説明

Fc融合タンパク質を精製する方法

本発明は、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィを介してFc融合タンパク質を精製する方法、具体的には、Fc融合タンパク質製剤中の遊離Fc部分の量を低減する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質精製の分野にある。より具体的には、本発明は、特にFc領域に融合された単一タンパク質を含有するFc融合タンパク質製剤中の遊離Fc部分の量を、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィを介して低減するために、前記製剤を精製することに関する。Fc領域に融合された単一タンパク質は、好ましくは、青色アフィニティ樹脂に結合することができる融合タンパク質であり、より好ましくはFc領域に融合されるIFN−βを含む融合タンパク質である。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、一般に「生物学的製剤(biologicals)」と呼ばれる薬物として商業的に重要になってきている。最大の難関の1つは、商業的規模でタンパク質を精製するための、コスト効果がありしかも効率的なプロセスの開発である。タンパク質の大規模調製のために多くの方法が現在利用可能ではあるものの、粗生成物、例えば細胞培養上澄みは、所期生成物を含有するだけでなく、不純分をも含有する。これらの不純物は所期生成物から分離するのが難しい。組み換えタンパク質生成物を発現させる細胞の細胞培養上澄みは、細胞が無血清培地中で成長させられる場合には、含有する不純物がより少ない場合があるが、宿主細胞タンパク質(HCPs)は、精製過程中にまだ排除されないままである。加えて、保健当局は、ヒトの投与のために意図されたタンパク質に対して高い純度基準を要求している。
【0003】
タンパク質精製のために幅広く用いられる数多くのクロマトグラフィ法が知られている。アフィニティ・クロマトグラフィなどのような方法が幅広く用いられている。
【0004】
アフィニティ・クロマトグラフィは、クロマトグラフィ樹脂に対して固定化された別のタンパク質に対する当該タンパク質の親和性に基づいている。このような固定化されたリガンドの例は、特定の免疫グロブリン(Igs)のFc部分に対する特異性を有する細菌細胞壁タンパク質であるタンパク質A及びタンパク質Gである。両タンパク質A及びタンパク質Gは、IgG抗体に対して強力な親和性を有しているが、しかし、他の免疫グロブリン・クラス並びにイソタイプに対する親和性は様々である。
【0005】
青色色素アフィニティ・クロマトグラフィは、マトリックス(例えばセファロース又はアガロース)に結合された色素リガンドCibacron Blueに基づいている。Blue Sepharose樹脂において、リガンドCibacron Blue F3G-Aは、クロロトリアジン環を通してsepharose(登録商標)に共有結合されている(Vlatakis G他、1987)。Blue Sepharoseは、インターフェロン・ベータ(Knight E Jr及びFahey, 1981)及びアルブミンを精製するために使用されている。商業的に利用可能な青色色素アフィニティ・マトリックスの例は、Blue Sepharose 6FF樹脂(GE Healthcare)、Blue Separose CL-6B(GE Healthcare)、Blue Trisacryl M (Pall/BioSepra)、Affi-Gel Blue (Bio-Rad)及びToyopearl AF-Blue (Tosoh Bioscience)又はCibacron Blue F3GA (Polysciences Inc.)を含む。
【0006】
主として電荷の相違に基づいてタンパク質を分離するために、イオン交換クロマトグラフィ(IEC)システムが用いられる。
【0007】
陰イオン交換体は、弱又は強として分類することができる。弱陰イオン交換体上の電荷基は、弱塩基であり、弱塩基は脱プロトン化されるようになり、ひいては、高pHでその電荷を失う。DEAE−セファロースが弱陰イオン交換体の一例であり、ここでは、アミノ基はほぼpH9未満で正荷電することができ、pH値が高くなるとその電荷を徐々に失う。例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)又はジエチル−(2−ヒドロキシ−プロピル)アミノエチル(QAE)は、対イオンとして塩化物を有している。他方において強陰イオン交換体は、強塩基を含有しており、強塩基は、イオン交換クロマトグラフィのために通常用いられるpH範囲(pH1〜14)全体を通して依然として正荷電される。Q−セファロース(Qは第四アンモニウムを意味する)が、強陰イオン交換体の一例である。
【0008】
陽イオン交換体も、弱又は強として分類することができる。強陽イオン交換体は、pH1〜14において依然として荷電される強酸(例えばスルホプロピル基)を含有しているのに対して、弱陽イオン交換体は弱酸(例えばカルボキシメチル基)を含有し、この弱酸は、pHが4又は5未満に低下するにつれて、その電荷を徐々に失う。例えば、カルボキシメチル(CM)及びスルホプロピル(SP)は、対イオンとしてナトリウムを有している。
【0009】
タンパク質の疎水性部分と、マトリックス上の不溶性の固定化疎水性基との疎水性相互作用に基づいてタンパク質を分離するために、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)が用いられる。一般に、高塩濃度緩衝剤中のタンパク質製剤が、HICカラム上にローディングされる。緩衝剤中の塩は、溶液中のタンパク質の溶媒和を低減するように水分子と相互作用し、これにより、タンパク質中の疎水性領域を曝露し、次いでこの疎水性領域は、マトリックス上の疎水性基によって吸着される。分子が疎水性になればなるほど、結合を促進するのに必要とされる塩は少なくなる。通常、カラムからタンパク質を溶出するために、塩勾配の減少が用いられる。イオン強度が減少するのに伴って、タンパク質の親水性領域の曝露は増大し、そして疎水性が増大する順にタンパク質がカラムから溶出する。
【0010】
Fc融合タンパク質は、しばしば免疫グロブリンG(IgG)である免疫グロブリンのFc領域に融合されたタンパク質又はその生物活性ドメインを含むキメラ・タンパク質である。免疫グロブリンのFcフラグメントとも呼ばれるFc領域は、ヒンジ領域(H)と抗体重鎖の第2(CH2)及び第3(CH3)ドメインを含む2つの同一のアームから成っている。Fc融合タンパク質は治療薬として幅広く使用される。それというのもこれらは、Fc領域によって与えられた利点をもたらすからである。これらの利点は、例えば次の通りである:
− IgGイソタイプに従って変化する親和性を有するタンパク質A又はタンパク質Gアフィニティ・クロマトグラフィを用いて精製することが可能である。ヒトIgG1、IgG2及びIgG4はタンパク質Aに強く結合し、そしてIgG3を含む全てのヒトIgGはタンパク質Gに強く結合する;
− Fc領域が、リソソーム分解から防御するサルベージ受容体FcRnに結合するので、循環系における半減期が増大する;
− Fc融合タンパク質の医学的用途に応じて、Fcエフェクタ機能が望ましいことがある。このようなエフェクタ機能は、Fc受容体(FcyRs)との相互作用を介した抗体依存性細胞毒性(ADCC)、及び相補成分1q(C1q)に結合することによる補体依存性細胞毒性(CDC)を含む。IgGイソフォームは、種々異なるレベルのエフェクタ機能を発揮する。一般には、ヒトIgG1及びIgG3は強いADCC及びCDC効果を有するのに対して、ヒトIgG2は弱いADCC及びCDC効果を有する。ヒトIgG4は、弱いADCCを示し、またCDC効果を示さない傾向がある。
【0011】
血清半減期及びエフェクタ機能は、Fc融合タンパク質のために意図された治療用途に応じて、それぞれFcRn、FcyRs及びC1qとのFc領域の結合を増減するように、Fc領域を工学的に作成することによって調節することができる。
【0012】
ADCCの場合、抗体のFc領域は、免疫エフェクタ細胞、例えばナチュラル・キラー及びマクロファージの表面上のFc受容体(FcyRs)に結合し、ターゲット細胞の食作用又は溶解をもたらす。
【0013】
CDCにおいて、抗体は、細胞表面で補体カスケードをトリガーすることにより、ターゲット細胞を殺す。IgGイソフォームは、IgG4 < IgG2 < IgG1 ≦ IgG3の順序で増大する種々異なるエフェクタ・レベルを発揮する。ヒトIgG1は、高いADCC及びCDCを示し、そして、病原体及び癌細胞に対する治療用途に最も適している。
【0014】
或る環境下において、例えばターゲット細胞の枯渇が望ましくないときには、エフェクタ機能の無効化が必要となる。対照的に、腫瘍用途のために意図されたFc融合タンパク質の場合、エフェクタ機能の増大が、治療活性を改善することができる(Carter他, 2006)。
【0015】
FcyRs又は補体因子の結合を改善又は低減するようにFc領域を工学的に作成することにより、エフェクタ機能を修飾することができる。
【0016】
IgGと、活性化(FcyRI、FcyRIIa、FcyRIIIa、及びFcyRIIIb)及び阻害(FcyRIIb)FcyRs又は補体の第1成分(c1q)との結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメイン内に配置された残基に依存する。CH2ドメインの2つの領域が、FcyRs及び補体c1qの結合にとって重要であり、またIgG2及びIgG4において固有の配列を有している。例えばKabat他によって定義されたEUインデックス・ポジション(Kabat, E. A., Wu, T. T., Perry, H. M., Gottesman, K. S.,及びFoeller, C. (1991))に基づく位置233〜236におけるIgG2残基をヒトIgG1へ置換すると、ADCC及びCDCを大幅に低減した(Armour他 1999及びShields他 2001)。
【0017】
IgGのCH2ドメイン内に数多くの突然変異形が形成されており、これらのADCC及びCDCに対する効果がin vitroで試験された(Shields他, 2001, Idusogie他, 2001及び2000, Steurer他, 1995)。具体的には、突然変異形E333Aは、ADCC及びCDCの両方を増大させることが報告された(Idusogie他, 2001及び2000)。
【0018】
治療用Fc融合タンパク質の血清半減期を増大させることは、その効力を改善するための別の方法であり、より高い循環レベル、より低い頻度の投与、及び低減された投与量を可能にする。このことは、Fc領域の、新生児FcR(FcRn)との結合を促進することにより達成することができる。内皮細胞の表面上に発現されるFcRnは、pH依存の形でIgGと結合し、これを分解から保護する。CH2ドメインとCH3ドメインとの間の界面に配置されたいくつかの突然変異形は、IgG1の半減期を増大することが判っている(Hinton他, 2004及びVaccaro他, 2005)。
