説明

GLP−1アゴニストを用いた食物選択の制御

【課題】GLP-1アゴニストを用いた食物選択の制御
【解決手段】GLP-1アゴニストは、高い糖血症指数を有する食物又はモノ-及びジ-サッカリドがともに炭水化物の総量の大きな割合を構成する食物の摂取の量を選択的に減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い糖血症指数を有する食物からのカロリー摂取、又は、炭水化物の高い割合がモノ−及びジ−サッカリドで構成されている食物からのカロリー摂取を減少するための、GLP-1アゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の世界の多くの部分におけるライフスタイルは、莫大な食事と、固体食物及びスナック並びに飲用可能なカロリーからのカロリーの「食間」摂取によって特徴づけられる。このライフスタイルは、しばしば「西洋ライフスタイル」と呼ばれ、一般に不健康なものとみなされる。我々の食物は、初期には、平均10%のタンパク質、30%の脂肪及び60%の炭水化物から構成されていた;その炭水化物の大部分はゆっくり吸収される炭水化物である。今日消費される食物及び特に食間スナックは、より高い量の急速に吸収される炭水化物と脂肪を有する。急速に吸収される炭化水素の量は、糖血症指数として測定されるか、又は炭水化物の総量のモノ-及びジ-サッカリドの割合として測定されることができる。急速に吸収される炭水化物及び/又は高脂肪の過剰摂取は、空腹感の減少、及び、ストレスの上昇をもたらす(WF Horn、N Keim. Effects of glycemic index on hunger、stress and aroursal. FASEB Journal 2003:17(4-5):A7097)。また、ヒトの中には、甘いもの及び/又は脂肪食物が欲しくてしかたがない人もあり、時には、ストレス又は月経前緊張症によって増強され、或いは、彼らは過食症又は強迫性の食事行動として表される心理学的な問題を有する。上記されたこの西洋のライフスタイル及び心理学的障害の結果として、ソーダ、ジュース、チョコレートミルク、加糖コーヒー、キャンディー、チョコレート、ケーキ、ビスケット、クラッカー、フレンチフライ、バーガー、ジャム又はゼリー又は蜂蜜をかけた白いパン、チップス、甘くて脂肪の多い穀物食品のような食物の過剰摂取が一般的である。
【0003】
GLP-1は、大きな配列の効果(large array of effects)を有するインクレチンホルモンとして記載されている。GLP-1は、1984年に発見され、重要なインクレチンであることが見出された[Nauck、M. A.; Kleine、N.; Orskov、C.; Holst、J. J.; Willms、B.; Creutzfeldt、W., diabetologia 1993、36、741-744]。それは、食事の際に、腸のL-細胞から放出されて、膵臓のベータ-細胞からインスリンを強力に放出する。インスリン放出の単なる刺激の他に、多くの効果がGLP-1に起因する。膵臓において、GLP-1はインスリンを放出するのみならずグルコース-依存性様式で行い、そして、他の機能的に重要な多くの効果を有する:インスリン生合成の刺激、島のグルコース感受性の回復、グルコース輸送体GLUT-2及びグルコキナーゼの発現の上昇の刺激。4,5,6GLP-1もまた、ベータ-細胞マスの制御、現存のベータ-細胞の複製と増殖の刺激、ダクト(duct)前駆体細胞からの新しいb−細胞のアポトーシス及び新生(これは肝臓のグルコース産出の減少を導く)の阻害に多数の効果を有する。腸においてGLP-1は運動と胃排出の強力な阻害剤であり、胃酸の分泌を阻害することも示されている[Flint、A.; Raben、A.; Astrup、A.; Holst、J. J.、J Clin Inv 1998、101、515-520; Zander、M.; Madsbad、S.; Madsen、J. L.; Holst、J. J.、Lancet 2002、359、824-830]11,12。従って、GLP-1アゴニストは、血中グルコースをコントロールするだけでなく、多くの他の効果によっても、2型糖尿病の進行をコントロールできると現在では信じられている。GLP-1は、肝臓、筋肉及び脂肪組織におけるグルコース摂取に直接影響を有すると提唱されているが、それらの効果の定量的な有意性は疑問とされている[Kieffer、T. J.; Habener、J. F.、Endocrine Reviews 1999、20、876-913]。新しい発表では、それはここで停止せず、血中グルコースの減少の利益とともに、心臓における特異的受容体であり、心臓血管合併症を予防し、GLP-1が記憶及び学習能力を刺激するとさえ提案している。包括的な概説は、グルコース様ペプチドについて存在している[Kieffer、T. J.; Habener、J. F.、Endocrine Reviews 1999、20、876-9139]。
【0004】
多くの記事が、食物摂取におけるGLP-1の影響について発表している。GLP-1は食物摂取を、中枢性の投与の後と末梢性の投与の後のいずれでも減少させる(Turton、Nature 196:379;69-72、Flint J Clin Inv 1998、101、515-520)。また、高用量のGLP-1の中枢性の投与は、味覚嫌悪を誘導する(Tang-Christensen, Diabetes 1998:47:530-537)。しかしながら、PVNへの部位直接的GLP-1マイクロ注射は、味覚嫌悪行動の誘導なしに、薬理学的に特異的な摂食の阻害を誘導する(McMahon、Wellman、Am.J.Phys 1998:274,R23-R29)。新生児グルタミン酸一ナトリウム処理によって破壊された弓状核を有する動物において、GLP-1の中枢性の投与は、その摂食障害の可能性を失い、しかし、味覚嫌悪はなお誘導している(Tang-Christensen, Diabetes 1998:47:530-537)。GLP-1の解離した特異的満腹誘導中枢標的及び非特異的味覚嫌悪誘導中枢標的のさらなるサポートは、PVNが標的を構成することを示す破壊研究に由来する。ここで、GLP-1は満腹を誘発し、ここで、中枢扁桃体及び傍小脳脚核はGLP-1誘導味覚嫌悪の仲介に関与する領域を構成する(van Dijk and Thiele、Neuropeputides 1999: 33、406-414)。他の研究は、食物摂取のコントロール及び味覚嫌悪において、GLP-1受容体の多様な役割があることを確認している(Kinzig、J Neuroscience 2002:22(23): 10470-10476)。また、GLP-1アゴニスト、エクセンディン-9-39の慢性の反復性の中枢投与は、食物摂取を増強し、満腹を仲介するGLP-1の内在性の傾向(tone)が、体重恒常性を媒介する中枢経路に存在することが示唆された(Meeran、Endocrinology 199:140:244-250)。ヒトの研究において、2型糖尿病患者に対するGLP-1の持続的な注入は、糖血症のコントロールの顕著な改善を生じ、また、穏やかで、その上、著しくない体重損失をもたらした(Zander、Lancet 2002: 359、824-830)。末梢的に投与されたGLP-1の摂食障害作用のサイトは知られていないが、中枢及び末梢サイトの両方のGLP-1への関与はありそうであり、これは、最近の研究が、放射性標識したGLP-1が容易に中枢神経系に接近できることが示されたためである(Hassan、Nucl Med Biol 1999:26:413-420)。孤束(solitary tract)の核は、血液脳関門フリー最後野(area postrema)に隣接して位置され、放射性標識した神経ペプチドを用いた他の研究は、神経ペプチドの末梢性投与は、最後野並びに背部迷走神経複合体を含む隣接した副最後野(subpostreme)領域の両方に接近できることを示している(Whitcomb Am J Phys1990: 259:G687-G691)。よって、末梢に投与されたGLP-1は、孤束の核に入り、食物摂取の制御に関与する上行性ニューロンに影響するようである。GLP-1と消化管の迷走神経の求心性との相互作用は、摂食障害行動のメディエーターとしてみなされる。これは、迷走神経の切除が麻酔されたブタの胃に、静脈内に投与されたGLP-1の無動症作用に対する感受性を与えたからである(Wettergren、Am J Phys 1998:275:984-992)。おそらく、迷走神経の求心性と末梢から接近可能なGLP-1受容体の両方は、GLP-1によって誘導された摂食障害の原因であり、なぜならば、摂食障害のGLP-1生成腫瘍を保有するラットにおける、両側の横隔下の迷走神経切除は、摂食障害の発展に何らの影響も与えないことが分かったからである(Jensen、JCI 1998: 101:503-510)。最後に、GLP-1は、脂肪に富むものと炭水化物に富むものの異なる種類の食物のいずれの摂取も阻害することが示されている(Bjenning,ジabetes Res及びClin Prac 2000:50(1):S386)。
【0005】
この深い(in-dept)認識にも関わらず、GLP-1アゴニストが不健康な西洋のライフスタイルに関連する食物の摂取を特異的に改変する効果を有することは、全く開示されていない。この効果は、甘いものや脂肪食物の摂取の増加に結びつけられる全ての種類の障害の治療に有用であり得る。
【0006】
初期の研究は、セレトニン作動性(seretoninergic)薬物が、炭水化物に富む食物の摂取の選択的な減少をもたらすことを示唆している[Wurthman、Neurophsycopharmacology、1993、9、201-210]。
【発明の開示】
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、GLP-1アゴニストが、被検者による食物摂取を特異的に改変するために用いることができることを発見した。ここで前記食物は、高い糖血症指数を有するか、又はモノ-及びジ-サッカリドがともに炭水化物の総量の大きな割合を構成する食物である。従って、一つの側面において、本発明は、被検者における食物摂取を減少させるための方法に関し、ここで、前記食物は60%以上の糖血症指数を有し、または、前記食物は、総エネルギーの30%より多くが脂肪に由来することと合わせて40%以上の糖血症指数を有し、前記方法は前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。
【0008】
他の側面において、本発明は、被検者による食物摂取を減少させるための方法に関し、ここで、前記食物中のモノ-及びジ-サッカリドはともに、前記食物中の炭水化物の総量の25%より多くを構成し、前記方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。
【0009】
他の側面において、本発明は、被検者における食物摂取を増加させる方法に関し、ここで前記食物は60%より低い糖血症指数を有するか、又は、前記食物は、総エネルギー量の30%より少ないエネルギーが脂肪に由来するのと合わせて、40%より低い糖血症指数を有し、前記方法は、前記患者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。
【0010】
さらに他の側面において、本発明は、被検者における食物摂取を増加させる方法に関し、ここでモノ-及びジ-サッカリドがともに、前記食物中の総炭水化物含有量の25%より少ない量を構成し、前記方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。
【0011】
さらに他の側面において、本発明は、食物の異常摂取又は過剰摂取を有する被検者を治療する方法に関し、糖血症指数が60%以上であり、または、総エネルギー量の30%より多くが脂肪に由来することと合わせて40%以上の糖血症指数を有し、前記方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【0012】
さらに他の側面において、本発明は、食物の異常摂取又は過剰摂取を有する被検者を治療する方法に関し、ここでモノ-及びジ-サッカリドはともに、炭水化物の総量の25%より多くを構成し、前記方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。
【0013】
