説明

F−T合成反応用触媒

【課題】 高活性を発現するF−T合成用触媒を提供する。
【解決手段】 多孔質材料からなる担体表面に活性金属からなる金属系化合物を担持した触媒において、前記活性金属元素のLCR=LCm/LCbの式(但し、LCm:金属系化合物中の活性金属元素の格子定数、LCb:粒径が1μm以上の金属元素からなるバルク材料中の活性金属元素の格子定数)で定義される格子定数比率LCRが、0.996以上、1.005以下の範囲にあることを特徴とするF−T合成反応用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素を水素化して、合成ガスから炭化水素を製造するための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等の環境問題が顕在化し、石油や石炭等に代替する他の炭化水素燃料として、石炭等と比較してH/Cが高く、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素排出量を抑えることができ、埋蔵量も豊富な天然ガスの重要性が見直されてきており、今後ますますその需要は増加するものと予想されている。
【0003】
そのような状況の中、東南アジア・オセアニア地域等には、数多くの中小規模ガス田が、パイプライン・LNGプラント等のインフラが未整備の遠隔地で発見されているが、その可採埋蔵量が、巨額の投資を必要とするインフラ建設には見合わず、未開発のまま残されており、その開発促進が望まれている。
【0004】
その有効な開発手段の一つとして、天然ガスを合成ガスに変換した後、この合成ガスからF−T合成反応を用いて輸送性・ハンドリング性の優れた灯・軽油等の液体炭化水素燃料に転換する技術の開発が各所で精力的に行われている。
【0005】
このF−T合成反応は、触媒を用いて合成ガスを炭化水素に転換する発熱反応であり、生じる反応熱を効果的に除去することがプラントの安定操業のために極めて重要となる。現在までに実績のあるF−T合成反応の反応形式には、気相合成プロセス(固定床、噴流床、流動床)と、液相合成プロセス(スラリー床)があり、それぞれ特徴を有しているが、近年、前者に比べて、熱除去効率が高く、生成した高沸点炭化水素の触媒上への蓄積や反応管閉塞が起こらない、後者のスラリー床液相合成プロセスが注目を集め、精力的に開発が進められている。
【0006】
一般的にF−T合成反応において、触媒の活性は、高ければ高いほど好ましいことは言うまでもないが、特にスラリー床液相合成プロセスでは、良好なスラリー状態を保持するためにスラリー濃度を一定の値以下にする必要がある。このため、スラリー床液相合成プロセスにおける、触媒の高活性化は、プロセス設計の自由度を拡大する上で、非常に重要な要素となる。
【0007】
現在までに報告されている各種F−T合成反応用触媒の活性は、炭素数が5以上の液状炭化水素の生産性で、高々1(kg−炭化水素/kg−触媒・時間)程度であり、前記観点から、スラリー床液相合成プロセスでは必ずしも十分とは言えない(例えば、非特許文献1、参照)。
【0008】
【非特許文献1】R. Oukaci et al., Applied Catalysis A:Genaral, 186(1999)129-144
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、現状のF−T合成汎用用触媒の活性は未だ十分ではなく、プラントの設計自由度を拡大する観点からも、更なる高活性触媒の開発が急務である。そこで、本発明は、上記問題を解決して、高活性を発現するF−T合成用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、高強度かつ高活性を有するF−T合成用触媒及び触媒であって、その発明の要旨とするところは、以下に示す通りである。
【0011】
(1)多孔質材料からなる担体表面に活性金属からなる金属系化合物を担持した触媒において、前記活性金属元素の下記(1)式で定義される格子定数比率LCRが、0.996以上、1.005以下の範囲にあることを特徴とするF−T合成反応用触媒。
LCR=LCm/LCb ・・・(1)
但し、LCm:金属系化合物中の活性金属元素の格子定数、LCb:粒径が1μm以上の金属元素からなるバルク材料中の活性金属元素の格子定数。
【0012】
(2)前記金属系化合物の粒度分布が粒径15nm以下の体積比率が50%以上であることを特徴とする(1)に記載のF−T合成反応用触媒。
【0013】
(3)前記金属系化合物中の活性金属元素の下記(2)式で定義される原子価比率VRが0.40以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のF−T合成反応用触媒。