【0019】
下記表1は、IgG Fc領域のいくつかの周知の突然変異形を要約する(Invivogenのウェブサイトから採用):
【表1】

【0020】
治療上の有用性を有する1クラスのFc融合タンパク質において、Fc領域は、腫瘍壊死因子受容体(TNF−R)スーパーファミリーに属する特定の受容体の細胞外ドメインに融合されている(Locksley他, 2001, Bodmer他, 2002, Bossen他, 2006)。TNFRファミリーの員の特質は、例えばNaismith及びSprang, 1998によって記載されているように、細胞外ドメイン内のシステイン豊富な擬似反復の存在である。
【0021】
Fc融合タンパク質の別の例は、単一インターフェロン・ベータ・タンパク質に結合されたFc領域から成っている。インターフェロン・ベータ(インターフェロンβ、IFN−ベータ又はIFN−β)が、サイトカインのクラスに属する自然発生型の可溶性糖タンパク質である。インターフェロン(IFN)は、広範囲の生物活性、例えば抗ウィルス、抗増殖、及び免疫調節特性を有している。インターフェロン・ベータは、数多くの疾患、例えば多発性硬化症、癌、又はウィルス疾患(例えばSARS又はC型肝炎ウィルス感染症)における治療用タンパク質薬物、いわゆる生物学的製剤(バイオロジカル)として使用される。
【0022】
IgG Fc領域に結合された生物活性分子としてIFN−βを含有する融合タンパク質が国際公開第2005/001025号パンフレットに記載されている。
【0023】
Fc融合タンパク質の治療上の有用性を考えると、ヒトへの投与に適した有意な量の精製済タンパク質が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
互いに結合された2つの異なるサブユニットから成るタンパク質(例えばFc領域のアームに融合された単一タンパク質)が生成された結果、少なくとも3つの異なる種、すなわち2つのホモ二量体(例えばFcアーム/Fcアーム及び単一タンパク質−Fcアーム/単一タンパク質−Fcアーム)及び1つのヘテロ二量体(例えばFcアーム/単一タンパク質−Fcアーム)が形成される。
【0025】
従って、Fc領域に融合された単一タンパク質(すなわちFc領域のアームに融合された単一タンパク質)の生成中に直面するおそれのある問題の1つは、当該任意のタンパク質に結合されないFc領域の発現から生じる、又は当該タンパク質、具体的にはFc領域に融合された単一タンパク質を含有するFc融合タンパク質のタンパク質分解的切断から生じる多量の「遊離Fc部分」、すなわちFcアームの二量体(例えばFcアーム/Fcアーム・ホモ二量体)が発生することである。
【0026】
本発明の目的は、Fc領域に融合された単一タンパク質の生成に際して主要な汚染物質を形成する前記遊離Fc部分を排除することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、Fc融合タンパク質の流体、組成物、又は製剤から、Fc領域に融合された単一タンパク質を精製し、これにより、存在する遊離Fc部分の量が低減される、精製方法の開発に基づいている。
【0028】
本発明は従って、Fc領域に融合された単一タンパク質を含有するFc融合タンパク質を精製する際に遊離Fc部分の濃度を低減する方法に関し、この方法は、前記製剤に、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィを施し、そしてpH約8.4〜約8.9で樹脂を洗浄することにより、遊離Fc部分を排除することを含む。
【0029】
第2の態様において、本発明は、Fc領域に融合された単一タンパク質を含有するFc融合タンパク質製剤中の遊離Fc部分を低減するために、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィを用いることに関する。
【0030】
第3の態様において、本発明は、Fc領域に融合された単一タンパク質を含有し、そして総タンパク質中の遊離Fc部分の濃度が約5%未満又は約2%未満又は約1%未満である精製済Fc融合タンパク質に関する。
【0031】
第4の態様において、本発明は、Fc融合タンパク質製剤及び遊離Fc部分から、Fc領域に融合された単一タンパク質を分離するための方法に関する。この態様において、Fc領域に融合された単一タンパク質は、青色色素アフィニティ樹脂に結合することができ、そして、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィが先行し、且つ/又は、引き続き、アフィニティ・クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、ナノ濾過、又は限外濾過のうちの1又は複数のステップが行われる。好ましくは、Fc領域に融合された単一タンパク質は、Fc領域に融合された単一IFN−βである。
【0032】
第5の態様において、本発明は、Fc融合タンパク質製剤及び遊離Fc部分から、Fc領域に融合された単一タンパク質を分離するために、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィと、アフィニティ・クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、ナノ濾過、又は限外濾過のうちの1又は複数のステップとを用いることに関する。
【0033】
本発明の第6の態様は、本発明による方法によって精製された、Fc領域に融合された単一タンパク質、好ましくはFc領域に融合された単一IFN−βに関する。
【0034】
本発明の第7の態様は、本発明による方法によって精製された、突然変異Fc領域であるFc領域に融合された単一IFN−βに関する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、例1のステップ2において記載された青色セファロース・クロマトグラフィのクロマトグラフィ・プロフィールを示している。(i)280nmにおけるOD(mAU)、(ii)導電率、(iii)pH。1−平衡化、2−ロード、3−洗浄1、4−洗浄2、5−溶出。
【図2】図2は、例1のステップ2からのロード(図2A)、洗浄2(図2B)、及び溶出液(図2C)画分のRP−HPLC分析スペクトルを示す。ここでピーク(a)は遊離Fcを、ピーク(b)はFcmut/IFNβ−Fcmutを、そしてピーク(c)はIFNβ−Fcmut/IFNβ−Fcmutを表す。
【図3】図3は、例1のステップ4において記載された陽イオン交換クロマトグラフィのクロマトグラフィ・プロフィールを示している。(i)280nmにおけるOD(mAU)、(ii)導電率、(iii)pH。1−平衡化、2−ロード、3−洗浄、4−洗浄2、5−再生、6−浄化。
【図4】図4は、例1のステップ5において記載された疎水性相互作用クロマトグラフィのクロマトグラフィ・プロフィールを示している。(i)280nmにおけるOD(mAU)、(ii)導電率、(iii)pH。1−平衡化、2−ロード、3−洗浄1、4−再生、5−浄化。
【0036】
配列リストの簡単な説明
配列番号1は、IFNβ−Fcmutアミノ酸配列である。アミノ酸1〜166は、成熟ヒトインターフェロン・ベータを表し、そしてアミノ酸167〜393は、突然変異ヒト免疫グロブリン・ガンマ重鎖配列の一部を表す。
配列番号2は、配列番号1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
配列番号3は、IFNβ−Fcアーム・アミノ酸配列である。アミノ酸1〜21は、IFN−βシグナル・ペプチドを表し、残基22〜187は成熟IFN−βを表し、残基188〜195はリンカー配列を表し、そして残基196〜422は、ヒト免疫グロブリン重鎖の一部を表す。
配列番号4は、配列番号3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
互いに結合された2つの異なるサブユニットから成るタンパク質が生成された結果、少なくとも3つの異なる種、すなわち2つのホモ二量体及び1つのヘテロ二量体が形成される。例えば、IFNβ−Fc融合タンパク質を生成する時には、少なくとも以下の種が形成される:Fcアーム/Fcアーム二量体(ホモ二量体)、IFNβ−Fcアーム/IFNβ−Fcアーム(ホモ二量体)及びFcアーム/IFNβ−Fcアーム(ヘテロ二量体)。
【0038】
Fc融合タンパク質の組成物(例えばIFNβ−Fcアーム/IFNβ−Fcアーム及びFcアーム/IFNβ−Fcアーム)が望まれる場合には、総量のうちの30%に達することもある遊離Fc部分(例えばFcアーム/Fcアーム二量体)の濃度は低減されなければならない。
【0039】
本発明は、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィが、青色色素アフィニティ樹脂に結合するFc融合タンパク質の流体又は組成物中に存在し得る遊離Fc部分の量または程度を効率に低減し、これによりFc融合タンパク質の純度を増大させる好都合且つシンプルな方法を提供することである。
【0040】
従って、本発明の第1の態様は、Fc融合タンパク質を含む流体中に存在する遊離Fc部分から、Fc領域に融合された単一タンパク質を含有するFc融合タンパク質製剤を精製する方法であって、該方法が:
(a) 青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ樹脂上に前記流体をローディングし;
(b) pHが約8.4〜約8.9の緩衝剤で該樹脂を洗浄し、これにより、該遊離Fc部分を該樹脂から排除し;そして
(c) 該Fc融合タンパク質を該樹脂から溶出する
ステップを含む、方法に関する。
【0041】
Fc融合タンパク質は、青色色素アフィニティ樹脂及び青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ樹脂に結合することができる。
【0042】
Fc融合タンパク質を含む流体は、任意の組成物又は製剤、例えばヒト又は動物に由来する体液、又は細胞培養に由来する流体、例えば細胞培養上澄み又は細胞培養採取物であってよい。流体は、別の精製ステップから誘導された流体、例えば捕捉ステップ、又は青色セファロース・クロマトグラフィに先立つ任意の他の好適な精製ステップから生じた溶出液又は貫流液、例えばタンパク質Aクロマトグラフィの溶出液であってもよい。
【0043】
流体は好ましくは、細胞培養物質、例えば可溶化細胞、より好ましくは細胞培養上澄みであってよい。本明細書中に使用される「細胞培養上澄み」という用語は、細胞が培養される培地、及びタンパク質が適宜の細胞信号、いわゆるシグナル・ペプチドを含有することを条件としてタンパク質が分泌される培地を意味する。細胞を発現させるFc融合タンパク質が無血清培養条件下で培養されることが好ましい。従って、細胞培養上澄みには動物由来の成分が欠けていることが好ましい。最も好ましくは、細胞培養培地は化学的に定義された培地である。
