説明

GLP−1ペプチドアゴニスト

本発明は、GLP-1レセプターを活性化することができ、GLP-1(7-37)に対しての酵素的安定性が高められた新規なグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)ペプチドアゴニストに関するものである。さらに本発明はかかるペプチドを生産しまた使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、GLP-1レセプターを活性化させることができ、ヒトGLP-1(7-37)に対して酵素的安定性が高められた新規なグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)ペプチドアゴニストに関する。さらに本発明はこのようなペプチドを生産し使用する方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
糖尿病(真性糖尿病)は、グルコースを利用する能力が部分的に又は完全に失われる代謝性疾患である。全人口の約5%が糖尿病に苦しみ、この病気は蔓延している。1920年代のインスリンの導入以来、絶え間ない努力が糖尿病の治療を改良するために行われてきた。
糖尿病の治療において非常に重要になると期待されている一つのペプチドはグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)である。ヒトGLP-1は、とりわけ回腸末端部、膵臓及び脳のL細胞で合成されるプレプログルカゴンに由来する37アミノ酸残基ペプチドである。GLP-1は、グルコース代謝及び消化器分泌及び代謝における調節機能を有する重要な消化管ホルモンである。GLP-1は、グルコース依存的な形でインスリン分泌を刺激し、インスリン生合成を刺激し、ベータ細胞レスキューを促進し、グルカゴン分泌、胃内容排出及び食物摂取を低減させる。ヒトGLP-1は、双方ともインスリン分泌性ペプチドであるGLP-1(7-37)及びGLP-1(7-36)-アミドに加水分解される。このペプチドの断片及びアナログの記載には単純なシステムが使用される。しかして、例えば[Gly]GLP-1(7−37)は、8位の自然に生じたアミノ酸残基(Ala)をGlyで置換することにより、GLP-1(7-37)から形式的に誘導されたGLP-1(7-37)のアナログを表す。同様に、(Ne34-テトラデカノイル)[Lys34]GLP-1(7-37)は、34位のLys残基のε-アミノ酸がテトラデカノイル化されているGLP-1(7-37)を表す。
【0003】
最近の10年間で、多くのペプチドがアメリカドクトカゲ(Gila monster lizards)(Heloderma suspectum及びHeloderma horridum)の毒から単離されている。エキセンディン-4は、Heloderma suspectumの毒から単離された39アミノ酸残基のペプチドであり、このペプチドは重複領域においてGLP-1(7-37)と52%の相同性を共有する。エキセンディン-4は、イヌに注射した場合、インスリン放出を刺激し、血糖値を確実に低下させることが実証されている強力なGLP-1レセプターアゴニストである。エキセンディン-4(1-39)、ある種のその断片、そのアナログ、及びその誘導体の群は、強力なインスリン分泌性薬剤である。エキセンディン-4(1-39)、そのインスリン分泌性断片、そのインスリン分泌性アナログ、及びそのインスリン分泌性誘導体の群が最も重要である。
【0004】
(発明の概要)
本発明は、GLP-1レセプターのアゴニストであり、天然GLP-1(7-37)に対して化学的安定性が高められたペプチドに関する。ある実施態様では、本発明のペプチドは、また、生理学的pHで正味の正電荷を有していてもよい。
本発明のペプチドは、式I:
Xaa−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Ser−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37−Xaa38−Xaa39−Xaa40−Xaa41−Xaa42−Xaa43−Xaa44−Xaa45−Xaa46 式(I)(配列番号1)
[上式中、
Xaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ(desamino)-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン又は4-ピリジルアラニンであり;
Xaaは、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;
Xaa16は、Val又はLeuであり;
Xaa18は、Ser、Lys又はArgであり;
Xaa19は、Tyr又はGlnであり;
Xaa20は、Leu又はMetであり;
Xaa22は、Gly、Glu又はAibであり;
Xaa23は、Gln、Glu、Lys又はArgであり;
Xaa25は、Ala又はValであり;
Xaa26は、Lys、Glu又はArgであり;
Xaa27は、Glu又はLeuであり;
Xaa30は、Ala、Glu又はArgであり;
Xaa33は、Val又はLysであり;
Xaa34は、Lys、Glu、Asn又はArgであり;
Xaa35は、Gly又はAibであり;
Xaa36は、Arg、Gly又はLysであり;
Xaa37は、Gly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa38は、Lys、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa39は、Ser、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa40は、Gly、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa41は、Ala、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa42は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa43は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa44は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa45は、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa46はアミドであるか、又は存在せず;
ここで、Xaa38、Xaa39、Xaa40、Xaa41、Xaa42、Xaa43、Xaa44、Xaa45又はXaa46が存在しないならば、下流の各アミノ酸残基は存在せず、アミノ酸7-37における塩基性残基(Lys残基+Arg残基)の総数は、アミノ酸7-37における酸性残基(Asp残基+Glu残基)の総数より多い]
のアミノ酸配列を含みうる。
【0005】
また本発明のペプチドは、次の式(IV):
Xaa−Xaa−Xaa−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Xaa17−Xaa18−Gln−Leu−Xaa21−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Asn−Xaa35−Xaa36−Xaa37−Xaa38−Xaa39−Xaa40−Xaa41−Xaa42−Xaa43−Xaa44−Xaa45−Xaa46 (式(IV)(配列番号4))
[上式中、
Xaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン又は4-ピリジルアラニンであり;
Xaaは、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;
Xaaは、Glu又はAspであり;
Xaa16は、Val又はLeuであり;
Xaa17は、Ser又はThrであり;
Xaa18は、Ser、Lys又はArgであり;
Xaa21は、Glu又はAspであり;
Xaa22は、Gly、Glu又はAibであり;
Xaa23は、Gln、Lys又はArgであり;
Xaa25は、Ala又はValであり;
Xaa26は、Lys又はArgであり;
Xaa27は、Glu又はLeuであり;
Xaa30は、Ala、Glu又はArgであり;
Xaa33は、Val又はLysであり;
Xaa34は、Lys、Glu、Asn又はArgであり;
Xaa35は、Gly又はAibであり;
Xaa36は、Arg、Gly又はLysであり;
Xaa37は、Gly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa38は、Lys、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa39は、Ser、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa40は、Gly、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa41は、Ala、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa42は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa43は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa44は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa45は、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa46はアミドであるか、又は存在せず;
ここで、Xaa38、Xaa39、Xaa40、Xaa41、Xaa42、Xaa43、Xaa44、Xaa45又はXaa46が存在しないならば、下流の各アミノ酸残基は存在しない]
のアミノ酸配列を含みうる。
【0006】
さらに本発明のペプチドは、次の式(V):
Xaa−Xaa−Glu−Gly−Thr−Leu−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Xaa17−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Xaa21−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37−Xaa38−Xaa39−Xaa40−Xaa41−Xaa42−Xaa43−Xaa44−Xaa45−Xaa46 (式(V)(配列番号5))
[上式中、
Xaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン又は4-ピリジルアラニンであり;
Xaaは、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;
Xaa16は、Val又はLeuであり;
Xaa17は、Ser又はThrであり;
Xaa18は、Ser、Lys又はArgであり;
Xaa19は、Tyr又はGlnであり;
Xaa20は、Glu又はAspであり;
Xaa21は、Leu又はMetであり;
Xaa22は、Gly、Glu又はAib又はLysであり;
Xaa23は、Gln、Glu、Lys又はArgであり;
Xaa25は、Ala又はValであり;
Xaa26は、Lys、Glu又はArgであり;
Xaa27は、Glu又はLeuであり;
Xaa30は、Ala、Glu、Asp又はArgであり;
Xaa33は、Val、Ile又はLysであり;
Xaa34は、Lys、Asn又はArgであり;
Xaa35は、Gly又はAibであり;
Xaa36は、Arg、Gly又はLysであり;
