説明

FPC接続用コネクタ

【課題】FPC基板の接続に用いられるコネクタを提供する。
【解決手段】回路基板20と、FPC基板30との位置合わせを行なうボス13がベース11に備わっており、回路基板20の所定の位置に装着されたベース11がFPC基板30を受け入れ、FPC基板30に備わる位置決め用のFPC孔32にボス13が係合することによって、FPC基板30と、回路基板20との重ね合わせが予定する位置に調整される。また、カバー15に備わる付勢機構によって、その重ね合わせ状態の固定が担保されるので、大容量で、かつ嵩高くならずに接続端子のピッチを狭小化したFPC基板の接続に適したコネクタの提供ができる。併せて、ベース11およびボス13、カバー15を導体とすることで、上述した効果を損なうことなく、高周波回路の構築に好適な信頼性の高いコネクタの提供ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPC(Frexible Printed Circuit)やFFC(Frexible Flat Cable)などの平型柔軟ケーブルと回路基板とを接続するコネクタに関する。本発明は、FPCやFFCを総称してFPC基板と称することにする。
【背景技術】
【0002】
電子機器は小型高機能化を課題として絶えず進化している。電子デバイスは多極化し、配線パターンの狭小化は一層進む。それに合わせて各種モジュールも小型化、多極化を追求する。今日では、液晶モニタ等の外部インターフェイスと、回路基板間の接続や、回路基板間同士の接続に用いられるFPC基板も、それらの要求に合致するように多極化や配線巾の狭小化が進められている。
【0003】
これらFPC基板と、回路基板とを接続する方法として、半田による固着方法が広く実施されているが、その他に、例えば、特許文献1に記載されているように、回路基板、FPC基板の夫々に、コネクタを装着したコネクタ方式による接続技術が知られている。このようなコネクタ方式は、複雑な形状の金属製コンタクトを複数個ハウジングに組み込んだ雌雄一対のコネクタで構成されているために、接続は堅固で信頼性は高いが、一方電気的絶縁性を確保しつつ、大容量(多極)のFPC基板接続用コネクタを必要とする携帯型の通信機器に装着するには、高さ寸法が嵩高過ぎるという問題があった。
【0004】
この問題を解決する手段として、例えば、特許文献2に記載の技術が知られている。この技術によれば、FPC基板接続用のコネクタは、回路基板に備わる複数の接続端子と、FPC基板に備わる複数の接続端子とをダイレクトに接続するもので、FPC基板を回路基板の所定の位置にセットし、重ね合わせた接続端子同士に上下方向から押圧荷重を加えるとともに、その押圧荷重が継続的に作用するように工夫されている。
【0005】
また、この技術は、回路基板に装着されたインシュレータにクランプ用のレバーを備えた構造をしており、接続方式は接続端子同士のダイレクト接続方式を採用している。したがって、複雑な形状をした金属製のコンタクト部品を必要としないので、ハウジングを要せず、その分嵩高さが軽減されている。また、FPC基板上の配線を形成する方法と同じ方法で接続端子の形成がなされているので、電気絶縁性を確保した大容量(多極)のFPC基板接続用コネクタの提供が実現されている。なお、ここで、FPC基板接続用コネクタとは「インシュレータにクランプ用のレバーを備えた構造」を言う。
【特許文献1】特開2002−15826号公報
【特許文献2】特開2004−227918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この技術によれば、インシュレータの両端部に、FPC基板を支持する一対の支持体Aを回路基板に対して平行に設け、この支持体Aの内側に、全巾に亘ってFPC基板の両側の端部を係合するための、断面がコの字状をした案内溝を具備している。この案内溝は、FPC基板の挿抜時には、FPC基板の案内としての働きをする一方、FPC基板の位置決め時には、FPC基板と、回路基板との水平方向の位置合わせの基準として働く。
【0007】
したがって、案内としての作用を実現するために、FPC基板が自在に摺動し得るだけのクリアランスが、両側に備わる溝間の巾寸法と、FPC基板の巾寸法との間で生じているが、位置合わせの際に、このクリアランスは基準点からの誤差を生じる原因となる。
【0008】
すなわち、インシュレータに収まったFPC基板は、インシュレータ内で、このクリアランスに相当する範囲で自在に動き得る状態にあり、正確な位置を決定できない。ここで、接続端子の巾やピッチは、この動き得る範囲を考慮して設計がなされるために、この動きの自在性は、FPC基板の狭ピッチ化を進める上で技術的な妨げとなる。
