使用できる。パラフィン包埋検体は、アルコール固定したものやホルマリン固定したものが含まれる。特に本発明の方法では、微量な組織のパラフィン包埋検体でもEML4−ALK融合遺伝子が検出可能であるので好ましい。
【0019】
前記生体試料としては、体細胞が含まれていればよい。個体から単離された組織または液体の試料を使用することができ、たとえば血液、腫瘍生検、髄液、胸腔内液、呼吸器、唾液、細胞(血液細胞を含むが、これらに限定されるわけではない)、腫瘍、器官、さらにはインビトロ細胞培養成分の試料を含む(しかし、これらに限定されるわけではない)。好ましくは、侵襲性の腫瘍生検による組織が簡便に使用できるので良い。
【0020】
前記試料から核酸分子を調製する方法としては、当技術分野において周知の任意の多くの手順を使用することができる。
【0021】
本発明で対象となる疾患は、EML4遺伝子の一部とALK遺伝子の一部が融合して生成した「EML4−ALK融合遺伝子」と腫瘍形成に相関が認められる疾患であれば限定されないが、特に、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント5b、バリアント6、バリアント7と相関が認められる疾患として肺癌が挙げられる。
【0022】
このような疾患には、ALKチロシンキナーゼ阻害活性を有する阻害剤(ALK阻害剤)が治療薬として使用することができる。ALK阻害剤としては、PF−02341066、TAE684などが挙げられる。薬効を示す物質としては、低分子化合物でも良いし、タンパク質(特には抗体)でも良い。本発明によるEML4−ALK融合遺伝子の検出方法を利用して該遺伝子の有無を判定することにより、前記ALK阻害剤の利用方針を決定することができる。
【0023】
「プローブ」という用語は、構造が異なる標的分子間を検出可能に区別することができる分子をいう。検出は、使用するプローブの型および標的分子の型に応じて、種々の異なる方法で達成することができる。したがって、たとえば、検出は、標的分子の活性レベルの識別に基づいてもよいが、好ましくは特異的結合の検出に基づく。このような特異的結合の例として、核酸プローブ・ハイブリダイゼーションを含む。
【0024】
本明細書に使用される「プライマー」という用語は、ポリヌクレオチドに対して相補的であるプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下に配置されたときに、相補鎖に沿ってポリヌクレオチド合成の開始位置として作用することができるオリゴヌクレオチドをいう。このような条件は、4つの異なるヌクレオチド三リン酸またはヌクレオシド類似体と、DNAポリメラーゼおよび/または逆転写酵素などの重合のための1つまたは複数の薬剤とが、適切な緩衝液(「緩衝液」は、補因子であるか、またはpH、イオン強度などに影響を及ぼす置換分を含む。)中に、かつ適切な温度にて存在することを含む。プライマーは、ポリメラーゼのための薬剤の存在下においても伸張産物の合成をプライムするほど十分に長くなければならない。典型的なプライマーは、少なくとも約5ヌクレオチドの長さの、標的配列に対して実質的に相補的な配列を含むが、いくらか長いプライマーが好ましい。通常、プライマーは、約15〜26ヌクレオチドを含むが、より長いプライマーを使用してもよい。
【0025】
プライマーは、増幅される特異的配列である標的配列に対して実質的に相補的な配列であって、プライマーがアニールすることができる配列を常に含む。プライマーは、任意に、付加配列を含んでいてもよい。付加配列は、後述するMassARRAYシステムでの測定に必要な分析用の配列や、その他、測定に必要な配列を適宜付加することができる。これらのプライマーの設計は、公知のプライマー設計ソフト(例えば、Primer3:NCBI提供)を使用し、測定法に合わせて適宜行うことができる。
【0026】
本発明では、損傷の激しい生体試料から、目的の遺伝子領域を増幅可能な増幅用プライマーを使用する。また、高感度に目的の遺伝子を検出するため、該増幅用プライマーで増幅された増幅産物を鋳型として、伸長用プライマーを使用することができる。本発明の伸長用プライマーは、プローブとしても使用することができる。
【0027】
本発明のEML4−ALK融合遺伝子の有無の検出には、多数の公知の解析手順を使用することができる。一般に、融合遺伝子の有無の検出は、増幅反応および所望によりシグナル発生系を必要とする。表1は、変異検出技術を列挙しており、中にはPCRに基くものもある。これらは、表2に挙げたシグナル発生系と組合わせて使用することもできる。また、表3に、その他の増幅技術を列挙する。融合遺伝子の多くの現行検出方法については、Nollau et al., Clin. Chem. 43, 1114-1120 (1997)および標準テキストブック、例えばLaboratory Protocols for Mutation Detection、U.Landegren編、オックスフォード・ユニバーシティー・プレス(1996)およびPCR、Newton & Grahamによる第2版、BIOS サイエンティフィック・パブリッシャーズ・リミテッド(1997)により概説されている。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
好ましい変異検出技術には、電気泳動法、MassARRAY法、オリゴヌクレオチドアレイ(DNAチップ)法、DNA配列決定法、ARMS(登録商標)、ALEX(登録商標)、COPS、Taqman、PNA−LNA PCR clamp法、分子ビーコン、RFLP、および制限部位に基くPCRおよびFRET技術がある。MassARRAY法が特に好ましい方法である。
【0032】
以下に、いくつかの検査方法について例示する。
【0033】
前記検査方法において、EML4−ALK融合遺伝子に生じた融合点の検出は、例えば、被検者のEML4−ALK融合遺伝子の塩基配列を直接決定することにより行うことができる。この方法においてはまず、被検者から得られた生体試料より、DNA試料を調製する。これらの試料は、例えば、組織または細胞から抽出したRNAを基に調製することができる。
【0034】
本方法においては、次いで、前記DNA試料を用いて、EML4−ALK融合遺伝子における融合点を含むDNAを単離する。該DNAの単離は、ホルマリン固定パラフィン包埋検体のような核酸に損傷がある検体でもEML4−ALK融合遺伝子における融合点を含む核酸配列を増幅可能な核酸配列にハイブリダイズするプライマーを用いて、前記調製したDNA試料を鋳型としたPCR等によって行うことも可能である。本方法においては、次いで、単離したDNAの塩基配列の大きさを決定する。単離したDNAの塩基配列の大きさ決定は、当業者に公知の方法で行うことができる。
【0035】
本発明で使用可能なプライマーとしては、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント1の増幅用プライマーとして配列番号11と配列番号15の組合せ(AB274722.1における第1742〜1779番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント2の増幅用プライマーとして配列番号20と配列番号18又は21の組合せ(AB275889.1における第2499〜2532番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aの増幅用プライマーとして配列番号23又は26と配列番号24の組合せ(AB374361.1における第711〜743番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント3bの増幅用プライマーとして配列番号32と配列番号33の組合せ(AB374362.1における第712〜787番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント4の増幅用プライマーとして配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せ(AB374363.1における第1695〜1723番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント5aの増幅用プライマーとして配列番号41と配列番号45の組合せ(AB374364.1における第252〜295番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント5bの増幅用プライマーとして配列番号47と配列番号48の組合せ(AB374365.1における第252〜279番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント6の増幅用プライマーとして配列番号50と配列番号51の組合せ(AB462411.1における第1540〜1560番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント7の増幅用プライマーとして配列番号56と配列番号54の組合せ(AB462412.1における第1655〜1715番塩基)を使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する増幅用プライマーが挙げられ、より具体的には、実施例で使用した各プライマーセット1又は2を挙げることができる。なお、各組合せの直後に記載した括弧内の塩基番号で規定される塩基配列は、各プライマーセットで増幅される塩基配列(但し、プライマー配列に対応する配列を除く)である。
【0036】
また、コントロールとして、GeneBankに野生型として登録されているALK遺伝子の配列(NM_004304.3)あるいはEML4遺伝子(NM_019063.3)を増幅するための増幅用プライマーが使用できる。例えば、ALK遺伝子の増幅用プライマーとして配列番号59と配列番号60の組合せ(NM_004304.3の第4072〜4099番塩基)、または、配列番号62と配列番号63の組合せ(NM_004304.3の第4023〜4062番塩基)を使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する増幅用プライマーが挙げられる(図21)。
【0037】
なお、本明細書において、「或るプライマーセットを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する」とは、増幅対象遺伝子の塩基配列において、前記プライマーセットで増幅される塩基配列〔プライマー配列(但し、プライマー配列と増幅対象遺伝子との重複または相補配列部分に限り、例えば、付加的ランダム配列部分は含まない)に対応する配列を含む〕の全長又はその一部を増幅することを意味する。
【0038】
まず、被検者からDNA試料を調製する。次いで、調製したDNA試料を前記と同様な増幅プライマーで増幅し、DNAを単離する。次いで、単離されたDNA断片をその大きさに応じて分離する。次いで、検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する。ALK遺伝子とEML4遺伝子は融合していなければ同一のRNA上には存在しないため、本発明の方法によっては検出されない。よって、目的の融合遺伝子の有無は、目的の大きさのDNA断片が得られたか否かで判断することができる。
【0039】
本発明の検査方法は、前記の如く直接被検者由来のDNAの塩基配列の大きさを決定する方法以外に、融合遺伝子の検出が可能な種々の方法によって行うことができる。例えば、以下のような方法を挙げることができる。
【0040】
前記の方法では、煩雑であったり、多数の検体を試験したりすることが難しい。また、PCR法による得られたDNA断片の大きさによる同定方法では、複数のEML4−ALK融合遺伝子のバリアントを検討する場合、増幅可能な領域の長さが狭いためお互いを見分けることが難しい場合がある。よって、融合点を直接検出するような方法が好ましい。
【0041】
この方法の例としては、一塩基伸長反応が挙げられる。一塩基伸長反応とは、非ラベルオリゴヌクレオチドプライマーを調べたい塩基位置直前のすぐ隣にアニーリングさせ、その3’末端を一分子のddNTPによって伸長させる。反応液中にはdNTPが含まれないため、目的の塩基に相補的な部位のみが伸長されることになる。このDNAフラグメントを、遺伝子解析システムで解析、検出する方法である。この方法を利用した測定法としてMassARRAYシステム(シーケノム社)が挙げられる。
【0042】
MassARRAYシステムによるEML4−ALK融合遺伝子の検出について説明する。まず、被検者からDNA試料を調製し、次いで、調製したDNA試料を前記と同様な増幅用プライマーで増幅し、DNAを単離する。増幅用プライマーとしては、前記で挙げた増幅用プライマーを使用することができる。次いで、この増幅産物を鋳型として、伸長用プライマーにより一塩基伸長反応を行い、得られた物質の質量によって伸長された塩基を決定する。伸長用プライマーはEML4−ALK融合遺伝子の融合点を検出できるように、該融合点を含む領域に設計することが好ましい。