VR=(V0+Vmin)/ΣVi ・・・(2)
但し、V0:金属状態にある活性金属元素のモル量、Vmin:最小原子価の状態にある活性金属元素のモル量、ΣVi:各原子価の状態にある活性金属元素のモル量の合計(=活性金属元素のモル量)。
【0014】
(4)前記活性金属が、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウムの少なくとも一つからなることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載のF−T合成反応用触媒。
【0015】
(5)前記担体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載のF−T合成反応用触媒。
【0016】
(6)前記担体が球状のシリカであることを特徴とする(1)〜(5)の何れかに記載のF−T合成反応用触媒。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、極めて高活性なF−T合成反応用触媒を提供でき、高い炭化水素生産性を有するF−T合成反応が実現可能となるため、本発明の産業上の利用価値は非常に高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を更に詳述する。
【0019】
触媒は担体とその表面に担持された活性金属からなる金属系化合物とで構成される。本発明者らは、触媒を構成する活性金属を有する金属系化合物の原子構造・微細組織等が触媒の高活性化に大きく影響することを見出し、この知見を基に本発明に至った。
【0020】
第一に、本発明者らは、担体表面に担持する活性金属からなる金属系化合物の原子構造について鋭意検討した。その結果、金属系化合物における活性金属の格子定数が、触媒の活性に大きな影響を及ぼし向上に対して極めて効果的であることを見出した。
【0021】
図1は、活性金属として、コバルト、鉄、ニッケルをそれぞれ含む金属系化合物(金属および金属酸化物)からなる活性の異なる触媒について、100℃での水素ガスのガス吸着量を測定し、各活性金属の下記(1)式で定義される格子定数比率LCRとの関係を示したものである。
【0022】
LCR=LCm/LCb ・・・(1)
但し、LCm:金属系化合物中の活性金属元素の格子定数、LCb:粒径が1μm以上の金属元素からなるバルク材料中の活性金属元素の格子定数。
【0023】
図1が示すように、格子定数比率LCRが、0.996以上、1.005以下の範囲において、ガス吸着量が高く、高い活性を有する触媒が得ることが期待できる。
【0024】
これらの知見を基に、本発明の多孔質材料からなる担体表面に活性金属からなる金属系化合物を担持した触媒において、良好な触媒活性を発現させるために、上記(1)式で定義される格子定数比率LCRを0.996以上、1.005以下の範囲に限定した。
【0025】
活性金属元素の格子定数比率LCRを上記範囲に保つことにより、触媒活性能を十分に発揮することが可能となる。
【0026】
格子定数比率LCRがこの範囲に限定されるのは以下の理由による。触媒反応は反応物質が触媒中の活性金属の最表面で反応することにより進行するため、その活性は触媒中の活性金属の最表面の電子状態に大きく左右される。
【0027】
しかし、触媒中の活性金属のサイズは数〜数十nmと小さいために、その活性金属の最表面は酸化等により状態が変わり易く、それに伴い活性も低下する。
【0028】
そこで、格子定数比率LCRを、0.996以上、1.005以下の範囲に保つことにより、その活性金属の最表面が活性金属特有の高活性状態に保たれ、高い活性を示すのである。
【0029】
なお、上記(1)式で定義される格子定数比率LCRを求める方法は、次に示す方法により行うことが可能である。
【0030】
例えば、X線回折法、電子線回折法、XAFS(X-ray Absorption Fine-structures:X線吸収微細構造)法(例えば、宇田川康夫編、X線吸収微細構造、学会出版センター(1993)参照)を用い、触媒担体上に担持した金属系化合物中に含まれる活性金属元素の格子定数を測定し、この測定結果と、予め同じ方法で測定された該金属のバルク材料(例えば高純度の金属塊試料)の格子定数の測定値もしくは同格子定数の報告値とを比較することにより、上記格子定数比率LCRを求めることができる。
【0031】
なお、触媒担体上に担持した金属系化合物中に含有される活性金属が複数である場合は、その主要な活性金属元素の上記格子定数比率LCRが上記範囲を満足すれば上記効果は発揮される。
【0032】