【0009】
また、回路基板に整列配置された接続端子と、FPC基板の端部に配置された接続端子とを重ね合わせて、ダイレクトに接続する方式を採っているが、接続部への押圧力は、インシュレータの両端に備わる一対の支持体Bによって、両端を支持されたクランプからもたらされている。このクランプは、クランプの一端に備わるクランプレバーによって回動軸を中心に回動するとともに、このクランプの閉じた状態の固定は、クランプに形成された偏心カムの外周形状によってもたらされている。すなわち、クランプレバーが回路基板と略平行になるところで、偏心カムに設けられた平坦部がFPC基板に押圧力をかける状態にあって、この状態のところでクランプは安定する。
【0010】
ここで、回動軸の中心からクランプレバーの先端までの距離L1に比べて、回動軸の中心からクランプ部(押圧部)までの距離L2は極めて小さいので、小さな力F1でもクランプレバーの先端に加わると、L1対L2の比率に相当する大きさに増幅された力F2が押圧部に作用することとなる。このことは、衝撃や振動による僅かな力でもクランプレバーに加わると、その力が増幅される結果、押圧量が変動しやすいことを意味している。したがって、この技術は、安定した堅固な接続の提供を目的とするコネクタとしては、問題を内包しているものである。
【0011】
そこで、本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、回路基板にFPC基板を精度良く、かつ堅固に電気的機械的に接続するとともに、この状態を継続することができ、また実質的に小型化、低背化の妨げにならない構造を備えたFPC基板接続用コネクタの提供を課題としている。併せて、そのようなFPC基板接続用コネクタであって、高周波回路の構築に好適な、信頼性の高いコネクタの提供をも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記課題を解決するため本発明のコネクタは、FPC基板を回路基板に接続するコネクタであって、前記回路基板が載置される平面を有するベースと、前記ベースに開閉自在に連結し、前記ベースの平面に対向するように覆うカバーとを備え、前記ベースは、離間して、当該平面から立設する一対のボスを有し、前記カバーは、前記一対のボスに係止可能な一対の第1係止孔を有し、前記回路基板は、所定領域に載置されるコネクタと、前記一対のボスに嵌合する一対の第2係止孔とを有し、前記FPC基板は、端部に形成された、前記コネクタと接続可能な露出導体部と、当該露出導体部の両翼に設けられて前記一対のボスに嵌合する一対の第3係止孔とを有し、前記コネクタに前記導体部が対向して重ね合わされた状態で、前記カバーが閉じられた時には、当該カバーは、前記回路基板に対して前記FPC基板を付勢するコネクタである。
【0013】
この(1)に記載の発明によれば、回路基板と、FPC基板との位置合わせを行なうボスがベースに備わっており、回路基板の所定の位置に装着されたベースがFPC基板を受け入れ、FPC基板に備わる位置決め孔(第3係止孔)に前記ボスが係合することによって、FPC基板と、回路基板との重ね合わせが予定する位置に調整される。また、カバーに備わる付勢機構によって、その重ね合わせ状態の固定が担保されるので、大容量(多極)で、かつ嵩高くならずに、接続端子のピッチを狭小化したFPC基板の接続に適したコネクタを提供できる。
【0014】
(2)前記ボスは、先端部から基底部に向けて拡径している(1)に記載のコネクタである。
【0015】
この(2)に記載の発明によれば、ボスの形状は、例えば、円錐台形あるいはN角錐台形であって、ボスの先端部は基底部に比べて口径が小さい。したがって、FPC基板に備わる係合孔(第3係合孔)をこのボスに挿入する際には、挿入しやすく、かつ挿入完了時には、基底部の拡径によって、ボスに対する係合孔の動きの自由度が制限されるため、両者の相対的な位置ずれは修正されていく。その結果、回路基板に対するFPC基板の重ね合わせの位置精度が一層向上し、大容量(多極)で、かつ嵩高くならずに、接続端子のピッチを狭小化したFPC基板の接続に適したコネクタの提供ができることとなる。
【0016】
ここで、円錐台形(あるいはN角錐台形)の先端部の口径Aと基底部の口径Bとの比率A/Bは0.4〜0.9の値をとるが、好ましくは0.5〜0.8であり、より好ましくは0.6〜0.7である。また、ここでN角錐台形の口径とは、正N角形のN個の頂点を通る円の口径を言う。しかし、このとき、ボスの断面形状が楕円形状のものや、正N角形でないN角形のものを排除するものではない。