【0043】
ALK遺伝子とEML4遺伝子は融合していない場合は同一のRNA上には存在しないため、増幅用プライマーで増幅されず、伸長用プライマーでの伸長もされないため、本発明の方法によっては検出されない。EML4−ALK融合遺伝子が存在している場合には、増幅用プライマーで増幅でき、かつ、融合点を含む伸長プライマーで伸長されるので、精度良くEML4−ALK融合遺伝子の有無を判定することができる。
【0044】
また、EML4−ALK融合遺伝子と相補的な配列の5’端に約10塩基のランダムな配列を付加することで、PCR増幅産物が質量分析可能な範囲外となり、一塩基伸長反応産物を特異的に検出することができる。これら増幅用プライマーや伸長用プライマーは、Assay Designer (シーケノム社)によって設計することができる。
【0045】
また、各々のバリアントを特異的に検出できるように、増幅用プライマー及び伸長用プライマーを検討することで、マルチプレックスPCRによる解析も可能である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
《実施例1:材料及びEML4−ALK融合遺伝子の検出方法》
1.鋳型DNAの構築
EML4−ALKバリアント1検出のための鋳型DNAとして、該バリアント1(配列番号1)全長を含むベクターであるpDNR-dual donor vector/EML4-ALKバリアント1を使用した(近畿大学医学部腫瘍内科より供与、pDNR-dual donor vectorはクロンテック社)。EML4−ALKバリアント3b(配列番号4)検出のための鋳型DNAとして、該バリアント3b全長を含むベクターであるpcDNA3.1(+)/EML4-ALKバリアント3bを使用した(近畿大学医学部腫瘍内科より供与)。EML4−ALKバリアント2(配列番号2)、EML4−ALKバリアント3a(配列番号3)、EML4−ALKバリアント4(配列番号5)、EML4−ALKバリアント5a(配列番号6)、EML4−ALKバリアント5b(配列番号7)、EML4−ALKバリアント6(配列番号8)、EML4−ALKバリアント7(配列番号9)の検出のための鋳型DNAは、In fusionシステム(クロンテック社)を用いて、各々融合ポイントを挟む約1,000bpのDNA配列をpcDNA3.1(+)(インビトロジェン社)に導入したプラスミドを作製、使用した。
【0048】
ALKとしては、野生型ALKを発現するヒト胃がん細胞株であるMKN1細胞(JCRB細胞バンクより入手)より抽出したRNAをcDNAにリバースしたcDNAを鋳型として、ALK検出のための融合ポイントをはさむ約1,000bpのDNA配列(配列番号10)をTAクローニングにより導入したプラスミドを作製、使用した。ALK検出のための融合ポイントとは、便宜的にエクソン19とエクソン20が接する部位を意味する。
【0049】
2.試料と鋳型の抽出方法
細胞株における融合遺伝子発現株および非発現株として、ヒト肺がん細胞株であるNCI−H3122(EML4−ALK/バリアント1遺伝子発現株:近畿大学医学部腫瘍内科より入手)及びNCI−H2228(EML4−ALK/バリアント3a及び3b遺伝子発現株:近畿大学医学部腫瘍内科(あるいはATCC)より入手)、ヒト胃がん細胞株であるMKN1(野生型ALK発現株:JCRB細胞バンクより入手)を用いた。これらの細胞株は、定法に従って培養した。
【0050】
本測定系における臨床検体の実例として、肺がん患者のホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いた。ホルマリン固定パラフィン包埋切片は、定法に従って作製した。
【0051】
細胞株からのRNA抽出にはRNeasy Plus Mini Kit(キアゲン社)、パラフィン包埋切片からのRNA抽出にはRNeasy FFPE Kit(キアゲン社)を用いた。抽出したRNAは、NanoDrop2000(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)により定量し、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(アプライド・バイオシステムズ社)により逆転写反応を行い、鋳型DNAを調製した。調製された鋳型DNAは、使用するまで−80℃で保存した。
【0052】
3.EML4−ALK融合遺伝子の検出方法
EML4−ALK融合遺伝子及び野生型ALK遺伝子の検出は、MALDI−TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型)質量分析装置を用いたMassARRAYシステム(シーケノム社)により行った。検出対象とする遺伝子は、9種の融合遺伝子(バリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント6、及びバリアント7)並びにALKの10種である。各バリアントの融合ポイントを含む特定領域をPCRによって増幅した後、融合ポイントを含む領域に伸長用プライマーをハイブリダイズし、一塩基伸長反応を行った。一塩基伸長反応により生成されたDNA断片をマトリックスチップに塗布し、MALDI−TOF質量分析計によってDNA断片の質量数から解析し、検出塩基を決定することで、測定対象の遺伝子を同定した。なお、ALKの検出のためには、融合点を含まず、融合遺伝子が有していないエクソン上(エクソン19)にもプライマーを設計した。
【0053】
検出反応は、iPLEX(TM) Gold(シーケノム社)を用い、プロトコールに準拠して行った。PCR反応に用いるプライマー及び一塩基伸長反応用プライマーを表4にまとめて示す。表4に示すフォワードプライマー及びリバースプライマーは、配列番号32及び56を除いて、いずれも5’端に、増幅対象塩基配列とは無関係な10塩基からなるランダム配列が付加されている。プライマーはSigma Genosys社で合成した。表4に挙げたプライマーは、まず、Assay Designer(シーケノム社)に従って、融合点を含んで増幅可能なプライマーと、一塩基伸長反応可能なプライマーの150個の候補を得、次に、特異的な増幅が行えるか、及び、微量な試料でも検出可能かを検討して決定した。
【0054】
【表4】
【0055】
上述の測定条件において検出される塩基を表5に示す。
【0056】
【表5】
【0057】
《実施例2:プラスミドを用いた各EML4−ALK融合遺伝子バリアントの検出の確認》
実施例1で調製したプラスミドDNAの0.1ngを用いて、野生型ALK遺伝子およびEML4−ALK融合遺伝子が、実施例1に示した方法によって検出可能か検討した。検討した測定条件は表5に示すとおりである。
【0058】
検出結果(各マススペクトル)を図1に示す。図1において、遺伝子名の後の小括弧内の数字は、セット名(セット1又はセット2のいずれを使用したか)を示す。また、横軸及び縦軸の記載は省略したが、横軸は質量(mass)を示し、縦軸は強度(intensity)を示す。検出塩基がT、G、C、Aである場合の一例として、図1に示すALK(1)、Variant1(1)、Variant3a(1)、Variant1(2)を、それぞれ、図2〜図5に示す。各マススペクトル(右側に行くほど高質量)において、右側の2本の点線は、それぞれ、一塩基伸長した塩基の種類によって表れるピークの位置を示しており、例えば、ALK(1)ではT(左側)及びA(右側)である場合の各ピークの位置を示しており、以下、同様に、Variant1(1)ではG(左側)及びC(右側)、Variant3a(1)ではG(左側)及びC(右側)、Variant1(2)ではT(左側)及びA(右側)である場合の各ピークの位置を示している。なお、各マススペクトルの左端の点線は、一塩基伸長が起こらなかった場合に表れるピークの位置を示す。その結果、作製したプライマーを使用して、全ての測定条件で野生型ALK遺伝子およびEML4−ALK融合遺伝子が同定できた。
【0059】
《実施例3:細胞を用いたEML4−ALK融合遺伝子バリアント1及びEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出》
実施例1で調製した鋳型cDNAの1ngを用いて、野生型ALK遺伝子およびEML4−ALK融合遺伝子が、実施例1に示した方法によって検出可能か検討した。検討した測定条件は、ヒト肺がん細胞株であるNCI−H3122(EML4−ALK/バリアント1遺伝子発現株)でEML4−ALK/バリアント1遺伝子が同定可能か、NCI−H2228(EML4−ALK/バリアント3a遺伝子及び3b遺伝子発現株)でEML4−ALK/バリアント3a遺伝子が同定可能か、及びヒト胃がん細胞株であるMKN1(野生型ALK遺伝子発現株)で野生型ALK遺伝子が同定可能かである。
【0060】
その結果、作製したプライマーセットVariant1(2)、すなわち、表4及び表5に記載のEML4−ALKバリアント1用プライマーセットのセット2を使用して、NCI−H3122においてEML4−ALK/バリアント1遺伝子を同定することができた。また、Variant3a(2)、すなわち、表4及び表5に記載のEML4−ALKバリアント3a用プライマーセットのセット2を使用して、NCI−H2228においてEML4−ALK/バリアント3a遺伝子を同定することができた。また、ALK(2)、すなわち、表4及び表5に記載のALK用プライマーセットのセット2を使用して、MKN1において野生型ALK遺伝子を同定することができた。一方、MKN1において、EML4−ALK/バリアント3a遺伝子測定条件で該遺伝子を検出できないことを確認した。なお、セット2の代わりにセット1を用いた場合も、同様の結果が得られた。一例として、Variant3a(2)を用いてMKN1を測定した結果を、図6に示す。
【0061】
《実施例4:臨床検体におけるEML4−ALK融合遺伝子の検出》
実施例1に従って、肺がん患者のホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)からmRNAを抽出し鋳型cDNAを調製した。そのcDNA 4ngを用いて、EML4−ALK融合遺伝子が、実施例1に示した方法によって検出可能か検討した。検討した条件は以下のように、EML4−ALK融合遺伝子バリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント5b、バリアント6、バリアント7を検出可能な条件で行った。
【0062】
その結果、EML4−ALK融合遺伝子バリアント3aを検出した。EML4−ALK融合遺伝子バリアント3aが検出されたことより、この肺がん患者はEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aを保有することが同定された。
【0063】
《実施例5:臨床検体のPCR増幅産物の配列解析》
実施例4で得られた、MassARRAYシステムの増幅反応で得られたPCR増幅産物の配列解析を行った。前記PCR増幅産物を、TOPO TA Cloning Kit(インビトロジェン社)によりサブクローニングし、得られた複数のシングルコロニーの挿入配列をダイレクトシークエンスにて解析した。その結果、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aと同一であった。このことから、使用した臨床検体は、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aを有することが確認できた。
【0064】
《実施例6:EML4−ALK融合遺伝子の検出感度の検討1》
実施例1に従ったMassARRAYシステムによるEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出感度を、PCR法と比較した。PCRの結果としてはMassARRAYシステムの増幅工程で得られた増幅産物を使用した。PCRによる増幅産物の確認はバイオアナライザー(アジレント・テクノロジー)で行った。
【0065】
プラスミド(pcDNA3.1(+)/EML4-ALKバリアント3a)DNA 1ng、NCI−H2228 DNA 4ng、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)DNA 10ngを使用し、PCR増幅法でもMassARRAYシステムでもEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aが検出できた。PCR増幅法の結果を図7に、MassARRAYシステムの結果を図8に、それぞれ示す。PCR増幅法は、プラスミド、細胞株(H2228)、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)の結果を、MassARRAYシステムはホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)の結果を示した。
【0066】