さらに他の側面において、本発明は、GLP-1アゴニスト含有産物の販売を促進する方法に関し、前記方法は、高い糖血症指数を有する食物又はモノ-及びジ-サッカリドがともに炭水化物の総量の大きな割合を構成する食物の摂取の減少が、前記産物の消費に起因すること、及び任意にそれに関連する利益を記述する情報を公衆に配給すること含む方法。
【0014】
さらに他の側面において、本発明は、以下を含む薬学的産物に関する:(a) 高い糖血症指数を有する食物又はモノ-及びジ-サッカリドがともに炭水化物の総量の大きな割合を構成する容器中の食物の摂取を減少させるGLP-1アゴニスト;及び(b) 医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関により規定された形態で前記容器に付随した通知、該通知は、高い糖血症指数を有する食物の摂取を減少させるために、ヒト又は動物(veterinary)投与のための前記GLP-1化合物の、前記機関による認可を反映する。
【定義】
【0015】
糖血症指数は、血糖値を上昇させる食物の能力の基準である。食物の糖血症指数は、少なくとも10人の健康なヒトから成るグループに、消化できる(利用できる)炭水化物を50グラム含む食物の一部を与え、その後二時間の間の彼らの血糖値に及ぼす影響を測定することによって決定される。各個人について、それらの二時間の血糖応答の下の領域(グルコースAUC)を測定する。他の機会に、同じ人のグループがグルコースを50g消費し、彼らの二時間の血糖応答が測定される。食物の糖血症指数は、その食物について測定されたAUCを、グルコースについて測定されたAUCで割り、100%を掛ける(グループの平均として算出される)。高い糖血症指数を有する食物は、急速に消化される炭水化物を含み、これは、血糖値の大きく急速な上昇と下落を生じさせる。反対に、低い糖血症指数スコアを有する食物は、ゆっくり消化される炭水化物を含み、これは、血糖値の緩徐で比較的低い上昇を生じさせる。
【0016】
本発明の内容において、「モノ-サッカリド」は、加水分解されてより単純な炭水化物にならない炭水化物を表すように意図される。食物中で最も適切なモノ-サッカリドは、グルコース及びフルクトースである。
【0017】
本発明の内容において、「ジ-サッカリド」は、二つのモノ-サッカリドに加水分解されることができる炭水化物を表すように意図される。食物中で最も適切なジ-サッカリドは、スクロース、マルトース及びラクトースである。
【0018】
モノ-及びジ-サッカリドの食物中の量は、酵素的な、気-液クロマトグラフィー(GLC)又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)方法によって特異的に分析できる。分析される食物マトリクスに依存して、水溶性エタノール、通常80%(v/v)中での低分子量の炭水化物の抽出が、分析の前に得策である。適切な分析方法は、例えば、[Southgate, 「Determination of food carbohydrates」, Elsevier, Science Publishers, Barkinggate, 1991];[Greenfield, 「Food composition data. Production, management and use」, Elsevier Appleid Science, London, 1992];及び[Department of Health, 「Dietery sugars and human health, Her Majesty’s Stationary Office, London, 1989]によって提供される。
【0019】
本発明の内容において、「炭水化物」は、[「Carbohydrates in human nutrition. (FAO Food and Nutrition Paper - 66)」, Report of a Joint FAO/WHO Expert Consultation, Rome, 14-18 April 1997, Report of a Joint FAO/WHO Expert Consultation Rome, 14-18 April 1997]中に定義されたものであり、すなわち、ポリヒドロキシアルデヒド、ケトン、アルコール、酸、それらの単純な誘導体及びアセタール型の結合を有するそれらのポリマーである。
【0020】
本発明の内容において、「脂肪」とは、グリセロール及びコレステロールに由来するモノ-、ジ-、及びトリ-カルボン酸エステルを表すように意図され、ここでグリセロールは二つのうち食物中でより重要なエネルギー源である。食物中の脂肪の量は、FAO:「Food energy-methods of analysis and conversion factors, Report of a Technical Workshop, Rome, 3-6 December 2002」に開示されているように測定できる。
【0021】
本発明の内容において、「総炭水化物含量」は、食物中に存在する炭水化物の和を表すように意図される。それはそのようには測定されず、むしろ、食物の総重量と、非炭水化物成分の重量の和の間の相違として算出される[FAO: Food energy-methods of analysis and conversion factors, Report of a Technical Workshop, Rome, 3-6 December 2002]。
【0022】
本発明の内容において、「肥満」又は「肥満症」は、脂肪組織の過剰を意味する。この内容において、肥満症は、健康リスクを与える任意の程度の過剰な体脂肪蓄積として最もみなされている。正常な個体と肥満の個体との間の区別は、おおよそでしかないが、しかし肥満によって与えられる健康リスクは恐らく体脂肪蓄積の上昇とともに連続している。しかしながら、本発明の内容においては、25以上の肥満度指数(BMI=キログラムでの体重をメートルでの身長の二乗で割ったもの)を有する個体が肥満とみなされる。
【0023】
本発明の内容において、「食物」とは、他に言及しない限り、任意の形態の食物を表すように意図される、即ち、液状食物及び固体食物の両者、並びに、基本的な食物及びキャンディー、スナックなどである。
【0024】
本発明の内容において、「異常又は過剰な食物摂取」は、肥満症のような病理学的な結果を有する摂取を表すように意図され、或いは、例えば、妊娠又は月経前緊張症と関連する心理学的な状態、又は過食症又は強制的な食事行動のような心理学的な疾病に起因し得る摂取を表すように意図される。
【0025】
本明細書で用いられるような化合物の「有効量」とは、与えられた疾病又は状態及びその合併症の臨床症状を治癒、緩和又は部分的に抑止するために充分な量を意味する。これを達成するのに適切な量が「有効量」として定義される。各目的に効果的な量は、疾病又は傷害の重篤度、並びに被検者の体重と一般的な状態に依存する。適切な投与量の決定は、訓練された医者又は獣医の通常の技術の範囲内である、値のマトリクスを構築し、マトリクスの異なる点で試験することによる、日常的な実験を用いて行うことができるということは理解されるであろう。
【0026】
「治療」及び「治療する」という語はここで用いられるように、疾病又は障害のような状態と闘う目的のための患者の管理及び治癒を意味する。該用語は、症状又は合併症を緩和するため、疾病、障害又は状態の進行を遅らせるため、症状及び合併症を緩和又は軽減するため、及び/又は、疾病、障害又は状態を排除するため、並びに、状態を予防するため(ここにおいて、予防は、疾病、状態、又は障害と闘う目的での患者の管理及び治癒として理解される)の、活性化合物の投与のような、患者が被っている与えられた状態の治療の全範囲を含むように意図され、及び、症状又は合併症の発症を予防するための活性成分の投与を含む。
【0027】
本発明の内容において、「食物摂取を減少させる」とは、本発明で証明されたように、GLP-1アゴニストを投与された一以上の被検者からなるグループによって食べられる食物の量(そのエネルギー含量で測定される)が、GLP-1アゴニストを投与されていない同様のコントロールグループと比較して、減少することを表すように意図される。同様に、「食物摂取を増加させる」は、本発明で証明されたように、GLP-1アゴニストを投与された一以上の被検者からなるグループによって食べられる食物の量(そのエネルギー含量で測定される)が、GLP-1アゴニストを投与されていない同様のコントロールグループと比較して、増加することを表すように意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
一つの態様において、本発明は、被検者による特定のタイプの食物の摂取を改善するための、GLP-1アゴニストの使用に関し、ここで前記食物は、高い糖血症指数を有するか、又は、モノ-及びジ-サッカリドがともに、前記食物中の炭水化物の総量の大きな割合を構成する。
【0029】
一つの態様において、本発明は、被検者による食物の摂取を減少させる方法を提供し、ここにおいて、前記食物は、高い糖血症指数を有するか、又は、モノ-及びジ-サッカリドがともに、前記食物中の炭水化物の総量の大きな割合を構成し、前記方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。特に、前記食物の糖血症指数は、60%以上であり、例えば65%以上であり、70%以上であり、75%以上であり、80%以上であり、90%以上である。
【0030】
他の態様において、本発明は、被検者による食物の摂取を減少させる方法を提供し、ここにおいて、前記食物は、40%以上の糖血症指数を有し、ここにおいて、エネルギー総量の30%より多くが脂肪に由来し、前記方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。本態様は、40%以上の糖血症指数、例えば45%以上、例えば50%以上、例えば55%以上、例えば60%以上、例えば65%以上、例えば70%以上、例えば75%以上、例えば80%以上、例えば90%以上の糖血症指数を有する食物の任意の組合せを含み、ここにおいて、エネルギーの総量の30%より多く、例えば35%より多く、例えば40%より多く、例えば50%より多く、例えば60%より多く、例えば70%より多く、例えば80%より多くが脂肪に由来する。
【0031】
一つの態様において、本発明は、被検者による食物摂取を減少する方法を提供し、ここにおいて、モノ-及びジ-サッカリドはともに、前記食物中の炭水化物の総量の25%より多くを構成し、該方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。特に、モノ-及びジ-サッカリドはともに、30%より多く、例えば35%より多く、例えば40%より多く、例えば45%より多く、例えば50%より多く、例えば70%より多く、例えば80%より多く、例えば90%より多く又は100%を構成する。特に、前記食物のエネルギーの総量の、30%より多く、例えば40%より多く、例えば50%より多く、例えば60%より多く、例えば70%より多く、例えば80%より多くが脂肪に由来する。一つの態様において、25%より多くのモノ-、ジ-及びトリ-サッカリドがともに、炭水化物の総量の25%より多くを構成する。
【0032】
他の態様において、本発明は、被検者による食物摂取を増加させる方法を提供し、ここにおいて前記食物は、低い糖血症指数を有し、また、モノ-及びジ-サッカリドはともに、前記食物中の炭水化物の総量の少ない割合を構成し、前記方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。特に、前記食物の糖血症指数は、60%より低く、例えば50%より低く、例えば40%より低く、例えば35%より低く、例えば30%より低く、例えば20%より低く、例えば10%より低く、例えば5%より低い。
【0033】
他の態様において、本発明は、被検者による食物摂取を増加させる方法を提供し、ここにおいて、前記食物は、40%より低い糖血症指数を有し、ここにおいて、エネルギーの総量の30%より少ないエネルギーが脂肪に由来し、前記方法は、被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。本態様は、糖血症指数が40%より低い、例えば30%より低い、例えば20%より低い、例えば10%より低い、例えば5%より低い食物の任意の組合せを含み、ここにおいて、エネルギーの総量の30%より低く、例えば20%より低く、例えば10%より低く、例えば5%より低いエネルギーが脂肪に由来する。
【0034】