【0017】
(3)前記カバーは、前記回路基板に対して前記FPC基板を付勢する押圧部を具備する(1)または(2)に記載のコネクタである。
【0018】
この(3)に記載の発明によれば、カバーに押圧部が備わるので回路基板に対するFPC基板の付勢荷重が増大し、回路基板と、FPC基板との重ね合わせた状態での機械的接続力が増大する。その結果、回路基板と、FPC基板との安定した電気的接続が担保される。
【0019】
ここで、押圧部はカバーと一体で形成されるものであってもよく、別単体をカバーに取り付けたものであってもよい。また、押圧部は板ばね状のものであってもよく、ゴムにより付勢力を発生するものであってもよい。更に、コイルスプリングを組み込んだ構造のものであってもよい。さらに、それらを組み合わせたものであってもよい。
【0020】
(4)前記押圧部は、前記平面に向けて突出する凸状片を有する(3)に記載のコネクタである。
【0021】
この(4)に記載の発明によれば、押圧部に凸状片を有するので、押圧部で発生した付勢荷重はこの凸状片に集中する。その結果、この凸状片を通して接続部へ押圧荷重が加わるので、一層回路基板と、FPC基板との安定した電気的接続の構築が担保されることとなる。
【0022】
(5)前記ベースおよび前記カバー、前記ボスが導体である(1)から(4)に記載のコネクタである。
【0023】
この(5)に記載の発明によれば、ベースおよびカバー、ボスが導体であるので、接続部の信号線は、これを包囲するように中間層に絶縁相を配し、最外層は導電相で覆われたシールド構造をとるものであって、回路基板へのアースも容易に行なえるので、高周波回路に適した電気的接続の構築が担保されることとなる。
【0024】
ここで、ベースおよびカバー、ボスは銅や銅合金等の金属であってもよいし、金属でなくてもよい。例えば、高分子のマトリックス材料に銀や銅の金属微粒子を添加した導電性の樹脂や導電性のゴムであってもよい。また、金属の切削やキャスティングによって形成してもよいし、金属粉末成型法や金属粉末射出成型法(Metal Injection Moulding)によって形成してもよく、特段、製法に制限はない。
【0025】
(6)前記カバーは、前記押圧部を具備する部分と、前記押圧部を具備する部分を覆う状態で前記押圧部を具備する部分から延在する副カバーとを具備する(1)から(5)に記載のコネクタである。
【0026】
この(6)に記載の発明によれば、カバーには、押圧部を覆う副カバーが備わっているので、最外層が導電相で均一に覆われる。その結果、高周波回路に好適な電気的接続の構築が担保されることとなる。
【0027】
(7)前記カバーには、上壁と下壁とで囲まれた中空部と、当該中空部内をスライドするスライドカバーとを備え、前記スライドカバーは前記ボスの係合溝に係合して前記カバーの閉じた状態を固定することを特徴とする(1)から(6)に記載のコネクタである。
【0028】
この(7)に記載の発明によれば、カバーにはスライドカバーが備わって、カバーの閉じた状態を堅固に固定するので、一層回路基板と、FPC基板との安定した電気的接続の構築が担保されている。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、円錐台形あるいはN角錐台形のボスを基準にして、回路基板およびFPC基板のそれぞれの位置決め孔(係合孔)が所定の位置に調整されるため、回路基板の接続端子と、FPC基板の接続端子との位置合わせが精度良く行われる。また、ベースに備わるボスと、カバーに備わる係合孔とによって、回動軸を中心にして開閉するカバーの閉じた状態の固定を行なうので、その際に生じる押圧力でFPC基板を回路基板に堅固に付勢できる。
【0030】
したがって、回路基板の接続端子と、FPC基板の接続端子とを直接接続することで、コネクタの小型化、低背化の達成がなされるとともに、位置決め精度の向上とあわせて、堅固に接続端子同士の接続が行なわれるので、大容量(多極)のFPC基板の接続で信頼性の高いコネクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。最初に本発明の第1の実施形態を説明する。図1は回路基板に組み付けられたコネクタと、装着の前段階にあるFPC基板との外観斜視図である。図2の(a)は、カバーをベースに組み付ける前の状態の外観斜視図であり、図2の(b)は、回路基板にベースを組み付ける前の状態の外観斜視図である。
【0032】
図1に示すように、コネクタ10には、回路基板20に装着されるベース11と、FPC基板30を回路基板20の基板面に押圧するためのカバー15とが備わる。ベース11には、一端(図1の矢印に示す右方向)にカバー15を支持する支持台12と、他端に回路基板20に備わる回路基板孔22および22に嵌合する一対のボス13および13とを備える。