Xaa37は、Gly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa38は、Lys、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa39は、Ser、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa40は、Gly、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa41は、Ala、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa42は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa43は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa44は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa45は、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa46はアミドであるか、又は存在せず;
ここで、Xaa38、Xaa39、Xaa40、Xaa41、Xaa42、Xaa43、Xaa44、Xaa45又はXaa46が存在しないならば、下流の各アミノ酸残基は存在しない]
のアミノ酸配列をさらに含みうる。
【0007】
また本発明は、本発明のペプチドを含有する製剤、及び2型糖尿病等の種々の病気及び/又は病状の治療におけるこれらの製剤の使用に関する。
【0008】
(定義)
本明細書において、次の用語は表示された意味を有する:
ここで使用される「ポリペプチド」及び「ペプチド」なる用語は、ペプチド結合により結合した構成アミノ酸からなる化合物を意味する。構成アミノ酸は遺伝暗号によりコードされるアミノ酸の群からのものであり得、及び/又は遺伝暗号によりコードされない天然アミノ酸、並びに合成アミノ酸であり得る。遺伝暗号によりコードされない天然アミノ酸は、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、オルニチン、ホスホセリン、D-アラニン及びD-グルタミンである。合成アミノ酸は、化学合成により製造されるアミノ酸、すなわち遺伝暗号によりコードされるアミノ酸のD-異性体、例えばD-アラニン及びD-ロイシン、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Abu(α-アミノ酪酸)、Tle(tert-ブチルグリシン)、β-アラニン、3-アミノメチル安息香酸、アントラニル酸を含む。
【0009】
ここで使用される「アゴニスト」なる用語は、ヒトGLP-1レセプターのアゴニストである化合物、すなわちヒトGLP-1レセプターを含む適切な培地中においてcAMPの形成を刺激する化合物を意味する。本発明のペプチドのアゴニストとしての作用強度は、以下に記載するように、用量反応曲線からEC50値を算出することにより決定される。
クローン化されたヒトGLP-1レセプターを発現するベビーハムスター腎臓(BHK)細胞(BHK-467-12A)を、100IU/mLのペニシリン、100μL/mLのストレプトマイシン、10%ウシ胎仔血清及び1mg/mLのジェネティシンG-418(Life Technologies)が添加されたDMEM培地で増殖させる。細胞膜は、バッファー(5mg/Lのロイペプチン(Sigma, St. Louis, MO, USA)、5mg/Lのペプスタチン(Sigma)、100mg/Lのバシトラシン(Sigma)、及び16mg/Lのアプロチニン(Calbiochem-Novabiochem, La Jolla, CAを含む、10mMのTris-HCl、30mMのNaCl及び1mMのジチオスレイトール、pH7.4)中でホモジナイズすることにより調製する。ホモジネートを、41w/v%スクロースの上に加えて遠心分離にかける。2層間の白色バンドをバッファーに希釈し、遠心分離する。細胞膜を使用するまで−80℃で保存する。
【0010】
機能的レセプターアッセイは、ペプチドによる刺激に対する反応としてcAMPを測定することにより実施される。全容量140μLの96-ウェルマイクロタイタープレートにおいて、次の最終濃度:50mMのTris-HCl、1mMのEGTA、1.5mMのMgSO、1.7mMのATP、20mMのGTP、2mMの3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、0.01%のトゥイーン-20、pH7.4と共に、インキュベートを実施する。アゴニスト活性を試験する化合物をバッファーに溶解し、希釈する。各実験のために、GTPを新たに調製する:2.5μgの膜を各ウェルに添加し、暗所で振盪しながら、混合物を室温で90分インキュベートする。25μLの0.5M HClを添加することにより、反応を停止させる。形成したcAMPをシンチレーション近接アッセイ(RPA 542, Amersham, UK)により測定する。個々の化合物について用量反応曲線をプロットし、GraphPad Prismソウトウェアを使用し、EC50値を算出する。
【0011】
ヒトにおける本発明のペプチドの血漿消失半減期を決定する方法は、以下の通りである:ペプチドを等張バッファー、pH7.4、PBS、又は任意の他の適切なバッファーに溶解させる。所定量を、好ましくは腹部又は大腿上部等、末梢に注入する。活性ペプチドの決定のための血液サンプルを頻繁な間隔でかつ十分な期間に対して取り出し、最終消失部分をカバーする(例えば、投与前、投与後1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、24(2日)、36(2日)、48(3日)、60(3日)、72(4日)及び84(4日))。活性ペプチド濃度の測定は、Wilkenら, Diabetologia 43(51):A143, 2000に記載されているようにして実施される。誘導した薬物動態パラメータは、市販のソフトウェアWinNonlin Version 2.1 (Pharsight, Cary, NC, USA)を用いる非コンパートメント法の使用により、それぞれ個々の被験者に対する濃度-時間データから算出される。最終消失速度定数は、濃度-時間曲線の最終対数線形部分に対する対数-線形回帰により推定され、消失半減期を算出するために使用される。
【0012】
ポリペプチドに関してここで使用される「酵素的安定性」なる用語は、血漿ペプチダーゼのジペプチジルアミノペプチダーゼ-4(DPP-IV)に対するGLP-1(7-37)の高められた耐性を示すポリペプチドを意味する。
【0013】
ジペプチジルアミノペプチダーゼIV(DPP-IV)による分解に対するペプチドの耐性は、次の分解アッセイにより測定される:
DPP-IVに対するペプチド安定性をブタDPP-IVを使用して試験した。ペプチドを20mMのTris-HCl(pH8.0)バッファーに溶解させ、1m-単位のブタDPP-IVを4.5nmolペプチド当たり添加した。ペプチドを37℃でインキュベートし、半量の10%トリフルオロ酢酸でサンプルをクエンチした。生成物を分離させ、HPLC分析を使用して定量した。
【0014】
(発明の詳細な記載)
本発明はGLP-1ペプチドに関し、ここで該ペプチドは、cAMP生成アッセイで証明されるGLP-1レセプターのアゴニストであり、GLP-1(7-37)に対して高められた酵素的安定性を示す。
【0015】
一実施態様では、本発明のペプチドは式I:
Xaa−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Ser−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Glu−Xaa22-−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37−Xaa38−Xaa39−Xaa40−Xaa41−Xaa42−Xaa43−Xaa44−Xaa45−Xaa46 式(I)(配列番号1)
[上式中、
Xaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン又は4-ピリジルアラニンであり;
Xaaは、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;
Xaa16は、Val又はLeuであり;
Xaa18は、Ser、Lys又はArgであり;
Xaa19は、Tyr又はGlnであり;
Xaa20は、Leu又はMetであり;
Xaa22は、Gly、Glu又はAibであり;
Xaa23は、Gln、Glu、Lys又はArgであり;
Xaa25は、Ala又はValであり;
Xaa26は、Lys、Glu又はArgであり;
Xaa27は、Glu又はLeuであり;
Xaa30は、Ala、Glu又はArgであり;
Xaa33は、Val又はLysであり;
Xaa34は、Lys、Glu、Asn又はArgであり;
Xaa35は、Gly又はAibであり;
Xaa36は、Arg、Gly又はLysであり;
Xaa37は、Gly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa38は、Lys、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa39は、Ser、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa40は、Gly、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa41は、Ala、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa42は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa43は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa44は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa45は、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa46はアミドであるか、又は存在せず;
ここで、Xaa38、Xaa39、Xaa40、Xaa41、Xaa42、Xaa43、Xaa44、Xaa45又はXaa46が存在しないならば、下流の各アミノ酸残基は存在しない]
のアミノ酸配列を含んでなる。
【0016】
本発明のさらなる実施態様では、本発明のペプチドは次の式(II):
Xaa−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val-Ser−Xaa18−Tyr−Leu−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Ala−Xaa26−Glu−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Val−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37−Xaa38 式(II)(配列番号2)
[上式中、
Xaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン又は4-ピリジルアラニンであり;
Xaaは、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;
Xaa18は、Ser、Lys又はArgであり;
Xaa22は、Gly、Glu又はAibであり;
Xaa23は、Gln、Glu、Lys又はArgであり;
Xaa26は、Lys、Glu又はArgであり;
Xaa30は、Ala、Glu又はArgであり;
Xaa34は、Lys、Glu又はArgであり;
Xaa35は、Gly又はAibであり;
Xaa36は、Arg又はLysであり;
Xaa37は、Gly、Ala、Glu又はLysであり;
Xaa38は、Lys、アミドであるか、又は存在しない]
のアミノ酸配列を含んでなる。
【0017】
本発明のさらなる実施態様では、本発明のペプチドは次の式(III):