次に、プラスミド(pcDNA3.1(+)/EML4-ALKバリアント3a)DNA 0.1ng、NCI−H2228 DNA 0.4ng、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)DNA 1ngでも同じように検討した。その結果、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)を使用したEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出は、PCR増幅法では確認できなかったが、MassARRAYシステムでは検出された。PCR増幅法の結果を図9に、MassARRAYシステムの結果を図10に、それぞれ示す。PCR増幅法は、プラスミド、細胞株(H2228)、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)、MassARRAYシステムはホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)の結果を示した。
【0067】
ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)は比較的入手しやすい臨床検体であるが、採取量はわずかであり貴重な試料である。以上より、微量な試料を対象とした場合にも、MassARRAYシステムを使用することにより、EML4−ALK融合遺伝子を検出可能となった。
【0068】
《実施例7:EML4−ALK融合遺伝子の検出感度の検討2》
臨床検体では、多量の正常細胞中に微量の異常細胞が混合している状態で存在している。そのような共雑物が混合している場合でも、目的のEML4−ALK融合遺伝子が検出可能か検討した。
【0069】
実施例3と同様に、細胞株中のEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aを検出可能か検討した。具体的には、MKN1とNCI−H2228の鋳型DNAを0:1(w/w)、1:0(w/w)、1:1(w/w)、9:1(w/w)、99:1(w/w)の比率で混合し、その合計4ngを使用してEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出を検討した。
【0070】
その結果、いずれの条件でもEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aを明確に検出することができた。このことから、この本方法によって、精度良くEML4−ALK融合遺伝子を検出可能なことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
肺癌患者から比較的入手可能なパラフィン包埋切片において、高感度且つ高精度に、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント5b、バリアント6、バリアント7の存在を検出することが可能となり、迅速且つ正確にALK阻害剤の有効性を診断することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0072】
配列表の配列番号11〜64の各配列で表される塩基配列は、プライマー配列である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、EML4−ALK融合遺伝子の高感度な検出方法、検出用プライマー、およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
EML4−ALK融合遺伝子は、第2染色体上のEML4(echinoderm microtubule associated protein like 4)のN末端とALK(anaplastic lymphoma receptor tyrosine kinase)のC末端が融合した産物である。ALKは受容体型チロシンキナーゼであるが、EML4との融合により活性体となり癌化能を示す(特許文献1、特許文献2)。EML4−ALK融合遺伝子発現細胞ではALKの活性化が認められ、その細胞増殖抑制にALK阻害剤が有効であることが明らかとなっている。すなわち、EML4−ALK融合遺伝子はALK阻害剤の感受性規定因子であるといえる。EML4−ALK融合遺伝子は、肺癌腫瘍における発現が認められており、その発現頻度は約5%といわれている。
【0003】
現在、癌組織からのEML4−ALK融合遺伝子の検出には、凍結検体に対する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法による定量法が報告されている(非特許文献1)が、この方法はEML4とALKの融合点を含んだ約200bp〜約1300bpを増幅する必要があるため、核酸が分解あるいは劣化したようなパラフィン包埋検体での測定には適応できていない。しかし、肺癌においては、生体組織の採取は困難であり、比較的入手可能なパラフィン包埋検体を用いた解析が望ましい。パラフィン包埋検体に対するEML4−ALK融合遺伝子の検出法としては、免疫組織染色法や蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法が用いられている。しかしこれらの方法では、検出感度が低いこと、融合点が近いバリアントを検出する場合には判別が難しいことなどから、パラフィン包埋検体を用いた、更に高感度且つ高精度な、EML4−ALK融合遺伝子の検出法の構築が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−295444号公報
【特許文献2】特開2010−501175号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Clin Cancer Res 2008;14:6618−24.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、パラフィン包埋検体のような検体(核酸、特にはmRNA)に損傷があるような微量の試料において、EML4−ALK融合遺伝子を高感度且つ高精度に検出する方法、該方法に使用するプライマーおよびキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記に挙げるEML4−ALK融合遺伝子の融合点を含む約100bp以下の領域を増幅可能なプライマーを使用し、例えば、一塩基伸長反応を利用する質量分析法(MassARRAY法)によって、該EML4−ALK融合遺伝子の有無を検出可能であることを見出した。すなわち、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント5b、バリアント6、バリアント7の各々について、EML4とALK遺伝子の各融合点を含む約100bp以下の領域を増幅可能な増幅用プライマーを用いて該融合点を増幅することによって、パラフィン包埋切片において該融合遺伝子の全てを検出することを可能にした。更に、その増幅産物を鋳型として、該融合点にハイブリダイズ可能な相補的なプライマーを使用する一塩基伸長反応を行うことによって、高感度且つ高精度に全ての該融合遺伝子の存在を検出することを可能にした。
【0008】
本発明は、
[1](A)試料から鋳型DNAを調製する工程、
(B)前記鋳型DNAに対し、融合点を含む領域を増幅する増幅用プライマーの組合せであって、配列番号11と配列番号15の組合せ、配列番号20と配列番号18又は21の組合せ、配列番号23又は26と配列番号24の組合せ、配列番号32と配列番号33の組合せ、配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せ、配列番号41と配列番号45の組合せ、配列番号47と配列番号48の組合せ、配列番号50と配列番号51の組合せ、配列番号56と配列番号54の組合せから選択される少なくとも一つの該増幅用プライマーの組合せを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する工程
を含む、EML4−ALK融合遺伝子を検出する方法;
[2]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号11と配列番号15の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント1を検出する方法;
[3]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号20と配列番号18又は21の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント2を検出する方法;
[4]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号23又は26と配列番号24の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aを検出する方法;
[5]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号32と配列番号33の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3bを検出する方法;
[6]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント4を検出する方法;
[7]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号41と配列番号45の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5aを検出する方法;
[8]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号47と配列番号48の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5bを検出する方法;
[9]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号50と配列番号51の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント6を検出する方法;
[10]前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号56と配列番号54の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント7を検出する方法;
[11](a)融合点を含む領域を増幅する増幅用プライマーの組合せであって、配列番号11と配列番号15の組合せ、配列番号20と配列番号18又は21の組合せ、配列番号23又は26と配列番号24の組合せ、配列番号32と配列番号33の組合せ、配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せ、配列番号41と配列番号45の組合せ、配列番号47と配列番号48の組合せ、配列番号50と配列番号51の組合せ、配列番号56と配列番号54の組合せから選択される少なくとも一つの該増幅用プライマーの組合せを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する工程、
(b)前記増幅産物を鋳型として、該融合点を挟む領域に相補的な検出プライマーを使用して一塩基伸長反応を行う工程
を含む、EML4−ALK融合遺伝子を検出する方法;
[12]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号11と配列番号15の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号13及び/又は配列番号16であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント1を検出する方法;
[13]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号20と配列番号18又は21の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号19及び/又は配列番号22であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント2を検出する方法;
[14]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号23又は26と配列番号24の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号25及び/又は配列番号28であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aを検出する方法;