【0033】
ベース11は金属粉末射出成型(以下MIM(Metal Injection Moulding)と言う)によって形成され、金属に準じた導電性を備える矩形状の剛体である。ボス13および13や、支持台12も併せて一体的に形成されるので、樹脂の射出成型に準じた効率で比較的廉価に形成される。
【0034】
ボス13は、先端部が基底部に比べて小径となる円錐台形で、先端部には一文字の切り欠き溝13aがほぼ基底部まではいっており、周面には同心円状に、カバー15に備わるカバー孔16に係合するボス溝14を備えている。ベース11の所定の位置に回路基板20を装着する際に、ボス13は水平方向の位置合わせの基準になるとともに、コネクタ(回路基板に装着されたベース)にFPC基板30を装着する際に、水平方向の位置合わせの基準になる。また、ボス13はカバー15を閉じた状態に固定し、その状態の継続を確保するための係合体としての働きをも有するものである。
【0035】
支持台12は、ベース11の端部(図2の(a)の矢印に示す右方向)に位置し、上述したように、MIM製法によって、ベース11とともに一体的に形成される。支持台12は、ベース11の基面から回路基板20の厚み相当分の段差部を形成しており、組み付けたときに、回路基板20の基板面とほぼ同一面を形成する。この段差部の両端には、カバー15を支持する支持部12aおよび12aが備わっており、支持部12aおよび12aには、カバー15の両端部に備わる回動軸18および18を軸受けする軸受け孔12bおよび12bが備わっている。
【0036】
カバー15は、銅や銅合金等の金属板から型抜き加工された剛体であって、一方端部には、回動軸18および18を備えるとともに、他方端部には、ボス13および13に係合するカバー孔16および16を備えている。また、カバー15には、FPC基板30の接続端子部31と、回路基板20の接続端子部21との重ね合わせた状態を堅固に狭持するための押圧部17が形成されている。
【0037】
押圧部17は、カバー15の全幅に亘って形成され、舌片状の板ばね17aを複数個一列に配設している。板ばね17aには、FPC基板に当接する側に凸形状の押し玉17bを備えている。したがって、板ばね17aは独立して板ばねとして作動するとともに、カバー15を閉じた際に発生する付勢荷重は、板ばね17aを通して押し玉17bに集中する。
【0038】
次に、カバー15のベース11への組み付けについて、図2の(a)を参照して詳細に説明する。押し玉17bが備わる面をベース11に向けてカバー15を載置し、カバー15の両端部に備わる一対の回動軸18および18を、ベース11に備わる案内溝に沿って軸受け孔12bおよび12bに嵌め合わせる。回動軸18は軸受け孔12b内で自在に回動できるが、上下方向および水平方向の動きは軸受け孔12bによって制限されている。その結果、カバー15は回動軸を中心にして0度から180度の範囲で自在に回動できるが、軸受け孔12bからは外れない構造になっている。
【0039】
ここで、角度の基準はカバー15が閉じた状態のカバー15の面と、ベース11の面との交線角を0度とする。また、回動できる範囲は、本実施形態では0度から180度の範囲であるが、この範囲に制限されるものではなく、0度から120度であってもよいし、0度から60度であってもよい。
【0040】
次に、回路基板20のベース11への装着について、図2の(b)を参照して詳細に説明する。接続端子21が形成された面の反対面がベース11に対向するように、回路基板20を載置し、回路基板20の回路基板孔22をベース11に備わるボス13に沿って挿入する。
【0041】
このとき、ボス13の形状は円錐台形であるから、先端部の直径は基底部の直径に比べて縮径している。一方回路基板20に備わる回路基板孔22の口径は、前記基底部の直径と同一寸法か、あるいは僅かに大きい。したがって、回路基板孔22は、ボス13に挿入される際に、内周面がボス13の先端部に掛かりやすく、テーパを有する周面に沿って、導かれるように基底部へ向かう。その過程で、次第にボス13の直径は拡径し、回路基板孔22との口径差はゼロに近づく。その結果、回路基板孔22が基底部へ達したときには、ベース11に対する回路基板20の水平方向のズレは限りなくゼロに収斂している。
【0042】
