説明

GLP−1アナログ複合タンパク質

本発明は、ある特定のIgG4−Fc派生物に融合された特定のGLP−1アナログを示す。これらの融合タンパク質は、半減期が延長し、免疫抗原性が減少し、エフェクター活性が緩和されている。本融合タンパク質は、糖尿病、肥満、過敏性腸症候群、そして、血糖値の低下、胃運動および/または腸運動の抑制、胃および/または腸排出の抑制、または食物摂取の抑制によって恩恵を受けるその他の症状の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ペプチドの生体内での半減期の延長に効果を有するタンパク質と融合させた、グルカゴン様ペプチドアナログに関する。これらの融合タンパク質は、糖尿病だけでなく他の様々な状況や疾患の処置にも使用することができる。
【0002】
グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)アナログ及びその誘導体は、II型糖尿病の処置への臨床試験で有望な結果を示している。GLP−1にはインシュリン分泌の刺激やグルカゴン分泌の抑制、胃排出の抑制、胃運動や腸運動の抑制、及び体重減少の誘導といった数多くの生物学的効果がある。GLP−1の重要な特性は、例えばインシュリン治療やインシュリンの発現増加に作用するような一部の経口治療を用いた際に見られる低血糖症に付随したリスク無しにインシュリン分泌を刺激することができる点である。
【0003】
GLP−1(1−37)は活性が乏しいうえ、自然に生じる2種類の切断されたペプチド、GLP−1(7−37)OH及びGLP−1(7−36)NHは生体内で速やかに排除され生体内半減期が著しく短いため、GLP−1ペプチドを用いた治療の有用性はこれまで制限があった。内因的に生成されたジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)がN末のヒスチジンとアラニン残基を除去することによって循環しているGLP−1ペプチドを不活性化すること、そしてこれが、半減期が短い主な理由であることが知られている。
【0004】
GLP−1ペプチドの除去半減期を延ばすため、または、生物活性を維持する一方でペプチドの体内からのクリアランスを緩和するための様々な取り組みが行なわれてきた。一つの取り組みは、GLP−1ペプチドを免疫グロブリンのFc部分への融合することに関するものである。免疫グロブリンは一般的に生体内での循環半減期が長い。例えば、IgG分子の半減期はヒトでは23日にも及ぶことがある。免疫グロブリンのFc部分は、この生体内での安定性の原因の一部である。GLP−1−Fc 融合タンパク質は、GLP−1分子の生物活性を保つ一方で、免疫グロブリンのFc部分によって付与された安定性を利用している。
【0005】
GLP−1治療へのこの取り組みは実行可能であるが(国際公開特許第02/46227号参照)、様々な融合タンパク質を長期間に渡って繰返し投与する際の抗原性に関する一般的な懸念がある。一旦診断されたら生涯処置を続けなければならない糖尿病患者へのGLP−1−Fc融合治療は、この点が特に懸念される。加えて、Fc融合タンパク質治療は、Fc部分に不必要なエフェクター機能が残っていないかという懸念にもなりえる。
【0006】
本発明は、長期間に渡って繰返し投与した後の免疫反応を誘発するリスクが軽減されエフェクター機能を有しない特定のGLP−1−Fc融合体を同定することによって、免疫抗原性の可能性に関わる問題とGLP−1−Fc融合体の投与に付随するエフェクター活性に関する問題の克服を探るものである。これら特定の融合タンパク質では、この分子のFc部分だけでなくGLP−1タンパク質部分の様々な位置での置換が行なわれている。本出願に記載の置換は、効力の増大、生体内での安定性の向上、エフェクター機能の排除、免疫系の適応要素によってこの分子が認識される可能性の減少を提供する。
【0007】
本発明の化合物は、GLP−1アナログを含む異種融合タンパク質を含み、前記GLP−1アナログは、
a) (SEQ ID NO:1)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly−Gly
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
b) (SEQ ID NO:2)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Gly
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
c) (SEQ ID NO:3)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly−Pro
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
d) (SEQ ID NO:4)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
e) (SEQ ID NO:5)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
f) (SEQ ID NO:6)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)
から成るグループから選択された配列を含み、

Ala−Glu−Ser−Lys−Tyr−Gly−Pro−Pro−
Cys−Pro−Pro−Cys−Pro−Ala−Pro−Xaa16
Xaa17−Xaa18−Gly−Gly−Pro−Ser−Val−Phe−
Leu−Phe−Pro−Pro−Lys−Pro−Lys−Asp−
Thr−Leu−Met−Ile−Ser−Arg−Thr−Pro−
Glu−Val−Thr−Cys−Val−Val−Val−Asp−
Val−Ser−Gln−Glu−Asp−Pro−Glu−Val−
Gln−Phe−Asn−Trp−Tyr−Val−Asp−Gly−
Val−Glu−Val−His−Asn−Ala−Lys−Thr−
Lys−Pro−Arg−Glu−Glu−Gln−Phe−Xaa80
Ser−Thr−Tyr−Arg−Val−Val−Ser−Val−
Leu−Thr−Val−Leu−His−Gln−Asp−Trp−
Leu−Asn−Gly−Lys−Glu−Tyr−Lys−Cys−
Lys−Val−Ser−Asn−Lys−Gly−Leu−Pro−
Ser−Ser−Ile−Glu−Lys−Thr−Ile−Ser−
Lys−Ala−Lys−Gly−Gln−Pro−Arg−Glu−
Pro−Gln−Val−Tyr−Thr−Leu−Pro−Pro−
Ser−Gln−Glu−Glu−Met−Thr−Lys−Asn−
Gln−Val−Ser−Leu−Thr−Cys−Leu−Val−
Lys−Gly−Phe−Tyr−Pro−Ser−Asp−Ile−
Ala−Val−Glu−Trp−Glu−Ser−Asn−Gly−
Gln−Pro−Glu−Asn−Asn−Tyr−Lys−Thr−
Thr−Pro−Pro−Val−Leu−Asp−Ser−Asp−
Gly−Ser−Phe−Phe−Leu−Tyr−Ser−Arg−
Leu−Thr−Val−Asp−Lys−Ser−Arg−Trp−
Gln−Glu−Gly−Asn−Val−Phe−Ser−Cys−
Ser−Val−Met−His−Glu−Ala−Leu−His−
Asn−His−Tyr−Thr−Gln−Lys−Ser−Leu−
Ser−Leu−Ser−Leu−Gly−Xaa230
(SEQ ID NO:7)

(配列中、16番目のXaaは、Pro、またはGluであり、
17番目のXaaは、Phe、Val、またはAlaであり、
18番目のXaaは、Leu、Glu、またはAlaであり、
80番目のXaaは、Asn、または Alaであり、
230番目のXaaは、Lys、または欠損である)、