[15]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号32と配列番号33の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号31及び/又は配列番号34であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3bを検出する方法;
[16]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号37及び/又は配列番号40であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント4を検出する方法;
[17]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号41と配列番号45の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号43及び/又は配列番号46であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5aを検出する方法;
[18]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号47と配列番号48の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号49であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5bを検出する方法;
[19]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号50と配列番号51の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号52であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント6を検出する方法;
[20]前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号56と配列番号54の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号55及び/又は配列番号58であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント7を検出する方法;
[21]配列番号11と12の組合せ、配列番号14と15の組合せ、配列番号17と18の組合せ、配列番号20と21の組合せ、配列番号23と24の組合せ、配列番号26と27の組合せ、配列番号29と30の組合せ、配列番号32と33の組合せ、配列番号35と36の組合せ、配列番号38と39の組合せ、配列番号41と42の組合せ、配列番号44と45の組合せ、配列番号47と48の組合せ、配列番号50と51の組合せ、配列番号53と54の組合せ、配列番号56と57の組合せから選択される、プライマーセット;
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高感度且つ高精度に、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント5b、バリアント6、バリアント7の存在を検出することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】プラスミドを用いた各EML4−ALK融合遺伝子バリアントの検出結果を示すマススペクトルである。
【図2】図1に示すマススペクトルの内、ALK(1)を用いた場合(検出塩基がT)の結果を示すマススペクトルである。
【図3】図1に示すマススペクトルの内、Variant1(1)を用いた場合(検出塩基がG)の結果を示すマススペクトルである。
【図4】図1に示すマススペクトルの内、Variant3a(1)を用いた場合(検出塩基がC)の結果を示すマススペクトルである。
【図5】図1に示すマススペクトルの内、Variant1(2)を用いた場合(検出塩基がA)の結果を示すマススペクトルである。
【図6】細胞株を用いたEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出結果の一例〔Variant3a(2);MKN1(野生型ALK遺伝子発現株)〕を示すマススペクトルである。
【図7】検出感度を比較するために(図8参照)、プラスミド、細胞株(H2228)、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)における、PCR増幅法によるEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出結果を示す電気泳動パターンである。
【図8】図7で実施したPCR増幅法における検出感度と比較するために、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)における、MassARRAYシステムによるEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出結果を示すマススペクトルである。
【図9】図7で使用したサンプルの1/10量を使用して、プラスミド、細胞株(H2228)、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)における、PCR増幅法によるEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出結果を示す電気泳動パターンである。
【図10】図8で使用したサンプルの1/10量を使用して、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)における、MassARRAYシステムによるEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出結果を示すマススペクトルである。
【図11】各EML4−ALK融合遺伝子バリアントの構造を模式的に示す説明図である。
【図12】EML4−ALK融合遺伝子バリアント1の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号1)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマー(フォワードプライマー、リバースプライマー、伸長用プライマー。以下、同じ)の標的配列を示す説明図である。
【図13】EML4−ALK融合遺伝子バリアント2の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号2)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図14】EML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの融合点およびその近傍領域の配列(配列番号3)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図15】EML4−ALK融合遺伝子バリアント3bの融合点およびその近傍領域の配列(配列番号4)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図16】EML4−ALK融合遺伝子バリアント4の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号5)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図17】EML4−ALK融合遺伝子バリアント5aの融合点およびその近傍領域の配列(配列番号6)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図18】EML4−ALK融合遺伝子バリアント5bの融合点およびその近傍領域の配列(配列番号7)と、表4に示すプライマーセット1に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図19】EML4−ALK融合遺伝子バリアント6の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号8)と、表4に示すプライマーセット1に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図20】EML4−ALK融合遺伝子バリアント7の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号9)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【図21】野生型ALK遺伝子の融合点およびその近傍領域の配列(配列番号10)と、表4に示すプライマーセット1及び2に含まれる各プライマーの標的配列を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、DNA、RNA、核酸、遺伝子、遺伝子発現、コード、相補、鋳型、プライマー、ハイブリダイゼーション、PCR等の用語の定義に関しては、現在、分子生物学、遺伝学、遺伝子工学等で広く一般的に使用されている用語と同じ意味である。
【0012】
本明細書における遺伝子操作技術は特に断りのない限り「Molecular Cloning」 Sambrook, Jら、ColdSpring Harbor Laboratory Press、1989年等の公知技術に従って実施可能である。
【0013】
本明細書において、核酸とは、DNA又はRNA、天然のものであってもよく、合成されたものであってもよい。天然の核酸として、例えば、生物から回収されたゲノムDNA、mRNA、tRNA、rRNA、hnRNA等がある。また、合成された核酸として、β−シアノエチルホスフォロアミダイト法、DNA固相合成法等の公知の化学的合成法により合成されたDNAや、PCR等の公知の核酸増幅法により合成された核酸、逆転写反応により合成されたcDNA等がある。
【0014】
本明細書において「野生型遺伝子」とは、融合を生じる前の遺伝子を言う。具体的には、NCBIのGene Bankのaccession Numberで示す、NM_019063.3のEML4遺伝子、NM_004304.3のALK遺伝子である。
【0015】
本明細書において「EML4-ALK融合遺伝子」とは、EML4遺伝子の一部とALK遺伝子の一部が融合し、腫瘍形成能を有するようになった遺伝子である(図11)。具体的には、NCBIのGene Bankのaccession Numberで示す、
・EML4遺伝子のエクソン1−13とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント1」(AB274722.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−20とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント2」(AB275889.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−6とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント3a」(AB374361.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−6とクリプティックエクソン(Additional cryptic exon)とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント3b」(AB374362.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−14と未知配列とALK遺伝子のエクソン20が逆の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント4」(AB374363.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−2とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント5a」(AB374364.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−2とALK遺伝子のイントロン19の一部とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント5b」(AB374365.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−13と未知配列とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント6」(AB462411.1:図11)、