さらに他の態様において、本発明は、被検者による食物摂取を増加する方法を提供し、ここでモノ-及びジ-サッカリドはともに、前記食物の炭水化物の総量の25%より少ない炭水化物を構成し、例えば20%より少ない、例えば15%より少ない、例えば10%より少ない炭水化物を構成する。特に、前記食物は、食物中のエネルギーの総量のどれほどが脂肪に由来するかで測定される場合に脂肪にも乏しい。特に、総エネルギーの30%より少ないエネルギー、例えば25%より少ない、例えば20%より少ない、例えば15%より少ない、例えば10%より少ない、又は5%より少ないエネルギーが脂肪に由来する。他の態様において、モノ-、ジ-及びトリ-サッカリドはともに、炭水化物の総量の25%より少ない量を構成する。
【0035】
他の態様において、上記のような、高い糖血症指数を有する食物又はモノ-及びジ-サッカリドがともに炭水化物の総量の大きな割合を構成する食物の摂取の減少は、上記のような低い糖血症指数を有する食物又はモノ-及びジ-サッカリドがともに炭水化物の総量の小さな割合を構成する食物の摂取を増加することによって達成される。
【0036】
食物のエネルギーの量は、典型的には、カロリー又はジュールで示され、それは、例えばボンブカロリメーター(bomb calorimeter)中などで食物を燃やすことによって測定できる。脂肪に起因するエネルギーの量は、上記のように分析された食物中の脂肪の量に38 kJ/gを掛けることによって決定できる。
【0037】
それらが良い味を有すると考えるために、多くの人々が甘いもの及び/又は脂肪性の食物を好むことは周知である。従って、本発明はまた、味覚の好みを制御する方法をも提供し、特に、甘いもの及び脂肪性食物から離れて味覚の好みを制御する方法を提供し、該方法は、GLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。
【0038】
西洋のライフスタイルが健康的でないことは、糖尿病及び心臓血管の合併症のようなその病理学的な結果をともなう肥満症の増加によって証明されているように極めて明らかであり、その意味で、そのライフスタイルは異常であるとみなされる。従って、一つの態様において、本発明は、ライフスタイル、特に食物の好みを正常化する方法に関し、該方法は、GLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。
【0039】
一つの態様において、治療される被検者は、上昇した食欲、空腹感、又は甘いもの又は脂肪食物への欲求を有する。これは、例えば、ストレス、禁煙、妊娠、月経前緊張症に関連し、或いは、それは、過食症、強迫性食事行動及び季節性情動障害のような、生理学的問題又は疾病に起因しうる。
【0040】
過食症障害(BED)は、かなり新しい診断可能な障害である−例えば、「Int.J.Obesity, 2002, 26, 299-307 and Curr.Opin.Pshyciatry, 17, 43-48, 2004」を参照されたい。BEDは、神経性過食症(BN)のような過食の発症によって特徴づけられる。しかしながら、BEDの被検者は、BNの患者とは反対に、自己誘導した嘔吐、過剰な運動、及び緩下剤、利尿薬又は浣腸の濫用のような、代償的な行動に関与しない。研究によって、通常の人口の1〜3%がBEDを病んでいることが示され、肥満症の患者の高い罹患率(25-30%まで)が報告されている[Int.J. Obesity, 2002, 26, 299-307]。これらの数は、BEDの被検者が肥満であるか肥満でないことを示し、また、肥満の患者がBEDを有するか又はBEDを有さないことを示し、即ち、肥満症の原因はBEDであることを示している。しかしながら、BEDを有する被検者の部分は、最終的に、過剰なカロリー摂取のための肥満になる。
【0041】
研究室の研究により、BED患者は、肥満のコントロールグループよりも、多くのデザート及びスナック(脂肪に富み、タンパク質が少ない)を消費することが示され[Int.J.Obesity, 2002, 26, 299-307]、本発明の方法は、従って、BEDの治療のために特に優れて適していると思われる。
【0042】
一つの態様において、本発明は、被検者のBEDを治療する方法に関し、該方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。特に、前記被検者は肥満である。
【0043】
一つの態様において、本発明は、被検者のBEDの治療のための薬剤の製造における、GLP-1アゴニストの使用に関する。特に、前記被検者は肥満である。
【0044】
過食症は、BEDと同じような過食発症によって特徴づけられるが、しかしながら、BNは、上記の代償的な行動によっても特徴づけられる。BNである被検者の割合は、結局は、代償的な行動が過剰なカロリー摂取を完全には補償できない範囲で肥満になる。BNの患者とBEDの患者の過食物(binges)を比較した調査により、BNの被検者における過食物(binges)は、BEDの被検者におけるものよりも高い炭水化物と糖含量であると結論づけられた。しかしながら、消費されたカロリー数には相違は見られなかった[Int.J.Obesity, 2002, 26, 299-307]。それ故、本発明の方法は、BNの治療に特に優れて適していると考えられる。
【0045】
一つの態様において、本発明は、被検者におけるBNの治療の方法に関し、該方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。特に、前記被検者は肥満である。
【0046】
一つの態様において、本発明は、被検者のBNの治療のための薬剤の製造における、GLP-1アゴニストの使用に関する。特に、前記被検者は肥満である。
【0047】
食物への欲求又は特定の食物を食べることに対する強烈な願望は、通常は、脂肪又は炭水化物に富む食物のような、エネルギーの高密度な食物に関連する[Appetite、17、177-185、1991; Appetite、17、167-175、1991]。そのような食物の例には、チョコレート、ビスケット、ケーキ及びスナックが含まれる。食物欲求者(food cravers)の割合は、過剰なカロリー摂取のために、結局は肥満になる。本発明の方法は、食物欲求者の治療に特に優れて適していると考えられ、特に、脂肪又は炭水化物に富む食物の欲求者の治療に適していると思われる。
【0048】
一つの態様において、本発明は、脂肪又は炭水化物に富む食物に対する欲求のような、例えば被検者のチョコレート欲求などの、食物欲求を治療する方法に関し、該方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。
【0049】
スナックは、本当の食事の間に食される、軽く、カジュアルで、あわただしく便利な、典型的な食事である。スナックは、典型的に脂肪及び炭水化物に富む。スナッキングの有病率の上昇が、特に米国の子供達の間で見られ、スナッキングが、例えば子供達におけるBMIの上昇の顕著な原因であることが、研究により示されている[J.Pediatrics、138、493-498、2001; Obes. Res.、11、143-151、2003]。より健康なスナックへのシフトが、恐らくBMIの上昇を停止するか又は変化させ、これは、近年に起こるであろう。ここに示したデータは、GLP-1アゴニストが食物の好みを、脂肪及び炭水化物に富む食物から、低脂肪で糖血症指数の低い食物へシフトできることを説明している。GLP-1アゴニストはそれ故、スナッキングの量の減少、又はスナックの好みをより健康なスナックへ変化させることにおいて有用である。
【0050】
一つの態様において、本発明は、被検者のスナックの好みを低脂肪、糖血症指数の低いスナックへ変化させる方法を提供し、該方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。特に、前記被検者は肥満である。
【0051】
一つの態様において、本発明は、被検者のスナック摂取(「スナッキング」)の量を低下させる方法を提供し、該方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む。特に、前記被検者は肥満である。
【0052】
上記の議論に従って、GLP-1アゴニストは、肥満症の治療に特に有用であると考えられ、ここで肥満症は、BED、BN、食物欲求(特にチョコレート欲求)又はスナッキングによって起こされるものである。
【0053】
本発明の対象は、原則的には、GLP-1受容体を有する任意の動物であり、特に哺乳類であり、例えばヒト、ペット動物、例えばネコ及びイヌであり、及び動物園の動物、例えばゾウ、キリン、ライオン及びヘビである。
【0054】
他の態様において、本発明は、GLP-1アゴニスト含有産物の販売、購入(purchase)、購入(buying)又は貿易(trade)を促進する方法に関し、該方法は、高い糖血症指数を有する食物又はモノ-及びジ-サッカリドがともに炭水化物の総量の大きな割合を構成する食物の摂取の減少が、前記産物の消費に起因すること、及びそれに関する利点、特に健康面での利点を記述する情報を公衆に配給する(public distribution)ことを含む。特に、前記情報の配給は、言語のコミュニケーション、パンフレット配布、印刷媒体(print media)、オーディオテープ、磁気媒体(magnetic media)、デジタル媒体(digital media)、視聴覚媒体(audiovisual media)、広告板(billboards)、広告、新聞、雑誌、ダイレクトメール(direct mailings)、ラジオ、テレビ、ダイレクトメール(electronic mail)、点字(braille)、電子媒体(electronic media)、垂れ幕(banner ads)、光ファイバー(fiber optics)、及びレーザー光線ショー(laser light shows)からなる群より選択される方法によって行われる。特に、前記産物は、薬学的産物である。
【0055】
本発明の方法の一つの態様において、GLP-1アゴニストは、食事と関連して被検者に投与される。この内容において、「食事と関連して」とは、食事の前後4時間までの期間、例えば食事の前後3時間まで、例えば食事の前後2時間まで、例えば食事の前後1時間まで、例えば食事の前後30分まで、例えば食事の前後15分までの機関を表すよう意図され、例えば食事と直接関連した期間を表すように意図される。
【0056】
本発明の内容において、「GLP-1アゴニスト」は、ペプチド及び非ペプチド化合物を含む任意の化合物を指すと理解され、これは、ヒトGLP-1受容体を完全に又は部分的に活性化する。好ましい態様において、「GLP-1アゴニスト」は、GLP-1受容体に結合する任意のペプチド又は非ペプチド小分子であり、好ましくは、当該分野で周知の方法(例えば、WO 98/08871を参照)によって測定された時、1 μMより低く、例えば100 nMより低い、親和性定数(KD)又は力価(EC50)を有し、インスリン分泌性活性を示し、ここでインスリン分泌性活性は、当業者に周知のインビボ又はインビトロアッセイで測定され得る。例えば、GLP-1アゴニストは、動物に投与され、インスリン濃度が時間の経過とともに測定される。
【0057】
一つの態様において、GLP-1アゴニストは、GLP-1(7-36)-アミド、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)-アミド類似体、GLP-1(7-37)類似体それらの何れかの誘導体からなる群より選択される。
【0058】
本出願において、「類似体」という名称は、親ペプチドの一以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基によって置換されたペプチド、及び/又は、親ペプチドの一以上のアミノ酸残基が欠失したペプチド、及び/又は一以上のアミノ酸残基が親ペプチドに付加されたペプチドを示すために用いられる。そのような付加は、親ペプチドのN-末端又はC-末端の何れか又は両方で生じ得る。典型的には、「類似体」は、6以下のアミノ酸が、親ペプチドで置換されたか、及び/又は付加されたか、及び/又は欠失されたペプチドであり、より好ましくは、3以下のアミノ酸が、親ペプチドで置換されたか、及び/又は付加されたか、及び/又は欠失されたペプチドであり、最も好ましくは、一つのアミノ酸が親ペプチドで置換されたか、及び/又は付加されたか、及び/又は欠失されたペプチドである。
【0059】