次に、回路基板20に装着されたコネクタ10に、FPC基板30を装着する際の各段階について、図3を参照しながら詳細に説明する。図3の(a)は、FPC基板30の装着を開始する際の、図1に示すA−Aの断面図である。カバー15が開かれた状態で、カバー15と、ベース11との間にFPC基板30を通過させるためのスリット40が形成されている。FPC基板30の接続端子部31が回路基板20の接続端子部21に向き合うようにして、スリット40を潜らせ、所定の位置まで挿入(図3の(a)の矢印に示す左方向)する。
【0043】
図3の(b)は、FPC基板30を所定の位置まで挿入し、回路基板20との位置合わせが完了した状態の、図1に示すA−A断面図である。FPC基板30の先端部に形成されたFPC孔32および32を、ベース11に備わるボス13および13に嵌合させることで、FPC基板30のFPC孔32および32と、ベース11のボス13および13との位置合わせの調整がなされる。
【0044】
ここで、ボス13の形状は円錐台形であり、先端部の直径は基底部の直径に比べて縮径している。一方FPC基板30のFPC孔32の口径は、前記基底部の直径と同一寸法か、あるいは僅かに大きい。したがって、FPC孔32および32をボス13および13に挿入する際に、FPC孔32の内周面がボス13の周面に掛かりやすく、ボス13の周面に沿って、導かれるようにして基底部へ向かう。その過程で、次第にボス13の直径が拡径し、FPC孔32の口径との寸法差がゼロに漸近していく、その結果、FPC孔32が基底部に達したときには、ベース11に対するFPC基板30の水平方向のズレが限りなくゼロに収斂している。
【0045】
したがって、一連の作業によって、ボス13を位置決め基準点としてFPC基板30の接続端子部31と、回路基板20の接続端子部21との位置合わせが精度よく行なわれるので、これら接続端子同士は対応する接続端子へ正確に重なり合う位置に調整されることとなる。
【0046】
図3の(c)は、FPC基板30の挿入を完了した後、カバー15を閉じて回路基板20の接続端子部21と、FPC基板30の接続端子部31とが、直接的に、かつ正確に重なり合った状態の、図1に示すA−Aの断面図である。カバー15が閉じた状態で固定されると、カバー15に形成された押圧部17を介して、FPC基板30の接続部を回路基板20の接続部へ付勢する押圧力が作用する。
【0047】
ここで、カバー15の閉じた状態を固定し、その状態を継続する仕組み、およびカバー15に備わる押圧部17による押圧の仕組みについて、図4および図5を参照して詳細に説明する。
【0048】
図4の(a)は、ボス13にカバー孔16を嵌め込む際の、図1に示すB−Bの断面図である。ボス13の形状は円錐台形であり、周面のテーパはカバー孔16を嵌め込む際に案内として働く。この案内に沿ってボス13の基底部(図4の(a)の矢印に示す下方向)に向かってカバー15を閉じていくと、カバー孔16の口径はボス13の直径に比べて小さいので、ボス13の先端部の切欠溝13aによって形成された一対の略半円柱13bおよび13bは、内向きに弾性的に変位する。すなわち、一対の略半円柱13bおよび13bは、下端部はボス13の土台部に据え置いて、上端部は自由に変位できる状態の片持ち梁として作用する。
【0049】
図4の(b)は、ボス13にカバー孔16の嵌め込みを完了した際の、図1に示すB−Bの断面図である。ボス13の周面に形成されたボス溝14に、カバー15に形成されたカバー孔16の内縁部分が嵌め込まれることで、カバー15のボス13への係合は完了する。この完了時点で、挿入途中で内向きに倒れこんでいた一対の略半円柱13bおよび13bは、外力からの開放によって元の位置まで弾性的に復元し、前記内縁部分をボス溝14に嵌め込む。この嵌め込みによってカバー15の閉じた状態は堅個に維持される。
【0050】
次に、カバー15に備わる押圧部17について、図5を参照して詳細に説明する。図5の(a)は、回路基板20に装着されたコネクタ10に、FPC基板30をセットした状態の、図1に示すA−Aの断面図である。カバー15に備わる押圧部17は、舌片状の板ばね17aで構成され、板ばね17aには、凸形状の押し玉17bが備わっている。板ばね17aは、カバー15の開閉側(図5の(a)の矢印に示す左方向)の枠部より内方向に延在する付勢体であって、押し玉17bはこの付勢力を突起部の一点に集中させる働きを備える。
【0051】
図5の(b)は、カバー15を閉じた際の付勢状態にある板ばねの、図1に示すA−Aの断面図である。回路基板20の接続端子部21にFPC基板30の接続端子部31が重なり合う状態で接続している。このときに、板ばね17aに予め設けられている下向きの傾きは、カバー15が閉じられて、押し玉17bがFPC基板30に接触したときから、その傾き度合を小さくしていく。そして、カバー15が閉じられたときには、傾きがゼロになっている。