【0044】
本明細書中、Fc領域は、Fcフラグメント又はFcドメインを意味することがある。本明細書中、「Fc領域」、「Fcフラグメント」又は「Fcドメイン」は相互に置き換え可能であり、同じ意味を有するものとして解釈されるべきである。
【0045】
本明細書中に使用される「Fc領域に融合された単一タンパク質」(例えばFcアーム/IFNβ−Fcアーム)という用語は、非免疫グロブリン・タンパク質(例えばIFN−β)を含む融合タンパク質を包含するものとする。非免疫グロブリン・タンパク質は本明細書中では、Fc領域由来部分(本明細書中では「Fc部分」と呼ぶ)の1つのアームだけに結合された「治療部分」(疾患の治療が意図されているかいないかとは関係なく)と呼ぶ。
【0046】
本明細書中に使用する「Fc融合タンパク質」は、「Fc領域に融合された単一タンパク質」と、融合タンパク質とを含む。融合タンパク質では、治療部分が非免疫グロブリン・タンパク質の2つのコピーから成っており、コピーのそれぞれがFc部分のアームに結合されている(例えばIFNβ−Fcアーム/IFNβ−Fcアーム)。本発明に従って精製されるべきFc融合タンパク質は、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ樹脂に結合する。
【0047】
本明細書中に使用される「Fc部分」という用語は、ヒンジ、CH2、CH3、CH4ドメイン、又はこれらの任意の組み合わせ、そして好ましくはヒンジ、CH2及びCH3ドメインから選択された、少なくとも1つの免疫グロブリン定常ドメイン、好ましくはヒト定常領域の二量体を意味する。免疫グロブリン定常ドメインは、IgG、IgA、IgE、IgM、IgD又はこれらの組み合わせ又はイソタイプに由来していてよい。好ましくは、これはIgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4である。より好ましくは、これはIgG1である。
【0048】
本発明によれば、Fc融合タンパク質のFc部分は、エフェクタ機能を調節するために修飾されてもよい。
【0049】
例えば、Fc部分がIgG1に由来する場合、EUインデックス・ポジション(Kabat他, 1991)に従って、下記Fc突然変異形を導入することができる:
T250Q/M428L
M252Y/S254T/T256E + H433K/N434F
E233P/L234V/L235A/ΔG236 + A327G/A330S/P331S
E333A;K322A。
【0050】
治療Fc融合タンパク質、すなわち、動物の疾患の治療又は予防のために、又は好ましくはヒトの治療又はヒトへの投与のために意図されたFc融合タンパク質が、本発明による精製に特に適している。
【0051】
青色色素アフィニティ樹脂と結合するいかなるFc融合タンパク質も、本発明にしたがって精製することができる。
【0052】
Fc融合タンパク質の治療部分は例えば、EPO、TPO、成長ホルモン、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、PDGF−ベータ、VEGF、IL−1アルファ、IL−ベータ、IL−2、IL−4、IL−5、IL−8、IL−10、IL−12、IL−17、IL−18、IL−18結合タンパク質、TGF−ベータ、TNF−アルファ、又はTNF−ベータであるか、又はこれに由来していてよい。
【0053】
Fc融合タンパク質の治療部分は、受容体、例えば膜貫通受容体に由来していてもよく、具体的には、受容体の細胞外ドメイン、及び所与の受容体の細胞外部分又は細胞外ドメインのリガンド結合フラグメントであるか、又はこれに由来していてよい。治療上興味深い受容体の例は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11a、CD11b、CD14、CD18、CD20、CD22、CD23、CD25、CD33、CD40、CD44、CD52、CD80、CD86、CD147、CD164、IL−2受容体、IL−4受容体、IL−6受容体、IL−12受容体、IL−17受容体(IL−17R、IL−17RB(IL−17RH1)、IL−17RC(IL−17RL)、IL−17RD(hSEF)、又はIL−17RE)、IL−18受容体サブユニット(IL−18R−アルファ、IL−18R−ベータ)、EGF受容体、VEGF受容体、インテグリン アルファ4 10 ベータ7、インテグリンVLA4、B2インテグリン、TRAIL受容体1、2、3、及び4、RANK、RANKリガンド、上皮細胞付着分子(EpCAM)、細胞内付着分子−3(ICAM−3)、CTLA4(細胞毒性T関連抗原である)、Fc−ガンマ−I、II又はIII受容体、HLA−DR 10ベータ、HLA−DR抗原、L−セレクチンである。
【0054】
上記定義に従って、本発明のFc融合タンパク質は、Fc融合ヘテロ二量体及びホモ二量体を含有していてよい。「ホモ二量体」は、単一非免疫グロブリン・タンパク質の2つのコピーを含み、これらのコピーのそれぞれがFc部分のアームに結合されている(例えば2つのIgGジスルフィド架橋ヒンジ−CH2−CH3アームの二量体)。「ヘテロ二量体」又は「Fc領域に融合された単一タンパク質」は、唯1つのアームが単一非免疫グロブリン・タンパク質に融合されているFc部分を含む。
【0055】
好ましくは、前記ヘテロ二量体は、2つのIgGヒンジ−CH2−CH3アームのうちの1つに結合された単一IFN−βを含む(例えば国際公開第2005/001025号パンフレット及び配列番号3)。2つのサブユニット、つまり単一IFN−βタンパク質に結合された突然変異IgGヒンジ−CH2−CH3アームを含む第1サブユニット(すなわちIFNβ−Fc mut、配列番号1のアミノ酸配列に対応)と、突然変異IgGヒンジ−CH2−CH3アームを含む第2サブユニット(すなわちFc mut、配列番号1のアミノ酸残基167〜393に対応)とを含有するヘテロ二量体も本発明に照らして好ましいものである。従って、本発明によれば、好ましくは
(a) 配列番号1又は3;
(b) 高緊縮条件下で配列番号2又は4の相補体とハイブリッド形成するポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチド;及び
(c) (a)のポリペプチドに対する配列同一性が少なくとも80%又は85%又は90%又は95%である(a)の突然変異タンパク質
から選択されたポリペプチドを含むFc部分に融合された単一IFN−βが、本発明の方法に従った精製に適している。
【0056】
このような、Fc部分に融合された単一IFN−βを、本発明の枠内で、概ねFcアーム/IFNβ−Fcアームと呼ぶ。
【0057】
本発明に照らしてさらに別の好ましいFcアーム/IFNβ−Fcアームは、配列番号3の突然変異形N272Aに対応する、EUインデックス・ポジションに基づく突然変異形N297Aを含む。
【0058】
本発明によれば、Fc融合タンパク質は、好ましくはFc融合タンパク質組成物の総タンパク質濃度の少なくとも5%未満、2%未満、又は1%未満まで、遊離Fc部分を低減、減少、又は排除するために、色素アフィニティ・クロマトグラフィを施される。
【0059】
本明細書中に使用される「遊離Fc部分」又は単に「遊離Fc」という用語は、本発明に従って精製されるべきFc融合タンパク質の任意の部分であって、治療部分に由来する完全な更なるドメイン又は完全な配列を含まないFc部分に相当するか又は由来するものを包含するものとする。遊離Fcは例えば、治療部分の重要な部分には結合されていない、IgGヒンジ、CH2及びCH3ドメインの二量体を含有していてよい。
【0060】
Fc部分に由来する単量体が、遊離Fc画分中に含有されていてもよい。言うまでもなく、遊離Fcは、治療部分からの数多くのアミノ酸残基をまだ含有していてよく、例えば治療部分に属するアミノ酸が、例えば1〜50個、1〜20個、又は1〜10個、又は1〜5個、又は1つの単一アミノ酸がFc部分にまだ融合されていてもよい。
【0061】
本発明によれば、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィは、任意の好適な樹脂上で実施することができる。好ましくは樹脂は、Cibacron Blue F3G-Aリガンドを含む。好ましくは、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィは、Blue Sepharose樹脂上で行われる。Blue Sepharose 6FF (GE Healthcare)という名称で商業的に利用可能な樹脂は、本発明の方法のステップ(a)に特に適したアフィニティ樹脂の一例である。Blue Sepharose FFの技術的特徴は次の通りである:
【表2】

【0062】
他の好適な商業的に利用可能な青色色素アフィニティ・カラムは、Blue Sepharose CL-6B (GE Healthcare)、Blue Trisacryl M (Pall/BioSepra)、Affi-Gel Blue (Bio-Rad)、Econo-Pac ブルーカートリッジ(Bio-Rad)、SwellGel Blue (Pierce)、及びToyopearl AF-Blue (Tosoh Bioscience)又はCibacron Blue F3G-A (Polysciences Inc.)から選択される。
【0063】
本発明の精製方法のステップ(a)において、Fc融合タンパク質を含む流体を青色色素樹脂上にローディングする前に、流体を好ましくは、6未満、好ましくは約4.5のpHに調節するか、或いは、必要な場合には約pH5で約20mS/cm未満の導電率まで水で希釈する。このことは、Fc融合タンパク質が青色色素樹脂に結合するのを可能にする。
【0064】
本発明の方法のステップ(b)において、pHが約8.4〜約8.9の緩衝剤で遊離Fc部分を青色色素樹脂から洗浄する。pHは例えば約8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、又は約8.9であってよい。
【0065】
ステップ(b)において、任意の好適な緩衝剤(例えば酢酸アンモニウム、Tris−HCl)を使用して、遊離Fc部分を青色色素アフィニティ樹脂から洗い落とす。8.7±0.2又は8.7±0.1のpHの酢酸アンモニウム緩衝剤が好ましい。
【0066】
更なる好ましい実施態様の場合、pH約8.7のイソクラチック塩濃度40〜100mMで、遊離Fc部分を青色セファロース・カラムから洗い落とす。イソクラチック塩濃度は、例えば40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100mMの、pH約8.6〜約8.8の酢酸アンモニウムであってよい。これは好ましくは、pH約8.7±0.1の50mM酢酸アンモニウムである。Tris−HCl緩衝剤が、好ましくはpH8.5の濃度50mMで使用されてもよい。
【0067】