・EML4遺伝子のエクソン1−14とALK遺伝子のエクソン20が正の向きで融合した「EML4−ALK融合遺伝子バリアント7」(AB462412.1:図11)
が含まれる。
【0016】
本明細書における「融合点」とは、前記EML4遺伝子とALK遺伝子の連結した部位を示す。EML4−ALK融合遺伝子バリアント1の融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の接する部位であり(図12)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント2の融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の接する部位であり(図13)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の接する部位であり(図14)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント3bの融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の間にクリプティックエクソンが挿入されているので、EML4遺伝子とクリプティックエクソンの接する部位あるいはALK遺伝子とクリプティックエクソンの接する部位であり(図15)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント4の融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の間に未知配列が挿入されているので、EML4遺伝子と未知配列の接する部位あるいはALK遺伝子と未知配列の接する部位であり(図16)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント5aの融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の接する部位であり(図17)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント5bの融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の間にALK遺伝子のイントロン19の一部が挿入されているので、EML4遺伝子とALK遺伝子のイントロン19の接する部位あるいはALK遺伝子とALK遺伝子のイントロン19の接する部位であり(図18)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント6の融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の間に未知配列が挿入されているので、EML4遺伝子と未知配列の接する部位あるいはALK遺伝子と未知配列の接する部位であり(図19)、EML4−ALK融合遺伝子バリアント7の融合点は、EML4遺伝子とALK遺伝子の接する部位である(図20)。
【0017】
前記融合遺伝子の調製方法としては、例えば、特開2008−295444号公報を参照して行うことができる。前記融合遺伝子を有する細胞あるいは組織、例えば、ヒト肺癌患者由来肺組織からmRNAを抽出する。次いで、このmRNAをランダムプライマー又はオリゴdTプライマーの存在下で、逆転写酵素反応を行い、第一鎖cDNAを合成することができる。得られた第一鎖cDNAを用い、目的遺伝子の一部の領域をはさんだ2種類のプライマーを用いてPCRに供し、前記融合遺伝子を得ることができる。また、本発明の実施例1に示すように、既にクローニングされているベクターから目的の領域を増幅し連結して融合遺伝子を作製することもできる。
【0018】
本発明で使用可能な生体試料は、EML4−ALK融合遺伝子が検出可能な限り、限定されないが、病理検体(生検・細胞診・手術標本・胸水)および喀痰における凍結組織検体、パラフィン包埋検体などが使用できる。パラフィン包埋検体は、アルコール固定したものやホルマリン固定したものが含まれる。特に本発明の方法では、微量な組織のパラフィン包埋検体でもEML4−ALK融合遺伝子が検出可能であるので好ましい。
【0019】
前記生体試料としては、体細胞が含まれていればよい。個体から単離された組織または液体の試料を使用することができ、たとえば血液、腫瘍生検、髄液、胸腔内液、呼吸器、唾液、細胞(血液細胞を含むが、これらに限定されるわけではない)、腫瘍、器官、さらにはインビトロ細胞培養成分の試料を含む(しかし、これらに限定されるわけではない)。好ましくは、侵襲性の腫瘍生検による組織が簡便に使用できるので良い。
【0020】
前記試料から核酸分子を調製する方法としては、当技術分野において周知の任意の多くの手順を使用することができる。
【0021】
本発明で対象となる疾患は、EML4遺伝子の一部とALK遺伝子の一部が融合して生成した「EML4−ALK融合遺伝子」と腫瘍形成に相関が認められる疾患であれば限定されないが、特に、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント5b、バリアント6、バリアント7と相関が認められる疾患として肺癌が挙げられる。
【0022】
このような疾患には、ALKチロシンキナーゼ阻害活性を有する阻害剤(ALK阻害剤)が治療薬として使用することができる。ALK阻害剤としては、PF−02341066、TAE684などが挙げられる。薬効を示す物質としては、低分子化合物でも良いし、タンパク質(特には抗体)でも良い。本発明によるEML4−ALK融合遺伝子の検出方法を利用して該遺伝子の有無を判定することにより、前記ALK阻害剤の利用方針を決定することができる。
【0023】
「プローブ」という用語は、構造が異なる標的分子間を検出可能に区別することができる分子をいう。検出は、使用するプローブの型および標的分子の型に応じて、種々の異なる方法で達成することができる。したがって、たとえば、検出は、標的分子の活性レベルの識別に基づいてもよいが、好ましくは特異的結合の検出に基づく。このような特異的結合の例として、核酸プローブ・ハイブリダイゼーションを含む。
【0024】
本明細書に使用される「プライマー」という用語は、ポリヌクレオチドに対して相補的であるプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下に配置されたときに、相補鎖に沿ってポリヌクレオチド合成の開始位置として作用することができるオリゴヌクレオチドをいう。このような条件は、4つの異なるヌクレオチド三リン酸またはヌクレオシド類似体と、DNAポリメラーゼおよび/または逆転写酵素などの重合のための1つまたは複数の薬剤とが、適切な緩衝液(「緩衝液」は、補因子であるか、またはpH、イオン強度などに影響を及ぼす置換分を含む。)中に、かつ適切な温度にて存在することを含む。プライマーは、ポリメラーゼのための薬剤の存在下においても伸張産物の合成をプライムするほど十分に長くなければならない。典型的なプライマーは、少なくとも約5ヌクレオチドの長さの、標的配列に対して実質的に相補的な配列を含むが、いくらか長いプライマーが好ましい。通常、プライマーは、約15〜26ヌクレオチドを含むが、より長いプライマーを使用してもよい。
【0025】
プライマーは、増幅される特異的配列である標的配列に対して実質的に相補的な配列であって、プライマーがアニールすることができる配列を常に含む。プライマーは、任意に、付加配列を含んでいてもよい。付加配列は、後述するMassARRAYシステムでの測定に必要な分析用の配列や、その他、測定に必要な配列を適宜付加することができる。これらのプライマーの設計は、公知のプライマー設計ソフト(例えば、Primer3:NCBI提供)を使用し、測定法に合わせて適宜行うことができる。
【0026】
本発明では、損傷の激しい生体試料から、目的の遺伝子領域を増幅可能な増幅用プライマーを使用する。また、高感度に目的の遺伝子を検出するため、該増幅用プライマーで増幅された増幅産物を鋳型として、伸長用プライマーを使用することができる。本発明の伸長用プライマーは、プローブとしても使用することができる。
【0027】
本発明のEML4−ALK融合遺伝子の有無の検出には、多数の公知の解析手順を使用することができる。一般に、融合遺伝子の有無の検出は、増幅反応および所望によりシグナル発生系を必要とする。表1は、変異検出技術を列挙しており、中にはPCRに基くものもある。これらは、表2に挙げたシグナル発生系と組合わせて使用することもできる。また、表3に、その他の増幅技術を列挙する。融合遺伝子の多くの現行検出方法については、Nollau et al., Clin. Chem. 43, 1114-1120 (1997)および標準テキストブック、例えばLaboratory Protocols for Mutation Detection、U.Landegren編、オックスフォード・ユニバーシティー・プレス(1996)およびPCR、Newton & Grahamによる第2版、BIOS サイエンティフィック・パブリッシャーズ・リミテッド(1997)により概説されている。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
好ましい変異検出技術には、電気泳動法、MassARRAY法、オリゴヌクレオチドアレイ(DNAチップ)法、DNA配列決定法、ARMS(登録商標)、ALEX(登録商標)、COPS、Taqman、PNA−LNA PCR clamp法、分子ビーコン、RFLP、および制限部位に基くPCRおよびFRET技術がある。MassARRAY法が特に好ましい方法である。
【0032】
以下に、いくつかの検査方法について例示する。
【0033】
前記検査方法において、EML4−ALK融合遺伝子に生じた融合点の検出は、例えば、被検者のEML4−ALK融合遺伝子の塩基配列を直接決定することにより行うことができる。この方法においてはまず、被検者から得られた生体試料より、DNA試料を調製する。これらの試料は、例えば、組織または細胞から抽出したRNAを基に調製することができる。
【0034】
本方法においては、次いで、前記DNA試料を用いて、EML4−ALK融合遺伝子における融合点を含むDNAを単離する。該DNAの単離は、ホルマリン固定パラフィン包埋検体のような核酸に損傷がある検体でもEML4−ALK融合遺伝子における融合点を含む核酸配列を増幅可能な核酸配列にハイブリダイズするプライマーを用いて、前記調製したDNA試料を鋳型としたPCR等によって行うことも可能である。本方法においては、次いで、単離したDNAの塩基配列の大きさを決定する。単離したDNAの塩基配列の大きさ決定は、当業者に公知の方法で行うことができる。
【0035】
本発明で使用可能なプライマーとしては、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント1の増幅用プライマーとして配列番号11と配列番号15の組合せ(AB274722.1における第1742〜1779番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント2の増幅用プライマーとして配列番号20と配列番号18又は21の組合せ(AB275889.1における第2499〜2532番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aの増幅用プライマーとして配列番号23又は26と配列番号24の組合せ(AB374361.1における第711〜743番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント3bの増幅用プライマーとして配列番号32と配列番号33の組合せ(AB374362.1における第712〜787番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント4の増幅用プライマーとして配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せ(AB374363.1における第1695〜1723番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント5aの増幅用プライマーとして配列番号41と配列番号45の組合せ(AB374364.1における第252〜295番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント5bの増幅用プライマーとして配列番号47と配列番号48の組合せ(AB374365.1における第252〜279番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント6の増幅用プライマーとして配列番号50と配列番号51の組合せ(AB462411.1における第1540〜1560番塩基)、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント7の増幅用プライマーとして配列番号56と配列番号54の組合せ(AB462412.1における第1655〜1715番塩基)を使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する増幅用プライマーが挙げられ、より具体的には、実施例で使用した各プライマーセット1又は2を挙げることができる。なお、各組合せの直後に記載した括弧内の塩基番号で規定される塩基配列は、各プライマーセットで増幅される塩基配列(但し、プライマー配列に対応する配列を除く)である。