His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Xaa18−Tyr−Xaa20−Glu−Gly−Xaa23−Ala−Val−Xaa26−Leu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Gly−Xaa36−Gly−Xaa38 式(III)(配列番号3)
[上式中、
Xaa18は、Lys又はArgであり;
Xaa20は、Leu又はMetであり;
Xaa23は、Gln又はAsnであり;
Xaa26は、Lys又はArgであり;
Xaa33は、Lys又はArgであり;
Xaa34は、Lys又はArgであり;
Xaa36は、Arg又はLysであり;
Xaa38は、Lys、アミドであるか、又は存在しない]
のアミノ酸配列を含んでなる。
【0018】
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは次の式(IV):
Xaa−Xaa−Xaa−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Xaa17−Xaa18−Gln−Leu−Xaa21−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Asn−Xaa35−Xaa36−Xaa37−Xaa38−Xaa39−Xaa40−Xaa41−Xaa42−Xaa43−Xaa44−Xaa45−Xaa46 式(IV)(配列番号4)
[上式中、
Xaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン又は4-ピリジルアラニンであり;
Xaaは、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;
Xaaは、Glu又はAspであり;
Xaa16は、Val又はLeuであり;
Xaa18は、Ser、Lys又はArgであり;
Xaa21は、Glu又はAspであり;
Xaa22は、Gly、Glu又はAibであり;
Xaa23は、Gln、Lys又はArgであり;
Xaa25は、Ala又はValであり;
Xaa26は、Lys又はArgであり;
Xaa27は、Glu又はLeuであり;
Xaa30は、Ala、Glu又はArgであり;
Xaa33は、Val又はLysであり;
Xaa34は、Lys、Glu、Asn又はArgであり;
Xaa35は、Gly又はAibであり;
Xaa36は、Arg、Gly又はLysであり;
Xaa37は、Gly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa38は、Lys、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa39は、Ser、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa40は、Gly、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa41は、Ala、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa42は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa43は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa44は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa45は、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa46はアミドであるか、又は存在せず;
ここで、Xaa38、Xaa39、Xaa40、Xaa41、Xaa42、Xaa43、Xaa44、Xaa45又はXaa46が存在しないならば、下流の各アミノ酸残基もまた存在しない]
のアミノ酸配列を含んでなる。
【0019】
他の実施態様では、本発明のペプチドは次の式(V):
Xaa−Xaa−Glu−Gly−Thr−Leu−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Xaa17−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Xaa21−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37−Xaa38−Xaa39−Xaa40−Xaa41−Xaa42−Xaa43−Xaa44−Xaa45−Xaa46 式(V)(配列番号5)
[上式中、
Xaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン又は4-ピリジルアラニンであり;
Xaaは、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;
Xaa16は、Val又はLeuであり;
Xaa17は、Ser又はThrであり;
Xaa18は、Ser、Lys又はArgであり;
Xaa19は、Tyr又はGlnであり;
Xaa20は、Glu又はAspであり;
Xaa21は、Leu又はMetであり;
Xaa22は、Gly、Glu又はAib又はLysであり;
Xaa23は、Gln、Glu、Lys又はArgであり;
Xaa25は、Ala又はValであり;
Xaa26は、Lys、Glu又はArgであり;
Xaa27は、Glu又はLeuであり;
Xaa30は、Ala、Glu、Asp又はArgであり;
Xaa33は、Val、Ile又はLysであり;
Xaa34は、Lys、Asn又はArgであり;
Xaa35は、Gly又はAibであり;
Xaa36は、Arg、Gly又はLysであり;
Xaa37は、Gly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa38は、Lys、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa39は、Ser、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa40は、Gly、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa41は、Ala、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa42は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa43は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa44は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa45は、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa46はアミドであるか、又は存在せず;
ここで、Xaa38、Xaa39、Xaa40、Xaa41、Xaa42、Xaa43、Xaa44、Xaa45又はXaa46が存在しないならば、下流の各アミノ酸残基もまた存在しない]
のアミノ酸配列を含みうる。
【0020】
本発明の一実施態様では、本発明のペプチド配列におけるアミノ酸位置7-37の塩基性残基(Lys残基+Arg残基)の総数は、ペプチド配列におけるアミノ酸位置7-37の酸性残基(Asp残基+Glu残基)の総数より多い。
【0021】
本発明の他の実施態様では、本発明のペプチドは、GLP-1(7-37)と比較して、10個以下のアミノ酸残基が置換、付加又は欠失されている。
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは、GLP-1(7-37)と比較して、8個以下のアミノ酸残基が置換、付加又は欠失されている。
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは、GLP-1(7-37)と比較して、6個以下のアミノ酸残基が置換、付加又は欠失されている。
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは、GLP-1(7-37)と比較して、4個以下のアミノ酸残基が置換、付加又は欠失されている。
【0022】
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは、遺伝暗号によりコードされない4個以下のアミノ酸残基を含む。
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは、遺伝暗号によりコードされない3個以下アミノ酸残基を含む。
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは、遺伝暗号によりコードされない2個以下アミノ酸残基を含む。
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは、遺伝暗号によりコードされない1個以下アミノ酸残基を含む。
【0023】
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは3個のリジン残基を含む。
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは2個のリジン残基を含む。
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは1個のみリジン残基を含む。
【0024】
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは7を越える等電点を有する。
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは8を越える等電点を有する。
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは9を越える等電点を有する。
本発明のさらなる他の実施態様では、本発明のペプチドは10を越える等電点を有する。
【0025】
本発明のさらなる実施態様では、本発明のペプチドは、
式(VI)(配列番号6)
His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Tyr−Met−Glu−Gly−Gln−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Lys−Lys−Gly−Arg−Gly−Xaa38
[上式中、Xaa38はアミドであるか、又は存在しない]
式(VII)(配列番号7)
His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Gln−Leu−Glu−Glu−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Val−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Xaa39
[上式中、Xaa39はアミドであるか、又は存在しない]
式VIII(配列番号8)
His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Thr−Gln−Tyr−Leu−Glu−Glu−Lys−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Asp−Trp−Leu−Ile−Asn−Gly−Arg−Pro−Lys−Xaa39
[上式中、Xaa39はアミドであるか、又は存在しない]、及び
式IX(配列番号9)
His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Thr−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−Lys−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Asp−Trp−Leu−Ile−Lys−Gly−Arg−Pro−Lys−Xaa39