以上のSEQ ID NO:7の配列を含む免疫グロブリンのFc部分と融合されている。
【0008】
本発明のGLP−1アナログタンパク質のC−末端とFc部分のN−末端の異種融合タンパク質は、Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(SEQ ID NO:8)の配列をもつグリシンに富んだペプチドリンカーの1回、1.5回、または2回繰返しを介して互いに融合されることが好ましい。
【0009】
本発明の異種融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター及び宿主細胞だけでなく、異種融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドも本発明に含まれる。また、本出願で考察されるインシュリン依存型糖尿病患者及び非依存型患者、肥満、そしてその他の様々な疾患および症状への、異種融合タンパク質の投与を含む処置方法も本発明に含まれる。
【0010】
本発明の異種融合タンパク質はGLP−1アナログタンパク質とFc部分を含む。GLP−1アナログタンパク質とFc部分は、ネイティブのGLP−1配列とヒトIgG4配列にそれぞれ置換を含むが、この置換は、ネイティブGLP−1またはFc配列と融合させていないGLP−1アナログと比較して、このタンパク質に効力の増大と生体内での安定性を与え、同時にヒトにおいて長期間の繰返し投与の後に抗体形成を誘導する可能性を減少させる。
【0011】
ネイティブGLP−1は生体内で分子から最初の6アミノ酸が切断されるプロセスを受ける。従って、当該分野の慣例によって、GLP−1のアミノ末端は7番とし、カルボキシ末端を37番となっている。ポリペプチドの他のアミノ酸は、SEQ ID NO:9に示されるように連続で番号付けされている。例えば、8番目はアラニンで、22番目はグリシンである。プロセッシングされたペプチドは更に生体内でC−末端のグリシン残基が取り除かれアミド基に置換されるといった修飾が行なわれる可能性がある。従ってGLP−1(7−37)OHとGLP−1(7−36)アミドは、二つの野生型分子を表す。GLP−1(7−37)OHのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:9、
His−Ala−Glu−10Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−15Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−20Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−
25Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−30Ala−Trp−Leu−Val−Lys−35Gly−Arg−37Gly(SEQ ID NO:9)
である。
【0012】
異種融合タンパク質のGLP−1アナログタンパク質は、野生型GLP−1(7−37)に関して第8番、22番、及び36番の位置に主要な置換が含まれている。第8番の位置の置換は、内因性のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)がアナログを不活性化する率を下げる。DPP−IVは、野生型GLP−1を2番目と3番目のアミノ酸の間(第8番と9番の間)で切断し、その結果として分子の活性が落ちる。従って、本発明の異種融合タンパク質はDPP−IV耐性である。第22番の位置の置換は、分子の凝集を緩和して分子の効力を高める。融合タンパク質全体の場合と同様に、第8番と22番で変更があるアナログの第36番の位置の置換は、融合タンパク質が繰返し長期間ヒトに投与した後に中和免疫反応を誘発するリスクを緩和する。
【0013】
液性免疫および細胞性免疫双方の発生の中心イベントは、T−ヘルパー(T)細胞の活性化とクローン増殖である。T細胞の活性化は、抗原提示細胞(APC)存在下でクラスII主要組織適合性抗原(MHC)分子に結合するT細胞受容体(TCR)−CD3複合体と、プロセスされた抗原ペプチドとの相互作用によって開始される。T細胞と抗原の相互作用は、休止T細胞を細胞周期に移行するように誘導(G期からG期への移行)する生化学的なイベントのカスケードである。活性化したT細胞は細胞周期を進め、増殖し、免疫記憶細胞やエフェクター細胞へと分化する。
【0014】
次の配列は、エピトープの可能性を確認するために解析された。
His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Ala−Glu−Ser−Lys−Tyr−Gly−Pro−Pro−Cys−Pro (SEQ ID NO:10)
【0015】
この配列は、ネイティブ配列の後にグリシンに富むリンカー配列の2コピー、その後ろにヒトIgG4由来のFc領域の最初の10アミノ酸が続くGLP−1アナログ配列を、第8番と22番の位置で変更した配列である。本明細書で使用しているエピトープとは、抗体が結合し得るタンパク質分子の領域を指す。エピトープは、タンパク質全体を抗原とした際に抗体反応を誘発するタンパク質の部分と定義される。このパターンに含まれる情報を得るため、エピトープマッピングに伴う配列の9アミノ酸ウィンドーのスライドによるスキャンが高度統計解析法とあわせて用いられた。配列の解析とT細胞に提示された際に免疫反応を誘発する見込みが高いペプチドの同定にはエピマトリックス(EpiMatrixTM)という専売ソフトウェアパッケージが用いられた。クラスIIMHC受容体相互作用の解析には非常に一般的な8つのアレルが用いられた。用いられたアレルは、DRB1*0101、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0701、DRB1*0801、DRB1*1101、DRB1*1301、および DRB1*1501である。
【0016】
強力なエピトープが、GLP−1アナログタンパクのC末端とリンカーの始めの連結部に位置することが予測された。このエピトープの配列は、Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−Gly−Gly(SEQ ID NO:11)で、DRB1*0801と相互作用する。本発明には、このエピトープがGLP−1アナログのC末端を以下の配列、Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly−Gly(SEQ ID NO:12)、Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Gly(SEQ ID NO:13)、Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly−Pro(SEQ ID NO:14)、Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro(SEQ ID NO:15)、Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly(SEQ ID NO:16)、および Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly(SEQ ID NO:17)の1つのいずれかに変化することによって排除されうるという発見を含む。
【0017】
本発明の異種融合タンパク質はヒトIgG4由来のFc部分を含むが、ヒトの野生型配列と比較すると1ヶ所かそれ以上の置換基を含んでいる。本出願で用いる場合、免疫グロブリンのFc部分とは免疫学の領域で一般的に用いられている用語の意味を持つ。特に、この用語は抗体の二つの抗原結合領域(Fab断片)を含まない抗体断片を指す。Fc部分は、非共有作用とジスルフィド結合を介して結合する抗体の両方のH鎖の定常部からなっている。Fc部分はヒンジ領域とCH2およびCH3ドメインから抗体のC末端まで渡る部分を含む場合がある。Fc部分には、更に、1以上の糖修飾部位が含み得る。
【0018】
ヒト免疫グロブリンには異なるエフェクター機能と薬物動態学的特性をもつ5つのタイプがある。IgGは5つのタイプの中で最も安定で、ヒトの血清中半減期は約23日である。IgGには4つのサブクラス(G1、G2、G3、およびG4)があり、それぞれ異なるエフェクター機能と呼ばれる生物学的機能があることが知られている。エフェクター機能は、一般的にFc受容体(FcγR)との相互作用か、C1qとの結合および補体結合によって仲介される。補体因子への結合は補体を介した細胞の分解を引き起こすことができるのに対し、FcγRへの結合は、抗体依存細胞を介した細胞溶解を引き起こすことができる。異種Fc融合タンパク質を設計するにあたり、ここではFc部分は単に半減期を延ばす能力のために利用されているため、他のエフェクター機能を最小限にすることが重要である。従って、FcγRと補体因子の結合能が他のIgGサブタイプと比べて低いことから、本発明の異種融合タンパク質はヒトIgG4由来なのである。しかし、IgG4 はヒトにおいて標的細胞を枯渇させると示されている[アイゼック(Issacs)ら、(1996)臨床および実験免疫学(Clin. Exp. Immunol. 106:427−433)]。本発明の異種融合タンパク質はインシュリンの発現を誘導するために膵臓のベータ細胞を標的とすることから、Fc融合タンパク質にIgG4由来の領域を利用する場合、膵臓ベータ細胞上に存在するGLP−1受容体と融合タンパク質の相互作用を通じて膵臓ベータ細胞に対する免疫反応を惹起する可能性がある。従って、本発明の融合タンパク質の一部であるIgG4のFc領域にはエフェクター機能を除去する置換を含む。本発明の融合タンパク質のIgG4のFc部分には、第233番残基のグルタミン酸からプロリンへ、第234番残基のフェニルアラニンからアラニンまたはバリンへ、および第235番残基のロイシンからアラニンまたはグルタミン酸への置換が1ヶ所かそれ以上含まれている(EU番号)、[カバットE.A.(Kabat, E.A.)ら(1991)、免疫学的のためのタンパク質配列、第五版(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.)米国健康福祉サービス部門(U.S. Dept. of Health and Human Services)、メリーランド州ベセスダ(Bethesda, MD)、NIH出版部(NIH Publication)no. 91−3242]。これらの残基は、SEQ ID NO:7の第16、17、18の位置に相当する。更に、IgG4のFc領域のSEQ ID NO:7で第80番の位置に相当する第297番残基(EU番号))のアスパラギンからアラニンへの置換によるN結合型糖鎖の付加部位が除去は、異種融合タンパク質の場合において残りのエフェクター効果の除去を確実にするもう一つの手段である。
【0019】
加えて、本発明の異種融合タンパク質のIgG4のFc部分は、H鎖二量体の形成を安定化させ半量体のIgG4−Fc鎖の形成を防ぐ置換を含んでいる。本発明の異種融合タンパク質は、ジスルフィド結合と種々の非共有作用によって互いに結合し、二量体として存在するのが望ましい。野生型IgG4は、第224番残基(EU番号)から始まるPro−Pro−Cys−Pro−Ser−Cys(SEQ ID NO:18)モチーフを含む。GLP−1アナログ−Fc鎖の単量体では、このモチーフは別のGLP−1アナログ−Fc鎖の相当のモチーフと共にジスルフィド結合を形成する。しかし、モチーフにセリンが存在した場合、融合タンパク質の単鎖が形成されることになる。本発明は、第228番残基(EU番号)の位置がプロリン(SEQ ID NO:7では11番アミノ酸残基)に置換されるというような、IgG4配列が更に変更された異種Fc融合タンパク質を含む。
【0020】
ネイティブ分子に存在するC末端のリジン残基は、本出願で考察している異種融合タンパク質であるIgG4派生物のFc部分では欠失している可能性がある(SEQ ID NO:7の第230番の位置、除去されたリジンはdes−Kと示されている)。リジンがC末のコドンにコードされている一部の細胞タイプ(例えばNSO細胞)で発現された融合タンパク質は、一部の分子でC末端アミノ酸がリジンで、一部はリジンが欠失しており、不均一である。この欠失は、一部のタイプのほ乳類細胞で発現される際のプロテアーゼの作用によるものである。従って、この不均一を回避するため、Fc融合体発現構築体は、リジンに対するC末端のコドンが欠けていることが好ましい。
【0021】
本出願で考察されるGLP−1アナログタンパク質のC末端アミノ酸は、グリシンに富んだリンカー配列を介してIgG4のFcアナログ部分のN末端と融合されることが好ましい。本発明の異種融合タンパク質の生体内機能と安定性は、望ましくないドメインの相互作用の潜在的な可能性を防ぐための短いペプチドリンカーの付加によって至適化することが可能である。更に、グリシンに富むリンカーには多少の構造的柔軟性を与えるため、GLP−1アナログタンパク質は膵臓のベータ細胞のような標的細胞上のGLP−1受容体と効果的に相互作用することができる。しかし、これらのリンカーは融合タンパク質が生体内で抗原となるリスクを著しく高める可能性がある。従って、望ましくないドメイン相互作用の防止、および/または生物活性の至適化、および/または安定性に必要な最低限の長さであることが好ましい。グリシンに富むリンカーの好ましい配列は、Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(SEQ ID NO:8)から成る。本発明の異種融合タンパク質にはこのリンカーが複数コピーで用いられている可能性があるが、長期間の繰返し投与に付随する免疫抗原性のリスクを最小化するため、このリンカーはシングルコピーで用いられるのが好ましい。
【0022】