【0052】
したがって、カバー15が閉じられたときに、板ばね17aは当初の傾きに相当する角度の変位が加えられており、このとき、その変位に応じた大きさで下方向への付勢力が作用している。また、押し玉17bに当接する部分には、付勢力によって生じた押圧力が集中的に作用する。その結果、接続端子同士の電気的機械的な接続は、より堅固なものとして担保されることとなる。
【0053】
カバー15が閉じた状態で、カバー15に備わる押圧部17の付勢力が作用するので、FPC基板30を回路基板20に押圧するとともに、反作用としてボス溝14にカバー孔16の周縁部から、上向きの付勢荷重が加わる。この上向きの付勢荷重によってボス溝14に対するカバー孔16の嵌め合いが一層強化されているので、安定した押圧力が継続して得られる。
【0054】
次に、FPC基板の接続用のコネクタであって、高速伝送回路での使用に適したコネクタの第2の実施形態について、図6にしたがって詳細に説明する。EMIカバー117以外の構成要素は、第1の実施形態と共通するので、ここでは説明しない。図6はEMIカバー117の外観斜視図である。EMIカバー117はカバー115と、EMI板116とから成るが、カバー115は、第1の実施形態のカバー15と実質的に同一であるので、ここでは説明しない。
【0055】
EMI板116は、カバー115の一方の側辺から全幅に亘って延出する矩形状の平板であって、カバー115と一体的に金属板から形成される剛体である。EMI板116は、カバー115の外表面の概ね全体が覆われるように、前記延出基底部を折り曲げ位置として180度折り返されたものである。
【0056】
ここで、コネクタ10にFPC基板30を装着し、EMIカバー117の閉じた状態を観察すれば、その任意の断面状態は、回路基板20と、FPC基板30とが重ね合わさった状態を中心にして、それを包囲するように中間層に絶縁相を配し、最外層にはベース11と、EMIカバー117とからなる導体相で覆われた構成になっている。
【0057】
すなわち、接続部の信号線を中心にした絶縁被覆構造全体を導体で囲むシールド構造であって、EMIカバー117は、ベース11と電気的に繋がっており、ベース11を介して容易に導体全体のアースをとることができるので、高速伝送回路の接続に適した接続部の構成が達成されている。
【0058】
次に、FPC基板の接続用のコネクタであって、カバーの開閉をより確実にしたコネクタの第3の実施形態について、図7にしたがって詳細に説明する。ここで、カバー215およびボス213以外の構成要素は、第1の実施形態と共通するので、ここでは説明しない。図7の(a)は、スライドカバー230と、カバー215との外観斜視図である。図7の(b)は、カバー215にスライドカバー230が装着された状態の、水平方向の断面斜視図である。図7の(c)は、スライドカバー230を装着したカバー215と、ボス213との嵌合状態の断面図である。
【0059】
カバー215には、上壁215aと、下壁215bとが間にスリットを形成するようにして、平行して備わる。下壁215bのスリット面には、スライドカバー230の挿抜時に両サイドを案内するための案内壁219および219を両側に備え、スライドカバー230の係合状態を固定するための係合片218および218を、案内壁217および217の入り口付近に備えるとともに、スライドカバー230がスリットから脱落するのを防止するためのストッパー220および220を、両サイド奥方向に備えている。
【0060】
下壁215bは、第1の実施形態のカバー15と同様の押圧部217と、嵌合孔216および216とを備えている。一方、上壁215aはコの字形状をした金属平板の剛体である。
【0061】
スライドカバー230は、金属板からプレス加工で得られるTの字状の剛体である。Tの字の柄にあたる部分の両端には、ストッパー220および220に係合する係合片232および232を備え、先端部の両側には、係合片218および218に係合する係合片231および231を備えている。
【0062】
ボス213は円錐台形で、周面の中間部に水平方向の切欠き溝213aを備えている。切欠き溝213aは、スライドカバー230の先端部に備わる掛り部233と係合して、カバー215の閉じた状態を固定する。
【0063】
上壁215aと、下壁215bとは、スライドカバー230をスリット220の所定の位置に装着した状態で接合材にて接合され、スライドカバー230は、スリット220内を規制範囲内で前後方向に自在にスライドできる。前方の規制は掛り部233の切欠き溝213aへの嵌入で生じ、後方の規制は係合片231の係合片218への当接で生じる。ここで、本実施形態では、カバー215は、上壁215aと、下壁215bとの接合によって形成されているが、一体的に形成してもよい。