本発明の方法のステップ(c)において、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ・カラムからFc融合タンパク質を溶出する。
【0068】
ステップ(c)においてFc融合タンパク質を青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ・カラムから溶出することは、pH約8.3〜8.7の緩衝剤中で行われる。好ましい実施態様の場合、溶出は、pHを調節するためにアンモニアが添加された酢酸アンモニア、NaCl、プロピレングリコールを含む緩衝剤中で実施される。10%〜50%、10%〜40%、20%〜40%、20%〜30%、及び40%〜50%の濃度でプロピレングリコールが使用されることが好ましい。好適な緩衝剤濃度は、例えば約25mM又は約50mM又は約100mM又は約150mM又は約200mM又は約250mMから選択される。
【0069】
極めて好ましい実施態様の場合、本発明の方法は、Fc融合タンパク質の精製スキームの第2ステップとして用いられ、この場合、青色セファロース樹脂上にステップ(a)においてローディングされた流体は、前記Fc融合タンパク質を含む流体に対して最初に施されたタンパク質A又はタンパク質Gアフィニティ・クロマトグラフィの溶出液である。流体は好ましくは、細胞培養物質、例えば可溶化細胞、より好ましくは細胞培養上澄みであってよい。
【0070】
タンパク質A又はGアフィニティ・クロマトグラフィは好ましくは捕捉ステップとして用いられ、ひいては、Fc融合タンパク質の調製のため、具体的には宿主細胞タンパク質(HCPs)及びFc融合タンパク質凝集体の排除のため、そしてFc融合タンパク質製剤の濃縮のために役立つ。
【0071】
MabSelect Xtra (GE Healthcare)の名称で商業的に入手可能なカラムは、捕捉ステップに特に適したアフィニティ樹脂の一例である。
【0072】
本発明によれば、ステップ(c)の青色セファロース・クロマトグラフィの溶出液は次いで、例えば下にさらに詳述するように、更なる精製のために使用することができる。
【0073】
本発明の好ましい実施態様の場合、ステップ(a)は、パッキングされた青色色素アフィニティ樹脂1リットル当たり40gのFc融合タンパク質の最大動的容量で、青色セファロース樹脂をローディングすることを含む。
【0074】
加えて、本発明の青色セファロース・クロマトグラフィは、遊離Fc部分のレベルを、約5%未満又は約2%未満又は約1%未満の遊離Fc部分に低減する。
従って、本発明の青色セファロース・クロマトグラフィ・ステップは、遊離Fc部分のレベルを、SDS−PAGEによって測定された検出レベル未満に低減する。従って、本発明の好ましい実施態様の場合、青色色素クロマトグラフィの溶出液は、1μgのFc融合タンパク質をローディングしたときに、非還元条件下のSDS−PAGE及び銀染色によっては検出することができない遊離Fc部分レベルを有している。
【0075】
本発明の第2の態様は、Fc融合タンパク質、具体的には青色色素アフィニティ樹脂に結合することができるFc融合タンパク質、及び具体的にはFc領域に融合された単一タンパク質を含有するFc融合タンパク質、例えばFcアーム/IFNβ−Fcアームを含む組成物中の遊離Fc部分の濃度を低減するために、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィを用いることに関する。好ましくは、青色色素樹脂は、青色セファロース樹脂である。
【0076】
本発明の第3の態様は、Fc領域に融合された単一タンパク質を含有し、そして総タンパク質中の遊離Fc部分の濃度が約5%未満又は約2%未満又は約1%未満である精製済Fc融合タンパク質に関する。
【0077】
本発明の第4の態様は、Fc融合タンパク質製剤(例えばIFNβ−Fcアーム/IFNβ−Fcアーム及びFcアーム/IFNβ−Fcアーム)及び遊離Fc部分(例えばFcアーム/Fcアーム二量体)から、Fc領域に融合された単一タンパク質(例えばFcアーム/IFNβ−Fcアーム)を分離するための方法に関する。このプロセスにおいて、好ましくは、アフィニティ・クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、及びサイズ排除クロマトグラフィから選択された1又は複数の追加的なステップを有する精製方法において、青色色素アフィニティ・セファロース・クロマトグラフィが用いられてよい。精製ステップのうちの1又は複数の間に、濾過ステップ、例えばナノ濾過、又は限外濾過を用いることができる。
【0078】
1実施態様の場合、精製されるべき、Fc領域に融合された単一タンパク質、例えばFcアーム/IFNβ−Fcアームを含有する流体(すなわちFc融合タンパク質製剤)に、例えばタンパク質A上で最初の捕捉ステップを施す。次いで捕捉ステップの溶出液を、本発明に従って、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ上に適用することができる。
【0079】
Fc融合タンパク質と濃度が低減された遊離Fc部分とを含む青色色素アフィニティ・クロマトグラフィの溶出液に、次いで、更なるクロマトグラフィ・ステップ、例えば陽イオン交換クロマトグラフィを施し、続いて、疎水性相互作用クロマトグラフィを施すことができる(例えば例1)。
【0080】
好ましくは、陽イオン交換クロマトグラフィにおいて使用される樹脂は、強陽イオン交換樹脂である。Fractogel SO3- (Merck)の名称で商業的に入手可能なカラムは、本発明の方法との関連において特に好適な陽イオン交換樹脂の一例である。
【0081】
好ましくは、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ・ステップからの溶出液を、陽イオン交換樹脂上にこれをローディングする前に、適切なローディング緩衝剤中に希釈又は透析する。ローディング前に、陽イオン交換カラムを好ましくは、適切な平衡化緩衝剤で平衡化する。適切な平衡化/洗浄緩衝剤は、例えば、pH5.0±0.5、導電率7.5±0.5mS/cmの酢酸ナトリウム、NaCl緩衝剤である。緩衝剤は好ましくは、pH5.0±0.2、導電率7.5±0.2mS/cmの酢酸ナトリウム、NaCl緩衝剤である。
【0082】
陽イオン交換樹脂を、平衡化/洗浄緩衝剤で洗浄し、そして次いで、例えばpH7.0±0.5、導電率16±1mS/cmの35mM〜45mMのリン酸ナトリウム及び50〜150mMのKClの緩衝剤で、陽イオン交換樹脂からFc融合タンパク質を溶出する。緩衝剤は好ましくは、pH7.0±0.1、導電率16±0.5mS/cmの40mMのリン酸ナトリウム及び100mMのKClの緩衝剤である。
【0083】
Fc領域に融合された単一タンパク質(例えばFcアーム/IFNβ−Fcアーム)を主に含有する、陽イオン交換クロマトグラフィ・ステップからの溶出液に、次いで疎水性相互作用クロマトグラフィを施す。疎水性相互作用クロマトグラフィは、任意の好適な樹脂上で実施することができる。PPG-600M (Tosoh)の名称で商業的に入手可能な樹脂が、本発明による疎水性相互作用クロマトグラフィ・ステップに特に適した樹脂である。
【0084】
疎水性相互作用クロマトグラフィ・カラムを好ましくは、適切な平衡化緩衝剤で平衡化する。
【0085】
陽イオン交換クロマトグラフィからの溶出液を、疎水性交換カラム上にこれをローディングする前に、適切なローディング緩衝剤中に希釈又は透析することができる。ローディング前に疎水性交換カラムの溶出液に、硫酸アンモニアを添加することが好ましい。
【0086】
ローディング後、カラムを適切な洗浄緩衝剤で洗浄し、そしてFc領域に融合された精製済の単一タンパク質(例えばFcアーム/IFNβ−Fcアーム)を、貫流液中で捕集する。貫流液は好ましくは、280nmにおける吸光ピークの主な上昇が現れたとき、そして洗浄終了時に安定なベースラインに達するまで捕集する。
【0087】
適切な平衡化/洗浄緩衝剤は、例えば、pH6.8±0.8、導電率5.3±8mS/cmの35mM〜45mMのリン酸ナトリウム、0.1〜0.8Mの硫酸アンモニウムの緩衝剤である。緩衝剤は好ましくは、pH6.8±0.2、導電率5.3±2mS/cmの40mMのリン酸ナトリウム、0.5Mの硫酸アンモニウム緩衝剤である。
【0088】
Fc領域に融合された精製済の単一タンパク質(例えばFcアーム/IFNβ−Fcアーム)を含む貫流液には、ナノ濾過及び透析の更なるステップを施すことができる。
【0089】
精製されるべき、Fc領域に融合された単一タンパク質(例えばFcアーム/IFNβ−Fcアーム)を含有する流体(すなわちFc融合タンパク質製剤)に、例えばタンパク質A上で最初の捕捉ステップを施す。次いで捕捉ステップの溶出液を、本発明に従って、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ上に適用する。Fc融合タンパク質と濃度が低減された遊離Fc部分とを含む青色色素アフィニティ・クロマトグラフィの溶出液に、更なるクロマトグラフィ・ステップ、例えば陰イオン交換クロマトグラフィを施し、続いて、サイズ排除クロマトグラフィを施すこともできる。
【0090】
陰イオン交換クロマトグラフィは、任意の好適な陰イオン交換樹脂、例えば上記「背景技術」で説明したような弱又は強陰イオン交換体上で実施することができる。好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィは、強陰イオン交換樹脂上で実施される。Q Sepharose Fast Flow (GE Healthcare)の名称で商業的に入手可能な樹脂は、本発明による陰イオン交換クロマトグラフィに特に適した陰イオン交換樹脂の一例である。
【0091】
好ましくは、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ・ステップからの溶出液を、陰イオン交換カラム上にこれをローディングする前に、適切なローディング緩衝剤中に希釈又は透析する。陰イオン交換カラムも好ましくは、ローディング緩衝剤で平衡化する。カラムを洗浄するために同じ緩衝剤を使用するのが好ましい。
【0092】
適切な平衡化/ローディング/洗浄緩衝剤は、例えばpH8.5±0.4の25〜100mM Trisを含有する緩衝剤である。緩衝剤は好ましくはpH8.5の50mM Trisである。
【0093】
Fc領域に融合された単一タンパク質(例えばFcアーム/IFNβ−Fcアーム)を主に含有する、陰イオン交換カラムからの溶出液は、最大0.5M NaCl + Tris 50mM pH8.5に達する塩勾配を提供することにより得られる。
【0094】
サイズ排除クロマトグラフィは任意の好適なゲル上で行うことができる。Superdex 200 (GE Healthcare)の名称で商業的に入手可能なゲルは、特に好適なサイズ排除ゲルの例である。陰イオン交換クロマトグラフィからの溶出液は、これをサイズ排除カラム上にローディングする前に、適切なローディング緩衝剤中にさらに希釈又は透析することができる。サイズ排除カラム上にローディングする前に、陽イオン交換カラムの溶出液に硫酸アンモニウムを添加することが好ましい。