本発明において好ましいGLP−1−Fc異種融合タンパク質は、次のタンパク質、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4(S228P)、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4(S228P,F234A,L235A)、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4(S228P,N297A)、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4(S228P,F234A,L235A,N297A)、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P)、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P,F234A,L235A)、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P,N297A)、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P,F234A,L235A,N297A)、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P)、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P,F234A,L235A)、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P,N297A)、およびGly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P,F234A,L235A,N297A)、また以上全てのVal型およびdes−K型を含む。
【0023】
本出願で特定の異種融合タンパク質を指す名称は以下のように定義される。融合タンパク質のGLP−1部分における特定の置換は、置換された特定のアミノ酸の後にアミノ酸残基の番号を用いて表される。GLP−1(7−37)は、第7番のヒスチジンで始まり、第37番のグリシンンで終わる成熟融合タンパク質のGLP−1部分を表す。Lは、Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser (SEQ ID NO:8)の配列のリンカーを指す。Lの直前の番号は、GLP−1部分をFc部分から隔てるリンカーの数を指す。1.5Lと特定されたリンカーは、Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(SEQ ID NO:19)の配列を指す。IgG4はヒトIgG4のFc配列SEQ ID NO:7で特定された配列のアナログを指す。異種融合タンパク質のIgG4のFc部分における置換は括弧内に示される。野生型アミノ酸は一般的な略語の後にEU番号システムを用いてIgG4配列全体の位置関係で位置番号を付し、その後ろに、その位置で置換されたアミノ酸を一般的な略語で特定する。
【0024】
本発明の異種融合タンパク質は様々な異なる手法で作製が可能であるが、融合タンパク質のサイズ故に、組換え法が好ましい。本出願で公開、請求した本発明の目的のために、次の一般的な分子生物学用語と略語は以下のように定義される。
【0025】
本出願で「塩基対」または「bp」と用いられるのはDNAまたはRNAを示す。A、C、G、およびTの略語は、DNA分子において使われた場合に、デオキシリボヌクレオシドの5'リン酸型の(デオキシ)アデノシン、(デオキシ)シチジン、(デオキシ)グアノシン、(デオキシ)チミジンをそれぞれ該当する。U、C、G、およびAの略語は、RNA分子において使われた場合に、ボヌクレオシドの5'リン酸型のウリジン、シチジン、グアノシン、アデノシンをそれぞれ該当する。DNAの二重鎖において、塩基対はAとT、またはCとGの組み合わせを指す。DNA/RNAのヘテロ二重鎖の塩基対は、AとU、またはCとGの組み合わせを指す。(以下の「相補」の定義参照)
【0026】
DNAの「消化」および「制限」は、DNAの特定の配列でのみ働く制限酵素を用いたDNAの触媒的な開裂を指す(「配列特異的エンドヌクレアーゼ」)。本出願で用いられた様々な制限酵素は商業的に入手可能で、反応条件や補助因子、その他の必要条件は、当該分野での普通の技術のひとつとして知られる方法を用いた。特定の制限酵素の適切なバッファーと基質の量は、製造会社によって特定されているか、または文献で容易に見つかるものである。
【0027】
「ライゲーション」は二つの二重鎖核酸断片の間のホスホジエステル結合の形成の過程を指す。別途規定しない限りは、ライゲーションはT4リガーゼといったDNAリガーゼを用いて既知のバッファーおよび条件を用いて行ない得る。
【0028】
「プラスミド」は染色体外(通常)自己複製遺伝要素を指す。
【0029】
本出願で用いられる「組換えDNAクローニングベクター」とは、プラスミドやファージを含むがこれらに限定されない、1つかそれ以上の付加的なDNA断片を追加できるかまたは既に追加されているDNA分子を含むあらゆる自律複製因子を指す。
【0030】
本出願で用いられる「組換えDNA発現ベクター」とは、挿入されたDNAの転写をコントロールするプロモーターが組込まれた、あらゆる組換えDNAクローニングベクターを指す。
【0031】
「転写」は、DNAの核酸配列に含まれる情報が相補的なRNA配列に写し取られる過程を指す。
【0032】
「形質移入」は、コードされている配列の如何、発現の如何に関わらず、宿主細胞による発現ベクターの取込みを指す。例えば、カルシウムリン酸沈澱法、リポソーム移入法、電気穿孔法といった数多くの形質移入法が一般的な熟練技術者に知られている。移入の成功は、一般的に宿主細胞内でベクターの何らかの作用を指標に確認される。
【0033】
「形質転換」は、DNAが複製されるように、染色体外因子として、または染色体への組み込みのいずれかによる生物へのDNAの導入を指す。バクテリアや真核宿主の形質転換法が当該分野で周知であり、J.サムブルック(J. Sambrook)ら、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)(1989)にまとめられた、核注入法、プロトプラスト融合、または塩化カルシウムを用いたカルシウム処理によるものといった多くの手法がある。一般的に、酵母にDNAを導入する際の形質転換という用語は、形質移入に相対して用いられる。
【0034】
本出願で用いられる「翻訳」とは、メッセンジャーRNA(mRNA)の遺伝情報がポリペプチド鎖の合成を特定し、指令する過程を指す。
【0035】
「ベクター」は細胞の形質移入および/または形質転換に用いられる核酸化合物を指し、遺伝子操作において適切なタンパク質分子に対応する適切な制御配列と組み合わせたポリヌクレオチド配列を持ち、形質移入および/または形質転換された宿主細胞に特定の特性を与える。プラスミド、ウィルス、およびバクテリアファージは適したベクターである。人工ベクターは、異なる供与源から制限酵素やリガーゼを用いてDNA分子を切断、結合することによって構築される。本出願で用いられる「ベクター」という用語は、組換えDNAクローニングベクター、および組換えDNA発現ベクターを含む。
【0036】
本出願で用いられる「相補的」または「相補性」とは、核酸二重鎖において水素結合を介して会合する塩基対(プリンとピリミジン)を指す。次の塩基対が相補的である。グアニジンとシトシン、アデニンとチミジン、アデニンとウラシル。
【0037】
「プライマー」は、酵素的または合成的な伸長の開始基質として機能する核酸断片を指す。
【0038】
「プロモーター」は、DNAからRNAの転写を指示するDNA配列を指す。
【0039】
「プローブ」は、他の核酸化合物とハイブリダイズする核酸化合物または核酸断片を指す。
【0040】
「リーダー配列」は、興味のある望ましいポリペプチドを生成するために酵素的に、または化学的に除去され得るアミノ酸配列を指す。
【0041】
「分泌シグナル配列」は、一般的にN末端領域に存在し、プリペプチドと小胞体のような細胞膜区画との会合の開始や、細胞膜を通じたポリペプチドの分泌に機能する長いポリペプチドアミノ酸配列を指す。
【0042】
野生型IgG4タンパク質は様々な出所から得られる。例えば、興味のあるmRNAを検出可能なレベルで発現している細胞からcDNAライブラリーを調整し、そのcDNAライブラリーからそれらのタンパク質を得ることができる。ライブラリーは、興味のある特定の発表されたDNAまたはタンパク質配列を用いて設計されたプローブでスクリーニングすることができる。例えば、免疫グロブリンのL鎖またはH鎖の定常部は、アダムズ(Adams)ら(1980)生化学誌(Biochemistry)19:2711−2719、ゴーエット(Goughet)ら(1980)生化学誌(Biochemistry)19:2702−2710、ドルビー(Dolby)ら(1980)全米科学アカデミー会報(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)77:6027−6031、ライス(Rice)ら(1982)全米科学アカデミー会報(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)79:7862−7862、フォークナー(Falkner)ら(1982)ネイチャー誌(Nature)298:286−288、および モリソン(Morrison)ら(1984)年刊免疫学概説(Ann. Rev. Immunol.)2:239−256、といった文献の中で述べられている。
【0043】
選択されたプローブを用いたcDNAライブラリー、またはゲノミックライブラリーのスクリーニングは、サムブルック(Sambrook)ら、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、ニューヨーク、コールドスプリングハーバー研究所出版部(Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY)刊(1989)に述べられているような標準的な手法を用いて行われる。免疫グロブリンタンパク質をコードする遺伝子を単離する別の方法は、PCR法を用いるものである[サムブルック(Sambrook)ら、前述;ディーフェンバック(Dieffenbach)ら、PCRプライマー:実験マニュアル(PCR Primer: A Laboratory Manual)、ニューヨーク、コールドスプリングハーバー研究所出版部(Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY)刊(1995)]。PCRプライマーは、発表された配列に基づいて設計することができる。
【0044】
本発明の融合タンパク質の一部であるGLP−1アナログにより長い血漿半減期を付与することができるIgG4のFcアナログ断片を作製するための全長の野生型配列は、一般的に、ある特定のライブラリーからクローニングしてテンプレートとすることができる。IgG4のFcアナログ断片は、望まれる断片の末端に対応する配列にハイブリダイズするように設計したプライマーを用いて、PCR技術を利用して作成することができる。PCRプライマーは発現ベクターにクローニングできるように制限酵素サイトを設けるよう設計することもできる。
【0045】
本発明のGLP−1アナログをコードするDNAは、化学合成DNAだけでなく上述したクローニング手法を含む様々な手法で作成することができる。化学合成は短いコードペプチドの場合であれば魅力的であるかもしれない。GLP−1のアミノ酸配列も、プレプログルカゴン遺伝子の配列も既に公表されている[ロペス(Lopez)ら(1983)全米科学アカデミー会報(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)80:5485−5489、ベル(Bell)ら(1983)ネイチャー誌(Nature)302:716−718、ハインリックG.(Heinrich, G.)ら(1984)内分泌学誌(Endocrinol)115:2176−2181、ギグリオン(Ghiglione, M.)ら(1984)糖尿病学誌(Diabetologia)27:599−600]。従って、本出願で述べられているGLP−1アナログをコードするDNAを作成するために、プライマーはネイティブ配列に基づいて設計できる。
【0046】
融合タンパク質をコードする遺伝子は、本出願で述べられたIgGFcタンパク質をコードするDNAに、GLP−1アナログをコードするDNAをインフレームでライゲーションすることによって構築することができる。野生型GLP−1とIgG4のFc断片をコードするDNAには、ライゲーションの前、または融合タンパク質全体をコードするcDNAに対して、のいずれかで変異を導入することができる。様々な変異誘発技術が当該分野において周知である。GLP−1アナログをコードする遺伝子と、IgG4のFcアナログタンパク質をコードする遺伝子は、グリシンに富むリンカーペプチドをコードするDNAを介してインフレームで結合することもできる。本発明のうちの、ある好ましい異種融合タンパク質の一つである、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4 (S228P,F234A,L235A,des K) をコードする好ましいDNA配列は、以下のSEQ ID NO:20として提供される。
CACGGCGAGGGCACCTTCACCTCCGACGTGTCCTCCTATCTCGAGGAGCAGGCCGCCAAGGAATTCATCGCCTGGCTGGTGAAGGGCGGCGGCGGTGGTGGTGGCTCCGGAGGCGGCGGCTCTGGTGGCGGTGGCAGCGCTGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCACCCTGCCCAGCACCTGAGGCCGCCGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACTCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGCCTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAAAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAGGCTAACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGGGAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGT (SEQ ID NO:20)
【0047】