[上式中、Xaa39はアミドであるか、又は存在しない]、及び
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
また本発明は、配列番号1-9で示される配列を有する本発明のペプチドのアナログであるペプチドも含み、ここで使用される「アナログ(類似体)」とは配列番号1-9で示される配列に対し、その配列が保存的置換を有しているペプチドを意味し、「保存的置換」とは、脂肪族又は疎水性アミノ酸Ala、Val、Leu及びIleの置換、;ヒドロキシル残基Ser及びThrの置換;酸性残基Asp及びGluの置換;アミド残基Asn及びGlnの置換、塩基性残基Lys、Arg、及びHisの置換;芳香族残基Phe、Tyr、及びTrpの置換;及び小サイズアミノ酸Ala、Ser、Thr、Met、及びGlyの置換等の、グループ内での交換を意図している。
【0027】
さらに本発明は、本発明のペプチド又はアナログの誘導体を含み、ここでペプチド又はアナログに関して使用される「誘導体」なる用語は、少なくとも一の置換基が未修飾のペプチド又はそのアナログ中に存在しない化学的に修飾されたペプチド、すなわち共有結合的に修飾されたペプチド又はそのアナログを意味する。典型的な修飾は、アミド、炭水化物、アルキル基、アシル基、ポリエチレングリコール基、エステル等である。GLP-1(7-37)の誘導体の例は、Arg34、Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)である。
【0028】
一実施態様では、誘導体は、アシル基等の親油性置換基で修飾されているペプチド又はアナログであり、ここで親油性置換基を用いたGLP-1ペプチドの修飾は、その内容が全体的にここに援用される国際公開第96/29342号、国際公開第98/08871号、国際公開第99/43708号及び国際公開第00/34331号に記載されている。
他の実施態様では、誘導体は、ポリエチレングリコール部分で修飾されているペプチド又はアナログであり、このような修飾は、その内容が全体的にここに援用される国際公開第00/66629号及び国際公開第03/40309号に記載されている。
【0029】
本発明のペプチドは、古典的なペプチド合成法、例えばt-Boc又はF-Moc化学を使用する固相ペプチド合成、又は他の十分に確立された技術により生産可能であり、実施例及び例えばHouben-Weyl, Methods of organic Chemistry, Volume E 22a, E 22b及びE 22c; Green and Wuts、「Protecting Groups in Organic Synthesis」, Jogn Wiley & Sons, 1999を参照のこと。
【0030】
また本発明のペプチドは、ポリペプチドをコードし、ポリペプチドを発現可能なDNA配列を含む宿主細胞を、ペプチドの発現が可能な条件下で適切な栄養培地において培養し、その後、得られたペプチドを培地から回収することを含む方法によっても生産されうる。
細胞の培養に使用される培地は、宿主細胞の増殖に適した任意の常套的な培地、例えば適切な栄養補助剤を含む最小又は複合培地でありうる。適切な培地は商業的供給者から入手可能であり、又は公開されているレシピ(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ)に従い調製することができる。ついで、細胞により生産されたペプチドは、遠心分離又は濾過により培地から宿主細胞を分離させ、上清又は濾液のタンパク質様成分を硫酸アンモニウム等の塩により沈殿させ、当該ペプチドの種類に応じて、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の様々なクロマトグラフィー手順により精製することを含む一般的な手順により、培養培地から回収することができる。
【0031】
治療用ポリペプチドをコードするDNA配列は、ゲノム又はcDNA由来のものが適しており、例えばゲノム又はcDNAライブラリーを調製し、標準的な技術(例えば、Sambrook, J, Fritsch, EF及びManiatis, T, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York、1989)に従い、合成オリゴヌクレオチドプローブを使用するハイブリダイゼーションにより、ポリペプチドの全体又は一部をコードするDNA配列をスクリーニングすることにより得られる。またポリペプチドをコードするDNA配列は、例えばBeaucage及びCaruthers, Tetrahedron Letters 22 (1981), 1859-1869に記載されたホスホラミダイト(phosphoamidite)法、又はMatthesら, EMBO Journal 3 (1984), 801-805により記載された方法のような確立された標準的な方法により合成的に調製することもできる。さらに、DNA配列は、例えば米国特許第4683202号、又はSaikiら, Science 239 (1988), 487-491に記載されたようにして、特異的プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応により調製することもできる。
【0032】
DNA配列は、簡便には組換えDNA手順に供せられる任意のベクターに挿入され得、多くの場合、ベクターの選択は、それが導入される宿主細胞に依存する。よって、ベクターは自己複製ベクターであってよく、すなわちベクターは染色体外体として存在し、その複製が染色体複製とは独立しているもの、例えばプラスミドでもよい。また、ベクターは、宿主細胞に導入されると、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体(群)と共に複製されるものでもよい。
【0033】
ベクターは、好ましくは、ペプチドをコードするDNA配列がプロモーター等のDNAの転写に必要な付加的なセグメントに作用可能に結合している発現ベクターである。プロモーターは宿主細胞の選択において転写活性を示す任意のDNA配列であってよく、宿主細胞と相同又は異種であるタンパク質をコードする遺伝子から誘導されてよい。様々な宿主細胞において本発明のペプチドをコードするDNAの転写をなさしめる適切なプロモーターの具体例は当該分野でよく知られており、例えば上掲のSambrookらが参照される。
【0034】
ペプチドをコードするDNA配列は、もし必要ならば、適切なターミネーター、ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサー配列、及び翻訳エンハンサー配列に作用可能に結合していてもよい。さらに本発明の組換えベクターは、ベクターを当該宿主細胞内で複製可能にするDNA配列をさらに含みうる。
【0035】
またベクターは、選択可能なマーカー、例えばその産物が宿主細胞における欠損を補完する遺伝子、又は薬物、例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシン、又はメトトレキサート等に耐性を付与するものをさらに含みうる。
【0036】
宿主細胞の分泌経路に本発明の親ペプチドを方向付けるために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列、又はプレ配列としても知られている)が、組換えベクター内に提供されてもよい。分泌シグナル配列は正しい読み枠でペプチドをコードするDNA配列に結合している。分泌シグナル配列は、通常、ペプチドをコードするDNA配列の5'に位置している。分泌シグナル配列はペプチドに通常付随しているものであってもよいし、又は他の分泌タンパク質をコードする遺伝子からのものであってもよい。
【0037】
親ペプチドをコードするDNA配列、プロモーター及び場合によってはターミネーター及び/又は分泌シグナル配列をそれぞれライゲーションし、複製に必要な情報を含む適切なベクターにそれらを挿入するのに使用される手順は、当業者によく知られている(例えば、上掲のSambrookらを参照)。
【0038】
DNA配列又は組換えベクターが導入される宿主細胞は、本ペプチドを生産可能な任意の細胞であってよく、細菌、酵母、真菌及び高等真核細胞を含む。よく知られ当該分野で使用されている適切な宿主細胞の例は、限定されるものではないが、大腸菌、出芽酵母、又は哺乳類BHK又はCHO細胞株である。
【0039】
製薬用組成物
本発明の化合物を含有する製薬用組成物は、一般的な手順、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 1985又はRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 19版 1995に記載されているようにして、調製することができる。
【0040】
本発明の目的の一つは、本発明のペプチドを含有する製薬用製剤を提供することである。一実施態様では、ペプチドは、約0.1mg/ml〜約25mg/mlの濃度で製剤中に存在している。他の実施態様では、ペプチドは、約1mg/ml〜約10mg/mlの濃度で製剤中に存在している。
【0041】
他の実施態様では、製剤は、4.0〜10.0のpHを有している。
本発明の他の実施態様では、製剤のpHは、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、及び10.0からなる列挙から選択される。
他の実施態様では、製剤は、4.0〜7.0のpHを有する。
さらなる他の実施態様では、製剤は、7.0〜10.0のpHを有する。
さらなる他の実施態様では、製剤は、7.0〜8.0のpHを有する。
【0042】
製剤は、バッファー系、保存料(類)、等張剤(類)、キレート剤(類)、安定剤及び界面活性剤をさらに含有してよい。本発明の一実施態様では、製薬用製剤は水性製剤であり、すなわち製剤は水分を含有している。このような製剤は、典型的には溶液又は懸濁液である。本発明のさらなる実施態様では、製薬用製剤は水溶液である。「水性製剤」なる用語は、少なくとも50%w/wの水分を含有する製剤と定義される。同様に「水溶液」なる用語も、少なくとも50%w/wの水分を含有する溶液と定義され、「水性懸濁液」なる用語は、少なくとも50%w/wの水分を含有する懸濁液と定義される。
【0043】
他の実施態様では、製薬用製剤は凍結乾燥製剤であり、医師又は患者は、使用前に溶媒及び/又は希釈液を添加する。
他の実施態様では、製薬用製剤は、何ら事前に溶解することなく使用準備が整った乾燥した製剤(例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥)である。
【0044】
さらなる側面において、本発明は、本発明のペプチドの水溶液とバッファーを含有する製薬用製剤に関する。
【0045】
本発明のさらなる実施態様では、バッファーは、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、シタラート、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ヘペス(hepes)、ビシン、トリシン、リンゴ酸、スクシナート、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はそれらの混合物からなる群から選択される。これらの特定のバッファーの各一が、本発明の別の実施態様を構成する。
【0046】