本出願において、「誘導体」とは、それらのペプチド又は類似体の一以上のアミノ酸残基において、例えばエステル、アルキル又は親油性官能基を導入することによって化学的に改変された、ペプチド又はそれらの類似体を示すために用いられる。GLP-1アゴニストを同定するための方法は、WO 93/19175 (Novo Nordisk A/S)に開示されており、本発明に従って使用できる適切なGLP-1類似体及び誘導体の例は、WO 99/43705 (Novo Nordisk A/S)、WO 99/43706 (Novo Nordisk A/S)、WO 99/43707 (Novo Nordisk A/S)、WO 98/08871 (Novo Nordisk A/S)、WO 99/43708 (Novo Nordisk A/S)、WO 99/43341 (Novo Nordisk A/S)、WO 87/06941 (The General Hospital Corporation)、WO 90/11296 (The General Hospital Corporation)、WO 91/11457 (Buckley et al.)、WO 98/43658 (Eli Lilly & Co.)、EP 0708179-A2 (Eli Lilly & Co.)、EP 0699686-A2 (Eli Lilly & Co.)、WO 01/98331 (Eli Lilly & Co)において言及されているものを含む。
【0060】
一つの態様において、GLP-1アゴニストは、GLP-1(7-36)-アミド、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)-アミド類似体又はGLP-1(7-37)類似体の誘導体であり、親油性置換基を含む。
【0061】
本発明のこの態様において、GLP-1誘導体は好ましくは、親ペプチド(即ちGLP-1(7-36)-アミド、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)-アミド類似体、又はGLP-1(7-37)類似体)に結合した、3つの親油性置換基、より好ましくは二つの親油性置換基、及び最も好ましくは一つの親油性置換基を有し、ここにおいて、それぞれの親油性置換基は、好ましくは、4-40の炭素原子、より好ましくは8-30の炭素原子、さらにより好ましくは8-25の炭素原子、さらにより好ましくは12-25の炭素原子、及び最も好ましくは14-18の炭素原子を有する。
【0062】
一つの態様において、親油性置換基は、部分的に又は完全に水素化されたシクロペンタノフェナトレン骨格(cyclopentanophenathrene)を含む。
【0063】
他の態様において、親油性置換基は、直鎖の又は分枝したアルキル基である。
【0064】
さらに他の態様において、親油性置換基は、直鎖の又は分枝した脂肪酸のアシル基である。好ましくは、親油性置換基は、式 CH3(CH2)nCO-を有するアシル基であり、式中nは4〜38の整数であり、好ましくは12〜38の整数であり、及び最も好ましくは、CH3(CH2)12CO-、CH3(CH2)14CO-、CH3(CH2)16CO-、CH3(CH2)18CO-、CH3(CH2)20CO-及びCH3(CH2)22CO-である。より好ましい態様において、親油性置換基は、テトラデカノイルである。最も好ましい態様において、親油性置換基はヘキサデカノイルである。
【0065】
本発明のさらなる態様において、親油性置換基は、カルボン酸基のような負に帯電した基を有する。例えば、親油性置換基は、式HOOC(CH2)mCO-の直鎖の又は分枝のアルカンα,ω-ジカルボン酸のアシル基であってよく、式中mは4〜38の整数であり、好ましくは12〜38の整数であり、及び最も好ましくはHOOC(CH2)14CO-、HOOC(CH2)16CO-、HOOC(CH2)18CO-、HOOC(CH2)20CO-又はHOOC(CH2)22CO-である。
【0066】
本発明のGLP-1誘導体において、親油性置換基は、親GLP-1ペプチドのアミノ酸の以下の官能基の一つに結合した官能基を含む:
(a) N-末端アミノ酸のα-炭素に結合したアミノ基
(b) C-末端アミノ酸のα-炭素に結合したカルボキシ基
(c) 任意のLys残基のε-アミノ基
(d) 任意のAsp及びGlu残基のR基のカルボキシ基
(e) 任意のTyr、Ser及びThr残基のR基のヒドロキシ基
(f) 任意のTrp、Asn、Gln、Arg、及びHis残基のR基のアミノ基、又は
(g) 任意のCys残基のR基のチオール基。
【0067】
一つの態様において、親油性置換基は、任意のAsp及びGlu残基のR基のカルボキシ基に結合する。
【0068】
他の態様において、親油性置換基は、C-末端アミノ酸のアルファ-炭素に結合したカルボキシ基に結合する。
【0069】
最も好ましい態様において、親油性置換基は、任意のLys残基のイプシロン-アミノ基に結合する。
【0070】
本発明の好ましい態様において、親油性置換基は、スペーサーによって親GLP-1ペプチドに結合される。スペーサーは、一つが親油性置換基の官能基に結合し、他が親GLP-1ペプチドの官能基に結合した、少なくとも二つの官能基を含む。
【0071】
一つの態様において、スペーサーは、Cys又はMet以外のアミノ酸残基であり、又はGly-Lysのようなジペプチドである。本発明の目的のために、「Gly-Lysのようなジペプチド」という句は、Cys又はMet以外の任意の二つのアミノ酸の組合せを意味し、ここで、C-末端アミノ酸残基がLys、His又はTrpであり、好ましくはLysであり、及びN-末端アミノ酸残基がAla、Arg、Asp、Asn、Gly、Glu、Gln、Ile、Leu、Val、Phe、Pro、Ser、Tyr、Thr、Lys、His及びTrpである、ジペプチド好ましい。好ましくは、親ペプチドのアミノ基は、アミノ酸残基のカルボキシル基又はジペプチドスペーサーとアミド結合を形成し、及び、アミノ酸残基のアミノ基又はジペプチドスペーサーは、親油性置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成する。
【0072】
好ましいスペーサーは、リジル、グルタミル、アスパラギル、グリシル、ベータ-アラニル及びガンマ-アミノブタノイルであり、そのそれぞれが独立した態様を構成する。最も好ましいスペーサーは、グルタミル及びベータ-アラニルである。スペーサーがLys、Glu、又はAspであるとき、それらのカルボキシル基は、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、それらのアミノ基は親油性置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成する。Lysがスペーサーとして用いられるとき、ある場合には、Lysのε-アミノ基と親油性置換基との間にさらなるスペーサーが挿入される。一つの態様において、そのようなさらなるスペーサーは、Lysのε-アミノ基と、及び、親油性置換基に存在するアミノ基とアミド結合を形成するコハク酸である。他の態様において、そのようなさらなるスペーサーは、Lysのε-アミノ基とアミド結合を形成し、親油性置換基中に存在するカルボキシル基と他のアミド結合を形成するGlu又はAspである、即ち、親油性置換基はNε-アシル化リジン残基である。
【0073】
他の態様において、スペーサーは、1〜7のメチレン基を有する非分枝アルカンα,ω-ジカルボン酸基であり、該スペーサーは、親ペプチドのアミノ基と親油性置換基のアミノ基との間に架橋を形成する。好ましくは、スペーサーはコハク酸である。
【0074】
さらなる態様において、結合したスペーサーを有する親油性置換基は、式CH3(CH2)pNH-CO(CH2)qCO-の基であり、式中pは8〜33の整数であり、好ましくは12〜28の整数であり、qは1〜6の整数であり、好ましくは2である。
【0075】
さらなる態様において、結合したスペーサーを有する親油性置換基は、式 CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CO-の基であり、式中、rは4〜24の整数であり、好ましくは10〜24の整数である。
【0076】
さらなる態様において、結合したスペーサーを有する親油性置換基は、式 CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CO-の基であり、式中、sは4〜24の整数であり、好ましくは10〜24の整数である。
【0077】
さらなる態様において、親油性置換基は、式 COOH(CH2)tCO-の基であり、式中、tは6〜24の整数である。
【0078】
さらなる態様において、結合したスペーサーを有する親油性置換基は、式 -NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)uCH3の基であり、式中、uは8〜18の整数である。
【0079】
さらなる態様において、結合したスペーサーを有する親油性置換基は、式 CH3(CH2)vCO-NH-(CH2)z-COの基であり、式中 vは4〜24の整数であり、zは1〜6の整数である。
【0080】
さらなる態様において、結合したスペーサーを有する親油性置換基は、式 -NHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)wCH3の基であり、式中、wは10〜16の整数である。
【0081】
さらなる態様において、結合したスペーサーを有する親油性置換基は、式 -NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NHCO(CH2)xCH3の基であり、式中、xはゼロ又は1〜22の整数であり、好ましくは10〜16の整数である。
【0082】
さらに他の態様において、GLP-1アゴニストは、Arg34、Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)である。
【0083】
さらに他の態様において、GLP-1アゴニストは、下記からなる群より選択される:Gly8-GLP-1(7-36)-アミド、Gly8-GLP-1(7-37)、Val8-GLP-1(7-36)-アミド、Val8-GLP-1(7-37)、Val8Asp22-GLP-1(7-36)-アミド、Val8Asp22-GLP-1(7-37) 、Val8Glu22-GLP-1(7-36)-アミド 、Val8Glu22-GLP-1(7-37)、Val8Lys22-GLP-1(7-36)-アミド、Val8Lys22-GLP-1(7-37)、Val8Arg22-GLP-1(7-36)-アミド、Val8Arg22-GLP-1(7-37)、Val8His22-GLP-1(7-36)-アミド、Val8His22-GLP-1(7-37)、それらの類似体及びそれらの何れかの誘導体。
【0084】
さらに他の態様において、GLP-1アゴニストは、下記からなる群より選択される:Arg26-GLP-1(7-37); Arg34-GLP-1(7-37); Lys36-GLP-1(7-37); Arg26,34Lys36-GLP-1(7-37); Arg26,34-GLP-1(7-37); Arg26,34Lys40-GLP-1(7-37); Arg26Lys36-GLP-1(7-37); Arg34Lys36-GLP-1(7-37); Val8Arg22-GLP-1(7-37); Met8Arg22-GLP-1(7-37);Gly8His22-GLP-1(7-37); Val8His22-GLP-1(7-37); Met8His22-GLP-1(7-37);His37-GLP-1(7-37); Gly8-GLP-1(7-37); Val8-GLP-1(7-37); Met8-GLP-1(7-37);Gly8Asp22-GLP-1(7-37); Val8Asp22-GLP-1(7-37); Met8Asp22-GLP-1(7-37);Gly8Glu22-GLP-1(7-37); Val8Glu22-GLP-1(7-37); Met8Glu22-GLP-1(7-37); Gly8Lys22-GLP-1(7-37); Val8Lys22-GLP-1(7-37); Met8Lys22-GLP-1(7-37); Gly8Arg22-GLP-1(7-37);