宿主細胞は、本出願で述べている異種融合タンパク質の生成のための発現ベクターまたはクローニングベクターで形質移入または形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、もしくは望ましい配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に変更を加えた通常の栄養培地で培養された。例えば培地、温度、pH、またそれに類する培養条件は、熟練技術者により過度の実験なしに選択される。一般的に、細胞培養の生産性を最大化する原理、プロとコール、および実地の技術は、ほ乳類細胞のバイオテクノロジー:実践的アプローチ(Mammalian Cell Biotechnology: A Practical Approach)M.バトラー(M. Butler)編(IRL 出版(IRL Press)、1991)およびサムブルック(Sambrook)ら(前述)に記載されている。また例えばカルシウムリン酸沈澱法や電気穿孔法といった形質移入手法は、熟練した当該分野の技術者に普通に知られている。ほ乳類細胞を用いた宿主系の形質転換についての一般的な側面は、米国特許第4,399,216号で述べられている。酵母への形質転換は一般的には、ヴァン・ゾーリンゲン(van Solingen) 等 細菌学誌(J Bac)130(2): 946−7(1977)、およびシャオ(Hsiao)等、全米科学アカデミー会報(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)76(8):3829−33(1979)の方法に従って行なわれた。一方、例えば核マイクロインジェクション手法や電気穿孔法、バクテリアプロトプラストの無処理細胞との融合、ポリブレンやポリオミチンといったポリカチオンなど、細胞へDNAを導入するためのその他の方法も用いられる。ほ乳類細胞の形質転換の様々な技術については、キーオン(Keown)ら、酵素学手法(Methods in Enzymology)185:527−37(1990)、およびメンサー(Mansour)ら、ネイチャー誌(Nature)336(6197):348−52(1988)を参照のこと。
【0048】
本出願のベクターで核酸(例えばDNA)をクローニングまたは発現するために適切な宿主細胞には、酵母または高等真核細胞がある。
【0049】
糸状菌または酵母のような真核微生物は、融合タンパク質ベクターのクローニングや発現宿主として適している。サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母)は、一般に用いられる下等真核宿主微生物である。その他には、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe、出芽酵母) [ビーチ(Beach)およびナース(Nurse)、ネイチャー誌(Nature)290:40−3(1981)、欧州特許第139,383号、1995年5月2日公表]、クルイヴェロマイセス属(Kluyveromyces)宿主[米国特許第4,943,529号、フリーア(Fleer)等、バイオテクノロジー誌(Bio/Technology)9(10):968−75(1991)] の例えば、K.ラクティス(K.lactis、キラー酵母)(MW98−8C, CBS683, CBS4574)[ドゥ・ルーヴェンコート(de Louvencourt)等、細菌学誌(J. Bacteriol.)154(2):737−42(1983) ]、K.フィアジリス(K. fiagilis)(ATCC 12,424)、K.ブルガリカス(K. bulgaricus)(ATCC 16,045)、K.ウィッケラミ(K wickeramii)(ATCC 24,178)、K.ワルチ(K waltii)(ATCC 56,500)、K.ドロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC 36.906)[ヴァン・デン・バーグ(Van den Berg)等、バイオテクノロジー誌(Bio/Technology)8(2):135−9(1990)]、K.テルモトイエランス(K. thermotoierans)、およびK.マルシアヌス(K. marxianus、キラー酵母)、ヤロウィア属(yarrowia、アルカン資化酵母)(欧州特許第402,226号)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris、メタノール資化酵母)(欧州特許第183,070号) [スリークリシュナ(Sreekrishna)等、基礎微生物学誌(J. Basic Microbiol.)28(4):265−78(1988)]、カンジダ属(Candida)、トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia)(欧州特許第244,234号)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa、アカパンカビ)[ケイス(Case)等、米国科学アカデミー会報(Proc. Natl. Acad Sci. USA)76(10):5259−63(1979)]、シュワニオマイセス属(Schwanniomyces)のシュワニオマイセス・オシデントゥリス(Schwanniomyces occidentulis)(欧州特許第394,538号、1990年10月31日公表)、および、例えば糸状菌類のニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラディウム属(Tolypocladium)(国際公開第91/00357号、1991年1月10日公表)、そしてアスペルジラス属(Aspergillus)宿主のA.ニドゥランス(A. nidulans)[バランス(Balance)等、生物化学生物物理学研究コミュニケーション誌(Biochem. Biophys. Res. Comm.)112(1):284−9(1983)、Tilburn等、遺伝子誌(Gene)26(2−3):205−21(1983)、イェルトン(Yelton)等、米国科学アカデミー会報(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)81(5):1470−4(1984)]、およびA.ニガー(A. niger)[ケリー(Kelly)およびハインズ(Hynes)、欧州分子生物学機構会誌(EMBO J.)4(2):475−9(1985)]がある。メタノール資化性酵母はハンゼヌラ属(Hansenula)、カンジダ属(Candida)、クロエケラ属(Kloeckera)、ピキア属(Pichia)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、トルロプシス属(Torulopsis)、および属ロドトルイア属(Rhodotoruia)から選択された。この種類の酵母の具体例としての特定種のリストは、 C.アントニー(C. Antony)、メタノール資化性微生物の生化学(The Biochemistry of Methylotrophs)269(1982)に見出され得る。
【0050】
本発明の融合タンパク質の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物由来の細胞である。例えば、植物細胞だけでなく、ドロソフィラ(Drosophila、ショウジョウバエ)S2細胞やスポドプテラ属(Spodoptera)の スポドプテラ・ハイ5(Spodoptera high5)細胞といった昆虫細胞を含む。有用なほ乳類細胞系統の例としては、NSO骨髄腫細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、SP2細胞、およびCOS細胞がある。より特異的な例としては、SV40(COS−7, ATCC CRL 1651)で形質転換したサル腎臓のCV1細胞系、ヒト胎児の腎臓細胞系[懸濁培養での増殖性でサブクローンした293または293 細胞、グレアム(Graham)等、総合ウィルス学誌(J. Gen Virol.)36(1):59−74(1977)]、チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR[CHO細胞、ウーラオプ(Urlaub)およびチェイシン(Chasin)、米国科学アカデミー会報(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)77(7):4216−20(1980)]、マウスセルトリー細胞[TM4,マザー(Mather)、生殖生物学誌(Biol. Reprod.)23(1):243−52 (1980)]、ヒト肺細胞(W138細胞、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2細胞、HB 8065)、およびマウス乳腺腫瘍細胞(MMT 060562、ATCC CCL51)がある。本発明のFc融合タンパク質を生成するのに好ましい細胞系はNSO骨髄腫細胞系で、欧州培養細胞コレクション(ECACC,カタログ番号85110503)から得ることができ、ガルフレG.(Galfre, G.)とミルステインC.(Milstein, C.)[(1981)酵素学手法(Methods in Enzymology)73(13):3−46、およびモノクローナル抗体の調整:戦略と過程(Preparation of Monoclonal Antibodies: Strategies and Procedures)ニューヨークアカデミックプレス(Academic Press, N.Y.)刊、ニューヨーク(N.Y.)]の文献で述べられている。
【0051】
本発明の融合タンパク質は、組み替えで直接、もしくは成熟融合タンパク質のN末端で特異的な切断部位を生じるようなシグナル配列またはその他の付加配列をもつタンパク質として生成することができる。一般的に、シグナル配列はベクターの構造要素であったり、ベクターに挿入された融合タンパク質をコードするDNAの一部分であったりする。酵母での分泌のためのシグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー配列、アルファーファクターリーダー配列(サッカロマイセス属および クルヴェロマイセス属のccファクターリーダー配列を含む。後者は米国特許第5,010,182号で述べられている]、もしくは酸性フォスファターゼリーダー配列、C.アルビカンスのグルコアミラーゼリーダー配列(欧州特許第362,179号)、または国際公開特許第90/13646号で述べられているシグナル配列がある。ほ乳類細胞での発現では、例えば同種または類縁の種の分泌ペプチドのシグナル配列やウィルスの分泌リーダー配列といった、ほ乳類のシグナル配列がタンパク質の分泌の指示に用いられる。
【0052】
発現ベクターとクローニングベクターは共に、一つ以上の選ばれた宿主細胞内でベクターの複製が可能となるような核酸配列を含んでいる。発現ベクターおよびクローニングベクターには、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含んでいるのが普通である。典型的な選択遺伝子は、(a)例えば、ネオマイシン、メトトレキセート、もしくはテトラサイクリンといった抗生物質や毒素への耐性を与える、(b)栄養欠乏症を補う、または(c)例えば、桿菌のD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子のような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードしている。
【0053】
ほ乳類細胞の適切な選択マーカーとして適切なものの例は、DHFRまたはチミジンキナーゼのように、融合タンパク質をコードする核酸の取込み能がある細胞の識別が出来るようにするものである。野生型DHFRが採用された場合に適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損しているCHO細胞系であり、その調整と増殖については以下の文献に述べられている[ウーラオプ(Urlaub)およびチェイシン(Chasin)、米国科学アカデミー会報(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)77(7): 4216−20(1980)]。酵母で用いる適切な選択遺伝子は、酵母のYRp7 プラスミドに存在するtrp1遺伝子である[スティンチコーム(Stinchcomb)等、ネイチャー誌(Nature)282 (5734):39−43(1979)、キングズマン(Kingsman)等、遺伝子誌(Gene)7(2):141−52(1979)、チャンパー(Tschumper)等、遺伝子誌(Gene)10(2):157−66(1980)]。trp1遺伝子は、例えばATCC No. 44076 または PEPC1[ジョーンズ(Jones)、遺伝学誌(Genetics)85:23−33(1977)]のようなトリプトファン中での増殖が出来ない酵母変異株への選択マーカーとなる。