本発明のさらなる実施態様では、製剤は、製薬的に許容可能な保存料をさらに含有する。本発明のさらなる実施態様では、保存料は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチオメロサル(thiomerosal)、ブロノポール、安息香酸、イミド尿素、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(chlorphenesine)(3p-クロルフェノキシプロパン-1,2-ジオール)又はそれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらなる実施態様では、保存料は、0.1mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる実施態様では、保存料は、0.1mg/ml〜5mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる実施態様では、保存料は、5mg/ml〜10mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる実施態様では、保存料は、10mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在している。これらの特定の保存料の各一が、本発明の別の実施態様を構成する。製薬用組成物に保存料を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0047】
本発明のさらなる実施態様では、製剤は、等張剤をさらに含有する。本発明のさらなる実施態様では、等張剤は、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えば、グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えばグリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、又はそれらの混合物からなる群から選択される。任意の糖、例えば単糖類、二糖類又は多糖類、又は水溶性グルカン類、例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、及びカルボキシメチルセルロース-Naを使用してもよい。一実施態様では、糖添加剤はスクロースである。糖アルコールは、アルデヒド基がヒドロキシル基に還元された糖と定義され、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラシチトール(galacititol)、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一実施態様では、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述した糖又は糖アルコールは、個々に又は組合せて使用されてよい。使用される量は、糖又は糖アルコールが液状調製物に溶解し、本発明の方法を使用して得られた安定化効果に悪影響を与えない限りは、限定されて固定されるものではない。一実施態様では、糖又は糖アルコールの濃度は、約1mg/ml〜約150mg/mlである。本発明のさらなる実施態様では、等張剤は1mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施態様では、等張剤は1mg/ml〜7mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施態様では、等張剤は8mg/ml〜24mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施態様では、等張剤は25mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在する。これらの特定の等張剤の各一が、本発明の別の実施態様を構成する。製薬用組成物に等張剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0048】
本発明のさらなる実施態様では、製剤は、キレート剤をさらに含有する。本発明のさらなる実施態様では、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、及びアスパラギン酸の塩、及びそれらの混合物から選択される。本発明のさらなる実施態様では、キレート剤は0.1mg/ml〜5mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施態様では、キレート剤は0.1mg/ml〜2mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施態様では、キレート剤は2mg/ml〜5mg/mlの濃度で存在する。これらの特定のキレート剤の各一が、本発明の別の実施態様を構成する。製薬用組成物にキレート剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0049】
本発明のさらなる実施態様では、製剤は安定剤をさらに含有する。製薬用組成物に安定剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0050】
特に、本発明の組成物は、その治療的活性化合物が液状製薬用組成物中での保存中に凝集体形成を示すおそれのあるタンパク質を含む安定化した液状製薬用組成物である。「凝集体形成」とは、可溶性のまま残りうるオリゴマーか、又は溶液から沈殿する大きい可視できる凝集体の形成を生じるポリペプチド分子間の物理的相互作用を意図している。「保存中」とは、ひとたび調製された液状製薬用組成物又は製剤が患者に直ぐ投与されるものではないことを意図している。むしろ次の準備のために、液状の形態、凍結状態、液体の形態に後で再構成される乾燥形態、又は患者への投与に適した他の形態で包装又は保存されている。「乾燥形態」とは、液状製薬用組成物又は製剤が、フリーズドライ(すなわち凍結乾燥;例えばWilliams及びPolli(1984)J. Parenteral Sci. Technol. 38:48-59を参照)、噴霧乾燥(Masters(1991) Spray-Drying Handbook(第5版;Longman Scientific and Technical, Essez, U.K.), pp.491-676;Broadheadら, (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18:1169-1206;及びMumenthalerら, (1994) Pharm. Res. 11:12-20)、又は空気乾燥(Carpenter及びCrowe (1988) Cryobiology 25:459-470;及びRoser (1991) Biopharm. 4:47-53)により乾燥されることを意図している。液状製薬用組成物の保存中のポリペプチドによる凝集体形成は、ポリペプチドの生物活性に悪影響を及ぼし、製薬用組成物の治療効果が損なわれるおそれがある。さらに凝集体形成は、他の問題、例えばポリペプチド含有製薬用組成物が注入システムを使用して投与される場合は管組織、膜組織、又はポンプを閉塞させる原因となりかねない。
【0051】
本発明の製薬用組成物は、組成物の保存中、ポリペプチドによる凝集体形成を低減させるのに十分な量のアミノ酸塩基をさらに含有してよい。「アミノ酸塩基」とは、アミノ酸又はアミノ酸の組合せで、任意の与えられたアミノ酸が、遊離塩基の形態又は塩の形態で存在しているものを意図している。アミノ酸の組合せを使用する場合、全てのアミノ酸は遊離塩基の形態で存在していてよく、全ては塩の形態で存在していてよく、又はいくつかは遊離塩基の形態で存在していてよく、残りは塩の形態で存在していてよい。一実施態様では、本発明の組成物の調製に使用されるアミノ酸は、荷電側鎖を担持しているもの、例えばアルギニン、リジン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸である。グリシン、イミダゾール、及び特定のアミノ酸(例えば、メチオニン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン及びそれらの混合物)の任意の立体異性体、又はこれらの立体異性体の組合せは、特定のアミノ酸が遊離塩基の形態又は塩の形態で存在している限り、本発明の製薬用組成物に存在していてよい。一実施態様では、L-立体異性体が使用される。また本発明の組成物は、これらのアミノ酸のアナログと共に処方されてもよい。「アミノ酸アナログ」とは、本発明の液状製薬用組成物の保存中、ポリペプチドによる凝集体形成を低減させる所望の効果を引き起こす天然に生じるアミノ酸の誘導体を意図している。適切なアルギニンアナログは、例えばアミノグアニジン、オルニチン及びN-モノエチル-L-アルギニンを含み、適切なメチオニンアナログはエチオニン及びブチオニンを含み、適切なシステインアナログはS-メチル-L-システインを含む。他のアミノ酸と同様、アミノ酸アナログは、遊離塩基の形態又は塩の形態で組成物に導入される。本発明のさらなる実施態様では、アミノ酸又はアミノ酸アナログは、タンパク質の凝集を防止又は遅延化させるのに十分な濃度で使用される。
【0052】
本発明のさらなる実施態様では、メチオニン(又は他の硫化アミノ酸又はアミノ酸アナログ)は、治療剤として作用するポリペプチドが、このような酸化に敏感な少なくとも一のメチオニン残基を有するポリペプチドである場合、メチオニン残基の酸化を阻害するために、メチオニンスルホキシドに添加されてもよい。「阻害」とは、経時的なメチオニン酸化種の蓄積を最小にすることを意図している。メチオニンの酸化を阻害すると、適切な分子形態でポリペプチドがさらに保持される結果となる。任意の立体異性体又はそれらの任意の組合せを使用することができる。添加される量は、メチオニンスルホキシドの量が調節剤に対して許容可能であるように、メチオニン残基の酸化を阻害するのに十分な量とするべきである。典型的にはこのことは、組成物が約10%〜約30%を越えるメチオニンスルホキシドを含有しないことを意味する。一般的に、メチオニン残基に対して添加されるメチオニンの比率が、約1:1〜約1000:1、例えば10:1〜約100:1の範囲になるようにメチオニンを添加することで達成することができる。
【0053】
本発明のさらなる実施態様では、製剤は高分子量のポリマー又は低分子量の化合物の群から選択される安定剤をさらに含有する。本発明のさらなる実施態様では、安定剤は、ポリエチレングリコール(例えばPEG3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ-/ヒドロキシセルロース又はそれらの誘導体(例えばHPC、HPC-SL、HPC-L及びHPMC)、シクロデキストリン類、硫黄含有物質、例えばモノチオグリセロール、チオグリコール酸及び2-メチルチオエタノール、及び種々の塩(例えば塩化ナトリウム)から選択される。これらの特定の安定剤の各一が、本発明の別の実施態様を構成する。
【0054】
また製薬用組成物は、治療的に活性なポリペプチドの安定性をさらに高める付加的な安定剤をさらに含有していてもよい。本発明で関心を持たれる特定の安定剤は、限定されるものではないが、メチオニンの酸化に対してポリペプチドを保護するEDTA及びメチオニン、凍結-解凍又は機械的剪断に関連する凝集からポリペプチドを保護する非イオン性界面活性剤を含む。
【0055】
