説明

EUV光源

簡単な構造で、十分な強度のEUVを安定して発生させることができ、レーザプラズマ光源の代替となるEUV光源を提供する。1次ターゲットを有するX線管1と、そのX線管1から発生したX線2が照射される2次ターゲット4とを備え、その2次ターゲット4から、Be−Kα線、Si−L線およびAl−L線の一群から選ばれた1つの蛍光X線5を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長13.5nm近傍のEUV(Extreme UltraViolet)を発生する光源に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体製造用の露光光源として、液化Xe(キセノン)にYAGレーザを照射して波長13.5nmのEUVを発生させるレーザプラズマ光源の開発が進められている(例えば、特許文献1の段落0003参照)。この開発中の光源を評価するためには、評価用の光学系として、回折格子、人工多層膜およびフィルタが必要となり、これらの光学系を評価するためには、開発中の光源の代替となる評価用の光源として、波長13.5nm近傍のEUVを発生する光源が必要となる。この評価用の光源として、SR(Synchrotron Radiation)光や、放電プラズマや、Siターゲットに電子線を照射してEUVを発生させる光源がある。
【特許文献1】特開2003−185798号公報
【0003】
しかし、SR光を得るには巨大な設備が必要であり、放電プラズマにおいては長期安定動作が難しい。また、Siターゲットに電子線を照射するものでは、可視光や赤外光も発生するので、それが検出器に入射してEUVの検出を妨害することのないように出射部にBe膜などの窓を設ける必要があり、そのためにEUVの強度が著しく減衰してしまう。さらに、Siターゲットの表面が電子線によって損傷するので、長時間の安定動作が困難である。
【発明の開示】
【0004】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、十分な強度のEUVを安定して発生させることができ、レーザプラズマ光源の代替となるEUV光源を提供することを目的とする。
【0005】
前記目的を達成するために、本発明にかかるEUV光源は、1次ターゲットを有するX線管と、そのX線管から発生したX線が照射される2次ターゲットとを備え、その2次ターゲットから、Be−Kα線、Si−L線およびAl−L線の一群から選ばれた1つの蛍光X線を発生させる。
【0006】
本発明によれば、2次ターゲットにX線管からのX線を照射し、EUVとしてBe−Kα線(波長11.4nm)、Si−L線(波長13.55nm)またはAl−L線(波長17.14nm)を発生させるので、簡単な構造で、十分な強度のEUVを安定して発生させることができ、レーザプラズマ光源(波長13.5nm)の代替にできる。
【0007】
本発明においては、前記X線管から発生したX線が前記2次ターゲットにおいてSi−K殻の電子を励起し、カスケード励起によりSi−L線を発生させることが好ましい。ここで、2次ターゲット表面の酸化膜が除去されていることがさらに好ましい。また、前記X線管から発生したX線がポリキャピラリにより集光されて2次ターゲットに照射されることが好ましい。さらに、人工多層膜または全反射ミラーにより、前記2次ターゲットから発生したX線が前記1つの蛍光X線に単色化されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態であるEUV光源の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態であるEUV光源について説明する。この光源は、図1に示すように、Mo、Rh、PdまたはCrを1次ターゲットとして有するX線管1と、そのX線管1から発生したX線2(前記1次ターゲットに応じて、Mo−Lα線(波長0.541nm)、Rh−Lα線(波長0.460nm)、Pd−Lα線(波長0.437nm)またはCr−Kα線(波長0.229nm)となる)が照射されるSiの2次ターゲット4とを備え、その2次ターゲット4から、EUVとして蛍光X線であるSi−L線5を発生させる。
【0010】
ここで、X線管1からのX線2によってSi−L殻を直接に効率よく励起することは容易でないので、X線管1から発生したX線2でSi−K殻の電子を励起し、カスケード励起によりSi−L線5を発生させる。Siの2次ターゲット4表面に酸化膜があるとSi−L線5が発生しにくく、例えば熱処理などによって自然酸化膜よりも厚い酸化膜が形成されていると特に発生しにくいので、この実施形態の光源では、あらかじめ弗酸を用いてSiの2次ターゲット4表面の酸化膜を除去している。2次ターゲット4を含むこの光源は、真空中で使用されるので、除去後使用中にSiの2次ターゲット4表面に酸化膜が再度形成されることはない。なお、EUVとしてBe−Kα線またはAl−L線を発生させてもよく、この場合には対応して2次ターゲット4にはBeまたはAlを用いる。Be−Kα線を発生させる場合には、カスケード励起によらずX線管1からのX線2で直接にBe−K殻を励起する。Al−L線を発生させる場合には、Si−L線と同様にカスケード励起による。
【0011】