【0036】
また、コントロールとして、GeneBankに野生型として登録されているALK遺伝子の配列(NM_004304.3)あるいはEML4遺伝子(NM_019063.3)を増幅するための増幅用プライマーが使用できる。例えば、ALK遺伝子の増幅用プライマーとして配列番号59と配列番号60の組合せ(NM_004304.3の第4072〜4099番塩基)、または、配列番号62と配列番号63の組合せ(NM_004304.3の第4023〜4062番塩基)を使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する増幅用プライマーが挙げられる(図21)。
【0037】
なお、本明細書において、「或るプライマーセットを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する」とは、増幅対象遺伝子の塩基配列において、前記プライマーセットで増幅される塩基配列〔プライマー配列(但し、プライマー配列と増幅対象遺伝子との重複または相補配列部分に限り、例えば、付加的ランダム配列部分は含まない)に対応する配列を含む〕の全長又はその一部を増幅することを意味する。
【0038】
まず、被検者からDNA試料を調製する。次いで、調製したDNA試料を前記と同様な増幅プライマーで増幅し、DNAを単離する。次いで、単離されたDNA断片をその大きさに応じて分離する。次いで、検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する。ALK遺伝子とEML4遺伝子は融合していなければ同一のRNA上には存在しないため、本発明の方法によっては検出されない。よって、目的の融合遺伝子の有無は、目的の大きさのDNA断片が得られたか否かで判断することができる。
【0039】
本発明の検査方法は、前記の如く直接被検者由来のDNAの塩基配列の大きさを決定する方法以外に、融合遺伝子の検出が可能な種々の方法によって行うことができる。例えば、以下のような方法を挙げることができる。
【0040】
前記の方法では、煩雑であったり、多数の検体を試験したりすることが難しい。また、PCR法による得られたDNA断片の大きさによる同定方法では、複数のEML4−ALK融合遺伝子のバリアントを検討する場合、増幅可能な領域の長さが狭いためお互いを見分けることが難しい場合がある。よって、融合点を直接検出するような方法が好ましい。
【0041】
この方法の例としては、一塩基伸長反応が挙げられる。一塩基伸長反応とは、非ラベルオリゴヌクレオチドプライマーを調べたい塩基位置直前のすぐ隣にアニーリングさせ、その3’末端を一分子のddNTPによって伸長させる。反応液中にはdNTPが含まれないため、目的の塩基に相補的な部位のみが伸長されることになる。このDNAフラグメントを、遺伝子解析システムで解析、検出する方法である。この方法を利用した測定法としてMassARRAYシステム(シーケノム社)が挙げられる。
【0042】
MassARRAYシステムによるEML4−ALK融合遺伝子の検出について説明する。まず、被検者からDNA試料を調製し、次いで、調製したDNA試料を前記と同様な増幅用プライマーで増幅し、DNAを単離する。増幅用プライマーとしては、前記で挙げた増幅用プライマーを使用することができる。次いで、この増幅産物を鋳型として、伸長用プライマーにより一塩基伸長反応を行い、得られた物質の質量によって伸長された塩基を決定する。伸長用プライマーはEML4−ALK融合遺伝子の融合点を検出できるように、該融合点を含む領域に設計することが好ましい。
【0043】
ALK遺伝子とEML4遺伝子は融合していない場合は同一のRNA上には存在しないため、増幅用プライマーで増幅されず、伸長用プライマーでの伸長もされないため、本発明の方法によっては検出されない。EML4−ALK融合遺伝子が存在している場合には、増幅用プライマーで増幅でき、かつ、融合点を含む伸長プライマーで伸長されるので、精度良くEML4−ALK融合遺伝子の有無を判定することができる。
【0044】
また、EML4−ALK融合遺伝子と相補的な配列の5’端に約10塩基のランダムな配列を付加することで、PCR増幅産物が質量分析可能な範囲外となり、一塩基伸長反応産物を特異的に検出することができる。これら増幅用プライマーや伸長用プライマーは、Assay Designer (シーケノム社)によって設計することができる。
【0045】
また、各々のバリアントを特異的に検出できるように、増幅用プライマー及び伸長用プライマーを検討することで、マルチプレックスPCRによる解析も可能である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
《実施例1:材料及びEML4−ALK融合遺伝子の検出方法》
1.鋳型DNAの構築
EML4−ALKバリアント1検出のための鋳型DNAとして、該バリアント1(配列番号1)全長を含むベクターであるpDNR-dual donor vector/EML4-ALKバリアント1を使用した(近畿大学医学部腫瘍内科より供与、pDNR-dual donor vectorはクロンテック社)。EML4−ALKバリアント3b(配列番号4)検出のための鋳型DNAとして、該バリアント3b全長を含むベクターであるpcDNA3.1(+)/EML4-ALKバリアント3bを使用した(近畿大学医学部腫瘍内科より供与)。EML4−ALKバリアント2(配列番号2)、EML4−ALKバリアント3a(配列番号3)、EML4−ALKバリアント4(配列番号5)、EML4−ALKバリアント5a(配列番号6)、EML4−ALKバリアント5b(配列番号7)、EML4−ALKバリアント6(配列番号8)、EML4−ALKバリアント7(配列番号9)の検出のための鋳型DNAは、In fusionシステム(クロンテック社)を用いて、各々融合ポイントを挟む約1,000bpのDNA配列をpcDNA3.1(+)(インビトロジェン社)に導入したプラスミドを作製、使用した。
【0048】
ALKとしては、野生型ALKを発現するヒト胃がん細胞株であるMKN1細胞(JCRB細胞バンクより入手)より抽出したRNAをcDNAにリバースしたcDNAを鋳型として、ALK検出のための融合ポイントをはさむ約1,000bpのDNA配列(配列番号10)をTAクローニングにより導入したプラスミドを作製、使用した。ALK検出のための融合ポイントとは、便宜的にエクソン19とエクソン20が接する部位を意味する。
【0049】
2.試料と鋳型の抽出方法
細胞株における融合遺伝子発現株および非発現株として、ヒト肺がん細胞株であるNCI−H3122(EML4−ALK/バリアント1遺伝子発現株:近畿大学医学部腫瘍内科より入手)及びNCI−H2228(EML4−ALK/バリアント3a及び3b遺伝子発現株:近畿大学医学部腫瘍内科(あるいはATCC)より入手)、ヒト胃がん細胞株であるMKN1(野生型ALK発現株:JCRB細胞バンクより入手)を用いた。これらの細胞株は、定法に従って培養した。
【0050】
本測定系における臨床検体の実例として、肺がん患者のホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いた。ホルマリン固定パラフィン包埋切片は、定法に従って作製した。
【0051】
細胞株からのRNA抽出にはRNeasy Plus Mini Kit(キアゲン社)、パラフィン包埋切片からのRNA抽出にはRNeasy FFPE Kit(キアゲン社)を用いた。抽出したRNAは、NanoDrop2000(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)により定量し、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(アプライド・バイオシステムズ社)により逆転写反応を行い、鋳型DNAを調製した。調製された鋳型DNAは、使用するまで−80℃で保存した。
【0052】
3.EML4−ALK融合遺伝子の検出方法
EML4−ALK融合遺伝子及び野生型ALK遺伝子の検出は、MALDI−TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型)質量分析装置を用いたMassARRAYシステム(シーケノム社)により行った。検出対象とする遺伝子は、9種の融合遺伝子(バリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント6、及びバリアント7)並びにALKの10種である。各バリアントの融合ポイントを含む特定領域をPCRによって増幅した後、融合ポイントを含む領域に伸長用プライマーをハイブリダイズし、一塩基伸長反応を行った。一塩基伸長反応により生成されたDNA断片をマトリックスチップに塗布し、MALDI−TOF質量分析計によってDNA断片の質量数から解析し、検出塩基を決定することで、測定対象の遺伝子を同定した。なお、ALKの検出のためには、融合点を含まず、融合遺伝子が有していないエクソン上(エクソン19)にもプライマーを設計した。
【0053】
検出反応は、iPLEX(TM) Gold(シーケノム社)を用い、プロトコールに準拠して行った。PCR反応に用いるプライマー及び一塩基伸長反応用プライマーを表4にまとめて示す。表4に示すフォワードプライマー及びリバースプライマーは、配列番号32及び56を除いて、いずれも5’端に、増幅対象塩基配列とは無関係な10塩基からなるランダム配列が付加されている。プライマーはSigma Genosys社で合成した。表4に挙げたプライマーは、まず、Assay Designer(シーケノム社)に従って、融合点を含んで増幅可能なプライマーと、一塩基伸長反応可能なプライマーの150個の候補を得、次に、特異的な増幅が行えるか、及び、微量な試料でも検出可能かを検討して決定した。
【0054】
【表4】
【0055】
上述の測定条件において検出される塩基を表5に示す。
【0056】
【表5】
【0057】
《実施例2:プラスミドを用いた各EML4−ALK融合遺伝子バリアントの検出の確認》
実施例1で調製したプラスミドDNAの0.1ngを用いて、野生型ALK遺伝子およびEML4−ALK融合遺伝子が、実施例1に示した方法によって検出可能か検討した。検討した測定条件は表5に示すとおりである。
【0058】
検出結果(各マススペクトル)を図1に示す。図1において、遺伝子名の後の小括弧内の数字は、セット名(セット1又はセット2のいずれを使用したか)を示す。また、横軸及び縦軸の記載は省略したが、横軸は質量(mass)を示し、縦軸は強度(intensity)を示す。検出塩基がT、G、C、Aである場合の一例として、図1に示すALK(1)、Variant1(1)、Variant3a(1)、Variant1(2)を、それぞれ、図2〜図5に示す。各マススペクトル(右側に行くほど高質量)において、右側の2本の点線は、それぞれ、一塩基伸長した塩基の種類によって表れるピークの位置を示しており、例えば、ALK(1)ではT(左側)及びA(右側)である場合の各ピークの位置を示しており、以下、同様に、Variant1(1)ではG(左側)及びC(右側)、Variant3a(1)ではG(左側)及びC(右側)、Variant1(2)ではT(左側)及びA(右側)である場合の各ピークの位置を示している。なお、各マススペクトルの左端の点線は、一塩基伸長が起こらなかった場合に表れるピークの位置を示す。その結果、作製したプライマーを使用して、全ての測定条件で野生型ALK遺伝子およびEML4−ALK融合遺伝子が同定できた。
【0059】
《実施例3:細胞を用いたEML4−ALK融合遺伝子バリアント1及びEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出》
実施例1で調製した鋳型cDNAの1ngを用いて、野生型ALK遺伝子およびEML4−ALK融合遺伝子が、実施例1に示した方法によって検出可能か検討した。検討した測定条件は、ヒト肺がん細胞株であるNCI−H3122(EML4−ALK/バリアント1遺伝子発現株)でEML4−ALK/バリアント1遺伝子が同定可能か、NCI−H2228(EML4−ALK/バリアント3a遺伝子及び3b遺伝子発現株)でEML4−ALK/バリアント3a遺伝子が同定可能か、及びヒト胃がん細胞株であるMKN1(野生型ALK遺伝子発現株)で野生型ALK遺伝子が同定可能かである。
【0060】