第二に、本発明者らは、担体表面に担持する活性金属からなる金属系化合物の微細組織について鋭意検討した。図2は、活性金属として、コバルト、鉄、ニッケルをそれぞれ含む金属系化合物からなる活性の異なる触媒について、100℃での水素ガスのガス吸着量を測定し、各金属系化合物の粒度分布における粒径15nm以下の体積比率(以下、微細粒の体積比率と称する)との関係を示したものである。
【0033】
図2から、各金属系化合物の粒度分布における粒径15nm以下の微細粒の体積比率が50%以上の場合にガス吸着量が高い値を示し高い活性を有する触媒が得ることが期待できる。これらの知見を基に、本発明の多孔質材料からなる担体表面に活性金属からなる金属系化合物を担持した触媒において、良好な触媒活性を発現させるために、金属系化合物の粒度分布が粒径15nm以下の体積比率が50%以上に限定した。
【0034】
金属系化合物の粒度分布における粒径15nm以下の体積比率を50%以上とすることにより、触媒を構成する担体表面に担持する金属系化合物の分散度が高くなり、触媒の比表面積が大きくなり、金属系化合物中の活性金属元素の作用が有効に活用させ、その結果、触媒の活性が向上すると考えられる。
【0035】
なお、上記金属系化合物の粒度分布の平均値は、例えば、X線回折線の回折ピークの幅から求めることができ、分布の詳細は、例えば、電子顕微鏡等による組織観察により求めることができる。
【0036】
第三に、本発明者らは、担体表面に担持する活性金属からなる金属系化合物の酸化状態について鋭意検討した。その結果、金属系化合物中の活性金属の酸化状態により、触媒の活性は変化し、触媒活性を高めるには、金属系化合物中の活性金属元素の原子価比状態が重要であることを見いだした。
【0037】
つまり、金属系化合物中の活性金属元素が酸化数の最も小さな状態にある場合には、活性金属が酸化されたとしても、金属原子1個あたりに結合する酸素原子の平均個数が少なく、F−T合成反応において還元されやすい状態を維持できるのである。
【0038】
本発明者らは、高い触媒活性を維持、つまり、F−T合成反応において還元性が高い金属酸化物形態を維するために、金属系化合物を構成する活性金属原子の中で、酸化されない金属状態、もしくは、酸化金属中であっても最小原子価の状態にある活性金属原子の割合について検討した。
【0039】
その結果、触媒を構成する金属系化合物中の活性金属元素の下記(2)式で定義される原子価比率VRが0.40以上であれば、触媒活性が高くなることを確認した。
【0040】
VR=(V0+Vmin)/ΣVi ・・・(2)
但し、V0:金属状態にある活性金属元素のモル量、Vmin:最小原子価の状態にある活性金属元素のモル量、ΣVi:各原子価の状態にある活性金属元素のモル量の合計(=活性金属元素のモル量)を示す。
【0041】
一例として、活性金属元素としてコバルトからなる金属系化合物を用いた場合について説明する。一般に、コバルトの酸化物の形態は、CoO、Co34の2種が知られており、これらのうちで、CoO中の活性金属元素Coが最小原子価の状態である。つまり、CoOとCo34とを比較すると、前者の活性金属元素Coの酸化数が後者のそれよりも小さく容易に還元されて金属状態Coとなりやすい。
【0042】
また、CoOとCo34の原子構造におけるコバルト原子間の距離を比較すると、前者が0.30nmであり、これは、後者の0.34nmに対して小さくコバルト原子がより近接している。このため、CoOはCo34に比べてF−T合成反応において還元により金属クラスターを形成しやすく、触媒活性が高い酸化物形態となる。
【0043】
なお、上記原子価比率VRを求める方法は、例えば、X線回折法、XAFS法、X線光電子分光法を用い、触媒担体上に担持した金属系化合物中に含まれる活性金属元素の金属及び各金属酸化物のそれぞれに相当する回折線もしくはスペクトルの強度を比較することにより、金属状態にある活性金属元素、各原子価の状態にある活性金属元素を定量化し、その結果から求められる。
【0044】
本発明によれば、上記多孔質材料からなる担体表面に活性金属からなる金属系化合物を担持した触媒において、活性金属は特に限定する必要がなく、通常知られているF−T合成反応用触媒の活性金属として用いられるものでよい。
【0045】
例えば、このような活性金属としては、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム等が挙げられ、これらの少なくとも一つからなる活性金属が、本発明の目的とする触媒の金属活性などの特性を維持するために好適である。
【0046】
また、本発明者らは、本発明において、触媒を構成する担体及びその表面に担持する活性金属の構成元素以外に触媒中に含有する不可避的不純物を低減することにより、さらに触媒の活性が向上することを確認した。