【0064】
次に、スライドカバー230によるカバー215の閉じた状態の固定の仕組みについて詳細に説明する。カバー215が閉じた状態に固定されていないとき、係合片231および231が、係合片218および218に係合した位置にあるので、嵌合孔216および216が、スライドカバー230の掛り部233および233によって遮られることは無い。すなわち、スライドカバー230はスムーズにボス213および213に嵌合し得る位置にある。
【0065】
次に、カバー215の閉じ込みは、押圧部217に付勢力が作用する角度まで行い、カバー215がベース11に対して略平行状態に達したところで、スライドカバー230をボス213の位置する方向へスライドさせる。この時、掛り部233の先端は、切欠き溝213aの開口部の手前に位置しているので、この状態で切欠き溝213a方向に掛り部233を前進させ、突き当り位置まで押しきる。この時に、掛り部233と、切欠き溝213aとの係合が完了するとともに、スライドカバー230に備わる係合片232および232と、ストッパー220および220とが係合する。この一連の操作によって、カバー215の閉じた状態の固定を堅固に担保することができるとともに、操作の終了を係合時のクリック感によって感知することができる。
【0066】
したがって、本発明の第1から第3の実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)回路基板の接続端子と、FPC基板の接続端子とがダイレクトに電気的機械的に接
続するので、従来要していたコンタクトを収容するハウジングが不要となり、小型化、低背化に適したコネクタを提供できる。
(2)ボスを基準にして、回路基板と、FPC基板との水平方向の位置合わせを行なって
おり、ボスが円錐台形で先端部に比べて基底部の直径が拡径しているので、基底部において実質的に公差ゼロの位置合わせが可能となる。その結果、回路基板の接続端子と、FPC基板の接続端子とが精度よく重なり合い、細線化・狭ピッチ化に適したコネクタの提供ができる。
(3)ボスに備わる係合溝にカバーに備わるカバー孔を係合させて、カバーの閉じた状態
の固定を行なうので、固定状態が堅固に維持された、振動や衝撃に強いコネクタの提供ができる。
(4)カバーに備わる押圧部がFPC基板を回路基板に押圧し、押圧部は複数個の板ばね
から成り、各板ばねには押し玉が備わるので、回路基板の接続端子と、FPC基板の接続端子との電気的機械的な接続が堅固に確保される。
(5)カバーおよびベース全体が導体で構成されており、回路基板と、FPC基板との接
続部の信号線を中心にして、中間層に絶縁相を配し、最外層を導電相で覆うシールド構造をとるので、高周波の伝送に適したコネクタの提供ができる。
(6)カバーにスライド部を設けてサブカバーの出し入れによって、カバーの固定ができ
るので、脱着が容易で、堅固な接続機構を備えたコネクタを提供できる。
【0067】
なお、上記の実施形態は、以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
(b1)第1の実施形態では、ボスの形状は円錐台形であるが、このような滑らかな周面でなくともよい。すなわち直径の相違する複数の円柱を基底部から順次小さい順に配置した、周面に段差のある形状であってもよい。このように構成した場合にも、概ね、上記(1)〜(6)の効果を奏し得る。
(b2)第1の実施形態では、ボスの形状は円錐台形であるが、円錐台形でなくともよい。すなわち、ボスの断面形状は円形でなくてもよく、3角形・4角形等のN角形(Nは3以上の整数)であってもよい。このように構成した場合にも、概ね、上記(1)〜(6)の効果を奏し得る。
(b3)第1の実施形態では、ベースおよびボス、支持台は一体で形成されるが、各々が別体で形成されてもよい。このように構成した場合にも、概ね、上記(1)〜(6)の効果を奏し得る。
(b4)第1の実施形態では、ベースおよびボス、支持台はMIM(金属粉末射出成型)製法で形成されるが、MIM製法によらなくともよく、金属粉末成型法、ダイキャスト製法、金属の切削加工法によってもよい。また、金属以外の導体であってもよく、例えば、マトリックス中に金や銀の微粒子を添加した導電性の樹脂や導電性のゴムであってもよい。このように構成した場合にも、概ね、上記(1)〜(6)の効果を奏し得る。
(b5)第1の実施形態では、ベースおよびボス、支持台、カバーは導体で構成されているが、導体でなくともよい。このように構成した場合にも、概ね、上記(1)〜(4)および(6)の効果を奏し得る。