【0095】
ローディング後、カラムを適切な洗浄緩衝剤で洗浄し、そしてFc領域に融合された精製済の単一タンパク質(例えばFcアーム/IFNβ−Fcアーム)を、貫流液中で捕集する。貫流液は好ましくは、280nmにおける吸光ピークの主な上昇が現れたとき、そして洗浄終了時に安定なベースラインに達するまで捕集する。
【0096】
樹脂の体積、使用されるべきカラムの長さ及び直径、並びに動的容量及び流量は、いくつかのパラメータ、例えば処理されるべき流体の体積、本発明の方法を施すべき流体中のタンパク質の濃度などに依存する。各ステップ毎にこれらのパラメータを測定することは、当業者の平均的技能範囲内に含まれる。
【0097】
本発明の精製方法の好ましい実施態様の場合、1又は複数の限外濾過又はナノ濾過ステップが実施される。限外濾過又はナノ濾過は、バルク・バッファ中のFc融合タンパク質を平衡化するために、又はFc融合タンパク質を所期濃度に濃縮するために、前のクロマトグラフィ・ステップから生じた溶出液中の小有機分子及び塩を除去するのに有用である。限外濾過は、分子量5kDA未満、10、15、20、25、又は30kDA以上の成分の除去を可能にする孔径を有する限外濾過膜上で実施してよい。
【0098】
本発明の方法に従って精製されたタンパク質が、ヒトへ投与するように意図されている場合、この方法に1又は複数のウィルス除去ステップを含むことが有利である。
【0099】
例えば、保管又は輸送を容易にするために、本発明の任意の精製ステップの前及び/又は後に、材料を凍結して解凍することができる。
【0100】
本発明によれば、Fc融合タンパク質は、真核生物発現系、例えば酵母、昆虫、又は哺乳動物細胞内に生成されてよく、その結果、グリコシル化Fc融合タンパク質となる。
【0101】
本発明によれば、哺乳動物細胞、例えば動物細胞系、又はヒト細胞系内にFc融合タンパク質を発現させることが最も好ましい。チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞又はマウス骨髄腫細胞系NS0が、精製されるべきFc融合タンパク質の発現に特に適した細胞系の例である。Fc融合タンパク質は好ましくは、ヒト細胞系、例えばヒト繊維肉腫HT1080細胞系、ヒト網膜芽細胞系PERC6、又はヒト胚腎臓細胞系293、又は欧州特許第1230354号明細書に記載されている永久羊膜細胞系中で生成することもできる。
【0102】
精製されるべきFc融合タンパク質が、これを分泌する哺乳動物細胞によって発現されるならば、本発明の精製方法の出発材料は、採取物又は粗採取物とも呼ばれる細胞培養上澄みである。細胞が、動物血清を含有する培地中に培養されるならば、細胞培養上澄みは不純物として血清タンパク質をも含有する。
【0103】
好ましくは、細胞を発現させ分泌するFc融合タンパク質は、無血清条件下で培養する。Fc融合タンパク質は、化学的に定義された培地中で生成することもできる。この場合、本発明の精製方法の出発材料は、不純物として宿主細胞タンパク質を主に含有する無血清細胞培養上澄みである。細胞培地に成長因子、例えばインスリンが加えられる場合には、例えばこれらのタンパク質も、精製過程中に排除されることになる。
【0104】
細胞培養上澄み中に放出された可溶性の分泌Fc融合タンパク質を形成するために、Fc融合タンパク質の治療部分の天然シグナル・ペプチドを使用するか、又は、異種シグナル・ペプチド、すなわち、使用される具体的な発現系において効率的である別の分泌タンパク質に由来するシグナル・ペプチド、例えばウシ又はヒトの成長シグナル・ペプチド、又は免疫グロブリン・シグナル・ペプチドが使用される。
【0105】
本明細書中に使用される「突然変異タンパク質」という用語は、好ましくは配列番号1の配列に対応するサブユニット(すなわちIFNβ−Fcmut)を有するFcアーム/IFNβ−Fcアームの類似体(例えばFcmut/IFNβ−Fcmut)であって、サブユニットにおいて、元のIFNβ−Fcアーム/Fcアームと比較して、結果としての生成物の活性を大きく変えることなしに、IFNβ−Fcアームのアミノ酸残基のうちの1つ又は2つ以上が異なるアミノ酸残基によって置換されているか、又は末梢されているか、又はIFNβ又はFcアームの元の配列に1又は複数のアミノ酸残基が付加されているものを意味する。これらの突然変異タンパク質は、周知の合成によって、且つ/又は部位特異的突然変異誘発技術によって、又はこれらに適した任意のその他の周知の技術によって調製される。
【0106】
本発明による突然変異タンパク質は、緊縮条件下で配列番号1に従ってIFNβ−FcmutをコードするDNA又はRNAとハイブリッド形成する核酸、例えばDNA又はRNAによってコードされたタンパク質を含む。IFNβ−FcmutをコードするDNA配列の一例は、配列番号2である。
【0107】
「緊縮条件」という用語は、当業者が従来より「緊縮」と呼んでいるハイブリダイゼーション及び後続の洗浄条件を意味する。Ausubel他, Current Protocols in Molecular Biology, supra, Interscience, N.Y.,§§6.3及び6.4 (1987, 1992)を参照されたい。限定することなしに、緊縮条件の例を挙げるならば、これらの例は、例えば5分間にわたって2 x SSC及び0.5% SDS、15分間にわたって2 x SSC及び0.1% SDS、30〜60分間にわたって37℃の0.1 x SSC及び0.5% SDS、そして30〜60分間にわたって68℃の0.1 x SSC及び0.5% SDS中の、研究対象のハイブリッドの計算Tmを12〜20℃下回る洗浄条件を含む。当業者には明らかなように、緊縮条件はまた、DNA配列、オリゴヌクレオチド・プローブ(例えば10〜40塩基)又は混合オリゴヌクレオチド・プローブの長さにも依存する。混合プローブが使用される場合には、SSCの代わりに塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用することが好ましい。上記Ausubelを参照されたい。
【0108】
同一性は、配列を比較することにより割り出された、2つ又は3つ以上のポリペプチド配列間、又は2つ又は3つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を反映する。一般に、同一性は、比較されている配列の全長にわたって、それぞれ2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド配列の、ヌクレオチドとヌクレオチド、又はアミノ酸とアミノ酸との正確な対応関係を意味する。
【0109】
正確な対応関係がない配列に対しては、「同一性%」を割り出すことができる。一般に、比較されるべき2つの配列は、配列間の最大相関を与えるようにアライニングされる。これらの配列は、アラインメント度を高めるために、一方又は両方の配列内に挿入「ギャップ」を含んでいてよい。比較されている配列のそれぞれの全長にわたって(いわゆるグローバル・アラインメント、これは同じ又は極めて類似した長さの配列に特に適している)、又はより短い、定義された長さにわたって(いわゆるローカル・アラインメント、これは等しくない長さの配列により適している)、同一性%を割り出すことができる。
【0110】
2つ又は3つ以上の配列の同一性及び相同性を比較する方法は当業者に良く知られている。このように例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package, version 9.1 (Devereux J他, 1984)において入手可能なプログラム、例えばプログラムBESTFIT及びGAPを使用することにより、2つのポリヌクレオチド間の同一性%と、2つのポリペプチド配列間の同一性%及び相同性%とを割り出すことができる。BESTFITは、Smith及びWaterman (1981)の「ローカル相同性」アルゴリズムを利用し、そして2つの配列間の最良の単独類似性領域を見いだす。配列間の同一性及び/又は類似性を割り出すための他のプログラム、例えばBLASTプログラム群(Altschul S F他, 1990, Altschul S F他, 1997, NCBLのホームページwww.ncbi.nlm.nih.govからアクセス可能)及びFASTA (Pearson W R, 1990)も当業者に知られている。
【0111】
好ましい実施態様の場合、任意のこのような突然変異タンパク質の同一性又は相同性は少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%である。
【0112】
本発明による突然変異タンパク質の好ましい変化は、「同類」置換として得られるものである。IFNβ−Fcアームの同類アミノ酸置換は、十分に類似の物理化学特性を有する群内部の同義アミノ酸を含んでいてよく、これにより、群の員間の置換は分子の生物学的機能を維持し続ける(Grantham, 1974)。アミノ酸の挿入及び抹消が少数のアミノ酸だけ、例えば30未満、20未満、又は好ましくは10未満だけに関与し、そして機能構造にとって重要なアミノ酸、例えばシステイン残基を除去又は変位しない場合には、上記配列内で、これらの機能を変えることなしに、アミノ酸を挿入・抹消してもよいことは明らかである。このような抹消及び/又は挿入によって生成されたタンパク質及び突然変異タンパク質は、本発明の範囲に含まれる。
【0113】
好ましくは、同類アミノ酸群は、表2において定義された群である。より好ましくは、同類アミノ酸群は、表3において定義された群であり、最も好ましくは、同類アミノ酸群は、表4において定義された群である。
【表3】

【表4】

【表5】

【0114】
第5の態様において、本発明は、Fc融合タンパク質製剤及び遊離Fc部分から、Fc領域に融合された単一タンパク質を分離するために、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィと、アフィニティ・クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、ナノ濾過、又は限外濾過のうちの1又は複数のステップとを用いることに関する。
【0115】
第6の態様において、本発明は、本発明による方法によって精製された、Fc領域に融合された単一タンパク質に関する。好ましい実施態様の場合、Fc領域に融合された精製済の単一タンパク質は、Fc領域に融合された単一IFN−ベータ(すなわちFcアーム/IFNβ−Fcアーム)である。
【0116】
第7の態様において、本発明は、本発明による方法によって精製された、突然変異Fc領域であるFc領域に融合された単一IFN−ベータに関する(すなわちFcmut/IFNβ−Fcmut)。
【0117】