【0047】
例えば、通常のシリカを担体として用いる場合には、シリカ中に、Na等のアルカリ金属、Ca、Mg等のアルカリ土類金属や、Fe、Al等が不可避的不純物として含まれる。
【0048】
これら不可避的不純物のうち、F−T合成反応における触媒活性を良好に維持するためには、特に、アルカリ金属やアルカリ土類金属が多量に存在するとF−T合成反応における活性が大きく低下し、良好な触媒活性を発現させるためには、担体中のアルカリ金属やアルカリ土類金属の含有量が0.1質量%以下に抑える必要があることを確認した。
【0049】
したがって、本発明において、良好な触媒活性を発現させるために、触媒を構成する担体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の含有量を0.1質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.07質量%以下、更に好ましくは0.04質量%以下とするのがよい。
【0050】
また、より良好な触媒活性を発現させるためには、担体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属以外の不純物を含む不可避的不純物の総量が0.15質量%以下とするのが好ましい。
【0051】
なお、触媒中の不純物量は、担持率や前駆体の種類にもよるため、担持率や前駆体の種類に応じて制限する必要があるが、触媒中の不純物量を低減するためには、活性金属の前駆体中の不純物量を5質量%以下に抑えることが効果的である。
【0052】
また、スラリー床液相合成プロセスによるF−T合成反応では、原料ガスの空塔速度(0.1m/秒以上)が非常に高い条件で運転されることが多く、触媒粒子は反応中に激しく衝突するため、物理的な強度や耐摩耗性(耐粉化性)が不足すると、反応中に活性金属を担持した粒子(以下、触媒担持粒子と称する)が破壊、粉化を起こして、粒子径が小さくなる。
【0053】
触媒担持粒子の粒子径が適正粒径以下に小さくなると、反応後の触媒担持粒子の分離操作効率が大きく低下するため、担体の強度や耐摩耗性(耐粉化性)を考慮し、破壊、粉化を抑制することにより、本発明の効果をより高めることができる。
【0054】
本発明者らの検討によれば、本発明の触媒を構成する担体として、球状のシリカ、アルミナ、チタニア等の酸化物、望ましくはシリカを用いると、破壊、粉化の抑制に極めて効果的であることを確認した。この理由から、本発明の触媒を構成する担体として、球状のシリカを用いることが好ましい。
【0055】
本発明において触媒の製造方法は特に限定する必要はないが、例えば、概略以下のようにして製造することが可能である。
【0056】
本発明による触媒は、F−T合成反応に触媒活性を有する活性金属、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム等の活性金属を含有した金属系化合物と、この金属系化合物を担持する担体として、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア等の多孔質酸化物からなる多孔質材料を適宜選定し、例えば、通常の含浸法、インシピエントウェットネス(Incipient Wetness)法、沈殿法、イオン交換法等により製造できる。
【0057】
活性金属からなる金属系化合物の担持率は、用いる活性金属に応じて調整し、触媒活性を発現するための最低担持率以上で、かつ、活性金属の分散度が極端に低下して、活性金属の反応寄与効率が低下しないような担持率以下の範囲であればよい。
【0058】
例えば、活性金属としてコバルトを用いた場合では、その担持率の最適範囲は7〜48質量%が好ましく、さらに好ましくは12〜38質量%とするのがよい。この担持率の範囲を下回ると触媒活性を十分発現することができず、また、この範囲を上回ると分散度が低下して、担持したコバルトの利用効率が低下して不経済となるため、好ましくない。
【0059】
さらに、活性金属の前駆体を担体に担持した後、F−T合成反応の運転を行う前までに、還元雰囲気、例えば、水素ガスを含む雰囲気で加熱処理することが望ましい。これらの処理により触媒中の活性金属の状態を変え、本発明の上記構成の活性金属からなる金属系化合物を有する触媒を得ることができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は上記本発明の目的を阻害しない限りこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