(b6)第1の実施形態では、FPC基板の挿入口は回路基板の端部に位置するが、端部になくともよく、回路基板の中央部に位置していてもよい。このように構成した場合にも、概ね、上記(1)〜(6)の効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態によるコネクタを組み込んだ回路基板とFPC基板との外観斜視図である。
【図2】図2の(a)は本発明の第1の実施形態によるカバーと、ベースとの外観斜視図である。図2の(b)は本発明の第1の実施形態による回路基板と、ベースとの外観斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるFPC基板をコネクタに挿入する際の側面断面図である。図3の(a)は挿入の前段階である。図3の(b)は挿入の完了段階である。図3の(c)はカバーを閉じた段階である。
【図4】本発明の第2の実施形態によるボスとカバー孔との嵌合状態の側面断面図である。図4の(a)は嵌合前の状態である。図4の(b)は嵌合状態である。
【図5】本発明の第1の実施形態によるカバーの側面断面図である。図5の(a)はカバーを閉じる前の段階である。図5の(b)はカバーを閉じた段階である。
【図6】本発明の第2の実施形態によるEMIカバーの外観斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態によるサブカバーを備えたカバーの斜視図である。図7の(a)はサブカバーをカバーから取り出した状態の外観斜視図である。図7の(b)はサブカバーをカバーに装着した状態の外観斜視図である。図7の(c)はサブカバーを装着したカバーの断面斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
10 コネクタ
11 ベース
12 支持台
12a 支持部
12b 軸受け孔
13・213 ボス
13a 切欠き溝
13b 半円柱
14 ボス溝
15・115・215 カバー
16・216 カバー孔
17 押圧部
17a 板ばね
17b 押し玉
18 回動軸
20 回路基板
21 (回路基板の)接続端子部
22 回路基板孔
30 FPC基板
31 (FPC基板の)接続端子部
32 FPC孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FPC基板を回路基板に接続するコネクタであって、前記回路基板が載置される平面を有するベースと、前記ベースに開閉自在に連結し、前記ベースの平面に対向するように覆うカバーとを備え、
前記ベースは、離間して、当該平面から立設する一対のボスを有し、
前記カバーは、前記一対のボスに係止可能な一対の第1係止孔を有し、
前記回路基板は、所定領域に載置されるコネクタと、前記一対のボスに嵌合する一対の第2係止孔とを有し、
前記FPC基板は、端部に形成された、前記コネクタと接続可能な露出導体部と、当該露出導体部の両翼に設けられて前記一対のボスに嵌合する一対の第3係止孔とを有し、
前記コネクタに前記導体部が対向して重ね合わされた状態で、前記カバーが閉じられた時には、当該カバーは、前記回路基板に対して前記FPC基板を付勢するコネクタ。
【請求項2】
前記ボスは、先端部から基底部に向けて拡径している請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記カバーは、前記回路基板に対して前記FPC基板を付勢する押圧部を具備する請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記押圧部は、前記平面に向けて突出する凸状片を有する請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ベースおよび前記カバー、前記ボスが導体である請求項1から請求項4記載のコネクタ。
【請求項6】
前記カバーは、前記押圧部を備える部分と、前記押圧部を備える部分を覆う状態で前記押圧部を備える部分から延在する副カバーとを備える請求項1から請求項5記載のコネクタ。
【請求項7】
前記カバーには、上壁と下壁とで囲まれた中空部と、当該中空部内をスライドするスライドカバーとを備え、前記スライドカバーは前記ボスの係合溝に係合して前記カバーの閉じた状態を固定することを特徴とする請求項1から請求項6記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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