このようなFc領域に融合された精製済の単一タンパク質は、好ましくは高度に精製された、Fc領域に融合された単一タンパク質である。高度に精製された、Fc領域に融合された単一タンパク質は、例えば1レーン当たり1又は2μgの量のタンパク質をローディングした後、銀染色された非還元型SDS−PAGE−ゲル中の単一バンドの存在によって検出される。Fc領域に融合された精製済の単一タンパク質は、HPLCにおける単一ピークとしての溶出液と定義されてもよい。
【0118】
本発明の方法から得られた、Fc領域に融合された精製済の単一タンパク質の製剤は、20%未満の不純物、好ましくは10%未満、5%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満の不純物を含有していてよく、或いは、均質になるまで、すなわちいかなる検出可能なタンパク質汚染物をも含まなくなるまで精製されてもよい。
【0119】
Fc領域に融合された精製済の単一タンパク質は、治療用途、具体的には人間の患者へ投与するように意図されていてよい。Fc領域に融合された精製済の単一タンパク質が患者へ投与される場合、これは好ましくは全身投与され、そして好ましくは、皮下投与、筋内投与、例えば気道を介して上皮投与されるか、又は局所投与される。Fc領域に融合された精製済の単一タンパク質の具体的な医療用途いかんでは、直腸又はくも膜下投与が適していることもある。
【0120】
投与を目的として、本発明の好ましい実施態様において、Fc領域に融合された精製済の単一タンパク質は、医薬組成物中に製剤する、すなわち、医薬的に許容し得るキャリア、又は賦形剤などと一緒に製剤することができる。
【0121】
「医薬的に許容し得る」という定義は、活性成分の生物活性の効果を妨害せず、しかもこれが投与される宿主に対して毒性でない、任意のキャリアを包含するものとする。例えば、非経口投与のために、活性タンパク質は、ビヒクル、例えば生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン、及びリンゲル溶液中の単位投与形態で製剤されてよい。
【0122】
本発明による医薬組成物の活性成分は、種々の方法で個体に投与することができる。投与ルートは、皮膚内、経皮(例えば徐放性製剤)、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、頭蓋内、硬膜外、局所、直腸、及び鼻腔内ルートを含む。他の任意の治療上効果的なルート、例えば上皮又は内皮組織、例えば深肺上皮への吸収を気道投与のために用いることができる。活性成分は遺伝子療法によって投与することもでき、この場合、活性物質をコードするDNA分子が患者に(ベクターを介して)投与され、これにより、活性物質はin vivoで発現され分泌されることになる。加えて、本発明によるタンパク質は、生物活性物質の他の成分、例えば医薬的に許容し得る界面活性剤、賦形剤、キャリア、希釈剤及びビヒクルと一緒に投与することもできる。
【0123】
非経口(例えば静脈、皮下、筋内)投与のために、Fc領域に融合された単一タンパク質は、医薬的に許容し得る非経口ビヒクル(例えば水、生理食塩水、デキストロース溶液)、及び、等張性(マンニトール)又は化学安定性(例えば保存剤及び緩衝剤)を維持する添加剤と連携して、溶液、懸濁液、エマルジョン又は凍結乾燥粉末として製剤することができる。製剤は、一般に用いられる技術によって滅菌される。
【0124】
活性タンパク質の「治療上効果的な量」は、Fc領域に融合された単一タンパク質のタイプ、Fc領域に融合された単一タンパク質のそのリガンドに対する親和性、投与ルート、患者の臨床条件を含む、多くの変数の関数となる。
【0125】
単回又は複数回投与として個体に投与される投与量は、Fc領域に融合された単一タンパク質の薬物動態特性、投与ルート、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、体格)、症状の程度、併用治療、治療頻度、及び所期効果を含む種々様々な因子に応じて変化することができる。確立された投与量範囲の調節及び操作、並びに、個体内の治療部分の天然リガンドの阻害を見極めるためのin vitro及びin vivo法は、当業者が十分に実施できる範囲にある。
【0126】
Fc領域に融合された精製済の単一タンパク質は、約0.001〜100mg/kg体重、又は約0.01〜10mg/kg体重、又は約0.1〜5mg/kg体重、又は約1〜3mg/kg体重、又は約2mg/kg体重の量で使用されてよい。
【0127】
更なる好ましい実施態様の場合、Fc領域に融合された精製済の単一タンパク質は、毎日又は隔日又は1週に3回又は1週に1回、投与される。
【0128】
一日の投与は通常、所期の結果を得るのに効果的な分割投与形態、又は徐放形態で行われる。第2又は後続の投与は、初期又は前回の個体への投与量と同じか、これよりも少ないか、又はこれよりも多い投与量で実施することができる。第2又は後続の投与は、疾患の発現中又は発現前に行うことができる。
【0129】
本発明についてここで十分に説明してきたが、当業者には明らかなように、本発明の思想及び範囲を逸脱することなしに、また過度の実験を行うことなしに、同等のパラメータ、濃度及び条件の幅広い範囲内で本発明を実施することができる。
【0130】
具体的な実施態様と関連して本発明を説明してきたが、言うまでもなく、更なる変更を加えることができる。本出願は、一般に、本発明の原理に従う、そして、本発明が関連する技術分野においては良く知られた慣習の範囲にあるような、又は添付の特許請求の範囲に従う前記本質的な特徴に適用され得るような、本開示内容から離脱したものを含む、本発明のいかなる変更形、用途、改変形にも範囲が及ぶものとする。
【0131】
雑誌の論文又は抄録、公開済又は未公開の米国又は外国特許出願文献、発行済の米国又は外国特許文献、又はあらゆる他の参考文献を含む、本明細書中に引用された全ての参考文献は、引用文献中に提示された全てのデータ、表、図、及び本文を含めて、その全体を参考のため本明細書中に引用する。加えて、本明細書中に引用した参考文献中に引用された参考文献の内容全体も、全体として参考のために引用する。
【0132】
周知の方法ステップ、コンベンショナルな方法ステップ、周知の方法又はコンベンショナルな方法に関する言及は、本発明の態様、説明又は実施態様が関連技術において開示、教示、又は示唆されていることを承認するものでは決してない。
【0133】
特定の実施態様の前記説明は、発明の一般的な性質を十分に明らかにするので、本発明の一般概念を逸脱することなしに、過度の実験なしに、当業者の技能範囲内の知識(本明細書中に引用した参考文献の内容を含む)を応用することにより、他者がこのような具体的な実施態様を種々の用途のために、容易に変更且つ/又は改変することができる。従って、このような改変形及び変更形は、本明細書中に提示された教示内容及び指針に基づいて、開示された実施態様の同等物の範囲内にあるものとする。言うまでもなく、本明細書中の表現又は用語は、説明を目的としたものであって、限定することを目的とはしていないので、本明細書中の表現又は用語は、当業者の知識と組み合わせて、本明細書中に提示された教示内容及び指針に照らして、当業者によって解釈することができる。
【実施例】
【0134】
例全体を通して頻繁に使用される略語のリスト
BV: 床容積
CHO: チャイニーズ・ハムスター卵巣
Cond.: 導電率
HCPs: 宿主細胞タンパク質
IFNβ−Fcmutタンパク質: 下記Fcmut/IFNβ−Fcmutヘテロ二量体及びIFNβ−Fcmut/IFNβ−Fcmutホモ二量体
KCl: 塩化カリウム
kDa: キロダルトン
NaCl: 塩化ナトリウム
OD: 光学濃度
PES: ポリエーテルスルホン
PG: プロピレングリコール
q.s.: 適量
RT: 室温
SDS−PAGE: ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動
RP−HPLC: 逆相高性能液体クロマトグラフィ
UV: 紫外線
設備
PG 200/500カラム(GE Healthcare)
MC126 Conductometer (Mettler-Toledo) 25℃の値に対して較正
Mp120 pHメーター(Mettler-Toledo)
【0135】
Fcmut/IFNβ−Fcmutヘテロ二量体は、インターフェロン−ベータタンパク質とFcドメインとの融合によって形成されたFc融合タンパク質である。免疫グロブリンの、Fcフラグメント又はFc領域とも呼ばれるFcドメインは、ヒンジ領域(H)と、抗体重鎖の第2(CH2)及び第3(CH3)ドメインとを含む2つの同一アームから成っている。Fcmut/IFNβ−Fcmutは、2つのサブユニット、つまり単一IFN−βタンパク質に結合された突然変異IgG Fcアームを含む第1サブユニット(配列番号1)と、突然変異IgG Fcアームを含む第2サブユニット(配列番号1のアミノ酸167〜393に対応)とを含有する。突然変異IgG Fcアーム(配列番号1のアミノ酸167〜393)は下記突然変異形を含有する:
【表6】

【0136】
CHOクローンは、Fcmut/IFNβ−Fcmutの発現に関して立証されている(IFNβ−Fcmutタンパク質発現CHOクローンと呼ばれる)。
Fcmut/IFNβ−Fcmutの両サブユニットがクローンから発現されるので、タンパク質の様々な種/形態が生成され、そして下記のように称される:
「遊離Fc」(Fcmut/Fcmut二量体)
「Fcmut/IFNβ−Fcmut」(Fcmut/IFNβ−Fcmutヘテロ二量体)
「IFN−ベータ二量体」(IFNβ−Fcmut/IFNβ−Fcmutホモ二量体)
凝集体及び切断形。
【0137】
シンプルなバッチ・モードで生成された細胞培養上澄み上のRP−HPLCは、「Fcmut/IFNβ−Fcmut」が、生成された総分子のほぼ50%を占めることを示した。「遊離Fc」は、生成された総分子のほぼ30%であり、また「IFN−ベータ二量体」は、生成された総分子のほぼ20%である。
【0138】
精製方法は、生成された他の形態からのFcmut/IFNβ−Fcmutの精製に関して立証された。Fcmut/IFNβ−Fcmutの分子はほぼ70kDaであり、そしてpHは約7〜7.5である。この精製方法は、遊離Fcを極めて低レベルまで低減するのを可能にする青色セファロース・クロマトグラフィを含む。
【0139】
例1
ステップ1:タンパク質A上の捕捉ステップ及び捕捉後溶出液の濾過
無血清条件下で培養されたIFNβ−Fcmutタンパク質発現CHOクローンの清浄化済の採取物に、具体的にはHCPs及びIFNβ−Fcmutタンパク質の凝集体を排除するために、先ず捕捉ステップとしてタンパク質Aアフィニティ・クロマトグラフィを施す。捕捉後溶出液を室温で解凍し、そしてMillistak + A1 HCフィルタ(照会MA1HC01FS1; Millipore)上で濾過した。濾過カセットを、下記ステップ2において記載された平衡化緩衝液1で予洗した(すなわち100リットル/m2)。濾過後、フィルタ及び濾過システムをデッドボリュームの1.5〜2倍で洗浄した。この洗浄溶液を、濾過された捕捉後溶出液と一緒に捕集し、そして混合物に、青色セファロース・クロマトグラフィを施した。
【0140】