本発明のさらなる実施態様では、製剤はさらに界面活性剤を含有する。本発明のさらなる実施態様では、界面活性剤は、洗浄剤、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタンの脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンのブロックポリマー(例えばポロキサマー、例えばプルロニック(Pluronic)(登録商標)F68、ポロキサマー188及び407、トリトン(Triton)X-100)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン及びポリエチレンの誘導体、例えばアルキル化され、アルコキシル化された誘導体(トゥイーン類、例えばトゥイーン-20、トゥイーン-40、トゥイーン80及びビリジ(Brij)-35)、モノグリセリド類又はそのエトキシル化誘導体、ジグリセリド類又はそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レシチン及びリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール及びスフィンゴミエリン)、リン脂質の誘導体(例えばホスファチジン酸ジパルミトイル)及びリゾリン脂質(例えばパルミトイル-リゾホスファチジル-L-セリン、及びエタノールアミン、コリン、セリン又はスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-ホスファートエステル)、及びリゾホスファチジル及びホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)-誘導体、例えばリゾホスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルホスファチジルコリン及び極性頭部基の修飾体、コリン類、エタノールアミン類、ホスファチジン酸、セリン類、スレオニン類、グリセロール、イノシトール、及び正に帯電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリン、及びリゾホスファチジルスレオニン、及びグリセロリン脂質(例えばセファリン類)、グリセロ糖脂質(例えばガラクトピラノシド)、スフィンゴ糖脂質(例えばセラミド類、ガングリオシド類)、ドデシルホスホコリン、鶏卵リゾレシチン、フシジン酸誘導体-(例えばタウロ-ジヒドロフジシン酸ナトリウム等)、長鎖脂肪酸及びそれらのC-C12塩(例えばオレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチン類及び誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンのNα-アシル化誘導体、又はリジン又はアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンと中性又は酸性アミノ酸の任意の組合せを含有するジペプチドのNα-アシル化誘導体、中性アミノ酸と2つの帯電したアミノ酸の任意の組合せを含有するトリペプチドのNα-アシル化誘導体、DSS(ドキュセートナトリウム、CAS登録番号[577-11-7])、ドキュセートカルシウム、CAS登録番号[128-49-4])、ドキュセートカリウム、CAS登録番号[7491-09-0])、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸又はその誘導体、胆汁酸及びその塩、及びグリシン又はタウリンコンジュゲート、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホナート、アニオン性(アルキル-アリール-スルホナート類)の一価の界面活性剤、双性イオン性界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、3-コールアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、カチオン性界面活性剤(第4級アンモニウム塩基)(例えばセチル-トリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド)、非イオン性界面活性剤(例えば、ドデシル-β-D-グルコピラノシド)、ポロキサミン類(例えばテトロニックス(Tetronic's))で、エチレンジアミンにプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを逐次付加することにより誘導された四官能性ブロックコポリマーから選択され、又は界面活性剤は、イミダゾリン誘導体又はそれらの混合物の群から選択されてもよい。これらの特定の界面活性剤の各一が本発明の別の実施態様を構成する。
製薬用組成物に界面活性剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0056】
他の成分が本発明の製薬用製剤に存在していてもよい。このような付加的な成分は、湿潤剤、乳化剤、酸化防止剤、増量剤、張力修正剤、キレート剤、金属イオン、油性ビヒクル、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えばアミノ酸、特にベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジン及びヒスチジン)を含んでよい。もちろん、このような付加的な成分は、本発明の製薬用製剤の全体的な安定性に悪影響が及ばないようにされる。
【0057】
本発明のペプチドを含有する製薬用組成物は、いくつかの部位、例えば局所的部位、特に皮膚及び粘膜部位、動脈、静脈、心臓への投与等、バイパス吸収がなされる部位、例えば皮膚、皮下、粘膜又は腹部への投与等、吸収に関する部位において、このような処置が必要とされる患者に投与してよい。
【0058】
本発明の製薬用組成物は、いくつかの投与経路、例えば舌、舌下、頬、口、経口、胃、及び腸、鼻、肺を介して、例えば細気管支及び肺胞及び/又はそれらを組合せたもの、表皮、真皮、経皮、膣、直腸、眼球を介して、例えば結膜、尿管、及び非経口を介して、このような処置を必要としている患者に投与することができる。
【0059】
本発明の組成物は、任意の投与形態、例えば溶液、懸濁液、エマルション、マイクロエマルション、多相エマルション、フォーム、膏薬、ペースト、プラスター、軟膏、錠剤、被覆錠剤、リンス、カプセル、例えば硬質ゼラチンカプセル及び軟質ゼラチンカプセル、坐薬、直腸用カプセル、ドロップ、ゲル、スプレー、パウダー、エアゾール、吸入剤、点眼剤、眼球用軟膏、眼球用リンス、膣用ペッサリー、膣用リング、膣用軟膏、注入溶液、インサイツ形質転換溶液、例えばインサイツゲル化、インサイツセット用、インサイツ沈殿化、インサイツ結晶化のもの、注入液、及び移植片で投与することができる。
【0060】
本発明の組成物は、化合物の安定性を高め、生物学的利用能を増加させ、溶解度を高め、悪影響を低減させ、当業者によく知られている時間治療を達成し、患者のコンプライアンスを高める、又はそれらの任意の組合せのために、例えば共有結合的、疎水的及び静電気的相互作用を介して、薬剤担体、薬剤送達系(ドラッグデリバリーシステム)、及び先端薬剤送達系(アドバンストドラッグデリバリーシステム)を、さらに組合せ又はこれらに結合させてもよい。担体、薬剤送達系及び先端薬剤送達系の例は、限定されるものではないが、ポリマー、例えばセルロース及び誘導体、多糖類、例えばデキストラン及び誘導体、デンプン及び誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリラート及びメタクリラートポリマー、ポリ乳酸及びポリグリコール酸、及びそれらのブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、担体タンパク質、例えばアルブミン、ゲル、例えば熱ゲル化系、例えば当業者によく知られているブロックコ-ポリマー系、ミセル、リポソーム、ミクロスフィア、ナノ粒子、液晶、及びそれらの分散液、L2相、及び脂質-水系における相挙動が当業者によく知られているそこでの分散液、ポリマー性ミセル、多相エマルション、自己乳化剤、自己-マイクロ乳化剤、シクロデキストリン及びそれらの誘導体、及びデンドリマーを含む。
【0061】
本発明の組成物は、全て、当業者によく知られた装置である、定量吸入器、乾燥パウダー吸入器、及び噴霧器等を使用し、化合物を肺に投与するための、固体状、半固体状、パウダー状及び液状の製剤に有用である。
【0062】
本発明の組成物は、制御、徐放性、持続性、遅延性及び低速放出性の薬剤送達系の製剤に特に有用である。特に限定されるものではないが、組成物は、当業者によく知られている非経口用の制御放出性及び徐放性系(双方の系とも、投与回数が数倍低下する)組成物に有用である。さらに好ましいのは、皮下投与される制御放出性及び徐放性系のものである。本発明の範囲を制限することなく、有用な制御放出性及び組成物の有用な例は、ヒドロゲル、油性ゲル、液晶、ポリマー性ミセル、ミクロスフィア、ナノ粒子である。
【0063】
本発明の組成物に有用な制御放出性系の製造方法は、限定されるものではないが、結晶化、縮合、共結晶化、沈殿、共沈殿、乳化、分散、高圧ホモジナイズ、カプセル化、噴霧乾燥、マイクロカプセル化、コアセルベーション、相分離、ミクロスフィアを製造するための溶媒蒸発、押出及び超臨界場プロセスを含む。一般的には、Handbook of Pharmaceutical Controlled Release(Wise, D.L.編. Marcel Dekker, New York, 2000)及びDrug and the Pharmaceutical Sciences vol.99:Protein Formulation and Delivery(MacNally, E.J.編. Marcel Dekker, New York, 2000)を参照のこと。
【0064】
本発明のペプチドを含有する製薬用組成物は、このような治療が必要な患者に非経口的に投与されうる。非経口投与は、シリンジ、場合によってはペン様シリンジにより、皮下、筋肉内、腹膜内又は静脈内注射で実施されうる。また非経口投与は、注入ポンプにより実施することもできる。さらなる選択肢は、鼻用又は肺用スプレーの形態でペプチドを投与するための液体又はパウダーであってよい組成物にある。さらなる選択肢としては、本発明のペプチドを、パッチ、場合によってはイオン導入パッチであって経皮的に、又は頬等の経粘膜的に投与することができる。
【0065】
よって、本発明のペプチドの組成物は、所望の最終生成物を得るのに適切な成分を溶解し、混合することを含む、製薬工業において従来から使用されている技術を使用して調製することができる。
【0066】
一実施態様では、ペプチドは、調製される組成物の最終容量より、幾分少ない量の水に溶解される。必要であれば等張剤、保存料及びバッファーが添加され、溶液のpH値が、必要に応じて、酸、例えば塩酸、又は塩基、例えば水酸化ナトリウム水を使用して調節される。最後に、所望の濃度成分が得られるように、溶液の容量が水で調節される。
【0067】
本発明の一実施態様では、ペプチドは、注射による投与に適した組成物の形態で提供される。このような組成物は、それを注射可能にする前に、溶媒に溶解しなければならない、凍結乾燥された製品等の所定量の固体状組成物とすることができるか、又は使用準備が整った注射可能な溶液のいずれかにすることができる。
【0068】
この発明のペプチドは、様々な病気の治療に使用することができる。使用される特定のペプチド及び任意の患者への最適投与レベルは、治療しようとする病気、及び使用される特定のペプチド誘導体の効能、年齢、体重、物理的活性度、及び患者の食生活を含む多様な要因、他の薬剤との可能な組合せ、及び症例の重症度に依存するであろう。この発明のペプチドの投与量は、当業者により、個々の患者に対して決定されることが推奨される。
【0069】
一実施態様では、ペプチドは、インスリン非依存性糖尿病の治療及び/又は肥満の治療用で、作用遅延型プロファイルを有する医薬を調製するのに有用であると考えられている。
【0070】
他の実施態様では、本発明は、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、1型糖尿病、肥満、高血圧、X症候群、脂質代謝異常、β-細胞アポトーシス、β-細胞欠乏症、心筋梗塞、炎症性腸症候群、胃腸障害、認知障害、例えば認識促進、神経防護作用、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患、及び他の心血管障害を処置するための医薬の調製に、本発明のペプチドを使用することに関する。
本発明の他の実施態様では、本発明のペプチドは、2型糖尿病の病気の進行を遅延化又は防止するための医薬の調製に使用される。
本発明の他の実施態様では、ペプチドは、食物摂取を低減させ、β-細胞アポトーシスを低減させ、β-細胞機能及びβ-細胞質量を増大させ、及び/又はβ-細胞に対するグルコース感受性を回復させるための医薬の調製に使用される。
【0071】
本発明のペプチドを用いた治療は、例えば抗糖尿病剤、抗肥満剤、食欲調節剤、血圧降下剤、糖尿病に起因する又は関連する合併症を治療及び/又は予防する薬剤、及び肥満に起因する又は関連する合併症及び疾患を治療及び/又は予防する薬剤から選択される第2の又はそれ以上の薬理学的活性物質と併用することもできる。本明細書において、「抗糖尿病剤」なる用語は、インスリン耐性及びインスリン耐性が病態生理学的メカニズムである病気を治療及び/又は予防する化合物を含む。