Val8Lys22His37-GLP-1(7-37); Gly8Glu22His37-GLP-1(7-37); Val8Glu22His37-GLP-1(7-37); Met8Glu22His37-GLP-1(7-37);Gly8Lys22 His37-GLP-1(7-37); Met8Lys22His37-GLP-1(7-37);Gly8Arg22His37-GLP-1(7-37); Val8Arg22His37-GLP-1(7-37); Met8Arg22His37-GLP-1(7-37); Gly8His22His37-GLP-1(7-37); Val8His22His37-GLP-1(7-37); Met8His22His37-GLP-1(7-37); Gly8His37-GLP-1(7-37); Val8His37-GLP-1(7-37); Met8His37-GLP-1(7-37);Gly8Asp22 His37-GLP-1(7-37); Val8Asp22His37-GLP-1(7-37); Met8Asp22His37-GLP-1(7-37); Arg26-GLP-1(7-36)-アミド; Arg34-GLP-1(7-36)-アミド; Lys36-GLP-1(7-36)-アミド; Arg26,34Lys36-GLP-1(7-36)-アミド; Arg26,34-GLP-1(7-36)-アミド; Arg26,34Lys40-GLP-1(7-36)-アミド; Arg26Lys36-GLP-1(7-36)-アミド; Arg34Lys36-GLP-1(7-36)-アミド; Gly8-GLP-1(7-36)-アミド; Val8-GLP-1(7-36)-アミド; Met8-GLP-1(7-36)-アミド;Gly8Asp22-GLP-1(7-36)-アミド; Gly8Glu22His37-GLP-1(7-36)-アミド; Val8Asp22-GLP-1(7-36)-アミド; Met8Asp22-GLP-1(7-36)-アミド;Gly8Glu22-GLP-1(7-36)-アミド; Val8Glu22-GLP-1(7-36)-アミド; Met8Glu22-GLP-1(7-36)-アミド; Gly8Lys22-GLP-1(7-36)-アミド; Val8Lys22-GLP-1(7-36)-アミド; Met8Lys22-GLP-1(7-36)-アミド; Gly8His22His37-GLP-1(7-36)-アミド; Gly8Arg22-GLP-1(7-36)-アミド; Val8Arg22-GLP-1(7-36)-アミド; Met8Arg22-GLP-1(7-36)-アミド;Gly8His22-GLP-1(7-36)-アミド; Val8His22-GLP-1(7-36)-アミド; Met8His22-GLP-1(7-36)-アミド;His37-GLP-1(7-36)-アミド; Val8Arg22His37-GLP-1(7-36)-アミド; Met8Arg22His37-GLP-1(7-36)-アミド; Gly8His37-GLP-1(7-36)-アミド; Val8His37-GLP-1(7-36)-アミド; Met8His37-GLP-1(7-36)-アミド;Gly8Asp22 His37-GLP-1(7-36)-アミド; Val8Asp22His37-GLP-1(7-36)-アミド; Met8Asp22His37-GLP-1(7-36)-アミド; Val8Glu22His37-GLP-1(7-36)-アミド; Met8Glu22His37-GLP-1(7-36)-アミド;Gly8Lys22 His37-GLP-1(7-36)-アミド; Val8Lys22His37-GLP-1(7-36)-アミド; Met8Lys22His37-GLP-1(7-36)-アミド;Gly8Arg22His37-GLP-1(7-36)-アミド; Val8His22His37-GLP-1(7-36)-アミド; Met8His22His37-GLP-1(7-36)-アミド;及びそれらの誘導体。
【0085】
さらに他の態様において、GLP-1アゴニストは、下記からなる群より選択される:Val8Trp19Glu22-GLP-1(7-37)、Val8Glu22Val25-GLP-1(7-37)、Val8Tyr16Glu22-GLP-1(7-37)、Val8Trp16Glu22-GLP-1(7-37)、Val8Leu16Glu22-GLP-1(7-37)、Val8Tyr18Glu22-GLP-1(7-37)、Val8Glu22His37-GLP-1(7-37)、Val8Glu22Ile33-GLP-1(7-37)、Val8Trp16Glu22Val25Ile33-GLP-1(7-37)、Val8Trp16Glu22Ile33-GLP-1(7-37)、Val8Glu22Val25Ile33-GLP-1(7-37)、Val8Trp16Glu22Val25-GLP-1(7-37)、それらの類似体及びそれらの何れかの誘導体。
【0086】
さらに他の態様において、GLP-1アゴニストは、安定なGLP-1アゴニスト/-誘導体である。本願を通して、「安定なGLP-1アゴニスト/-誘導体」とは、下記の方法によって測定された場合、ヒトにおいて少なくとも10時間のインビボ血漿排除半減期を示す、GLP-1類似体又はGLP-1類似体の誘導体を意味する。安定なGLP-1類似体/誘導体の例は、WO 98/08871及びWO 99/43706中に発見できる。ヒトでの化合物の血漿排除半減期の測定方法は、次のとおりである:化合物を等張緩衝液、pH 7.4、PBS又は他の任意の適切な緩衝液に溶解する。用量を末梢的に、好ましくは腹腔又は上部大腿に注射する。活性化合物の測定用の血液サンプルを頻繁な間隔で、及び、終点の排除部分をカバーするのに充分な期間で採取する(例えば、投与前、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、24 (2日目)、36 (2日目)、48 (3日目)、60 (3日目)、72 (4日目)及び84 (4日目) 時間、投与後)。活性化合物の濃度の測定は、「Wilken et al., Diabetologia 43(51):A143、2000」に開示されているように行う。誘導(derived)薬物動態学的パラメーターは、商業的に入手可能なソフトウェアWinNonlin 2.1版(Pharsight、Cary、NC、USA)を用いて、非-区画方法の使用によってそれぞれの個体被検者についての濃度-時間データから算出される。終点(terminal)排除速度定数は、濃度-時間曲線の終点log-直鎖状部分における、log-直鎖回帰によって推定され、終点半減期の算出に用いられる。
【0087】
安定なGLP-1類似体及び誘導体は、WO 98/08871(親油性置換基を有する類似体)及びWO 02/46227 (血清アルブミン又はIgのFc部分に融合した類似体)に開示されている。
【0088】
他の態様において、GLP-1アゴニストは、上記のように、ヒトにおける半減期が少なくとも10時間であるように処方される。これは、当該分野で周囲の持続した放出製剤によって得られる。
【0089】
さらに他の態様において、GLP-1アゴニストは、エクセンディン-4又はエクセンディン-3、エクセンディン-4又はエクセンディン-3の類似体、又はそれらの何れかの誘導体である。
【0090】
本発明に含まれる、エクセンディン並びに類似体、誘導体、及びそれらの断片の例は、WO 97/46584、US 5,424,286及びWO 01/04156に開示されているものである。US 5,424,286は、エクセンディン ポリペプチドによる、インスリン放出を刺激する方法を開示している。開示されたエクセンディンポリペプチドは、HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGX; 式中 X = P又はY、及び、HX1X2GTFITSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS;式中 X1X2 = SD (エクセンディン-3)又はGE (エクセンディン-4))を含む。WO 97/46584は、切断された型のエクセンディンペプチドを開示している。開示されたペプチドは、インスリンの分泌と生合成を増加させるが、グルカゴンのそれらは減少させる。WO 01/04156には、エクセンディン-4類似体及び誘導体並びにそれらの分子の製法が開示されている。血清アルブミン又はIgのFc部分に融合されることによって安定化されたエクセンディン-4類似体は、WO 02/46227に開示されている。
【0091】
一つの態様において、エクセンディン-4類似体は、HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPSKKKKKKである。
【0092】
さらに他の態様において、GLP-1アゴニストは、安定なエクセンディン-4類似体/-誘導体である。「安定なエクセンディン-4類似体/誘導体」という語は、本明細書で用いられるように「安定なGLP-1類似体/誘導体」について上記した方法で測定したとき、ヒトにおいて少なくとも10時間のインビボ血清排除半減期を示す、エクセンディン-4(1-39)類似体又はエクセンディン-4(1-39)類似体の誘導体を示す。
【0093】
さらに他の態様において、GLP-1アゴニストは、Aib8,35 GLP-1(7-36)アミド(Aib = α-アミノイソ酪酸)である。
【0094】
さらに他の態様において、GLP-1アゴニストは、Ser38,Lys39,40,41,42,43,44-エクセンディン-4(1-39)アミドである。
【0095】
さらに他の態様において、GLP-1アゴニストは、WO 00/42026に開示された非-ペプチド小分子GLP-1アゴニストから選択される。
【0096】
本発明は、GLP-1アゴニストの薬学的に許容される塩をも包含する。そのような塩は、薬学的に許容される酸付加塩、薬学的に許容される金属塩、アンモニウム及びアルキル化アンモニウム塩を含む。酸付加塩は、無機酸並びに有機酸の塩を含む。適切な無機酸の代表的な例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸などを含む。適切な有機酸の代表的な例は、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、スクシン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモイン酸(pamoic acid)、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などを含む。薬学的に許容される無機又は有機酸付加塩のさらなる例は、「J. Pharm. Sci. 1977、66、2」にリストされた薬学的に許容される塩を含む。金属塩の例には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが含まれる。アンモニウム及びアルキル化アンモニウム塩の例には、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、ブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などが含まれる。
【0097】
また、薬学的に許容される酸付加塩は、本発明のGLP-1アゴニストが形成可能な水和物であるように意図される。
【0098】
ペプチドGLP-1化合物は、ペプチド合成及びペプチド化学の分野で既知の組換えDNA技術又はペプチド合成(例えば、メリフィールドタイプの固相合成)によって調製された、適切なペプチド骨格の適切な誘導体によって調製されることができる。
【0099】
GLP-1アゴニストの投与経路は、活性成分を適切な作用サイト又は所望の作用サイトに効果的に輸送するいずれの経路であってよく、例えば経口、経鼻、頬側、肺性、経皮又は非経口的な経路である。
【0100】
Arg34、Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)のようなGLP-1アゴニストを含む医薬又は薬学的組成物は、それらを必要とする患者に非経口的に投与されうる。非経口投与は、シリンジ、任意にペン様シリンジによって、皮下注射、筋肉内注射又は静脈内注射によって行われる。或いは、非経口投与は、注入ポンプによって行っても良い。さらなる選択肢は、経鼻又は肺性スプレーの形態でのGLP-1アゴニストの投与のための粉末又は液体である組成物である。さらに他の選択肢として、GLP-1アゴニストは、例えばパッチ、任意にイオントフォレーシスでのパッチからの経皮的投与、或いは例えば頬側での経粘膜的投与で投与されてもよい。上記の可能なGLP-1アゴニストの投与方法は、本発明の範囲を限定するものとはみなされない。
【0101】
一つの態様において、本発明の方法において患者に投与されるGLP-1アゴニストの投与量は、約0.1 μg/kg/日〜約20μg/kg/日である。