【0054】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常融合タンパク質をコードしている核酸配列に、RNA合成指示の機能を果たすように操作可能なように連結されたプロモーターを含んでいる。様々な考えうる宿主細胞に認識されるプロモーターは、よく知られている。酵母宿主へ用いる適切な促進配列の例としては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモーター[ヒッツェマン(Hitzeman)等、生物化学誌(J. Biol. Chem.)255(24):12073−80(1980)]や、エノラーゼ、グリセルアルデヒド三リン酸デハイドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホグルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、グルコキナーゼといった、その他の解糖系の酵素[ヘス(Hess)等、応用酵素誌(J. Adv. Enzyme Reg.)7:149(1968)、ホーランド(Holland)、生化学誌(Biochemistry)17(23):4900−7(1978)]がある。その他の酵母のプロモーターで、増殖条件による転写コントロールの更なる利点がある誘導性のプロモーターには、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関わる分解酵素であるメタロチオネイン、グリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ、およびマルトースとガラクトース利用に関わる酵素のプロモーター領域がある。酵母での発現に用いる適切なベクターとプロモーターは欧州特許第73,657号で更に述べられている。融合タンパク質をコードしているmRNAのほ乳類宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えば宿主細胞系と用意されたプロモーターに互換性がある、ポリオーマウィルス、鶏痘ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシのパピローマウィルス、鳥の肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス、およびサルウィルス40(SV40)といったウィルスゲノムから得られるプロモーターや、アクチンプロモーターもしくは免疫グロブリンプロモータといった異種のほ乳類プロモーター、またヒートショックプロモーターによって制御されうる。
【0055】
融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの高等真核生物による転写は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することによって高めることができる。エンハンサーは通常約10から300 bpで、プロモーター上で作用して転写を増やす、DNAのシス作用性要素である。ほ乳類遺伝子(グロブリン、エラスターゼ、アルブミン、a−ケトタンパク質、およびインシュリン)から多くのエンハンサー配列が現在知られている。しかし、典型的には、真核細胞ウィルスからのエンハンサーの一つが使われる。実施例は、複製オリジン後期側のSV40エンハンサー(100−270番塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製オリジンの後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウィルスエンハンサーを含む。エンハンサーは、融合タンパク質コード配列の5’もしくは3’の位置でベクターにスプライスされてもよいが、プロモーターから5’側に位置するのが好ましい。
【0056】
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、もしくはその他の多細胞生物由来の核のある細胞)で用いられる発現ベクターは、転写の終了およびmRNAの安定化に必要な配列も含んでいる。そのような配列は、一般的に真核生物かウィルスのDNAもしくはcDNAの、5’、時には3’非翻訳領域から得られる。これらの領域は、融合タンパク質をコードするmRNAの非翻訳部分のポリアデニル化された断片として転写されるヌクレオチド部分を含む。
【0057】
様々な種類の融合タンパク質が、培養液や宿主細胞溶菌液から回収される。もし膜に結合していれば、適切な界面活性剤(例えば、トライトン−X100(Triton−X 100))を用いて膜から遊離させることができる。融合タンパク質の発現に利用された細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械破壊、または細胞溶解剤といった様々な物理的、または化学的手段によって破壊される。
【0058】
いったん本発明の異種融合タンパク質が適切な宿主細胞で発現されれば、アナログタンパク質は分離、精製される。以下の過程は、適当な精製過程の具体例である。カルボキシメチルセルロースによる分画、セファデックスG−25といったゲル濾過、ジエチルアミノエチル(DEAE)やモノ−Q(Mono−Q)といった陰イオン交換樹脂、CMやモノ−S(Mono−S)などの陽イオン交換、エピトープタグ型のポリペプチドを結合させるメタルキレートカラム、逆相HPLC、等電点電気泳動、シリカゲル、エタノール沈澱、および硫安沈澱。
【0059】
タンパク質精製の様々な方法が利用されてよい。また、そのような方法は当該技術分野において周知であり、例えばドイチャー(Deutscher)、酵素学手法(Methods in Enzymology)182:83−9(1990)、およびスコープス(Scopes)、タンパク質精製:原理と実践(Protein Purification: Principles and Practice)、ニューヨーク、スプリンガーフェアラーク(Springer−Verlag, NY)刊(1982)に記述されている。精製の段階は、用いた生成の過程や生成された融合タンパク質固有の性質によって選択される。例えば、Fc断片を含む融合タンパク質は、プロテインAかプロテインGのアフィニティーマトリックスを用いて効果的に精製できる。アフィニティーマトリックスからの融合タンパク質の溶出には、低pH、または高pHバッファーを用いることができる。融合タンパク質の不可逆的な変性を防ぐうえで、穏やかな溶出条件が助けになる。
【0060】
本発明の異種融合タンパク質は、一つかそれ以上の添加剤と共に調整されてよい。本発明の融合タンパク質は、医薬上許容できるバッファーと組み合わされ、許容できる安定性を与え、腸管外投与のような投与に許容できるpHに調節され得る。任意で、医薬上許容できる一つかそれ以上の抗菌剤が添加されてよい。メタクレゾールおよびフェノールは、医薬上許容できる望ましい微生物剤である。医薬上許容できる一つかそれ以上の塩が、イオン強度または張性を調節するために加えられてよい。製剤の等張性を調節するため、更に一つかそれ以上の添加剤が加えられてよい。グリシンは等張性を調節する添加剤の例である。医薬上許容できるという意味は、ヒトもしくは動物への投与に適しており、従って有害な要素や望ましくない夾雑物を含まず、有効化合物の活性を妨げないという意味である。
【0061】
本発明の異種融合タンパク質は、液剤、または適当な希釈で再構成できる凍結乾燥粉末として製剤することができる。凍結乾燥された剤形は、融合タンパク質が安定する方法の一つであり、溶液のpHを維持する緩衝能の有無に関わらず、再構成した製品の安定性は、指定された一般に用いられている有効期限を越える。本出願で考察された異種融合タンパク質を含む凍結乾燥する前の液剤が実質的に等張で、再構成後の溶液を等張にできれば好ましい。
【0062】
本発明の異種融合タンパク質の医薬上許容できる塩のタイプは、本発明の範囲に含まれている。酸添加塩を形成するのに一般的に利用される酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸といった無機酸や、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、ブロモフェニールスルホン酸、炭酸、安息香酸、酢酸などといった有機酸である。好ましい酸添加塩は、塩酸や臭化水素酸のような無機酸である。
【0063】
塩基添加塩には、アンモニウム、またはアルカリ、または水酸化アルカリ土類金属、炭酸塩、炭酸水素塩などのような無機塩基由来のものがある。このような塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどの本発明の塩を調整するのに有用である。
【0064】
本発明の異種融合タンパク質には生物活性がある。生物活性とは、融合タンパク質が生体内でGLP−1受容体に結合して活性化し、反応を誘導する能力を指す。GLP−1によって誘導される反応とは、インシュリンの分泌、グルカゴンの抑制、食欲の抑制、体重減少、満腹感の誘導、アポトーシスの抑制、膵臓のベータ細胞増殖の誘導、膵臓のベータ細胞分化の誘導を含むが、これらに限定されない。代表的な数のGLP−1融合タンパク質が生体内同様に生体外でも活性が試験された。実施例1および実施例2は、融合タンパク質のヒトGLP−1受容体との相互作用と活性化能に基づいた生体外活性を示す。双方一連の試験は、ヒトGLP−1受容体を過剰発現しているHEK293細胞が用いられた。GLP−1受容体は、環状AMP応答配列(CRE)により制御されるレポーター遺伝子の発現誘導によって、細胞がアデニリルシクラーゼの活性化することによって活性化される。実施例1(表1)はレポーター遺伝子がベータラクタマーゼの場合、実施例2(表2)はレポーター遺伝子がルシフェラーゼの場合のデータを示す。実施例3は、本発明の異種融合タンパク質の一つをラットに投与後のデータを示す。データは全体として、融合タンパク質がGLP−1受容体に結合し、活性化できるということ示し、生体外ではVal−GLP−1(7−37)OHより効果があるようにみえる。加えて、ラットでのデータは、融合タンパク質が生体内で活性であり、ネイティブGLP−1より半減期が長いことを示した。
【0065】
異種融合タンパク質は、通常の技術を有する医師に効果があると知られているあらゆる経路を通じて投与されてよい。末梢腸管外経路はそのうちの一つである。腸管外投与は一般的に滅菌注射器やその他のインフュージョンポンプといった医療機器によって、製剤を体内に注射することとして医学文献上理解されている。末梢腸管外経路は、静脈、筋肉内、皮下、腹腔内経路の投与が含まれる。
【0066】
本発明の異種融合タンパク質は、非腸管外経路である経口、直腸、鼻腔、または下部呼吸器経路による投与にも従うことができる。これらの非腸管外経路のうち、下部呼吸器経路および経口経路が好ましい。
【0067】
本発明の融合タンパク質は、広範囲の疾患や症状の処置に用いることが出来る。本発明の融合タンパク質は、「GLP−1受容体」と呼ばれる受容体に作用することによって、その生物学的効果を主に発揮する。そのために、GLP−1受容体の刺激、またはGLP−1化合物の投与が好ましく反応する疾患および/また症状を伴う患者は、本発明のGLP−1融合タンパク質によって処置できる。これらの対象は「GLP−1化合物による処置が必要である」、または「GLP−1受容体刺激が必要である」と表現される。これには、インシュリン比依存性糖尿病、インシュリン依存性糖尿病、脳卒中(国際公開特許第00/16797号参照)、心筋梗塞(国際公開特許第98/08531号参照)、肥満(国際公開特許第98/19698号参照)、外科手術後の異化作用の変化(米国特許第6,006,753号参照)、機能性消化不良および過敏性腸症候群(国際公開特許第99/64060号参照)の患者が含まれる。また、GLP−1化合物による予防処置が必要な、例えばインシュリン非依存性糖尿病の発症の恐れのある患者(国際公開特許第00/07617号参照)も含まれる。インシュリン非依存性糖尿病を発症する危険があるのは、耐糖能障害もしくは空腹時血糖異常の患者、患者の身長と体格に対して標準より約25%体重が多い患者、膵臓部分切除を行なった患者、一人以上の両親にインシュリン非依存性糖尿病がある患者、妊娠性糖尿病の病歴がある患者、および急性または慢性的な膵炎に罹ったことのある患者である。
【0068】
本出願で述べられたGLP−1−Fc融合タンパク質の効果的な量は、GLP−1受容体刺激が必要な患者に投与した場合に、容認できない副作用を伴わずに治療効果および/また予防効果が望ましい結果になる量である。「望ましい治療効果」とは、以下の一つ以上を満たすものである;1)疾患または症状に関連する症候の回復、2)疾患または症状に関連した症候開始の遅延、3)処置しなかった場合と比較して寿命が延びること、4)処置しなかった場合と比較したクオリティー・オブ・ライフの向上。例えば、糖尿病の処置に対するGLP−1−Fc融合タンパク質の「効果的な量」は、処置しなかった場合と比較して血糖制御の向上をもたらし、その結果網膜障害、神経障害または腎臓病といった糖尿病合併症の発症を遅延させる量である。糖尿病予防におけるGLP−1−Fc融合タンパク質の「効果的な量」は、処置しなかった場合と比較して、スルホニル尿素、チアゾリジン誘導体、インシュリンおよび/またビスグアニジンといった血糖降下薬による処置が必要な高血糖レベルの発症を遅らせる量である。
【0069】
患者の血糖の正常化に効果的な融合タンパク質の用量は、例えば患者の性別、体重、年齢、血糖制御不能の重症度、投与の経路、および生物活性、融合タンパク質の薬物動態学的特性、効力、剤形を含むが、これに限定されない、数々の因子に依存する。用量は、0.01から1 mg/体重kgの範囲でよいが、0.05から0.5 mg/体重kgの範囲である事が好ましい。
【0070】
本発明の融合タンパク質が、2週間に一度、もしくは1週間に一度いずれかで投与されるのが好ましい。処置される疾患によって、1週間に2、3回といったより頻繁に融合タンパク質の投与が必要になる場合もある。
【0071】
ここで、以下の実施例を非限定的な実施例としてのみ参照し、本発明を説明する。
【実施例1】
【0072】
実施例1−生体外におけるGLP−1受容体活性化アッセイ
CRE−BLAMシステムを用いたヒトGLP−1受容体を発現するHEK−293細胞を、ポリ−d−リジンコーティングされた底面が透明な黒い96穴プレートに、1ウェルあたり10%FBSを含むDMEM培地100 μl中、20,000から40,000細胞の密度で播種した。播種翌日、培地を除き、血漿を含まないDMEM培地80 μlを添加した。播種後3日目に、用量反応曲線を得るために、異なる濃度の様々なGLP−1−Fc異種融合タンパク質を含む0.5%BSA含有血漿不含DMEM培地20 μlをそれぞれのウェルに加えた。通常、3nmolから30nmolまでのGLP1−Fc融合タンパク質を含む14倍希釈物を、EC50値を決定する用量反応曲線を得るため用いた。融合タンパク質とのインキュベーション5時間後、β−ラクタマーゼ基質20 μl(CCF2/AM,パンヴェラ社(PanVera LLC))を加え、1時間インキュベートを続け、Cytofluor(蛍光プレートリーダー)上で蛍光を測定した。このアッセイについては、ズロカーニック(Zlokarnik)等、(1998)サイエンス誌(Science)278:84−88で更に述べられている。種々のGLP−1−Fc融合タンパク質をテストし、EC50値を表1に示した。この値は、全実験で、内部標準として行なったVal−GLP−1(7−37)OHの結果に対する相対値としてもとめた。
【表1】