この実施形態の光源では、X線管1から発生したX線2がポリキャピラリ4により集光されて2次ターゲット4に照射される。2次ターゲット4から発生するX線5には、目的とするSi−L線の他にSi−K線やX線管1から発生したX線2の散乱線も含まれるが、人工多層膜(ここでは湾曲型)6でのブラッグ反射によりSi−L線に単色化できる。人工多層膜6でブラッグ反射されたSi−L線は、全反射ミラー(ここでは湾曲型)7で全反射され、スリット8を焦点として通過して、評価対象の例えば回折格子10に照射されて回折され、検出器であるCCD9に集光されつつ入射する。スリット8を通過したSi−L線は、評価対象が人工多層膜である場合にはブラッグ反射され、フィルタである場合にはフィルタリングされて、CCD9に入射する。評価対象が人工多層膜やフィルタである場合には、検出器として、CCDに代えてF−PCなどのX線検出器を用いてもよい。
【0012】
人工多層膜6と全反射ミラー7は、2次ターゲット4から発生したX線5の垂直成分と水平成分をそれぞれ独立に集光するようにいわゆるKB(Kirkpatrick−Baez)配置となっている。また、人工多層膜6と全反射ミラー7の両方がブリュースター角で反射すると、全反射ミラー7で反射後のSi−L線の強度がなくなってしまうので、少なくとも一方の反射角はブリュースター角から外れるように設定する。なお、2次ターゲット4から発生したX線5にはSi−L線よりも波長の長いX線はほとんど含まれていないので、人工多層膜6の代わりに全反射ミラーを用い、もう1枚の全反射ミラー7とで2次ターゲット4から発生したX線5を2回全反射することにより、Si−L線よりも波長の短いX線(Si−K線やX線管1から発生したX線2の散乱線など)を除去し、結果としてSi−L線に単色化することもできる。さらに、検出器9が十分に高いエネルギー分解能をもつ場合には、単色化は不要となるので、人工多層膜6や全反射ミラー7を用いず、2次ターゲット4から発生したX線5をそのままスリット8に入射させることができる。
【0013】
この実施形態の光源によれば、Siの2次ターゲット4にX線管1からのX線2を照射し、EUVとしてSi−L線(波長13.55nm)5を発生させるので、簡単な構造で、十分な強度のEUV5を安定して発生させることができ、レーザプラズマ光源(波長13.5nm)の代替にできる。ここで、X線管1から発生したX線2が2次ターゲット4においてSi−K殻の電子を励起し、カスケード励起によりSi−L線5を発生させ、しかもSiの2次ターゲット4の表面には酸化膜がないので、特に効率よくEUV5を発生させることができる。また、X線管1から発生したX線2がポリキャピラリ3により例えば直径150μm程度に集光されて2次ターゲット4に照射されるので、微小に集光されるレーザプラズマ光源の代替として、より好ましい。さらに、人工多層膜6により、2次ターゲット4から発生したX線5がSi−L線に単色化されるので、検出器9にはエネルギー分解能が要求されない。
【0014】
なお、本発明においては、ポリキャピラリなどを用いず、X線管からのX線を集光せずに2次ターゲットに照射してもよい。また、光学系には、集中法でなく平行法によるもの(平板型の人工多層膜または全反射ミラーとソーラースリットとを用いるもの)を採用してもよい。さらに、用いる人工多層膜または全反射ミラーは、全部で2つ以上である必要はなく、1つでもよい。例えば、X線管からのX線が集光されずに2次ターゲットに照射され、2次ターゲットから発生したX線が、ソーラースリットを通過し、単一の平板型人工多層膜でEUVに単色化されて、評価対象に照射されるようなEUV光源も、本発明に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次ターゲットを有するX線管と、
そのX線管から発生したX線が照射される2次ターゲットとを備え、
その2次ターゲットから、Be−Kα線、Si−L線およびAl−L線の一群から選ばれた1つの蛍光X線を発生させるEUV光源。
【請求項2】
請求項1において、
前記X線管から発生したX線が前記2次ターゲットにおいてSi−K殻の電子を励起し、カスケード励起によりSi−L線を発生させるEUV光源。
【請求項3】
請求項1において、
前記2次ターゲット表面の酸化膜が除去されているEUV光源。
【請求項4】
請求項1において、
前記X線管から発生したX線がポリキャピラリにより集光されて2次ターゲットに照射されるEUV光源。
【請求項5】
請求項1において、
人工多層膜または全反射ミラーにより、前記2次ターゲットから発生したX線が前記1つの蛍光X線に単色化されるEUV光源。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/020644
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513294(P2005−513294)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011905
【国際出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000250351)理学電機工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】