【0102】
他の態様において、本発明の方法において患者に投与されるGLP-1アゴニストの投与量は、約0.5 μg/kg/日〜約2 μg/kg/日である。
【0103】
一つの態様において、GLP-1アゴニストは、肥満症の治療又は体重減少の誘導のため又は得られた体重減少の維持のために用いられるか又は、肥満症が病因の一部である疾病又は状態の治療に用いられる、さらなる治療的活性成分とともに共投与される。さらなる治療的活性成分の例は、抗糖尿病薬剤、抗高脂血症剤、抗肥満症剤、血圧降下薬及び糖尿病の結果起こったか又は糖尿病に付随する合併症の治療のための薬剤を含む。
【0104】
適切な抗糖尿病薬剤は、インスリン、GLP-1 (グルカゴン様ペプチド-1)誘導体、例えばWO 98/08871 (Novo Nordisk A/S) (参考として本明細書に援用される)に開示されているようなもの、並びに、経口的に活性な血糖降下剤を含む。
【0105】
適切な経口活性血糖降下剤は、好ましくは以下のものを含む:イミダゾリン、スルホニルウレア、ビグアニド、メグリチニド、オキサジアゾリジンジオン、チアゾリジンジオン、インスリン感作物質、α-グルコシダーゼ阻害剤、膵臓β-細胞のATP-依存性カリウムチャンネル上で作用する薬剤、例えば、WO 97/26265、WO 99/03861及びWO 00/37474 (Novo Nordisk A/S) (参考として本明細書に援用される)に開示されているような、カリウムチャンネルオープナー、オルミチグリニド(ormitiglinide)のようなカリウムチャンネルオープナー、ナテグリニド又はBTS-67582のようなカリウムチャンネルブロッカー、WO 99/01423及びWO 00/39088 (Novo Nordisk A/S及びAgouron Pharmaceuticals、Inc.) (そのすべてが参考として本明細書に援用される)に開示されているようなグルカゴンアンタゴニスト、WO 00/42026 (Novo Nordisk A/S及びAgouron Pharmaceuticals、Inc.)(参考として本明細書に援用される)に開示されているようなGLP-1アゴニスト、DPP-IV (dipeptidyl peptidase-IV)阻害剤、PTPase (チロシンホスファターゼ)阻害剤、WO 02/08209(Hoffmann La Roche)に開示されたようなグルコキナーゼ活性化剤、糖新生及び/又はグリコーゲン分解の刺激に関与する肝臓酵素の阻害剤、グルコース取り込み修飾因子、GSK-3 (グリコーゲン合成キナーゼ-3)阻害剤、脂質代謝を修飾する化合物、例えば、抗高脂血症剤及び抗脂血症剤、食物摂取を低下する化合物、及び、PPAR(ペロキソーム増殖因子-活性化受容体)及びRXR(レチノイドX 受容体)アゴニスト、例えば、ALRT-268、LG-1268、又はLG-1069。
【0106】
適切なさらなる治療的活性化合物の他の例は、インスリン、又はインスリン類似体、スルホニルウレア、例えば、トルブタミド、クロルプロパミド、トラザミド、グリベンクラミド、グリピジド、グリメピリド(glimepiride)、グリカジド、グリブリド、ビグアニド、例えばメトホルミン、メグリチニド、例えばレパグリニド又はセナグリニド/ナテグリニドを含む。
【0107】
適切な、さらなる治療的活性化合物の他の例は、チアゾリジンジオンインスリン感作物質、例えばトログリタゾン、シグリタゾン(ciglitazone)、ピオグリタゾン(pioglitazone)、ロシグリタゾン(rosiglitazone)、イサグリタゾン(isaglitazone)、ダルグリタゾン(darglitazone)、エングリタゾン(englitazone)、CS-011/CI-1037又はT 174又はWO 97/41097 (DRF-2344)、WO 97/41119、WO 97/41120、WO 00/41121及びWO 98/45292 (Dr. Reddy’s Research Foundation)、(参考として本明細書に援用される)に開示された化合物を含む。
【0108】
適切な、さらなる治療的活性化合物の他の例は、インスリン感作物質、例えば、GI 262570、YM-440、MCC-555、JTT-501、AR-H039242、KRP-297、GW-409544、CRE-16336、AR-H049020、LY510929、MBX-102、CLX-0940、GW-501516或いはWO 99/19313 (NN622/DRF-2725)、WO 00/50414、WO 00/63191、WO 00/63192、WO 00/63193 (Dr. Reddy’s Research Foundation)及びWO 00/23425、WO 00/23415、WO 00/23451、WO 00/23445、WO 00/23417、WO 00/23416、WO 00/63153、WO 00/63196、WO 00/63209、WO 00/63190及びWO 00/63189 (Novo Nordisk A/S)(参考として本明細書に援用される)に開示された化合物を含む。
【0109】
適切な、さらなる治療的活性化合物の他の例は、α-グルコシダーゼ阻害剤、例えば、ボグリボース(voglibose)、エミグリテート(emiglitate)、ミグリトール(miglitol)又はカルボースを含む。
【0110】
適切な、さらなる治療的活性化合物の他の例は、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、例えば、WO 97/09040 (Novo Nordisk A/S) に開示された化合物を含む。
【0111】
適切な、さらなる治療的活性化合物の他の例は、グルコキナーゼ活性化剤を含む。
【0112】
適切な、さらなる治療的活性化合物の他の例は、膵臓β-細胞のATP-依存性カリウムチャンネル上で作用する薬剤、例えば、トルブタミド、グリベンクラミド、グリピジド、グリカジド、BTS-67582、又はレパグリニドを含む。
【0113】
適切な、さらなる治療的活性化合物の他の例は、ナテグリニドを含む。
【0114】
適切な、さらなる治療的活性化合物の他の例は、抗高脂血症剤又は抗脂血症剤、例えば、コレスチラミン、コレスチポール、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、プロブコール、又はデキストロサイロキシンを含む。
【0115】
さらなる治療的活性化合物の他の例は、抗肥満症化合物又は食欲制御剤を含む。そのような化合物は、以下からなる群より選択される:CART (コカインアンフェタミン制御転写物)アゴニスト、NPY (ニューロペプチド Y)アンタゴニスト、MC3 (メラノコルチン3)アゴニスト、MC4 (メラノコルチン4)アゴニスト、オレキシンアンタゴニスト、TNF (腫瘍壊死因子)アゴニスト、CRF (コルチコトロピン放出因子)アゴニスト、CRF BP (コルチコトロピン放出因子結合タンパク質)アンタゴニスト、ウロコルチン(urocortin)アゴニスト、β3アドレナリン作用性アゴニスト、例えばCL-316243、AJ-9677、GW-0604、LY362884、LY377267又はAZ-40140、MSH (メラノサイト-刺激ホルモン)アゴニスト、MCH (メラノサイト-濃縮ホルモン)アンタゴニスト、CCK(クロレシストキニン(cholecystokinin))アゴニスト、セロトニン再取込み阻害剤 (フルオキセチン(fluoxetine)、セロキサット又はシタロプラム(citalopram))、セロトニン及びノレピネフィリン(norepinephrine)再取込み阻害剤、5HT (セロトニン)アゴニスト、ボンベシンアゴニスト、ガラニンアンタゴニスト、成長ホルモン、成長因子(growth factors)、例えば、プロラクチン又は胎盤性ラクトゲン、成長ホルモン放出化合物、TRH (チレオトロピン放出ホルモン)アゴニスト、UCP 2、又は3 (アンカップリングタンパク質 2、又は3)モジュレーター、化学的アンカップラー、レプチンアゴニスト、DA (ドーパミン)アゴニスト(ブロモクリプチン、ドプレキシン)、リパーゼ/アミラーゼ阻害剤、PPARモジュレーター、RXRモジュレーター、TR βアゴニスト、アドレナリン作動性CNS刺激剤、AGRP (アゴウチ関連タンパク質)阻害剤、H3ヒスタミンアンタゴニスト、例えばWO 00/42023、WO 00/63208及びWO 00/64884(参考として本明細書に援用される)に開示されたもの、エクセンディン-4、GLP-1アゴニスト及び毛様体神経栄養性因子。さらなる抗肥満症薬剤は、ブプロピオン(抗抑制剤)、トピラメート(抗痙攣薬)、エコピパム(ドーパミン
D1/D5アンタゴニスト)、ナルトレキソン(オピオイドアンタゴニスト)、及びペプチド YY3-36 (Batterham et al、Nature 418、650-654 (2002))である。
【0116】
一つの態様において、抗肥満症薬剤はレプチンである。
【0117】
一つの態様において、抗肥満症薬剤はペプチド YY3-36である。
【0118】
一つの態様において、抗肥満症薬剤はセロトニン及びノルエピネフリン再取り込み阻害剤、例えば、シブトラミン(sibutramine)である。
【0119】
一つの態様において、抗肥満症薬剤は、リパーゼ阻害剤、例えば、オルリスタットである。
【0120】
一つの態様において、抗肥満症薬剤は、アドレナリン作動性CNS刺激剤、例えば、デキサンフェタミン、アンフェタミン、フェンテルミン、マチンドールフェンジメトラジン、ジエチルプロピオン、フェンフルラミン、又はデキフェンフラミンである。
【0121】
一つの態様において、抗肥満症薬剤は、WO 03/22304 (Imperial College)に開示されているような、オキシントモデュリン(oxynthomodulin)である。
【0122】
一つの態様において、抗肥満症薬剤は、グレイン(ghrelin)アンタゴニスト、例えばWO 01/56592に開示されているようなものである。
【0123】
一つの態様において、抗肥満症薬剤は、エネルギー消費改変剤である。
【0124】
一つの態様において、抗肥満症薬剤は、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型阻害剤である。
【0125】
適切な、さらなる治療的活性化合物の他の例は、抗高血圧剤を含む。抗高血圧剤の例は、アルプレノロール、アテノロール、チモロール、ピンドール、プロプラノロール(propranolol)及びメトプロロールのようなβ-ブロッカー、ベンザゼプリル(benazepril)、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル(fosinopril)、リシノプリル、キナプリル及びラミプリル(ramipril)のようなACE (アンジオテンシン転換酵素)阻害剤、ニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、イスラジピン、ニモジピン、ジルチアゼム及びベラパミルのようなカルシウムチャンネルブロッカー、及びドキサゾジン、ウラピジル、プラゾシン及びテラゾシンのようなα-ブロッカーである。
【薬学的組成物】
【0126】
Arg34、Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)のようなGLP-1アゴニストを含む薬学的組成物は、従来技術、例えば「Remington's Pharmaceutical Sciences, 1985」又は「Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995」に開示されているような技術によって調製することができる。
【0127】
このように、GLP-1アゴニスト、インスリン及び自己免疫性薬剤の注射可能な組成物は、医薬工業の従来技術を用いて調製されることができ、これは、成分を適切に溶解及び混合して所望の最終産物を与えることを含む。
【0128】
例えば、Arg34、Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)のようなGLP-1アゴニストは、調製される組成物の最終容量より幾分少ない量の水に溶解される。等張剤、保存剤及び緩衝剤を必要に応じて添加し、必要であれば、例えば塩酸などの酸又は例えば水酸化ナトリウムなどの塩基を必要に応じて用いて溶液のpH値を調整する。最後に、溶液の容量を水で調整し、所望の成分濃度を与える。
【0129】