【実施例2】
【0073】
実施例2−生体外におけるGLP−1受容体活性化アッセイ
CRE−ルシフェラーゼ系を用いたヒトGLP−1受容体を安定に発現するHEK−293細胞を、96穴プレートに1ウェルあたり低血清DMEM F12培地80 μl中、30,000細胞の密度で播種した。播種翌日、0.5%BSAに溶解したテストタンパク質を20μlの一定分量で混合し、細胞と共に5時間インキュベートした。通常、3pmolから3nmolを含む12倍希釈物を各テストタンパク質用に5倍濃度で調整し、細胞に添加し、EC50値を決定する用量反応曲線を作成した。インキュベーション後、ルシフェラーゼ試薬100 μlをそれぞれのプレートに直接加え、2分間穏やかに混合した。プレートをTRILUX社のルミノメーターに置き、ルシフェラーゼ発現の結果により生じる発光を測定した。種々のGLP−1−Fc融合タンパク質をテストし、EC50値を表2に示した。この値は、全実験で、内部標準として行なったVal−GLP−1(7−37)OHの結果に対する相対値としてもとめた。以下でテストした融合タンパク質は二量体であるため、値をモル濃度にして2倍の違いを考慮して補正した。
【表2】

【実施例3】
【0074】
実施例3−ラットにおける静脈内糖負荷試験
Fc融合タンパク質、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−L−IgG4 (S228P、F234A、L235A)を、ラットにおける静脈内糖負荷試験(IVGTT)にて評価した。3グループそれぞれには、少なくともラット3匹が含まれている。グループIには溶媒を投与し(表3)、グループII にはGly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−L−IgG4(S228P,F234A,L235A)、1.79 mg/kgを一回の皮下注射にて投与し(表4)、グループIIIにはGly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−L−IgG4 (S228P,F234A,L235A)、0.179 mg/kgを一回の皮下注射にて投与した(表5)。ラットを、第一日目の朝、皮下注射した。初回の注射から24時間後、ラットの体重1グラムあたり1 μLのグルコース(D50)をボーラス投与した。血液試料を、グルコースボーラス投与2、4、6、10、20および30分後に採取した。
【表3】