その結果、作製したプライマーセットVariant1(2)、すなわち、表4及び表5に記載のEML4−ALKバリアント1用プライマーセットのセット2を使用して、NCI−H3122においてEML4−ALK/バリアント1遺伝子を同定することができた。また、Variant3a(2)、すなわち、表4及び表5に記載のEML4−ALKバリアント3a用プライマーセットのセット2を使用して、NCI−H2228においてEML4−ALK/バリアント3a遺伝子を同定することができた。また、ALK(2)、すなわち、表4及び表5に記載のALK用プライマーセットのセット2を使用して、MKN1において野生型ALK遺伝子を同定することができた。一方、MKN1において、EML4−ALK/バリアント3a遺伝子測定条件で該遺伝子を検出できないことを確認した。なお、セット2の代わりにセット1を用いた場合も、同様の結果が得られた。一例として、Variant3a(2)を用いてMKN1を測定した結果を、図6に示す。
【0061】
《実施例4:臨床検体におけるEML4−ALK融合遺伝子の検出》
実施例1に従って、肺がん患者のホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)からmRNAを抽出し鋳型cDNAを調製した。そのcDNA 4ngを用いて、EML4−ALK融合遺伝子が、実施例1に示した方法によって検出可能か検討した。検討した条件は以下のように、EML4−ALK融合遺伝子バリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント5b、バリアント6、バリアント7を検出可能な条件で行った。
【0062】
その結果、EML4−ALK融合遺伝子バリアント3aを検出した。EML4−ALK融合遺伝子バリアント3aが検出されたことより、この肺がん患者はEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aを保有することが同定された。
【0063】
《実施例5:臨床検体のPCR増幅産物の配列解析》
実施例4で得られた、MassARRAYシステムの増幅反応で得られたPCR増幅産物の配列解析を行った。前記PCR増幅産物を、TOPO TA Cloning Kit(インビトロジェン社)によりサブクローニングし、得られた複数のシングルコロニーの挿入配列をダイレクトシークエンスにて解析した。その結果、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aと同一であった。このことから、使用した臨床検体は、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aを有することが確認できた。
【0064】
《実施例6:EML4−ALK融合遺伝子の検出感度の検討1》
実施例1に従ったMassARRAYシステムによるEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出感度を、PCR法と比較した。PCRの結果としてはMassARRAYシステムの増幅工程で得られた増幅産物を使用した。PCRによる増幅産物の確認はバイオアナライザー(アジレント・テクノロジー)で行った。
【0065】
プラスミド(pcDNA3.1(+)/EML4-ALKバリアント3a)DNA 1ng、NCI−H2228 DNA 4ng、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)DNA 10ngを使用し、PCR増幅法でもMassARRAYシステムでもEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aが検出できた。PCR増幅法の結果を図7に、MassARRAYシステムの結果を図8に、それぞれ示す。PCR増幅法は、プラスミド、細胞株(H2228)、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)の結果を、MassARRAYシステムはホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)の結果を示した。
【0066】
次に、プラスミド(pcDNA3.1(+)/EML4-ALKバリアント3a)DNA 0.1ng、NCI−H2228 DNA 0.4ng、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)DNA 1ngでも同じように検討した。その結果、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)を使用したEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出は、PCR増幅法では確認できなかったが、MassARRAYシステムでは検出された。PCR増幅法の結果を図9に、MassARRAYシステムの結果を図10に、それぞれ示す。PCR増幅法は、プラスミド、細胞株(H2228)、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)、MassARRAYシステムはホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)の結果を示した。
【0067】
ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)は比較的入手しやすい臨床検体であるが、採取量はわずかであり貴重な試料である。以上より、微量な試料を対象とした場合にも、MassARRAYシステムを使用することにより、EML4−ALK融合遺伝子を検出可能となった。
【0068】
《実施例7:EML4−ALK融合遺伝子の検出感度の検討2》
臨床検体では、多量の正常細胞中に微量の異常細胞が混合している状態で存在している。そのような共雑物が混合している場合でも、目的のEML4−ALK融合遺伝子が検出可能か検討した。
【0069】
実施例3と同様に、細胞株中のEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aを検出可能か検討した。具体的には、MKN1とNCI−H2228の鋳型DNAを0:1(w/w)、1:0(w/w)、1:1(w/w)、9:1(w/w)、99:1(w/w)の比率で混合し、その合計4ngを使用してEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aの検出を検討した。
【0070】
その結果、いずれの条件でもEML4−ALK融合遺伝子バリアント3aを明確に検出することができた。このことから、この本方法によって、精度良くEML4−ALK融合遺伝子を検出可能なことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
肺癌患者から比較的入手可能なパラフィン包埋切片において、高感度且つ高精度に、EML4−ALK融合遺伝子のバリアント1、バリアント2、バリアント3a、バリアント3b、バリアント4、バリアント5a、バリアント5b、バリアント6、バリアント7の存在を検出することが可能となり、迅速且つ正確にALK阻害剤の有効性を診断することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0072】
配列表の配列番号11〜64の各配列で表される塩基配列は、プライマー配列である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)試料から鋳型DNAを調製する工程、
(B)前記鋳型DNAに対し、融合点を含む領域を増幅する増幅用プライマーの組合せであって、配列番号11と配列番号15の組合せ、配列番号20と配列番号18又は21の組合せ、配列番号23又は26と配列番号24の組合せ、配列番号32と配列番号33の組合せ、配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せ、配列番号41と配列番号45の組合せ、配列番号47と配列番号48の組合せ、配列番号50と配列番号51の組合せ、配列番号56と配列番号54の組合せから選択される少なくとも一つの該増幅用プライマーの組合せを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する工程
を含む、EML4−ALK融合遺伝子を検出する方法。
【請求項2】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号11と配列番号15の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント1を検出する方法。
【請求項3】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号20と配列番号18又は21の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント2を検出する方法。
【請求項4】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号23又は26と配列番号24の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aを検出する方法。
【請求項5】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号32と配列番号33の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3bを検出する方法。
【請求項6】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント4を検出する方法。
【請求項7】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号41と配列番号45の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5aを検出する方法。
【請求項8】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号47と配列番号48の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5bを検出する方法。
【請求項9】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号50と配列番号51の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント6を検出する方法。
【請求項10】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号56と配列番号54の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント7を検出する方法。
【請求項11】
(a)融合点を含む領域を増幅する増幅用プライマーの組合せであって、配列番号11と配列番号15の組合せ、配列番号20と配列番号18又は21の組合せ、配列番号23又は26と配列番号24の組合せ、配列番号32と配列番号33の組合せ、配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せ、配列番号41と配列番号45の組合せ、配列番号47と配列番号48の組合せ、配列番号50と配列番号51の組合せ、配列番号56と配列番号54の組合せから選択される少なくとも一つの該増幅用プライマーの組合せを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する工程、
(b)前記増幅産物を鋳型として、該融合点を挟む領域に相補的な検出プライマーを使用して一塩基伸長反応を行う工程
を含む、EML4−ALK融合遺伝子を検出する方法。
【請求項12】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号11と配列番号15の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号13及び/又は配列番号16であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント1を検出する方法。
【請求項13】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号20と配列番号18又は21の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号19及び/又は配列番号22であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント2を検出する方法。
【請求項14】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号23又は26と配列番号24の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号25及び/又は配列番号28であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aを検出する方法。