ステップ2:青色セファロース・クロマトグラフィ
生成された遊離Fc画分を除去するために、青色セファロース・クロマトグラフィを展開した。
【0141】
全ての作業を室温(20±5℃)で実施し、そして流量を、溶出中を除いて300cm/hで一定に保った。溶出中には流量は、溶出緩衝剤の粘度が高いため160cm/hであった。280nmにおけるUVシグナルを常に記録した。
設備:a)緩衝剤
【表7】

b)カラム
BPG 200/500カラム(GE Healthcare)にBlue Sepharose 6FF 樹脂(GE Healthcare)を、床高8±1cm(約2.5リットルの樹脂)までパッキングした。
【0142】
青色セファロース・クロマトグラフィを実施するために、下記経過を辿った(表5も参照):
−平衡化
貫流液の導電率及びpHが緩衝剤1の値(すなわちpH:5.0±0.2及び導電率2.5±0.2mS/cm)に達するまで、少なくとも6BVの緩衝剤1で、カラムを平衡化した。
−ローディング
パッキングされた樹脂1リットル当たり約40gのIFNβ−Fcmutタンパク質(RP−HPLC分析)の最大動的容量で、pH4.5の濾過済捕捉後溶出液をカラムにローディングした。種々異なるロード容量を用いて種々のランを実施した(下記表6参照)。
−洗浄1
安定なベースラインに達するまで、少なくとも5BVの緩衝剤1でカラムを洗浄した。
−洗浄2
遊離Fcに対応する280nmの吸光ピークが現れるまで、少なくとも5BVの緩衝剤2でカラムを洗浄した。安定なベースラインに達するまで、洗浄を続けた。
−溶出
流量を160cm/hまで低下させた。
少なくとも9BVの緩衝剤3で溶出を達成し、そして溶出液を滅菌容器内に捕集した。このBVの緩衝剤をカラムに適用したときに、小さな吸光ピークが280nmで現れ得る。この小さなピークは、残留量の遊離Fcなので好ましくは捕集されるべきではない。次いで、吸光ピークの主な上昇が現れたとき、安定なベースラインに達するまで、IFNβ−Fcmutタンパク質に対応する溶出液を捕集する。
−洗浄3
少なくとも5BVの水でカラムを洗浄した。最初は160cm/hの流量を、300cm/hまで増大させた。
−再生&浄化
少なくとも3BVの緩衝剤4で、カラムを浄化し、続いて30〜60分間にわたって待機した。次いでpHが7.0に戻るまで、約10BVの精製水で樹脂を洗浄した。
【表8】

−保管
カラムを緩衝剤5で洗浄し、そして室温で保管した。
種々異なるロード容量を用いて種々のランを実施した。
【0143】
結果
図1は、ラン67のクロマトグラフィ・プロフィールを示している(試験ロード容量18g/L、表6)。経過「洗浄2」及び「溶出」に関して記載した条件を用いて、2つの明確なピークを分解した。「洗浄2」のピークを遊離Fc画分として同定した。「溶出」のピークは、精製済IFNβ−Fcmutタンパク質(すなわちFcmut/IFNβ−Fcmut及びIFN−ベータ二量体)を表す。「洗浄2」において用いられた条件、すなわち、pH8.7±0.1の50mM 酢酸アンモニウムは、遊離Fc画分を1〜2%に低減した。図2Cに示されているように、Fcmut/IFNβ−Fcmut及びIFN−ベータ二量体を含有する青色セファロースからの溶出液は、Fc部分がないことが見いだされた。青色セファロース・クロマトグラフィはまた、HCPs含有率の更なる低減を可能にする。下記表6は、種々のランに対応する異なる画分中の遊離Fc含有率を報告する。
【表9】

【0144】
ステップ3:青色セファロース溶出液の透析
プロピレングリコールの濃度を低減するために、上記ステップ2の青色セファロース・カラムの溶出液を、好適な緩衝剤(酢酸ナトリウム、NaCl、pH5.0)中に透析した。下記緩衝剤及びカセットを使用した:
a)カセット
PES(ポリエーテルスルホン)中0.46m2の膜表面及び30Kdaの有孔率を有するKvick Flow Cassette(GE Healthcare, 照会56-4113-51)。透析に必要なカセット数は4である。
b)緩衝剤
【表10】

【0145】
結果
このステップのOD及びRP−HPLCの平均収率は80〜100%であった。
【0146】
ステップ4:Fractogel SO3-上の陽イオン交換クロマトグラフィ
全ての作業を室温(20±5℃)で実施し、そして流量を、平衡化開始時、最終洗浄(精製水)時、及び保管段階を除いて240cm/hで一定に保った。平衡化開始時、最終洗浄(精製水)時、及び保管段階には流量は、圧力が増大するため125cm/hであった。280nmにおけるUVシグナルを常に記録した。
設備:a)緩衝剤
【表11】

b)カラム
BPG 200カラム(GE Healthcare)にFractogel SO3- (Merck, 照会1.14894)を、床高8±1cm(約2.5リットルの樹脂)までパッキングした。
【0147】
陽イオン交換クロマトグラフィを下記のように実施した。
−平衡化
貫流液の導電率及びpHが緩衝剤の値に達するまで、少なくとも9BVの平衡化緩衝剤で、カラムを平衡化した。圧力の発生に従って、流量を125cm/hから240cm/hに徐々に増大させた。
−ローディング
パッキングされた樹脂1リットル当たり20gのIFNβ−Fcmutタンパク質(OD 280nm)の最大動的容量で、ステップ3において記載したように透析された青色セファロース後溶出液をカラムにローディングした。
−洗浄
安定なベースラインに達するまで、少なくとも4BVの平衡化/洗浄緩衝剤1でカラムを洗浄した。
−溶出
少なくとも10〜11BVの溶出緩衝剤で溶出を達成し、そして溶出液を滅菌容器内に捕集した。このBVの緩衝剤をカラムに適用したときに、小さな吸光ピークが280nmで現れ得る。この小さなピークは好ましくは捕集されるべきではない。次いで、吸光ピークの主な上昇が現れたとき、UVシグナルの安定なベースラインに達するまで、Fcmut/IFNβ−Fcmut画分を含有する溶出液を捕集する。
−再生
この段は、IFN−ベータ二量体及び凝集体の排除に相当する。UVシグナルの安定なベースラインに達するまで、少なくとも8BVの再生緩衝剤で、カラムを再生した。
−浄化
少なくとも3BVの浄化緩衝剤で、カラムを浄化し、続いて30〜60分間にわたって待機した。流量を125cm/hに徐々に低下させた。次いでpHが7に達するまで(pH紙で制御)、樹脂を精製水で洗浄した。
−保管
カラムを少なくとも2BVの保管緩衝剤で洗浄し、そして室温で保管した。
【0148】
結果
図3は、陽イオン交換クロマトグラフィのクロマトグラフィ・プロフィールを示している。使用される溶出緩衝剤は、一方ではFcmut/IFNβ−Fcmutを、そして他方ではIFN−ベータ二量体及び凝集体を分離する能力を有している。従って、溶出ピークは、Fcmut/IFNβ−Fcmut画分を表すのに対して、再生ピークは、IFN−ベータ二量体及び凝集体を表す。導電率が増大すると(25mS/cmまで)、Fcmut/IFNβ−Fcmut及びIFN−ベータ二量体の分離は効果が少なくなる(結果は示さない)。陽イオン交換クロマトグラフィはまた、HCPs含有率の付加的な低減を可能にする。
【0149】
ステップ5:PPG-600Mにおける疎水性相互作用クロマトグラフィ
全ての作業を室温(20±5℃)で実施し、そして流量を130cm/hで一定に保った。280nmにおけるUVシグナルを常に記録した。
設備:a)カラム
BPG 200/500カラム(GE Healthcare)にPPG-600M(Tosoh, 照会21304)を、床高11±1cm(約3.5リットルの樹脂)までパッキングした。カラムは反対モード(維持しない)で使用し、この場合当該画分はカラムに結合されず、貫流液中に捕集される。
b)緩衝剤
【表12】

【0150】
疎水性相互作用クロマトグラフィを実施するために、下記経過を辿った。
−平衡化
貫流液の導電率及びpHが緩衝剤の値に達するまで、少なくとも5BVの平衡化/洗浄緩衝剤で、カラムを平衡化した。
−ローディング
66.07g/kgの硫酸アンモニウムが添加された、上記ステップ4で得られたFractogelカラムの溶出液を、カラムにローディングした。パッキングされた樹脂1リットル当たり10gの、今やほどんどFcmut/IFNβ−Fcmutだけを含有するIFNβ−Fcmutタンパク質(OD 280nm)の最大動的容量で、得られた製剤を樹脂上にローディングした。
−洗浄
UVシグナルの安定なベースラインに達するまで、少なくとも7BVの平衡化/洗浄緩衝剤でカラムを洗浄した。280nmの吸光ピークの主な上昇が現れたとき、洗浄終了時に安定なベースラインに達するまで、精製済Fcmut/IFNβ−Fcmutを含有する貫流液を捕集した。
−再生
凝集体及びHCPsに相当する280nmにおける吸光ピークの安定なベースラインに達するまで、少なくとも3BVの再生緩衝剤で、カラムを再生した。
−浄化
少なくとも3BVの浄化緩衝剤で、カラムを浄化し、続いて30〜60分間にわたって待機した。次いでpHが7に達するまで(pH紙で制御)、樹脂を精製水で洗浄した。
−保管
カラムを少なくとも3BVの保管緩衝剤で洗浄し、そして室温で保管した。
【0151】
結果
図4は、疎水性相互作用クロマトグラフィのクロマトグラフィ・プロフィールを示している。当該タンパク質(すなわちFcmut/IFNβ−Fcmut)は、ローディング・ステップの未結合画分中、及び洗浄ステップの貫流液中に存在する。試験最大ロード容量は24g(OD280nm)/Lであったが、しかし凝集体及びHCPsに対する樹脂選択性は、用いられるロード容量がより低い(すなわち5〜10g/L)と、より良好であった。このステップのODの平均収率は約90%であった。疎水性相互作用クロマトグラフィは、残っているHCPs及び凝集体の排除を可能にする。
【0152】
ステップ6:ナノ濾過
ステップ5で捕集された画分に、ViroSart CPVフィルタ(Sartorius)上のナノ濾過を施した。
【0153】
ステップ7:濃縮/最終透析
精製済Fcmut/IFNβ−Fcmutを含有する疎水性相互クロマトグラフィ・カラムの貫流液を、pH6.0のクエン酸緩衝剤に対して透析し、そして3g/lまで濃縮した。この緩衝剤は凝集体の発生を最小化する。
【0154】
結論
遊離Fcを極めて低いレベルまで低減することを可能にするステップを含む効率的な精製方法が、Fcmut/IFNβ−Fcmutの精製のために確立された。青色セファロース・クロマトグラフィのために開発された特定の洗浄条件が、遊離Fc画分量を効率的に低減した。適用されたクロマトグラフィ・ステップ、すなわち、陽イオン交換クロマトグラフィ、及びこれに続く疎水性相互作用クロマトグラフィは、均質になった当該タンパク質(すなわちFcmut/IFNβ−Fcmut)を得るのを可能にした。
【0155】
参考文献
1. Altschul, S. F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W.,and Lipman, D.J. (1990). Basic local alignment search tool. J. Mol. Biol. 215, 403-410.