内容積300mlのオートクレーブを用い、2gの活性金属がCo又はCo+Feで、担体がSiO2(富士シリシア化学(株)製のシリカ担体で、平均粒径100μmの球形)からなる触媒と、50mlのn−C16(n−ヘキサデカン)を仕込んだ後、温度:230℃、圧力:2.0MPaの条件下、撹拌子を800min-1で回転させながら、合成ガス(H2/CO=2)をW(触媒質量)/F(合成ガス流速)=5(g・h/mol)で流通させて、F−T合成反応を行った。
【0062】
F−T合成反応における各触媒の活性の評価は、以下の式に示す、CO転化率、CH4選択率、CO2選択率を算出し、これらから行なった。
【0063】
【化1】

【0064】
なお、活性金属元素Coの格子定数比率LCR(上記(1)式で定義される)は、X線回折法及びXAFS法により決定した。また、活性金属元素からなる金属系化合物の粒度分布が粒径15nm以下の体積比率は、電子顕微鏡等により決定した。金属系化合物中の活性金属元素の原子価比率VR(上記(2)式で定義される)は、X線光電子分光法により決定した。
【0065】
表1〜3に発明例および比較例の条件およびその結果を示す。
【0066】
表1〜3に示される通り、本発明で規定する活性金属元素Coの格子定数比率LCRの範囲から外れた比較例5、11は、F−T合成反応におけるCO転化率が低く、触媒活性が低い結果となった。
【0067】
これに対して、活性金属元素Coの格子定数比率LCRが本発明で規定する範囲内であり、金属系化合物の粒度分布における粒径15nm以下の体積比率、活性金属元素の原子価比率VR、担体中の不純物含有量(アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計量)が本発明の好ましい範囲内にある発明例1〜4、7〜10は、F−T合成反応におけるCO転化率が高く、触媒活性が高い結果となった。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】金属系化合物中の各活性金属の格子定数比率LCRと100℃での水素ガスのガス吸着量との関係を示す図である。
【図2】金属系化合物の粒度分布における粒径15nm以下の体積比率と100℃での水素ガスのガス吸着量との関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料からなる担体表面に活性金属からなる金属系化合物を担持した触媒において、前記活性金属元素の下記(1)式で定義される格子定数比率LCRが、0.996以上、1.005以下の範囲にあることを特徴とするF−T合成反応用触媒。
LCR=LCm/LCb ・・・(1)
但し、LCm:金属系化合物中の活性金属元素の格子定数、LCb:粒径が1μm以上の金属元素からなるバルク材料中の活性金属元素の格子定数。
【請求項2】
前記金属系化合物の粒度分布が粒径15nm以下の体積比率が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のF−T合成反応用触媒。
【請求項3】
前記金属系化合物中の活性金属元素の下記(2)式で定義される原子価比率VRが0.40以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のF−T合成反応用触媒。
VR=(V0+Vmin)/ΣVi ・・・(2)
但し、V0:金属状態にある活性金属元素のモル量、Vmin:最小原子価の状態にある活性金属元素のモル量、ΣVi:各原子価の状態にある活性金属元素のモル量の合計(=活性金属元素のモル量)。
【請求項4】
前記活性金属が、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウムの少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のF−T合成反応用触媒。
【請求項5】
前記担体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のF−T合成反応用触媒。
【請求項6】
前記担体が球状のシリカであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のF−T合成反応用触媒。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−297273(P2006−297273A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122381(P2005−122381)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】