【請求項15】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号32と配列番号33の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号31及び/又は配列番号34であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3bを検出する方法。
【請求項16】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号37及び/又は配列番号40であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント4を検出する方法。
【請求項17】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号41と配列番号45の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号43及び/又は配列番号46であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5aを検出する方法。
【請求項18】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号47と配列番号48の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号49であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5bを検出する方法。
【請求項19】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号50と配列番号51の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号52であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント6を検出する方法。
【請求項20】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号56と配列番号54の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号55及び/又は配列番号58であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント7を検出する方法。
【請求項21】
配列番号11と12の組合せ、配列番号14と15の組合せ、配列番号17と18の組合せ、配列番号20と21の組合せ、配列番号23と24の組合せ、配列番号26と27の組合せ、配列番号29と30の組合せ、配列番号32と33の組合せ、配列番号35と36の組合せ、配列番号38と39の組合せ、配列番号41と42の組合せ、配列番号44と45の組合せ、配列番号47と48の組合せ、配列番号50と51の組合せ、配列番号53と54の組合せ、配列番号56と57の組合せから選択される、プライマーセット。
【請求項1】
(A)試料から鋳型DNAを調製する工程、
(B)前記鋳型DNAに対し、融合点を含む領域を増幅する増幅用プライマーの組合せであって、配列番号11と配列番号15の組合せ、配列番号20と配列番号18又は21の組合せ、配列番号23又は26と配列番号24の組合せ、配列番号32と配列番号33の組合せ、配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せ、配列番号41と配列番号45の組合せ、配列番号47と配列番号48の組合せ、配列番号50と配列番号51の組合せ、配列番号56と配列番号54の組合せから選択される少なくとも一つの該増幅用プライマーの組合せを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する工程
を含む、EML4−ALK融合遺伝子を検出する方法。
【請求項2】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号11と配列番号15の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント1を検出する方法。
【請求項3】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号20と配列番号18又は21の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント2を検出する方法。
【請求項4】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号23又は26と配列番号24の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aを検出する方法。
【請求項5】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号32と配列番号33の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3bを検出する方法。
【請求項6】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント4を検出する方法。
【請求項7】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号41と配列番号45の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5aを検出する方法。
【請求項8】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号47と配列番号48の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5bを検出する方法。
【請求項9】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号50と配列番号51の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント6を検出する方法。
【請求項10】
前記[1]の方法において、増幅用プライマーが配列番号56と配列番号54の組合せであるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント7を検出する方法。
【請求項11】
(a)融合点を含む領域を増幅する増幅用プライマーの組合せであって、配列番号11と配列番号15の組合せ、配列番号20と配列番号18又は21の組合せ、配列番号23又は26と配列番号24の組合せ、配列番号32と配列番号33の組合せ、配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せ、配列番号41と配列番号45の組合せ、配列番号47と配列番号48の組合せ、配列番号50と配列番号51の組合せ、配列番号56と配列番号54の組合せから選択される少なくとも一つの該増幅用プライマーの組合せを使用することによって増幅可能な塩基配列領域内を増幅する工程、
(b)前記増幅産物を鋳型として、該融合点を挟む領域に相補的な検出プライマーを使用して一塩基伸長反応を行う工程
を含む、EML4−ALK融合遺伝子を検出する方法。
【請求項12】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号11と配列番号15の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号13及び/又は配列番号16であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント1を検出する方法。
【請求項13】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号20と配列番号18又は21の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号19及び/又は配列番号22であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント2を検出する方法。
【請求項14】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号23又は26と配列番号24の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号25及び/又は配列番号28であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3aを検出する方法。
【請求項15】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号32と配列番号33の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号31及び/又は配列番号34であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント3bを検出する方法。
【請求項16】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号35又は38と配列番号36又は39の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号37及び/又は配列番号40であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント4を検出する方法。
【請求項17】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号41と配列番号45の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号43及び/又は配列番号46であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5aを検出する方法。
【請求項18】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号47と配列番号48の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号49であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント5bを検出する方法。
【請求項19】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号50と配列番号51の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号52であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント6を検出する方法。
【請求項20】
前記[11]の方法において、増幅用プライマーが配列番号56と配列番号54の組合せであり、伸長用プライマーが配列番号55及び/又は配列番号58であるEML4−ALK融合遺伝子のバリアント7を検出する方法。
【請求項21】
配列番号11と12の組合せ、配列番号14と15の組合せ、配列番号17と18の組合せ、配列番号20と21の組合せ、配列番号23と24の組合せ、配列番号26と27の組合せ、配列番号29と30の組合せ、配列番号32と33の組合せ、配列番号35と36の組合せ、配列番号38と39の組合せ、配列番号41と42の組合せ、配列番号44と45の組合せ、配列番号47と48の組合せ、配列番号50と51の組合せ、配列番号53と54の組合せ、配列番号56と57の組合せから選択される、プライマーセット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図7】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2012−100628(P2012−100628A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254179(P2010−254179)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(591122956)三菱化学メディエンス株式会社 (45)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(591122956)三菱化学メディエンス株式会社 (45)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
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