2. Altschul, S. F., Madden, T.L., Schaffer, A.A., Zhang, J., Zhang, Z., Miller, W., and Lipman, D.J. (1997). Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs. Nucleic Acids Res. 25, 3389-3402.
3. Armour KL, Clark MR, Hadley AG, Williamson LM. (1999). Recombinant human IgG molecules lacking Fc-gamma receptor I binding and monocyte triggering activities. Eur J Immunol. 29(8):2613-24.
4. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, supra, Interscience, N.Y., §§6.3 and 6.4 (1987, 1992).
5. Bodmer JL, Schneider P, Tschopp J. (2002). The molecular architecture of the TNF superfamily. Trends Biochem Sci. 2002 Jan; 27(1):19-26.
6. Bossen C, Ingold K, Tardivel A, Bodmer JL, Gaide O, Hertig S, Ambrose C, Tschopp J, Schneider P. (2006). Interactions of tumor necrosis factor (TNF) and TNF receptor family members in the mouse and human. J Biol Chem. 2006 May 19; 281 (20):13964-71.
7. Carter PJ. (2006). Potent antibody therapeutics by design. Nat Rev Immunol. 2006 May; 6(5): 343-57.
8. Devereux, J., Haeberli, P., and Smithies, O. (1984). A comprehensive set of sequence analysis programs for the VAX. Nucleic Acids Res. 12, 387-395.
9. Grantham, R. (1974). Amino acid difference formula to help explain protein evolution. Science 185, 862-864.
10. Hinton PR, Johlfs MG, Xiong JM, Hanestad K, Ong KC, Bullock C, Keller S, Tang MT, Tso JY, Vasquez M, Tsurushita N. (2004). Engineered human IgG antibodies with longer serum half-lives in primates. J Biol Chem. 279(8):6213-6.
11. Idusogie EE. 他(2000). Mapping of the C1q binding site on rituxan, a chimeric antibody with a human IgG1 Fc. J Immunol. 164(8): 4178-84.
12. Idusogie EE. 他(2001). Enginnered antibodies with increased activity to recruit complement. J Immunol. 166(4): 2571-5.
13. Kabat, E. A., Wu, T. T., Perry, H. M., Gottesman, K. S., and Foeller, C. (1991), Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., National Institutes of Health, Bethesda, MD.
14. Knight E Jr and Fahey (1981). Human fibroblast interferon. An improved purification . J Biol Chem. 256(8): 3609-11.
15. Locksley et al. (2001). The TNF and TNF receptor superfamilies: Integrating mammalian biology. Cell 104, 487-501.
16. Moore et al., (1999). BLyS: member of the tumor secrosis factor family and B lymphocyte stimulator. Science. 285(5425): 260-3.
17. Naismith JH, Sprang SR. (1998). Modularity in the TNF-receptor family. Trends Biochem Sci. 23(2):74-9. Review.
18. Novak他 (2004). Expression of BCMA, TACI, and BAFF-R in multiple myeloma: a mechanism for growth and survival. Blood. 103(2): 689-94. Epub 2003 Sep 25.
19. Shield RL. et al. (2001). High resolution mapping of the binding site on human IgG1 for Fc gamma RI, Fc gamma RII, Fc gamma RIII, and FcRn and design of IgG1 variants with improved binding to the Fc gamma R. J Biol Chem. 276(9): 6591-604.
20. Smith, T.F. and Waterman, M.S. (1981). Identification of common molecular subsequences. J. Mol. Biol. 147, 195-197.
21. Steurer W, Nickerson PW, Steele AW, Steiger J, Zeng XX, Strom TB. (1995). Ex vivo coating of islet cell allografts with murine CTLA4/Fc promotes graft tolerance. J Immunol. 155(3): 1165-74.
22. Vaccaro C, Zhou J, Ober RJ, Ward ES. (2005). Engineering the Fc region of immunoglobulin G to modulate in vivo antibody levels. Nat Biotechnol. 23(10): 1283-8.
23. Vlatakis G, Skarpelis G, Stratidaki I, Bouriotis V, Clonis YD. (1987). Dye-ligand chromatography for the resolution and purification of restriction endonucleases. Appl Biochem Biotechnol. 15(3):201-12.
24. 国際公開第2005/001025号パンフレット
25. 欧州特許第1230354号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fc融合タンパク質を含む流体中に存在する遊離Fc部分から、Fc領域に融合された単一タンパク質を含有するFc融合タンパク質製剤を精製する方法であって、該方法が:
(a) 青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ樹脂上に前記流体をローディングし;
(b) pHが約8.4〜約8.9の緩衝剤で該樹脂を洗浄し、これにより、該遊離Fc部分を該樹脂から排除し;そして
(c) 該Fc融合タンパク質を該樹脂から溶出する
ステップを含む、方法。
【請求項2】
前記Fc融合タンパク質が、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ樹脂に結合することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)の青色色素アフィニティ・クロマトグラフィが、固定化されたシバクロンブルー(Cibacron Blue) F3G-Aを有する樹脂を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ樹脂のために使用される樹脂が、ブルーセファロース(Blue Sepharose) FF樹脂である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)が、パッキングされた青色セファロース樹脂1リットル当たり40gのFc融合タンパク質の最大動的容量で、青色セファロース樹脂をローディングすることを含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記流体が、ステップ(a)において、約pH5の該樹脂上にローディングされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)が、pH8.7±0.2の酢酸アンモニウム緩衝剤を使用して行われる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該酢酸アンモニウムが50mMである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(c)が、少なくとも酢酸アンモニウムとプロピレングリコールとを含有するpH8.5±0.2の溶出緩衝剤を使用して行われる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(c)から生じる青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ樹脂の溶出液が、1μgのFc融合タンパク質をローディングしたときに、非還元条件下のSDS−PAGE及び銀染色によっては検出することができない遊離Fc部分レベルを有している、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)で、前記Fc融合タンパク質を含む流体が、濾過されたタンパク質Aクロマトグラフィ溶出液である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記Fc融合タンパク質が、免疫グロブリン(Ig)定常領域の部分を含む、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記定常領域がヒト定常領域である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫グロブリンが、IgG1である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記定常領域が、少なくともCH2及びCH3ドメインを含む、請求項12から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記Fc融合タンパク質が、Fc領域に融合された単一タンパク質、好ましくはFc領域に融合された単一IFN−βを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Fc領域に融合された単一IFN−βが:
(a) 配列番号1又は3;
(b) 高緊縮条件下で配列番号2又は4の相補体とハイブリッド形成するポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチド;及び
(c) (a)のポリペプチドに対する配列同一性が少なくとも80%又は85%又は90%又は95%である(a)の突然変異タンパク質
から選択されたポリペプチドを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、アフィニティ・クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、ナノ濾過、又は限外濾過のうちの1又は複数の追加的なステップを含む、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記1又は複数の追加的なステップが、Fc融合タンパク質製剤からの、Fc領域に融合された単一タンパク質の分離を可能にする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
Fc領域に融合された該単一タンパク質が、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィ樹脂に結合することができる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Fc領域に融合された該単一タンパク質が、Fc領域に融合された単一IFN−βである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
請求項17に記載のポリペプチドを精製する方法であって:
(a) ポリペプチドを含む流体にタンパク質Aクロマトグラフィを施し;
(b) ステップ(a)の溶出液に、青色色素クロマトグラフィを施し;
(c) ステップ(b)の溶出液に、陽イオン交換クロマトグラフィを施し;
(d) ステップ(c)の溶出液に、疎水性相互作用クロマトグラフィを施し;そして
(e) ステップ(d)の該疎水性相互作用クロマトグラフィの貫流液を捕集する
ステップを含む、方法。
【請求項23】
請求項17に記載のポリペプチドを精製する方法であって:
(a) ポリペプチドを含む流体にタンパク質Aクロマトグラフィを施し;
(b) ステップ(a)の溶出液に、青色色素クロマトグラフィを施し;
(c) ステップ(b)の溶出液に、陰イオン交換クロマトグラフィを施し;
(d) ステップ(c)の溶出液に、サイズ排除クロマトグラフィを施し;そして
(e) ステップ(d)のサイズ排除クロマトグラフィの溶出液を捕集する
ステップを含む、方法。
【請求項24】
さらに、Fc領域に融合された単一タンパク質を医薬組成物中に製剤することを含む、請求項18から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
Fc領域に融合された単一タンパク質を含有するFc融合タンパク質製剤中の遊離Fc部分の濃度を低減するための、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィの使用。
【請求項26】
遊離Fc部分の濃度が、前記製剤の総タンパク質濃度の約5%未満又は約2%未満又は約1%未満に低減される、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
Fc融合タンパク質製剤及び遊離Fc部分から、Fc領域に融合された単一タンパク質を分離するための、青色色素アフィニティ・クロマトグラフィと、アフィニティ・クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、ナノ濾過、又は限外濾過のうちの1又は複数のステップとの使用。
【請求項28】
請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法によって精製されたFc融合タンパク質。
【請求項29】
総タンパク質中の遊離Fc部分の濃度が、約5%未満又は約2%未満又は約1%未満である、請求項28に記載の精製済Fc融合タンパク質。
【請求項30】
請求項18から23までのいずれか1項に記載の方法によって精製された、Fc領域に融合された単一タンパク質。
【請求項31】
Fc領域に融合された単一IFN−βから成る、請求項30に記載のFc領域に融合された精製済単一タンパク質。
【請求項32】
Fc領域が突然変異Fc領域である、請求項30又は31に記載のFc領域に融合された精製済単一タンパク質。
【請求項33】
請求項30から32までのいずれか1項に記載のFc領域に融合された精製済単一タンパク質を含む医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−500756(P2011−500756A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530428(P2010−530428)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064208
【国際公開番号】WO2009/053358
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(309025524)メルク セローノ ソシエテ アノニム (49)
【Fターム(参考)】