本発明の一つの態様において、GLP-1アゴニストの製剤は、7.0〜10の範囲のpHを有する。本発明の他の態様において、該製剤は、7.0〜9.5の範囲のpHを有する。本発明のさらなる態様において、該製剤は、7.0〜8.5の範囲のpHを有する。本発明のさらに他の態様において、該製剤は、7.0〜8.0の範囲のpHを有し、好ましくは7.4〜7.8の範囲のpHを有する。本発明のさらなる態様において、該製剤は、9.0〜10の範囲のpHを有する。
【0130】
本発明の製剤に用いられる等張剤の例は、以下からなる群から選択されるものである:塩(例えば、塩化ナトリウム)、多価アルコール(例えば、キシリトール、マンニトール、ソルビトール又はグリセロール)、モノサッカリド(例えば、グルコース又はマルトース)、ジサッカリド(例えば、スクロース)、アミノ酸(例えば、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、プロピレングリコール、又はそれらの混合物。本発明のさらなる態様において、等張剤は、塩化ナトリウム、グリセロール、マンニトール、グルコース、スクロース、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、又はそれらの混合物から成る群から選択される。それらの具体的な等張剤のそれぞれは、本発明の代替の態様を構成する。
【0131】
本発明の製剤に用いられる保存剤の例は、フェノール、m-クレゾール、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、2-フェノキシエタノール、ブチルp-ヒドロキシベンゾエート、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチオメロサル(thiomerosal)、又はそれらの混合物である。それらの具体的な保存剤のそれぞれは、本発明の代替の態様を構成する。本発明の好ましい態様において、保存剤はフェノール又はm-クレゾールである。
【0132】
本発明の製剤に用いられる適切な緩衝剤の例は、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、シトラート、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、又はそれらの混合物である。それらの具体的な緩衝剤のそれぞれは、本発明の代替の態様を構成する。本発明の好ましい態様において、緩衝剤は、グリシルグリシン、リン酸一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム又はそれらの混合物である。
【0133】
上記の成分からさらに、GLP-1アゴニストを含有する溶液は、ペプチドの溶解性及び/又は安定性を改善するために界面活性剤(surfactant)を含んでよい。本発明のさらなる態様において、前記製剤はさらに界面活性剤を含む。本発明のさらなる態様において、該界面活性剤は、以下から選択される:界面活性剤(detergent)、エトキシ化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、188及び407のようなポロキサマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキル化及びアルコキシル化誘導体(トゥイーン、例えば、トゥイーン-20、又はトゥイーン-80)のようなポリオキシエチレン誘導体、モノグリセリド又はそれらのエトキシ化誘導体、ジグリセリド又はそれらのポリオキシエチレン誘導体、グリセロール、コール酸又はそれらの誘導体、レクチン、アルコール及びリン脂質、グリセロリン脂質(レクチン、ケファリン、ホスファチジルセリン)、グリセロ糖脂質(ガラクトピラノシド)、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン)、及びスフィンゴ糖脂質(セラミド、ガングリオシド)、DSS (ドクセート(docusate)ナトリウム、CAS登録番号[577-11-7])、ドクセートカルシウム、CAS登録番号[128-49-4])、ドクセートカリウム、CAS登録番号[7491-09-0])、SDS (ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウム)、ジパルミトイルホスファチジン酸、カプリル酸ナトリウム、胆汁酸及びその塩及びグリシン又はタウリン接合体、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホンエート、陰イオン性(アルキル-アリール-スルホネート)一価の界面活性剤、パルミトイルリソホスファチジル-L-セリン、リゾリン脂質(例えば、エタノールアミン、コリン、セリン又はスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)、アルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、リソホスファチジル及びホスファチジルコリンのアルコキシ(アルキルエーテル)-誘導体、例えば、リソホスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及び極性頭部(head group)の修飾、即ち(that is)コリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトール、及び正に帯電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リソホスファチジルセリン及びリソホスファチジルスレオニン、両性イオン性界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホンエート、3-クロルアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホンエート、ドデシルホスホコリン、ミリストイルリソホスファチジルコリン、鳥卵(hen egg)リソレクチン)、陽イオン性界面界面活性剤(四級アンモニウム塩基) (例えば、セチル-トリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウム塩化物)、非-イオン性界面活性剤、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(プルロニック/テトロニック、トリトンX-100、ドデシルβ-D-グルコピラノシド)又は重合体の界面活性剤(Tween-40、Tween-80、Brij-35)、フシジン酸誘導体-(例えば、ナトリウムタウロ-ジヒドロフシデートなど)、長鎖脂肪酸及びそれらの塩 C6-C12 (例えば、オレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチン及び誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンのNα-アシル化誘導体、又はリジン又はアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジン及び中性又は酸性のアミノ酸の任意の組合せを含むジペプチドのNα-アシル化誘導体、中性アミノ酸及び二つの帯電したアミノ酸の任意の組合せを含むトリペプチドのNα-アシル化誘導体、又は該界面活性剤は、イミダゾリン誘導体、又はそれらの混合物の群から選択される。それらの具体的な界面活性剤のそれぞれは、本発明の代替の態様を構成する。
【0134】
等張剤、保存剤、及び界面活性剤の使用は、医薬品分野で周知であり、「Remington: The Science及びPractice of Pharmacy、20th edition、2000」を参考にできる。
【0135】
本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、本発明の製剤中に、0.1mg/ml〜80mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、1mg/ml〜80mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、0.1mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、1mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、0.1mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、1mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、0.1mg/ml〜10mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、1mg/ml〜10mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、0.1〜5mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、1〜5mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、0.1〜0.5mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、GLP-1アゴニストは、0.6〜1mg/mlの濃度で存在する。それらの具体的な濃度範囲のそれぞれは、本発明の代替の態様を構成する。
【0136】
本明細書に記載された刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参照文献は、参照によって、それぞれの参考文献が独立して具体的に援用されたように、また、その内容が本明細書に記載されたかのように(法によって許容される最大範囲まで)、その全内容及び同じ範囲が参照によって本願明細書に援用される。
【0137】
全ての表題及び副題は、便宜のためだけに本明細書中では用いられ、いずれの方法においても、本発明を限定するとみなされるべきではない。
【0138】
本明細書で提供された、何れかの及び全ての例、代表的な言語(例えば、「のような」)の使用は、本発明をよりよく説明するために意図され、他に請求しない限り、本発明の範囲を限定するために提出されたものではない。明細書中のいずれの言葉も、本発明の実施に必須な請求されていない要素を示すとみなされるべきではない。
【0139】
本明細書で挙げられ援用された特許公報は、便宜のためだけに行われ、その特許公報の有効性、特許性、及び/又は 実施可能性のいずれの観点を反映するものではない。
【0140】
本発明は、適用可能な法によって許容される特許請求において挙げられた対象事項の全ての改変物及び等価物を含む。
【実施例】
【0141】
実施例1
四月齢のラットに、固形飼料及び5交替のキャンディー類(チョコレート、チョコレートビスケット、糖)から成る食事制限を与えて、食事制限(diet)が誘導した肥満症(DIO)を、2ヵ月半かけて導入した。キャンディーは毎日交換し、同じキャンディーが5日毎に提供されるようにした。脂肪のないコントロールグループは、固形飼料のみで飼育した。DIOグループは、続いて12週間、リラグルタイド(liraglutide)(0.2 mg/kg s.c. bid, n=10)で処置した。キャンディーと固形飼料の提供は、全処置期間の間も継続した。溶媒(vehicle)は、肥満症(n=14)及び脂肪のないコントロールラット(n=15)の両方に与えた。固形飼料とキャンディーを区別した食物摂取を毎日モニターした。
【0142】
リラグルタイドは累積的なカロリー摂取を有意に(p=0.009)減少させた(4452.3±150.6 vs. 5061.2±99.9 kcal)。この減少は、キャンディーから得たカロリーにおける選択的な減少であり(2863.3±200.9 vs. 3803.2±110.2 kcal、p=0.017)、事実上、固形飼料から得たカロリーが上昇した(1589.0±96.9 vs.1248.5±71.6 kcal、p=0.001)。
【0143】