【表4】

【表5】

【実施例4】
【0075】
実施例4−カニクイザル(Cynomolgus Monkey)への一回の皮下注射後の薬物動態学的調査
雄のカニクイザルにFc融合タンパク質、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−L−IgG4(S228P,F234A,L235A)を0.1 mg/kg皮下注射(SC)した際の薬物動態(PK)を明らかにするために試験を行った。ラジオイムノアッセイ(RIA)抗体はGLPの中間部分に特異的である。酵素免疫測定法(ELISA)は、N末端特異的な捕捉抗体、およびFc特異的な検出抗体を用いる。酵素免疫測定法(ELISA)法およびラジオイムノアッセイ(RIA)法、双方から得られた血漿濃度の結果を、この薬物動態パラメーター値の決定に用いた。
【0076】
薬物動態(PK)パラメーター値の代表例を、表6に要約した。ラジオイムノアッセイ(RIA)による皮下注射単回用量の薬物動態(PK)は、平均Cmaxが446.7 ng/mLであって、対応する平均Tmaxが17.3時間である。平均消失半減期は約79.3時間(3.3日)である。酵素免疫測定法(ELISA)法による薬物動態(PK)は、平均Cmaxが292.2 ng/mLであって、対応する平均Tmaxは16.7時間である。平均除去半減期は約51.6時間(2.2日)である。
【表6】


a:観察された最大血漿濃度
b:最大血漿濃度が観察された時間
c:血漿濃度−時間曲線の0から無限大までの曲線下面積(AUC)
d:除去半減期
e:生物学的利用能に対する全身クリアランス
f:生物学的利用能に対する分布容積
SD:標準偏差
【実施例5】
【0077】
実施例5−反復皮下注射後の潜在的な抗体形成の評価
カニクイザル(cynomolgus monkey)の所定の血清試料を、Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−L−IgG4(S228P,F234A,L235A)に対する抗体形成を直接吸着法による酵素免疫測定法(ELISA)法を用いてテストした。マイクロタイタープレートを0.1 μg/mLの濃度のGly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−L−IgG4(S228P,F234A,L235A)でコーティングした。サル血清試料をブロッキング溶液で50倍、500倍、1000倍および5000倍に希釈して、ウェル当たり0.05 mLで約1時間インキュベートした。二次抗体、ヤギ抗ヒトFab'2ペルオキシダーゼ結合抗体(ヒトとの交差反応性は75%)を、ブロッキング溶液にて10,000倍に希釈され、ウェル当たり0.05mLで約1時間インキュベートした。テトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine,TMB)基質を用いた発色を、450nm−630nmの吸光度で測定した。2回の計測値を平均した。GLP−1抗体をポジティブコントロールに用い、検出に用いる二次抗体にはヤギ抗ウサギIgG(H+L)ペルオキシダーゼ結合抗体を用いた。抗体形成の可能性を評価するため、血清試料を、投薬前、2回目の投薬の24時間後、1回目、2回目の皮下注射投薬168時間後に採取した。G8E22−CEX−L−hIgG4に対する抗体力価の有無は、投薬前の血清とポジティブコントロールの比較によって解釈された。該当結果は、表7に示す。
【表7】

【実施例6】
【0078】
実施例6−絶食状態および段階的な静脈グルコース点滴中のカニクイザル(Cynomolgus Monkeys)への一回の皮下注射後の薬物動態学的調査
段階1(研究第1日)で、溶媒の皮下注射を行った。次いで、5、10、および25 mg/kg/minの段階的な静脈グルコース(20%グルコース)点滴を溶媒注射後直ちに行った。段階2(研究第2日)では、GLP−1融合タンパク質(0.1 mg/kg)の皮下注射を行った。段階3では、GLP−1融合タンパク質の注射後、およそ96時間の段階的な静脈グルコース点滴を行った。
【0079】
段階的な静脈グルコース点滴の処置を、前夜16時間の絶食後の鎮静剤を施したサルに行った。双方の静脈グルコース点滴について、ベースラインを定めるため、ベースライン試料を20分間10分ごとに採取した。ステップアップグルコース点滴を、開始20分目に5 mg/kg/minの速度で始め、その後10 mg/kg/min、および25 mg/kg/minで点滴した。それぞれの点滴速度を、20分間行った。血液試料を、グルコース、インシュリン、グルカゴンの測定のために10分間隔で採取した。段階1および3の点滴開始前20分、10分、0分、およびグルコース点滴後10分、20分、30分、40分、50分、60分に、血液を約1.0 mL採取した。
【0080】
このデータを表8に示す。
【表8】