【0072】
これら薬理学的活性物質の例は:インスリン、GLP-1アゴニスト、スルホニル尿素(例えば、トルブタミド、グリベンクラミド、グリピジド(glipizide)及びグリカジド(glicazide))、ビグアニド類、例えば、メトホルミン、メグリチニド類(meglitinides)、グルコシダーゼインヒビター(例えばアカルボース(acarbose))、グルカゴンアンタゴニスト、DPP-IV(ジペプチジルペプチダーゼ-IV)インヒビター、グルコース新生及び/又はグリコーゲン分解の刺激に関与する肝酵素インヒビター、グルコース取込調節剤、チアゾリジンジオン類、例えばトログリタゾン(troglitazone)及びシグリタゾン(ciglitazone)、脂質代謝を調節する化合物、例えば抗高脂血剤(antihyperlipidemic agents)、例えばHMG CoAインヒビター(スタチン類)、食糧摂取量を低下させる化合物、RXRアゴニスト、及びβ-細胞のATP-依存性カリウムチャンネルに作用する薬剤、例えばグリベンクラミド、グリピジド(glipizide)、グリクラジド及びレパグリニド(repaglinide);コレスチラミン、コレスチポール、クロフィブラート、ゲンフィブロジル(gemfibrozil)、ロバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、プロブコール、デキストロサイロキシン、ネテグリニド(neteglinide)、レパグリニド類;β-ブロッカー、例えばアルプレノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、プロプラノロール及びメトプロロール、ACE(アンジオテンシン変換酵素)インヒビター、例えばベナゼプリル(benazepril)、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル(fosinopril)、リシノプリル、アラトリオプリル(alatriopril)、キナプリル及びラミプリル、カルシウムチャンネルブロッカー、例えばニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、イスラジピン、ニモジピン、ジルチアゼム及びベパラミル、及びα-ブロッカー、例えばドキサゾシン、ウラピジル、プラゾシン及びテラゾシン;CART(コカインアンフェタミン調節転写)アゴニスト、NPY(神経ペプチドY)アンタゴニスト、MC4(メラノコルチン4)アゴニスト、オレキシン(orexin)アンタゴニスト、TNF(腫瘍壊死因子)アゴニスト、CRF(コルチコトロピン放出因子)アゴニスト、CRF BP(コルチコトロピン放出因子結合タンパク質)アンタゴニスト、ウロコルチンアゴニスト、β3アゴニスト、MSH(メラノサイト刺激ホルモン)アゴニスト、MCH(メラノサイト集中ホルモン)アンタゴニスト、CCK(コレシストキニン)アゴニスト、セロトニン再摂取インヒビター、セロトニン及びノルアドレナリン再摂取インヒビター、混合セロトニン及びノルアドレナリン性化合物、5HT(セロトニン)アゴニスト、ボンベシンアゴニスト、ガラニンアンタゴニスト、成長ホルモン、成長ホルモン放出化合物、TRH(チレオトロピン(thyreotropin)放出ホルモン)アゴニスト、UCP2又は3(脱共役タンパク質2又は3)モジュレーター、レプチンアゴニスト、DAアゴニスト(ブロモクリプチン、ドプレキシン(doprexin))、リパーゼ/アミラーゼインヒビター、RXR(レチノイドXレセプター)モジュレーター、TRβアゴニスト;ヒスタミンH3アンタゴニストである。
【0073】
本発明のペプチドと、一又は複数の上述した化合物と、場合によっては一又は複数のさらなる薬理学的に活性な物質の任意の適切な組合せは、本発明の範囲内であると考えられると理解されなければならない。
本発明を、本発明の範囲を限定するとは解してはならない以下の実施例によりさらに例証する。上述の記載及び以下の実施例に開示されている特徴は、別々にでもその任意の組合せにおいてでも、本発明をその様々な形態で実施するための材料でありうる。
【実施例】
【0074】
実施例1
配列番号6-9に示される配列を有するペプチドの生物学的作用強度及び化学的安定性
生物学的な作用強度を、ここに記載したようにして、GLP-1レセプターアゴニスト活性に対してcAMP形成アッセイで測定し、化学的安定性を、ここに記載したDPP-IV分解アッセイで測定した。比較のために、同様のアッセイをエキセンディン-4及びGLP-1(7-37)について実施した。結果は以下の通りであった:
【0075】
配列番号8及び9に示される2つの配列に対するデータは以下の通りである。

表1:試験したペプチドのDPP-IV安定性アッセイにおけるレセプター親和性、作用強度及び半減期(T1/2)を示す。作用強度については、2回又はそれ以上の測定を行い、データは平均プラス標準偏差として提示する。T1/2を2つの独立した測定値の平均から算出する。
【0076】
配列番号6及び7に対するデータを以下に示す。
表2:インビトロDPP-IV安定性アッセイにおけるペプチドのレセプター親和性、作用強度及び半減期(T1/2)を示す。作用強度については、2回又はそれ以上の測定を行い、データは平均プラス標準偏差として提示する。T1/2は2又はそれ以上の独立した測定値の平均から算出する。

【0077】
実施例2
C. pyrrhogasterのGLP-1、及びC. pyrrhogasterで観察された変異に基づいたhGLP-1(7-37)の変異体に対するヒトGLP-1レセプターの親和性及び作用強度を示す。作用強度はn回の独立の測定値の平均(±標準偏差)として与えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
Xaa−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Ser−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37−Xaa38−Xaa39−Xaa40−Xaa41−Xaa42−Xaa43−Xaa44−Xaa45−Xaa46 式(I)(配列番号1)
[上式中、
Xaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン又は4-ピリジルアラニンであり;
Xaaは、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;
Xaa16は、Val又はLeuであり;
Xaa18は、Ser、Lys又はArgであり;
Xaa19は、Tyr又はGlnであり;
Xaa20は、Leu又はMetであり;
Xaa22は、Gly、Glu又はAibであり;
Xaa23は、Gln、Glu、Lys又はArgであり;
Xaa25は、Ala又はValであり;
Xaa26は、Lys、Glu又はArgであり;
Xaa27は、Glu又はLeuであり;
Xaa30は、Ala、Glu又はArgであり;
Xaa33は、Val又はLysであり;
Xaa34は、Lys、Glu、Asn又はArgであり;
Xaa35は、Gly又はAibであり;
Xaa36は、Arg、Gly又はLysであり;
Xaa37は、Gly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa38は、Lys、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa39は、Ser、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa40は、Gly、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa41は、Ala、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa42は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa43は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa44は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa45は、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa46はアミドであるか、又は存在せず;
但し、Xaa38、Xaa39、Xaa40、Xaa41、Xaa42、Xaa43、Xaa44、Xaa45又はXaa46が存在しないならば、下流の各アミノ酸残基もまた存在せず、アミノ酸7-37における塩基性残基(Lys残基+Arg残基)の総数は、アミノ酸7-37における酸性残基(Asp残基+Glu残基)の総数より多い]
のアミノ酸配列を含んでなるペプチド。
【請求項2】
次の式(IV):
Xaa−Xaa−Xaa−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Xaa17−Xaa18−Gln−Leu−Xaa21−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Asn−Xaa35−Xaa36−Xaa37−Xaa38−Xaa39−Xaa40−Xaa41−Xaa42−Xaa43−Xaa44−Xaa45−Xaa46 式(IV)(配列番号4)
[上式中、
Xaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン又は4-ピリジルアラニンであり;
Xaaは、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;
Xaaは、Glu又はAspであり;
Xaa16は、Val又はLeuであり;
Xaa17は、Ser又はThrであり;
Xaa18は、Ser、Lys又はArgであり;
Xaa21は、Glu又はAspであり;
Xaa22は、Gly、Glu又はAibであり;
Xaa23は、Gln、Lys又はArgであり;
Xaa25は、Ala又はValであり;
Xaa26は、Lys又はArgであり;
Xaa27は、Glu又はLeuであり;
Xaa30は、Ala、Glu又はArgであり;
Xaa33は、Val又はLysであり;
Xaa34は、Lys、Glu、Asn又はArgであり;
Xaa35は、Gly又はAibであり;
Xaa36は、Arg、Gly又はLysであり;
Xaa37は、Gly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa38は、Lys、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa39は、Ser、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa40は、Gly、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa41は、Ala、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa42は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa43は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa44は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa45は、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa46はアミドであるか、又は存在せず;
ここで、Xaa38、Xaa39、Xaa40、Xaa41、Xaa42、Xaa43、Xaa44、Xaa45又はXaa46が存在しないならば、下流の各アミノ酸残基もまた存在しない]
のアミノ酸配列を含んでなるペプチド。
【請求項3】
次の式(V):