リラグルタイドは、Arg34、Lys26(Nε-(γ-Glu(Nε-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)のINDネームである;キャンディー1 (糖):モノ-及びジ-サッカリドが炭水化物の総量の100%を構成する;キャンディー2 (チョコレートクリーム充填クラッカー):糖血症指数49%、総エネルギーの39%が脂肪に由来、モノ-及びジ-サッカリドが炭水化物の総量の57%を構成する;キャンディー3 (ミルクチョコレート):糖血症指数49%、総エネルギーの60%が脂肪に由来、モノ-及びジ-サッカリドが炭水化物の総量の90%を構成する;キャンディー4 (ナッツ入りミルクチョコレート):総エネルギーの80%が脂肪に由来、モノ-及びジ-サッカリドが炭水化物の総量の80%を構成する;キャンディー5(タフィーチョコレート):総エネルギーの80%が脂肪に由来、モノ-及びジ-サッカリドが炭水化物の総量の75%を構成する;固形飼料:総エネルギーの15%が脂肪に由来、モノ-及びジ-サッカリドが炭水化物の総量の15%を構成する。
【0144】
データによって、GLP-1アゴニストが、カロリー摂取を減少させ得ることが明らかに示され、また、GLP-1アゴニストが、高い糖血症指数を有する食物又はモノ-及びジ-サッカリドがともに炭水化物の総量の大きな割合を構成する食物を嫌うことを誘導することが示された。
【0145】
実施例2
ヒトにおけるGLP-1アゴニストの効果を示す実験は、ここで記載するように設計される。ヒト被検者は、薬理学的活性な血中GLP-1様レベルをもたらすGLP-1アゴニストの一つ又は幾つかの1日用量、又は、プラセボ化合物を投与される。被検者は、A)からD)のグループの一以上から及びE)からH)のグループの一以上から、食物と飲料の選択の機会を与えられる。
【0146】
A)糖血症指数が60%以上
B)糖血症指数が40%以上及び総エネルギーの30%より多くが脂肪に由来
C)モノ-又はジ-サッカリドのあわせた量が、炭水化物の総含量の25%より多くを構成する
D)モノ-又はジ-サッカリドのあわせた量が、炭水化物の総含量の25%より多くを構成し、総エネルギーの30%より多くが脂肪に由来
E)糖血症指数が60%より少ない
F)糖血症指数が40%より少ない及び総エネルギー量の30%より少ない量が脂肪に由来
G)モノ-及びジ-サッカリドのあわせた量が、炭水化物の総含量の25%より少ない量を構成する
H)モノ-及びジ-サッカリドのあわせた量が、炭水化物の総含量の25%より少ない量を構成し、総エネルギー量の30%より少ない量が脂肪に由来。
【0147】
全ての食物グループの食べられた量と飲まれた量を、エネルギー摂取に関して算出し、A)からD)のグループ(不健康食物)の一以上からの食物の摂取を選択的に減少し、E)からH)のグループ(健康食物)の一以上からの食物の摂取を増加させる、GLP-1アゴニストの能力が算出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者による食物の摂取を減少させるための方法であって、前記食物が、60%以上の糖血症指数を有し、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項2】
被検者による食物の摂取を減少させるための方法であって、前記食物が、40%以上の糖血症指数を有し、ここで、前記食物における総エネルギーの30%より多くが、脂肪に由来し、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項3】
被検者による食物の摂取を減少させるための方法であって、前記食物中のモノ-及びジ-サッカリドがともに、前記食物中の炭水化物の総量の25%より多くを構成し、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項4】
前記食物中の総エネルギーの30%より多くが脂肪に由来する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
被検者による食物の摂取を増加させるための方法であって、前記食物が、60%より低い糖血症指数を有し、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項6】
被検者による食物の摂取を増加させるための方法であって、前記食物が、40%より低い糖血症指数を有し、前記食物における総エネルギーの30%より少ないエネルギーが脂肪に由来し、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項7】
被検者による食物の摂取を増加させるための方法であって、前記食物中のモノ-及びジ-サッカリドがともに、前記食物中の総炭水化物含有量の25%より少ない量を構成し、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項8】
前記食物における総エネルギーの30%より少ない量が脂肪に由来する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
食物の異常摂取又は過剰摂取を有する被検者を治療する方法であって、糖血症指数が60%以上であり、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項10】
食物の異常摂取又は過剰摂取を有する被検者を治療する方法であって、糖血症指数が40%以上であり、前記食物の総エネルギーの30%より多くが脂肪に由来し、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項11】
食物の異常摂取又は過剰摂取を有する被検者を治療する方法であって、モノ-及びジ-サッカリドがともに、炭水化物の総量の25%より多くを構成し、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項12】
前記食物中の総エネルギーの30%より多くが脂肪に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
被検者の過食症障害を治療する方法であって、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項14】
被検者の神経性過食症を治療する方法であって、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項15】
被検者の食物への欲求を治療する方法であって、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項16】
被検者のスナック好みを低脂肪、糖血症指数の低いスナックに変化させる方法であって、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項17】
被検者の肥満症を治療する方法であって、前記肥満症が、過食症障害、神経性過食症、食物への欲求、又はスナッキング(snacking)によって引き起こされ、前記方法が、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項18】
被検者のスナック摂取(「スナッキング」)の量を低下させる方法であって、該方法は、前記被検者にGLP-1アゴニストの有効量を投与することを含む方法。
【請求項19】
請求項13〜18の何れか1項に記載の方法であって、前記被検者が肥満である方法。
【請求項20】
請求項1〜19の何れか1項に記載の方法であって、前記GLP-1アゴニストが食事と関連して投与される方法。
【請求項21】
請求項1〜20の何れか1項に記載の方法であって、前記被検者がヒト、ペット動物又は動物園の動物である方法。
【請求項22】
前記被検者がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
GLP-1アゴニスト含有産物の販売を促進する方法であって、前記方法は、高い糖血症指数を有する食物又はモノ-及びジ-サッカリドがともに炭水化物の総量の大きな割合を構成する食物の摂取の減少が、前記産物の消費に起因することを記述する情報を公衆に配給することを含む方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記情報の前記配給が、言語のコミュニケーション、パンフレット配布、印刷媒体、オーディオテープ、磁気媒体、デジタル媒体、視聴覚媒体、広告板、広告、新聞、雑誌、ダイレクトメール、ラジオ、テレビ、電子メール、点字、電子媒体、垂れ幕、光ファイバー、及びレーザー光線ショーから成る群から選択される方法によって達成される方法。
【請求項25】
以下を含む薬学的産物:(a) 高い糖血症指数を有する食物又はモノ-及びジ-サッカリドがともに炭水化物の総量の大きな割合を構成する容器中の食物の摂取を減少させるGLP-1アゴニスト;及び(b) 医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関により規定された形態で前記容器に付随した通知、該通知は、高い糖血症指数を有する食物又はモノ-及びジ-サッカリドがともに炭水化物の総量の大きな割合を構成する食物の摂取を減少させるために、ヒト又は動物(veterinary)投与のための前記GLP-1化合物の、前記機関による認可を反映する。
【請求項26】
請求項1〜25の何れか1項に記載の方法であって、前記GLP-1アゴニストは、GLP-1(7-36)-アミド又はGLP-1(7-37)である方法。
【請求項27】
請求項1〜25の何れか1項に記載の方法であって、前記GLP-1アゴニストは、GLP-1(7-36)-アミド又はGLP-1(7-37)の類似体の類似体又は誘導体である方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記誘導体は、Arg34、Lys26(Nε-(γ-Glu(Nε-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)である方法。
【請求項29】
請求項1〜25の何れか1項に記載の方法であって、前記GLP-1アゴニストが、エクセンディン(exendin)-4、エクセンディン-4類似体、又は前記エクセンディン-4又はエクセンディン-4類似体の誘導体である方法。
【請求項30】
前記GLP-1アゴニストがエクセンディン-4である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
被検者における過食症障害の治療のための医薬の製造におけるGLP-1アゴニストの使用。
【請求項32】
被検者における欲求の治療のための医薬の製造におけるGLP-1アゴニストの使用。
【請求項33】
被検者における神経性過食症の治療のための医薬の製造におけるGLP-1アゴニストの使用。
【請求項34】
前記被検者が肥満である、請求項30〜32の何れか1項に記載の使用。
【請求項35】
肥満症の治療のための医薬の製造におけるGLP-1アゴニストの使用であって、前記肥満症が過食症障害、神経性過食症、食物への欲求又はスナッキングによって起こされたものである使用。
【請求項36】
前記GLP-1アゴニストがGLP-1(7-36)-アミド又はGLP-1(7-37)である、請求項31〜35の何れか1項に記載の使用。
【請求項37】
請求項31〜35の何れか1項に記載の使用であって、前記GLP-1アゴニストが、GLP-1(7-36)-アミド又はGLP-1(7-37)の類似体の類似体又は誘導体である使用。
【請求項38】
前記誘導体が、Arg34、Lys26(Nε-(γ-Glu(Nε-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)である、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
請求項31〜35の何れか1項に記載の使用であって、前記GLP-1アゴニストが、エクセンディン-4、エクセンディン-4類似体、又は前記エクセンディン-4又はエクセンディン-4類似体の誘導体である使用。
【請求項40】
前記GLP-1アゴニストがエクセンディン-4である、請求項39に記載の使用。

【公表番号】特表2008−504217(P2008−504217A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543367(P2006−543367)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000853
【国際公開番号】WO2005/056036
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(391032071)ノボ ノルディスク アクティーゼルスカブ (148)
【氏名又は名称原語表記】NOVO NORDISK AKTIE SELSXAB
【Fターム(参考)】