グルカゴンレベルは、溶媒およびGLP−1融合タンパク質投与サル間において統計的相違は無かった。
【実施例7】
【0081】
実施例7−絶食状態および段階的な静脈グルコース点滴中のラットへの3つの異なる投薬量による一回の皮下注射後の薬物動態学的調査
カニューレを常置したラットは、溶媒コントロール(生理食塩水)もしくは3つの処置グループの一つ(GLP−1融合タンパク質、0.0179 mg/kg、0.179 mg/kg、または 1.79 mg/kg)のいずれかに割り当てられた。GLP−1融合タンパク質および溶媒を、皮下注射にて投与した。処置24時間後、前夜絶食させた(16時間)ラットを、段階的静脈グルコース点滴試験の対象とした。段階的グルコース点滴を、ベースラインの生理食塩水期間(20分)、その後それぞれ5および15 mg/kg/minの2回の30分間のグルコース点滴段階で構成した。血漿試料を、グルコース点滴前(ベースライン)20分、10分、0分、およびグルコース点滴後10分、20分、30分、40分、50分、60分に採取した。
【0082】
このデータを表9に示す。
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
GLP−1アナログを含む異種融合タンパク質であって、前記GLP−1アナログは、
a) (SEQ ID NO:1)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly−Gly
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
b) (SEQ ID NO:2)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Gly
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
c) (SEQ ID NO:3)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly−Pro
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
d) (SEQ ID NO:4)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
e) (SEQ ID NO:5)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly
(配列中、Xaaは GlyとValから選択される)、
f) (SEQ ID NO:6)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)
から成るグループから選択される配列を含み、
Ala−Glu−Ser−Lys−Tyr−Gly−Pro−Pro−
Cys−Pro−Pro−Cys−Pro−Ala−Pro−Xaa16
Xaa17−Xaa18−Gly−Gly−Pro−Ser−Val−Phe−
Leu−Phe−Pro−Pro−Lys−Pro−Lys−Asp−
Thr−Leu−Met−Ile−Ser−Arg−Thr−Pro−
Glu−Val−Thr−Cys−Val−Val−Val−Asp−
Val−Ser−Gln−Glu−Asp−Pro−Glu−Val−
Gln−Phe−Asn−Trp−Tyr−Val−Asp−Gly−
Val−Glu−Val−His−Asn−Ala−Lys−Thr−
Lys−Pro−Arg−Glu−Glu−Gln−Phe−Xaa80
Ser−Thr−Tyr−Arg−Val−Val−Ser−Val−
Leu−Thr−Val−Leu−His−Gln−Asp−Trp−
Leu−Asn−Gly−Lys−Glu−Tyr−Lys−Cys−
Lys−Val−Ser−Asn−Lys−Gly−Leu−Pro−
Ser−Ser−Ile−Glu−Lys−Thr−Ile−Ser−
Lys−Ala−Lys−Gly−Gln−Pro−Arg−Glu−
Pro−Gln−Val−Tyr−Thr−Leu−Pro−Pro−
Ser−Gln−Glu−Glu−Met−Thr−Lys−Asn−
Gln−Val−Ser−Leu−Thr−Cys−Leu−Val−
Lys−Gly−Phe−Tyr−Pro−Ser−Asp−Ile−
Ala−Val−Glu−Trp−Glu−Ser−Asn−Gly−
Gln−Pro−Glu−Asn−Asn−Tyr−Lys−Thr−
Thr−Pro−Pro−Val−Leu−Asp−Ser−Asp−
Gly−Ser−Phe−Phe−Leu−Tyr−Ser−Arg−
Leu−Thr−Val−Asp−Lys−Ser−Arg−Trp−
Gln−Glu−Gly−Asn−Val−Phe−Ser−Cys−
Ser−Val−Met−His−Glu−Ala−Leu−His−
Asn−His−Tyr−Thr−Gln−Lys−Ser−Leu−
Ser−Leu−Ser−Leu−Gly−Xaa230
(SEQ ID NO:7)
(配列中、16番目のXaaは、Pro、またはGluであり、
17番目のXaaは、Phe、Val、またはAlaであり、
18番目のXaaは、Leu、Glu、またはAlaであり、
80番目のXaaは、Asn、または Alaであり、
230番目のXaaは、Lys、または欠損である)、
以上のSEQ ID NO:7の配列を含む免疫グロブリンのFc部分と融合される、異種融合タンパク質。
【請求項2】
GLP−1アナログタンパク質のC−末端のグリシン残基が、
a)Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser (SEQ ID NO:8)、
b)Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser (SEQ ID NO:19)、および
c)Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser (SEQ ID NO:21)、
より成るグループから選択された配列を含むペプチドリンカーを介して、前記Fc部分のN−末端のアラニン残基と融合される、請求項1に記載の異種融合タンパク質。
【請求項3】
リンカーにSEQ ID NO:8の配列を含む、請求項2に記載の異種融合タンパク質。
【請求項4】
GLP−1アナログの配列中、8番目のXaaがGlyである、請求項1から3のいずれかに記載の異種融合タンパク質。
【請求項5】
GLP−1アナログの配列中、8番目のXaaがValである、請求項1から3のいずれかに記載の異種融合タンパク質。
【請求項6】
GLP−1アナログがSEQ ID NO:1の配列を含む、請求項1から3のいずれかに記載の異種融合タンパク質。
【請求項7】
a) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4 (S228P)、b) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4(S228P、F234A、L235A)、c) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4(S228P、N297A)、d) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4(S228P、F234A、L235A、N297A)、e) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P)、f) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P、F234A、L235A)、g) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P、N297A)、h) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P、F234A、L235A、N297A)、i) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P)、j) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P、F234A、L235A)、k) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P、N297A)、l) Gly−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P、F234A、L235A、N297A)、およびこれらのdes−K型から成るグループから選択される異種融合タンパク質。
【請求項8】
a) Val−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4(S228P)、b) Val−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4(S228P、F234A、L235A)、c) Val−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4(S228P、N297A)、 d) Val−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1L−IgG4(S228P、F234A、L235A、N297A)、e) Val −Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P)、f) Val −Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P、F234A、L235A)、g) Val−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P、N297A)、h) Val−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−1.5L−IgG4(S228P、F234A、L235A、N297A)、i) Val−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P)、j) Val−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P、F234A、L235A)、k) Val−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P、N297A)、l) Val−Glu22−Gly36−GLP−1(7−37)−2L−IgG4(S228P、F234A、L235A、N297A)、およびこれらのdes−K型から成るグループから選択される異種融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の異種融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項9に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項11】
請求項10に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項1から8のいずれかに記載の少なくとも一つの異種融合タンパク質を発現している宿主細胞。
【請求項13】
宿主細胞がCHO細胞である、請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項14】
宿主細胞がNSO細胞である、請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項15】
異種融合タンパク質が検出可能な量で発現されている状況下において、請求項9に記載のポリヌクレオチドを転写、および翻訳するステップを含む、異種融合タンパク質の産生方法。
【請求項16】
請求項1から8のいずれかに記載の異種融合タンパク質を治療上有効な量投与することを含む、インスリン非依存性糖尿病患者の処置方法。
【請求項17】
請求項1から8のいずれかに記載の異種融合タンパク質を治療上有効な量投与することを含む、体重過多の患者の体重減少を誘発する方法。
【請求項18】
異種融合タンパク質が、体重に対して約0.05mg/kgから0.5mg/kgの用量で投与される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
異種融合タンパク質が、一週間に一度投与される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から8のいずれかに記載の異種融合タンパク質の、薬剤としての使用。
【請求項21】
請求項1から8のいずれかに記載の異種融合タンパク質の、インスリン非依存性糖尿病処置を目的とした薬剤製造のための使用。
【請求項22】
請求項1から8のいずれかに記載の異種融合タンパク質の、体重過多の患者の肥満処置、または体重減少の誘導を目的とした薬剤製造のための使用。
【請求項23】
請求項1から8のいずれかに記載の異種融合タンパク質の、治療によるヒト、または動物の身体処置のための使用。
【請求項24】
GLP−1アナログを含む異種融合タンパク質であって、前記GLP−1アナログは、
a) (SEQ ID NO:1)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly−Gly
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
b) (SEQ ID NO:2)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Gly
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
c) (SEQ ID NO:3)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly−Pro
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
d) (SEQ ID NO:4)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
e) (SEQ ID NO:5)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Gly
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)、
f) (SEQ ID NO:6)
His−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−
Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−
Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−
Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly
(配列中、XaaはGlyとValから選択される)
から成るグループから選択される配列を含み、

Ala−Glu−Ser−Lys−Tyr−Gly−Pro−Pro−
Cys−Pro−Pro−Cys−Pro−Ala−Pro−Xaa16
Xaa17−Xaa18−Gly−Gly−Pro−Ser−Val−Phe−
Leu−Phe−Pro−Pro−Lys−Pro−Lys−Asp−
Thr−Leu−Met−Ile−Ser−Arg−Thr−Pro−
Glu−Val−Thr−Cys−Val−Val−Val−Asp−
Val−Ser−Gln−Glu−Asp−Pro−Glu−Val−
Gln−Phe−Asn−Trp−Tyr−Val−Asp−Gly−
Val−Glu−Val−His−Asn−Ala−Lys−Thr−
Lys−Pro−Arg−Glu−Glu−Gln−Phe−Xaa80
Ser−Thr−Tyr−Arg−Val−Val−Ser−Val−
Leu−Thr−Val−Leu−His−Gln−Asp−Trp−
Leu−Asn−Gly−Lys−Glu−Tyr−Lys−Cys−
Lys−Val−Ser−Asn−Lys−Gly−Leu−Pro−
Ser−Ser−Ile−Glu−Lys−Thr−Ile−Ser−
Lys−Ala−Lys−Gly−Gln−Pro−Arg−Glu−
Pro−Gln−Val−Tyr−Thr−Leu−Pro−Pro−
Ser−Gln−Glu−Glu−Met−Thr−Lys−Asn−
Gln−Val−Ser−Leu−Thr−Cys−Leu−Val−
Lys−Gly−Phe−Tyr−Pro−Ser−Asp−Ile−
Ala−Val−Glu−Trp−Glu−Ser−Asn−Gly−
Gln−Pro−Glu−Asn−Asn−Tyr−Lys−Thr−
Thr−Pro−Pro−Val−Leu−Asp−Ser−Asp−
Gly−Ser−Phe−Phe−Leu−Tyr−Ser−Arg−
Leu−Thr−Val−Asp−Lys−Ser−Arg−Trp−
Gln−Glu−Gly−Asn−Val−Phe−Ser−Cys−
Ser−Val−Met−His−Glu−Ala−Leu−His−
Asn−His−Tyr−Thr−Gln−Lys−Ser−Leu−
Ser−Leu−Ser−Leu−Gly−Xaa230
(SEQ ID NO:7)
(配列中、16番目のXaaは、Pro、またはGluであり、
17番目のXaaは、Phe、Val、またはAlaであり、
18番目のXaaは、Leu、Glu、またはAlaであり、
80番目のXaaは、Asn、または Alaであり、
230番目のXaaは、Lys、または欠損である)、
以上のSEQ ID NO:7の配列を含む免疫グロブリンのFc部分と融合される、異種融合タンパク質。

【公表番号】特表2007−536902(P2007−536902A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533197(P2006−533197)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/015595
【国際公開番号】WO2005/000892
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】