Xaa−Xaa−Glu−Gly−Thr−Leu−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Xaa17−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Xaa21−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37−Xaa38−Xaa39−Xaa40−Xaa41−Xaa42−Xaa43−Xaa44−Xaa45−Xaa46 式(V)(配列番号5)
[上式中、
Xaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン又は4-ピリジルアラニンであり;
Xaaは、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;
Xaa16は、Val又はLeuであり;
Xaa17は、Ser又はThrであり;
Xaa18は、Ser、Lys又はArgであり;
Xaa19は、Tyr又はGlnであり;
Xaa20は、Glu又はAspであり;
Xaa21は、Leu又はMetであり;
Xaa22は、Gly、Glu又はAib又はLysであり;
Xaa23は、Gln、Glu、Lys又はArgであり;
Xaa25は、Ala又はValであり;
Xaa26は、Lys、Glu又はArgであり;
Xaa27は、Glu又はLeuであり;
Xaa30は、Ala、Glu、Asp又はArgであり;
Xaa33は、Val、Ile又はLysであり;
Xaa34は、Lys、Asn又はArgであり;
Xaa35は、Gly又はAibであり;
Xaa36は、Arg、Gly又はLysであり;
Xaa37は、Gly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa38は、Lys、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa39は、Ser、Lys、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa40は、Gly、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa41は、Ala、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa42は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa43は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa44は、Pro、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa45は、Ser、アミドであるか、又は存在せず;
Xaa46はアミドであるか、又は存在せず;
ここで、Xaa38、Xaa39、Xaa40、Xaa41、Xaa42、Xaa43、Xaa44、Xaa45又はXaa46が存在しないならば、下流の各アミノ酸残基もまた存在しない]
のアミノ酸配列を含んでなるペプチド。
【請求項4】
Xaa22がLysである請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドが、次の式(II):
Xaa−Xaa−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val-Ser−Xaa18−Tyr−Leu−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Ala−Xaa26−Glu−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Val−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37−Xaa38 式(II)(配列番号2)
[上式中、
Xaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン又は4-ピリジルアラニンであり;
Xaaは、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;
Xaa18は、Ser、Lys又はArgであり;
Xaa22は、Gly、Glu又はAibであり;
Xaa23は、Gln、Glu、Lys又はArgであり;
Xaa26は、Lys、Glu又はArgであり;
Xaa30は、Ala、Glu又はArgであり;
Xaa34は、Lys、Glu又はArgであり;
Xaa35は、Gly又はAibであり;
Xaa36は、Arg又はLysであり;
Xaa37は、Gly、Ala、Glu又はLysであり;
Xaa38は、Lys、アミドであるか、又は存在しない]
のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドが、次の式(III):
His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Xaa18−Tyr−Xaa20−Glu−Gly−Xaa23−Ala−Val−Xaa26−Leu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Gly−Xaa36−Gly−Xaa38 式(III)(配列番号3)
[上式中、
Xaa18は、Lys又はArgであり;
Xaa20は、Leu又はMetであり;
Xaa23は、Gln又はAsnであり;
Xaa26は、Lys又はArgであり;
Xaa33は、Lys又はArgであり;
Xaa34は、Lys又はArgであり;
Xaa36は、Arg又はLysであり;
Xaa38は、Lys、アミドであるか、又は存在しない]
のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドが、次の式(IV):
His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Tyr−Met−Glu−Gly−Gln−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Lys−Lys−Gly−Arg−Gly−Xaa38 式(VI)(配列番号6)
[上式中、Xaa38はアミドであるか、又は存在しない]
のアミノ酸配列を含んでなる請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
次の式(VII)(配列番号7):
His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val-Ser−Ser−Gln−Leu−Glu−Glu−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Val−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Xaa39
[上式中、Xaa39はアミドであるか、又は存在しない]
のアミノ酸配列を含んでなるペプチド。
【請求項9】
アミノ酸7-37における塩基性残基(Lys残基+Arg残基)の総数が、アミノ酸7-37における酸性残基(Asp残基+Glu残基)の総数より多い請求項2又は3に記載のペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドが7を越える等電点を有する請求項1から3の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項11】
前記ペプチドが8を越える等電点を有する請求項1から3の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項12】
前記ペプチドが9を越える等電点を有する請求項1から3の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項13】
前記ペプチドが10を越える等電点を有する請求項1から3の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項14】
前記ペプチドのC末端アミノ酸がXaa37又はXaa38である請求項1から3の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項15】
前記ペプチドのアミノ酸配列は、GLP-1(7-37)と比較して、8個以下のアミノ酸残基が置換、付加又は欠失されている請求項1から3の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項16】
前記ペプチドのアミノ酸配列が、GLP-1(7-37)と比較して、6個以下のアミノ酸残基が置換、付加又は欠失されている請求項1から3の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項17】
前記ペプチドのアミノ酸配列が、GLP-1(7-37)と比較して、4個以下のアミノ酸残基が置換、付加又は欠失されている請求項1から3の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項18】
前記ペプチドのアミノ酸配列が、遺伝暗号によりコードされない4個以下のアミノ酸残基を含む請求項1から3の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項19】
次の式VIII(配列番号8):
His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Thr−Gln−Tyr−Leu−Glu−Glu−Lys−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Asp−Trp−Leu−Val−Asn−Gly−Arg−Pro−Lys−Xaa39
[上式中、Xaa39はアミドであるか、又は存在しない]
のアミノ酸配列を含んでなるペプチド。
【請求項20】
次の式IX(配列番号9):
His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Thr−Ser−Tyr−Leu−Glu−Glu−Lys−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Asp−Trp−Leu−Ile−Lys−Gly−Arg−Pro−Lys−Xaa39
[上式中、Xaa39はアミドであるか、又は存在しない]
のアミノ酸配列を含んでなるペプチド。
【請求項21】
請求項1から3、8、19及び20の何れか一項に記載のペプチドと、製薬的に許容可能な賦形剤を含有する製薬用組成物。
【請求項22】
経口投与に適している請求項21に記載の製薬用組成物。
【請求項23】
肺投与に適している、請求項21に記載の製薬用組成物。
【請求項24】
高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、1型糖尿病、肥満、高血圧、X症候群、脂質代謝異常、認知障害、アテローム性動脈硬化、心筋梗塞、冠動脈心疾患からなる群から選択される病気又は疾患の治療方法であって、請求項21に記載の製薬用組成物の有効量を、該治療が必要な患者に投与することを含む方法。
【請求項25】
食物摂取を低減させ、β-細胞アポトーシスを低減させ、β-細胞機能及びβ-細胞質量を増大させ、及び/又はβ-細胞に対するグルコース感受性を回復させるための方法であって、請求項21に記載の製薬用組成物の有効量を患者に投与することを含む方法。

【公表番号】特表2009−532422(P2009−532422A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503545(P2009−503545)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053023
【国際公開番号】WO2007/113205
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508260359)
【Fターム(参考)】